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ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。ドンペリドン曝露は乳児の主要な奇形のリスク増加と関連なし 本研究は、1988年4月~2017年12月までに、虎の門病院「妊娠と薬相談外来」または国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」に、妊娠中の薬物の安全性について相談した女性が含まれ、妊娠初期(4~13週)にドンペリドンを服用した妊婦519例(ドンペリドン群)と、対照薬を服用した妊婦1,673例(対照群)から生まれた乳児の奇形発生率を比較した。なお、ドンペリドンとメトクロプラミドの両方を使用した妊婦は研究から除外された。 対照薬としては、アセトアミノフェン、催奇形性リスクが増加しない抗ヒスタミン薬、H2ブロッカー、消化酵素製剤、ペニシリンやセファロスポリンなどの抗菌薬、および外用薬(点眼、軟膏・クリームなど)が含まれた。また、妊婦の制吐薬として一般的に使用されるメトクロプラミドを服用した妊婦241例(メトクロプラミド群)を参照群として定義した。 ドンペリドンによる乳児の奇形発生率について検討した主な結果は以下のとおり。・カウンセリング時の年齢中央値はすべての群で30歳であり、年齢分布も同等だった。飲酒または喫煙習慣のいずれにおいても、3群に大きな違いはなかった。・出産の結果はすべての登録者について集計され、生産の割合は、ドンペリドン群で94.0%(488例)、対照群で93.8%(1,570例)、メトクロプラミド群で94.2%(227例)だった。3群間で死産、流産または中絶の発生率に顕著な違いはなかった。・生産の単胎児における奇形発生率は、ドンペリドン群で2.9%(14/485例、95%信頼区間[CI]:1.6~4.8)、対照群で1.7%(27/1,554例、95%CI:1.1~2.5)、メトクロプラミド群では3.6%(8/224例、95%CI:1.6~6.9)で、有意な差は見られなかった。・飲酒量、喫煙、母体年齢、妊娠初期、施設、対照薬以外の併用薬使用を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、対照群とドンペリドン群の調整後オッズ比(OR)は1.86(95%CI:0.73~4.70、p=0.191)であり、奇形発生率に有意差は見られなかった。また、対照群とメトクロプラミド群の調整後ORは2.20(95%CI:0.69~6.98、p=0.183)と同様の結果だった。 研究者らは、「この観察コホート研究は、妊娠初期のドンペリドン曝露が乳児の主要な奇形のリスク増加と関連していないことを示した。これらの結果は、妊娠中にドンペリドンを服用した妊婦の不安を和らげるのに役立つ可能性がある」と結論している。

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第50回 COVID-19ワクチン接種後数日してからの皮膚反応

接種後の遅れ馳せ(Delayed)の皮膚反応への心づもりが必要新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質を作るmRNAが成分のModerna(モデルナ)社のワクチンmRNA-1273を接種した12人に接種後すぐではなく何日か(4~11日;中央値8日)してから生じた遅れ馳せの皮膚反応を米国ボストン市の著名病院・Massachusetts General HospitalのチームがNEJM誌に報告し1)、皮膚感染症と混同して抗生物質で無闇に治療してはいけないと注意を促しています2)。提供:Massachusetts General Hospital腫れ、痒み、痛みなどを伴う上の写真のようなそれら皮膚反応は接種後すぐの局所や全身の症状が解消した後に注射部位近くに広く生じ、5人の病変の直径は10cm以上ありました。主に冷やすか抗ヒスタミン薬で治療され、何人かにはステロイド(グルココルチコイド)が使われました。また1人は蜂巣炎と推定されて抗生物質が投与されました。症状は発生から2~11日(中央値6日)で解消しました。そのような皮膚反応が遅延型かT細胞を介した過敏反応らしいとの著者等の見立ては報告された12人と同様に遅れ馳せの広域皮膚反応を呈した別の1人の皮膚検体の解析で支持されています。検体の表層血管周囲や毛胞周囲には好酸球や肥満細胞(マスト細胞)を含むリンパ球浸潤が認められました。遅延型過敏反応や注射部位反応を呈した人への2回目接種は禁忌ではないことから12人には2回目の接種を案内し、全員が2回目の接種を済ませました。2回目の接種後に半数の6人は1回目と同様か1回目より軽度の反応を再び被りました。2回目の接種後の皮膚症状はより早く、接種から1~3日(中央値2日)後に発生しています。mRNA-1273ワクチンへの遅れ馳せの局所反応に心づもりができていない医師がいるかもしれませんが、今回の報告はそれらの反応がおよそ恐れるに足るものではないことを改めて示しています2)。著者によると遅れ馳せの皮膚反応は免疫が良好に働いていることをどうやら意味しており、ワクチン接種の妨げにはなりません。今回の報告が不必要な抗生物質使用を減らしてワクチン接種の全うを助けることを著者は望んでいます。皮膚病変はSARS-CoV-2感染でも生じうるワクチンのみならずCOVID-19と種々の皮膚異変の関連も示唆されており、たとえば足のつま先によく生じる3)ことから”COVID toes”として知られる凍瘡(しもやけ)様病変がCOVID-19流行に伴って小児や若い成人患者にとくに多く認められています4)。COVID toes患者の鼻や喉の拭い液のPCR検査でSARS-CoV-2が検出されることは少なく4)、まったく検出できなかった報告5,6)ではSARS-CoV-2感染との関連はなさそうと結論されています。しかし組織を生検した幾つかの試験ではSARS-CoV-2スパイクタンパク質が検出されており、それらの断片が皮膚の内皮細胞のACE2に結合して取り込まれて血管内皮炎を誘発するのかもしれません7)。スパイクタンパク質はPfizerやModerna 社のワクチンが体内で作り出す成分でもあり、スパイクタンパクと内皮細胞のACE2の相互作用がどういう顛末をもたらすのかをさらに調査する必要があります。参考1)Blumenthal KG,et al. N Engl J Med. 2021 Mar 3. [Epub ahead of print]2)MGH researchers call for greater awareness of delayed skin reactions after Moderna COVID-19 vaccine / MGH3)Magro CM, et al.Br J Dermatol . 2021 Jan;184:141-150. 4)Colmenero I, et al.Br J Dermatol. 2020 Oct;183:729-737. 5)Herman A, et al. JAMA Dermatol. 2020 Sep 1;156:998-1003.6)Roca-Gines J, et al. JAMA Dermatol.2020 Sep 1;156:992-997.7)Ko CJ, et al. J Cutan Pathol. 2021 Jan;48:47-52.

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治療フローが様変わり、「肝硬変診療ガイドライン2020」の変更点とは

 肝硬変の非代償期と聞けば誰しもが諦めていたものだが、時代遅れと言われぬよう、この感覚をアップデートさせねばならないようだー。2020年11月、『肝硬変診療ガイドライン2020(改定第3版)』が発刊された。第2版が発刊された2015年から5年もの間に肝硬変治療に関する知見が数多く報告され、治療法は目まぐるしく変化している。そのため、海外の最新治療ガイドライン(GL)と齟齬がないように、かつ日本の実地診療に即したフローとなるよう留意し、日本肝臓学会と日本消化器病学会が対等の立場で初めて合同作成した。今回、その作成委員長を務めた吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器・代謝内科 教授)に非専門医もおさえておくべき変更点やGLの活用方法についてインタビューした。肝硬変症状、プライマリケアでも早期発見を 今回の改訂において、“実地医家(プライマリケア医)にも使いやすい”を基本に作成を進めたと話した吉治氏。同氏によると、肝硬変は肝臓専門医による診療だけではなく、実地医家による日々の診療からの気付きが重要だという。「これまで非代償期の患者は予後不良で治療も困難であった。しかし、肝硬変は非代償期からも可逆性である事が明らかとなると共に、この5~10年の間に新薬が次々と登場し肝硬変治療に対する概念が変わったことで、非代償期を含めた肝硬変を非専門医にも診察してもらう意味がある」と説明した。 今回のフローチャートの見やすさや検査項目の算出のしやすさは、そんな状況変化を反映させ刷新しており、肝硬変診断のフローチャートの身体所見に『黄疸』『掻痒感』が追加されたのもその一例である。同氏は「黄疸は進行例で発見されることが多く実地医家では診療が困難であったため、これまで所見として含まれていなかったが、現況を顧みて追加した」と補足した。一方、掻痒感については「多くの非専門医は肝臓疾患がもたらす痒みの認識が薄いように感じる。そのため、抗ヒスタミン薬などで経過観察され、その間に肝疾患が進行してしまう場合も散見される。冬場は乾燥によるかゆみを訴える患者も多いが、肝疾患によるかゆみは抗ヒスタミン薬が無効である例が多く、ほかの所見もあれば血液検査を行い肝臓疾患の有無について判別を行ってほしい」と訴えた。栄養療法を簡単に個別化できるフローチャートへ 肝硬変治療で重要となる栄養療法もフローチャートが明確になり非専門医でも利用しやすくなっているが、これには近年の肝硬変患者の成因変化が影響している。2008年の肝硬変成因別調査

