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監視下隔離中に新型コロナクラスター発生、その原因は/NEJM

 米国海軍入隊者1,848人について調べたところ、入隊時の定量PCR検査でSARS-CoV-2陰性だった入隊者のうち約2%が、入隊2週間後の検査で陽性に転じていた。また、入隊時の検査を拒否した入隊者のうち、同2週間後の検査で陽性だったのは2%未満であり、さらに、入隊2週間後の検査で陽性と判定された入隊者のうち、検査前から症状が認められたのは10%に満たず大半が無症状で、毎日の検温や体調モニタリングによるスクリーニングでは、SARS-CoV-2感染者は検出されなかったという。ゲノム解析では、6つの感染クラスターが確認された。米国・Naval Medical Research CenterのAndrew G. Letizia氏らが、若年成人におけるSARS-CoV-2感染制御のための有効な公衆衛生対策の研究が不十分であることから本検討を行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。系統樹解析でクラスターや疫学的特徴を検証 研究グループは、自宅で2週間の隔離生活を行った後、休校中の大学構内で2週間の監視下隔離生活(マスク装着、ソーシャルディスタンス、体温・体調を毎日モニタリング)を送った米国海軍入隊者1,848人に協力を仰ぎ試験を行った。 被験者は、学校に到着直後と2日、7日後と隔離生活終了時の14日後に、それぞれ鼻腔スワブによる定量PCR検査を受けSARS-CoV-2感染の有無を調べた。また、検査協力を拒否した入隊者については、隔離生活終了の14日後のみ定量PCR検査を受けた。 感染が確認された被験者のウイルスゲノムについて系統樹解析を行い、クラスターの特定と、感染の疫学的特徴を検証した。ルームメイト、小隊内での感染を確認 大学到着2日後に定量PCR検査で陽性だったのは16人(0.9%)で、うち15人が無症状だった。同7日後または14日後には、さらに35人(1.9%)が陽性となった。14日後までに陽性だった51人のうち、定量PCR検査前1週間の間に症状が認められたのは5人(9.8%)のみだった。 同試験への自発的参加を拒否した入隊者で定量PCR検査結果が得られた1,554人のうち、14日後の検査で陽性だったのは26人(1.7%)だった。 毎日の体温・体調モニタリングの結果を踏まえて定量PCR検査を行った人からは、陽性者は確認されなかった。 32人の感染者から得た36のSARS-CoV-2ゲノムを解析したところ、18人について6つのクラスターを特定した。疫学的解析により、ルームメイトや同じ小隊内での感染など、複数の局地的感染の存在が確認された。

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第33回 誰もちゃんと説明してくれない…、ファイザー社ワクチン「90%以上に効果」の効果って何?

数字にまつわる「野球」と「ワクチン」の話題こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週は数字にまつわる2つの大きなニュースがありました。11月11日、米メジャーリーグは今シーズンのサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を発表しました。最終候補3人にナショナル・リーグではシカゴ・カブスのダルビッシュ 有投手が、アメリカン・リーグではミネソタ・ツインズの前田 健太投手が残っており、日本人初のサイ・ヤング賞投手が誕生するのではと期待されていました(最新号の「Sports Graphic Number」誌はダルビッシュ特集です)。ダルビッシュ投手は、ナ・リーグ最多の8勝をあげており、「ひょっとすると…」と早朝からMLBサイトの生配信を観ていました。しかし、フタを開けてみるとシンシナティ・レッズで最優秀防御率1.73のトレバー・バウアー投手が27人の1位票(受賞は記者投票制)で受賞し、ダルビッシュは2位でした。一方、ア・リーグは主要3部門(勝利数、奪三振、防御率)を独占したクリーブランド・インディアンスのビーバー投手が満票で受賞しました。近年のサイ・ヤング賞は、投手主要3部門のうち勝利数はあまり重視されない傾向にあるようです。勝利は投手の力というよりもチーム力に左右される、という考え方です。それに代わりWHIP(1イニングに許した走者の数)、WAR(代替選手に比べてシーズンでどれだけ勝利数を上積みできたか)、FIP(疑似防御率)といった新たな指標が注目を集めています。計算式が複雑なものもあり、いいことなのか悪いことなのかわかりませんが、野球も数字・数字というわけです。さて、もう1つ、今週の数字にまつわる大きな話題はコロナワクチンです。米・ファイザーと独・ビオンテックは11月9日、開発中のmRNAワクチン(BNT162b2)で90%の有効性が示された、と発表しました。このニュースは全世界を駆け巡り、世界各国の株価にまで影響を及ぼしました。さらに11月16日には米・モデルナも開発中のmRNAワクチン(mRNA-1273)の臨床試験の暫定結果を発表、こちらは94.5%の有効性とのことでした。「90%」の意味をきちんと解説しないマスコミファイザーとビオンテックの発表直後、私も全国紙からNHK・民放ニュースまでいろいろチェックしましたが、どこも「90%以上」の意味をきちんと解説してくれないので、困ってしまいました。記者が理解できていないのか、あるいは難しいからあえて説明しないのか、それすらもわかりません。挙句の果て「打った90%の人に効いた」というよくわからないコメントを出す人まで現れて、もはやカオスです。さて、ここで問題です。この「ワクチンの臨床試験で90%以上に効果がある」とはどういうことでしょうか?以下の選択肢から選んでください。1)ワクチンを打った90%以上の人が新型コロナウイルス感染症を発症しなかった2)ワクチンを打った 90%以上の人に中和抗体ができた3)ワクチンを打った人の群と打たなかった人の群を比べて、打った人の群の発症が90%以上低かった発症94例、90%を超える発症予防効果誰も教えてくれないので、私もあちこち調べて勉強しました。マスコミの報道を読んだ、あるいは見た一般の人(政治家含む)の多くは1)か2)だと思ったのではないでしょうか。正解は3)です。当初、正解が3であることをきちんと解説していたメディアは私が読んだ限り、「日経バイオテク」の11月11日付の記事だけでした。ファイザーの発表では、今回の第III相試験は4万3,998例の被験者を対象として、ワクチン接種群とプラセボ接種群に1対1で割り付けた、ランダム化観察者盲検試験です。複数国で4万3,538例が登録され、3万8,955例がワクチンの2回接種を行いました。その結果、2回目接種から7日目以降(「7日後」という報道もあるようですが「7日目以降」が正しいようです)に新型コロナウイルス感染症を発症したのが94例で、ワクチン接種群とプラセボ接種群を比較して90%を超える発症予防効果が得られた、とのことです。ファイザーとビオンテックが発表した数字はここまでで、ワクチン接種群とプラセボ接種群それぞれの発症数は公表されていません。このことも解説や解釈を難しくした原因なのかもしれません。有効性はどれくらい発症を減らしたかを見た数字一般的に、ワクチンの有効性はワクチン接種群とプラセボ(もしくは非接種)群を比較して、それぞれの群における発症数を比較して出します。仮に、ワクチン群1万人中発症10人、プラセボ群1万人中発症100人だとしたら、本来100人発症するところを90人減らして10人に抑えた、ということで、ワクチンの有効性は90%となります。この考え方を今回の臨床試験の3万8,955例に当てはめると、発症したのが計94例、有効性90%超ということですから、ワクチン群の発症は8例以下、プラセボ群は86例以上という計算になります(仮に8例と86例とするなら、有効性は単純計算では[(86-8)÷ 86 ]×100=90.7%になります(2群が1対1で割り付けられた前提)。ちなみに、モデルナのワクチンの場合は、3万例を超える臨床試験の対象者のうち、ワクチン群の発症は5例、プラセボ群は90例ということですから、有効性は単純計算では[(90-5)÷90]×100=94.4%になります。まあ、投手の防御率[(自責点×9)÷投球回数]の計算くらいの易しさですね。ヒトでのチャレンジ試験のほうが簡単?今回のワクチンの臨床試験での「90%を超える」「94.5%」とは、概ね以上のような意味です。皆さん、理解していましたでしょうか?ファイザーとビオンテックの臨床試験は、参加者から感染者が164例発生した段階で最終解析を行う計画とのことで、あと70例の発症者が出るまで結論は出ません。各群の発症者がどれくらい出るのかはわからないので、90%以上という数字も大きく変わる可能性があります。モデルナも効果について「臨床試験が進むにつれて変わる可能性がある」としています。そもそも、感染症は感染しても発症しなかったりするケースがあるので、臨床試験が大変です。4万例近い被験者の臨床試験を組んで、わずか164例の発症者数で解析するというのはとても非効率に映ります。10月20日、英国政府はヒトでのチャレンジ試験(曝露試験)実施を支援するため、産官学が協力すると発表しました。チャレンジ試験とは、臨床試験の被験者にワクチンを接種したあと、新型コロナウイルスにあえて曝露させ、ワクチンの安全性や有効性を評価するというものです。こちらの方法であれば、少人数かつ効率的に結果を出せそうです。倫理的な問題も多々あるようですが、このヒトを対象としたin vivo試験の動きも注目しておきたいところです。

