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cemiplimab、再発子宮頸がんに有効/NEJM

 プラチナ製剤を含む化学療法による1次治療後に再発した子宮頸がん患者の治療において、完全ヒトプログラム細胞死1(PD-1)阻害モノクローナル抗体cemiplimabは単剤の化学療法と比較して、全生存期間が延長し、無増悪生存期間への効果は明確ではないものの、客観的奏効率や奏効期間も良好であることが、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のKrishnansu S. Tewari氏らが実施した「EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年2月10日号に掲載された。全生存期間を評価する国際的な無作為化第III相試験 研究グループは、再発・転移を有する子宮頸がんの治療におけるcemiplimabの有効性と安全性の評価を目的に、日本を含む14ヵ国が参加する非盲検無作為化第III相試験を実施し、2017年7月~2020年8月の期間に患者の登録を行った(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤を含む化学療法による1次治療後に病勢が進行した再発・転移を有する子宮頸がん患者で、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現の有無は問われなかった。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと、静脈内投与)の投与を受ける群、または担当医が選択した単剤化学療法(ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは全生存期間とされ、無増悪生存期間や安全性の評価も行われた。 本試験は、予定されていた2回目の中間解析(追跡期間中央値16.8ヵ月)で、扁平上皮がんにおける有効性に関する事前に規定された基準に則り、中止となった。死亡リスクが31%低減、奏効率と奏効期間は2倍以上に 608例の女性患者が登録され、2つの群に304例ずつが割り付けられた。全体の年齢中央値は51歳(範囲22~87)で、473例(77.8%)が扁平上皮がん、135例(22.2%)は腺がんまたは腺扁平上皮がんであった。また、259例(42.6%)が再発病変に対する全身治療を2ライン以上受けており、296例(48.7%)はベバシズマブによる治療歴を有していた。 治療期間中央値は、cemiplimab群が15.2週(範囲1.4~100.7)、化学療法群は10.1週(1.0~81.9)で、全体の追跡期間中央値は18.2ヵ月(6.0~38.2)だった。 全生存期間中央値は、cemiplimab群が12.0ヵ月と、化学療法群の8.5ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、両側検定のp<0.001)。化学療法群の全生存期間中央値は、トポテカンの6.5ヵ月からイリノテカンの11.9ヵ月までの幅が認められた。 組織型別の全生存期間中央値は、扁平上皮がん(11.1ヵ月vs.8.8ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.58~0.91、両側検定のp=0.006)および腺がん/腺扁平上皮がん(13.3ヵ月vs.7.0ヵ月、0.56、0.36~0.85)のいずれにおいても、cemiplimab群で良好であった。 また、無増悪生存期間中央値は、両群間に大きな差はなかったものの、有意差がみられ、cemiplimab群で良好であった(HR:0.75、95%CI:0.63~0.89、両側検定のp<0.001)。扁平上皮がん(0.71、0.58~0.86、同p<0.001)では有意差があったが、腺がん/腺扁平上皮がん(0.91、0.62~1.34)では差がなかった。 客観的奏効率は、cemiplimab群が16.4%(95%CI:12.5~21.1)と、化学療法群の6.3%(3.8~9.6)に比し、有意に優れた(両側検定のp<0.001)。cemiplimabの投与を受けた患者のうち、腫瘍細胞のPD-L1の発現が1%以上の患者の客観的奏効率は18%で、発現が1%未満の患者でも11%であった。また、奏効期間中央値は、cemiplimab群が16.4ヵ月(95%CI:12.4~未到達)、化学療法群は6.9ヵ月(5.1~7.7)だった。 Grade 3以上の有害事象は、cemiplimab群が45.0%、化学療法群は53.4%で発現した。最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、貧血(cemiplimab群12.0%、化学療法群 26.9%)、尿路感染症(5.0%、2.8%)、好中球減少(1.0%、9.0%)であった。治療中止の原因となった有害事象は、それぞれ26例(8.7%)および15例(5.2%)で発現した。免疫関連有害事象の発現率は、15.7%および0.7%だった。 著者は、「この試験では、腫瘍細胞のPD-L1の発現が1%未満の患者でも客観的奏効が得られた。PD-L1の発現状況の評価が可能な患者が少なく、cemiplimab治療の奏効におけるPD-L1の役割をどう解釈するかは、評価が難しい問題ではあるが、PD-L1陰性例にもcemiplimabが奏効する患者が存在する可能性があることが示唆される」としている。

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TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法、アジア人解析結果(KEYNOTE-355)/日本臨床腫瘍学会

 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善したことが、ESMO 2021で発表されている。同試験のアジア人サブグループの解析結果を、がん研有明病院の高野 利実氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。なお本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。[KEYNOTE-355試験]・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)・試験群(2:1の割合で下記2群に無作為に割り付け):ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)プラセボ群:プラセボ+化学療法 ・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるOSと無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 アジア人サブセットにおける主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2021年6月15日。ITT集団における追跡期間中央値は43.8ヵ月だった。・アジア人サブセットには160例(ペムブロリズマブ群113例、プラセボ群47例)が含まれた(日本人は87例)。・ベースライン特性を全体集団と比較すると、ECOG PS1の患者および化学療法としてタキサンの投与を受けた患者の割合が若干少なく、同クラスの化学療法歴のある患者がプラセボ群に若干多かった。[OS中央値]CPS≧10:ペムブロリズマブ群26.7ヵ月 vs.プラセボ群17.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.28~1.04)全体集団では23.0ヵ月 vs.16.1ヵ月(HR:0.73、95% CI:0.55~0.95、p=0.0093)CPS≧1:22.0ヵ月 vs.16.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.40~0.97)全体集団では17.6ヵ月 vs.16.0ヵ月(HR:0.86、95% CI:0.72~1.04、p=0.0563)ITT集団:24.1ヵ月 vs.17.2ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.39~0.84)全体集団では17.2ヵ月 vs.15.5ヵ月(HR:0.89、95% CI:0.76~1.05)[PFS中央値]CPS≧10: 17.3ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.48、95% CI:0.24~0.98)全体集団では9.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95% CI:0.50~0.88)CPS≧1:7.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.37~0.91)全体集団では7.6ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.75、95% CI:0.62~0.91]ITT集団:8.8ヵ月 vs.6.7ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.44~0.99)全体集団では7.5ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.82、95% CI:0.70~0.98)・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群77.9% vs.プラセボ群78.7%と全体集団と比較して若干多く報告された(全体集団では68.1% vs. 66.9%)が、安全性について全体の傾向は同様で、管理可能であった。 高野氏は、ペムブロリズマブ群におけるベネフィットがアジア人でより大きい傾向がみられることについて、症例数の限られたサブグループ解析であり、慎重に解釈する必要があるとの見解を示しつつ、新たな臨床研究で検討すべき重要なポイントであると述べた。

