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HER2低発現乳がんへのT-DXd、32ヵ月でのOS・PFS・安全性(DESTINY-Breast04)/ESMO2023

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験において、より長い追跡期間(中央値32ヵ月)で評価した全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性を、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)で、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(HR+の場合は内分泌療法抵抗性)557例・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか)184例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるHR+例のPFS[副次評価項目]BICRによる全例のPFS、治験医師によるHR+例および全例のPFS、HR+例および全例のOS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・今回のデータカットオフ(2023年3月1日)時点での追跡期間中央値は32.0ヵ月だった。・OS中央値は、HR+例でT-DXd群23.9ヵ月vs.TPC群17.6ヵ月でHRが0.69(95%信頼区間[CI]:0.55~0.87)、全例で22.9ヵ月vs.16.8ヵ月でHRは0.69(95%CI:0.55~0.86)と、共にT-Dxd群で有意に改善した。・治験医師によるPFS中央値は、HR+例でT-DXd群9.6ヵ月vs.TPC群4.2ヵ月でHRが0.37(95%CI:0.30~0.46)、全例で8.8ヵ月vs.4.2ヵ月でHRは0.36(95%CI:0.29~0.45)と、共にT-DXd群で有意に改善した。・HR-例におけるOS中央値は、T-DXd群17.1ヵ月vs.TPC群8.3ヵ月でHRが0.58(95%CI:0.31~1.08)、治験医師によるPFS中央値は6.3ヵ月vs.2.9ヵ月でHRは0.29(95%CI:0.15~0.57)だった(探索的解析)。・Grade3以上の治療下での有害事象(TEAE)の発現率は、T-DXd群54.4%、TPC群67.4%だった。・治療中止関連のTEAEで多くみられたのは、T-DXd群で間質性肺疾患/肺臓炎(10.2%)、TPC群で末梢感覚神経障害(2.3%)だった。・減量関連のTEAEで多くみられたのは、T-DXd群では悪心(4.6%)および血小板数減少(3.0%)、TPC群で好中球数減少(10.5%)および手足症候群(5.2%)だった。・全GradeのTEAEの曝露調整後発現率は、T-DXd群1.2%、TPC群2.6%だった。・安全性プロファイルは初回解析結果と同様であり、薬物関連間質性肺疾患/肺臓炎は初回解析以降の新たな報告はなかった。 Modi氏は「今回の結果から、HR発現の有無にかかわらず、これまでに示されているHER2低発現の転移乳がんに対するT-DXdの持続的で臨床的に意義のある改善が確認された。治療期間が長くなっても、全体的な安全性プロファイルは忍容可能でおおむね管理可能だった」とまとめた。

102.

KRAS G12C変異大腸がん、ソトラシブ+パニツブマブが第III相試験でPFS延長(CodeBreaK 300)/ESMO2023

 KRAS G12C遺伝子変異を有する進行固形がんに対する、KRAS G12C阻害薬ソトラシブの有用性をみる大規模バスケットCodeBreaK試験。第I相CodeBreaK 101試験ではKRAS G12C変異の転移大腸がん(mCRC)コホートにおいて、ソトラシブ+抗EGFR抗体パニツムマブ併用療法が30%の奏効率(ORR)を示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialセッションで、イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのFilippo Pietrantonio氏が、第III相CodeBreaK 300試験の初回解析結果を発表した。・対象:化学療法抵抗性KRAS G12C変異を有するmCRC患者、PS0~2・試験群:ソトラシブ960mgを1日1回+パニツムマブ6mg/kg(高ソト群)、またはソトラシブ240mgを1日1回+パニツムマブ6mg/kg(低ソト群)・対照群:治験責任医師が選択したTAS-102またはレゴラフェニブ(選択治療群)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、ORR 主な結果は以下のとおり。・160例が登録され、高ソト群(n=53)、低ソト群(n=53)、選択治療群(n=54)に無作為に1対1対1で割り付けられた。・追跡期間中央値7.8ヵ月におけるPFSは、高ソト群5.6ヵ月、低ソト群3.9ヵ月、選択治療群2.2ヵ月であった。高ソト群の選択治療群に対するハザード比[HR]は0.49(95%信頼区間[CI]:0.30~0.80、p=0.006)、低ソト群のHRは0.58(95%CI:0.36~0.93、p=0.03)で、主要評価項目を達成した。・OSは未到達、ORRは高ソト群26.4%、低ソト群5.7%、選択治療群0%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、高ソト群36%、低ソト群30%、選択治療群43%で発現した。5%以上に発現したのは、高ソト群はざ瘡様皮膚炎(11.3%)、低マグネシウム血症(5.7%)、発疹(5.7%)、低ソト群は低マグネシウム血症(7.5%)、下痢(5.7%)、選択治療群は好中球減少症(23.5%)、貧血(5.9%)、高血圧(5.9%)であった。致命的なTRAEはなかった。 Pietrantonio氏は「ソトラシブ+パニツムマブ併用療法は、本試験の主要評価項目を達成し、とくに高ソト群は優れた臨床的ベネフィットを示した。Grade3以上のTRAEは両ソト群で選択治療群より少なく、忍容性が認められた。以上から、ソトラシブ+パニツムマブ併用療法は新たな標準療法となり、非小細胞肺がん同様に、ソトラシブ960mgのレジメンが支持される」と結論付けた。

103.

