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cemiplimab単独療法、PD-L1≧50%進行NSCLCのOSとPFSを延長/Lancet

 未治療のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧50%の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、cemiplimab単剤療法はプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法と比較して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、1次治療の新たな選択肢となる可能性があることが、トルコ・バシケント大学のAhmet Sezer氏らが行った「EMPOWER-Lung 1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年2月13日号に掲載された。cemiplimabは、PD-1に直接的に作用する強力な完全ヒト・ヒンジ安定化IgG4モノクローナル抗体。根治的手術や根治的放射線治療が適応とならない転移を有する/局所進行皮膚有棘細胞がんの治療薬として米国などで承認されており、進行固形腫瘍では他のPD-1阻害薬と同程度の抗腫瘍活性と安全性プロファイルが確認されている。24ヵ国138施設の無作為化第III相試験 研究グループは、進行NSCLCの1次治療におけるcemiplimabの有用性を評価する目的で、国際的な非盲検無作為化対照比較第III相試験を実施した(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成による)。2017年6月~2020年2月の期間に、24ヵ国138施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的にStageIIIB/IIIC/IVのNSCLCと確定され、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。生涯非喫煙者は除外された。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと)またはプラチナ製剤ベース2剤併用化学療法薬の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後にcemiplimabへのクロスオーバーが許容された。 主要エンドポイントは、マスクされた独立審査委員会の評価によるOS期間およびPFS期間とし、intention-to-treat(ITT)集団および米国食品医薬品局(FDA)の要請で事前に規定されたPD-L1発現率≧50%の集団で評価された。有害事象の評価は、少なくとも1回の投与を受けたすべての患者で行われた。死亡リスクが43%低減、2年OS率は50% 710例(ITT集団)が登録され、cemiplimab群に356例(年齢中央値63歳、女性12%)、化学療法群には354例(64歳、17%)が割り付けられた。このうちPD-L1発現率≧50%の患者は563例で、cemiplimab群283例(63歳、12%)、化学療法群280例(64歳、18%)だった。化学療法群の病勢進行例は203例で、このうち150例(74%)がクロスオーバーとしてcemiplimabの投与を受けた。 PD-L1発現率≧50%の集団におけるOS期間中央値は、cemiplimab群が未到達(95%信頼区間[CI]:17.9~評価不能)、化学療法群は14.2ヵ月(11.2~17.5)であり、ハザード比(HR)は0.57(0.42~0.77)と、cemiplimab群で有意に良好であった(p=0.0002)。また、2年OS率は、cemiplimab群50%(36~63)、化学療法群27%(14~43)だった。 同集団のPFS期間中央値は、cemiplimab群が8.2ヵ月(95%CI:6.1~8.8)と、化学療法群の5.7ヵ月(4.5~6.2)に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.43~0.68、p<0.0001)。また、1年PFS率は、cemiplimab群41%(34~48)、化学療法群7%(4~12)だった。 同集団の客観的奏効率は、cemiplimab群が39%(111/283例、CR:6例[2%]、PR:105例[37%])、化学療法群は20%(57/280例、3例[1%]、54例[19%])であり(オッズ比[OR]:2.53、95%CI:1.74~3.69、p<0.0001)、奏効期間中央値はそれぞれ16.7ヵ月および6.0ヵ月であった。 一方、ITT集団でも、高いクロスオーバー率(74%)にもかかわらず、OS期間中央値(22.1ヵ月[95%CI:17.7~評価不能]vs.14.3ヵ月[11.7~19.2]、HR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.0022)およびPFS期間中央値(6.2ヵ月[4.5~8.3]vs.5.6ヵ月[4.5~6.1]、0.59[0.49~0.72]、p<0.0001)は、いずれもcemiplimab群で有意に良好であった。 治験薬投与中に発現したGrade3/4の有害事象は、cemiplimab群が28%(98/355例)、化学療法群は39%(135/342例)で認められ、cemiplimab群では肺炎(16例[5%])、貧血(12例[3%])、低ナトリウム血症(9例[3%])の頻度が高く、化学療法群では貧血(56例[16%])、好中球減少(35例[10%])、血小板減少(28例[8%])が高頻度にみられた。 著者は、「探索的解析では、PD-L1発現の増加と良好な転帰に相関が認められ、有効性の腫瘍バイオマーカーとしてのPD-L1のエビデンスがもたらされた」としている。

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COVID-19の重症度、現在より過去の喫煙が関連か/日本疫学会

 喫煙者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクについては、海外から相反する結果が報告されている。また、過去喫煙者と現在喫煙者では重症化リスクが異なるとの報告もある。日本人COVID-19入院患者を対象に、喫煙歴と重症度の関連を検討した結果を、1月27~29日にオンライン開催された第31回日本疫学会学術総会で、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)が発表した。 解析に使われたのは、国立国際医療研究センターが中心となり日本全国の施設からCOVID-19入院症例を登録するレジストリ研究COVIREGI-JP1)のデータ。2021年1月12日時点で、872施設から2万4,017例が登録されている。このうち、日本国籍を有し、転院・転送例を除く20~89歳の患者1万853例が解析対象とされた。 重症度は入院中の治療等により0~5の6段階で定義された(重症度0:酸素投与なし、重症度1:非侵襲的な酸素投与、重症度2:ハイフロー・NIPPV、重症度3:侵襲的機械換気[ECMO以外]、重症度4:ECMO、重症度5:死亡[治療内容は問わず])。 主な結果は以下の通り。・解析対象患者の属性は、男性6,321例、女性4,532例。20代が2,091例と最も多く、50代(1,917例)、40代(1,729例)、30代(1,534例)と続く。・喫煙歴は、[男性]現在喫煙者:1,581例(28.8%)、過去喫煙者:1,717例(31.2%)、喫煙歴なし:2,198例(40.0%)[女性]現在喫煙者:574例(15.0%)、過去喫煙者:453例(11.8%)、喫煙歴なし:2,803例(73.2%)・重症度は、[男性]0:4,655例(73.6%)、1:1,186例(18.8%)、2:132例(2.1%)、3:100例(1.6%)、4:15例(0.2%)、5:233例(3.7%)[女性]0:3,783例(83.5%)、1:598例(13.2%)、2:40例(0.9%)、3:15例(0.3%)、4:0%、5:96例(2.1%)・男女ともに年齢が上がるほど重症化リスクが高い傾向がみられた。・年齢で調整後も、女性より男性で重症化リスクが高い傾向がみられた。・心血管疾患、COPD、糖尿病、肥満などの既報にて重症化との関連が指摘されている併存疾患を有する場合、併存疾患なしの場合と比較して重症化リスクが有意に増加していた。・男性では、とくに重症度1および4/5との比較において、過去の喫煙者で重症化リスクが高まる傾向がみられた(重症度0を対照群、喫煙歴なしを基準としたオッズ比):[重症度1(1,186例)]現在喫煙者:年齢調整後0.88(95%信頼区間:0.73~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.84(0.69~1.03)過去喫煙者:年齢調整後1.28(1.09~1.52)、年齢・併存疾患調整後1.23(1.04~1.46)[重症度2(132例)]現在喫煙者:年齢調整後0.62(0.36~1.07)、年齢・併存疾患調整後0.60(0.35~1.04)過去喫煙者:年齢調整後1.14(0.76~1.71)、年齢・併存疾患調整後1.08(0.72~1.64)[重症度4/5(248例)]現在喫煙者:年齢調整後0.97(0.55~1.69)、年齢・併存疾患調整後0.88(0.48~1.62)過去喫煙者:年齢調整後1.61(1.11~2.33)、年齢・併存疾患調整後1.29(0.86~1.93)・女性では、男性でみられたような傾向はみられなかった。・現在喫煙者と比較して過去喫煙者のほうが、うっ血性心不全、脳血管障害、高血圧症、重症糖尿病などの併存疾患を有する割合が高かった。 これらの結果から、大曲氏は喫煙歴とCOVID-19重症化リスクについて、下記のように考察した:1.過去喫煙者は何らかの疾患に罹患したことで禁煙した可能性がある2.過去喫煙者は禁煙したものの、併存疾患により重症化リスクが高いのではないか3.現在喫煙者はまだこれらの疾患に罹患していないために、重症化リスクが上がらないのではないか4.現在の喫煙そのものは現在の重症化リスクとは直接関係しないが、他の疾患に罹患することで将来COVID-19に罹患した場合には重症化リスクが高まるのではないか また、女性では過去の喫煙と重症度との間に関連がみられなかったことについて、女性では全体として喫煙者が少なく、検出力が不足していた可能性を指摘した。

