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コーヒーや炭酸飲料、潰瘍性大腸炎リスクを減少/日本人での研究

 食事は潰瘍性大腸炎リスクに影響する可能性があるが、日本人でのエビデンスは乏しい。今回、日本潰瘍性大腸炎研究グループが、コーヒーやその他のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究で検討した。その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においても、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示された。愛媛大学の田中 景子氏らがJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年12月10日号で報告。 本研究では、潰瘍性大腸炎の症例群として384人、対照群として665人が参加した。コーヒー、カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、炭酸飲料、チョコレート菓子の摂取量について半定量的食物摂取頻度調査票を用いて調査し、性別、年齢、喫煙、飲酒量、虫垂炎既往、潰瘍性大腸炎の家族歴、学歴、BMI、ビタミンC、レチノール、総エネルギー摂取量で調整した。なお、本研究は厚生労働科学研究費補助金の「潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究」班として実施された。 主な結果は以下のとおり。・コーヒーと炭酸飲料の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが減少し、有意な用量反応関係が認められた。一方、チョコレート菓子の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが有意に高かった。・カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連は認められなかった。・カフェインの総摂取量は潰瘍性大腸炎リスクと逆相関し、両極の四分位間の調整オッズ比は0.44(95%信頼区間:0.29~0.67)であった。

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塩分過多は糖尿病のリスクも高める可能性

 糖分の取り過ぎは2型糖尿病リスクを高めることはよく知られている。一方、高血圧リスクとの関連で注意が呼び掛けられることの多い塩分の取り過ぎも、2型糖尿病リスクを高める可能性のあることが報告された。米チューレーン大学公衆衛生熱帯医学大学院のLu Qi氏らの研究によるもので、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」11月号に掲載された。 この研究は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて行われた。ベースライン時に糖尿病、慢性腎臓病、がん、心血管疾患の既往がなく、料理に塩を加える頻度を問う質問への回答が記録されていた40万2,982人を解析対象とした。中央値11.9年の追跡で1万3,120人の2型糖尿病発症が記録されていた。 料理に塩を「全く、またはほとんど加えない」と回答していた群(55.5%)を基準として、交絡因子調整後の2型糖尿病発症ハザード比は、「時々加える」群(28.1%)が1.11(95%信頼区間1.06~1.15)で、「だいたい加える」群(11.6%)は1.18(同1.12~1.24)、「常に加える」群(4.8%)は1.28(1.20~1.37)であり、塩を加える頻度が高いほど2型糖尿病リスクが高いことが明らかになった(傾向性P<0.001)。 サブグループ解析から、年齢や性別、人種、BMI、C反応性タンパク、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・脂質異常症の有無、食習慣(高血圧予防のためのDASH食に近い食習慣か否か)、教育歴、所得、タウンゼント剥奪指数(貧困など社会的不平等の程度を表す指標)などの違いでは、有意な交互作用は観察されなかった。一方、媒介分析からは、塩の添加と2型糖尿病リスクとの有意な関連は、BMIが33.8%、ウエスト/ヒップ比が39.9%、C反応性タンパクが8.6%媒介していることが示された。また、BMIの媒介効果を除脂肪量(主に筋肉や骨の重量)と体脂肪量とに分けて解析すると、前者は2.0%のみであり、体脂肪量の媒介効果が大きいことが明らかになった。 これらの結果からQi氏は、「塩分制限が高血圧や心血管疾患のリスクを抑制することは既に知られているが、われわれの研究は食卓塩をテーブルに置かないことが、2型糖尿病の予防にも役立つことを初めて示した」と語っている。また、塩の添加と2型糖尿病リスクとの関連のメカニズムについては、「明確には分からないが、塩を加えることで過食につながり、肥満やそれに伴う炎症が亢進するためではないか」と考察している。 研究グループは、このトピックに関する次のステップとして、塩分添加量を研究参加者自身が管理することによって、2型糖尿病のリスクが抑制されることを実証するための臨床試験が必要だとしている。ただしQi氏は、そのような前向き研究のエビデンスのない現時点におけるアドバイスとして、「なるべく減塩を心掛けた食生活を、早めにスタートするに越したことはない」と述べている。

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統合失調症患者に対する心血管リスク最適化プログラム

 心血管疾患は、統合失調症患者の早期死亡の主な原因の1つである。関連する修正可能なリスク因子には、不健全なライフスタイル、薬剤性副作用、身体的併存疾患などが含まれる。スペイン・ビック大学のNuria Riera-Molist氏らは、統合失調症患者の心血管リスク(CVR)低下のための6ヵ月間にわたる多因子CVR介入の有効性を評価する目的で本研究を実施した。その結果、患者中心の多因子CVR介入は統合失調症患者の6ヵ月後のCVRを改善し、それは主に脂質プロファイルの改善によりもたらされていたという。Journal of Psychiatric Practice誌2023年11月1日号の報告。 地域の精神保健センターにおいて、2群間並行ランダム化臨床試験を実施した。1つ以上のCVR因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のマネジメントが不十分な統合失調症患者46例を、介入群または対照群にランダムに割り付けた。介入群では、健康的なライフスタイルの促進、CVR因子の薬理学的管理、向精神薬の最適化、動機付けフォローアップなどの患者中心のアプローチ(心血管リスク最適化プログラム[Programa d'optimitzacio del RISc CArdiovascular:PRISCA])を行った。主要アウトカムは、両群のベースライン時と比較した6ヵ月後のCVRの変化とし、Framingham-REGICOR関数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、介入群23例、対照群23例にランダムに割り付けられた。・ベースライン時に最も高頻度で認められたCVR因子は、高コレステロール血症(84.8%)であり、次いで喫煙(39.1%)であった。・介入群では、6ヵ月後のREGICORスコアの有意な低下が認められたが(相対リスクの低減率:20.9%)、対照群では有意な変化が認められなかった。 【介入群】REGICORスコア:-0.96%、95%信頼区間(CI):-1.60~-0.32、p=0.011 【対象群】REGICORスコア:0.21%、95%CI:-0.47~0.89、p=0.706・介入群では、LDLコレステロールの有意な低下も確認された(-27.14mg/dL、95%CI:-46.28~-8.00、p=0.008)。

