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コロナ罹患後症状、研究指標をアップデート/JAMA

 米国・スタンフォード大学のLinda N. Geng氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環であるRECOVER-Adult studyにおいて、追加の参加者のデータを含めた最新解析を行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状であるLong COVID(LC)の研究指標を報告した。著者は、「LCの理解が進むに従って指標の継続的な改善が必要で、LC研究指標2023年版を更新した2024年版は、研究者がLCとその症状サブタイプを分類するのに役立つ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月18日号掲載の報告。追加参加者を含めRECOVER成人コホートのデータを解析 研究グループは、米国およびプエルトリコの83施設において、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず18歳以上の成人を登録し、90日ごとに症状について調査した。 感染歴がある場合は、初回SARS-CoV-2感染から4.5ヵ月後以降に少なくとも1回来院しており、再感染から30日以内ではない者とした。 研究の対象とした来院期間は、2021年10月~2024年3月であった。 主要アウトカムはLCの有無と参加者が報告した52の症状で、LASSO回帰を用いた重み付けロジスティック回帰分析により、LCを特定する症状と各症状のスコアを算出した。2024年版では11症状で評価 解析対象は1万3,647例(SARS-CoV-2感染が確認されている人1万1,743例、感染歴が確認されていない人1,904例)で、年齢中央値は45歳(四分位範囲:34~69)、73%が女性であった。 LC研究指標2024年版では、2023年版で特定された12症状から3つの症状(性的欲求・性機能の変化、消化管症状、異常行動)が除外され、2つの症状(息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸)が追加された。その結果、LC研究指標は労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、浮動性めまい、動悸、嗅覚・味覚の喪失または変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸の11症状となった。 また、重度のLC症状を有する患者を特定するためのスコアの閾値は11点以上であった。 LC研究指標2024年版では、既知のSARS-CoV-2感染歴がある参加者の20%、既知の感染歴がない参加者の4%が「LCの可能性が高い」と分類され(2023年版ではそれぞれ21%、5%)、既知の感染歴がある参加者の39%が、2024年版で新たに追加されたカテゴリーである「LCの可能性あり」(スコアが1以上11未満)と分類された。 クラスター分析の結果、生活の質(QOL)を追跡するLC症状サブタイプとして、嗅覚または味覚の変化(サブタイプ1)、慢性咳嗽(サブタイプ2)、ブレインフォグ(サブタイプ3)、動悸(サブタイプ4)、労作後倦怠感・めまい・消化器症状(サブタイプ5)の5つが特定された。その中で、多系統症状で負荷の大きいサブタイプ5は、他のサブタイプよりも、QOL、身体の健康、日常機能が悪いと報告する頻度が高かった。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysisPayne AB, et al. Lancet. 2024;404:1547-1559.<リアルワールドにおけるRSウイルスワクチンの有効性>:RSウイルスワクチンはRSウイルス関連の入院および救急外来受診を予防Test Negativeデザインにより、RSウイルスワクチンの60歳以上の成人におけるリアルワールドでの有効性を評価した初めての研究です。本研究により、リアルワールドにおいても、RSウイルス関連の入院や救急外来受診に対するワクチン予防効果が示されました。Cathepsin C (dipeptidyl peptidase 1) inhibition in adults with bronchiectasis: AIRLEAF®, a Phase II randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding studyChalmers JD, et al. Eur Respir J. 2024:2401551.<AIRLEAF®試験>:気管支拡張症に対するカテプシンC阻害薬投与は最初の増悪までの時間を減少気管支拡張症の成人を対象に、カテプシンC阻害薬BI 1291583の有効性、安全性、および最適用量を評価した第II相無作為化比較試験です。BI 1291583は、最初の増悪までの時間に基づいて用量依存的にプラセボよりも有意な効果を示しました。今後、この薬剤の第III相試験(AIRTIVITY®)も予定されています。Neoadjuvant pembrolizumab plus chemotherapy followed by adjuvant pembrolizumab compared with neoadjuvant chemotherapy alone in patients with early-stage non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-671): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trialSpicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252.<KEYNOTE-671試験>:NSCLCへの周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS改善:KN-671長期成績切除可能な早期非小細胞肺がん患者において、周術期のペムブロリズマブ+化学療法は、プラセボ+化学療法と比較して36ヵ月全生存率(71% vs.64%)および無イベント生存期間中央値(47.2ヵ月 vs.18.3ヵ月)を有意に改善しました。Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung CancerCheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327.<ADRIATIC試験>:限局型小細胞肺がん、デュルバルマブ地固め療法でOS・PFS改善Efficacy and safety of tezepelumab versus placebo in adults with moderate to very severe chronic obstructive pulmonary disease (COURSE): a randomised, placebo-controlled, phase 2a trialSingh D, et al. Lancet Respir Med. 2024 Dec 6. [Epub ahead of print]<COURSE試験>:トリプル吸入療法使用中のCOPD患者を対象としたtezepelumab投与は増悪を改善せずトリプル吸入療法使用中の中等症から最重症COPD患者を対象としたtezepelumabの第IIa相試験の結果が報告されました。主要評価項目である年間中等度/重度増悪率において、プラセボ群との有意差は認められませんでしたが、好酸球数150cells/μL以上のサブグループでは増悪抑制効果がある可能性が示唆されました。

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高リスクくすぶり型多発性骨髄腫、ダラツムマブ単剤が有効/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫は、活動性多発性骨髄腫の無症候性の前駆疾患であり、現在の標準治療は経過観察であるが、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者では早期治療が有益な可能性があるとされる。ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. DimopoulosらAQUILA Investigatorsは「AQUILA試験」において、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療では注意深い経過観察と比較して抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ皮下注単剤療法が、活動性多発性骨髄腫への進行または死亡のリスクを有意に改善し、全生存率も良好で、予期せぬ安全性に関する懸念も認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年12月9日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 AQUILA試験は、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療におけるダラツムマブの有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年5月に日本を含む23ヵ国124施設で患者を登録した(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上、過去5年以内に国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準でくすぶり型多発性骨髄腫との確定診断を受け、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高く、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、ダラツムマブの皮下投与を36ヵ月間で39サイクル受けるか、あるいは病勢の進行が確定するまで投与を継続する群、または注意深い経過観察を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。注意深い経過観察群では、疾患特異的治療を受けず、36ヵ月間あるいは病勢が進行するまで観察を継続した。 主要評価項目は無増悪生存(活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡)とし、IMWG基準に従って独立審査委員会が評価した。完全奏効以上、最良部分奏効以上の割合も良好 390例を登録し、ダラツムマブ群に194例(年齢中央値63.0歳[範囲:31~86]、男性49.0%)、注意深い経過観察群に196例(64.5歳[36~83]、47.4%)を割り付けた。くすぶり型多発性骨髄腫の初回診断から無作為化までの期間中央値は0.72年(範囲:0~5.0)であった。ダラツムマブの投与期間中央値は35.0ヵ月(0~36.1)、サイクル数中央値は38だった。 追跡期間中央値65.2ヵ月の時点で、活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡に至ったのは、経過観察群が99例(50.5%)であったのに対し、ダラツムマブ群は67例(34.5%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.36~0.67、p<0.001)。5年無増悪生存率は、ダラツムマブ群63.1%、経過観察群40.8%であった。 病勢進行までの期間中央値は、それぞれ44.1ヵ月および17.8ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.40~0.66)であり、完全奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効)は、17例(8.8%)および0例(0%)、最良部分奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効+最良部分奏効)は、58例(29.9%)および2例(1.0%)だった。 41例が死亡し、内訳はダラツムマブ群15例(7.7%)、経過観察群26例(13.3%)であった(HR:0.52、95%CI:0.27~0.98)。5年全生存率は、それぞれ93.0%および86.9%だった。重篤な有害事象は29.0%、投与中止は5.7% Grade3または4の有害事象は、ダラツムマブ群40.4%、経過観察群30.1%で発現し、最も頻度が高かったのは高血圧で、それぞれ5.7%および4.6%であった。重篤な有害事象は、29.0%および19.4%で発現し、最も高頻度だったのは肺炎で、3.6%および0.5%だった。ダラツムマブ群では、11例(5.7%)で投与中止に至った有害事象を認めた。 Grade3または4の感染症は、ダラツムマブ群16.1%、経過観察群4.6%で発現した。ダラツムマブ群では、32例(16.6%)で投与に関連した全身反応が報告され(Grade3または4は2例[1.0%])、53例(27.5%)で注射部位の局所反応(Grade3または4はなし)を認めた。ダラツムマブ群の18例(9.3%)および経過観察群の20例(10.2%)で2次原発がんが発生した。ダラツムマブによる新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、ダラツムマブは臓器障害の進行を遅らせるか、あるいは完全に防止し、活動性多発性骨髄腫への進行を抑制する可能性を示唆し、深い寛解を達成しない場合でも臨床的な有益性をもたらす可能性があると考えられる」「ダラツムマブをベースとした併用療法などの治療戦略がより適切かは現時点では不明だが、先行試験と本試験の結果を統合すると、本疾患の治療にダラツムマブ単剤療法を一定期間使用することが支持される」としている。

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 3

統合失調症の起源は創造性じゃなかったの?統合失調症の「双極性障害起源説」について説明してきました。従来から、統合失調症の起源仮説として、創造性が挙げられています。統合失調症は、人類が創造性という能力を進化させた時の副産物であるという仮説です。確かに、創造性と幻覚妄想は、紙一重です。創造性とは、まさにないものあるかのように感じて表現することであり、作為体験に通じます。しかし、創造性は起源ではないと考えられます。その理由は3つあります。1つ目は、創造性が生まれたのは、早くても約5万年前であり、7万年前の出アフリカよりもあとです。もしも創造性が起源だとしたら、統合失調症の発症率などに地域差が生まれることになってしまい、世界共通であることを説明できなくなるからです。2つ目は、創造性が起源だとすると、その3で説明した発症率、好発年齢、回復率の謎のどれも説明できなくなるからです。3つ目は、創造性が「集団統合機能」のように生存や生殖の適応度を直接高めることがなく、進化の選択圧(淘汰圧)としては弱いからです。つまり、創造性もまた「集団統合機能」の副産物と言えるでしょう。創造性の起源の詳細については、関連記事6をご覧ください。ボスザルからリーダーに約20万年前に人類が言葉を話すようになり、約10万年前に抽象的な思考(概念化)ができるようになってから、敏感さ(過敏性)を得た人は、その超越的な存在の実感を神と呼ぶようになったでしょう。しかも、もともと躁状態であったことから、確信して断定的に言ったでしょう。こうして、双極性障害のボスザルになる機能は、統合失調症のリーダーになる機能に拡張されていったのです。これが、その2で説明した「集団統合仮説」です。統合失調症と同じく双極性障害も発症率が1%であることから、おそらく100人の部族には最終的に双極性障害と統合失調症が1人ずついたことになります。おそらく、生活環境(社会環境)が安定している時はハイテンションの双極性障害がそのままボスとなり、逆に生活環境が不安定な時はカリスマ的な統合失調症がリーダーに台頭するという役割分担をしていたのかもしれません。現在の調査研究でも、感染症が蔓延して生活環境が不安定な亜熱帯の地域ほど、宗教の数が増えていくことがわかっています3,6)。そのような地域の人々は、まさに映画版のカーモディさんやドラマ版のナタリーのような教祖(統合失調症)にすがってしまうのでしょう。実際に、その時代の社会情勢が不安定な時にこそ、カルトを含む宗教が盛り上がるのは、日本も含め歴史から学ぶことができます。だからこそアフリカのサバンナからグレートジャーニーへよくよく考えると、約20万年前から私たち現生人類(ホモサピエンス)の脳は構造的にも遺伝的にも大きく変わっていないです。この点を踏まえると、人類の概念化の能力や一部の人(統合失調症)の霊感の能力(超越的な存在の実感)は、約20万年前の時点ですでに潜在的に備わっていたと考えられます。それらが、ようやく約10万年前になって言葉によって表現され共有され、顕在化したのでしょう。つまり、10万年前から7万年前(出アフリカ)の3万年間は、統合失調症が進化した期間ではなく、すでに進化していた統合失調症の歴代のリーダーたちが「集団統合機能」を言葉(伝承)によって文化的に発展させる、つまり原始宗教を確立する期間であったのでしょう。そして、この原始宗教が約7万年前にようやく確立したからこそ、その時点でアフリカからの大規模な拡散、つまりグレートジャーニー(大陸大移動)が始まったのでしょう。かつてのアフリカのサバンナのボスザルは、「約束の地」(神が約束した新天地)へと導くリーダーになっていった…統合失調症の起源に根気強く迫っていくなか、そんな人類史の壮大な歴史にまで思いを馳せてしまいます。参考記事なお、さらに20万年前よりも以前に遡った概念化の心理機能とは、そもそも目の前にないものを存在として認識する心理機能(象徴機能)が考えられます。この詳細については、お化けの起源として、関連記事7をご覧ください。確かに、神とお化けは同じく、姿がよくわからないし、何かされそう…実は神はもともとお化けだった…!?1)「進化精神病理学」p.195、p.214:マルコ・デル・ジュディーチェ:福村出版、20232)「標準精神医学 第8版」p.306、p.329:医学書院、20213)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20234)「ヌアー族」pp.323-324:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、20235)「ヌアー族の宗教 下」p.231:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、19956)「友だちの数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学」P127:ロビン・ダンバー、インターシフト、2011<< 前のページへ■関連記事映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 1映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 3NHK「おかあさんと一緒」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1絵画編【ムンクはなぜ叫んでいるの?】ビューティフルマインド【統合失調症】ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 2絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子供にお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 1

