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再発・難治濾胞性リンパ腫、レナリドミド+リツキシマブへのtafasitamab上乗せ(inMIND)/ASH2024

 再発/難治(R/R)濾胞性リンパ腫(FL)では、抗CD-20抗体併用療法であるレナリドミド(len)とリツキシマブ(R)が用いられる。 そのような中、R/R FLにおける抗CD-19抗体tafasitamabのlen+Rへの上乗せ効果を評価する第III相inMIND試験が行われている。同試験の初回解析結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaurie H. Sehn氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。・試験デザイン:第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験・対象:グレード1~3Aの成人R/R FL(または辺縁帯リンパ腫)、抗CD-20抗体療法を含む1ライン以上の前治療歴あり・試験群:tafasitamab(12mg/kg)12サイクル(1~3サイクルは毎週、4~12サイクルは2週ごと)+len(20mg)12サイクル(Day1~21連日)+R(375mg/m2)5サイクル(1サイクルは毎週、2~5サイクルは4週ごと)(TAFA群、273例)・対照群:プラセボ+len+R(PBO群、275例)・評価項目:【主要評価項目】治験医師評価の無増悪生存率(PFS)【副次評価項目】PET-CR率、全生存率(OS)、独立評価委員会(IRC)評価のPFS、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、後治療までの期間(TTNT)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は64歳(75歳以上19.7%)、FLIPI(中等度・高リスク濾胞性リンパ腫国際予後指標)3~5が52.4%、GELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)高腫瘍量規準該当が82.8%、POD24(初回化学療法後24ヵ月以内の再発・増悪)は31.6%と比較的高リスクな集団であった。・追跡期間中央値14.1ヵ月時点のPFS中央値はTAFA群22.4ヵ月、PBO群13.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~0.58、p<0.0001)と有意にTAFA群で良好であった。・PFSはすべてのサブグループにおいてTAFA群が優れていた。・PET-CR率はTAFA群49.4%、PBO群39.8%(オッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.04〜2.13、名目上p=0.0286)と有意にTAFA群で良好であった。・ORRはTAFA群83.5%、PBO群72.4%(OR:2.0、95%CI:1.30〜3.02、名目上p=0.0014)と有意にTAFA群で良好であった。・頻度の高いGrade3/4の試験治療下における有害事象(TEAE)は好中球減少(TAFA群39.8%、PBO群37.5%)、肺炎(それぞれ8.4%、5.1%)などであった。・TEAEによる投与中止は、TAFA群の11%、PBO群の7%にみられた。 inMINDはR/R FLに対して初となる、抗CD19と抗CD20という2つの抗体を併用した試験としても評価される。レナリドミド・リツキシマブ併用へのtafasitamabの上乗せは、R/R FLに対する新しい標準治療としての将来性を示した、とSehn氏は結んだ。

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MSI-H/dMMRの進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。国際的な無作為化第III相試験の中間解析 CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんで、各施設の検査でMSI-HまたはdMMRを示し、さまざまな治療ライン数の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ療法、ニボルマブ単独療法、化学療法を受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は以下の2つとし、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者を対象とした。(1)1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法または化学療法を受けた群におけるPFS、(2)転移病変に対する全身療法の有無を問わずに、ニボルマブ+イピリムマブ療法またはニボルマブ単独療法を受けた群におけるPFS。 今回の事前に規定された中間解析では、(1)の解析結果が報告された。境界内平均生存期間が10.6ヵ月延長 転移病変に対する全身療法を受けていない303例を、ニボルマブ+イピリムマブ群に202例(年齢中央値62歳、女性53%)、化学療法群に101例(同65歳、55%)割り付けた。255例(ニボルマブ+イピリムマブ群171例[85%]、化学療法群84例[83%])が、中央判定でMSI-HまたはdMMRの腫瘍を有していた。 追跡期間中央値31.5ヵ月(範囲:6.1~48.4)の時点で、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者におけるPFS中央値は、化学療法群が5.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.4~7.8)であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ群は未到達(38.4~評価不能)と有意に優れた(p<0.001[両側層別log-rank検定を用いて算出したPFSの群間差])。 また、Kaplan-Meier曲線による12ヵ月無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が79%(95%CI:72~84)、化学療法群は21%(11~32)であり、24ヵ月無増悪生存率はそれぞれ72%(64~79)および14%(6~25)であった。 24ヵ月時の境界内平均生存期間(RMST)は、化学療法群よりニボルマブ+イピリムマブ群で10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.9)延長し、これはPFSの主解析の結果と一致した。新たな安全性に関する懸念はみられない ニボルマブ+イピリムマブ群では、そう痒(22%)、下痢(21%)、甲状腺機能低下症(16%)、無力症(14%)、化学療法群では下痢(51%)、悪心(47%)、無力症(35%)、食欲減退(23%)の頻度が高かった。 Grade3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23%、化学療法群で48%に発現した。試験薬の投与中止に至った全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ16%および32%に認めた。また、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。 著者は、「本試験で得られたPFSの結果は、非無作為化CheckMate 142試験における1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法のデータと一致しており、MSI-HまたはdMMRを示す転移を有する大腸がん患者の治療において、この免疫チェックポイント阻害薬2剤併用療法の使用を支持するものである」としている。

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シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。 Mell氏らの説明によると、頭頸部がんは比較的発生頻度の高いがんで、患者数は世界の全てのがんの中で7番目に多いという。頭頸部がんのリスク因子は、喫煙や飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などで、口や鼻、副鼻腔、唾液腺、喉、声帯の組織に発生する可能性がある。長年にわたって頭頸部がんの最も良い治療薬はシスプラチンであると考えられてきた。しかし、30%程度の患者では、副作用の厳しさから化学療法が中止に至る。 セツキシマブはこれまで長い間、シスプラチン不耐の患者に使用できる優れたセカンドライン治療薬と見なされてきたが、近年、別の治療選択肢としてデュルバルマブが浮上してきた。多くのがん専門医は、セツキシマブよりもデュルバルマブの方が安全性も有効性も高いのではないかと考えている。そのような考えを検証するため、Mell氏らは今回、北米の89の大学病院や地域医療センターで第2/3相多施設共同ランダム化非盲検並行群間比較試験を行った。対象とされた、186人のシスプラチン不耐の進行頭頸部扁平上皮がん患者(年齢中央値72歳、男性84%)は、放射線治療開始の2週間前と、放射線治療開始から2週目以降は4週間ごとにデュルバルマブ1,500mgを投与する群(7サイクル)、または放射線治療開始の1週間前にセツキシマブ400mg/m2、放射線治療開始から1週間目以降は毎週250mg/m2を投与する群(8サイクル)に2対1の割合で割り付けられた。 その結果、2年無増悪生存率は、デュルバルマブ投与群(123人)での50.6%に対してセツキシマブ投与群(63人)では63.7%だった。有害事象の発生については、両群で同様であった。セツキシマブ投与群とデュルバルマブ投与群のアウトカムの差があまりにも大きかったため、Mell氏らは試験を早期に中止し、全ての患者でセツキシマブの投与に切り替えたという。 Mell氏は「デュルバルマブに対しては、数多くの理由から楽観視する見方があったが、標準を下回る可能性もあるという結果になった」とUCSDのニュースリリースの中で話している。その上で、「標準的なシスプラチンの併用ができない患者にとって、放射線治療にセツキシマブを併用する治療が極めて良い選択肢となることが、われわれの試験で改めて示された」と述べている。 ただ、一部のわずかな患者にとってはデュルバルマブがより良い選択肢になる可能性はある。Mell氏らによると、デュルバルマブとセツキシマブの作用の仕方にはかなり大きな違いがあり、セツキシマブはがん細胞表面のタンパク質と結合し、がん細胞の増殖を抑制するのに対し、デュルバルマブはがん細胞表面の別のタンパク質をブロックし、がん細胞が免疫系による攻撃を受けやすい状態にするという。このことを踏まえてMell氏は、「腫瘍の免疫反応性が極めて高い患者に対しては、デュルバルマブによる治療の方が有効な可能性があるとのエビデンスは残っている」とUCSDのニュースリリースの中で述べている。