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前立腺がんの心血管・死亡リスク、経皮エストロゲンvs.LHRHa/Lancet

 進行前立腺がん患者において、エストラジオールの経皮投与(tE2)パッチによる治療と黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬(LHRHa)による治療で、心血管疾患または死亡の発生に差は示唆されなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRuth E. Langley氏らが、英国の52施設で実施した多施設共同無作為化第II/III相試験「Prostate Adenocarcinoma Transcutaneous Hormone trial:PATCH試験」における長期的な心血管追跡調査データを報告した。アンドロゲン抑制は前立腺がん治療の柱であるが、長期毒性が問題となる。tE2は肝初回通過効果を受けないため、経口エストラジオールでみられる心血管毒性や、LHRHaでみられるエストロゲン枯渇効果を避けられると考えられていた。Lancet誌2021年2月13日号掲載の報告。局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を追跡 研究グループは、局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を、LHRHa群またはtE2パッチ群のいずれかに、病期、年齢、喫煙状況、心血管疾患の家族歴などで層別化し無作為に割り付けた(2007年8月14日~2011年2月17日までは1対2、その後は1対1)。 LHRHaは各施設の診療に従って投与し、tE2パッチは100μg/24時間パッチ4枚を最初の4週間は週2回交換、4週後にテストステロンが去勢レベル(≦1.7nmol/L)に達した場合は3枚を週2回交換に減量した。 主要評価項目は、心血管疾患(心不全、急性冠症候群、血栓塞栓性脳卒中、および他の血栓塞栓性イベントなど)および死亡であった。tE2パッチとLHRHaで心血管転帰に有意差なし 2007年8月14日~2019年7月30日の期間に、計1,694例がLHRHa群(790例)またはtE2パッチ群(904例)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は3.9年(四分位範囲2.4~7.0年)であった。 1ヵ月および3ヵ月時点での去勢率は、LHRHa群でそれぞれ65%および93%、tE2パッチ群で83%および93%であった。 事前に定義された基準を満たす心血管イベントは、153例・計167イベントが報告された。致死的心血管イベントは、1,694例中26例(2%)に認められた(LHRHa群15例[2%]、tE2パッチ群11例[1%])。心血管イベントの初回発生までの期間は、治療間で差はなかった(検視報告書なしの突然死を含む場合のハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.80~1.53、p=0.54、検視報告書が確認された場合のみのHR:1.20、95%CI:0.86~1.68、p=0.29)。 tE2パッチ群での心血管イベント89件中30件(34%)が、tE2パッチを中断あるいはLHRHaへ変更後3ヵ月以降に発生した。主な有害事象(全グレード)は、女性化乳房(LHRHa群38% vs.tE2パッチ群86%、p<0.0001)、ホットフラッシュ(LHRHa群86% vs.tE2パッチ群35%、p<0.0001)であった。

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肺血栓塞栓症はCOPD増悪の原因と考えてよいか?(解説:山口佳寿博氏)-1355

 まず言葉の定義から考えていく。COPDの分野にあって、“急性増悪”という言葉が使用されなくなって久しい。現在では、単に“増悪(Exacerbation)”という言葉を使用する。さらに、増悪は“気道病変(炎症)の悪化を原因とする呼吸器症状の急性変化”と定義される(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2006以降)。GOLD 2003では、増悪は狭義のもの(一次性原因)と広義のもの(二次性原因)の2種類に分類されたが、GOLD 2006以降では、気道病変(炎症)の悪化を原因とする“狭義の増悪”を“増悪”と定義し、それ以外の原因に起因する“広義の増悪”は増悪ではなく“増悪の鑑別診断/修飾因子”として考慮することになった(肺炎、肺血栓塞栓症、気胸、胸部外傷、胸水、心不全/不整脈、麻薬/鎮静剤、β blocker。GOLD 2011以降では、麻薬/鎮静剤、β blockerが鑑別から除外)。増悪の定義が厳密化されたのは、増悪様症状を示した症例のうち80%以上が感染性(気道感染)、非感染性(環境汚染など)による気道炎症の悪化に起因し、それに対してSteroid、抗菌薬を中心とした基本的治療法が確立されたためである。その意味で、肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary thromboembolism)は増悪を惹起する原因ではなく、増悪の鑑別診断となる病態であることをまず理解していただきたい。 COPDとPTEの合併に関しては古くから多くの検討がなされ、COPD患者におけるPTEの合併率は、19%(Lesser BA, et al. Chest. 1992;102:17-22.)から23%(Shetty R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2008;26:35-40.)と報告されている。これらのPTE合併頻度は本邦の一般人口におけるPTEの発症頻度(剖検例での検討:無症候性の軽症を含め18~24%)とほぼ同等であり、COPD自体がPTE発症を助長しているわけではない。しかしながら、原因不明のCOPD増悪(一次性原因と二次性原因を含む)症例を解析した論文では、その3.3%(Rutschmann OT, et al. Thorax. 2007;62:121-125.)から25%(Tillie-Leblond I, et al. Ann Intern Med. 2006;144:390-396.)にPTEの合併を認めたと報告された。本論評で取り上げたCouturaudらの論文では、COPD増悪様症状を呈した症例の5.9%にPTEの合併を認めたと報告されている(Couturaud, et al. JAMA. 2021;325:59-68.)。これら3論文を合わせて考えると、増悪様症状を呈したCOPD患者のうち少なくとも10%前後に、二次性原因としてのPTEが合併しているものと考えなければならない。以上の解析結果は、安定期COPDはPTEの発生要因にはならないが、COPDの増悪様症状を呈した患者にあってはPTEに起因するものが少なからず含まれ、COPDの真の増悪(一次性増悪)の鑑別診断としてPTEは重要であることを示唆する。PTEの合併はCOPD患者のその後の生命予後を悪化させ、1年後の死亡率はPTE合併がなかったCOPD患者の1.94倍に達する(Carson JL, et al. Chest. 1996;110:1212-1219.)。 Couturaudらのものを含め現在までに報告された論文からは、COPDの真の増悪とPTEとの関連を明確には把握できない。COPDの増悪がPTEの危険因子となる、あるいは、逆にPTEの合併がCOPDの真の増悪をさらに悪化させるかどうかを判定するためには、増悪様症状を呈したCOPD患者を真の増悪(一次性原因)とそうでないもの(二次性原因)に分類し、各群でPTEの発症頻度を評価する必要がある。COPDの真の増悪は、一秒量(FEV1)関連の閉塞性換気指標の悪化、喀痰での好中球、好酸球の増加、喀痰中の微生物の変化などから簡単に判定できる。これらの変化は、PTEなどの二次性原因では認められないはずである。以上のような解析がなされれば、COPDの真の増悪とPTE発症の関係が正確に把握でき、COPDの真の増悪がPTE発症の危険因子として作用するか否かの問題に決着をつけることができる。今後、このような解析が世界的になされることを念願するものである。本邦のPTEガイドライン(cf. 10学会合同の『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症[静脈血栓塞栓症]予防ガイドライン』[2004])では、COPDの増悪がPTEの危険因子の1つとして記載されているが、この場合の増悪がいかなる意味で使用されているのか、再度議論される必要がある。

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魔の10分を制する【Dr. 中島の 新・徒然草】(361)

