サイト内検索|page:131

検索結果 合計:5557件 表示位置:2601 - 2620

2601.

COVID-19に対する政府対応の質がメンタルヘルスに及ぼす影響

 COVID-19のパンデミックは、公衆衛生、経済、メンタルヘルスに深刻なダメージを与えている。カナダ・トロント大学のYena Lee氏らは、ウイルス感染を減少させるための政府の厳格な措置をタイムリーに実施することが、メンタルヘルスにベネフィットをもたらすと仮定し、抑うつ症状発現率の減少に影響するかを調査するためシステマティックレビューを行った。Journal of Affective Disorders誌2021年7月1日号の報告。 政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの違いがうつ症状の発症をどの程度緩和するかを調査するため、33ヵ国の研究(114件、64万37例)のシステマティックレビューを実施した。高所得国18ヵ国、上位中所得国9ヵ国、下位中所得国6ヵ国からのデータが含まれた。政府が実施したCOVID-19に対する対応の厳格さおよびタイムリーさの評価には、Oxford COVID-19 Government Response("Stringency")Indexを用いた。うつ病の定義は、PHQ-9スコア10以上またはPHQ-2スコア3以上とした。 主な結果は以下のとおり。・臨床的に有意な抑うつ症状を有する参加者の割合は、21.39%(95%CI:19.37~23.47)であった。・臨床的に有意な抑うつ症状の有症率は、政府が厳格な政策をタイムリーに実施した国で有意に低かった。・政府の対応によるこの効果は、調査開始時のCOVID-19発生率、ヘルスケアへのアクセスと質の指標、研究にCOVID-19患者を含めた場合でも、有意なままであった。・本結果に影響を与える可能性のある因子として、ロックダウン期間の違い、研究参加者およびアウトカム評価者の盲検化の欠如、抑うつ症状の重症度に対するレトロスペクティブ評価などが考えられる。 著者らは「COVID-19の蔓延を封じ込めるために厳格な対応を講じた政府は、国民の身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスに対してもベネフィットをもたらした」としている。

2602.

2020年の米国平均余命、2018年から約2年短縮/BMJ

 米国では、2018~20年の平均余命(life expectancy)が他の高所得国よりもはるかに大きく短縮し、とくにヒスパニック系および非ヒスパニック系黒人集団で顕著であった。米国・バージニア・コモンウェルス大学のSteven H. Woolf氏らが、分析結果を報告した。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより世界中の人々が命を落としたが、米国では他の高所得国に比べ死亡者数が多かったことから、2020年の死亡者数が米国の平均余命や他国との差にどのような影響を与えたかを分析したもの。著者は、「長期にわたり拡大している米国の健康上の不利益、2020年の高い死亡率、持続的な人種・民族的マイノリティに対する不公平な影響は、長年の政策選択と組織的な人種差別の産物であると考えられる」と述べている。BMJ誌2021年6月23日号掲載の報告。米国と他の高所得国16ヵ国について分析 研究グループは、米国および他の高所得国16ヵ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、英国)の2010~18年および2020年の平均余命を、米国は国立健康統計センター(NCHS)、その他の高所得国は死亡データベース(Human Mortality Database)のデータを用いて分析した。オーストラリア、カナダ、ドイツ、イタリア、日本は、死亡データが不完全であったため分析には含まなかったという。 評価項目は、男女別の出生時の平均余命ならびに25歳時と65歳時の平均余命で、米国のみ人種・民族別の平均余命も分析した。なお、対象国の多くで生命表データが入手できなかったため、2019年は分析から除外した。また、2020年の平均余命は、2020年の年齢別死亡率の推定値からシミュレーションし、確率的誤差を10%として算出した。米国は他高所得国の8.5倍となる1.87年短縮、人種・民族的な差も 米国と他高所得国の平均余命の差は、2010年の1.88年(米国の平均余命:78.66歳vs.他高所得国の同平均値:80.54歳)から、2018年には3.05年(78.74歳vs.81.78歳)に拡大していた。2020年では、米国の平均余命は76.87歳で、2018年から1.87年短縮していた。同値は、他高所得国の平均短縮幅(0.22年)の8.5倍で、両者の差は4.69年とさらに拡大した。 2018~20年の米国の平均余命の低下は、人種・民族的マイノリティにより差がみられ、ヒスパニック系では3.88年、非ヒスパニック系黒人では3.25年であったのに対して、非ヒスパニック系白人では1.36年であった。ヒスパニック系と非ヒスパニック系黒人の平均余命の短縮は、他高所得国のそれぞれ18倍および15倍に上った。 米国では2010年以降、黒人と白人の平均余命の差が縮まってきていたが、2018年から2020年にかけてその縮小は消失し、黒人男性の平均余命は1998年以来の最低水準となる67.73歳で、長年続いていたヒスパニック系の優位性もほぼなくなった。

2603.

妊娠中のインフルワクチン接種と出生児の健康アウトカム/JAMA

 妊娠中の母親のインフルエンザワクチン接種は、生まれた子供の健康アウトカムに悪影響を及ぼすことはない。カナダ・ダルハウジー大学のAzar Mehrabadi氏らが、追跡期間平均3.6年間の後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種することで妊婦や新生児のインフルエンザ疾患を減らすことができるが、妊娠中のワクチン接種と小児期の有害な健康アウトカムとの関連については、報告が限られていた。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。最長5.5歳、平均3.6歳までの健康アウトカムと母親のワクチン接種との関連を解析 研究グループは、出生登録および出生登録とリンクしている健康管理データを用い、2010年10月1日~2014年3月31日の間にカナダのノバスコシア州で生まれたすべての出生児を対象に、母親の妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種、ならびに出生児の免疫関連疾患(喘息、感染症など)、非免疫関連疾患(腫瘍、感覚障害など)、および非特異的事象(緊急または入院医療の利用など)について、2016年3月31日まで追跡調査を行った(最短2年、最長5.5年、平均[±SD]3.6±1.1年)。 母親のワクチン接種の有無と出生児の健康アウトカムについて、母親の病歴およびその他の交絡因子を調整し、逆確率重み付け(IPTW)法を用いてハザード比(HR)と発生率比(IRR)、ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。喘息、感染症、腫瘍、感覚障害などいずれも有意な関連なし 解析対象の出生児は、2万8,255例(女児49%、妊娠37週以上の出生児92%)であった。このうち、1万227例(36.2%)が、季節性インフルエンザワクチンの接種を妊娠中に受けた母親から生まれた。 追跡期間平均3.6年間において、母親のインフルエンザワクチン接種は小児喘息、腫瘍および感覚障害と有意な関連はないことが認められた。母親の接種ありと接種なしにおける出生児1,000人年当たりの発生率は、小児喘息が3.0 vs.2.5(群間差:0.53[95%CI:-0.15~1.21]、補正後HR:1.22[95%CI:0.94~1.59])、腫瘍が0.32 vs.0.26(0.06[-0.16~0.28]、1.26[0.57~2.78])、感覚障害が0.80 vs.0.97(-0.17[-0.54~0.21]、0.82[0.49~1.37])であった。 また、母親のインフルエンザワクチン接種は、小児期早期の感染症(発生率184.6 vs.179.1、群間差:5.44[95%CI:0.01~10.9]、補正後IRR:1.07[95%CI:0.99~1.15])や、緊急または入院医療の利用(511.7 vs.477.8、33.9[24.9~42.9]、1.05[0.99~1.16])とも有意な関連は認められなかった。

2604.

