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膵がん死を減らせるか? 膵がん切除後の補助療法:mFOLFIRINOXかゲムシタビンか(解説:上村直実氏)-998

 消化器領域のがんでは感染症である肝がんと胃がんによる死亡者が激減し、著明な増加を示していた大腸がん死亡者数も肺がんと同様にプラトーに達し減少に転じている。その中で早期発見が困難でかつ発見時には手術不能例が多い膵がんによる死亡者数のみが年間3万人を超えて増加の一途をたどっている。膵がん死を防ぐ方法としては、完治できる外科的手術が理想的であるが、早期に発見された切除可能膵がんでも手術単独の5年生存率はわずか10%とされており、生存率の向上を目的として、術前・術後の補助療法が模索されているが、とくに局所病変が切除可能で転移に乏しい患者に対する術後の補助療法は必須となっている。 このたび、フランスとカナダで施行された第III相試験(RCT)の結果として、切除可能膵がん患者に対する術後補助療法として、毒性の強いFOLFIRINOX(フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチン併用)の用量を調整したmodified FOLFIRINOXと欧米における標準治療であるゲムシタビン(GEM)を比較した結果、前者がより有効であることがNEJM誌に報告された。mFOLFIRINOX群の無病3年生存率39.7%がGEM群の21.4%に比べて有意に延長した結果は今後に期待を持てる数字といえる。一方、日本では欧米の評価と異なりGEMとともに標準治療とされているS-1の評価が必要であると考えられる。 いずれにせよ、わが国における今後の膵がん対策として、実地医家など第一線の診療現場と専門医を有する中核施設の協力体制による早期発見システム(尾道方式など)の構築が必要であり、一方、補助化学療法としては、GEMとS-1を標準治療として有効性を示す新規薬剤の模索が進行中であるが、今後、MSI-highの膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性が早急に検討されることが期待される。

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ニボルマブ、食道がん第III相試験でOS延長(ATTRACTION-3)/小野薬品

 小野薬品工業株式会社は、2019年1月9日、ニボルマブ(商品名: オプジーボ)について、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐となった切除不能な進行または再発食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3:ONO-4538-24/CA209-473)の最終解析において、ニボルマブ群が化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示したと発表。 ニボルマブは、切除不能な進行または再発食道がんにおいて、腫瘍細胞のPD-L1発現を問わない集団全体においてOSの有意な延長を示した世界で初めての免疫チェックポイント阻害薬となる。なお、本試験の結果については、今後、関連学会にて公表する予定とのこと。

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75歳以上の日本人進行非小細胞肺がん患者への免疫療法、有効性と安全性/日本肺癌学会

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療の有効性と安全性については、議論が定まっていない。日本人高齢NSCLC患者を対象に、免疫療法の影響を評価した後ろ向き多施設共同研究の結果が、2018年11月29日、第58回日本肺癌学会学術集会で岡山大学病院の久保 寿夫氏により発表された。 本研究では、2015年12月~2017年12月に、日本国内の7つの医療機関でペムブロリズマブあるいはニボルマブによる治療を受けた進行NSCLC患者434例について後ろ向きに分析を行った。無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)のほか、PS、PD-L1発現状態、血清アルブミン値、G8スコアによる生存期間の比較、安全性などが評価された。 G8は高齢者の治療方針を決める際などに、高齢者機能評価を行うべき患者を抽出するために用いられる簡易スクリーニングツールで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)も高齢者研究での使用を必須としており1)、食事摂取量や体重減少などについての8項目からなる。本研究では診療記録を用いた評価のため、「同年齢の人と比べて、自分の健康状態をどう思いますか」という質問項目を除く7項目の修正版が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・434例の患者のうち、100例が75歳以上(中央値:79歳、範囲:75~90歳)であった。 うちPS 3の5例については除外された。・男性が77例(81.1%)、PD-L1発現<1%:4例(4.2%)/ 1~49%:10例(10.5%)、≧50%:26例(27.4%)、不明:55例(57.9%)であった。・組織学的所見は、非扁平上皮がん55例(57.9%)、扁平上皮がん40例(42.1%)。・20例(21.1%)で1次治療としてICIが投与され、75例(78.9%)で2次治療以降に投与されていた。67例(70.5%)がニボルマブ、28例(29.5%)がペンブロリズマブによる治療を受けていた。・ECOG PS0:16例(16.8%)/ PS1:60例(63.2%)/ PS2:19例(20.0%)、修正G8スコアの中央値は11.5(範囲:5.5~15.5)であった。・PFS 中央値は1次治療群で6.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7)、2次治療以降群では2.9ヵ月(95%CI:1.9~4.6)であった。・生存期間中央値(MST)は1次治療群で8.7ヵ月(95%CI:7.9~NR)、2次治療以降群では15.5ヵ月(95%CI:5.5~NR)であった。・ORRは1次治療群で35.0%(CR:0例、PR:7例、SD:6例、PD:5例、NE:2例)、2次治療以降群で20.0%(CR:0例、PR:15例、SD:18例、PD:31例、NE:11例)であった。・MSTを各層別因子ごとに比較した結果、PSと修正G8スコアによる有意な差が認められた: PS 0~1 vs.PS 2:17.8ヵ月 vs.3.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.23、95%CI:0.11~ 0.46、p<0.01) 修正G8スコア ≧11 vs.<11:NR vs. 8.2ヵ月(HR:2.17、95%CI:1.11~4.17、 p = 0.02)・Grade2以上の免疫関連有害事象発生率は23.3%(甲状腺疾患:4.2%、間質性肺疾患:10.5%)であった。 久保氏は、本研究の観察期間は短く、後ろ向きの検討であることに触れたうえで、「ICI は75歳以上の患者においても良好な治療効果を認め、有害事象も忍容可能なものであった。また、PS良好例やG8スコア高値の患者で予後良好であった」とまとめている。 今後ICIと細胞障害性抗がん剤との併用療法導入にあたっては、「併用療法が有効な患者集団を抽出するために、G8などの高齢者機能評価の有用性を改めて評価する必要がある。実臨床では、今回の検討でもPS良好例では予後良好な傾向がみられており、高齢者においてもまずはPSを1つの指標として治療選択を考えていくべきではないか」とコメントした。■参考1)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)ホームページ「高齢者研究委員会」■関連記事高齢者への抗がん剤治療は有効か―第19回 肺がん医療向上委員会※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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本庶 佑氏ノーベル賞授賞式に…世界のがん治療に進化を与えた日本の研究

 2018年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した、本庶 佑氏(京都大学高等研究院 特別教授)とJames P. Allison氏(テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター 教授)が、12月10日、授賞式に出席した。本庶氏と同じく京都大学出身で、現在、腫瘍内科医として、米国でがん臨床に携わるダートマス大学 腫瘍内科 准教授の白井敬祐氏に聞いた。―米国での「がん免疫治療に関する発見」のノーベル生理学医学賞受賞の反響は? ニューヨークタイムスなどの一流紙でも取り上げられるなど、多くのメディアで報道されています。新聞の切り抜きを持って来院し、「この薬は私には使えないか」「これは私が使っている薬か」などと尋ねる患者さんも多くなりました。医療者のみならず、患者さんや家族、サバイバーといった一般の方に対しても大きな反響があります。 この発見から開発されたPD-1阻害薬やCTLA-4阻害薬について、現在はTVでも大々的にCMが流されており、一般の方の知名度も高いと思います。ちなみに、CTLA-4およびPD-1へのモノクローナル抗体を開発したのは、ダートマス大学の免疫学の研究者が創立したMedarex社であり、その辺りにも縁を感じます。―白井先生は京都大学出身ですが、本庶先生の講義を受けられていたとか・・・ 在学当時、本庶先生の講義も受けていました。生化学の授業だったのですが、とても厳格な先生という印象でした。英語の発音にもこだわっておられましたね。米国に来てからは、本庶先生がボストンで講義をされたときに聴講に伺い、ご挨拶させていただきました。―この発見が生み出した免疫チェックポイント阻害薬のがん治療への影響は? 私の専門であるメラノーマと肺がんだけ見ても大きな影響があります。たとえば、StageIVのメラノーマについて、以前であれば、まずベストサポーティブケアが頭に浮かぶほど予後不良な疾患でした。しかし、PD-1阻害薬やCTLA-4阻害薬が登場し、効果が期待できるようになりました。私も、StageIVでPD-1阻害薬ニボルマブとCTLA-4阻害薬イピリムマブの併用療法で完全奏効(CR)となったケースを経験しています。これらの薬剤の登場で、患者さんへの説明の仕方もまったく変わりました。 また、肺がんについても米国では大きな意義がある薬剤です。ドライバー遺伝子変異がある非小細胞肺がん(NSCLC)の患者さんには、分子標的薬が非常によく奏効しますが、米国では治療対象となるドライバー遺伝子変異患者の割合は少ないのです。日本の非小細胞肺がんの約半数にEGFR変異が認められますか、米国におけるEGFR変異は5~10%程度です。一方、米国のNSCLCで、PD-1阻害薬のバイオマーカーの1つであるPD-L1強陽性の患者さんは、3分の1を占めるとされます。実際、私のNCSLC患者さんで、脳転移があったにもかかわらず、ニボルマブの投与で3年間CRが持続している患者さんがいます。しかも、ほとんど副作用がなくフルタイムで働いておられます。 このように、日本以上に免疫チェックポイント阻害薬の役割は大きく、今回の発見はがん治療に非常に大きな意味を持つものだといえます。