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ソーシャルメディアの使用、健康に及ぼす影響とは/BMJ

 ソーシャルメディアの利用は、若年層において、好ましくない健康リスク行動と関連しており、なかでも健康リスク行動を表示する情報内容は、不健康な食生活やアルコール摂取と強く関連することが、英国・グラスゴー大学のAmrit Kaur Purba氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年11月29日号で報告された。10~19歳を対象としたメタ解析 研究グループは、年齢10~19歳の青少年におけるソーシャルメディアの利用と健康リスク行動との関連を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(英国医学研究審議会[MRC]などの助成を受けた)。 1997年1月1日~2022年6月6日に医学関連データベースに登録された文献を検索した。健康リスク行動は、アルコール・薬物・タバコ・電子式ニコチン供給システム(いわゆる電子タバコ)の使用、不健康な食生活、不十分な身体活動、ギャンブル、反社会的行動、性的リスクのある行動、複数のリスク行動と定義した。 解析の対象とした論文は、ソーシャルメディア変数(利用時間[1日当たりの時間など]、使用頻度[日/週当たり、日常的に使用など]、健康リスク行動の内容を含む情報[例:Facebook上のアルコールの広告など]への曝露、その他のソーシャルメディア活動[オンラインプレゼンスの管理や方策など])および1つ以上の関連アウトカムを報告している研究とした。 126編の論文についてレビューし、73編をメタ解析に含めた。最終的に143万1,534人(平均年齢15.0歳)の青少年を解析の対象とした。使用頻度が高いと、多くの健康リスク行動と関連 メタ解析を含まない統合解析では、63.6%の研究がソーシャルメディアと不十分な身体活動には有益な関連を認めたと報告していたが、これを除いた場合、ほとんどの研究でソーシャルメディアと健康リスク行動には有害な関連があることが示された。 ソーシャルメディアの使用頻度が低い場合と比較して、高い場合に増加していた有害な健康リスク行動として、アルコール摂取(オッズ比[OR]:1.48、95%信頼区間[CI]:1.35~1.62、解析対象者数38万3,068人)、薬物使用(1.28、1.05~1.56、11万7,646人)、喫煙(1.85、1.49~2.30、42万4,326人)、性的リスク行動(1.77、1.48~2.12、4万7,280人)、反社会的行動(1.73、1.44~2.06、5万4,993人)、複数のリスク行動(1.75、1.30~2.35、4万3,571人)、ギャンブル(2.84、2.04~3.97、2万6,537人)が挙げられた。 ソーシャルメディア上で健康リスク行動を見せる情報内容への曝露がない場合と比較して、このような曝露がある場合にオッズが上昇していた有害な健康リスク行動として、電子式ニコチン供給システムの使用(OR:1.73、95%CI:1.34~2.23、解析対象者数72万1,322人)、不健康な食生活(2.48、2.08~2.97、9,892人)、アルコール摂取(2.43、1.25~4.71、1万4,731人)を認めた。利用者作成の情報、2時間以上の利用で、アルコール摂取が増加 アルコール摂取については、マーケティング担当者が作成したソーシャルメディアの情報内容(OR:2.12、95%CI:1.06~4.24)と比較して、利用者が作成した情報内容(3.21、2.37~4.33)に曝露した場合に、より強力な関連が確認された。 また、ソーシャルメディアの利用時間については、1日2時間未満の場合と比較して、2時間以上ではアルコール摂取のオッズが高かった(OR:2.12、95%CI:1.53~2.95、解析対象者数1万2,390人)。 GRADEによるエビデンスの確実性の解析では、不健康な食生活は「中」、アルコール摂取は「低」、その他のアウトカムは「非常に低」であった。 著者は、「今後は、因果関係を立証し、健康格差への影響を解明し、ソーシャルメディアのどの側面が最も有害かを明らかにするために、さらに質の高い研究を進める必要がある」とし、「本研究の知見は、主に横断研究に基づくもので、ソーシャルメディアの利用に関する自己報告による測定値を使用しており、未調整の多くの交絡因子による交絡が残存している可能性がある」と指摘している。

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喫煙はがんの抑制に関わる遺伝子の変異と関連

 喫煙ががんの主因であることは周知の事実だが、喫煙によりがんが発生する機序の一端を解き明かす研究結果が、カナダの研究グループにより発表された。この研究によると、喫煙は、DNAのストップゲイン変異と呼ばれる危険な変異と関連しており、この変異が特に、がん抑制遺伝子で多く認められることが明らかになったという。オンタリオがん研究所(OICR、カナダ)のJuri Reimand氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」に11月3日掲載された。 ストップゲイン変異では、DNA塩基の変異によりアミノ酸をコードする部分がタンパク質合成を終結させる終止コドンと呼ばれるコードに置き換わってしまう。その結果、正常なタンパク質が作られず、そのタンパク質が本来持つはずの機能を発揮できなくなる可能性がある。Reimand氏は、「われわれの研究により、喫煙が、がん抑制遺伝子の変異と関連することが明らかになった。がん抑制因子が作られなければ、細胞の防御機能が働かずに異常な細胞が増殖し続け、がんが発生しやすくなる」とOICRのニュースリリースで説明している。 Reimand氏らは、18の主要な組織に由来する1万2,341件のがんゲノムを解析し、一塩基置換(single-base substitution;SBS)がタンパク質のコーディング領域に及ぼす影響を調べた。その結果、SBSはがん発生において重要な経路や、TP53、FAT1、APCなどのがん抑制遺伝子に頻繁に影響を与えていることが明らかになった。特に肺がんでは、喫煙に起因するストップゲイン変異と喫煙量が強い相関を示し、それが最終的にはがんをより複雑で治療困難なものにする可能性のあることが示された。 Reimand氏は、「喫煙はDNAに大きなダメージを与え、細胞の機能に深刻な影響を与える。われわれの研究は、喫煙が、細胞の基本的な構成要素である重要なタンパク質の働きを阻害し、それが長期的な健康に影響を与え得る可能性を示したものだ」と述べている。 さらに、APOBECと呼ばれる酵素群(DNAやRNAのシトシンをウラシルに置換する機能を持つ)もストップゲイン変異の発生に関わる要素として特定され、特に、乳がん、頭頸部がん、子宮体がん、肺がん、食道がんと強く関連することが示された。このほか、不健康な食生活、飲酒なども同様にDNAにダメージを与える可能性があるが、Reimand氏は、「これらが具体的にどのようにDNAに作用するのかを完全に理解するためには、さらなる情報が必要だ」と述べている。 論文の筆頭著者である、トロント大学(カナダ)のNina Adler氏は、喫煙は世界的に見てもがんの主因の一つであり、本研究結果は、その関連を理解するための重要な手がかりとなり得るとの見方を示す。同氏は、「喫煙ががんの原因となり得ることは広く知られているが、ライフスタイル要因ががんリスクに及ぼす影響を理解するためには、その影響を分子レベルで説明することが重要な一歩となる」と説明している。

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若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80

 高血圧とがんリスクとの関連についての報告は一貫していない。今回、岡山大学の久松 隆史氏らが、日本人の前向きコホートNIPPON DATA80において、高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査したところ、30~49歳における高血圧は、後年における大腸がん死亡リスクと独立して関連していることがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2023年11月22日号に掲載。 研究グループは、NIPPON DATA80(厚生労働省の循環器疾患基礎調査)において、ベースライン時に心血管系疾患や降圧薬服用のなかった8,088人(平均年齢48.2歳、女性56.0%)を2009年まで追跡。喫煙、飲酒、肥満、糖尿病などの交絡因子で調整したFine-Gray競合リスク回帰を用いて、血圧が10mmHg上昇した場合のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。逆の因果関係を考慮し、追跡開始後5年以内の死亡を除外して解析した。 主な結果は以下のとおり。・29年の追跡期間中に、胃がんで159人(2.0%)、肺がんで159人(2.0%)、大腸がんで89人(1.1%)、肝臓がんで86人(1.1%)、膵臓がんで68人(0.8%)が死亡した。・高血圧は大腸がん死亡リスクと正の関連を認めたが、他のがんによる死亡リスクとは関連を認めなかった。・収縮期および拡張期血圧と大腸がん死亡率の関連は30~49歳で明らかだった(収縮期血圧におけるHR:1.43、95%CI:1.22~1.67、拡張期血圧におけるHR:1.86、95%CI:1.32~2.62)が、50~59歳および60歳以上では認められなかった(収縮期および拡張期血圧における年齢交互作用のp<0.01)。・これらの関連は、喫煙、飲酒、肥満、糖尿病の有無で層別化した解析でも同様にみられた。

