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日本のトラック運転手の不眠症に関連する因子

 トラック運転手の不眠症は、交通事故リスクの増加につながる重大な問題である。秋田大学の宮地 貴士氏らは、日本のトラック運転手における不眠症の有病率を調査し、不眠症に関連する因子を特定するため、検討を行った。Nature and Science of Sleep誌2021年5月18日号の報告。 対象は、65歳未満の男性トラック運転手2,927人。自己記入式質問票を用いて、不眠症状、状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、飲酒・喫煙習慣、BMI、カフェイン摂取量、毎日の運転時間、連続して自宅から離れた日数、走行距離に関する情報を収集した。不眠症状には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を含め、これらいずれかの症状が毎日観察された場合を不眠症と定義した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症有病率は、13.3%(356例)であった。不眠症のタイプ別の割合は、中途覚醒が最も多く78%、次いで早朝覚醒26.4%、入眠障害13.5%であった。・共変量で調整した後、不眠症と有意かつ直線的な関連が認められた因子は、飲酒習慣、毎日の運転時間、STAIスコアであった。 【飲酒習慣】非飲酒者と比較した調整オッズ比(aOR):1.74、95%信頼区間(CI):1.23~2.47、trend p<0.001 【毎日の運転時間】1日8時間未満と比較した12時間以上のaOR:1.87、95%CI:1.00~3.49、trend p<0.001 【STAIスコア】最低四分位と比較した最高四分位のaOR:5.30、95%CI:3.66~7.67、trend p<0.001 著者らは「日本のトラック運転手では、不眠症が蔓延している。そのリスク因子として、飲酒習慣、毎日の運転時間、不安症状が関連していることが示唆された」としている。

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世界の喫煙率減少も、人口増で喫煙者数は増加:GBD 2019/Lancet

 世界的な15歳以上の喫煙率は、1990年以降、男女とも大幅に減少したが、国によって減少の程度やタバコ対策への取り組みにかなりの違いがあり、喫煙者の総数は人口の増加に伴って1990年以降大きく上昇したことが、米国・ワシントン大学のEmmanuela Gakidou氏らGBD 2019 Tobacco Collaboratorsの調査で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌2021年6月19日号で報告された。1990~2019年の204の国・地域における喫煙率と疾病負担を評価 研究グループは、世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD])の一環として、1990~2019年の期間に204の国と地域で、年齢別、性別の喫煙率と喫煙に起因する疾病負担について検討を行った(Bloomberg PhilanthropiesとBill & Melinda Gates財団の助成を受けた)。 本研究では、3,625件の全国的な調査から得られた喫煙関連指標がモデル化された。また、因果関係のある36の健康アウトカムについて系統的レビューとベイズ流メタ解析が行われ、現喫煙者と元喫煙者の非線形用量反応リスク曲線の推定が実施された。 さらに、この研究では、直接的な推定法を用いて寄与負担を評価することで、喫煙の健康への影響について、以前のGBDよりも包括的な推定値が得られた。2019年の男性の死因の約2割が喫煙 2019年の世界の喫煙者数は11億4,000万人(95%不確実性区間[UI]:11億3,000万~11億6,000万)で、15歳以上の年齢標準化喫煙率は男性が32.7%(32.3~33.0)、女性は6.62%(6.43~6.83)であった。また、同年の紙巻きタバコ換算のタバコ類の消費量は7兆4,100億本だった。 15歳以上の喫煙率は、1990年以降、男性で27.5%(95%UI:26.5~28.5)、女性で37.7%(35.4~39.9)減少したが、喫煙者数は人口の増加によって1990年の9億9,000万人から顕著に増加した。 2019年の世界における喫煙による死亡数は769万人(95%UI:716万~820万)で、障害調整生命年(DALY)は2億年であり、男性の死亡の最も重大なリスク因子(20.2%、19.3~21.1)であった。769万人の喫煙に起因する死亡者のうち、668万人(86.9%)が現喫煙者だった。 なお、2019年の日本における15歳以上の喫煙率は、男性が33.4%(95%UI:31.4~35.5)、女性は10.2%(8.71~11.9)と、いずれも世界平均を上回っていた。また、1990~2019年の喫煙率の減少幅は、男性では41.7%(38.0~45.3)と世界平均よりも大きかったが、女性では23.6%(9.65~35.2)と世界平均に比べ小さかった。 著者は、「介入がなければ、喫煙に起因する死亡数769万人とDALY 2億年は、今後、数十年にわたって増加するだろう。すべての地域、すべての発展段階の国で、喫煙率の低減において実質的な進展が認められたものの、タバコ規制の推進には大きな隔たりがみられた」とまとめ、「喫煙率の減少を加速させ、国民の健康に多大な恩恵をもたらすために、各国は、エビデンスに基づく強力な施策を承認する明確で緊急性の高い機会を手にしている」と指摘している。

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スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

