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出揃ったC型肝炎治療薬、最新使い分け法

 相次いで有効な新経口薬が登場し、適切に使い分けることでほぼ全例でウイルス排除が可能となったC型肝炎。しかし、陽性患者の治療への移行割合が伸び悩むなど課題は残っており、医師・患者双方が、治療によるメリットと治療法をより正しく認識することが求められている。1月9日、都内で「C型肝炎の撲滅に向けた残された課題と今後の期待~C型肝炎治療の市販後の実臨床成績~」と題したメディアセミナーが開催され(主催:アッヴィ合同会社)、熊田 博光氏(虎の門病院 顧問)、米澤 敦子氏(東京肝臓友の会 事務局長)が講演した。マヴィレットは実臨床でも高いSVRを達成、残された非治癒例とは? 発売から約1年が経過したC型肝炎治療薬マヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル)の虎の門病院における市販後成績は、治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率(SVR12)はすべてのジェノタイプ、治療歴の患者で臨床試験と同様の良好な結果が得られ、有害事象に関しても新たな事象の発現はみられなかった。 ただし、他の直接作用型抗ウイルス療法(DAA)既治療の患者、ならびにジェノタイプ3型感染者については、98.7%、87.5%とSVR12が若干低い傾向がみられている(臨床試験ではそれぞれ93.9%、83.3%)。熊田氏は、この両者への対応について解説した。 まずDAA既治療患者について、ジェノタイプ1型のマヴィレット非治癒例の詳細解析を行ったところ、C型肝炎ウイルスのNS5A領域P32遺伝子欠損という共通点がみつかった。このP32遺伝子欠損の患者には、1月8日に薬事承認されたエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)とリバビリンの併用療法が80%の患者に効果があったと報告されている。「P32遺伝子欠損の患者には、エプクルーサ+リバビリン24週投与が第一選択になるだろう」と同氏。DAA既治療患者のうち、P32遺伝子欠損症例の発現頻度は5%ほどと考えられるという1)。 3型感染者については、日本人では元々非常に少ない(虎の門病院のデータで、1万879例中55例[0.5%])。「マヴィレットで大部分の患者に対応できるが、非治癒だった症例に対しては、ソバルディとリバビリンの併用を24週投与することで治癒する症例が確認されている」と話した。DAA未治療/既治療それぞれのC型肝炎治療薬の使い分け 上記を踏まえ、同氏は虎の門病院で医師間の申し送り時に使用しているという「DAAの使い分け法」を解説。DAA未治療/既治療それぞれの、C型肝炎治療薬の使い分けを以下に紹介する。 [初回・DAA未治療] 慢性肝炎(1型、2型とも)→マヴィレット8週間 肝硬変  代償性→(1型、2型とも)ハーボニーあるいはマヴィレット12週      (1型のみ)エレルサ・グラジナ12週間  非代償性→エプクルーサ12週間 [DAA既治療] 1型  Y93H、L31ダブル耐性あり→マヴィレット12週間*あるいはエプクルーサ  +リバビリン24週間  Y93H、L31ダブル耐性なし→マヴィレット*、ハーボニー、エレルサ・グラジナの  いずれか12週間、あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 *P32欠失例を除く 2型→マヴィレット(ハーボニー)12週間あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間 3型→マヴィレット12週間(ただし、マヴィレット非治癒例にはソバルディ  +リバビリン24週間) 最後に同氏は、C型肝炎ウイルスへの感染が肝臓以外のさまざまな他臓器疾患にも影響を及ぼすことに言及。SVR非達成例では、達成例と比較してCKD発症率が約2.7倍2)、骨粗鬆症症例における骨折の発症率が約3倍3)というデータを紹介し、「糖尿病のコントロール向上に関連するというデータもあり、早いうちにC型肝炎を確実に治療することで、肝外病変に対しても好影響がある。短期間の経口薬投与でこれだけの治療率が達成されているので、他科の先生方もぜひ積極的にC型肝炎チェックを実施して、治療につなげていってほしい」と呼び掛けた。C型肝炎治療は高齢者には難しいという認識が根強いが・・・ 続いて登壇した米澤氏は、東京肝臓友の会にこの1年半ほどの間で寄せられた相談内容をいくつか紹介。「医師から一人暮らしの後期高齢者にそんな治療はしないぞ! と怒られた」「過去にインターフェロン治療を行ったが効かず、治療薬のことを知りかかりつけ医に相談したが、知らないと言われた」などの相談が実際に寄せられているという。 患者側も、自覚症状がなければ治療に踏み切れない事例も多い。「主治医から治療を勧められたが、肝機能はずっと正常値。症状もないので治療はしなくてもいいか?」などで、同氏は「インターフェロン治療の時代が長かったため、C型肝炎治療は高齢者には難しい、あるいは大変な治療という認識が根強くある。またかかりつけ医から専門医への受け渡しがスムーズにいっていない事例もあると感じる」と話した。 なお、肝炎ウイルス検査陽性の場合の精密検査費用の国による助成が、2019年度から民間分も対象になる予定であることも紹介された。

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1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」【下平博士のDIノート】第15回

1日1回1錠で他の抗HIV薬を併用する必要がない「オデフシィ配合錠」今回は、「リルピビリン塩酸塩/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:オデフシィ配合錠)」を紹介します。本剤は、3剤の抗ウイルス薬を配合した1日1回服用のヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症治療薬であり、服薬率が治療の成否に関わるHIV治療において良好なアドヒアランスを維持することが期待されています。<効能・効果>本剤はHIV-1感染症の適応で、2018年8月21日に承認され、2018年9月20日より販売されています。HIV-1の逆転写酵素活性を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人および小児(12歳以上かつ体重35kg以上)には、1回1錠を1日1回食事中または食直後に経口投与します。本剤は、空腹時に服用すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるなどの理由により、「食事中または食直後」となっているので、監査・投薬時には注意が必要です。<副作用>他剤によってウイルス学的に抑制されているHIV-1患者を対象として本剤に切り替えた海外第III相試験では、6.3~12.8%に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主な副作用は下痢、悪心、頭痛、鼓腸、不眠症、異常な夢でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.3種類の抗ウイルス薬でHIVの増殖を抑え、AIDS(後天性免疫不全症候群)の発症・進行を防ぐ薬です。2.飲み合わせに注意すべき薬や食品が多くあるため、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。また、新たに薬を飲み始める場合は、あらかじめ相談してください。3.抗HIV薬は、飲み忘れが繰り返されると、HIVが耐性を獲得して治療に失敗する可能性が高くなりますので、医師の指示どおりに毎日きちんと服用してください。4.抗HIV薬はHIV感染症を根本的に治す薬ではなく、ほぼ生涯にわたって治療を継続する必要があります。5.本剤服用後に、むくみ、尿量減少、全身倦怠感、過呼吸、手足の震え、意識障害などが現れた場合は、ただちに受診してください。6.母乳中に移行することが報告されているため、本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>HIV感染症は抗ウイルス薬を3~4種類併用する抗レトロウイルス療法(ART)が標準治療となっており、強力にHIVを抑制する「キードラッグ」1剤と、キードラッグを補足してウイルス抑制効果を高める「バックボーン」2剤を組み合わせるのが一般的です。本剤は、キードラッグとしてリルピビリン、バックボーンとしてテノホビル アラフェナミドフマル酸(TAF)とエムトリシタビンの3剤が含有されており、1日1回1錠の服用で他の抗HIV薬を併用する必要はありません。本剤は、既存のリルピビリン塩酸塩/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン配合錠(商品名:コムプレラ配合錠)に含まれるテノホビル ジソプロキシルフマル酸(TDF)をTAFに置換した製剤です。TDFとTAFは、どちらもテノホビルのプロドラッグですが、TDFが血漿中で活性体であるテノホビルに変換されるのに対し、TAFは細胞内で変換されるため、テノホビルを効率的に感染細胞内へ送達できます。そのため、TAFは低用量でTDFと同等の抗HIV効果を示すことができると考えられています。TDFを含む抗HIV治療薬では、腎機能障害や骨密度低下について安全性の懸念がありますが、TDFをTAFに置き換えた本剤では、体内への暴露量が減ることなどにより、これらの副作用の軽減が期待されています。相互作用に気を付けるべき薬は複数あり、とくに注意が必要なのはプロトンポンプ阻害薬(PPI)です。PPIの胃酸分泌抑制作用によって胃内pHが上昇すると、リルピビリンの血中濃度が低下する恐れがあるため、併用禁忌となっています。同様の理由から、H2ブロッカーや制酸剤も時間をずらして投与する必要があり、他科からの処方薬やOTC薬にも念入りなチェックが必要です。近年HIV感染症の薬物療法は格段に進化し、適切な治療さえ行っていれば、もはや死の病とは言えなくなりました。しかし、アドヒアランスが非常に重要で、飲み忘れなく続けることが治療の成否に関わることを患者さんに十分に理解してもらうことが大切です。ガイドラインでもアドヒアランスの観点から、新規に治療を開始する患者さんでは1日1回投与の薬剤を積極的に選択するように記載されています。1日1回投与で他の抗HIV薬を併用する必要がない配合剤はすでに4剤発売されていますが、本剤はそれらよりも小さい薬剤であり、患者さんの負担の少ない選択肢が増えたことはHIV感染症の患者さんにとって大きな意義があるでしょう。

