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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 心不全・虚血性心疾患とのかかわり

室原 豊明 氏名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学はじめに高尿酸血症は循環器疾患の危険因子の1つとして見なされているが、その具体的な影響度や機序などに関しては不明な点も多い。高尿酸血症が持続すると、いわゆる尿酸の蓄積に伴う疾患や症状が前面に現れてくる。典型的には、痛風・関節炎・尿路結石などである。しかしながら、尿酸そのものは抗酸化作用があるともいわれており、尿酸そのものが血管壁や心筋に直接ダメージを与えているのか否かは未だ不明の部分も多い。ただし、尿酸が体内で生成される過程の最終段階では、酵素であるキサンチンオキシダーゼが作用するが、この時に同時に酸素フリーラジカルが放出され、これらのラジカルが血管壁や心筋組織にダメージを与え、その結果動脈硬化病変や心筋障害が起こるとの考え方が主流である。本稿では、高尿酸血症と循環器疾患、特に心不全、虚血性心疾患とのかかわりに関して緒言を述べたい。高尿酸血症と尿酸代謝尿酸はDNAやRNAなどの核酸や、細胞内のエネルギーの貯蔵を担うATPの代謝に関連したプリン体の最終代謝産物である。プリン体は食事から摂取される部分(約20%)と、細胞内で生合成される部分(約80%)がある。細胞は過剰なプリン体やエネルギー代謝で不要になったプリン体を、キサンチンオキシダーゼにより尿酸に変換し、細胞から血液中に排出する。体内の尿酸の総量は通常は一定に保たれており(尿酸プール約1,200mg)、1日に約700mgの尿酸が産生され、尿中に500mg、腸管等に200mgが排泄される。余分な尿酸は尿酸塩結晶となり組織に沈着したり、結石となる。多くの生物はウリカーゼという酵素を持ち、尿酸を水溶性の高いアラントインに代謝し尿中に排泄することができるが、ヒトやチンパンジーや鳥類はウリカーゼを持たないために、血清尿酸値が高くなりやすい。尿酸の約3/4は腎臓から尿中に排泄される。腎臓の糸球体ではいったん100%濾過されるが、尿細管で再吸収され、6 ~10%のみ体外へ排出される。最近、尿酸の再吸収や分泌を担うトランスポーターが明らかにされ、再吸収では近位尿細管の管腔側膜にURAT1、血管側にGLUT9が、分泌では管腔側にABCG2が存在することが報告されている1, 2)。腎障害としては、尿酸の結晶が沈着して起こる痛風腎のほかに、結晶沈着を介さない腎障害である慢性腎臓病(CKD)も存在する。高尿酸血症のタイプは、尿酸産生過剰型(約10%)、尿酸排泄低下型( 約50~70%)、混合型(約20 ~30%)に分類され、病型を分類するために、簡便法では尿中の尿酸とクレアチニンの比を算出し、その比が 0.5を上回った場合には尿酸産生過剰型、0.5未満の場合には尿酸排泄低下型と分類している。高尿酸血症と循環器疾患の疫学高尿酸血症と動脈硬化性疾患、心血管イベント高尿酸血症は痛風性関節炎、腎不全、尿路結石を起こすだけでなく、生活習慣病としての側面も有しており、高血圧・肥満・糖尿病・高脂血症などの他の危険因子とよく併存し、さらには脳血管障害や虚血性心臓病を合併することが多い3)。尿酸は直接動脈硬化病変も惹起しうるという報告と、尿酸は単なる病態のマーカーに過ぎないという2面の考え方がある。いずれにしても、血清尿酸値の高値は、心血管病変(動脈硬化病変)の進行や心血管イベントの増大と関連していることは間違いなさそうである。尿酸は血管壁において、血小板の活性化や炎症反応の誘導、血管平滑筋の増殖を刺激するなど、局所で動脈硬化を惹起する作用がこれまでに報告されている。実際に、ヒトの頸動脈プラーク部において、尿酸生成酵素であるキサンチンオキシダーゼや、結晶化した尿酸が存在することが報告されている(本誌p.24図を参照)4)。尿酸は直接細胞膜やライソゾーム膜を傷害し、また補体を活性化することで炎症を誘発し血管壁細胞を傷害する。さらに尿酸生成に直接寄与する酵素であるキサンチンオキシダーゼは、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞にも発現しており、この酵素は酸素ラジカルを生成するため、このことによっても細胞がさらなる傷害を受けたり、内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)の作用を減弱させたりする。実際に、高尿酸血症患者では血管内皮機能が低下していることや、血管の硬さを表す脈派伝播速度が増大していることが報告されている(本誌p.25図を参照)5)。このように、尿酸が過度に生成される状態になると、尿酸が動脈壁にも沈着し動脈硬化病変を直接惹起させうると考えられている。では、血清尿酸値と心血管イベントとの関係はどうであろうか。1次予防の疫学調査はいくつかあるが、過去の研究では、種々の併存する危険因子を補正した後も、血清尿酸値の高値が心血管イベントの独立した危険因子であるとする報告が多く、女性では7.0mg/dL、男性では9.0mg/dL以上が危険な尿酸値と考えられている。また2次予防の疫学調査でも、血清尿酸値の高値が心血管事故再発の独立した危険因子であることが報告されている3)。日本で行われたJ-CAD研究でも、冠動脈に75%以上の狭窄病変がある患者群において、血清尿酸値高値(6.8mg/dL以上)群では、それ以下の群に比べて心血管イベントが増大することが示されている(本誌p.25図を参照)6)。イベントのみならず、最近のVH-IVUS法を用いたヒトの冠動脈画像の研究から、高尿酸血症はプラーク量や石灰化病変と関連していることが示されている(本誌p.26図を参照)7)。繰り返しになるが、これらが因果関係を持っての尿酸によるイベントや動脈硬化病変の増大か否かについては議論の余地が残るところではある。高尿酸血症と心不全慢性心不全患者では高尿酸血症が多くみられることがこれまでに明らかにされている8)。これは慢性心不全患者には他のさまざまな危険因子が併存しており、このため生活習慣病(multiple risk factor 症候群)の患者も多く、これらに付随して尿酸高値例が自然と多くみられるという考え方がある。もう1つは、慢性心不全患者では多くの場合利尿剤が併用されているため、この副作用のために血清尿酸値が高くなっているという事実がある。いずれにしても、尿酸が生成される過程は、心不全患者では全般に亢進していると考えられており、ここにもキサンチンオキシダーゼの高発現による酸素フリーラジカルの産生が寄与していると考えられている。事実、拡張型心筋症による慢性心不全患者の心筋組織では、キサンチンオキシダーゼの発現が亢進していることが報告されている9)。また、血清尿酸値と血中のキサンチンオキシダーゼ活性も相関しているという報告がある10)。高尿酸血症では、付随するリスクファクターや腎機能障害、炎症性サイトカインの増加、高インスリン血症などが心不全を増悪させると考えられるが、なかでも高尿酸血症に伴う心不全の病態においては、酸化ストレスの関与は以前から注目されている。慢性の不全心では心筋内のキサンチンオキシダーゼの発現が亢進しており、このために酸素フリーラジカルが細胞内で多く産生されている。また、慢性心不全患者の血液中には、心不全のないコントロール群に比べて、内皮結合性のキサンチンオキシダーゼの活性が約3倍に増加していることが報告されている。心筋細胞内のミトコンドリアにおいては、細胞内の酸素フリーラジカルが増加すると、ミトコンドリアDNAの傷害や変異、電子伝達系の機能異常などが起こり、最終的なエネルギー貯蔵分子であるATP産生が低下する。傷害されたミトコンドリアはそれ自身も酸素フリーラジカルを産生するため、細胞のエネルギー代謝系は悪循環に陥り、この結果心筋細胞のエネルギー産生と活動性が低下、すなわち心不全が増悪してくると考えられている。では疫学データではどうであろうか。前述したように、慢性心不全患者では高尿酸血症が多くみられる。さらに2003年にAnkerらが報告した論文では、ベースラインの血清尿酸値が高くなればなるほど、慢性心不全患者の予後が悪化することが示された11)。また筒井らの行った日本におけるJ-CARE-CARD試験でも、高尿酸血症(血清尿酸値が7.4mg/dL以上)は、それ以下の群に比べて、心不全患者の全死亡および心臓死が有意に増加していることが示された(本誌p.27表を参照)12)。このように、高尿酸血症は、心血管イベントの増加のみにとどまらず、慢性心不全の病態悪化や予後とも関連していることがこれまでに明らかにされている。おわりに高尿酸血症と虚血性心疾患、心不全との関係について概説した。尿酸そのものが、直接の原因分子として動脈硬化病変の進展や虚血性心疾患イベントの増加、心不全増悪と関連しているか否かは議論の残るところではあるが、疫学的には高尿酸血症とこれらのイベントに正の相関があることはまぎれもない事実である。この背景には、付随するリスクファクターとキサンチンオキシダーゼ/酸素フリーラジカル系が強く関与しているものと思われる。文献1)Enomoto A et al. 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Vol. 2 No. 3 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテルインターベンションの現状と展望 バルーン肺動脈形成術は肺動脈血栓内膜摘除術の代替療法となりうるか?