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第24回 風邪薬1箱飲んだら、さぁ大変!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)若年者の嘔気・嘔吐では必ず鑑別に!2)拮抗薬はきちんと頭に入れておこう!【症例】26歳女性。ご主人が帰宅すると、自宅で繰り返し嘔吐している患者さんを発見し、辛そうにしているため救急要請。救急隊からの情報では、リビングの机の上には市販薬の空箱が数箱あり、嘔吐物には薬塊も含まれていた様子。●受診時のバイタルサイン意識10/JCS血圧119/71mmHg脈拍98回/分(整)呼吸25回/分SpO299%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3 +/+既往歴特記既往なし内服薬定期内服薬なし最終月経2週間前風邪薬の成分とはみなさん風邪薬を服用したことがあるでしょうか? 医療者はあまり使用することはないかもしれませんが、一般の方は風邪らしいなと思ったら薬局などで購入し、内服することは多いでしょう。救急外来や診療所に発熱や咳嗽を主訴に来院する患者さんの中には、市販薬が効かないから来院したという方が一定数いるものです。市販薬を指定されている量を内服している場合には、それが理由でとんでもない副作用がでることはまれですが、当然服用量が過剰になればいろいろと問題が生じます。風邪薬の成分は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬、クロルフェ二ラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン薬、ジヒドロコデインリン酸塩などの鎮咳薬、そして無水カフェインが含まれている商品が多いです。今回は救急外来で遭遇する頻度が比較的高い「アセトアミノフェン中毒」について重要な点をまとめておきます。その他、カフェイン、ブロン、ブロムなども市販薬の内服で起こり得る中毒のため、是非一度勉強しておくことをお勧めします。アセトアミノフェンの投与量以前、アセトアミノフェンは1日最大量1,500mg(1回最大量500mg)と少量の使用しか認められていませんでしたが、2011年1月から1日最大量4,000mg(1回最大量1,000mg)と使用可能な量が増えました。また、静注薬も発売され、みなさんも外来で痛みを訴える患者さんに対して使用していることと思います。高齢者に対しても、肝機能障害やアルコール中毒患者では2,000〜3,000mg/日を超えないことが推奨されていますが、そうでなければ1回の投与量は10〜15mg/kg程度(1,000mgを超えない)が妥当と考えられています。アセトアミノフェン中毒とはアセトアミノフェンは、急性薬物中毒の原因物質として頻度が高く、救急外来でもしばしば遭遇します。最も注意すべきは肝障害であり、アセトアミノフェン中毒で急性肝不全を呈した患者の3週間死亡率は27%と非常に高率です1)。そのため、十分量使用しながらも中毒にならないように管理する必要があります。アセトアミノフェンの大部分は肝臓で抱合され尿中に排泄されますが、一部は肝臓で分解され、N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)を生成し、これをグルタチオンが抱合することで尿中に排泄されます。NAPQIは毒性が高いのですが、アセトアミノフェンが適正の量であれば、グルタチオンによって解毒されます。しかし、過剰量の場合には、グルタチオンが枯渇し、正常の30%程度まで減少するとNAPQIが蓄積、肝細胞壊死へと進行してしまいます2)。そのため、アセトアミノフェンを過剰に摂取した場合には、グルタチオンを増やすことが必要になるわけです。NACとは中毒診療において重要なこととして、拮抗薬の存在が挙げられます。拮抗薬が存在する薬剤は限られるため頭に入れておきましょう(参考:第7回 意識障害その6 薬物中毒の具体的な対応は?)。アセトアミノフェンに対する拮抗薬はN-アセチルシステイン(NAC)です。NACは、グルタチオンの前駆体であり、中毒症例、特に肝細胞壊死へと至ってしまうような症例では必須となります。タイミングを逃さず、NACの投与が開始できれば肝不全は回避できます。ちなみにこのNAC、投与経路は経口です。静注ではありません。臭いをかいだことがある人は忘れない臭いですよね。腐った卵のあの臭い…。NACはいつ投与するかそれではいつNACを投与するべきでしょうか。アセトアミノフェンの血中濃度が迅速に判明する場合には、その数値を持って治療の介入の有無を判断することがある程度することが可能です。ちなみに、アセトアミノフェン摂取後の経過時間を考慮した血中濃度で判断する必要があり、内服直後の数値のみをもって判断してはいけません。一般的には4時間値が100μg/mLを超えているようであればNAC開始が望ましいとされます(以前は150μg/mLでしたが、肝障害発症の予防を強固に、そして医療費の削減のため基準値が下げられました)。“Rumack-Matthewのノモグラム”は有名ですね2)。そのため、摂取時間を意識した測定、経過観察が大切です。測定が困難な場合には、内服した量から推定するしかありません。アセトアミノフェンを150mg/kg以上(50kgであれば7,500mg)服薬していた場合にはNAC療法が推奨されます。この7,500mgという量をみてどのように思いますか? 前述した通り、アセトアミノフェンの1日の最大投与量として許容されている量は4,000mgです。中毒量が目の前に存在することがよくわかると思います。痛みに悩む患者さんは多く、処方されている薬を飲み過ぎてしまうと、簡単に中毒量に達してしまう可能性があるため注意が必要なのです。1箱飲んだら危険製品にもよりますが、アセトアミノフェンが含有される風邪薬や頭痛薬など鎮痛薬と称される市販薬は、1錠に含まれるアセトアミノフェンは80~200mg程度と少量の物が多いのですが、1箱80錠のものも存在します。また、インターネット上で購入しようと思えば500mg錠100錠など、中毒量を購入することは簡単にできてしまうのが現状です。初療時のポイントは、本症例のように嘔気・嘔吐を認める患者など過量内服患者を拾い上げること、そしてNACの適応となり得る量を内服していないかを血中濃度や推定内服量から見積もり判断することです。さいごにアセトアミノフェンは使用し易く、処方する機会は多いと思います。しかし、使用方法を間違ってしまうと肝不全へ陥ってしまう可能性のある恐い薬でもあります。安全な薬というイメージが強いかもしれませんが、いかなる薬もリスクであるため、処方する際には正しい内服方法を丁寧に患者さんに説明しましょう。また、過量内服患者ではNACの適応を理解し、肝障害を防ぎましょう。1)Ostapowicz G,et al. Ann Intern Med. 2002;137:947-954.2)Heard KJ. N Engl J Med. 2008;359:285-292.

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双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」【下平博士のDIノート】第56回

双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」今回は、抗精神病薬/双極性障害のうつ症状治療薬「ルラシドン塩酸塩(商品名:ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、長期間の治療が必要な統合失調症や双極性障害のうつ症状の患者に対し、忍容性を保ちながら適切な治療効果を維持することが期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月11日より発売されています。<用法・用量>《統合失調症》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回、食後に経口投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は80mgを超えることはできません。《双極性障害におけるうつ症状の改善》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20mgから開始し、1日1回、食後に経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、増量幅は20mgとして、1日量60mgを超えることはできません。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象876例中338例(38.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、アカシジア75例(8.6%)、悪心40例(4.6%)、統合失調症29例(3.3%)、傾眠28例(3.2%)、頭痛、不眠症各25例(2.9%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、遅発性ジスキネジア、高血糖、白血球減少(いずれも1%未満)、悪性症候群、痙攣、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、肺塞栓症、深部静脈血栓症、横紋筋融解症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻覚、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげ、また、双極性障害におけるうつ症状を改善します。2.薬の飲み始めや増量した時期に低血圧が起こることがあります。眠気が出たり、注意力・集中力・反射運動能力が低下したりすることもあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.薬を飲み始めてから、じっとしていられない、興奮が強くなる、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなど、普段と異なる様子がみられた場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.血糖値が上がることがあるので、本剤を服用後に激しい喉の渇きを感じたり、尿の回数や量が増えたりしたら連絡してください。5.動きが遅い、手足の震えやこわばり、呼吸回数の減少、低血圧などが現れたらご相談ください。6.アルコールは薬の効果を強めることがあるので、本剤を服用中は飲酒を控えてください。また、グレープフルーツを含む飲食物によっても、薬の作用が強く現れることがあるので、本剤を服用中は摂取しないよう気を付けてください。<Shimo's eyes>本剤は第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。既存のSDA内服薬としては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、ブロナンセリン(同:ロナセン)、パリペリドン(同:インヴェガ)の4剤があり、本剤が5番目となります。本剤は、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用する一方で、抗ヒスタミン作用や抗コリン作用は少ないと考えられています。そのため、本剤は既存のSDAにはない、統合失調症における幻聴や妄想といった陽性症状、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状の改善のほか、不安や落ち込みといったうつ症状の改善も期待できます。統合失調症患者もしくは双極I型障害うつ患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の忍容性に関して大きな問題は認められませんでした。また、長期投与試験において、統合失調症患者の精神症状に対する効果および双極性障害患者のうつ症状に対する効果は、それぞれ52週にわたり維持されたことが確認されています。2020年5月現在、統合失調症治療薬として、欧米を含む47の国と地域で承認されており、また、双極I型障害のうつ症状治療薬としては米国を含む7つの国と地域で承認されています。海外の最新治療ガイドラインでは、体重増加、糖代謝異常などの代謝系副作用が少ないなどの観点から統合失調症に対して推奨され、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬の1つとして推奨されています。処方時の注意点として、中等度以上の腎機能・肝機能障害のある患者では、投与量の制限があるため、投与量を適宜減量し、慎重に投与することとされています。また、本剤は、1日1回食後に服用することで最高血中濃度が引き上げられ、効果が継続するため、食後投与を厳守する必要があります。なお、本剤と同様に「双極性障害におけるうつ症状」の適応を有するクエチアピンフマル酸塩徐放錠(商品名:ビプレッソ)は就寝前投与なので、服用時点を混同しないように注意しましょう。相互作用としては、CYP3A4の基剤であるため、クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬などのCYP3A4を強く阻害する薬剤や、リファンピシンなどのCYP3A4を強く誘導する薬剤は禁忌です。アルコールやグレープフルーツ含有食品も併用注意になっており、摂取には注意が必要であることを伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ラツーダ錠20mg/ラツーダ錠40mg/ラツーダ錠60mg/ラツーダ錠80mg

