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早期/局所進行TNBCの術前補助療法、camrelizumab追加でpCR改善/JAMA

 早期または局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術前補助療法において、化学療法単独と比較して化学療法に抗PD-1抗体camrelizumabを追加すると、病理学的完全奏効(pCR)の割合を有意に改善し、術前補助療法期に新たな安全性シグナルは発現しなかったことが、中国・復旦大学上海がんセンターのLi Chen氏らが実施した「CamRelief試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月13日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 CamRelief試験は、早期または局所進行TNBCの術前補助療法におけるcamrelizumab追加の有益性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年11月~2023年5月に中国の40病院で患者を登録した(Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18~75歳、StageIIまたはIIIの浸潤性TNBCの女性(性別は自己申告)で、乳がんに対する全身治療を受けておらず、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、術前補助療法(24週間)として、化学療法(2週ごと)との併用でcamrelizumab(200mg、2週ごと)またはプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、最初の16週間はnab-パクリタキセル(100mg/m2)とカルボプラチン(曲線下面積[AUC]1.5)を28日間(1サイクル)の1、8、15日目に投与し、次の8週間はエピルビシン(90mg/m2)とシクロホスファミド(500mg/m2)を2週ごとに投与した。その後、手術を行い、術後補助療法として、camrelizumab群はcamrelizumab 200mgを2週ごとに最長1年間投与+標準治療、プラセボ群は標準治療のみを受けた。 主要評価項目はpCRで、両乳房とリンパ節に浸潤性腫瘍がない状態(ypT0/Tis ypN0)と定義した。副次評価項目のデータは不十分 441例(年齢中央値48歳[範囲:22~75]、StageIII 158例[35.8%]、リンパ節転移あり331例[70.5%])を、camrelizumab群(222例)またはプラセボ群(219例)に無作為に割り付けた。camrelizumab群の198例(89.2%)とプラセボ群の200例(91.3%)が手術を受けた。無作為化後の追跡期間中央値は14.4ヵ月(範囲:0.0~31.8)だった。 pCRを達成した患者は、プラセボ群で98例(44.7%)であったのに対し、camrelizumab群では126例(56.8%)と有意に達成患者割合が高かった(達成率の群間差:12.2%、95%信頼区間[CI]:3.3~21.2、片側p=0.004)。 データカットオフ(2023年9月30日)の時点で、副次評価項目である無イベント生存、無病生存、遠隔無病生存のデータは不十分であったが、18ヵ月無イベント生存率はcamrelizumab群86.6%、プラセボ群83.6%(ハザード比:0.80、95%CI:0.46~1.42)、12ヵ月無病生存率はそれぞれ91.9%および87.8%(0.58、0.27~1.24)、12ヵ月遠隔無病生存率は91.9%および88.4%(0.62、0.29~1.33)だった。 また、手術前の画像上の奏効は、camrelizumab群が194例(87.4%)、プラセボ群は181例(82.6%)で達成された(群間差:4.7%、95%CI:-1.8~11.1)。術後補助療法期にも新たな安全性シグナルは認めない 術前補助療法期に、Grade3以上の有害事象はcamrelizumab群198例(89.2%)、プラセボ群182例(83.1%)に発現した。両群とも血液毒性が主で、白血球数の減少がそれぞれ73.4%および67.6%、好中球数の減少が80.2%および77.2%、貧血が30.2%および21.9%に認めた。また、重篤な有害事象は、それぞれ77例(34.7%)および50例(22.8%)に発現し、camrelizumab群で致死的有害事象を2例(0.9%)に認めた。 camrelizumab群では、205例(92.3%)に免疫関連有害事象を認め、21例(9.5%)がGrade3以上であった。最も頻度が高かったのはreactive capillary endothelial proliferation(195例[87.8%])で、このうちGrade3以上は5例(2.3%)だった。 また、術後補助療法期のcamrelizumabの継続投与では、Grade3以上の有害事象、重篤な有害事象、免疫関連有害事象に関して、新たな安全性シグナルは認めなかった。 著者は、「これらの結果を先行研究と統合すると、とくに高リスクの患者における強力化学療法レジメンと併用した場合のcamrelizumabの有益性が示され、早期または局所進行TNBCの新たな治療選択肢となる可能性を支持する知見と考えられる」としている。

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2024年の消化器がん薬物療法の進歩を振り返る!【消化器がんインタビュー】第15回