本論文は何が新しいか? 2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。リスクモデル作成研究(derivation study)と検証研究(validation study) 実地医家にはあまり聞き慣れない研究手法かもしれない。糖尿病や虚血性心疾患などにおいてリスク予測のためCox回帰モデルからリスク計算をし、それを検証する2段階の統計手法。症状や徴候、あるいは診断的検査を組み合わせてこれらを点数化し、イベント発症の可能性に応じ患者を層別化して予測する。作業プロセスは、モデル作成(derivation)と、モデル検証(validation)の2つから成る。モデル作成のコホートを検証に用いた場合、内的妥当性が高いことは自明である。したがって、作成されたモデルは他のコホート患者群に当てはめて外的妥当性が正しいか否かを客観的に検証する必要がある。心血管疾患リスクの推定は、複数の因子(例:治療法の変遷、危険因子にはリスクが高いもの[肥満]と低いもの[喫煙]があることなど)によって過大評価あるいは過小評価される可能性がある。結果の概要1)リスクモデルの作成(derivation study):2004~16年に行ったPREDICT試験を母体にしたPREDICT-1°糖尿病サブコホート試験(PREDICT-1°)において用いられたリスクの予測モデル因子は、年齢・性・人種・血圧・HbA1c・脂質・心血管疾患家族歴・心房細動の有無・ACR・eGFR・BMI・降圧薬や血糖降下薬使用、などである。これら糖尿病および腎機能関連の18の予測変数を有するCox回帰モデルから、5年心血管疾患リスクを推定した。2)リスクモデルの検証(validation study):2004~16年にかけて施行されたPREDICT-1°におけるリスク方程式を、2000~06年に行われたNZ糖尿病コホート研究(NZDCS)におけるリスク方程式にて外的妥当性を検証した。PREDICT-1°は追跡期間中央値5.2年(IQR:3.3~7.4)で、登録した46,625例の中で4,114件の新規心血管疾患イベントが発生した。心血管疾患リスクの中央値は、女性で4.0%(IQR:2.3~6.8)、男性で7.1%(4.5~11.2)であった。これに対して外的検証で用いたNZDCSにおいては心血管疾患リスクが女性では3倍以上(リスク中央値14.2%、IQR:9.7~20.0)、男性では2倍以上(17.1%、4.5~20.0)と過大評価されていることが示された。このことから、最近行われたPREDICT-1°は、過去に行われたNZDCSよりも優れたリスク識別性を有することが検証された。また、この新しいPREDICT-1°のリスク方程式によってリスク評価を行わない場合、糖尿病の低リスク患者を(新たに開発された)血糖降下薬などで過剰診療する可能性なども示唆された。糖尿病の心血管リスクスクリーニングの世界事情 先進国においては、強化糖尿病のスクリーニングを受ける成人が増加している。このため、これらの先進国では糖尿病患者の疾病リスク予測は、より早期と考えられる患者群(低年齢・軽度の高血圧や脂質異常症)に移行しており、より多くの患者が症候性になるより早期に糖尿病と診断されるようになってきた。ちなみにNZでは、スクリーニング検査の推奨項目として空腹時血糖値を非空腹時HbA1cに置き換えることにより、対象者の糖尿病スクリーニング受診率を向上させる新たな国家戦略を立ち上げ、2001年に15%、2012年に50%、2016年には対象者の90%で糖尿病スクリーニング受診という目標を達成してきた。一方、アフリカ、東南アジア、西太平洋ではスクリーニングによる診断よりは臨床診断が主体となるため、心血管疾患リスクスコアを過大評価している可能性がある。本論文から学ぶこと 最新のPREDICT-1°においては、HbA1cによるスクリーニングが普及し、心血管疾患のリスクが低い無症状の糖尿病患者が多数確認された。これにより2型糖尿病において早期発見・早期治療が可能になる。また、心血管疾患リスク評価式は、時代の変遷に応じて現代の集団に更新する必要がある。私見であるが、糖尿病への早期介入推奨の潮流は、たとえばKDIGO 2020年の糖尿病腎症治療ガイドラインなどにすでに反映されている。このガイドラインでは、腎保護戦略のACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬などの薬剤介入と平行して、自己血糖モニタリングや自己管理教育プログラムの重要性にも多くの紙面を割き言及している(Navaneethan SD, et al. Ann Intern Med. 2021;174:385-394. )。 翻って、本邦での糖尿病スクリーニングによる心血管リスク予測の課題として、国家レベルでの医療データベースの充実化、健診環境のさらなる改善、そして本研究におけるPREDICT-1°に準じた新たな解析法の導入などが考えられよう。

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統合失調症の認知機能とキノリン酸との関連

 トリプトファンとその代謝産物(TRYCATs)は、統合失調症やうつ病の病態生理に影響する末梢免疫系の活性化や中枢神経伝達物質の異常と関連することが示唆されている。しかし、これらの疾患におけるさまざまな精神病理的な関連は、まだ解明されていない。スイス・チューリヒ大学のFlurin Cathomas氏らは、統合失調症およびうつ病患者におけるTRYCATsの潜在的な違いを調査し、認知機能への影響について検討を行った。Scientific Reports誌2021年5月11日号の報告。 統合失調症患者45例、うつ病患者43例、健康対照者19例を対象に、血漿中のトリプトファン、キヌレニン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸の違い、血漿タンパク質と認知機能との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、BMI、喫煙、投薬の共変量で調整した後、うつ病患者は、健康対照者と比較し、キヌレニンと3-ヒドロキシキヌレニンのレベルが低かった。・統合失調症患者では、キノリン酸と複合的な認知機能スコアとの負の相関が認められ。より重篤な認知機能障害は、キノリン酸の血漿レベルの上昇との関連が認められた。この関連は、うつ病患者では認められなかった。 著者らは「統合失調症やうつ病では、キヌレニン経路の調節不全が関連していると考えられる。キノリン酸は、統合失調症患者の認知機能の病態生理ととくに関連している可能性が示唆された。これら神経精神疾患の病因とTRYCATsとの因果関係を判断するためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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わが国のEGFR陽性NSCLCに対するゲフィチニブのアジュバント治療の結果(IMPACT)/ASCO2021