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医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD

 経済協力開発機構(OECD/本部:フランス・パリ)から加盟38ヵ国に関する医療レポートが、11月7日に公表された。レポートでは、新型コロナ感染症(COVID-19)が与えた各国への影響のほか、医療費、医療の質などに関する内容が記載されている。わが国は、平均寿命はOECDの中で84.5歳と1番長いが、受診率の多さ、医師数、電子化の遅れなど他の国との差もあり、今後の課題も提示されている。 以下に概要を示す。【COVID-19禍での国民の健康状態について】・2020~22年のCOVID-19での10万人当たり死亡率は、ノルウェー、インドが同順で38人、ニュージーランドが45人、わが国が46人と4番目に低かった。・2020年は平均余命が伸びた半面、21年は0.1歳短くなった。・COVID-19初期(2020年)には17%の人がうつの症状を訴えていた。・自殺者は2020年に10万人当たり15.4人だった(参考:2019年14.6人)。【医療支出の現状と今後について】・2022年または直近年のGDPに占める医療支出の割合は、アメリカの16.6%、ドイツの12.7%、フランスの12.1%に次いで、わが国は11.5%と4番目に多かった。・2021年の政府支出に占める公的医療費支出の割合は、わが国が22%と1番高く、アメリカ、イギリス、アイルランドが21%と続いた。・2021年の受診回数は、韓国15.7回が1番多く、わが国は11.1回と2番目に多く、スロバキアが11.0回と続いた。OECDの平均受診回数は6.0回だった。・2021年の高齢化率は、65歳以上の人口割合で、わが国は28.9%と1番高く、次いでイタリアの23.6%、ギリシャの22.8%と続いた。OECDの高齢者割合の平均は18.0%だった。【医療資源の活用について】・2021年の1,000人当たりの病床数は、韓国の12.8床が1番多く、次いでわが国の12.6床、ブルガリアの7.9床と続いた。OECDの平均病床数は4.3床だった。・2021年の病院支出における内訳では、OECDの平均では入院が64%、日帰りが6%、外来が24%、介護が3%、その他が3%だった。これに対しわが国は、入院が63%、日帰りが1%、外来が23%、介護が10%、その他が3%と介護の割合が高かった。・2021年の平均在院日数は、韓国が18.5日と1番多く、次いでわが国が16.0日、ハンガリーが9.7日と続いた。OECDの平均在院日数は7.7日だった。・2019年または直近年の人口100万人当たりのCT、MRIなどの医療機器数は、わが国が1番多く178台、次いでオーストラリアが88台、アメリカが86台と続いた。OECDの平均医療機器台数は48台だった。・2021年の医師数は、1,000人当たりでギリシャが1番多く6.3人、次いでポルトガルの5.6人、オーストリアが5.4人と続いた。わが国は5番目に少なく2.6人だった。また、OECDの平均医師数は3.7人だった。【予防医療について】・2021年または直近年の喫煙率を男女合わせた数字でみると、インドネシアが1番多く33%、次いでブルガリアが29%、トルコが28%と続いた。わが国は男性27%、女性8%で、OECDの平均喫煙率は、男性20%、女性12%だった。・2021年または直近年の乳がん検診率(50~69歳女性)は、デンマークが1番多く83%、次いでフィンランドとポルトガルが82%と続き、わが国は45%だった。OECDの平均受診率は54%だった。【医療へのアクセスとデジタル化について】・2021年または直近年の医療での自己負担額割合は、トルコとクロアチアが1番低く1.4%、次いでコロンビアが1.7%と続き、わが国は2.4%だった。OECDの平均の医療での自己負担額割合は3.3%だった。・2021年の開業クリニックにおける電子カルテ利用率は、クロアチアが1番低く3%、次いでポーランドとスイスが30%と続き、わが国は42%と5番目に低かった。OECDの平均開業クリニックにおける電子カルテ利用率は93%で、欧米、とくに北欧の利用率はほぼ100%だった。

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アルコール依存症やニコチン依存症と死亡リスク

 一般集団を対象とした、アルコール依存症とニコチン依存症の併発とその後の死亡リスクとの関連についての知見は、不十分である。ドイツ・グライフスヴァルト大学のUlrich John氏らは、死亡率の予測における、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間との潜在的な関連性を分析した。その結果から、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間は、死亡するまでの期間に累積的な影響を及ぼす可能性が示唆された。European Addiction Research誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象サンプルは、18~64歳のドイツ北部在住の一般集団よりランダムに抽出した。1996~97年における過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間を、Munich-Composite International Diagnostic Interviewを用いて評価した。すべての原因による死亡率に関するデータは、2017~18年に収集し、分析には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間は相互に関連しており、死亡までの期間の予測因子であることが示唆された。・アルコール依存症歴のある人の29.59%は、現在ニコチン依存症であった。・アルコール依存症歴があり、現在起床してから30分以内に最初の喫煙を行う人は、アルコール消費量の少ない非喫煙者と比較し、早期死亡のハザード比が5.28(95%信頼区間[CI]:3.33~8.38)であった。 結果を踏まえ、著者らは「死亡リスクを低減させるためには、依存症からの寛解支援に加え、非依存者に対しても高リスクの飲酒や喫煙をやめるように支援することが、有益である」としている。

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大腸がんの新しい非侵襲的検査、便潜血より良好な検出感度/JAMA

 マルチターゲット便中RNA(mt-sRNA)検査(ColoSense)は、大腸がんおよび進行腺腫の検出感度が高く、従来の免疫便潜血検査(FIT)と比較し感度を有意に改善することが認められた。また、大腸内視鏡検査で病変が認められない特異度は、既存の非侵襲的な分子スクリーニング検査と同等であった。米国・ワシントン大学のErica K. Barnell氏らが、医療機器クラスIIIとしての承認申請を行うために、平均的リスクの45歳以上を対象に実施された盲検化第III相試験「CRC-PREVENT試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。分散型臨床試験により約1.4万人を登録、8,920例を解析 研究グループは、オンラインのソーシャルメディアを用いて参加者の募集活動を行い、2021年6月~2022年6月の間に、米国の49州において分散型ナースコールセンターを介し、平均的な大腸がんのリスクがある45歳以上の計1万4,263例を登録した。 登録された参加者には便検体採取キットを提供し、便検体採取後72時間以内に採取キットを中央検査施設に送付してもらい、その後、地域の内視鏡センターで大腸内視鏡検査を受けてもらった(内視鏡医は盲検下で検査を実施)。 便検体は、従来FIT、便中の8種類のRNA転写物濃度、および自己報告の喫煙状況を組み込んだmt-sRNA検査を行い、結果(陽性または陰性)を判定した。 主要アウトカムは、大腸がんおよび進行腺腫の検出に対するmt-sRNA検査の感度、および大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度とした。 登録された1万4,263例のうち、mt-sRNA検査および大腸内視鏡検査をいずれも完遂し、適格であった8,920例が解析対象となった。mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%、特異度は87.9% 8,920例(平均年齢55歳[年齢範囲:45~90]、女性60%、アジア系4%、黒人11%、ヒスパニック系7%)のうち、36例(0.40%)に大腸がん、606例(6.8%)に進行腺腫が認められた。 mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%(95%信頼区間[CI]:81~99)、進行腺腫検出感度は45.9%(95%CI:42~50)、大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度は87.9%(95%CI:87~89)であった。 mt-sRNA検査はFITと比較し、大腸がん(94.4% vs.77.8%、McNemarのp=0.01)および進行腺腫(45.9% vs.28.9%、McNemarのp<0.001)の感度が有意に高かった。