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関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)【大学医局紹介~がん診療編】

金井 雅史 氏(診療科長・センター教授)朴 将源 氏(センター診療講師)生駒 龍興 氏(病院助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴臨床腫瘍科は2024年7月に新設された診療科で、がん薬物療法とがんゲノム医療を担当しています。2023年の外来化学療法の実績は約2万1,000件で、症例数も多いため、短期間でがん薬物療法の経験値を上げることができます。2024年11月には抗がん剤の早期開発 (Phase I) を実施する新薬開発科が立ち上がり、今後は新薬開発科とも連携してがん薬物療法を実践していきます。地域のがん診療における医局の役割枚方市を含む7市から構成される北河内医療圏(総人口約120万人)のがん診療の基幹病院として、近隣施設からも紹介患者を受け入れています。北河内医療圏は病院間の連携がスムーズで、外来化学療法中の患者さんの体調不良時には近隣施設で対応してもらうことも多いです。今後医局をどのように発展させていきたいか、医師の育成方針私自身も若いときから医療機器や医薬品開発に関わり、現在も継続しています。とくに決まったレールは敷いていないので、海外留学を含めやりたいことがあればできる限りのサポートをします。大学病院で基礎の研究室との垣根も低く、いろんなことにチャレンジできると思います。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力当科では、消化管がん・乳がん・膵がん・頭頸部がん・婦人科がん・希少がんの診療を行っています。各診療科と連携しつつ、幅広いがん種をカバーしていることが特徴です。また、irAE(免疫関連有害事象)やOnco-cardiology(腫瘍循環器)の院内体制整備など、臓器横断的な活動を任されています。多施設共同研究にも精力的に参加しており、産学連携下の大規模ながんの遺伝子解析プロジェクトであるSCRUM-Japan MONSTAR-SCREENへの登録数は全国でもトップレベルです。臨床研究への参加を通じて、がん研究を行う仲間を全国に作ることができます。さらに、小さな研究のシーズに関しても、KMUコンソーシアムという学内連携の枠組みで基礎・臨床研究を両輪で進めることができます。ふとしたアイデアを形にできる環境です。医学生/初期研修医へのメッセージがん薬物療法への関わりを中心に、皆様の可能性を広げていけるようにサポートしたいと思います。人数が少ないからこそ、個々が尊重されるような診療科を目指していきたいと思います。詳細についてご興味のある方は、ぜひご連絡ください。これまでの経歴初期研修を修了後、腫瘍内科に強い興味を持ち、神戸市立医療センター中央市民病院の内科専門医プログラムに参加しました。2023年に内科専門医の資格を取得し、現在はがん薬物療法専門医の取得を目指して、臨床の現場で研鑽を積んでいます。また、基礎研究には学生時代から興味があり、関西医科大学大学院に進学し、がんの分子メカニズムの解明ができるよう研究に取り組んでいます。臨床と研究の両面で、がん患者の治療の向上を目指して日々努力しています。現在学んでいること低酸素誘導因子とがんに関連する基礎研究を中心に、主にマウスモデルを用いた実験を行っています。研究では、発がんや転移のメカニズムとの関連性に着目し、仮説の検証を進めています。実験結果が仮説通りにいかないことも多く、その原因を特定するのは難しいですが、それが逆に研究を深める手助けとなり、日々興味深く実験に取り組んでいます。関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)住所〒573-1191 大阪府枚方市新町2-3-1問い合わせ先朴 将源(bokush@hirakata.kmu.ac.jp)医局ホームページ関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)*個別ホームページ作成中所属スタッフが取得している専門医資格総合内科専門医がん薬物療法専門医消化器病専門医乳腺専門医臨床薬理専門医研修プログラムの特徴(1)本院(大阪府枚方市)に加えて、連携施設として関西医科大学総合医療センター、関西医科大学香里病院を含めた54病院、合計55の病院により構成される内科専門研修プログラムです。詳細はこちら(2)「阪神5大学サステナブルがん人材養成プラン」に参加しており、大学院(地域がん医療課題克服型腫瘍学コース)では学位取得・専門医取得の指導を行います。詳細はこちら

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手術可能な高齢乳がん患者の予後、即時手術vs.局所再発まで延期/SABCS2024

 70歳以上の手術可能な乳がん患者における、即時手術または局所再発まで手術を延期した場合の長期的リスクを調査したメタ解析によって、即時手術は5年以内の局所再発率を大幅に低下させ、長期的な遠隔再発率と乳がん死亡率も低下させたことを、英国・オックスフォード大学のRobert K. Hills氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 これまでの研究により、年齢が上がるほど、とくに80歳以上になると手術の実施率が下がることが報告されている。そのため、手術可能な早期乳がんであっても、高齢患者に対しては内分泌療法のみを実施して手術は局所再発時まで行わないことがあるが、手術を延期することの長期的リスクは不明である。そこで研究グループは、即時手術と手術延期の転帰を比較するために、1980年代に開始された3つの無作為化試験を用いて個々の患者データのメタ解析を実施した。対象は、70歳以上の手術可能な乳がんの女性1,082例(全例がタモキシフェンを少なくとも5年間投与)であった。これらの試験では、放射線療法や化学療法は予定されていなかった。 主要アウトカムは、局所再発までの期間、遠隔再発までの期間、乳がん死亡率であった。局所再発は、手術後の局所再発、または手術を行わない場合は腫瘍径の25%以上の増大と定義した。リンパ節転移の状態により層別化した年齢調整intent-to-treat log-rank解析を用いて初発再発の発生率比(RR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●無作為化時の年齢中央値は76(73~80)歳、腫瘍径が20mm超だったのは63%(666/1,082例)であった。生存中の平均追跡期間は7.3年であった。●即時手術を受けた518例のうち、45.7%が乳房切除術を受け、47.3%が乳房温存術を受けた。●5年時点の局所再発率は、リンパ節転移の有無にかかわらず即時手術群で大幅に低く、この有益性はフォローアップ初期から認められた。 ・リンパ節転移なし(656例) 即時手術群14.4%、手術延期群45.4%(RR:0.25、95%信頼区間[CI]:0.19~0.34、p<0.00001) ・リンパ節転移あり(262例) 即時手術群6.8%、手術延期群48.1%(RR:0.18、95%CI:0.11~0.29、p<0.00001)●15年時点では、即時手術群のほうが遠隔再発率(RR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.003)、乳がん死亡率(RR:0.68、95%CI:0.54~0.86、p=0.002)が低かった。これらの有益性はフォローアップ初期は顕著ではなかった。●全死因死亡率は、即時手術群のほうが低い傾向にあったが、有意差は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.72~0.97、p=0.016)。

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高リスクHR+/HER2-乳がんの1次治療、パルボシクリブ+内分泌療法vs.化学療法単独(PADMA)/SABCS2024

