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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会2023

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)1)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)のStageIIIB、IIIC、IVの未治療NSCLC成人患者557例(日本人94例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例[日本人47例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[日本人47例※])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など※:1例は治療開始前に死亡 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は、併用群でEGFR遺伝子L858R変異が多かったが(併用群51%、単独群34%)、それ以外は両群で同様であった。日本人集団はPS 0が多く(全体集団はいずれの群も37%であったのに対し、日本人集団はそれぞれ53%、43%)、腫瘍径が小さかった(平均値は全体集団がそれぞれ65mm、64mmであったのに対し、日本人集団はそれぞれ48mm、51mm)。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、併用群が24.8ヵ月、単独群が16.4ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。・OSはデータカットオフ時点で未成熟(成熟度:29%)であった。参考値ではあるが、データカットオフ時点のOS中央値は、併用群が31.9ヵ月、単独群が未到達であった(HR:0.70、95%CI:0.32~1.54)。・奏効率は、併用群が87%(CRは0例)、単独群が72%(CRは0例)で、奏効期間中央値は、それぞれ23.3ヵ月、13.8ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群に多く発現したが(併用群47%、単独群13%)、治療関連死はいずれの群においても認められなかった。 また、全体集団におけるベースライン時の脳転移の有無別、EGFR遺伝子変異の種類別にみた治験担当医師評価に基づくPFSの結果も報告された。PFS中央値およびHR、95%CIは以下のとおり。・脳転移あり集団:併用群24.9ヵ月、単独群13.8ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.33~0.66)。・脳転移なし集団:併用群27.6ヵ月、単独群21.0ヵ月(同:0.75、0.55~1.03)。・exon19欠失変異集団:併用群27.9ヵ月、単独群19.4ヵ月(同:0.60、0.44~0.83)。・L858R変異集団:併用群24.7ヵ月、単独群13.9ヵ月(同:0.63、0.44~0.90)。 本試験結果について、小林氏は「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセドは、日本人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の新たな選択肢となるだろう」とまとめた。

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EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。<FLAURA2試験 探索的解析>・対象:EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)のStageIIIB~IVの未治療NSCLC患者222例・試験群(化学療法併用群):オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2(3週ごと)118例・対照群(オシメルチニブ単剤療法群):オシメルチニブ80mg/日 104例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など 主な結果は以下のとおり。・盲検下独立中央判定(BICR)の評価では、化学療法併用群は、オシメルチニブ単剤療法群と比較して、2年時点におけるCNSの病勢進行または死亡リスクが42%減少した(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.33~1.01)。・2年時点におけるCNSでの病勢進行または死亡が認められなかった患者の割合は、化学療法併用群では74%だったのに対し、オシメルチニブ単剤療法群では54%だった。・CNSでの完全奏効(CR)が認められた患者の割合は、化学療法併用群で59%、オシメルチニブ単剤療法群で43%だった。・化学療法併用群におけるオシメルチニブの安全性プロファイルは、おおむねコントロール可能だった。有害事象は化学療法併用群で発現率が高かったものの、既知のプロファイルと一貫していた。・オシメルチニブの投与中止に至った割合は、化学療法併用群では11%、オシメルチニブ単剤療法群では6%だった。 本試験の治験責任医師でGustave Roussy Institute of Oncologyの胸部腫瘍医David Planchard氏は、「オシメルチニブは血液脳関門を通過することができ、脳転移のない患者よりも予後不良となることが多い中枢神経系への転移を伴う肺がん患者の転帰を改善することが証明されている。FLAURA2試験では、オシメルチニブに化学療法を併用することで、中枢神経系への転移を伴う患者の半数以上でCRおよび脳内の腫瘍消失が認められた」と述べた。 また、AstraZeneca(英国)のオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるSusan Galbraith氏は、「今回の結果から、ベースライン時に脳転移を有していた患者にFLAURA2レジメンを用いたところ意義のある結果が認められ、脳にがんが転移した患者に希望をもたらした」とコメントした。

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進行胸膜中皮腫、化学療法+ペムブロリズマブでOS延長/Lancet

 進行性胸膜中皮腫患者の治療において、標準治療的化学療法のプラチナ+ペメトレキセドへのペムブロリズマブの上乗せは、忍容性は良好で、全生存(OS)を有意に改善した。カナダ・Cross Cancer InstituteのQuincy Chu氏らが、カナダ、イタリア、フランスの51病院で、440例を対象に行われた第III相の国際非盲検無作為化試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は「本レジメンは、未治療の進行性胸膜中皮腫に対する新たな治療選択肢である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。未治療患者を無作為化、主要評価項目はOS 研究グループは、カナダ、イタリア、フランスの51病院で、未治療の進行性胸膜中皮腫で、ECOG-PSスコアが0~1の18歳以上の患者を登録し、化学療法+ペムブロリズマブ治療がOSを改善するかについて検証した。 被験者は化学療法(シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5~6mg/mL/分]+ペメトレキセド500mg/m2、3週ごと最長6サイクル)の静脈内投与に加えて、ペムブロリズマブ静脈内投与(200mgを3週ごと、最長2年)の併用または非併用投与する群に1対1の割合で無作為化された。 主要評価項目はOSで、無作為化された全患者を対象に評価した。安全性は、試験薬を1回以上投与された患者を対象に評価した。3年OS率、化学療法単独群17%、ペムブロリズマブ併用群25% 2017年1月31日~2020年9月4日に440例が登録され、化学療法単独群(218例)または化学療法+ペムブロリズマブ群(222例)に無作為化された。被験者のうち333例(76%)が男性、347例(79%)が白人で、年齢中央値は71歳(四分位範囲[IQR]:66~75)だった。 最終解析(データベースロック2022年12月15日、追跡期間中央値16.2ヵ月[IQR:8.3~27.8])時点で、OS中央値は化学療法単独群16.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.1~18.2)、化学療法+ペムブロリズマブ群17.3ヵ月(14.4~21.3)であり、ペムブロリズマブ併用群で有意に延長した(死亡に関するハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.64~0.98、両側p=0.0324)。 3年OS率は、化学療法単独群17%(95%CI:13~24)、化学療法+ペムブロリズマブ群25%(20~33)だった。 試験治療に関連したGrade3/4の有害事象の発現は、化学療法単独群32/211例(15%)、化学療法+ペムブロリズマブ群60/222例(27%)だった。入院を要した重篤な有害事象の発現は、化学療法単独群12/211例(6%)、化学療法+ペムブロリズマブ群40/222例(18%)。1つ以上の治療薬に関連したGrade5の有害事象の発現は、化学療法単独群1例、化学療法+ペムブロリズマブ群2例だった。

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妊婦禁忌のコロナ治療薬は慎重に処方・調剤を、5団体が合同声明文を発表

 妊婦にとって禁忌とされる新型コロナウイルス感染症の治療薬が処方・調剤され、その後に患者が妊娠していることが判明した事例が多数報告されていることから、11月14日付で、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会、日本医師会、日本薬剤師会の5団体は、診療に携わる医療関係者および治療を受ける女性患者のそれぞれに向けて合同声明文を発表した。 現在承認されている経口コロナ治療薬は、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)、ニルマトレビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)である。そのうち、モルヌピラビルとエンシトレルビルは、動物実験で催奇形性や胚・胎児致死などが認められているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌となっている。 合同声明文によると、医師の問診や処方前のチェックリストにてこれらのコロナ治療薬が処方に問題ないと判断され、薬局薬剤師の聞き取りでも確認したにもかかわらず、コロナ治療薬の処方・調剤後に、患者が妊娠していることが判明した事例が多数報告されている。実際に服用した患者は大変に大きな不安を抱えて妊娠と向き合うことになっているという。 声明文では、コロナ治療薬を処方する医師並びに調剤する薬剤師に対して、患者が妊娠可能年齢の女性である場合、本人への問診の結果、妊娠の可能性がないと申告されても完全には排除できるものではないということに留意することを訴えた。そのうえで、患者に丁寧な説明を行うとともに、妊婦にとって禁忌とされている薬剤を妊娠可能な世代の女性の患者に処方・調剤するかどうかについて、くれぐれも慎重に判断するよう呼びかけた。 また、この合同声明文を受けて厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部が同日に発表した事務連絡では、以下の周知も呼びかけている。・製造販売業者が周知している薬服用時の事前のチェックリスト及び処方された女性患者と家族向けの資材を活用すること。・資材が活用され、かつ患者から服薬の同意が得られている事例においても、処方時点では患者が妊娠の可能性に気付いておらず、服薬後に妊娠が判明する事例が複数報告されていることから、妊娠している可能性(前回月経後に性交渉を行った場合は妊娠している可能性があること等)について、入念に説明、確認を行うこと。