1)【胃がん】HER2陽性胃がん1次治療、化学療法+トラスツズマブにペムブロリズマブの上乗せ効果KEYNOTE-811試験はHER2陽性胃がんに対する1次治療として、化学療法+トラスツズマブにペムブロリズマブ(PEMB)の上乗せ効果を検証するプラセボ使用無作為化第III相試験であり、奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)の結果より、欧米においてはすでに臨床導入されている。ESMO2024で全生存期間(OS)の最終解析結果が報告され(#1400O)、同時に論文発表もされた(Janjigian YY, et al. N Engl J Med. 2024;391:1360-1362.)。OSはPEMB群vs.プラセボ群で20.0ヵ月vs.16.8ヵ月と有意に延長し(ハザード比[HR]:0.80、p=0.0040)、PFSも10.0ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.73)、ORRも72.6% vs.60.1%とPEMB群で良好であった。サブグループ解析では、PD-L1 CPS1以上の場合にはOSが20.1 vs.15.7ヵ月(HR:0.79)、PFSが10.9ヵ月vs.7.3ヵ月(HR:0.72)かつORRが73.2% vs.58.4%(奏効期間中央値:11.3ヵ月vs.9.5ヵ月)とより良好な結果であったのに対し、CPS1未満ではOSが18.2ヵ月vs.20.4ヵ月(HR:1.10)、PFSが9.5ヵ月vs.9.5ヵ月(HR:0.99)、ORRが69.2% vs.69.2%と、PEMBの上乗せ効果が弱まる傾向があった。一方、論文ではCPSのカットオフを10としたサブグループ解析も報告されており、CPS10以上ではOSが19.9ヵ月vs.17.1ヵ月(HR:0.83)、PFSが9.8ヵ月vs.7.8ヵ月(HR:0.74)に対し、CPS10未満ではOSが20.1ヵ月vs.16.5ヵ月(HR:0.83)、PFSが9.8ヵ月vs.7.8ヵ月(HR:0.75)であった。現在、欧米ではHER2陽性かつPD-L1がCPS1以上の症例に対してPEMBの併用が推奨されているが、本邦でどのような条件で保険承認されるのかが注目される。2)【大腸がん】切除不能な大腸がん肝転移に対する化学療法後の肝移植の可能性TransMet試験(NCT02597348)では、原発巣切除後、肝外病変がなく、化学療法を3ヵ月以上かつ3ライン以下投与して効果があった切除不能大腸がん肝転移の患者において、化学療法に続いて肝移植を行った場合と化学療法のみを行った場合が比較された(ASCO2024、#3500)。観察期間中央値は59ヵ月で、主要評価項目であるOSはITT解析でHR:0.37(95%信頼区間[CI]:0.21~0.65)、5年OS率は肝移植群57%、化学療法のみ群13%。per protocol解析でOSのHR:0.16(95%CI:0.07~0.33)、5年OS率は肝移植群73%、化学療法のみ群9%となっていた。切除不能な大腸がん肝転移は化学療法が標準治療だが、TransMet試験により、肝移植をすることで長期予後を得られる可能性が示唆された。日本においても先進医療が現在進行中であり、本邦からのエビデンス創出にも期待したい。3)【大腸がん】MSI-H/dMMRの再発転移大腸がん患者へのニボルマブ+イピリムマブCheckMate 8HW試験(NCT04008030)は、MSI-HまたはdMMRの再発または手術不能な進行大腸がん患者を対象に、ニボルマブ(Nivo)とイピリムマブ(Ipi)の併用投与とNivoの単剤投与、医師選択化学療法(mFOLFOX6またはFOLFILI±ベバシズマブまたはセツキシマブ)を比較した無作為化オープンラベル第III相試験である。医師選択化学療法群で増悪した患者は、Nivo+Ipi併用投与群へのクロスオーバーが認められていた。主要評価項目は、1次治療におけるNivo+Ipi併用投与群と医師選択化学療法群のPFSの比較、およびすべての治療ラインにおけるNivo+Ipi併用投与群とNivo単剤投与群のPFSの比較である。ASCO-GI 2024(#LBA768)では、1次治療としてのNivo+Ipi併用投与群と医師選択化学療法群のPFSが発表された。観察期間中央値24.3ヵ月でPFS中央値は、Nivo+Ipi併用投与群と医師選択化学療法群で未達(95%CI:38.4~NE)vs.5.9ヵ月(95%CI:4.4~7.8)、HR:0.21(97.91%CI:0.13~0.35、p<0.0001)と有意にNivo+Ipi併用投与群で延長した。1年PFS率は、79% vs.21%、2年PFS率は72% vs.14%と大きな差がついた(Andre T, et al. N Engl J Med. 2024;391:2014-2026.)。近々、Nivo+Ipi併用投与群vs.Nivo単剤投与群における比較の結果報告も予定されており、同対象に対するIO-IO combinationとIO単剤療法による治療成績の違いも楽しみだ。4)【直腸がん】dMMR局所進行直腸がん患者に対するdostarlimabdMMR局所進行直腸腺がん患者に対するdostarlimabは、すでに6ヵ月のdostarlimab投与が完了した最初の14例すべてで臨床的な完全奏効(cCR)が得られ、ORRは100%だったことが報告されている(Cercek A, et al. N Engl J Med. 2022;386:2363-2376.)。ASCO2024においては、投与を完了した42例の結果が追加報告された(#LBA3512)。本試験は、dMMRの臨床病期II期/III期局所進行直腸腺がん患者を対象にdostarlimab 500mgを3週おきに6ヵ月投与し、その後に画像学的な評価および内視鏡評価を行い、cCRが得られた場合は4ヵ月ごとに観察、cCRが得られなかった場合は化学放射線療法や手術を受けるというデザインで実施された。主要評価項目はORR、病理学的完全奏効(pCR)率または12ヵ月後のcCR率であり、試験に参加した48例のうち、T3~T4の患者が8割、リンパ節転移陽性も8割強を占めたが、観察期間中央値17.9ヵ月で、dostarlimabの6ヵ月投与が完了した42例すべてでcCRが得られ、cCR率は100%であった。本邦においてもdMMR局所進行結腸がん患者に対するdostarlimabの臨床試験(AZUR-2試験)が開始されており、日本人に関する治療効果にも期待したい。本邦においてもdMMR局所進行結腸がん患者に対するdostarlimabの臨床試験(AZUR-2)が開始されており、日本人に関する治療効果にも期待したい。また、dMMR局所進行直腸がん患者に対しニボルマブによる術前治療を検討する医師主導治験であるVOLTAGE-2が症例登録中である(https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031220484)。対象患者を認めた際にはぜひ、治験実施施設へご紹介ください。5)【結腸がん】NICHE-2追加報告,局所進行dMMR結腸がんに対する術前Nivo+Ipi療法MSI-High(dMMR)の直腸がんについては、先のdostarlimabをはじめ、術前免疫療法が非常に奏効することが複数報告されている。一方、転移のあるdMMR結腸がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の有用性が報告されており、本邦でも切除不能dMMR結腸がんの1次治療の標準治療はPEMBであり、免疫チェックポイント阻害薬未投与例には2次治療以降でNivo+Ipiも選択可能である。NICHE-2試験は局所進行dMMR結腸がんに対する術前治療としてのNivo+Ipi療法の有効性を探索する単群第II相試験であり、1コース目にNivo+Ipi療法を行い、2コース目にNivo単剤療法を行った後、手術が実施された。主要評価項目は安全性と3年無病生存(DFS)率である。すでに高い病理学的奏効率と安全性は報告されていたが、ESMO2024で3年無病生存(DFS)率とctDNAのデータが報告された(#LBA24)。115例が登録され、T4が65%でT4bが29%、リンパ節転移ありが67%と局所進行例が登録されていた。pCR率は68%、3年DFS率は100%と非常に良好な治療効果が示唆された。ctDNAは治療前の段階では92%で陽性であったが、1コース後に45%が陰性となり、2コース後には83%が陰性となった。術後のctDNAを用いたMRDの探索では、全例がctDNA陰性であった(Chalabi M, et al. N Engl J Med. 2024;390:1949-1958.)。本試験により、局所進行dMMR結腸がんに対するNivo+Ipiは非常に魅力的な治療選択肢であることが示唆された。本治療は2コースで術前治療が終わり、手術まで6週と定義されており、短期間で良好な治療効果を認めている。ESMO2024では、同様の局所進行dMMR結腸がんに対してPEMBの有効性を探索したIMHOTEP試験や、Nivo+relatlimab(抗LAG-3抗体)の併用療法の有効性を探索したNICHE-3試験も報告があった。局所進行MSI-H/dMMR結腸がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬の有効性は有望な治療法だが、至適投与期間や単剤/併用療法などについては、今後の検討が待たれる。6)【大腸がん】CodeBreaK 300最終解析KRAS G12C変異陽性の進行大腸がん患者に対する新規分子標的薬combinationCodeBreaK 300試験は、フルオロピリミジン、イリノテカン、オキサリプラチンを含む1ライン以上の治療歴があるKRAS G12C変異陽性の進行大腸がん患者を対象に、High-doseソトラシブ(960mg)とパニツムマブを投与する群、Low-doseソトラシブ(240mg)とパニツムマブを投与する群、医師選択治療群(トリフルリジン・チピラシルとレゴラフェニブから選択)が比較された。主要評価項目は盲検下独立中央判定によるRECISTv1.1に基づくPFSであり、ASCO2024における最終解析でKRAS G12C阻害薬ソトラシブと抗EGFR抗体パニツムマブの併用は、標準的な化学療法よりもOSを延長する傾向があることが報告された(#LBA3510)。High-doseソトラシブ群の医師選択治療群に対するOSのHRは0.70(95%CI:0.41~1.18、p=0.20)、Low-doseソトラシブ群の医師選択治療群に対するOSは0.83(95%CI:0.49~1.39、p=0.50)と、医師選択治療群では後治療として3割の患者がKRAS G12C阻害薬へクロスオーバーしていたにもかかわらず、高用量群で30%のリダクションを認めた。ORRもHigh-doseソトラシブ群で30%(奏効期間10.1ヵ月)、Low-doseソトラシブ群が8%、それに対して医師選択治療群は2%であり、高用量では腫瘍縮小効果が期待された。本邦においても比較的早い時期に臨床実装されることが見込まれており、新たな治療選択肢として期待される。7)【膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)】NETTER-2試験(NCT03972488)は、高分化型(G2およびG3)の膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)患者において、1次治療として、従来の標準治療である高用量オクトレオチド長時間作用型(LAR)と「ルテチウムオキソドトレオチド:ルタテラ(177Lu)+低用量オクトレオチドLAR」併用療法とを比較した非盲検無作為化第III相試験である。主要評価項目はPFS、副次評価項目はORR、病勢コントロール率、奏効期間、有害事象(AE)など。対象患者はソマトスタチン受容体陽性(SSTR+)かつG2およびG3のGEP-NETと診断された患者であった。両群でバランスは取れており、原発部位は膵臓(55%)、小腸(30%)、直腸(5%)、胃(4%)、その他(7%)であった。PFS中央値はルタテラ群と対照群でそれぞれ22.8ヵ月vs.8.5ヵ月、HR:0.28(95%CI:0.18~0.42、p<0.0001)とルタテラ群で有意に延長を認め、客観的奏効率は43% vs.9.3%(p<0.0001)とルタテラ群で良好な腫瘍縮小効果を認めた。ルタテラ群と対照群との比較において最もよく見られた(20%以上)全GradeのAEは、悪心(27.2% vs.17.8%)、下痢(25.9% vs.34.2%)、腹痛(17.7% vs.27.4%)であり、Grade3以上のAE(5%以上)はリンパ球数の減少(5.4% vs.0%)であった。進行期GEP-NET(G2/G3)患者における新たな第1選択薬として期待される結果であり、今後、OSおよび長期安全性を含む副次評価項目が報告予定である。

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進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ

 アストラゼネカは、2024年12月13日に「イミフィンジ・リムパーザ適応拡大メディアセミナー ~進行・再発子宮体がん治療における免疫チェックポイント阻害剤・PARP阻害剤の新たな可能性~」と題したメディアセミナーを開催した。 進行・再発子宮体がんにおける新たな治療選択肢として、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は「進行・再発の子宮体癌」、リムパーザ(一般名:オラパリブ)は「ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体癌におけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法」をそれぞれ効能または効果として、本年11月22日に厚生労働省より承認を取得している。 セミナーでは、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 主任教授の岡本 愛光氏、同じく講師/診療医長の西川 忠曉氏が、進行・再発子宮体がん治療における現状と課題、デュルバルマブとオラパリブの臨床成績のポイントについて語った。進行・再発子宮体がん治療における現状と課題 岡本氏からは、子宮体がん治療における現状と課題が述べられた。子宮体がんの発生は40代後半から増加し50〜60代をピークとし、日本では年間約1万7,800例が診断され約2,800例が死亡している。組織型の分類では約8割が類内膜がんであり、早期の場合は比較的予後は良好であるが進行期は予後不良、5年生存率についてはStageIVで21.0%と推定されている。子宮体がんとミスマッチ修復 子宮体がんの分類は、分子遺伝学分類が行われるようになってきている。WHO分類(第5版)では、類内膜がんをPOLE-ultramutated、MMR-deficient、p53-mutant、非特異的分子プロファイル(NSMP)に区分する、分子遺伝学的分類が採用されている。 ミスマッチ修復(MMR)については、状態により免疫療法の反応性が異なるといわれており、海外のガイドラインでは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を検討している子宮体がん患者に対してMMR欠損の検査を推奨している。 MMR機能はDNA複製の際に生じる相補的ではない塩基対合(ミスマッチ)を修復するものであり、MMR機能が低下した状態をMMR deficient(dMMR)、機能が保たれた状態をMMR proficient(pMMR)と表現している。dMMR細胞では腫瘍変異負荷(TMB)が高くICIが奏効しやすいといわれているが、pMMR細胞ではICIの効果は限定的であるとの報告がある。DUO-E試験における臨床成績 子宮体がん治療の第1選択は手術療法であるが、再発リスクが中・高リスク群では術後補助療法が行われる。ICIは、進行・再発例であり化学療法で増悪した症例に使用されるため1次治療で用いることはできなかったが、デュルバルマブとオラパリブの適応拡大により1次治療としての選択肢が増えたことになる。 西川氏は、新たに診断された進行または再発子宮体がん患者を対象とし、デュルバルマブおよびオラパリブの有用性を検討したDUO-E試験について解説した1)。本試験は、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法群(カルボプラチン+パクリタキセル:TC群)、化学療法(TC)とデュルバルマブ併用療法の後、デュルバルマブとオラパリブによる維持療法を行うDUO-E Triplet群、デュルバルマブによる維持療法を行うDUO-E Doublet群の3群で比較検討された。 患者背景について、アジア人が約3割であった。西川氏は、組織型では多くの試験で除外されることが多いがん肉腫が約5%程度含まれており、再発例は約半分、ICIが奏効しやすいとされるdMMRは約2割であった、とコメントした。 主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、TC群9.6ヵ月に対し、DUO-E Triplet群15.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.43~0.69、p<0.0001)、DUO-E Doublet群10.2ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.57~0.89、p=0.003)と優越性が検証された。 サブグループ解析ではMMR状態別のPFSについて検討が行われ、pMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.57(95%CI:0.44~0.73)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.77(0.60~0.97)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.76(0.59~0.99)であった。 dMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.41(95%CI:0.21~0.75)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.42(0.22~0.80)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.97(0.49~1.98)であった。本解析に対し西川氏は、「ICIが効きやすいdMMR集団ではオラパリブを併用しなくても有効性が認められた」とコメントした。 また、安全性に関して、Grade3以上の有害事象の発現率は、全試験期間ではDUO-E Triplet群67.2%、DUO-E Doublet群54.9%、TC群56.4%であり、維持療法期ではDUO-E Triplet群41.1%、DUO-E Doublet群16.4%、TC群16.6%であった。同氏は「新たな有害事象はなかったが、これまでと同様にICIによる免疫関連有害事象(irAE)やオラパリブの骨髄抑制による好中球減少症などに注意が必要だ」と付け加えた。本結果の意義と今後の展望 最後に西川氏は、「これまでの薬物療法では予後が悪かった進行・再発の子宮体がんにおいて、患者の免疫原性が活発なタイミングである1次治療にICIが使えることに意義がある。今回の適応拡大は、進行・再発の子宮体がんの1次治療における初めてのICIやPARP阻害薬を用いた複合免疫療法によるパラダイムシフトの始まりであり、それに伴い2次治療戦略の再検討も必要ではないか。分子遺伝学分類に基づく治療戦略をどのように組み立て、患者へ最大限のメリットを届けるか、という課題に向き合っていきたい」と締めくくった。