 高リスクHR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用が国際的ガイドラインで推奨されているが、化学療法単独との比較を前向きに実施した試験は報告されていない。今回、ドイツ・German Breast Groupが実施したPADMA試験で、パルボシクリブ+内分泌療法の併用が化学療法単独に比べて、治療成功期間(TTF)と無増悪生存期間(PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを、Sibylle Loibl氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 PADMA試験は、化学療法の適応のある高リスク転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を化学療法単独(±維持療法としての内分泌療法)と比較した、初の前向き多施設無作為化非盲検第IV相試験である。・対象:化学療法の適応のある未治療のHR+/HER2-転移乳がん・試験群:パルボシクリブ+内分泌療法(アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)・対照群:医師選択の化学療法(パクリタキセル/カペシタビン/エピルビシン/ビノレルビン)±維持療法として内分泌療法(タモキシフェン/アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)・評価項目:[主要評価項目]TTF(無作為化から病勢進行/治療毒性/患者希望/死亡による治療中止までの期間と定義)[副次評価項目]PFS、全生存期間(OS)、安全性、忍容性、コンプライアンスなど 主な結果は以下のとおり。・2018年4月~2023年12月にドイツの28施設で130例が登録され、うち120例(パルボシクリブ+内分泌療法群 61例、化学療法群59例)が治療を開始し解析に組み入れられた。年齢中央値は62歳(範囲:31~85歳)であった。化学療法群における医師選択の化学療法はカペシタビンが69.0%、パクリタキセルが29.3%、ビノレルビンが1.7%で、22.4%が維持療法としての内分泌療法を受けた。・TTF中央値は、追跡期間中央値36.8(範囲:0~74.4)ヵ月において、パルボシクリブ+内分泌療法群が17.2ヵ月と、化学療法群の6.1ヵ月より有意に長く(ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]: 0.31~0.69、p<0.001)、どのサブグループにおいても一貫していた。・PFS中央値も、パルボシクリブ+内分泌療法群が18.7ヵ月と、化学療法群の7.8ヵ月より有意に長かった(HR:0.45、95%CI:0.29~0.70、p<0.001)。・OS中央値は、パルボシクリブ+内分泌療法群が46.1ヵ月、化学療法群が36.8ヵ月と、パルボシクリブ+内分泌療法群で数値的に改善傾向がみられた。・血液毒性の発現割合はパルボシクリブ+内分泌療法群で有意に高く(全Grade:96.8% vs.56.8%、 Grade3/4:54.8% vs.6.9%)、非血液毒性は両群で同程度であった。・治療関連死亡はパルボシクリブ+内分泌療法群で1例(敗血症性ショック)みられた。 Loibl氏は、「この結果は、HR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を標準治療と提唱する既存の国際的ガイドラインを支持する」と述べた。

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EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんのアンメットニーズと新たな治療/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で2024年9月に本邦での製造販売承認を取得したアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)を、同年11月20日に発売した。これを受け、11月29日にライブリバント発売記者発表会が開催され、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)が講演を行った。EGFRエクソン20挿入変異の特徴 アミバンタマブの対象となる「EGFRエクソン20挿入変異」はEGFR遺伝子変異の中で3番目に多いことが知られており1)、LC-SCRUM-Asiaの報告では、登録者のおよそ1.7%(189/11,397例)に検出されていた2)。また、同報告においては、エクソン19欠失変異やL858R変異と比較して、男性や喫煙者にも検出される割合がやや高かった。 EGFR遺伝子の変異は、リガンド非依存的なATP結合と細胞増殖シグナル伝達を引き起こすが、エクソン20挿入変異があると、ATP結合部位が狭くなり、ATPと競合拮抗するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の結合が妨げられることが報告されている3,4)。従来のTKIへの感受性は乏しく、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域とされている。そこに新たに登場したのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体のアミバンタマブである。2024年版ガイドラインにおけるアミバンタマブの位置付け アミバンタマブは、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性のNSCLC患者を対象とした国際共同非盲検無作為化比較第III相試験「PAPILLON試験」の結果に基づいて承認された。本試験では、アミバンタマブと化学療法の併用群が、化学療法群と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示したことが報告されている5)。 これを受けて、2024年10月に公開された『肺癌診療ガイドライン2024年版』6)では、EGFRエクソン20挿入変異の一次治療に関するCQが新設され、アミバンタマブと化学療法の併用療法の推奨が明記された。【肺癌診療ガイドライン2024年版 CQ50】CQ50. エクソン20の挿入変異に対して、一次治療で標的療法が勧められるか?a. エクソン20の挿入変異にはカルボプラチン+ペメトレキセド+アミバンタマブ併用療法を行うよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)b. エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKI単剤療法を行わないよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)【製品概要】商品名:ライブリバント点滴静注350mg一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え)製造販売承認日:2024年9月24日薬価基準収載日:2024年11月20日発売日:2024年11月20日薬価:350mg 7mL 1瓶 160,014円製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社■参考文献・参考サイト1)Arcila ME, et al. Mol Cancer Ther. 2013;12:220-229.2)Okahisa M, et al. Lung Cancer. 2024;191:107798.3)Yasuda H, et al. Sci Transl Med. 2013;5:216ra177.4)Robichaux JP, et al. Nat Med. 2018;24:638-646.5)Zhou C, et al. N Engl J Med. 2023;389:2039-2051.6)日本肺癌学会 編. 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む―2024年版【Web版】

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高リスクHR+/HER2-早期乳がんの術前療法、HER3-DXd単独vs.内分泌療法併用(SOLTI VALENTINE)/SABCS2024

 高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者の術前療法として、HER3-DXd単独、HER3-DXdとレトロゾール併用、化学療法を比較した第II相SOLTI VALENTINE試験の結果、HER3-DXdによる治療はレトロゾールの有無にかかわらず化学療法と同程度の病理学的完全奏効(pCR)を示し、Grade3以上の有害事象の発現は少なかったことを、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 高リスクのHR+/HER2-早期乳がんでは、化学療法と内分泌療法の両方が有効であるにもかかわらず、再発リスクが長期にわたって持続するため、転帰を改善するための新たな戦略が必要とされている。HER3-DXdは、HER3を標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、複数の乳がんサブタイプに活性を示す可能性がある。そこで研究グループは、術前療法としてのHER3-DXd(±レトロゾール)の有効性と安全性を評価することを目的として研究を実施した。 なお、2022年の欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022)で発表されたSOLTI TOT-HER3試験において、HR+/HER2-早期乳がん患者に対するHER3-DXdの術前単回投与が、pCRの予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加および臨床的奏効と関連していたことが報告されている。<SOLTI VALENTINE試験>・試験デザイン:並行群間非盲検無作為化非比較試験・対象:手術可能なStageII/IIIで高リスク(Ki67≧20%および/または高ゲノムリスク[遺伝子シグネチャーで定義])のHR+/HER2-早期乳がん患者・試験群1(HER3-DXd群):HER3-DXd 5.6mg/kgを21日ごとに6サイクル・試験群2(HER3-DXd+LET群):HER3-DXd(同上)とレトロゾール2.5mgを1日1回(±LH-RHアゴニスト)・比較群(化学療法群):ECまたはAC療法(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を14日または21日ごと)を4サイクル→パクリタキセル80mg/m2の毎週投与を12週間・評価項目:[主要評価項目]手術時のpCR(ypT0/is ypN0)率[副次評価項目]全奏効率(ORR)、CelTILスコアの変化、Ki-67値の変化、PAM50サブタイプの変化、再発リスクスコア(ROR)、安全性、無浸潤疾患生存期間・データカットオフ:2024年4月22日 主な結果は以下のとおり。・2022年11月~2023年9月に122例の患者が2:2:1にHER3-DXd群(50例)、HER3-DXd+LET群(48群)、化学療法群(24群)に無作為に割り付けられた。・全体の年齢中央値は51(29~82)歳、女性が99.2%、閉経前が52.9%であった。cT3/4はHER3-DXd群が42.0%、HER3-DXd+LET群が39.6%、化学療法群が29.2%、リンパ節転移陽性が76.0/77.1/75.0%、StageIIIが36.0/39.6/29.2%、Ki67中央値が35/37/35、HER3-highが80.6/83.8/88.2%、PAM50によるLuminal Bが54.0/60.4/47.8%であった。・主要評価項目である手術時のpCR率は、HER3-DXd群4.0%(95%信頼区間[CI]:0.5~13.7)、HER3-DXd+LET群2.1%(0.1~11.1)、化学療法群4.2%(0.1~21.1)であった。・ORRはHER3-DXd群70.0%(95%CI:55.4~82.1)、HER3-DXd+LET群81.3%(67.4~91.1)、化学療法群70.8%(48.9~87.4)であった。・Ki67中央値の低下は、HER3-DXd+LET群で最も顕著であった。・PAM50によるLuminal BからLuminal A/Normal-likeサブタイプへの変化は3群ともに2サイクル目の1日目に観察され、手術時にはさらに増強した。・CelTILスコアの有意な増加はHER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群では認められたが、化学療法群では有意ではなかった。・ROR-high/mediumからROR-lowへの変化は3群ともに認められた。・治療有害事象(TEAEs)はHER3-DXd群96.0%、HER3-DXd+LET群97.9%、化学療法群95.8%に発現し、うちGrade3以上は14.0/14.6/45.8%であった。減量や治療中断・中止に至るTEAEsはHER3-DXd群で少なかった。間質性肺疾患や治療に関連する死亡は報告されなかった。・HER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群で多く報告されたTEAEsは、悪心、脱毛、疲労、下痢などであった。 これらの結果より、Oliveira氏は「SOLTI VALENTINE試験は、HER3-DXdの早期乳がんにおける有効性および高リスクのHR+/HER2-乳がんにおける可能性を支持するものである」とまとめた。