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いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

 2017年の米国FDAでの承認に続き、本邦でもがん種横断的な免疫チェックポイント阻害薬による治療法が臨床現場に登場する日が近づいている。がん種によって頻度が異なる高度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の固形がんを有する患者を、どのように診断して治療につなげていくのか。2018年11月16日、都内で「キイトルーダとがん種を横断したMSI診断薬利用の意義と今後の医療に与えるインパクト」と題したメディアセミナーが開催され(主催:株式会社ファルコホールディングス)、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が講演した。MSI-Hの固形がんに強烈に効く可能性がある薬 米国で39のがん種、1万例以上を対象とした研究で、MSI-Hの固形がんは27がん種、3.8%で確認されている1)。全体でみると大きなポピュレーションとは言えないが、「これまでの試験結果から、MSI-Hの固形がん患者に対するペムブロリズマブの効果は“著効”と言えるもので、膵がんなどの一般的に予後が悪いがん種でも完全奏効する例が確認された意義は大きく2)、今までの治療体系を大きく変えるものと言える」と吉野氏。対象となる患者を確実に診断していくことの重要性を指摘した。MSI検査は腫瘍部組織のみで可能。ただし慎重になるべき症例も MSI-H固形がんに対するペムブロリズマブの適応拡大に先立ち、本邦では2018年9月10日にMSI検査キット(FALCO)がコンパニオン診断薬として製造販売承認を取得し、12月1日より保険適用されている (保険点数は2,100点)。FDAの承認ではコンパニオン診断薬の指定はなく、がん種横断的なコンパニオン診断薬が承認されたのは世界初。従来法では、正常部と腫瘍部の組織が必要だったが、本キットを使った検査では腫瘍部の組織のみで検査可能な点が特徴だという。吉野氏は、「腫瘍部の組織だけで検査可能なため、MSI検査を追加するに当たり、検体採取について現場で新たな手順を加える必要がないことは大きい」と話した。 ただし、腫瘍組織のみで判断することに慎重になるべき症例も存在する。本検査法では、マルチプレックスPCR法による電気泳動波形を目視で判定するが、特定のがん種で正常範囲として設定された波形とのズレが小さく、腫瘍組織のみでの判断が難しい場合があるという。吉野氏は「大腸がんでは正常範囲とのズレが大きく、明らかな波形の違いがみられるが、子宮がんや卵巣がん、乳がんなどではズレが小さく、判断が難しいケースが確認された。そのような場合は、正常部との比較が必要になる」と話し、特にこれらのがん種では慎重な対応を求めている。MSI-Hを有する固形がんにペムブロリズマブの適応を追加 固形がんにおけるMSI-H頻度については、子宮内膜がんや胃がん、大腸がんや膵がんなど、婦人科系・消化器系がんで高い傾向が報告されている2,3)。しかし日本人では消化器がん以外のデータがほとんどなく、まずはそのデータを蓄積していく必要性を吉野氏は指摘した。米国のデータでは、悪性リンパ腫や急性骨髄性白血病(AML)など12のがん種ではMSI-Hが確認されていない1)。「がん種横断的といってもどこまで検査すべきか、現状では世界的に指針がない。患者さんにとっては非常に大きな問題であることは間違いなく、どのように適正使用を促していくかは大変大きな問題。何らかの形で国際的なコンセンサスを取り、レコメンデーションを発出していく必要があると考えている」と同氏はコメントした。 また、「臓器横断的なゲノムスクリーニングに対する知識の習得」を目的とした医師・CRC向けのe-leaningシステム(e Precision Medicine Japan)を紹介し、MSI-H(MMR genes)を含む各ドライバー遺伝子別のエビデンスや薬剤承認状況等の把握・学習に役立ててほしいと話した。 なお、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2018年11月29日、ペムブロリズマブの適応に、「進行・再発のMSI-Hを有する固形がん」を追加することを了承した(化学療法後に増悪しており、標準的な治療が困難な場合に限る)。近く承認が見込まれている。

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がん治療に大変革をもたらした2つの研究~がん免疫療法のいま・未来~

 2018年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した、本庶 佑氏(京都大学高等研究院 特別教授)とJames P. Allison氏(テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター 教授)が、現地時間の12月10日(日本時間 12月11日未明)、授賞式に出席した。 両氏の研究成果は、がん免疫療法の発展に大きく寄与している。本庶氏は日本医師会での講演にて、がん免疫療法によって「今世紀中にがん死はなくなる可能性が出てきた」と語っている。いま一度、両氏の功績を振り返るとともに、がん治療に大変革をもたらした免疫チェックポイント阻害薬の開発までの軌跡をたどる。がん免疫療法、はじめの一歩 免疫チェックポイント阻害薬の標的である免疫チェックポイント分子のうち、最初に発見されたのがCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)であった。 1987年、CTLA-4は活性化T細胞上に発現する分子として発見され1)、1990年代半ばにはCTLA-4が抑制性受容体であり、T細胞のブレーキ機能を果たすことが明らかにされた2)。これに着目し、がん治療への応用を考えたのがAllison氏らだ。Allison氏らはマウスを用いた実験でCTLA-4をモノクローナル抗体で遮断し、いわばT細胞のブレーキを外すことで、抗腫瘍免疫応答を活性化できることを証明した3)。これは、最初の免疫チェックポイント阻害薬である抗CTLA-4抗体の臨床開発につながる大きな発見だった。大変革への架け橋 時を同じくして、1992年に本庶氏らは、もう1つの免疫チェックポイント分子を発見する。それがPD-1(Programmed cell Death 1)分子だ。本庶氏らはPD-1がCTLA-4と同様にT細胞のブレーキとして機能するものの、CTLA-4とは異なる機序で作動することを示した4)。そして1990年代後半には、本庶氏らが実施したPD-1欠損マウスでの研究5)からPD-1分子による免疫抑制作用が明らかにされた6)。2000年にはPD-1のリガンドであるPD-L1(Programmed cell Death ligand 1)が同定された。T細胞上のPD-1が、がん細胞に発現したPD-L1と結合すると、T細胞にブレーキが掛かり活発な免疫反応が妨げられる。その結果、がん細胞は免疫システム攻撃から逃れていることを解明したのだ7)。 この本庶氏らの研究成果は、抗PD-1抗体開発につながる偉大な功績となった8)。がん免疫療法のいま・未来 2000年代に入り、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体といった、免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験が開始された。2010年、抗CTLA-4抗体のイピリムマブの、悪性黒色腫に対する顕著な効果が示された9)。 また2012年には、抗PD-1抗体であるニボルマブの、非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん種に対する臨床試験において、既存の治療法と比べて、全生存期間および奏効率の双方に関する臨床的に著しい改善が示された10-12)。まさにがん治療の大変革が現実のものとなったのだ。 その後本邦では、2014年7月に世界に先駆けてニボルマブが、2015年7月にはイピリムマブが承認を取得した。両剤は免疫チェックポイント阻害薬のトップランナーとして、実臨床で高い効果を発揮し、がん治療に大きな貢献を果たしている。 現在、多数のがん種において、さまざまな免疫チェックポイント阻害薬の開発が進む中、がん免疫療法単独での効果を増強する目的で、作用機序が異なるがん免疫療法同士を組み合わせた、複合がん免疫療法の開発が盛んに行われている13)。イピリムマブとニボルマブの併用療法も一部のがん種で承認され、治療の幅が広がっている。今後もがん免疫療法の発展は続いていくようだ。 免疫チェックポイント阻害薬はがん治療に大きな変革をもたらした。本庶氏が語るように、がん免疫療法によってがん克服が可能になる日も遠くないのかもしれない。■参考1)Brunet JF, et al. Nature. 1987;328:267-270.2)Krummel MF, et al. J Exp Med. 1995;182:459-465.3)Leach DR, et al. Science. 1996;271:1734-1736.4)Ishida Y, et al. EMBO J. 1992;11:3887-3895.5)Nishimura H, et al. Science. 2001;291:319-322.6)Nishimura H, et al. Immunity. 1999;11:141-151.7)Freeman GJ, et al. J Exp Med. 2000;192:1027-1034.8)Iwai Y, et al. Int Immunol. 2005 Feb;17:133-144.9)Hodi FS, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003;100:4712-4717.10)Brahmer J, et al. N Eng J Med. 2015;373:123-135.11)Weber J, et al. N Engl J Med. 2017;377:1824-1835.12)Motzer RJ, et al. N Eng J Med. 2018;378:1277-1290.13)河上 裕. 日臨. 2017;75:175-180.

