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糞便移植で糖尿病に伴う消化器症状が改善する可能性

 1型糖尿病に伴う合併症で、吐き気、腹部膨満感、下痢などの消化器症状を来している人が、健康な人の糞便カプセルを服用すると、それらの症状が緩和するという研究結果が「eClinicalMedicine」1月号に掲載された。論文の筆頭著者である、オーフス大学(デンマーク)のKatrine Lundby Hoyer氏は、「本研究は1型糖尿病患者を対象に、糞便移植の有用性を対プラセボで検討した初の試みである。結果は非常に有望であり、糞便カプセル群に割り付けられた患者では、プラセボ群の患者で観察された変化を大きく超える、症状と生活の質(QOL)の改善が認められた」と語っている。 1型糖尿病患者の約4分の1が、合併症の糖尿病性胃腸障害を患っているとするデータがある。糖尿病性胃腸障害は、消化管の働きをコントロールしている神経が、慢性高血糖によってダメージを受けることで発症する病気であり、治療法はごく限られている。Hoyer氏らは、糖尿病性胃腸障害を来している患者の腸の状態を、糞便移植によって改善できないかを検討した。なお、糞便移植は健康な人の腸内細菌を患者に対して移植するという治療法で、重度の下痢を引き起こすことのある有害な細菌(クロストリディオイデス・ディフィシル)による感染症の治療などに応用されている。 この研究では1型糖尿病患者20人を募集し、ランダムに10人ずつの2群に分け、糞便またはプラセボのカプセルを、無糖飲料とともに摂取してもらった。なお、糞便カプセルの作成には8人の健康なドナーの糞便が用いられ、それらは混合せず、10人の患者はそれぞれ1人のドナーの糞便から作られたカプセルを摂取した。 解析の結果、糞便移植を受けた患者は、消化器症状を表すスコアが、58から35へと有意に低下していた。プラセボを摂取した患者のスコアは、64から56への変化だった。また、過敏性腸症候群のQOLへの影響の評価尺度を用いた検討では、糞便移植群のスコアは108から140に上昇していた一方、プラセボ群は77から92への変化にとどまっていた。 本研究の結果についてHoyer氏は、「この治療法は一部の患者にとって、疾患発症前の日常生活を取り戻せるほどの意味を持つ。糞便移植には大きな可能性があり、より多くの患者が恩恵を受けられるように、さらに研究を推し進めていきたい」と話している。ただ、糞便移植が糖尿病臨床における一般的な治療選択肢の一つとなるまでには、長期的な安全性・有効性の検証や、特に有用な患者群を治療前に特定するための研究などが必要とされる。論文の上席著者である同大学のKlaus Krogh氏も、「糞便移植に期待している患者に対して、この治療法を広く適用できるようにしていくために、やるべきことは少なくない」と述べている。

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2月14日 予防接種記念日【今日は何の日?】

【2月14日 予防接種記念日】〔由来〕1790(寛政2)年の今日、秋月藩(福岡県朝倉市)の藩医・緒方春朔が、初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定した。関連コンテンツわが国初の経鼻弱毒生インフルワクチン「フルミスト点鼻液」【最新!DI情報】インフルワクチン、小児の救急外来・入院を50%減少/CDC高齢者への2価RSVワクチン、入院/救急外来受診リスクを低減インフルワクチン接種と急性腎障害の関連~高齢者での検討ワクチン接種、50年間で約1億5,400万人の死亡を回避/Lancet

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sepsis(敗血症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第20回

言葉の由来「敗血症」は英語で“sepsis”といいます。日本の臨床現場でもよく用いられるため、なじみのある人も多いかもしれません。この言葉は「腐敗、物質の分解」を意味する古代ギリシャ語の“sepsis(「e」はeにサーカムフレックス)”に由来するという説が一般的です。紀元前4世紀という大昔に、すでにヒポクラテスが“sepsis”を医学的な概念として用いていたことが記録に残っているといいます。ほかの医学用語と比べても、殊に歴史の深い言葉であることがわかります。それほどまでに歴史のある病名ですが、長年統一された定義があったわけではなく、地域や医師それぞれが思い思いの定義で使っている、という状況でした。ようやく1991年にロジャー・ボーンらがSCCM-ACCP(米国集中治療医学会-米国臨床薬学会)会議にて敗血症の統一的な定義をつくることを提唱し、「Sepsis」という国際的なガイドラインが策定されました。以降も改訂が繰り返されていますが、厳密な疾患の定義や診断基準が規定されています。併せて覚えよう! 周辺単語全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)多臓器不全multiple organ failure抗菌薬antibiotics感染源管理source control敗血症性ショックseptic shockこの病気、英語で説明できますか?Sepsis is a life-threatening condition caused by the body's extreme immune response to an infection. It leads to systemic inflammation, organ dysfunction, and can progress to septic shock if not treated promptly.講師紹介

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RSV感染症vs.インフル、重症度と転帰を比較~日本の成人5万7千例

 RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。 本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高かった(9.7% vs.7.0%、リスク比[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.08~1.67)。・院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等であった(7.5% vs.6.6%、RR:1.05、95%CI:0.82~1.34)。・RSV群はインフルエンザ群と比較して、生存者の退院後1年以内の再入院リスク(34.0% vs.28.9%、RR:1.19、95%CI:1.07~1.32)および入院後1年以内の全死亡リスク(12.9% vs.10.3%、RR:1.17、95%CI:1.02~1.36)が高かった。・年齢層別解析では、60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高かった。