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アトピーのそう痒、nemolizumab+外用薬で改善/NEJM

 アトピー性皮膚炎の治療において、nemolizumabと外用薬の併用は、プラセボと外用薬の併用に比べそう痒が大幅に減少し、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアや皮膚科学的生活の質指数(DLQI)も良好であるが、注射部位反応の発現率はnemolizumabで高いことが、京都大学の椛島 健治氏らが実施した「Nemolizumab-JP01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月9日号に掲載された。nemolizumabは、アトピー性皮膚炎のそう痒と炎症に関与するインターロイキン(IL)-31受容体Aのヒト化モノクローナル抗体であり、投与は皮下注射で行われる。本薬は、第II相試験でアトピー性皮膚炎の重症度を軽減すると報告されている。そう痒の低減効果を評価する日本の無作為化第III相試験 本研究は、アトピー性皮膚炎と中等度~重度のそう痒がみられ、外用薬に対する反応が不十分な日本人患者を対象とする16週間の二重盲検無作為化第III相試験で、2017年10月に開始され、2019年2月にデータ解析が行われた(マルホの助成による)。 被験者は、外用薬併用下に、nemolizumab(60mg)を4週ごとに16週まで皮下投与する群、またはプラセボを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは,そう痒の視覚アナログ尺度(VAS)のスコア(0~100点、点数が高いほどそう痒が重度)のベースラインから16週目までの平均変化率とした。 副次エンドポイントは、4週目までのそう痒VASスコアの変化率の推移、EASIスコア(0~72点、点数が高いほど重症)の変化率、DLQIスコア(0~30点、点数が高いほど日常生活への影響が大きい)が4点以下の患者の割合、不眠重症度指数(ISI)スコア(0~28点、点数が高いほど重症)が7点以下の患者の割合、および安全性などであった。有害事象の頻度は同じ、多くが軽度~中等度 215例が登録され、nemolizumab群に143例(年齢中央値39.0歳[範囲:13~73]、男性65%)、プラセボ群には72例(40.5歳[13~80]、67%)が割り付けられた。ベースラインのそう痒VASスコアの中央値は75.4点、EASIスコア中央値は23.2点であった。全例が事前に外用薬の投与を受けており、88%は経口抗ヒスタミン薬を投与されていた。 16週の時点で、そう痒VASスコアのベースラインからの最小二乗平均の変化率は、nemolizumab群が-42.8%と、プラセボ群の-21.4%に比べ有意に改善された(群間差:-21.5ポイント、95%信頼区間[CI]:-30.2~-12.7、p<0.001)。また、4週までのそう痒VASスコアの平均変化率は、nemolizumab群が−34.4%であり、プラセボ群の−15.3%に比し良好であった(-19.3ポイント、-26.6~-11.9)。 16週までのEASIスコアの平均変化率(nemolizumab群:-45.9% vs.プラセボ群:-33.2%、群間差:-12.6%、95%CI:-24.0~-1.3)、16週時にDLQIスコア≦4点の患者の割合(40% vs.22%、17%、2~31)、16週までにDLQIスコアが4点以上低下した患者の割合(67% vs.50%、17%、3~31)、16週時にISIスコア≦7点の患者の割合(55% vs.21%、33%、17~48)も、nemolizumab群で優れた。 有害事象は、両群とも71%で発生した。ほとんどが軽度~中等度で、重度の有害事象はnemolizumab群で3例(メニエール病、急性膵炎、アトピー性皮膚炎)に認められた。薬剤の投与中止の原因となった治療関連有害事象は、nemolizumab群の3例で4件(アトピー性皮膚炎、メニエール病/円形脱毛症、末梢性浮腫)発現した。 最も頻度の高いとくに注目すべき有害事象はアトピー性皮膚炎の増悪で、nemolizumab群で24%、プラセボ群では21%に発現した。注射関連反応の発現率は、nemolizumab群が8%で、プラセボ群の3%よりも高かった。 著者は、「本試験では、16週以降のnemolizumabの効果の持続性と安全性は検討しておらず、これら課題を明らかにするためには、より長期で大規模な試験を行う必要がある」としている。

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CDK4/6i治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん、alpelisib併用が有効性示す(BYLieve)/ASCO2020

 CDK4/6阻害薬を含む治療歴のあるホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対し、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的有効性を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が第II相BYLieve試験の結果を発表した。・対象:CDK4/6阻害薬を含む治療後に増悪した、PIK3CA遺伝子変異陽性、ECOG PS≦2、測定可能病変あるいは溶骨性病変を有する、男性あるいは女性(閉経後/閉経前)のHR+/HER2-進行乳がん患者 ・試験群(コホートA):直前の治療としてCDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)の投薬を受けた患者 alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mgを1サイクル28日でDay1に投与(1サイクル目のみDay1、15)※BYLieve試験ではコホートB(直前の治療がCDK4/6阻害薬+フルベストラントの患者、alpelisib+レトロゾールを投与)およびコホートC(AIで増悪後全身化学療法を受けた患者または直前の治療が内分泌療法だった患者、alpelisib+フルベストラントを投与)についても登録中。今回はコホートAの結果について発表された。・評価項目:[主要評価項目]RECISTv1.1に基づく6ヵ月時点の各コホートでの無増悪生存率[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、PFS2、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2017年8月14日~2019年12月17日に、少なくとも6ヵ月以上の追跡期間のある患者127例がコホートAに登録された(追跡期間中央値は11.7ヵ月)。このうち、PIK3CA遺伝子変異陽性が確認された121例が解析対象とされた。・ベースライン特性は女性が100%、年齢中央値は58歳(範囲:33~83)。白色人種63.8%、アジア人種9.4%、黒色人種4.7%。ECOG PS 0が62.2%であった。・転移病変に対する治療歴数0(術後療法としてCDK4/6阻害薬を投与)が11.8%、1が70.1%、2が16.5%、3が1.6%。転移病変に対する内分泌療法歴数0が11.8%、1が77.2%、2が11.0%であった。・試験登録時のprimary endocrine resistance(転移・再発乳がんに対する一次内分泌療法を開始して6ヵ月以内にPD、または術後内分泌療法を開始して2年以内の再発)症例が20.5%を占めていた。・6ヵ月時点の無増悪生存率は50.4%(95%信頼区間[CI]:41.2~59.6)となり、あらかじめ設定された95%信頼区間の下限(>30%)を超え、臨床的有効性が示された。・PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:5.6~8.3)であった。・ORRは17.4%、CBRは45.5%。CRは0例、PRは21例、SDは55例であった。・Grade 3以上の有害事象は、高血糖28.3%、発疹9.4%、下痢5.5%など。有害事象による治療中止は20.5%で起き、治療中止につながった有害事象で最も多かったのは皮疹であった(3.9%)。・抗ヒスタミン薬を事前に投与されなかった患者(117例)で皮疹が発生しなかったのは53.0%だったのに対し、事前に投与された患者(10例)では70.0%で発生せず、またGrade 3以上の皮疹の発生率も低かった(21.4% vs.10.0%)。同様の傾向がSOLAR-1試験でも観察され、予防的抗ヒスタミン剤が皮疹の発生と重症度を低下させる可能性があることが示唆された。・米国Flatiron Health Foundation Medicineのデータベースを利用した、リアルワールドデータとのマッチド解析の結果、リアルワールドでの標準治療と比較して、コホートAの治療法はPFSを改善した。 SOLAR-1試験において、CDK4/6阻害薬による治療歴のあった少数のサブグループでは、alpelisib併用群で6ヵ月時点の無増悪生存率は44.4%、PFS中央値は5.5ヵ月であった。研究者らは、今回のBYLieve試験からの報告はSOLAR-1試験の結果をサポートするもので、CDK4/6阻害薬治療後のalpelisibとフルベストラントの併用療法が、臨床的に意味のある有効性と管理可能な毒性を示したとまとめている。

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高齢者特有のリスクを考慮した抗ヒスタミン薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第20回

