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鼻に歯が生えていた2例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第297回

鼻に歯が生えていた2例さまざまな場所に歯が生えるものですが、過去に脳内に歯が生えた事例を紹介しました。今度は鼻の中です。脳に比べるとインパクトは少ないかもしれませんが、おどろき医学論文マニアとして、紹介しなければなりません。Bergamaschi IP, et al. Intranasal Ectopic Tooth in Adult and Pediatric Patients: A Report of Two Cases. Case Rep Surg. 2019 Sep 17;2019:8351825.「先生、鼻の中に“歯”があると言われたんですけど……」。外来でこんな訴えが飛び出したら、皆さんどうされるでしょうか。「抜けた歯が鼻腔に入ったのかな? いや、でもなんで歯が鼻に?」と一瞬フリーズしたくなりますが、世の中には“鼻から歯が生える”患者さんが存在します。今回は、ブラジルの口腔外科チームが報告した「鼻腔内異所性歯」の成人例と小児例、2症例を扱った論文をご紹介します。1例目は、32歳の女性です。主訴はズバリ「鼻の中に歯がある」というものでした。この患者さんによると、この状態は痛みを引き起こし、とくに寒い日には鼻血が出るとのことでした。詳しく病歴を聴取すると、6歳のときに顔面外傷を負い、上顎前歯部に損傷を受けたことが判明しました。つまり、26年もの間、歯が鼻の中に存在していたことになります。臨床診察で鼻尖部を持ち上げてみると、なんと右鼻孔内に上顎中切歯の歯冠が観察されました。6歳といえば、ちょうど前歯の永久歯が萌出する時期であり、Nollaの発育段階では7(歯冠完成、歯根の3分の1発育)に相当します。この時期に外傷を受けたことで、本来口腔内に萌出するはずだった歯が、上方に変位して鼻腔内に迷い込んでしまったと考えられます。ここで疑問が生じます。なぜ26年間も放置されていたのでしょうか。論文によると、これは「専門家からの誤った情報提供」が原因だったとのことです。つまり、症状(痛みや鼻出血)に対する対症療法のみが行われ、その原因である鼻腔内の歯が長年見過ごされていたということです。2例目は、左側の片側性口唇口蓋裂を有する8歳の女児です。この子供は、左側鼻閉を主訴に紹介されてきました。原因は、肉芽組織に囲まれた鼻腔内の硬い組織塊でした。口腔内診察とCT検査の結果、この白色塊は左側側切歯の異所性萌出であることが判明しました。口腔内では左側側切歯が欠損しており、塊の透過性は他の歯と一致していました。興味深いことに、CT検査では、この形成異常歯の上部は軟組織内に埋入しており、骨性支持がない状態でした。母親によると、この白色塊は腸骨骨移植による口鼻瘻孔閉鎖術の3ヵ月後に出現したとのことです。口唇口蓋裂自体が多因子性の病因を持つため、異所性萌出に対する遺伝的素因も否定できませんが、手術操作による歯胚の変位も原因として考えられます。両症例とも、治療は全身麻酔下での歯の外科的摘出でした。「鼻から歯を抜く」という、一見すると大手術のように思える処置ですが、実際の手技は比較的シンプルで、無事に済んだそうです。

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第275回 国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省

<先週の動き> 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省厚生労働省が発表した2024年末時点の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、国内の医師数は前回調査から1.3%増加し、34万7,772人と過去最多を更新した。人口10万人当たりの医師数も全国平均で267.4人と、前回から5.3人増加していた。施設別では、診療所に勤務する医師が4.1%増の11万1,699人と大きく伸びた一方、病院勤務者は0.3%減の21万9,393人となった。また、大学病院などの教育・研究機関に所属する医師数も減少傾向にあり、専門医志向の高まりを背景とした大学院進学者の減少が浮き彫りとなっている。診療科別では、内科が全体の約19%を占めて最多だが、注目すべきは明暗が分かれた特定診療科の動向。近年、自由診療の拡大を背景に美容外科医が急増しており、前回から4割近い増加をみせた。対照的に、外科医はピーク時から約4%減少していた。過酷な労働環境や訴訟リスクが敬遠される要因とみられるが、2026年度からの専門研修登録状況では、外科を志望する医師が前年比で16.9%増と大幅な回復の兆しをみせている。これは一部の病院による給与引き上げや学会の魅力発信が功を奏した形である。地域格差も依然として深刻であり、人口10万人当たりの医師数が最も多い徳島県の345.4人に対し、最少の埼玉県は189.1人と、1.8倍以上の開きがある。また、産婦人科・産科医が全体として1.2%減少する中、福井県と埼玉県の格差も顕著となっている。総数が増加する一方で、医師の働き方改革や専門科の偏在、地域間格差といった課題は山積している。日本専門医機構は今後、若手医師の意識調査や、自己研鑽と労働の切り分けに関する標準時間の策定を進め、持続可能な医療体制の構築を急ぐ方針。 参考 1) 令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚労省) 2) 医師、約35万7,000人=過去最多を更新、24年末-厚労省(時事通信) 3) 国内医師数34.8万人、24年は過去最多 診療所勤務が増加(日経新聞) 4) 2026年度からの専門医資格取得を目指す研修、「外科医を目指す医師」が大幅増の可能性大-日本専門医機構・渡辺理事長(Gem Med) 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府政府は12月24日、2026年度当初予算案の一般会計総額を、過去最大の122兆3,000億円程度とする方向で最終調整に入った。高齢化に伴う社会保障関係費の増大に加え、物価高や賃上げへの対応により、歳出は2年連続で過去最大を更新する。税収も過去最高を見込むものの、足りない分は29兆6,000億円に及ぶ新規国債の発行で賄う、厳しい財政運営となった。今回の予算編成の大きな焦点とされた2026年度診療報酬改定については、医療従事者の人件費にあたる「本体」部分を2年度平均でプラス3.09%引き上げることで合意した。本体の3%を超える引き上げは1996年度以来、実に30年ぶりの高水準。上野 賢一郎厚生労働大臣と片山 さつき財務大臣の折衝を経て、物価高騰に直面する病院経営の安定と、全職種にわたる確実な賃上げを実現するための財源確保が決着した。異例の措置として、改定率は2026年度にプラス2.41%、2027年度にプラス3.77%と段階的に引き上げる手法が初めて導入される。これにより、各年度で3.2%のベースアップを目指すとともに、他産業との人材獲得競争が激しい看護補助者や事務職員には5.7%の上乗せ措置が講じられる。その一方で、医薬品の公定価格である薬価は市場実勢価格を踏まえ0.87%引き下げられ、薬価引き下げを含めたネットでは2.22%のプラス改定となり、12年ぶりの全体プラスとなる。しかし、現役世代の保険料負担を抑えるため、患者には新たな負担も求められる。市販薬と成分が重なる「OTC類似薬」については、薬剤費の4分の1を患者が特別料金として上乗せ負担する仕組みが2027年3月から開始される。また、後発薬がある先発品を希望する際の追加負担も現行の4分の1から2分の1へと引き上げられ、高額療養費制度の上限額も所得に応じて段階的に引き上げられる。今回の改定は、30年ぶりの大幅なプラス改定で医療現場の窮状を救う一方、薬剤費や一部の自己負担を「聖域」とせずメスを入れる、全世代型社会保障への大きな転換点と位置付けられる。今後、医師にはリフィル処方の推進やエビデンスに基づく薬剤選択が求められるようになり、医療機関の経営と診療の質、そして患者負担のバランスをどう取るかが、現場の新たな課題となる。予算案は12月26日に閣議決定が行われた。また、同日、診療報酬改定について中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承され、中医協総会は公聴会を1月23日に開催することで決定した。なお、政府は2026年1月23日に召集される通常国会で予算案について審議し、3月末までに成立を目指している。 参考 1) 診療報酬改定について(厚労省) 2) 来年度予算案、122.3兆円程度 国債前年度上回る29.6兆円-26日閣議決定(時事通信) 3) 診療報酬2.22%引き上げ、薬価0.87%引き下げも全体で12年ぶりプラス改定…閣僚折衝で合意(読売新聞) 4) 「2026→27年度」と物価・人件費が高騰する点踏まえ2026年度2.41%、27年度3.77%の診療報酬本体引き上げ-上野厚労相(Gem Med) 5) 診療報酬本体はプラス3.09%、医科の実質的な増加分は0.23%(日経メディカル) 6) 122兆円の来年度予算案が閣議決定…過去最大の社会保障関係費・防衛費、「責任ある積極財政」路線鮮明に(読売新聞) 7) 第639回総会資料(厚労省) 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府政府は12月24日、医療費の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」の見直し案を正式に決定した。今回の改正では、現役世代の保険料上昇を抑制する狙いから、1ヵ月当たりの負担上限額を2027年8月までに段階的に引き上げる一方、長期治療が必要な患者の生活を守るための新たなセーフティーネットが導入される。具体的な引き上げ幅について、来年8月に現行の所得区分に応じ4~7%引き上げられ、さらに2027年8月には所得区分を現在の5~13段階へと細分化した上で、最大38%程度の引き上げを実施する。政府の試算によると、年収約650~770万円の層では、月額上限が現在の約8万円から約11万円へと上昇する。これは昨年末に検討されていた「最大70%超」という大幅な引き上げ案が患者団体の強い反発で凍結されたことを受け、上げ幅を約半分に抑制した形。特筆すべきは、がんや難病などで長期にわたり高額な治療を続ける患者への配慮である。過去12ヵ月で3回上限に達した場合、4回目から負担が下がる「多数回該当」の金額は原則として据え置かれた。さらに、月ごとの支払額の変動による家計の破綻を防ぐため、所得に応じて年間の支払い総額に上限を設ける「年間上限額」が新設される。平均的な年収世帯の場合、年間上限は53万円に設定される。その一方で、70歳以上の外来受診費を軽減する「外来特例」についても、負担上限額が段階的に引き上げられる。年収約200~370万円の層では、現在の月額1万8,000円から2年後には2万8,000円となる。政府は今回の見直しにより、累計1,600億円規模の保険料負担の圧縮を見込んでいる。上野厚労大臣は「長期療養者の経済的負担に配慮した内容であり、丁寧に説明して理解を得たい」と述べているが、患者団体からは依然として、現役世代の負担増が治療の断念につながりかねないとして、さらなる抑制を求める声も上がっている。 参考 1) 高額療養費の自己負担上限、年収に応じ最大38%引き上げ…石破内閣時の70%超案から抑制(読売新聞) 2) 高額療養費、月の上限4~38%上げ 27年8月、患者配慮で改革縮む(日経新聞) 3) 高額療養費制度 月当たり負担上限額 所得に応じ引き上げへ(NHK) 4) 高額療養費の見直し、背景に少子化財源も 患者は「更なる抑制を」(朝日新聞) 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省厚生労働省は、2026(令和8)年度の診療報酬改定および医療保険制度改革において、市販薬(OTC医薬品)と成分・効能が類似する医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」の自己負担の在り方を見直す方針を固めた。現役世代の負担抑制と医療保険制度の持続可能性を高める不断の取組の一環として、保険適用は維持しつつも、対象薬剤に対して「特別の料金」を求める新たな仕組みを創設する。新しい制度の最大の柱は、薬剤費の4分の1(25%)を保険外の特別負担とし、残る4分の3(75%)を従来の保険給付対象とする点。具体的な対象として、ロキソニンやアレグラ、ヒルドイドなど、日常診療で頻用される77成分、約1,100品目が検討されている。実施時期は2027年3月を目指しており、これによる医療費削減効果は約900億円と試算されている。ただし、受診行動や重症化への影響を考慮し、配慮が必要な層については追加負担を求めない方針である。具体的には、子供、がん患者、難病患者、低所得者、入院患者のほか、医師が医療上長期間の使用が不可欠と判断した慢性疾患患者などが除外対象として検討されている。また、今回の改革ではOTC類似薬以外にも薬剤給付の適正化が並行して進められる。後発医薬品の使用促進を目的とし、先発品(長期収載品)を希望した場合の特別料金を、現在の薬価差の4分の1から「2分の1」へ引き上げることが決定した。加えて、症状が安定した患者へのリフィル処方せんや長期処方の原則化を視野に入れ、院内掲示の必須化など普及に向けた環境整備を加速させる。厚労省は、この新たな負担増について国民の理解を得るため、セルフメディケーションの推進やスイッチOTC化の目標達成に向けた取り組みを強化し、2027年度以降はさらなる対象範囲の拡大や負担割合の引き上げも視野に検討を継続する構えである。医療現場においては、患者への丁寧な説明とともに、医学的妥当性や経済性の視点も踏まえたより効率的な処方の推進が求められる。 参考 1) アレグラ、ロキソニンに追加料金 市販類似薬、負担25%上乗せ(共同通信) 2) ロキソニンやアレグラに上乗せ料金 OTC類似薬、77成分判明(日経新聞) 3) OTC類似薬 特別料金上乗せ対象 まずは77成分 約1,100品目の方針(NHK) 4) 特別料金の対象となる医薬品の成分一覧[案](厚労省) 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省厚生労働省は、12月22日に「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を開き、急速に進む少子化に対応するため、小児および周産期医療体制の再編に向けた論点を提示した。2030年度から始まる第9次医療計画を念頭に、限られた医療資源の効率的な配置と、質の高い医療の維持が大きな柱となる。現在、周産期医療においては、NICU(新生児特定集中治療室)の整備が目標を大きく上回る一方で、出生数の減少により、とくに「地域周産期母子医療センター」での病床利用率の低下が顕著となっている。一部の施設では利用率が50%を割り込んでおり、専門医の偏在も課題となっている。これに対し、支払側委員からは、利用率の低い施設の再編や、NICUとGCU(新生児回復期治療室)の整備バランスの見直しを求める声が上がっている。一方、小児医療については、単純な施設の集約化に対して慎重な意見が相次いだ。日本小児科学会の滝田 順子会長は、小児医療の広範な専門性を指摘し、安易な集約は地域医療の崩壊を招くと警鐘を鳴らす。まずは、外来を担う「かかりつけ機能」と、入院を担う「拠点機能」の役割分担を地域ごとに明確にすることが優先されるべきとの考えである。また、最重症例への対応については、都道府県をまたいだ広域連携の構築が必要であることも議論された。今後の対策として、2025年度補正予算に計上された「地域連携周産期医療体制モデル事業」を通じ、集約化の先行事例を収集し、全国へ展開する方針である。少子化が想定を上回るペースで進む中、ワーキンググループは今年度内に一定の取りまとめを行い、地域の実情に応じた持続可能な提供体制の構築を急ぐ考え。 参考 1) 第3回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 周産期医療体制、さらなる集約へ 地域周産期母子センターの再編求める声も 厚労省WG(CB news) 3) 少子化進む中で小児、産科医療機関の「集約化」論議進む、ただし「小児科の単純な集約は危険」との指摘も―小児・周産期WG(Gem Med) 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府政府は12月24日、介護従事者のさらなる処遇改善を図るため、2026年度に「介護報酬」を全体で2.03%引き上げる臨時改定を行うことを正式に決定した。本来、介護報酬は3年に1度の改定サイクルだが、加速する他産業の賃上げや物価高騰に対応するため、異例の前倒し実施となる。今回の改定の最大の柱は、介護・障害福祉分野で働く職員の給与を、月額最大1万9,000円引き上げる。具体的には、訪問看護やケアマネジャーを含む幅広い介護従事者を対象に、一律で月1万円の賃上げを実施。これに加え、ICT活用によるケアプランデータ連携システムの導入など、生産性向上や協働化に取り組む事業所の職員には、さらに月7,000円が上乗せされる。ここに定期昇給分を加え、最大1万9,000円の増額を実現し、全産業平均との賃金格差の解消を目指す。その一方で、制度の持続可能性を確保するための効率化も進められる。これまで全額保険給付(自己負担なし)であったケアマネジメントについて、一部有料化に踏み切る。「住宅型有料老人ホーム」や、それに準ずる「サービス付き高齢者向け住宅」の入居者を対象に、ケアプラン作成や生活相談を行う業務を新たなサービス区分とし、原則1割の自己負担を求めることとなる。焦点となっていた「利用料2割負担」の対象者拡大については、高齢者の生活実態や医療保険の負担増との兼ね合いを慎重に見極める必要があるとして、年内の決定を見送った。2027年度から始まる第10期介護保険事業計画の開始前までに改めて結論を出す方針。今回の臨時改定は、深刻な人手不足が続く現場にとって大きな支えとなるが、同時に利用者や現役世代への負担転嫁という課題も突きつけている。政府は2026年6月の施行に向け、具体的な算定要件の詳細を詰める方針である。 参考 1) 介護報酬、2.03%増へ 来年度臨時改定で職員賃上げ-政府(時事通信) 2) 介護報酬は2026年度の臨時改定で2.03%引き上げ(日経メディカル) 3) 介護報酬 来年度臨時で2.03%引き上げ “職員給与増やすため”(NHK)

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第294回 初めてづくしの診療報酬大幅改定、その中身とは

