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忽那氏が振り返る新型コロナ、今後の対策は?/感染症学会・化学療法学会

 2024年8月2日の政府の発表によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の定点当たりの報告数は14.6人で、昨夏ピーク時(第9波)の20.5人に迫る勢いで12週連続増加し、とくに10歳未満の感染者数が最も多く、1医療機関当たり2.16人だった。週当たりの新規入院患者数は4,579人で、すでに第9波および第10波のピークを超えている1)。 大阪大学医学部感染制御学の忽那 賢志氏は、これまでのコロナ禍を振り返り、パンデミック時に対応できる医師が不足しているという課題や、患者数増加に伴う医師や看護師のバーンアウトのリスク増加など、今後のパンデミックへの対策について、6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて発表した。日本ではオミクロン株以前の感染を抑制 忽那氏は、コロナ禍以前の新興感染症の対策について振り返った。コロナ禍以前から政府が想定していた新型インフルエンザ対策は、「不要不急の外出の自粛要請、施設の使用制限等の要請、各事業者における業務縮小等による接触機会の抑制等の感染対策、ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等を含めた医療対応を組み合わせて総合的に行う」というもので、コロナ禍でも基本的に同じ考え方の対策が講じられた。 欧米では、オミクロン株が出現した2021~22年に流行のピークを迎え、その後減少している。オミクロン株拡大前もしくはワクチン接種開始前に多くの死者が出た。一方、日本での流行の特徴として、第1波から第8波まで波を経るごとに感染者数と死亡者数が拡大し、とくにオミクロン株が拡大してからの感染者が増加していることが挙げられる。忽那氏は「オミクロン株拡大までは感染者数を少なく抑えることができ、それまでに初回ワクチン接種を進めることができた。結果として、オミクロン株拡大後は、感染者数は増えたものの、他国と比較して死亡者数を少なくすることができた」と分析した。新型コロナの社会的影響 しかし、他国よりも感染対策の緩和が遅れたことで、新型コロナによる社会的な影響も及んでいる可能性があることについて、忽那氏はいくつかの研究を挙げながら解説した。東京大学の千葉 安佐子氏らの日本における婚姻数の推移に関する研究では、2010~22年において、もともと右肩下がりだった婚姻数が、感染対策で他人との接触が制限されたことにより、2020年の婚姻数が急激に減少したことが示されている2)。また、超過自殺の調査では、新型コロナの影響で社会的に孤立する人の増加や経済的理由のために、想定されていた自殺者数よりも増加していることが示された3)。忽那氏は、「日本は医療の面では新型コロナによる直接的な被害者を抑制することができたが、このようなほかの面では課題が残っているのではないか。医療従事者としては、感染者と死亡者を減らすことが第一に重要だが、より広い視点から今回のパンデミックを振り返り、次に備えて検証していくべきだろう」と述べた。パンデミック時、感染症を診療する医師をどう確保するか コロナ禍では、医療逼迫や医療崩壊という言葉がたびたび繰り返された。政府が2023年に発表した第8次医療計画において、次に新興感染症が起こった時の各都道府県の対応について、医療機関との間に病床確保の協定を結ぶことなどが記載されている。ただし、医療従事者数の確保については欠落していると忽那氏は指摘した。OECDの加盟国における人口1,000人当たりの医師数の割合のデータによると、日本は38ヵ国中33位(2.5人)であり医師の数が少ない4)。また、1994~2020年の医療施設従事医師数の推移データでは、医師全体の数は1.47倍に増えているものの、各診療科別では、内科医は0.99倍でほぼ横ばいであり、新興感染症を実際に診療する内科、呼吸器科、集中治療、救急科といった診療科の医師は増えていない5)。 感染症専門医は2023年12月時点で1,764人であり、次の新興感染症を感染症専門医だけでカバーすることは難しい。また、岡山大学の調査によると、コロナパンデミックを経て、6.1%の医学生が「過去に感染症専門医に興味を持ったことがあるが、調査時点では興味がない」と回答し、3.7%の医学生が「コロナ禍を経て感染症専門医になりたいと思うようになった」、11.0%の医学生が「むしろ感染症専門医にはなりたくない」と回答したという結果となった6)。医療従事者のバーンアウト対策 日本の医師と看護師の燃え尽きに関する調査では、患者数が増えると医師と看護師の燃え尽きも増加することが示されている7)。米国のMedscapeによる2023年の調査では、診療科別で多い順に、救急科、内科、小児科、産婦人科、感染症内科となっており、コロナを診療する科においてとくに燃え尽きる医師の割合が高かった8)。そのため、パンデミック時の医師の燃え尽き症候群に対して、医療機関で対策を行うことも重要だ。忽那氏は、所属の医療機関において、コロナの前線にいる医師に対して精神科医がメンタルケアを定期的に実施していたことが効果的であったことを、自身の経験として挙げた。また、業務負荷がかかり過ぎるとバーンアウトを起こしやすくなるため、診療科の枠を越えて、シフトの調整や業務分散をして個人の負担を減らすなど、スタッフを守る取り組みが大事だという。 忽那氏は最後に、「感染症専門医だけで次のパンデミックをカバーすることはできないので、医師全体の感染症に対する知識の底上げのための啓発や、感染対策のプラクティスを臨床現場で蓄積していくことが必要だ。今後の新型コロナのシナリオとして、基本的には過去の感染者やワクチン接種者が増えているため、感染者や重症者は減っていくだろう。波は徐々に小さくなっていくことが予想される。一方、より重症度が高く、感染力の強い変異株が出現し、感染者が急激に増える場合も考えられる。課題を整理しつつ、次のパンデミックに備えていくことが重要だ」とまとめた。■参考1)内閣感染症危機管理統括庁:新型コロナウイルス感染症 感染動向などについて(2024年8月2日)2)千葉 安佐子ほか. コロナ禍における婚姻と出生. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年12月2日.3)Batista Qほか. コロナ禍における超過自殺. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年9月7日4)清水 麻生. 医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2021およびOECDレポートより-. 日本医師会総合政策研究機構. 2022年3月24日5)不破雷蔵. 増える糖尿病内科や精神科、減る外科や小児科…日本の医師数の変化をさぐる(2022年公開版)6)Hagiya H, et al. PLoS One. 2022;17:e0267587.7)Morioka S, et al. Front Psychiatry. 2022;13:781796.8)Medscape: 'I Cry but No One Cares': Physician Burnout & Depression Report 2023

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膵管がんの化学療法抵抗性を逆転させ得る方法とは?

 膵臓がんは特に攻撃的で治療が難しいが、その理由の1つは化学療法に抵抗性を示すことが多いからである。しかし、米スタンフォード大学材料工学分野のSarah Heilshorn氏らが、膵臓がんで化学療法抵抗性が生じる理由と、それを逆転させ得る方法に関する研究結果を、「Nature Materials」に7月4日報告した。この研究によると、がん細胞周囲の組織の物理的な硬さが、化学療法の効果を低下させているのだという。Heilshorn氏は、「膵臓がんの大きな臨床的課題は化学療法抵抗性であるが、本研究結果は、それを克服するための今後の薬剤開発の新しい方向性を示唆するものだ」と述べている。 本研究では、膵臓がんの90%を占める浸潤性膵管がん(pancreatic ductal adenocarcinoma;PDAC)に焦点が当てられた。PDACは膵管上皮から発生し、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸などを主成分とする細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)の過剰な産生と硬化を特徴とする。 実際に膵臓で何が起こるのかを解明するために、Heilshorn氏らは研究室でPDACのECMの主要な特徴を再現した硬化したマトリックスを作成し、その中で3人の膵臓がん患者のPDAC細胞に由来するオルガノイド(幹細胞を三次元で培養して得られるミニ臓器)を培養した。Heilshorn氏はこのマトリックスについて、「われわれは、がん細胞がECMの化学的シグナルや機械的性質に反応しているのではないかという考えを検証できるようなデザイナー・マトリックスを作成した」と語っている。 その結果、これらのオルガノイドは、実際の患者のがん細胞と同様に、いくつかの抗がん薬に対して抵抗性を持つようになることが確認された。また、このような抵抗性は、高剛性の環境では、ヒアルロン酸と結合する受容体であるCD44とヒアルロン酸の相互作用が増大し、その結果、抗がん薬を細胞外に排出するトランスポーターが多く作られ、抵抗性が生じることも明らかになった。さらに、オルガノイドの培養環境を高剛性のものから低剛性に変えることで、化学療法に対する抵抗性を逆転させられることも示された。 Heilshorn氏は、「がん細胞を、化学療法に反応しやすい状態に戻すことができることが分かった。このことは、CD44受容体を通じた硬化のシグナル伝達を破壊することができれば、患者の膵臓がんを通常の化学療法で治療できる可能性のあることを示唆している」と述べている。 Heilshorn氏は、「がん細胞が薬物に反応するかどうかは、ECMに依存しているため、化学療法をデザインする際には、患者に関連したECMで培養をテストすべきだ」と話している。 研究グループは、CD44受容体、およびその活性後にがん細胞で生じる一連の出来事についての調査を続けている。また、細胞培養モデルを改良し、化学療法や他のがん治療が特定の患者にどのように作用するのかを予測できるようにすることにも取り組んでいるという。