三百六十一の段 魔の10分を制する第3波のコロナ感染者数はピークを過ぎたとはいえ、すんなり下がってくれません。まだまだ油断大敵のようです。先週は、飲食店経営の患者さんからも苦しい状況を聞かされました。なにしろ客が来ないので、昼の弁当販売が主体だそうです。でも、売れるのは300円台の安いものばかり。儲けが出ないので経営が苦しく、奥さんとの喧嘩が絶えないそうです。中島「あの1日6万円の補助っていうのは、助けにならないんですか?」患者「期待しているんですけど、いつになったら頂けるのやら」時短協力金が支給されるまで何とか凌いでほしいですね。さて、話は変わって先日のこと。頭痛を主訴に、母親と共に受診したのは20代の女性です。中島「頭痛の原因について何か心当たりはありますか?」母親「筋トレをするようになってから頭が痛いと言い出したんですよ」中島「なんでまた急に筋トレなんかしようと思ったんですか」患者「もうちょっと痩せようと思って」中島「食事のほうも減らしたんですか?」患者「そうですね」念のため、身長と体重を聞いてみましょう。中島「身長は150センチくらいですか?」患者「そんなもんです」中島「体重は?」患者「そ、それは言えません」カルテには60何キロとか書いてあります。中島「急に体重が減ると、頭が痛くなる人が多いように思いますよ」患者&母親「本当ですか?」中島「原因はわかりませんが、そんな患者さんは沢山みてきました」一応、私なりの理屈はあるのですが、読者の皆様に馬鹿にされたくないので披露するのはやめておきます。中島「何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、少しずつ痩せるといいですよ」患者「どうやったらいいのですか?」中島「実は無理せずに痩せる方法があるんです」患者&母親「なになになに、教えて、教えてー!」患者さんのみならず、お母さんも身を乗り出してきました。中島「まず、食べるのを我慢するのではなく、食べ過ぎないようにするわけです」空腹なのに食べてはならない、というのはつらいですよね。そうではなく、つい食べ過ぎてしまうのを防ぐわけです。中島「そのためには『魔の10分』を制することです」患者&母親「魔の10分?」中島「そうです。人間、満腹になってから『腹一杯』と感じるまでに10分ほどのタイムラグがあるわけです」正確には10分だったかな、20分だったかな。でも、10分と断言した以上、このまま押し通します。中島「たとえば、夕食後に、まだ少し足りないな、と思ったとしましょう」患者&母親「ええ」中島「そこで時計を見るわけです。たとえば午後7時45分だったらですね、それから10分待つ」患者&母親「……」中島「午後7時55分になってもまだ物足りなかったら、何か追加で食べましょう」患者&母親「食べてもいいわけですね」中島「ええ。でもほとんどの場合、10分も待っているうちに満腹になってしまいます」患者&母親「ホントですか?」中島「本当です」私自身いつも心掛けていますが、10分もしたら食べること自体に興味がなくなってしまうんですね、不思議なことに。中島「この方法にはもう1つの効能があります」患者「ほかにもあるんですか」中島「いつのまにか胃が小さくなってしまうわけです」いつも食べ過ぎていたら知らないうちに胃が大きくなり、腹八分目だと胃が小さくなる、というのが私の考えです。胃が大きくなってしまうと、いつも空腹感に悩まされてしまいます。中島「あと、間食を減らすことですね。絶えず何か口にしているということはありませんか?」母親「あります、あります」患者「ついお菓子を食べてしまうんです」中島「魔の10分を制することも大切ですが、間食を控えることも大切です」母親「それ、わかっていてできないんですよ、この子は」患者「お母さんも食べているじゃないの!」患者&母親「どうしたらいいんですか?」中島「いい方法があります」患者&母親「教えて、教えてー!」私自身がやってみて効果があった方法を伝授しました。私の場合、よくあるのが、日曜日の自宅でケアネットの原稿を書きながら、ついヒョイパク、ヒョイパクとお菓子を食べてしまうことです。この必敗パターンにどう対抗するのか。中島「意志の力に頼ってはなりません。環境です、環境こそがポイントです」患者「どうも甘いものの誘惑に弱いんで」中島「大丈夫です。私がしているのは、ポテトチップスやチョコレートなどを別の部屋のクローゼットの棚に置いておくやり方です」患者「へっ?」中島「この方法は効果抜群です。何か口に入れたいと思っても、わざわざ寒い部屋にいってクローゼットを開けて棚の上に手をのばして1つだけとるわけですから、もう面倒で面倒で仕方ありません。すぐに間食を減らすことができます」母親「なーるほど」そういえば、似たようなことを思い出しました。アメリカ駐在で、たちまちタバコを止めることができた知人の話です。オフィスが75階にあったので、タバコを吸うためには毎回1階まで下りてビルの外に出なくてはならなかったとか。喫煙の誘惑も、エレベーターを使う手間に勝てなかったそうです。まさしく意志の力より環境の力。というわけで、大きなお腹を抱えながらも人様に偉そうな講釈をしてしまいました。ダイエット&エクササイズ、永遠の課題ですね。最後に1句立春の 寒き部屋に 菓子隠す

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第34回 数値で測定できないデータの標準偏差とは?【統計のそこが知りたい!】

第34回 数値で測定できないデータの標準偏差とは?ある薬剤の効果に関する試験を行った結果、得られたデータの散らばりの程度を数値で示すことができれば、その値を比較することによって薬剤を評価することができます。その散らばりの程度を示す数値のことを「標準偏差(standard deviation:SD)」と言います。標準偏差は平均値と比べて、「どれだけばらついているか?」「差が大きいか?」を求めた数値で、最小値がゼロ、データの「バラツキの程度」が大きいほど値は大きくなります。この標準偏差は、数量データで用いることが多いイメージですが、数値で測定できないデータ(カテゴリーデータ)でも算出できます。今回は、カテゴリーデータの標準偏差について解説します。■カテゴリーデータの標準偏差の公式データには、大きく分けて、数量データとカテゴリーデータがあります。・数量データ:数値として足したり引いたりできるデータ(例:血圧値、体温)・カテゴリーデータ:数値で測定できないデータ(例:喫煙の有無、性別)たとえば、問診票などの「喫煙あり、喫煙なし」の2値のカテゴリーデータは「1、0」データに変換することにより、下記の公式で標準偏差を求めることができます。 表1のデータは、ある問診票の「喫煙あり、喫煙なし」を調べたものです。このデータを喫煙あり:1、喫煙なし:0の「1、0」データに変換したときの分散と標準偏差を求めてみましょう。表1 問診表の喫煙の有無のデータ 喫煙している人の割合は、全体5人に対して3人なので、 3÷5=0.60.6を前述の公式に当てはめると 分散=0.6(1-0.6)=0.24 標準偏差=√0.24=0.49となります。ちなみに、公式を使わずに計算すると表2のように、データの平均値は0.6、分散は0.24になりました。表2 表による喫煙の有無の標準偏差の算出 標準偏差も計算すると0.49となり、公式を使用した場合と同じ計算結果になります。■カテゴリーデータに関する留意点上記の問題のように、「喫煙あり・喫煙なし」や「男・女」などで評価されたカテゴリーデータの基準を「名義尺度」と言います。大小関係はなく、お互いを比較する際に同じであるかどうかだけが重要となります。カテゴリーデータを評価する基準にはもう1つあり、それを「順序尺度」と言います。たとえば、治療満足度を患者さんに聞いて、「満足・やや満足・どちらともいえない・やや不満・不満」というように5段階で評価されたデータです。このような順序尺度は比較する際、同じであるかどうかに加えて、大小関係も有するデータとなります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第1回 「標準偏差」と「標準誤差」の使い分けは「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション3 データのバラツキを調べる標準偏差

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GERDを増悪させる薬剤を徹底見直しして負のスパイラルから脱出【うまくいく!処方提案プラクティス】第32回

