サイト内検索|page:5

検索結果 合計:270件 表示位置:81 - 100

81.

未治療CLLへのベネトクラクス+オビヌツズマブ、PFS延長を維持/Lancet Oncol

 ベネトクラクス+オビヌツズマブ療法の長期有効性の知見が報告された。同療法はCLL14試験において、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する固定期間治療のレジメンとして確立されたが、ドイツ・ケルン大学のOthman Al-Sawaf氏らは、同試験における治療中止後の有効性をchlorambucil+オビヌツズマブ療法と比較した。その結果、治療中止から2年後においても、ベネトクラクス+オビヌツズマブは、chlorambucil+オビヌツズマブと比較し無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を維持していることが示された。著者は「この結果は、ベネトクラクス+オビヌツズマブを固定期間治療の選択肢として支持するものだ」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年9月号掲載の報告。 CLL14試験は、21ヵ国196施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相試験。研究グループは、18歳以上で併存疾患(累積疾患評価尺度[CIRS]の総スコアが6超またはクレアチニンクリアランスが30~69mL/分)を有する未治療CLL患者を、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群とchlorambucil+オビヌツズマブ群に、1対1に無作為に割り付けた。  ベネトクラクス+オビヌツズマブ群では、1サイクルを28日間として、ベネトクラクスの12サイクルとオビヌツズマブの6サイクルを併用投与した。chlorambucil+オビヌツズマブ群では、chlorambucilの12サイクルとオビヌツズマブの6サイクルを併用投与した。主要評価項目は、ITT集団における治験担当医評価によるPFSであった。 主な結果は以下のとおり。・2015年8月7日~2016年8月4日に432例が登録された(ベネトクラクス+オビヌツズマブ群216例、chlorambucil+オビヌツズマブ群216例)。・データカットオフ時点で、全例が24ヵ月以上治療を中止していた。・追跡期間中央値39.6ヵ月において、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群はchlorambucil+オビヌツズマブ群に比べPFSが有意に延長した(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.22~0.44、p<0.0001)。・PFS中央値は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群では未到達、chlorambucil+オビヌツズマブ群では35.6ヵ月であった。・主なGrade3/4の有害事象は、両群とも好中球減少症(ベネトクラクス+オビヌツズマブ群112/212例[53%]、chlorambucil+オビヌツズマブ群102/214例[48%])であった。・重篤な有害事象は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群で115/212例(54%)、chlorambucil+オビヌツズマブ群で95/214例(44%)に認められた。・治療関連死は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群で1/212例(1%、敗血症)、chlorambucil+オビヌツズマブ群で2/214例(1%、敗血症性ショック1例、転移を有する皮膚扁平上皮がん1例)が報告された。

82.

持続的腎代替療法時の抗凝固療法、クエン酸 vs.ヘパリン/JAMA

 急性腎障害を伴う重症患者への持続的腎代替療法施行時の抗凝固療法において、局所クエン酸は全身ヘパリンと比較して、透析フィルター寿命が長く、出血性合併症は少ないが、新規感染症が多いことが、ドイツ・ミュンスター大学病院のAlexander Zarbock氏らが行った「RICH試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。欧米の現行ガイドラインでは、重症患者への持続的腎代替療法時の抗凝固療法では局所クエン酸が推奨されているが、この推奨のエビデンスとなる臨床試験やメタ解析は少ないという。ドイツの26施設が参加、試験は早期中止に 研究グループは、持続的腎代替療法施行時の局所クエン酸投与が透析フィルター寿命および死亡に及ぼす影響を、全身ヘパリンと比較する目的で、多施設共同無作為化試験を実施した(ドイツ研究振興協会の助成による)。本試験はドイツの26施設が参加し、2016年3月~2018年12月に行われた。 対象は、年齢18~90歳、KDIGOステージ3の急性腎障害または持続的腎代替療法の絶対適応とされ、重症敗血症/敗血症性ショック、昇圧薬の使用、難治性の体液量過剰のうち1つ以上がみられる患者であった。 被験者は、持続的腎代替療法施行時に、局所クエン酸(イオン化カルシウムの目標値1.0~1.40mg/dL)または全身ヘパリン(活性化部分トロンボプラスチン時間の目標値45~60秒)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 フィルター寿命と90日死亡率を複合主要アウトカムとした。副次エンドポイントには出血性合併症や新規感染症が含まれた。 本試験は、596例が登録された時点で、中間解析の結果がプロトコールで事前に規定された試験終了に達したため、早期中止となった。フィルター寿命が15時間延長、死亡への影響の検出力は低い 638例が無作為化の対象となり、596例(93.4%、平均年齢67.5歳、183例[30.7%]が女性)が試験を終了した。局所クエン酸群が300例、全身ヘパリン群は296例だった。 フィルター寿命中央値は、局所クエン酸群が47時間(IQR:19~70)、全身ヘパリン群は26時間(12~51)であり、有意な差が認められた(群間差:15時間、95%信頼区間[CI]:11~20、p<0.001)。90日の時点での全死因死亡は、局所クエン酸群が300例中150例、全身ヘパリン群は296例中156例でみられ、Kaplan-Meier法による推定死亡率はそれぞれ51.2%および53.6%であり、両群間に有意な差はなかった(補正後群間差:-6.1%、95%CI:-12.6~0.4、ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.63~1.004、p=0.054)。 38項目の副次エンドポイントのうち34項目には有意差がなかった。局所クエン酸群は全身ヘパリン群に比べ、出血性合併症(15/300例[5.1%] vs.49/296例[16.9%]、群間差:-11.8%、95%CI:-16.8~-6.8、p<0.001)が少なく、新規感染症(204/300例[68.0%] vs.164/296例[55.4%]、12.6%、4.9~20.3、p=0.002)が多かった。 局所クエン酸群は、重度アルカローシス(2.4% vs.0.3%)および低リン血症(15.4% vs.6.2%)の頻度が高く、全身ヘパリン群は、高カリウム血症(0.0% vs.1.4%)および消化器合併症(0.7% vs.3.4%)の頻度が高かった。これら以外の有害事象の頻度は両群間に差はなかった。 著者は、「本試験は早期中止となったため、抗凝固療法戦略が死亡に及ぼす影響に関して、結論に至るに十分な検出力はない」としている。

83.