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未治療CLLへの固定期間のアカラブルチニブ併用療法、PFSを改善/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、BTK阻害薬アカラブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法は、抗CD20抗体オビヌツズマブの追加有無にかかわらず、化学免疫療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らAMPLIFY investigatorsが27ヵ国133施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「AMPLIFY試験」で示された。未治療CLL患者において、アカラブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用投与が、化学免疫療法と比べてPFSが優れるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。アカラブルチニブ+ベネトクラクス併用療法と医師選択化学免疫療法を比較 研究グループは、18歳以上、ECOG PS 0~2で、17p欠失またはTP53変異のない未治療CLL患者(>65歳はCumulative Illness Rating Scale for Geriatrics[CIRS-G]スコアが>6の場合は除外)を、アカラブルチニブ+ベネトクラクス(AV)群、アカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ(AVO)群、または化学免疫療法群に1対1対1の割合で、無作為に割り付けた。 AV群では、1サイクル28日として、アカラブルチニブ(100mgを1日2回)をサイクル1~14に、ベネトクラクス(20mgを1日1回から開始し5週間をかけて400mgを1日1回に増量)をサイクル3~14に投与した。 AVO群では、上記のAVに加えてオビヌツズマブ(1,000mg)をサイクル2~7の1日目に静脈内投与した。 化学免疫療法群では、医師選択によるフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブまたはベンダムスチン+リツキシマブを標準投与プロトコールに従い、サイクル1~6に投与した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSで、AV群と化学免疫療法群を比較した(ITT解析)。アカラブルチニブ+ベネトクラクスのPFSが有意に延長 2019年2月25日~2021年4月5日に、1,141例がスクリーニングを受け、867例が無作為化された(AV群291例、AVO群286例、化学免疫療法群290例[フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ群143例、ベンダムスチン+リツキシマブ群147例])。患者背景は、年齢中央値61歳(範囲:26~86)、男性64.5%、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なし58.6%であった。 追跡期間中央値40.8ヵ月において、36ヵ月PFS率推定値はAV群76.5%(95%信頼区間[CI]:71.0~81.1)、AVO群83.1%(78.1~87.1)、化学免疫療法群66.5%(59.8~72.3)であり、化学免疫療法群に対するAV群の疾患進行または死亡のハザード比は0.65(95%CI:0.49~0.87、p=0.004)であった(AVO群と化学免疫療法群の比較のp<0.001)。 重要な副次評価項目である全生存期間(OS)については、36ヵ月OS率推定値がAV群94.1%、AVO群87.7%、化学免疫療法群85.9%であった。 主な臨床的に関心のある有害事象のうち、Grade3以上の好中球減少症はAV群、AVO群および化学免疫療法群でそれぞれ32.3%、46.1%、43.2%に報告された。また、新型コロナウイルス感染症による死亡はそれぞれ10例、25例、21例報告された。

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無症状の重症大動脈弁狭窄症に対する早期介入は有効か?―EVOLVED 無作為化臨床試験(解説:佐田政隆氏)

 大動脈弁狭窄症(AS)患者は社会の高齢化と共に急速に増えている。ASの予後は非常に不良なことが知られており、自覚症状が出現してから突然死などで死亡するまでの期間は短い。狭心症や失神では3年、息切れでは2年、うっ血性心不全では1.5~2年で亡くなるといわれている。有効な薬物療法はなく、人工弁置換術が唯一の治療法である。従来、高齢者や合併症を持った患者では、人工心肺を用いた開胸による外科的大動脈弁置換術(SAVR)に耐えられない症例が多かった。近年では、比較的低侵襲で行われる経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の治療成績が飛躍的に向上し急速に普及している。100歳を超えた成功例も数多く報告されている。 しかし、無症状で偶発的に発見されたASに対して弁置換術を施行することの予後改善効果や医療経済的価値が問題視されている。ASの病態が進行性で予後不良であることで毎回引用される、J. Ross JrとE. Braunwaldによる1968年のCirculation誌の論文は、何と57年前のものであるうえ、当時のASの主な原因は溶連菌感染症によるリウマチ熱の後遺症であるリウマチ性弁膜症であった。現在問題になっている、高齢者石灰化大動脈弁狭窄症の自然経過に関する研究は倫理的な問題からなされていない。 同じように、冠動脈疾患に対する早期のカテーテルインターベンションについても、その意義が議論されてきた。2019年に報告されたISCHEMIA試験では、中等度以上の虚血が認められた患者において、早期の侵襲的治療戦略は、薬物療法で管理する保守的治療戦略と比較し、心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症/心不全による入院、心停止後の蘇生の複合イベントのリスク抑制は認められなかったことが、医療現場に大きなインパクトを与えた。 このような状況下に行われたのが、本EVOLVED試験である。英国とオーストラリアの24施設で、224例の心筋線維化(高感度トロポニンIの上昇か、心エコー図検査で左室肥大、心臓MRI検査での遅延造影のうち1つが陽性)を伴った無症候性重症AS患者が、人工弁による早期介入(SAVRまたはTAVI)、もしくは、ガイドラインに沿った保守的管理に振り分けられ、中央値で42ヵ月観察された。主要評価項目である、心血管死と大動脈弁狭窄症に起因する予期せぬ入院では有意差がみられなかった。 注意すべき点としては、保守的管理に振り分けられても、中央値として20.2(11.4~42.0)ヵ月後に人工弁置換術に移行している。人工弁置換の55%がSAVR、45%がTAVIであった。人工弁置換術に移行した理由の72%が症状の出現、15%が緊急の入院手術のためであった。30日死亡率は0%であった。 また、無症候性の患者がエントリーされたとはいえ、フォローアップ1年後、保守的管理群でNYHA II度、III度、IV度の割合が多く、早期介入によってQOLの改善が得られたことになる。 今回の研究は、対象患者数が比較的少なく、観察期間も必ずしも十分長いとはいえない。TAVIの手術成績が向上した現在、無症候性の重症AS患者を紹介されることが多いが、どのように治療手段を選択すべきか指針を作成するための、今後の各種臨床試験の結果が待たれる。

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尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入【とことん極める!腎盂腎炎】第12回

尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入Teaching point(1)急性期治療のみではなく前立腺肥大や神経因性膀胱などによる複雑性尿路感染症の原因にアプローチできるようになる(2)排尿障害を来す薬剤を把握し内服調整できるようになる《症例1》72歳、男性。発熱を主訴に救急外来を受診し、急性腎盂腎炎の診断で入院となった。抗菌薬加療で経過良好、尿培養で感受性良好な大腸菌が同定されたため経口スイッチし退院の日取りを計画していた。チームカンファレンスで再発予防のアセスメントについて指導医から質問された。《症例2》66歳、男性。下腹部痛、尿意切迫感を主訴に救急外来を受診した。腹部超音波検査で膀胱内尿貯留著明であり、導尿で800mL程度の排尿を認めた。前立腺肥大による尿閉を考えバルーン留置で帰宅、泌尿器科受診の方針としていた。今回急に尿閉に至った原因がないのか追加で問診するように指導医から提案された。はじめに腎盂腎炎を繰り返す場合や男性の尿路感染症では背景疾患の検索、治療が再発予防に重要である。本項では前立腺肥大や神経因性膀胱についての対応、排尿障害を来す薬剤についてまとめる。まず、排尿障害と治療を理解するために、前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体、その作用について図に示す。排尿筋は副交感神経によるコリン刺激で収縮、尿道括約筋にはα1受容体が分布しており、α1刺激で収縮する。また、β3受容体も分布しておりβ3刺激で弛緩する。β3受容体は膀胱の平滑筋細胞にも広く分布しており、β3刺激で膀胱を弛緩させる。図 前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体画像を拡大する1.前立腺肥大男性は解剖学的に尿路感染症を起こしにくいが、60歳以上から大幅に増加し女性と頻度が変わらなくなる。これは前立腺肥大の有病率の増加が大きく影響する1)。肥大していても症状を自覚していないこともあるので注意しよう。症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアを使用し聴取する2)。薬物療法として推奨グレードA2)であるα1遮断薬、5α還元酵素阻害薬とPDE5阻害薬を処方例とともに表1で解説する。生活指導(多飲・コーヒー・アルコールを含む水分を控える、膀胱訓練・促し排尿、刺激性食物の制限、排尿障害を来す薬情提供、排便コントロール、適度な運動、長時間の坐位や下半身の冷えを避ける)も症状改善に有効である2)。2.神経因性膀胱神経因性膀胱では、上流の原因検索と排尿機能廃絶のレッテルを早期に貼らないことが大事な2点であると筆者は考える。中枢神経障害(脳血管障害、脊髄疾患、神経変性疾患など)、末梢神経障害(骨盤内手術による直接的障害、帯状疱疹などの感染症や糖尿病性ニューロパチー)で分けて考える。機能からも、蓄尿機能と排尿機能のどちらに障害を来しているのか評価するが、両者を合併することも多い。薬物治療は蓄尿障害であれば抗コリン薬などが用いられ、排尿障害であればコリン作動薬やα1受容体遮断薬が用いられる(表1)。 表1 前立腺肥大症治療薬、神経因性膀胱治療薬の特徴と処方例画像を拡大する薬剤で奏功しない場合でも、尿道バルーンカテーテル留置はQOLの低下や感染リスクを伴うことから、間欠的自己導尿が対応可能か考慮しよう。臥位では腹圧をかけにくいため排尿姿勢の確認も大切である。急性期の状態を脱し、全身状態、ADLの改善とともに排泄機能も改善するため、看護師やリハビリを含めた多職種で協力して経時的に評価を行っていくことを忘れてはならない。看護記録の「自尿なし」という記載のみで排尿機能廃絶というレッテルを貼らないようにしよう。3.薬剤による排尿障害薬剤も排尿障害の原因となり、尿閉の原因の2~10%程度といわれている6,7)。抗コリン作用のある薬剤、α刺激のある薬剤、β遮断作用のある薬剤で尿閉が生じる。プロスタグランジンも排尿筋の収縮を促すため、合成を阻害するNSAIDsも原因となる8)。カルシウム拮抗薬も排尿筋弛緩により尿閉を来す。過活動性膀胱に対して使用されるβ3作動薬のミラベグロンで排尿障害となり尿路感染症の原因となる例もしばしば経験する。急性尿閉の原因がかぜ薬であったというケースは読者のみなさんも経験があるだろう。総合感冒薬には第1世代抗ヒスタミン薬やプソイドエフェドリンが含まれるものがあり、かぜに対して安易に処方された薬剤の結果で尿閉を来してしまうのである。排尿障害の原因検索という観点と自身の処方薬で排尿障害を起こさないためにも排尿障害を起こし得る薬剤(表2)9)を知っておこう。表2 排尿障害を来す薬剤リスト画像を拡大する《症例1(その後)》担当看護師に夜の様子を確認すると夜間頻尿があり排尿のために数回目覚めていた。IPSSを評価したところ16点、前立腺体積は42mLで中等症の前立腺肥大症が疑われた。退院後外来で泌尿器科を受診し前立腺肥大症と診断、タムスロシン処方開始となり夜間頻尿は改善し尿路感染症の再発も認めなかった。《症例2(その後)》追加問診で1週間前に感冒のため市販の総合感冒薬を内服していたことが判明した。抗ヒスタミン薬が含まれており抗コリン作用による薬剤性の急性尿閉と考えられた。感冒は改善しており薬剤の中止、バルーン留置し翌日の泌尿器科を受診した。前立腺肥大症が背景にあることが判明したが、内服中止後はバルーンを抜去しても自尿が得られたとのことであった。1)Sarma AV, Wei JT. N Engl J Med. 2012;367:248-257.2)日本泌尿器科学会 編. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン リッチヒルメディカル;2017.3)Fisher E, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014:CD006744.4)National Institute for health and care excellence. Lower urinary tract symptoms in men:management. 2010.5)Tsukamoto T, et al. Int J Urol. 2009;16:745-750.6)Tesfaye S, et al. N Engl J Med. 2005;352:341-350.7)Choong S, Emberton M. BJU Int. 2000;85:186-201.8)Verhamme KM, et al. Drug Saf. 2008;31:373-388.9)Barrisford GW, Steele GS. Acute urinary retention. UpToDate.(最終閲覧日:2021年)

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市中肺炎、ステロイドを検討すべき患者は?

 市中肺炎(CAP)は、過剰な炎症反応が死亡と関連することから、ステロイドの併用が有効である可能性が指摘されている。そこで、複数の無作為化比較試験(RCT)やシステマティックレビュー・メタ解析が実施されているが、ステロイドの併用による死亡率への影響については議論が続いている。そのような背景から、オランダ・エラスムス大学医療センターのJim M. Smit氏らの研究グループは、CAPによる入院患者を対象としたRCTの個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析を実施し、ステロイドの併用の30日死亡率への影響を評価した。その結果、ステロイドの併用により30日死亡率が低下し、とくにCRP高値の患者集団で有用である可能性が示された。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。 CAPにより入院した患者を対象に、ステロイド併用の有用性を検討した8つのRCTを抽出した。これらのRCTのIPDを用いてメタ解析を実施した。主要評価項目は30日死亡率とし、抗菌薬にステロイドを併用した群(ステロイド群)と抗菌薬にプラセボを併用した群(プラセボ群)を比較した。CRPや肺炎重症度(PSI)スコアなどによる治療効果の異質性も検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、8つのRCTの対象患者3,224例であった。・30日死亡率は、ステロイド群6.6%(106/1,618例)、プラセボ群8.7%(140/1,606例)であり、ステロイド群が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.94)。・CRP 204mg/L以下の集団における30日死亡率は、ステロイド群13.0%(46/355例)、プラセボ群13.2%(49/370例)であり、両群間に差はみられなかった(OR:0.98、95%CI:0.63~1.50)。・CRP 204mg/L超の集団における30日死亡率は、ステロイド群6.1%(20/329例)、プラセボ群13.0%(39/301例)であり、ステロイド群が低かった(OR:0.43、95%CI:0.25~0.76)。・PSIスコア(クラスI~III vs.クラスIV/V)による治療効果の差はみられなかった。・ステロイド群では、高血糖の発現(OR:2.50、95%CI:1.63~3.83、p<0.0001)、再入院(OR:1.95、95%CI:1.24~3.07、p=0.0038)が多かった。 本研究結果について、著者らは「CAPによる入院患者において、CRP高値の場合はステロイドの併用を考慮すべきであることが示唆された」と考察した。

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高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)のヒト感染(解説:寺田教彦氏)