新型コロナ治療に中和抗体カクテル療法を承認申請/中外

 中外製薬は6月29日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療のためのcasirivimabおよびimdevimabの抗体カクテル療法について、国内における製造販売の承認申請を行ったことを発表した。COVID-19患者を対象とした海外臨床第III相試験(REGN-COV 2067)の成績と、日本人における安全性・忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第I相臨床試験の成績に基づき、厚生労働省に特例承認の適用を求めた。 本抗体カクテル療法は、SARS-CoV-2に対する2種類のウイルス中和抗体(casirivimab+imdevimab)を組み合わせ、COVID-19に対する治療および予防を目的として、米国・リジェネロン社などが開発したもの。先述のREGN-COV 2067においては、本抗体カクテル療法はプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを70%(1,200mg静脈内投与)および71%(2,400mg静脈内投与)と有意に低下させた。米国では2020年11月、成人および小児患者(12歳以上で体重が40㎏以上)で軽度~中等度のCOVID-19外来患者への治療薬として、FDAから緊急使用の許可を取得している。 中外製薬は、本抗体カクテル療法の意義について「変異株の感染拡大など、COVID-19の流行は長期化しており、新たな治療選択肢が必要とされている。1日も早く患者さんに届けられるよう、規制当局と緊密に協働していきたい」とコメントしている。

2605.

トファシチニブ、COVID-19肺炎入院患者の予後を改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎で入院した患者の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブはプラセボと比較して、28日以内の死亡または呼吸不全のリスクを抑制し、安全性に大きな差はないことが、ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのPatricia O. Guimaraes氏らが実施した「STOP-COVID試験」で示された。NEJM誌オンライン版2021年6月16日号掲載の報告。ブラジル15施設の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COVID-19肺炎入院患者の治療におけるトファシチニブの有効性と安全性を評価する目的で、二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Pfizerの助成による)。本試験では、2020年9月16日~12月13日の期間に、ブラジルの15施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染が確定され、画像検査(胸部CTまたはX線)でCOVID-19肺炎の証拠が認められ、入院から72時間未満の患者であった。被験者は、トファシチニブ(10mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられ、14日間または退院まで投与された。 主要アウトカムは、28日時点での死亡または呼吸不全とされた。米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の疾患重症度に関する8段階順序尺度(点数が高いほど、病態の重症度が高い)で、6点(入院中に非侵襲的換気または高流量酸素装置による換気を受けている)、7点(入院中に侵襲的機械換気または体外式膜型人工肺[ECMO]の装着を受けている)、8点(死亡)の場合に、主要アウトカムを満たすと定義された。全死因死亡には差がない 289例が登録され、144例がトファシチニブ群、145例はプラセボ群に割り付けられ、それぞれ2例および3例が試験薬の投与を受けなかった。全体の平均年齢は56歳で、34.9%が女性であった。COVID-19の診断から無作為化までの期間中央値は5日だった。 ベースラインの全体のBMI中央値は29.7で、50.2%が高血圧、23.5%が糖尿病を有しており、75.4%が酸素補充療法、78.5%が糖質コルチコイド、77.9%が予防的抗凝固療法、20.8%が治療的抗凝固療法を受けていた。入院中に89.3%が糖質コルチコイドの投与を受けた。 28日の時点での死亡または呼吸不全の発生率は、トファシチニブ群が18.1%(26/144例)と、プラセボ群の29.0%(42/145例)に比べ有意に低かった(リスク比:0.63、95%信頼区間[CI]:0.41~0.97、p=0.04)。 28日時の全死因死亡の発生率は、トファシチニブ群が2.8%(4/144例)、プラセボ群は5.5%(8/145例)であり、両群間に差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.49、95%CI:0.15~1.63)。 プラセボ群と比較したトファシチニブ群の8段階順序尺度スコアの比例オッズは、14日の時点で0.60(95%CI:0.36~1.00)、28日時は0.54(0.27~1.06)であった。 重篤な有害事象は、トファシチニブ群が14.1%(20例)、プラセボ群は12.0%(17例)で発現した。とくに注目すべき有害事象は、トファシチニブ群で深部静脈血栓症、急性心筋梗塞、心室頻拍、心筋炎が1例ずつ認められた。重篤な感染症の発生率は、トファシチニブ群3.5%、プラセボ群4.2%であった。また、死亡を除き、試験薬投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ11.3%および3.5%でみられ、最も頻度の高かった原因はアミノトランスフェラーゼ値上昇(4.2%、0.7%)と、リンパ球減少(2.8%、1.4%)だった。 著者は、「ACTT-2試験(バリシチニブ+レムデシビルはレムデシビル単剤に比べ、とくに高流量酸素補充または非侵襲的機械換気を受けている患者で、回復までの期間を短縮)と本試験の結果を統合すると、JAK阻害薬は、侵襲的機械換気を受けていないCOVID-19肺炎患者の新たな治療選択肢となることを示すエビデンスがもたらされた」としている。

2606.

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

 新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。 対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。 本邦では、ワクチン接種は本人の希望によるとされている。重篤な合併症が元気な人に突然起こるという情報は医療関係者のみならず広く一般に広報されるのがよいと筆者は考える。確率は低いが致死的な合併症への対応、事前説明はきわめて難しい。

2607.

