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軽~中等症コロナ治療薬「ゼビュディ」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は9月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、「ゼビュディ点滴静注液 500mg」(一般名:ソトロビマブ[遺伝子組換え])の国内における製造販売を承認した。酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いCOVID-19患者が投与対象となる。海外第II/III相臨床試験(COMET-ICE試験)では、ゼビュディの単回投与で、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者の入院または死亡リスクが有意に低下することが示されており、グラクソ・スミスクライン(GSK)が9月6日、特例承認の適用を求め申請していた。国内におけるCOVID-19治療薬としては、レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、ロナプリーブに続く5例目となる。ゼビュディは投与29日目までに24時間を超える入院または死亡を79%低減 ゼビュディは、GSKと米国・Vir Biotechnologyが研究開発を行う抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体。COMET-ICE試験に参加した1,057例の有効性に関する主要解析において、ゼビュディは投与29日目までに24時間を超える入院または死亡がプラセボと比べ79%低減し(補正相対リスク減少)(p<0.001)、主要評価項目を達成したことが報告されている。いずれかの投与群で1%以上の被験者に認められた有害事象の中で、プラセボ群よりもソトロビマブ投与群で発現率が高いものは下痢(ソトロビマブ群:2%[8例] vs.プラセボ群:1%未満[4例])で、いずれもグレード1(軽度)または2(中等度)だった。 また、in vitro試験のデータでは、デルタ株、ラムダ株を含む懸念される変異株/注目すべき変異株に対し、活性を維持することが示されているが、臨床に及ぼす影響はまだ不明で、データ収集と解析が続いている。 ゼビュディの国内供給については、当面の間は厚労省が購入し、GSKに流通を委託する。医療機関には、GSKの登録センターに登録する方法でゼビュディが配分される見通し。<ゼビュディ製品概要>販売名:ゼビュディ点滴静注液 500mg一般名:ソトロビマブ(遺伝子組換え)効能又は効果: SARS-CoV-2 による感染症用法及び用量:通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ソトロビマブ(遺伝子組換え)として500mgを単回点滴静注する。

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薬局倒産件数が過去最多!“薬局余り”が現実に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第76回

新型コロナウイルス感染症による“受診控え”の影響が、薬局の「倒産」という数字で表れてきました。2021年1-8月の「調剤薬局」の倒産は22件(前年同期比83.3%増)に達し、2004年の調査開始以来、年間最多だった2017年(17件)を大幅に上回った。22件のうち、コロナ関連倒産は4件(構成比18.1%)で、今後さらにコロナ関連倒産が増加しそうだ。(東京商工リサーチ 2021年9月7日付)倒産とは、ついにそこまで来てしまったか、という感じです。この調査結果の「調剤薬局」とは、いわゆる調剤を主に行う薬局のことで、医薬品小売業やドラッグストアは除かれています。コロナ禍でマスクや消毒液などの購買が伸びたこともあってか、調剤薬局を除く医薬品小売業やドラッグストアの倒産件数はそれぞれ前年同期を下回っていましたので、調剤の売り上げおよび利益の確保が難しくなったということでしょう。これは8月までの結果ですので、残念ながらその後も倒産件数はまだ伸び続けると思われます。では、昨年の調剤医療費はどのくらい変化したのでしょうか。8月末に厚生労働省が2020年度の調剤医療費を発表していますが、調剤医療費は7兆4,987億円(前年度比2.6%減)でした。その内訳は技術料が1兆8,779億円(同5.0%減)、薬剤料が5兆6,058億円(同1.8%減)でした。また、処方箋単価は9,849円(同7.2%増)、処方箋枚数は7億6,135万枚(同9.2%減)でした。ものすごく単純に考えると、調剤薬局の売り上げは単価×処方箋枚数ですから、単価の増加が処方箋枚数の減少をカバーしきれなかったのでしょう。また、調剤という業務の実態を考えると技術料はほぼそのまま利益と考えられますが、その技術料が5%減ったというのも経営的に大打撃です。この20年ほどは、薬剤師が余る、調剤だけを行う薬局が多すぎる、と言われてきましたが、ついに現実になったのだなと思います。受診控えや感染対策による感染症の減少によって患者数が減ったままという流れはまだ続くと予想できます。では、売り上げが好調なマスクや消毒液を売ればいいのかというとそんなに簡単な話ではなく、在宅や地域活動に力を入れて技術料や加算を算定していく、専門薬剤師などの資格を取得して高度医療に挑戦する、もしくはOTC医薬品などを知識も交えて販売できるようにするなど、薬局の大きな方向性を決めなくてはいけないのだと思います。数年後には、処方箋を待っているだけの薬局はなくなっているかもしれません。参考1)「調剤薬局」の倒産が過去最多、コロナで受診控えが響く(2021年1-8月)|東京商工リサーチ(tsr-net.co.jp)2)調剤医療費(電算処理分)の動向~令和2年度版~|厚生労働省(mhlw.go.jp)

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第79回 ACE2をつてに細胞感染しうるコウモリコロナウイルスを発見

フランス・パリのパスツール研究所のウイルス学者Marc Eloit氏が同国と東南アジアの同僚と協力してコウモリ645匹を調べた研究1,2)の甲斐あって新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源探しが大いに前進しました。SARS-CoV-2が見つかってからこれまでにその起源発見を目指して種々の動物が調べられました。昨年にNature誌に掲載された報告によると10年近く前の2013年に中国の雲南省のコウモリから見つかったコロナウイルスRaTG13はゲノム配列がSARS-CoV-2と96.2%同一であり3)、Eloit氏らの今回の研究が報告されるまではコウモリコロナウイルスの中でSARS-CoV-2に最も近縁でした。よく知られているようにヒト細胞のACE2(hACE2)がSARS-CoV-2の受容体であり、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合領域(RBD)の17アミノ酸がACE2と相互作用します。RaTG13のゲノム配列全般はSARS-CoV-2と非常に似通っていますがRaTG13のRBDのそれら17アミノ酸のうちSARS-CoV-2と一致するのはわずか11のみであり、hACE2への親和性はごく僅かです2,4)。新たな研究でEloit氏らはインドシナ半島のラオス北部の洞窟のコウモリ645匹の血液、唾液、糞/肛門、尿を調べ、RaTG13を含む今まで知られているどのウイルスよりもSARS-CoV-2に似ていてSARS-CoV-2と同様にhACE2を介してヒト細胞に侵入しうるコロナウイルス3種を発見しました2)。それらウイルス3種のRBDはRaTG13とは対照的にSARS-CoV-2のそれとアミノ酸配列が1つか2つしか違わず、流行しはじめの頃のSARS-CoV-2株と同様に手際よくhACE2に結合しうることが示されました。また、3種のうちの1つ・BANAL-236のスパイクタンパク質を導入した代理ウイルス(pseudovirus)はhACE2発現ヒト細胞に侵入することができ、その侵入にはhACE2を必要としました。代理ウイルスではなくBANAL-236を細胞培養で増やすことはすでに実現しており、これからはBANAL-236そのものの病原性が動物実験で検討される予定です1)。SARS-CoV-2が研究所の人為的産物ではないかと疑う向きがありますが、hACE2を介してヒト細胞に侵入しうるコロナウイルスがコウモリから今回同定されたことはSARS-CoV-2の自然発生をいっそう物語っています。しかし、まだわからないこともあります。たとえば今回ラオスで見つかったコロナウイルスのスパイクタンパク質にはヒト細胞のプロテアーゼ・フリン(furin)による切断部位(フリン切断部位)がありません。フリン切断部位はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質には存在し、ヒト細胞への侵入をより容易にすることが知られています。フリン切断部位は調べたコウモリの数が不十分で見つからなかったのかもしれませんし、コウモリから別の動物への過渡期、あるいは人間界を巡りはじめて間もない頃にウイルスに備わった可能性もあります2)。東南アジアのコウモリやその他の野生動物のさらなる調査が多数進行中であり1)、それらの取り組みでSARS-CoV-2の起源の疑問がさらに解消していくでしょう。参考1)Closest known relatives of virus behind COVID-19 found in Laos / Nature2)Coronaviruses with a SARS-CoV-2-like receptor-binding domain allowing ACE2-mediated entry into human cells isolated from bats of Indochinese peninsula. Research Square. 2021 Sep 16.3)Zhou P,et al. Nature. 2020 Mar;579:270-273.4)Liu K,et al. Cell 2021 Jun 24;184:3438-3451.

