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オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム、9月に保険適用へ/エグザクトサイエンス

 エグザクトサイエンスは、「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用について、中央社会保険医療協議会が2023年7月5日付けで了承したことを発表した。9月1日に保険収載される見込みという。 オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムは、オンコタイプDX乳がん再発スコア検査および日本向けに開発されたソフトウエアを組み合わせたプログラム医療機器。ホルモン受容体陽性HER2陰性で、リンパ節転移なし、もしくは3個以内の早期浸潤性乳がんを対象に、遠隔再発リスクを提示し、化学療法の要否の決定を補助するものとして、2021年8月に厚生労働省から薬事承認を受けている。 オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムの使用により、手術後にどの程度再発しやすいかの予測と併せて、術後薬物療法の検討時にホルモン療法に化学療法を追加するかどうかの意思決定の助けとなる情報を提供する。昭和大学の中村 清吾氏は「意思決定に有用な情報を提供することで、医療者と患者さんが話し合い、手術後の薬の治療をどうするかについて納得して治療方針を決める、いわゆるShared Decision Makingの一助になると期待している」と述べている。

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気功ががんサバイバーの倦怠感を軽減

 米ブラウン大学神経科学分野のCatherine Kerr氏は、自身ががん患者となったときに中国の伝統的な健康法である気功を実践し、倦怠感が軽減したことから、気功ががんサバイバーの倦怠感に与える影響について調べ始めた。Kerr氏は2016年に死去したが、彼女の研究を引き継いだ同大学脳科学がん研究所のStephanie Jones氏らが、気功とがんサバイバーの倦怠感に関するランダム化比較試験の結果を、「Integrative Cancer Therapies」に5月19日報告した。それによると、気功には、エネルギーを大量に消費する運動や栄養プログラムと同程度に倦怠感を軽減する効果のあることが明らかになったという。 がんサバイバーに倦怠感が生じるのは珍しいことではなく、研究グループによると、がんサバイバーの45%が中等度から重度の倦怠感を経験するという。研究グループは、「倦怠感は、痛みや吐き気、抑うつよりも大きな負担になり得る」と説明する。そして、運動が倦怠感の軽減に役立つことは明らかにされているが、倦怠感が生じている患者にとって運動をすること自体が非常にハードルの高いことだと指摘する。これに対して、深呼吸や時に瞑想と組み合わせてゆっくりと体を動かす気功は、がん患者に臨床的に意味のある改善をもたらすことが示唆されているという。 Jones氏らは今回、気功を標準的な運動と直接比較する、小規模ではあるが初めてのランダム化比較試験を実施した。対象者は、倦怠感を有する女性がんサバイバー24人(平均年齢57.3±9.0歳)で、本試験へ参加する8週間以上前に、手術、放射線療法、化学療法などの治療を終えていた。対象者のうちの11人は10週間にわたって気功を行う群に(気功群)、13人は筋力トレーニングや有酸素運動に加え、植物ベースの栄養指導と健康/心理的教育を行う群(運動/栄養群)に割り付けられた。気功群では、米国と中国で40年間気功を教えている指導者が選んだ、倦怠感のあるがんサバイバー向けのプログラムが行われた。 介入の結果、両群において、Functional Assessment of Cancer Therapy: Fatigue(FACIT-F、がん治療に伴う倦怠感の機能的評価)で評価した倦怠感が、事前に3と設定した臨床的に意義のある最小変化量の2倍以上、改善したことが明らかになった(気功群:7.068±10.30、運動/栄養群:8.846±12.001)。改善の程度に両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。気功群ではさらに、気分や感情制御、ストレスに有意な改善が認められたのに対し、運動/栄養群では睡眠と倦怠感に改善が認められた。 同大学神経科学分野のChloe Zimmerman氏は、「この研究の大きな目標の一つは、がんの治療後の患者にどうやって元気になってもらうのか、それは、筋肉トレーニングなどよりははるかに穏やかな心身の鍛錬で実現できるのか、ということだと考えている」と述べる。研究グループによると、ヨガやマインドフルネス、太極拳なども含めた心身の鍛錬は、身体、感情、脳の健康に役立つ可能性があることから、ますます注目を浴びているのだという。 Jones氏らは目下、両群での治療効果には、脳と筋肉のコミュニケーションの変化が関係し、それが気功群と運動/栄養群では異なっているという仮説を検証するために、脳と筋肉の活動に関する電気生理学的な測定値の変化を調べている最中だという。 研究グループによると、すでにいくつかの病院では気功プログラムが提供されている。今回の研究には関与していないJun Mao氏が所属する米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターもそうした病院の一つだ。同氏は、「気功のメカニズムは、まだ完全には解明されていないが、気功のゆっくりとした体の動きや呼吸法、瞑想などの組み合わせが、心と体のつながりを育むのに役立つのだろう」と話す。同氏はまた、気功の一部の動作は、ベッドに寝たままでも行えることから、機能的な制約が多いがん患者にとって実践がより容易である点にも言及している。

