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“睡眠”も心血管リスク因子に、循環器版「睡眠呼吸障害の診断・治療ガイドライン」改訂

 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が循環器疾患の重要なリスク因子であることが明らかになり、2010年に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』が発刊された。あれから13年、3月11日に本ガイドライン(以下、GL)の2023年改訂版が発刊され、第87回日本循環器学会学術集会の「ガイドラインに学ぶ2」において、葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科 准教授)が改訂ポイントを6つに絞り、改訂の背景や臨床に役立つ点を発表した。循環器医も患者の“睡眠”を意識する時代 SDBは、さまざまな循環器疾患に合併し、循環器疾患の悪化に関与するだけではなく、循環器疾患の発症そのものに関与することも示唆されている1)。AHAは2010年にCardiovascular Health Promotionとして、7つの修正可能な因子(適正体重の維持、禁煙、運動習慣、健康的な食習慣、血圧・血清脂質・血糖値のコントロール)をLife’s Simple7として示してきたが、「睡眠」の重要性がエビデンスの構築により高まり、2022年の改訂では追加されLife‘s Essential 8になっている。 今回、本邦のガイドラインにもその点が反映され、以下の6項目が改訂された。葛西氏は「とくに診断における定義・スクリーニング、検査時のスコアリングルールがアップデートされており重要」と述べ、「以前から多くの先生に引用されていたであろう“心血管疾患ごとのSDB合併頻度”についても改訂し、HFpEFなどの疾患項目数を増やした」と説明した(本GL図8参照)。また、現状の循環器診療においてSDB診断がなされているかを知るために福島県立医科大学の医師らがJROAD-DPCからその傾向を調査したところ、「入院患者のみのデータではあるが、2012~19年の期間に急性心筋梗塞以外でのSDB診断は若干増加したものの、全体としては未診断が散見され、検査の実施率も心房細動以外では低下傾向」であったことを言及し、「入院中検査は点数が算定できないことも要因の1つだが、循環器医に対して、SDB診断の普及啓発が必要である」とも話した。<主な改訂点>1)正常睡眠と睡眠障害:より循環器領域の内容に特化する形へ変更2)診断:最近の定義・スコアリングルールに関する内容にupdate3)疫学:有病率などをより近年のデータにupdate4)病態:近年提唱された新たな病因・病態生理について言及5)治療:全体をupdateするとともに、エビデンスが出ている治療(舌下神経電気刺激療法[保険収載]、中枢性睡眠時無呼吸への横隔神経電気刺激療法[保険未収載]など)の可能性に関して言及6)各疾患との関連と治療:項目を拡充し、高血圧以外の循環器疾患リスク因子にも言及。多数のエビデンスが報告された不整脈(とくに心房細動)や心不全に関して、細分化し項目を分けた。 主な変更点は以下のとおり。1)正常睡眠と睡眠障害睡眠呼吸障害以外に循環器医が注意すべき睡眠問題として、睡眠過不足、睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群[restless legs syndrome:RLS]、周期性四肢運動[periodic limb movement in sleep:PLMS])にもフォーカスを当てた。2)診断呼吸器学会が発行している「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」同様にSDBの診断基準は国際睡眠障害分類の第3版(ICSD-3)に準じ、成人の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea:OSA)の診断基準の1つに「患者が高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、あるいは2型糖尿病と診断されている」と書かれている点を踏襲。スクリーニングと診断の違いを明記した(表10参照)。なお、OSAの診断基準とCPAP治療の保険適用の基準が異なる点に注意が必要。また、心房細動や粗動、うっ血性心不全、あるいは神経疾患の存在は、中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration:CSA-CSR)を合併しやすい点も重要。3)疫学各心血管疾患でのSDB合併頻度は肺高血圧症(89.0%)が最も高く、治療抵抗性高血圧(83.0%、AHI≧10)、心房細動(81.4%)、HFrEF(76.0%)と続く。これを踏まえ患者を診察してもらうことで、これまで以上にリスク患者をあぶりだせる可能性。4)病態OSAの機序の記載を大幅に変更し、「上気道の解剖学的異常、上気道の神経性調節異常、呼吸調節系の不安定性、覚醒閾値」について、具体的な説明を加えた。5)治療・OSAに対する舌下神経電気刺激療法(CPAPが受けられない患者に適用)の項が追加。・生活習慣是正については睡眠薬のうち非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やオレキシン受容体拮抗薬の処方検討を考慮してもよい。・OSAの薬物療法については上気道解剖学的要因、上気道神経性調節異常などに対しそれぞれ言及。・CSR-CSA治療に対しては心不全治療薬ARNIが追加。・そのほかのSDB治療については弾性ストッキングが追加。6)各疾患との関連と治療これまで「各論」としていた項目の名称を変更し、高血圧をはじめとする13疾患にカテゴライズ。とくにSDBのリスク因子となる高血圧、糖尿病、CKD、高尿酸血症のほか、多数のエビデンスが報告された頻脈性不整脈(上室)などの内容を充実させた(表35~45参照)。

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収縮期血圧とCOVID-19重症化リスクの用量反応関係

 高血圧患者の血圧管理状況と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時の重症化リスクとの間に、有意な用量反応関係があるとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学のHolly Pavey氏らが、同国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」のデータを解析した結果であり、詳細は「PLOS ONE」に11月9日掲載された。 高血圧はCOVID-19患者の基礎疾患として最も多く見られ、かつ重症化リスクとの関連が示唆されている。ただし、血圧管理状況と重症化リスクとの関連は、必ずしも十分明らかになっていない。Pavey氏らはこの点について、UKバイオバンクのビッグデータを用いた検討を行った。 解析に必要なデータ欠落のない43万8,400人のうち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性判定やCOVID-19の診断、またはCOVID-19による死亡が記録されていた1万6,134人(平均年齢65.3±8.7歳、男性47.4%)を解析対象とした。このうち6,517人(40.4%)が高血圧であり、その67.4%は降圧薬が処方されていた。 世界保健機関(WHO)のCOVID-19重症度分類の4~10(入院を要する状態~死亡)を重症と定義すると、3,584人(22.2%)が該当。そのうち29.6%は死亡していた。 まず、高血圧でないCOVID-19患者と高血圧患者を比較すると、高血圧患者の重症化リスクは交絡因子未調整でオッズ比(OR)2.33(95%信頼区間2.16~2.51)であり、年齢と性別で調整してもOR1.52(同1.40~1.65)であって、高血圧患者で有意なリスク上昇が認められた。さらに、調整因子にBMI、人種/民族、喫煙習慣、糖尿病、CRP、タウンゼント指数を追加してもOR1.22(1.12~1.33)、心血管疾患や脳卒中の既往を加えた場合もOR1.15(1.05~1.26)であり、有意性は保たれていた。 次に、研究の主題である、血圧管理状況と重症化リスクとの用量反応関係を検討。収縮期血圧(SBP)120~129mmHgに管理されていた患者を基準とすると、血圧がより低く管理されている場合と管理不良の場合の双方で、以下のように重症化リスクの上昇が認められた。SBP120mmHg未満ではOR1.40(1.11~1.78)、150~159mmHgではOR1.91(1.44~2.53)、160~169mmHgでOR1.77(1.21~2.58)、170~179mmHgでOR1.90(1.09~3.31)、180mmHg以上でOR1.93(1.06~3.51)。なお、SBP130~149mmHgの範囲は非有意だった。 著者らは結論を、「高血圧はCOVID-19重症化のリスク因子である。また、降圧治療を受けている患者では、血圧がコントロールされていない場合に、重症化リスクがより高いことが示された」とまとめている。 なお、SARS-CoV-2はアンジオテンシン変換酵素II(ACEII)を足場として体内に侵入するため、パンデミック当初、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が重症化リスクに影響を与えるとの懸念が指摘され、その後、そのような可能性を否定する研究が複数報告されていたが、本研究においても、ACE阻害薬やARBによる重症化リスクへの影響は認められなかった。

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HFpEF診療はどうすれば…?(後編)【心不全診療Up to Date】第7回