 今回は、胃食道逆流症(GERD)を悪化させる薬剤を中止することで症状を改善し、ポリファーマシーを解消した事例を紹介します。GERDは胸焼けや嚥下障害などの原因となるほか、嚥下性肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性咳嗽などの呼吸器疾患を発症・増悪させることもあるため、症状や発症時期を聴取して薬剤を整理することが重要です。患者情報70歳、女性(外来患者)基礎疾患発作性心房細動、慢性心不全、高血圧症、逆流性食道炎診察間隔循環器内科クリニックで月1回処方内容<循環器内科クリニック(かかりつけ医)>1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠2.5mg 1錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン徐放錠40mg 1錠 分1 朝食後(1ヵ月前から増量)5.エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後<内科クリニック>1.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前(2週間前に処方)2.テオフィリン徐放錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前(2週間前に処方)本症例のポイントこの患者さんは、なかなか胸焼けが治らないことを訴えて、半年前にGERDの診断を受けました。プロトンポンプ阻害薬による治療によって症状は改善したものの、最近はまた症状がぶり返しているとお悩みでした。患者さんの生活状況を聴取したところ、喫煙や飲酒はしておらず、高脂肪食なども5年前の心房細動の診断を機に気を付けて生活していました。心不全を併発していますが、体重は47.5kg程度の非肥満で増減もなく落ち着いていて、とくにGERD増悪の原因となる生活習慣や体型の問題は見当たりませんでした。さらに確認を進めると、最近の変化として、血圧が高めで推移したため1ヵ月前にニフェジピン徐放錠が20mgから40mgに増量になっていました。また、2週間前に咳症状のため、かかりつけの循環器内科クリニックとは別の内科クリニックを受診し、喘息様発作でモンテルカストとテオフィリンを処方されていました。GERDにおける食道内への胃酸の逆流は、嚥下運動と無関係に起こる一過性の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)弛緩や腹腔内圧上昇、低LES圧による食道防御機構の破綻などにより発生します1)。また、GERDを増悪させる要因として、Ca拮抗薬やテオフィリン、ニトロ化合物、抗コリン薬などのLES弛緩作用を有する薬剤、NSAIDsやビスホスホネート製剤、テトラサイクリン系抗菌薬、塩化カリウムなどの直接的に食道粘膜を障害する薬剤があります1,2)。Ca拮抗薬は平滑筋に直接作用してCaイオンの流れを抑制することで、LES圧を低下させるとも考えられています3)。上記のことより、1ヵ月前に増量したCa拮抗薬のニフェジピン徐放錠がGERD症状の再燃に影響しているのではないかと考えました。その食道への刺激によって乾性咳嗽が生じて他院を受診することになり、そこで処方されたテオフィリンによってさらにLESが弛緩してGERD症状が増悪するという負のスパイラルに陥っている可能性も考えました。かかりつけ医では他院で処方された薬剤の内容を把握している様子がなかったため、状況を整理して処方提案することにしました。処方提案と経過循環器内科クリニックの医師と面談し、別の内科クリニックから乾性咳嗽を主体とした症状のためモンテルカストとテオフィリンが処方されていることと、患者さんの胸焼けや咳嗽がニフェジピン増量に伴うLES弛緩により出現している可能性を伝えしました。医師より、ニフェジピン増量がきっかけとなってGERD症状から乾性咳嗽に進展した可能性が高いので、ニフェジピンを別の降圧薬に変更しようと回答をいただきました。そこで、ACE阻害薬は空咳の副作用の懸念があったため、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を提案し、医師よりニフェジピンをオルメサルタン40mgに変更する指示が出ました。また、現在は乾性咳嗽がないため、心房細動への悪影響を考慮してテオフィリンを一旦中止し、モンテルカストのみ残すことになりました。変更した内容で服用を続けて2週間後、フォローアップの電話で胸焼け症状は改善していることを聴取しました。その後の診察でモンテルカストも中止となり、患者さんは乾性咳嗽や胸焼け症状はなく生活しています。1)藤原 靖弘ほか. Medicina. 2005;42:104-106.2)日本消化器病学会編. 患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド. 2018.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

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うつ症状が心血管疾患発症と関連/JAMA

 22コホート・参加者56万3,255例のデータを包含したプール解析において、ベースラインのうつ症状は心血管疾患(CVD)と関連していることを、英国・ケンブリッジ大学のEric L. Harshfield氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)研究グループが明らかにした。ただし、症状レベルは大うつ病性障害を示す閾値よりも低く、関連の程度はわずかであった。これまで、うつ症状が独立してCVD発症と関連するかどうかは不明であった。JAMA誌2020年12月15日号掲載の報告。22コホート・56万3,255例のデータをプール解析 研究グループは、気分の落ち込みを含むうつ症状とCVD発生の関連を明らかにする目的で、Emerging Risk Factors Collaboration(21コホート・16万2,036例、ベースラインサーベイ期間:1960~2008年、最終フォローアップ:2020年3月)と、UK Biobank(40万1,219例、ベースラインサーベイ期間:2006~2010年、最終フォローアップ:2020年3月)の被験者データを基にプール解析を行った。適格被験者は、ベースラインでうつ症状を自己申告しており、CVD歴はなかった。 被験者のうつ症状は、検証済みの評価ツールを用いて記録。ERFC被験者のうつ病スコアは、Center for Epidemiological Studies Depression(CES-D)スケールをコホート全体に反映して調整したうえで評価が行われた(スコア範囲:0~60、16以上がうつ病性障害の可能性を示す)。UK Biobankでは、2-item Patient Health Questionnaire 2(PHQ-2、スコア範囲:0~6、3以上がうつ病性障害の可能性を示す)で記録された。 主要アウトカムは、致死的または非致死的の冠動脈疾患(CHD)、脳卒中、およびCVD(両者を併発)の発生であった。 年齢、性別、喫煙歴、糖尿病で補正後のCES-DまたはPHQ-2スコアの1-SD上昇当たりのハザード比(HR)を算出して評価した。うつスコア上昇に伴いCHD、脳卒中、CVDとも発生率増大 ERFC被験者16万2,036例(女性73%、ベースライン平均年齢:63歳[SD 9])では、CHD 5,078例、脳卒中3,932例の発生が記録された(追跡期間中央値:9.5年)。 CHD、脳卒中、およびCVDとの関連性は顕著な対数線形を示した。うつ病スコア1-SD上昇当たりのHRは、CHDが1.07(95%信頼区間[CI]:1.03~1.11)、脳卒中が1.05(1.01~1.10)、CVDが1.06(1.04~1.08)であった。CES-Dスコアの最高四分位(幾何平均スコア19)vs.最低四分位(同1)でみた1万人年当たりの発生率は、CHDイベントが36.3 vs.29.0、脳卒中イベントは28.0 vs.24.7、CVDイベントは62.8 vs.53.5であった。 UK Biobank被験者40万1,219例(女性55%、ベースライン平均年齢56歳[SD 8])では、CHD 4,607例、脳卒中3,253例の発生が記録された(追跡期間中央値:8.1年)。 うつ病スコア1-SD上昇当たりのHRは、CHDが1.11(95%CI:1.08~1.14)、脳卒中が1.10(1.06~1.14)、CVDが1.10(1.08~1.13)であった。PHQ-2スコアの4以上vs.0でみた1万人年当たりの発生率は、CHDイベントが20.9 vs.14.2、脳卒中イベントは15.3 vs.10.2、CVDイベントは36.2 vs.24.5であった。 HRの大きさと統計学的有意性は、追加リスク因子で補正後も実質的に変化はみられなかった。

