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HR+/HER2-乳がんへのダトポタマブ デルクステカンを発売/第一三共

 第一三共は、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬である抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2025年3月19日に薬価収載され、同日より発売したことを発表した。 本剤は、TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。化学療法の前治療歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移を有する乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験において、本剤投与群では医師選択化学療法投与群よりも有意に無増悪生存期間が延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象は半数以下であったことが示された。なお、アジア人サブグループ解析においても、全体集団と同様の結果が得られている。<製品概要>販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日および発売日:2025年3月19日薬価:100mg 1瓶 311,990円製造販売元:第一三共株式会社

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非がん性慢性疼痛へのオピオイド、副作用対策と適切な使用のポイント~ガイドライン改訂

 慢性疼痛はQOLを大きく左右する重要な問題であり、オピオイド鎮痛薬はその改善に重要な役割を果たす。一方、不適切な使用により乱用や依存、副作用が生じる可能性があるため、適切な使用が求められている。そこで、2024年5月に改訂された『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』1)の作成ワーキンググループ長を務める井関 雅子氏(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授)に、本ガイドラインのポイントを中心として、オピオイド鎮痛薬の副作用対策と適切な使用法について話を聞いた。新規薬剤が追加、特殊な状況での処方や副作用対策などが充実 2017年に改訂された前版の発刊以降に、非がん性慢性疼痛に対して新たに使用可能となった薬剤・剤形が複数登場したことなどから、時代に即したガイドラインの作成を目的として『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』が作成された。井関氏は、今回の改訂のポイントとして以下を挙げた。1.新しい薬剤・剤形の追加 前版の発刊以降に慢性疼痛に使用可能となった薬剤として、トラマドール速放部付徐放錠(商品名:ツートラム)、オキシコドン徐放錠※(商品名:オキシコンチンTR錠)が追加され、オピオイド誘発性便秘症に対して使用可能となった薬剤として、ナルデメジン(商品名:スインプロイク)が追加された。 ※:非がん性慢性疼痛に適応を有するのはTR錠のみ2.特殊な状況でのオピオイド鎮痛薬処方の章の追加 妊娠中の患者、高齢患者、腎機能障害患者、肝機能障害患者、睡眠時無呼吸症候群患者、労働災害患者、AYA世代患者へのオピオイド鎮痛薬処方に関するクリニカルクエスチョン(CQ)を新設した(CQ9-1~9-7)。3.構成の変更 オピオイド鎮痛薬は慢性疼痛の管理に幅広く使われることから、オピオイド鎮痛薬への理解を深めてから使用してほしいという願いをこめ、第1章に「オピオイドとは」、第2章に「オピオイド鎮痛薬各論」を配置し、内容を充実させた。なお、オピオイド鎮痛薬の強さは「弱オピオイド(トラマドール、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、コデイン)」「強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)」に分類し(CQ1-4、p32表6)、使い方や考え方の違い、副作用についてまとめた。4.オピオイド誘発性便秘症への末梢性μオピオイド受容体拮抗薬の追加 オピオイド誘発性便秘症に対し、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジンが使用可能となったことから、CQを追加した(CQ5-5)。便秘の管理が重要、ナルデメジンの使用を強く推奨 オピオイド鎮痛薬による治療中には、悪心・嘔吐、便秘、眠気などの副作用が高頻度に出現する。ただし、井関氏は「悪心・嘔吐はオピオイド鎮痛薬の使用開始・増量から2週間以内に発現することが多いため、制吐薬などを使用することで管理可能である」と述べる。本ガイドラインでも、耐性が形成されるため1~2週間で改善することが多いこと、オピオイド鎮痛薬による治療開始時や増量時には制吐薬を予防的に投与することを検討してよいことが記載されている。 一方で、「便秘についてはオピオイド鎮痛薬による治療期間を通してみられるため、管理が重要である」と井関氏は話す。オピオイド誘発性便秘症については、新たに末梢性μオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジンが使用可能となっている。そこで、本ガイドラインではCQが設定され、一般緩下薬で改善しないオピオイド誘発性便秘症に対して、ナルデメジンの使用を強く推奨している(CQ5-5)。ナルデメジンを使用するタイミングについて、井関氏は高齢者ではオピオイド鎮痛薬の使用前から、酸化マグネシウムなどの一般緩下薬を使用している場合も多いことに触れ、「まずは酸化マグネシウムなどの一般緩下薬を少量使用し、効果が不十分であれば、増量するよりもナルデメジンの併用を検討するのがよいのではないか」と考えを述べた。突然増強する痛みにオピオイド鎮痛薬は非推奨 非がん性慢性疼痛を有する患者において、突然増強する痛み(がん性疼痛でみられる突出痛とは管理が異なることから区別される)が生じることも少なくない。この突然増強する痛みに対して、本ガイドラインでは「安易にオピオイド鎮痛薬を使用すべきではない。オピオイド鎮痛薬による治療中にレスキューとしてオピオイド鎮痛薬を使用することは、使用総量の増加や乱用につながる可能性が高く、推奨されない」としている。これについて、井関氏は「オピオイド鎮痛薬に限らず、突然増強する痛みに対して即時(数分以内など)に効果がみられる薬剤は存在しないため、痛みの期間と薬効のタイムラグが発生してしまう。なかなか薬で太刀打ちできるものではないため、患部を温める、さすってみるなど、非薬物療法を考慮してほしい」と述べた。また、井関氏は「突然増強する痛みに対して、慢性疼痛に適応のない短時間作用性のオピオイド鎮痛薬をすることは、治療効果が出ないだけでなく、依存や副作用が生じるため避けなければいけない」と指摘した。 井関氏は、オピオイド鎮痛薬の適切な使用に向けて、がん患者のがん性疼痛と非がん性慢性疼痛をしっかり区別することが重要であると話す。がん患者の場合、がん性疼痛以外にも術後の痛み、化学療法後の痛み、放射線治療後の痛みなどさまざまな非がん性慢性疼痛が存在するが、これらを区別せずに強オピオイド鎮痛薬が使用されることが散見されるという。これについて、井関氏は「非がん性慢性疼痛に適応のない強オピオイドの速放性製剤を用いると、血中濃度の変動も大きく、依存になりやすいため非常に危険である」と指摘した。また、がん患者に限らず、たとえば帯状疱疹による痛みに対して「痛いと言われるたびにどんどん増量してしまうのも不適切使用である」とも語った。井関氏は、適切な使用のために「オピオイド鎮痛薬の特性と慢性疼痛という病態をしっかり理解したうえで、オピオイド鎮痛薬を使ってほしい」と述べた。適切な使用のために心がけるべき4つのポイント 最後に、オピオイド鎮痛薬の適切な使用に向けて心がけるべきポイントを聞いたところ、井関氏は以下の4点を挙げた。1.長期投与・高用量を避ける 投与期間は6ヵ月までとし、強オピオイドの場合は標準的にはモルヒネ換算で60mgまで、最大でも90mgまでとする。疼痛が改善して減薬する場合には、短いスパンで観察することなどにより退薬症状を出さないようにする。2.不適切使用を避ける たとえば、がん患者の非がん性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、これまでがんに直接起因する痛みへの処方の経験があったとしても、非がん性慢性疼痛に処方するための正規のステップを踏んで、企業のeラーニングを受講して慢性疼痛の知識を持ち、処方資格を得るべきである。がん患者であっても、非がん性慢性疼痛に適応のない速放性製剤を非がん性慢性疼痛に用いることは、依存を招くため許容されない。3.若年患者への処方は慎重に判断する 若年患者では依存症のリスクが高いため、できるだけオピオイド鎮痛薬以外の治療法を検討する。4.QOLを低下させない 眠気が強いようであれば減量する、便秘の対策をしっかりと行うなど、QOLを下げない工夫をする。

