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EGFR陽性NSCLC、EGFR-TKIによる術後補助療法1年延長でOS改善(ICOMPARE)

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を用いた術後補助化学療法により、無病生存期間(DFS)の改善1,2)が認められており、最新の研究(ADAURA試験)では全生存期間(OS)の改善3)も認められているが、治療期間との関係は明らかになっていない。そこで、中国・Beijing Cancer HospitalのChao Lv氏らは、肺腺がん患者に対してEGFR-TKIのicotinibによる術後補助化学療法を1年実施した場合と、2年実施した場合の有効性・安全性を無作為化比較試験により検討した。その結果、icotinibの2年投与は1年投与と比較して、DFSのみならず、OSも改善した。本研究結果は、ESMO Open誌2023年6月20日号で報告された。・試験デザイン:多施設共同海外第II相無作為化非盲検比較試験・対象:18歳以上でStageII/IIIAのEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)肺腺がん患者のうち、完全切除可能であった109例・試験群(2年群):icotinib 125mgを1日3回、2年間投与 54例・対照群(1年群):icotinib 125mgを1日3回、1年間投与 55例・評価項目[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくDFS[副次評価項目]OS、安全性・データカットオフ日:2020年9月27日 主な結果は以下のとおり。・主な患者背景は、年齢中央値59歳(範囲:32~76)、女性67%で、EGFR遺伝子変異の内訳は、ex19delが55%、L858Rが45%であった。また、StageIIが52%、StageIIIAが48%であった。・データカットオフ時点の追跡期間中央値は44.1ヵ月であった。・DFS中央値は、1年群が32.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~44.8)であったのに対し、2年群は48.9ヵ月(同:33.1~70.1)であり、2年群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.28~0.94、p=0.029)。・治療期間終了後のDFS中央値は、1年群22.6ヵ月(95%CI:14.9~38.9)、2年群26.8ヵ月(同:14.5~46.1)であり、有意差は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.33~1.53、p=0.3832)。・OSについて、2年群は1年群と比較して有意に改善した(HR:0.34、95%CI:0.13~0.95、p=0.0317)。・5年OS率は、1年群が72%であったのに対し、2年群は88%であり、2年群が有意に改善した(p=0.032)。・治療関連有害事象(TRAE)は、1年群75%(41例)、2年群67%(36例)に認められた。Grade3/4のTRAEは、1年群7%(4例)、2年群6%(3例)に認められた。治療に関連した死亡や間質性肺疾患の報告はなかった。

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フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例【見落とさない!がんの心毒性】第22回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・男性主訴 胸痛既往歴脂質異常症、糖尿病生活歴タバコ20本/日×38年現病歴X年10月下部食道扁平上皮がん T3N2M1(肝転移)、ステージIVbの診断で、放射線化学療法の方針となった。放射線療法50Gy+化学療法「シスプラチン+フルオロウラシル」2コースの初期治療に続いて、「ネダプラチン+フルオロウラシル」を6コース行い完全寛解となった。X+2年7月食道がんの局所再発あり。光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)を500J実施したが、同年9月のCT、PETでリンパ節転移を認め、ネダプラチン+フルオロウラシルを再開した。再開1回目の入院治療時、持続点滴開始3日後に胸部絞扼感が出現。モニター心電図の変化が疑われ循環器科受診。心筋逸脱酵素の上昇はなく、安静時心電図正常、負荷心電図陰性、心エコーも特記所見がなかったため、頓服用の硝酸薬が処方され退院。さらに、2コース目の治療入院の際にもフルオロウラシル持続点滴開始2日目に胸痛発作あり、Ca拮抗薬を開始しつつホルター心電図を実施した。退院後は胸痛発作なく過ごしたため、3コース目で入院したが化学療法開始後に胸痛発作が出現したため、さらに硝酸薬を追加し、がん治療は中止した。循環器科初診時の検査データWBC 3,000/μL、RBC 487×104/μL、Hb 15.2g/dL、Plt 18.0×104/μL、TP 6.9g/dL、Alb 4.3g/dL、AST 23U/L、ALT 32U/L、ALP 230U/L、LDH 178U/L、CK 88U/L、CRP 0.13mg/dl、Na 141mmol/L、K 4.4mmol/L、Cl 102mmol/L、BUN 10.8mg/dL、Cr 1.15mg/dL、Glu 116mg/dL、CEA 1.9ng/mL、CA19-9 16.4U/mL、SCC抗原 1.5ng/mL、BNP 33.2pg/mL、トロポニンT 0.012ng/mL(正常<0.014 ng/mL)安静時心電図と胸痛発作時を含むホルター心電図を以下に供覧。<安静時心電図>画像を拡大する心電図所見洞調律、正常範囲。追加で行ったマスターダブル負荷試験は陰性。<ホルター心電図>【発作時の圧縮波形】画像を拡大する心電図所見心室性期外収縮が出現し、徐々にST上昇の変化をきたしていることが確認できます。【拡大波形】画像を拡大する心電図所見非発作時:ST上昇なし。心電図変化:(1)に比し、ch1でST上昇傾向を認めます。胸痛発作:(2)と比し、ch1でのST上昇が顕著となっています。【問題】本症例の病状、方針として妥当と思われるものはどれか?a.症状、心電図変化からフルオロウラシルに関連した冠攣縮性狭心症を考える。b.3コース目で治療を中止しているが、さらに、ニコランジルなどの冠拡張薬を追加し同一の化学療法を継続すべき。c.ST上昇を認めるので、速やかに心臓カテーテル検査などの精査を行うべき。d.抗がん剤治療のレジメン自体を見直す。1)Shiga T, et al. Curr Treat Options Oncol. 2020;21:27.2)Cucciniello T, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960240.3)Chong JH, et al. Interv Cardiol. 2019;14:89-94.4)Redman JM, et al. J Gastrointest Oncol. 2019;10:1010-1014.5)Zafar A, et al. JACC CardioOncol. 2021;3:101-109.講師紹介

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KRAS G12C変異陽性NSCLCに対するソトラシブ+化学療法の有効性(SCARLET)/ASCO2023

 KRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、KRAS G12C阻害薬であるソトラシブとカルボプラチン、ペメトレキセドとの併用療法が有用である可能性が示された。国内単群第II相試験として実施されたSCARLET試験の主要評価項目の解析結果として、和歌山県立医科大学の赤松 弘朗氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 KRAS G12Cは進行非扁平上皮NSCLCのdruggableターゲットで、免疫チェックポイント阻害薬(±プラチナダブレット化学療法)、ソトラシブ、細胞障害性抗がん剤単剤が標準治療とされてきた。SCARLET試験では、化学療法治療歴のないKRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCに対して、ソトラシブ、カルボプラチン、ペメトレキセドの併用療法の有効性と安全性について評価した。・対象:未治療のKRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLC患者30例・介入:ソトラシブ(960mg)+カルボプラチン(AUC 5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ソトラシブ+ペメトレキセドを病勢進行まで継続・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)および有害事象(AE) 主な結果は以下のとおり。・2021年10月~2022年7月に登録された30例中、29例が安全性、27例が有効性解析の対象となった。・観察期間中央値4.1ヵ月における、BICR判定ORRは88.9%(80%信頼区間[CI]:76.9~95.8、95%CI:70.8~97.6)であった。事前設定のORR基準(閾値40%、期待値65%)を満たし、主要評価項目を達成した。・BICR判定によるPFS中央値は5.7ヵ月、6ヵ月PFS率は49.6%、治験担当医判定によるPFS中央値は7.6ヵ月、6ヵ月PFS率は56.7%であった。・OS中央値は未到達で、6ヵ月OS率は87.3%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は72.4%に発現し、そのうち20%以上の項目は貧血(37.9%)、好中球数減少(24.1%)、血小板数減少(24.1%)、白血球数減少(20.7%)であった。 KRAS G12C変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCにおける、ソトラシブと化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)の併用は良好な有効性と忍容性を示した、と赤松氏は結んだ。

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TKI耐性EGFR陽性NSCLCに対するペムブロリズマブ+化学療法の最終解析(KEYNOTE-789)/ASCO2023

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブと化学療法の併用は、統計学的に有意な生存ベネフィットを示さなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏が発表した、国際共同二重盲検第III相KEYNOTE-789試験の最終解析の報告である。・対象:EGFR-TKI治療後のEGFR変異陽性NSCLC症例・試験群:ペムブロリズマブ(Pembr)+カルボプラチン/シスプラチン+ペメトレキセド(Peme)→Pembr+Peme(Pembr群:245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン/シスプラチン+Peme→プラセボ+Peme(CT群:247例)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など今回の発表には、追跡期間中央値28.6ヵ月(データカットオフ:2021年12月)における2回目の中間解析のPFSと、追跡期間中央値42.0ヵ月(同:2023年1月)のOS最終解析が含まれている。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はPembr群が5.6ヵ月、CT群が5.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.80(95%信頼区間[CI]:0.65〜0.97、p=0.0122)であった。事前に設定されていた2回目の中間解析のp値の閾値0.0117を下回ることはなかった。・6ヵ月PFS率はPembr群が42.8%、CT群が34.6%、12ヵ月PFS率はそれぞれ14.0%と10.2%であった。・OS中央値はPembr群が15.9ヵ月、CT群が14.7ヵ月で、HRは0.84(95%CI:0.69〜1.02、p=0.0362)と、こちらも事前設定のp値の閾値0.0117を下回ることはなかった。・12ヵ月OS率はPembr群が61.6%、CT群が59.4%、24ヵ月OS率はそれぞれ30.6%と26.4%であった。・PD-L1発現状況別に見たOSのHRは、TPS≧50%で0.84(95%CI:0.55~1.30)、1〜49%で0.76(同:0.52~1.10)、<1%では0.91(同:0.70~1.19)であった。・ORRはPembr群で29.0%、CT群で27.1%、DOR中央値は、それぞれ6.3ヵ月と5.6ヵ月であった。・両群ともに新たな安全性シグナルは報告されなかった。

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転移乳がんへのカペシタビン、固定用量vs.標準用量(X-7/7)/ASCO2023

 転移を有する乳がん(MBC)患者を対象としたX-7/7試験において、カペシタビンの固定用量(1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬)は、体表面積に基づく用量(1,250mg/m2 1日2回 14日間投与後7日間休薬)と比較して、無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)に差はなく、手足症候群などの有害事象の発生率が低かったことを、米国・カンザス大学がんセンターのQamar J. Khan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 MBCは継続的な治療が必要となるため毒性の少ない治療が望まれているが、FDAに承認されているカペシタビンの用量では忍容性が低く、中止率が高いという懸念がある。そこで研究グループは、体表面積に関係なく固定用量のカペシタビンを投与した場合の有効性と安全性を、標準用量と比較するランダム化試験を実施した。・対象:内分泌療法または化学療法の治療歴のある転移を有する乳がんの女性(HER2+患者ではトラスツズマブを併用)・試験群(固定7/7群):カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与→7日間休薬 80例・対照群(標準14/7群):カペシタビン1,250mg/m2 1日2回 14日間投与→7日間休薬 73例・評価項目[主要評価項目]3ヵ月PFS率[副次評価項目]PFS、OS、奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2015年10月~2021年4月にMBC患者153例を固定7/7群と標準14/7群に1対1に無作為に割り付けた。ベースライン時の患者特性は同等で、年齢中央値60歳、内臓転移ありが44%、HR+HER2-が78%、HER2+が11%、トリプルネガティブが11%、化学療法の前治療歴なしが65%、測定可能な病変を有していたのは67%であった。・PFS中央値は、固定7/7群で8.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.4~11.6)、標準14/7群で12.1ヵ月(同:8.9~16.3)であった(p=0.98)。・固定7/7群および標準14/7群のPFS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月PFS率:76%、76%、p=0.99 -6ヵ月PFS率:39%、50%、p=0.23 -24ヵ月PFS率:25%、23%、p=0.77 -36ヵ月PFS率:11%、0%、p=0.24・ORRは固定7/7群8.9%、標準14/7群19.6%であった(p=0.11)。・OS中央値は、固定7/7群19.8ヵ月(95%CI:12.9~28.3)、標準14/7群17.5ヵ月(同:12.5~34.0)であった(p=0.17)。・固定7/7群および標準14/7群のOS率はそれぞれ下記のとおりであった。 -3ヵ月OS率:94%、85%、p=0.16 -12ヵ月OS率:56%、63%、p=0.59 -24ヵ月OS率:30%、33%、p=0.85 -36ヵ月OS率:23%、23%、p=1.00 -48ヵ月OS率:17%、14%、p=0.82・Grade3~4の有害事象は、固定7/7群で11.3%、標準14/7群で27.4%に生じた(p=0.02)。Grade2~4の有害事象のうち、下痢は2.5%/20.5%(p=0.0008)、手足症候群は3.8%/15.1%(p=0.0019)、口内炎は0%/5.5%(p=0.0001)、好中球減少は21.3%/27.4%(p=0.68)であった。 これらの結果より、Khan氏は「MBCの治療で有効性を維持しながら毒性を最小化するために、カペシタビン1,500mg 1日2回 7日間投与後7日間休薬する固定用量は有用なオプションとなる可能性がある」とまとめた。

