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降圧薬が皮膚がんのリスク増加に関連

 米国・マサチューセッツ総合病院のK.A. Su氏らによる調査の結果、光感作性のある降圧薬(AD)による治療を受けた患者では、皮膚の扁平上皮がん(cSCC)のリスクが軽度に増加することが明らかになった。多くのADは光感作性があり、皮膚の日光に対する反応性を高くする。先行の研究では、光感作性ADは口唇がんとの関連性が示唆されているが、cSCCの発症リスクに影響するかどうかは不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、北カリフォルニア州の包括的で統合的なhealthcare delivery systemに登録され、高血圧症に罹患した非ヒスパニック系白人のコホート研究において、ADの使用とcSCCリスクとの関連を調べた。ADの使用については電子データを用いて分析。ADは、公表論文に基づいて、光感作性(α2刺激薬、利尿薬[ループ系、カリウム保持性、サイアザイド系および配合剤])、非光感作性(α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬およびARB)または光感作性不明(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、血管拡張薬およびその他の配合剤)に分類された。 Coxモデルを用いて補正ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。共変量は、年齢、性別、喫煙、合併症、cSCCおよび日光角化症の既往歴、調査年、医療制度の利用、医療保険会員の期間、光感作性ADの使用歴とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、cSCCを3,010例が発症した。・AD不使用群と比較し、cSCCのリスクは、光感作性AD使用歴ありの群(aHR:1.17、95%CI:1.07~1.28)、光感作性不明AD使用歴ありの群(aHR:1.11、95%CI:1.02~1.20)で増加したが、非光感作性AD使用歴ありの群では関連は認められなかった(aHR:0.99、95%CI:0.91~1.07)。・光感作性ADの処方数の増加に伴い、cSCCのリスクが軽度に増加した。1~7剤(aHR:1.12[95%CI:1.02~1.24])、8~15剤(同:1.19[1.06~1.34])、16剤以上(同:1.41[1.20~1.67])。

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高齢・心房細動合併、日本人の拡張期心不全患者(JASPER)/日本循環器学会

 本邦における拡張期心不全(HFpEF)入院患者の現状、長期アウトカムなどは明らかになっていない。2018年3月23〜25日に大阪で開催された、第82回日本循環器学会学術集会で、北海道大学 安斉俊久氏が、「本邦における拡張期心不全の実態に関する多施設共同調査研究」JASPER試験(JApanese heart failure Syndrome with Preserved Ejection fRaction Study)の結果を初めて発表した。 解析対象は、2012年11月〜2015年3月に、全国15施設で登録されたHFpEF患者535例となった。海外研究と比較し、日本人患者では、平均年齢が高く(80歳)、BMIが低く(23.9kg/m2)と、心房細動合併が高い(61%)という特徴があった。 HFpEF患者の入院の原因は、食事のコンプライアンスの悪さが最も高く、逆に服薬コンプライアンス不良、腎障害は海外に比べ低かった。使用薬剤(経口)はループ利尿薬、β遮断薬、ARBの使用が多く、とくにARBとMRAの使用率は海外に比べ高かった。心不全の入院期間は16日と長く、総死亡率は1.3%と低かった。約40%の患者が、退院後2年以内にイベント(死亡あるいは入院)を起こし、イベントの半数は心血管系であった。長期死亡・入院の決定因子は、入院時の低収縮期血圧、血漿アルブミン低値、退院時のNYHA III〜IV、血漿BNP値であった。 日本人のHFpEF入院患者に対しては、心房細動および低栄養に焦点を当てた、予防的治療的な介入が重要となると、している。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(後編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会が、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。今回は後編。(前編はこちら)新たな心不全ガイドラインは診断フローチャートを簡略化 慢性心不全診断のフローチャートは、2010年版ガイドラインから大幅に簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドライン(Ponikowski P, et al. Eur Heart J.2016;37:2129-2200)を下敷きとしながらも、わが国の実態を踏まえ、画像診断を重視するチャートになっている。急性心不全治療のフローチャートも新規作成 「時間経過と病態を踏まえた急性心不全治療フローチャート」や、「重症心不全に対する補助人口心臓治療のアルゴリズム」の作成、「併存症の病態と治療」に関する記載の充実も新たな心不全診療ガイドラインの主要な改訂ポイントのひとつである。併存症は、心房細動、心室不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症・痛風、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害について記載されている。心不全合併高血圧には、4種薬剤が推奨クラスI、エビデンスレベルA 新たな心不全診療ガイドラインでは、高血圧を合併したHFrEFに対する薬物治療は、ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の[推奨クラス、エビデンスレベル]が[I、A]、利尿薬が同上[I、B]、カルシウム拮抗薬が同上[IIa、B]とされた。なお、長時間作用型のジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は陰性変力作用のため使用を避けるべきと注記されている。 高血圧を合併したHFpEFに対する治療は、適切な血圧管理が同上[I、B]、基礎疾患の探索と治療が同上[I、C]とされた。心不全合併糖尿病には、包括的アプローチとSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)を推奨 心不全を合併した糖尿病に対する治療は、食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的アプローチが同上[I、A]、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が同上[IIa、A]、チアゾリジン薬が同上[III、A]とされた。CKD合併心不全は、CKDステージで推奨レベルが異なる CKD合併心不全に対する薬物治療は、CKDステージ3とステージ4~5に分けて記載されている。 CKDステージ3においては、β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが同上[I、A]、ARBが同上[I、B]、ループ利尿薬が同上[I、C]となっている。CKDステージ4~5においては、β遮断薬が同上[IIa、B]、ACE阻害薬が同上[IIb、B]、ARB、MRAが同上[IIb、C]、ループ利尿薬が同上[IIa、C]とされた。新たな心不全ガイドラインでは血清尿酸値にも注目 心不全を伴う高尿酸血症の管理においては、血清尿酸値の心不全の予後マーカーとしての利用が[IIa、B]、心不全患者における高尿酸血症への治療介入が[IIb、B]とされた。国内未承認の治療法も参考までに紹介 海外ではすでに臨床応用されているにもかかわらず、国内では未承認の治療薬やデバイスがある。ARB/NEP阻害薬(ARNI)や、Ifチャネル阻害薬などだ。これらの薬剤は「今後期待される治療」という章で、開発中の治療と並び紹介されている。