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免疫再構築症候群(IRIS)による結核発症・悪化の予防にprednisoneが有効(解説:吉田敦氏)-973

 HIV感染者において、抗ウイルス療法(ART)開始後に併存している感染症が悪化することを経験するが、これはARTによって免疫再構築が生じることによるとされ、免疫再構築症候群(IRIS)と総称されている。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス感染症、結核、クリプトコッカス髄膜炎が代表的であり、これらの感染症を発症した後にARTを開始する際には、IRISによる悪化ないし発症を少なくするために、感染症治療からある程度の時間をおいてからARTを開始するのがよいとされてきた。 しかしながら、ART開始が遅れると免疫低下の強い期間がそれだけ長くなるために、全身状態の改善が遅れたり、他の日和見感染症の発症を招き、ひいては死亡につながる。このためART開始時期については、たとえばニューモシスチス肺炎では治療開始後2週間以内、クリプトコッカス髄膜炎では抗真菌薬開始後5週間以降が目安とされている。ただし結核については開始時期のみならず、IRIS発症予防ないし発症時に用いられるステロイド投与についても議論があった※。またその際、ステロイド投与を避けるべきとされるカポジ肉腫(KS)の合併や悪化にも懸念があった。 今回の試験では、結核治療開始後1ヵ月以内にARTを開始した、CD4陽性リンパ球数100個/μL以下の患者において、ARTと同時にprednisoneを開始し、28日間続け、結核によるIRIS発生率をプライマリーエンドポイントとして評価した。結果としてIRIS発生率はprednisone投与群で有意に低く、さらに合併した場合でもその程度は軽度であった。さらにKS合併率も増加しなかった。 prednisoneの初期投与量は40mg/日であったが、同時に投与されていたリファンピシンとの相互作用を鑑みると、実際の体内濃度はこの半分程度であろう。低用量であるといえ、この量でも効果がみられたことは興味深い。さらにCD4陽性リンパ球数が中央値49個/μLとかなり低下し、ARTをできる限り早く開始すべきである一方、ステロイド投与によるさらなる免疫低下と他の感染症の合併を容易に来しやすい患者群でありながら、日和見感染症を含む他の感染症もKSも増加せず、さらに抗結核薬の副作用の出現も少なかったことは、ステロイドによるIRIS抑制・アレルギー抑制というポジティブな効果が高く発揮された結果といえよう。 本検討の限界として筆者らは、今回の対象者が歩行可能な患者であったことと、死亡率の比較まで行えるほど集団が大きくなかったことを挙げている。入院患者では結核もさらに進行しているのが通常であり、より重症な患者でのIRISによる結核の悪化に対しては、ステロイドの効果は異なる可能性がある。また従来のコンセンサス※は生存率まで含んだものであったので、この点も今後の知見が待たれるところである。なお他論文ではART開始前のIL-6が結核のIRIS発症と相関することが報告されており1)、これをマーカーとしたIRISのハイリスク患者の区別と、ステロイド投与法の工夫も今後検討される課題であろう。※従来では、CD4リンパ球数<50ならば、結核治療開始後2週間以内にARTを開始すると生存率が改善、CD4>50ならば早期のART開始による生存率改善は認められず、中等症~重症結核では結核治療開始後2~4週、重症結核では8~12週でART開始、とされてきた。

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新規抗インフルエンザ薬の位置付け

 インフルエンザの流行期に備え、塩野義製薬が「インフルエンザ治療の最前線」と題したメディアセミナーを都内にて開催した。本講演では、廣津 伸夫氏(廣津医院 院長)が、「抗インフルエンザウイルス薬『ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)』の臨床経験を通じた知見」について語り、「従来の治療薬と同等の立場で選択されるべき治療薬だ」との見解を示した。既存のNA阻害薬と新規作用機序のバロキサビル はじめに、最新のインフルエンザ治療に関する自身の研究成果が紹介された。本人・家族における過去のインフルエンザ感染既往は、ワクチン接種後の抗体価上昇に良好に影響し、ウイルスの残存時間を短縮するという。既存の抗インフルエンザウイルス薬であるノイラミニダーゼ(NA)阻害薬は、薬剤によってウイルスの残存時間への影響が異なり、ウイルス残存時間が短いNA阻害薬ほど、家族内感染率を下げたと報告された。 次に、2018年3月に発売されたバロキサビルについて解説された。バロキサビルは、新規作用機序をもつ抗インフルエンザウイルス薬であり、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し、ウイルスのmRNA合成を阻害することで、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する。 廣津氏は、第II相、第III相、および小児の治験から得られた、バロキサビルの利便性、抗ウイルス効果、安全性についての結果と、自ら携わった治験での臨床経験を語った。バロキサビルはインフルエンザの罹病期間を短縮する バロキサビルの、成人および青少年(12歳以上65歳未満)の患者を対象とした国際共同第III相試験において、A型および/またはB型インフルエンザウイルス感染症患者1,064例を対象とした結果、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間の中央値は、プラセボ群(80.2時間、95%信頼区間[CI]:72.6~87.1)と比較して、バロキサビル群(53.7時間、95%CI:49.5~58.5)で有意に短かった(p<0.0001)。 また、副次評価項目であるウイルス力価に基づくウイルス排出停止までの時間の中央値は、オセルタミビル群(72.0時間、95%CI:72.0~96.0)と比較して、バロキサビル群(24.0時間、95%CI:24.0~48.0)で有意に短く(p<0.0001)、インフルエンザ罹患時にバロキサビルを服用すると、体内のインフルエンザウイルスが早くいなくなる可能性が示唆された。 しかし、オセルタミビルとの比較試験では、主要評価項目の基準となったインフルエンザの7症状(咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさまたは悪寒、筋肉または関節の痛み、疲労感)の消失を基準にした罹病期間はほとんど変わらなかったが、「何よりも治療を受けた患者さんたちの『楽になった』との自覚症状の改善が印象的」と語った。低年齢の小児では、治療後に変異ウイルス発現の可能性 続けて小児(6ヵ月以上12歳未満)のA型および/またはB型インフルエンザウイルス感染症患者104例を対象とした国内第III相試験について、成人を対象とした試験と同様にインフルエンザの罹病期間の中央値を評価したところ、バロキサビル群で44.6時間(95%CI:38.9~62.5)と良好な結果が得られた。 一方で、小児では治療後にバロキサビルに対する感受性低下を示す可能性のある変異ウイルスが観察されており、低年齢(とくに5歳未満)で変異率が高くなるという報告がある。しかし、臨床効果への影響についてはまだわかっていないため、今後の検討が必要であるという旨の提言が日本感染症学会インフルエンザ委員会から出されている。これに対しては、抗体価が高いと、変異のリスクを低下させる可能性があるという治験での結果から、ワクチン接種の効果も期待できるとの見解が示された。 最後に、同氏は「インフルエンザ患者の初診時に、効果、安全性、利便性を考えたうえでの薬剤選択が必要。バロキサビルという新薬の登場で、インフルエンザ診療に新たな選択肢が増えた。バロキサビルの単回経口投与という利便性と、高い有効性と安全性から、従来の薬にとって代わる薬剤になるのではないかと思っている。ただし、変異ウイルスに関しては、今後も十分な観察・注意が必要だ」と講演を締めくくった。

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「かぜには抗菌薬が効く」と認識する患者が約半数、どう対応すべきか