とにかく異例づくしである。2026年診療報酬改定のことだ。正直、診療報酬本体の改定率が+3.09%と伝わった瞬間の個人的な感想は「嘘だろ!」というものだった。もうすでに+1%未満に慣れてしまったせいか、「何が起きたんだ?」とさえ思った。確かに事前に漏れ伝わってきた話は、さすがの財務省も病院経営の苦境への対応はやむを得ないとして1%台のプラスを主張し、これに対して厚生労働省は3%台を主張する形で平行線をたどっているというものだった。私自身は「おそらく1%台の後半、もしかしたら2%に届くかも?」との読みを持っていたが、まさかの決着である。ちなみに私が医療専門紙記者となった1990年代前半は+4%超の改定があり、1996年は+3.4%。その後は小泉 純一郎政権下での史上初のマイナス改定まで、半ば倍々ゲームの逆を行くかのような下がり方をした。旧民主党政権下では久々に1%台となったものの、自民党の政権復帰とともに前回の2024年までは1%未満という微々たる改定率が続いてきた。つまりは1996年改定以来、実に30年ぶりの数字である。薬価・医療材料の引き下げ幅は0.87%であり、本体と薬価引き下げ分を合わせた最終改定率がプラスとなるのも14年ぶり、最終改定率が2%超となるのも実に32年ぶりで、すべてにおいて異例の改定率である。しかも、さらに今回驚かされたのが、当初発表された+3.09%も2年分の平均であり、2026年度が2.41%、27年度が3.77%という段階的な改定率が設定されたことだ。こうした仕組みは診療報酬史上初のことである。もはや異次元の診療報酬改定と言ってもよいかもしれない。さてその内訳だが、これは2020年改定時から新たに公表され始めたもので、要は特例や特定の目的に紐付けられたものなどを以下のように明示している。(1)賃上げ対応分:+1.70%(2)物価対応分:+0.76%(3)食費・光熱水費分:+0.09%(4)24年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分:+0.44%(5)政策医療・医療高度化対応:+0.25%(6)適正化・効率化対応分:-0.15%このうち(1)と(2)も単年度ごとの改定率があり、(1)は26年度が+1.23%、27年度が+2.18%、(2)は26年度が+0.55%、27年度が+0.97%。さらに(2)については、とくに2026年度以降の物価上昇への対応として2年分平均として+0.62%(2026年度が+0.41%、2027年度が+0.82%)を充て、施設類型ごとの費用関係データに基づき、病院が+0.49%、医科診療所が+0.10%、歯科診療所が+0.02%、保険薬局が+0.01%。残る+0.14%は大学病院も含む高度機能医療を担う病院への特例的な対応としての上乗せ分である。また、(4)は病院が+0.40%、医科診療所が+0.02%、歯科診療所が+0.01%、保険薬局が+0.01%の配分。このように特例の対応分について医科部分を病院と診療所に分けたのも初のことである。一方、正味の診療報酬アップは政策医療・医療高度化対応分の+0.25%であり、この配分は医科が+0.28%、歯科が+0.31%、調剤が+0.08%となる。これは1972年7月、田中 角栄政権時に厚生大臣、大蔵大臣、内閣官房長官の閣僚合意で決められた診療報酬配分である医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3が踏襲された形だ。こうして俯瞰してみると、異例の高改定率とはいえ、とりわけ急性期を担う病院に手厚くしたことがわかる。その意味では今年初めくらいから各方面で伝えられた病院の苦境という情報発信が功を奏したとも言える。そして今回の診療報酬改定の発表文書では、付帯事項のような説明文書もかなりの分量が割かれている。まず、注目すべきは物価高騰対応である。実際の経済・物価の動向が今回の改定時の見通しから大きく変動し、医療機関などの経営状況に支障が生じた場合は2027年度予算編成で「加減算を含め更なる必要な調整を行う」と記述している。「加減算」という文言はインフレ鎮静化時の減算もあり得ることを示唆している。また、賃上げについても、2024年改定でベースアップ評価料の対象外の医療者(入院基本料や初・再診料を賃上げ原資として配分される40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工士など)への賃上げ措置を確認するため、「実効性が確保される仕組みの構築や実績の把握を迅速かつ詳細に行う」ことをうたっている。さらに医師偏在対策についても具体的な記述があり、「改正医療法に基づき、外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合には、診療報酬上の減算措置を講じることで、医師偏在対策の実効性を高めることとする」という文言がある。そして何より個人的に注目したのは、前述の(4)の中で「メリハリ」という言葉を使ってきたことである。実は先頃の自民党と日本維新の会による社会保障関連政策に関する政調会長間合意文書でも「令和8年度診療報酬改定におけるメリハリ付け」が筆頭に来ている。このメリハリは多くの人が想像できていると思うが、「今回は病院、とくに急性期医療を担う本格的な病院の苦境は救うが、そのほかについては厳しくする」という意味に読めてしまう。実際、前述の医師偏在対策の文言や効率化・適正化分に「長期処方・リフィル処方の取り組み強化等による効率化」が含まれていることなども併せれば、経営実態調査からも比較的良好だった医科診療所をかなり意識しているのではないだろうか?そして改定率では手厚いはずの病院についても、改定率決定に先立ち成立した2025年度補正予算の中身を見ると、一定の締め付けをしてくることは予想できる。補正予算では「医療・介護等支援パッケージ」に1兆3,649億円が付けられ、このうち最大だった「医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援」の5,341億円に次いだのが「病床数の適正化に対する支援」の3,490億円だった。これは医療需要の変化を踏まえて病床数の適正化を進める一般・療養・精神病院と有床診療所に対し、1床当たり410.4万円(休床の場合は205.2万円)を支援するもの。従来から病床の転換・再編では国や都道府県から補助金が支出されていたが、今回の額は破格である。これらを総合すると、私自身は「今回は大目に見てやるが、この間に国の政策に沿った自助努力をしなければ、後は知らないよ」と読めてしまうのである。 参考 1) 厚生労働省:診療報酬改定について

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医師の奨学金、若手層ほど借入額増大で返済長期化か/医師1,000人アンケート

 医学部卒業までにかかる多額の費用を支える「奨学金」。本来、学問を志す者を支えるための制度であるが、返済義務を伴う貸与型が主流である現状では、実態として「若年期に背負う多額の負債(借金)」という側面も併せ持つ。今回、CareNet.comでは、「医師の奨学金利用と返済状況」と題したアンケートを実施し、奨学金の利用率や借入額、そして返済や利用条件が医師のキャリアに与えた影響を聞いた。対象はケアネット会員医師1,031人で、20代~60代以上の各年代層から回答を得た。回答者の7割が国公立出身 Q1では「卒業した大学の種別」を聞いた。全体では、国公立大学が72%と大半を占め、次いで私立大学が25%、目的別医科大学(防衛医大、自治医大、産業医大)が3%という構成であった。今回のアンケート結果は、比較的学費が抑えられている国公立大学出身の医師たちの視点が強く反映されており、その中での奨学金利用や「地域枠」に対する評価が浮き彫りとなっている。3人に1人が奨学金を利用、30代では半数近くに Q2では「医学部在学中に奨学金を利用した経験」を聞いた。全体では「利用した」と回答した医師が35%に上った。年代別にみると、30代が45%と最も高く、次いで40代が39%となっており、中堅層において利用経験者が多い傾向にある。大学種別では、目的別医科大学(防衛医大、自治医大、産業医大)が73%と突出して高く、国公立大学は39%、私立大学は20%であった。 興味深いのは、現在の勤務先の「病床数」と奨学金利用の関係だ。100~199床の病院では47%、200床以上の大規模病院では36%の医師が奨学金を利用していたのに対し、0床では28%、1~19床の小規模施設では18%にとどまっている。また、200床以上の病院では国公立出身者が75%を占める一方、クリニックなどの無床施設では私立大学出身者の割合が37%と高まっており、経済的背景と卒業後の進路選択には一定の相関があることが推察される。利用先は日本学生支援機構(旧育英会)が最多 Q3では、奨学金利用者に「利用した奨学金制度」を複数回答で聞いた。全体では「日本学生支援機構(旧育英会)」が62%で最も多く、次いで「地方自治体の修学資金貸与制度」が23%、「大学独自の奨学金制度」が21%と続いた。大学種別でみると、国公立大学出身者は「日本学生支援機構」の利用が68%と多く、目的別医科大学出身者は「大学独自の制度」が88%で主軸となっていた。世代が下るごとに膨らむ負債額――30代の4人に1人が「1,000万円超」を借入 Q4では、奨学金利用者のうち「貸与型奨学金の借入総額」を聞いた。全体では「500万円未満」が51%と過半数を占めた。 借入総額を年代別に分析すると、とくに30代以下の負担の重さが顕著だ。借入額が「500万円未満」の割合は60代以上の67%に対し、20代では41%、30代では37%まで低下している。一方で、1,000万円を超える高額借入の割合は、60代以上で9%と最も低いのに対し、30代が約26%と全世代で最も高く、次いで20代で約21%となっている。現在の若手から中堅層にかけて、多額の負債を抱えながら医療に従事している実態が浮き彫りとなった。 大学種別でも大きな格差がみられた。奨学金利用者のうち、国公立出身者では「500万円未満」が56%を占めるが、私立大学出身者では42%が1,000万円を超える借入を行っていた。さらにその内訳を見ると、私立大出身者の17%は2,000万円以上のきわめて高額な借入を行っていた。返済期間は10年以内が主流も、若手には長期化の懸念 Q5では、返済義務のある人に対して「返済完了までにかかった(かかる予定の)年数」を聞いた。全体では「5~10年未満」が31%で最多、次いで「5年未満」が27%となった。完済まで「15年以上」を要する層の割合は、60代以上では約16%にとどまるのに対し、20代では31%、30代では34%と倍増している。とくに臨床研修医においては「15~20年未満」との回答が40%に達しており、5年未満での完済予定はわずか5%であった。「恩恵」と「負債」の間で揺れる医師たちの本音 Q6では、自由回答として奨学金がキャリアに与えた影響を聞いた。進学を支えた制度への深い感謝がある一方で、経済的負担感や、地域枠に伴うキャリア制限への複雑な思いも綴られている。以下、主なコメントを抜粋。・奨学金がなければ大学に行けなかったので助かった(40代、小児科)・経済観念が身に付く良い機会だと思う(40代、内科)・若い頃しか経験できないこと(旅行、自己投資)にお金を使うことができる(20代、臨床研修医)・留年したら給付が止まるので留年の危機感がほかの学生より強かった(30代、神経内科)・地域枠のため3年目は強制で地域病院へ派遣。県からのサポートも不十分で、キャリアへの影響もかなりあると思う(20代、呼吸器内科)・男性はいいが、女性は妊娠・出産で中断のリスクがあり使いにくい(30代、呼吸器内科)・岩手県のように指導体制が整っていないところで研修をさせられるのは、その奨学生の人生において大きなマイナスになります(40代、循環器内科)・借金のことを奨学金と記載するのはよくない。病気になっても借金は残るため、高校生の時点で借金を背負う選択肢をさせてはいけない(30代、内科)・出身地の東京~埼玉は私立医大ばかりで、他は東大理IIIと医科歯科のみ。せめて埼玉と栃木に国立の医学部があれば。理想的には東京界隈の私立の医学部に貸与型の奨学金で入学し、(返済の問題はあるが)もう少し多様性のある人生を歩みたかった(60代、麻酔科)・借りるときは、インフレで物価は上昇するから、返済するときはタダみたいなものと言われていた。卒業後、賃金を含め物価上昇がほとんどなく、利子なしで20年払いとはいえ返済には苦労した(60代、放射線科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の奨学金利用と返済の実態/医師1,000人アンケート

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「まずは金属除去」ではない? 金属アレルギー診療と管理の手引きを公開/日本アレルギー学会

 本邦では初となる金属アレルギーに特化した手引き『金属アレルギー診療と管理の手引き 2025』1)が、2025年9月26日に公開された。そこで、手引きの検討委員会の代表を務める矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が、第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)において、手引きの作成の背景と概要を紹介した。なお、手引きはアレルギーポータルの医療従事者向けページで公開されている。アレルギー疾患対策基本法の対象疾患に含まれない金属アレルギー 本邦では「アレルギー疾患対策基本法」が定められており、喘息やアトピー性皮膚炎などの6疾患が重点的な対象疾患となっている。しかし、現状では金属アレルギーは対象疾患に含まれていない。この理由について、矢上氏は「若年で発症し、後年に金属製材料を使用するときに苦慮する人がいる」「患者は複数の診療科を受診するが連携した診療体制が不十分」「患者数が未知」といった背景があったと述べる。そこで「厚生労働科学研究事業で、それらを補う情報をまとめたほうがよいのではないかということで研究が始まり、疫学調査結果や検査法などをまとめて、手引きを作成する方向となった」とのことだ。これらの研究成果を集約した『金属アレルギー診療と管理の手引き2025』には、診療の流れや検査・管理の要点、多診療科・多職種が連携した診療体制の構築の重要性などが記載されている。女性が多く、全身型の疑い例も少なくない 1章「総論」では、金属アレルギーの定義や本邦における金属アレルギーの実態調査結果、局所型・全身型金属アレルギーの概要が記されている。 「本邦の一般人を対象とした調査では、金属アレルギーの自覚者は女性が7割を占め、医療機関を受診しても検査を受けているのは3割にとどまっていた」と矢上氏は述べる。金属アレルギーは、局所型と全身型に分けられるが「全身型の疑いがある国民は少なくないのではないかということもわかってきた」とも指摘する。全身型では、食物、水、歯科金属などに含まれる金属が体内に入っていくことで、全身性の症状や手掌の症状、口唇炎などが発現するが、一般人を対象とした調査でも、局所型の症状の接触皮膚炎だけでなく、これらの症状が多く報告されていた。パッチテストとin vitro検査の現状 第2章「金属アレルギーの診断」では、問診で聞くべきことや各種検査の概要、金属負荷試験などの解説が記載されている。問診については、医科および歯科の問診票がそれぞれ掲載されているため、参考にされたい。 金属アレルギー診断のゴールドスタンダードはパッチテストであるが、現在保険収載されている試薬は「パッチテスト試薬金属:金属16種類(鳥居薬品)」と「パッチテストパネル:金属4種類(佐藤製薬)」に限られている。とくに臨床現場でのニーズが高い「チタン」の試薬は保険適用外であり、特定臨床研究などでしか実施できない現状がある。 研究班では、より範囲が広く精度の高いパッチテスト金属試薬シリーズの選定を目指し「新金属シリーズ」を作成した。その結果、保険適用外の金属についても陽性を示したが、チタンが陽性となったのは331例中1例であった。本検討の結果の詳細は、手引きに記載されている。なお、「新金属シリーズ」の試薬は保険適用外であるため、特定臨床研究などでのみ貼付可能であることを矢上氏は強調した。 血液検体を用いてアレルギー反応を評価するリンパ球刺激試験について、矢上氏は慎重な見解を示す。その理由として、検査会社によって実施件数に大きな差(年間数百件から数件)があり、使用される試薬も標準化されていないことを挙げた。手引きでは「現時点では、金属アレルギーの診断における日常診療で使用可能な十分な感度・特異度を備えた簡便で正確なin vitro検査はなく、今後の症例の集積と臨床的検討の継続が不可欠である」と結論付けている。薬剤の塗布方法やうがいの方法を記載 3章「金属アレルギーの治療」では、症状に対する具体的な治療方法が示されている。手引きの特徴として、矢上氏は薬剤の塗布方法やうがいの仕方まで具体的に記載していることを挙げ、医師・歯科医師のみならず、看護師や歯科衛生士にも活用してほしいと強調した。 全身型金属アレルギーとの関連が報告されている皮膚疾患の1つに掌蹠膿疱症がある。これについても、現在ではさまざまな治療薬が登場しており、手引きにも具体的な治療方法が記載されている。また、掌蹠膿疱症における歯科金属アレルギーの関与と金属除去の是非が議論されているが、これについて手引きの第1章では「歯性病巣の関与の可能性が否定された後に金属アレルギーを考慮する」と記載されている。これは『掌蹠膿疱症診療の手引き2022』2)において、歯性病巣の治療を優先することが推奨文として示されていることと一致する。また『掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022』3)でも歯科金属との関係が記載されているため、参考にされたい。金属を多く含む食品の一覧表も掲載 第4章「金属アレルギー患者に対する生活指導」では、パッチテストで陽性となった場合の対応について、具体的な指導内容が盛り込まれている。 金属アレルゲンとの経皮的な接触の回避のみで改善しない全身型金属アレルギーでは、食事の管理が重要となる場合もある。そこで、手引きではニッケル、コバルト、クロムといった主要なアレルゲンについて、これらを多く含む食品の一覧が掲載された。さらに、缶詰や調理器具の使用に関する注意点など、患者が日常生活で実践できるワンポイントアドバイスも記載されている。医科と歯科の連携がきわめて重要 第5章「金属アレルギーの診療の流れ」では、金属アレルギー診療・治療においてきわめて重要な「医科歯科連携」について解説されている。現状の課題として、矢上氏は「医師は歯科から患者の紹介を受けて歯科へと戻すが、その後の経過はフォローアップできていない」と指摘する。そのため、医科と歯科が連携したフォローアップ体制の構築が重要である。 その重要性について、矢上氏は実例を挙げて紹介した。皮膚科治療によって皮膚症状の改善が得られなかった掌蹠膿疱症の患者の例では、歯科で差し歯を交換したところ、皮膚症状が著明に軽快したという。この改善は金属除去によるものか、歯性病巣の治療によるものかは明らかではなかったとのことであるが、医科と歯科の連携の重要性が理解できる。 また、近年の研究では、パッチテストで金属試薬が陽性であっても、ただちに金属を除去するのではなく、まずは歯性病巣の治療を行うことで皮膚症状が改善する場合があることも報告されている4)。この知見に基づき、安易な金属除去を避けるためにも、医科と歯科が密に連携し、経過観察結果を共有する体制の構築が求められる。 手引きには、歯科金属アレルギーを疑う患者に対する診断・治療フローチャートが掲載されており、ここでも「パッチテストで金属試薬が陽性であっても、まずは歯性病巣への対応を基本とし、歯科金属の除去は可能な限り優先しない」と記載されている。まとめ 手引きの作成を通じて、これまでに見落とされてきた課題や、依然として解決されていない問題点が明らかになったという。それを踏まえ、矢上氏は「国民の多くの方が金属アレルギーに苦慮している一方で、受診しない人も多いと考えられる。そのため、関連学会や専門団体を通じて手引きの周知を行うことで、医療現場での活用を促進し、診療体制の発展に寄与することを期待している。そして、いずれはニッケルの使用などのさまざまな規制などに繋がっていくことを願っている」と講演を締めくくった。

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第274回 診療報酬26年度改定「本体3.09%引き上げ」で決着へ、医療現場の賃上げ原資に/政府