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COPD急性増悪、入院患者の約6%が肺塞栓症/JAMA

 呼吸器症状の急性増悪で入院した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、あらかじめ定めた診断アルゴリズムを用いると、5.9%の患者に肺塞栓症が検出された。フランス・Centre Hospitalo-Universitaire de BrestのFrancis Couturaud氏らが、同国内の病院7施設で実施した前向き多施設共同横断研究「prevalence of symptomatic Pulmonary Embolism in Patients With an Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease study:PEP研究」の結果を報告した。COPDで呼吸器症状が急性増悪した患者における肺塞栓症の有病率はこれまで明らかになっておらず、COPDの急性増悪で入院した患者に対していつどのように肺塞栓症のスクリーニングをするかが課題であった。JAMA誌2021年1月5日号掲載の報告。COPD急性増悪による入院患者を肺塞栓症診断アルゴリズムで評価 研究グループは、2014年1月~2017年5月の間に呼吸器症状の急性増悪のため入院したCOPD患者を対象に、あらかじめ定めた肺塞栓症診断アルゴリズム(改訂ジュネーブスコアによる検査前確率判定、Dダイマー検査、スパイラルCT肺血管造影+下肢圧迫超音波検査)を入院48時間以内に適用し、3ヵ月間追跡調査した(追跡調査最終日は2017年8月22日)。 主要評価項目は、入院48時間以内に診断された肺塞栓症であった。主な副次評価項目は、入院時に静脈血栓塞栓症を有していないとして抗凝固療法を受けなかった患者における3ヵ月間の肺塞栓症とした。その他の評価項目は、入院時および3ヵ月間の静脈血栓塞栓症(肺塞栓症または深部静脈血栓症)、ならびに3ヵ月間の死亡(静脈血栓塞栓症が臨床的に疑われるかどうかにかかわらない)とした。COPD急性増悪で入院後、2日以内に約6%で肺塞栓症が確認 COPD急性増悪のため入院した患者の計740例(平均[±SD]年齢68.2±10.9歳、女性274例[37.0%])が登録された。このうち、入院48時間以内に肺塞栓症が確認されたのは44例(5.9%、95%信頼区間[CI]:4.5~7.9%)であった。 COPD急性増悪による入院時に静脈血栓塞栓症を有していないと判定され抗凝固療法を受けなかった患者670例において、3ヵ月間の追跡期間中に肺塞栓症が確認されたのは5例(0.7%、95%CI:0.3~1.7%)で、このうち3例は肺塞栓症に関連して死亡した。 全例における3ヵ月死亡率は、6.8%であった(50/740例、95%CI:5.2~8.8%)。追跡期間中に死亡した患者の割合は、入院時静脈血栓塞栓症有病者が非有病者と比較して高かった(25.9%[14/54例]vs.5.2%[36/686例]、リスク差:20.7%、95%CI:10.7~33.8%、p<0.001)。 静脈血栓塞栓症の有病率は、肺塞栓症が疑われた患者(299例)で11.7%(95%CI:8.6~15.9%)、肺塞栓症が疑われなかった患者(441例)で4.3%(95%CI:2.8~6.6%)であった。 著者は、研究の限界として、呼吸器症状の急性増悪が軽度であった患者や重度呼吸不全患者は過小評価されている可能性があること、17.6%の患者は肺塞栓症の初回評価を完遂できていないことなどを挙げたうえで、「COPD患者における肺塞栓症の体系的なスクリーニングが果たしうる役割について、さらなる研究により理解する必要がある」とまとめている。

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成人発症のがんサバイバー、2次原発がんの発症・死亡リスク高/JAMA

 米国の成人発症がんの生存者は一般集団と比較して、いくつかの種類の原発がんで、2次原発がん(SPC)の発症およびSPCによる死亡のリスクが高く、喫煙または肥満に関連する一部のSPCは、がん生存者全体におけるSPC罹患およびSPCによる死亡に占める割合が高いことが、米国がん協会(ACS)のHyuna Sung氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年12月22・29日号に掲載された。新たながんを発症するがん生存者の数は増加すると予測されている。一方、成人発症がんの生存者におけるSPCのリスクに関して、包括的なデータは十分でないという。SEERの12のレジストリデータを用いた後ろ向きコホート研究 研究グループは、成人発症がんの生存者における全体およびがん種別のSPCリスクを、1次原発がん(FPC)の種別および性別で定量的に評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(ACSの助成による)。 解析には、米国のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の12のレジストリのデータを用いた。対象は、1992~2011年の期間に年齢20~84歳でFPCと診断され(2017年12月31日まで追跡)、5年以上生存した患者であった。 主要アウトカムは1万人年当たりのSPC罹患およびSPCによる死亡とし、標準化罹患比(SIR)と標準化死亡比(SMR)を一般集団の予測値と比較した。男女とも喉頭がんでSIRが高く、肺がんで全SPC死の3割以上 153万7,101例の生存者(平均年齢60.4歳、女性48.8%)のうち、1,119万7,890人年(平均7.3年)の追跡期間中に、15万6,442例がSPCに罹患し、8万8,818例がSPCで死亡した。 男性では、一般集団と比較して、30種のFPCのうち18種でSPC発症リスクが、27種でSPCによる死亡リスクが統計学的に有意に高かった。また、女性では、一般集団と比較して、31種のFPCのうち21種でSPC発症リスクが、28種でSPCによる死亡リスクが統計学的に有意に高かった。 男性では、SIRが最も高かったのは喉頭がんの生存者(SIR:1.75、95%信頼区間[CI]:1.68~1.83、罹患率:1万人年当たり373例)であり、SMRが最も高かったのは胆嚢がんの生存者(SMR:3.82、95%CI:3.31~4.39、死亡率:1万人年当たり341例)であった。また、女性では、SIRおよびSMRはいずれも、喉頭がん生存者(SIR:2.48、95%CI:2.27~2.72、罹患率:1万人年当たり336例、SMR:4.56、95%CI:4.11~5.06、死亡率:1万人年当たり268例)で最も高かった。 特定のFPCとSPCリスクとの関連には大きなばらつきが認められた。一方、喫煙または肥満に関連する一部のSPC(たとえば、肺がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、大腸がん、膵がん、子宮体がん、肝がんなど)だけで、全SPCの罹患率および死亡率のかなりの割合を占めており、肺がん単独で全SPCによる死亡の31~33%を占めた。 著者は、「これらの知見は、がん生存者における継続的なサーベイランスおよび新規がんの予防への取り組みの重要性を強調するものである」としている。

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ゾレドロン酸の顎骨壊死発生率とリスク因子/JAMA Oncol

 ゾレドロン酸は、骨転移のあるがん患者において骨修飾薬(BMA)として用いられている。米国の多施設共同前向き観察コホート試験(SWOG Cancer Research Network S0702)の結果、投与後累積3年の顎骨壊死の発生率は2.8%であることが明らかにされた。JAMA Oncology誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。 試験は、BMA治療が限定的または治療歴がなく、試験登録から30日以内、ゾレドロン酸の使用などの治療計画があり、骨転移のあるがん患者を対象とした。ベースラインおよび6ヵ月ごとに提出された医学的、歯科学的および患者によるアウトカム報告に基づき、顎骨壊死(確立された基準で定義)の発生を3年間にわたり追跡評価した。 主要評価項目は、確認された顎骨壊死の累積発生率で、頭蓋領域への同時放射線療法が行われていない状態で8週間以上、顎領域に骨の露出領域が認められた場合と定義した。 主な結果は以下のとおり。・SWOG S0702試験には、3,491例が登録された(女性1,806例[51.7%]、年齢中央値63.1歳)。1,120例が乳がん、580例が骨髄腫、702例が前立腺がん、666例が肺がん、423例がその他の悪性腫瘍であった。・ベースラインの歯科学的検査が行われたのは2,263例(64.8%)であった。・全体で、顎骨壊死の確定発生は90例であった。累積発生率は1年時0.8%(95%信頼区間[CI]:0.5~1.1)、2年時2.0%(1.5~2.5)、3年時2.8%(2.3~3.5)であった。・3年累積発生率は、骨髄腫の患者で最も高率だった(4.3%、95%CI:2.8~6.4)。・ゾレドロン酸の投与計画間隔が5週間未満だった患者は、5週間以上だった患者と比べて顎骨壊死の発生が有意に多かった(ハザード比[HR]:4.65、95%CI:1.46~14.81、p=0.009)。・顎骨壊死の発生率の高さは、歯の総数が少ないこと(HR:0.51、95%CI:0.31~0.83、p=0.006)、義歯(入れ歯)があること(1.83、1.10~3.03、p=0.02)、現在喫煙(2.12、1.12~4.02、p=0.02)と関連していた。