 一般市民対象の抗菌薬に関する意識調査の結果、約半数が「かぜやインフルエンザなどのウイルス性疾患に対して抗菌薬が効く」と誤った認識をしていることが明らかになった。AMR臨床リファレンスセンターは10月30日、「抗菌薬意識調査2018」の結果を公表し、「薬剤耐性(AMR)対策の現状と取り組み 2018」と題したメディアセミナーを開催した。セミナーでは大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院 副院長/国際感染症センター長/AMR臨床リファレンスセンター長)、具 芳明氏(AMR臨床リファレンスセンター 情報‐教育支援室長)らが登壇し、意識調査結果や抗菌薬使用の現状などについて講演した。抗菌薬で熱が下がる? 痛みを抑える? 「抗菌薬意識調査2018」は、2018年8~9月に、10~60代の男女721人を対象に実施されたインターネット調査1)。「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」という質問に対し、94.2%(679人)が「ある(66.7%)」あるいは「あるが詳しくはわからない(27.5%)」と回答した。「抗菌薬・抗生物質はどのような薬だと思うか」と複数回答で聞いた結果、「細菌が増えるのを抑える」と正しく回答した人はうち71.9%(488人)。一方で「熱を下げる(40.9%)」、「痛みを抑える(39.9%)」など、直接の作用ではないものを選択する人も多く、抗菌薬に対する誤った認識が浮き彫りとなった。 「抗菌薬・抗生物質はどのような病気に有用か知っているか」という質問に対しては、「かぜ」と答えた人が49.9%(339人)で最も多く、2番目に多かった回答は「インフルエンザ(49.2%)」であった。正しい回答である「膀胱炎」や「肺炎」と答えた人はそれぞれ26.7%、25.8%に留まっている。「かぜで受診したときにどんな薬を処方してほしいか」という質問にも、30.1%の人が「抗菌薬・抗生物質」と回答しており、“ウイルス性疾患に抗菌薬が効く”と認識している人が一定数いる現状が明らかになった。抗ウイルス薬を約3割の人が抗菌薬と誤解 さらに、抗菌薬5種類を含む全12種類の薬品名を挙げ、「あなたが思う抗菌薬・抗生物質はどれか」と複数回答で尋ねた質問では、多かった回答上位5種類のうち3種類が抗菌薬以外の薬剤であった。最も多かったのは抗ウイルス薬のT(頭文字)で、29.3%(199人)が抗菌薬だと誤解していた。他に、鎮痛解熱薬のL(18.1%)やB(14.4%)も抗菌薬だと回答した人が多かった。 本調査結果を解説した具氏は、「医療従事者が思っている以上に、一般市民の抗菌薬についての知識は十分とは言えず、適応や他の薬剤との区別について誤解が目立つ結果なのではないか。このギャップを意識しながら、十分なコミュニケーションを図っていく必要がある」と話した。 “不必要なことを説明して、納得してもらう”ために 医師側も、一部でこうした患者の要望に応え、抗菌薬処方を行っている実態が明らかになったデータがある。全国の診療所医師を対象に2018年2月に行われた調査2)で、「感冒と診断した患者や家族が抗菌薬処方を希望したときの対応」について聞いたところ(n=252)、「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師が50.4%と最も多かった。「説明して処方しない」は32.9%に留まり、「希望通り処方する」が12.7%であった。 大曲氏は、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを取りまとめる過程で検討したデータからも、感冒をはじめとした急性気道感染症や下痢症など、本来抗生物質をまず使うべきでないところで多く使われている現状が明らかになっている」と話し、必要でないケースでは医師側が自信を持って、ときには繰り返し患者に説明していくことの重要性を強調した。2018年度の診療報酬改定で新設された、「小児抗菌薬適正使用支援加算」3)は、不必要な抗菌薬を処方するのではなく、患者への十分な説明を重視したものとなっている。そのためのツールの1つとして、2017年発行の「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」や、センターが運用している「薬剤耐性(AMR)対策eラーニングシステム」4)などの活用を呼び掛けている。■参考1)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター プレスリリース2)日本化学療法学会・日本感染症学会合同外来抗菌薬適正使用調査委員会「全国の診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査」2018.3)厚生労働省「第3回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 資料5」4)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター情報サイト「かしこく治して、明日につなぐ」 ■関連記事全国の抗菌薬の使用状況が一目瞭然「抗微生物薬適正使用の手引き」完成●診療よろず相談TV シーズンII第30回「抗微生物薬適正使用の手引き」回答者:国立成育医療研究センター 感染症科 宮入 烈氏第32回「『抗微生物薬適正使用の手引き』の活用法」回答者:東京都立多摩総合医療センター 感染症科 本田 仁氏

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第11回 レジパスビル/ソホスブビルの8週、12週、24週投与による有効性の違いは?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 C型肝炎の治療薬は近年急速に充実してきました。そのはしりがアスナプレビルとダクラタスビルの併用療法ですが、すぐにソホスブビル(商品名:ソバルディ錠)がインターフェロン無効例でも高い奏効率を示したことから、画期性加算が100%上乗せされて同薬剤には高額な薬価が設定されました。次いでレジパスビル/ソホスブビル(商品名:ハーボニー配合錠)が発売され、「ジェノタイプ(遺伝子型)1型のC型慢性肝炎において、リバビリン併用なしでSVR12を100%達成」と大きな話題になりました1)。レジパスビル/ソホスブビルも高額な薬価が設定され、IQVIAジャパンの調査によれば、レジパスビル/ソホスブビルは2016年の売上金額第1位でした。その後も、2017年にグレカプレビル/ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット配合錠)が発売され、こちらも2018年の第1・第2四半期で売上金額第1位となっています2)。何かと話題に事欠かないC型肝炎治療薬の中から、今回はレジパスビル/ソホスブビルに関する研究を紹介します。レジパスビル/ソホスブビルの第III相試験には、多施設オープンラベルのランダム化比較試験のION-1、ION-2、ION-33-5)の3つがあります。いずれも18歳以上のジェノタイプ1のC型肝炎患者を対象としており、未治療例、他剤無効例、肝硬変例などの属性の患者ごとにレジパスビル/ソホスブビルあるいはレジパスビル/ソホスブビル+リバビリン併用の効果を、SVR12をプライマリエンドポイントとして検討しています。なお、SVRとはsustained virological response(持続陰性化)の略で、服用終了から12週後にC型肝炎ウイルス陰性(検出限界未満)が確認された場合にはSVR12となり、24週後も陰性が確認された場合にはSVR24となります。それぞれの試験の結果は下表のとおりです。結果から、インターフェロンが無効であった例でも高い奏効率であること、肝硬変例においても有効であることが読み取れます。また、ION-3において肝硬変なしの未治療例の研究では、8週服用と12週服用で大きな差はみられませんでした。本邦では12週服用が原則ですが、英国のNICEガイダンスにおいては、肝硬変を伴わないジェノタイプ1のC型肝炎については8週服用が推奨されています6)。国民保健サービス(NHS)により原則公費負担で提供される英国の医療制度においては、診療ガイドライン作成時に費用対効果も厳しく査定され、期待できる効果に大差がなければ8週で終了というのは経済的にも副作用予防の側面でも合理的なのかもしれません。なお、比較的多くみられた有害事象は、倦怠感や頭痛に不眠、吐き気、無力症、下痢、発疹などでした。これらの試験は肝がんへの進展や総死亡をプライマリエンドポイントとしているわけではないため、厳密には総死亡や肝がん発生率を語ることはできないのですが、SVR12の達成率が高いということはウイルス陰性が長く続くということなので、肝障害の進展抑制が期待できるものと推察されます。ただし、事例として多いわけではないものの、インターフェロンと異なり免疫活性作用が期待できない直接作用型の抗ウイルス薬治療で肝細胞がんの再発が増えた事例も報告されていますから、一定の認識はあってもよいかと思います7)。飲み忘れ時は「気づいた時点で服用」が原則経験上、レジパスビル/ソホスブビルは自己負担の上限はあれど薬価がきわめて高いことや、肝硬変や肝がんに進行させたくないという治療目的から、患者さんが普段以上に相互作用や飲み忘れ時の対応などで慎重になるように思います。レジパスビルは胃内pHの上昇により溶解性が低下するため、添付文書にはH2ブロッカー併用時は同時投与または12時間の間隔を空け、PPI併用時は空腹時に同時服用となっています。酸化マグネシウムは本邦の添付文書には具体的な服用間隔の指示はありませんが、米国の添付文書では4時間の間隔を空けるとあります。飲み忘れて慌てて連絡してくる患者さんもお見かけしますが、メーカーに問い合わせてみると「一般的に飲み忘れに気付いた時点で服用し、その日の服用はそれのみとして、その翌日から従来通りの服用時点で服用する。同じ日に2回分を飲まないという原則を守る。薬を体内から切らさないようにすることが大切」という回答を得たことがありますので参考にしていただければと思います。1)ギリアド ・サイエンシズ株式会社プレスリリース(2015年8月31日付)2)IQVIAジャパン トップライン市場データ3)Afdhal N, et al. N Engl J Med. 2014;370:1889-1898.4)Afdhal N, et al. N Engl J Med. 2014;370:1483-1493.5)Kowdley KV, et al. N Engl J Med. 2014;370:1879-1888.6)NICE guidance Ledipasvir-sofosbuvir for treating chronic hepatitis C7)Reig M, et al. J Hepatol. 2016;65:719-726.8)ハーボニー配合錠 添付文書(2018年2月改訂 第7版)、インタビューフォーム(2018年7月改訂 第8版)9)HARVONI package insert

