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抗菌薬適正使用推進プログラム、広域抗菌薬の適応外使用を改善/JAMA

 小児プライマリ・ケア外来への抗菌薬適正使用推進プログラム(antimicrobial stewardship program)の導入により、細菌性急性気道感染症(ARTI)の診療ガイドライン遵守状況が改善されることが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らの検討で示された。米国では小児に処方される薬剤の多くが抗菌薬で、そのほとんどが外来患者であり、約75%がARTIに対するものだという。ウイルス性ARTIへの抗菌薬の不必要な処方は減少しつつあるが、細菌性ARTIでは、とくに狭域抗菌薬が適応の感染症に対する広域抗菌薬の不適切な使用が多いとされる。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。プライマリ・ケアでのプログラムによる介入の効果を評価 研究グループは、小児プライマリ・ケア医による外来患者への抗菌薬処方における、抗菌薬適正使用推進プログラムに基づく介入の効果を評価するクラスター無作為化試験を行った。 ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児プライマリ・ケア施設のネットワークから18施設(医師162人)が参加し、介入群に9施設(医師81人)、対照群に9施設(医師81人)が割り付けられた。 介入群の医師は、プログラムに基づき2010年6月に1時間の研修を1回受講し、その後1年間にわたり3ヵ月に1回、細菌性およびウイルス性ARTIに対する処方への監査とフィードバックが行われた。対照群の医師は通常診療を実施した。 主要評価項目は、介入の20ヵ月前から介入後12ヵ月(2008年10月~2011年6月)までの、細菌性ARTIに対する広域抗菌薬の処方(ガイドライン規定外)およびウイルス性ARTIに対する抗菌薬の処方の変化とした。広域抗菌薬処方率が6.7%低下 広域抗菌薬の処方率は、介入群では介入前の26.8%から介入後に14.3%まで低下し(絶対差:12.5%)、対照群は28.4%から22.6%へ低下した(同:5.8%)。両群の絶対差の差(difference of differences:DOD)は6.7%で、介入による処方率の有意な抑制効果が認められた(p=0.01)。 肺炎の小児への広域抗菌薬処方率は、介入群が15.7%から4.2%へ、対照群は17.1%から16.3%へ低下し、介入による有意な抑制効果がみられた(DOD:10.7%、p<0.001)。一方、急性副鼻腔炎への処方率はそれぞれ38.9%から18.8%へ、40.0%から33.9%へと低下した(DOD:14.0%、p=0.12)。 A群レンサ球菌咽頭炎では、ベースラインの広域抗菌薬処方率が低く、介入による変化はほとんどみられなかった(介入群:4.4%から3.4%へ低下、対照群:5.6%から3.5%へ低下、DOD:−1.1%、p=0.82)。ウイルス感染症への抗菌薬処方にも同様の傾向が認められた(介入群:7.9%から7.7%へ低下、対照群:6.4%から4.5%へ低下、DOD:-1.7%、p=0.93)。 著者は、「プライマリ・ケア医の研修と、処方の監査、フィードバックを組み合わせた抗菌薬適正使用推進プログラムにより、小児に一般的な細菌性ARTIの診療ガイドラインの遵守状況が、通常診療に比べて改善された。一方、ウイルス感染症への抗菌薬処方については、介入の影響は認めなかった」とまとめ、「今後、外来における抗菌薬適正使用推進プログラムの有効性の促進要因や、一般化可能性、持続可能性、臨床アウトカムの検証を行う必要がある」と指摘している。

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炎症性バイオマーカー上昇、COPDの増悪リスク増大と関連/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪の指標として、炎症性バイオマーカー(C反応性蛋白[CRP]、フィブリノゲン、白血球数)が有用な可能性があることが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMette Thomsen氏らの検討で示された。COPDにおける呼吸器症状の増悪は、長期に持続する重篤な有害作用をもたらし、増悪が気道感染症の原因となることも多い。