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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第5回

TAVIの新たな課題~デバイス血栓症~世界的に急速に普及が進む経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)ですが、それに伴い術後の人工弁血栓症が新たな懸念として浮上しています。これまでの報告では「TAVI後の人工弁血栓の発生はきわめてまれである」とされてきました1)~3)。一方で、人工弁血栓がTAVI後の大動脈弁圧較差の原因となりうること3)、そして生体弁による外科的弁置換術後の血栓症も予想以上に多く、術後数年を経過してから発生すること4)もありうることが報告されています。われわれの施設でもTAVI後、約2年が経過した症例で人工弁に血栓が生じ、左冠動脈主幹部に塞栓症を起こし、重篤な転帰となった症例を経験しており5)、見逃すことのできない合併症と考えています。最近、TAVI後の血栓症について新たな興味深い報告が発表されましたので紹介したいと思います。本研究では、デンマークの単施設で行われたSAPIEN XTあるいはSAPIEN 3を用いたTAVIの連続登録症例460例のうち、術後1~3ヵ月以内にMDCTおよび経胸壁・経食道心エコーによる人工弁血栓症の評価が行われた405例で解析が行われました。その結果、28例(7%)の症例で血栓の発生が確認され、大きな人工弁(29mm)留置と、術後ワルファリン未使用が人工弁血栓の独立した予測因子であることが示されました。また、ワルファリン使用によって人工弁血栓が消退することも同時に報告されています6)。これまでの報告と同様に、今回の研究でも多くの症例で人工弁血栓症は無症候性で、脳梗塞の発症などのイベントとの関連を示すには至っていません。ただ、当院で経験した症例のように重篤な転帰に至る症例もあることから、TAVI後の人工弁血栓の臨床的意義、予測因子、そして予防法・治療法を明らかにすることは非常に重要です。TAVI後の抗血栓療法のレジメンとしては、心房細動を合併しない症例では、アスピリン・クロピドグレルの抗血小板薬2剤併用を6ヵ月間、その後抗血小板薬1剤を継続することが推奨されています。しかしながら、今回の研究結果をみると、血栓症のリスクの高い症例では抗凝固療法を加えたプロトコルのほうが優れているのではないかとも考えられます。この点については、現在進行中のRandomized trialであるGALILEO trial、 POPular-TAVI trial、ATLANTIS trialなどの結果によって明らかになると思われます。これまでの連載で紹介したSAPIEN 3(エドワーズライフサイエンス社)など新世代デバイスの登場によって急性期の合併症が著しく減少したTAVIですが、その分、今後はこのような長期的な予後や管理について明らかにすることが重要になってくると考えています。ドイツでは年間1万3,000例以上のTAVIが行われ、私が勤務する施設においても年間300例以上と、大変多くの症例を経験することができています。これまではTAVIにおける症例選択やより安全なTAVIの施行に重点を置いてきましたが、今後は術後の至適治療という視点からもTAVIについて考えていきたいと思っています。1.Latib A, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2015;8.2.De Backer O, et al. Eur Heart J. 2016;37:2271.3.De Marchena E, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2015;8:728-739.4.Egbe AC, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;66:2285-2294.5.Neuss M , Kaneko H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2016.6.Hansson NC, et al. J Am Coll Cardiol. 2016.

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エドキサバンは電気的除細動時の抗凝固療法として有用/Lancet

 エドキサバンは、心房細動(AF)患者への電気的除細動施行時の抗凝固療法として、エノキサパリン+ワルファリンと同等の高度な安全性と有効性を発揮することが、ドイツ・St Vincenz病院のAndreas Goette氏らが実施したENSURE-AF試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年8月30日号に掲載された。経口第Xa因子阻害薬エドキサバンは、AF患者の抗凝固療法において、エノキサパリン+ワルファリンと比較して、脳卒中や全身性塞栓症の予防効果が非劣性で、出血は少ないことが知られている。一方、AFへの電気的除細動の試験の事後解析では、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の良好な安全性プロファイルが示されているが、エドキサバンの安全性データは十分ではないという。電気的除細動施行AFでの有用性を無作為化試験で評価 ENSURE-AF試験は、電気的除細動および抗凝固療法が予定されている非弁膜症性AF患者において、エドキサバンとエノキサパリン+ワルファリンの有用性を比較する無作為化第IIIb相試験(Daiichi Sankyo社の助成による)。 被験者は、エドキサバン(60mg/日)またはエノキサパリン+ワルファリンを投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンは、クレアチニンクリアランスが15~50mL/分、体重≦60kg、P糖蛋白阻害薬併用例では30mg/日に減量することとした。 初回の薬剤投与は、電気的除細動施行の前に行われ、施行後28日間の治療が実施された。その後、30日間のフォローアップを行った。 有効性の主要評価項目は、脳卒中、全身性塞栓イベント、心筋梗塞、心血管死の複合エンドポイントとした。安全性の主要評価項目は、重大な出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血(CRNM)であった。 2014年3月25日~2015年10月28日までに、欧米19ヵ国239施設に2,199例が登録され、エドキサバン群に1,095例が、エノキサパリン+ワルファリン群には1,104例が割り付けられた。安全性の解析は、それぞれ1,067例、1,082例で行われた。両群とも良好な有効性と安全性を達成 全体の平均年齢は64歳で、約3分の2が男性であり、平均CHA2DS2-VAScスコアは2.6(SD 1.4)であった。経口抗凝固薬の投与歴がない患者は27%であった。エドキサバン群の47%がビタミンK拮抗薬の投与を受けており、エドキサバンに変更された。 有効性のエンドポイントは、エドキサバン群が5例(<1%)、エノキサパリン+ワルファリン群は11例(1%)に認められた(オッズ比[OR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.12~1.43)。 脳卒中はエドキサバン群が2例(<1%)、エノキサパリン+ワルファリン群は3例(<1%)(OR:0.67、95%CI:0.06~5.88)にみられ、頭蓋内出血は両群ともに認めず、全身性塞栓イベントは1例(<1%)、1例(<1%)、心筋梗塞は2例(<1%)、3例(<1%)(OR:0.67、95%CI:0.06~5.88)、心血管死は1例(<1%)、5例(<1%)(OR:0.20、95%CI:0~1.80)に発現した。 安全性のエンドポイントは、エドキサバン群が16例(1%)、エノキサパリン+ワルファリン群は11例(1%)にみられた(OR:1.48、95%CI:0.64~3.55)。 重大な出血はエドキサバン群が3例(<1%)、エノキサパリン+ワルファリン群は5例(<1%)(OR:0.61、95%CI:0.09~3.13)に認め、CRNMはそれぞれ14例(1%)、7例(1%)(OR:2.04、95%CI:0.77~6.00)にみられた。生命を脅かす出血は1例ずつに認められた。すべての出血の発現数は32例(3%)、35例(3%)(OR:0.93、95%CI:0.55~1.55)であった。 これらの結果は、電気的除細動における経食道心エコー(TEE)ガイドの有無や、抗凝固薬の投与状況の違いによって差が生じることはなかった。また、エドキサバン群は99%以上というきわめて良好な服薬遵守(アドヒアランス)が達成された。 著者は、「エドキサバンは安全に投与でき、患者にとって使用しやすく、電気的除細動施行時に経口抗凝固療法を迅速に開始するのに有用であり、従来のヘパリン+ワルファリンの代替療法として使用可能と考えられる」としている。

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ESC 2016 注目の演題

2016年8月27~31日、イタリア・ローマでESC(欧州心臓病学会)2016が開催されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考にしていただけるよう注目演題に関するアンケートを実施しましたので、その結果を学会開催前にご紹介します。また、ローマのおすすめスポットについても、会員の方々から情報をお寄せいただきました。併せてご活用ください。ローマのおすすめスポットはこちらイタリア留学経験のある循環器内科医が選ぶESC 2016注目の演題はこちら※演題名および発表順は、8月12日時点でESC 2016ウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Clinical Trial Update coronary artery diseaseChairperson: Stephan ACHENBACH8/29(月)14:00 - 15:30、Forum - The Hub1.5-year outcomes after implantation of biodegradable polymer-coated biolimus-eluting stents versus durable polymer-coated sirolimus-eluting stents in unselected patients2.A life-time perspective on the effects of an early invasive compared with a non-invasive treatment strategy in patients with non-ST-elevation acute coronary syndrome - the FRISC II 15 years follow-up3.10-year follow-up of clinical outcomes in a randomized trial comparing routine invasive versus selective invasive management in patients with non ST-segment elevation acute coronary syndrome.4.Comparative Efficacy of Coronary Artery Bypass Surgery Versus Percutaneous Coronary Intervention in Diabetic Patients with Multivessel Coronary Artery Disease With or Without Renal Dysfunction5.The effect of CABG by age in patients with heart failure: 10 year follow data from the STICHES study6.ABSORB Japan: 2-year clinical results from a randomized trial evaluating the Absorb Bioresorbable Vascular Scaffold vs. metallic drug-eluting stent in de novo native coronary artery lesionsQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line coronary artery disease and imagingChairpersons: Fausto Jose PINTO, Michael HAUDE8/29(月)16:30-18:00、Rome - Main Auditorium1.CONSERVE - Direct catheterization versus selective catheterization guided by Coronary Computed Tomography in patients with stable suspected Coronary Artery Disease2.DOCTORS - Does Optical Coherence Tomography Optimise Results of Stenting?3.CE-MARC 2 - A randomized trial of 3 diagnostic strategies in patients with suspected coronary heart disease.4.PACIFIC trial - Head-to-head comparison of coronary CT angiography, myocardial perfusion SPECT, PET, and hybrid imaging for diagnosis of ischemic heart disease5.AMERICA - Systematic detection and management of multivascular involvement of atherothrombosis in coronary patients in comparison with treatment of coronary disease onlyQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するRegistries coronary artery disease, stroke and interventionChairperson: Elliott ANTMAN, Leonardo BOLOGNESE8/29(月)16:30-18:00、Sarajevo - Village 21.SWEDEHEART: Stent thrombosis and all-cause mortality in bivalirudin and heparin treated ST-elevation myocardial infarction patients undergoing primary percutaneous intervention2.Feasibility and safety of direct catheter-based thrombectomy in the treatment of acute ischemic stroke. Prospective registry PRAGUE-163.Quality Indicators for Acute Myocardial Infarction: rate of implementation and relation with 3 year survival. A study using data from the nationwide FAST-MI 2005 and FAST-MI 2010 registries4.Modulators of the response to CRT in international practice: the ADVANCE CRT registry5.ELECTRa (European Lead Extraction ConTRolled) Registry: a deeper snapshot on transvenous lead extraction in europe6.Two year prospective follow up of patients treated with dabigatran etexilate for stroke prevention in non-valvular atrial fibrillation: The GLORIA-AF RegistryQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line coronary artery disease and stentingChairpersons: Steen Dalby KRISTENSEN, Andreas BAUMBACH8/30(火) 11:00-12:30、Rome - Main Auditorium1.NorStent - Comparison of long term effects of new generation DES vs contemporary BMS on mortality, morbidity, revascularization, and quality of life2.BASKET-SAVAGE - Drug-eluting vs. bare metal stents in saphenous vein grafts3.PRAGUE -18 - Randomized comparison of ticagrelor versus prasugrel in ST elevation myocardial infarction4.Can patients with acute coronary syndromes caused by plaque erosion be treated with anti-thrombotic therapy without stenting?5.BBK II trial - Culotte versus T-stenting for treatment of coronary bifurcation lesionsQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大する欧州留学経験のある循環器内科医が選ぶESC 2016の注目演題ESC 2016開催に当たり、欧州留学経験のある循環器内科臨床医、大野 洋平氏が注目の演題を厳選して紹介する。ESCならではの循環器領域の多岐にわたる興味深い臨床研究が幾つもあり、会場でのdiscussionも含めて非常に楽しみである。まずは、ABSORB Japanの2年フォローアップの臨床結果に注目したい。ABSORB Japanは、薬剤溶出性生体吸収スキャフォールドAbsorbと第3世代薬剤溶出性ステントXienceの無作為化比較試験であり、昨年ロンドンで開催されたESC 2015のLate Breakingで1年フォローアップのデータが発表された。現在、スキャフォールド血栓症が話題であるが、本試験でのVery Late Scaffold Thrombosisが比較対象のXience 群と比べてどうだったのか、非常に気になるところである。血管内イメージング王国である日本では、IVUSあるいはOCTガイドによるPCIが日常臨床で行われている。しかし、OCTガイドPCIがはたして良好な治療転帰につながるかという明確な答えはまだ存在しない。今回のHot Lineでは、OCTはPCIの治療成績を最適化するか?という命題に答えを出すべく、フランスの多施設で実施されているDOCTORS(NCT01743274)試験の結果が発表される。非ST上昇型急性冠症候群の患者を「通常透視のみ使用群」と「OCTガイド群」に無作為に割り付け、DESあるいはBMSを留置するというもので、ステント留置後にFFRを評価する1次エンドポイントが特徴の試験である。半年後の有害心イベント(死亡、心筋梗塞の再発、ステント血栓症、標的血管血行再建)と併せて結果を確認したい。金属ステントだけでなく、BRSも入ってくるともっと面白いのだが。“Hot Line coronary artery disease and stenting”のセッションでは、“Can patients with acute coronary syndromes caused by plaque erosion be treated with anti-thrombotic therapy without stenting?”という演題に注目したい。近年、急性冠症候群を呈した患者の血管内イメージングにて、“plaque erosion”というplaque ruptureは来していないが病変に血栓を伴う症例が報告されるようになり、ステントを留置せず、抗血小板療法や抗凝固療法といった抗血栓療法のみで加療が可能ではないかという議論がある。こういった病変に対して金属ステントを留置することなく、抗血栓療法のみで安全に加療できるのであれば、非常に意義のあることだと考える。それを裏付ける結果が得られるかどうか、楽しみである。TAVI関連の臨床試験は今回あまり多くはないようだが、SENTINEL(NCT02214277)試験に注目したい。TAVIの合併症の1つに脳梗塞がある。幸い、後遺症を残すようないわゆるdisabling strokeに臨床で遭遇することはあまりないが、もちろん可能であれば予防したい。ちなみに、最新の自己拡張型生体弁であるMedtronic社のEvolut Rを使用した臨床試験(Evolut R CE Study)では、30日のdisabling strokeはなんと0%。より太いシステムであるEdwards Lifesciences社のSapien 3を使用した臨床試験(PARTNER II S3 Trial)でも0.9%と非常に良好な成績が報告されている。本試験で使用する脳梗塞予防デバイスはClaret Medical社のSentinelという脳保護システムである。右橈骨動脈よりアプローチして、右腕頭動脈および左総頸動脈にフィルターをかけるデバイスである。日本人オペレーターであれば、フィルターの留置に難渋することは少ないと思われるが、処置時間が短くなってきた現在のTAVIという治療の中では、やはり時間のかかる操作になる。筆者もイタリアで使用経験があるが、時間がかかるわりに効果はどうなのか、という印象がある。脳梗塞ハイリスクの一部の患者のみをターゲットにすれば有用である可能性はあるが、少なくとも全例に使用するデバイスではないと考える。どういった結果が出るのか、注目したい。