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ESMO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のESMOはスペインのマドリードで開催されました。昨年・一昨年以上に参加人数が多かったようで、ポストコロナ時代の学会として大変盛況でした。さて、肺がん領域においてはPractice Changeにつながる可能性の高い重要な演題が多く発表されました。とくに、ここ2年間で劇的に進歩した肺がん周術期治療やEGFR・RETなどのdriver mutation陽性の進行例に対する新たな知見が複数報告されております。今回はその中から、7つの演題を取り上げ概括したいと思います。CheckMate77T試験切除可能なIIA~IIIB(N2)期の非小細胞肺がんを対象として、術前の化学療法を標準治療として、術前のニボルマブ+化学療法および術後のニボルマブ療法の優越性を検証した無作為化比較第III相試験である。CheckMate816試験を基に現在保険承認されている術前のニボルマブ+化学療法に術後1年間のニボルマブ療法を加えた、いわゆるサンドイッチレジメンである。主要評価項目は中央判定での無イベント生存期間(EFS)で、副次評価項目は中央判定での病理学的完全奏効(pCR)、中央判定での病理学的奏効(MPR)、全生存期間(OS)、安全性プロファイルが設定されていた。患者背景として、病期やPD-L1発現などはCheckMate816試験と同様であった。主要評価項目の結果としては、CheckMate816試験やほかのサンドイッチレジメンと同様にEFSを有意に延長し(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.81)、副次評価項目であるpCRやMPRも化学療法と比較して有意に良好であった(pCR:25.3% vs.4.7%、MPR:35.4% vs.12.1%)。EFSのサブ解析を見ても、おおむねどの集団においてもニボルマブ併用群で良好な結果であった。また、ほかのサンドイッチレジメンと同様にpCRやMPR別でのEFSの解析も行われ、こちらも今までと同様にpCRやMPRの有無でEFSに大きな差が認められた。安全性のデータも報告されたが、目新しい有害事象(AE)の報告はなく、過去の周術期ICIのレジメンと同様であった。本レジメンも将来的に保険承認されると予想されるが、ほかのペムブロリズマブやデュルバルマブなどのサンドイッチレジメンとの差別化が図れるようなデータは今回の報告からは見られなかった。ALINA試験本年のASCOで、EGFR遺伝子変異陽性肺がん完全切除例に対するオシメルチニブによる術後補助療法が、プラセボと比較してOSを有意に延長したことが大きな話題となったが、ESMOではALK遺伝子転座陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの術後補助療法の有効性が報告された。UICC-7版でのIB~IIIA期のALK陽性非小細胞肺がんが対象で、標準治療であるプラチナ併用化学療法による補助療法に対するアレクチニブを2年間内服する術後補助療法の有効性を検証する無作為化比較第III 相試験である。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次評価項目はCNSのDFS、OS、安全性であった。主要評価項目はII~IIIA期で評価された後、ITT集団を対象として階層的に評価されるデザインであった。257例が登録されており、アジア人が約半数でIIIA期が約半数登録された試験であった。主要評価項目であるII~IIIA期DFSは、標準治療と比較してアレクチニブ群のハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.45)であり、ITT集団を対象とした解析でもハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.43)と、ともに主要評価項目を達成した。サブ解析でもほぼすべての集団でアレクチニブ群のDFSが良好であった。副次評価項目の1つであるCNSのDFSも、アレクチニブ群は標準治療と比較してハザード比は0.22(95%CI:0.08~0.58)と良好であった。再発後の治療はアレクチニブ群の約半数、標準治療群では約75%でALK-TKIが投与されており、今回の発表のデータカットオフ時点ではOSのイベントはわずか6例しか認められなかった。安全性は、Grade3以上は30%で治療関連の死亡は認められなかった。主なAEは、CPK上昇(約40%)、便秘(約40%)、AST上昇・ALT上昇(約40%前後)と、過去のALEX試験やJ-ALEX試験と同様のプロファイルであった。今回、DFSの良好な結果が報告されたが、オシメルチニブと同様にOSの延長にも寄与するかが今後期待される。ただ、ALK陽性肺がんの予後を考えると、数年後まで結果は出てこない可能性が高い。今回の結果からは、今後バイオマーカーの結果によって周術期治療戦略も進行期と同様に細分化されると考えられる。MARIPOSA試験EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する1次治療として確立しているオシメルチニブを標準治療とした、無作為化比較第III相試験である。試験治療群はEGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの2剤併用療法もしくはlazertinib単剤の3群の比較試験で、主要評価項目はamivantamab・lazertinib併用療法のオシメルチニブに対する中央判定によるPFSであった。 1,074例が登録され、amivantamab・lazertinib併用療法、オシメルチニブ療法、lazertinib療法に、それぞれ2:2:1に割り付けられた。EGFR変異の種別はExon19欠失が60%でL858R点変異が40%、約40%が脳転移を有していた。主要評価項目のPFSはamivantamab・lazertinib併用群で中央値23.7ヵ月、オシメルチニブ群で中央値16.6ヵ月、ハザード比0.70(95%CI:0.58~0.85)と、amivantamab・lazertinib併用群のオシメルチニブに対するPFS延長効果が証明され、主要評価項目を達成した。サブ解析では、おおむねどの集団においてもamivantamab・lazertinib併用群で良好な結果であったが、65歳以上の集団ではハザード比1.06であった。奏効率(ORR)は併用群およびオシメルチニブ群ともに約85%で、OSは今回の中間解析時点では2年時点で5%約の差(75% vs.69%)で併用群が良好であった。有効性について有望な結果が得られたamivantamab・lazertinib併用群であったが、AEが強く発現する点に注意する必要がある。Grade3以上のAEは75%で、皮膚障害・粘膜障害についてもGrade3以上がamivantamab・lazertinib併用群で強く発現していた。さらに特筆すべきは静脈血栓症(VTE)で、オシメルチニブ群の9%と比較して併用群では37%と高く、発症時期は中央値で84日と比較的早期に発症することが特徴である。現在実施されているamivantamab・lazertinib併用の治験では、治療開始後4ヵ月間は予防的抗凝固療法が推奨されているとのことであった。今回、オシメルチニブに対するPFS延長を示したamivantamab・lazertinib併用療法であるが、AEが強く発現する点から、個人的には今後オシメルチニブに完全に置き換わるよりは、使い分けが重要となってくると予想する。MARIPOSA-2試験先述したMARIPOSA試験と同じセッションで発表された本試験は、オシメルチニブに対して病勢増悪を来したEGFR遺伝子変異陽性例を対象として、カルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を標準治療として、amivantamab+lazertinib+化学療法の4剤併用療法もしくはamivantamab+化学療法の3剤併用療法の3群に割り付ける無作為化比較第III相試験で、657例が登録された。主要評価項目は中央判定による4剤併用療法と化学療法を比較するPFSと、3剤併用療法と化学療法を比較したPFSである。登録前のオシメルチニブは、70%が1次治療、30%が2次治療で投与されていた。主要評価項目のPFSの結果は、4剤併用療法群の中央値が8.3ヵ月、3剤併用療法群の中央値が6.3ヵ月、化学療法群の中央値が4.2ヵ月で、それぞれハザード比が0.44(95%CI:0.35~0.56)、0.48(95%CI:0.36~0.64)と、4剤併用療法、3剤併用療法ともに化学療法に対する有意なPFS延長効果を証明した。サブ解析においても、すべての集団でPFSは良好な結果であった。ORRは両群63%程度(化学療法は36%)で頭蓋内のPFSも両群とも良好であった(4剤併用:12.8ヵ月、3剤併用:12.5ヵ月、化学療法:8.3ヵ月)。AEは先述したMARIPOSA試験同様に注意すべき点である。とくにlazertinibを加えた4剤併用療法では、Grade3以上のAEは92%、治療関連死亡は5%に認めた。3剤併用療法はGrade3以上のAEが72%であった。なかでも好中球減少や血小板減少などの血球減少は多く見られ、吐き気や倦怠感、食欲不振といった自覚症状として出てくるAEも4剤併用療法や3剤併用療法で多く認められた。血球減少が多く見られたことから、4剤併用療法のレジメンが見直され、lazertinibはカルボプラチン終了後に開始となるレジメンにmodifyされた。この修正後のレジメンの有効性・安全性データは今後評価予定となっている。今回、オシメルチニブ後の治療として有望な結果が得られたが、効果と安全性のバランスを考えると3剤併用療法がより使いやすい印象はある。先述したMARIPOSA試験と併せて、EGFR遺伝子変異陽性の最適な治療シークエンスが今後検討されることであろう。LIBRETTO-431試験本試験は肺腺がんの1~2%に認められるRET融合遺伝子陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、RET阻害薬であるセルペルカチニブを試験治療として、カルボプラチン+ペメトレキセド(+ペムブロリズマブ:investigator choice)療法を標準治療とした無作為化比較第III相試験である。標準治療群に割り付けられても病勢増悪後にセルペルカチニブにクロスオーバーが可能な試験である。主要評価項目は中央判定によるPFSであった。PFSはITT集団とITT-pembrolizumab(ITT-P)集団という2つの対象で評価された。261例が2:1に割り付けられた。約20%に脳転移を認め、40%強がPD-L1発現を認めた。主要評価項目であるPFSはITT-P集団でハザード比0.465(95%CI:0.309~0.699)、ITT集団で0.482(95%CI:0.331~0.700)と、規定された2つの集団でセルペルカチニブのPFSの有意な延長効果が証明された。サブ解析ではPD-L1陰性例よりも陽性例で良好な結果であった。セルペルカチニブのORRは83.7%(標準治療群:65.1%)、頭蓋内のORRも82.4%(標準治療群:58.3%)と、ともに良好な結果であった。CNS転移の累積発生率で見ても、12ヵ月時点で標準治療群が約20%であるのに対して、セルペルカチニブ群は5.5%とCNS転移をしっかりと抑えていることが示された。AEについては、セルペルカチニブの承認の元になった第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験と同様のプロファイルであった。Grade3以上のAEは約70%に認められ、頻度の高いAEはAST上昇(Grade3以上13%)、ALT上昇(Grade3以上22%)、高血圧(Grade3以20%)、下痢(Grade3以上:1%)であった。約80%の症例でセルペルカチニブの用量変更が必要であったことも特筆すべきことである。今回の第III試験の報告で、RET融合遺伝子陽性例の1次治療としてセルペルカチニブは確立したものとなったと考える。本試験の結果は発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にpublishされたことも報告された。TROPION-Lung01試験既治療の進行・再発非小細胞肺がんを対象として、ドセタキセル療法を標準治療としたdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の優越性を検証する無作為化比較第III相試験である。Dato-DXdはTROP2を標的とした抗体薬物複合体である。EGFRやALKなどのdriver mutationを有する症例について、標的治療およびプラチナ併用化学療法(+ICI)の治療を終えた症例であれば組み込むことは可能であった。主要評価項目は中央判定によるPFSとOSであった。604例が1:1に割り付けられ、非扁平上皮がんが約80%、EGFR遺伝子変異陽性例は約15%登録されていた。主要評価項目のPFSはDato-DXd群で中央値が4.4ヵ月、ドセタキセル群で中央値が3.7ヵ月、ハザード比は0.75(95%CI:0.62~0.91)とDato-DXdの有意なPFS延長効果が示された。ORRはDato-DXd群は26.4%、ドセタキセル群では12.8%と、こちらもDato-DXd群で良好であった。PFSのサブ解析で特筆すべきは組織型での差であった。非扁平上皮がんではDato-DXd群のハザード比が0.63であったのに対して、扁平上皮がんでは1.38と組織型でDato-DXd療法の有効性が異なることが示唆された。今回の中間解析時点でのOSはDato-DXd vs.ドセタキセルで0.90(95%CI:0.72~1.13)であり、今後のフォローアップデータが待たれるところである。治療期間の中央値はDato-DXdが4.2ヵ月、ドセタキセルは2.8ヵ月であった。Dato-DXdのAEについて、Grade3以上のAEは25%、減量を要した症例の割合は20%と、どちらもドセタキセルと比較して低い傾向にあった。頻度の多いAEは口内炎(47%)、吐き気(34%)、脱毛(32%)であった。またDato-DXdに特徴的なAEとしてドライアイや流涙などの眼関連のAEが19%に発生した。また、ILDは8%で、7例(2%)にILDによる治療関連死亡が発生したことも注意すべきAEとして取り上げたい。これらの結果から、既治療の非扁平上皮がんに対してDato-DXdが重要な治療選択肢になりうると結論付けられた。ACHILLES/TORG1834試験最後に、本邦からの重要な第III相試験の報告を紹介する。TORGを中心に全国の臨床試験グループが参加して行われたインターグループスタディであるACHILLES試験の結果が、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏より報告された。本試験は、EGFR遺伝子変異の中でExon19欠失もしくはL858R点変異を除く、いわゆるuncommon変異を有する未治療例を対象として、標準治療をプラチナ+ペメトレキセド、試験治療をアファチニブとして、PFSを主要評価項目に設定した無作為化比較試験である。109例が登録され、標準治療群とアファチニブ群に1:2に割り付けられた。変異の種類としてはG719Xが約40%と最も多く、L861Qが約18%であった。複数のuncommon変異を同時に有するcompound変異は約30%であった。ベースの脳転移は約30%に認めた。主要評価項目のPFSはアファチニブ群の中央値が10.6ヵ月、標準治療群では5.7ヵ月で、ハザード比は0.422(95%CI:0.256~0.694)であり、アファチニブの有意なPFS延長効果が示された。ORRはアファチニブで61.4%、標準治療で47.1%とアファチニブで良好であった。安全性は過去のLUX-Lung試験と同様のプロファイルであった。uncommon変異に対する初めての第III相試験であり、OSの結果が待たれるところであるが、同対象への標準治療としてアファチニブの地位はほかのEGFR-TKIよりリードしたものと考える。終わりに今回のESMOでは、取り上げた演題以外にもMini Oralやポスター発表で非常に興味深い発表が多かったです。今回のレポートが、多くの先生の臨床にお役に立てれば幸いです。

