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切除不能転移大腸がん1次治療、FOLFOXIRI+ベバシズマブへのアテゾリズマブ上乗せ(AtezoTRIBE)/ESMO2021

 未治療の切除不能転移大腸がん(mCRC)に対し、FOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)+アテゾリズマブはFOLFOXIRI+BEVと比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、Gruppo Oncologico del Nord-Ovest(GONO)グループによる「AtezoTRIBE試験」で示された。イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。AtezoTRIBE試験で1次治療におけるアテゾリズマブ追加による予後を検証 AtezoTRIBE試験はGONOによる無作為化非盲検第II相試験で、mCRCの1次治療における第1選択であるFOLFOXIRI+BEVに、抗PD-L1抗体のアテゾリズマブを併用することにより、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)/DNAミスマッチ修復欠損(dMMR)の有無にかかわらず患者の予後を改善できるかを検証したもの。  免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、DNAミスマッチ修復欠損のない(pMMR)mCRCには有効性が認められていないが、化学療法+BEVを併用することでICIに対する感受性が高まる可能性が示唆されていた。・対象:18~75歳で未治療の切除不能mCRC患者(18~70歳:PS≦2、71~75歳:PS 0)・試験群:FOLFOXIRI+BEV+アテゾリズマブ(最大8サイクル)→維持療法5FU/LV+BEV+アテゾリズマブ・対照群:FOLFOXIRI+BEV(最大8サイクル)→維持療法5FU/LV+BEV・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]安全性、奏効率(ORR)、全生存期間 AtezoTRIBE試験の主な結果は以下のとおり。・2018年11月~2020年2月に、イタリアの22施設で218例が組み入れられた(対照群73例/アテゾリズマブ群145例)。・Grade3/4の有害事象の発現率に両群で差はなかった。免疫関連有害事象の発現率は対照群/アテゾリズマブ群で全Gradeが12%/27%、Grade3/4が1%/3%であった。・観察期間中央値19.9ヵ月におけるPFS中央値はアテゾリズマブ群13.1ヵ月、対照群11.5ヵ月であり、主要評価項目を達成した(HR:0.69、80%CI:0.56~0.85、p=0.012)。・ORRは、アテゾリズマブ群59%、対照群64%で両群に差はなかった(オッズ比[OR]:0.78、80%CI:0.54~1.15、p=0.412)。・PFSのサブグループ解析では、概してアテゾリズマブ群が良好であった。・dMMRサブグループのPFS中央値は、アテゾリズマブ群で未到達、対照群では6.6ヵ月、とアテゾリズマ群で有意に延長した(HR:0.11、80%CI:0.14~0.35、p=0.002)。・pMMRサブグループでも、アテゾリズマブ群でPFSの有意な延長が認められた(12.9ヵ月対11.4ヵ月、HR:0.78、80%CI:0.62~0.97、p=0.071、有意水準p=0.10)。 Cremolini氏はAtezoTRIBE試験を、「mCRCの1次治療として、FOLFOXIRI+BEVにアテゾリズマブを追加することでPFSが有意に延長し、主要評価項目が達成された。dMMRだけではなく、pMMR患者でもアテゾリズマブの追加による有意なベネフィットが得られた」とまとめた。(2021年10月14日 記事を修正いたしました)

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デュルバルマブの小細胞肺がん1次治療、3年の成績(CASPIAN)/ESMO2021

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療として、デュルバルマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン、EP)併用はEP単独と比較して、追跡期間中央値3年超の時点でも持続的な全生存期間(OS)の延長が示された。 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏が、「CASPIAN試験」の3年フォローアップの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。CASPIAN試験でデュルバルマブと化学療法併用が進展型小細胞肺がんのOS改善 CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブ±tremelimumab+EPとEP単独療法の安全性と有効性を比較した第III相の国際多施設共同無作為化非盲検無作為化試験。追跡期間中央値25.1ヵ月時点で、デュルバルマブ+EP併用群のEP単独群に対する有意なOS改善が示され(HR:0.73、p=0.0047)、2年フォローアップ時でも持続的な改善が確認されていた(HR:0.75、p=0.0032)。デュルバルマブ+tremelimumab+EP併用群は、数値上のOS改善は示されたが統計的な有意性の基準は達成しなかった。・対象:未治療進展型小細胞肺がん(WHO PS0/1、無症候性/治療安定性の脳転移許容、平均余命≧12週、RECIST v1.1測定可能病変)患者805例・試験群:デュルバルマブ(1,500mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群)3週ごと4サイクル、その後病勢進行(PD)までデュルバルマブ4週ごとデュルバルマブ(1,500mg)+tremelimumab(75mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)3週ごと4サイクル、その後PDまでデュルバルマブ4週ごと・対照群:EP単独、3週ごと最大6サイクル、その後オプションで予防的全脳照射・評価項目[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性、患者報告アウトカム(PRO) 進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブと化学療法併用とEP単独療法の安全性と有効性を比較したCASPIAN試験の主な結果は以下のとおり。・3年OSを評価したデータカットオフ時点(2021年3月21日、追跡期間中央値39.4ヵ月)で、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続していることが示された(HR:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.86、nominal p=0.0003)。・OS中央値は、D+EP群12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群10.5ヵ月(9.3~11.2)であり、36ヵ月時点で生存していた患者はそれぞれ17.6%、5.8%であった。・年齢、性別、PSなどのサブグループ解析では、D+EP群のすべての患者にベネフィットがあることが認められた。・D+T+EP群のOS中央値は10.4ヵ月(95%CI:9.5~12.0)であり、EP群に対する数値上のOS改善は持続していた(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97、nominal p=0.0200)。36ヵ月時点で生存していた患者は15.3%であった。・データカット時点でデュルバルマブ投与が継続されていたのは、D+EP群10.2%(投与回数中央値7.0)、D+T+EP群7.1%(6.0)であった。・重篤有害事象(あらゆる原因による)の発現率は、D+EP群32.5%、D+T+EP群47.4%、EP群36.5%であった。死亡に結びついた治療関連有害事象はそれぞれ、2.3%、4.5%、0.8%であった。 Paz-Ares氏は、「これまでに行われたES-SCLC患者を対象としたEP+抗PD(L)-1療法の第III相試験の中で、今回のOS解析の追跡期間中央値は3年超と最長であった。既報のとおり、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続しており、安全性プロファイルも忍容されるものであった。3年時点でEP群と比べてD+EP群の生存患者の割合は3倍超高く、多くの患者のEP治療が継続されており、ES-SCLCの1次治療の標準治療としてのD+EPの地位を、さらに確固とする結果であった」とまとめた。