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直腸がんへのネオアジュバント強化、長期フォローアップでも有用性示す(PRODIGE 23)/ASCO2023

 局所進行直腸がん患者において、標準治療である術前化学放射線療法よりも前にmFOLFIRINOXによる化学療法を強化することで無病生存期間(DFS)が有意に改善されることを報告した第III相PRODIGE 23試験。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)では本試験の7年の長期フォローアップの結果を、フランス・ロレーヌがん研究センターのThierry Conroy氏が報告した。・対象:T3またはT4の直腸腺がん患者、18~75歳、PS1以上・試験群(術前化学療法群):mFOLFIRINOXによる6サイクル・3ヵ月の化学療法→化学放射線療法→直腸間膜全切除(TME)→mFOLFOXによる4サイクル・3ヵ月の補助化学療法・対照群(標準治療群):化学放射線療法→TME→mFOLFOXによる8サイクル・6ヵ月の補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無転移生存期間(MFS)、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・2012年6月~2017年6月に35の参加施設から461例が登録され、標準治療群230例と術前化学療法群231例に割り付けられた。年齢中央値61.5歳、66.3%が男性だった。・今回の解析における追跡期間中央値は82.2ヵ月で、標準治療群56例、術前化学療法群42例の死亡が報告された。・7年時点における局所再発の累積発生率は標準治療群8.1% vs.術前化学療法5.3%、転移率は標準治療群27.7% vs.術前化学療法群18.4%と、術前化学療法群が良好だった。・2次がんの発生率は標準治療群4.8%に対し、術前化学療法群は19.4%と高かった。すべてが固形がんで血液腫瘍は含まれなかった。・7年時点におけるDFSは標準治療群62.5%(95%信頼区間[CI]:55.6~68.6)vs.術前化学療法群67.6%(95%CI:60.7~73.6)、MFSは同65.4%(95%CI:58.7~71.3)vs.73.6%(95%CI:67.0~79.2)、OSは同76.1%(95%CI:69.8~81.3)vs.81.9%(95%CI:75.8~86.7)と、いずれも術前化学療法群が優れていた。 Conroy氏は「mFOLFIRINOXの術前化学療法の強化によって、7年の長期フォローアップにおいてもDFS、OSを含むすべてのアウトカムが有意に改善していた。この治療戦略は局所進行直腸がんにおける最良の治療の1つと考えるべきだ」とした。

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局所進行大腸がんにおける、術前化学療法の有用性は?(NeoCol)/ASCO2023

 局所進行大腸がん初回治療の標準治療は切除と術後補助化学療法だが、ほかのがん種で広がる術前化学療法は有効なのか。この点について検討したランダム化比較第III相NeoCol試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、デンマーク・Danish Colorectal Cancer Center SouthのLars Henrik Jensen氏が発表した。・対象:浸潤が5mm以上と評価されたT3あるいはT4、PS0~2、18歳以上の大腸がん患者・試験群(術前化学療法群):3サイクルのCAPOX、または4サイクルのFOLFOX後に手術、術後の状態に応じて術後補助化学療法・対照群(標準治療群):先行手術、術後の状態に応じて8サイクルの術後補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]術後補助化学療法を受ける割合、全生存期間(OS)、有害事象、QOL 主な結果は以下のとおり。・2013年10月~2021年11月に3ヵ国の9施設において術前化学療法群126例と標準治療群122例が登録された。45%が女性、年齢中央値66歳、PS0が90%、ベースラインのStageはT3が73%だった。・術前術後を合わせた化学療法サイクル数中央値は、標準治療群5.9に対し、術前化学療法群は4.8だった。・術後補助化学療法を必要とした患者は、標準治療群のほうが多かった(73% vs.59%、p=0.03)。・2年時点のDFSは両群で同等であり(p=0.94)、OSも同等だった(p=0.95)。・術後合併症はイレウス(標準治療群:8% vs.術前化学療法群:4%)、吻合部漏出(同:8% vs.2%)の発生率が高かった。・Grade3以上の有害事象は下痢(標準治療群:14% vs.術前化学療法群:13%)、末梢神経障害(同:11% vs.7%)の頻度が高かったが、両群で大きな差はみられなかった。 Jensen氏は「術前化学療法は標準治療と比較して、DFSおよびOSに優位性は示されなかった。しかし、術前化学療法は、化学療法サイクル数、術後合併症、および病期の進行の点で標準療法よりも好ましい結果をもたらしていた」とした。

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TN乳がんのHER2発現状況、生検時期によって変動/ASCO2023