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第2回

左心耳閉鎖デバイスWatchmanの真の実力を検証!!心房細動に伴う心原性脳梗塞の脳梗塞予防として左心耳閉鎖術は欧州ではすでに標準的治療として行われています。一方、PROTECT-AF試験1)、PREVAIL試験2)など抗凝固療法とのランダム化比較試験のデータはありましたが、実臨床に基づく大規模なデータの報告はありませんでした。今回、ヨーロッパ、ロシア、中東の13ヵ国47施設が参加し、左心耳閉鎖デバイスとして現在、最も広く普及しているデバイスであるWatchman(ボストン・サイエンティック社)の実臨床における手技成功率や周術期の安全性について評価したEWOLUTION試験3)がEuropean Heart Journal誌に報告されました。画像を拡大する登録された1,021症例の平均年齢は73歳で6割が男性、高血圧や糖尿病、血管疾患の既往を高率に有し、34%の症例はうっ血心不全を合併しています。そして約半数の症例で一過性脳虚血発作、脳梗塞、あるいは出血性脳梗塞の既往が存在しました。全体の62%は既存の合併症や低アドヒアランス、出血のハイリスクなどのために抗凝固療法に不適とされ、Watchman植込み術の適応となった症例でした。患者背景として、PROTECT-AF試験(CHADS2スコア平均2.2、HA2DS2-VAScスコア平均3.4)、PREVAIL試験(CHADS2スコア平均2.6、HA2DS2-VAScスコア平均4.0)と比較し、EWOLUTION試験ではCHADS2スコア平均2.8、HA2DS2-VAScスコア平均4.5であり、より脳梗塞リスクの高い症例が集まっています。さらにHAS-BLEDスコア3以上の(抗凝固療法に伴う)出血リスクの高い症例もPROTECT-AF試験では20%、PREVAIL試験では30%なのに対して、EWOLUTION試験では約40%含まれ、抗凝固療法が行いづらい患者群であることもわかります。このようにこれまでの試験と比較して、EWOLUTION試験では実臨床を反映してハイリスクの患者群を対象としました。画像を拡大する結果としてWatchmanデバイスは98.5%の症例で成功裏に植込まれました。PROTECT-AF試験での手技成功率は90.9%であったことから、植込み技術の経時的な向上によって、ハイリスク症例を対象としても高い手技成功率を達成できることがわかります。手技に伴う重大な合併症としては、心嚢液貯留が5例(そのうち1例が心タンポナーデ)報告されていますが、この頻度もPROTECT-AF試験の約5%からは大きく改善されており、経験の蓄積により手技の安全性も高まることが示唆されます。そして特筆すべき点として、本研究では上記のように抗凝固療法不適と判断されてWatchman植込み術が行われた症例が6割を超えており、術後も7割以上の症例で抗凝固療法が行われていませんでした(6%の症例では抗血小板剤を含め一切の抗血栓療法が行われていません)。しかしながら、術後30日以内の脳梗塞発症はわずか3例(0.3%)ときわめて稀であり、一方で輸血を要する大出血は19例(2%)に認められました。この結果を踏まえて今後はWatchman植込み術後の至適抗血栓療法のプロトコルを考えていく必要があります。左心耳閉鎖術に関して、実臨床の患者群を対象としては初の大規模多施設研究であるEWOLUTION試験のインパクトは大きく、この結果は「Watchmanが実臨床において安全かつ成功裏に植込めるデバイスであり、抗凝固療法が困難な心房細動症例における脳梗塞予防の標準的治療として妥当である」との見解を支持するものだと考えます。日本人を含むアジア人は欧米人と比較して人種的に出血のリスクが高く、左心耳閉鎖術の恩恵を受ける可能性がある患者さんも多いと考えられます。本治療の安全かつ迅速なわが国への導入が期待されます。1)Holmes DR, et al. Lancet. 2009;374:534-542.2)Holmes DR, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;64:1-12.3)Boersma LV, et al. Eur Heart J. 2016 Jan 27. [Epub ahead of print]

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安定冠動脈疾患への長期DAPTの有益性・有害性/BMJ

 安定冠動脈疾患への2剤併用抗血小板療法(DAPT)の長期治療について、有益性と有害性を明らかにするCALIBER抽出患者(任意抽出集団;リアルワールド) vs.PEGASUS-TIMI-54試験の被験者(急性心筋梗塞後1~3年の患者が登録;試験集団)の検討が、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのA Timmis氏らにより行われた。結果、リアルワールドで試験集団の包含・除外基準を満たした患者は4分の1で、同集団の発症後1~3年の再発リスクは約19%であったこと、リスクは試験集団よりも倍増してみられたこと、脳卒中既往歴なしや直近の抗凝固療法歴のないハイリスク患者で、1年超のDAPTの有益性は大きくなる可能性が示唆されたという。急性心筋梗塞後の2次予防として、生涯にわたる複数併用の薬物療法が推奨されるが、最近の検討を踏まえDAPTは1年までとする勧告が直近のガイドラインで示されていた。BMJ誌オンライン版2016年6月22日号掲載の報告。CALIBER抽出患者 vs. PEGASUS-TIMI-54試験の被験者 研究グループは、試験集団のハイリスク集団でみられる急性心筋梗塞(AMI)後のDAPTの長期有益性と有害性について、リアルワールドでの大きさを推算する住民ベースの観察コホート試験を行った。CALIBER(ClinicAl research using LInked Bespoke studies and Electronic health Records)は英国プライマリケアの電子医療記録を結ぶデータベース。PEGASUS-TIMI-54試験にはAMI後1~3年の患者が登録され、ticagrelor60mg+アスピリンはアスピリン単独と比べて、心血管死、心筋梗塞、脳卒中のリスクを16%抑制する一方、大出血リスクを2.4倍増大することが示されていた。 CALIBER(2005年4月~10年3月)からAMI後生存患者を抽出(リアルワールド集団、7,238例)、そのうちPEGASUS-TIMI-54試験を満たす患者を特定し(ハイリスク集団、5,279例)、さらに試験除外基準を適用して患者を抽出し(ターゲット集団、1,676例)、PEGASUS-TIMI-54試験プラセボ群(アスピリン単独群、7,067例)と比較検討した。主要評価項目は、AMIの再発・脳卒中・致死的心血管疾患の発生(有益性エンドポイント)、致死的・重度または頭蓋内の出血(有害性エンドポイント)とした。 発症後1年を起点とした追跡期間は、中央値1.5年(範囲:0.7~2.5)であった。リアルワールドでは有益性、有害性ともに試験集団よりも大きいことが判明 リアルワールドにおける試験の包含・除外基準を満たしたターゲット集団の割合は、23.1%(1,676/7,238例)であった。同集団は試験プラセボ集団と比較して、集団年齢中央値が12歳高く、女性の比率が高かった(48.6 vs.24.3%)。 解析の結果、3年累積発生率は有益性エンドポイント(18.8%[95%信頼区間[CI]:16.3~21.8] vs.9.04%)、有害性エンドポイント(3.0%[同:2.0~4.4%] vs.1.26%[プラセボ群についてはTIMI重大出血の発生率])ともに、ターゲット集団が試験プラセボ集団と比べて大幅に高かった。致死的または頭蓋内出血についてみた場合も、プラセボ集団の約2倍であった。試算の結果、これらターゲット集団の治療にticagrelorを加えることで、年間患者1万治療当たり、虚血性イベントを101例(95%CI:87~117)予防できること、また致死的・重度または頭蓋内出血の発生過剰は75例(同:50~110)であることが示された。 リアルワールドで試算した場合も、類似の結果が得られた。有益性エンドポイント(虚血性イベント)の3年リスクは17.2%(95%CI:16.0~18.5)で、予防可能なイベント数は92例(同:86~99)であり、出血イベントは2.3%(同:1.8~2.9)、発生過剰は58例(同:45~73)であった。 著者は、「CALIBERを用いることで、“ヘルシー試験参加者”の影響を明らかにでき、AMI後1年超の代表的な患者でのDAPTの絶対的な有益性と有害性を確認することが可能であった」と述べている。

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抗凝固療法、ポリファーマシーによる影響は?/BMJ

 ポリファーマシー(多剤併用)による抗凝固療法への影響を調べるため、英国・ラドバウド大学ナイメーヘン医療センターのJeroen Jaspers Focks氏らは、ARISTOTLE試験の事後解析を行った。同試験は、心房細動患者を対象にアピキサバン vs.ワルファリンを検討したものである。解析の結果、被験者の4分の3が5剤以上のポリファーマシーを受けており、そうした患者では、併存疾患、薬物相互作用および死亡の有意な増大や、血栓塞栓症、出血性合併症の発症率が有意に高率であることが明らかになった。そのうえで、併用薬剤数に関係なく、アピキサバンのほうがワルファリンよりも有効性に優れることが認められ、安全性も大出血に対するベネフィットはアピキサバンのほうが大きかったが、併用薬剤数が多いほどワルファリンとの差は減少することが示されたという。BMJ誌オンライン版2016年6月15日号掲載の報告。ARISTOTLE試験を事後解析、併用薬剤数で患者を分類しアウトカムとの関連を評価 ポリファーマシーは、併存疾患、フレイル(高齢者の虚弱)、薬物相互作用と関連し、有害な臨床転帰のマーカーであることが示唆されている。研究グループは、「したがって、ポリファーマシー患者では抗凝固療法への反応が異なる可能性がある。心房細動患者において、アピキサバンはワルファリンよりも有効かつ安全であるとされているが、これまで複数の薬物を併用する患者においても同様の結果であるのかについては明らかになっていない」として本検討を行った。 ARISTOTLE試験は2006年に開始、2011年に終了した多施設共同二重盲検ダブルダミー試験で、心房細動患者におけるアピキサバンの脳卒中およびその他血栓塞栓イベントの低減効果について評価が行われた。追跡中央値は1.8年であった。研究グループは同試験の被験者1万8,201例について2015年時点で事後解析を行った。 ARISTOTLE試験で被験者は、アピキサバン5mgを1日2回(9,120例)またはワルファリン(目標INR範囲2.0~3.0、9,081例)に無作為に割り付けられた。事後解析では、ベースラインでの服用薬剤数によって患者を分類(0~5、6~8、≧9剤)した。 主要評価項目は、アピキサバン vs.ワルファリンの臨床転帰および治療効果で、年齢、性別、国で補正を行った。多剤併用患者でもアピキサバンのほうが有効で安全 ポリファーマシーの中央値は6剤(四分位範囲:5~9)で、5剤以上のポリファーマシー患者は1万3,932例(76.5%)であった。また、0~5剤群(6,943例)、6~8剤群(6,502例)、9剤以上群(4,756例)別にみると、より多くの併用薬が高年齢者(各群平均年齢68、69、71歳)、女性(各群男性割合67.5、63.2、62.9%)、および米国の患者(各群北米患者の割合10.6、20.8、50.1%)で用いられていた(いずれもp<0.001)。なお、アジアの患者は各群18.3、15.9、12.9%(p<0.001)。 また、併存疾患数は、併用薬剤が増えるほど増加し、アピキサバンまたはワルファリンとの相互作用を示す患者の割合も有意に増大した。 有効性アウトカムの評価についても併用薬剤増加との有意な関連がみられた。全死因死亡の発生(100患者年当たり)は0~5剤群3.01、6~8剤群3.80、9剤以上群4.70(p<0.001)であり、脳卒中/全身性塞栓症(SE)は同1.29、1.48、1.57(p=0.004)であった。安全性アウトカムも重大出血は同1.91、2.46、3.88(p<0.001)と有意な関連が認められ、ネット有益性アウトカム(脳卒中/SE/重大出血/全死因死亡)は、同5.24、6.59、8.92(p<0.001)であった。 しかし、アピキサバン vs.ワルファリンの脳卒中/SEの相対的なリスクの低下は、併用薬剤数にかかわらず認められなかった(交互作用p=0.82)。死亡についても同様であったが(p=0.81)、重大出血については、併用薬剤数が増えてもアピキサバンのほうがわずかだが有意な抑制が認められた(交互作用p=0.017)。 ワルファリンおよびアピキサバンの作用を強化する治療(CYP3A4/P-糖蛋白阻害薬)を受けていた患者において、アピキサバン vs.ワルファリンのアウトカムは類似しており、一貫した治療効果が認められた。 これらの結果を踏まえて著者は「ポリファーマシーに関係なく、心房細動患者ではアピキサバンがワルファリンよりも有効であり、少なくとも安全であるようだ」とまとめている。

