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1.

心不全への経カテーテル三尖弁修復術は有用か/NEJM

 重症三尖弁閉鎖不全症の患者に対する経カテーテル三尖弁修復術+薬物療法は薬物療法単独よりも、1年時点の全死因死亡、心不全入院、QOLの階層的複合評価項目に関して優れることが示され、また、3年時点の全死因死亡または心不全入院の複合リスクも低下させたことが示された。ドイツ・Ludwig-Maximilians-Universitat MunchenのJorg Hausleiter氏らTRIC-I-HF-DZHK24 Investigatorsが、同国29施設で行った非盲検無作為化試験の結果を報告した。重症三尖弁閉鎖不全症患者に対する経カテーテル三尖弁修復術の、臨床アウトカム(死亡および心不全入院など)への影響は依然として明らかになっていない。これまでに行われた2件の無作為化試験(経カテーテル三尖弁修復術vs.薬物療法)では、修復術群の1年時点のQOL改善は示されたが心不全入院や死亡の減少は示されなかった。また、2年時点の解析で心不全入院の減少が示唆されたが、修復術群の有用性を判断するにはデータが不十分であった。NEJM誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。severe以上重症患者対象、経カテーテル三尖弁修復術群vs.薬物療法単独 本試験では、少なくとも30日間の薬物療法(利尿薬を含む個別化至適用量による)を受けたが、重症三尖弁閉鎖不全症(5段階評価分類でsevere以上)を有し、将来的な心不全イベントリスクが高い患者(過去12ヵ月間の非代償性心不全の既往、または心腎症候群もしくは心肝症候群のいずれかに該当と定義)を対象とした。患者の選定および登録は各試験施設のハートチームの判断に委ねられ、ベースライン薬物療法に関する中央適格委員会の承認またはスクリーニングは不要とされた。なお、将来的な心不全イベントリスクの基準は、試験途中(2023年7月)にプロトコールに追加されたものである。 適格患者は、経カテーテル三尖弁修復術+薬物療法(三尖弁修復術群)または薬物療法単独(薬物療法群)に2対1の割合で無作為に割り付けられ、追跡評価を受けた。追跡評価は1ヵ月、12ヵ月、2年、3年の時点で行われた。 主要評価項目は、1つ目が1年時点の全死因死亡、心不全入院、QOLの複合で、win ratioに基づき階層的に評価が行われた。そして、有意な群間差が認められた場合に2つ目として、3年時点の全死因死亡もしくは心不全入院の複合について検証された。3年時点の全死因死亡または心不全入院のハザード比0.40 2022年3月~2025年6月に360例が無作為化された(三尖弁修復術群237例、薬物療法群123例)。被験者の平均年齢は80.3±6.4歳、女性が56.4%であった。 ベースラインにおける三尖弁閉鎖不全症の重症度は、severeが50.8%、massiveが34.2%、torrentialが10.3%で、平均左室駆出率は54.3±8.6%であった。また、NYHA心機能分類III/IV心不全が75.0%、過去1年間の心不全入院歴ありが55.0%で、81.7%が心腎症候群を、46.2%が心肝症候群を有していた。 1つ目の主要評価項目のwin ratioは2.42(95%信頼区間[CI]:1.76~3.33)で三尖弁修復術群が優れることが示された(p<0.001)。 3年時点での全死因死亡または心不全入院の回避率(Kaplan-Meier推定値)は、三尖弁修復術群52.4%(95%CI:43.2~63.6)、薬物療法群21.0%(95%CI:12.7~34.6)であった(全死因死亡または心不全入院のハザード比:0.40、95%CI:0.29~0.55、p<0.001)。 なお、安全性に関して、三尖弁修復術群では術後30日以内の重大有害事象の発現は14例(5.9%)であった。

2.

70歳以上の1次予防、スタチンは有益か?/NEJM

 地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照無作為化試験で、アトルバスタチンは主要心血管イベントリスクを抑制したが(追跡期間中央値5.9年時点)、障害のない生存期間の延長には寄与しなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のSophia Zoungas氏らSTAREE Investigatorsが、同国の一般診療所(general medical practice)で行った「STAREE試験」の結果を報告した。高リスク成人において、スタチンが心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低減させることは十分に確立されているが、臨床ガイドラインにおいて、70歳以上の高齢者へのスタチン処方を強く推奨する記述はなく、とくに75歳以上の高齢者への処方を推奨するエビデンスは乏しい。また、認知症や障害への影響に対するエビデンスも不足していることから、研究グループは、主要心血管イベントおよび障害のない生存へのアトルバスタチンの影響を評価した。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。アトルバスタチン40mgを1日1回vs.プラセボ STAREE試験では、心血管疾患、糖尿病、認知症の既往がない、地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象とした。 研究グループは被験者を、アトルバスタチン40mgを1日1回またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要評価項目は2つで、心血管死、非致死的心筋梗塞または脳卒中、冠動脈血行再建術の複合(主要心血管イベントへの影響を評価)と、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合(障害のない生存への影響を評価)で、階層的に評価された。主要心血管イベントは有意に減少、障害のない生存期間は延長せず 2015年7月~2023年3月に9,971例が無作為化された(アトルバスタチン群4,984例、プラセボ群4,987例)。被験者の平均年齢(SD)は74.7±4.5歳で、女性は51.9%であった。 ベースラインで、被験者の大半は現在飲酒の習慣があり、喫煙歴なしと申告した。服用薬数中央値は2(四分位範囲:1~4)で、最も多かった薬剤は降圧薬(46.3%)、胃酸関連疾患の治療薬(27.1%)などであった。過去にスタチン服用歴ありと報告した被験者は5.2%。既往歴として多かったのはがん、うつ病であった。また、認知機能スコアは良好であることが示され、88.7%の被験者が日常生活動作(ADL)の自立度を評価する修正Katz Indexの6項目について、いずれも困難はないと報告した。 追跡期間中央値5.9年後において、主要心血管イベントの発生はアトルバスタチン群297例(1,000人年当たり10.9イベント)、プラセボ群412例(1,000人年当たり15.5イベント)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.82、p<0.001)。 障害のない生存への影響を評価した、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合の発生は、アトルバスタチン群637例(1,000人年当たり21.6イベント)、プラセボ群676例(1,000人年当たり23.0イベント)であった(HR:0.94、95%CI:0.84~1.05、p=0.25)。 重篤な有害事象の発現は、アトルバスタチン群で131例(2.7%)、プラセボ群で129例(2.7%)に認められた。筋骨格系、肝胆道系、および糖尿病関連の有害事象はアトルバスタチン群でより多く認められた。

3.

ミュンヘンの熱気とアスピリンの行方~PREMIUM試験が語る学会と雑誌の歴史学~【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第100回