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化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによるNSCLC1次治療の全生存期間(TASUKI-52)/日本臨床腫瘍学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するニボルマブとプラチナダブレットおよびベバシズマブ併用の1次治療を評価する国際無作為化二重盲検第III相TASUKI-52試験の全生存期間(OS)の成績が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表された。同併用群はOSについても改善を示した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・最小追跡期間は19.4ヵ月であった。・OS中央値はニボルマブ群30.8ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月、とニボルマブ群で有意に良好であった(HR:0.74、95%CI:0.58~0.94、p=0.0135)・18ヵ月OS率はニボルマブ群69.0%、プラセボ群61.9%、24ヵ月OS率はそれぞれ59.8%と50.3%で、その差は開いている。・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でニボルマブ群が優位であった。・PD-L1発現レベルによるOSのHRはPD-L1<1%集団で0.84、1~49%集団で0.59、≧50%で0.83、と発現レベルをとわずニボルマブ群で良い傾向であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、ニボルマブ群98.5%に対しプラセボ群99.6%、治療中止にいたったTRAEはそれぞれ16.5%と4.4%であった。 この結果は、非扁平上皮NSCLCの1次治療におけるニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用をさらに支持するものだと発表者は述べている。

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早期TN乳がん、術前PEM+化学療法と術後PEMでEFS改善/NEJM

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前補助療法でペムブロリズマブ+化学療法→術後補助療法でペムブロリズマブによる治療は、術前補助療法での化学療法のみと比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長することが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが21ヵ国181施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「KEYNOTE-522試験」で示された。すでに本試験の最初の解析において、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加することで、根治的手術実施時に病理学的完全奏効(pCR)(乳房内に浸潤がんがなく、リンパ節転移陰性と定義)を得られた患者の割合が有意に増加することが報告されていた。NEJM誌2022年2月10日号掲載の報告。術前化学療法へのPEM追加+術後PEMの有効性を、プラセボと比較 研究グループは、未治療の早期TNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 ペムブロリズマブ+化学療法群では、術前補助療法としてペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後補助療法としてペムブロリズマブを3週ごとに9サイクル投与した。プラセボ+化学療法群では、術前補助療法でプラセボ+化学療法(同上)、術後補助療法でプラセボを投与した。 主要評価項目は、pCRおよびEFS(無作為化から、根治的手術不能となる病勢進行、局所または遠隔再発、2次原発がんの発生、または全死因死亡までの期間と定義)とし、安全性についても評価した。3年EFS率は84.5% vs.76.8% 2017年3月~2018年9月に計1,174例が割り付けられた(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。 計画されていた今回の第4回中間解析(データカットオフ日:2021年3月23日)における追跡期間中央値は39.1ヵ月(範囲:30.0~48.0)で、EFSのイベントはペムブロリズマブ+化学療法群で123例(15.7%)、プラセボ+化学療法群で93例(23.8%)に認められた。 3年無イベント生存率は、ペムブロリズマブ+化学療法群84.5%(95%信頼区間[CI]:81.7~86.9)、プラセボ+化学療法群76.8%(72.2~80.7)であった(イベントまたは死亡のハザード比:0.63、95%CI:0.48~0.82、p<0.001)。 有害事象は主に術前補助療法期に発現し、ペムブロリズマブおよび化学療法ですでに確立されている安全性プロファイルと一致していた。

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PD-L1高発現NSCLC1次治療に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの効果(WJOG@Be)/ J Immunother Cancer

 非小細胞肺がん(NSCLC)において、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用の可能性が議論されている。PD-L1阻害薬アテゾリズマブと血管新生阻害薬ベバシズマブの併用は第III相IMpower150試験で検討されているが、化学療法がベースの検討であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブのみの有用性評価ではない。 そのような中、NSCLCに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの評価が、九州がんセンターの瀬戸貴司氏らによる第II相単群WJOG@Be試験で検討されている。同試験結果がJournal for immunotherapy of cancer誌で発表され、未治療のPD-L1高発現NSCLCに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの可能性が示唆されている。・対象:未治療のPD-L1高発現(TPS≧50)非扁平上皮NSCLC(PS 0〜1)・介入:アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kg 3週ごと最大2年間、病勢進行あるいは忍容不能な副作用発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・登録39例のうちCRは0例、PRは25例で、ORR は64.1%であった。・12ヵ月PFS率は54.9%、12ヵ月OS率は70.6%であった。・25例の奏効患者のDoR中央値は10.4ヵ月であった。・重篤な有害事象(AE)は12例23項目で発現したが、Grade4以上のものはなかった。・治療中断は19例で、12例は疾患進行、2例は免疫関連AEによるものであった。 今回の結果を受けて著者は、アテゾリズマブとベバシズマブの併用はPD-L1高発現の非扁平上皮NSCLCに対し、可能性のある治療法であると述べている。