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COVID-19治療でシクレソニドの推奨見直し/厚生労働省

 2020年12月25日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.1版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に、第4版は12月4日に公表され、今回重要事項について大きく3点で加筆が行われた(なお、この手引きは2020年12月23日現在の情報を基に作成。今後の知見に応じ、内容に修正が必要となる場合がある)。■主な改訂点【病原体・疫学】・国内発生状況の内容を追記(12月23日までの情報に更新)【臨床像】・「重症化のリスク因子」の中で、重症化のリスク因子に「悪性腫瘍」「2型糖尿病」「脂質異常症」「喫煙」「固形臓器移植後の免疫不全」を追記【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でシクレソニドにつき、「無症状・軽症の患者には推奨されない」を追記

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なぜ・どうやって患者に禁煙をすすめるか?/日本肺癌学会

 11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「禁煙を通して肺がん撲滅をめざす」と題したシンポジウムが行われ、この中で岡山済生会総合病院 がん化学療法センター長の川井 治之氏が「呼吸器内科医はなぜ・どうやって患者に禁煙をすすめているのか」と題した講演を行った。 冒頭に川井氏は、患者に禁煙を薦める理由として 1)喫煙は多くの呼吸器疾患の原因や悪化因子となる 2)がん治療への悪影響がある 3)がん治療後の2次(原発)がんの発生要因となる という基本事項を確認した。 1)について、今年に入って注目されたトピックスとして、COVID-19と喫煙の関係を紹介し、最新の研究を踏まえると「喫煙者は非喫煙者と比較して約2倍、新型コロナ感染症で重症化しやすい」1)というデータを共有した。 2)について、手術においては術後合併症発生率・術後死亡率・再手術の発生率がいずれも上がること、抗がん剤治療においてはイリノテカン・エルロチニブの全身曝露量を低下させ効果を減弱させる、シスプラチンの作用によるアポトーシスを阻害して耐性をもたらす、放射線治療においては治療効果の低下、治療関連毒性の増加など、各治療において広範囲に及ぶ悪影響があることを紹介した。さらに、小細胞肺がんの放射線化学療法中に喫煙を継続した場合、5年生存率が5%低下する2)、喫煙が肺がんの脳転移リスクを上昇させる3)といった研究結果も紹介した。 3)の喫煙関連の2次がんのリスク増については、喫煙者は治療後の肺がん発症リスクが6~24倍になること4)、2次がん発症のリスクが76%増加すること5)を指摘した。さらに診断時、3年以内に禁煙していた場合、現在の喫煙者と比較して死亡リスクが11%減少するというデータ6)を紹介し、喫煙の有害性、禁煙の有効性を改めて訴えた。相手に合わせて言葉を変え、あらゆる機会に介入 続けて、実際に診療にあたってどのように患者に禁煙をすすめるのかという点について、自身の実践を踏まえて紹介した。 初診時は、カルテのバイタルサイン欄に喫煙歴のチェック欄を設け、診療時に医療者が喫煙について触れる機会をつくる試みを紹介。この際、過去に喫煙歴のある患者は「(現在は)喫煙していない」と回答しがちなので、過去の喫煙歴も必ず聞くとよい、とアドバイスした。  「検診の胸部異常陰影で受診したが、CTでは異常がなかった」というケースの診療時では、「肺がんでなくてよかったですね。でもこのままタバコを吸っていると6人に1人は肺がんになります。良い機会ですから禁煙しませんか?」と伝え、40歳以下の患者であれば「喫煙者は寿命が10歳短くなりますが、今禁煙すれば寿命に対する影響をほぼなしにできますよ」と相手に響く言葉を添えたうえで禁煙外来につなぐことを紹介した。 さらに、非専門医が禁煙をすすめる際の手引きとして日本肺癌学会が翻訳・公開するNCCNガイドラインを推奨、自身のブログ・SNSを使った禁煙についての情報発信も紹介し、一般向けにわかりやすく禁煙の大切さを伝える重要性を訴えた。■参考1)Patanavanich R , et al. Nicotine & tobacco research. 2020 ;24:22;1653-1656.2)Videtic GMM, et al. J Clin Oncol. 2003;21:1544-9.3)Wu SY, et al. Int J Clin Exp Med. 2020;03:2174)The Health Consequences of Smoking—50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General5)Tabuchi T, et al. Ann Oncol. 2013;24:2699-27046)Tabuchi T, et al. Int J Cancer. 2017;140:1789-1795.

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がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクとその対策/日本医療薬学会

 近年、腫瘍循環器学という新しい概念が提唱されている。10月24日~11月1日にWeb開催された第30回日本医療薬学会総会のシンポジウム「腫瘍循環器(Onco-Cardiology)学を学ぼう~タスクシェア・シフト時代にマネジメントする薬剤師力の発揮~」において、腫瘍循環器領域の第一人者である向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長)が「腫瘍循環器学とは?臨床現場で薬剤師に求めること」と題し、腫瘍循環器学における新たな視点について語った。がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクも変化 がん患者の心血管リスクは、がん治療時の急性期/慢性期心毒性をピークに回復・寛解期には一度低下傾向を示す。しかし、転移・再発に対するがん治療の開始やがんサバイバーとして生き長らえる中で、潜在的心血管リスクの増悪による晩期心毒性によりリスクは再び上向きに転じることが報告1)されている。向井氏はその1つとして、28種がんのがんサバイバーの治療経過と心臓病による死亡リスクの検討2)から、がん診断後から5~10年の時点で全領域のがんサバイバー、なかでも乳がん、皮膚がん(メラノーマ)、前立腺がん患者などの死亡リスクが上昇する報告を示した。同氏は「新規薬剤によるがん治療の進歩とそれに伴う生存率上昇の反面、心毒性が増加していることが影響している」と述べ、最新のがん治療にも心血管リスクが潜んでいる点を指摘した。投与終了後の経過観察は生涯必要 がん治療による心毒性・心血管リスクの歴史は1970年代に遡る。殺細胞系抗がん剤アントラサイクリンによる心筋症が明らかになって以降、2000年代には分子標的薬のトラスツズマブにより生じる心筋症が、近年では免疫チェックポイント阻害薬による劇症心筋炎と心血管合併症が問題になっている。さらに、血管新生阻害薬(抗VEGF薬)は心毒性リスクが投与用量に比して増加し、かつ経時的に変化する特徴があり、投与初期には毛細血管攣縮による血圧上昇、数ヵ月後に毛細血管循環障害(密度希薄化)による高血圧症や尿蛋白が出現する。その後、年単位の治療が継続されることでプラーク形成による血栓症・出血が発生し、3~5年の長期治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な心血管疾患発症に至る。このような症例を実際に目の当たりにした同氏は「がん治療が進歩する一方でこれまでにない晩期合併症が増加している」と危惧した。 心毒性発症の原因は多様性を示し、がん自体の作用、心血管疾患の既往、ゲノムの関与、そしてがん治療が影響していることから、「心毒性に対し循環器医の介入はもちろんのこと実際に薬剤を扱う薬剤師も、近年頻度が増加しているがん関連血栓症や動脈硬化血管障害(虚血性心疾患)、不整脈などを幅広く理解しておく必要がある」とも述べた。がんと循環器疾患の共通点、危険因子と発症機序 がんの危険因子を列挙すると循環器疾患の危険因子との共通項目が非常に多く、たとえば、喫煙、飲酒、食塩摂取、運動不足などが挙げられる。また、がんと動脈硬化発症の機序において、腫瘍が増殖する際の血管新生に影響を及ぼすVEGFは、循環器領域ではプラーク形成にかかわる血管新生や血管内皮障害を起こす。そのほかにもがんの進展と動脈硬化の発症メカニズムには多くの共通点が指摘されており3)、同氏は「遠い存在であったがんと循環器は共通の性格を持つ疾患である」とし、「いずれも生活習慣病として、遺伝子的因子、エピジェネティク因子、環境因子、生活習慣などが原因で酸化ストレス、炎症、増殖、アポトーシス、血管新生などを生じ動脈硬化やがんに発展する。心不全や血栓症などの晩期心毒性はこれらの危険因子を抑えることで発症予防につながることが期待されている」と話した。薬剤師によるがんサバイバーへの貢献に期待 このようにがんと循環器のリスクの共通性が解明される一方、増加するがんサバイバーへの対応は現在模索中である。しかし、がん診療をがん発症予防、診断と治療計画、がん治療、がんサバイバーの4つのステージに分けて考えた時、どのステージにおいてもこれから薬剤師が活躍すると同氏は期待を寄せる。とくにがん治療が終わった後のがんサバイバーは、自分を知っていてくれるかかりつけ薬剤師に調剤薬局やドラッグストアで接することになる。そこでは、がんサバイバーが直面する晩期合併症、なかでも晩期心毒性に対応するためにがん診療における薬薬連携による情報交換と幅広い理解が求められている。 最後に同氏は「腫瘍循環器学を学び、がんと循環器の共通点を知りタスクシフト・シェア時代に対応することで、がんサバイバーの不安を軽減し支援することができるよう薬剤師の皆さまに“薬剤師力”を発揮していただきたい」と締めくくった。