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ESMO2023 レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのマドリードで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)が、現地時間10月20日~24日にハイブリッド開催で行われた。日本の先生からの演題も多数報告されていたが、今回は消化器がんの注目演題について、いくつか取り上げていきたい。胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬#LBA74Pembrolizumab plus chemotherapy vs chemotherapy as neoadjuvant and adjuvant therapy in locally-advanced gastric and gastroesophageal junction cancer:The Phase III KEYNOTE-585 study本試験は、T3以上の深達度もしくはリンパ節転移陽性と診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、術前・術後に化学療法+プラセボを3コースずつ行った後にプラセボを3週ごと11コース行う標準治療群と、術前・術後に化学療法+ペムブロリズマブ併用を3コースずつ行った後にペムブロリズマブを3週ごと11コース行う試験治療群を比較するランダム化二重盲検第III相試験である。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平先生により結果が報告された。化学療法は、カペシタビン+シスプラチンまたは5-FU+シスプラチンを用いたメインコホートとFLOT療法を用いるFLOTコホートがあり、主要評価項目は全体の病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存期間(EFS)、メインコホートの全生存期間(OS)、FLOTコホートの安全性であった。全体で1,254例が登録され、メインコホートのペムブロリズマブ群402例とプラセボ群402例、FLOTコホートのペムブロリズマブ群100例とプラセボ群103例が登録された。メインコホートではアジアから約50%が登録され、PD-L1のCPS1以上は約75%、MSI-Hが約10%、StageIIIが約75%およびカペシタビン+シスプラチンが約75%であった。メインコホートのpCR率は、ペムブロリズマブ群の12.9%に対しプラセボ群では2.0%と、有意にペムブロリズマブ群で良好であった(p<0.0001)。pCR率のサブグループ解析では、PD-L1のCPS1未満でペムブロリズマブ群のpCR改善率が悪い傾向があり(4.2%の上乗せ)、MSI-H群ではペムブロリズマブ群のpCR率が有意に高かった(37.1%の上乗せ)。EFS中央値はペムブロリズマブ群で44.4ヵ月、プラセボ群で25.3ヵ月であり、事前に設定された統計設定を達成できなかった(HR:0.81、p=0.0198)。OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.90)。メインコホート+FLOTコホートにおける解析では、EFS中央値がペムブロリズマブ群で45.8ヵ月、プラセボ群で25.7ヵ月(HR:0.81)、OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.93)。重篤な毒性は全体では両群に有意差はなく、Grade3~4の免疫関連有害事象とインフュージョン・リアクションはペムブロリズマブ群で多い傾向があった。#LBA73Pathological complete response (pCR) to durvalumab plus 5-fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel (FLOT) in resectable gastric and gastroesophageal junction cancer (GC/GEJC): interim results of the global, phase III MATTERHORN study本試験は、StageII、IIIおよびIVAの診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、FLOT+プラセボ療法4コース後に手術を行い、術後FLOT+プラセボ4コース施行後プラセボを4週ごと10サイクル追加する標準治療群に対し、術前および術後のFLOT療法に対するデュルバルマブを上乗せし、終了後デュルバルマブを4週ごと行う試験治療群の優越性を検証したランダム化二重盲検第III相試験である。主要評価項目はEFS、副次評価項目は中央判定のpCR率、OSであり、今回は副次評価項目であるpCR率が報告された。日本を含む20ヵ国から948例が登録され、474例がFLOT+デュルバルマブ群に、474例がFLOT+プラセボ群に登録された。デュルバルマブ群では91%で手術が行われ、87%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行、プラセボ群では91%で手術が行われ、85%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行された。患者背景は両群で偏りがなく、胃がんが約70%で食道胃接合部がんは約30%、T1~2/T3/T4が約10%/約65%/約25%、臨床的リンパ節転移陽性が約70%、病理はdiffuse typeが約20%、PD-L1発現(腫瘍における発現)は≦1%が約90%であった。副次評価項目である中央判定pCR率はデュルバルマブ群で19%、プラセボ群で7%と12%の上乗せとなり、統計学的有意差を認めた(オッズ比[OR]:3.08、95%信頼区間[CI]:2.03~4.67、p<0.00001)。pCRとnear pCRを合わせた改善率はデュルバルマブ群で27%、プラセボ群で14%と、13%の上乗せがあり、統計学的に有意な改善を認めた(OR:2.19、95%CI:1.58~3.04、p<0.00001)。サブグループ解析では全体にデュルバルマブ群で良好であったが、PD-L1発現1%未満の群ではpCR率の差が少ない傾向にあった。手術の完遂率・R0切除率・術式・リンパ節郭清の割合は両群で差がなかった。安全性に関しては両群とも新規の有害事象(AE)は認められなかった。周術期のFLOT療法にアテゾリズマブの上乗せを検証するDANTE試験がASCO2022で、中国で行われた周術期capeOX/SOXにtoripalimabの上乗せを検証する試験がASCO2023で報告され、tumor regression grade rate(TRG rate)という病理学的効果を見る指標が改善する可能性が示唆されている。今回、2つの周術期の大規模第III相試験が報告され、術前治療における免疫チェックポイント阻害薬の併用はpCR率を改善することが報告された。しかし、KEYNOTE-585試験では、ほかの主要評価項目であるEFSは統計学的に改善せず、OSもほぼ同等であった。今まで大規模第III相試験で、免疫チェックポイント阻害薬の追加でEFSやOSを改善した報告はなく、胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬が予後を改善するかはまだ明らかではない。MATTERHORN試験の今後の解析や他研究を含め、PD-L1やMSIを含む、さらなるバイオマーカー研究が待たれる。HER2陽性進行胃がん1次治療へのペムブロリズマブ#1511OPembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma: Survival results from the phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled KEYNOTE-811 studyKEYNOTE-811試験はHER2陽性の切除不能進行胃がんを対象に、標準治療である化学療法+トラスツズマブに対するペムブロリズマブの上乗せを検証する、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験である。2021年9月に副次評価項目の1つである奏効率(ORR)に関する報告がNature誌に掲載され、標準治療群の51.9%に対してペムブロリズマブの併用で74.4%と、22.5%の上乗せと統計学的有意差を認めていた。今回、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)とOSについて第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)の報告がなされた。698例が、ペムブロリズマブ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。第2回中間解析における全体集団においてペムブロリズマブ群はプラセボ群に対してPFS(10.0ヵ月vs.8.1ヵ月)に有意な改善を認めた(HR:0.73、p=0.0002)。PD-L1が≦1の症例においては、さらなる改善傾向を認めた(10.9ヵ月vs.7.3ヵ月、HR:0.71)。第3回中間解析の結果が示され、全体集団におけるOSは20.0ヵ月vs.16.8ヵ月(HR:0.84)であったが、統計学的なp値は示されなかった。PD-L1≦1の症例においては、PFSと同様にOSも改善傾向を認めた(20.0ヵ月vs.15.7ヵ月、HR:0.81)。まだイベントが少なく、OSは追加解析中である。ORRは73% vs.60%でありペムブロリズマブ群で13%の上乗せを認めた。今回の検討で、OSは全体集団で統計学的有意な改善を示さなかった。しかし、ORRの改善や、PFSは全体集団で有意な改善を認め、OSもPD-L1≦1症例では良好な結果が報告された。しかし、Lancet誌で論文化された結果を見ると、第2回中間解析でOSの延長は統計学的有意差を示せなかった。またディスカッションで述べられていたが、PD-L1がCPS1未満では、逆にペムブロリズマブ群でOSが不良であったことが示されている。以上よりEUではPD-L1 CPS1以上においてのみペムブロリズマブ併用が承認され、米国FDAも同様の基準に承認が変更されている。本邦ではまだ保険適用外であるが、治療効果が高いレジメンであり、承認されればHER2陽性胃がんの1次治療が大きく変化する。今後、本邦での承認の可否や承認された場合の適応条件を含め注目される。MSI-H胃がん1次治療のイピリブマブ+ニボルマブ#1513MOA Phase II study of Nivolumab plus low dose Ipilimumab as 1st line therapy in patients with advanced gastric or esophago-gastric junction MSI-H tumor:First results of the NO LIMIT study (WJOG13320G/CA209-7W7)本研究は本邦で行われた、MSI-High切除不能進行再発胃がんに対する1次治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi/Nivo)の有効性と安全性を探索した単群第II相試験である。主要評価項目はORR、副次評価項目は病勢コントロール率(DCR)、PFS、OS、奏効期間(DOR)、安全性であり、今回、主要評価項目であるORRの結果が愛知県がんセンター薬物療法部の室 圭先生より報告された。スクリーニング試験であるWJOG13320GPS試験が並行して行われており、2020年11月~2022年8月の期間に国内75施設から進行胃がん935例がスクリーニングされた。そのうちMSI-Highと診断された症例のうち29例が本試験に登録された。3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%CI:42.3~79.3)で事前の統計学的設定に達し、主要評価項目を達成した。DCRは79.3%、追跡期間中央値9.0ヵ月時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未到達、12ヵ月PFS率は73%、OS率は80%であった。Grade3のAEが11例、Grade4が1例発現したが、治療関連死は認めず、既存の研究と異なるAEは認めなかった。21例で治療が中止され、治療中止の最も多い理由はAE(13例)であった。進行胃がんの中でおよそ5%といわれるMSI-Highを対象にしており、スクリーニング研究を含め、本邦の多くの先生が協力して完遂されたことにまずは拍手を送りたい試験である。既報のCheckMate 649試験でもMSI-High群では免疫チェックポイント阻害薬の併用効果がきわめて高いことが知られており、MSI-Highは胃がん1次治療前の治療選択に重要なバイオマーカーであると考えられる。また、Ipi/Nivoは食道がんにおけるCheckMate 648試験でも長期生存につながる症例が他治療より多い可能性が示唆されており、胃がんにおいてもそのような対象があるかもしれない。もちろんIpi/Nivoは胃がんにおいて本邦では保険適用外であるが、本研究の長期フォローアップの結果やバイオマーカーの解析結果が期待される。RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんのm-FOLFOXIRI+セツキシマブ#555MOModified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab treatment and predictive clinical factors for RAS/BRAF wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer (mCRC):The DEEPER trial (JACCRO CC-13)本試験は本邦で行われた大規模なランダム化第II相試験である。主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)はASCO2021で有意な改善が報告されている。今回、聖マリアンナ医科大学腫瘍内科講座の砂川 優先生よりRAS/BRAF野生型かつ左側のサブグループ解析結果が報告された。RAS/BRAF野生型、左側の大腸がんにおいてDpRとPFSはいずれもm-FOLFOXIRI+セツキシマブ群においてm-FOLFOXIRI+ベバシズマブ群より良好であった(DpR中央値: 59.2% vs.47.5%、p=0.0017、PFS:14.5ヵ月vs.11.9ヵ月、HR:0.71、p=0.032)。またPFSにおけるサブグループ解析では男性、R0/1切除ができなかった症例、および肝限局以外の症例においてセツキシマブ群で良好な傾向があった。とくに肝限局転移例ではPFSは両群で有意差を認めなかった(14.5ヵ月vs.15.5ヵ月、HR:0.86、p=0.62)ものの、それ以外ではセツキシマブ群でPFSの改善を認めた(15.1ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.63、p=0.015)。今回のサブグループ解析は、本邦の実臨床における実際と合致した対象で、期待できる効果が示された。深い奏効が期待できるため、個人的には詳細なゲノム検査が困難な、若いRAS/BRAF野生型大腸がん症例に期待したい治療である。次回のガイドラインの記載が注目される。KRAS G12C変異大腸がんへのソトラシブ+パニツムマブ#LBA10 Sotorasib plus panitumumab versus standard-of-care for chemorefractory KRAS G12C-mutated metastatic colorectal cancer (mCRC):CodeBreak 300 phase III study肺がんなどを中心に、新たに注目されているバイオマーカーであるKRAS G12Cに対する治療開発が進んでいる。大腸がんでは約3%の症例でKRAS G12C変異を認めるといわれており、ソトラシブ+パニツムマブは先行する第I相試験でORRが30%と期待できる結果を示していた。今回、1レジメン以上の治療を受けたKRAS G12C変異陽性切除不能進行再発大腸がんに対して、ソトラシブ+パニツムマブと標準治療(トリフルリジン・チピラシルもしくはレゴラフェニブ)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はORRとOSで、160例がソトラシブ960mg/日+パニツムマブ(53例)と、ソトラシブ240mg/日+パニツムマブ(53例)、そして標準治療(54例)に1対1対1で割り付けられた。約90%が2レジメン以上、オキサリプラチン、フッ化ピリミジン、イリノテカン、血管新生阻害薬による治療を受けていた。主要評価項目であるPFSはソトラシブ960mg群、ソトラシブ240mg群、標準治療群でそれぞれ5.6ヵ月(HR:0.49、p=0.006)vs.3.9ヵ月(HR:0.58、p=0.03)vs.2.2ヵ月であり、ソトラシブ群で有意に改善を認めた。ORRはそれぞれ26% vs.6% vs.0%であり、ベースラインよりも腫瘍が縮小した症例の割合は81% vs.57% vs.20%であった。OSはイベント発生数がまだ約40%と未達で、8.1ヵ月vs.7.7ヵ月vs.7.8ヵ月であった。主なGrade3以上の毒性はソトラシブ群でざ瘡様皮疹(960mg群11% vs.240mg群4%)、皮疹(6% vs.2%)、下痢(4% vs.6%)、低マグネシウム血症(6% vs.8%)であり、標準治療群では好中球減少(24%)、貧血(6%)、嘔気(2%)であった。研究者らは、KRAS G12C変異を有する大腸がんに対してソトラシブ960mg/日+パニツムマブが新しい標準治療になる可能性があると結論付け、本結果はNEJM誌にも掲載された。PFSやORRは期待できる結果を示しているが、肺がんではソトラシブ単剤で28.1~37.1%のORRが報告されており、大腸がんではパニツムマブ併用ながら、やや劣る奏効である。またOSはそれほど差がなく、標準治療群でソトラシブをクロスオーバーして使用しているのかなど、後治療の影響があるのかも含めた長期フォローの結果が待たれる。いずれにせよ、希少な対象の薬剤であり、本邦でも早期にKRAS G12C変異陽性大腸がん患者に届けられるようになることが期待される。転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル#1616ONab-paclitaxel plus gemcitabine versus modified FOLFIRINOX or S-IROX in metastatic or recurrent pancreatic cancer (JCOG1611, GENERATE):A multicentred, randomized, open-label, three-arm, phase II/III trial切除不能進行膵がんにおける1次化学療法の標準治療は(modified)FOLFIRINOX療法とゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)療法であるが、直接比較した大規模第III相試験はいまだなかった。今回、本邦でmFOLFIRINOX療法とGnP療法およびS-IROX療法(S-1、イリノテカン、オキサリプラチン)を比較する第II/III相試験であるGENERATE試験(JCOG1611)が行われ、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博先生より結果が報告された。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORRおよび安全性であった。PS0~1の症例を対象に、2019年4月~2023年3月に国内45施設から527例が登録され、GnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。主要評価項目のOSはGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(HR:1.31、95%CI:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)であった。中間解析にて最終解析における優越性達成予測確率はmFOLFIRINOX群0.73%、S-IROX群0.48%とGnP群を上回る可能性がほとんどないため、本試験は中止となった。PFSはGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)、ORRはGnP群35.4%、mFOLFIRINOX群32.4%、S-IROX群42.4%であった。Grade3以上のAEで多かったものは好中球減少症で、GnP群60%、mFOLFIRINOX群52%、S-IROX群39%で認められた。食欲不振(5% vs.23% vs.28%)、下痢(1% vs.9% vs.23%)は、GnP群よりもmFOLFIRINOX群、S-IROX群で多く認められた。本研究は膵がんの実臨床に対する非常に重要な試験であり、今回の結果を鑑みると本邦における切除不能膵がんに対する1次治療の標準治療はGnP療法であると考えられる。本邦の現状では1次治療でGnP療法を行い、2次治療でナノリポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナートを行うことが推奨されているが、2023年のASCOでナノリポソームイリノテカンを使ったNALIRIFOX療法のGnP療法に対する優越性が報告されている。本邦ではNALIRIFOX療法は保険適用外であるが、今後本邦での承認を含めた状況が注目される。