川上 崇史 氏慶應義塾大学病院循環器内科はじめに慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)とは、器質化血栓により広範囲の肺動脈が狭窄または閉塞した結果、肺高血圧症を合併した状態である。早期に適切な治療がなされない場合、予後不良であり、心不全から死に至るといわれている1)。当初Riedelらは、CTEPHの予後は、平均肺動脈圧が30mmHg、40mmHg、50mmHg以上と段階的に上昇するにつれて、5年生存率は50%、30%、10%へ低下すると報告した2)。現在、各種肺血管拡張剤が発達しており、上記より良好な成績であるとは思われるが、効果は限定的である。また、中枢型CTEPHに対しては、肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)が根治術として確立されている3)。しかし、末梢型CTEPHに対する成績は中枢型CTEPHと比較して劣っており、末梢型のためにPEA適応外となる症例も少なからず存在する。2000年代半ばより、本邦において、薬物療法で十分な治療効果が得られず、PEA適応外である症例に対して、バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)が試みられ、有効性が報告された。以下、本邦から治療効果と安全性が確立したBPAについて概説する。BPAについて最初に複数例のCTEPHに対するBPAの有効性を報告したのは、2001年のFeinsteinらである4)。Feinsteinらは、末梢型や並存疾患によりPEA適応外である18例のCTEPHに対して、平均2.6セッションのBPAを施行し、平均36か月間、経過観察した。BPA後、平均肺動脈圧の有意な低下(43→33.7mmHg)とNYHA分類の改善(3.3→1.8)、6分間歩行距離の改善(191→454m)を認めたが、PEAと同様の合併症である再灌流性肺水腫が18例中11例(61.1%)に発症し、人工呼吸器管理が3例(16.6%)、BPA関連死が1例(5.6%)という成績であった。当時の旧式のバルーンカテーテルや0.035インチガイドワイヤーを用いて行われたBPAの初期報告は、上記のように有効性を認めたわけであるが、外科的根治術であるPEAの有効性には及ばなかった。当時、UCSDのJamiesonらのPEA周術期死亡率は4.4%であり、術後の平均肺動脈圧は、中枢型CTEPHで46から28mmHg、末梢型CTEPHで47から32mmHgまで改善することができた3)。このため、米国ではBPAはPEAに劣ると結論づけられた。当時、CTEPHの治療選択肢には、PEAと薬物療法があり、PEAの適応症例であれば、十分な改善を得ることができたが、PEA適応外の症例を薬物療法で治療してもあまり改善は得られなかった。結果として、年齢、並存疾患(全身麻酔ができない)、末梢型CTEPHなどでPEAが実施できない症例が割と多いこと、末梢病変の存在によりPEA後の残存肺高血圧症が10%程度あることが問題として残った。このような背景において、2000年代半ばより、本邦の施設でPEA適応外である重症CTEPHに対して、BPAが施行されるようになり、いくつかの報告がされた5-7)。なかでも、岡山医療センターのMizoguchi、Matsubaraらの報告は、68名のCTEPH患者に対して255セッションのBPAを施行し、最大7年間、経過観察している。結果、BPA後に平均肺動脈圧、肺血管抵抗の低下(各々45.4→24mmHg、942→327dyne sec/cm5)、心係数の増加(CI 2.2→3.2L/min/m2)、6分間歩行距離の延長(296→368m)、BNPの有意な改善(330→35pg/mL)を認めた。酸素投与量も減量(oxygen inhalation 3.0→1.3)することができ、68名中、26名の患者(38%)で在宅酸素療法を離脱することができた。また、96%の患者がWHO分類ⅠまたはⅡまで改善することができた。周術期死亡率は1.5%であり、再灌流性肺障害(再灌流性肺水腫と同義)を含めた呼吸器関連合併症を認めたが、症例経験の増加に伴い、合併症は有意に低下すると報告している。以上、2010年以降の本邦からの報告において、改良されたBPAは、Feinsteinらの初期のBPAと比べて、安全性・有効性ともに著しく改善したといえる。改善した理由としては、バルーンカテーテルの発達、0.014インチガイドワイヤーの使用、画像診断デバイス(IVUSなど)の積極的な使用などがあると思われる。手技の流れについては次項で述べる。BPAの実際術前、右心カテーテル検査・肺動脈造影を必ず行い、個々の患者における肺高血圧症の重症度と肺動脈病変の形態評価を行う。検査結果より、右房圧が高ければ、利尿剤を調節し、心拍出量が低値(CI 2.0L/min以下)であれば、術前からドブタミンの投与を行う。抗凝固療法については前日からワルファリンカリウムを中止している。重症例で軽度の肺出血が致死的となる可能性がある場合、コントロールしやすいヘパリンへ置換する方法もあると考える。ワルファリンは他剤との併用により容易に効果が増強するので、PT-INRの頻回の測定を要する。また、われわれはエポプロステノールを使用していない。理由はCTEPHにおいて肺動脈圧の低下作用が軽微であること、中心静脈カテーテル留置など手技が煩雑であること、抗凝集作用により出血を助長する可能性があると考えているからである。次に実際のBPA手技について述べる。手技は施設間でやや異なっていると思われる。しかし、0.014インチガイドワイヤーの使用、肺動脈主幹部へのロングシース挿入、積極的な画像診断デバイスの使用などは各施設である程度、共通していると思われる。以下、われわれの施設の手法を述べる。アプローチ部位の第1選択は、右内頸静脈である(図1)。理由はガイディングカテーテルのバックアップや操作性がよいことである。また、術後のスワンガンツカテーテル留置が迅速にできることも利点である。内頸静脈が使用できない場合は、大腿静脈アプローチを考慮する。まず、エコーガイド下に9Fr 8.5cmシース(スワンガンツカテーテル留置用シース)を右内頸静脈に挿入する。内頸静脈アプローチとはいえ、稀に気胸を合併することがある。気胸はBPA後の必要時にNPPVが使用できなくなるなど、術後管理を困難にするため、必ず避けねばならない。このため、われわれは100%、エコーガイド下穿刺を実践している。図1 右内頸静脈アプローチ画像を拡大する次に6Fr 55cmまたは70cmロングシースを9Frシース内へ挿入する。6Frロングシースの先端をJ型またはPigtail型にシェイピングし、0.035インチラジフォーカスガイドワイヤーに乗せて、治療対象となる左右肺動脈の近位部へ進める。その後、6Frロングシース内へ6Frガイディングカテーテルを入れ、治療標的となる肺動脈病変へエンゲージする。ガイディングカテーテルの選択には術者の好みもあると思うが、われわれは岡山医療センターと同様、柔らかい材質のMulti-purposeカテーテルを第1選択とすることが多い。その他、治療標的血管により、AL1カテーテルやJR4カテーテルを適宜、選択する。稀であるが、完全閉塞病変に対して、材質の固いガイディングカテーテルを使用することがある。ガイディングカテーテルのエンゲージ後、正面、左前斜位60度の2方向で選択造影を行い、0.014インチガイドワイヤーをバルーンかマイクロカテーテルサポート下に肺動脈病変を通過させる。肺動脈病変に対するワイヤリングは、PCIやEVTと違うと感じる術者が多い。