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胃、食道腺がん1次治療のニボルマブ+化学療法の追加解析、ニボルマブ+イピリムマブ初回解析(CheckMate 649)/ESMO2021

 胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療において、ニボルマブ+化学療法(NIVO+Chemo)は化学療法単独と比較し、追跡期間を1年延長しても全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が引き続き認められた。ただし、ニボルマブ+イピリムマブ(NIVO+IPI)については、PD-L1 CPS≧5の患者において化学療法単独と比較しOSの有意な改善は認められなかった。 第III相CheckMate-649試験の最新解析結果を、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのYelena Y. Janjigian氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。・対象:未治療のHER2陰性進行または転移を有する胃/胃食道接合部/食道腺がん、PS 0~1・試験群:NIVO+Chemo(NIVO 360mg+XELOX[3週ごと]、またはNIVO 240mg+FOLFOX [2週ごと])789例NIVO+IPI(NIVO 1mg/kg+IPI 3mg/kg[3週ごと、4サイクル]→NIVO 240mg[2週ごと])409例・対照群:上記のいずれかの化学療法単独(Chemo群)833例・評価項目:[主要評価項目]NIVO+Chemo vs Chemo:OS およびPFS(PD-L1 CPS≧5患者)[副次評価項目]NIVO+Chemo vs Chemo:OS(PD-L1 CPS≧1、全無作為化患者)        NIVO+IPI vs Chemo:OS(PD-L1 CPS≧5、全無作為化患者) 主な結果は以下のとおり。[NIVO+Chemo群 vs.Chemo群]・データカットオフ時点で(2021年5月27日、最短追跡期間24.0ヵ月)、臨床的に意味のあるOSの改善が維持された。PFSも同様であった。・PD-L1 CPS≧5患者では、OS中央値がNIVO+Chemo群14.4ヵ月、Chemo群11.1ヵ月で、死亡リスクが30%低下(HR:0.70、95%CI:0.61~0.81)、24ヵ月OS率が12%改善(31% vs.19%)、PFS中央値は8.1ヵ月 vs 6.1ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.60~0.81)。・全無作為化患者では、OS中央値がNIVO+Chemo群13.8ヵ月、Chemo群11.6ヵ月で、死亡リスクが21%低下(HR:0.79、95%CI:0.71~0.88)、24ヵ月OS率が9%改善(28% vs.19%)、PFS中央値は7.7ヵ月 vs.6.9ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.70~0.89)。・全無作為化患者において、MSI-H患者およびMSS患者のいずれもNIVO+Chemo群でChemo群と比較しOSの延長と高いORRが得られたが、ベネフィットはMSI-H患者で大きく、MSS患者では全無作為化集団全体と同様の結果であった。[NIVO+IPI群 vs.Chemo群]・データカットオフ時点で(2021年5月27日、最短追跡期間35.7ヵ月)、副次評価項目は達成されなかった。・PD-L1 CPS≧5患者では、OS中央値がNIVO+IPI群11.2ヵ月、Chemo群11.6ヵ月(HR:0.89、96.5%CI:0.71~1.10、p=0.2302)、24ヵ月OS率は25% vs.17%)。・全無作為化患者では、OS中央値がNIVO+IPI群11.7ヵ月、Chemo群11.8ヵ月(HR:0.91、96.5%CI:0.77~1.07)、24ヵ月OS率は23% vs.19%。[安全性]・NIVO+ChemoおよびNIVO+IPIで、新たな安全性の懸念は認められなかった。・NIVO+Chem群の主なGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)は、好中球減少症(15%)、好中球数減少(11%)、貧血(6%)。・NIVO+IPI群の主なGrade3/4のTRAEは、リパーゼ増加(7%)、アミラーゼ増加(4%)、ALT/AST増加(各4%)。・Chemo群の主なGrade3/4のTRAEは、好中球減少症(11~13%)、好中球数減少(9~10%)、下痢(3~4%)。・免疫関連のGrade3/4 TRAEは、臓器別にみるとNIVO+Chemo群は5%以下、NIVO+IPI群は12%以下であった。 Janjigian氏は、「HER2陰性の進行胃/胃食道接合部/食道腺がん患者の1次治療において、NIVO+Chemoは追跡期間を1年延長した場合でも臨床的に意義のある長期にわたるOSおよびPFSの改善が認められ、生存曲線の開きが持続した。新たな標準1次治療としてのNIVO+Chemoの使用がさらに支持される結果であった」とまとめた。

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非小細胞肺がん1次治療cemiplimab+化学療法(EMPOWER-Lung3)/ESMO2021

 変異のない進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に対する新PD-1阻害薬cemiplimabと化学療法の併用を評価するEMPOWER-Lung3試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。cemiplimab+化学療法のNSCLC1次治療としての可能性が示唆されている。 EMPOWER-Lung3は2部構成の無作為化第III相試験。今回発表されたのは、Part2試験の2回目の中間解析の結果である。・対象:未治療の進行NSCLC(組織形/PD-L1発現レベルは問わず、既治療の安定した脳転移例は許容)・試験群:cemiplimab(350mg)3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル・対照群:プラセボ 3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル ※治療は108週(あるいは進行するまで)行われた。・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、最良総合効果、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・適格患者466例は、無作為にcemiplimab+化学療法群312例とプラセボ+化学療法群154例に割り付られた。・患者の年齢中央値は63.0歳、 57.1%が非扁平上皮がん、85.2%がStage4であった。・OS中央値はcemiplimab+化学療法群21.9ヵ月に対し、プラセボ+化学療法群では13.0ヵ月であった。cemiplimab+化学療法群で有意な改善し、主要評価項目を達成した(HR:0.71、 p=0.014)。・PFS中央値はcemiplimab+化学療法群8.2ヵ月に対しプラセボ+化学療法群は5.0ヵ月で、cemiplimab+化学療法群が有意に改善した(HR:0.56、p<0.0001)。・サブグループでのOS/PFSのHRでは、組織形を問わず(非扁平上皮がん0.79、扁平上皮がん0.56)、PD-L1を発現している場合は発現レベルを問わず(PD-L1

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mCRC、テモゾロミド後のイピリムマブ+ニボルマブ、PFSを延長(MAYA)/ESMO2021