Congratulations!!2026年8月29日、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)のHot Line Sessionにおいて、近畿大学の中澤 学先生より「PREMIUM試験」の結果が発表され1)、同時に高橋 邦彰先生を筆頭著者としてThe New England Journal of Medicine(NEJM)誌に掲載されました2)。本試験は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者のPrimary PCIにおいて「PCI直後からアスピリンを抜いても大丈夫なのか?」というきわめて実践的な問いを検証したものです。国内69施設・約2,300例が登録され、プラスグレル単剤群と標準的なDAPT(アスピリン+プラスグレル)12ヵ月群に1:1で割り付けられました。1年後の複合エンドポイント(全死亡・心筋梗塞・脳卒中)の発生率は、プラスグレル単剤群11.0%に対し、DAPT群8.5%。結果として単剤療法の非劣性は証明されませんでした(HR 1.34、95%信頼区間:1.02~1.75、非劣性p=0.40)。昨今トレンドとなっている「アスピリン早期中止」や「P2Y12阻害薬単剤化」ですが、少なくともSTEMIの超急性期においてはPCI直後からのアスピリン省略戦略は支持できないという明確なメッセージを残した点に、本試験の大きな意義があります。「単なるNegative Trial」で終わらせない臨床的視点本試験を「非劣性が示せなかったからNegative」と切り捨てるのは早計でしょう。興味深いのは、単剤群で増加した血栓性イベントがステント血栓症ではなく、主に非責任病変によるものであったという点です。つまり、STEMI患者における急性期DAPTは「ステント閉塞の予防」にとどまらず、「全冠動脈のプラーク安定化」という重要な役割を担っていることを示唆しています。今後のサブ解析やさらなる知見の広がりに期待が膨らみます。「村祭り」から「ディズニーランド」、そして欧州の逆襲堅苦しい学術的解釈はこのあたりにして。3,000人超を収容する大ホールが超満員となり、立ち見客の熱気に包まれたHot Line Sessionの現場に立ち会いながら、小生はふと別の感慨に耽っていました。いまや循環器領域で世界で最も勢いのある学会といえば、間違いなくESCでしょう。小生が初めて参加した国際学会は、1990年11月に米国ダラスで開催されたAHA(American Heart Association)でした。当時のAHAはまさに「世界の中心」。規模、参加者数、演題の質、華やかな企業展示……そのすべてが規格外でした。日本の「村祭り」しか知らなかった若手医師が、いきなり本場の「ディズニーランド」に放り出されたような衝撃を受けたことを覚えています。当時のESCといえば、大変失礼ながら地味な存在でした。「世界を動かす重要な臨床試験はまず米国(AHA/ACC)で発表される」というのが当時の暗黙の了解だったのです。しかし、この30年で景色は一変しました。欧州の研究者たちは「素晴らしい研究を米国に持っていかれるのを指をくわえて見てなるものか」とばかりに、Late-Breaking Clinical TrialsやHot Line Sessionの改革を断行。世界中の重要試験を誘致する文化を育て上げました。今回のESC 2026でも、実に59本ものHot Line Trialが発表されています。学会の規模と熱量においては、もはやAHAに並ぶどころか、凌駕したと言っても過言ではありません。学会と雑誌が織りなす「主導権のねじれ」ただ、現地で観察していて実に興味深い現象がありました。学会の主役がESCへとシフトした一方で、その成果を世界へ拡散する「発信拠点」としては、依然として米国のNEJM誌が圧倒的なプレゼンスを誇っているという点です。今回のESCでも、重要試験の多くがNEJM誌へ同時掲載されました。欧州主導の学会で発表された成果が、アメリカの医学雑誌の手によって世界基準へと昇華されていく。一見すると不思議なねじれ現象ですが、これは「発表の場」として発展してきたESCの歴史と、200年以上にわたり臨床的信頼を蓄積してきた「知識の集積場所」としてのNEJMの歴史の違いを表しているのかもしれません。学会のイニシアチブと、論文メディアのイニシアチブは必ずしも一致しないのです。日本発のエビデンスが世界標準になる瞬間そう考えると、今回のPREMIUM試験の成功には二重の喜びがあります。第1に、日本発の大型臨床試験が世界最高峰のステージで満場の注目を浴びたこと。そして第2に、それがNEJM誌に掲載されることで、真の意味で「世界共有のエビデンス」として歴史に刻まれたことです。かつてダラスのAHA会場でただただ圧倒されていた1人の循環器医として、ESCの目覚ましい躍進をリアルタイムで体験できたことは感慨深いものがあります。そしてその歴史的舞台の真ん中に、日本から発信されたPREMIUM試験が存在したことを誇らしく思います。中澤先生、高橋先生をはじめとする研究グループの皆さまに心より敬意を表するとともに、本研究がひらく新たな臨床の扉に期待を寄せて筆を置きたいと思います。ESC 2026 Hot Line Session、中澤 学先生の発表1)ESC. Hot Line 3: PREMIUM trial. What were the results? :中澤先生インタビュー動画(YouTube)2)Takahashi K, et al. N Engl J Med. 2026 Aug 29. [Epub ahead of print]

4.

PCI施行STEMI患者、アスピリン投与は省略できるか/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、プライマリPCI施行前に開始した低用量プラスグレル単剤療法は、アスピリン+プラスグレルの抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に対して、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合に関して非劣性を示さなかった。近畿大学の高橋 邦彰氏らPREMIUM Trial Investigatorsが、国内69病院で実施した多施設共同非盲検無作為化試験「PREMIUM試験」の結果を報告した。欧米のガイドラインでは、出血リスクが高くない急性冠症候群患者には、虚血性イベントの2次予防としてPCI後少なくとも12ヵ月のDAPTが標準治療として推奨されている。一方で、ステント技術が進展し、強力なP2Y12阻害薬が開発され、イベント予防と出血リスクのバランスを取ることがますます困難になっており、こうした流れの中で、DAPT期間の短縮や、P2Y12阻害薬単剤療法による戦略が検討されている。STEMI患者は通常、虚血性イベントおよび出血イベントがいずれもプライマリPCI後早期に発生する。しかしながら、12ヵ月のDAPT標準治療とアスピリンを用いないアップフロント治療を直接比較した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合を評価 PREMIUM試験は、18歳以上、発症から12時間以内のSTEMIで、エベロリムス溶出プラチナクロムステントを用いたプライマリPCIが予定された、12ヵ月のDAPTに適応があった患者を適格とした。 研究グループは書面にて同意を得た後、患者を低用量プラスグレル単剤療法またはDAPT群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月治療を行った。 プラスグレル単剤療法群では、PCI前にアスピリン投与なしでプラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のプラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。DAPT群では、PCI前にアスピリン(162~200mg)+プラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のアスピリン(81~100mg)+プラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。 主要評価項目は、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合で、プラスグレル単剤療法群の非劣性について評価した。事前に規定した非劣性マージンはハザード比(HR)の片側95%信頼区間(CI)上限が1.50と定義された。 重要な副次評価項目は、12ヵ月時点の大出血(BARC出血基準のタイプ3[非致死的大出血]またはタイプ5[致死的出血])であり、主要評価項目の非劣性が示された場合に優越性を評価した。Kaplan-Meier推定発生率、プラスグレル単剤11.0%vs.DAPT 8.5% 2023年4月~2024年12月に2,268例が無作為化され、解析集団には2,216例が含まれた(プラスグレル単剤療法群1,109例、DAPT群1,107例)。両群の患者背景はバランスが取れており、平均年齢は69.4±12.5歳、男性は76.6%で、糖尿病併存者は38.5%、出血リスクが高い患者は35.9%であった。無作為化前に5.6%がアスピリン、3.1%がP2Y12阻害薬の投与を受けていた。病院到着から無作為化までの時間中央値は43.3分であった。 12ヵ月時点で全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の発生は、プラスグレル単剤療法群124例(Kaplan-Meier推定11.0%)、DAPT群94例(Kaplan-Meier推定8.5%)であった(HR:1.34、95%CI:1.02~1.75、非劣性のp=0.40)。 大出血は、プラスグレル単剤療法群61例(Kaplan-Meier推定5.6%)、DAPT群92例(Kaplan-Meier推定8.4%)で認められた(HR:0.66、95%CI:0.47~0.91)。definiteもしくはprobableのステント血栓症(プラスグレル単剤療法群1.4%、DAPT群1.5%)および重篤な有害事象(それぞれ17.2%、16.5%)が報告された患者の割合は、両群で同程度であった。

5.

たこつぼ症候群とACSの早期鑑別、新診断スコアBioTAKが高い鑑別能

たこつぼ症候群(TTS)は胸痛、心電図異常、心筋バイオマーカー上昇を呈し、急性冠症候群(ACS)と臨床像が重なる。現行の診断では、臨床評価や精神・神経疾患歴、反復心画像検査、責任冠動脈病変の除外のための侵襲的冠動脈造影(ICA)が中心となり、早期鑑別が課題となっている。今回、スイス・チューリッヒ大学のVictor Schweiger氏らがICA前のTTSとACSの早期鑑別を支援するバイオマーカーに基づく診断スコア(BioTAK)を開発・外部検証した結果を、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究では、ACSまたはTTSの患者3,615例を対象に、ICA前に採取した血液で既存および新規の心血管バイオマーカーを測定した。BioTAKは、開発コホート1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)で、機械学習による特徴量選択とロジスティック回帰を用いて作成され、独立した外部検証コホート1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)で検証された。主要な診断アウトカムは最終診断としてのTTSで、AUC、キャリブレーション、事前設定したrule-in/rule-out閾値による診断性能を評価した。主な結果は以下のとおり。・開発コホートは1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)、検証コホートは1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)であった。・TTSはACSと比較して女性の割合が高く(開発:91.3%vs.19.3%、検証:85.7%vs.21.2%、いずれもp<0.001)、年齢も高かった(開発:70.5±13.8歳vs.64.0±12.5歳、検証:70.0±14.0歳vs.63.5±12.5歳、いずれもp<0.001)。・左室駆出率中央値もTTSで低かった(開発:44%vs.51%、検証:41%vs.50%、いずれもp<0.001)。・NT-proBNP中央値はTTSで高く、開発コホートでは2,369ng/L(四分位範囲[IQR]:384~5,748)vs.281ng/L(98~1,077)、検証コホートでは1,553ng/L(536~5,103)vs.352ng/L(100~1,242)であった。一方、hsTnTは両疾患で大きな差はなく、CKはACSで高かった。・新規バイオマーカーでは、sLOX-1中央値がTTSで低く(開発:4pg/mL vs.38pg/mL、検証:3pg/mL vs.33pg/mL、いずれもp<0.001)、PAM中央値はTTSで高かった(開発:87ng/mL vs.72ng/mL、検証:83ng/mL vs.73ng/mL、いずれもp<0.001)。・LDL-C中央値はTTSで低かった(開発:101mg/dL vs.118mg/dL、p<0.001、検証:104mg/dL vs.120mg/dL、p=0.007)。・機械学習による変数重要度解析では、sLOX-1とPAMがTTS診断の予測因子として高く評価された。最終的なBioTAKスコアは、NT-proBNP、PAM、sLOX-1、LDL-C、性別の5項目で構成され、0~60点で評価された。・BioTAKの鑑別能は、開発コホートでAUC 0.97(95%信頼区間[CI]:0.95~0.98)、外部検証コホートでAUC 0.93(95%CI:0.90~0.96)であった。キャリブレーションは良好であった。・BioTAKは、精神・神経疾患歴などを含む既存のInterTAK診断スコアに対して非劣性を示した(delta AUC:0.00、95%CI:-0.01~0.02、p<0.001)。また、Dagrenatらのスコア(delta AUC:0.04、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、NT-proBNP/hsTnT比、hsTnT/CK比、NT-proBNP/CK比に対しても非劣性を示した。・開発コホートでは、BioTAKにより1,583例(86.8%)がTTS低確率(27点未満)、196例(10.8%)が中間確率(27~32点)、44例(2.4%)が高確率(33点以上)に分類され、1,627/1,823例(89.2%)が低確率または高確率群に層別化された。33点以上によるTTS rule-inの特異度は99.0%(95%CI:98.4~99.3)、陽性的中率は59.1%(44.4~72.3)であった。36点以上では特異度99.9%(99.7~100)、陽性的中率88.9%(56.5~98.0)であった。著者らは、「TTSはACSと異なる病態生理を反映する疾患特異的なバイオマーカープロファイルで特徴付けられ、客観的なBioTAKスコアは、ACS疑いで受診した患者におけるTTSの早期同定、診断経路の効率化、回避可能な侵襲的検査の低減に寄与しうる」とまとめた。

