サイト内検索|page:40

検索結果 合計:1614件 表示位置:781 - 800

781.

TIA/脳梗塞患者、長期の心血管リスクは?/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)および軽度虚血性脳卒中を発症後の心血管イベントの長期的なリスクは知られていない。フランス・パリ第7大学のPierre Amarenco氏らは、21ヵ国のレジストリデータを解析し、TIA/軽度虚血性脳卒中の発症から1年後の心血管イベントのリスクが、5年後も持続していることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号に掲載された。脳卒中後の新たなイベントのリスクは、発症後10日間は増大し、その後は発症後1年まで比較的安定するとされるが、1年以降の脳卒中のリスクを評価した研究は少なく、再発リスクを検討した試験の多くは単施設で行われたものだという。5年フォローアップした3,847例のデータを解析 本研究(TIAregistry.orgプロジェクト)では、2009~11年にTIAおよび軽度虚血性脳卒中患者4,789例を登録した21ヵ国のレジストリデータを解析し、2016年に1年時のアウトカムの結果を報告しており、今回は5年時の長期的なアウトカムの報告が行われた(AstraZeneca社など3社の助成による)。 レジストリへの登録前7日以内にTIA/軽度虚血性脳卒中を発症した患者を対象とした。1年時のアウトカム研究に参加した61施設のうち、5年時に登録患者の50%以上のフォローアップデータを有していた42施設を選出した。 主要アウトカムは、非致死的脳卒中、非致死的急性冠症候群、心血管死のうち最初に発生したイベントの複合であった。 5年フォローアップには3,847例(80.3%)が含まれた。各施設の5年フォローアップ患者の割合の中央値は92.3%(IQR:83.4~97.8)だった。心血管イベント発生率、1年時が6.4%、2〜5年時も6.4% 対象の平均年齢は66.4±13.2歳で、59.8%が男性であった。1年コホートのうち5年解析に含まれなかった患者は、5年解析に含まれた患者に比べ、高血圧、脂質異常症、喫煙者が少なく、修正Rankinスケール、NIH脳卒中スケール、ABCD2のスコアが低かった。 5年時の主要アウトカムのイベント発生は469例(心血管死:96例、非致死的脳卒中:297例、非致死的急性冠症候群:76例)に認められ、推定累積イベント発生率は12.9%(95%信頼区間[CI]:11.8~14.1)であった。このうち、235例(50.1%)は2~5年の期間に発症した。絶対イベント発生率は、1年時が6.4%であり、2~5年の期間でも6.4%だった。 5年時までに、脳卒中は345例が発症し、推定累積イベント発生率は9.5%(95%CI:8.5~10.5)であった。このうち、149例(43.2%)が2~5年の期間に発症した。心筋梗塞は、5年時までに39例が発症した。 全死因死亡は373例(推定5年累積イベント発生率:10.6%)、心血管死は96例(2.7%)、脳卒中またはTIAの再発は621例(16.8%)、急性冠症候群は84例(2.4%)に認められ、大出血は53例(1.5%)、頭蓋内出血は39例(1.1%)にみられた。 多変量解析では、同側大動脈のアテローム性動脈硬化(p=0.001)、心原性脳塞栓症(p=0.007)、ベースラインのABCD2スコア(0~7点、点数が高いほど脳卒中のリスクが高い)≧4点(4〜5点:p=0.01、6〜7点:p=0.04)が、2~5年の期間の脳卒中再発リスクの独立した予測因子であったが、神経画像上の脳病変はリスクの上昇とは関連しなかった。 著者は、「TIAおよび軽度虚血性脳卒中の患者では、心血管イベントのリスクが5年にわたり持続しており、イベントの半数は2〜5年の期間に発生していた」とまとめ、「継続的な2次予防策が、脳卒中の再発を抑制する可能性がある」と指摘している。

783.

握力が5kg低いと全死亡リスクが2割高い/BMJ

 握力と健康アウトカムの関連が指摘されている。英国・グラスゴー大学のCarlos A. Celis-Morales氏らは、UK Biobankのデータを解析し、握力は全死因死亡のほか、心血管疾患、呼吸器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、がんの発生やこれらの疾患による死亡と関連し、従来の診察室ベースのリスク因子に加えると、死亡や心血管疾患の予測能を改善することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2018年5月8日号に掲載された。筋機能が低下するほど、死亡率や罹患率が増加することが多くの研究で示されている。また、低い握力は不良な健康アウトカムの範囲の拡大と関連し、年齢や性別に握力測定を加えると、死亡の予測能が強化されることが報告されている。50万人以上で、疾患別の発生率、死亡率との関連を評価 研究グループは、握力と疾患別の発生率、死亡率の関連を評価し、測定項目に加えることでリスクスコアの予測能を増強するかを検証するために、地域住民ベースの前向き研究を行った。 2007年4月~2010年12月の期間に、年齢40~69歳の地域住民がUK Biobankに登録され、このうち握力のデータがある50万2,293例を解析に含めた。被験者は、握力の強さで4群に分類された(Q1:最も弱い群、Q2:2番目に弱い群、Q3:2番目に強い群、Q4:最も強い群)。 握力の強さと、全死因死亡、心血管疾患、呼吸器疾患、COPD、がん(全がん、大腸、肺、乳房、前立腺)の発生率、死亡率の関連を解析した。握力の5kg低下ごとに、死亡リスクが女性で20%、男性で16%増加 全体の平均年齢は56.5(SD 8.1)歳、54.5%が女性であった。平均フォローアップ期間は7.1年(範囲:5.3~9.9)で、この間に1万3,322例(2.7%)が死亡した。 握力が5kg低下するごとに、全死因死亡のハザード比(HR)は男女とも有意に上昇した(女性のHR:1.20、p<0.001、男性のHR:1.16、p<0.001)。同様に、心血管死(1.19、p<0.001、1.22、p<0.001)、呼吸器疾患死(1.31、p<0.001、1.24、p<0.001)、COPD死(1.24、p=0.01、1.19、p<0.001)、全がん死(1.17、p<0.001、1.10、p<0.001)、大腸がん死(1.17、p=0.01、1.18、p<0.001)、肺がん死(1.17、p<0.001、1.08、p=0.001)、乳がん死(1.24、p<0.001)のHRも、握力5kg低下ごとに男女とも有意に上昇したが、前立腺がん死のHR(1.05、p=0.29)には有意な差を認めなかった。これらの関連は、全般に若い年齢層のほうが、わずかに強かった。 筋力低下(女性:握力<16kg、男性:握力<26kg)は、女性の大腸がん、男性の前立腺がん、男女の肺がんを除き、健康アウトカムのハザードの上昇と関連した。 また、従来の診察室で測定するリスク因子(年齢、性別、糖尿病、BMI、収縮期血圧、喫煙)に、握力測定を加えると、C-indexの変化で評価した予測能が、全死因死亡(C-indexの変化:0.013、95%信頼区間[CI]:0.011~0.015、p<0.001)、心血管死(0.012、0.007~0.017、p<0.001)、心血管疾患の発症(0.009、0.007~0.010、p<0.001)に関して有意に改善された。 著者は、「握力の潜在的な臨床的有用性を確立するには、リスクスコアやリスクスクリーニングにおける握力測定の導入に関して、さらなる検討が求められる」と指摘している。