<先週の動き> 1.診療報酬26年度改定「本体3.09%引き上げ」で決着へ、医療現場の賃上げ原資に/政府 2.薬価0.8%引き下げで最終調整、新薬維持制度で創薬力強化へ/政府 3.OTC類似薬に「25%追加負担」を自民・維新が合意、2026年度開始へ/自民・維新 4.東京科学大が国際卓越研究大学に認定、東大は継続審査に/文科省 5.赤字の大学病院が譲渡に、市川総合病院が国際医療福祉大学へ/国際医療福祉大 6.生活保護で6,650万円不正、歯科医院名を公表/東京都 1.診療報酬26年度改定「本体3.09%引き上げ」で決着へ、医療現場の賃上げ原資に/政府政府は2026年度診療報酬改定で、医療行為の対価となる「本体」を+3.09%とする方針を固め、週明けの厚労・財務両大臣折衝を経て月内に正式決定する見通しとなった。3%超の引き上げは1996年度の3.4%以来の30年ぶりの高さで、2024年度の+0.88%を大きく上回る。首相官邸で高市 早苗首相、上野 賢一郎厚労相、片山 さつき財務相が協議し、物価高と賃上げ圧力の下で悪化する医療機関経営を支える必要性を優先した。内訳は賃上げ対応1.70%、物価対応(光熱水費・食費などを含む)1.29%、医療の高度化など0.25%で、適正化として0.15%を差し引く。厚生労働省は当初より3%台を主張し、財務省は「適正化・効率化を前提に1%台」としてきたが、最終的に高市首相が厚労省案を選択した。日本医師会は、公定価格ゆえ賃金・物価上昇を転嫁できない点を挙げ、賃上げ・物価対応の「真水」確保に謝意を示した。医療経済実態調査では一般病院の医業・介護損益率がマイナス7.3%とされ、補正予算でも医療・介護等支援パッケージ約1.4兆円が計上されたが、現場はなお厳しい。その一方で、診療報酬の財源は保険料が約5割、公費約4割、患者負担約1割とされ、1%引き上げで約5,000億円、3%での単純計算で約1.5兆円規模の国民負担増になる。政府・与党は現役世代の保険料軽減も掲げるため、今後は中央社会保険医療協議会(中医協)で「病院・診療所・調剤のメリハリ」や、急性期・高度医療、地域医療維持、人材確保へどう配分するかが焦点となる。財務省は、利益率の高い無床診療所や調剤への報酬点検を求めており、病院への傾斜配分を主張している。改定率の決定後は、各点数の算定要件の厳格化が実収入を左右するため、医療機関はDXによる効率化と、地域医療構想に合致した機能分化への対応が不可欠となる。改定率決定後、入院基本料、手術・救急、地域包括ケア、外来・在宅、薬局などへの配分と算定要件について取りまとめることになる。国立大学病院長会議は12月18日、44国立大学病院のうち32病院で現金収支の悪化のために、321億円の赤字を見込む数字を公表し、機器更新の先送りや人事院勧告に沿った賃上げができない例を指摘した。3%台を評価しつつ「危機は脱していない」として、高度医療への傾斜配分や、物価上昇に連動して診療報酬を改定する枠組みの検討を求めた。 参考 1) 診療報酬本体、3.09%上げ 物価高対応で30年ぶり水準-政府(時事通信) 2) 26年度診療報酬改定 本体プラス3.09% 賃上げ対応1.70%、物価対応0.76%、適正化はマイナス0.15%に(ミクスオンライン) 3) 診療報酬30年ぶりの高水準、3%こだわった首相 「不十分」の声も(朝日新聞) 4) 診療報酬改定「本体」30年ぶりに3%超引き上げで最終調整(NHK) 2.薬価0.8%引き下げで最終調整、新薬維持制度で創薬力強化へ/政府政府は12月19日、2026年度の薬価を0.8%程度引き下げる方向で最終調整に入った。今回の改革の柱は、創薬イノベーションの評価と医薬品の安定供給確保の両立にある。中央社会保険医療協議会(中医協)が示した骨子(たたき台)では、特許期間中の薬価を維持する仕組みを「革新的新薬薬価維持制度(PMP)」と改称し、制度の透明性を高める方針が示された。注目すべきは、収載時には加算対象でなかった品目でも、後に国内の診療ガイドラインで「標準的治療法」に位置付けられた場合に、薬価改定時に評価を行う新ルールの導入である。これにより、医療機関には、よりエビデンスに基づいた処方の「標準化」が強く求められることになる。医療現場の経営に直結するのは、医薬品の安定供給対策である。昨今の供給不安定化を受け、不採算品再算定の要件が緩和される。これまで同一組成・規格の「全類似薬」が不採算である必要があったが、一部の類似薬にシェアが集中している場合は、品目単位での再算定が可能となる。これは現場で多用される基礎的医薬品の確保に資する一方、改定のたびに薬価が上下する不安定な状況は、医療機関の「在庫負担」や「購入価格交渉」に複雑な影響を与える。さらに、年間1,500億円を超える巨大市場を形成した高額医薬品への対応も強化される。効能追加の有無に関わらず、NDB(レセプト情報等データベース)を用いて使用量を把握し、年4回の新薬収載の機会に合わせた機動的な再算定が実施される。今回の改定は、単なる引き下げにとどまらず、イノベーション評価と供給不安解消を同時に進める構造改革の側面が強い。医療機関にとっては、新制度による薬剤費の変動を注視しつつ、地域連携やDXを通じた適正な在庫管理と標準ガイドラインに準拠した効率的な薬剤選択が、経営の安定化と質の高い医療提供の鍵となる。 参考 1) 令和8年度薬価制度改革の骨子[たたき台](厚労省) 2) 薬価 0.8%程度引き下げる方向で最終調整(NHK) 3) 2026年度薬価制度改革の骨子たたき台、医薬品業界は「イノベーション評価のメッセージが不十分」と指摘-中医協・薬価専門部会(Gem Med) 3.OTC類似薬に「25%追加負担」を自民・維新が合意、2026年度開始へ/自民・維新自由民主党と日本維新の会は12月19日、市販薬と成分・効能が近い「OTC類似薬」について、保険適用は維持しつつ、対象薬で薬剤費の4分の1(25%)を保険外で追加負担させる新制度を導入することで合意した。対象は77成分・約1,100品目(湿布、胃腸薬、アレルギー薬、外用薬などを想定)で、政府は2026年通常国会に法案提出し、26年度中(来年度末ごろ)の開始を目指す。追加負担は、薬代の25%は全額自己負担、残る75%は従来通り保険給付(窓口1~3割)という整理。子供、がん・難病など長期治療が必要な患者、低所得者、慢性疾患や入院患者などへの配慮(除外)を検討し、具体的な品目選定は厚生労働省が詰める。協議では、維新が当初主張した「保険適用除外(全額自己負担)」は見送り、制度創設で折り合った。あわせて薬剤給付の見直しとして、長期収載品の選定療養は先発品選択時の特別料金を薬価差の1/4から1/2へ引き上げ、長期処方・リフィル処方箋の活用(安定患者で原則化も視野、院内掲示要件拡大)、食品類似薬は「食事で栄養補給可能な患者」への使用を保険給付外とする方針で合意した。これらを通じて、約900~1,880億円規模の医療費抑制を見込み、27年度以降の対象拡大や負担割合見直しも検討事項に入った。狙いは保険料負担の軽減だが、患者負担増と受診行動への影響、対象外の線引きが今後の論点となる。 参考 1) 自民・維新 長期収載品の選定療養 価格差の「2分の1」に引上げへ リフィル処方箋の活用にも合意(ミクスオンライン) 2) OTC類似薬、1,100品目で25%を患者が追加負担へ 自維が合意(朝日新聞) 3) 市販類似薬の追加負担、薬価の4分の1で自維合意…湿布薬や胃腸薬など1,100品目対象(読売新聞) 4.東京科学大が国際卓越研究大学に認定、東大は継続審査に/文科省文部科学省は12月19日、世界最高水準の研究力を持つ大学を重点支援する「国際卓越研究大学」の第2回公募で、東京科学大学を新たに認定し、京都大学を認定候補として選定したと発表した。一方、東京大学は計画の実効性やガバナンス面に課題があるとして、最長1年間の継続審査となった。国際卓越研究大学は、政府が設立した10兆円規模の大学ファンドの運用益を原資に、認定校へ最長25年間にわたり巨額の助成を行う制度。研究力に加え、財務戦略やガバナンス、組織改革の実行力が厳しく問われる。第1号としては2024年に東北大学が認定されている。東京科学大は、東京工業大と東京医科歯科大が統合して2024年に発足した新大学で、理工系と医療系を融合した医工連携を中核に据える全学的改革が評価された。2026年度から百数十億円規模の助成を受ける見通しで、「日本の新しい大学モデル」として期待が集まる。京都大は、従来の小講座制を見直し、研究領域ごとのデパートメント制を導入する大胆な組織改革や若手研究者の活躍促進、スタートアップ創出を掲げた点が高く評価された。ただし計画は策定途上とされ、2026年末までに具体化を確認した上で正式認定される。一方、東京大は「10年で世界トップ10の研究大学」を掲げたものの、大学本部が改革を主導できるか不透明と判断された。加えて、東大病院を巡る贈収賄事件などガバナンス上の不祥事も影を落とし、有識者会議は「新たな不祥事が生じた場合は審査を打ち切る」と厳しい条件を付した。今回の選定は、日本の研究大学に対し、研究実績だけでなく、組織改革と統治能力を含めた「大学経営力」が問われる段階に入ったことを示している。 参考 1) 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(文科省) 2) 国際卓越研究大学に東京科学大と京都大を認定へ 東大は継続審査(毎日新聞) 3) 「国際卓越研究大学」 東京科学大学を認定へ 京都大学も候補に(NHK) 4) 「国際卓越大」に東京科学大を認定へ、京大も候補 不祥事続く東大は保留(日経新聞) 5.赤字の大学病院が譲渡に、市川総合病院が国際医療福祉大学へ/国際医療福祉大国際医療福祉大学(栃木県大田原市)は、東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)を取得し、来年4月に「国際医療福祉大市川総合病院」として開院する。両大学は12月18日、無償での譲渡契約を締結した。大学病院が他大学に経営譲渡されるのは極めて異例なケース。市川総合病院は1946年開院、511床・26診療科を有する地域の中核病院だが、物価高や人件費、医療機器コストの上昇を背景に経営が悪化し、2023年度に約9億円、24年度には約16億5千万円の赤字を計上した。病院閉院は地域医療への影響が大きいとして、東京歯科大は存続を最優先に経営譲渡を決断。今年に入り、歯科医師交流などの実績がある国際医療福祉大に打診していた。国際医療福祉大は全国で6つの付属病院を運営し、千葉県内でも2病院を展開している。取得後も病床数や診療科、職員の雇用は維持し、東京歯科大からの歯科医師派遣や学生・研修医の受け入れを継続する方針。医科と歯科の連携を強化し、臨床実習の場を拡充するとともに、グループ病院間の連携や調達の効率化によるスケールメリットで早期の経営改善を目指す。全国的にも大学病院の赤字は深刻で、全国医学部長病院長会議によれば、81大学病院の収支は2024年度に計508億円の赤字となった。高度医療を担う大学病院ほどコスト増の影響を受けやすく、国の補正予算による支援も講じられているが、構造的な再編や集約化の議論は避けられない。今回の譲渡は、地域医療を守るための経営再編という新たな選択肢を示した事例といえる。 参考 1) 学校法人国際医療福祉大学による東京歯科大学市川総合病院の承継について(国際医療福祉大学) 2) 国際医療福祉大が病院取得=東京歯科大から、来年4月開院へ(時事通信) 3) 国際医療福祉大、市川総合病院を取得…多額の赤字で東京歯科大が譲渡を打診(読売新聞) 6.生活保護で6,650万円不正、歯科医院名を公表/東京都東京都は12月18日、都内で過去最大額となる約6,650万円の診療報酬を不正請求したとして、板橋区前野町の歯科医院「医療法人社団山富会 タカシデンタルクリニック」(廃止済み)の名称を公表した。対象期間は2020年4月~2024年9月で、生活保護受給者89人分の診療報酬を不正・不当に請求した。内訳の多くは、実際に診療していないにもかかわらず請求する架空請求で約5,000万円に上る。不正は、来院していない患者の診療実績を捏造したり、診療内容を水増ししたりする手口で行われた。確認された架空請求の中には、一時帰国中、入院中、さらには死亡していた患者に関する請求も含まれていた。2024年2月、福祉事務所からの情報提供(帰国中の受給者に対する請求)を端緒に、都が生活保護法に基づく検査を2024年11月~2025年6月まで実施し、不正を認定した。同医院は都から検査通知を受けた後の2024年10月に廃止されたが、同一理事長が同一所在地で名称を変えて再開業しているとの情報もある。都は、利用者が適切な医療機関を選択するために必要として、医院名の公表に踏み切った。被害を受けた板橋区は警視庁への告訴を検討している。本件は、生活保護医療におけるレセプト管理・内部統制の不備が巨額不正に直結し得ることを示した。医療機関には、診療実績の実在性確認、レセプト点検の多重化、異常値の早期検知、職員教育の徹底など、ガバナンス強化と日常的なコンプライアンス運用が改めて求められる。 参考 1) 生活保護法に基づく元指定医療機関の不正請求について(東京都) 2) 生活保護受給者の診療報酬6,600万円超を不正・不当請求…板橋区の歯科医院の名称を公表(読売新聞) 3) 診療報酬6,650万円を不正請求の歯科医院名を公表 東京都内では過去最大額(産経新聞)

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第293回 クマ外傷、その種類や標準化された治療法とは

INDEXクマが狙うのは、ほぼ顔外傷の種類や特異性創傷部位の評価と必要な処置創部感染の原因菌と予防対策具体的な外科治療の実際薬物療法に漢方が標準化さて、前回は昨今話題のクマ外傷被害についてCiNii検索で抽出した2000年以降の16論文と秋田大学医学部救急・集中治療医学講座教授の中永 士師明(なかえ はじめ)氏の編著『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(以下、クマージェンシー)をもとに疫学についてまとめた。今回もこれらの出典から、クマ外傷の病態と治療についてまとめてみた。クマが狙うのは、ほぼ顔岩手医科大学(50例)、秋田大学(13例)、新潟大学(10例)、山梨県立中央病院(9例)の主な臨床報告では、クマによる外傷の部位はいずれも顔面が90%以上(秋田大学の報告は「頭頸部を含む顔面」)で、次いで上肢が多い(38~77%)。この外傷部位の特徴は、ツキノワグマが攻撃時に後足で立ち上がり、発達した前足の鋭い爪でヒトを殴打する攻撃スタイルに起因すると考えられている。ツキノワグマの体長(頭胴長)は120~145cm、前足、後足とも約15cm。ほぼ完全に後足で立ち上がって前足を上げれば、全長150~175cmとなり、前足がちょうどヒトの顔面付近に位置する格好になるため、顔面の受傷の多さは理解しやすいだろう。一方、顔面に次いで上肢が多いのは、ヒトがとっさに顔や頭を守ろうとする防御行動によるものと報告されている。ちなみにクマージェンシーで紹介されている2023年に秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された20例では、受傷部位はやはり顔面が90%、上肢が70%、頭部が60%と前出の報告とほぼ同様だが、下肢が40%と記述されている。下肢の受傷理由についての記述はないが、おそらくは第1撃で顔面や上肢を受傷し、逃げようとしたところを追いすがられた結果と考えるのが自然だろう。外傷の種類や特異性クマ外傷は鋭い爪による軟部組織損傷(鋭的外傷)とパワーの強い打撃による骨折(鈍的外傷)に大別される。ツキノワグマの爪は、木登りに適した鋭く内側に曲がったかぎ状(フック状)となっており、長さは通常3〜5cmほど。クマージェンシーでは「一見、小さな外傷に見えても内部構造を破壊させることで大きな障害を残すことがある」と記述している。軟部組織のどこを受傷したかは、クマの爪が当たった場所に依存するが、各論文などでは眼球破裂・脱出、涙小管断裂、顔面神経損傷、耳下腺管断裂などが報告されている。また、鋭い爪の影響でごく一部では上口唇動脈、腋窩動脈、上腕動脈に達する損傷が認められることがあるという。さらに爪による攻撃は、皮膚に平行な強い力が加わることで、皮膚が広範囲に剥がされる「剥脱創」となることがあり、この場合は重度の出血を伴い、致命的となりうることを参照論文では指摘している。一方、ツキノワグマは体重60〜100kgで、動作が秒速10~15mとも言われるため、ここから算出される一打の打撃エネルギー量は、約400〜1,300ジュール(J) と言われている。これに対する比較対照を並べると、プロボクサーのパンチ一打が 約300〜500J、日本の警察の9mm口径の拳銃弾命中時が約500Jと推定されるため、その強大さは桁違いである。骨を破壊するエネルギー量がおおむね1,000Jと言われるので、当然ながら受傷者の一部では骨折が生じる。実際、参照論文を見ると、顔面への受傷例のおおむね半数以上で顔面での骨折が認められ、とくに眼窩、頬骨、鼻骨、鼻篩骨といった顔面中央部(中顔面)に多発。これ以外では頭蓋骨、下顎骨、歯槽骨などの骨折、さらに防御行動による四肢・体幹での尺骨や肋骨、肘関節などの骨折も報告されている。新潟大学の報告では、クマ外傷による骨折には特有のパターンがあることが指摘されている。これは通常の顔面骨の骨折では、顔表面から内側、すなわち頭蓋骨内部方向に陥没する骨折がほとんどなのに対し、クマ外傷では顔面骨が外側に引き出されるようなベクトルで骨折が生じることがあるとしている。これはおそらくクマによる打撃の際にめり込んだ前出のかぎ状の爪を引き抜く際に生じたものだろう。クマ外傷はこのように多発外傷であるため、全身に影響を及ぼし、動脈損傷では大量出血による出血性ショック、口腔内の持続的な出血や粉砕された顔面骨などによる気道閉塞、硬膜下血腫といった頭蓋内損傷など重篤な合併症を引き起こす危険性がある。参照論文中でも出血性ショックは10~23%で報告され、秋田大学の報告13例のうち7例で気道閉塞の危険性があるとして気道確保のため気管切開が行われている。創傷部位の評価と必要な処置前出のような受傷状況を踏まえ、参照論文のうち複数論文では、クマ外傷では交通事故や高所からの墜落のような高エネルギー外傷に準じた初期対応、具体的にはクマ外傷の患者の搬送がわかった段階で、気道確保、止血と大量輸血・輸液の準備が必要と強調している。そのうえで搬送後は、頭頸部や四肢・体幹の受傷や組織損傷の状況を注意深く評価することを求めている。とくに前出のようにクマ外傷では見た目の傷が小さくとも深部組織を破壊していることがあるため、参照論文の中ではこの点の評価を怠らないよう注意喚起しているものが少なくない。また、クマ外傷では創部感染のリスクが高いため、創部の十分な洗浄とデブリードマンが推奨されている。参照論文を見ると、洗浄で使う生理食塩水の量は症例によっては5,000~10,000mLとかなり大量である。また、クマージェンシーでは、表面上の傷が小さいものの深部まで達している四肢の外傷では、傷口からの注水だけでは洗浄が不十分として、目視で深部まで確認できる皮膚の追加切開を推奨している。創部感染の原因菌と予防対策実際の創部感染発生率は、今回の参照論文で確認した範囲では20~33.3%。クマージェンシーに記述されている13例では21.1%で、おおむねクマ外傷被害者の3~5人に1人の発生率である。ちなみにこの数字は搬送時に予防的抗菌薬投与などをほぼ全例で行ったうえの数字であり、個人的には驚きを禁じ得ない。創部感染の原因菌については、クマージェンシーでは4分の1の症例で同定され、主にセラチア菌(グラム陰性桿菌)と腸球菌(通性嫌気性グラム陽性菌)だったと報告している。参照論文で原因菌が特定されたケースでもこの2種類が散見されるが、そのほかにもグラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やA群レンサ球菌が検出された報告もある。こうしたこともあり、予防的抗菌薬投与では、嫌気性菌種を広くカバーするβラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬(ピペラシリン・タゾバクタムやアンピシリン・スルバクタム)が使われていることが多いようだ。もっともクマージェンシーではβラクタマーゼ阻害薬を含む場合と含まない場合の抗菌薬投与を比較し、創部感染発生率に差はないと報告している。また、岩手県の50例でも同様の検討を行い、βラクタマーゼ阻害薬の有無で創部感染発生率に有意差(p=0.08)はなかったものの、βラクタマーゼ阻害薬を含む群での感染発生率が9.1%に対し、含まない群では28.5%で、βラクタマーゼ阻害薬を投与したほうが感染発生率は低い傾向があると記述している。また、クマの爪や創部が土壌などで汚染されることを考慮し、ほぼすべての症例で破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与が行われており、少なくとも参照論文とクマージェンシーでは破傷風発症事例はない。破傷風トキソイドを含む三種混合(DTP)ワクチンの日本での定期接種化が1968年であり、前回紹介したように受傷者はそれより以前に生まれた高齢者が多いことなどを考えれば、必要な措置なのだろう。具体的な外科治療の実際実際の治療は外科的なものがほとんどだが、損傷が多岐にわたるため、複数の専門診療科による連携手術が必要となるのは必定である。ここでは主な外科的治療の概略を紹介する。顔面骨骨折では、前出のような特有の外側に転位した骨片の有無を考慮し、観血的整復固定術が行われる。次に、動脈損傷、顔面神経損傷、涙小管断裂は即時再建が原則である。クマージェンシーでは鼻周辺の組織が噛みちぎられた事例として、路上に残されていた被害者の組織が持ち込まれ、再接合が行われた様子が写真とともに紹介されている。このため、同書では救急隊員が取るべき対応として、汚染の有無にかかわらず回収できる軟部組織はできるだけ回収して病院に持参するよう勧めている。素人には背筋が凍り付くような話である。ただ、完全な組織の欠損で機能回復や審美性を考慮した再建術が行われたケースでは、参照論文を見る限り、複数回の手術が長いものでは受傷から1年半後くらいまで行われている。歯や広範な歯槽骨欠損では、骨移植を併用した歯科インプラント治療が行われた事例も報告されている。このケースでは受傷6ヵ月後に骨移植術が実施され、さらにその6ヵ月後にインプラント埋入術が施行されている。薬物療法に漢方が標準化一方、抗菌薬の予防投与を除くと、治療で薬物を処方したケースは少ない。新潟県でのドクターヘリ搬送例で出血を抑えることを目的としたトラネキサム酸、山形県の症例で喉頭浮腫予防を目的としたデキサメタゾン、岐阜県の症例で後頭部や上腕の縫合を行わなかった創部に感染予防目的で処方されたゲンタマイシン(外用薬)ぐらいしか見当たらない。ただ、クマージェンシーでは秋田大学による漢方薬処方という興味深い事例を紹介している。具体的には鎮痛目的で打撲の痛みなどに使われる「治打撲一方」や感染防止目的での抗菌薬と「排膿散及湯」の併用である。治打撲一方の使用では1日で痛みが取れた著効例もあったという。また、排膿散及湯の併用は2024年から標準化している模様だ。しかしながら、このような難治療を経ても、視力障害、顔面神経麻痺、唾液や涙が止まらない、口腔機能低下などの後遺症に悩まされるケースは少なくないという。結局のところ、何よりもクマに遭遇しない予防措置が重要ということだろう。