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Real World Evidenceからみたカナグリフロジンの有用性(解説:吉岡成人 氏)-819

カナグリフロジンの新たなエビデンス ADA(American Diabetes Association)のガイドラインでは心血管リスクを持つ2型糖尿病患者に、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンやカナグリフロジンの積極的な使用を推奨している。その根拠となる臨床試験は、EMPA-REG OUTCOME試験およびCANVASプログラムである。これらの臨床試験における主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、対象となった患者も心血管疾患のハイリスクグループであった。今回紹介するのは、米国における民間の医療データベースを基に、2型糖尿病患者における投与薬剤と心血管イベントについて検討したReal World Evidenceとしてのデータである。医療データベースを基に検証 今回の研究は、米国の民間の医療データベースOptum Clinformatics Datamartを基に、18歳以上の2型糖尿病の患者で、2013年4月から2015年9月までにSGLT2阻害薬であるカナグリフロジンまたはDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SU薬の使用を開始したものを対象として、心血管イベントの発症を比較したものである。処方データを抽出し、患者の背景をマッチさせ、イベントの発症を検討する後ろ向きコホート試験である。 主要評価項目は心不全による入院と複合心血管イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中による入院)となっている。カナグリフロジンは心不全の入院を減らすが、心筋梗塞や脳卒中は抑制しない Real world dataを基にした30ヵ月間の観察において、カナグリフロジンが他の薬剤に比較して心不全による入院のリスクを有意に低下させることが確認された。カナグリフロジンンとDPP-4阻害薬を比較した場合、イベントの発生頻度はそれぞれ8.9/1,000人年、12.8/1,000人年であり、ハザード比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.54~0.92)。GLP-1アナログ、SU薬と比較したハザード比も0.61(95%CI:0.47~0.78)、0.51(95%CI:0.38~0.67)であった。しかし、複合心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中による入院)については、抑制効果は認められず、ハザード比はDPP-4阻害薬と比較して0.89(95%CI:0.68~1.17)、GLP-1アナログでは1.03(95%CI:0.79~1.35)、SU薬でも0.86(95%CI:0.65~1.13)であった。この傾向は、ベースラインにおけるHbA1c値や心疾患や心不全の既往の有無によってサブグループ解析を行っても同様であったと報告されている。 心疾患の既往の有無などを問わず、カナグリフロジンは心不全による入院を他の薬剤に比較して有意に30~49%抑制するものの、心筋梗塞や脳卒中による入院は抑制し得ないことになる。とはいえ、解析の対象となった患者の平均年齢はおよそ57±10歳前後と若く、観察期間も各群でマッチさせることができたのは0.6±0.5年ほどでしかない。これらの点を勘案すると、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンは、患者の年齢を問わず、投与開始後早い時期から、心不全による入院を抑制する効果を持っているといえる。 SGLT2阻害薬が新たなカテゴリーの利尿薬として心不全を抑制しているのか、それとも、利尿効果を超えた心血管イベント抑制の効果があるのか、今後の展開に期待したい。

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尿路感染へのトリメトプリムで突然死リスクは増えるのか/BMJ

 尿路感染症(UTI)に対するトリメトプリムの使用は、他の抗菌薬使用と比べて、急性腎障害(AKI)および高カリウム血症のリスクは大きいが、死亡リスクは高くないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のElizabeth Crellin氏らによるコホート研究の結果で示された。また、相対リスクの上昇は試験対象集団全体においては類似していたが、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬およびカリウム保持性利尿薬を服用していた群ではベースラインのリスクが高いほど、AKIや高カリウム血症の絶対リスク上昇がみられたという。BMJ誌2018年2月9日号掲載の報告。一般集団を対象に、AKI、高K血症、死亡の発生を他の抗菌薬と比較 合成抗菌薬のコトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)は、突然死のリスク増大と関連しており、そのリスク増大は血清カリウム値の上昇による可能性が報告されている。しかし先行研究は、対象が特定集団(RAS阻害薬服用患者など)であり、交絡因子(感染症のタイプや重症度)の可能性が排除できず、結果は限定的であった。また、トリメトプリムとST合剤のリスクが同程度のものなのかについても、明らかになっていなかった。 研究グループは、一般集団においてUTIに対するトリメトプリム使用が、AKI、高カリウム血症、あるいは突然死のリスクを増大するかを検証した。 英国のClinical Practice Research Datalinkに集積されているプライマリ受診者の電子カルテ記録を用い、Hospital Episode Statisticsデータベースからの入院記録データと関連付けて解析を行った。 対象は、1997年4月~2015年9月に、プライマリケアでUTIの診断後に最長で3日間、トリメトプリム、アモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、またはnitrofurantoinのいずれかを処方されていた65歳以上の患者。UTIの抗菌薬治療14日間でのAKI、高カリウム血症、死亡の発生について評価した。RAS阻害薬とスピロノラクトンの使用群ではリスクが上昇 コホートには、65歳以上の患者119万1,905例が組み込まれた。このうち、17万8,238例がUTIの抗菌薬治療を1回以上受けており、UTIの抗菌薬治療エピソード総計42万2,514件が確認された。 抗菌薬投与開始後14日間のAKI発生のオッズ比(OR)は、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(補正後OR:1.72、95%信頼区間[CI]:1.31~2.24)およびシプロフロキサシン群(同:1.48、1.03~2.13)で高かった。 抗菌薬投与開始後14日間の高カリウム血症発生のORは、アモキシシリン群との比較において、トリメトプリム群(同:2.27、1.49~3.45)のみで高かった。 しかしながら、抗菌薬投与開始後14日間の死亡発生のORは、アモキシシリン群と比べてトリメトプリム群では高くなく、全集団における補正後ORは0.90(95%CI:0.76~1.07)であった。一方で、RAS阻害薬使用群における補正後ORは1.12(同:0.80~1.57)であった。 解析の結果、65歳以上で抗菌薬治療を受けた1,000UTIについて、RAS阻害薬使用の有無にかかわらず、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合の高カリウム血症の追加症例は1~2例であり、AKIによる入院は2例であることが示唆された。一方で、RAS阻害薬およびスピロノラクトンの使用群では、アモキシシリンの代わりにトリメトプリムを用いた場合、高カリウム血症の追加症例は18例、AKIによる入院は11例であった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第43回

