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オンコマインDx、EGFRエクソン20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/サーモフィッシャ

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは2024年9月10日、次世代シーケンシングコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(オンコマインDx)」に関して、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺がんに対するアミバンタマブと化学療法の併用療法」を対象としたコンパニオン診断システムとして、一部変更承認を取得したことを発表した。 この承認によりオンコマインDxは、非小細胞肺がんに対して8種類、甲状腺がんに対しては2ドライバー遺伝子、甲状腺髄様がんに対しては1ドライバー遺伝子の変異等を網羅するコンパニオン診断となった。非小細胞肺がん ●BRAF遺伝子V600E変異:ダブラフェニブ/トラメチニブ ●EGFR遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く):ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ ●EGFR遺伝子エクソン20挿入変異:アミバンタマブ ●HER2遺伝子変異:トラスツズマブ デルクステカン ●ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブ ●ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ、エヌトレクチニブ ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●MET遺伝子エクソン14スキッピング変異:カプマチニブ、テポチニブ甲状腺がん ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●BRAF遺伝子V600E変異:エンコラフェニブ/ビニメチニブ甲状腺髄様がん ●RET遺伝子変異:セルペルカチニブ

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局所進行直腸がん、TNT+非手術的管理後の遠隔転移とctDNAによる予後予測(NO-CUT)/ESMO2024

 局所進行直腸がんでは、術前に化学療法や放射線療法を集中的に行って腫瘍縮小を最大限に図り、局所制御と遠隔転移のリスクを低減するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、世界的な標準治療となりつつある。TNT後に臨床学的完全奏効(cCR)が得られた患者では非手術的管理も検討され、その後の局所転移は19~34%程度と報告されている。非手術的管理後の遠隔転移率と、ctDNA解析によるTNT後の奏効率のバイオマーカー探索を目的とした多施設単群第II相NO-CUT試験が行われ、イタリア・Niguarda Cancer CenterのAlessio Amatu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)のPresidential Symposiumで初回の結果報告をした。・対象:pMMR/MSSの局所進行直腸がん、PS 0~1・方法:CAPOX療法4サイクルに続いて5週間の長時間化学放射線療法のTNTを行い、cCRが得られれば非手術的管理、得られなければ手術を行ったうえでフォローアップ。評価項目:[主要評価項目]30ヵ月時点で生存し、遠隔転移のない患者の割合(DRFS30)[副次評価項目]cCR率、非手術的管理群の臓器温存率 主な結果は以下のとおり。・2018~23年に180例がTNTを受け、164例(91%)がプロトコル通りに治療を完了し、46例(25.5%)がcCRを得て非手術的管理群に割り付けられた。追跡期間中央値は27(SD 3~27)ヵ月だった。・DRFS30は非手術的管理群97%、手術群74%、全体77%であった。・非手術的管理群の臓器温存率は85%(39/46例)だった。・局所再発は、非手術的管理群では15%、手術群では9%で発生した。2024年4月1日時点で、12例の死亡(6.6%)が報告された。内訳は有害事象1例、腫瘍進行9例、その他2例だった。・TNT後のリキッドバイオプシー解析では、ctDNA陰性例ではcCR率が高く、陽性例では手術の有無にかかわらず遠隔転移のリスクが高かった。手術後のctDNAの状態と無増悪生存期間(PFS)にも相関が見られた。その他のマルチオミクス解析は進行中となっている。 Amatu氏は「NO-CUT試験の主要評価項目は達成され、4人に1人がTNT療法によって非手術的管理のベネフィットを得られた。さらに非手術的管理群のDRFS30は97%、臓器温存率は85%と高い結果だった。今後のマルチオミクス解析によって非手術的管理の患者選択はさらに精緻にできるようになるだろう」とした。

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未治療TN乳がんへのカピバセルチブ、化学療法への上乗せ効果示さず(CAPItello-290)/ESMO2024

 切除不能な局所進行または転移を有する未治療のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者を対象に、1次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性および安全性を、プラセボ+パクリタキセルと比較した第III相CAPItello-290試験の結果、全生存期間(OS)は有意に改善しなかったものの、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められたことを、米国・UT Southwestern Medical CenterのHeather L. McArthur氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験・対象:切除不能な局所進行または転移を有し、全身療法を受けていないTN乳がん患者。6ヵ月以内(タキサン系の場合は12ヵ月以内)の術前・術後化学療法歴がある患者は除外された。・試験群(カピバセルチブ群):カピバセルチブ 400mgを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 404例・対照群(プラセボ群):プラセボを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 408例・評価項目:[主要評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者集団におけるOS[主要副次評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する患者集団におけるPFS、安全性・層別化因子:内臓転移の有無、術前または術後化学療法歴の有無、地域・データカットオフ:2024年3月18日 主な結果は以下のとおり。・2019年7月~2022年2月に812例がランダム化された。・年齢中央値はカピバセルチブ群が54.0(範囲:26~85)歳、プラセボ群が53.0(範囲:25~87)歳、閉経後が65.1%および64.2%、内臓転移ありが70.3%および69.6%、de novoが39.9%および41.2%、術前または術後化学療法歴があったのは両群とも50.0%であった。・PIK3CA/AKT1/PTEN変異を認めたのは、カピバセルチブ群30.7%(124例)、プラセボ群30.6%(125例)であった。・全患者集団におけるOS中央値は、カピバセルチブ群17.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.6~20.3)、プラセボ群18.0ヵ月(95%CI:15.3~20.3)であった(ハザード比[HR]:0.92[95%CI:0.78~1.08]、p=0.3239)。・PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるOSは、カピバセルチブ群20.4ヵ月(95%CI:15.7~23.4)、プラセボ群20.4ヵ月(95%CI:14.6~26.9)であった(HR:1.05[95%CI:0.77~1.43]、p=0.7602)。・全患者集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群5.6ヵ月(95%CI:5.4~7.1)、プラセボ群5.1ヵ月(95%CI:3.9~5.4)であった(HR:0.72[95%CI:0.61~0.84])。・PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群7.5ヵ月(95%CI:5.6~9.3)、プラセボ群5.6ヵ月(95%CI:5.3~5.7)であった(HR:0.70[95%CI:0.52~0.95])。・全患者集団における奏効率(ORR)は、カピバセルチブ群50.1%、プラセボ群37.6%であった(オッズ比[OR]:1.68[95%CI:1.27~2.23])。完全奏効(CR)は2.2%および1.2%、部分奏効(PR)は47.9%および36.3%であった。・PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるORRは、カピバセルチブ群54.1%、プラセボ群41.9%であった(OR:1.63[95%CI:0.99~2.72])。CRは2.5%および1.6%、PRは51.6%および40.3%であった。・全患者集団における有害事象は、カピバセルチブ群98.0%(うちGrade3以上が58.0%)、プラセボ群95.1%(うちGrade3以上が38.8%)に発現した。新たな安全シグナルは認められなかった。