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歯の根管治療は心臓の健康にも有益

 歯の根管治療を受けたい人はいないだろうが、もし受けなければならない場合は、心臓には良い影響があるかもしれない。英国の研究で、根管治療の成功は心臓病に関連する炎症を軽減し、さらにコレステロール値や血糖値を改善する可能性のあることが明らかにされた。英キングス・カレッジ・ロンドン歯内治療学分野のSadia Niazi氏らによるこの研究結果は、「Journal of Translational Medicine」に11月18日掲載された。 Niazi氏は、「歯の根管治療は口腔の健康を改善するだけでなく、糖尿病や心臓病などの深刻な疾患リスクの軽減にも役立つ可能性がある。このことは、口腔の健康が全身の健康に深く関わっていることを強く思い出させる」と話している。 根管治療は虫歯が歯の神経にまで達した場合に行われる神経の治療で、感染または損傷した歯髄(歯の内部にある神経と血管を含む軟組織)を除去し、歯の内部を清掃・洗浄した後に詰め物をして密封する。近年、多くの研究で、口腔の健康が心血管の健康に密接に関連していることが示されている。Niazi氏らも背景説明の中で、口腔内の感染症は、全身、特に心臓に炎症を引き起こす可能性があると指摘している。 今回の研究では、根管治療を受けた根尖性歯周炎患者65人を対象に2年間追跡して、根管治療の成功が血清の代謝プロファイルにどのような影響を与えるかを調べた。その上で、それらの変化とメタボリックシンドローム(MetS)の指標、炎症バイオマーカー、血液・根管内の微生物叢との関連を評価した。対象者から、治療前(ベースライン)、治療後3カ月、6カ月、1年、2年の5時点で血清サンプルを採取し、核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて解析した。 その結果、根管治療後には、24種類(54.5%)の代謝物に有意な変化が認められた。具体的には、3カ月後に分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が有意に減少し、2年後にはグルコースとピルビン酸(解糖系で生成される代謝物)が有意に減少した。また、コレステロール、コリン、脂肪酸が短期間で減少し、トリプトファンは徐々に増加した。これらの結果は、糖代謝・脂質代謝の改善と炎症負荷の軽減を示唆しており、心臓の健康にとって好ましい兆候といえる。さらに、代謝プロファイルの変化は、MetSの臨床指標、炎症マーカー、治療前の血液・根管内の微生物叢と強く関連することも示された。 Niazi氏は、「根管の感染症が長期間続くと、細菌が血流に入り込んで炎症を引き起こし、血糖値や脂質値を上昇させる可能性がある。その結果、心臓病や糖尿病などのリスクが高まる。歯科医は、このような根管感染症の広範な影響を認識し、早期診断と治療を推進することが不可欠だ」とニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、口腔の健康と全身の健康の間には密接な関係があることから、歯科医と他領域の医療専門家が連携して治療する必要があるとの考えも示している。

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第273回 2025年度補正予算通過、診療所には1施設当たり32万円支給へ/政府

<先週の動き> 1.2025年度補正予算通過、診療所には1施設当たり32万円支給へ/政府 2.医師臨床研修制度、都市集中は緩和も大学病院が減少/厚労省 3.OTC類似薬、保険外し見送り 患者に追加負担で医療費抑制へ/厚労省 4.医学部女子41%時代へ、「医学部=男子優位」は過去の話に/文科省 5.医療DXで人手不足に挑む「働きやすい病院」の認定制度創設を検討/厚労省 6.電子カルテ情報共有、全国運用は26年冬へ モデル課題で工程見直し/厚労省 1.2025年度補正予算通過、診療所には1施設当たり32万円支給へ/政府政府の総合経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算案(一般会計18兆3,034億円)は12月11日、衆議院本会議で可決され参議院に送付された。与党に加え国民民主党、公明党などが賛成に回り、会期内成立が確実視される。補正予算は物価高対策(電気・ガス代支援、子供1人当たり2万円給付など)を柱とするが、医療分野では「医療・介護等支援パッケージ」を中心に、病院・診療所の経営を下支えする補助が盛り込まれた。厚生労働省関係は2兆3,252億円で、このうち医療・介護等支援パッケージは1兆3,649億円。医療機関・薬局の「賃上げ・物価上昇」への緊急支援として5,341億円を計上し、診療体制の維持と人材確保を狙う。具体的には、病院に対し1床当たり「賃金分8.4万円+物価分11.1万円」の計19.5万円を基礎的に支給する。さらに救急医療を担う病院には、救急車の受入件数に応じ、1施設当たり500万円から最大1億5,000万円を加算し、3次救急病院には件数にかかわらず1億円を加算する仕組みも設けた。有床診療所は1床当たり8.5万円、無床の診療所(医科・歯科)は1施設当たり32万円を支援する。薬局も店舗数に応じた傾斜配分とし、訪問看護ステーションも対象に含める。また、病床再編を促す「病床数適正化緊急支援基金」として3,490億円を計上し、病院(一般・療養・精神)や有床診療所が病床削減などを行う場合、1床当たり410.4万円(休床は205.2万円)を補助する。さらに、施設整備の資材高騰分などを支援する事業(462億円)や、ICT機器導入など生産性向上を後押しする支援(200億円、1病院当たり上限1億円)も盛り込み、物価高・人件費高騰局面での経営悪化に歯止めをかける構成となっている。予算成立後は交付要綱で要件が示され、現場では申請実務と資金繰りへの速効性が焦点となる。なお、病院向け支援額については下記参考中の計算ツール(東日本税理士法人 長 英一郎氏作成)で概算が試算できる。 参考 1) 医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援 病院向け支援額計算ツール【交付額】 2) 令和7年度厚生労働省補正予算案の主要施策集(厚労省) 3) 18兆円の25年度補正予算案、午後の衆院本会議で可決へ…国民民主・公明も賛成の方針(読売新聞) 4) 政府25年度補正予算案を閣議決定 医療機関の賃上げ・物価上昇に5,341億円計上 後発品基金は844億円(ミクスオンライン) 5) 病院経営の危機踏まえ、1床当たり「賃金分8万4,000円、物価分11万1,000円」の緊急補助、救急病院では加算も-2025年度補正予算案(Gem Med) 2.医師臨床研修制度、都市集中は緩和も大学病院が減少/厚労省厚生労働省は2025年12月5日に、医道審議会医師分科会医師臨床研修部会で、2027年度臨床研修医の募集定員上限案を了承した。募集定員倍率は前年度と同じ1.05倍とし、定員上限は約1万1,000人規模となる。地域枠学生の増加などで算出上の乖離が生じたため、上限総数を超過した分(約100人規模)を各都道府県の「基本となる数」に応じて按分する仕組みを初めて導入する。また、前年度比で減少率が1%を超える都道府県への追加配分や、離島人口に加えて離島数も考慮する新たな加算を設け、地域の実情をより反映させる。制度導入以降、研修医の都市部集中は緩和され、大都市6都府県の採用割合は約4割まで低下した。その一方で、募集定員に占める大学病院の割合は減少傾向が続き、教育・研究機能の低下や医局を通じた地域医師派遣への影響を懸念する声が相次いだ。委員からは、大学病院の経営悪化が研修環境を損ねているとして、国による財政的支援やインセンティブの必要性を訴える意見が出された。あわせて、2026年度から開始された医師少数県と多数県を結ぶ「広域連携プログラム」は、初年度からマッチ率約8割と順調な滑り出しをみせた。基礎研究医プログラムも一定の成果を上げており、今後は定員や設置要件の柔軟化が検討されている。反面、医師働き方改革の本格実施から1年超が経過し、地域医療への影響は限定的とされるものの、若手医師の症例経験や研究意欲が制限され、将来の医療の質低下を懸念する声が強まっている。時間規制と人材育成・研究機能の両立が、今後の臨床研修制度と医療政策の大きな課題となっている。 参考 1) 令和9年度の各都道府県の募集定員上限について(厚労省) 2) 27年度臨床研修、定員上限総数を調整 厚労省部会、109人分(MEDIFAX) 3) 臨床研修病院の2027年度募集定員倍率も「1.05倍」、離島数に応じた係数などを新たに設置(日経メディカル) 4) 若手医師等の「もっと症例経験したい、手術に入りたい」等の意欲を阻害しない医師働き方改革の仕組みが必要-全自病・望月会長(Gem Med) 3.OTC類似薬、保険外し見送り 患者に追加負担で医療費抑制へ/厚労省市販薬と成分・効能が類似している「OTC類似薬」をめぐり、政府・与党と日本維新の会は、公的医療保険の適用を維持した上で、患者に追加負担を求める新たな仕組みを導入する方向で調整に入った。維新が主張してきた「保険適用からの原則除外」は見送られることになった。OTC類似薬は、湿布薬や風邪薬、花粉症治療薬など、市販薬でも対応可能とされる一方、医師の処方が必要な医療用医薬品として保険適用され、患者は1~3割の自己負担で入手できる。維新は現役世代の保険料負担軽減を目的に、保険外しによる医療費削減を訴えてきたが、急激な患者負担増への懸念が強く、方針転換に至った。今後は、薬剤費の4分の1や3分の1などを「特別料金」として患者に追加で負担してもらう案が検討されている。対象薬や負担割合は、成分や用量、症状の重さなどで線引きする方向で、子供や慢性疾患患者への配慮も盛り込まれる見通し。この見直しは、医療現場にも影響を及ぼす。軽症患者が自己判断で受診を控え、市販薬へ移行すれば、外来受診の減少につながる可能性がある一方、追加負担を避けるために処方を求める患者との調整が医師の負担になる懸念もある。とくに慢性疾患の患者では、治療継続への影響や薬剤選択をめぐる説明責任が増す可能性が指摘されている。また、立憲民主党などからは、患者への影響を十分に検証しないまま結論を急ぐべきではないとの声が上がっており、負担増による受診控えや治療中断への懸念も根強い。医療費適正化と患者・医療現場への影響をどう両立させるのか、制度設計の丁寧さが今後の焦点となる。 参考 1) OTC類似薬の保険外し見送りへ 政府・与党、利用者に追加負担を要求(日経新聞) 2) 維新、OTC類似薬の保険適用除外を断念 追加負担求める方向で調整(毎日新聞) 3) OTC類似薬、患者に追加負担導入へ 保険適用維持に維新が同調(朝日新聞) 4) OTC類似薬、「患者への影響」検証を 立民、厚労相に要請(MEDIFAX) 4.医学部女子41%時代へ、「医学部=男子優位」は過去の話に/文科省文部科学省は、2025年度の医学部医学科入試において、入学者に占める女性の割合が41.0%となり、過去10年で最高を更新したと発表した。前年度の39.8%から1.2ポイント上昇し、2年ぶりに4割を超えた。入学者数は男性5,438人、女性3,780人で、男性が59.0%、女性が41.0%だった。女性の受験者数は5万3,917人と3年連続で増加し、調査開始以来最多となった。男性の受験者数6万7,480人の約8割に迫っている。合格者数は男性8,286人、女性5,593人で、合格率は男性12.3%、女性10.4%と女性が1.9ポイント低かった。全体の受験者数は12万1,397人、合格率は11.4%だった。大学別にみると、女性入学者の割合が5割を超えたのは女子医大を除いて10大学に上った。北里大(58.5%)をはじめ、埼玉医大、弘前大、聖マリアンナ医大、川崎医大、香川大、杏林大、秋田大、島根大、昭和医大で女性が過半数を占めた。一方、京都大は18.8%にとどまり、東大と阪大はいずれも21.0%と低水準だった。東大などでは女性受験者数自体が少なく、合格率に大きな男女差はなかったとされる。医学部入試をめぐっては、2018年に一部の大学で女性受験者を一律に減点するなどの不適切な運用が社会問題化した。これを受け、文科省は2019年度以降、全国81大学を対象に男女別の受験者数や合格率、入学者数を毎年公表している。今回の結果は、入試の透明化が定着する中で、女性の医学部志向が着実に高まっている現状を示す一方、大学間のばらつきや合格率格差といった課題も浮き彫りにした。医師養成の担い手が多様化する中、入試の公平性に加え、卒後のキャリア形成や就労環境の整備が改めて問われている。 参考 1) 医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る調査について(文科省) 2) 医学部の女性入学者41% 過去10年で最高 25年度(CB news) 3) 医学科の女子受験者、3年連続で増加…文科省調査(Rese Mom) 5.医療DXで人手不足に挑む「働きやすい病院」の認定制度創設を検討/厚労省少子高齢化で医療人材の確保が難しくなる中、政府は医療DXを「人手不足対策」と「職場環境改善」の柱として制度的に後押しする方針が明らかとなった。厚生労働省は、12月8日に社会保障審議会・医療部会を開催し、すでにDXを導入して業務効率化を進めてきた医療機関の取り組みを提示するとともに、未導入・遅れがちな医療機関にも裾野を広げる支援について検討した。2025年度補正予算案では、試行的な取り組みだけでなく幅広い医療機関を対象にDX化を支援する枠として200億円を計上し、効果が出るまで時間を要する点を踏まえ継続的支援のあり方も論点となった。効果検証では、労働時間の変化、医療の質・安全、経営への影響などを統一基準で収集・分析し、医療情報の標準化や医療機関の負担軽減にも配慮する。さらに、業務効率化に資する機器・サービスの価格や機能、効果を透明に把握できる仕組みや新技術開発の推進、都道府県の勤務環境改善支援センターによる伴走支援強化も盛り込んでいる。さらに注目されるのは「業務効率化・職場環境改善に計画的に取り組む病院」を公的に認定し公表する制度案で、医療者の職場選択に影響し、認定病院が人材確保で有利になる可能性がある。その一方で、非認定病院が相対的に不利となり地域格差や医師偏在を助長しないか、財政的に厳しい中小医療機関への支援をどう担保するか慎重論も出た。改正医療法では2030年末までの電子カルテ普及目標が明記されたが、現場では「普及率100%」より、データ利活用の価値提示が重要との指摘が強い。自治体と医療機関が連携し、予防や地域単位の健康施策に活用するモデル事業を示すこと、サイバーセキュリティや制度整備を含め、DXを「負担」ではなく、「定着と質向上」につなげる設計が問われている。 参考 1) 令和7年度補正予算案(保険局関係)の主な事項について(厚生省) 2) 「働きやすい病院」国が認定 AI活用で効率化、生産性も向上(日経新聞) 3) 「業務効率化・職場環境改善に積極的な病院」を国が認定、医療人材確保等で非常に有利となる支援充実も検討-社保審・医療部会(Gem Med) 4) 改正医療法でも強調された医療DX、「電カル普及100%」より大事な議論は(日経メディカル) 6.電子カルテ情報共有、全国運用は26年冬へ モデル課題で工程見直し/厚労省厚生労働省は、12月10日に開かれた「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループで、医療機関間で診療情報を共有する「電子カルテ情報共有サービス」について、全国での本格運用開始時期を当初想定していた2025年度内から見直し、2026年度の冬ごろを目標とする方針を示した。同サービスは、診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書の「3文書」と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方など「6情報」を標準化し、必要時に医療機関や患者が閲覧できる仕組み。2025年2月から各地でモデル事業が進み、現在は複数地域・医療機関で運用しているが、臨床情報の登録段階で、医療機関や電子カルテベンダーごとに状況が異なる複数の課題が確認されたという。厚労省は原因の特定と解決を優先し、サービス側と電子カルテ側の双方を改修した上で再検証を行い、支障なく運用できる文書・情報から順次、全国で利用可能にする考え。また、処方情報の取り扱いは方針を転換し、電子カルテ情報共有サービスでは抽出を行わず、電子処方箋管理サービスに1本化する案を示した。医薬品コードの違いにより処方の一部しか抽出できない場合、情報が欠落したまま「すべての処方」と誤認される恐れがあるためとしている。その一方で電子処方箋は院内処方を含む登録が進み、網羅性と即時性の点で活用が見込めるとしている。構成員からは、全国展開時に医療機関の負担が再発しないようメーカーとの連携を求める声や、患者説明が医療機関任せになっている点への懸念、電子処方箋未導入施設では処方情報が拾えない課題が指摘され、今後の検討事項となった。 参考 1) 電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について(厚労省) 2) 電子カルテの普及について(同) 3) 電子カルテ情報共有、全国運用は26年冬に 処方情報は電子処方箋に1本化 情報利活用WG(CB news) 4) 電子カルテ情報共有サービス、モデル事業での検証・改修経て「2026年度冬頃の本格運用」目指す-医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)