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いよいよ総裁選!医師が希望する次期総裁は?…会員1,000人アンケート

 9月29日、自民党総裁選の開票が行われる。出馬する4氏のうち次期総裁になって欲しい人物や、次期総裁に期待する政策について、会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年9月22日実施)。 「出馬を表明した4氏のうち、次の総裁になってほしいのは誰ですか?」との問いには河野 太郎氏(行政改革担当大臣)が54%の支持を集めトップで、続く21%の高市 早苗氏(前総務相)に倍以上の差をつけた。岸田 文雄氏(前政務調査会長)は高市氏と僅差の20%、野田 聖子氏(幹事長代行)は5%と伸び悩んだ。 回答者の勤務先別で見ると、20床以上の病院に勤務する層では20床未満の層よりも河野氏の支持率が高く、高市・岸田両氏の支持率が低かった。年代別で見ると20~30代では河野氏の支持率が60%と高い一方、60代以上は同53%となり、河野氏の代わりに岸田氏の支持率が上がっていた。新型コロナ対策よりも経済政策を優先 「次期総裁について、最も注力すべきとお考えの政策は何ですか?」との問いでは、「経済・財政政策」が43%と最多で、「新型コロナ対策」の33%を10%上回る結果となり、新規感染者数に減少傾向が続き、緊急事態宣言の解除が見込まれる状況において、経済再生への期待が強い状況を反映する結果となった。 「最も注力すべき政策」では、支持する候補別に傾向の違いも顕著となった。河野氏の支持者は「新型コロナ対策」が42%と最多だが、高市氏の支持者は「経済・財政政策」が42%で最多、「外交・安全保障政策」が38%でこれに続き、「新型コロナ対策」は12%に留まった。岸田氏は「経済・財政政策」が52%と4候補の中で唯一過半を占め、野田氏は「新型コロナ対策」が36%で最多ながら、他候補では1%未満の「ジェンダーや多様性」が4%となるなど、強調する政策の違いが現れた。 「新型コロナウイルス感染症対策の中で、最も注力すべきとお考えの政策は何ですか?」との問いには「医療体制の整備、病床確保」「ワクチン・治療薬の開発・確保」がそれぞれ約40%という結果となった。 自由回答には「今回の総裁選は面白い」「初の女性宰相誕生に期待」とのコメントが集まり、久しぶりに白熱する総裁選に注目する声が集まった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『いよいよ総裁選!医師が希望する次期総裁は?…会員1,000人アンケート』

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第71回 3回目ワクチン早ければ年内にも/コロナ特例加算9月で廃止

<先週の動き>1.3回目ワクチン、早ければ年内にも医療従事者から開始/厚労省2.コロナ特例加算は今月末で廃止、補助金で代替へ/厚労省3.浸透しないオンライン診療、患者負担が割高で敬遠か4.来年度の診療報酬改定に診療側と支払い側で議論紛糾/中医協5.胃・大腸の進行がん症例増加、がん検診控えの影響か6.病院を選ぶ理由の1位は? 受療行動調査で明らかに/厚労省1.3回目ワクチン、早ければ年内にも医療従事者から開始/厚労省厚生労働省は、22日に自治体向けの説明会を開催し、新型コロナウイルスワクチンの追加接種について、早ければ年内の12月から3回目接種の実施に向けて準備を開始するように働きかけた。追加接種は2回接種完了からおおむね8ヵ月以上経過した人を対象に想定しており、まずは医療従事者から開始となる。高齢者への接種は年明け以降の見通し。ワクチンの種類は2回目までと同じものを基本としながら、別の種類も認めるかはあらためて検討される。(参考)ワクチン3回目接種、年内は医療従事者104万人 高齢者は年明け(朝日新聞)新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について(厚労省)2.コロナ特例加算は今月末で廃止、補助金で代替へ/厚労省厚労省は、特例的に上乗せしていた診療・介護報酬における新型コロナ感染症対策実施加算について、今年9月末までとする方向で、財務省と検討していることが報道された。外来診療で1例当たり50円、入院1日当たり100円などの加算は時限的措置であったため、医療介護団体は10月以降も継続を求める要望書を厚労省に宛てて提出しているが、財務省は「新型コロナの対応に当たる医療機関に限定すべき」として打ち切りを主張していた。このため、特例措置は9月末までが期限となり、今年末までは経過措置として補助金で支援を継続する方針。このほか、新たに発熱外来などの対応を行う医療機関への診療報酬の加算も検討されている。(参考)診療や介護報酬、特例打ち切りへ コロナ患者非対応も加算に批判(日経新聞)新型コロナ 特例加算、月末で廃止 診療・介護報酬 補助金で代替(毎日新聞)コロナ対応の特例延長で要望書続出 日医、四病協、日看協や全老健など医療・介護団体(CBnewsマネジメント)3.浸透しないオンライン診療、患者負担が割高で敬遠か新型コロナウイルス感染拡大の中、政府によって初診患者についても規制緩和されているオンライン診療について、各医療機関が保険診療の点数が低いために、これとは別に利用料を請求している事例があることを日本経済新聞が報道した。厚労省はオンライン診療を「補完的」と位置付け、診療報酬を低くしているが、医療機関側は患者に対して、システム利用料や通信費の名目で平均約900円の負担を求めているという。また、日本医師会も対面での診療が基本とする姿勢を崩していない。政府の規制改革推進会議では、引き続きオンライン診療の規制緩和を求めているが、厚労省には、安全性・信頼性の担保のほか、令和4年度の診療報酬改定も含めた議論が求められる。(参考)オンライン診療・オンライン服薬指導に関する検討状況について(厚労省)ネット診療の患者負担が割高 平均900円加算、普及阻む(日経新聞)患者「便利だが」割高敬遠 ネット診療、システム利用コスト 医療機関「対面より手間」(日経新聞)4.来年度の診療報酬改定に診療側と支払い側で議論紛糾/中医協22日に中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会が開催され、入院医療等の調査・評価分科会の中間とりまとめを基に、2022年度の診療報酬について議論が行われた。入院診療の医療費をめぐって、コロナの影響か前回の診療報酬改定の影響か判断がつかない中、診療現場に大きな影響が出るような改定に診療側は懸念を示すものの、支払い側は、コロナ禍であっても必要と、一般病棟入院基本料など見直すべき課題を列挙した。今後、中医協でさらなる検討を重ね、年内の取りまとめに動く見込み。(参考)診療報酬調査専門組織入院医療等の調査・評価分科会からの報告について(中医協)入院医療の中間とりまとめ受け意見対立、中医協 診療側「病床削減避けるべき」、支払側「やるべきはやる」(中医協)5.胃・大腸の進行がん症例増加、がん検診控えの影響か日本対がん協会は、今年上半期のがん検診受診者数は156万6,022人と、大幅に減少していた去年の同時期に比べて2.2倍に増加したが、感染拡大前の一昨年に比べると17%減少しており、コロナの余波がまだ残っていることを明らかにした。また、横浜市立大学の研究チームは、コロナウイルス感染拡大により、胃や大腸の早期がんの診断者数が減少し、進行がんの症例が増えたと報告しており、検診控えにより、早期がんの診断が遅れ、症状が発現してから発見に至る症例が増えたことも考えられる。今後、各自治体による働きかけが求められるが、自治体もコロナの影響で対応が遅れており、さらなる対策が必要だろう。(参考)がん検診の受診者が回復傾向 コロナ禍前には及ばず 日本対がん協会(朝日新聞)自治体実施のがん検診受診者 去年より回復もコロナ前に戻らず(NHK)進行した大腸がん増加、患者調査 コロナで検診、受診控え(東京新聞)6.病院を選ぶ理由の1位は? 受療行動調査で明らかに/厚労省厚労省が3年おきに行なっている受療行動調査の結果が公表された。全国の一般病院484施設を利用する患者(外来・入院)約16万人を対象として、10月に調査を実施。受診した医療機関を選んだ理由が「ある」と回答した人のうち、外来・入院ともに「医師による紹介」が最多で、外来は38.7%、入院は55.5%だった。次いで、外来では「交通の便が良い」が27.5%、入院では「専門性が高い医療を提供している」が26.5%であった。また、外来で「予約をした」患者は77.4%となっており、前回(2017年)と比べて6.0ポイント上昇していた。全体として、医療を受けた病院に「満足」と回答した患者は、外来64.5%、入院68.9%であり、「不満」と回答した患者は、外来3.8%、入院4.9%だった。病院の種類別で「満足」と回答した患者は、外来・入院ともに特定機能病院が最も高かった。(参考)令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況(厚労省)20年の受療行動調査結果を公表 厚労省(CBnewsマネジメント)小規模病院や療養病床持つ病院で「社会的入院」が増加、背景を地域ごとに探る必要あり―2020年受療行動調査(Gem Med)