Dr.田中和豊の血液検査指南 総論・血算編

【総論】 第1回 検査の目的 第2回 検査の指標 第3回 診断過程における検査の役割 第4回 検査の選択とマネジメント 第5回 Bayes統計学【血算編】 第1回 白血球1 白血球増加症 第2回 白血球2 白血球分画異常症 第3回 白血球3 白血球減少症 第4回 赤血球1 多血症 第5回 赤血球2 貧血 第6回 赤血球3 正球性貧血・小球性貧血 第7回 血小板1 血小板増加症 第8回 血小板2 血小板減少症 第9回 血小板3 汎血球減少症 第10回 血小板4 TTP・HUS・HIT 【総論】すべてのベースとなる検査の基本からスタート。日々の診療で検査を行うことが目的になっていませんか?念のための検査をやっていませんか?何のために検査を行うのか、どのような検査をどのように行えばよいのか、また、その結果をどのように解釈し、マネジメントを行うのか。Dr.田中和豊流の“血液検査学”を理解するための前提の講義です。【血算編】白血球・赤血球・血小板の検査値をどのように解釈し、治療を行うのか。Dr.田中和豊式“鉄則”や、鑑別診断や経験的治療の“フローチャート”を用い、やるべきことをシンプルにレクチャーします。この番組を見ると、血液検査の数値を見たときに、実臨床で何をすべきかをしっかりと理解できるようになるはずです。※この番組をご覧になる際に、「問題解決型救急初期検査 第2版(医学書院)」ご参考いただくと、より理解が深まります。書籍はこちら ↓【問題解決型救急初期検査 第2版(医学書院)】【総論】第1回 検査の目的医学生、初期研修医 の皆さん!その検査は何のためにやっていますか?検査を行うことが目的になっていませんか?念のための検査をやっていませんか? そんな検査に、田中和豊先生が喝を入れます! 日々の診療で行う検査について、今一度、考え直してみましょう。【総論】第2回 検査の指標検査を行うためには、それぞれの検査の特性を知らなければなりません。傷病を診断するための検査の特性を示すいくつかの指標があります。例えば、有病率と罹患率、感度と特異度、精密度・再現性・信頼度、尤度比などです。それらの指標の考え方と意義、そしてそれらをどのように用いるのか?田中和豊先生が医学生・初期研修医向けにシンプルにわかりやすく解説します。【総論】第3回 診断過程における検査の役割診療において検査を行うとき、検査前にその疾患である確率と検査を行い、その結果による検査後の確率の変化について考えていきましょう。検査前確率と検査後の確率の関係はBayesの定理によってその関係式が導き出されます。また、検査前の確率から、検査後の確率を算出する方法は2つあり、それにはオッズ比と尤度比という指標を用います。今回は、これらの関係について、そして検査後確率の算出方法について、詳しく解説します。医学生・初期研修医の方は必見です。【総論】第4回 検査の選択とマネジメント今回は、検査の選択、検査計画、検査の解釈、診断、マネジメントについて解説します。 それぞれの場面において何を優先して考えるべきか、その結果から何を導き出すのか、Dr.田中和豊が示す“鉄則”を確認していきましょう!【総論】第5回 Bayes統計学今回はBayes統計学について考えます。Bayes統計学は、原因から結果という自然な時間の流れに逆行する“逆確率”であるということ、事前確率を推定する“主観確率”であるということから、異端の統計学とのレッテルを貼られ、一統計学の世界から抹殺されていた時期もありました。そして、現在どのようにBayes統計学をEBMに応用しているのか、その歴史と意義について詳しく解説します。【血算編】第1回 白血球1 白血球増加症血液検査の原則から確認しましょう。採血は痛い!だから患者のためには、きちんとした計画そして評価が必要です。 そして、いよいよ血算編。まずは3回にわたって白血球についてみていきます。今回は、白血球増加症について。白血球が増加しているとき、確認すべきステップと鉄則は?Dr.田中和豊がシンプルかつわかりやすくにお教えします。【血算編】第2回 白血球2 白血球分画異常症今回は、白血球分画の異常について取り上げます。白血球の分画の基準値は%で示されますが、実際の異常を診る場合には絶対数を計算して確認しましょう。 好中球増加症、リンパ球増加症、異形リンパ球、単球増加症、好酸球増加症についてぞれぞれの異常値とその原因についてシンプルにわかりやすく解説します。 好中球増加症で用いられる左方移動や右方移動についてもその命名の歴史からご説明します。【血算編】第3回 白血球3 白血球減少症今回は白血球減少症についてです。白血球減少症の原因は、産生低下と破壊亢進の2つ。そのため、通常、問診や診察で簡単に判断できます。 すなわち白血球減少症では、鑑別よりも、マネジメントが問題となります。 その中でもとくに重要な発熱性好中球減少症について詳しく解説します。 Dr.田中和豊式フローチャートに沿って対応すれば、慌てずに対処できます。【血算編】第4回 赤血球1 多血症今回から3回にわたって赤血球について解説します。 まずは、赤血球の基本から。 赤血球の指標には、RBC、Hb 、Hctがありますが、実は、この3つの指標はほぼ同じもので、どれを使用してもかまいません。 しかし、実際には、Hbを使用することが多いのではないでしょうか。 それは、赤血球を評価するためには、赤血球の機能である酸素運搬能を評価することとなり、その動脈酸素運搬能DO2を算出する際に直接比例するHbを多血症や貧血の指標として用いるのです。 Hbの指標を用いて、基準値、多血症について、考えていきましょう。※スライドの文字に修正があります。誤)多血症 polycythermia⇒ 正)多血症 polycythemiaとなります。【血算編】第5回 赤血球2 貧血臨床上、最も多く遭遇する病態である「貧血」について解説します。血液単位容積あたりのヘモグロビン量の減少を貧血と呼びます。 まずは、その貧血の定義と鑑別診断について考えていきましょう。MCV(平均赤血球容積)で貧血を分類し、その中で大球性貧血について詳しくみていきます。田中和豊式鑑別診断のフローチャートで体系立てて診断・治療をすすめていきましょう。【血算編】第6回 赤血球3 正球性貧血・小球性貧血赤血球の最終話は、正球性貧血と小球性貧血について解説します。 それぞれの鑑別診断とその後の対応について、田中和豊式フローチャートで解説します。小球性貧血の中でも頻度の高い、鉄欠乏性貧血については、著量なども含め、詳しく見ていきます。最後には赤血球に関するまとめまで。しっかりと確認してください。【血算編】第7回 血小板1 血小板増加症今回から4回にわたって血小板について解説します。血小板の異常は、数の異常と、機能異常がありますが、このシリーズでは、数の異常について取り上げていきます。まずは、血小板増加症から。血小板増加症は、一次性と2次性に分類されます。それらをどのような順番で鑑別していくのか、田中和豊式フローチャートで確認していきましょう。【血算編】第8回 血小板2 血小板減少症今回は血小板減少症を取り上げます。血小板減少症は、プライマリケアにおいて、遭遇することが多い疾患です。そのため、マネジメントを身に付けておくことが重要となります。Dr.田中和豊式フローチャートで手順をしっかりと確認しましょう。対応するうえで重要なポイントとなる「血小板輸血」、「敗血症」などについても詳しく解説します。最後に、Dr.田中和豊が実際に経験した症例「血小板数3,000/μLの29歳女性」について振り返ります。その時のDr.田中のマネジメントはどうだったのか!【血算編】第9回 血小板3 汎血球減少症今回は汎血球減少症、無効造血、溶血性貧血について取り上げます。それぞれの疾患の定義と鑑別疾患をシンプルにわかりやすく解説します。いずれも、鑑別疾患が限られる疾患ですので、しっかりと覚えておきましょう。【血算編】第10回 血小板4 TTP・HUS・HIT最終回の今回は、TTP:血栓性血小板減少性紫斑病、HUS:溶血性尿毒症症候群 、HIT:ヘパリン起因性血小板減少症について取り上げます。それぞれの診断のポイントと、治療例を解説します。 また、血小板に関してこれまでを総括します。重要なポイントをおさらいしましょう!

84.

FDA、急性骨髄性白血病の寛解導入にベネトクラクスの併用療法を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月16日、75歳以上または併存疾患で強力な寛解導入療法が適用できない成人の急性骨髄性白血病(AML)に対して、ベネトクラクスとアザシチジン、desitabineまたは低用量シタラビン(LDAC)との併用を正式に承認した 。 ベネトクラクスとこれらの併用に関する有効性は2件の無作為化二重盲検プラセボ対照試験で確認されている。1つはベネトクラクス+アザシチジン群(n=286)とプラセボ+アザシチジン群(n=145)を無作為に比較したVIALE-A試験である。この試験では、ベネトクラクス+アザシチジン群のOS中央値14.7ヵ月に対し、プラセボ+アザシチジン群では9.6ヵ月(HR:0.66、 95%CI:0.52~0.85、p<0.001)と、ベネトクラクス+アザシチジン群の有意な有効性が確認された。完全寛解(CR)率においても改善を示し、ベネトクラクス+アザシチジン群37%に対し、プラセボ+アザシチジン群では18%であった。 もう1つはベネトクラクス+LDAC群(n=143)とプラセボ+LDAC群(n=68)を無作為に比較したVIALE-C試験である。この試験では、ベネトクラクス+LDAC群のCR率は27%、CR期間中央値は11.1ヵ月に対し、プラセボ+LDAC群ではどれぞれ7.4%、8.3ヵ月と、CR率とCR期間に関してベネトクラクス+アザシチジン群で良好であった。OSについては、有意な改善は確認されなかった(HR:0.75、 95%CI:0.52~1.07、 p=0.114)。  ベネトクラクスとの併用で頻度の高かった(30%以上)有害事象は、悪心、下痢、血小板減少症、便秘、好中球減少症、発熱性好中球減少症、疲労、嘔吐、浮腫、発熱性肺炎 、呼吸困難、出血、貧血、発疹、腹痛、敗血症、筋骨格痛、めまい、咳、中咽頭痛、および低血圧であった。

85.

ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

86.

