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攻めの予防医療、産業医はどう関わる?【実践!産業医のしごと】

産業医の役割を、もう一度「予防」から考える少子高齢化と人手不足が進む中で、従業員の健康は、福利厚生というよりも事業の継続にも関わるテーマになってきました。そこで政府が掲げているのが「攻めの予防医療」です1)。データヘルスや保険者機能の強化、健康経営に取り組む企業への支援、がん検診・歯科健診の推進などを通じて、病気になってから対応するのではなく、リスクを早めにつかみ、受診や重症化予防につなげる考え方です。ただし、企業の現場で考えるなら、内閣官房の有識者資料として古井 祐司先生が示した整理2)が、より実務に近い示唆を与えてくれます。「『攻めの予防医療』:人的資本を基盤に国力を最大化する国家戦略」と題された資料では、攻めの予防医療を単なる医療費抑制策ではなく、健康を人的資本の中核と捉え、ウェルビーイングと企業価値をともに高める枠組みとして位置付けています。この流れは、本来、産業医と非常に相性がよいはずです。産業医の仕事は、もともと予防に軸足があります。健康管理、作業環境管理、作業管理は、いずれも病気や労災が起きる前に手を打つための枠組みです。にもかかわらず、現場では復職判定、不調者対応、健診後措置など、問題が起きた後に呼ばれることが多く、職場の健康課題を早い段階で考える場面には十分に関与できていない状況があります。予防に関わりにくい背景を整理する産業医が予防に関わりにくい背景には、いくつかの構造的な要因があります。まず、産業医に声が掛かるのは、不調者が出た後、休職が発生した後、復職判定が必要になった後であることが少なくありません。そのため、予防の設計よりも「起きた問題への対応」を求められやすいのです。また、健康課題が企業の中で、経営課題や職場づくりの課題として見えにくいこともあります。高血圧、糖尿病、睡眠不足、メンタル不調などは、欠勤、休職、生産性低下につながります。しかし現場では、「本人の健康管理の問題」として受け止められやすく、働き方や受診しやすさ、管理職の関わり方と結び付けて考えられにくい面があります。さらに、保険者が持つ健診・レセプトデータと、企業が持つ労働時間、ストレスチェック、休職・復職などの職場データが分かれていることも、課題を見えにくくしています。これらがつながって、集団としての健康課題が見えてきます。総じて、予防の成果は評価されにくく、企業の意思決定の中に、まだ「予防をどう設計するか」という問いが十分に組み込まれていないのが現状です。産データ連携時代に求められる産業医の関わり方「攻めの予防医療」を進めるうえで、カギになるのは保険者と企業の連携です。保険者と企業が連携し、集団としての健康課題を可視化するうえで、産業医に求められる役割は、大きく3つあります。図1 保険者・企業連携と産業医の関与画像を拡大する1)データから見えてきた課題を読み解く未治療の高血圧が多い、精密検査の受診率が低い、睡眠課題が多いといった結果を、単に本人の意識の問題で終わらせず、年齢構成、勤務形態、長時間労働、受診しにくさ、職場のストレスなど、背景まで含めて解釈することが重要です。2)課題を職場で動く施策に翻訳する受診勧奨や健診後フォローだけでなく、職場環境改善、治療と仕事の両立支援、安全衛生委員会での議題化など、データを職場づくりの題材として扱う視点が求められます。3)経営や意思決定者に届く形で、予防につながる職場施策を提言する攻めの予防医療は、健診で異常が出た人に受診を促すだけではありません。長時間労働、過度な業務負荷、相談しにくい職場風土など、健康リスクを高める要因に早い段階で目を向けることが重要です。産業医には、組織の施策を決定する権限があるわけではありません。だからこそ、課題に医学的な意味付けを行い、経営層や人事などの意思決定者が判断できる形で伝えることが求められます。意思決定者を巻き込み、職場全体の取り組みとして位置付けていく必要があります。働く人のQOLと企業価値を同時に高める仕事を、予防の側から組み立てていく。そこに、これからの産業医の本領があります。攻めの予防医療は、産業医が本来持っている予防の力を、企業の中でより生かしていくための機会だと思います。 参考 1) 社会保障分野における経済・財政一体改革の検討事項等について/厚生労働省 2) 内閣官房 第3回 副大臣等会議 古井祐司氏提出資料

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第295回 MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省

<先週の動き> 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省厚生労働省は5月11日、第一三共の麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチン「ミムリット皮下注用」を承認した。3疾患を1度に予防するMMRワクチンで、効能・効果は「麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防」。国内でMMRワクチンが使用されるのは約30年ぶりとなる。ミムリットは、現在定期接種の対象となっている第一三共の麻しん・風しん2種混合ワクチンに、世界で広く用いられているおたふくかぜワクチン株を組み合わせた3種混合の弱毒生ワクチンである。添付の溶剤0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射する。接種対象は生後12ヵ月以上で、性別や年齢にかかわらず接種可能とされるが、具体的な接種年齢は学会などの最新情報を踏まえ総合的に判断する。明らかな発熱がある人、免疫機能に異常がある人や免疫抑制治療中の人、妊娠していることが明らかな人などは接種不適当者とされる。わが国では1989年に別のMMRワクチンが定期接種に導入されたが、含有されていたおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生が社会問題となり、1993年に事実上中止された。今回のミムリットについて厚労省は、国内第III相臨床試験で小児約400例に無菌性髄膜炎の発現は認められなかったこと、含まれるムンプスウイルス株がWHOで事前認定された株の1つであること、海外で豊富な使用実績があり、無菌性髄膜炎の発現率が相対的に低いとの報告がある株を選択したことなどを踏まえ、リスクは許容可能と判断した。現在、麻しん・風しんはMRワクチンとして定期接種の対象だが、おたふくかぜワクチンは任意接種で自己負担となっている。おたふくかぜは無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などの合併症を起こし得る。2015~16年の流行では成人を含め少なくとも359例がムンプス難聴と診断され、医学系学会が定期接種化を要望してきた。海外では120ヵ国以上で定期接種化されており、ミムリットの承認により、接種回数の削減と保護者負担の軽減、さらにおたふくかぜ対策の前進が期待される。 参考 1) 麻疹・おたふく・風疹のMMRワクチン承認 約30年ぶり使用へ(毎日新聞) 2) MMRワクチン、国内でも使用可能に-第一三共の「ミムリット」承認取得(日本医事新報) 3) 第一三共の3種混合ワクチン承認 はしかと風疹におたふく追加(日経新聞) 4) 厚労省 第一三共のMMRワクチン・ミムリット皮下注用を承認 2つの再生医療等製品も(ミクスオンライン) 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省厚生労働省は、中東情勢悪化による医療用物資の供給不安を踏まえ、国が備蓄する医療用手袋のうち、まず5,000万枚を医療機関向けに放出する。医療用手袋は現時点で全体としてただちに不足する状況ではないが、通常量を超える発注や一般のネット通販で取引が停止されており、歯科診療所など一部の医療機関で確保困難が生じている。国は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、非滅菌手袋などの個人防護具を備蓄しており、今回の放出は需給の偏在を緩和する措置となる。要請は医療機関等情報支援システム「G-MIS」を通じて行う。医療機関は週次調査で在庫量、1週間の想定消費量、1週間の購入見込み量を入力し、あわせて販売業者であるアスクルの専用サイトに施設名、住所、医療機関コード、メールアドレスなどを登録する。都道府県が要請内容と配布要否、枚数を確認し、厚労省が承認した後、対象医療機関のリストが販売業者に送られ、医療機関は案内メールを受けて購入手続きを行う。G-MISでの申請が困難な場合は、都道府県への相談による個別シート対応も用意されている。対象となるのは、在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた量の4週間分」を下回る医療機関である。購入可能数は想定消費量2週間分を基準に1,000枚単位で切り上げ、1セット1,000枚から購入できるほか、セット単位でサイズ指定も可能とされる。第1弾は5月18日午前9時から20日午後5時まで申請を受け付け、以後も毎週水曜午後5時締めで受け付ける予定。感染対策資材の不足は、病院、歯科、在宅、訪問看護など幅広い診療継続に直結する。医療機関には、在庫と使用量を踏まえた適正申請が求められ、国と都道府県には配送状況や追加放出の情報を迅速に示す対応が求められる。 参考 1) 中東情勢を踏まえた医療用手袋の放出について(厚労省) 2) 上野厚労相「国備蓄の手袋5千万枚を放出」 中東情勢影響による医療機関での不足受け(産経新聞) 3) 医療用手袋 5月18日から購入申請受け付け開始 政府備蓄放出分(NHK) 4) 国備蓄の医療用手袋放出発表うけ 看護現場からは安堵の声(日本テレビ) 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省厚生労働省は5月14日に「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、がん診療連携拠点病院などの整備指針見直し案を示した。柱となるのは、がん医療の高度化と人口減少を踏まえた「集約化」と「均てん化」の切り分けである。2026年夏ごろに新たな整備指針を取りまとめ、2027年度から新体制を始める見通し。とくに注目されるのは、がんゲノム医療体制の強化である。厚労省は2026年度の指針改定で、がん診療連携拠点病院などが「がんゲノム医療中核拠点病院」「同拠点病院」「同連携病院」のいずれかに指定されていることを「望ましい要件」とし、2029年度の改定時には必須要件化する方針を示した。がんゲノム医療の進展により、患者ごとに最適な薬物療法を選択する重要性が高まっているためである。ただ、2026年4月1日時点で地域がん診療連携拠点病院357施設のうち、がんゲノム医療中核拠点病院などの指定を受けているのは7割弱にとどまる。別資料でも、2026年3月時点で拠点病院等463施設のうち指定済みは295施設(63.7%)とされ、遺伝カウンセリング体制、C-CATへのデータ登録、エキスパートパネル実施などが課題となっている。手術療法と放射線療法についても、実績要件の厳格化が進む。現行指針では、地域拠点病院の要件として、悪性腫瘍の手術年400件以上、放射線治療の延べ患者年200人以上などの絶対数要件がある一方で、同一がん医療圏に1施設のみの場合は、地域患者の約2割を診療していれば要件を満たす「カバー率要件」も認められている。厚労省は2029年度の見直しでこの緩和要件を廃止し、2030年度から手術年400件以上、放射線治療年200人以上を必須要件とする方向。現在、手術件数を満たさず、カバー率で指定されている施設は13施設、放射線治療の基準を下回る地域拠点病院は38施設ある。また、手術、放射線治療、薬物療法の実績や専門職配置、機器情報などを都道府県に報告し、都道府県がん診療連携協議会の求めに応じて情報提供すること、診療実績をウェブサイトなどで公表することも必須要件とする。協議会には、地域でどの医療を集約し、どの医療を身近に提供するかを議論する役割が期待される。その一方で、ワーキンググループでは、拠点病院が減少した場合の地域医療の質や患者アクセスへの影響を懸念する意見も出た。集約化は質の維持や人材確保には不可欠だが、患者や住民に必要性をわかりやすく説明し、地域がん診療病院や周辺医療機関との連携を強めることが求められる。今回の見直しは、がん医療を「どこでも同じ」から「高度医療は集約し、継続診療は地域で支える」体制へ再編する転換点となる。 参考 1) 第10回がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) がん拠点病院、ゲノム中核指定を「望ましい要件」に 整備指針改定で 29年度からは必須要件化(CB news) 3) がん診療連携拠点病院、2030年度から「ゲノム中核拠点病院等であること」を必須要件へ-がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第18週(4月27日~5月3日)の麻しん(はしか)報告数は23例で、年初からの累計は462例となった。過去10年で患者数が最多だった2019年の同時期467例に迫る水準で、感染は首都圏を中心に広がっている。累計では東京都226例が最多であり、神奈川県41例、鹿児島県34例、埼玉県33例、千葉県28例、愛知県25例と続く。東京都では5月14日までに239例の患者が確認され、現在の集計方法となった2008年以降で過去2番目、過去10年では最多となった。麻しんは空気感染する極めて感染力の強い感染症で、免疫を持たない人が同じ空間にいれば、ほぼ感染するとされる。発熱、咳、発疹などを来し、肺炎、中耳炎、脳炎などを合併し、重症化すれば死亡することもある。国内は麻しんウイルスが定着していない「排除状態」とされるが、今年の患者の約7割は国内感染とみられ、海外から持ち込まれたウイルスが国内で連鎖している可能性がある。5月5日には埼玉県所沢市のベルーナドームで野球観戦した来場者の麻しん陽性が判明し、ゴールデンウイーク後の拡大が警戒されている。東京都は感染拡大を受け、保健所が接触者と特定した都民のうち、接触から72時間以内で、麻しんの既往がなく、接種歴が不明または1回以下の人を対象に、5月18日から都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料の緊急ワクチン接種を始める。接触後72時間以内の接種により、発症を予防できる可能性があるためだ。厚生労働省も、子どもの定期接種の徹底に加え、乳幼児や渡航者と接する機会の多い職種で未接種者に接種検討を呼びかけている。医療機関での対応も重要になっている。国立国際医療センターでは、病棟勤務の医療従事者2人と外来受診患者1人の麻しん陽性が判明した。職員2人は麻しん含有ワクチンを複数回接種済みで、修飾麻しんでは典型例より症状や感染性が低い傾向があるとされるが、同院は通常の麻しん発生時に準じ、接触者調査、免疫確認、健康観察を実施している。疑い患者には事前連絡を求め、一般患者と動線や診察時間を分け、医療従事者はN95マスクを着用するなど、院内感染対策の徹底が求められる。背景には、世界的なワクチン接種率の低下がある。新型コロナ禍で接種機会が失われ、医療資源もコロナ対応に偏った。麻しん流行国は2024年に59ヵ国と2022年の1.6倍に増え、集団免疫に必要とされる95%以上の接種率を1回目接種で達成した国・地域は、2019年の84から2024年には69に減少した。わが国でも麻しんワクチン1回目の接種率は2024年度に92%と、2008年度以降で最低となった。ワクチン供給の混乱に加え、否定的な印象の拡大も指摘されており、麻しん対策は国内流行への対応にとどまらず、予防接種への信頼回復を含む公衆衛生上の課題となっている。 参考 1) 世界でワクチン離れ、接種率「コロナ前」遠く はしか流行1.6倍の59カ国(日経新聞) 2) 麻疹報告数462例に、過去10年で最多だった2019年同時期に迫る(日経メディカル) 3) はしか感染者 過去10年で最多の2019年に迫るペースで増加(NHK) 4) 東京都 はしか感染拡大で接触者に無料ワクチン接種の緊急対策(同) 5) はしか患者10年で最多の東京都、ワクチン緊急接種の開始を発表…患者との接触者が対象(読売新聞) 6) 当院職員の麻しん発症に関するご報告(国立国際医療センター) 7) 当院受診患者の麻しん発症に関するご報告(同) 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県奈良市の市立奈良病院で4月に電子カルテなどのシステムに異常が検知され、外来診療や救急受け入れが一時停止した問題で、市は原因究明と再発防止に向け、情報セキュリティーの専門家らによる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。病院では4月21日夜、ネットワーク監視装置が異常な通信を検知。電子カルテなどに関係するサーバーをネットワークから切り離したため、電子カルテの入力や閲覧ができなくなった。これを受け、同病院は翌22日から2日間にわたり、救急患者と一般外来患者の新規受け入れを停止した。外来診療や救急搬送の受け入れは4月24日朝から通常通り再開したが、その後も受付、会計、一部診療、診療報酬関連システムなどで復旧作業が続き、業務に遅れが生じていた。奈良市は5月13日午後、残っていたシステムを含め、すべての復旧作業が完了したと発表した。現時点で、異常の原因は明らかになっていない。サイバー攻撃の疑いも含めて検証が必要とされており、市は6月初めごろにも第三者委員会を開き、病院側の分析の妥当性を外部の専門家が確認する。仲川 げん市長は記者会見で、「日常の病院業務がいとも簡単に止まってしまうリスクを今回感じた」と述べ、原因を分析した上で国に報告し、全国の自治体にも事例を共有できるよう取り組む考えを示した。今回の障害は、電子カルテや会計、診療報酬請求など、病院運営の基盤となる情報システムが停止した場合、地域の救急・外来機能にただちに影響が及ぶことを改めて示した。医療機関では、サイバー攻撃対策だけでなく、異常検知後の初動対応、ネットワーク遮断時の診療継続体制、紙運用への切り替え、復旧手順、自治体や国への報告体制などを含めた事業継続計画の実効性が問われている。第三者委員会の検証結果は、自治体病院を含む全国の医療機関にとっても重要な教訓となりそうだ。 参考 1) サイバー攻撃疑いで診療停止の市立奈良病院 原因究明に向け、奈良市が第三者委員会設置へ(産経新聞) 2) 市立奈良病院のシステム障害 完全復旧し原因解明へ(NHK) 3) 電子カルテシステムの大規模障害、市立奈良病院は全てのシステムが復旧したと明らかに…第三者委員会で検証(読売新聞) 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県静岡市は、20年連続で赤字が続く市立清水病院について、清水厚生病院との一体的運用と指定管理者制度の導入により、市立病院としての存続を図る方針を示した。開始目標は2027年4月。市立清水病院は463床、29診療科を持つ総合病院だが、稼働病床は291床にとどまる。2025年度の赤字額は29.5億円、赤字率は29.9%に達する見込みで、市は従来型の改善策では再建困難と判断した。背景には、清水区全体の医療需要の縮小がある。市立清水病院のほか、154床の清水厚生病院、159床の清水さくら病院が存在するが、人口減少下で各病院が同じ機能を維持すれば、患者と症例が分散し、医師確保や若手医師育成にも悪影響を及ぼす。市は「共倒れ」を避けるため、清水厚生病院の入院機能を市立清水病院に集約し、約400床規模で一体運用する計画。清水厚生病院は外来診療所として地域医療を継続し、指定管理者の最有力候補には同院を運営するJA静岡厚生連が挙がっている。その一方で、現場の反発は大きい。労働組合のアンケートでは、指定管理導入後も継続勤務を希望する職員は12.0%にとどまり、「退職したい」が41.4%、「悩んでいる」が44.1%を占めた。退職希望の理由は「給与が下がる可能性」が95.5%、「手当がなくなる可能性」が87.2%と、処遇悪化への不安が中心となっている。職員からは、「説明が突然で、行政から見放されたようだ」との声もある。難波 喬司市長は説明不足を認め、職員説明会や個別相談窓口の設置を表明した。市は、指定管理者への転籍に際して数年間の給与水準保障や、市職員としての配置転換も検討する。病院再編は地域医療を守るための選択肢となり得るが、医療提供体制の根幹である職員の納得と定着を欠けば、かえって診療機能の低下を招きかねない。今回の事例は、再編の成否が病床数の最適化だけでなく、雇用不安への対応と現場との合意形成に左右されることを示している。 参考 1) 静岡市、指定管理で赤字病院の存続図る 清水区の市立・公的病院を一体的運用(CB news) 2) 市立病院で職員の4割が「退職したい」 突然の方針表明に「あまりに突然。行政から見放されたような思い」 指定管理者制度の導入で待遇面の悪化を危惧 不十分な説明に怒りと困惑(FNNプライムオンライン) 3) 民営化待遇低下不安視 「退職したい」4割 職員向け説明会へ 静岡市立清水病院(読売新聞) 4) 市立清水病院・清水厚生病院の一体的運営方針発表の静岡市…病院職員反発に市長“説明不足”を謝罪し詳細説明会開催へ(静岡第一テレビ)