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症状からの逆引きによるirAEマニュアル/日本肺癌学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、今後肺がん治療の中心になっていくと思われる。それに伴い、ICIによる有害事象(irAE)の対策をさらに整備していく必要がある。滋賀県・市立長浜病院 呼吸器内科 野口 哲男氏は、症状からの逆引きによるirAEマニュアルを作成し、第59回日本肺癌学会学術集会ワークショップ6で紹介した。頻度の高いirAEの主訴8項目から疑われる病名にたどりつける とくに夜間・時間外の救急外来では、患者は症状があって受診する。それはirAEにおいても同様である。あらかじめirAEの種類や症状を知っておくことで、早期発見と対処につながる。とはいえ、irAEの症状は多岐にわたり、発現パターンもさまざまである。問診で患者から診断に結びつく症状を申告するとは限らない。さらに、ICIを用いることのない診療科や研修医がirAEの初診を行うことも考えられる。このようなことから、症状から疑わしい病名を想起させ、その後の対応を調べられる、実際に即したirAEマニュアルが必要となる。 野口氏は、頻度の高いirAEの主訴8項目から疑われる病名にたどりつける『irAE逆引きマニュアル』を作成した。8項目は、発熱、吐き気、意識レベル低下、だるさ(倦怠感)、呼吸困難、腹痛、頭痛、手足の脱力。たとえば、発熱の場合、追加の症状聴取で呼吸困難・空咳があればILD、背部痛があれば膵炎、といったように数個の症状を組み合わせることで、可能性のあるirAEの病名が記載されている。実際、このirAE逆引きマニュアルの効果を前期研修医で検証したところ、いずれの研修医も、マニュアルを用いることで、短時間で病態を把握できることが示された。 この『irAE逆引きマニュアル』を参考に、当直医が初期検査をした上でICI処方科の待機医師に報告を行い、その後はICI処方科から専門科(1型糖尿病なら内分泌内科など)へコンサルトされる。また、電子カルテの付箋機能に「ICI投与中」「気を付ける副作用一覧」を表示するなど、他科医師およびメディカルスタッフとの連携を進めているという。 この「irAE逆引きマニュアル」は野口氏のホームページからダウンロード可能である。■参考「呼吸器ドクターNのHP」irAE逆引きマニュアル

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免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形寛氏)-962

 乳がん領域での免疫チェックポイント阻害薬の有効性に関する初のP3 RCTの報告である。化学療法は腫瘍抗原の放出と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を高めるようであり、とくにタキサンはToll様受容体の活性化と樹状細胞の活動性を促進するため、併用効果が期待されてきた。 本試験ではnab-PTXとヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用効果が検証され、追跡期間約1年でPFSの有意性が示された。また、PD-L1が免疫染色にて腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上発現がみられるものは、より有効性があるようであった。Grade3以上のアテゾリズマブに関連する有害事象はとくにないようであった。OSはmarginalであったが、症例数の設定とTNBCという一般的に予後が短い特殊な集団であることを考えると、OSへの寄与も十分見込めるのではないかと考えられる。 コストの問題は常につきまとうが、乳がん領域への重要な知見である。PD-L1の免疫染色の臨床的有用性だけでなく、マイクロサテライト不安定性や遺伝子変異数(Tumor Mutation Burden:TMB)との関連も検証してほしい。■「nab-PTX(ナブパクリタキセル)」関連記事進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018

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新たな免疫CP阻害薬《私を食べて》-さまざまながん腫に対する有用性を示唆(解説:大田雅嗣 氏)-961

 NEJM誌11月1日号に「CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma.」のタイトルで論文が掲載された1)。スタンフォード大学のWeissmanらのグループの長年にわたる基礎研究が実を結び治療薬として脚光を浴びることとなった。 CD47(インテグリン関連蛋白)はマクロファージ、樹状細胞などが介するphagocytosisの調節機能を担う蛋白で種々の細胞表面に発現している。CD47は免疫担当細胞の細胞表面膜の受容体の1つであるSIRPα(signal regulating protein α)のリガンドでもあり、双方の結合によりphagocytosisを抑制する“do not eat me”シグナルを伝達することが判明しており2)、腫瘍細胞は免疫担当細胞による捕食から身を守るシステムを有している。 この“do not eat me”シグナルをCD47に対する抗体で抑制することによりマクロファージを活性化し腫瘍細胞のphagocytosisを促進し、またT細胞を介した抗腫瘍効果が期待された。これまでリンパ腫を含む種々のがん細胞でCD47の高発現が観察されており、予後不良因子とされた。in vivoでCD47に対する抗体が急性骨髄性白血病(AML)細胞のphagocytosisを促進させることが判明 3)。さらに、AML、非ホジキンリンパ腫(NHL)や種々の固形がんの担がん免疫不全マウスモデルで、CD47抗体ががん細胞に対して殺細胞的に働くことが示された4)。また急性リンパ芽球性白血病細胞担がんマウスモデル5)、固形腫瘍担がんマウスモデル6)でも同様の抗腫瘍効果が示された。 今回の論文で用いられたヒト化抗CD47単クローン抗体はHu5F9-G4 (IgG4 isotype)と命名され、抗CD20抗体であるリツキシマブと相乗的に、リンパ腫担がんマウスモデルでリンパ腫細胞に対して殺細胞的に作用し、リンパ腫の治癒を可能にすることが示された7)。 本論文では再発または難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫22症例を対象にHu5F9-G4とリツキシマブを投与し、全奏効率50%(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で40%、濾胞性リンパ腫で71%)、奏効例での91%が解析時点でも奏効を保ったという優れた成績が示された。有害事象としては、頭痛、疲労感、貧血、下痢、infusion reactionが多かった。とくに貧血はGrade3が半分を占めたが、これはCD47を発現している赤血球がマクロファージによって捕食されたことによる当然のon-target effectと考えられる8)。 現在NIH主導で米国内では、本論文に掲載されている再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫に対するHu5F9-G4と抗CD20抗体リツキシマブとの併用療法、固形がん、進行大腸がんに対する抗EGFR抗体セツキシマブとの併用療法、再発・難治性AML、高リスクMDS(骨髄異形成症候群)に対するアザシチジンとの併用療法のトライアルが進行中である。日本では再発・難治性乳がんに対する抗HER2抗体トラスツズマブとの併用療法が臨床研究中である。 マクロファージを活性化する新たな免疫チェックポイント阻害薬の登場で、がん免疫療法はまた新たな段階を迎えることになる。今後の臨床試験の成果に注目していきたい。■参考文献1)Advani R, et al. N Engl J Med. 2018;379:1711-1721.2)Jaiswal S, et al. Cell. 2009;138:271-285.3)Majeti R, et al. Cell. 2009;138:286-299.4)Liu J, et al. PLoS One. 2015;10:e0137345.5)Chao MP, et al. Cancer Res. 2011;71:1374-1384.6)Willingham SB, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012;109;6662-66677)Chao MP, et al. Cell. 2010;142:699-713.8)Oldenborg PA, et al. Science. 2000;288:2051-2054.

