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女性のがん、39ヵ国の診断時期・治療を比較/Lancet

 英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のClaudia Allemani氏らVENUSCANCER Working Groupは、女性に多い3種類のがん(乳がん、子宮頸がん、卵巣がん)の治療提供状況について初めて世界規模で評価した「VENUSCANCERプロジェクト」の解析結果を報告した。低・中所得国では、早期がんと診断された女性がガイドラインに準拠した治療を受けやすくなってはいたが、早期診断される女性の割合は依然として非常に低いままであることを示した。著者は、「解析で得られた知見は、WHOの世界乳がんイニシアチブや子宮頸がん撲滅イニシアチブといった、がん対策への国際的な取り組みの実施とモニタリングを支援する重要なリアルワールドエビデンスである」としている。Lancet誌2025年11月15日号掲載の報告。ガイドライン準拠、診断~治療開始の期間中央値を評価、高所得国と低・中所得国の受療確率を分析 研究グループは、CONCORDプログラムに乳がん・卵巣がん・子宮頸がんのデータを提供した全322のがん登録に対して、VENUSCANCERプロジェクトへのデータ提供を要請し、世界39の国と地域における103のがん登録から得られた2015~18年のいずれかの1年間に乳がん、子宮頸がん、または卵巣がんと診断された女性の高精度データを解析した。高精度データには、診断時Stage、Stage分類手順、腫瘍グレード、バイオマーカー(ER、PR、HER2)、各治療法(手術、放射線療法、化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)の初回治療コースおよび関連する日付が含まれた。 国または地域別に予後因子、国際臨床ガイドライン(ESMO、ASCO、NCCN)との整合性を示す主要な指標、および診断から治療開始までの期間中央値を評価した。年齢と腫瘍のサブタイプを調整し、高所得国と低・中所得国におけるガイドラインに沿った治療を受けられる確率を分析した。低・中所得国では、早期診断される女性の割合が依然として非常に低い 解析には、3種類のいずれか1つのがんと診断された女性計27万5,792例が包含された。乳がん診断者21万4,111例(77.6%)、子宮頸がん(上皮内がんを含む)診断者4万4,468例(16.1%)、卵巣がん診断者1万7,213例(6.2%)であった。 高所得国では、早期・リンパ節陰性のがんは乳がん診断者および子宮頸がん診断者の40%超を占めていたが、卵巣がん診断者では20%未満であった。一方、低・中所得国では、これらの割合は3つのがんすべてでおおむね20%未満であった。ただしキューバ(乳がん30%)、ロシア(子宮頸がん36%、卵巣がん27%)では高かった。 国際ガイドラインとの整合性には大きなばらつきが認められ、とくに早期乳がんに対する手術・放射線療法(ジョージア13%~フランス82%)、進行子宮頸がんに対する化学療法(モンゴル18%~カナダ90%)、転移のある卵巣がんに対する手術+化学療法併用(キューバ9%~米国53%)で顕著であった。 何らかの手術が提供されたのは、高所得国では78%、低・中所得国では56%であり、早期がんに対する初期治療(臨床ガイドラインに準拠した)は、乳がんと比べて子宮頸がんと卵巣がんのほうがより均一に行われていた。高所得国と低・中所得国のいずれにおいても、高齢女性(70~99歳)は50~69歳の女性との比較において臨床ガイドラインに準拠した初期治療を受ける確率が低かった。 早期がんの診断から治療までの期間中央値は、複数の高所得国では1ヵ月未満であったが、モンゴルの子宮頸がんおよびエクアドルの卵巣がんでは最大4ヵ月、モンゴルの乳がんでは最大1年であった。

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既治療のEGFR陽性NSCLC、sac-TMTがOS改善(OptiTROP-Lung04)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療後に病勢が進行したEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)とともに全生存期間(OS)をも改善し、新たな安全性シグナルの発現は認められなかった。中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのWenfeng Fang氏らが、第III相試験「OptiTROP-Lung04試験」の結果で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年10月19日号に掲載された。中国の無作為化試験 OptiTROP-Lung04試験は、中国の66施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2023年7月~2024年4月に参加者のスクリーニングが行われた(Sichuan Kelun-Biotech Biopharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18~75歳、局所進行(StageIIIBまたはIIIC)または転移のある(StageIV)の非扁平上皮NSCLCと診断され、治癒切除術または根治的化学放射線療法が非適応で、EGFR変異(exon19delまたはexon21 L858R置換)陽性であり、1次または2次治療においてEGFR-TKI(第1・2世代はT790M変異陰性例、第3世代はT790M変異の有無を問わない)の投与を受けたのち病勢が進行した患者376例(年齢中央値60歳[範囲:31~75]、男性39.6%)を対象とした。  参加者を、sac-TMT群(188例)またはペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法群(188例)に無作為に割り付けた。sac-TMT群は、28日を1サイクルとして1および15日目に5mg/kg体重を静脈内投与した。化学療法群は、21日を1サイクルとして1日目にペメトレキセド(500mg/m2体表面積)+担当医の選択によりカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)またはシスプラチン(75mg/m2)の投与を最大で4サイクル行い、その後ペメトレキセドによる維持療法を施行した。客観的奏効割合、奏効期間も優れる 登録時に、74.5%が非喫煙者で、97.6%がStageIVであった。全身状態の指標(ECOG PSスコア)は、0が20.7%、1が79.3%で、94.7%が前治療で第3世代EGFR-TKIの投与(62.5%は1次治療として)を受けていた。  追跡期間中央値18.9ヵ月の時点における、独立審査委員会が盲検下に評価したPFS中央値(主要エンドポイント)は、化学療法群よりもsac-TMT群で延長した(8.3ヵ月vs.4.3ヵ月、病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.62)。12ヵ月時のPFS率は、sac-TMT群が32.3%、化学療法群は7.9%だった。  また、OS中央値(主な副次エンドポイント)は、化学療法群が17.4ヵ月であったのに対し、sac-TMT群は推定不能(95%CI:21.5~推定不能)であり有意に優れた(死亡のHR:0.60、95%CI:0.44~0.82、両側p=0.001)。18ヵ月時のOS率は、sac-TMT群が65.8%、化学療法群は48.0%だった。  独立審査委員会が盲検下に評価した客観的奏効(完全奏効+部分奏効)の割合は、sac-TMT群が60.6%、化学療法群は43.1%であった(群間差:17.0%ポイント、95%CI:7.0~27.1)。奏効期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および4.2ヵ月であり、奏効期間中央値が1年以上の患者の割合は36.3%および8.1%だった。口内炎が高頻度に sac-TMT関連の新たな安全性シグナルは認めなかった。Grade3以上の治療関連有害事象は、sac-TMT群で58.0%、化学療法群で53.8%に発現し、最も頻度が高かったのは好中球数の減少(39.9%、33.0%)であった。Grade3以上の貧血(11.2%vs.14.3%)、血小板減少(2.1%vs.16.5%)はsac-TMT群で少なく、重篤な治療関連有害事象の頻度もsac-TMT群で低かった(9.0%vs.17.6%)。また、sac-TMT群では、治療関連有害事象による投与中止の報告はなかった。  とくに注目すべき薬剤関連有害事象については、sac-TMT群で口内炎(64.4%vs.4.9%)の頻度が高かった。sac-TMT群の口内炎の内訳は、Grade1が42例(22.3%)、同2が70例(37.2%)、同3が9例(4.8%)で、Grade4/5は認めなかった。19例(10.1%)が口内炎のため減量したが、投与中止例はなく、Grade3の9例はいずれも適切な介入と減量により診断から中央値で10日以内にGrade2以下に改善した。  著者は、「近年の治療の進歩は主に、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬、抗血管新生薬、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体、HER3を標的とする抗体薬物複合体を組み合わせた多剤併用療法が中心となっているが、主要な臨床試験ではOSの有益性に関して有意差は達成されていないことから、本試験においてsac-TMTが単剤でOSを有意に改善したことは注目に値する」「EGFR-TKI抵抗性のNSCLCでは、ペメトレキセド+白金製剤ベースの化学療法の前に、sac-TMTが考慮すべき好ましい治療選択肢となる可能性がある」としている。

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スタチンでケモブレインを防げる?

 最も一般的なコレステロール治療薬であるスタチン系薬剤(以下、スタチン)が、がん患者を「ケモブレイン」から守るのに役立つかもしれない。新たな研究で、スタチンは乳がんやリンパ腫の患者の認知機能を最大2年間保護する可能性のあることが示された。米バージニア・コモンウェルス大学パウリー心臓センターのPamela Jill Grizzard氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月21日掲載された。 Grizzard氏は、「がん治療は患者を衰弱させる可能性があり、化学療法による認知機能の低下は治療終了後も長期間続くことがある」と話す。その上で、「この研究結果は、スタチン投与群に割り付けられたがん患者において、治療開始から2年間にわたり認知機能に予想外の改善傾向が認められたことを示している。がん治療中に知性を守ることは、心臓を守るのと同じくらい重要だ」と述べている。 化学療法を受ける患者の多くは、記憶力、問題解決能力、自制心、計画力の低下など、頭がぼんやりするブレインフォグや思考力の低下を訴える。これらの副作用は一般に「ケモブレイン」と呼ばれている。研究グループによると、ケモブレインの原因は医師にもはっきりと分かっておらず、化学療法薬が脳細胞に直接作用している可能性や、化学療法の副作用として知られている疲労感や貧血が原因となっている可能性が示唆されているという。 今回、Grizzard氏らは、スタチンが化学療法による心毒性から心臓を保護できるのかどうかを調べた過去の臨床試験のデータの2次解析を行った。対象者である、ドキソルビシンによる治療中でステージI~IVのリンパ腫、またはステージI~IIIの乳がんの患者238人(平均年齢49歳、女性91.2%)は、ドキソルビシン治療開始前から最長で24カ月間にわたり、アトルバスタチン(40mg/日)を投与する群(118人)とプラセボを投与する群(120人)に割り付けられていた。今回の研究では、対象者の注意機能(Trail Making Test Part A〔TMT-A〕で評価)、実行機能(TMT-Bで評価)、言語流暢性(Controlled Oral Word Association Testで評価)が評価された。 その結果、治療前と比べて治療開始から24カ月時点の実行機能は、アトルバスタチン投与群では平均10.2秒有意に改善したのに対し、プラセボ群では平均0.2秒の改善にとどまり、統計学的に有意ではなかった。ただし、時間の経過による変化の仕方に両群間で有意な差はなかった。注意力と言語流暢性の改善度についても、両群で同程度であった。 研究グループは、「このような認知スキルは、治療の選択と日常生活のさまざまな課題を両立させようと努力しているがんサバイバーにとって不可欠である」と述べている。Grizzard氏は、「今後の研究で有益な効果が確認されれば、スタチンはがんサバイバーが治療中も認知機能と生活の質(QOL)を維持する上で貴重なツールとなる可能性がある」と結論付けている。

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がん患者のメンタル問題、うつ病と不安障害で発症期に差

 がん患者におけるうつ病と不安障害の発症率と時間的傾向を明らかにした研究結果が、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月29日号に発表された。九州大学の川口 健悟氏らは日本の14の自治体から収集された診療報酬請求データを用いて、がん診断後、最大24ヵ月間の追跡期間中にうつ病と不安障害を発症した例について調査した。 2018年4月~2021年3月に新たにがんと診断された2万2,863例を対象とした。粗発症率を算出し、ポアソン回帰分析を用いて月別発症率と時間的傾向を可視化した。全患者を対象とした分析と、性別、年齢、治療法、がんの種類別の分析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の全体的な粗発症率は1,000人月当たり3.36、不安障害は同3.11であることが明らかになった。・うつ病と不安障害ではピークを迎える時期が異なっていた。うつ病の発症はがん診断後2ヵ月頃にピークを迎え、不安障害は診断された月にピークを迎えた。・女性や化学療法を受けている患者では、うつ病と不安障害の両方で発症率が高いことが示された。がんの種類別では、膵臓がん患者が両疾患において最も高い発症率を示した。 研究者らは「うつ病と不安障害はがん治療への遵守率、生活の質、生存率などに悪影響を及ぼすことが知られているが、これらの発症時期を特定することで、より効果的な介入時期を計画できる可能性がある。とくに、不安障害は診断直後に、うつ病は診断から2ヵ月後頃に注意が必要であることが示された。また、女性患者、化学療法を受ける患者、膵臓がん患者などのハイリスク群に対しては、より積極的なメンタルヘルスのスクリーニングとサポートが必要かもしれない。今後は、これらの知見に基づいたハイリスク期間における的を絞った介入プログラムの開発と評価が期待される」とした。