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永遠の命題PCI vs.CABG、SYNTAXスコアII 2020開発は、本当に進化か?(解説:中川義久氏)-1318

 冠血行再建におけるPCI vs.CABGは永遠の命題なのであろう。次々と情報が提供される。その度に、霧が晴れるようにスッキリしていくのではなく、出口のない迷宮をさまよう気持ちになる。 PCI vs.CABGの比較において、最も重要で代表的な臨床試験が2005年から2007年に施行されたSYNTAX試験である。3枝疾患または左主幹部病変を有する患者を、PCIかCABGに無作為に割り付けて比較したものである。このSYNTAX試験の登録患者を10年後まで追跡するSYNTAX Extended Survival(SYNTAXES)試験から、長期予後の予測モデルである「SYNTAXスコアII 2020」が開発されたことが、2020年10月8日付のLancet誌に報告された。筆頭著者は、当該施設に留学していた日本人であり、その努力と貢献はうれしく、賞賛に値する。 ここで復習してみよう。古典的には、冠動脈病変の重症度は1枝疾患、2枝疾患や3枝疾患といった罹患病変枝数や左前下行枝近位部の有無によって評価されてきた。しかし、同じ3枝病変であっても重症度に幅があることは臨床現場で認識されていた。これを受け、冠動脈病変の形態と重症度について、とくにPCIを実施する立場から客観点にスコア化したものがSYNTAXスコアである。病変枝数や部位だけでなく、完全閉塞・分岐部・入口部・屈曲・石灰化病変などに応じて点数を付ける。 次に開発されたのが、SYNTAXスコアIIである。SYNTAXスコアに患者背景を組み入れた指標として提唱された。SYNTAXスコアに加えて年齢、性別、クレアチニンクリアランス、左室駆出率、左主幹部病変、末梢動脈疾患、COPDなどを背景因子として組み入れて算出する。これはCABGまたはPCI術後の4年後の予測に有用であるという。 今回、SYNTAXスコアIIを基に「SYNTAXスコアII 2020」が開発された。この、SYNTAXスコアII 2020は、SYNTAXスコアに加えて、3枝病変か左主幹部病変かの分類、年齢、クレアチニンクリアランス、左室駆出率、末梢動脈疾患、COPD、喫煙、糖尿病などの背景因子から算出される。このスコアは、その患者にPCIを適用した場合とCABGを適用した場合の、10年後の総死亡予測および5年後の主要心血管イベントの予測に有用であるという。 「SYNTAXスコア」から「SYNTAXスコアII」そして「SYNTAXスコアII 2020」への推移は、本当にモデル構築の進化なのだろうか? この進化によって日常臨床のレベルが向上し、患者がより幸せになることに貢献するのであろうか。確かにモデルに組み入れる因子の数が多いほど緻密にモデルを構築できるであろう。これは、ある種当然といえる。最初にSYNTAXスコアが紹介されたときには、大きな感動を覚えた。これまで、1枝疾患、2枝疾患や3枝疾患といった大雑把な評価しかなかったが、臨床現場では動脈硬化の進行度や複雑性の違いを実感していた。「SYNTAXスコアすごい! これが、俺たちが表現したかったものだ!」という気持ちであった。SYNTAXスコアII 2020には、残念ながらこの感動はない。糖尿病患者の予後が不良であること、それもCABGに比してPCI患者において顕著に作用する因子であることなど先刻承知のことであり、現時点でも治療方針選択においては当然のように考慮されている因子である。それを、わざわざ組み込んだモデルだからといっても、その斬新性は低い。  数多くの因子から複雑に算出するモデルを構築して、ようやく差異を認識できるまでに、PCIとCABGが拮抗してきたのである。その場合に、モデルの示す数値の差よりも、患者の希望(選好)のほうが実臨床の現場では大切なのではないだろうか。考え出すと迷宮から抜け出すことは一層困難となる。いっそのこと判断は、AI様に任せる時代になるのであろうか。

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乾癬患者における、COVID-19の重症化因子は?

 COVID-19への決定的な対策はいまだ見いだされていないが、入院・重症化リスクを捉えることで死亡を抑え込もうという世界的な努力が続いている。本稿では、乾癬患者のCOVID-19に関する国際レジストリ「PsoProtect」へ寄せられた25ヵ国からの臨床報告に基づき、英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのSatveer K. Mahil氏らが乾癬患者の入院・重症化リスクを解析。「高齢」「男性」「非白人種」「併存疾患」がリスク因子であることを明らかにした。また、乾癬患者は複数の疾患負荷と全身性の免疫抑制薬の使用によってCOVID-19の有害アウトカムのリスクが高まる可能性があるとされているが、これまでデータは限定的であった。今回、著者らは「生物学的製剤の使用者は、非使用者と比べて入院リスクが低かった」とも報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2020年10月16日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者におけるCOVID-19の臨床経過を明らかにし、入院と関連する因子を特定するため、国際レジストリ「PsoProtect」を通じて、COVID-19確認/疑いと臨床医が報告した乾癬患者を対象に、多重ロジスティック回帰法にて、臨床/人口統計学的特性と入院との関連を評価した。また、患者自身が報告する別のレジストリ「PsoProtectMe」のデータから、リスクの回避行動を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・評価は、臨床医からの報告症例である25ヵ国374例(確認例172例[46%]、疑い例202例[54%])の患者を対象に行われた。36%が英国、21%がイタリア、15%がスペインの患者で、年齢中央値は50歳、男性61%、白人種85%であった。喫煙歴なし54%、現在喫煙者は15%だった。・71%の患者が生物学的製剤による治療を受けていた。非生物学的製剤による治療を受けていた患者は18%、全身療法が行われていなかったのは10%だった。・COVID-19から完全に回復したのは348例(93%)であった。入院を要したのは77例(21%)、死亡は9例(2%)であった。・入院リスクの増大因子は、高齢(多変量補正後オッズ比[OR]:1.59/10歳、95%信頼区間[CI]:1.19~2.13)、男性(2.51、1.23~5.12)、非白人種(3.15、1.24~8.03)、慢性肺疾患の併存(3.87、1.52~9.83)であった。・入院率は、生物学的製剤使用患者よりも非使用患者で高率だった(OR:2.84、95%CI:1.31~6.18)。生物学的製剤のクラスの違いによる有意差はなかった。・患者報告のデータ(48ヵ国1,626例)から、生物学的製剤使用患者と比べて非使用患者はソーシャルディスタンスのレベルが低いことが示唆された(OR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。

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COVID-19の予防に対する意識が低い人とは?