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ESC心不全GL改訂、HFmrEF廃止・「急性心不全」は「非代償性心不全」へ/ESC2026

 欧州心臓病学会(ESC)による新たな心不全診療ガイドライン「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」がEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号でオンライン公開され1)、8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において改訂の要点が解説された2)。今回の改訂では、疾患の予防と早期治療の徹底、左室駆出率(LVEF)に基づく分類の簡素化、「急性心不全」から「非代償性心不全」へ名称変更、新たな治療分類(FMT・AMT・GDIT)の導入など、時代に即した大幅な再定義が行われている。 本ガイドラインにおける主な改訂のポイントは以下のとおり。【心不全の分類・定義の刷新】LVEFに基づく分類の簡素化(HFmrEFの廃止) 従来、LVEF 41~49%の病態は「軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されていたが、今回の改訂でこの分類が廃止された。HFmrEF患者は、LVEF低下例(HFrEF)と同様の病態生理を共有し、同様の治療から恩恵を受けることが明らかになったためである。これにより、心不全のフェノタイプは以下の2つにシンプル化された。新LVEF分類・LVEFが低下した心不全(HFrEF):LVEF 50%未満で、心不全の症状・徴候を有する病態。・LVEFが保たれた心不全(HFpEF):LVEF 50%以上で、心不全の症状・徴候に加え、構造的・機能的異常やナトリウム利尿ペプチドの上昇を認める病態。予防・早期介入のためのステージ分類導入 発症予防と早期治療の徹底を目的として、心不全リスク段階(ステージA)から、前心不全(ステージB)、症候性心不全(ステージC)、重症/進行性心不全(ステージD)に至る段階的なステージ分類が採用された。また、高血圧またはステージBの心不全患者において、心不全発症リスクを低減するため、収縮期血圧130mmHg未満を目指す厳格な血圧管理がクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。「急性心不全」から「非代償性心不全」への名称変更 従来「急性心不全(Acute HF)」と呼ばれていた病態は、心機能の徐々の低下に伴い代償機構が破綻した状態を正確に表現するため、「非代償性心不全(Decompensated HF:DHF)」へ名称が変更された。DHFの初期管理においては、尿中ナトリウムモニタリングに基づく利尿薬調整(クラスIIb)や、初期安定化後のSGLT2阻害薬の院内早期導入(クラスI)が盛り込まれている。【治療分類の刷新と薬物治療のアップデート】「GDMT」から動的な3分類(FMT・AMT・GDIT)への移行 長年使用されてきた「ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)」という用語が見直された。新規薬剤や医療デバイスの承認に合わせて動的(dynamic)に対応し、常に最新の管理を行えるよう、治療法が以下の3クラスに再定義された。治療クラスの新たな3分類・基礎的薬物治療(FMT:Foundational medical therapy):対象を限定しない心不全患者全体に対して、罹患率や死亡率の低減に関する最も強いエビデンスを持つクラスI推奨の薬物治療。 ―HFrEFのFMT:β遮断薬、ACE阻害薬/ARNI/ARB、MRA、SGLT2阻害薬の4薬剤。  ―HFpEFのFMT:MRA、SGLT2阻害薬の2薬剤。・追加的薬物治療(AMT:Additional medical therapy):特定サブ集団における転帰改善、または症状・QOL改善に特化したエビデンスを持つ薬物治療(クラスIIa/IIb推奨、または特定の症状改善目的のクラスI推奨)。・ガイドラインに基づく介入治療(GDIT:Guideline-directed interventional therapy):推奨されるすべての心臓植え込み型電子デバイス(CIED)や経カテーテル治療などのインターベンション治療。FMTの主な推奨事項・全LVEF領域におけるSGLT2阻害薬とMRAの推奨 SGLT2阻害薬およびミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、LVEFを問わずすべての有症候性心不全患者に対し、心不全入院または心血管死のリスク低減を目的としてクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。具体的な対象薬剤は以下のとおり。・SGLT2阻害薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン・MRA ―HFrEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン、エプレレノン) ―HFpEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン)、非ステロイド性MRA(フィネレノン) なお、慢性心不全の管理において、FMTは症状やバイタルサイン、血液検査を参考に少なくとも1~2週間ごとに漸増し、目標用量に達することがクラスIで推奨された。また、無症状化やLVEF改善が得られた場合であっても、原則として最高耐容用量でのFMT継続がクラスIで推奨されている。AMTの主な推奨事項・肥満を伴うLVEF 45%以上の心不全に対するGLP-1受容体作動薬 BMI 30kg/m2以上かつLVEF 45%以上の肥満を伴う有症候性心不全患者(糖尿病の有無を問わない)に対し、体重減少、運動耐容能・QOLの改善を目的としてセマグルチドまたはチルゼパチドの投与がクラスIIa(エビデンスレベルB1)で推奨された。・慢性心不全へのAMT 最適なFMTを実施しても有症候性のHFrEF(LVEF 40%以下)患者に対し、心不全入院リスク低減目的で強心配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)の追加がクラスIIaで推奨された。また同様に、FMT 治療後のHFrEF(LVEF 45%未満)患者に対してはベリシグアトの追加もクラスIIbで考慮される。GDITの主な推奨事項・経カテーテル的Edge-to-Edge修復術(TEER) 最適なFMTや適応のある心臓再同期療法(CRT)を実施しても持続する、血行動態が安定した重症二次性僧帽弁閉鎖不全症を伴う有症候性HFrEF患者に対し、心不全入院リスク低減およびQOL改善を目的としたTEERがクラスI(エビデンスレベルB1)で推奨された。【早期介入の重要性と患者参加型医療への展望】 ガイドライン作成タスクフォースの共同委員長を務めたLars Kober氏(デンマーク・コペンハーゲン大学病院)は、「高齢化や肥満などのリスク因子の増加に伴い、心不全の全体的な疾病負担は高まると予想される。今回のガイドラインで特に強調したかったのは、予防と可能な限り早期からの治療開始の重要性である」とプレスリリースで述べている。さらに新たな治療用語の導入について、「10年以上前に導入された『GDMT』という用語は治療の進歩に伴い、今日において何を指すのか曖昧になっていた。新用語(FMT・AMT・GDIT)は、今後新たな薬剤やデバイスが承認された際にも柔軟に対応し、常に時代に即した概念であり続けられるよう設計されている」と解説している。 同じく共同委員長を務めたMarianna Adamo氏(イタリア・ブレシア大学)は、LVEF分類の簡素化について「軽度低下(HFmrEF)という分類は、従来臨床試験に含まれにくかった患者に光を当てるため導入されたが、これらの患者がHFrEFと同様の病態生理を共有し、同様の治療恩恵を受けることが判明したためシンプル化した」と説明している。また、「急性」から「非代償性」への変更点については「突然悪化するのではなく、心臓が欠陥を補いきれなくなるまで徐々に機能低下していく病態を明確にするための改訂である」と付言した。 本ガイドラインには患者教育とセルフケアに関するセクションが含まれている。Adamo氏は「患者教育とライフスタイルのアドバイスは、患者自身が心不全を管理し、医療者と意思決定を共有する力を与える。患者が自身のケアのパートナーとなることを目指し、患者向けバージョンのガイドラインも公開されている3)」と結んでおり、医療者と患者が一体となった包括的な心不全管理の重要性がさらに高まると期待される。