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抗インフル薬バロキサビルの第II相・第III相試験の結果/NEJM

 合併症を伴わない急性インフルエンザの思春期・成人患者へのバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の単回投与は、症状緩和についてプラセボに対し優越性を示し、投与開始1日後時点のウイルス量低下についてプラセボおよびオセルタミビルに対する優越性が示された。安全性に関する明らかな懸念はなかったが、治療後にバロキサビルに対する感受性の低下を示す知見も観察されたという。米国・バージニア大学のFrederick G. Hayden氏らによる、日本と米国の患者を対象に行った2件の無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年9月6日号で発表された。バロキサビル マルボキシルは、インフルエンザウイルス・キャップ依存性エンドヌクレアーゼ選択的阻害薬。前臨床モデル試験で、既存の抗ウイルス薬では効果が認められない耐性株を含むインフルエンザA型とB型に対して、治療活性が示されていた。20~64歳、12~64歳の合併症のないインフルエンザ患者を対象に試験 研究グループは、合併症のない急性インフルエンザを発症し、それ以外は健康な患者を対象に2つの無作為化試験を行った。1つ目は、2015年12月~2016年3月にかけて20~64歳の日本人成人を対象に行った、第II相の二重盲検プラセボ対照無作為化用量範囲探索試験。被験者を4群に分け、バロキサビルを10mg、20mg、40mg、プラセボをそれぞれ単回投与した。 もう1つの試験は、2016年12月~2017年3月にかけて、インフルエンザ様症状で外来受診した12~64歳の米国人・日本人を対象に行った、第III相の二重盲検プラセボ/オセルタミビル対照無作為化試験「CAPSTONE-1」。20~64歳の被験者を無作為に3群に分け、バロキサビル(体重80kg未満は40mg、体重80kg以上は80mgを1回)、オセルタミビル(75mgを1日2回5日間)、プラセボをそれぞれ投与した。12~19歳の患者は、2対1の割合で無作為に割り付けてバロキサビルまたはプラセボを投与した。 有効性の主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)感染集団におけるインフルエンザ症状緩和までに要した時間だった。バロキサビル群がプラセボ群よりも23.4~28.2時間早く症状が緩和 第II相試験では、症状緩和までの時間中央値は、バロキサビル群がプラセボ群よりも23.4~28.2時間短かった(p<0.05)。 CAPSTONE-1試験では、ITT感染集団1,064例のうち、インフルエンザA型(H3N2)感染が各群で84.8~88.1%に認められた。症状緩和までの時間中央値は、プラセボ群80.2時間(95%信頼区間[CI]:72.6~87.1)に対し、バロキサビル群53.7時間(同:49.5~58.5)だった(p<0.001)。また、バロキサビル群では、プラセボ群やオセルタミビル群と比べ、レジメン開始1日後のウイルス量が有意に減少した。 なお、バロキサビル群とオセルタミビル群の症状緩和までの時間中央値は類似していた。 有害事象の発生は、バロキサビル群20.7%、プラセボ群24.6%、オセルタミビル群24.8%で認められた。バロキサビルへの感受性低下につながるI38T/M/F置換を伴うポリメラーゼ酸性蛋白領域の変異は、第II相試験とCAPSTONE-1試験で、それぞれバロキサビル投与例の2.2%と9.7%で認められた。

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50歳以上の帯状疱疹はワクチンで予防

 2018年7月19日から3日間、都内で日本ペインクリニック学会 第52回大会「あなたの想いが未来のペインクリニックを創る-専門性と多様性への挑戦-」が開催された。本稿では、7月20日のシンポジウム「帯状疱疹関連痛の治療、予防の未来を考える」から、木村 嘉之氏(獨協医科大学 麻酔科学講座 准教授)が発表した「帯状疱疹関連痛の疫学と予防」について、概要を紹介する。PHNは、痛みの期間が長いと発症リスクが上がる 帯状疱疹は、初感染を経て細胞に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが何らかの原因により再燃することで発症し、これに起因した一連の痛みは、帯状疱疹関連痛と呼ばれている。帯状疱疹関連痛は、皮疹による痛み(侵害受容性疼痛)と、帯状疱疹後神経痛(神経障害性疼痛)に分けられ、病期に伴い痛みの性状は変化していく。 帯状疱疹の発症数は近年増加傾向にあり、わが国では、50歳以上で帯状疱疹の罹患率が上昇するという報告がある1)。とくに皮膚症状・疼痛が中等度~重症の患者では、痛みが遷延し、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行することがあり、海外では、50歳以上の帯状疱疹患者の18%がPHNを発症すると報告2)されている。 PHNのリスクは、重症度、年齢、ウイルスの感染部位などによって異なるが、痛み治療の遅れがPHN発症につながる可能性も指摘されている。PHNは、長期に続く痛み・かゆみが患者のQOLを大きく低下させるため、帯状疱疹の予防と適切な治療の早期導入が重要だ。PHNの予防には、帯状疱疹ワクチンが有効 PHNの予防として、木村氏は、まず水痘にならないこと、そして帯状疱疹を発症させないことを強調した。患者に水痘罹患歴がない場合は、水痘ワクチン接種で発症を予防できる。水痘に罹患しなければ、ウイルスの潜伏もなく、将来的な帯状疱疹の発症はないと考えられる。 水痘ワクチンは2014年から定期接種の対象になっているため、近年患者数は激減しているが、成人の90%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスへの感染歴がある3)という。よって、この集団における将来的な帯状疱疹発症の予防が急務となる。同氏は、高齢者が水痘患者と接する機会が減ったことで、追加免疫効果を得られず、帯状疱疹ウイルスに対する抗体価が低下している可能性を指摘する。そこで推奨されるのが、帯状疱疹ワクチンだ。水痘の感染歴がある場合でも、ワクチン接種で抗体価をあげることによってウイルスの再活性化を予防できるという。 また、帯状疱疹の予防には、日常生活の中で、免疫力の低下(過度のストレスや体力低下など)を避けることも大切だ。同氏は、「50歳以上の患者さんには、帯状疱疹・PHNの予防策として、水痘・帯状疱疹ワクチンを推奨する必要がある」と強く訴えた。 なお、帯状疱疹が発症してしまった場合、PHNなど痛みの遷延化を防ぐためには、早期診断、抗ウイルス薬の投与とともに、痛みに対する適切な治療を開始することが重要となる。 海外では、ワクチン接種がPHNへの移行を予防する可能性が報告4)されている。わが国では、帯状疱疹ウイルスワクチン(生ワクチン)が発売されており、任意で接種を受けることができる。なお、2018年3月にはサブユニットワクチンが承認されており、発売が待たれる。〔8月13日 記事の一部を修正いたしました〕■参考1)国立感染症研究所 宮崎県の帯状疱疹の疫学(宮崎スタディ)2)Yawn BP, et al. Mayo Clin Proc. 2007;82:1341-1349.3)国立感染症研究所 感染症流行予測調査グラフ 抗体保有状況の年度比較「水痘」4)Izurieta HS, et al. Clin Infect Dis. 2017;64:785-793.日本ペインクリニック学会 第52回大会■関連記事こどもとおとなのワクチンサイトが完成