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米国がん協会、肺がん検診の対象枠を拡大

 米国がん協会(ACS)は、前回の2013年から10年ぶりに改訂された肺がん検診ガイドラインに関するレポートを、「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に11月1日発表した。改訂版のガイドラインでは、検診対象者の年齢と喫煙歴の基準が変更され、また、喫煙をやめてからの経過年数にかかわりなく喫煙歴のある全ての人に対する年1回の検診実施が推奨されている。 米国では、肺がんはがんによる死亡原因として最も多く、また、男女ともに、がんの診断件数としても2番目に多い。ACSは、2023年には23万8,340人(男性11万7,550人、女性12万790人)が新たに肺がんと診断され、12万7,070人(男性6万7,160人、女性5万9,910人)が肺がんにより死亡すると予測している。 肺がん検診を受けることが推奨される対象の基準に関して、前回のガイドラインから今回のガイドラインで変更された主な点は以下の通り。・対象年齢:前回の55〜74歳から50〜84歳へ・喫煙歴(パックイヤー):前回の30パックイヤー(1日1箱を30年)以上から20パックイヤー以上へ・禁煙年数:前回の15年以下から、禁煙年数にかかわりなく喫煙歴のある人は全てへ ACSの早期がん発見科学(Early Cancer Detection Science)のシニア・バイス・プレジデントであるRobert Smith氏は、「これまでのガイドラインでは、喫煙歴があっても禁煙から15年が経過すれば肺がんリスクは極めて低くなり、検診の対象から外しても良いと考えられていた。しかし、喫煙歴が極めて長い人では、実際には、肺がんの絶対リスクが継続していることが明らかになった。具体的には、禁煙後に肺がんリスクは多少低下するが、やがて平坦化した後に再び上昇に転じ、最終的にはかなり急増することが示されたのだ。例えば、タバコを1日に20本吸っていた場合には、肺がんリスクは年に約9%ずつ増加していた」と話す。 Smith氏によると、これらの推奨は、基本的には2年前に発表された米国予防医療専門委員会(USPSTF)の推奨と一致する内容であるが、唯一、禁煙年数に関係なく検診を推奨している点が異なるという。そのため、検診にかかる費用が保険でカバーされない患者が出てくるケースも見込まれると同氏は話す。 さらにSmith氏は、肺がん検診の対象となる人の中に健康保険未加入者が多いことを指摘する。同氏は、「検診対象となる現喫煙者や元喫煙者は、低所得者であることが多く、医療制度の中にうまく組み込まれていないため、その恩恵もあまり受けていない。喫煙には多くのスティグマがつきものであり、中でも喫煙が原因で生じる病気としての肺がんに関わるスティグマは多い」と話す。 米ブラウン大学医学部教授で、このガイドラインレポートの付随論評の共著者であるDon Dizon氏は、「喫煙者に対する低線量CTスキャンによる肺がん検診は、肺がんによる死亡を減少させることが示されている」と述べ、肺がん検診の重要性を強調する。その一方で同氏は、「それでも、肺がんリスクを低下させる最善の方法は、非喫煙者はそれを継続し、喫煙者であれば禁煙することだ」と主張する。 Dizon氏は、米国では検診対象者の18〜30%しか検診を受けていないことを指摘し、「禁煙年数を検診の基準から外すことで、検診を受ける人が増えるだろう」と話す。同氏によると、今回の改訂により検診を受ける人は、白人、ヒスパニック系、アジア系では30%、黒人では27%の増加が見込まれているという。 米ノースウェル・ヘルス社の呼吸器専門医であるBrett Bade氏は、「肺がんは今や、検診によりがんを早期発見すれば、新しい治療法によって生存が見込める疾患だ」と述べる。同氏によると、肺がん検診により、肺がんの50%が早期発見される可能性があるという。

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携帯電話の頻回な使用は精液の質を低下させる?

 スイスの研究者らが10年分以上のデータを解析した結果、携帯電話を頻回に使用する若い男性では携帯電話をあまり使用しない男性に比べて、精子濃度が低く、総精子数も少ないことが明らかになった。ジュネーブ大学(スイス)遺伝子医学・発達部門のRita Rahban氏らによるこの研究の詳細は、「Fertility and Sterility」に10月31日掲載された。 この研究の背景情報によると、過去50年間に精子濃度は、平均して精液1mL当たり9900万個から4700万個に減少したという。この現象は、環境要因(内分泌かく乱物質、農薬、放射線)と生活習慣(食事、アルコール、ストレス、喫煙)の双方が影響を及ぼした結果と考えられている。Rahban氏らは、この50年で使用が劇的に増加した携帯電話の使用もその一因ではないかと考え、今回の研究を実施した。携帯電話から発せられる電磁波については、健康に有害である可能性が指摘されている。 本研究では、2005年から2018年の間にスイスの6カ所の徴兵センターで募集した18歳から22歳の男性2,886人を対象に、携帯電話の使用頻度と精液の質との関連が調査された。対象者は精液サンプルを提出し、また、携帯電話の使用頻度や使用しないときの置き場所などのライフスタイルや健康に関する質問票に回答していた。 その結果、携帯電話の使用頻度が週に1回未満の男性では、1日の使用頻度が20回を超える男性に比べて精子濃度と総精子数が有意に高いことが明らかになった(精子濃度:5650万個/mL対4450万個/mL、総精子数:1億5370万個対1億2000万個、いずれも中央値)。この結果から、携帯電話の1日の使用頻度が20回を超える男性では、世界保健機関(WHO)の定める健康な男性の精液の基準値を下回るリスクが、精子濃度では30%、総精子数では21%高まるものと推定された。その一方で、携帯電話の使用と精子の形状や運動能力との間に関連は認められなかった。 さらに、このような携帯電話の使用頻度と精液の質の低下との関連は、2005年から2018年にかけて徐々に減弱していることも示された。Rahban氏は、「この傾向は、2Gから3Gへ、そして3Gから4Gへの移行に伴う携帯電話の送信出力の低下に対応していると考えられる」と述べている。同氏は、「4Gは2Gよりはるかに効率的なデータ伝送が可能なため、電磁波への曝露時間が短縮される。一般的に、4Gや5Gのような新しい世代のモバイル技術は、データ通信の速度と機能を向上させながら、電磁波への曝露レベルを減らすことを目指している」と説明する。 この研究には関与していない、米マイアミ大学保健システムの男性生殖医療・外科部長であるRanjith Ramasamy氏は、「この研究で観察された、携帯電話の使用が精子濃度や総精子数へ及ぼす影響が、男性の生殖能力に影響を与えている可能性は否定できない」と話す。同氏は、「この研究結果は、携帯電話が男性の生殖能力に及ぼす影響について、われわれの理解を再考させるものだ」とコメント。その上で、「精液の質が低下していることは多くの研究で示唆されているが、今回の知見を踏まえると、携帯電話の頻回な使用はその原因の一つなのかもしれない」との見方を示している。 ただしRamasamy氏は、この研究で示された携帯電話のヘビーユーザーの精子濃度(4450万/mL)は、WHOの男性不妊症の数値(1500万/mL)の2倍以上であることを指摘し、「携帯電話の使用が原因で男性が不妊症になるリスクは低い」と述べている。同氏は、「精子は睾丸で持続的に生成され、10週間ごとに更新される。このことは、たとえ携帯電話の使用と精液の質の低下が関連するとしても、多くの場合、その影響は可逆的であることを意味する。それゆえ、男性はこの結果に恐れを抱く必要はない」と話している。