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周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期治療に、抗PD-1抗体toripalimabを追加投与することで、無イベント生存期間(EFS)が延長することが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相Neotorch試験の中間解析から示された。中国・上海市胸科医院のShun Lu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者404例・試験群:toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→toripalimab 3週ごと最大13サイクル(toripalimab群)202例・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→プラセボ3週ごと最大13サイクル(プラセボ群)202例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医評価によるStageIII、II/IIIのEFS、盲検下独立病理学審査(BIPR)評価によるStageIII、II/IIIの病理学的奏効(MPR)率[副次評価項目]全生存期間(OS)、BIPR/施設病理医の評価によるStageIII、II/IIIの病理学的完全奏効(pCR)率、独立評価委員会(IRC)評価によるStageIII、II/IIのEFS、無病生存期間(DFS)、安全性と手術の実行性EFS(StageIII)→EFS(StageII/III)→MPR(StageIII)→MPR(StageII/III)→OS(StageIII)→OS(StageII/III)の順番で階層的に検定 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.3ヵ月における、治験担当医によるStageIIIのEFS中央値は、toripalimab群が未到達、プラセボ群が15.1ヵ月で、toripalimab群の有意なEFS改善が示された(両側p<0.0001)。・EFSのHRをPD-L1発現別にみると、PD-L1<1%では0.59(95%信頼区間[CI]:0.327〜1.034)、1~49%では0.31(同:0.176〜0.554)、50%≦では0.31(同:0.152〜0.618)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・EFSのHRを組織型別にみると、非扁平上皮がんでは0.54(95%CI:0.265〜1.096、p=0.0827)、扁平上皮がんでは0.35(同:0.236〜0.528、p<0.0001)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・MPR率はtoripalimab群48.5%、プラセボ群8.4%(p<0.0001)、pCR率はtoripalimab群24.8%、プラセボ群1.0%(p<0.0001)と、いずれもプラセボ群に比べ改善していた。・Grade3以上の治療下発現有害事象(TEAE)は、toripalimab群の63.4%で、プラセボ群の54.0%で発現した。Grade3以上の免疫関連有害事象は、toripalimab群の11.9%で、プラセボ群の3.0%で発現した。 発表者のLu氏は、「従来の研究と合わせ、Neotorch試験の結果は、周術期の抗PD-1抗体と化学療法との併用が、切除可能NSCLCの標準治療となるべきであることを示した」と述べている。

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早期膵臓がんの低侵襲切除術は治療選択肢として有望

 早期膵臓がんに対する、腹腔鏡下またはロボット支援下でがんを切除する侵襲性の低い「低侵襲膵体尾部切除術(以下、低侵襲切除術)」では、開腹してがんを切除する「開腹膵体尾部切除術(以下、開腹切除術)」と同程度の手術成績が得られ、手術後の患者の回復も早いことが、新たな臨床試験で示された。Fondazione Poliambulanza(イタリア)のMohammad Abu Hilal氏らによるこの試験の結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023、6月2~6日、米シカゴ)で発表された。Hilal氏は、「この種のものとしては初となる今回の臨床試験において、切除可能な膵臓がんの治療で低侵襲切除術は、開腹切除術に代わる安全かつ有効で効率的なアプローチになり得ることが確認された」と説明している。 今回Hilal氏らが報告した臨床試験では、1,100人以上の膵臓がん患者のスクリーニングが実施され、このうち258人が、化学療法による治療を開始せず手術で腫瘍の切除が可能な早期膵臓がんと診断された。試験は2018年5月8日から2021年5月7日にかけて、12カ国に所在する35カ所の医療機関で実施された。258人の早期膵臓がん患者は、腹部の何カ所かを小さく切開して膵臓と脾臓を切除する低侵襲切除術群(117人)と、腹部を大きく切開して切除する標準的な開腹切除術群(114人)のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、がんを完全に切除できた割合は、低侵襲切除術群で73%、開腹切除術群で69%だった。また、手術中に切除されたリンパ節の数(平均)は同順に22個、23個、腹腔内のがん再発率は同順に41%、38%と、いずれもほぼ同程度であった。 この試験結果について、ASCOのチーフメディカルオフィサーであるJulie Gralow氏は、「低侵襲切除術には、医師の追加のトレーニングや技術的なスキルが必要となるものの、患者の術後の回復は驚くほど早い。侵襲性が低い方法で、がんを残さず切除でき、再発率も開腹手術と同程度であるなら、患者にとっては低侵襲手術の方が良い」とする見解を示し、「今後の標準治療を変える可能性がある」と期待を示す。 その一方でGralow氏は、現時点では誰もが低侵襲手術を受けられる状況にはないことを指摘。「米国の農村部の多くや、膵臓がん手術を一般外科医が担っている所では、医師が低侵襲切除術の方法を習得していない可能性がある」と話す。Hilal氏も、「小規模病院の外科医は、低侵襲切除術のトレーニングや施行経験がない場合が多い。低侵襲手術はかなり複雑で、開腹手術と比べて難易度も高い」と説明している。 また、膵臓がんは進行した段階で見つかることが多いため、手術を治療選択肢として考慮できる膵臓がん患者が少ないことにもGralow氏やHilal氏は言及。Gralow氏は、「残念ながら、手術が適応となる段階で膵臓がんと診断される患者の割合は、膵臓がん患者全体のわずか15%に過ぎない。ほとんどの膵臓がん患者は、診断時にはすでに腫瘍を切除できない段階にまで進行している」と現状について説明する。なお、ASCOによると、手術による治療が可能な早期膵臓がんの5年相対生存率は44%である。 一方Hilal氏は、「今回のランダム化比較試験の結果がきっかけで、幸いにも早期の段階で膵臓がんが見つかった患者に対して、これまで以上に低侵襲切除術が施行されるようになるはずだ」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

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ペムブロリズマブ+ラムシルマブの非小細胞肺がん術前補助療法(EAST ENERGY)/ASCO2023