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新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。 2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。AMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について 従来のAMLの診断は、骨髄における白血病細胞がFAB分類では30%以上、WHO分類では20%以上とされてきたが、今回のガイドライン改訂版ではEuropean Leukemia Net(ELN)が2022年の改訂で採用した分類を引用している。すなわち、AMLを定義付けるような遺伝子異常(PML::RARA、CBFB::MYH11、RUNX1::RUNX1T1など)があれば、芽球比率が10%以上でAMLと診断することになった。ただし、BCR::ABL1については、CML移行期との混乱を避けるため20%以上とされた。 分類に関するほかの重要な変更点の1つとして、病歴よりも遺伝学的特徴のほうが生物学的AMLの分類に関連していることから、従来のAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)と治療関連骨髄性腫瘍の病型が削除された。 なお、遺伝子変異と染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた予後層別化システムについては、2022年のELN改訂版でFLT3-ITD変異がアレル比やNPM1変異の有無にかかわらず、すべてIntermediate群に分類された点が今回のガイドライン改訂版に記載された(ただし、FLT3阻害薬が初回治療から使用できることが前提)。このほかにも、細かい遺伝子異常が予後層別化に追加された。 急性前骨髄球性白血病(APL)以外の若年者AMLにおける治療アルゴリズムとして、今回のガイドライン改訂版ではFLT3遺伝子変異の情報を診断時に取得することが明記された。また、高齢者AMLにおいてもFLT3遺伝子変異情報の取得が記載され、藥師神氏は「基本的に初発時からFLT3遺伝子変異検査を行うことになる。なお、強力化学療法非適応症例への寛解導入療法は、CQ8『強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)を参照すること」と述べた。 これ以外の注目すべきCQとして、同氏はCQ3『若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ13『治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2Aおよび2B)を挙げた。一方、APLにおいては、CQ2『初発APLの寛解導入療法におけるDIC(播種性血管内凝固)対策として何が勧められるか』で、遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療が推奨グレード・カテゴリー3からカテゴリー2Bにアップグレードされた点を挙げた。CMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について CMLの診断時に評価すべき予後スコアは、SokalスコアやELTS(EUTOS long-term survival)スコアを使用し、治療効果はELN 2020の判定規準に従い、血液学的奏効(血液・骨髄検査所見および臨床所見で判定)、細胞遺伝学的奏効(骨髄細胞中のPhiladelphia[Ph]染色体割合で判定)、分子遺伝学的奏効(PCRによる血液細胞中のBCR::ABL1遺伝子発現量で判定)の3つのレベルで判定する。加えて、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療効果のモニタリングと戦略が、同氏より解説された。 また、注目すべきCQとして、CQ1『初発CML-CP(慢性期)に対する治療として何が勧められるか』で、TKI阻害薬が新たに1剤追加されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ3『ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療、三次治療以降は何が勧められるか』で、三次治療以降にSTAMP(specifically targeting the ABL myristoyl pocket)阻害薬が追記されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ5『同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか』で、さまざまな状況に応じた移植の検討が推奨されること(推奨グレード・カテゴリー2A)を挙げた。 さらに、CQ6『DMR(分子遺伝学的に深い奏効)を達成しMRD(微小残存病変)が検出されなければTKI中止は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ7『CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1、2Aおよび2B)、CQ8『CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2B)の改訂点が紹介された。ALLおよびCLLの主なCQの改訂点について ALLの注目すべきCQとして、CQ4『寛解期成人ALLにおけるMRDは、どのような評価方法、評価時期、閾値の判定が勧められるか』で、定量PCRによる白血病特異的融合遺伝子測定および免疫グロブリン重鎖(Ig)/T細胞受容体(TCR)遺伝子再構成測定が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、ならびに1回目のMRD測定は寛解導入療法後が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)が紹介された。同氏は、そのほかにCQ6『第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか』で、適切な前処置に関する推奨(推奨グレード・カテゴリー2B)が明記された点や、CQ7『Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか』で、MRD陰性の時点で開始する予防的なTKI維持療法は推奨されない(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが記載された点を紹介。CQ9『再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか、CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか』で、新たな治療選択肢(推奨グレード・カテゴリー1)やCAR-T細胞療法(推奨グレード・カテゴリー2A)が追記された点についても言及した。 CLLの注目すべきCQとして、初回治療としてBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬が推奨され(CQ2『CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])、免疫化学療法は初回治療として推奨されない(CQ3『CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])ことが紹介された。二次治療における治療方針の推奨(CQ4『イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』およびCQ5『イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』)が、ともにカテゴリー1として明記された点も紹介し、CQ7『自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか』では、無症候性・非活動性CLLであればステロイド治療が推奨される(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが説明された。これからの白血病診療の展望 造血器腫瘍の診断および治療について、ゲノム情報に基づく診療がWHOなどから提唱される中、つい最近、わが国においても造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査が登場した。「本邦での造血器腫瘍におけるがんゲノム医療の導入は喫緊の課題」と語る藥師神氏は、「日本血液学会が発行する『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年度版』で遺伝子パネル検査の基盤となる情報が提供されている。そのため、新規治療薬の導入とともに、白血病診療が今後さらに前進していくことが期待される」と締めくくった。

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既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibの有用性(Beamion LUNG-1)/日本臨床腫瘍学会

 HER2遺伝子変異はNSCLC患者の約2~4%に認められ、脳転移が生じることが多く、予後不良の場合が多い。zongertinibはHER2チロシンキナーゼドメイン選択的に共有結合し、不可逆的にHER2を阻害するチロシンキナーゼ阻害薬である。野生型のEGFRへの結合は非常に弱く、EGFR関連有害事象が抑制されることが期待されている。そこで、zongertinibの用量探索および安全性・有効性を検討する国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」が実施された。第Ib相の既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性コホートにおける結果が、世界肺がん学会(WCLC2024)で報告されており、WCLC2024の報告では、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けた患者の66.7%に奏効が認められ、忍容性も高かったことが示された。その後、本試験のアップデート解析が実施され、その結果を葉 清隆氏(国立がん研究センター東病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で報告した(本解析結果は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会[ESMO Asia2024]でも報告されている)。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ia相の結果から1日1回120mg、240mgの用量が選択された。今回は、第Ib相においてプラチナ併用化学療法による治療歴のある(抗体薬物複合体による治療歴を有する患者は除外)HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート1)の結果が報告された。コホート1では、zongertinibを 1日1回120mg投与する群(120mg群)、240mg投与する群(240mg群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中間解析により1日1回120mgの用量が選択され、中間解析以降の組み入れ患者には、1日1回120mgの用量で投与した。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効割合(ORR)とし、副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)とした(いずれも中央判定)。 今回は120mg群の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年8月29日)において、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けたのは75例であり、年齢中央値は62歳(範囲:30~80)、女性の割合は68%、アジア人の割合は53%であった。前治療ライン数1/2/3以上の割合は56%/16%/28%であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合は37%であった。・主な治療関連有害事象(TRAE)は下痢(51%)、皮疹(27%)、AST増加(21%)、ALT増加(20%)であり、多くがGrade1~2であった。死亡に至ったTRAEは認められず、間質性肺疾患(ILD)の発現もなかった。減量に至った有害事象(AE)の発現割合は5%、治療中止に至ったAEの発現割合は3%と低かった。・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは71%であり(期待値30%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。DCRは93%であった。・奏効が認められた患者(53例)のうち、データカットオフ時点で55%がzongertinibによる治療を継続していた。・6ヵ月PFS率は69%、6ヵ月DOR率は73%であった。 本結果について、葉氏は「zongertinibは、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLC患者において、良好な抗腫瘍活性を示した。PFSやDORのデータから、zongertinibは持続的な効果を示すことが示唆された」とまとめた。HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療として、zongertinibと標準治療を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が実施されており、現在患者を組み入れ中である。なお、zongertinibは米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定およびブレークスルーセラピー指定を受けている。

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MSI-H/dMMR進行大腸がんにおけるニボルマブ+イピリムマブ、アジア人にも有用(CheckMate 8HW)/日本臨床腫瘍学会

 CheckMate 8HW試験は、全身療法歴のない高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移大腸がん患者に対して、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法と化学療法の有用性を検討した試験である。昨年末にはニボ+イピ群が化学療法群と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されたが1)、2025年3月6~8日に行われた第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)では国立がん研究センター東病院の吉野 孝之氏が、本試験のアジア人サブグループにおける解析結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:切除不能または転移大腸がん(mCRC)、MSI-H/dMMR・試験群:1)ニボルマブ(240mg)+イピリムマブ(1mg/kg):ニボ+イピ群2)ニボルマブ単独:ニボ群3)化学療法(医師選択による化学療法±標的療法):ケモ群 患者は2:2:1の割合で無作為に割り付けられ、治療は疾患進行または容認できない毒性が認められるまで(全群)、最長2年間(ニボ+イピ群)継続された。今回は発表されたのはニボ+イピ群対ケモ群の中間解析であり、ニボ群の解析は追って発表予定。[主要評価項目]1次治療におけるニボ+イピ群vs.ケモ群のPFS、全期間におけるニボ+イピ群対ニボ群のPFS[副次評価項目]安全性、PFS2、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2023年10月12日)時点において、全体集団の追跡期間中央値は31.5ヵ月、アジア人は20.2ヵ月だった。・全体集団ではニボ+イピ群に202例、ケモ群に101例が割り付けられた。うちアジア人サブグループはニボ+イピ群19例(うちMSI-H/dMMR:17例)、ケモ群11例(同:11例)含まれていた。・全体集団におけるPFS中央値は、ニボ+イピ群は未到達(95%信頼区間[CI]:38.4ヵ月~評価不能)、ケモ群は5.9ヵ月(95%CI:4.4~7.8)であった(HR:0.21)。アジア人におけるPFS中央値はニボ+イピ群は未到達(95%CI:評価不能)、ケモ群は7.4ヵ月(95%CI:1.5~評価不能)であった(HR:0.03)。・その後の全身療法を受けた患者は、全体集団ではニボ+イピ群15%、ケモ群69%であった。アジア人ではそれぞれ18%、73%だった。・全体集団におけるPFS2期間中央値は、ニボ+イピ群は未到達(95%CI:評価不能)、ケモ群は29.9ヵ月(95%CI:14.8~評価不能)であった(HR:0.27)。アジア人はいずれも未到達であった(HR:0.63)。・Grade3/4の治療関連有害事象は全体集団ではニボ+イピ群23%、ケモ群48%で発生した。アジア人はそれぞれ16%、71%だった。ニボ+イピ群で多かった有害事象は副腎機能不全(23%)、甲状腺機能低下症(21%)、食欲減退(16%)、ケモ群では悪心(57%)、下痢、好中球減少症、末梢神経障害(各43%)だった。 吉野氏は「ニボ+イピはアジア人サブグループにおいても全体集団同様に、化学療法と比較して臨床的有意なPFSの改善を示した。クロスオーバー率が高いにもかかわらず、アジア人におけるPFS2はニボ+イピが化学療法よりも優れており、治療後も臨床的ベネフィットを得られることを示唆している(24ヵ月後のPFS2率はニボ+イピ群93%対ケモ群74%)。安全性も既報と一致していた。サンプルサイズは小さいものの、本結果はアジア人においてもニボ+イピ療法がMSI-H/dMMR mCRC患者1次治療における標準治療となる可能性を支持するものだ」とした。

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、日本人サブグループ解析(ALINA)/日本臨床腫瘍学会