尿路上皮がん1次治療、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブでOSが倍増(EV-302/KEYNOTE-A39)/アステラス

 アステラス製薬は2023年10月23日付のプレスリリースにて、治療歴のない局所進行/転移尿路上皮がん(la/mUC)患者を対象とした第III相EV-302/KEYNOTE-A39試験において、エンホルツマブ ベドチン(商品名:パドセブ)※とペムブロリズマブの併用療法が、化学療法と比較して、死亡リスクを53%減少、全生存期間(OS)の中央値を15ヵ月以上延長したと発表した。本結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。※アステラス製薬がSeagenと共同で開発を進めている抗体maru-薬物複合体(ADC) 主な結果は以下のとおり。 EV-302試験で、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群(以下「併用療法群」)は、白金製剤+ゲムシタビンを用いた化学療法群と比較して、OSおよび無増悪生存期間(PFS)を延長し、主要評価項目を達成した。●OS中央値は、併用療法群で31.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:25.4~未到達)、化学療法群で16.1ヵ月(95%CI:13.9~18.3)だった。・併用療法群でOSを有意に延長し、化学療法群と比較して死亡リスクを53%減少させた(ハザード比[HR]:0.47、95%CI:0.38~0.58、p<0.00001)。・独立データモニタリング委員会は、OSの中間解析において、事前に規定した有効性の基準を満たしたと判断した。●PFS中央値は、併用療法群で12.5ヵ月(95%CI:10.4~16.6)、化学療法群で6.3ヵ月(95%CI:6.2~6.5)だった。・併用療法群は、化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させた(HR:0.45、95%CI:0.38~0.54、p<0.00001)。●シスプラチン適応の可否やPD-L1発現レベルなど、事前に規定したすべてのサブグループにおいて、一貫したOSの結果が得られた。●併用療法群のGrade3以上の治療関連有害事象(3%以上)は、斑状丘疹状皮疹、高血糖、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチー、下痢、貧血であった。EV-302試験における併用療法群の安全性は、シスプラチン不適応のla/mUC患者を対象に実施したEV-103試験と同様の結果で、新たな安全性上の問題は確認されなかった。●副次評価項目のうち、併用療法群における奏効率(ORR)は68%(95%CI:63.1~72.1)であったのに対し、化学療法群のORRは44%(95%CI:39.7~49.2)だった(p<0.00001)。併用療法群では、完全奏効は29.1%、部分奏効は38.7%の患者で認められた。一方、化学療法群では、それぞれ12.5%および32.0%だった。奏効期間は、併用療法群では中央値に到達せず、化学療法群では7ヵ月(95%CI:6.2~10.2)だった(p<0.00001)。

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Uncommon EGFR変異陽性NSCLC、アファチニブがPFS改善(ACHILLES/TORG1834)/ESMO2023

 EGFR遺伝子変異は多様であり、多くのuncommon変異やcompound変異(EGFRチロシンキナーゼ部位に複数の変異を有する)が存在する。これらの多様な変異に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効性を示す可能性を示唆する報告はあるが、結論は得られていない。そこで、EGFR-TKIの活性が低いとされるexon20挿入変異やT790M変異を除くuncommon変異をsensitizing uncommon変異と定義し、EGFR遺伝子にsensitizing uncommon変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象として、アファチニブと化学療法を比較する第III相試験(ACHILLES/TORG1834試験)が実施された。その結果、アファチニブは化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。本結果は、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表された。試験デザイン:国内第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療のsensitizing uncommon EGFR遺伝子変異(exon20挿入変異、de novo T790M変異を除くuncommon/compound変異)を有する進行・再発の非扁平上皮NSCLC患者109例試験群:アファチニブ(1日30mgまたは40mg)を病勢進行まで (アファチニブ群:73例)対照群:プラチナ製剤(シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチンAUC5または6)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごとに4サイクル→ペメトレキセドを3週ごとに病勢進行まで(化学療法群:36例)評価項目:[主要評価項目]治験医師評価に基づくPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、安全性などデータカットオフ日:2023年2月28日 主な結果は以下のとおり。・対象の半数以上が主要なuncommon変異を有し、G719X変異単独が39.4%(43/109例)、L861Q変異単独が18.3%(20/109例)であった。compound変異は31.2%(34/109例)に認められ、uncommon/uncommon変異が22.0%(24/109例)、common(L858Rまたはexon19欠失変異)/uncommon変異が9.2%(10/109例)であった。・追跡期間中央値は12.5ヵ月であった。・PFS中央値は化学療法群が5.7ヵ月であったのに対し、アファチニブ群は10.6ヵ月であり、アファチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.422、95%信頼区間[CI]:0.256~0.694、p=0.0007、有意水準α=0.0304)。・以上の結果から、データ安全性モニタリング委員会は試験の早期中止を勧告した。・ORRは化学療法群が47.1%(PR:16例)であったのに対し、アファチニブ群は61.4%(CR:2例、PR:41例)であったが両群間に有意差は認められなかった(p=0.2069)。・DCRは化学療法群82.4%、アファチニブ群82.9%であった。・Grade3以上の有害事象は化学療法群37.1%、アファチニブ群43.8%に発現した。アファチニブ群の主な有害事象(50%以上に発現)は、下痢(82.2%)、爪囲炎、発疹、粘膜炎(いずれも58.9%)であった。アファチニブ群において肺炎による治療関連死が1例認められた。 三浦氏は「本試験によって、未治療のsensitizing uncommon EGFR遺伝子変異を有する非扁平上皮NSCLC患者において、アファチニブが標準治療となることが示された。今後はOSのデータや変異の種類による治療への反応性、病勢進行後の治療状況などを明らかにする予定である」とまとめた。

105.