 切除可能なPD-L1陽性StageIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法として、ペムブロリズマブとラムシルマブの併用療法が有効であることが、多施設共同の単群第II相試験であるEAST ENERGY試験の結果から示唆された。国立がん研究センター東病院の青景 圭樹氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、切除可能NSCLC患者に対する標準的な術前補助療法の1つとして認識されている。しかし、プラチナ製剤不適格患者に対する、この薬剤の組み合わせは十分に検証されていない。一方、ICIと血管新生阻害薬の併用は、進行期NSCLCにおいて有効性と安全性が報告されている。 ICI+血管新生阻害薬を術前補助療法に適用できないか。EAST ENERGY試験では、PD-L1陽性NSCLCに対し、ICIであるペムブロリズマブと血管新生阻害薬(VEGFR2阻害薬)であるラムシルマブの併用術前補助療法の有効性と安全性が検討された。・対象:PD-L1≧1%の切除可能なStageIB〜IIIA(AJCC8版)NSCLC患者24例・介入:ペムブロリズマブ(200mg)+ラムシルマブ(10mg/kg) 3週ごと2サイクル→手術・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央病理学審査(BIPR)評価による主要な病理学的奏効(MPR)率[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)率、R0切除率、奏効率(ORR)、無再発生存期間(RFS)、PD-L1発現別の全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・BIPR評価のMPR率は50.0%(24例中12例)で、事前に設定したMPR率の基準(MPR 9例以上[37.5%以上])を超え、主要評価項目を達成した。・pCR率は25%(24例中6例)であった。・観察期間中央値23.6ヵ月時点でのRFS中央値は未到達、12ヵ月RFS率は91.1%、24ヵ月RFS率は75.6%であった。・同期間でのOS中央値は未到達、12ヵ月OS率は100%、24ヵ月OS率は94.4%であった。・Grade3の治療関連有害事象(TRAE)は23例中7例に発現、そのうち5例が重篤だった(Grade4以上はなし)。・Grade3の免疫関連有害事象は、23例中3例(急性腎障害2例、リウマチ性多発筋痛症1例)に発現した(Grade4以上はなし)。・Grade3の術中・術後合併症は22例中3例(肺ろう、術中肺動脈出血、術後胸腔内血腫)に発現した。 青景氏は、この新しいレジメンはPD-L1陽性NSCLCの術前補助療法として、プラチナ不適格患者や高齢患者に適用できるだろうと述べた。

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EGFR陽性NSCLC、EGFR-TKIによる術後補助療法1年延長でOS改善(ICOMPARE)

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を用いた術後補助化学療法により、無病生存期間(DFS)の改善1,2)が認められており、最新の研究(ADAURA試験)では全生存期間(OS)の改善3)も認められているが、治療期間との関係は明らかになっていない。そこで、中国・Beijing Cancer HospitalのChao Lv氏らは、肺腺がん患者に対してEGFR-TKIのicotinibによる術後補助化学療法を1年実施した場合と、2年実施した場合の有効性・安全性を無作為化比較試験により検討した。その結果、icotinibの2年投与は1年投与と比較して、DFSのみならず、OSも改善した。本研究結果は、ESMO Open誌2023年6月20日号で報告された。・試験デザイン:多施設共同海外第II相無作為化非盲検比較試験・対象:18歳以上でStageII/IIIAのEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)肺腺がん患者のうち、完全切除可能であった109例・試験群(2年群):icotinib 125mgを1日3回、2年間投与 54例・対照群(1年群):icotinib 125mgを1日3回、1年間投与 55例・評価項目[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくDFS[副次評価項目]OS、安全性・データカットオフ日:2020年9月27日 主な結果は以下のとおり。・主な患者背景は、年齢中央値59歳(範囲:32~76)、女性67%で、EGFR遺伝子変異の内訳は、ex19delが55%、L858Rが45%であった。また、StageIIが52%、StageIIIAが48%であった。・データカットオフ時点の追跡期間中央値は44.1ヵ月であった。・DFS中央値は、1年群が32.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~44.8)であったのに対し、2年群は48.9ヵ月(同:33.1~70.1)であり、2年群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.28~0.94、p=0.029)。・治療期間終了後のDFS中央値は、1年群22.6ヵ月(95%CI:14.9~38.9)、2年群26.8ヵ月(同:14.5~46.1)であり、有意差は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.33~1.53、p=0.3832)。・OSについて、2年群は1年群と比較して有意に改善した(HR:0.34、95%CI:0.13~0.95、p=0.0317)。・5年OS率は、1年群が72%であったのに対し、2年群は88%であり、2年群が有意に改善した(p=0.032)。・治療関連有害事象(TRAE)は、1年群75%(41例)、2年群67%(36例)に認められた。Grade3/4のTRAEは、1年群7%(4例)、2年群6%(3例)に認められた。治療に関連した死亡や間質性肺疾患の報告はなかった。