 HER2の発現状況は変動的であり、HER2低発現ではないIHC 0のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者が病勢進行時に生検を繰り返し行うことでHER2低発現となる可能性があることを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・マサチューセッツ総合病院のYael Bar氏が発表した。 第III相DESTINY-Breast04試験サブグループ解析において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はTNBCを含むHER2低発現で転移を有する乳がん患者の無増悪生存期間と全生存期間を有意に改善した。しかし、T-DXdのFDA承認はHER2低発現であってTNBCではないため、HER2低発現かどうかを特定することは臨床的に重要である。 先行研究では、TNBCにおけるHER2発現状況は不均一で時間の経過とともに変動することが示唆されているが、TNBC患者がHER2低発現の結果を得るために繰り返し生検を受ける意義があるかどうかは不明である。そこで研究グループは、TNBC患者における生検の実施回数とHER2発現状況の相関、生検を繰り返して行う意義、生検時期によるHER2発現状況の変動の評価を行った。 研究グループは、2000~22年に単一施設で治療を受けたTNBC(ER/PR<10%、HER2陰性)患者512例のデータを後方視的に解析した。HER2の発現状況が不明または不確定の患者は除外された。HER2低発現は、IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-と定義された。生検は実施時期や実施方法に基づいて分類された。 患者の年齢中央値は52歳(範囲:25~97歳)、50歳以上が46%、ER低発現(1~10%)が13%、術前化学療法実施が54%であった。StageIが28%、StageIIが48%、StageIIIが14%、StageIVが8%、不明が1%で、生検の実施回数は1回が38%、2回が45%、3回が9%、4回が6%、5回以上が2%であった。 主な結果は以下のとおり。・生検の合計実施回数が増えるにつれて、HER2低発現の結果を少なくとも1回示した患者の割合が増加した。生検を計1回実施した患者では59%、計2回では73%、計3回と計4回では83%、計5回以上では100%であった。・以前の生検でHER2ゼロだった患者は、次の生検を受けるたびにその3分の1が新たにHER2低発現の結果を示した。・同一患者の異なるタイミングの生検を分析した結果、HER2ゼロ→HER2低発現、HER2低発現→HER2ゼロの変動が主に認められ、その変動の可能性は早期に実施した生検と転移が進んだ状態で実施した生検の間で最も大きかった。転移が進んだ状態の生検は、HER2ゼロ→HER2低発現となる割合が高かった。・術前化学療法の有無はHER2発現状況の変動に影響を与えなかった。 これらの結果より、Bar氏は「TNBC患者においてHER2発現状況は変動的であった。T-DXdの適応がない患者でも、生検を繰り返すことで新たにHER2低発現の結果を得られる可能性があるため、実施可能かつ安全であるのであれば検討してもよいと考える。また、何らかの理由で生検を行った場合は再検査を行うべきである」とまとめた。

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膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Knut Jorgen Labori氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。 切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。対象:切除可能膵臓がん試験群:FOLFIRINOX4サイクル→手術→FOLFIRINOX8サイクル(ネオアジュバント群)対照群:手術→FOLFIRINOX12サイクル(アジュバント群)評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・140例が無作為に割り付けられた(ネオアジュバント群:77例、アジュバント群:63例)。年齢中央値は66.5歳(四分位範囲[IQR]:59.72)、ECOG0は115例(82.1%)、1が25例(17.9%)だった。最終的にネオアジュバント群:63例、アジュバント群:56例が切除を受けた。・術後補助療法でのFOLFIRINOXの使用は、ネオアジュバント群では25%、アジュバント群では40%にとどまった。・R0切除率はネオアジュバント群56%、アジュバント群39%であった(p=0.076)。・N0切除率はネオアジュバント群29%、アジュバント群14%であった(p=0.060)。・OS中央値はネオアジュバント群25.1ヵ月、アジュバント群38.5ヵ月であった(HR:1.52、95%CI:0.94~2.46、p=0.096)。・18ヵ月後のOSはネオアジュバント群60%、アジュバント群73%だった(p=0.1)。・Grade3~5の有害事象はネオアジュバント群は57.5%、アジュバント群は40.4%に発現した。 FOLFIRINOXの術前補助療法は許容可能な安全性と切除実施率を示したものの、切除可能な膵臓がんに対するスタンダードとして支持される結果とはならなかった。

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HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験において、SGがPFSを有意に改善(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83)したことはASCO2022で、OSについてはプロトコールでの最終解析である第2回中間解析の結果、有意に改善(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96)したことがESMO2022で発表されている。また、HER2低発現例においてPFSが有意に改善(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79)したこともESMO2022で発表されている。今回、探索的解析として、追跡期間を延長し解析した結果が発表された。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年12月1日)時点で、追跡期間中央値は12.75ヵ月となった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月で、引き続きPFSの改善を示した(HR:0.65、95%CI:0.53~0.81、nominal p=0.0001)。・OS中央値はSG群14.5ヵ月、TPC群11.2ヵ月で、OSも引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、nominal p=0.0133)。12ヵ月OS率は、SG群60.9%、TPC群47.1%、18ヵ月OS率はSG群39.2%、TPC群31.7%、24ヵ月OS率はSG群25.7%、TPC群21.1%であった。・HER2 IHC別のPFSは、HER2低発現(HR:0.60、95%CI:0.44~0.82)およびHER2ゼロ(HR:0.70、95%CI:0.51~0.98)ともSG群で有意に改善がみられた。・HER2 IHC別のOSは、HER2低発現(HR:0.75、95%CI:0.57~0.97)およびHER2ゼロ(HR:0.85、95%CI:0.63~1.14)ともSG群で改善がみられた。・ORR、CBRも引き続き改善を示し、DORは延長した。・延長された追跡期間に新たな安全性シグナルはみられなかった。 Tolaney氏は「本試験の追加された追跡期間においてもSGの有用性が持続したことにより、治療歴のある内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-転移乳がんに対して、SGが重要で新たな治療であることがさらに補強された」と結論した。

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高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

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早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。最初の患者無作為化後5年時点で分析 ZUMA-7試験は、早期再発(1次化学免疫療法後12ヵ月以内に再発)または難治性(1次治療に抵抗性)LBCLの18歳以上の患者を対象とし、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、axi-cel療法または標準治療(化学免疫療法2~3サイクル、奏効が得られた患者には続けて高用量化学療法+自家幹細胞移植)を行い追跡評価した。 2018年1月25日~2019年10月4日に、被験者計359例がaxi-cel療法群(180例)または標準治療群(179例)に無作為化された。 主要アウトカムはEFSで、主な副次アウトカムは奏効とOSであった。 本論では、事前規定のOS解析(最初の患者を無作為化後5年時点で評価)の結果が報告されている。既報の主要アウトカムのEFSについては、axi-cel療法群が標準治療群よりも有意に優れたことが示され(ハザード比[HR]:0.40、層別化log-rank検定のp<0.001)、追跡期間中央値24.9ヵ月時点で、EFS期間中央値はaxi-cel療法群8.3ヵ月、標準治療群2.0ヵ月であり、同24ヵ月時点のEFS率はそれぞれ41%、16%だった。奏効が認められたのはaxi-cel療法群83%、標準治療群50%であり、完全奏効(CR)が認められたのは、それぞれ65%、32%だった。4年PFS率、標準治療群24%に対しaxi-cel療法群42% 追跡期間中央値47.2ヵ月(範囲:39.8~60.0)時点で、死亡はaxi-cel療法群82例、標準治療群95例で報告された。 OS中央値は、axi-cel療法群は未到達であり、標準治療群は31.1ヵ月だった。推定4年OS率は、それぞれ54.6%、46.0%で(死亡に関するHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.98、両側log-rank検定のp=0.03)、これらaxi-cel療法による生存の改善は、患者の74%で原発性難治性疾患やその他のハイリスク要因が認められたITT集団で観察された。 治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値は、axi-cel療法群14.7ヵ月、標準治療群3.7ヵ月であり、推定4年PFS率はそれぞれ41.8%、24.4%だった(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 EFS主解析以降に、新たな治療関連死は発生しなかった。