784.

心房細動の発症、リスク1つでも明らかに上昇/BMJ

 心房細動の生涯リスクは、指標年齢(55歳、65歳および75歳)にかかわらず、リスク因子を有していない場合で約5分の1、1つ以上のリスク因子があると約3分の1強に上昇することが、米国・ボストン大学のLaila Staerk氏らによるフラミンガム心臓研究を基にした解析の結果、明らかにされた。これまで、心房細動の生涯リスクは40歳以上で約4分の1と推定されてきた。心房細動の短期的なリスク因子は確立されているが、リスク因子の負荷が心房細動の生涯リスクにどれほど影響するかは不明であった。結果を踏まえて著者は、「心房細動の疾病負担を減らす予防的な取り組みは、修正可能な境界域および明らかなリスク因子を目標とし、複数の併存疾患を考慮すべきであろう」と述べている。BMJ誌2018年4月26日号掲載の報告。55歳、65歳、75歳時点での心房細動生涯リスクを推定 研究グループは、指標年齢55歳、65歳および75歳時に心房細動が認められなかったフラミンガム心臓研究の登録例を解析対象とした。 指標年齢時のリスク因子(喫煙、飲酒、BMI、血圧、糖尿病、心不全または心筋梗塞の既往)のプロファイルから、至適リスク(全リスク因子が至適:喫煙未経験、飲酒は男性で週14単位以下、女性で7単位以下、BMI 25未満、収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満、空腹時血糖値100mg/dL未満または随時血糖値140mg/dL未満、心不全または心筋梗塞の既往歴なし)、境界リスク(境界域のリスク因子はあるが、それ以外は至適)、および高リスク(明らかなリスク因子が1つ以上ある)の3群に分類し、指標年齢別に心房細動以外の死亡の主な原因を調整した指標年齢時から95歳時までの心房細動の生涯リスクを算出した。年齢を問わず、高リスク群が至適リスク群よりも一貫して高値 指標年齢55歳群の解析対象は5,338例(男性2,531例、47.4%)で、このうち247例(4.6%)は至適リスク、1,415例(26.5%)が境界リスク、3,676例(68.9%)が高リスクであった。高リスクの割合は、指標年齢の上昇に伴い徐々に増加した。 指標年齢55歳において、心房細動の生涯リスクは37.0%(95%信頼区間[CI]:34.3~39.6%)であった。リスクカテゴリー別では、至適リスク群で23.4%(95%CI:12.8~34.5%)、境界リスク群で33.4%(95%CI:27.9~38.9%)、高リスク群で38.4%(95%CI:35.5~41.4%)であった。明らかなリスク因子を1つ以上有している場合、心房細動の生涯リスクは少なくとも37.8%であった。 指標年齢65歳群および75歳群においても、リスク因子の負荷と心房細動の生涯リスクとの関連に同様の傾向が確認された。指標年齢65歳群(4,805例)では、心房細動の生涯リスクは全体33.7%、至適リスク群18.1%、境界リスク群26.1%、高リスク群35.8%で、75歳群(3,199例)ではそれぞれ30.8%、15.4%、23.6%、32.2%であった。

785.

喫煙による難聴リスク~日本の大規模コホート

 わが国の職域多施設研究であるJapan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study(J-ECOH Study)において、喫煙が難聴(とくに高音域)リスクと関連することが示された。この喫煙による過剰リスクは、禁煙後、比較的短期間で消失するという。Nicotine & Tobacco Research誌オンライン版2018年3月14日号に掲載。 本研究は、難聴リスクと喫煙状況・喫煙量・禁煙との関連を検討した、わが国の大規模コホート研究である。ベースライン時に難聴を認めなかった20~64歳の労働者5万195人を最大8年間追跡した。純音聴力検査を毎年実施し、1kHzおよび4kHzにおける難聴について調べた。喫煙と難聴の関連はCox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、3,532人に高音域の難聴、1,575人に低音域の難聴が発症した。・生涯非喫煙者と比較した現在喫煙者のハザード比(HR)は、高音域の難聴で1.6(95%信頼区間:1.5~1.7)、低音域の難聴で1.2(同:1.1~1.4)であった。・高および低音域の難聴リスクは、どちらも1日喫煙本数と共に増加した(傾向のp<0.001)。・過去喫煙者のHRは、高音域の難聴で1.2(同:1.1~1.3)、低音域の難聴で0.9(同:0.8~1.1)であった。・難聴リスクは禁煙により低下し、禁煙後5年未満の群においても低下していた。

786.