 今回は、抗ヒスタミン薬の追加提案について紹介します。高齢者で抗ヒスタミン薬を選択する際には、鎮静やせん妄などのリスクを十分に考慮する必要があります。経過をフォローすることで、漫然投与も防ぎましょう。患者情報75歳、男性(施設入居)基礎疾患:高血圧症、便秘症訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後3.センノシド錠12mg 1錠 分1 夕食後4.d-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mg 3錠 分3 朝昼夕食後(今回追加)5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 1日2回 全身に塗布(今回追加)6.ジフルプレドナート軟膏 10g 1日2回 体幹部位に塗布(今回追加)本症例のポイントこの患者さんは、全身の乾燥と体幹部に強い痒みを伴う湿疹があり、夜間も痒くて眠れないので飲み薬も出してほしい、という訴えを訪問診療の同行時に聴取しました。そこで医師より、しっかりとした作用が必要なのでd-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mgを1日3回でどうかという相談がありました。ここでの処方薬のポイントは3点あります。1.高齢者における第1世代抗ヒスタミン薬のリスク第1世代の抗ヒスタミン薬は、中枢神経を抑制して鎮静作用が強く生じることがあります。この患者さんが眠れないと訴えたことから、鎮静作用を期待している可能性もありますが、抗コリン作用などに伴う口渇や便秘、認知機能低下、せん妄があり、高齢者ではリスクが大きいと懸念されます。2.第2世代抗ヒスタミン薬の代謝と排泄経路、鎮静作用代替薬として、よりH1受容体に選択的に作用する第2世代抗ヒスタミン薬を検討しました。多くの薬剤が発売されていますが、高齢者では肝・腎機能などの低下を考慮して、安全に使用できる薬剤が望ましいです。また、鎮静の強さも各薬剤で違いがありますので、鎮静作用が比較的弱いフェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチンが適切と考えました。3.併用薬との相互作用相互作用の面では、現在服用中の酸化マグネシウムとフェキソフェナジンは併用注意です。酸化マグネシウムがフェキソフェナジンの作用を減弱させるため候補から外れました。服用回数の少なさも薬剤選択の大きなポイントですが、ロラタジンもエピナスチンも1日1回ですので、今回は腎臓への負担の少ないエピナスチンが妥当と考え、医師に提案しました。処方提案と経過医師には、冒頭の処方内容では、鎮静が強く生じて転倒するリスクがあり、口渇や便秘、認知機能低下、せん妄リスクもあることを伝えました。代替薬として、エピナスチン錠20mg(後発品)を提示し、服用薬との薬物相互作用もなく、腎機能への影響も少なく、服用回数も1回で済むことを紹介しました。医師からは、高齢者での第1世代抗ヒスタミン薬のリスクを軽視するわけにはいかないと返答があり、提案のとおりに変更されました。患者さんはエピナスチン錠を服用開始した翌日の夜には掻痒感が改善し、よく眠れたと聴取することができました。2週間後には皮疹もきれいに治っていたことから、エピナスチン錠を中止し、保湿剤によるスキンケアのみを継続することを医師に提案しました。この提案も採用され、保湿剤のみとなりましたが現在も経過は良好です。抗ヒスタミン薬は漫然と飲み続けているケースも多く見受けられますが、継続的にフォローして、治療終了を判断することも重要と考えます。画像を拡大する※2020年5月時点の薬価※肝・腎:肝機能低下、腎機能低下でそれぞれ血中濃度上昇の可能性あり1)各薬剤のインタビューフォーム2)「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院.3)谷内一彦ほか. 日耳鼻. 2009;112:99-103.

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岡田正人のアレルギーLIVE

第1回 食物アレルギー第2回 臨床免疫第3回 アナフィラキシーショック第4回 鼻炎第5回 薬物アレルギー第6回 アトピー性皮膚炎第7回 蕁麻疹第8回 好酸球増加 岡田正人が帰ってきた!2007年にリリースされた名作『Dr.岡田のアレルギー疾患大原則』を最新の知見を踏まえて全面刷新。白熱教室さながらの熱いレクチャーをご体感ください。外来でよく遭遇するが悩ましい食物アレルギーや即座の対応を必要とするアナフィラキシーはもちろん、花粉症、蕁麻疹、喘息、薬剤アレルギーなど、アレルギー疾患の基本を世界標準の診療を知り尽くしたDr.岡田が圧倒的なわかりやすさでお届けします。第1回 食物アレルギーどの科の医師でも必ず知っておくべきアレルギー診療。その基本をわかりやすくレクチャーします。初回は外来で出会うことも多い食物アレルギーについて。症例ベースに詳しく解説します。第2回 臨床免疫自然免疫と獲得免疫、免疫系のそれぞれの細胞の働き、またそれに伴う疾患、薬剤についてなど‥。免疫についてこんなにわかりやすく解説した番組はこれまでになかったといっても過言ではありません!第3回 アナフィラキシーショックアナフィラキシーショックは、時間との勝負!わずかなためらいや判断の遅れが患者の命にかかわります。即座に判断、対応するための知識をわかりやすく解説します。なぜ、アナフィラキシーが起こるのか、なぜその対応が必要なのかまで、しっかりとカバー。アナフィラキシーに関する疑問や悩みを解決します。第4回 鼻炎今回はアレルギー性鼻炎についてです。アレルギー性鼻炎は、鼻漏、鼻閉、かゆみ、結膜炎などさまざまな症状があります。実は、出る症状(とくに鼻漏と鼻閉)によって、処方する薬が異なってきます。患者の症状に合わせた治療薬と処方方法についてそれぞれの薬の特徴も踏まえ、詳しくわかりやすく解説します。また、効果のある飲み方とその理由など、患者に説明することによって、より効果を高めることができます。次回の花粉症シーズン前に知識を整理してみませんか。第5回 薬物アレルギー今回は薬物アレルギーについて解説します。薬物アレルギーは、100%防ぐことは不可能です。発症したときにできるだけ早く、そして重症化しないように対処しなければなりません。医原性である薬物アレルギーの対処法は、すべての医療者にとって必要なことです。しっかりと理解しておきましょう。一方で、近年、抗菌薬アレルギーに対するオーバーダイアグノーシス(過剰診断)が問題となっています。それにより、本来使うべき薬剤を使用できず、薬剤の効果や耐性菌など、実際の治療への影響を及ぼしています。ならば、どうすればよいのか。岡田正人がわかりやすくお教えします。第6回 アトピー性皮膚炎「アトピー性皮膚炎」当然のように使われるこの言葉ですが、本来の意味だと、実はちょっとおかしいのでは?そう、アトピーで皮膚炎が起こるのではありません。なぜ皮膚炎が起こるのか、起こさないためにはどうすべきか、起こったときの治療方法は、そしてなぜその方法なのか。そのことを患者が理解することが、治療への近道となります。ステロイド・保湿剤の選択、患者への説明の仕方、ステロイドが嫌だという患者への対応など、実際の臨床で行われているDr.岡田のシンプルかつ詳細な治療方法をわかりやすくお教えします。第7回 蕁麻疹今回のテーマは蕁麻疹。蕁麻疹には、抗ヒスタミン薬。それだけ処方すればいいと思っていませんか?確かに抗ヒスタミン薬は有効ですが、それが効かない患者さんもいます。なぜ効かないのかを知っておくと、その後の対応がぐっと楽になります。問診や検査はどうするか、かゆみの鑑別診断は?そして薬剤の処方のしかたや患者さんの納得する説明など、蕁麻疹の診療のノウハウを岡田正人がわかりやすくお教えします。第8回 好酸球増加好酸球が増加する原因はアレルギー、薬剤、寄生虫感染症、膠原病、HES、悪性腫瘍など多岐にわたります。現在では、好酸球の遺伝子異常の検査もできますが、医療経済的なことを考えると、最初から行うものではありません。診察、問診によって、まずは明らかな原因がないかどうかを確認し、そのうえで必要な検査を行うようにしましょう。好酸球の働きや特性を知っておけば、その症状を引き起こす原因と理由がはっきりと理解できるようになります。

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日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」【下平博士のDIノート】第44回

日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」今回は、「エピナスチン塩酸塩点眼液」(商品名:アレジオンLX点眼液0.1%、製造販売元:参天製薬)を紹介します。本剤は、薬剤を高濃度化したことで抗アレルギー作用が長時間持続する1日2回点眼の薬剤であり、アレルギー性結膜炎患者のアドヒアランスと治療満足度の向上が期待できます。<効能・効果>本剤は、アレルギー性結膜炎の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月27日より発売されています。<用法・用量>通常、1回1滴、1日2回(朝、夕)点眼します。<副作用>本剤の臨床試験で安全性解析対象となった総症例189例において、本剤との因果関係が否定できない臨床検査値異常変動を含む副作用として、結膜充血1例(0.5%)が認められました(承認時)。なお、アレジオン点眼液0.05%で報告されている刺激感、異物感、羞明、眼瞼炎、眼痛、流涙、点状角膜炎、そう痒感、眼脂が、その他の副作用として注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アレルギー症状や炎症を引き起こすヒスタミンの働きを抑えるとともに、炎症を誘発する物質の放出を抑えます。2.1日2回の点眼でかゆみを減らします。防腐剤が含まれていないので、コンタクトをつけたままでも使用可能です。3.点眼時に刺激を感じることがあります。症状が強い場合や継続する場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.ほかの点眼薬を併用する場合には、少なくとも5分以上間隔を空けてから点眼してください。<Shimo's eyes>本剤は、2013年から発売されているアレジオン点眼液0.05%の高用量製剤です。「LX」は、Lasting extendという造語に由来し、持続性を意味しています。薬剤の高濃度化により、持続性を向上させたことで、わが国で初めての1日2回点眼の持続性抗ヒスタミン点眼薬となりました。また、防腐剤フリーの点眼薬ということも特徴に挙げられます。アレジオン点眼液0.05%も、防腐剤としてコンタクトレンズへの吸着や角膜上皮障害が問題となる塩化ベンザルコニウムではなく、ホウ酸を使用しています。本剤は、防腐剤フリーでありながら、保存効力試験に適合しているため、開封後28日間は安全に使うことができ、患者さんへの負担が少ない製剤になったと考えられます。参考1)PMDA アレジオンLX点眼液0.1%

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透析皮膚掻痒症は解決に向かうのか?(解説:浦信行氏)-1147