 MGMT(O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ)発現陰性およびMGMTプロモーター領域のメチル化が確認されたMGMTサイレンシング、かつマイクロサテライト安定性(MSS)の転移大腸がん(mCRC)に対し、テモゾロミドによる過剰変異を利用することで、低用量イピリムマブ+ニボルマブ併用療法の持続的な効果を誘導できることが、「MAYA試験」で示され、イタリア・IRCCS財団国立がん研究所のFillippo Pietrantonio氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 MAYA試験は、イタリアの12施設で実施された多施設共同非盲検第II相概念実証試験。標準治療(フッ化ピリミジン系薬剤、オキサリプラチン、イリノテカン、および抗EGFRモノクローナル抗体[RAS/BRAF野生型の場合])後に進行した、または標準治療の対象とならない18歳以上MGMTサイレンシングMSS mCRC患者を対象とした。・対象:18歳以上、標準治療後に進行、または標準治療の対象とならないMGMTサイレンシングMSS mCRC患者・試験群:テモゾロミド150mg/m2を1~5日目に4週ごと2サイクル投与後(第1治療期)、CTでCR、PRまたはSDが確認された患者に対して、テモゾロミドに加えてイピリムマブ(1mg/kg、8週ごと)およびニボルマブ(480mg、4週ごと)を併用投与(第2治療期)・評価項目:[主要評価項目]第2治療期を開始した患者における8ヵ月無増悪生存(PFS)率[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、有害事象(AE)、患者報告アウトカム 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2020年11月に、イタリアの12施設で703例がプレスクリーニングに同意し組織検体が解析された。204例が適格基準を満たし、135例が第1治療期を開始し、33例(24%)が第2治療期を開始した。・33例の患者背景は、年齢中央値58歳、男性52%、RAS変異型76%、RAS変異/BRAF野生型24%、前治療が3ライン以上48%、2ライン以上46%であった。また、原発巣が右側の患者が45%を占め、第1治療期を開始した135例の30%に比べて高値であった。・観察期間中央値16.0ヵ月(カットオフ日:2021年8月5日)において、PFS中央値は7.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.4)、33例中12例がPFS>8ヵ月を達成し、8ヵ月PFS率は36%であった。・OS中央値は18.4ヵ月(95%CI:14~NA)、ORRは42%(14/33例)であった。・全Gradeの主な化学療法関連AEは嘔吐(48%)、血小板減少症(36%)、貧血(24%)、主な免疫関連AEは甲状腺機能障害(27%)、そう痒症(24%)、発疹(18%)、大腸炎(12%)などであった。・Grade3/4の有害事象の発現頻度は低かった。 Pietrantonio氏は、「MGMTサイレンシングMSS mCRCに対し、テモゾロミドによるプライミング後の低用量イピリムマブ+ニボルマブ併用療法は、管理可能な安全性プロファイルと有望な臨床効果を示すことが認められた。この治療戦略の適格患者はmCRCの5%のみではあるものの、無作為化臨床試験で検討する価値がある」とまとめた。

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術後化療なしのTN乳がん患者、TILとPD-L1で予後を層別化可能/ESMO2021

 早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおいて、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とPD-L1を組み合わせると、術後補助化学療法を受けていないTN乳がん患者の予後を層別化できることが示された。間質TIL(sTIL)が30%以上かつPD-L1陰性の患者は予後が良好であり、補助化学療法を省略できる可能性がある。国立がん研究センター中央病院の矢崎 秀氏らは、補助化学療法を受けていない早期TN乳がん患者の予後と、TILとPD-L1、Tertiary lymphoid structures(TLS)の関連を検討した後ろ向き解析の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 2001~15年に国立がん研究センター中央病院で術後補助化学療法を受けなかったStageI~IIIのTN乳がん患者を特定、sTIL、TLSおよびPD-L1発現状態を手術標本で評価した。sTILとTLSはそれぞれガイドラインと以前の研究に従って評価され、免疫細胞におけるPD-L1の発現状態は、VENTANASP142アッセイによって評価された。 sTIL-highを≧30%、PD-L1陽性(+)をIC≧1と定義し、4つのグループに分類した:sTIL-high/PD-L1(+)、sTIL-high/PD-L1(+)、sTIL-high/PD-L1(-)、sTIL-high/PD-L1(-)。コックス比例ハザードモデルを使用して、sTIL、TLS、およびPD-L1の予後予測因子としての価値を検討した。 主な結果は以下のとおり。・125例が解析対象とされ年齢中央値は68(32~99)歳、69%がT1、85%がリンパ節転移陰性だった。・sTILの中央値は10%(IQR:0~30)であり、35例(28%)はsTILが30%以上だった。・36例(29%)がPD-L1陽性、63例(50%)がTLSを示した。・sTIL-high/PD-L1(+)が28例(22.4%)、sTIL-low/PD-L1(+)が8例(6.4%)、sTIL-high/PD-L1(-)が7例(5.6%)、sTIL-low/PD-L1(-)が82例(65.6%)だった。・多変量解析の結果、sTIL≧30%は無浸潤疾患生存(iDFS)率の改善と有意に関連し(HR: 0.19、95%信頼区間[CI]:0.059~0.62、p=0.006)、PD-L1陽性はiDFSの悪化と有意に関連していた(HR:3.39、95%CI:1.07~10.8、p=0.039)。一方で、TLSとiDFSの間に関連はみられなかった(HR:0.95、95%CI:0.31~2.91、p=0.93)。・sTIL-high/PD-L1(-)の腫瘍の患者は最も予後が良好であり(5年iDFS率:100%)、sTIL-low/PD-L1(+)の腫瘍の患者は予後が最も悪かった(5年iDFS率:28.6%、95%CI:4.1~61.2)。・sTIL-high/PD-L1(+)の腫瘍(5年iDFS率:80.7%、95%CI:56.3~92.3)およびsTIL-low/ PD-L1(-)の腫瘍(5年iDFS率:83.6%、95%CI:72.9~90.4)の患者は中等度の予後だった(p<0.001)。 研究者らは、sTILとPD-L1はそれぞれ予後の改善と悪化に有意に関連しており、それらの組み合わせで、補助化学療法を受けていないTN乳がんの予後を層別化できるとまとめている。症例の5.6%を占めたsTIL-high/PD-L1(-)の早期TN乳がん患者では、補助化学療法なしで良好な予後を示していた。