新規抗体薬物複合体SG、尿路上皮がんに有望(TROPHY-U-01)/ESMO2020

 プラチナ系抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療歴を有する転移のある尿路上皮がんに対する新規抗体薬物複合体Sacituzumab Govitecan(SG)の有用性は、昨年のESMO2019で中間解析結果が発表されている(35例での奏効率は29%)。今回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、その最終解析結果が、フランス・Institut de Cancerologie Gustave RoussyのYohann Loriot氏より報告された。 このSGは、多くの固形腫瘍の細胞表面に発現するタンパクTrop-2を標的としており、ヒト化抗Trop-2モノクローナル抗体とイリノテカン系抗がん剤の抗体薬物複合体(ADC)である。TROPHY-U-01試験は、複数のコホートからなるオープンラベルの第II相試験であり、今回はそのコホート1集団の発表である。・対象:プラチナ系抗がん剤とICI既治療(治療ライン数は問わず)の転移のある尿路上皮がん(mUC)患者、PSは0~1・試験群:SG 10mg/kgをday1、8、3週ごと[主要評価項目]中央判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・今回の最終解析の対象は、113例(ITT)。年齢中央値は66歳で75歳以上は23%、内臓転移有りは62%(肝転移は28%)だった。・前治療ライン数の中央値は3.0だった。・データカットオフ2020年5月、追跡期間中央値6.3ヵ月の時点で、治療継続症例は16例(14%)だった。・ORRは27%で、CR 5%、PR 22%であった。これは、試験設計時の統計学的なORR閾値12%を上回っていた。・DOR中央値は5.9ヵ月であった。・PFS中央値は5.4ヵ月、OS中央値は10.5ヵ月であった。・主な治療関連有害事象(TRAE)は、下痢:65%(Grade3は9%、4は1%)悪心:58%(同4%、0%)、好中球減少症:46%(同22%、12%)、倦怠感:50%(同4%、0%)、脱毛:47%(同0%、0%)、発熱性好中球減少症:10%(同7%、3%)などであった。・TRAEによる治療中止は6%で、原因は好中球減少症などであった。治療関連死は発熱性好中球減少による敗血症の1例だった。 SGは、米国FDAによりmUCにおけるファストトラック指定を受けており、トリプルネガティブ乳がんでは迅速承認を取得している。現在、mUCを対象とした第III相試験TROPiCS-04(NCT04527991)が進行中である。

87.

大手術時の術中換気、低容量vs.従来換気量/JAMA

 大手術を受ける成人患者において、術中の低容量換気(low-tidal-volume ventilation)は従来の1回換気量と比較し、同一の呼気終末陽圧(PEEP)下では、術後7日以内の肺合併症の有意な減少は認められなかった。オーストラリア・オースティン病院のDharshi Karalapillai氏らが、単施設での評価者盲検無作為化臨床試験の結果を報告した。手術中の人工換気は旧来、超生理学的1回換気量が適用されてきたが、低容量換気に比べ有害で術後合併症を引き起こす懸念が高まっている。しかし、手術中に人工呼吸器を使用する患者における理想的な1回換気量は不明であった。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。手術予定患者1,236例で手術中の低容量換気と従来の1回換気量の有効性を比較 研究グループは、2015年2月~2019年2月にオーストラリア・メルボルンの三次医療機関において、2時間以上の全身麻酔下で大手術(心臓胸部手術、頭蓋内手術を除く)を受ける予定の40歳以上の患者1,236例を登録し、低容量換気群(1回換気量が予測体重1kg当たり6mL)または従来換気群(1回換気量が予測体重1kg当たり10mL)に無作為に割り付け、2019年2月17日まで追跡調査した。両群とも、すべての患者でPEEPは5cmH2Oとした。 主要評価項目は、肺炎、気管支痙攣、無気肺、肺うっ血、呼吸不全、胸水、気胸、予定外の術後の侵襲的/非侵襲的人工換気などを含む術後7日以内の術後肺合併症である。副次評価項目は、入院中の肺塞栓症、急性呼吸促迫症候群を含む術後肺合併症、全身性炎症反応症候群、敗血症、急性腎障害、創傷感染(表層部/深部)、術中昇圧剤の必要率、予定外の集中治療室(ICU)入室、院内迅速対応チーム呼び出し、ICU在室期間、入院日数、院内死亡率とした。術後7日以内の術後肺合併症の発生は両群とも38~39%で有意差なし 無作為化された患者1,236例のうち、1,206例(低容量換気群614例、従来換気群592例)が試験を完遂した。平均年齢は63.5歳、女性が494例(40.9%)、腹部外科手術が681例(56.4%)であった。 主要評価項目である術後7日以内の術後肺合併症は、低容量換気群で608例中231例(38%)、従来換気群で590例中232例(39%)に発生した(群間差:-1.3%[95%信頼区間[CI]:-6.8~4.2%]、リスク比:0.97[95%CI:0.84~1.11]、p=0.64)。また、いずれの副次評価項目も、両群間に有意差は確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、単施設の試験で、治療の特性上盲検化できなかったこと、両群の患者数がわずかに不均衡であったこと、胸部X線画像が体系的に評価されていないことなどを挙げている。

88.

selpercatinib、RET融合遺伝子陽性NSCLCに有望/NEJM

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、selpercatinibは、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者と未治療の患者の双方において、頭蓋内の効果を含む持続的な有効性をもたらし、主な毒性作用は軽度であることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが実施した「LIBRETTO-001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月27日号に掲載された。RET融合遺伝子は、NSCLCの1~2%にみられるがんドライバー遺伝子で、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者は脳転移のリスクが高いとされる。selpercatinibは、新規のATP競合的で高選択性の低分子RETキナーゼ阻害薬であり、中枢神経系にも到達するよう設計されており、前臨床モデルでは脳内での抗腫瘍活性が確認されている。selpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験 本研究は、RET融合遺伝子陽性NSCLCの治療におけるselpercatinibの安全性と有効性を評価する第I/II相試験であり、日本を含む12ヵ国65施設が参加した(Loxo Oncologyなどの助成による)。 対象は、年齢12歳以上(規制当局や施設内倫理委員会の許諾が得られない場合は18歳以上)のRET融合遺伝子陽性進行NSCLCで、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のある患者、または未治療の患者であった。 第I相用量漸増試験では、20mg(1日1回)~240mg(1日2回)の範囲でselpercatinibが経口投与(カプセルまたは液剤)された。第II相試験では、推奨用量(160mg、1日2回)のselpercatinibが投与された。治療は、28日を1サイクルとし、病勢進行、死亡、許容できない毒性作用、同意の撤回のいずれかが起きるまで継続された。 主要評価項目は、独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目には、奏効期間、無増悪生存、安全性などが含まれた。selpercatinibの奏効割合は既治療例64%、未治療例85% 2017年5月~2018年12月の期間に、プラチナ製剤ベースの化学療法歴のあるRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者105例(年齢中央値61歳、女性59%、前治療レジメン数中央値3[範囲1~15]、脳転移あり38例[36%])が登録された。また、2017年12月~2019年6月の期間に、未治療のRET融合遺伝子陽性進行NSCLC患者39例(年齢中央値61歳、女性56%、脳転移あり7例[18%])が登録された。 プラチナ製剤ベースレジメンによる既治療例のselpercatinibの奏効割合は64%(95%信頼区間[CI]:54~73)であり、このうちCRが2%、PRは62%であった。奏効期間中央値は17.5ヵ月(12.0~評価不能)であり、フォローアップ期間中央値12.1ヵ月の時点で、奏効例の63%で奏効が持続していた。また、フォローアップ期間中央値13.9ヵ月の時点で、無増悪生存期間中央値は16.5ヵ月(13.7~評価不能)であり、1年無増悪生存率は66%(55~74)だった。 また、既治療例のベースライン時に脳転移を認めた38例のうち、11例が測定可能病変を有しており、このうち91%(10/11例)が客観的頭蓋内奏効(CR:3例[27%]、PR:7例[64%])を達成し、中枢神経系の奏効期間中央値は10.1ヵ月だった。 一方、未治療の39例では、selpercatinibの奏効割合は85%(95%CI:70~94)であり、CRはなく、PRが85%であった。6ヵ月の時点で、奏効例の90%で奏効が持続していた。また、奏効期間中央値(フォローアップ期間中央値7.4ヵ月)および無増悪生存期間中央値(同9.2ヵ月)には未到達で、1年無増悪生存率は75%だった。 全体で最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、高血圧症(14%)、ALT値上昇(12%)、AST値上昇(10%)、低ナトリウム血症(6%)、リンパ球減少症(6%)であった。Grade5の有害事象が6件(4%)(敗血症が2例、心停止、多臓器不全症候群、肺炎、呼吸器不全が1例ずつ)認められた。これらのイベントは、担当医によりselpercatinibとは関連がないと判定された。 selpercatinibの投与を受けた531例のうち、薬剤関連有害事象により160例(30%)が減量し、12例(2%)が投与を中止した。 著者は、「selpercatinibは、RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に迅速で持続的な抗腫瘍効果をもたらし、以前にマルチキナーゼ阻害薬で達成されたアウトカムよりも優れたことから、RET融合遺伝子は肺がんにおいて実質的かつ臨床的に使用可能なドライバー遺伝子として確立された」と指摘している。