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ファイザー製ワクチンの6ヵ月の有効性と安全性、第II/III相試験データ/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)について、6ヵ月間でワクチンの有効性は徐々に低下するものの安全性プロファイルは良好であり、COVID-19予防効果は高い。米国・ニューヨーク州立大学のStephen J. Thomas氏らが、現在進行中の国際共同無作為化観察者盲検プラセボ対照第II/III相試験の結果を報告した。BNT162b2ワクチンは現在、世界各国で承認、条件付き承認または緊急使用が正式に認められているが、最初の認可の時点で接種後2ヵ月を超えるデータは得られていなかった。NEJM誌オンライン版2021年9月15日号掲載の報告。16歳以上の4万4,165例、12~15歳の2,264例で、プラセボと比較 研究グループは2020年7月27日~10月29日の期間に、152施設(米国130、アルゼンチン1、ブラジル2、南アフリカ4、ドイツ6、トルコ9)において、健康または安定慢性疾患を有する16歳以上の4万4,165例を、また2020年10月15日~2021年1月12日の期間に米国の29施設にて12~15歳の2,264例を、BNT162b2ワクチン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、1回30μgを21日間隔で2回接種した。 安全性評価項目は、接種後7日間の局所反応・全身性イベント・解熱剤の使用、初回接種後から2回目接種後1ヵ月後までに発生した自発的な有害事象、初回接種後から2回目接種後1ヵ月後および6ヵ月後までに発生した重篤な有害事象とし、少なくとも1回接種を受けた16歳以上の参加者を対象に解析した。 有効性評価項目は、2回目接種後7日以内の血清学的またはウイルス学的SARS-CoV-2陰性参加者、および過去の感染の有無に関係ない参加者における、2回目接種後7日以上経過後の検査で確認されたCOVID-19感染で、少なくとも1回接種を受けた12歳以上のすべての参加者を解析対象とした。BNT162b2ワクチンの6ヵ月間の有効性は91.3%、安全性は良好 BNT162b2の安全性は良好で、有害事象プロファイルは許容可能なものであった。重篤な有害事象や試験中止に至った有害事象はほとんどなかった。 初回接種後以降、BNT162b2群で2万1,926例中15例(0.068%)、プラセボ群で2万1,921例中14例(0.064%)の死亡が認められたが、死因は両群で一致しており、BNT162b2に関連した死亡はなかった。 SARS-CoV-2感染陰性で評価可能な12歳以上の4万2,094例において、データカットオフ日(2021年3月13日)までに2回目接種後7日以上経過後のCOVID-19発症例は、BNT162b2群で77例、プラセボ群で850例であり、有効率は91.3%(95%信頼区間[CI]:89.0~93.2)であった。 期間別に見たBNT162b2の有効率は、2回目接種後7日~2ヵ月未満で96.2%(95%CI:93.3~98.1)、2回目接種後2~4ヵ月未満で90.1%(86.6~92.9)、2回目接種後4ヵ月~データカットオフ日までで83.7%(74.7~89.9)であった。 重症のCOVID-19に対するBNT162b2の有効性は、96.7%であった(95%CI:80.3~99.9)。 本試験ではサブグループ別の有効性を評価する検出力はなかったが、年齢、性別、人種・民族、併存疾患の有無、国別のサブグループにおける2回目接種後のBNT162b2の有効性は、全体集団とおおむね一致していた。また、懸念されているSARS-CoV-2変異株B.1.351(またはβ株)が確認された南アフリカにおいて、ワクチン有効性は100%(95%CI:53.5~100)であることが示された。

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第76回 総裁選でも気になるコロナ対策、4氏の具体策は現実的?

最近はテレビのニュースの時間になると同じ4人の顔を見ることが増えてきた。言わずと知れた自民党総裁選に出馬した岸田 文雄氏、河野 太郎氏、高市 早苗氏、野田 聖子氏の4人のことである。ちなみにこの順番で表記したのは男尊女卑でも何でもなく、単純に50音順である。総裁選後には任期満了に伴う衆議院選挙が控えているが、現在の衆議院で政権与党の自民党と公明党の占める議席が465議席中304議席(竹下 亘氏の死去による欠員分を除く)であり、現下の情勢では多少議席を減らしたとしても与党側が過半数を大きく割る可能性はほぼないと思われる。つまるところ、この総裁選の勝者が当面の次期総理大臣となることは99%確実である。実は過去の本連載でも取り上げたことがあるが、この総裁選立候補者の政策を新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策に限定して俯瞰してみたい。ちなみに4氏のうち野田氏以外は全員が総裁選用の特設サイトを開設している。岸田氏:声をかたちに。信頼ある政治河野氏:日本を前にすすめる。温もりのある国へ高市氏:政策9つの柱これと、各人の著書、具体的には岸田氏の「岸田ビジョン 分断から強調へ」(講談社)、河野氏の「日本を前に進める」(PHP新書)、高市氏の「美しく、強く、成長する国へ。―私の『日本経済強靱化計画』―」(WAC)、野田氏の「みらいを、つかめ 多様なみんなが活躍する時代に」(CCCメディアハウス)や、日本記者クラブでの総裁選候補討論会の動画、テレビ朝日での全員出演動画などを参考に各人の主張を紹介するとともに、そこに若干の論評を加えてみたい。ちなみに予め言っておくと、私がこれら候補に関する主張や報道を読んで、各人の底流に流れる政治思想を「○○主義」と名づけるなら、岸田氏は「協調主義」、河野氏は「合理主義」、高市氏は「国粋主義」、野田氏は「女性活躍主義」と表現する。さてその各人の考える新型コロナ対策だが、実はテレビ朝日への出演では、番組サイドが「何をコロナ対策の一丁目一番地と考えるか?」を尋ねている。岸田氏は「病床・医療人材の確保を徹底」を挙げた。これについてはこれまでの岸田氏の主張やそれにかかわる報道から解説が必要だろう。まず、岸田氏は今後もワクチン接種を推進して行く中で11月には希望者全員のワクチン接種が終了し、経口治療薬の登場までの間隙を縫って第6波が来ることも想定し、そこに向けた対策として病床・人材の確保を主張する。この点は岸田氏の政策集の『コロナ対策 岸田4本柱』にもあるように、重症者は国公立病院のコロナ重点病院化、一般的な発熱患者や新型コロナの自宅療養者は開業医で対応し、この間をつなぐものとして政府による野戦病院的臨時医療施設の開設や借り上げした大規模宿泊施設などを中間設置して第6波に備えるというもの。基本は現状とあまり変わらないが、「病床・医療人材の確保を徹底」とは、要はこの中間施設のハードとソフトの確保を謳っていると思われる。もっとも東京都の例を挙げると、開設を予定した臨時医療施設の一部で稼働が遅れた主な原因が人員確保に手間取ったゆえだった。このことを考えると、それをここ2~3ヵ月で解決するのは容易ではない。そして今回のコロナ禍では第5波まで経験しながら、感染拡大局面で病床がひっ迫することについて世論からは一貫して疑問を呈せられてきた。この点の解決策については日本記者クラブでの記者会見で各人が考えを表明している。「臨時病院の設置も含め非常時の指揮命令系統と権限というのは、これは見直さなければいけない。今回痛切に感じたのは、ベッドはあるけれども高度な治療ができる人材やチームがいないこと。また、重症から回復した人を臨時病院や軽症・中等症の病床に移していくことがうまく動かなかった。そこはやはり国や都道府県の調整をしなければならなかった。国と都道府県、どちらが何をやるのかというのを決めなければいけない」(河野氏)「病床確保については国が総合調整機能を持って調整することになっているが、将来的により強力な調整機能を発揮のために新たなこの工夫が必要になる。一方的に強制すると現場の反発を買ってしまう。平素から診療報酬等の上乗せで優遇を与える『感染症危機中核病院』のようなものを設置し、危機の際には国のコントロールによって 半強制的にこうした病院に病床を提供してもらい、それに応じない場合はペナルティも考えていく仕掛けも必要」(岸田氏)「国民皆保険制度の下である以上、緊急事態では国や地方自治体が医療機関や医療従事者に対して、病床確保等の必要な対応を命令する権限を持つことも含めて法案化を考えたい」(高市氏)「急変時に医療の手が届かないことを考えると自宅療養という仕組みはもう無理。入院できないならば危機的な時だけ国がサブホスピタルを作る必要がある」(野田氏)4氏のコロナ政策、主張あれこれテレビ朝日で「コロナ対策一丁目一番地」として河野氏が主張したのは「政府による製造支援も念頭に置いた、簡易検査キットの低コストでの大量調達と供給。薬局での販売解禁」である。簡易検査はたぶん抗原検査を意味していると思われる。河野氏は「どんどん検査をすることで、見える景色が大きく変わってくると思います」と述べているが、どのような着地点を持ってこの主張をしているかが不明である。第5波では膨大な数の検査陽性者が発生したことで、保健所も医療機関もキャパシティーをオーバーし、半ば機能不全に陥った例もある。実際、河野氏が言う簡易検査を不特定多数に行った場合、かなりの陽性者が判明するはずで、そうした人を自宅待機にするのか、その場合誰がどうフォローアップするのかなど抱えている課題は多い。ちなみに岸田氏も『コロナ対策 岸田4本柱』で「予約不要の無料PCR 検査所の拡大と、簡易な抗原検査など在宅検査手段の普及促進」を謳っているが、PCR検査ともなるとそこにも人材の配置が必要になるため、前述の河野氏のところで指摘した課題に加え、再び人材確保という壁にぶち当たる。一方、高市氏と野田氏がテレビ朝日で第一に主張したのは、ともに感染者の重症化を予防するための「治療薬の確保」。ちなみに高市氏はわざわざ「国産の治療薬」としていたのが、彼女らしいとも言える。日本記者クラブでの討論会では「ワクチンまた治療薬の国産化に向けてとくに生産設備に対するしっかりとした投資(支援)をする」との考えも示している。この点は政策集などで河野氏も「治療薬と国産ワクチンの確保」を主張し、岸田氏も年内の治療薬登場に期待するコメントを日本記者クラブでの会見で述べている。現在、第III相試験中と最も開発が先行しているmolnupiravirは外資系のメルク社のものであり、それも年内中の上市については未知の部分は残されている。そして国産の治療薬、ワクチンに関しては、塩野義製薬のプロテアーゼ阻害薬が第I/II相、第一三共のmRNAワクチン、塩野義製薬の組み換えタンパクワクチン、KMバイオロジクスの不活化ワクチンのいずれもがやはり第I/II相と初期段階に過ぎない。アンジェスのDNAワクチンが第II/III相だが、最近になって高用量での第I/II相を開始したことから考えると、第II/III相まで進行した当初の用量での臨床試験は芳しいものとは言えなかったと見る向きもある。いずれにせよ国産化まではまだ相当時間を要する見通しで、この点は各人ともやや楽観的過ぎるともいえる。なおワクチン接種に関しては各人とも推進の方針。この中で河野氏はワクチン担当相ということもあってか、3回目のブースター接種開始への意欲を示したほか、来年以降に現行のmRNAワクチンが生後6ヵ月以上に適応拡大が進む見通しについて言及。野田氏も現在ワクチン接種対象外の11歳以下の小児に対し、希望者へのワクチン接種推進を訴えている。ちなみに野田氏のこの主張の背景には2010年にアメリカで卵子提供を受け妊娠、2011年1月に出産した障害児の息子を抱えることも念頭にあっての発言だろうと推察される。コロナの先を見据える女性陣その意味ではテレビ朝日での4氏討論の際は次なる感染拡大時のロックダウンの可否について、野田氏だけが否定的な見解を示した。その理由については現時点で法制度上不可能なこと、ワクチン接種、病床確保などそれ以前に行うべきものがあると挙げながら、「人がウイルスを運んでいるようなものですが、人は生きていくために動かなければいけません。とくに子供は動き回らなければいけないので、そこは冷静に判断していかなければいけません」と述べている。やはりここでも「子供」が出てくるところは少子化対策に熱心な野田氏らしい視座とも言える。一方、高市氏と河野氏は、どちらかというとより強力な新興感染症が登場することを念頭に法令上の整備が必要という考え。岸田氏はいわゆる外出禁止やそれに伴う刑事罰などを含めた厳密な意味でのロックダウンは日本に合わないとして、「ワクチン接種証明や陰性証明を組み合わせて、人流抑制をお願いする日本型のロックダウン政策」を述主張する。岸田氏は「電子的なワクチン接種証明の積極活用」も政策として掲げていることから、先日政府が発表した行動制限緩和策の「ワクチン・検査パッケージ」に何らかの法的な位置付けを与えて人流抑制に活用しようというものらしい。菅首相にチクリの男性陣今回の自民党総裁選で菅首相の不出馬というサプライズが起こる前から一番手で立候補に名乗りを上げていただけあって、岸田氏の場合、政策集に書かれていることは実現の可否は別にして充実している。その中で公衆衛生上の危機発生時に国・地方を通じた強い司令塔機能を有する「健康危機管理庁(仮称)」と「臨床医療」「疫学調査」「基礎研究」を一体的に扱う「健康危機管理機構(仮称)」の創設を謳っている。また、菅首相の対応をやんわり批判した発言も目に付く。今回のコロナ対応について岸田氏は「国民への丁寧な説明」と「楽観的な見通し」が課題だったと各所で指摘している。この点について日本記者クラブでの公開討論会では「国民の協力が必要な中では納得感のある説明、(政策決定の)結果だけではなく、そこに至るプロセスなどを丁寧に説明する必要があった」と指摘している。これは菅首相による複数回の緊急事態宣言の発出時のことが念頭にあることは明らかである。同時に別の場所では、楽観的な見通しについて緊急事態宣言解除の時期などを挙げている。もし、岸田氏が自民党総裁となり、その後総理大臣となることがあったら、この点がどの程度実現できるかは注視したいところである。一方、河野氏も国民への説明については自らの政策集で「新型コロナウイルスについて、最新の科学的知見に基づいたわかっていること、わからないこと、できること、できないことをしっかりと国民と共有し、謙虚に、わかりやすい対話をしながら決めていきます」としている。時にはスタンドプレーになりがちな河野氏のことは本連載でも指摘してきたが、一大臣と総理大臣では求められるものの質と許容されることの幅も異なってくる。さてさて最終的にどうなることやら。個人的にはかなり注目しているところである。