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高齢者への2価RSVワクチン、入院/救急外来受診リスクを低減

 呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に対する2価融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチンは、60歳以上の高齢者においてRSV関連下気道疾患による入院および救急外来の受診リスクを低減させたことを、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院のSara Y. Tartof氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年12月13日号掲載の報告。 RSV感染症は主に幼児・小児の感染症とされているが、高齢者が感染すると重大な転機に至ることがある。しかし、臨床試験では75歳以上の高齢者や併存疾患を有する患者に対する有効性、さらにRSV関連下気道疾患による入院や救急外来受診の予防効果は十分に明らかになっていない。そこで研究グループは、高齢者におけるRSVpreFワクチンの有効性を評価するために後ろ向き症例対照研究を行った。対象は、2023年11月24日~2024年4月9日にカイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院に下気道疾患で入院または救急外来を受診してRSV検査を受けた60歳以上の患者であった。 下気道疾患に罹患する21日以上前にRSVpreFワクチンを接種した患者はワクチン接種済みとみなし、RSVpreFワクチンではないRSVワクチンの接種者は除外された。対照は、2つの定義が事前に規定された。(1)厳密な対照群:RSV陰性、ヒトメタニューモウイルス陰性、SARS-CoV-2陰性、インフルエンザ陰性で、ワクチンで予防できない原因による下気道疾患(2)広範な対照群:RSV陰性のすべての下気道疾患 主な結果は以下のとおり。・解析には、RSV検査結果のある7,047例の入院または救急外来受診患者が含まれた。平均年齢は76.8(SD 9.6)歳、女性は3,819例(54.2%)、免疫不全は998例(14.2%)、併存疾患を1つ以上有していたのは6,573例(93.3%)であった。最も多い診断は肺炎であった。・RSV陽性は623例(8.8%)であった。RSV陰性(=広範な対照群)は6,424例(91.2%)で、そのうち厳密な対照群に該当するのは804例であった。・RSVpreFワクチンを接種していたのは、全体では3.2%で、RSV陽性群は0.3%(2例)、厳密な対照群は3.6%(29例)、広範な対照群は3.4%(221例)であった。・RSV陽性群と厳密な対照群を比較した解析では、調整後のワクチンの有効性は91%(95%信頼区間[CI]:59~98)と推定された。・RSV陽性群と広範な対照群を比較した解析では、調整後のワクチンの有効性は90%(95%CI:59~97)と推定された。・重度の下気道疾患による入院および救急外来受診に対する調整後のワクチンの有効性は89%(95%CI:13~99)と推定された。 これらの結果より、研究グループは「RSVpreFワクチン接種は、60歳以上の成人(大部分は75歳以上で合併症を有する)において、RSV関連下気道疾患による入院および救急外来受診に対する予防効果を示した。これらのデータは、高齢者におけるRSVpreFワクチンの使用を支持するものである」とまとめた。

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英国の過去20年の新薬導入、公衆衛生への影響を評価/Lancet

 2000~20年における英国国民保健サービス(NHS)による新薬提供は、公衆衛生にもたらした利益より損失のほうが大きかった。英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのHuseyin Naci氏らが、後ろ向き研究の結果を報告した。英国では、国立医療技術評価機構(NICE)による新薬に関する推奨は、健康増進をもたらす可能性がある一方で、その資金を代替治療やサービスに利用できなくなるため、犠牲となる健康が生じる可能性がある。著者は、「今回の結果は、新薬から直接的な恩恵を受ける人々と、新薬への資源の再配分により健康を諦めることになる人々との間に、トレードオフが存在することを浮き彫りにしている」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。2000~20年の間に承認された183品目について解析 研究グループは、2000~20年にNICEの公開データベースに公表されている、英国における新薬の技術評価を特定した。評価中止、推奨されなかった、またはその後販売を中止した製品、ならびに医療機器、診断または介入手順に関するプログラムの評価は除外した。また、NICEが評価した医薬品については、承認から5年以内の製品を調査対象として、医薬品名、評価された適応症、医薬品およびその評価の特徴に関するデータを収集した。 新薬の費用対効果を増分費用効果比(ICER)で、健康上の利益を質調整生存年(QALY)として算出。また、イングランドで2000年1月1日~2020年12月31日の間に販売された新薬の総量に関する独自のデータを用い、NICEが推奨する新薬を投与された患者数を推定した。 各評価の健康への影響は、NHSで新薬を用いた場合に得られる獲得QALYと、同じ資金を他のNHSサービスや治療に再配分した場合に理論的に得られるQALY推定値の差分から算出した。新薬の増分費用をNHSの支出による健康機会費用で割ることにより、逸失QALY(forgone QALY)を算出した。 NICEは2000~20年に332種類の医薬品を評価し、276品目(83%)が推奨され、このうち207品目(75%)は承認から5年以内に評価された。207品目のうち、適格基準を満たした183品目(88%)が今回の解析に含まれた。新薬で375万QALYを得るも、純損失は125万QALY 339件の評価全体における獲得QALYの中央値は0.49(四分位範囲[IQR]:0.15~1.13)で、これは完全に健康な期間の0.5年に相当した。 新薬の推奨に対するICER中央値は、2000~04年に公表された14件の評価では獲得QALY当たり2万1,545ポンド(IQR:1万4,175~2万6,173)であったが、2015~20年に公表された165件の評価では2万8,555ポンド(1万9,556~3万3,712)に増加した(p=0.014)。ICER中央値は治療領域によって異なり、感染症治療薬12件の評価では6,478ポンド(3,526~1万2,912)であるのに対し、抗がん剤144件の評価では3万ポンド(2万2,395~4万5,870)であった(p<0.0001)。 NICEが推奨した新薬を使用した患者1,982万人において、新薬の使用により推定375万QALYが追加されたが、新薬の使用によるNHSの追加費用は751億ポンドと推定された。同じ資源をNHSの既存サービスに用いた場合、2000~20年の間に500万QALYが追加で得られたと推定された。全体として、NICEが推奨した薬剤による累積的な公衆衛生への影響は負であり、純損失の発生は約125万QALYであった。

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第223回 押さえておきたい令和7年度スタートの「かかりつけ医機能報告制度」と「新たな地域医療構想」

毎週、さまざまな医療ニュースをお届けしていますが、今回は、これまでの厚生労働省の政策から、今後の医療のあり方などを考えてみたいと思います。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上となり、全人口の18%が後期高齢者となる超高齢社会の節目となる年です。15年前の2010年には、死亡者数は119.7万人でしたが、高齢化の進展により死亡者数はさらに増加すると予想されていました(2023年には157.6万人)。全日本病院協会の「病院のあり方に関する報告書」に目を通すと、当時から人口減少・少子高齢社会の急速な進展で、生産年齢人口、労働力人口の減少で看護師や介護職員の不足が予見されていました。このため、政府は平成26年(2014年)に医療介護総合確保促進法を制定し、都道府県において、病床の機能ごとの将来の必要量など、地域の医療提供体制について、二次医療圏ごとに将来のあるべき姿として「地域医療構想」を策定して、バランスのとれた医療機能の分化・連携を進めてきました。成功したかのように思えた政府の計画人口動態などから、「医療需要は2025年がピークとなり、その後は減少傾向、介護需要は2035年がピーク」と導き出されましたが、東京や大阪など大都市圏では介護需要のピークが2040年になるなど地域差も見出されました。さらに入院医療においては「肺炎、骨折、脳卒中・虚血性心疾患、がん、糖尿病」が、外来医療では「循環器系疾患、筋骨格系疾患、神経系疾患、眼および付属器疾患」で患者数の増加が見込まれました。「病院のあり方に関する報告書(2015-2016年版)」では、2015年当時の病床数は125.1万床でしたが、「2025年の時点で152万床程度の病床が必要」との予測から、「病院のベッド数の不足などから死に場所に困る者が年間50万人にも上るのでは」と懸念されていました(当時は看取りの場が病院・診療所が約8割と大半を占めていたため)。このため、厚労省は平成26年(2014年)に医療法を改正し、2025年に向けて地域医療構想の実現を、各都道府県に働きかけてきました。毎年、病床を有する医療機関に対して、病床機能報告を行わせて、医療機関は病棟単位で現在の病床機能と今後の方向性などの報告を行い、それを地域の実情に応じて病床機能の転換、再編などについて協議をしてきました。あわせて、一般病床において医療資源投入量の少ない患者の在宅医療や介護施設への移行などを通じて、2025年に119.1万床となることを目標としていました。結果として、「病床機能報告上の病床数について、2015年から2023年にかけて、125.1万床から119.2万床になり、2025年の必要病床数である119.1万床と同程度の水準」となり、「2025年の必要病床数の方向性に沿って、全体として地域医療構想の進捗が認められる」とほぼ成功したと判断しています。一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染爆発で明らかになったように、感染患者の急増によって、救急医療がパンクしたのは事実ですが、政府がこのときに行った規制改革でICTなどを用いた遠隔診療の普及、ナーシングホームでの在宅医による看取りなどが急増したのも事実です。このため、COVID-19が落ち着いた現在では、むしろ患者不足によって病床稼働率が低下し、多くの医療機関や介護施設が赤字に苦しんでいます。病院や介護施設では、患者や利用者が減少しても、看護師やリハビリ職員などの専門職を簡単には解雇できないため、人件費の負担が大きくなり、経営状況の悪化に拍車をかけているのです。労働力不足の中での医療の未来図今後は、人口構造がさらに変化して後期高齢者が増え、労働者が不足する中で、医療や介護の担い手に対するニーズは増え続けるのにかかわらず、弾力的な対応ができません。COVID-19の流行が落ち着いた現在、厚労省は2040年に向けて新たな地域医療構想を策定するため、検討会での議論を経て、12月18日に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」が公表されました。2024年の骨太の方針に沿った形で「2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」とされています。具体的には、さらなる医療機関の機能分化や連携強化、在宅医療の推進、ICTの活用のほか、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)取組みの推進が含まれます。とくにACPについては2024年の診療報酬改定で、入院料の通則に人生の最終段階における意思決定支援と身体的拘束の最小化の取り組みを要件化しています。通則に盛り込まれたということは、実施しなければ、入院料の算定は認めないということであり、多くの入院医療機関は対応が必須となります。かかりつけ医機能報告制度の趣旨と狙いこの「新たな地域医療構想」に向けて用いられるのが、「かかりつけ医機能報告制度」です。これについては、12月22日に開催された「日本在宅療養支援病院連絡協議会」の第2回研究会(2024年12月22日)で、厚労省の高宮 裕介氏(大臣官房参事官救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)の基調講演「かかりつけ医機能報告制度について」がYouTubeで公開されています。解説を聞きましたが、非常に詳細でわかりやすかったので視聴をお勧めします。この中でわかったことは、かかりつけ医機能の報告自体が目的ではなく、報告の結果を基に地域の協議の場で、医療関係者や自治体などともに在宅医療や時間外対応などの対応のほか、介護施設との連携などが図られることが理解できました。現在、在宅医療を行っている在宅医療機関としては、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院がありますが、最近は後者が増えており2,021施設になりました。日本全国で病院数は8,097施設なので、約25%は在宅医療を実施しており、今後も在宅医療ニーズが増えるのに応じて、急性期病院であっても中小規模の病院がさらに在宅医療に参入することが予想されます。日本在宅療養支援病院連絡協議会は、病院勤務医には馴染みがない訪問診療について、会員向けに在宅医療塾のほか、訪問栄養食事指導の講習会などを行うとのことです。ぜひご参考にされてください。2024年もご愛読ありがとうございました。また、2025年もよろしくお願いします。参考1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省)2)かかりつけ医機能報告制度(同)3)かかりつけ医機能報告制度について研修・説明会(同)4)地域医療構想に関する主な経緯や都道府県の責務の明確化等に係る取組・支援等(同)5)病院のあり方に関する報告書[2015-2016年版](全日病)6)日本在宅療養支援病院連絡協議会