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胃がん/食道胃接合部がん、デュルバルマブ上乗せでpCR改善(MATTERHORN)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、切除可能な局所進行(StageII、III、IVA)胃がん/食道胃接合部がん患者を対象とした、術前補助化学療法への抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)上乗せを検証したMATTERHORN試験の中間解析結果において、病理学的完全奏効(pCR)の改善が示されたと発表した。本結果は、10月20日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。・対象:切除可能なStageII~IVAの胃がん/食道胃接合部がん・試験群: デュルバルマブ1,500mg+化学療法(FLOT:フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)、4週ごと2サイクル→手術→デュルバルマブ1,500mg、4週ごと最大12サイクル(FLOTによる化学療法2サイクルを含む)・対照群: 化学療法(FLOT)+プラセボ、4週ごと2サイクル→手術→プラセボ、4週ごと最大12サイクル(FLOTによる化学療法2サイクルを含む)・評価項目:[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・米国、カナダ、欧州、南米、アジアの20ヵ国、176施設において、948例の患者が無作為にデュルバルマブ併用療法群と化学療法群に割り付けられた。・盲検下独立中央判定(BICR)の評価では、化学療法群のpCRが7%だったのに対し、デュルバルマブ併用療法群のpCRは19%だった(pCRの差12%、オッズ比[OR]:3.08、p<0.00001)。完全奏効または、ほぼ完全奏効(near pCR)(modified Ryan基準による、切除時にがん細胞が単一またはまれにしか認められない場合)は、デュルバルマブ併用療法群で27%、化学療法群で14%だった。・本試験におけるデュルバルマブの忍容性は全般的に良好であり、化学療法にデュルバルマブを追加した場合の安全性および忍容性は、既知のプロファイルと一貫していた。・Grade3以上の有害事象は両群でほぼ同じであり、化学療法群での発現割合が68%、デュルバルマブ併用療法群の発現割合は69%だった。・本試験は、主要評価項目であるEFSおよび重要な副次評価項目のOSを評価するため、二重盲検下で継続する。 本試験の治験責任医師で米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Janjigian氏は、「切除可能な胃がん/食道胃接合部がん患者は、手術を行った場合も多くが再発する。今回のMATTERHORN試験の中間解析結果で示されたpCRは、FLOT療法にデュルバルマブを追加することが、周術期に必要とされている新たな治療法となりうるという希望につながる」とコメントした。 AstraZeneca(英国)のオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるSusan Galbraith氏は、「MATTERHORN試験の結果は、胃がん/食道胃接合部がん患者に対する早期治療としての免疫治療薬と化学療法の併用療法の可能性を裏付けるもの」と述べている。