今、改めて見直したい院内の換気対策【コロナ時代の認知症診療】第4回

質問されることの多い、ワクチン2回完了後のマスク着用65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり進行しつつある。私の関与する患者さんとその家族でも2回目が終わったと安堵の報告をしてくださる人が増えてきた。政府の言う「この7月下旬には終了」の目標は実現しなくても、それにさほど遅れることなく終わりそうな気配になってきた。こうした過渡期にある現在、「2回のワクチン接種を済ませた患者さん、医療関係者は院内でマスクを外してもよいか?」という質問への回答が求められるようになってきた。すでにこの3月には、わが国の厚労省などが感染症対策においてよく参考にするとされる、米国疾病予防管理センター(CDC)による米国国民向けの文書が出されていた1)。堅実な臨床研究の結果2)に基づくものだそうだが、米国らしい大胆に割り切った内容であることに驚いた。ざっと次のような内容である。もしあなたが十分に予防接種されているのなら、パンデミック前の活動に戻れます。十分に予防接種されているのなら、行政等が定めた例外的な場所以外では、マスクをつけたり、フィジカルディスタンス(日本でいうソーシャルディスタンス)をとったりせずに従来の活動をしてもかまいません。けれども予防接種がまだなら、ワクチンを見つけなさい。さてここでいう「十分に予防接種されている」とは、ファイザー社やモデルナ社のような2回接種タイプのワクチンなら、2回目接種の2週間後である。またジョンソンアンドジョンソン社のような1回接種型のワクチンなら、接種の2週間後と上述のCDCのページでは解説されている。理論としてはこのとおりだと納得できる。実際、テレビのニュースなどを見ていると、米国ではマスクをしている人が少数派になってきている様子が見える。けれどもこの方針がこのまま日本で使えるか? となると、これは難しそうだ。実際、次のような反対の声もある。たとえワクチン接種されていてもまだ他人にウイルスを感染させる可能性がある。また抗体ができるには接種後、時間を要する。さらに免疫系が弱い人でもマスクによって防御効果が期待できる。加えて変異種に対してワクチンの有効性が低下する可能性がある、といった批判である3)。※なお、本稿執筆後の6月16日、新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」では、ワクチン接種後も国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、マスク着用を求めている。少なくとも自分のクリニックにおいてどうするかは、問題になる。今考えているのは、条件付きマスク解放である。当院のスタッフは、事務職員を含め全員がすでに2回の接種を終えている。患者さんで2回の接種を終えている人で、それを証明するものがあれば、診察時の限定的な場においては、患者さんも私たちもマスクをしないでよしとしようかと考えている。もっとも未接種の付き添いがいらっしゃる場合は別にする必要がある。忘れてはならない換気、基本を振り返る一方で忘れてはならないのが換気である。感染症対策では風の流れを作り出して、ウイルスを含む空気が効率よくこの場から外へ流れ出す工夫する工夫が求められる。対策の基本は、一定の方向に着実に風の流れを作ることだ。これを実現するにはいくつかの段階がある。仮に10坪(33平方メートル)以上の比較的広い区間を想定する。まずは、ここと思しき窓やドアを2ヵ所(たとえばAとB)開けてみて、風の方向を見る。この際に、私たちは写真に示すようなスズランテープを用いている。2ヵ所のテープが空中に漂う様子(写真)から、仮にAからBへと向かっているとわかれば、この流れを強化する仕掛けを作る。画像を拡大するその基本は換気扇と扇風機の併用である。そもそもサーキュレーターと扇風機は用途が異なる。サーキュレーターは、小さい羽根で直線的で強い風を出し、遠くまで風が届くように設計されているので、室内の空気を循環させられる。つまり部屋の中の空気をかき混ぜるだけではなく、部屋の空気と外の空気を入れ替えもできる。と言うのは、サーキュレーターは、後ろの空気を吸い込み、その空気を前へ放出するからだ。この場合、サーキュレーターを窓Aに置き、外気を室内に吸い込むように部屋の内側に向ける。一方で扇風機は本来、大きい羽根により広範囲に風を送り出せる。そこで扇風機は窓Bの位置に外に向けて置く。この併用により循環効率が上がる(図)4,5)。画像を拡大するなお狭い部屋(たとえば10平方メートル以下)で、入り口と1つの窓だけしかない環境もある。この場合、風が外から強く吹き込むときが問題になる。基本はサーキュレーターを窓の外に向けることだが、戸外へ送風できない場合には、外からの風を人のいない方向にどうやって流すかの工夫が求められる。終わりにご注意を1つ。部屋中の窓を皆開ければ換気効率が良くなると思われがちだが、それは違う。部屋の中に空気が渦巻いてしまう。参考文献・参考情報1)CDC 「When You've Been Fully Vaccinated | CDC2)Thompson MG,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Apr 2;70:495-500.3)Here’s Why Vaccinated People Still Need to Wear a Mask/NY times4)ダイキン工業株式会社「上手な換気の方法~住宅編~」5)厚生労働省「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

2608.

第66回 ModernaやPfizerのCOVID-19ワクチン説明書に心筋炎/心膜炎の警告をFDAが追加

米国疾病予防管理センター(CDC)会議での検討結果を受け、心筋炎や心膜炎(心臓を包む組織の炎症)がどうやら生じやすくなるとの警告(Warning)をModernaとPfizerの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチンそれぞれの説明書(Fact Sheet)1,2)に米国FDAが追加しました3)。心筋炎や心膜炎はそれらワクチンの2回目の接種後にとくに生じやすいらしく、ほとんどの場合接種から数日以内に発症するようです。CDC検討会議の資料4)によるとmRNAワクチン2回目接種者100万人当たり約13人(12.6人)の割合で心筋炎/心膜炎が発生しています。接種を受ける人やその保護者向けの説明書(Fact Sheets for Recipients and Caregiver)も変更され、胸痛、息切れ、心臓の動悸(心拍の亢進、動揺、高ぶり)が接種後に生じたらすぐに診てもらう必要があるとの指示が付け加えられています。心筋炎や心膜炎の症状はほとんどの場合短期で解消するようですが、長期の転帰はまだ不明です。FDAとCDCは報告を検討し、より多くの情報を集め、数ヵ月の長期転帰を追跡する予定です。心筋炎や心膜炎がワクチンの説明書の警告に加えられたとはいえ、米国のワクチン接種支持に変わりはありません。ワクチン後の心筋炎や心膜炎は非常に稀であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で生じることのほうがずっと多いことが知られています。それに、COVID-19の心臓への害は重症化する恐れがあります。米国保健行政代表や家庭・小児科・産婦人科・心臓・内科・看護・公衆衛生・地域医療・感染症の専門家たちは恩恵が害を遥かに上回るワクチンを許容可能な12歳以上の誰もが接種することを強く望んでいます5,6)。また、COVID-19ワクチンに伴う心筋炎様病態で入院した19~39歳の患者7例をCirculation誌に最近報告した著者らも接種の価値は害を引き続きだいぶ上回ると結論しています7)。それらのうち6例はModernaかPfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種後、1例はJohnson & Johnson社のアデノウイルス仕様のCOVID-19ワクチン接種後のものでした。今月初めにPediatrics誌に報告された別の7例8)と同様に経過は概ね良好であり、治療にはβ遮断薬や抗炎症薬などが使われ、全員が症状解消の上で入院から2~4日以内に退院できました7,9)。参考1)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE MODERNA COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 3)Coronavirus (COVID-19) Update: June 25, 2021 / FDA4)Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) June 23, 2021 / CDC5)Statement Following CDC ACIP Meeting from Nation’s Leading Doctors, Nurses and Public Health Leaders on Benefits of Vaccination / AAP 6)Health officials, AAP urge COVID-19 vaccination despite rare myocarditis cases / AAP7)Rosner CM, et al. Circulation. 2021 Jun 16. [Epub ahead of print] 8)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.9)Symptoms resolved in 7 patients with myocarditis-like illness after COVID-19 vaccination.AMERICAN HEART ASSOCIATION / EurekAlert

2609.

妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。■日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」対象:全般要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報■日本小児科学会「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」対象:子供(12歳以上)要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。■日本産科婦人科学会「―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて―」対象:妊婦要旨:妊娠初期を含めワクチンは妊婦・胎児双方を守る。希望する妊婦はワクチンを接種できる。持病のある妊婦はとくに接種を検討すべきである。■日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A」対象:女性全般要旨:ワクチン接種で不妊になったり、流産したりといった情報に科学的根拠は全くない。生理中や経口避妊薬服用中でもワクチン接種に対する問題はない(7/26情報追加)。■日本血液学会「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について」対象:血液疾患患者要旨:基本的にワクチン接種は推奨されるものの、治療の状況に応じてワクチン接種の効果が減じる可能性があるため、主治医と適切なタイミングを相談する。■日本神経学会「COVID-19 ワクチンに関する日本神経学会の見解」対象:神経疾患患者要旨:現時点では神経疾患(脳卒中、認知症、神経難病)を対象としたエビデンスはないが、海外のデータから副反応は一過性のものに限られ、アナフィラキシー以外には重篤な健康被害はみられていないことから、リスクは小さいものと考えられる。■日本骨髄腫学会「骨髄腫患者に対する新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について」対象:骨髄腫患者要旨:骨髄腫患者は重篤化と死亡のリスクが高いと推測され、ワクチン接種による罹患率と重篤化防止が期待できるが、接種タイミングは患者ごとの免疫不全状態をみながらの判断となる。■日本リウマチ学会「COVID-19ワクチンについて」対象:リウマチ性疾患患者要旨:ステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種したほうがよい。通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはない。■日本麻酔科学会「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について(5月18日修正版)」対象:手術予定患者要旨:待機手術もワクチン接種後すぐに行うことができるが、数日間(最大1週間)空けることで、術後の発熱などの症状が副反応か手術によるものかが区別できる。■日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療について Q&A-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-」対象:がん患者要旨:がん患者における重症化の可能性を考慮すると、ワクチン接種はベネフィットがリスクを上回ると思われ、接種が推奨される。

2610.

COVID-19入院患者へのトシリズマブを緊急使用許可/FDA

 中外製薬は6月25日、同社創製の関節リウマチ治療薬トシリズマブ(商品名:アクテムラ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可したと発表した。コルチコステロイドの全身投与を受けており、酸素補給、非侵襲的もしくは侵襲的な人工呼吸、またはECMOが必要な入院中の成人および2歳以上小児がその対象となる。 今回の緊急使用許可は、4つのランダム化比較試験におけるCOVID-19入院患者、計5,500例超の成績に基づいており、酸素補給または呼吸補助を必要とするコルチコステロイド投与中の患者の転帰を改善する可能性があることが示唆された。 これらの試験のいずれにおいても、トシリズマブに対する新たな安全性シグナルは認められなかった。主な副作用(発現率3%以上)は、便秘、不安、下痢、不眠、高血圧、悪心。 トシリズマブは、炎症性サイトカインの一種であるIL-6の作用を阻害する働きを持つ、中外製薬創製の国産初の抗体医薬品。国内では2005年6月に販売を開始し、点滴静注用製剤では関節リウマチなど6つの適応症、皮下注製剤では3つの適応症で承認を取得している。 中外製薬では、日本国内においても新型コロナ治療薬の適応について、年内の承認申請を目指し準備を進めている。

2612.