第43回:二次性高血圧症の考え方と検索法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 高血圧患者の多くに明確な病因はなく、本態性高血圧に分類されます。しかし、このうち5~10%の患者については二次性高血圧症の可能性があり、潜在的かつ治療可能な原因を含みます。この二次性高血圧症の有病率および潜在的な原因は、年齢によって異なりますので今回の記事で確認してみましょう。 また、国内では「高血圧治療ガイドライン2014」2)が出ているので、この機会に併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年10月1日号1)より【疫学】二次性高血圧症は潜在的に治療可能な原因を伴う高血圧症で、高血圧の症例の5~10%とわずかな割合しか占めていない。二次性高血圧の罹患率は年齢によって異なり、18~40歳の高血圧患者では30%に近い有病率で、若年者ではより一般的である。すべての高血圧症患者において、二次性高血圧の網羅的な検査が勧められるわけではないか、30歳未満の患者では、詳細な検査が推奨される。【二次性高血圧を疑い評価を考慮する場合】*これまで安定していた血圧が急に高値になった場合思春期前に高血圧を発症した場合高血圧の家族歴がなく、非肥満性で非黒人の30歳未満の場合(末梢臓器障害の徴候を伴う)悪性高血圧もしくは急速進行の高血圧の場合重症高血圧(収縮期血圧>180mmHgおよび/または拡張期血圧>120mmHg)または、ガイドラインに準じて1つの利尿薬を含む3つの適切な降圧薬使用にもかかわらず持続する治療抵抗性の高血圧【アプローチ】(1)まずは正確な血圧測定の方法を確認し、食生活や肥満による高血圧を除外する(2)既往歴、身体診察、検査(心電図、尿検査、空腹時血糖、ヘマトクリット、電解質、クレアチニン/推定糸球体濾過率、カルシウム、脂質)を確認する(3)二次性高血圧を疑う症状/徴候があれば、以下の表のように検索をすすめる画像を拡大する(4)二次性高血圧を疑う症状/徴候がなくても、上記の二次性高血圧を疑い評価を考慮する場合(*の項目を参照)は下記を考え、検索をすすめる【二次性高血圧の年齢別の一般的な原因】11歳までの子ども(70~85%):腎実質疾患、大動脈縮窄症12~18歳の青年(10~15%):腎実質疾患、大動脈縮窄症19~39歳の若年成人(5%):甲状腺機能不全、線維筋性異形成、腎実質疾患40~64歳の中高年(8~12%):高アルドステロン症、甲状腺機能不全、閉塞性睡眠時無呼吸、クッシング症候群、褐色細胞腫65歳以上の高齢者(17%):アテローム硬化性腎動脈狭窄、腎不全、甲状腺機能低下症【二次性高血圧の稀な原因】強皮症、クッシング症候群、大動脈縮窄症、甲状腺・副甲状腺疾患、化学療法薬、経口避妊薬※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Am Fam Physician. 2017 Oct 1; 96:453-461. 2) 高血圧治療ガイドライン2014

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ヒドロクロロチアジドの使用、非黒色腫皮膚がんと関連

 ヒドロクロロチアジドは、米国および西欧で最も使用頻度の高い利尿・降圧薬の1つであるが、光感作性があり、これまでに口唇がんとの関連が報告されている。デンマーク・南デンマーク大学のSidsel Arnspang氏らの症例対照研究の結果、ヒドロクロロチアジドの累積使用量は、非黒色腫皮膚がん(NMSC)、とくに扁平上皮がん(SCC)リスクの著しい増加と関連していることが明らかとなった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年11月30日掲載の報告。 研究グループは、ヒドロクロロチアジドの使用と、基底細胞がん(BCC)および扁平上皮がんのリスクとの関連を調べる目的で、デンマークがん登録データ(2004~2012年)から非黒色腫皮膚がん患者を特定し、これらの症例を対照と年齢および性別でマッチ(症例1に対し対照20の割合)させるとともに、デンマーク処方登録データ(Danish Prescription Registry)からヒドロクロロチアジドの累積使用量(1995~2012年)のデータを得た。 条件付きロジスティック回帰法で、ヒドロクロロチアジドの使用と関連するBCCおよびSCCのオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロクロロチアジドの累積使用量が5万mg以上でのORは、BCCが 1.29(95%信頼区間[CI]:1.23~1.35)、SCCが3.98(95%CI:3.68~4.31)であった。・ヒドロクロロチアジドの使用は、BCCおよびSCCのいずれとも、明らかな用量反応関係が認められ、累積使用量が最も多いカテゴリー(20万mg以上)のORは、BCCが1.54(95%CI:1.38~1.71)、SCCが7.38(95%CI:6.32~8.60)であった。・他の利尿薬および降圧薬の使用と、NMSCとの関連は認められなかった。

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高血圧治療法の新たな展開?(解説:冨山博史 氏/椎名一紀 氏)-738