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外来通院治療中の肺がんにおける悪液質合併、初診時で5割超、治療開始が遅れるとさらに増加/日本肺癌学会2023

 外来通院中の肺がん患者の5割超が初診時に悪液質を合併しており、その割合は治療開始までの期間が長いほど増加するとの研究結果が示された。関西医科大学の勝島 詩恵氏が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した、外来通院肺がん患者における悪液質の後ろ向き観察研究のデータである。 がん悪液質は進行がんの多くに合併し、化学療法の効果を下げ、有害事象の発現を増加させる。また、悪液質は進行すると不可逆的かつ治療抵抗性になるため、早期からの介入が推奨される。しかし、臨床現場における悪液質の病状判断は難しく、必ずしも早期介入が実現しているとは言えない。 同大学では外来通院がん患者に特化した、がんリハビリテーション外来である「フレイル外来」を実施している。勝島氏らは、同外来を2020年11月〜22年11月に受診した肺がん患者を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・フレイル外来初診時の肺がん患者(76例)における悪液質の合併は55.3%(42例)であった。・悪液質の発症と関連する項目はMNA(Mini Nutritional Assessment Score、p<0.001)とIPAQ(International Physical Activity Questionnaire、p=0.026)であった。つまり、低活動と低栄養が独立した関連因子であることが明らかになった。<悪液質の有無による比較>・フレイル外来初診時からの生存日数を悪液質の有無で比較すると、悪液質あり群は、なし群に比べ有意に予後不良であった(p=0.012)・悪液質がない状態で治療開始した患者では病勢制御率、初回治療完遂率ともに100%であった。一方、悪液質がある状態で治療開始した患者では、病勢制御率66.7%、初回治療完遂率58.3%であり、悪液質の合併は、治療効果とともに治療完遂率に悪影響を及ぼすことが示された。<初診から治療開始までの期間:早期群[45日未満]と遅延群[45日以上]による比較>・早期群では、初診時と治療開始時の悪液質合併割合に変化はなかったが(初診時61%→治療開始時61%)、遅延群では初診時から治療開始時にかけて増加しており(37%→87%)、初診から治療開始までの時間が長いほど悪液質の発症が高まる傾向にあった。 勝島氏は、がん悪液質の予防、とくに診断から治療開始までの空白期間での介入は、化学療法の有効活用にとっても重要であること、そして、がん悪液質の予防には多職種が有機的に関わって患者の身体活動量や栄養状態を維持することが欠かせないと述べた。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の安全性・有効性は?(LIGHT-NING)/日本肺癌学会2023

 進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、2020年11月にニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。また、国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の有効性の成績は、非常に少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第3回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者525例試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:308例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:217例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.7%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/6.5%/1.5%、扁平上皮がんが27.0%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.5%/34.7%/9.1%/9.7%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ11.7%、40.1%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.5%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は85.3%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.6%、有害事象が38.3%、その他が5.9%であった。・Grade3/4のTRAEは40.2%(CM 9LA群:49.7%、CM 227群:26.7%)に発現し、いずれかの薬剤の中止に至ったTRAEは37.9%(それぞれ41.9%、32.3%)に発現した。・治療関連死は3.4%(CM 9LA群:3.6%[11例]、CM 227群:3.2%[7例])に認められ、間質性肺疾患(9例)が最も多かった。・OS中央値は、CM 9LA群が24.3ヵ月、CM 227群が21.9ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ69.1%、62.8%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CM 9LA群が6.4ヵ月、CM 227群が6.2ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.2%、37.5%であった。・医師判定に基づく奏効率は、39.6%(CM 9LA群:40.7%、CM 227群:37.8%)であった。 本結果について、山口氏は「安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、227試験と同様であった。治療関連死の原因としては肺臓炎関連が多かった。有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、PD-L1発現割合によっても治療効果に大きな差はみられなかった」とまとめた。

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CheckMate試験の日本語版プレーン・ランゲージ・サマリーが公開/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)点滴静注」の3つの臨床試験結果に関するPlain Language Summary of Publication(PLS)の日本語版がFuture Oncology誌に掲載されたことを発表した。 PLSとは、臨床試験結果や医学論文などの情報を、専門家以外の人でも理解しやすいように平易な言葉で要約した文書で、PLSを受け入れる国際ジャーナルの増加に伴い、近年、世界的にその出版数が増加している。 今回、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、下記3つの第III相臨床試験に関するPLSの日本語翻訳サポートを行った。・CheckMate 816試験:切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前補助療法としてニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 649試験:未治療の切除不能な進行・再発の胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がん患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 274試験:根治的切除術を受けた筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象に、術後補助療法としてニボルマブを評価した臨床試験PLS日本語版 掲載されたPLSは、単純に元となった論文を簡素化した内容ではなく、疾患の基礎情報や専門用語の解説、薬の基本的な作用機序などについてもまとめられている。また、文書全体にイラストやピクトグラムを用い、治療の意義や結果の解釈なども含めて、QA形式でわかりやすく解説されている。 いずれもオープンアクセスになっており、専門家以外が情報を確認したり、医療関係者が患者への説明に使用したりすることで、治療の理解や選択に役立つと考えられる。 なお、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、国際ジャーナルに掲載された主要な第III相臨床試験のPLSについて、今後も日本語翻訳のサポートを行っていくとしている。

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NSCLCの術前術後デュルバルマブ、pCRとEFS改善(AEGEAN)/NEJM

 未治療の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術前化学療法+周術期(術前術後)のデュルバルマブは、術前化学療法単独と比較し、無イベント生存期間(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)を有意に改善し、安全性プロファイルは各薬剤の既知のプロファイルと一致していたことが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏らが、28ヵ国で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「AEGEAN試験」の結果を報告した。術前または術後の補助療法としての免疫療法は、切除可能NSCLC患者のアウトカムを改善する可能性が示されており、周術期レジメンは両方の利点が組み合わさり長期アウトカムを改善することが期待されていた。NEJM誌2023年10月23日号掲載の報告。術前化学療法+周術期デュルバルマブvs.術前化学療法+プラセボを比較 研究グループは、未治療の切除可能なStageIIA~IIIB[N2](AJCC Cancer Staging Manual第8版による)のNSCLCで、手術が予定され、ECOG PSが0~1の18歳以上の患者を、病期(IIまたはIII)、PD-L1発現(≧1%または<1%)で層別化して、デュルバルマブ群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。術前にプラチナ製剤ベースの化学療法+デュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を3週ごとに4サイクル、術後にデュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を4週ごとに12サイクル行った。 主要評価項目は、EFS(盲検下独立中央判定)とpCR(中央評価)であった。EFSは、手術の施行または完了が阻害された病勢進行、局所再発または遠隔再発、あるいは全死因死亡のうち最も早く発生したイベントまでの期間と定義した。なお、有効性の解析は、ベースラインでEGFRまたはALK遺伝子変異が確認された患者を除外して行われた(修正ITT集団)。 2019年1月2日~2022年4月19日の間に、計802例がデュルバルマブ群(400例)とプラセボ群(402例)に無作為に割り付けられ、修正ITT集団は計740例(それぞれ366例、374例)であった。デュルバルマブ併用の有益性、病期やPD-L1発現状況にかかわらず確認 修正ITT集団について事前に計画した第1回中間解析(データカットオフ2022年11月10日、無イベント生存者の追跡期間中央値11.7ヵ月[範囲:0.0~46.1])において、EFSは、デュルバルマブ群未到達(NE)、プラセボ群25.9ヵ月であり、デュルバルマブ群で有意な延長を認めた(病勢進行、再発または死亡の層別化ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53~0.88、p=0.004)。12ヵ月EFS率は、デュルバルマブ群73.4%(95%CI:67.9~78.1)、プラセボ群64.5%(58.8~69.6)であった。24ヵ月EFS率は、それぞれ63.3%(56.1~69.6)、52.4%(45.4~59.0)であった。 pCRは最終解析(データカットオフ2022年11月10日)において、デュルバルマブ群17.2%(95%CI:13.5~21.5)、プラセボ群4.3%(95%CI:2.5~6.9)で、デュルバルマブ群が有意に高かった(群間差:13.0ポイント、95%CI:8.7~17.6)。この結果は、中間解析の結果(データカットオフ2022年1月14日、402例対象、p<0.001)と一致していた。 EFSおよびpCRに関するデュルバルマブの有益性は、病期およびPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 Grade3または4の有害事象の発現率は、デュルバルマブ群42.4%、プラセボ群43.2%であった。

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セルペルカチニブによるRET陽性NSCLC1次治療、PFSを有意に延長/NEJM

 進行RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、セルペルカチニブはプラチナベースの化学療法(ペムブロリズマブの併用を問わず)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、中国・同済大学のCaicun Zhou氏らが行った第III相無作為化試験で示された。セルペルカチニブは中枢移行性を有する強力な選択的RET阻害薬で、進行RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が、第I・II相の非無作為化試験で示されていた。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。切除不能なRET陽性・非扁平上皮NSCLCで全身性治療未実施の患者を対象に試験 1次治療としてのセルペルカチニブの有効性と安全性を検証した本試験は、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB、IIIC、IVのRET融合遺伝子陽性・非扁平上皮NSCLCで、転移後に薬物治療を受けていない18歳以上の患者を対象に行われた。研究グループは被験者を、セルペルカチニブ(160mg、1日2回、21日サイクル)の投与を受ける群、プラチナベースの化学療法を受ける群(対照群)に、無作為に割り付けた。対照群には、治験担当医師の裁量でペムブロリズマブ(200mg)を投与した。試験薬の投与期間中、対照群に盲検下独立中央判定(BICR)で評価された病勢進行が認められた場合は、セルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。 主要評価項目は、ITTペムブロリズマブ集団(対照群に割り当てられた場合に医師がペムブロリズマブを投与する予定だった患者を含む)と被験者全体のITT集団の両集団における、BICRで評価したPFSだった。PFS中央値、セルペルカチニブ群24.8ヵ月、対照群11.2ヵ月 2020年3月~2022年8月に、23ヵ国103施設から計261例(全ITT集団)が登録された。 ITTペムブロリズマブ集団は計212例だった(セルペルカチニブ群129例、対照群83例)。被験者は65歳未満、女性、非喫煙者が多かった。 事前計画の中間有効性解析時点(死亡または病勢進行が98イベント後と規定)のPFS中央値は、セルペルカチニブ群24.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.9~推定不能)、対照群11.2ヵ月(8.8~16.8)だった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.70、p<0.001)。 奏効を示した患者の割合は、セルペルカチニブ群84%(95%CI:76~90)、対照群65%(54~75)だった。中枢神経系に影響をもたらした病勢進行までの時間に関する原因特異的HRは0.28(95%CI:0.12~0.68)だった。 有効性に関する全ITT集団(261例)の結果は、ITTペムブロリズマブ集団の結果と類似していた。有害事象は、両群ともに既報のものと変わらなかった。