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第294回 増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省

<先週の動き> 1.増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省 2.18歳人口減少で、医療職の養成校の定員割れ深刻化、2040年へ確保を/厚労省 3.小規模クリニック苦境、医療・福祉倒産が3年連続最多/東京商工リサーチ 4.病院サイバー対策を強化、クラウド移行支援へ/政府 5.抗がん剤取り違えで乳児死亡 県立こども病院医師を減給処分/静岡県 6.奥能登の新病院構想、集約化か産科維持かで議論/石川県 1.増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省厚生労働省の医療施設動態調査によると、2026年2月末時点の全国の病院数は7,972施設となり、前年同月比で75施設減少した。病院数は1990年の1万96施設をピークに減少が続いており、2025年には8,000施設を割り込んでいる。その一方で、一般診療所は10万5,548施設で、前年同月比407施設増となったが、その内訳をみると無床診療所が増える一方で、有床診療所の減少が続いている。有床診療所は2月末時点で5,080施設、病床数は6万6,672床となり、いずれも減少傾向にある。直近1年間では月平均約19施設、約348床のペースで減少しており、現在のペースが続けば2026年7月には5,000施設、6万5,000床を割り込み、2027年には6万床を下回る可能性も指摘されている。有床診療所は、在宅医療や高齢者医療、急性期病院からの受け入れなど、地域包括ケアを支える重要な役割を担っている。2次医療圏によっては総病床数の4分の1を有床診療所が占める地域もあり、その減少は地域医療体制の脆弱化につながることが懸念されている。厚労省はこれまで診療報酬改定で、有床診療所を「専門特化型」と「地域包括ケア型」に分類し、在宅患者や介護施設利用者の受け入れ評価、慢性透析患者対応、地域連携分娩管理加算などの支援策を拡充してきた。2026年度同改定でも入院基本料引き上げなどのテコ入れが行われている。しかし、減少傾向には歯止めがかかっていない。背景には経営難に加え、後継者不足や医師・看護師確保の困難さがあるとみられる。地域包括ケアシステムや高齢者医療を支える役割が期待される中、有床診療所の維持をどう図るかが今後の大きな課題となっている。 参考 1) 医療施設動態調査(2026年2月末概数)(厚労省) 2) 病院数が前年同月比75施設減、厚労省調べ 一般診療所は407施設増(CB news) 3) 有床診療所は2026年2月末に5,080施設・6万6,672床に減少、2026年7月に5,000施設・6万5,000床を切る公算-医療施設動態調査(Gem Med) 2.18歳人口減少で、医療職の養成校の定員割れ深刻化、2040年へ確保を/厚労省少子高齢化が進む中、看護師やリハビリ専門職など医療関係職種の養成・確保が新たな政策課題として浮上している。厚生労働省は5月7日、「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」の初会合を開き、医師・歯科医師・薬剤師を除く12職種について、横断的な対策の検討を始めた。対象は、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、救急救命士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、歯科技工士である。背景にあるのは、18歳人口の減少と養成校の定員割れである。2024年度の定員充足率は、診療放射線技師が103.2%と唯一100%を上回った一方で、看護師は89.6%、理学療法士は87.8%、救急救命士は82.6%にとどまった。言語聴覚士は72.9%、臨床検査技師は76.1%、作業療法士は66.5%で、歯科技工士は53.5%、臨床工学技士は57.0%と6割を下回った。看護師国家試験の受験者数も2021年の6万6,124人をピークに減少し、2025年は6万3,131人となった。厚労省の推計では、2021年から2040年にかけて18歳人口は23道県で4割以上減少する見通しで、秋田県、青森県、岩手県、福島県では5割前後の減少が見込まれる。森光 敬子医政局長は、「養成校の努力だけで充足率の改善を図ることは、なかなか見込めない」と述べ、地域ごとの対応が必要との認識を示した。その一方で、現場では高年齢の看護職員の存在感が増している。55歳以上の看護職員は2008年の17.1万人から2024年には41.3万人へと2.4倍に増え、このうち65歳以上は10.8万人だった。厚労省は、ミドルやシニア層が希望に応じて働き続けられる支援が重要になるとしている。検討会では、養成校の集約化や共同化、遠隔授業、サテライト施設の活用、奨学金、社会人の参入促進、リカレント教育、育児・介護と両立できる働き方などが論点となる。さらに、限られた人員で医療水準を維持するため、各職種の質の確保や役割分担、地域別の需給推計の必要性も指摘された。2040年に向け、医療・介護ニーズは複雑化する一方で、支え手は減少する。養成校の定員割れは単なる学校経営の問題ではなく、地域医療の持続可能性に直結する。厚労省は年内をめどに意見を取りまとめ、2027年度予算や制度改正につなげたい考え。 参考 1) 第1回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会(厚労省) 2) 少子高齢化進む2040年に向けて、看護職・リハ職など12医療専門職種の養成・確保策の検討開始-医療職種養成・確保検討会(Gem Med) 3) 18歳人口が4割超減少 23道県で 21-40年に(CB news) 4) 看護師国試、21年をピークに受験者数が減少 OT・PT・STの受験者数は定員割れで推移(同) 5) 医療職種の養成校、定員割れ改善「見込めない」厚労省医政局長が認識(同) 6) 医療職種、入学定員割れが顕著 安定的な養成・確保が課題に(同) 7) 55歳以上の看護職員、16年で2.4倍増 24年は41.3万人 厚労省集計(同) 3.小規模クリニック苦境、医療・福祉倒産が3年連続最多/東京商工リサーチ医療・福祉分野の経営悪化が深刻化している。東京商工リサーチによると、2025年度の医療・福祉事業の倒産は478件で、前年度比10%増となり、1988年度以降で過去最多を3年連続で更新した。とくに老人福祉・介護事業が182件と最多で、障害者福祉や児童福祉でも倒産が増加した。また、従業員5人未満の小規模事業者が大半を占めていた。病院やクリニック、歯科医院に限った「医療機関」の倒産も71件とこの20年間で最多となった。内訳はクリニック32件、歯科医院31件、病院8件で、とくに歯科医院の増加が目立つ。原因の約9割は「販売不振」と「既往債務のしわ寄せ」で、患者減少に加え、人件費や光熱費、医療材料費の高騰が経営を圧迫している。倒産の97%超は破産で、経営再建の難しさも浮き彫りとなった。歯科分野では、歯科診療所と歯科技工所の倒産が計39件に達し、過去20年で最多となった。全国の歯科診療所は約6万6,000施設と、コンビニの店舗数を上回る水準にある。予防歯科や審美歯科など需要は多様化しているものの、競争激化に加え、高額医療機器への投資、後継者不足、材料費高騰が重荷となっている。とりわけ歯科技工所では、銀など貴金属価格の上昇に加え、中東情勢悪化によるナフサ不足の影響で、樹脂系材料も値上がりしている。診療報酬改定でベースアップ支援料が新設されたが、コスト増を吸収できるかどうかは不透明だ。コロナ禍ではゼロゼロ融資などで倒産が抑えられていたが、支援終了後に経営悪化が顕在化した形。人口減少と高齢化が進む中、医療提供体制の維持には、単なる補助金ではなく、業務効率化や地域再編、M&Aも含めた抜本的な対策が求められている。 参考 1) 2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2) 医療・福祉の倒産、3年連続で過去最多 東京商工リサーチ調べ(日経新聞) 3) 「歯科関連」倒産が過去20年で最多 「あると助かるがコンビニより多い」 コロナ禍後に医療現場で起きている「支援終了」(AERA DIGITAL) 4.病院へのサイバー対策を強化、クラウド移行支援へ/政府政府は、大規模病院に対するサイバーセキュリティ対策を強化するため、クラウド型システムへの移行を支援する方針を固めた。今夏にまとめる官民投資のロードマップでは、「2030年までに地域の拠点病院のサイバー対策100%実施」という数値目標を盛り込む見通し。背景には、医療機関を狙ったサイバー攻撃の増加がある。2022年には大阪急性期・総合医療センターが攻撃を受け、救急患者受け入れを制限。2026年2月には日本医科大武蔵小杉病院で個人情報漏洩が発生したほか、市立奈良病院でも今年4月にシステム障害が起き、救急受け入れ停止や外来制限に追い込まれた。市立奈良病院では、ネットワーク監視装置が異常通信を検知し、電子カルテを含む一部システムを停止。手術延期や紙カルテ運用への切り替えを余儀なくされた。現時点で個人情報漏洩や悪意ある侵入は確認されていないものの、奈良市は外部有識者による調査委員会を設置し、再発防止策を検討する。政府は、経済安全保障推進法の改正に合わせ、医療分野を「基幹インフラ」に追加する方向で調整している。対象は病床数400以上、診療科16以上などを満たす全国88病院で、多要素認証やサイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)策定などを点検する。現在、多くの病院では院内サーバーで管理する「オンプレミス型」が主流だが、更新や監視の負担が大きく、データ連携にも障壁がある。このため政府は、クラウド型への移行を促進し、システム開発企業や医療機関への財政支援を検討している。また、厚労省は2026年5月にも「医療情報システムの安全管理ガイドライン第6.1版」を公表する予定で、AI利用に伴う情報漏洩リスクや職員教育の重要性も新たな論点となっている。診療継続と患者情報保護の両立に向け、医療機関のセキュリティ体制強化が急務となっている。 参考 1) 病院のサイバー対策支援 クラウド移行、政府が予算措置 今夏に数値目標(日経新聞) 2) 巧妙化するサイバー攻撃 医療機関のセキュリティ見直し急務(RESCHOニュース) 3) サイバー攻撃疑いの市立奈良病院、救急受け入れと外来診療を停止(日経メディカル) 4) 市立奈良病院システム障害 奈良市が謝罪、原因特定調査「継続中」(奈良新聞) 5.抗がん剤取り違えで乳児死亡 県立こども病院医師を減給処分/静岡県2021年に静岡県立こども病院にて生後3ヵ月の乳児に抗がん剤を誤投与した医療事故で、病院を運営する県立病院機構は5月8日、担当していた49歳の男性医師を減給の懲戒処分とした。乳児は重い障害を負い、約10ヵ月後に死亡している。事故当時、乳児は急性白血病で入院中だった。医師は本来、静脈内に投与すべき抗がん剤を、脊髄を囲む「髄腔」内に誤って投与した。病院の事故調査報告書によると、医師は看護師から薬剤を受け取る際、確認を十分に行わず、髄腔内投与用と静脈投与用の薬剤を取り違えたという。乳児は誤投与後、自発呼吸ができなくなる重大な障害を負い、治療が続けられたものの、10ヵ月後に死亡した。事故を受け、医師は昨年、業務上過失傷害の罪で略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けていた。病院と遺族側との間では民事上の示談も成立している。県立病院機構は5月8日付で、医師に対し「1日分賃金の半額」の減給処分を実施した。また、監督責任を問い、当時の院長と内科系診療部長についても文書厳重注意とした。男性医師は「大変申し訳ないことをしてしまった」と述べている。坂本 喜三郎理事長は「あってはならない重大事案」とした上で、「安全・安心な医療を提供できるよう、再発防止に職員一丸となって取り組む」とコメントしている。今回の事故では、薬剤確認の不徹底というヒューマンエラーが背景にあったとされる。小児がん治療のような高度医療では、複数人による確認体制や投与経路確認の徹底が不可欠であり、医療安全対策のあり方が改めて問われている。 参考 1) 医療ミスで生後3ヵ月の乳児死亡 薬剤を誤投与した男性医師を減給処分 1日分の賃金を半分に 患者は急性白血病で入院(テレビ静岡) 2) 乳児に薬を誤投与、重大な障害を負い10ヵ月後に死亡 静岡県立こども病院の男性医師を減給処分(中日新聞) 3) 静岡県立こども病院で乳児死亡“薬取り違え”で医師を懲戒処分(NHK) 6.奥能登の新病院構想、集約化か産科維持かで議論/石川県石川県が進める奥能登地域の病院再編を巡り、産科医療体制のあり方が大きな論点となっている。県は、人口減少や医療従事者不足が深刻化する奥能登地域の4つの公立病院について、救急や入院機能を集約した新病院を能登空港周辺に整備する方針で、7日に検討会を開いた。会議では、奥能登の妊婦は新病院で妊婦健診を受ける一方で、分娩は七尾市や金沢市の病院で行う案が県側から示された。県は、「分娩には24時間対応できる複数の産科医や小児科医、麻酔科医、新生児対応体制など膨大な人的・物的資源が必要であり、現状では医療従事者の確保が困難」と説明した。これに対し、輪島市や穴水町などの自治体側からは強い反発が相次いだ。輪島市の坂口 茂市長は「安全だけでなく、住民の安心感も重要だ」と述べ、奥能登で出産できない状況が若者流出にもつながると懸念を示した。出席者からは「若者は住むなと言っているに等しい」との声も上がった。奥能登では、能登半島地震以前は市立輪島病院が地域唯一の分娩機能を担っていたが、過去の医療事故を受けて複数医師体制を構築してきた経緯がある。現在は地震後の影響もあり、金沢からの医師派遣が週2回程度に減少し、妊婦健診など外来対応のみとなっている。その一方で、県側は宿泊費支援や搬送体制整備などで安全性を担保したい考えで、山野 之義知事は「安全第一が共通認識」とした上で、地域の要望も踏まえて工夫を検討したいと述べた。石川県は今後、産科や小児医療の分科会を設置し、専門家も交えて議論を継続する。今年度中に新病院の基本構想をまとめる方針だが、開院までにはさらに6~7年程度かかる見通しで、地域医療と人口維持をどう両立させるかが問われている。 参考 1) 石川 奥能登地域の病院再編 産科の医療体制について議論(NHK) 2) 「能登に住むなってことか」奥能登新病院に「分娩機能なし」提案 首長から反発 山野知事「どんな工夫ができるのか」議論する(石川テレビ) 3) 奥能登の新病院で分娩実施せず 石川県が体制案 市町首長から反論(朝日新聞) 4) 奥能登の新病院構想 自治体要望の分べん機能導入 医療従事者不足で石川県は慎重姿勢(テレビ金沢)