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ミノサイクリン処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第18回

画像を拡大するTake home messageミノサイクリンを使用する際には、皮膚症状の副作用を中心とした5つの副作用を覚えておこうミノサイクリンはテトラサイクリン系抗菌薬の1つで、あらゆる感染症に対して効果を発揮します。腎機能にかかわらず使用できるため便利な反面、いくつかの重要な副作用には注意する必要があります。今回は、とくに気を付けるべき5つの副作用を学んでいきます。1. 皮膚:光線過敏症まれに光線過敏症が生じることがあります。日光に長時間さらされることを避け、外出時には日焼け止めの使用や遮光性の高い衣類の着用を推奨します。2. 皮膚:色素沈着(青灰色・褐色)青灰色や褐色の色素沈着がみられることがあり、長期使用で患者の3~15%に発現するという報告もあります。この色素沈着は、タイプ1~4が報告されており、分布や機序が異なります。高用量のミノサイクリンを長期間使用した場合に発生率が高くなるといわれますが、短期間の使用における報告もあります。色素沈着の改善には時間を要することが多く、一部では不可逆的な場合の報告もあるため、注意が必要です。3. 消化器系および前庭神経症状(嘔気・嘔吐、めまい・運動失調)最も一般的な副作用として、消化器系症状(嘔気・嘔吐)および前庭系症状(めまい・運動失調)が挙げられます。前庭神経症状は、ミノサイクリンがほかのテトラサイクリンと異なり、血液脳関門を通過しやすい特性を持つために発生すると考えられています。とくに女性に多くみられる傾向があり、対症療法で改善する場合が多いものの、症状が継続する場合は薬剤変更を検討します。4. 良性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)これもまれですが、良性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)が発生することがあります。とくに女性に多くみられ、頭痛が主な症状です。偽脳腫瘍が疑われる場合は、眼科での診察を依頼し、乳頭浮腫の有無を確認することが重要です。この副作用は通常は可逆的ですが、まれに視覚障害が回復しないケースも報告されているため、早期発見と対応が重要です。5. 小児/胎児における歯の変形および着色、骨発達の遅延小児/胎児において歯の変形および着色、骨発達の遅延を引き起こす可能性があるとされています。ミノサイクリンは胎盤を通過するため、妊婦には禁忌とされています。また、8歳未満だけでなく、歯冠がすべて発達する(13~19歳)までミノサイクリンの使用は避けるべきという報告もあるため、ほかに選択肢がある場合は小児への使用は避けたほうがよい、という意見が多いです。このように、ミノサイクリンは頻度の高いものからまれなものまで多様な副作用があり、十分に理解しておくことが重要です。とくに色素沈着に関しては青黒色や灰色の外観が非常に印象的であること、回復まで時間を要することが多いため、患者に対する十分な説明と理解が必要です。ほかの抗菌薬と同様に、可能な限り短期間の使用にとどめることが重要です。1)Wang P, et al. JAMA Dermatol. 2021;157:992.2)Katayama S, et al. N Engl J Med. 2021;385:2463.3)Martins AM, et al. Antibiotics (Basel).4)Smilack JD, Mayo Clin Proc. 1999;74:727-729.5)Mouton RW, et al. Clin Exp Dermatol. 2004;29:8-14.6)Raymond J, et al. Australas Med J. 2015;8:139-142.

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進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫の初回治療、watchful waiting対早期リツキシマブ(JCOG1411/FLORA)/ASH2024

 未治療の進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫(LTB-FL)では、診断後にすぐに治療を行わずに経過を診る、いわゆる無治療経過観察(watchful waiting、WW)が標準治療とされているが、高腫瘍量(HTB)への進行や組織学的形質転換といったリスクが懸念される。 一方、リツキシマブ単剤療法は、LTB-FLに対する初回治療の選択肢としてその有効性が示されているが、同剤を開始する最適な時期は明らかになっていない。そこで、未治療の進行期LTB-FL患者を対象に、WWに対する早期リツキシマブ導入の優越性を検証する無作為化第III相JCOG1411/FLORA試験が行われた。なお、同試験は、2024年6月に事前に計画された2回目の中間解析により、JCOG効果・安全性評価委員会から早期終了が勧告された。同試験の結果を東北大学の福原 規子氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。・試験デザイン:無作為化第III相比較試験・対象:未治療の進行期・超低腫瘍量FL(Grade 1〜3A)※本試験では、GELF規準による低腫瘍量FLを、超低腫瘍量(腫瘍の最大長径が5cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節が2領域以下、胸腹水貯留なし)と、中腫瘍量(最大長径5cm以上7cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節3領域、重篤な胸腹水貯留なし、のうち1つ以上該当)の2つに分け、超低腫瘍量を試験の対象とし、中腫瘍量をリツキシマブ投与規準と定義した。・試験群:リツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)(RTX群、144例)・対象群:無治療経過観察 (WW群、148例) 両群とも中腫瘍量に進行した場合はリツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)投与・評価項目:【主要評価項目】無イベント生存期間(EFS)(イベント:高腫瘍量(HTB)への進行、細胞傷害性化学療法±放射線療法の開始、組織学的形質転換、または死亡)【副次評価項目】無細胞傷害性化学療法生存期間、無組織学的形質転換生存期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、全奏効割合(ORR)、有害事象など 主な結果は以下のとおり。・2016年12月〜2023年3月にJCOGリンパ腫グループ54施設から292例が登録された。・第2回中間解析(データカットオフ2023年12月)の観察期間中央値2.5年時点で、主要評価項目であるEFSにおいて、中央値はRTX群6.9年に対しWW群4.5年であり、有意にRTX群で改善した(HR:0.625、95%CI:0.425~0.918、片側p=0.0078)。・EFSのイベント内訳は、HTBへの進行(RTX群18.8%、WW群32.4%)、組織学的形質転換(RTX群8.3%、WW群12.8%)、化学療法の開始(RTX群11.8%、WW群8.8%)などであった。・PFS中央値はRTX群、WW群とも3.0年で両群間に差はみられなかった(HR:0.911、95%CI:0.666~1.247)。・ORRはRTX群70.8%、WW群3.4%であった。・OS中央値は両群とも未到達、3年OS割合はRTX群97.5%、WW軍98.5%で両群間に差は見られなかった(HR:0.908、95%CI:0.329〜2.506)。・無組織学的形質転換生存期間中央値は両群とも未到達、同3年割合はRTX群91.4%、WW群87.4%であった。・主なGrade2~4の非血液毒性(>5%)はインフュージョンリアクション(RTX群24.1%、WW群8.9%)、上気道感染症(RTX群6.4%、WW群2.1%)、高血圧(RTX群5.7%、WW群1.4%)であり、主なGrade3~4の血液毒性(>5%)はリンパ球減少であった(RTX群11.4%、WW群8.5%)。 以上の結果から福原氏は、未治療の進行期超低腫瘍量FL患者において、リツキシマブ早期介入は高腫瘍量への進行や化学療法の開始時期を遅らせることが示され、OSや組織学的形質転換に関しては長期のフォローアップが必要であるものの、リツキシマブ早期投与は未治療の進行期超低腫瘍量FLの初期治療に推奨されると結んだ。

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第243回 レプリコンワクチンのデマが現場にも忍び寄る?あるアンケートで明らかに

通称レプリコンワクチンと呼ばれるMeiji Seikaファルマの新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン「コスタイベ」に関して、同社は12月25日、立憲民主党の衆議院議員・原口 一博氏を提訴する方針を明らかにした。この件についての詳細は、後日に改めて述べるが、近年SNS上では一部のワクチン懐疑論者が否定的な情報を拡散しており、その影響が実際に現れている別の事例を目にした。福祉施設入所者の接種状況とその理由12月10日に開催された東京都医師会の定例会見で、東京都老人保健施設協会が行ったインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの接種状況に関する緊急調査の結果1)が報告された。調査は都内の介護老人保健施設184施設を対象に行われ、11月28日に1回目、12月9日に2回目が実施され、回答率はそれぞれ49.5%、46.3%だった。それによると、入所者を対象にインフルエンザワクチンを接種した(予定も含む)施設は99%にのぼったのに対し、新型コロナワクチンに関しては81%に留まった。職員を対象とすると、インフルエンザワクチンは82%、新型コロナワクチンは40%とさらに大きな差が開いた。また、2回目の調査では入所者や職員のワクチン接種希望割合を聴取しており、インフルエンザワクチンでは、入所者の希望割合が「7割以上」だった施設は最多の49%、次いで「6割」が25%なのに対し、新型コロナワクチンでは最多が「3割未満」の31%、次いで「3割」が23%だった。ここでもインフルエンザワクチンに比べ、新型コロナワクチンでは明らかに接種に消極的な実態が浮かび上がった。入所者へ新型コロナワクチン接種を実施しない施設に、施設として実施しない理由を尋ねた結果、「体制不足」が35%、「安全性が心配」が15%、「その他」が50%だった。理由の自由記述では、「ワクチン費用が高い、補助金がない」「施設長(医師)の判断」「家族より心配との声」「コスト面と希望者が少ない」「インフルエンザ接種を優先、コロナは1月以降の実施予定」「独立型老健施設での接種は実費になる」「区からの接種券が使用できないので、家族に他の医療機関で接種してもらっている」「外出した際に病院・クリニックで接種してもらっている」「入所前に接種している」などが挙げられた。自由記述を概観すると、施設側としてはやはり体制の問題、とりわけ自治体発行の接種券が施設での集団接種の場合は使いにくいという事情が大きく影響しているとみられる。同時に見逃せないのは、「家族より心配との声」に代表されるような安全性への過度な不安が15%もあることだ。一方、新型コロナワクチン接種を実施する施設で、入所者が接種を希望しない理由を尋ねた結果、「安全性が心配」が33%、「費用負担」が30%、「その他」が37%と、安全性の問題がやや多かった。これに関連する自由記述は「家族の意向」「以前接種後(に)体調を悪くした」「『何回も打ったからいい』という方もいて以前より危機感が薄くなった様子」「使用ワクチンを『コスタイベ』と案内したところネット情報等で不安視し見合わせた家族が多数あり」「必要性を感じない」「罹患した方や、3~4回接種後から実施していない方などが多い印象」「効果が懐疑的という声あり」「自治体とのやり取りの手間」「外部と接触がないので、もう必要ないと思う」「施設で実施すると実費になり高額になるため」「流行していないから」だった。危機感が薄れているとともに、安全性について懐疑的あるいは恐怖を感じる人が少なくない印象だ。しかも、ここでまさに明らかになったように「コスタイベ」を不安視する家族の声で接種を希望しない入所者がいる現実は、外から眺めている私たちが思っていた以上に深刻と言えそうだ。また、職員に対するワクチン接種実施状況については、インフルエンザワクチンでは「原則として全員」が51%、「希望者のみ」が47%、「実施しない」が2%に対し、新型コロナワクチンでは「実施しない」が52%、「希望者のみ」が48%と、やはりここでもインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの差が明確になっている。新型コロナワクチン接種に対する施設側の意見、要望に関する自由記述もあり、その内容を以下にすべて列挙する。「コロナワクチンは無料と有料があり混乱」「できれば高齢者は無料にしてほしい」「65歳未満のコロナワクチンの費用が高すぎる」「65歳未満のコロナワクチンが今回から全額自己負担となり、高額であることから見合わせる職員が大部分。インフルエンザは年齢問わず自己負担額が低いため施設が職員へワクチン接種をすすめ易い」「各市町村によって手続きや費用が違って事務が煩雑、国に一本化してほしい」「コロナワクチンは高額のため希望しない職員が多い」「5類となり、施設負担(手技含む)特に経済的な問題が発生しており、今後、施設実施できない方向」「自治体に確認する手間がかかる為スムーズにいかない」「集団生活の場であり、より多くの方が接種することが望ましいかと思うが、やはり希望しない方に強制する必要もないと考えている」「施設職員に対してコロナワクチンの助成をして欲しい」「2種混合ワクチンがあると良い。高齢者施設では医療関連の手間をかけられない」このように見てみると、施設側やその職員が新型コロナワクチン接種に積極的とは言えない現実については、定期接種対象の高齢者でも一部費用負担が発生してこれが自治体によって異なること、自立型老健施設が主体の集団接種は施設側に費用負担が発生すること、65歳未満で基礎疾患がない職員などの場合は1回1万5,000円前後の高額な接種費用が全額自己負担など、制度や経済的な問題が主な理由と言える。ただ、接種対象の高齢者側が接種を希望しない理由では、新型コロナワクチンの安全性に関する、有体に言えばデマの“汚染”がすでに見過ごせない程度、浸透していることもわかる。もっとも一般論として考えると(アンコンシャスバイアスかもしれないが)、老健に入所している高齢者でSNS上のデマを直接目にしている人は少数派ではないだろうか。実際、ある程度限られた情報ではあるものの、自由記述を見ると安全性への懸念の表明元は入所者からよりも家族からのほうが多そうである。このようにしてみると、コスタイベを含む新型コロナのmRNAワクチンに関するデマは、もはやエコーチェンバーの枠を超え、現場にも迫りつつあるのだと改めて実感している。ちなみに今回、私の連載のご意見・ご質問欄を通じて介護職の方から「レプリコンワクチンはファイザー、モデルナのmRNAワクチンと同程度の安全性をもつと考えていいのでしょうか?」との問い合わせを受けたが、これに対する私の答えは「国内第III相試験の結果を見る限り、同程度と言えます。私は次回の新型コロナワクチン接種ではコスタイベを選択するつもりです」となる。参考1)東京都医師会定期記者会見(令和6年12月10日):令和6年秋冬の新型コロナワクチン定期接種の状況-東京都老人保健施設協会緊急調査結果から-