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フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例【見落とさない!がんの心毒性】第22回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・男性主訴 胸痛既往歴脂質異常症、糖尿病生活歴タバコ20本/日×38年現病歴X年10月下部食道扁平上皮がん T3N2M1(肝転移)、ステージIVbの診断で、放射線化学療法の方針となった。放射線療法50Gy+化学療法「シスプラチン+フルオロウラシル」2コースの初期治療に続いて、「ネダプラチン+フルオロウラシル」を6コース行い完全寛解となった。X+2年7月食道がんの局所再発あり。光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)を500J実施したが、同年9月のCT、PETでリンパ節転移を認め、ネダプラチン+フルオロウラシルを再開した。再開1回目の入院治療時、持続点滴開始3日後に胸部絞扼感が出現。モニター心電図の変化が疑われ循環器科受診。心筋逸脱酵素の上昇はなく、安静時心電図正常、負荷心電図陰性、心エコーも特記所見がなかったため、頓服用の硝酸薬が処方され退院。さらに、2コース目の治療入院の際にもフルオロウラシル持続点滴開始2日目に胸痛発作あり、Ca拮抗薬を開始しつつホルター心電図を実施した。退院後は胸痛発作なく過ごしたため、3コース目で入院したが化学療法開始後に胸痛発作が出現したため、さらに硝酸薬を追加し、がん治療は中止した。循環器科初診時の検査データWBC 3,000/μL、RBC 487×104/μL、Hb 15.2g/dL、Plt 18.0×104/μL、TP 6.9g/dL、Alb 4.3g/dL、AST 23U/L、ALT 32U/L、ALP 230U/L、LDH 178U/L、CK 88U/L、CRP 0.13mg/dl、Na 141mmol/L、K 4.4mmol/L、Cl 102mmol/L、BUN 10.8mg/dL、Cr 1.15mg/dL、Glu 116mg/dL、CEA 1.9ng/mL、CA19-9 16.4U/mL、SCC抗原 1.5ng/mL、BNP 33.2pg/mL、トロポニンT 0.012ng/mL(正常<0.014 ng/mL)安静時心電図と胸痛発作時を含むホルター心電図を以下に供覧。<安静時心電図>画像を拡大する心電図所見洞調律、正常範囲。追加で行ったマスターダブル負荷試験は陰性。<ホルター心電図>【発作時の圧縮波形】画像を拡大する心電図所見心室性期外収縮が出現し、徐々にST上昇の変化をきたしていることが確認できます。【拡大波形】画像を拡大する心電図所見非発作時:ST上昇なし。心電図変化:(1)に比し、ch1でST上昇傾向を認めます。胸痛発作:(2)と比し、ch1でのST上昇が顕著となっています。【問題】本症例の病状、方針として妥当と思われるものはどれか?a.症状、心電図変化からフルオロウラシルに関連した冠攣縮性狭心症を考える。b.3コース目で治療を中止しているが、さらに、ニコランジルなどの冠拡張薬を追加し同一の化学療法を継続すべき。c.ST上昇を認めるので、速やかに心臓カテーテル検査などの精査を行うべき。d.抗がん剤治療のレジメン自体を見直す。1)Shiga T, et al. Curr Treat Options Oncol. 2020;21:27.2)Cucciniello T, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960240.3)Chong JH, et al. Interv Cardiol. 2019;14:89-94.4)Redman JM, et al. J Gastrointest Oncol. 2019;10:1010-1014.5)Zafar A, et al. JACC CardioOncol. 2021;3:101-109.講師紹介

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KRAS G12C変異陽性NSCLCに対するソトラシブ+化学療法の有効性(SCARLET)/ASCO2023

 KRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、KRAS G12C阻害薬であるソトラシブとカルボプラチン、ペメトレキセドとの併用療法が有用である可能性が示された。国内単群第II相試験として実施されたSCARLET試験の主要評価項目の解析結果として、和歌山県立医科大学の赤松 弘朗氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 KRAS G12Cは進行非扁平上皮NSCLCのdruggableターゲットで、免疫チェックポイント阻害薬(±プラチナダブレット化学療法)、ソトラシブ、細胞障害性抗がん剤単剤が標準治療とされてきた。SCARLET試験では、化学療法治療歴のないKRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCに対して、ソトラシブ、カルボプラチン、ペメトレキセドの併用療法の有効性と安全性について評価した。・対象:未治療のKRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLC患者30例・介入:ソトラシブ(960mg)+カルボプラチン(AUC 5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ソトラシブ+ペメトレキセドを病勢進行まで継続・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)および有害事象(AE) 主な結果は以下のとおり。・2021年10月~2022年7月に登録された30例中、29例が安全性、27例が有効性解析の対象となった。・観察期間中央値4.1ヵ月における、BICR判定ORRは88.9%(80%信頼区間[CI]:76.9~95.8、95%CI:70.8~97.6)であった。事前設定のORR基準(閾値40%、期待値65%)を満たし、主要評価項目を達成した。・BICR判定によるPFS中央値は5.7ヵ月、6ヵ月PFS率は49.6%、治験担当医判定によるPFS中央値は7.6ヵ月、6ヵ月PFS率は56.7%であった。・OS中央値は未到達で、6ヵ月OS率は87.3%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は72.4%に発現し、そのうち20%以上の項目は貧血(37.9%)、好中球数減少(24.1%)、血小板数減少(24.1%)、白血球数減少(20.7%)であった。 KRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCにおける、ソトラシブと化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)の併用は良好な有効性と忍容性を示した、と赤松氏は結んだ。

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TKI耐性EGFR陽性NSCLCに対するペムブロリズマブ+化学療法の最終解析(KEYNOTE-789)/ASCO2023

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブと化学療法の併用は、統計学的に有意な生存ベネフィットを示さなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏が発表した、国際共同二重盲検第III相KEYNOTE-789試験の最終解析の報告である。・対象:EGFR-TKI治療後のEGFR変異陽性NSCLC症例・試験群:ペムブロリズマブ(Pembr)+カルボプラチン/シスプラチン+ペメトレキセド(Peme)→Pembr+Peme(Pembr群:245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン/シスプラチン+Peme→プラセボ+Peme(CT群:247例)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など今回の発表には、追跡期間中央値28.6ヵ月(データカットオフ:2021年12月)における2回目の中間解析のPFSと、追跡期間中央値42.0ヵ月(同:2023年1月)のOS最終解析が含まれている。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はPembr群が5.6ヵ月、CT群が5.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.80(95%信頼区間[CI]:0.65〜0.97、p=0.0122)であった。事前に設定されていた2回目の中間解析のp値の閾値0.0117を下回ることはなかった。・6ヵ月PFS率はPembr群が42.8%、CT群が34.6%、12ヵ月PFS率はそれぞれ14.0%と10.2%であった。・OS中央値はPembr群が15.9ヵ月、CT群が14.7ヵ月で、HRは0.84(95%CI:0.69〜1.02、p=0.0362)と、こちらも事前設定のp値の閾値0.0117を下回ることはなかった。・12ヵ月OS率はPembr群が61.6%、CT群が59.4%、24ヵ月OS率はそれぞれ30.6%と26.4%であった。・PD-L1発現状況別に見たOSのHRは、TPS≧50%で0.84(95%CI:0.55~1.30)、1〜49%で0.76(同:0.52~1.10)、<1%では0.91(同:0.70~1.19)であった。・ORRはPembr群で29.0%、CT群で27.1%、DOR中央値は、それぞれ6.3ヵ月と5.6ヵ月であった。・両群ともに新たな安全性シグナルは報告されなかった。

170.