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ブレークスルー感染、死亡・入院リスクが高い因子/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、英国政府の委託で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行の第2波のデータを基に作成した、ワクチン接種後の死亡・入院のリスクを予測するアルゴリズム(QCovid3モデル)の有用性の検証を行った。その結果、ワクチンを接種しても、COVID-19関連の重症の転帰をもたらすいくつかの臨床的なリスク因子が同定され、このアルゴリズムは、接種後の死亡や入院のリスクが最も高い集団を、高度な判別能で特定することが示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月17日号に掲載された。アルゴリズムの妥当性を検証する英国の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19ワクチンを1回または2回接種後のCOVID-19関連の死亡・入院のリスクを推定するリスク予測アルゴリズムの妥当性の検証を目的とする、英国の全国的な人口ベースの前向きコホート研究である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 解析にはQResearchデータベースが用いられた。このデータベースには、約1,200万例の臨床研究および薬剤の安全性研究に基づく個々の患者の臨床・薬剤に関するデータが含まれ、COVID-19ワクチン接種、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査結果、入院、全身性抗がん薬治療、放射線治療、全国的な死亡・がんのレジストリデータと関連付けられた。 2020年12月8日~2021年6月15日の期間に、COVID-19ワクチンを1回または2回接種した年齢19~100歳の集団(解析コホート)が対象となった。 主要アウトカムはCOVID-19関連死、副次アウトカムはCOVID-19関連入院とされ、ワクチンの初回および2回目の接種後14日から評価が行われた。また、解析コホートとは別の一般診療の検証コホートで、妥当性の評価が実施された。 ワクチンを接種した解析コホート695万2,440人(平均年齢[SD]52.46[17.73]歳、女性52.23%)のうち、515万310人(74.1%)が2回の接種を完了した。COVID-19関連死は2,031人、COVID-19関連入院は1,929人(最終的に446人[23.1%]が死亡)で認められ、2回目の接種後14日以降の発生はそれぞれ81人(4.0%)および71人(3.7%)だった。 最終的なCOVID-19関連死のリスク予測アルゴリズムには、年齢、性別、民族的出自、貧困状態(Townsend剥奪スコア[点数が高いほど貧困度が高い])、BMI、合併症の種類、SARS-CoV-2感染率が含まれた。早期介入の優先患者の選択に有用な可能性 COVID-19関連死の発生率は、年齢および貧困度が上がるに従って上昇し、男性、インド系とパキスタン系住民で高かった。COVID-19関連死のハザード比が最も高い原因別の因子として、ダウン症(12.7倍)、腎移植(慢性腎臓病[CKD]ステージ5、8.1倍)、鎌状赤血球症(7.7倍)、介護施設入居(4.1倍)、化学療法(4.3倍)、HIV/AIDS(3.3倍)、肝硬変(3.0倍)、神経疾患(2.6倍)、直近の骨髄移植または固形臓器移植の既往(2.5倍)、認知症(2.2倍)、パーキンソン病(2.2倍)が挙げられた。 また、これら以外の高リスクの病態(ハザード比で1.2~2.0倍)として、CKD、血液がん、てんかん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中、心房細動、心不全、血栓塞栓症、末梢血管疾患、2型糖尿病が認められた。 一方、イベント数が少な過ぎて解析できなかった疾患を除き、COVID-19関連入院にも死亡と類似のパターンの関連性がみられた。 初回と2回目の接種後で、死亡・入院との関連性が異なるとのエビデンスは得られなかったが、2回目以降のほうが絶対リスクは低かった(初回接種のみと比較した2回目接種の死亡ハザード比[HR]:0.17[95%信頼区間[CI]:0.13~0.22]、入院HR:0.21[0.16~0.27])。 検証コホートでは、QCovid3アルゴリズムにより、COVID-19関連死までの期間の変動の74.1%(95%CI:71.1~77.0)が説明可能であった。D統計量は3.46(95%CI:3.19~3.73)、C統計量は92.5と、判別能も良好だった。このモデルの性能は、ワクチンの初回と2回目の接種後も同程度であった。また、COVID-19関連死のリスクが高い上位5%の集団では、70日以内のCOVID-19関連死を同定する感度は78.7%だった。 著者は、「このリスク層別化の方法は、公衆衛生上の施策の推進に役立ち、早期介入の対象となる患者の優先的な選択に有用となる可能性がある」としている。

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ニボルマブとイピリムマブが悪性胸膜中皮腫に引き続き良好な成績(CheckMate743)/ESMO2021

 転移を有する悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブとイピリムマブの併用第III相試験CHeckMate743の3年追跡結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress2021)で発表され、良好な長期ベネフィットが示された。これが転移のある悪性胸膜中腫に対する免疫療法としては、初めての長期成績の報告となる。・対象:転移のある切除不能な未治療の悪性胸膜中皮腫・試験群:ニボルマブ(3mg/m2)2週ごと+イピリムマブ(1mg/m2)6週ごと・対照群:シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド3週ごと6サイクル・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS )[副次評価項目]全奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、盲検化独立評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群18.1ヵ月に対し、化学療法群は14.1ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)であり、ニボルマブ+イピリムマブ群の優越性は引き続き示された。・組織別にみると、上皮型中皮腫では18.2ヵ月に対し16.7ヵ月(HR:0.85)、非上皮型中皮種では18.1に対し8.8ヵ月(HR:0.48)、といずれもニボルマブ+イピリムマブで良好であった。・その他のサブグループにおいてもすべてニボルマブ+イピリムマブ群で良好であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月に対し、化学療法群は7.2ヵ月であった(HR:0.92)。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群39.6%に対し、化学療法群は44.0%であった。・奏効期間はニボルマブ+イピリムマブ群11.6ヵ月に対し、化学療法群は6.7ヵ月であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群では80%、化学療法群では92%に発現した。・TRAEのため治療中止となったニボルマブ+イピリムマブ群症例におけるOS中央値は25.4ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群全体に対しても劣っていなかった。 発表者は、3年追跡結果においても、ニボルマブとイピリムマブの併用は、切除不能悪性胸膜中皮腫の標準治療であることを確認できたとしている。

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HER2陽性早期乳がんへの術前トラスツズマブ+ラパチニブ併用、メタ解析で生存延長示す/ESMO2021