89.

selpercatinib、RET変異甲状腺髄様がんに有効な可能性/NEJM

 RET変異を有する甲状腺髄様がんの治療において、selpercatinibは、バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わず持続的な有効性をもたらし、主な毒性作用は軽度であり、既治療のRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんでも同様の抗腫瘍活性を発揮することが、米国・マサチューセッツ総合病院のLori J. Wirth氏らが実施した「LIBRETTO-001試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月27日号に掲載された。RET変異は、甲状腺髄様がんの70%に生じており、他の甲状腺がんでRET融合遺伝子が発現することはまれだという。selpercatinibは、新規のATP競合的で高選択性の低分子RETキナーゼ阻害薬。実験モデルでは、V804残基における後天的ゲートキーパー抵抗性突然変異を含む多様なRET変異に対してナノモル濃度で効果を発揮し、脳内での抗腫瘍活性も確認されている。甲状腺髄様がんと甲状腺がんの第I/II相試験 研究グループは、RET変異陽性甲状腺がんの治療におけるselpercatinibの安全性と有効性を検討する第I/II相試験を行った(Loxo Oncologyなどの助成による)。 対象は、12歳以上(規制当局の許諾が得られない場合は18歳以上)で、バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わずRET変異遺伝子を有する甲状腺髄様がんと、これらの薬剤による治療歴のない既治療のRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんの患者であった。 第I相用量漸増試験では、selpercatinibが20mg(1日1回)~240mg(1日2回)の範囲で、経口投与(カプセルまたは液剤)された。第II相試験では、推奨用量(160mg、1日2回)が投与された。治療は、28日を1サイクルとし、病勢進行、死亡、許容できない毒性作用の発現、同意の撤回があるまで継続された。 主要エンドポイントは、独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次エンドポイントは、奏効期間、無増悪生存、安全性などであった。髄様がんの約7割で奏効、1年無増悪生存率8~9割 2017年5月~2019年6月の期間に、12ヵ国65施設で162例が登録された。バンデタニブまたはカボザンチニブあるいはその両方による治療歴のあるRET変異甲状腺髄様がん患者が55例(A群:年齢中央値57歳、男性36例)、これらの薬剤による治療歴のないRET変異甲状腺髄様がん患者が88例(B群:58歳、58例)、これらの薬剤による治療歴のない既治療のRET融合遺伝子陽性甲状腺がん患者が19例(C群:54歳、9例)であった。 A群は、奏効割合が69%(95%信頼区間[CI]:55~81)で、このうちCRが9%、PRが60%であった。奏効期間中央値は評価不能(95%CI:19.1~評価不能)で、1年無増悪生存率は82%(69~90)だった。 B群は、奏効割合が73%(95%CI:62~82)で、CRが11%、PRは61%であった。奏効期間中央値は22.0ヵ月(評価不能~評価不能)で、1年無増悪生存率は92%(82~97)だった。 C群は、奏効割合79%(95%CI:54~94)、CR 5%、PR 74%で、奏効期間中央値18.4ヵ月(7.6~評価不能)であり、1年無増悪生存率は64%(37~82)だった。 全体で最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、高血圧(21%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇(11%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇(9%)、低ナトリウム血症(8%)、下痢(6%)であった。Grade5の有害事象は5件(喀血、出血、敗血症、心停止、心不全[各1例])認められた。 selpercatinibの投与を受けた全531例のうち、160例(30%)が治療関連有害事象のため減量し、12例(2%)が投与を中止した。 著者は、「RETの阻害から利益を得る可能性のある非家族性の甲状腺髄様がん患者を特定するには、生殖細胞性または体細胞性のRET変異を有する患者に対する効果的な分子スクリーニング戦略の実施が不可欠だろう」としている。

90.

入院中の成人アトピー性皮膚炎患者、全身性感染症リスク増大

 成人アトピー性皮膚炎(AD)と全身性感染症との関連について、デンマーク・コペンハーゲン大学のCatherine Droitcourt氏らが全国規模のコホート研究を行った結果、入院治療中のAD患者において全身性感染症のリスクが増大していることが明らかになった。ADと全身性感染症との関連は指摘されていたが、これまでに行われた大規模研究はわずかで、関連性は明確にはなっていなかった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年8月1日号掲載の報告。 研究グループは成人AD患者について、入院治療と関連した全身性感染症リスクの上昇が認められるかどうかを調べるため、全国レジストリベースのコホート研究を行った。 被験者は1995~2017年にレジストリに登録されたデンマーク成人。Coxモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・成人AD患者1万602例(年齢中央値29.8歳、IQR:22.6~44.8)と、参照対照群10万6,020例を対象に評価を行った。・全身性感染症の全罹患率は、1万人年当たり、成人AD群180.6(95%CI:172.6~189.0)、参照対照群120.4(118.3~122.5)であった。・ADと全身性感染症の関連は、筋骨格系(補正後HR:1.81、95%CI:1.42~2.31)、心臓(1.75、1.21~2.53)、上気道感染症(1.42、1.15~1.73)および下気道感染症(1.21、1.10~1.33)で観察された。・敗血症(補正後HR:1.19、95%CI:1.01~1.44)、皮膚感染症(2.30、2.01~2.62)のリスク上昇も認められた。 なお著者は、「本所見は、病院外で認められる成人の軽症AD患者に一般化することはできない限定的なものである」としている。

91.

敗血症性ショック、ステロイドを含む3剤併用は無効/JAMA

 敗血症性ショックの患者に対する、アスコルビン酸+コルチコステロイド+チアミンの3剤併用投与は、プラセボと比較して、試験登録後72時間におけるSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアを統計学的に有意に低下しないことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAri Moskowitz氏らによる無作為化試験「ACTS試験」の結果、報告された。先行研究により、3剤併用投与は潜在的な治療法であることが見いだされていたが、著者は今回の試験結果を踏まえて「敗血症性ショック患者に対する3剤併用のルーチン使用は支持されない」と述べている。JAMA誌2020年8月18日号掲載の報告。3剤併用vs.プラセボの無作為化試験、72時間のSOFAスコアで評価 研究グループは、アスコルビン酸+コルチコステロイド+チアミンの3剤併用投与が、敗血症性ショックの患者における臓器損傷を軽減するかどうかを、多施設共同の無作為化盲検プラセボ対照試験で評価した。 2018年2月9日~2019年10月27日に、米国の14施設で敗血症患者205例を登録し、2019年11月26日まで追跡調査した。 被験者は無作為に、非経口アスコルビン酸(1,500mg)+ヒドロコルチゾン(50mg)+チアミン(100mg)を6時間ごとに4日間投与する群(介入群、103例)、または同時に同一量のプラセボを投与する群(プラセボ群、102例)に割り付けられた。 主要評価項目は、試験登録~72時間のSOFAスコア(範囲:0~24、0=最良)の変化。主要な副次評価項目は、腎不全、30日死亡率などであった。少なくとも1用量の治験薬を投与された患者を解析対象とした。SOFAスコアの補正後群間差-0.8ポイント、統計学的有意差なし 無作為化を受けた被験者205例(平均年齢68[SD 15]歳、女性90例[44%])のうち、200例(98%)が少なくとも1用量の治験薬を投与され試験を完了した(介入群101例、プラセボ群99例)。 全体として、試験登録後72時間のSOFAスコアに関して、時間と治療グループ間に統計学的に有意な相互作用はみられなかった。平均SOFAスコアの変化は、介入群が9.1ポイントから4.4ポイント(-4.7ポイント)、プラセボ群は9.2ポイントから5.1ポイント(-4.1ポイント)であった(補正後群間差:-0.8、95%信頼区間[CI]:-1.7~0.2、相互作用のp=0.12)。 腎不全の発生率(介入群31.7% vs.プラセボ群27.3%、補正後リスク差:0.03、95%CI:-0.1~0.2、p=0.58)、30日死亡率(34.7% vs.29.3%、ハザード比:1.3、95%CI:0.8~2.2、p=0.26)はいずれも有意な差は認められなかった。最も頻度が高かった重篤有害事象は、高血糖症(介入群12例vs.プラセボ群7例)、高ナトリウム血症(11例vs.7例)、新規の院内感染(13例vs.12例)であった。

92.