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Moderna社の新型コロナワクチン、有効率94.5%を示す/第III相試験中間解析

 Moderna社は、COVID-19に対するワクチン候補であるmRNA-1273の第III相試験(COVE試験)の最初の中間分析において、ワクチンの有効率が94.5%と統計学的な有意差を示したことを11月16日に発表した。今後数週間以内に米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定という。 第III相COVE試験は、米国で18歳以上の参加者を対象に、用量100μgで28日間隔・2回投与でmRNA-1273の有効性を評価する無作為化1:1プラセボ対照試験。10月22日に3万人の登録を完了した。参加者には7千人以上の高齢者(65歳以上)、5千人以上の慢性疾患(糖尿病、重度の肥満、心臓病など)を有する患者が含まれる。 主要評価項目は症候性COVID-19の予防で、主要な副次的評価項目には、重症COVID-19の予防、およびSARS-CoV-2による感染の予防が含まれる。今回の中間分析は、ワクチンの2回目の投与から2週間後に確認されたCOVID-19症例の分析に基づき、独立データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が実施した。95例のCOVID-19発症が確認され、そのうち90例がプラセボ群、5例はmRNA-1273群で観察され、ワクチン有効性の点推定値は94.5%であった(p<0.0001)。 副次評価項目として重症例を分析し、この最初の中間分析では11例の重症例(研究プロトコルでの定義による)が含まれた。11例すべてがプラセボ群で発生し、mRNA-1273ワクチン接種群では発生しなかった。中間分析には、DSMBによる安全性データのレビューが含まれ、重大な安全性の懸念は報告されていない。有害事象の多くは軽度または中等度で、1回目の投与後の頻度が2%以上のGrade 3の有害事象としては注射部位の痛み(2.7%)が、2回目の投与後は倦怠感(9.7%)、筋肉痛(8.9%)、関節痛(5.2%)、頭痛(4.5%)、痛み(4.1%)、注射部位の紅斑/発赤(2.0%)が含まれた。 今後の研究の進行に応じて、最終的な有効性の点推定値および安全性データは変更される可能性がある。2020年末までに約2千万回分を米国で、2021年に世界で5億から10億回分を製造する準備が整うと見込んでいる。 なお、同社はmRNA-1273の貯蔵について、標準的な家庭用または医療用冷蔵庫の温度である2~8℃(36~46°F)で30日間安定していることが確認されたと発表している。

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第34回 COVID-19入院患者の約3人に1人が入院中か退院60日後までに死亡

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の入院中の転帰はよく調べられていますが、退院後を含む長期転帰はあまり分かっていません。そこで米国ミシガン大学の研究チームは同州全域の取り組みMI-COVID19に参加している38病院のデータを使ってCOVID-19入院患者の長期転帰を調べてみました。その結果、入院患者1,648人の4人に1人(398人)は入院中に亡くなり、3月中旬から7月1日までに退院した残りの患者1,250人のうち84人(6.7%)は退院後60日を生きて迎えることができず、入院中と退院後60日間を合わせると実に3人に1人近く(29.2%)が死亡していました。幸い生き延びたとしても困難は大きく、退院後60日を過ぎてからの電話での調査に応じた488人のうち159人の咳や呼吸困難などの心肺症状は収まっておらず、92人は症状の新規発生や悪化を被っていました。65人は味覚や嗅覚の消失が解消しておらず、58人は身支度・食事・入浴・トイレ・寝起き・室内歩行の困難が新たに生じるかより悪化していました。入院前に職に就いていた195人のうち78人は健康不調や失業で復職できていませんでした。復職した残り117人のうち30人は体調を理由に職務が変わるか就業時間が短くなっていました。精神的・経済的影響も大きく、488人のうち約半数(238人)は体調について気に病んでおり、179人は経済的逼迫を少なくともいくらか被っていました。COVID-19入院患者は退院後も負担を長く引きずり、敗血症や重度呼吸器ウイルス疾患の後遺症と一致する経過を辿ることを今回の結果は裏付けています。幸い今回の試験の患者の大半は退院後に一般診療で診てもらっていましたが、5人に1人はそうしておらず、COVID-19入院を経て暮らす人を支援するより一層の取り組みが必要と著者は言っています。今回の結果は日本のCOVID-19入院患者にそのままあてはまるものではないと思いますが、敗血症等と同様に重症のCOVID-19入院患者に退院後の手当ての筋道を提供することは大きな支えになるに違いありません。参考1)Sixty-Day Outcomes Among Patients Hospitalized With COVID-19 / Eurekalert2)Chopra V, et al. Ann Intern Med. 2020 Nov 11. [Epub ahead of print]

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第31回 新型コロナウイルスワクチン、集団接種を検討へ

<先週の動き>1.新型コロナウイルスワクチン、集団接種を検討へ2.オンライン診療の見直し、初診患者は過去の受診歴が条件に3.75歳以上医療費の窓口負担引き上げ、議論加速4.受診時定額負担の拡大に医療機関側から反論、年末までに議論5.医師・医療機関が守るべき保険診療ルール、新チェックリスト公開1.新型コロナウイルスワクチン、集団接種を検討へ13日の衆議院厚生労働委員会で、新型コロナウイルスのワクチンについて集団接種を検討していることを、田村 憲久厚生労働相が明らかにした。第III相試験の中間解析の結果、90%の有効性が認められるなど臨床開発が進んでいるファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチンは、マイナス70度と超低温での輸送・管理が必要となる。このため、超低温冷凍庫保管設備を持たない小規模なクリニックで予防接種を行うのは困難とされ、集団接種の実施が検討されている。感染拡大防止のために集団接種体制の確立と、ワクチンの安全性の確保が求められる。すでに、政府はファイザーから1億2,000万回分、モデルナから5,000万回分のワクチンの供給を受けることで合意しており、今後、承認されるまでに検討が重ねられる。(参考)厚労相、ワクチンの「集団接種」検討 超低温の輸送・管理難しく 新型コロナ(毎日新聞)新型コロナワクチンが「90%の有効性」ってどういうこと?(日経バイオテク)新型コロナワクチン実用化秒読み マイナス70度保管必要 身近な接種困難か(産経新聞)2.オンライン診療の見直し、初診患者は過去の受診歴が条件に13日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」において、オンライン診療のガイドラインの見直しについて討議された。初診患者のオンライン診療については、安全性・信頼性の観点から、過去12ヵ月以内に受診歴のある患者について利用が可能となった。また、過去に受診歴がない場合であっても、2次医療圏外の遠隔地にいる専門医の診察を受ける場合は、患者が看護師といる状態(to P with N)で初診からオンライン診療の提供が可能となる見込み。(参考)完全初診でも、予防接種や健診で患者情報を把握できればオンライン初診を認めて良いか―オンライン診療指針見直し検討会(GemMed)「受診歴」を軸にオンラインでの初診を認める要件を議論 厚労省検討会(Med IT Tech)第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 資料(厚労省)3.75歳以上医療費の窓口負担引き上げ、議論加速厚労省は、12日に開催された社会保障審議会の医療保険部会において、現役並みの所得がある後期高齢者の判断基準の見直しについて検討を行った。後期高齢者の窓口負担が3割となる現役並み所得水準としては、年収約383万円以上(課税所得145万円以上)とされている。近年、年金受給者でも就労者が増加しており、現役世代とバランスをとるため、「団塊の世代」が75歳以上となり始める2022年度までに、年齢ではなく所得に応じて負担を求める考え方について検討している。一方、基準の見直しについては、年金を収入源とする高齢者の受診抑制を懸念する医師会からは、所得が高い人に絞るよう要望している。今後、団塊世代の高齢化に伴う現役世代の負担増大を踏まえ、議論が加速していくだろう。(参考)75歳以上医療費 窓口負担引き上げ 所得の線引きなど議論加速へ(NHK)高齢者の「現役並み所得」基準、見直しは当面見送り 年内取りまとめに盛り込まず、医療保険部会(CBnews)資料 後期高齢者の窓口負担割合の在り方等について(厚労省)4.受診時定額負担の拡大に医療機関側から反論、年末までに議論12日に開催された社会保障審議会の医療保険部会において、大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について議論された。紹介状なしの受診患者から定額負担を徴収する医療機関については、200床以上の特定機能病院や地域医療支援病院とされている。これをさらに200床以上の一般病院に広げる方針について、ほかの医療機関が存在しない地域で診療活動をする施設もあるので、医療機関側からは地域医療に支障が生じないような対応を求める声が上がった。(参考)受診時定額負担の対象拡大、病床数での区切りに反発 医療提供側、医療保険部会(CBnews)資料 大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について(厚労省)5.医師・医療機関が守るべき保険診療ルール、新チェックリスト公開10日、厚労省保険局医療課医療指導監査室は、保険診療確認事項リスト(医科)の令和2年度改定版を公開した。病院のみならず、診療所などで行われている保険診療についても、各種事項についてチェックリスト方式で確認ができる。具体的には「診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項の記載を十分に行うこと(とくに、症状、所見、治療計画等について記載内容の充実を図ること)」など、診療に当たる医師だけでなく、医療スタッフにとっても役立つ内容である。6月には改定版「適時調査実施要領」「重点的に調査を行う施設基準」なども公開されており、こちらも参考にされたい。(参考)保険診療確認事項リスト(医科) 令和2年度改定版 ver.2010(厚労省)適時調査実施要領等(同)