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抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ高リスク患者にも良好な成績(CAPSTONE-2)/シオノギ

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功)は、重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象としたバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の第III相臨床試験(CAPSTONE-2)において、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復するまでの時間)がプラセボに対する優越性を示し、本試験の主要目的を達成したと発表。また、主要副次評価項目である抗ウイルス効果(ウイルス排出期間の短縮や体内ウイルス量の減少効果など)においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示した。さらに、インフルエンザ関連合併症の発現率をプラセボに対して有意に低下させた。一方,本試験での本薬の忍容性は良好であり、安全性について懸念は示されなかった。本試験の詳細な結果は、今後学会にて発表する予定。 バロキサビル マルボキシルは、新しい作用機序であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、これによりインフルエンザウイルスの増殖を抑制する。すでに実施した、重症化および合併症のリスク要因をもたないインフルエンザ患者を対象とした第III相臨床試験(CAPSTONE-1)においても、インフルエンザ罹病期間がプラセボに対して有意に短縮し、ウイルス排出期間および体内ウイルス量などの抗ウイルス効果においても、プラセボおよびオセルタミビルに対する優越性を示している。 同薬は、2018年2月23日に日本国内で製造販売承認を取得し、成人および小児におけるA型およびB型インフルエンザウイルス感染症を対象に販売されている。米国では、2018年4月24 日に、12歳以上の急性の合併症のないインフルエンザウイルス感染症を適応症として、米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請を行い、受理されている。■関連記事新規抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」発売

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天然痘の治療薬登場か/NEJM

 1980年、天然痘の撲滅が宣言されたが、天然痘ウイルス(VARV)は依然として存在する。米国・SIGA Technologies社のDouglas W. Grosenbach氏らは、天然痘の治療薬として経口tecovirimatの検討を行い、2つの動物モデルにおける有効性と、ヒトでの安全性を確認したことを、NEJM誌2018年7月5日号で報告した。天然痘に対する有効な治療はないため、tecovirimatの開発が進められている。天然痘が自然に発症する状況での臨床試験は実施できないことから、有効性と安全性を評価する他の開発法が必要とされていた。非ヒト霊長類、ウサギ、ヒトで有用性を評価 研究グループは、非ヒト霊長類(サル痘)およびウサギ(ウサギ痘)モデルにおけるtecovirimatの有効性を検討し、ヒトにおける同薬の臨床試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 本研究は、専門家諮問委員会が天然痘の治療用に解釈した、米国食品医薬品局(FDA)の動物における有効性の評価規則に従い行われた。また、成人ボランティア449例において、プラセボを対照とした薬物動態と安全性の試験を実施した。天然痘に有効な抗ウイルス薬となる可能性 サル痘モデルで90%以上の生存を達成するのに要するtecovirimatの最低用量は、10mg/kg体重の14日間投与であった。ウサギ痘モデルで同程度の効果を得るのに要する用量は、40mg/kgの14日間投与であった。 体重1kg当たりの有効用量の値はウサギのほうが高かったが、曝露量は低かった。定常状態の最高濃度(Cmax)、最低濃度(Cmin)、平均濃度(Cavg)の平均値は、ウサギではそれぞれ374ng/mL、25ng/mL、138ng/mL、非ヒト霊長類では1,444ng/mL、169ng/mL、598ng/mLであった。また、24時間の濃度-時間曲線下面積(AUC0-24hr)は、ウサギが3,318ng×時間/mL、非ヒト霊長類は14,352ng×時間/mLだった。 これらの知見から、ヒトで必要な薬物曝露量を推定するには、非ヒト霊長類のほうが、より保守的なモデルであることが示唆された。 ヒトでの試験(年齢中央値:39.0歳[範囲:18~80]、男性:41%)には、600mgの1日2回、14日間投与が選択され、非ヒト霊長類を上回る曝露量がもたらされた(定常状態のCmax:2,209ng/mL、Cmin:690ng/mL、Cavg:1,270ng/mL、AUC0-24hr:30,632ng×時間/mL)。 試験期間中に、tecovirimat群の134例(37.3%)に318件の重篤でない有害事象が発現し、このうち71例(19.8%)、176件が試験薬関連であった。試験薬とは関連しない肺塞栓症で1例が死亡した。問題となる有害事象のパターンは認められなかった。 著者は、「これら動物およびヒトに関する試験結果は、全体として、天然痘の抗ウイルス薬としてのtecovirimatの有用性を支持するものである」としている。

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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C肝に8週投与でSVR99%:マヴィレット第III相試験/NEJM

 肝硬変を伴わないC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型または3型感染患者において、グレカプレビル・ピブレンタスビル合剤(商品名:マヴィレット配合錠)の1日1回8週間治療および12週間治療のいずれについても、高率の持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成(それぞれ99%、95%)したことが、ドイツ・フランクフルト大学病院のStefan Zeuzem氏らが行った検討の結果、示された。NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬グレカプレビルとNS5A阻害薬ピブレンタスビルは、すべてのHCV遺伝子型(1~6型)に活性を示し、耐性に対して高いバリアを持つ直接作用型抗ウイルス薬である。両薬合剤の第II相試験では、12週間治療のSVRが全遺伝子型で93%以上を達成し、1/3型のSVRは97%を示していた。NEJM誌2018年1月25日号掲載の報告。グレカプレビル300mg+ピブレンタスビル120mgを遺伝子型1/3型感染患者に 大半のHCV感染患者への治療レジメンは12週間である。しかし、患者のアドヒアランスは、8週間を過ぎると下がる可能性があり、服薬期間はできるだけ短いほうがアドヒアランスを改善することが示唆されていた。 研究グループは、2件の第III相多施設共同無作為化非盲検試験(ENDURANCE-1試験とENDURANCE-3試験)にて、肝硬変を伴わないHCV遺伝子型1/3型感染患者に対するグレカプレビル300mg+ピブレンタスビル120mgの、8週間治療および12週間治療の有効性と安全性を評価した。 ENDURANCE-1試験では、1型感染患者を対象にグレカプレビル・ピブレンタスビルの8週間治療と12週間治療の有効性と安全性を比較評価した(割り付け1対1)。ENDURANCE-3試験では、3型感染患者を対象にグレカプレビル・ピブレンタスビルとソホスブビル・ダクラタスビル(SOF+DCV)の有効性と安全性を比較検討した(治療は12週間、割り付けは2対1)。さらに、3型感染患者を追加登録し、非無作為にてグレカプレビル・ピブレンタスビルの8週間治療を受ける群に割り付けた。 主要評価項目は、治療終了後12週時点のSVR(SVR12)とした。SVR12、95~99.1% 2015年10月21日~2016年5月4日に1,051例が無作為化治療を受けた。その内訳は、1型で8週間治療群351例、1型(352例)/3型(233例)の12週間治療群585例、3型で12週間SOF+DCV治療群115例であった。また、追加登録(非無作為割り付け)の3型で8週間治療群は157例で、総計1,208例の患者が試験治療を受けた。 SVR12は、1型8週間治療群が99.1%(95%信頼区間[CI]:98~100)、1型12週間治療群は99.7%(95%CI:99~100)であった。3型8週間治療群は95%(95%CI:91~98)(149/157例)。3型12週間治療群は95%(95%CI:93~98)(222/233例)、3型で12週間SOF+DCV治療群は97%(95%CI:93~99.9)(111/115例)であった。 なお、治療中止に至った有害事象の発生は、いずれの治療群でも1%以下であった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第42回

第42回:水痘/帯状疱疹、50歳以上にワクチン接種勧めますか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 今回のテーマは水痘/帯状疱疹です。日本では2014(平成26)年10月から水痘ワクチンが定期接種化(生後12~36ヵ月)されています。先日も6歳の子が水痘で受診されましたが、接種していなくて未発症の姉は予防接種すべきか、担がん患者の祖母は接種したほうがよいか、非常に迷いました(50歳以上の接種で帯状疱疹を予防するエビデンスあり)。身近な問題ながら、わからないことが多いのが、水痘/帯状疱疹です。 以下、Am Fam Physician.11月15日号1)より帯状疱疹は、水痘ウイルスの再活性化(reactivation)で発症する。米国では年間100万人発症し、その人が生涯発症するリスクは30%程度とされている。家庭医の診療ベースでは、人口1,500人当たりで年間2~3例が発症し、体液性免疫が低下している人に関しては、そのリスクが20~100倍まで跳ね上がる。発疹の2~3日前に、全身倦怠感、頭痛、発熱、腹部の皮膚の違和感があるが、前駆症状だけで診断するのはかなり困難である。発疹は片側性に、1つのデルマトームに限局することが多く、水疱は7~10日で痂皮化する。72時間以内の抗ウイルス薬投与が勧められるが、新しい病変が発生する場合や、眼病変、神経症状が出る場合はその限りではない。アシクロビルにするか、バラシクロビル(商品名:バルトレックス)にするか迷うところである。アシクロビルは安価だが生体利用率が低く、投与回数も多い(3回と5回)。また、6ヵ月後の皮膚病変については差がないが、神経痛の改善はバラシクロビルのほうが早いと言われている2)。帯状疱疹後神経痛は5人に1人の割合で発症し、治療法はリドカイン、カプサイシン、ガバペンチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬がある。50歳以上の人に水痘ワクチンを接種することは、帯状疱疹の減少につながる可能性がある(ちなみに抗体価を測って接種の可否を決める必要はない。年齢要件があれば、既往や抗体価の有無に関わらず適応がある)。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2017;96:656-663. 2) Beutner KR, et al .Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1546-1553.