1. 背景 腎除神経の有意な降圧効果が確認され、高血圧発症・進展における交感神経の重要性が再注目されている。生体における循環動態は一定でなく体位や環境要因などで変動するが、恒常性を維持するために圧受容体反射が重要な役割を有する。圧受容体反射は、血圧上昇に伴う頸動脈伸展刺激が求心刺激となり、延髄循環調節中枢を介して徐脈・降圧に作用するオープンループシステムである。基礎実験にて、デバイスによる頸動脈伸展刺激は降圧効果を示すことが報告されている。2. 目的 上記の背景に基づき、内頸動脈へのステントデバイス留置が降圧作用を示すかを検証した。ただし、本研究では、降圧作用の検証はSecondary endpointであり、Primary endpointはステントデバイス留置に伴う合併症発生である。3. 方法 3-1 対象の選択条件の概要:難治性高血圧(利尿薬を含む3剤で血圧コントロールが不十分)30例(対照群なし)。問診にて服薬アドヒアランス80%以上の症例を選択。ステント植え込みに際してCTまたはMRAで内頸動脈径が5.00~11.75mmであり、かつ同部位に粥状硬化(plaque/ulceration)を認めない。腎機能障害、不整脈、心不全を合併しない。 3-2 手技:左右いずれかの内頸動脈にステントを留置(ステントサイズは5.00~7.00、6.25~9.00、8.00~11.75mmの3サイズから選択)。ステントデバイス留置は、トレーニングを受けた術者が実施。 3-3 診療経過:基本、研究期間中、降圧薬は変更しない。 3-4 評価項目:重症合併症、治療後7日、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月の外来血圧・24時間平均血圧。4. 結果 4-1 合併症:低血圧(2例:7%)、高血圧増悪(2例:7%)、一過性脳虚血発作(2例:7%)など。 4-2 降圧効果:24時間平均血圧(収縮期血圧/拡張期血圧)が3ヵ月後で15/8mmHg、6ヵ月後で21/12mmHg低下した。5. コメント 前回、SPYRAL HTN-OFF MED研究のコメントで述べさせていただいたが、こうしたデバイスによる降圧療法の有用性評価には、降圧薬服薬アドヒアランス、治療手技の確実性、血圧の評価方法などを吟味する必要がある。 5-1 降圧薬服薬アドヒアランス:本研究は問診にて服薬アドヒアランスを確認している。しかし、研究期間中、降圧薬は変更せずに継続しており、服薬アドヒアランスの変化の影響は除外できない。今後、SPYRAL HTN-OFF MED研究のように、降圧薬を中止してステントデバイスの降圧効果を検証する研究が必要である。現在、CALM-START研究として進行中である。 5-2 治療手技の確実性:本治療では内頸動脈径に合わせて3種類のサイズから適切なサイズのステントを選択し留置している。理論的には頸動脈内径が拡大することが刺激となり降圧効果を示すと考えられるが、術後の頸動脈内径の変化はCTや超音波検査では評価されていない。このように手技の確実性は検証されていない。 5-3 血圧の評価方法:血圧の評価は24時間平均血圧で評価している。しかし、対照群が存在しないため経時的血圧変化の影響を除外できていない。6. 本結果の臨床的意義 上述のごとく、降圧薬服薬アドヒアランス、治療手技の確実性、血圧評価方法のいずれにも限界を有する研究である。しかし、治療後6ヵ月の24時間平均血圧の低下度は収縮期血圧21mmHg/拡張期血圧12mmHgである。この結果は、軽症・中等症高血圧を対象としたSPYRAL HTN-OFF MED研究での結果(24時間平均血圧が対照群に比べて収縮期血圧5mmHg/拡張期血圧4.4mmHg低下した)に比べると大きな降圧作用を示している。ゆえに、上記の問題点を解決する新たな研究の成果(現在進行中)を待つ必要がある。 一方、合併症に関しては重大な合併症はないが、2/30例(7%)に一過性脳虚血発作を認めたことは、今後も発生する合併症の種類・頻度に注意を要する治療法であろう。

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新たな血管内デバイス、治療抵抗性高血圧を著明に改善?/Lancet

 治療抵抗性高血圧の新たな治療デバイスとして開発された血管内圧受容器増幅デバイス「MobiusHD」(米国Vascular Dynamics社製)について、持続的な降圧効果と安全性が確認されたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのWilko Spiering氏らが、ヒトでは初となる前向き非盲検臨床試験「CALM-FIM_EUR試験」の結果、発表した。MobiusHDは、頸動脈洞を再構築(reshape)する血管内インプラントで、頸動脈の圧反射活性が血圧を低下するという原理を応用して開発された。Lancet誌オンライン版2017年9月1日号掲載の報告。片側頸動脈内に留置し6ヵ月時点で安全性と有効性を評価 CALM-FIM_EURはproof-of-principle試験で、欧州の6施設(オランダ5、ドイツ1)にて治療抵抗性高血圧の成人患者(18~80歳)を集めて行われた。 患者の適格要件は、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用治療にもかかわらず診察室血圧が≧160mmHg、平均24時間ABPが130/80mmHg以上であった。主な除外基準は、高血圧が睡眠時無呼吸症候群以外に起因している患者、頸動脈または大動脈弓のプラークまたは潰瘍の形成あり、頸動脈の内径が5.00mm未満または11.75mm超、BMIが40以上、慢性心房細動、2剤併用抗血小板療法の禁忌あり、長期に経口抗凝固薬を服用中、過去3ヵ月に心筋梗塞または不安定狭心症、前年に脳血管系の発作、推定糸球体濾過量45mL/分/1.73m2以下、イミダゾリン受容体薬やその他の中枢性に作用する降圧薬の服用者などであった。 MobiusHDデバイスを片側の頸動脈内に留置。主要エンドポイントは6ヵ月時点の重篤有害事象の発現率とした。副次エンドポイントは、診察室血圧および24時間ABPの変化などであった。留置後半年で、診察室血圧24/12mmHg、24時間ABPは21/12mmHg降圧 2013年12月~2016年2月に、患者30例が登録されデバイスを成功裏に留置した。被験者の平均年齢は52歳(SD 12)、15例(50%)が男性、降圧薬の平均服用数は4.4剤(SD 1.4)であった。 ベースラインの平均診察室血圧は184/109mmHg(SD 18/14)であったが、6ヵ月時点で24/12mmHg(SD 13~34/6~18)の降圧が認められた(収縮期p=0.0003、拡張期p=0.0001)。 また、ベースラインの24時間ABPは166/100mmHg(SD 17/14)であったが、6ヵ月時点で21/12mmHg(SD 14~29/7~16)の降圧が認められた(収縮期、拡張期ともp<0.0001)。 6ヵ月間で重篤有害事象の発生は、患者4例(13%)において5件が報告された。低血圧症が2例、高血圧症の悪化が1例、間欠性跛行1例、創感染1例であった。