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日本人の進行・転移胸腺腫、ステロイドが有効か

 何らかの前治療歴を有する局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイドが抗腫瘍効果を示す可能性が示された。新潟大学の田中 知宏氏らがRespiratory Investigation誌2024年7月4日号で報告した。 国立がん研究センターにおいて、2010年1月~2021年3月にステロイド単剤(プレドニゾロンまたはデキサメタゾン)による治療を受けた局所進行または転移を有する胸腺腫患者13例を対象として、後ろ向き研究を実施した。評価項目は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などとした。 主な結果は以下のとおり。・胸腺腫のWHO分類の内訳はABが3例(23%)、B1が1例(8%)、B2が5例(38%)、B3が4例(31%)であった。・対象患者は、手術、放射線療法、化学療法のうち、少なくとも1つ以上の治療歴があった。・ステロイドの初期用量は、プレドニゾロン換算で0.9mg/kg/日(範囲:0.4~1.1)であった。・ORRは53.8%(7/13例)で、SDは38.5%(5/13例)であった。・奏効までの期間の中央値は21日(範囲:6~88)であった。・PFS中央値は5.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.5~9.6)であった・OS中央値は25.3ヵ月(95%CI:7.1~推定不能)であった。・WHO分類B3の患者は良好な治療反応を示す傾向にあった(ORR:75%、PFS中央値:10.6ヵ月、OS中央値:45.0ヵ月)。 本研究結果について、著者らは「局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイド単剤が抗腫瘍効果を示した。先行研究において、アントラサイクリンを含む化学療法でのORRは59.0%、カルボプラチン+パクリタキセルでのORRは42.9%、ペメトレキセド単剤でのORRは26.0%であったことが報告されており、ステロイド単剤は化学療法と同等の効果を示すことが示唆される。ステロイドによる治療は、手術や放射線療法、化学療法に失敗した患者にとって、有望な治療選択肢の1つになると考えられる。今後の研究では、最適な初期用量や治療期間の確立が必要である」と考察した。

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MRD陰性寛解BCP-ALLの地固め療法、ブリナツモマブ追加でOS改善/NEJM

 測定可能残存病変(MRD)陰性の寛解を達成した前駆B細胞性急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)の成人患者に対する化学療法による地固め療法にブリナツモマブ(二重特異性T細胞誘導[BiTE]抗体)を追加すると、地固め化学療法単独と比較して、3年全生存(OS)率を有意に改善し、3年無再発生存(RFS)率も有意に良好であることが、米国・メイヨー・クリニックのMark R. Litzow氏らが実施したE1910試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月25日号に掲載された。ブリナツモマブの上乗せ効果を評価する無作為化第III相試験 E1910試験は、MRD陰性寛解を達成したBCP-ALL成人患者に対する地固め療法におけるブリナツモマブ追加の有効性と安全性の評価を目的とする無作為化第III相試験であり、2013年12月~2019年10月にカナダ、イスラエル、米国の参加施設で患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 年齢30~70歳、BCR::ABL1遺伝子(::は融合を意味する)陰性のBCP-ALLで、導入化学療法および強化化学療法を施行後にMRD陰性の寛解(フローサイトメトリーによる評価で骨髄中の白血病細胞が0.01%未満と定義)を達成した患者を対象とした。 被験者を、地固め化学療法4サイクルに加えブリナツモマブ4サイクルを投与する群、または地固め化学療法4サイクルのみを投与する群に無作為に割り付けた。 主要評価項目はOSとした。副次評価項目はRFSなどであった。3年OS率:85% vs.68%、3年RFS率:80% vs.64% データ安全性監視委員会が3回目の中間解析の結果を審査し、これを報告するよう勧告した。登録した488例のうち、395例(81%)で血球数の完全回復の有無を問わず完全寛解が得られた。このうちMRD陰性を達成した224例(年齢中央値51歳[範囲:30~70]、女性113例[50%])を解析の対象とし、ブリナツモマブ追加群に112例、化学療法単独群に112例を割り付けた。 追跡期間中央値43ヵ月の時点における3年OS率は、化学療法単独群が68%であったのに対し、ブリナツモマブ追加群は85%と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.23~0.73、p=0.002)。また、3年RFS率は、化学療法単独群の64%と比較して、ブリナツモマブ追加群は80%と良好であった(HR:0.53、95%CI:0.32~0.87)。 年齢55歳未満の132例では、3年OS率(95% vs.70%、HR:0.16[95%CI:0.05~0.47])および3年RFS率(87% vs.70%、0.31[0.14~0.69])はいずれもブリナツモマブ追加群で優れ、年齢55歳以上の93例でも、3年OS率(70% vs.65%、0.66[0.33~1.35])および3年RFS率(69% vs.57%、0.74[0.39~1.43])ともブリナツモマブ追加群で良好であった。23%でGrade3以上の神経・精神系有害事象が発現 地固め療法中に発現した治療関連の非血液毒性の割合は、ブリナツモマブ追加群ではGrade3が43%、Grade4が14%、Grade5が2%であり、化学療法単独群ではそれぞれ36%、15%、1%であった(p=0.87)。 Grade3以上の治療関連の神経・精神系有害事象の頻度は、化学療法単独群では5%であったのに対し、ブリナツモマブ追加群では23%と有意に高率だった(p<0.001)。 著者は、「本試験はサブグループ解析のための検出力はなかったが、55歳未満の患者で有益性が高いと考えられた」とし「現在進行中の試験では、新規に診断されたBCR::ABL1陰性の病変を有する高齢患者においてブリナツモマブをより早期に使用する方法などが検討されている」と述べている。

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ニボルマブ承認から10年、がん治療はどう変わったか/小野・BMS