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日本人乳がん患者におけるHER2低発現の割合・特徴(RetroBC-HER2L)/日本癌治療学会

 HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の乳がん患者に対する治療薬の臨床的ベネフィットが示され、その割合や治療パターン、転帰などについて理解を深めることが求められる。HER2陰性転移乳がんにおけるHER2低発現患者の割合を10ヵ国13施設で評価したRetroBC-HER2L試験の日本人解析結果を、昭和大学病院の林 直輝氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。日本からは3施設が参加している。・対象:2014年1月~2017年12月に切除不能および/または転移を有するHER2陰性(IHC 0、1+、2+/ISH-)乳がんと診断され治療を受けた患者・評価項目:[主要評価項目]過去のHER2固定組織スライドを実施医療機関の検査室で(ベンタナ4B5または他の検査法を用いて)再評価した結果に基づくHER2低発現の割合、ベースライン特性、治療パターン、アウトカム(治療成功期間[TTF]、最初の後治療開始または死亡までの期間[TFST]、全生存期間[OS])[副次評価項目]HER2低発現の病理組織学的・臨床病理学的特徴、過去のHER2検査と再検査結果の一致状況など 主な結果は以下のとおり。・日本人サブセットには155例が組み入れられ、ホルモン受容体陽性(HR+)が120例/陰性(HR-)が35例、HER2再検査にベンタナ4B5が用いられたのが130例/その他の検査法が25例だった。・再評価の結果、過去にHER2陰性と評価された患者におけるHER2低発現の患者の割合は61.3%(155例中95例)だった(全体集団では67.2%)。ホルモン受容体の状態ごとにみると、HR+患者の68.3%(120例中82例)、HR-患者の37.1%(35例中13例)が該当した。なお検査法別にみると、ベンタナ4B5で63.8%(130例中83例)、その他の検査法で48.0%(25例中12例)だった。・HER2低発現とHER2 IHC 0の患者の間で、年齢中央値(HR+:56.5歳vs.55.0歳、HR-:50.0歳vs.47.0歳)、閉経状態(閉経後がHR+:63.4% vs.65.8%、HR-:53.8% vs.40.9%)のほか、ベースラインでの転移箇所や転移個数について有意な差はみられなかった。・治療パターンについては、一次治療としてHR+では内分泌療法単独が53.4% vs.66.7%、HR-では単剤化学療法が45.5% vs.38.9%用いられていた。・アウトカムについて、TTF中央値(HR+:5.6ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:3.7ヵ月vs.3.8ヵ月)およびTFST中央値(HR+:8.3ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:4.1ヵ月vs.5.0ヵ月)はホルモン受容体の状況によらずHER2発現による顕著な差はみられなかったが、OS中央値はHER2 IHC 0かつHR-(トリプルネガティブ乳がん)で短い傾向がみられた(HR+:38.7ヵ月vs.32.4ヵ月、HR-:29.8ヵ月vs.14.4ヵ月)。・過去のHER2検査と再検査結果の一致率は82.6%(κ=0.636)。過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は76.2%(63例中48例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は87.0%(92例中80例)となり、IHC 0がHER2低発現と再評価される頻度よりもHER2低発現がIHC 0と再評価される頻度のほうが低いという点で、全体集団と同様の傾向がみられた。・ベンタナ4B5が用いられた症例についてみると、過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は72.4%(54例中39例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は89.5%(76例中68例)となり、過去にHER2 IHC0と診断された約3人に1人がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療適応になりうるHER2低発現と再評価される可能性があり、適切な治療選択のためにHER2発現の再評価を考慮すべきことが示された。

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AI耐性HR+進行乳がんへのフルベストラント+capivasertib、日本人解析結果(CAPItello-291)/日本癌治療学会

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験の日本人サブグループ解析結果を、九州がんセンターの徳永 えり子氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)・試験群(capi群):capivasertib(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 37例(グローバル:355例)・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 41例(353例)・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CA、AKT1、PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団における無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)など[層別化因子]CDK4/6阻害薬治療歴の有無、肝転移の有無など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は両群で61歳、閉経後患者はcapi群78.4% vs.プラセボ群70.7%だった。肝転移ありが29.7% vs.31.7%でグローバル(43.9% vs.42.5%)と比較すると少なく、ECOG PS 0が94.6% vs.85.4%と多かった(63.1% vs.68.3%)。・ベースラインで進行がんに対して1ラインの内分泌療法歴のある患者は51.4% vs.43.9%、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者は13.5% vs.19.5%とそれぞれグローバル(80.8% vs.71.4%、69.0% vs.69.1%)と比較すると少なかった。・AKT経路に変異のある患者は51.4% vs.46.3%とグローバル(43.7% vs.38.0%)と比較してやや多かった。・全体集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群7.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.40~1.28)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.2ヵ月vs.3.6ヵ月、HR:0.60、95%CI:0.51~0.71、両側p<0.001)。・AKT経路に変異のある患者集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群9.1ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.29~1.39)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.3ヵ月vs.3.1ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、両側p<0.001)。・ORRは全体集団でCapi群29.4% vs.プラセボ群22.0%(グローバルでは22.9% vs.12.2%)、AKT経路に変異のある患者集団で27.8% vs.15.8%(28.8% vs.9.7%)で、グローバルと同様の傾向がみられた。・重篤な有害事象(SAE)はCapi群で13.5%に認められ、グローバル(16.1%)と同様だったが、AEによる試験薬の中止(日本人サブグループ56.8%、グローバル34.9%)およびAEによる試験薬の減量(27.0%、19.7%)は日本人集団で多い傾向がみられた。・Capi群の安全性プロファイルはグローバルと同様で、多く認められたAEは下痢(73.0%)、皮疹(48.6%)、口内炎(29.7%)など。皮疹と口内炎は日本人サブグループで多い傾向がみられた。 徳永氏は日本人サブグループにおけるPFS中央値がグローバルより長いのは、ベースラインでECOG PS 0の患者の割合が多く、肝転移のある患者が少なく、進行がんに対する内分泌/化学療法歴あるいはCDK4/6阻害薬による治療歴のある患者が少なかったことによる可能性があると考察。グローバルでの結果と同様に、日本の患者におけるcapivasertib+フルベストラント併用療法のベネフィットとリスクのプロファイルは良好であり、将来の治療選択肢となる可能性があるとまとめている。