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

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切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS・EFS改善(KEYNOTE-671)/ESMO2023

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験の第1回中間解析において、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善したことが報告されている1)。今回、KEYNOTE-671試験の第2回中間解析の結果が、カナダ・McGill UniversityのJonathan Spicer氏により、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表され、EFSと全生存期間(OS)が有意に改善したことが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2023年10月16日に切除可能なNSCLC患者に対する術前・術後補助療法としてペムブロリズマブの使用を承認したことを発表している2)。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験・対象:切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル(ペムブロリズマブ群:397例)・対照群:プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル(プラセボ群:400例)・評価項目:[主要評価項目]EFSおよびOS[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(mPR)など・解析計画:計2回の中間解析が事前規定され、今回の中間解析はEFSの最終解析とした。今回の解析におけるOSの有意水準は片側α=0.00543であった。・データカットオフ日:2023年7月10日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は36.6ヵ月(範囲:18.8~62.0)であり、254例(31.9%)が死亡した。・OS中央値はプラセボ群が52.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:45.7~推定不能)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では未到達(同:推定不能~推定不能)であり、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.56~0.93、片側p=0.00517)。・3年OS率はプラセボ群64.0%、ペムブロリズマブ群71.3%、4年OS率はそれぞれ51.5%、67.1%であった。・OSのサブグループ解析においてもペムブロリズマブ群が良好な傾向であったが、PD-L1発現状況別にみたOSのHR(95%CI)は、PD-L1(TPS)50%以上が0.55(0.33~0.92)、1~49%が0.69(0.44~1.07)、1%未満が0.91(0.63~1.32)であり、PD-L1発現が少ないほどペムブロリズマブ群のベネフィットは減少する傾向にあった。また、東アジア人集団のHR(95%CI)は1.05(0.64~1.73)、喫煙歴のない集団は1.00(0.41~2.46)であった。・EFS中央値はプラセボ群が18.3ヵ月(95%CI:14.8~22.1)であったのに対し、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月(同:32.9~推定不能)であり、第1回の中間解析に続き、ペムブロリズマブ群が有意に改善した(HR:0.59[95%CI:0.48~0.72])。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はプラセボ群37.8%、ペムブロリズマブ群45.2%に認められ、治療中止に至ったTRAEはそれぞれ5.3%、13.6%、死亡に至ったTRAEはそれぞれ0.8%、1.0%に認められた。 本結果について、Spicer氏は「OSの有意な改善が認められ、新たな安全性シグナルは検出されなかったことから、本試験の周術期レジメンは切除可能なStageII、IIIA、IIIBのNSCLCに対する新たな標準治療となる」とまとめた。

107.

ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/is ypN0)[副次評価項目]PD-L1陽性集団のpCR、全体およびPD-L1陽性集団の腫瘍残存率(RCB)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況、Grade、腋窩リンパ節転移、AC療法の投与スケジュール 2022年4月に主要評価項目は修正ITT集団のpCR率のみに修正され、PD-L1陽性集団のpCR率は副次評価項目となった。今回がCheckMate 7FL試験結果の初報告で、全体およびPD-L1陽性集団のpCRとRCBが報告された。 主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は50歳/51歳、Grade3が98%/99%以上、StageIII期が46%/42%、PD-L1 IC≧1%が34%/33%、腋窩リンパ節転移陽性が80%/79%で、両群でバランスがとれていた。・修正ITT集団全体のpCR率は、ニボルマブ群24.5%、プラセボ群13.8%で、ニボルマブ群が有意に高かった(調整差10.5%[95%信頼区間[CI]:4.0~16.9]、オッズ比[OR]:2.05、p=0.0021)。・PD-L1陽性集団におけるpCR率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%(調整差:24.1%[95%CI:10.7~37.5]、OR:3.11)であった。なお、PD-L1陰性集団では14.2%/10.7%であった。・リンパ節転移の有無、Stage、年齢、AC療法の治療スケジュールにかかわらずニボルマブ群のほうがpCR率は良好であった。・全体におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群30.7%、プラセボ群21.3%(調整差:9.2%[95%CI:2.0~16.5]、OR:1.65)であった。・PD-L1陽性集団におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群54.5%、プラセボ群26.2%(調整差:28.5%[95%CI:14.6~42.4]、OR:3.49)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群35%、プラセボ群32%に発現し、安全性プロファイルは既報と一致していた。免疫介在性有害事象はニボルマブ群のほうが多かった。ニボルマブ群では死亡が2例(肺炎、肝炎)認められた。 これらの結果より、Loi氏は「高リスクのER+/HER2-早期乳がん患者の術前化学療法にニボルマブを追加することで、pCRは10.5%改善するとともにRCB 0~1率も9.2%改善した。この恩恵はPD-L1陽性集団でより大きかった。安全性プロファイルはこれまでと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで「バイオマーカーに関する追加データは今後の学会で発表する予定である」とまとめた。

108.

胃がん1次治療、周術期ペムブロリズマブはEFS延長せず(KEYNOTE-585)/ESMO2023

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められているが、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)において術後療法にニボルマブの上乗せを検証したATTRACTION-5試験では上乗せ効果は示されなかった。同じくG/GEJがん患者を対象として、術前術後の化学療法にペムブロリズマブの上乗せ効果を検証した無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-585試験においても、無イベント生存期間(EFS)に有意な延長はみられなかったことがすでに報告されている。本試験の詳細について、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療の局所進行、切除可能G/GEJがん、PS0~1・試験群(メインコホート):術前にペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたはシスプラチン+5-FU)を3サイクル、術後にペムブロリズマブ+化学療法を3サイクル実施、さらにペムブロリズマブ単剤を最大11サイクル投与(ペムブロ群)・対照群:術前・術後にプラセボ+化学療法、さらにプラセボ単剤投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)、EFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]安全性 主な結果は以下のとおり。・804例が登録され、ペムブロ群とプラセボ群に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は47.7ヵ月だった。アジア人47%、欧米人26%、その他27%だった。・pCR率はペムブロ群で12.9%(95%信頼区間[CI]:9.8~16.6)、プラセボ群で2.0%(95%CI:0.9~3.9)だった。・EFSはペムブロ群で改善したが(中央値44.4ヵ月vs.25.3ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.99、p=0.0198)、わずかな差であったものの、事前に規定された有意差を示すには至らなかった。・OS中央値はペムブロ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月で、有意差はなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群で64%、プラセボ群で63%で発生した。 設楽氏は「未治療の局所進行切除可能G/GEJがん患者において、周術期のペムブロ+化学療法は残念ながらEFSに有意な改善はみられなかったが、pCR率は大幅に改善した。周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を確かめるためには、さらなる研究が必要だ」とした。 続いて発表された、本試験同様に胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬投与を検討するMATTERHORN試験(術前化学療法にデュルバルマブ上乗せ)がポジティブな結果となったことを踏まえ、発表後のディスカッションでは、差異が出た要因や適切な化学療法の種類、恩恵を受ける患者の特性などについて、盛んな議論が交わされた。

109.