日本人の学歴・職歴と認知症の関連に糖尿病は関与するか

 欧米では、低い社会経済的地位(SES)と認知症との関連は生活習慣病(糖尿病)を介すると報告されている。しかし、わが国では低SESと認知症の関連は研究されていない。今回、敦賀看護大学(福井県)の中堀 伸枝氏らの研究から、低SESと認知症の間のメディエーターとして、生活習慣病の役割はきわめて小さいことが示唆された。BMC Geriatrics誌2018年4月27日号に掲載。 本研究は、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた後ろ向き症例対照研究である。富山県在住の65歳以上(入院および非入院)の人をサンプリングレート0.5%で無作為に選択、うち1,303人が参加に同意した(回答率84.8%)。全体として、認知症137人および認知症ではない対照1,039人を同定した。必要に応じて、参加者と家族または代理人との構造化インタビューを実施し、参加者の病歴、生活習慣(喫煙および飲酒)、SES(学歴および職歴)を調査した。Sobel検定を用いて、低SESが生活習慣病を介した認知症の危険因子である可能性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・認知症のオッズ比(OR)は、低学歴(6年以下)の参加者で高学歴の参加者より高く(年齢・性別での調整OR:3.27、95%CI:1.84~5.81)、また、事務の職歴より肉体労働の職歴を持つ参加者で高かった(年齢・性別での調整OR:1.26、95%CI:0.80~1.98)。・職歴について調整後、低学歴の参加者における認知症のORは3.23~3.56であった。・以前の習慣的な飲酒歴および糖尿病・パーキンソン病・脳卒中・狭心症/心血管疾患の病歴が、認知症リスクを増加させることが認められた。・学歴は、飲酒、喫煙、糖尿病、パーキンソン病、脳卒中、心血管疾患に関連していなかった。・職歴は、糖尿病および脳卒中に関連していた。・低学歴と認知症の関連における糖尿病の役割は、きわめて限られていることが示された。

787.

日本人高齢者の歩数と死亡率

 これまでの研究では、高齢者の日常的な歩行活動の評価はアンケートに基づいている。今回、愛媛大学の山本 直史氏らは、客観的に歩行活動を評価する手段として歩数計を用いて、歩数と全死因死亡率の関連を検討した。その結果、1日平均歩数が多いと全死因死亡率が低いことが示唆された。BMC public health誌2018年4月23日号に掲載。 本コホート研究には、身体的に自立している地域在住の71歳の日本人419人(男性228人、女性191人)が参加した。1日の歩数は、ベースライン時に連続7日間、腰に装着した歩数計で測定した。1日平均歩数によって参加者を四分位に分け(第1四分位:4,503歩/日未満、第2四分位:4,503~6,110歩/日、第3四分位:6,111~7,971歩/日、第4四分位:7,972歩/日以上)、平均9.8年間(1999~2010年)追跡した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に76人(18.1%)が死亡した。・1日平均歩数の各四分位における死亡のハザード比(性別、BMI、喫煙、飲酒、薬剤服用を調整)は、最低四分位から順に1.00(基準)、0.81(95%CI:0.43~1.54)、1.26(同:0.70~2.26)、0.46(95%CI:0.22~0.96)であった(傾向のp=0.149)。・最高四分位の参加者は、最低四分位の参加者と比較して死亡リスクが有意に低かった。

788.

死亡リスクが低い飲酒量、ロング缶で週5本まで?/Lancet

 アルコール摂取の低リスク推奨量は、各国のガイドラインで大きな差があるという。英国・ケンブリッジ大学のAngela M. Wood氏らは、約60万人のアルコール摂取状況を解析し、死亡リスクが最も低い閾値は約100g*/週であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2018年4月14日号に掲載された。国ごとで低リスク推奨量にばらつきがあるのは、最も死亡リスクが低い飲酒量の閾値の曖昧さや、心血管疾患のサブタイプに関連する、アルコール摂取に特異的な帰結の不確実性を反映している可能性があるためとされる。*アルコール量の目安:ビール(5%)500mLで20g19の高所得国の前向き研究83件のデータを解析 研究グループは、全死因死亡および心血管疾患のリスクが最も低いアルコール摂取量の閾値を明らかにするために、心血管疾患の既往歴のないアルコール摂取者59万9,912例のデータを解析した(英国医学研究審議会などの助成による)。 19の高所得国の3つの大規模なデータソース(Emerging Risk Factors Collaboration、EPIC-CVD、UK Biobank)から、個々の参加者のデータを収集し、統合解析を行った。83件の前向き研究を施設、年齢、性別、喫煙、糖尿病などで補正して、用量反応関係の特性を明らかにし、アルコール摂取量の100g/週ごとのハザード比(HR)を算出した。 ベースラインのアルコール摂取量を、週当たりの摂取量(g)で8つの群に分類し、アルコール摂取量と、全死因死亡、心血管疾患全体、心血管疾患のサブタイプとの関連を評価した。HRは、アルコール摂取量の長期的なばらつきの推定値で修正した。適量は、グラスワイン、1パイントのビールで、週に5~6杯 登録のベースライン年は1964~2010年で、平均年齢は57±9歳、44%が女性だった。喫煙者は21%で、アルコール摂取量100g/週以上が約50%を占め、350g/週以上は8.4%であった。 540万人年のフォローアップ期間に、4万310例(血管系:1万1,762例、新生物:1万5,150例を含む)が死亡し、3万9,018例(脳卒中:1万2,090例、心筋梗塞:1万4,539例、心筋梗塞を除く冠動脈疾患:7,990例、心不全:2,711例、他の心血管疾患による死亡:1,121例を含む)が心血管疾患イベントを発症した。 全死因死亡のHRは、アルコール摂取量が増加するに従って曲線を描いて上昇し、最も死亡リスクの低い摂取量は約100g/週未満であった。これは週に、英国の標準的なグラスワインまたは1パイントのビールで、およそ5~6杯に相当する。 アルコール摂取量の増加とリスクの上昇に、ほぼ直線的な関連が認められた心血管疾患のサブタイプとして、脳卒中(摂取量の100g/週増加のHR:1.14、95%信頼区間[CI]:1.10~1.17)、心筋梗塞を除く冠動脈疾患(1.06、1.00~1.11)、心不全(1.09、1.03~1.15)、致死的高血圧性疾患(1.24、1.15~1.33)、致死的大動脈瘤(1.15、1.03~1.28)が挙げられた。 これに対し、アルコール摂取量の増加とともに、心筋梗塞のリスクは低下し、対数線形的な関連がみられた(HR:0.94、95%CI:0.91~0.97)。 40歳時の平均余命は男女とも、アルコール摂取量が>0~≦100g/週の集団と比較して、>100~≦200g/週の集団は約6ヵ月短く、>200~≦350g/週の集団は約1~2年、>350g/週の集団は約4~5年短縮した。 著者は、「これらのデータは、現行の多くのガイドラインで推奨されているアルコール摂取量制限値を、さらに低くすることを支持するものである」としている。