急性発作時は循環血中の急性期蛋白質や炎症細胞が増加するとの報告の一方で、安定期COPDでは全身性の炎症反応は低いものの炎症性バイオマーカーの上昇がみられる場合があるとのエビデンスや、炎症性バイオマーカーの上昇が不良な転帰と関連するとの研究結果もあるという。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。マーカー上昇とリスク増大との関連を前向きコホート試験で検証 研究グループは、安定期COPD患者における炎症性バイオマーカーの上昇が増悪のリスク増大と関連するとの仮説を立て、これを検証するためにプロスペクティブなコホート試験を実施した。 解析の対象は、Copenhagen City Heart Study(2001~2003年)およびCopenhagen General Population Study(2003~2008年)の参加者のうち、スパイロメトリー検査(6万1,650例)でCOPDと判定された6,574例[年齢中央値67歳、男性47%、2回以上の増悪歴あり127人、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)のGrade A/B 6,016例、C/D 558例、GOLDのGrade 1/2 6,109例、3/4 465例]であった。 増悪症状の未発現時に、ベースラインのCRP、フィブリノゲン、白血球数の測定を行った。増悪は、経口コルチコステロイド薬の単剤または抗菌薬との併用による短期的治療が行われた場合、およびCOPDで入院となった場合と定義した。CRPは3mg/L、フィブリノゲンは14μmol/L、白血球数は9×109/Lをカットオフ値として高値と低値に分類した。軽度、増悪歴なしでも有意な増悪リスク因子に フォローアップ期間中に3,083回のCOPD増悪が認められた(1人当たり平均0.5回)。 フォローアップ1年目のバイオマーカー上昇なし(9/1,000人・年)との比較における増悪の多変量調整済みオッズ比[OR]は、1つのバイオマーカー上昇の場合は1.2(95%信頼区間[CI]:0.7~2.2、17回/1,000人・年)、2つ上昇の場合は1.7(95%CI:0.9~3.2、32回/1,000人・年)、3つでは3.7(95%CI:1.9~7.4、81回/1,000人・年)であり、上昇マーカー数が増えるに従って増悪リスクが増大した(傾向性検定:p=2×10-5)。 全フォローアップ期間を通じてのORは、1つのバイオマーカー上昇の場合が1.4(95%CI:1.1~1.8)、2つ上昇で1.6(95%CI:1.3~2.2)、3つでは2.5(95%CI:1.8~3.4)であった(傾向性検定:p=1×10-8)。 基本モデルに炎症性バイオマーカーを加えることで、C統計量が0.71から0.73へ改善された(p=9×10-5)。また、軽度COPDや増悪歴のないCOPD患者においても、全体的な相対リスクとの一致が認められた。 3つのバイオマーカー上昇を認める場合の増悪の5年絶対リスクは、GOLD Grade C/Dの患者が62%(バイオマーカー上昇なしでは24%)、増悪歴ありの患者は98%(同:64%)、GOLD Grade 3/4の患者は52%(同:15%)であった。 著者は、「CRP、フィブリノゲン、白血球数の上昇はCOPDの増悪リスクの増大と相関を示し、この関連は軽度COPDや増悪歴のないCOPD患者にも認められた」とまとめ、「リスクを層別化するには、今後、これらのバイオマーカーの臨床的な価値についてさらに検討を進める必要がある」としている。

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こどものみかた<上巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~