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再発卵巣がん、トラメチニブでPFS有意に延長/Lancet

 米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDavid M. Gershenson氏らは、再発低悪性度漿液性卵巣がん患者を対象とした多施設共同非盲検無作為化第II/III相試験「GOG 281/LOGS試験」において、MEK阻害薬トラメチニブが標準治療と比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、新たな治療選択肢となる可能性があることを示した。卵巣または腹膜の低悪性度漿液性がんはMAPKシグナル伝達経路の異常が特徴であり、高悪性度漿液性がんに比べ化学療法に対する感受性が低い。これまでの研究で、MEK阻害薬は有効性が期待される治療戦略であることが示唆されていた。Lancet誌2022年2月5日号掲載の報告。トラメチニブの有効性および安全性を医師選択の標準治療と比較 研究グループは、米国および英国の84施設において、RECIST ver.1.1に基づく測定可能病変を有する18歳以上の再発低悪性度漿液性がん患者を、トラメチニブ群または標準治療群のいずれかに、地域(米国、英国)、前治療レジメン数(1、2、3以上)、PS(0、1)、計画された標準治療を層別因子として、1対1の割合で無作為に割り付けた。5つの標準治療薬すべてではなく、少なくとも1つのプラチナ製剤を含むレジメンによる治療を受けたことがある患者を適格とし、化学療法歴のレジメン数は問わなかった。また、漿液性境界型腫瘍、または低悪性度漿液性がんと高悪性度漿液性がんを含む腫瘍を有する患者は除外した。 トラメチニブ群は2mgを1日1回経口投与し、標準治療群は次の5つのうち医師が選択した治療を行った。パクリタキセル(80mg/m2を1、8、15日目に静脈内投与、28日ごと)、ペグ化リボソームドキソルビシン(40~50mg/m2を4週に1回静脈内投与)、トポテカン(4mg/m2を1、8、15日目に静脈内投与、28日ごと)、レトロゾール(2.5mg 1日1回経口投与)、タモキシフェン(20mgを1日2回経口投与)。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化された治療を受けている間のPFS(治験責任医師評価)とし、ベースライン、続く15ヵ月間は8週ごと、それ以降は3ヵ月ごとに画像診断を行った。トラメチニブ群でPFS中央値が約6ヵ月有意に延長 2014年2月27日~2018年4月10日の期間に260例が登録され、トラメチニブ群(130例)と標準治療群(130例)に無作為化された。観察期間中央値は、トラメチニブ群31.5ヵ月(IQR:18.1~43.3)、標準治療群31.3ヵ月(15.7~41.9)であった。 主要解析において、PFSイベントは217例確認され、トラメチニブ群101例(78%)、標準治療群116例(89%)であった。PFS期間中央値は、トラメチニブ群13.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.9~15.0)、標準治療群7.2ヵ月(5.6~9.9)で、ハザード比は0.48(95%CI:0.36~0.64、p<0.0001)であった。 主なGrade3/4の有害事象は、トラメチニブ群(128例)が皮疹(17例、13%)、貧血(16例、13%)、高血圧(15例、12%)、下痢(13例、10%)、悪心(12例、9%)、疲労(10例、8%)であり、標準治療群(127例)が下腹部痛(22例、17%)、悪心(14例、11%)、貧血(12例、10%)、嘔吐(10例、8%)であった。治療に関連した死亡は確認されなかった。

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進行食道扁平上皮がんの1次治療、ニボルマブを含むレジメンが有望/NEJM