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Vol. 4 No. 4 心房細動患者におけるDAPTを考える

掃本 誠治 氏熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学はじめに高齢化で増加している心房細動には、抗凝固薬が必須である。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行症例、心筋梗塞、それぞれに合併する心房細動頻度は、海外では約10%、本邦では6~8%程度と報告されている1-3)。心房細動とステントを伴うPCIを合併すれば、DAPT+抗凝固薬の3剤併用と考えるが、出血リスクが上昇する4-6)。心房細動合併PCIあるいは急性冠症候群(ACS)患者に対する抗凝固薬と抗血小板薬の組み合わせは、原疾患による血栓塞栓症リスクと抗血栓薬による出血リスクの有効性と安全性を考慮することが重要である。WOEST試験WOEST試験7)は、心房細動や機械弁留置後に抗凝固薬を服用する患者で、冠動脈ステント挿入後、クロピドグレルと抗凝固薬の2剤併用群[経口抗凝固薬(ワルファリン)+クロピドグレル284例]と、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と抗凝固薬の3剤併用群(ワルファリン+クロピドグレル+アスピリン289例)で、安全性と有効性を比較した試験で、平均年齢70歳、男性80%、抗凝固薬投与の理由として、心房細動が2剤併用群で69.5%、3剤併用群では69.2%、機械弁はそれぞれ10.2%と10.7%だった。結果として、1年間の出血イベントは、3剤併用群が有意に高値だった(3剤44.4% vs. 2剤19.4%)。また心血管イベントは、2剤併用群が有意に低かった(複合エンドポイント;1次エンドポイント+脳卒中+全死亡+心筋梗塞+ステント血栓症+標的血管再血行再建術;3剤併用群17.6% vs. 2剤併用群11.1%)。抗凝固薬を服用している患者でステント留置術を受けたとき、アスピリンを止めてチエノピリジン系抗血小板薬単剤と抗凝固薬の合計2剤にするというこれまでの発想とは異なることが不可能ではないことを示した意義は大きい。また、心房細動合併のステント留置術後の患者において、CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2が日本の実情を表している3)。2005年~2007年、26施設、1,057例、退院時ワルファリン群506例(48%)、非ワルファリン群551例(52%)を5年間フォローし、脳卒中(虚血性、出血性)、全死亡、心筋梗塞、大出血を評価。非ワルファリン群は、高齢、急性心筋梗塞、頭蓋内出血、貧血が多く、男性、薬剤溶出性ステント(DES)、末梢動脈疾患(PAD)が少なかった。そもそも、心房細動があってもDAPTで上記の因子が複数あれば、臨床現場においてはワルファリンを躊躇するのかもしれない。脳卒中は、ワルファリン群と非ワルファリン群で有意差がなく、虚血性、出血性でも有意差はみられず、心筋梗塞は、ワルファリン群で少なかった。プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内時間(TTR)が65%以上群では、65%未満群に比し脳卒中発症率が低値だった。非弁膜症性心房細動(NVAF)ACSやPCI直後ではない非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象として、本邦からJAST試験においてNVAF患者へのアスピリン150~200mg/日投与は、大出血が多く、無効と報告されている8)。海外では、ACTIVE W試験において、脳卒中リスクの高い心房細動患者に対し(17.4%に心筋梗塞既往)、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)は、OAC(経口抗凝固薬)に比し心血管イベント抑制効果を示せなかった9)。さらに、NVAFでワルファリン不適合者に対するアスピリンとクロピドグレルのDAPTはアスピリン単独に比し脳梗塞抑制効果がみられたが、心筋梗塞死、血管死は差がなく、大出血イベントが多かった10)。以上の結果は、心房細動には抗血小板薬より抗凝固薬が必要であることを示している。ワルファリンのエビデンス冠動脈疾患には低用量アスピリンを終生投与するのが現在のガイドラインであるが、ワルファリンは50年以上日常臨床で使用されている薬剤で、急性心筋梗塞後のワルファリン vs. プラセボの大規模臨床研究でワルファリンの有効性が示されている11)。さらに心筋梗塞後、アスピリン vs. ワルファリン vs. アスピリン+ワルファリンの3群での比較研究では、アスピリン+ワルファリン併用群、ワルファリン群、アスピリン群の順に心血管イベント抑制効果が優れていた12)。しかし、この試験でのPT-INRは2.8~4.2と現在の実臨床より高値で設定されており、出血合併症が多かったこともあり推奨されなかった。安定冠動脈疾患を合併した心房細動患者のデンマークでのコホート研究では、ワルファリンに抗血小板薬を追加しても心血管イベントリスクは減少せずに出血リスクが増加した13)。以上は、出血リスクが低ければ、抗凝固薬が冠動脈疾患にも有効であることを示唆するものである。実臨床においては、本来抗凝固療法の適応でありながら、あえてコントロール不要の抗血小板薬を投与して、ワルファリンが躊躇される症例が存在した。そのようななかで、脳出血が少なく、PT-INRのコントロールが不要なNOACの登場は実臨床においては魅力的である。心房細動患者におけるACS合併またはステント留置時のガイドライン欧州心臓病学会からACS合併あるいはPCI施行の心房細動患者での抗血栓薬のjoint consensus documentが2014年に発表された14)。(1)脳卒中リスク CHA2DS2-VAScスコア(2)出血リスク HAS-BLEDスコア(3)病態 安定冠動脈疾患か急性冠症候群(待機的か緊急か)(4)抗血栓療法 どの抗血栓薬をどのくらい使用するか基本的には、出血リスクの高い3剤併用(DAPT+抗凝固薬)の期間を上記の条件にしたがって層別化し、可能なら抗血小板薬単剤+抗凝固薬に減量し、12か月以上では、左冠動脈主幹部病変などを除き可能なら抗凝固薬単剤への切り替えが推奨されている。また、VKAはTTR70%以上が推奨されており、VKAとクロピドグレルand/orアスピリンの症例ではINRは2.0~2.5が推奨されている。また、アクセス部位は橈骨動脈穿刺が推奨されている。AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドライン2014でも、PCI後CHA2DS2-VAScスコアが2点以上では、慢性期にはアスピリンを除いて、抗凝固薬+抗血小板薬単剤が合理的であると記載されている15)。現在進行中の試験ACSあるいはPCIを受けた心房細動患者に対するNOACの臨床試験が進行中である(本誌p16の表を参照)16)。 RE-DUAL PCI試験は、ステント留置を伴うPCIを受けた非弁膜性心房細動患者を対象に、ダビガトランの有効性および安全性を評価する試験である。PIONEER AF-PCI試験は、ACS合併心房細動患者において、抗血小板薬に追加するリバーロキサバンの用量を検討する試験で、アピキサバンでも同様の試験が進行している。これらはステント留置術後急性期からの試験だが、本邦ではステント留置術後慢性安定期の心房細動合併患者を対象としたOAC-ALONE試験やAFIRE試験が進行しており、結果が待たれるところである。今後現在進行中の試験から新たなエビデンスが創出されるが、個々の患者において最適な治療法を見つけ出す努力は常に必要とされる(表)。表 ステント留置AF患者における抗血栓療法画像を拡大する文献1)Kirchhof P et al. Management of atrial fibrillation in seven European countries after the publication of the 2010 ESC Guidelines on atrial fibrillation: primary results of the PREvention oF thromboemolic events--European Registry in Atrial Fibrillation (PREFER in AF). Europace 2014; 16: 6-14.2)Akao M et al. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-266.3)Goto K et al. Anticoagulant and antiplatelet therapy in patients with atrial fibrillation undergoing percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol 2014; 114: 70-78.4)Toyoda K et al. Dual antithrombotic therapy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke 2008; 39: 1740-1745.5)Uchida Y et al. Impact of anticoagulant therapy with dual antiplatelet therapy on prognosis after treatment with drug-eluting coronary stents. J Cardiol 2010; 55: 362-369.6)Sørensen R et al. Risk of bleeding in patients with acute myocardial infarction treated with different combinations of aspirin, clopidogrel, and vitamin K antagonists in Denmark: a retrospective analysis of nationwide registry data. Lancet 2009; 374: 1967-1974.7)Dewilde WJ et al. Use of clopidogrel with or without aspir in in patients taking oral anticoagulant therapy and under going percutaneous coronary intervention: an openlabel, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-1115.8)Sato H et al. Low-dose aspirin for prevention of stroke in low-risk patients with atrial fibrillation: Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial. Stroke 2006; 37: 447-451.9)Connolly S et al. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial. Lancet 2006; 367: 1903-1912.10)Connolly SJ et al. Effect of clopidogrel added to aspirin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 360: 2066-2078.11)Smith P et al. The effect of warfarin on mortality and reinfarction after myocardial infarction. N Engl J Med 1990; 323: 147-152.12)Hurlen M et al. Warfarin, aspirin, or both after myocardial infarction. N Engl J Med 2002; 347: 969-974.13)Lamberts M et al. Antiplatelet therapy for stable coronary artery disease in atrial fibrillation patients taking an oral anticoagulant: a nationwide cohort study. Circulation 2014; 129: 1577-1585.14)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.15)January CT et al. 2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. Circulation 2014; 130: 2071-2104.16)Capodanno D et al. Triple antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients with acute coronary syndromes or undergoing percutaneous coronary intervention or transcatheter aortic valve replacement. EuroIntervention 2015; 10: 1015-1021.

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「研究」からプロの「ビジネス」への転換:ランダム化比較試験の現在(解説:後藤 信哉 氏)-542

 長らく臨床をしていると、日本にいても肺塞栓症などの経験はある。1980年代~90年代には循環器内科以外の内科の病棟管理もしていたが、一般の内科の救急入院症例に対して一般的に抗凝固療法が必要と感じたことはなかった。中心静脈カテールを内頸静脈から入れることが多かったが、内頸静脈アプローチが失敗した場合、下腿静脈アプローチとならざるを得ない場合もあった。後日、米国に友人を持つようになると、彼らにとっては下腿静脈からの留置カテーテルは血栓源として恐れられていることを知って、日米の差異に驚愕した。 本ランダム化比較試験では、肺炎、脳卒中、心不全などの内科疾患の入院例に6~14日の低分子ヘパリンは標準治療と考えられている。14日以内には低分子ヘパリン皮下注射、または抗Xa薬betrixaban、14日以降はbetrixabanなし、ありの比較となっている。14日以降の抗Xa薬の有無を比較する部分に主要な興味を置いた論文である。 日本では、内科疾患の入院時に予防的抗凝固療法を行う発想がない。安静にするだけで血栓ができる症例が、幸いにして少ない。理由の一部は、血栓性の高い活性化プロテインC抵抗性の血液凝固因子第V因子のLeiden型変異が、日本人にないことである。 本試験には、シンガポールなどのアジア地区からの症例登録もある。日本の参加がないのは標準治療と血栓イベントリスクが異なるため仕方ない。国際共同ランダム化比較試験といっても、その結果を適応できる地域に日本は含まれない。以前は、「日本人の血栓イベントリスクが欧米と同じと言えないかもしれない」ので日本が参加しない試験が多かったが、今は「日本人の血栓イベントリスクが欧米と同じでない」ことが事実として認識されている。日本人以外でも、登録症例における血栓イベントが想定より少なかったとみえて、試験の途中にてD-dimer陽性または75歳以上が登録基準に追加された。ランダム化比較試験の意味が、「標準治療を転換する手段」から「新薬の認可承認のためのチャレンジ」に転換している。統計手法も複雑化していて、筆者のような素人には理解できない。 かつては研究者の「研究」であったランダム化比較試験も、現在では薬剤開発のための高度な学術的「ビジネス」に転換しているように筆者にはみえる。誰にも理解できる単純な仮説検証研究が可能であった時代が懐かしい。

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Vol. 4 No. 4 DAPTを検証した臨床試験の数々、それらが導いた「答え」とは?