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ESMO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する後方ライン治療(1)-ATTRACTION-2試験長期成績-切除不能胃がんに対する標準治療は1次治療フルオロピリミジン+白金製剤(HER2陽性の場合にはさらにトラスツズマブ併用)、2次治療パクリタキセル+ラムシルマブである。3次(後方ライン)治療以降は、ニボルマブもしくはイリノテカンが治療選択肢である。ニボルマブは、2レジメン以上の化学療法不応の切除不能胃がん(胃食道接合部がん含む)を対象としたプラセボ群との比較第III相試験(ATTRACTION-2)で有効性が示され、本邦でも2017年9月に胃がんへと適応拡大された。ESMO2018では、ATTRACTION-2のアップデート結果が報告された。2018年2月までの2年間の長期追跡でも、ニボルマブ群はプラセボ群と比較して有意なOS延長が確認され、2年全生存(OS)割合は、ニボルマブ群10.6%、プラセボ群3.2%、2年無増悪生存(PFS)割合は、ニボルマブ群3.8%、プラセボ群0%であった。奏効例のOS中央値26.61ヵ月、2年OS割合61.3%であった。また、SD症例におけるOS中央値は、ニボルマブ群8.87ヵ月、プラセボ群7.62ヵ月(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.52~1.23)であり、有意差はないもののニボルマブ群で良好であった。本結果は、実施臨床でのニボルマブ使用においても実感できる。奏効例では長期奏効が得られることも多く、まさにノーベル賞受賞の最近の報道でなされる“奇跡の薬”との表現にも同意する。一方で胃がんでのニボルマブの奏効率はわずか10%程度であり、治療のメリットが実感できない場面が多いのも事実である。さらに、最近は約10%にhyperprogressionが認められ、むしろdetrimentalに働く集団の存在も示唆されている。抗PD-1抗体薬の効果予測バイオマーカーが必要であり、有効もしくは無効のバイオマーカーがないと、1次・2次治療や補助療法での抗PD-1抗体薬の使用は困難であろう。胃がんに対する後方ライン治療(2)-新たな治療選択肢の登場-TAGS試験(TAS-102 Gastric Study)は、2レジメン以上の前治療歴のある切除不能胃がんに対するTAS-102の有効性を検証したプラセボ対照第III相試験である。結果はすでに本年の世界消化器癌学会議(ESMO-GI)で発表されているが、ESMO2018ではサブグループ解析と腫瘍縮小効果の結果が追加された(TAS-102群:337例、プラセボ群:170例)。主要評価項目であるOS(中央値/12ヵ月OS割合)は、プラセボ群3.6ヵ月/13%に対して、TAS-102群5.7ヵ月/21%(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)であり、TAS-102群が有意に良好であった。サブグループ解析でも、各サブグループにおいてTAS-102群が良好な結果であった。腫瘍縮小効果はTAS-102群で1例の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)12例を認め、奏効割合(ORR)は4%であった。安定(SD)も含めた病勢制御割合(DCR)はTAS-102群44%であり、プラセボ群14%に比べ有意に良好であった。有害事象は、TAS-102群においてgrade 3以上の有害事象が多くみられ(TAS-102 80% vs.プラセボ58%)、好中球数減少(38% vs.0%)や白血球減少(21% vs.0%)、貧血(19% vs.7%)、血小板数減少(6% vs.0%)などの血液毒性が主であった。これら有害事象によるTAS-102の減量・休薬は58%で、13%の症例は試験治療中止となり、16%の症例でG-CSFが投与されていた。本試験より、TAS-102は胃がん後方ライン治療の新たな選択肢として、本邦においても使用可能となるだろう。位置付けはニボルマブと同様になると思われる。有害事象も大腸がんでの報告と同程度であり、胃がんでも比較的スムーズに臨床導入できるだろう。一方で、胃がんと大腸がんの病態の違いには注意が必要である。つまり、胃がんの方がよりaggressiveな病態を呈する患者が多く、経口摂取が困難となるケースも多い。本試験でもTAS-102後の後治療移行率は、TAS-102群25%、プラセボ群26%と両群ともきわめて低率であった。ニボルマブ、TAS-102、イリノテカンをすべて単剤療法として使い切るストラテジーよりも、併用療法の開発が期待される。大腸がん1次治療としてのTriplet療法の再検証-TRIBE2試験-大腸がん1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法は、本邦におけるガイドラインでも推奨されるレジメンの1つである。その根拠となったTRIBE試験は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法(Triplet)とFOLFIRI+ベバシズマブ療法との第III相試験であり、ORR 65% vs.53%(p=0.006)、PFS中央値12.1ヵ月vs.9.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.75、p=0.003)、OS中央値29.8ヵ月vs.25.8ヵ月(HR:0.80、p=0.030)と、いずれもTriplet群が有意に良好であった。しかし本試験では、FOLFIRI群の後治療のオキサリプラチン導入割合が低く、本邦の実地臨床への外挿に疑問の声もあった。ESMO2018では、続編としてTriplet+ベバシズマブ療法を1次治療および2次治療で使用する群(triplet群)と1次治療FOLFOX+ベバシズマブ療法→2次治療FOLFIRI+ベバシズマブ療法を逐次的に行う群(doublet群)を比較した第III相試験(TRIBE2試験)の結果が報告された。すべての治療は最大8コースの施行とされ、その後は、増悪まで5-FU+ベバシズマブ療法継続が実施された。679例が登録され、患者背景は両群に大きな差はなく、RAS変異型60%程度、BRAF変異型10%、右側結腸38%と、一般的な大腸がんのpopulationよりも多い傾向であった。主要評価項目であるPFS2(2次治療終了までの無増悪生存期間)中央値は、doublet群16.2ヵ月、triplet群18.9ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)とtriplet群で有意に良好であった。1次治療PFSはdoublet群9.9ヵ月、triplet群12.0ヵ月(HR:0.73、p<0.001)、2次治療PFSの中央値はdoublet群5.5ヵ月、triplet群6.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.70~1.05、p=0.120)と有意差を認めなかった。doublet群の86%(248/288例)、triplet群の74%(194/261例)が2次治療に移行し、規定された2次治療が、doublet群では88%(FOLFIRI±Bmab)、triplet群では76%(FOLFOXIRI±Bmab)に行われていた。有害事象は既報のとおりで、1次治療における安全性は、grade 3以上の有害事象のうち、下痢(doublet群5% vs.triplet群17%、以下同様)、好中球減少(21% vs.50%)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%)で群間差を認めた。本発表は、初回治療におけるtripletの有効性を再現したものと考えられる。doublet群の88%で2次治療に移行できているにもかかわらずtriplet群でPFS2が良好であったことはインパクトが大きいが、その理由は明らかではない。治療早期に強いレジメンを実施し、腫瘍縮小を達成することが生存延長につながっているのであろうか。とくに本試験の対象として多く含まれているRAS/BRAF変異型や右側結腸原発症例で有用である。今後発表されるOS結果にも注目したい。大腸がんに対する免疫療法の明暗-Checkmate142試験とMODUL試験-大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害剤は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)やミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)タンパク発現消失を示すMMR機能欠損(deficient MMR:dMMR)がんとMMR機能欠損を示さないproficient MMR(pMMR)がんに分けて治療開発が行われている。dMMR例は遺伝子変異数(tumor mutation burden:TMB)が多く、腫瘍浸潤性リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の強い免疫腫瘍環境を有することから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる。CheckMate142試験は抗PD-1抗体薬ニボルマブ(NIVO)単剤療法、NIVOと抗CTLA-4抗体薬イピリムマブ(IPI)との併用療法を検討した第II相試験であり、ESMO2018では1次治療としてのNIVO+IPI併用療法コホートの結果が報告された。本コホートは、dMMR例を対象に、NIVO(3mg/kgを2週間隔)と低用量IPI(1mg/kgを6週間隔)の併用療法であり、既報の同薬剤併用の既治療コホート(NIVO 3mg/kg+IPI 1mg/kgを3週間隔×4回→その後はNIVO 3mg/kgを2週間隔)とは異なったスケジュールである。今回のコホートには45例が登録され、BRAF変異型38%、Lynch症候群18%が含まれていた。主要評価項目である担当医判定によるORRは60%(完全奏効[CR]:3例[7%]を含む)、DCRは84%であった。BRAF変異例17例でも、ORR 71%、DCR 88%と良好だった。解析時点において82%の症例が効果継続中であり、12ヵ月PFS割合77%、OS割合83%と、長期の生存延長効果が期待された。Grade 3以上の重篤な有害事象割合は16%であり、治療中止に至る有害事象も7%と低かった。今回の報告は既治療例通常用量のNIVO+IPIコホートと比較して有効性は同程度、重篤な有害事象は少ない傾向であった。これが、低用量IPIのおかげなのか、それとも初回治療例を対象としたものかはランダム化比較試験でないため確証はないが、個人的には有害事象と有効性のバランスが良い本投与法を実地臨床では使用したい。とくにBRAF変異型も含めた高い有効性は魅力的である。dMMRがんに対するpembrolizumabは本年度中に適応拡大予定であるが、NIVO+IPI療法もdMMR大腸がんに必要なレジメンと考えられる。一方でpMMR大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療開発は、いまだ成功していない。MODUL試験は、大腸がんにFOLFOX+ベバシズマブ導入化学療法後の維持療法に関するランダム化比較試験で、バイオマーカーに基づくアンブレラ型試験である。今回、BRAF野生型コホート(コホート2)としてフッ化ピリミジン系薬剤+Bevacizumab(Bmab)とAtezolizumabの併用療法との比較パートの結果が発表された。患者背景はRAS変異型60~65%、dMMR2%であり、本試験はpMMR大腸がんへの免疫チェックポイント阻害剤の有効性を探索する試験と言える。追跡期間中央値18.7ヵ月時点におけるupdate analysisでのPFS中央値は試験治療群7.20ヵ月、標準治療群7.39ヵ月(HR:0.96、95%CI:0.77~1.20、p=0.727)、OS中央値は試験治療群22.05ヵ月、標準治療群21.91ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.13、p=0.283)と、有意差は認められなかった。ESMO-GIでは後方ラインでのAtezolizumab(+cobimetinib)の第III相試験(COTEZO)もnegativeな結果が報告された。pMMR大腸がんへの免疫療法は、まだまだ暗い闇の中といったところである。