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除後の術後療法としてのゲフィチニブの有用性を検討した国内臨床試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、吹田徳洲会病院の多田弘人氏から報告された。 このIMPACT試験は日本のWJOGにより実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。・対象:EGFR変異(del19またはL858R)を有する Stage II~IIIの完全切除後のNSCLC患者(T790M変異陽性症例は除外。年齢は75歳未満)・試験群:ゲフィチニブ(250mg/日)を2年間投与(Gef群)・対照群:シスプラチン(80mg/m2をday1)+ビノレルビン(25mg/m2をday1,8)を3週ごとに4サイクル投与(CV群)・評価項目:[主要評価項目]独立中央判定による無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性、再発様式など有効性は6ヵ月ごとに、脳転移や骨転移の有無は12ヵ月ごとに評価 主な結果は以下のとおり。・2011年9月~2015年12月に234例が無作為化割り付けされ、232例がITT集団として解析された。・両群間に患者背景の差は見られなかった。女性が約60%、年齢中央値は64歳、非喫煙者も約60%、Stage IIAが約30%、IIIAが約60%であった。・Gef群(2年間)の治療完遂率は61.2%、CV群は77.6%であった。CV群に治療関連死が3例報告された。・観察期間中央値70.1ヵ月時点での、DFS中央値はGef群35.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.0~47.7)、CV群25.0ヵ月(95%CI:17.7~41.8)、ハザード比[HR]:0.92、p=0.63であった。2年時DFS率はGef群63.7%、CV群52.3%、5年時DFS率はGef群31.8%、CV群34.1%であった。DFSに関するサブグループ解析でも、両群間に有意な差を持つ因子はなかった。・OS中央値は両群とも未到達で、5年OS率はGef群78.0%、CV群74.6%で、HRは1.03、p=0.89であった。OSに関するサブグループ解析では、70歳以上と70歳未満での比較において、有意に70歳以上の症例でGef群が有効であった。(70歳以上のHRは0.314、70歳未満は1.438、p=0.018)・有害事象については、両群ともに新たな事象は認められず、Grade3以上の好中球減少や発熱性好中球減少がCV群で多く、Grade3以上の肝機能障害や皮膚障害はGef群で多く報告された。また、薬剤に起因する間質性肺炎の報告は両群ともに無かった。・再発部位は、局所再発については両群で差はなかったが、脳転移は、Gef群で26件、CV群で14件であった。(p=0.07)・再発後の治療では両群ともTKIの投与が大半を占めたが(Gef群67%、CV群93%)、オシメルチニブの投与は少なかった(Gef群14%、CV群2%)。 最後に多田氏は「今回の試験では予後の優越性は検証できなかったが、アジュバント治療としてのゲフィチニブは、シスプラチン+ビノレルビン投与が不適などの特定な患者層には有用であるかもしれない。」と結んだ。

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がん通院中患者の新型コロナ抗体量は低値、投与薬剤によって差も/国がん

 国立がん研究センターとシスメックスは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500人のがん患者と1,190人の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した。 その結果、新型コロナウイルスの罹患歴のない対象では、がん患者、健常人共に抗体保有率は低く、両群で差がないことがわかった。一方、抗体の量は、健常人と比較し、がん患者で低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。 さらに、がん治療が抗体量に与える影響を検証したところ、細胞障害性抗がん剤を受けている患者では抗体量が低く、免疫チェックポイント阻害薬を受けている患者では高いことが明らかになった。同研究結果から、がんの合併、ならびにがん薬物療法が抗体量に影響を与える可能性が示唆された。 本調査結果は、JAMA Oncology誌2021年5月28日号(オンライン版)に掲載された。

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統合失調症患者における末梢炎症レベルの再定義~FACE-SZコホート研究

 統合失調症の予後には、末梢炎症が関連しているといわれている。高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は、日常的に最も使用されている炎症性バイオマーカーである。しかし、末梢炎症の有無を区分するための合意に基づくカットオフ値は、これまで明確に定義されていなかった。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、1mg/L未満の患者と比較し、治療転帰が不良であるかを検討した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月29日号の報告。 対象は、2010~18年にフランス国内の専門学術センター10施設が参加したFACE-SZコホート研究より抽出したhs-CRP 3mg/L未満の統合失調症患者。炎症の潜在的な原因、社会人口統計、疾患の特徴、現在の疾患重症度、機能、QOLを、FACE-SZ標準化プロトコールに従って収集した。 主な結果は以下のとおり。・580例が抽出され、そのうち226例に軽度の炎症(hs-CRP 1~3mg/L)が認められた。・炎症の潜在的な原因として、過体重と歯科治療の欠如が特定された。・これらの因子で調整した後、炎症の認められた患者は、検出値(hs-CRP 1mg/L)未満の患者と比較し、より重度の精神症状、抑うつ症状、攻撃性、機能障害を有していた。・喫煙や身体活動レベルとの関連は認められなかった。 著者らは「hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、炎症関連障害のリスクがあると考える必要がある。末梢炎症の原因をコントロールするうえで、減量や積極的な歯科治療の実施が、有用な戦略である可能性が示唆された。カットオフ値hs-CRP 1mg/L超は、統合失調症患者の末梢炎症の検出において、信頼できるマーカーであると考えられる」としている。

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糖尿病の発症年齢が低いほど認知症のリスクが高い(解説:吉岡成人氏)-1396