中川 義久 氏天理よろづ相談所病院循環器内科はじめに冠動脈疾患の治療においては、冠動脈血行再建を達成することが本質的に重要である。その手段として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が主流を占めている。冠動脈血行再建においてバルーン拡張によるPCIの有効性が報告されてから30年以上になる。バルーン拡張のみでは再狭窄率や再閉塞率が高いことが問題であり、これを解決するために金属製ステント(baremetal stent:BMS)が導入された。BMSを用いたPCIは通常治療として受け入れられるようになったが、それでも長期的には再狭窄によって再血行再建を要することが多く克服すべき問題であった。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、BMSに比較して再狭窄を減少させることが示されている。第1世代DESであるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent:SES)とパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent:PES)が2004年8月から本邦で保険償還が認可され、実臨床において使用可能となった。これにより冠動脈ステント留置後1年の再狭窄率を10%以下に低下させた。現在のPCIではDES留置が通常である。DESは再狭窄を強く抑制するものの、これが血管内皮の修復反応の遅延をきたし、血栓性閉塞(ステント血栓症)の可能性が高い時期が長期間にわたってつづくことが問題とされる。ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の適切な投与が重要となっている。ステント血栓症の予防のためにアスピリンと、チエノピリジン系抗血小板薬の併用投与(dual anti-platelet therapy:DAPT)が主流となっているが、その継続すべき期間については明確な指針はない。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上してステント血栓症は減少している。さらに、2015年末からは第3世代のDESも実臨床の現場に登場する。DAPTの期間を短縮しても安全性が保たれるという方向の報告がある一方で、DAPTの期間を延長したほうがよいとの報告もあり、議論がつづいている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性があり、血栓症予防と出血性合併症の両者のトレードオフで比較すべき問題である。ステント血栓症の予防のためにDAPTを継続すべき期間について明確な結論はない。DAPTを長期間継続することによる頭蓋内出血などの重大な出血性合併症は患者の不利益ともなり、DAPTの至適施行期間を明らかにすることは、DES留置後の患者にとって大切である。DAPT導入の背景現在は使用頻度が減少しているが、BMSの臨床試験が日本で始まったのは1990年(平成2年)であった。その当時、筆者は小倉記念病院に在籍し、その現場を体験した。当時はDAPTという概念はなく、抗血小板薬としてアスピリンを投与し、さらにワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。そのうえ、PCI術後には数日間のヘパリンの持続点滴も加えていた。しかし3%前後という高いステント血栓症の発生率と出血性合併症に悩まされていた。この経験からも明らかなように、抗凝固療法を強化してもステント血栓症を予防できないことはみな痛感していた。チエノピリジン系薬剤とアスピリンによるDAPTをBMS留置後1か月間施行することでステント血栓症の発生を抑制することが示され、ステント留置後の標準治療となった1)。その当時はチエノピリジン系薬剤としてクロピドグレルは存在せずチクロピジンのみであった。STARS研究の結果1)をみると、アスピリン単独や、アスピリンとワルファリンによる抗血栓療法に比べて、DAPTによってステント植込み手技の安全性が高まることがわかる。このデータをもとに、現在のDES時代においてもステント術後のDAPT療法として継承されている。現在では、チエノピリジン系抗血小板薬としては、チクロピジンよりも副作用が少ないクロピドグレルが最も頻用されている。short DAPTとlong DAPTDAPT継続期間については12か月間を基準として、それよりも短い期間(3か月から6か月間)で十分とする意見をshort DAPT派、1年を超えてDAPTを継続したほうがよいという意見をlong DAPT派と総括され、両派による活発な議論がつづいている。しかし、第2世代のDESが普及しステント血栓症は減少し、DAPTの期間は短縮する方向での知見が増加している。抗凝固薬を必要とする患者における抗血小板療法については、DAPTを含む3剤の抗血栓薬は避けたほうがよいとのコンセンサスは得られつつあるが、明確な指針は未だ存在しない。明確な指針はない状況においても各担当医は実臨床の現場で方針を決定しなければならない。DES留置後のDAPT期間、short DAPTで十分か?日本循環器学会のガイドライン2, 3)では、2次予防における抗血小板療法として、禁忌がない患者に対するアスピリン(81~162mg)の永続的投与(レベルA)、DES留置の場合にはDAPTを少なくとも12か月間継続し、出血リスクが高くない患者やステント血栓症の高リスク患者に対する可能な限りの併用療法の継続(レベルB)が推奨されている。本邦でのデータとしてCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2に登録されたDES(主としてシロリムス溶出性ステント)留置患者6,309例における4か月のランドマーク解析がある4)。4か月の時点でのチエノピリジン系抗血小板薬継続例と中止例でその後3年までの死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率に差はなく、出血性合併症の発症はチエノピリジン系抗血小板薬継続例で多いことが報告されている。これは、日本人におけるDES留置後の至適なDAPT施行期間は、現在の第2世代DESよりもステント血栓症の頻度が相対的に高かった第1世代DESの時代においてすら、4か月程度で十分である可能性を示唆しているもので貴重なデータである。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上しステント血栓症は減少しており、DAPTの期間を短縮しても安全性が担保されるという方向の報告が多い。この至適DAPT期間を検討するために大規模なメタ解析の結果が報告された5)。無作為化試験を選択し、DAPT投与期間が12か月間である試験を標準として、12か月未満のshort DAPT試験と、12か月超のlong DAPT試験の比較を行っている。アウトカムは、心血管死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・重大出血・全死因死亡である。10の無作為化試験から32,287例が解析されている。12か月の標準群と比較してshort DAPT群は、有意に重大出血を減少させた(オッズ比:0.58、95%CI:0.36-0.92、p=0.02)。虚血性または血栓性のアウトカムについて有意差はなかった。long DAPT群は、心筋梗塞とステント血栓症は有意に減少させたが、重大出血は有意な増大がみられた。また、全死亡の有意な増大もみられた(オッズ比:1.30、95%CI:1.02-1.66、p= 0.03)。この結果を要約すれば、short DAPTは、虚血性合併症を増大させることなく出血を減らし、ほとんどの患者においてshort DAPTで十分であることが示されたといえる。さらにDAPT期間についてARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果が興味深い6)。DESの留置後1年の間に虚血性または出血性イベントを経験しなかった患者において、1年以降のDAPT継続は1剤のみの抗血小板療法と比較し、虚血性イベントの抑制効果は示されず、重症または軽症出血のリスクの上昇が認められた。つまり、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後のDAPT継続には有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増大し有害であることが示されたことになる。この試験だけでなく、PRODIGY7)、DES LATE8)、EXCELLENT9)、RESET10)、OPTIMIZE11)などのshort DAPTとlong DAPTを比較した試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性をもって示されている。本邦におけるshort DAPTを示唆する研究:STOPDAPT研究長期間のDAPT施行が抗血小板薬単独治療に比べて出血性合併症を増加させ、長期のDAPT施行をつづけても心血管イベントの発症抑制効果がないのであれば、DAPT施行期間はできるだけ短いほうが望ましいことは明確である。このためのエビデンス構築をめざして、本邦においてはSTOPDAPT研究が行われた。日本心血管インターベンション治療学会2015年学術集会(CVIT2015)においてNatsuakiらによって結果が発表された。この研究は、ステント血栓症の発生リスクが低い第2世代DESを代表するコバルトクロム合金のエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)が留置された患者において、チエノピリジン投与期間を3か月に短縮可能と担当医が判断した連続症例を登録し、ステント留置後3か月の時点でチエノピリジン投与を中止し、ステント留置後12か月の心血管イベント、出血イベントの発生率を評価する研究である。冠動脈にCoCr-EESの留置を受けた3,580人のうち3か月でDAPT中止が可能と判断された患者1,525人が登録された。チエノピリジン投与は4か月までに94.2%で中止され、1年追跡率は99.6%であった。definiteのステント血栓症の発生は皆無であった。選択された患者においてではあるが、CoCr-EES留置後3か月でのDAPT中止の安全性が示唆されたSTOPDAPT研究の意義は大きい。DAPT期間は延長すべき? DAPT試験2014年の第87回米国心臓協会年次集会(AHA2014)でDAPT試験の結果が発表されるまでは、short DAPTの方向に意見は収束しつつあるように思われていた。つまり、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6か月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3か月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。この方向性を逆転するような結果が「DAPT試験」として報告されたのである12)。DES後の患者で、DAPT期間12か月と30か月というlong DAPTを比較する無作為割り付け試験である。米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施された多施設共同ランダム化比較試験であり、冠動脈ステントを製造・販売する企業など8社が資金を提供した大規模研究である。DES後の患者9,961例を対象に、DAPT期間の長短によるリスクとベネフィットが比較検討された。その結果、30か月のlong DAPT群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低く、出血性合併症はlong DAPT群で有意に高かった。long DAPTのベネフィットが報告されたDAPT試験ではあるが、このDAPT試験に内在する問題点についての指摘も多い。本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12か月と30か月に割り付けたわけではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は22,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性がある。この除外された半数を超える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。また、この試験の結果では30か月DAPT施行による主要有害複合エンドポイントの抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増えれば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともにlong DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的にもつ意味合いについても考える必要がある。PEGASUS-TIMI 54研究もlong DAPTを支持する結果であった13)。これは、心筋梗塞後1年以上の長期にわたるDAPTが有用か否かを検証する試験で、アスピリン+チカグレロルとアスピリン単独の長期投与を比較した研究である。その結果、有効性はアスピリン+チカグレロル群で有意に優れていたが、安全性(大出血)は有意に高リスクであることが示された。short DAPTかlong DAPTかの問題について決着をつけるには、さらなる研究が必要と思われる。DAPT試験の結果が発表されたあとに、DAPT期間についてのメタ解析がいくつか報告されている。その代表がPalmeriniらによって報告されたものである14)。その論文の結論は明確にDAPT期間の長短を断じたものではなく、患者個別のベネフィットとリスクを考えることを薦めるものであることに注目したい。全患者に均一のDAPT期間を明示することは現実的には困難であり、リスク層別化を考えることが大切と思われる。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが極めて高い患者でDAPT期間の延長を考慮することが現実的であろう。文献1)Leon MB et al. A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronaryartery stenting. Stent Anticoagulation Restenosis Study Investigators. N Engl J Med 1998; 339: 1665-1671.2)日本循環器学会ほか. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).3)日本循環器学会ほか. ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).4)Tada T et al. Duration of dual antiplatelet therapy and long-term clinical outcome after coronary drug-eluting stent implantation: landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 381-391.5)Navarese EP et al. BMJ 2015; 350: h1618.6)Collet JP et al. Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting stent implantation (ARCTICInterruption): a randomised trial. Lancet 2014; 384: 1577-1585.7)Valgimigli M et al. Randomized comparison of 6-versus 24-month clopidogrel therapy after balancing anti-intimal hyperplasia stent potency in all-comer patients undergoing percutaneous coronary intervention. Design and rationale for the PROlonging Dual-antiplatelet treatment after grading stent-induced Intimal hyperplasia study (PRODIGY). Am Heart J 2010; 160: 804-811.8)Lee CW et al. Optimal duration of dual Antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a randomized controlled trial. Circulation 2013; 129: 304-312.9)Gwon HC et al. Six-month versus 12-month dual antiplatelet therapy after implantation of drugeluting stents: the efficacy of Xience/Promus versus cypher to reduce late loss after stenting (EXCELLENT) randomized, multicenter study. Circulation 2012; 125: 505-513.10)Kim BK et al. A new strategy for discontinuation of dual antiplatelet therapy: the RESET trial (REal Safety and Efficacy of 3-month dual antiplatelet Therapy following Endeavor zotarolimus-eluting stent implantation). J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1340-1348.11)Feres F et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-2522.12)Mauri L et al. For the DAPT study investigators: Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents. N Engl J Med 2014; 371: 2155-2166.13)Bonaca MP et al. for the PEGASUS-TIMI 54 steering committee and investigators. Long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015; 372: 1791-1800.14)Palmerini T et al. Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials. Lancet 2015; 385: 2371-2382.

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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EuroPCR 2016 注目の演題