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MSI-H/dMMRの進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。国際的な無作為化第III相試験の中間解析 CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんで、各施設の検査でMSI-HまたはdMMRを示し、さまざまな治療ライン数の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ療法、ニボルマブ単独療法、化学療法を受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は以下の2つとし、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者を対象とした。(1)1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法または化学療法を受けた群におけるPFS、(2)転移病変に対する全身療法の有無を問わずに、ニボルマブ+イピリムマブ療法またはニボルマブ単独療法を受けた群におけるPFS。 今回の事前に規定された中間解析では、(1)の解析結果が報告された。境界内平均生存期間が10.6ヵ月延長 転移病変に対する全身療法を受けていない303例を、ニボルマブ+イピリムマブ群に202例(年齢中央値62歳、女性53%)、化学療法群に101例(同65歳、55%)割り付けた。255例(ニボルマブ+イピリムマブ群171例[85%]、化学療法群84例[83%])が、中央判定でMSI-HまたはdMMRの腫瘍を有していた。 追跡期間中央値31.5ヵ月(範囲:6.1~48.4)の時点で、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者におけるPFS中央値は、化学療法群が5.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.4~7.8)であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ群は未到達(38.4~評価不能)と有意に優れた(p<0.001[両側層別log-rank検定を用いて算出したPFSの群間差])。 また、Kaplan-Meier曲線による12ヵ月無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が79%(95%CI:72~84)、化学療法群は21%(11~32)であり、24ヵ月無増悪生存率はそれぞれ72%(64~79)および14%(6~25)であった。 24ヵ月時の境界内平均生存期間(RMST)は、化学療法群よりニボルマブ+イピリムマブ群で10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.9)延長し、これはPFSの主解析の結果と一致した。新たな安全性に関する懸念はみられない ニボルマブ+イピリムマブ群では、そう痒(22%)、下痢(21%)、甲状腺機能低下症(16%)、無力症(14%)、化学療法群では下痢(51%)、悪心(47%)、無力症(35%)、食欲減退(23%)の頻度が高かった。 Grade3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23%、化学療法群で48%に発現した。試験薬の投与中止に至った全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ16%および32%に認めた。また、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。 著者は、「本試験で得られたPFSの結果は、非無作為化CheckMate 142試験における1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法のデータと一致しており、MSI-HまたはdMMRを示す転移を有する大腸がん患者の治療において、この免疫チェックポイント阻害薬2剤併用療法の使用を支持するものである」としている。

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シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。 Mell氏らの説明によると、頭頸部がんは比較的発生頻度の高いがんで、患者数は世界の全てのがんの中で7番目に多いという。頭頸部がんのリスク因子は、喫煙や飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などで、口や鼻、副鼻腔、唾液腺、喉、声帯の組織に発生する可能性がある。長年にわたって頭頸部がんの最も良い治療薬はシスプラチンであると考えられてきた。しかし、30%程度の患者では、副作用の厳しさから化学療法が中止に至る。 セツキシマブはこれまで長い間、シスプラチン不耐の患者に使用できる優れたセカンドライン治療薬と見なされてきたが、近年、別の治療選択肢としてデュルバルマブが浮上してきた。多くのがん専門医は、セツキシマブよりもデュルバルマブの方が安全性も有効性も高いのではないかと考えている。そのような考えを検証するため、Mell氏らは今回、北米の89の大学病院や地域医療センターで第2/3相多施設共同ランダム化非盲検並行群間比較試験を行った。対象とされた、186人のシスプラチン不耐の進行頭頸部扁平上皮がん患者(年齢中央値72歳、男性84%)は、放射線治療開始の2週間前と、放射線治療開始から2週目以降は4週間ごとにデュルバルマブ1,500mgを投与する群(7サイクル)、または放射線治療開始の1週間前にセツキシマブ400mg/m2、放射線治療開始から1週間目以降は毎週250mg/m2を投与する群(8サイクル)に2対1の割合で割り付けられた。 その結果、2年無増悪生存率は、デュルバルマブ投与群(123人)での50.6%に対してセツキシマブ投与群(63人)では63.7%だった。有害事象の発生については、両群で同様であった。セツキシマブ投与群とデュルバルマブ投与群のアウトカムの差があまりにも大きかったため、Mell氏らは試験を早期に中止し、全ての患者でセツキシマブの投与に切り替えたという。 Mell氏は「デュルバルマブに対しては、数多くの理由から楽観視する見方があったが、標準を下回る可能性もあるという結果になった」とUCSDのニュースリリースの中で話している。その上で、「標準的なシスプラチンの併用ができない患者にとって、放射線治療にセツキシマブを併用する治療が極めて良い選択肢となることが、われわれの試験で改めて示された」と述べている。 ただ、一部のわずかな患者にとってはデュルバルマブがより良い選択肢になる可能性はある。Mell氏らによると、デュルバルマブとセツキシマブの作用の仕方にはかなり大きな違いがあり、セツキシマブはがん細胞表面のタンパク質と結合し、がん細胞の増殖を抑制するのに対し、デュルバルマブはがん細胞表面の別のタンパク質をブロックし、がん細胞が免疫系による攻撃を受けやすい状態にするという。このことを踏まえてMell氏は、「腫瘍の免疫反応性が極めて高い患者に対しては、デュルバルマブによる治療の方が有効な可能性があるとのエビデンスは残っている」とUCSDのニュースリリースの中で述べている。

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ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するSERD+CDK4/6i+PI3Kiによる予後の改善(解説:下村昭彦氏)

 inavolisibは新規PI3K阻害剤である。2023年の「San Antonio Breast Cancer Symposium」で全生存期間(OS)の改善が期待されるデータが公表されてから、その詳細が待たれていた。inavolisibはPI3Kαを特異的に阻害する薬剤で、既存のPI3K阻害剤よりも有害事象が軽減することが期待されていた。 inavolisibの有効性を初めて証明した試験がINAVO120試験であり、2024年10月21日にNEJM誌に発表された。INAVO120試験では、ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)進行乳がん(転移乳がんもしくは局所進行乳がん)のうち、組織、もしくはctDNAでPIK3CAの変異が検出された患者を対象として、フルベストラント+パルボシクリブにinavolisibまたはプラセボを上乗せするデザインとなっていた。この試験は進行乳がんの1次治療の試験ではあるが、適格基準に特徴がある。すなわち、術後ホルモン療法中の再発、もしくは術後ホルモン療法完了後12ヵ月以内の再発の患者を対象としており、いわゆるホルモン感受性の低い患者へのエスカレーションとなっている。 inavolisib群に161例、プラセボ群に164例が割り付けられ、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の中央値は15.0ヵ月vs.7.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~059、p<0.001)と統計学的有意にinavolisib群で良好であった。重要な副次評価項目のOSはHR:0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、inavolisib群で良好な傾向を認めるものの事前に規定された有意水準は満たさなかった。inavolisib群に特徴的な有害事象として高血糖、粘膜障害、下痢が挙げられ、Grade3以上の頻度は低いものの他のPI3K阻害剤と同様注意が必要と考えられた。 ホルモン感受性の低いHR+HER2-乳がん患者に対するホルモン療法の有効性を高めるのにどのような併用薬が有効かということは、非常に重要なクリニカルクエスチョンの1つである。他にも同様の試験としてAKT阻害剤であるカピバセルチブを併用するCAPItello-292試験も国際共同治験として実施されている(NCT04862663)。一方で、併用薬剤が増加しPFSが改善することで、有害事象の管理は困難になり、また患者の生活への影響は無視できなくなる。比較的有害事象が軽い場合もある抗体医薬複合体(ADCs)も多数開発されている。必ずしもホルモン療法と他の薬剤の併用が化学療法を始めとした他の機序の薬剤と比較して毒性が低いとはいえず、ADCsの時代にはHR+HER2-乳がんの治療ストラテジー全体を再考する必要があるのかもしれない。