 透析皮膚掻痒症は50~90%の例に認められると報告され、程度が強いものは睡眠障害などで患者のADLを著しく低下させる。従来の対処法には皮膚の保湿や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬などがあるが、効果は限定的で満足な治療効果は得られていないのが現状である。また、腎不全そのものの病態、すなわち尿毒症物質やCa、Pの沈着などの機序も加味することから重症で難治性の症例が多い。 掻痒の機序の一部は内因性オピオイドのβ-エンドルフィンによるμ受容体の活性化であるが、κ受容体がこの作用に拮抗し掻痒を抑制する。このたび報告されたdifelikefalinは選択的κ受容体作動薬である。有効性や有害事象は11月21日配信のジャーナル四天王の記事のとおりである。ただし、週3回透析終了後の回路からの静注で使用するので、腹膜透析患者や保存期腎不全患者には適応しにくい。保存期腎不全でも15~49%に難治性の掻痒症が見られると報告されている。difelikefalinの経口薬が保存期腎不全を対象に、現在第II相で試験が行われているようだ。末梢のκ受容体への選択性が高く、中枢性の幻覚や身体違和感などは見られていないとのことで安全性も高い。 ただし、わが国には10年以上前から同一機序のナルフラフィンが透析患者で保険適応があり、1割以上の症例で使用されている。使用が認められているのがわが国と韓国だけのようであり、その分わが国では有利な状況である。ナルフラフィンの有効率は63.5%という報告があるが、プラセボ対照無作為化二重盲検試験ではなく、しかも評価法も違うことからdifelikefalinと単純に比較はできない。また、わが国の透析患者は透析期間が長く、高齢者が多いことから欧米の透析患者とは病状が異なる。difelikefalinについては、わが国での臨床試験が必要と考えられる。また、いずれの薬剤も現時点では保存期腎不全には使用できない。保存期腎不全での適応に関する試験が行われ、保存期腎不全患者にも恩恵をもたらすことを切に願う。

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第2回 薬局薬剤師のレベルは低すぎる?

第2回 薬局薬剤師のレベルは低すぎる?―薬剤師は保険薬局の仕事を一般的にどう捉えていると感じていますか?鈴木:研修会に来た薬剤師さんとか最近の学生さんが、保険薬局ってDo処方だとやることなくて楽でいいよね、と言っているのを聞いて危機感を感じています。Do処方の裏に隠れている問題を考えたり、なぜDo処方なのか掘り下げて把握したりしているのでしょうか? 降圧薬1個飲むにしたって、普段の血圧がどうなのか、医師がどういう治療方針なのか、食生活や仕事、生活習慣がどう影響しているのかなどを考えることが重要です。渡すだけなら保険薬局薬剤師は不要です。笹川:学生さんに話を聞くと、薬局はレベルが低いと思っていて、病院に行きたがる人が多いです。薬局は6年間の知識を生かすところだとは思われていないようです。鈴木:薬剤師が何をする人なのかまだ把握できていないのでは? 今の薬局薬剤師も自信を持って業務をしていないという自覚があるようで、子供を薬剤師にさせたくないという薬剤師も多いんです。裏には薬剤師なんて…というコンプレックスがあるのでしょう。ただ、実際にたいていの患者さんが薬剤師に求めていることは、いかに早く医師から処方された薬を渡すかということかもしれません。以前、皮膚科と眼科で抗ヒスタミン薬がバッティングしていた患者さんがいたんですが、診察時に他科の処方を伝えたか聞いても、「話してない。なんか悪いの? それより早くしてよ」と言われ、そのまま渡すわけにはいかないので疑義照会して1剤減らしていたら、「あと何分?」とかしつこく言われたことがあります。かなり腹が立ったんですが、普段この人たちが行く薬局には、懇切丁寧な説明や状況把握を心掛けているのではなく、とにかく薬を渡すことと調剤スピード命の薬剤師しかいないんだろうなと思いました。現時点では臨床的なレベルが低いと思われても仕方がないような仕事ぶりの薬剤師も多いような印象を受けています。山﨑:人は起こらなかったことにはありがたみを感じにくいので、事故や重複服用を未然に防ぐという薬剤師の職能について理解しづらいという構造的な課題もあるように思います。万一の話ですが、患者さんからすれば、たとえば抗ヒスタミン薬がバッティングして抗コリン性の副作用で痙攣を起こして搬送されるリスクなど夢にも思わないでしょうし。すでに困っていて、それを解消できたら感謝されるのかもしれませんが。―今、薬局薬剤師に求められているスキルは何だと思いますか?笹川:今、薬剤師に求められているのはコミュニケーション能力でしょう。でも、人と話すのが苦手と平気で言う薬剤師が多いんです。患者さんと話をするのが仕事なのですから、心では思っていても口には出さないでほしいなと思います。調剤だけをするのが薬剤師だとでもいまだに思っているのでしょうか?山﨑:話すのが苦手だと思っていた人がうまくいったときのほうが喜びは大きいので、成功体験があれば変わるのではないでしょうか? 話しやすい患者さんと会話するところから始めて自信をつけてもらったり、アドバイスを周りから提案してみたりするなど、ちょっとしたきっかけやアシストで覚醒される薬剤師もいらっしゃいます。鈴木:話をせざるを得ない環境に置いてもいいかもしれません。私は学生さんの実習では在宅に連れて行くようにしています。担当(役割)を持たせることによって責任感も持ちますし、今起きている問題は何か考えるよい機会になります。在宅だと何回もフォローできますので、どんどん情報をもらってきて、患者さんが抱えている問題は何か教えて、っていう課題を与えるとやりがいを持ってもらえますよ。薬局薬剤師に必要なスキルは、臨床推論を活用して目の前の患者さんに何が起きているかを把握・言語化して、多職種と共通言語でコミュニケーションがとれることだと思っています。大学で学んできたことや薬剤師スキルをフル活用できる場はいくらでもあるので。チェーンと個店、どっちの薬剤師が幸せか?―チェーン薬局と個店の違いはどう感じていますか?山﨑:それぞれ良いところがあると思います。チェーンは体系的な学びや発表の機会を得やすかったり、社内キャリアの幅があったりするのがメリットかと思います。病院実習の機会が設けられたり、抗がん剤の知識をしっかり習えたり、社内学習コンテンツがあったりさまざまのようです。個店でもできるところはあると思いますし、チェーン顔負けの魅力的な取り組みをされているところもあるのですが、そうした機会のバラつきが大きいとは感じています。薬歴の記入の仕方でも、記入する基準・必要性を考えさせたり、服薬指導で必要なことを考えさせたりする研修もあります。外国語が得意な人は語学力を生かせる立地に配属させてもらって経験を積めたりもするそうです。笹川:私はチェーン薬局のあり方には問題を感じています。チェーンでは異動がつきものですが、3年程度で異動するのであれば患者さんを長くみることはできません。病院はともかく開業医の先生は何十年もその患者さんを担当しているのに、薬剤師は3年ごとに変わるんだったらどちらを信頼するかは考えるまでもないでしょう。医師からの信頼も同様です。10年担当するからこそ見えてくるものってありますよ。地域密着型薬局と地域にあるだけの薬局では意味が全然違います。薬剤師が行きつくところはド地域密着しかないと思っています。山﨑:ファンがつくまでって時間がかかりますよね。2~3年で異動していたらそれは難しいかもしれませんね。鈴木:チェーンに就職する学生さんに話を聞くと、チェーンは教育がしっかりしているからそこに決めたという話をよく聞くんです。やはり個店よりも職場環境や教育環境は手厚いんでしょうね。山﨑:いいスーパーバイザーやエリアマネジャーがいる薬局は全然動きが違いますね。もちろん人の資質によるところはありますし、個店でもそういう側面はあると思いますが、全国チェーンだと全国規模の情報が手に入って、こういうことをすべきだという情報も社内で手に入ることがあります。集合知のようなものがありそうというイメージや説明会などで目につくなどの事情で学生さんがチェーンを選択されるのかもしれません。笹川:未来というか、社内キャリアの見通しがききやすいというメリットはあると思います。山﨑:少し先の未来像が先輩を通してイメージできて、それがご自身の理想にそぐわないと辞めてしまう方もいるようです。かかりつけなど課せられたノルマがご自身の考えに合わないと漏らされる方もいます。笹川:数百人からかかりつけの同意書をとったからといって偉いわけではないでしょう? 質を担保することが目的なので、数字に意味はないと思います。何もしなくてもかかりつけ薬剤師を名乗れるのは疑問です。鈴木:まったく同意見で、同意書をとったから何? という感じですね。その先に何があるのか聞いてみたいです。でも、現状は質よりもとにかく点数を稼げという本部からの圧力が大きいらしいですね。そして圧力に耐えられなくて辞めていくんでしょう。―では、理想の薬局環境とはどのような環境でしょうか?鈴木:私が理想の環境だと思っているのは、尊敬できる先輩や同僚がいることです。キーパーソンではないけれど、導いてくれたり、現場を教えてくれたりする先輩は必要でしょう。薬剤師の仕事の面白さをリアルに伝えてくれる人がいれば、下の子たちも自然と付いてくるのではないでしょうか? この人みたいになりたいとか、学会に行ってみたいとか、こんな仕事がやりたいとか。ちなみにうちの薬局は尊敬できるそんな仲間が多いです(笑)。山﨑:Musubi(株式会社カケハシの電子薬歴システム)の導入施設を見ていて、うまくいっている薬局で明確に共通しているのはそういうリーダーシップを発揮している方がいることですね。当たり前にすごい業務ができる人がいると、周りの人の仕事の基準も変わってくるようです。鈴木:自分にもできるかもしれないっていうのは大きいポイントですよね。あと、仲間がいないと孤独ですよ。仲間がいると同じ方向に向かって頑張れるので、環境としてはベストかなと思います。尊敬できる先輩や仲間がいる薬局のほうが絶対に楽しめます。笹川:医師の世界では誰々先生に師事しましたっていうのはよく聞きますが、薬剤師の世界ではそういう話はあまりないですよね?鈴木:医師は研修期間が年単位であるので、尊敬できる先輩に付くことができれば身近で見ることのできるいい環境だと思います。薬剤師はそういう教育の部分が弱いので、教育の仕組みを作って、薬局でもしっかり勉強できるということをアピールしたら、学生さんも薬局の活動やすごい先輩がいるということを知って変わってくるのではないでしょうか?山﨑:確かに薬局に尊敬できる先輩がいたことはモチベーションになっていました。逆に、そういう環境がない中で仕事にやりがいを持てないとか、異動が多いといった理由から地域密着で活躍している個店に転職を検討される方もいます。ただ、よい個人薬局をネットで探そうとしてもなかなか見つけられないので「紹介してください」と言われることもあります。薬局側も地域での活動を際立たせてPRする戦略が必要かもしれません。笹川:個店でもホームページを作って、アピールしたほうがいいですよ。個店だからと縮こまらないで、コラムを書いたり、講演会をしたりして薬局薬剤師もどんどん発信していく必要はあるでしょうね。これからは薬局単位よりも個々の薬剤師の活動を発信していく時代だと思います。―次回は、薬剤師の知識の得方や発信の方法について伺います。