 COVID-19に対する予防措置を講じても、約20%の人が適切な実施に対して消極的であることが、東京大学医科学研究所の武藤 香織氏らの研究によって明らかとなった。消極的な人の特徴として、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さが挙げられた。PLOS ONE誌2020年6月11日号の報告。 COVID-19に対して予防措置や自制の呼び掛けといった対策を講じ、協力を要請した状況下で、予防的行動がいつ、どのように変化したか調査した。クォータサンプリングに基づき、オンラインプラットフォームで実施された横断調査のミクロデータ(20~64歳、回答者数合計1万1,342人)を使用した。 全国調査の結果については以下のとおりである。・社会的距離の測定は、約85%が実践しており、女性、高年齢の割合が高かった。・頻繁な手洗いは全体の86%(女性の92%、40歳以上の87.9%)で実践されていた。・予防措置に影響を与えた要因に、2020年2月初旬に発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での感染が影響していた。・適切な予防措置の実施に約20%が消極的であり、その特徴は、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さであった。 著者らは、「日本での感染拡大を防ぐためには、さまざまな手段を用いて行動の変化を促すことが不可欠である」としている。

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禁煙とうつ病~メタ解析

 禁煙は健康、とくにメンタルヘルスに好影響を及ぼす可能性がある。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのSohrab Amiri氏は、禁煙者におけるうつ病有病率を明らかにするため、検討を行った。Journal of Addictive Diseases誌オンライン版2020年10月21日号の報告。 PRISMAガイドラインを用いて、メタ解析を実施した。2020年7月までに英語で報告された研究を、PubMed、Scopusより検索した。うつ病の有病率に関連する結果を算出し、プールした。 主な結果は以下のとおり。・研究デザインの異なる49研究が抽出された。・禁煙者のうつ病有病率は18%(信頼区間[CI]:14~22%)であった。・うつ病の有病率が最も高かったのは、アジアと欧州、次いで米国であった。・禁煙者の大うつ病有病率は15%、うつ症状の有症率は17%であった。・禁煙者は、現在の喫煙者と比較し、うつ病のオッズ比が低かった(オッズ比:0.63、CI:0.54~0.75、I2=83.9%)。・出版バイアスは、ほとんど認められなかった。 著者らは「禁煙者のうつ病有病率は、非喫煙者や現在の喫煙者とは異なっていた。健康政策および禁煙を推奨するという観点から、メンタルヘルスへの好影響を考慮する必要がある」としている。

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ホルモン補充療法の乳がんリスク、治療法と期間で異なる/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの同国コホート内症例対照研究で、ホルモン補充療法(HRT)の乳がんリスクのレベルは、HRTの種類により異なり、併用療法および長期投与で高いことが示された。ただし、メタ解析と比較し、長期のHRTに関連した乳がんのリスク増加は小さく、治療の中止でリスクは顕著に低下することも示されている。先行研究では、長期的なHRTは乳がんのリスク増加と関連しており、治療中止後はリスク増加が減るものの数年間はリスクが高いままであることが、また最近の大規模メタ解析ではHRTに関連した乳がんリスクが予想よりも高いことが示されていた。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。治療法と期間別に乳がんリスクをコホート内症例対照研究で評価 研究グループは、異なるHRTの種類および投与期間と乳がんリスク増大との関連を評価するため、英国のプライマリケア研究データベース、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)のデータを用いたコホート内症例対照研究を行った。これらのデータベースは、入院、死亡、社会的剥奪およびがん登録(QResearchのみ)と連携している。 解析対象は、1998~2018年の期間に乳がんの初回診断を受けた50~79歳の女性9万8,611例(症例群)、およびこの集団と年齢、一般診療、index dateを一致させた女性45万7,498例(対照群)であった。 主要評価項目は、一般診療記録、死亡記録、入院記録、がん登録に基づく乳がんの診断とし、HRTの種類ごとに患者背景、喫煙状況、アルコール摂取、併存疾患、家族歴、他の処方薬で補正したオッズ比(OR)を算出し評価した。長期のエストロゲン単独療法とエストロゲン+プロゲステロン併用療法で増加 症例群3万3,703例(34%)および対照群13万4,391例(31%)が、index dateの1年前にHRTを受けていた。 HRT使用歴なしと比較し、最近(過去5年未満)の長期(5年以上)使用者では、エストロゲン単独療法(補正後OR:1.15、95%信頼区間[CI]:1.09~1.21)およびエストロゲン+プロゲステロン併用療法(1.79、1.73~1.85)のいずれも乳がんのリスク増加と関連していた。併用するプロゲステロンについては、乳がんのリスク増加はノルエチステロンが最も高く(1.88、1.79~1.99)、ジドロゲステロンが最も低かった(1.24、1.03~1.48)。 過去(5年以上前)のエストロゲン単独療法の長期使用、および過去の短期(5年未満)エストロゲン+プロゲステロン併用療法は、乳がんのリスク増加との関連は認められなかった。しかし、過去の長期エストロゲン+プロゲステロン併用療法では乳がんのリスクは高いままであった(補正後OR:1.16、95%CI:1.11~1.21)。 HRT使用歴なしと比較した乳がん発症例の増加(1万人年当たり)は、最近のエストロゲン単独療法使用者では3例(若年女性)~8例(高齢女性)、最近のエストロゲン+プロゲステロン併用療法使用者では9例~36例、過去のエストロゲン+プロゲステロン併用療法使用者では2例~8例と予測された。 結果を踏まえて著者は、「われわれの研究は、英国におけるさまざまなHRTの使用と乳がんリスク増大に関する一般化可能な新たな推定値を提供するものである」と述べている。

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第二アンジオテンシン変換酵素(ACE2)は、ヒトの運命をつかさどる『X因子』か?(解説:石上友章氏)-1309

 米国・ニューヨークのマクマスター大学のSukrit Narulaらは、PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)試験のサブ解析から、血漿ACE2濃度が心血管疾患の新規バイオマーカーになることを報告した1)。周知のようにACE2は、古典的なレニン・アンジオテンシン系の降圧系のcounterpartとされるkey enzymeである。新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2が、標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2を受容体として、ウイルス表面のスパイクタンパクと結合することが知られている。降って湧いたようなCOVID-19のパンデミックにより、にわかに注目を浴びているACE2であるが、本研究によりますます注目を浴びることになるのではないか。 Narulaらの解析によると、血漿ACE2濃度の上昇は、全死亡、心血管死亡、非心血管死亡と関係している。さらに、心不全、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の罹患率の上昇にも関係しており、年齢、性別、人種といったtraditional cardiac risk factorとは独立している。ここまで幅広い疾病に独立して関与しているとすると、あたかも人の運命を決定する「X因子」そのものであるかのようで、にわかには信じることができない。COVID-19でも、人種による致命率の差を説明する「X因子」の存在がささやかれていることから、一般人にも話題性が高いだろう。COVID-19とRA系阻害薬、高血圧との関係が取り沙汰されていることで、本研究でも降圧薬使用とACE2濃度との関係について検討されている(Supplementary Figure 1)。幸か不幸か、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬のいずれの使用についても、有意差はつかなかった。血漿ACE2濃度は、血漿ACE2活性と同一であるとされるが、肺胞上皮細胞での受容体量との関係は不明である1)。したがって、単純にSARS-CoV-2の感染成立との関係を論ずることはできない。 COVID-19の「X因子」については、本年Gene誌に本邦のYamamotoらが、ACE遺伝子のI(挿入)/D(欠失)多型であるとする論文を発表している2)。欧米人と日本人で、ACE遺伝子多型に人種差があることで、COVID-19の致命率の差を説明できるのではないかと報告している。欧州の集団はアジアの集団よりもACE II遺伝子型頻度が低く、一方、高い有病率とCOVID-19による死亡率を有していた。何を隠そう、ACE遺伝子多型に人種差があることを、初めて報告したのは本稿の筆者である3)。自分の25年前の研究とこのように再会することになるとは、正直不思議な思いである。

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