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免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

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四肢軟部肉腫、周術期ペムブロリズマブ上乗せでDFS改善/Lancet

 四肢の高リスク限局性軟部肉腫患者の治療において、術前放射線療法+手術と比較して、これに術前および術後のペムブロリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)を追加する方法は、無病生存期間(DFS)を有意に改善することから、これらの患者の新たな治療選択肢となる可能性があることが、米国・ピッツバーグ大学のYvonne M. Mowery氏らが実施したSU2C-SARC032試験で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。4ヵ国の無作為化試験 SU2C-SARC032は、4ヵ国(オーストラリア、カナダ、イタリア、米国)の20施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2023年11月に参加者の無作為化を行った(Stand Up to Cancerなどの助成を受けた)。 年齢12歳以上、四肢・肢帯のGrade2または3のStageIII未分化多形肉腫、または脱分化型もしくは多形型の脂肪肉腫の患者を対象とした。 被験者を、術前放射線療法後に手術を受ける群(対照群)、または術前ペムブロリズマブ+放射線療法(ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに静脈内投与、放射線療法前・中・後の3サイクル)後に手術を受け、さらに術後にペムブロリズマブ療法(14サイクル以内)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、担当医判定によるDFS(無作為化から再発または再発なしの死亡までの期間)とした。Grade3の患者でDFSが良好な傾向 127例を登録し、対照群に63例(平均年齢61[SD 12]歳、女性38%)、ペムブロリズマブ群に64例(60[12]歳、36%)を割り付けた。Grade2が対照群32%、ペムブロリズマブ群34%、Grade3がそれぞれ68%および66%で、未分化多形肉腫がそれぞれ76%および83%であり、腫瘍部位は下肢が60%および64%だった。 追跡期間中央値43ヵ月の時点で、修正ITT(mITT)集団における無病生存のイベントは56件(対照群32件、ペムブロリズマブ群24件)認めた。DFSは、対照群に比べペムブロリズマブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.61、90%信頼区間[CI]:0.39~0.96、p=0.035)。 また、2年無病生存率は、対照群の52%(90%CI:42~64)に対しペムブロリズマブ群は67%(58~78)と良好であった。 Grade2のmITT集団では、DFSに両群間で意義のある差はなかった(HR:0.84、95%CI:0.26~2.76、p=0.78)が、Grade3ではペムブロリズマブ群で良好な傾向がみられた(0.57、0.31~1.03、p=0.064)。Grade3以上の有害事象が多かった mITT集団における全生存期間は、対照群に比べペムブロリズマブ群で良好であったが統計学的に有意な差はなく(HR:0.67、95%CI:0.33~1.39、p=0.28)、2年全生存率は対照群85%、ペムブロリズマブ群88%であった。 Grade3以上の有害事象は、対照群(31%)に比べペムブロリズマブ群(56%)で多かった。Grade5の有害事象は発現しなかった。22例(各群11例)に28件(対照群13件、ペムブロリズマブ群15件)のGrade3以上の手術関連合併症を認めた。 著者は、「ペムブロリズマブの追加投与が全生存期間に影響を及ぼすかを判断するには、より長期間の追跡調査が必要だが、毒性プロファイルはドキソルビシンベースの化学療法と比較してペムブロリズマブがより良好であることから、術前放射線療法と手術による治療を受ける高リスクで切除可能な四肢の未分化多形肉腫または脂肪肉腫の患者において、ペムブロリズマブは魅力的な選択肢となるだろう」としている。

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「サンドイッチ療法」を肺がん周術期治療の主軸に考えよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 この数年で肺がんの周術期に関連するエビデンスが数多く発表され、治療ストラテジーも大きく変わってきている。従来はIIB~IIIA期の非小細胞肺がんで手術が検討される場合には、術前プラチナ併用化学療法が一般的であったのに対し、肺がんの状況によって免疫治療や標的治療を周術期に行う治療に置き換わりつつある。術前治療としては、ドライバー変異陰性/不明例のII~IIIA期非小細胞肺がんに対し、術前にニボルマブ+化学療法を3コース行う「CheckMate 816試験」がある。術前にニボルマブ+化学療法を行うことで無イベント生存期間(EFS:event free survival)を化学療法単独群に比べ有意に延長(31.6ヵ月vs.20.8ヵ月)し、病理学的完全奏効(pCR:pathological complete response)も有意に増加(24.0% vs.2.2%)させた(Forde PM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1973-1985.)。また術後治療としては、病理病期IIB~IIIA期の完全切除例に対するアテゾリズマブの「IMpower010試験」が報告されている。PD-L1陽性(1%以上)の症例に対し、術後アテゾリズマブを16コース投与することで、無病生存期間(DFS:disease free survival)をプラセボに比べ有意に延長(未到達vs.35.3ヵ月)させた(Felip E, et al. Lancet. 2021;398:1344-1357.)。 ドライバー変異陽性例の手術に関しては、EGFR陽性非小細胞肺がんの完全切除後にオシメルチニブを3年間投与する「ADAURA試験」が報告されており、DFSの中央値はプラセボと比較して未到達vs.19.6ヵ月と有意に延長(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2020;383:1711-1723.)が認められ、全生存期間(OS:overall survival)の評価でも5年生存率が85%とプラセボ群を引き離す生存曲線が示された(Tsuboi M, et al. N Engl J Med. 2023;389:137-147.)。ALK陽性肺がんでも、術後アレクチニブの内服でDFSの延長が「ALINA試験」で報告されている(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2024;390:1265-1276.)。 今回紹介する「KEYNOTE-671試験」は手術前後にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を含む治療を行うレジメンであるが、免疫治療で手術を「はさむ」ということから、「サンドイッチ療法」と呼ばれている。術前に扁平上皮がんであればシスプラチン+ゲムシタビン+ペムブロリズマブを4コース、非扁平上皮がんであればシスプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブを4コース行い、術後は最大13コースのペムブロリズマブを維持するスケジュールとなる。EFSはプラセボ群と比較して未到達vs.17.0ヵ月と昨年報告されている(Wakelee H, et al. N Engl J Med. 2023;389:491-503.)。サブグループ解析でも年齢、人種差、組織型など、論文に挙げられている項目では、ほぼすべての点推定値がペムブロリズマブ追加群に寄っていることが示されている。今回、2回目の中間解析ということで、フォローアップ期間の中央値が36.6ヵ月と約3年での結果が報告された。3年生存率がペムブロリズマブ群で71%、プラセボ群で64%、OS中央値は未到達vs.52.4ヵ月(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.56~0.93)と有意に改善したことが報告され、周術期治療としては頑強なエビデンスが報告された。肺がん周術期治療においてOSの有意な改善を示した報告がなく、生存を改善した「サンドイッチ療法」は大変価値があると考える。 この「KEYNOTE-671試験」ではペムブロリズマブ群にIII期症例が70%含まれており、状態の良い症例がたくさん含まれていたとは考えにくい。どちらかというと手術が難しければ切除不能III期症例として化学放射線療法からのデュルバルマブか、あるいは手術や放射線が難しいとしてIV期治療に移行する可能性のある症例が多く含まれると考えるべきである。その中で、手術を含め有意差をもって高い効果を示したことは評価されうる。 術前治療を行うことで手術ができなくなる懸念がいわれている。とくに重篤な免疫関連有害事象を認めた場合にはその可能性が高くなる。ペムブロリズマブ群において免疫関連有害事象およびinfusion reaction(治療開始後24時間以内に起こる発熱や発疹などの過敏性反応)は26%に認められている。また、ネオアジュバント(術前治療)の期間に病勢が進行して手術不能となる症例を懸念する意見も頂くが、そのような症例であれば手術を早期に施行したとしても、早々に再発することが予想される。さまざまな不安があることは重々承知しているが、この「KEYNOTE-671試験」ではEFSの改善とOS延長まで示されている。手術が無事に行えるかどうかというのは大変重要なポイントではあるが、「サンドイッチ療法」を周術期においては主軸に考えていくことが妥当と考える。今後、手術を行う外科医でも免疫治療の管理が必須になるとともに、今まで以上に内科・外科の連携がより一層必要かつ重要となってくるのであろう。

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腫瘍循環器学と不易流行【見落とさない!がんの心毒性】第30回(最終回)