第1回「トリアージのABC」第2回「どうする?夜間の急な発熱」第3回「あわてない!熱性けいれん」 小児科医でなくても、日常診療や夜間救急・輪番で「こどもを診る」機会のある一般内科医や看護師も多いのではないでしょうか。そんな時、慌てずに対応できていますか?本DVDは、診療所に緊急度の高い小児救急患者が訪れた場面のシミュレーションをふまえ、適切なトリアージ、処置、診断、家族への病状説明、小児専門医への搬送などを身に付ける、小児救急の実践的プログラムです。 ポケットサイズでいつでも使える、T&A特製・小児救急オリジナルマニュアル付きです!!第1回「トリアージのABC」小児救急において、症候にかかわらず最初に必要となるのがトリアージ。「トリアージ」というと身構えてしまう方もいるかもしれませんが慌てる必要はありません。トリアージでは、「ABC」即ちAppearance(外見)、Breathing(呼吸)、Circulation to Skin(皮膚)の3点に注目すれば良いのです。呼吸に特徴がある患者やCapillary refill timeに特徴ある患者の実際の動画を見ながら臨床現場で意識せずに実行できるノウハウを学んでいきます。第2回「どうする?夜間の急な発熱」子どもの外来や救急外来で多いといえば「発熱」ではないでしょうか?しかし熱があるからといって単なる「カゼ」と診断してばかりもいられません。時には発熱の裏に致命的な病気が隠れていることがあるからです。今回は「発熱」の裏に隠れた髄膜炎、Occult bacteremia、尿路感染症を見極めるための発齢期、病歴、身体所見をロールプレイを交えながら学んでいきます。番組の終わりには、恒例のおさらいクイズもあり、学習度を確認できます。第3回「あわてない!熱性けいれん」小児救急外来でよくみかける熱性けいれん。子どもの10~20人に1人が経験すると言われている熱性けいれんの知識は小児救急診療には必須です。目の前の子どもがけいれんを起こしたら…パニックに陥っている親御さんを安心させながら適切に対応していきたいものです。まず優先すべきはけいれんを止めること。とはいっても、けいれんしている子どものルート確保は簡単ではありません。そんな時あなたならどう対応しますか?さらに、けいれんの原因を考える上で、救急外来で見逃してはならないのは脳炎・脳症や髄膜炎。では、その鑑別のポイントは何でしょうか?第3回は熱性けいれんの病態と対応をロールプレイ、質疑を通しながら学んでいきます。そして最後に恒例のおさらいクイズで学習度をチェックしましょう。

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ERCP検査で十二指腸穿孔を来し死亡したケース

消化器最終判決判例タイムズ 579号26-51頁概要胆嚢の精査目的でERCP検査を施行した67歳男性。10回前後にわたる胆管へのカニューレ挿管がうまくいかず、途中で強い嘔吐反射や蠕動運動の亢進がみられたため検査終了となった。検査後まもなくして腹痛が出現、当初は急性膵炎を疑って保存的治療を行ったが、検査翌日になって腹腔内遊離ガスが確認され緊急開腹手術が行われた。ところが手術翌日から急性腎不全となり、さらに縫合不全、腹壁創離開、敗血症などを合併し、検査から約2ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報某大学附属病院で数回にわたり健康診断を行い、肥満症(身長165cm、体重81.5kg)、動脈硬化症、高尿酸血症、左上肢筋萎縮症と診断された67歳男性。過去の健康診断でも胆嚢を精査するよう指摘されていた経過1979年4月10日腹部超音波検査では高度の肥満により鮮明な画像が得られなかった。テレパーク経口投与による胆嚢造影検査でも不造影となり、胆石や胆嚢がんなどの異常が疑われた。4月24日静注法による胆嚢造影検査を追加したが、やはり不造影に終わった。4月27日11:40ERCP開始。左側臥位とし側視鏡型式ファイバースコープを経口挿入、十二指腸下行部までは順調に到達した。この時点で蠕動運動が始まったため、鎮痙剤ブトロピウム(商品名:コリオパン1A)を静注。蠕動が治まったところで乳頭開口部を確認し、胆管造影を試みたが失敗、カニューレは膵管にしか進められなかった。2名の担当医師により前後約10回にわたって胆管への挿管が試みられたがいずれもうまくいかず、そうしているうちに再び蠕動運動の亢進が出現した。さらに、強い嘔吐反射が2度にわたって生じたことや、検査担当医自身も疲労を感じたことから胆管造影を断念。12:30スコープを抜管して検査終了となった(検査時間約50分)。担当医によれば、検査中穿孔の発生を疑わせる特段の異常はなく、造影剤が十二指腸から漏れ出た形跡や検査器具による損傷を思わせる感触もなかった。13:00患者は検査後の絶飲食および安静の指示を守らず、自家用車を運転して勝手に離院。13:30その帰途で腹痛を覚え、タクシーで帰院。腹部に圧痛・自発痛がみられたが腹膜刺激症状は認められず、検査後の膵炎を考慮してガベキサートメシル(商品名:エフオーワイ)、コリオパン®を投与。