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診療所のマイナ保険証利用率は10%未満の施設が約7割/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、年末年始の感染症対策ならびに診療所における医療DXに係る緊急調査の結果について説明を行った。 初めに松本氏が、会員医療機関の経営逼迫に対し政府などへの要望、医師偏在対策への提案など、この1年の医師会のさまざまな事業を振り返った。続いて「年末年始の感染症対策等について」として副会長の釜萢 敏氏(小泉小児科医院 院長)が、この数週間で急増しているインフルエンザ流行への対策、同時に新型コロナウイルス感染症への対応について説明した。とくにインフルエンザの迅速診断キットが外来などの現場で不足していることに触れ、医師会として厚生労働省に要望を出していること、臨床現場では特定のメーカーのキットだけでなく、融通できるキットを使用して診断を行ってもらいたいと語った。また、予防対策として「『マスク着用、手指衛生とうがい、換気の実施』は、従来どおり行ってもらいたい」と述べた。診療所のDXのカギは人材育成と政府の支援 「診療所における医療DXに係る緊急調査の結果」について、担当常任理事の長島 公之氏(長島整形外科院長)が概要を説明した。 冒頭、先般の電子処方箋の不具合による発行停止に触れ、「健康被害発生を防ぐために万全を期してほしい。不具合の解消までの再開延期は妥当だが、今後こうした事態が発生しないようにお願いしたい。そのために医師会も支援・協力をする」と語った。 次に今回行われた医療DXに係る緊急調査の結果の内容について説明した。 本アンケートは、医療DX推進が拙速に進められると医療提供体制に混乱や支障が生じるという懸念、医療DX推進体制整備加算の電子処方箋導入に関する施設基準の経過措置が令和7(2025)年3月31日までであること、診療所での医療DXの取り組みについての調査は今まで行われていないことから、実態や負担感について緊急調査を実施したもの。 調査は、2024年9月20日~10月4日まで無作為に抽出した医師会員の診療所管理者(院長)1万人にWebで行い、うち4,454人(回答率44.5%)から回答を得た。回答年齢階層はほぼ均等で、内科、眼科、小児科の順で回答が多かった。1)マイナ保険証について マイナ保険証の利用率は低迷。調査では、利用率(レセプト件数ベース)が10%未満の施設が全体の約7割を占めた。また、医療DX推進体制整備加算の令和7(2025)年1月から予定されている施設基準(10%以上)を満たせない施設が多かった。傾向として院長の年齢が高い施設や小児科(患児のカードが作成されていない)などで利用率がさらに低い傾向だった。2)電子処方箋について 電子処方箋を導入済みで運用中は4.6%、導入済みだが未運用が9.9%で、導入率は計14.5%で低迷。医療DX推進体制整備加算の経過措置(~令和7年3月末)後の施設基準を満たす施設はごく一部に止まっていた。未運用の理由は「地域の薬局や医療機関が未運用である」が多く、課題として地域が一体となって推進することが求められた。また、電子処方箋を導入していない理由は、「システム費用面の負担が大きい」が58.3%、「導入のメリットを感じない」が52.5%、「ICTに詳しい人材の不足」が40.4%だった。3)電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスについて 電子カルテの使用割合は62.6%であった。院長の年齢階層が高いほど使用率が下がるが、70歳以上の階層でも41.4%が使用していた。これは、回答者がICTに慣れた医師が多い可能性もあり、偏りには留意が必要。また、電子カルテ情報共有サービスについては、診療中にネットワーク上の患者情報をみることは難しいという意見が約4割を占めた。有事の際の利用など認識度は低く、現時点では内容が十分に周知されていない状況だった。4)医療DXに係る課題について(1)ICT人材不足と医師の作業負担 ICTの知識がある人材が不足していると回答した施設は9割強にのぼった。64.1%の施設では医師が診療のかたわらにシステム対応を行っており、システム対応の作業負担は大きいことがうかがえた。(2)システム費用負担 電子カルテとレセコンを合わせると高額なシステム費用を負担している施設が多く、95%の施設はシステム費用の負担を感じていた。国や自治体からの補助金や診療報酬上の十分な手当がないと、医療DXの推進は困難な状況だった。5)まとめ・診療所は規模が小さく、ICT対応に係る負担感が大きい。ICT人材は不足し、システム事業者に払う費用負担は重荷となっている。・医療DXの推進には、国の全面的な支援が必要で、現場の実情に即した診療報酬上の手当てと、補助金の検討が求められる。その際、単純な平均値だけではなく分布を踏まえて対応すべきである。・ステークホールダーが多い中、効果的な情報提供が不可欠であり、システム事業者対応に伴う作業負担の軽減、高齢の医師などへの支援も求められる。・医療DXはわが国の患者・国民により良い医療を提供するためのきわめて重要な取り組みである。災害時に患者の診療情報を閲覧できるなど、わかりやすい説明を現場に提供し、急がず、丁寧に進めることが肝要である。・医師会においても高齢の医師を含む地域の医師・医療機関に寄り添い、情報提供と支援を今後も行っていく。 以上の内容を踏まえ長島氏は、医療のDX化は必要であり、推進を認めつつも、政府による義務化や強制には難色を示し、「医療機関も患者もDX化で取りこぼしのないように援助・支援を行うべきである。さまざまな診療報酬の加算も期限を設けるのではなく、実情を考慮してもらいたい」と語り、説明を終えた。

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第128回 年末年始、インフルエンザ・新型コロナの大流行が直撃

インフルエンザの流行曲線がヤバイさて毎年のように感染症に警戒しなければならない年末。昨シーズンは、新型コロナもインフルエンザも年明けからわりと流行していましたが、今シーズンはインフルエンザの流行曲線がほぼ直角に上がっています。第50週で19.06人。定点医療機関あたりの感染者数が5週間で1から一気にここまで上がりました(図)。やべえ!画像を拡大する図. インフルエンザとCOVID-19の定点医療機関あたりの感染者数(筆者作成)1)外来でも、インフル陽性、インフル陽性、新型コロナ陽性、インフル陽性…といった感じで報告が上がっていて、時折混ざってくる新型コロナにドキっとする日々です。幸いマイコプラズマは当地域では徐々に減ってきており、もともと風邪症状や気管支炎止まりのことが多いため、全体として入院を逼迫するような要因にはなっていません。マイコプラズマの感染者が若い人が中心、という理由もあるでしょう。しかし、インフルエンザや新型コロナに関しては、高齢者が罹患すると、わりと入院が必要になります。年末年始はまた大変なことになるのかなあと身構えています。新型コロナもじわじわ増えており、第50週で3.89人です。過去、この立ち上がりから流行を迎えなかったことはありません。ですから、ほどなく新型コロナも注意報レベルになることも既定路線でしょう。2年連続、同時流行。乾燥している病院インフルエンザウイルスは、相対湿度が40%を超えるとウイルスの活性化率が急速に低下することが知られています2)。ゆえに、医療機関においても40%ラインは確保したいところ。新型コロナも同様です。121ヵ国の気象データと新型コロナの感染者数・死亡者数を調べたアメリカのデータによると、室内の相対湿度を40~60%に維持することで、新型コロナの感染だけでなく、ひいては死亡者数まで低下するという研究結果が報告されています3)。温度環境は良好に管理されているものの、相対湿度については、多くの医療機関や高齢者福祉施設では40%を下回っています。そもそも、湿度をしっかり管理している病院って多くないかもしれません。レジオネラなどの院内アウトブレイクがあったら問題になりますし、加湿器はなかなか置けないかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移2)Noti JD, et al. High Humidity Leads to Loss of Infectious Influenza Virus from Simulated Coughs. PLoS One. 2013;8(2):e57485.3)Verheyen CA, et al. Associations between indoor relative humidity and global COVID-19 outcomes. J R Soc Interface. 2022;19(196):20210865.

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GOMER、暴れる患者、対応困難な患者【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第1回