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白内障治療の将来を読む――全国と地方の眼科医供給格差

 白内障は加齢に伴って多くの人にみられ、日本では高齢化の進展とともに手術の需要増加が見込まれている。一方で、地域によって医療資源には偏りがあることも課題となっている。今回、NDBオープンデータや人口推計などを用いた研究で、都道府県ごとの白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測した結果、特に地方で需給バランスが悪化し、医療アクセスの地域格差が拡大する可能性が示された。研究は、国際医療福祉大学の山口浩史氏、アルアリアシーらるび氏、藤田烈氏によるもので、詳細は3月3日付の「BMJ Open Ophthalmology」に掲載された。 白内障手術は近年増加傾向にあり、日本では過去数十年で手術件数が大きく伸びている一方、眼科医の増加はそれに比べて緩やかにとどまっている。また、眼科医の地域偏在も指摘されており、都市部と地方の格差は拡大している。こうした中、需要と供給を同一の枠組みで定量的に評価した研究は限られている。そこで本研究では、地域ごとの人口動態や医療資源の違いを踏まえ、日本における白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測し、需給バランスを評価することを目的とした。 本研究では、厚生労働省のNDBオープンデータ(2014~2022年度)を用い、診療報酬請求件数から年齢別・性別の白内障手術実施率を算出した。NDBは全国民を対象とした医療保険データであり、日本の医療実態を広く反映している。白内障手術の件数は、水晶体再建術(眼内レンズを挿入する手術)の請求件数から算出した。この手術実施率を、総務省の人口推計および国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計に適用し、回帰モデルを用いて2030年、2040年、2050年における手術需要を推計した。一方、眼科医の将来供給については、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」を基に、線形回帰モデルを用いて予測した。さらに、都道府県ごとに手術需要を眼科医数で割った需給比を算出した。この指標は、眼科医1人あたりが担う手術件数を示すもので、値が高いほど医師不足の程度が大きいことを意味する。将来の需給バランスの変化は、2022年を基準として評価した。 白内障手術の需要は今後大きく増加すると推計された。手術件数は、2030年に約193万件、2040年に約237万件、2050年には約286万件に達する見込みで、2050年には2022年と比べて約1.7倍に増加する可能性が示された。特に70代および80歳以上の高齢者で顕著な増加が予測され、手術の大半(約7割以上)はこれら高齢層に集中していた。なお、手術件数は一貫して女性で男性を上回っていた。 一方、眼科医数は多くの都道府県で緩やかな増加が見込まれるものの、一部の地域では減少する可能性が示された。 その結果、白内障手術の需要を眼科医数で割った需給比は全国的に上昇すると推計された。人口減少が進む地域でも需要の増加が見込まれる中、とりわけ地方での上昇幅が大きく、都市部との地域差が今後さらに拡大する可能性が示唆された。さらに、一部地域では需給比が2倍以上に達する可能性も示された。 著者らは、公的統計データを用いて都道府県別の白内障手術需要と眼科医供給を推計した結果、手術需要は今後も増加し、特に70代および80歳以上に集中する一方、眼科医数は一部地域で減少する可能性があると報告している。これに伴い需給比は全国的に上昇し、とりわけ地方での増加が大きく、都市部との格差が拡大する可能性があると指摘している。さらに、受診の遅れや待機期間の長期化を防ぐ対策の必要性とともに、より細かな地域単位での需給評価の重要性を挙げている。 なお、本研究は公的データに基づく推計であり、実際の手術需要や供給能力を十分に反映しない可能性がある。また、都道府県単位の解析のため地域内差や患者移動を考慮できず、将来予測には一定の不確実性がある。

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医師でリスクの低いがんは?~日本人の職業とがんリスクの大規模研究

 日本の労働者における職業とがん種別発症リスクの関連を全国規模で調査した、東海大学の深井 航太氏らによる大規模症例対照研究の結果、肉体労働や運輸関連の職業でがんリスクが高いなど、職業による違いがみられ、とくに男性で顕著であることがわかった。一方、医師などの専門職では肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんのリスクが低いことが示された。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載。 本研究は、労働者健康安全機構の有する病職歴データベース(ICOD-R、2005〜23年度)を活用した多施設共同、病院ベース症例対照研究である。14万6,994例のがん症例と、年齢・性別・入院年をマッチングした27万8,244例の対照群を対象に分析した。喫煙、飲酒、肥満、シフトワークなどの生活習慣・背景因子を調整したうえで、一般事務従事者を基準とした職業別の調整オッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。<男性>・がん全体では、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、教師などの専門職およびホワイトカラーの職業においてリスクが低い一方で、肉体労働、サービス業、輸送関連の職業ではリスクが高い職業が多かった。・肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんは、医師などの専門職でリスクが低かったが、販売、飲食物調理、接客サービス、自動車運転、建設、土木、金属製品、運搬の職業では、肺がん、大腸がん、肝がんのリスクが高かった。・木製品製造従事者は胆道がんリスクが高かった。・建築家、土木技術者、測量士、音楽家、化学製品製造従事者は膀胱がんリスクが高かった。・前立腺がんは多くの職種で一般事務職よりもリスクが低かったが、これは潜在的な発症率の差というより、受診行動やPSA検査を含む検診受診率における職業間の差異を反映している可能性がある。<女性>・がん全体では、職業分類による差は男性ほど顕著ではないが、特定の部位で関連が認められた。・電気機械組立従事者は、肺がん、胆道がん、胃がんのリスクが有意に高かった。・胃がんは、事務機器操作、商品販売、家庭生活支援サービス、衣服・宝石製品製造の従事者の間でリスクが高かった。・大腸がんは、教師、芸術家、デザイナー、写真家や、映像操作、販売類似職業、家庭支援サービス、介護サービス、農業の従事者でリスクが低かった。・乳がんは、保健師、助産師、看護師、その他の医療従事者、介護サービス従事者が、一般事務職と比較して有意にリスクが低かった。

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医療に伴う負債は医療の後回しと関連

 医療に伴う負債がある人は、将来の疾病予防に必要な医療を後回しにしがちであることが、新たな研究で明らかになった。この傾向は、特に歯科とメンタルヘルス領域で顕著であったという。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCatherine Ettman氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に3月10日掲載された。 Ettman氏は、「定期的なケアや予防医療を受けないことは、患者の健康状態を悪化させ、結果として医療費の増加につながる。その負担は、患者だけでなく、保険者や米国の医療費の多くを負担している納税者にも及ぶ」とニュースリリースで述べている。 この研究では2023年に実施された米国国民健康面接調査(National Health Interview Survey;NHIS)のデータを用いて、医療に伴う負債が一般診療、メンタルヘルス医療、歯科医療の後回しと関連するのかを検討した。 データが揃った2万8,699人の参加者のうち、10.7%に当たる2,835人が過去12カ月間に医療に伴う負債があったことを報告した。負債は保険未加入者で最も多く(19.5%)、次いでメディケイド加入者(12.6%)、民間保険加入者(9.3%)、メディケア加入者(8.1%)の順だった。医療に伴う負債がある人の33.3%が費用を理由に医療受診を後回しにしていたのに対し、負債のない人での割合は5.3%だった。メンタルヘルスの受診を後回しにした人は、医療に伴う負債がある場合は20.3%、ない場合は5.1%、歯科受診ではそれぞれ53.2%と17.3%だった。社会人口統計学的特徴を調整して解析した結果、医療に伴う負債は受診を後回しにする可能性の増大と関連し、その増加幅は歯科受診で24.6パーセントポイントと最も大きく、次いで医療受診で17.6パーセントポイント、メンタルヘルス受診で9.3パーセントポイントであった。 研究グループは、必要な医療を後回しにすることは、早期に発見できたはずの健康問題のリスクを高めると指摘している。こうした未治療の問題は、別の疾患を引き起こす可能性もある。例えば、口腔の健康状態の悪化は、心疾患や認知機能の低下などと関連していることが報告されている。論文の筆頭著者である同大学のKyle Moon氏は、「医療費を患者が無理なく支払えるようにする政策や、医療に伴う負債が連鎖的にもたらす影響に対処する政策は、受診の遅れが健康や経済に及ぼす影響を軽減する上で極めて重要だ」と述べている。

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第291回 診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省