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HER2+胆道がんに対するtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性/ASCO2023

 数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村 能章氏よりなされた。 これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。・対象:1ライン以上の化学療法治療歴のある進行または転移を有するHER2陽性胆道がん症例(HER2陽性:HER2高発現[IHC 3+]またはHER2遺伝子増幅あり[FISH/NGS]と定義)・介入:tucatinib 300mg×2/日+トラスツズマブ6mg/kg(初回8mg/kg)3週ごと・評価項目:[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年6月~2022年5月に30例が胆道がんコホートに登録され、追跡期間中央値は10.8ヵ月であった。・患者の年齢中央値は68.5歳、アジア人が76.7%、胆嚢がんが50%、StageIVが60.0%、前治療のライン数中央値は2であった。・ORRは46.7%で、CRは1例(3.3%)、PRは13例(43.3%)であった。DCRは76.7%で、DOR中央値は6.0ヵ月であった。・腫瘍縮小効果発現までの中央値は2.1ヵ月であった。・PFS中央値は5.5ヵ月で、6ヵ月PFS率は49.8%、12ヵ月PFS率は16.1%であった。・OS中央値は15.5ヵ月で、6ヵ月OS率は73.0%、12ヵ月OS率は53.6%であった。・治療関連有害事象は全例に認められ、主なものは発熱43.3%、下痢40.0%、インフュージョンリアクション26.7%、血中クレアチニン増加26.7%、ALT上昇26.7%などであった。Grade3以上の有害事象は、悪心10%、胆管炎10%、食欲不振10%などであり、治療関連死はなかった。・HER2検査の中央判定と施設判定での陽性一致率は、IHC、FISH共に87.5%であり、血液検体を用いたNGSでは75.9%であった。中央判定でHER2陰性と判定された症例に、奏効例はなかった。

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既治療・転移乳がんへのHER3-DXd、幅広いHER3発現状況で有用/ASCO2023

 複数治療歴のあるER+およびトリプルネガティブ(TN)の局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者を対象とした第II相試験の結果、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)の有効性は、幅広いHER3発現状況で認められたことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が発表した。 MBC患者はHER3が高値であることが多いが、HER3過剰発現はがんの進行や生存率の低下と関連することが報告されている。また、HER3-DXdの有効性は乳がんのサブタイプやHER3発現状況にあまり依存しない可能性が示唆されている。本試験は、HER3-DXd投与で最大の効果が得られる患者群を特定するために、パートA、パートB、パートZの3パートで実施されている。今回はパートAとして、特定のバイオマーカー(ER/PR/HER2/HER3)が発現した患者における有効性と安全性が検討された(データカットオフ:2022年9月6日)。・対象:18歳以上の男性または女性、HER2-、ECOG PS 0/1で下記のいずれかを満たすMBC患者1)HR+患者:0~2ラインの化学療法歴+内分泌療法±CDK4/6阻害薬による治療歴がある2)HR-患者(TN):1~3ラインの化学療法歴がある・試験群:HER3-DXd 5.6mg/kg 3週間ごとに静脈内投与 60例・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)、6ヵ月無増悪生存(PFS)率[副次評価項目]奏効期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、安全性・忍容性 など 主な結果は以下のとおり。・女性98.3%(男性は1例[1.7%])、18歳超65歳未満が71.7%、前治療ライン数中央値3(範囲:1~9)であった。StageIVが21.7%、BRCA1変異が3.3%、BRCA2変異が1.7%であった。ベースライン時のER高発現(10%超)/低発現(1~10%)/陰性(0%)はそれぞれ50.0%/2.1%/47.9%、PR高発現(10%超)/低発現(1~10%)/陰性(0%)はそれぞれ45.8%/6.3%/47.9%、TNは39.6%であった。・ベースライン時にHER3発現が評価可能であった47例のうち、HER3-high(75%以上)が63.8%、HER3-low(25~74%)が27.7%、HER3-negative(25%未満)が8.5%であった。・治療期間中央値は5.2ヵ月(範囲:0.7~15.2)で、43.3%の患者がHER3-DXdを6ヵ月以上継続していた。・全体のORRは35.0%(95%信頼区間:23.1~48.1)、CBRは43.3%(同:30.6~56.8)であった。HER3-highではそれぞれ33.3%/40.0%、HER3-lowでは46.2%/53.8%、HER3-negativeは症例は少ないものの50.0%/50.0%であった。・全体の6ヵ月以上のDOR達成は47.6%、HER3-highでは40.0%、HER3-lowでは33.3%、HER3-negativeでは100%であった。・HER3-highとHER3-lowでORRとCBRに有意差はみられなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は93.3%に認められ、Grade3/4が31.7%であった。主なものは、悪心、疲労、下痢、嘔吐、貧血、脱毛であった。7%(4例)に重篤なTRAEが生じ、内訳は間質性肺疾患、悪心・嘔吐、肺炎、血小板減少症であった。 これらの結果より、Hamilton氏は「複数の治療を重ねてきたER+およびTNのMBC患者において、HER3-DXdの有効性は幅広いHER3発現状況で認められた。Grade3/4のTRAEは少なく、管理可能な安全性プロファイルであった。この解析結果は、HER3-DXdがサブタイプにかかわらずMBSの治療パラダイムに参入する可能性を裏付けるものである」とまとめた。 なお、パートBではパートAのER/PR/HER2/HER3発現状況に基づいたサブグループで有効性を解析し、パートZではHER2+でT-DXd治療歴のあるMBC患者21例を追加登録して有効性を解析する予定。