GOMER、暴れる患者、対応困難な患者Point陰性感情をもたないようにして、コミュニケーション能力(傾聴と共感)を磨け。警察を呼ぶタイミングを知っておこう:暴力、器物損壊はただちに。それ以外は2段階方式で。身体拘束と薬物拘束は段階的に、人権意識をもって対処する。器質的疾患を見逃さないようにすべし。症例56歳男性。研修医の診察中に急に激高して暴れ始めた。目はどこかあちらの世界に飛んでいるようだ。家で奇声を上げたり、台所で排尿したりして、家人が心配で連れてきた。バイタルサインは血圧160/100mmHg、脈拍110回/分、呼吸数30回/分、体温38.2℃、SpO2 98%であった。落ち着くようにいっても聞く耳をもたない。本人は帰宅するというが、そのまま帰していいのだろうか。おさえておきたい基本のアプローチ対応困難な患者は、患者だけの問題ではないGOMER(Get Out of My ER)とは、「俺の救急室からとっとと出ていけ」という特定の患者を嫌う医療者の勝手な造語であり、使ってはいけない隠語だ。患者と馬が合わないのを患者のせいにするなんて医者の風上にも置けない。多くの人が苦手とする患者であってもうまく対応できてこそプロなのだ。difficult patient(良好な医師-患者関係を築けない患者)には、患者要因、医療者要因、環境要因などが挙げられる(図1)。図1 difficult patientが誕生するわけ画像を拡大する勝手に患者が悪いなんて決めつけてはいけない。以前医療過誤にあった家族をもつ患者であれば、医療者が誰も話を聞いてくれなかったつらい過去をもっており、医療不信になるのも当然だ。そんな患者に寄り添うには、事情がわからなくても「1に親切、2に親切、3に親切」に接するに限る。つらい思いでやっと救急室にたどり着いたのに、待ち時間は長く、暇そうな医療者が大声で笑い、コーヒーのいい匂いが漏れ出てきて、愛想のない受付や看護師が対応し、最後にコミュニケーションスキルが皆無の医者が出てきて、あなたの期待に全然応えなかったら…ハイ、あなたでも怒っている患者になりませんか?医者は偏見を捨てて、患者の訴えに傾聴し(医学的に間違っていてもすぐに否定してはいけない)、決めつけずに、愛情をもった態度で、患者中心のコミュニケーションを進め、共感を示すべし1)。どんな状況においても医者には大逆転できるhalo effectがあるんだから、「私はあなたの味方ですよ」オーラを全開に放って対応しよう。自分の感情をコントロールせよ医者が陰性感情をもつ場合は、自分の力が及ばない無力感こそが最大の敵である(表1)。表1 こんな患者に陰性感情をもってはダメ:誤診の宝庫画像を拡大する研修医にわけのわからない質問を受けると、イラッと来てしまうが、それは答えがわからないいらつきなんだよね。対処法がわからない、きちんと情報が取れない、それは何も患者が悪いわけではないと自覚しよう。自分の感情をコントロールし、偏見を捨てて、患者に変なレッテルを張らないようにしよう。陰性感情をもつと、診療が雑になり、誤診しやすくなってしまう。危ない患者、暴れる患者を予想する医療者の第六感を鍛えるのは大事。どんな患者が暴れ始めるのか早めに察知しよう(表2)。表2 危険を察知する画像を拡大する初期研修医2年目も終わりごろになれば、どの科のどの医者が危ないか第六感でわかってくる、その勘と相通じるとか通じないとか…。危険を察知したら、なるべく団体行動をとること。人を集めて、数がいることで抑止力になり得る。警備員を救急待合室に配置しておこう。多勢に無勢なのに暴れるなら、その患者は本物のせん妄なのかもしれない。治療を要する患者を見逃すな病気のせいでせん妄になり暴れている場合は、何が何でも患者の安全を優先して治療しないといけない。自傷他害の恐れがなく、判断能力(decision-making capacity)がしっかりしている場合は、患者の同意なく医療行為はできない。反対にどれか1つでもかけていたら、患者の安全のために抑制し治療が必要になる(図2)。decision-making capacityに関しては4つの要素を確認する(表3)2)。その際にはきちんとMMSEなど記録をしっかり残すこと。図2 治療を優先すべきとき画像を拡大する表3 decision-making capacityの4つの要素画像を拡大するせん妄患者の特徴は、急性発症で意識レベルが変動し、注意力散漫または意識障害を呈するものである。まるでキツネにつままれたように、まともになったり、変になったりする。バイタルサイン異常、とくに発熱に気をつける。新しい記憶の障害を伴う見当識障害を認めることが多い。古い記憶は保たれるため、名前や住所が言えても意識は大丈夫と思ってはいけない。暴れる患者の鑑別診断機能的なものは精神疾患や人格障害によるものが多い。治療可能な器質的疾患は見逃さないようにしたい。鑑別診断「FIND ME」と覚えよう(表4)。慢性硬膜下血腫の半数は精神症状で来院する。感染症や薬剤によるせん妄も多い。低血糖も3割は好戦的になるのだ3)。子供だって、お腹がすくと怒りっぽくなるよねぇ。表4 暴れる患者の鑑別診断 FIND ME画像を拡大する落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「そんな大声出すなら警察を呼びますよ」…大声をあげるだけでは警察は動かない警察を呼ぶのに許可はいらない。必要なときは、遠慮せずさっさと警察に助けを求めよう。ぎりぎりまで我慢すると、暴力はエスカレートしてくるので、早い段階で警察を呼ぶほうがいい。警察は誰か怪我をしたとき(暴行罪:刑法第208条、傷害罪:刑法第204条)や物が壊れた時(器物損壊罪:罪刑法第261 条)は素早く動いてくれる。敵もさるもの、大声くらいでは警察が来ないのを知っている。この程度で、「警察呼びますよ」なんていうと、「おりゃぁ、じゃ、呼んでみぃ、コルアァ」と火に油を注ぐ結果になっちゃうかもしれない。大声を出したくらいでは警察は動かない。公然わいせつ罪:刑法第174条、脅迫罪:刑法第222条、強要罪:刑法第223条「土下座しろ~」、名誉棄損罪:刑法第230条、侮辱罪:刑法第231条、威力業務妨害罪:刑法第234条「大声を出す」、恐喝罪:刑法第249条「お金は払わないぞ」、つきまとい行為:ストーカー規制法など罪状は数あれど、この程度では警察はすぐ来てくれない。これくらい病院自身で対応しなさいということ。そんな場合は、2段階警察呼び出し法を知っておこう(図3)。2回通告しても診療の邪魔をしてきて、ほかの患者の診療に支障が出る場合は、証拠を残しておけば、警察に助けを求められる。図3 2段階警察呼び出し法画像を拡大するPoint暴言・暴力、迷惑行為には早々に屈して、警察を呼ぼう身体拘束と薬物拘束を同時に行いましょう…はダメ!身体拘束や薬物拘束は、重大な人権侵害になる可能性があると、常に気を配ろう。自傷他害の恐れがある場合や見当識障害がありdecision-making capacityがない場合は、患者の安全のために拘束が許される。身体抑制に至った経緯と所見をしっかりカルテ記載すること。身体抑制で事足りる場合は、薬物抑制はしてはならない。したがって、身体抑制では患者の安全が保てないと判断した場合は、その理由と時間をカルテ記載し、段階的に薬物抑制が必要だった旨をカルテ記載すべし。Point身体抑制と薬物抑制は段階的に行い、人権意識をもって対処し、記録をしっかりすべしワンポイントレッスン言葉による鎮静言葉による鎮静は基本の基本。言葉による鎮静の10ヵ条を示す(表5)。表5 言葉による鎮静の10ヵ条画像を拡大する多くの場合、患者が自分の思いが医療者に通じないと思って騒いでいることが多い。言葉の鎮静は、相手の意見を十分聞くことが秘訣だ。平昌五輪のカーリング女子のように「そだねー」を連発し、相手の意見を承認するのがいい。医療者をなるべく集めておき、患者と医療者は2人きりにならないようにする。部屋のドアは開放し、出口側に自分を位置し、いざというときはさっと逃げられるようにする。身体抑制・薬物抑制身体抑制Tips、薬剤抑制Tipsを表6に示す。表6 身体抑制・薬物抑制Tips画像を拡大する必ず同時に行わないで、段階的に行い時間を記載する。身体抑制のみでは患者の安全が保てない場合に、薬物抑制を行ったというカルテ記載を必ず残すべし。薬物抑制はなるべく筋注がいい。静注だと点滴ライン確保時に、患者が暴れて針刺し事故になる危険がある。またジアゼパムの筋注は、残り少ない理性が吹っ飛んで余計暴れるので、しないほうがいい。勉強するための推奨文献New A, et al. Psy Clin North Am. 2017;40:397-410.Moukaddam N, et al. Psy Clin North Am. 2017;40:379-395.Moukaddam N, et al. Emerg Med Clin North Am. 2015;33:797-810.American Academy of Family Physician. Fam Pract Manag. 2019;26:32.参考1)Cannarella Lorenzetti R, et al. Am Fam Physician. 2013;87:419-425.2)Appelbaum PS. N Engl J Med. 2007;357:1834-1840.3)Malouf R, Brust JC. Ann Neurol. 1985;17:421-430.講師紹介