ニボルマブベースの非小細胞肺がん周術期レジメンが有効性示す(CheckMate 77T)/ESMO2023

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブベースの周術期レジメンが良好な結果を示した。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において米国・MDアンダーソンがんセンターのTina Cascone氏が発表した、同集団に対する術前ニボルマブ+化学療法、術後ニボルマブを評価する無作為化二重盲検第III相CheckMate 77T試験の中間解析の結果である。・対象:切除可能なStageIIA〜IIIB (American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版) のNSCLC・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→ニボルマブ480mg 4週ごと1年間(NIVO+化学療法/NIVO群、n=229)・対照群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→プラセボ4週ごと1年間(化学療法/PBO群、n=232)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)および主要な病理学的奏効(MPR)(ともに盲検下独立病理学審査[BIPR]評価)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は25.4ヵ月であった。・BICR評価のEFS中央値は、NIVO+化学療法/NIVO群は未到達、化学療法/PBO群は18.4ヵ月で、NIVO+化学療法/NIVO群で有意に改善していた(ハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42〜0.81、p=0.00025)。・12ヵ月EFS率はNIVO+化学療法/NIVO群73%、化学療法/PBO群59%、18ヵ月EFS率はそれぞれ70%と50%であった。・BIPR評価のpCR率はNIVO+化学療法/NIVO群25.3%、化学療法/PBO群4.7%(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40〜12.97)、BIPR評価のMPR率はそれそれ35.4%と12.1%であった(OR:4.01 、95%CI:2.48〜6.49)。・全期間における全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、NIVO+化学療法/NIVO群の89%、化学療法/PBO群の87%に発現した。術前期間のTRAE発現はそれぞれ86%と85%、術後期間のTRAE発現はそれぞれ50%と30%であった。 Cascone氏は、CheckMate 77T試験の結果は、ニボルマブベースの周術期レジメンが切除可能NSCLCにとって有望な新しい治療選択肢であることを支持するものだと結んだ。

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転移乳がんへのDato-DXd、医師選択化療よりPFS延長(TROPION-Breast01)/ESMO2023

 化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR陽性(+)/HER2陰性(-)の乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験の結果、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、医師選択化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は半数以下であったことを、米国・Massachussetts General Hospital/Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialで報告した。・対象:HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移を有する乳がん患者 732例・試験群:Dato-DXd(6mg/kg、3週ごと)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(Dato-DXd群:365例)・対照群:医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(化学療法群:367例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医評価によるPFS、安全性・層別化因子:前治療のライン数、地域、CDK4/6阻害薬の治療歴の有無 Dato-DXdは、第I相TROPION-PanTumor01試験において、手術不能または転移を有するHR+/HER2-の前治療歴のある乳がん患者において有望な活性を示している。今回は、グローバル第III相TROPION-Breast01試験の主要評価項目の1つであるPFSの結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・Dato-DXd群と化学療法群の年齢中央値は56歳(範囲:29~86)/54歳(28~86)、白人が49%/46%、アジア系が40%/41%、1ラインの前治療歴が63%/61%、CDK4/6阻害薬の治療歴ありが82%/78%、タキサン系and/orアントラサイクリン系の治療歴ありが90%/92%で、両群でバランスがとれていた。・データカットオフ(2023年7月17日)時点の追跡期間中央値は10.8ヵ月で、Dato-DXdの93例と化学療法群の39例が治療を継続していた。・主要評価項目であるBICRによるPFSは、Dato-DXd群6.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~7.4)、化学療法群4.9ヵ月(95%CI:4.2~5.5)であり、Dato-DXd群で有意にPFSが改善された(HR:0.63[95%CI:0.52~0.76]、p

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切除不能または転移を有する尿路上皮がん1次治療、化療へのニボルマブ追加でOS改善(CheckMate 901)/ESMO2023

 切除不能または転移を有する尿路上皮がんの1次治療として、シスプラチンベースの化学療法へのニボルマブの追加が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。日本も参加している第III相CheckMate 901試験の結果を、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMichiel S. van der Heijden氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。なお本結果は、2023年10月22日にNEJM誌オンライン版へ同時掲載されている。・対象:シスプラチン適格、未治療の切除不能または転移を有する尿路上皮がん患者(18歳以上、ECOG PS 0~1)・試験群:ニボルマブ(360mg、1日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2、1日目・8日目)+シスプラチン(70mg/m2、1日目)を3週ごとに最大6サイクルまで→ニボルマブ(480mg)を4週ごとに疾患進行/許容できない毒性の発現または最大2年まで 304例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン 304例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるOS、PFS[副次評価項目]PD-L1≧1%におけるOS、PFS、健康関連QOL(HRQOL)[探索的評価項目]BICRによる奏効率(ORR)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況(≧1% vs.