2016年5月17~20日、フランス・パリでEuroPCR 2016が開催されます。EuroPCRでは今年も魅力的な最新研究が多数発表されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考としていただけるよう、Late Breaking Trialをはじめとした注目演題に関するアンケートを実施し、その結果を学会開催前にご紹介します。また、観光名所やレストランなど開催地パリのおすすめスポットについて、会員の方々から情報をお寄せいただきました。ぜひご活用ください。EuroPCR 2016 開催地パリのおすすめスポットはこちら欧州留学中の循環器内科医が選んだEuroPCR 2016注目の演題はこちら※演題名および発表順は4月20日時点でEuroPCR 2016のウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Update on BRSChairperson: A. Al Nooryani M. JonerPanellist: S. Cook M. Sabaté M. Valgimigli R. Vijayvergiya P. Vranckx A. Yildirim<5/17(火) 12:00-13:30、Theatre Bordeaux>1.Two-year clinical, angiographic and serial OCT follow-up after implantation of everolimus-eluting BRS and everolimus-eluting metallic stent: insights from the randomised ABSORB Japan trial2.Six-year follow-up of the first-in-man use of a polylactide everolimus-eluting BRS for the treatment of coronary stenosis: an assessment of FFR by multislice CT3.Effect of DAPT termination at 12 months on very late scaffold thrombosis in regular clinical practice: data of a regional collaboration including 868 patients 4.Thirty-day results of the Italian diffuse / multivessel disease ABSORB prospective registry (IT-DISAPPEARS)5.Clinical outcomes following coronary revascularisation with the everolimus-eluting BRS in patients with diabetes: the ABSORB trial diabetic study6.Thirty-day outcome of the Italian ABSORB registry (RAI), a prospective registry of consecutive patients treated with biovascular scaffold7.France ABSORB registry: in-hospital and one-month results in 2,000 patientsQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するLate-breaking trials and trial updates in coronary interventionsChairpersons: T. Cuisset J.F. TanguayPanellist: S. Cook M. Sabaté M. Valgimigli R. Vijayvergiya P. Vranckx A. Yildirim<5/17(火) 15:30-17:00、Theatre Bordeaux>1.The balance of thrombosis and bleeding in patients at high bleeding risk from Leaders Free trial2.Six-month versus 12-month DAPT following long-length everolimus-eluting stent implantation3.Randomised, double-blinded, placebo-controlled trial of intramyocardial autologous bone marrow CD133+ cells on left ventricle perfusion and function in patients with inducible ischaemia and refractory angina (REGENT-VSEL) 4.The final 5-year results from the COMPARE II trial: the first real long-term results between biodegradable polymer biolimus-eluting stent and durable polymer everolimus-eluting stent5.5-year non-enrolled TWENTE: clinical outcome of participants in the randomised TWENTE trial vs. non-enrolled eligible patients, treated with the same second-generation DES6.3-year clinical follow-up of the RIBS V randomised clinical trial7.A randomised control trial comparing two DES on the degree of early stent healing and late neointima progression using longitudinal sequential OCT follow-up: the OCT-ORION studyQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するTAVI-registriesChairpersons: A. Cribier A.S. PetronioPanellist: M. Chen U. Gerckens K. Hayashida<5/17(火) 15:30-17:00、Room Maillot>1.Late outcomes of TAVI in high-risk patients: FRANCE 2 registry2.SOURCE 3 post-approval registry - early outcomes in 1,946 TAVI patients with a third-generation balloon expandable transcatheter heart valve3.30-day registry results using a second generation transfemoral aortic valve implantation system for the treatment of patients with severe aortic stenosis 4.Implantation of novel balloon-expandable transcatheter heart valves into degenerated surgical aortic bioprostheses: matched comparison and insights from the Valve-In-Valve International Data (VIVID) registry 5.Acute and 30-day outcomes of women after TAVI: results from the first Women IN Transcatheter Aortic Valve Implantation (WIN-TAVI) real world registry 6.TAVI in hospitals with and without on-site cardiac surgery department: insights from the prospective German aortic valve replacement quality assurance registry (AQUA) in 17,919 patients7.The RESPOND study: safety and efficacy of a fully repositionable and retrievable aortic valve used in routine clinical practiceQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するAdvances in PCI procedural techniqueChairperson: I. Al Rashdan W. WijnsPanellist: D. Kettles R. Mohd Ali S. Nakamura S. Pala A.Pichard M. Singh Sandhu<5/18(水) 08:30-10:00、Theatre Bordeaux>1.Impact of radial vs. femoral access on acute kidney injury in patients with ACS invasively managed: the AKI-MATRIX (Acute Kidney Injury-Minimising adverse hemorrhagic events by TRansradial access site and systemic Implementation of angioX) substudy2.The first report of a prospective, controlled, randomised, open-labeled, multicentre, clinical study “rap and beat trial” to evaluate safety and efficacy of novel 6Fr small outer diameter sheath for transradial coronary angiography and intervention.3.What is the better stent and the better access for the treatment of the left main in the era of second-generation DES? Insights from the FAILS-2, a multicentre registry including 1,270 patients 4.Upper extremity function post-transradial (TR)-PCI: interim results 5.Sealing intermediate non-obstructive coronary SVG lesions with DES as a new approach to maintaining vein graft patency and reducing cardiac events: the VELETI II randomised clinical trial6.Prospective randomised comparison of clinical and angiographic outcomes between everolimus-eluting vs. zotarolimus-eluting stents for treatment of coronary restenosis in DES: IVUS volumetric analysis 7.Impact of coronary CT angiography on planning of bifurcation PCI8.Structural damage of jailed guidewire during the treatment of coronary bifurcations: a microscopic randomised trialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するNew valvular interventions and enabling technologiesChairpersons: M. Buchbinder T. FeldmanPanellists: P.J. Fitzgerald R. Makkar G. Manoharan I. Reda<5/18(水) 14:45-16:15、Room Maillot>1.Does use of a direct thrombin inhibitor prevent the occurrence of cerebral emboli during TAVI? Insights from the BRAVO-3 study2.A pooled analysis of triguard cerebral protection compared to unprotected transcatheter aortic valve replacement. Results of a pooled patient level analysis3.12-month results of a novel large access closure device: insights from the FRONTIER II trial4.LAA occlusion vs. standard care in patients with atrial fibrillation and intracranial hemorrhage: A propensity matched score follow-up study5.One-year follow-up date of a novel self-expanding TAVI system in a prospective, bi-centric, single arm pilot trial 6.Mitral valve repair using a novel percutaneous septal sinus shortening device7.Millipede percutaneous mitral annuloplasty ringQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するFFR/iFRChairperson: C. Di MarioPanellists: C. Berry N. Curzen J. Davies N.R. Holm<5/19(木) 10:30-12:00、Room Maillot>1.Impact of routine FFR on management decision and one-year clinical outcome of ACS patients insights from the POST-IT and R3F integrated multicentre registries - implementation of FFR in routine practice (PRIME-FFR)2.iFR/FFR and IVUS-guided percutaneous coronary revascularisation with new-generation DES in patients with De Novo three vessel disease: 30-day outcomes of the SYNTAX II trial3.DEFINE REAL: a prospective, observational, non-randomised, European, multicentre registry, collecting real-life information for the utilisation of instantaneous wave-free ratio (iFR) in assessing coronary stenosis relevance in the multivessel disease patients population4.Image-based FFR during coronary catheterisation5.Diagnostic accuracy of a fast computational approach to derive FFR from coronary X-ray angiography: results from the international multicentre FAVOR (Functional Assessment by Various flOw Reconstructions) pilot studyQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大する欧州留学中の循環器内科医が選んだEuroPCR 2016注目の演題EuroPCR 2016開催に当たり、欧州で循環器内科臨床医として活躍する金子 英弘氏が注目の演題を厳選して紹介する。さすが世界最大のカテーテルインターベンション・ライブコース!というラインアップで、どれも注目演題ですが、個人的な興味も含めて紹介させていただきます。Two-year clinical, angiographic and serial optical coherence tomographic follow-up after implantation of everolimus-eluting bioresorbable scaffold and everolimus-eluting metallic stent: insights from the randomised Absorb Japan trial今回のEuroPCRでもBRS(bioresorbable scaffold:生体吸収性スキャフォールド)についての演題が目立ちます。その中で、Absorb Japan trialからのデータが、late-breaking trialとして発表されます。Absorb Japanについては、治療後12ヵ月のメインデータがすでに昨年のEuropean Heart Journal誌に掲載されていますが1)、今回は術後2年の臨床成績、そして血管造影・OCT解析の結果が報告されます。EuroPCRのlate-breaking trialということで世界的にも大きな注目を集める発表になりますが、日本でのBRS導入を間近に控えた今、日本からの参加者にとっては間違いなく見逃せない演題です。TAVI関連からは2つの演題を選びました。SOURCE 3 post-approval registry - early outcomes in 1946 TAVI patients with a third generation balloon expandable transcatheter heart valveSOURCE 3は、次世代TAVIデバイスであるSapien 3(Edwards Lifesciences社)の、CEマーク取得後のヨーロッパでの多施設レジストリです。Sapien 3は、ヨーロッパではすでにTAVIの標準デバイスとしての地位を確立し、先のACC 2016では外科大動脈弁置換術を上回る良好な結果が報告されたばかりです2)。近々、日本でも導入が予定されていることから、日本でTAVIを行っている施設の先生方も注目されるのではないかと思います。Implantation of novel balloon-expandable transcatheter heart valves into degenerated surgical aortic bioprostheses: matched comparison and insights from the Valve-In-Valve International Data (VIVID) registry変性した生体外科大動脈弁に対するTAVI(valve-in-valve)のレジストリからのデータです。欧米では標準的な治療として行われているvalve-in-valveの手技ですが、日本ではTAVIの適応から外れています。一方で、日本人の患者さんは長寿の方が多く、今後、生体弁による外科大動脈弁置換術手術を受けた方の再治療で、TAVIを考えざるを得ない患者さんに出会う機会も増えてくるのではないかと予想されます。今回のような大規模レジストリで良好な結果が報告されれば、日本でも将来的にvalve-in-valveにもTAVIの適応が広がる可能性があります。そういった意味でも、本試験の結果には注目が集まります。New valvular interventions and enabling technologiesのセッションにも注目演題が並びます。LAA occlusion vs. standard care in patients with atrial fibrillation and intracranial haemorrhage: a propensity matched score follow-up study脳出血の既往のある心房細動患者に対する抗凝固療法は、実臨床において非常に難しい判断を要します。そして、このような患者さんこそが左心耳閉鎖の最も良い適応と考えられます。現在、勤務している施設では左心耳閉鎖についてはconservativeな適応としていますが、それでも脳出血の既往のある方には、積極的に左心耳閉鎖を行っています。日本でも、このような患者さんを念頭に置いた左心耳閉鎖デバイスへの期待は高まっており、きわめて実臨床のニーズに即した研究です。Mitral valve repair using a novel percutaneous septal sinus shortening deviceMillipede percutaneous mitral annuloplasty ring僧帽弁閉鎖不全(MR)に対するニューデバイスに関する発表です。MRに対するカテーテル治療のデバイスとしては、MitraClip(Abbott Vascular社)が最も普及しており、ヨーロッパでのMRに対するカテーテル治療の98%以上がMitraClipを用いて行われていると言われています。しかしながら、MitraClipですべてのMRが治療できるわけではなく、現在、約40種類ものデバイスが開発中です。本セッションで紹介されるデバイスがMitraClipに続くデバイスとなるのでしょうか?これ以外にもHot Lineセッションを含め、EuroPCR 2016は見どころ満載です。初夏のパリを舞台に発表される、カテーテルインターベンションの最新知見の数々、非常に楽しみです。参考文献1)Kimura T, et al. Eur Heart J. 2015;36:3332-3342.2)Thourani VH, et al. Lancet 2016 Apr 1 [Epub ahead of print] .

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心房内左右シャント作成デバイスはHFrEFの血行動態改善に有効か?(解説:絹川 弘一郎 氏)-518

 難治性の肺高血圧症(PH:pulmonary hypertension)に対して、バルーンによる心房中隔裂開術(BAS:balloon atrial septostomy)という治療がある(というか、あった)。 この治療は、PHによる右心不全から上昇した右房圧を左房に逃がすことで、右室負荷を軽減するのみならず左室への血流を保ち心拍出量の増加につながるため、右左シャントによる低酸素血症を勘案しても血行動態的に有益であると考えられる症例に施行されてきた。今は、肺動脈性肺高血圧症に有効な薬剤が多数使用可能となり、BASを施行する症例はごく少ないようであるが、この論文は左心不全に伴う左房圧上昇を右房へ逃がすデバイスのfirst-in-manの報告である。 左心不全による左房圧上昇は、肺うっ血を招く。また、左心不全由来の肺高血圧を来すこともある。このデバイスによる左房減圧効果は、肺うっ血軽減や肺高血圧の改善に効果があると思われる。また、逆流を防ぐシステムになっており、右左シャントは生じないため、この手技自体で酸素飽和度の低下を招くことはない。有効性という観点では長期予後は不明であるが、3ヵ月の時点での運動耐容能の改善が得られている。肺動脈楔入圧は明らかに低下しているものの、肺動脈圧の低下が有意でないのは左右シャントによる肺血流の増加がわずかながらでもあるからであろう(Qp/Qs 1.08)。抗凝固療法を術後最低3ヵ月間と低用量アスピリンの継続治療で、このデバイスによる有害事象は今のところないようである。 有用なデバイスと思われるが、適応を考えて使用すべきであろう。左心不全に伴う肺高血圧において、reactive PHの要素が大きい場合、すなわちtranspulmonary pressure gradient(TPG)が12 mmHgを超えるような場合は、肺動脈楔入圧の低下による肺動脈圧の低下が、Qpの増加によって打ち消されてしまうかもしれず、肺うっ血は改善されても肺高血圧による右心負荷まで改善できないかもしれない。 この研究ではTPGの平均は6mmHgであり、また収縮期の肺動脈圧が70mmHgを超えた患者は除外になっているのは賢明な判断と思われるが、より詳細な解析を待ちたい。なお、表2の心拍出量はシャント作成後も熱希釈法で測定した数値を挙げており、有意なシャントがある術後では無意味である。Fick法での数値も記載があり、数値に大きな差はないということであるが、たまたま数字が一致したからいいというものではなく、そもそも術前を含めてすべての数値がFick法で計算されるべきであろう。

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性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