<先週の動き> 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省人件費や物価の上昇で経営環境が厳しさを増すなか、厚生労働省はクリニックや中小病院に対して支援策を拡充し、日本医師会はその活用を呼びかけている。国は2026年度の「働き方改革推進支援助成金」を拡充し、常勤10人未満の小規模事業所では賃上げ加算の上限を引き上げ、最大300万円を上乗せできるようにした。労務管理研修やソフト導入、勤務間インターバル導入、時間外労働削減などの取り組みに応じ、補助上限は最大520万円となる。加えて、月60時間以内の時間外労働の割増賃金率を5%以上引き上げた場合の加算も新設された。その一方で、診療報酬ではベースアップ評価料が見直され、対象職種は看護師や薬剤師に加え、40歳未満の医師や歯科医師、事務職員にも広がった。点数も大幅に引き上げられ、継続的な賃上げを行う医療機関はより高く評価される。しかし、診療所の届出率は病院よりも低く、無床診療所59.2%、有床診療所70.0%にとどまっている。6月の診療報酬改定に向けて、算定するためには医療機関は5月中に必ず届出を行う必要がある。また、2024年度にすでに届け出ている医療機関も再届出が必要となる。賃金改善計画書は不要となり、手続き負担は軽減された。さらに、評価料収入は全額を賃上げに充てること、8月の実績報告に備えて対象職員数や賃上げ実績を整理しておくことが重要となる。人材流出を防ぎ、他産業に見劣りしない処遇改善を進めるためにも、診療所は助成金と評価料を組み合わせて活用する姿勢が求められる。 参考 1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚労省) 2)令和8年度診療報酬改定ベースアップ評価料による賃上げについて(日医) 3)日医がベースアップ評価料の積極的な算定を呼びかけ、届け出率は無床診療所で約6割(日経メディカル) 4)日医がベースアップ評価料の届け出を呼びかけ(MEDICAL TRIBUNE) 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会麻しん(はしか)の感染拡大が続いている。2026年4月上旬までに報告された患者は236人に達し、新型コロナ禍後で最多だった2025年(265人)を上回るペースで推移している。感染者は10~20代が半数を占め、若年層を中心に流行の兆しが強まっている。麻しんは極めて感染力が強く、免疫を持たない場合ほぼ100%発症するほか、肺炎や脳炎など重篤な合併症を引き起こす可能性がある。わが国は2015年に世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定されたが、近年は海外からの持ち込みを起点とした感染が続いている。世界的にも患者数は増加しており、各国で流行が拡大している。国内ではコロナ禍の水際対策で患者数は一時減少したが、2023年以降は増加に転じた。地域別では東京都が最多で、鹿児島県、愛知県と続く。とくに都市部での感染が目立ち、成人を含む若年層への広がりが確認されている。背景にはワクチン接種率の低下がある。麻疹の排除維持には2回接種で95%以上の接種率が必要とされるが、現状はこれを下回っている。感染者の半数以上が未接種、1回接種、あるいは接種歴不明であり、十分な免疫を持たない層の存在が流行拡大の要因となっている。麻しんへの予防接種は1歳時と小学校入学前の2回接種で高い予防効果が得られる。日本小児科学会は、接種歴を確認し未接種や不明の場合は任意接種を検討するよう呼びかけるとともに、発熱や発疹などの症状がある場合は事前連絡のうえで医療機関を受診するよう求めている。流行抑制には、ワクチン接種の徹底と早期受診が不可欠だ。 参考 1)麻しん累積報告数の推移 2019~26年 (JIHS) 2)2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起 (小児科学会) 3)はしか感染、230人超 新型コロナ後で最多ペース-10~20代が中心(時事通信) 4)はしか感染者増加“子どもの定期接種確実に”日本ワクチン学会(NHK) 5)海外からの流入・予防接種率低下等で麻疹(はしか)流行の兆し、適切なワクチン接種(定期・任意)と医療機関受診を-小児科学会(Gem Med) 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府中東情勢の緊迫化による原油・ナフサ供給不安が、医療物資の流通に影響を及ぼしている。政府は4月16日に「中東情勢に関する関係閣僚会議」を開き、対策として感染症流行に備え備蓄している医療用手袋約5億枚のうち、5,000万枚を2026年5月から医療機関向けに放出する方針を決定した。放出対象は、採血や検査で用いる非滅菌手袋で、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて医療機関が必要量を申請し供給される仕組みを整備する。厚生労働省によると、医療物資の供給不安に関する相談はメーカー・卸・医療機関を合わせ2,956件に上り、うち34件が供給に影響ありと判断された。消毒液や透析関連物資など一部は解決が進む一方で、透析用チューブや滅菌関連資材などでは中長期的な供給不安が残る。医療機関からの相談は急増しており、需給逼迫の兆しが強まっている。背景には、医療用手袋やガウン、チューブなど多くの医療消耗品が石油由来であり、原料のナフサを中東に依存している構造がある。現場では価格上昇や出荷制限の動きもみられ、手術や透析など生命維持医療への影響を懸念する声が上がる。実際に通販業者では購入制限が導入され、需給の不安定化が流通段階にも波及している。政府は約1.3万の医療機関から情報収集できるシステムを稼働させ、専門チームを増員して供給状況の把握と対策を強化している。また、アジア諸国との連携によるサプライチェーン強靭化にも着手し、エネルギー供給の安定化を通じた医療物資確保を図る方針。医療物資の安定供給は、エネルギー安全保障と一体の課題となっており、短期対応と中長期対策の両立が求められる。 参考 1)石油関連製品の供給不足に伴う厚生労働分野の影響・対応について(厚労省) 2)中東情勢に関する関係閣僚会議(首相官邸) 3)高市首相 5月から医療用手袋5,000万枚の備蓄放出を表明(NHK) 4)高市首相、医療用手袋5,000万枚放出表明 中東情勢で確保困難(毎日新聞) 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省厚生労働省は、4月16日に「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開き、高度ながん治療を担う病院の集約化を進める方針を明確にした。従来は全国どこでも一定水準のがん医療を受けられる「均てん化」を重視してきたが、今後は人口減少や医師不足、医療の高度化を踏まえ、質の高い治療を維持するために「集約化」との両立へ軸足を移す。とくに消化器外科では担い手不足が深刻で、現状のままでは2040年にがん治療を担う外科医が約9,200人と足元から39%減り、需要の5,200人を下回る見通しとなっている。一般の医師数は増加している一方で、一般外科医・消化器外科医はこの10年で減少し、若手ほど減り幅が大きい。長時間労働や負担に見合わない処遇が背景にあり、外科医がいる病院の約半数で消化器外科医は1~2人にとどまる。こうした状況から、厚労省は食道がんや膵がんなど高難度手術を拠点病院や大学病院へ集約し、希少がんでは県域を超えた集約も視野に入れる。その一方で、胃がんや大腸がんの標準的手術、長期の薬物療法や検診などは地域の医療機関で担う考え。今後は、新たな地域医療構想と連動し、各医療機関の機能を2028年度までに整理し、第9次医療計画へ反映する。がん診療連携拠点病院の整備指針も見直され、指定期間は最長3年に短縮される見通しで、構想や医療計画との整合性を高める。もっとも、都道府県ごとの議論の進捗にはばらつきが大きく、実施時期未定の地域も多い。国によるデータ提供や技術支援を強化しつつ、患者の受療アクセス低下を防ぎながら、医療の質、病院経営、勤務環境改善を両立できる再編を進められるかが焦点となる。 参考 1)第20回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(厚労省) 2)がん医療・地域医療構想・医療計画等を連動させ「集約化すべき病院、高度医療の内容」等を明確化する-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 3)がんの医療体制、地域医療構想と連動して整備へ 厚労省案 「28年度までに決定」(CB news) 4)がん手術維持へ病院集約 40年に外科医5,000人超不足、厚労省(日経新聞) 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省医師偏在対策の柱として拡大してきた医学部の地域枠が、現在見直しの局面に入っている。厚生労働省は、4月17日に開催した「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、2027年度の医学部臨時定員の調整方法を了承し、医師多数県を中心に削減を進めつつ、へき地尺度などを用いて一部地域では削減幅を緩和する方針を示した。医学部定員に占める地域枠などは2007年度の173人から2025年度には1,847人へと増え、全体の19.9%を占めるまで拡大しており、医学部定員9,393人のなかで大きな比重を占めている。この拡大は2008年度以降の臨時定員増を背景とするが、近年は医師数の増加ペース見直しの議論が進み、今後は臨時定員の縮減とともに、地域枠を恒久定員内で運用する方向が示された。検討会では、2027年度以降は医師多数県の臨時定員削減を基本としつつ、へき地尺度や高齢化の進展を踏まえて調整する方針を確認した。さらに2028年度以降は、医師多数県に限らず定員適正化を進める方向性が示され、量的拡大から質的最適化への転換が明確になりつつある。地域枠の制度設計も見直し対象となっている。現在は卒後9年以上の地域勤務が求められ、一定期間を医師不足地域で従事する仕組みとなっているが、義務履行中断者が約7%に上るなど、若手医師のライフイベントや専門医取得との両立が課題となっている。厚労省の資料でも、仕事と育児の両立志向の高まりなど、若年層の価値観変化が制度運用に影響していることが示されている。実際、日経メディカルの調査では「地域枠は必要だが見直しが必要」との回答が約半数を占め、当事者では6割近くに達した。背景には、都市部の生活の利便性や教育環境、キャリア形成機会の偏在があり、単なる配置義務では地域定着につながらない現実がある。地域枠は一定の成果を上げつつも、若手医師の価値観変化や医師需給の転換期を受け、制度疲労が顕在化している。今後は定員管理、勤務環境改善、経済的インセンティブを組み合わせた総合的な再設計が求められる。 参考 1)医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針について(厚労省) 2)今後の地域枠等の運用について(同) 3)27年度臨時定員、へき地尺度で多数県の削減幅を緩和 検討会が了承(MEDIFAX) 4)地域枠、医師48%が「従事期間や奨学金の利息見直しが必要」(日経メディカル) 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ東京商工リサーチの調査によると、2025年度に倒産した医療機関(病院、診療所、歯科医院)は前年度比20.3%増の71件となり、過去20年で最多を更新した。コロナ禍では支援策により低水準に抑えられていたが、収束後の2023年度以降は53件、59件、71件と増加が続き、経営の悪化が顕在化している。業態別では診療所が32件、歯科医院が31件といずれも最多で、とくに歯科は前年度比1.5倍と急増した。その一方で、病院は8件と減少したものの、依然として高い水準にある。負債規模では1億円以上の案件も多く、中堅規模以上の医療機関の倒産が目立つ点も特徴だ。原因は「販売不振」が66%を占め、「既往のシワ寄せ」と合わせ約9割に達した。人口減少による患者数減少や診療報酬改定の影響に加え、光熱費や人件費、医療材料費の上昇により収益構造が悪化している。さらに、経営者の高齢化や人手不足、設備の老朽化も重なり、経営継続が困難となるケースが増えている。倒産形態は破産が69件で全体の97%を占め、再建型の民事再生は2件にとどまった。医療機関は収益規制や後継者不足などから再建が難しく、退出に直結しやすい構造が浮き彫りとなっている。医療機関の倒産は地域の医療提供体制に影響を及ぼし、とくに高齢化が進む地方では受診機会の喪失につながる懸念が強い。2026年6月の診療報酬改定の効果は不透明で、今後、公的支援の強化に加え、M&Aなどを含めた医療機関の再編・集約が一層進む可能性がある。 参考 1)2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2)25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞)

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歯科でのHbA1c測定、3人に1人で糖尿病早期発見の可能性

 歯科への受診をきっかけに、未診断の糖尿病発見につながる可能性が報告された。歯科の患者に、指先穿刺による簡便な血液検査を行ったところ、3人に1人以上の割合で糖尿病または糖尿病前症が見つかったという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のGiuseppe Mainas氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Dentistry」4月号に掲載された。 この研究では、歯科受診者に対して診察室内でのHbA1c測定が、糖尿病のスクリーニングとして機能するか、横断的に検討された。英国成人の歯科受診頻度はかかりつけ医の受診頻度よりも高い傾向があり、かつ、医科受診時のHbA1c測定が日常的に行われているわけではないことが、この研究の背景にあるという。 解析対象はKCLによる口腔・歯科関連のバイオバンクに参加している911人で、このうち104人は、既に2型糖尿病の診断を受けている患者だった。歯肉の状態は、6.0%が健康、11.3%は歯肉炎、82.7%は歯周病だった。HbA1cは診察室内で指先穿刺により採血して測定し、所要時間は6分ほどだった。 HbA1cの平均は5.71±0.94%であり、既診断や自覚症状のある糖尿病患者を除くと、227人(28.7%)がHbA1c 5.7~6.3%で「糖尿病前症」に該当し、58人(7.3%)はHbA1cがより高く「糖尿病」に該当した。つまり、歯科でのスクリーニングにより、3人に1人以上に未診断の糖尿病前症または糖尿病が発見される可能性が示された。 また、歯肉の状態が悪いほどHbA1cが高いという関連も見つかった。具体的には、歯肉が健康な人のHbA1cは5.43±0.51%、歯肉炎の人は5.51±0.91%、歯周病の人は5.76±0.97%だった(傾向性P=0.004)。 Mainas氏は、「われわれの研究結果は、歯科受診が糖尿病リスクのある人を見いだす有用な機会となり得ることを示唆している。特に高齢者やBMIが高い人、歯周病のある人では、その可能性が高い」と述べている。また、論文の筆頭著者であるKCLのMark Ide氏は、「歯科受診を契機にHbA1cが高いことが判明した場合、患者はかかりつけ医を受診し詳しく調べてもらうことができる。歯科でHbA1cが検査されなければ、その機会はかなり先になってしまうかもしれない。実際、本研究に参加してHbA1cが高いことが判明した患者の大半は、自分が糖尿病前症や糖尿病に該当するとは思っておらず、判定結果に驚いていた」と話している。 なお、歯周病と糖尿病の関連について、論文の上席著者であるKCLのLuigi Nibali氏は、「これまでの多くの研究で、両者に双方向性の関連があることが示されている。歯周病による炎症は糖代謝に変化をもたらし、糖代謝の乱れは炎症に影響を与える。歯周病は糖尿病の発症や悪化に関連する可能性があり、その逆もまた同様だ」と解説している。

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アメリカの恐ろしすぎる「医療保険」のリアル【臨床留学通信 from Boston】第22回

アメリカの恐ろしすぎる「医療保険」のリアル今回は、アメリカ滞在において常に心配のタネとなる「医療保険」のお話です。最初にお断りしておきますが、医療費の額については完全に正確な数字というよりは、「だいたいの相場観」として捉えていただければ幸いです。まず、家族4人で医療保険を1年間まかなおうとすると、それだけで1万ドル(約160万円)かかるとも言われています。かつては多かった「無給リサーチフェロー」は減りつつありますが、今でも「無給であっても医療保険だけは死守した」という話を聞くほど、保険の有無は死活問題です。ポスドクの給料は概して6~7万ドル程度といわれますが、そこに医療保険が含まれているかどうかで生活水準は雲泥の差です。最初にその交渉はきちんとしたほうがよいでしょう。クリニカル(臨床)で入ると、通常は自施設の病院は完全にカバーされます。しかし、医療保険プランにはTier 1、Tier 2、Tier 3といった階層があり、これが非常に厄介です。通常は、病院を選ぶことがなければTier 1だけカバーする安い保険を選びます。しかし、もし間違えてTier 3の病院に行ったりすると、とんでもない請求が届きます。病院の受付で何度も保険が利くかどうかを確認する必要がありますし、受付も信用できないので、必ず自分で保険のウェブサイトを確認してから行くようにしています。アメリカで入院すると1泊1万ドルという嘘のような請求が来ます。実際、保険のおかげで数十ドルの負担で済んだという話もあれば、旅行保険に入っていて、3日の緊急入院を余儀なくされた人が、3万ドルをなんとかカバーされたという話も聞きます。とにかく、「入院」には戦々恐々とするのがアメリカ生活です。また、外来の仕組みも面倒です。実は、地域や施設によって家族のカバー範囲が大きく異なります。私が以前所属していたニューヨークのMount Sinai、Montefioreは家族分もカバーされるのですが、ボストンのMGHやBIDMCは家族分を月300ドルほど払わなければなりません。しかも、自施設のプライマリケアにかかっても「Copay」という自己負担が40ドルほど発生するなど、ボストンのほうが世知辛い印象です。自分の病院の中の薬局を使ったほうが安く済むので、近くのドラッグストアで薬を電子処方してもらうことはありません。ここでとくに注意したいのが、歯科保険は通常の医療保険とは「まったく別のプラン」だということです。これを知らずに受診し、2人で1,000ドルの請求が来たという恐ろしい話も聞きます。また、クリーニングやX線はカバーされますが、実際の処置になると、保険が利いても「4~5割自己負担」というケースがほとんどです。留学前に日本で歯を完璧にキレイにしてから行ったほうがよいでしょう。そして最もストレスが溜まるのが「外来予約」です。電話をかけても、オペレーターにつながるまでいくつもの自動音声ボタンを押して、たどりついたと思ったら10分以上待たされて、やっとつながったら「セクションが違う」とさらにたらい回しにされ、ようやく予約が取れたと思ったら「最短で8ヵ月後です」ということも…。日本のような快適な医療システムは、持続性の意味で心配になることもありますが、それでも「アメリカでだけは絶対に病気になりたくない」と痛感する次第です。

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鮨が食いてえ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(622)

六百二十二の段 鮨が食いてえ!今年の花粉症は例年より早く始まっているみたいです。外来中に何度もクシャミが出て、患者さんにまで「先生も花粉症ですか?」と心配される始末。私の職場でもお互いに薬を処方し合っています。ひどい花粉症に一番効くのは手術室。なんせ手術室の空調には0.3μm以上の微粒子をキャッチするHEPAフィルターが用いられています。一方、スギ花粉のサイズは約20~40μmなので、除去するのは簡単!なので、医療従事者にとっても手術室は「避難所」とか「安息の地」と呼ばれているのだとか。ん?ここまでAIで調べてきて、いきなり不思議な表現が出てきてしまいました。「誰かな、こんなことを言っているのは?」と思ってリンクをたどってみると……なんと、「CareNet.com」経由で「手術室あるある【Dr. 中島の 新・徒然草】(423)」が出てきたではありませんか。この文学的表現、まさか4年前の自分自身が使っていたとは!ということで苦難の外来診療ですが、今回登場するのは70代の高齢女性。抗痙攣薬を処方して終わり、だったはずなのですが…… 患者 「先生、ちょっと相談したいことがありまして」 中島 「何でしょうか?」 患者 「実は事故で顔を打って以来、顎の具合が悪いのです。それで近所の病院の口腔外科で治療してもらって、その後は歯医者さんに診てもらっているのです」 なるほど。 患者 「でも顎の噛み合わせがおかしくて、うまく噛めないんです」 まあ、そういうこともあるでしょう。 患者 「こちらの病院にも口腔外科があると聞いたので、中島先生のほうから紹介してもらえないかと」 ようやく話の全体が見えてきました。 中島 「まず、最初に診てもらった病院の名前を教えてくれますか」 患者 「○○病院です。治療の後に歯医者さんに紹介されたんです」 中島 「なんという名前の歯医者さんですか?」 患者 「△△歯科クリニックです」 なるほど、なるほど。 中島 「その場合はですね、まず△△歯科クリニックの先生に言って紹介状を書いてもらってください。元の○○病院の口腔外科宛てにしてもいいし、当院の口腔外科に宛ててもいいですから。それが正式なルートですよ」 私が院内紹介してもいいですが、必ず今かかっている医療機関のデータを持ってくるように言われるので二度手間です。 患者 「△△先生に失礼なことはないでしょうか」 中島 「ないない。『先生のおかげで歯のほうは快調なのですが、顎のほうの具合が悪くて』と言ったら『顎は俺の専門じゃないしな』という顔をされるので、すかさず『別件でかかっている大阪医療センターの口腔外科に紹介状を書いてもらえませんか?』と言ったらいいですよ」 これこそ受診のノウハウというもの。 患者 「でもお。もう顎がおかしいので、死にたいくらいなんです」 死にたい……って? 中島 「ちょっと何を言っているんですか。死ぬのはまだ早いですよ!」 患者 「ええっ?」 中島 「キチンと言うべきことを言わないと駄目じゃないですか」 患者さんは黙ってしまいましたが、ここは念を押しておきましょう。 中島 「いいですか、自分が何を困ってどうしてほしいのか、それをちゃんと△△先生に伝えてください。モジモジしていてもどうにもなりませんから」 私はいつも患者さんを対等な大人として扱っています。なので「黙っていても察してほしい」というのは通じません。 中島 「人と喋るのは苦手だというのもやめておきましょう。人間、一生勉強、何事も練習です」 ついつい力が入ってしまいました。 中島 「口が開かなくて握り鮨を食べられなったら悲しいし、ひょっとしたら死にたくなるかもしれません。でも、その前にご自分のできる努力はしましょうよ」 患者 「またお鮨を食べることができるでしょうか」 中島 「できます、できます。今の季節だったら鰆(さわら)ですよ。鰆がね、『食ってくれー!』と言って待っていますから」 あまり確信はありませんが、字の中に「春」が入っているくらいだから鰆は旬のはず。 中島 「もし△△先生に頼んだのに『俺は絶対に紹介状を書かんぞ!』と言われてしまったら、その時は私が口腔外科に院内紹介してあげますから」 患者 「ありがとうございます」 中島 「まずは踏むべき手順を踏んでくださいね」 それにしてもいきなり「死ぬ」は無いんじゃないかな。論理の飛躍ってものですよ、そいつは。最後に1句 死ぬよりも 鰆を食べる 算段だ