789.

早期NSCLC、ニボルマブによる術前免疫療法が有望/NEJM

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の治療法には、過去10年間、ほとんど進展がないという。米国ジョンズ・ホプキンス大学のPatrick M. Forde氏らは、ニボルマブによる術前補助療法は副作用が少なく、計画された手術を遅延させず、切除腫瘍の45%に病理学的奏効をもたらしたとの研究結果を、NEJM誌オンライン版2018年4月16日号で報告した。早期肺がん患者では、PD-1経路の遮断により、宿主免疫の適合能が増大し、腫瘍のクローン不均一性が減弱するため、抗腫瘍効果が増強する可能性がある。また、原発巣は、腫瘍特異的T細胞の増殖と活性化、および微小環境の全身的な監視の抗原源として活用される可能性があるため、術前免疫療法は興味深いアプローチとされる。安全性と実行可能性を検証するパイロット試験 研究グループは、早期NSCLCにおけるニボルマブによる術前補助療法の安全性と実行可能性を評価するパイロット試験を実施した(Cancer Research Institute-Stand Up 2 Cancerなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)が0/1で、未治療の外科的切除が可能な早期NSCLC(StageI、II、IIIA)の患者であった。ニボルマブ(3mg/kg)は2週ごとに2回投与し、初回投与から約4週後に手術が計画された。 主要エンドポイントは安全性と実行可能性とした。また、原発巣の病理学的奏効、PD-L1の発現、遺伝子変異負荷、遺伝子変異関連のネオアンチゲン特異的T細胞応答の評価も行った。なお、ネオアンチゲンは、がん細胞の遺伝子変異に由来する、細胞傷害性Tリンパ球の標的となる抗原である。 2015年8月~2016年10月の期間に、米国の2施設に22例が登録された。PD-L1発現の有無にかかわらず奏効 全体の平均年齢は66.9±8.3歳、女性が11例(52%)であった。腺がんが62%、StageII/IIIAが81%、喫煙者/元喫煙者が86%を占めた。小細胞肺がん(SCLC)が見つかった1例は治療を中止した。 術前ニボルマブ療法による未知の毒性作用は認められなかった。治療関連有害事象は23%(5/22例、95%信頼区間[CI]:7.8~45.4)にみられたが、Grade3以上は1件のみだった。22例中20例が、計画された2回の投与を完遂した。 治療関連の手術の遅延は認めなかった。2回目の投与から手術までの期間中央値は18日(範囲:11~29)であり、21例中20例(95%)で腫瘍の完全切除が達成された。 切除された20個の腫瘍のうち9個(45%)で病理学的奏効(残存する活動性腫瘍の割合が10%以内)が得られた。3例では、病理学的完全奏効(活動性腫瘍なし)が達成された(1例は肺門リンパ節に腫瘍が残存)。原発巣の病理学的退縮率中央値は-65%であった。また、病理学的奏効例のうち、PD-L1陽性は3例、陰性は2例で、不明が4例だった。 治療前の遺伝子変異負荷の平均値は、病理学的奏効例が非奏効例に比べ有意に高く(p=0.01)、変異負荷はPD-1遮断による病理学的奏効の深さの重要な決定因子と考えられた。 評価が可能であった9例中8例で、腫瘍および末梢血の双方のT細胞クローン数が、ニボルマブ投与後に増加していた。また、病理学的完全奏効が得られた原発巣における遺伝子変異関連のネオアンチゲン特異的T細胞クローンは、治療後2~4週に末梢血で急速に増殖しており、これらのクローンには、ニボルマブ投与前の末梢血では検出されなかったものも含まれた。 著者は、「術前免疫チェックポイント遮断療法は、現在、乳がんやNSCLCの第III相試験など、さまざまながん種で検討が進められており、早期がんの再発抑制や治癒における術前PD-1遮断療法の役割を明らかにするには、これらの試験の長期的なフォローアップが必要である」としている。

790.