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日本人EGFR陽性NSCLC、アファチニブvs.オシメルチニブ(Heat on Beat)/日本肺癌学会

 オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療として用いられている。ただし日本人では、オシメルチニブの有用性をゲフィチニブまたはエルロチニブと比較検証した「FLAURA試験」1,2)において、有効性が対照群と拮抗していたことも報告されている。そこで、1次治療にアファチニブを用いた際のシークエンス治療の有用性について、1次治療でオシメルチニブを用いる治療法と比較する国内第II相試験「Heat on Beat試験」が実施された。第66回日本肺癌学会学術集会において、本試験の結果を森川 慶氏(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)が報告した。なお、本試験の結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)でも報告されている(PI:帝京大学腫瘍内科 関 順彦氏)。・試験デザイン:国内第II相無作為化比較試験・対象:未治療のStageIIIB/IIIC/IVのEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者100例・試験群(アファチニブ群):アファチニブ→病勢進行時の再生検でEGFR T790M変異が認められた場合にオシメルチニブ 50例(解析対象:47例)・対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ 50例(解析対象:48例)・評価項目:[共主要評価項目]3年全生存(OS)率、免疫学的バイオマーカー探索[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、OSなど 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者の年齢中央値は、アファチニブ群70歳(範囲:43~87)、オシメルチニブ群72歳(48~88)、非喫煙者の割合はそれぞれ46.8%、45.8%であった。EGFR exon21 L858R変異がそれぞれ48.9%、47.9%であった。・ORRはアファチニブ群63.8%(CR:1例)、オシメルチニブ群62.5%(CR:3例)であった。・3年OS率はアファチニブ群54.7%、オシメルチニブ群57.5%であり、主要評価項目は達成されなかった(p=0.64)。・OS中央値はアファチニブ群38.8ヵ月、オシメルチニブ群未到達であった(ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:0.64~2.05)。・PFS中央値はアファチニブ群16.7ヵ月、オシメルチニブ群14.5ヵ月であった(HR:1.17、95%CI:0.72~1.90)。・EGFR遺伝子変異の種類別にみたPFS中央値、OS中央値は以下のとおりであった(アファチニブ群vs.オシメルチニブ群[HR、95%CI]を示す)。【exon19欠失変異】 PFS中央値:18.3ヵ月vs.33.6ヵ月(HR:1.62、95%CI:0.75~3.48) OS中央値:未到達vs.未到達(HR:1.16、95%CI:0.42~3.20)【exon21 L858R変異】 PFS中央値:13.9ヵ月vs.10.6ヵ月(HR:0.88、95%CI:0.43~1.79) OS中央値:35.9ヵ月vs.未到達(HR:1.21、95%CI:0.54~2.70)・有害事象は、アファチニブ群では下痢、ざ瘡様皮膚が多かった。下痢の発現割合(全Grade/Grade3以上)はアファチニブ群91.5%/29.8%、オシメルチニブ群31.3%/6.3%であり、ざ瘡様皮膚はそれぞれ68.1%/10.6%、43.8%/2.1%であった。一方、オシメルチニブ群では肺臓炎が多く、発現割合はそれぞれ10.6%/2.1%、20.8%/6.3%(オシメルチニブ群のGrade3以上はいずれもGrade5)であった。・有害事象で1次治療が治療中止に至った患者のうち、2次治療に移行した患者の割合はアファチニブ群70.0%(7/10例)、オシメルチニブ群35.7%(5/14例)であった。・2次治療を受けた患者の割合は、アファチニブ群74.5%、オシメルチニブ群54.2%であった。2次治療の内訳は以下のとおりであった。【アファチニブ群】 化学療法20.0% 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)±化学療法42.9% オシメルチニブ±化学療法31.4% オシメルチニブ以外のEGFR-TKI±化学療法5.7%【オシメルチニブ群】 化学療法23.1% ICI±化学療法53.8% オシメルチニブ±化学療法3.8% オシメルチニブ以外のEGFR-TKI±化学療法19.3%・アファチニブ群の病勢進行時の再生検検体でEGFR T790M変異が認められた割合は、組織検体19.2%(5/26件)、リキッドバイオプシー検体20%(4/20件)であった。・末梢血中の種々の免疫細胞を評価し、Th7RおよびTh2フラクションのみがPFSおよびOSとの相関を認めた。オシメルチニブ群では、Th7R高値、Th2低値で予後が良好な傾向にあったが、この傾向はアファチニブ群では認められなかった。バイオマーカー別のオシメルチニブ群のPFS中央値、OS中央値は以下のとおり。【免疫バイオマーカー:Th7R高値vs.低値】 PFS中央値:33.1ヵ月vs.6.7ヵ月(p<0.01) OS中央値:未到達vs.40.5ヵ月(p=0.29)【免疫バイオマーカー:Th2高値vs.低値】 PFS中央値:6.0ヵ月vs.30.6ヵ月(p=0.02) OS中央値:30.2ヵ月vs.未到達(p<0.01) 本結果について、森川氏は「主要評価項目の3年OS率は達成されなかった。その要因の1つとして、EGFR T790M変異の検出が低く、かつT790M変異陽性症例でのオシメルチニブ投与期間も想定より短かったため、シークエンス治療(アファチニブ→オシメルチニブ)が有効であった症例が少なかったことが考えられる」と考察した。また「オシメルチニブはホストの免疫状態によって治療効果が大きく影響を受ける可能性があり、Th7Rなどの免疫バイオマーカーがオシメルチニブの治療効果予測に関与する可能性がある」と述べた。

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EGFR陽性NSCLCへのオシメルチニブ+化学療法、日本人でもOS良好(FLAURA2)/日本肺癌学会

 国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」において、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善したことが報告されている1)。ただし、本試験のサブグループ解析において、中国人を除くアジア人集団のOSのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間[CI]:0.71~1.40)であったことから、日本人集団の結果が待ち望まれていた。そこで、第66回日本肺癌学会学術集会において、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が本試験の結果を報告するとともに、日本人集団のOS解析結果を報告した。また、本報告の追加資料において、日本人集団の患者背景とPFS解析結果も示された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 既報の主要な結果は以下のとおり。・OS中央値(併用群vs.単独群)47.5ヵ月vs.37.6ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)・2/3/4年OS率(同上)80%/63%/49%vs.72%/51%/41%・PFS中央値(同上)25.5ヵ月vs.16.7ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49〜0.79、p<0.001)・1/2年PFS率(同上)80%/57%vs.66%/41% 日本人集団の解析結果は以下のとおり。・解析対象は併用群47例、単独群47例であった。男性の割合はそれぞれ34%、51%であり、年齢中央値はそれぞれ68歳(範囲:39~83)、65歳(同:33~79)であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群49%/51%、単独群66%/34%であった。・OS中央値は併用群48.3ヵ月、単独群34.3ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.60、95%CI:0.36~1.03)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ85%、65%、52%であり、単独群がそれぞれ65%、41%、33%であった。・PFS中央値は併用群24.8ヵ月、単独群16.4ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。・1年、2年時のPFS率は、併用群がそれぞれ83%、64%であり、単独群がそれぞれ63%、30%であった。

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ESMO2025 レポート 乳がん(転移再発乳がん編)

