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ロタウイルス胃腸炎疾患啓発サイト「産後ロタ.jp」オープン

MSD株式会社は24日、7月20日の5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン「ロタテック内用液」の発売を機に、ロタウイルス胃腸炎疾患啓発サイト「産後ロタ.jp」(PCサイト:http://35-rota.jp/、携帯サイト:http://35-rota.jp/m/)を開設した。産後ロタ.jpでは、ロタウイルス胃腸炎の症状やその原因となるロタウイルスに関する解説のほか、予防ワクチンに関する情報提供や体験談、Q&Aなどを紹介している。また、ロタウイルス胃腸炎とワクチンに関する用語をわかりやすく解説する用語辞典もある。さらに、子どもが罹患した際の家族の負担などをマンガでわかりやすく紹介した「とある家庭のロタウイルス胃腸炎」や、実際に子どもがロタウイルス胃腸炎に罹った母親の声なども掲載している。詳細はプレスリリースへhttp://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2012/Pages/product_news_0724.aspx

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妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、出生児のリスク増大認められず

妊娠中へのアジュバント新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種は、重大な先天異常や早産、胎児発育遅リスクを、非接種と比べて増大しないことが報告された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjo rn Pasternak氏らが、新生児5万例超の国内登録コホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月11日号で発表した。妊娠第1期の予防接種での重大先天異常リスクは接種群5.5%、非接種群4.5%研究グループは、2009年11月2日~2010年9月30日にデンマークで生まれた単胎児5万3,432例を対象とする登録コホート試験を行った。傾向スコアによるマッチング解析を行い、妊娠中のアジュバント新型インフルエンザワクチン(Pandemrix)接種の有無による、致死的転帰発生リスクを比較した。主要アウトカムは、重大な先天異常、早産、在胎齢に対する過少体重だった。母親が妊娠中にインフルエンザ予防接種を受けていたのは、13.1%(6,989例)だった。そのうち妊娠第1期の接種は345例、第2~3期接種は6,644例だった。妊娠第1期接種者についての傾向スコアマッチング(330例曝露群、330例非接種群)の結果、重大な先天異常が認められたのは接種群18例(5.5%)に対し、非接種群では15例(4.5%)だった(有病割合オッズ比:1.21、95%信頼区間:0.60~2.45)。早産、在胎齢に対する過少体重ともに、妊娠中ワクチン接種によるリスク増大認められず早産の発生についても、曝露群31例(9.4%)、非接種群24例(7.3%)と、有意なリスク増大は認められなかった(有病割合オッズ比:1.32、同:0.76~2.31)。早産については妊娠第2・第3期についても比較したが、同発生は第2・第3期接種群6,543例中302例(4.6%)、非接種群6,366例中295例(4.6%)と、リスク増大は認められなかった(有病割合オッズ比:1.00、同:0.84~1.17)。在胎齢に対する過少体重は、妊娠第1期では接種群25例(7.6%)、非接種群31例(9.4%)に認められた(有病割合オッズ比:0.79、同:0.46~1.37)。妊娠第2・第3期接種群では、6,642例中641例(9.7%)、同非接種群6,642例中657例(9.9%)だった(有病割合オッズ比:0.97、同:0.87~1.09)。

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新型インフルエンザワクチン接種によるギラン・バレー症候群発症リスクは?

新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種によるギラン・バレー症候群発症リスクは、小さいながら有意にあることが報告された。カナダ・Laval大学のPhilippe De Wals氏らが、ケベック州で地域住民対象のコホート試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月11日号で発表した。ケベック州では2009年秋に新型インフルエンザのパンデミックを受けてワクチン接種キャンペーンを展開した。その際多くの人がAS03アジュバントワクチン(Arepanrix)の接種を受け、年度末までに住民780万人のうち57%が同ワクチン接種を受けたという。ギラン・バレー症候群71人中、8週間以内のワクチン接種は25人研究グループは、2009年10月~10年3月の6ヵ月間、カナダのケベック州で住民ベースのコホート試験を行った。試験期間中にギラン・バレー症候群が疑われた、または診断された患者について、地域の医師からの報告と病院の退院報告書で確認した。インフルエンザワクチン接種については、地域の予防接種登録名簿などで確認し、ギラン・バレー症候群発症との関連を、ポアソンモデルと自己対照ケースシリーズ法で分析した。その結果、6ヵ月の試験期間中、ギラン・バレー症候群が83人に認められ、そのうち71人はブライトン分類評価で1~3であった。そのうち、発症前8週間以内に新型インフルエンザワクチンの接種を受けていたのは25人、そのうち19人が同4週間以内に接種を受けていた。発症リスク、ワクチン接種後8週間は1.8倍、4週間は2.75倍ポアソンモデル解析の結果、接種群のギラン・バレー症候群の確定診断に関する非接種群に対する年齢・性別補正後相対リスクは、接種後8週間は1.80(95%信頼区間:1.12~2.87)、同4週間は2.75(同:1.63~4.62)だった。自己対照ケースシリーズ法では、接種群のギラン・バレー症候群の確定診断(42人)に関する非接種群に対する年齢・性別補正後相対リスクは、接種後4週間は3.02(同:1.64~5.56)だった。ブライトン分類評価1~3(36人)についてみた場合のリスクは2.33(同:1.19~4.57)だった。ワクチン接種のギラン・バレー症候群発症への寄与リスクは、100万人当たり2人だった。Wals氏は、「ワクチン接種によるベネフィットは、リスクを上回るようだ」と結論している。

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MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。延べ追跡期間5,600万人・年のうち、MRSA感染症は約2,600人、創部膿瘍感染は8万人超研究グループは、2005~2010年に、米国国防総省の医療保険「TRICARE」受給者について観察研究を行った。主要アウトカムは、10万人・年当たりのMRSAを起因とする感染症罹患率と、2005~2010年の年間罹患率の傾向とした。延べ追跡期間は5,600万人・年で、その間にMRSA感染症は2,643人、MRSAによる創部膿瘍感染は8万281人に、それぞれ発症した。MRSA感染症の年罹患率は3.6~6.0/10万人・年、MRSA皮膚軟部組織感染症は122.7~168.9/10万人・年だった。2010年のMRSA感染症年間罹患率、市中型1.2/10万人・年、院内型0.4/10万人・年追跡期間中の年間罹患率の変化についてみると、市中型MRSA感染症の発症率は、2005年の1.7/10万人・年から、2010年の1.2/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。院内型MRSA感染症も、同期間に0.7/10万人・年から0.4/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。また、MRSAが原因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年には創部膿瘍の62%を占めたのをピークに、2010年にはその割合は52%へと低下した(傾向p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン 7月20日より販売開始