転移乳がんへのカペシタビン、固定用量vs.標準用量(X-7/7)/ASCO2023

 転移を有する乳がん(MBC)患者を対象としたX-7/7試験において、カペシタビンの固定用量(1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬)は、体表面積に基づく用量(1,250mg/m2 1日2回 14日間投与後7日間休薬)と比較して、無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)に差はなく、手足症候群などの有害事象の発生率が低かったことを、米国・カンザス大学がんセンターのQamar J. Khan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 MBCは継続的な治療が必要となるため毒性の少ない治療が望まれているが、FDAに承認されているカペシタビンの用量では忍容性が低く、中止率が高いという懸念がある。そこで研究グループは、体表面積に関係なく固定用量のカペシタビンを投与した場合の有効性と安全性を、標準用量と比較するランダム化試験を実施した。・対象:内分泌療法または化学療法の治療歴のある転移を有する乳がんの女性(HER2+患者ではトラスツズマブを併用)・試験群(固定7/7群):カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与→7日間休薬 80例・対照群(標準14/7群):カペシタビン1,250mg/m2 1日2回 14日間投与→7日間休薬 73例・評価項目[主要評価項目]3ヵ月PFS率[副次評価項目]PFS、OS、奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2015年10月~2021年4月にMBC患者153例を固定7/7群と標準14/7群に1対1に無作為に割り付けた。ベースライン時の患者特性は同等で、年齢中央値60歳、内臓転移ありが44%、HR+HER2-が78%、HER2+が11%、トリプルネガティブが11%、化学療法の前治療歴なしが65%、測定可能な病変を有していたのは67%であった。・PFS中央値は、固定7/7群で8.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.4~11.6)、標準14/7群で12.1ヵ月(同:8.9~16.3)であった(p=0.98)。・固定7/7群および標準14/7群のPFS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月PFS率:76%、76%、p=0.99 -6ヵ月PFS率:39%、50%、p=0.23 -24ヵ月PFS率:25%、23%、p=0.77 -36ヵ月PFS率:11%、0%、p=0.24・ORRは固定7/7群8.9%、標準14/7群19.6%であった(p=0.11)。・OS中央値は、固定7/7群19.8ヵ月(95%CI:12.9~28.3)、標準14/7群17.5ヵ月(同:12.5~34.0)であった(p=0.17)。・固定7/7群および標準14/7群のOS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月OS率:94%、85%、p=0.16 -12ヵ月OS率:56%、63%、p=0.59 -24ヵ月OS率:30%、33%、p=0.85 -36ヵ月OS率:23%、23%、p=1.00 -48ヵ月OS率:17%、14%、p=0.82・Grade3~4の有害事象は、固定7/7群で11.3%、標準14/7群で27.4%に生じた(p=0.02)。Grade2~4の有害事象のうち、下痢は2.5%/20.5%(p=0.0008)、手足症候群は3.8%/15.1%(p=0.0019)、口内炎は0%/5.5%(p=0.0001)、好中球減少は21.3%/27.4%(p=0.68)であった。 これらの結果より、Khan氏は「MBCの治療で有効性を維持しながら毒性を最小化するために、カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬する固定用量は有用なオプションとなる可能性がある」とまとめた。

171.

直腸がんへのネオアジュバント強化、長期フォローアップでも有用性示す(PRODIGE 23)/ASCO2023

 局所進行直腸がん患者において、標準治療である術前化学放射線療法よりも前にmFOLFIRINOXによる化学療法を強化することで無病生存期間(DFS)が有意に改善されることを報告した第III相PRODIGE 23試験。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)では本試験の7年の長期フォローアップの結果を、フランス・ロレーヌがん研究センターのThierry Conroy氏が報告した。・対象:T3またはT4の直腸腺がん患者、18~75歳、PS1以上・試験群(術前化学療法群):mFOLFIRINOXによる6サイクル・3ヵ月の化学療法→化学放射線療法→直腸間膜全切除(TME)→mFOLFOXによる4サイクル・3ヵ月の補助化学療法・対照群(標準治療群):化学放射線療法→TME→mFOLFOXによる8サイクル・6ヵ月の補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無転移生存期間(MFS)、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・2012年6月~2017年6月に35の参加施設から461例が登録され、標準治療群230例と術前化学療法群231例に割り付けられた。年齢中央値61.5歳、66.3%が男性だった。・今回の解析における追跡期間中央値は82.2ヵ月で、標準治療群56例、術前化学療法群42例の死亡が報告された。・7年時点における局所再発の累積発生率は標準治療群8.1% vs.術前化学療法5.3%、転移率は標準治療群27.7% vs.術前化学療法群18.4%と、術前化学療法群が良好だった。・2次がんの発生率は標準治療群4.8%に対し、術前化学療法群は19.4%と高かった。すべてが固形がんで血液腫瘍は含まれなかった。・7年時点におけるDFSは標準治療群62.5%(95%信頼区間[CI]:55.6~68.6)vs.術前化学療法群67.6%(95%CI:60.7~73.6)、MFSは同65.4%(95%CI:58.7~71.3)vs.73.6%(95%CI:67.0~79.2)、OSは同76.1%(95%CI:69.8~81.3)vs.81.9%(95%CI:75.8~86.7)と、いずれも術前化学療法群が優れていた。 Conroy氏は「mFOLFIRINOXの術前化学療法の強化によって、7年の長期フォローアップにおいてもDFS、OSを含むすべてのアウトカムが有意に改善していた。この治療戦略は局所進行直腸がんにおける最良の治療の1つと考えるべきだ」とした。

172.