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ASH2024レポート

レポーター紹介はじめに2024年12月6日(金)~10日(火)の5日間にわたり、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴにて、第66回米国血液学会(ASH)年次総会が開催されました。ASHは、全世界から約3万人の血液学の専門家が集う世界最大の血液学会のイベントであり、毎年、12月の初旬に開催されます。私は、2019年にフロリダ州オーランドで開催された第61回ASHに参加して以来、5年ぶりの現地参加となりました(2020年からはCOVID-19の世界的流行のため、On lineでの開催となり、以降、現地開催とともにOn lineでの参加が可能となっている)。3年前の2022年から、米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された血液領域の注目演題のレポートをケアネットのDoctors'Picksのコーナーに寄稿していますが、ASCOにて口演に採択される血液がん関連の演題数は限られており、その中から10演題程度を選ぶ作業は比較的容易ですが、ASHの演題はすべて血液関連であり、口演の演題数だけでも1,000演題程度(ポスターは4,000演題程度)あり、その中から10演題選ぶのは至難の業でした。今回は、私の専門領域のリンパ系腫瘍(悪性リンパ腫と多発性骨髄腫)の演題から独断と偏見で10演題選びました。それでは、どのような演題が発表されたか各演題の概要にお目を通してください。なお、YouTubeチャンネルのEXPERT MINDでも、これらの演題を含む24演題の解説動画を2025年1月中旬から順次アップしておりますので、興味のある方は、そちらもご覧ください。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)Five-Year Analysis of the POLARIX Study: Prolonged Follow-up Confirms Positive Impact of Polatuzumab Vedotin Plus Rituximab, Cyclophosphamide, Doxorubicin, and Prednisone (Pola-R-CHP) on Outcomes. (Abstract #469)POLARIX試験(初発のびまん性大細胞型リンパ腫[DLBCL] に対し、Pola-R-CHP療法とR-CHOP療法を比較したグローバル試験であり、主要評価項目のPFSにおいて、Pola-R-CHPが有意に優った試験)の結果をもとに、2年前から日本でも保険診療でPola-R-CHPが初発DLBCL患者に対し使用可能となっている。今回、そのPOLARIX試験の5年のフォローアップデータが示された。主要評価項目のPFSは、2年時点のHR0.73(95%CI:0.57-0.95)が、5年時点でHR0.77(0.62~0.97)となり、Pola-R-CHPのR-CHOPに対する有意性が維持されていた。副次評価項目のOSについては、2年時点でHR:0.94(0.65-1.37)であったが、5年時点ではHR:0.85(0.63-1.15)とK-M曲線において少し差が開きかけているデータであった。安全性については、両治療にほぼ差を認めず、Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの新たな標準療法とみなせるデータが示されたと思われる。本試験はあと2年フォローが継続されるようで、OSにも有意差がみられることが期待される。A Randomized Phase 2, Investigator-Led Trial of Glofitamab-R-CHOP or Glofitamab-Polatuzumab Vedotin-R-CHP (COALITION) in Younger Patients with High Burden, High-Risk Large B-Cell Lymphoma Demonstrates Safety, Uncompromised Chemotherapy Intensity, a High Rate of Durable Remissions, and Unique FDG-PET Response Characteristics. (Abstract #582)IPIや組織型でハイリスクの初発DLBCL患者(IPI≧3あるいはNCCN-IPI≧4あるいはDH/TH)に対し、CD20/CD3二重抗体薬のglofitamab(Glofit)をPola-R-CHPとR-CHOPに併用した第2相ランダム化比較試験(COALITION試験)の結果が報告された。投与法は、Glofitを2サイクル目のDay8、Day15と3~6サイクル目のDay8に投与し、さらに地固めとしてGlofitのみを2サイクル追加した。各群40例ずつの患者がエントリーされた。安全性に関しては、ほぼ同等であり、CRSはどちらも約20%の患者でみられたがG1~2であり、ICANSはゼロであった。最良効果でのCMR率はどちらも98%であり、EOIでのcfDNAを用いたMRD陰性率は88%であった。2年時点のPFSは、どちらの群とも86%と、ハイリスクDLBCL患者に対する良好な治療成績が示された。以上の結果を基に、さらに症例数を増やした試験が実施される予定である。濾胞性リンパ腫(FL) Single-Agent Mosunetuzumab Produces High Complete Response Rates in Patients with Newly Diagnosed Follicular Lymphoma: Primary Analysis of the Mithic-FL1 Trial. (Abstract #340)CD20XCD3二重抗体薬のmosunetuzumab(Mosun)を単剤で初発の濾胞性リンパ腫(FL)患者に投与した第2相Mithic-FL1試験の初めての解析結果が報告された。Mosunは、再発・難治FLに対し、海外ではすでに承認され、日本でも近々承認される薬剤である。特徴は投与スケジュールであり、1サイクル目Day1に5mg、Day8、15に45mg、2サイクル目からはDay1に45mg投与し、8サイクル終了後(6ヵ月間)にCRであればそこで治療を終了し、PRであれば9サイクル追加(約1年間)する固定期間の治療ということである。80例がエントリーされた。効果判定可能な76例のうち、ORRは96%、CRは80%であり、1年のPFSは91%という優れた治療成績が示され、免疫化学療法の成績に劣らなかった。安全性ではCRSが54%にみられ、G2は3%のみであった。初発FLに対して二重抗体薬のみで免疫化学療法と同等の治療効果が得られる可能性が示されたことでFLの今後の治療はケモフリーの方向に進んで行くと思われた。Loncastuximab Tesirine with Rituximab Induces Robust and Durable Complete Metabolic Responses in High-Risk Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma.(Abstract #337)抗CD19抗体に抗がん剤のPBD dimer cytotoxinを結合した新規のADC薬のLoncastuximab Tesirine(Lonca)とリツキシマブによる再発・難治FLに対する臨床試験の成績である。Loncaはすでに海外で2ライン以上の治療歴のあるR/R DLBCLに対し単剤での使用が認められており、開発試験の成績では14例に対し、ORR 78.6%、CR 64.3%であった。投与スケジュールは1~2サイクル目にLonca+R、3・4サイクル目にLoncaのみを投与し、PR以上であれば、Lonca+Rを3サイクル追加し(維持療法1)、CRであればRのみ、PRであればLonca+Rを6サイクル追加する(維持療法2)。39例の患者がエントリーされ、POD24の症例は20例であり、3ライン以上の前治療歴のある症例は11例であった。最良治療効果のORR 97.4%、CR 76.9%であり、12ヵ月時点でのPFSは94.6%であった。有害事象もほとんどがG1~2であり、安全性も問題なかった。Lonca+RもR/R FLに対する新たな選択肢となりうる可能性が示された。マントル細胞リンパ腫(MCL)Ibrutinib-rituximab is superior to rituximab-chemotherapy in previously untreated older mantle cell lymphoma patients. Results from the international randomised controlled trial, Enrich.(Abstract #235)マントル細胞リンパ腫(MCL)は、難治性のリンパ腫であり、寛解・再燃を繰り返す。これまでは、初発MCLに対しリツキシマブと抗がん剤を併用する免疫化学療法(CIT)が標準療法として実施されてきたが、BTK阻害薬が登場し治療戦略が変わりつつある。本発表では、高齢の初発MCL患者に対し、BTK阻害薬のイブルチニブとリツキシマブを併用したIR療法と従来のCITを比較した第III相試験(Enrich試験)の結果が報告された。IR群:199例、免疫化学療法群(RBかR-CHOP)198例がエントリーされた。主要評価項目のPFS中央値は、IR群65.3ヵ月、免疫化学療法群42.4ヵ月であり、HRは0.69(0.52~0.90)と有意にIR療法が優れていた。ただし、免疫化学療法の治療法別では、R-CHOPとのHRは0.37(0.22-0.62)であったが、RBとのHRは0.91(0.66~1.25)と差がみられなかった。また、Blastoid-typeのMCLに対してはRBとのHRは2.33(0.83~6.52)とIRの治療成績が劣ることも示されている。IRはケモフリー治療として初発MCL患者に対する1つの選択肢となり得る。Lack of Benefit of Autologous Hematopoietic Cell Transplantation (auto-HCT) in Mantle Cell Lymphoma (MCL) Patients (pts) in First Complete Remission (CR) with Undetectable Minimal Residual Disease (uMRD): Initial Report from the ECOG-ACRIN EA4151 Phase 3 Randomized Trial.(Abstract #LBA6)若年の初発MCL患者に対しては、第一寛解期に自家移植併用大量化学療法(ASCT)が行われることが標準療法とされてきたが、リツキシマブやイブルチニブによる維持療法を追加することで、ASCTが不要となる可能性が示されてきている。本試験でも、寛解導入療法によって微小残存病変(MRD)が陰性となった患者において、リツキシマブによる3年間の維持療法を行うことで、ASCTをスキップ可能かどうかが前向きに検証された。寛解導入治療によって、MRD陰性となった患者をASCT+R-m(A)群とR-m単独(B)群にランダム化し、主要評価項目としてOSが評価された。A群257例、B群259例がエントリーされた。2.7年の追跡期間で、HR 0.984と両群にまったく差がみられず、MIPI-cでHighリスクの症例でも同様であった。このことから、寛解導入療法でMRD陰性となったMCL患者においてはASCTを行う必要はなくなったという結果が示された。これから長期のフォローが必要だが、MCLの治療においてもMRD陰性が治療目標になることが示された。慢性リンパ性白血病(CLL)Fixed-Duration Acalabrutinib Plus Venetoclax with or without Obinutuzumab Versus Chemoimmunotherapy for First-Line Treatment of Chronic Lymphocytic Leukemia: Interim Analysis of the Multicenter, Open-Label, Randomized, Phase 3 AMPLIFY Trial.(Abstract #1009)初発の慢性リンパ性白血病(CLL)に対し、BTK阻害薬アカラブルチニブ+BCL2阻害薬ベネトクラクス±抗CD20抗体薬オビヌツズマブ併用治療(AV±O)を固定期間(14ヵ月)で行う治療と従来の免疫化学療法(FCRかBRのどちらかを選択)を比較した第III相試験(AMPLIFY試験)の中間解析結果が報告された。エントリーされた患者は、AV群291例、AVO群286例、FCR群143例、BR群147例であった。主要評価項目はAV群と免疫化学療法群のPFSの比較であった。結果は、PFS中央値が、AV群未達、免疫化学療法群47.6ヵ月でHR 0.65(0.49~0.87)と有意にAV群が優った。AVO群の免疫化学療法群に対するHRは0.42(0.30~0.59)とさらに良好であり、MRD陰性化率もAVO>免疫化学療法であったが、本試験の実施中にCOVID-19のパンデミックがあり、AVO群でCOVID-19による死亡、治療中止が最も多かったということも示された。固定期間のAVあるいはAVO療法が免疫化学療法よりも有用であることが初めて示された。感染症の観点からはAV>AVOと思われるが、現在日本で使用可能なAOの固定期間治療の有用性は、これから検証する必要がある。多発性骨髄腫(MM)Sustained MRD Negativity for Three Years Can Guide Discontinuation of Lenalidomide Maintenance after ASCT in Multiple Myeloma: Results from a Prospective Cohort Study.(Abstract #361)初発多発性骨髄腫(MM)の治療では、自家移植併用大量化学療法(ASCT)を行い、レナリドミドにて維持療法を行うのが標準療法となっている。また、MRD陰性が持続することが長期のPFSを得るためには必要な条件となっているが、いつまでレナリドミドを投与すべきか、あるいはレナリドミドを中止できる条件などは明らかではない。本試験では、レナリドミドによる維持療法を3年間行い、その期間、MRD陰性を確認できた患者に対し、レナリドミドを一旦中止し、その後のMRDを6ヵ月ごとにフォローする前向き試験の結果が報告された。52例のMM患者がエントリーされた。中央値3年間のフォロー期間で、12例(23%)がMRD陰性⇒MRD陽性となり(中央値27.5ヵ月にて)レナリドミドが再開された。4例(7.6%)がPDとなった。1例がMM以外で死亡された。Treatment-free survivalは、93.9%(@1年)、91.6%(@2年)、75.8%(@3年)であった。また、7年のPFSは90.2%であった。以上より、ASCT後、レナリドミド維持療法による3年間のMRD陰性持続が治療中止の条件として妥当と考えられた。Phase 3 Randomized Study of Daratumumab Monotherapy Versus Active Monitoring in Patients with High-Risk Smoldering Multiple Myeloma: Primary Results of the Aquila Study.(Abstract #773)くすぶり型骨髄腫(MM)に対し、これまでは治療介入せずに注意深く経過観察を行うことが推奨されてきた。本試験(AQUILA試験)では、ハイリスクのくすぶり型MMに対し、ダラツムマブ皮下注単剤治療を導入する群と注意深く経過観察する群に分けて、SLiM-CRABの所見を認めるまでの期間(PFS)を比較している。Dara群:194例、観察群:196例がエントリーされた。有害事象のためDaraが中止となったのは13例(6.7%)であり、Daraが安全な治療薬であることが示された。追跡期間の中央値65.2ヵ月において、主要評価項目のPFSは、Dara群未達、観察群41.5ヵ月であり、HR 0.49(0.36~0.67)と有意にDara群でSLiM-CRABの所見に移行する患者が少なかった。また、骨髄腫の治療が開始されるまでの期間もDara群で有意に長く、さらに、骨髄腫の最初の治療の効果(PFS、OS)は観察群で有意に不良であることも示された。以上の結果から、ハイリスクのくすぶり型MMに対するDaraによる早期の治療介入が、今後の標準治療となることが示された。Previous HDM/ASCT adversely impacts PFS with BCMA-directed CAR-T cell therapy in multiple myeloma.(Abstract #79)多発性骨髄腫(MM)の初期治療は、ASCTを行うかどうかで治療方針が大きく分かれる。通常、65歳以下でPS良好の患者はASCTの適応となる。しかし、多くの患者ではやがて再発がみられ、次の治療が必要となる。再発MMに対しては、CAR-T細胞治療の有効性が示されている。本研究では、ASCT治療歴のあるMM患者に対するCAR-T治療の効果が検証されている。BCMA-CAR-T治療が行われたMM患者で、ASCT治療歴のある81例とASCT治療歴のない77例が比較された。寛解導入療法の治療効果は、両群で差を認めなかったが、CAR-T療法によるPFS中央値は9.9ヵ月(ASCT歴あり)と16.1ヵ月(ASCT歴なし)で、ASCT歴があるとCAR-T療法の効果が有意に悪いことが示された。ただし、OSへの影響は差がなかった。CAR-T療法の種類では、特に、Ide-celの効果が落ちることも示された。この結果のメカニズムの詳細は不明だが、CAR-T療法を行う可能性があるMM患者へのASCTの適応は慎重に考える必要があることが示唆された。おわりに今回、5年ぶりのASHへの現地参加であったが、これまでと変わらない参加者たちの熱気を感じ、on lineでの参加とは違う刺激を受けました。レポートしました10の演題は現地でも注目度が高く、会場が満席で、急遽、別室で中継される事態も発生していました。これらの発表を聞いていると、今後、リンパ系腫瘍の治療は、従来の化学療法剤(ケモ薬)を使用せず、分子標的薬と免疫療法(CAR-TやT細胞エンゲージャー)だけで治療する時代に変わっていくように感じました。ASHの参加費は年々高くなり、さらに円安の影響で学会参加費は、かなり高騰しています。また、アメリカは物価が高く、わずか5泊の滞在でしたが、ホテル代や食費もかなりの出費でした。今後、毎年、ASHに参加するのは難しいと思いましたが、できれば、数年後に、また、現地参加してみたいと思っています。

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敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA

 敗血症が疑われる重篤な入院成人患者において、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]とC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールによる抗菌薬投与期間の決定について、標準治療と比較してPCTガイド下では、安全に投与期間を短縮でき全死因死亡も有意に改善したが、CRPガイド下では投与期間について有意な差は示されず、全死因死亡は明らかな改善を確認することはできなかった。英国・マンチェスター大学のPaul Dark氏らADAPT-Sepsis Collaboratorsが、多施設共同介入隠蔽(intervention-concealed)無作為化試験「ADAPT-Sepsis試験」の結果を報告した。敗血症に対する抗菌薬投与の最適期間は不明確であり、投与中止の判断はバイオマーカー値に基づいて行われているが、その有効性および安全性の根拠は不明確なままであった。JAMA誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。総抗菌薬投与期間(有効性)と全死因死亡(安全性)を評価 ADAPT-Sepsis試験は2018年1月1日~2024年6月5日に、英国国民保健サービス(NHS)の集中治療室(ICU)41ヵ所で行われた。敗血症が疑われ24時間以内に抗菌薬の静脈内投与を開始した、少なくとも72時間の投与継続の可能性がある18歳以上の成人患者2,760例を対象に、PCTまたはCRPの評価に基づく決定が抗菌薬期間を安全に短縮可能かどうかについて検証した。 被験者は、daily PCTガイド下プロトコール群(918例)、daily CRPガイド下プロトコール群(924例)、標準治療群(918例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化から28日までの総抗菌薬投与期間(有効性)と全死因死亡(安全性)であった。副次アウトカムは、CCU(critical care unit)入室期間、入院期間データなどであった。90日全死因死亡も評価した。PCTガイド下の有効性、安全性を確認 無作為化された2,760例のベースライン特性は3群間で類似しており、平均年齢は60.2(SD 15.4)歳、男性60.3%であった。ほぼすべての患者が敗血症診断Sepsis-3基準を満たしていたと考えられ(SOFAスコア:7[四分位範囲:5~9])、敗血症患者は1,397例(50.8%)、敗血症性ショック患者は1,352例(49.2%)であった。 無作為化から28日までの総抗菌薬投与期間は、daily PCTガイド下プロトコール群が標準治療群と比較して有意に短縮した(平均期間:9.8日[SD 7.2]vs.10.7日[7.6]、平均群間差:0.88[95%信頼区間[CI]:0.19~1.58]、p=0.01)。一方、daily CRPガイド下プロトコール群は標準治療群と比較して、総抗菌薬投与期間について差はみられなかった(10.6日[SD 7.7]vs.10.7日[7.6]、平均群間差:0.09[95%CI:-0.60~0.79]、p=0.79)。 無作為化から28日までの全死因死亡について、daily PCTガイド下プロトコール群(全死因死亡率20.9%[184/879例])の標準治療群(19.4%[170/878例])に対する非劣性(非劣性マージンは5.4%)が示された(絶対群間差:1.57[95%CI:-2.18~5.32]、p=0.02)。daily CRPガイド下プロトコール群(全死因死亡率21.1%[184/874例])の標準治療群に対する非劣性は確証が得られなかった(絶対群間差:1.69[95%CI:-2.07~5.45]、p=0.03)。