連載終了にあたりある日、医療・医学情報サイトCareNet.comの編集者から腫瘍循環器学に関する連載をしませんかという企画をいただきました。そしてその内容はインターネット情報サイトを活用して、腫瘍循環器専門医のみならず一般の循環器医や腫瘍医の先生、メディカルスタッフの皆さんに腫瘍循環器学をわかりやすく理解していただくため、というものでした。この頃は、大阪府立成人病センター循環器内科において腫瘍循環器外来が開始して以来10年が経過した時点であり、日本腫瘍循環器学会が発足したばかりの時期でもありました。タイムリーな企画だなと考え、腫瘍循環器医として第一線で活躍されておられる大倉 裕二先生、草場 仁志先生、志賀 太郎先生をお誘いして本連載を開始することにいたしました。当初は2年間の予定でしたので、最初の1年は総論(第1回~第11回)、その後は症例中心に連載を行うことにいたしました(第12回~第28回)。途中CareNet.com読者の皆さまにアンケートを行う試みも行いました1,2)。症例報告については、当初の4名に加え多くのエキスパートの先生にご参加いただき、実際に先生方がご経験された症例などを元に原稿を作成していただきました。その結果、3年半、合計30回の連載企画になりました。今回は、最終回としてこれまでの3年間を振り返りながら腫瘍循環器学の現在と将来についてまとめさせていただきます。古くて新しいアントラサイクリン系抗がん剤まず取り上げたのは、最も古くから存在する抗がん剤の一つであるアントラサイクリン系抗がん剤でした。1970年代に報告されたアントラサイクリン心筋症こそが、腫瘍循環器領域で最初に報告された心血管合併症(心血管毒性)であり、大倉先生に第2回『見つかる時代から見つける時代へ』で執筆いただきました。それは「アントラサイクリン心不全は3回予防できる」と名言を残した素晴らしい内容でした。循環器医なら全員が知っているはずのアントラサイクリン心筋症ですが、その病態や管理については意外と知られておりません。第15回 化学療法中に心室期外収縮頻発!対応は?第17回 造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?さらにアントラサイクリン系抗がん剤と同様に、以前から投与されている殺細胞性抗がん剤について、以下の回で取り上げられました。第22回 フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第26回 増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法この古くて新しい抗がん剤については、第17回で取り上げましたように、がん治療が終了した後もがんサバイバーにおける晩期合併症としても大変注目されています。そして、乳がん領域で最も予後が不良であったトリプルネガティブ症例に対する最も新しい治療の一つとしてその有効性が明らかとなっています3)。腫瘍循環器学の始まりは分子標的薬から腫瘍循環器学は2000年になり登場した分子標的薬とそれに伴い出現する心血管毒性が報告されてから急激な発展を遂げています。第3回『HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は?』で取り上げたHER2阻害薬は、米国・MDアンダーソンがんセンターにおいて世界最初に開設されたOnco-Cardiology Unitのきっかけになったがん治療薬です。当時は副作用が少なく有効性の高い夢のような薬として登場いたしましたが、アントラサイクリンとの併用により高頻度で心毒性が出現(HERA試験)4)したことで、腫瘍循環器領域に注目が集まりました。HER2阻害薬は第3回で解説があるように、その可逆性には二面性があり腫瘍循環器的にも注意が必要な薬剤です。そして、現在最も多く投与されている分子標的薬である血管新生阻害薬について、以下の回で触れています。第4回 VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月第14回 深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法このほか、第12回、第19回 と本連載でも多く取り上げられています。血管新生阻害薬は高血圧、心不全、血栓症など多くの心血管毒性に注意が必要な薬剤であり、Onco-Hypertension領域におけるがん治療関連高血圧の原因薬剤としても注目されています5)。古くて新しいがん関連血栓症がんと血栓症は、1800年代にトルーソー(Trousseau)らにより「がんと血栓症」が報告されて以来、トルーソー症候群という概念で古くから存在しています。そして現在は血管新生阻害薬などのがん治療薬の進歩に伴い、がん治療に伴う血栓症の頻度が急速に増加してきたことで、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という新しい概念が生まれてきました(図1)6)。(図1)画像を拡大する本企画では第8回 がんと血栓症、好発するがん種とリスク因子は?第20回 静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?第23回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)第24回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法で、症例クイズとして数多く取り上げています。また、本疾患概念などについては、第9回『不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から』や第26回『増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー』でも触れられています。そのほかのがん治療古くて新しいがん治療には、放射線療法そしてホルモン療法が挙げられます。第7回『進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは』、そして第11回『免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?』に放射線関連心機能障害(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)が取り上げられました。さらに、ホルモン療法は第16回 がん患者に出現した呼吸困難、見落としがちな疾患は?第27回 アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例にて症例提示がなされています。一方、最も新しいがん治療である免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場はがん診療にパラダイムシフトを起こしています。ICIに関連した連載は、第5回 免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?第11回 免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?第18回 免疫チェックポイント阻害薬の開始後6日目に出現した全身倦怠感第29回 irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!と計4回に登場します。また、第6回『新治療が心臓にやさしいとは限らない~Onco-Cardiologyの一路平安~』には、副作用に関するコメントとして、心毒性と腫瘍循環器医が知っておかねばならない副作用情報の読み方がまとめられており、ぜひとも再読してみてください。今後の腫瘍循環器学ニッチな学際領域であった腫瘍循環器学はいまや世界的に多くの研究がなされるようになり、各学会でステートメントやガイドラインが作成されています。本邦では、本連載が始まった後Onco-Cardiologyガイドラインが作成され、現在もトランスレーショナルリサーチや臨床研究がなされており、多くのエビデンスが明らかとなってきています。このような背景の元で、2025年10月に大阪千里ライフサイエンスセンターにおいて第8回日本腫瘍循環器学会学術集会(大会長 向井 幹夫)が開催されます。テーマを「不易流行* がんと循環器:古くて新しい関係」としており、本連載をお読みになられた方にはぜひ学術集会にご参加いただき、一緒に討論いたしましょう。*精選版 日本国語大辞典 第二版より:蕉風俳諧の理念の一つ。新しみを求めてたえず変化する流行性にこそ永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根元において一つであるとし、それは風雅の誠に根ざすものだとする。芭蕉自身が説いた例は見られないが向井 去来、服部 土芳らの門人たちの俳論において展開された。今回、連載の編集にご協力いただきました3名の先生、そして連載をお願いした腫瘍循環器医の先生方に御礼申し上げます。そして、本連載を読んでいただきました読者の皆さまと共に更なるご発展を祈念いたします。最後にCareNet.com連載について最初から担当いただき、適切なアドバイスをいただきましたケアネット社ならびに担当された土井様に深謝いたします。監修向井 幹夫(大阪がん循環器病予防センター 副所長)編集大倉 裕二(新潟県立がんセンター腫瘍循環器科 部長)草場 仁志(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)志賀 太郎(がん研究会有明病院腫瘍循環器・循環器内科 部長)向井 幹夫著者大倉 裕二、加藤 浩、北原 康行、草場 仁志、塩山 渉、志賀 太郎、鈴木 崇仁、竹村 弘司、田尻 和子、田中 善宏、田辺 裕子、津端 由佳里、深田 光敬、藤野 晋、向井 幹夫、森山 祥平、吉野 真樹(50音順、敬称略)1)向井幹夫ほか. がん診療医が不安に感じる心毒性ーCareNet.comのアンケート調査よりー. 第5回日本腫瘍循環器学会学術集会.2)志賀太郎ほか. JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は〜インターネットを用いた「余命期間と侵襲的循環器治療」に対するアンケート調査結果〜. 第7回日本腫瘍循環器学会学術集会.3)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.4)Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005;353:1659-1672.5)Minegishi S et al. Hypertension 2023;80:e123-e124.6)Mukai M et al. J Cardiol. 2018;72:89-93.講師紹介

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PIK3CA変異進行乳がん1次治療、inavolisib追加でPFS改善/NEJM

 PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がん患者の治療において、パルボシクリブ+フルベストラントにプラセボを加えた場合と比較して、パルボシクリブ+フルベストラントにPI3Kα阻害薬inavolisibを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した一方で、一部の毒性作用の発生率が高いことが、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月31日号に掲載された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 INAVO120試験は、進行乳がんにおけるinavolisib追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に28ヵ国で患者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がんの女性(閉経の前/中/後かは問わない)または男性で、術後補助内分泌療法中または終了後12ヵ月以内に再発した患者であった。 被験者を、1次治療としてinavolisib(9mg、1日1回、経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(inavolisib群)、またはプラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までの期間)であった。全生存率は有意差がない 325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。全体の年齢中央値は54.0歳(範囲:27~79)、319例(98.2%)が女性、195例(60.0%)が閉経後女性であり、167例(51.4%)が3つ以上の臓器に転移を、260例(80.0%)が内臓(肺、肝、脳、胸膜、腹膜)転移を有し、269例(82.8%)が過去に術前または術後補助化学療法を受けていた。追跡期間中央値は、inavolisib群21.3ヵ月、プラセボ群21.5ヵ月だった。 PFS中央値は、プラセボ群が7.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~9.3)であったのに対し、inavolisib群は15.0ヵ月(11.3~20.5)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.59、p<0.001)。また、感度分析として盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の評価を行ったところ、結果は担当医判定と一致していた(0.50、0.36~0.68、p<0.001)。 一方、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月時の全生存率は、inavolisib群がそれぞれ97.3%、85.9%、73.7%、プラセボ群は89.9%、74.9%、67.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。死亡のHR(inavolisib群vs.プラセボ群)は0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、事前に規定された有意差の境界値(p<0.0098)を満たさなかった。 客観的奏効率はinavolisib群が58.4%、プラセボ群は25.0%(群間差:33.4%ポイント、95%CI:23.3~43.5)、奏効期間中央値はそれぞれ18.4ヵ月および9.6ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.33~0.99)であった。重篤な有害事象inavolisib群24.1%、試験薬投与中止6.8% Grade3/4の有害事象は、inavolisib群が80.2%、プラセボ群は78.4%で発現した。このうちinavolisib群で多かったGrade3/4の有害事象として、高血糖(5.6% vs.0%)、口内炎/粘膜炎症(5.6% vs.0%)、下痢(3.7% vs.0%)を認め、Grade3/4の皮疹は両群とも観察されなかった。 重篤な有害事象はinavolisib群24.1%、プラセボ群10.5%、Grade5(致死性)の有害事象はそれぞれ3.7%および1.2%で発現し、有害事象による試験薬の投与中止は6.8%(inavolisib 6.2%、パルボシクリブ4.9%、フルベストラント3.1%)および0.6%(有害事象によるパルボシクリブ、フルベストラントの投与中止はない)で発現した。 著者は、「本研究では、これらの患者集団において、総投与量を用いたPI3Kα阻害薬(inavolisib)+CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)+内分泌療法(フルベストラント)の併用療法は、PFSを大幅に改善した。一部の有害事象の発現率が高いものの安全性プロファイルは良好であったことから、この治療法は新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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乳がん薬物療法の最新トピックス/日本癌治療学会