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心筋梗塞の定義、3分類へ刷新/ESC2026

心筋梗塞の診断は、高感度心筋トロポニン検査や冠動脈・心臓イメージングの普及により精緻化してきた一方、従来のタイプ分類は日常診療で一貫して適用しにくい場面があった。そこで今回、英国のNicholas L. Mills氏を筆頭とするESC/ACC/AHA/WHF合同タスクフォースは、心筋梗塞のユニバーサル定義第5版(The Fifth Universal Definition of Myocardial Infarction:UDMI)を策定し、心筋梗塞を病態生理と臨床状況に基づき3分類へ再編、急性・慢性心筋障害との区別や診断基準などを更新した。本声明は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)での発表とともにEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号にも掲載された。本声明は、欧州心臓病学会(ESC)、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、世界心臓連合(WHF)による共同コンセンサス文書である。12ヵ国5大陸から選出された多職種の専門家タスクフォースが、既存の科学的知見とエビデンステーブルに基づいて作成し、18人の査読委員、患者パネル、欧州心臓胸部外科学会(EACTS)、米国胸部外科学会(STS)などによる独立査読を経て承認された。主な検討項目は、心筋梗塞の臨床定義、急性・慢性心筋障害、心筋梗塞分類、心筋トロポニンと心電図の解釈、冠動脈・心臓イメージング、特殊状況、ICD-11コードとの整合性であった。主な改訂内容は以下のとおり。1. 分類体系の再編 数値分類(1~5型)から病態生理・臨床状況に基づく3分類へ。従来の1型~5型という数値分類は廃止され、臨床評価および病態生理に沿った以下の3つの分類に整理された。(1)原発性心筋梗塞(Primary Myocardial Infarction) 定義・特徴:急性冠動脈疾患(急性冠病変)により自然発生的に生じる心筋梗塞である。病態にはアテローム血栓症のほか、自然冠動脈解離(SCAD)、冠動脈塞栓、冠攣縮(スパズム)、および血行再建から30日超を経過して発生した再狭窄・ステント血栓症・バイパスグラフト不全が含まれる。【実臨床への影響】 従来の2型に含まれていたSCAD、冠塞栓、冠攣縮などが「原発性」に統合された。これにより、急性冠病変を評価・同定するための冠動脈造影(CAG)や血管内イメージング(OCT/IVUS)、機能的評価の実施がより強力に推奨される。また、30日を超える遅発性のステント血栓症やグラフト不全は、手技合併症ではなく「de novoの原発性疾患」として扱われる。(2)2次性心筋梗塞(Secondary Myocardial Infarction) 定義・特徴:急性冠病変以外の「別の急性疾患」に伴う酸素需給ミスマッチ(頻脈性不整脈、重症高血圧、低酸素血症、貧血、ショックなど)によって生じる急性心筋虚血・障害である。【実臨床への影響】 単に「トロポニン上昇+虚血症状/心電図変化」のみでは確定診断とせず、可能な限りイメージングなどによる客観的エビデンスを求めることで過剰診断を防ぐ。診断の確定には、「急性冠病変を伴わない閉塞性冠動脈疾患(CAGで70%以上の狭窄/生理学評価FFR/iFRなどで血流制限を伴う50%以上の狭窄)の確認」や「画像検査(心エコー/心臓MRI[CMR]など)での虚血パターンに一致する新規の局所壁運動異常(RWMA)もしくは心筋viability消失」の証明が必要である。これらが証明されない、あるいは画像評価で正常な場合は「急性心筋障害」などにとどめ、不要な心筋梗塞診断や不適切な2次予防治療の介入を回避する。(3)手技関連心筋梗塞(Procedure-related Myocardial Infarction) 定義・特徴:経皮的(PCI、TAVIなど)または外科的心臓手技(CABG、弁手術など)の合併症として「30日以内」に生じる心筋梗塞である。【実臨床への影響】 第4版で設けられていた「99パーセンタイル上限基準値の5倍(PCI)/10倍(CABG)」といった統一カットオフ値は廃止された。術後のトロポニン上昇はほぼ全例でみられるため、バイオマーカーのみで機械的に診断することは取り止める。そして、カテーテル治療か外科手術かによらず共通の基準が適用される。確定診断条件として、「冠動脈合併症(枝閉塞、解離、no-reflow現象、ステント血栓症、グラフト閉塞など)の造影所見」または「心筋画像検査での新規RWMA/viability消失の証明」が必要である。ただし、手技中の発生、あるいは急性心筋梗塞に対する治療手技中に生じた場合は、上記両方を満たすことが求められる。2. 急性・慢性心筋障害の定義更新と性別基準値・急性心筋障害:心筋トロポニン(hs-cTn)IまたはTの「上昇および/または低下(変動)」を認め、少なくとも1つの値が性別ごとの99パーセンタイル上限値を超える場合と定義される。・慢性心筋障害:安定した臨床状況下で、2回以上のhs-cTnが性別ごとの99パーセンタイル上限値を持続的に超える場合と定義される。【実臨床への影響】 高感度hs-cTn I/T検査において、性別ごとの99パーセンタイル上限値(Sex-specific thresholds)を厳格に適用することが強調された。女性の基準値は男性より低く設定されているため、従来の共通基準値で生じていた女性の急性心筋障害・心筋梗塞の過小診断や治療遅延を防ぐ効果が期待される。3. MINOCA(非閉塞性冠動脈を伴う心筋障害)の位置付け変更 MINOCAの再定義:従来「Myocardial Infarction with Non-obstructive Coronary Arteries(非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞)」とされていた名称が、「Myocardial Injury with Non-obstructive Coronary Arteries(非閉塞性冠動脈を伴う心筋障害)」へ更新された。【実臨床への影響】 CAGで50%以上の有意狭窄を認めない患者に適用される暫定的な「作業診断」であり、最終診断ではないことが明確化された。さらに、発症後2週間以内にCMRを実施することが推奨される。CMR施行後、実際に「心筋梗塞」と確定診断される割合は22~27%程度にとどまり、多くは急性心筋炎やタコツボ症候群などの非虚血性心疾患と同定されるため、早期CMRによる正確な病因鑑別と適切な治療選択が求められる。 上記以外にも、心電図基準およびそのほかの変更点として、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の心電図基準(V2~V3誘導:40歳未満男性≧2.5mm、40歳以上男性≧2mm、女性[全年齢]≧1.5mm、その他の誘導:男女問わず≧1mm)、急性冠閉塞(ACO)を示唆する等価心電図の変化、ICD-11コードとの完全整合などが示された。

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キシリトールが心血管イベント増加と関連/ESC2026

 人工甘味料のキシリトールは食品や口腔ケア製品などに広く使用されているが、一般集団における長期的な心血管安全性に関するエビデンスは限定的である。今回、カナダ・マギル大学のThomas M. Zheng氏らの研究グループが、北米と欧州の2つの大規模前向き観察コホートのデータを用いて解析した。その結果、血中キシリトール濃度が高い一般集団において、主要心血管イベント(MACE)リスクが有意に上昇することが示された。本研究結果は、ドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において8月29日に発表された。 研究グループは、カナダの「Canadian Longitudinal Study on Aging(CLSA)」から7,651例(追跡期間6年)、および欧州の「European Prospective Investigation into Cancer(EPIC)-Norfolk研究」から1万59例(追跡期間30年)の計1万7,710例の非標的メタボロミクス(untargeted metabolomics)データを解析した。血中キシリトール濃度により四分位群(Q1~Q4)に分類し、初回MACE(心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合)発症リスクとの関連を評価した。解析にはCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙状況などの従来の心血管リスク因子を補正した調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者1万7,710例(平均年齢60.9歳)において、追跡期間中にCLSAコホートで2,950例、EPIC-Norfolkコホートで5,670例のMACEが発生した。・従来の心血管リスク因子を調整後、血中キシリトール濃度最高四分位群(Q4)は最低四分位群(Q1)と比較して、MACEリスクが有意に高かった。-CLSAコホートにおけるaHR:1.47(95%CI:1.15~1.86、p=0.002)。-EPIC-NorfolkコホートにおけるaHR:1.18(95%CI:1.09~1.27、p<0.0001)。・中間四分位群(Q2・Q3)を含めた解析においても、両コホートで血中キシリトール濃度が高くなるほどMACE発生率が高まる用量依存的な関連が示唆された。・サブグループ解析においても、ベースライン時の患者背景や既存の心血管メタボリック因子にかかわらず、一貫したMACEリスクの増加が認められた。 著者らは、過去の研究で示されたキシリトールの血小板凝集・血栓形成促進作用に触れ1)、明白な心血管リスク因子を持たない1次予防対象者においてもキシリトールが残留リスクを及ぼす可能性があると指摘している。発表者であるMarco Witkowski氏は、「人工甘味料は砂糖より健康に良いと考え消費されており、規制当局からも一般に安全と見なされている。しかし、一般集団における今回の長期的な知見は、われわれがキシリトールの心血管系の安全性についていかに知見が不足しているかを浮き彫りにしている」と、ESCのリリースの中で述べている。そのうえで、製品中のキシリトール含有量が増加し続ける現状を踏まえ、さらなる検証が必要であると結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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低用量リバーロキサバン、LAAO後の無症候性脳塞栓の減少や認知機能維持に効果/ESC2026