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造血幹細胞移植後のCMV感染症予防にletermovirは有効か/NEJM

 造血幹細胞移植レシピエントに対する、移植後の抗サイトメガロウイルス(CMV)薬letermovirの予防投与は、プラセボと比較してCMV感染症リスクを有意に減少することが示された。有害事象の発現はプラセボと同程度で、大半が軽度だった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のFrancisco M. Marty氏らが、565例を対象に行った第III相の無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年12月6日号で発表した。同種造血幹細胞移植後のCMV感染症は、頻度が高い合併症のままで、letermovirは、CMVテルミナーゼ複合体を阻害する抗ウイルス薬として開発された。移植後14週間、letermovirまたはプラセボを投与 研究グループは、2014年6月~2016年3月にかけて、CMV血清反応陽性の造血幹細胞移植レシピエント565例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、letermovirまたはプラセボを1日1回480mg(シクロスポリン投与患者は1日240mg)投与した。投与は移植を受けてから中央値9日後に開始し14週間行った。投与中に臨床的に重篤なCMV感染症(CMV疾患またはCMV血症で先制治療を要した)を発症した患者は、試験薬投与を中止し抗CMV治療を受けた。 主要エンドポイントは、無作為化時点でCMV-DNAが検出されなかった患者における、移植後24週間以内に臨床的に重篤なCMV感染症を発症した患者の割合とした。途中で試験薬投与を中止した患者や、24週時点でエンドポイントデータが得られなかった患者は、主要エンドポイントが認められたとみなして解析に組み込んだ。 フォローアップは、移植後48週まで行われた。CMV感染症の発症、letermovir群37.5%に対しプラセボ群60.6%で有意な差 無作為化時点でCMV-DNAが検出されなかった患者は495例だった。このうち移植後24週時点でCMV感染症を発症した患者(または主要エンドポイントを発生したとみなされた患者)の割合は、プラセボ群60.6%(103/170例)に対し、letermovir群は37.5%(122/325例)と、有意に低率だった(p<0.001)。 有害事象の発現頻度や重症度については、両群でおおむね同等だった。嘔吐を認めたのはletermovir群18.5%に対しプラセボ群13.5%、浮腫はそれぞれ14.5%と9.4%、心房細動・心房粗動は4.6%と1.0%だった。骨髄毒性イベントや腎毒性イベント発生率も、両群で同等だった。 移植後48週時点の全死因死亡率は、letermovir群20.9%、プラセボ群25.5%だった(p=0.12)。

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C型肝炎治療は新たなステージに

 2017年11月28日、アッヴィ合同会社はメディアセミナー「C型肝炎治療におけるアンメットメディカルニーズと治療のさらなる進歩」を開催した。まず、熊田博光氏(虎の門病院分院長)が「新たなステージに入ったC型肝炎治療」と題した講演を行った。 C型肝炎のジェノタイプの中で、わが国でもっとも多い1型では、1992年にインターフェロン単独療法が保険適用されて以来、2014年には日本初の経口薬のみの治療としてアスナプレビル・ダクラタスビル併用療法が承認され、その後も12週で治療可能な直接作用型抗ウィルス薬(DAA)が複数発売されており、高い治療効果が望めるようになった。しかし従来の薬剤では肝機能障害や循環器系の副作用のリスク、腎機能低下例への投与禁忌、遺伝子変異による効果減弱、併用禁忌薬が多いなど幾つかの問題があった。 また、1型に次いで多い2型でも2015年にソホスブビル・リバビリン併用療法が承認されたことで高い治療効果が得られるようになったが、リバビリン併用による貧血出現や、腎機能低下例には禁忌であるといった課題があった。 以上の課題に加えて、日本で保険適用され一般的に使用されているセロタイプとジェノタイプの不一致が報告されており、その診断に基づき、誤った治療が行われていることもあるため、すべてのジェノタイプに効果があるパンジェノタイプの薬剤が求められていた。 このような中、11月27日にマヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル、以下マヴィレット)が発売された。マヴィレットは、最短8週間の投与で治療効果を発揮するバンジェノタイプ、リバビリンフリーの治療薬である。 まずは2型におけるリバビリンフリーの達成、そして既存のDAAで効果が得られなかった症例などへの使用が見込まれるが、最短8週間という治療期間の短縮やパンジェノタイプといったマヴィレットの特性は、すべての患者にとって有用であると考えられる。 セミナーの後半で日本肝臓病患者団体協議会 代表理事 米澤敦子氏が、患者の立場から語ったように、治療奏効率が高まってきたからこそ、既存治療で効果が見られなかった患者が、患者仲間と自分を比較して孤立感を深めているという事例もあるという。そのような患者の選択肢を増やすという観点からも、今後のマヴィレットの果たす役割に期待したい。

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最短8週間治療が可能なC型肝炎治療薬が登場

 アッヴィ合同会社は、すべての主要なジェノタイプ(GT1~6型)のC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した成人患者に対して1日1回投与、リバビリンフリーの治療薬であるマヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル/ピブレンタスビル、以下マヴィレット)を11月27日に発売した。マヴィレットは肝硬変を有さない、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)未治療のジェノタイプ1型(GT1)および2型(GT2)のC型慢性肝炎(HCV)感染患者にとって、最初で唯一の最短8週間治療となる。薬価は1錠24,210.40円。 日本は先進国の中でC型肝炎ウイルスの感染率が最も高い国の1つで、感染患者のうちGT1型およびGT2型が97%を占める。また日本は、C型慢性肝炎とその合併症が主な原因となり発症する肝臓がんの罹患率が先進国の中で最も高い。 虎の門病院分院長の熊田 博光氏は、「今回のマヴィレットの発売により、DAA治療は第3世代へと移行し日本のC型肝炎治療は最終章を迎えると考えている。これまでのDAA療法は、ジェノタイプ、ウイルス耐性の有無、過去のDAA治療歴、または透析など、患者さんの状態によりDAA療法を使い分けていたが、マヴィレットの登場により1つの治療レジメンでそのほとんどがカバーされることになる」と述べている。 マヴィレットは今年2月に製造販売承認申請後、3月に優先審査品目に指定され、9月27日に承認された。 マヴィレットは、「肝硬変を有さない、DAA未治療のGT1型およびGT2型のHCVに感染した日本人患者」を対象とした第III相試験(CERTAIN試験)において、8週間の治療で99%(226例/229例)のウイルス学的著効率(SVR12)を達成した。また、他剤DAAで治癒しなかった患者において93.9%(31例/33例)のSVR12の達成となり、患者背景によらず、いずれも高い著効率を示した。副作用(臨床検査異常を含む)は、国内第III相試験において332例中80例(24.1%)に認められ、主な副作用は、そう痒症16例(4.8%)、頭痛14例(4.2%)、倦怠感10例(3.0%)および血中ビリルビン増加8例(2.4%)であった。 <効能・効果>C型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善<用法・用量>○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎の場合 通常、成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。 投与期間は8週間とする。なお、C型慢性肝炎に対する前治療歴に応じて投与期間は12週間とすることができる。○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型代償性肝硬変の場合○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変の場合 通常、成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回、食後に経口投与する。投与期間は12週間とする。