 HER2陽性早期乳がんの術前補助療法としての化学療法とトラスツズマブ、ラパチニブの併用については、複数の試験で病理学的完全奏効(pCR)率の増加が確認されているが、生存に対する有効性については結果が一致していない。イタリア・パドヴァ大学のValentina Guarneri氏らは、同併用療法の生存に対するベネフィットについてメタ解析を実施し、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 Guarneri氏らは、4つの無作為化比較試験(CHER-LOB、NSABP-B41、NeoALTTO、CALGB40601)から1,410例を本解析の対象とした。4試験の主な違いとしては、CHER-LOB、NSABP-B41試験では術前にアントラサイクリン系・タキサン系薬剤が使用されており、NeoALTTO、CALGB40601試験では術前にタキサン系、術後にアントラサイクリン系薬剤が使用された。またNeoALTTO試験のみ術後に試験時の薬剤が投与され、その他3試験ではトラスツズマブが投与された。 全試験でトラスツズマブ+ラパチニブ併用群のpCR率の増加がみられたが、生存に関する評価項目の有意な改善がみられたのはCALGB40601試験のみだった。 メタ解析の主な結果は以下のとおり。・無再発生存期間(RFS)は、トラスツズマブ単独と比較してトラスツズマブ+ラパチニブ併用群で改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]0.46~0.85)。また全生存期間も併用群で改善がみられた(HR:0.65、95%CI:0.43~0.98)。・組み合わせたすべての治療において、pCRを達成した患者は、手術時に残存病変を有する患者よりもRFS(HR:0.45、95%CI:0.34~0.60)およびOS(HR:0.32、95%CI:0.22~0.48)が良好だった。・ホルモン受容体陰性の患者では、pCRは再発リスクの65%減少(HR:0.35、95%CI:0.23~0.53)および死亡リスクの73%減少(HR:0.27、95%CI:0.15~0.47)と関連していた。・ホルモン受容体陽性の患者も、pCRを達成した患者はRFSが改善(HR:0.60、95%CI:0.37~0.97)したが、その効果はホルモン受容体陰性の患者よりも小さかった。 Guarneri氏は、pCRが予後予測の強力なマーカーであることが確認され、この傾向はとくにホルモン受容体陰性の患者で強くみられるとした。さらにトラスツズマブ単独の場合と比較して、トラスツズマブ+ラパチニブの併用療法は生存に対するベネフィットを示し、pCRをサロゲートマーカーとして、ラパチニブの早期での使用を考慮すべきではないかとまとめている。

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アテゾリズマブ術後補助療法、PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者で有益(IMpower010)/ESMO2021

 完全切除および補助化学療法後の早期(Stage IB~IIIA)肺がん患者へのアテゾリズマブを評価した「IMpower010試験」の最新の中間解析結果を、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現している(PD-L1 TC≧1%)Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)において、アテゾリズマブは再発または死亡リスクを34%低下したこと、再発部位について両群で明確な違いはみられないが、再発までの期間はアテゾリズマブ群のほうが延長したことなどが報告された。 IMpower010試験は、完全切除および補助化学療法後の早期肺がん患者へのアテゾリズマブによるアジュバント免疫療法(CIT)の有効性と安全性を、支持療法(BSC)と比較した初となる第III相無作為化試験。「ASCO 2021」において、アテゾリズマブ群で無病生存期間(DFS)に関する有益性が統計的に有意であったことが報告されたが、今回研究グループは、再発部位と再発後治療に着目した探索的結果を加えて報告した。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStage IB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンを含む補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクル・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団、(2)Stage II~IIIA全集団、(3)ITT(Stage IB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% Stage II~IIIA集団のDFS、全3集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。・DFSに関する有意性の境界を越えていたのは、(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団(ハザード比[HR]:0.66[95%信頼区間[CI]:0.50~0.88]、p=0.004)、(2)Stage II~IIIA全集団(0.79[0.64~0.96]、p=0.02)であった。(3)ITT集団は越えていなかった(0.81、0.67~0.99)、p=0.04)。・PD-L1発現率が高いほどDFSの改善が大きいことが認められた。サブグループ解析で、PD-L1 TC 1~49%はHR:0.87(95%CI:0.60~1.26)、≧50%はHR:0.43(0.27~0.68)であった。・PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団の再発率は、アテゾリズマブ群29.4%、BSC群44.7%であった。・再発パターンは両群で差はなかった。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団における、局所領域のみの再発率はアテゾリズマブ群47.9%、BSC群41.2%、遠隔再発のみは38.4%、39.2%などであった。・無作為化から再発までの期間は、3集団ともにアテゾリズマブ群が延長した。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団では、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(範囲:0.7~42.3)、BSC群10.9ヵ月(1.3~37.3)であった。・再発後の治療は両群とも化学療法が最も多かったが、CITの使用は3集団ともにBSC群で多かった。PD-L1 TC≧1%のStage II~IIIA集団ではアテゾリズマブ群11.0%に対し、BSC群35.3%であった。また、同集団での再発後放射線治療の実施は、アテゾリズマブ群43.8%、BSC群47.1%、手術の施行は16.4%、10.8%であった。 Felip氏は、「IMpower010試験において、アテゾリズマブはPD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者の再発または死亡リスクを34%低下したことが示され、同集団の標準治療を変え得る可能がある」とまとめた。

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HR+/HER2+早期乳がん、de-escalateした術前補助療法に適した症例は?(ADAPT TP)/ESMO2021

 ホルモン受容体陽性HER2陽性(HR+/HER2+)早期乳がんに対するT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)でのde-escalateした術前補助療法において、治療前の腫瘍免疫原性が高いほど病理学的奏効(pCR)率が高く予後良好なことが、ドイツ・West German Study Group(WSG)によるADAPT triple positive(TP)試験で示された。WSGのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 ADAPT TP試験はWSGによる第II相試験で、ADAPTアンブレラ試験の一部である。すでに主要評価項目であるpCR率はT-DM1投与群で40%を超え、副次評価項目の生存アウトカムも良好だったことが報告されている。今回は、もう1つの副次評価項目であるトランスレーショナルリサーチについて、治療前の生検で分析されたバイオマーカーにより検討された。・対象:HR+/HER2+早期乳がん 375例・試験群A:T-DM1(3週ごと)12週 119例・試験群B:T-DM1(3週ごと)+内分泌療法12週 127例・試験群C:トラスツズマブ(3週ごと)+内分泌療法12週 129例術後または12週の生検後(pCRが得られない場合)は標準化学療法が推奨され、pCRが得られた場合は化学療法の省略が許容された。・評価項目[主要評価項目]pCR率(ypT0/is/ypN0)[副次評価項目]安全性、5年無浸潤疾患生存(iDFS)率、5年全生存率、トランスレーショナルリサーチ 早期奏効は、3週時点の生検でKi67が治療前の30%以上減少または低細胞密度(腫瘍細胞数が500個未満)の場合とした。腫瘍浸潤リンパ球とIHCの免疫マーカー(CD8、PD1、PDL1)、PIK3CA変異の有無、遺伝子(RNA)発現を治療前の検体で評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療前におけるCD8発現やPD-L1発現が良好なpCRと関連し、また、良好なiDFSとより強い関連がみられた。iDFSのハザード比(HR)は、CD8A発現で0.61(95%信頼区間[CI]:0.36~1.01)、CD8 mRNA発現で0.66(95%CI:0.47~0.92)、免疫細胞PD-L1発現で0.32(95%CI:0.10~1.07)だった。・PIK3CA変異は16.32%に認められ、pCR率および5年iDFS率の低下と関連していた。すべての患者で予後が悪化したが、とくにT-DM1投与患者では5年iDFS率に22%の差があった(野生型90.2%、変異型68.4%、p=0.007)。・本試験における分子サブタイプは、luminal Aタイプが55.9%、luminal Bタイプが22.69%、HER2-enrichedタイプが21.3%、basal-likeタイプが0.93%であった。pCR率はHER2-enrichedタイプが最も高かったが、5年iDFS率はluminal Aタイプが89.8%と最も高く、HER2-enrichedタイプは80.9%と低かった。 Harbeck氏は、「HR+/HER2+早期乳がんにおいて、治療前における腫瘍免疫原性はde-escalateした術前補助治療後の高いpCR率と予後良好に関連していた。PIK3CA変異がある患者は、T-DM1を投与し術後に化学療法とトラスツズマブを投与しても予後不良であった。luminal Aタイプの患者は、HER2標的治療後にpCR率が低くても最も予後が良好だった」と結果をまとめ、「今後のde-escalation戦略については、luminal AタイプではpCR率と生存率、HER2-enrichedタイプではpCRによるアプローチが有望」とした。