レポーター紹介2025年10月17~21日にドイツ・ベルリンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、3万7,000名を超える参加者、3,000演題弱の発表があり、乳がんの分野でも、現在の標準治療を大きく変える可能性のある複数の画期的な試験結果が発表された。とくに、抗体薬物複合体(ADC)、CDK4/6阻害薬、およびホルモン受容体陽性乳がんに対する新規分子標的治療に関する発表が注目を集めた。臨床的影響が大きい主要10演題を早期乳がん編・転移再発乳がん編に分けて紹介する。[目次]転移再発乳がん編ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん1.evERA2.VIKTORIA-1HER2陽性乳がん3.DESTINY-Breast09トリプルネガティブ乳がん4.ASCENT-035.TROPION-Breast02ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん1.evERA:ESR1陽性HR+/HER2-転移乳がんに対するgiredestrant(経口SERD)+エベロリムス併用療法の有効性の報告evERAは、ホルモン受容体(ER)陽性、HER2陰性の進行/転移乳がん患者に対する新規経口SERD「giredestrant(ギレデストラント)」にエベロリムス(mTOR阻害薬)併用の、対照群として医師選択の内分泌療法(エキセメスタン/タモキシフェン/フルベストラント)+エベロリムスに対する、有効性と安全性を検証した国際第III相臨床試験である。対象は、CDK4/6阻害薬による治療歴があるER陽性/HER2陰性進行/転移乳がん患者(ESR1変異陽性も含む)であった。373例が参加し、日本人患者も参加していた。ITT集団において、giredestrant+エベロリムス群の無増悪生存期間(PFS)中央値は8.77ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.60~9.59)に対し、対照群(内分泌療法+エベロリムス)では 5.49ヵ月(95%CI:4.01~5.59)(ハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.44~0.71、p<0.0001)であり、統計学的有意にgiredestrant群のPFSが良好であった。ESR1変異陽性サブ集団では、PFS中央値が9.99ヵ月(95%CI:8.08~12.94)に対し、対照群で5.45ヵ月(95%CI:3.75~5.62)、PFSのHR:0.38(95%CI:0.27~0.54、p<0.0001)であり、統計学的有意にgiredestrant群のPFSが良好であった。全生存期間(OS)データは未成熟だが、ITT集団ではHR:0.69(95%CI:0.47~1.00、p=0.0473)、ESR1変異陽性ではHR:0.62(95%CI:0.38~1.02、p=0.0566)と、良好な傾向であった。安全性については、giredestrant+エベロリムス併用群は、既知の薬剤プロファイルに準じた有害事象(AE)が観察され、新たな安全信号は確認されていないと報告。主要な有害事象としては、口内炎(stomatitis)、下痢、貧血など、エベロリムスでよく知られた有害事象が中心であり、giredestrantに特徴的な有害事象としてはGrade 1/2の徐脈(3.8%)であり、忍容性は良好と報告されていた。日本ではあまり積極的に使用されていないエキセメスタンなどの内分泌療法とエベロリムスの併用療法であるが、欧米ではCDK4/6阻害薬治療後の2次治療での主要な選択肢になっている。このため、evERAの結果を受けて、今後のCDK4/6阻害薬による治療で病勢進行した場合の主要な選択肢としてgiredestrantとエベロリムスが期待される結果となった。PFSとOSのトレンドとしては、ESR1変異のある症例での有効性に、ITTも引っ張られている様子で、ESR1変異のない集団では試験治療群と対照群のPFSやOSの差はほとんどない様子であった。このため、これまでのほかの経口SERD同様に、ESR1変異のある症例での承認を目指していくことと思われる。2.VIKTORIA-1:PAM経路(PI3K/AKT/mTOR)阻害によるホルモン耐性乳がんの克服VIKTORIA-1は、CDK4/6阻害薬とアロマターゼ阻害薬による治療後に進行したHR+/HER2-/PIK3CA野生型進行乳がん患者を対象とした第III相ランダム化試験である。VIKTORIA-1にはPIK3CA変異コホートもあるが、今回は報告されていない。392例の患者が、「gedatolisib(ゲダトリシブ)」(PI3K/mTORC1/mTORC2阻害薬、点滴)+パルボシクリブ+フルベストラント(3剤併用群)、gedatolisib +フルベストラント(2剤併用群)、またはフルベストラント単独群にランダム割付された。3剤併用群は、フルベストラント単独群と比較して、HR:0.24、95%CI:0.17~0.35、p<0.0001と、PFSを改善させた。PFSの中央値は3剤併用群9.3ヵ月に対してフルベストラント単独群2.0ヵ月(差:+7.3ヵ月)であった。2剤併用群は、フルベストラント単独群と比較して、HR:0.33(95%CI:0.24~0.48、p<0.0001)と、PFSを改善させた。PFSの中央値は2剤併用群7.4ヵ月に対してフルベストラント単独群2.0ヵ月であった。gedatolisibベースの治療は良好に忍容され、治療関連有害事象により中止した患者はごく少数であった。これまでも、CDK4/6阻害薬耐性HR+乳がん患者に対して、PAM経路標的化は新しい治療戦略を提供することを示唆してきた。gedatolisibの二重特異的阻害特性により、より強力な細胞周期制御と耐性機序の同時阻害が期待されるが、VIKTORIA-1の結果は、トリプレット療法がこの高度に耐性のある患者集団に対してとくに有望であることを示唆した。CDK4/6阻害薬の治療後にCDK4/6阻害薬のbeyond progressionの使用の有効性を示したpostMONARCHやMAINTAINは別のCDK4/6阻害薬からの変更が主体であったが、VIKTORIA-1で3剤併用群のパルボシクリブ併用の症例のうち約4割はパルボシクリブによる前治療歴があり、パルボシクリブのシークエンスでもある程度上乗せ効果が期待できる可能性を示唆している。また、VIKTORIA-1は日本では実施されておらず、今後はドラッグロスの1つとなる可能性が懸念される。来年度以降の1次、2次内分泌療法のシークエンス(予想)は以下のとおり。画像を拡大するHER2陽性乳がん3.DESTINY-Breast09サブグループ解析:サブグループによらずT-DXd+PERが標準治療にDESTINY-Breast09(第III相、トラスツズマブ デルクステカン[T-DXd]+ペルツズマブ[T-DXd+PER群]vs.標準療法:タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ[THP群])は、ASCO2025で、すでにその主要評価項目が発表され、T-DXd+PER群のTHP群に対するPFSの優越性が検証された。今回ESMO Congress 2025では、すべてのサブグループでT-DXd+ペルツズマブがPFSを大きく延長したことが報告された。T-DXd+PER群のPFSのHRや中央値は既存標準治療を大きく上回る結果で、今後、1次治療の標準になる可能性が示された。サブグループ解析結果のまとめを以下に示す。画像を拡大するトリプルネガティブ乳がん4.ASCENT-03:PD-L1陰性のTNBCの初回治療にサシツズマブ ゴビテカンが名乗りを上げるASCENT-03は、免疫療法が適応とならないPD-L1陰性またはPD-1/PD-L1阻害薬不適格の未治療転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象とした第III相ランダム化試験である。558例が、サシツズマブ ゴビテカン(SG)群または化学療法(パクリタキセル、アルブミン懸濁パクリタキセル、またはゲムシタビン+カルボプラチン)群にランダム割付された。中央値13.2ヵ月のフォローアップで、PFSの中央値はSG群で9.7ヵ月、化学療法群で6.9ヵ月(HR:0.62、p<0.0001)であり、統計学的有意にPFSの改善を示した。奏効期間(DOR)の中央値はSG群で12.2ヵ月、化学療法群で7.2ヵ月で、SG群で著しく長かった。奏効率(ORR)は両群で同程度であった(48%vs.46%)。発表時点でOSデータはまだ未成熟であったが、試験としては、対照群では2次治療以降で希望者は企業提供によりSG治療のクロスオーバーが可能であった。このため、82%が2次治療以降でSGを受けたとされる。有害事象は、SG群の好中球数減少など、これまでに知られている内容から大きな違いはなかった。約40~60%の転移TNBC患者はPD-L1陰性であり、そういった患者に対するより有効な治療が期待されている。本試験結果は、現在2次治療以降で使用されているSGが初回治療の標準治療となりうる可能性を示した重要な結果であった。5.TROPION-Breast02:もう1つのADC TNBC初回治療成績TROPION-Breast02は、免疫療法が適応とならない未治療の転移・局所再発TNBC患者644例を対象に、抗TROP2 ADC「ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)」の1次治療としての有効性・安全性を主治医選択の化学療法と比較した国際第III相試験である。主要評価項目はPFSとOSであった。結果として、PFS中央値はDato-DXd群10.8ヵ月、化学療法群5.6ヵ月であり、PFSのHR :0.57(95%CI:0.47~0.69、p<0.0001)、OS中央値はDato-DXd群23.7ヵ月、化学療法群18.7ヵ月であり、OSのHR:0.79(95%CI:0.64~0.98、p=0.0291)と、いずれも統計学的有意にDato-DXd群が良好であった。ORRもDato-DXd群62.5%、化学療法群29.3%と、Dato-DXd群が良好であった。安全性としては主なGrade3以上有害事象は口内炎・粘膜炎、視覚障害であり、これまでの報告に比べて新たな有害事象報告は認めなかった。以下に、ASCENT-03とTROPION-Breast02の違いをまとめる。なお、対照群の治療内容が異なるため、奏効率も各試験で異なっている。ASCENT-03は人道的配慮から、企業が対照群の病勢進行後のSGを提供することでクロスオーバーを許容しており、OSの差が検出されづらくなっていた。一方でTROPION-Breast02はクロスオーバーが実質的に不可能であるため、OSの差が中間解析の段階で検証されたと思われる。奏効率に関しては、試験治療群の結果を見る限りでは、Dato-DXdのほうが高いように思われた。来年以降将来的には、PD-L1陽性群ではSG+ペムブロリズマブがASCENT-04に基づいて初回治療として検討され、PD-L1陰性群ではSGまたはDato-DXdが検討される時代になると想定される。その際には、SGまたはDato-DXdのいずれを優先するか、次治療で別のTROP2 ADCへのシークエンスをどうするか、HER2低発現でT-DXdへのシークエンスをどうするか、などの検討が生まれるだろう。現時点でのデータの状況であれば、SGまたはDato-DXdのいずれを優先するかについては、有害事象の違いを考慮する必要があるが、OS利益がはっきりしているDato-DXdのほうに分があるように思われる。画像を拡大する終わりに今回のESMO Congress2025では、数多くのランダム化第III相試験の結果が報告され、実臨床を大きく変える研究結果が報告された。各試験の限界や問題点を考慮しつつ、来年以降の標準治療のあるべき姿と、生まれてきた新たなクリニカルクエスチョンに関して、創出すべきエビデンスを考えていきたいと思う。