第7回 HFpEF診療はどうすれば…?(後編)Key Points簡便なHFpEF診断スコアで、まずはHFpEFの可能性を評価しよう!HFpEF治療、今できることを整理整頓、明日から実践!HFpEF治療の未来は、明るい?はじめに近年、HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩があるにもかかわらず、日常診療においてまだ十分に認識されていない。そのような現状であることから、前回はまず最新の定義、病態生理についてレビューした。そして、今回は、その後編として、HFpEFの診断、そして治療に関して、最新情報を含めながら皆さまと共有したい。 HFpEFの診断スコアってご存じですか?呼吸苦や倦怠感などの心不全徴候を認め、EF≥50%でうっ血を示唆する客観的証拠を認めた場合、HFpEFと診断される1)。そのため、エコーでの拡張障害の評価はHFpEFを診断する上では必要がなく、またNa利尿ペプチド(NP)値が正常であっても、HFpEFを除外することはできないと前回説明した。では、具体的にどのようにして診断を進めていくとよいか、図1を基に考えていこう。(図1)HFpEFが疑われる患者を評価するためのアプローチ方法画像を拡大するまず、原因不明の労作時息切れを主訴に来院された患者に対して、病歴、身体所見、心エコー検査、臨床検査などからHFpEFである可能性を検討するわけであるが、その際に大変参考になるのが、診断のためのスコアリングシステムである。たとえば、米国で開発されたH2FPEFスコアでは、スコア5点以上であれば、HFpEFが強く疑われ(>80% probability)、1点以下であれば、ほぼ除外できる2)。ただし、NP値上昇や心不全徴候を認めるにも関わらず、H2FPEFスコアが低い場合は、アミロイドーシスやサルコイドーシスのような浸潤性心筋症など非典型的なHFpEFの原因疾患を疑う姿勢が重要である点も強調しておきたい(図2)。(図2)HFpEFを発症し得る治療可能な疾患画像を拡大するこれらのスコア算出の結果、HFpEFの可能性が中程度の患者に対しては、運動負荷検査が推奨される。運動負荷検査には、心エコー検査と右心カテーテル検査があるが、診断のゴールドスタンダードは、右心カテーテル検査による安静時および運動時の血行動態評価であり、安静時PAWP≥15mmHgもしくは労作時PAWP≥25mmHg(spine)、もしくは労作時PAWP/心拍出量slope>2mmHg/L/min(upright)を満たせば、HFpEFと診断できる3)。ただ、侵襲的な運動負荷検査は、どの施設でも気軽にできるものではなく、受動的下肢挙上や容量負荷といった代替的な検査法の有用性に関する報告もある4-6)。とくに心エコー検査にて下肢挙上後の左房リザーバーストレインの低下は、運動耐容能の低下とも関連していたという報告もあり、非侵襲的であることから一度は施行すべき検査手法と考えられる7)。なお、脈拍応答不全の診断については、Heart rate reserve([最大心拍数-安静時心拍数]/[220-年齢-安静時心拍数])を算出し、0.8未満(β遮断薬内服時は0.62未満)であれば、脈拍応答不全あり、と一般的に定義される8)。なお、私自身も現在、HFpEF早期診断のためのウェアラブルデバイス開発に取り組んでいるが、今後はより非侵襲的に診断できるようになることが切望される。そして、HFpEFであると診断した後、まず考えるべきことは『原因は何だろうか?』ということである。なぜなら、その鑑別疾患の中には治療法が存在するものもあるからである(図2)。アミロイドーシスを疑うような手根管症候群や脊柱管狭窄症を示唆する身体所見はないか、頚静脈もしっかり観察してKussmaul徴候はないか、心エコーにて中隔変動(septal bounce)や肝静脈血流速度の呼気時の拡張期逆流波はないか、スペックルトラッキングエコーによる左室長軸方向ストレイン(GLS, global longitudinal strain)のbullseye mapに特徴的なパターンがないか…など、ぜひご確認いただきたい9)。HFpEF治療の今、そして今後は?かかりつけ医の先生方にもご承知いただきたいHFpEF治療の流れを図でまとめたので、これを基にHFpEF治療の今を説明する(図3)。(図3)HFpEF治療 2023画像を拡大するHFpEFの診断が確定し、図2に記載してあるような疾患を除外した上で、まず考慮すべき処方は、SGLT2阻害薬である。なぜなら、EMPEROR-Preserved試験およびDELIVER試験において、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンおよびダパグリフロジンが、EF>40%の心不全患者において、主要エンドポイントである心不全入院または心血管死が20%減少することが示されたからである(ただし、eGFR<20mL/min/1.73m2、1型糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシスの既往がある場合は避ける。そのほかSGLT2阻害薬使用時の注意事項は、「第3回 SGLT2阻害薬」を参照)10, 11)。そして、それと同時に身体所見、臨床検査、画像検査などマルチモダリティを活用して体液貯留の有無を評価し、体液貯留があれば、ループ利尿薬や利水剤(五苓散、牛車腎気丸、木防已湯など)を使用し12)、TOPCAT試験の結果から心不全入院抑制効果が期待され、薬価が安いMR拮抗薬の投与をできれば考慮いただきたい13)。とくにカリウム製剤が投与されている患者では、それをMR拮抗薬へ変更すべきであろう。そして、忘れてはならないのが、併存疾患に対するマネージメントである。高血圧があれば、130/80mmHg未満を達成するように降圧薬(ARB、ARNiなど)を投与し、鉄欠乏性貧血(transferrin saturation<20%など)があれば、骨格筋など末梢の機能障害へのメリットを期待して鉄剤(カルボキシマルトース第二鉄[商品名:フェインジェクト])の静注投与を検討する。そのほか、肥満、心房細動、糖尿病、冠動脈疾患、慢性腎臓病、COPD、睡眠時無呼吸症候群などに対してもガイドライン推奨の治療をしっかり行うことが重要である。(表1)画像を拡大するそれでも心不全症状が残存し、EFが55~60%未満とやや低下しており、収縮期血圧が110~120mmHg以上ある患者に対しては、ARNiの追加投与を検討する(詳細は第4回 「ARNi」を参照)。なお、HFrEFにおいて必要不可欠なβ遮断薬については、虚血性心疾患や心房細動がなければ、HFpEFに対しては原則投与しないほうが良い。なぜなら、HFpEFでは運動時に脈拍を早くできない脈拍応答不全の合併が多く、投与されていたβ遮断薬を中止することで、peak VO2が短期で大幅に改善したという報告もあるからである14)。なお、脈拍応答不全に対して右房ペーシングにより運動時の心拍数を上げることで運動耐容能が改善するかを検証した試験の結果が最近公表されたが、結果はネガティブで、現時点では脈拍応答不全に対して、心拍数を落とす薬剤を中止する以外に明らかな治療法はなく、今後さらに議論されるべき課題である15)。これらの治療以外にも、mRNA医薬、炎症をターゲットとした薬剤、代謝調整薬(ATP産生調整など)といった、さまざまなHFpEF治療薬の開発が現在進められている16)。また、近年HFpEFは、肥満や座りがちな生活と密接に結びついた運動不耐性の原因としても着目されており、心不全患者教育、心臓リハビリテーションもエビデンスのあるきわめて重要な治療介入であることも忘れてはならない17, 18)。最近は大変ありがたいことに心不全手帳(第3版)が心不全学会サイトでも公開されており、ぜひ活用いただきたい(http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/shinhuzentecho.html)。非薬物治療に関しても、今まで欧米を中心に多くの研究が実施されてきた。例えば、症候性心不全患者に対する肺動脈圧モニタリングデバイスガイド下の治療効果を検証したCHAMPION試験のサブ解析において、肺動脈モニタリングデバイス(商品名:CardioMEMS HF System)を使用することで、HFpEF患者において標準治療よりも心不全入院が50%減少し、心不全管理における有用性が報告されている(本邦では未承認)19)。また、HFpEF(EF≥40%)に対する心房シャントデバイス(商品名:Corvia)治療の効果を検証したREDUCE LAP-HF II試験の結果もすでに公表されている20)。心血管死、脳卒中、心不全イベント、QOLを含めた主要評価項目において、心房シャントデバイスの有効性を示すことができなかったが、本試験では全患者に対して運動負荷右心カテーテル検査を実施しており、ポストホック解析において、運動時肺血管抵抗(PVR, pulmonary vascular resistance)が上昇しなかった群(PVR≤1.74 Wood units)では臨床的便益が得られる可能性が見いだされ21)、この群にターゲットを絞ったレスポンダー試験が現在進行中である。また、血液分布異常を改善させるための右大内臓神経アブレーション(GSN ablation)の有効性を検証するREBALANCE-HF試験も現在進行中であるが、非盲検ロールイン段階における予備的解析では、運動時の左室充満圧とQOL改善効果が認められたことが報告されており22)、今後本解析(sham-controlled, blinded trial)の結果が期待される。そのほかにも多くのHFpEF患者を対象とした臨床試験、橋渡し研究が進行中であり(表2)、これらの結果も大変期待される。(表2)HFpEFについて進行中の臨床試験 画像を拡大する以上HFpEF治療についてまとめてきたが、現時点ではHFpEFの予後を改善する治療法はまだ確立しておらず、さらに一歩進んだ治療法の確立が喫緊の課題である。つまり、HFpEFのさらなる病態生理の解明、非侵襲的に診断するための技術開発、個別化治療に結びつくフェノタイピング戦略を活用した新たな次世代の革新的研究が必要であり、その実現に向けて、前回紹介した米国HeartShare研究など、現在世界各国の研究者が本気で取り組んでいるところである。ただ、それまでにわれわれにできることも、図3の通り、しっかりある。ぜひ、目の前の患者さんに今できることを実践していただき、またかかりつけ医の先生方からも循環器専門施設の先生方へフィードバックいただきながら、医療従事者皆が一眼となってより良いHFpEF治療をわが国でも更新し続けていければと強く思う。1)Borlaug BA, et al. Nat Rev Cardiol 2020;17:559-573.2)Reddy YNV, et al. Circulation. 2018;138:861-870.3)Eisman AS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004750.4)D'Alto M, et al. Chest. 2021;159:791-797.5)Obokata M, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2013;6:749-758.6)van de Bovenkamp AA, et al. Circ Heart Fail. 2022;15:e008935.7)Patel RB, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:245-257.8)Azarbal B, et al. J Am Coll Cardiol 2004;44:423-430.9)Marwick TH, et al. JAMA Cardiol. 2019;4:287-294.10)Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021;385:1451-1461.11)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.12)Yaku H, et al. J Cardiol. 2022;80:306-312.13)Pitt B, et al. N Engl J Med. 2014;370:1383-1392.14)Palau P, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:2042-2056. 15)Reddy YNV, et al. JAMA;2023:329:801-809.16)Pugliese NR, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3536-3555.17)Kamiya K, et al. Circ Heart Fail. 2020;13:e006798.18)Bozkurt B, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;77:1454-1469.19)Adamson PB, et al. Circ Heart Fail. 2014;7:935-944.20)Shah SJ, et al. Lancet. 2022;399:1130-1140. 21)Borlaug BA, et al. Circulation. 2022;145:1592-1604.22)Fudim M, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24:1410-1414.

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不眠症治療について日本の医師はどう考えているか

 ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンは、安全性への懸念や新規催眠鎮静薬(オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬)の承認にもかかわらず、依然として広く用いられている。秋田大学の竹島 正浩氏らは、日本の医師を対象に処方頻度の高い催眠鎮静薬およびその選択理由を調査した。その結果、多くの医師は、オレキシン受容体拮抗薬が効果的かつ安全性が良好な薬剤であると認識していたが、安全性よりも有効性を重要視する医師においては、ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンを選択することが確認された。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月14日号の報告。 2021年10月~2022年2月に、日本プライマリ・ケア連合学会、全日本病院協会、日本精神神経科診療所協会に所属する医師962人を対象にアンケート調査を実施した。調査内容には、処方頻度の高い催眠鎮静薬およびその選択理由を含めた。 主な結果は以下のとおり。・処方頻度の高い催眠鎮静薬は、オレキシン受容体拮抗薬(84.3%)、非ベンゾジアゼピン(75.4%)、メラトニン受容体作動薬(57.1%)、ベンゾジアゼピン(54.3%)の順であった。・ロジスティック回帰分析では、オレキシン受容体拮抗薬の処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性(オッズ比[OR]:1.60、95%信頼区間[CI]:1.01~2.54、p=0.044)および安全性(OR:4.52、95%CI:2.99~6.84、p<0.001)への関心が高かった。・メラトニン受容体作動薬の処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、安全性への関心が高かった(OR:2.48、95%CI:1.77~3.46、p<0.001)。・非ベンゾジアゼピンの処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性をより重要視していた(OR:2.43、95%CI:1.62~3.67、p<0.001)。・ベンゾジアゼピンの処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性に最も関心が高く(OR:4.19、95%CI:2.91~6.04、p<0.001)、安全性にはあまり関心を持っていなかった(OR:0.25、95%CI:0.16~0.39、p<0.001)。・多くの医師は、オレキシン受容体拮抗薬が効果的かつ安全性が良好な薬剤であると認識していたが、安全性よりも有効性を重要視する医師においては、ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンを選択することが確認された。

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アルドステロン合成酵素に対する選択性を100倍にしたbaxdrostatによる第II相試験の結果は、治療抵抗性高血圧症に有効である可能性が示された―(解説:石上友章氏)