有病率8.6%。中国のCOPD有病率とリスク因子/Lancet

 中国の20歳以上の成人における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率は8.6%に達し、喫煙、環境大気汚染、痩せ、小児期の慢性咳嗽、親の呼吸器疾患歴、小学校以下の教育歴がリスク因子であることが、中国・中日友好病院呼吸器医療センターのChen Wang氏らが行ったChina Pulmonary Health(CPH)研究で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年4月9日号に掲載された。2002~04年に行われた40歳以上の中国人の調査では、COPDの有病率は8.2%(男性:12.4%、女性:5.1%)と報告され、リスク因子として環境大気汚染や喫煙の重要性が指摘されている。一方、若年成人におけるCOPD有病率の上昇を示唆する報告があるが、40歳未満の中国人のデータはこれまでなかったという。約5万人の横断研究 CPHは、中国本土の10の省、自治区、直轄市の20歳以上の成人を対象とする全国的な横断研究である(中国衛生部、科学技術部の助成による)。 すべての参加者は、気管支拡張薬吸入後に肺機能検査を受けた。COPDの診断は、GOLD判定基準(2017年版)に従い、非COPD、Grade I~IVのCOPDに分類した。多変量ロジスティック回帰分析で、全体および非喫煙者におけるリスク因子を同定した。 2012年6月~2015年5月の期間に、5万7,779人に参加を呼びかけ、そのうち信頼性の高い肺機能検査の結果が得られた5万991人(男性:2万1,446人、女性:2万9,545人)を解析に含めた。過去に肺機能検査歴のある患者は12.0%のみ 2015年の20歳以上の中国人におけるCOPD患者数は9,990万人(95%信頼区間[CI]:7,630万~1億3,570万)であり、全体のCOPD有病率は8.6%(7.5~9.9)であった。 男性の有病率は11.9%(95%CI:10.2~13.8)で、女性の5.4%(4.6~6.2)に比べ高率であった(p<0.0001)。この男女間の差は、全体および非喫煙者でも全年齢層で認められた。また、40歳以上の有病率は13.7%(12.1~15.5)と、20~39歳の2.1%(1.4~3.2)に比し高かった(p<0.0001)。さらに、農村部住民は都市部住民よりも有病率が高かった(9.6 vs.7.4%、p=0.047)。過去に肺機能検査歴があるのは12.0%(95%CI:8.1~17.4)のみだった。 COPDのリスク因子として、20箱年以上の喫煙(オッズ比[OR]:1.95、95%CI:1.53~2.47、p<0.0001)、直径2.5μm未満の粒子状物質(PM2.5)の平均年間曝露量が50~74μg/m3(1.85、1.23~2.77、p=0.005)および75μg/m3以上(2.00、1.36~2.92、p=0.001)の場合、BMI<18.5の痩せ(1.43、1.03~1.97、p=0.03)、小児期(14歳未満)のときどき(年に1~3ヵ月)発現する慢性咳嗽(1.48、1.14~1.93、p=0.006)および頻繁(年に3ヵ月以上)に発現する慢性咳嗽(2.57、2.01~3.29、p<0.0001)、親の呼吸器疾患歴(1.40、1.23~1.60、p<0.0001)が挙げられた。このうち喫煙を除く6つの因子は、非喫煙者においても有意なリスク因子であった。 COPD発症のリスクが低い因子は、初級中学~高級中学(Middle and high school)の教育歴(OR:0.76、95%CI:0.64~0.90、p=0.003)と、大学(college)以上の教育歴(0.47、0.33~0.66、p=0.0002)であった。 著者は、「COPD関連合併症や死亡を低減するために、予防およびスパイロメトリーによるCOPDの早期検出を公衆衛生上の最優先課題とすべき」と指摘している。

791.

タバコの50%値上げ、健康や経済に有益/BMJ

 タバコの値上げは、所得上位層20%よりも所得下位層20%に対して、健康や財政面の利益を提供しており、タバコ税増税は非感染性疾患および貧困に関する持続可能な開発目標(sustainable development goals:SDGs)を支持し、疾病に対する生活資金的な保障を提供する。カナダ・セント・マイケルズ病院のSujata Mishra氏らが、タバコの50%値上げによる影響を検証した研究結果を報告した。タバコ税増税は、2030年までに非感染性疾患の死亡率を3分の1まで低下させるというSDGs達成に重要であるが、タバコ税増税による健康や財政面への影響に関する研究はほとんどなかった。BMJ誌2018年4月11日号掲載の報告。13ヵ国の男性喫煙者5億人を対象に、タバコの値上げによる影響を評価 研究グループは、中所得13ヵ国の総計20億人のうち男性喫煙者5億人を対象に、所得分類ごとのタバコ価格の値上げによる健康、財政、税に関する利益を評価するコンパートメントモデルを開発した。 主要評価項目は、獲得生存年、回避可能医療費、高額医療支出を回避する男性数、貧困度、および所得分類ごとの追加税収とした。タバコの50%値上げが約4億5,000万人の生存年数を延長、低所得層に有益 タバコ価格の50%値上げは、喫煙をやめることによる、13ヵ国の約4億5,000万人(うち約半数は中国)の生存年数の延長につながる可能性が示された。 タバコ価格の50%値上げによる生存年数延長者は、全13ヵ国において、所得下位層20%の男性が所得上位層20%の男性と比較して、6.7倍多いと予測された(1億5,500万人 vs.2,300万人)。所得下位層の喫煙者が禁煙によって得る平均獲得生存年は、所得上位層の5.1倍であった(1.46年 vs.0.23年)。回避可能な医療費1,570億ドル(1,130億ポンド、1,270億ユーロ)のうち、所得下位層が回避可能な医療費は所得上位層と比べて4.6倍に上ることが予測された(460億ドル vs.100億ドル)。 また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジのない7ヵ国(インド、インドネシア、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、中国、メキシコ)における約1,550万人の男性が、高額医療支出の回避が可能と予測された。結果として、880万人(このうち半分は所得下位層)が、世界銀行が定義する極度の貧困状態以下に陥ることを回避すると予測された。この880万人の男性は、前述の7ヵ国における極度の貧困の中で生活する2.4%に相当していた。 追加税収は1,220億ドルで、そのうち所得上位層が納める金額は、受ける恩恵が少ないにもかかわらず、所得下位層の2倍に上ることが予測された。所得下位層は、31%が生存年数の延長を獲得し、29%が疾患ごとの医療費や高額医療支出を回避可能だが、追加税収の支払いは10%のみであることが予測された。 著者は研究の限界として、個々の喫煙者の行動に対するタバコ税値上げの長期的影響を検証したものではないこと、所得下位層の禁煙による実際の利益を過小評価している可能性などを挙げている。