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ESMO2025 レポート 泌尿器がん

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。虎の門病院の竹村 弘司氏が泌尿器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。ここ数年、泌尿器腫瘍領域の薬物治療における重要な研究成果はESMOで報告されることが多く、ESMO2023ではEV-302試験、ESMO2024ではNIAGARA試験の結果が報告されたことが記憶に新しい。いずれも大きな話題となり、本邦においてもこれらの臨床試験の結果が今日の日常臨床を変えた。ESMO2025では、泌尿器領域から4演題がPresidential Symposiumに採択された。いずれも近い将来の日常臨床や治療開発の方向性を変える可能性のある臨床試験である。本レポートでは、これら4演題の内容についての詳細を解説する。(表)ESMO2025 GU領域の注目演題のQuick Check画像を拡大する[目次]1.【膀胱がん】LBA22.【膀胱がん】LBA83.【前立腺がん】LBA64.【尿路上皮がん】LBA7【膀胱がん】LBA2Perioperative (periop) enfortumab vedotin (EV) plus pembrolizumab (pembro) in participants (pts) with muscle-invasive bladder cancer (MIBC) who are cisplatin-ineligible: The phase 3 KEYNOTE-905 study1.背景筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療はシスプラチンを含む術前化学療法後の根治的膀胱全摘除術(RC)であるが、腎機能障害や併存疾患のためにシスプラチン不適格となる患者が約半数を占める。このような患者群に対しては (周術期化学療法なしの)膀胱全摘術が現在の標準治療であるが、再発率が高く、予後が悪い。本試験(KEYNOTE-905)は、シスプラチン不適格または拒否例のMIBC患者を対象に、EV+ペムブロリズマブ(以下EVP療法)による周術期化学療法の有効性および安全性を検証した第III相無作為化比較試験である。2.試験デザインデザイン多施設共同、第III相、無作為化比較試験対象シスプラチン不適格または拒否したMIBC患者治療:治療EVP群:EVP療法3コース後に膀胱全摘術、術後にEV 6コース、ペムブロリズマブ14コース対照群(標準治療/膀胱全摘術±リンパ節郭清のみ)主要評価項目無イベント生存期間(EFS)副次評価項目全生存期間(OS)、病理学的完全奏効率(pCR)、安全性など3.結果EVP群170例、対照群174例に無作為割り付けされた。観察期間中央値は25.6ヵ月(範囲:11.8~53.7)。EVP群の患者の年齢中央値は74.0歳(範囲:47~87)であり、75歳以上の高齢者は45.9%含まれていた。ECOG PS 0が60%、男性が80.6%であった。シスプラチン不適格例が83.5%、拒否例が16.5%であった。病期別ではT2N0が17.6%、T3/T4が78.2%、N1症例が4.1%であった。両群間で背景に大きな差はなかった。主要評価項目であるEFS中央値はEVP群で未到達、対照群で15.7ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.40(95%信頼区間[CI]:0.28~0.57、p<0.0001)と、EVP群で有意なリスク低減が認められた。12ヵ月時点のEFS率は77.8%vs. 55.1%、24ヵ月時点では74.7%vs.39.4%であった。EFS改善効果は事前に設定されたサブグループ解析でも一貫しており、年齢、性別、PS、PD-L1発現、腎機能などにかかわらずEVP群で良好であった。OS中央値は、EVP群で未到達、対照群で41.7ヵ月であり、HR:0.50(95%CI:0.33~0.74、p=0.0002)とEVP群で有意な生存延長を認めた。12ヵ月時点での生存率は86.3%vs.75.7%、24ヵ月時点で79.7%vs.63.1%であった。pCR率は57.1%vs.8.6%(95%CI:39.5~56.5、p<0.000001)であった。本試験において、pCRは手術検体における腫瘍残存なし(pT0N0)と定義されており、手術未施行例は非奏効(non-responder)として解析されている。周術期EVP療法の安全性プロファイルは既報の進行期尿路上皮がん(UC)治療での報告とおおむね一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。また、本併用療法は根治的手術施行率を低下させなかったことも示された。4.結論周術期EVP療法は、シスプラチン不適格または拒否したMIBC患者において、EFS、OS、pCR率を有意に改善した。手術実施率への悪影響はなく、安全性も許容範囲内であった。本試験は、MIBCに対する周術期治療としてEVP療法が新たな標準治療となる可能性を初めて示した第III相試験である。5.筆者コメントEVP療法はすでに転移を有する再発UCの領域でパラダイムシフトを起こしており、予想はしていたが、KEYNOTE-905試験もpositiveな結果であった。文句なくpractice changeであるが、今後検証・確認しないといけないこととして以下が挙げられる。シスプラチン適格の患者を対象に、シスプラチンベースのレジメンと比較してもEVPが優れるかどうか。→EV-304試験の結果が待たれる。術後のEVP療法は全例に必要なのか。→術後EVP、ペムブロリズマブのみ、経過観察のみ、の3群比較ではどうなるか。今後リアルワールドデータの報告なども待たれる。周術期にEVが合計9コース投与されるため、末梢神経障害も懸念される。周術期EVP療法におけるctDNAステータスを絡めた探索的解析の結果が待たれる。【膀胱がん】LBA8IMvigor011: a Phase 3 trial of circulating tumour (ct)DNA-guided adjuvant atezolizumab vs placebo in muscle-invasive bladder cancer1.背景MIBCの術後アテゾリズマブ療法の有効性を検証したランダム化第III相試験であるIMvigor010試験はnegative studyであったが、探索的研究でctDNAが予後予測因子であることに加えてアテゾリズマブの効果予測因子であることが示唆された。そのような背景から、ctDNA-guided selectionされたコホートにおけるアテゾリズマブの有効性を検証したのがIMvigor011試験である。IMvigor011試験は、MIBC患者のうち術後ctDNAが陽性であるコホートのみを対象としたアテゾリズマブ術後療法の有効性を評価したランダム化第III相試験である。2.試験デザインデザイン多施設共同、第III相、無作為化比較試験対象膀胱全摘術後6〜24週以内のMIBC(pT2-T4aN0M0またはpT0-T4aN+M0)。術前化学療法の実施は許容された。介入:介入6週ごとのctDNA評価、12週ごとの画像評価を実施。ctDNA陽性→アテゾリズマブ(1,680mg IV 4週ごと×最大1年)vs.プラセボ(2:1)ctDNA陰性→無治療・経過観察群主要評価項目治験医師評価の無病生存期間(DFS)副次評価項目OS3.結果登録患者756例(ctDNA陽性:379例、ctDNA陰性:377例)。このうち、ctDNA陽性例250例がランダム化(アテゾリズマブ:167例、プラセボ:83例)。患者の年齢中央値は69歳(範囲:42~87)、ほぼ全例がECOG PS 0~1であった。病理学的ステージはpT3/4が約7割、リンパ節転移陽性が約6割であった。初回ctDNA評価で陽性判定されたのは約6割、フォローアップ中のctDNA評価で陽性判定されたのは約4割であった。主要評価項目である治験医師評価のDFS中央値は、アテゾリズマブ群9.9ヵ月、プラセボ群4.8ヵ月であり、HR:0.64(95%CI:0.47~0.87、p=0.0047)と統計学的に有意にアテゾリズマブ群が良好であった。12ヵ月DFS率は44.7%vs.30.0%、24ヵ月DFS率は28.0%vs.12.1%であった。OSは32.8ヵ月vs.21.1ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.0131)であり、24ヵ月時点のOS率は62.8%vs.46.9%と、アテゾリズマブ群で明確な上乗せ効果を示した。なお、1年間のctDNAフォロー期間においてctDNA陰性で経過したコホートでは、24ヵ月時点のDFSは88.4%、OSは97.1%で無イベントで経過していた。4.結論ctDNAガイド下アテゾリズマブ術後療法は、ctDNA陽性のMIBC患者においてDFSおよびOSを有意に改善した。非選択集団で有効性を示せなかったIMvigor010試験と異なり、ctDNAを用いた層別化戦略により免疫療法の効果を享受できるコホートを抽出することができる可能性が示唆された。5.筆者コメントMIBCの術後化学療法において、ctDNAをベースとした免疫チェックポイント阻害薬による治療戦略を構築することに成功した重要な臨床試験である。周術期における免疫チェックポイント阻害薬を含む治療の有効性を検証している他の大規模比較試験においても同様の傾向がみられるか、今後再現性の評価も重要である。一方で、ctDNA陽性の場合、介入群でも多くの患者が再発しており、今後このコホートに対するより強度の高い治療の有効性が検証されるべきであると感じた。【前立腺がん】LBA6Phase 3 trial of 177Lu-PSMA-617 combined with ADT + ARPI in patients with PSMA-positive metastatic hormone-sensitive prostate cancer (PSMAddition)1.背景177Lu-PSMA-617は、VISION試験において転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対する生存延長効果を示した。PSMAddition試験は、ホルモン感受性転移を有する前立腺がん(mHSPC)を対象に、177Lu-PSMA-617をアンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)に併用する有効性と安全性を検証した第III相無作為化試験である。2.試験デザインデザイン国際多施設共同、無作為化、第III相試験対象PSMA PET/CTで陽性のmHSPC男性(ECOG PS 0~2)介入群177Lu-PSMA-617(7.4GBq 6週ごと×最大6コース)+ADT+ARPI対照群ADT+ARPI無増悪確認後のクロスオーバー許可(BIRC評価)主要評価項目画像評価による無増悪生存期間(rPFS)副次評価項目全生存期間(OS)などESMO2025ではrPFSの第2回中間解析、OSの第1回中間解析の結果が発表された。3.結果1,529例がスクリーニングされ、PSMA陽性1,232例のうち1,144例が無作為化割り付け(177Lu-PSMA-617群572例、対照群572例)された。年齢中央値68歳(範囲:36~91歳)、70歳以上が43%、ECOG PS 0~1が97%以上であった。high volumeが68%、de novo症例が52.1%を占めた。使用ARPIはアビラテロン37.6%、アパルタミド32.9%、エンザルタミド22.1%、ダロルタミド6%であった。主要評価項目であるrPFS中央値は両群とも未到達であったが、HR:0.72(95%CI:0.58~0.90、p=0.002)と統計学的有意差をもって併用群で改善がみられた。事前に設定されたサブグループ(年齢、腫瘍量、PSA値、PSなど)によらず、一貫して併用群が優位であった。OSは中間解析時点で未到達(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)ながら、併用群で生存延長傾向を示した。その他の主要な副次評価項目の結果は以下のとおりである。奏効率(ORR) 85.3%vs.80.8%(CR:57.1%vs.42.3%)PSA進行までの期間 HR:0.42(95%CI:0.30~0.59)48週時点でのPSA<0.2ng/mL達成率 87.4%vs.74.9%mCRPCへの進行時間 HR:0.70(95%CI:0.58~0.84)有害事象(AE)は既知の177Lu-PSMA-617関連毒性とおおむね一致しており、主な毒性プロファイルを以下に示す。Grade≧3 AE 50.7%vs.43.0%177Lu-PSMA-617群でみられた主なAE:口渇(45.7%)、疲労(34.8%)、悪心(34.2%)、便秘(17.9%)、食欲低下(14.4%)、嘔吐(13.8%)、下痢(12.2%)、味覚異常(11.9%)。血液毒性:貧血(28%)、好中球減少(14.7%)、血小板減少(11.2%)と軽度の骨髄抑制がみられたが、治療関連死亡はなし。4.結論177Lu-PSMA-617をADT+ARPIに併用することにより、PSMA陽性mHSPCにおけるrPFSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。OSは未成熟ながら改善傾向を示しており、副次評価項目(PSA応答、mCRPC進行時間など)も一貫して併用群が優れていた。安全性は既知の範囲内で、新たな毒性シグナルは認められなかった。5.筆者コメントcontrol armがARPI doubletであり、現在の標準治療に一致した治療が行われている。PFS benefitがあることは今回の結果で判明したが、OSの長期フォローアップデータが気になるところである。本邦ではmCRPCに対する177Lu-PSMA-617が保険承認されたが、日常臨床で広く利用可能になるには、まだまだ時間がかかりそうである。【尿路上皮がん】LBA7Disitamab vedotin (DV) plus toripalimab (T) versus chemotherapy (C) in first-line (1L) locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (la/mUC) with HER2-expression1.背景これまでに、HER2陽性UCに対して、HER2抗体薬物複合体(ADC)であるdisitamab vedotin(DV)が有効性を示し、さらに抗PD-1抗体toripalimab(T)との併用は前治療歴を問わずORR76%、PFS中央値9.3ヵ月と有望な結果が報告されている。RC48-C016試験は、未治療のHER2発現(IHC 1+以上)局所進行または転移を有するUCを対象に、DV+T併用療法の1次治療における有効性と安全性を化学療法と比較した第III相試験である。2.試験デザインデザイン中国で実施された多施設共同、オープンラベル、無作為化第III相試験対象切除不能局所進行または転移を有するHER2 IHC 1+/2+/3+ UC、ECOG 0~1介入群(DV+T群)DV(2.0mg/kg)+T(3.0mg/kg)併用療法対照群(化学療法群)シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン主要評価項目BIRC評価によるPFSおよびOS副次評価項目治験医師評価PFS、ORR、奏効期間(DOR)、安全性など3.結果811例がスクリーニングされ、484例が無作為化割り付けされた。年齢中央値66歳、ECOG 0~1が97%以上であった。HER2発現はIHC 1+が22.6%、IHC 2+/3+は77.4%であった。内臓転移あり、上部尿路原発、シスプラチン適格性ありの患者は、いずれも半分程度であった。PFS中央値はBIRC評価でDV+T群13.1ヵ月vs.化学療法群6.5ヵ月であり、HR:0.36(95%CI:0.28~0.46、p<0.0001)と統計学的に有意にDV+T群で良好であった。12ヵ月PFS率は54.5%vs.16.2%であった。すべての事前に設定されたサブグループ(HER2発現、PD-L1、臓器転移、年齢、PS)で一貫した有効性を示した。OSはDV+T群31.5ヵ月vs.化学療法群16.9ヵ月(95%CI:14.6~21.7)であり、HR:0.54(95%CI:0.41~0.73、p<0.0001)と統計学的に有意にDV+T群で良好であった。ランドマークOSは12ヵ月OS率79.5%vs.62.5%、18ヵ月64.6%vs.48.1%であった。ORRは76.1%vs.50.2%(CR:4.5%vs.1.2%)、DoR中央値は14.6ヵ月vs.5.6ヵ月であり、DV+T群で良好な傾向にあった。化学療法群の64.7%が後治療を受け、そのうち40.2%が抗HER2療法、50.2%がPD-1/PD-L1阻害薬を使用していた。DV+T群では27.2%が後治療を受けており、主に殺細胞性抗がん剤による治療であった。安全性についてのプロファイルは以下のとおりである。治療関連有害事象(TRAE):DV+T群98.8%、化学療法群100%Grade≧3 TRAE:55.1%vs.86.9%主なAEトランスアミナーゼ上昇(43~49%)、貧血(42%)、末梢神経障害(18%)、発疹(21%)など免疫関連AE18.9%がGrade≧3、重篤な毒性増加はなし治療中止率12.3%vs.10.4%総じてDV+T併用は化学療法より有害事象が少なく、許容可能な安全性を示した。4.結論RC48-C016試験は、HER2発現mUCにおいて、抗HER2 ADCと抗PD-1抗体の併用が化学療法と比較して有効性を示した初めての第III相試験である。DV+T療法は1次治療HER2陽性進行尿路上皮がんの新たな標準治療候補として位置付けられる。5.筆者コメント本試験はHER2発現1+以上が参加可能となっており、今後プラクティスで使用可能となった場合は適格性を有する患者の割合はそれなりに多いことが想定される。本試験は中国のみで実施されたPhaseIIIであるが、SGNDV-001試験(DV+ペムブロリズマブのPhaseIII)でも同様の有効性が実証されるか、結果が期待される。HER2発現UCの1次治療として今後標準治療に組み込まれることが期待され、EV+ペムブロリズマブ療法との使い分けなど、今後検討が必要となる。直接比較はできないが、DVは比較的毒性がマイルドである可能性があり、プラクティスを大きく変化させる可能性がある。また、DV後のEV(またはEV後のDV)といったADC製剤の逐次的治療のデータなどの蓄積も今後期待される。

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進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して、PD-L1の発現状態を問わず無増悪生存期間(PFS)を有意に改善させ、安全性プロファイルは管理可能なものであった。中国・上海交通大学のZhiwei Chen氏らが、同国50病院で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の結果で示された。扁平上皮NSCLCは非扁平上皮NSCLCと比べて臨床アウトカムが不良で、治療選択肢は限られている。今回の結果を踏まえて著者は、「本レジメンは扁平上皮NSCLC患者集団における1次治療として使用できる可能性がある」とまとめている。Lancet誌2025年11月1日号掲載の報告。臨床病期(IIIB/IIIC期vs.IV期)、PD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)で層別化 HARMONi-6試験では、進行扁平上皮NSCLC患者に対する1次治療として、ivonescimab+化学療法(ivonescimab群)の有効性と安全性をチスレリズマブ+化学療法(チスレリズマブ群)と比較した。対象は、年齢18~75歳、未治療・切除不能な病理組織学的に確認されたStageIIIB/IIICまたはStageIVの扁平上皮NSCLCで、ECOG PSスコア0または1の患者とした。 被験者は、ivonescimab群またはチスレリズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、ivonescimab(20mg/kg)またはチスレリズマブ(200mg)+パクリタキセル(175mg/m2)およびカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)をいずれも静脈内投与で3週ごとに4サイクル受けた後、維持療法としてivonescimab(20mg/kg)またはチスレリズマブ(200mg)の単独療法を受けた。臨床病期(IIIB/IIIC期vs.IV期)、PD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)によって層別化された。 主要評価項目は、無作為化された全被験者におけるPFS(RECIST v1.1に基づく独立画像判定委員会判定)であった。また、安全性(治療に関連した有害事象および重篤な有害事象ならびに免疫またはVEGF阻害に関連した有害事象と定義)は、割り付け治療の試験薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に解析が行われた。PFS中央値はivonescimab群11.1ヵ月、チスレリズマブ群6.9ヵ月 2023年8月17日~2025年1月21日に761例が適格性についてスクリーニングを受け、532例(70%)が試験に登録・無作為化された(ivonescimab群266例、チスレリズマブ群266例)。ベースライン特性は両群間でバランスが取れており、被験者は、ほとんどが現在または元喫煙者で(92%と86%)、両群ともPD-L1 TPS<1%は39%であった。 データカットオフ日の2025年2月28日時点で、ivonescimab群で162例(61%)、チスレリズマブ群で134例(50%)が割り付け治療を継続していた。追跡期間中央値は10.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.5~11.0)で、PFS中央値は、ivonescimab群11.1ヵ月(95%CI:9.9~評価不能)、チスレリズマブ群6.9ヵ月(5.8~8.6)であった(ハザード比[HR]:0.60、95%CI:0.46~0.78、片側p<0.0001)。ivonescimab群のPFS改善、PD-L1発現状態にかかわらず ivonescimab群におけるPFSベネフィットは、PD-L1の発現状態にかかわらず一貫して認められた(TPS≧1%群のHR:0.66[95%CI:0.46~0.95]、<1%群:0.55[0.37~0.82])。 ivonescimab群で170例(64%)、チスレリズマブ群で144例(54%)にGrade3以上の治療関連有害事象が認められ、ivonescimab群で24例(9%)、チスレリズマブ群で27例(10%)にGrade3以上の免疫関連有害事象が認められた。Grade3以上の治療関連出血は、ivonescimab群で5例(2%)、チスレリズマブ群で2例(1%)に認められた。