心房細動(AF)患者に対する左心耳閉鎖術(LAAO)後の抗血栓療法において、長期維持療法の最適なレジメンは確立されていない。今回、LAAO成功後のAF患者を対象に、低用量リバーロキサバン(10mg/日)が抗血小板療法と比較して無症候性脳塞栓(SCE)を減少させ、認知機能を維持しうるかを検討する「HALO-SCE試験」を実施。その結果、低用量リバーロキサバンは抗血小板療法と比較し、新規SCEの発生率を有意に低下させ、認知機能低下の抑制効果が認められることが明らかになった。本研究結果は、中国・南京医科大学第一附属病院のKexin Wang氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究は、研究者主導の前向き多施設共同無作為化比較試験である(アウトカム評価は盲検下)。中国本土の3施設において、2022年12月~2025年2月にWatchmanまたはWatchman FLXを用いた経皮的LAAOを受け、術後45日時点の心臓CTまたは経食道心エコー(TEE)でデバイス関連血栓(DRT)がなく、有意なデバイス周囲リーク(3mm以上)を認めないLAAO成功例164例を対象とした。対象患者は、低用量リバーロキサバン(10mg/日)群または抗血小板療法群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。全例でLAAO直後から45日評価まではリバーロキサバン15mg+アスピリン100mgが投与された。無作為化後、抗血小板療法群では180日までアスピリン100mg+クロピドグレル75mg/日(DAPT)を、その後365日までアスピリン単剤(SAPT)が投与された。拡散強調MRI(DW-MRI)および認知機能評価(MMSE、MoCA)は、LAAO後90日、180日、365日時点で実施した。主要評価項目は追跡期間中に新たに検出されたSCEの患者単位の発生率とし、副次評価項目は認知機能の推移、SCE病変負荷(SCE burden)、複合臨床アウトカム(全死亡・臨床的血栓塞栓イベント・大出血)などとした。主な結果は以下のとおり。・低用量リバーロキサバン群82例、抗血小板療法群82例に割り付けられた。評価可能な追跡MRIはリバーロキサバン群80例、抗血小板療法群78例で得られ、評価可能な認知機能評価は各群80例であった。・全体の平均年齢は69.2±7.1歳、女性36.6%、脳卒中既往77.4%であった。平均CHA2DS2-VAScスコアは4.2±1.3、平均HAS-BLEDスコアは2.4±0.7であった。・追跡期間中のMRI実施回数は、リバーロキサバン群2.4±0.7回、抗血小板療法群2.3±0.8回であり、有意差は認められなかった(p=0.328)。・新規SCEの患者単位の発生率は、リバーロキサバン群12.2%(10例)で、抗血小板療法群31.7%(26例)より有意に低かった。・新規SCEが2個以上検出された患者割合は、リバーロキサバン群11.0%(9例)、抗血小板療法群25.6%(21例)で、患者ごとの累積病変数の分布も両群間で有意に異なった。・累積病変径が10mm超の患者は、リバーロキサバン群では認められなかったのに対し、抗血小板療法群では20.7%に認められた。・認知機能低下(MoCAスコア2点以上の低下)は全体で20.0%(32例)に発生し、リバーロキサバン群5.0%(4例)、抗血小板療法群35.0%(28例)であった。・365日時点のモデル推定による群間差は、MMSEで2.56点(95%信頼区間[CI]:1.11~4.01、p<0.001)、MoCAで2.67点(95%CI:1.07~4.26、p=0.001)と、いずれもリバーロキサバン群で良好であった。・事前に規定した複合臨床アウトカムは、リバーロキサバン群2.4%(2例)、抗血小板療法群11.0%(9例)に発生した。臨床的血栓塞栓イベントはそれぞれ1.2%、7.3%、大出血は0%、3.7%であった。・12ヵ月時点の治療継続率は、リバーロキサバン群95.1%、抗血小板療法群85.4%であった。本研究結果について著者らは、「45日時点で成功が確認されたLAAO後の経口抗凝固療法適格患者において、低用量リバーロキサバン(10mg/日)は抗血小板療法と比較して新規SCEの患者単位の発生率を低下させ、12ヵ月までの認知機能の推移も良好で、複合臨床イベントも数値上少なかった」とまとめた。

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LDL-C<55mg/dLでもMACE再発、リスク因子は?/ESC2026

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防では、超高リスク患者においてLDL-C<1.4mmol/L(55mg/dL)の達成が推奨されている。一方で、LDL-Cを良好に管理しても動脈硬化の進展や心血管イベントの再発は起こりうる。今回、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後にLDL-C<1.4mmol/Lを達成した冠動脈疾患(CAD)患者におけるASCVD再発の臨床的特徴を検討した結果、主要心血管イベント(MACE)は6.2%に発生し、動脈硬化性疾患(polyvascular disease:PVD)がMACEと強く関連する一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/L(40mg/dL)の達成はMACEリスク低下と関連していたことが明らかになった。本研究結果は、国立循環器病研究センター 循環器内科の片岡 有氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)の2次予防のセッションで発表、Journal of Clinical Lipidology誌2026年8月号にも掲載された。本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日にPCIを受けたCAD患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。PCI後2ヵ月時点のLDL-Cデータがない患者、3年時点の臨床フォローアップがない患者、PCI後2ヵ月以内にMACEを発症した患者、非動脈硬化性のCAD患者などを除外。PCI後2ヵ月時点でLDL-C<1.4mmol/Lを達成した患者を解析対象とし、MACE発生例と非発生例の臨床背景、脂質低下療法、リスク因子管理を比較した。主要評価項目は、心臓死、非致死的心筋梗塞、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建からなるMACEとした。主な結果は以下のとおり。・解析対象は780例で、平均年齢70.1歳、男性81.7%であった。高血圧は73.7%、脂質異常症は65.2%、2型糖尿病は37.1%、慢性腎疾患は50.3%に認められ、心筋梗塞既往は11.9%、多枝病変は31.0%であった。・観察期間中央値1,632日(四分位範囲[IQR]:1,011~2,502)で、MACEは48例(6.2%)に発生した。内訳は、心臓死1.1%、非致死的心筋梗塞1.4%、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建4.7%であった。・LDL-C<1.4mmol/L達成後に発生したMACEの81.2%(39/48例)は、PCI後2年以内に発生した。また、心臓死9例はすべてPCI後6ヵ月以内に発生した。・MACE発生例では、非発生例と比較してPVDの割合が高かった(72.9%vs.17.3%、p<0.001)。下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)もMACE発生例で多く(54.2%vs.4.0%、p<0.001)、CAD+脳血管疾患(CVD)+LEADの併存も高頻度であった(12.5%vs.1.6%、p<0.001)。一方、従来の冠危険因子および多枝病変などの臨床的特徴に有意差はみられなかった。・PCI後2ヵ月時点で、全体の94.8%がスタチン、73.3%が高強度スタチンで治療されていた。エゼチミブの使用はMACE発生例で非発生例より少なかった(45.8%vs.63.2%、p=0.023)。PCSK9阻害薬の使用割合は、MACE発生例4.1%、非発生例5.1%であった(p=0.770)。・PCI後2ヵ月時点で治療中LDL-C<1.0mmol/Lを達成していた割合は、MACE発生例で非発生例より低かった(16.7%vs.33.2%、p=0.018)。治療中LDL-CはMACE発生例で数値的に高かった(44.1±10.5 vs.41.6±9.3mg/dL、p=0.074)。・多変量Cox解析では、PVDがMACE発生と独立して関連していた(ハザード比[HR]:10.74、95%信頼区間[CI]:5.65~20.39、p<0.001)。一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.37、95%CI:0.17~0.80、p=0.010)。・脂質低下療法の強度を追加調整したモデルでも、PVD(HR:11.02、95%CI:5.80~20.93、p<0.001)およびLDL-C<1.0mmol/L(HR:0.39、95%CI:0.18~0.85、p=0.019)の関連は一貫していた。・PVDの表現型別では、CAD単独を基準とした場合、CVD併存はMACEリスク上昇と有意に関連しなかった(HR:1.63、95%CI:0.46~5.75、p=0.447)。一方、LEAD併存はMACEリスク上昇と強く関連し(HR:21.03、95%CI:10.74~41.17、p<0.001)、CVD+LEAD併存でも同様であった(HR:23.75、95%CI:8.51~66.26、p<0.001)。・PVDを有する162例では、32.1%がLDL-C<1.0mmol/Lを達成していた。PVD患者において、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACE発生頻度の低下と関連し(Log-rank p=0.032)、多変量解析でもMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.36、95%CI:0.14~0.87、p=0.024)。本研究結果について著者らは、LDL-C<1.4mmol/Lを達成したCAD患者においても心血管リスクは残存しており、とくにPVDはMACE発生と独立して関連していたとまとめた。また、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/LがMACEリスク低下と関連していたことから、CAD患者におけるASCVD再発予防では、さらに低いLDL-C目標を考慮しうると結論付けた。

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肺動脈性肺高血圧症、ralinepagが臨床的悪化リスクを半減/Lancet