 高血圧症は、本邦で4,000万人が罹患するといわれている、脳心血管病の最大の危険因子である。降圧薬は、市場規模の大きさから多くの製薬企業にとって、開発・販売に企業の持っているリソースの多くを必要とするカテゴリーの製品であった。医療サイドにとっては、その患者数の多さと健康寿命に与える影響の重要さから、確実で安全な医療の提供の実現が求められている。公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の調査によると、あらゆる薬剤の中で、降圧薬の貢献度・満足度がきわめて高いことが示されている。降圧治療は、疾病の克服において、これまでに人類が手にした治療薬として、きわめて高い水準の完成度に達したといえる。 利尿薬を含む、3種類以上の降圧薬の内服にもかかわらず、降圧目標に到達していない場合に、治療抵抗性高血圧症と定義される。高血圧症の多くを占める本態性高血圧症は、多因子性の疾患であると考えられており、これまではアルドステロン受容体拮抗薬が推奨されていた。本邦では、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)が降圧薬としての適応を取得したことから、数年以内に改訂される高血圧診療ガイドラインでは、その推奨が変わる可能性がある。 こうした高血圧診療の成熟が、製薬企業による新薬開発の低下や、若手医師や研究者の高血圧領域への関心の低下といった事態を招いている可能性がある。米国では、約10%が治療抵抗性高血圧といわれている。本邦に当てはめるならば、約400万人が該当する。既存の降圧薬で十分な降圧が得られない高血圧症は、実感としても少なからず存在している。第II相試験ではあるが、baxdrostatの成果は、降圧薬の新たな選択肢として期待できるだけでなく、高血圧症の制圧の実現に大きく寄与すると考えられる。

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意識していますか「毎月17日は減塩の日」

 ノバルティスファーマと大塚製薬は、「減塩の日」の啓発にちなみ高血圧症をテーマとしたメディアセミナーを共催した。 高血圧症は、血圧値が正常より高い状態が慢性的に継続している病態であり、わが国には約4,300万人の患者が推定されている。とくに高齢者の有病率が高く、今後も患者数は増加することが予測されている。また、高血圧状態が続くことで、脳心血管疾患や慢性腎臓病などの罹患および死亡リスクが高まることが知られており、血圧を適切なレベルにコントロールすることが重要となる。高血圧治療を阻む3要因は「肥満、食塩の過剰摂取、治療薬の服薬回数」 はじめに下澤 達雄氏(国際医療福祉大学 医学部 臨床検査医学 主任教授)が「高血圧、これからも 減塩宣言 解除なし」をテーマに講演を行った。 高血圧症は、わが国の脳心血管病死亡の危険因子寄与の1位であるが、現状、高血圧治療が大きく進歩したにも関わらず、約3,000万人がコントロール不良という。また、「診断方法が進歩したにも関わらず、医療機関で治療を受けていない方の存在」と「治療方法が進歩したにも関わらず、降圧目標未達成の患者の存在がある」と同氏は現在の課題を説明した。 高血圧の治療は、年々進歩し、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARBなどの降圧薬が登場するとともに、心血管系の疾患への機序のさらなる解明や新たなバイオマーカーの開発などが研究されている。 大規模な臨床試験のSPRINT試験(主要アウトカムは心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死)では、積極治療群(≦120mmHg)と標準治療群(≦140mmHg)の比較で積極治療群の方がハザード比で0.73(95%CI、0.63~0.86)と差異がでたものの1)、「治療必要数や有害必要数をみると、まだきちんと治療できていない」と同氏は指摘した。 現在、わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH)は、降圧目標値について75歳を目安にわけ、75歳未満ではきちんと血圧を下げるように設定し(例:診察室130/80mmHg未満)、75歳以上では無理せず降圧する方向で行われている(例:診察室140/90mmHg未満)。それでも「全体の1/5しか治療できていないという現実がある」2、3)と同氏は説明する。 その要因分析として挙げられるが、「肥満、食塩の過剰摂取、治療薬の服薬回数」であり、とくに食塩の過剰摂取への対応ができていないことに警鐘を鳴らす。 高血圧学会では、毎月17日を「減塩の日」と定め、食塩の適正摂取の啓発活動を行っている。同学会では、減塩料理の健康レシピなどを“YouTube”で公開しているので、参考にして欲しいと紹介するともに、「20歳時に肥満だと高血圧になるリスクがあり、若いうちから減塩することが重要だ」と同氏は述べ講演を終えた。簡単にできる運動習慣で血圧を下げる 後半では、谷本 道哉氏(順天堂大学 スポーツ健康科学部 先任准教授)が、「高血圧予防のための『時短かんたんエクササイズ』について」をテーマに運動の重要性のレクチャーと簡単にできる運動の実演を行った。 運動による降圧効果は知られており、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、筋肉トレーニングともに降圧効果がある(ただし高負荷の筋トレは血管に負担がかかるので注意が必要)。また、心疾患死亡リスクについて、運動習慣がある人と運動習慣がない人を比べた場合、運動習慣がある人の方がリスクが減少しているという4)。 降圧のための運動では、1)まず快適に動ける体作り(例:背骨周りをフレキシブルに動かせること、ラジオ体操はお勧めの体操)2)高齢化により筋力が足元から落ちるので「しっかり歩く」などして維持3)筋肉は適応能力が高く、何歳からでも大きく発達するので筋トレ励行4)生活活動向上に腕を強く振るなど意識して歩行などを行うことで、「体力をつけ、高血圧のリスクを下げていって欲しい」と思いを述べた。同氏の運動の詳細は、下記の“YouTube”で公開されている。

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非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。喘息診療実践ガイドラインで2028年までに喘息死を0に 東田氏は、「均質な医療を提供することで、2028年までに喘息死を半減させる。できれば0にしたい」と語った。そのために「喘息の科学的知見に基づく情報提供をしたい」「非専門医の日常診療に役に立つガイドラインを作りたい」との思いから、喘息診療実践ガイドラインを作成したという。喘息診療実践ガイドラインは、新薬の登場などに合わせて、可能な限り毎年改訂を行う予定とのことである。喘息診療実践ガイドライン2022の問診チェックリスト活用を 従来のガイドラインでは、「喘息診断の目安」が記載されているものの、「診断基準」は明記されていない。また、喘息の診断には呼吸機能検査が必要とされているが、日常診療の場では難しい。そこで、喘息診療実践ガイドライン2022では、臨床現場で実際に活用できる診断アルゴリズムを作成している。ここで、重要となるのが「問診」である。東田氏らは、4千人超の喘息患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果を基に、喘息患者の特徴を抽出した「問診チェックリスト」を作成し、喘息診療実践ガイドライン2022上に掲載している(p4、表2-1)。チェックリストは、大項目(喘鳴、咳嗽、喀痰などの喘息を疑う症状)と小項目(症状8項目、背景7項目の計15項目)からなり、「大項目+小項目(いずれか1つ)があれば喘息を疑う」とされている。 問診の結果、喘息を疑った場合には、「まず中用量のICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(中用量ICS/LABA)を最低3日以上使ってほしい」という。「中用量ICS/LABAによる治療に反応し、治療開始前から喘鳴がある場合は喘息と診断して良い」とのことである。反応しない場合は、「他疾患も疑う必要があるため、迷わず専門医に紹介してほしい」と語った。喘息診療実践ガイドライン2022には喘息治療のフローを掲載 喘息診療実践ガイドライン2022の喘息治療のフローに基づくと、日常診療では診断もかねて基本的には中用量ICS/LABAで治療を開始し、それでも症状が残ってしまう場合には、症状に応じて次のステップを考える。咳・痰が続く、呼吸困難が残る、喫煙歴がある場合などは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)がある場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を追加する。LAMAを追加する場合は、「1デバイスで3成分を吸入できるICS/LABA/LAMAの3成分配合剤が登場しているため、こちらを使用してほしい」とのことだ。 また、治療効果が不十分の場合には、吸入薬をきちんと吸えていない可能性があるという。そのため、「まず、うまく吸えているかを確認してほしい。吸入指導の動画も用意しているので活用してほしい」と述べた。各種吸入デバイスの吸入指導用動画や「ホー吸入」という薬の通り道を広く保つ吸入法が、日本喘息学会HPに掲載されているので活用されたい。喘息診療実践ガイドライン2022に医療連携の可能な病院リスト 喘息治療においては、専門医との病診連携を積極的に活用してほしいという。たとえば、「中用量ICS/LABAにLAMAまたはLTRAを追加しても効果が得られない場合」「重症喘息に該当する喘息患者に遭遇した場合」「治療のステップダウンを検討しているが、呼吸機能検査ができない場合」などは検査を行う必要があるため、「専門医で治療導入や呼吸機能検査を実施し、その後はかかりつけ医の先生に診療いただくという病診連携も可能だ」と専門医との病診連携の重要性を強調した。専門医への紹介を考慮すべきタイミングについての詳細や専門医紹介時のひな型、医療連携の可能な病院のリストが喘息診療実践ガイドライン2022上に記載されているので活用されたい(p68~p71)。COVID-19流行期こそ喘息コントロールが重要 注目を集める喘息と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、「喘息をきちんとコントロールできていれば、COVID-19感染リスクが高いわけではないので、必要以上に怖がることはない。ただし、喘息のコントロールが悪いと、気道に炎症が起こり感染しやすくなってしまうので、喘息をコントロールすることが最も重要である」と喘息コントロールの重要性を強調した。『喘息診療実践ガイドライン2022』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:本文72頁発行:2022年7月作成:一般社団法人日本喘息学会発行:協和企画

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褐色細胞腫・パラガングリオーマ〔PPGL:pheochro mocytoma/paraganglioma〕