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HER2変異陽性NSCLCに対するゾンゲルチニブを発売/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得したゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。ゾンゲルチニブは、同適応症に対する分子標的薬として、国内初の経口薬となる。 HER2遺伝子変異は、NSCLC患者の約2~4%に認められるとされており、非喫煙者や女性、腺がんで多くみられる。また、HER2遺伝子変異陽性のNSCLCは予後不良であり、脳転移のリスクも高いことが知られている。 ゾンゲルチニブは、野生型EGFRを阻害せず、HER2のチロシンキナーゼドメイン以外の変異(HER2 exon20挿入変異など)を含む広範なHER2変異体に対して阻害活性を有するHER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬である。また、共有結合型の不可逆的な結合様式を有する。 ゾンゲルチニブの承認の根拠となった国際共同第I相非盲検用量漸増試験「Beamion LUNG-1試験」1)では、既治療のNSCLC患者における奏効率は71%(完全奏効率7%、部分奏効率64%)であり、病勢コントロール率は96%であった。最も多く報告された有害事象はGrade1の下痢(48%)であり、治験薬との因果関係のあるGrade3以上の有害事象の発現割合は17%であった。<製品概要>販売名:ヘルネクシオス60mg錠一般名:ゾンゲルチニブ製造販売承認日:2025年9月19日薬価基準収載日:2025年11月12日効能又は効果:がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌用法及び用量:通常、成人には、ゾンゲルチニブとして1日1回120mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

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ESMO2025 レポート 乳がん(早期乳がん編)

レポーター紹介2025年10月17~21日にドイツ・ベルリンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、3万7,000名を超える参加者、3,000演題弱の発表があり、乳がんの分野でも、現在の標準治療を大きく変える可能性のある複数の画期的な試験結果が発表された。とくに、抗体薬物複合体(ADC)、CDK4/6阻害薬、およびホルモン受容体陽性乳がんに対する新規分子標的治療に関する発表が注目を集めた。臨床的影響が大きい主要10演題を早期乳がん編・転移再発乳がん編に分けて紹介する。[目次]早期乳がん編ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん1.monarchEHER2陽性乳がん2.DESTINY-Breast053.DESTINY-Breast11トリプルネガティブ乳がん4.PLANeTその他5.POSITIVEホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん1.monarchE:HR陽性/HER2陰性早期乳がん患者における術後療法の全生存期間の改善効果monarchEは、高リスクホルモン受容体陽性(HR+)、HER2陰性早期乳がん患者における術後療法の有効性を評価する第III相ランダム化試験である。5,120例が内分泌療法単独または2年間のアベマシクリブと内分泌療法の組み合わせにランダム割付された。高リスク患者は、腋窩リンパ節≧4個陽性、または1~3個陽性で組織学的グレード3および/または腫瘍径≧5cm、あるいはKi67≧20%と定義された。中央値76ヵ月のフォローアップで、アベマシクリブ+ホルモン療法はホルモン療法単独と比較して、死亡リスクを15.8%低下させた(ハザード比[HR]:0.842、p=0.0273)。7年時点での無浸潤疾患生存(iDFS)イベントリスクの低下は26.6%(名目上のp<0.0001)、無遠隔再発生存(DRFS)イベントリスクの低下は25.4%(名目上のp<0.0001)であった。約7年追跡時点で、標準内分泌療法+アベマシクリブ群の全生存(OS)率は86.8%、内分泌療法単独群は85.0%であり、絶対差は1.8%であった。これらの成績は、アベマシクリブ中止後も長期間持続し、乳がん術後内分泌療法におけるCDK4/6阻害薬併用が微小転移性疾患を持続的に抑制する可能性を示している。術後治療でHR陽性HER2陰性乳がんのみに限定して、全生存期間の改善を示した臨床試験は限られており、その意味でも非常に意義深い結果である。HER2陽性乳がん:T-DXdの“治癒可能”病期への本格進出2.DESTINY-Breast05:HER2陽性乳がん再発高リスク患者における術前薬物療法後に残存病変を有する症例に対するトラスツマブ デルクステカンの追加効果の検証DESTINY-Breast05は、術前薬物療法後に非pCR(残存浸潤病変を有する)の高リスクHER2陽性早期乳がん患者を対象とした、第III相ランダム化試験である。本試験では、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と、標準治療であるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を比較した。1,635例が登録され、3年iDFS率はT-DXd群92.4%(95%信頼区間[CI]:89.7~94.4)に対し、T-DM1群83.7%(95%CI:80.2~86.7)であった。浸潤性再発または死亡のリスクはT-DXd群で53%減少した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.0001)。Grade3以上の有害事象発生率は両群でほぼ同等であった(T-DXd群50.6%、T-DM1群51.9%)。ただし、薬剤性間質性肺疾患(ILD)はT-DXd群でより多く報告され(9.6%vs.1.6%)、2例の致死例(Grade 5)が認められた。左室機能障害は低率であった(1.9%)。これらの結果は、T-DXdが治癒を目指す術前療法領域に進出しうることを示唆しており、高リスク残存病変例における新たな標準治療候補として位置付けられる。さらに、本試験結果を実臨床で運用する上でのILDの評価と早期介入が必要であることを示唆した。DB-05とKATHERINEの患者対象の違いは以下のとおり。画像を拡大する3.DESTINY-Breast11:HER2陽性乳がんにおける術前抗がん剤治療におけるアントラサイクリン除外戦略DESTINY-Breast11は、高リスクHER2陽性早期乳がんに対し、アントラサイクリン非使用戦略を評価した第III相試験である。T3以上、リンパ節転移陽性、または炎症性乳がんを対象に、640例がT-DXd-THP(T-DXd単独→パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ)群またはddAC-THP(ドキソルビシン+シクロホスファミド→THP)群に割り付けられた。pCR(病理学的完全奏効)割合はT-DXd-THP群で67.3%、ddAC-THP群で56.3%(差:11.2ポイント、95%CI:4.0~18.3、p=0.003)であった。ホルモン受容体状態にかかわらず一貫した傾向を示した。無イベント生存期間(EFS)ではT-DXd-THP群に有利なトレンドがみられた(HR:0.56、95%CI:0.26~1.17)。有害事象(Grade≧3)はT-DXd-THP群で37.5%、ddAC-THP群で55.8%と低率で、左室機能障害も少なかった(1.9%vs.9.0%)。ILDの発生は両群で低頻度かつ同等であった。この結果から、HER2陽性乳がんの周術期治療としてアントラサイクリンの使用が必須ではないことが示唆され、T-DXdを基盤とする新術前療法が高い奏効割合と毒性の低減を両立しうることが検証された。とくに海外においては、アントラサイクリン系抗がん剤の使用に対する忌避が強く、カルボプラチンとドセタキセル併用のレジメンが中心となってきているが、今回の結果はアントラサイクリン系の省略に向けたさらなる示唆を提示した。早ければ来年度中に、本邦でもDB05、DB11レジメンが適応拡大される可能性がある。先のDB05と相まって、いずれも選択可能となった場合に、術前療法でT-DXdを使用するのか、EFSなど長期成績がT-DXd群で改善することが証明されてからDB11が運用されていくべきなのか、pCR割合の改善をもって標準治療としてよいと考えるか、現在議論になっている。画像を拡大するトリプルネガティブ乳がん4.PLANeT:TNBCの周術期治療における低用量ペムブロリズマブの併用PLANeTは、インド・ニューデリーのがん専門施設単施設において実施された第II相ランダム化試験である。StageII~IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、標準的術前化学療法に「低用量ペムブロリズマブ(50mg/6週間ごと×3回)」を併用する群vs.化学療法単独群(dose dense AC療法とdose denseパクリタキセル療法)の比較であった。主要評価項目は術前化学療法+低用量ペムブロリズマブ併用群と化学療法単独群のpCR割合の比較であり、副次評価項目にiDFSやQOLが含まれていた。すでに、TNBC患者に対する周術期治療におけるペムブロリズマブの通常用量(200mg/3週間ごとなど)の併用は、KEYNOTE-522試験においてpCR割合、EFS、OS改善が証明されており、標準治療となっている。一方で、低〜中所得国・医療資源制限環境では高額薬剤/免疫療法アクセスが課題となっており、“低用量併用”戦略がコスト・アクセス面で代替案になりうる可能性が検討されている。本試験では、157例が各群に割り付けられ(低用量併用群78例、対照群79例)、治療が実施された。ITT解析でのpCR割合は低用量併用群53.8%(90%CI:43.9~63.5)、対照群40.5%(90%CI:31.1~50.4)、絶対差:13.3%(90%CI:0.3~26.3、片側p=0.047)であり、ペムブロリズマブ低用量併用による、統計学的有意なpCR割合の改善が示された。また、有害事象としても、Grade 3以上の有害事象は低用量併用群50%、対照群59.5%で、重篤毒性はむしろ低率であった。とくにirAEとして、甲状腺機能障害は低用量併用群10.3%と、KEYNOTE-522試験よりも低めであった。ただし、低用量併用群で1例の治療関連死亡(中毒性表皮壊死症)が報告された。本試験はフォローアップ期間・無病生存データ・最終OSデータなどはまだ不十分で、「仮説生成的(hypothesis‐generating)」段階であるものの、コスト・アクセス改善(低用量による医療経済性改善)を重視した設計であり、とくに資源制約のある地域で免疫療法併用治療を普及させる可能性が示唆された。ただ、問題としてはペムブロリズマブ50mgという投与量が十分か? という科学的根拠はほとんどない様子であり、KEYNOTE-522試験レジメンが使用可能な国における標準治療に影響を与えるものではない。その他5.POSITIVE:妊娠試みによる内分泌療法中断の予後や出産児に与える影響の検討POSITIVE(Pregnancy Outcome and Safety of Interrupting Therapy for young oNco‐breast cancer patients)は、若年HR+乳がん患者において、術後内分泌療法を一時中断して、再発リスクを増やさずに妊孕(妊娠を試みること)可能かを検証した前向き試験である。ESMO Congress 2025では、5年フォローアップ成績が報告されており、“妊娠試みによる内分泌療法中断”が少なくとも5年時点では再発リスクを有意に増加させていないという結果が報告された。518例のHR陽性 StageI~III乳がん患者が、術後18~30ヵ月内分泌療法を継続した後、最大2年間の内分泌療法中断で妊娠を試み、その安全性と妊孕性、再発への影響を評価された。登録時の平均年齢は35~39歳が最多。対象の75%は出産歴がなく、62%が化学療法も受けていた。5年乳がん無発症割合(BCFI)は、POSITIVE群12.3%、外部対照のSOFT/TEXT群13.2%と差は−0.9%(95%CI:−4.2%~2.6%)であった。5年無遠隔再発率(DRFI)はPOSITIVE群6.2%、SOFT/TEXT群8.3%(差:−2.1ポイント%、95%CI:−4.5%~0.4%)で、内分泌療法一時中断による再発・転移リスク増加は認められなかった。HER2陰性のサブ解析でも同様の結果。年齢やリンパ節転移、化学療法歴などで層別しても有意差なしだった。試験期間中、76%が少なくとも一度妊娠し、91%が少なくとも一度生児出産。365人の子供が誕生した。出生児の8.6%が低出生体重、1.6%が先天性欠損だったが、これは一般母集団と同等であった。また、ART(胚・卵子凍結など)を利用した女性でも再発リスクは非利用者と同等であり、母乳育児も高率で実現し、安全であることも確認された。内分泌療法中断後、82%が内分泌療法を再開した。POSITIVE試験は、妊娠希望のHR陽性乳がん女性が、内分泌療法を最大2年中断して妊娠・出産しても短期再発リスクは増加しないこと、妊娠やART、母乳育児の成績・安全性も良好で、安心材料となるエビデンスを提供しており、患者さんへのShared decision makingに非常に役立つ結果であった。