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ペムブロリズマブ+化学療法、子宮頸がん1次治療の生存改善(KEYNOTE-826)/ESMO2021

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)において、ペムブロリズマブ+化学療法±ベバシズマブの子宮頸がん1次治療による生存の改善が報告された。 KEYNOTE-826試験は、全身化学療法未実施の再発または転移を有する子宮頸がん患者617例を対象に、ペムブロリズマブ+化学療法±ベバシズマブとプラセボ+化学療法±ベバシズマブを比較した無作為化第III相試験。 主要評価項目である全生存期間(OS)は、全対象患者でペムブロリズマブ群24.4ヵ月に対し、プラセボ群16.5ヵ月(ハザード比[HR] :0.67、95%信頼区間[CI]: 0.54~0.84)、もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)も、ペムブロリズマブ群10.4ヵ月に対し、プラセボ群8.2ヵ月と、ペムブロリズマブの併用により有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.53〜0.79、p<0.001)。 ペムブロリズマブ群のPFSおよびOSの改善は、PD-L1陽性レベル(CPS)を問わず示されている。 ペムブロリズマブの併用の毒性は、既報と一致しており、新たな安全性シグナルは見られなかった。 発表者のフランス・Universite ClaudeBernard Lyon IのIsabelle Ray-Coquard氏は、「ペムブロリズマブと化学療法の併用による1次治療での生存期間を延長に関する高レベルのエビデンスを提供した。これらのデータは臨床を変えるであろう」と述べる。 この発表は、New England Journal of Medicine誌に同時掲載された。

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ニボルマブ、小児ホジキンリンパ腫に対する承認取得/BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、小児の再発又は難治性古典的ホジキンリンパ腫に対する承認を取得したことを発表した。 ホジキンリンパ腫はリンパ細網系から生じた細胞の限局性又は播種性の悪性腫瘍であり、国内の年間発症患者数は約1,720人、小児における年間発症患者数は約70人と推定されている。小児ホジキンリンパ腫の一次治療には化学療法等が行われ、再発または治療抵抗性の場合にはさらなる化学療法や抗CD30モノクローナル抗体であるブレンツキシマブ ベドチン等による治療が行われているものの予後は厳しく、ニボルマブは新たな選択肢の一つとして期待される。 今回の承認取得は、国立がん研究センター中央病院で実施された、小児期およびAYA(思春期・若年成人)世代の患者を対象としたニボルマブの有用性を見ることを目的とした医師主導治験(PENGUIN試験)の結果に基づいたもの。本試験は、小児・AYA世代の難治悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫患者のうち、標準的な治療(2種類以上の化学療法後)抵抗性の患者を対象とし、主要評価項目は用量制限毒性相当の有害事象の発生割合、副次評価項目は全生存期間、無増悪生存期間、奏効率等だった。 試験は2017年から開始され、26例の患者(平均年齢12.4歳、11歳以下10/26[38.5%]、12~17歳13/26[50.0%]、18歳以上3/26[11.5%]が組み入れられた。参加者のがん種は横紋筋肉腫が4/26(15.4%)、ユーイング肉腫が3/26(11.5%)、神経芽腫および神経節芽腫が2/26(7.7%)、古典的ホジキンリンパ腫、肺の神経内分泌がんなどが1名ずつだった。結果として、古典的ホジキンリンパ腫の1例において完全奏効が得られ、成人患者での承認時用量と同様の3mg/kgの体重換算用量で確認した結果、有害事象と薬物動態について成人において観察されたものと大きな違いがないことが確認された。 その他のがん種に対するニボルマブの有効性など、本試験の詳細な結果は10月21日から開催されるSIOP 2021(国際小児腫瘍学会)で発表予定となっている。

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ribociclib+レトロゾールが乳がん1次治療のOSを改善(MONALEESA-2)/ESMO2021

 HR陽性HER2陰性の転移を有する乳がん(mHRBC)に対するCDK4/6阻害薬ribociclibとレトロゾールの併用療法による1次治療は、レトロゾール単独療法より全生存期間(OS)を延長することが示された。国際共同の大規模臨床試験であるMONALEESA-2試験の最終解析で、米国The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのGabriel N. Hortobagyi氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 本試験は二重盲検無作為化第III相試験であり、ribociclibは本邦では未発売である。・対象:閉経後のmHRBCで、転移・再発に対する治療歴のない症例 668例(ホルモン剤による術前または術後療法は許容)・試験群:ribociclib+レトロゾール群 334例(Ribo群)・対照群:プラセボ+レトロゾール群 334例(Pla群)ribociclibは 600mg/日を3週間投与1週間休薬。レトロゾールは2.5mg/日を連日投与。・評価項目[主要評価項目]主治医評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、QOL 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のPFSについては、すでにRibo群の有意な延長が報告されている(中央値25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.568、p=9.63×10-8)。・今回のOS最終解析のデータカットオフ時(2021年6月)の観察期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)であり、この時点ではRibo群の30例(9.0%)、Pla群の17例(5.1%)が投薬継続中であった。・OS中央値はRibo群63.9ヵ月、Pla群51.4ヵ月で、HRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93)、p=0.004と有意にRibo群で良好であった。・4年OS率はRibo群が60.9%、Pla群が55.2%、5年OS率はRibo群が52.3%、Pla群が43.9%、6年OS率はRibo群が44.2%、Pla群が32.0%と、期間が延びるほど両群の差は大きくなっていた。・試験投薬終了後に後治療を受けていたのはRibo群が87.8%、Pla群が90.2%で、何らかのCDK4/6阻害薬の投与を受けていたのは、Ribo群21.7%(パルボシクリブが16.1%)、Pla群34.4%(パルボシクリブが31.5%)であった。・探索的解析である化学療法施行までの期間中央値は、Ribo群50.6ヵ月、Pla群38.9ヵ月で、HRは0.74(95%CI:0.61~0.91)であった。・安全性に関する新たな徴候は見られなかった。Grade3/4の主な有害事象は好中球減少症(Ribo群63.8%、Pla群1.2%)、肝機能障害(14.4%、4.8%)、QT延長(4.5%、2.1%)などであった。 Hortobagyi氏は最後に、「Ribo群のOS中央値は5年を超え、さらにPla群に比し臨床的にも意義のある12ヵ月のOS延長を示した本試験の結果と、これまでのribocilcibの試験(MONALEESA-3、MONALEESA-7)の結果から、ribociclibとホルモン剤の併用療法は、治療ラインを問わずmHRBC治療の重要な治療選択肢となり得る」と述べた。