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スタチン、上咽頭がんCCRT中の投与で死亡リスク減

 スタチンによる、さまざまな悪性腫瘍に対する潜在的な抗がん作用が注目されている。頭頸部がんにおいては、診断前後のスタチンの使用が化学療法の有効性を高め、がん幹細胞の活性を抑制し、放射線療法に伴う心血管および脳血管の合併症を減少させる可能性があることが示唆されている。 進行上咽頭がん(nasopharyngeal cancer)患者における同時化学放射線療法(CCRT)中のスタチン使用が、全生存率およびがん特異的生存率に与える影響を評価する研究が報告された。台湾・台中慈済病院のJung-Min Yu氏らによって行われた本研究は、Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌2024年11月号に掲載された。 台湾の全国健康保険研究データベースを用い、2012~18年にCCRTを受けた進行上咽頭がん患者を抽出した。対象は、転移のないIII~IVA期、PS 0~1、標準CCRT(プラチナベース化学療法と強度変調放射線療法併用)を受けた成人の上咽頭がん患者だった。スタチン使用は、根治的CCRT期間中にスタチンの累積定義1日投与量を最低28回以上受けていることと定義した。スタチン使用者と非使用者の生存率を比較するため、傾向スコアマッチングで年齢、性別、併存疾患などの交絡因子を調整した。さらに、異なる種類のスタチン、累積用量、およびスタチン使用の1日当たりの強度の影響も調査した。 主な結果は以下のとおり。・1,251例が対象となり、1,049例が非スタチン群、202例がスタチン群であった。ベースライン特性では、スタチン群は非スタチン群と比較して年齢中央値が高く、女性が多く、高所得者・都市部の住民・併存症を持つ割合が高かった。マッチングを行った結果、スタチン群と非スタチン群各174例、計348例が解析対象となった。追跡期間中央値は6.43年であった。・全死因死亡率は、非スタチン群では50.57%であったのに対し、スタチン群では33.33%、調整ハザード比(aHR)は0.48(95%信頼区間[CI]:0.34~0.68)であった。同様に上咽頭がん特異的死亡率は、非スタチン群では40.80%、スタチン群では22.99%、aHRは0.43(95%CI:0.29~0.65)であった。・全死因死亡率において、親水性スタチンのロスバスタチンは非スタチン使用と比較してaHR:0.21(95%CI:0.19~0.50)、親油性スタチンのアトルバスタチンはaHR:0.39(95%CI:0.23~0.66)と、とくに良好な結果を示した。全死因死亡、上咽頭がん特異的死亡ともにスタチンの累積定義1日投与量が増加するごとにリスクが減少し、用量反応関係があることが示された。 研究者らは「スタチンは抗炎症作用や免疫調節作用も有することが報告されており、CCRT中の腫瘍微小環境に影響し、治療効果を高めた可能性がある。また、スタチン使用が放射線感受性を高め、腫瘍細胞のアポトーシスを促進する可能性も示唆されている。とくに心血管疾患のリスクが高い患者においては、スタチンの使用が二重の利益をもたらす可能性がある。スタチンの種類、投与量、投与期間など、最適な使用方法に関するさらなる研究が必要だ」とした。

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ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するSERD+CDK4/6i+PI3Kiによる予後の改善(解説:下村昭彦氏)

 inavolisibは新規PI3K阻害剤である。2023年の「San Antonio Breast Cancer Symposium」で全生存期間(OS)の改善が期待されるデータが公表されてから、その詳細が待たれていた。inavolisibはPI3Kαを特異的に阻害する薬剤で、既存のPI3K阻害剤よりも有害事象が軽減することが期待されていた。 inavolisibの有効性を初めて証明した試験がINAVO120試験であり、2024年10月21日にNEJM誌に発表された。INAVO120試験では、ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)進行乳がん(転移乳がんもしくは局所進行乳がん)のうち、組織、もしくはctDNAでPIK3CAの変異が検出された患者を対象として、フルベストラント+パルボシクリブにinavolisibまたはプラセボを上乗せするデザインとなっていた。この試験は進行乳がんの1次治療の試験ではあるが、適格基準に特徴がある。すなわち、術後ホルモン療法中の再発、もしくは術後ホルモン療法完了後12ヵ月以内の再発の患者を対象としており、いわゆるホルモン感受性の低い患者へのエスカレーションとなっている。 inavolisib群に161例、プラセボ群に164例が割り付けられ、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の中央値は15.0ヵ月vs.7.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~059、p<0.001)と統計学的有意にinavolisib群で良好であった。重要な副次評価項目のOSはHR:0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、inavolisib群で良好な傾向を認めるものの事前に規定された有意水準は満たさなかった。inavolisib群に特徴的な有害事象として高血糖、粘膜障害、下痢が挙げられ、Grade3以上の頻度は低いものの他のPI3K阻害剤と同様注意が必要と考えられた。 ホルモン感受性の低いHR+HER2-乳がん患者に対するホルモン療法の有効性を高めるのにどのような併用薬が有効かということは、非常に重要なクリニカルクエスチョンの1つである。他にも同様の試験としてAKT阻害剤であるカピバセルチブを併用するCAPItello-292試験も国際共同治験として実施されている(NCT04862663)。一方で、併用薬剤が増加しPFSが改善することで、有害事象の管理は困難になり、また患者の生活への影響は無視できなくなる。比較的有害事象が軽い場合もある抗体医薬複合体(ADCs)も多数開発されている。必ずしもホルモン療法と他の薬剤の併用が化学療法を始めとした他の機序の薬剤と比較して毒性が低いとはいえず、ADCsの時代にはHR+HER2-乳がんの治療ストラテジー全体を再考する必要があるのかもしれない。

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第240回 消費者向け「遺伝子検査」を受けて思わず動揺!その分析結果とは