MSD株式会社は13日、5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン「ロタテック内用液」(以下「ロタテック」)の販売を、7月20日より開始すると発表した。ロタテックは、ロタウイルスの感染によって引き起こされる乳幼児のロタウイルス胃腸炎を予防する5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン。ロタウイルスには多くの血清型があると報告されているが、そのうちG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]の5種類の血清型の組み合わせで、ロタウイルス胃腸炎の原因の約90%を占めている。ロタテックは、G1、G2、G3、G4およびP1A[8]型の5つの血清型のロタウイルス株を含む5価のワクチンであり、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]に起因するロタウイルス胃腸炎に対して予防効果が示唆されている。また、疫学研究において、ロタウイルスに複数回感染することで、ロタウイルス胃腸炎に対する自然免疫をより高く獲得することも報告されている。その研究結果から、ロタテックは3回接種のロタウイルスワクチンとして開発されたという。ロタテックは、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.によって開発され、2005年にメキシコで承認されて以来、2012年3月時点で、世界107の国と地域で承認されている。日本では、2012年1月18日に厚生労働省より製造販売承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2012/Pages/product_news_0713.aspx

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HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。母親あるいは乳児に対する予防治療の有効性を無作為化試験で評価BAN(Breastfeeding、 Antiretrovirals、 and Nutrition)試験は、HIV感染母親から子どもへの感染予防における母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週投与の有効性を検討する無作為化対照比較試験。2004年4月21日~2010年6月28日まで、アフリカ南東部の国マラウイの首都リロングウェ市で実施された。HIVに感染し、CD4陽性リンパ球細胞数≧250個/1μLの授乳期の母親2,369人とその乳児を対象とし、3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けた。すべての母親と乳児に、ネビラピン(商品名:ビラミューン)(母親:200mg/kg、乳児:2mg/kg)を1回経口投与し、ジドブジン(商品名:レトロビル)(母親:300mg/kg、乳児:2mg/kg)+ラミブジン(商品名:エピビル)(母親:150mg/kg、乳児:4mg/kg)の合剤(母親は錠剤、乳児はシロップ)を1日2回、7日間投与した。対照群(668人)にはこれ以上の治療は行わなかった。母親に対する抗レトロウイルス薬3剤併用療法群(849人)には、ジドブジン+ラミブジン合剤(商品名:コンビビル)を28週投与し、ネビラピンは出産後最初の2週は1日1回、15日~28週は1日2回投与した。乳児に対するネビラピン療法群(852人)は、出生後最初の2週は10mg/kgを、3~18週は20mg/kgを、19~28週は30mg/kgをそれぞれ1日1回投与した。なお、ネビラピンは、その肝毒性に関するFDA勧告に基づき、2005年2月以降はネルフィナビル(商品名:ビラセプト)に、2006年2月以降はロピナビル+リトナビル合剤(商品名:カレトラ)に変更した。母親には産後24~28週の離乳が推奨された。治療割り付け情報は、現地の医療従事者と患者には知らされたが、それ以外の研究者にはマスクされた。主要評価項目は48週時の乳児のHIV感染とした。48週乳児HIV感染率:対照群7%、母親3剤併用群4%、乳児ネビラピン群4%母親3剤併用群の676組、乳児ネビラピン群の680組、対照群の542組が、48週のフォローアップを完遂した。産後28週以降は授乳を中止した母親は2つの介入群を合わせ96%、対照群は88%だった。生後2~48週の間にHIVに感染した乳児は、母親3剤併用群が30人、乳児ネビラピン群が25人、対照群は38人で、そのうち28人(30%)は28週の治療終了以降に感染していた(それぞれ9人、13人、6人)。48週までの乳児HIV感染リスクは、対照群の7%に比し、母親3剤併用群が4%(p=0.0273)、乳児ネビラピン群も4%(p=0.0027)と、いずれも有意に良好だった。乳児における重篤な有害事象の頻度は、治療期間中よりも治療終了後(29~48週)のほうが有意に高く(1.1件/100人・週 vs 0.7件/100人・週、p<0.0001)、下痢、マラリア、発育不良、結核、死亡のリスクが高かった。産後2~48週の間に9人の母親が死亡した(母親3剤併用群:1人、乳児ネビラピン群:2人、対照群:6人)。著者は、「医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週予防投与により乳児のHIV感染が減少するが、6ヵ月での離乳は乳児の罹病率を増加させる可能性がある」と結論している。なお、WHOは現在、本試験を含む知見に基づき、授乳期12ヵ月間の抗レトロウイルス薬予防治療を推奨しているという。(菅野守:医学ライター)

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SGLT1/2阻害薬LX4211の有効性

新しい作用機序を持つ経口の2型糖尿病治療薬であるSGLT1/2阻害薬LX4211の試験結果が、B Zambrowicz氏らによりClinical Pharmacology & Therapeutics誌Early Online Publication 2012年6月27日付で報告された。この結果、LX4211はプラセボと比べて、消化器症状などの有害事象を増加させることなく、空腹時血糖値やHbA1c値を有意に改善させることが明らかになった。SGLT2は腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である。SGLT2阻害による血糖コントロール改善が示されており、現在、複数のSGLT2選択的阻害薬が開発段階にある。SGLT1を介さず、SGLT2に選択性の高い阻害薬が多く開発されているのは、主に腸管のグルコース輸送体として存在するSGLT1の腎臓のグルコース再吸収への貢献がわずか10%であることや、SGLT1欠損患者ではグルコースとガラクトースの吸収不良に起因する重篤な消化器症状が示唆される等が理由とされていた。しかしRoux-en-Y法による肥満外科手術や難消化性でん粉摂取後は、遠位小腸および大腸へのグルコース輸送が増加しても、消化器症状を発現することなく耐糖能を改善できている。これは、GLP-1分泌によるものと考えられている。このことから、SGLT1/2阻害薬も、選択的SGLT2阻害薬同様に、消化器症状に影響を与えずに、腸管からのグルコース吸収を遅延させ血糖コントロールを改善できるのではないかと、今回検討が行われた。試験対象は、38歳~64歳の2型糖尿病患者36例。プラセボ群、LX4211の150mg投与群、同300 mg投与群、の3群に無作為に割り付け、1日1回経口投与を28日間継続した。主な結果は以下のとおり。 ・LX4211群はプラセボ群と比較して、28日後の空腹時血糖値、耐糖能、およびHbA1c値を含む血糖コントロール指標を有意に改善した。・24時間UGE値は1日後、14日後、28日後においてプラセボ群と比較し、LX4211群で有意に増加した。・LX4211群は、プラセボと比較して、血清トリグリセリド値を有意に低下させた。また、有意差は認められなかったが、体重と血圧は減少傾向、GLP-1濃度は増加傾向を認めた。・有害事象発現は3群間で同等であり、緊急性尿路感染症、性器感染症、低血糖などはみられず、重篤な有害事象の報告はなかった。心血管イベント発現、心電図所見の有意な変化も認められなかった。(ケアネット 佐藤 寿美)〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク 臨床医と患者が語る、乾癬の研究と治療の最新動向