これは、肺動脈の解剖が3次元的に多彩であること(細かい分岐が多い)、肺動脈は脆弱で破綻しやすいこと、肺動脈病変が他の動脈硬化病変と大きく異なること、呼吸変動の存在などに起因すると思われる。特にBPAにおいて、呼吸変動をコントロールすることはとても重要である。呼吸変動を上手に利用すれば、ガイドワイヤー通過の助けになるが、上手にコントロールできなければ、ガイドワイヤーによる肺血管障害(肺出血)が容易に起こると思われる。当院では、肺血管障害を最小限にするため、ガイドワイヤーの通過後、可能な限り、先端荷重の軽いコイルタイプのガイドワイヤーへ交換している。ガイドワイヤー通過後は、血管内超音波(IVUS)または光干渉断層法(OCT)で病変性状・範囲・血管径などを評価し、病変型に準じて、血管径の50~80%程度のサイズのバルーンカテーテルで拡張していく。なお、平均肺動脈圧40mmHg以上または心拍出量2.0L/min以下の症例の場合は、岡山医療センターの手法に倣って、上記より20%程度減じたバルーンサイズを選択している。なお、CTEPHの肺動脈病変は再狭窄することはほぼなく、バルーンサイズを減じても大きな問題になることはない。しかし、複数回治療後に平均肺動脈圧が低下した症例の場合は、適切なサイズのバルーンカテーテルで拡張することがさらなる改善のために必要である。次に術後管理について述べる。BPA後は原則として、スワンガンツカテーテルを留置し、集中治療室管理としている。また、術後、再灌流性肺障害の有無や程度を確認するために必ず胸部単純CTを施行する。これらは、術後の再灌流性肺障害の有無、重症度の評価をするために行っている。経過がよければ、翌日午前中に集中治療室から一般病室へ戻ることができ、午後には歩行可能となる。当院での104セッションのBPAにおいては、1セッションのみで3日間の集中治療室管理を要したが、残り103セッションの集中治療室の滞在期間は1日であった。なお、最近、NPPV装着は必須としていないが、常にスタンバイしておく必要がある。NPPV適応となるのは、コントロール困難な喀血・血痰、重度の酸素化不良例などである。以下に当院の症例を示す。症 例54歳、女性主 訴労作時呼吸困難既往歴特になし家族歴特になし現病歴2011年11月、労作時呼吸困難(WHO分類Ⅱ)を認めた。2012年1月、労作時呼吸困難が悪化したため(WHO分類Ⅲ)、近医を受診し、急性肺塞栓症の診断で緊急入院となった。抗凝固療法を行い、外来で経過観察していたが、2012年9月、労作時呼吸困難が再増悪したため(WHO分類Ⅲ)、同医を受診。心エコー図で肺高血圧症を指摘され、CTEPHと診断された。2012年11月、精査加療目的で当院を紹介受診した。右心カテーテル:右房圧9、肺動脈圧73/23/m41、心拍出量1.8、肺血管抵抗1156肺動脈造影:図2入院後経過タダラフィル20mg/日を内服開始したが、肺動脈圧66/24/m39、心拍出量1.8、肺血管抵抗967と有意な改善は認めなかった。本人・家族と相談し、BPAの方針となった。1回目BPA:左A9、A102回目BPA:右A6、A8、A103回目BPA:右A1、A2、A3、A4、A54回目BPA:左A1+2、A85回目BPA:左A4、A56回目BPA:右A1、A3、A6、A7、A8、A9治療後計6回のBPAで計20病変を治療後、症状は消失した(WHO分類Ⅰ)。また、右心カテーテルでは肺動脈圧34/11/m19、心拍出量3.1、肺血管抵抗316と著明な改善を認めた。図2 肺動脈造影画像を拡大するBPAの現状と今後の適応過去の報告において、FeinsteinらはBPA適応を末梢型CTEPHや併存疾患により全身麻酔が困難なPEA適応外のCTEPHとしてきた。これらは、本邦からの報告でも同様である。しかし、近年、BPAは有効性に加えて、安全性も大きく向上しており、当院では適応範囲を拡大して、以下をBPAの適応としている。中枢型CTEPH(原則としてinoperable)末梢型CTEPH高齢重篤な併存疾患を有するCTEPHPEA後の残存PH軽度から中等度のCTEPH上記の重篤な併存疾患とは、全身麻酔ができない症例のことであると考える。また、BPAの普及により、最も恩恵を受けたのは、PEA後の残存PHと軽度から中等度のCTEPH症例であろう。PEA後の残存PHに対して再度、PEAを行うのは実際、高リスクであり、BPAはよい選択肢である。また、軽度から中等度のCTEPHは、従来、薬物療法で経過観察されていた患者群であるが、これらの症例に対して、BPAを行うことによりさらにQOLが向上し、薬物療法の減量、在宅酸素療法の減量・中止が可能となることをしばしば経験する。以上より、カテーテル治療であるBPAは低侵襲であり、PEAより適応範囲が広いと思われる。しかし、BPAに適した症例、PEAに適した症例があり、個々の患者でよく検討することが重要である。CTEPHには、血管造影上、いくつかの特徴的な病変があることが報告されている8)。当院で治療した計476病変を検討した結果、病変により、BPAの手技成功率が異なることが確認された(図3)。当然であるが、カテーテル手術のため、閉塞病変の方が狭窄病変より治療が難しく、再灌流性肺障害を含めた合併症発生率も高率である。しかし、BPAで閉塞病変を開存させることにより、著しく血行動態や酸素化の改善を経験することが多々あり、個人的には、閉塞病変は可能な限り開存させるべきであると考える。図3 各種病変と手技成功率画像を拡大する一方、用手的に器質化血栓を摘除するPEAは、BPAと比べて、閉塞病変の治療が容易にできるかもしれない。また、器質化血栓が多量である場合、器質化血栓をバルーンで壁に圧着させるBPAより、完全に摘除するPEAの方が理にかなっているかもしれない。しかし、PEAでは到達が困難である肺動脈枝が存在することも事実である。いずれにしても、BPA、PEAの双方とも一長一短があり、適応決定に際しては、外科医・カテーテル治療医の両者で話し合うことが望ましいと考えられる。まとめ以上、近年、本邦で発展を遂げたインターベンションであるBPAについて概説した。従来、CTEPHに対する根治術はPEAだけであったため、BPAの発展は、CTEPH患者にとって大きな福音であると思われる。現在、経験のある施設で再灌流性肺障害を低減させる試みがなされ、合併症発症率は確実に減少している。しかし、安全性を重視するあまり、治療効果を減じるようでは、本末転倒といわざるをえない。低い合併症発生率と高い治療効果の双方を合わせもったBPAでなければならない。CTEPHの第一の治療ゴールは、平均肺動脈圧30mmHg以下を達成することである。これにより、CTEPH患者の予後を改善することができる。そして、第二の治療ゴールは、さらなる平均肺動脈圧の低下を目指して(20mmHg以下)、QOLの向上や酸素投与量の減量・中止、薬物療法の減量などを達成することである(図4)。われわれは可能な限り、平均肺動脈圧の低下を目指す「lower is better」を目標として、日々、CTEPHを治療している。また、BPAは本邦が世界をリードしている分野であり、今後、本邦から多くの知見が報告されなければならないと考える。図4 治療のゴール画像を拡大する最後にわれわれも発展途上であり、今後、多くの施設とBPAの発展について協力していければと思っている。文献1)Piazza G et al. 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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート2