 本報告では、2024年3月から10月に米国で確認された高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)のヒト感染例46症例の特徴が記されている。概要は「鳥インフルエンザA(H5N1)、ヒト感染例の特徴/NEJM」に記載のとおりである。 高病原性鳥インフルエンザ(Highly pathogenic avian influenza:HPAI)ウイルスA(H5N1)は、香港における生鳥市場を介したヒト感染例が1997年に報告されて以降、渡り鳥により世界中に広がり、世界24ヵ国で900例以上の報告がある。かつては、HPAIV(H5N1)はヒトや哺乳類には感染しにくく、ヒトヒト感染はまれだが、ヒトの感染例では重症化することがあり、死亡率も高い(約50%)と考えられていた。しかし、2003年ごろから哺乳類の感染事例が報告され、2024年3月下旬に米国の酪農場でヤギや乳牛で感染事例が報告されて以降は、米国内の複数州から乳牛の感染事例の報告が相次いでいた。 本ケースシリーズは、米国内において乳牛のHPAIV(H5N1)の報告がされた3月から10月にかけての感染リスクや臨床症状・経過や採取検体とその陽性率等のデータがまとめられている。 まず、今回のケースシリーズでは、ヒトヒト感染を確認した症例はなく、今のところHPAIV(H5N1)のヒトヒト感染のリスクは低そうである。 次に、検出された遺伝子型を確認する。遺伝子型の違いによるウイルス性状の違いは現時点で判明していないが、過去の報告では、野鳥や家禽に関連するHPAIV(H5N1)の遺伝子型はほとんどがD1.1で、牛に関連するHPAIV(H5N1)の遺伝子型はB3.13が多かった。今回の報告では、遺伝子型が調査されたうち、ほとんどがB3.13で家禽に曝露した4例のみがD1.1だった。 臨床像では93%が結膜炎を呈し、発熱は49%、気道症状(咳嗽、咽頭痛、息切れ)は36%でみられた。重症度は、入院を要した患者(曝露源不明)が1例のみで、死亡例はなく、過去の報告よりも軽症患者が多い印象だった。 検体は結膜から採取された症例が多く(45例中41例)、結膜スワブの陽性率は高かった(結膜炎報告例の90%が陽性)。 さて、本報告を読んで気になったことの1つに重症度がある。本ケースシリーズでは、HPAIV(H5N1)の入院例は1例のみで死亡者はおらず、HPAIV(H5N1)が軽症化しているかのように思われた。しかし、本報告と同日にNEJMで報告されたカナダにおける鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)は重症例であり(Jassem AN, et al. N Engl J Med. 2024 Dec 31. [Epub ahead of print])、HPAIV(H5N1)が軽症化したと考えるのは早計かもしれない。 考えられることの1つとして、今回の報告では、HPAIV(H5N1)に罹患した動物に曝露したヒトを10日間モニタリングしており、軽微な症状の症例も診断することができたために重症度が低下したようにみえた可能性が考えられる。本報告で入院した患者とカナダの重症化した患者の共通点は、感染経路不明である。過去にHPAIV(H5N1)に罹患した患者でも、重症化しなかったためにHPAIV(H5N1)の検査までは行われずに過去の報告では見逃されていた患者が存在したのかもしれない。 あるいは、遺伝子型の違いも考えられるかもしれない。カナダから報告された症例の遺伝子型は、D1.1だったが、今回のケースシリーズの遺伝子型の多くはB3.13だった。他に考えられることとしては、本報告では、ほとんどが発症後早期に診断され、オセルタミビルの投与がされていたことがある。感染経路不明の場合には、診断の遅れなどにより、抗ウイルス薬投与開始までの時間がかかるため、速やかな抗ウイルス薬投与が予後改善に関与していた可能性は残る。 本報告から、2024年に米国で確認されたHPAIV(H5N1)の特徴を知ることはできたが、HPAIV(H5N1)の経過や重症度、感染リスクを十分把握したとはいえず、今後も動向を監視する必要があるだろう。 最後に本邦におけるHPAIV(H5N1)の状況を振り返る。 HPAIV(H5N1)は、感染症法に基づく医師の届出の2類感染症に指定されているが、幸いにも国内でのヒト発症例の報告はない(国立感染症研究所「高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)感染事例に関するリスクアセスメントと対応」)。ただし、国内でも鳥類でのHPAIV(H5N1)の検出事例は継続して報告されており、本邦でも引き続き動物を含めて発生動向を監視する必要があるだろう。 また、本邦におけるHPAIV(H5N1)の届出基準では検査材料に結膜拭い液は含まれていない。HPAIV(H5N1)と結膜炎の関係性は、米国の乳牛曝露例でも報告(Uyeki TM, et al. N Engl J Med. 2024;390:2028-2029.)されていたが、本ケースシリーズからも、結膜炎を呈する割合は高く、それらの患者で結膜スワブの陽性率は高かった。今後は、HPAIV(H5N1)疑いの患者で、結膜炎を呈する場合は、本邦でも角結膜拭い液の検査が検討されるようになるかもしれない。

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C型肝炎のフォローアップ【日常診療アップグレード】第23回

C型肝炎のフォローアップ問題65歳男性。C型肝炎による肝硬変のため通院中である。6ヵ月前に患者はC型肝炎感染と診断され、抗ウイルス療法を受けてウイルスは除去されている。1ヵ月前の超音波検査では肝臓に小さな結節が認められたが、腫瘤はなかった。身体診察ではバイタルサインも含め異常はない。6ヵ月ごとにα-フェトプロテイン(AFP)の測定と腹部造影CT検査を行うこととした。