 ホワイトホール・スタディ(Whitehall study)はフラミンガム・スタディの「英国版」ともいわれるもので、英国の国家公務員を対象とした大規模な前向きコホート研究である。1967年に開始された「第I期」、1985年に開始された「第II期」がある。糖尿病に関連した論文では、糖尿病は発症の3~6年前から、空腹時血糖値、75g経口糖負荷試験の2時間値、HOMAα、HOMAβが急激な変動を示す(Tabak AG, et al. Lancet. 2009;373:2215-2221.)という臨床的にインパクトが大きい研究報告がある。また、50歳時における心血管の健康スコア7項目(喫煙、食事、運動、BMI、空腹時血糖値、コレステロール値、血圧)が認知症のリスクと関連していることも2019年に報告されている(Sabia S, et al. BMJ. 2019;366:l4414.)。 日本における久山町研究でも2型糖尿病と認知症の関連が報告されているが、ホワイトホールIIにおいての2型糖尿病の発症年齢と認知症のリスクとの関連が示されたことが、JAMA誌2021年4月27日号に掲載された。 10,095人(1985~88年の登録時に35~55歳、男性67.3%)を2019年3月末まで追跡。追跡期間31.7年(中央値)の間に、1,710人が2型糖尿病を発症し、639人が認知症と診断された。非糖尿病者の70歳における認知症の発症率は1,000人年当たり8.9なのに対し、2型糖尿病を5年以内に発症した場合は10.0、6~10年前では13.0、10年以上前で18.3であった。多変量解析では、70歳で糖尿病ではない場合に比較して、2型糖尿病の罹病期間が10年以上の際の認知症を発症するハザード比(HR)は2.12(95%信頼区間[CI]:1.50~3.00)であり、6~10年ではHR 1.49(95%CI:0.95~2.32)、5年以内であればHR 1.11(95%CI:0.70~1.76)であり、2型糖尿病の発症時期が早いものほど認知症のリスクが高い傾向にあったという。認知症の発症リスクに関連する臨床検査値、社会人口学的因子、健康関連行動を調整した解析でも、2型糖尿病の発症年齢が5歳低下するごとに、70歳時点での認知症の発症のHRは1.24(95%CI:1.06~1.46)であり、糖尿病の発症年齢が低いほど認知症のリスクが高いことが報告された。 2型糖尿病患者における認知機能の低下には多くの要因が関与している。中枢神経系に広く分布しているインスリン受容体におけるインスリン抵抗性のためのシグナリングの異常、グルコースの代謝障害、細小血管障害による脳血流の障害、炎症や免疫反応の惹起、酸化ストレスなどの影響、さらには治療による低血糖なども認知機能に影響を及ぼす。糖尿病の罹病期間と認知機能が関連することは「当たり前」かもしれない。しかし、「当たり前」と思われることであっても、私たちに客観的な「事実」としてデータを明示するコホート研究には、それなりの迫力と説得力を感じざるを得ない。

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第2世代抗精神病薬による統合失調症治療におけるMetSに関連する因子

 重度の精神疾患を有する人は、一般の人と比較し、合併症の罹患や死亡率が増加する。体重増加を含む抗精神病薬の有害事象は、メタボリックシンドローム(MetS)の発症に影響を及ぼす可能性があり、これはすべての原因による死亡リスクや心血管疾患による死亡リスクの増加と関連している。オランダ・ユトレヒト大学のMarius H. Sneller氏らは、第2世代抗精神病薬(SGA)による治療を行った統合失調症スペクトラム障害患者におけるMetS関連の臨床的、生化学的、遺伝学的因子について、包括的なレビューを実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年3月29日号の報告。 SGA治療を行った統合失調症スペクトラム障害患者におけるMetSとの関連を調査したすべてのコホート研究、横断的研究、臨床試験を特定するため、PubMedおよびEmbaseより検索を行った。MetS関連の臨床的、生化学的、遺伝的因子を抽出した。MetSに関連する因子の定義は、2つ以上の研究で報告されている因子とした。 主な結果は以下のとおり。・58件(1万2,123例)の研究をレビューした。・MetSのリスク増加と関連している因子として、62因子が特定された。・58件中31件の研究で、2件以上の研究で報告されたMetSと関連する因子について調査されていた。・MetSと有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●臨床的因子:性別、高齢、気分安定薬の併用、ベースライン時および現在のBMIの高さ、SGAの早期使用、高用量、治療期間の長さ、精神疾患、喫煙 ●生化学的因子:低アディポネクチン血症、C反応性蛋白(CRP)レベルの上昇、白血球(WBC)数高値 ●遺伝学的因子:HTR2C遺伝子のrs1414334 C対立遺伝子 著者らは「SGAで治療している患者におけるMetS発症リスクを予測するためには、これらの因子を段階的に適用する必要がある。臨床診療において、MetS発症リスクを判断するためには、今後の研究が求められる」としている。

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心不全の2人に1人は予防できる!(解説:有馬久富氏)-1393