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ESMO2018レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2018はドイツのミュンヘンで、2018年10月19~23日の期間に行われた。今年は9月に世界肺癌学会がカナダのトロントで行われたこともあり、昨年のESMOと比べると少しトピックスが少ない印象ではあったが、2万8千人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域でのトピックスをいくつか紹介する。分子標的治療薬のトピックスオシメルチニブの耐性機序EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)で治療された後、耐性遺伝子の1つであるT790M変異が陽性であった場合に、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブもしくはプラチナ製剤+ペメトレキセドに割り付けられる第III相試験であるAURA3の試験における、耐性メカニズムについて報告された。ベースラインの血漿サンプルでEGFR遺伝子変異陽性であり、耐性後に血漿検体の評価ができた73例の検討では、49%でT790Mの消失を認め、C797Sが14%で認められた。(Papadimitrakapoulou V, et al, LBA51)また、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療として第1世代のEGFR-TKIとオシメルチニブを比較する第III相試験であるFLAURA試験における耐性メカニズムについても報告された。第1世代のEGFR-TKIで治療され、ベースラインの血漿でEGFR遺伝子変異が陽性であった129例の検討では、T790M陽性が47%と最も多く、METの増幅が4%、PIK3CAの変異が3%で認められた。また、オシメルチニブ群で血漿のEGFR遺伝子変異が陽性であった91例の検討では、METの増幅が15%で最も多く、C797X変異が7%、PIK3CA変異が7%で認められた(Ramalingam SS, et al LBA50)。血漿での検討ではあるが、オシメルチニブの耐性メカニズムの検討として重要な報告であったと考える。ALESIAアジアで行われた、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの初回治療として、クリゾチニブとアレクチニブを比較する第III相試験の結果が報告された。本試験には187例が登録され、125例がアレクチニブ(600mgを1日2回内服)群に、62例がクリゾチニブ群に割り付けられた。主要評価項目である研究者による評価の無増悪生存期間(PFS)は、アレクチニブ群で有意に良好であった(PFS中央値、アレクチニブ群:未到達、クリゾチニブ群:11.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.13~0.38、p<0.0001)。また、Grde3以上の毒性においても、アレクチニブ群では28.8%でみられたのに対し、クリゾチニブ群で48.8%であり、毒性においてもアレクチニブ群で軽いことが3つ目の第III相試験でも確認された(Zhou C, et al. LBA10)。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおけるアレクチニブの有効性が改めて確認された一方で、日本のみアレクチニブの用量が異なることが、今後のALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療開発において、問題となることが危惧される。免疫チェックポイント阻害薬のトピックスPACIFIC試験の全生存期間に関する探索的検討III期の非小細胞肺がんに対し、化学放射線療法後にデュルバルマブとプラセボを比較する第III相試験であるPACIFIC試験において、SP263で評価したPD-L1の発現によるサブグループ解析の結果が報告された。PFSにおいては、PD-L1が1%以上の集団、PD-L1が1%未満の集団ともにデュルバルマブ群で良好な結果であった。しかし、全生存期間(OS)においては、PD-L1が1%以上の集団ではデュルバルマブ群で良好な結果であったが、PD-L1が1%未満の集団ではプラセボ群で生存曲線が上回る結果であった(Faivre-Finn C, et al. 1363O)。PD-L1の発現評価が可能であったのは全体の60%強であり、またそのうちのサブグループ解析であるため、この結果の解釈には注意が必要であり、この結果をもってPD-L1が1%未満にはデュルバルマブの効果が低いという結論には至らない。しかし、化学放射線療法施行例において、PD-L1発現と予後の結果については今後も検討を行う必要があることが示唆されると考える。IMpower130IV期の非扁平上皮非小細胞肺がんの初回治療として、カルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブの3剤併用療法後にアテゾリズマブの維持療法(Atezo+CnP)とカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法後に支持療法もしくはペメトレキセドの維持療法(CnP)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目の1つである研究者評価のPFS(遺伝子変異陰性患者での)はAtezo+CnPで有意に良好であった(PFS中央値、Atezo+CnP:7.0ヵ月、CnP:5.5ヵ月、HR:0.64[95%CI:0.54~0.77]、p<0.0001)。またもう1つの主要評価項目であるOS(遺伝子変異陰性患者での)においても、Atezo+CnPで有意な改善を認めた(OS中央値、Atezo+CnP:18.6ヵ月、CnP:13.9ヵ月、HR:0.79[95%CI:0.64~0.98]、p=0.033)。EGFRもしくはALK陽性の患者において、PFSとOSともにカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果は認められなかった。遺伝子変異陰性の非小細胞肺がんに対する、初回治療としての、プラチナ製剤を含む併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果が再確認された結果であった。一方で、遺伝子変異陽性の患者に対する、プラチナ製剤を含む併用療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果については、いまだ不明のままである。大規模な比較試験の結果が待たれる。(Cappuzzo F, et al. LBA53)B-F1RST局所進行または転移性非小細胞肺がん患者における、アテゾリズマブ単剤の単群第II相試験の結果が報告された。本試験の主解析として、血液検体を用いたtumor mutation burden(bTMB)のカットオフを16とした解析が含まれている。152例のITT集団のうち、バイオマーカーの評価可能でmaximum somatic allele frequency≧1%の患者が119例であり、bTMB≧16の患者は28例であった。bTMB≧16の患者での奏効割合が28.6%に対し、bTMB<16の患者では奏効割合4.4%であった。また、PFSはbTMB≧16群でよい傾向であったものの、統計学的な有意差は認めなかった(PFS中央値、bTMB≧16:4.6ヵ月、bTMB<16:3.7ヵ月、HR:0.66[95%CI:0.42~1.02]、p=0.12)。本試験のみで、bTMBのバイオマーカーとしての有効性の評価は難しいが、高い期待が持てる結果とはいえない。現在、bTMBが高い集団に対する第III相試験が進行中であり、その結果が待たれる。(Kim ES, et al. LBA55)