局所進行大腸がんにおける、術前化学療法の有用性は?(NeoCol)/ASCO2023

 局所進行大腸がん初回治療の標準治療は切除と術後補助化学療法だが、ほかのがん種で広がる術前化学療法は有効なのか。この点について検討したランダム化比較第III相NeoCol試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、デンマーク・Danish Colorectal Cancer Center SouthのLars Henrik Jensen氏が発表した。・対象:浸潤が5mm以上と評価されたT3あるいはT4、PS0~2、18歳以上の大腸がん患者・試験群(術前化学療法群):3サイクルのCAPOX、または4サイクルのFOLFOX後に手術、術後の状態に応じて術後補助化学療法・対照群(標準治療群):先行手術、術後の状態に応じて8サイクルの術後補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]術後補助化学療法を受ける割合、全生存期間(OS)、有害事象、QOL 主な結果は以下のとおり。・2013年10月~2021年11月に3ヵ国の9施設において術前化学療法群126例と標準治療群122例が登録された。45%が女性、年齢中央値66歳、PS0が90%、ベースラインのStageはT3が73%だった。・術前術後を合わせた化学療法サイクル数中央値は、標準治療群5.9に対し、術前化学療法群は4.8だった。・術後補助化学療法を必要とした患者は、標準治療群のほうが多かった(73% vs.59%、p=0.03)。・2年時点のDFSは両群で同等であり(p=0.94)、OSも同等だった(p=0.95)。・術後合併症はイレウス(標準治療群:8% vs.術前化学療法群:4%)、吻合部漏出(同:8% vs.2%)の発生率が高かった。・Grade3以上の有害事象は下痢(標準治療群:14% vs.術前化学療法群:13%)、末梢神経障害(同:11% vs.7%)の頻度が高かったが、両群で大きな差はみられなかった。 Jensen氏は「術前化学療法は標準治療と比較して、DFSおよびOSに優位性は示されなかった。しかし、術前化学療法は、化学療法サイクル数、術後合併症、および病期の進行の点で標準療法よりも好ましい結果をもたらしていた」とした。

173.

TN乳がんのHER2発現状況、生検時期によって変動/ASCO2023

 HER2の発現状況は変動的であり、HER2低発現ではないIHC 0のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者が病勢進行時に生検を繰り返し行うことでHER2低発現となる可能性があることを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・マサチューセッツ総合病院のYael Bar氏が発表した。 第III相DESTINY-Breast04試験サブグループ解析において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はTNBCを含むHER2低発現で転移を有する乳がん患者の無増悪生存期間と全生存期間を有意に改善した。しかし、T-DXdのFDA承認はHER2低発現であってTNBCではないため、HER2低発現かどうかを特定することは臨床的に重要である。 先行研究では、TNBCにおけるHER2発現状況は不均一で時間の経過とともに変動することが示唆されているが、TNBC患者がHER2低発現の結果を得るために繰り返し生検を受ける意義があるかどうかは不明である。そこで研究グループは、TNBC患者における生検の実施回数とHER2発現状況の相関、生検を繰り返して行う意義、生検時期によるHER2発現状況の変動の評価を行った。 研究グループは、2000~22年に単一施設で治療を受けたTNBC(ER/PR<10%、HER2陰性)患者512例のデータを後方視的に解析した。HER2の発現状況が不明または不確定の患者は除外された。HER2低発現は、IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-と定義された。生検は実施時期や実施方法に基づいて分類された。 患者の年齢中央値は52歳(範囲:25~97歳)、50歳以上が46%、ER低発現(1~10%)が13%、術前化学療法実施が54%であった。StageIが28%、StageIIが48%、StageIIIが14%、StageIVが8%、不明が1%で、生検の実施回数は1回が38%、2回が45%、3回が9%、4回が6%、5回以上が2%であった。 主な結果は以下のとおり。・生検の合計実施回数が増えるにつれて、HER2低発現の結果を少なくとも1回示した患者の割合が増加した。生検を計1回実施した患者では59%、計2回では73%、計3回と計4回では83%、計5回以上では100%であった。・以前の生検でHER2ゼロだった患者は、次の生検を受けるたびにその3分の1が新たにHER2低発現の結果を示した。・同一患者の異なるタイミングの生検を分析した結果、HER2ゼロ→HER2低発現、HER2低発現→HER2ゼロの変動が主に認められ、その変動の可能性は早期に実施した生検と転移が進んだ状態で実施した生検の間で最も大きかった。転移が進んだ状態の生検は、HER2ゼロ→HER2低発現となる割合が高かった。・術前化学療法の有無はHER2発現状況の変動に影響を与えなかった。 これらの結果より、Bar氏は「TNBC患者においてHER2発現状況は変動的であった。T-DXdの適応がない患者でも、生検を繰り返すことで新たにHER2低発現の結果を得られる可能性があるため、実施可能かつ安全であるのであれば検討してもよいと考える。また、何らかの理由で生検を行った場合は再検査を行うべきである」とまとめた。

174.

膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Knut Jorgen Labori氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。 切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。対象:切除可能膵臓がん試験群:FOLFIRINOX4サイクル→手術→FOLFIRINOX8サイクル(ネオアジュバント群)対照群:手術→FOLFIRINOX12サイクル(アジュバント群)評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・140例が無作為に割り付けられた(ネオアジュバント群:77例、アジュバント群:63例)。年齢中央値は66.5歳(四分位範囲[IQR]:59.72)、ECOG0は115例(82.1%)、1が25例(17.9%)だった。最終的にネオアジュバント群:63例、アジュバント群:56例が切除を受けた。・術後補助療法でのFOLFIRINOXの使用は、ネオアジュバント群では25%、アジュバント群では40%にとどまった。・R0切除率はネオアジュバント群56%、アジュバント群39%であった(p=0.076)。・N0切除率はネオアジュバント群29%、アジュバント群14%であった(p=0.060)。・OS中央値はネオアジュバント群25.1ヵ月、アジュバント群38.5ヵ月であった(HR:1.52、95%CI:0.94~2.46、p=0.096)。・18ヵ月後のOSはネオアジュバント群60%、アジュバント群73%だった(p=0.1)。・Grade3~5の有害事象はネオアジュバント群は57.5%、アジュバント群は40.4%に発現した。 FOLFIRINOXの術前補助療法は許容可能な安全性と切除実施率を示したものの、切除可能な膵臓がんに対するスタンダードとして支持される結果とはならなかった。

175.

HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験において、SGがPFSを有意に改善(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83)したことはASCO2022で、OSについてはプロトコールでの最終解析である第2回中間解析の結果、有意に改善(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96)したことがESMO2022で発表されている。また、HER2低発現例においてPFSが有意に改善(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79)したこともESMO2022で発表されている。今回、探索的解析として、追跡期間を延長し解析した結果が発表された。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年12月1日)時点で、追跡期間中央値は12.75ヵ月となった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月で、引き続きPFSの改善を示した(HR:0.65、95%CI:0.53~0.81、nominal p=0.0001)。・OS中央値はSG群14.5ヵ月、TPC群11.2ヵ月で、OSも引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、nominal p=0.0133)。12ヵ月OS率は、SG群60.9%、TPC群47.1%、18ヵ月OS率はSG群39.2%、TPC群31.7%、24ヵ月OS率はSG群25.7%、TPC群21.1%であった。・HER2 IHC別のPFSは、HER2低発現(HR:0.60、95%CI:0.44~0.82)およびHER2ゼロ(HR:0.70、95%CI:0.51~0.98)ともSG群で有意に改善がみられた。・HER2 IHC別のOSは、HER2低発現(HR:0.75、95%CI:0.57~0.97)およびHER2ゼロ(HR:0.85、95%CI:0.63~1.14)ともSG群で改善がみられた。・ORR、CBRも引き続き改善を示し、DORは延長した。・延長された追跡期間に新たな安全性シグナルはみられなかった。 Tolaney氏は「本試験の追加された追跡期間においてもSGの有用性が持続したことにより、治療歴のある内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-転移乳がんに対して、SGが重要で新たな治療であることがさらに補強された」と結論した。

176.

高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

177.

早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。最初の患者無作為化後5年時点で分析 ZUMA-7試験は、早期再発(1次化学免疫療法後12ヵ月以内に再発)または難治性(1次治療に抵抗性)LBCLの18歳以上の患者を対象とし、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、axi-cel療法または標準治療(化学免疫療法2~3サイクル、奏効が得られた患者には続けて高用量化学療法+自家幹細胞移植)を行い追跡評価した。 2018年1月25日~2019年10月4日に、被験者計359例がaxi-cel療法群(180例)または標準治療群(179例)に無作為化された。 主要アウトカムはEFSで、主な副次アウトカムは奏効とOSであった。 本論では、事前規定のOS解析(最初の患者を無作為化後5年時点で評価)の結果が報告されている。既報の主要アウトカムのEFSについては、axi-cel療法群が標準治療群よりも有意に優れたことが示され(ハザード比[HR]:0.40、層別化log-rank検定のp<0.001)、追跡期間中央値24.9ヵ月時点で、EFS期間中央値はaxi-cel療法群8.3ヵ月、標準治療群2.0ヵ月であり、同24ヵ月時点のEFS率はそれぞれ41%、16%だった。奏効が認められたのはaxi-cel療法群83%、標準治療群50%であり、完全奏効(CR)が認められたのは、それぞれ65%、32%だった。4年PFS率、標準治療群24%に対しaxi-cel療法群42% 追跡期間中央値47.2ヵ月(範囲:39.8~60.0)時点で、死亡はaxi-cel療法群82例、標準治療群95例で報告された。 OS中央値は、axi-cel療法群は未到達であり、標準治療群は31.1ヵ月だった。推定4年OS率は、それぞれ54.6%、46.0%で(死亡に関するHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.98、両側log-rank検定のp=0.03)、これらaxi-cel療法による生存の改善は、患者の74%で原発性難治性疾患やその他のハイリスク要因が認められたITT集団で観察された。 治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値は、axi-cel療法群14.7ヵ月、標準治療群3.7ヵ月であり、推定4年PFS率はそれぞれ41.8%、24.4%だった(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 EFS主解析以降に、新たな治療関連死は発生しなかった。

178.

HER2+胆道がんに対するtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性/ASCO2023

 数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村 能章氏よりなされた。 これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。・対象:1ライン以上の化学療法治療歴のある進行または転移を有するHER2陽性胆道がん症例(HER2陽性:HER2高発現[IHC 3+]またはHER2遺伝子増幅あり[FISH/NGS]と定義)・介入:tucatinib 300mg×2/日+トラスツズマブ6mg/kg(初回8mg/kg)3週ごと・評価項目:[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年6月~2022年5月に30例が胆道がんコホートに登録され、追跡期間中央値は10.8ヵ月であった。・患者の年齢中央値は68.5歳、アジア人が76.7%、胆嚢がんが50%、StageIVが60.0%、前治療のライン数中央値は2であった。・ORRは46.7%で、CRは1例(3.3%)、PRは13例(43.3%)であった。DCRは76.7%で、DOR中央値は6.0ヵ月であった。・腫瘍縮小効果発現までの中央値は2.1ヵ月であった。・PFS中央値は5.5ヵ月で、6ヵ月PFS率は49.8%、12ヵ月PFS率は16.1%であった。・OS中央値は15.5ヵ月で、6ヵ月OS率は73.0%、12ヵ月OS率は53.6%であった。・治療関連有害事象は全例に認められ、主なものは発熱43.3%、下痢40.0%、インフュージョンリアクション26.7%、血中クレアチニン増加26.7%、ALT上昇26.7%などであった。Grade3以上の有害事象は、悪心10%、胆管炎10%、食欲不振10%などであり、治療関連死はなかった。・HER2検査の中央判定と施設判定での陽性一致率は、IHC、FISH共に87.5%であり、血液検体を用いたNGSでは75.9%であった。中央判定でHER2陰性と判定された症例に、奏効例はなかった。