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非小細胞肺がん2次治療に現れた新規作用薬plinabulin(DUBLIN-3)/ESMO2021

 プラチナベース化学療法で進行した2〜3次治療の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるplinabulinとドセタキセルの併用の有用性を評価した国際無作為化第III相試験DUBLIN-3の初回解析が欧州臨床腫瘍学会(ESMO COngress2021)で発表された。その結果、plinabulinとドセタキセルは当該対象患者に対する有効性と良好な安全性を示した。 EGFR変異のないNSCLC、1次治療のスタンダードがPD-(L)1阻害薬となった現在、2次治療の主体はドセタキセルベースの化学療法である。しかし、ドセタキセルの効果は限定的であり、好中球減少の懸念も拭えず、2次治療にはアンメットニーズがある。 plinabulinはファースト・イン・クラスの免疫調整微小管結合薬(Selective Immunomoduliting Mictorotubule Binding agent, SINMBA)である。同剤は、微小管のチューブリンβサブユニットを結合し、樹状細胞を成熟化させ、T細胞の増殖を促進して免疫腫瘍反応の適正化する。・対象:1〜2ラインのプラチナ化学療法で進行したNSCLC(EGFR野生型、免疫チェックポイント阻害薬の前治療は許容)・試験薬群:plinabulin(30mg/m2 Day1)+ドセタキセル(70mg/m2 Day1、8)(PD群 278例)・対照薬群:ドセタキセル(70mg/m2 Day1、8)(D群 281例)・評価項目[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、第1サイクル8日目のGrade4の好中球減少、24および36ヵ月OS率、奏効期間(DoR)、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、PD群10.5ヵ月に対し、D群9.4ヵ月で、主要評価項目を達成した(HR:0.82、95%CI:0.67〜0.99、p=0.0399)。24ヵ月OS率は22.13%対12.51%であった。・PFS中央値は、PD群6.0に対し、D群4.4ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.63〜0.93)。・ORRは、PD群12.23%に対し、D群では6.76%であった(p=0.0275)。・第1サイクル8日目のGrade4の好中球減少はPD群で5.26%に対し、D群では27.8%と、PD群で有意に少なかった(p<0.0001)。・PD群の有害事象発現率は全Gradeで56.9%、Grade3/4では27.4%であった。 発表者は、plinabulinとドセタキセルの併用は、NSCLC2/3次治療において、良好な効果と安全性を示すとともに、plinabulinの骨髄保護作用がGrade4の好中球現象を減少させた、と述べている。 plinabulinとドセタキセルの併用は、NSCLC2/3次治療としての可能性を示唆したと言えるだろう。

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腹膜播種診療ガイドライン 2021年版

腹膜播種診療に本邦初となる臓器横断的なガイドライン登場!腹膜播種は、腫瘍細胞が腹腔内に散布された形で多数の転移を形成する予後不良の病態で、がん種や地域ごとに様々なアプローチで診断・治療がされており、統一した治療指針が確立されていない。日本腹膜播種研究会では臓器横断的な観点から腹膜播種患者の予後向上を目指し、本邦初となるガイドラインを策定。腹膜播種特有の手技(審査腹腔鏡、腹腔内温熱化学療法、CART)に対するCQ等、臨床で有用な推奨を明示した。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    腹膜播種診療ガイドライン 2021年版定価3,300円(税込)判型B5判頁数B5判・212頁・図数:3枚発行2021年8月編集日本腹膜播種研究会電子版でご購入の場合はこちら

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トラスツズマブ デルクステカン、HER2変異NSCLCに有望(DESTINY-Lung01)/ESMO2021

 HER2抗体複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)による、既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する第II相試験DESTINY-Lung01の初回解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表され、有効な成績が示された。 NSCLCにおけるHER2遺伝子変異は約3%と多くはない。標的治療薬は承認されておらず、検査は行われない。治療には化学療法が使われるが、効果は限定的である。 そのようななか、第II相DESTINY-Lung01試験の中間解析で良好な成績を示したことから、T-DXdに新たな選択肢としての期待がかかる。 DESTINY-Lung01試験は多施設国際2コホート研究。・対象:転移を有する標準療法不応のHER2発現またはHER2変異陽性の非扁平上皮NSCLC・コホート1:HER2過剰発現患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)・コホート1a:HER2過剰発現患者 T-DXd 5.4mg/kg 3週間ごと(n=41)・コホート2:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=42)・コホート2拡張:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による全奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・HER2変異NSCLCは91例登録され、T-DXdの投与を受けた。・データカットオフ時(2021年5月3日)の追跡期間中央値は13.1ヵ月であった。・無症候性中枢神経系(CNS)転移は36.3%に認められた。・98.9%が全身治療を受けており、前治療数の中央値は2であった。・前治療の内訳はプラチナベース化学療法94.5%、PD-(L)1阻害薬65.9%、プラチナベース化学療法+PD-(L)1阻害薬62.6%、ドセタキセル19.8%、HER2-TKI14.3%であった。・ICR評価のconfirmed ORRは54.9%、DCRは92.3%であった(CR1例、PR49例、SD34例)。・サブグループのORRは、脳転移の有無、HER2変異サブタイプを問わず、良好であった。・DoR中央値は9.3ヵ月、PFD中央値は8.2ヵ月、OS中央値は17.8ヵ月であった。・治療関連有害事象(TEAE)は96.7%で発現した。・薬物関連間質性肺疾患(ILD)は24例24.1%で発現した。そのうち、75%はGrade1および2であった。 T-DXdは、既治療のHER2変異陽性NSCLC患者に良好かつ持続的な有効性を示した。安全性プロファイルも以前の研究と一致しており、間質性肺疾患についても管理可能なものであった。 この研究は、T-DXdがこれらの集団に対する、新たな標準治療としての可能性をを支持するものだ、と発表者は締めくくった。 この結果はNEJM誌に同時公開された。