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。体重を3kg程度減らすとされていますが、その現象がなぜ1年ほどで止まってしまうのか、ご教示ください。SGLT2阻害薬は、尿糖排泄を促進することによりエネルギー収支を負に傾け、体重を減少させます。その体重減少効果はおおむね6ヵ月で底値(平均約3kg減少)に達し、観察期間2年の報告では、その後有意な増加はなく維持されています。しかし、質問にありますように、投与後6ヵ月以降ではさらなる体重減少は認めにくいようです。観察期間2年の報告を見ても経過中の尿糖排泄量に変化はないようです。理論的には、一定の食事と運動を継続する限り、体重はどこかで安定すると考えられます。しかし、体重減少作用減弱の原因として摂食量の増加や糖の消費に伴うエネルギー消費効率の低下もある程度寄与する可能性は否定できません。SGLT2阻害薬投与マウスやSGLT2ノックアウトマウスでは、コントロール群と比較し観察期間を通して摂餌量が増加し、SGLT1、2ノックアウトマウスではさらに摂餌量が増加します。また、SGLT2阻害薬投与後のエネルギー消費を確認したヒトや動物での研究はまだ少ないですが、体重減少効果が減弱した時期に酸素消費量や呼吸商を検討した報告では、コントロール群とSGLT2阻害薬群で差はないとされています。(保険診療外において)糖尿病ではない患者に対し、体重減少を目的として使用した場合、その効果は期待できるのかどうか、ご教示ください。健常者にSGLT2阻害薬を投与した場合においても、尿糖排泄が増加します。通常使用量では25~60g/日の尿糖排泄が確認されており、100~240kcal/日のエネルギー喪失となるため、非糖尿病肥満者でも体重減少効果が認められると考えます。しかし、安易な使用は、中止後の体重のリバウンドや、尿糖排泄に伴う尿路・性器系感染症のリスクといった問題点を引き起こしかねず、非糖尿病者での使用は厳に慎むべきです。SGLT2阻害薬と併用薬による改善効果の違いはどの程度でしょうか、ご教示ください。SGLT2阻害薬は、既存の糖尿病治療薬とまったく異なる作用機序を有する薬剤であり、すべての糖尿病治療薬で併用効果があります。日本人2型糖尿病患者対象の、既存糖尿病治療薬との52週間併用試験の結果では、スルホニル尿素(SU)薬:-0.63~0.84%、グリニド薬:-0.59~0.76%、DPP-4阻害薬:-0.52~0.81%、ビグアナイド薬:-0.61~0.95%、チアゾリジン薬:-0.6~0.86%、α-グルコシダーゼ阻害薬:-0.68~0.84%と、既存薬間での違いは見られません。観察期間中の低血糖発現率は、SU薬:3.0~14.7%、グリニド薬:0~6.1%で、その他の薬剤:3%未満で、SU薬やインスリン製剤と併用する場合にはとくに低血糖に注意が必要です。体重減少効果は、SU薬とチアゾリジン薬で乏しい傾向ですが、52週時点でもSGLT2阻害薬投与前と比較し体重減少は少なく、SU薬とチアゾリジン薬のデメリットを低減すると考えます。その他既存薬との併用では-2.5~3.0kgの体重減少効果があります。腎機能が低下しつつある患者さんにも効果が期待できるでしょうか、ご教示ください。SGLT2阻害薬非投与時の2型糖尿病患者の尿糖排泄量(平均±標準偏差)は、腎機能低下に伴い、正常腎機能6.71±8.77g/日、軽度腎機能障害8.80±17.0g/日、中等度腎機能障害2.00±3.76g/日、重度腎機能障害0.553±0.247g/日と減少します(トホグリフロジン添付文書)。また、SGLT2阻害薬自体も腎機能低下に伴い、糸球体濾過量が減少します。このように、腎機能低下例では、糖およびSGLT2阻害薬の糸球体での濾過量が減少するため、SGLT2阻害薬投与時の2型糖尿病患者の24時間尿糖排泄量は、正常腎機能70~90g/日、軽度50~70g/日、中等度20~40g/日、重度腎機能障害10g/日と、腎機能低下とともに減少します。このような理由から、中等度腎機能低下例(30≦eGFR≦59mL/min/1.73 m2)のHbA1c改善度は-0.1~0.3%程度と減弱します。しかし、興味深いことに、腎機能正常例と比較し体重減少効果の減弱は認められず、その原因は現時点では不明です。また、高度腎機能低下または透析中の末期腎不全例では、効果がないことや副作用発現リスクを考慮し投与しないことになっています。副作用の発現時に、すぐに休薬すべきか、しばらく様子をみるかどうか、また、休薬時のポイントをご教示ください。●低血糖とくにインスリン製剤やスルホニル尿素(SU)薬と併用する場合に留意する必要があります。インスリン製剤やSU薬は血糖管理不良例で使用されていることが多いですが、SGLT2阻害薬の血糖低下作用は血糖管理不良例ほど大きく、インスリン製剤やSU薬と併用する場合には予期せぬ低血糖が起こる場合があり、低血糖リスク軽減のためインスリンやSU薬の減量を考慮する必要があります。ただし、インスリン製剤やSU薬使用例はインスリン分泌能低下例も多く、早めの受診を促し病態悪化阻止に努めるべきです。低血糖出現時には糖質摂取を促し、インスリンやSU薬を減量してください。●脱水投与早期(とくに1ヵ月以内)に多く、とくに、高齢者、利尿剤投与例、血糖コントロール不良例で注意が必要です。SGLT2阻害薬による尿量増加は200~600mL/日とされており、予防として500mL/日程度の飲水を促し、脱水を認めた場合は休薬と補液を考慮ください。●尿路/性器感染症とくに既往を有する例で注意が必要です。清潔を保持することで多くは予防可能ですが、症状出現時には速やかに受診するよう事前指導し、感染症治療を行うとともに、症状に応じて休薬を考慮ください。●ケトン体増加インスリン作用不足に起因する場合にはインスリン補充が必要であり、糖尿病性ケトアシドーシスの場合には、とくに速やかな対応が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスでは3-ヒドロキシ酪酸が顕著に増加しますが、尿ケトン体定性検査は3-ヒドロキシ酪酸を検出できないため、過小評価となる危険性があるので注意してください。●休薬時の対応SGLT2阻害薬の休薬時には、病態に応じて薬剤の変更や追加が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part1はこちら