第60回 ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省

<先週の動き>1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み3.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省厚生労働省は、22日に事務連絡「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その2)」を発出し、新型コロナワクチンの接種開始から6月16日までに報告された「接種間違い」は139件(10万回当たり0.596件)であり、そのうち健康被害につながる恐れのある「重大な間違い」は70件(同0.300件)だったことを公表した。なお、現時点で健康被害は確認されていない。最も多かったミスは、「接種間隔の間違い」が31件、次いで注射器の再使用など「血液感染を起こしうる間違い」が23件、「不必要な接種(生理食塩水のみ)」と「接種量の間違い」がそれぞれ13件。厚労省が掲げる対策として、「リキャップを行わない」「接種後は速やかに使用後の注射器を確実に廃棄する」「一連の作業を中断させない」など、再発防止の徹底を呼び掛けた。厚労省は、全国の自治体に対し、ワクチンの接種ミスがあった場合、速やかに報告するよう求めている。(参考)ワクチン接種ミス139件 厚労省、再発防止を呼びかけ(朝日新聞)ワクチン接種ミス「139件」、厚労省が集計…最多は「接種間隔の間違い」(読売新聞)ワクチン接種ミス 139件確認 使用済み注射器使用など 厚労省(NHK)2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み全国医学部長病院長会議が23日に発表した大学病院の経営状況調査の結果によると、2020年度は、新型コロナウイルス感染症患者の対応により、対前年度比4%減の1,204億円強の医業赤字となり、医業利益率はマイナス8.3%と前年度に比べて3.93ポイント悪化したことが明らかになった。また、手術件数も前年と比較して累計約13万件減少となっている。今年の3月以降、改善しつつある指標もあるが、前年度の反動と考えられ、依然として厳しい経営環境にあり、同会議は一層の財政支援を強く要望している。(参考)2020年度に大学病院経営は1204億円強の医業赤字、3月に外来指標が改善するが「前年の反動」である点に留意―医学部長病院長会議(GemMed)新型コロナウイルス感染症に関する大学病院の経営状況調査(3月度)全国医学部長病院長会議 プレスリリース20213.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省厚労省は、21日に「大麻等の薬物対策のあり方検討会とりまとめ~今後の大麻等の薬物対策のあり方に関する基本的な方向について~」を公表した。世界と比較し、日本の違法薬物使用の生涯経験率は著しく低い水準に留まっている一方で、2020年には大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加し過去最高を更新、30歳未満の検挙者も7年連続で増加するなど、若年層での大麻乱用が拡大している状況だ。使用に対する罰則が規定されていないことが、「大麻を使用してもよい」というメッセージと受け止められかねないため、ほかの薬物と同様、大麻の使用に対しても罰則を科すことが必要という意見が多かった。今後、法制化について国会で審議される見込み。(参考)大麻使用罪に賛成多数 厚労省検討会が報告書(福祉新聞)「大麻等の薬物対策のあり方検討会」とりまとめを公表します(厚労省)資料 「大麻等の薬物対策のあり方検討会」について(同)4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、健康保険証の代わりにマイナンバーカードが使える医療機関や薬局の数が、6月21日時点で732施設と明らかになった。今年3月から本格稼働する予定が、保険団体側のミスなどにより10月に延期になっている。受付に必要なカードリーダーの補助金には、全国の医療機関、薬局合計約13万施設(57%)が申し込みを行っているが、マイナンバーカードの健康保険証利用登録状況は、20日時点で440.3万件(10.4%)と、まだ本格的な稼働まで時間がかかりそうだ。(参考)オンライン資格確認等システムについて(厚労省)マイナ保険証732施設どまり、10月運用へ準備急ぐ(日経新聞)オンライン資格確認、試行運用に732施設参加 21日時点、来週には800施設超(CBnewsマネジメント)5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚労省は全医療機関の治療内容や専門医の有無などを全国横断的に検索できる「医療情報サイト」を新設することを明らかにした。これまで、各都道府県が医療機関等に対して、患者が医療機関等の選択をするために必要な情報(医療機能情報)の報告を義務付け、自治体ごとに運用していたが、都道府県をまたいで検索・比較ができないなどの課題があった。新システムは外国語対応のほか、医療機関の業務負担軽減のために、手術などの実施件数はNDBオープンデータを利用して事前入力を行う方針であり、運用開始は2024年度を目指す。(参考)医療機能情報提供制度に関する全国統一的な検索サイトの構築に向けた進捗状況について(厚労省)「治療どこで」全国18万病院を一括検索、厚労省が情報サイト新設へ(読売新聞)6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省厚労省は、24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で、ウェブサイト広告で規制している美容医療関係の事例について、具体的な解説を公表した。「即日インプラント治療1日で終了」「医療脱毛満足度99%」「全身脱毛3年し放題」などの表示、ビフォーアフター写真は虚偽や誇大広告とされ規制される。医療機関やウェブサイト制作事業者、地方自治体などに対し、医療に関する広告規制の理解を深めるのが目的とされる。なお、虚偽広告は自治体が中止命令や是正命令に従わなかった場合、6ヵ月以下の懲役か30万円以下の罰金となる。(参考)第17回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 資料(厚労省)医療広告禁止などの事例解説書を公開へ 厚労省(CBnewsマネジメント)「脱毛3年し放題」は誇大 ネット広告、厚労省が解説書(朝日新聞)

2613.

コロナワクチン後に心筋炎、CDCが接種との関連性を指摘

 米国疾病予防管理センター(CDC)は6月23日、新型コロナワクチンを接種した若年層において、心筋炎などの副反応と見られる症状が、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に1,000件以上報告されていることを明らかにした。CDCは接種と関連している可能性を指摘し、さらなる調査を進めるとしている。ただ、これまでに投与されたワクチン総量と比しても発症はまれであり、COVID-19のリスクおよび関連合併症を考慮した上で、ワクチン接種を引き続き推奨する方針だ。 米国では、現在12歳以上がコロナワクチンの接種対象となっていて、これまでに1億7,700万人以上が少なくとも1回目の接種を受けている状況。着実に接種人口が増える中、今年4月以降、ファイザー社やモデルナ社が開発したmRNAワクチン接種後に起きた心筋炎および心膜炎の症例が、VAERSに1,226例報告されたという(6月11日時点)。 CDCによると、症例が確認されたのは主に16歳以上の男性青年および若年成人で、2回目接種後で多く、おおむね接種後、数日以内だったという。CDCが323例について経過を調べたところ、309例が入院したものの295例がすでに退院、218例(79%)が症状から回復している。 CDCは、「ワクチン接種がCOVID-19から自身および家族を守るのに役立つ最良の方法」とし、12歳以上のすべての人にCOVID-19ワクチン接種を引き続き推奨する方針を明らかにした。日本国内での報告例は11例 一方、日本国内における症例報告はどのような状況なのだろうか。厚生労働省によると、副反応疑い報告制度において、ファイザー社のワクチン接種後の心筋炎関連事象(心筋炎・心膜炎)として、6月13日までに、医療機関から12件(11例)*の報告があったという。年齢群別では、40歳未満8件(7例)*、40歳~65歳未満2件、65歳以上2件となっている。モデルナ社のワクチンでは現在までに同症例の報告はない。*40歳未満の男性1例は、心筋炎・心膜炎の両者の記載があるため、1例分を2件として計上。

2614.

新型コロナ感染者の7割が症状持続:系統的レビュー

 COVID-19で長期持続する症状の頻度や種類、重症度についてはまだよくわかっていない。米国・スタンフォード大学のTahmina Nasserie氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状の頻度と多様性を調べた研究の系統的レビューを実施した結果、COVID-19の症状は一般的に感染急性期が過ぎても持続し、健康関連機能とQOLに影響を与えることがわかった。少なくとも1つの持続的な症状を経験している患者の割合は72.5%(中央値)であった。JAMA Network Open誌2021年5月26日号に掲載。 著者らは、2020年1月1日~2021年3月11日に公開されたSARS-CoV-2感染後の持続的な症状を調べた研究をPubMedとWeb of Scienceで検索した。持続的な症状の定義は、診断/発症/入院後の少なくとも60日間、または急性疾患からの回復/退院後少なくとも30日間持続する症状とした。SARS-CoV-2感染者の持続的な症状の有症率を報告し、明確に定義された十分なフォローアップが行われたコホート研究の1次データを提示しているすべての英語文献を含めた。症例報告、症例シリーズ、発症時や入院時のみの症状を記載した研究は除外した。構造化されたフレームワークで研究の質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・特定された1,974研究のうち適格とされたのは47研究で、84の臨床症状を報告した45報の研究について系統的レビューを実施した。・9,751例のうち男性が5,266例(54.0%)で、45研究のうち30研究で年齢の平均値または中央値が60歳未満だった。・16研究(ほとんどが入院していた症例での研究)のうち、少なくとも1つの持続的な症状を経験している患者の割合の中央値は72.5%(四分位範囲[IQR]:55.0~80.0)だった。・頻度が高い症状は、息切れまたは呼吸困難(26研究、頻度の中央値:36.0%、IQR:27.6~50.0)、倦怠感または疲労感(25研究、頻度の中央値:40.0%、IQR:31.0~57.0)、睡眠障害または不眠症(8研究、頻度の中央値:29.4%、IQR:24.4~33.0)だった。・研究のデザインと質には大きなばらつきがあり、主なデザインの違いは、患者集団、観察開始時期の定義、観察期間の長さ、重症度の定義などのアウトカムの定義であった。

2615.