 6月25日、アボット・ジャパン株式会社、エーザイ株式会社の主催でプレスセミナー「もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク」が開催された。聖母病院皮膚科 小林里実氏を講師に、乾癬患者さんをゲストに迎え、乾癬がおかれている現状と、乾癬に罹患した患者さんがどのような症状で苦しんでいるのかを紹介した。乾癬の現状 乾癬では、炎症による表皮細胞の増殖を伴う疾患である。炎症と増殖があるという点で、皮膚炎の中でも湿疹とは異なる。表皮細胞は増殖分化する細胞であり、表皮は常に新生を繰り返すこと(turn over)で外傷や炎症に対処している。乾癬では、炎症により通常は有棘層28日+角層14日のturn overサイクルが4~7日+2日にまで亢進しているため、表皮が厚くなるとともに角層が鱗屑としてどんどん落ちていく。 また、これらの炎症は皮膚表面で起こっているため、見た目にも非常に目立ち、感染症や特殊な皮膚病などと誤解されることが多い。 乾癬の皮膚症状は、境界明瞭な紅斑、銀白色雲母様の鱗屑、盛り上がって触れる浸潤が特徴的である。初発部位は頭部、次いで肘膝などが多いが、全身どこにでも出現する。尋常性乾癬が90%近くを占めるが、そのほかにも関節症性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がある。 膿疱性乾癬のうち、急性型は重症で治療に難渋する例が少なくない。また、乾癬性紅皮症は、正常な皮膚がほとんどない、紅皮症を呈する病型である。そして、関節症性乾癬は、非リウマチ性関節炎一つで、の不十分な治療により関節破壊や屈曲変形をきたす。しかしながら、症状に消長があるため、軽症と判断されたり、仙腸関節炎や脊椎炎も腰痛症などとして見逃されることも少なくない。 乾癬の罹患率は欧米で2%。本邦では0.1~0.2%とされているが、生活の欧米化により日本人での発症は増えている。発症年齢は、20歳と40~50歳代の二峰性といわれているが、実際には10代での発症も稀ではない。治療をあきらめて受診しない例のほか、きちんと診断されていない例、脂漏性湿疹などと誤診される例もあり、実際は乾癬として登録されるデータ以上の患者さんがいると予想される。 このような症状を示す乾癬では患者さんのQOLは著しく低い。鱗屑は軽く触れるだけで大量に落ちる。そのために温泉やプールに行けない。皮膚症状が手足にでるため、スカートがはけない、半袖のシャツが着られないなど日常生活での支障は多い。また、このような状態におかれた患者さんは人に見られることが大きな精神的ストレスとなる。ひどい場合は引きこもりとなったり、精神的に支障を来す例も少なくない。生物学的製剤が、より高い治療レベルを達成 乾癬の治療は、外用療法、光線療法、免疫抑制剤など進歩してきたが、近年の生物学的製剤の登場で治療は格段に向上した。これにより、重症の患者さんでも皮疹のない状態を保持する事が可能となってきたのである。PASI(Psoriasis Area Sensitivity Index)90、つまり皮疹の90%改善を達成すると、QOLは著明に改善する事が明らかになった。従来の治療では、皮疹が減り医療者が「良くなった」と思っても、患者さんにとっては満足できる状態ではなく、認識の乖離がみられることも少なくなかった。生物学的製剤によりPASI90を目指すことができるようになり、患者さんのQOLもDLQI 0~1と、日常生活にほとんど支障のない状態を実現することが可能となった。また、生物学的製剤の適応となる関節症性乾癬では、有効な治療を得たことにより医療者側の治療意欲の向上、知識の普及にもつながるなど、生物学的製剤は、乾癬治療を格段に進歩させた。乾癬の病態解明とメタボリックシンドローム 近年、乾癬はメカニズムが解明されて、Th17リンパ球、またその活性経路に関わるTNFα、IL12、IL23などのサイトカインが重要であることがわかってきた。そして、これらのサイトカインをブロックするターゲット療法として、生物学的製剤の登場へとつながった。 さらに、ここ1~2年で新たな知見が加わっている。乾癬に高血圧、脂質異常症、高血糖、高尿酸血症などの合併が多いことは以前から知られていたが、これらの疾患にもTNFαが強く関連することがわかったのである。その結果、乾癬によるTNFαの増加が、イ ンスリン抵抗性、動脈硬化、虚血性疾患のリスクを上昇させるという乾癬マーチの概念まで出てきている。 乾癬の治療目的とゴールは、皮疹の改善からQOLの改善へと変化している。そして、生物学的製剤の出現により、関節症性乾癬も有効に治療できるようになった。さらに、今後はメタボリックシンドロームと心血管イベントの低減までも視野に入れた治療へと変わっていく可能性がある。社会にもっと知ってほしい セミナーでは、3名の患者さんもゲストとして発言をした。そのなかで、患者B氏の事例を紹介する。 B氏は長年、関節症状で悩まされてきた患者さんである。初期は、ふけが出始めることから始まった。その後、背中のこわばり、足先の痛み、そして2ヵ月後に足親ゆびが曲がり始める。皮膚科医を受診し、乾癬と診断されるが、その際に不治の病であるといわれた。そのショックから、診療所、病院、鍼灸など数えきれないほどの医療機関を受診する。その経過の中で、免疫抑制剤で副作用が現れるなど多くの苦痛を経験した。 少し関節症状がよくなると皮膚症状が悪化し始めた。強いステロイド外用薬を大量に使い、ついには全身が赤くなり、やけどのように、少し触っただけで皮膚がむけてしまうようにもなった。服を脱ぐと砂糖を撒いたように皮膚が落ちたそうだ。 このような状態から、勤務先を解雇になり生活保護を余儀なくされる。精神的にも支障をきたし、うつ病と診断される。自暴自棄となりギャンブル依存症、ついに自殺寸前まで精神的に追い込まれたという。 しかしながら、昨年からの生物学的製剤治療が奏効し、現在は誰もBさんを見て病気だという人はいない。だが、関節症性乾癬の症状である脊椎炎が続いて定職につけず、ボランティア活動をしているという。Bさんは長年の経験を話し、「22年間病気を理解してくれる日がくる事を望んでいた。社会にもっと知って欲しい、メディアももっと取り上げてほしい」と訴えた。 最後に小林氏は、「医師は患者から得た乾癬の情報を研究し、新たな治療法の開発に努めている。患者さんや患者会は、患者間の情報共有、医師への疑問・要望の提供など素晴らしい活動をしている。しかし、それだけでは不十分であり、社会の理解とサポートが必要だ。メディアの今後の啓発活動に大いに期待したい」と語った。(ケアネット 細田 雅之)