 現在の標準治療を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、ralinepagはプラセボと比較し、臨床的悪化の初回イベントリスクを有意に低下させたが、有害事象による治療中止の発現割合は高かった。米国・ミシガン大学のVallerie V. McLaughlin氏らADVANCE OUTCOMES Investigatorsが、30ヵ国の169施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「ADVANCE OUTCOMES」の結果を報告した。PAHは肺血管抵抗の上昇を特徴とする希少かつ進行性の疾患であり、右心不全や早期死亡に至る可能性がある。ralinepagは選択的プロスタサイクリン(IP)受容体作動薬で、1日1回経口投与のPAH治療薬として開発された。Lancet誌オンライン版2026年7月28日号掲載の報告。主要評価項目は臨床的悪化 研究グループは、2022欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS)ガイドラインに基づきPAHと診断され、平均肺動脈圧>20mmHg、肺動脈楔入圧≦15mmHg、肺血管抵抗>2Wood単位、WHO機能分類クラスII~IVの18歳以上の患者を、ralinepag群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化の層別因子は、ベースラインにおける6分間歩行距離(6MWD)、PAHの病因、およびPAHに対する経口併用療法であった。治験の依頼者、患者、および治験の実施に直接関与するすべての担当者は、試験薬およびすべての割り付けについて盲検化された。 投与は1日1回50μgから開始し、治験責任医師の判断により最大耐量に達するまで毎週50μg単位で増量調整した。 主要評価項目は、臨床的悪化の初回イベント発生であった。臨床的悪化は全死因死亡、PAHの悪化・右心不全・またはその両方による入院、非経口または吸入プロスタサイクリン製剤の投与開始、疾患進行または長期的な臨床反応不十分の複合と定義した。 有効性解析対象集団は、無作為化されたすべての患者(FAS)、安全性解析対象集団はFASのうち試験薬を少なくとも1回投与された患者とした。ralinepagはプラセボと比較して臨床的悪化のリスクを55%有意に低下 2019年1月24日~2025年6月20日に、スクリーニングを受けた1,037例中728例が登録され無作為化された。全例が試験薬の投与を1回以上受けたが、規制上の課題およびデータの完全性に関する懸念から中国の施設で無作為化され治療を受けた41例を除外し、687例が有効性および安全性の解析対象集団に包含された(ralinepag群350例、プラセボ群337例)。患者背景は、ベースラインの6MWD平均値は438.9m(SD 104.8)で、548例(80%)がPAHに対する2剤併用療法を受けていた。 追跡期間中央値は、ralinepag群85.0週(四分位範囲[IQR]:27.6~160.9)、プラセボ群78.4週(IQR:34.6~137.0)であった。 臨床的悪化の初回イベントは、ralinepag群で350例中64例(18%)、プラセボ群で337例中121例(36%)に認められ、ハザード比は0.45(95%信頼区間:0.33~0.62、p<0.0001)であった。 臨床的悪化の構成要素で群間差が数値的に最も大きかったのは、疾患進行、非経口または吸入プロスタサイクリン製剤の投与開始、長期的な臨床反応不十分であった。 治療中止の主な理由は有害事象で、有害事象による治療中止はralinepag群で65例(19%)、プラセボ群で10例(3%)に発現した。重篤な有害事象の発現は、ralinepag群で98例(28%)、プラセボ群で104例(31%)、死亡に至った有害事象はそれぞれ15例(4%)および14例(4%)に認められた。

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PCI実施の急性冠症候群患者、LDL-C40未満でMACEリスク最小化/CVIT

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者において、PCI後早期におけるLDL-C 40mg/dL未満の達成は、長期的な主要心血管イベント(MACE)リスクの最小化に直結し、慢性冠症候群(CCS)患者と比較してもはるかに大きな臨床的恩恵をもたらすことが明らかになった。本結果は片岡 有氏(国立循環器病研究センター 循環器内科)が2026年7月16~18日に開催された第34回日本心血管インターベンション治療学会のLate Breaking Clinical Trials 1にて発表し、JACC Asia誌オンライン版2026年7月17日号に同時掲載された。一律の管理目標から「臨床病態に応じた個別化」へ 現行の欧州心臓病学会(ESC)などの『脂質異常症管理のためのガイドライン』では、心血管イベントの二次予防、とくにACSを含む超高リスク患者に対してLDL-C 55mg/dL未満、さらに一部の極高リスク患者には40mg/dL未満の達成を推奨している。しかし日本の実臨床では、ACSと安定期病態であるCCSに一律のLDL-C管理基準値が適用されており、両病態での脂質低下療法の恩恵の差異や、40mg/dL未満達成への真の臨床的意義について、直接比較した多施設データは十分に示されていない。また、J-PCIレジストリデータ(2024年)によると、日本国内で年間約9万5,000例のACS患者がPCI治療を受けている。 そこで同氏らは、国内3施設(国立循環器病研究センター、柏厚生総合病院、近森病院)でPCIを受け、3年間フォローアップされた冠動脈疾患(CAD)患者2,560例(CCS:878例、ACS:1,682例)を対象に大規模多施設レトロスペクティブ解析を実施し、LDL-C値層別化によりACS、CCSでの心血管系の転帰の違い、LDL-C 40mg/dL未満への低下効果について検証した。本研究におけるLDL-C達成は、PCI後2ヵ月(8週間)時点で測定された値とし、主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞[MI]、非責任病変における冠血行再建術)*とした。*再狭窄やステント血栓症に伴う標的病変再血行再建術(TLR)は評価項目から除外 主な結果は以下のとおり。・PCI後2ヵ月時点でのLDL-C達成中央値は、CCS群で61.0mg/dL、ACS群で60.5mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL未満の達成率は、CCS群で32.5%、ACS群で29.4%と両群間に有意差はなかった。・CCSのLDL-C 70mg/dL以上の患者群を基準として多変量調整ハザード比(aHR)を算出・比較したところ、ACSでLDL-C 70mg/dL以上にとどまった群では、aHR2.31(95%信頼区間[CI]:1.61~3.31、p<0.001)と、心血管イベントリスクが大幅に上昇していた。・LDL-C 55mg/dL未満を達成したACS患者では、aHR0.29(95%CI:0.17~0.51、p<0.001)とMACEリスクが極めて低いレベルに抑えられた。これに対し、CCS患者のaHRは0.67(p=0.088)であった。・カプランマイヤー曲線による推定でも、ACS患者での55mg/dL未満達成群と非達成群の乖離は、CCS患者と比較して顕著であった。・LDL-C 40mg/dL未満を達成した超厳格管理群(CCS:10.9%、ACS:9.2%)の追加解析を実施したところ、ACS患者のaHRは0.20(95%CI:0.06~0.72、p=0.039)で、40~54mg/dL群(aHR:0.88、p=0.009)と比較してもリスクが大幅に減少していた。・連続的なLDL-C値とMACEリスクの関連を評価するスプライン曲線解析において、CCS患者では全体的な関連性が認められたものの非線形性は有意ではなかった(Non-linearity p=0.211、Overall association p=0.040)。・ACS患者では非常に強い非線形性を示し(Non-linearity p<0.001、Overall association p<0.001)、LDL-Cの低下がMACEリスク低下に極めて高感度に反映されることが示唆された。 本結果の限界として、観察研究の枠組みであること、日本人のみを対象としたデータ、脂質評価タイミングといった点が挙げられるが、PCI後のACS患者で、病態の安定化と新規イベント予防のためにPCI後2ヵ月(8週間)という極めて早期の段階でLDL-C値を70mg/dL未満→55mg/dL未満→40mg/dL未満と段階的かつ強力にコントロールすることの重要性が示された。 なお、上述のようにACS患者でPCI治療を受けている10万例弱に対して本解析結果を適用した場合、日本人ACS患者の約70%(年間約6万6,500例に相当)がPCI後にLDL-C 55mg/dL以上の高リスク水準に留まっていると推計される。これらを踏まえて、同氏は「ACSというハイリスク症例に対しては、躊躇することなく早期から強力なLDL-C管理(Strike Early)である“LDL-C 40mg/dL未満”という超厳格な目標達成を目指すことが重要である」と締めくくった。

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心臓MRI遅延造影とNT-proBNP値が肥大型心筋症の予後予測に有用(解説:佐田政隆氏)

 現在の肥大型心筋症のガイドラインは必ずしも完全ではなく(著者のコメント)、避けられたはずの突然死や不必要なICD(植込み型除細動器)植込みにつながっていると言われている。 本研究では、北米ならびに欧州の44施設から2,750例の肥大型心筋症が前向きに登録され、平均6.9年追跡された。注目すべきことには、全例で、造影剤を用いた心臓MRI(CMR)、遺伝子検査、各種バイオマーカー測定が行われた。主要評価項目は、肥大型心筋症関連死、持続性心室頻拍、左室補助装置植込みもしくは心移植であった。CMRで検出された遅延造影(心筋線維化)の割合、左室重量指数、左室収縮末期容量係数およびNT-proBNP値が予後規定因子であった。 欧州心臓病学会の肥大型心筋症突然死リスクスコアには、年齢、最大壁厚、左房径、左室流出路圧格差が含まれているが、今回はどれも予後予測因子にならなかった。本研究で、従来、補助的に用いられてきたCMRの重要性が明らかとなった。しかし、とくに本邦では、CMRは簡単に施行できず、解析にも高度な技量と時間が必要で、多くの施設で頻回に行われている検査ではない。 一方、NT-proBNPは日常臨床で頻用され保険適用もされている。他に、cTnT、ST2、MMP1、TIMP1、CICP、BAPなどが測定されているが、予後予測にはNT-proBNPが最も有効であったことは注目すべきである。 また、9例は遺伝子検査などで、肥大型心筋症の表現型模写(phenocopies)で肥大型心筋症でないと判断されて除外された。Fabry病やアミロイドーシスとして診断されているが、これらの疾患は、最近、有効な治療薬が開発されている。「心肥大」をみたら2次性心肥大を鑑別することの重要性を再認識した。