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再利用ペースメーカーは安全で再利用可能

 再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表された。 Crawford氏らは、7カ国の298人の成人を対象にしたランダム化比較試験で、再利用ペースメーカーの機能と安全性を、新しいペースメーカーと比較した。対象者は149人ずつ、新しいペースメーカーを植え込む群(新規ペースメーカー群)と再利用ペースメーカーを植え込む群(再利用ペースメーカー群)にランダムに割り付けられ、植え込みから2週間後と最長90日後に転帰の評価が行われた。 その結果、植え込み部位での感染症が生じ、ペースメーカーの抜去が必要になった患者は5人であり、そのうちの3人は新規ペースメーカー群、2人は再利用ペースメーカー群の患者であったことが明らかになった。また、新規ペースメーカー群の1人に、抗菌薬で対応可能な表在性皮膚感染症が発生した。ペースメーカーの植え込み後にリードの移動または交換手術を必要とした患者は、新規ペースメーカー群で5人、再利用ペースメーカー群で6人だった。ペースメーカーの故障は、いずれの群でも報告されなかった。再利用ペースメーカー群では死亡が3件発生したが、ペースメーカーの植え込みとは無関係だった。新規ペースメーカー群に死亡は発生しなかった。 こうした結果を受けてCrawford氏は、「これらの肯定的な初期の結果により、ペースメーカーの大規模な寄付とその再利用により世界中の人々の命を救うという現実に一歩近付いた」とAHAのニュースリリースの中で述べている。 研究者らは、「今回の3カ月間の結果は希望が持てるものだった。6カ月後と12カ月後の転帰を調査することで、電池の寿命を除けば、再利用ペースメーカーが新品同様に機能するかどうかが明らかになるだろう」と述べている。 米国では、リサイクルされたペースメーカーを植え込むことは違法だが、米食品医薬品局(FDA)は、それを海外に送ることは許可している。2010年、MHYHプログラムは、命を救うための代替治療法がない心臓病患者に対する人道的な使用のために、再利用ペースメーカーの海外への送付を開始した。リサイクルされるペースメーカーは、死亡した患者や、より高度なデバイスへのアップグレードを必要とする患者が使っていたものである。同プログラムでは、電池の寿命が4年以上のペースメーカーが、ミシガン州の研究所で再処理され、コネチカット州で再滅菌される。多くは墓地や火葬場業界にサービスを提供するリサイクル会社が回収したもので、全国の葬儀場からも寄付が寄せられているという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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完璧なHIV感染予防法にアクセスできるのは?(解説:岡慎一氏)

 年2回の注射で完璧にHIV感染を予防できることは、PURPOSE 1試験にて、最も予防が難しいといわれていたアフリカ女性ですでに証明されている。今回の試験は、PURPOSE 2試験と呼ばれ、男性同性愛者やトランスジェンダーなどその他の感染リスクの高い人すべてを組み入れたHIV感染予防の研究である。結果は、PURPOSE 1試験同様、ほぼ完璧に予防できるという事が示された。 これらの試験で用いられた画期的新薬は、レナカパビルという新しい機序の薬剤であり、多剤耐性ウイルスを持つHIV患者の治療薬としては、すでに認可されている。日本で、この薬剤を治療に用いた場合の医療費は、年間約700万円である。 この薬剤を開発した会社は、6つのGeneric Companyに低・低中所得国の120ヵ国にGeneric薬の供給を認め、18のHIV感染率の高い国に対して、Generic薬が供給されるまでの間の薬剤の提供を約束した。しかし、欧米の国々では、正規品での薬剤使用となるため、この高価な予防薬にアクセスできる人は、かなり限られると予想される。有効な薬剤に対するアクセスの不平等は、1996年強力な多剤併用療法が可能となった時に、南北格差として問題となった。この解決のため、先進国の製薬会社は、途上国でのGeneric薬の使用を認めるようになった。 今回の処置もその一環ともいえる。しかし、今回は、先進国が有効な薬剤にアクセスできないという逆の不平等が問題となっている。この問題がどのように解決されていくのか、日本の現状とも照らし注視していきたい。

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第222回 インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省

<先週の動き>1.インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省2.電子処方箋で誤表示トラブル、24日まで発行停止で一斉点検/厚労省3.帯状疱疹ワクチン、2025年度から65歳定期接種へ2025年4月開始/厚労省4.医師偏在対策で地方勤務医に手当増額へ、2026年度から/厚労省5.進む医療の「在宅シフト」在宅患者は過去最多、入院は減少/厚労省6.高額療養費制度の見直し、来年夏から70歳以上の外来2千円増/厚労省1.インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省インフルエンザの流行が全国的に拡大している。厚生労働省によると、2024年12月9~15日までの1週間に、全国約5,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は9万4,259人、1医療機関当たり19.06人となり、前週比110.9%増と8週連続で増加。40都道府県で注意報レベルの10人を超え、大分県(37.22人)、福岡県(35.40人)では警報レベルの30人を超えた。全国の推計患者数は約71万8,000人に上る。札幌市ではインフルエンザ警報が発令され、小中学校で学級閉鎖などの措置が相次いでいる。一方、新型コロナウイルスの感染者数も3週連続で増加。同期間の全国の新規感染者数は19,233人、1医療機関当たり3.89人(前週比1.27倍)で、44都道府県で増加。北海道(11.93人)、岩手県(10.51人)、秋田県(9.29人)で多く、沖縄県(1.09人)、福井県(1.49人)、鹿児島県(1.51人)で少ない。新規入院患者数も1,980人(前週比1.21倍)と増加傾向にある。北海道では新型コロナウイルスの患者が2024年度最多を更新し、インフルエンザとの同時流行が懸念されている。さらに、マイコプラズマ肺炎や手足口病の報告も過去5年間に比べて多く、医療現場では、発熱外来がひっ迫し、受診を断らざるを得ない状況も発生している。こうした状況を受け、厚労省は、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの対症療法薬(解熱鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬、トラネキサム酸)の需給が逼迫する恐れがあるとして、医療機関や薬局に対し、過剰な発注を控え、必要最小限の処方・調剤を行うよう要請した。具体的には、医療機関には治療初期からの長期処方を控え、必要最小日数での処方や残薬の活用を、薬局には地域での連携による調剤体制の確保や代替薬の使用検討を求めている。厚労省は対症療法薬の増産を製薬会社に依頼しているが、増産分の出荷前に感染症が急激に流行すれば、需給が逼迫する可能性もある。現時点では、在庫放出などで昨年同期の1.2倍の出荷量の調整が可能だが、今後の感染状況によっては不足する懸念もあるため、安定供給されるまでは過剰発注を控えるよう呼びかけている。専門家は、年末年始は人の移動や接触機会が増え、感染がさらに広がる可能性があると指摘。とくに今年は新型コロナ流行でインフルエンザへの免疫がない人が多いと考えられ、流行のピークは来年1月頃と予測されている。手洗いや咳エチケット、マスク着用、ワクチン接種など、基本的な感染対策の徹底が重要となる。また、小児科ではインフルエンザ以外にも感染性胃腸炎や溶連菌感染症なども増えており、注意が必要だ。参考1)インフルの定点報告数が注意報レベルに 感染者数は9万人超え(CB news)2)コロナやインフルの対症療法薬、過剰な発注抑制を 需給逼迫の恐れ 厚労省が呼び掛け(同)3)コロナ感染者3週連続増 前週比1・27倍、厚労省発表(東京新聞)4)インフルエンザ患者数 前週の2倍以上 40都道府県が“注意報”(NHK)5)新型コロナ患者数 3週連続増加 “冬休み 感染広がる可能性も”(同)6)今般の感染状況を踏まえた感染症対症療法薬の安定供給について(厚労省)2.電子処方箋で誤表示トラブル、24日まで発行停止で一斉点検/厚労省厚生労働省は、マイナ保険証を活用した「電子処方箋」システムにおいて、医師の処方と異なる医薬品が薬局側のシステムに表示されるトラブルが7件報告されたことを受け、12月20~24日までの5日間、電子処方箋の発行を停止し、全国の医療機関・薬局に対し一斉点検を実施する。電子処方箋は、処方箋情報を電子化し、複数の医療機関や薬局がオンラインで共有できるサービス。2023年1月から運用が開始され、重複投薬や飲み合わせの悪い薬の処方を防ぎ、薬局での待ち時間短縮などのメリットがあるとされる。一方で、2024年11月時点で導入率は病院で3.0%、医科診療所で7.6%、薬局で57.1%に止まっている。今回報告された7件のトラブルは、いずれも医療機関や薬局におけるシステムの設定ミスが原因で、医師が処方した薬とは別の薬が薬局の画面に表示されていた。薬剤師らが気付いたため、誤った薬が患者に渡ることはなかったが、健康被害が発生する可能性もあったと福岡 資麿厚生労働相は指摘している。一斉点検期間中、医療機関は紙の処方箋で対応し、点検が完了した医療機関から順次、電子処方箋の発行を再開する。厚労省は、点検が完了した医療機関をホームページで公表する予定。また、医療機関に対し、医薬品マスタの設定確認や、特殊な事例を除きダミーコードを設定しないよう呼びかけているほか、薬局に対しては、調剤時に必ず薬剤名を確認するよう求めている。厚労省は、電子処方箋のベンダーに対しても提供するコードの使用について報告を求め、その結果を公表する。2024年11月時点で、電子処方箋を発行している医療機関は2,539施設、同月の推定処方箋枚数約7,500万枚のうち、電子処方箋は約11万枚(約0.15%)だった。政府は2024年度中に、おおむねすべての医療機関と薬局に電子処方箋を導入する目標を立てていたが、今回のトラブルを受け、目標達成に影響が出る可能性もある。厚労省は、国民に必要な医薬品を確実に届けられるよう、システムの安全性確保に万全を期すとしている。参考1)電子処方箋システム一斉点検の実施について(厚労省)2)電子処方箋の導入薬局で「処方と異なる医薬品」が表示されるトラブル、福岡厚労相「健康被害が発生しうる」(読売新聞)3)マイナ保険証活用「電子処方箋」でトラブル 20日から発行停止(NHK)4)電子処方箋システム、一斉点検へ 薬局で誤った薬の表示トラブル7件(朝日新聞)3.帯状疱疹ワクチン、2025年度から65歳定期接種へ2025年4月開始/厚労省厚生労働省は、2025年4月から帯状疱疹ワクチンについて原則65歳を対象とした定期接種とする方針を決定した。高齢者に多い帯状疱疹の予防と重症化を防ぐことが目的で、接種費用は公費で補助される。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染で免疫が低下した60~64歳も対象となる。帯状疱疹は、水疱瘡と同じウイルスが原因で、加齢や疲労などによる免疫力の低下で発症する。50歳以上でかかりやすく、患者は70代が最も多い。皮膚症状が治まった後も、神経痛が数年間残るケースもあり、80歳までに3人に1人が発症するという研究データもある。現在、50歳以上を対象に「生ワクチン」と「組換えワクチン」の接種が行われているが、任意接種のため自己負担が必要(約8,000~44,000円)。定期接種化により、接種費用は国や自治体からの補助が見込まれ、自己負担額は自治体によって異なる見通しだ。開始時期は2025年4月(予定)、対象は原則65歳とするが、HIV感染で免疫が低下した60~64歳も対象とされるほか、経過措置として2025年4月時点で65歳を超えている人に対し、5年間の経過措置を設け、70、75、80、85、90、95、100歳で接種機会を提供するほか、100歳以上の人は定期接種初年度(2025年度)に限り全員を対象とする。帯状疱疹は、高齢になるほど発症しやすく、重症化しやすい。また、長年にわたって生活の質を低下させることもあるため、定期接種化により、高齢者の健康維持に寄与することが期待されている。一方で、定期接種化前に接種希望者が増え、ワクチンの供給が不足する可能性も指摘されている。厚労省は、ワクチンの安定供給に向けて必要な対応を検討するとしている。今後は、政令の改正手続きを進め、準備が整った自治体から順次、定期接種が開始される予定。参考1)帯状疱疹ワクチンについて(厚労省)2)帯状ほう疹ワクチン 来年度定期接種へ 65歳になった高齢者など(NHK)3)帯状疱疹ワクチン、65歳対象の「定期接種」に…66歳以上には経過措置(読売新聞)4)帯状疱疹ワクチン、65歳を対象に25年4月から定期接種へ 5年の経過措置を設け、70歳なども対象に 厚科審(CB news)4.医師偏在対策で地方勤務医に手当増額へ、2026年度から/厚労省厚生労働省は12月19日に開催したの社会保障審議会医療保険部会で、医師偏在対策を検討した。医師不足が深刻な地域で働く医師を増やすため、2026年度を目途に新たな支援策の導入を図る見込み。具体的には、医師少数区域に「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」を指定し、同区域で勤務または派遣される医師の勤務手当を増額する。この財源には医療保険の保険料を充てることが了承された。手当増額の仕組みは、社会保険診療報酬支払基金が保険者から徴収した保険料を財源とし、都道府県が実施主体となる。費用総額は、国が人口、可住地面積、医師の高齢化率、医師偏在指標などを基に設定し、各都道府県へ按分・配分する予定。この措置に対し、健康保険組合連合会(健保連)など保険者側からは、保険料負担増への懸念や費用対効果への疑問が示された。これを受け厚労省は、対策の進捗や効果を検証する仕組みを整備する方針を示した。国、都道府県、健保連などが参加する会議体を想定し、効果や現役世代の保険料負担への影響を検証する。さらに、保険医療機関に「管理者」の役職を新設し、医師の場合、臨床研修後2年、保険医療機関での勤務3年以上を要件とする。これにより、適切な管理能力を持つ医師を管理者に据え、保険医療の質・効率性向上を図るとともに、美容医療などへの医師流出を抑える狙いがある。今回の措置は医師偏在解消に向けた一歩となる。しかし、保険者の理解を得て実効性を高めるためには、費用総額の設定、効果検証の具体化、保険料負担増を抑えるための診療報酬抑制策など、今後の議論が重要となる。参考1)第190回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)医師の手当て増額支援、保険者から財源徴収 偏在対策 医療保険部会で了承(CB news)3)医師偏在対策の効果、検証の仕組み整備へ 厚労省(日経新聞)4)都心に集中する医師 「前例なき」参入規制検討も、踏み込み不足?(毎日新聞)5.進む医療の「在宅シフト」在宅患者は過去最多、入院は減少/厚労省厚生労働省が2024年12月20日に発表した2023年「患者調査」の結果によると、在宅医療を受けた外来患者数が1日当たり推計23万9千人と、1996年の調査開始以来、過去最多を記録したことが明らかになった。前回調査(2020年)から6万5,400人増加しており、在宅医療の需要が高まっていることがうかがえた。一方、同年10月の病院・一般診療所を合わせた入院患者数は1日当たり推計117万5,300人で、現在の調査方法となった1984年以降で過去最低を更新した。前回調査から3万6千人減少しており、入院から在宅への移行が進んでいることが示唆された。患者調査は3年ごとに実施され、今回は全国の病院や診療所、歯科診療所計約1万3千施設を対象に、2023年の特定の1日における入院・外来患者数を調査し、推計した。参考1)令和5年(2023)患者調査の概況(厚労省)2)入院患者数、過去最低を更新 23年患者調査(MEDIFAX)3)在宅医療患者1日23万人で最多 23年調査、入院は最少更新(共同通信)6.高額療養費制度の見直し、来年夏から70歳以上の外来2千円増/厚労省厚生労働省は、医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」について、2025年夏から段階的に見直す方針を固めた。所得区分ごとに自己負担の上限額を2.7~15%引き上げる。とくに高所得者層の引き上げ幅を大きくし、年収約1,160万円以上の区分では月約3万8,000円増の約29万円となる。一方、住民税非課税世帯などの低所得者層に対しては、引き上げ幅を抑えたり、段階的な引き上げを実施することで、急激な負担増による受診控えを防ぐ狙いがある。今回の見直しは、高額な医療費負担を軽減するセーフティーネットである同制度の持続可能性を確保しつつ、子供関連政策の財源確保に向けた医療費抑制を図る目的がある。また、保険給付の抑制により、現役世代を中心に保険料負担の軽減効果も見込まれる。具体的には、2025年8月に70歳未満は、所得区分ごとに自己負担限度額を2.7~15%引き上げ。一般的な収入層(主に年金収入約200万円以下、窓口負担1割)は月2,000円増の2万円。それ以上の所得水準の場合は特例対象外。また、70歳以上で年収約370万円を下回る人が外来受診にかかる費用を一定額に抑える「外来特例」の自己負担限度額も月額2,000円引き上げる方針であり、受診抑制につながる可能性も指摘されているが、詳細については今月末までに決定される見込み。さらに、2026年8月以降に、所得区分を3つに再編して、段階的に引き上げる予定。高額療養費制度の見直しは、国民皆保険制度を守るために、持続可能性と医療費抑制のバランスを取るために行われる。今後、社会保障審議会医療保険部会で具体的な制度設計をめぐる議論を深め、今月末までに最終決定される見通し。参考1)医療保険制度改革について(厚労省)2)高額療養費の外来特例 上限を2千~1万円引き上げ 厚労省最終調整(朝日新聞)3)高額療養費上限引き上げ 激変緩和 最終形は27年8月、3段階検討(同)4)高額療養費の負担上限、高所得で月3.8万円上げ 厚労省(日経新聞)