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IV期扁平上皮がんへの免疫療法+化学療法併用について(解説:小林英夫氏)-950

 肺がんの組織型は非小細胞がんが多くを占め、とりわけ扁平上皮がんと腺がんが中心となっている。1980年代までは扁平上皮がん、なかでも肺門型(中枢型)の扁平上皮がんが多かったが、その後徐々に腺がんが多数となり、扁平上皮がんを診療する機会が減少していた。ところが近年になり、以前の肺門型扁平上皮がんではなく、肺野末梢に発生する扁平上皮がんを経験する機会が増加してきている。なぜ再増加しているのか理由は定かではない。また、切除不能であるIV期の非小細胞肺がんの治療面では、2000年代以降になり遺伝子変異陽性の腺がんに対しチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的治療薬が急速に普及し、腺がんの標準治療は大きく変化してきた。一方で、IV期扁平上皮がん治療に有効な分子標的薬は導入できておらず、細胞障害性抗腫瘍薬または免疫チェックポイント阻害薬が現時点における治療の主役だが、まだまだ十分な効果は得られていない状況にある。 本論文は、非扁平上皮がんに対する治療としてプラチナ製剤を含む化学療法+ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が生存期間延長をもたらす可能性が示された既報を受けて、扁平上皮がんへの同併用療法の効果を検証した二重盲検無作為化第III相試験である。全例がカルボプラチンをベースにした化学療法を受け、その半数にペムブロリズマブ、残りの群はプラセボが投与され、両群が比較検討された。主要エンドポイントである全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群15.9ヵ月がプラセボ群11.3ヵ月に比べ有意に延長した。無増悪生存期間中央値もペムブロリズマブ群が6.4ヵ月で、プラセボ群4.8ヵ月に比し良好であった。ペムブロリズマブ群がプラセボ群を上回ることはある程度予想された結果と考えられる。一方、投与薬剤が増えるため有害事象発現も重要課題で、有害事象による治療中止はペムブロリズマブ群が高かった(13.3 vs.6.4%)。治療関連死はそれぞれ3.6%、2.1%にみられた。 2018年ノーベル生理学・医学賞受賞により、がんの免疫療法、チェックポイント阻害薬がますます脚光を浴びている。かつて日本で話題になった丸山ワクチンのような免疫療法と現在の免疫チェックポイント阻害薬はまったく別の機序で作用しており、チェックポイント阻害薬が著効する症例も数多く報告されている。しかし同薬が万能薬ではないことも事実であり、今後、扁平上皮がん治療のキードラッグとしてどのような投与法が最適なのか、まさに研究が進行している。

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「がんだけ診ていればよい時代」は終わった?日本腫瘍循環器学会開催

 2018年11月3~4日、都内にて第1回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催され、盛んな議論が行われた。「がんだけ診ていればよい時代」は終わった 日本腫瘍循環器学会理事長の小室 一成氏は、理事長講演で以下のように述べた。 がんと心血管疾患の関係は以前からみられる。近年、がん治療の進歩が生存率も向上をもたらした。そこに、がん患者の増加が加わり、がんと心血管疾患の合併は増加している。さらに、抗がん剤など、がん治療の副作用は、心血管系合併症のリスクを高め、生命予後にも影響することから、がん患者・サバイバーに対する心血管系合併症管理の重要性が増している。実際、乳がん患者の死因は、2010年に、がんそのものによる死亡を抜き、心血管疾患が第1位である。 がん治療において重要な心血管系合併症の1つは心機能障害である。心機能障害を起こす抗がん剤は数多い。アドリアマイシンによる心筋症は予後が悪いことで知られている。また、免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も、発症率は少ないが、いったん発症すると重篤である。もう1つの大きな問題は、がん関連血栓症(cancer associated thrombosis:CAT)として注目されている、血栓塞栓症である。がん患者では血液凝固系が活性化されているが、そこに、抗がん剤による血栓症や内皮細胞傷害のリスクが加わり、がん患者はさらに血栓塞栓症になりやすくなる。また、血栓塞栓症を合併したがん患者の予後は不良である。血栓塞栓症は、がん外来化学療法患者の死亡の10%を占め、死因の第2位となっている。 そのような中、海外では、90年代から、学会の設立、ガイドラインの発行など、さまざまな取り組みが始まっている。わが国では昨年(2017年)10月に日本腫瘍循環器学会が設立された。同学会では、がん患者・サバイバーのために、腫瘍と循環器の専門医が一緒に活動し、疫学・レジストリ研究、基礎研究・臨床研究の推進、診療指針(ガイドライン)の策定、医療体制の整備、教育研修に取り組んでいく。求められる腫瘍および循環器専門医のチームワーク 日本腫瘍循環器学会副理事長で第1回学術集会の会長である畠 清彦氏は、会長講演で以下のように述べた。 がん対策基本法が制定されて、どの地域でも標準治療が受けられるようになり、全体に底上げされて、今までになかったようなサポート体制が出来上がった。一方で、がん患者はどんどん高齢化し、心血管系合併症も増加している。しかし、がん専門施設での循環器内科医不足など、腫瘍循環器の分野は十分とは言えない。多くの薬が登場する中、心臓血管障害の問題があっても、その対策は各施設に任されている状況である。 また、最近の分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤は、短期間の観察で承認される。長期的にどのような副作用が出るか報告が必要となる。心血管系の副作用を正確に報告するためにも、循環器と腫瘍の専門家が協調する必要がある。今後、さらに腫瘍専門医と循環器専門医のチームワークが求められるであろう。

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マクロファージ免疫CP阻害薬、再発・難治性リンパ腫に有望/NEJM