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新しい抗うつ薬の出現(解説:岡村毅氏)-1117

 まったく新しい機序の抗うつ薬に関する臨床からの報告である。まずは抗うつ薬についておさらいしてみよう。1999年にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使えるようになり、うつ病の薬物療法に革命的な変化が起きた。それまでの古典的抗うつ薬には抗コリン作用(便秘など)や抗ヒスタミン作用(眠気など)などが伴ったが、SSRIには消化器症状(吐き気など)以外は比較的少なかったからである。 また、このころ(製薬業界にとっては黒歴史かもしれないが)うつはこころの風邪というキャンペーンがなされたりして、精神科・心療内科の敷居がずいぶん低くなった。うつはこころの風邪という言説は、今ではすっかり疾病喧伝(薬を売るために変な宣伝をしたという批判)の文脈で引用されるが、個人的には物事には両面があると思う。今では信じられないかもしれないが、「うつは弱い人がなるものだ」「精神科に行くなんて人生の破滅だ」と信じて、誰にも助けを求められずに重篤化する人もいたので、このキャンペーンによって救われた人もいただろう。 もちろん操作診断が使われるようになり、専門家が経験と知識に基づいて診断する「うつ病」から、いくつかの基準を満たしたときに診断される「うつ病エピソード」として捉えられるようになったことも大きいだろう。 ともあれ、20世紀から21世紀になるころ、うつ病は特殊で恐ろしい精神疾患ではなくなり、僕らの生活世界に現れた。人々は、かつてはそう簡単には「わたし、うつっぽいかも」とは言わなかったが、いまやずいぶん簡単に言うようになった。あれから20年間、いち臨床医としての意見であるが、SSRIが出たときのような革命的変化をもたらした薬剤は出ていない。 これは実は、統合失調症についてもいえる。1996年に同じく副作用が少ない非定型抗精神病薬が使えるようになって(もちろん、ないわけではない)、革命的な変化が起きた。具体的には新たな長期入院者はほとんど見なくなった。その後いくつかいい薬は出たが、破壊的イノベーションは起きていない。そして人々は「トウシツ」などと気軽に言うようになった。 おそらく50年前には、うつ病や統合失調症を経験した友達がいる人は少なかったであろう。今では、たぶん普通のことだ。 いずれにせよ、うつ病の薬物治療は20年程度、革命的な進歩はない。よく言えば漸進している状態である。むしろ、うつ病として治療すべき状態と、そうではない状態(たとえば生活習慣の乱れをまずは治すべき状態)などの、薬物治療以前の仕分けがしっかりなされるようになってきている。また人的資源の少ないわが国でも認知行動療法もようやく行われつつある。修正型電気けいれん療法(m-ECT)もいまや広く行われている。薬物療法以外が拡充しているのだから、健全なことだと思う。 さて、うつ病の薬物治療で現在のところ期待されている薬剤は「ケタミン」と「GABA受容体作用薬」であろう。本論文は、後者についての明らかな臨床効果を報告するものである。 これが、革命を起こしたSSRI以来の20年間に出現した「その他大勢」の新薬の末席に連なることになるのか、ブレークスルーになるのかは、もうしばらく見てみないとわからないだろう。 なお、筆者は抗うつ薬が常に必要だとは思わない。うつ病の治療には薬物治療、精神療法、環境調整の3つの柱があり、とくに軽症の場合は薬物を使わなくてもよい場合も多い。一方で、医学はしょせん人間の営みであり、苦しむ人を支援するためには、3つの柱を総動員しなければならない。また、こころを込めて治療をしても治らないときもある。とはいえ、この3つの柱はがんの「標準治療」みたいなものであり、奇妙な代替療法に患者さんが迷い込まないことを祈りたい。

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第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーはいつでも起こりうることを忘れずに!2)治療薬はアドレナリン! 適切なタイミング、適切な投与方法で!3)“くすりもりすく”を常に意識し対応を!【症例】62歳女性。数日前から倦怠感、発熱を認め、自宅で様子をみていたが、食事も取れなくなったため、心配した娘さんと共に救急外来を受診した。意識は清明であるが、頻呼吸、血圧の低下を認め、悪寒戦慄を伴う発熱の病歴も認めたため、点滴を行いつつ対応することとした。精査の結果、「急性腎盂腎炎」と診断し、全身状態から入院適応と判断し、救急外来で抗菌薬を投与し、病床の調整後入院予定であった。しかし、抗菌薬を投与し、付き添っていたところ、反応が乏しくなり、血圧低下を認めた。どのように対応するべきだろうか?●抗菌薬投与後のバイタルサイン意識10/JCS血圧88/52mmHg脈拍112回/分(整)呼吸28回/分SpO297%(RA)体温38.9℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧内服薬アジルサルタン(商品名:アジルバ)、アトルバスタチン(同:リピトール)アナフィラキシーの認識本症例の原因、これはわかりやすいですね。抗菌薬投与後に血圧低下を認める点から、アナフィラキシーであることは、誰もが認識できると思いますが、「アナフィラキシーであると早期に認識すること」が非常に大切であるため、いま一度整理しておきましょう。アナフィラキシーとは、「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性のアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過剰反応」と定義されます。また、アナフィラキシーショックとは、それに伴い血圧低下や意識障害を伴う場合とされます1)。アナフィラキシーの診断基準は表1のとおりですが、シンプルに言えば、「食べ物、蜂毒、薬などによって皮膚をはじめ、複数の臓器に何らかの症状が出た状態」と理解すればよいでしょう。表2が代表的な症状です。皮膚症状は必ずしも認めるとは限らないこと、消化器症状を忘れないことがポイントです。そして、本症例のような意識消失の原因がアナフィラキシーであることもあるため注意しましょう。表1 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する表2 アナフィラキシーの症状と頻度画像を拡大するアナフィラキシーの初期対応-注射薬によるアナフィラキシーは「あっ」という間!アナフィラキシー? と思ったら、迷っている時間はありません。とくに、抗菌薬や造影剤など、経静脈的に投与された薬剤によってアナフィラキシーの症状が出現した場合には、進行が早く「あっ」という間にショック、さらには心停止へと陥ります。今までそのような経験がない方のほうが多いと思いますが、本当に「あっ」という間です。万が一の際に困らないように確認しておきましょう。一般的に、アナフィラキシーによって、心停止、呼吸停止に至るまでの時間は、食物で30分、蜂毒で15分、薬剤で5分程度と言われていますが、前述のとおり、経静脈的に投与された薬剤の反応はものすごく早いのです4)。アドレナリンを適切なタイミングで適切に投与!アナフィラキシーに対する治療薬は“アドレナリン”、これのみです! 抗ヒスタミン薬やステロイドを使う場面もありますが、どちらも根本的な治療薬ではありません。とくに、本症例のように、注射薬によるアナフィラキシーの場合には、重症化しやすく、早期に対応する必要があるため、アドレナリン以外の薬剤で様子をみていては手遅れになります。ちなみに、「前も使用している薬だから大丈夫」とは限りません。いつでも起こりうることとして意識しておきましょう。日本医療安全調査機構から『注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析』が平成30年1月に報告されました。12例のアナフィラキシーショックによる死亡症例が分析されていますが、原因として多かったのが、造影剤、そして抗菌薬でした。また、どの症例もアナフィラキシーを疑わせる症状が出てからアドレナリンの投与までに時間がかかってしまっているのです5)。アドレナリンの投与を躊躇してしまう気持ちはわかります。アドレナリンというと心肺停止の際に用いるもので、あまり使用経験のない人も多いと思います。しかし、アナフィラキシーに関しては、治療薬は唯一アドレナリンだけです。正しく使用すれば恐い薬ではありません。どのタイミングで使用するのか、どこに、どれだけ、どのように投与するのかを正確に頭に入れておきましょう。アドレナリンの投与のタイミングアドレナリンは、皮膚症状もしくは本症例のように明らかなアレルゲンの曝露(注射薬が代表的)があり、そのうえで、喉頭浮腫や喘鳴、呼吸困難感などのairwayやbreathingの問題、または血圧低下や失神のような意識消失などcirculationの問題、あるいは嘔気・嘔吐、腹痛などの消化器症状を認める場合に投与します。大事なポイントは、造影剤や抗菌薬などの投与後に皮膚症状がなくても、呼吸、循環、消化器症状に異常があったら投与するということです。アドレナリンの投与方法アドレナリンは大腿外側広筋に0.3mg(体型が大きい場合には0.5mg)筋注します。肩ではありません。皮下注でも、静注でもありません。正しく打てば、それによって困ることはまずありません。皮下注では効果発現に時間がかかり、静注では頻脈など心臓への影響が大きく逆効果となります。まずは筋注です!さいごに抗菌薬、造影剤などの薬剤は医療現場ではしばしば使用されます。もちろん診断、治療に必要なために行うわけですが、それによって状態が悪化してしまうことは、極力避けなければなりません。ゼロにはできませんが、本当に必要な検査、治療なのかをいま一度吟味し、慎重に対応することを心掛けておく必要があります。救急の現場など急ぐ場合もありますが、どのような場合でも、常に起こりうる状態の変化を意識し、対応しましょう。1)日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策特別委員会. アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014.2)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.3)Joint Task Force on Practice Parameters, et al. J Allergy Clin Immunol. 2005;115:S483-523.4)Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000;30:1144-1150.5)日本医療安全調査機構. 医療事故の再発防止に向けた提言 第3号 注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析. 日本医療安全調査機構;2018.