 ALK阻害薬アレクチニブは、2024年8月28日に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得している。本承認は、ALK融合遺伝子陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施された国際共同第III相試験「ALINA試験」1)の結果に基づくものである。本試験の用量は、切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する承認用量(1回300mg、1日2回)の2倍量となる1回600mg、1日2回であり、日本人集団における安全性や薬物動態に関する解析が求められていた。そこで、ALINA試験の日本人集団の有効性、安全性、薬物動態について解析が行われ、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回、2年間または再発まで) 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS、全生存期間、安全性など[薬物動態解析]アレクチニブとその主要代謝物の血漿中薬物濃度 今回は日本人集団の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は全体集団と同様であったが、病期についてStageIBの患者は含まれなかった。StageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群0%/13%/87%(全体集団:11%/36%/53%)、化学療法群0%/35%/65%(同:9%/35%/55%)であった。・DFSイベントはアレクチニブ群27%(4例)、化学療法群35%(7例)に認められた(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.13~1.67[全体集団では、同:0.24、0.13~0.43])。・アレクチニブとその主要代謝物の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、AUC0-8h)について、ALINA試験の日本人集団とALEX試験(切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象とした海外第III相試験)の非日本人集団を比較した結果、いずれも両集団に有意差はみられなかった。・アレクチニブとその主要代謝物のトラフ濃度について、ALINA試験の日本人集団と非日本人集団を比較した結果、両集団に有意差はみられなかった。・日本人集団の安全性の結果は、全体集団と同様であった。日本人集団の全例に少なくとも1件の有害事象が認められたが、その多くはGrade1~2であった。Grade3~4の有害事象はアレクチニブ群33%(5/15例)、化学療法群40%(8/20例)に認められた。・投与中止に至った有害事象は、化学療法群が10%(2/20例)に発現したが、アレクチニブ群は0例であった。ただし、日本人集団ではアレクチニブ群の有害事象による減量が53%(8/15例)と高率であり(全体集団は26%[33/128例])、用量強度(dose intensity)中央値は日本人集団では75%であった(全体集団は99%)。減量に至った有害事象の内訳はCPK増加(2例)、ALT増加、AST増加、血中ビリルビン増加、便秘、湿疹、倦怠感、筋骨格硬直、斑状丘疹状皮疹(各1例)であった。 本結果について、堀之内氏は「日本人患者に対してアレクチニブを1回600mg、1日2回投与した結果、薬物動態パラメータは非日本人集団と同様であった。DFSについて、全体集団と同様に日本人集団でもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。日本人患者に対するアレクチニブ1回600mg、1日2回投与は忍容性が良好であり、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。日本人集団の安全性のデータは、全体集団と同様であった」とまとめた。本試験の日本人集団でアレクチニブの減量が多かったことについて、「日本では1回300mg、1日2回の用量での使用に慣れていることから、有害事象が発現した際に減量に至りやすかったのではないかと考えている」と考察した。 本発表後に実施されたプレスリリースセッションでは、有害事象発現時の対応について、堀之内氏は「海外では減量ではなく中断して再開することで、有害事象の管理が可能である場合も存在することが知られており、本試験でも全体集団では減量の前にまず中断して経過をみられている事例が報告されている。有害事象発現時には、まずは中断し、それでも管理が難しい場合に減量とするのが良いのではないか」と考えを述べた。

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乳がんdose-dense PTX療法、Peg Gは安全に省略可能/日本臨床腫瘍学会

 乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法は好中球減少症を引き起こすリスクが高いため、予防的に持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(Peg G)が投与されることが多い。今回、Peg Gを省略したdose-denseパクリタキセル療法であってもスケジュールを遅延させることなく治療の完了が可能であり、安全性に問題はなく、薬剤費が削減できることを、東北労災病院の大竹 かおり氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 これまでの報告で、パクリタキセルを高用量で投与する場合であってもPeg Gを有効かつ安全に省略できることが示唆されている。Peg Gの有害事象や薬剤費というリスクを低減できる可能性があるが、東アジア人では化学療法による骨髄抑制が生じやすい傾向があるため、東アジア人におけるエビデンスが求められていた。そこで大竹氏らは、東北労災病院の乳がん患者のデータをレトロスペクティブに解析し、dose-denseパクリタキセル療法でPeg Gを省略した場合の有効性と安全性を評価した。 対象は、2019年2月~2024年3月にdose-dense EC療法を行い、dose-denseパクリタキセル療法を4サイクル完了した患者で、投与スケジュール、有害事象、相対用量強度(relative-dose-intensity)、薬剤費をPeg G投与群とPeg G非投与群で比較した。なお、Peg G非投与群で好中球減少症が発現した場合はPeg Gの投与が認められた。 主な結果は以下のとおり。・合計48例の患者が解析対象となり、Peg G投与群が15例、Peg G非投与群が33例であった。年齢中央値は49歳(範囲:31~66)、全例がアジア人で、ベースライン時の特性は両群でバランスがとれていた。・相対用量強度は両群ともに高く、投与群は0.961、非投与群は0.985で両群間に有意差は認められなかった(p=0.125)。・各サイクルの投与予定日に、非投与群で好中球減少症のためにPeg Gの投与が必要になったのは最大(3サイクル目)で12.1%であった。・各サイクルの1日目に好中球絶対数が1,000/µL超であった割合は、非投与群では4サイクル目に87.9%に低下したが、両群間に有意差は認められなかった(p=0.796)。・パクリタキセル投与を7週間以内に4サイクル完了した割合は、両群で同等であった(p=0.561)。・投与群および非投与群で発現した非血液毒性は、疼痛がそれぞれ87%(うちGrade3以上が7%)および91%(45%)、浮腫が47%(0%)および48%(3%)、神経障害が87%(7%)および91%(27%)であった。・4サイクルの平均薬剤費は、投与群が56万4,681円、非投与群が17万9,214円であり、両群間に有意差が認められた(p<0.001)。 これらの結果より大竹氏は、好中球などの血液検査の必要性を強調したうえで、「アジア人に対する乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法において、Peg Gの省略は有望な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

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初発Ph+ALLへのポナチニブvs.イマチニブ、年齢別・バリアント別のMRD陰性とPFS(PhALLCON)/日本臨床腫瘍学会

 新たにフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)と診断された成人患者に対してポナチニブとイマチニブを比較した第III相PhALLCON試験では、すでに主要評価項目である導入療法終了時の微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)率において、ポナチニブ群(34.4%)がイマチニブ群(16.7%)に比べて有意に高かったことが2024年のJAMA誌に報告されている。日本も参加している本試験の結果を受け、米国では2024年3月にPh+ALLの1次治療にFDAより迅速承認されている(現在、日本で1次治療に承認されている薬剤はイマチニブのみ)。今回、本試験における年齢およびBCR::ABL1バリアント別の微小残存病変(MRD)陰性割合と無増悪生存期間(PFS)、さらに造血幹細胞移植(HSCT)を受けなかった患者における治療中に発現した有害事象(TEAE)の結果について、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で国立がん研究センター東病院の南 陽介氏が発表した。 本試験では、新たにPh+ALLと診断された成人245例(うち日本人13例)を、ポナチニブ群(開始用量30mg1日1回、導入療法終了後はMRD陰性CRが得られた時点で15mgに減量)またはイマチニブ群(600mg1日1回)に2:1に無作為に割り付け、低用量の化学療法(導入療法3サイクル、強化療法6サイクル、維持療法11サイクル)と併用した。化学療法後はポナチニブまたはイマチニブの単剤投与が行われた。HSCTは治験責任医師の判断に従った。主要評価項目はMRD陰性CR率、主な副次評価項目は無イベント生存期間(EFS)であった。今回の事後解析では、年齢(65歳以上/65歳未満)、BCR::ABL1バリアント(p190/p210)で分け、任意の時点でのMRD陰性(MR4:BCR::ABL1IS≦0.01%)の割合とPFS(治療終了時MRD陰性未達、MRD陰性の消失、全死亡、導入療法終了時CR未達、CRからの再発)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2022年8月12日)に中央検査機関でp190/p210が確認された232例(ポナチニブ群:154例、イマチニブ群:78例、追跡期間中央値19.4ヵ月)において、MRD陰性の割合はポナチニブ群68%、イマチニブ群50%であった(相対リスク[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.05~1.73)。各サブグループにおいても、統計学的有意差は認められなかったものの、ポナチニブ群/イマチニブ群のMRD陰性率(RR:95%CI)は、65歳未満が69%/49%(1.41:1.06~1.86)、65歳以上が62%/53%(1.16:0.67~1.99)、p190が70%/57%(1.24:0.95~1.62)、p210が60%/36%(1.67:0.93~2.98)と、すべてのサブグループでベネフィットが認められた。・PFS中央値は、全体ではポナチニブ群(20.2ヵ月)がイマチニブ群(7.5ヵ月)の2倍以上長かった(ハザード比[HR]:0.52、95%CI:0.36~0.73)。各サブグループにおいても、ポナチニブ群/イマチニブ群のPFS中央値(HR:95%CI)は、65歳未満では18.7/7.3ヵ月(0.50:0.34~0.74)、65歳以上では22.5/7.5ヵ月(0.65:0.28~1.49)、p190では22.5/9.3ヵ月(0.52:0.34~0.81)、p210では9.0/4.1ヵ月(0.48:0.26~0.90)と一貫していた。・HSCTを受けた患者の割合は、全体でポナチニブ群が36%とイマチニブ群の47%より低く、MRD陰性が得られた患者においてもポナチニブ群32%、イマチニブ群56%で同様であった。・HSCTを受けなかった患者では、曝露期間中央値がポナチニブ群(107例)で12.8ヵ月とイマチニブ群(42例)の5.1ヵ月より2倍以上長かった。・TEAEの発現割合は、動脈閉塞イベントおよび静脈血栓塞栓イベントを含め同程度であった。TEAEによる投与中断の割合はポナチニブで高く、TEAEによる減量・投与中止の割合は同程度であった。 今回の結果から、南氏は「Ph+ALLの1次治療でポナチニブ+化学療法を受けた症例は、イマチニブ+化学療法を受けた症例に比べて、年齢およびBCR::ABL1バリアントのどのサブグループにおいてもMRD陰性の割合が大幅に高く、PFSも延長し、さらにMRD陰性が得られた患者ではHSCTを受けた割合も低かったことが示された」とまとめた。また、ポナチニブで懸念されていた血管毒性がイマチニブと同程度であったことについて、「効果が得られた場合に減量するという設定によるものと思われる」と述べた。