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NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・術後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。 米国・スタンフォード大学のHeather Wakelee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、NSCLC患者を対象に周術期におけるペムブロリズマブの効果を評価した、無作為化二重盲検第III相試験。免疫チェックポイント阻害薬の術前・術後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、toripalimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。・対象:切除可能なStage(AJCC第8版)II、IIIA、IIIB(N2)NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mg 3週ごと最大13サイクル・対照群:プラセボ+化学療法(同上)3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボ3週ごと最大13サイクル・評価項目:[主要評価項目]EFSおよび全生存期間(OS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、主要な病理学的奏効(mPR) 主な結果は以下のとおり。・786例の登録患者をペムブロリズマブ群およびプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。・EFS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群17.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.72、p<0.00001)。・OS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群45.5ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.54〜0.99、p=0.02124)。・mPRはペムブロリズマブ群30.2%、プラセボ群11.0%、pCRはペムブロリズマブ群18.1%、プラセボ群4.0%であった。・治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群96.7%、プラセボ群95.0%で発現、免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群25.3%、プラセボ群10.5%で発現した。 このデータは、ペムブロリズマブを含む術前・術後補助療法が、切除可能なNSCLCの新たな治療選択肢となることを支持するものだと、Wakelee氏は述べた。

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HR+進行乳がん、capivasertib+フルベストラントが有効/NEJM

 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無にかかわらず、アロマターゼ阻害薬の治療中または治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertibとフルベストラントの併用療法は、フルベストラント単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏らによる第III相無作為化二重盲検比較試験「CAPItello-291試験」で示された。AKT経路の活性化は内分泌療法の抵抗性に関与することが知られているが、HR+進行乳がんに対するフルベストラントへのcapivasertib上乗せの有効性と安全性に関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月1日号掲載の報告。capivasertib+フルベストラントvs.フルベストラント単独を比較 研究グループは、CDK4/6阻害薬併用の有無にかかわらずアロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または病勢進行した、HR+HER2-進行乳がん患者(閉経前または閉経後の女性、および男性、化学療法歴1ライン以下)を、capivasertib+フルベストラント群(capivasertib群)、またはプラセボ+フルベストラント群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、全体集団およびAKT経路の遺伝子変異(PIK3CA、AKT1またはPTEN)を有する患者集団における、治験責任医師評価によるPFSで、安全性も評価した。主要評価項目のPFSは、capivasertib+フルベストラントで有意に延長 計708例が無作為化され、289例(40.8%)がAKT経路の遺伝子変異を有しており、489例(69.1%)が進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬の治療歴を有していた。 全体集団におけるPFS中央値は、capivasertib群7.2ヵ月、プラセボ群3.6ヵ月で、病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.51~0.71、p<0.001)であった。また、AKT経路の遺伝子変異を有する患者集団におけるPFS中央値は、capivasertib群7.3ヵ月、プラセボ群3.1ヵ月であった(HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、p<0.001)。 capivasertib群で頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、発疹(12.1% vs.0.3%)、下痢(9.3% vs.0.3%)であった。投与中止に至った有害事象は、capivasertib群13.0%、プラセボ群2.3%で報告された。

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局所進行直腸がん、術前FOLFOX単独は術前化学放射線療法に非劣性(PROSPECT)/ASCO2023

 局所進行直腸がんの標準治療は、術前の骨盤放射線照射とフッ化ピリミジン系抗がん剤による化学療法(化学放射線療法)である。PROSPECT(Alliance N1048)試験は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンを用いた術前化学療法(FOLFOX)が術前化学放射線療法の代わりに使用できるかを検討した第III相試験。PROSPECT試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションとして米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのDeborah Schrag氏が発表し、同日にNEJM誌に掲載された。PROSPECT試験で術前化学療法の術前化学放射線療法への非劣性を証明・対象:T2リンパ節陽性、T3リンパ節陰性または陽性の直腸間膜全切除術(TME)適応直腸がんの成人患者・試験群(FOLFOX群):術前にFOLFOX6サイクル。抗腫瘍効果を評価し、20%以上の腫瘍縮小があればそのままTME。20%未満であれば化学放射線療法を追加してTME。術後R0であればFOLFOXを6サイクル追加、R1、R2であれば化学放射線療法とFOLFOXを4サイクル追加・対照群(化学放射線療法群):標準的な術前化学放射線療法→TME→術後FOLFOXを8サイクル追加・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)。再発または死亡に関するハザード比の両側90.2%信頼区間(CI)上限が1.29を超えない場合に非劣性とする[副次評価項目]全生存期間(OS)、無局所再発生存期間、病理学的完全奏効、有害事象プロファイルなど PROSPECT(Alliance N1048)試験の主な結果は以下のとおり。・2012年6月~2018年12月に、合計1,194例がランダム化を受け、1,128例が治療を開始した。うち585例がFOLFOX群、543例が化学放射線療法群に組み入れられた。・追跡期間中央値58ヵ月時点で、FOLFOX群のDFSは化学放射線療法群に対して非劣性であった(再発または死亡のハザード比:0.92、90.2%CI:0.74~1.14、非劣性のp=0.005)。・5年DFS率はFOLFOX群で80.8%(95%CI:77.9~83.7)、化学放射線療法群で78.6%(95%CI:75.4~81.8)だった。OS率(死亡のハザード比:1.04、95%CI:0.74~1.44)および局所再発(ハザード比:1.18、95%CI:0.44~3.16)に関して、両群は同等だった。 術前化学療法の術前化学放射線療法への非劣性が証明されたことで、今後の実臨床では患者を選択したうえで放射線療法を省略することが治療選択肢となりそうだ。