 高齢者の増加に伴い、心不全患者さんが大幅に増加する「心不全パンデミック」が訪れると予想されている(Shimokawa H, et al. Eur J Heart Fail. 2015;17:884-892.)。心不全パンデミックを避けるためには、心不全の発症予防が急務である。 今回、Framingham研究・PREVEND研究およびMESA研究の統合解析から、年代別に心不全発症の危険因子およびその集団寄与危険割合を検討した結果がBMJに報告された(Tromp J, et al. BMJ. 2021;372:n461.)。その結果、すべての年代において、男性・肥満・高血圧・糖尿病・喫煙・心筋梗塞および心房細動の既往が重要な危険因子であり、それらすべての集団寄与危険割合は75歳未満で75~77%、75歳以上で53%であった。つまり、75歳未満における心不全の4分の3、75歳以上では2分の1が、これらの危険因子により引き起こされているということが明らかになった。 残念ながら制御できない危険因子(男性および心筋梗塞・心房細動の既往)が含まれているため、制御可能な危険因子のみに限定した場合の集団寄与危険割合は不明であるが、男性の集団寄与危険割合は10~25%であること、心筋梗塞・心房細動の多くは心不全と同じ危険因子をコントロールすることで予防できることを考えると、心不全の約2分の1は、制御可能な危険因子(肥満・高血圧・糖尿病および喫煙)により引き起こされているのではないかと推測する。つまり、肥満・高血圧・糖尿病および喫煙を完全にコントロールすることで心不全の2人に1人は予防できる可能性があると思われる。 心不全パンデミック対策においても、ほかの脳心血管病対策と同じように、肥満・高血圧・糖尿病および喫煙のコントロールが重要であろう。

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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健康の社会経済的格差、生活習慣の影響は?/BMJ

 米国および英国の成人において、不健康な生活習慣が健康の社会経済的格差に及ぼす影響は小さいことが、中国・華中科技大学のYan-Bo Zhang氏らによるコホート研究データの解析の結果で示された。結果を踏まえて著者は、「健康的な生活習慣の推進だけでは、健康の社会経済的格差は縮小されない可能性があり、健康の社会的決定要因に取り組む他の方策が必要である」と指摘したうえで、「それでも、健康的な生活習慣はさまざまな社会経済的地位の集団において全死因死亡および心血管疾患(CVD)のリスク低下と関連しており、疾病負担の軽減における健康的な生活習慣の役割は重要である」と述べている。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。米国NHANESから約4万5千人、英国Biobankから約40万人のデータを解析 研究グループは、社会経済的地位と死亡およびCVD発症との関連に生活習慣が影響するかどうか、また、生活習慣と社会経済的地位の交互作用や関連の程度を検討する目的で、米国の国民健康栄養調査(NHANES、1988~94年および1999~2014年)、英国のBiobankのデータを用いてコホート研究を行った。解析対象は、20歳以上の米国成人4万4,462人および37~73歳の英国成人39万9,537人である。 社会経済的地位は、世帯収入、職業・雇用形態、教育レベル、健康保険(米国のみ)を用いた潜在クラス分析により、項目回答確率に応じて3段階(低、中、高)に分類した。健康的な生活習慣のスコアは、喫煙未経験、大量飲酒なし(女性は1日1杯以下、男性は1日2杯以下、1杯のエタノール含有量は米国では14g、英国では8g)、身体活動量上位3分の1、および食事の質の高さの情報を用いて構築した。 主要評価項目は、米国集団では全死因死亡、英国集団では全死因死亡、CVD死および発症であった。社会経済的地位が低い成人は高い成人と比べ転帰不良のリスクが高い 米国集団では追跡期間平均11.2年で死亡が8,906人、英国集団では同8.8~11.0年で死亡が2万2,309人、CVD発症が6,903件記録された。 社会経済的地位が低い成人における年齢調整死亡リスク(1,000人年当たり)は、米国集団22.5(95%信頼区間[CI]:21.7~23.3)、英国集団7.4(95%CI:7.3~7.6)、英国集団の年齢調整CVDリスク(1,000人年当たり)は2.5(95%CI:2.4~2.6)であった。一方、社会経済的地位が高い成人では、それぞれ11.4(95%CI:10.6~12.1)、3.3(95%CI:3.1~3.5)、1.4(95%CI:1.3~1.5)であった。 社会経済的地位が低い成人は、高い成人と比較した場合のハザード比(HR)(生活習慣で補正後)が、全死因死亡は米国集団2.13(95%CI:1.90~2.38)、英国集団1.96(95%CI:1.87~2.06)、英国集団におけるCVD死は2.25(95%CI:2.00~2.53)、同CVD発症は1.65(95%CI:1.52~1.79)で、いずれも高かった。 また、生活習慣の影響度(proportion mediated)は、米国集団の全死因死亡12.3%(95%CI:10.7~13.9%)、英国集団の全死因死亡4.0%(95%CI:3.5~4.4%)、英国集団のCVD死3.0%(95%CI:2.5~3.6%)、同CVD発症3.7%(95%CI:3.1~4.5%)であった。米国集団では生活習慣と社会経済的地位の間に有意な交互作用はなかったが、英国集団では社会経済的地位が低い成人で生活習慣と転帰に強い関連が認められた。 社会経済的地位が高く健康的な生活習慣の要素を3または4つ有する成人に比べて、社会経済的地位が低く健康的な生活習慣の要素が1つまたはまったくない成人は、全死因死亡(HR:米国集団3.53[95%CI:3.01~4.14]、英国集団2.65[95%CI:2.39~2.94])、英国集団におけるCVD死(HR:2.65、95%CI:2.09~3.38)およびCVD発症(HR:2.09、95%CI:1.78~2.46)のリスクが高かった。