新型コロナ感染のアスリート、無症候性心筋炎に注意

 心筋炎はアスリートの突然死の主な原因であり、新型コロナウイルスが原因で発症することも示唆されている。今回、Big Ten COVID-19 Cardiac Registry InvestigatorsのメンバーであるCurt J Daniels 氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したすべての米国アスリートを対象に、心臓MRI検査(CMR)を実施して心筋炎の発症有無を調べた。その結果、37例(2.3%)が臨床症状を有する心筋炎または無症候性心筋炎と診断された。今回の研究では、大学間で有病率にばらつきが見られたものの、検査プロトコルは心筋炎の検出と密接に関連していた。JAMA Cardiology誌オンライン版2021年5月27日号掲載の報告。 研究者らはCOVID-19に罹患したアスリートの心筋炎の有病率を定め、プレーに安全に復帰するための戦略を洗い出し比較することを目的とし、2020年3月1日~12月15日の期間にCOVID-19に罹患したアスリートの観察データを調査した。心筋炎を発症した選手については、心臓の状態や心臓検査の詳細が記録された。なお、心筋炎は心臓の症状とCMR所見に基づいて臨床症状を有する心筋炎または無症候性心筋炎に分類。無症候性心筋炎は、ほかの検査異常に基づいてprobableまたはpossible に分類した。 主な結果は以下のとおり。・13大学のアスリート1,597例(男性:964例[60.4%])でCMRが実施された。・37例(男性:27例)でCOVID-19による心筋炎と診断され(全体の2.3%、プログラムあたりの範囲:0~7.6%)、そのうち9例は臨床症状を有する心筋炎であり、28例は無症候性心筋炎だった。・心臓検査が心臓症状のみに基づいていた場合、検出されたのは5例のみであった(検出された有病率:0.31%)が、すべてのアスリートにCMRを施したことにより、心筋炎(臨床症状有および無症候性)の検出が7.4倍に増加した。・心筋炎と診断されたうちの27例(73.0%)でフォローアップCMRを行ったところ、全例(100%)でT2シグナル上昇を示し、11例(40.7%)で遅延ガドリニウム造影(LGE)を呈した。 研究者らは、「CMR所見のさまざまな確認と未知なる影響は、心臓検査のタイミングの標準化と解釈の必要性を強調し、アスリートの安全なプレー復帰のためにも定期的なスクリーニングにおけるCMRの役割をさらに調査する必要がある」としている。

2616.

第63回 尾身会長の専門家のプライド滲む具体的な指摘vs.模範解答も無視の菅政権

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき4月25日から東京都に出されていた緊急事態宣言が今週月曜日から約2ヵ月ぶりに解除され、「まん延防止等重点措置(まん防)」へと移行した。東京都で焦点となっていた飲食店の営業形態については、措置区域内(檜原村、奥多摩町を除く)で5~20時までの時間短縮営業を要請し、酒類の提供は来店者が同一グループで2人以内、最大滞在時間90分を条件に19時まで認めることになった。実効性はもちろん、なんとも分かりにくい。医療の世界で言うところの、なるべく取ってほしくない高点数の診療報酬の算定に当たって、あれこれと条件を付けるのと似ていなくもない。緊急事態宣言最終日の6月20日の日曜日。東京は午前中には雨がぱらつき、昼以降は曇り空、その割に気温は高いという何ともはっきりしない天気。仕事の合間(私は年中ほぼ無休、というか無窮とも言えるかもしれない)に昼食を取りに出かけた最寄り駅の繁華街周辺は、長らく休業が続いていた飲食店のシャッターが開けられ、店内では翌日以降の開店準備のためか、清掃をしている様子があちこちで見受けられた。久しぶりに活気があったことは私自身もやや嬉しくもあったが、同時に素直に喜びきれない複雑な思いも抱えていた。というのも6月12日に約1ヵ月ぶりに感染者報告数が前週同一曜日を上回り、6月17日からも同様の現象が3日間続いていたからだ。20日も夕方の時点でやはり前週日曜日よりも感染者報告数が上回ったことが明らかになった。そして、まん防移行後、本稿執筆時点までひたすら前週同一曜日を上回る現象が続きっぱなしだ。潜伏期間を考慮すれば、やはりヒトの我慢の限界は1ヵ月程度なのかもしれない。宣言開始直前の本連載での言葉を用いれば、私たちは赤点だったことになる。だが、今回それ以上に赤点だったと思える存在は政治である。そもそも4月25日から3回目となる緊急事態宣言を東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県を対象に発出した際の期限は5月11日。潜伏期間などを考えれば、5月11日というのは宣言の効果が見え始めるか否かの段階に過ぎず、端から宣言解除は期待できない期限だった。それでも政治がこの期限を設定したのは、3回目の緊急事態宣言に伴う国民の宣言疲れへの配慮や経済を必要以上に横目で眺めた結果だったのだろうと推測できる。そして1回目の宣言延長時、実は政治には赤点回避の模範解答が示されていた。緊急事態宣言の対象地域に4都府県に加え、愛知県、福岡県を追加し、期限も5月31日まで延長することを決定した5月7日の首相官邸での記者会見でのことだ。会見冒頭の質問で東京新聞の記者から宣言解除の基準を問われた際に菅 義偉首相は「基本的対処方針、ここにも書かれていますように、ステージ4、ここを脱却することが目安となりますが、具体的には専門家や自治体の意見も聴きながら総合的に判断していきたい、このように考えております」と、いつものようにややボヤっとした基準を示したのに対し、もはや同席が慣例となった新型インフルエンザ等対策閣僚会議新型インフルエンザ等対策有識者会議会長兼新型コロナウイルス感染症対策分科会長の尾身 茂氏はかなり具体的な形での指摘を行っている。以下に引用したい。「ステージ3に入って、しかもステージ2のほうに安定的な下降傾向が認められるということが非常に重要。それからもう一つは、感染者の数も重要ですけれども、解除に当たっては医療状況のひっ迫というものが改善されているということが重要だと思います。それから、今回は明らかに変異株の影響というのが前回に比べて極めて重要な要素になっていますので、今回は、いずれ解除するときには、今まで以上に慎重にやる必要があると思います。それから最後の点、申し上げたいことは、これは多くの専門家はなるべく下げたいという、なるべく数が少ないほうが良いということでいろいろな数が出ていますけれども、そうなることが理想ですが、必ずしもかなり下がるというところまでいかない可能性も、これはある。その場合は、いわゆる下げ止まりという状況があります。これがあり得る。そのときに、下げ止まったからすぐに解除するということをすると必ずリバウンドが来ますので、ここは何週間ということはなかなか難しいですけれども、必要な対策を続けながら、普通、われわれ感染症の専門家の常識を考えると、下げ止まっても、大まかな目安ですけれども、2~3週間はぐっと我慢するということが次の大きなリバウンドになるまでの時間稼ぎをできるということで、そういうことが必要だと思います。」私はスポーツジムのトレッドミルを走りながら、目の前のディスプレイであの会見をリアルタイムで聞いていたのだが、上記の中でも太字にした部分について「かなり踏み込んだ」と個人的には感じていた。私の勝手な推測だが、尾身氏のこの発言には2回目の緊急事態宣言の苦渋の解除が頭にあったのだろうと思っている。改めて記すと、2回目の緊急事態宣言は1月8日から東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に発出され、1月14日には栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県へと対象地域が拡大。最終的に首都圏の1都3県では3月21日まで宣言が維持された。この時の東京都では3月10日前後を境に前週同一曜日の感染者報告を上回り、200~300人台で感染者報告は下げ止まった。宣言期間が約2ヵ月半におよんだうえでの下げ止まりで、打つ手なしのやや投げやりな解除にも映った。実際、諮問委員会では反対意見を言った専門家は一人もいなかったこと、それに驚いたことを尾身氏自身が明らかにしている。「宣言解除、専門家の反対はゼロ 尾身会長も驚いた議論」(朝日新聞)こう書くと、「そういう尾身氏自身が反対しなかったのでは?」と野暮な突っ込みをする人が出てくるだろうが、あくまで専門家は助言・提言を行う立場であることを考えれば、おのずとできることに限界はある。ただ、その後まもなくリバウンドが起こり、現実に3回目の宣言発出になったからこそ、前述の会見での発言につながったのだろうと思う。専門家としての後悔も感じていたのではないかと思えるし、それ以上に政治の側に公の場で「くぎを刺す」意味もあったのだろう。だからこそ私はこの尾身氏の示した基準通りに政府側が動くか否かだけを注視していた。すでに答えは明らかで、模範解答は破り捨てられた。しかも、今回の東京都では、2回目の宣言解除直前よりやや多い300~400人台の感染者報告数で「まん防」に移行した。前回と違って一気に解除ではなく「まん防」に移行しているのだからましだと思えるかもしれないが、町の様子を見ていると多くの人は「移行」というよりは「解除」と捉えているのではないだろうか。現在、ようやく目標の1日100万回に達したワクチン接種。これを促進して力技で第5波への突入を阻止できるかは微妙だ。だが、もし第5波となってしまえば、今回はさすがに今まで以上に政府・政治家の責任は大きいと言わざるを得ない。と、そう思ったのだが、この政治は言ってしまえばわれわれの総意の結果、産み出されているものである。そうなるとやっぱり自分たちの赤点ぶりも相当のものと反省しなければならないとも思うのである。