1 疾患概要褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)は副腎髄質または傍神経節のクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生腫瘍で、前者を褐色細胞腫、後者をパラガングリオーマ、総称して「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」と呼ぶ。カテコールアミン過剰分泌による症状と腫瘍性病変による症状がある。カテコラミン過剰により、動悸、頭痛などの症状、高血圧、糖代謝異常などの種々の代謝異常、心血管系合併症、さらには各種の緊急症(高血圧クリーゼ、たこつぼ型心筋症による心不全、腫瘍破裂によるショックなど)を呈することがある。すべてのPPGLは潜在的に悪性腫瘍の性格を有し、実際、約10〜15%は悪性・転移性を示す。それ故、早期の適切な診断と治療が極めて重要である。原則として日本内分泌学会「褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018」1)(図)に基づき、診断と治療を行う。図 褐色細胞腫・パラガングリオーマの診療アルゴリズム画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ PPGLを疑う所見カテコラミン過剰による頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白、体重減少、悪心・嘔吐、心筋梗塞類似の胸痛、不整脈などの多彩な症状を示す。肥満はまれである。高血圧を約85%に認め、持続型、発作型、混合型があるが、特に発作性高血圧が特徴的である。持続型では治療抵抗性高血圧の原因となる。発作型では各種刺激(運動、ストレス、過食、排便、飲酒、腹部触診、メトクロプラミド[商品名:プリンペラン]静注など)で高血圧発作が誘発される(高血圧クリーゼ)。さらに、急性心不全、肺水腫、ショックなどを合併することもある。発作型の非発作時には、まったくの「無症候性」であることも少なくない。また、高血圧をまったく呈さない無症候性や、逆に起立性低血圧を示すこともある。副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見される例も多い。■ スクリーニングの対象PPGLは二次性高血圧の中でも頻度が少なく、希少疾患に位置付けられるため、全高血圧でのスクリーニングは、費用対効果の観点から現実的ではない。PPGLガイドラインでは、特に疑いの強いPPGL高リスク群(表)での積極的なスクリーニングを推奨している。表 PPGL高リスク群1)PPGLの家族歴ないし既往歴(MEN、Von Hippel-Lindau病など)のある例2)特定の条件下の高血圧(発作性、治療抵抗性、糖尿病合併、高血圧クリーゼなど)3)多彩な臨床症状(動悸、発汗、頭痛、胸痛など)4)副腎偶発腫特に近年、副腎偶発腫瘍、無症候例の頻度が増加しているため、慎重な鑑別診断が必須である。スクリーニング方法カテコールアミン過剰の評価に際しては、運動、ストレス、体位、食品、薬剤などの測定値に影響する要因を考慮する必要がある。まず、外来でも実施可能な血中カテコールアミン(CA)分画(正常上限の3倍以上)、随時尿中メタネフリン分画(メタネフリン、ノルメタネフリン)(正常上限の3倍以上または500ng/mg・Cr以上)の増加を確認する。メタネフリン、ノルメタネフリンはカテコールアミンの代謝産物であり、随時尿でも安定であるため、スクリーニングや発作型の診断に有用である。近年、海外で第1選択である血中遊離メタネフリン分画も実施可能となったが、海外とは測定法が異なるため注意を要する。機能診断法上記のスクリーニングが陽性の場合、24時間尿中カテコールアミン分画(≧正常上限の2倍以上)、24時間尿中総メタネフリン分画(正常上限の3倍以上)の増加を確認する。従来実施された誘発試験は著明な高血圧を来すため推奨されない。アドレナリン優位の腫瘍は褐色細胞腫、ノルアドレナリン優位の腫瘍はパラガングリオーマが多い。画像診断臨床的にPPGLが疑われる場合は腫瘍の局在、広がり、転移の有無に関する画像診断(CT、MRI)を行う。約90%は副腎原発で局在診断が容易であり、副腎偶発腫瘍としての発見も多い。約10%はPGLで時に局在診断が困難なため、CT、 MRI、123I-MIBGシンチグラフィなどの複数のモダリティーを組み合わせる。(1)CT副腎腫瘍確認の第1選択。造影剤使用はクリーゼ誘発の可能性があるため、わが国では原則禁忌であり、実施時には患者への説明・同意とフェントラミンの準備が必須となる。(2)MRI副腎皮質腫瘍との鑑別診断、頭頸部病変、転移性病変の診断に有用である。(3)123I-MIBGシンチグラフィ疾患特異性が高いが偽陰性、偽陽性がある。PGLや転移巣の診断にも有用である。ヨウ化カリウムによる甲状腺ブロックを行う。(4)18F-FDG PET多発性病変や転移巣検索に有用である。病理学的診断(1)良・悪性を鑑別する病理組織マーカーは未確立である。組織所見とカテコールアミン分泌パターンを組み合わせたスコアリング(GAPP)が悪性度と予後判定に有用とされる。(2)コハク酸脱水素酵素サブユニットB(SDHB)の免疫染色の欠如はSDHx遺伝子変異の存在を示唆する。遺伝子解析(1)PPGLの30~40%が遺伝性で、19種類の原因遺伝子が報告されている2)。(2)若年発症(35歳未満)、PGL、多発性、両側性、悪性では生殖細胞系列の遺伝子変異が示唆される2)。(3)SDHB遺伝子変異は遠隔転移が多いため悪性度評価の指標となる。(4)全患者において遺伝子変異の頻度と臨床的意義、遺伝子解析の利益と不利益の説明を行うことが推奨されるが、必須ではなく、[1]遺伝カウンセリング、[2]患者の自由意思による判断、[3]質の担保された解析施設での実施が重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)過剰カテコールアミンを阻害する薬物治療と手術による腫瘍摘除が治療原則である。1)薬物治療α1遮断薬が第1選択で、効果不十分な場合、Ca拮抗薬を併用する。頻脈・頻脈性不整脈ではβ遮断薬を併用するが、α1遮断薬に先行しての単独投与は禁忌である。循環血漿量減少に対して、術前に高食塩食あるいは生理食塩水点滴を行う。α1遮断薬でのコントロール不十分な場合はカテコールアミン合成阻害薬メチロシン(商品名:デムサー)を使用する。2)外科的治療小さな褐色細胞腫では腹腔鏡下副腎摘除術、悪性度が高い例では開腹手術を施行する。潜在的に悪性であることを考慮して、腫瘍被膜の損傷に注意が必要である。家族性PPGLや対側副腎摘除後の症例では副腎部分切除術を検討する。悪性の可能性があるため、全例で少なくとも術後10年間、悪性度が高いと判断される高リスク群では生涯にわたる経過観察が推奨される。3)悪性PPGL131I-MIBG内照射、CVD化学療法、骨転移に対する外照射などの集学的治療を行う。治癒切除が困難でも、原発巣切除術による予後改善が期待される。■ 診断と治療のアルゴリズム上述の日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズム(図)を参照されたい。PPGL高リスク群で積極的にスクリーニングを行う。外来にて血中カテコラミン、随時尿中メタネフリン分画などを測定、疑いが強ければ、蓄尿でのCA分画と画像診断を行う。内分泌異常と画像所見が合理的に一致していれば、典型例での診断は容易である。無症候性、カテコールアミン産生能が低い例、腫瘍の局在を確認できない場合の診断は困難で、内分泌検査の反復、異なるモダリティーの画像診断の組み合わせが必要である。単発性病変であれば、α1ブロッカーによる適切な事前治療後、腫瘍摘出術を行う。術後、長期にわたり定期的に経過観察を要する。悪性・転移性の場合は、ガイドラインに準拠して集学的な治療を行う。診断と治療は専門医療施設での実施が推奨される。4 今後の展望今後解決すべき課題は以下の通りである。PPGL疾患概念の変遷:分類、神経内分泌腫瘍との関連診療アルゴリズムの改変診断基準の精緻化機能検査:遊離メタネフリン分画の位置付け画像検査:オクトレオチドスキャンの位置付け、68Ga-DOTATEシンチの応用遺伝子検査の臨床的適応頸部パラガングリオーマの診断と治療内科的治療:デムサの適応と治療効果核医学治療:123I-MIBG、ルテチウムオキソドトレオチド(商品名:ルタテラ)の適応と実態5 主たる診療科初回受診診療科は一般的に代謝・内分泌科、循環器内科、泌尿器科、腎臓内科など多岐にわたるが、以下の場合には専門医療施設への紹介が望ましい。(1)PPGLの家族歴・既往歴のある患者(2)高血圧クリーゼ、治療抵抗性高血圧、発作性高血圧などの患者(3)副腎偶発腫瘍で基礎疾患が不明な場合(4)PPGLの局所再発や遠隔転移のある悪性PPGL(5)遺伝子解析の実施を考慮する場合6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)1)成瀬光栄、他. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班 平成22年度報告書.2010.2)Lenders JW、 et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:1915-1942.3)日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」委員会(編).褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018.診断と治療社;2018.公開履歴初回2023年1月5日