 進行食道扁平上皮がん患者の1次治療では、抗プログラム細胞死1(PD-1)モノクローナル抗体ニボルマブ+化学療法の併用と、ニボルマブ+抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体イピリムマブの併用は、化学療法単独と比較して、いずれのレジメンも全生存期間を有意に延長することが、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学の土岐祐一郎氏らが実施した「CheckMate 648試験」で示された。新たな安全性のシグナルは確認されなかったという。研究の成果は、NEJM誌2022年2月3日号に掲載された。3群を比較するアジア主体の国際的な無作為化第III相試験 本研究は、進行食道扁平上皮がんの1次治療における免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用、および免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年6月~2019年11月の期間に、日本を含む26ヵ国182施設で参加者の登録が行われた(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、根治治療の適用がなく、進行病変に対する全身療法の治療歴のない切除不能な進行、再発、転移性の食道扁平上皮がん患者であり、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現の有無は問われなかった。 被験者は、ニボルマブ(240mg、2週ごと、静脈内投与)+化学療法(4週を1サイクルとして、1~5日目にフルオロウラシル800mg/m2[体表面積]を静脈内投与し、1日目にシスプラチン80mg/m2を静脈内投与)、ニボルマブ(3mg/kg[体重]、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg[体重]、6週ごと、静脈内投与)、化学療法単独の投与を受ける3つの群のいずれかに、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、全生存期間と無増悪生存期間とし、盲検下に独立の中央判定委員会によって判定された。検定は階層的に行われ、最初に腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者で、次いで患者全体(無作為に割り付けられた全患者)で実施された。 970例が無作為化の対象となった。ニボルマブ+化学療法群に321例(年齢中央値64歳、男性 79%)、ニボルマブ+イピリムマブ群に325例(63歳、83%)、化学療法単独群に324例(64歳、85%)が割り付けられた。680例(70%)がアジア人で、PD-L1の発現率が1%以上の患者は473例(49%)であった。奏効率と奏効期間も、ニボルマブを含むレジメンで良好な傾向 最も短い追跡期間が13ヵ月の時点における全生存期間中央値は、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者では、ニボルマブ+化学療法群が15.4ヵ月、化学療法単独群は9.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、99.5%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p<0.001)で、患者全体では、それぞれ13.2ヵ月および10.7ヵ月(HR:0.74、99.1%CI:0.58~0.96、p=0.002)であり、いずれもニボルマブ+化学療法群で有意に優れた。 また、全生存期間中央値のニボルマブ+イピリムマブ群と化学療法単独群との比較では、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者(ニボルマブ+イピリムマブ群13.7ヵ月vs.化学療法単独群9.1ヵ月、HR:0.64、98.6%CI:0.46~0.90、p=0.001)および全体(12.7ヵ月vs.10.7ヵ月、HR:0.78、98.2%CI:0.62~0.98、p=0.01)のいずれにおいても、ニボルマブ+イピリムマブ群で有意に良好だった。 一方、無増悪生存期間は、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者では、ニボルマブ+化学療法群が化学療法単独群よりも有意に延長した(6.9ヵ月vs.4.4ヵ月、HR:0.65、98.5%CI:0.46~0.92、p=0.002)が、全体では、両群間の差は事前に規定された有意差の境界(p=0.015)を満たさなかった(5.8ヵ月vs.5.6ヵ月、HR:0.81、98.5%CI:0.64~1.04、p=0.04)。 無増悪生存期間のニボルマブ+イピリムマブ群と化学療法単独群との比較では、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者(ニボルマブ+イピリムマブ群 4.0ヵ月vs.化学療法単独群4.4ヵ月、HR:1.02、98.5%CI:0.73~1.43、p=0.90)において統計学的有意差の基準を満たさなかったため、全体(2.9ヵ月vs.5.6ヵ月、HR:1.26、95%CI:1.04~1.52)での検定は行われなかった。 客観的奏効率(PD-L1発現率1%以上の患者:ニボルマブ+化学療法群53%、ニボルマブ+イピリムマブ群35%、化学療法単独群20%、全体:47%、28%、27%)はニボルマブ+化学療法群で最も高く、奏効期間中央値(8.4ヵ月、11.8ヵ月、5.7ヵ月/8.2ヵ月、11.1ヵ月、7.1ヵ月)はニボルマブ+イピリムマブ群で最も長かった。 Grade3または4の治療関連有害事象の発現率は、ニボルマブ+化学療法群が47%と最も高く、ニボルマブ+イピリムマブ群は32%,化学療法単独群は36%であった。重篤な治療関連有害事象はニボルマブ+化学療法群が24%、ニボルマブ+イピリムマブ群は32%にみられ、化学療法単独群の16%よりも高率であった。免疫学的原因の可能性がある治療関連有害事象の多くはGrade1または2だった。 著者は、「この研究は、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブの比較や、特定のサブグループにどの治療を用いるべきかを評価するようにはデザインされていない。ニボルマブを含む2つのレジメンの有効性を予測する人口統計学的因子の特性やベースラインの疾患特性を同定するには、新たな探索的な事後解析が、これに資する可能性がある」としている。

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世界初、ニボルマブが原発不明がんの適応追加

 2022年1月19日、小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは原発不明がんの治療薬として、適応追加承認を取得した免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)に関するプレスセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、原発不明がんへの適応拡大の意義や臨床試験結果などについて、中川 和彦氏(近畿大学 内科学 腫瘍内科部門)が説明した。原発不明がん~診断・治療における課題~ 原発不明がんは十分な検索にもかかわらず、原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍のことを指す。全がん種のうち1~5%が原発不明がんとされている。しかし、原発不明がんに承認されている薬剤はこれまで存在せず、治療を行うためには何らかの病名を付ける必要があることから、正確な患者数は不明だ。 原発不明がんの治療における課題は治療方法が確立されていないことである。 15~20%存在する“予後良好群”(原発巣の推定が可能な患者群)では、ガイドラインで推奨される治療を実施するが、残りの80~85%の患者は“予後不良群”とされ、特定の治療方針が定められておらず、確立された標準治療が存在していなかった。NivoCUP試験の結果 今回は、原発不明がん患者の“予後不良群”を対象に、近畿大学病院の主導の下、ニボルマブを評価した医師主導治験「NivoCUP試験」の結果に基づき、適応拡大承認を取得した。 同試験では、56例の原発不明がん患者(化学療法既治療:45例、化学療法未治療:11例)に、ニボルマブを最大52サイクル(約2年)投与した。主要評価項目は化学療法既治療例における奏効率(独立した中央判定によるCRまたはPRの割合)であり、副次評価項目は全体集団での奏効率などだった。 主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率は22.2%(95%CI:11.2~37.1)、さらに、奏効期間の中央値は12.4ヵ月だった。 化学療法未治療例を含めた全体集団における奏効率は21.4%(95%信頼区間:11.6~34.4)だった。 安全面については、全Gradeの副作用は62.5%、Grade3または4の副作用は19.6%で発現した。重篤な副作用は発現率16.1%、肺臓炎や腹水などであった。死亡に至った副作用は認められなかった。安全性プロファイルに関して、他の疾患におけるニボルマブのプロファイルと大きな差はなかった。ニボルマブ承認の意義 ニボルマブの適応追加承認により、原発不明がんに対して、世界に先駆けて日本で初めて抗悪性腫瘍剤が承認されることとなった。原発不明がんが保険適用の対象疾患として認められる、つまり、今後原発不明がんは研究の対象となり、生物学的な特性の解明や薬剤開発が進んでいくことが期待される。このことに大きな意義があると中川氏は語る。 「研究の対象にならないことほど患者さんにとって恐怖はない。自分の疾患がどの研究者からも研究されないということは、可能性がないということを意味する。しかし、今回ニボルマブが承認されたということが、日本の研究者に原発不明がんが伝わる“好機”になる」と、中川氏はニボルマブ承認の意義について述べ、講演を終えた。

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がん患者さんと家族のはてなにこたえるQ&A100…OKワード・NGワードを知ってコミュ力UP!