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心血管疾患2次予防、LDL-C 55mg/dL未満の達成後も高Lp(a)は強力な残余リスクに/EAS2026

 欧州心臓病学会(ESC)などのガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防において、LDL-C 55mg/dL未満への厳格な管理を推奨している1)。しかし、依然として残る心血管リスク因子として、遺伝的要因の強いリポ蛋白(a)[Lp(a)]が注目されている。現在、具体的なLp(a)低下療法が確立されていない中、LDL-Cを徹底的に低下させることでLp(a)によるリスクをどこまで軽減できるか、とくに日本人患者における検証は不十分であった。 ギリシャ・アテネで開催された欧州動脈硬化学会(EAS2026)にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏らの研究グループがこの課題に関する多施設共同研究「Lp(a)-JAPAN study」の成果を発表した。なお、本研究はEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年5月24日号に同時掲載された。 本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日の期間に、国内3施設において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であった冠動脈疾患(CAD)患者1,581例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-CおよびLp(a)測定値を基準として、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞、非責任病変への臨床的に誘発された冠血行再建術)の発生率とした。追跡期間の中央値は5.1年であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の1,581例の平均年齢は68.3歳、女性23.6%、Lp(a)値の中央値は12.8mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL以上の患者(1,069例)におけるMACE発生率は21.3%であった。そのリスクはLp(a)レベルの上昇に伴って有意に増加した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で3.9、30〜50mg/dL未満で7.9、50mg/dL以上で11.0、log-rank p<0.001)。・LDL-C 55mg/dL未満を達成した患者(512例)におけるMACE発生率は4.3%と有意に低かった(p<0.001)。しかし、Lp(a)レベルの高値は、MACEの高リスク患者を明確に特定した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で1.4、30〜50mg/dL未満で4.7、50mg/dL以上で7.5、p<0.001)。・5年標準化MACE発生率では、Lp(a) 30mg/dL未満の群の5.0%に対し、Lp(a) 30〜50mg/dL未満の群では17.0%(調整ハザード比[aHR]:3.80、95%信頼区間[CI]:1.78~8.11、p<0.001)、Lp(a) 50mg/dL以上の群では33.4%(aHR:6.90、95%CI:3.53~13.46、p<0.001)と高値を示した。・ROC曲線分析の結果、将来のMACE発生を予測するLp(a)の閾値(カットオフ値)は28.2mg/dL以上であることが判明した(p<0.001)。 研究グループは、ガイドラインが推奨する厳格なLDL-C低下療法がLp(a)に起因する心血管リスクを部分的に軽減するものの、完全に消失させることはできず、Lp(a)が独立した重大な残余リスク因子であることを実証したと結論付けた。  現在海外で進行中の新規Lp(a)低下薬(RNA薬など)の臨床試験では、登録基準となるLp(a)の閾値が一律で高く設定されている(60~80mg/dLに相当)。しかし、本研究で判明した日本人CAD患者におけるリスク閾値(28.2mg/dL)は欧米人より大幅に低い。そのため、欧米人より低いLp(a)レベルでも脆弱性を持つ集団を対象とした新たな臨床試験を行う必要があると論文内で指摘されている。

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PCI後早期のLDL-C値55mg/dL未満達成でMACEリスク激減/日本循環器学会

 欧州心臓病学会(ESC)および欧州動脈硬化学会(EAS)のガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次予防において、非常に高リスクな患者にはLDLコレステロール(LDL-C)55mg/dL未満、きわめて高リスクな場合には40mg/dL未満という目標値を推奨している1)。しかし、日本人患者においてこれほど厳格な管理が実際に予後を改善するかは十分に検証されていなかった。現在、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、二次予防の目標値は、原則100mg/dL未満、ハイリスク者で70mg/dL未満と設定されている2)。 日本人冠動脈疾患(CAD)患者における超低LDL-C目標達成の臨床的意義を検証するため、国内3施設による多施設共同研究が実施された。その結果、PCI後にLDL-C値55mg/dL未満、さらには40mg/dL未満を早期に達成することで、主要心血管イベント(MACE)のリスクが有意に減少することが示された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏が発表した。なお、本結果はAtherosclerosis誌オンライン版2026年3月23日号に掲載された3)。 本試験では、2017年1月~2022年8月の期間にPCIを施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であったCAD患者2,560例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-C測定値を「達成値」と定義し、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心血管死、非致死性自然発症心筋梗塞、脳卒中、および臨床的に誘発された非標的病変への冠血行再建術)の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の2,560例のうち、2ヵ月時点で目標LDL-C値55mg/dL未満を達成していたのは780例(30.4%)、40mg/dL未満を達成していたのは251例(全体の9.8%)であった。・55mg/dL未満の群では、2型糖尿病の合併率や喫煙歴が他の群よりも有意に高かった。主治医がこれらのハイリスク症例に対して、より強力な脂質低下療法を積極的に行った結果、LDL-C値が低下したと考えられる。・LDL-C値55mg/dL未満の達成群では、強力な脂質低下療法が行われており、スタチンが98%、エゼチミブが62%、PCSK9阻害薬が5%で使用されていた。また、達成群の68%がこれら薬剤の併用療法を受けていた。・LDL-C値70mg/dL以上の群(794例、29%)と比較して、55mg/dL未満を達成した群ではMACE発生リスクが有意に減少した(ハザード比[HR]:0.38、95%信頼区間[CI]:0.28~0.51、p<0.001)。・55mg/dL未満達成群の中での比較において、40mg/dL未満に到達した群(251例)は、40~54mg/dL(529例)の群と比較して、MACEリスクがさらに58%減少した(HR:0.42、95%CI:0.19~0.90、p=0.027)。55mg/dL以上の群と比較した場合、40mg/dL未満達成群のHRは0.20(95%CI:0.10~0.41、p=0.001)であった。・サブグループ解析の結果、年齢、性別、糖尿病の有無、慢性冠症候群/急性冠症候群の別にかかわらず、LDL-C値40mg/dL未満の達成による一貫したリスク低減効果が認められた。 本研究の結果について片岡氏は、「日本人においても、PCI後2ヵ月というきわめて早い段階でLDL-C値40mg/dL未満まで強力に低下させる『Strike Early-Strike Strong Lipid-Lowering(早期強力脂質低下)』戦略を実践することが、その後の長期的な心血管予後を劇的に改善する鍵となるだろう」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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日帰り経カテーテル大動脈弁置換術の安全性は?

 心臓弁置換術を受ける一部の患者は日帰り手術できる可能性のあることが、新たな研究で示された。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の実施日に退院した患者と、健康状態の懸念から入院継続となった「同日退院の適格者」との間で、予後に差は認められなかったという。英ジェームズ・クック大学病院の循環器専門医であるKrishnarpan Chatterjee氏らによるこの研究は、欧州心臓病学会(ESC)の部会の一つであるEuropean Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions(EAPCI)が主催する「EAPCI Summit 2026」(2月19〜20日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。 TAVIは、鼠径部の大腿動脈からカテーテルを挿入し、大動脈弁部まで進めて人工弁を留置する治療法である。Chatterjee氏は、「TAVI後の翌日退院は、技術の進歩やケアパスウェイ(ケアの計画)の効率化によって、近年広がりつつある。同日退院は、その次のステップだ。これは、厳密な基準で選ばれた患者においては安全であることが示されている」と述べている。 この研究では、2018年6月から2024年12月までの間にTAVIを受けた790人の患者の記録を調査した。このうち279人(35.3%)は、初期スクリーニングで、重度の末梢血管疾患がなく、すでにペースメーカーを植え込み済みか心拍リズムが正常で、手術当日の夜に自宅でのサポートが確保できることから、同日退院の適格基準を満たす患者と判断された。しかし、実際に予定通りに同日退院できたのは160人(57.3%)にとどまり、残りの患者は、不整脈、血管の問題、その他の健康上の理由で、医師により入院継続と判断された。同日退院した患者の平均年齢は80.4歳で、40%が女性であった。 同日退院群と入院継続群の臨床アウトカムを比較した結果、30日以内の死亡率は、同日退院群で1.8%、入院継続群で0.8%、30日以内の再入院率はそれぞれ4.4%と9.2%であり、いずれについても両群間に統計学的な有意差は認められなかった(P=0.472、P=0.102)。 Chatterjee氏は、「患者を慎重に選定すれば、TAVIを受けた患者の約5人に1人が、合併症リスクを増加させることなく安全にその日のうちに退院できることが示された。同日退院により、入院に伴う感染症やせん妄といった合併症のリスクが低下するため、この結果は患者にとって重要だ。また、医療資源の使用の削減にもつながる。同日退院に関するさらなる研究が必要だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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がん患者の心血管疾患リスクに糖尿病が影響か