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ファイザー製ワクチン、60歳以上で3回目接種の効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)について、2回接種を5ヵ月以上前に完了した60歳以上の高齢者に対する3回目ブースター接種は、COVID-19感染および重症化リスクが大幅に低下することを、イスラエル・Weizmann Institute of ScienceのYinon M. Bar-On氏らが報告した。イスラエルでは2021年7月30日に、5ヵ月以上前にBNT162b2の2回接種を完了した60歳以上の高齢者への、3回目接種が承認されている。研究グループは、追加免疫のデータを収集するため3回目ブースター接種を行った同国約114万例の高齢者を対象に試験を行った。NEJM誌オンライン版2021年9月15日号掲載の報告。ブースター接種後4~6日、12日以上経過の有効性も比較 研究グループは2021年7月30日~8月31日に、イスラエル保健省のデータベースを基に、60歳以上でBNT162b2の2回接種を5ヵ月以上前に完了した113万7,804例を対象に、3回目ブースター接種の予防効果を検証した。 主要解析では、COVID-19感染率と重症化率について、ブースター接種後12日以上経過者(ブースター群)と、ブースター非接種者(非ブースター群)を比較した。2次解析では、ブースター接種後4~6日群と、12日以上経過群について同発生率を比較した。 すべての解析は、交絡因子補正後Poisson回帰分析を用いて行った。ブースター接種後12日以上群、4~6日群に比べ感染率5倍超低下 ブースター群のCOVID-19感染率は、非ブースター群に比べ11.3倍低かった(補正後率比:11.3、95%信頼区間[CI]:10.4~12.3)。重症率についても、ブースター群は非ブースター群に比べ、19.5倍低かった(補正後率比:19.5、95%CI:12.9~29.5)。 2次解析では、ブースター接種後12日以上経過群が、4~6日経過群に比べ、感染率は5.4倍低かった(率比:5.4、95%CI:4.8~6.1)。

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第76回 「ブレインフォグ」に見るCOVID-19後遺症の社会的影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡り、後遺症に関するデータが徐々に蓄積されてきている。後遺症として確認されている症状は、200種類以上にのぼるという。睡眠障害などの精神神経症状、筋力低下などの全身症状、呼吸苦などの呼吸器症状、胃腸障害などの消化器症状、そして味覚障害や嗅覚障害、脱毛などだ。中でも、比較的若い世代で増えていると言われているのが「ブレインフォグ」だ。脳に霧がかかったような認知機能障害の一種で、主な症状としては記憶障害、集中力不足、精神疲労、不安などの症状が挙げられる。コロナ感染により、脳に炎症が起きてアルツハイマー病に起こるような変化が脳細胞に生じ、脳機能が低下、認知機能障害などが起きると見られている。日常生活や勤務にも大きな影響社会的・経済的な影響も大きい。昨年8月にCOVID-19の症状が出た30代女性は、何か作業をするとすぐに頭痛が生じ、店で考えながら買い物をしただけで疲れて寝込むこともあるという。今年5月にCOVID-19の症状が出た40代女性は、文章が書けなくなったり、文字は読めても内容が理解できなくなったりして、会社を退職した。フランスの大学病院が実施したコロナ入院患者の調査によると、患者の38%が入院から4ヵ月経過後も認知障害を認める結果が出た。一方、キングス・カレッジ・ロンドンが2020年12月~2021年7月までの約220万人のデータを分析したところ、ワクチンを2回接種した場合、後遺症リスクが49%減少したという。また、LongCovidSOSによると、4月にワクチン接種を受けた約900人を調査したところ、後遺症があっても57%が改善したという。後遺症のメカニズムはどの症状も解明途上にあるが、これらの調査によると、コロナ後遺症の転帰に関しては「ワクチン接種」が1つの重要なカギを握るようだ。「コロナ後遺症外来」を設けている都内のクリニック院長は「COVID-19は男性のほうが重症化しやすいと指摘されているが、後遺症については20〜40代の女性が多い。世界的に見ても、女性は男性の約1.5倍多くなっている。女性に自己免疫系疾患が多いことと関連しているのかもしれない」と話す。6ヵ月後も3割超で症状が残存東京・世田谷区が今月公表した、コロナ感染者を対象に今年7〜8月に実施した調査によると、回答があった3,710人のうち48.1%が「後遺症がある」と回答。年代別では10代で30%、10歳未満でも14%など、若い世代や子供でも後遺症が見られることが明らかになった。全体で最も多かったのは嗅覚障害(54%)で、次いで全身の倦怠感(50%)、味覚障害(45%)などが続き、ブレインフォグと見られる集中力低下(24%)や記憶障害(10%)を訴える人もいた。また厚生労働省のアドバイザリーボードは、2020年1月~2021年2月に入院した525症例を対象にした研究の中間報告を今年6月に公表。退院時までに疲労感・倦怠感、筋力低下、息苦しさ、睡眠障害、思考力・集中力の低下などの症状があった患者の3割以上で、6ヵ月後にも同じ症状が認められた。世田谷区、厚労省の調査・研究のいずれにも、記憶障害や思考力・集中力が低下するブレインフォグの症状が認められる。症状の類似性から筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)との関連も指摘されているように、COVID-19の後遺症はさまざまな要因の症状が同時多発的に起きている。しかも影響が多岐にわたる懸念があり、原因解明に向けたサーベイランスや、後遺症治療のための地域医療体制も必須である。一命は取り留めても、その後の社会生活を困難なものに変える懸念をはらむコロナ後遺症。長期的経過を注意深く見ていく必要がありそうだ。