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第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」

診療報酬「本体」は引き上げの方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。師走となり、診療報酬改定の議論が白熱してきました。各紙報道によれば、診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は小幅引き下げの見通しの一方、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分は2024年度改定以上の引き上げが見込まれ、全体ではプラス改定となりそうです。12月7日のNHKも、「政権幹部の1人は『高市総理大臣は、引き上げに意欲を見せており、プラス改定になる方向だ』と話すなど、人件費などに充てられる『本体』の引き上げ幅が焦点となる見通しです」と報じています。最大の関心事は病院と診療所それぞれに対する配分引き上げ幅はもちろん重要ですが、医療関係者の最大の関心事は病院と診療所、それぞれに対する配分でしょう。医療経済実態調査や財政審の「秋の建議」など、次期改定を左右する様々な発表が相次ぎ、事態は混沌としています。全国各地の病院の窮状に加え、今年は日本維新の会が自民党との連立政権に加わったことで、診療所院長が主な構成員である日本医師会にとってはいつになく厳しい状況となっています。最近では新聞だけではなくテレビでも、病院経営の苦しさが連日のように報道されています。日本医師会は「財務省の『二項対立による分断』には、絶対に乗ってはいけない」(11月29日に開かれた九州医師会連合会における日本医師会の松本 吉郎会長の発言)と警戒感をあらわにしています。特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字関連する最近の発表をおさらいしましょう。まず、医療経済実態調査です。次期診療報酬の改定に向けた基礎的な資料となるものですが、病院の経営状況の悪さが改めてクローズアップされました。厚生労働省は11月26日、中医協の調査実施小委員会と総会で第25回医療経済実態調査の結果を公表しました。今回の調査は2023~24年度の経営状況が対象となり、1,167の病院(回答率50.2%)、医療法人立と個人立を合わせて2,232の診療所(同54.9%)から回答を得ています。それによると、一般病院の開設主体別では、医療法人(402施設)は2023年度がマイナス1.1%、2024年度がマイナス1.0%でほぼ横ばい、公立(130施設)はマイナス17.1%からマイナス18.5%へ悪化、国立(24施設)はマイナス5.8%からマイナス5.4%、公的(51施設)はマイナス5.5%からマイナス4.1%と若干改善したものの赤字幅は依然大きいままでした。医業損益は、病院全体で67.2%、一般病院で72.7%が赤字でした。経常損益でも病院全体で58.0%、一般病院で63.3%が赤字でした。とくに特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字で、急性期病院の苦境が際立っていました。診療所経営も悪化したものの病院ほどではない一方、診療所ですが、医療法人立の無床診の損益率は2024年度が5.4%と、2023年度の9.3%から悪化しました。医療法人立の無床診の平均損益率は診療科で差が大きく、低かったのは外科(回答49施設)0.4%、精神科(25施設)1.6%、産婦人科(35施設)2.7%、整形外科(143施設)3.1%、内科(581施設)が4.2%、小児科(86施設)4.7%などでした。一方、高い収益を上げたのは耳鼻咽喉科(91施設)の9.5%、眼科(96施設)の8.7%、皮膚科(71施設)の8.1%などでした。なお、個人立の無床診療所は院長等の報酬が費用に含まれないために数値が高く出る傾向がありますが、2024年度は29.1%と、2023年度(32.3%)から低下しました。端的に言えば「病院はとても厳しい、診療所もそこそこ厳しいものの、病院ほどではない」というのが医療経済実態調査の結果ということになります。このままでは「分が悪過ぎる」と考えたのでしょうか? 日本医師会の江澤 和彦常任理事は12月3日の定例記者会見で、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。「病院はすでに瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きている」ことに危機感を示し、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と語り、危機に直面しているのは病院だけではないことを強調しました。財務省は「メリハリ」強調、診療所の診療報酬の適正化を提案医療経済実態調査が公表された6日後の12月2日には、財務省の財政制度等審議会(十倉 雅和会長・住友化学相談役)が、「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)を取りまとめ、片山 さつき財務相に手渡しました。秋の建議では2026年度診療報酬改定について「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッションと言えよう。これを実現するためには、医療機関の経営状況のデータを精緻に分析することが必要である。特に物価・賃金対応については、医療機関の種類・機能ごとの経営状況や費用構造に着目した上で、本来は過去の改定の際に取り組むべきであった適正化・効率化を遂行することも含め、メリハリときめ細やかさを両立させた対応を強く求めるものである」と「メリハリ」という言葉を何度も使って医療機関の種類・機能ごとに差を付けるべきだと主張しました。その上で、「1)赤字経営の診療所が顕著に増加しているという主張もあるが、医療機関の経営状況に関する厚生労働省等のデータによると、物価高騰の中でも、診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準を維持していること、2)他職業との相対比較における開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っていることなどを踏まえ、診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべきである」と、診療報酬の病院への重点配分と診療所の診療報酬の適正化を改めて主張しています。11月に開かれた財政制度等審議会・分科会での主張とほぼ同じで、診療所をターゲットとしている点は変わりません。秋の建議の社会保障関連ではその他、「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築、リフィル処方箋の拡充、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しなど提言しています。「かかりつけ医機能の報酬上の評価」は個々の診療報酬についても言及、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めています。なお、昨年の秋の建議まで、財務省が繰り返し提言してきた「診療報酬の地域別単価の導入」は、今回は盛り込まれませんでした。経団連、健保連、維新も「メリハリ」求めるこうした動きの中、診療報酬の「メリハリ」を求める声は各方面からも高まっています。経団連(日本経済団体連合会)は11月28日、健康保険組合連合会や日本労働組合総連合会(連合)など医療保険関係5団体と共に、上野 賢一郎・厚生労働大臣と面会し、2026年度診療報酬改定に関する共同要請を行いました。要請では、「高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している」状況下での診療報酬改定について、「基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない」と従来の「単純な一律の引上げ」を批判、その上で、「優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」と、病院への重点配分を強く求めています。さらに、12月4日には日本維新の会が社会保障制度改革の推進を求める申し入れを高市 早苗首相に手渡しています。申し入れでは、2026年度診療報酬改定について、「診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け、医科・歯科・調剤の固定的な配分の見直しなど診療報酬体系の抜本的な見直しを行うこと」を求めるとともに、「抜本的見直しの方向性について、中央社会保険医療協議会に任せることなく、年末に政治の意思として決定し、示すこと」を要請しました。「今やらないでいつやる?」と病院団体の関係者は思っているのでは日本医師会は「二項対立による分断」と言いますが、そもそも病院経営と診療所経営の”格差”を形作ってきた一因は日本医師会にもあるのではないでしょうか。年末に診療報酬の改定率が決まった後も、年明けの中央社会保険医療協議会総会で、2026年度診療報酬改定の答申が行われるまで「メリハリ」を巡る戦いは続くでしょう。「今やらないでいつやるんだ」と病院団体の関係者は思っているに違いありません。次期改定で本当の意味での「メリハリ」が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したいと思います。

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第291回 “消費税負担の補填”引き上げなし、強気に出られない医師団体のいきさつ

INDEX消費税負担の補填、診療報酬での引き上げ見送り診療報酬による補填、消費税負担を上回る?消費税負担の補填、診療報酬での引き上げ見送り2026年度の診療報酬改定を控え、昨今は中央社会保険医療協議会(中医協)総会での議論を注視しているが、その中で現在苦境にある病院経営を大きく左右する、ある方針が了承された。11月28日に中医協総会で了承された「2026年診療報酬改定で消費税負担の補填を目的とした診療報酬の引き上げは行わない」というもの。私自身は、これが病院経営苦境の最大の理由の1つと捉えている。医療機関の経営に直接かかわっていない医療者にとっては、ややなじみが薄いかもしれないが、この消費税を巡る「ねじれた現象」はすでに半世紀弱続いており、医療機関の経営を相当圧迫している。まず、ご存じのように世の中で製品購入やサービス利用にあたって、消費者は製品・サービスの価格に対してかかる10%の消費税を負担している。一方で、周知のように医療費、具体的には診療報酬や薬価に消費税はかかっていない。これは1989年、自民党・竹下 登政権下で初めて3%の消費税が導入された際に医療費と薬価は消費税の対象外とされたからである。こうなったのは当時の日本医師会(会長・羽田 春兎氏)が「医療は消費ではない。選択の自由に基づく消費と違い、必要不可欠で選べない支出」「医療に課税すると低所得者ほど相対的負担が大きくなる、逆進的な課税になる」などと主張し、医療費と薬価を消費税の対象外にするよう求めた結果である。もっとも消費税が導入された1989年4月の直前には、消費税対応のため、薬価が2.7%、診療報酬が0.12%の引き上げが行われている。そしてこの消費税導入にあたって制定された消費税法の第30条に定められたのが仕入税額控除という制度だ。要は「事業者が仕入れや経費の支払時に負担した消費税を半ば経費のように売上にかかる消費税から差し引いてよい」という仕組みである。より平たく説明すると、ある事業者Aが事業者Bから原価100万円で仕入れたものは、現行ならば消費税10%がかかり事業者Aは事業者Bに110万円を支払う。これを事業者Aが150万円で販売した場合は消費税も含め165万円を受けとるが、この際に事業者Aが国に支払う消費税は15万円から仕入れで支払った10万円分を差し引いた5万円で済む制度だ。ただ、この仕入税額控除の制度が適用となるのは課税事業者のみであり、非課税事業者は適用外である。前述のように医療は非課税事業と規定されたため、医療機関は仕入税額控除が認められず、取引業者に支払った消費税分を丸々負担する(損税)ことになった。医療機関は病院ならば医療材料だけでなく、リネン関係、入院患者に提供する食事のための食材、光熱水費はすべて消費税を支払っている。診療報酬による補填、消費税負担を上回る?さて、この損税を医療者の団体が公の場で問題視する発言が目立つようになったのは2010年代後半と比較的最近のことである。これは2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられたことと、診療報酬本体の伸び率が0.5%前後まで圧縮された時期とも重なる。要は税率が低い時代は、損税分をなんとか医業収益で吸収できていたが、それが難しくなったということだろう。1989年当時はこうした状況は想像できなかったに違いない。そして今回の11月28日の中医協総会では、先立って開催された診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で第25回医療経済実態調査の調査対象医療機関で行った2023年度、2024年度分の消費税補填率(医療機関などの消費税負担に対する診療報酬での補填状況)の算出結果が示され、病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局を合わせた全体の1施設1年間当たりの平均補填率は2024年度が100.3%、2023年度が103.1%で、いずれも診療報酬による補填が消費税負担を上回っていた。この結果を受けて、2026年度診療報酬改定では消費税負担に関する補填を目的とした引き上げをしないことを分科会、総会の各委員が了承した。もっとも分科会や総会では、何の留保もなく了承されたわけでもない。そもそも発表された数字を医療機関種別、病院種別や開設主体種別で見ると、たとえば2024年度の平均補填率は、一般診療所が93.5%、こども病院が90.3%、公立病院が83.2%、精神病棟入院基本料届出病院が87.8%などかなり格差があるのが実態だ。いわゆる診療側委員と言われる人たちのこの日の発言を聞くと、施設間格差の是正、高額投資への補助金支給など、次期改定で補填をしないという事務局提案を前提にした弱気の発言が目立った。ちなみに総会の場では日本医療法人協会副会長の太田 圭洋氏が「当協会が10月に公表した同様の調査結果では、一般病院の補填率が100%を大きく下回っていた。われわれと厚労省の調査で何がどう違うのかを検討する場を作っていただきたい。ただ、私自身、事務局を信頼しておりますので、一旦は納得させていただきたい」と発言したのが最も印象的である。ざっくり言うならば「納得しかねるが、納得するしかない」というのが診療側委員に共通した思いなのだろう。さらにこの件については、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の四病院団体協議会は、医療機関の法令上の課税のあり方そのものの変更を求めているが、私見ではそれほど強烈な主張の仕方はしていないと感じる。そして1989年の消費税導入時を振り返ると、この四病院団体協議会加盟の各団体もおおむね日本医師会と同様の主張をしていた。こうした各団体のやや弱気とも思えるスタンスは、思うにあの当時は各団体とも自らの主張が後にとてつもないブーメランになって返ってくるとは思わず、今になって「やっちまった感」を抱いているからではないだろうか?

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「ゆっくり食べ、よく噛む」習慣と関連する食事・口腔要因を解明

 日本では「食育基本法」の目標の1つとして「ゆっくり食べてよく噛む人の割合を増やす」ことが掲げられている。日本で行われたウェブ調査で、「ゆっくり食べ、よく噛む」食習慣は「味わいながら食べる」ことや「口いっぱいに食べない」ことと強く関連していることが明らかになった。国立保健医療科学院の石川 みどり氏らによるこの研究結果は、Scientific Reports誌2025年11月19日号に掲載された。 研究チームは、オンライン調査会社の全国モニターから40~70代の男女を対象に、性別・年齢層別に調査票を配布し、食生活・健康行動(12項目)、歯科口腔状態(14項目)、社会経済的要因(6項目)の質問への回答を自己評価形式で収集した。最終的に成人1,644例(男女各822例)が解析対象となった。 主な結果は以下のとおり。・男女ともにほぼすべての年齢層において、「ゆっくり食べ、よく噛む」行動と最も強く関連していたのは「味わいながら食べる」という主観的な食体験であり、オッズ比は男性11.20、女性11.48と高値を示した。また、「口いっぱいに食べない」行動も有意に関連しており、食べる姿勢や注意の向け方が咀嚼行動に関与することが示唆された。・口腔状態との関連では、男性では歯槽骨の吸収がみられないこと、女性では歯痛がないことが「ゆっくり食べ、よく噛む」習慣と有意に関連していた。・一方、家族構成や学歴などの社会経済因子は一部の層で関連を示したものの、明確な一貫性はみられなかった。「ゆっくり食べ、よく噛む」行動は、所得や教育よりも日常の食体験の質と口腔状態に強く依存する可能性が示唆された。 研究者らは、「これらの結果から、『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は、食事を味わいながら食べることによって促進される可能性があることが示唆された。また、口腔の健康状態を維持することも、とくに男性では歯周病予防、女性では歯痛予防が、良好な食習慣の維持に寄与する可能性がある。『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は肥満や過体重の予防に役立つ可能性がある。患者指導や保健事業において『噛む回数』を数える指導は継続が難しいことが多いが、『食べものを意識して味わう』という指示は心理的負担が小さく実践しやすい。今後は、これらの知見を活かした食育プログラムの開発や、長期的な介入研究による因果関係の検証が期待される」としている。

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歯周病は脳にダメージを与え脳卒中のリスクを高める

 歯周病が脳の血管にダメージを与えたり、脳卒中のリスクを高めたりする可能性のあることが、2件の研究で明らかになった。歯周病と虫歯の両方がある場合には、脳卒中のリスクが86%上昇することや、習慣的なケアによってそのリスクを大きく抑制できる可能性があることも報告された。いずれも、米サウスカロライナ大学のSouvik Sen氏らの研究の結果であり、詳細は「Neurology Open Access」に10月22日掲載された。 一つ目の研究は、歯周病のある人とない人の脳画像を比較するというもの。解析対象は、一般住民のアテローム性動脈硬化リスク因子に関する大規模疫学研究「ARIC研究」のサブスタディーとして実施された、口腔状態の詳細な検査も行う「Dental ARIC」の参加者のうち、脳画像データのある1,143人(平均年齢77歳、男性45%)。このうち800人が歯周病ありと判定された。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、喫煙、高血圧、糖尿病など)を調整後、歯周病のある人は脳の白質高信号域(認知機能低下リスクの高さと関連のある部分)の体積が有意に大きく(P=0.012)、その体積と歯周病の重症度との有意な関連も認められた(ρ=0.076、P=0.011)。 二つ目の研究もDental ARICのデータが用いられた。解析対象5,986人(平均年齢63±5.6歳、男性48%)のうち、1,640人は口腔の健康状態が良好、3,151人は歯周病があり、1,195人は歯周病と虫歯が併存していた。そして、それら両者が併存していると、虚血性脳卒中のリスクが86%有意に高く(ハザード比〔HR〕1.86〔95%信頼区間1.32~2.61〕)、主要心血管イベントのリスクも36%有意に高いことが分かった(HR1.36〔同1.10~1.69〕)。また虚血性脳卒中の病型別の検討では、血栓性脳梗塞(HR2.27〔1.22~4.24〕)、および心原性脳塞栓(HR2.58〔1.27~5.26〕)のいずれも、有意なリスク上昇が認められた。 一方、希望につながるデータも示された。歯磨きやデンタルヘルスで日常的な口腔ケアを行い、定期的に歯科へ通院している人は、歯周病が約3割少なく(オッズ比〔OR〕0.71〔0.58~0.86〕)、歯周病と虫歯の併存が約8割少ないという(OR0.19〔0.15~0.25〕)、有意な関連が観察された。 報告された2件の研究結果は、口腔衛生状態が良くないことが脳卒中を引き起こすという直接的な因果関係を証明するものではない。しかし、口腔内の炎症が心臓と脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとする、近年増加しているエビデンスを裏付けるものと言える。これらのデータを基に研究者らは、「歯と歯茎の健康を維持することが、脳卒中リスクを軽減する簡単な方法の一つになる可能性がある」と述べている。 なお、世界保健機関(WHO)は、世界中で35億人が歯周病や虫歯を有していると報告している。また米国心臓協会(AHA)によると、米国では毎年79万5,000人以上が脳卒中を発症しているという。