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ARNi【心不全診療Up to Date】第4回

第4回 ARNiKey PointsARNi誕生までの長い歴史をプレイバック!ARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめ!ARNiの認知機能への影響は?はじめに第4回となる今回は、第1回で説明した“Fantastic Four”の1人に当たる、ARNiを取り上げる。第3回でSGLT2阻害薬の歴史を振り返ったが、実はこのARNiも彗星のごとく現れたのではなく、レニンの発見(1898年)から110年以上にわたる輝かしい一連の研究があってこその興味深い歴史がある。その歴史を簡単に振り返りつつ、この薬剤の作用機序、エビデンス、使用上の懸念点をまとめていきたい。ARNi開発の歴史:なぜ2つの薬剤の複合体である必要があるのか?ARNiとは、Angiotensin Receptor-Neprilysin inhibitorの略であり、アンジオテンシンII受容体とネプリライシンを阻害する新しいクラスの薬剤である。この薬剤を理解するには、心不全の病態において重要なシステムであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)とナトリウム利尿ペプチド系(NPS)を理解することが重要である(図1)。アンジオテンシンII受容体は説明するまでもないと思われるが、ネプリライシン(NEP)はあまり馴染みのない先生もおられるのではないだろうか。画像を拡大するネプリライシンとは、さまざまな心保護作用のあるナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、 CNP)をはじめ、ブラジキニン、アドレノメデュリン、サブスタンスP、アンジオテンシンIおよびII、エンドセリンなどのさまざまな血管作動性ペプチドを分解するエンドペプチダーゼ(酵素)のことである。その血管作動性ペプチドにはそれぞれに多様な作用があり、ネプリライシンを阻害することによるリスクとベネフィットがある(図2)。つまり、このNEP阻害によるリスクの部分(アンジオテンシンIIの上昇など)を補うために、アンジオテンシン受容体も合わせて阻害する必要があるというわけである。画像を拡大するそこでまずはACEとNEPの両方を阻害する薬剤が開発され1)、このクラスの薬剤の中で最も大規模な臨床試験が行われた薬剤がomapatrilatである。この薬剤の心不全への効果を比較検証した第III相試験OVERTURE(Omapatrilat Versus Enalapril Randomized Trial of Utility in Reducing Events)、高血圧への効果を比較検証したOCTAVE(Omapatrilat Cardiovascular Treatment Versus Enalapril)にて、それぞれ心血管死または入院(副次評価項目)、血圧をエナラプリルと比較して有意に減少させたが、血管性浮腫の発生率が有意に多いことが報告され、市場に出回ることはなかった。これはomapatrilatが複数のブラジキニンの分解に関与する酵素(ACE、アミノペプチダーゼP、NEP)を同時に阻害し、ブラジキニン濃度が上昇することが原因と考えられた。このような背景を受けて誕生したのが、血管性浮腫のリスクが低いARB(バルサルタン)とNEP阻害薬(サクビトリル)との複合体であるARNi(サクビトリルバルサルタン)である。この薬剤の慢性心不全(HFrEF)への効果をエナラプリル(慢性心不全治療薬のGold Standard)と比較検証した第III相試験がPARADIGM-HF (Prospective Comparison of ARNi With ACE Inhibitors to Determine Impact on Global Mortality and Morbidity in HF)2)である(図3、表1)。この試験は、明確な有効性と主要評価項目が達成されたことに基づき、早期終了となった。つまり、ARNiは、長らく新薬の登場がなかったHFrEF治療に大きな”PARADIGM SHIFT”を起こすきっかけとなった薬剤なのである。画像を拡大する画像を拡大するARNiの心不全患者に対するエビデンス総まとめARNiの心不全患者を対象とした主な臨床試験は表1のとおりで、実に多くの無作為化比較試験(RCT)が実施されてきた。2010年、まずARNiの心血管系疾患に対する有効性と安全性を検証する試験(proof-of-concept trial)が1,328例の高血圧患者を対象に行われた3)。その結果、バルサルタンと比較してARNiが有意に血圧を低下させ、咳や血管浮腫増加もなく、ARNiは安全かつ良好な忍容性を示した。その後301人のHFpEF患者を対象にARNiとバルサルタンを比較するRCTであるPARAMOUNT試験が実施された(表1)4)。主要評価項目である投与開始12週後のNT-proBNP低下量は、ARNi群で有意に大きかった。36週後の左室充満圧を反映する左房容積もARNiでより低下し、NYHA機能分類もARNiでより改善された。そして満を持してHFrEF患者を対象に実施された大規模RCTが、上記で述べたPARADIGM-HF試験である2)。この試験は、8,442例の症候性HFrEF患者が参加し、エナラプリルと比較して利尿薬やβ遮断薬、MR拮抗薬などの従来治療に追加したARNi群で主要評価項目である心血管死または心不全による入院だけでなく、全死亡、突然死(とくに非虚血性心筋症)も有意に減少させた(ハザード比:主要評価項目 0.80、全死亡 0.84、突然死 0.80)。本試験の結果を受け、2015年にARNiは米国および欧州で慢性心不全患者の死亡と入院リスクを低下させる薬剤として承認された。このPARADIGM-HF試験のサブ解析は50本以上論文化されており、ARNiのHFrEFへの有効性がさまざまな角度から証明されているが、1つ注意すべき点がある。それは、サブグループ解析にてNYHA機能分類 III~IV症状の患者で主要評価項目に対する有効性が認められなかった点である(交互作用に対するp値=0.03)。その後、NYHA機能分類IVの症状を有する進行性HFrEF患者を対象としたLIFE(LCZ696 in Advanced Heart Failure)試験において、統計的有意性は認められなかったものの、ARNi群では心不全イベント率が数値的に高く、進行性HF患者ではARNiが有効でない可能性をさらに高めることになった5)。この結果を受けて、米国心不全診療ガイドラインではARNiの使用がNYHA機能分類II~IIIの心不全患者にのみClass Iで推奨されている(文献6の [7.3.1. Renin-Angiotensin System Inhibition With ACEi or ARB or ARNi])。つまり、早期診断、早期治療がきわめて重要であり、too lateとなる前にARNiを心不全患者へ投与すべきということを示唆しているように思う。ではHFpEFに対するARNiの予後改善効果はどうか。そのことを検証した第III相試験が、PARAGON-HF(Prospective Comparison of ARNi With ARB Global Outcomes in HF With Preserved Ejection Fraction)である7)。本試験では、日本人を含む4,822例の症候性HFpEF患者を対象に、ARNiとバルサルタンとのHFpEFに対する有効性が比較検討された。その結果、ARNiはバルサルタンと比較して主要評価項目(心血管死または心不全による入院)を有意に減少させなかった(ハザード比:0.87、p値=0.06)。ただ、サブグループ解析において、女性とEF57%(中央値)以下の患者群については、ARNiの有効性が期待できる結果(交互作用に有意差あり)が報告され、大変話題となった。性差については、循環器領域でも大変重要なテーマとして現在もさまざまな研究が進行中である8,9)。EFについては、その後PARADIGM-HF試験と統合したプール解析によりさらに検証され、LVEFが正常値(約55%)以下の心不全症例でARNiが有用であることが報告された10)。これらの知見に基づき、FDA(米国食品医薬品局)は、ARNiのHFpEF(とくにEFが正常値以下の症例)を含めた慢性心不全患者への適応拡大を承認した(わが国でも承認済)。このPARAGON-HF試験のサブ解析も多数論文化されており、それらから自分自身の診療での経験も交えてHFpEFにおけるARNiの”Sweet Spot”をまとめてみた(図4)。とくに自分自身がHFpEF患者にARNiを処方していて一番喜ばれることの1つが息切れ改善効果である11)。最近労作時息切れの原因として、HFpEFを鑑別疾患にあげる重要性が叫ばれているが、BNP(NT-proBNP)がまだ上昇していない段階であっても、労作時には左室充満圧が上がり、息切れを発症することもあり、運動負荷検査をしないと診断が難しい症例も多く経験する。そのような症例は、だいたい高血圧を合併しており、もちろんすぐに運動負荷検査が施行できる施設が近くにある環境であればよいが、そうでなければ、ARNiは高血圧症にも使用できることもあり、今まで使用している降圧薬をARNiに変更もしくは追加するという選択肢もぜひご活用いただきたい。なお、ACE阻害薬から変更する場合は、上記で述べた血管浮腫のリスクがあることから、36時間以上間隔を空けるということには注意が必要である。それ以外にも興味深いRCTは多数あり、表1を参照されたい。画像を拡大するARNi使用上の懸念点ARNiは血管拡張作用が強く、それが心保護作用をもたらす理由の1つであるわけだが、その分血圧が下がりすぎることがあり、その点には注意が必要である。実際、PARADIGM-HF試験でも、スクリーニング時点で収縮期血圧が100未満の症例は除外されており、なおかつ試験開始後も血圧低下でARNiの減量が必要と判断された患者の割合が22%であったと報告されている12)。ただ、そのうち、36%は再度増量に成功したとのことであった。実臨床でも、少量(ARNi 50mg 2錠分2)から投与を開始し、その結果リバースリモデリングが得られ、心拍出量が増加し、血圧が上昇、そのおかげでさらにARNiが増量でき、さらにリバースリモデリングを得ることができたということも経験されるので、いったん減量しても、さらに増量できるタイミングを常に探るという姿勢はきわめて重要である。その他、腎機能障害、高カリウム血症もACE阻害薬より起こりにくいとはいえ13,14)、注意は必要であり、リスクのある症例では初回投与開始2~3週間後には腎機能や電解質、血圧等を確認した方が安全と考える。最後に、時々話題にあがるARNiの認知機能への懸念に関する最新の話題を提供して終わりたい。改めて図2を見ていただくと、アミロイドβの記載があるが、NEPは、アルツハイマー病の初期病因因子であるアミロイドβペプチド(Aβ)の責任分解酵素でもある。そのため、NEPを持続的に阻害する間にそれらが脳に蓄積し、認知障害を引き起こす、あるいは悪化させることが懸念されていた。その懸念を詳細に検証したPERSPECTIVE試験15)の初期結果が、昨年のヨーロッパ心臓病学会(ESC2022)にて発表された16)。本試験は、592例のEF40%以上の心不全患者を対象に、バルサルタン単独投与と比較してARNi長期投与の認知機能への影響を検証した最初のRCTである(平均年齢72歳)。主要評価項目であるベースラインから36ヵ月後までの認知機能(global cognitive composite score)の変化は両群間に差はなく(Diff. -0.0180、95%信頼区間[CI]:-0.1230~0.0870、p=0.74)、3年間のフォローアップ期間中、各時点で両群は互いに類似していた。主要な副次評価項目は、PETおよびMRIを用いて測定した脳内アミロイドβの沈着量の18ヵ月時および36ヵ月時のベースラインからの変化で、有意差はないものの、ARNi群の方がアミロイドβの沈着が少ない傾向があった(Diff. -0.0292、95%CI:0.0593~0.0010、p=0.058)。これは単なる偶然の産物かもしれない。ただ、全体としてNEP阻害がHFpEF患者の脳内のβアミロイド蓄積による認知障害リスクを高めるという証拠はなかったというのは間違いない。よって、認知機能障害を理由に心不全患者へのARNi投与を躊躇する必要はないと言えるであろう。1)Fournie-Zaluski MC, et.al. J Med Chem. 1994;37:1070-83.2)McMurray JJ, et.al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.3)Ruilope LM, et.al. Lancet. 2010;375:1255-66.4)Solomon SD, et.al. Lancet. 2012;380:1387-95.5)Mann DL, et.al. JAMA Cardiol. 2022;7:17-25.6)Heidenreich PA, et.al. Circulation. 2022;145:e895-e1032.7)Solomon SD, et.al. N Engl J Med. 2019;381:1609-1620.8)McMurray JJ, et.al. Circulation. 2020;141:338-351.9)Beale AL, et.al. Circulation. 2018;138:198-205.10)Solomon SD, et.al. Circulation. 2020;141:352-361.11)Jering K, et.al. JACC Heart Fail. 2021;9:386-397.12)Vardeny O, et.al. Eur J Heart Fail. 2016;18:1228-1234.13)Damman K, et.al. JACC Heart Fail. 2018;6:489-498.14)Desai AS, et.al. JAMA Cardiol. 2017 Jan 1;2:79-85.15)PERSPECTIVE試験(ClinicalTrials.gov)16)McMurray JJV, et al. PERSPECTIVE - Sacubitril/valsartan and cognitive function in HFmrEF and HFpEF. Hot Line Session 1, ESC Congress 2022, Barcelona, Spain, 26–29 August.

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降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。 2022年2月18日までに公表された文献をOvid MEDLINE、Ovid Embase、Ovid PsycINFO、Web of science、Scopusより検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。対象は、認知機能が正常な40歳以上の高血圧患者。2つのメタ解析(降圧薬未使用患者との比較研究、降圧薬の比較研究)を個別に行い、調整済み相対リスク(RR)をプールした。 主な結果は以下のとおり。・9件の研究(152万7,410例)をメタ解析に含めた。・降圧薬未使用患者との比較研究におけるメタ解析では、降圧薬使用はアルツハイマー病発症リスク低下と関連していることが示唆された(RR:0.94、95%CI:0.90~0.99、p=0.01)。・降圧薬の比較研究におけるメタ解析では、ARB使用患者は、他の抗うつ薬使用患者と比較し、アルツハイマー病のリスク低下との関連が認められた(RR:0.78、95%CI:0.68~0.88、p<0.001)。

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急性心不全へのGDMTの早期増量と頻回なフォローアップで再入院リスクは減少する?(解説:原田和昌氏)

 診療ガイドライン推奨の心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)は、通常慢性期に推奨用量を目標に漸増するものであり、急性心不全による入院後に、いつごろからどのくらいの時間で、どの用量まで増量するかのエビデンスはほとんどない。心不全入院後の頻回なフォローアップだけでは、これまで有効性は示されなかった。急性心不全(HFrEFが68%、HFpEFが15%)による入院後に、GDMTの早期漸増に加えて頻回なフォローアップ(90日で5回)を行うという強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、Mebazaa氏らの多施設共同無作為化非盲検並行群間試験であるSTRONG-HF試験により示された。 14ヵ国の87病院において、急性心不全で入院し退院予定日前2日以内に経口心不全治療薬の最大用量を投与されていない18~85歳の患者を対象に、2週間でGDMTを目標用量まで漸増する強化治療と通常治療とを比較した。左室駆出率(≦40% vs.>40%)で層別化して、通常治療群または高強度治療群(β遮断薬、RAS阻害薬またはARNI、MR拮抗薬)に1対1の割合で無作為に割り付けた。高強度治療群では無作為化後2週間以内に推奨用量の100%まで治療薬を漸増し、無作為化後1・2・3・6週時に臨床状態、臨床検査値、NT-proBNP値を評価した。主要評価項目は、180日以内の心不全による再入院または全死亡で、ITT集団を対象に有効性と安全性を評価した。なお、主要評価項目の群間差が予測より大きかったため、本試験は2022年9月23日に早期中止となった。 1,078例が高強度治療群(542例)または通常治療群(536例)に無作為化された。平均(±SD)年齢63.0±13.6歳、男性61%であった。180日以内の心不全による再入院または全死亡は、高強度治療群で506例中74例、通常治療群で502例中109例発生した(補正後リスク差:8.1%[95%信頼区間[CI]:2.9~13.2]、p=0.0021、リスク比:0.66[95%CI:0.50~0.86])。高強度治療群は通常治療群と比較して、90日目までに経口心不全治療薬を最大用量まで漸増された患者の割合が高かった(RAS阻害薬:55% vs.2%、β遮断薬:49% vs.4%、MR拮抗薬:84% vs.46%)。また、高強度治療群は通常治療群より、90日目までに血圧、心拍数、NYHA分類、体重およびNT-proBNP値が改善した。90日以内の有害事象は、高強度治療群(223/542例、41%)が通常治療群(158/536例、29%)より多く認められたが、重篤な有害事象の発現率、致死的有害事象の発現率は同等であった。 GDMTの優位性を示すことは診療ガイドラインの有効性を検証することであり、論文になりやすい。しかし、二重盲検化されたRCTのエンドポイントは全死亡+心不全入院でよいが、本試験は非盲検試験であるため、QOLの改善にはバイアスが入りやすいこと、また、エンドポイントとしては問題がある180日の全死亡+心不全再入院で有意差がついているが、全死亡や心血管死のハードエンドポイントで差がつかなかったことは、統計的パワー不足と言い訳しているのが、気に掛かるところである。また、HFpEFが15%含まれているのは実臨床に即しているというが、LVEFによって各GDMT薬の有効性も異なる可能性があるため、年齢やHFpEFの割合が違う別の集団で同じ結果が出るかは疑問である。また、通常治療群においてGDMT(β遮断薬、RAS阻害薬またはARNI)の推奨量に達した、または推奨量の半分以上の患者の割合が、180日たってもほとんど増加していないのは、本試験での通常治療とは何なのか意味不明である。