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歯や口の困りごとがうつ病と関係?日本人成人1.5万人を追跡調査

 メンタルヘルス対策は精神症状そのものに焦点が当てられてきた一方で、日常生活に身近な身体的要因との関連は十分に検討されてこなかった。そうした中、日本人成人約1万5,000人を1年間追跡した縦断研究により、歯や口の困りごとによって口腔関連QoL(OHRQoL)が低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。研究は、岡山大学学術研究院医療開発領域の竹内倫子氏、学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大氏らによるもので、詳細は1月4日付で「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。 うつ病は世界的に大きな疾病負担をもたらす精神疾患であり、その発症には年齢、社会的孤立、慢性疾患、生活習慣、QoLなど多様な要因が関与する。近年、歯の欠損や口腔痛、歯周病、OHRQoLとうつ病との関連も報告されているが、多くは横断研究にとどまり、因果関係は明らかでない。本研究は、うつ病のない成人を対象に、口腔の健康状態およびOHRQoLがその後のうつ病の発症と関連するかを縦断的に検討することを目的とした。 本研究では、2022年および2023年に実施された「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS調査)」のデータを用いて解析を行った。ベースライン時点でうつ病の自己申告がない20歳以上の参加者1万5,068人を解析対象とした。うつ病は、2回の調査間における自己申告に基づいて判定した。OHRQoLは、Oral Health Impact Profile(OHIP)の短縮版である日本語版OHIP-14を用いて評価した。口腔の健康状態については、歯の喪失、歯周病、口腔痛、過去1年間の歯科受診の状況により評価を行った。これらの要因とうつ病発症との関連について、社会人口学的要因および行動要因を調整したロジスティック回帰分析を用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 追跡調査の結果、1年後に218人(1.45%)が「うつ病がある」と回答した。「うつ病がある」と回答した群と、「うつ病がない」と回答した群の背景因子を単変量で比較したところ、歯科受診状況やOHRQoL(OHIP-14)、年齢、性別、社会経済状況、生活習慣に加え、孤独感、社会的孤立、生活満足度、睡眠薬・抗不安薬の使用など、多くの心理社会的要因に差が認められた。 次にこれらの因子を独立変数、うつ病発症を従属変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、OHRQoLが低いほど、うつ病を発症するリスクが有意に高いことが示された(OR 1.02、95%CI 1.00~1.04、P=0.039)。このほか、年齢が若いこと(OR 0.97、95%CI 0.96~0.99、P<0.001)、趣味や文化活動への参加(あり:OR 2.22、95%CI 1.50~3.30、P<0.001)、睡眠薬または抗不安薬の常用(現在使用:OR 3.51、95%CI 2.27~5.44、P<0.001)、孤独感の増大(OR 1.22、95%CI 1.14~1.30、P<0.001)、生活満足度の低さ(OR 0.90、95%CI 0.84~0.97、P=0.005)、および自己評価による健康状態の不良(OR 2.92、95%CI 1.81~4.72、P<0.001)も、うつ病の発症と関連していた。 さらに構造方程式モデリングによる解析では、OHRQoLの低下が、その後のうつ病の発症と関連する過程において、孤独感や社会的孤立、生活満足度、主観的健康感といった心理社会的要因が重要な媒介役を果たしていることが示された。OHRQoLは、これらの要因を介した間接的な影響に加え、うつ病発症への直接的な影響も認められた。 著者らは、「うつ病を自己申告していなかった人を追跡した結果、口腔関連QoLが低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。この関連は、年齢や生活習慣などの要因を考慮した後も認められ、さらに孤独感や社会的つながり、生活満足度といった心理社会的要因が、その関係の一部を仲介している可能性がある」と述べている。 なお、本研究は自己申告に基づくオンライン調査であり、未評価の交絡因子や追跡期間の短さといった制約があるため、うつ病の評価とOHRQoLとの関連については因果的解釈に注意が必要であるとしている。

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全国データで見えた舌がんの実像

 舌がんは、舌に発生する口腔がんの一つで、進行すると発話や嚥下に大きな影響を及ぼす。日本では舌がんの全国的な動向は十分に把握されてこなかったが、今回、全国レセプトデータを用いた解析により、舌がんが女性の特定年齢層で増加している可能性が示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の辻川敬裕氏らによるもので、詳細は1月18日付で「Cancer Medicine」に掲載された。 舌がんの罹患率は世界的に増加しており、特に若年層や女性での増加が懸念されている。しかし日本では、舌がんは口腔・咽頭がんとして一括して統計化されており、全国的な実態は十分に把握されていない。国民皆保険制度のもと、95%以上の保険請求を網羅するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は、全国疫学研究に適したデータ基盤である。舌切除術が全病期で標準治療であることから、本研究では手術コード(医科K415および歯科J018)に基づき舌がん手術を新規症例の代替指標として用い、全国的な舌がん罹患の年次推移および年齢・性別別の特徴を明らかにすることを目的とした。 本研究では、医科(2014~2022年)および歯科(2016~2022年)のレセプトデータを用い、全体ならびに年齢階級別の男女比を算出した。さらに、人口10万人年あたりの手術率について、性別および年齢階級別に人口学的ピークの解析を行った。年次推移については、手術件数を線形回帰モデルで、手術率をポアソン回帰モデルで解析し、年次リスク比(RR)を推定した。なお、RR>1.0は人口10万人年あたりの手術率が年々増加していること、RR<1.0は減少していることを示す。 2016~2022年の医科・歯科レセプトデータを用いた解析では、年間平均4,470.7件の手術が実施されていた(手術率:3.4件/10万人年)。男女比は全体で1.6:1であり、男性がやや優勢であることが示された。年齢階層別の男女比は、40歳未満ではほぼ1:1であったのに対し、60~70歳代では2.0:1となり男性優位の傾向が顕著に認められた。 手術率は、男性では75~79歳でピーク(12.0件/10万人年)を示し、女性では75~84歳でピーク(5.9件/10万人年)を示した。年齢調整後の手術件数(医科)は2014年から2022年にかけて有意に増加していた。 さらに年齢調整した手術率は、女性全体(RR=1.020、P<0.0001)および全体集団(RR=1.010、P=0.0006)で有意な増加を示した。年齢階級別の解析では、女性の40~44歳(RR=1.083、P=0.0001)および60~64歳(RR=1.055、P=0.0005)で有意な増加が認められた。 本研究の結果から、特定の年齢層(中高年)の女性で、舌がんが増えている可能性が浮かび上がった。著者らは、「本研究で示された中高年女性での舌がん手術率の増加傾向は、今後、喫煙や飲酒などの修正可能なリスク因子に関する啓発を含め、女性を意識した予防・早期対応の重要性を示唆する結果といえる」と述べている。 なお、本研究の限界として、レセプトデータを用いた解析であり、再手術や疾患分類の誤差、病期や生活習慣など患者背景を考慮できていない点を挙げている。また歯科レセプトの観察期間が短く、結果の解釈には注意を要するとしている。

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第284回 終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案

<先週の動き> 1.終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案 2.全国がん登録に「死亡場所」追加、研究活用促進へ/規制改革推進会議 3.小児科・産科、総合診療の人材不足鮮明 医師確保計画の改定で/厚労省 4.美容医療の診療録記載を省令で明確化へ、監督強化でパブコメ開始/厚労省 5.出生数70.6万人で過去最少更新、推計より17年早い少子化/厚労省 6.人口減少で経営悪化の病院再編、市立病院が閉院へ/室蘭市 1.終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案救急・集中治療領域における生命維持治療の終了・差し控えを巡り、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会の4学会は、合同ガイドライン改訂案を公表した。2014年策定の指針から約11年ぶりの改訂となる。改訂案では「終末期」をあえて定義せず、人工呼吸器などの生命維持治療を開始しない、または終了する際の判断手順を具体化した点が特徴となっている。患者本人の価値観や意思を中心に、家族および医療チームが協議して方針を決定する「共同意思決定」を原則とした。また、1度治療を開始すると中止できないという臨床現場の萎縮を防ぐため、期限を区切って治療効果を評価する「タイム・リミテッド・トライアル」の考え方を明記。治療を差し控え、または終了した場合の緩和ケアについても、苦痛緩和の具体的手順や家族支援の在り方を詳細に示した。これまで、法的責任への懸念や指針のあいまいさから、患者が望まない治療が継続される事例も少なくなかった。今回の改訂案は、現場での判断を支える実践的指針として、患者の尊厳を尊重した医療の実現につながることが期待される。3月27日までパブリックコメントを実施している。 参考 1) 終末期医療の指針、救急など4学会改訂案 意思決定やケアの手順示す(朝日新聞) 2) 延命治療終了の手順具体化 学会指針案、11年ぶり改定(共同通信) 3) 延命治療終了の手順明記 4学会が指針案、患者の意思尊重 医療者・家族の協議求める(日経新聞) 4) 「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」パブリックコメント募集のお知らせ(日本救急医学会) 2.全国がん登録に「死亡場所」追加、研究活用促進へ/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は2月26日、規制改革に関する中間答申を公表し、「全国がん登録情報および院内がん登録情報の利活用拡大」を最重要項目に位置付けた。がん登録に含まれる死亡日や死因情報は、遺族の個人情報に該当する可能性から、現行制度では第三者提供が厳しく制限されている。その一方で、多施設共同研究などでは生存確認や死亡情報の活用ニーズが高く、「研究に使えない」との指摘が相次いでいた。中間答申では、死亡日を5日単位でグループ化するなど、個人特定リスクを抑えた加工を施したうえでの第三者提供を検討すると明記。死因についても、がん死亡では部位が判別可能な情報、非がん死ではICD中間分類レベルの提供を可能とする方向性が示された。2026年の制度実施を目指す。これにあわせて、全国がん登録の届け出項目拡充も進められる。厚生労働省は、2027年診断症例から「死亡場所」を登録項目に追加する方針を了承。終末期医療や在宅看取りの実態把握に資する狙いだ。さらに、2028年以降はUICCのTNM分類(腫瘍径、リンパ節転移、遠隔転移)の追加も予定されている。また、院内がん登録とNDB(レセプト・特定健診情報)など公的データベースの連結解析を可能とし、本人同意を不要とする第三者提供の対象に院内がん登録を含める方針も示された。AYA世代や希少がんでは、国際標準分類に基づく情報提供を拡充する。その一方で、議論が続く自治体がん検診の「医師1人+AI読影」解禁は、今回の中間答申には盛り込まれなかった。政府は、今夏に規制改革実施計画を策定し、がん研究基盤の強化を急ぐとしている。 参考 1) がん登録情報の利活用、死亡日など提供方法を検討 中間答申 規制改革推進会議(CB news) 2) がん登録に「死亡場所」も 27年症例から項目追加 厚労省(同) 3) 規制改革推進に関する中間答申(規制改革推進会議) 3.小児科・産科、総合診療の人材不足鮮明 医師確保計画の改定で/厚労省厚生労働省は、2月25日に開かれた「第13回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、都道府県を対象に実施したアンケート結果を公表し、医師確保が特に必要な診療科として「小児科」を挙げた自治体が最多の41都道府県に上ったと明らかにした。次いで産科・産婦人科が40、総合診療科が34となり、生命予後に直結しやすく、24時間対応や当直負担の重い診療科で人材不足が深刻である実態が改めて浮き彫りとなった。特定診療科の医師確保に向けた支援策は44都道府県で実施しており、主な手法は(1)診療科を特定した地域枠の設定、(2)人件費や医師派遣費など医療機関への財政支援、(3)大学への寄附講座設置などであった。その一方で、都道府県が養成過程での対策を進めるために国に求める支援としては、財政支援の拡充、制度に関する情報提供や協議の場の設置、臨床研修・専門研修での採用上限設定など制度的関与の強化が多く挙げられた。この検討会において、第8次医師確保計画(後期、2027年度~)に反映する「医師養成過程の取組に係る議論の整理(案)」を大筋で了承した。整理案では、地域枠は原則として恒久定員内で設置する方針を明確化し、医師少数県や離島・豪雪地帯など、やむを得ない事情がある場合に限って臨時定員の活用を例外的に認めるとした。また、医学部段階だけでなく、臨床研修・専門研修を通じた偏在是正を重視し、若手医師の流出入や研修修了後の定着状況、地域枠医師の義務年限終了後の勤務実態を継続的に把握・検証することを都道府県に求めた。大学医学部・大学病院に対しては、地域医療を担う診療科への誘導や研修プログラムの魅力向上など、教育機能と地域医療政策の一体的運用がより強く求められることになる。 参考 1) 医師確保が特に必要な診療科、最多は「小児科」 厚労省の都道府県調査で(CB news) 2) 地域枠は原則「恒久定員内」に設置へ 医師多数県以外も 厚労省検討会が整理案(同) 3) 特に医師確保が必要な診療科として、41都道府県が「小児科」と回答(日経メディカル) 4) 医師確保計画策定ガイドラインの見直しに向けた医師養成過程の取組に係る議論の整理案(厚労省) 4.美容医療の診療録記載を省令で明確化へ、監督強化でパブコメ開始/厚労省厚生労働省は、美容医療を巡る健康被害や不適切な勧誘の増加を受け、医師の診療録の記載ルールを見直す省令改正案を公表し、パブリックコメントを実施している。意見募集は3月17日まで。改正案では、美容医療を提供する場合の診療録の記載事項に「患者の主訴」「患者が希望する治療内容」が含まれることを明確化し、保健所などの立入検査・指導で診療実態を確認できるようにする。これまでは医師法違反などが疑われる事案でも、診療録の記載自体が不十分で根拠が追えず、指導の実効性が上がらないケースがあったためであり、厚労省は監督強化の一環として2026年4月の施行を予定している。今回の医師法施行規則の改正は、美容医療の消費者相談の件数増加を受け、2024年に厚労省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」での議論をもとに、同年11月の取りまとめで「診療録記載の徹底」を安全確保の柱に位置付けた経緯がある。わが国の美容医療はSNS拡散とコロナ禍の「特需」を追い風に急拡大し、推計では2024年に市場規模は6,310億円に達している。クリニック数は、2020年の1,404施設から2023年に2,016施設へと増加し、施術件数も2017年約160万件から2024年約306万件に伸長、自由診療の高収益性を背景に研修後すぐ美容医療に進む「直美」医師も2012年の16人から2022年には198人と急増している。その一方で、経験不足や合併症対応の脆弱さを不安視する声があり、国民生活センターへの相談件数も2022年度3,798件から2024年度1万736件へと急増している。自由診療は保険診療と異なり、診療内容について保険審査の枠外で、価格設定や運営の自由度が高い。クリニックによっては、カウンセラーにノルマを課して高額な施術へ誘導するほか、術後の合併症の対応能力不足、未承認の薬剤や医療機器を使用した施術での重篤な被害の発生も繰り返されている。SNSでは「痛みゼロ」「必ず小顔」など断定的表現や根拠不明の肩書が拡散しやすく、広告規制が届きにくい「グレーゾーン」も課題となっている。厚労省では、患者の「主訴」「希望する治療」の記録を明確化して、診療の妥当性や説明・同意の検証、トラブル時の事後検証を可能にし、行政指導につなげたい考え。2025年12月には美容医療機関に安全管理措置や相談先などの報告を年1回程度求める制度整備も進んでおり、今回の省令改正と併せ、統一的な指針整備、若手教育・倫理、広告監視の実効性をどう高めるかが焦点となる。厚労省は、パブリックコメントで記載項目の具体性や運用負担、立入検査での活用方法などへの意見を求めており、4月以降は現場での真摯な対応が求められる。 参考 1) 医師法施行規則及び歯科医師法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について(政府) 2) 美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書(厚労省) 3) 美容医療、診療録の記載事項に「患者の主訴」「希望する治療内容」も 省令改正へ(CB news) 4) 美への欲望につけこみ高額な課金、死亡事故も…専門医は「過剰営業」を懸念(日経メディカル) 5) 「成功してるじゃん」美容医療で“しこり”も医師が失敗認めず…被害者が施術費用の返還など求めクリニックを提訴(弁護士JPニュース) 5.出生数70.6万人で過去最少更新、推計より17年早い少子化/厚労省厚生労働省が公表した人口動態統計速報(外国人を含む)によると、2025年の出生数は70万5,809人で、1899年の統計開始以降で過去最少を更新し、10年連続減少した。前年差は1万5,179人減(2.1%減)で、2022~24年の約5%減に比べ減少幅は縮小した。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計(中位推計)では出生数が70万人台となるのは2042年と見込まれており、想定よりも約17年早いペースで少子化が進んでいる。死亡数は160万5,654人で0.8%減と5年ぶりに減少へ転じたが、出生数との差である自然減は89万9,845人と過去最大に拡大した。団塊の世代が全員75歳以上となる中、人口減の加速が改めて示された。婚姻数は50万5,656組で1.1%増、2年連続の増加。ただしコロナ禍前(2019年の59万組台)には戻っていない。離婚は18万2,969組で3.7%減だった。地域別では45道府県で出生数が減少する一方、東京都は8万8,518人(1.3%増)と速報値で9年ぶりに増加し、石川県も6,515人(128人増)と増加に転じた。全国出生数の約3割を首都圏1都3県が占め、地域差も鮮明となった。東京都は、現金給付や保育料無償化の拡大、無痛分娩助成など子育て支援を進めており、周辺自治体から転居希望の増加を指摘する声もある。上野 賢一郎厚生労働大臣は、若年層の所得向上や共働き・共育て支援を進める考えを示し、「婚姻増は良い傾向」と述べている。もっとも、出生数の下振れが続けば、年金・医療・介護の前提となる人口見通しが揺らぎ、給付と負担の再設計を迫る可能性がある。なお日本人のみの出生数・合計特殊出生率は6月公表予定で、出生数は60万人台となる見通しが示されている。政府は2030年までが少子化反転の「ラストチャンス」として、こども未来戦略を推進し、財源として公的医療保険に上乗せする支援金制度を段階的に運用する方針も示している。 参考 1) 人口動態統計速報(厚労省) 2) 2025年の出生数70万人、10年連続で最少更新…東京・石川が増加に(読売新聞) 3) 出生数過去最少の70万人 推計より17年早い少子化 25年速報値(毎日新聞) 4) 2025年の出生数70.5万人 少子化は推計より17年早く、人口減も進行(日経新聞) 5) 2025年、出生数は70万5,809人で10年連続減少、死亡数が160万5,654人で、自然増減は「マイナス89万9,845人」-厚労省(Gem Med) 6.人口減少で経営悪化の病院再編、市立病院が閉院へ/室蘭市北海道室蘭市は、経営悪化が続く市立室蘭総合病院について2027年度をめどに閉院し、高度急性期・急性期機能を製鉄記念室蘭病院へ統合する方針を正式に決定した。市内3病院(市立室蘭総合病院、製鉄記念室蘭病院、日鋼記念病院)の再編を巡り、地域医療連携再編等推進協議会が最終合意に達した。背景には、室蘭市および西胆振地域で進む人口減少と急性期医療需要の縮小がある。3病院が同様の急性期機能を維持し続ければ、病床過剰や症例分散により医療の質低下や医師確保難を招き、病院経営の持続性が失われるとの判断が示された。市立病院は1872年開設、517床・22診療科を有し、約720人が勤務する基幹病院だが、2024年度末で約85億円の負債を抱え、市の一般会計からの多額の繰り出しが市の財政を圧迫していた。再編後、東室蘭地域では製鉄記念室蘭病院が2次医療圏の救命救急・高度急性期拠点を担い、蘭西地域では日鋼記念病院を中心に急性期から回復期、在宅医療までを支える体制とする。道内初の結核患者収容モデル病室の稼働など、政策医療の集約も進める。その一方で、500人超の市立病院職員は公務員の身分を失うため、再就職支援が課題となる。北海道知事の鈴木 直道氏は、患者の受け皿確保や職員雇用について市と連携し、丁寧に対応する考えを示している。今回の閉院は、人口減少地域における公立病院再編の先行事例として、全国の地域医療に大きな影響を与える可能性がある。 参考 1) 室蘭市地域医療連携・再編等推進について(室蘭市) 2) 市立室蘭総合病院、27年度めどに閉院へ 製鉄記念室蘭病院へ機能統合 3病院再編で合意(CB news) 3) 市立室蘭総合病院を閉院へ 北海道室蘭市、70億円超の財政支出も(朝日新聞) 4) 150年の歴史がある市立病院が閉院へ…新年度に23億円支出方針の室蘭市の財政は「危機的水準」(読売新聞)