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医療従事者の新型コロナ感染に対応の補償制度スタート/日本医師会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に限定した医療従事者対象の労災補償上乗せ保険として、新たな補償制度が創設された。11月9日から募集がスタートしている。COVID-19対応医療機関でなくてもすべての医療機関が加入可能で、より少ない負担で医療従事者に対する補償を行うことができる仕組みとなっている。11月11日の日本医師会定例記者会見で、今村 聡副会長が活用を呼びかけた。 治療の最前線で働く医療従事者が、万一感染した場合であっても一定の収入が補償されることが重要であるとして、COVID-19患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度への補助を日本医師会では国に対して要望してきた。今回創設された本制度では日本医師会他医療団体からの寄付金、国の補助金が充当される。今村氏は、「感染拡大が顕著になる中、医療従事者が万一罹患した場合の収入面の不安を少しでも解消し、安心して医療に従事するためのサポートとして、より多くの医療機関に加入していただきたい」と話した。 年間保険料は原則として1名あたり1,000円とされているが、医療機関のCOVID-19対応の状況に応じて補助金が充当され、例えば都道府県等指定のCOVID-19患者受け入れ医療機関や、発熱患者の診療または検査を行う医療機関等では、医師・看護師ら医療資格者の保険料は無料となっている。<新型コロナウイルス感染症対応 医療従事者支援制度>制度に加入できる医療機関:日本国内の病院、診療所、介護医療院、助産所、訪問看護ステーション※病院・診療所については保険医療機関補償の対象者:・医療機関が加入している政府労災保険等で給付の対象となるすべての医療従事者(被用者)が補償の対象(アルバイト、パートタイマー、臨時雇い等を含む)・医療資格者のみを対象とすることも可能・医療法人の代表者・役員、個人事業主(個人診療所の開設者等)は政府労災保険の特別加入者となることにより補償の対象となる・公務員災害補償法等の対象とする公務員(国家公務員は除く)も補償対象補償の内容:医療従事者(被用者)が新型コロナウイルス感染症に罹患し、労災事故として認定された場合に、労災保険等からの給付に加えて・4日以上の休業を行った場合20万円を給付・死亡した場合500万円を給付※各補償については、政府労災保険等の給付(休業補償給付、遺族補償給付)が決定した場合に保険金が支払われる。なお、休業日数の認定は、政府労災保険等における決定に従う保険料:年間保険料は医療従事者1名あたり1,000円※医師、看護師、薬剤師ほか医療資格者については、医療機関の区分に応じて国や医療団体からの補助金を充当することができる。医療資格者以外は、医療機関の区分を問わず1,000円となる。詳細は同制度のパンフレットを参照制度加入募集期間と保険期間:(1)募集期間:2020年11月9日~11月25日/保険期間:2020年12月1日~2021年12月1日(2)募集期間:2020年11月26日~12月23日/保険期間:2021年1月1日~2022年1月1日(3)募集期間:2020年12月24日~2021年1月25日/保険期間:2021年2月1日~2022年2月1日(4)募集期間:2021年1月26日~2月15日/保険期間:2021年3月1日~2022年3月1日加入方法:日本医療機能評価機構の「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度特設サイト」からインターネット申し込み

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第32回 P社の新型コロナワクチン報道、企業の発信内容は適切だった?

11月9日、日本中はおろか世界中を駆け巡ったニュースがある。そのニュースは米・ファイザー社と独・ビオンテック社が共同開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン候補が、第III相試験のワクチン接種者で90%以上に効果があったというもの。各国の株式市場の平均株価まで上昇するほどのビッグニュースだったが、現時点での発表内容やこれまでCOVID-19について分かっていることなどを考え合わせると、希望を持つのはまだまだ早いと感じている。そもそも、今回ファイザー側から発表があったワクチン候補のプラセボ対照第III相試験は登録者が全世界で4万3,538人、うち3万8,955人が2回接種を受けている。参加者から感染者が164例発生した段階で最終解析を行う計画で、今回発表されたのは感染者が94例発生した時点の中間解析の結果である。米国本社のプレスリリースに記載されている範囲での中間解析結果は、ワクチン接種群で90%超の予防効果を示し、これは2回目接種から7日後で最初の接種から28日後の効果としている。また、安全性に関する深刻な問題はこれまで報告されていないとのこと。リリースに記載されている具体的な内容はこれだけである。失望・絶望に至るファクターはないものの、何とも言えないというのが正直な感想である。一方で、COVID-19に関してこれまで分かっていることは、ワクチンが開発されてもそれで一気にこの事態が改善されるとは言い切れないことばかりである。たとえば中国や欧米の報告では、COVID-19患者では感染・発症から2~3ヵ月後にIgGのレベルが低下し、感染時の症状が軽いほどこの傾向が顕著だと報告されている。実際、中国で感染者を追跡したデータでは、無症状だった感染者の4割で2~3ヵ月後にIgG抗体が陰性になってしまうことが報告されている。そして、この抗体価の低下による再感染と考えられる事例もすでに報告されている。最初に報告されたのは香港の事例で、1回目の感染は3月、その5ヵ月後に再感染してしまったというもの。このケースでは1回目と2回目の感染でのウイルス遺伝子は若干異なるものだったが、その相違は劇的なものではなかった。つまり再感染はウイルスのサブタイプなどによる感染性の強弱などが影響したというよりは感染者側の免疫低下が原因ではないかと推察されている。この再感染事例についてはBNO Newsというサイト内の特設ページ「COVID-19 reinfection tracker」で確認できる。11月12日時点では25人の再感染例が掲載されているが、いずれも再感染が確実に証明された事例のみであり、実際の再感染例はこれより多く存在すると思われる。そしてこの25人のうち、1回目と2回目の重症度が判明している21人の約半数である10人は2度目の感染のほうが重症化し、うち1人は死亡している。つまり「一旦感染して免疫ができれば2度目の感染を完全には防げなくとも重症化は避けられるかも?」という希望的観測すらまったく通用しないということだ。しかも、一般論から考えれば、ある病原体に対してワクチンでできる免疫は、自然感染でできた免疫よりは強くならないことは周知のこと。今回の発表によればファイザー・ビオンテックのワクチンは少なくとも1ヵ月程度は有効ということになるが、最大有効期間は現時点では不明である。結局のところ「ワクチン接種者で90%以上に効果」はまだまだ蜃気楼的なものとさえいえる。医療従事者の中にはこうしたことを十分理解している人は少なくないはずで、同時に今回の報道に「過剰に期待をあおっている」という見方もあるだろう。しかし、いま世界中がCOVID-19にワクチン開発を注視している中で、研究開発元である大手製薬企業が発表する以上、それを報じるなとメディアに求めるのも無理な話である。報じ方を工夫しろと言われても、リリースに記載された内容が上記のような極めて限定的なものであることを考えれば、工夫の余地すらもかなり限られる。そして敢えて私見を言わせてもらえば、接種から1ヵ月後の有効性を公表することに医学的にどれだけの意味があるのかも疑問である。その意味で今回のケースは、「報道する側よりも発信する企業側がどの時点でどのような内容を発表するか」を今一度吟味する必要性を示していると個人的には感じている。