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がん研有明病院、病床数を削減し、外来機能を拡充

 公益財団法人がん研究会 有明病院(東京都江東区、病床数644床)は、「病院機能・フロア見直しプロジェクト」の第1弾として、5階西病棟の42床を閉鎖し、外来治療センターを移転・拡充した。2025年9月に新センターが稼働を開始し、10月20日には報道向け説明会・見学会が行われた。入院日、稼働率減の一方で、外来化学療法件数は増加 説明会では渡邊 雅之副院長が登壇し、プロジェクトの背景を説明した。「診療報酬の伸び悩み、人件費・薬剤費の上昇などにより、2024年度は4分の3の病院が医業利益で赤字となっている。当院においてもコロナ禍から順調に収支を回復してきたものの、ここ数年の人件費、薬剤・材料費の高騰が大きく響き、2025年度は赤字の見込みとなっている」とした。 同院においては、低侵襲手術の普及などにより平均在院日数は直近の10年間で13日から11日に短縮、病床稼働率も80%台前半まで低下した。一方、外来薬物療法の実施数は約3万件から3万7,000件へ増加、治験の受託件数も約2,800件(2019年)から4,300件(2023年)へと拡大している。渡邊氏は「今後も病床稼働率の改善は見込めない。外来薬物療法の強化を軸とした改革が不可避だ」とし、今回の外来治療センター改修はこの改革の中核施策に位置付けられるものだとした。同フロアに調剤室を配置し、導線を改善 新たな外来治療センターは、これまで1、2階に分散していた外来機能を5階に統合し、延床面積を約620m2から1,073m2へ拡張。リクライニングチェアとベッドの合計数を75床から83床に増やし、個室ブースも整備。患者が快適に過ごせるよう、ゆったりとした待合室と治療後に利用できるパウダーコーナーを新設した。調剤室を地下から同じフロアに移設することで、薬剤師、看護師を中心としたスタッフの動線が短縮し、投与前確認や副作用対応も迅速化したという。 説明会で登壇した副院長・消化器化学療法科部長の山口 研成氏は「免疫チェックポイント阻害薬やADC(抗体薬物複合体)などの新薬が増え、患者の予後が改善される一方で、治療期間は長期化している。副作用対応や多職種連携を行うためには、外来の専用空間をより充実させることが不可欠になっている」と説明。外来化学療法部長の陳 勁松氏も「以前行った当院の調査では、患者さんの63%が外来治療を希望していた。今後も多くの診療科で外来治療件数の増加が予測されており、今回の新治療センターは患者と医療者双方のニーズに合致するものだ」と述べた。2026年春には「トータルケアセンター」も集約 プロジェクト第2弾として、2026年春には2階に「トータルケアセンター」が移設される予定だ。同センターは医療連携部と患者・家族支援部で構成され、地域連携室、がん相談支援センター、就労・サバイバー支援機能などをワンストップで提供し、がん患者の治療から社会復帰までを包括的に支援する体制を整える。 渡邊氏は、「外来薬物療法の拡充は患者の希望にも合致するものだ。しかし、今の診療報酬体系では外来より入院に重きが置かれ、薬剤費の高騰の影響もあって外来診療の採算が見合っていない現状がある。この点は政府に改善を求めつつ、外来主体の医療モデルに転換し、限られた資源の中で持続可能ながん医療を提供していきたい」と述べた。

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小細胞肺がん2次治療、タルラタマブの安全性(DeLLphi-304)/ESMO2025

 DLL3を標的とするBiTE製剤タルラタマブの小細胞肺がん(SCLC)2次治療DeLLphi-304試験における、有害事象(AE)の追加分析結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8・15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[主要な副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 主な結果は以下のとおり。・DeLLphi-304試験において新たな安全性のシグナルは特定されなかった。・タルラタマブ群は化学療法群に比べ、血液毒性および感染症の発生率が低かった。・タルラタマブの治療関連有害事象(TRAE)は多くがGrade1/2で、時間経過とともに発現割合は減少した。・同剤のTRAEで最も多いのものはサイトカイン放出症候群(CRS)であった。CRSの発現は1ヵ月未満56%、1〜3ヵ月3%、3ヵ月超0%でほとんどが1ヵ月未満であった。・CRS発現はサブグループ(PS、年齢、肝転移、脳転移、PD-[L]1投与歴、腫瘍量)間で差はみられなかった。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は6%で認められたが、ほとんどはGrade1/2で、93%が回復した。・神経学的TRAEとして書字障害が23%でみられた。書字障害のほとんどはGrade1/2で、全例回復、投与中止になった症例はなかった。

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FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する治療戦略/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、清井 仁氏(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)を座長に行われた会長シンポジウムでは、「FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する治療戦略」と題して、FLT3変異陽性AMLの管理についてMark James Levis氏(米国・Johns Hopkins University)、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展についてはCatherine Smith氏(米国・University of California, San Francisco)から講演が行われた。FLT3変異陽性AMLの高齢患者に対する最適なアプローチ FLT3変異陽性AMLの管理について、Levis氏が発表した。FLT3はAMLで最も一般的な遺伝子変異であり、FLT3変異はAMLのほぼすべてのサブタイプで発生する可能性があるため、臨床医にとっての課題となっていた。近年、FLT3変異陽性AMLのマネジメントに有用な薬剤がいくつか登場した。現在、3つの異なるFLT3阻害薬が、疾患の異なるステージに対して承認されており、FLT3変異とさまざまな共変異との相互作用に関する理解および測定可能残存病変(MRD)の検出能力の向上は、FLT3変異陽性AML患者のアウトカム改善に大きく貢献している。しかし、依然として多くの疑問が残っている。では、FLT3変異陽性AML患者をどのように治療すべきか、MRDをどのように活用して治療を最適に導くべきなのであろうか。 本講演では、推奨パラダイムが提示された。FLT3変異陽性AMLのマネジメントにおいて、強力な導入化学療法および地固め療法にFLT3阻害薬を併用することで全生存期間を改善し、より深い寛解によりMRD陰性化が可能であるが、現時点でどのFLT3阻害薬が最良の選択肢であるかは明らかになっていない。また、MRDは将来の造血幹細胞移植の必要性を判断するうえで、重要な指標と位置付けられると述べている。FLT3変異陽性AMLの高齢患者に対する最適なアプローチは、まだ十分に定義されていないとしながらも、Johns Hopkins Universityでは、ベネトクラクス(VEN)+アザシチジン(AZA)による導入療法を実施し、奏効の早期評価、遺伝子検査、MRD測定、回復後の脆弱性評価の結果に基づき、VEN+AZA療法、ギルテリチニブ(GIL)単剤療法、同種造血幹細胞移植、中等量シタラビン+GILのいずれかによる治療アプローチを行っていると述べた。AMLにおけるFLT3阻害薬耐性メカニズム 続いてSmith氏が、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展について発表した。FLT3阻害薬は、新規患者および再発・難治性のFLT3変異陽性AML患者のいずれにおいても標準治療となっているが、すべてのFLT3阻害薬において耐性は依然として問題となっている。 キザルチニブ(QUIZ)やソラフェニブなどのタイプIIのFLT3阻害薬では、これらの阻害薬が不活性なキナーゼ構造にのみ結合するため、FLT3のオンターゲット二次キナーゼドメイン変異が獲得耐性の最も一般的なメカニズムであると考えられる。最も一般的な耐性誘発変異は、FLT3ゲートキーパーF691および活性化ループD835残基に発生するが、FLT3キナーゼドメインの他の残基とも関与している。これらのキナーゼドメイン変異は、薬物結合を直接阻害するか、FLT3阻害薬との相互作用に対し活性キナーゼ構造をもたらす。 活性キナーゼ構造に結合可能なGILやcrenolanibなどのタイプIのFLT3阻害薬を用いたその後の研究では、タイプIのFLT3阻害薬はオンターゲットキナーゼドメイン変異の影響を受けにくいものの、ゲートキーパーF691残基またはその近傍の変異には依然として一定程度の相対的耐性をもたらすことが示されている。 最近では、RAS/MAPK経路の活性化変異がGILに対する耐性の共通因子であり、他のFLT3阻害薬に対する耐性にも影響を及ぼすことが明らかになっている。患者内での腫瘍固有の異質性は、FLT3阻害薬による治療選択により、FLT3変異クローンに対するクローン選択と代替ドライバー変異の出現を促進する可能性がある。この現象は、FLT3阻害薬を他の薬剤と併用した場合においても観察されることがわかっている。 たとえば、GILとBCL2阻害薬であるVENとの併用はFLT3変異クローンを迅速に抑制するが、変異やその他の手段によるRASシグナル伝達の活性化には依然として耐性を示す可能性がある。また、トランスレーショナル研究では、FGF2やFLT3リガンドなどの微小環境因子が耐性クローンの生存や増殖を促進することが示唆されている。 耐性を最小限にするための今後の戦略としてSmith氏は「耐性クローンの発生を予防し、耐性の最も一般的な新規メカニズムであるRAS/MAPKシグナル伝達の活性化を抑制するための適切な併用戦略の確立に重点を置くべきである」とし、講演を締めくくった。

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HER2陽性進行乳がんの1次治療、T-DXd+ペルツズマブvs.THP/NEJM

 HER2陽性の進行または転移を有する乳がんの1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブの併用療法は、標準治療のタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法と比べて進行または死亡のリスクが有意に低く、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らDESTINY-Breast09 Trial Investigatorsが、第III相の「DESTINY-Breast09試験」の中間解析の結果を報告した。T-DXdは、既治療のHER2陽性の進行または転移を有する乳がん患者に対する有効性が示されているが、未治療の同患者に対するT-DXdの有効性および安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。国際共同第III相無作為化試験、PFSを評価 DESTINY-Breast09試験は、国際共同第III相無作為化試験で、HER2陽性の進行または転移を有する乳がんで、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない患者を対象に、T-DXd単剤療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性および安全性を評価した。術前・術後化学療法と全身性の抗がん剤治療終了後の再発までの期間が6ヵ月超の患者は対象とされ、進行・転移病変への内分泌療法歴は1ラインまで許容された。 T-DXd+ペルツズマブまたはT-DXd+プラセボ併用療法とTHP併用療法が比較された。被験者は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法群(盲検化)、T-DXd+プラセボ併用療法群(盲検化)、THP併用療法群(非盲検化)に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、および安全性であった。 2021年4月26日~2023年10月26日に、279施設で1,157例が登録・無作為化された。 本報告では、事前規定の中間解析であるT-DXd+ペルツズマブ併用療法とTHP併用療法のデータが報告された。T-DXd+プラセボ併用療法のデータは、PFSの最終解析まで盲検化される。T-DXd+ペルツズマブ群のPFSのハザード比0.56 T-DXd+ペルツズマブ群(383例)とTHP群(387例)のベースラインの人口動態学的および疾患特性は均衡が取れていた。この2群において、被験者の年齢中央値は54歳(範囲:20~85)、アジア人が約半数(49.6%と50.6%)で、de novoが400例(51.9%)、ホルモン受容体陽性が416例(54.0%)、PIK3CA変異陽性が237例(30.8%)などであった。 データカットオフ時点(2025年2月26日)で、T-DXd+ペルツズマブ群で174/380例(45.8%)、THP群で128/383例(33.4%)が治療を継続していた。 主要評価項目であるPFSは、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~推定不能[NC])、THP群26.9ヵ月(21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群が有意に改善した(進行または死亡のハザード比:0.56、95%CI:0.44~0.71、p<0.00001[事前規定の優越性のp値閾値は0.00043])。 ORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(74.1~82.5)であり、完全奏効率はそれぞれ15.1%および8.5%であった。DOR中央値は39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)と26.4ヵ月(22.3~NC)であった。安全性は既知のプロファイルと一致 安全性は、各治療法の既知のプロファイルと一致していた。 Grade3以上の有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群63.5%、THP群62.3%に発現した。最も多くみられたのは、T-DXd+ペルツズマブ群では好中球減少症、低カリウム血症、貧血であり、THP群では好中球減少症、白血球減少症、下痢であった。 薬剤関連有害事象と判定された間質性肺疾患または肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群で12.2%(46例:44例がGrade1/2、2例がGrade5[死亡])、THP群で1.0%(4例:すべてGrade1/2)に発現した。