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若手医師は帰属意識が高い?首都圏出身者も移住希望?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2025年12月23日、『令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』1)を公表し、都道府県別にみた人口10万人当たりの医師数などが明らかになった(参考:「医師数公表、人口当たり医師数が最も多い県・少ない県/厚労省」)。厚生労働省ではこれを基盤として医師偏在をさらに客観的に把握するため、2018年度より「医師偏在指数」*も公表している。また、2025年11月に行われた医師偏在対策に関する検討会では、労働時間などの違い、地域ごとの医療需要(医療ニーズ)などといった考慮すべき5つの要素が示され、2027年度からの次期医師確保計画に向けて必要な見直しが検討されるという2)。*計算式は、標準化医師数÷[地域の人口(10万×地域の標準化受療率比)]で、数値が低いほど医師不足を表す。現行は「医師の性別・年齢分布」が考慮されているが、2027年度より5つの要素(医療需要[ニーズ]及び将来の人口・人口構成の変化、患者の流出入等、へき地等の地理的条件、医師の性別・年齢分布、医師偏在の種別[区域、診療科、入院/外来])が考慮される予定。 そこで、このような状況を踏まえ、ケアネットでは医師が勤務地選択の際にどのような条件を重視するのかなどを調査。20~60代の会員医師1,018名を対象に、移住(Iターン・Jターン・Uターン)3)希望の有無、将来的に希望する勤務地・定住先とその理由、勤務地を決定したタイミングについて、アンケートを行った。若手の地方出身者は帰属意識が高い?首都圏出身者は? まず、回答者の出身エリアと主な勤務エリアは以下のとおりであった。―――――――――――――――――――<出身エリア>北海道:5.8%  東北:7.2%  関東:22.3%  中部:16.7%  近畿:21.3%  中国:8.3%   四国:4.3%  九州・沖縄:12.8%  海外:0.6%<現在の主な勤務エリア>北海道:5.3%  東北:6.1%  関東:30.1%  中部:16.1%  近畿:19.6%中国:8.3%   四国:3.9%  九州・沖縄:10.3%  海外:0.2%――――――――――――――――――― 将来的な勤務希望地(出身地や実家[義実家を含む]のある地域での勤務希望)について、全体の60%超が「はい(いつか戻りたい)」「現在、出身地・実家のある地域で働いている」と回答。また、すでに地元などで勤務している医師は40代以上では4割を超えていた。 今回、本アンケート結果のp.12では、参考までに年代・出身地別の移住意向率も示した。現在、県外に勤務し将来的に移住を希望する割合は20代で高く(47.7%)、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)を除外した場合にも高い傾向であった。また、驚いたことに、首都圏出身者(263人)のうち85人が首都圏外で勤務していたが、そのうちの7割は戻る意向を示さなかった。一方で、東北エリア、中国エリア出身者の県外勤務者の移住意向は低かった(それぞれ9.1%、7.4%)。 なお、診療科別(内科・外科・その他)での希望有無の違いを比較すると、外科系医師の移住希望はやや少ない傾向であった。希望地の選択理由、20代と60代で共通する理由 本結果から各年代での勤務地選択理由の傾向が明らかになった。20代は「地域/へき地医療への貢献」(18.5%)、30~40代は「子育て・教育環境」(各25.0%、14.9%)を重視する傾向にあった。50代以降では、「親の介護/実家管理」などの問題もやや増加した。60代以降でも約2割の医師は「地域/へき地医療への貢献」を選択していた。 各年代の選択理由については、以下のようなコメントも寄せられた。<20代>・地域枠(山梨県出身/山梨県勤務・糖尿病・代謝・内分泌内科)・出世するためにどこへでも行きたいから(兵庫県出身/千葉県勤務・病理診断科)・家賃が高い(大阪府出身/東京都勤務・眼科)<30代>・義務だったため(新潟県出身/新潟県勤務・内科)・医局を辞め新しい居住地を探す際に、地元が便利なため(神奈川県出身/兵庫県勤務・神経内科)<40代>該当コメントなし<50代>・子を保育園に預けられないとき(感染症など)、実家にみてもらうため。教授から「実家がないと復帰は無理」と言われ、辞めることを暗に勧められた(岩手県出身/岩手県勤務・心療内科)・需要と供給、利便性、将来性などのバランス(東京都出身/山口県勤務・精神科)<60代>長女だから仕方ない(大阪府出身/大阪府勤務・小児科)将来の勤務先、20~30代が意識する時期は… 将来の勤務地を意識する/した時期については、各年代ともに「意識したことがない」医師が最も多かったものの、その傾向は若手になるほど減少に転じている。年代別でみると、20~30代は「前期研修時」(各25.0%、16.2 %)、40代は「医学部入学時」(10.9%)、50代は「親の健康状態の変化」(9.3%)、60代は「入局時」(12.6%)という結果であった。 このほかのアンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『将来の希望勤務地は?いつ決めた?/医師1,000人アンケート』

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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抗加齢医学の初心者にもおすすめ『第8回アンチエイジングセミナーin松山』【ご案内】

 2026年3月8日(日)、松山市立子規記念博物館にて『第8回アンチエイジングセミナー in 松山』が開催される。参加費は無料で、医師・歯科医師・研究者・メディカルスタッフなど、医療関係者であれば誰でも参加可能。申込締切は3月3日(火)、定員100名に達し次第締め切りとなる。 本セミナーは、「抗加齢医学に興味はあるが、これまで体系的に学ぶ機会がなかった」「日常診療にどのように取り入れればよいのか知りたい」といった医療従事者にも参加しやすい内容となっている。 老化を疾患として捉え、長寿研究を基礎に学際的な視点から健康長寿を目指す抗加齢医学は、循環器疾患、認知症、生活習慣病、フレイル対策など、日常診療と密接に関わる分野として注目を集めている。本セミナーでは、抗加齢医学を取り巻く最新の知見を踏まえつつ、日常診療や生活指導、予防医療の現場での実践につながる視点を中心に、明日から活かせる内容をわかりやすく解説する。 主催の日本抗加齢医学会では、「愛媛県をはじめとする地域から抗加齢医学の輪を広げ、日常診療に役立つ知見を共有する場にしたい」としており、専門分野や経験年数を問わず、幅広い医療関係者の参加を呼びかけている。 開催概要は以下のとおり。開催日時:3月8日(日)13:00~16:15開催場所:松山市立子規記念博物館    〒790-0857 愛媛県松山市道後公園1-30 TEL:089-931-5566     道後温泉駅より徒歩5分/JR松山駅より市内電車20分     開催形式:会場開催(WEB配信はなし)参加方法:無料(事前参加登録制)申込締切:3月3日(火)または定員100名になり次第終了■参加登録はこちらから【プログラム】座長:北野 克宣氏(医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)講演1 13:00~13:45「統合医療としての抗加齢〜Life’s crucial 9と糖化対策〜」    山岸 昌一氏    (昭和医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)講演2 13:45~14:30 「食健幸プロジェクト」    高橋 路子氏    (神戸大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科/栄養管理部長)休憩  14:30~14:45講演3 14:45~15:30 「認知症予防における歯周炎対策の重要性」    伊賀瀬 道也氏    (愛媛大学病院抗加齢予防医療センター長/愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座 特任教授)講演4 15:30~16:15 「笑顔と健幸プロジェクト    〜疲労と睡眠・精神健康対策でHealthy Ageingの社会実装を目指す〜」    北野 克宣氏    (医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)【主催】 一般社団法人日本抗加齢医学会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-3 日本橋山大ビル4F TEL:03-5651-7500 FAX:03-5651-7501 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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第280回 7対1でも安泰ではない? 急性期病院A・Bが迫る機能再編/中医協