がん患者さん、家族の質問へのベストアンサーを指南治療法や副作用、生活や食のことまで、がん患者さん、家族から実際に受けた100個の質問に、優しく寄り添ってこたえるアンサーブックです。臨床現場のがん看護ナースは、日々患者さんや家族から多くの質問を受けています。「がんのステージってどういう意味?」「抗がん剤の副作用をなくす方法はないの?」などのがんの基礎知識や治療についてに限らず、「治療期間中、職場にどうやってがんのことを伝えたらいい?」「子どもにどうやってがんのことを伝えたらいい?」など、生活やメンタル面にいたるまで、そのジャンルは多岐にわたります。そんな質問に対して答えや根拠の説明にとどまらず、患者さんや家族への伝え方、対応の仕方を具体的に入れ、がん看護ナースのコミュ力アップを支援します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん患者さんと家族のはてなにこたえるQ&A100…OKワード・NGワードを知ってコミュ力UP!定価4,400円(税込)判型B5判頁数272頁発行2022年2月編集中村 将人(社会医療法人財団 慈愛会 相澤病院 がん集学治療センター化学療法科 統括医長)

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デュルバルマブ+化学療法、進行胆道がん1次治療で奏効(TOPAZ-1)/AZ

 アストラゼネカは、2022年1月26日 、第III相TOPAZ-1試験の良好な結果から、進行胆道がん(BTC)の1次治療薬として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ )と標準化学療法の併用が、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の延長を示したことを発表。この結果は、2022年1月21日に米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムで示された。 TOPAZ-1試験では、デュルバルマブと化学療法の併用療法により、病勢進行または死亡のリスクが25%低下した(HR:0.75、95%CI:0.64〜0.89、両側検p=0.001)。PFS中央値は、デュルバルマブと化学療法の併用療法の7.2ヵ月に対し、化学療法単独は 5.7ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法の併用療法の奏効率(ORR)は26.7%であったのに対し、化学療法単独のORRは18.7%であった。  BTCは米国、欧州および日本で約5 万人、世界では約21万人が毎年が新たに診断されている。BTC患者の予後は不良で、5年生存率は5~15%とされる。 進行BTCの治療は10年以上大きな進展がなかった。TOPAZ-1試験の結果から、同併用療法は、新たな治療選択肢となる可能性を有する。

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アベマシクリブのHR+/HER2-乳がん術後薬物療法における位置付けは?

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法として、CDK4/6阻害薬アベマシクリブ(商品名:ベージニオ)が2021年12月24日に追加承認を取得した。1月21日「ベージニオに新たな適応症が追加 HR+/HER2-乳癌の術後薬物療法の新しい選択肢とは」と題したメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、座長として大野 真司氏が登壇、原 文堅氏(ともにがん研究会有明病院)が術後薬物療法におけるアベマシクリブの位置付けについて講演した。 アベマシクリブは2018年9月に、HR+/HER2-の手術不能または再発乳がんに対する治療薬として承認されている。アベマシクリブは骨髄での造血管細胞の成熟に関連するCDK6-サイクリンD3よりも、乳がんの増殖に関連するCDK4-サイクリンD1をより高く阻害するため、パルボシクリブと比較して骨髄抑制が軽く、連日内服が可能という点が特徴となっている。アベマシクリブの用法・用量としては1回150mgの1日2回経口投与であるが、術後薬物療法では投与期間は最大で24ヵ月間、状態に応じて適宜減量することとされた。アベマシクリブのHR+乳がん術後薬物療法における有効性 乳がん―とくにHR+乳がんにおいては、初回診断後5年経過以降も再発リスクがある。再発リスクに応じて、化学療法追加(オンコタイプDXなどの遺伝子検査で判定)、術後内分泌療法の延長(5年→10年)などにより予後は改善してきたが、リンパ節転移の個数が多い場合などの再発高リスクの患者では不十分であった。 再発高リスクの患者を対象とした国際共同第III相monarchE試験では、術後薬物療法としてのアベマシクリブと内分泌療法による併用療法の有効性を検討。主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(iDFS)は、2年時点でアベマシクリブ+内分泌療法群92.6%に対し内分泌療法群89.6%となり、有意にアベマシクリブ併用群で改善がみられた。3年時点では88.6%に対し82.9%とより差が開く形となり、原氏は「フォローアップ期間が延びてその差が広がるということは、それだけアベマシクリブ併用療法の有効性が高いことを示している」と話した。アベマシクリブのHR+乳がん術後薬物療法における有害事象 アベマシクリブの有害事象については、転移・再発乳がんへの治療においてみられたものと同様の傾向で、下痢(82.2%)、好中球減少症(44.6%)、疲労(38.4%)などが多く報告された。日本人サブグループにおいてもアベマシクリブは同様の傾向が報告されている。下痢については、アベマシクリブ投与初期の1~2サイクル目での報告が多くを占める。「ベージニオ適正使用ガイド」では、グレードに応じた用量調整の考え方が示されており、原氏は適切に休薬・減量をすることでマネジメントは可能との認識を示した。 アベマシクリブのその他重大な副作用として、間質性肺疾患、肝機能障害(ALT/AST増加等)、骨髄抑制(好中球減少、白血球減少、貧血等)、静脈血栓塞栓症が挙げられる。原氏は、「適正使用ガイドでは胸部CT検査や肝機能検査、骨髄機能検査などアベマシクリブ投与中に必要な検査とその推奨時期が示されており、われわれはこれを遵守することが求められる」とした。 間質性肺炎に関しては、monarchE試験の日本人集団では13例認められており、うち治験薬との因果関係が認められたのは1例。グレード2以上であれば投与中止(原則として再投与なし)が求められる。 静脈血栓塞栓症は、日本人集団では2例報告されている。全体集団解析での発現率は2.3%で多くが非重篤であるが、原氏は「重篤な事象が起こりうるという認識の下で管理していくことが非常に重要」と指摘した。 最後に同氏は、今後の検討課題として、真にアベマシクリブ併用療法の恩恵に預かることのできる症例を選択するためのバイオマーカー探索、逆にmonarchE試験の対象外症例へのアベマシクリブ適応拡大の可能性の検討、術後に本療法を実施した症例の再発時の治療法の検討を挙げ、講演を締めくくった。