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。CQ:術後の最適な治療法は?pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

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TN乳がんに対する初のADCサシツズマブ ゴビテカン、有効性と注意すべき有害事象/ギリアド

 2024年9月24日、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がん(TNBC)の治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)が本邦で承認された。10月29日にギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催され、岩田 広治氏(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究戦略部)が「トリプルネガティブ乳がんに新薬の登場」と題した講演を行った。ESMOガイドラインでは転移TNBCの2次治療として位置付け 欧米では同患者に対するサシツズマブ ゴビテカンは約3年前に承認・使用されており、2021年のESMO Clinical Practice Guideline1)ではPD-L1陽性患者に対する免疫療法、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬、PD-L1およびgBRCA陰性患者に対する化学療法などの次治療として位置付けられている。 乳がん領域で承認されたADCとしてはトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ)、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)に続き3剤目となるが標的となる抗体が異なり、TNBCに対しては初めて承認されたADCとなる。岩田氏は、「新しい作用機序の薬剤が使えるようになることは朗報。われわれはこの新しい武器を有効に使っていかなければならない」と話した。ASCENT試験とASCENT-J02試験のポイント 国際第III相ASCENT試験(日本不参加)では、2レジメン以上の化学療法歴のある(術前化学療法後12ヵ月以内に再発した場合は1レジメンで参加可能)転移TNBC患者(529例)を対象として、サシツズマブ ゴビテカンと主治医選択による化学療法の有効性が比較された。PD-L1陽性で免疫チェックポイント阻害薬治療歴のある患者が26~29%、gBRCA陽性でPARP阻害薬治療歴のある患者が7~8%含まれており、再発診断から登録までの中央値は約15ヵ月であった。 最終解析の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群4.8ヵ月vs.化学療法群1.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.413、95%信頼区間[CI]:0.33~0.517)、全生存期間(OS)中央値は11.8ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.514、95%CI:0.422~0.625)となり、サシツズマブ ゴビテカン群における改善が示されている2)。奏効率(ORR)は35% vs.5%であり、岩田氏はこの結果について「2レジメン以上の治療歴のある患者さんに対し、大きな治療効果といえる」と話した。 日本で実施された第II相ASCENT-J02試験においても、サシツズマブ ゴビテカン投与患者(36例)におけるPFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値はNR、ORRは25%で、ASCENT試験で報告された有効性との一貫性が示されている。注意を払うべき有害事象と今後の展望 岩田氏は、有害事象の中でとくに注意すべきものとして好中球減少症、下痢や悪心などの消化器症状、脱毛を挙げた。Grade3以上の好中球減少症はASCENT試験で34%、ASCENT-J02試験で58%、下痢はそれぞれ10%、8.3%に認められた。欧米では好中球減少症への対策として60~70%で予防的G-CSF投与が行われているといい、岩田氏は好中球減少症のマネジメントが課題となると指摘した。 現在、転移・再発TNBCの1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカンの有効性を評価する臨床試験がすでに進行中であるほか、同様の機序の薬剤の開発も進んでいる。岩田氏は今後はそれらの薬剤との組み合わせや使い分けが重要になってくるとして、講演を締めくくった。

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肝細胞がんにおけるICI療法後の肝移植の転帰は良好

 肝細胞がん患者において、肝移植(LT)前の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用は転帰を悪化させないという研究結果が、「Journal of Hepatology」7月10日に掲載された。 中東肝疾患センター(イラン)のMohammad Saeid Rezaee-Zavareh氏らは、ICIの使用がLT後の転帰に及ぼす影響について、個々の患者データを用いたメタ解析で検討した。解析には、適格患者91人のデータが含まれた。 その結果、追跡期間中央値690.0日の間に、同種移植片拒絶反応が24例、肝細胞がん再発が9例、死亡が9例認められた。年齢(10年当たりの調整ハザード比〔aHR〕0.72)およびICIウォッシュアウト期間(1週間当たりのaHR 0.92)において、移植片拒絶反応との関連が認められた。同種移植片拒絶反応の確率が20%以下の患者における、ウォッシュアウト期間の中央値は94日であった。全生存は、同種移植片拒絶反応の有無による違いは認められなかった。肝細胞がんの再発患者は未再発患者よりもICIサイクルの中央値が少なかった(4.0対8.0)。ICI後にミラノ基準を満たした患者の割合は、再発患者の方が未再発患者よりも低かった(16.7%対65.3%)。 上席著者である米シダーズ・サイナイ医療センターのJu Dong Yang氏は、「免疫療法の最終投与から肝移植まで90日間の間隔があれば、臓器拒絶反応のリスクは免疫療法を受けなかった場合と変わらない」と述べている。 なお複数人の著者がバイオ医薬品企業、医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet

 持続性、再発または転移を有する子宮頸がんの1次治療において、標準治療の化学療法単独と比較して、化学療法にPD-1とCTLA-4のシグナル伝達経路を同時に遮断する二重特異性抗体cadonilimabを追加すると、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・復旦大学上海がんセンターのXiaohua Wu氏らが実施した「COMPASSION-16試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年10月26日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 COMPASSION-16試験は、標準治療の化学療法へのcadonilimab追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年9月~2022年6月に中国の59施設で患者を登録した(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 年齢18~75歳、持続性、再発または転移(StageIVB)を有する子宮頸がんと診断され、根治的手術または同時化学放射線療法の適応がなく、病変に対する全身療法による前治療歴がなく、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)が0または1の患者を対象とした。 被験者を、cadonilimab(10mg/kg)またはプラセボを静脈内投与する群に1対1の割合で無作為化に割り付けた。全例に、ベバシズマブ(15mg/kg)の投与または非投与下に、化学療法(シスプラチン[50mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 4~5]+パクリタキセル[175mg/m2])を3週ごとに6サイクル施行し、引き続き3週ごとに最長2年間の維持療法を行った。 主要評価項目は2つで、最大の解析対象集団(FAS)におけるPFS(盲検下独立中央判定による)とOSとした。2年全生存率は、cadonilimab群62.2% vs.プラセボ群48.4% 445例の女性を登録し、222例をcadonilimab群に、223例をプラセボ群に割り付けた。ベースラインの全体の年齢中央値は56歳(四分位範囲:50~62)で、287例(64%)はECOG PSが1、370例(83%)は扁平上皮がん、215例(48%)は同時化学放射線療法による前治療歴あり、323例(73%)は転移性病変を有していた。ベバシズマブは、265例(60%)が使用していた。 追跡期間中央値17.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、プラセボ群が8.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~9.6)であったのに対し、cadonilimab群は12.7ヵ月(11.6~16.1)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.80、p<0.0001)。 追跡期間中央値25.6ヵ月時のOS中央値は、プラセボ群の22.8ヵ月(95%CI:17.6~29.0)に比べ、cadonilimab群は未到達(27.0~評価不能)であり有意に優れた(死亡のHR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.0011)。24ヵ月全生存率は、cadonilimab群62.2%(95%CI:55.2~68.5)、プラセボ群48.4%(41.1~55.4)だった。10%でGrade3以上の免疫関連有害事象 盲検下独立中央判定による客観的奏効(完全奏効+部分奏効)の割合はcadonilimab群で高く(83% vs.69%)、完全奏効の割合もcadonilimab群で高率(36% vs.23%)だったが、病勢コントロール率は両群で同程度であった(94% vs.92%)。また、奏効期間中央値はcadonilimab群で長く(13.2ヵ月 vs.8.2ヵ月)、奏効までの期間中央値は両群で同じ(1.5ヵ月 vs.1.5ヵ月)だった。 Grade3以上の試験治療下での有害事象は、cadonilimab群で85%、プラセボ群で80%に発現し、両群とも好中球数の減少(cadonilimab群41%、プラセボ群46%)、白血球数の減少(28%、36%)、貧血(17%、26%)の頻度が高かった。試験薬の投与中止に至った有害事象は、cadonilimab群28%、プラセボ群11%に、死亡に至った有害事象はそれぞれ5%(12例)および3%(7例)に発現し、このうち治療関連死は4%(9例)および3%(6例)だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、cadonilimab群で82%、プラセボ群で79%に、Grade3以上の免疫関連有害事象はそれぞれ10%(22例)および<1%(2例)に発現した。 著者は、「これらの知見は、プラチナ製剤ベースの化学療法±ベバシズマブにcadonilimabを追加することで、PD-L1の陽性/陰性を問わず、またベバシズマブの投与が可能か否かにかかわらず、生存ベネフィットがもたらされる可能性を示唆する」「これまでの臨床試験は、参加者のほとんどが白人であるか、高所得地域で実施されたものであったが、本試験の結果はアジア人および中所得国におけるエビデンスを付加するものである」としている。

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ホジキンリンパ腫、ニボルマブ+AVD療法がPFS延長/NEJM