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大腸がん1次治療のセツキシマブ、RAS/BRAF野生型の左側、男性に有効(DEEPER)/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験はJACCRO(日本がん臨床試験推進機構)が主導し、RAS野生型切除不能大腸がんの1次治療として、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)の上乗せとして抗EGFR抗体薬・セツキシマブと抗VEGF抗体薬・ベバシズマブの有用性を比較検討した無作為化第II相試験である。これまでにセツキシマブ併用群はベバシズマブ併用群に比べ、主要評価項目である腫瘍縮小率(DpR)が有意に高かったことが報告されている。2025年3月6~8日に行われた第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionにおいて、聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座の砂川 優氏が、サブグループ解析を含む本試験の最終解析を報告した。・試験デザイン:国内ランダム化第II相試験・対象:未治療のRAS野生型転移大腸がん(mCRC)、ECOG PS0~1・セツキシマブ(CET)群:mFOLFOXIRI(イリノテカン150mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2、5-FU 2,400mg/m2)+セツキシマブ・ベバシズマブ(BEV)群:mFOLFOXIRI+ベバシズマブ・評価項目:[主要評価項目]DpR[副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)など 今回は観察期間5年における最終生存解析とともに、原発巣の位置、性別、肝転移の状態、BRAF遺伝子などのサブタイプ別の探索的解析の結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・CET群に179例、BEV群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。・データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET群で13.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.2~17.5)、BEV群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。・一方で、RAS/BRAF野生型の左側症例(178例)に限定して行われた解析では、PFS中央値はCET群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET群で有意に延長した(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OS中央値はCET群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET群では50ヵ月を超える結果が示されたものの、統計学的有意差は認められなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。・さらに、RAS/BRAF野生型左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた解析(125例)では、OS中央値はCET群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET群で有意に延長した(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)が、肝限局転移例ではこの傾向は見られなかった(HR:1.17、95%CI:0.61~2.24)。・RAS/BRAF野生型左側症例では、男性患者においてCET群がBEV群よりもOSの延長を示した(52.8ヵ月vs. 40.2ヵ月、HR:0.59、95%CI:0.38~0.91)が、女性患者ではこの傾向はみられなかった(HR:1.19、95%CI:0.67~2.14)。 砂川氏は「現在、RAS野生型進行大腸がん1次治療の標準療法は2剤併用の化学療法+抗EGFR抗体薬であるが、今後はRAS/BRAF野生型の左側症例についてはmFOLFOXIRIの3剤併用+セツキシマブ療法が有用なオプションとなり、とくに転移が肝臓に限局していない患者や男性患者には有効である可能性がある」とまとめた。 ディスカッサントを務めたDuke大学のJohn Strickler氏は、同じくRAS野生型大腸がん1次治療として抗EGFR抗体薬のパニツムマブとベバシズマブを比較した日本のPARADIGM試験をはじめとした関連試験の結果を紹介し、化学療法は2剤か3剤か、抗EGFR抗体薬に何を選択するか、最適な患者の選択基準など、多くの論点があることを紹介した。質疑応答では、セツキシマブの有用性の男女差が出た理由について質問があった。砂川氏は「抗腫瘍効果に男女差があるかについて先行研究を調べたが、むしろ女性のほうが有効だという結果だった。n数が少なく確定的ではないものの、女性は男性よりも皮膚毒性が強く出ており、治療強度が弱まった可能性がある」とした。

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切除不能進行胃がん1次治療、sugemalimab追加でOS・PFS改善(GEMSTONE-303)/JAMA

 未治療の切除不能な局所進行または転移を有する胃・食道胃接合部腺がんの治療において、プラセボ+化学療法と比較してsugemalimab(完全ヒト型抗プログラム細胞死リガンド1[PD-L1]抗体)+化学療法は、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・北京大学のXiaotian Zhang氏らGEMSTONE-303 Investigatorsが実施した「GEMSTONE-303試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年2月24日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 GEMSTONE-303試験は、切除不能な局所進行または転移を有する胃・食道胃接合部腺がんの1次治療における化学療法(カペシタビン+オキサリプラチン[CAPOX])へのsugemalimab追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年4月~2021年12月に中国の54施設で患者を登録した(CStone Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 PD-L1の複合発現スコア(CPS)が5点以上、全身療法による前治療を受けていない患者479例を対象とした。これらの患者を、3週間ごとに最長24ヵ月間sugemalimab 1,200mgを静脈内投与する群(241例)またはプラセボを投与する群(238例)に割り付け、全例に3週間ごとに最長6サイクルCAPOXを投与した。 主要評価項目は、OSおよび担当医評価によるPFSであった。中央判定によるPFS、客観的奏効率も優れる 全例がアジア人であった。sugemalimab群の年齢中央値は63歳(範囲:25~75)、男性が71.4%、PD-L1 CPSが10点以上の患者の割合は53.9%であり、プラセボ群はそれぞれ63歳(26~75)、74.8%、53.8%だった。追跡期間中央値は、それぞれ25.1ヵ月および26.3ヵ月であった。 OS中央値は、プラセボ群が12.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.6~14.1)であったのに対し、sugemalimab群は15.6ヵ月(13.3~17.8)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.75[95%CI:0.61~0.92]、p=0.006)。 また、PFS中央値は、プラセボ群の6.1ヵ月(95%CI:5.1~6.4)に比べ、sugemalimab群は7.6ヵ月(6.4~7.9)であり有意に優れた(HR:0.66[95%CI:0.54~0.81]、p<0.001)。 副次評価項目である盲検下独立中央判定のPFS中央値(PD-L1 CPS 5点以上の患者のHR:0.72[p=0.002]、同10点以上の患者のHR:0.70[p=0.02])、および客観的奏効率(sugemalimab群68.6%vs.プラセボ群52.7%、群間差:15.9%[95%CI:6.6~25.2]、p=0.001)はsugemalimab群で有意に優れ、奏効期間中央値(PD-L1 CPS 5点以上の患者:6.9ヵ月vs.4.6ヵ月、同10点以上の患者:7.2ヵ月vs.5.6ヵ月)もsugemalimab群で良好であった。新たな安全性シグナルは認めない Grade3~5の治療関連有害事象は、sugemalimab群で53.9%、プラセボ群で50.6%に発現した。Grade3~5の治療関連有害事象のうち最も頻度が高かったのは血小板数の減少(sugemalimab群18.3%vs.プラセボ群16.0%)であった。 試験薬の投与中止に至った有害事象は、sugemalimab群17.8%、プラセボ群12.2%に認めた。治療関連の重篤な有害事象はそれぞれ33.2%および25.3%にみられ、最も頻度が高かったのは血小板数の減少(6.2%vs.6.8%)、貧血(3.3%vs.2.1%)、好中球数の減少(2.5%vs.1.7%)であった。死亡の原因となった有害事象は、それぞれ7例(2.9%)および9例(3.8%)に発現した。新たな安全性シグナルは認めなかった。 著者は、「PFSのHRはCPS 5~9点の患者で0.78、10点以上の患者で0.58、OSのHRはそれぞれ0.88および0.65であり、これはCPSが高いほどsugemalimabの有益性が優れるとの予測が可能であることを裏付けている」「これらの知見は、PD-L1 CPSが5点以上の患者の1次治療における新たな治療選択肢としてのsugemalimab+化学療法の併用を支持するものである」としている。

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TTF-1陰性Non-Sq NSCLCに対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(LOGIK2102)/日本臨床腫瘍学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とペメトレキセドを含む化学療法の併用療法が広く用いられている。しかし、TTF-1陰性の非扁平上皮(Non-Sq)NSCLCでは、ペメトレキセドの治療効果が乏しいことも報告されている。そこで、ペメトレキセドを含まないレジメンとして、アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセルの有用性を検討する国内第II相試験「LOGIK2102試験」が実施された。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)において、白石 祥理氏(九州大学病院 呼吸器内科)が本試験の結果を報告した。・試験デザイン:国内第II相単群試験・対象:TTF-1陰性(IHC)で、化学療法による治療歴のないStageIII/IVまたは再発Non-Sq NSCLC患者52例・試験群:アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(4サイクル)→アテゾリズマブ(病勢進行まで)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効割合(ORR)、奏効期間(DOR)、治療継続期間、安全性など・解析計画:PFS中央値の期待値を6.7ヵ月とし、80%信頼区間の下限値が4.5ヵ月を上回った場合に主要評価項目達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は68歳(範囲:41~81)、男性の割合は79%、PS0/1の割合は31%/69%であった。組織型は、腺がん/非腺がん(扁平上皮がんを含まない)の割合が63%/37%であった。臨床病期は、StageIII/StageIV/再発の割合が4%/85%/12%であった。PD-L1の発現状況は、1%未満/1~49%/50%の割合が42%/35%/21%であった。・主要評価項目のPFSについて、PFS中央値は4.9ヵ月(80%信頼区間[CI]:4.3~5.9、95%CI:4.2~6.1)であり、主要評価項目は達成されなかった。・PFSのサブグループ解析において、PS0の集団、非腺がんの集団で良好な傾向にあった。PFS中央値は、PS0の集団が6.6ヵ月(95%CI:4.3~推定不能)、PS1の集団が4.4ヵ月(同:3.6~5.9)であり、非腺がんの集団が7.2ヵ月(同:5.6~9.3)、腺がんの集団が4.2ヵ月(同:2.7~5.6)であった。・OS中央値は12.9ヵ月(95%CI:9.7~推定不能)であった。・組織型別にみたOS中央値は、非腺がんの集団が未到達(95%CI:10.3~推定不能)、腺がんの集団が10.7ヵ月(同:7.3~推定不能)であった。・ORRは56.9%(いずれもPR)であり、DOR中央値は4.4ヵ月であった。・カルボプラチン+nab-パクリタキセルを4サイクル実施した患者の割合は66%であり、アテゾリズマブを8サイクル以上実施した患者の割合は35%にとどまった。・本試験における有害事象発現状況は、既報のアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセルによる治療成績と同様であった。 本結果について、白石氏は「本試験は、TTF-1陰性の進行Non-Sq NSCLC患者を対象とした初の前向き試験であったが、主要評価項目は達成されなかった。TTF-1陰性の進行Non-Sq NSCLC患者の予後は不良であり、治療法の開発が必要である。今後については、TTF-1陰性の進行Non-Sq NSCLC患者に対するプラチナ製剤+ペメトレキセド+抗PD-1/L1抗体のリアルワールドでの治療成績と、本試験の治療成績を比較する研究を計画・実施中である」とまとめた。なお、新規治療法の開発について、TTF-1陰性の進行・再発Non-Sq NSCLCに対するデュルバルマブ+トレメリムマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセルの有用性を検討する第II相試験(WJOG17223L、TURNING試験)などが、進行中である。