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オシメルチニブ耐性NSCLCへのamivantamab+化学療法、第2回OS中間解析(MARIPOSA-2)/ESMO2024

 オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、amivantamab+化学療法±lazertinibの併用療法は、化学療法単独と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」で報告されている。また、同時に実施された全生存期間(OS)の第1回中間解析において、amivantamab+化学療法の併用療法はOSも良好な傾向にあったことも報告されている1)。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、英国・Royal Marsden HospitalのSanjay Popat氏がOSの第2回中間解析の結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者・試験群1(ALC群):amivantamab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)263例・試験群2(AC群):amivantamab+化学療法(同上)131例・対照群(C群):化学療法(同上)263例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価に基づくPFS(ALC群vs.C群、AC群vs.C群)[副次評価項目]全生存期間(OS)、症状進行までの期間(TTSP)、治療開始から後治療までの期間(TTST)、PFS2(後治療後のPFS)、安全性など[探索的評価項目]治療開始から中止までの期間(TTD)など・解析計画:OSの第2回中間解析は、75%のイベント発現時に実施することが事前に規定され、本解析の有意水準は両側α=0.0142であった。 今回は、AC群とC群の比較結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.1ヵ月時点におけるOS中央値は、AC群17.7ヵ月、C群15.3ヵ月であり、AC群が改善する傾向にあったが、今回の解析では統計学的有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.99、p=0.039)。18ヵ月OS率は、それぞれ50%、40%であった。・TTSP中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.8ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.73、95%CI:0.55~0.96、p=0.026[層別log-rank検定])。・TTD中央値はAC群10.4ヵ月、C群4.5ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.42、95%CI:0.33~0.53、p<0.0001[層別log-rank検定])。18ヵ月時点の試験治療継続率は、それぞれ22%、4%であった。・TTST中央値は、AC群12.2ヵ月、C群6.6ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.51、95%CI:0.39~0.65、p<0.0001[層別log-rank検定])。・PFS2中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.6ヵ月であり、AC群が良好であった(HR:0.64、95%CI:0.48~0.85、p=0.002[層別log-rank検定])。18ヵ月PFS2率は、それぞれ39%、27%であった。 Popat氏は、本結果について「第2回OS中間解析においても、amivantamab+化学療法化学療法単独と比べてOSが良好な傾向がみられた。病勢進行後の評価項目についても、amivantamab+化学療法化学療法単独と比べて、持続的な改善が認められた」とまとめた。なお、本試験は継続中であり、OSの最終解析が予定されている。

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大阪医科薬科大学病院 化学療法センター【大学医局紹介~がん診療編】

山口 敏史 氏(化学療法センター センター長)由上 博喜 氏(化学療法センター 助教)松尾 奈々子 氏(化学療法センター 助教)亀石 眞 氏(化学療法センター レジデント)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴化学療法センターではあらゆるがん種の外来化学療法を実施・管理をしています。スタッフは化学療法チームと緩和ケアチームで構成され、常に連携してがん診療を行っています。化学療法チームは主に消化器がんを診療しており、標準治療のみならず新規薬剤による国際共同治験や臨床試験、ゲノム医療を実施しています。また、若手の育成の一環で国立がん研究センター中央・東病院、愛知県立がんセンターにおける研修が可能であり、これまで多くの先生が国内のトップオンコロジストや著名な緩和ケア医の薫陶を受けて帰局され活躍しています。医師の育成方針化学療法センターは消化器内科医局との連携が強く、腫瘍内科のみでは習得が難しい消化器疾患の管理や内視鏡など、消化器腫瘍を治療していくうえで必要不可欠な知識や技術を取得することが可能です。腫瘍内科と消化器内科の両輪で活躍することが可能であり、将来のライフプランに合わせて成長することができます。さらにセンター業務は化学療法や緩和ケアに専念することができる環境です。当センターは「がん患者のために」をスローガンに化学療法から緩和ケアに至るまで全人的ながん医療を提供できる医師の育成を目指しています。力を入れている治療/研究テーマ私たちの施設は、JCOGなどの臨床研究グループに所属し、消化器がんを対象とした臨床試験や治験に積極的に参加しており、実地診療や試験治療の中から、患者さんに最適な治療法を提供できるよう努めています。また、がん治療のエビデンス創出のため、企業に臨床試験を提案し、より良い治療を患者さんに届けることを目指しています。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力私たちは、消化器内科の一部門としてがん治療を担当しています。腹腔内の原発不明がんなども診療しており、がん診療を幅広く行っています。また、消化器内科に所属しているため、医局内の連携がスムーズで、内視鏡治療が必要な際も迅速に対応できる体制が整っています。消化器内科という比較的大所帯の医局に所属していることもあり、多くの同僚と連携しながら診療に取り組める点が大きな魅力です。医学生/初期研修医へのメッセージがん診療は、治療開発が著しく進展している分野であり、多くの患者さんの生活を支えるやりがいがある仕事です。私たちの医局では、最先端の治療を学びつつ、実践的な経験を積むことができます。また、患者さんにとって最善の治療方針をチームで相談し決定する過程を通じて、多職種との協力を学ぶ機会も豊富です。がん治療に興味がある方、ぜひご連絡ください。国際学会にも参加、発表もこれまでの経歴初期研修中にがん治療に携わりたいと考えるようになり、幅広く消化器内科の経験が積める第II内科に入局しました。市中病院も含め6年間研鑽を積み、多くのがん患者さんと向き合う中で緩和ケアを学びたいという思いを持ち、現在は院内の緩和ケアチームで修練を積んでいます。同医局を選んだ理由化学療法センターでは、臨床と並行して日常的にクリニカル・クエスチョンを研究に結びつけ、医療の発展に貢献しています。そうした環境と密接に連携している当院の緩和ケアチームで学びたいと思いました。また、当医局では、専門分野を選んだ後も内視鏡を含む多様な働き方が可能であり、女性医師も多く、ロールモデルを見つけやすい点も魅力です。今後のキャリアプラン消化器関連の専門医取得後、現在は大学院生として学位取得を目指し先生方のご指導のもと臨床研究・論文作成にも取り組んでいます。各分野の専門家が集う緩和ケアチームでさらなる力を養い、今後に繋げていきたいと考えています。同医局を選んだ理由私は初期研修修了後、消化器内科に興味を持ちました。当医局は消化管・肝臓・胆膵・化学療法それぞれの専門グループで構成されており、互いが密に連携し、幅広い疾患やその病態に対応できる環境の良さから入局を決意しました。そして消化器内科医としてさまざまな症例を経験し、専門医取得後はとくにがん治療への関心が深まりました。現在学んでいること現在は化学療法グループに所属し、主に消化器がん患者様の病棟管理や、治験患者様の対応、臨床研究などを学んでいます。当グループは、がん薬物療法専門医を持つ多くの指導医が常在しています。目の前の患者様のことでも、クリニカルクエスチョンに関してでも、研究論文の進め方でも、何事も気軽に相談できます。時には疾患別のレクチャーを受けて薬物療法の理解を深める機会にも恵まれています。今後のキャリアプラン今後は論文執筆を進め学位取得を目指すとともに、がんセンター病院への留学を考えており、薬物治療の最前線に携わり将来当医局へ還元にしていくつもりです。大阪医科薬科大学病院 化学療法センター住所〒569-8686 大阪府高槻市大学町2-7問い合わせ先toshifumi.yamaguchi@ompu.ac.jp医局ホームページ化学療法センター大阪医科薬科大学第2内科専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本内科学会 認定医、総合内科専門医日本癌治療認定医機構 癌治療認定医日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本消化器病学会 消化器病専門医日本内視鏡学会 内視鏡専門医研修プログラムの特徴(1)がん薬物療法専門医の取得とサブスぺシャリティの獲得消化器内科医局へ属することで、内科専門医研修を行うことができ、消化器内科医としての基本的手技や専門医の取得が可能です。がんセンターへの留学や他診療科と連携することで、がん薬物療法専門医や緩和ケア専門医の取得を目指します。(2)学位取得各スタッフが臨床研究指導から学会発表、国内・国際学会、論文作成に至るまでサポートし、学位取得が可能です。(3)国内留学国内の主要なハイボリュームセンターへの研修が可能です。これまで多くのスタッフが国立がんセンターなどで研鑽を積んでいます。