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筋層浸潤性膀胱がんにおけるデュルバルマブの役割:NIAGARA試験からの展望

 膀胱がんは筋層に浸潤すると予後不良となる。筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の治療にはアンメットニーズが多く、新たな治療戦略が求められる。そのような中、デュルバルマブのMIBCにおける術前・術後補助療法が承認された。都内で開催されたアストラゼネカのプレスセミナーで、富山大学の北村 寛氏がMIBC治療の現状と当該療法の可能性について紹介した。StageII/III MIBCにおける術前化学療法の限界とICIの登場 膀胱がんの5年生存割合は、筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)では70~80%であるのに対して、MIBCでは20~30%と低い。また、病期が進行するにつれ予後不良となり、II期のMIBCでは46.6%、III期では35.7%、IV期では16.6%である。 StageIIとIIIのMIBC治療におけるゴールドスタンダードは膀胱全摘術±CDDPベースの術前補助療法である。膀胱全摘への術前化学療法の導入により治療成績は向上し、5年生存割合は5%上がる。この成績はさまざまな試験で立証され確立したものである。半面、恩恵を受けられる患者は5%にとどまる。StageIIとIIIのMIBCに対する新たな治療法の開発が必要であった。 このような状況で、 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、MIBC治療への導入が検討され始める。周術期においては、高リスクの根治切除後MIBCに対するニボルマブ術後補助療法の有効性を評価したCheckMate-274試験が行われている。同試験において、ニボルマブの術後補助療法は、プラセボと比較して無病生存期間などを有意に改善している。デュルバルマブによる術前・術後補助療法を評価する「NIAGARA試験」 CheckMate 274の結果から、ICIのさらなる有効活用が検討されはじめる。 NIAGARA試験はMIBCに対するデュルバルマブを上乗せした周術期療法を評価するために行われた。対象は膀胱全摘術の対象となるMIBCで、標準治療である術前ゲムシタビン+CDDP(GC)療法とデュルバルマブ周術期療法(術前GC・デュルバルマブ併用+術後デュルバルマブ)を比較する第III相非盲検無作為化試験である。主要評価項目は病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)である。 その結果、主要評価項目であるpCR(データ更新後再解析)は、デュルバルマブ・GC群37.3%、GC群27.5%で、デュルバルマブ・GC群で有意に高かった(オッズ比:1.60、95%信頼区間[CI]:1.227~2.084、p=0.0005)。また、EFSのHRは0.68(95%CI:0.56~0.82、p<0.001)、2年EFS割合はデュルバルマブ・GC群で67.8%、GC群59.8%で、デュルバルマブ・GC群で有意に改善した。 デュルバルマブ・GC群の有害事象プロファイルはGC療法単独群と大きく変わらず、免疫関連有害事象 の頻度も限定的であった。 NIAGARA試験の結果から、StageII/III MIBCに対するデュルバルマブ併用周術期治療はNCCNガイドラインで推奨されている。※記事の一部に誤記載がございました。訂正してお詫び申し上げます。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。国際的な無作為化第III相試験 FLAURA2試験は、日本の施設も参加した国際的な非盲検無作為化第III相試験(AstraZenecaの助成を受けた)。2020年1月~2021年12月に患者のスクリーニングが行われ、年齢18歳以上(日本は20歳以上)で、EGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性の局所進行・転移のある非扁平上皮NSCLCと診断され、進行病変に対する全身療法を受けていない患者を対象とした。 被験者を、導入療法としてオシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与と、ペメトレキセド(500mg/m2体表面積)+白金製剤(シスプラチン[75 mg/m2体表面積]またはカルボプラチン[AUC 5 mg/mL/分])の3週ごとの静脈内投与を4サイクル受ける群(化学療法併用群)、またはオシメルチニブ(80mg)単剤の1日1回経口投与を受ける群(オシメルチニブ単剤群)のいずれかに無作為に割り付けた。化学療法併用群は、導入療法終了後に維持療法として、オシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与とペメトレキセド(500mg/m2体表面積)の3週ごとの静脈内投与を受けた。 557例(最大の解析対象集団)を登録し、化学療法併用群に279例(年齢中央値61歳[範囲26~83]、女性173例[62%])、オシメルチニブ単剤群に278例(62歳[30~85]、169例[61%])を割り付けた。全生存期間中央値が約10ヵ月延長 データカットオフ時点での投与期間中央値は化学療法併用群が30.5ヵ月、オシメルチニブ単剤群は21.2ヵ月で、全生存の追跡期間中央値はそれぞれ42.6ヵ月および35.7ヵ月であった。この時点で化学療法併用群の144例(52%)、オシメルチニブ単剤群の171例(62%)が死亡した。 OS中央値は、オシメルチニブ単剤群が37.6ヵ月(95%CI:33.2~43.2)であったのに対し、化学療法併用群は47.5ヵ月(41.0~算出不能)と有意に優れた(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、p=0.02)。また、36ヵ月時のOS率は、化学療法併用群が63%、オシメルチニブ単剤群は51%であり、48ヵ月OS率はそれぞれ49%および41%であった。 ベースラインで中枢神経系転移を認めた患者の36ヵ月OS率は、化学療法併用群が57%、オシメルチニブ単剤群は40%であり、同転移のない患者ではそれぞれ67%および58%だった。新たな毒性作用は認めず、Grade3以上が多い 551例(安全性解析集団:化学療法併用群276例、オシメルチニブ単剤群275例)が少なくとも1回の試験薬の投与を受けた。主解析から2年超の時点での安全性の知見は、主解析時の解析結果と一致しており、新たな毒性作用は認めなかった。 Grade3以上の有害事象は、化学療法併用群で193例(70%)、オシメルチニブ単剤群で94例(34%)に、重篤な有害事象はそれぞれ126例(46%)および75例(27%)に発現した。死亡に至った有害事象はそれぞれ22例(8%)および10例(4%)で認め、このうち試験薬との関連の可能性があると判定されたのは5例(2%)および2例(1%)であり、オシメルチニブ単剤群の1例を除き、いずれも主解析のデータカットオフ日の前に死亡していた。オシメルチニブの投与中止に至った有害事象は、それぞれ34例(12%)および20例(7%)で報告された。 著者は、「Grade3以上の有害事象は化学療法併用群で高頻度であったが、このオシメルチニブ単剤群との差は、主に化学療法を含むレジメンで予想される骨髄抑制作用に起因する有害事象によるものであった」「病勢進行のため投与を中止したオシメルチニブ単剤群の患者の多くが最初の後治療として白金製剤ベースの2剤併用化学療法を受けたが、これらの患者のOSは化学療法併用群よりも劣ったことから、発症後の最初の治療は併用療法で開始するのが好ましい可能性が示唆され、本試験の化学療法併用群におけるOSの有益性は、1次治療を有効性の高い併用療法で開始することの重要性を強調するものである」としている。

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ESMO2025 レポート 消化器がん(下部消化器編)

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏が消化器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。上部消化器編は こちら4.【大腸がん】CheckMate 8HW試験のupdate(#LBA29)切除不能MSI-H/dMMR大腸がんに対してNIVO+IPIの有効性を検証したランダム化第III相試験であるCheckMate 8HW試験。各施設で行われたMSI/MMR判定より中央判定でMSI-H/dMMRと判定された症例における解析では、NIVO+IPIの化学療法もしくはNIVO単剤と比較したPFSの有効性の差がより明らかになっていた。今回は、事前に計画されていた、中央判定でMSI-H/dMMRと判定された症例における1次治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのPFS最終解析と、すべての治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのOS最終解析の結果が報告された。1次治療におけるNIVO+IPI vs.NIVOのPFSは事前に設定されたp<0.0383の閾値に到達しなかったものの、HRは0.69(95%CI:0.48~0.99、p=0.0413)と臨床的に意義のある差を認めた。OSにおいてもすべての治療ラインにおけるNIVO+IPI vs.NIVOのOSはHR:0.61(95%CI:0.45~0.83)と良好な結果であったが、予測されていたイベントの69%しか発生しておらず、immatureな結果であった。いずれにしても、これらの結果はNIVO+IPIがMSI-H/dMMR大腸がんにおける標準治療であることを支持するものである。5.【大腸がん】BREAKWATER試験のctDNA解析(#729MO)切除不能BRAF V600E変異大腸がんの1次治療としてmFOLFOX6+エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)とECと化学療法+ベバシズマブの3群を比較したBREAKWATER試験では、すでに奏効率(ORR)、PFS、OSにおいて有効性が検証されている。今回は事前に設定されていたBRAFの変異アレル頻度(variant allele frequency:VAF)に基づくctDNA検査と組織検査の一致、治療効果、治療に対する耐性との関係を解析した。ctDNA検査はGuardant Infinityが用いられた。組織のBRAF変異とctDNAのBRAF変異は高い一致が認められ、tumor burden(転移巣の腫瘍径の総和)とctDNAの検出には関連性が認められた。ctDNAのVAFにかかわらず、mFOLFOX6+ECは他治療と比較して良好なORRとOSを認めた。経時的な測定ではmFOLFOX6+EC症例で最も速やかなVAFの低下とその後の治療経過でも低下の維持が認められ、2コース目Day15におけるctDNA未検出が良好なOSと関連するとともに、そのような症例がmFOLFOX6+EC症例で最も多く認められた。mFOLFOX6+EC症例はEC症例より長期の治療が可能であったにもかかわらず、治療終了時のKRAS、NRAS、MAP2K1変異、MET遺伝子増幅など耐性獲得変異などの検出がより少なかった。これらの結果は、mFOLFOX6+ECの標準治療としての地位をより強化するものである。6.【大腸がん】DESTINY-CRC02試験の最終解析(#737MO)切除不能HER2陽性大腸がんに対して抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を検討した多施設共同第II相試験であるDESTINY-CRC02試験は、HER2陽性(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)122例を対象に、T-DXd 5.4mg/kgおよび6.4mg/kg(各40例、追加42例)を3週ごとに投与し、主要評価項目は独立中央判定による確定奏効率(confirmed ORR:cORR)であった。最終解析では、追跡期間中央値が5.4mg/kg群14.2ヵ月、6.4mg/kg群12.7ヵ月に延長され、主要評価項目のcORRはそれぞれ37.8%(95%CI:27.3~49.2)および27.5%(14.6~43.9)と、5.4mg/kg群でより高い奏効率を示した。PFSは中央値5.8ヵ月vs.5.5ヵ月、OSは15.9ヵ月(12.6~18.8)vs.19.7ヵ月(9.9~25.8)であり、奏効期間(duration of response:DOR)は両群とも5.5ヵ月であった。安全性では、Grade3以上の有害事象が5.4mg/kg群で42.2%、6.4mg/kg群で48.7%に認められ、間質性肺疾患(ILD)はそれぞれ9.6%(主にGrade1~2)、17.9%と用量依存的な増加を示したが、新たな安全性シグナルは確認されなかった。これらの結果から、T-DXd 5.4mg/kgが有効性と安全性のバランスに優れた推奨用量と結論付けられた。この結果は標準治療後のHER2陽性大腸がんにおけるT-DXdの有用性を確立するものである。7.【大腸がん】STELLAR-303試験(#LBA30)現時点でMSI-H/dMMR以外の転移を有する大腸がんに対して免疫チェックポイント阻害薬がOSを有意に改善した第III相試験は存在しない。zanzalintinibはTAM kinase、MET、VEGFレセプターを阻害するマルチキナーゼ阻害薬であり、STELLAR-001試験でzanzalintinibとアテゾリズマブ(Atezo)の併用で良好な治療効果と許容される毒性を認めていた。その結果に基づき、ランダム化非盲検第III相試験であるSTELLAR-303試験が前治療のある転移性大腸がんに対して実施された。MSI-H/dMMR以外の標準治療終了後の転移性大腸がん901例をzanzalintinib+Atezo群(451例)とレゴラフェニブ群(450例)に1:1に割り付け、主要評価項目は、ITT症例におけるOSと肝転移を持たない症例におけるOSとdual primaryとなっていた。ITT症例におけるOS中央値でzanzalintinib+Atezo群10.9ヵ月vs.レゴラフェニブ群9.4ヵ月(HR:0.80、95%CI:0.69~0.93、p=0.0045)と統計学的に有意な差を認めた。肝転移のない症例においても中間解析でOS中央値15.9ヵ月vs.12.7ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.61~1.03、p=0.087)と良好な傾向が認められた。サブグループ解析でもすべてのサブグループで試験治療が良好な傾向であり、肝転移ありの症例でも良好な結果であった。PFSにおいても、中央値でzanzalintinib+Atezo群3.7ヵ月vs.レゴラフェニブ群2.0ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.59~0.79)と良好な結果であった。安全性においてはGrade3の有害事象がzanzalintinib+Atezo群56%vs.レゴラフェニブ群33%であったが、治療関連死は両群ともにまれであった。zanzalintinib+AtezoはMSI-H/dMMR以外の転移性大腸がんにおいて今後の治療オプションとなりうるが、治療効果の上乗せは大きくなく(中央値で1.5ヵ月)、日本は参加していない試験であり、今後各国での承認および本邦における導入の動向が注目される。8.【結腸がん】DYNAMIC-III試験(#LBA9)StageIII切除後結腸がんの標準治療は、リスクに応じて3~6ヵ月のオキサリプラチンベースの術後補助化学療法である。DYNAMIC-III試験はctDNAの結果を基にStageIIIの結腸がんに対してctDNA-positive症例には治療のescalation(ASCO 2025で報告済み)、ctDNA-negative症例には治療のde-escalationを実施する治療の有効性を検証するランダム化第II/III相試験である。今回、ctDNA-negative症例に治療のde-escalationを実施するコホートの結果が報告された。ctDNAの情報を基に治療を実施する群(事前に治療を規定して、ctDNAの結果を基にde-escalation)と主治医判断の下に治療を実施する群(ctDNAの結果はブラインド)に1:1に割り付けた。主要評価項目は3年RFSであり、非劣性マージンを7.5%とし、750例が必要と算出された。ctDNA-negative症例が75%と想定され、トータルで1,002例がランダム化された。ctDNA-negative cohortでは752例が対象となり、3~6ヵ月のオキサリプラチンベースの治療が行われた症例がde-escalation群で34.8%、標準治療群で88.6%(RR:0.41、p<0.001)と有意に少なく、治療関連の入院、Grade3~4の治療関連の有害事象も有意に少ない結果であった。3年RFSはde-escalation群で85.3%、標準治療群で88.1%であり、非劣性マージンである7.5%の95%CIの下限を満たさない結果であった。臨床的なLow Risk(T1-3N1)とHigh Risk(T4 and/or N2)の比較では、High Risk群でde-escalation群がより不良な結果であった。ctDNA陰性例と陽性例の比較では、陰性→陽性群でctDNA量が少ない群の順番でRFSが良好であった。ctDNAの情報を基にしたde-escalationの戦略はさらなる検討が必要と結論付けられた。