792.

減塩によるポピュレーション予防戦略の推進を!(解説:有馬久富氏)-840

 食塩摂取は高血圧の確立された危険因子であり、減塩により血圧は有意に低下することが示されている1)。そのため、2012年に発表されたWHO(世界保健機関)のナトリウム摂取量に関するガイドラインでは、一般成人の食塩摂取量を5g/日未満にすべきとしている2)。 今回、米国NHANES(国民健康栄養調査)の対象者から無作為抽出された827名を対象に24時間蓄尿検査を実施した成績がJAMAに報告された3)。その結果、20~69歳の米国人における食塩摂取量推定値は、平均9.2g(男性10.7g、女性7.7g)であった。本研究は、米国人を代表するサンプルにおいて、24時間蓄尿法を用いて厳格に食塩摂取量を推定した、非常に重要な研究であるといえる。 一方、日本人の一般住民において24時間蓄尿を用いて厳密に塩分摂取量を推定した研究は少ないが、1996~99年に実施されたINTERMAP研究における日本国内4地域の40~59歳の男女における食塩摂取量推定値は、男性で平均12.3g、女性で10.9gであった4)。2016年の国民健康・栄養調査結果では、国民1人1日当たりの食塩摂取量は平均9.9g(男性10.8g、女性9.2g)であり、低下傾向にある5)。対象・推定方法が異なるため厳密な比較はできないが、今回発表された米国の成績と比べると、とくに女性において日本人の食塩摂取量が多いようにみえる。 前述したように、WHOは、一般成人の食塩摂取量を5g/日未満にすべきと推奨している2)。日本では、食事摂取基準(2015年版)6)が食塩摂取量男性8g未満・女性7g未満を、健康日本21(第2次)7)が平均食塩摂取量8gを目標としている。本邦の食塩摂取量は低下傾向にあるが、これらの目標値には到達していない。今後、高齢化とともに絶対数が増加すると見込まれる循環器疾患を予防していくうえで、高血圧者を対象とするハイリスク戦略に加えて、国民全体の血圧分布を低い方向にシフトさせるポピュレーション戦略は必要不可欠である。国をあげての減塩対策をさらに推進し、目標まで食塩摂取量を減らしていく必要がある。■参考1)Graudal NA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;11:CD004022.2)World Health Organization. Sodium intake for adults and children ;2012.3)Cogswell ME, et al. JAMA. 2018 Mar 7. [Epub ahead of print]4)Stamler J, et al. J Hum Hypertens. 2003;17:655-775.5)厚生労働省健康局健康課栄養指導室. 平成28年国民健康・栄養調査結果報告. 厚生労働省;2017.6)厚生労働省健康局がん対策・健康増進課栄養指導室.「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書. 厚生労働省;2014.7)厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会 次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会. 健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料. 厚生労働省;2012.

793.

コーヒーと大動脈弁狭窄症リスク~7万人の前向き研究

 コーヒーには、心血管系に有害もしくは有益な作用を及ぼしうる生物学的活性物質が多く含まれているが、コーヒー摂取と大動脈弁狭窄症リスクの関連は不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna Larsson氏らの7万人超による前向き研究により、コーヒー摂取量と大動脈弁狭窄症リスクが正相関することが示された。Nutrition, metabolism, and cardiovascular diseases誌オンライン版2018年2月7日号に掲載。 この前向き研究には、ベースライン時のアンケートでコーヒー摂取量を回答した7万1,178人の男女が参加した。大動脈弁狭窄症の発症については、Swedish National Patient and Cause of Death Registersで同定した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間(15.2年)の間に、1,295人の参加者(男性777人、女性518人)が大動脈弁狭窄症と診断された。・年齢、性別、喫煙、ほかの危険因子の調整後、コーヒー摂取は用量反応的に大動脈弁狭窄症リスクと正相関していた(傾向のp=0.005)。・多変量ハザード比は、コーヒー2杯/日の増加当たり1.11(95%信頼区間:1.04~1.19)、摂取量最多のカテゴリー(6杯/日以上)を最少のカテゴリー(0.5杯/日未満)と比較すると1.65(95%CI:1.10~2.48)であった。この関連性はほかの危険因子によって変わらなかった。

795.