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膣脱修復術後の失禁予防のための中部尿道スリング術

骨盤臓器脱の経膣的手術後に、尿失禁リスクに対して予防的に行う中部尿道スリング術のベネフィットとリスクについて検証した多施設共同無作為化試験の結果、3ヵ月と12ヵ月時点の尿失禁は低率となる一方、有害事象が高率でみられることが、米国・ミシガン大学のJohn T. Wei氏らにより明らかにされた。文献的には膣脱修復術を受ける女性は5人に1人に上り、欧州女性に関する報告では手術を受けた女性の4人に1人に尿失禁が出現することが示されている。これらに対して近年施術されるようになったのがスリング術だが、この予防的処置の相対的なベネフィットとリスクについては、これまで明らかにされていなかったという。NEJM誌2012年6月21日号より。スリング術群と偽切開群に無作為化し追跡研究グループは、膣脱手術を受ける予定の女性(骨盤臓器脱定量化システム検査でステージ2以上)で、腹圧性尿失禁症状のない女性を、術中に中部尿道スリング術または偽切開を受けるよう無作為に割り付け、術後の尿失禁治療の有無について調べた。また、術前に腹圧性尿失禁テストを行うことについても評価した。主要エンドポイントは2つを定め、第1主要エンドポイントは、3ヵ月時点での尿失禁の出現、または尿失禁治療を受けている割合とした。第2の主要エンドポイントは、12ヵ月時点におけるその後に尿失禁治療が見込まれる割合とした。スリング術群の尿失禁の出現は低率だが有害事象が高率で出現337例の女性が無作為化され、327例(97%)が1年間の追跡調査を完了した。結果、3ヵ月時点の尿失禁(または治療)の発生率は、スリング術群23.6%に対し、偽切開グループ49.4%だった(P<0.001)。12ヵ月時点での尿失禁(またはその後に治療が見込まれる)の発生率は、スリング術群27.3%、偽切開群43.0%だった(P=0.002)。12ヵ月時点で尿失禁1例を予防するのに必要なスリング術は6.3例だった。一方で、膀胱穿孔の発生率が、スリング術群のほうが偽切開群より高かった(6.7%対0%)。同様に、尿路感染症(31.0%対18.3%)、重大な出血性合併症(3.1%対0%)、術後6週間にわたる残尿感(3.7%対0%)も、スリング術群で高率に認められた(全比較におけるP≦0.05)。(朝田哲明:医療ライター)

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重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。集中治療室入院症例数と患者アウトカムの関連を後ろ向きに評価研究グループは、英国の成人敗血症患者の一般集中治療室への入院における、症例数と患者アウトカムの関連について検討するために、統合データベースを用いたレトロスペクティブなコホート試験を実施した。客観的で標準化された重症敗血症の判定基準を満たし、2008~2009年に集中治療室に入院した患者を対象とし、救急病院からの最終的な退院時の死亡率について評価した。症例数と重症度、人工呼吸器装着との間にも関連なし一般化推定方程式を用いた多変量ロジスティック回帰分析で、入院症例数と院内死亡率の関連を評価したところ、英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はなかった。サブ解析にて症例数と疾患の重症度、人工呼吸器装着との交互作用の検定を行ったところ、これらの間にも有意な関連は認めなかった。著者は、「本試験では、成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はみられなかった」とし、「今後は、症例数や一般集中治療室以外の要素に焦点を当てた検討を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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災害対策として大学医学部の新設は必要と感じた