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術前補助療法+ニボルマブが乳がん患者の病理学的完全奏効を改善

 乳がんのタイプとして最も多いのは、エストロゲン受容体陽性(ER+)/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2−)乳がんであり、乳がん全体の70%を占める。このタイプの乳がん患者では、補助化学療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の達成率が低いことが知られている。しかし、術前補助療法に免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名オプジーボ)を追加することで、ER+/HER2−乳がん患者のpCR達成率が向上したとする第3相臨床試験の結果が発表された。オプジーボの製造元であるブリストル・マイヤーズ スクイブ社の資金提供を受けて米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのHeather McArthur氏らが実施したこの臨床試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月21日掲載された。 多くのがん細胞は、PD-L1という分子を発現してT細胞表面のPD-1と結合することで、T細胞の攻撃から逃れることが知られている。抗PD-1抗体であるニボルマブは、T細胞のPD-1に結合してがん細胞との相互作用を阻害することで、免疫にかけられたブレーキを解除し、T細胞の免疫機能を活性化させる。 この試験では、新たに乳がんと診断された、腫瘍グレードが2または3でER発現率が1〜10%のER+/HER2−の原発性乳がん患者521人を対象に、術前補助療法にニボルマブを追加することで、患者のpCR達成率が向上するかどうかが評価された。対象者は、アントラサイクリン系抗がん薬とタキサン系抗がん薬をベースにした術前補助療法にニボルマブを追加する群(ニボルマブ群)とプラセボを追加する群(プラセボ群)にランダムに割り付けられた。 ニボルマブ群では、最初の12週間は、ニボルマブ360mgを3週間ごとに、タキサン系抗がん薬のパクリタキセルを毎週投与した。その後、ニボルマブ(360mgを3週間ごと、または240mgを2週間ごと)を、アントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドと併用した。プラセボ群では、同様のプロトコルでニボルマブの代わりにプラセボを投与した。最終的に、有効性に関してはニボルマブ群257人とプラセボ群253人を対象に、安全性に関してはそれぞれ262人と255人を対象に評価された。 その結果、pCR達成率は、ニボルマブ群で24.5%であったのに対しプラセボ群では13.8%にとどまっており、前者のpCR達成率の方が有意に高いことが明らかになった(P=0.0021)。特に、PD-L1の発現率が1%以上と判定された患者でのpCR達成率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%であり、ニボルマブ群で大きな効果が得られた。安全性に関しては、これまでに報告されていない有害事象は認められなかったが、ニボルマブ群では5人が死亡し、うち2人の死因はニボルマブの毒性であることが確認された。プラセボ群では死亡例は認められなかった。 McArthur氏は、「これらの結果が治療を決定する際の情報として役立ち、それにより乳がん患者の転帰が改善し、最終的には治癒率の向上につながることを期待している」と述べている。

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尿路上皮がんの遺伝子異常に基づく治療薬「バルバーサ錠3mg/4mg/5mg」【最新!DI情報】第34回

尿路上皮がんの遺伝子異常に基づく治療薬「バルバーサ錠3mg/4mg/5mg」今回は、経口FGFRチロシンキナーゼ阻害薬「エルダフィチニブ(商品名:バルバーサ錠3mg/4mg/5mg、製造販売元:ヤンセンファーマ)」を紹介します。本剤は、日本国内で初めてかつ唯一の遺伝子異常に基づく尿路上皮がん治療薬であり、FGFR遺伝子異常を有する患者の予後の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がんの適応で、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはエルダフィチニブとして1日1回8mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回9mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、網膜剥離(12.6%)、角膜障害(5.2%)、高リン血症(78.5%)、重度の爪障害(爪甲剥離症[23.0%]、爪囲炎[11.9%]、爪ジストロフィー[8.1%]など)、手足症候群(30.4%)、急性腎障害(3.0%)があります。その他の副作用は、下痢(54.8%)、口内炎(45.9%)、食欲減退、味覚不全、口内乾燥、脱毛症、皮膚乾燥、爪甲脱落症、ALT増加(いずれも20%以上)、貧血、低ナトリウム血症、ドライアイ、霧視、流涙増加、眼球乾燥症、鼻出血、悪心、便秘、嘔吐、口腔内潰瘍形成、爪変色、爪の障害、疲労、無力症、AST増加、体重減少(いずれも5%以上20%未満)、結膜炎、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、視力低下、視力障害、眼瞼炎、白内障、血管石灰化、鼻乾燥、肝細胞融解、高ビリルビン血症、肝機能異常、腹痛、消化不良、発疹、爪線状隆起、湿疹、乾皮症、そう痒症、皮膚亀裂、爪痛、爪破損、皮膚剥脱、皮膚病変、皮膚毒性、過角化、爪の不快感、皮膚萎縮、粘膜乾燥、血中クレアチニン増加(いずれも5%未満)、手掌紅斑、爪床出血(いずれも頻度不明)があります。本剤は、ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験において、胚・胎児死亡、着床後胚損失率高値および催奇形性が報告されています。そのため、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。妊娠可能年齢にある女性には、服用中および服用中止後1ヵ月間は妊娠を避けるよう指導します。また、男性には、服用中および服用中止後1ヵ月間は避妊するよう指導します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、遺伝子異常を持つ線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)というタンパク質の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖を抑える抗悪性腫瘍薬です。2.がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がんに用いられます。3.PD-1/PD-L1阻害薬による治療が可能な場合には、これらの治療が優先されます。4.妊婦または妊娠している可能性のある人は、必ず医師または薬剤師に伝えてください。5.視力の低下など目の異常が現れた場合には、ただちに受診してください。<ここがポイント!>尿路上皮がんは、腎盂、尿管、膀胱、尿道などに発生するがんであり、とくに膀胱に多く認められます。根治的切除が不可能、もしくは転移を有する尿路上皮がんの治療は薬物療法が主体となり、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬が用いられます。転移を有する尿路上皮がんと診断された患者の約20%は、FGFR遺伝子異常を有しています。エルダフィチニブは、1日1回経口投与されるFGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、尿路上皮がんに対する日本国内で初めてかつ唯一の遺伝子異常に基づく治療薬です。FGFR1~4のキナーゼ活性を阻害し、FGFR3融合遺伝子を有するヒト膀胱がん細胞株(RT-112およびRT-4)に対して増殖抑制作用を示します。PD-1/PD-L1阻害薬を含む治療歴のあるFGFR遺伝子異常を有する根治切除不能な尿路上皮がん患者を対象とした国際共同第III相試験(BLC3001試験コホート1)において、主要評価項目である全生存期間(OS)の中央値は、本剤群で12.06ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.28~16.36)、化学療法群で7.79ヵ月(95%CI:6.54~11.07)であり、本剤群でOSが有意に延長し、死亡リスクが36%低下しました(ハザード比:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.0050、非層別log-rank検定)。

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CDK4/6阻害薬治療中に進行したHR+HER2-転移乳がん、生存に関連する因子は?