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新型インフルエンザ対策の最前線

 2017年11月5日、厚生労働省は都内において、「新型インフルエンザ対策に関する研修」を開催した。当日は、新型インフルエンザの疫学、治療ガイドライン、感染対策、行政の動向について4名の演者による講演が行われた。急がれるH7N9ワクチン はじめに「鳥インフルエンザの疫学について」をテーマに小田切 孝人氏(国立感染研インフルエンザウイルス研究センター WHOインフルエンザ協力センター センター長)が、鳥インフルエンザの動向、最新の知見を解説した。 インフルエンザAタイプは人獣共通感染症であり、野生のツルやカモなどの水禽類が宿主となっている。このタイプは、ヒト、トリ、ブタ間でも感染し、現在トリではH5N1、H5N6、H7N9、H9N2が、ブタではH1N2v、H3N2vがヒトに感染することがわかっている。とくに患者数が多かったH5N1は、その数が減少する傾向にあるものの、高病原性ゆえに致命率は53%と高いという。 問題は、突然変異によるパンデミックポテンシャルをウイルスが持っていることであり、トリがこうしたウイルスを獲得していないかどうか、常に監視する必要があると警告する。 ワクチンについては、世界保健機関(WHO)がインフルエンザウイルスのリスト化とワクチン株の保存を行い、日本、米国、英国の施設で新型インフルエンザワクチン製造株を作製・提供を実施しており、中国でも開発中であるという。 その中国では、2013年より鳥インフルエンザ H7N9が流行。2017年8月31日時点で、1,531例の感染例(うち死亡604例)と高い致命率(39.5%)が報告された。また、旅行など人の移動が感染拡大を助長したこと、高齢者の感染例が多いことも報告された(H5N1は青年に多かった)。 H7N9は、飛沫感染する例も動物実験で報告され、ワクチンの開発が急がれているが、予防接種の免疫獲得が低いことや免疫細胞に認識されないなどの問題があり、現在も研究が続けられている。 最後に、日本で中国のようなアウトブレイクが起きるかどうかについて、「わが国の検疫対応をみると発生しないだろう」と現状からの予測を語り、レクチャーを終えた。新型インフルエンザには抗ウイルス薬の使用をためらわない 次に川名 明彦氏(防衛医科大学校 感染症・呼吸器内科 教授)が、「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン改訂の方向性について」をテーマに解説を行った。 2014年3月に現在の治療ガイドラインが発行され、現在は改訂(第2版)の最終段階であり、12月中には最新のガイドラインが発行されるとの見通しを述べた。 ガイドラインで示される治療の範囲は、入院診療の治療がメインとなり、とくに意識障害、肺炎の有無別による治療にページが割かれるという。また、予想される新型インフルエンザの臨床像は、過去のインフルエンザの事例、鳥インフルエンザの重症例、季節性インフルエンザの重症例などから検討され、インフルエンザ肺炎の中でも原発性、混合性、二次性の大きく3つに分けた治療が記されるという。 現在、日本で使用できる抗ウイルス薬には、オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(同:リレンザ)、ラニナミビル(同:イナビル)、ペラミビル(同:ラピアクタ)の4種がある。治療では、米国疾病管理予防センター(CDC)の原則に沿い、早期投与が勧められているほか、入院患者、2歳以下の小児、65歳以上の高齢者、循環器や代謝異常などの既往症、免疫抑制状態、妊婦(出産後2週間以内も含む)、病的肥満(BMI 40以上)、長期療養施設に入所など、ハイリスク患者には可能な限り早期に投与するとしている。 症状が、軽症、中等症、肺炎合併がない場合の新型インフルエンザの治療では、季節性インフルエンザと同じ治療としつつ、肺炎を合併した場合は、できるだけ早く抗ウイルス薬の投与を示している。とくに重症例ではペラミビルの選択、増量や投与期間の延長、ファビピラビル(同:アビガン)との併用も考慮するとしている(ただしファビピラビルは妊婦または妊娠している可能性のある婦人へは投与しない)。 新型インフルエンザ肺炎への細菌感染の合併例については、頻度の高いものとして肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などのウイルス細菌混合性肺炎と、緑膿菌、アシネトバクターなどの二次性細菌性肺炎を挙げ、入院を要する症例ではただちに抗菌薬療法を開始する。そして抗菌薬の選択はガイドラインを参考に行い、病原体確定後に、より適切な抗菌薬へde-escalationすることとしている。その他の薬物療法として副腎皮質ステロイド薬は、ウイルス性肺炎では喘息合併に限り重症化を抑制するほか、細菌性肺炎では敗血症性ショック時の相対的副腎不全に低容量で有効とされている。また、マクロライド系薬は、細菌性肺炎の重症化例で予後を改善するとの報告がある。 肺炎時の呼吸管理では、人工呼吸を躊躇しないで使用するほか、悪化または改善がみられない場合は、特殊な人工呼吸法(ECMO)の導入やより専門的な施設への転送をするとしている。 インフルエンザ肺炎の重症度評価では、PSI、A-DROP、CURB-65などの市中肺炎の重症度評価法よりも、重症度が過小評価されることに注意が必要と指摘する。 最後に、川名氏は「“新型インフルエンザ”の病態は未知であるが、病原性の高いインフルエンザの出現を想定し、準備する必要がある。ガイドラインも、出現時にはウイルスの特徴に応じてただちに再検討する必要がある」とまとめ、レクチャーを終えた。感染対策は手指衛生と予防接種が大事 次に加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室 医長)が、「感染対策について」をテーマに解説を行った。 インフルエンザの院内感染の特性は、新型も季節性も、新生児、骨髄移植患者、長期療養型病棟で致死率の高い流行を起こすことがあり、医療従事者においては患者からの感染と患者の感染源になるという2つのリスクがあると説明する。そして、新型インフルエンザ流行時には、感染被害の軽減と封じ込めの同時進行が必要であり、過去の拡大例を検証すると、医療従事者から患者への飛沫感染対策は重要であるという。 そして、医療機関における具体的な感染対策としては、「感染源対策」「患者・職員の健康管理」「感染経路の遮断」の3つが必要とされ、CDCの推奨でも予防接種、患者との接触を減らす、標準予防策の順守、飛沫予防策の順守、訪問者の制限なども掲げられ、実践されることが期待される。 とくに飛沫感染対策・咳エチケットとして、医療機関の入口での注意の掲示、1m以上の距離を隔てた待合用の座席、待合室の手近な場所への手指衛生設備の設置などが必要となる。同様に、医療スタッフへの指導では、個人防護具(手袋、ガウン、シールド付きサージカルマスクなど)の装着・脱着の研修は有効であるという。 最後に加藤氏は「院内感染対策では、手指衛生と(患者、医療従事者の)予防接種の2つが有効とされている。新型インフルエンザの対策も、季節性インフルエンザの延長にあると考え、流行に備えてもらいたい」と語り、解説を終えた。新型インフルエンザではWeb情報も活用を! 最後に、厚生労働省の海老名 英治氏(健康局結核感染症課 新型インフルエンザ対策推進室 室長)が「行政動向について」をテーマに、新型インフルエンザ対策の法令、ワクチンの備えに関して説明を行った。 新型インフルエンザへの対策は、水際での侵入阻止と早期封じ込めによる感染拡大の抑制と流行規模の平坦化、それと同時にワクチンの開発、生産、接種によって流行のピークを下げること、医療への負荷を減らすことであるという。 2012年5月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が公布され(施行は2013年6月)、流行時の各種対策の法的根拠が明確化された。具体的には、体制整備として国・地方公共団体の行動計画や訓練、国民への啓発のほか、流行発生時の対策本部の設置、特定接種の指定などが決められ、「新型インフルエンザ等緊急事態」発生の際の措置では、外出自粛要請、興行場等の制限などの要請・指示、住民への予防接種の実施、医療提供体制の確保、緊急物資の運送の要請・指示などの規定が挙げられる。 また、国のインフルエンザ対策として、時間軸で海外発生期、国内発生早期、国内感染期、小康期の4つに区切り、各段階で(1)実施体制、(2)サーベイランス・情報収集、(3)情報提供・共有が行われると説明を行った。 現行の被害想定はいずれも最大数で、罹患者を人口の25%、医療機関受診者を約2,500万人、入院者を約200万人、死亡者を約64万人、欠勤者を従業員の約40%とし、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は人口の45%を目標としている(2017年7月時点の有識者会議で、全人口の25%が罹患するとして再検討されている)。また、「これら抗ウイルス薬の備蓄方針、季節性インフルエンザとの同時流行時の規模や重症患者への倍量・倍期間治療、予防投与についても、省内の厚生科学審議会で継続的に審議されている」と説明する。 最後に海老名氏は、「審議会などの新しい情報も厚生労働省のウェブサイトなどを通じて日々発信しているので、新型インフルエンザの対策ではこれらも参考に準備をしていただきたい」と述べ、説明を終えた。■参考厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)内閣官房 新型インフルエンザ等対策厚生労働省 セミナー当日の配布資料