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NSCLCへの周術期デュルバルマブ、OS・DFSの改善は?(AEGEAN)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助化学療法に周術期デュルバルマブを上乗せすることで、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)を改善したことが、国際共同第III相試験「AEGEAN試験」のEFSの第1回中間解析およびpCRの最終解析において報告されている1)。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において、AEGEAN試験の事前に規定されたEFSの第2回中間解析、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)の第1回中間解析の結果が報告された。EFSの第2回中間解析においても、引き続きEFSの改善傾向がみられ、DFSの臨床的に意義のある改善が認められた。また、OSについても改善傾向がみられた。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏が、本研究結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIIA〜IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル) 400例・対照群(プラセボ群):プラセボ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル) 402例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくEFS、pCR[主要な副次評価項目]病理学的奏効、BICRに基づくDFS、OS 主な結果は以下のとおり。・EFSの第2回中間解析時点において、すべての患者が試験治療を終了していた。・術後補助療法を開始した患者のうち、デュルバルマブ群の68.6%(166/242例)、プラセボ群の63.7%(151/237例)が治療を完遂した。・EFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群30.0ヵ月であり、デュルバルマブ群で引き続き改善する傾向がみられた(層別ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88)。3年EFS率は、それぞれ60.1%、47.9%であった。・術前補助化学療法に用いたプラチナ製剤別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。シスプラチンを用いたサブグループにおけるEFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群45.0ヵ月であり(HR:0.85、95%CI:0.35~0.93)、カルボプラチンを用いたサブグループでは、それぞれ未到達、26.2ヵ月であった(同:0.75、0.57~0.97)。・術後補助療法の有無別にEFSを比較すると、術後補助療法を受けたサブグループでデュルバルマブ群のベネフィットが大きい傾向にあった。術後補助療法を受けたサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.62、95%CI:0.44~0.86)、術後補助療法を受けていないサブグループでは、それぞれ5.1ヵ月、5.2ヵ月であった(同:0.83、0.60~1.14)。・pCR達成の有無別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。pCR達成のサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.73、95%CI:0.22~3.28)、pCR未達成のサブグループでは、それぞれ41.2ヵ月、25.9ヵ月であった(同:0.81、0.64~1.03)。・DFS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.66、95%CI:0.47~0.92、層別log-rank検定のp=0.0137)。デュルバルマブ群でDFSが改善する傾向にあったが、本解析における有意水準は0.0123であり、統計学的有意差は認められなかった。3年DFS率は、それぞれ71.2%、61.4%であった。・OS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.89、95%CI:0.70~1.14)。デュルバルマブ群でOSが改善する傾向にあり、3年OS率は、それぞれ67.1%、63.9%であった。なお、本解析時点におけるOSの成熟度は35.3%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験期間全体ではデュルバルマブ群33.4%(134/401例)、プラセボ群33.4%(133/398例)に認められ、術後補助療法の期間中ではそれぞれ7.5%(20/266例)、3.5%(9/254例)に認められた。 Heymach氏は、本研究結果について「米国食品医薬品局(FDA)が切除可能なNSCLCの周術期の治療薬として承認したデュルバルマブが、切除可能なNSCLC患者の新たな治療選択肢の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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再発難治MCLに対する新薬ピルトブルチニブが発売/日本新薬

 2024年8月、日本新薬と日本イーライリリーは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)の発売を開始した。適応はほかのBTK阻害薬に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)。発売に合わせ、9月5日に行われた日本新薬主催のプレスセミナーでは、がん研究会有明病院の丸山 大氏が「マントル細胞リンパ腫に対する既存のBTK阻害剤後のアンメットニーズ」と題した講演を行った。 悪性リンパ腫は全がん種のうち男女とも罹患数で10位以内に入る、比較的患者数の多いがんだ。一方で、MCLは悪性リンパ腫全体の2~3%(日本の場合)であり、希少疾患に数えられる。発症年齢中央値は60代半ば、男女比は2対1程度と「高齢の男性」に多いがんと言える。リンパ腫の中には治癒するものもあるが、MCLは治癒が難しいとされ、初回治療は大量化学療法もしくは自家造血幹細胞移植だが治療抵抗性となる率が高く、多くの患者が次治療に移行する。「造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版」では、再発難治MCLにする治療としてイブルチニブ、ベンダムスチン、ボルテゾミブ単剤もしくはリツキシマブとの併用、GDP療法など複数の多剤併用療法が推奨されており、とくにピルトブルチニブと同じBTK阻害薬であるイブルチニブが広く使われている。しかし、イブルチニブにも治療抵抗性となった場合の次治療のレジメンはさらに多岐にわたり、確立されたものはない状態だ。 イブルチニブをはじめとする従来型のBTK阻害薬は、BTKタンパク質のC481位のアミノ酸に共有結合することで作用する「共有結合型阻害薬」に分類される。一方、今回発売されたピルトブルチニブはC481位を介さない「非共有結合型阻害薬」となる。この違いによって、C481変異によって引き起こされる共有結合型阻害薬への耐性を回避するため、従来型BTK阻害薬に耐性となった患者に対しても有効性が期待される。また、ピルトブルチニブは従来型BTK阻害薬に比べBTKに対する選択性が高く、非標的分子への影響を抑えることができるため、副作用のリスクを軽減できる可能性もある。 今回のピルトブルチニブの承認は、国際共同第I/II相BRUIN-18001試験に基づくもの。有効性解析対象となった日本人8例を含む65例を対象にした本試験では、従来型BTK阻害薬の前治療歴がある参加者に対し、ピルトブルチニブは56.9%の奏効率(CR+PR)を示した。奏効が得られた例では、比較的長期間の奏効持続が得られる傾向があった。一方、安全性解析対象集団となったMCL患者164例では89.0%(146例)に有害事象が認められ、発現頻度の高いものとしては疲労29.9%(49例)、下痢21.3%(35例)、呼吸困難16.5%(27例)などがあった。その他の重大な有害事象として感染症、出血および骨髄抑制が報告されている。 丸山氏は「治癒が困難な再発難治MCLに対し、新たな治療選択肢ができたことは喜ばしい」とまとめた。