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ESMO2025 レポート 消化器がん(上部消化器編)

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏が消化器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。下部消化器編は こちら1.【食道がん】SKYSCRAPER-07試験(#2094O)食道扁平上皮がんにおいて、切除不能症例および切除可能症例の術後治療としての免疫チェックポイント阻害薬は、すでに本邦で薬事承認されている。一方、切除不能局所進行症例(遠隔転移はないが、局所進行のため切除できない症例)の標準治療は根治的な化学放射線療法であるが、免疫チェックポイント阻害薬を追加することによる有効性の上乗せはまだ検証されていなかった。TIGITは活性化T細胞、NK細胞、制御性T細胞に発現する共抑制因子というものであり、その阻害抗体薬であるtiragolumab(Tira)はPD-L1抗体であるアテゾリズマブ(Atezo)との併用で治療効果が期待されていた。ランダム化二重盲検第III相試験であるSKYSCRAPER-07試験では、StageII~IVAおよび鎖骨上リンパ節転移のみのIVBの食道扁平上皮がん症例を、根治的化学放射線療法の後にTira+Atezo、Atezo+プラセボ、プラセボ+プラセボに1:1:1に割り付けて、1年間の維持療法を実施した。主要評価項目はTira+Atezo群とプラセボ群の主治医が判断した無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)と全生存期間(overall survival:OS)、Atezo+プラセボ群とプラセボ群のOSであり、Tira+Atezo群とプラセボ群の主治医が判断したPFS→OS→Atezo+プラセボ群とプラセボ群のOS、の順番で検定を行う計画であった。結果は、残念ながらTira+Atezo群とプラセボ群の主治医判定のPFSが中央値20.8ヵ月vs.16.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、p=0.0942)、OSが中央値38.6ヵ月vs.36.4ヵ月(HR:0.91、p=0.4772)と有効性を検証することができなかった。一方でAtezo+プラセボ群とプラセボ群では、主治医判定のPFSが中央値29.1ヵ月vs.16.6ヵ月(HR:0.74、p=0.0113)、OSが中央値未到達vs.36.4ヵ月(HR:0.69、p=0.0085)と有意な治療効果の上乗せを認めた。Tiraの追加による免疫関連有害事象の増加が認められたが、許容される範囲であった。根治的放射線化学療法後のAtezoによる治療効果の上乗せが認められたが、残念ながら統計学的に検証することはできなかった。TIGITの阻害はdetrimentalな効果があることが示唆され、TIGIT阻害薬のこの対象における開発はしばらく進まなそうである。一方でAtezo単剤の有効性は示されており、実臨床での使用が強く望まれる。2.【胃がん】MATTERHORN試験(#LBA81)切除可能胃・胃食道接合部がんを対象としたFLOT+デュルバルマブとFLOT+プラセボを比較したランダム化二重盲検第III相試験であるMATTERHORN試験は、すでに主要評価項目である無イベント生存期間(event-free survival:EFS)が有意に改善したことが報告されている。OSについても中間解析で良好な結果が報告されているが、今回、OSの最終解析結果が報告された。併せて病理学的な効果とEFSの関係についても報告された。3年OSが68.6%vs.61.9%と改善を認め、両群ともに中央値に到達していなかった(HR:0.78、p=0.021)が、事前に設定されたP値(p<0.0499)に到達しており、OSにおいても有効性が検証された。サブグループ解析でも一貫して効果が認められ、PD-L1発現にかかわらず治療効果の上乗せが認められた。病理学的完全奏効(pCR)、主要病理学的奏効(MPR)が得られた症例は一貫してEFSが良好である一方で、ypNにかかわらず、EFSの上乗せが認められた。今後本邦でも、デュルバルマブが胃がん周術期治療に組み込まれる見込みである。本邦においてはFLOT療法の臨床現場での導入が課題である。3.【胃がん】FORTITUDE-101試験(#LBA10)進行胃・胃食道接合部がんにおいてFGFR2bが高発現していることが報告されており、bemarituzumabはFGFR2bを標的とした抗体薬である。第II相試験であるFIGHT試験でbemarituzumab+mFOLFOX6はFGFR2b高発現のHER2陰性胃・胃食道接合部がんにおいて良好な治療効果が認められており、今回第III相試験であるFORTITUDE-101試験の結果が報告された。本試験では、FGFR2bが免疫染色で2+/3+と高発現した(後に≧10%発現の症例に適格性変更)HER2陰性の前治療のない胃・胃食道接合部がんを対象に、bemarituzumab+mFOLFOX6(全体で275例、FGFR2b≧10%が159例)vs.プラセボ+mFOLFOX6(全体で267例、FGFR2b≧10%が165例)に1:1で割り付けが行われた。主要評価項目はFGFR2b≧10%症例におけるOSであり、観察期間中央値11.8ヵ月でbemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値17.9ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値12.5ヵ月(HR:0.61、p=0.005)と中間評価の時点で優れた結果であった。PFSにおいてもbemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値8.6ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値6.7ヵ月(HR:0.71、p=0.019)と優れた結果である一方、奏効割合では45.9%vs.44.8%と両群で大きな差を認めなかった。観察期間中央値19.4ヵ月のフォローアップの結果では、bemarituzumab+mFOLFOX6群で中央値14.5ヵ月vs.プラセボ+mFOLFOX6で中央値13.2ヵ月、HR:0.82(0.62~1.08)で治療効果の上乗せが検証できなかった。安全性においては視力障害、角膜障害、貧血、好中球減少、吐き気、corneal epithelial defect(角膜上皮障害)、ドライアイなどが高く認められたが、全体的には許容されるものであった。今後、FOLFOX+ニボルマブにbemarituzumabの上乗せを検証するFORTITUDE-102の結果が報告され、bemarituzumabの有効性と安全性の情報がさらに充実することが期待される。

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HER2陽性尿路上皮がん、disitamab vedotin+toripalimabがPFS・OS改善(RC48-C016)/NEJM

 未治療のHER2陽性局所進行または転移のある尿路上皮がん患者において、HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるdisitamab vedotinと抗PD-1抗体toripalimabの併用療法は、化学療法と比較して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長することが認められた。中国・Peking University Cancer Hospital and InstituteのXinan Sheng氏らRC48-C016 Trial Investigatorsが、中国の72施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「RC48-C016試験」の事前に規定されたPFS解析およびOS中間解析の結果を報告した。HER2を標的とするADCの単剤療法は、化学療法後のHER2陽性尿路上皮がんに対する有効な治療選択肢として確立されている。disitamab vedotinは、単剤療法として、またPD-1を標的とした免疫療法との併用において、有望な抗腫瘍活性と安全性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年10月19日号掲載の報告。PFSとOSを主要評価項目として、化学療法と比較 研究グループは、病理組織学的に確認された切除不能な局所進行または転移のある尿路上皮がんを有し、術前または術後補助療法後12ヵ月以内の病勢進行または再発は認められず、かつ全身化学療法未治療で、中央検査にてHER2陽性(IHCスコア1+、2+または3+)が確認された18歳以上の患者を、disitamab vedotin+toripalimab群と化学療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 disitamab vedotin+toripalimab群では、disitamab vedotin 2.0mg/kgとtoripalimab 3 mg/kgをいずれも2週間ごとに投与し、化学療法群では3週間を1サイクルとしてゲムシタビン1,000mg/m2を1日目と8日目に、シスプラチン70mg/m2またはカルボプラチンAUC=4.5を1日目に投与し、病勢進行、許容できない毒性発現または規定サイクル完了(化学療法は6サイクル、disitamab vedotin+toripalimabは上限なし)まで継続した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFS、およびOS、副次評価項目は奏効率、病勢コントロール率、奏効期間、安全性などであった。disitamab vedotin+toripalimab群のPFSとOSが有意に延長 適格患者484例が無作為化された(disitamab vedotin+toripalimab群243例、化学療法群241例)。 追跡期間中央値18.2ヵ月において、PFS中央値はdisitamab vedotin+toripalimab群13.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.1~16.7)、化学療法群6.5ヵ月(5.7~7.4)であり、disitamab vedotin+toripalimab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.36、95%CI:0.28~0.46、p<0.001[有意水準0.05])。OS中央値もそれぞれ31.5ヵ月(95%CI:21.7~推定不能)、16.9ヵ月(14.6~21.7)で、disitamab vedotin+toripalimab群で有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.73、p<0.001[有意水準0.009])。 奏効率は、disitamab vedotin+toripalimab群76.1%(95%CI:70.3~81.3)、化学療法群50.2%(43.7~56.7)であった。 安全性プロファイルはdisitamab vedotin+toripalimab群が化学療法群と比較し良好で、Grade3以上の治療関連有害事象はdisitamab vedotin+toripalimab群で55.1%、化学療法群で86.9%に認められた。 なお、著者は、中国のみで実施された臨床試験であること、両群とも完全奏効が得られた患者の割合は同時期の他の臨床試験で報告されている割合よりも低かったこと、中国ではアベルマブによる維持療法は未承認であるため利用できなかったことなどを研究の限界として挙げている。

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