 本邦初の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ニボルマブ。2014年7月4日に製造販売承認を取得してから、早くも10年が経過した。ICIによるがん免疫療法は、どれだけ社会に認知されているのだろうか。また、ICIはがん治療においてどのようなインパクトを与えたのだろうか。小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、これらの疑問に答えるべく「免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫療法のいまとこれから」と題し、2024年7月24日にメディアセミナーを実施した。ICIは医師には定着も、患者さんへのさらなる情報発信が必要 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、がん免疫療法に対する医師・患者さんの現状評価を把握することを目的として、がん治療に関わる医師100人とがん患者さん900人を対象にアンケート調査を実施した。本調査の結果について、高井 信治氏(小野薬品工業 メディカルアフェアーズ統括部長)が紹介した。 アンケート調査の結果、医師の90.0%は「ICIはがん治療の選択肢としての地位を築いた」と回答し、ICIによるがん免疫療法が実臨床に定着したことが示された。また、87.0%が「さらなる発展を期待したい治療法である」と回答し、ICIへの期待の高さがうかがわれた。 しかし、ICIによる治療を受けたことがないがん患者さんでは「複数のがん免疫療法を知っている」と回答したのは2.9%、「知っているがん免疫療法がある」と回答したのは9.6%に留まり、「名前を聞いたことがある」と回答した50.6%を含めても、がん免疫療法の認知率は63.0%であった。また、この集団(がん免疫療法を認知しているICI未経験の患者さん)に対し、がん免疫療法について知っていることを聞いたところ、「医学的に効果が認められているがん免疫療法には、抗がん剤治療などとは異なる副作用がある」と回答した割合は26.3%に留まり、免疫関連有害事象(irAE)に関する認知や理解が低いことが示唆された。このことから、がん患者さんや一般生活者の方々への正しいがん免疫療法の認知、理解促進に向けてさらなる情報発信が必要であると考えられた。 がん免疫療法の正しい理解促進に向けて、小野薬品工業では患者さん向けの啓発サイト「ONO ONCOLOGY」の充実を図るほか、ブリストル・マイヤーズ スクイブと共同で、臨床試験結果の論文を平易な言葉で要約する「プレーン・ランゲージ・サマリー」を公表している。【アンケート調査の概要】<調査実施期間>2024年6月21~28日<調査対象>医師:ICI適応がん腫いずれかに関連する診療科で全身化学療法によるがん治療経験のある医師(病床数200床以上)100人患者さん:(1)20~70代のICIによるがん治療を受けたことのある200人、(2)20~70代のICI適応のがん腫ではあるがICIによる治療は受けたことのない700人ICIの登場により患者さんへの説明は大きく変わった 続いて「免疫チェックポイント阻害薬ががん治療に与えたインパクト」というテーマで林 秀敏氏(近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門 主任教授)がICI登場後のがん治療の変化を紹介した。 林氏が専門とする肺がんの場合、ICIの登場前は進行期の患者さんの5年生存率は5%未満であったが、ICIの登場後は20%程度に改善していると述べた。ICIの登場前は、進行期の患者さんへ「長生きするチャンスはありますが、治るというのは難しいです」と伝えていたという。ところが、ICIの登場後は治癒に近い形で長期生存が得られる患者さんも存在するようになり、「高い効果がみられるのは2割程度です」との前置きは必要としつつも、患者さんへ大きな希望を持たせることができるようになったと語った。 また、ICIの登場により希少がんの治療薬開発状況も変化している。ICIの登場前は、希少がんに対する治療薬の開発は非常に困難であった。しかし、ICIの登場により希少がんや原発不明がんに対する治療薬の開発が可能となった。実際に、林氏らの研究チームは、原発不明がんに対するニボルマブの有効性を検討する医師主導治験(NivoCUP試験)を実施し、その結果をもとにニボルマブは原発不明がんに対する適応を取得している。この反響は非常に大きかったという。「本試験の結果がYahoo!ニュースのトップに掲載され、近畿大学に行けばICIによる治療を受けられるのかという電話が数多くかかってきたことを覚えています。原発不明がんの患者さんは日本中にいて、治療薬の開発を求めていたことを実感しました」と林氏は述べた。なお、原発不明がんに対してICIの保険適用が得られているのは、日本におけるニボルマブのみである。irAEの伝え方は? アンケート調査結果では、がん免疫療法を認知していてもICIによる治療を受けたことのない患者さんでは、irAEに関する理解が不十分であることが示唆された。そこでセミナー終了後、ICIによる治療を実施する際の患者さんへの説明方法を林氏へ聞いた。 アンケート調査結果を踏まえて、irAEをどう伝えるべきかを聞いたところ、林氏は「irAEは頻度が少ないのに種類が多いため、患者さんへの教育にも限界があります。では、どこまで伝えるのが適切かというのはすごく難しいと感じます。患者さんによって理解度は異なりますし、複雑な伝え方をしてしまうと理解できず、びっくりさせて不安を与えるだけになってしまいます」と話した。そこで、実際にどのように伝えているかを聞いたところ「私はシンプルに伝えています。38℃以上の熱があったらとりあえず連絡をください、下痢が止まらなかったら連絡をくださいという形で、できるだけシンプルに伝えています。100%の説明にならなくてもよいと思います。100%で説明して理解されないよりも、50%で伝えて理解できるほうがよいと思っています」と述べた。ただし、この伝え方が必ずしも正解とは限らないとも述べ、患者さんへの説明用アプリなどの開発とその活用への期待も語った。

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第225回 新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連

新しい帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下が関連米国の20万例強の記録を英国オックスフォード大学の研究者らが解析したところ、2017年から同国で使用されるようになった新しい組み換え帯状疱疹ワクチンであるシングリックス接種と認知症を生じ難いことが関連しました1-3)。2006年から使われ始めて7年ほど前まで最も一般的だった別の帯状疱疹ワクチンZostavaxは生きた弱毒化ウイルスを成分とします。何を隠そうZostavaxも認知症が生じ難くなることとの関連が先立つ試験で示されています。しかし今回の新たな結果によると、認知症発現を遅らせるか、ともすると防ぎうるシングリックスの効果はZostavaxに比べて高いようです。帯状疱疹は高齢者の多くに生じる深刻な疾患の1つです。ストレスや化学療法などの免疫を弱らす事態に乗じて体内に潜む水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することを原因とし、痛い皮疹を引き起こし、2次感染や傷跡を残すことがあります。帯状疱疹は加齢につれて生じ易くなることから、高齢者へのそのワクチン接種が必要とされています。米国では50歳、英国では65歳での帯状疱疹ワクチン接種が推奨されています。米国を含む多くの国で帯状疱疹ワクチンは代替わりしてより有効なシングリックスが使われるようになっており、Zostavaxは使われなくなっています。シングリックスは組み換えワクチンであり、病原体のDNAのごく一部を細胞に挿入して作られるタンパク質を成分とします。それらタンパク質が体内で感染予防に必要な免疫反応を引き出します。米国では2017年後半からシングリックスがZostavaxの代わりに使われるようになりました。オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らは、その区切り以降にシングリックスを接種した人とそれ以前にZostavaxを接種した人の認知症の生じ易さを比較しました。選ばれた人の数はどちらも10万例強で、平均年齢は71歳です。6年間の経過を追ったところ、シングリックス接種群の認知症の発症率はZostavax接種群に比べて17%低いことが示されました。また、帯状疱疹以外のワクチン(インフルエンザワクチンと3種混合ワクチン)接種群と比べてもシングリックス接種群の認知症発症率は2~3割ほど低く済んでいました。帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難くなることを関連付ける仕組みは不明で、今後調べる必要があります。もしかしたら帯状疱疹の原因ウイルスが認知症を生じ易くし、帯状疱疹ワクチンはそれらウイルスを阻止することで認知症をより生じ難くするのかもしれません2)。または、ワクチン自体が脳に有益な効果をもたらしている可能性もあります。ところで認知症発症率低下との関連は帯状疱疹以外のワクチンでも示されています。結核の予防や膀胱がん治療に使われるBCGワクチンはその1つで、認知症の発症リスクの45%低下との関連が昨年発表されたメタ解析で確認されています4)。BCGワクチンといえば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防効果がかつて期待されましたが、プラセボ対照無作為化試験でその効果を示すことができませんでした5)。残念な結果になったとはいえBCGワクチンのCOVID-19予防効果は最終的に無作為化試験で検証されました。その試験と同様のシングリックスの認知症予防効果を検証する大規模無作為化試験の構想を今回の結果は促すだろうとTaquet氏らは論文に記しています。参考1)Taquet M, et al. Nat Med. 2024 Jul 25. [Epub ahead of print]2)New shingles vaccine could reduce risk of dementia / University of Oxford 3)Evidence mounts that shingles vaccines protect against dementia / NewScientist4)Han C, et al. Front Aging Neurosci. 2023;15:1243588. 5)Pittet LF, et al. N Engl J Med. 2023;388:1582-1596.

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HR+/HER2-早期乳がんにおける早期再発のリスク因子(WJOG15721B)/日本乳癌学会

 HR+/HER2-早期乳がん患者における早期再発のリスク因子を探索したWJOG15721B試験の結果、若年、静脈侵襲、病理学的浸潤径、病理学的リンパ節転移の個数などが独立したリスク因子として同定されたことを、国立がん研究センター東病院の綿貫 瑠璃奈氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 HR+/HER2-乳がんで、術後内分泌療法開始後3年以内の早期に再発した患者の予後は不良であることが報告されている。monarchE試験では再発高リスクのHR+/HER2乳がん患者において内分泌療法にアベマシクリブを加えることで有意に無浸潤疾患生存期間(iDFS)が延長したことが示されている。monarchE試験の適格基準を満たす患者は極めて再発高リスクであり、この基準を満たさない早期再発の高リスク集団が存在する可能性がある。そこで研究グループは、HR+/HER2-乳がんの臨床病理学的因子や周術期治療と術後3年以内の再発との関連を調べ、早期再発のリスク因子を同定することを目的として後方視的多施設共同観察研究を実施した。 対象は、StageII~IIIのHR+/HER2-乳がんと診断されて手術を受け、2012年1月1日~2017年1月1日に術後内分泌療法を開始した患者であった。術前/術後化学療法の実施の有無については問わなかった。主要評価項目は3年のiDFS割合、副次評価項目はiDFS、全生存期間、3年の無遠隔転移生存(DRFS)割合、DRFSであった。 予後因子の検討のため、多変量Cox比例ハザード回帰モデルにおいて臨床病理学的因子を説明変数として用いた。iDFSの予測モデルを作成するため、説明変数の有意水準を0.05としたステップワイズ法を用いた多変量Cox比例ハザード回帰モデルによってノモグラムを作成した。 主な結果は以下のとおり。●2,732例(年齢中央値:51歳[範囲:23~96])が解析された。StageIIAが1,841例(67.4%)、StageIIBが529例(19.4%)、StageIIIが362例(13.3%)であった。●術前化学療法を受けたのは23.0%、術後化学療法を受けたのは32.5%で、治療薬は90%超がアントラサイクリン系であった。●主要評価項目である3年iDFS割合は92.1%(95%信頼区間[CI]:91.1~93.1)であった(追跡期間中央値:7.1年)。●iDFSに対する多変量解析により、早期再発に関連する統計学的に有意な因子として6つの因子が明らかになった。ハザード(HR)は以下のとおり(括弧内は95%CI)。【年齢】・20~39歳vs.40~69歳 HR:1.46(1.09~1.95)、p=0.011・70歳以上vs.40~69歳 HR:1.73(1.32~2.26)、p<0.001【核グレード】・グレード2 vs.グレード1 HR:1.66(1.31~2.11)、p<0.001・グレード3 vs.グレード1 HR:1.64(1.24~2.19)、p=0.001【静脈侵襲】・ありvs.なし HR:1.36(1.04~1.78)、p=0.027【浸潤径】・2以上5cm未満vs.2cm未満 HR:1.75(1.35~2.27)、p<0.001・5cm以上vs.2cm未満 HR:2.07(1.48~2.89)、p<0.001【リンパ節転移個数】・1~3 vs.0 HR:1.16(0.92~1.46)、p=0.201・4以上vs.0 HR:1.70(1.29~2.24)、p<0.001【術前化学療法歴】・ありvs.なし HR:2.41(1.90~3.06)、p<0.001。●両側乳がん、ER、PgR、HER2、Ki-67、リンパ管侵襲は統計学的に有意な因子ではなかった。●同定された6つの因子で3年および5年iDFS割合を予測するノモグラムを作成したところ、とくに40~69歳と比較して20~39歳は予後が不良であるとともに、70歳以上でも予後が不良であった。術前化学療法を行った患者はそれでもなお予後が不良であった。●ノモグラムの総ポイントに基づきスコアごとに層別化したiDFSの曲線を作成し、ログランク検定とCox比例ハザードモデルで評価した結果、総ポイントが高いほど予後が不良であった。ノモグラムのC-indexは0.68であった。 これらの結果より、綿貫氏は「若年、核グレード、静脈浸潤、病理学的浸潤径、病理学的リンパ節転移の個数がHR+/HER2-乳がん患者の早期再発の独立したリスク因子であることが明らかになった。また、臨床医によって術前化学療法が選択された患者は、術前化学療法を行ってもなお早期再発のリスクが高いと考えられる。今回同定された因子を有するHR+/HER2-乳がん患者に対してアベマシクリブが有効かについてはさらなる検証が必要である」とまとめた。