FHホモ接合体のevinacumab併用、LDL-Cを40%低下/NEJM

 最大用量の脂質低下療法を受けているホモ接合型家族性高コレステロール血症(FH)の患者において、evinacumabを併用することでLDLコレステロール(LDL-C)値がベースラインよりも大幅に低下したのに対し、プラセボではLDL-C値がわずかに上昇し、24週の時点で群間差が49.0ポイントに達したとの研究結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrederick J. Raal氏らによって報告された。「ELIPSE HoFH試験」と呼ばれるこの研究の成果は、NEJM誌2020年8月20日号に掲載された。ホモ接合型FHは、LDL-C値の異常な上昇によって引き起こされる早発性の心血管疾患を特徴とする。この疾患は、LDL受容体活性が実質的に消失する遺伝子変異(null-null型)または障害される遺伝子変異(non-null型)と関連している。また、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、低脂血症や、アテローム性動脈硬化性心血管疾患への防御と関連している。ANGPTL3に対するモノクローナル抗体であるevinacumabは、ホモ接合型FH患者にとって有益である可能性が示されていた。11ヵ国30施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験 本研究は、11ヵ国30施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年2月15日~12月18日の期間に患者登録が行われ、2019年7月29日にデータベースがロックされた(Regeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢12歳以上のホモ接合型FHで、許容できない副作用が発現しない最大用量の脂質低下療法を安定的に受けており、LDL-C値が70mg/dL以上の患者であった。 被験者は、evinacumab(15mg/kg体重)を4週ごとに静脈内注入する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ベースラインから24週までのLDL-C値の変化率(%)とした。LDL-C値:47.1%低下vs.1.9%上昇 65例が登録され、evinacumab群に43例、プラセボ群には22例が割り付けられた。12~<18歳の患者が各群に1例ずつ含まれた。全体の平均年齢は41.7±15.5歳で、女性が35例(54%)であった。 ベースラインの平均LDL-C値は、最大用量の基礎脂質低下療法を受けていたにもかかわらず、evinacumab群が260mg/dL、プラセボ群は247mg/dLであった。全体の94%がスタチン(77%は高強度スタチン)、77%がPCSK9阻害薬の投与を、34%がアフェレーシスを受けており、63%が3剤以上の脂質修飾薬の投与を受けていた。 24週の時点で、evinacumab群ではLDL-C値がベースラインから47.1%低下したのに対し、プラセボ群では1.9%上昇しており、群間の最小二乗平均差は-49.0ポイント(95%信頼区間[CI]:-65.0~-33.1、p<0.001)であった。 また、LDL-C値の群間の最小二乗平均絶対差は-132.1mg/dL(95%CI:-175.3~-88.9、p<0.001)であった。 LDL-C値の低下は、null-null型変異を有する患者では、evinacumab群がプラセボ群よりも大きく(-43.4% vs.+16.2%)、非null型変異の患者でもevinacumab群で大きかった(-49.1% vs.-3.8%)。 主な副次アウトカムであるアポリポ蛋白B、非HDL-C値、総コレステロール値のベースラインから24週時までの変化率は、いずれもevinacumab群がプラセボ群よりも有意に低下した(すべてのp<0.001)。 有害事象は、evinacumab群が66%、プラセボ群は81%で発現した。evinacumab群で頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(16%)、インフルエンザ様疾患(11%)、頭痛(9%)、鼻漏(7%)であった。 有害事象により治療中止となった患者は両群とも認められず、死亡例もなかった。重篤な有害事象は、evinacumab群の2例(5%、尿路性敗血症、自殺企図)でみられたが、いずれも回復した。 著者は、「LDL-C値の低下に伴い、アポリポ蛋白Bはevinacumab群がプラセボ群よりも36.9ポイント低下した。この低下は、大量基礎脂質低下療法へのアフェレーシス追加の有無にかかわらず達成された」としている。

93.

デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。デキサメタゾンまたはプラセボに小児患者を1対1で割り付け 本研究は、小児の心臓手術における、術中デキサメタゾン投与による重度合併症や死亡の抑制効果を評価する医師主導の二重盲検無作為化試験であり、3ヵ国(中国、ブラジル、ロシア)の4施設の参加の下、2015年12月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(各参加施設の研究助成のみで実施)。 対象は、生後12ヵ月以下で、CPBを伴う待機的心臓手術が予定されている患児であった。これらの患児は、麻酔導入後にデキサメタゾン(1mg/kg)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム水溶液)の静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、術後30日以内の死亡、非致死的心筋梗塞、体外式膜型人工肺の必要性、心肺蘇生法の必要性、急性腎障害、長期の機械的換気、神経学的合併症の複合とした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの個々の構成要素のほか、機械的換気の期間、変力指標、ICU入室期間、ICU再入室、入院期間など17項目であった。デキサメタゾンとプラセボは副次エンドポイントのすべてで有意差なし 小児患者394例(月齢中央値6ヵ月、男児47.2%)が登録され、全例が試験を完遂した。デキサメタゾン群に194例、プラセボ群には200例が割り付けられた。CPB時間中央値は、デキサメタゾン群が50分、プラセボ群は46分だった。 主要複合エンドポイントの発生は、デキサメタゾン群が74例(38.1%)、プラセボ群は91例(45.5%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(絶対リスク減少:7.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~15.3、ハザード比[HR]:0.82、95%CI:0.60~1.10、p=0.20)。事前に規定されたすべてのサブグループで、両群間に治療効果の差はみられなかった。 主要エンドポイントの個々の構成要素を含む副次エンドポイントのすべてで、両群間に有意差はなかった。デキサメタゾン群で2例(1.0%)、プラセボ群で4例(2.0%)の小児患者が死亡した。急性腎障害はそれぞれ10例(5.1%)および14例(7.0%)で発生し、長時間の換気(24時間以上)は70例(36.1%)および84例(42.0%)で認められ、神経学的イベントは6例(3.1%)および13例(6.5%)で発現した。 感染症は、デキサメタゾン群が4例(2.0%)、プラセボ群は3例(1.5%)で発生した。デキサメタゾン群の3例で肺炎、1例で縦隔炎がみられ、プラセボ群の2例で肺炎(1例は創感染を伴う)、1例で深部胸骨感染が発生した。敗血症は認めなかった。 著者は、「本試験は、治療効果を過大評価している可能性があり、主要エンドポイントの群間差の95%CIの範囲内に、臨床的に意義のある最小変化量(15%)が含まれていることから、検出力が十分でない可能性がある」としている。

94.