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「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」で副作用事例と対応策を公表

日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月の副作用報告を受け、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。■Recommendation1.SU 薬などインスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4.発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5.本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合にはすみやかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7.原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。■副作用の事例と対策(抜粋)●重症低血糖24例(うち4例が重症例)の低血糖が報告され、多数の糖尿病薬を使用している患者にさらに追加されている場合が多くみられた。併用薬はSU薬、インスリンに加えて、ほかの作用機序の薬剤も含まれている。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤またはインスリン製剤と同剤を併用する場合は、低血糖のリスクを軽減するためあらかじめスルホニルウレア剤などの併用剤の減量を検討する必要がある。とくに、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要。グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じるグリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じるグリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる●ケトアシドーシス1例の報告例。本例では極端な糖質制限が行われていた。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシス発現に厳重な注意を図るとともに、同時に栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者への投与ではケトアシドーシスを発現させうることに注意が必要。●脳梗塞3例(うち2例重篤、1例非重篤)の報告。脱水が脳梗塞発現に至りうることに改めて注意を喚起し、高齢者や利尿剤併用患者などの体液減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬の投与は、十分な理由がある場合のみとし、とくに投与初期には体液減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意が必要。参考「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20●全身性皮疹・紅斑全身性皮疹が7例(うち6例は重篤)の報告、全身紅斑または紅斑性皮疹が4例(うち3例が重篤)の報告。SGLT2阻害薬投与後、1~12日目で発症。SGLT2阻害薬との因果関係が疑われ、投与に際しては十分な注意が必要。SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「適応を十分考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48

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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。1日に尿に排泄される糖は、約60g程度と聞いています。この量は血糖コントロールの改善に差が出てくるのでしょうか、ご教示ください。健常人では糸球体から180g/日(血糖値100mg/dLの場合)の糖が濾過されますが、血糖値が尿糖排泄閾値160~180mg/dLを超えない限り、近位尿細管に発現するSGLT2(再吸収の約90%を担う)とSGLT1(再吸収の約10%を担う)の働きによりほぼ100%再吸収されるため、尿糖排泄はみられません。一方、健常人にSGLT2阻害薬を投与すれば、SGLT1による糖再吸収能が高まり、尿糖排泄量は糸球体濾過量の1/3程度にとどまると考えられています。尿糖排泄量は、血糖管理状況と腎機能の影響を受けるため、2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した場合、尿糖排泄量のバラツキは大きくなり、各薬剤の添付文書によれば、70~140g/日まで増加します。すなわち血糖値が高いほど、尿糖排泄量が多くなり、HbA1c低下量は大きくなります。このようにSGLT2阻害薬による血糖改善効果の程度は、腎機能が正常である限り、使用時のHbA1c値によって変わってきます。具体的な投与対象患者像について、また、投与を避けたほうがよい患者像について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄促進により血糖を改善するため、腎機能低下がない限り血糖を低下させます。また、体重減少、血圧低下、中性脂肪低下、HDL-コレステロール上昇、尿酸低下、糖毒性改善に伴うインスリン分泌能およびインスリン抵抗性の改善といった多面的効果も期待できます。その一方で、(1) 浸透圧利尿による多尿、頻尿、脱水、血圧低下、(2) 尿糖排泄増加に伴う尿路/性器感染症、(3) 糖新生促進によるケトン体増加、筋組織の萎縮など今後の臨床応用において留意すべき多くの点があります。各々の留意点として、(1) 口渇を感じにくい高齢者、腎機能低下例、利尿剤使用例、脳梗塞既往例、自律神経障害例、乳酸アシドーシス危険因子の保有例、(2) 尿路/性器感染症の既往例、とくに女性、(3) インスリン分泌能低下例(ケトアシドーシスリスク)、やせ、筋肉量が少ない例が挙げられます。つまり、最も適切な投与患者像は、非高齢の、罹病期間が比較的短い、肥満2型糖尿病例と考えられます。これらの患者においてもSU薬やインスリンとの併用時には低血糖発現に留意すべきで、あらかじめSU薬、インスリンを減量することを勧めます。コントロール不良例で使用する場合の注意点についてご教示ください。血糖管理不良例では尿糖排泄量が増加するため、SGLT2阻害薬の有効性は高くなります。しかし、血糖管理不良時には内因性インスリン分泌能を見極める必要があり、さらに頻尿、脱水などの副作用の頻度や重症度が高くなる可能性があるため注意が必要です。新規2型糖尿病患者の場合、肥満でインスリン非依存状態にあればよい適応です。しかし、非肥満例では糖新生に伴う骨格筋萎縮の懸念が強く、不適と考えます。すでに他剤が投与されているインスリン非依存例では、前投薬がインスリン製剤もしくはSU薬の場合は低血糖に、ビグアナイド薬の場合は乳酸アシドーシスに注意する必要があります。他剤の使用の有無にかかわらず、インスリン依存状態(体重減少例、ケトーシス例)ではケトアシドーシスに注意する必要があり、インスリン製剤を先行投与すべきです。SGLT2阻害薬のHbA1cの低下効果はどの程度でしょうか、ご教示ください。2014年6月18日現在、わが国ではイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)、ルセオグリフロジン(同:ルセフィ)、トホグリフロジン(同:アプルウェイ/デベルザ)が発売、カナグリフロジンが発売準備中、エンパグリフロジンが承認申請中の状態です。一般にHbA1cの低下効果は、ベースラインHbA1c値に依存します。すなわちHbA1cが高い患者ほどよく下がります。わが国での臨床試験結果から、HbA1c8%程度に使用した場合、0.7~1.0%の低下が期待できると思われます。この効果は薬剤間で有効性に差はないものと思われます。単独療法での各SGLT2阻害薬のHbA1c改善効果は、52週時点で-0.6~0.67%と大きな差はありません。IC50で評価した各SGLT2阻害薬のSGLT2阻害活性が1.3~6.7nmol/Lと大きな違いがないことからも有効性に大差はないと考えられます。(高齢者の)浸透圧利尿による脱水の程度、およびその対処法や泌尿器科領域の感染症の頻度とその重症度について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿により尿量を増加させ、継続投与による尿量増加は200~600mL/日程度とされています。そのため、通常より約500mL/日多く飲水を行えば脱水を回避できると予想されます。継続投与による体液量関連指標の変化は、ヘマトクリット:+1%、尿素窒素:+1.5mg/dL、血清クレアチニン値:腎機能正常例-0.05mg/dL、中等度腎機能低下例+0.1mg/dL程度です。また、多尿、頻尿、口渇の発現率は、各々0~1%、2~5%、0~2%です。しかし、前述した値はあくまでも平均値であり、各々の値の標準偏差は大きいため、実地臨床で使用する場合には注意が必要であり、とくに口渇感を感じにくい高齢者、利尿剤使用例、血糖管理不良例では注意を要します。SGLT2阻害薬では、尿糖排泄増加による尿路や性器感染症が懸念されています。発現頻度は各々1~5%、1~7%で、重症度は軽症から中等症にとどまり、重症例は現時点で報告されていません。これらの多くは既往を有する例であり、とくに女性では注意が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part2はこちら