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生体吸収型ステントの再挑戦やいかに(解説:野間重孝氏)

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン』が、昨年(2022年)改訂された。この記事はCareNet .comでも紹介されたので、ご覧になった方も多いのではないかと思う。 冠動脈疾患以外のすべての体中の血管の疾患を末梢動脈疾患(PAD)と呼び、さらに下肢閉塞性動脈疾患をLEAD、上肢閉塞性動脈疾患をUEADに分ける。脳血管疾患はこの分類からいけばUEADということになるが、こちらは通常別途議論される。そうするとPADの中で最も多く、かつ重要な疾患がLEADということになる。その危険因子としては4大危険因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙が挙げられるが、腎透析が独立した危険因子であることは付け加えておく必要があるだろう。 そのLEADの中でとくに下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染など肢切断リスクを持ち、早急な治療介入が必要な下肢動脈硬疾患がとくに「chronic limb-threatening ischemia :CLTI」と呼称され、「包括的高度慢性下肢虚血」と訳される。ガイドラインにもあるように速やかに血行再建術が施行される場合がほとんどであるため、その自然歴の報告は大変少ないものの、血行再建術が非適応ないし不成功だったCLTI患者の6ヵ月死亡率は、20%に上ることが報告されている。 今回の他施設共同研究では主要エンドポイントがスキャフォールド群で173例中135例、血管形成群で88例中48例となっているが、これは研究の対象患者が膝窩動脈疾患とはいってもCLTI例ばかりではなく、有症状ながらもそれほどの重症例ではないものも組み入れられていたためと考えられる。この結果は生体吸収型のステントにかなり有利なものになっているが、一方で批判的な見方も忘れてはならないと思う。 血管内治療に携わったことのある医師ならば、以前生体吸収型の冠動脈ステントがやはり今回のスポンサーであるアボットから発売されて一時話題になったが、血栓症のリスクが高いことが問題となり、現在はこの技術の開発や普及がほぼ中断された状態になっていることをご存じだと思う。 一方足の血管において、とくに膝窩動脈の治療においてはステントが血管内に残留していることによる足の可動制限が大きな問題となる。膝窩動脈の治療は、下肢動脈の他の部位の治療とは違った見方がされる必要があるのである。さらに足の血管は冠動脈に比して血流が遅く、血管内の炎症が進行しやすいため、血栓症のリスクが高まると考えられている。その点生体吸収型ステントは、一定期間で分解・吸収されるため、血管内に留まる時間が短く血栓症のリスクを下げるばかりでなく、可動制限が一定期間で解消されるのではないかと期待が持たれている。 しかしその一方、生体吸収性ステントは、金属製ステントよりも血栓の発症そのものは起こりやすく、また金属ステントに比して厚みのある構造になっていることから、留置後の血管治癒反応が起こりにくく、血管内腔にデバイスの一部が浮いた状態となる「遅発性不完全圧着」が生じ、これがさらに血栓症の危険を高めるのではないかとも危惧されている。 評者は今回の試みを評価するものではあるが、もうしばらくフォローアップ期間を置いて判断する必要があるのではないかと思う。また、重症例に絞った結果も知りたいところである。そして何といっても、外科的な治療との比較が行われることが重要なのではないかと考えるものである。評者は内科医であるから外科領域について軽々に言及することは控えなければならないが、あえていえば、最近末梢血管治療を手掛ける外科医(下肢の血管は血管外科医だけでなく形成外科でも一部手掛けられている)が、どんどん減少していること、それもあってか新しい術式の開発が積極的になされていないことが気になるところである。 なお、今回の研究は動脈硬化性狭窄を対象としているが、はっきり動脈瘤を形成している場合は、現在でも外科手術が第一選択であることは付け加えておかなければならないだろう。

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日常生活の中の短時間の身体活動でも寿命が延びるか

 日常生活における家事などの身体活動であっても、寿命延伸につながる可能性を示唆するデータが報告された。シドニー大学(オーストラリア)のMatthew Ahmadi氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Public Health」10月号に掲載された。数分程度の身体活動でも有意な影響が認められるという。ただし、身体活動の持続時間がより長くより高強度である場合に、寿命に対してより大きな影響が認められるとのことだ。 この研究では、英国で行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。余暇時間に積極的な運動を行っていない成人2万5,241人(平均年齢61.8±7.6歳、女性56.2%)を7.9±0.9年間追跡。身体活動量はウェアラブルデバイスにより把握した。追跡期間中に主要心血管イベント(MACE)が824件発生し、全死亡(あらゆる原因による死亡)は1,111人だった。なお、これまでの研究で、健康アウトカムとの関連が検討されていた最も短い身体活動持続時間は10分であることから、今回の研究では持続時間10分未満の身体活動の影響が検討された。 解析の結果、中強度以上の身体活動の持続時間が10分以下であっても、その時間の長さによって心臓発作や脳卒中、および全死亡リスクに差が認められることが明らかになった。Ahmadi氏は、「われわれの研究により、従来はスポーツなどの運動によって得られると考えられていた健康上のメリットが、日常生活での身体活動でも得られることが分かった。スポーツウェアやスポーツシューズを身に着けるまでもなく、家事やガーデニング、子どもと遊ぶことも健康にとって有益だ。この結果は運動が苦手な人、または運動をしたくてもできない状況の人にとって素晴らしい知見と言える」と話している。 明らかになった主な結果は以下の通り。いずれも1日の中で観察された、最も持続時間の長い中強度以上の身体活動時間(以下、最長身体活動持続時間)が1分未満であった群(全体の5.6%)と比較した結果であり、年齢や性別、喫煙・飲酒習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往、心血管疾患・がんの家族歴、座位行動時間、睡眠時間、教育歴、フレイル指数などの交絡因子の影響を調整済み。・最長身体活動持続時間が5~10分未満の群(52.6%)は、早期死亡リスクが52%低く、MACEリスクが41%低い。・最長身体活動持続時間が3~5分未満の群(26.7%)は、早期死亡リスクが44%低く、MACEリスクが38%低い。・最長身体活動持続時間が1~3分未満の群(15.1%)は、早期死亡リスクが34%低く、MACEリスクが29%低い。 なお、このような短時間の身体活動のメリットが示唆された一方、身体活動時間が長いと健康上のメリットがより大きいことや、身体活動中の運動強度が重要であることも明らかになった。運動強度については、1機会の身体活動のうち最低15%(1分間の場合は約10秒)は、高強度の負荷のかかる身体活動とすると効果が最大化すると考えられ、その条件を満たしていれば、たとえ最長身体活動持続時間が1分未満であっても、有意な影響が観察されたとのことだ。 これらの結果を総括してAhmadi氏は、「明らかになった結果は、日常生活の中で行われる短時間の身体活動が、心血管系に対して保護的に働く可能性を示している。それらの身体活動は、血圧や血糖値のコントロール、心肺機能の強化、酸化ストレスの抑制などを介して、健康上のメリットを発揮するのではないか」と述べている。