14:00腹痛が治まらなかったので、ペンタゾシン(商品名:ペンタジン)、コリオパン®を筋注し、約10分後にようやく腹痛は治まった。16:00担当医師は病院にとどまるように説得したが、患者は聞き入れず、「腹痛が再発したら来院すること」を指示して帰宅を許可した。19:00腹痛が再発したため帰院。当直医によりペンタジン®筋注、エフオーワイ®の点滴が開始された。20:00腹部X線写真にて上腹部付近に異常な帯状のガス影がみつかったが、その原因判断は困難であった。22:00担当医師らが協議した結果、消化管穿孔による腹膜炎で生じるはずの横隔膜下遊離ガス像が明確でないこと、検査担当医には腸管穿孔の感触がなかったこと、腹膜炎の徴候であるデファンスやブルンベルグ徴候がなかったことから、急性膵炎の可能性が高いと考えた(この時アミラーゼを測定せず)。4月28日翌日になっても腹痛が持続。10:40再度腹部X線撮影を実施したところ、横隔膜下に遊離ガス像を確認。11:00下腹部試験穿刺にて膿を確認。13:50緊急開腹手術施行。十二指腸第2部と第3部の移行部(尾側屈曲部)に直径1cmの穿孔があり、十二指腸液が漏出していた。穿孔部は比較的フレッシュで12~24時間以内に形成されたものと思われ、腹腔内の洗浄に加えて穿孔部の縫合閉鎖を行った。また、膵頭部は腫大しており、周囲の脂肪組織や横行結腸間膜に膵液による壊死性変化がみられた。胆嚢は異常に拡張し、内腔には3個の結石が確認され、胆嚢摘除術が追加された。なお、体表には打撲、皮下出血などの外傷所見はみられなかった。16:40手術終了。4月29日手術翌日から急性腎不全を発症。4月30日BUN 47.3、K 6.3と上昇がみられたためシャント作成、血液透析開始。5月5日縫合不全を併発。5月13日腹壁開腹創全離開、感染症増悪、敗血症を併発。5月22日頭蓋内出血および数回にわたる腹腔内出血を起こす。6月16日各種治療の効果なく多臓器不全に進行し、肺機能不全により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.ERCP検査に際しスコープ操作に細心の注意を払う義務を怠った2.漫然と長時間にわたってERCP検査を施行し、ついには操作を誤って十二指腸を穿孔させた。その結果、急性腎不全、敗血症、頭蓋内出血などを起こし、汎発性腹膜炎により死亡した病院側(被告)の主張1.スコープの操作にあたっては確立された手技にしたがって慎重に実行し、不必要、不用意あるいは乱暴な操作を行ったことはなく、器具損傷の感触もなかったまた、スコープ自体は十二指腸の湾曲に沿った形で滑り易くなっていて、さらに腸管の柔軟性、弾力性、および腸管内面の粘滑性に照らすと、スコープの挿入によって腸管穿孔を生じるほどの強い力が働くことはないし、嘔吐反射によって腸管穿孔が生じるとも考えがたい2.十二指腸穿孔の原因は、穿孔部位の解剖学的関係から交通事故などによる外的鈍力の作用によるものである(ただし外傷所見は確認されていない)3.そして、十二指腸穿孔はただちに死に結びつくものではなく、予後を悪化させて死の転帰に至らしめた最大かつ根本的な要因は急性腎不全であり、その原因は本人の腎不全に陥りやすいという身体的理由と、医師の指示を無視した患者自身の自由勝手な行動にある裁判所の判断1.ERCP検査中に、蠕動亢進、嘔吐反射の反覆がみられたにもかかわらず穿孔を生じうるスコープ操作を継続したため、十二指腸が穿孔したと推認される2.患者には交通事故その他鈍的外傷を受けたと認めるに足る事実(体表の打撲傷、十二指腸周辺の合併損傷など)がなく、万一交通事故に遭遇していたのであれば検査や診療に当たった医師などに告知するはずである3.担当医らは腹痛が出現した後も、事態に対する重大な認識をまったくもっておらず、十分な経過観察をしようとする姿勢がみられなかった。仮に患者の自由勝手な行動がなかったとしても、適切な診断や早急な開腹手術が実施された可能性はきわめて低い担当医はERCP検査の危険性などを十分に認識していたにもかかわらず、必ずしも慎重、冷静な心身の状態なくして胆管へのカニューレ挿入を10回も試み、老齢で薄い十二指腸壁をこすり、過進展させ、また、蠕動運動の亢進や嘔吐反射の反覆にもかかわらず検査を続行し、結果回避義務を違反して穿孔を生じさせた結果死亡した。ただし、医療に対する協力を怠り不注意な問題行動をとった点は患者側の過失であり、損害額の2割は過失相殺するのが相当である。原告側合計5億1,963万円の請求に対し、3億1,175万円の判決考察本件は医療過誤裁判史上、過去最高の賠償額ということで注目を集めたケースです(なお2審判決では1億4,000万円とかなり減額され、現在も最高裁で係争中です)。