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募集した質問にエキスパートが答える!心房細動診療 Q&A (Part.1)

今回は、4つの質問に回答します。「高齢者への抗凝固療法」「抜歯、手術、消化器内視鏡時の抗凝固療法」「新規抗凝固薬の違い、使い分け」「新規抗凝固薬のモニタリング」新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け方法について教えてください。確かに大変気になるところです。新規抗凝固薬は超高齢社会に突入した日本において、今後ニーズが高くなる薬剤でしょう。新規抗凝固薬はいずれもワルファリンを対照薬とした臨床試験によって、その効果と副作用が明らかになりました。しかしながら、この3つの新規抗凝固薬は、機序や内服回数が異なるうえ、いずれも異なる臨床背景を持つ症例を対象に臨床試験が行われています。いわば「土俵」が違うのです。このため、3剤の使い分けの指針はありません。下記に示す表1に従って禁忌症例に注意し、腎機能によって投与量を選択するとともに、薬剤特有の副作用に注意してください。たとえば、ダビガトランに特有の副作用はディスペプシアです。コップ一杯の水とともに内服するようにし、それでもディスペプシアの症状が出る場合は、プロトンポンプ阻害薬や消化管運動賦活剤(イトプリド塩酸塩、商品名:ガナトンなど)などが有効であるとも聞きます。表1.新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け画像を拡大するなおアピキサバンは、「80歳以上、血清クレアチニン(Cr)1.5 mg/dL以上、体重60kg以下」のうち2項目以上に該当する場合は低用量(1回2.5㎎を1日2回)とするよう記載があります。新規抗凝固薬はまだ十分な使用経験がないので、出血事象が危惧されるような高齢者、低体重者、腎機能低下者、抗血小板薬併用者を避け、このような因子が複数ある場合にはワルファリンを使用するべきと思います。心不全などで利尿剤を服用している場合は腎機能が大きく変動することがあります。まず、安全性の高い症例への投与経験を積んで持ち寄ることが重要と思います。新規抗凝固薬のコントロール指標、検査の間隔、薬剤量調節方法について教えてください。表1に一般の病院や医院で測定可能な出血モニター指標をまとめました。凝固線溶系マーカーの基準値は試薬によって異なるため、外注の場合は同一ラボに依頼すべきでしょう。検査の間隔についてのエビデンスは少ないようです。ただし、少なくともワルファリンのように毎月測定する必要はありません。腎機能が保たれている場合には年に1~2回の採血で良いのではないでしょうか。高齢者や利尿剤を内服している場合には、腎機能の悪化によって新規抗凝固薬の効果が高まることも予想されるため、もう少し頻回に調べるべきでしょう。ダビガトランはaPTTでモニターします。心臓血管研究所の報告ではaPTT値は個人差が大きく、低用量(220mg/日)であっても、~70秒に延長する症例もあるようです。多くの症例では、内服2~3時間後の血中濃度ピーク時に測定すると45~50秒位となり、トラフ時は~40秒となるようです。内服開始1週間以内にピーク時を狙って1度は測定し、aPTT高値例では減量やワルファリンへの切り替えを検討するべきでしょう。リバーロキサバンのモニターはPT-INRで行います。内服2~3時間後位のピーク時のPT-INRは~2が多いようですが、中には2.5を超えることもあります。PT-INRが2を常時超えるとなると出血事象が増加すると思いますので、その際には減量かワルファリンへの切り替えが良いと思います。アピキサバンも理論的にはPT-INRが指標になりますが、リバーロキサバンと比べてPT-INRはあまり上がらないようです。まずは、安全性の高い症例に投与してその経験を持ち寄り、日本人のエビデンスをつくることが重要と思います。高齢者への抗凝固療法について薬剤選択や投与量の注意点、決定方法について教えてください。また、何歳まで抗凝固療法を行うべきか(効果はあるか)? 逆に、何歳で抗凝固療法をやめるべきでしょうか? 教えてください。大変悩ましい問題です。ワルファリンは、Net clinical benefitの考えで計算すると、若年者より高齢者の方が塞栓症の予防効果が高く算出されます。しかしながら、超高齢者に継続投与するのが現実的かどうか、症例ごとの判断が必要でしょう。私の外来でワルファリンを処方している最高齢者は88歳の発作性心房細動の男性で、CHADS2スコア2点です。この方は78歳時に前医によってワルファリンが開始され、その後も続けています。ADLは保たれ、内服薬の自己管理は完璧で、幸いこれまで出血事故は経験していません。対照的な症例として、3ヵ月前にワルファリンを中止した75歳の女性がいます(CHADS2スコア2点)。この方は70歳時にワルファリンが開始されましたが、2年間に3度の出血事故を起こしたために中止しました。老老介護のため内服管理が困難で、決められた錠数が守れなかったり、転倒して眼窩出血を起こしたりしたほか、感冒や感染で抗炎症剤や抗生剤を長期連用して消化管出血と鼻出血で来院したなど、を経験しました。逆説的ですが、出血の既往は大出血の危険因子です。何らかの出血事象を経験した症例は、その後も出血を繰り返す確率が上がります。高齢者に抗凝固療法を開始する場合には(個人的には私は80歳が1つのラインかと思っていますが・・・)、全身状態やADL、認知症の有無などを総合的に判断し、家族を含めた話し合いを行うべきでしょう。抜歯、消化器内視鏡検査時や外科的手術施行時に、抗凝固療法はどのようにするべきでしょうか? 教えてください。外科的処置の侵襲度と患者さんのCHADS2スコア、とくに塞栓症既往の有無などを勘案しなければいけません。抜歯の際にワルファリンを中止すると1%の確率で塞栓症を発症するとされます。このため、ワルファリンは中止しない、あるいは若干の減量で対処し、PT-INRが2未満となったことを確認して抜歯していただくとよいと思います。もちろん、日頃のPT-INR値が1.6位と低い場合にはそのまま抜歯が可能でしょう。しかし、地域によっては歯科医院の数に限りがあり、ワルファリンを中止しないと治療は行わないとする先生もあると聞いています。その際には、ワルファリンを中止したらとくに脱水に留意するとともに、止血が確認できたら速やかにワルファリンを(中止前の錠数で)再開するなどの処置をとってください。CHADS2スコアが高い場合には、紹介入院の下で処置をお願いすることも考えてください。ビガトランの場合は、薬剤半減期が短いので治療の1日前に中止すれば血中濃度が下がりますが、腎機能が低下している場合には2日前に中止することが推奨されます(図1)。しかしながら、塞栓症リスクの高い場合は、1日完全にやめてしまうことに不安を感じます。そのような場合には、血中濃度が下がっている時間帯に治療を行うとよいでしょう。朝食後の内服を中止し午前中に抜歯し、就寝直前に1回内服する。あるいは朝食後に内服した場合は、午後の遅い時間帯に抜歯し、就寝直前に2回目を内服する、などの方法により止血困難な時間帯を避けられるのではないかと考えます。リバーロキサバンの場合は、内視鏡による生検や内視鏡下での観血的処置を実施する場合には、処置当日のみ中止し、その翌日より再開するとよいとされます(図2)(手技終了後に出血のないことを確認し、さらに後出血の危険がないと考えられる時点で速やかに再開する)。2012年(平成24年)7月に日本消化器内視鏡学会から、「抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラン」が刊行されました。抗血栓薬を継続して使用することによる消化管出血だけでなく、休薬による血栓塞栓症発症にも配慮されています。ただし、消化管出血に対する緊急内視鏡には適応されません。下記に抗凝固薬服用者の治療の流れを示します(図3、4)。内視鏡検査の侵襲度に応じて「休薬なし」から「ヘパリン置換」まで変わります。PT-INRが治療域越えの場合には治療域に入ったことを確認してから検査とするようご配慮ください。また施設によっても対処が変わるかと思います。科をまたいだ連携が必要でしょう。他に抗血小板薬を用いる場合も掲載されておりますが、紙面の都合上割愛致しました。図1.手術等を行う場合の中止手順画像を拡大する図2.抜歯等の侵襲的処置を行う場合の対応画像を拡大する図3.フローチャート画像を拡大する図4.出血危険度による消化器内視鏡の分類画像を拡大する