消費者向け(Direct-to-Consumer:DTC)遺伝子検査について目にしたことがある医療者も少なくないだろうと思う。私もこれまでネット上で目にはしていたが、眉唾モノとの印象が強く、完全無視を決め込んでいた。しかし、ある取材でこれを受けなければならなくなった。編集者が「早い・安い」で申し込んだ検査キットが届いたのは、今から約1ヵ月前。検査キットと言っても唾液採取のための容器とその補助装備、さらにID・パスワードが書かれた紙が入っていただけだ。まず、そのID・パスワードで検査会社のウェブサイトにアクセスし、個人情報や生活習慣、飲酒・喫煙歴、両親の出身地、自分と親の既往歴などについての簡単なアンケートに回答する。そのうえで同封されていた容器に自分の唾液を充填し、ポストに投函。翌日には検体が無事届いたとのメールが入り、それから1週間で自分のメールアドレスに検査結果終了の案内メールが届いた。体質分析の結果早速アクセスしてみた。200項目超の体質の項目を見る。大まかな項目は以下のとおり。基礎代謝量…高  肥満リスク…低  筋肉の発達能力…高短距離疾走能力…低  有酸素運動適合性…低  運動による減量効果…高アルコール代謝…普通  酒豪遺伝子(意味不明だが)…普通  二日酔い…低アルコール消費量…多  アルコール依存症リスク…中  ワインの好み…赤肌の光沢…低  肌のしわ…多  AGA発症リスク…低まあ、基礎代謝に関しては高いのかどうかわからないが、かつて幼少期の娘からは「お父さんと一緒に寝ていると、お布団の中がコタツを最強にした感じで、冬でも汗をかく」と言われたことがある。体質では「登山家遺伝子」なる項目もあり、そこは“高所登山家タイプ”となっていた。体質の食習慣に関する評価項目では、なぜか芽キャベツと甘いものは好まないとの評価だった(私は仕事場近くの焼き鳥・焼きとん屋に行き、野菜串焼きに芽キャベツがあると喜んで注文し、ムシャムシャ食べてしまうのだが…)。飲酒については、実生活と明確に異なるのは、私の好みのワインは「白」という点だ。肌については自覚がある。男性型脱毛症(AGA)の発症は確かに今のところその兆しはない。しかし、ここまで来ると、大きなお世話と言いたくもなる。いずれにせよ当たらずとも遠からずというか、当たっていると言えるものもあれば、明らかに違うと言えるものもある。ただ、自分の体のことはわかっているようで、わかっていない部分もあるので何とも言えない。性格分析の結果そして性格についても分析があり、同じ項目について事前アンケートの結果と検査結果が並列で記載がある。こちらもアンケート結果と検査結果がほぼ同一のものもあれば違うものもある。どちらかといえばほぼ同一のものがほとんどである。そして「総合性格タイプ」は、持ち前のタフな精神力で、自分の好奇心に従って未知の世界へどんどん飛び込んでいける“サバイバルYouTuber”タイプとの評価である。まあ、当たっていると言えなくもないが、同時にYouTuberと一緒にされるのもなんだかなという感じである。165疾患のリスク、その結果は…さてこの検査の本丸、というか受ける人の多くが気にするであろうと考えられるのが疾患リスクである。私の受けた検査では、「予防」なる大項目があり、さらに一般疾患と各種がんの合計165疾患についてリスクが表示されている。このリスク表示、疾患ごとにオッズ比のような数値と大、中、小の3段階の定性的表現で発症リスクが示してあった。がんの項目を見ていくと、ほとんど問題はなさそうである。が、後半にスクロールしている手が止まった。多発性骨髄腫の発症リスクが「大」とある。思わず「はあ?」と声が漏れてしまった。一瞬動揺してしまうと同時に、検査結果を見る当事者をそういう心理状況に置く結果通知をラーメン店の券売機にある「小」「並」「大」にも似たざっくりした表現で示された腹立たしさも入り混じった何とも言えない不快感である。さて当然のことながら多発性骨髄腫を知らぬわけはない。化学療法が奏功しやすい血液がんの中でも難治で知られるがんである。少なくとも数年前の5年相対生存率は50%未満だ。ちなみにこれ以外でも一般疾患では、痛風、狭心症、そしてなぜか慢性C型肝炎もリスク大と判定された(というか、C型肝炎に未感染であることはたまたま最近行ったある検査で判明している)。だが、やはり多発性骨髄腫のリスク大のインパクトが一番大きい。発症するとかなりの痛みを伴うことや激烈な化学療法が必要になること、そして治癒もコントロールも難しいことがわかっているからだ。もっともDTC遺伝子検査は、正確に言えば遺伝子そのものを調べているわけではなく、「一塩基多型(SNP、スニップ)」と疾患に関する相関を調べた研究を基にリスク判定しているため、各種固形がんや遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)のような発症や増悪に関与する遺伝子変異の検査に比べれば、当たるも八卦当たらぬも八卦の域であることは私自身も百も承知である。ただ、実はちょっとだけ安堵感もあった。血液内科専門医の皆さんならご存じのように、昨今、この疾患では新薬開発が活発で治療選択肢も増えているからだ。治療法によっては5年相対生存率も60%近くまで伸びている。そんなこんなで日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン2023」に記載された多発性骨髄腫のパートを改めて通読してみた。私にとってこれはこれで改めて知識の整理ができる利点もあった。ただ、ガイドラインで示されている治療の実際は、やはり文字で読んでいるだけでもきつそうである。とはいえ、今後本当に多発性骨髄腫を発症したとしても「あの時、ああいう結果が出てたしな」という感じで受け止められると考えれば、この検査が自分にとって無意味だったとまでは言えない。神社でおみくじを引いて、「凶」と出た直後にケガをしたら、「おみくじは凶だったし」と自分を納得させようとすることとどこか似ている。一部の専門家がDTC遺伝子検査の持つ不確実性を踏まえ、「占い」と評してしまうのはそうしたところにも起因しているのかもしれない。ただし、私のように割り切れる人はどれだけいるだろうか? 気弱な人、生真面目な人ならばそうは簡単に割り切れない危険性は十分にある。そのように考えると、まったく科学的根拠がないわけではないとはいえ、ただ唾液を投函してこのような結果が示されるという今の在り方は、もう少し改善することも必要なのではないかとも考え始めている。

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トリプルネガティブ乳がんの治療にDNAワクチンが有望か

 悪性度が高く、治療も困難なトリプルネガティブ乳がんの女性に新たな希望をもたらす可能性のある、DNAワクチンに関する第1相臨床試験の結果が報告された。ワクチンを接種した18人の患者のうち16人が、接種から3年後もがんを再発していないことが確認されたという。米ワシントン大学医学部外科分野教授のWilliam Gillanders氏らによるこの研究の詳細は、「Genome Medicine」に11月14日掲載された。 トリプルネガティブ乳がんは、他のタイプの乳がんの典型的な原因である、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)とHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)がいずれも陰性であるため、これらの受容体を標的にした治療法が効かない。そのため、手術、化学療法、放射線療法などで対処するより他ないのが現状である。全米乳がん財団によると、米国で発生する乳がんの約10〜15%はトリプルネガティブ乳がんであるという。 今回の試験は、補助化学療法後もがんが残存している非転移性トリプルネガティブ乳がん患者18人を対象に実施された。このような患者は、がんを外科的に切除した後も再発リスクが高いという。研究グループは、患者のがん細胞と健康な組織を比較・分析し、それぞれの患者のがんに特有の遺伝子変異を特定した。このような遺伝子変異により、がん細胞では変異したタンパク質(ネオアンチゲン)が生成される。ネオアンチゲンは、免疫系によって異物として認識されるため、健康な組織に影響を与えることなく、変化したタンパク質のみを認識して攻撃するように免疫系を訓練できる可能性がある。 研究グループは、自分たちで設計したソフトウェアを用いて、患者のがん細胞内で生成され、強力な免疫反応を引き起こす可能性が最も高いと目されるネオアンチゲンを選び出し、その情報(設計図)をDNAワクチンの中に組み込んだ。対象者のそれぞれのワクチンには、平均11個(最小4個から最大20個)のネオアンチゲンの情報が含まれていた。対象者は、1回4mgのDNAワクチンを計3回(1日目、29±7日目、57±7日目)接種した。 その結果、ワクチン接種後に生じた有害事象は比較的少なく、認容性は良好であることが示された。また、Enzyme-Linked ImmunoSpot(ELISpot)アッセイおよびフローサイトメトリーによる測定の結果、18人中14人でネオアンチゲン特異的T細胞応答が誘導されたことが確認された。中央値36カ月間の追跡期間における対象者の無再発生存率は87.5%(95%信頼区間72.7〜100%)であった。 Gillanders氏は、「この試験の結果は予想以上に良かった」と話す。研究グループが、標準治療のみで治療されたトリプルネガティブ乳がん患者の過去のデータを分析したところ、治療から3年後も無再発で生存していた患者の割合は約半数と推測されたという。同氏は、「われわれは、このネオアンチゲンワクチンの可能性に興奮している。この種のワクチン技術をより多くの患者に提供し、悪性度の高いがんに罹患した患者の治療成績の向上に貢献できることを期待している」と話している。 ただし、研究グループは、今後はより大規模な臨床試験でこのワクチンの有効性を証明する必要があると述べている。Gillanders氏は、「この種の分析に限界があることは承知している。しかし、われわれはこのワクチン戦略を追求し続けており、標準治療とワクチン接種による併用療法と標準治療のみの場合の有効性を直接比較するランダム化比較試験を現在も行っている最中だ。現時点では、併用療法に割り当てられた患者で確認されている結果に勇気付けられている」と述べている。