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一次乳房再建における有害事象のリスク因子/日本乳癌学会

 2013年に乳房インプラントが保険収載されて以降乳房再建は増加傾向にあり、2020年には遺伝性乳がん卵巣がん症候群の予防的切除も保険収載された。一方で、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生が報告され、再建後有害事象のリスク因子についても多数の報告があるが、結果は一致していない。日本乳癌学会班研究(枝園班)では、一次乳房再建施行患者における有害事象のリスク因子について多施設共同の後ろ向き解析を実施し、聖マリアンナ医科大学の志茂 彩華氏が結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究の対象は、2008年1月~2016年12月に国内12施設で一次乳房再建が施行された、診断時に20歳以上80歳未満の乳がん症例4,720例。Stage IVの患者は除外された。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値46(20~83)歳、65歳以上は4.1%であった。BMIは18.5~25(普通)が74.3%を占めたが、25以上の肥満患者も10%以上含まれた。喫煙歴なしが77.8%、両側性なしが84.0%、乳房手術はtotal mastectomyが35.9%、skin-sparing mastectomy(SSM)が33.8%、nipple-sparing mastectomy(NSM)が30.3%であった。再建方法は、一次一期再建としてインプラントが3.5%、自家組織が11.1%、一次二期再建が85.4%であった。腋窩手術はセンチネルが81.7%、郭清が17.2%、なしが1.1%であった。・組織型は浸潤性乳管がんが64.5%を占め、非浸潤性乳管がんが27.1%、浸潤性小葉がんが4.2%であった。pN0が79.3%を占めた一方、pN≧4の症例も4.5%含まれた。術前/術後化学療法なしがそれぞれ90.0%/77.4%で、術後ホルモン療法は62.3%が受けていた。PMRTの施行を受けていたのは7.6%であった。・有害事象が報告されたのは840例(17.8%)で、最も多かったのは乳頭乳輪(NAC)血流不全(NSM症例のうち14.9%)で、皮弁壊死が4.8%、感染が3.8%と続き、感染についてはGrade3が2.8%であった。・有害事象の転帰については、インプラント症例で感染が発生した場合75.9%で抜去もしくは入れ替えが行われていた。皮弁壊死の場合はインプラント症例の11.9%で抜去もしくは入れ替え、自家再建症例の23.1%で自家再建組織の一部もしくは全切除が行われていた。・有害事象のリスク因子について、65歳以上、BMI≧25、喫煙歴ありの症例については、多変量解析および単変量解析のいずれにおいても有意差が認められた。・連続変数によるロジスティック解析においても、年齢およびBMIが高くなるほど有害事象が増加することが明らかになった。・手術の方法と有害事象の関係について、total mastectomyと比較するとSSM、NSMはともに多変量解析および単変量解析のいずれにおいても有意にリスクが高くなり、とくにNSMで最も多いことが確認された。再建方法については、一次二期再建と比較するとインプラント、自家再建ともに一次一期再建で有意にリスクが高かった。両側性の有無や腋窩手術に関して因果関係は認められなかった。・病理結果と有害事象の関係について、単変量解析の結果、非浸潤性乳管がんと比較すると浸潤性がんでリスクが高かった。リンパ節転移の有無に関しては、pN≧4でリスクが高かった。・治療法と有害事象の関係について、単変量解析の結果、術後ホルモン療法およびPMRTありの場合にリスクが高かった。術前/術後化学療法の有無に関して因果関係は認められなかった。 志茂氏は、「重大な有害事象が起こると再手術が必要になる可能性があり、整容性の低下、患者の負担が懸念される」とし、「リスク因子を有する患者に対しては、術前の管理や術後の経過について十分に注意する必要がある」とまとめている。

189.

HR+/HER2-進行乳がん1次治療、リアルワールドでのパルボシクリブ+フルベストラント/+AIの効果/日本乳癌学会

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療におけるパルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬(AI)の効果をリアルワールドデータ(RWD)で評価した結果、ほぼ同様な傾向であったことを京都大学の増田 慎三氏が第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。後治療の検討から、増田氏は「後治療におけるホルモン療法の期間を伸ばす工夫が今後大切」とした。 HR+/HER2-進行乳がんにおいてパルボシクリブと内分泌療法の併用療法が内分泌療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することは第III相試験において示されているが、実臨床下でフルベストラント併用とAI併用を別々に評価した研究はほとんどない。本研究では、HR+/HER2-進行乳がんに1次または2次治療としてパルボシクリブ+内分泌療法を行った際の実臨床下での有用性を評価した国内20施設の多施設観察研究のデータから、1次治療として登録された420例のうち、術後補助療法終了から再発までの期間(TFI)が12ヵ月以上、および初診時Stage IVの症例を解析対象とした。併用した内分泌療法別に、患者背景、実臨床下でのPFS(rwPFS)、全生存期間(OS)、化学療法開始までの期間(CFS)、後治療の内訳を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1次治療でパルボシクリブ+フルベストラントおよびパルボシクリブ+AIで治療された症例は、それぞれ74例および118例であった。患者背景に大きな違いはなかったが、閉経前/閉経周辺期の患者割合がフルベストラント併用群27.0%、AI併用群 6.8%とフルベストラント併用群で多かった。・rwPFS中央値は、フルベストラント併用群 で33.57ヵ月(95%信頼区間[CI]:23.37~50.43)、AI群で34.10ヵ月(同:25.63~44.53)とほぼ同様で、第II相試験であるPARSIFAL試験、PARSIFAL-LONG試験の再現性が認められた。・CFS中央値についても、フルベストラント併用群43.90ヵ月(同:32.57~NE)、AI群42.53ヵ月(同:33.6~NE)で同様の傾向がみられた。・OS中央値はどちらも未達で、今後、長期フォローアップによるデータの更新を予定している。・TFIが12ヵ月以上の再発症例と初診時StageIVの症例、また閉経状況によらず、rwPFS、CFS、OSはおおむね同じ傾向であった。・後治療の内訳は、フルベストラント併用群、AI併用群の順に、化学療法が34.1%および29.5%、内分泌療法単独が19.5%および26.2%、内分泌療法+CDK4/6阻害薬が17.1%および34.4%、内分泌療法+エベロリムスが26.8%および4.9%であった。1次逐次治療で内分泌療法±分子標的治療を選択された患者群の治療期間中央値は、フルベストラント併用群3.0ヵ月、AI併用群4.5ヵ月であった。 増田氏は「HR+/HER2-進行再発乳がん治療において、ホルモン感受性が期待できると考えられる集団の1次治療において、日本人におけるReal world evidence studyから、パルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+AIは共に有用な選択肢であることが示唆された」と結論した。

190.