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第32回 日本発「パンデミック・ロボット」は幻に、厚労省の残念過ぎる失策

新型コロナウイルスの感染拡大で、ロボットの需要が世界的に高まっている。医療スタッフの負担を減らしつつ安全を確保でき、患者の救命にもつながるからだ。医療用ロボットはアメリカや中国などで開発が進んでいるが、実は日本でも遡ること7年前、東京五輪開催が決定した当時、新型感染症の国内発生に備えて、パンデミック対応用医療ロボットの開発が進められていた。厚生労働省の上層部で密かに進められていた計画だった。だが因果なことに、今年の新型コロナの発生で研究は中止され、開発の中心人物は中国へ移った。関係者は無念の気持ちを吐露する。コロナ禍における世界のロボット活用の状況はどうなっているのか。研究者団体「Robotics for Infectious Diseases(感染症のためのロボット工学)」によると、7月上旬時点で、少なくとも33ヵ国においてあらゆる種類のロボットがパンデミック対応に活用されているという。例えば、米国のボストン・ダイナミックが開発した犬型ロボット「Spot」は、iPadを通じて患者予備軍の診察を遠隔で行っているほか、体温や脈拍を計り、血中酸素濃度の測定もしている。中国・猟戸星空(ORION STAR)のロボットは事前診断、医療情報の1次開示、病院内の一定の場所への医療用品の配達などを行っている。日本の「パンデミック・ロボット」は、東京五輪の海外来場者が持ち込む新型感染症の発生を懸念したO医師が発案。他国に先駆けた、感染症向け医療用ロボットだった。O医師は当時、九州大学で主に手術におけるAI活用について研究していた。O医師は、産業用ロボット大手のY社と組み、体温を測ったり口腔内を検査したりできるアーム型ロボットを開発した。厚生労働省のバックアップを受け、国立感染症研究所の4階フロアに専用ルームを設け、実験を続けた。しかし、ヒトに対する研究はたった1例にとどまり、研究は中止された。コロナ禍に加え、「操作性が難しい」というのがその理由だったようだ。だが関係者は、「ロボットはゲームパッドのようなコントローラーで、一般人でも操作できるものだった。このロボットを導入できていたら、コロナ禍による医療現場の混乱防止にも役立ったはず」と口惜しさを滲ませる。O医師らはその後、自治体の首長、成田や羽田の空港関係者などに「パンデミック・ロボット」の導入を働き掛けたが、理解を得られなかったという。翻って、「中国製造2025」などの国策を打ち出し、ロボット市場が拡大する中国。気候変動などによって、今後も新興感染症が現れると予測するO医師は、中国の国家衛生健康委員会(日本の厚労省に相当)に招聘され、日本を離れてしまったようだ。「日の丸ロボット」が幻となっただけでなく、開発のキーマンからも見放されてしまった日本。厚労省は先見の明がなさ過ぎやしないか。

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新型コロナウイルス感染症~日独の対応」Web講演開催/日本国際医学協会

 日本国際医学協会では、2020年11月26日(木)18時より、第60回国際治療談話会総会「新型コロナウイルス感染症~日独の対応」をWeb講演で開催する。日独それぞれにおける治療の実際、防疫課題についての講演が行われる。<新型コロナウイルス感染症~日独の対応>日時:2020年11月26日(木) 18:00~21:00(Web講演)司会:近藤 太郎氏、ゲオルグ・K・ロエル氏(日本国際医学協会)【同時通訳あり(日本語/英語)】【講演I】新型コロナウイルス感染症の臨床像と治療の実際演者:大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)、オリバー・ヴィッツケ氏(エッセン大学病院感染症科 教授、西ドイツ感染症センター[WZI] 理事)【講演II】新型コロナウイルス感染症の防疫課題と反省点演者:和田 耕治氏(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学 教授)、イェルグ・J ・ヴェーレシルト氏(フランクフルトおよびケルン大学病院、ドイツ感染研究所 教授)、【感 想】新型コロナウイルス感染症が日独経済に及ぼす影響マルティン・シュルツ氏(富士通株式会社 チーフポリシーエコノミスト)参加費:無料(同協会会員に限りオンデマンドでも視聴可能の予定)申込期限:11月19日(木)まで(申込締切後、11月25日(水)までにZoomウェビナーへのアクセスリンクをメールにて連絡予定)参加のお申込みはこちらからお問い合わせ先:公益財団法人日本国際医学協会 事務局TEL:03-5486-0601  FAX:03-5486-0599E-mail: imsj@imsj.or.jp  URL:http://www.imsj.or.jp/

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医療従事者とその家族のCOVID-19入院リスク/BMJ

 スコットランドにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者のうち、6分の1は医療従事者とその家族であることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnoop S V Shah氏らによる国内コホート研究で明らかにされた。また、全体としては入院絶対リスクは低いが、患者との対面サービスを担う(対面職)医療従事者の入院リスクが非対面職医療従事者と比べて3倍、その家族についても2倍高かったという。医療従事者のCOVID-19感染リスクの研究は行われているが、規模が小さく、単一施設をベースとした断面調査で、バイアスの影響を非常に受けやすい手法によるもの、また医師と看護師に限定されたものであり、医療従事者の家族についても評価した研究は不足していたという。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。医療従事者約16万人とその家族約23万人を調査 研究グループは、スコットランドを対象に、対面職と非対面職の比較による医療従事者およびその家族におけるCOVID-19の入院リスクを調べた。スコットランドを対象とした理由として著者は、医療従事者の大多数(とくに急性期医療従事者)がNHS(国民保健サービス)に直接雇用されていること、それら全スタッフのデータベースが管理されていること、健康記録連携システムが十分に確立されていることを挙げている。 医師や看護師、検査技師などの医療従事者で、スコットランドで最初のCOVID-19患者が確認された2020年3月1日時点でNHSに雇用されていた15万8,445人と、その家族22万9,905人について、同年6月6日までのCOVID-19による入院率を調べ、一般集団と比較した。調査対象者の年齢は、18~65歳だった。患者対面職のCOVID-19絶対入院リスクは0.5%未満 対象医療従事者のうち、対面職の割合は57.3%(9万733人)だった。試験期間中のCOVID-19による入院患者で年齢が18~65歳の人のうち、医療従事者またはその家族が占める割合は17.2%(360/2,097人)だった。 年齢や性別、人種、社会経済的格差、併存疾患で補正後、非対面職の医療従事者とその家族のCOVID-19による入院リスクは、一般集団の同リスクと同等だった(それぞれ、ハザード比[HR]:0.81[95%信頼区間[CI]:0.52~1.26]、0.86[0.49~1.51])。 一方で、対面職医療従事者は非対面職医療従事者に比べ、COVID-19による入院リスクは高率だった(HR:3.30、95%CI:2.13~5.13)。また、その家族のリスクも高率だった(1.79、1.10~2.91)。 さらに対面職医療従事者について、救急隊員や集中治療室スタッフなど“最前線”で働く群と、そうでない群に分けたところ、最前線群は非最前線群に比べCOVID-19による入院リスクが高かった(HR:2.09、95%CI:1.49~2.94)。 全体の6割近くを占めていた対面職医療従事者とその家族における、COVID-19による絶対入院リスクは0.5%未満だったが、高齢男性で併存疾患が認められる場合は1%超に増大することも明らかになったという。 著者は「重要なのは、非対面職の医療従事者とその家族の入院リスクは、一般集団と同等だったことである」と述べ、「今回の調査結果は、医療サービス組織、個人用保護具の使用、配置転換に関する決定に活用すべきであろう」としている。