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HR+HER2-早期乳がんの遠隔転移再発率の低下(解説:下村昭彦氏)

 早期乳がん治療についてはEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が多くのメタ解析を出版しており、日常臨床に活用されている。今回EBCTCGから早期乳がんの遠隔転移再発に関するプール解析が実施され、Lancet誌2024年10月12日号に掲載された。 本研究では、1990年から2009年までに151の臨床試験に登録された早期乳がん患者15万5,746例のデータが用いられた。遠隔再発については各試験の定義が用いられ、10年遠隔再発リスクについて検討された。年代を1990年から1999年と、2000年から2009年の各10年に分けて検討され、リンパ節転移陰性では、エストロゲン受容体(ER)陽性で10.1% vs.7.3%、ER陰性で18.3% vs.11.9%、リンパ節転移が1~3個では、それぞれ19.9% vs.14.7%、31.9% vs.22.1%、リンパ節転移が4~9個では、それぞれ39.6% vs.28.5%、47.8% vs.36.5%であった。治療について補正後、2000年代は1990年代と比較して、遠隔再発率がER陽性例で25%、ER陰性例で19%減少し、ER陽性例では5年を超えても同様の改善が認められた。 この結果は、約20年の間に遠隔再発リスクが著しく低下したことを示す。原因としては、1)低リスク(すなわちリンパ節転移陰性)の患者が多く臨床試験に登録されたこと、2)治療が大幅に進化していること、が挙げられる。私自身はこの年代に乳がんの治療を主体的に行ったことはないが、1990年代と2000年代では大きく治療が異なっている。この間に、ホルモン療法としては閉経後アロマターゼ阻害薬が標準治療となり、化学療法はCMFが主であった時代からアンスラサイクリン、さらにタキサンが標準治療として用いられるようになった。さらに、HER2陽性乳がんではトラスツズマブの有効性が証明され、標準治療となった。事実、図2では2000~04年と2005~09年を分けて解析しているが、ERステータスを問わず新しい年代のほうが再発リスクが低下している。 一方、臨床試験の世界ではこれ以降、高リスクの患者に対する治療のエスカレーションと、低リスクの患者に対するデエスカレーションがトレンドとなった。リスクを評価してその患者に最適な治療を届けるという日常診療の基本が、臨床試験で検証されるようになったと言ってもよい。10年後に、2010年代の再発リスクに関する研究が発表されるのが非常に楽しみである。

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免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

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四肢軟部肉腫、周術期ペムブロリズマブ上乗せでDFS改善/Lancet

 四肢の高リスク限局性軟部肉腫患者の治療において、術前放射線療法+手術と比較して、これに術前および術後のペムブロリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)を追加する方法は、無病生存期間(DFS)を有意に改善することから、これらの患者の新たな治療選択肢となる可能性があることが、米国・ピッツバーグ大学のYvonne M. Mowery氏らが実施したSU2C-SARC032試験で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。4ヵ国の無作為化試験 SU2C-SARC032は、4ヵ国(オーストラリア、カナダ、イタリア、米国)の20施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2023年11月に参加者の無作為化を行った(Stand Up to Cancerなどの助成を受けた)。 年齢12歳以上、四肢・肢帯のGrade2または3のStageIII未分化多形肉腫、または脱分化型もしくは多形型の脂肪肉腫の患者を対象とした。 被験者を、術前放射線療法後に手術を受ける群(対照群)、または術前ペムブロリズマブ+放射線療法(ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに静脈内投与、放射線療法前・中・後の3サイクル)後に手術を受け、さらに術後にペムブロリズマブ療法(14サイクル以内)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、担当医判定によるDFS(無作為化から再発または再発なしの死亡までの期間)とした。Grade3の患者でDFSが良好な傾向 127例を登録し、対照群に63例(平均年齢61[SD 12]歳、女性38%)、ペムブロリズマブ群に64例(60[12]歳、36%)を割り付けた。Grade2が対照群32%、ペムブロリズマブ群34%、Grade3がそれぞれ68%および66%で、未分化多形肉腫がそれぞれ76%および83%であり、腫瘍部位は下肢が60%および64%だった。 追跡期間中央値43ヵ月の時点で、修正ITT(mITT)集団における無病生存のイベントは56件(対照群32件、ペムブロリズマブ群24件)認めた。DFSは、対照群に比べペムブロリズマブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.61、90%信頼区間[CI]:0.39~0.96、p=0.035)。 また、2年無病生存率は、対照群の52%(90%CI:42~64)に対しペムブロリズマブ群は67%(58~78)と良好であった。 Grade2のmITT集団では、DFSに両群間で意義のある差はなかった(HR:0.84、95%CI:0.26~2.76、p=0.78)が、Grade3ではペムブロリズマブ群で良好な傾向がみられた(0.57、0.31~1.03、p=0.064)。Grade3以上の有害事象が多かった mITT集団における全生存期間は、対照群に比べペムブロリズマブ群で良好であったが統計学的に有意な差はなく(HR:0.67、95%CI:0.33~1.39、p=0.28)、2年全生存率は対照群85%、ペムブロリズマブ群88%であった。 Grade3以上の有害事象は、対照群(31%)に比べペムブロリズマブ群(56%)で多かった。Grade5の有害事象は発現しなかった。22例(各群11例)に28件(対照群13件、ペムブロリズマブ群15件)のGrade3以上の手術関連合併症を認めた。 著者は、「ペムブロリズマブの追加投与が全生存期間に影響を及ぼすかを判断するには、より長期間の追跡調査が必要だが、毒性プロファイルはドキソルビシンベースの化学療法と比較してペムブロリズマブがより良好であることから、術前放射線療法と手術による治療を受ける高リスクで切除可能な四肢の未分化多形肉腫または脂肪肉腫の患者において、ペムブロリズマブは魅力的な選択肢となるだろう」としている。

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低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024