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血清尿酸値と認知症リスク~メタ解析

 中国医科大学のZhike Zhou氏らは、血清尿酸値(UA)と認知症およびそのサブタイプのリスクとの関連を調査するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年2月25日号の報告。 Embase、PubMed、Web of Scienceより、2020年7月までに公表された文献を検索した。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出するため、変量効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は23件(5,575例)であった。・全体として、認知症患者のUAレベルは、非認知症患者と比較し、低かった(SMD:-0.32、95%CI:-0.64~-0.01、p=0.04)。・認知症タイプのサブグループ解析では、UAとアルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連が認められたが、血管性認知症(VaD)との関連は認められなかった。 ●AD(SMD:-0.58、95%CI:-1.02~-0.15、p=0.009) ●PDD(SMD:-0.33、95%CI:-0.52~-0.14、p=0.001)・UAレベルの層別解析では、UA四分位1~2において認知症および神経変性サブタイプと負の相関が認められ(p<0.05)、UA四分位4と認知症に正の相関が認められた(p=0.028)。・交絡因子のメタ回帰分析では、認知症のリスク推定においてUAの影響が認められた因子は、年齢、BMI、糖尿病、高血圧、喫煙ではなく教育であった(p=0.003)。 著者らは「低UAレベル(292μmol/Lまたは4.91mg/dL)は、ADおよびPDDの潜在的なリスク因子である。認知症におけるUAレベルのメカニズムは、さらなる調査により明らかにする必要がある」としている。

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運動30分前のカフェインが脂肪を燃やす

 運動30分前のカフェイン摂取が最良の脂肪燃焼法かもしれない。これまでの研究で、カフェインが最大脂肪酸化率(MFO)と有酸素能力を増加させることが明らかになっているが、運動と組み合わせた効果は詳しくわかっていなかった。今回、スペイン・グラナダ大学のMauricio Ramirez-Maldonado氏らが、運動テスト中におけるMFOの日内変動に対するカフェイン摂取の影響を調査した結果、有酸素運動30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく運動中の脂肪酸化を増加させることを発見した。The Journal of the International Society of Sports Nutrition誌2021年1月7日号に掲載。 本研究は、プラセボ対照三重盲検クロスオーバー試験で、男性15例が参加した(平均年齢:32±7歳)。すべての被験者は次の条件に合致した(BMI:18.5~28、非喫煙者、運動によって悪化する持病がない、服薬していない、1日50mg未満のカフェイン消費、週3回以上の持久力トレーニングを最低2年間継続[自己報告]、カフェインアレルギーでない、前月に筋骨格系の損傷なし)。 7日間隔で4回の段階的な運動テストを実施、各テストの30分前に、無香料・無着色・無臭の粉末状無水カフェイン(グリーンコーヒー豆抽出物)またはプラセボ(純度100%の微結晶セルロース)のいずれか3mg/kgを250mLの水に溶解し、見分けがつかない状態で摂取した。調査は2019年6~11月の間で行われ、午前8~11時と午後5~8時に、サイクルエルゴメーターを用いた段階的なテストを一定の温度・湿度下で実施した。MFOと最大酸素摂取量(VO2max)を間接熱量測定法で測定し、MFOを誘発した運動強度(Fat max)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・被験者のクロノタイプは均一に分布していた(適度に朝型、適度に夜型、どちらでもない各5人)。・段階的運動テスト30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく、MFO、Fat max、VO2maxを増加させた。また、すべて午前よりも午後のほうが有意に高かった(すべてp<0.05)。・プラセボと比較して、カフェインは平均MFOを午前10.7%(0.28±0.10 vs.0.31±0.09g/min、p<0.001)、午後29.0%(0.31±0.09 vs.0.40±0.10g/min、p<0.001)増加させた。・また、カフェインは平均Fat maxを午前11.1%(36.9±14.4 vs.41.0±13.1、p=0.005)、午後13.1%(42.0±11.6 vs.47.5±10.8、p=0.008)増加させた。・さらに、カフェインは平均VO2maxを午前3.9%(43.7±7.8 vs.46.7±7.0mL/kg/min、p=0.012)、午後3.2%(45.4±8.0 vs.48.2±7.0mL/kg/min、p=0.001)増加させた。 研究者らは、「カフェイン摂取と午後の適度な運動の組み合わせは、継続的な有酸素運動により脂肪燃焼量を増やしたい人にとって最良のシナリオ。なお、高用量のカフェインが全身の脂肪酸化により大きな効果を誘発し、持久力のパフォーマンスをさらに改善するかどうかはまだ調査されていない」と結論している。

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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若年者の肥満・高血圧、心不全発症リスクへの影響は?/BMJ