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もはや薬局薬剤師の必修科目 外来化学療法のレジメン管理【スーパー服薬指導(5)】

スーパー服薬指導(5)もはや薬局薬剤師の必修科目 外来化学療法のレジメン管理講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説外来にて大腸癌のIRIS療法を受けている患者が来局し、口内炎の市販薬が欲しいと、薬剤師に相談。処方箋に記載されている半夏瀉心湯に気がついた薬剤師は…

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子宮内膜がん、レンバチニブ+ペムブロリズマブでPFS/OSを延長/NEJM

 進行子宮内膜がん患者において、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法は化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長した。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのVicky Makker氏らが、21ヵ国167施設で実施した非盲検第III相試験「Study 309/KEYNOTE-775試験」の結果を報告した。プラチナ製剤による化学療法後の進行性子宮内膜がんに対する治療選択肢は、限られていた。NEJM誌オンライン版2022年1月19日号掲載の報告。レンバチニブ+ペムブロリズマブvs.ドキソルビシンまたはパクリタキセル 研究グループは、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による化学療法の治療歴のある進行子宮内膜がん患者を、レンバチニブ(20mg、1日1回経口投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと静脈投与)併用群、または化学療法(治験医師選択によるドキソルビシン60mg/m2の3週ごと静脈投与、またはパクリタキセル80mg/m2の週1回静脈投与3週・1週休薬)群のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるPFS、およびOSで、全体集団およびミスマッチ修復機構を有する(mismatch repair proficient:pMMR)集団を対象としてintention-to-treat解析を行った。安全性についても同様に評価した。 2018年6月11日~2020年2月3日に計827例(pMMR患者697例、ミスマッチ修復機構欠損患者130例)が、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群(411例)および化学療法群(416例)に割り付けられた。データカットオフ日は2020年10月26日。レンバチニブ+ペムブロリズマブでPFSおよびOSが有意に延長 PFS期間中央値は、全体集団(7.2ヵ月vs.3.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.47~0.66、p<0.001)、pMMR集団(6.6ヵ月vs.3.8ヵ月、0.60、0.50~0.72、p<0.001)のいずれにおいても、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群が化学療法群より有意に延長した。 OS期間中央値も同様に、全体集団(18.3ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.51~0.75、p<0.001)、pMMR集団(17.4ヵ月vs.12.0ヵ月、0.68、0.56~0.84、p<0.001)のいずれにおいても、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群が化学療法群より有意に延長した。 Grade3以上の有害事象の発現率は、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群88.9%、化学療法群72.7%であった。

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KRAS G12C変異の非小細胞肺がんにソトラシブ国内承認/アムジェン

 アムジェンは、2022年1月20日、KRASG12C阻害薬ソトラシブ(製品名:ルマケラス)について、がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの効能・効果で、日本における製造販売承認を取得した。 日本における製造販売承認は国際共同第I/II相多施設共同単群非盲検試験(CodeBreaK100試験)の結果に基づいたもの。同試験の第II相パートでは、非小細胞肺がん(NSCLC)患者126例(日本人11例を含む)を対象に、ソトラシブ960mgが1日1回経口投与され、主要評価項目である奏効率は、有効性評価対象123例で37.4%であった。副作用は安全性評価対象190例(日本人13例を含む)中128例(67.4%)に認められ、主な副作用(発現率5%以上)は、下痢(27.9%)、悪心、ALT増加、AST増加(各16.3%)、疲労(11.1%)、血中アルカリホスファターゼ増加(7.9%)、嘔吐(7.4%)および腹痛(5.3%)である。 ソトラシブは2021年5月、KRASG12C阻害薬として世界で初めて米国で迅速承認を取得し、EU、英国、カナダ、スイスおよびアラブ首長国連邦でも承認されている。日本では2021年3月11日付で厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けていた。 KRASG12C変異は、NSCLCに高い頻度で認められるがんドライバー遺伝子変異の1つであり、米国では肺腺がんの約13%、日本では非扁平上皮がんの4.5%に認められると報告されている。KRASG12C変異の2次治療選択肢は限られており、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する。既存の治療法による予後は不良であり、KRASG12C変異を有するNSCLC患者の2次治療後の無増悪生存期間の中央値は約4ヵ月であると報告されている。販売名:ルマケラス錠120mg一般名:ソトラシブ効果又は効能:がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん用法及び用量:通常、成人にはソトラシブとして960mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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ペムブロリズマブの非小細胞肺がん術後アジュバント、無病生存率を改善/Merck

 Merck社は、2022年1月10日、EORTCおよびETOPとともに、第III相KEYNOTE-091(EORTC-1416-LCG / ETOP-8-15 - PEARLS)試験の結果を発表した。  独立データモニタリング委員会による中間分析では、主要要評価項目の1つであるステージIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)全集団のDFS(無病生存期間)について、ペムブロリズマブ治療群はプラセボ群と比較して、PD-L1発現を問わず、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 ただし、もう1つの主要評価項目である高PD-L1発現(TPS≥50%)集団のDFSは、事前に指定された統計計画による統計的有意を示さなかった。高PD-L1発現患者のDFSは引き続き分析される、また副次的評価項目である全生存期間(OS)も評価される。 同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告されたものと一致していた。結果は、今後の医学会議で発表され、規制当局に提出される。 KEYNOTE-091試験は、ステージIB~IIIAの肺葉切除または肺切除後(±補助化学療法)のNSCLC患者の補助治療において、ペムブロリズマブをプラセボと比較する無作為化第III相試験。主要評価項目は、全集団および高PD-L1発現患者のDFSである。副次的評価項目は、OSおよび肺がん特異的死亡率など。