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MSI-H胃がん1次治療のニボルマブ+イピリブマブ、初回奏効率62%(NO LIMIT/WJOG13320G)/ESMO2023

 ニボルマブと低用量イピリムマブの併用は、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)大腸がんの第1みた選択療法として有用性を示している。一方、胃・胃食道接合部がん(G/GEJ)におけるMSI-Hの患者は5%程度とされ、同レジメンのMSI-H胃がん1次治療に対する有用性をみた、医師主導、国内単群非盲検第II相NO LIMIT(WJOG13320G/CA209-7W7)試験の初回解析結果を、愛知県がんセンターの室 圭氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療で切除不能の進行再発転移G/GEJ、MSI-H、PS0~1・試験群:ニボルマブ(240mg)2週ごと+イピリムマブ(1mg/kg)6週ごと、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2020年11月~2022年8月、国内75施設から935例がスクリーニングされ、29例が登録された。年齢中央値75(SD:54~84)歳、44.8%が男性であった。・データカットオフ(2022年12月12日)時点で、3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%信頼区間[CI]:42.3~79.3)であった。・DCRは79.3%(95%CI:60.3~92.0)であった。追跡期間中央値9.0ヵ月(SD:4.0~18.0)時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未達であった。・12ヵ月PFS率は73%(95%CI:52~86)、OS率は80%(95%CI:57~91)であった。・Grade3の有害事象が11例、Grade4が1例発現した。治療中止の最も多い理由は有害事象であったが、安全性プロファイルは既知のプロファイルと一致していた。治療関連死は観察されなかった。 室氏は「ニボルマブと低用量イピリムマブ併用によるケモフリー戦略は、MSI-HのG/GEJ患者において良好な忍容性とともに高く強固な有効性を示した。本試験は、胃がんMSI-H患者の1次治療における本レジメンの有用性を示した世界初の試験であり、引き続き長期フォローアップとバイオマーカー探索を行う予定」とした。 ディスカッサントのバレンシア大学病院・Tania C. Fleitas氏は、CheckMate 649試験(胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法)、CheckMate 142試験(MSI-H大腸がんへのニボルマブ+イピリムマブ)を参照しつつ、「ニボルマブ+低用量イピリムマブは、MSI-H胃がん患者のORRに有意な影響を与えた。結果はほかの研究と一致しており、今後はさらに胃がん患者へのMSI検査、MSI-H患者への免疫療法を強く考慮すべきだろう」とした。

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ER+乳がんの術前化療にペムブロリズマブ追加、pCRを有意に改善(KEYNOTE-756)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相KEYNOTE-756試験の結果、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことを、ポルトガル・Champalimaud Clinical Centre/Champalimaud FoundationのFatima Cardoso氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、ER+/HER2–、Grade3、未治療の浸潤性乳管がん患者 1,278例・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+AC療法またはEC療法→手術→ペムブロリズマブ+内分泌療法 635例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法またはEC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 643例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間、安全性など・層別化因子:東ヨーロッパ:PD-L1発現状況、中国:なし、その他の国/地域:PD-L1発現状況、リンパ節転移、AC/EC療法の投与スケジュール、ER陽性率 今回がKEYNOTE-756試験結果の初報告で、主要評価項目の1つであるpCRの結果が報告された。EFSについては引き続き評価が行われる予定。 主な結果は以下のとおり。・pCRの最終解析(データカットオフ:2023年5月25日)における追跡期間中央値は33.2ヵ月(範囲:9.7~51.8)であった。・ペムブロリズマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は49歳(範囲:24~82)/49歳(19~78)、PD-L1 CPS≧1%が75.9%/76.0%、T3/4が36.7%/35.8%、リンパ節転移陽性が89.8%/90.5%、ER≧10%が94.6%/93.3%で、両群でバランスがとれていた。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示した(推定差8.5%[95%信頼区間[CI]:4.2~12.8]、p=0.00005)。・副次評価項目のpCRは、ypT0 ypN0がペムブロリズマブ群21.3%、プラセボ群12.8%(推定差8.3%[95%CI:4.2~12.4])、ypT0/Tisはペムブロリズマブ群29.4%、プラセボ群18.2%(推定差11.0%[95%CI:6.5~15.7])であった。・事前に規定したサブグループのpCRもペムブロリズマブ群のほうが良好であった。とくにER陽性率が10%以上の場合の推定差は8.0%であったが、10%未満の場合は25.6%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は、ペムブロリズマブ群52.5%、プラセボ群46.4%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群7.1%、プラセボ群1.2%であった。ペムブロリズマブ群では急性心筋梗塞による死亡が1例(0.2%)認められた。 これらの結果より、Cardoso氏は「PD-L1発現状況にかかわらず、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、pCR(ypT0/Tis ypN0)は8.5%改善し、ypT0 ypN0およびypT0/Tisでも同様であった。安全性プロファイルはこれまでのものと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで、「今回の結果は、もう1つの主要評価項目であるEFSの評価を行うに値する結果である。現時点ではまだ不十分であるが、引き続き評価が必要である」とまとめた。

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切除可能ALK陽性NSCLC、術後アレクチニブがDFS改善(ALINA)/ESMO2023