喫煙者の非扁平上皮肺がん、遺伝的寄与が大

 肺がんの発症には環境的因子や遺伝的因子の影響が強いが、組織型別の遺伝的寄与は不明である。メリーランド大学のShamus R. Carr氏らが喫煙者と非喫煙者における組織型への寄与を調査したところ、非喫煙者の非扁平上皮がんの発症における遺伝的素質を支持する結果が得られた。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2018年4月4日号に掲載。 著者らは、喫煙者(1,751例)と非喫煙者(818例)における肺がんの組織型への遺伝的寄与を評価するために、州のがんレジストリの肺がん症例(5,408例)にリンクした、集団ベースのコンピューター化された家系図リソースを分析した。肺がん症例における有意な過剰の関連性を調べるために統計的手法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・小細胞肺がんのサブセット(p=0.213)を除いて、分析したすべての肺がんの組織型によるサブグループで有意な過剰の関連性がみられた。・肺がんの喫煙者および非喫煙者の組織型によるサブセットを検討すると、過剰な関連性は、非喫煙者の非小細胞肺がんでみられ(653例、p=0.026)、とくに、非喫煙者の非扁平上皮がんでみられた(561例、p=0.036)。・非喫煙者の非扁平上皮がんの有意な過剰リスクを示した61家系が同定され、これらの高リスク家系の症例は女性のほうが多かった。

796.

アルコール以外の飲料摂取とうつ病リスク

 最近の疫学研究では、アルコール以外のさまざまな種類の飲料の消費とうつ病リスクとの関連が検討されているが、その関連性は矛盾した結果として報告されている。韓国・慶煕大学校のDami Kang氏らは、この関連性についての定量的な評価を行うため、観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2018年3月2日号の報告。 PubMedおよびWeb of Scienceのデータベースより、2017年2月までの適格な研究を検索し、それらの参考文献リストを調査した。重要な交絡因子を調整した後、プールされた相対リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出するため、ランダム効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・飲料消費とうつ病との関連を研究した15件の観察研究(横断研究:9件、プロスペクティブ研究:6件)より、2万572例のうつ病患者を含む34万7,691例が抽出された。・コーヒーの消費に関して、高消費群vs.低消費群のプールされたRRは、0.73(95%CI:0.59~0.90)であった。・紅茶の消費に関して、高消費群vs.低消費群のプールされたRRは、0.71(95%CI:0.55~0.91)であった。・しかし、ソフトドリンクの消費に関しては、高消費群vs.低消費群のプールされたRRは、1.36(95%CI:1.24~1.50)であった。・これらの関連性では、性別、国、高消費のカテゴリおよび、アルコールや喫煙、身体活動といった調整因子による変化は認められなかった。 著者らは「コーヒーや紅茶の摂取が多いほど、うつ病リスクは低下し、ソフトドリンクの摂取が多いほど、うつ病リスクは上昇することが示唆された。今後、うつ病リスクに対するさまざまな種類の飲料の影響を明らかにし、決定的なエビデンスを提供するためには、よく設計された大規模な研究が必要である」としている。■関連記事アルツハイマーやうつ病の予防、コーヒーに期待してよいのか1日1杯のワインがうつ病を予防とくに女性は要注意!コーヒーの飲み過ぎでうつ病に

798.

高齢者の身体機能、社会経済学的地位により年単位の差/BMJ

 高齢者において、社会経済的地位と身体機能には独立した関連性が認められ、その強さおよび整合性は、非感染性疾患(糖尿病、アルコール多飲、高血圧、肥満、身体不活動、喫煙)のリスク因子と類似していることが明らかにされた。スイス・ローザンヌ大学病院のSilvia Stringhini氏らが、24ヵ国で行われたコホート試験を解析し明らかにした。これまでに、社会経済的地位が不良なことや非感染性疾患のリスク因子による、損失生存年数(years of life lost:YLL)については明らかにされているが、身体機能へどれほど影響するかについては明らかにされていなかった。BMJ誌2018年3月23日号掲載の報告。結果を踏まえて著者は、「これらすべてのリスク因子に取り組むことが、身体機能良好で余生を過ごせる時間を大幅に増やすことにつながることが示唆された」と述べている。身体機能について歩行速度の指標を用いて評価 研究グループは、ヨーロッパ、米国、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの世界保健機関(WHO)加盟国のうち24ヵ国で、1990~2017年に行われた37件のコホート試験について解析を行った。被験者は45~90歳の男女計10万9,107例だった。 身体機能の評価には、歩行速度検査の運動耐容能の指標(index of overall functional capacity)を用いた。社会経済的地位や非感染性疾患リスク因子に曝露された被験者と非曝露の被験者の、歩行速度の差を定量化し、損失身体機能年数を求めて評価した。社会経済的地位が低い60歳男性の身体機能、6.6年後退 混合モデルによる解析の結果、社会経済的地位が低い60歳男性の歩行速度は、社会経済的地位が高い66.6歳男性の歩行速度と同じだった(損失身体機能年数:6.6年、95%信頼区間[CI]:5.0~9.4)。同様に女性についてみると、社会経済的地位が低いことによる損失身体機能年数は4.6年(3.6~6.2)だった。 社会経済的地位が低いことによる損失身体機能年数差は、高所得国で低中所得国より大きく、高所得国では男性が8.0(5.7~13.1)年、女性が5.4(4.0~8.0)年に対し、低中所得国ではそれぞれ2.6(0.2~6.8)年、2.7(1.0~5.5)年だった。高所得国の中でも、米国はヨーロッパ諸国に比べて格差が大きかった。 その他のリスク因子についてみると、身体活動が不十分な人の60歳までの損失身体機能年数は、男性が5.7(4.4~8.1)年、女性が5.4(4.3~7.3)年。肥満による損失身体機能年数は、それぞれ5.1(3.9~7.0)年と7.5(6.1~9.5)年、高血圧症は2.3(1.6~3.4)年と3.0(2.3~4.0)年、糖尿病は5.6(4.2~8.0)年と6.3(4.9~8.4)年、喫煙は3.0(2.2~4.3)年と0.7(0.1~1.5)年だった。

799.