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COVID-19は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症リスクを高めるようだ。新型コロナウイルス感染者は、ME/CFSを発症するリスクが5倍近く高くなることが、新たな研究で示された。研究グループは、このことからME/CFSの新規症例がパンデミック前の15倍に増加している理由を説明できる可能性があるとの見方を示している。米ベイトマンホーンセンターのSuzanne Vernon氏らによるこの研究結果は、「Journal of General Internal Medicine」に1月13日掲載された。Vernon氏らは、「われわれの研究結果は、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの発症率と発症リスクが大幅に増加することのエビデンスとなるものだ」と結論付けている。 米疾病対策センター(CDC)によると、ME/CFSの患者は慢性的な倦怠感に悩まされており、用事を済ませる、学校行事に参加する、仕事をこなす、シャワーを浴びるなどの日常的な活動を行った後には倦怠感が増幅するという。また、睡眠障害やめまい、記憶や思考能力の低下などの症状に悩まされることもある。これらの症状の多くは、COVID-19罹患後症状(long COVID)にも見られることから、研究グループは、両者の間に関連性があるのではないかと考えた。研究グループによると、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)やロスリバーウイルスのようなウイルスによる感染症罹患者の11%も、ME/CFSの診断基準を満たすという。 今回の研究は、COVID-19の健康への長期的な影響に関するプロジェクトRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)の一環として、RECOVERの成人を対象とした縦断観察研究RECOVER-Adultのデータを用い、新型コロナウイルス感染者1万1,785人と非感染者1,439人を対象に、ME/CFSの罹患率と有病率を調査した。対象者は、新型コロナウイルス感染後のME/CFSの有無に基づき、ME/CFSの診断基準を満たす者、診断基準を満たさないがME/CFS様の症状がある者、ME/CFSの症状を報告しない者の3群に分類された。 新型コロナウイルス感染者のうち、531人(4.5%)がME/CFSの診断基準を満たし、4,692人(39.8%)がME/CFS様の症状を持ち、6,562人(55.7%)はME/CFSの症状を有していなかった。非感染者では、それぞれ9人(0.6%)、232人(16.1%)、1,198人(83.3%)であった。ME/CFSの100人年当たりの罹患率は新型コロナウイルス感染者で2.66件(95%信頼区間2.63〜2.70)であったのに対し、非感染者では0.93件(同0.91〜10.95)であった。ハザード比(HR)は4.93(同3.62〜6.71)であり、新型コロナウイルス感染がME/CFSの発生リスクを大幅に増加させることが示された。新型コロナウイルス感染者において最もよく報告されたME/CFSの症状は労作後の倦怠感で、全感染者の24.0%(2,830人)に認められた。さらに、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの診断基準を満たした参加者の大多数(88.7%、471/531人)は、RECOVER研究で定義されるlong COVIDの基準も満たしていた。 研究グループは、「さらなる研究で、一部の新型コロナウイルス感染者が他の患者よりも感染後にME/CFSを発症しやすい理由を解明する必要がある」と結論付けている。

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適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。 Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。 認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。 Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。 文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。 検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。 Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。 また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。

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リファンピシン耐性/キノロン感受性結核に有効な経口レジメンは?/NEJM

 リファンピシン耐性でフルオロキノロン感受性の結核患者の治療において、3つの経口レジメン(BCLLfxZ、BLMZ、BDLLfxZ)の短期投与が標準治療に対し非劣性で、Grade3以上の有害事象の頻度はレジメン間で同程度であることが、フランス・ソルボンヌ大学のLorenzo Guglielmetti氏らが実施した「endTB試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月30日号に掲載された。7ヵ国の第III相対照比較非劣性試験 endTB試験は、7ヵ国(ジョージア、インド、カザフスタン、レソト、パキスタン、ペルー、南アフリカ共和国)の12施設で実施した第III相非盲検対照比較非劣性試験であり、2017年2月~2021年10月の期間に参加者のスクリーニングと無作為化を行った(Unitaidの助成を受けた)。 年齢15歳以上のリファンピシン耐性でフルオロキノロン感受性の結核患者を、ベダキリン(B)、デラマニド(D)、リネゾリド(L)、レボフロキサシン(Lfx)またはモキシフロキサシン(M)、クロファジミン(C)、ピラジナミド(Z)から成る5つの併用レジメン(BLMZ、BCLLfxZ、BDLLfxZ、DCLLfxZ、DCMZ)または標準治療レジメン(WHOガイドラインに準拠)の6つの治療群に無作為に割り付けた。5つの併用レジメンは9ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは73週目の良好なアウトカムとし、不良なアウトカムがなく、65~73週における連続2回の喀痰培養陰性または良好な細菌学的、臨床的、X線画像上の変化と定義した。不良なアウトカムには、死亡(死因は問わない)、5つの併用レジメンのうち1剤または標準治療レジメンのうち2剤の置き換えまたは追加、リファンピシン耐性結核に対する新たな治療の開始などが含まれた。非劣性マージンは-12%ポイントとした。per-protocol集団ではDCMZ群の非劣性確認できず 754例を無作為化し、このうち699例が修正ITT解析、562例がper-protocol解析の対象となった。修正ITT集団の内訳は、BLMZ群118例(年齢中央値31歳、女性34.7%)、BCLLfxZ群115例(38歳、32.2%)、BDLLfxZ群122例(32歳、45.1%)、DCLLfxZ群118例(30歳、32.2%)、DCMZ群107例(32歳、42.1%)、標準治療群119例(31歳、40.3%)であった。 修正ITT解析では、良好なアウトカムの全体の達成率は84.5%(591/699例)で、標準治療群では80.7%(96/119例)であった。修正ITT集団で非劣性が確認された新規レジメンは次の4つで、標準治療群とのリスク差はBCLLfxZ群で9.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:0.9~18.7)、BLMZ群で8.3%ポイント(-0.8~17.4)、BDLLfxZ群で4.6%ポイント(-4.9~14.1)、DCMZ群で2.5%ポイント(-7.5~12.5)であった。DCLLfxZ群では非劣性が示されなかった。 per-protocol集団における良好なアウトカムの全体の達成率は95.9%であった。標準治療群とのリスク差はDCMZ群を除いて同程度で、DCMZ群では非劣性を確認できなかった。重篤な有害事象の頻度も同程度 Grade3以上の有害事象は全体の59.2%(441/745例)で発現し、6つのレジメンで54.8~62.7%の範囲であった。重篤な有害事象は、全体の15.2%(113例)に認め、6つのレジメンで13.1~16.7%の範囲と同程度だった。また、とくに注目すべき有害事象のうちGrade3以上の肝毒性イベント(ALTまたはAST上昇)は、全体で11.7%(87例)、標準治療群では7.1%(9例)にみられた。 著者は、「これらの結果は、リファンピシン耐性結核の成人および小児患者の治療における効果的で簡便な経口薬治療に関して、明るい展望をもたらすものである」としている。

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ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第275回

ゴキブリのせいで多剤耐性菌が院内アウトブレイク院内感染対策において、私たちは常に新たな課題に直面しています。コロナ禍で注目されたテーマなので、いろいろな研究やエビデンスが出てきました。今回ご紹介する事例は、都市部の病院のICUで発生した、20ヵ月に及ぶ奇妙な多剤耐性エンテロバクターのアウトブレイクです。この事例がとくに注目に値するのは、標準対策では制御できなかった感染拡大が、まさかのアイツによって引き起こされていたことです。タイトルに書いちゃってますが…。っていうか、この連載、ゴキブリ論文多くない?Hanrahan J, et al. Invasion of superbugs: Cockroach-driven outbreak of multidrug-resistant Enterobacter in an ICU.Antimicrob Steward Healthc Epidemiol. 2024 Oct 1;4(1):e155.アウトブレイクは、隣接する病室の2人の患者から多剤耐性エンテロバクターが検出されたことから始まりました。医療スタッフはただちに接触予防策、手指衛生の強化、個々の医療機器の使用徹底など、標準的な感染対策プロトコールを適用しました。しかし、これらの対策にもかかわらず、新たな感染例が次々と確認されていきました。環境調査では、ベッドサイドキャビネット、マットレス、ベッド柵、ゴミ箱の蓋、人工呼吸器、吸引装置など、多くの環境表面から多剤耐性エンテロバクターが検出されました。徹底的な消毒清掃を実施しましたが、一部の病室では繰り返し清掃が必要な状況が続きました。このアウトブレイクの謎を解く重要な手がかりとなったのは、現場の看護師の観察眼! 看護師の1人が病室でゴキブリを目撃していたという報告を受け、捕獲したゴキブリを用いた培養検査を実施しました。その結果、多剤耐性エンテロバクターに加えて、多剤耐性緑膿菌、MRSA、MSSA、アスペルギルス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など、複数の院内感染の原因となる微生物が検出されたのです。耐性菌ゴキブリや!最終的に、このアウトブレイクでは入院患者131名中25名(19.5%)が多剤耐性エンテロバクターに感染または保菌していました。感染までの平均期間は14.5日(±10.7日)で、最短でわずか3日というありさまでした。害虫駆除の専門家による対策強化後、一時的に新規感染例は抑制されましたが、13ヵ月後に再びゴキブリが発見され、その1週間後に新たな感染例が確認されました。いや、この害虫ほんまに何やねん…。この論文が声高に書いているのは、病院環境における害虫の存在を決して軽視してはならないということです。とくにゴキブリはさまざまな病原体の媒介者となる可能性があり、比較的清潔な病院が多い日本の医療機関でも注意が必要です。