 切除可能なStageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療は、プラチナ製剤を用いた化学療法である。そこで、進行期のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が認められているアレクチニブを術後補助療法として用いた場合の有効性・安全性を検討するALINA試験が実施され、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのBenjamin Solomon氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析の結果を発表した。アレクチニブはプラチナ製剤を用いた化学療法と比較して無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが示された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:抗がん剤による全身療法歴のないECOG PS 0/1の切除可能なStageIB(4cm以上)~IIIAのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者(UICC/AJCC第7版に基づく)試験群:アレクチニブ600mg(1日2回)を2年間または再発まで(アレクチニブ群:130例)対照群:シスプラチン+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(シスプラチン不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)を3週ごと4サイクルまたは再発まで(化学療法群:127例)評価項目:[主要評価項目]DFS(StageII~IIIA集団→ITT集団[StageIB~IIIA]の順に階層的に検証)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS(CNS DFS)、全生存期間(OS)、安全性など解析計画:今回の解析におけるStageII~IIIA集団の有意水準はα=0.0118、ITT集団の有意水準はα=0.0077とした。データカットオフ日:2023年6月26日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は27.8ヵ月であった。・StageII~IIIA集団におけるDFS中央値は化学療法群44.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:27.8~推定不能)であったのに対し、アレクチニブ群は未到達であり、アレクチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.24、95%CI:0.13~0.45、p<0.0001)。・StageII~IIIA集団における2年DFS率は化学療法群63.0%、アレクチニブ群93.8%、3年DFS率はそれぞれ53.3%、88.3%であった。・ITT集団においても、アレクチニブ群は化学療法群と比較してDFSが改善した(HR:0.24、95%CI:0.13~0.43、p<0.0001)。・DFSのサブグループ解析において、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。・ITT集団において、アレクチニブ群は化学療法群と比較してCNS DFSが改善した(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。・再発はアレクチニブ群15例、化学療法群49例に認められ、そのうち遠隔転移はアレクチニブ群33.3%(5/15例)、化学療法群55.1%(27/49例)であった。脳転移はアレクチニブ群4例、化学療法群14例に認められた。・OSのデータは未成熟であった(死亡は6例)。・Grade3以上の有害事象は化学療法群31%(37/120例)、アレクチニブ群30%(38/128例)に認められ、Grade5の有害事象は認められなかった。重篤な治療関連有害事象はそれぞれ7%(8/120例)、2%(2/128例)、治療中止に至った有害事象はそれぞれ13%(15/120例)、5%(7/128例)に認められた。 本結果について、Solomon氏は「本試験は、切除可能なStageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者におけるALK阻害薬の有効性を第III相試験で初めて示した試験であり、アレクチニブは術後補助療法における新たな治療選択肢となる」とまとめた。

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HIV陽性者の結核性髄膜炎、デキサメタゾン追加は有用か/NEJM

 結核性髄膜炎を有するHIV陽性の成人患者の治療において、抗結核化学療法に補助療法としてデキサメタゾンを追加する方法は、プラセボの追加と比較して、1年生存率を改善せず、神経障害や免疫再構築症候群(IRIS)の発生などに関しても有益性を認めないことが、ベトナム・オックスフォード大学臨床研究所(OUCRU)のJoseph Donovan氏らが実施した「ACT HIV試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年10月12日に掲載された。ベトナムとインドネシアの無作為化プラセボ対照試験 ACT HIV試験は、ベトナムとインドネシアの施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2017年5月~2021年4月の期間に参加者の無作為化を行った(Wellcome Trustの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、HIV陽性(新規または過去の診断)で、臨床的に結核性髄膜炎(髄膜炎症状と脳脊髄液[CSF]の異常が5日以上持続)との診断を受け、担当医によって抗結核化学療法が予定されているか、開始された患者であった。 被験者を、12ヵ月間の標準的な抗結核化学療法に加え、デキサメタゾンまたはプラセボを6~8週間で漸減投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、無作為化から12ヵ月間における全死因死亡とした。 ITT集団として520例(年齢中央値36歳[四分位範囲[IQR]:30~41]、男性76.2%)を登録し、デキサメタゾン群に263例、プラセボ群に257例を割り付けた。255例(49.0%)は抗レトロウイルス療法(ART)を1回も受けたことがなく、データを入手できた484例のうち251例(51.9%)がベースラインのCD4細胞数が50/mm3以下であった。死亡率は容認できないほど高い 結核性髄膜炎の重症度は全般に軽度~中等度で、Medical Research Council(MRC)の修正重症度分類のグレード1または2が447例(86.0%)を占めた。登録時の抗結核化学療法レジメンとして、93.0%でリファンピシン、94.4%でイソニアジド、91.6%でピラジナミド、70.8%でエタンブトールが使用されていた。 12ヵ月の追跡期間中に、デキサメタゾン群の263例中116例(44.1%)、プラセボ群の257例中126例(49.0%)が死亡し(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.66~1.10、p=0.22)、1年生存率に関して両群間に有意な差を認めなかった(主要エンドポイント)。 事前に規定されたサブグループの解析では、デキサメタゾン群で明確な有益性を示したものはなかった。また、per-protocol集団とそのサブグループでも有益性を認めたものはなかった。 副次エンドポイントについても、ITT集団およびper-protocol集団の双方で両群間に差はなかった。たとえば、ITT集団における12ヵ月時の神経障害(修正Rankinスケール3~5)のオッズ比は1.31(95%CI:0.80~2.14)、最初の6ヵ月間のIRIS発生のHRは1.11(95%CI:0.46~2.69)、12ヵ月間における新たな神経学的イベントの発生または死亡のHRは0.85(95%CI:0.67~1.08)、AIDSを定義するイベントの発生または死亡のHRは0.87(95%CI:0.68~1.12)だった。 12ヵ月時までに少なくとも1件の重篤な有害事象を発現した患者は、デキサメタゾン群が263例中192例(73.0%)、プラセボ群は257例中194例(75.5%)であった(p=0.52)。また、重篤な神経学的有害事象が発現した患者の割合は、プラセボ群(115/257例[44.7%])よりもデキサメタゾン群(95/263例[36.1%])で低かった。 著者は、「これらの結果は、HIV陽性者の結核性髄膜炎に伴う死亡率は依然として容認できないほど高く、HIVと結核の発見と早期治療の強化が世界的に重要であることを強調するものである」と指摘している。

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HER2陽性胃がん、トラスツズマブ+化学療法のペムブロリズマブ上乗せは3年時も有用(KEYNOTE-811)/ESMO2023