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利尿ペプチドNT-proBNPガイドによる心不全診療は通常診療に勝るか?(解説:今井 靖 氏)-732

 本邦において心不全患者が増加の途にあるが、その診療は病歴、身体所見および胸部X線写真などの臨床所見を基に行うが、最近ではBNPまたはNT-proBNPといった利尿ペプチドを診療ガイドに使用することが多い。それら利尿ペプチドが心不全診断や予後予測に有用であることには多くのエビデンスがあるが、しかしながら、そのようなバイオマーカーガイドによる心不全診療の有効性については小規模集団での検討はあるものの結果は一定せず、それを検証する意義は大きいと考えられる。 そのような疑問に答えるべく、GUIDE-IT(Guiding Evidence Based Therapy Using Biomarker Intensified Treatment in Heart Failure)試験は2013年1月~2016年9月まで北米の45ヵ所の医療機関で実施された。左室駆出率が40%以下の収縮不全を伴う心不全症例で、30日以内にナトリウム利尿ペプチド値の上昇があり、心不全による有害事象(心不全入院、心不全による救急外来受診、外来における利尿薬静注治療)の既往がある1,100例をNT-proBNPガイド治療群と、それを用いない標準治療群に無作為化した。 NT-proBNPガイド治療群においてはNT-proBNP値1,000pg/mL未満を到達目標とした心不全治療薬の調整を行い、通常治療群においてはNT-proBNP値の連続測定検査を行わずに臨床ガイドラインに従って治療が行われた。主要エンドポイントは、初回心不全入院までの期間、または心血管死の複合とされた。副次エンドポイントは、全死亡、すべての心不全入院数、心血管系による入院がない無事故生存期間、主要エンドポイントの各項目・有害事象などとされていた。 結果としてこの試験では894例(年齢中央値63歳、女性32%)が登録された時点で無益性が明らかになり(追跡期間中央値15ヵ月)、データおよび安全性モニタリング委員会によって試験中断が勧告された。主要エンドポイントの発生はNT-proBNPガイド治療群(446例)中164例(37%)、標準治療群(448例)中164例(37%)であり、差異を認めなかった(補正後ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.79~1.22、p=0.88)。心血管死についてもNT-proBNPガイド治療群12%(53例)、標準治療群は13%(57例)と有意差を認めなかった(HR:0.94、95%CI:0.65~1.37、p=0.75)。二次エンドポイントもいずれについても有意差は認められなかった。NT-proBNP値に関しても12ヵ月間においてガイド治療群が中央値2,568pg/mLから1,209pg/mLに、標準治療群は2,678pg/mLから1,397pg/mLに低下したが両群で有意差はなかった。 この研究はNT-proBNPに代表される利尿ペプチドの心不全における臨床的意義を否定するものではないが、利尿ペプチドを頻回に測定して心不全ガイドをしたとしても臨床転帰を改善せずコストが増えることとなり、そのような点でコスト・ベネフィットも考慮しつつ、より良い心不全治療を目指す努力をわれわれは行う必要性がある。 最近、特に海外ではNTproBNPを指標とした研究が増え、また血清検体で測定が可能である点で本邦でもNTproBNPの普及が目立つ。しかし、本邦ではBNPがより敏捷に反応し急性期の状態を反映するとして活用頻度が高く、臨床現場での有用性は過去からの多大な蓄積があることも事実である。臨床現場において心不全に関わる問診、身体所見、各種検査所見を統合し、必要に応じてNTproBNP/BNPという心不全マーカーを使いこなすことが我々の責務といえよう。(2017年10月2日追記)

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NT-proBNPガイド心不全治療の無益性が明らかに/JAMA

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、NT-proBNPガイド治療戦略のアウトカム改善効果は、標準治療によるものと変わらないことが、米国・デューク臨床研究所(DCRI)のG. Michael Felker氏らによる大規模無作為化試験「GUIDE-IT試験」の結果、示された。ナトリウム利尿ペプチドは、HF重症度のバイオマーカーであり、有害アウトカムの予測因子である。これまで小規模試験で、ナトリウム利尿ペプチド値をベースに調整を行うHF治療(ガイド治療)の評価は行われているが、結果は一貫していなかった。JAMA誌2017年8月22日号掲載の報告。無作為化試験で標準治療と比較、HF初回入院までの時間または心血管死を評価 GUIDE-IT(Guiding Evidence Based Therapy Using Biomarker Intensified Treatment in Heart Failure)試験は、2013年1月16日~2016年9月20日、米国およびカナダの臨床施設45ヵ所で行われた。試験は計画では、HFrEF(駆出率40%以下)で、30日以内にナトリウム利尿ペプチド値の上昇がみられ、HFイベント(HF入院、HFでER受診、外来でHF利尿薬静注治療)の既往歴がある1,100例を、NT-proBNPガイド治療戦略群または標準治療群に無作為化する予定であった。 NT-proBNPガイド治療戦略では、NT-proBNP値1,000pg/mL未満達成を目指したHF滴定治療を、通常治療では、公表ガイドラインに従い実証済みのHF神経内分泌系治療の滴定を重視した治療が行われた。NT-proBNP値の連続測定検査は、通常治療では行われなかった。 主要エンドポイントは、初回HF入院までの期間または心血管死の複合であった。事前規定の副次エンドポイントは、全死因死亡、全HF入院数、心血管系による入院のない生存日数、主要エンドポイントの各要素、有害事象などであった。主要および副次アウトカムともに有意差なし 試験は、894例(年齢中央値63歳、女性32%)が登録された時点で無益性が明らかになり、データおよび安全性モニタリング委員会によって試験中断が勧告された。追跡期間は中央値15ヵ月であった。 主要エンドポイントの発生は、NT-proBNPガイド治療戦略群(446例)が164例(37%)、標準治療群(448例)も164例(37%)であった(補正後ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.79~1.22、p=0.88)。 心血管死の発生率は、NT-proBNPガイド治療戦略群12%(53例)、標準治療群は13%(57例)であった(HR:0.94、95%CI:0.65~1.37、p=0.75)。 副次エンドポイントについても、いずれも群間の有意差は認められなかった。また、NT-proBNP値の低下についても、12ヵ月間でガイド治療戦略群が中央値2,568pg/mLから1,209pg/mLに低下(減少率53%)、標準治療群は2,678pg/mLから1,397pg/mLに低下し(減少率48%)、群間で有意差はなかった。