 低リスク肺塞栓症(PE)を発症したがん患者を対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)であるリバーロキサバンの投与期間を検討したONCO PE試験の結果が、京都大学循環器内科の山下 侑吾氏らにより、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表され、Circulation誌2024年11月18日号に同時掲載された。 本研究より、リバーロキサバンの18ヵ月間の投与は6ヵ月間の投与に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを有意に低下させ、一方で出血リスクは有意な上昇を認めず、「がん患者の低リスクPEに対するDOACを用いた抗凝固療法は、血栓症予防の観点から18ヵ月間のより長期的な投与が望ましい」との結果が得られた。 ONCO PE試験は、国内32施設による多施設非盲検判定者盲検ランダム化比較試験(RCT)である。対象は、低リスクPEとして肺血栓塞栓症の重症度評価の簡易版PESIスコアが1点(がんの因子のみ)のPEと、新しく診断されたがん患者で、2021年3月~2023年3月に登録された179例をリバーロキサバンの18ヵ月投与群または6ヵ月投与群に1対1の割合でランダムに割り付けた。同意を途中撤回した症例を除外し、18ヵ月投与群89例、6ヵ月投与群89例をITT集団とした。主要評価項目は18ヵ月後までのVTEの再発。副次評価項目は18ヵ月後までの国際血栓止血学会(ISTH)の基準による大出血などであった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は平均年齢65.7歳、男性47%で、症候性のPEは12%だった。がんの罹患部位は、多い順に大腸がん12%、子宮がん12%、卵巣がん11%であった。・主要評価項目である18ヵ月後までのVTE再発は、18ヵ月投与群5.6%(89例中5例)、6ヵ月投与群19.1%(89例中17例)と有意に抑制された(オッズ比[OR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.09~0.72、p=0.01)。・大出血は、18ヵ月投与群7.8%(89例中7例)、6ヵ月投与群5.6%(89例中5例)に発生し、18ヵ月投与群で多い傾向にあったが、統計学的に有意な増加ではなかった(OR:1.43、95%CI:0.44~4.70)。・年齢、性別、体重、VTEの既往、腎機能、血小板数、貧血の有無、大出血の既往、がんの遠隔転移の有無、化学療法の有無などのサブグループ解析でも、18ヵ月投与群における主要評価項目のリスク抑制傾向は一貫して認められた。 これらの結果から研究グループは「簡易版PESIスコア1点の低リスクPEを発症したがん患者に対するVTE再発予防を目的としたリバーロキサバンの投与期間は、6ヵ月間よりも18ヵ月間のほうが優れていた」と結論付けた。低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発予防、国内での普及目指す がん患者の腫瘍の評価のためにCT検査が実施されることは多いが、その際に偶発的な軽症のPEを認めることも多い。国際的なガイドラインでは、このようながん患者に併発した比較的軽症のPEに対しても、通常のPEと同様に扱うことを弱く推奨している。しかしながら、このような低リスクPEを発症したがん患者を対象とした抗凝固療法の投与期間を検討したRCTは過去に報告されておらず、そのエビデンスレベルは低い状況であった。 この現況を踏まえて行われた本解析について、同氏は「本研究結果は、がん患者では低リスクPEでも血栓症リスクを軽視すべきではないという現行の国際ガイドラインの考え方を支持する結果であった。一方で、統計学的に有意ではないものの、大出血を起こした患者数が18ヵ月投与群で多かったことは注意を要する点である。RCTは確実性の高いエビデンスを提供する有用な研究デザインであるが、目の前の患者ごとの治療の最適解を提供することは困難である。臨床現場では、これらの研究結果も参考に、血栓リスクと出血リスクのバランスを患者ごとに慎重に検討することが重要である。また、今後RCTの弱点を克服するような新しい臨床研究の発展も望まれる」とコメントした。 最後に、「本研究は、数多くの共同研究者が日本全体で集結し、その献身的な姿勢による多大な尽力により成り立っている。日本の腫瘍循環器領域における重要な研究成果が、今回日本から世界に情報発信されたが、すべての共同研究者、事務局の関係者、および本研究に参加いただいた患者さんに何よりも大きな感謝を示したい」と締めくくった。

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TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年11月20日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における販売開始を発表した。 サシツズマブ ゴビテカンは、2024年9月24日に国内製造販売承認を取得。この承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカンと医師が選択した治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。<製品概要>商品名:トロデルビ点滴静注用200mg一般名:サシツズマブ ゴビテカン剤形:注射剤(バイアル)効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌用法及び用量:通常、成人には、サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を、21日間を1サイクルとし、各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。投与時間は3時間とし、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降は1~2時間に短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認日:2024年9月24日製造販売元:ギリアド・サイエンシズ株式会社

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日本人に対するニボルマブのNSCLC周術期治療(CheckMate 77T)/日本肺癌学会

 ニボルマブは、切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術前補助療法として本邦で使用されているが、米国ではこれに加えて、2024年10月に術前・術後補助療法としての適応も取得している。その根拠となった第III相「CheckMate 77T試験」の日本人集団の結果について、産業医科大学の田中 文啓氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。CheckMate 77T試験 試験デザインと結果の概要試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:切除可能なStageIIA(>4cm)~IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群:229例)対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群:232例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)・病理学的奏効(MPR)、安全性など 追跡期間中央値25.4ヵ月時点における全体集団のEFS中央値は、ニボルマブ群では未到達、プラセボ群では18.4ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42~0.81)。pCR率はニボルマブ群25.3%、プラセボ群4.7%(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40~12.97)、MPR率はそれぞれ35.4%と12.1%であった(OR:4.01、95%CI:2.48~6.49)。 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・全体集団461例中、日本人は68例(ニボルマブ群40例、プラセボ群28例)含まれており、全体集団と比較して、PS0の患者やプラチナ製剤としてシスプラチンを使用する患者の割合が高かった。また、日本人集団のニボルマブ群はプラセボ群と比較して、扁平上皮がん、喫煙歴あり、PD-L1発現1%未満の患者の割合が高かった。・4サイクルの術前補助療法を完遂した割合は、ニボルマブ群で65%、プラセボ群で82%、手術を実施した割合はそれぞれ90%と93%、術後補助療法を実施した割合は60%と71%、術後補助療法を完遂した割合は45%と36%であった。ニボルマブ群では、全体集団と比較して、術前補助療法完遂の割合は低いものの(日本人集団vs.全体集団:65% vs.85%)、手術実施の割合は高かった(同:90% vs.78%)。・追跡期間中央値24.9ヵ月時点におけるEFS中央値は、ニボルマブ群では未到達、プラセボ群では12.1ヵ月であった(HR:0.46、95%CI:0.22~0.95)。12ヵ月EFS率はニボルマブ群82%、プラセボ群50%、18ヵ月EFS率はそれぞれ77%と43%であった。・pCR率はニボルマブ群42.5%、プラセボ群0%(OR:NA)、MPR率はそれぞれ52.5%と7.1%であった(OR:14.37、95%CI:3.00~68.82)。・全期間におけるGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ群55.0%(22/40例)、プラセボ群39.3%(11/28例)に認められ、全体集団よりも高い割合で発現していた(全体集団はそれぞれ32.5%、25.2%)。これを期間別にみると、術前期間ではニボルマブ群47.5%(19/40例)、プラセボ群39.3%(11/28例)、術後期間ではそれぞれ12.5%(3/24例)と0%(0/20例)と、術前期間における発現割合が高かった。・日本人集団でとくに発現割合が高かった免疫介在性有害事象は、皮膚障害や間質性肺疾患などであった。 講演後、全体集団と比較した場合の手術実施割合、pCR率、MPR率の高さの理由について質問があった。田中氏は、「(明確な理由は不明であるものの)無作為化により対照群に割り付けられる患者の不利益を踏まえ、切除可能性やPSなどを考慮して、厳格に患者選定を行った結果ではないか」と考察した。また、術前のみニボルマブを使用するCheckMate 816試験の結果も踏まえ、pCRが得られた場合の後治療の要否やnon-pCRであった場合の後治療など、今後のクリニカルクエスチョンについても議論があった。 田中氏は、今回の有効性と安全性プロファイルの結果はCheckMate 77T試験の全体集団の結果と一致しているとし、「切除可能NSCLC日本人患者に対するニボルマブの術前・術後補助療法としての使用可能性を支持するものである」とまとめた。