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第32回 遅れに遅れた地域の病院再編、コロナに乗じた「先延ばし」はさらなる悲劇に

冬を目前におでんも病院再編議論も本格化こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京も木枯らし1号が吹いて寒くなってきました。北海道をはじめ、新型コロナウイルス感染症のクラスターが全国各地で発生しています。「Go Toトラベル」「Go Toイート」で人々の行動が緩んだ中での冬の到来…。今後の患者数の増加が気になります。さて、寒くなるとおでんです。私はコンビニおでん、とくにセブン-イレブンのおでんがお気に入りで月に数度は食べていたのですが、友人から「今年はコロナでコンビニのおでんはないらしい」と言われ、がっくりきていました。が、近所のセブン-イレブンに行ってみると、なんとあるではないですか、カウンター脇にいつものおでん鍋が。ただし、鍋はアクリルのカバー付きで、客側からはおでんに触れず、飛沫も入らないつくりです。調べてみると、セブンイレブンはコロナ対策として、容器入りの電子レンジで温めて食べるおでんも販売したようです。でも、それではいろいろなおでんのエキスが煮詰まって美味しくなった、あのおでんつゆを味わえません…。私は今シーズンも店頭注文で行こうと思います。今回は始まりそうで始まらない、病院再編の議論の話題です。厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形 裕也・九州大学名誉教授)の第28回会議が11月5日に開催され、前回に続き「新型コロナウイルス感染症を踏まえた地域医療構想の考え方」に関する議論が行われました。厚労省の事務局はこの日の会議で、「新興感染症などの感染拡大時の患者の受け入れ体制の確保」「公立・公的医療機関等に対する『具体的対応方針の再検証』の取り組みへの影響」「今後どのような工程で議論・取り組みを進めるか」などの論点を提示しました。「具体的対応方針の再検証」の報告期限は延期のまま厚労省がとにかく早く進めたいのは、新型コロナウイルスの感染拡大で遅れに遅れてしまった地域の医療機関の再編成です。公⽴・公的医療機関等に対する「具体的対応⽅針の再検証」を再開し、それを踏まえつつ、2025年以降も⾒据えた具体的な⼯程についての議論を開始したいというわけです。公立・公的医療機関等に対する「具体的対応方針の再検証」については、9月9日の本連載「第23回 実は病院経営に詳しい菅氏。総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと」でも詳しく書きました。各地で地域医療構想調整会議が進められる中、「公立病院だけでなく公的病院も対象に加えろ」という議論の流れとなり、2018年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2018」の中に「公立・公的病院については、地域の民間病院では担うことのできない高度急性期・急性期医療や不採算部門、過疎地等の医療等に重点化するよう医療機能を見直し、これを達成するために再編・統合の議論を進める」と明記されました。それを踏まえ、厚労省は急性期病床を持つ公立・公的病院のがん、心疾患などの診療実績を分析し、2019年9月には全国と比較してとくに実績が少ないなどの424病院(2020年1月に約440病院に修正)のリスト公表を敢行しました。公表とともに、急性期病床の縮小やリハビリ病床などへの転換などを含む地域の病院の再編・統合を各地で議論を行うことを要請し、今年9月末までに結論を出すよう定めました。これが上記の「具体的対応方針の再検証」です。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響もあり、8月31日、厚労省は「具体的対応方針の再検証等の期限について」と題する医政局長通知(医政発0831第3号)を各都道府県知事に発出、全国約440の公立・公的病院を対象とする再編・統合について、都道府県から国への報告期限を今年9月末から10月以降に延期、11月11日現在も期限は決まっていません。「拙速だ」との異論が出て議論は前進せず厚労省の事務局は同日に「議論の整理に向けた考え方(案)」を提示しています。それは以下のような内容です。「感染拡大時の取組における新興感染症等の医療計画への位置付けなどの枠組みを前提としつつ、今後の人口構造の変化に伴う医療ニーズの質・量の変化や労働力人口の減少に対応しつつ、質の高い効率的な医療提供体制を維持していくための地域医療構想については、地域医療構想調整会議において、新興感染症等への対応の観点も踏まえて協議を行いながら、引き続き、着実に進める必要がある」。しかし、共同通信などの報道によれば、病院団体の委員から「拙速だ」との異論が出て、具体的な工程や方向性に関する議論は前進しなかったそうです。また、「どの医療機関がどのような機能を果たすのか、しっかり協議しないと方向性が見えない」「コロナ拡大で悪化した病院の経営状況のデータも踏まえた検討を」など、議論をさらに深めるべきだとの意見も相次いだとのことです。自治体、病院団体も病院の再編・統合に後ろ向き同様の考えは、地方自治体からも出ています。各紙報道によれば、10月29日に開催された「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」(全国知事会、全国市長会、全国町村会の地方3団体と総務省、厚生労働省が地域医療の体制整備について話し合う場)において、全国知事会で社会保障を担当する平井 伸治・鳥取県知事は病院の再編・統合に関し、「地方はコロナ対策に向き合わなければならない現実がある。スケジュール通りに物事を進めようとするとコロナ対策がおざなりになりかねない」として、丁寧な議論が必要だと訴えました。平井知事は11月5日に開かれた社会保障審議会医療部会でも同趣旨の発言をしており、医療計画、地域医療構想について議論されたこの日の同部会では、日本病院会会長の相澤 孝夫氏からも「今、地域医療構想を云々するのは良くない」旨の発言があったとのことです。先延ばしにしたら”傷口”はますます拡がる2025年を見据えた地域医療構想の策定や、公立・公的病院のリストラに待ったをかけるようなこうした議論は、コロナに乗じた「先延ばし」のようにも感じられます。確かに、新型コロナウイルス対応は重要ですが、だからといって病院再編の議論を先延ばしにする理由にはならないでしょう。コロナ禍にあっても各地の人口減少は確実に進んでいます。収益が悪化したままの公立・公的病院のリストラを1年、2年と先延ばしにしていたら、”傷口”はますます拡がってしまいます。10月中旬、千葉県東金市の独立行政法人・東千葉メディカルセンター(314床)の乱脈経営が内部告発によって明らかになり、現在、東金市と九十九里町では大騒動になっています。各紙報道によれば、毎年10億円以上の赤字にもかかわらず、県からの出向職員への高額な給与や、不明朗で高額過ぎる業務委託費などの問題が次々と明らかになっています。ちなみに、同病院は先の厚労省の約440病院のリストにも入っています。経営的にボロボロの公立・公的病院は全国に数多くあります。同病院のように、自治体の人口構成や財政状況などを顧みず、首長のメンツや、地域住民のエゴで新設された病院にとくに多い印象です。そうした病院がある地域では、今後、新型コロナウイルス対応も勘案しながら、病院機能再編の議論をできるだけ早くスタートすることが望まれます。病院が潰れてなくなったり、医師が辞めていなくなってしまったりしたら、それこそ悲劇です。ところで、コロナに乗じた「先延ばし」ということでは、75歳以上の医療費窓口負担を現行の原則1割から2割に引き上げる、という政府方針への反対もコロナに乗じた「先延ばし」感が拭えません。日本医師会は、新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関の受診を控える動きが広がっている中、さらなる受診抑制が生じるとの考えから、引き上げの対象者を一部に限定するよう求めています。地域のため、患者のためと話す医療関係者・自治体関係者・政治家の多くの言葉が、コロナに乗じた詭弁に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。