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アナフィラキシーには周囲の理解が必要

 2019年8月21日、マイランEPD合同会社は、9月1日の「防災の日」を前に「災害時の食物アレルギー対策とは」をテーマにしたアナフィラキシー啓発のメディアセミナーを開催した。セミナーでは、アナフィラキシー症状についての講演のほか、患児の親の声も紹介された。アナフィラキシーの原因、小児は食物、成人は昆虫 セミナーでは、佐藤さくら氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)を講師に迎え、「アナフィラキシーの基礎知識とガイドラインに基づく正しい治療法について」をテーマに講演を行った。 アナフィラキシーとは「短時間に全身に現れる激しい急性のアレルギー反応」とされ、その原因として抗菌薬やNSAIDsなどの医薬品、手術関連、ラテックス、昆虫、食物などがある。とくに小児では食物が本症の一番大きな誘因となる(65%)のに対し、成人では昆虫刺傷が一番大きな誘因となる(48%)というデータが欧州では報告されている1)。 日本アレルギー学会が行った「全国アナフィラキシー症例集積研究」(n=767、平均年齢6歳[3~21歳])によれば、本症の誘因は食物(68.1%)、医薬品(11.6%)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:5.2%)の順で多く、誘因が食物の場合、牛乳(21.5%)、鶏卵(19.7%)、小麦(12.5%)の順で発生があったと報告されている。また、アナフィラキシーショックによる死亡は毎年60例前後(多い年は70例超)が報告されている。必要ならば早くアドレナリン筋注を 診断として次の3項目のいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。1)皮膚症状(全身の発疹、瘙痒または紅斑)または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)のいずれかが存在し、急速(数分~数時間以内)発現する症状で、かつ呼吸症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)の少なくとも1つを伴う2)一般的にアレルゲンとなりうるものへの曝露後、急速に(数分~数時間以内)発現する皮膚・粘膜症状(全身の発疹、瘙痒、紅潮、浮腫)、呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)、持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)のうち、2つ以上を伴う3)当該患者におけるアレルゲンへの曝露後の急速な(数分~数時間以内)な血圧低下。具体的には、収縮期血圧の場合、平常時血圧の70%未満、または生後1~11ヵ月まで(<70mmHg)、1~10歳(<70mmHg+2×年齢)、11歳~成人(<90mmHg) 以上の診断のあとグレード1(軽症)、2(中等症)、3(重症)の重症度を評価2)し、それぞれのグレードに応じた治療が行われる。 グレード1(軽症)であれば抗ヒスタミン薬やβ2アドレナリン受容体刺激薬、ステロイド薬が選択されるが、即効性はない。グレード3(重症)ならアドレナリン筋肉注射(商品名:エピペンなど)の適応となる(ただしグレード2[中等症]でも過去に重篤な本症の既往がある、病状進行が激烈な場合、気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸症状では適応となる)。 佐藤氏は、本症の診療では「初期対応が大切で、軽いうちから治療していくことが重要。エピペンの使用率が低く、使用に対する教育・啓発も必要」と説明を行った。災害時の食物アレルギーのリスクを最低限に抑えるために つぎに大規模災害とアナフィラキシーについて触れ、とくに食物アレルギー患者への対応が重要と指摘した。 災害時には、患者の誤食リスクの上昇、アレルギー対応食品の入手困難、症状発症時の治療薬不足、周囲の病気への理解不足などリスクが生じるため、さまざまな対応が必要となる。現在は、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月内閣府作成)などが決められ、避難所にはアルファ米や特別ミルクなどの備蓄と配給上の配慮などが決められている。その一方で、熊本地震でのアレルギー対応食への取り組みについて自治体に聞いたアンケートでは、「十分取り組まれていた」がわずか3.1%など現場への浸透に課題があることも紹介された。 災害時の食物によるアナフィラキシーへの備えとして、地域公的機関での備蓄、ネットワーク作り、病気への理解、アレルギー情報の携帯、発症時の対応、炊き出し原材料の確認、アレルギー表示の確認、自宅での備蓄が必要であり、こうした情報は「アレルギーポータル」などのwebサイト、自治体の各種配布物に記されている。おわりに「こうした媒体で医療者も患者もよく学び、病気への理解を深めることが大切」と語り、佐藤氏は講演を終えた。 続いて、患者会代表の田野 成美氏が、実子の闘病経験を語り、親の目の届かない学校生活での不安や周囲の理解不足による発症の危険性、氾濫する診療情報などの問題点を指摘した。■参考「アレルギーポータル」(日本アレルギー学会)「アナフィラキシーってなあに.jp」(マイランEPD合同会社)

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HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。alpelisib併用群とプラセボ群に割り付け SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。 alpelisib併用療法の主な結果は以下のとおり。・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれalpelisib併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:alpelisib併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。・PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団ではalpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月とalpelisib併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、alpelisib併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。・PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。・日本人集団において、全体集団と比較してalpelisib併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。・alpelisib併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

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不眠症治療薬と自殺未遂リスク

 成人における慢性不眠症の薬理学的治療のためのガイドラインでは、エビデンスが不十分であるにもかかわらず、トラゾドンや他の適応外投与が一般的に行われているとされる。退役軍人保健局(VA)では、ベンゾジアゼピンやゾルピデムに加え、市販の鎮静性抗ヒスタミン薬、古い抗うつ薬などの安価な薬剤が大量に使用されている。これら薬剤の自殺行動に関する安全性の比較については、十分にわかっていない。米国・Canandaigua VA Medical CenterのJill E. Lavigne氏らは、VAにおいて、不眠症治療に一般的に使用されている薬剤の安全性について比較を行った。Journal of General Internal Medicine誌オンライン版2019年6月3日号の報告。 本研究は、傾向スコア一致サンプルを用いた効果比較研究である。対象は、初回薬物投与の12ヵ月前までに自殺念慮または自殺行動が認められず、不眠症治療薬未使用で不眠症を発症し、VAにおいて単剤治療を行った患者。薬物治療後、12ヵ月以内に多剤併用または切り替えを行った患者は除外した。VAでの処方およびデータを用いて、不眠症に対する薬理学的治療を特定した。すべての不眠症治療において、1%以上を占める薬剤は、トラゾドン200mg未満、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、ゾルピデム、ロラゼパム、ジアゼパム、temazepamであった。主要アウトカムは、初回薬物投与から12ヵ月以内の自殺未遂とした。 主な結果は以下のとおり。・基準を満たした患者34万8,449例を、ゾルピデムと一致した薬物クラスにより3つのバランスの取れたコホートを作成した。・投与量、メンタルヘルス健康歴、疼痛薬と中枢神経系薬の投与歴で調整した後、ゾルピデムと比較したハザード比は以下のとおりであった。●トラゾドン200mg未満(HR:1.61、95%CI:1.07~2.43)●鎮静性抗ヒスタミン薬(HR:1.37、95%CI:0.90~2.07)●ベンゾジアゼピン系薬(HR:1.31、95%CI:0.85~2.08) 著者らは「自殺未遂リスクは、トラゾドン200mg未満において、ゾルピデムと比較し、61%高かった。鎮静性抗ヒスタミン薬とベンゾジアゼピン系薬では、有意な差が認められなかった」としている。