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迅速承認がん治療薬、確認試験が否定的でも推奨薬のまま?/BMJ

 米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を受けたがん治療薬の適応症は、法令で定められた承認後確認試験で有効性の主要エンドポイントの改善が得られなかった場合であっても、3分の1が添付文書に正式なFDAの承認を得たものとして記載され、数年にわたり診療ガイドラインで推奨されたままの薬剤もあることが、カナダ・クイーンズ大学のBishal Gyawali氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月8日号で報告された。承認後確認試験で否定的な迅速承認薬の後ろ向き観察研究 研究グループは、FDAの迅速承認を受けたものの、承認後確認試験で主要エンドポイントの改善が得られなかったがん治療薬の規制上の取り扱いを調査し、承認後確認試験の否定的な結果が診療ガイドラインでの推奨にどの程度影響を及ぼしているかを評価する目的で、後ろ向き観察研究を実施した(米国・Arnold Venturesの助成を受けた)。 FDAのDrugs@FDAデータベースを用いて、2020年12月までに迅速承認を受けたすべてのがん治療薬が系統的に検索された。また、FDAのPostmarketing Requirements and Commitmentsデータベースを検索し、これらの薬剤の適応症について、法令で定められた承認後確認試験の結果が調査された。 規制措置や確認試験の否定的な結果が臨床現場に及ぼす影響を評価するために、迅速承認された各薬剤の適応症について、全米包括的がんネットワーク(NCCN)の診療ガイドラインにおける、2021年5月の時点での推奨状況の確認が行われた。自主的に撤回は61%、1項目はFDAが承認を取り消し 迅速承認を受けたが承認後確認試験で主要エンドポイントが改善されなかったがん治療薬とその適応症として、10剤の18項目(免疫チェックポイント阻害薬 11項目、モノクローナル抗体 4項目、分子標的薬、化学療法薬、抗体薬物複合体 各1項目)が特定された。 18項目のうち、11項目(61%)が製薬会社によって自主的に撤回され、1項目(HER2陰性乳がんのベバシズマブ)はFDAにより承認を取り消されていた。11項目の自主的撤回のうち6項目は2021年に行われていた。また、18項目のうち残りの6項目(33%)は、添付文書に適応と記載された状態だった。 一方、NCCNガイドラインでは、承認の自主的撤回および取り消し後も一定の頻度で、これらの薬剤が高いレベルで推奨されており、1項目(PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がんのアテゾリズマブ)がカテゴリー1(高レベルのエビデンスに基づき、NCCNの統一したコンセンサスがある)、7項目はカテゴリー2A(比較的低レベルのエビデンスに基づき、NCCNの統一したコンセンサスがある)であった。 著者は、「これらの知見は、迅速承認の行程を支える速度とエビデンスの妥結点が達成されていないことを表している。最近の規制措置の動きからは、FDAがこのような状況に多大な注意を払ってきたことがうかがわれるが、FDAが承認したすべての薬剤が患者にとって安全で有効であることを示すには、迅速承認の行程の新たなガイダンスと改革が求められる」としている。

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進行食道がん1次治療に免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が参入(解説:上村直実氏)

 外科的に切除不能な進行・再発または転移のある食道扁平上皮がんに対して、一般的には放射線・化学療法が行われている。このうち化学療法に関しては30年前からフルオロウラシルとシスプラチン等のプラチナ製剤の併用療法(FP療法)が標準治療として用いられてきたが、最近、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1阻害薬)の登場によって大きな変化が起こりつつある。すなわち、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)など抗PD-L1阻害薬とFP療法の併用がFP療法単独に比べて、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)を有意に延長するという研究結果が報告されている。 今回は切除不能進行・再発食道扁平上皮がんに対する1次治療の有用性を検討するために世界26ヵ国で実施された国際共同第III相試験(KEYNOTE-590試験)の結果がLancet誌に報告された。CPSが10以上の症例を対象とした本試験では、ペムブロリズマブとFPの併用療法がFP単独に比べてOSならびにPFSを有意に延長し、食道扁平上皮がんに対する標準化学療法に名乗りを上げる研究結果と思われる。今後、手術不能進行食道がんに対する標準治療は、抗PD-L1阻害薬とFP療法の併用療法もしくは異なる抗PD-L1阻害薬の併用療法と放射線治療を加えた集学的治療の有用性が検討された後、食道がんに対する初期化学療法が大きく変わるものと思われる。 なお、日本における保険診療の現場に対しては、9月にニボルマブとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法およびニボルマブと化学療法の併用療法の有用性を示した国際共同RCTであるCheckMate-648試験の結果に基づいて食道がんの1次治療に使用できるようにするための一変申請が提出されている。今後、ペムブロリズマブに関しても同様の内容で申請されることが予想される。現時点におけるニボルマブとペムブロリズマブの違いは、前者はCPSにかかわりなく使用可能であるが後者にはCPSが5以上という条件が付される可能性がある。いずれにせよ、近いうちに食道がんに対する標準的化学療法が大きく変化して診療ガイドラインにも反映されるものと思われる。 さらに、今年の6月に発表されたCheckMate-649試験では、切除不能進行・再発胃がん/食道胃接合部がん/食道腺がんを対象としてニボルマブと化学療法の併用ないしはニボルマブとイピリムマブの併用療法が化学療法単独に比べて優越性を認めたことから、胃がんに対する標準治療にも抗PD-L1阻害薬が参入する可能性が出てきており、上部消化管領域の切除不能進行がんに対する化学療法が大きな変革を迎えようとしており、ひいては患者さんが大きな恩恵を受けることが期待される。

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EGFR exon20挿入変異非小細胞肺がんへのmobocertinibをFDAが迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年9月15日、プラチナベース化学療法で進行した、EGFR exon20挿入変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、mobocertinibを迅速承認した。 mobocertinibは、EGFR exon20挿入変異を標的とした、新たなTKIである。 今回の承認は、上記患者を対象とした国際非ランダム化非盲検マルチコホート試験(NCT02716116)に基づいたもの。 同試験では、プラチナベース化学療法で疾患進行した114例の患者に、mobocertinib160mg/日を疾患進行または忍容できない毒性の発現まで投与し、有効性を評価した。 主要有効性評価指標は、盲検化独立中央委員会(BICR)評価の全奏効率(ORR)と奏効期間。ORRは28%、奏効期間中央値は17.5ヵ月。一般的な副作用(20%以上)は、下痢、発疹、悪心、口内炎、嘔吐、食欲減退、爪囲炎、倦怠感、皮膚の乾燥、筋骨格痛であった。

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