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交互接種・コアリング防止など追記、新型コロナ予防接種の手引き/厚労省

 厚生労働省は、2021年9月21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(4.1版)」を公開した。 この手引きは、2020(令和2)年12月17日に初版が公開され、逐次新しい知見やエビデンスを追加し、ほぼ毎月改訂を重ねてきた。妊婦や交互接種、接種時のコアリングについて追記 今回の主な改訂点は下記の通りである。【第3章 3(10):妊娠中の者等への接種体制の確保について追記】 妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとされている。妊娠中の者及び配偶者等(以下「妊娠中の者等」という)が希望する場合には、できるだけ早期に、円滑に新型コロナワクチンの接種を受けることができるよう、例えば、予約やキャンセル待ちに当たって妊娠中の者等を可能な範囲で優先する、現時点で妊娠中の者等が年齢等によって必ずしも接種予約の対象となっていない場合には妊娠中の者等を接種予約の対象とする、といった方法により、特段の配慮をすること。【第3章 3(11):交互接種への対応について追記】(交互接種への対応) 新型コロナワクチンについては、原則として同一の者には、同一のワクチンを使用することとしているが、被接種者に対し1回目及び2回目に同一の新型コロナウイルスワクチンを接種することが困難である場合については、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(以下「交互接種」という)ができる。そのため、やむを得ず交互接種を受ける者に対して、適切に接種機会を提供できるよう予約対応やコールセンターでの対応等に留意すること。【第4章 3(1)ア:新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者を追記】 予防接種を行うことが不適当な状態にある者※1 明らかな発熱を呈している者とは、通常37.5℃以上の発熱をいう。※2 いずれかの新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者については、当該者に対し、当該新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンの接種を行うことができない。※3 アストラゼネカ社ワクチンの接種を行う接種会場では、上記血栓症及び毛細血管漏出症候群の既往歴の有無を確実に確認するために、必ずアストラゼネカ社ワクチン専用の予診票を用いて予診を尽くすこと。【第4章 3(5):コアリングの防止について追記】 コアリング(ゴム栓に対して斜めに針を刺すと、針のあご部でゴム栓が削り取られてしまうこと)を防ぐために、注射針をバイアルに穿刺する際は、ガイドマーク(中心円)の内側に、針を垂直に押し込むこと。また、刺しながら注射針を回転させたり、同じ場所に何度も穿刺したりしないこと。【第6章 4:交互接種について追記】(交互接種) 新型コロナワクチンについては、原則として、同一の者には、同一のワクチンを使用すること。ただし、新型コロナワクチンの接種を受けた後に重篤な副反応を呈したことがある場合や必要がある場合には、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(交互接種)ができること。「必要がある場合」とは、以下の場合をいう。(1)接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンの国内の流通の減少や転居等により、当該者が2回目に当該新型コロナワクチンの接種を受けることが困難である場合(2)医師が医学的見地から、接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンを2回目に接種することが困難であると判断した場合(接種間隔) 交互接種をする場合においては、1回目の接種から27日以上の間隔をおいて2回目の接種を実施すること。前後に他の予防接種を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。 以上のほかにも図の改訂、予診票、16歳未満の接種の保護者の同意なども改訂されているので、一読を願いたい。

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リレー小説、有名作家の皆さまによる新型コロナ座談会【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第40回

第40回 リレー小説、有名作家の皆さまによる新型コロナ座談会本日は高名な作家のせんせい方にご参集いただき、代表作の登場人物とともに新型コロナウイルス感染症やワクチンについて語り戯れていただきます。あまり意味のない中川の言葉遊びの作文です。私は、このような文学遊びが大好きです。こんな意味のない作業に耽溺できる生活にあこがれます。一番バッター、中島敦せんせい(山月記)滋賀の義久は浅学非才、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、COVID-19に甘んずるを潔しとしなかった。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中に、何か身体中に力が充ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。これは夢に違いないと考えた。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分はコロナウイルスとの闘いに身を投ずる覚悟を得た。ICUから病院屋上に躍り出た虎は、月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、ワクチン接種会場に躍り入って、再びその姿を見なかった。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。二番バッター、五木寛之せんせい(青春の門)「織江!」信介は博多駅で荷物の整理をしている間に、織江がいなくなったのに気付いた。信介が織江を見つけたのは、丁度織江が橋を渡ろうとしているところだった。織江は信介の姿に気付くと一瞬逃げようとしたが、なぜか再び信介の方を振り向いた。「馬鹿野郎! 一体何を考えているんだ、なんでワクチンを打たないんだ!」「信介しゃんなんかに、うちの気持ちは分からんとよ!」信介は思いもかけなかった織江の言葉に、思わず、つかまえた織江の手を放した。腕には、猫の引っ掻き傷から血が滲んでいた。三番バッター、庄司薫せんせい(赤頭巾ちゃん気をつけて)「薫クンじゃないの?」ぼくは驚いてじっとこのなんていうかイカレたようなすごい美人の顔をまじまじとみつめた。ぼくは彼女に引きずられるように話に入っていった。「COVID-19は感染症の一種なの、本当に大事なことは理解されていないのね。ワクチンを打つことが決め手なのよ!」ぼくは女性と多くつきあってきた方で(もっとも、どこからが多く、どこからが多くないかは、良く分らないけれども)知り合いの女性はたくさんいるんだけど、この女性ほど自らに厳しさを求める人は知らなかった。今日はワクチン2回目の日。彼女はぼくの手を掴んで(本当に掴むという表現がピッタリなほど強く)接種会場の正面玄関に向かって足早に歩き始めた。四番バッター、小川洋子せんせい(博士の愛した数式)彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。「おお、賢い心が詰まっていそうだ」博士は、そういいながら息子をみつめた。「COVID-19は、憎むべきウイルス感染症ですが、素数が含まれていますね」この世で博士が最も愛したのは、素数だった。素数というものを私も一応知っていたが、それが愛する対象になるとは考えたためしもなかった。しかし彼の素数への愛し方は正統的だった。相手を慈しみ、無償で尽くし、敬いの心を忘れず、博士は素数のそばから離れようとしなかった。「しかし、COVID-19に素数が含まれているのは許せませんね」博士の瞳には決意がやどっていた。五番バッター、宮澤賢治せんせい(雨にも負けず)雨にも負けず 風にも負けず パンデミックにも負けぬ 丈夫なからだを持ち 欲は無く 決して瞋からず 何時も静かに笑っている 東にコロナに感染した子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた医療者あれば 行って防護服を着て手伝いをし 南に死にそうな人あれば 行ってECMO管理を手伝い 北にワクチンの流言飛語があれば つまらないからやめろと言い ICUの中をオロオロ歩き 皆にデクノボーと呼ばれ 誉められもせず苦にもされず そういう者に 私はなりたい。六番バッター、川上宗薫せんせい(赤い夜)弥生が、「わたしには秘密があるの」と言った時、浦川はギョッとなった。「わたしは、これだけは言うまいと思ってたんだけれど、やはり隠しておれないわ」「ぼくが驚くようなことかね」「驚くとおもうわ」「ぼくが驚くとしたら、殺人をやったとか、そういうことだよ」弥生は笑った、なのに眼には涙がたまっている。「やっぱりワクチンを打つことにしたの」浦川は、狼狽を露わにした。七番バッター、フロイトせんせい、(精神分析入門 高橋義孝訳)そのワクチン接種者の副反応を皆さんにお話する前に、その方が私に語った彼自身が見た夢の話をせねばなりません。私にこう語ってくれたのです。「私は気が付くとなにか暗い闇の中を彷徨うような気持ちでした。もがいていると一筋の光がすうっーと刺し込んできたのです。猫の瞳が輝くような光です。アセトアミノフェンを口にすると嘘のように再び眠りに帰ったのです」さて皆さん、ここまでくるとあなた方の中には、この患者の夢の内容が、私がこれまで述べてきた「リビドー」の観念で容易に分析できると考えるひとが出てくるでしょう。八番バッター、宇能鴻一郎せんせい(むちむちぷりん)そうなんです。あたし、ワクチンを打ったんです。初めはワクチンなんか、とっても厭だったの、あたし。だって恐ろしかったんですもの。ワクチンを打つと不妊症になるってSNSで読んだの。でも、今考えてみると、あなたが大丈夫って言ってくれて、打つ勇気がでたの。ワクチンを早く受けておいてよかったわ。COVID-19のこと知ってる? この病気のこと。コロナウイルスに捕まっちゃう病気なの。感染症っていうのね、分った? お家にいる子猫さんは大丈夫かしら。あたし、心配なんです。九番バッター、太宰治せんせい(走れメロス)メロスは激怒した。必ず、かのワクチンのデマを流布する主を除かなければならぬと決意した。「待て」「何にをするのだ。私は陽の沈まぬうちに接種会場へ行かなければならぬ。放せ」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け」「私にはいのちの他には何も無い」「その、いのちが欲しいのだ」山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃を食らわせた。もっと多くのせんせい方にも登場いただきたいのですが、このあたりでさようなら。