大腸がん、1次治療からFOLFOXIRI+ベバシズマブで予後良好/Lancet Oncol

 未治療の転移を有する切除不能大腸がん(mCRC)に対する有効な治療法が明らかにされた。1次治療でFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)療法を行い2次治療も同療法を再導入する治療法は、1次治療でmFOLFOX+BEV療法→2次治療でFOLFIRI+BEV療法を逐次投与する治療法と比較して、良好な治療成績が得られることが認められたという。イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏らが、イタリア国内58施設で実施した、無作為化非盲検第III相試験「TRIBE2試験」の最新解析結果を報告した。Lancet Oncology誌2020年4月号掲載の報告。 研究グループは、2015年2月26日~2017年5月15日に未治療mCRC患者679例を、対照群(340例)と試験群(339例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 対照群では、1次治療でmFOLFOX6+BEV療法(オキサリプラチン[OX]85mg/m2 /ロイコボリン[LV]200mg/m2の2時間静注、フルオロウラシル[5-FU]400mg/m2ボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)→2次治療でFOLFIRI+BEV療法(イリノテカン[IRI]180mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 400mg/m2のボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 試験群では、1次治療および2次治療ともにFOLFOXIRI+BEV療法(IRI 165mg/m2の1時間静注、OX 85mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 3,200mg/m2を48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 主要評価項目は、無作為化から2次治療における増悪(PD)または死亡までの期間(無増悪生存期間[PFS]2)とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値35.9ヵ月(四分位範囲:30.1~41.4)(データカットオフ日:2019年7月30日)において、PFS2は試験群19.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.3~21.4)、対照群16.4ヵ月(95%CI:15.1~17.5)であった(ハザード比:0.74、95%CI:0.63~0.88、p=0.0005)。・1次治療の期間中に認められた主なGrade3/4の有害事象(発現率:試験群vs.対照群)は、下痢(17% vs.5%)、好中球減少症(50% vs.21%)、動脈性高血圧症(7% vs.10%)であった。・重篤な有害事象は、試験群で84例(25%)、対照群で56例(17%)に認められた。・治療関連死亡は試験群で8例(腸閉塞、腸穿孔および敗血症各2例、心筋梗塞および出血各1例)、対照群で4例(閉塞2例、穿孔および肺塞栓症各1例)報告された。・最初の増悪後、神経毒性を除き、対照群と試験群でGrade3/4の有害事象の発現率に差は認められなかった。神経毒性は試験群でのみ報告された(132例中6例、5%)。・増悪後の重篤な有害事象は、試験群で20例(15%)、対照群で25例(12%)に認められた。・最初の増悪後の治療関連死亡は、試験群で3例(腸閉塞2例、敗血症1例)、対照群で4例(腸閉塞、腸穿孔、脳血管イベントおよび敗血症各1例)報告された。

95.

グラム陰性菌血症への抗菌薬、個別vs.7日間vs.14日間/JAMA

 合併症のないグラム陰性菌血症の成人患者において、抗菌薬の投与期間をC反応性蛋白(CRP)に基づいて個別に設定した場合および7日間固定とした場合のいずれも、30日臨床的失敗率は14日間固定に対して非劣性であることが示された。スイス・ジュネーブ大学病院のElodie von Dach氏らが、スイスの3次医療機関3施設において実施した無作為化非劣性臨床試験の結果を報告した。抗菌薬の過度の使用は抗菌薬耐性を引き起こす。グラム陰性菌血症は一般的な感染症で、十分な抗菌薬使用を必要とするが、投与期間で有効性に差があるかは十分に解明されていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。CRPによる個別設定投与、7日間投与、14日間投与の3群に無作為化 研究グループは、2017年4月~2019年5月にグラム陰性菌血症で入院した成人患者を登録し、2019年8月まで追跡した。適格基準は18歳以上、24時間以内の発熱および複雑性感染症(膿瘍など)または重度の免疫抑制の所見がなく、血液培養で発酵性グラム陰性細菌が検出され微生物学的に有効な抗菌薬が投与されている患者であった。 有効な抗菌薬が投与されて5日(±1日)目に、投与期間をCRPに基づき設定する群(CRPがピークから75%低下で中止)(以下、CRP群)、7日間固定群(7日群)、14日間固定群(14日群)に、1対1対1の割合で無作為化した。患者および医師は、無作為化から抗菌薬投与中止まで盲検化された。投与開始後30日、60日、90日時に電話で追跡調査を行った。 主要評価項目は、30日以内の臨床的失敗(菌血症の再発、局所の化膿性合併症、最初の菌血症と同じ菌種による遠隔部位の合併症、臨床的悪化によるグラム陰性菌に対する抗菌薬の再投与、全死因死亡のいずれか1つ以上)で、非劣性マージンは10%とした。副次評価項目は、90日以内の臨床的失敗などであった。30日以内の臨床的失敗、14日間投与に対し個別設定および7日間投与は非劣性 2,345例がスクリーニングされ、504例(年齢中央値79歳、四分位範囲:68~86歳)が無作為化された。このうち、493例(98%)が30日間、448例(89%)が90日間の追跡調査を完遂した。CRP群(170例)は、投与期間中央値が7日(四分位範囲:6~10、範囲:5~28)で、30日間の追跡調査を完遂した164例のうち34例(21%)はプロトコール違反(CRP低下前の退院など)があった。 主要評価項目である30日以内の臨床的失敗は、CRP群で164例中4例(2.4%)、7日群で166例中11例(6.6%)、14日群で163例中9例(5.5%)に確認された(CRP群vs.14日群の差:-3.1%[片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1、p<0.001]、7日群vs.14日群の差:1.1%[片側97.5%CI:-∞~6.3、p<0.001])。また、90日以内の臨床的失敗は、CRP群143例中10例(7.0%)、7日群151例中16例(10.6%)、14日群153例中16例(10.5%)であった。 なお、著者は、盲検化が無作為化から抗菌薬中止までに限られたことなどを研究の限界として挙げたうえで、「発生したイベントが少ないのに対して非劣性マージンが広く、CRP群でのアドヒアランスの低さや投与期間の幅広さなどから、結果の解釈には限界がある」とまとめている。

96.