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歯を失うと寿命にも影響?80歳女性で“咬合支持”の重要性が明らかに

 高齢になると「歯が抜けても仕方ない」と思われがちだが、噛み合わせの力が寿命にまで影響する可能性がありそうだ。今回、地域在住の80歳高齢者を10年間追跡した研究で、咬合支持(噛み合わせの支え)を失った女性は、そうでない女性に比べて死亡リスクが有意に高いことが示唆された。研究は新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座予防歯科学分野の田村浩平氏、濃野要氏、小川祐司氏によるもので、詳細は9月23日付けで「International Dental Journal」に掲載された。 咀嚼は全身の健康と長寿に重要であり、歯や義歯による安定した咬合支持が不可欠である。咬合支持の低下は咀嚼の満足度や効率を損ない、栄養不足や運動機能低下にも関連することが報告されている。また、フレイルは高齢者の死亡リスク因子として注目され、歯の喪失や咬合力低下などの口腔要因も関連する。日本では高齢者の歯の保存が重要視されているが、健康な高齢者を対象に残存歯数や咬合力と死亡率の関係を検証した研究は少ない。咬合と死亡率については、最大咬合力や機能歯の数が全死因死亡率の有力な予測因子であり、Eichner Index(アイヒナー指数:EI)がこれらの指標の代替になり得ると考えられる。このような背景を踏まえ、著者らは新潟市の高齢者を対象とした25年間のコホート研究の一環として、咬合支持の喪失が死亡リスク因子であるという仮説を検証した。具体的には、フレイルのない健康な地域在住の80歳高齢者において、EIで評価した咬合支持と10年間の死亡率との関連を調査した。 本研究の解析対象は、新潟市在住のフレイルのない80歳の高齢者360人であり、追跡調査は2008年6月~2018年6月まで実施された。ベースライン時に、歯牙および歯周検査、唾液分泌量測定(ガム試験)、血液検査、および自記式アンケート(喫煙・飲酒習慣、運動習慣、既往歴など)が実施された。口腔検査票から、咬合支持はEIクラスA/B群(咬合支持あり/部分的にあり)およびC群(咬合支持なし)に分類され、歯周炎症表面積も算出された。生存解析にはKaplan-Meier法とログランク検定が用いられ、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)が算出された。 最終的な解析対象には297人(男性155人、女性142人)が含まれた。ベースライン時のEIクラスはA/B群が203人、C群が94人だった。10年間の累積生存率はA/B群とC群でそれぞれ79.8%および66.0%であり、有意な差が認められた(P=0.038)。 多変量Cox比例ハザードモデルでは、「EIクラスC」および「男性」が全死因死亡の有意な独立リスク因子であった。性別、BMI、喫煙状況、既往歴などの交絡因子で調整後のHRは、EIクラスCで1.88(95%信頼区間 [CI] 1.08~3.36、P<0.05)、男性で2.28(CI 1.23~4.26、P<0.05)であった。 男女別の層別解析では、EIクラスCは女性のみで有意な独立リスク因子となり、歯周炎症表面積、唾液分泌量、BMI、喫煙状況、既往歴などで調整後のHRは4.17(95%CI 4.17~11.79、P<0.05)であった。その一方、男性では統計的に有意な差は認められなかった。 著者らは、「地域在住の健康な80歳高齢者において、咬合支持の喪失は、特に女性で全死因死亡の独立したリスク因子であった。この結果は、咬合支持の維持が咀嚼機能や十分な栄養摂取を支えることで、長寿の促進に重要な役割を果たす可能性を示している。今後の研究では、咬合支持の喪失が死亡に至るまでの間接的な経路をさらに検討する必要がある」と述べている。 なお、結果に性差が出た理由として、男性は一般的に筋肉量や咀嚼筋力が大きく、咬合支持を失っても咀嚼機能や栄養摂取への影響が相対的に小さいこと、また、心理社会的要因(抑うつや孤立)の影響は女性でより顕著に現れやすいことが指摘されており、歯の喪失による審美的な変化が心理的に与える影響が、女性でより大きい可能性などが考察された。

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第265回 呼吸器感染症が同時急増 インフルエンザ8週連続増 百日咳は初の8万人突破/厚労省

<先週の動き> 1.呼吸器感染症が同時急増 インフルエンザ8週連続増 百日咳は初の8万人突破/厚労省 2.がん検診指針を改正、肺がんは「喀痰細胞診」廃止し「低線量CT」導入へ/厚労省 3.かかりつけ医機能報告制度で「見える化」から「評価」へ/中医協 4.過去最高48兆円突破、国民医療費が3年連続更新/厚労省 5.中堅病院の倒産1.5倍に、民間主導の統合・経営譲渡が進行/北海道 6.美容医療大手が62億円申告漏れで追徴課税、SNS豪遊アピールが引き金か/国税庁 1.呼吸器感染症が同時急増 インフルエンザ8週連続増 百日咳は初の8万人突破/厚労省全国でインフルエンザ、百日咳、マイコプラズマ肺炎といった複数の呼吸器感染症が同時期に急増し、医療現場と地域社会で警戒が強まっている。厚生労働省は10月17日、2025年10月6~12日の1週間におけるインフルエンザの感染者報告数が、全国の定点医療機関当たり2.36人に達したと発表した。これは前週の約1.5倍で、8週連続の増加。総患者報告数は9,074人を超え、昨年の同時期と比較して2倍以上、流行のペースも昨年より約1ヵ月早い状況となっている。都道府県別では、沖縄県(14.38人)が突出して多いほか、東京(4.76人)、神奈川(4.21人)、千葉(4.20人)といった首都圏でも感染が拡大している。この影響で、全国の小学校や中学校など合わせて328ヵ所の学校・学級閉鎖の措置が取られ、厚労省では手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策の徹底を呼びかけている。また、激しい咳が続く百日咳の流行も深刻である。国立健康危機管理研究機構によると、今年に入ってからの累計患者数(10月5日時点の速報値)は8万719人に達し、現在の集計法となった2018年以降で初めて8万人を突破した。これは、過去最多だった2019年の約4.8倍という異例の多さとなっている。コロナ対策中に病原体への曝露機会が減り、免疫が弱まったことが一因と指摘されている。感染は10代以下の子供を中心に広がっており、乳児は肺炎や脳症を併発する重症化リスクがあるため、とくに警戒が必要とされる。さらに、マイコプラズマ肺炎も5週連続で増加しており、9月29日~10月5日の定点当たり報告数は1.36人となっている。秋田、群馬、栃木、北海道などで報告が多く、この秋は複数の感染症が同時に拡大する「トリプル流行」の様相を呈している。 参考 1) 2025年 10月17日 インフルエンザの発生状況について(厚労省) 2) インフルエンザ感染者数 前週の1.5倍に 8週連続で増加 1医療機関あたり「2.36人」 厚生労働省(TBS) 3) インフル定点報告2.36人、前週の1.5倍に 感染者数は9,074人に(CB news) 4) マイコプラズマ肺炎の定点報告数、5週連続増 前週比6.3%増 JIHS(同) 5) インフルエンザ患者 昨年同期の2倍超 日ごとの寒暖差が大きいため体調管理に注意を(日本気象協会) 6) 百日ぜきが初の8万人超 2025年患者数、18年以降の最多更新続く(日経新聞) 2.がん検診指針を改正、肺がんは「喀痰細胞診」廃止し「低線量CT」導入へ/厚労省厚生労働省は10月10日、「がん検診のあり方に関する検討会」を開き、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を改正する方針を固めた。最新の医学的エビデンスに基づき、肺がん検診の方法を抜本的に見直すほか、乳がん検診のガイドラインの更新を国立がん研究センターに依頼する。最も大きな変更は、重喫煙者を対象とした「胸部X線検査と喀痰細胞診の併用法」の公費検診からの削除。これは、喫煙率の低下に伴い、喀痰細胞診で見つかる肺門部扁平上皮がんが減少し、現在ではこの検査による追加的な効果が極めて小さい(ガイドラインで「推奨しない:グレードD」)と評価されたためである。厚労省は2026年4月1日の指針改正で同検査を削除する方針。ただし、喀痰などの有症状者に対しては、検診ではなく医療機関での早期受診を促す指導を指針に追記する方向とされる。一方、「重喫煙者に対する低線量CT検査」については、死亡率を16%程度低下させるという高い有効性(グレードA)が認められたため、新たに住民検診への導入を目指す。この導入に向け、2026年度から希望する自治体でモデル事業を実施し、実施マニュアルの作成と課題整理を行う予定。その結果を踏まえ、早ければ2027年以降に指針に追加し、全国で導入される見通しである。また、乳がん検診についても、現在のガイドラインが2013年度版で古いことから、最新の医学研究成果を反映させるため、ガイドラインの更新を国立がん研究センターに依頼した。高濃度乳房で有用性が期待される「3Dマンモグラフィ」や「マンモグラフィ+超音波検査の併用」などの知見を整理し、今後の対策型検診への導入可能性が検討される。厚労省は、これらの検診方法の見直しを通じて、死亡率減少効果が高い検査に重点を置く「エビデンスに基づいたがん検診」への転換を加速させる。今後は、低線量CT導入に必要な実施体制の整備や、受診率の向上、住民への適切な情報提供などが課題となる。 参考 1) 第45回がん検診のあり方に関する検討会(厚労省) 2) 肺がん検診について(同) 3) 胸部X線と喀痰細胞診の併用法、肺がん検診から削除 指針改正へ(MEDIFAX) 4) たん検査、肺がん検診除外 喫煙率低下で効果小さく(共同通信) 5) 最新医学知見踏まえて乳がん検診ガイドライン更新へ、肺がん検診に「重喫煙者への低線量CT」導入し、喀痰細胞診を廃止-がん検診検討会(Gem Med) 3.かかりつけ医機能報告制度で「見える化」から「評価」へ/中医協厚生労働省は、中央社会保険医療協議会総会(中医協)を10月17日に開き、2026年度改定に向けて、2025年度から始まる「かかりつけ医機能報告制度」に関して、制度の背景や今後のスケジュールを説明するとともに、地域医療体制および診療報酬制度との関係を整理するための論点提示を行った。「かかりつけ医機能」の報告は、ほぼすべての医療機関(特定機能病院、歯科診療所を除く)に対して、2026年1~3月に(1)かかりつけ医機能を有するかどうか、(2)対応可能な診療領域・疾患、(3)在宅医療・介護連携・時間外対応の可否について、報告を求める。1号側(支払い側)の委員からは、「かかりつけ医機能報告制度」の項目(1次診療で対応可能な領域・疾患のカバー状況、研修医受け入れなど)と、機能強化加算などの施設基準・算定要件を整合させ、わかりやすい仕組みに再設計すべきと主張する意見が挙げられた。2号側(診療側)の委員からは、2040年像を見据えた制度を1年後の改定に直結させるのは「論外」と反発する意見が出た。改定の論点には、「大病院→地域医療機関」への逆紹介の実効性向上(2人主治医制の推進、情報連携の評価である「連携強化診療情報提供料」の要件緩和)や、外来機能分化の徹底も含まれている。厚労省の提案には、かかりつけ医側に(1)一次診療対応領域の明確化と提示、(2)地域の病院との双方向連携(紹介・逆紹介、共同管理)の定着、(3)データ提出の拡大・標準化が求められている。とくに機能強化加算は、報告制度の実績(対応疾患カバー、ポリファーマシー対策、研修体制など)とリンクした見直しが俎上に上がっており、基準の再整理や算定要件の具体化が想定される。開業医に対しては「対応可能領域・疾患の可視化」「紹介・逆紹介の運用記録」「連携書式・電子共有の整備」などの対応と提出するデータに根拠が求められる。一方で、情報連携加算の要件が緩和されれば、地域のかかりつけ医は大学病院などとの共同管理で報酬評価を得やすくなる可能性がある。全体として「報告制度による見える化」と「診療報酬での評価」をどの程度リンクさせるかで、支払側と診療側の主張が対立し、年末まで引き続き協議が続く見通し。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会 議事次第(厚労省) 2) 「かかりつけ医機能」報告、診療報酬と「整合を」支払側が主張 日医委員は「あり得ない」(CB news) 3) 大病院→地域医療機関の逆紹介をどう進めるか、生活習慣病管理料、かかりつけ医機能評価する診療報酬はどうあるべきか-中医協総会(Gem Med) 4.過去最高48兆円突破、国民医療費が3年連続更新/厚労省厚生労働省は10月10日、2023年度の国民医療費が48兆915億円に達し、前年度比3.0%増で3年連続の過去最高を更新したと発表した。1人当たりの医療費も38万6,700円と過去最高を記録している。医療費増加の主な要因は、高齢化の進展と医療の高度化に加え、コロナ禍後の反動やインフルエンザなどの呼吸器系疾患が増加したことが背景にあるとされる。とくに、医療費の負担は高齢者層に集中し、65歳以上が国民医療費全体の60.1%を占め、75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の39.8%にあたる19兆円超となった。人口の大きなボリュームゾーンである団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に到達し始めている影響が顕著となり、2025年度に向けてこの傾向は続くとみられる。財源は、保険料が24.1兆円、公費が18.3兆円、患者負担が5.6兆円で構成されているが、患者負担額が前年度から4.5%増と最も高い伸びを示した。また、1人当たりの国民医療費には依然として大きな地域格差が残っており、最高額の高知県(49.63万円)と最低額の埼玉県(34.25万円)との間で1.44倍の開きがある。医療費の高い地域ではベッド数が多い傾向が指摘され、地域医療構想に基づく病床の適正化が課題として改めて浮き彫りとなった。厚労省は、国民皆保険制度の維持・継承のため、社会経済環境の変化に応じた医療費の適正化と改革を積み重ねる重要性を訴えている。 参考 1) 令和5(2023)年度 国民医療費の概況(厚労省) 2) 国民医療費、3年連続最高 23年度3%増(日経新聞) 3) 2023年度の国民医療費、3.0%増の48兆915億円…3年連続の増加で過去最高を更新(読売新聞) 4) 2023年度の国民医療費は48兆915億円、1人当たり医療費に大きな地域格差あり最高の高知と最低の埼玉とで1.44倍の開き―厚労省(Gem Med) 5.中堅病院の倒産1.5倍に、民間主導の統合・経営譲渡が進行/北海道全国の医療機関の経営環境が急速に悪化し、地域医療に直接影響を及ぼす段階に入っている。東京商工リサーチによると、2025年1~9月の病院・クリニックの倒産は27件と高水準で推移し、とくに病床20床以上の中堅病院の倒産が前年同期比1.5倍の9件に急増した。負債10億円以上の大型倒産も増加し、地域の基幹医療を担う施設が深刻な苦境に立たされている。この経営危機は、物価高、人件費上昇、設備投資負担といったコストアップ要因に加え、理事長・院長の高齢化、医師・看護師不足という構造的な課題が重なり発生している。また、自治体が運営する公立病院も約8割が赤字であり、医療業務のコストと診療報酬のバランスの崩壊が、医療機関全体を採算悪化に追い込んでいる。再編の動きは加速し、とくに北海道では江別谷藤病院(負債25億円)が、給与未払いの事態を経て、札幌の介護大手「ライフグループ」への経営譲渡が決定し、未払い給与が肩代わりされた。また、室蘭市では、日鋼記念病院を運営する法人が、経営難の市立病院との統合協議を棚上げし、国内最大級の徳洲会グループ入りを選択した。これは、公立病院の巨額赤字(年間約20億円)と人口減がネックとなり、民間主導での集約が進んでいるとみられる。こうした倒産・統合の波は、診療科の再配置、当直体制・人事制度の統一、電子カルテや検査体制の共有など、医師や医療者の勤務環境やキャリア設計に直接的な変化をもたらす。地域の医療提供体制を維持するため、再編の移行期における診療体制の維持と、地域住民・自治体との合意形成が、医療従事者にとって重要な課題となる。診療報酬の見直しやM&Aといった手段による医療機関の存続に向けた取り組みが急務となる。また、病院再編にあたっては、移行期の診療体制の維持や、患者の混乱を避けるため、地域住民への情報提供と、自治体との合意形成が鍵となる。 参考 1) 1-9月「病院・クリニック」倒産 20年間で2番目の27件 中堅の病院が1.5倍増、深刻な投資負担とコストアップ(東京商工リサーチ) 2) 負債額約25億円の江別谷藤病院 札幌の「ライフグループ」に経営譲渡(北海道テレビ) 3) 室蘭3病院、再編協議難航 市立病院の赤字ネックに…「日鋼」、徳洲会の傘下模索(読売新聞) 4) 赤字続きの兵庫県立3病院、入院病床130床休止へ…収支改善が不十分ならさらに減床も(同) 5) 突然の来訪、室蘭市に衝撃 日鋼記念病院の徳洲会入り検討、市立総合病院との統合に黄信号(北海道新聞) 6.美容医療大手が62億円申告漏れで追徴課税、SNS豪遊アピールが引き金か/国税庁全国で100以上のクリニックを展開する「麻生美容クリニック(ABC)グループ」が、大阪国税局など複数の国税局による大規模な税務調査を受け、2023年までの5年間で計約62億円の巨額な申告漏れを指摘されていたことが明らかになった。追徴税額は、重加算税などを含め約12億円に上るとみられている。申告漏れの主な原因は、グループ内の基幹法人「IDEA」と傘下の6医療法人の間で、医療機器などの仕入れ価格を約47億円分過大に計上していたと判断されたためである。これにより、各医療法人の課税所得が不当に圧縮されていた。また、患者から受け取った前受金(手付金)約10億円の計上漏れも指摘された。さらに、基幹法人IDEAが得た収入のうち約3億円が、売上記録の偽装など悪質な仮装・隠蔽を伴う所得隠しと認定され、重加算税の対象となった。法人の資金を個人的な用途に流用したとして、グループ関係者にも約2億円の申告漏れが指摘されている。グループ側は報道機関の取材に対し、税務調査の事実を認め、「見解の相違もあったが、当局の指導により修正申告と納税は完了している」とコメントしている。背景には、SNSの普及などで美容医療の市場が急拡大する一方、新規開設費や広告費がかさみ、収益性の低い法人の倒産・休廃業が増えるなど、美容医療業界の過当競争が激化している現状がある。また、グループを率いる医師やその息子が、自家用ジェットや高級車などの豪華な私生活をSNSで積極的に公開していたことが、税務当局による異例の大規模調査のきっかけの1つになった可能性も指摘されている。 参考 1) 美容医療グループが62億円申告漏れ(朝日新聞) 2) 麻生美容クリニックグループ、60億円申告漏れ 大阪国税局など指摘(日経新聞) 3) 「19歳で3,000万円のフェラーリを乗り回し…」 62億円申告漏れの美容外科医と息子が自慢していた豪遊生活(週刊新潮)