耳鼻咽喉科望月医院望月 義也 2012年6月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。  先日耳鼻咽喉科の学会での特別講演で、宮城県の耳鼻咽喉科医会の先生から先の大震災の貴重なお話をお伺いする機会がありました。 現地の開業医の先生方が被災地の医療をなんとか維持するために奔走されて大変な苦労をされた事が非常によく分かりました。また先生ご自身も被災者であるため、自分たちの生活や家族の事でも大変なさなか、更に被災地の地域医療に貢献する仕事をされていらっしゃったお話を聞いて非常に頭が下がる思いでした。私自身は生まれも育ちも東京の人間ですが妻が東北の人間なので今回の災害は他人事ではありませんでした。親戚で津波に流され今も行方不明の方がいらっしゃいます。当時私も何か貢献が出来ないかと考えていました。そんな折震災後間もなくある被災地域の病院で医療ボランティアに参加できる医師の募集がありました。それが妻の実家と同県の地域だったので私は直ぐに手をあげて参加を申し込みました。応募は受理され私は3月の終わりから4月初めにかけて行くチームに予定が組まれました。しかし出発の直前でその医療ボランティアを企画している本部から私の参加は断られてしまいました(念のため申し上げますと派遣先の被災地の病院から断られたのではなくて、東京のそのボランティアの企画団体の責任者に断られました)。理由は「開業医の耳鼻咽喉科医は必要無い」という事で、その時私は大変ショックを受けました。私たち耳鼻咽喉科医は上気道感染症の専門科です。平時の私の医院の外来でもねつ、せき、たん、などの患者さんは子どもからお年寄りまで診察し対応していますし、喘息の患者さんも診察しています。また地震の後激しい揺れを体験した事から、揺れがおさまった後も持続するめまいを訴える患者さんが多いと聞いていました。それこそ私耳鼻咽喉科医の出番と思っていましたし、また病院勤務医の頃は外科系当直として一般の一次・二次救急の外傷患者さんの対応もしていましたので大概の事は対応出来るつもりでいたのですが、そういった訳で今回は大変残念な思いをしました。その後東北の実家には自力で行って、妻のご家族と親戚にお会いして安否を確認しました。そんな私の経験があったのですが、今回の講演をされた先生からも似た様なお話を聞いたのです。現地でもやはり耳鼻咽喉科医はあまり前にでて何かをやるという機会が無かったという事でした。それでも何か出来ないかという事で、宮城県の耳鼻咽喉科医師たちに協力を仰いで、回診用のワゴン車を借りて被災地の避難所を巡回する事をされたそうです。巡回してみるとそれなりに耳鼻咽喉科も需要はあったという事でした。災害後、被災地の先生方がまずつくされたのが医師間での情報を整備することだったそうです。直後は何しろ電話も電気も使えない状況です。その演者の先生を含め宮城県の人でも津波による直接被害が無かった人たちは津波があった事を当初知らなかったそうです。知ったのは何日か後に電気がついてテレビが見られる様になってからだったそうです。そんな大変な状況の中、正しい医療の情報を伝えるために奔走されたお話を聞く事が出来ました。その話の流れで出て来た事がやはり病院、医師が足りない、元々医療過疎だった事もあって更に様々な事が困難であったそうです。そんな中で最後に何か頼むのはどんな地域でも大学病院です。しかし宮城県には有名病院がいくつもありますが医学部附属病院は東北大学一つしかありません。拠点となる大学病院が一つだけでは自ずと手が回らなくなってくる事は明らかです。手が足りない時は比較的ダメージの少ない日本海側の大学病院に協力してもらったという事でした。また別の演者の先生からは福島県の現状のお話も聞きました。福島県では原発処理に携わる人たちの病気や怪我の対応が大変だという事でした。福島県も福島県立医科大一つしかないので手が足りないそうです。今、各地で医学部新設に対する是非を問う意見が交わされています。私も以前はどちらかというと積極的に賛成しない意見でした。しかし今回の被災地のお話を聞いて、私は積極的に医学部を新設するべきではないかと強く感じました。分院や関連病院ではなくて、医学部附属病院の本院が必要だと感じました。県の大きさにもよりますが、各県に本院が最低限二つはあった方がいいのではと思いました。それらが拠点となり県を超えて電車の路線の様につながった医療のネットワークのシステムを構築し、平常時からいろいろなやり取りが出来る様にしておくと、このような突然の災害が起きたとしても、災害で医療が機能しなくなった地域へ近接の地域から迅速に医療を提供する事が出来る様になるのではと感じました。特に地震、台風、洪水といった災害が多い日本にはこういった有事の際に密な連絡と連携が出来る医療システムの様なものが必要だと思いました。そしてその中核として大学医学部附属病院の新設が必要と思います。そうなれば、今回私に起きた様な医師派遣のミスマッチも、地元の指令系統がしっかりできていれば起きなくなるかもしれません。医学部新設反対の意見の一つにこれから人口ピラミッドが逆転して人口が減って行く事が上げられていますが、医療は日本国民全てに平等に必要なものですから日本という国、国土がある限り、地方とか都市部とか関係なくまた人口の多い少ないに関わらず、全国に良い医療を提供するための構造が必要で、そしてそのためには拠点となる新たな大学医学部附属病院の必要である事を強く感じました。医学部新設するためには様々な困難な問題がある事は理解していますが、それにもまして新設の必要性は強く感じました。この6月19日に宮城県知事が復興をめぐる政府への要望書の中に大学医学部新設も盛り込まれていたそうです(6月20日の河北新報ニュースより)。この被災地の思いが政府に届く事を切に願います。

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世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。5歳未満児死亡の約4割が新生児、死因別では64%が感染症で死亡 Liu氏らは、2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向を調査するため、生後0~27週間の新生児、1~59ヵ月の5歳未満児の死亡総数のアップデートデータを集めて解析した。データは各国固有の死因区分が適用されているため、各国間のデータ適合を図ったり、死亡率が高い国に対して同様の多変量ロジスティック回帰モデルなどを作成適用するなどして調整を図り、インドと中国に関しては、国別モデルを作成し検討した。 集計結果から地域と世界の推定値を導き出した。 結果、2010年の5歳未満児死亡760万人のうち、64.0%(487万9,000人)は感染症が原因であった。また死亡の40.3%(307万2,000人)は新生児だった。医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7% 新生児死亡の主な原因は、早産の合併症[14.1%、107万8,000人、誤差範囲(UR):0.916~1.325]、分娩関連合併症(9.4%、71万7,000人、UR:0.610~0.876)、敗血症または髄膜炎(5.2%、39万3,000人、UR:0.252~0.552)だった。 幼児では、肺炎(14.1%、107万1,000人、UR:0.977~1.176)、下痢(9.9%、75万1,000人、UR:0.538~1.031)、マラリア(7.4%、56万4,000人、UR:0.432~0.709)が最も多かった。 一方で、関連データ同定の努力にもかかわらず、2010年に医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7%(20万5,000人)にとどまった。 2000~2010年の間の世界の5歳未満児死亡の減少は200万人で、肺炎(45万1,000人減)、はしか(36万3,000人減)、下痢(35万9,000人減)が全体的な減少に寄与していた。 国連のミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満乳幼児死亡率を1990年の3分の1に低減)達成に十分な年率で減少していたのは、破傷風、はしか、AIDS、マラリア(アフリカ)のみであった。

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亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。亜鉛追加の有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価研究グループは、重症細菌感染症の可能性がある乳児に対する抗菌薬治療の補助療法としての亜鉛の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年7月6日~2008年12月3日まで、インド・ニューデリー市の3つの病院に、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児が登録された。これらの患児が、登録時の低体重や下痢の有無で層別化した上で、標準抗菌薬治療に加えて亜鉛10mgあるいはプラセボを毎日経口投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は治療不成功率(割り付けから7日以内の抗菌薬の変更を要する病態、21日以内の集中治療[人工呼吸器装着もしくは血管作動薬投与]を要する病態あるいは死亡)とした。治療不成功率:10% vs 17%352例が亜鉛追加群に、348例がプラセボ群に割り付けられ、それぞれ332例、323例が評価可能だった。治療不成功率は、プラセボ群の17%(55/323例)に対し、亜鉛追加群は10%(34/332例)と有意に少なかった[相対リスク低下率:40%、95%信頼区間(CI):10~60%、p=0.0113、絶対リスク低下率:6.8%、95%CI:1.5~12.0、p=0.0111)。治療不成功を1例回避するのに要する治療例数は15例(95%CI:8~67)であった。死亡例は亜鉛追加群が10例で、プラセボ群は17例と、有意な差はなかったものの亜鉛追加群で低下する傾向を認めた(相対リスク:0.57、0.27~1.23、p=0.15)。著者は、「生後60日までの乳児に限ってもベネフィットが確認された。回復、体重増加、完全経口摂食までの期間には影響はなかった。亜鉛は、標準抗菌薬治療の補助療法として、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児の治療不成功リスクを低減する可能性がある」と結論し、「亜鉛はすでに一般的に使用可能で、多くの低~中所得国で急性下痢の治療薬として市販されており、重症細菌感染疑いの乳児への介入に使用しても医療コストの増分はわずかだ」と指摘している。