第7回 COVID-19に立ち向かう医療従事者をBCGワクチンで守れるか? 国際試験が進行中

新生児の結核予防にほぼ100年も前から使われてきたワクチンがほかの感染症も防ぐという裏付けに触発され、フランスの微生物学者の名にちなんで名付けられたそのワクチン・カルメットゲラン桿菌(BCG)で、目下の新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行を防ぐことができるのか、研究者が調べ始めています。BCGワクチンの成分は結核を引き起こす細菌の類縁菌・Mycobacterium bovisを弱毒化したものです。これまでに40億人以上に接種されており、世界で最も広く投与されているワクチンの一つとなっています1)。BCGは結核に対する特異的な効果のみならず、幅広く、多くの感染症に対し非特異的に防御する効果を免疫系に備わせる働きがあります2)。たとえば、新生児の死亡率が高いギニアビサウでの3試験のメタ解析の結果、低体重出生児へのBCG-Denmark(BCGワクチンの1つ)接種は生後28日間の死亡率の38%低下と関連し、その効果は主に肺炎や敗血症による死亡の減少によってもたらされました3)。12~17歳の若者が参加した南アフリカでの無作為化試験ではBCG-Denmark接種で上気道感染症発現率がプラセボ群に比べて73%(2.1% vs 7.9%)低下しました2,4)。オランダのMihai Netea氏等による試験では、ウイルスへの効果も示唆されています。健康な成人にBCG-Denmarkを接種してしばらくしてからあえて弱毒化黄熱病ウイルスを投与したところ、血中ウイルス量がプラセボ投与に比べて有意に減少しました5)。そのような試験や研究成果を背景にして、COVID-19への効果の緒を掴むべく、BCG接種義務国とそうでない国を比較した結果が報告されるようになっています。たとえば査読前報告掲載サイトmedRxivに今月初めに掲載された報告によると、BCG接種が義務であることは流行最初の30日間のCOVID-19症例数や死亡数の増加がより緩やかであることと関連しました6)。3月末にmedRxivに掲載された別の報告ではイタリア、米国、オランダ等のBCGワクチンが広まっていない国はワクチンが広く接種されている国に比べて流行の被害がより大きいことが示されています7)。ただしそれらの報告は因果関係を示すものではありません。また、個々のヒト単位の比較ではなく国と国の比較には結果を偏らせる多くの要因が存在し、それらをすべて差し引いて解析することは不可能です。BCGワクチンをかれこれ20年調べているデンマークの疫学者Christine Stabell Benn氏は、COVID-19に関するそれらの最近のBCGワクチンの検討データは裏付けの重みとしては最底辺の類のものだが、長年に渡って蓄積された裏付けによると、BCGワクチンのCOVID-19予防効果にかけてみるのは悪くないと科学ニュースThe Scientistに話しています。Benn氏はすでに動きだしており、COVID-19のリスクが最も高い人々、すなわちその対処にあたる医療従事者1,500人を募る試験を始めています。BCGで欠勤が減るかどうかやCOVID-19発現が減るかどうか等が調べられます。デンマークでは1980年代までBCGワクチンが使われており、学校でかつてBCGワクチン接種経験がある医療従事者も試験には混じるでしょう。Benn氏は過去にBCG接種経験がある人への更なる接種は接種経験がない人より有効だろうと想定しています。Benn氏と協力関係にある上述のNetea氏はオランダで同様の試験を開始しています。また、オーストラリア出身のメディア王マードック氏の母親Dame Elisabeth Murdoch(エリザベス マードック)氏の支援を受けて30年前の1986年に設立された同国の小児健康研究所Murdock Children’s Research Institute(MCRI)は、Netea氏も協力する国際試験BRACEを3月27日に始めています。医療従事者を対象としたそれらの試験結果は待ち遠しいですが、無作為化試験以外で先走ってCOVID-19予防にBCGを接種してはいけないと世界保健機関(WHO)は釘を刺しています。あまり当てにならない最近の査読前報告を高品質な裏付けと勘違いしてBCGに群がると、すでに不足気味となっているBCGワクチンがそれを必要としている乳幼児に行き渡らなくなる恐れがあります。実際、アフリカの一部では小児向けのワクチンが医療従事者に横流しされていると上述のBRACE試験を率いるNigel Curtis氏は聞いており、「軽はずみにワクチンを使い始めると幼い子にツケが回る。いまあるワクチンは赤ちゃんの結核を予防するものだ」とThe Scientistに話しています。試験外での不適切な使用を注意しつつCurtis氏が進めているBRACE試験を支援する動きは広がっており、最近になってその被験者数はゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)からの1,000万ドル支援を受けて4,000人から1万人へと大幅に増えています。5月5日の発表によると、試験にはすでに医療従事者2,500人が組み入れられています8)。感染症に広く効きうるBCGワクチン等が病因狙い撃ちワクチン完成までの橋渡しの役割を担うことは、目下のCOVID-19流行や将来の感染流行への対処に大いに貢献するだろうとCurtis氏等はLancet誌に記しています2)。参考1)An Old TB Vaccine Finds New Life in Coronavirus Trials / TheScientist2)Curtis N,et al. Lancet. 2020 Apr 30.3)Biering-Sørensen S,et al. Clin Infect Dis. 2017 Oct 1;65:1183-1190. 4)Nemes E,et al. N Engl J Med. 2018 Jul 12;379:138-149.5)Arts RJW,et al. Cell Host Microbe. 2018 Jan 10;23:89-100.6)Mandated Bacillus Calmette-Guerin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19. medRxiv. May 04, 20207)Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study. medRxiv. March 28, 20208)10M grant enables MCRI’s BCG vaccine trial to expand internationally, enrol 10,000 healthcare workers / Murdoch Children’s Research Institute’s (MCRI)

97.

COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開

 2020年5月8日、ギリアド・サイエンシズ社(以下、ギリアド社、本社:米カリフォルニア州)は、特例承認制度の下、レムデシビル(商品名:ベクルリー)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として承認されたことを発表した。現時点では供給量が限られているため、ギリアド社より無償提供され、公的医療保険との併用が可能である。 本治療薬は5月1日に米国食品医薬品局(FDA)よりCOVID-19治療薬としての緊急時使用許可を受け、日本では5月4日にギリアド社の日本法人から厚生労働省へ承認申請が出されていた。レムデシビル投与、対象者の選定に注意 レムデシビルはエボラウイルス、マールブルグウイルス、MERSウイルス、SARSウイルスなど、複数種類の新興感染症病原体に対し、in vitroと動物モデルを用いた試験の両方で広範な抗ウイルス活性が認められている核酸アナログである。 添付文書に記載されている主なポイントは以下のとおり。・投与対象者は、酸素飽和度(SpO2)が94%(室内気)以下、酸素吸入を要する、体外式膜型人工肺(ECMO)導入または侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者。・警告には急性腎障害、肝機能障害の出現について記載されており、投与前及び投与中は毎日腎機能・肝機能検査を行い、患者状態を十分に観察する。・臨床検査値(白血球数、白血球分画、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、クレアチニン、グルコース、総ビリルビン、AST、ALT、ALP、プロトロンビン時間など)について、適切なモニタリングを行う。・Infusion Reaction(低血圧、嘔気、嘔吐、発汗、振戦など)が現れることがある。・用法・用量は、通常、成人及び体重40kg以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200mgを、投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。通常、体重3.5kg以上40kg未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に5mg/kgを、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する。なお、総投与期間は10日までとする。ただし、これに関連する注意として、「本剤の最適な投与期間は確立していないが、目安としてECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されている患者では総投与期間は10日間までとし、ECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されていない患者では5日目まで、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する」「体重3.5kg以上40kg未満の小児には、点滴静注液は推奨されない」との記載があり、投与期間や体重制限などに注意が必要である。・小児や妊婦への投与は治療上の有益性などを考慮する。・主な有害事象は、呼吸不全(10例、6%)、急性呼吸窮迫症候群(3例、1.8%)、呼吸窮迫(2例、1.2%)、敗血症性ショック(3例、1.8%)、肺炎(2例、1.2%)、敗血症(2例、1.2%)、急性腎障害(6例、3.7%)、腎不全(4例、2.5%)、低血圧(6例、3.7%)など。 このほか、厚生労働省が発出した留意事項には、適応患者の選定について、以下を参考にするよう記載されている。■■■<適格基準> ・PCR検査においてSARS-CoV-2が陽性 ・酸素飽和度が94%以下、酸素吸入又はNEWS2スコア4以上・入院中 <除外基準>・多臓器不全の症状を呈する患者 ・継続的に昇圧剤が必要な患者 ・ALTが基準値上限の5倍超 ・クレアチニンクリアランス30mL/min未満又は透析患者 ・妊婦■■■ また、本剤を投与する医療機関において迅速なデータ提供を求めており、「本剤には承認条件として可能な限り全症例を対象とした調査が課せられているが、本剤については安全性及び有効性に関するデータをとくに速やかに収集する必要がある」としている。2つの臨床試験と人道的見地に基づき承認へ 今回の承認は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導するプラセボ対象第III相臨床試験(ACTT:Adaptive COVID-19 Treatment Trial、COVID-19による中等度から重度の症状を呈する患者[極めて重症の患者を含む]を対象)、ならびにギリアド社が実施中のCOVID-19重症患者を対象とするグローバル第III相試験(SIMPLE Study:重症例を対象にレムデシビルの5日間投与と10日間投与を評価)の臨床データ、そして、日本で治療された患者を含むギリアド社の人道的見地から行われた投与経験データに基づくもの。 ギリアド社によると、2020年10月までに50万人分、12月までに100万人分、必要であれば2021年には数百万人分の生産量を目標としている(各患者が10日間投与を受けると想定して計算)。

98.