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HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。 本試験の先行解析において、HER2+早期乳がん患者の術前治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ併用のpCR率が37.9%であったことが、2021年のLancet Oncology誌に掲載されている。今回は、手術を受けた患者を対象に、3年iDFS率の結果が発表された(データカットオフ:2023年2月24日)。PET反応例の判断基準はベースラインのSUVmax値から40%以上の減少であった。・対象:腫瘍径が1.5cm以上で、初回治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を受けたStageI~IIIAのHR+早期乳がん患者・試験群(PH群):PHを2サイクル→PET→PET反応例はPHを6サイクル/無反応例はTCHPを6サイクル→手術→pCR例はPHを10サイクル/非pCR例はTCHPを6サイクルとPHを4サイクル/PET無反応例はPHを10サイクル 285例・対照群(TCHP群):TCHPを2サイクル→PET→TCHPを4サイクル→手術→PHを12サイクル 71例・評価項目:[主要評価項目]試験群におけるPET反応例のpCR(ypT0/isN0)、試験群における3年iDFS[副次評価項目]全患者のpCR、対照群における3年iDFS、遠隔無病生存期間(DDFS)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性 など 主な結果は以下のとおり。・2017年6月26日~2019年4月24日に、356例をPH群とTCHP群に4:1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間中央値は3.5年(範囲:0~5.3)で、手術を受けたのはTCHP群63例(88.7%)、PH群267例(93.7%)であった。・PH群のPET反応例は79.6%(227例)、PET無反応例は20.4%(58例)であった。pCR率は37.9%であった(95%信頼区間[CI]:31.6~44.5、p<0.001)。・3年iDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が95.4%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。iDFSイベントは、PH群全体で4.5%、PH群のPET反応例かつpCR例で1.2%に生じた。・3年DDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が96.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・3年EFS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が93.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。・3年OS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が98.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象および重篤な有害事象の発現は、TCHP群が61.8%/27.9%、PH群全体が32.9%/13.8%、PH群のPET反応例かつpCR例が1.2%/0%であった。治療に関連する死亡例はなく、予期しない安全性上の所見は認められなかった。 これらの結果より、Cortes氏は「本試験において、PH群の3年iDFS率は95.4%で、とくにPET反応例かつpCR例では98.8%であった。多くのHER2+早期乳がん患者が、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)で治療できる可能性がある」とまとめた。

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心アミロイドーシス、本当に除外できていますか?【心不全診療Up to Date】第9回

第9回 心アミロイドーシス、本当に除外できていますか?Key Points心臓に影響を及ぼすアミロイドーシスには、どんな種類がある?最近話題のATTRアミロイドーシスって、なに?まずは疑い、早期発見!~心アミロイドーシス診断の今とこれから~はじめに心アミロイドーシスとは、心臓の間質にアミロイドと呼ばれる不溶性の異常な線維が沈着して機能障害を引き起こす、重篤で進行性の浸潤性疾患である。そのアミロイドが形成されるために必要なアミロイド前駆蛋白は、現在30種類以上同定されているが、心アミロイドーシスを来す病型は、異常形質細胞により産生されたモノクローナルな免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイドが全身諸臓器に沈着する免疫グロブリン性(AL, amyloid light chain)アミロイドーシス、トランスサイレチン(TTR, transthyretin) を前駆蛋白とするアミロイドが全身諸臓器に沈着するATTRアミロイドーシスのどちらかで98%以上を占める1)(図1、表1)。(図1)心臓に影響を及ぼすアミロイドーシスは、主にこの2種類画像を拡大するそしてATTRアミロイドーシスの中に、TTR遺伝子に変異のある遺伝性トランスサイレチン(ATTRv, hereditary transthyretin)アミロイドーシス(常染色体優性の遺伝性疾患)と、変異のない野生型トランスサイレチン(ATTRwt, wild-type transthyretin)アミロイドーシス(旧病名:老人性全身性アミロイドーシス)が存在する(表1)。(表1)心アミロイドーシスの主な種類とその特徴画像を拡大する画像診断技術や非侵襲的な診断方法の進歩のおかげで、そのほかの疾患で偶然診断されることも少なくなく(図2)、心アミロイドーシスは従来考えられていたよりも頻度の高い疾患であることがわかってきている。とくに近年症例数が増加している病型は、高齢者に多いATTRwtアミロイドーシスである2,3)(後述の表3で説明)。(図2)さまざまな場面における心アミロイドーシスの有病率画像を拡大するそして、心アミロイドーシスといえば、早期発見、早期治療がきわめて重要な疾患であるが、それはなぜか。その理由を含め、心アミロイドーシスの今とこれからについて皆さまと共有したい。まずは疑い、早期発見!~心アミロイドーシス診断の今とこれから~心アミロイドーシスを見逃さず早期発見するための症状やポイントを表2、図3にまとめた。(表2)心アミロイドーシスをいつ疑うか画像を拡大する臨床症状は多様であるが、まずは心アミロイドーシスのRed Flagsをしっかり把握しておくことが重要である。左室壁肥厚があるにもかかわらず心電図上は低電位を呈する、ACE阻害薬やβ遮断薬などの心不全治療薬に抵抗性であるなど、表2に詳細を記載したので、ぜひご確認いただきたい。それ以外にも、ATTRアミロイドーシスやALアミロイドーシスを疑う所見も表2、図3に記載した。このように、病歴、血液検査、心電図、心エコー図検査などを参考にしながら、「まずは疑う」という姿勢こそが見逃さないためにきわめて重要である(表3)。(表3)トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は稀ではない!画像を拡大するそして、臨床的に心アミロイドーシスを疑われた場合(表2、図3)、本当に心アミロイドーシスか、アミロイドーシスであれば、どの病型かを診断していくこととなる。その診断アルゴリズムを最新の文献を参考に図4にまとめたので、これを基に診断方法を解説していく。なお、本邦の「2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン」にも大変わかりやすい診断アルゴリズムが掲載されており、ぜひこちらも一読いただきたい。(図3)心アミロイドーシスの症状画像を拡大する(図4)心アミロイドーシスの診断アルゴリズム4,5)画像を拡大する心アミロイドーシスを疑った場合、まず行うべきことは、治療可能なALアミロイドーシス(未治療の場合、急速に進行する致命的な疾患!)の除外である。ALアミロイドーシスは、骨髄中のクローナルな(腫瘍化した)形質細胞の過剰増殖によるもので、通常、血清または尿中にモノクローナル蛋白(M蛋白)が検出される。この疾患は、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS, monoclonal gammopathy of undetermined significance)、くすぶり型骨髄腫(SMM, smoldering multiple myeloma)、多発性骨髄腫(MM, multiple myeloma)にまたがる疾患群の一部である。MGUSは、クローナルな形質細胞のわずかな過剰増殖(骨髄中のクローナルな形質細胞比率<10%)によるものであり、血清M蛋白が3g/dL未満で、クローンに関連する臓器障害(CRAB [高Ca血症:calcium、腎不全:renal、貧血:anemia、溶骨性骨病変:bone]など)がないと定義される。SMMは、骨髄形質細胞または血清M蛋白のいずれか(または両方)が基準値を超えているが、臓器障害がない患者を指す。そして、最終的には臓器障害(CRAB)を合併し、MMとなる。定義上、ALアミロイドーシスは、MGUSとSMMのいずれにも該当しないが、AL患者の骨髄やM蛋白はそれらの定義に合致している。重要な点は、AL患者は、心筋障害、腎障害、神経障害、肝障害などの臓器障害を有し、化学療法を必要とするということである。治療の詳細は後編で述べる。現在、ALアミロイドーシスを除外するための最も効率的で効果的な方法は、血清および尿蛋白免疫固定電気泳動法(IFE, immunofixation electrophoresis)、血清遊離軽鎖(sFLC, serum free light chain)アッセイ、この3つの簡易検査を行うことである。血清および尿のIFEでM蛋白が検出されず、sFLCアッセイが正常(κ/λ比:0.26~1.65)であれば、ALアミロイドーシスを除外するための陰性的中率は約99%となる(なお、sFLCの正常値は、使用するアッセイによって異なる)6,7)。なお、これらの検査が陽性であれば、生検が必要であり、今後の早期治療も踏まえて早急に血液内科へコンサルトする。一方、これらの検査が陰性であれば、次に行うべき検査は、ピロリン酸シンチグラフィ(99mTc-PYP)である。その結果、視覚的評価法のGrade2(肋骨と同等の心臓への中等度集積)もしくはGrade3(肋骨よりも強い心臓への高度集積)、心/対側肺野比(H/CL比)≧1.5(1時間後撮影)もしくは1.3(3時間後撮影)であれば、ATTRアミロイドーシスと診断される8)。ただし、Grade2の症例では、ALや血液プールへの生理的集積を鑑別する必要があるため、プラナー撮影にSPECT撮影をできる限り追加し、心筋や血液プールへの集積をより正確に評価することが推奨されている8,9)。そして最後にTTR遺伝子解析を行い、ATTRvかATTRwtかを診断する。以上、診断アルゴリズムについて詳しく説明してきたが、最後に少し心アミロイドーシス診断のこれからについて、述べてみたい。近年、人工知能・深層学習モデルを用いて心電図や心エコー図検査から心アミロイドーシスを自動検出する技術の進歩が凄まじく、かなりの精度で完全自動診断できるという報告10)や、機械学習モデルを用いて電子カルテ情報からATTRwtアミロイド心筋症のリスク評価を自動で行い、早期診断に繋げるという報告がある11)。このように、心アミロイドーシスが早期に自動診断される時代はすぐそこに来ており、わが国においても、いち早くこのようなシステムが導入されることが望まれる。以上、今回は心アミロイドーシスとはどういったもので、診断をどうすべきかについて述べてきた。次回は、心アミロイドーシスの最新治療を含めた治療の今とこれからについて詳しくまとめていきたいので、乞うご期待。第10回につづく。1)Benson MD, et al. Amyloid. 2018;25:215-219.2)Ruberg FL, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:2872-2891.3)Aimo A, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24:2342-2351.4)Hanna M, J Am Coli Cardiol. 2020;75:2851-2862.5)Kittleson MM, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;81:1076-1126.6)Katzmann JA, et al. Clin Biochem Rev. 2009;30:105-111.7)Katzmann JA, et al. Clin Chem. 2002;48:1437-1444.8)Dorbala S, et al. J Nucl Cardiol. 2019;26:2065-2123.9)Singh V, et al. J nucl Cardiol. 2019;26:158-173.10)Goto S, et al. Nat Commun. 2021;12:2726.11)Huda A, et al. Nat Commun. 2021;12:2725.