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第76回 「空気感染」主流説報道続々 “野球感染”リスクは球場によって大きく異なる可能性も

的外れではなかった“萬田マトリクス”こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末、所用があって知人と食事をしたのですが、テーブルに備え付けられたアクリル板には閉口しました。そもそも会話が聞き取り辛い(結果、高齢者は大声に…)ことに加え、あの閉塞感はいただけません。さらに、利用したお店は料理の取り分けのためか、正面のアクリル板の下に四角い穴が開けてありました。「これ、意味ないです!」と思わずお店の人に言いそうになりました。さて、先週の「第75回 行動制限緩和の前に、あのナンセンスな制限だけは先行して撤廃を」でも書いた新型コロナの空気感染ですが、掲載直後、「コロナ空気感染」に関する記事が新聞などのメディアに頻出しています。前回示した私の“萬田マトリクス”もあながち的外れではなかった、と胸をなでおろしましたが、こうした報道や情報発信によって、今後の国の感染対策の方針も大きく変わりそうな予感がします。「飛沫が支配的なのは、0.2メートル以内の会話だけ」医療ガバナンス学会が発行するメールマガジン 「MRIC」のVol.179(9月16日発行)号では、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の高橋 謙造氏が、8月27日のScience誌に掲載された「呼吸器感染するウイルスの空気感染について」と題する総説論文を解説しています1)。それによれば、「SARS-CoV-2においての飛沫感染ははるかに効率が悪く、飛沫が支配的になるのは、個人同士が0.2メートル以内で会話をしているときだけであることがわかってきた。飛沫よりもエアロゾル感染の方が支配的になることも明らかになってきた」とのことです。その上で高橋氏は「日本はこれまで、『3密(密集、密接、密閉)』を主たる対策、しかも特に密集、密接対策を主として推進し、密閉対策には十分に配慮されて来なかった」と指摘し、「もし、空気感染が寄与しているとすれば(中略)、その対策の主眼は、徹底した換気(つまり密閉対策)とマスク装着等に主眼が置かれるべき」と主張しています。高橋氏の解説は、Nature誌やLancet誌における議論についても触れています。ご一読をお勧めします。「エアロゾル感染」という言葉がわかりにくいと日経日本経済新聞も9月16日の朝刊で「コロナ『空気感染』対策を」という記事2)を掲載しています。8月に感染症の専門家など科学者有志が「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める緊急声明3)を出したことを踏まえ、厚生労働省の言う「エアロゾル感染」という言葉のわかりにくさについて指摘、科学者たちが「新型コロナウイルスは『空気感染する』と言い換えるよう求めている」と書いています。同記事は、この声明に賛同した国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長の西村 秀一氏の言葉を紹介しています。同氏は、「エアロゾル感染は空気を介した感染で空気感染と表現すべきだ。空気感染があると明確にしないと飛沫感染や接触感染への対策が重視されすぎて、対策全体の実効性が高まらない」と述べ、前述の高橋氏と同じく、飛沫感染、接触感染重視から転換しない国の対策を強く批判しています。専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ったことが元凶9月15日には毎日新聞も「コロナ空気感染、不都合な真実? 認めぬ国に専門家38人緊急声明」と題し、賛同者の一人、愛知県立大看護学部教授の清水 宣明氏のインタビュー記事4)を掲載しています。感染制御学、微生物学が専門の清水氏はこの記事で、国や専門家組織の専門家が頑なに空気感染(エアロゾル感染)を認めてこなかった結果、「真の感染経路に真正面から向き合わず、消毒や手洗い、アクリル板の設置といった効果の低い対策ばかりを推奨した結果『第5波』までに多くの犠牲者を生み出したのだと思います」と話しています。さらに、国が空気感染を認めたくない理由として、新型コロナが国内で初めて確認された段階で、専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ってしまったことや、東京オリンピックの開催を控えていたことなどの理由を指摘しています。日本の専門家が、「空気感染」と呼ばず、「マイクロ飛沫感染」という海外文献でもあまり見ることのない用語を使っている点については、「換気の必要性を訴えないといけなくなったけれど、いまさら『飛沫』は外せない。さりとて『空気感染』とは言いたくないと、無理やりひねり出したのでしょう」と話しています。ZOZOマリンスタジアムは「とても安全」空気感染、飛沫感染、接触感染がどれくらいの頻度かを実験で測定することは相当難しいとのことですが、もし空気感染が主体とするならば、世界(やさまざまな業界・業態)における感染予防対策を根底から見直さなければならなりません。例えば、野球観戦は観客数制限ではなく、球場のつくりや環境に目を向けるべきでしょう。ドーム球場より屋外球場の方が安全なのは確かですし、特に海に面して風が強いZOZOマリンスタジアムの野球観戦は「とても安全」というお墨付きが出るかもしれません。飲食店の意味のないアクリル板も早々に撤去されることを期待しています。冒頭でも書いたように、今やアクリル板設置は感染対策というより、お店の“優良マーク”取得のためだけの設備と化しています。アクリル板のない静かな居酒屋でゆっくりと「一人飲み」。これが、秋から年末にかけてのささやかな私の目標です。参考1)Vol.179 COVID-19:空気感染に関する議論2)コロナ「空気感染」対策を/日本経済新聞3)最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明4)コロナ空気感染、不都合な真実?/毎日新聞

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23日より血液学会スタート!会長インタビューと注目演題紹介