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ESMO2023 レポート 乳がん

レポーター紹介はじめにESMO Congress2023が10月20日から24日の間、スペイン・マドリードで開催されました。155の国から3万3,000人以上の参加者があり、2,600演題を超える研究成果が発表されました。今年は、非常に重要なPhase3試験の結果が数多く報告され、今後の診療に影響を与える興味深い結果も多く報告されました。今回は乳がん領域で、非常に話題となったいくつかの演題をピックアップして今後の展望を考えてみたいと思います。周術期乳がん演題1)ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)乳がん今年は、術前化学療法を行うようなHR+/HER2-乳がんに対して、周術期に免疫チェックポイント阻害薬を使用するランダム化比較第III相試験が2つ報告されました(CheckMate 7FL試験とKEYNOTE-756試験)。いずれも、主要評価項目である病理学的完全奏効割合(pCR[ypT0/is ypN0])については、免疫チェックポイント阻害薬併用によって向上することが示されました。CheckMate 7FL試験(NCT04109066、LBA20)本試験では、新規発症のER陽性(ER+)/HER2-乳がん(病期T1c~2、N1~2個またはT3~4、N0~2個、Grade2[かつER 1~10%]またはGrade3[かつER≧1%])と診断された早期乳がん患者521例が組み入れられました。患者は抗PD-1抗体のニボルマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はニボルマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでニボルマブまたはプラセボとAC療法の併用投与を受けました。ニボルマブ360mgを3週ごとに、または240mgを2週ごとに投与されました。手術後、両群の患者は、治験責任医師が選択した内分泌療法を受けました。ニボルマブ投与群では、術後治療としてニボルマブ480mgを4週ごとに7サイクル投与されています。全体として、ニボルマブ群では89%、プラセボ群では91%の患者が手術を受けました。結果として、pCR率はニボルマブ群で24.5%、プラセボ群で13.8%(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.0021)であり、統計学的に有意な改善を示しました。とくに、SP142のPD-L1陽性(IC≧1)患者のpCR率はニボルマブ群で44.3%、プラセボ群で20.2%(OR:3.11、95%CI:1.58~6.11)であり、24.1%の差を認めました。KEYNOTE-756試験(NCT03725059、LBA21)本試験では、新規発症のER+/HER2-乳がん(病期T1c~2かつN1~2個、またはT3~4かつN0~2個、Grade3、中央判定)と診断された早期乳がん患者1,278例が組み入れられ、抗PD-1抗体のペムブロリズマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はペムブロリズマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでペムブロリズマブまたはプラセボとAC療法またはEC療法の併用投与を受けました。手術後、患者はペムブロリズマブ200mgまたはプラセボを3週間ごとに6ヵ月間投与され、内分泌療法を最長10年間受け、適応があれば放射線療法を受けました。本試験の2つの主要評価項目は、ITT集団における最終手術時pCR(ypT0/TisおよびypN0)割合、およびITT集団における治験責任医師評価による無イベント生存期間(EFS)でした。主要評価項目のpCR割合は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示しました(推定差:8.5%[95%CI:4.2~12.8]、p=0.00005)。とくに、75%程度を占める22C3のPD-L1陽性(CPS≧1)患者において、pCR割合の差は9.8%(95%CI:4.4~15.2)であり、PD-L1陰性(CPS2)トリプルネガティブ乳がん NeoTRIP試験(NCT002620280、LBA19)NeoTRIP試験は、TNBC患者を、nab-パクリタキセルとカルボプラチンを8サイクル投与する群(化学療法群)とnab-パクリタキセルとカルボプラチンにアテゾリズマブを追加投与する群(アテゾリズマブ群)に無作為に割り付けた試験です。主要評価項目はEFS、副次評価項目はpCR割合で、以前にpCR割合のみが報告されていました。ITT解析において、アテゾリズマブ投与後のpCR割合(48.6%)は、アテゾリズマブ非投与(44.4%;OR:1.18、95%CI:0.74~1.89、p=0.48)と比較して統計学的有意な改善を認めませんでした。多変量解析では、PD-L1発現の有無がpCR率に最も影響する因子でした(OR:2.08)4)。今回発表のあった、追跡期間中央値54ヵ月後のEFS率は、アテゾリズマブ非投与の化学療法単独群74.9%に対してアテゾリズマブ+化学療法群70.6%でした(HR: 1.076、95%CI:0.670~1.731)。このため、主要評価項目のEFSも統計学的有意差を示せなかったという結果でした。アテゾリズマブを使用した術前抗がん剤として、IMpassion 031試験はpCRの改善は認めましたが、DFSやOSは検討できない症例数で、ESMO BC2023における報告では、明らかな有意差を示していませんでした。一方で、KEYNOTE-522の結果は、前述の通りペムブロリズマブ追加でpCRも改善して、EFSも改善していましたので、真逆の結果でした。NeoTRIP試験のKEYNOTE-522試験と異なる点は、術後療法では免疫チェックポイント阻害薬を使用しないこと、術前抗がん剤治療として免疫チェックポイント阻害薬の併用ではアントラサイクリン系薬剤は使用しないこと、異なる免疫チェックポイント阻害薬を使用していることがありましたが、どのくらいこういった要素が影響するかは定かではありません。転移・再発乳がん演題1)HR+/HER2-乳がん TROPION-Breast01試験(NCT05104866、LBA11)本試験では、手術不能または転移を有するHR+/HER2-(IHC 0、IHC 1+またはIHC 2+、ISH陰性)乳がん患者732例が組み入れられました。ECOG PS 0~1、内分泌療法で進行を認め内分泌療法が適さない患者であり、全身化学療法を1~2ライン受けた患者が対象となっています。患者は、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)(6mg/kgを1日目に投与、3週おき)を投与する群、または医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を投与する群に1:1で無作為に割り付けられました。主要評価項目は、RECISTv1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)でした。本試験の結果、BICRによるPFS中央値はDato-DXd群6.9ヵ月、医師選択化学療法群4.9ヵ月、HR0.63(95% CI:0.52~0.76、p<0.0001)と、有意にDato-DXd群のPFSが良好でした。奏効割合はDato-DXd群36.4%、医師選択化学療法群22.9%でした。OSについては、イベントが不十分な状況でしたが、Dato-DXd群で良好な傾向が認められ、HR0.84(95% CI:0.62~1.14)でした。治療関連有害事象(TRAE)はDato-DXd群で94%、医師選択化学療法群で86%に発生したのですが、Grade 3以上のTRAE割合は、Dato-DXd群で21%対医師選択化学療法群で45%と、Dato-DXd群で低い頻度でした。また、薬剤関連の間質性肺疾患はDato-DXd群で3%、ただしほとんどがGrade 1か2でした。画像を拡大するこれまでにHR+/HER2-(低発現)乳がんに対するランダム化比較第III相試験で、有効性を検証した抗体薬物複合体(ADC:antibody drug conjugate)は3つ目ということになります。HER2低発現に対するT-DXdはすでに保険適用となっていますが、Destiny Breast 04試験の結果、2次治療以降の症例でPFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。ESMOではOSのupdate結果が報告され、HR陽性群のT-DXd群の成績は、OS中央値が23.9ヵ月で、HR0.69(95%CI:0.55~0.87)と、これまでの報告の有効性が維持されていました。また、TROP2に対するADCとして、sacituzumab govitecan(SG)があり、こちらもTROPiCS-02試験の結果、PFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。SGは2023年10月時点で、まだ日本では承認されていませんが、将来的に承認されることが期待されている薬剤です。実臨床ではまだDato-DXdは使用できませんが、仮にこれら3剤が使用可能な場合のHR陽性HER2陰性乳がんのADCシークエンスはどうなるでしょうか。いずれにせよ、臨床試験で組み入れられた症例はTROPION-Breast01とDestiny Breast04試験は1~2ラインの抗がん剤治療歴がある患者、TROPiCS-02試験は全身化学療法を2~4ライン受けた患者が対象でした。このため、2次治療以降のADCシークエンスが検討されます。HER2低発現であればOS改善効果が証明されている現状では、T-DXdが2次治療では優先されると思います。さらに、3次治療となればSGのほうはOS改善効果が証明されているので、同じTROP2のADCではSGの方が優先されると思います。一方で、HER2 0の症例では、現時点ではT-DXdは使用されませんので、2次治療での有効性はDato-DXdが優先され、3次治療でSGが検討されるのかと考えます。今後、現在進行中のDESTINY-Breast06試験の結果により、1次治療や、HER2 0の症例でのT-DXdの有効性が報告されることが期待されます。さらに、ADCのシークエンスが本当に臨床試験通り有効か? という点は非常に議論されているところですので、今後のリアルワールドデータや、臨床研究の結果が待たれます。2)トリプルネガティブ乳がん BEGONIA試験(NCT03742102、379MO)BEGONIA試験は、進行転移トリプルネガティブ乳がん患者として化学療法歴がない患者を対象とした、デュルバルマブとその他の薬剤との併用療法の有効性を複数のコホートで検討するPhaseIb/II試験です。いくつもの試験治療群がありますが、Dato-DXdと抗PD-L1療法であるデュルバルマブの併用療法を検討したアーム7の有効性と安全性については、昨年2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)において、7.2ヵ月のフォローアップ中央値の結果として報告されていました。PD-L1発現が低い症例が53例(86.9%) (Tumor Area Positivity1)von Minckwitz G, et al. J Clin Oncol. 2012;30:1796-804.2)Masuda J, et al. J Immunother Cancer. 2023;11:e007126.3)Jerusalem G, et al. Breast. 2023;72:103580.4)Gianni L, et al. Ann Oncol. 2022;33:534-543.5)Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.6)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022;40:3365-3376.7)Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.

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HER2+胃がん1次治療、ペムブロリズマブ上乗せでPFS改善(KEYNOTE-811)/Lancet

 未治療の転移のあるHER2陽性胃・食道胃接合部腺がん患者において、1次治療であるトラスツズマブおよび化学療法へのペムブロリズマブ上乗せ併用は、プラセボと比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、とくにPD-L1陽性(CPS 1以上)患者で顕著であった。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏らが、20ヵ国168施設で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「KEYNOTE-811試験」の第2回および第3回の中間解析結果を報告した。KEYNOTE-811試験の第1回中間解析では、奏効率に関してペムブロリズマブ群のプラセボ群に対する優越性が示されていた。Lancet誌オンライン版2023年10月20日号掲載の報告。主要評価項目はPFSとOS 研究グループは、未治療の局所進行または転移のあるHER2陽性胃・食道胃接合部腺がんで、RECIST v1.1による測定可能病変を有しECOG PSが0または1の18歳以上の患者を、ペムブロリズマブ群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、地域、PD-L1 CPSおよび医師が選択した化学療法であった。 両群とも、トラスツズマブおよび、フルオロウラシル+シスプラチンまたはカペシタビン+オキサリプラチンとの併用下で、3週ごとに最大35サイクル、または病勢進行、許容できない毒性発現、治験責任医師の判断または患者の同意撤回による中止まで投与した。 主要評価項目は、PFSおよび全生存期間(OS)で、ITT解析を行った。安全性は、無作為化され1回以上投与を受けたすべての患者を対象に評価した。ペムブロリズマブ群でPFSは有意に延長、OSは延長するも有意水準を満たさず 2018年10月5日~2021年8月6日の期間に計698例がペムブロリズマブ群(350例)またはプラセボ群(348例)に割り付けられた。564例(81%)が男性、134例(19%)が女性であった。第3回中間解析時は、投与を受けたペムブロリズマブ群350例中286例(82%)、プラセボ群346例中304例(88%)が投与を中止しており、そのほとんどは病勢進行によるものであった。 第2回中間解析(追跡期間中央値:ペムブロリズマブ群28.3ヵ月[四分位範囲[IQR]:19.4~34.3]、プラセボ群28.5ヵ月[20.1~34.3])において、PFS中央値はそれぞれ10.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.6~11.7)、8.1ヵ月(7.0~8.5)であり(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.60~0.87、p=0.0002[優越性の有意水準:p=0.0013])、OS中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~23.2)、16.9ヵ月(15.0~19.8)であった(HR:0.87、95%CI:0.72~1.06、p=0.084)。PD-L1発現がCPS 1以上の患者では、PFS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群7.2ヵ月であった(HR:0.70、95%CI:0.58~0.85)。 第3回中間解析(追跡期間中央値:ペムブロリズマブ群38.4ヵ月[IQR:29.5~44.4]、プラセボ群38.6ヵ月[30.2~44.4])では、PFS中央値はそれぞれ10.0ヵ月(95%CI:8.6~12.2)、8.1ヵ月(7.1~8.6)であり(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)、OS中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~22.1)、16.8ヵ月(15.0~18.7)であった(HR:0.84、95%CI:0.70~1.01)。OSは有意性の水準を満たさなかったが、その後の治療がOSの評価に影響を与える可能性があることから、事前に規定された最終解析計画は変更せず試験は継続されている。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で350例中204例(58%)、プラセボ群で346例中176例(51%)に発現した。死亡に至った治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で4例(1%)(肝炎、敗血症、脳梗塞、肺炎が各1例)、プラセボ群で3例(1%)(心筋炎、胆管炎、肺塞栓症が各1例)に認められた。すべての治療関連有害事象で最も多く見られたのは、下痢(ペムブロリズマブ群165例[47%]、プラセボ群145例[42%])、悪心(それぞれ154例[44%]、152例[44%])、貧血(109例[31%]、113例[33%])であった。