 がん治療の進歩により、生存期間が延びる患者が増える一方で、治療後に心血管疾患(CVD)を発症するリスクが新たな課題として注目されている。しかし、どのような患者がCVDを発症しやすいのかは、十分に明らかになっていない。今回、大阪府の大規模がん登録データを用いた解析で、がんの初回診断時に糖尿病を併存する患者では、CVDの新規発症および全死亡リスクが有意に高いことが示された。研究は、大阪国際がんセンターがん対策センターの桒原佳宏氏、宮代勲氏らによるもので、詳細は1月22日付で「PLOS One」に掲載された。 がん治療の進歩により生存期間が延び、がんサバイバーが増加する一方、がんとCVDは共通の危険因子を多く持ち、治療自体もCVDリスクを高めることから、治療後のCVD発症が重要な課題となっている。しかし、がん患者においてCVD発症に影響する因子は十分に明らかではない。糖尿病は一般集団でCVDリスクを高めることが知られているが、がんの初回診断時にCVDを有さない患者における影響は不明である。欧州心臓病学会(ESC)が策定した心臓とがん医療に関するガイドラインでは、がん患者の糖尿病管理の重要性が示されているが、十分なエビデンスはそろっていない。本研究は、糖尿病併存がCVD発症および死亡に与える影響を明らかにすることを目的とした。 本研究は多施設の後ろ向きコホート研究であり、大阪府がん登録をDPCデータと連結した集団ベースのデータを用いた。2010~2015年にがんと診断され、初回診断時にCVDのない患者を対象とした。糖尿病の有無は糖尿病治療薬の処方歴から判定し、CVD発症はICD-10コードで同定した。がん診断後3年間追跡し、がん診断時の糖尿病併存の有無と全死亡およびCVD発症との関連を、年齢、性別、がん種、病期、BMIなどで調整したCox比例モデルおよび競合リスク解析で評価した。 本研究の解析対象12万1,997人のうち、4,317人は、がんの初回診断時に糖尿病を併存していた。糖尿病を併存する群は、併存しない群と比較して男性の割合が高く、比較的高齢の患者が多かった。また、遠隔転移を有する患者の割合も高かった。 糖尿病を併存する群の3年生存率は61.5%で、併存しない群の78.2%を下回っていた。交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルの結果、糖尿病を併存する群では、併存しない群と比較して全死亡リスクが有意に高く(調整ハザード比1.40〔95%信頼区間1.33~1.48〕)、予後不良との関連が示された。がん部位別解析では、糖尿病の併存は一部のがん種を除き、ほとんどのがん部位で予後不良と関連していた。がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外した感度解析でも、結果は一貫していた。 死亡を競合リスクとして考慮した競合リスク回帰分析では、糖尿病を併存する患者は、併存しない患者と比較して全CVDの発症リスクが有意に高かった(同1.43〔1.34~1.53〕)。また、心血管イベントの種類やがん種によって関連の強さには差がみられたが、がん種別解析でも全体解析と同様の傾向が認められた。なお、がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外して解析しても、主要な結果は変わらなかった。 死亡直前2か月以内に入院歴のあった2万1,292人を対象に死因を推定した解析では、糖尿病を併存する群でCVDによる死亡割合が高かった(6.94% vs. 4.57%)。交絡因子を調整したロジスティック回帰分析でも、糖尿病の併存はCVDによる死亡リスクの上昇と有意に関連していた(オッズ比1.47〔95%信頼区間1.19~1.81〕)。がん種別では、胃がんおよび胆嚢がんでこの関連が有意であった。 著者らは、「がん診断時に心血管疾患のない患者でも、糖尿病を併存している場合、その後の心血管疾患の発症や予後に悪影響を及ぼす可能性が示された。糖尿病管理ががん患者の転帰改善につながるかどうか、今後の検証が必要である」と述べている。 なお、本研究の限界として、診療報酬データに基づく後ろ向き観察研究である点、糖尿病やCVDの誤分類や未調整の交絡因子の影響を否定できない点などを挙げている。

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左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有益ではない(解説:佐田政隆氏)

 急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、駆出率の低下を伴わない心筋梗塞後に対しても、現在の各国ガイドラインではβ遮断薬の使用を推奨している。しかし、その根拠となったエビデンスは、再灌流療法や、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの心保護薬の使用も一般的ではない1990年代までの臨床試験に基づくものであった。最近は、急性期再灌流療法の普及で、左室駆出率が良好なまま回復する症例が増え、本当にそのような場合に漫然と長期間β遮断薬を投与したほうがよいかどうかは、エビデンスがないのが現状であった。 そこで、最近、左室駆出率が40%以上の急性心筋梗塞を対象にβ遮断薬の有効性を検討する臨床試験が各国で行われた。そのメタ解析が2025年11月、American Heart Association 2025で発表され、同日New England Journal of Medicine誌に掲載された。スペインで行われたREBOOT試験(7,459例)、スウェーデン、エストニア、ニュージーランドで行われたREDUCE-AMI試験(4,967例)、ノルウェーで行われたBETAMI試験(2,441例)、デンマークで行われたDANBLOCK試験(2,277例)、日本で行われたCAPITAL-RCT試験(657例)の統合解析で、急性心筋梗塞(ST上昇型・非ST上昇型)後14日以内で左室駆出率が50%以上、高血圧や不整脈などβ遮断薬の積極的な適応がない患者を対象にしている。主要評価項目(全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合エンドポイント)について、β遮断薬群と非投与群で有意差は認められなかった(β遮断薬群:8.1%、非投与群:8.3%、HR:0.97、95%CI:0.87~1.07)。本試験で、左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者では、β遮断薬の有益性が否定されたことになる。 一方、BETAMI試験、DANBLOCK試験、REBOOT試験、CAPITAL-RCT試験のメタ解析では、心不全の徴候がなく左室駆出率が軽度低下(40~49%)した急性心筋梗塞患者において、β遮断薬は総死亡、再梗塞、心不全を減少させることが2025年欧州心臓病学会で発表された(Rossello X, et al. Lancet. 2025;406:1128-1137.)。 このような最近のエビデンスに基づき、急性心筋梗塞患者に対するガイドラインは改訂されていくものと思われる。

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がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

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さまざまなリスクの左室駆出率の低下した心不全へのベルイシグアトの効果―VICTORIA・VICTOR試験統合解析より(解説:加藤貴雄氏)

 VICTORIA試験は、直近の心不全増悪があった左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者に対する試験であり(Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.)、2025年8月の欧州心臓病学会で発表されたVICTOR試験は、6ヵ月以内の入院歴や3ヵ月以内の外来での利尿薬静注の「最近増悪した症例」を除外し、NT-proBNP 600~6,000pg/mL(心房細動は900~6,000pg/mL)を組み入れ基準とした試験で、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトの二重盲検ランダム化比較試験である(Butler J, et al. Lancet. 2025;406:1341-1350.)。 VICTORIA試験では、プラセボ群よりも心血管死または心不全による入院の発生率が低かったが、VICTOR試験では、主要評価項目イベント(心血管死または心不全入院)はハザード比(HR)0.93(95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)とプラセボ群との有意差は認めなかった。心血管死と全死亡(および、事後的に解析された突然死)はプラセボ群に比して低下を示したものの、心不全による入院はプラセボ群との差を認めなかった。 今回取り上げた論文(Zannad F, et al. Lancet. 2025;406:1351-1362.)は、そのVICTOR試験とVICTORIA試験の事前規定された統合解析である。アジア人が20%弱含まれ、過去の心不全入院歴のない患者が26%、NYHA心機能分類ではII度70%の背景であった。β遮断薬は94%、RAS系阻害薬も90%超(ARNIを含む)、MRAは74%で、SGLT2阻害薬はVICTORIA試験時代は投与率が低かったため、全体で34%であった。ICDは31%に入っていた。主要評価項目の心血管死または心不全入院は、ベルイシグアト群で低く(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98)、心血管死・全体および初回心不全入院・全死亡の副次評価項目もベルイシグアト群でリスクを低下させた。治療効果は、ベースラインのNT-proBNPが低いほど大きく認められた。 この結果から、どのような患者がベルイシグアトの好適例となるかを考察する。心不全増悪や過去の心不全入院歴があってもなくてもGDMTが処方されたうえでも、HFrEFにとどまり、NYHA II度以上の症状があり、NT-proBNPが600pg/mLを超える患者は、心血管死または心不全入院の発生率がプラセボでも0.21/年であり、ベルイシグアトの投与対象となりうる患者と考えられる。したがって、外来通院中でも直近の悪化歴がなかったとしても、外来で入院していない=「安定している」とは考えず、BNP/NT-proBNPや症状の出現や増悪に注意しながら、常にGDMTの最適化や治療の見直しを行いつつ、上に記したようにHFrEFでNYHA II度以上の症状があり、NT-proBNPが600pg/mLを超える事態は、心不全診療において要注意のフェーズと考えられる。

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