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高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者への術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加を検討したmonarchE試験において、65歳以上の高齢患者においても管理可能な安全性プロファイルと治療効果が得られることが示された。米国・Sarah Cannon Research Institute at Tennessee OncologyのErika P. Hamilton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法は65歳以上にも効果 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+内分泌療法群と内分泌療法単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、すでに無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の延長と忍容可能な安全性プロファイルが示され、2年間の治療後もiDFS、DRFSへのベネフィットが持続し、QOLも保たれている。今回、本試験に参加した高齢患者における有効性と安全性を検討するために、65歳未満および65歳以上に分け、各サブグループでハザード比(HR)を推定した。また、安全性は65歳以上を65~74歳と75歳以上に分けて評価した。 術後補助療法としてのアベマシクリブ+内分泌療法について、高齢患者における有効性と安全性を検討した主な結果は以下のとおり。・monarchE試験の参加者のうち、65歳未満は4,787例、65歳以上が850例であった。・高齢患者は、併存疾患がより多く、PSがより高く、以前に受けていた術前/術後化学療法がより少なかった。・追跡期間中央値42ヵ月で、iDFSは、アベマシクリブ+内分泌療法群が内分泌療法単独群に比べて、65歳未満群(HR:0.646、95%信頼区間[CI]:0.554~0.753)と65歳以上群(HR:0.767、95%CI:0.556~1.059)の両群で数値的に優れた効果がみられた。4年iDFS率の絶対差は、65歳未満6.7%、65歳以上5.2%と、アベマシクリブによる絶対ベネフィットはほぼ同様だった。4年DRFS率の絶対差も65歳未満6.2%、65歳以上4.6%とほぼ同様だった。・アベマシクリブ+内分泌療法群での有害事象(AE)発現率は、全体、65歳未満、65歳以上でほぼ同様だった。75歳以上ではGrade3の下痢とGrade2~3の倦怠感の発現率が高かった。・65歳以上ではAEのために減量する割合が55%(65歳未満41%)、中止する割合が38%(65歳未満15%)と高く、75歳以降ではより高かった。・AEのために用量調節した患者群でもiDFSは同様だった。・QOLは2年間の治療期間中、どちらの治療群でもどの年齢層でも同様だった。 Hamilton氏は「これらのデータは、すべての年代への術後アベマシクリブを支持し、患者への治療経過の見通しについての助言に使用できる」とした。

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