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近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門【大学医局紹介~がん診療編】

林 秀敏 氏(主任教授)三谷 誠一郎 氏(医学部講師)渡邉 諭美 氏(医学部講師)村岡 未沙子 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴われわれの理念は「がん患者さんの健康と幸福のためにすべてを行う」です。腫瘍に関わる内科診療をすべて自科で行います。肺、消化器、乳房、頭頸部、希少がんなど年間900例の新規患者さんを診療します。病棟は50床、化学療法目的は20%程度でほかは腫瘍救急や緩和ケア、ゲノム診療など内科的力量が鍛えられる環境となります。臨床、橋渡し、基礎研究(Mayoなどへの海外留学も!)も積極的に行っており、卒後10年以内でJAMA oncologyなど一流誌への筆頭著者としての論文発表も可能です。さまざまながんに対する治験も100以上行われており、われわれも研究者として名を連ねるNEJMやLancetなどにある新しい治療を先んじて経験可能です。文字通り、「すべてを行う」ことが可能な環境です。医師の育成方針専攻医は当初病棟にて腫瘍に関わる内科的診療や手技(実は手技が多いのも特徴です)を学びます。習熟度に応じて外来を1年目の下半期から開始とし、化学療法の決定、マネジメントをがん薬物療法専門医(国内大学最大数です)のサポートの元で行います。がんセンターはもちろん、大阪や関東など多くの基幹市中病院より当院で育成された腫瘍内科医が欲しい、という要望があり、実際に300~1,000床クラスの病院へ腫瘍内科を輩出してきました。オンオフははっきりしており、業務時間内はハードな勤務となりますが、いち早く「腫瘍内科医として1人で生きていける」ように支援します。医局における取り組み当科は、肺がん・消化器がん・乳がん・頭頚部がん・原発不明がんを中心として、さまざまな固形腫瘍を1つの科で臓器横断的に診療する点においては、日本で唯一無二と言っても過言ではありません。外来から入院まで途切れることなく診療に携わり、緩和医療にも関わる機会が多くあることも、当科の特徴と考えています。また、カンファレンスだけでなく、普段から若手の先生が質問、発言しやすい雰囲気づくりを心掛けています。医学生/初期研修医へのメッセージ実際に、上記のような点を、当科の魅力として捉えてもらって、本学内外を問わず、2024年度は6名の新入局員(専攻医5名)が加わり、来年度も複数名の先生を、新たな専攻医として迎える予定です。がん診療、とくに薬物療法の領域は、まだまだ発展途上の領域です。今後、ますます多くの仲間を加えて、がん診療の発展に貢献できればと考えています。当医局を選んだ理由私は元々臨床医を志していたのですが、この医局から新しいエビデンスが次々に生み出される様子を目の当たりにし、目の前にいる患者さんだけでなくこれからの患者さんによりよい治療を届けていくための研究の重要性を痛感し、自分も臨床だけでなく研究の側面でもがん治療に貢献していきたいと思い入局しました。医局の雰囲気、魅力産休・育休を二度経験しましたが、時短や日当直免除等その時々の状況に合わせて働き方を決めさせてもらっています。またオンラインカンファレンスを導入し、朝、子供の見送りがある医師が道中でも参加できるようになっています。男性医師も育休を取り、小さいお子さんがいる場合には8~16時といったフレキシブルな働き方も可能で、比較的自由度の高い職場であると感じています。カンファレンスは忌憚のない意見を言い合う雰囲気が良く、切磋琢磨しあえる環境があります。ぜひわれわれの医局に新しい風を吹き込みにやってきてください。当医局を選んだ理由私が腫瘍内科を志望したのは、絶えず進歩している抗がん剤治療を幅広く知りたいという気持ちがきっかけです。抗がん剤治療について調べる中で、近畿大学腫瘍内科の存在を知りました。そこでの多種多様ながん種に対する取り組みや豊富な臨床経験を持つ医師の層の厚さを見学の際に実感しました。その経験が決め手となって、入局を決意しました。現在学んでいること現在は、専攻医の1年目として肺がんや消化器がんをはじめとしたさまざまながん種の治療法や副作用マネジメント、緩和医療などを学んでいます。病棟業務から外来対応まで、多くの患者さんと接する機会があり、1人ひとりの異なるニーズに応えるのはとても難しいですが、上級医のサポートに助けられながら日々診療を行っています。この経験はこれから出会う患者さんへより良い医療を提供するための大きな財産になると思い、日々努力を重ねております。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科に興味がある方には、ぜひ一度見学にお越しいただき当科での診療について、より具体的なイメージを持っていただければと思います。近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門住所〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2問い合わせ先seiichiro.mitani@med.kindai.ac.jp医局ホームページ近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本呼吸器学会日本呼吸器内視鏡学会日本消化器病学会研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な診療を、外来から入院まで主体的に担っており、緩和医療を実践する経験も豊富。(2)全国でも有数の治験実施施設であり、臨床研究が盛んであるだけでなく、橋渡し研究や基礎研究にも従事でき、学位取得も可能。希望者には海外留学を支援。(3)ライフワークバランスを考慮した勤務体制で、産休・育休取得も随時相談可能。