 III期またはIV期の進行古典的ホジキンリンパ腫を有する思春期および成人患者において、ニボルマブとドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用投与(N+AVD)は、ブレンツキシマブ ベドチンとドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用投与(BV+AVD)と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長し、良好な副作用プロファイルを示したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのAlex F. Herrera氏らによる検討で示された。進行古典的ホジキンリンパ腫の治療にブレンツキシマブ ベドチンを組み入れることで、成人および小児患者の転帰は改善することが知られている。しかしながら、ブレンツキシマブ ベドチンは、成人の治療において毒性を増加させ、投与を受けた小児患者の半数以上に地固め放射線療法が行われており、再発が依然として課題となっている。ホジキンリンパ腫では、未治療患者を含めた予備的試験などでPD-1の阻害が有効であることが示されており、研究グループはN+AVDの有効性と安全性を評価する試験を行った。NEJM誌2024年10月17日号掲載の報告。III期/IV期の12歳以上患者を対象、N+AVD vs.BV+AVDを評価 研究グループは、米国およびカナダの256施設でIII期またはIV期のホジキンリンパ腫と新規に診断された12歳以上の患者を対象に、第III相多施設共同非盲検無作為化試験を行った。 被験者は、N+AVD群またはBV+AVD群に1対1の割合で無作為化され、追跡評価を受けた。残存する代謝活性病変に放射線療法を受けることが可能であることが事前に規定された。 主要評価項目はPFSで、無作為化から初回の病勢進行または全死因死亡までの期間とした。N+AVD群でPFSが有意に改善 2019年7月19日~2022年10月5日に計994例が無作為化を受け(N+AVD群496例、BV+AVD群498例)、970例が修正ITT集団に組み入れられた(N+AVD群487例、BV+AVD群483例)。 計画されていた第2回中間解析の時点(追跡期間中央値12.1ヵ月)で、N+AVD群はBV+AVD群と比較してPFSの有意な改善が示され(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.48、99%信頼区間[CI]:0.27~0.87、両側p=0.001)、有効性の閾値達成が認められた。 追跡期間が短かったために、追跡期間を延長して繰り返し解析を実施。追跡期間中央値2.1年(範囲:0~4.2)では、2年PFS率はN+AVD群で92%(95%CI:89~94)、BV+AVD群で83%(79~86)であった(病勢進行または死亡のHR:0.45、95%CI:0.30~0.65)。 全体で7例が放射線療法を受けた。ニボルマブ投与による免疫関連の有害事象はまれであった。ブレンツキシマブ ベドチンは、より多くの治療中止と関連していた。

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ICI既治療の進行腎細胞がん、tivozanib単独vs.ニボルマブ併用(TiNivo-2)/Lancet

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療歴を有する進行腎細胞がん患者の2次または3次治療において、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3選択的な経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるtivozanibにニボルマブを併用しても、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の改善は示されなかった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のToni K. Choueiri氏らが、オーストラリア、欧州、北米、南米の16ヵ国190施設で実施した無作為化非盲検第III相試験「TiNivo-2試験」の結果を報告した。ICIおよびVEGFR-TKIは進行腎細胞がんに対する1次治療の基本となっているが、進行後の最適な治療順序は不明であった。著者は、「今回の結果は、進行腎細胞がん患者では、ICIの再投与を控えるべきであることを裏付けるものであった。さらには、ICI投与後はtivozanib単独療法が有効であることを示唆するものである」とまとめている。Lancet誌2024年10月5日掲載の報告。tivozanib+ニボルマブvs.tivozanib単独で、PFSを評価 TiNivo-2試験の対象は、ICIを含む1~2ラインの治療歴があり、治療中または治療後に増悪した18歳以上、ECOG PSが0または1の進行腎細胞がん患者である。研究グループは適格患者を、1サイクルを28日として、tivozanib 0.89mgを1日1回21日間経口投与+ニボルマブ480mgを1日目に静脈内投与する群(tivozanib+ニボルマブ群)、またはtivozanib 1.34mgを1日1回21日間経口投与する群(tivozanib単独群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 層別因子は、直近の治療(ICI、非ICI)およびIMDCリスク分類(低、中、高)であった。 主要評価項目はPFSで、無作為化後、独立画像判定によるRECIST 1.1に基づく客観的な病勢進行または全死亡のいずれか早い記録までの期間と定義した。重要な副次評価項目は全生存期間(OS)、その他の副次評価項目は治験責任医師評価によるPFSなどで、有効性の評価はITT解析にて行われた。安全性は、治験薬を1回以上投与された患者を対象に評価した。追跡期間中央値12.0ヵ月時点の評価で、PFSの改善認められず 2021年11月4日~2023年6月16日に、343例が無作為に割り付けられた(tivozanib+ニボルマブ群171例、tivozanib単独群172例)。追跡期間中央値は12.0ヵ月であった。  独立画像判定によるPFS中央値は、tivozanib+ニボルマブ群5.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.0~7.4)、tivozanib単独群7.4ヵ月(5.6~9.2)、ハザード比は1.10(95%CI:0.84~1.43、p=0.49)であった。 事前に規定された直近の治療別のサブグループ解析におけるPFS中央値は、直近の治療がICIの患者集団(244例)でtivozanib+ニボルマブ群7.4ヵ月(95%CI:5.6~9.6)、tivozanib単独群9.2ヵ月(7.4~10.0)であり、非ICIの患者集団(99例)ではそれぞれ3.7ヵ月(2.7~5.4)、3.7ヵ月(1.9~7.2)であり、いずれも両群間に差は認められなかった。 OSは、データが未成熟であったが、データカットオフ時点の中央値はtivozanib+ニボルマブ群17.7ヵ月(95%CI:15.1~NR)、tivozanib単独群22.1ヵ月(15.2~NR)であった。 安全性解析対象集団(339例)において、重篤な有害事象はtivozanib+ニボルマブ群で168例中54例(32%)、tivozanib単独群で171例中64例(37%)に認められた。死亡に至った有害事象はそれぞれ7例および5例が報告され、うちtivozanib単独群の1例は治療に関連すると判断された。

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進行メラノーマに対するオプジーボとヤーボイの併用療法が生存期間を延長

 ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の2種類の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法により、進行メラノーマ患者の生存期間を大幅に延長できる可能性のあることが、10年にわたる追跡調査により明らかになった。米ワイル・コーネル・メディスンのJedd Wolchok氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月15日掲載された。Wolchok氏は、「これは、慣例を変える試験だった。対象患者の平均生存期間は現在6年を超えている。追跡3年時点でがんの進行が認められなかった患者は、10年後も再発や他の病気を発症することなく生存している可能性が高い」と話している。 がん細胞は、免疫チェックポイントという正常な免疫システムを利用して免疫細胞の攻撃を回避することが知られている。ニボルマブとイピリムマブはともに、T細胞にブレーキをかけるシグナルを阻害することでT細胞を活性化し、がん細胞を攻撃させる。 今回報告された研究は、ランダム化二重盲検第III相試験(CheckMate 067)の10年間の追跡調査の結果である。この試験では、世界21カ国のセンターで治療を受けた進行メラノーマ患者945人が、ニボルマブとイピリムマブによる併用療法を受ける群(併用療法群、314人)、ニボルマブ単剤療法を受ける群(ニボルマブ群、316人)、イピリムマブ単剤療法を受ける群(イピリムマブ群、315人)にランダムに割り付けられていた。治療は、病態進行や許容できない毒性が認められるか、患者が治療に対する同意を撤回するまで続けられた。 最低10年に及ぶ追跡期間における全生存期間中央値は、併用療法群で71.9カ月、ニボルマブ群で36.9カ月、イピリムマブ群で19.9カ月であった。併用療法群の死亡リスクはイピリムマブ群に比べて47%、ニボルマブ群の死亡リスクはイピリムマブ群に比べて37%低かった。メラノーマ特異的生存期間の中央値は、併用療法群では120カ月を超え(中央値には未到達)、ニボルマブ群で49.4カ月、イピリムマブ群で21.9カ月であった。さらに、3年間生存し、病態進行が認められなかった患者での10年間のメラノーマ特異的生存率は、併用療法群で96%、ニボルマブ群で97%、イピリムマブ群で88%であった。研究グループは、これらの治療では薬剤を長期にわたって服用する必要があることを安全性の懸念事項としていたが、追跡期間中に長期毒性は認められなかったという。 本研究には関与していない、米フォックス・チェイスがんセンター外科部長のJeffrey Farma氏は、「この追跡調査は、進行メラノーマ患者に対する免疫療法でわれわれが成し遂げた進歩と、状況がいかに劇的に変化したかを改めて浮き彫りにするものだ。本研究結果は、10年後も生存率が向上し続けていることを裏付けている」と述べている。 論文の共著者である米ダナ・ファーバーがんセンターのメラノーマセンターおよび免疫腫瘍学センター所長であるF. Stephen Hodi氏は、「この試験は現時点では、免疫療法の長期的な効果と免疫療法の併用で治療効果が改善する可能性を患者に説明する上で重要な要素となっている」と話す。同氏はさらに、「10年間の追跡調査を経て、われわれは、進行メラノーマを管理可能な慢性疾患に変え得る治療法が存在することを、患者に自信を持って伝え、将来に対する自信を持たせることができるようになった」と喜びを表している。