<先週の動き> 1.7対1でも安泰ではない? 急性期病院A・Bが迫る機能再編/中医協 2.診療報酬46億円返還、医師14人が資格喪失、不正請求は「見逃されない」時代へ/厚労省 3.緊急避妊薬(アフターピル)が国内初の市販化、2月から全国販売へ/厚労省 4.相次ぐ汚職でトップが謝罪―卓越大認定に暗雲、不退転の改革へ/東大 5.臓器移植改革が始動 ドナー関連業務を地域法人に移行/藤田医大 6.介護事業者倒産が過去最多176件 突出する訪問介護の経営危機/厚労省 1.7対1でも安泰ではない? 急性期病院A・Bが迫る機能再編/中医協2026年度の診療報酬改定で中央社会保険医療協議会(中医協)は、新たに「急性期病院A・B(急性期病院入院基本料)」を設け、急性期医療の評価軸が病棟単位中心から「病院機能・実績」へと一段強まることになる。Aは「地域の急性期医療の拠点」を想定し、年間の救急搬送2,000件以上かつ全身麻酔手術1,200件以上など、高い実績要件が柱となる。Bは一般的な急性期を幅広く捉え、救急搬送1,500件以上、または救急搬送500件以上+全身麻酔手術500件以上などを求める。加えて、Aでは地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟との併設を認めない一方で、Bは地域包括医療病棟のみを除外するなど、ケアミクスの許容範囲でも差を付けた。注目は救急実績の「質」の担保で、介護保険施設入所者の救急搬送は、協力医療機関での受入困難など例外を除き、A・Bいずれでも原則として救急搬送件数に算入しない方向が示された。その一方で、現行7対1病院の相当数がA基準を満たしにくいとの指摘もあり、急性期の集約・機能分化を加速させる可能性がある。今後は、地域で救急・手術を集約する「A志向」か、高齢者救急や包括期との接続を含めた「B/他入院料志向」か、病院ごとの役割の再設計が不可避となりそうだ。 参考 1) 【急性期】厚労省が個別改定項目を提示 救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 2) 7対1病院の6割、11万床が急性期Aの基準未達(CB news) 3) 「地域の急性期医療の拠点」病院を評価する【急性期病院一般入院料】を新設、病院単位での救急搬送・手術実績が要件にー中医協総会(Gem Med) 2.診療報酬46億円返還、医師14人が資格喪失、不正請求は「見逃されない」時代へ/厚労省厚生労働省は1月29日、2024(令和6)年度に実施した保険医療機関などへの指導・監査の状況を公表し、診療報酬の不正請求などを理由に、「医科・歯科を含む9施設の保険医療機関指定を取り消した」と発表した。処分に先立ち廃業した施設を含めると、指定取消相当は14施設にのぼる。これに伴い、保険医の登録が取り消されたのは医師5人、歯科医師12人の計17人で、返還を求めた診療報酬額は約48億5,000万円と、前年度を上回った。その一方で、厚労省があわせて公表した2023年度の指導・監査実績によると、個別指導を受けた保険医療機関は1,464件で前年度比2.7%減少したものの、対象となった医師数は2,774人と大幅に増加している。医科に限れば、個別指導件数・対象医師数ともに増加しており、医科領域での請求内容に対する点検が一層強化されている実態がうかがえる。2023年度に実施された監査は46件で、その結果、保険指定取消または取消相当となった医療機関は21件、医師ら14人が資格を喪失した。返還された診療報酬総額は46億2,338万円に達し、前年度から26億円以上増加した。とくに施設基準を満たさない入院料の請求、実施していない診療行為の請求(架空請求)、実診療で行っていない行為を上乗せする付増請求など、基本的ルール逸脱が繰り返し確認されている。注目すべき点として、保険指定取消などの端緒(発覚のきっかけ)の多くが、保険者や医療機関従事者、患者からの情報提供であったことが挙げられる。医療費通知やマイナンバーカード利用の進展により、請求内容の「見える化」が進み、不正請求は発覚しやすい環境となっている。診療報酬は公費・保険料・患者負担で成り立つ共有財源であり、ルール遵守は医療者全体の信頼を支える前提条件である。近年の指導・監査の動向は、「悪質事例への厳正対応」と同時に、日常診療における請求の正確性や施設基準管理の重要性を、すべての医師に改めて突きつけるものと言えそうだ。 参考 1) 令和6年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について(厚労省) 2) 9施設の保険指定取り消し 24年度、返還請求48億円(産経新聞) 3) 不正請求等で21件・14人の医師等が「保険指定取り消し」等の処分、診療報酬46億円強を返還-2023年度指導・監査(Gem Med) 3.緊急避妊薬(アフターピル)が国内初の市販化、2月から全国販売へ/厚労省国内初となる市販の緊急避妊薬(アフターピル)が、2月2日から全国で販売される。第一三共ヘルスケアが販売するレボノルゲストレル(商品名:ノルレボ)は、これまで医師の処方箋が必要だったが、スイッチOTCとして薬局やドラッグストアで購入可能となる。希望小売価格は1錠7,480円で、年齢制限はなく、未成年でも保護者やパートナーの同意は不要とされた。ノルレボは、排卵を遅らせる作用があり、性交後72時間以内に1回服用すれば、約8割の確率で妊娠を防ぐとされる。24時間以内の服用では妊娠阻止率は約95%に達する一方、時間が経過するほど効果は低下し、49~72時間では約58%に下がる。販売は対面に限定され、厚生労働省が指定した研修を修了した薬剤師が、チェックシートによる確認と説明を行い、購入者本人がその場で服用する「面前服用」が要件となる。転売や誤用を防ぐ狙いで、ネット販売や持ち帰りは認められていない。服用後は、3週間を目安に妊娠検査や医療機関での確認が推奨されている。厚労省によると、販売開始時点で全国5,445店舗が取り扱い、今後はさらに拡大する見通しだ。イオンリテールは併設薬局69店舗で販売を開始し、ウエルシア薬局やクオールなど大手も全店展開を予定している。その一方で、緊急避妊薬はあくまで緊急時の対処法で、服用後は一時的に妊娠しやすくなる場合もある。専門家は、低用量ピルなど確実性の高い平時の避妊法や、性教育の充実が不可欠だと指摘する。世界では約90の国・地域で処方箋なしで購入可能であり、世界保健機関(WHO)の必須医薬品にも指定されている。今回の市販化は、望まない妊娠を防ぐ選択肢を広げる一方、適切な使用と制度運用が問われる転換点となりそうだ。 参考 1) 緊急避妊薬、2月から薬局などで販売 1錠7,480円購入は対面のみ(朝日新聞) 2) 緊急避妊薬、来年2月に初の市販開始 面前服用要件に-第一三共「ノルレボ」(時事通信) 3) 緊急避妊薬、72時間以内の服用で効果8割 2月から市販(日経新聞) 4) イオンリテール、緊急避妊薬を販売 2日から併設の薬局69店舗で(同) 5) 2月発売の緊急避妊薬、全国5,000超の店舗で取り扱い 厚労省集計(同) 4.相次ぐ汚職でトップが謝罪-卓越大認定に暗雲、不退転の改革へ/東大東京大学医学部附属病院で汚職事件が相次いだ問題で、同大は1月28日、藤井 輝夫総長が記者会見し「教育・研究機関として社会の信頼を著しく損ねた」と謝罪した。大学院医学系研究科の佐藤 伸一教授が、民間団体との共同研究(社会連携講座)に絡み、性風俗店を含む高額接待を受けたとして24日に収賄容疑で逮捕され、東大は26日付で懲戒解雇した。不祥事は単発ではなく、2025年11月にも同院の准教授が医療機器選定を巡る収賄容疑で逮捕・起訴されている。こうした事態を受け、田中 栄病院長は27日付で引責辞任。教職員宛てのメールで「短期間に複数の重大な不祥事が発生し、患者や社会の信頼を著しく損ねた。組織の長として管理監督責任を明確にする」と辞任理由を説明した。藤井総長は会見で、不祥事の背景として(1)教員の倫理意識の希薄さ、(2)民間資金受け入れを巡るチェック機能の不足、(3)閉鎖的でヒエラルキーの強い組織風土の3点を挙げた。責任を取り、総長は役員報酬の一部(1ヵ月分の50%)を自主返納し、担当理事らも返納する。さらに、全教職員約1万3,000人を対象とした調査で、倫理規程違反が22件判明し、うち3件で高額接待が認められたことも明らかにした。大学は4月に最高リスク責任者(CRO)を新設し、独立監査を含む「三線防御」によるガバナンス再構築を進める方針だ。10兆円規模の大学ファンド支援を受ける「国際卓越研究大学」の審査が継続している最中、改革の実効性と信頼回復への道筋が厳しく問われている。 参考 1) 本学教員の逮捕を受けて(東大) 2) 東京大学総長「信頼著しく損ねた」30秒頭下げ謝罪 教授の収賄事件(朝日新聞) 3) 東京大学総長謝罪 大学院教授の収賄など汚職相次ぎ(NHK) 4) 東大ガバナンス欠如、卓越大認定影響避けられず? 総長「急ピッチで改革進める」(産経新聞) 5) 東大総長が汚職事件で謝罪「信頼損ねる」 高額接待など新たな倫理違反22件も発覚(同) 5.臓器移植改革が始動 ドナー関連業務を地域法人に移行/藤田医大厚生労働省は1月30日、藤田医科大学などが設立した一般社団法人「中部日本臓器提供支援協会(CODA)」を、心臓や肺などの提供臓器をあっせんする「ドナー関連業務実施法人」として許可した。眼球を除く臓器あっせん業の許可は、日本臓器移植ネットワーク(JOT)以外では全国で初めてとなる。これまで、脳死や心停止下での臓器提供に際し、家族への説明や同意取得、摘出チームの受け入れ調整などのドナー関連業務はJOTが一元的に担ってきた。しかし近年、臓器提供数の増加に対し、コーディネーター不足や業務の集中による対応の遅れが指摘され、結果として移植が見送られる事例も生じていた。こうした状況を受け、厚労省は2024年12月、ドナー側業務を地域ごとに分担する体制改革を打ち出していた。CODAは中部7県(愛知、三重、岐阜、静岡、福井、富山、石川)を担当し、臓器提供が想定される医療機関にコーディネーターを派遣。ドナー家族への説明や同意取得、関係機関との調整を担う。その一方で、移植希望者の登録やレシピエント選定、臓器搬送は引き続きJOTが担当し、公平性は従来通り担保される。CODAは移植業務経験者5人を確保し、JOTでの研修を経て、2026年夏ごろの本格稼働を予定している。厚労省は今後、他地域でも同様のあっせん法人を募集する方針で、臓器提供体制は「全国一元」から「地域分担」へと大きな転換点を迎えた。ドナーの意思を確実に生かし、移植機会の拡大につながるかが注目される。 参考 1) ドナー関連業務実施法人を許可しました(厚労省) 2) 臓器提供 家族対応などの業務を新法人に許可 厚労省(NHK) 3) 臓器あっせん法人を初許可 ドナー対応、藤田医大設立(日経新聞) 4) 「中部日本臓器提供支援協会」、厚労省が臓器あっせん業を許可 藤田医科大などが設立(中日新聞) 6.介護事業者倒産が過去最多176件 突出する訪問介護の経営危機/厚労省訪問介護事業者の経営悪化が深刻さを増している。2024年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、物価高や移動に伴うコスト増が重なり、収益を圧迫している。とりわけ人手不足が最大のボトルネックとなり、サービスの継続が困難になるケースが相次いでいる。こうした状況を受け、厚生労働省は人材確保に向けた広報を強化。昨秋以降、訪問介護の仕事の具体像を伝えるショート動画や漫画、ポスターなどを特設サイトで発信し、教材としての活用も見込むなど、職場の魅力を可視化して担い手拡大を狙っている。背景には介護事業者の倒産の増加への危機感がある。東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者倒産は176件で過去最多を更新し、「訪問介護」は91件と3年連続で最多。倒産理由は「販売不振」が約8割を占め、「人手不足」倒産も最多を更新した。規模は小・零細が中心で、資金繰り余力の乏しさが表面化している。賃上げ支援や生産性向上策は進むが、他産業の賃上げに追いつかず、現場の人材確保は依然として厳しい。国・自治体には、倒産抑制と運営効率化支援を一体で進める対応が求められる。 参考 1) 2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加(東京商工リサーチ) 2) 訪問介護の倒産急増、人材確保に懸命の厚労省 PR動画・漫画など続々(日経新聞)

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第298回 戦後最短の衆院選、今回の各党の医療・社会保障政策は?~自民・維新・中道編