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医師と「法への不服従」に関する論考

神戸大学感染症内科岩田 健太郎 2012年6月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 平岡諦氏の「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を興味深く読みました。平岡氏は「医の倫理」は「法」よりも上位にあり、日本医師会は「医の倫理」に遵法を要求していることから、法律家(弁護士)が「医の倫理」規定に参画するのは間違っていると主張します。本稿の目的は平岡氏のこの大意「そのもの」への反論ではありません。平岡氏が指摘するような日本医師会の医療倫理への「操作」や歴史的プロセスについて、あるいはそこにおける弁護士の意味や役割についてぼくは十分な情報を持っていませんし、また関心事でもないからです。しかし、部分的には異議を持ちましたので、その点については、あくまでも各論的に指摘したいと思います。アメリカ医師会の倫理綱領を紹介して平岡氏はそこで「『法への非服従』を謳っている」と説明し、「A physician shall respect the law and also recognize a respondsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient」という文章を紹介します。しかし、「法への非服従」には二つの意味があります。一つは現行法を遵守しつつ、その法が「悪法である」と主張して変化を求めること、もう一つは現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行うことです。平岡氏が主張する「法への非服従」は後者にあたります。しかし、アメリカ医師会の文章では「seek changes」と書かれていますから、素直に読めば前者の意味と理解するのが自然です。平岡氏は自身の見解、医師の「法への非服従」にあまりにこだわるあまり、AMAの見解を曲解しています。ナチスドイツが行ったユダヤ人やその他の民族の大虐殺、そして医療の世界における非道な人体実験は我々の倫理・道徳的な観念に大きな揺さぶりをもたらしました。問題は、これらの非道な行為が「悪意に満ちた、悪魔的な集団によって行われた」というより、ハンナ・アーレントらが指摘するように、普通の常識的な人物たちが当時の法と上司の命令に素直に従って行った悪烈な行為であったことが大きな問題であったのです。ですから、それに対する大きな反省を受けて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」(ハンナ・アーレント「イスラエルのアイヒマン」みすず書房 225ページ)という考えがでてきました。これが平岡氏の言う「法への非服従」でしょう。さて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」は普遍的な原則です。ナチスドイツの法と命令に従った全ての人に適応可能な原則なのですから。したがって、「法への非服従」を求められる職業は平岡氏が主張するように医師だけに要求される倫理観ではありません。看護師などの他の医療者や、教師や、あるいはあらゆる社会人にも適用可能な原則です。しかし、ナチスドイツにしても、日本の731部隊にしても、その人体実験は極端なまでに悪らつで、また例外的な悪事でした。医療者は一般的に善良な意志を持っており、また善良なプラクティスを心がけています。それが必ずしも患者にとって最良な医療になる保証はありませんが、少なくともナチスドイツや731部隊的な行為は日常的には行われません。あれは、極めて例外的な事項です。日常的にあんなことが頻発されてはたまったものではありません。例外的なのだから忘却しても構わない、と申し上げたいのではありません。ハンナ・アーレントが指摘するように、そのような例外的な悪らつ非道は「ふつうの人」にも起こりえる陥穽を秘めています。だから、ぼくらはそのような「極端な悪事」にうっかり手を貸してしまうリスクを常に認識しておかねばなりません。繰り返しますが、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」というハンナ・アーレントの格率は、そのような極端な事例において適応が検討されるもので、日常的な格率ではありません。一方、アメリカはかなり強固な契約社会であり、法とか社会のルールを遵守するのが正しいと主張する社会です。アメリカのような契約社会でルールを破っても構わない、という考え方はかなりリスクが大きいのです。医師を含め、医療者も法やルールをきちんと遵守することが日ごろから要求されています。平岡氏のいう「法への非服従」はアメリカ医療の前提にはありません。だからAMAはseek changesとは言っても、act against the lawとは明記しなかったのです。もしアメリカにおいてそれが許容されることがあったとしても、繰り返しますが、極めてレアなケースとなるでしょう。アメリカ以外の社会においても、法への非服従が正当化されるのはナチスドイツ的な極めて例外的な悪事、「明白に犯罪的な命令」に限定されます。しかも、何が犯罪的なのかは自分自身で判断しなければならないのですが、その基準は「あいまい」であってはなりません。ハンナ・アーレントは「原則と原則からの甚だしい乖離を判別する能力」(同ページ)が必要と述べます。「甚だしい」乖離でなければならないのです。臨床試験の医療倫理規定であるヘルシンキ宣言もナチスドイツの人体実験の反省からできたものですが、ホープは極めて例外的なナチスドイツ的行為が、日常的な臨床試験の基準のベースになっていることに倫理的な問題を指摘しています(医療倫理、岩波書店)。あまりにも杓子定規で性悪説的なヘルシンキ宣言のために、患者が医療サービスを十全に受ける権利が阻害されているというのです。形式的で保険の契約書みたいなインフォームドコンセント、過度に官僚的なプロトコルなどがその弊害です。医療倫理を善と悪という二元的でデジタルな切り方をするから、こういう困難が生じるのです。多くの場合、医療の現場は白でも黒でもないグレーゾーンであり、ぼくら現場の専門家に求められるのは、「どのくらいグレーか」の程度問題なのですから。そして、アメリカであれ、日本であれ、他の世界であれ、医師が「法への不服従」を正当化されるのは(正当化されるとすれば、ですが)、極めて黒に近い極端で例外的な事例においてのみ、なのです。また、平岡氏は日本医師会がハンセン病患者の隔離政策に対応してこなかったことを批判します。その批判は正当なものです。しかし、それは「法の改正を求める」という方法と「法そのものをあえて破る」ことが区別されずに批判されています。たとえば、現行の悪法を悪法だと批判し、改正を求めることもひとつの方法なのです。そして、(引用)『医師の職業倫理指針』では「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」となっています。すなわち、日本医師会は「遵法」のみを医師に要求し、「法への非服従」を医師に求めていないのです。このことは、日本医師会が「悪法問題」を解決していないことを示しています。(引用終わり)と医師会も「法律の不備」を指摘し、改善を求める必要は認めているのですから、少なくともAMAと(WMAはさておき)主張はそう変わりないのだとぼくは思います。また、平岡氏はジュネーブ宣言を引用して「いかなる脅迫があっても」と訳しますが、原文は「even under threat」、、脅迫下においても、、、という言及のみで「いかなる」=under any circumstances、とは書かれていません。この点では平岡氏の牽強付会さ、議論の過度な拡大解釈、が問題になります。平岡氏は日本医師会が「世界標準」から外れており、そこに(WMAに)従わないのが問題だといいます。その是非は、ここでは問いません。しかし、そもそも医の倫理に「世界標準」などというものを作ってしまえば、それは倫理を他者の目、「他者の基準」に合わせてしまうことを意味しています。しかし、たとえWMAがいう「規範」であっても、それが自分の中にある道徳基準を極端に外れている場合は、それに従わないというのが、カントらが説く自律的な倫理観です。AMAがこういっている、WMAがそう訴えている、「だから」それに従うというのは、そもそもその自律的な倫理原則から外れてしまいます。これは本質的なジレンマです。自律と他律のこのジレンマは、ヘーゲルら多くの哲学者もとっくみあった極めて難しい問題ですが、いずれにしても「世界標準だから」医師会にそれに従えと言うのは、自律を原則とする医療倫理における大きなパラドックスではないでしょうか。AMAの倫理規定を読むと、ぼくはいつもため息を禁じえません。http://www.ama-assn.org/resources/doc/ethics/decofprofessional.pdfそこには例えば、Respect human life and the dignity of every individual.とあります。全ての人の生命と尊厳を尊重せよと説きます。しかし、その基盤となるアメリカの国民皆保険に強固に反対してきたのも、またAMAでした(医師の利益が阻害されるからです)。このようなダブルスタンダードが、もっとも非倫理的な偽善ではないかとぼくは考えます。日本医師会がどうあるべきかは、本稿の趣旨を超えるものですが、少なくともAMAやWMAを模倣することに、その回答があるのではないことは、倫理の自律性という原則に照らし合わせれば確かなのです。