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ワクチン接種後の免疫抑制療法患者のリスクを抗体の有無で評価(解説:栗原宏氏)

本研究のまとめ・免疫抑制療法患者において、抗SARS-CoV-2スパイク抗体(抗S Ab)陽性者は感染・入院リスクが低い・感染リスク要因:年齢が若い(18~64歳)、子供との同居、感染対策の実施・入院リスク要因:併存疾患の存在強み(Strong Points)・3つの異なる免疫抑制患者群におけるCOVID-19リスクを大規模データで解析・抗S Abの有無と感染・重症化リスクの関連を明確化・実臨床データとリンクし、健康アウトカムに関する実証的な証拠を提供限界(Limitations)・因果関係ではなく相関関係の分析に留まる・治療介入(抗ウイルス薬、モノクローナル抗体)の影響が不明確・ワクチンの種類や接種時期の詳細な分析が不足・行動要因(マスク着用、社会的距離)の影響が考慮されていない可能性 本研究は、免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体の有無が、感染および入院率にどのような影響を与えるかを評価する約2万人規模のコホート研究である。 免疫抑制療法では、ワクチン接種後の免疫応答が低下する可能性があり、COVID-19感染リスクが高いと考えられる。 英国の全国疾病登録データを用い、以下の3つの免疫抑制患者群において抗体の影響を評価した。1)固形臓器移植(SOT)2)まれな自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)3)リンパ系悪性腫瘍(lymphoid malignancies)主な結果と臨床的意義 いずれの群でも、抗体陽性者のCOVID-19感染率・入院率は、年齢・人種・既存疾患などを調整しても有意に低かった。より具体的には、抗体陰性者の感染リスクは1.5〜1.8倍、入院リスクは2.5〜3.5倍高かった。 これらの結果から、免疫抑制患者に対し抗体検査を活用することで、高リスク群を特定し、追加ワクチン接種や早期治療などの対応を提供できる可能性が示唆された。 しかし、本研究は相関関係の分析に留まるため、・「抗体ができやすい人=健康状態が良く感染リスクが低い」・「抗体ができにくい人=強力な免疫抑制療法を受けており感染・重症化リスクが高い」といった因果関係の逆転の可能性も考慮する必要がある。 また、本研究では、ワクチンの種類・接種回数の影響、抗体価の高低、行動習慣(通勤・外出頻度)の影響は評価されていない。感染リスク要因の考察 感染リスク要因として、年齢が若いこと、子供との同居、感染対策の実施が挙げられた。「感染対策をしている人の感染リスクが高い」という結果は直感的に意外だが、これは 「感染リスクが高い人ほど対策をしているが、免疫が弱いため、それでも感染しやすい」という背景を反映しているという可能性がある。 本研究は、免疫抑制患者における抗S Abの有無とCOVID-19感染・入院リスクの相関を示し、免疫抑制患者のCOVID-19管理戦略を考えるうえで重要な知見を提供していると考えられる。

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医師介入が死亡率に影響?がん患者診療のための栄養治療ガイドライン発刊

 日本人がん患者の栄養管理は、2022年より周術期栄養管理加算や外来栄養食事指導料が算定できるようになったことで、その管理体制は改善傾向にある。しかし、栄養治療が必要な患者に十分届いているとは言い難く、適切な栄養管理によってより良い予後をもたらすことが日本栄養治療学会(JSPEN)としての喫緊の課題になっている。そんな最中、2024年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編』が発刊されたため、作成ワーキンググループのガイドライン委員会前委員長である小谷 穣治氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授)にがん患者の栄養管理の実際やガイドラインで押さえておくべき内容について話を聞いた。がん患者への栄養管理の意味 がん患者の場合、がんの病状変化や治療により経口摂取に支障が生じ、体重減少を伴う低栄養に陥りやすくなるため、「食事摂取量を改善させる」「代謝障害を抑制する」「筋肉量と身体活動を増加させる」ことを目的として栄養治療が行われる。 国内におけるがん治療に対する栄養治療は、食道癌診療ガイドラインや膵癌診療ガイドラインなど臓器別のガイドラインではすでに示されているが、海外にならって臓器横断的な視点と多職種連携を重要視したガイドラインを作成するべく、今回、JSPENがその役割を担った。本書では、重要臨床課題として「周術期のがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」「放射線療法を受けるがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」といった事柄をピックアップし、Minds*方式で作成された4つのClinical Question(CQ)を設定している。本書の大部分を占める背景知識では現況のエビデンス解説が行われ、患者団体から集まった疑問に答えるコラムが加わったことも特徴である。*厚生労働省委託業務EBM普及推進事業、Medical Information Distribution Service なお、がん患者に対する栄養治療が「がん」を増殖させるという解釈は、臨床的に明らかな知見ではないため、“栄養治療を適切に行うべき”と本書に記されている。医師に求められる栄養治療 医師が栄養治療に介入するタイミングについて、p.39~40に記された医師の役割の項目を踏まえ、小谷氏は「(1)診断時、(2)治療開始前、(3)治療中、(4)治療終了後[入院期間中、退院後]と分けることができるが、どの段階でも介入が不足しているのではないか。とくに治療開始前の介入は、予後が改善されるエビデンスが多数あるにもかかわらず(p.34~35参照)、介入しきれていない印象を持っている。ただし、入院治療が始まる前から食欲低下による痩せが認められる場合には、微量元素やビタミン類を含めた血液検査がなされるなどの介入ができていると見受けられる」とコメントした。 介入するうえでの臨床疑問はCQで示されており、CQ1-1(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:弱い、エビデンスの確実性:弱い])については、日本外科感染症学会が編集する『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン』のCQ3-4(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療[経口・経腸栄養、静脈栄養]を行うことは推奨されるか?)と同様に術前介入について言及している。これに対し同氏は「両者に目を通す際、日本外科感染症学会で評価されたアウトカムはSSI※であり、本ガイドラインでの評価アウトカム(術後合併症数、術後死亡率、術後在院日数など)とは異なることに注意が必要」と述べた。※Surgical Site Infectionの略、手術部位感染 また、CQ1-2(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:強い、エビデンスの確実性:中程度])で触れられている免疫栄養療法については、「アルギニン、n3系脂肪酸、グルタミンが用いられるが、成分ごとに比較した評価はなく、どの成分が術後合併症の発生率低下や費用対効果として推奨されるのかは不明」と説明しながら、「今回の益と害のバランス評価において、免疫栄養療法を実施することによって術後合併症が22%減少、術後在院日数が1.52日短縮することが示された。また、術後の免疫栄養療法では術後の非感染性合併症も減少する可能性が示された(p.135)」と説明した。<目次>―――――――――――――――――――第1章:本ガイドラインの基本理念・概要第2章:背景知識 1. がん資料における代謝・栄養学 2. 栄養評価と治療の実際 3. 特定の患者カテゴリーへの介入第3章:臨床疑問 CQ1-1:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療(経口・経腸栄養、静脈栄養)を行うことは推奨されるか? CQ1-2:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか? CQ2:成人の根治目的の癌治療を終了したがん罹患経験者(再発を経験した者を除く)に対して、栄養治療を行うことは推奨されるか? CQ3:根治不能な進行性・再発性がんに罹患し、抗がん薬治療に不応・不耐となった成人患者に対して、管理栄養士などによる栄養カウンセリングを行うことは推奨されるか?第4章:コラム――――――――――――――――――― 最後に同氏は、「現代は2人に1人はがんになると言われているが、もともとがん患者は栄養不良のことが多い。また、その栄養不良ががんを悪化させ、栄養不良そのもので亡くなるケースもある。周術期や治療前にすでに栄養状態が悪くなっている場合もあることから、栄養管理の重要性を理解するためにも、がんに関わる医療者全員に本書を読んでいただきたい」と締めくくった。