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治療抵抗性高血圧に対する二重エンドセリン受容体拮抗薬の効果(解説:石川讓治氏)

 治療抵抗性高血圧は、降圧利尿薬を含む3種類の降圧薬の服用によっても目標血圧レベル(本研究では収縮期血圧140mmHg未満)に達しない高血圧であると定義されている。基本的な2種類としてカルシウムチャネル阻害薬およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシンII受容体阻害薬といった血管拡張薬が選択されることが多く、この定義には、血管収縮と体液ナトリウム貯留といった2つの血圧上昇の機序に対して介入しても血圧コントロールが不十分であることが重要であることが含まれている。従来から、第4番目の降圧薬として、血管拡張と体液ナトリウム貯留の両方に作用する薬剤であるスピロノラクトンやミネラルコルチコイド受容体阻害薬が投与されることが多かったが、高齢者や腎機能障害のある患者では、高カリウム血症に注意する必要があった。 本研究においては、二重エンドセリン受容体拮抗薬であるaprocitentan 12.5mg、25mgとプラセボを治療抵抗性高血圧患者に投与して、診察室における収縮期血圧がaprocitentan 12.5mg投与群で15.3mmHg、aprocitentan 25mg投与群で15.2mmHg低下したことが報告された。本研究においてはプラセボ群においても11.5mmHgの収縮期血圧の低下が認められており、実際の投薬による収縮期血圧の降圧効果はそれぞれ3.8mmHgおよび3.7mmHgであったと推定されている。24時間自由行動下血圧における降圧効果も4.2mmHgと5.9mmHgであり、aprocitentanの治療抵抗性高血圧に対する有効性を示した報告であった。 治療抵抗性高血圧の研究において、研究者を悩ませるのが、プラセボ群においても血圧が大きく低下する(本研究では11.5mmHg)ことで、従来の研究においてはピルカウントや尿中の降圧薬血中濃度のモニタリングをしながら、服薬アドヒアランスを厳密に調整しないと統計学的な有意差がでないことがあった。本研究においてもaprocitentan内服による実質の収縮期血圧低下度(プラセボ群との差)はaprocitentan 12.5mg群で3.8mmHg、aprocitentan 25mg群で3.7mmHg程度でしかなかった。現在、わが国で使用されているエンドセリン受容体拮抗薬は、肺動脈性肺高血圧に対する適応ではあるが、非常に高価である。本態性高血圧に対するaprocitentan投与が実際にどの程度の価格になるのかは明らかではないが、わが国においては本態性高血圧の患者は4,300万人いるといわれており(日本高血圧治療ガイドライン2019)、約4mmHgのさらなる降圧のためにどの程度の医療資源や財源を投入すべきかといったことも今後の議論になると思われる。 有害事象として、浮腫や体液貯留がaprocitentan 12.5 mmHg群で約9%、25mg群で約18%も認められた。治療抵抗性高血圧の重要な要因である体液貯留が10%近くの患者に認められたことは注意が必要であると思われる。そのため、効果とリスクのバランスの評価が難しいと感じられた。治療抵抗性高血圧に対する4番目の降圧薬として、aprocitentanとミネラルコルチコイド受容体阻害薬のどちらを優先するのかといったことも今後の検討が必要になると思われた。

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アムロジピンとニフェジピンが妊婦にも処方可能に/使用上の注意改訂

 厚生労働省は12月5日、血管拡張薬のアムロジピンベシル酸塩とニフェジピンの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。禁忌から妊婦が削除 これまで上記2剤は「妊婦(ニフェジピンは妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある婦人」が禁忌とされてきたが、今回の改訂によりこの内容が削除され、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には投与可能とされた。改訂の背景 今般、妊娠全期間において厳格な血圧コントロールが求められるようになってきた。そのような医療環境を踏まえ、積極的適応のない場合の高血圧に対して第1選択薬とされているCa拮抗薬のうち、医療現場での処方割合の高い上記2剤について、添付文書の禁忌の適正性が検討された。国内外のガイドライン、海外添付文書、臨床使用に関する公表文献などが評価された結果、添付文書の禁忌から「妊婦(ニフェジピンは妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある女性」を削除することが可能と判断された。

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baxdrostat、治療抵抗性高血圧で有望な降圧効果/NEJM

 治療抵抗性高血圧患者の治療において、選択的アルドステロン合成阻害薬baxdrostatは用量依存性に収縮期血圧の低下をもたらし、高用量では拡張期血圧に対する降圧効果の可能性もあることが、米国・CinCor PharmaのMason W. Freeman氏らが実施した「BrigHTN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年11月7日号で報告された。適応的デザインのプラセボ対照用量設定第II相試験 BrigHTN試験は、適応的デザインを用いた二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定第II相試験であり、2020年7月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングが行われた(米国・CinCor Pharmaの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、利尿薬を含む少なくとも3剤の降圧薬の安定用量での投与を受けており、座位平均血圧が130/80mmHg以上の患者であった。被験者は、3種の用量のbaxdrostat(0.5mg、1mg、2mg)またはプラセボを1日1回、12週間、経口投与する4つの群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、プラセボ群と比較したbaxdrostat群の各用量における、収縮期血圧のベースラインから12週目までの変化量とされた。副作用プロファイルは許容範囲 275例(baxdrostat 0.5mg群69例、同1mg群70例、同2mg群67例、プラセボ群69例)が無作為化の対象となり、248例(90%)が12週の試験を完遂した。各群の平均年齢の幅は61.2~63.8歳、男性の割合の幅は52~61%だった。全例が利尿薬の投与を受けており、91~96%がACE阻害薬またはARB、64~70%がカルシウム拮抗薬の投与を受けていた。 本試験は、事前に規定された中間解析で、独立データ監視委員会により顕著な有効性の基準を満たしたと結論されたため、早期中止となった。 ベースラインから12週までの収縮期血圧の最小二乗平均(LSM)(±SE)変化量は、baxdrostat群では用量依存性に低下し、0.5mg群が-12.1±1.9mmHg、1mg群が-17.5±2.0mmHg、2mg群は-20.3±2.1mmHgであった。 プラセボ群(LSM変化量:-9.4mmHg)と比較して、baxdrostat 1mg群(群間差:-8.1mmHg、95%信頼区間[CI]:-13.5~-2.8、p=0.003)および同2mg群(-11.0mmHg、-16.4~-5.5、p<0.001)では、収縮期血圧における有意な降圧効果が認められた。 一方、baxdrostat 2mg群における拡張期血圧のLSM(±SE)変化量は-14.3±1.31mmHgであり、プラセボ群との差は-5.2mmHg(95%CI:-8.7~-1.6)であった。 試験期間中に死亡例はなかった。重篤な有害事象は10例で18件認められたが、担当医によってbaxdrostatやプラセボ関連と判定されたものはなかった。副腎皮質機能低下症もみられなかった。 また、baxdrostatでとくに注目すべき有害事象は8例で10件発現し、低血圧が1件、低ナトリウム血症が3件、高カリウム血症が6件であった。カリウム値が6.0mmol/L以上に上昇した患者のうち2例は、投与を中止し、その後再投与したところ、このような上昇は発現しなかった。 著者は、「本試験により、アルドステロンは高血圧における治療抵抗性の原動力の1つであるとのエビデンスが加えられた」としている。

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軽症のコロナ入院患者、ARB上乗せは無益/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)(主にテルミサルタン40mg/日)による治療は疾患重症度に対する有益性がないことが、オーストラリア・シドニー大学のMeg J. Jardine氏らがインドとオーストラリアの17施設で実施したプラグマティックなアダプティブデザインの無作為化比較試験「CLARITY試験(Controlled evaLuation of Angiotensin Receptor blockers for covid-19 respIraTorY disease)」の結果、示された。これまで、ARB未治療の患者を対象とした5件の無作為化臨床試験において、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の主要評価項目に対する中立的効果が報告され、1件では副次評価項目である死亡に対し高用量テルミサルタン(80mgを1日2回14日間投与)の有益性が報告されていた。著者は本試験の結果について、「対象のほとんどがベースラインで酸素吸入を必要としない患者であったため」と述べたうえで、「現在進行中の試験では、より重症患者におけるARBの効果を評価できる可能性があり、ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いることで、臨床診療に役立つ確定的かつ効率的な回答が得られる」と述べている。BMJ誌2022年11月16日号掲載の報告。標準治療+ARB(主にテルミサルタン)vs.標準治療のみ(±プラセボ) 研究グループは、ARBによる治療歴がなく、検査による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の確定診断を受け、COVID-19の管理のために入院した18歳以上の患者を、標準治療に加えてARBまたは対照薬を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回28日間経口投与した。なお、ARBは、インドではテルミサルタン(開始用量40mg/日)、オーストラリアでは担当医の選択とし、対照薬はインドではプラセボ(二重盲検試験)、オーストラリアでは標準治療のみ(非盲検試験)であった。 主要評価項目は、14日目における修正WHO臨床進行スケール(WHO-CPS)(1:退院・活動制限なし~7:死亡)によるCOVID-19の疾患重症度、副次評価項目は28日目のWHO-CPS、死亡率、集中治療室入室、呼吸不全であった。14日目の疾患重症度は両群で同じ 2020年5月3日~2021年11月13日の期間に、2,930例がスクリーニングを受け、787例がARB群(393例、うち388例[98.7%]はテルミサルタン40mg/日)または対照群(394例)に無作為に割り付けられた。787例中、778例(98.9%)がインドから、9例(1.1%)がオーストラリアからの参加であった。 主要評価項目である14日目のWHO-CPS中央値は、ARB群(384例)で1(四分位範囲[IQR]:1~1)、プラセボ群(382例)で1(1~1)であった(補正後オッズ比[OR]:1.51、95%信用区間[CrI]:1.02~2.23、オッズ比>1の確率〔Pr[OR>1]〕:0.98)。 28日目のWHO-CPSは、両群間でほとんど差は認められなかった(補正後OR:1.02、95%CrI:0.55~1.87、Pr[OR>1]:0.53)。 本試験は、事前に設定された無益性の基準を満たし中止となった。