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降圧薬と乳がんリスクの関連~SEERデータ

 米国Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのLu Chen氏らは、Surveillance, Epidemiology and End-Results(SEER)-Medicareデータベースを用いて、主要な降圧薬と乳がんリスクの関連を検討し、利尿薬とβ遮断薬が高齢女性の乳がんリスクを増加させる可能性があることを報告した。「ほとんどの降圧薬は乳がん発症に関して安全だが、利尿薬とβ遮断薬についてはさらなる研究が必要」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2017年8月14日号に掲載。 本研究では、2007~11年にStage I/II乳がんと診断された66~80歳の女性1万4,766例を同定した。がん発症後の各種降圧薬の使用についてMedicare Part Dデータで調べた。アウトカムは、SBCE(second breast cancer event、初回の再発または2次対側原発乳がんの複合)、乳がんの再発、乳がんによる死亡とした。時間変動Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3年で、SBCEが791例、乳がんの再発が627例、乳がん死亡が237例であった。・乳がん診断後に利尿薬を使用した患者(8,517例)では非使用者と比較して、SBCEリスクは29%(95%CI:1.10~1.51)、再発リスクは36%(同:1.14~1.63)、乳がん死亡リスクは51%(同:1.11~2.04)、それぞれ高かった。・β遮断薬を使用した患者(7,145例)では非使用者と比較して、乳がん死亡リスクが41%(95%CI:1.07~1.84)高かった。・アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用は、乳がんリスクに関連していなかった。

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高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。 高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。高齢者の高血圧診療は高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。高齢者においても降圧治療による脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。高齢者高血圧には認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が示唆されているものの、一定の結論は得られていない。よって、現段階では認知機能の評価により、降圧治療を差し控える判断や降圧薬の種類を選択することにはつながらないため、原則として認知機能にかかわらず、降圧治療を行う。ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。高齢者高血圧への降圧治療で転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨 高齢者高血圧への降圧治療を開始する際には、骨折リスクを増大させる可能性があるので注意を要する。一方で、サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、合併症に伴う積極的適応を考慮したうえで、転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる可能性があるため、注意が必要である。高齢者高血圧への降圧治療でCa拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性 高齢者高血圧への降圧治療でもっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。しかし、「利尿薬」という名称から、高齢者高血圧患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。高齢者高血圧の降圧薬治療開始や降圧目標は個別判断が必要なケースも 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。エンドオブライフにある高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。高齢者高血圧の「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載 高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。 また、高齢者高血圧の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間~3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシーやアドヒアランスの対策などのポイントが挙げられている。

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高血圧予防食、痛風リスクを低減/BMJ

 DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は男性の痛風リスクを低減するのに対し、西洋型の食事(Western diet)はこれを増加させることが、米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。DASH食は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事法で、血圧を低下させ、心血管疾患の予防にも推奨されている。西洋型の食事(赤身や加工肉、フライドポテト、精製穀類、甘い菓子、デザート)は、血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを増加させる多くの食品から成るのに対し、DASH食は、最近の無作為化試験で高尿酸血症患者の血清尿酸値を低下させると報告されているが、痛風のリスクに関するデータはこれまでなかったという。4万人以上の男性を5段階のDASH食型と西洋食型に分けて評価 研究グループは、Health Professionals Follow-up Study(HPFS)のデータを用いて、DASH食および西洋食の、痛風リスクとの関連を前向きに評価するコホート試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 HPFSは、1986年に開始された進行中の縦断的研究で、食生活、病歴、薬物の使用状況などに関する質問票に回答した歯科医、検眼士、整骨医、薬剤師、手足治療医、獣医などの男性5万1,529例を対象とする。このうちベースライン時に痛風の既往歴がなかった4万4,444例について解析を行った。 妥当性が検証された食品頻度質問票を用いて、個々の参加者をDASH食型または西洋食型に分け、それぞれスコア化して5段階に分けた(スコアが高いほど、DASH食度、西洋食度が高い)。米国リウマチ学会(ACR)の判定基準を満たす痛風のリスクを評価し、年齢、BMI、高血圧、利尿薬の使用、アルコール摂取など可能性のある交絡因子で補正した。最高DASH食度群:32%低下、最高西洋食度群:42%増加 26年の追跡期間中に、1,731例が新たに痛風と診断された。1,500例(86.7%)に足部痛風が、1,226例(70.8%)に高尿酸血症が、605例(35.0%)に足根関節病変が、167例(9.6%)には痛風結節がみられた。 DASH食型の集団は、スコアが高くなるに従って痛風リスクが低下した(最高スコア群の補正相対リスク:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57~0.80、傾向検定:p<0.001)。これに対し、西洋食型の集団はスコアが高くなるほど痛風リスクが増加した(1.42、1.16~1.74、p=0.005)。 BMI(25未満 vs.25以上)、アルコール摂取の有無、高血圧の有無で層別解析を行ったところ、痛風の相対リスクは主解析の結果とほぼ同じであり、交互作用検定では有意な差を認めなかった(すべての集団で、交互作用検定のp>0.17)。したがって、これらの因子にかかわりなく、DASH食型集団はスコアが上昇するほどリスクが低下すると考えられる。 著者は、「DASH食は、高尿酸血症患者の尿酸値を低下させることで痛風リスクを低減すると示唆される。痛風のリスクがある男性にとって、大いに興味を引かれる痛風予防の食事療法となる可能性がある」と指摘している。