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早期乳がん術前化学療法、pCRは代替エンドポイントには役不足/BMJ

 病理学的完全奏効(pCR)は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)のいずれについても、臨床試験の代替エンドポイントとして不十分であることが、イタリア・European Institute of Oncology(IEO)のFabio Conforti氏らが実施した、早期乳がんを対象とする術前化学療法の無作為化臨床試験に関するシステマティックレビューおよびメタ解析で確認された。米国食品医薬品局(FDA)は、早期乳がんの術前化学療法を検証する無作為化臨床試験において、pCRをDFSおよびOSの代替エンドポイントとすることを承認している。しかし、先行のメタ解析(試験数に限界があった)で認められたpCRとDFSおよびOSとの間の強い相関関係は、患者レベルであり試験レベルではなく、pCRを代替エンドポイントとすることについては議論の的となっていた。著者は、「今回示された結果は、pCRを早期乳がん術前化学療法の主要エンドポイントとして規定すべきではないことを示すものである」とまとめている。BMJ誌2021年12月21日号掲載の報告。54件のRCTをメタ解析、試験レベルで検証 研究グループは、Medline、EmbaseおよびScopusを用い、2020年12月1日までに発表された、術前化学療法の単独または他の治療(抗HER2薬、標的治療薬、抗血管薬、ビスホスホネート、免疫チェックポイント阻害薬など)との併用を検証した無作為化臨床試験を特定し、pCRとDFSまたはOSの試験レベルでの関連性を解析した。 治療効果推定値(DFSおよびOSのハザード比、pCRの相対リスク)を対数変換した後、加重回帰解析を実施し、決定係数(R2)を用いて関連性を定量化した。また、実験群における治療法の種類、pCRの定義(乳房およびリンパ節vs.乳房のみ)、疾患の生物学的特性(HER2陽性またはトリプルネガティブ乳がん)によって試験を層別化し、事前に計画されたサブグループ解析の結果の異質性を検証するとともに、DFS/OSのハザード比に関する代替閾値効果についても評価した。 無作為化臨床試験54件(計3万2,611例)が本解析に組み込まれた。DFSおよびOSとの関連は弱く、OSの代替エンドポイントとはならず pCRの対数(相対リスク)と、DFS(R2=0.14、95%信頼区間[CI]:0.00~0.29)およびOS(0.08、0.00~0.22)の対数(ハザード比)との間に観察された関連性は弱いものであった。全サブグループ解析において、pCRの定義、実験群における治療法の種類、疾患の生物学的特性にかかわらず、同様の結果が得られた。 代替閾値効果は、DFSに関しては5.19であったが、OSについては推定できなかった。 3つの感度解析(登録患者200例未満の小規模試験を除外、追跡期間中央値24ヵ月未満の試験を除外、pCRの相対リスクを治療群間のpCR率の絶対差に置き換え)の結果、一貫した結果が確認された。

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男性乳がんの予後不良因子は?

 男性乳がんは稀な疾患であるものの、近年増加傾向がみられている。認知度の低さなどから進行期になってから診断されるケースが多く、生存に寄与する因子や適切な治療戦略については明確になっていない部分が多い。韓国・忠北大学校病院のSungmin Park氏らは、国民健康保険データベースを用いた男性乳がん患者の転帰に関する後ろ向き解析結果を、Journal of Breast Cancer誌オンライン版2021年12月24日号に報告した。 本研究では、韓国の健康保険データベースを使用して、該当の請求コードをもつ男性乳がん患者を特定、男性乳がんの発生率、生存転帰、およびその予後因子が評価された。最初の請求から1年以内の手術と放射線療法の種類を含む、医療記録と死亡記録がレビューされた。その他、経済状況(≧20パーセンタイル、<20パーセンタイル)、地域(都市部、地方)、チャールソン併存疾患指数(0、1、≧2)、およびBRCA1/2(乳がん遺伝子)テストの実施について情報が収集された。 主な結果は以下のとおり。・2005~16年の間に、新たに男性乳がんと診断された患者838例が特定された。・男性乳がんの診断が最も多かった年齢層は70~74歳で、60〜64歳、65〜69歳が続いた。・患者の約80%が診断後に乳がんの外科手術を受け、50%以上が化学療法、約68%がタモキシフェンの投与を受けており、トラスツズマブは2008年以降約9%が投与を受けていた。・追跡期間中央値約5年間(1,769日)において、268例の死亡が確認され、5年生存率は73.7%だった。・65歳以上の男性は65歳未満の男性よりも全生存期間が短かった(ハザード比:2.454、95%信頼区間:1.909~3.154、p<0.001)。そのほか、併存疾患2つ以上、外科的治療なし、タモキシフェンの投与なし、低所得が、予後不良と関連していた。・多変量解析の結果、予後不良に関連する最も重要な因子は、併存疾患2つ以上だった(HR:4.439、95%CI:2.084~9.453、p=0.001)。

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CAR-T療法イエスカルタ、大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に有効 /NEJM