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COVID-19パンデミック前後、遠隔皮膚科診療は3倍増に

 本邦のコロナ禍における受診動向の変化については、2020年8月6日の「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」が発表され耳目を集めた。電話またはオンライン診療の受診者は10歳未満が最も多く、ほかの年齢では発熱での受診が最多であったが、10歳未満の受診は湿疹が最多(22.7%)で、受診科目は内科、小児科に次いで皮膚科が3番目だったことなどが報告されている。 本論は、COVID-19感染者数が米国に次いで現在世界第2位の、インド・R.D. Gardi Medical CollegeのShashank Bhargava氏らが、ウェブベースでグローバルに皮膚科医に診療形態の変化について行ったサーベイ調査の結果である。COVID-19パンデミック前後で、teledermatology(遠隔皮膚科診療:TD)の活用が3倍増になったことなどが報告されている。International Journal of Women's Dermatology誌オンライン版2020年10月12日号掲載の報告。 研究グループは、COVID-19パンデミックによる皮膚科診療の変化の大きさについては、十分に研究がされていないとして、同パンデミックの皮膚科診療への即時的および長期的影響を評価する検討を行った。評価対象には、臨床活動、診療行為の頻度および種類、TDの使用などを含んだ。Googleフォームでサーベイツールを作成し、2020年4月1日~20日に、とくに皮膚科専門医のソーシャルメディアサイトの研究者に電子的に配布された。 主要アウトカムは、対面診療、病院サービス、TD、処置の提供に関する回答者の割合。また、パンデミック時および将来的なTDの利用について、オッズ比(OR)に与える可能性がある要因をロジスティック回帰モデルで調べた。 主な結果は以下のとおり。・サーベイに応じた皮膚科医は733例であった。アジア系が47.6%、北米18.7%、中南米17.9%、欧州13.9%、その他1.9%であった。診療歴は10年以下が45.0%を占め、都市部従事者が78.6%、開業医47.2%などであった。・対面診療の提供に関する割合は、パンデミック前100%に対し、パンデミック中は46.6%に減っていた。病院サービスは52.8% vs.27%、処置100% vs.25.6%といずれも減っていた(いずれもp<0.001)。・一方で、TDは、3倍増となっていた(26.1%vs. 75.2%)(p<0.001)。・TD利用率は、パンデミック中および将来利用予測ともに、診療地域と有意に関連しており、とくに北米の回答者で最も高かった(いずれもp<0.001)。・パンデミック中のTD利用は、従前からのTD利用、操作能力、およびとくに色素性病変が疑われる場合の生検と正の相関性がみられた(いずれもp<0.001)。・パンデミック前のTD利用は、パンデミック中のTD利用の最も強力な予測因子であった(OR:16.47、95%信頼区間[CI]:7.12~38.06)。・サーベイ参加者のうち3分の2以上(68.6%)が、将来的にTDを利用するだろうと回答した。・将来的なTD利用予測についてOR増大が最も大きかった要因は、国内のCOVID-19感染者数が1,000例を超えた場合だった(OR:3.80、95%CI:2.33~6.21)。

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Pfizer社の新型コロナワクチン、接種28日目以降の予防効果確認/第III相試験中間解析

 Pfizer社とBioNTech社が開発している、SARS-CoV-2に対するmRNAベースのワクチン候補BNT162b2の第III相試験の最初の中間解析で、感染歴のないボランティアへの2回目の投与(初回から21日後)の7日目以降に90%以上のワクチン有効率を示した。これは、ワクチン接種の開始から28日目以降の予防効果が達成されたことを意味する。Pfizer社とBioNTech社が11月9日に発表した。11月第3週に米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定という。 BNT162b2の第III相試験は7月27日に開始。現在までに4万3,538人が登録され、そのうち3万8,955人が11月8日時点で21日間隔・2回目の投与を受けている。中間解析は、評価可能なCOVID-19症例数が94例に達した時点で外部の独立データモニタリング委員会により行われ、2回目の投与の7日目以降に90%を超えるワクチン有効率を示した。今後の研究の進行に応じて、最終的な有効率は変わる可能性がある。 この研究では、SARS-CoV-2への曝露経験者でのCOVID-19を予防する可能性および重症COVID-19に対する予防効果も評価する予定。主要有効性評価項目は、2回目の投与から7日目以降におけるCOVID-19発症で、最終解析には、副次有効性評価項目として2回目の投与から14日目以降のCOVID-19発症も追加された。安全性については引き続きデータを蓄積し、2回目の投与後2年間、長期的な予防効果と安全性について観察する。 試験への登録は継続中で、164例のCOVID-19症例が発生した時点で、最終解析が実施される予定。現在の予測に基づくと、2020年に世界で最大5,000万回、2021年には最大13億回のワクチンを生産予定と発表されている。

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COVID入院患者で注意しなくてはならないのは?(解説:香坂俊氏)-1314

COVIDは11月現在、まだ世界で猛威を振るい続けている。なかでも状況が深刻なのは米国であるが、かの国から興味深い報告がなされた(掲載されたのは珍しくBMJ[英国の雑誌]なのであるが…)。COVID-19の感染が確認された成人患者情報が68の病院のICUから集められ、合計5,019人の「集中治療を要した」COVID患者のデータが解析された。このうち14%が心肺停止となったとされ、このあたりの数値は武漢からの報告ともおおむね一致している(武漢のCOVID専属治療施設での重症例の心肺停止の頻度が20~25%程度であった)。院内心停止が発生した患者は高齢かつ、併存疾患が多く、ICU病床数の少ない病院に入院している傾向にあり、心停止の際にモニターでよく見られたパターンはPEA(無脈性電気活動:50%)とasystole(心静止:24%)であったただ、自分が最も注目すべき点として挙げたいのは、こうした院内心肺停止症例で蘇生行為を受けたのが57%にとどまったというところである。自分の経験でも米国の医療施設では、事前にDNRのオーダーが出ていない限り必ず蘇生行為が行われるので、それだけadvance care planning(ACP)が重症例に対して積極的になされていたと考えられる。それを裏付ける、という訳でもないのだが、蘇生行為を受けて助かり、退院までこぎ着けることができた患者はわずか12%にすぎなかった。このときの生存率は年齢によって異なり、若年者にfavorableな結果であったというのもこれまでの報告と一致している(45歳未満の患者の21%が生存しているのに対し、80歳以上の患者の生存率は3%)。こうした非常に大規模な研究により、COVID重症例での対応が徐々に明確になってきている。たとえば、PEAやasystoleが心肺停止の際に多くみられたということは、主に心臓以外の要因で亡くなる方が多いということが示唆される。また、今回のデータからも、重症COVIDで患者さんを拝見させていただく場合に(とくに高齢者や背景疾患が存在する方)、かなり早い時期からACPの議論を始めておく必要性は強調される。

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第33回 悪夢払いアプリを米国FDAが承認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行食い止めのためのロックダウン6週目に4,275人を調べたところ睡眠時間は多くなっていたものの目が覚めてしまうことが増え、4人に1人以上(26%)は悪夢を見ることが多くなっていました1)。コロナ禍の矢面に立って負担を強いられている医療従事者はとくにそうなりがちらしく、スペインでの別の研究によると100人中38人(38%)が悪夢を報告しており、非医療従事者のその割合約21%を有意に上回りました(p=0.02)2)。先週金曜日、そんな安眠さえままならない医療従事者の苦悩を軽減してくれるかもしれないApple Watch(アップルウォッチ)/iPhone(アイフォン)アプリが米国FDAに承認されました3)。Nightwareという商品名のそのアプリは募る負担の現れである悪夢を遮って夜間の休息が続くようにします。NightwareはApple Watchのセンサーを使って睡眠中の体の動きや心拍数を把握し、サーバーにそれらの情報を送ります。サーバーは独自のアルゴリズムを使って患者の睡眠パターンを把握し、おそらく悪夢を見ていると判断したら目を覚まさせない程度にApple Watchを震わせて気を引いて悪夢の解消を目指します。アプリは賢くて学習機能があり、もし振動で目が覚めてしまった場合、次からはそうならないようにより弱く振動させます4)。70人が参加した無作為化比較試験の結果、振動する製品は振動しない模造品に比べて睡眠の質の自己評価指標Pittsburgh Sleep Quality Indexをより改善しました。Nightwareは悪夢障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)による悪夢に苦しむ22歳以上の患者に使うことができます。ただし、PTSD患者には他の治療と一緒に使う必要があり、NightwareだけでPTSDを治療することはできません。また、悪夢の際に眠ったまま歩いたり(sleepwalking)乱暴する人は使うことはできません。参考1)Pesonen AK, et al. Front Psychol. 2020 Oct 1;11:573961. 2)Herrero San Martin A, et al. Sleep Med. 2020 Aug 17;75:388-394.3)FDA Permits Marketing of New Device Designed to Reduce Sleep Disturbance Related to Nightmares in Certain Adults/PR Newswire4)NightWare製品説明