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急性心不全、強化治療戦略で死亡・再入院リスク減/Lancet

 急性心不全で入退院後、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の早期漸増と頻回なフォローアップによる強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、および180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、フランスのパリ・シテ大学のAlexandre Mebazaa氏らが実施した多施設共同無作為化非盲検並行群間試験「STRONG-HF試験」の結果、示された。急性心不全で入退院後にGDMTを行う際の用量や漸増速度に関するエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。2週間で目標用量まで漸増するGDMTと通常治療を比較 研究グループは、14ヵ国(アルゼンチン、オーストリア、ブルガリア、コロンビア、フランス、ハンガリー、イスラエル、モザンビーク、ナイジェリア、ロシア、セルビア、スロバキア、南アフリカ、チュニジア)の87病院において、急性心不全で入院し退院予定日前2日以内に経口心不全治療薬の最大用量を投与されていない18~85歳の患者を対象に試験を行った。 退院前に左室駆出率(≦40% vs.>40%)および国で層別化して、通常治療群または高強度(high-intensity)治療群(β遮断薬、RAS阻害薬[ACE阻害薬、ACE阻害薬に不耐用の場合はARB]、ARNI、MR拮抗薬による)に1対1の割合で無作為に割り付けた。通常治療群では各地域の診療に従った治療を行い、高強度治療群では無作為化後2週間以内に推奨用量の100%まで治療薬を漸増するとともに、無作為化後1・2・3・6週時に臨床状態、臨床検査値、NT-proBNP値を評価した。 主要評価項目は、180日以内の心不全による再入院または全死亡で、intention-to-treat(ITT)集団を対象に有効性と安全性を評価した。主要評価項目については、倫理委員会がプロトコルの修正を承認し180日目まで患者の追跡調査を可とした病院に登録された患者のみを解析対象集団とした。 なお、本試験は、計1,069例が無作為化された時点の解析で主要評価項目の群間差が予測より大きかったため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により2022年9月23日に早期中止となった。早期漸増で180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクが有意に減少 2018年5月10日~2022年9月23日の期間に、計1,641例がスクリーニングを受け、1,078例が高強度治療群(542例)または通常治療群(536例)に無作為化された(ITT集団)。患者背景は、平均(±SD)年齢63.0±13.6歳、男性61%で、白人またはコーカサスが77%/黒人21%/アメリカ先住民<1%/太平洋諸島系<1%/その他1%であった。 データカットオフ時点(2022年10月13日)において、高強度治療群は通常治療群と比較して、90日目までに経口心不全治療薬を最大用量まで漸増された患者の割合が高かった(RAS阻害薬:55% vs.2%、β遮断薬:49% vs.4%、MR拮抗薬:84% vs.46%)。また、高強度治療群は通常治療群より、90日目までに血圧、心拍数、NYHA分類、体重およびNT-proBNP値が改善した。 180日以内の心不全による再入院または全死亡は、高強度治療群で506例中74例、通常治療群で502例中109例発生した(補正後リスク差:8.1%[95%信頼区間[CI]:2.9~13.2]、p=0.0021、リスク比:0.66[95%CI:0.50~0.86])。 90日以内の有害事象は、高強度治療群(223/542例、41%)が通常治療群(158/536例、29%)より多く認められたが、重篤な有害事象の発現率(88例[16%]vs.92例[17%])、致死的有害事象の発現率(25例[5%]vs.32例[6%])は同等であった。

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治療抵抗性高血圧、二重エンドセリン受容体拮抗薬が有効/Lancet

 エンドセリン経路の遮断による降圧作用が示唆されているが、現時点では治療標的とはなっていない。オーストラリア・西オーストラリア大学のMarkus P. Schlaich氏らは「PRECISION試験」において、二重エンドセリン受容体拮抗薬aprocitentanは治療抵抗性高血圧患者で良好な忍容性を示し、4週の時点での収縮期血圧(SBP)がプラセボに比べ有意に低下し、その効果は40週目まで持続したと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月7日号に掲載された。3部構成の無作為化第III相試験 PRECISION試験は、欧州、北米、アジア、オーストラリアの22ヵ国193施設が参加した無作為化第III相試験であり、2018年6月~2022年4月の期間に参加者の登録が行われた(Idorsia PharmaceuticalsとJanssen Biotechの助成を受けた)。 対象は、利尿薬を含むクラスの異なる3種の降圧薬から成る標準化された基礎治療を受けたが、診察室での座位SBPが140mmHg以上の患者であった。 試験は連続する3部から成り、パート1は4週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の期間で、患者は標準化基礎治療に加えaprocitentan 12.5mg、同25mg、プラセボの1日1回経口投与を受ける群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。パート2は32週間の単盲検(患者)の期間で、すべての患者がaprocitentan 25mgの投与を受けた。パート3は12週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の投与中止期で、再度無作為化が行われ、患者はaprocitentan 25mg群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、パート1のベースラインから4週目までの診察室座位SBP、主な副次エンドポイントはパート3のベースライン(36週目)から4週目(40週目)までの診察室座位SBPの変化であった。そのほか副次エンドポイントには、24時間時間自由行動下SBPの変化などが含まれた。4週時の24時間自由行動下SBPも良好 730例が登録され、このうち704例(96%)がパート1を、703例のうち613例(87%)がパート2を、613例のうち577例(94%)がパート3を完遂した。730例のうちaprocitentan 12.5mg群が243例(平均年齢61.2歳、男性59%)、同25mg群が243例(61.7歳、60%)、プラセボ群は244例(62.2歳、59%)であった。 パート1の4週時におけるSBPの最小二乗平均(SE)変化は、aprocitentan 12.5mg群が-15.3(0.9)mmHg、同25mg群が-15.2(0.9)mmHg、プラセボ群は-11.5(0.9)mmHgであった。プラセボ群との差は、aprocitentan 12.5mg群が-3.8(1.3)mmHg(97.5%信頼区間[CI]:-6.8~-0.8、p=0.0042)、同25mg群は-3.7(1.3)mmHg(-6.7~-0.8、p=0.0046)と、いずれも有意に低下した。 パート1の4週時における、24時間自由行動下SBPのプラセボ群との差は、aprocitentan 12.5mg群が-4.2mmHg(95%CI:-6.2~-2.1)、同25mg群は-5.9mmHg(-7.9~-3.8)であった。 パート3の4週(40週)時におけるSBP(主な副次エンドポイント)は、aprocitentan 25mgに比べプラセボ群で有意に高かった(5.8mmHg、95%CI:3.7~7.9、p<0.0001)。 パート1の4週間で発現した最も頻度の高い有害事象は浮腫/体液貯留で、aprocitentan 12.5mg群が9.1%、同25mg群が18.4%、プラセボ群は2.1%で認められた。試験期間中に治療関連死が11例(心血管死5例、新型コロナウイルス感染症関連死5例、腸穿孔1例)でみられたが、担当医によって試験薬関連と判定されたものはなかった。 著者は、「本研究により、aprocitentanによる二重エンドセリン受容体の遮断は、ガイドラインで推奨されている3剤併用降圧治療との併用で、良好な忍容性とともに、診察室および自由行動下の血圧の双方に持続的な降圧効果をもたらす有効な治療法であることが確立された」としている。

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新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。 camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害薬パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。 今回結果が発表されたSERENA-2試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象に、複数の用量のcamizestrantをフルベストラントと比較して評価する、無作為化非盲検並行群間多施設共同第II相臨床試験。主要評価項目は、フルベストラント(500mg)との比較によるcamizestrant(75mg)のPFS、およびフルベストラントとの比較によるcamizestrant(150mg)のPFSであり、Response Evaluation Criteria In Solid Tumours(RECIST)ガイドライン第1.1版の定義に従い評価される。240例をcamizestrant群またはフルベストラント群に無作為に割り付け、病勢進行が認められるまで治療を実施した。副次評価項目は、24週目の安全性、客観的奏効率および臨床的ベネフィット率(CBR)など。本試験の詳しい結果は、今後の医学学会で発表される予定となっている。 また、1次治療中にESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性の転移乳がん患者を対象にcamizestrantとCDK4/6阻害剤(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)の併用療法を評価する検証的第III相臨床試験であるSERENA-6試験や、HR陽性の局所進行または転移乳がんへの1次治療におけるcamizestrantとパルボシクリブの併用療法を評価する第III相SERENA-4試験などが実施されており、SERENA-6試験の適応症は米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を付与されている。

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従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付け【心不全診療Up to Date】第2回