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切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。 本研究は、CheckMate 77T試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと4サイクル]→手術→ニボルマブ[4週ごと1年間])またはCheckMate 816試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと3サイクル]→手術)に参加した患者のIPDを用いて実施した。評価項目は根治手術後のEFSとした。解析には傾向スコアマッチングの手法を用い、平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の重み付け、治療群における平均処置効果(ATT:Average Treatment effect on the Treated)の重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate 77T試験に参加した139例(術前術後群)、CheckMate 816試験に参加した147例(術前群)が、今回の解析の対象となった。・根治手術後のEFSは、術前術後群が術前群と比較して良好であった。解析方法別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ATEの重み付け:0.61、0.39~0.97 ATTの重み付け:0.56、0.35~0.90 重み付けなし:0.59、0.38~0.92・根治手術後のEFSを病理学的完全奏効(pCR)の有無別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、pCR未達成のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 pCR達成:0.58、0.14~2.40 pCR未達成:0.65、0.40~1.06・根治手術後のEFSをPD-L1発現レベル別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、PD-L1<1%のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 PD-L1<1%:0.51、0.28~0.93 PD-L1≧1%:0.86、0.44~1.70・根治手術後のEFSをベースライン時のStage別にみると、全体集団と同様に術前術後群が良好な傾向がみられた。HRおよび95%CIは以下のとおり。 StageIB~II:0.53、0.25~1.11 StageIII:0.63、0.37~1.07・安全性は両群間で同様であった。Grade3~4の治療関連有害事象は術前術後群27%(38例)、術前群35%(52例)に発現し、中止に至った治療関連有害事象はそれぞれ6%(9例)、5%(8例)に発現した。

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バーベキュー後の腹痛・下痢【日常診療アップグレード】第12回

バーベキュー後の腹痛・下痢問題28歳男性。7日前に友人とバーベキューパーティーをした。2日前から頭痛と38.5℃の発熱あり。昨日から右下腹部痛が出現し、本日から水様便(8回/日)となっている。血液内科に通院し、悪性リンパ腫の化学療法を外来で受けている。38.5℃の発熱以外のバイタルサインに異常を認めない。右下腹部に圧痛はあるが振動を与えても痛みの誘発はない。便のグラム染色でらせん桿菌を認めた。アジスロマイシンを投与した。

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ICI関連心筋炎の発見・治療・管理に腫瘍循環器医の協力を/腫瘍循環器学会

 頻度は低いが、発現すれば重篤な状態になりえる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象としての心筋炎(irAE心筋炎)。大阪大学の吉波 哲大氏が第7回日本腫瘍循環器学会学術集会でirAE心筋炎における問題点を挙げ、腫瘍循環器医の協力を呼びかけた。致死率20%を超えるirAE心筋炎 ICIは今や固形がんの治療に必須の薬剤となった。一方、ICIの適用拡大と共に免疫関連有害事象(irAE)の発症リスクも増加する。心臓に関連するirAEは心筋炎、非炎症性左室機能不全、心外膜炎、伝導障害など多岐にわたる。その中でもirAE心筋炎は、発現すると一両日中に、心不全、コントロール困難な不整脈を併発し、致死的な状況に追い込まれることもある1)。 irAE心筋炎はICIにより活性化したT細胞が心筋に浸潤し、心筋を傷害するために起こるとされる。irAE心筋炎の発現は1%前後であるが2)、死亡率は20%を超え、通常の心筋炎をはるかに上回る3)。とくに女性(調整オッズ比[aOR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.38〜0.51、p<0.01)、75歳以上(aOR:0.19、95%CI:0.14〜0.28、p<0.01)、ICI同士の併用(aOR:1.93、95%CI:1.19〜3.12、p=0.08)ではリスクが高い2)。irAE心筋炎の頻度は低いものの、ICIの適応拡大とともに遭遇機会は増えていると考えられる。irAE心筋炎発現時期はICI開始後30日程度(日本のデータでは18〜28日、米国のデータでは中央値34日)と報告されている4、5)。定期モニタリングとステロイドによる治療が原則 わが国のOnco-CardiologyガイドラインではirAE心筋炎スクリーニングに、心電図、トロポニンT、NT-pro BNP、NLR(好中球・リンパ球比)、CRPのモニタリングが有効な可能性を挙げている(FRQ6-1)。吉波氏も、月1回程度行うICIの定期モニタリング時にトロポニンT、NT-pro BNPなどの検査(リスクがあれば心電図)をすべきと提案する。また、irAE心筋炎に対するステロイド治療については、使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないものの、有用な可能性があるとしている(BQ6-2)。irAE心筋炎を管理してICI治療を実施するために腫瘍循環器医の協力を ICIのがん治療に対する影響は大きく、もはや固形がんでは必須の薬剤だ。ペムブロリズマブは周術期化学療法に併用することでトリプルネガティブ乳がんの再発リスクを37%低下させ6)、アテゾリズマブは化学療法に併用することでStageIVもしくは再発非小細胞肺がんの12ヵ月無増悪生存割合を約2倍にする7)。 「治りたい、長生きしたい」という患者の希望を実現するために、腫瘍診療医はirAE心筋炎を危惧しながらもICIを使っている。「irAE心筋炎の発見・治療・管理にぜひとも腫瘍循環器医の協力をお願いしたい」と吉波氏は訴える。■参考1)三浦理. 新潟がんセンター病院医誌. 2024;62:45-48.2)Zamami Y, et al. JAMA Oncol. 2019;5:1635-1637.3)Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1721-1728.4)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.5)Hasegawa S, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2020;29:1279-1294.6)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.7)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.

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Guardant360CDx、EGFR exon20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルス

 ガーダントヘルスジャパンは2024年8月26日、リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360 CDx)について、Johnson&Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌(NSCLC)」に対するamivantamabと化学療法の併用療法に関するコンパニオン診断として承認を取得したと発表。 肺がんは世界において罹患率や死亡率が高いがんの1つであり、NSCLCは全肺がんの約80〜85%を占めている。日本を含む東アジアにおける実臨床データのレトロスペクティブ解析では、NSCLC患者から約2.4%のEGFR遺伝子エクソン20挿入変異がGuardant360 CDxによって検出されている。 Guardant360 CDxは、2022年3月に承認された進行固形がん患者を対象とする包括的がん遺伝子パネル検査である。74のがん関連遺伝子を一度に調べると同時に、国内で承認された複数のがん治療薬に対するコンパニオン診断機能を併せ持つ。 Guardant360 CDx は下記のコンパニオン診断として承認されている。・KRAS G12C:(非小細胞肺がん)ソトラシブ・HER2 変異:(非小細胞肺がん)トラスツズマブ デルクステカン・EGFRエクソン20挿入変異:(非小細胞肺がん)amivantamab・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブ、ビニメチニブおよびセツキシマブ・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブおよびセツキシマブ・HER2コピー数異常:(結腸・直腸がん)トラスツズマブおよびペルツズマブ・KRAS/NRAS野生型:(結腸・直腸がん)セツキシマブ、パニツムマブ・MSI-High:(結腸・直腸がん)ニボルマブ・MSI-High:(固形がん)ペムブロリズマブ

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ペムブロリズマブ、非小細胞肺がん術前・術後補助療法に承認/MSD