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ESMO2024レポート 肺がん

レポーター紹介2024年9月13日から17日にかけて、ESMO2024がスペインのバルセロナで開催された。肺がん領域でも多くの注目される内容が発表されたが、その中でもとくに現在や近未来の日常臨床に影響を与えそうなものについていくつか紹介したい。すでに報告されているpositive試験のアップデート内容がある一方で、期待された第III相試験のnegativeデータも複数報告されていたことも印象的であった。LBA48:CCTG BR.31試験試験概要BR.31試験は、完全切除された非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する補助療法としてのデュルバルマブの有効性と安全性を評価する第III相二重盲検プラセボ対照試験である。試験デザイン患者は完全切除後に原則プラチナベースの化学療法を受けた後、2:1の割合でデュルバルマブ(20mg/kgを4週ごとに1年間)またはプラセボの投与を受けた。PD-L1発現が25%以上の患者で、EGFRおよびALKの遺伝子変異を持たない患者での無病生存期間(DFS)が主要評価項目であり、副次評価項目として全生存期間(OS)、生活の質(QOL)、および安全性が評価された。結果PD-L1発現が25%以上の患者群では、デュルバルマブを投与された群とプラセボ群でDFSに有意な差は認められなかった。DFS中央値はデュルバルマブ群で69.9ヵ月、プラセボ群で60.2ヵ月であり、ハザード比は0.935(p=0.642)であった。また、安全性プロファイルは従来の知見と一致しており、重大な有害事象(Grade3/4)の発生率は23.5%であった。結論完全切除後のNSCLC患者に対して、デュルバルマブはDFSの延長に寄与しないことが示された。治療関連有害事象(TRAE)は発生したものの、全体的な安全性は許容範囲内とされた。コメント本試験は、本邦も西日本がん研究機構(WJOG)を介して参加したグローバル試験であり、その結果も注目されたが、結果はnegativeであり残念であった。NSCLCの術後補助療法では、これまでにアテゾリズマブやペムブロリズマブの良好な結果が示されていたが、それらとの結果の違いの原因については明らかではない。デュルバルマブについては後述の術前・術後にデュルバルマブを使用するAEGEAN試験は良好な結果であったため、やはり免疫療法は術後投与よりも術前投与のほうが有利であることが示唆された。LBA49:AEGEAN試験研究概要AEGEAN試験において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)のクリアランスが術前治療中の病理学的効果および無イベント生存期間(EFS)に与える影響を評価することを目的とした。研究デザインこの研究では、手術可能なNSCLC患者(IIA~IIIB期)が対象となり、デュルバルマブ1,500mgとプラチナベースの化学療法を4サイクル行い、その後、12サイクルのデュルバルマブまたはプラセボを投与した。試験の探索的エンドポイントとして、ctDNAクリアランスと病理学的完全奏効(pCR)、EFSとの関連が評価された。結果ctDNAクリアランスが得られた患者では、pCR率が大幅に改善した。とくに、術前治療4サイクル後にctDNAがクリアされた患者では、EFSが有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.23、p<0.05)。また、ctDNAクリアランスが得られた患者の5年EFS率は73.4%に達し、予後良好な患者群であることが示された。結論手術可能なNSCLC患者において、術前のctDNAクリアランスはpCRおよびEFSの改善と強く関連しており、治療効果の早期予測指標として有望である。コメントAEGEANレジメンは本邦ではまだ承認されていないが、今後承認が期待されている。ctDNAクリアランスを含めた術前治療後の評価により高率にpCRを予測できるようになれば、術前療法のみで治癒し、手術を必要としない患者も将来的には予測できるようになるかもしれない。また、リキッドバイオプシーにより術後療法の必要性も判断できるようになることを期待したい。1208MO:NEJ034試験試験概要この第III相試験は、特発性肺線維症(IPF)を伴う肺がん患者に対する周術期ピルフェニドン療法の有効性と安全性を評価することを目的とした。ピルフェニドンは抗線維化および抗炎症作用を持つ薬剤であり、術後の急性増悪を予防できるかどうかが検証された。試験デザイン患者は、周術期にピルフェニドンを4週間投与された群と投与されなかった群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、術後30日以内に発生した急性増悪の割合であった。結果ピルフェニドン群で急性増悪の発生率は6.1%、対照群では10.3%と報告されたが、この差は統計学的に有意ではなかった(p=0.339)。ピルフェニドンの投与が急性増悪の予防に明確な効果を示すことはできなかった。結論日本人患者を対象としたこの試験では、ピルフェニドンが術後の急性増悪を防ぐ効果は示されなかった。コメント本邦における肺がん手術では手術関連死はほとんどなく、世界的にもきわめて良好であるが、間質性肺炎合併肺がん患者においては術後急性増悪が発生するとその致死率は約50%とされているため、本試験の結果は注目されていた。結果はnegativeであり残念であった。間質性肺炎合併肺がん患者に対する、より安全な治療法の開発が期待される。1243MO:JCOG1914試験試験概要この第III相試験は、切除不能な局所進行NSCLCを有する高齢者(75歳以上)に対する週1回のカルボプラチン(CBDCA)+nab-パクリタキセル(nab-PTX)療法と毎日の低用量CBDCA療法を比較したものである。試験デザイン患者はCBDCA+nab-PTXまたは低用量CBDCAを放射線療法と併用して投与された。化学放射線療法(CRT)後はデュルバルマブによる維持療法が推奨された。主要評価項目はOSであり、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、奏効率、患者報告アウトカム(PROs)、および安全性が評価された。結果PFSの結果では、1年PFS率はCBDCA+nab-PTX群で55.5%、低用量CBDCA群で59.0%と報告され、OSに関してもCBDCA+nab-PTX群で79.6%、低用量CBDCA群で87.3%であり、ともに有意差は確認されなかった。TRAE(Grade3/4)は両群ともに比較的多く報告され、CBDCA+nab-PTX群での治療関連死も観察された。結論高齢の日本人患者において、CBDCA+nab-PTX療法は、低用量CBDCA療法に対して優位性を示さなかった。コメント本試験は中間解析の結果、将来的にもCBDCA+nab-PTX群のOSでの優越性が示される可能性はきわめて低いと判断され、無効中止となった。本邦においては、高齢者に対するcCRTにおいて標準的な化学療法レジメンは引き続き低用量CBDCAということになる。LBA54:MARIPOSA-2試験試験概要この第III相試験は、EGFR遺伝子変異を有する進行NSCLC患者において、オシメルチニブ治療後のアミバンタマブ+化学療法併用に与える影響を評価することを目的としており、今回はアップデートされたOSが発表された。試験デザイン患者は、アミバンタマブ+化学療法、または化学療法単独の群に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFS、副次評価項目としてOS、治療後の症状進行までの時間(TTSP)、治療中断までの時間(TTD)、および安全性が評価された。結果2回目の中間解析では、アミバンタマブ+化学療法併用群は化学療法単独群と比較してOSの延長傾向が示された(HR:0.73)。また、TTSPやTTDの観点からもアミバンタマブ併用群のほうが優れており、副作用プロファイルは既存のデータと一致していた。結論オシメルチニブ治療後の進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者に対して、アミバンタマブ+化学療法は全体的な生存率を改善し、今後の標準治療の1つとなる可能性がある。コメントMARIPOSA-2試験におけるアミバンタマブ+化学療法併用群と化学療法単独群の比較について報告された。2回目の中間解析でOSの延長傾向が報告された。オシメルチニブ治療後増悪時の治療選択は課題であり、本レジメンの本邦での承認が期待される。LBA55:MARIPOSA試験(抵抗性メカニズムの解析)研究概要この試験は、進行NSCLC患者に対する1次治療としてのアミバンタマブ+lazertinibの併用療法と、オシメルチニブ単独療法における獲得抵抗性メカニズムを比較することを目的としている。試験デザインEGFR変異陽性の局所進行または転移のあるNSCLC患者を対象に、アミバンタマブ+lazertinib群(429例)とオシメルチニブ群(429例)で比較した。主要評価項目はPFSであり、副次評価項目としてOS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、および安全性が評価された。結果ctDNAを用いたGuardant360 CDx がん遺伝子パネルにより、アミバンタマブ+lazertinib群とオシメルチニブ群では抵抗性メカニズムの違いが明らかになった。とくに、MET増幅がオシメルチニブ群では9.3%の患者に認められたのに対し、アミバンタマブ+lazertinib群では1.8%と低かったことが確認された。さらに、EGFRの二次性耐性変異発生率も、アミバンタマブ+lazertinib群のほうが低かったことが報告された。結論EGFR変異を有する進行NSCLC患者において、アミバンタマブ+lazertinibはオシメルチニブと比較して、EGFRおよびMETに関連した耐性メカニズムの発生率を有意に低下させた。コメントアミバンタマブの作用機序として期待通りの結果である。とくに、治療前と治療終了時のctDNAの比較により獲得耐性メカニズムを研究した点は興味深い。アミバンタマブ+lazertinib療法も本邦での承認が期待されている。LLBA81:ADRIATIC試験研究概要ADRIATIC試験は、限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)患者を対象に、デュルバルマブ療法の有効性を評価したものである。とくに、cCRTの使用レジメンおよび予防的頭蓋照射(PCI)の影響に焦点を当てた。試験デザイン限局型SCLC患者において、cCRT後にデュルバルマブを投与した群と標準治療を比較した。PCIの使用も含めて、治療後のOSおよびPFSに与える影響が検討された。結果デュルバルマブ併用療法は、cCRT後の生存率を改善することが示されたが、PCIの有無やcCRTの内容にかかわらず、その効果は持続した。TRAE(Grade3/4)は両群で同様に発生し、安全性において大きな差は認められなかった。結論限局型SCLC患者に対するデュルバルマブ併用療法は、標準治療に比べて統計学的に有意な生存利益をもたらした。とくに、PCIの使用にかかわらず良好な結果が示されており、今後の標準治療として採用される可能性がある。コメント現在、限局型SCLCに対して免疫チェックポイント阻害薬は本邦では承認されていないが、ADRIATIC試験の結果により本邦での承認も期待される。今回の内容は限局型SCLCに対する本レジメンの標準的な使用をサポートすることになると考えられる。

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