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がんにおいて、内分泌療法+CDK4/6阻害薬による治療中に病勢進行した後の実臨床における無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)をイタリア・European Institute of Oncology IRCCSのPier Paolo Maria Berton Giachetti氏らが評価した。その結果、「若年」「de novo転移病変」「内臓転移」が独立してPFS短縮と関連し、「12ヵ月を超えるCDK4/6阻害薬投与」がOS延長と関連していた。また、内臓転移のある患者には経口化学療法が有益である可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2025年2月3日号に掲載。 本研究は多施設後ろ向きコホート研究で、2015年4月22日~2023年1月31日にHR+HER2-転移乳がんと診断され、内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後に内分泌療法ベースの治療または化学療法ベースの治療を受けた506例(病勢進行後、CDK4/6阻害薬、抗体薬物複合体、免疫チェックポイント阻害薬、PARP阻害薬を投与された患者は除外)を対象とした。治療タイプ、臨床病理学的特徴、CDK4/6阻害薬の前治療期間に基づいて解析した。治療タイプについては、内分泌療法ベースの治療はエベロリムス+エキセメスタンと内分泌療法単独、化学療法ベースの治療は静注化学療法と経口化学療法に分けて解析した。主要評価項目は、実臨床におけるPFS(内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後の最初の薬剤治療開始から病勢進行/あらゆる原因による死亡までの期間)、副次評価項目は、実臨床におけるOS(内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後、あらゆる原因による死亡までの期間)とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者506例(診断時年齢中央値:52.4歳、四分位範囲:44.6~62.8)において、PFS不良と関連する独立因子は、内臓転移(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.17~1.80、p=0.008)とde novo転移病変(HR:1.25、95%CI:1.01~1.54、p=0.04)であった。・CDK4/6阻害薬の投与期間が長いほど(OSのHR:0.55、95%CI:0.41~0.73、p<0.001)、また年齢が高いほど(PFSのHR:0.99、95%CI:0.98~1.00、p=0.03)、予後良好であった。・静注化学療法および内分泌療法の治療は、経口化学療法と比較してPFS短縮と関連していた(静注化学療法のHR:1.45、95%CI:1.11~1.89、p=0.006、エベロリムス+エキセメスタンのHR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.02、内分泌療法単独のHR:1.38、95%CI:1.05~1.89、p=0.02)。・12ヵ月超のCDK4/6阻害薬投与がOS延長と関連していた(HR:0.55、95%CI:0.41~0.73、p<0.001)。・内臓転移を有する患者では、静注化学療法は経口化学療法と比較してOS短縮と関連していた(HR:1.52、95%CI:1.03~2.24、p=0.04)。 このコホート研究の結果から、著者らは「CDK4/6阻害薬ベースの治療で得られた腫瘍制御期間と内臓転移の有無が、治療決定に影響する可能性のある主要因子として浮上した。経口化学療法は特定の患者グループに有益な可能性がある」と結論した。

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乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。 ctDNAに基づく分子的残存病変(MRD)の検出は、再発リスクの高い患者を特定するための戦略となる。今回、WGSに基づく超高感度のtumor-informed ctDNA プラットフォームを使用して早期乳がん患者のプロファイリングを実施した。本研究では、転移のない原発性乳がん78例(トリプルネガティブ乳がん23例、HER2+乳がん35例、HR+乳がん18例、不明2例)の血漿617検体(中央値:8、範囲:2~14)を分析。検体は、診断時(治療前)、術前化学療法の2サイクル目、術後(術前化学療法を受けた場合)、術後1年間は3ヵ月ごと、その後は6ヵ月ごとに採取された。血漿DNAはNeXT Personal MRDプラットフォームを用いて分析され、1例当たり1,451バリアント(中央値)を追跡する個別化ctDNAシークエンスパネルを作成した。MRD検出は臨床転帰と相関していた。  主な結果は以下のとおり。・ctDNAは2.19~204,900PPM(中央値:405)の範囲で検出され、検出されたctDNAの39%は100PPM未満の超低レベルであった。・診断時の検体があった50例中49例(98%)は、治療前にctDNAが検出されていた。・追跡期間中央値76ヵ月(範囲:5~118)において、ctDNAの検出は、再発高リスク(log-rank検定:p<0.0001)と全生存期間の短縮(p<0.0001)に関連し、ctDNA検出から臨床的な再発までのリードタイム中央値は15ヵ月(範囲:0.9~61.5)であった。・再発した11例すべてでMRDが同定され、MRD初回検出時のctDNA中央値は13.1PPMであった。・ctDNAが検出されなかった64例はすべて、追跡期間中に再発がみられなかった。・エクソームを用いたMRD検出アッセイより、感度とリードタイムが改善した。 本研究の結果、全ゲノムを利用したMRDアッセイでは乳がん再発までのリードタイムが長く、無再発生存と強く関連していた。また、診断時のctDNA検出率は、エクソームを利用したtumour-informedアッセイで報告された検出率より高かった。