 中悪性度および低悪性度のリンパ腫の治療において、マクロファージ免疫チェックポイント阻害薬Hu5F9-G4(以下、5F9)は、リツキシマブとの併用で有望な抗腫瘍活性をもたらし、臨床的に安全に投与できることが、米国と英国の共同研究で示された。米国・スタンフォード大学のRanjana Advani氏らが、NEJM誌2018年11月1日号で報告した。5F9は、マクロファージ活性化抗CD47抗体であり、腫瘍細胞の貪食を誘導する。CD47は、ほぼすべてのがんで過剰発現している抗貪食作用(“do not eat me[私を食べないで]”)シグナルであり、マクロファージなどの食細胞からの免疫回避を引き起こす。5F9は、リツキシマブと相乗的に作用してマクロファージが介在する抗体依存性の細胞貪食を増強し、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞を除去するとされる。3+3デザインを用い3種の用量で漸増する第Ib相試験 研究グループは、再発または難治性の非ホジキンリンパ腫患者を対象に、5F9+リツキシマブの安全性と有効性を明らかにし、第II相試験の推奨用量の提示を目的とする第Ib相試験を行った(Forty Sevenと米国白血病・リンパ腫協会の助成による)。 対象は、CD20の発現がみられるB細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]または濾胞性リンパ腫)で、再発または2ライン以上の前治療歴のある難治性の患者であった。全身状態(ECOG PS)は0~2とした。3+3デザインを用いて、3種の用量にそれぞれ最少3例を登録した。用量制限毒性の評価は投与開始から28日まで行った。 5F9は、全例に初回用量1mg/kg体重を静脈内投与し、1週間後からの維持用量を10、20、30mg/kg(週1回)と増量した。リツキシマブは、1サイクル目は第2週から毎週375mg/m2体表面積を静脈内投与し、2~6サイクル目は毎月1回投与した。推奨維持用量は30mg/kg、36%で完全奏効 2016年11月~2017年10月の期間に、再発・難治性のDLBCL患者15例と、濾胞性リンパ腫患者7例の合計22例が登録された。5F9の維持用量別の症例数は、10mg/kgが3例、20mg/kgが6例、30mg/kgが13例となった。 全体の年齢中央値は、59歳(範囲:44~82)、男性が12例(55%)で、21例(95%)がECOG PS 0/1、4例(18%)が自家幹細胞移植を受けていた。前治療数中央値は4(範囲:2~10)であり、21例(95%)がリツキシマブ抵抗性で、14例(64%)は直近の治療レジメンに抵抗性であった。 治療期間中央値は22週(範囲:1.7~70.7、治療中の患者を含む)で、22例全例が2剤の投与を受けた。1例が、治療開始から約2週時に有害事象(特発性血小板減少性紫斑病)により投与中止となり、有効性の評価ができなかったが、非奏効例として解析に含まれた。3例が死亡し、全死因死亡率は14%だった。 有害事象は、主としてGrade1または2であった。頻度の高い有害事象は、悪寒、頭痛、貧血、およびinfusion-related reactionsであった。貧血(予測された標的作用)は、5F9の初回投与と維持投与を調節することで軽減された。 用量制限副作用は3例(20mg/kg群の1例[Grade3の肺塞栓症]、30mg/kg群の2例[Grade4の好中球減少、Grade3の特発性血小板減少性紫斑病])に認められたが、最大耐用量には到達せず、第II相試験の5F9の推奨用量は30mg/kgとした。 5F9の初回用量1mg/kgと維持用量30mg/kgにより、循環血中の白血球と赤血球のCD47受容体占有率はほぼ100%となった。 11例(50%)で客観的奏効(完全奏効+部分奏効)が得られ、8例(36%)で完全奏効が達成された。客観的奏効率と完全奏効率は、DLBCL患者でそれぞれ40%と33%、濾胞性リンパ腫患者では71%と43%であった。奏効までの期間中央値は1.7ヵ月(範囲:1.6~6.6)で、フォローアップ期間中央値がDLBCL患者6.2ヵ月、濾胞性リンパ腫患者8.1ヵ月の時点で、奏効例の91%(10/11例)で奏効が持続しており、奏効期間中央値には未到達だった。 著者は、「新たなマクロファージ活性化抗CD47抗体は、リツキシマブとの併用で安全に投与が可能であり、持続的な完全奏効をもたらすことが示された」としている。現在、第II相試験が進行中だという。

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免疫CP阻害薬、心血管障害スクリーニングの結果/腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の免疫関連有害事象(irAE)としての心血管障害は、報告数は少ないものの、発症すると重篤化する。しかし、真の発生頻度や種類、発生時期については明らかになっていない。国際医療福祉大学三田病院の古川 明日香氏らは、腫瘍循環器学会において、同院の腫瘍循環器外来におけるICI使用時における心血管障害イベントのスクリーニングの意義について発表した。 スクリーニングの検証は、Active Screening Protocolを作成して行われた。このProtocolは、ICI投与開始前に腫瘍循環器外来を予約。ベースライン(投与開始前)、投与開始後、定期的に、血液学的検査(CK、CK-MB、トロポニンI、BNP、D-dimerなど)、心電図、胸部レントゲン、心エコー検査のフォローアップを行うというもの。 対象は2018年10月31日までに同院でICIの投与を受けたがん患者。対象患者は、Passive Consultation群(ICI投与後、心血管障害出現時に同科紹介となったケース)と、Active Screening群(投与開始前からプロトコールに準じてモニタリングしたケース)に分けて評価された。評価項目は、イベント(症候性で循環器治療介入を要するもの)、心血管関連検査異常(循環器特異的治療介入を要しない検査値のみの異常のもの)であった。 主な結果は以下のとおり。・同院でICI投与を受けた症例は91例。そのうちPassive Consultation群は28例、Active Screening群は63例であった。・Passive Consultation群では、2例7.1%に致死的イベントを認めた。・Active Screening群では、27例42.9%に心血管関連検査異常を認めたが、致死的イベントは認めなかった。・検査異常出現までの日数は、平均30.4日と比較的早期の発現が多かった。・治療開始前の心血管疾患既往・合併の有無による心血管関連検査異常の発生に差は認めなかった。・重篤化した症例では、症状に出現に先行してCK上昇を認めており、CK上昇を放置すると、その後 心筋傷害が進行する可能性が示唆された。 Active Screeningにより、心血管関連検査異常を確認できた。また、CK上昇の早期発見と介入により、致死的イベントを回避できる可能性が示唆された。治療開始前の心血管疾患合併の有無にかかわらず、プロトコール化されたモニタリングが重要であると考えられる。

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免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第1回

第1回 免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が標準治療の一部となり、今後プラチナ併用療法との3~4剤併用がPD-L1発現レベルにかかわらず検討されるようになる。一方で、根治に導かれる対象はまだまだ少なく、増悪後の治療戦略は今後の検討課題である。前治療で有効性の高い薬剤の再投与はre-challengeと称され、小細胞肺がんにおけるプラチナ併用療法のre-challenge(Inoue A, Lung Cancer 2015)や遺伝子変異陽性例に対するチロシンキナーゼ阻害剤の再投与(Asahina H, Oncology 2010)が第II相試験レベルで行われてきた。ICIについて、先行する悪性黒色腫では単群第II相試験が複数報告され、初回治療と遜色のない効果のみならず安全性も忍容可能であることが報告されているものの、肺がんを含んだ報告はこれまでcase report(Hakozaki T, BMC Cancer 2018)が散見される程度であった。しかしながら2018年に入って徐々に新規の報告が増えてきており、今回その中から2報を取り上げる。1)Fujita K, et al. Retreatment with pembrolizumab in advanced non-small cell lung cancer patients previously treated with nivolumab: emerging reports of 12 cases.Cancer Chemotherapy and Pharmacology.2018;81:1105-1109.2)Bernard-Tessier A, et al. Outcomes of long-term responders to anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 when being rechallenged with the same anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 at progression.Eur J Cancer.2018;101:160-1641)について本邦から、12例の後方視的ケースシリーズニボルマブ(Nivo)既治療例に対するペムブロリズマブ(Pembro)の効果:ORR 8.3%と、やや期待外れではあるものの、約4割で病勢制御が得られている。2例が12ヵ月以上の長期奏効を呈しており、1例は前治療NivoでもPRが得られている一方、2例目は前治療Nivoの最良効果はPDであった。2)についてフランスから、ICI(PD-1/L1阻害剤)の第I相試験に参加した13例に同じICIを再投与したもの(プロトコール規定による前向き研究)。ORRは25%、PFS中央値は12ヵ月。1)、2)いずれも少数例の研究であり、これらをすぐさま実臨床に援用はできない。悪性黒色腫の報告も含めて、現時点では「再投与の安全性は問題なさそう」というのが最も明らかなことと思われる。今後、標準的な細胞障害性化学療法との比較試験が必要になってくると思われるが、下記のようないくつかの議論が必要である。どのような対象で再投与が有効なのか。有効例を対象にした2)の方が再投与の有効性は高いようにもみえるが、1)では初回不応例に再投与が有効性を示している。同じICIがよいのか、もしくはPD-1→PD-L1阻害剤のように変更したほうがよいのか。免疫関連有害事象(以下、irAE)を生じていても再投与は可能なのか。この点については、1)、2)とも詳細が不明である。ICIの再投与については国内外で臨床試験が進行中である(たとえばWJOG9616L:試験事務局 寺岡 俊輔@和歌山県立医科大学)。今後の情報集積が期待される。

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第66回 ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用【侍オンコロジスト奮闘記】