 MSDは2024年8月28日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、非小細胞肺がん(NSCLC)における術前・術後補助療法の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表。 今回の承認は、臨床病期II、IIIAまたはIIIB(T3-4N2、UICC/AJCC 第8版)の周術期NSCLC患者797例(日本人82例を含む)を対象とした、国際共同第III相試験であるKEYNOTE-671試験の結果に基づいている。同試験において、ペムブロリズマブ・化学療法併用による術前療法とペムブロリズマブ術後療法の組み合わせは、化学療法による術前補助療法とプラセボの術後療法の組み合わせと比較して、全生存期間(OS)および無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した(OS HR:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.00517、EFS HR:0.58、95%CI:0.46~0.72、p<0.001)1)。 安全性解析対象例396例中383例(96.7%)(日本人39例含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、悪心216例(54.5%)、好中球数減少169例(42.7%)、貧血143例(36.1%)、白血球数減少111例(28.0%)、疲労108例(27.3%)、便秘107例(27.0%)および食欲減退92例(23.2%)であった。

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EGFR陽性NSCLCへのオシメルチニブ、RECIST PDで中止すべき?(REIWA)

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療では、オシメルチニブが広く用いられているが、RECISTに基づく病勢進行(RECIST PD)後の臨床経過や治療実態は明らかになっていない。そこで、1次治療としてオシメルチニブを用いたEGFR遺伝子変異陽性患者を前向きに追跡する多施設共同観察研究(REIWA)が実施された。本研究において、オシメルチニブは実臨床においても既報の臨床試験と同様の有効性がみられたが、臨床的に安定した患者ではRECIST PD後にオシメルチニブを継続した場合、中止した場合と比べてRECIST PD後の全生存期間(OS)が短かった。本研究結果は、渡邊 景明氏(都立駒込病院)らによって、JTO Clinical and Research Reports誌2024年8月23日号で報告された。 本研究は、2018年9月~2020年8月の期間に1次治療として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けたEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者660例のうち、オシメルチニブによる治療を受けた583例を対象とした。対象患者をRECIST PD時の病勢進行の部位(中枢神経のみ、オリゴ転移、複数臓器)、症状・全身状態(無症状、有症状かつ臨床的増悪なし、臨床的増悪あり)で分類し、臨床経過および治療実態を検討した。また、RECIST PD後にオシメルチニブを継続した患者(継続群)と中止した患者(中止群)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者583例におけるOS中央値は41.0ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は20.0ヵ月であった。・EGFR遺伝子変異別にみたOS中央値は、exon19欠失変異群が44.2ヵ月、exon21 L858R変異群が36.1ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0004)。PFS中央値は、それぞれ23.5ヵ月、16.9ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(同:0.68、0.56~0.84、p=0.0002)。・RECICT PDは344例に認められ、部位別にみると中枢神経のみが37例(10.8%)、オリゴ転移が156例(45.4%)、複数臓器が151例(43.9%)であった。症状・全身状態別にみると無症状が195例(56.7%)、有症状かつ臨床的増悪なしが73例(21.2%)、臨床的増悪ありが76例(22.1%)であった。・RECIST PD後もオシメルチニブを継続したのは163例(47.4%)であった。・臨床的増悪のない集団(247例)を対象として、RECIST PD後のオシメルチニブ継続の有無別にみた場合のRECIST PD後のOS中央値は、継続群が13.2ヵ月、中止群が24.0ヵ月であり、継続群は中止群と比べて有意にRECIST PD後のOSが短かった(HR:2.01、95%CI:1.38〜2.91、p=0.0002)。・2次治療として化学療法による治療を実施した患者は、継続群が63例(38.7%)、中止群が114例(63.3%)であった。

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アレクチニブ、ALK陽性非小細胞肺がんの術後補助療法に承認/中外

 中外製薬は2024年8月28日、ALK阻害薬アレクチニブ(商品名:アレセンサ)について、「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得したと発表。 今回の承認はIB期(腫瘍径4cm以上)~IIIA期(UICC/AJCC 第7版)のALK陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施されたグローバル第III相臨床試験であるALINA試験の成績に基づいている。同試験において、アレクチニブはプラチナベースの化学療法と比較して、対象患者の再発または死亡リスクを76%低下させた(ハザード比:0.24、95%信頼区間:0.13〜0.43、p<0.0001)1)。また、アレクチニブの安全性および忍容性は、転移のあるALK陽性NSCLCを対象とした過去の試験と同様であり、新たな所見は認められなかった。 なお、同療法において化学療法の併用は義務付けられておらず、アレクチニブの用量は600mg×2/日、投与期間は24ヵ月までとされている。電子化添付文書情報 ※下線部について変更・追加販売名:アレセンサ カプセル150mg一般名:アレクチニブ塩酸塩カプセル効能又は効果:ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法用法及び用量:〈ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法〉通常、成人にはアレクチニブとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。ただし、投与期間は24ヵ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。

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第229回 てんかん薬スチリペントールががん治療に役立ちそう