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ASCO-GI 2025会員レポート

レポーター紹介2025年1月23~25日に米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)が米国・サンフランシスコで開催された。東北大学・腫瘍内科の笠原 佑記氏(上部消化器がん担当)と大内 康太氏(下部消化器がん担当)が重要演題をピックアップし、結果を解説する。食道がんPhase II study of neoadjuvant chemotherapy with fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel for resectable esophageal squamous cell carcinoma.(abstract#418)切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル(FLOT療法)による術前化学療法の安全性と有効性を評価した、日本発の第II相多施設共同試験の結果が報告された。病理学的奏効率(pRR)は43.4%(95%信頼区間[CI]:29.8~57.7、p=0.00002)であり、主要評価項目を達成した。また、R0切除率は83.0%、病理学的完全奏効率(pCR)は13.2%と良好な結果が得られた。とくに注目すべき点として、DCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法で課題とされる発熱性好中球減少症の発生率が1.9%と相対的に低かったことが挙げられる。これにより、FLOT療法は効果と安全性のバランスに優れた新たな治療選択肢となりうる可能性が示された。胃がんNivolumab (NIVO) + chemotherapy (chemo) vs chemo as first-line (1L) treatment for advanced gastric cancer/gastroesophageal junction cancer/esophageal adenocarcinoma (GC/GEJC/EAC): 5-year (y) follow-up results from CheckMate 649.(abstract#398)ニボルマブ+化学療法の有効性と安全性について、CheckMate 649試験の5年フォローアップデータが報告された。PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)、化学療法単独群で11.1ヵ月(95%CI:10.1~12.1)であり、ハザード比(HR)は0.71(95%CI:0.61~0.82)であった。60ヵ月時点の生存割合は、ニボルマブ+化学療法群で16%、化学療法単独群で6%であった。昨年のASCO-GI 2024で報告された48ヵ月時点での生存割合(それぞれ17%、8%)と比較すると、ニボルマブ併用により生存率の改善と長期奏効がもたらされていることが示唆される。本試験の結果は、CheckMate 649試験が胃がんの1次治療の標準を大きく変えた重要な試験であることをあらためて認識させるものであった。Final analysis of the randomized phase 2 part of the ASPEN-06 study: A phase 2/3 study of evorpacept (ALX148), a CD47 myeloid checkpoint inhibitor, in patients with HER2-overexpressing gastric/gastroesophageal cancer (GC).(abstract#332)HER2陽性胃・食道胃接合部がんの2次・3次治療における、抗CD47抗体evorpacept併用療法の有効性と安全性を評価した第II相無作為化比較試験(ASPEN-06)の結果が報告された。evorpaceptは、CD47に対する高い親和性を持ちつつ、不活性化されたFc領域を有することで、従来のCD47阻害による課題の1つであった赤血球減少を回避しながら、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を増強することが可能な薬剤である。本試験では、トラスツズマブ+ラムシルマブ+パクリタキセル(TRP群)と、これにevorpaceptを併用した群(Evo-TRP群)に患者を無作為に割り付けた。奏効率(ORR)は、Evo-TRP群で40.3%、TRP群で26.6%であり、主要評価項目であるヒストリカルコントロール(ラムシルマブ+パクリタキセル療法、想定奏効率30%)との比較では統計学的有意差を示すことはできなかった(p=0.095)。しかしながら、治療前の生検にてHER2陽性が確認された患者に限定すると、Evo-TRP群の奏効率は54.8%と高く、evorpaceptが抗HER2療法の効果を高める可能性が示唆された。evorpaceptは、その作用機序からトラスツズマブ以外の抗体薬との併用においても抗腫瘍効果の増強が期待できる薬剤であり、今後のさらなる臨床応用の発展が期待される。大腸がんASCO-GI 2025では、切除不能大腸がんにおけるTargeted TherapyとImmunotherapyの双方においてPractice changingな発表が行われた。本稿では3つの注目演題を中心に報告する。BREAKWATER: Analysis of first-line encorafenib + cetuximab + chemotherapy in BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer.(abstract#16)1つ目の注目演題は、BRAF V600E変異を有する未治療の切除不能大腸がん患者を対象に実施されたBREAKWATER試験である。 BRAF V600E変異陽性大腸がんに対しては、BEACON試験(Kopetz S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1632-1643.)の結果から、現在は2次治療あるいは3次治療でエンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)の2剤併用療法もしくはエンコラフェニブ+セツキシマブ+ビニメチニブの3剤併用療法が標準治療として用いられている。2剤併用療法と3剤併用療法の使い分けについては、BEETS試験(abstract#164)の結果から2剤併用療法の有用性が示されたが、3ヵ所以上の遠隔転移など予後不良因子を有する群においては3剤併用療法が有用である可能性が示唆された。今回報告されたBREAKWATER試験は、 BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんに対する1次治療として、EC±化学療法と標準治療を比較した非盲検多施設共同第III相試験である。本試験は当初、EC群、EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の3群に割り付けを行う試験デザインで開始されたが、その後EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の2群に1対1で割り付ける試験デザインに変更された。2022年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)では、Safety Lead-inパートにおける忍容性とPK(薬物動態)の解析結果に加え、少数例での予備的なデータではあるが有望な抗腫瘍効果が示され、注目を集めていた。ASCO-GI 2025では、主要評価項目の1つであるEC+mFOLFOX6併用療法群および標準治療群における盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率の主解析結果、OSの中間解析結果および安全性に関する報告が行われた。EC+mFOLFOX6併用療法群に236例が、標準治療群に243例が無作為に割り付けられ、原発巣占居部位を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点での確定奏効率は、EC+mFOLFOX6併用療法群が標準治療群に比べて有意に高い結果であった(60.9%vs. 40.0%、オッズ比:2.443[95%CI:1.403~4.253]、p=0.0008)。中間解析時点でのOSの中央値は、EC+mFOLFOX6併用療法群で未到達(95%CI:19.8~NE)、標準治療群で14.6ヵ月(95%CI:13.4~NE)であり、immatureではあるがHR:0.47(95%CI:0.318~0.691)という驚くべき数値をもってEC+mFOLFOX6併用療法群で有意に延長していた(p=0.0000454)。Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)発現割合は、EC+mFOLFOX6併用療法群で69.7%、標準治療群で53.9%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。以上の結果を受け、FDA(米国食品医薬品局)は2024年12月に BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんの1次治療としてエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6併用療法を迅速承認しており、本邦においても承認が待たれる。また、今後は BRAF阻害薬がfrontlineで投与される可能性が高いことから、 BRAF阻害薬を含む治療に耐性となった BRAF V600E変異陽性切除不能大腸がんに対する2次治療以降の治療戦略の開発にも注目していきたい。First results of nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) vs NIVO monotherapy for microsatellite instability-high/mismatch repair-deficient (MSI-H/dMMR) metastatic colorectal cancer (mCRC) from CheckMate 8HW.(abstract#LBA 143)2つ目の注目演題は、CheckMate-8HW試験である。MSI-HまたはdMMRの切除不能大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として、現行のガイドライン(『大腸癌治療ガイドライン医師用 2024年版』大腸癌研究会編)では、第III相試験(KEYNOTE-177試験)の結果から1次治療においてはペムブロリズマブ単剤療法が、第II相試験(KEYNOTE-164試験、CheckMate 142試験)の結果からICI未投与の既治療例においてはペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ(Nivo)単剤療法もしくはイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi+Nivo)併用療法がそれぞれ強く推奨されている。しかし、Nivo単剤療法とIpi+Nivo併用療法とを直接比較した試験はこれまでに行われていなかった。CheckMate-8HW試験は、ICI未投与のMSI-H/dMMR切除不能大腸がんを対象として、Ipi+Nivo併用療法の有効性と安全性をNivo単剤療法または医師選択化学療法と比較検討した多施設共同非盲検第III相試験である。昨年開催されたASCO-GI 2024では、本試験の主要評価項目の1つである1次治療におけるIpi+Nivo併用群と医師選択化学療法群とを比較したBICRの評価による無増悪生存期間(PFS)の解析結果が報告され、HR:0.21(95%CI:0.13~0.35)と大きなインパクトを伴ってIpi+Nivo併用群で有意にPFSが延長していた。ASCO-GI 2025では、もう1つの主要評価項目である、全治療ラインにおけるIpi+Nivo併用群とNivo単剤群とを比較したBICRの評価によるPFSの解析結果、および安全性に関する報告が行われた。Ipi+Nivo併用群に354例が、Nivo単剤群に353例が無作為に割り付けられ、PD-L1発現状態や遺伝子異常を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点でのPFSの中央値は、Ipi+Nivo併用群で未到達(53.8~NE)、Nivo単剤群で39.3ヵ月(22.1~NE)であり、Ipi+Nivo併用群で有意に延長していた(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81、p=0.0003)。BICRに基づく確定奏効率は、Ipi+Nivo併用群で71%(95%CI:65~76)、Nivo単剤群で58%(95%CI:52~64)であり、有意にIpi+Nivo併用群で高かった(p=0.0011)。Grade3/4のTRAE発現割合は、Ipi+Nivo併用群で22%、Nivo単剤群で14%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。CheckMate-8HW試験の結果から、主要評価項目であるPFSの比較において、ASCO-GI 2024では標準化学療法に対する優越性が、今回のASCO-GI 2025ではNivo単剤療法に対する優越性が検証されたことから、Ipi+Nivo併用療法はMSI-H/dMMRの切除不能大腸がんに対する標準治療として確立されていくものと予想される。今後の課題としては、2剤併用療法を用いることで想定される免疫関連有害事象のリスクマネジメントが挙げられ、また本試験ではニボルマブの最長投与期間が2年に設定されていたため、長期病勢制御が得られた場合の適切な治療期間についてはさらなる検討が必要と考えられる。Final analysis of modified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab versus bevacizumab for RAS wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer: The DEEPER trial (JACCRO CC-13). (abstract#17)3つ目の注目演題は、DEEPER試験である。本試験はRAS野生型切除不能大腸がんの1次治療において、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)のパートナーとして、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)と抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)のいずれがより適しているかを比較検討した無作為化第II相試験である(Shiozawa M, et al. Nat Commun. 2024;15:10217.)。主要評価項目は最大腫瘍縮小率(DpR)に設定され、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、セツキシマブ(CET)併用群ではベバシズマブ(BEV)併用群に比べて有意にDpRが高いことが報告された。ASCO-GI 2025では、副次評価項目である生存期間(PFSおよびOS)に関する最終解析の結果が報告された。本試験ではCET併用群に179例、BEV併用群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET併用群で13.9ヵ月(95%CI:12.2~17.5)、BEV併用群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。左側症例におけるOSの中央値はCET併用群で45.3ヵ月(95%CI:37.6~53.1)、BEV併用群で41.9ヵ月(95%CI:34.1~48.7)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.85[95%CI:0.64~1.12]、p=0.25)。一方で、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例(178例)に対象を限定して行われた探索的な解析では、PFSの中央値はCET併用群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV併用群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET併用群で有意にPFSが延長していた(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV併用群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET併用群では50ヵ月を超えるOS中央値が示されたものの、統計学的有意差は認めなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。さらに、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた探索的な解析(125例)では、OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV併用群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET併用群で有意にOSが延長していた(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)。これらの結果から、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例、なかでも非肝限局転移症例においてはmFOLFOXIRI+セツキシマブ併用療法が有望な治療オプションとなる可能性が示されたが、皮疹や下痢などの有害事象発現のリスクや、あくまで探索的な解析結果である点には十分留意してdecision makingに反映する必要がある。なお、未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例を対象とした非盲検多施設共同第III相試験(TRIPLETE試験、Rossini D, et al. J Clin Oncol. 2022;40:2878-2888.)では、抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)に併用する化学療法として3剤併用療法(mFOLFOXIRI)の2剤併用療法(mFOLFOX)に対する優越性が検討されたが、積極的に3剤併用療法を選択するエビデンスは示されなかった。したがって、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例に対する1次治療において、抗EGFR抗体薬に2剤併用療法を選択するのか、3剤併用療法を選択するのかという点についても引き続き議論が必要であるが、DEEPER試験で示された転移臓器との関連がキーポイントとなるかもしれない。今回紹介した注目演題で検討された試験治療は、いずれも有望な抗腫瘍効果を示した一方で、従来の標準治療に比べて相応の有害事象発現リスクの上昇を伴うものである。今後のトランスレーショナルリサーチ(TR)研究によって、真にベネフィットが期待される患者集団の絞り込みや、耐性克服につながる治療戦略が開発されることを期待したい。

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日本の乳がん統計、患者特性・病理・治療の最新データ

 2022年にNCD(National Clinical Database)乳がん登録に登録された日本国内1,339施設の乳がん症例10万2,453例の人口学的・臨床病理学的特徴を、兵庫医科大学の永橋 昌幸氏らがBreast Cancer誌2025年3月号に報告した。 日本乳癌学会では1975年に乳がん登録制度(Breast Cancer Registry)を開始し、2012年からはNCD乳がん登録のプラットフォームへ移管された。NCDに参加する医療機関で新たに乳がんと診断された患者は、乳房手術の有無にかかわらず登録対象となっており、2012~21年の10年間で累計89万2,021例が登録されている。 主な結果は以下のとおり。・女性患者は10万1,793例(99.4%)で、診断時の年齢中央値は62歳(四分位範囲:50~73歳)、29.4%が閉経前であった。・1万5,437例(15.2%)がStage0、4万2,936例(42.2%)がStageIと診断された。・エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の陽性率は、それぞれ78.7%、69.4%、12.8%であった。・遠隔転移のない9万7,154例のうち、4万521例(41.7%)が乳房温存手術を受け、5,780例(5.9%)が乳房切除時に乳房再建手術を受けていた。・6万6,894例(68.9%)がセンチネルリンパ節生検を受け、7,155例(7.4%)がセンチネルリンパ節生検に続き腋窩リンパ節郭清を受けていた。・乳房温存手術を受けた4万521例のうち、2万9,500例(72.8%)が全乳房照射を受けていた。・分子標的治療の有無にかかわらず術前化学療法を受けた1万3,950例のうち、4,308例(30.9%)が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、とくにホルモン受容体陰性/HER2陽性の患者でpCR率が最も高く、60.5%であった。

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日本人PD-L1低発現の切除不能NSCLC、治験不適格患者へのICI+化学療法の有用性は?