敗血症関連頻脈性不整脈に対して、ランジオロールが目標心拍数の達成と新規不整脈発生の抑制を示す(J-Land 3S)

 敗血症または敗血症性ショックにおける頻脈性不整脈に対して、従来治療にランジオロールを加えた治療が従来治療に比べ24時間後の心拍数60~94bpm達成率を有意に高め、168時間までの新規不整脈発生率を有意に低下することが、鹿児島大学の垣花 泰之氏らによるJ-Land 3Sで示された。詳細は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2020年3月31日号に掲載された。 敗血症関連頻脈性不整脈は、発症頻度が高く予後が悪い疾患である。しかし、現在のところ効果的な治療法は存在していない。そこで、垣花氏らは、超短時間作用型β遮断薬ランジオロールの本病態に対する有効性・安全性を検討した。従来の敗血症治療へのランジオロール追加試験に、日本の54施設が参加 本試験は、日本の54病院で多施設非盲検無作為化比較試験として実施された。対象は、集中治療室で敗血症管理のため臨床ガイドラインに従った従来の敗血症治療を受けた後に頻脈性不整脈を発症した患者で、従来の敗血症治療にランジオロール治療を追加する群(ランジオロール群)と従来の敗血症治療のみを受ける群(対照群)にオープンラベルで無作為に割り付けられた。ランジオロール群では、無作為化後2時間以内にランジオロール塩酸塩として毎分1μg/kgの初期用量で静脈内注入が行われ、最大20μg/kg/分まで増加可能とされた。 主要アウトカム項目は、無作為化後24時間における心拍数60〜94bpmを達成した患者割合であった。24時間後の心拍数60~94bpm達成率、168時間までの新規不整脈発生率を有意に改善 151例が登録され、ランジオロール群に76例、対照群に75例が割り付けられた。 主要アウトカム項目は、ランジオロール群55%(41/75例)、対照群33%(25/75例)となり、ランジオロール群で有意に高かった(p=0.0031)。 有害事象は、ランジオロール群、対照群において、それぞれ64%(49/77例)、59%(44/74例)で認められ、重篤な有害事象(死に至る有害事象を含む)は、12%(9/77例)、11%(8/74例)であった。ランジオロールに関連した重篤な有害事象は、血圧低下(3例)、心停止、心拍数低下、および駆出率低下(各1例)であった。 また、副次評価項目である168時間までの新規不整脈発生率は、ランジオロール群、対照群でそれぞれ9%(7/75例)、25%(19/75例)となり、ランジオロール群で有意に低く(p=0.015)、28日までの死亡率は、それぞれ12%(9/75例)、20%(15/75例)であった(p=0.22)。 垣花氏らは、「ランジオロールは敗血症関連頻脈性不整脈において、投与24時間後における心拍数60〜94bpm達成患者を有意に増やし、新規の不整脈発生率も有意に低減させ、許容性も高い薬剤であるが、低血圧リスクが存在するために血圧と心拍数の適切な監視の下で使用する必要がある」としている。

99.

新型コロナウイルス感染症患者に対するremdesivir人道的使用(解説:浦島充佳氏)-1220

オリジナルニュース重症COVID-19へのremdesivir、68%で臨床的改善か/NEJM 現在、COVID-19に対する有効な治療薬はない。そこでSpO2 94%以下の低酸素症を伴うCOVID-19患者61例にremdesivirを使用した。しかし、結果の不明な7例と薬物使用量の不適切だった1例を除外し53例で解析が成された。投与開始中央値18日(IQR:12~23日)において53例中36例(68%)で酸素投与法の改善をみた。一方、有害事象として60%に肝臓酵素の上昇、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧を認めた。23%に多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧を、人工換気をしている患者に認めた。 SARS-CoV-2はRNAウイルスであり、remdesivirのRNAポリメラーゼ阻害作用に期待しての人道的使用によるデータを集めての報告である。データを解釈するうえで気になった点は以下の4つである。1. 除外された8例の詳細がない2. アウトカム評価の方法が事前に決められていない3. 有害事象が多い4. 製薬会社(Gilead Sciences)主導の研究である 結論にも記載があるように、現在ランダム化プラセボ比較試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。 SARSにおいてHIV治療薬の1つであるロピナビル・リトナビルを41例に投与したところ21日以内に呼吸窮迫症候群ないし死亡したケースは1例のみであった(2.4%)。一方、ロピナビル・リトナビルを投与しない過去のSARS 111例では、同アウトカムが32例(28.8%)に発生した1)。この研究デザインはhistorical controlであるが、今回のCOVID-19に対して非盲検ランダム化プラセボ比較試験が実施された2)。199例のCOVID-19患者を対象としたが、臨床症状の改善までの日数、死亡率ともに両群で有意差を認めなかった。 第II相試験で比較的良好な結果であり、第III相試験に進んでも効果が実証されないことは多い。米国の大規模臨床腫瘍グループの実施した第III相試験では、わずか28%(26/94試験)のみが、主要評価項目で既存治療に対する優越性を示したと報告した3)。 remdesivirのCOVID-19に関してもランダム化プラセボ比較試験の結果が待たれるところである。1)Chu CM, et al. Thorax. 2004;59:252-256.2)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 18. [Epub ahead of print]3)Unger JM, et al. JAMA Oncol. 2016;2:875-881.

100.

重症COVID-19へのremdesivir、68%で臨床的改善か/NEJM

 抗ウイルス薬remdesivirを、重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者53例(日本からの症例9例を含む)に投与したところ、36例(68%)で臨床的改善がみられた。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのJonathan Grein氏らが、remdesivirの人道的使用によるコホート分析データを、NEJM誌オンライン版2020年4月10日号で発表した。<試験概要>・対象:COVID-19感染による重度急性呼吸器症状を呈する入院患者で、酸素飽和度≦ 94%もしくは酸素補充を受けている患者・治療概要: remdesivirの10日間投与(1日目に負荷投与量として200mg、その後 9 日間は100mgを1日1回静脈内投与)・観察期間:投与開始から28日間 本研究では、評価項目は事前に設定されていない。しかし分析の一環として、酸素補充の必要レベルの変更、退院、remdesivirの投与中止につながった有害事象(報告ベース)、死亡など、主要な臨床的事象の発生率を定量分析。本研究での臨床的改善を、WHOの「R&Dブループリント(戦略対策計画)」の推奨に従い、(1)退院、(2)入院や酸素補充の必要レベルなどで評価する6段階の評価基準でベースラインから2段階以上の改善の、少なくともどちらかを満たす場合と定義している。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月25日~3月7日に少なくとも1回remdesivirを投与された61例のうち、8例のデータが除外された(7例で治療後のデータがなく、1例は投与エラーのため)。・データが分析された53例のうち、22例が米国、22例がヨーロッパまたはカナダ、9例が日本の症例。年齢中央値は64歳(四分位範囲:48~71)、40例(75%)が男性であった。・remdesivir投与開始前の症状持続期間の中央値は12日間。ベースライン時に30例(57%)が人工呼吸器、4例(8%)が体外式膜型人工肺(ECMO)を使用していた。・40例(75%)で10日間のフルコースの投与が実施され、10例(19%)は 5~9日間、3例(6%)は5日未満であった。・追跡期間中央値は18日間。この間、36例(68%)で酸素補充の必要レベルが改善し、人工呼吸器使用者30例のうち17例(57%)が抜管した。・Kaplan-Meier分析の結果、観察期間中に認められた臨床的改善の累積出現率は84%(95%信頼区間[CI]:70~99)。臨床的改善がみられた症例の割合は、侵襲的換気療法実施例(非侵襲的換気療法実施例に対するハザード比[HR]:0.33、95%CI:0.16~0.68)、70歳以上で低かった(50歳未満に対するHR:0.29、95%CI:0.11~0.74)。・25例(47%)が退院し、7例(13%)が死亡。死亡リスクは、70歳以上(70歳未満に対するHR:11.34、95%CI:1.36~94.17)、ベースライン時の血清クレアチニン値が相対的に高い症例(mg/dL ごとのHR:1.91、95%CI:1.22~2.99)、侵襲的換気療法実施例(非侵襲的換気療法実施例に対するHR:2.78、95%CI:0.33~23.19)で高い傾向がみられた。・32例(60%)がフォローアップ中に有害事象を報告した。最も一般的な有害事象は、肝酵素値の上昇、下痢、発疹、腎障害、低血圧。12例(23%)で多臓器不全症候群、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧等の深刻な有害事象が発生し、これらはベースライン時に侵襲的換気を受けていた症例で報告された。・4例が治療途中で投与が中止され、その理由は既存の腎機能障害の悪化が1例、多臓器不全が1例、肝酵素値の上昇が2例(うち1例は斑状丘疹状皮疹発現)であった。 著者らは、コホートサイズの小ささ、フォローアップ期間の短さ、無作為化対照群がないこと等の本研究の限界に触れ、支持療法の種類や施設での治療プロトコル、入院のしきい値の違いなどが、結果に寄与している可能性を指摘。そのうえで、今回の分析からはremdesivirが重症Covid-19患者に臨床的利益をもたらす可能性が示唆されたとし、進行中の無作為化プラセボ対照試験の結果が待たれるとしている。(ケアネット 遊佐 なつみ)専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王

検索結果 合計:270件 表示位置:81 - 100