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コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19はインフルエンザと比較して、男性に多く(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)、肥満度が高い人に多かった(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、現在喫煙者の割合が低かった(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)およびICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長く、人工呼吸を必要とする頻度が高く(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)、死亡率が高かった(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)。・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、上気道症状がより顕著で、併存疾患の割合が高かった。

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コロナワクチン、免疫抑制患者への接種継続は必要か?/Lancet

 英国・NHS Blood and TransplantのLisa Mumford氏らは、英国の全国疾病登録を用いた前向きコホート研究において、免疫抑制状態にあるすべての人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防戦略を継続的に受ける必要があることを示した。英国では、免疫が脆弱と考えられる人々に対し、年2回のCOVID-19ワクチンブースター接種が推奨されている。著者らは、3回以上のワクチン接種を受けた免疫抑制状態にある患者において、抗SARS-CoV-2スパイク蛋白IgG抗体(抗S抗体)と感染リスクおよび感染の重症度との関連を集団レベルで調査した。結果を踏まえて著者は、「大規模に実施可能な抗S抗体の評価は、免疫抑制状態にある人々のうち最もリスクの高い人々を特定可能で、さらなる個別化予防戦略のメカニズムを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2025年1月25日号掲載の報告。固形臓器移植、希少自己免疫性リウマチ性疾患、リンパ系悪性腫瘍患者を対象に評価 研究グループは、英国の全国疾病登録を用いて固形臓器移植(SOT)患者、希少自己免疫性リウマチ性疾患(RAIRD)患者、リンパ系悪性腫瘍患者を特定して研究への参加者を募集した。抗S抗体のラテラルフロー検査を行うとともに社会人口学的および臨床的特性に関するアンケート調査を実施した後、英国国民保健サービス(NHS)のデータを用いて6ヵ月の追跡調査を行った。 アウトカムは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院とした。SARS-CoV-2感染は主に英国健康安全保障庁(UKHSA)のデータを用いて特定し、COVID-19による入院および治療に関する記録で補完した。COVID-19関連入院は、検査陽性から14日以内の入院と定義した。抗S抗体陽性、COVID-19の感染や入院のリスク低下と関連 2021年12月7日~2022年6月26日に登録された適格患者2万1,575例を解析対象とした(SOT患者8,466例、RAIRD患者6,516例、リンパ系悪性腫瘍患者6,593例)。 抗S抗体陽性率は、SOT患者77.0%(6,519/8,466例)、RAIRD患者85.9%(5,594/6,516例)、リンパ系悪性腫瘍患者79.3%(5,227/6,593例)であった。 抗S抗体検査後6ヵ月間のSARS-CoV-2感染は、全体で3,907例(18.1%)に認められ、COVID-19関連入院は556例(2.6%)に発生した。そのうち17例(<0.1%)が感染後28日以内に死亡した。 感染率は社会人口学的および臨床的特性によって異なるが、多変量補正解析の結果、抗S抗体の検出は感染発生率の低下と独立して関連しており、発生率比(IRR)はSOT患者集団で0.69(95%信頼区間[CI]:0.65~0.73)、RAIRD患者集団で0.57(0.49~0.67)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.62(0.54~0.71)であった。 また、抗S抗体陽性はCOVID-19関連入院のリスク低下とも関連しており、IRRはSOT患者集団で0.40(95%CI:0.35~0.46)、RAIRD患者集団で0.32(0.22~0.46)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.41(0.29~0.58)であった。

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過体重/肥満の2型糖尿病、ダパグリフロジン併用で寛解率が大きく改善/BMJ