 進行胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の有効性は化学療法との併用においてより効果を発揮することが示唆されており、最適なレジメンが検討されている。第III相KEYNOTE-811試験は、胃・胃食道接合部がん1次治療としてのペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法の有用性を示し、この結果を基に米国食品医薬品局(FDA)は2021年5月に本レジメンを承認している。2023年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏が本試験の第3回中間解析結果を発表、同日にLancet誌に掲載された。・対象:未治療のHER2陽性胃・胃食道接合部がん、PS0~1・試験群:ペムブロリズマブ200mg+トラスツズマブ+標準化学療法(フルオロピリミジンおよびプラチナ製剤)を3週間ごと最大35サイクル(ペムブロ群)・対照群:プラセボ+トラスツズマブ+標準化学療法(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下の通り。・698例がペムブロ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。年齢中央値62歳、81%が男性であった。・第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)において、全例でペムブロ群はプラセボ群に対してPFSを有意に改善した。PFS中央値はペムブロ群10.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.6~12.2)対プラセボ群8.1ヵ月(95%CI:7.1~8.6)、ハザード比(HR)0.73(95%CI:0.61~0.87、p=0.0002)であった。PD-L1<1の症例においては、この差はさらに開いた(10.9ヵ月対7.3ヵ月、HR:0.71、95%CI:0.59~0.86)。・全生存期間中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~22.1)対16.8ヵ月(95%CI:15.0~18.7)、HR 0.84(95%CI:0.70~1.01)で、事前に規定された基準を満たさなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群58%対プラセボ群50%、Grade5(死亡)は4例(1.1%)対3例(0.9%)で発現した。・ORRはペムブロ群73%対プラセボ群60%、DORは11.3ヵ月対9.5ヵ月であった。 Janjigian氏は「本試験は、切除不能でHER2陽性胃がん、とくにPD-L1高発現の患者において本レジメンによる1次療法の有用性を強く支持するものであり、毒性はこれまで報告されていたものと同様だった。OSは引き続き解析を行い、最終解析として報告予定」とした。この結果を受け、欧州医薬品庁(EMA)は PD-L1<1の患者を対象に同レジメンを承認しており、ESMOガイドラインも同日にアップデートされた。

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術前ICI+化学療法でcCRの膀胱がん、膀胱温存可能か?/Nat Med

 筋層浸潤性膀胱がんは、膀胱全体を摘出する膀胱全摘除術が標準治療とされているが、尿路変向の必要があり、合併症や死亡のリスクも存在する。抗PD-1抗体薬と化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)の併用による術前化学療法で膀胱がん患者の40~50%で病理学的完全奏効(pCR)が得られることが報告されているが1,2)、pCRは膀胱全摘除術後に判定する必要がある。そこで米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの研究グループは、術前化学療法により臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者が安全に膀胱全摘除術を回避できるか検討した。その結果、cCRが得られた患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避し、32例における2年無転移生存率は97%であり、膀胱温存の可能性が示された。・試験デザイン:海外多施設共同第II相医師主導治験(HCRN GU16-257試験)・対象:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)に基づき筋層浸潤性膀胱がん(cT2-4N0M0)と診断され、シスプラチンに適格の18歳以上の患者76例・治療:ゲムシタビン(1、8日目に1,000mg/m2)+シスプラチン(1日目に70mg/m2)+ニボルマブ(1日目に360mg)を4サイクル(21日1サイクル)投与した。cCRを達成し、膀胱全摘除術を回避した患者はニボルマブ(240mg、隔週)を8サイクル投与した。cCRを達成しなかった患者は術前化学療法後に膀胱全摘除術を実施することとした。・評価項目:[複合主要評価項目]cCR(生検、細胞診で悪性腫瘍なし、画像検査で局所再発/転移なし)達成率、cCRの陽性的中率(膀胱全摘除術を回避した患者:2年無転移生存、膀胱全摘除術を実施した患者:pT1N0未満で評価、95%信頼区間[CI]の下限値が80%超で複合主要評価項目達成)[副次評価項目]体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)とcCRの陽性的中率の関連、無転移生存期間(MFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・4サイクルの治療終了後に病期の再分類評価が行われた72例中、43%(33/72例)がcCRを達成した。・cCRを達成した患者の観察期間中央値は30ヵ月(範囲:18~42)であった。・cCRを達成した患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避した。・cCRの陽性的中率は97%(95%CI:0.91~1)であり、複合主要評価項目を達成した。・cCRを達成した患者は達成しなかった患者と比較して、MFSおよびOSが有意に延長した(それぞれp=0.007、p=0.003)。・体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)はcCRの陽性的中率を改善しなかった。・Grade3以上の有害事象は75%の患者に発現し、主なものは好中球数減少(34%)、尿路感染(17%)、貧血(16%)であった。全Gradeの主な有害事象は疲労(76%)、貧血(75%)、好中球数減少(68%)、悪心(58%)であった。

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運動するのも緩和ケア?【非専門医のための緩和ケアTips】第61回

第61回 運動するのも緩和ケア?緩和ケアの専門家として、時々聞かれるのが「運動療法ってどんなことをするのですか?」というトピックです。確かに緩和ケアの教科書を見ると書いてありますからね。今回は緩和ケアにおける運動療法を考えてみましょう。今回の質問外来で診ているがん患者さん。痛みなどの身体症状は抑えられているのですが、不眠があり、気分も晴れないとのことです。こういった方に運動を勧めることをどう思われますか?外来通院されている患者さんに、少しでもできることがないかと考える姿勢が非常に伝わってくる質問ですね。まず、緩和ケア領域における運動療法についての一般論を共有します。がん患者への運動療法は世界的に議論され、研究領域の1つでもあります。その効果としては、倦怠感などの苦痛症状の緩和、身体機能やQOLの向上などが期待されています。運動の内容としては、日本緩和医療学会の編集による『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)に、これまでのエビデンスをまとめた推奨事項が記載されています。これによると「一般に成人(18~64歳)に対して、中等度の身体活動を週150分、高強度の有酸素運動を週75分、中~高強度の抵抗運動を週2回以上、行うことが推奨されている」(学会サイトから無料で閲覧可)。このように、緩和ケア領域における運動療法には一定の効果が期待できるわけですが、実践するうえでの注意点は何でしょう?それは、「適応」と「安全」です。「適応」としては、運動療法を検討している患者さんの症状や苦痛に対するアセスメントが重要です。今回の相談のケースでは、患者さんの気分の落ち込みがうつ病の症状かを考慮する必要があるでしょう。また、不眠も運動による改善が期待できますが、そもそもの不眠の原因を取り除くことも必要です。次に「安全」についてです。健康な人も同様ですが、がん患者であればなおさら過度な運動は禁物です。高齢の患者さんには持病のある人も多く、さらに安全に配慮する必要があります。骨転移のあるがん患者さんが転倒して骨折する、というのはよくあるケースですが、運動療法中に骨折すれば管理上の問題にもなります。そのほか、化学療法中の患者さんであれば、発熱や吐き気といった副作用が出ている時期や、骨髄抑制の期間中の運動は避けたほうがよいでしょう。以上、緩和ケア領域における運動療法を検討しました。「適応」と「安全」をしっかり考えながら、ケアに運動を取り込みましょう。今回のTips今回のTips緩和ケア領域の運動療法は、「適応」と「安全」を考えるのがポイント!