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転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本癌治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期(21日ごとに1・8日目に投与:2投1休)で投与する場合と比較して、28日周期(28日ごとに1・8日目に投与:2投2休)の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。 エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。これまでエリブリンを1・15日目に投与する28日周期の投与スケジュールにおけるPFSはすでに報告されているが、異なる投与スケジュールが後治療の効果に与える影響を調べた研究はなかった。そこで水野氏らは、エリブリンの異なる治療スケジュールと後治療のPFSの関連を評価するために研究を実施した。 エリブリン治療はまず標準スケジュールである21日周期の1・8日目投与で開始し、2サイクル目の1日目に好中球数が1,500mm3以上であれば標準スケジュールを継続し(2投1休群)、1,500mm3未満であった場合は28日周期の1・8日目投与に変更してその後も28日周期を継続した(2投2休群)。3サイクル目以降も同様に1日目の好中球数が1,500mm3以上かどうかでスケジュールを検討した。 対象は、転移を有する乳がん患者81例(うちde novo StageIVが23例[28%])で、年齢中央値は67歳(範囲:39~90歳)であった。主な転移部位は骨(48%)、肝臓(40%)、所属リンパ節(38%)、肺(32%)。ER/PgR陽性が63%、トリプルネガティブが37%。前治療の化学療法歴なしが31%、1ラインが44%、2ライン以上が25%であった。 主な結果は以下のとおり。<エリブリン治療>・奏効率は9%、病勢コントロール率は30%、臨床的有用率は56%であった。・全体のPFS中央値は6.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~8.6)であった。治療スケジュール別のPFS中央値は、2投1休群(49例)が6.1ヵ月(95%CI:3.4~8.4)、2投2休群(32例)が8.6ヵ月(95%CI:5.1~13.0)で有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.149)。・全体のOS中央値は20.6ヵ月(95%CI:14.6~27.1)であった。2投1休群は17.1ヵ月(95%CI:10.2~21.1)、2投2休群は27.1ヵ月(95%CI:14.6~30.9)で、PFSと同様に有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.0833)。<後治療>・後治療を行ったのは47例で、多かったレジメンはパクリタキセル+ベバシズマブ(32%)、AC/EC療法(19%)、カペシタビン±シクロホスファミド(13%)、S-1(11%)、内分泌療法(11%)などであった。・全体のPFS中央値は4.9ヵ月(95%CI:3.0~8.1)であった。2投1休群は3.3ヵ月(95%CI:2.8~5.6)であった一方、2投2休群では10.4ヵ月(95%CI:2.1~14.5)で有意に改善した(p=0.0195)。・OS中央値は2投1休群17.1ヵ月(95%CI:10.9~21.1)、2投2休群28.5ヵ月(95%CI:14.6~53.5)で延長傾向にあった(p=0.0965)。 これらの結果より、水野氏は「エリブリンの標準とは異なる2投2休の投与スケジュールはPFSおよびOSを延長させ、さらに後治療にも好影響をもたらす」とまとめるとともに、質疑応答で「十分に血球を回復させるために2週間休薬することが重要だと考える。好中球数が減少していたとしてもしっかりと回復させる期間が得られ、それによって後治療に好影響をもたらすのではないか」と見解を述べた。

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EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性NSCLC・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab群、153例)・対照群:化学療法化学療法群、155例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、OS、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.9ヵ月であった。・BICR評価のPFS中央値はamivantamab群11.4ヵ月、化学療法群6.7ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.395、95%信頼区間[CI]:0.30~0.53、p<0.0001)。12ヵ月PFSはそれぞれ48%と13%、18ヵ月PFSはそれぞれ31%と3%であった。・すべてのPFSサブグループにおいて、amivantamab群が良好であった。・BICR評価のORRはamivantamab群73%、化学療法群47%であった(オッズ比[OR]:3.0、95%CI:1.8〜4.8、p<0.0001)。・DOR中央値はamivantamab群9.7ヵ月、化学療法群4.4ヵ月であった。・PFS2中央値はamivantamab群未到達、化学療法群17.2ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(HR:0.493、95%CI:0.32〜0.76、p=0.001)。・OS中央値は未到達であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。・OS中央値はamivantamab群未到達、化学療法群24.4ヵ月であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。 Girard氏は、この試験の結果から、EGFR exon20挿入変異NSCLCに対するamivantamab+化学療法の1次治療は新たな標準治療であることを示した、と述べた。

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オシメルチニブ耐性EGFR陽性肺がんに対するamivantamab含有レジメンの有効性(MARIPOSA-2)/Ann Oncol

 オシメルチニブ耐性を獲得したEGFR陽性肺がんに対し、有望な新治療法が報告された。 現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、主に第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブがである用いられる。しかし、初回治療の奏効にもかかわらず、多くの症例がオシメルチニブ耐性を獲得し、その後は細胞障害性抗がん剤による治療が主流となる。 オシメルチニブの耐性メカニズムは多彩であるが、MET遺伝子異常とEGFR経路の異常が多いとされる。amivantamabはEGFRとMETの二重特異性抗体、lazertinibは第3世代EGFR-TKI である。この両剤と化学療法の併用は、オシメルチニブを含むEGFR-TKI耐性のEGFR変異陽性NSCLCにおける有効性を第I相試験で示している。 MARIPOSA-2試験は、オシメルチニブ耐性のEGFR変異陽性NSCLCに対する、amivantamab+化学療法±lazertinibを評価した国際無作為化第III相試験である。・対象:オシメルチニブ単剤療法耐性のEGFR変異(exon19 delまたはL858R)NSCLC・試験群1:amivantab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)(ALC群、n=263)・試験群2:amivantab+化学療法(同上)(AC群、n=131)・対照群:化学療法(同上)(C群、n=263)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はAC群6.3ヵ月、ALC群8.3ヵ月、C群4.2ヵ月で、対化学療法群のハザード比(HR)はそれぞれ0.48(95%CI:0.36~0.64、p<0.001)、0.44(95%信頼区間[CI]:0.35~0.56、p<0.001)であった。・サブ解析においても、すべての集団でamivantamab含有群のPFSが良好な結果であった。・ORRはAC群64%、ALC群63%、C群36%で、対化学療法のオッズ比[OR]はそれぞれ3.10(95%CI:2.00~4.80、p<0.001)、2.97(95%CI:2.08~4.24、p<0.001)であった。・BICR評価による頭蓋内PFSはAC群12.5ヵ月、ALC群12.8ヵ月、C群8.3ヵ月で、対化学療法のHRはそれぞれ0.55(95%CI:0.38~0.79)と0.58(95%CI:0.44~0.78)であった。・DORはAC群6.9ヵ月、ALC群9.4ヵ月、C群5.6ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、ALC群92%、AC群72%、C群の48%で発現した。・amivantamab含有群で頻度が高かったGrade3以上のTEAEは好中球減少、血小板減少、白血球減少であった。また、インフュージョンリアクション(全Grade)がAC群の58%、ALC群の56%、静脈血栓塞栓症(全Grade)がAC群の10%、ALC群の22%で発現した。

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膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は?【見落とさない!がんの心毒性】第25回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・男性主訴なし現病歴既往症はとくになし。背部痛を契機に病院を受診し、腹部エコーで膵頭部腫瘍、多発肝結節を指摘された。経皮的肝生検で膵がん(腺がん)の病理診断となった。造影CTで膵頭部の原発巣および多発肝転移、腹膜播種、腹水貯留を認めた。CA19-9が1,250U/mLと上昇していたほか、血液検査で臨床的に問題となる異常所見は認めなかった。膵がんStageIVの診断で、PS0と全身状態は良好であり、緩和的化学療法を導入する方針となった。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GEM+nab-PTX)療法(GEM1,000mg/m2 day1,8,15/nab-PTX125mg/m2 day1,8,15/1サイクル=4週)を開始した。3サイクル終了後、がんの病勢評価のために造影CTを実施したところ、両肺動脈に造影欠損域が多発しており、偶発的肺塞栓症(incidental pulmonary embolism:incidental PE)が発覚した。【問題1】当該患者に連絡し、臨時で病院を受診するように指示をした。取り急ぎ確認すべきこと、必要な検査として優先度の低い選択肢を一つ選べ。a.自覚症状の有無(呼吸困難、胸痛など)の確認とバイタルサインb.血液検査 D-dimerc.血液検査 CA19-9d.心臓超音波検査e.下肢超音波検査【問題2】該当患者がPEを発症した原因を鑑別する上で、優先度の低い選択肢を一つ選べ。a.造影CTでがんの病勢確認b.DVTの確認c.GEMやnab-PTXによる薬剤性血栓塞栓症リスクの確認d.プロテインC/プロテインSの確認e.がん以外の合併症や内服薬の確認全体解説Incidental PEは症候性VTEと同様に抗血栓薬での治療を行うことがASCOガイドラインで提案されている3)。韓国で実施された後ろ向き研究で、肺がん患者におけるincidental PEについて評価された。8,014例の肺がん患者が登録されたデータベースにおいて、180例(2.2%)が治療経過の中でPEと診断されており、その内113例(63%)がincidental PEであった。肺がんの診断から3ヵ月以内にPEを発症した場合は予後不良(ハザード比[HR]:1.5)であり、またincidental PEに対する抗血栓療法を行わなかった場合は予後不良(HR:4.1)であったと報告されている4)。本邦からの単施設による後ろ向き研究では、incidental PEのがん患者における発症率は1.3%であり、PE合併がん患者の死亡率は高い(HR:2.26)ことが報告されている5)。incidental PEについて検討した大規模試験は多くないが、日常診療で経験される病態であり、基本的には症候性PEと同様に対応することが望ましい。Incidental PEはその診断経緯から無症候性であることも多い。スペインで実施された前向き観察研究では、PEに起因するうっ血性心不全や右室機能不全、活動性出血などの大きなリスクがないincidental PE患者に対する外来抗血栓療法の安全性が報告されており6)、一部の症例は入院管理を必要としない可能性も示唆されるが、その適応は循環器内科専門医により慎重に判断される必要がある。また、Incidental PEは進行期のがん患者、および化学療法による積極的な治療中のがん患者に発症することが多く、発症数週以内の死亡の可能性もあるため7)、無症状であっても過小評価するべきではない。当科でもincidental PEは年に数件程度の頻度で経験するが、約1/3は膵がん患者である。Incidental PEの発症時期は、がんの診断直後(数ヵ月以内)、化学療法中、原疾患が進行し予後数週と思われる時期、などさまざまである。化学療法中の患者の場合は化学療法を円滑に継続するために腫瘍専門医と循環器内科医の協力が必須である。原疾患が進行し予後が限られている場合は、出血リスクや入院加療による負担などを考慮した上で治療適応を慎重に判断することが求められる。1)Horsted F, et al. PLoS Med. 2012;9:e1001275.2)Campia U, et al. Circulation. 2019;139:e579-e602.3)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-3071. 4)Sun JM, et al. Lung Cancer. 2010;69:330-336.5)Nishikawa T, et al. Circ J. 2021 Feb 17.[Epub ahead of print] 6)Martin AM, et al. Clin Transl Oncol. 2020;22:612-615.7)Olusi SO, et al. Vasc Health Risk Manag. 2011;7:153-158.講師紹介

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