 大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療において、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞製品アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel、商品名:イエスカルタ)は標準治療と比較して、無イベント生存期間および奏効割合を有意に改善し、Grade3以上の毒性作用の発現は予想された程度であることが、米国・H. Lee MoffittがんセンターのFrederick L. Locke氏らが実施した「ZUMA-7試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年12月11日号に掲載された。世界77施設で行われたCAR-T細胞製品の第III相無作為化試験 研究グループは、早期再発または難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療におけるCAR-T細胞製品axi-celの有用性を評価する目的で、2018年1月~2019年10月の期間に、世界77施設で参加者を募り国際的な無作為化第III相試験を行った(米国・Kiteの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、世界保健機関(WHO)の分類基準(2016年版)で組織学的に大細胞型B細胞リンパ腫と確定され、1次治療で完全寛解が得られなかった患者、または1次治療終了から12ヵ月以内に生検で再発が確認された患者であった。 被験者は、axi-cel群または標準治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。axi-cel群は、白血球アフェレーシスを受け、前処置としての化学療法(シクロホスファミド+フルダラビン)が施行された後、目標用量(2×106/kg体重)のCAR-T細胞が単回注入された。標準治療群は、プロトコールで定義された化学免疫療法のうち担当医によって選択されたレジメンによる治療を受け、完全または部分寛解が得られた患者には、さらに大量化学療法と自家幹細胞移植が施行された。 主要エンドポイントは、盲検下の中央判定による無イベント生存。主な副次エンドポイントは奏効および全生存であり、安全性の評価も行われた。無イベント生存期間が6ヵ月以上延長、奏効割合は1.66倍に 359例が登録され、axi-cel群に180例、標準治療群に179例が割り付けられた。全体の年齢中央値は59歳(範囲:21~81)、30%(109例)が65歳以上であり、66%(237例)が男性だった。74%が難治性、79%がStageIII/IV、19%がMYCおよびBCL2とBCL6の両方かいずれか一方の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫であった。追跡期間中央値は24.9ヵ月だった。 無イベント生存期間中央値は、axi-cel群が8.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.5~15.8)、標準治療群は2.0ヵ月(1.6~2.8)で、24ヵ月無イベント生存割合はそれぞれ41%(33~48)および16%(11~22)であり、axi-cel群で有意に優れた(イベントまたは死亡のハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.31~0.51、p<0.001)。 奏効割合は、axi-cel群が83%と、標準治療群の50%の1.66倍に達した(群間差:33ポイント、p<0.001)。完全奏効はそれぞれ65%、32%であった。また、中間解析における全生存期間中央値は、axi-cel群が未到達、標準治療群は35.1ヵ月であり両群間に有意な差はなかった(死亡のHR:0.73、95%CI:0.53~1.01、p=0.054)。推定2年全生存割合はそれぞれ61%および52%であった。 さらに、無増悪生存期間中央値は、axi-cel群が14.7ヵ月(95%CI:5.4~評価不能)であり、標準治療群の3.7ヵ月(2.9~5.3)に比べ延長した(進行または死亡のHR:0.49、95%CI:0.37~0.65)。24ヵ月無増悪生存割合は、それぞれ46%(95%CI:38~53)および27%(20~35)だった。 Grade3以上の有害事象の発現頻度は、axi-cel群91%(155例)、標準治療群83%(140例)であった。axi-cel群では、Grade3以上のサイトカイン放出症候群が6%(11例)、Grade3以上の神経学的イベントが21%(36例)に認められたが、これらによる死亡例はなかった。 著者は、「アキシカブタゲン シロルユーセルは、再発または難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療において、化学免疫療法、大量化学療法、自家幹細胞移植によるレジメンの代替治療として実行可能であることが明らかとなった」としている。

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世界初、RET融合遺伝子TKIのセルペルカチニブ発売/日本イーライリリー

 2021年9月末にセルペルカチニブ(商品名:レットヴィモ)が「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」に対する治療薬として世界で初めて承認され、日本イーライリリーは発売に合わせ12月16日にプレスセミナーを開催した。セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性のがんでRETキナーゼを選択的に阻害 日本における肺がんの罹患全国推定数は約12万人(2017年)、がん種別の死亡数では男女とも1位(2019年)。従来の手術、化学療法、放射線療法に加え、近年の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、治療が著しく進化している。セミナーでは国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏が、肺がんにおける遺伝子治療の現状やセルペルカチニブ承認の基となったデータを解説した。 セルペルカチニブはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の1つで、RET融合遺伝子変異はNSCLCの約2%に発生する希少変異。RET融合遺伝子陽性のがんでは、がん細胞の増殖と生存がRETキナーゼの活性化に依存しており、活性化されたRETキナーゼを選択的に阻害することで腫瘍の増殖を阻害する、というのが作用機序となる。 現在NSCLCではEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRL、MET、そして今回のRETを含めた7つの変異をターゲットとした薬剤が承認済だが、発現頻度の高いEGFR、ALK変異等をターゲットにした薬剤が優先して開発されてきた経緯がある。後藤氏は「希少変異は製薬メーカー主導の開発が難しいため、国立がん研究センターを中心とした研究基盤であるLC-SCRUM-Asiaで遺伝子変異解析と医師主導治験を進めてきた」と説明した。 今回のセルペルカチニブの承認は、国際共同治験LIBRETTO-001の結果を受けたもの。後藤氏は「参加16ヵ国83施設746例中、日本からは13施設64例が参加し、大きな役割を果たした」と紹介した。LIBRETTO-001におけるセルペルカチニブの奏効率(CR+PR)は未治療例で70.5%(95%CI:54.8~83.2)、既治療例で56.9%(49.8~63.8)。「従来の化学療法の奏効率は30%程度、ICI単剤の場合15%程度なので、セルペルカチニブに限らずTKIは非常に奏効率が高い」(後藤氏)。さらにセルペルカチニブは中枢神経系に対する奏効率も82%と高く、脳転移に対する効果も期待される。 有害事象としては、高血圧36.6%(Grade3以上19.2%)、ALT増加32.6%(同9.8%)、AST増加32.6%(同8.3%)が高頻度だった。後藤氏は「セルペルカチニブはRETの選択性が高いために全体的に毒性が低く、外来でも十分マネジメントは可能と考える。発疹をはじめとした過敏症が認められるケースがあったが、そうしたケースも休薬・減薬とステロイド投薬で対応できており、投薬中止例はほとんどなかった」と解説した。 最後に「今後1、2年で肺がんではHER2、KRAS、EGFRエクソン20挿入変異に対するTKIも臨床応用されるようになり、遺伝子解析と個別化医療がさらに一般的なものとなるだろう」とした。

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