 9月23日より第83回日本血液学会学術集会がオンラインで開催される。ケアネットが運営する医師限定キュレーションサイト「Doctors'Picks」では学会の特集サイトを公開しており、掲載された会長の東北大学の張替 秀郎氏による動画メッセージの一部を紹介する。ーー本学会のテーマ「恒常性と復元力」にはどのような意味を込めたのでしょうか? 血液細胞は、酸素運搬、感染防御、止血といった身体の恒常性の根幹を担う必須の細胞です。そして、血液のがんはほかのがんと異なり、腫瘍を取ってしまえばよいわけではなく、そこから正常な造血機能が回復してはじめて寛解となる。そうした意味で復元力が極めて大切な臓器です。そうした2つの血液の本質に立ち返り、改めて考察したいという狙いからテーマとしました。 そして、このテーマには、もう一つの思いが込められています。2021年は東日本大震災から10年の節目にあたります。2011年、東日本大震災により日本、とくにこの東北は甚大な被害を受け、すべての恒常性が失われました。そして2020年、COVID-19感染症によって、世界は再度すべての恒常性を失いました。東日本大震災から10年、社会がその復元力によって恒常性を取り戻したように、現在はまだコロナ禍にはありますが、社会の復元力によって生活・科学・医療の恒常性を取り戻すことを信じて願う、という意味も込めました。ーー今回の学会でとくに注目の演題は? 各専門別の最新の情報が集まるというのは毎年のことですが、私が企画したのはPresidential Symposiumと特別講演です。Presidential Symposiumは「The Path from Stem Cells to Red Blood Cells」という演題で、赤血球の分化過程という基礎的なテーマを設定しました。特別講演は2つで、ハーバード大学の幹細胞研究を専門とするDavid Scadden氏の「Biology to therapy in the hematopoietic niche」と、UCLAの鉄代謝を専門とするTomas Ganz氏の「Systemic iron homeostasis: hormones, pathways, diseases」、いずれもなかなか話を聞けない高名な先生なので、貴重な機会になるはずです。海外演者の方もディスカッションにはライブで参加いただく予定です。 また、コロナ関連の特別シンポジウムも企画しており、「ポストコロナの医療・社会変容」をテーマに、早稲田大学教授のロバート・キャンベル氏、プロ野球楽天の社長である立花 陽三氏など、医療以外の専門家を招き、多様な視点からコロナ後の社会の変化についてディスカッションを行う予定です。ーー仙台の会場とオンラインのハイブリッド開催を予定されていましたが、完全オンライン方式に変更されました。 新型コロナの感染状況を鑑みてやむを得ないと判断しました。ただし、学会のライブ感を大切にしたいと考え、会期後にオンデマンドで配信するのは教育講演と一部のシンポジウムにとどめ、基本的には会期中にライブで視聴いただくことを想定しています。ぜひご参加いただき、血液学の「旬」を感じ、明日からの治療に役立てていただければと思います。Doctors’ Picks 第83回日本血液学会 特集サイトhttps://drpicks-spot.carenet.com/ 特集サイトでは、入山 規良氏(日本大学)、柴山 浩彦氏(国立病院機構 大阪医療センター)、丸山 大氏(がん研究会有明病院)、山崎 悦子氏(横浜市立大学附属病院)が選定した学会の注目演題も紹介している。

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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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第78回 COVID-19ワクチンと月経異常の関連について調査が必要

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのよくある副反応に月経の変化や不意な膣出血などの月経異常は含まれていませんが、そういう事態があったという訴えが増えています。英国はCoronavirus Yellow Card1)というウェブサイトを開設し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連医療の副反応らしき事態を広く収集しています。月経がいつもよりきつい、遅れている、不意な膣出血などのCOVID-19ワクチン接種後の月経異常の報告が今月初旬(9月8日時点)までにそのデータベースに3万件以上(34,633件)集まっています。幸いなことに、ワクチン接種後の月経異常のほとんどは後の周期で正常化しています。それに、COVID-19ワクチン接種が女性の受胎へ悪影響を及ぼす恐れは認められていません。Coronavirus Yellow Cardに集まった月経異常は専門家グループによって検討され、COVID-19ワクチンとの関連は認められないと判斷されました2)。しかし英国の大学Imperial College Londonの生殖免疫学の専門家Victoria Male氏によるとCoronavirus Yellow Cardで集めた情報から確実な結論を導くのは困難であり、ワクチン接種者の月経異常の発生率を非接種の人と比べる別口の取り組みが必要です3,4)。Male氏も言及しているとおり米国ではCOVID-19ワクチンの月経への影響を調べる試験がすでに計画されており、同国政府はその取り組みに2億円近く(167万ドル)を提供することを約束しています5)。米国での試験では不規則な月経やその欠如、いつもより多い出血などの月経異常とCOVID-19ワクチン接種の関連性、月経異常の持続期間、ワクチンと関連しうる月経異常の仕組みが検討されます。COVID-19ワクチン接種後の月経異常はおおむね一過性とはいえ軽視すべきでなく、COVID-19ワクチン忌避の元凶である誤謬を払拭してワクチン接種の普及を成功させるにはその検討が不可欠です3)。将来の妊娠に害をもたらすというデマが若い女性のCOVID-19ワクチン忌避を主にもたらしています。COVID-19ワクチン接種後の月経異常を隈無く調べることを怠ればワクチン忌避女性の心配がいっそう助長しかねません。もし今後の検討でワクチンと月経異常が関連するとわかれば、その手立てを前もって心づもりする事が可能になります。きっちりと試験を実施してCOVID-19ワクチンが月経に及ぼしうる影響を把握して知らせれば月経がある若い女性はワクチン接種後にどうなるかをより見通せるようになり、ワクチン忌避を減らすことも可能でしょう5)。月経異常はmRNAワクチンとアデノウイルスが下地のワクチンの両方で認められており、もしワクチンと関連するならワクチンの成分によるのではなくワクチンへの免疫反応を原因としそうです3)。実際、月経周期はウイルス感染を含む種々の要因への免疫活性化の影響を受けうることが知られています。SARS-CoV-2もそういう要因の1つかもしれず、COVID-19女性およそ4人に1人に月経異常が認められたことを中国のチームが昨年報告しています3,6)。参考1)Coronavirus Yellow Card reporting site2)Coronavirus vaccine - weekly summary of Yellow Card reporting3)Male V.BMJ 2021;374:n2211.4)Link between menstrual changes after covid-19 vaccination is plausible and should be investigated / Eurekalert5)Item of Interest: NIH funds studies to assess potential effects of COVID-19 vaccination on menstruation / NIH6)Li K,et al. Reprod Biomed Online. 2021 Jan;42:260-267.

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医療者のブレークスルー感染が増加、接種後の期間は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症に対して、現在使用されているmRNAワクチンの有効性について、デルタ変異株に対しては低く、経時的に減少する可能性を示唆する医療者での調査結果を、米国・カリフォルニア大学San Diego Health(UCSDH)のJocelyn Keehner氏らがNEJM誌オンライン版2021年9月1日号のCORRESPONDENCEで報告した。 UCSDHでは、2020年12月中旬からBNT162b2(ファイザー)とmRNA-1273(モデルナ)による予防接種を開始し、2021年3月までに全職員の76%がワクチン接種を完了、7月には87%が完了した。新型コロナウイルスの感染者は2021年2月初旬までに減少し、3~6月は検査陽性者が月30人未満だった。しかし、6月15日にカリフォルニア州のマスク着用義務が解除され、7月末にはデルタ変異株がUCSDH分離株の95%以上を占めるようになり、ワクチン接種完了者を含めて感染者が急増した。 UCSDHではワクチン接種の有無に関係なく、毎日、1つ以上の症状もしくは曝露があれば鼻腔スワブのRT-PCR検査が実施されている。2021年3月1日~7月31日に227人が陽性となり、そのうち130人はワクチン接種2回完了しており、7人が接種1回のみ、90人が未接種だった。症状が見られたのは、接種2回完了者130人中109人(83.8%)、未接種者90人中80人(88.9%)であった。死亡者はおらず、入院は1人(ワクチン未接種)だった。 ワクチン有効性を月別にみると、3~6月は90%を超えていたが、7月は65.5%(95%信頼区間[CI]:48.9~76.9)に急激に低下した。7月の発症率をワクチン接種完了月で分けて算出すると、1~2月に接種完了した職員の1,000人当たりの発症率は6.7(95%CI:5.9〜7.8)、3~5月に接種完了した職員では3.7(95%CI:2.5〜5.7)で、1~2月に完了した職員のほうが高かった。なお、ワクチン未接種者の7月の発症率は16.4(95%CI:11.8~22.9)だった。 著者らは、6月から7月にかけてのワクチン有効性の大きな減少はデルタ変異株の出現と免疫力低下の両方が原因で、カリフォルニア州でのマスク着用義務の終了とそれによるコミュニティでの曝露リスク増大により悪化した可能性を指摘し、「この結果は、回避可能な疾患や死亡を防ぎ、社会の混乱を回避するために、ワクチン接種の拡大のほか、屋内でのマスク着用や集中的な検査をすぐに復活させることの重要性を強調している」とまとめている。

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第75回 【特集・第6波を防げ!】政治家の目論見?コロナ陰性証明が自腹の怪