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未治療の転移のある膵管腺がん患者におけるNALIRIFOX対nab-パクリタキセルおよびゲムシタビン―無作為化非盲検第III相試験(解説:上村直実氏)

 膵がんは消化器領域で最も予後が悪く、罹患者数と死亡者数が増加している唯一の悪性腫瘍である。治癒可能なStage0/Iの初期段階で早期発見されるのは全体の2〜3%にすぎず、大半は外科的切除不能の進行がんで診断される。さらに、手術可能な段階で発見され治癒切除術が施行された場合であっても、再発が多く術後の5年生存率は20%程度であり、遠隔転移を認める場合はわずか2%以下とされている。したがって、現時点では、根治可能な初期がんの早期発見と切除不能膵がんに対する有効な化学療法の開発が喫緊の課題となっている。 切除不能膵がん(遠隔転移例ないしは切除不能局所進行がん)に対する化学療法について、西欧諸国ではNALIRIFOX療法(ナノリポソーム型イリノテカン+オキサリプラチン+ロイコボリン+5-FU)とゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法(Gem+nab-P)の両者が、化学療法の第一選択として推奨されつつある。今回、この2つの化学療法レジメンを直接比較した無作為化非盲検第III相試験「NAPOLI 3」の結果が、2023年9月のLANCET誌オンライン版に報告された。 日本を含まない世界18ヵ国で施行された国際共同試験であるNAPOLI 3は、切除不能膵がんの一次治療として2つの併用化学療法レジメンを直接比較するために施行された、無作為化オープンラベルの第III相試験である。試験の結果、NALIRIFOX群がGem+nab-P群よりも全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示された。この結果、欧米では、遠隔転移例を中心とする切除不能膵がんに対する化学療法の第一選択はNALIRIFOX療法となる可能性が高い。 日本における臨床試験の成績では、欧米と異なり、ゲムシタビン+パクリタキセル併用療法は今回のOSを大きく上回る延命効果を示している。現在もmodified FOLFIRINOX療法とGem+nab-P併用療法の比較試験が行われている最中である。さらに西欧諸国と異なる点として、切除可能膵がんの術前・術後の補助療法に有用性を示しているS-1を組み込んだレジメンやゲノム医療の導入も期待され、今後、日本人を対象とした新たなエビデンスが作られることが待望される。 一方、初期がんの早期発見に関しては、広島県尾道市を中心として一般実地医家と専門施設で膵がん対策チームを作った「尾道方式」が次第に全国へ広まりつつある段階である。さらに、最近、がんの特異的遺伝子発現パターンをターゲットとした診断キットの開発が進んでおり、切除可能な膵がん(Stage0/I/II)を数多く発見できる体制が期待される。 最後に、わが国におけるがん関連臨床試験の対象年齢は18歳から75歳としているものが多かったが、がん患者は75歳以上の高齢者が多いことを反映して、最近は今回の論文と同様に、年齢の上限をなくしたものが見られることは臨床現場にとって喜ばしい変化である。

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アントラサイクリン系薬剤による心機能障害をアトルバスタチンは抑制したがプラセボとの差はわずかであった(解説:原田和昌氏)

 近年、Onco-cardiologyが注目されており、がん化学療法に伴う心毒性を抑制できる薬剤の探索が行われている。動物実験や小規模なランダム化比較試験では、アントラサイクリン系薬剤による左室駆出率(LVEF)低下に対する、アトルバスタチンの抑制作用が報告されていたが、乳がんを中心としたPREVENT試験では効果を示せなかった(ドキソルビシン換算の中央値、240mg/m2)。 リンパ腫患者においてアトルバスタチン(40mg/日)の投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤に関連する心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であるSTOP-CA試験で示された(同、300mg/m2)。主要評価項目はLVEFが化学療法前後で絶対値において10%以上低下し、12ヵ月後に55%未満となった患者の割合で、プラセボ群22%対アトルバスタチン群9%であった(p=0.002)。しかし、群全体としてのEF低下幅はスタチン群4.1%で、プラセボ群5.4%との差は1.3%のみであった(p=0.029)。 がん化学療法の心毒性に対する抑制効果のメタ解析では、スピロノラクトン、エナラプリルが最も有効で、スタチン、β遮断薬がこれに続いた。また、アントラサイクリン系薬剤もしくはトラスツズマブ治療を受けた患者のコホート研究では、ACE阻害薬、β遮断薬の治療にて全死亡が少なかった。さらに、アントラサイクリン系薬剤治療に関するメタ解析では、β遮断薬によって心不全の発症が有意に低下した。 スタチンによる心保護作用についてはさまざまな機序が推定されており、その意味で本試験の結果は納得のいくものである。そもそも、最近のメタ解析によるとスタチンにはHFrEF患者の入院の抑制作用も示されている。しかし、EF低下幅の差1.3%で有意差を出すことができたのは、ひとえに試験デザインの秀逸さによるものと考えられる。

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