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激辛!伊賀流心臓塾

第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」第4回「これだけは知っておきたい!心不全」第5回「無症状で著明な左室肥大」 ※第1巻は、「激辛!伊賀流心臓塾(第1巻)≪増補改訂版≫」となります。第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めての胸痛が出現し、3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。 決して珍しい症例ではなく、コモンに起こるケースだといえる今回の症例。さて、どうしますか?CT、胸部レントゲン、心エコー、トロポニンT、ニトログリセリン点滴、専門医へ転送…。いろいろ選択肢は考えられますが、果たしてどうするのが適切なのでしょうか? もし、あなたが非専門のプライマリ・ケア医なら、あるいは夜間当直中の病院勤務医ならどう対処されますか?達人がズバリお答えします。【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めて胸痛が出現し、冷や汗をともない3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。第4回「これだけは知っておきたい!心不全」心不全の患者さんについて、循環器非専門医として、どこまで知っておかなければならないか、どのようにアプローチしていくのか、ということをお話していきます。【今回の症例】治療抵抗性の心不全を呈する72歳の女性。約1年ほど前から心不全との診断で、近くの病院に3回入院。今回も心不全で同じ病院に入院して、診断は「拡張型心筋症」と説明を受けていたが、いつもと違って利尿剤に対する反応が悪いために、大きな病院で診てもらうことで転入。血圧は90/70、心拍数95でレギュラー。内頚靜脈の怒張を認め、やや頻呼吸を呈している。2/6度の収縮期雑音が前胸部全体に聴取されギャロップリズムだった。両側下肺野でクラックルが聴取される。末梢はやや冷たいが動脈は全て触知した。心電図は洞調律でST,T変化を伴った左室肥大であった。 さて、ここで循環器非専門医として何をどう考え、どのように診断していくべきでしょうか? 2004年現在の医療レベルで改善できる疾患を見逃さないために何を念頭に置いて、どのように検査していくべきでしょうか?第5回「無症状で著明な左室肥大」心電図検診で異状を指摘された患者さんが、セカンドオピニオンを求めて来院されるケースはしばしばあることでしょう。ときには狭心症や肝不全などと診断され、日常生活を大きく制限されたり、すぐに薬物療法を施行されるケースもあるようです。しかし、実際は心電図で狭心症と言われること自体がおかしい、ということはすでに学ばれたとおりです。実は今回のような症例は日本人に多いとのことですが、一体どのように考え、どのようなアプローチをすべきでしょうか?【今回の症例】63歳男性。高血圧など既往歴なく無症状であったが、心電図検診で左室肥大を指摘され、狭心症を疑われた。血圧、心音、胸部X線は正常、心エコー図も正常とのレポートであった。

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利尿剤の合剤「ブロプレス プラス」をヨーロッパで発売開始

 武田薬品工業株式会社は18日、ドイツにおいて、ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)との合剤である高血圧症治療剤「ブロプレス プラス」を発売した。新たに発売されたブロプレス プラスは、欧州における最高用量であるカンデサルタン32mgにヒドロクロロチアジド25mgまたは12.5mgを組み合わせた2つの新用量がある。ドイツ当局からの販売許可を受けてブロプレス プラスを欧州で初めて発売 ブロプレス プラスは、カンデサルタン32mgまたはヒドロクロロチアジド単剤で効果不十分な本態性高血圧症患者に適応するという。 ブロプレス プラスの審査は、欧州において分散承認審査方式により行われている。同社では、ドイツ当局からの販売許可を受け、ブロプレス プラスをヨーロッパにおいて初めて発売したが、これまでに、オーストリア、ポルトガル、スペインにおいても販売許可を取得しており、今後、欧州のその他主要国においても順次、販売許可を取得し、発売する予定とのこと。

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チアジド系降圧利尿剤 フルイトラン錠1mg新発売

塩野義製薬株式会社は15日、チアジド系降圧利尿剤「フルイトラン錠1㎎」(一般名:トリクロルメチアジド)を新発売した。フルイトランは、米国シェリング・プラウ社により開発され、1960年に米国で発売されたチアジド系降圧利尿剤トリクロルメチアジドの経口用製剤で、腎臓の遠位尿細管でナトリウムや水分の再吸収を抑え、体内の余分な水分を排出して尿の量を増やし、高血圧症の方々の心臓への負担を軽減する。現在、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を含むレニン・アンジオテンシン系抑制薬と、少量の降圧利尿薬の併用療法が、降圧効果の相乗作用のみならず、電解質・糖代謝に対する副作用を相殺できる利点があるとして推奨されている。同社は「フルイトラン錠2㎎」を1960年より販売しているが、今回、少量製剤であるフルイトラン錠1mgを発売し、新たに医療現場に提供することで患者の利便性を向上させ、さらにARBである「イルベタン錠」と併用することで降圧効果の増強を図ることが可能になるとしている。詳細はプレスリリースへhttp://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/090515.pdf

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ブロプレスと利尿剤の合剤 エカード配合錠新発売

 武田薬品工業株式会社は13日、ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と低用量の利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)との合剤である高血圧症治療剤「エカード配合錠LD」「エカード配合錠HD」を発売した。 エカード配合錠は、高血圧治療ガイドラインにおいて併用が推奨されているアンジオテンシンII受容体拮抗剤と低用量の利尿剤を組み合わせた合剤。ヒドロクロロチアジドの含量を通常用量の4分の1である6.25mgとすることで、サイアザイド系利尿剤に一般的に見られる副作用を軽減できると考えられ、臨床第3相試験において降圧効果の増強が認められているという。 製剤の種類は、1日1回の経口投与製剤で、1錠あたりカンデサルタン シレキセチル4mg/ヒドロクロロチアジド6.25 mgを含有する「エカード配合錠LD」と、カンデサルタン シレキセチル8mg/ヒドロクロロチアジド6.25mgを含有する「エカード配合錠HD」の2種類。