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第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、花粉症が増える季節になりました。症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。アレルゲンを防ぐには?アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いた後は外出を避けたり、マスクやメガネ、なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。症状を緩和する食材や栄養素は?n-3系脂肪酸大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。ただし、急性の症状に対して明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそうです。ビタミンEビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、アレルギー性鼻炎患者63例を、ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、症状スコアにも血清IgEにも有意差はありませんでした5)。カゼイ菌アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2~5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52~―0.10)日/年でした。鼻炎にわずかな効果が期待できるかもしれませんが、喘息には有効ではないとの結果です6)。薬物治療の効果は?薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、抗ヒスタミン薬にフォーカスして見ていきましょう。比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。種々の臨床試験から、第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等でビラスチンは1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続を示しています。なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。また、眼のかゆみなど症状がない季節性のアレルギー性鼻炎であれば、抗ヒスタミン薬よりもステロイド点鼻薬の有効性が高いことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、点鼻薬を推奨すべきとするレビューもあります9)。副作用は?抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。インペアード・パフォーマンスは集中力や生産性が低下した状態ですが、ほとんどの場合が無自覚なので運転を控えるようにすることなどの指導が大切です。フェキソフェナジン、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。口渇、乏尿、便秘など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。頻度は少ないですが、第1世代、第2世代ともに痙攣の副作用がWHOで注意喚起されています11)。万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。予防的治療の効果は?季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、症状が出てから服用しても遅くはないと伝えると安心していただけるでしょう。服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。花粉症対策については環境省の花粉症環境保健マニュアルによくまとまっています。また、同じく環境省による花粉情報サイトで各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 200212)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.13)「環境省 花粉情報サイト」

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第20回 小児科クリニックからの セフカペンピボキシル の処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1患児の保護者に確認することは?Q2疑義照会しますか?Q3 抗菌薬について説明することは?今は必要ないかもしれないが、必要になる可能性もあると説明 中堅薬剤師さん(薬局)提示された情報から、ウイルス性感冒(ヘルパンギーナ、咽頭結膜炎など)の可能性は高いと思われますが、溶連菌感染症の可能性もあり、フロモックス®の必要性は否定できません。医師との関係性を壊したくない思いを尊重し、フロモックス®を服用するかどうかの選択も残したいと思います。「今は必要ないかもしれないが、今後、必要になる可能性もある」と説明し、調剤は受けてもらい、フロモックス®以外の対症療法薬で経過観察をするよう助言します。対症療法薬で軽快しないようであれば、溶連菌感染症の可能性があるので、耳鼻咽喉科に相談することを勧めます(小児科には行きにくいでしょうから・・・)。そして、フロモックス®は使わずに残してあることを伝えた上で、今後の対処を相談してもらいます。鑑別が難しいこと、重症化のリスク 奥村雪男さん(薬局)処方医と患児家族の関係を損なわぬよう、「ウイルスが原因となる初期の風邪だと思うが、患児は2歳未満であり、今後咳がひどくなって細気管支炎になると重症化するリスクがある。その場合、ウイルス性か細菌性か明確に鑑別するのが難しいので、効率は良くないが、慣行として抗菌薬をあらかじめ処方することがある」と説明します。低血糖の危険性 中西剛明さん(薬局)未熟児で生まれた子は、筋肉量が少ないことが多く、健常児より低血糖を起こしやすいと言われています。フロモックス®はピボキシル基を有する抗菌薬なので、低血糖の危険があります。出生時体重を参考に、未熟児であれば低血糖の危険について説明します。散剤の与薬の仕方 わらび餅さん(病院)小児病棟で、赤ちゃんへうまく薬を飲ませられない母親を何人も見てきました。理論通りではうまくいかない、赤ちゃんの機嫌に合わせた工夫も必要です。赤ちゃんが9カ月なら、母親の与薬経験が未熟な可能性があるので、薬を飲ませられるか聞いて、それに応じて散剤の与薬の仕方を説明します。フロモックス®は、マクロライドなどに比べるとひどい味ではないですが、飲み残しがないように食前に飲ませていいこと、たくさんの水で溶かないことなどです。鼻水や痰を除去すること JITHURYOUさん(病院)本人が苦しいばかりでなく、細菌の二次感染の引き金になる可能性があるので、鼻水や痰などはできるだけ取るように説明します。Q4 その他、気付いたことは?医療関係者でも知識に乏しいことがある ふな3さん(薬局)発熱(のおそれ)+咽頭炎ということで、溶連菌の疑いがあっての抗菌薬投与なのか、額面通り「二次感染予防」なのか微妙です。それ故、飲ませないという保護者の希望を後押しするかどうか悩ましいところです。「医療関係者」という言葉の範囲には、医師、看護師、薬剤師などの専門職から、受付事務まで非常に幅広く含む場合があります。たとえ医師でも、専門分野以外については知識が浅い場合もあります。こちらが「これくらいは知っているだろう。説明しなくてもいいな」と考えていても、実は相手は、説明を聞きたい、相談したい、と思っている可能性もあります。会話をしながらその辺りの「雰囲気」をくみ取ることは、さじ加減が難しいですが大切だと思います。また「医療関係者」である場合に、「薬歴管理料を算定するか?」という問題も同時に発生します。その医師と完全にツーカーの間柄で、飲み方の指示などを受けているようなら薬歴料は算定しませんし、前述のような「相談したい」というような雰囲気であれば、算定すると思います(今回のケースは患者負担はゼロなので、お会計には影響ないのですが・・・)。フォローアップがあるとすれば、さり気なく保護者に「どちらの病院にお勤めですか?」とか、医師との面会時に「○○さんとは、親しいんですね!」などと、お互いの関係性に"探り"を入れておくと、今後の展開が違うかも・・・と思います。薬剤師も同じ「医療関係者」です。「医師との信頼関係」と同時に、「薬剤師との信頼関係」が築けたらいいな、と思います。Von Harnack表を活用 奥村雪男さん(薬局)フロモックス®の1日量は9mg/kg、ムコダイン®の1日量は30mg/kgで、いずれも体重に比してやや少ないように思います。その他の薬剤は、Von Harnack表※より、6カ月で成人量の1/5、1歳で成人量の1/4なので、概ね妥当な用量だと思います。※成人量を1としたとき、それぞれの年齢での用量の目安。になっている。未熟児新生児6カ月1歳3歳7歳半12歳1/101/81/51/41/31/22/3VON HARNACK GA. Monatsschr Kinderheilkd 1956; 104(2): 55-56.ペリアクチンの副作用 柏木紀久さん(薬局)9カ月というとハイハイやつかまり立ちをする頃なので、ペリアクチンの傾眠によるケガなども心配です。痙攣の閾値も下がるので、鼻水や発赤疹がなければペリアクチンが疑義の対象になると思います。薬剤師も一般への啓発を 荒川隆之さん(病院)私は学校薬剤師として、何度か保護者に「風邪に抗菌薬は不要」という話をしております。北欧やオランダなど薬剤耐性菌の少ない国では、耐性菌に関する国民の知識がしっかりしていると聞きます。日本においても薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなど国がようやく動き出したところですから、我々薬剤師もそれぞれにできることを少しずつやっていくことが大切なのでは、と考えます。1回で飲ませきれない量では 中西剛明さん(薬局)ペリアクチンが処方されていることが気になります。抗ヒスタミン薬を使うと痙攣の閾値が下がるので、発熱している場合は熱性けいれんも含め、痙攣の危険が高まります。数ある抗ヒスタミン薬の中でペリアクチンを選んだ意図がわかりません。加えて、近隣の小児科医は「抗ヒスタミン薬で鼻水が固くなって、鼻づまりが解消しにくくなり困る」と言っていました。あと、7種類の薬剤は出しすぎでは?1回で飲ませ切れない「かさ」になってしまっています。症状に合わせて用量を調節 児玉暁人さん(病院)ムコダインDSの量が少ないですが、症状に合わせているのだろうと考え、これに関しては疑義照会しません。医師の処方意図を理解しておくべき JITHURYOUさん(病院)医師に処方意図の確認が必要だと感じます。抗菌薬が必要ならば薬剤の処方の必要性を患者家族にもきちんと説明しなければいけません。服用しないならば、症状が悪化するリスクもあります。さまざまな可能性のリスク回避をしておきたいという医師の考えがあるのかもしれません。なぜ抗菌薬処方をしたのか、その医師の処方傾向をできれば把握したいです。調剤するだけではなく患者さんと向き合うこと 中堅薬剤師さん(薬局)私は「医師の治療方針に同意していない患者さん」には調剤をしない方針です。ただ、簡単に「調剤をしない」としてしまうと、後で治療する機会を奪うことにもなるので、十分な説明の上、患者さんの意向を尊重して調剤するかどうか決定します。私の経験ですが、「喘息ではないのに吸入を強要された」と言う患者さんがいました。医師法第二十三条に基づいて考えると、処方医は患者が納得する十分な医学的指導をしていない可能性があり、その結果、治療に対して強い拒否を示していると推察しました。ただ、咳喘息の可能性は否定できないので、「使ってみて改善しなければ、呼吸器科以外の医師に相談することをお勧めしたい」と助言しました。治療前から否定するのではなく、治療をしてから継続の可否を判断する方がよいのではないか、と患者さんに話したのです。その後、患者さんから感謝の言葉をいただきました。「医師よりも私の治療に向き合ってくれた気がする」と。同時に、医師はどうして患者側に寄り添って治療を考えてくれないのか、という不満も打ち明けてくれました。ですから、今回の症例は薬剤師はただ調剤すればいいというものではないと、考えさせられる症例だと感じました。医師法第二十三条・・・医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。担当した薬剤師の対応フロモックス®の量が少ないことを疑義照会し、添付文書上の用量まで増量した。また、患児の保護者から、処方箋提出時に「抗菌薬だけ別包にしてほしい」と言われたので、別包にて調剤した。[PharmaTribune 2017年9月号掲載]

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薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

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