希望者全員へのワクチン接種が初冬には完了することを見越した国民の行動制限緩和案として、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部がこのほど発表した「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方」。大都市圏を中心に年初からこれまでの期間のほとんどが、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用されている。出口の見えないコロナ禍に対して蓄積した国民の不満をワクチン接種の進展に応じて少しでも解消したいという思いがあるのだろう。と言えば聞こえがいいが、正直なところ自民党総裁や任期満了に伴う衆議院選を目前にした時期の発表であるため、普段なら陰謀論に対して眉間にしわを寄せがちな私自身もどうしても疑いの目で見てしまう。今回の行動制限緩和の肝となっているのがワクチン接種歴やPCR検査などの陰性結果の証明書を基にした「ワクチン・検査パッケージ」だ。要は感染リスクの少ない国民の都道府県をまたぐ移動やイベント参加、夜間の酒類提供を伴う会食などを解禁することで国民の不満解消や経済浮揚につなげるというもの。同時にこの件では「陰なる意図」というか政権のある種の真意も見え隠れする。ワクチン接種証明に代わる検査での陰性証明に関して「検査費用には、基本的に公費投入はしない」と明記しているからだ。つまり頻回な検査のわずらわしさやそれに伴う費用負担を感じる個人が「しゃあないから、ワクチンを打とう」となる方向へと暗に誘導しているとも受け取れる。私個人はできるだけワクチン接種率が向上することがコロナ禍収束への大前提と考えているので、ワクチン接種へ誘導すること自体を否定はしない。ただ、この種のものはやり方を間違えると、さらなる不信感や陰謀論を招くことになる。今回の措置を実行する際に、ワクチン非接種者のPCR検査必要時の検査費用に公費を投入しない前提ならば、最近までに判明しているワクチン接種で得られるメリット、具体的には高齢者での重症者や医療施設などでのクラスター発生の激減、ブレイクスルー感染者での重症化抑止レベルなどについて、より簡潔かつ分かりやすく発信する必要がある。つまるところ「ワクチン接種が現時点では最善策。ただし接種しない人の選択権は認めるが、すでに説明したように科学的に信頼性のあるデータからメリットは示されているので、もし打ちたくないのであれば、申し訳ないが都度必要になる陰性証明の費用は自己負担でお願いしたい」という趣旨の説明を行うべしということだ。もちろん以前と比べ厚生労働省などはワクチンに関してこれまでにないほど丁寧なQ&Aページなどを用意しており、何もしていないわけではないことは承知している。しかし、これらのページで紹介されている情報は多くが臨床試験段階のものに留まっていて、説明内容も分かりにくい。そして何よりこれまでワクチン接種のメリットの発信は、専門家個人や官公庁や自治体の発信に依存していることが多く、行動制限を決定している側である政治から語られることはほとんどなかった。泥臭い言い方になって恐縮だが、官僚や専門家ももちろんだが、人前に立ちメディアにも報じられることが圧倒的に多い政治の側から生身の声で語られることなしでは、この問題は半歩たりとも前進しないと個人的には感じている。同時にこの際に政治の側からもう一つ発信してほしい情報がある。それは「ワクチン接種を選択しない人が今後自らとその周囲の感染リスクを最小化するためにとるべき行動様式」に関してだ。もちろんこの情報にはほとんど目新しいものはないだろう。だが、国民に対して平等性を重んじるべき政治側には、このことも親身に訴える義務があると考える。同時にこのことは接種しない権利を選択するにあたって国民はどのような責任を持つかという自覚を促すことにもなる。今回の行動制限緩和が単なる選挙用でないならば、政治の側はこうした点でその覚悟を示して欲しいものだ。官僚にゆだねられた空疎な文言を棒読みし、中途半端に経済を横目に見ながら不適切に使われてきた結果、伝家の宝刀から錆びだらけのカッターナイフに落ちぶれた緊急事態宣言の二の舞は、一国民としてもうこりごりである。

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事例034 新型コロナウイルス感染症のPCR検査で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説新型コロナウイルス感染症疑いがぬぐい切れない患者にSAR-COV-2核酸検出(以下「PCR検査」)を3回実施したところ、1回分がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用され査定となりました。患者は感染拡大区域に居住しており、発熱が続いたのちに倦怠感を訴えていたために2回の検査陰性後も新型コロナウイルス感染症を強く疑い、3回目のPCR検査が実施されたものでした。しかしながら、3回目のPCR検査の請求は認められませんでした。新型コロナウイルス感染症にかかる診療報酬の通知や疑義解釈が多く発出されています。査定の根拠が記載された通知があるのではないかと調べたところ、2020年3月4日に「COVID19の確定診断に至るまでのPCR検査は2回まで」と通知で定められていました。さらに同年9月28日には、PCR検査の「1回目及び2回目」のみ、医師が必要と判断した医学的理由を記載すると通知があり、3回目以降の記述はありません。したがって、感染疑いの場合は医学的理由を記載しても当初の規定通り2回が限度と推測できます。最近に至るまでは2回以上実施している場合でも査定はありませんでした。しかし、ある時期から前出の規定を厳格に適用して、審査が行われるようになっています。他のPCR検査の査定事例を調べてみても、医学的根拠の薄い3回目はほぼすべてが過剰を事由に査定となっています。また、2回目であっても症状から医学的に強く疑うことなく、「内視鏡検査実施前」、「院内感染防止」、「感染拡大地域居住」という摘要欄への記載である場合、認められない傾向が強くなっていることにご留意ください。

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mRNAワクチン後の心筋炎、日本でも10~20代男性で多い傾向/厚労省

 ファイザー社および武田/モデルナ社ワクチン接種後、アナフィラキシーは若年女性で、心筋炎関連事象については若年男性で報告頻度が高いことが示された。9月10日開催の第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会と合同開催)の報告より。同会では他に使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている該当ロットの武田/モデルナ社ワクチン接種後死亡例についての現時点での評価結果、継続実施中のコホート調査の最新結果も報告された1)。接種後のアナフィラキシー、現在の発生状況 ファイザー社ワクチンについて、製造販売業者からアナフィラキシー疑いとして報告された件数は8月22日までの集計で24件(100万回接種当たり)と、前回報告から変化はなかった(米国では7月22日までの集計で5.0件/100万回、英国では8月25日までの集計で12.1件/100万回)2)。 武田/モデルナ社ワクチンについては、同様に8月22日までの集計で12件(100万回接種当たり)と、前回より2件増加したがほぼ変化はなかった(米国では7月31日までの集計で4.9件/100万回、英国では8月25日までの集計で15.5件/100万回)。 今回公開された年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンは30代女性で30.2件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンは20代女性で6.7件/100万回と最も高く、若年女性で多く報告されている。心筋炎は10~20代男性で頻度高い傾向、必要な注意喚起は? 心筋炎関連事象疑いとして報告されたのは、ファイザー社ワクチンが前回より3件増の62件、武田/モデルナ社ワクチンが前回より14件増の27件であった。100万回当たりの件数はファイザー社ワクチンが0.6件、武田/モデルナ社ワクチンが1.6件となっている2)。 年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンが20代男性で7.7件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンが10代男性で17.1件/100万回と若年男性で最も高くなっている(ただし、現状10代の推定接種回数は他年代と比較して低い点に留意が必要)。なお、参考資料として提示されたCOVID-19感染者の心筋炎関連事象者数は、15~40歳未満男性で推計834件/100万回となっている。 国内の心筋炎関連事象疑いの報告事例においては、因果関係が疑われている若年男性に係る事例では、引き続きほとんどの事例で軽快または回復が確認されている3)。2回目接種後数日以内に発症する若年の男性での報告が多いこと、典型的な症状としてはワクチン接種後4日程度の間に、胸痛や息切れが出ることが想定されることから、こうした症状が現れた場合は医療機関を受診することを厚労省のWebサイト(Q&A)4)等で注意喚起を行っている。遅延性の皮膚反応はファイザー社ワクチンでも 武田/モデルナ社ワクチン後に報告されていた遅延性の皮膚反応が、ファイザー社ワクチンにおいても1回目接種後0.23%にみられ、40~50代女性に多くみられたことが報告された。継続的に実施されている「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」から、伊藤 澄信氏(順天堂大学)が報告した5)。 ファイザー社ワクチン後に健康観察日誌が回収できた1万9,783人中46人(0.23%)で1回目の接種後に遅延性の皮膚反応が報告され、40代女性で0.52%、50代女性で0.45%と多い傾向がみられた。平均消失日は12.8±2.7日、10日時点の最大径は9cmであった。 なお、同武田/モデルナ社ワクチン接種者への調査では、1万29人中195人(1.94%)で報告されており、平均消失日は12.5±2.3日、10日時点の最大径は30cmであった。該当ロット接種後の死亡例、現時点での評価結果 使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている武田/モデルナ社ワクチンの3つのロットのうち、異物混入は報告されていないものの、同時期に同じ設備で製造されたロットの1つ(3004734)において、3例の死亡例が報告されている。うち38歳男性について死因が判明し、致死性不整脈であったと報告された6)。 専門家による因果関係評価ではγ(情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの)とされ、「剖検の結果、急性死が示唆されること、死因に影響を及ぼす損傷を認めず中毒学的にも異常を認めないことから死因は致死性不整脈と考えると報告されており、ワクチンの影響は不明とされている。致死性不整脈は確認されたものではなく除外診断であり、ワクチンと死亡との因果関係については評価不能である。使用ロットに異物混入があったとした場合に異物が本症例の死亡に与えた影響についても同様に評価不能である」とされている。 他2例については剖検結果待ちおよび死因検索中で死因は判明していない。参考文献・参考サイトはこちら1)第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料2)資料1-7-1 副反応疑い報告の状況について3)資料1-7-2 副反応疑い報告の状況について(報告症例一覧)4)厚生労働省新型コロナワクチンQ&A「ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか。」5)資料2(スライド1~26)新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(13)6)資料1-6-1 モデルナ筋注使用見合わせロットに係る副反応疑い報告(死亡)の状況

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