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高血圧症治療剤「エカード配合錠」の製造販売承認を取得

 武田薬品工業は21日、ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と低用量の利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)との合剤である高血圧症治療剤「エカード配合錠」の製造販売承認を取得したと発表した。 エカード配合錠はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤と低用量の利尿剤を組み合わせた合剤。1日1回の経口投与製剤で、1錠あたりカンデサルタン シレキセチル4 mg / ヒドロクロロチアジド6.25 mgを含有する「エカード配合錠LD」と、カンデサルタン シレキセチル8 mg / ヒドロクロロチアジド6.25 mgを含有する「エカード配合錠HD」の二種類の製剤がある。

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ACE阻害薬、利尿薬とよりもCa拮抗薬との併用のほうが優れる:ACCOMPLISH試験

 米国の現行の高血圧治療ガイドライン(JNC 7)では、ハイリスクの高血圧患者に対してサイアザイド系利尿剤を含んだ併用療法を用いることを推奨しているが、最適な併用治療は十分に検討されていなかった。国際的な多施設共同試験ACCOMPLISHは、ACE阻害薬「ベナゼプリル」+ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬「アムロジピン」と、「ベナゼプリル」+サイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」とを比較したもので、ACE阻害薬+Ca拮抗薬併用療法のほうが、心血管イベントの減少効果が優れていることを報告した。NEJM誌2008年12月4日号より。アメリカ、北欧の計5ヵ国548施設から1万強が参加 ACCOMPLISH(Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension)試験は多施設共同無作為化二重盲検試験で、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの5ヵ国548施設から参加した、心血管イベントリスクが高い高血圧患者1万1,506例(2003年10月登録開始)を、ベナゼプリル+アムロジピン併用療法群(Ca拮抗薬併用群)とベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法群(利尿薬併用群)に割り付け行われた。 両群の患者基線値は同等。試験は、追跡平均36ヵ月時点で、事前規定の試験有効性の中止基準を上回ったため早期に終了された。Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の2割減 平均血圧は、Ca拮抗薬併用群で131.6/73.3 mmHg、利尿薬併用群で132.5/74.4 mmHgで、目標血圧(140/90 mmHg以下)は前者75.4%、後者72.4%の達成率だった。 主要なアウトカムイベント(心血管系を原因とする死亡、心筋梗塞、脳卒中、狭心症による入院、突然の心停止後に蘇生、冠動脈血行再建)は、Ca拮抗薬併用群では552件(9.6%)だったが、利尿薬併用群では679件(11.8%)発生し、Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の0.80倍(95%信頼区間:0.72~0.90、P

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アリスキレン、肥満の高血圧患者において利尿剤よりも有意な降圧効果を示す

ノバルティス ファーマ株式会社は、新しいクラスの直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor:DRI)アリスキレン(製品名:米国ではTekturna、それ以外ではRasilez)が、肥満の高血圧患者において、利尿剤ヒドロクロロチアジド(HCT)単独よりも有意に血圧を低下させることが確認されたと発表した。2008年度欧州心臓病学会(ESC: European Society of Cardiology)で発表された事後解析では、アリスキレン300mgを単独で使用した場合、座位収縮期血圧が平均で16.7mmHg低下したということが示された。これに対し、HCTによる座位収縮期血圧の低下は平均で12.2mmHgだった。また、拡張期血圧の低下については、HCTの9.1mmHgに対してアリスキレンは12.3mmHgだった(p

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武田薬品 ブロプレスと利尿剤の合剤を申請

 3月17日、武田薬品工業はブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)の合剤を厚生労働省に申請したと発表した。武田薬品の配合剤としては、海外ではインスリン抵抗性改善剤であるアクトス(一般名:塩酸ピオグリタゾン)とビグアナイド系血糖降下剤(一般名:メトフォルミン)との合剤や、アクトスとスルフォニル尿素剤(一般名:グリメピリド)との合剤を発売しているが、承認されれば日本市場向け製品の第1号となる見通し。

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NPPA遺伝子変異型の降圧剤への効果と関連性

 高血圧治療は近年優れた薬剤の登場でコントロールが可能となってきているが、ミネソタ大学薬理学のAmy I. Lynch氏らは「患者個々の遺伝子特性に合わせた治療が可能となれば、心血管疾患(CVD)罹患率および死亡率をもっと低下することができるのではないか」と考えた。その可能性をALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)の高血圧患者のデータを利用し解析。JAMA誌2008年1月23日号に結果が掲載された。ALLHATから高血圧患者38,462例のデータを事後解析Lynch氏らがターゲットとしたのは、一部の降圧剤の効能をコントロールする可能性が示唆される心房性ナトリウム利尿ペプチドの前駆体をコードしているNPPA遺伝子。その変異による降圧剤への効果と関連性を調べた。NPPA T2238CあるいはNPPA G664A変異を有する対象者での心血管疾患率および血圧の変化の違い、利尿剤と他の降圧薬治療との違いについて調査。ALLHATから高血圧患者38,462例のデータによる事後解析の内訳は、利尿剤(クロルサイアザイド)13,860例、Ca拮抗剤(アムロジピン)8,174例、ACE阻害剤(リジノプリル)8,233例、αブロッカー剤(ドキサゾシン)8,195例となっている。遺伝子タイピングの実施期間は2004年2月から2005年1月の間に行われた。平均追跡期間は4.9年。主要評価項目は、致死的CHD・非致死的心筋梗塞と定義された虚血性心疾患(CHD)。副次評価項目は、脳卒中、全死亡、心血管疾患併発、6ヵ月後の収縮期・拡張期血圧の変化。血圧変化(収縮期)はCC遺伝子型で最も大きな変化TT、TCなど各遺伝子型(NPPA T2238C:TT、TC、CC NPPA G664A:GG、GA、AA)の結果から最大・最低値をみると、CHDの最低はAAにおける15.3、最高はTTで19.3、脳卒中は9.6(TT)、15.4(AA)、全死亡は27.4(TT)、30.7(AA)(いずれも/1,000人年)。NPPA T2238C変異群でイベント発症が低いことが明らかとなった。6ヵ月後の血圧変化(収縮期)については、CC遺伝子型で最も大きな変化がみられた(利尿剤:-6.5mmHg、Ca拮抗剤:-3.8mmHg、ACE阻害剤:-2.4mmHg、αブロッカー剤:-3.8mmHg)。TT遺伝子型では、投薬による降圧効果は収縮期、拡張期とも、いずれの薬剤においても低かった。NPPA G664A異型では「遺伝薬理学的な関連性をみいだせなかった」とも報告されている。Lynch氏らは、「NPPA T2238C異型は、心血管疾患、血圧に影響を及ぼす降圧剤との関連が認められた。C遺伝子型を有する場合は、利尿剤投与が最も心血管疾患のアウトカムに有利で、TT遺伝子型の場合は、Ca拮抗剤が最も有利」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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