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新規インフルエンザ薬S-033188、先駆け審査指定制度下で国内承認申請

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功)は、自社創製の新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬S-033188について、成人および小児におけるA型又はB型インフルエンザウイルス感染症を適応症として、2017年10月25日付で日本国内における製造販売承認申請を行ったと発表。 S-033188は、既存の薬剤とは異なる作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新規化合物であり、2015年10月に厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されている。S-033188は、成人または小児を問わず、経口による1回のみの錠剤の服用で治療が完結するため、利便性が高く、確実なアドヒアランスが期待できるという。 これまでに実施した健常なインフルエンザ患者を対象とした臨床試験(CAPSTONE-1)では、S-033188は、既存薬のオセルタミビルと比較して、抗ウイルス効果が高く、投与翌日には50%以上の患者(小児を含む)でウイルス力価の陰性化が認められている。そのため、家庭内や学校、職場等でのウイルス伝播、飛沫/空気感染拡大に対しても一定の抑制効果を示すことが期待される。また、薬剤との関係性が疑われる有害事象の発現率がオセルタミビルと比較して有意に低く、従来の治療と同等以上の安全性を示すと考えられる。さらに、S-033188は、非臨床試験において、鳥インフルエンザウイルス(H5N1やH7N9)や、既存のインフルエンザ治療薬に耐性を有するウイルス株を含む、さまざまな亜型のA型インフルエンザウイルスに対してもウイルス増殖抑制効果が確認されている。そのため、パンデミックへの備えとしても重要な薬剤になると考えられる。■参考シオノギ製薬株式会社ニュースリリース■関連記事新インフルエンザ治療薬S-033188、第III相試験結果発表/IDWeek2017

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2017年度 総合内科専門医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全5問消化管領域で最も出題される可能性が高いのは、(1)相次ぐ新薬の上市、(2)胃がんガイドライン改訂に向けた動き、(3)消化器がんの化学療法、である。治療の進歩が著しい炎症性腸疾患、2016年にRome IV基準が発表された過敏性腸症候群と機能性胃腸症については、必ず押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)上部消化管疾患に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)食道粘膜傷害の内視鏡的重症度と自覚症状の間には相関を認める(b)食道アカラシアは高い非同期性収縮を認めることが多い(c)食道静脈瘤出血時にバソプレシン、テルリプレシン、オクトレオチドは有効であるが、ソマトスタチンは無効である(d)好酸球性胃腸炎の診断基準の1つに、「腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している」がある(e)ボノプラザンは、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療には保険適用となっていない例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全5問肝臓の領域では、B型肝炎をはじめ、体質性黄疸、肝膿瘍、自己免疫性肝炎などのマイナー疾患からの出題も予想される。膵臓では嚢胞腫瘍、自己免疫性膵炎、膵がんの化学療法などがポイントとなる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)HBV感染に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)B型慢性肝炎の治療対象は、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらずALT 31U/L以上かつHBV DNA 2,000IU/mL以上である(b)本邦におけるB型肝硬変は、代償性/非代償性肝硬変にかかわらずIFN治療が第1選択となる(c)HBV持続感染者に対する抗ウイルス療法の長期目標は、ALT持続正常化・HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性・HBV DNA増加抑制の3項目である(d)テノホビルの長期投与では、腎機能障害・高リン血症・骨密度低下に注意する必要があり、定期的に腎機能と血清リンの測定を行うことが推奨される(e)テノホビルアラフェミナド(TAF)はテノホビル(TFV)の新規プロドラッグであり、テノホビルジソプロキシル(TDF)に比べ少ない用量で同等の高い抗ウイルス効果を示すが、TDFと比較して腎機能障害および骨密度低下を来しやすいと報告されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域は、認定内科医試験では出題比率が低いものの、総合内科専門医試験では高い傾向がある。本試験の対策としては、個々の薬剤名とその適応をしっかり覚えることがポイントとなる。頻出テーマは、鉄過剰症、悪性リンパ腫の治療前感染症スクリーニング、特発性血小板減少性紫斑病など。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)貧血に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)鉄欠乏性貧血では、生体内鉄制御を担う血中ヘプシジン増加を認めることが報告されている(b)鉄欠乏性貧血の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が関与している可能性が指摘されている(c)鉄欠乏性貧血の診断基準は(1)ヘモグロビン12g/dL未満(2)血清鉄30µg/dL未満(3)血清フェリチン12ng/mL未満である(d)温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)は、全例直接クームス試験陽性である(e)特発性温式AIHAの治療は、副腎皮質ステロイドを第1選択とするが、ステロイド無効の場合にはリツキシマブ(ヒト化抗CD20モノクローナル抗体)が保険適用となっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 神経】 全5問神経領域では、総合内科専門医試験特有のテーマとして、抗NMDA受容体抗体脳炎、多発性硬化症と神経脊髄炎との違い、筋強直性ジストロフィーがある。この3つのテーマは、毎年複数題出題されているので、確実に押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)末梢神経障害に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢は同じである(b)起床時に手首に力が入らず、垂れてしまう。これは睡眠中の尺骨神経麻痺が原因である(c)フローマンサイン陽性は、橈骨神経麻痺の診断に有用である(d)手根管症候群の診断に有用な所見として、ファレンテスト陽性・ティネル様サイン陽性がある(e)足を組んで寝ていたら、翌朝足首(足関節)と足の指(趾)が背屈できなくなり受診。診察所見で下垂足(drop foot)を認める。脛骨神経麻痺が原因である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 循環器】 全7問循環器領域では、心筋梗塞、心不全治療に加えて、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、大動脈炎症候群が、本試験における特徴的なテーマといえる。また、新しいデバイスが登場すると出題される傾向がある。今年要注意なのは、リードレスペースメーカー、最近適応拡大されたループレコーダーなど。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)心不全について正しいものはどれか?1つ選べ(a)NYHA分類I度は「軽度の身体活動の制限があるが、安静時には無症状」の状態である(b)NYHA分類II度はAHA/ACC心不全ステージBに相当する(c)クリニカルシナリオ(CS)は急性心不全患者の入院早期管理に用いられる指標で、CS4は右心不全、CS5は急性冠症候群に分類されている(d)NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心筋細胞内のproBNPがBNPに分解される際に産生され、心不全診断の基準値はBNPと同じ値である(e)日本循環器学会/日本心不全学会のステートメント(心不全症例におけるASV適正使用に関するステートメント第2報)に、中枢型有意の睡眠時無呼吸を伴い、安定状態にある左室収縮機能低下に基づく心不全患者に対しては、ASVの導入・継続は禁忌ではないが、慎重を期する必要があると記載されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全3問総合内科/救急の領域で確実に出題されるのは「意識レベル」。JCSとGCSについては、どちらも確実に解答できるようにしておきたい。また、JMECCに関する問題と脳死判定基準も出題のヤマとなると思われる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)救急・脳死に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)覚醒しているが、見当識障害を認めればJapan Coma Scale(JCS)は3とする(b)「痛み刺激で開眼・不適当な発語・指示には従えないが痛み刺激から逃避する」でGlasgow Coma Scale(GCS)は8点となる(c)病歴聴取で使用されるSAMPLE historyの「M」は「Meal(最終食事時間)」である(d)脳死判定基準の除外基準では、深昏睡および自発呼吸の消失が「低体温によるもの」「代謝/内分泌障害によるもの」とともに「急性薬物中毒によるもの」が含まれている(e)脳死判定基準の1つに「前庭反射の消失」があり、聴性脳幹誘発反応にて確認することとなっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第7回~第12回の解答】第7回:(d)、第8回:(a)、第9回:(b)、第10回:(d)、第11回:(e)、第12回:(d)【第1回】~【第6回】は こちら

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