てんかん薬スチリペントールががん治療に役立ちそうがん細胞はエネルギーを生成するのに無酸素での糖分解を好んで利用します。それゆえがん細胞は無酸素解糖系(anaerobic glycolysis)というその反応の最終産物である乳酸を溜め込みます。がん細胞が化学療法を寄せ付けなくすること(化学療法耐性)をその乳酸が後押しすることを示した英国Institute of Cancer Research(ICR)の成果が先月7月初めにNature誌に掲載されました1)。放射線やほとんどの化学療法薬はDNA損傷を引き起こすことで細胞を死なせます。がん細胞が生き残って増えるには損傷DNAを素早く修復しなければなりません。2-ヒドロキシグルタル酸、フマル酸、コハク酸などの代謝産物の蓄積がDNA修復を阻止してゲノム不安定性を促すことがわかっています。一方、がんの生存を促しうるDNA修復を促進する代謝産物はほとんど知られていません。いまだほとんど未踏のDNA修復促進代謝産物を探ることでがんの新たな泣き所が見つかるかもしれません。そう考えたICRの研究者らは手始めに白金化学療法耐性(治療抵抗性)の15例を含む胃がん患者24例の手術後のがん検体の解析に取り組みました。締めて2,347種類のタンパク質を定量して327の代謝産物が同定され、治療抵抗性のがんでは解糖系の一員である乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)が多く発現していました。また、LDHAによって生成される乳酸もより豊富でした。乳酸が化学療法耐性に寄与しているなら、乳酸を減らすことでがんの化学療法耐性を解消できそうです。その予想は正しく、乳酸生成を減らすLDHA阻害薬スチリペントールが化学療法や放射線治療(照射)を後押しすることがマウス実験で示されました。化学療法耐性の胃がんマウスに化学療法薬シスプラチンか照射と共にスチリペントールを投与したところ腫瘍が縮小して生存が延長しました。乳酸はタンパク質のアミノ酸・リシンの乳酸化に携わることが先立つ研究で示されています。今回の研究によると乳酸はDNA修復に携わる蛋白質NBS1のアミノ酸配列388番目のリシン(K388)の乳酸化によってDNA修復を助けます。NBS1は他の2つのタンパク質・MRE11とRAD50と複合体を形成し、DNA二本鎖切断を感知してDNA修復経路活性化することに与します。NBS1 K388乳酸化はその複合体・MRE11-RAD50-NBS1(MRN)の形成やDNA二本鎖切断部位での相同組換え修復タンパク質の蓄積に不可欠なことが今回の研究で示唆されました。LDHAやNBS1 K388乳酸化を頼りとするのは胃がんに限ったことではないようです。がんと正常組織の遺伝子発現のデータベースGene Expression Profiling Interactive Analysis(GEPIA)を調べたところ、LDHAの発現は胃がんを初め膵がん、肺がん、卵巣がんで有意に上昇していました。続く胃がん患者94例の検討で、LDHAやNBS1 K388乳酸化が盛んなことは実際により有害らしいと示唆されました。検体を解析したところ、LDHAが多いほどNBS1 K388はより乳酸化されており、LDHAやNBS1 K388乳酸化がより多い患者は少ない患者に比べてだいぶ短命でした。今回の結果を受け、治療抵抗性胃がん患者への化学療法の効果がスチリペントールで復活するかどうかを調べる臨床試験が早くも発足しています。スチリペントールはてんかんの治療に長く使われており、ヒトでもマウスと同様の効果があるならがん治療としての利用がより早く実現しそう、と著者の1人Axel Behrens氏は言っています2)。参考1)Chen H, et al. Nature. 2024;631:663-669.2)Epilepsy drug could keep chemotherapy for stomach cancer working for longer / Institute of Cancer Research

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肺がん患者、肥満でICIの効果が減少する可能性

 がんと肥満を併存している患者は正常体重の患者に比べて予後が不良であるとされているが、一部のデータでは体格指数(BMI)が高い場合のほうが、治療後の全生存率がより良好であるとの報告もあり、これは「肥満パラドックス」とされている。大阪公立大学・井原 康貴氏らは、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、BMIが免疫療法または化学療法後の全生存率(OS率)に関連するかを調査した。JAMA Network Open誌2024年8月1日号掲載の報告。 研究チームは2015年12月1日~2023年1月31日、日本の急性期病院のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。参加者は新規診断を受けた成人の進行NSCLC患者であり、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療または従来の化学療法を受けた。分子標的薬(TKI)治療や化学放射線療法を受けた患者は除外された。主要評価項目はOS率、解析は初回治療後3年の追跡期間を対象とした。BMI 18.5未満を低体重、18.5~24.9を標準体重、25.0~29.9を過体重、30以上を肥満と定義した。 主な結果は以下のとおり。・計3万1,257例が同定された。うち1万2,816例(平均年齢:70.2[SD 9.1]歳、男性1万287例[80.3%]、平均BMI:21.9[SD 3.5])がICI治療、1万8,441例(70.2[8.9]歳、男性1万4,139例[76.7%]、平均BMI:22.1[3.5])が化学療法を受けた。・初回治療から3年以内に死亡した患者の割合は、ICI治療群は28.0%(3,586/1万2,816例)、化学療法群は35.9%(6,627/1万8,441例)と化学療法群のほうが高かった。・BMIが28未満では、ICI治療群は化学療法群と比較して死亡のハザードが有意に低かった(BMI 24のハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.75~0.87)。しかし、BMI 28以上の患者ではこの関連は認められなかった(BMI 28のHR:0.90、95%CI:0.81~1.00)。・ICI治療群では、BMIが15~24まではBMIの増加につれて死亡率が減少したが、24を超えるとリスクは増加し、BMIと死亡率のあいだにU字型の関連が認められた。・一方で、全体としては、低体重と比較して、過体重または肥満のほうが死亡リスクは低かった。 著者らは、「本研究の結果として、過体重または肥満の患者においては、ICI治療は化学療法と比較して生存率の改善と関連していなかった。本研究の結果は、過体重または肥満の患者において、ICI治療が最適な初回療法ではない可能性を示唆している。そのような患者では従来の化学療法の使用も考慮すべきである」としている。

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日本人の子宮頸がんに対するペムブロリズマブ+同時化学放射線療法(KEYNOTE-A18)/日本婦人科腫瘍学会

 局所進行子宮頸がん(LACC)に対する同時化学放射線療法(CCRT)へのペムブロリズマブの上乗せは、日本人患者においてもグローバルと同様に無増悪生存期間(PFS)の改善傾向を示した。 1999年以降、LACCの標準治療は、化学療法と外部照射放射線治療(EBRT)の併用とその後の小線源療法へと続くCCRTである。現在、CCRTの効果をさらに高めるために免疫チェックポイント阻害薬の上乗せが検討されている。 KEYNOTE-A18試験(ENGOT-cx11/GOG-3047)は未治療の高リスクLACCにおいてペムブロリズマブ+CCRTとCCRT単独を比較した第III相試験である。グローバル集団の初回解析の結果ではCCRT単独に比べ、ペムブロリズマブ+CCRTがPFSを有意に改善している(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.55〜0.89、p=0.002)1)。第66回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、愛知県がんセンターの鈴木 史朗氏が同試験の日本人サブセットの結果を発表した。対象:FIGO2014 Stage IB2〜IIB(リンパ節転移陽性)またはStage III〜IVAの子宮頸がん(リンパ節転移問わず)試験薬群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+ペムブロリズマブ(200mg)3週ごと 5サイクル→ペムブロリズマブ(400mg)6週ごと 15サイクル(ペムブロリズマブ群)対照群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+プラセボ 3週ごと 5サイクル→プラセボ6週ごと 15サイクル(プラセボ群)評価盲目:[主要評価項目]治験責任医師・治験分担医師評価のPFSまたは全生存期間(OS)[副次評価項目]24ヵ月PFS、全奏効率、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・グローバル1,060例中、日本人サブセットは90例(ペムブロリズマブ群42例、プラセボ群48例)であった。・日本人サブセットのPFS中央値は両群とも未到達(HR:0.60、95%CI:0.24〜1.52)、12ヵ月PFS率はペムブロリズマブ群81.8%、プラセボ群71.8%、24ヵ月PFS率はそれぞれ71.6%と評価不能であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群の85.4%、プラセボ群の81.3%に発現した。治療関連死はみられなかった。・ペムブロリズマブ群で頻度の高いTRAEは下痢(80.5%)、悪心(80.5%)、好中球減少(63.4%)、貧血(61.0%)など。ペムブロリズマブ群で頻度の高い免疫関連有害事象は甲状腺機能低下(17.1%)、甲状腺機能亢進(9.8%)などであった。 KEYNOTE-A18試験における日本人サブセットの知見から、ペムブロリズマブ+CCRTは日本人の高リスクLACCに対する治療選択肢となり得るのではないか、と鈴木氏は述べた。