病院側は本件で生じた十二指腸の穿孔部位が、スコープなどの器具で発生することの多い「腹腔側穿孔」ではなく、交通事故などの鈍的外力の時によくみられる「後腹膜腔穿孔」であったことを強調し、スコープ操作が原因の十二指腸穿孔ではなく、「患者が検査後の医師の指示を守らず、自由勝手な行動をとって病院から離れた時に、きっと交通事故でも起こして腹部を打撲した結果十二指腸が穿孔したのだろう」と主張しました。しかし、患者さんは検査後に交通事故などでケガをしたとは申告していませんし、開腹手術時にも外傷所見は認められませんでしたので、未確認の鈍的外力が原因とするのは少々無理な主張ではないかと思います。それ以外にも病院側の対応にはさまざまな問題点があり、それらを総合して最終判断に至ったと思われます。たとえば、開腹手術後には「若い者がやったことだから大目にみてくれ」と上司から説明があったり、検査担当医も「穿孔を生じさせ申し訳ない」と謝意を述べていながら、訴訟へ発展した後になって「交通事故など鈍的外傷による穿孔である」とERCP検査による穿孔を真っ向から否定し始めました。また、腹痛発症当初は「急性膵炎」と診断してエフオーワイ®などの投与を行っていましたが、検査当日にアミラーゼ検査をまったく実施しなかったことや、2回目の帰院時には、ほかの関連病院へ入院させる途中で容態が悪化し、やむなく大学附属病院に入院処置をとった点も、「事態に対する重大な認識の欠如」という判断を加速させたようです。そもそも本件では本当に無理な内視鏡操作が行われていたのでしょうか。その点については担当医にしかわからないことだと思いますが、胆管へのカニューレ挿入がなかなかうまくいかず、試行錯誤しながらも10回挿管を試みたのは事実です。その間に十二指腸の蠕動運動が始まったり、強い嘔吐反射が反覆したことも確認されていますので、やはり腸管が穿孔してしまうほどの外力が加わったと認定されてもやむを得ないように思います。担当医らは「無理な操作はしていない」とくり返し主張しましたが、胆管へ10回も挿管を試みたということは多少意地になって検査を遂行したという側面もあるのではなかと推測されます。裁判記録によれば、担当医は消化器内科の若手医師でERCPを当時約200例以上こなしていましたので、この検査にかけてはベテランの域に達していたと思います。そして、検査がうまくなるにつれ、難しい病気を診断したり、同僚の医師がうまくいかないような検査をやり遂げることができれば、ある意味での満足感や達成感が得られることは、多くの先生方が経験されていると思います。しかし、いくら検査に習熟していたといっても、自らが行った医療行為によって患者さんが不幸な転帰をとるような事態は何としても避けなければなりませんので、検査中は常に細心の注意を払う必要があると思います。と同時に、たとえ検査の目的が達成されなくても、けっして意地を張らずに途中で検査を中止する勇気を持たなければならないと痛感しました。最近の統計(日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol.42 308-313, 2000)によると、1993~1997年のERCP検査の偶発症は189,987件中190例(0.112%)であり、急性膵炎がもっとも多く、穿孔、急性胆道炎などがつづきます。そのうち死亡は12例(0.0063%)で、急性膵炎による死亡6名、穿孔による死亡3名という内訳です。このような統計的数字をみると、過去3回の大規模調査でも偶発症発生頻度はほとんど変化はないため、偶発症というのは(検査担当医にかかわらず)一定の確率で発生するものだという印象を受けます。しかし、昨今の社会情勢をみる限り、検査前までは健康であった患者さんに内視鏡偶発症が発生した場合、けっして医療側が無責ということにはならないと思います。このような場合、裁判所の判決に至るよりも和解、あるいは示談で解決する場合が多いのですが、本件のように当初は謝意を示していながら裁判となったとたんに前言を翻したりすると、交渉が相当こじれてしまうと思われますので、医療側としては終始一貫した態度で臨むことが重要であると思います。なお、ここ数年はMRIを用いた膵胆管造影(MRCP)の解像度がかなり向上したため、スクリーニングの目的ではまずMRCPを考えるべきであると思います。消化器

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