性差医療とその本質とは? 歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。この性差という個体の特徴における相違は、生物学的要因としてのホルモンバランスの違いなどがその原因として挙げられている。現代医学は、この性差を無視して成立しなくなったこともあり、性差研究を通して医療に反映させる性差医療が発展してきた。しかし、この性差医療に関し危惧されることがある。それは、性差がもたらすだろう損得を種々追求するがあまり、性差は個体の特徴の1つに過ぎないという本質を失念し、人種や年齢などの寄与度の高い危険因子の存在を無視・偏重して解析することであり、さらに性差がその疾患の予後を規定する普遍の定理かのような提起をしてしまうことである。このことは厳に慎まなければならない。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめる。本論文は、女性であることが心房細動の予後規定因子としてより強い心血管イベント/死亡リスクであるのか、30件のコホート研究、計437万1,714例を解析対象として行ったメタ解析研究である。 その結果、心房細動の各アウトカムに対する相対危険の男女比(女性/男性)は、全死亡:1.12(1.07~1.17)、脳卒中:1.99(1.46~2.71)、心血管死:1.93(1.44~2.60)、心イベント:1.55(1.15~2.08)、心不全:1.16(1.07~1.27)であった。したがって、心房細動は、女性であることが心血管イベントや死亡リスクに対し、より強い予後規定因子であると報告している。著者らはその機序として、女性のほうが男性より治療が遅れるのではないかということや、抗凝固薬による出血が多いことが、より強い心血管イベント/死亡リスクとなったのではないかとしているが、あくまでも著者らの推論の域を出ない。 各国の心房細動に対する抗凝固療法ガイドラインにおける性差 心房細動患者の生命予後に対する性差の影響に関しては、わが国も含めてこれまでも多くの研究報告がなされているが、その結果は混沌としていて一定の見解が得られていない。 フラミンガム心臓研究の38年に及ぶ追跡調査では、心房細動の危険度は高血圧があれば男性1.5倍、女性1.4倍とほぼ同等であったが、糖尿病があれば男性1.4倍、女性1.6倍高いという結果が報告された1)。 わが国の心房細動の有無と死亡リスクの関連を検討した、1万人以上の住民を登録したNIPPON DATA80では、非心房細動患者の死亡リスクを1としたとき、心房細動患者の循環器疾患死亡リスクは、男性で1.4倍、女性で4.0倍と多く、総死亡リスクは男性で1.4倍、女性で2.4倍と、女性において心房細動は全死亡あるいは心血管死の独立した危険因子であることが示された2)。しかし、この研究データは1980年~1999年の追跡調査より得られていることから、ワルファリンによる抗凝固療法が普及する以前を反映しているものと考えられ、現状に即応していないものと考えられている。 一方、最近では、心房細動患者の生命予後に関して、女性という因子はそれほど強い危険因子ではないのではないかという報告がなされている。デンマークで行われた、ワルファリン療法を受けていない心房細動患者7万例を登録したコホート研究によると、うっ血栓心不全、高血圧、および糖尿病といったCHADS2スコア1点のリスクと比較して、女性という性差のリスクがきわめて低いことが示された3)。 このような混沌とした結果を受けて、各国のガイドラインも異なった取り扱いをしている。2014年10月にアップデートされた、カナダの心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインでは、女性という因子のみはエビデンスがないと抗凝固の対象には入れないとしている4)。これに対して、2015年2月にヨーロッパ心血管プライマリケア学会から出された、心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインでは、65歳以上の女性あるいは75歳以上の男性であるならば、CHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断することとしており、女性という性差を心房細動の予後規定因子として重要視している5)。 わが国のガイドラインにおいては、65歳未満でほかに器質的心疾患を伴わない心房細動患者において、女性であることは単独の危険因子にならないとし、さらに65~74歳は性別にかかわらず考慮可となりうることから、単独因子として女性という性差は記載されていない6)。さらに、昨年5月に報告されたわが国のJ-RHYTHMレジストリを用いたCHA2DS2-VAScスコアの妥当性を検討した論文では7)、血栓塞栓症は男性(年1.6%)に比較し、女性(年1.2%)ではかえって少ないこと、CHA2DS2-VAScスコアから女性を除いたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で有用であり、さらに日本人では、65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないことから、かえってこれらの因子を含めると予測能が落ちるため、むしろCHADS2スコアで抗凝固薬の使用を評価するのがよいと結論付けられている。はたして女性は心房細動の危険因子なのか? これまでの結果から、心房細動患者に対する抗凝固療法の適応を考慮するとき、女性という性差をその危険因子として考えることよりも、やはり人種による差が大きいといわざるを得ない。その点、この論文は所詮欧米のガイドラインを構築するエビデンスに過ぎず、わが国のガイドラインを左右するほどの影響力は持ち合わせていない。 米国心臓協会 (American Heart Association)の活動として、“Go Red for Women”が提唱されている。この標語は、日本人にとってわかりづらい英語の表現であったこともあり、私が『女性の心血管疾患を減らすことを目的として、女性に積極的に呼びかけていこうという運動の名称』であると知ったのは、かなり経ってからである。米国における女性の心血管疾患罹患の深刻化が問題となっていることの一端であるが、わが国の現状とはかなり異なっているといわざるを得ない。参考文献1)Kannel WB, et al. Am J Cardiol. 1998;82:2N-9N.2)Ohsawa M, et al. Circ J. 2007;71:814-819.3)Olesen JB, et al. BMJ 2011;342:d124.4)Verma A, et al. Can J Cardiol. 2014;30:1114-1130.5)Hobbs FR, et al. Eur J Prev Cardiol. 2016;23:460-473.6)日本循環器学会ほか. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).PDF (2016.3.1参照)7)Tomita H, et al. Circ J. 2015;79:1719-1726.

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ネフローゼ症候群〔Nephrotic Syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿(3.5g/日以上)と低アルブミン血症(3.0g/dL以下)を示す疾患群であり、腎臓に病変が限局するものを一次性ネフローゼ症候群、糖尿病や全身性エリテマトーデスなど全身疾患の一部として腎糸球体が障害されるものを二次性ネフローゼ症候群と区別する(表1)。ネフローゼ症候群には浮腫が合併し、高コレステロール血症を来すことが多い。ネフローゼ症候群の診断基準を表2に示す。また、治療効果判定基準を表3に示す。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■ 疫学新規発症ネフローゼ症候群は、平成20年度の厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の調査では年間3,756~4,578例の新規発症があると推定数が報告されている。日本腎生検レジストリーの中でネフローゼ症候群を示した患者の内訳は図1に示すように、IgA腎症を含めると一次性ネフローゼ症候群が2/3を占める。二次性ネフローゼ症候群では糖尿病が多く、ループス腎炎、アミロイドーシスが続く。ネフローゼ症候群を示す各疾患の発症は、図2に示すように年齢によって異なる。15~65歳ではループス腎炎、40歳以上で糖尿病、アミロイドーシスが増加する。図2に示すように一次性ネフローゼ症候群は、40歳未満では微小変化型(MCNS)が最も多く、60歳以上では膜性腎症(MN)が多くなる。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は全年齢を通じて発症する。画像を拡大する画像を拡大する■ 病因ネフローゼ症候群において大量の蛋白尿が出るときには、糸球体上皮細胞(ポドサイト)が障害を受けている。MCNSの場合には、この障害に液性因子が関連している可能性が示唆されているが、その因子はいまだ同定されていない。FSGSは、ポドサイトを構成するいくつかの遺伝子の異常が同定されており、多くは小児期に発症する。特発性のFSGSは成人においても発症するが、原因は不明である。MNの原因の1つに、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)に対する自己抗体の存在が証明されており、ポドサイトに発現するPLA2Rに結合して抗原抗体複合物を産生することが示されている。MPGNは糸球体基底膜の免疫複合体の沈着位置によってI、II、III型に分類される。I型の原因は、補体の古典的経路による活性化が原因と考えられている。III型も同じ原因との説があるが、まだ明確にはわかっていない。II型は補体成分に対する、後天的な自己抗体が産生されることによるとされている。最近、MPGNはC3腎症として定義され、C3が主として糸球体に沈着する腎症群とする考え方に変わってきた。■ 症状1)浮腫ネフローゼ症候群には浮腫を合併する。浮腫の発症機序を図3に示す。画像を拡大する浮腫の発生には2つの仮説がある。循環血漿量不足説(underfill)と循環血漿量過剰説(overfill)である。underfill仮説は、低アルブミン血症のために、血漿膠質浸透圧が低下するとStarlingの法則に従い水分が血管内から間質へ移動することにより循環血漿量が低下する。その結果、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系が活性化され、二次的にNa再吸収を促進し、さらに浮腫を増悪するとされる。2つ目はoverfill仮説であり、遠位尿細管や集合管におけるNa排泄低下・再吸収の亢進が一次的に生じて、Na貯留により血管内容量が増加した結果、静水圧が高まり浮腫を生じるというものである。この原因に、糸球体から大量に漏れてくるplasminなどの蛋白分解酵素が、遠位尿細管や集合管に存在する上皮Naチャネルの活性化に関連し、Na再吸収が亢進するとの報告もある。低アルブミン血症が徐々に進行する場合には膠質浸透圧勾配はほとんど変化しないこと、ネフローゼ症候群患者では必ずしもRAS活性化がみられないことなど、underfill仮説に反する報告もあり、とくに微小変化型ネフローゼ症候群の患者が寛解する際、血清アルブミン値が上昇する前に浮腫が改善し始めるという臨床的事実は、overfill仮説を支持するものである。浮腫成立の機序は必ずしも単一ではなく、症例ごと、また同じ症例でも病期により2つの機序が異なる比率で存在するものと思われる。2)腎機能低下ネフローゼ症候群では腎機能低下を来すことがある。MCNSでは低アルブミン血症による腎血漿流量の低下から、一過性の腎機能低下はあっても、通常腎機能低下を来すことはない。それ以外の糸球体腎炎では、糸球体障害が進めば腎機能の低下を来す。3)脂質異常症肝臓での合成亢進と分解の低下から、高LDLコレステロール血症を来す。■ 予後MCNS、FSGS、MNの治療後の寛解率を図4に示す。画像を拡大するMCNSは2ヵ月以内に85%が完全寛解する。FSGSは6ヵ月で約45%、1年で約60%が完全寛解する。MNは6ヵ月では30%しか完全寛解しないが、1年で60%が完全寛解する。平成14年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の報告で、膜性腎症と巣状糸球体硬化症に関する予後調査の結果が報告されている。膜性腎症1,008例の腎生存率(透析非導入率)は10年で89%、15年で80%、20年で59%であった。巣状糸球体硬化症278例の腎生存率は10年で85%、15年で60%、20年で34%と長期予後は不良であった。2 診断 (病理所見)ネフローゼ症候群の診断自体は尿蛋白の定量と血清アルブミン値、血清総蛋白量を測定することにより行うことができる。しかし、実際の治療に関しては、二次性ネフローゼ症候群を除外した後、腎生検によって診断をする必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 浮腫に対する治療浮腫に対しては、利尿薬を使用する。第1選択薬としてループ利尿薬を使用する。効果がみられない場合には、サイアザイド系利尿薬を追加する。それでも効果のない場合や、低カリウム血症を合併する場合には、スピロノラクトンを使用する。アルブミン製剤は使用しないことが原則であるが、血清アルブミン値2.5g/dL以下で、低血圧、急性腎不全などの発症の恐れがある場合に使用する。しかし、その効果は一過性であり、かつ利尿効果はわずかである。利尿薬に反応しない場合には、体外限外濾過による除水を行う。■ 腎保護を目的とした治療1)低蛋白食ネフローゼ症候群への食事療法の有効性に十分なエビデンスはないが、摂取蛋白量を減少させることにより尿蛋白が減少することが期待できるため、通常以下のように行う。(1)微小変化型ネフローゼ症候群蛋白 1.0~1.1g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下(2)微小変化型ネフローゼ症候群以外蛋白 0.8g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下2)身体活動度ネフローゼの治療において運動制限の有効性を示すエビデンスはない。しかし、身体活動を制限することにより、深部静脈血栓のリスクが増大する。このため、入院中の寛解導入期であっても、ベッド上での絶対安静は避ける。維持治療期においては、適度な運動を勧める。3)レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬微小変化型ネフローゼ症候群を除き、尿蛋白の減少と腎保護を目的として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。このとき高カリウム血症に注意する。RAS阻害薬を使用することにより、血圧が低下して、臓器障害を起こす可能性がある場合には、中止する。利尿薬との併用は、RAS阻害薬の降圧作用を増強するので注意する。アルドステロン拮抗薬を追加することにより、尿蛋白が減少する。■ 合併症の予防1)感染症の予防ネフローゼ症候群では、IgGや補体成分の低下がみられ、潜在的に液性免疫低下が存在することに加え、T細胞系の免疫抑制もみられるなど、感染症の発症リスクが高い。日和見感染症のモニタリングを行いながら、臨床症候に留意して早期診断に基づく迅速な治療が必要である。肺炎球菌ワクチンの接種を副腎皮質ステロイド治療前に行う。ツベルクリン反応陽性、胸部X線上結核の既往がある者、クオンティフェロン陽性者は、イソニアジド300mgを6ヵ月投与する。副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬の治療と並行して投与を行う。1日20mg以上のプレドニゾロンや免疫抑制薬を長期間にわたり使用する場合には、顕著な細胞性免疫低下が生じるため、ニューモシスチス肺炎に対するST合剤の予防的投薬を考慮する。β-Dグルカン値を定期的に測定する。2)血栓症の予防ネフローゼ症候群では、発症から6ヵ月以内に静脈血栓形成のリスクが高く、血清アルブミン値が2.0g/dL未満になればさらに血栓形成のリスクが高まる。過去に静脈血栓症の既往があれば、ワルファリンによる予防的抗凝固療法を考慮する。D-dimer、FDPにて、血栓形成の可能性をモニターする。静脈血栓症由来の肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させて、血栓の状況を確認しながらワルファリン内服に移行し、PT-INRを2.0(1.5~2.5)とするように抗凝固療法を行う。肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを経静脈的に投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させる。また、経口FXa阻害薬を投与する。■ 各組織型別の特徴と治療1)微小変化型(MCNS)小児に好発するが、成人にも多く、わが国の一次性ネフローゼ症候群の40%を占める。発症は急激であり、突然の浮腫を来す。多くは一次性であるが、ウイルス感染、NSAIDs、ホジキンリンパ腫、アレルギーに合併することもある。副腎皮質ステロイドに対する反応は良好である。90%以上が寛解に至る。再発が30~70%で認められる。ステロイド依存型、長期治療依存型になる症例もあり、頻回再発型を示す場合もある。わが国で行われた無作為化比較試験にて、メチルプレドニゾロンを使用したパルス療法は、尿蛋白減少効果において、経口副腎皮質ステロイドと変わらないことが示されている。寛解導入後の治療は、少なくとも1年以上継続して行ったほうが再発が少ない。(1)再発時の治療プレドニゾロン20~30 mg/日もしくは初期投与量を投与する。患者に、検尿試験紙を持たせて、自己診断できるように教育し、再発した場合にすぐに来院できるようにする。(2)頻回再発型、ステロイド依存性、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群免疫抑制薬(シクロスポリン〔商品名:サンディミュン、ネオーラル〕1.5~3.0 mg/kg/日、またはミゾリビン〔同:ブレディニン〕150 mg/日、または、シクロホスファミド〔同:エンドキサン〕50~100 mg/日など)を追加投与する。シクロスポリンは、中止により再発が起こるリスクが高く、寛解が得られる最小量にて1~2年は治療を継続する。頻回再発を繰り返す症例や難治症例ではリツキサンを500mg/日 1回点滴静注投与することも検討する。2)巣状分節性糸球体硬化症巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)は、微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome:MCNS)と同じような発症様式・臨床像をとりながら、MCNSと違ってしばしばステロイド抵抗性の経過をとり、最終的に末期腎不全にも至りうる難治性ネフローゼ症候群の代表的疾患である。糸球体上皮細胞の構造膜蛋白であるポドシン(NPHS2)やα-アクチニン4(ACTN4)などの遺伝子変異により発症する、家族性・遺伝性FSGSの存在が報告されている。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)換算1mg/kg標準体重/日(最大60mg/日)相当を、初期投与量としてステロイド治療を行う。重症例ではステロイドパルス療法も考慮する。(2)ステロイド抵抗性4週以上の治療にもかかわらず、完全寛解あるいは不完全寛解I型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合は、ステロイド抵抗性として以下の治療を考慮する。必要に応じてステロイドパルス療法3日間1クールを3クールまで行う。a)ステロイドに併用薬として、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白が1g/日未満に減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。b)ミゾリビン 150 mg/日を1回または3回に分割して投与する。c)シクロホスファミド 50~100 mg/日を3ヵ月以内に限って投与する。シクロホスファミドは、骨髄抑制、出血性膀胱炎、間質性肺炎、発がんなどの重篤な副作用を起こす可能性があるため、総投与量は10g以下にする。(3)補助療法高血圧を呈する症例では積極的に降圧薬を使用する。とくに第1選択薬としてACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用を考慮する。脂質異常症に対してHMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブ(同:ゼチーア)の投与を考慮する。高LDLコレステロール血症を伴う難治性ネフローゼ症候群に対してはLDLアフェレシス療法(3ヵ月間に12回以内)を考慮する。必要に応じ、蛋白尿減少効果と血栓症予防を期待して抗凝固薬や抗血小板薬を併用する。3)膜性腎症膜性腎症は、中高年者においてネフローゼ症候群を呈する疾患の中で、約40%と最も頻度が高く、その多くがステロイド抵抗性を示す。ネフローゼ症候群を呈しても、尿蛋白の増加は、必ずしも急激ではない。特発性膜性腎症の主たる原因抗原は、ポドサイトに発現するPLA2Rであり、その自己抗体がネフローゼ症候群患者の血清に検出される。PLA2R抗体は、寛解の前に消失し、尿蛋白の出現の前に検出される。特発性膜性腎症の抗体はIgG4である。一方、がんを抗原とする場合の抗体はIgG1、IgG2である。約1/3が自然寛解するといわれている。したがって、欧米においては、尿蛋白が8g/日以下であれば、6ヵ月間は腎保護的な治療のみで、経過をみることが一般的である。また、尿蛋白が4g/日以下であれば、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬は使用しない。わが国における本症の予後は、欧米のそれに比較して良好である。この原因は、尿蛋白量が比較的少ないことによる。このため、ステロイド単独投与により寛解に至る例も少なくない。通常、免疫抑制薬の併用により尿蛋白が減少し、予後の改善が期待できる。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)0.6~0.8mg/kg/日相当を投与する。最初から、シクロスポリンを併用する場合もある。(2)ステロイド抵抗性ステロイドで4週以上治療しても、完全寛解あるいは不完全寛解Ⅰ型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合はステロイド抵抗性として免疫抑制薬、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を1日1回投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白1g/日未満に尿蛋白が減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。シクロスポリンが無効の場合には、ミゾリビン 150 mg/日、またはシクロホスファミド 50~100 mg/日の併用を考慮する。リツキサン500mg/日 1回を、点滴静注することにより寛解することが報告されており、難治例では検討する。(3)補助療法a)高血圧(収縮期血圧130mmHg 以上)を呈する症例では、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。b)脂質異常症に対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブの投与を考慮する。c)動静脈血栓の可能性に対してはワルファリンを考慮する。4)膜性増殖性糸球体腎炎膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)はまれな疾患であるが、腎生検の6%を占める。光学顕微鏡所見上、糸球体係蹄壁の肥厚と分葉状(lobular appearance)の細胞増殖病変を呈する。係蹄の肥厚(基底膜二重化)は、mesangial interpositionといわれる糸球体基底膜(GBM)と内皮細胞間へのメサンギウム細胞(あるいは浸潤細胞)の間入の結果である。また、増殖病変は、メサンギウム細胞の増殖とともに局所に浸潤した単球マクロファージによる管内増殖の両者により形成される。確立された治療法はなく、メチルプレドニゾロンパルス療法に加えて、免疫抑制薬(シクロホスファミド)の併用の有効性が、観察研究で報告されている。4 今後の展望ネフローゼ症候群の原因はいまだに不明な点が多い。これらの原因因子を究明することが重要である。膜性腎症の1つの原因因子であるPLA2R自己抗体は、膜性腎症の発見から50年の歳月をかけて発見された。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本腎臓学会ホームページ エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014(PDF)(医療従事者向けの情報)日本腎臓学会ホームページ ネフローゼ症候群診療指針(完全版)(医療従事者向けの情報)進行性腎障害に関する調査研究班ホームページ(医療従事者向けの情報)難病情報センターホームページ 一次性ネフローゼ症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働省「進行性腎障害に関する調査研究」エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン作成分科会. エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014.日腎誌.2014;56:909-1028.2)厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会編.松尾清一監修. ネフローゼ症候群診療指針 完全版.東京医学社;2012.3)今井圓裕. 腎臓内科レジデントマニュアル.改訂第7版.診断と治療社;2014.4)Shiiki H, et al. Kidney Int. 2004; 65: 1400-1407.5)Ronco P, et al. Nat Rev Nephrol. 2012; 8: 203-213.6)Beck LH Jr, et al. N Engl J Med. 2009; 361: 11-21.公開履歴初回2013年09月19日更新2016年02月09日