第66回:ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用キーワードノーベル生理学・医学賞免疫チェックポイント阻害薬Daniel Y,et al. Fatal Toxic Effects Associated With Immune Checkpoint Inhibitors.JAMA Oncol. 2018 Sep 13.[Epub ahead of print]

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免疫CP阻害薬の治療効果と便秘の関係

 近年、腸内細菌叢にある宿主免疫制御が報告され、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果との相関が注目されている。また、腸内細菌叢は排便習慣により変化することが報告されている。非小細胞肺がん(NSCLC)患者における便通異常と、ICIの治療効果の関連性について後ろ向きに検討した京都府立医科大学の研究結果が、片山 勇輝氏らにより第16回日本臨床腫瘍学会で報告された。 対象は京都府立医科大学附属病院でICI治療を行ったNSCLC40例。ICI投与前後1週間で3日以上の便秘もしくは緩下剤の内服歴を有する患者を便秘群と定義し、便秘群と非便秘群においてICIの治療効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療成功期間(TTF)中央値は便秘群で31.5日、非便秘群で204日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0032)。・病勢制御率(DCR)は便秘群で20.0%、非便秘群で78.8%と、便秘群で低い結果であった(p=0.00083)。・全生存期間(OS)は便秘群で79日、非便秘群で511日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0017)。 片山氏は、NSCLCのICIの治療効果や予後と患者の便通異常に有意な相関を認めた。このことは、ICI治療開始時の便通異常がICIの治療効果を予測しうる新たなバイオマーカーの1つである可能性を示した、としている。 以下、発表者 片山 勇輝氏(現在は京都鞍馬口医療センター)との一問一答この試験の実施背景として排便習慣に着目した理由はどのようなものですか? 2016~17年にかけて、悪性黒色腫において腸内細菌叢と免疫治療の効果についてのデータが発表されてきました。免疫チェックポイント阻害薬が奏効したメラノーマ患者では、腸内細菌叢が多様性に富んでいたという報告もあります。 一方、免疫チェックポイント阻害薬の使用機会が多いものの、肺がんでは、腸内細菌叢との関係は明らかではありません。ただ、腸内細菌叢の測定にコストがかかることもあり、まだ現実的ではありません。腸内細菌叢と排便習慣は関連性も示されていることから、簡便なマーカーとして排便習慣が使えないかと考え、このような研究を行いました。免疫チェックポイント阻害薬治療成功期間(TTF)全生存期間(OS)とも非便秘群で有意に長いという結果でしたが、これは臨床でどう考えるべきでしょうか。 従来、EGFR変異陽性例や、悪液質も含め全身状態の悪い例では免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいといわれていましたが、便秘もそういったマーカーの1つなのではないかと考えられます。非便秘、つまり排便良好は腸内細菌叢が良好だということでしょうか。 排便習慣といっても、カルテで回数を追跡したにとどまりますので、単純に非便秘イコール良好な腸内細菌叢の形成とはいえないと思います。今後の研究はどのようにお考えですか? 今回の研究は後ろ向きですが、今後は、前向きに排便習慣を確認しながら腸内細菌叢の関連も一緒に調査したいと考えています。ただ、がんではオピオイド誘発性の便秘になりがちですし、殺細胞性抗がん剤により腸内細菌叢も乱れますので、こういった交絡因子を除外することが必要だと思います。この点を明らかにためにも、今後のさらなる検討が必要だと思います。※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の1次治療はプラチナ化学療法とエトポシドの併用だが、20年以上大きな進歩はみられておらず、全生存期間(OS)中央値は10ヵ月程度である。一方で、小細胞肺がんは腫瘍変異負荷が高いことから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されている。そこで、小細胞肺がんに対する、カルボプラチン・エトポシドへの免疫チェックポイント薬アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133が行われている。同試験の中間解析の結果がNEJM誌2018年9月25日号で発表された。アテゾリズマブ群のOSが有意に改善 IMpower133は、未治療のES-SCLC患者403例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第I/III相試験。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(症状がない既治療のCNS病変を有する患者を含む)・試験薬:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・対照薬:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・評価項目:治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)およびOS 主な結果は以下のとおり。・201例がアテゾリズマブ群に、202例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は13.9ヵ月であった。・OSはアテゾリズマブ群12.3ヵ月、プラセボ群10.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、p=0.007)。・1年OS率はアテゾリズマブ群52.7%、プラセボ群38.2%であった。・PFSはアテゾリズマブ群5.2ヵ月、プラセボ群4.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.02)。・サググループをみてもこのアテゾリズマブ群で良好な結果であった。・安全性プロファイルは、すでに個々の薬剤で報告されているものと同様であった。 ES-SCLC患者の1次治療において、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブの追加はOSおよびPFSを有意に改善した。 なお、この試験結果は、同時に第19回世界肺癌学会(WCLC2018)で発表された。

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ノーベル賞受賞、がん治療を劇変させたPD-1とCTLA-4

 2018年のノーベル医学・生理学賞を、京都大学高等研究院特別教授の本庶 佑氏とMDアンダーソンがんセンター教授のJames P. Allison氏が共同受賞することが決まった。両氏はともにがんに対する免疫応答の制御に関連するタンパク質を発見し、がん免疫療法の近年の急速な進歩に寄与したことが受賞理由となっている。本稿では、ノーベル財団のプレスリリースから、2人の研究の足跡を紹介する。ほぼ同時期に、2つの発見 1992年、本庶氏ら京都大学の研究者が、T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子としてPD-1(Programmed cell death 1)を発見。その機能が明らかになるまでには時間を要したが、1998年、マウスによる実験でPD-1がT細胞のブレーキとして機能し、その働きを制御していることが明らかとなった。その後に続く同氏らおよび他の研究グループによる動物実験の結果、PD-1に結合してT細胞の活性化を抑制する PD-L1やPD-L2との結合をブロックする抗PD-1抗体が、がんとの戦いにおいて有望な戦略であることが示された。 2012年には、非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん腫における抗 PD-1抗体ニボルマブの臨床試験結果が発表され、その結果は全生存期間および奏効率の双方で臨床的に大きく改善するものであった。 一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究所では、Allison氏が同じくT細胞のブレーキとして機能する細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を研究していた。彼は、CTLA-4の阻害がT細胞ブレーキを解除し、免疫細胞の抑制を解くことで、がん細胞を攻撃できる可能性があるのではないかと考えていた。 そして1994年の年末、マウスを使った最初の実験を行い、抗CTLA-4抗体による治療で、腫瘍を持つマウスが治癒することが確認された。当初、製薬業界の関心が向けられることはほとんどなかったが、間もなくして、いくつかの研究グループから有望な結果がもたらされるようになった。2010年には重要な臨床試験結果が発表され、悪性黒色腫の患者に対し、抗CTLA-4抗体イピリムマブが顕著な効果を示した。 PD-1とCTLA-4は同様にT細胞のブレーキとして機能するが、その作用機構は異なる。 がん治療を根本的に変えた 現在、多くのがん腫において多数の臨床試験が進行中であり、ニボルマブとイピリムマブ以外の新たな免疫チェックポイント阻害薬による治療法の開発も進んでいる。また、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法がさらに効果的である可能性も、悪性黒色腫に対する臨床試験によって示されている。 100年以上もの間、多くの研究者ががんとの闘いに免疫システムを結び付けようとしてきたものの、その臨床的進歩はほとんどみられなかった。しかし、2人の受賞者による発見の後、治療法の開発とその成果は劇的なものだった。免疫チェックポイント阻害薬による治療はがん治療に革命をもたらし、がんの管理方法を根本的に変えるものであった。■参考ノーベル財団プレスリリース■2つの発見に関する主要な論文Ishida Y. et al. EMBO J. 1992 Nov;11:3887~3895.Leach DR et al. Science. 1996 Mar 22;271:1734~1736.Kwon ED et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Jul 22;94:8099~8103.Nishimura H et al. Immunity. 1999 Aug;11:141~151.Freeman GJ et al. J Exp Med. 2000 Oct 2;192:1027~1034.Hodi FS et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Apr 15;100:4712~4717.Iwai Y et al. Int Immunol. 2005 Feb;17:133~144.

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