 過体重または肥満を伴う2型糖尿病患者において、カロリー制限療法単独と比較してSGLT2阻害薬ダパグリフロジンと定期的なカロリー制限の併用は、大幅に高い糖尿病寛解率を達成し、体重減少やさまざまな代謝性リスク因子(体脂肪率、インスリン抵抗性指数[HOMA-IR]、収縮期血圧、空腹時血糖値、HbA1c値など)も有意に改善することが、中国・復旦大学のYuejun Liu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年1月22日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、2型糖尿病の寛解に及ぼすダパグリフロジン+カロリー制限療法の有効性の評価を目的に多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行い、2020年6月~2023年1月に中国の16の施設で患者を登録した(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 年齢20~70歳の2型糖尿病(罹患期間6年未満)で、BMI値25以上、HbA1c値6.5~10%の患者328例を対象とした。これらの患者を、カロリー制限療法に加え、ダパグリフロジン(10mg/日)を投与する群(165例)、またはプラセボを投与する群(163例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、糖尿病の寛解(抗糖尿病薬の投与を2ヵ月以上受けておらず、HbA1c値<6.5%かつ空腹時血糖値<126mg/dL)とした。 全体の平均年齢は46.7歳、男性が218例(66%)で、平均BMI値は28.2、平均HbA1c値は7.3%であり、148例(45%)がベースラインでメトホルミンの投与を受けていた。介入期間中央値は、ダパグリフロジン群が9ヵ月(四分位範囲:4~12)、プラセボ群は12ヵ月(4~12)だった。HDLコレステロール、トリグリセライドも改善 12ヵ月の時点での糖尿病寛解率は、プラセボ群が28%(46例)であったのに対し、ダパグリフロジン群は44%(73例)と有意に良好であった(リスク比:1.56[95%信頼区間[CI]:1.17~2.09]、p=0.002)。 また、副次アウトカムであるベースラインから最終受診時までの体重の変化量(ダパグリフロジン群-5.0[SD 4.5]kg vs.プラセボ群-3.2[3.8]kg、推定群間差:-1.3kg[95%CI:-1.9~-0.7]、p<0.001)およびHOMA-IRの変化量(-1.8 vs.-0.6、-0.8[-1.1~-0.4]、p<0.001)も、プラセボ群に比べ、ダパグリフロジン群で優れた。 同様に、体脂肪率の変化量(-2.1[SD 2.8]% vs.-1.4[3.4]%、-0.5%[95%CI:-0.9~0]、p=0.05)、収縮期血圧の変化量(-4.0[12.3]mmHg vs.-3.6[13.1]mmHg、-1.9mmHg[-3.0~-0.7]、p=0.002)、空腹時血糖値の変化量(-23.4[25.0]mg/dL vs.-13.8[29.1]mg/dL、-9.2mg/dL[-11.8~-6.7]、p<0.001)、HbA1c値の変化量(-1.0[1.0]% vs.-0.8[0.9]%、-0.2%[-0.3~-0.1]、p=0.003)のほか、HDLコレステロール値の変化量(4.8[6.9]mg/dL vs.2.3[6.2]mg/dL、1.3mg/dL[0.4~2.2]、p=0.003)、トリグリセライド値の変化量(-17.3[-62.0~7.1]mg/dL vs.-4.4[-35.4~20.4]mg/dL、-16.4mg/dL[-31.3~-1.6]、p=0.03)もダパグリフロジン群で良好だった。軽度~中等度の有害事象の発現率は同程度 ダパグリフロジン群で重篤な有害事象が2例(1.2%、いずれも尿路感染症による入院)に発現した。試験期間中の死亡例はなく、軽度~中等度の有害事象の発現率は両群で同程度だった。 著者は、「これらの知見は、初期の2型糖尿病患者の寛解の達成において、強力な体重管理以外の新たな選択肢として、より実践的な戦略を提供するものである」としている。

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COVID-19パンデミック前後で医療の利用状況が大きく変化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前後で、国内医療機関の利用状況が大きく変わったことが明らかになった。全国的に入院患者の減少傾向が続いているという。慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの野村周平氏、東京海洋大学の田上悠太氏、東京大学のカオ・アルトン・クアン氏らの研究の結果であり、詳細は「Healthcare」に11月19日掲載された。著者らは、「入院患者数の減少は通常の状況下では医療システムの効率化の観点からポジティブに捉えられる可能性がある一方で、パンデミック期間中には超過死亡も観測されていることから、入院患者数の減少による国民の健康への潜在的な影響も排除できない」としている。 COVID-19パンデミックが世界中の医療体制に多大なインパクトを与えたことは明らかで、影響の大きさを詳細に検証した論文も既に多数報告されている。ただし、パンデミック収束後の実態に関する研究は多くない。また、日本は他の先進国と異なり、パンデミック初期には患者数が少なかったものの、オミクロン株が主流になって以降に患者数が顕著に増加するというやや特異な影響が現れた。これらを背景として野村氏らは、パンデミック以前の2012年1月から2023年11月までの厚生労働省「病院報告」の月次データを用いて、パンデミックによって国内の医療機関の利用状況がどのように変わったかを検討した。 「病院報告」では、一般病床、精神病床、感染症病床、療養病床などの病床種類別の入院患者数や利用率、在院日数などが月ごとに報告されている。これらのうち本研究では、パンデミックが医療に与えた間接的な影響(COVID-19治療以外の医療)に焦点を当てるという意図から、一般病床と精神病床のデータを解析対象とした。解析には、準ポアソン回帰モデルという手法を用いた。 まず、一般病床に関する解析結果を見ると、入院患者数はパンデミック以前から経年的に減少傾向にあった。これは、病院から地域(在宅や療養型施設)へという政策の推進によるものと考えられる。しかし、パンデミックが始まった2020年3月以降の入院患者数は、パンデミック以前の減少傾向から予測される患者数を有意に下回り、解析対象期間の最終月である2023年11月まで有意に少ない状態が続いていた。例えば、2023年の一般病床の1日平均在院患者数は62万6,450人で、パンデミック前の2017~2019年の67万9,092人と比較して、7.8%少なかった。月当たりの新規入院患者数についても、パンデミック以降は予測値より有意に少ない月が多く発生し、約10%減少していた。 病床数も2021年以降に減少傾向が見られたが、その変化は入院患者数の減少速度より緩徐であり、絶対数の減少幅は1%未満だった。病床数がわずかな減少で入院患者数は大きく減少した結果として、病床利用率は、パンデミック前の2017~2019年の平均が73.5%であるのに対して、パンデミック以降の2020~2022年は67.5%と、6パーセントポイント低下していた。 次に、精神病床について見ると、一般病床と同様、パンデミック前から入院患者数が経年的に減少傾向にあったが、パンデミック発生後には以前の減少傾向から予測される患者数を有意に下回り、解析対象期間の最終月である2023年11月まで有意に少ない状態が、ほぼ連続していた。また、新規入院患者数についても、パンデミック以降は予測値より有意に少ない月が多く発生し、約8%減少していた。病床利用率は、パンデミック前の2017~2019年が平均85.6%であったのに対し、2023年には81.3%へと5.3パーセントポイント低下していた。 これらの解析の結果として著者らは、「COVID-19パンデミックは国内の医療機関の利用状況を根本的に変え、その影響は世界保健機関(WHO)が2023年5月に緊急事態宣言を終了した後も続いている」と総括している。また、国内においてパンデミック後期にCOVID-19以外の超過死亡が報告されていたことに関連して、入院患者数の減少が国民の健康アウトカムに潜在的な影響を及ぼしていた可能性を指摘。「脱施設化や長期ケアの地域医療への移行を進める中で、政策立案者は医療提供パターンの変化を注意深くモニタリングし、適切な医療アクセスの確保に注意を払う必要がある」と付け加えている。

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