心不全ガイドラインを統合·改訂(前編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会から新たな心不全診療ガイドラインが公表された。本ガイドラインは、11学会(日本循環器学会、日本心不全学会、日本胸部外科学会、日本高血圧学会、日本心エコー図学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本超音波医学会、日本糖尿病学会、日本不整脈心電学会)、班員31名、協力員25名、外部評価員6名という巨大な組織により策定されたものである。 公表を受け、日本循環器学会学術集会(3月23~25日、大阪)では、ガイドライン作成班による報告セッションが組まれ、班長を務めた筒井裕之氏(九州大学)が説明した。講演内容を含め、本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。心不全の定義を明確化 まず、これまで不明確であった心不全の定義が明確化された。新しい定義は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」というものである。 加えて、非医療従事者向けの定義も書き込まれた。「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というものである。心不全という疾患は不可逆性に進行し、命に関わる状態である点が明記されている。進行過程を4つのステージに区分。ステージごとの治療最適化を目指す 心不全が進行性の疾患である点も強調され、発症前から治療抵抗性に至るまでの過程が「A」から「D」の4ステージに分けられた(A:器質的心疾患がなく危険因子のあるステージ、B:器質的心疾患があるステージ、C:心不全症候のある(既往も含む)心不全ステージ、D:治療抵抗性心不全ステージ)。2001年に、米国ガイドラインが導入した捉え方である(Yancy CW, et al. Circulation.2013;128:e240)。また、ステージごとに治療目標が設定された。これにより、ステージごとに適切な治療が提供されることが期待されている。心不全発症前から積極介入。「予防」に注力 前回ガイドラインとの最大の違いは、まだ心不全を発症していないステージ「A」と「B」が治療対象となっている点である。心疾患危険因子のみを有する「ステージA」では、それら危険因子の管理により、心不全発症のリスク因子である器質的心疾患発症の「予防」を図り、虚血性心疾患や左室肥大など器質的病変が生じている「ステージB」では、心不全発症の「予防」が推奨されている。 このように新ガイドラインは、心不全の「発症予防」にも力をいれている。「心不全予防」という章も、「心不全治療の基本方針」の前に新設された。その中には、高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動の項が設定され、心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が推奨クラスI、エビデンスレベルAとして推奨された理由が特筆されている。薬剤治療はEFの高低で3類型に分けて整理 心不全に対する治療の考え方も、大きく変わった。「ステージC」心不全例に対しては、左室収縮能(EF)に応じた治療の選択が推奨されるようになった。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40-50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」ごとに治療方針は異なる(なお心不全の「分類」の項では、この3類型に、HFrEFから治療によりEFが40%以上に回復した「HFpEF improved、HFrecEF」という類型を加えた4類型が示されている)。 もっともHFpEFとHFmrEFに関しては、現時点では予後改善の確たるエビデンスがない。そのため、HFpEFに対しては「心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療」が基本とされ、HFmrEFについては「この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する」と記載するに留まっている。「緩和ケア」を初めて明記·詳述 心不全発症例に対する「緩和ケア」の推奨も、今回改訂の大きな目玉である。この「緩和ケア」に関し筒井氏は、同日夕方に行われたガイドライン記者会見において、「心不全患者への緩和ケアは終末期医療に限定されない」点を強調した。緩和ケアは「ステージC」の段階から推奨されている。つまり、病状末期の「ステージD」に限定されていない。これは心不全の進展はさまざまな因子に影響を受けるため個人差が大きく、「終末期」がいつ訪れるか予知が困難なためである。この点は、経過の予想が比較的容易ながん治療と大きく異なる。そのため心不全では、発症直後から緩和ケアを行うべきだというのが、新ガイドラインの立場である。

800.

早期胃がん切除後のピロリ除菌は有益か/NEJM

 早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を受けた患者に対し、抗菌薬によるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の除菌治療はプラセボと比較して、1年以降に評価した異時性胃がんの発生リスクは低く、3年時に評価した胃体小彎の腺萎縮についても改善効果があることが示された。韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らが、470例を対象に行った前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表した。これまで、H. pylori除菌治療による、組織学的改善や異時性胃がんの予防に関する長期的効果は不明だったという。異時性胃がんの発生と胃体部小彎の腺萎縮の程度を比較 研究グループは、早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を行った470例を、無作為に2群に分け、一方には抗菌薬によるH. pylori除菌治療を行い、もう一方にはプラセボを投与した。 主要評価項目は2つで、(1)追跡1年以降に内視鏡検査で認められた異時性胃がんの発生、(2)追跡3年時点における胃体部小彎の腺萎縮の程度のベースラインからの改善とした。治療群の半数で胃体部小彎腺萎縮が改善 被験者のうち修正intention-to-treat解析の対象者は、治療群が194例、プラセボ群が202例の計396例だった。平均年齢は、治療群59.7歳、プラセボ群59.9歳、男性がそれぞれ72.7%、77.7%を占めた。飲酒者は55.2%、63.4%、喫煙者は41.2%、37.6%。 中央値5.9年の追跡期間中に、異時性胃がんを発生したのは、プラセボ群が13.4%(27例)だったのに対し、治療群は7.2%(14例)だった(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.26~0.94、p=0.03)。 組織学的解析を行ったサブグループ327例において、胃体部小彎における腺萎縮の程度についてベースラインからの改善が認められた患者の割合は、プラセボ群15.0%だったのに対し、治療群は48.4%と大幅に有意に高率だった(p<0.001)。 重篤な有害事象は認められなかったが、軽度の薬剤性有害事象(味覚変化、下痢、めまいなど)については、治療群の頻度が有意に高かった(42.0% vs.10.2%、p<0.001)。

検索結果 合計:1614件 表示位置:781 - 800