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がん治療の有害事象が減る!?高齢がん患者への機能評価【高齢者がん治療 虎の巻】第3回

<今回のPoint>高齢者総合機能評価(CGA)は、身体面・精神面・社会的要素などいくつかの構成要素から成り立つ高齢がん患者に対する機能評価は、治療の適応性や有害事象のリスク評価、予後予測が目的CGA(GA)の実施には、多職種協働や診療科連携によるチーム医療が重要だが、最終評価者は医師または歯科医師が担う<症例>85歳・男性X年9月前医でS状結腸がんcStageIIaと診断し、腹腔鏡下S状結腸切除術施行X+1年4月前医で増大傾向にある肝腫瘤の指摘あり、大学病院消化器内科紹介受診X+1年5月生検の結果、肝内胆管がんstageIV(多発肝転移・多発リンパ節転移)の診断X+1年6月治療方針決定前の評価目的で同院老年科に紹介 評価で問題がなければ、治療開始(GCD療法[GEM+CDDP+デュルバルマブ])の予定。治療説明などの応答がしっかりせず、不安症状がみられる。CGA実施、診療報酬は50点日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えたことで、高齢のがん患者も増加し、高齢者診療や高齢者がん診療の重要性はより一層高まっています。その中でもとくに重要なことは、「高齢者の医療や生活を多面的に評価し、問題点を抽出し、適切な介入を行う」というプロセスです。このことを、高齢者総合機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)と呼び、老年医学の根幹となっています。入院中の患者(65歳以上の全員と特定疾患を有する40歳以上の一部)に関しては、CGAを行うことで、診療報酬点数「総合機能評価加算」50点(入退院支援加算として退院時1回)の算定ができます。算定にあたっては、日常生活力などを評価する必要があり、各医療職種が評価できますが、最終評価者は医師または歯科医師が行わなければなりません。CGAの構成成分には主に、身体機能・精神心理状態・社会的背景などが挙げられ(表1)、それらを元に生活機能や医療の評価を行います。日常生活動作(Activity of Daily Living:ADL)は、人が生活を送るために必要な動作のことであり、身体的な要素を主とした評価として、CGAの代表的な評価ツールとなっています。(表1)高齢者総合機能評価の構成要素画像を拡大する移動・食事・排泄・更衣・整容など、生きていく上で最低限必要な基本的な日常動作のことを基本的ADLと呼びます。一方で、買い物・調理・洗濯・金銭管理など、社会で自立した生活を送るために必要な動作のことを手段的ADLと呼びます。当院での総合機能評価加算の書式では、いくつかの項目を多職種でチェックし、日常生活動作、認知機能、気分・心理状態それぞれに対して、最終判定を担当医が行います。がん診療では“治療の適応性や有害事象のリスク評価、予後予測が目的”ここまで、一般高齢者を対象としたCGAに関して述べましたが、がん患者に対する機能評価は、目的やアプローチがやや異なります。がん患者に対しては、「治療を実施するか否か」「どの治療法を選択するか」「治療に伴う有害事象がどの程度起こりうるか」といった診療方針決定に重要な情報が求められます。高齢者がん診療の領域においても、多面的な評価の重要性は広く示されてきました。しかし実際には、必要なケアを同定して介入につなげるというよりも、治療の適応性や有害事象のリスク評価、予後予測などに使われることが多く、CGAではなく、GA(Geriatric Assessment)と称されます1)。なお、日本老年腫瘍学会のホームページ内では、CGAとGAの違いについて表2のようにまとめられております2)。(表2)CGAとGAの違い画像を拡大するがん診療のガイドラインでは、ECOG-PS(Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status)という、日常生活の活動レベルを5段階で表した指標によって治療方針が定められることも多いですが、ECOG-PSが良好でも、併存症の存在、手段的ADLの低下、栄養状態や認知機能の低下などにより、がん治療に対しての脆弱性を有しているケースはとても多いです。実際にGAが治療方針に与える影響も大きく、あるシステマティックレビューによると、GAの実施により、がん治療方針が変更された割合は28%(中央値)で、その変更の多くは、より強度の弱い治療へ変更されていました3)。また、根治不能な70歳以上の固形がん患者に対して、GAを行って結果と推奨マネジメントを治療担当医に提供することで、重篤な有害事象を有意に減らせられたといった報告もあります(1年後の生存率は変わらず)4)。GAに含めるべき必須の重要ドメインとして、身体機能、認知機能、心理状態、併存疾患、栄養状態、多剤併用、社会的サポートなどが挙げられます5)。特徴として、がん治療を念頭に置いているため、「治療に耐えられるか」という観点から、とくに重要な要素として、栄養状態や併存疾患が入ります。また、近年、GAにおいて評価を行うだけではなく、CGAのように、結果に基づいたマネジメントを行うこと(GA-guided management:GAM)(第2回参照)が強く推奨されてきています。さらに、個別化した治療計画の立案、有害事象の予測、介入すべき問題を特定することに加え、意思決定支援のために、GAの結果を患者と家族に提供することも推奨されます。冒頭に示した症例では、GAを施行したところ、元々バイタリティにあふれた性格でしたが、家族の病気や家族との関係性、また自身への立て続けのがんの告知などにより、診察時には心身共にエネルギー切れの、うつ傾向の心理状態であることがわかりました。さらには、独居であり、スムーズに家族のサポートを得ることも難しい状態でもありました。これらの情報を元に腫瘍専門医と協働し、多職種との連携も通して意思決定のサポートを行い、化学療法に伴う副作用の説明も含めて、治療の準備を行いました。その結果、予定通りGCD療法が通常量で投与されました。1)Wildiers H, et al. J Clin Oncol. 2014;32:2595-2603.2)日本老年腫瘍学会:CGAとGA3) Hamaker ME, et al. J Geriatric Oncol. 2018;9:430-440. 4)Mohile SG, et al. Lancet. 2021;398:1894-1904.5)Dale W, et al. J Clin Oncol. 2023;41:4293-4312.講師紹介

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地中海式ダイエットは歯周病も予防する?

 地中海式ダイエットは、心臓病や神経変性疾患、がんなどさまざまな健康問題の予防に役立つことが示唆されているが、歯周病の重症度とも関連することが、新たな研究で明らかにされた。地中海式ダイエットの遵守度が低い人や赤肉の摂取頻度が高い人では、歯周病が重症化しやすい傾向があることが示されたという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のGiuseppe Mainas氏らによるこの研究結果は、「Journal of Periodontology」に9月15日掲載された。 地中海式ダイエットは、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、オリーブ油などの健康的な脂肪の摂取を重視し、魚、鶏肉、脂身の少ない肉、乳製品を適度に摂取する一方で、赤肉、菓子類、甘い飲み物、バターなどを控える食事法である。Mainas氏は、「われわれの研究結果は、バランスの取れた地中海式ダイエットが歯周病や全身性炎症を軽減し得ることを示唆している」とKCLのニュースリリースの中で述べている。 本研究では、KCLの口腔・歯科・頭蓋顔面バイオバンク研究に参加した195人の患者のデータを分析し、食事と歯周病、歯茎および全身の炎症との関連を検討した。対象者は、完全な歯科検診を受け、血液サンプルを提供し、食物摂取頻度調査票(FFQ)に回答した。研究グループは、FFQへの回答内容から地中海式ダイエットの遵守度を評価した。また、血液サンプルから、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)、歯周病に関与する酵素であるMMP-8(マトリックスメタロプロテアーゼ-8)、炎症や免疫応答に関与するさまざまなサイトカイン(インターロイキン〔IL〕-1α、IL-1β、IL-6、IL-10、IL-17)の血清レベルを測定した。 195人のうち112人は地中海式ダイエットの遵守度が高い群に分類された。多変量解析の結果、地中海式ダイエットの遵守度が高い群では低い群に比べて、重度の歯周病(ステージⅢ、Ⅳ)のオッズが有意に低いことが明らかになった(オッズ比0.35、95%信頼区間0.12〜0.89)。食品群別に検討すると、赤肉の摂取頻度の高さは重度の歯周病と独立して関連していた(同2.75、1.03〜7.41)。さらに、歯周病の重症度は炎症マーカー(CRP、IL-6)と関連しており、IL-6との関連は交絡因子を調整後も有意だった。一方で、野菜や果物などの植物由来の食品を多く摂取すると、炎症マーカーが低くなる傾向が認められた。 Mainas氏は、「歯周病の重症度、食事、そして炎症の間には関連性がある可能性があるため、患者の歯周病に対する治療方針を決める際には、これらの側面を総合的に考慮する必要がある」と話している。 研究グループは、タンパク質を多く含む食事は有害な細菌の増殖を促す口腔環境を作り出す可能性があると指摘する。論文の上席著者でKCL歯周病学教授のLuigi Nibali氏は、「バランスの取れた食事が歯周組織の健康状態を維持する上で役割を果たしていることを示唆するエビデンスが増えつつある。われわれの研究は、栄養価が高く植物性食品を多く含む食事が歯肉の健康改善に寄与する可能性があることを示している。しかしながら、人々が歯肉の健康を管理するための個別化されたアプローチを開発するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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歯肉炎の改善に亜鉛が影響?

 歯周病は心血管疾患や糖尿病、脳梗塞などの疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆されている1,2)。今回、トルコ・Cukurova UniversityのBahar Alkaya氏らは、歯周病の初期段階とされる歯肉炎の管理において、歯科用の亜鉛含有ステント(マウスピース型器具)が機械的プラークコントロールの補助として有益であることを示唆し、歯肉炎が亜鉛によって改善したことを明らかにした。 本研究は、歯肉炎患者での歯肉の炎症、出血、歯垢の再増殖に対する亜鉛含有ステントの効果を調査したもの。Cukurova Universityにおいて、全身的に健康な18~30歳の歯肉炎患者42例を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。参加者は試験群(亜鉛含有ステント)または対照群(プラセボステント)に割り付けられ、歯石除去後4週間、毎日12時間以上にわたって器具を装着するよう指示された。評価項目は歯肉炎指数(GI)*1、プラーク指数(PI)*2、プロービング時の出血(BOP)*3などで、ベースライン時、2週目、4週目、8週目に評価が行われた。統計解析にはIBM SPSSおよびRStudioの統計ソフトウェアが用いられた。*1:歯肉の炎症度を数値化した指標*2:歯の表面へのプラーク付着状態を数値化した指標*3:探針による歯周ポケットの深さを測定した指標(歯茎からの出血の有無を調べる) 主な結果は以下のとおり。・両群とも、時間の経過とともに歯肉の健康状態が統計学的に有意に改善したが、亜鉛含有ステント群はすべての時点でGIスコアが統計学的に有意に低下し、歯肉の炎症がより大きく軽減された。・PIスコアとBOPスコアは両群で改善したが、両群間に統計学的有意差は認められなかった。 亜鉛による抗菌作用および抗炎症作用は、歯肉の健康改善に寄与する可能性が高いといわれており、本研究結果は亜鉛含有ステントが機械的プラーク除去単独実施に加えて、歯肉炎の軽減にさらなる効果をもたらすことを示唆している。ただし、研究者らは「より広範な臨床応用を確認するためにさらなる長期研究が必要」としている。

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第282回 次期総裁選目前!候補5人の公約を徹底比較

INDEX小泉 進次郎氏 神奈川11区・6期小林 鷹之氏 千葉2区・5期高市 早苗氏 奈良2区・10期林 芳正氏 山口3区・2期(参院・山口選挙区5期)茂木 敏充氏 栃木5区・11期7月の参院選で連立する公明党と合わせても過半数を維持できなかった自民党。1955年の結党以来、衆参両院とも自民党が属する側が過半数を割ったのは初のことであり、以来、首相である石破 茂氏の退陣を求める、いわゆる石破おろしの動きが浮上し、党内が荒れていた。しかし、9月7日に石破氏が自民党総裁辞任を発表したことで、自民党は一気に総裁選モードに移行した。9月22日に告示された総裁選には昨年も出馬した5人が再度顔をそろえた。50音順で小泉 進次郎氏(44)、小林 鷹之氏(50)、高市 早苗氏(64)、林 芳正氏(64)、茂木 敏充氏(69)。派閥解消の影響もあってか石破氏とこの5人を含む合計9人が出馬した昨年の総裁選では、全候補の社会保障、医療・介護政策を前編と後編に分けて紹介した。ということで、今回は再挑戦した5人の社会保障、医療・介護政策を前回マニフェストとの比較も含め、独断と偏見の評価も交えながらお伝えしたい。小泉 進次郎氏 神奈川11区・6期言わずと知れた、自民党内で一時「変人」と呼ばれた元首相・小泉 純一郎氏の次男である。閣僚経験は環境相、内閣府特命担当相(原子力防災担当、気候変動担当)、農林水産相で、一見すると厚生労働行政には縁もゆかりもないように見えるが、実は2018年に自民党厚生労働部会長を経験している。前回の総裁選は党刷新を前面に出したためなのか、今の日本では最重要課題と言っても過言ではない少子高齢化に伴う社会保障制度関連の政策は、マニフェスト上皆無というぶったまげたことをやってのけた御仁である。今回は「立て直す。国民の声とともに」というキャッチフレーズの下、大項目として7つの政策を打ち出した。そのうち3番目で以下のような社会保障関連、医療・介護政策に言及している。3. 社会保障・教育子供から子育て世代、お年寄りまで、すべての世代が安心できる、全世代型社会保障制度を実現する。そのために、与野党協議を真摯に進める医療・介護・保育・福祉・教育など公的分野で働く方々の物価上昇を上回る処遇改善の実現率直に言ってどちらも目新しさはない。処遇改善は自民党内外を問わずに多くの政治家や政党が掲げる政策でもある。前者の全世代型社会保障制度も現状路線の維持だが、こと小泉氏にとっては別の意味も持つと言える。というのも、現在の全世代型社会保障制度という概念の下、定着しつつある改革の方向性として「年齢ではなく経済力に応じた負担」を自民党として打ち出したのが、まさに小泉氏が党厚生労働部会長時代であり、なおかつ彼自身がこの方向性の主導者と言われているからである。なお、大項目「5.防災・治安対策」では、昨今の保守層を中心に話題となりがちな外国人問題について言及しているが、小泉氏自身のホームページではより具体的に「医療保険制度などの制度の不適切利用の是正」を掲げている。ここからは党内でも比較的リベラルと受け止められている小泉氏が支持のウイングを広げようとしている様子がうかがえる。小林 鷹之氏 千葉2区・5期前回の総裁選で彗星のごとく登場した小林氏。大蔵省(現・財務省)に入省し、在米日本大使館赴任時代の民主党政権下で日米関係が崩壊していく様子を目の当たりにした危機感から政治家を志したという。こうした経緯もあってか、今回の5人の中では高市 早苗氏と並んで保守色の強い政治家である。総裁選のキャッチフレーズは「挑戦で拓く 新しい日本」。この下で5つの主要政策項目を掲げている。社会保障関連、医療・介護政策は以下のようなものだ(数字は小林氏の政策マニフェストで記載された順番。◇は中項目)。1. 力強く成長するニッポン◇現役世代の社会保険料負担軽減医療DXの推進、重複の解消・予防インセンティブの導入、保険適用範囲の見直しなどについて、「社会保障国民会議」を設置し、国民皆保険・社会保障制度の持続など国民の安心を守りながら包括的改革◇デフレから成長経済への移行期対策医療・看護・介護等公定価格分野での人材確保・処遇改善2. 自らの手で守り抜くニッポン◇医療安全保障ドラッグラグ・ロス問題の解消原薬およびサプライチェーンの外国依存からの脱却ワクチン・診断薬・治療薬などの感染症危機対応医薬品の開発・確保の強化3.結束するニッポン◇少子化対策・こども政策出産体制確保と負担軽減の両立「ニッポン」を連発するところが保守色の強い小林氏らしさとも言える。政策の中にある「社会保障国民会議」については、前回の総裁選では「社会保障未来会議(仮称)」としていた。「現役世代の社会保険料負担軽減」は前回の総裁選とほぼ同じ政策である。前回はより給付削減を打ち出していた。また、予防インセンティブは、参院選での参政党の政策を彷彿とさせる。具体策までは踏み込んでいないが、東大から財務省というリアルな政策の場を渡り歩いてきた小林氏が、このインセンティブ政策の細部設計でさすがに参政党レベルはあり得ないだろうとは思うが、どのような構想を持っているかは個人的に興味があるところだ。「デフレから成長経済への移行期対策」は今回新たに登場したが、小泉氏のところで触れたように目新しさはない。2では新たに「医療安全保障」というワードを繰り出してきた。正直、その意味するところがわかるようなわからないような…。また、ここに書かれた各項目は、やはり保守政治家らしいと言えるが、以前から私自身は繰り返し言っているように、創薬、医薬品サプライチェーンのボーダレス化が進んでいる中では空疎にしか見えない。言っちゃ悪いが、保守層受けの良い政策を無機質に並べたようにも映る。ちなみに前回はゲノム創薬の強化を打ち出していたが、今回はその項目は消えている。また、同じく前回は「医師・診療科の偏在是正」や「医療法人改革」を掲げていたが、これも今回のマニフェストからは消えた。高市 早苗氏 奈良2区・10期前回総裁選の1回目投票で1位となりながら、決選投票で石破氏に敗れた高市氏。無所属で国会議員となり、そこから自由党(党首・柿澤 弘治氏)→自由改革連合(代表・海部 俊樹氏)→新進党(党首・海部 俊樹氏)→自民党と渡り歩き、自民党内で5度の閣僚経験、党三役の政調会長を務めたバルカン政治家である。今回のマニフェストキャッチフレーズは「日本列島を、強く豊かに。」である。マニフェストの大項目は5つだが、その大部分を1番目が占めている。社会保障、医療・介護領域の政策もすべてここに含まれている。中身は以下の通りだ。1.大胆な『危機管理投資』と『成長投資』で、『暮らしの安全・安心』の確保と『強い経済』を実現。◇経済安全保障の強化と関連産業の育成経済安全保障に不可欠な成長分野(AI、半導体、ペロブスカイト・全固体電池、デジタル、量子、核融合、マテリアル、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、造船、創薬、先端医療、送配電網、港湾ロジスティクスなど)に、分野毎の官民連携フレームワークにより積極投資を行ない、大胆な投資促進税制を適用◇健康医療安全保障の構築地域医療・福祉の持続・安定に向け、コスト高に応じた診療・介護報酬の見直しや人材育成支援「攻めの予防医療」(がん検診陽性者の精密検査・国民皆歯科健診の促進等)を徹底することで、医療費の適正化と健康寿命の延伸を共に実現ワクチンや医薬品については、原材料・生産ノウハウ・人材を国内で完結できる体制を構築再生・細胞医療、遺伝子治療分野、革新的がん医療、認知症治療等に係る研究開発と社会実装を促進長年の取組で実現した「女性の健康」ナショナルセンター機能の構築を推進この政策をざっと眺めると、小林氏とかなり相似性が高いことがわかるだろう。とくに「健康医療安全保障」という造語などが代表的だ。むしろ文言上の政策は高市氏のほうが充実していると言えるかもしれない。「コスト高に応じた診療・介護報酬の見直し」などは、ウクライナ戦争に端を発した物価高により経営難にあえぐ医療機関・介護施設の経営者にとっては首が振りきれるほど頷く政策だろう。一方で小林氏のところでも指摘した予防医療の推進とワクチン・医薬品の国産化については、個人的には「ふーん」という感じである。予防医療自体は悪いことではないが、そのコスト・パフォーマンスの悪さは医療現場に身を置く人なら誰しもが気付いていることだろうし、ワクチン・医薬品の国産化については前回の小林氏の政策のところで述べたとおりだ。一言で言うならば、「現場を知らないのだろう」という印象である。ここで高市氏と小林氏の政策についてまとめて言及すると、私個人は社会保障とは国家の存立基盤の1つであり、経済成長の有無とは関係なく持続性を持つものでなければならないと考えている。その前提に立つと、この分野の政策ほぼすべてが経済成長を視野に入れて立案されていることには、かなり違和感がある。林 芳正氏 山口3区・2期(参院・山口選挙区5期)石破内閣では内閣官房長官を務めたが、5人の候補者の中では地味めである。もっとも参院議員として4度も入閣をしたのは戦後、林氏ただ1人である。また、総裁選出馬は今回が3度目で、1回目は参院議員時代の2012年。自民党総裁選で推薦人制度導入以降に参院議員が名乗りを上げたのも林氏が初。失礼を覚悟で言えば、見た目以上に“武勇伝”がある人物なのである。今回の総裁選では「経験と実績で未来を切り拓く」をキャッチフレーズに掲げた。前回は「人にやさしい政治。」で、いずれもやはり地味である。また、余談を言うと、今回の総裁選で使っている本人の写真は右手でガッツポーズしたスタイルである。率直に言うと、このポーズは地方選挙での新人候補のポスターでこそよく見かけるパターンだが、ベテラン政治家ではあまり見かけないアピールパターンである。さてマニフェストは「林よしまさが掲げる政策 林プラン」と題したもので、大項目は6項目。その1番目と3番目に関連政策の記述がある。以下のような内容である。1.経済対策・成長戦略・教育改革創薬力の強化3.社会保障・福祉医療・介護・福祉人材の大幅な処遇改善生涯を通じた歯科検診(国民皆歯科健診)に向けた具体的取組医師・看護師確保対策経済政策としての創薬力強化は、実は岸田政権時の「創薬エコシステムサミット」開催以来の政策であり、林氏がかつて岸田派だったことを考えれば、むしろ自然な流れと言える。次なる社会保障・福祉の項目内は、ざっと見ればごくごくありきたりなモノばかりである。ちなみに国民皆歯科健診は高市氏も掲げているが、実は従来から自公政権下での骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)に記載されており、石破政権期の国政選挙の政策集にも組み込まれている。一方で、医師・看護師確保対策の具体的な記述はないが、前回の総裁選では「医師の偏在是正」「大学病院の派遣機能強化」も掲げていた。今回はこの2つの記述はないが、おそらく医師・看護師確保対策という文言に含まれているのだろう。そして直接の社会保障、医療・介護政策ではないが、私個人は大項目5番目「党・政治・行政改革」に記載された「現行の1府12省庁体制の検証、省庁再々編に向けた議論」が目に留まった。省庁再々編を議論する場合、似て非なる業務を行う旧厚生省と旧労働省を無理やり一つにした、半ばユニットバスのような厚生労働省が真っ先に的になることは必然。林氏だけでなく、そのことを視野に入れている勢力は自民党に一定程度いるのだろうと改めて認識させられた。茂木 敏充氏 栃木5区・11期もともとは旧日本新党出身という“外様”ながら、経済産業相、外相という重要閣僚、幹事長という自民党4役の要を経験し、さらには旧田中派・経世会に源流を持つ自派閥(旧茂木派)まで有していた茂木氏。今回の総裁選では真っ先に出馬に名乗りをあげた。マニフェストのキャッチフレーズは「結果を出す」。この下で実行プランと称する6つの大項目を掲げている。その最後に社会保障関連について以下のように言及している。●国家、国民を守り抜く◇社会保障、外交そして憲法改正で安心安全な国づくり負担能力に応じた誰もが安心・納得の社会保障制度の確立基本的に小泉氏と同じ全世代型社会保障制度を支持しているスタンスである。前回総裁選では、デジタル活用による負担と給付の透明化や在職老齢年金制度の見直しまで訴えていた。おそらくこの辺は本質的に変更してはいないのだろうが、高齢層から反発が予想される内容だけに文言上今回はかなりマイルドにしたのかもしれない。さてここまで5人の政策を評価したが、どうやら総裁選そのものの情勢は小泉氏vs.高市氏の2強対決に林氏が3番手に絡み票を伸ばしている状況らしい。とくに小泉陣営では、週刊文春が報じた「やらせ応援メッセージ書き込み依頼事件」もあり、それによる失票が林氏に回っている構図のようだ。いずれにせよ来週にはもう自民党総裁、いわば総理大臣最有力候補が決定している。結果はいかに?