INDEX自民党日本維新の会中道改革連合年明け早々から衆議院解散の報道が流れ始めたが、実際に高市 早苗首相が2026年1月23日の通常国会冒頭で解散を行ったことで、すでに衆議院議員総選挙に突入している。そこでいつものごとく、各党の医療・社会保障政策を取り上げ、独断と偏見に基づく寸評を加えたいと思う。今回は与党の自民党と日本維新の会、さらに公明党と立憲民主党が合流した最大野党の中道改革連合を取り上げる。自民党まずは与党で比較第1党の自民党。主な政策として5つの柱とそれに続く中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。その中から医療・社会保障政策(年金を除く)を要約して列挙すると、以下のようになる。詳細は以下のとおり1. 強い経済で、笑顔あふれる暮らしを<危機管理投資・成長投資>予防・健康づくり分野を成長産業として育成し、健康経営の拡大や女性の健康、生活習慣病、認知症などの研究開発を促進仕事と介護の両立支援のため、公的保険外の介護サービスの振興や、企業における支援を促進<経済安全保障>医薬品を「特定重要物資」と位置付け、サプライチェーンの強靱化や国内生産能力の強化<デジタル>マイナンバーカードを健康保険証として利用し、運転免許証などとの一体化を推進社会保険や税、介護、死亡・相続などの行政手続きを「スマホで60秒」で完結させるデジタル化・ワンストップサービス化一人ひとりの暮らしに応じたサービス提供のため、医療、こども・子育てなどの分野でのデータ連携を支援2.地方が日本経済のエンジンに<地域未来戦略>離島・半島における医療・介護の振興策を講じる3.わが国を守る責任。国際秩序を担う日本外交<科学技術>ゲノムデータ・創薬基盤の充実、医薬品・医療機器の開発、国際協力を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(誰もが適切な医療を負担可能な費用で受けられる状態)の達成創薬力を抜本的に強化するため、産学官の研究力を向上させ、とくに感染症に備えた国産ワクチン・治療薬・診断薬の生産体制を強化バイオ医薬品(抗体医薬品、再生医療等製品など)の生産体制整備や創薬ベンチャーへの支援を推進健康医療を含む最先端分野での研究開発から社会実装までを支援4.すべての世代の安心と次世代への責任<こども・子育て>妊娠前から出産、子育て期まで切れ目のない支援を行い、病児保育の充実旧優生保護法による被害者の救済と、疾病や障害者への偏見・差別根絶<社会保障(最重点項目)>医療・介護・福祉分野の賃上げ:物価上昇に対応し、幅広い職種での確実な賃上げのため、報酬の引き上げ等を実施持続可能な医療体制:2040年を見据えた「地域医療構想」により、医療機関の連携・再編・集約化の推進歯科・リハビリ・薬局:生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)、リハビリの充実、かかりつけ薬剤師・薬局の普及を推進医療・介護DX:全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテの普及により、安全で効率的なサービスを実現予防・健康寿命:「攻めの予防医療」により健康寿命を延ばし、がん、循環器病、難病、移植医療、依存症対策などを推進介護提供体制:訪問介護を含む受け皿整備と人材確保を進め、介護離職を防ぐとともに、認知症対策やフレイル(虚弱)対策を推進正常分娩費用の負担を実質ゼロにすることで、妊婦の経済的負担軽減薬の安定供給:革新的な創薬環境の整備と、後発医薬品(ジェネリック)の安定供給を確保社会保険料負担の軽減:中・低所得者の負担軽減のため、「給付付き税額控除」の検討を含む社会保障と税の一体改革を議論<教育>特別支援教育の充実に向け、発達障害のあるこども達に対する早期からの支援や医療的ケア看護職員の配置促進<文化・スポーツ>生涯にわたるスポーツの継続を支援し、生涯健康を土台に人材の能力を最大限発揮させることで、人材一人ひとりの生産性向上と社会保障費抑制を図り、経済成長を支える<女性活躍>「女性の健康総合センター」を司令塔に診療拠点の整備や研究、人材育成等の取組みを全国展開、女性の生涯にわたる健康支援を強化<防災・減災、国土強靭化>マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化の全国展開<災害復興>地震・津波被災地域での心のケアやこどもの支援等の中長期的な取組み<生活の安全>熱中症対策実行計画に基づく熱中症対策の強化。花粉症の総合的な対策の推進<外国人政策>税・社会保険料の未納や制度悪用を根絶。出入国在留管理庁と関係機関との税・国民健康保険料等のマイナンバー等による情報連携を行い、上陸審査・在留審査等に反映。医療費未払情報報告システムの登録基準額を20万円以上から1万円以上に引き下げるとともに対象を中長期在留者へ拡大することを検討。<多様性・共生社会>医療保険者とかかりつけ医が協働する「社会的処方」の推進 石破 茂政権時代の参議院議員通常選挙(以下、参院選)時や高市首相が自民党総裁選時に掲げた政策と比較して、私が注目した変化は「2040年を見据えた『地域医療構想』により、医療機関の連携・再編」という点である。この点、以前の表現ではあくまで「病床数の適正化」だったが、今回は「医療機関の再編」と一歩踏み込んでいる。もちろん病床数の適正化の先に究極的には医療機関の再編があるのは事実。そして今回の診療報酬の個別改定項目(短冊)を見ても、急性期医療の絞り込みに向けた“出血大サービス”となっていることと併せれば、与党として自民党が本気を出してきたと言えるかもしれない。また、これまでになかった政策と言えば、<経済安全保障>の項目の医薬品を「特定重要物資」への位置付け、<デジタル>の項目にある「スマホで60秒」サービス、<多様性・共生社会>にある「社会的処方」、である。このうち「社会的処方」については、すでに2020年の政府方針「骨太方針2020」にも謳われたことだが、かかりつけ医の位置付けが現状ではまだまだ曖昧な中で、どのような仕組みを想定しているかは不明である。日本維新の会昨年の参院選時には予想もされていなかった日本維新の会(以下、維新)の与党入り。OTC類似薬の給付の大幅見直しなど、与党入りしてからは良くも悪くも存在感を発揮している同党だが、今回の衆議院選にあたり発表した「維新八策2026」では、社会保障政策の大項目の元、中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。以下、要約の上で列挙する。詳細は以下のとおり社会保障政策<社会保険料を下げる改革>国民医療費を年間4兆円以上削減し、現役世代1人あたりの社会保険料を年間6万円引き下げ高齢者の医療費窓口負担を9割引から7割引(現役世代と同じ)へ引き上げ金融所得を含めた総合的な所得把握に基づく負担区分を設定女性や高齢者の就業促進、第3号被保険者制度見直し等により社会保障制度を就業促進型へ転換生産年齢人口の定義を見直し中央社会保険医療協議会に医薬品・医療機器メーカーを追加し、創薬支援を強化。企業届出価格承認制度の導入等により薬価算定制度を見直し費用対効果に基づく医療行為や薬剤の保険適用見直しを進め、限られた医療財源を重症患者や革新的医療に重点配分後発医薬品の使用原則化、タスクシフト、地域フォーミュラリ導入等により医療費削減不要となる約11万床を削減し、1兆円以上の医療費削減(感染症対応病床は確保)2030年までに電子カルテ普及率100%を達成エビデンスが乏しい無価値医療(低価値医療)の保険適用を見直し医療介護産業を需要者側の視点で改革し、市場原理導入や合理化で生産性向上を実現AIやビッグデータを活用した全国統一レセプトチェックで医療費適正化と医療の質向上を同時実現オンライン診療の診療報酬点数の対面診療と同等化定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者の保険料を値引きする保険料割引制度を導入診療報酬点数の決定で医療サービスの需給バランスを通じた調整メカニズムを導入< 医療・介護提供体制>開業医(かかりつけ医))が診察・健康管理・入院判断に積極的に関与する体制構築医療DXを推進し、在宅医療・在宅介護の質・量を高め、地域包括ケアシステムを構築介護現場の待遇・職場環境を改善し、ロボット・テクノロジー導入で負担軽減介護サービスの地方分権と規制改革を行い、待機高齢者問題等の介護施設不足を解決老人ホームと保育所を一体化させた複合施設の設置基準を自治体が決定できる権限移譲日本版DBS制度(こども性暴力防止法に基づく制度)の介護人材への適用検討など、介護現場のハラスメント対策を立法化尊厳死(平穏死)について幅広い議論・検討を推進悪質な渡航移植対策として無許可あっせん業の罰則強化と国際的枠組み構築<予防・健康づくり>一次予防・健康増進を図り、早期予防・早期介入により健康寿命を延ばし、介護費用抑制と両立自立支援型介護を推進し、がん検診・特定検診の受診率向上により健康寿命を延伸受動喫煙防止の徹底認知症患者支援・理解啓発を推進し、iPS細胞による再生医療等の研究を支援慢性疾患について先進的な取り組みの全国展開や標準化による発症・再発・重症化予防対策の推進アレルギー疾患の医療相談、治療体制を全国で整備検体の自己採取と血液マーカー検査など新しい検診制度を導入HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置<医療産業>IoT、AI、ビッグデータ、5G通信により医療・健康分野の産業化・高度化を推進混合診療を解禁・推進医療法人などの経営・資金調達規制を大幅に緩和医療品販売の過度な対面販売規制を見直し<感染症対策>十分な経済的補償を前提に医療機関などへ実効力ある要請・命令ができる法整備新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、地方が地域事情に応じて機動的に感染症対応できる体制を確立首都圏と関西圏に「日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)」を各1ヵ所所整備有事に都道府県の枠を超えた情報・医療資源の共有化など相互補助できる体制を構築感染症法改正等により国民が検査・医療を受ける権利を明確化有事の指揮命令系統等に関し、危機対応ガバナンス確立のための法改正・憲法議論を積極的に行う国産ワクチン・治療薬の研究開発・生産体制を抜本に強化 大部分は昨年の参院選時に発表された「維新八策2025」を維持したものである。ただ、今回は以前よりも新たな政策が追加された。追加項目は、「混合診療の解禁・推進」「医療法人の資金調達に関する規制緩和」「医薬品の対面販売規制」「診療報酬点数の決定への医療サービスの需給バランスによる調整メカニズム導入」「HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置」である。これらはHPVワクチンの件を除くと、政府の経済への介入を抑え、自由競争によって経済の効率化や発展を実現すべきという「新自由主義」に一番近いとされる維新らしい政策とも言える。また、社会保険料の負担軽減や医療費抑制につながる政策で維新側が明確な数字を示すのに対し、自民党側が概念的な政策提示である点でも新自由主義的な維新の性格をよく表していると言えるだろう。中道改革連合今回、おそらく有権者を最も驚かせたのが、野党第1党の立憲民主党と昨秋まで与党だった公明党による新党「中道改革連合(以下、中道)」が発足したことだろう。正直、私個人もまったく予想外だった。中道の今回の候補者の中には医師が8人おり、自民党の9人に次ぐ人数。多くは旧立憲民主党の議員だが、旧2党で見ると、どちらかというと以前与党にいた旧公明党のほうが医療政策に明るいと思われがちだ。今回、医療以外の安全保障や原発問題などで公明党寄りに政策修正したと言われる中道だが、医療・社会保障関連政策はどのようになったのか?今回、中道は大項目となる第1~5の柱を立て、その中で中項目(<>)、さらに小項目(・)となる具体的な政策を記述している。以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり第1の柱:一人ひとりの幸福を実現する、持続的な経済成長への政策転換<家計の安心へ>社会保険料負担で手取りが減る「130万円のガケ」を解消<賃上げと中小企業・産業の活性化>社会保険料の事業主負担軽減や奨学金代理返還の支援医療・介護・保育・物流・建設・交通等の処遇改善に向け、公定価格と労務費の適正化を推進し、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーの所得の抜本的引き上げを実現第2の柱:現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築<ベーシック・サービス従事者の処遇改善>医療・介護・保育・障がい福祉従事者などの給与の全産業平均への引き上げ<健康、安心の医療・年金>予防・検診強化で健康寿命を延ばし、重複検査是正・医療DXで医療費を抑制、社会保険料上昇を抑制がんの原因となる感染症など、リスクに応じた検診を実現し、企業検診率向上を目指す高額療養費の自己負担限度額の引き上げを見直し経営困難な医療機関を支援(次期診療報酬改定でのプラス改定など)。医師確保のための基金拡充かかりつけ医の制度導入を目指し、かかりつけ医を中心とした新たな地域医療構想の実現移動困難な高齢者のためにオンライン診療・モニタリング等で地域医療体制を整備職場・地域で心のケアを必要とする人を早期発見し、治療体制を強化薬価の中間年改定を廃止保証人のいない単身者が必要な医療を受けられるよう、実効性のある「ガイドライン」の普及とフォローアップを図る<高齢者、介護支援、障がい福祉>介護の相談体制・家族支援を強化し、事業所のDX化で安心できるケア体制を整備「介護離職ゼロ」に向けた取り組み(介護休業の通算期間の延長、介護休業中の賃金補償の拡充)を強化訪問介護の基本報酬を引き上げ介護事業所の情報通信技術(ICT)化を進め、業務効率化・情報共有で介護従事者などの負担軽減とサービスの質・生産性向上を目指す介護記録の電子化・介護センサー導入で介護施設・在宅介護の人手不足をサポート第3の柱 選択肢と可能性を広げる包摂社会の実現<こども・子育て>妊婦健診や出産費用の無償化と産後ケアの充実ヤングケアラーを早期に発見し、教育や医療、就労など横断的に支援 この中で「130万円のガケ」は、従来から国民民主党が唱える「103万円の壁」と違って初めて聞いた人もいるかもしれない。これは給与所得者に扶養されている配偶者に健康保険料や年金保険料の負担が生じ始める年収である。念のため説明すると103万円は所得税負担がかかり始める年収である。要は「103万円の壁」の引き上げを軸に若年層に支持を広げた国民民主党にあやかった政策なのかもしれない。そして意外に思うかもしれないが、実は中道が掲げたこれらの政策は、与党の中でも穏健なほうになる(あくまで維新との比較だが)自民党の社会保障政策と類似点は少なくない。とくにICT、DX関連はかなり類似が多い。パッと見て与党と明らかに違う政策として目につくのは、かかりつけ医の制度導入と薬価の中間年改定廃止である。ちなみに薬価の中間年改定廃止は従来から国民民主党が唱えている政策でもある。また、中道がここで述べているかかりつけ医の制度導入とは、現在の「かかりつけ医機能報告制度」とかかりつけ医機能を評価する診療報酬ということではなく、いわばヨーロッパなどで行われている家庭医制度のようなものだろう。いずれにせよ、全体的には穏健、悪く言えば、非常に概念的な政策で、私見を言えば、「なかなか埋没感がある」と思ってしまう。さて次回はそのほかの野党を一斉に取り上げる。

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喘息への活用に期待、『アレルゲン免疫療法の手引き2025』

 アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキを原因とする季節性アレルギー性鼻炎と、ダニなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎に大別される。本邦では2014年頃からアレルゲン免疫療法(以下、AIT)の手軽な手法である舌下免疫療法(以下、SLIT)が臨床導入されたが、近年のエビデンス蓄積により、ダニアレルゲンによって症状が出現しているアトピー型喘息へのダニSLITの有効性が示されているという。2025年6月には日本アレルギー学会より『アレルゲン免疫療法の手引き2025』が発刊され、最新の知見に基づき、治療の意義や位置付けが刷新されたことから、今回、本書の作成委員長を務めた永田 真氏(埼玉医科大学呼吸器内科 教授/埼玉医科大学病院アレルギーセンター センター長)にAITの基礎と推奨される患者像などについて話を聞いた。アレルゲン免疫療法の意義  以前に日本では“減感作療法”とも呼ばれたAITは、「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療」と定義付けられ、アレルギー疾患の根本的な体質改善を期待できる唯一の治療法である。本邦オリジナルの手法である皮下免疫療法(SCIT)は諸外国と比べ格段に普及が遅れていた。しかし2014年に舌下免疫療法(SLIT)が承認され、スギ花粉症を中心にその普及が始まった。 『アレルゲン免疫療法の手引き』の2022年版*からの主な改訂ポイントについて、永田氏は「『喘息予防・管理ガイドライン 2024』および『鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版』との整合性を図り、最新の臨床知見を反映した。とくにこれまでの理念を覆す免疫病態や、またAITの新規の効果が近年明らかになってきたため、新たに判明した作用をブラッシュアップしている。たとえば、ダニSLITが喘息患者の呼吸機能を改善させ長期的に維持させ得ることや、重症患者(喘息併存)への生物学的製剤(抗IgE抗体オマリズマブや抗IL-4受容体α鎖抗体デュピルマブなど)との併用効果に関するエビデンスなどを盛り込んだ。さらに、現段階での適応拡大はないが、アトピー性皮膚炎に対しても部分的に効果があることも報告されている。さらに、スギアレルゲンによる治療がヒノキアレルギーに対しても一定の効果を示す可能性が指摘されている」など、治療標的の広がりについても言及した。また、医療経済的な観点として、AITによる医療費抑制効果が確認されていることにも触れた。*2013年に「スギ」「ダニ」別の指針として発刊されていた前身の出版物を統合・刷新したもの AITの機序についてはいわゆる脱感作現象の寄与は極めて限られ、したがって“減感作療法”という呼称は科学的に誤っている。実際には生体にとって有益な免疫応答を能動的に誘導することの寄与が大きいと判明している。同氏は喘息患者において、「AITが気道上皮細胞のインターフェロン産生能力を高め、ウイルス感染に対する抵抗性を増強する作用が報告されている。これは、感染を契機とした増悪を抑制する効果を意味する」と、その免疫学的メリットを強調した。小児期からの介入と喘息発症予防 AITの適応は、IgE依存性アレルギーであることが正確に診断されたダニアレルギーまたはスギ花粉症患者で、とくに重要なことは全身的・包括的な効果を期待して行われる点である。施行にあたっては、「アレルゲン免疫療法に精通した医師」が条件であり、とくにSCITは効果が高いものの、アナフィラキシーあるいは喘息増悪(発作)などに対する迅速な対応が可能な施設においてのみ実施される。 AITの普及状況について、「成人のスギ花粉症治療でのSLITの応用が活発な一方、通年性鼻炎や喘息に影響をもたらすダニアレルギーへの介入は欧米に比べ依然として不十分」と同氏は指摘した。とくに小児においては、小児喘息の多くが難治化のリスクを抱える中、AITの追加が予後改善に寄与することが確認され、『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』にも5歳以上に対するダニ免疫療法の重要性が示されている。「小児期からの介入は、将来的な喘息の新規発症を予防し、すでに発症済みの小児喘息の改善も期待することができる」と同氏はコメントした。 アレルギー性鼻炎の鑑別疾患としては、非アレルギー性・非感染性の鼻粘膜過敏症(血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎、また鼻かぜ[急性鼻炎]など)が挙げられる。このほかの注意点として、同氏は「海外では喘息でダニSLITが適応となる一方で、日本の場合には“適応がない”点は留意したいが、日本人の約8割の喘息患者はアレルギー性鼻炎も併発している」と喘息患者は治療対象となる場合が多い点を指摘した。<処方医が診療時に注意するべきポイント>・リスク管理:アナフィラキシーリスク評価と迅速な対応ができること・禁忌/慎重投与:「自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する」「%FEV1(1秒量)が70%未満、または不安定な喘息患者」「全身性ステロイド薬の連用や抗がん剤の使用」に関する状況確認・SLITに関する歯科連携: 腔内の傷や炎症、抜歯などの予定は吸収率や局所反応に影響するため、休薬を含めた指導を実施・環境整備:ダニアレルギーの場合、ダニの繁殖を防ぐため、床のフローリング化やこまめな清掃など、また喘息ではとくに完全禁煙を指導治療中断後の再開は?ほかのアレルゲンへの適応は? AITの治療期間について、世界保健機関(WHO)は3~5年を推奨しているが、さらなる長期継続も許容される。患者が中断してしまった場合やいったん中止後に再発した場合の再開基準について、永田氏は次のような見解(私見)を述べた。「スギSLITの場合、投与開始から3年が経過していれば、免疫寛容の誘導が進んでいる時期。一時的に中断しても2年は効果が持続すると判明しているが、中止後の再発に伴う再開に際しては『改めて最低3年』を目標に仕切り直すことを推奨する。」 なお、ほかのアレルゲンへのAITの展開については、ハチ毒でのSCIT、食物アレルゲンでの経口免疫療法、一部の薬剤(NSAIDs、抗酸菌薬など)に対する脱感作療法が存在する。ピーナッツなどの食物アレルギーに対する経口・経皮免疫療法は研究が進んでいるが、現時点で本邦での承認予定はない。そのため、最新の手引きではこれらについての詳細な解説は見送られている。

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