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飲酒をする人は緑内障になりやすい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第245回

【第245回】飲酒をする人は緑内障になりやすい?Unsplashより使用緑内障は、人間ドックで眼底や眼圧をみてもらわないとなかなか発見できない病気なので、定期的にチェックする必要があります。さて、日本から新たなエビデンスが発出されました。飲酒と緑内障の関係についてです。Sano K, et al.Association Between Alcohol Consumption Patterns and Glaucoma in Japan.J Glaucoma. 2023 Nov 1;32(11):968-975.これは、緑内障3,207例、マッチコホート3,207例を含んだ日本人の症例対照研究です。アルコールの摂取量が多いと緑内障の有病率が増えるのではないかという関連を検証したものです。詳細な飲酒パターンのほか、喫煙歴や生活習慣に関連する併存疾患など、さまざまな交絡因子を登録し、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、緑内障有病率のオッズ比を算出しました。その結果、男性においては、1週間当たり数日(オッズ比:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)、1週間当たりほぼ毎日(オッズ比:1.40、95%CI:1.18~1.66)の飲酒頻度は緑内障のリスクであることが示されました。生涯の総飲酒量でみると、1年当たり60杯超90杯以下(オッズ比:1.23、95%CI:1.01~1.49)、1年当たり90杯超(オッズ比:1.23、95%CI:1.05~1.44)で有意な関連が示されています。反面、女性においては、これらの因子とは有意な関連がみられませんでした。最近のメタアナリシスでは、アジア人はアルコール摂取と緑内障との間に強い関連があることが示されています1)。アルコールによって誘発される緑内障の感受性に人種差があるのかもしれません。というわけで、飲酒習慣がある男性は、メタボ、肝炎、そのほかの生活習慣病だけでなく、緑内障にも気を付けながら生活する必要があるかもしれません。ちなみに、緑内障と診断された後にアルコールをやめることで、視力障害や失明のリスクを減らすことができるという報告もあります2)。1)Stuart KV, et al. Alcohol, Intraocular Pressure, and Open-Angle Glaucoma: A Systematic Review and Meta-analysis. Ophthalmology. 2022;129:637-652.2)Jeong Y, et al. Visual Impairment Risk After Alcohol Abstinence in Patients With Newly Diagnosed Open-Angle Glaucoma. JAMA Netw Open. 2023 Oct 2;6(10):e2338526.

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セルペルカチニブによるRET陽性NSCLC1次治療、PFSを有意に延長/NEJM

 進行RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、セルペルカチニブはプラチナベースの化学療法(ペムブロリズマブの併用を問わず)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、中国・同済大学のCaicun Zhou氏らが行った第III相無作為化試験で示された。セルペルカチニブは中枢移行性を有する強力な選択的RET阻害薬で、進行RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が、第I・II相の非無作為化試験で示されていた。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。切除不能なRET陽性・非扁平上皮NSCLCで全身性治療未実施の患者を対象に試験 1次治療としてのセルペルカチニブの有効性と安全性を検証した本試験は、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB、IIIC、IVのRET融合遺伝子陽性・非扁平上皮NSCLCで、転移後に薬物治療を受けていない18歳以上の患者を対象に行われた。研究グループは被験者を、セルペルカチニブ(160mg、1日2回、21日サイクル)の投与を受ける群、プラチナベースの化学療法を受ける群(対照群)に、無作為に割り付けた。対照群には、治験担当医師の裁量でペムブロリズマブ(200mg)を投与した。試験薬の投与期間中、対照群に盲検下独立中央判定(BICR)で評価された病勢進行が認められた場合は、セルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。 主要評価項目は、ITTペムブロリズマブ集団(対照群に割り当てられた場合に医師がペムブロリズマブを投与する予定だった患者を含む)と被験者全体のITT集団の両集団における、BICRで評価したPFSだった。PFS中央値、セルペルカチニブ群24.8ヵ月、対照群11.2ヵ月 2020年3月~2022年8月に、23ヵ国103施設から計261例(全ITT集団)が登録された。 ITTペムブロリズマブ集団は計212例だった(セルペルカチニブ群129例、対照群83例)。被験者は65歳未満、女性、非喫煙者が多かった。 事前計画の中間有効性解析時点(死亡または病勢進行が98イベント後と規定)のPFS中央値は、セルペルカチニブ群24.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.9~推定不能)、対照群11.2ヵ月(8.8~16.8)だった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.70、p<0.001)。 奏効を示した患者の割合は、セルペルカチニブ群84%(95%CI:76~90)、対照群65%(54~75)だった。中枢神経系に影響をもたらした病勢進行までの時間に関する原因特異的HRは0.28(95%CI:0.12~0.68)だった。 有効性に関する全ITT集団(261例)の結果は、ITTペムブロリズマブ集団の結果と類似していた。有害事象は、両群ともに既報のものと変わらなかった。