 若年者のほうが高齢者と比較して、心不全発症率および絶対リスクは低いが、リスクとの関連性が強く、修正可能な絶対リスクのリスクへの寄与が高いことが示された。シンガポール国立心臓センターのJasper Tromp氏らが、フラミンガム心臓研究などの参加者を対象としたプールコホート研究の結果、明らかにした。若年者のほうが高齢者と比べて心不全発症率が低いことは知られているが、年齢差を考慮したリスク因子との関連に関する研究はほとんど行われていなかった。先行研究では、電子健康記録を用いた研究で、心不全を含む12の心血管疾患発症と血圧上昇との相対リスク低下が認められたことや、心不全患者を対象とした研究で、若年患者(55歳以下)は肥満、男性、糖尿病既往者で多くみられることは報告されていた。今回の結果について研究グループは、「成人への生涯にわたる予防介入の重要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2021年3月23日号掲載の報告。一般集団を対象に心不全の年齢別リスク因子を評価 研究グループは、一般集団における心不全の年齢別リスク因子を評価するため、フラミンガム心臓研究、PREVEND(Prevention of Renal and Vascular End-stage Disease)研究、およびアテローム性動脈硬化症の多民族(MESA)研究を基にプール住民ベースコホート研究を行った。 被験者は心不全歴のない2万4,675例で、若年者(<55歳、1万1,599例)、中年者(55~64歳、5,587例)、前期高齢者(65~74歳、5,190例)、後期高齢者(75歳以上、2,299例)に層別化し、心不全の発症について評価した。被験者の平均年齢は56(SD 14)歳、男性47%であった。若年者のほうが発症の絶対リスクは低いが、リスク因子との関連が強い 追跡期間中央値12.7年において、心不全発症者は、若年者138/1万1,599例(1%)、中年者293/5,587例(5%)、前期高齢者538/5,190例(10%)、後期高齢者412/2,299例(18%)だった。駆出率が保持された心不全として分類されたのは、若年者では32%(44例)、後期高齢者では43%(179例)だった。 高血圧、糖尿病、現在喫煙、および心筋梗塞既往などのリスク因子は、高齢者と比較して、若年者のほうが相対リスクへの寄与が大きかった(すべての相互作用のp<0.05)。たとえば高血圧は、若年者の将来的心不全リスクを3倍(ハザード比[HR]:3.02、95%信頼区間[CI]:2.10~4.34、p<0.001)増大したのに対し、後期高齢者では1.4倍(1.43、1.13~1.81、p=0.003)の増大であった。 心不全発症の絶対リスクは、リスク因子の有無にかかわらず、高齢者より若年者のほうが低かった。 注目されたのは、既知のリスク因子が占める集団寄与リスクへの割合が、若年者のほうが高齢者より大きく(75% vs.53%)、モデルパフォーマンスは良好であったこと(C統計量0.79 vs.0.64)で、同様に、肥満(21% vs.13%)、高血圧(35% vs.23%)、糖尿病(14% vs.7%)、現在喫煙(32% vs.1%)の集団寄与リスクも、若年者のほうが高齢者と比較して大きかった。

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心血管リスク因子のないSTEMIは死亡リスクが高い/Lancet

 標準的な心血管リスク因子(SMuRFs:高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のないST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は、少なくとも1つのSMuRFsを有する患者と比較して全死因死亡のリスクが有意に高く、とくに女性で顕著である。オーストラリア・Royal North Shore HospitalのGemma A. Figtree氏らが、スウェーデンの心疾患登録研究であるSWEDEHEART研究を用いた後ろ向き解析結果を報告した。心血管疾患の予防戦略はSMuRFsを標的とすることが重要であるが、SMuRFsのない心筋梗塞はまれではなく、SMuRFsを有していない患者の転帰についてはよく知られていなかった。著者は、「早期死亡リスクの上昇は、ガイドラインで示された治療を追加することで弱まる。今回得られた所見は、ベースラインでのリスク因子や性別にかかわらず、心筋梗塞発症直後のエビデンスに基づいた薬物療法の必要性を強調するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年3月9日号掲載の報告。STEMI患者約6万2千例を対象にSMuRFsの有無別で死亡率を解析 研究グループはSWEDEHEART研究のデータを用い、SMuRFsの有無にかかわらずSTEMI成人患者の臨床特性と転帰について、全体および性別ごとに解析した。冠動脈疾患の既往歴がある患者は除外された。 主要評価項目は、STEMI発症後30日以内の全死因死亡、副次評価項目は30日以内の心血管死、心不全および心筋梗塞であった。各評価項目は、退院まで、ならびに12年間の追跡終了時まで調査。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて院内死亡率を比較し、Cox比例ハザードモデルおよびカプランマイヤー法により長期転帰を比較した。 解析対象は、2005年1月1日~2018年5月25日の期間に登録されたSTEMI患者6万2,048例であった。このうち、診断を要するSMuRFsを認めなかったのは9,228例(14.9%)で、年齢中央値はSMuRFsあり群68歳(四分位範囲:59~78)、SMuRFsなし群69歳(60~78)であった。SMuRFsなしで30日死亡リスクは約1.5倍、とくに女性は一貫して死亡率が高い SMuRFsなし群はあり群と比較して、経皮的冠動脈インターベンション実施率は類似していたが(71.8% vs.71.3%)、退院時におけるスタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬の投与率は有意に低かった。 発症後30日以内の全死因死亡リスクは、SMuRFsなし群で有意に高かった(ハザード比:1.47、95%信頼区間[CI]:1.37~1.57、p<0.0001)。30日以内の全死因死亡率が最も高かったのはSMuRFsがない女性(17.6%、381/2,164例)で、次いでSMuRFsあり女性(11.1%、2,032/1万8,220例)、SMuRFsなし男性(9.3%、660/7,064例)、SMuRFsあり男性(6.1%、2,117/3万4,600例)の順であった。 SMuRFsなし群における30日以内の全死因死亡リスクの上昇は、年齢、性別、左室駆出率、クレアチニン、血圧で補正後も有意であったが、退院時の薬物療法(ACEI/ARB、β遮断薬、スタチン)を組み込んだ場合は減弱した。 さらに、SMuRFsなし群はあり群と比較して、院内の全死因死亡率が有意に高かった(9.6% vs.6.5%、p<0.0001)。30日時点の心筋梗塞および心不全は、SMuRFsなし群で低かった。全死因死亡率は、男性では8年強、女性では追跡終了時である12年後まで、SMuRFsなし群が一貫して高いままであった。