脳転移を有するHER2低発現乳がん、T-DXdの頭蓋内奏効率は?(DESTINY-Breast04)/日本乳癌学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移を有する乳がん患者を対象として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験の、脳転移を有する患者に絞った探索的研究において、T-DXd群ではTPC群を上回る良好な頭蓋内奏効が得られたことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第32回日本乳癌学会学術総会のアンコール企画で発表した。 脳転移は、HER2低発現の転移・再発乳がん患者の約15%に生じる可能性があり、予後不良であることが報告されている。これまでのDESTINY-Breast04試験のサブグループ解析では、脳転移を有する症例であっても、T-DXd群は全体集団と同様に有意に無増悪生存期間(PFS)が延長したことが報告されているが、頭蓋内転移に対する有効性は不明であった。そこで研究グループは、DESTINY-Breast04試験のうち、ベースライン時に無症候性脳転移を認めた症例におけるT-DXdおよびTPCの頭蓋内病変に対する有効性を、脳MRIまたはCTの盲検下独立中央判定(BICR)に基づき評価した(データカットオフ:2022年1月11日)。 評価項目は、BICR判定による頭蓋内確定奏効率(cORR)(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、頭蓋内最良総合効果、頭蓋内臨床的有用率(CBR)(CR+PR+安定[SD])、病勢コントロール率(DCR)(CR+PR+SD)、BICR判定による中枢神経系PFS(CNS-PFS)、全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に無症候性脳転移を認めたのは35例で、T-DXd群が24例(うち未治療が8例)、TPC群が11例(同7例)であった。T-DXd群では、年齢中央値が高く、CDK4/6阻害薬の治療歴がない割合が高く、脳転移に対する治療として放射線療法(±外科治療)を受けていた割合が高かった。・頭蓋内cORRは、T-DXd群25.0%、TPC群0%であった。T-DXd群では、16.7%でCRが得られた。・T-DXd群およびTPC群の頭蓋内CBRは58.3%/18.2%、頭蓋内DCRは75.0%/63.6%であった。・頭蓋内最良総合効果のSwimmer Plotでは、奏効している患者はT-DXd群のほうが長い傾向を示した。・T-DXd群におけるCNS-PFS中央値は9.7ヵ月、OS中央値は16.7ヵ月であった。・最初の増悪部位別では、頭蓋内で進行(PD)と判定されたのはT-DXd群8.3%、TPC群27.3%であった。 鶴谷氏は「本探索的研究は部分集団解析であり、前治療歴などは両群で差があったことを加味する必要がある」としたうえで、「組み入れられた患者はごく少数であったが、頭蓋内の有効性データから、TPCを上回るT-DXdの有益性が示された」とまとめた。

191.

デュルバルマブ+化学療法±オラパリブの日本人子宮体がんに対する成績(DUO-E)/日本婦人科腫瘍学会

 進行子宮体がんに対してデュルバルマブを含む治療と標準化学療法を比較する第III相試験DUO-Eの日本人サブセット解析が、第66回日本婦人科腫瘍学会学術大会で久留米大学の西尾 真氏により発表された。 DUO-E試験では、進行再発子宮体がん1次治療のITT集団において、化学療法・デュルバルマブ併用+デュルバルマブ維持療法群および、同併用+デュルバルマブ・オラパリブ維持療法群共に、化学療法と比べ無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が報告されている。対化学療法群におけるハザード比(HR)はそれぞれ0.71(95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、0.55(95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)であった。・対象:未治療の進行StageIII/IV(FIGO2009)または再発子宮体がん・試験群1: 化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+デュルバルマブ→デュルバルマブ(TC+D群)・試験群2:TC+デュルバルマブ→デュルバルマブ+オラパリブ(TC+D+O群)・対照群:TC→プラセボ(TC群)・評価項目:[主要評価項目]治験責任医判定によるPFS(TC+D群vs.TC群、TC+D+O群vs.TC群)[副次評価項目]全生存期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・日本人サブセットは88例(TC群32例、TC+D群30例、TC+D+O群26例)であった。・日本人サブセットはITT集団に比べPS良好例、初発例、StageIV例が多く、放射線治療歴が少なかった。・日本人患者のPFS中央値はTC群9.5ヵ月、TC+D群9.9ヵ月(対TC群HR:0.61、95%CI:0.32〜1.12)、TC+D+O群15.1ヵ月(対TC群HR:0.44、95%CI:0.22〜0.85)で、ITT集団と一貫した傾向であった。・安全性プロファイルはITT集団と一貫していた。・Grade3以上の有害事象発現はTC群の19.0%、TC+D群の10.0%、TC+D+O群の45.0%であった。 DUO-E試験の結果から、日本人の子宮体がんにおいて、化学療法+デュルバルマブおよびその後のデュルバルマブ±オラパリブが新たな治療選択肢となり得る、と西尾氏は述べた。

192.

monarchEとPOTENTの適格性の有無と予後の関連/日本乳癌学会

 再発高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法として、アベマシクリブおよびS-1がそれぞれmonarchE試験およびPOTENT試験の結果を基に保険適応となっている。しかしその投与対象は一部が重複しており、またPOTENT試験の適格基準はStage I~IIIBと幅広い。名古屋市立大学の磯谷 彩夏氏らはmonarchE試験およびPOTENT試験の適格/不適格症例ごとの予後を検討することを目的に、単施設の後ろ向き解析を実施。結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、1981〜2023年に名古屋市立大学病院で根治的手術を実施したStage I~IIICのHR陽性HER2陰性乳がん2,197例の診療録を後ろ向きに解析した。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。S-1、CDK4/6阻害薬、PARP阻害薬のいずれかの投与歴のある患者98例が除外され、本研究に適格とされた患者2,099例のうち、両試験適格群は275例、monarchE試験(コホート1)のみ適格群は64例、POTENT試験のみ適格群は810例、両試験不適格群は950例であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢(平均56.7歳)、性別(99.6%が女性)、閉経状況(49.6%が閉経後)に各群で大きなばらつきはなかった。化学療法歴はmonarchEのみ適格群(82.8%)および両試験適格群(74.5%)で高く、再発についてもmonarchEのみ適格群(65.6%)で高い傾向がみられた。・観察期間中央値28.5年における全体集団の5年DFSは88.79%、10年DFSは78.71%であった。・各群の5年DFSは、monarchEのみ適格群59.8%、両試験適格群75.0%、POTENT試験のみ適格群89.8%、両試験不適格群94.8%であり、monarchE適格患者は有意に予後不良であった(log-rank検定のp<0.0001)。・POTENTのみ適格の患者の予後は、POTENT不適格の患者と比較するとリンパ節転移の有無によらず不良であり、とくにリンパ節転移陽性の場合は晩期再発も多くみられ、S-1の上乗せはより妥当と考えられた。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者における予後因子を単変量解析で検討した結果、Gradeが高いほどまた腫瘍径が大きいほど予後不良であることが明らかになった。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Gradeと腫瘍径別に予後を検討した結果、Grade2では腫瘍径2cm以上3cm未満と比較して3cm以上では有意に予後不良(p=0.001)であった一方、2cm未満と比較して2cm以上3cm未満では有意な差はみられなかった(p=0.51)。またGrade3では腫瘍径2cm未満で比較的予後良好な傾向がみられた。・そこで、POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Grade2かつ腫瘍径2cm以上3cm未満およびGrade3かつ腫瘍径2cm未満の患者(予後検討群)を、その他のPOTENT適格患者と比較した結果、予後検討群で有意に予後良好であった(p=0.007)。 磯谷氏は、後ろ向き研究であること、1980年代の症例が含まれていることなどの本研究の限界を挙げたうえで、monarchE適格患者にはアベマシクリブの投与が妥当であり、POTENT試験の適格患者のうち、Grade2かつ2cm以上3cm未満およびGrade3かつ2cm未満の患者は比較的予後が良好であり、S-1の上乗せ効果は限定的である可能性が示唆されたとまとめた。一方で、予後良好患者においてもS-1の上乗せ効果を否定できないため、今後はS-1投与患者における予後調査が必要としている。

193.