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帯状疱疹ワクチン、65歳を対象に定期接種化を了承/厚労省

 12月18日に開催された第65回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、帯状疱疹を予防接種法のB類疾病に位置付けるとし、帯状疱疹ワクチンの定期接種化が了承された。 2025年4月1日より、原則65歳を対象に定期接種が開始される見込み。高齢者肺炎球菌ワクチンと同様に、5年間の経過措置として、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳時に接種する機会を設ける方針だ。また、60歳以上65歳未満の者であっても、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害を有する者として厚生労働省令で定める者も対象となる。帯状疱疹にかかったことのある者についても定期接種の対象となる。 使用するワクチンは、乾燥弱毒生水痘ワクチン(商品名:ビケン)、または乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス筋注用)となる。 接種方法については以下のとおり。【乾燥弱毒生水痘ワクチンを用いる場合】 0.5mLを1回皮下に注射する。【乾燥組換え帯状疱疹ワクチンを用いる場合】 1回0.5mLを2ヵ月以上7ヵ月未満の間隔を置いて2回筋肉内に接種する。ただし、疾病または治療により免疫不全、免疫機能が低下している、もしくは低下する可能性がある者については、医師が早期の接種が必要と判断した場合、1回0.5mLを1ヵ月以上の間隔を置いて2回筋肉内に接種する。 ※接種方法の注意点として、帯状疱疹ワクチンの交互接種は認められない。同時接種については、医師がとくに必要と認めた場合に行うことができる。乾燥弱毒生水痘ワクチンとそれ以外の注射生ワクチンの接種間隔は27日の間隔を置くこととする。 定期接種化に関して、使用ワクチンの1つに定められた「シングリックス筋注用」を生産するグラクソ・スミスクラインは、同日にステートメントを発表した。 ステートメントによると、日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいるとされ、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症が増え始め、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するという。また、高血圧・糖尿病・リウマチ・腎不全といった基礎疾患がある人は、帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告もあるという。今回の了承について、「さらに多くの人々が帯状疱疹のリスクから守られることに寄与する大きな一歩」としてワクチンの供給に貢献することを示した。

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温水洗浄便座を使用する?しない?その理由は/医師1,000人アンケート

 友人同士でも腹を割って話しにくいであろう話題の1つがトイレや排泄に関することではないだろうか。今回、CareNet.comでは医師のトイレ事情として、温水洗浄便座の使用有無や温水洗浄便座が影響する疾患の認知度などを探るべく、『温水洗浄便座の使用について』と題し、会員医師1,021人にアンケートを実施した。その結果、医師の温水洗浄便座の使用率は約8割で、年齢を重ねるほど使用率が高い傾向にあることが明らかになった。6割が自宅・外出先を問わず使用 まず、使用場所について聞いたところ、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」は61%、「自宅では使用するが外出先では使用しない」が17%、「自宅では使用しないが外出先では使用する」が1%、「どちらも使用しない」が20%であった。また、年代別にみると50~60代の医師の使用率が高く、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」との回答が7割超で、「自宅では使用するが外出先では使用しない」まで合わせると8割強にまでのぼり、温水洗浄便座が生活になくてはならないものになっているようだ。実際に温水洗浄便座の使用に対して以下のようなコメントが寄せられていた。・排便後の清拭習慣はなかなか変えられないため(50代、内科)・排便後の局所の清潔が保たれる。排便後の掻痒がない(50代、外科/乳腺外科)・排便の調子が使うほうが良い(50代、内科)・清潔保持のため(60代、循環器内科/心臓血管外科)・清潔な便座であれば外出時でも使用します(60代、内科)・森林資源の保全に間接的に寄与するかもしれない(60代、神経内科)・痔があるから(60代、消化器科)・外出先ではノズル洗浄をしてから使用する。ノロウイルス感染を危惧はするが、トイレットペーパーの使用回数を減らしたいため(60代、整形外科) 一方で、使用しないと回答した医師の意見には以下のようなものが挙げられた。・尿路感染症などが心配(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・肛門環境が悪くなるから(40代、内科)・便がお尻に飛び散る気がして心配になるから(40代、腎臓内科)・清潔ではないから(50代、消化器科)・膣炎や膀胱炎のリスクがある(60代、内科)使用者は患者にも勧める?温水洗浄便座が便失禁につながる報告も 温水洗浄便座の使用自体は肛門疾患、とくに裂肛を有する場合に勧められる1)。では実際に、痔の症状を訴える患者に対して勧めるかを聞いたところ、「毎回勧めている」は12%、「症状(裂肛など)や併存疾患を考慮して勧めている」は34%と、約半数の医師が患者に勧めていた。興味深いことに、50代以上の医師で患者に勧めている傾向が大きいことから、自身が利用しその有用性を認めた上で患者に話している可能性が考えられる。 一方で、温水洗浄便座の使用によって引き起こされる疾患も存在し、その1つが便失禁である2,3)。これについての認知度を調査したところ、「知っている」と回答したのは15%で、「聞いたことはあるが詳細は知らない」まで含めると約半数の医師が便失禁リスクになることを認識していた。これに関して、消化器科医の回答割合も同等であり、専門・非専門を問わず詳細まで知っている医師は少ないようだ。なお、温水洗浄便座の頻回使用や長時間使用が肛門のかゆみを引き起こす『温水洗浄便座症候群』の原因にもなることから、TOTO社はウォシュレットの使用説明書4)において「約10~20秒を目安にご使用ください」と注意喚起している。 このほか、温水洗浄便座使用に対する患者へのアドバイス経験の有無、患者や自身のトイレに関するエピソードのアンケート結果を公開している。アンケートの詳細は以下にて公開中『温水洗浄便座、医師の利用率は?』

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