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第262回 風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO

<先週の動き> 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO厚生労働省は9月26日、「わが国が風疹の『排除状態』にあると世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から認定を受けた」と発表した。「排除」とは、国内に定着した風疹ウイルスによる感染が3年間確認されないことを指し、わが国では2020年3月を最後に土着株の感染例が報告されていなかった。風疹は、発熱や発疹を引き起こす感染症で、妊婦が感染すると先天性風疹症候群を発症した子供が生まれるリスクがある。国内では2013年に約1万4千人が感染し、2018~19年にも流行が発生。過去には妊婦の感染により、45例の先天性風疹症候群が報告されていた。流行の中心は予防接種の機会がなかった40~50代の男性であり、国は2019年度からこの世代を対象に無料の抗体検査とワクチン接種を実施した。その結果、2021年以降は年間感染者数が10人前後に抑えられ、感染拡大は収束した。今回の認定はこうした取り組みの成果を示すもので、厚労省は「引き続き適切な監視体制を維持し、ワクチン接種を推進する」としている。一方で、海外からの輸入例は依然としてリスクが残る。今後も免疫のない世代や妊婦への周知徹底が課題となる。風疹排除はわが国の公衆衛生政策の大きな成果だが、維持のためには医療現場と行政が協力し続ける必要がある。 参考 1) 世界保健機関西太平洋地域事務局により日本の風しんの排除が認定されました(厚労省) 2) 風疹の土着ウイルス、日本は「排除状態」とWHO認定…2020年を最後に確認されず(読売新聞) 3) WHO 日本を風疹が流行していない地域を示す「排除」状態に認定(NHK) 4) 日本は風疹「排除状態」、WHO認定 土着株の感染例確認されず(朝日新聞) 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁救急現場での情報確認を迅速化する「マイナ救急」が、10月1日から全国の消防本部で導入される。マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を活用し、救急隊員が、患者の受診歴や処方薬情報を即時に確認できる仕組みである。患者本人や家族が説明できない状況でも、カードリーダーで情報を読み取り、オンライン資格確認システムに接続して必要な医療情報を閲覧できるようになる。これにより、救急隊は持病や服薬を把握した上で適切な搬送先を選定し、受け入れ先の医療機関では治療準備を事前に進めることが可能となる。患者が意識不明の場合には、例外的に同意なしで情報参照が認められる。2024年5月から実施された実証事業では、救急隊員から「服薬歴の把握が容易になり、搬送判断に役立つ」との評価が寄せられた。わが国では高齢化に伴い、多疾患併存やポリファーマシーの患者が増加している。救急現場での服薬歴不明は治療遅延や薬剤相互作用のリスクにつながるため、本制度は臨床現場の安全性向上に資する。その一方で、救急時に確実に活用するためには、患者自身がマイナ保険証を常時携帯することが前提となる。厚生労働省と消防庁は「とくに高齢者や持病のある方は日頃から携帯してほしい」と呼びかけている。マイナ保険証の登録件数は、2025年7月末時点で約8,500万件に達しているが、依然として所持率や利用登録の偏りは残る。医師にとっては、救急現場から搬送される患者情報がより早く共有されることで、初期対応の迅速化や医療安全の強化が期待される。他方、情報取得の精度やシステム障害時の対応など、運用上の課題にも注意が必要となる。「マイナ救急」は、地域を越えて情報を共有し、救急医療の質を底上げする国家的インフラの一環であり、今後の運用実績を踏まえ、医療DXの具体的成果として浸透するかが注目される。 参考 1) あなたの命を守る「マイナ救急」(総務省) 2) 救急搬送時、マイナ保険証活用 隊員が受診歴など把握し適切対応(共同通信) 3) 「マイナ救急」10月から全国で 受診歴や服用薬、現場で確認(時事通信) 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省厚生労働省が公表した「令和6年医療施設(動態)調査・病院報告」によれば、2024年10月1日現在、全国の一般病院で産婦人科や産科を掲げる施設は計1,245施設となり、前年より9施設減、34年連続の減少で統計開始以来の最少を更新した。小児科を有する一般病院も2,427施設と29施設減少し、31年連続の減少となった。全国的に病院数そのものが減少傾向にあり、とくに周産期・小児医療を担う診療科の縮小は地域医療体制に大きな影響を及ぼすとみられる。調査全体では、全国の医療施設総数は18万2,026施設で、うち活動中は17万9,645施設。病院は8,060施設で前年比62施設の減、一般病院は7,003施設と62施設の減、診療所は10万5,207施設で微増、歯科診療所は6万6,378施設で440施設の減となった。病床数でも全体で約1万4,663床減少し、とくに療養病床と一般病床が減少した。病院標榜科の内訳をみると、内科(92.9%)、リハビリテーション科(80.5%)、整形外科(69.1%)が多い一方で、小児科は34.7%、産婦人科15.0%、産科2.8%にとどまる。産婦人科と産科を合わせた比率は17.8%であり、地域により分娩を担う施設が極端に限られる状況が続いている。また、病院報告では、1日当たりの外来患者数が前年比1.7%減の121万2,243人と減少した一方、在院患者数は113万3,196人で0.8%増加し、平均在院日数は25.6日と0.7日短縮した。医療需要は依然高水準である一方で、入院期間短縮と医療資源の集約化が進む姿が浮かんだ。今回の結果は、産科・小児科医師の偏在や医師不足が長期的に続いている現実を裏付けるものであり、医師にとっては、地域における出産・小児救急の受け皿が細り続ける中で、救急搬送の広域化や勤務負担の増大が避けられない。各地域での分娩体制再編や周産期医療ネットワーク強化の重要性が一層高まっている。 参考 1) 令和6年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚労省) 2) 産婦人科・産科が最少更新 34年連続、厚労省調査(東京新聞) 3) 産婦人科・産科がある病院1,245施設に、34年連続の減少で最少を更新 厚労省調査(産経新聞) 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は9月25日、「令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要」を発表した。1ヵ月の医療費が1,000万円を超える件数は2,328件(前年度比+8%)で10年連続の最多更新となり、過去10年で6倍超に増加した。上位疾患の約8割は悪性腫瘍で、CAR-T療法や遺伝子治療薬などの登場が背景にある。最高額は約1億6,900万円で、単回投与型の薬剤を用いた希少疾患治療が占めた。これらの薬剤は患者に新たな治療選択肢を提供し、長期生存やQOL改善につながる一方で、健保組合の財政に直結する。健保連の制度により高額事例は共同で負担される仕組みだが、件数増加は拠出金を押し上げ、結果として保険料率や現役世代の負担増につながる。実際に2024年度の平均保険料率は9.31%と過去最高となり、1/4の組合は「解散ライン」とされる10%を超えた。臨床現場にとっても影響は現実に及ぶ。新規薬剤を希望する患者からの説明要請が増えており、医師は「なぜこの薬が高額なのか」「自分に適応があるのか」「高額療養費制度でどこまで自己負担が軽減されるのか」といった質問に直面している。加えて、長期投与が前提となる免疫療法や分子標的薬では、累積コストや再投与リスクについても説明が欠かせない。患者や家族が治療継続の是非を判断する際、経済的側面を含めた十分な情報提供が求められる。今後は、がん免疫治療の投与拡大、希少疾患への新規遺伝子治療薬導入などにより、高額レセプトはさらに増加すると予測される。薬価改定で一定の調整は行われるが、医療費全体に占める薬剤費の比重は確実に高まり、制度改革や患者負担の見直し議論は避けられない。現場の医師には、エビデンスに基づく適正使用とともに、経済的影響を含めた説明責任がより重くのしかかる局面にある。 参考 1) 令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要(健保連) 2) 高額レセプト10年連続で最多更新 24年度は2,328件 健保連(CB news) 3) 「1,000万円以上」の高額医療8%増 費用対効果の検証不可欠(日経新聞) 4) 綱渡りの健康保険 組合の4分の1、保険料率10%の「解散水準」に(同) 5) 健保1,378組合の半数近く赤字、保険料率が過去最高の月収9.3%…1人あたりの年間保険料54万146円(読売新聞) 6) 健保連 昨年度決算見込み 全体は黒字も 半数近くの組合が赤字(NHK) 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国米国トランプ大統領は9月22日、解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(パラセタモール)が「妊婦で自閉スペクトラム症(ASD)リスクを大幅に上げる」として服用自粛を促した。これに対し、わが国の自閉スペクトラム学会は「十分な科学的根拠に基づく主張とは言い難い」と懸念を表明している。米国産科婦人科学会(ACOG)も「妊娠中に最も安全な第一選択肢」と反論。WHO、EU医薬品庁、英国規制当局はいずれも「一貫した関連は確認されていない」とし、現行推奨の変更不要とした。一方、米国の現政権は葉酸関連製剤ロイコボリンのASD治療薬化にも言及したが、大規模試験の根拠は乏しい。わが国の医療現場にも余波は広がり、妊婦・家族からの不安相談が増加する懸念や、自己判断での服用中止による解熱の遅延、SNS起点の誤情報拡散が想定されている。妊娠中の高熱は、胎児に不利益を与え得るため、わが国の実務ではアセトアミノフェンは適応・用量を守り「必要最小量・最短期間」で使用するのが原則となっている。他剤(NSAIDs)は妊娠後期で禁忌・慎重投与が多く、安易な切り替えは避けるべきとされる。診療現場では、現時点で因果を支持する一貫した証拠はないこと、高熱の速やかな改善の利点、自己中断せず受診・相談すること、市販薬も含む総服薬量の確認を丁寧に説明することが求められる。ASDの有病増加には、診断基準変更やスクリーニング拡充も影響し、単一因子で説明できない点もあり、過度な警告は受療行動を阻害し得る。医師には、ガイドラインや専門学会の公的見解に基づく対応が求められる。 参考 1) 自閉症の原因と治療に関するアメリカ政府の発表に関する声明(自閉スペクトラム学会) 2) WHO アセトアミノフェンと自閉症「関連性は確認されず」(NHK) 3) トランプ政権“妊婦が鎮痛解熱剤 自閉症リスク高” 学会が反対(同) 4) トランプ氏「妊婦の鎮痛剤、自閉症リスク増」主張に日本の学会が懸念(日経新聞) 5) 解熱剤と自閉症の関連主張 トランプ大統領に批判集中(共同通信) 6) 「鎮痛剤が自閉症に関係」 トランプ政権が注意喚起へ(時事通信) 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪救急搬送の「選定療養費」徴収を導入した2つの自治体で、適正利用の進展が確認された。三重県松阪地区では、2024年6月~2025年5月に基幹3病院で入院に至らなかった救急搬送患者の一部から7,700円の徴収を開始した。1年間の救急出動は1万4,184件で前年同期比-10.2%、搬送件数も-10.6%。軽症率は55.4%から50.0%へ-5.4ポイント、1日50件以上の多発日は86から36日へ減少した。搬送1万4,786人(乳幼児193人を含む)のうち帰宅は7,585人(51.3%)、徴収は1,467人(全体の9.9%)。疼痛・打撲・めまいなどが多かった。並行して1次救急(休日・夜間応急診療所)受診が31%、救急相談ダイヤル利用が34%増え、受診先の振り分けが進んだ。茨城県の検証(2025年6~8月)でも、対象22病院の徴収率は3.3%(673/20,707)と限定的ながら、県全体の救急搬送は-8.3%、うち軽症などは-19.0%、中等症以上は+1.7%と、救急資源の選別利用が進んだ。近隣5県より減少幅が大きく、呼び控えによる重症化や大きなトラブルの報告は認められなかった。なお、電話相談で「出動推奨」だった例は徴収対象外とし、誤徴収は月1件程度で返金対応としている。現場の医師は、徴収対象と除外基準の周知徹底、乳幼児や高齢者などへの配慮のほか、1次救急・電話相談との連携による適正振り分け、会計時の説明の一貫性などが課題となる。今後は「安易な利用抑制」と「必要時にためらわず利用できる安心感」の両立を、医師と行政が協働して救急現場に反映させることが問われている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費の徴収に関する検証の結果について(概要版)(茨城県) 2) 一次二次救急医療体制あり方検討について(第四次報告)(松阪市) 3) 軽症者の救急搬送19%減 茨城県が「選定療養費制度」を検証(毎日新聞) 4) 選定療養費 軽症搬送、前年比2割減 6~8月 茨城県調査「一定の効果」(茨城新聞) 5) 救急搬送の一部患者から費用徴収、出動件数は1年間で10.2%減 松阪市「適正利用が進んだ」(中日新聞) 6) 救急車「有料化」で出動数1割減 「持続可能な医療に寄与」と松阪市(朝日新聞)

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