 PD-L1低発現の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の有用性は臨床試験ですでに検証されている。しかし、実臨床では臨床試験への登録が不適格となる患者も多く存在する。そこで、研究グループはPD-L1低発現の切除不能NSCLC患者を臨床試験への登録の適否で分類し、ICI+化学療法の有用性を検討した。その結果、臨床試験への登録が不適格の集団は、適格の集団よりも全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が短かったものの、ICI+化学療法化学療法単独よりも有用であることが示唆された。ただし、PS2以上、扁平上皮がんではICI+化学療法によるOSの改善はみられなかった。本研究結果は、畑 妙氏(京都府立医科大学大学院 呼吸器内科学)らにより、Lung Cancer誌2025年2月号で報告された。 本研究は、多施設共同後ろ向きコホート研究として、日本の19施設において実施された。対象患者は、PD-L1低発現(TPS 1~49%)のStageIIIB、IIIC、IV(TNM分類第8版)のNSCLC患者のうち、ICI+化学療法または化学療法単独による治療を行った728例とした。対象患者を第III相試験への登録基準への適否で分類し(適格集団/不適格集団)、OSやPFSなどを検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者728例のうち、適格集団は333例、不適格集団は395例であった。・対象患者の年齢中央値は70歳(範囲:36~89)、男性が79%、現/元喫煙者が89%、組織型は腺がんが58%、扁平上皮がんが32%であった。・OSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。しかし、不適格集団のPS2以上、扁平上皮がんに限定した解析では、有意差はみられなかった。OS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群25.1ヵ月、化学療法群18.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.97、p=0.03)<不適格集団> ICI+化学療法群18.2ヵ月、化学療法群14.9ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.018)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群12.2ヵ月、化学療法群9.2ヵ月(p=0.21)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群12.9ヵ月、化学療法群13.1ヵ月(p=0.27)・PFSは適格集団、不適格集団のいずれにおいてもICI+化学療法群が化学療法群と比べて有意に長かった。不適格集団のうち扁平上皮がんに限定した解析では、ICI+化学療法群が有意に長かったが、PS2以上に限定した解析では有意差はみられなかった。PFS中央値は以下のとおり。<適格集団> ICI+化学療法群9.3ヵ月、化学療法群6.1ヵ月(p<0.0001)<不適格集団> ICI+化学療法群7.0ヵ月、化学療法群5.1ヵ月(p<0.0001)<PS2以上の不適格集団> ICI+化学療法群5.7ヵ月、化学療法群4.0ヵ月(p=0.17)<扁平上皮がんの不適格集団> ICI+化学療法群6.1ヵ月、化学療法群5.0ヵ月(p=0.008) 本研究結果について、著者らは「PS2以上、扁平上皮がんを除き、臨床試験への登録が不適格の集団においてもICI+化学療法の有用性が示唆された」とまとめた。

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HER2+早期乳がん、TILが20%以上ならde-escalation可能か

 第III相ShortHER試験の長期追跡データを用いて、HER2+の早期乳がん患者における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と予後との関連性を評価した結果、TILが高値であるほど遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)が良好で、TIL量が20%以上の場合はde-escalationの術後補助療法であっても過剰なリスクは認められなかったことを、イタリア・パドヴァ大学のMaria Vittoria Dieci氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。 ShortHER試験は、2007年12月~2013年10月にHER2+の早期乳がん患者1,253例を登録し、術後化学療法と併用したトラスツズマブの9週間投与と1年間投与を比較したイタリアの多施設共同ランダム化非劣性試験。1年投与群に対する9週投与群の非劣性は認められなかったが、N0およびN1~3の集団では10年OS率が非常に類似していた。研究グループは、TILの予後因子としての可能性を探るため、追跡期間中央値9年のデータを2023年2月~2024年8月に解析し、TIL量(5%刻み)が予後に与える影響を評価した。評価項目はDDFSおよびOSで、Cox回帰モデルを使用してハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全参加者1,253例のうち、評価可能なTILデータを有したのは866例(69%)であった。年齢中央値は56歳で、TIL量の中央値は5%(四分位範囲:1~15)であった。・TILデータがある集団における9週群vs.1年群のDDFSのHRは1.44(95%CI:0.98~2.10)、OSのHRは1.11(95%CI:0.71~1.76)であった。・TIL量が5%増加するごとにDDFSイベントリスクは13%減少し(HR:0.87、95%CI:0.80~0.95、p=0.001)、OSリスクは11%減少した(HR:0.89、95%CI:0.81~0.98、p=0.01)。・TILが低値の集団よりも高値の集団のほうが10年DDFS率および10年OS率は良好で、TIL量が20%以上の集団では89.8%および91.3%、30%以上の集団では91.7%および93.3%、50%以上の集団では96.9%および98.1%であった。・10年DDFS率および10年OS率は、TIL量が20%未満の集団では1年群のほうが9週群よりも良好であったが、TIL量が20%以上の集団では9週群のほうが良好であった。

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第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の会長は徳島大学の高山 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。 2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適用となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。 今年の演題数は計1,267題、うち509題は海外からのものだ。また12月中旬まで臨床試験の結果を待って最新の内容を盛り込む「Late Breaking Abstract」をはじめて採用し、約20題が採択された。以下、主な演題を紹介する。プレジデンシャルセッション・全16演題Presidential Session 1 呼吸器 血液3月6日(木)8:30~11:101)PS1-1 TTF-1陰性の進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+nab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の第II相試験:F1NE TUNE(LOGIK2102)2)PS1-2 完全切除後のALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌に対する術後Alectinibの第III相試験(ALINA試験):日本人薬物動態、安全性解析3)PS1-3 Phase I/II study of tifcemalimab combined with toripalimab in patients with previously treated advanced lung cancer4)PS1-4 In-depth Responder Analysis of PhALLCON, a Phase 3 Trial of Ponatinib Versus Imatinib in Newly Diagnosed Ph+ ALLPresidential Session 2 泌尿器 頭頸部 TR・臨床薬理3月7日(金)15:00~17:405)PS2-1 未治療切除不能尿路上皮癌に対してエンホルツマブベドチン+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較したEV-302試験:アジア人サブグループ解析6)PS2-2 Safety profile of belzutifan monotherapy in patients with renal cell carcinoma: A pooled analysis of 4 clinical trials7)PS2-3 LIBRETTO-531:RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌に対する一次治療としてのSelpercatinibの有効性・安全性・生存のアップデート8)PS2-4 血中遊離DNAによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの多施設共同臨床第II相試験(HERALD/EPOC1806試験) データ アップデートPresidential Session 3 消化管3月7日(金)8:20~11:009)PS3-1 RAS野生型大腸癌におけるmodified-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法の効果予測臨床因子:DEEPER試験(JACCRO CC-13)10)PS3-2 血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験(CIRCULATE-Japan ALTAIR/EPOC1905)11)PS3-3 再発高リスクStage II結腸癌に対するオキサリプラチン併用術後補助化学療法の至適投与期間に関する第III相試験:ACHIEVE-2試験12)PS3-4 進行食道がんに対するNivolumab+Ipilimumab or 化学療法:CheckMate648における日本人サブグループの45ヶ月フォローアップPresidential Session 4 肝胆膵 希少がん 乳腺3月8日(土)8:30~11:1013)PS4-1 CRAFITYスコア2点の肝細胞癌に対する一次薬物療法:レンバチニブと免疫療法の治療効果の比較14)PS4-2 Final Results of TCOG T5217 Trial:SLOG vs Modified FOLFIRINOX as First-Line Treatment in Advanced Pancreatic Cancer15)PS4-3 消化管・膵原発の切除不能進行・再発神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス単剤療法とエベロリムス+ランレオチド併用療法のランダム化第III相試験:JCOG190116)PS4-4 脳転移を伴う又は伴わない治療歴のあるHER2陽性の進行/転移性乳癌患者を対象とするトラスツズマブ デルクステカンの試験結果(DESTINY-Breast12)会長企画・特別セッション特別講演がんの近赤外光線免疫療法(光免疫療法)The Era of Liquid Biopsy Biomarkers and Precision Medicine in Gastrointestinal Cancers特別企画腫瘍循環器学の重要性と実態:小室班研究を踏まえて会長企画シンポジウム全ゲノムシークエンスの臨床実装ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか?激論!『条件付き承認制度』の活用はドラッグ・ロス対策に有用か!?ctDNAに基づくがん治療希少がんの遺伝性腫瘍がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?大腸がんに対する新たな分子標的治療薬注目のシンポジウム 今回の学会テーマと深く関連するがん遺伝子パネル検査の課題と今後の方向性については上記シンポジウムで2つのテーマが設定されている。京都大学の武藤 学氏が関連する2つのセッションの概要を説明した。会長企画シンポジウム2:ゲノム医療で推奨された保険適用外薬をどのように使うか?3月6日(木)14:00~15:30 遺伝子変異に基づいて推奨された治療薬は日本の医療制度では保険適用外で使用困難な現状があり、治験や先進医療の活用が求められるものの、制度上の制約が多い。欧米では患者支援プログラム(PAP)やコンパッショネート・ユースの仕組みがある。東京科学大学の池田 貞勝氏が基調講演を行い、医師、患者代表、経済学者がそれぞれの立場から発表を行う。会長企画シンポジウム6:がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?3月8日(土)14:00~15:30 日本において保険収載の遺伝子パネル検査は標準治療終了後に行うこととされているが、患者の状態が悪化し、推奨された治療を受けられないケースも多い。海外では1次治療前の検査が推奨されており、日本でも早期検査の意義が議論されている。早期のパネル検査の有効性を検討する臨床試験の結果を共有し、がん種別の検討や厚労省の見解を発表する。 さらに、昨年の学会で初めて行われたSNSを使った学会広報に関する活動に関する報告も引き続き行われる。これまでJSMOのSNSワーキンググループ(SNS-WG)は、昨年の学会において対象プログラムのスライド撮影およびSNS投稿解禁を実現し、今年の学会ではSNS投稿時の公式ハッシュタグを「#JSMO25」に統一することとした。これまで国内では「#JSMO2024」、海外では「#JSMO24」が多く使われ、SNS上で分断が起こっていたことに対処したものだ。委員会企画 禁煙推進セッション/SNSワーキンググループシンポジウム オンコロジー領域におけるSNS利用3月6日(木)8:30~10:00 インターネット上の医療情報のファクトチェックをテーマとした論文を執筆した豊川市民病院の呉山 菜梨氏、SNSを使った医療コミュニケーション経験が豊富な帝京大学ちば総合医療センターの萩野 昇氏が講演を行い、SNS-WGメンバーの東海大学・扇屋 大輔氏が昨夏の「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」においてWGが行った情報発信と成果について報告する。―――――――――――――――――――第22回日本臨床腫瘍学会 開催概要会期:2025年3月6日(木)〜8日(土)会場:神戸コンベンションセンター開催形式:現地(現地主体、一部ライブ配信+オンデマンド配信)SNSハッシュタグ:#JSMO25学会サイト:https://site2.convention.co.jp/jsmo2025/―――――――――――――――――――

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