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ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。ドンペリドン曝露は乳児の主要な奇形のリスク増加と関連なし 本研究は、1988年4月~2017年12月までに、虎の門病院「妊娠と薬相談外来」または国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」に、妊娠中の薬物の安全性について相談した女性が含まれ、妊娠初期(4~13週)にドンペリドンを服用した妊婦519例(ドンペリドン群)と、対照薬を服用した妊婦1,673例(対照群)から生まれた乳児の奇形発生率を比較した。なお、ドンペリドンとメトクロプラミドの両方を使用した妊婦は研究から除外された。 対照薬としては、アセトアミノフェン、催奇形性リスクが増加しない抗ヒスタミン薬、H2ブロッカー、消化酵素製剤、ペニシリンやセファロスポリンなどの抗菌薬、および外用薬(点眼、軟膏・クリームなど)が含まれた。また、妊婦の制吐薬として一般的に使用されるメトクロプラミドを服用した妊婦241例(メトクロプラミド群)を参照群として定義した。 ドンペリドンによる乳児の奇形発生率について検討した主な結果は以下のとおり。・カウンセリング時の年齢中央値はすべての群で30歳であり、年齢分布も同等だった。飲酒または喫煙習慣のいずれにおいても、3群に大きな違いはなかった。・出産の結果はすべての登録者について集計され、生産の割合は、ドンペリドン群で94.0%(488例)、対照群で93.8%(1,570例)、メトクロプラミド群で94.2%(227例)だった。3群間で死産、流産または中絶の発生率に顕著な違いはなかった。・生産の単胎児における奇形発生率は、ドンペリドン群で2.9%(14/485例、95%信頼区間[CI]:1.6~4.8)、対照群で1.7%(27/1,554例、95%CI:1.1~2.5)、メトクロプラミド群では3.6%(8/224例、95%CI:1.6~6.9)で、有意な差は見られなかった。・飲酒量、喫煙、母体年齢、妊娠初期、施設、対照薬以外の併用薬使用を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、対照群とドンペリドン群の調整後オッズ比(OR)は1.86(95%CI:0.73~4.70、p=0.191)であり、奇形発生率に有意差は見られなかった。また、対照群とメトクロプラミド群の調整後ORは2.20(95%CI:0.69~6.98、p=0.183)と同様の結果だった。 研究者らは、「この観察コホート研究は、妊娠初期のドンペリドン曝露が乳児の主要な奇形のリスク増加と関連していないことを示した。これらの結果は、妊娠中にドンペリドンを服用した妊婦の不安を和らげるのに役立つ可能性がある」と結論している。

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飲酒と乳がんリスク~日本人16万人の解析

 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。 本研究には、国内の大規模コホート研究である多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、放影研寿命研究の8コホート研究が参加。それぞれのコホート研究で使用している飲酒習慣のアンケート調査結果から、飲酒習慣を頻度と量に分けて検討し、頻度は「現在非飲酒」「機会飲酒(週1日以下)」「ときどき(週1日以上4日以下)」「ほとんど毎日(週5日以上)」の4つ、量は1日飲酒量で「0g」「0~11.5g」「11.5~23g」「23g以上」の 4つのカテゴリーに分類した。年齢、地域、閉経状況、喫煙、BMI、初経年齢、出産数、女性ホルモン薬の使用、余暇の運動を調整後、非飲酒に対するその他の飲酒カテゴリーの乳がん罹患リスクを算出し、プール解析を行った。また乳がんの罹患は、閉経状態に基づき閉経前乳がんと閉経後乳がんに分け、それぞれに対する飲酒の影響を検討した。  主な結果は以下のとおり。・計15万8,164人の女性を平均14年追跡し、2,208例が新規に乳がんと診断された。・調査時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒頻度別では非飲酒者に対する最も頻度の高い飲酒者のハザード比(HR)は1.37(1.04~1.81)、飲酒量別では1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.74(1.25~2.43)であった。・診断時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒量別で1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.89(1.04~3.43)であった。・一方、調査時もしくは診断時での閉経状態に基づく閉経後乳がんでは、飲酒頻度、飲酒量ともに乳がんリスクとの有意な関連は認められなかった。 これらの結果から、日本人においても欧米での報告と同様に、閉経前乳がんでは飲酒が乳がんの罹患リスクを上昇させることが明らかとなった。一方、閉経後乳がんでは日本人では有意な関連が認められず、海外の結果と異なり閉経状態によって乖離がみられた。

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日本における産後のうつ症状と妊娠中の体重増加との関係

 産後のうつ症状(PPDS)と妊娠中の体重増加との関係については、依然として議論の余地が残っている。福島県立医科大学の山口 明子氏らは、産後1ヵ月のPPDSと妊娠中の体重増加との関係について、妊娠前のBMIに基づいて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年2月2日号の報告。 2011~14年に日本人女性8万927人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠前のBMIに基づき、対象者をG1(18.5kg/m2未満)、G2(18.5~20.0kg/m2)、G3(20.0~23.0kg/m2)、G4(23.0~25.0kg/m2)、G5(25kg/m2以上)の5グループに分類した。PPDSに関連する不十分または過剰な妊娠中の体重増加の潜在的なリスク因子を特定するため、母体年齢、教育、年間世帯収入、喫煙、出産歴、分娩方法、母乳の中止、精神的ストレス、妊娠中のエネルギー摂取量で調整した後、各グループに対して多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・G3の女性において、不十分な妊娠中の体重増加がPPDSのリスク因子であることが示唆された(調整オッズ比:1.24、95%CI:1.14~1.36)。・この結果は、内在的要因により変化は認められなかった。 著者らは「妊娠前のBMIが20.0~23.0kg/m2の女性では、妊娠中の不十分な体重増加がPPDSのリスク因子であるため、PPDSを早期に発見するためにも、妊娠中の体重をモニタリングすることが推奨される」としている。

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