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COVID-19、家庭・職場で感染リスクが高い行動は?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクを減らすには何に注意すればよいのだろうか。シンガポール・National Centre for Infectious DiseasesのOon Tek Ng氏らが、COVID-19患者の濃厚接触者におけるSARS-CoV-2感染に関連する因子を調べた結果、家族内では「寝室の共有」「COVID-19患者から30分以上話されること」が、家族以外では「2人以上のCOVID-19患者への曝露」「COVID-19患者から30分以上話されること」「同じ車への乗車」が関連していた。一方、「間接的な接触」「一緒に食事すること」「同じトイレの使用」については独立した関連がみられなかった。Lancet Infectious Disease誌オンライン版2020年11月2日号に掲載。 シンガポールではCOVID-19と診断された患者すべてに、保健省による接触者のトレースやPCR検査、濃厚接触者の健康サーベイランスを実施している。本研究は、このデータを使用し、2020年1月23日~4月3日に診断されたCOVID-19患者の濃厚接触者すべてを調査した後ろ向きコホート研究である。家族内接触者はCOVID-19患者との同居者、家族外の濃厚接触者はCOVID-19患者から2m以内で30分間以上の接触者とした。シンガポールではCOVID-19患者は全員入院し、接するのは医療スタッフに限られ、濃厚接触者は全員14日間隔離し1日3回、電話で症状モニタリングを実施している。誤診の発生割合と無症候性SARS-CoV-2陽性者の有病率はベイズモデリングで推定し、SARS-CoV-2感染の危険因子は単変量および多変量ロジスティック回帰モデルで決定した。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月23日~4月3日の間に、PCRで確認されたCOVID-19患者1,114例の濃厚接触者7,770人が特定された(家族接触者1,863人、職場での接触者2,319人、社会での接触者3,588人)。・症状に基づいたPCR検査で188例検出され、7,582人は陽性ではなかった。・濃厚接触者7,770人のうち全データが揃っている7,518人(96.8%)における2次的な臨床的罹患率は、家族接触者1,779人では5.9%(95%CI:4.9~7.1)、職場での接触者2,231人では1.3%(同:0.9~1.9)、社会での接触者3,508人では1.3%(同:1.0~1.7)であった。・濃厚接触者1,150人(家族接触者524人、職場の接触者207人、社会での接触者419人)の血液および症状のデータのベイズ分析の結果、症状に基づいたPCR検査戦略によってCOVID-19の62%(95%CI:55~69)を見落とし、感染者の36%(同:27~45)は無症候性だったと推定された。・家族接触者のSARS-CoV-2感染に関連していた因子は、寝室の共有(多変量オッズ比[OR]:5.38、95%CI:1.82~15.84、p=0.0023)、COVID-19患者から30分以上話されること(OR:7.86、95%CI:3.86~16.02、p<0.0001)であった。・家族以外の接触者では、2人以上のCOVID-19患者への曝露(多変量OR:3.92 、95%CI:2.07~7.40、p<0.0001)、COVID-19患者から30分以上話されること(多変量OR:2.67、95%CI:1.21~5.88、p=0.015)、同じ車への乗車(多変量OR:3.07、95%CI:1.55~6.08、p=0.0013)がSARS-CoV-2感染に関連していた。・家族接触者と家族以外の接触者のどちらも、間接的な接触(感染患者から物を受け取る、感染患者が触った面を直後に触る)、一緒に食事すること、同じトイレの使用については、SARS-CoV-2感染との独立した関連は示されなかった。

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第30回 来年9月、レセプト審査システムにAI活用で地域差解消へ

<先週の動き>1.来年9月、レセプト審査システムにAI活用で地域差解消へ2.将来的に、電子カルテ情報は全国の医療機関で共有されることに3.オンライン診療は映像必須など、ガイドラインの見直しへ4.地域医療構想、コロナ収束後に向けた議論も見直し進まず5.アドバンス・ケア・プランニング、介護報酬にも反映を1.来年9月、レセプト審査システムにAI活用で地域差解消へ10月30日、厚生労働省は「審査支払機能の在り方に関する検討会」を開催し、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)によるレセプト審査結果の不合理な差異の解消、支払基金と国民健康保険団体連合会(国保連)のシステムのあり方について議論が行われた。毎月1億6,000万件のレセプト処理を手作業で行っている現状だが、今後、AIを導入することで支払いの効率化を図ることとなった。また、従来からある支払基金と国保連のシステムの二重投資については、審査プログラムの共通化、AIの活用により、2021年9月からは9割のレセプト審査がコンピュータチェックで完結するように準備を進めていることが明らかとなった。今後、レセプト審査の標準化により、これまで認められていた地域差が縮小し、レセプト審査費用の軽減などが見込まれる。(参考)医療費審査、地域差縮小へ 厚労省、来年9月にシステム統一 無駄な支払いを抑制(日本経済新聞)第3回 審査支払機能の在り方に関する検討会 資料(厚労省)支払基金改革 審査事務集約化計画工程表等を公表(支払基金)2.将来的に、電子カルテ情報は全国の医療機関で共有されることに厚労省は11月6日、「第5回健康・医療・介護情報利活用検討会及び第4回医療等情報利活用ワーキンググループ」をオンライン開催した。保健医療情報を全国の医療機関などで確認できる仕組みの拡大および電子カルテ情報などの標準化について話し合われた。今後、電子カルテ情報の標準化を進め、全国の医療機関で共有できる範囲については、診療情報提供書、退院時サマリー、電子処方箋、健診結果を含めることになった。その確認方法については、今年中をめどに具体化する見込み。また、患者がレセプトの傷病名を確認できることについて、患者への告知を前提とし、提供の仕組みは改めて検討される。さらに患者が受診の都度、情報公開に対する同意の有無でコントロールするなどの提案が出された。このほか救急時の情報閲覧の仕組みに関しても、患者がマイナンバーカードを持参し、顔認証付きカードリーダーなどを用いて本人確認を行い、情報閲覧への本人の同意を得た上で、医師らによる情報の閲覧を原則とすることとなった。政府は、2021年3月のオンライン資格確認の本格的な運用開始に合わせて、マイナンバーカードを利用した電子処方箋の仕組み構築も進めており、マイナポータルでは、同年3月から特定健診などの、2021年10月から薬剤などの情報の閲覧開始に向けた準備を着実に進めている。(参考)注視すべきデータヘルス改革(薬事日報)第5回 健康・医療・介護情報利活用検討会及び第4回医療等情報利活用WG資料(厚労省)3.オンライン診療は映像必須など、ガイドラインの見直しへ厚労省は11月2日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開き、オンライン診療の普及に向けたガイドラインの見直しについて検討を行った。2018年3月に発出された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、新型コロナウイルスの流行拡大により、初診患者についても規制緩和を行なっているが、今後、適切なオンライン診療の普及に必要な検討を進める。オンライン診療は対面診療を行なわないため、心筋梗塞などを見逃すリスクがある。このため安全性と信頼性を担保するため、オンライン診療は、電話ではなく映像を必須とすることになった。また、初診のオンライン診療は医師会側が兼ねてから要望している「かかりつけ医」が行うことについては、オンラインシステムのベンダーについて国側に管理を求める声も上がった。今後、各方面の意見を取りまとめ、年内にルールの大枠を定め、来年以降施行されることになる見込み。(参考)関心高まるオンライン診療 普及に医師・患者のリスク共有不可欠(SankeiBiz)第11回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(厚労省)4.地域医療構想、コロナ収束後に向けた議論も見直し進まず11月5日、「厚労省医政局は地域医療構想に関するワーキンググループ」を開催し、新型コロナウイルス感染症を踏まえた地域医療構想の考え方について議論した。現状、各医療機関において新型コロナ対応を行なっているが、その間も人口減少・高齢化は着実に進み、地域の医療ニーズが徐々に変化するとともに、労働力人口の減少によるマンパワー不足も一層厳しくなるため、2025年の地域医療構想の実現は変わらず必要とされている。今後、地域医療構想の実現に向けた医療機能の分化・連携の取り組みの中で、コロナも含めた感染症病床の整備も踏まえた形での検討に時間を要することから、現時点ではスケジュールの具体化に関する議論は進んでいない。また、公立・公的医療機関などに対する再検証要請も、今年9月の期限を延長したものの明確な期限は示されていない。総務省では、10月29日に「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」を開催し、各都道府県の首長からは、現状のコロナ感染拡大でのスケジュールの見直しを求めている。今後の議論の行方次第では、地域医療構想の実現に影響が及ぶと考えられる。(参考)今後の地域医療構想に関する議論の整理に向けた考え方(案)(厚労省)新型コロナウイルス感染症を踏まえた地域医療構想の検討状況について(厚労省医政局)5.アドバンス・ケア・プランニング、介護報酬にも反映を厚労省は11月5日に「社会保障審議会介護給付費分科会」をオンラインで開催した。今後、最も年間死亡数が多くなると予測される2040年には、2015年と比べて約39万人の死亡数増加が見込まれる中、国民の多くは、「最期を迎えたい場所」について、「自宅」を希望している。充実した看取りへの対応が求められているとし、2018年3月に改定された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき、看取り・ターミナルケアに関して、ガイドラインの内容に沿った取り組みを行う介護サービス事業者への加算要件について検討することが提案された。今後、終末期医療や看取りの現場では、アドバンス・ケア・プランニングに基づいて患者が希望する医療・介護の実現が求められることとなる。(参考)第191回 社会保障審議会介護給付費分科会 【資料1】地域包括ケアシステムの推進(厚労省)「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について(同)