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既治療・転移乳がんへのHER3-DXd、幅広いHER3発現状況で有用/ASCO2023

 複数治療歴のあるER+およびトリプルネガティブ(TN)の局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者を対象とした第II相試験の結果、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)の有効性は、幅広いHER3発現状況で認められたことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が発表した。 MBC患者はHER3が高値であることが多いが、HER3過剰発現はがんの進行や生存率の低下と関連することが報告されている。また、HER3-DXdの有効性は乳がんのサブタイプやHER3発現状況にあまり依存しない可能性が示唆されている。本試験は、HER3-DXd投与で最大の効果が得られる患者群を特定するために、パートA、パートB、パートZの3パートで実施されている。今回はパートAとして、特定のバイオマーカー(ER/PR/HER2/HER3)が発現した患者における有効性と安全性が検討された(データカットオフ:2022年9月6日)。・対象:18歳以上の男性または女性、HER2-、ECOG PS 0/1で下記のいずれかを満たすMBC患者1)HR+患者:0~2ラインの化学療法歴+内分泌療法±CDK4/6阻害薬による治療歴がある2)HR-患者(TN):1~3ラインの化学療法歴がある・試験群:HER3-DXd 5.6mg/kg 3週間ごとに静脈内投与 60例・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)、6ヵ月無増悪生存(PFS)率[副次評価項目]奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性・忍容性 など 主な結果は以下のとおり。・女性98.3%(男性は1例[1.7%])、18歳超65歳未満が71.7%、前治療ライン数中央値3(範囲:1~9)であった。StageIVが21.7%、BRCA1変異が3.3%、BRCA2変異が1.7%であった。ベースライン時のER高発現(10%超)/低発現(1~10%)/陰性(0%)はそれぞれ50.0%/2.1%/47.9%、PR高発現(10%超)/低発現(1~10%)/陰性(0%)はそれぞれ45.8%/6.3%/47.9%、TNは39.6%であった。・ベースライン時にHER3発現が評価可能であった47例のうち、HER3-high(75%以上)が63.8%、HER3-low(25~74%)が27.7%、HER3-negative(25%未満)が8.5%であった。・治療期間中央値は5.2ヵ月(範囲:0.7~15.2)で、43.3%の患者がHER3-DXdを6ヵ月以上継続していた。・全体のORRは35.0%(95%信頼区間:23.1~48.1)、CBRは43.3%(同:30.6~56.8)であった。HER3-highではそれぞれ33.3%/40.0%、HER3-lowでは46.2%/53.8%、HER3-negativeは症例は少ないものの50.0%/50.0%であった。・全体の6ヵ月以上のDOR達成は47.6%、HER3-highでは40.0%、HER3-lowでは33.3%、HER3-negativeでは100%であった。・HER3-highとHER3-lowでORRとCBRに有意差はみられなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は93.3%に認められ、Grade3/4が31.7%であった。主なものは、悪心、疲労、下痢、嘔吐、貧血、脱毛であった。7%(4例)に重篤なTRAEが生じ、内訳は間質性肺疾患、悪心・嘔吐、肺炎、血小板減少症であった。 これらの結果より、Hamilton氏は「複数の治療を重ねてきたER+およびTNのMBC患者において、HER3-DXdの有効性は幅広いHER3発現状況で認められた。Grade3/4のTRAEは少なく、管理可能な安全性プロファイルであった。この解析結果は、HER3-DXdがサブタイプにかかわらずMBSの治療パラダイムに参入する可能性を裏付けるものである」とまとめた。 なお、パートBではパートAのER/PR/HER2/HER3発現状況に基づいたサブグループで有効性を解析し、パートZではHER2+でT-DXd治療歴のあるMBC患者21例を追加登録して有効性を解析する予定。

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NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・術後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。 米国・スタンフォード大学のHeather Wakelee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、NSCLC患者を対象に周術期におけるペムブロリズマブの効果を評価した、無作為化二重盲検第III相試験。免疫チェックポイント阻害薬の術前・術後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、toripalimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。・対象:切除可能なStage(AJCC第8版)II、IIIA、IIIB(N2)NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mg 3週ごと最大13サイクル・対照群:プラセボ+化学療法(同上)3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボ3週ごと最大13サイクル・評価項目:[主要評価項目]EFSおよび全生存期間(OS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、主要な病理学的奏効(mPR) 主な結果は以下のとおり。・786例の登録患者をペムブロリズマブ群およびプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。・EFS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群17.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.72、p<0.00001)。・OS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群45.5ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.54〜0.99、p=0.02124)。・mPRはペムブロリズマブ群30.2%、プラセボ群11.0%、pCRはペムブロリズマブ群18.1%、プラセボ群4.0%であった。・治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群96.7%、プラセボ群95.0%で発現、免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群25.3%、プラセボ群10.5%で発現した。 このデータは、ペムブロリズマブを含む術前・術後補助療法が、切除可能なNSCLCの新たな治療選択肢となることを支持するものだと、Wakelee氏は述べた。

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