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「サンドイッチ療法」を肺がん周術期治療の主軸に考えよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 この数年で肺がんの周術期に関連するエビデンスが数多く発表され、治療ストラテジーも大きく変わってきている。従来はIIB~IIIA期の非小細胞肺がんで手術が検討される場合には、術前プラチナ併用化学療法が一般的であったのに対し、肺がんの状況によって免疫治療や標的治療を周術期に行う治療に置き換わりつつある。術前治療としては、ドライバー変異陰性/不明例のII~IIIA期非小細胞肺がんに対し、術前にニボルマブ+化学療法を3コース行う「CheckMate 816試験」がある。術前にニボルマブ+化学療法を行うことで無イベント生存期間(EFS:event free survival)を化学療法単独群に比べ有意に延長(31.6ヵ月vs.20.8ヵ月)し、病理学的完全奏効(pCR:pathological complete response)も有意に増加(24.0% vs.2.2%)させた(Forde PM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1973-1985.)。また術後治療としては、病理病期IIB~IIIA期の完全切除例に対するアテゾリズマブの「IMpower010試験」が報告されている。PD-L1陽性(1%以上)の症例に対し、術後アテゾリズマブを16コース投与することで、無病生存期間(DFS:disease free survival)をプラセボに比べ有意に延長(未到達vs.35.3ヵ月)させた(Felip E, et al. Lancet. 2021;398:1344-1357.)。 ドライバー変異陽性例の手術に関しては、EGFR陽性非小細胞肺がんの完全切除後にオシメルチニブを3年間投与する「ADAURA試験」が報告されており、DFSの中央値はプラセボと比較して未到達vs.19.6ヵ月と有意に延長(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2020;383:1711-1723.)が認められ、全生存期間(OS:overall survival)の評価でも5年生存率が85%とプラセボ群を引き離す生存曲線が示された(Tsuboi M, et al. N Engl J Med. 2023;389:137-147.)。ALK陽性肺がんでも、術後アレクチニブの内服でDFSの延長が「ALINA試験」で報告されている(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2024;390:1265-1276.)。 今回紹介する「KEYNOTE-671試験」は手術前後にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を含む治療を行うレジメンであるが、免疫治療で手術を「はさむ」ということから、「サンドイッチ療法」と呼ばれている。術前に扁平上皮がんであればシスプラチン+ゲムシタビン+ペムブロリズマブを4コース、非扁平上皮がんであればシスプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブを4コース行い、術後は最大13コースのペムブロリズマブを維持するスケジュールとなる。EFSはプラセボ群と比較して未到達vs.17.0ヵ月と昨年報告されている(Wakelee H, et al. N Engl J Med. 2023;389:491-503.)。サブグループ解析でも年齢、人種差、組織型など、論文に挙げられている項目では、ほぼすべての点推定値がペムブロリズマブ追加群に寄っていることが示されている。今回、2回目の中間解析ということで、フォローアップ期間の中央値が36.6ヵ月と約3年での結果が報告された。3年生存率がペムブロリズマブ群で71%、プラセボ群で64%、OS中央値は未到達vs.52.4ヵ月(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.56~0.93)と有意に改善したことが報告され、周術期治療としては頑強なエビデンスが報告された。肺がん周術期治療においてOSの有意な改善を示した報告がなく、生存を改善した「サンドイッチ療法」は大変価値があると考える。 この「KEYNOTE-671試験」ではペムブロリズマブ群にIII期症例が70%含まれており、状態の良い症例がたくさん含まれていたとは考えにくい。どちらかというと手術が難しければ切除不能III期症例として化学放射線療法からのデュルバルマブか、あるいは手術や放射線が難しいとしてIV期治療に移行する可能性のある症例が多く含まれると考えるべきである。その中で、手術を含め有意差をもって高い効果を示したことは評価されうる。 術前治療を行うことで手術ができなくなる懸念がいわれている。とくに重篤な免疫関連有害事象を認めた場合にはその可能性が高くなる。ペムブロリズマブ群において免疫関連有害事象およびinfusion reaction(治療開始後24時間以内に起こる発熱や発疹などの過敏性反応)は26%に認められている。また、ネオアジュバント(術前治療)の期間に病勢が進行して手術不能となる症例を懸念する意見も頂くが、そのような症例であれば手術を早期に施行したとしても、早々に再発することが予想される。さまざまな不安があることは重々承知しているが、この「KEYNOTE-671試験」ではEFSの改善とOS延長まで示されている。手術が無事に行えるかどうかというのは大変重要なポイントではあるが、「サンドイッチ療法」を周術期においては主軸に考えていくことが妥当と考える。今後、手術を行う外科医でも免疫治療の管理が必須になるとともに、今まで以上に内科・外科の連携がより一層必要かつ重要となってくるのであろう。

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MRIで直腸がん手術の要否を判断可能か

 MRIによる直腸がん患者のがんステージの再評価により、手術を回避できる患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。手術を回避できた患者は、生涯にわたってストーマ装具を装着せずに済む可能性も期待できる。米バージニア大学(UVA)医療システム身体画像部門のArun Krishnaraj氏らによるこの研究の詳細は、「Radiology」に9月3日掲載された。 米国がん協会(ACS)によると、米国で直腸がんは比較的一般的な疾患で、毎年約4万6,220人(男性2万7,330人、女性1万8,890人)が新たに直腸がんの診断を受けているという。直腸がんによる死亡者数は、毎年5万4,000人以上に上る大腸がん死亡者数の統計に含まれている。 直腸がんの治療にあたる医師が理想とするのは、放射線療法と化学療法のみでがんを治療して患者の腸の機能を温存することだ。しかし、患者によっては経肛門的全直腸間膜切除術と呼ばれる処置が必要になる場合がある。この手術を受けた患者では、残念なことに、生涯にわたるストーマ装具の装着が必要となり、性機能障害などの他の問題を抱えることも多い。そのため、手術なしでも良好な状態を保つ可能性のある患者を特定することは非常に重要である。 今回の研究では、ステージIIまたはIIIの直腸がん患者277人(年齢中央値58歳、男性179人)を対象にしたランダム化比較試験(Organ Preservation in Rectal Adenocarcinoma〔OPRA〕試験)のデータの二次解析を行い、MRIでの再評価により手術を行わずに経過観察が可能な患者を特定できるかが検討された。対象者は、放射線療法後に化学療法を行う群と、化学療法後に放射線療法を行う群にランダムに割り付けられ、いずれの患者も再評価のためのMRI検査を受けた。これらのMRI画像は、放射線科医により、臨床的完全奏効(clinical complete response;cCR)、完全奏効に近い奏効(near-complete clinical response;nCR)、または不完全奏効(incomplete clinical response;iCR)に分類された。追跡期間の中央値は4.1年だった。 その結果、cCR達成患者では、nCR達成患者に比べて手術を回避できた患者の割合が高いことが明らかになった(65.3%対41.6%、ログランク検定によるP<0.001)。5年無病生存率は、cCR達成患者で81.8%、nCR達成患者で67.6%、iCR達成患者で49.6%だった。また、これらの再評価による分類は、全生存、遠隔再発なしの生存、および局所再発の予測因子としても機能することが示された。2年以上の追跡調査を受けた266人の対象者のうち、129人(48.5%)に再発が認められた。解析の結果、MRI画像所見での拡散制限(restricted diffusion;組織内で水分子が動きにくくなる状態)の存在と、リンパ節の形態的異常が再発に独立して関連していることが判明した。 研究グループは、腸の内視鏡検査の結果を加えると、MRIに基づく予測の精度がさらに高まる可能性があるとの見方を示している。Krishnaraj氏は、「MRIや内視鏡検査などの他のツールの継続的な進歩により、患者の将来の転帰に関してより詳細な情報が得られるようになることを私は楽観視している」とUVAのニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「最終的には、治療後に患者に説明するがんの再発や転移のリスクについての予測精度を99%にまで上げたいと考えている。まだ道のりは遠いが、それがわれわれの目標だ」と語っている。

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