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肝臓と腎臓の慢性疾患の併存で心臓病リスクが上昇する

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(IHD)のリスク抑制には、肝臓と腎臓の病気の予防が肝腎であることを示唆する研究結果が報告された。代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)と慢性腎臓病(CKD)が併存している人は、既知のリスク因子の影響を調整してもIHD発症リスクが有意に高いという。札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の宮森大輔氏、田中希尚氏、古橋眞人氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に7月8日掲載された。 MAFLDとCKDはどちらも近年、国内で患者数の増加が指摘されている慢性疾患。MAFLDは、脂肪肝とともに過体重/肥満、糖尿病もしくはその他の代謝異常(血糖や血清脂質、血圧の異常など)が生じている状態で、最近では動脈硬化性疾患の新たなリスク因子と位置付けられている。一方、CKDは腎機能の低下を主徴とする疾患だが、腎不全のリスクというだけでなく、動脈硬化性疾患のリスクとしても重視されている。肝臓と腎臓はともに生体の恒常性維持に重要な役割を担っており、動脈硬化性疾患に関しても、MAFLDとCKDが存在した場合にはリスクがより上昇する可能性がある。ただし、そのような視点での研究はこれまで報告されていない。古橋氏らの研究グループは、健診受診者のデータを用いた縦断的解析により、この点を検討した。 解析対象は、2006年に渓仁会円山クリニック(札幌市)で定期健診を受けた人のうち、2016年までに1回以上、再度健診を受けていて追跡が可能であり、ベースライン時(2006年)にIHDの既往がなく、解析データに欠落のない1万4,141人(平均年齢48±9歳、男性65.0%)。このうち、ベースライン時点でMAFLDは4,581人(32.4%)、CKDは990人(7.0%)に認められ、両者併存は448人(3.2%)だった。 平均6.9年(範囲1~10年)の追跡で、479人がIHDを発症。1,000人年当たりの発症率は、男性6.3、女性2.4だった。IHD発症リスクとの関連の解析に際しては、年齢と性別の影響を調整する「モデル1」、モデル1に現喫煙とIHDの家族歴を追加する「モデル2」、モデル2に過体重/肥満(BMI23以上)、糖尿病、脂質異常症、高血圧を追加する「モデル3」という3通りで検討した。なお、モデル3で追加した調整因子は、一般的にIHD発症に対して調整される必要があるが、MAFLDの診断基準と重複していることにより多重共線性の懸念(有意な関連を有意でないと判定してしまうこと)があるため、最後に追加した。 ベースライン時点でMAFLDとCKDがともにない群を基準とすると、MAFLDのみ単独で有していた群のIHD発症リスクは、モデル1〔ハザード比(HR)1.42〕とモデル2(HR1.40)では有意な関連が示された。ただし、モデル3では非有意となった。ベースライン時点でCKDのみを有していた群は、全てのモデルで関連が非有意だった。それに対して、MAFLDとCKDの併発群は、モデル1〔HR2.16(95%信頼区間1.50~3.10)〕、モデル2〔HR2.20(同1.53~3.16)〕、モデル3〔HR1.51(1.02~2.22)〕の全てで、IHD発症リスクが高いことが示された。 なお、性別の違いは上記の結果に影響を及ぼしていなかった(モデル3での交互作用P=0.086)。また、モデル3において、MAFLDの有無、およびCKDの有無で比較した場合は、いずれもIHDリスクに有意差がなかった。 続いて、IHDリスクの予測に最も適したモデルはどれかを、赤池情報量規準(AIC)という指標で検討した。AICは値が小さいほど解析に適合していることを意味するが、モデル1から順に、8585、8200、8171であり、モデル3が最適という結果だった。 次に、IHDの古典的なリスク因子(年齢、性別、現喫煙、IHDの家族歴)にMAFLDとCKDの併存を追加した場合のIHD発症予測能への影響をROC解析で検討。すると、古典的リスク因子によるAUCは0.678であるのに対して、MAFLDとCKDの併存を加えると0.687となり、予測能が有意に上昇することが分かった(P<0.019)。 著者らは本研究の限界点として、食事・運動習慣やがんの既往などが交絡因子に含まれていないこと、脂肪肝の重症度が考慮されていないことなどを挙げている。その上で、「日本人一般集団においてMAFLDとCKDの併存は、それらが単独で存在している場合よりもIHD発症リスクが高いことが示された」と結論付け、「MAFLD、CKD、IHDの相互の関連の理解を進めることが、IHDの新たな予防戦略につながるのではないか」と述べている。

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一人暮らしでペットを飼っている人は、うつ病リスクが高い?

 ペットを飼っている独居者には、うつ症状のある人が多いことを示すデータが報告された。ペットのいない独居者よりも、そのような人の割合が高い可能性があるという。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の三宅遥氏らの研究結果であり、詳細は「BMC Public Health」に9月11日掲載された。 うつ病は各国で増加しており、世界的な公衆衛生上の問題となっている。抗うつ薬で寛解に至るのは患者の3分の1程度にとどまるため、うつ病の発症を予防する因子の特定は喫緊の課題である。これまでに行われた複数の研究からは、独居がうつ病のリスク因子の一つであることが示唆されている。一方で、家族の一員としても捉えられることもあるペットを飼育することが、独居によるうつ病リスクを押し下げるかどうかについて、詳細な検討はされていない。三宅氏らは、一人暮らしの人はうつ病リスクが高いとしても、ペットを飼育している場合は、その関連が減弱されるのではないかとの仮説を立て、同居家族やペットの有無別に、うつ症状のある人の割合を比較検討した。 この研究は、同センターが中心となり国内の複数の企業が参加して行われている職域多施設研究(J-ECOHスタディ)の一環として、2018~2021年に実施された。大手企業5社の従業員のうち健診を受診した1万7,078人の中で、1万2,847人が本研究のためのアンケート調査に回答した。解析に必要なデータが不足している人を除外し、1万2,763人(平均年齢42.5±12.4歳、女性12.1%)を解析対象とした。 アンケートにより、同居家族やペットの有無を把握し、全体を以下の4群に分類した。同居者あり/ペットなし群(54.4%)、独居/ペットなし群(27.9%)、同居者あり/ペットあり群(16.5%)、独居/ペットあり群(1.2%)。また、うつ病のリスクは「うつ病自己評価尺度(CES-D)」で評価し、33点中9点以上の場合をうつ症状ありと判定した。 まず、独居か否かで二分して比較すると、同居者あり群(9,050人)では27.1%がうつ症状ありと判定され、独居群(3,713人)でのその割合は39.9%だった。うつ病リスクに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、婚姻状況、教育歴、職位など)を調整後、同居者あり群を基準とした場合、独居群でのうつ症状ありの有病割合比(prevalence ratios;PR)は1.17(95%信頼区間1.09~1.26)と有意に高く、独居がうつ病のリスク因子であることが示唆された。 次に、前記の4群ごとに、うつ症状ありと判定された人の割合を見ると、同居者あり/ペットなし群は26.9%、独居/ペットなし群は39.7%、同居者あり/ペットあり群は27.9%、独居/ペットあり群は44.2%だった。同居者あり/ペットなし群を基準として、前記同様の交絡因子を調整すると、独居/ペットなし群はPR1.17(1.08~1.26)と、うつ症状のある人が17%多く、さらに独居/ペットあり群はPR1.42(同1.18~1.69)であって42%多いという結果になった。なお、同居者あり/ペットあり群はPR1.03(同0.95~1.11)で、同居者あり/ペットなし群と統計学的に有意な差が認められなかった。 これらの結果に基づき著者らは、「一人暮らしでのペットの飼育は、うつ症状を有する割合の高さと有意に関連しており、研究仮説は否定された」と結論付けている。また、ペットの飼育がメンタルヘルスに対してマイナスに働いてしまうメカニズムについて、先行研究を基に、「夜間のペットの行動によって睡眠が妨げられることなどが関係しているのではないか」との考察を加えている。 なお、本研究の限界点として著者らは、横断的解析であるため因果関係は不明なこと、解析対象者に占める女性の割合が低いこと、ペットの種類や対象者本人が世話に関わる程度を評価していないことなどを挙げている。特に一番目の点については、うつ症状のある独居者が孤独感を紛らわすためにペットを飼っているという、因果の逆転を見ている可能性もあるとし、「独居者のうつ病リスクを抑制する介入手段の探索のため、さらなる研究が必要である」と述べている。