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第31回 ワクチン浸透のシナリオにインフルワクチン難民の出現は好機?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下でのインフルエンザ同時流行を懸念して今年のインフルエンザワクチンの接種は異例の事態となっている。厚生労働省が事前に「高齢者優先」を呼び掛けて10月1日からスタート。今シーズンは例年よりも多い成人量換算で約6,640万人分のワクチンが確保されたというが、高齢者以外への接種が本格的に始まった10月26日からわずか1週間ほど経た現在、すでにワクチン接種の予約受付を停止した医療機関も相次いでいるという。実は、私はまさにインフルエンザワクチンスタート日の10月1日に接種している。これはたまたま馴染みの医療機関がかかりつけの高齢者には既に9月中旬~下旬に接種を開始し、さらに高齢者での接種者増加も十分に見込んだ発注を終えていたこともあり、高齢者の接種希望者が多くない平日の午後を中心に高齢者以外の接種予約も進めていたからである。ちなみに面識のある複数の開業医に話を聞くと、一様に今年はインフルエンザワクチンの接種希望者が多く、しかも一見さんの割合が多いと口にする。ある知り合いの医師は、Facebookでの投稿で10月だけで3,000人に接種したと記述していたのだから驚く。ワクチン接種の予約を停止した医療機関の多くは、12月までの入荷を見越しても、もはやこれ以上の接種予約を受け付けるのは不可能という判断らしい。そうした中でワクチン接種を求めてさまよう「ワクチン難民」も出始めているという。私のような仕事をしていると、この手の状況や家族が重病になった時に「どこへ行けば?」的な相談が来ることが少なくない。実際、今回も「どこに行けば打てるんだろうか?」「子供が受験生なので何とかならないかな?」という相談がもはや10件以上来ている。たぶん医療従事者の皆さんは私以上にその手の相談攻勢にさらされていると思われる。これらに対しては相談者の居住地域の開業医一覧が乗っている医師会のHPがあれば、それを教えて個別の医療機関に問い合わせするよう促し、各医療機関にワクチンが再入荷するであろう11月下旬前後まで落ち着いて待つように伝えるぐらいしかできない。そして、今回そうした相談を寄せてくる人に見事に共通しているのが、これまでほとんどインフルエンザワクチンの接種歴がないこと。それゆえかかりつけ医もなく、情報も不足しているので「ワクチン難民」という状況である。これを自業自得と言ってしまうのは簡単だが、ちょっと見方を変えるとこれがワクチンへの一般人の理解を浸透させる新たなチャンスにも見えてくる。改めて言うまでもないが、ワクチンとは基本的に健康な人に接種するものである。しかも、その効果は予防あるいは重症化リスクの低下であり、接種者は実感しにくい。この点は検査値や自覚症状の改善が実感できる薬とは根本的に受け止め方が異なる。根拠の曖昧な反ワクチン派がはびこってしまう根底には、このように侵襲が伴うにもかかわらず効果を自覚しにくい、そして時として副反応が報告されてしまうワクチン特有の構造的な問題が一因と考えられる。そして、ワクチンの中でも比較的信頼度の低いものの代表格がインフルエンザワクチンである。これは一般人のワクチンに対する直感的な理解が「ワクチン=予防=打ったら完全にその感染症にかからない」であり、インフルエンザワクチンは麻疹、風疹のワクチンのようなほぼ完全に近い予防効果は期待できない。ところがこうした「誤解」が不信感の種になりやすいのである。実際、毎年インフルエンザシーズンになるとTwitterなどでは「インフルエンザワクチンは効かない」「ワクチン打ったのにかかったから、もう2度と打ちたくない」など、反ワクチン派に親和性の高い言説が飛び交う。ここでは釈迦に説法だが、インフルエンザワクチン接種による予防効果、つまり一般人の理解に基づく「ほぼ完全に予防できる効果」に近い数字は、たとえば小児では2013年のNEJMにVarsha K. Jainらが報告した6割前後というデータがある。これに加え重症化のリスクを低減でき、18歳未満でのインフルエンザ関連死は65%減らせるし、18歳以上の成人での入院リスクを5割強減らす。私は今回個人的に相談をしてきた人にはこうした話を必ずしている。彼らに知ってもらいたいのは「ワクチンの中には完全な予防効果が期待できないものの、重症化のリスクを減らす種類のものがあり、その接種でも意味がある」ということだ。とりわけ今のようなCOVID-19流行下では、医療機関は発熱患者が受診した際にその鑑別で頭を悩ませることになる。すでに日本感染症学会は「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」でインフルエンザとCOVID-19の鑑別について、患者の接触歴やその地域での両感染症の流行状況、さらにインフルエンザに特徴的な突然の発熱や関節痛、COVID-19に特徴的な味覚・嗅覚障害などの症状を加味して、どちらの検査を優先させるかを決定するよう提言している。しかし、それでも多くの医師は事前鑑別には苦労するだろう。その中で予めインフルエンザワクチンを接種していれば、鑑別の一助にはなるだろう。そうしたことも私は相談者に話している。前述した「チャンス」とはまさにこのような、なんだかよく分からないけど今の雰囲気の中でインフルエンザワクチン接種を切望し、今後流れ次第で親ワクチン派、反ワクチン派のいずれにでも転びかねない人に少しでも理解を深めてもらうチャンスである。正直、メディアの側にいるとワクチンの意義という非常に地味なニュースほど一般に浸透しにくいことを痛いほど自覚している。だからこそ繰り返し伝えること、そして身近な人に確実に伝えることを辛抱強くやるしか方法はないと常に考えている。そしてこれは多忙で患者とじっくり話す時間が取れないことが多い状況であることは承知のうえで、医療従事者の皆さんにも実践してほしいことである。

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