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慢性心房細動に対する抗凝固療法中に消化管出血を来したとき~抗凝固療法を再開する?それとも中止?~(解説:西垣 和彦 氏)-465

揺れ動く医師の心情 心房細動に起因する心原性脳血栓塞栓症は、いったん発症するとほかのアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞の予後とは比較にならないほど重症となり、20%が死亡、40%が要介護4度あるいは5度の寝たきりとなる悲惨な状態が待っている。これが、心原性脳血栓塞栓症を“ノック・アウト型脳梗塞”と評するゆえんである。したがって、心房細動に対する治療の最も重要なポイントは、心原性脳血栓塞栓症をいかに発症させないようにするかという予防的治療であり、その点において抗血栓療法の果たす役割は大きい。 しかし、抗血栓療法は、塞栓症予防のメリットと相反し、とくに脳出血や消化管出血などの重篤かつ致死的となりうる出血性副作用というデメリットを併せ持つ。出血性副作用をいったん経験すると、医師の抗血栓薬の処方動機は極端に抑制され、出血性副作用を来した当該患者さんのみならず、その他の心房細動患者に対しても抗血栓薬の処方が敬遠するという悪影響をもたらす。つまり、“医師も人の子”、その揺れ動く心情はよくわかる話である。 そこで本論文は、心房細動に対する抗血栓療法(経口抗凝固薬、抗血小板薬、そしてその併用)中に消化管出血を来した患者を対象として、抗血栓治療再開の影響を検討したものである。個々症例ごとに基礎疾患も状況も異なり、本来ならば“どんぶり勘定”で検討する問題ではないが、マスとしての有益性、合理性、経済性を追求する欧米ならではの医療理念から導かれたこの問題に対して“一定の結論”を知っておくことは悪くはない。ただし、本研究が、Boehringer-Ingelheimの研究費で支えられたものであることと、無作為化比較試験ではなくコホート研究であることは認識すべきである。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめてみよう。デンマーク全国コホート研究のデータベースを用い、抗血栓薬による治療を受けていたが消化管出血により入院し、その後退院した心房細動を有する患者4,602例を抽出したコホート研究で、集団はデンマークにおける一般診療等のデータが使用されており問題はない。比較リスクモデルの検討では、CHA2DS2-VAScスコアの因子と既往処方薬の使用による交絡を回避するため、フォローアップ開始を退院後90日時点からとし、調整されている。追跡期間中央値は2年であり比較的短く、また平均年齢は78.3±9.3歳と、わが国のレジストリ試験と比較すると8歳も高齢の患者を対象としている。ただし、平均のCHADS2スコアは2.1点であり、高齢以外の因子が少ない患者を対象としている研究であることがわかる。 消化管出血発症前に受けていた抗血栓療法は、経口抗凝固薬単独23.9%、抗血小板薬単独53.3%、経口抗凝固薬+抗血小板薬の併用19.4%、アスピリン+アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬の併用2.5%、その他3剤併用は0.9%であった。わが国のガイドラインでは、心房細動による心原性脳血栓塞栓症予防に対してアスピリンなどの抗血小板薬を用いることは無効であり推奨されていないが、現実的には依然アスピリンなどの抗血小板薬で“代用できる”と処方している医師や、冠動脈硬化性心疾患などの合併症のため余儀なく抗血小板薬を複数併用投与している症例があり、リアルワールドの併用時の有効性と安全性を評価・検討するのに役立つデータである。 コホート解析結果であるが、デンマークでも消化管出血になるとその後の抗血栓療法は3分の1程度の症例(27.1%)で中止されている。つまり、“デンマークの医師も人の子”、その揺れ動く心情は万国共通のものであるということである。では、今回の研究結果からいうと、はたしてその“親心的な”医師の心情が良い結果を生んだのであろうか? 結果は否である。 抗血栓薬非再開群との比較で、再開群はアスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用以外、経口抗凝固薬単独、抗血小板薬単独、そして経口抗凝固薬+抗血小板薬併用で有意に全死因死亡リスクの低下を認めた。また、血栓塞栓症リスクの低下も同様の結果であった。 一方、“両刃の剣”の安全性に関してはどうであったのか。結果は、抗血小板薬単独、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用、そしてアスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用では大出血リスクを上昇させなかったが、経口抗凝固薬単独ではかえってその危険性を有意に増す結果となった。しかし、懸案であった消化管出血の再発リスクに関しては、どの抗血栓薬でも非再開群と有意差はなく、消化管出血の再発リスクを上昇させるものではなかった。結論として 今回のこの論文を通じて、次の結論がみえてくる。1)有効性に関しては、アスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用以外は総死亡と血栓塞栓症予防の有意な有効性が認められ、抗血栓薬を消化管出血後でも再開したほうが良い。2)一方で、安全性に関して、大出血がとくに経口抗凝固薬単独でそのリスクが上昇するので注意が必要である。3)消化管出血後の抗血栓薬再開においては、医師のその“親心的な”判断で抗血栓薬の投与を躊躇することは、患者に重大かつ不幸な結果をもたらすことが示唆される。 冒頭に述べたように、個々症例ごとに基礎疾患も状況も異なり、本来ならば“どんぶり勘定”で検討する問題ではなく、個々の症例ごとにその適応を十分に検討されるべきであり、軽々に結論を捻出するものでもないが、やはり消化管出血後でも一刻でも早く抗血栓薬を再開したほうが、死亡を先延ばしにできるようである。あらためて、心房細動に対する抗血栓療法の重要性と心房細動の真の重篤性を痛切に感じ、かつ自戒の念を喚起させた論文である。

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心房細動の抗血栓療法時の消化管出血後、再開による死亡リスクは?/BMJ