2617.

新型コロナのα株、30代から重症化リスク増/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株(α株[英国株]としても知られる)の感染者は、SARS-CoV-2野生株感染者と比較して、入院リスクが高く、症状もより重症となる可能性が高いことが示唆された。さらに、重症化は30歳以上に特異的な可能性も示されたという。英国・ケンブリッジ大学のTommy Nyberg氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。B.1.1.7変異株は、2020年11月に英国で発見され、野生株よりも感染力が高いため、その後は優勢な系統となった。これまで、B.1.1.7変異株は重症化しやすいことを示唆するエビデンスはあったが、死亡率との相関を示した報告は交絡因子により研究の限界があったと考えられる。BMJ誌2021年6月15日号掲載の報告。PCR検査陽性後14日以内の入院を評価 研究グループは、英国における地域でのSARS-CoV-2検査のデータを入院データと個々に結び付け解析した。対象は、2020年11月23日~2021年1月31日の期間に、B.1.1.7変異の代替となるS-gene target failure(SGTF)変異の有無を評価できるTaqPathアッセイを用いているLighthouse研究所3施設のいずれかで検査され、SARS-CoV-2のPCR陽性が確認された83万9,278例(このうち3万6,233例は14日以内の入院例)。患者データは、年齢、性別、民族、貧困指標、居住地域、陽性判定日で層別化した。 主要評価項目は、初回SARS-CoV-2陽性判定日から14日以内の入院であった。重症化のリスク増大は30代から 83万9,278例のうち、SGTF変異を有する患者は59万2,409例で、うち2万7,710例(4.7%)が14日以内に入院した。一方、SGTF変異が認められなかった24万6,869例中14日以内の入院は8,523例(3.5%)であった。 野生株感染者に対する変異株感染者の入院の補正後ハザード比(HR)は、1.52(95%信頼区間[CI]:1.47~1.57)であった。HRは年齢に伴い有意に上昇し(p<0.001)、20歳未満では0.93~1.21、20~29歳では1.29、30歳以上では1.45~1.65であった。 14日以内の入院に関する補正後絶対リスクは、変異株感染者で4.7%(95%CI:4.6~4.7)、野生株感染者で3.5%(3.4~3.5)であった。 なお、著者は、救急外来や他の医療機関に直接受診した患者は除外されていることなどを研究の限界として挙げている。

2619.