第2回 従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付けKey Pointsエビデンスが確立している心不全薬物治療をしっかり理解しよう!1)生命予後改善薬を導入、増量する努力が十分にされているか?2)うっ血が十分に解除されているか?3)服薬アドヒアランスの良好な維持のための努力が十分にされているか?はじめに心不全はあらゆる疾患の中で最も再入院率が高く1)、入院回数が多いほど予後不良といわれている2)。また5年生存率はがんと同等との報告もあり3)、それらをできる限り抑制するためには、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の実施が極めて重要となる4)。なぜこれから紹介する薬剤がGDMTの一員になることができたのか、その根拠までさかのぼり、現時点での慢性心不全の至適薬物療法についてまとめていきたい。なお、現在あるGDMTに対するエビデンスはすべて収縮能が低下した心不全Heart Failure with reduced Ejection Fraction(HFrEF:LVEF<40%)に対するものであり、本稿では基本的にはHFrEFについてのエビデンスをまとめる。 従来の薬剤治療のエビデンスを整理!第1回で記載したとおり、慢性心不全に対する投薬は大きく2つに分類される。1)生命予後改善のための治療レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)、β遮断薬、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬、ベルイシグアト、イバブラジン2)症状改善のための治療利尿薬、利水剤(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)その他、併存疾患(高血圧、冠動脈疾患、心房細動など)に対する治療やリスクファクター管理なども重要であるが、今回は上記の2つについて詳しく解説していく。1. RAAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)1)ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬≧ARB)【適応】ACE阻害薬のHFrEF患者に対する生命予後および心血管イベント改善効果は、1980年代後半に報告されたCONSENSUSをはじめ、SOLVDなどの大規模臨床試験の結果により、証明されている5,6)。無症候性のHFrEF患者に対しても心不全入院を抑制し、生命予後改善効果があることが証明されており7)、症状の有無に関わらず、すべてのHFrEF患者に投与されるべき薬剤である。ARBについては、ACE阻害薬に対する優位性はない8–11)。ブラジキニンを増加させないため、空咳がなく、ACE阻害薬に忍容性のない症例では、プラセボに対して予後改善効果があることが報告されており12)、そのような症例には適応となる。【目標用量】ATLAS試験で高用量のACE阻害薬の方が低用量より心不全再入院を有意に減らすということが報告され(死亡率は改善しない)13)、ARBについても、HEAAL試験で同様のことが示された14)。では、腎機能障害などの副作用で最大用量にしたくてもできない症例の予後は、最大用量にできた群と比較してどうなのか。高齢化が進み続けている実臨床ではそのような状況に遭遇することが多い。ACE阻害薬についてはそれに対する答えを示した論文があり、その2群間において、死亡率に有意差は認めず、心不全再入院等も有意差を認めなかった15)。つまり、最大”許容”用量を投与すれば、その用量に関係なく心血管イベントに差はないということである。【注意点】ACE阻害薬には腎排泄性のものが多く、慢性腎臓病患者では注意が必要である。ACE阻害薬/ARB投与開始後のクレアチニン値の上昇率が大きければ大きいほど、段階的に末期腎不全・心筋梗塞・心不全といった心腎イベントや死亡のリスクが増加する傾向が認められるという報告もあり、腎機能を意識してフォローすることが重要である16)。なお、ACE阻害薬とARBの併用については、心不全入院抑制効果を報告した研究もあるが9,17)、生存率を改善することなく、腎機能障害などを増加させることが報告されており11,18)、お勧めしない。2)MR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)【適応】スピロノラクトンは、RALES試験にて重症心不全に対する予後改善効果(死亡・心不全入院減少)が示された19)。エプレレノンは、心筋梗塞後の重症心不全に対する予後改善効果が示され20)、またACE阻害薬/ARBとβ遮断薬が85%以上に投与されている比較的軽症の慢性心不全に対しても予後改善効果が認められた21)。以上より、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬を最大許容用量投与するも心不全症状が残るすべてのHFrEF患者に対して投与が推奨されている。【目標用量】上記の結果より、スピロノラクトンは50mg、エプレレノンも50mgが目標用量とされているが、用量依存的な効果があるかについては証明されていない。なお、EMPHASIS-HF試験のプロトコールに、具体的なエプレレノンの投与方法が記載されているので、参照されたい21)。【注意点】高カリウム血症には最大限の注意が必要であり、RALES試験の結果発表後、スピロノラクトンの処方率が急激に増加し、高カリウム血症による合併症および死亡も増加したという報告もあるくらいである22)。血清K値と腎機能は定期的に確認すべきである。ただ近年新たな高カリウム血症改善薬(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)が発売されたこともあり、過度に高カリウム血症を恐れる必要はなく、できる限り予後改善薬を継続する姿勢が重要と考えられる。またRALES試験でスピロノラクトンは女性化乳房あるいは乳房痛が10%の男性に認められ19)、実臨床でも経験されている先生は多いかと思う。その場合は、エプレレノンへ変更するとよい(鉱質コルチコイド受容体に選択性が高いのでそのような副作用はない)。2. β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール)【適応】β遮断薬はWaagsteinらが1975年に著効例7例を報告して以来(その時は誰も信用しなかった)、20年の時を経て、U.S. Carvedilol、MERIT−HF、CIBIS II、COPERNICUSなどの大規模臨床試験の結果が次々と報告され、30~40%の死亡リスク減少率を示し、重症度や症状の有無によらずすべての慢性心不全での有効性が確立された薬剤である23–26)。日本で処方できるエビデンスのある薬剤は、カルベジロールとビソプロロールだけである。カルベジロールとビソプロロールを比較した研究もあるが、死亡率に有意差は認めなかった27)。なお、慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬どちらの先行投与でも差はないとされている28)。【目標用量】用量依存的に予後改善効果があると考えられており、日本人ではカルベジロールであれば20mg29)、ビソプロロールであれば5mgが目標用量とされているが、海外ではカルベジロールであれば、1mg/kgまで増量することが推奨されている。【注意点】うっ血が十分に解除されていない状況で通常量を投与すると心不全の状態がかえって悪化することがあるため、少量から開始すべきである。そして、心不全の増悪や徐脈の出現等に注意しつつ、1~2週間ごとに漸増していく。心不全が悪化すれば、まずは利尿薬で対応する。反応乏しければβ遮断薬を減量し、状態を立て直す。また徐脈などの副作用を認めても、中止するのではなく、少量でも可能な限り投与を継続することが重要である。3. 利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、トルバプタン)、利水剤(五苓散など)【適応】心不全で最も多い症状は臓器うっ血によるものであり、浮腫・呼吸困難などのうっ血症状がある患者が利尿薬投与の適応である。ただ、ループ利尿薬は交感神経やRAS系の活性化を起こすことが分かっており、できる限りループ利尿薬を減らした状態でいかにうっ血コントロールをできるかが重要である。そのような状況で、新たなうっ血改善薬として開発されたのがトルバプタンであり、また近年利水剤と呼ばれる漢方薬(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)もループ利尿薬を減らすための選択肢の1つとして着目されており、心不全への五苓散のうっ血管理に対する有効性を検証する大規模RCTであるGOREISAN-HF試験も現在進行中である。この利水剤については、また別の回で詳しく説明する。【注意点】あくまで予後改善薬を投与した上で使用することが原則。低カリウム血症、低マグネシウム血症、腎機能増悪、脱水には注意が必要である。新規治療薬の位置付け上記の従来治療薬に加えて、近年新たに保険適応となったHFrEF治療薬として、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(Angiotensin receptor-neprilysin inhibitor:ARNI)、SGLT2阻害薬(ダバグリフロジン、エンパグリフロジン)、ベルイシグアト、イバブラジンがある。上記で示した薬物療法をHFrEF基本治療薬とするが、効果が不十分な場合にはACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替える。さらに、心不全悪化および心血管死のリスク軽減を考慮してSGLT2阻害薬を投与する。第1回でも記載した通り、これら4剤を診断後できるだけ早期から忍容性が得られる範囲でしっかり投与する重要性が叫ばれている。服薬アドヒアランスへの介入は極めて重要!最後に、施設全体のガイドライン遵守率を改めて意識する重要性を強調しておきたい。実際、ガイドライン遵守率が患者の予後と関連していることが指摘されている28)。そして何より、処方しても患者がしっかり内服できていないと意味がない。つまり、内服アドヒアランスが良好に維持されるよう、医療従事者がしっかり説明し(この薬がなぜ必要かなど)、サポートをすることが極めて重要である。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムは欧米のガイドラインでもクラスIに位置づけられており、ぜひ皆様には、このGDMTに関する知識をまわりの看護師などに還元し、チーム医療という形でそれが患者へしっかりフィードバックされることを切に願う。1)Jencks SF, et al. N Engl J Med.2009;360:1418-1428.2)Setoguchi S, et al. Am Heart J.2007;154:260-266. 3)Stewart S, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes.2010;3:573-580.4)McDonagh TA, et al.Eur Heart J. 2022;24:4-131.5)CONSENSUS Trial Study Group. N Engl J Med. 1987;316:1429-1435.6)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1991;325:293-302.7)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1992;327:685-691.8)Pitt B, et al.Lancet.2000;355:1582-1587.9)Cohn JN, et al.N Engl J Med.2001;345:1667-1675.10)Dickstein K, et al. Lancet.2002;360:752-760.11)Pfeffer MA, et al.N Engl J Med. 2003;349:1893-1906.12)Granger CB, et al. Lancet.2003;362:772-776.13)Packer M, et al.Circulation.1999;100:2312-2318.14)Konstam MA, et al. Lancet.2009;374:1840-1848.15)Lam PH, et al.Eur J Heart Fail.. 2018;20:359-369.16)Schmidt M, et al. BMJ.2017;356:j791.17)McMurray JJ, et al.Lancet.2003;362:767-771.18)ONTARGET Investigators. N Engl J Med.2008;358:1547-1559.19)Pitt B, et al. N Engl J Med.1999;341:709-717.20)Pitt B, et al. N Engl J Med.2003;348:1309-1321.21)Zannad F, et al. N Engl J Med.2011;364:11-21.22)Juurlink DN, et al. N Engl J Med.2004;351:543-551.23)Packer M, et al.N Engl J Med.1996;334:1349-1355.24)MERIT-HF Study Group. Lancet. 1999;353:2001-2007.25)Dargie HJ, et al. Lancet.1999;353:9-13.26)Packer M, et al.N Engl J Med.2001;344:1651-1658.27)Düngen HD, et al.Eur J Heart Fail.2011;13:670-680.28)Fonarow GC, et al.Circulation.2011;123:1601-10.29)日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5【「実践的」臨床研究入門】第25回

前回、筆者らが出版したコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のP(対象)の構成要素の検索式の実例を用いて、その構造を解説しました。今回は引き続き、このコクランSR論文1)のI(介入)を示す検索式と検索式全体の完成形の実際例について解説します(連載第24回参照)。Iの構成要素をORでつないでまとめる下記は、この論文のIである「アルドステロン受容体拮抗薬」の構成要素の検索式です。14.Mineralocorticoid Receptor Antagonists[mh]15.Diuretics, Potassium Sparing[mh:noexp]16.spironolactone[tiab]17.eplerenone[tiab]18.canrenone[tiab]19.#14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18#14は「アルドステロン受容体拮抗薬」のMeSH term (統制語)である”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”です(連載第22回参照)。「アルドステロン受容体拮抗薬」は降圧薬の一種でK保持性利尿薬に分類される薬剤です。”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”というMeSH termの階層構造をみてみると、下記およびリンクのとおりとなります。●Diuretics, Potassium Sparing○Epithelial Sodium Channel Blockers○Mineralocorticoid Receptor Antagonists#15では”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”の上位概念である”Diuretics, Potassium Sparing”(K保持性利尿薬)を[mh: noexp]の「タグ」で指定しています。”Diuretics, Potassium Sparing”の下位概念のうち"Epithelial Sodium Channel Blockers"という違う薬剤クラスは除外した検索式になっています(連載第22回参照)。その結果、”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”で拾えない”Diuretics, Potassium Sparing”をカバーしています。#16-18では、MeSH termで拾えない可能性のある「アルドステロン受容体拮抗薬」に含まれる薬剤固有名詞を、「タグ」でTitle/Abstractを指定したうえでテキストワードを列記し、検索式を補完しています(連載第23回、第24回参照)。#19で#14から#19を”OR”でつなぎ、Iの構成要素の検索式が出来上がります。最後にPとIの構成要素をANDでつなぐPとIそれぞれの構成要素は、MeSH termやテキストワードで示される類似した語句同士なので重なりは大きいのですが、”OR”でつなげて、できるだけ検索漏れがないようにします。高校の数学で習ったはずの「ベン図」で表すと、下の図のようなイメージです。「ベン図」とは、ある概念で表されるグループ(集合)の関係性を視覚的に表した図でした。PとIの構成要素の検索式がそれぞれ完成したら、最終的にはPとIの「集合」の重なり部分を求めます。こちらも「ベン図」で示すと下図のようになります。Pの構成要素の検索式のまとめである#13(下記、連載第24回参照)と13. #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12Iの構成要素をまとめた検索式#19を、#20(下記)のように”AND”でつなぐことで検索式が完成します。20. #13 AND #191)Hasegawa T, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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