HER2+乳がんに対する周術期至適治療を検討/日本乳癌学会

 HER2+乳がんの周術期治療選択において、Stage Iやリンパ節転移陰性のStage II(T2N0)でのレジメン選択や術前化学療法の適応は施設間で考え方に違いがある。今回、船橋市立医療センターの松崎 弘志氏らは、これらのStageに対する至適な治療法を明らかにするため、手術を実施したHER2+乳がんについて後ろ向きに評価し、第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究は、1994年4月~2021年11月に手術を実施したHER2+乳がん350例を対象とし、Stage別の治療法と無再発生存率(RFS)の関係、Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS 、Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFSについて、後ろ向きに検討した。 主な結果は以下のとおり。■Stage別の治療法と5年RFSの関係・全Stage(350例)において、トラスツズマブありが84.5%、なしが63.6%とトラスツズマブで有意な予後改善を認めた。・Stage I(113例)では、無治療が78.6%と低く、トラスツズマブのみは90%、化学療法のみは90.9%と高く、化学療法+トラスツズマブでは再発例はなかった。・Stage II(172例)では、化学療法のみでは62.6%と不良であったが、トラスツズマブのみで79.4%、化学療法+トラスツズマブで89.1%であった。・Stage III(65例)では、化学療法+トラスツズマブでも55.6%と予後不良だった。■Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS・腫瘍径別では、T1c(63例) が95.2%と最も高く、T1b(19例) 94.7%、T1mi (17例)92.3%で、T1a は14例と少ないものの局所も含めた再発が4例あり、77.1%と低かった。・Stage I全体でトラスツズマブ投与の有無別では、トラスツズマブなしが85.0%に対し、ありが98.6%と有意な改善がみられ、化学療法の有無にかかわらず投与症例での再発は1例のみだった。■Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFS・T2N0(96例)が87.2%、T1N1(21例)が68.2%と、T1N1で予後不良な傾向がみられた。・T2N0で化学療法+トラスツズマブを投与した症例において、ペルツズマブありが88.9%、なしが93.5%と明らかな差はみられなかったが、ペルツズマブ投与群では再発がなかった(検討症例の時期から、ペルツズマブ投与は12例にとどまっており、観察期間も短かった)。 松崎氏は、「T1ではトラスツズマブを投与した73例中、再発は1例のみであり、予後改善のための術前化学療法の意義は少ない。一方、トラスツズマブなしではT1a以下の腫瘍径でも再発を認め、投与すべき」と述べ、「T1bおよびT1cは、化学療法+トラスツズマブの適応だが、ペルツズマブ追加の必要性には乏しく、APT試験の結果を合わせ、アントラサイクリン省略も考慮される」と考察した。一方、「Stage IIAでは化学療法+トラスツズマブ投与でも一定数の再発を認め、ペルツズマブが必須、さらには術前化学療法(レスポンスガイド)による予後向上を目指すべきで、T2N0においてもこれらは同様と考える」と述べた。

194.

コロナ変異株KP.3のウイルス学的特徴、他株との比較/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第11波が到来したか――。厚生労働省が7月19日時点に発表した「新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移」によると、都道府県別では、沖縄、九州、四国を中心に、定点当たりの報告数が第10波のピークを上回る地域が続出している1)。全国の定点当たりの報告数は11.18となり、昨年同期(第9波)の11.04を超えた2)。また、東京都が同日に発表したゲノム解析による変異株サーベイランスによると、7月18日時点では、全体の87%をKP.3(JN.1系統)が占めている3)。KP.2やJN.1を合わせると、JN.1系統が98.7%となっている。 東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤 佳氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan(The Genotype to Phenotype Japan)」は、感染拡大中のKP.3、および近縁のLB.1と KP.2.3の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性について調査した。その結果、これらの親系統のJN.1と比べ、自然感染やワクチン接種により誘導された中和抗体に対して高い逃避能や、高い伝播力(実効再生産数)を有することが判明した4)。6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて結果を発表した。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年6月27日号に掲載された。 本研究ではJN.1より派生したKP.3、LB.1、KP.2.3の流行拡大のリスク、およびウイルス学的特性を明らかにするため、ウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内における各変異株の実効再生産数を推定し、次に、培養細胞におけるウイルスの感染性を評価した。また、SARS-CoV-2感染によって誘導される中和抗体や、XBB.1.5対応ワクチンによって誘導される中和抗体に対しての抵抗性も検証した。 主な結果は以下のとおり。・2024年5月時点のカナダ、英国、米国のウイルスゲノム疫学調査情報を基にした調査において、KP.3の実効再生産数は、親系統のJN.1よりも1.2倍高いことが認められた。さらに、LB.1、KP.2.3は、KP.2とKP.3よりも高かった。・培養細胞におけるウイルスの感染性について、KP.2とKP.3はJN.1よりも低い感染性を示した。一方、LB.1とKP.2.3は、JN.1と同等の感染性を示した。・これまでの流行株(XBB.1.5、EG.5.1、HK.3、JN.1)の既感染もしくはブレークスルー感染血清を用いた中和アッセイでは、LB.1とKP.2.3に対する50%中和力価(NT50)は、JN.1に対するものよりも有意に(LB.1:2.2~3.3倍、KP.2.3:2.0~2.9倍)低かった。さらに、KP.2に対するものよりも(LB.1:1.6~1.9倍、KP.2.3:1.4~1.7倍)低かった。・KP.3はすべての回復期血清サンプルに対してJN.1よりも高い中和抵抗性(1.6~2.2倍)を示したが、KP.3とKP.2の間に有意差は認められなかった。・コロナ未感染のXBB.1.5対応ワクチン血清サンプルは、JN.1系統(JN.1、KP.2、KP.3、LB.1、KP.2.3)に対するNT50は非常に低かった。・XBB自然感染後のXBB.1.5対応ワクチン血清サンプルにおいて、KP.3、LB.1、KP.2.3に対するNT50は、JN.1に対するものよりも有意に(2.1~2.8倍)低く、さらにKP.2に対するものよりも(1.4~2.0倍)低かった。 本研究の結果、JN.1から派生したKP.2、KP.3、LB.1、KP.2.3は、JN.1と比較して免疫逃避能と実効再生産数が増加し、その中でも、LB.1とKP.2.3は、KP.2やKP.3よりも高い感染性とより強力な免疫逃避能を保持することが明らかとなった。G2P-Japanについて 佐藤氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan」では、所属機関を超えて研究者が共同で研究を行っている。2021年より、新たな懸念すべき変異株出現の超早期にウイルス学的性状について検証し、その成果は主要な医科学誌に断続的に掲載され、世界的に注目されている。佐藤氏は、次のパンデミックに備えるためにも、「G2P-Japan」としての研究活動を継続し、若手研究者の育成や啓蒙することの重要性を訴えた。ウイルス研究に関して、従来のin vivoやin vitroでの解析に加え、疫学や全世界的な流行動態の推定といったマクロの視点から、迅速に変異の影響を理解するためのタンパク質構造解析といったミクロの視点まで、多角的かつ統合的に理解することが必要であるとし、佐藤氏が創設した「システムウイルス学」という新たな研究分野によって解決していきたいと語った。第2回新型コロナウイルス研究集会を開催 新型コロナに関する最新の知見を共有するため、佐藤氏が大会長を務める「第2回新型コロナウイルス研究集会」が8月2~4日に東京・品川にて開催される5)。2023年に開催された第1回はウイルス学に関する基礎研究にフォーカスしたものだったが、第2回研究集会では、疫学、臨床医学、免疫学、ウイルス学と領域を拡大し、各分野で活躍する研究者が登壇する。 開催概要は以下のとおり。第2回新型コロナウイルス研究集会開催日時:2024年8月2日(金)〜4日(日)会場:東京コンファレンスセンター品川[現地開催]2024年8月2日(金)〜4日(日)[オンデマンド]2024年9月2日(月)正午〜9月30日(月)正午 ※予定[参加登録締切]2024年9月30日(月)大会長:佐藤 佳参加登録など詳細は公式ウェブサイトまで。

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乳がん領域におけるがん遺伝子パネル検査後の治療到達割合(C-CATデータ)/日本乳癌学会