第63回 政府の「骨太の方針」に日本病院会が現場の視点で提言

政府の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」では、医療機能の集約や、初診からのオンライン診療の恒久化などの方針が打ち出された。“官僚による机上の作文”の感のある内容だが、これに対し、日本病院会(日病)は現場の視点に基づく提言を行った。緊急時に「通常医療から転用できる病床」を確保「骨太の方針」では「感染症を機に進める新たな仕組みの構築」の中で、「平時と緊急時で医療提供体制を迅速かつ柔軟に切り替える仕組みの構築」が不可欠とし、▽症状に応じた感染症患者の受入医療機関の選定▽感染症対応とそれ以外の医療の地域における役割分担の明確化▽医療専門職人材の確保・集約―などを求めている。これに対し、日病の相澤 孝夫会長は6月16日の記者会見で、▽緊急時対応の病床を日頃から確保しておくことは得策でなく、緊急時に転用できる病床を予め確保しておく▽非常時の医療提供体制を構築する地理的範囲を明確にし、感染症の拡大ステージごと、患者の重症度ごとに、非常時対応の必要病床数と病院を地域ごとに明らかにする▽すべての病院スタッフが感染症などの緊急時に対応できるように普段からの教育が必要―と述べた。感染症患者を受け入れる医療機関に対する支援について、「骨太の方針」では「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応の在り方を検討し、引き続き実施する」としている。これに関し、相澤会長は「従来、感染症診療に対する診療報酬は低額に抑えられてきた。紛れもない急性期疾患に対する診療報酬上の適正な評価を行うべき」と指摘。また、感染症診療のための空床確保と通常医療の制限による減収については、「空床確保は空床確保料として当然補助金で対応すべきだと思う。通常医療の制限による減収は測ることが難しいため、緊急時支援金として交付することで対応すべき」と述べた。グランドデザインを描いた上で診療報酬を見直す「骨太の方針」の「更なる包括払いのあり方も含めた医療提供体制の改革につながる診療報酬の見直し」に対しては、「部分最適に陥りやすく医療の質確保にも疑念がある」と牽制。「診療報酬による医療提供体制改革という方法論は、これまでも数々の混乱を招いてきたので、やるべきではない。まず、医療提供体制改革のグランドデザインをしっかりと描いた上で、それを支援する形での診療報酬の見直しを進めていくべき」と提案した。また、「病院の連携強化や機能強化・集約化などを通じた将来の医療需要に沿った病床機能の分化・連携」や「かかりつけ医機能の強化・普及等による医療機関の機能分化・連携の推進」「外来機能の明確化・分化の推進」を掲げることに対し、相澤会長は「病院の連携は機能分化が明確になって、初めて機能するもの。したがって、まずは病院の機能を明確にすることが必要で、それに沿って連携強化が行われるべき。その結果として、集約が必要であれば集約化すべきだが、一方で分散化をしておいたほうがよい病院機能もあるということが、このコロナ禍で明らかになった」と述べ、「集約化」と「分散化」のバランスを取ることの必要性を示した。かかりつけ医機能の強化・普及については、「定義や機能が未だ明確になっていないことや、多くの人々の一致した認識になっていない。まず、その点を明確にすべき。また国民には、主治医とかかりつけ医の違いが明確になっていない状況で、かかりつけ医機能の強化や普及を進めることは混乱を招く」と指摘。外来機能については、「従来蓄積してきたデータの公開と十分な分析に基づいて、機能分化の方針を決定すべき。これなくして機能の分化・連携の推進を進めることは、かえって混乱を招くことになる」と述べた。オンライン診療をDXの流れで推進オンライン診療について、「骨太の方針」では「幅広く適正に活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医によるとしつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討」するとしている。これに対し相澤会長は、「時代のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の流れを含めて推進すべき。医療の安全を損なわないよう十分に配慮しながら、ポジティブリストを作成して推進する工夫が必要」と述べた。また、「団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革」にも言及。現在の医療提供体制改革の主眼は「地域医療構想の実現」で、「地域医療構想は入院医療費をコントロールするため、病床機能ごとの病床数の上限を定めたものだと思う」と相澤会長。その上で、「病床機能報告を積み上げたものが、必ずしも病院機能を示すものではない。病床機能報告を基に、機能ごとの病床数の調整や、病院機能分化の促進を図ろうとしても、議論は噛み合わない。各病院が地域で果たしている病院機能を明確にすれば、準備すべき病床と機能は決まってくる」と提案した。現在の改革方針が、現実に求められる医療提供機能とかけ離れ、かえって地域医療の混乱を招く“改悪”にならないように、病院界は今後も是々非々で情報発信をしていくことが必要だろう。また政府側にも、そうした現場の声に耳を傾ける柔軟さを求めたい。

2620.

コロナワクチンで注目される有害事象、ワクチンなしでの発生率は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン関連の、とくに注目される15種の有害事象(AESI)のバックグラウンド発生率を8ヵ国のデータベースを基に調べたところ、年齢や性別によりばらつきがあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らによる検討で明らかにされた。データベース間でも差が認められたという。ワクチン有害事象のバックグラウンド率は、ワクチン接種者の間で観察された割合のベースラインコンパレータとして機能することで、ワクチンの安全性を監視するうえで歴史的に重要な役割を果たしているが、研究結果を踏まえて著者は、「バックグラウンド率をサーベイランス目的で用いる場合は、同一のデータベースを使い比較する必要性が示唆された。事前に年齢や性別による差を考慮し、階層化や標準化が必要だ」と述べている。BMJ誌2021年6月14日号掲載の報告。脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓症など15のAESI発生率を解析 研究グループは、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、スペイン、英国、米国の8ヵ国の電子健康記録と医療費支払いデータを基に、COVID-19ワクチン関連の15のAESIに関するバックグラウンド発生率を定量化した。事前に規定した15のAESIは、非出血性・出血性脳卒中、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アナフィラキシー、ベル麻痺、心筋炎/心膜炎、ナルコレプシー、虫垂炎、免疫性血小板減少症、播種性血管内凝固症候群、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎だった。 AESI発生率は、年齢、性別、データベースにより層別化。発生率はランダム効果メタ解析を用いて別のデータベースとプール化し、国際医学団体協議会(Council for International Organizations of Medical Sciences:CIOMS)による頻度カテゴリーに従って分類した。データベースや年齢、性別によりAESI発生率に差 13のデータベースを基に、1億2,666万1,070人について2017年1月1日~2019年12月31日の間に365日以上の観察を行った(観察日は各年の1月1日)。 AESIバックグラウンド発生率は、データベースにより大きなばらつきがあった。たとえば、深部静脈血栓症の65~74歳女性の発生率は、英国CPRD GOLDデータベースでは387件(95%信頼区間[CI]:370~404)/10万人年だったが、米国IBM MarketScan Multi-State Medicaidデータでは1,443件(1,416~1,470)/10万人年だった。 AESI発生率は、年齢上昇に伴い増加するものもあった。具体的には、米国Optum電子健康記録データでは、男性の心筋梗塞発生率は、18~34歳では28件(95%CI:27~29)/10万人年だったが、85歳超では1,400件(1,374~1,427)/10万人年だった。 一方で、若年層に多くみられるAESIもあった。同健康記録データでは、男性のアナフィラキシー発生率は、6~17歳では78件(95%CI:75~80)/10万人年だったが、85歳超では8件(6~10)/10万人年だった。 メタ解析によるAESI発生率の推定値は、年齢および性別で分類された。

検索結果 合計:5557件 表示位置:2601 - 2620