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サルモネラ感染の拡大、通販で購入したひな鳥が原因と特定

2005年に特定されたヒトサルモネラモンテビデオ感染症の集団発生について、米国CDCのNicholas H. Gaffga氏らが、感染源を特定し予防対策を講じる調査を行った結果、通信販売専門の孵化場から出荷されたひな鳥との接触が原因であったことが報告された。感染したのは主に幼児で、孵化場への介入により、ヒトへの感染は減少したが根絶には至らず、「生きているひな鳥からのサルモネラ菌伝播を断つことは難しいことが示された」と結論している。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。2004~2011年の間に43州316症例が同定、患者の年齢中央値は4歳ヒトサルモネラ感染症の集団発生は、生きたひな鳥との接触が関連しているとの見解が高まっているが、有効なコントロール方法はわかっていない。研究グループは、2005年に全米亜型分類ネットワークPulseNetによって確認された、ヒトサルモネラモンテビデオ感染症について調査を行った。公衆衛生局および動物衛生局と協力し、多州にわたる患者インタビュー、トレースバック調査、集団発生に関連した通信販売専門の孵化場での環境検査などを行い、感染源を特定し、さらなる予防対策を行った。症例は、2004~2011年に報告された発生株に感染していた例と定義した。その結果、43州で43州にわたる316症例が同定された。患者の年齢中央値は4歳だった。孵化場へ介入後、ヒトへの感染は減少したが伝播は継続面談は156例(49%)の患者(または保護者)に対して行われた。そのうち、入院は36例(23%)だった。また、情報が得られた145例のうち、80例(55%)に出血性下痢が認められた。入手できた、孵化後まもないひな鳥と接触したことを示す情報は159例あった。このうち、122例(77%)で接触があったことが報告された。トレースバック調査の結果、米国西部にある1つの通信販売専門孵化場が同定された(調査結果81%)。この孵化場で採取したひな鳥の検体から、ヒトサルモネラモンテビデオ感染症集団発生株が分離された。孵化場へ介入後、ヒトへの感染は減少したが伝播は継続した。(武藤まき:医療ライター)

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国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率と感染症発生との関連について調査「手洗いキャンペーン」は、ベッドサイドへのアルコール手指消毒薬の供給、医療従事者に手洗いを想起させるポスターの配布、コンプライアンスについての定期的検査とフィードバック、医療従事者に手洗いを想起させるための患者への資料提供から成った。アルコール手指消毒薬および液状石鹸はNHS物品供給会社を通して購入することとされ品質は保証されたものだった。キャンペーンは保健省が資金を提供し、国家患者安全丁(NPSA)の調整の下で展開された。キャンペーンの全国展開開始は2004年12月1日で翌2005年6月まで全国の急性期NHS病院に対し介入が続けられた。その後、2006年6月末、2007年10月に一新やポスターの再作成などが図られた。Stone氏らは、病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率、特定の医療従事者関連感染の報告におけるキャンペーンの影響について評価し、2004年7月1日~2008年6月30日の間の感染症発生と調達率との関連について、前向き生態学的断続時系列の手法を用いて調査した。調達率3倍に、MRSAとC. difficileは減少に転じたがMSSAには影響認められず四半期ごとに調べられた病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率は、1患者・床・日当たり21.8mLから59.8mLへと約3倍に増えていた。調達率は各キャンペーン発動と関連して上昇していた。感染報告症例は1万床・日当たり、MRSA菌血症は1.88から0.91に減少、C. difficile感染症も16.75から9.49に減少した。しかしMSSA菌血症は減少に転じなかった(2.67からピーク時3.23に、試験終了時は3.0)。石鹸の調達は、C. difficile感染症低減と独立した関連が試験期間を通して一貫して認められた(1mL/患者・床・日増大に対する補正後発生率:0.993、95%信頼区間:0.990~0.996、P<0.0001)。アルコール手指消毒薬の調達は、MRSA菌血症低減と独立した関連が認められたが、それは試験最後の4四半期においてのみだった(同:0.990、0.985~0.995、P<0.0001)。2006年発動のキャンペーンが最も強くMRSA菌血症低減(同:0.86、0.75~0.98、P=0.02)、C. difficile感染症低減(同:0.75、0.67~0.84、P<0.0001)と関連していた。定期検査のための保健省改善チームのトラスト訪問も、MRSA菌血症低減(同:0.91、0.83~0.99、P=0.03)、C. difficile感染症低減(同:0.80、0.71~0.90、P=0.01)と強く関連し、訪問後少なくとも2四半期はその影響が認められた。結果を踏まえてStone氏は、「手洗いキャンペーンは、病院の手指消毒薬等の調達継続と関連しており、医療従事者関連の感染症低減に重要な役割を果たすことが示された。医療従事者関連の感染症低減には、人目を引く政治組織的な推進力の下で行う国家的介入の感染症コントロールが有効である」と結論している。