 2019年のがん遺伝子パネル検査の保険適用から5年が経過したが、治療到達割合の低さ、二次的所見の提供のあり方、人材育成や体制整備、高額な検査費用などの課題が指摘されている。京都府立医科大学の森田 翠氏らは、とくに臨床医として現場で感じる課題として「治療到達割合の低さ」に着目。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録されたデータを用いて日本人乳がん患者における遺伝子変異の頻度、エビデンスレベルの高い実施可能な治療への到達割合などを解析し、結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、2019年6月~2023年12月のC-CATデータ“Breast”3,900例から葉状腫瘍、血管肉腫などを除いた“Breast Cancer”3,776例を対象とした。臨床医が求める薬剤到達割合の基準を、・既存のコンパニオン診断では治療に結び付いていないこと・がん遺伝子パネル検査で初めて治療に結び付くもの・日本のPMDA承認薬であることと定義し、さらに基準1(乳がんを対象とした第III相試験が施行されているという従来の基準)と基準2(臓器横断的承認で、第I/II相試験も可とする新しい基準)を設定した。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値56歳、40~50代が54.8%を占め、すでにコンパニオン診断によりgBRCA1陽性と診断されていた症例が2.5%、gBRCA2陽性が4.3%であった。パネル検査はFoundationOne CDxが72.3%、FoundationOne Liquid CDxが16.7%、OncoGuide NCCオンコパネルシステムが10.6%で使用されていた。・検出された遺伝子変異はTP53が58.1%と最も多く、PIK3CAが36.0%、MYCが18.7%、CCNDIが15.0%、GATA3が13.8%と続いた。・検出頻度上位100の遺伝子変異について2024年の最新状況に基づき薬剤到達割合をシミュレーションした結果、PIK3CAの変異(検出頻度:36.0%)は基準1、2ともに19.0%(推奨される薬剤:カピバセルチブ+フルベストラント)、ERBB2の増幅(13.7%)はHER2陰性乳がんにおいて基準1、2ともに3.4%(抗HER2薬)、PTENの変異と欠失(13.4%)は基準1、2ともに5.0%(カピバセルチブ+フルベストラント)、AKT1の変異(7.9%)は基準1、2ともに3.4%(カピバセルチブ+フルベストラント)、NTRK1の遺伝子融合(2.6%)は基準2のみで0.05%(エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ)、BRAFV600E(1.4%)は基準2のみで0.21%(ダブラフェニブ+トラメチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ)であった。・全体として、基準1を満たしたのは28.4%で、うち3.4%はHER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅に対する抗HER2薬の適応、25.0%はAKT経路(PIK3CA/AKT1/PTEN)の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応であった。基準2を満たしたのは37.9%で、基準1からの増加分のうち9.2%はTMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブの適応、0.3%はBRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応であった。・PMDA非承認薬については、企業あるいは医師主導の治験に結び付いた症例は、C-CATデータから検出しうる範囲内で、全体で25例(0.7%)であった。・AKT経路の遺伝子変異を有する症例は全体で944例(25%)、ER陽性HER2陰性乳がんでは最大で50.9%を占めた。3遺伝子の包含関係については、重複する症例もあるが、PIK3CAが719例、AKT1が129例、PTENが190例であった。 森田氏は、HER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅について、術前化学療法後にHER2が陽転化した割合が同じく3.4%であった過去の報告1)に触れ、偽陰性であった可能性を指摘。またAKT経路の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応については、FoundationOneをCDxで使用する際に現状では臨床現場で課題があること、働き方改革の観点からは、CGP検査の前倒しよりも3因子に限った小パネル検査を開発することを提案。TMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブ、BRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応については臓器横断的承認であり、承認の根拠となった臨床試験に乳がん症例が含まれておらず、臨床医が自信を持ってこれらの薬剤を使えるかというと疑問が残ると考察した。したがって、現状ではCGP検査による薬剤到達割合は、臨床医の実感どおり非常に低いことが本研究により示された。乳がん診療におけるがんゲノム医療の現状は、現場の負担と患者の期待が大きいことに比して薬剤への到達割合に課題が山積しているとし、今後は臨床医を対象に定期的に広くアンケート調査を実施することなどで、現場の状況を反映していくことも必要ではないかとして講演を締めくくった。

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局所進行食道がんに対する術前補助療法として3剤併用化学療法が標準治療となるか?(解説:上村直実氏)

 日本の臨床現場における食道扁平上皮がんは、発見される時期により予後が大きく異なる疾患である。内視鏡検査によりStage0やIの早期段階で発見されると、外科的手術や化学放射線治療ではなく侵襲の少ない内視鏡的切除により完治する可能性が高い疾患であるが、一方、StageII以上の進行がんになると、化学療法や放射線療法および外科的手術を含む集学的治療を行っても予後が悪い疾患となる。したがって、進行がんの予後に関しては外科的手術に先立つ術前治療の有効性が重要となっている。 今回、術前治療としてわが国の標準治療である2剤併用化学療法(A群、CF療法:フルオロウラシル+シスプラチン)と欧米における標準治療である2剤併用化学療法+放射線療法(B群、CF+RT療法)およびC群として3剤併用化学療法(DCF療法:フルオロウラシル+シスプラチン+ドセタキセル)を加えた3群の有用性と安全性を比較検証するオープンラベルの多施設共同臨床試験(RCT)が施行された結果、C群の3年生存率がA群やB群と比較して統計学的に有意に延長することが2024年6月のLancet誌に掲載された。なお、3年後に生存している患者の割合は、A群が62.6%、B群が68.3%に対して、C群が72.1%であった。 本研究の対象患者はStageIII、すなわち、がんが食道外に進展してリンパ節に転移を認める場合や周囲臓器に進展しているが転移を認めない症例であり、最近の疫学調査によると現在の5年生存率35%程度の改善が期待できる。この結果、進行食道扁平上皮がんに対する術前補助治療に関するガイドラインにおいて、標準治療とされている2剤併用化学療法+放射線治療に代わって3剤併用療法が新たな標準治療となるものと思われる。 今回の臨床研究は国立がん研究センター(NCC)のJCOGが主導して行われたものであるが、世界の食道がん診療ガイドラインに影響を与える大きなインパクトを有するものであり、がん治療に関して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)療法や臓器温存療法の分野においても、わが国からのさらなるエビデンスの創出が期待できる。 さいごに、本研究をはじめとしてがんに対する臨床試験の対象症例は20歳から75歳の患者に限定されているが、高齢化が著しい実臨床からみると75歳以上の高齢者を含めた検討が必要と思われる。

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オミクロン対応2価コロナワクチン、半年後の予防効果は?/感染症学会・化学療法学会

 第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会が、6月27~29日に神戸国際会議場および神戸国際展示場にて開催された。本学会では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新知見も多数報告された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2021年7月から国内での新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価することを目的としてVERSUS研究1)を開始しており、これまで断続的にその成果を報告している。今回は、2023年4月1日~11月30日の期間(XBB系統/EG.5.1流行期)における、オミクロン株BA.1およびBA.4-5対応2価ワクチンの有効性についての結果を発表した。本結果によると、2価ワクチンの入院予防効果について、接種から半年後でも高い有効性が持続することなどが明らかとなった。 本研究では、コロナワクチンの発症予防の有効性および入院予防の有効性を評価している。発症予防については、全国9都県15施設でCOVID-19を疑う症状で医療機関を受診した16歳以上を対象とした。入院予防については、全国10都府県12施設で呼吸器感染症を疑う症状が2つ以上ある、または新たに出現した肺炎像を認め、医療機関に入院した60歳以上を対象に調査を行った。検査陰性デザイン(test-negative design:TND)を用いた症例対照研究で、ワクチン未接種と比較した2価ワクチン接種の有効性(回数によらない)を推定している。ワクチン接種歴不明、ワクチンの種類不明の場合(起源株対応の従来型のワクチンか2価ワクチンか不明の場合)は解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。【発症予防の有効性】・全体で7,494例が解析対象となった。年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:28~63)、男性45.2%、基礎疾患のある人27.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし13.1%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種41.6%、オミクロン株BA.1/BA.4-5対応2価ワクチン接種45.2%であった。・16~64歳での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では22.9%(95%信頼区間[CI]:-4.8~43.2)、91~180日では32.3%(7.7~50.4)、181日以上では2.9%(-21.5~22.5)となり、接種から半年間の有効性の低下が顕著であった。・65歳以上での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では40.8%(95%CI:6.1~62.7)、91~180日では52.2%(21.7~70.8)、181日以上では40.8%(3.8~63.5)であった。【入院予防の有効性】・60歳以上の1,170例が解析対象となった。年齢中央値83歳(IQR:75~89)、男性57.1%、高齢者施設入居者29.7%、基礎疾患のある人76.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし16.3%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種22.9%、オミクロン株対応2価ワクチン接種60.8%であった。・2価ワクチンの入院予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では59.6%(95%CI:31.2~76.2)、91~180日では69.4%(45.6~82.8)、181日以上では55.3%(19.1~75.3)であった。入院時呼吸不全あり、CURB-65で判断した重症度で入院時の重症度が中等症以上、入院時肺炎ありといったより重症の場合でも、ワクチンの有効性は全入院予防の有効性と比較して同等かそれ以上であった。 本研究により、オミクロン対応2価コロナワクチンの有効性について、発症予防はとくに若年者において低い値であったが、サンプルサイズは限られるものの、入院予防は接種から半年後も高い有効性が保たれていることが認められた。前田氏は、「ただし、より長期的に評価すると、接種から時間が経つにつれ効果は下がってくる可能性があるため、追加接種の必要性を考えるためにも継続して評価が必要である」と見解を示し、「新型コロナワクチン政策や流行株は各国で異なるため、国内におけるワクチンの有効性を評価することは、国内のワクチン政策を考慮する際にとくに重要であり、現在使用されているXBB.1.5対応ワクチンなどについても、今後も継続して評価をしていく」と語った。