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ヒドロクロロチアジド使用量と口唇がんリスクが相関

 利尿薬であるヒドロクロロチアジドの使用により口唇がんリスクが高まることを示唆する報告がある。この関連を検討した南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らの症例対照研究において、ヒドロクロロチアジドの累積使用量と口唇がんリスクに強い相関が認められた。Journal of internal medicine誌オンライン版2017年5月8日号に掲載。 本研究は、デンマークの全国登録データを用いた症例対照研究である。がん登録(2004~12年)から、口唇の扁平上皮がん(SCC)633例を特定し、これらの症例をリスクセットサンプリングを用いて6万3,067人のコントロールにマッチさせた。また、処方箋登録からヒドロクロロチアジドの使用量(1995~2012年)を取得し、累積使用量により分類した。ヒドロクロロチアジド使用に関連するSCC口唇がんのオッズ比(OR)は、条件付きロジスティック回帰を用いて、人口統計学・処方箋・患者の登録から事前に定義された潜在的交絡因子を調整して計算した。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロクロロチアジド使用によるSCC口唇がんの調整ORは2.1(95%信頼区間[CI]:1.7~2.6)で、累積使用量が多い場合(25,000mg以上)は3.9(同:3.0~4.9)に上昇した。・用量反応関係(p<0.001)が認められ、累積使用量が最も多いカテゴリー(100,000mg以上)のORは7.7(95%CI:5.7~10.5)であった。・ほかの利尿薬利尿薬以外の降圧薬では、口唇がんとの関連はみられなかった。・因果関係があると仮定すると、SCC口唇がん症例の11%がヒドロクロロチアジドの使用に起因すると推定された。

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眼圧と心血管薬の使用、関連せず

 眼圧は、血圧やほかの心血管リスク因子と関連していることがよく知られている。眼圧に対する全身性の心血管薬、とくに降圧薬の影響はいまだ論争の的であるが、非緑内障者では眼圧と心血管薬(とくにβ遮断薬)との間に関連はないことを、ドイツ・マインツ大学のRene Hohn氏らが、コホート研究にて明らかにした。著者は、「局所および全身性β遮断薬の長期のドリフト現象(drift phenomenon)が、この結果を説明するかもしれない」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。 研究グループは、ドイツ中西部の住民1万3,527例を対象とした前向き観察コホート研究(グーテンベルク健康研究)において、全身性の心血管薬の使用と眼圧との関連について検討した。 眼圧は、非接触圧平眼圧計で測定された。調査した薬剤の種類は、末梢血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、硝酸薬、ほかの降圧薬、アスピリンおよびスタチンである。薬剤の使用と眼圧との関連について、多変量線形回帰分析を用いて解析した(p<0.0038)。なお、眼圧欠測例、眼圧低下点眼薬使用歴または眼手術既往歴のある参加者は解析から除外された。 主な結果は以下のとおり。・選択的β遮断薬も非選択的β遮断薬も、眼圧低下との間に統計学的に有意な関連は認められなかった(それぞれ、−0.12mmHg、p=0.054および−0.70mmHg、p=0.037)。・BMI、収縮期血圧および中心角膜厚を調整後、ACE阻害薬の使用と眼圧は関連しなかった(0.11mmHg、p=0.07)。

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腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

 CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。 『RA系阻害薬は全身血圧を降下させるとともに、輸出細動脈を拡張させて糸球体高血圧/糸球体過剰ろ過を是正するため、GFRが低下する場合がある。しかし、この低下は腎組織障害の進展を示すものではなく、投与を中止すればGFRが元の値に戻ることからも機能的変化である。』(JSH2014, p71) 図は、この考えの根拠となるアンジオテンシンIIと、尿細管・平滑筋細胞・輸入輸出細動脈との間の、量-反応関係を示している。アンジオテンシンIIは、選択的に輸出細動脈を収縮させる。いわば、糸球体の蛇口の栓の開け閉めを制御しており、クレアチニンが上昇しGFRが低下する現象は、薬剤効果であり、軽度であれば無害であるとされてきた。糖尿病合併高血圧では、Hyperfiltration説(Brenner, 1996)に基づいた解釈により、RA系阻害薬は糸球体高血圧を解消することから、腎保護効果を期待され、第一選択薬として排他的な地位を築いている。 しかしながら、こうした考えはエキスパート(専門家)の"期待"にとどまっているのが実情で、十分なエビデンスによる支持があるわけではなかった。 RA系阻害薬の腎保護効果について、その限界を示唆した臨床試験として、ONTARGET試験・TRANSCEND試験があげられる[1, 2]。本試験は、ARB臨床試験史上、最大規模のランダム化比較試験であり、エビデンスレベルはきわめて高い。その結果は、或る意味衝撃的であった。ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBとの併用で、有意に33%の腎機能障害を増加させていた。TRANSCEND試験に至っては、腎機能正常群を対象にしたサブ解析で、実薬使用群での、腎機能障害の相対リスクが2.70~3.06であったことが判明した。他にも、RA系阻害薬の腎保護効果に疑問を投げかける臨床試験は、複数認められる。  eGFRの変化は、アルブミン尿・タンパク尿の変化よりも、心血管イベント予測が鋭敏である[3]。Schmidtらの解析による報告[4]は、RA系阻害薬による”軽微”とされていた腎障害が、腎保護効果はおろか、心血管イベントの抑制にも効果がなかったことを証明した。ガイドラインは、過去の研究成果を積み上げた仮説にすぎない。クリニカル・クェスチョンは有限とはいえ、無数にある。あらゆる選択肢の結果を保証するものではない。専門家の推論や、学術的COIに抵触するような期待に溢れた、あいまいな推奨を断言するような記述は、どこまで許容されるのか。この10年あまりの間、糖尿病合併高血圧や、CKD合併高血圧にRA系阻害薬がどれだけ使用されたのか。そのアウトカムの現実を明らかにした本論文の意義は、学術的な価値だけにとどまらず、診療ガイドラインの限界を示しているともいえる。 1)ONTARGET Investigators, et al. N Engl J Med. 2008;358:1547-1559.2)Mann JF, et al. Ann Intern Med. 2009; 151: 1-10.3)Coresh J, et al. JAMA. 2014; 311: 2518-2531.4)Schmidt M. BMJ. 2017;356:j791.