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関節リウマチ治療薬への新たな期待 【アバタセプト全例調査 中間解析結果】

2012年4月に開催された第56回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR2012)において、アバタセプト(商品名:オレンシア)の使用成績調査(全例調査)の中間解析結果が報告された。これを受けて2012年5月25日、ブリストル・マイヤーズ株式会社による記者発表会が開催され、産業医科大学第1内科学講座の田中良哉氏によって講演が行われた。関節リウマチとは?関節リウマチは手指や膝など全身の関節に腫れや痛みが生じ、症状が進行すると関節破壊・変形が起こるため、生活や仕事に影響を及ぼす自己免疫疾患である。また、関節破壊は発症後、約2年間で急激に進むため、早期からの適切な治療が求められる。日本の患者数は70万人とも100万人ともといわれ、30~40歳代の女性に好発する。関節リウマチの診断基準関節リウマチは関節破壊が起こる前に治療を開始することが求められるため、早期診断・早期治療を推奨することを目的に米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)により、関節リウマチ分類基準(ACR/EULAR2010)が発表されている。この基準によると、1ヵ所以上の関節腫脹を認め、他の疾患と鑑別された場合に、下記スコアリングによる分類基準において10点中6点以上であれば関節リウマチと診断される。 腫脹または圧痛関節数1個の中~大関節   0点2~10個の中~大関節   1点1~3個の小関節   2点4~10個の小関節   3点11個以上の関節(1つの小関節を含む)   5点血清学的検査RFも抗CCP抗体も陰性   0点RFか抗CCP抗体のいずれかが低値の陽性   2点RFか抗CCP抗体のいずれかが高値の陽性   3点滑膜炎の期間6週未満   0点6週以上   1点急性期反応CRPもESRも正常値   0点CRPかESRのいずれかが異常値   1点標的部位の異なる生物学的製剤現在、関節リウマチ(RA)治療に用いられる生物学的製剤はTNF阻害剤が4製品、IL-6阻害剤とT細胞阻害剤がそれぞれ1製品発売されている。T細胞阻害剤であるアバタセプトは抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを遮断し、T細胞の活性化とサイトカイン産生を阻害する薬剤である。これまでのTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤とはコンセプトの異なる薬剤として注目されている。3,000例を目標とする全例調査アバタセプトは使用実態下における臨床経過や有効性、安全性に関する情報を収集することを目的に全例調査の実施が承認条件となっている。2010年9月から症例登録が開始され、目標症例数は3,000例(24週の観察期間を終了する症例数)である。本中間解析では登録開始後の初期1,000例を対象として解析された。 <患者背景>性別 男性18.1%、女性81.9%平均年齢 61.4歳生物学的製剤の使用歴 未使用27.2% 既使用72.8%メトトレキサートの併用状況 非併用35.7% 併用64.3%安全性について有害事象は236例(23.6%)、うち重篤な有害事象は33例(3.3%)にみられ、副作用は160例(16.0%)、うち重篤な副作用は24例(2.4%)であった。有害事象のうち、重点調査項目であった重篤な感染症は8例、重篤な過敏症は1例、悪性腫瘍は3例であった。また、生物学的製剤を投与する際には結核等の再燃が危惧されるが、本中間解析において結核の報告はなかった。なお、重篤な副作用発現に対するリスク因子として、リンパ球数1000mm3未満と体重40kg未満が示唆された。バイオナイーブ群ではより高い改善効果DAS28(CRP)*1平均値は投与前は4.34であったが、24週時点で3.32まで低下した。 SDAI*2、CDAI*3はそれぞれ投与前が23.9、22.1であったのに対し、投与後は14.6、13.5まで改善した。また、生物学的製剤による前治療の有無別にみると、既投与例ではDAS28(CRP)は4,36(投与前)から3.48(24週時点)へ低下したのに対し、未投与(バイオナイーブ)群では4.26(投与前)から2.84(24週時点)まで低下していたことから、バイオナイーブの患者でより大きな改善がみられた。より高い治療効果への期待全例調査の中間解析により、アバタセプトは比較的副作用の発現頻度が低く、安全性の高さが示唆された。また、田中氏は、「アバタセプトはバイオナイーブ症例で有効性が高く、他の生物学的製剤と遜色がなかったことから、生物学的製剤の第一選択となり得る」と考察を述べた。アバタセプトの全例調査は承認条件が解除されるまで継続され、現在、長期使用における安全性や有効性に関する調査も実施されており、今後さらなるデータの蓄積が期待される。 *1 DAS28(CRP)28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による健康状態の評価、CRP(C反応性蛋白)による評価*2 SDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による全般評価、医師による全般評価、CRPによる評価*3 CDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、医師による全般評価(ケアネット 森 幸子)

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妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、胎児死亡との関連認められず

妊婦への不活化新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関して、胎児死亡リスク増大のエビデンスは見つからなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らによる約5.5万人の妊婦を被験者とするデンマーク全国登録コホート研究の結果、示された。2009パンデミック当時、新型インフルエンザに罹患した妊婦の罹病率、死亡率が増大し、妊娠アウトカムが不良となることが認められたことから、その後、多くの国で、新型インフルエンザワクチン接種キャンペーンのターゲットに妊婦を含んでいる。Pasternak氏らは、ワクチン接種が胎児死亡と関連しないかを国民ベースで検証した。BMJ誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載報告より。妊婦5万4,585例を対象に、ワクチン接種群と非接種群の胎児死亡等リスクを比較対象となったのは、2009年11月~2010年9月に単胎児妊娠中の妊婦5万4,585例であった。AS03パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン不活化新型インフルエンザワクチン(Pandemrix)接種状況および潜在的交絡因子を結びつけて調査が行われた。主要アウトカムは、ワクチン非接種妊婦と比較したワクチン接種妊婦の、傾向スコア補正後の胎児死亡(特発性流産と死産を含む)リスクとした。副次アウトカムは、流産(妊娠7~22週)、死産(22週過ぎ以降)とした。主要、副次アウトカムともにリスク増大の関連認められず妊婦5万4,585例のうち、ワクチン接種者は7,062例(12.9%)。胎児死亡発生は、1,818例(特発性流産1,678例、死産140例)だった。解析の結果、ワクチン接種と胎児死亡リスク増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:0.79、95%信頼区間:0.53~1.16)。副次アウトカムについても、流産(同:1.11、0.71~1.73)、死産(同:0.44、0.20~0.94)ともに増大は認められなかった。また共存症あり(同:0.82、0.44~1.53)、共存症なし(同:0.77、0.47~1.25)で検討した結果も、推定胎児死亡リスクは同程度であった。

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