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運動が化学療法による末梢神経障害の回避に有効か

 化学療法を受ける患者の多くが発症する化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の回避に運動が有効である可能性が、新たな研究で示唆された。この研究では、運動をしなかった患者でCIPNを発症した者は、運動をした患者の約2倍に上ることが示されたという。バーゼル大学(スイス)のFiona Streckmann氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に7月1日掲載された。 研究グループによると、化学療法を受ける患者の70〜90%は、痛みやバランス感覚の問題、しびれ、熱感、ピリピリ感やチクチク感などのCIPNの症状を訴え、半数の患者は、がんの治療後もこのような症状が持続するという。 今回の研究では、オキサリプラチン、またはビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬による化学療法を受ける158人のがん患者(平均年齢49.1歳、男性58.9%)を対象にランダム化比較試験を実施し、感覚運動トレーニング(sensorimotor training;SMT)と全身振動刺激(whole-body vibration;WBV)トレーニングがCIPNの発症や症状の低減に有効であるかどうかが検討された。対象者は、SMTを受ける群(55人)、WBVトレーニングを受ける群(53人)、および、運動は行わずに通常のケアのみを受ける群(対照群、50人)にランダムに割り付けられた。介入群(SMT群とWBV群)は、1回当たり15〜30分間のトレーニングセッションを週に2回、化学療法が終了するまで受けた。 ITT解析の結果、CIPNの発症率は、対照群で70.6%であったのに対し、SMT群では30.0%、WBVトレーニング群では41.2%であり、対照群に比べて介入群では有意に低いことが明らかになった。この結果は、介入に75%を超えて参加した者のみを対象にしたPPS解析ではさらに顕著であった(対照群73.3%、SMT群28.6%、WBVトレーニング群37.5%)。また、2種類の介入のうち、より効果が高かったのはSMTで、SMT群では対照群よりも、開眼/閉眼で両足立ちでのバランスコントロール、片足立ち、振動感覚、触覚、下肢の筋力の改善、および痛みと熱感の軽減の程度が大きく、化学療法の投与量削減を受けた患者が少なく、死亡率も低かった。 Streckmann氏は、「CIPNは、患者に必要な化学療法サイクルの計画通りの実施不可や、化学療法に含まれる神経毒性薬剤の投与量の削減、治療の中止など、臨床治療に直接的な影響を与える」と話す。同氏によると、現時点でCIPNの予防や回復に有効な薬剤は見つかっていない。それにもかかわらず、米国の医師は毎年、CIPNの治療に患者1人当たり推定1万7,000ドル(1ドル160円換算で272万円)を費やしているという。同氏は、「これに対し、運動は効果的である上に安価だ」と述べる。 Streckmann氏らは、支持療法としてがん治療に運動を取り入れるためのガイドラインを病院向けに作成中であるとしている。また、ドイツとスイスの6つの小児病院で、化学療法を受けている小児の末梢神経障害に対する運動の予防効果を確かめる研究が進行中であるという。

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名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)【大学医局紹介~がん診療編】

安藤 雄一 氏(教授)満間 綾子 氏(病院講師)近藤 千晶 氏(病院助教)宮井 雄基 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴化学療法部では、腫瘍内科の診療とともに、外来化学療法室の運用、がんゲノム医療外来、診療科横断的なカンファレンスやコンサルテーション対応、化学療法レジメンの整備、緩和ケアチームの活動、がん診療連携拠点病院の事業、そしてがん薬物療法の実践的な教育などに取り組んでいます。いずれも日頃からの各診療科や部門との連携によって、初めて実践できるものです。専用病床では、新規抗がん薬の治験や稀ながんや重篤な合併症をもつ患者さんの診療を行っています。名大病院は「臨床研究中核病院」、「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定されており、それらの関連事業においても化学療法部は重要な役割を果たしています。昨年度から開始されている文部科学省「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン(がんプロ)」では、がん医療を担う大学院生や専門医療人材の養成に取り組んでいます。毎朝行われる多職種カンファレンス同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力外来化学療法室では、小児から高齢者まで外来で抗がん薬の点滴投与を受けるすべての患者さんに対応しています。殺細胞性抗がん薬はもちろん、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など臓器横断的に使用されるレジメンが増える中で、多彩な副作用をうまくコントロールすることが求められています。担当医だけでなく、今までがん医療と関連が少なかった分野の専門医や多職種との連携、地域との連携など院内外でのチーム医療が重要です。腫瘍内科学のオンザジョブトレーニングを通して科学的で適切ながん薬物療法を実践できる環境です。外来化学療法室での処置医局の雰囲気、魅力医局では大学院生から医員、教員まで、多様なバックグラウンドをお互いに尊重しながらそれぞれの特色を活かした診療や学術活動を行っています。今後のキャリアパスを考える上で、ロールモデルを見つけることもできますし、迷いが生じた時にはさまざまな経験に基づいたアドバイスを得ることが可能です。これまでの経歴大学卒業後、市中病院で初期研修を行いました。研修終了後の進路として腫瘍に加え、アレルギー、感染など多様な分野が含まれるという理由で呼吸器内科を選択しました。各分野の疾患の診療を通じて難治である進行肺がんの化学療法、中でも分子標的薬に興味を持ち、がん薬物療法専門医を取得するとともに、大学院で学びました。このような経歴もあって、現在はがん種横断的にがんゲノム医療に関わり、化学療法部での仕事・診療とともに名大病院のがん遺伝子パネル検査とエキスパートパネルの運営を行っています。今後のキャリアプランがんの性質を知り、がん患者さんの化学薬物療法の選択肢を広げるためのがんゲノム医療は、2019年の保険診療開始から常に状況が変化しています。がんゲノム医療を多くの患者さんに届け、また名大病院内や地域のがんゲノム医療の普及のための活動、研究を続けたいと考えています。これまでの経歴初期研修を終えたのち、大学院入学とともに入局しました。基礎と臨床の両方を学ぶため、横断的ながん薬物療法の臨床経験を積みながらがん薬物療法専門医を取得する一方で、腫瘍病理学でがんの間質に多く存在するがん関連線維芽細胞に注目し、これらが免疫治療の効果にどう影響するかについての基礎研究にも励んでいます。現在学んでいること治療法の最新動向の把握や有害事象への対応法だけでなく、腫瘍学以外の分野も含めて幅広い知識を日頃から学んでいます。最近は、定量的解析手法の習得に注力しています。具体的には、大規模オミクスデータを解析する手法や高度な統計手法を学び、実際に臨床データや実験データの高精度な解析に応用しています。今後のキャリアプラン海外留学など異なる文化圏での仕事や、他分野の研究者と接することで、視野を広げたいと考えています。この過程で目標が変わる可能性もありますが、現時点では、まだ治療法が少ない、あるいは治療薬開発への機運が乏しい、稀な悪性腫瘍の治療実績の改善に貢献できる医師・医学研究者となることを目指しています。名古屋大学医学部 化学療法学(附属病院化学療法部)住所〒466-8560 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65問い合わせ先chemo-sec@med.nagoya-u.ac.jp医局ホームページ名古屋大学医学部附属病院化学療法部専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本人類遺伝学会日本内科学会 など研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な臨床腫瘍学のトレーニングが可能(2)がん薬物療法学、緩和ケア、ゲノム医療、トランスレーショナルリサーチなど多様な領域の研修・研究が可能名古屋大学医学部附属病院化学療法部【動画】

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食道がんの術前化学療法前のZn濃度、早期再発に影響

 国立がん研究センター中央病院の久保 祐人氏らは、術前化学療法を受ける食道がん患者において、術前の血清亜鉛(Zn)低値が食道がんの早期再発に悪影響を及ぼすことを明らかにし、術前にZnが欠乏している食道がん患者にはZn補給を行う必要があることを示唆した。Annals of Gastroenterological Surgery誌2024年7月号掲載の報告。 本研究では、2017年8月~2021年2月に術前化学療法後に完全切除(R0切除)が施行された食道がん患者185例を対象に、術前の血清Zn値と臨床転帰の関係を遡及調査した。 主な結果は以下のとおり・対象患者は術前の血清Zn濃度の平均に基づき、低Zn群(64μg/dL未満)と高Zn群(64μg/dL以上)に分けられた。・低Zn群では全生存期間(OS)が有意に短く、低Zn群と高Zn群の2年OS率は76.2% vs.83.3%(p=0.044)だった。・ノンレスポンダー(Grade1a以下)の低Znは、無再発生存期間(RFS)の短縮と有意に関連し、低Zn群と高Zn群の術後2年RFS率は39.6% vs.64.1%(p=0.032)であった。・多変量解析の結果、術前栄養指標のうちBMIと血清Zn濃度の低さが、ノンレスポンダーのRFS悪化の独立した危険因子であることが明らかになった。・レスポンダーと比較し、ノンレスポンダーには男性とパフォーマンスステータス1以上が有意に多く、レスポンダーでは血清Zn濃度に差はなかった。 研究者らは「術前血清Zn濃度は食道がん手術後の早期再発の予測マーカーとして役立つ可能性がある」としている。

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