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乳がん関連リンパ浮腫、日常生活の中のリスク因子

 乳がん治療後のリンパ浮腫を防ぐために、患者には日常生活における感染や外傷などのリスクを避けることが推奨されている。一方で日常生活の中のリスク因子が乳がん関連リンパ浮腫に及ぼす影響を検討したデータは不足している。米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMei Rosemary Fu氏らは、日常生活におけるリスクの発生状況および乳がん関連リンパ浮腫への影響を調べることを目的とした横断研究を実施し、結果をAnnals of Surgical Oncology誌オンライン版2024年8月1日号に報告した。 本研究は、米国都市部のがんセンターで登録の3ヵ月以上前に急性期治療(手術、放射線治療、化学療法)を完了しており、転移、再発、またはリンパ系疾患の既往のない21歳以上の女性を対象に実施された。リンパ浮腫リスク軽減行動チェックリスト(The Lymphedema Risk-Reduction Behavior Checklist)を用いて、日常生活における11のリスク因子(感染症、切り傷/引っかき傷、日焼け、油はねまたは蒸気による火傷、虫刺され、ペットによる引っかき傷、爪のキューティクルのカット、重い荷物の運搬/持ち上げ、ショルダーバッグの持ち運び、食料品の持ち運び、ウェイトリフティング)の発生状況を評価。乳がん関連リンパ浮腫への影響を明らかにするために、記述分析、回帰分析、および因子分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・567例のデータが収集・解析され、23.46%が乳がん関連リンパ浮腫と診断された。全体の52.73%は5つ超のリスク因子を経験していた。・感染症(オッズ比[OR]:2.58、95%信頼区間[CI]:1.95~3.42)、切り傷/引っかき傷(2.65、1.97~3.56)、日焼け(1.89、1.39~3.56)、油はねまたは蒸気による火傷(2.08、1.53~3.83)、虫刺され(1.59、1.18~2.13)は乳がん関連リンパ浮腫と有意に関連していた。・日常生活におけるリスク因子は、皮膚外傷と物の持ち運びに関連する要因に集約され、皮膚外傷リスクは乳がん関連リンパ浮腫と有意に関連していた(B=0.539、z=3.926、OR:1.714、95%CI:1.312~2.250、p<0.001)。・皮膚外傷リスクが3つ、4つ、または5つある場合、乳がん関連リンパ浮腫の発症オッズはそれぞれ4.31倍、5.14倍、6.94倍に大幅に増加した。・物の持ち運び関連のリスクは、乳がん関連リンパ浮腫の発症に有意な影響も増分的な影響も与えていなかった。 著者らは、52.73%の人が5つを超えるリスク因子を経験していることを考慮すると、これらのリスクを完全に回避するのは難しいとし、“乳がん関連リンパ浮腫の日常生活リスクを最小限に抑えるための戦略”として、「日焼けを防ぐために日焼け止め(SPF30以上)を塗るか、長袖の服を着ましょう」「発疹、水疱、赤み、腕の熱感の増加、痛みなどに気づいた場合は、すぐに医師に相談しましょう」など16項目を提示している。

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原発不明がん、包括的ゲノム解析に基づく個別化治療が有望/Lancet

 未治療の非扁平上皮性の非良性原発不明がん(cancer of unknown primary:CUP)で、導入化学療法後に病勢コントロールが得られた患者においては、プラチナ製剤ベースの標準的な化学療法と比較して、分子腫瘍委員会による包括的ゲノム解析(comprehensive genomic profiling:CGP)に基づいて担当医が個別に選択した治療(molecularly guided therapy:MGT)は、無増悪生存期間(PFS)中央値が有意に延長し、客観的奏効率にも良好な傾向がみられることが、German Cancer Research Center(DKFZ)のAlwin Kramer氏らが実施した「CUPISCO試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月31日号で報告された。34ヵ国の無作為化実薬対照第II相試験 CUPISCO試験は、日本を含む34ヵ国159施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第II相試験であり、2018年7月~2022年12月に参加者を募集した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 中央判定で病変(腺がん、低分化がん)が確認され、全身状態の指標であるECOG PSが0または1で、プラチナ製剤ベースの標準的な化学療法による1次治療(3サイクル)で病勢コントロール(完全奏効、部分奏効、安定)を達成した患者を対象とした。 被験者を、CGPに基づくMGTを受ける群、または1次治療と同じ化学療法レジメンを少なくとも3サイクル継続する群に、3対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団における担当医判定によるPFS(無作為化の日から病勢進行または全死因死亡のいずれか早い日まで)とした。PFS:MGT群6.1ヵ月vs.化学療法群4.4ヵ月 636例を登録した。追跡期間中央値は24.1ヵ月であった。導入化学療法で病勢コントロールを達成した438例のうち436例を無作為化の対象とし、MGT群に326例(年齢中央値61.0歳[四分位範囲[IQR]:53.0~70.0]、男性51%)、化学療法群に110例(62.5歳[55.0~69.0]、52%)を割り付けた。 PFS中央値は、化学療法群が4.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.1~5.6)であったのに対し、MGT群は6.1ヵ月(4.7~6.5)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.56~0.92、p=0.0079)。 全生存期間(OS)の中間解析では、OS中央値はMGT群が14.7ヵ月(95%CI:13.3~17.3)、化学療法群は11.0ヵ月(9.7~15.4)だった。 客観的奏効率は、MGT群が18%(95%CI:13.8~22.4)、化学療法群は8%(3.81~15.0)(群間差:9.6%、95%CI:2.4~16.8)であり、奏効期間や病勢コントロール率には差を認めなかった。OSのより長期の追跡が必要 MGT群は、治療中止に至った重篤な有害事象(100人年当たりの発生率:9.2 vs.3.8)と致死的なアウトカムに至った有害事象(5.1 vs.0)を除き、他のすべての有害事象のカテゴリーにおいて化学療法群に比べて発生率が低いか、同程度であった。 著者は、「これらの結果に基づき、非良性CUP患者の初回診断時にはCGPを実施することを推奨する。CGPのための組織生検およびリキッドバイオプシーは、より適切な治療の選択を可能にし、これらの患者におけるpractice-changingな戦略となる可能性があり、今後の発展が期待される」と述べ、「ベネフィット-リスクのプロファイルの評価をさらに進めるためには、OSについてより長期間の追跡調査が必要である」とまとめている。

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