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急性心不全に対するトルバプタンの効果:大阪府立総合医療センター

 急性非代償性心不全(ADHF)の治療の主流は、利尿薬治療によるうっ血改善であるが、しばしば腎機能の悪化(WRF)と関連する。大阪府立急性期・総合医療センターの玉置 俊介氏らは、左室駆出率(LVEF)が保持されたADHF患者のWRFに対する選択的V2受容体アンタゴニストであるトルバプタンの効果について検討を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月16日号の報告。 入院時のLVEFが45%以上のADHF患者を50例連続で登録を行った。対象患者は、トルバプタン追加群26例と従来の利尿薬治療群24例にランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、WRFの発生とした。WRFの定義は、ランダム化後48時間以内に血清クレアチニン(Cr)0.3mg/dL以上またはベースラインより50%以上の上昇とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化後48時間では、体重または総尿量に2群間で有意な差は認められなかった。・ランダム化後24、48時間におけるCrの変化(ΔCr)およびWRFの発生率は、トルバプタン群で有意に低く、尿素窒素排泄率(FEUN)は有意に高かった。・ランダム化後48時間で、ΔCrとFEUNとの間に逆相関が認められた。 著者らは「トルバプタンは、腎灌流の維持を通じて、LVEFが保持されたADHF患者において、有意なWRF低リスクを有しうっ血を軽減することができる」としている。関連医療ニュース CKD患者に対するトルバプタン、反応予測因子は:横浜市大センター病院

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夜間高血圧に対するARB/CCB併用の効果をICTモニタリングで証明~日本循環器学会

 夜間血圧の上昇は心血管イベントの増加につながることから、近年、夜間血圧が注目されている。自治医科大学の星出 聡氏は、2017年3月17~19日に行われた第81回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションにおいて、情報通信技術(ICT)による夜間血圧モニタリングによって、コントロール不能な夜間高血圧症に対する2パターンのアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)併用療法を評価したNOCTURNE試験の結果を報告した。この結果は、Circulation Journal誌に同時掲載された。 患者はARB療法(イルベサルタン100mg/日)を行ってもベースライン時の夜間血圧が120/70mmHg以上の患者411例。患者はARB/カルシウム拮抗薬(CCB)併用群(イルベサルタン100mg+アムロジピン5mg)とARB/利尿薬併用群(イルベサルタン100mg+トリクロルメチアジド1mg)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、試験開始4週後(ベースライン)と12週後の夜間家庭血圧の変化である。 主な結果は以下のとおり。・夜間収縮期血圧は、ARB/CCB群は128.3mmHgから113.9mmHgに(p<0.0001)、 ARB/利尿薬群は128.3から117.9mmHg(p<0.0001)に、両群とも有意に低下した。・両群間の変化を比較すると、ARB/CCB群-14.4 mmHg、 ARB/利尿薬群-10.5mmHgと、ARB/CCB群で有意に低下していた(p<0.0001)。・サブグループ解析では、糖尿病、慢性腎臓病、高齢者(65歳超)を除き、ARB/CCB群で優れていた。・ICTベースの夜間家庭血圧モニタリングは、睡眠中も患者の客観的な夜間血圧測定を把握することができ、臨床試験に実用可能であった。

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CKD患者に対するトルバプタン、反応予測因子は:横浜市大センター病院

 バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンは、心不全患者の利尿作用を有する。しかし、慢性腎臓病(CKD)患者におけるトルバプタンの効果に関するデータは少ない。横浜市立大学附属市民総合医療センターの勝又 真理氏らは、慢性心不全およびCKD患者に対するトルバプタンの効果をレトロスペクティブに解析した。Clinical and experimental nephrology誌オンライン版2017年2月11日号の報告。 対象は、慢性心不全およびCKDを有する患者21例。トルバプタンは、ほかの利尿薬と同時に投与した。トルバプタン治療前後の臨床パラメータを比較した。さらに、ベースラインデータと体重変化との相関を調査した。 主な結果は以下のとおり。・トルバプタンは、体重を減少させ、尿量を増加させた(p=0.001)。・尿浸透圧は、試験期間を通じて有意に減少した。・尿中ナトリウム/クレアチニン比およびFENa(ナトリウム排泄分画)は、4時間後に有意に変化し、8時間後にはより顕著であった(各々:p=0.003)。・血清クレアチニンは、治療1週間後、わずかに増加した(p=0.012)。・試験期間中の体重変化は、ベースラインの尿浸透圧(r=-0.479、p=0.038)、尿量(r=-0.48、p=0.028)、下大静脈径(IVCD:r=-0.622、p=0.017)と負の関連が認められた。・低ナトリウム血症は正常値に改善し、ナトリウム濃度の増加は基礎ナトリウムレベルと負の関連が認められた(p=0.01、r=-0.546)。 著者らは「トルバプタンは、CKD患者においても利尿作用を高め、低ナトリウム血症改善に有効である。尿浸透圧、尿量、IVCDのベースライン値は、トルバプタンの利尿作用の有益な予測因子となりうる」としている。

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