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自殺企図リスクと関連する遺伝子座を同定

 自殺に関する大規模なゲノム研究2件を統合解析した研究により、自殺企図リスクと関連する12の遺伝子座が同定された。米ユタ大学ハンツマン・メンタルヘルス研究所の精神医学准教授であるAnna Docherty氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Psychiatry」に10月1日掲載された。この結果から、自殺の生物学的原因の理解が深まることが期待される。 Docherty氏らは、既存の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)であるInternational Suicide Genetics ConsortiumおよびMillion Veteran Programのデータを用いて、GWASメタアナリシスを実施。解析対象には、民族的背景の多様な22集団(ヨーロッパ系15、東アジア系3、アフリカ系3、ヒスパニック・ラテンアメリカ系1)から構成される自殺企図歴のある4万3,871人(一部、自殺既遂者を含む)と、民族的背景が同じで自殺企図歴のない91万5,025人が含まれていた。 解析の結果、自殺企図リスクと関連する12の遺伝子座が同定された。また、関連する遺伝子バリアントについて、他の精神的・身体的な健康問題や行動に関する1,000を超える既発表の遺伝子データと比較したところ、自殺企図リスクは他の健康状態とも関連していることが判明した。具体的には、自殺企図リスクと関連する遺伝子バリアントは、喫煙、注意欠如・多動症(ADHD)、慢性疼痛などとも関連していた。 今回の研究から、自殺リスクは単一の遺伝子の関与として説明できるものではなく、さまざまな遺伝子の累積的な関与の結果であることが分かった。Docherty氏は、「精神疾患には小さな遺伝的要因が多数影響しており、それらを全て考慮に入れて初めて、実際の遺伝的リスクが見えてくる」と同大学のニュースリリースで解説している。 Docherty氏は、今回の研究により、「自殺の遺伝的リスクが、うつ病、心疾患など、他の多くのリスク因子とも関連していることを知ることができた。自殺は精神的な健康状態に限らず、特に喫煙や肺に関連する病気など、身体的な健康状態とも関連しているが、これらは自殺者の診療記録では必ずしも見ることができない」と述べる。その上で同氏は、遺伝情報を用いて自殺企図者の健康リスクを明らかにすることができれば、精神医療を必要とする患者を特定しやすくなると期待を寄せている。 ただし、この論文の共著者で、同大学の精神医学教授であるHilary Coon氏は、「これらの健康因子の一つでも持っている人が、自殺企図リスクが高いということにはならない。遺伝的素因に他のストレス因子が加わった場合に、リスクが高まる可能性がある」と解説している。 研究グループは、「関連する遺伝子のいくつかは、細胞のストレス応答、損傷したDNAの修復、免疫系との情報伝達に関与している。これらの遺伝子は、脳内でも高発現しており、抗精神病薬や抗うつ薬の標的として知られている」と説明。また今回の研究は、自殺と健康要因との関連性を示したに過ぎないとした上で、Docherty氏は、「自殺とこれらの健康要因に共通する生物学的背景を探求していきたい。それが、より確かな治療標的を特定する手助けになる」と述べている。

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切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS・EFS改善(KEYNOTE-671)/ESMO2023

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験の第1回中間解析において、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善したことが報告されている1)。今回、KEYNOTE-671試験の第2回中間解析の結果が、カナダ・McGill UniversityのJonathan Spicer氏により、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表され、EFSと全生存期間(OS)が有意に改善したことが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2023年10月16日に切除可能なNSCLC患者に対する術前・術後補助療法としてペムブロリズマブの使用を承認したことを発表している2)。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験・対象:切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル(ペムブロリズマブ群:397例)・対照群:プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル(プラセボ群:400例)・評価項目:[主要評価項目]EFSおよびOS[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(mPR)など・解析計画:計2回の中間解析が事前規定され、今回の中間解析はEFSの最終解析とした。今回の解析におけるOSの有意水準は片側α=0.00543であった。・データカットオフ日:2023年7月10日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は36.6ヵ月(範囲:18.8~62.0)であり、254例(31.9%)が死亡した。・OS中央値はプラセボ群が52.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:45.7~推定不能)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では未到達(同:推定不能~推定不能)であり、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.56~0.93、片側p=0.00517)。・3年OS率はプラセボ群64.0%、ペムブロリズマブ群71.3%、4年OS率はそれぞれ51.5%、67.1%であった。・OSのサブグループ解析においてもペムブロリズマブ群が良好な傾向であったが、PD-L1発現状況別にみたOSのHR(95%CI)は、PD-L1(TPS)50%以上が0.55(0.33~0.92)、1~49%が0.69(0.44~1.07)、1%未満が0.91(0.63~1.32)であり、PD-L1発現が少ないほどペムブロリズマブ群のベネフィットは減少する傾向にあった。また、東アジア人集団のHR(95%CI)は1.05(0.64~1.73)、喫煙歴のない集団は1.00(0.41~2.46)であった。・EFS中央値はプラセボ群が18.3ヵ月(95%CI:14.8~22.1)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月(同:32.9~推定不能)であり、第1回の中間解析に続き、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(HR:0.59[95%CI:0.48~0.72])。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はプラセボ群37.8%、ペムブロリズマブ群45.2%に認められ、治療中止に至ったTRAEはそれぞれ5.3%、13.6%、死亡に至ったTRAEはそれぞれ0.8%、1.0%に認められた。 本結果について、Spicer氏は「OSの有意な改善が認められ、新たな安全性シグナルは検出されなかったことから、本試験の周術期レジメンは切除可能なStageII、IIIA、IIIBのNSCLCに対する新たな標準治療となる」とまとめた。

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ベジタリアン食で、胃がん罹患リスク6割減

 食事とがん発症リスクとの関連は多数の先行研究があり、果物、野菜、全粒穀物、豆類などの植物性食品の摂取量の増加はがん罹患の予防効果と関連し、赤身肉や加工肉の多量摂取はがん罹患リスク増加と関連している、という報告がある。こうした中、菜食(ベジタリアン食)と消化器がんリスクについて調査した研究結果が発表された。中国・香港中文大学Tongtong Bai氏らによるこのシステマティックレビューは、European Journal of Gastroenterology & Hepatology誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。 研究者らは、PubMed等で、2022年8月までに発表されたベジタリアン食と消化器がん罹患リスクに関する観察研究を検索した。ベジタリアン食は肉または肉製品を含まない食事と定義し、主要アウトカムは消化器がんの罹患率とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(コホート研究7件、ケースコントロール研究1件)が組み入れられ、参加者は68万6,691例(成人)だった。全研究がデータ解析で交絡因子を処理しており、交絡因子には性別、年齢、BMI、身体活動、喫煙と飲酒の状態が含まれた。・ベジタリアン食の消化器がん罹患リスクは、非ベジタリアン食と比較して低かった(相対リスク[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)。・サブグループ解析では、ベジタリアン食は胃がん(RR:0.41、95%CI:0.28~0.61)および大腸がん(RR:0.85、95%CI:0.76~0.95)のリスク減少と関連を示した。一方、胃を除く上部消化器がん(RR:0.93、95%CI:0.61~1.42)のリスクとは相関しなかった。・ベジタリアン食は、男性では消化器がんリスク減少と関連を示したが(RR:0.57、95%CI:0.36~0.91)、女性では相関しなかった(RR:0.89、95%CI:0.71~1.11)。・ベジタリアン食は、北米の集団(RR:0.76、95%CI:0.61~0.95)およびアジアの集団(RR:0.43、95%CI:0.26~0.72)では消化器がんのリスク減少と関連を示したが、ヨーロッパの集団(RR:0.83、95%CI:0.68~1.01)では相関しなかった。 研究者らは、「ベジタリアン食は消化器がんの罹患リスクを低下させる可能性が高いが、詳細については、きちんとコントロールされたコホート研究、およびそのほかの研究のデータが必要である」としている。

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