 心房細動患者の消化管出血後の抗血栓療法再開による全死因死亡などのリスクについて調べた結果、再開しなかった患者群との比較で、再開レジメン別にみると経口抗凝固薬単独再開群の全死因死亡および血栓塞栓症のアウトカムが良好であったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLaila Staerk氏らによるコホート試験の結果、明らかにされた。消化管出血は、経口抗凝固療法を受ける心房細動患者の出血部位として最も多いが、同出血後に抗血栓療法を再開するのか見合わせるのかに関してはデータが不足していた。BMJ誌オンライン版2015年11月16日号掲載の報告。全死因死亡、血栓塞栓症、重大出血、消化管出血再発リスクを検討 検討は、デンマークコホート(1996~2012年)の抗血栓療法を受ける心房細動患者で、入院中に消化管出血を呈しその後退院した全患者を対象に行われた。試験集団には4,602例(平均年齢78歳、女性45%)が組み込まれた。これら患者が消化管出血発症前に受けていた抗血栓療法の内訳は、経口抗凝固薬単独23.9%、抗血小板薬単独53.3%、経口抗凝固薬+抗血小板薬の併用19.4%、アスピリン+アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬の併用2.5%、その他3剤併用0.9%であった。 同集団について、時間依存的Cox比例ハザードモデルや比較リスクモデル[抗血栓療法の非再開群 vs.再開群(単独または併用療法)]を用いて、全死因死亡、血栓塞栓症、重大出血、消化管出血再発の各アウトカム発生リスクを調べた。なお、比較リスクモデルの検討では既往処方薬の使用による交絡を回避するため、フォローアップ開始を退院後90日時点からとした。非再開群との比較では経口抗凝固薬単独群のアウトカムが良好 試験集団全体における消化管出血後2年時点の各アウトカムの累積発生率は、全死因死亡が39.9%(95%信頼区間[CI]:38.4~41.3%、1,745例)、血栓塞栓症12.0%(同:11.0~13.0%、526例)、重大出血17.7%(同:16.5~18.8%、788例)、消化管出血再発12.1%(同:11.1~13.1%、546例)であった。全死因死亡、重大出血、消化管出血再発は、集団への包含1ヵ月以内に顕著な増大がみられた一方、血栓塞栓症の発生は、2年の間、一定して増大していた。 比較リスクモデルの検討には3,409例が組み込まれた。このうち抗血栓療法を再開しなかった患者は27.1%(924例)であった。また再開群のレジメン内訳は、経口抗凝固薬単独21%(725例)、抗血小板薬単独38.5%(1,314例)、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用11.3%(384例)、アスピリン+ADP受容体拮抗薬併用1.5%(51例)であった。 非再開群との比較で、全死因死亡リスクの低下が認められた再開レジメンは、経口抗凝固薬単独(ハザード比[HR]:0.39、95%CI:0.34~0.46)、抗血小板薬単独(同:0.76、0.68~0.86)、そして経口抗凝固薬+抗血小板薬併用(同:0.41、0.32~0.52)であった。 また、血栓塞栓症リスクの低下が認められたのは、経口抗凝固薬単独(同:0.41、0.31~0.54)、抗血小板薬単独(同:0.76、0.61~0.95)、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用(同:0.54、0.36~0.82)であった。 一方で、単独療法において経口抗凝固薬単独のみが、重大出血リスクの増大と関連していた(同:1.37、1.06~1.77)。 消化管出血再発リスクについては、レジメン間で有意差はみられなかった。

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FDA、ダビガトランの中和剤idarucizumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、抗凝固薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤idarucizumab(商品名:Praxbind)を迅速承認した。対象はダビガトラン服用中で緊急に抗凝固作用の中和を要する患者。 idarucizumabは初めて承認されたダビガトランの特異的中和薬。ダビガトランに結合し、その作用を無効化する。 idarucizumabの効果と安全性は、ダビガトランを服用した283例の健康成人(抗凝固治療を必要としない成人)による3つの試験で検討された。その結果、idarucizumabが投与された健康成人において、ダビガトランの血中量(非結合型ダビガトランの血漿中濃度を測定)は迅速に減少し、その作用は24時間持続した。また、ダビガトラン服用中で、止血困難な出血が発生した、あるいは緊急手術が必要となった123例の患者による試験が行われた。この進行中の試験では、89%の患者でダビガトランの抗凝固作用が完全に中和され、その作用はidarucizumab投与後 4時間以上持続した。同試験において、idarucizumabの頻度の高い副作用は高カリウム血症、意識錯乱、便秘、発熱、肺炎であった。 ダビガトランの作用中和により、患者は血栓や心房細動による脳卒中のリスクにさらされることになる。そのため、idarucizumabの添付文書では、医療者が医学的に適切だと判断し次第、すみやかに抗凝固療法を再開することを推奨している。FDAのプレスリリースはこちら。

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生体弁で弁尖運動が低下、脳卒中・TIAリスク増大の可能性も/NEJM

 大動脈生体弁の植込みをした患者について調べた結果、弁尖運動の低下が認められ、その発生率はワルファリンによる抗凝固療法を行った患者のほうが、抗血小板薬2剤併用療法を受けた患者に比べ低率であることが判明した。弁尖運動の低下は、抗凝固療法により改善することも確認されたという。米国・Cedars–Sinai Heart InstituteのRaj R Makkar氏らが、約190例の患者について調べ報告した。弁尖運動の低下は、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発生リスクを増加する可能性も示唆され、著者は「今回発見した所見の臨床的アウトカムへの影響について、さらなる調査を行う必要がある」と指摘している。NEJM誌オンライン版2015年10月5日号掲載の報告。四次元立体レンダリングCT画像で弁尖運動の低下を判定 今回の検討の背景には、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後に脳梗塞を発症した患者について、CTにおいて大動脈弁の弁尖運動の低下が確認され、不顕性の弁尖血栓症の懸念が持ち上がったことがある。 研究グループは、TAVR臨床試験の被験者55例と、TAVRまたは外科的大動脈生体弁植込み術を実施した患者に関する2ヵ所の医療機関の単独レジストリ登録者132例を対象に、四次元立体レンダリングCT画像データと、抗凝固療法、脳卒中やTIAを含む臨床的アウトカムに関する情報を得て分析を行った。弁尖運動低下は抗凝固療法で改善 結果、CT画像で弁尖運動の低下が認められたのは、臨床試験被験者55例中22例(40%)、患者レジストリ132例中17例(13%)だった。弁尖運動の低下は、TAVR・外科的植込み術ともに複数種の生体弁で認められた。 弁尖運動低下の発生率は、抗血小板薬2剤併用療法を行った群では臨床試験群55%、レジストリ群29%に対し、ワルファリンによる抗凝固療法を行った群ではともに0%と発生率は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.04)。 被験者のうち追跡CT画像を撮影した患者において、抗凝固療法を受けた11例全例で弁尖運動の低下は改善したが、抗凝固療法を受けていなかった10例では同改善が認められたのは1例のみだった。 弁尖運動の低下による脳卒中またはTIAの発生率については、臨床試験群では有意差はなかったものの、レジストリ群では、弁尖運動が正常な人では115例中1例に対し、弁尖運動低下が認められた人では17例中3例と有意に高率だった(p=0.007)。

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CHA2DS2-VAScスコアの応用って?~JAMA掲載に値するか~(解説:西垣 和彦 氏)-430

JAMAって? 世の中には、あまた医学雑誌がある。その中でも最高峰に位置するのが、このJAMA(The Journal of the American Medical Association:米国医師会雑誌)である。インパクトファクター(impact factor: IF)は、2014年には54.420と上昇し、臨床医学総合誌では第1位の座を堅持している。しかしながら、インパクトファクターは、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標であるが、あくまでWeb of Scienceに収録された、特定のジャーナルの「平均的な論文」の被引用回数にすぎない。JAMA誌の記事の採択率は、依頼した記事も依頼していない記事もまとめて、年間6,000本受け取るうちのおおよそ8%であり、最難関の雑誌であることは間違いない。しかし、しょせん米国医師会雑誌であり、専門性がない臨床医学総合誌であるので、読者層はおのずから幅広くなり、インパクトファクターが高くなることは必然である。最近、このJAMA誌において、その独自性と総合雑誌であるがゆえに、頭を抱えたくなるような論文が掲載される例が多々目に付く。この論文もその範囲にあるのかもしれない。CHA2DS2-VAScスコアの真意 心房細動は、発作性であっても持続性~慢性であっても、また、心房細動の持続時間とも関係なく、心原性脳血栓塞栓症を発症させるに十分な血栓塞栓(フィブリン血栓)を生成させる可能性がある。しかも、心原性脳血栓塞栓症がいったん発症すると、ほかのアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞の予後とは比較にならないほど重症となり、20%が死亡、40%が要介護4度あるいは5度の寝たきりの状態となる。さらに、急性期に命を取り留めたとしてもその後の5年生存率は30%と、がんなどの予後に匹敵するほど著しく予後不良なため、心原性脳血栓塞栓症は“ノック・アウト型脳梗塞”と呼ばれる。よって、心原性脳血栓塞栓症の最も重要なポイントは、心原性脳血栓塞栓症をいかに発症させないようにするかであるが、これまで心原性脳血栓塞栓症予防のための抗凝固薬は、約50年前の1962年に発売されたワルファリンのみで、ほかに選択の余地がなかった。しかも、このワルファリンは、経験豊富な循環器専門医でさえもその副作用である出血の点で安心して処方できない、非常にハードルの高い薬剤である。よって、ワルファリン投与により、副作用を上回る有効性を担保する患者を層別化する目的で、心房細動患者の血栓塞栓症リスクを評価しスコア化したのがCHA2DS2-VAScスコアなのである。 本論文の臨床的な意義は? 本論文は、デンマークのレジストリデータを用い、心房細動のない心不全患者の場合でもCHA2DS2-VAScが虚血性脳卒中、血栓塞栓症、心不全診断後1年以内の死亡を推定することができるかどうか、心不全患者4万2,987例を対象にして検討された研究である。その結果、CHA2DS2-VAScスコアの高い(≧4)患者では、血栓塞栓症の絶対リスクは心房細動の存在にかかわらず高値であった。 しかし、この結果は、CHA2DS2-VAScスコアの中に心不全の項目が要素として入っていることと臨床的な見地から、当然といえば当然の結果であり、予期された結論であったと考える。しかも、CHA2DS2-VAScスコアという使用目的が異なるスコアを心房細動のない心不全患者の層別化に用いるには、推定精度は中等度であったことからも無理があり、臨床的に使用する意義は少ない。結論として 今回のこの論文を通じて、次の3点が結論としてみえてくる。1)心房細動のない心不全患者に対し、抗凝固療法を行うべきか否かは、出血のリスク層別化スコアであるHAS-BLED等も考慮すべきであり、この論文ではCHA2DS2-VAScスコアで層別化できるかやってみたにすぎない。したがって、今後ガイドラインに何ら影響するほどの論文ではない。2)今後、あらためて心房細動のない心不全患者の虚血性脳卒中や血栓塞栓症の因子を分析し、より精度の高いスコアを考案したうえで、新規スコアを使って層別化された患者群に対して、抗凝固薬投与で虚血性脳卒中や血栓塞栓症、死亡が減らせるかどうかの大規模無作為化比較試験の実施が必要である。3)JAMA誌の採択基準は依然不明であり、その臨床的意義すら窮する論文も存在する。

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なぜ心房細動ばかりが特別扱い?(解説:後藤 信哉 氏)-424

 脳卒中予防は重要である。Framingham研究は、地域住民の34年間という長期の観察により、脳卒中のリスク因子として、心房細動、心不全、冠動脈疾患、高血圧などの重要性を示した。近未来の脳卒中発症予測法は、近未来の心筋梗塞発症予測法よりも信頼性が高い。 実際、「非弁膜症心房細動」症例の、近未来の脳卒中リスク予測に用いるCHA2DS2-VASc scoreを構成する、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳卒中の既往、血管病、性差のうち、心不全、血管病、高血圧が心房細動の有無にかかわらず脳卒中発症の独立した危険因子であることは、Framingham研究からも明らかにされていた。実際、脳卒中発症に関わる「心不全」の寄与は、「心房細動」の寄与に匹敵する。CHA2DS2-VASc scoreが心房細動を合併した症例の脳卒中予防のみでなく、一般的な脳卒中発症予測にも利用価値があるのではないかと考えるのは、きわめて自然である。Framingham研究が、脳卒中の発症における心房細動の重要性をすでに示しているので、予測因子に「心房細動」を含まないCHA2DS2-VASc scoreの脳卒中予測能力は、非心房細動例では心房細動例よりも不安定であろうという仮説も論理的である。 本研究は、およそ20%の心房細動例を含む4万2,987例の心不全症例を対象とした。抗凝固療法を受けている症例は除外されている。心不全発症後1年以内における虚血性脳卒中、全身塞栓症、死亡率と CHA2DS2-VASc scoreの関係が、心房細動例と非心房細動例において検証された。予想のとおりであるが、いずれのエンドポイントも心房細動の有無にかかわらず、CHA2DS2-VASc scoreの高い症例におけるイベント発症率が高かった。本研究は、新規発症の「心不全例」のうち、抗凝固療法を受けていない症例を対象としているが、CHA2DS2-VASc scoreは、脳卒中、全身塞栓症、死亡率の予測に、心房細動の有無にかかわらず役立つことを示して興味深い。 われわれは以前、日本において、心筋梗塞後、脳卒中後、心房細動の症例を登録して8,000例を超えるデータベースを構築した。CHADS 2 scoreは、1年間の観察期間内の心筋梗塞の発症予測には役立たなかったが、脳卒中、死亡率の予測には有用であることを示した1)。CHA2DS2-VASc scoreにしてもCHADS 2 scoreにしても、心房細動症例に限局せず、近未来の脳卒中、死亡率と関連していることは、臨床医は再認識すべきである。今回のJAMA誌の論文は、CHA2DS2-VASc scoreにかかわらず、脳卒中イベントよりも死亡率が近未来のイベントとしてインパクトが大きいことを示した。実際、過去のRE-LY試験、ENGAGE TIMI 48試験など、心房細動を対象としたNOAC開発試験においても、脳卒中発症率よりも近未来の死亡率が高かったことを再認識すべきである。新規開発された経口抗凝固薬が過剰宣伝されると「CHA2DS2-VASc scoreは心房細動症例以外の症例でも脳卒中予防に役立つ」、「CHA2DS2-VASc scoreは近未来の死亡予測に役立つ」など、いわゆるNOAC販売に繋がらない重要な臨床情報が十分に伝達されない。 ヒトの一生は「心房細動」の有無で大きな影響を受けるものではないことを再認識すべきである。

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