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家族に糖尿病患者がいるといない家族と比べ20倍の発症リスク/新潟大

 2型糖尿病の発症に家族歴が関係していることが知られているが、その発症や有病リスクはどのくらいになるのだろうか。この疑問に新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野の池田 和泉氏らの研究グループは、健康診断データ約4万例を解析し、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率および発症率を解析した。その結果、糖尿病有病リスクは、家族に糖尿病がまったくいない人の約20倍という結果が示された。この結果は、Mayo Clinic Proceedings誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。家族歴は糖尿病、脂質異常症、高血圧の発症に関連 研究グループは、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往の家族歴(両親、兄弟姉妹、祖父母)と、同一集団におけるそれらの有病率および発症率との関連を検討するために1997年1月1日~2007年12月31日までに健康診断を受診した4万1,361例のデータを解析し、同一コホートにおけるロジスティック回帰分析およびCox回帰分析の結果を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、3疾患とも家族に既往者がいるほど有病率が増加し、とくに2型糖尿病は、罹患した親族の数が3人以上である場合のオッズ比(OR)が12.00(95%信頼区間[CI]:7.82~18.41)だった。・家族歴がない場合と比較し、3世代にわたる家族歴で既往がある場合のORは20.43(95%CI:11.0~37.8)だった。・家族歴を「両親、兄弟姉妹、祖父母」から「両親と兄弟姉妹」または「両親のみ」に再定義しても、各疾患のORに有意な変化はなかった。・家族歴で既往がありBMIが30以上の人では、家族歴がなくBMIが18.5~24.9の人と比較して、高血圧の有病率が19倍高かった。・縦断的研究において、家族歴は2型糖尿病(ハザード比[HR]:2.40、95%CI:1.93~2.98)、高血圧(HR:1.43、95%CI:1.26~1.62)、脂質異常症(HR:1.41、95%CI:1.08~1.83)の発症に強く影響した。 研究グループでは、以上の結果から「これらの疾患の家族歴の聴取は、高リスク群の同定に有用だった。また、2型糖尿病については、家族歴の既往の影響が最も強く、罹患家族の重複によってリスクが顕著に上昇した。家族歴が早期発見と予防に役立つことを示唆している」と述べている。

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医師による身体活動量の評価は慢性疾患の予防につながる

 医師が患者の身体活動量について尋ねることは、慢性疾患の予防に役立つ可能性があるようだ。米アイオワ大学ヘルスケア医療センターの患者を対象にした調査結果から、中強度から高強度の身体活動を週に150分以上というガイドラインの推奨を満たしていた人では、高血圧や心疾患、糖尿病など19種類の慢性疾患の発症リスクが有意に低いことが示された。論文の上席著者である、アイオワ大学健康・人間生理学分野のLucas Carr氏らによるこの研究結果は、「Preventing Chronic Disease」1月号に掲載された。 この研究でCarr氏らは、2017年11月1日から2022年12月1日の間にアイオワ大学ヘルスケア医療センターで健康診断を受けた患者を対象に、Exercise Vital Sign(EVS)質問票を用いた身体活動量のスクリーニングを受けた患者と受けていない患者の健康状態を比較した。また、スクリーニングで測定された身体活動量の違いに基づく健康状態の比較も行った。 EVS質問票は、「中強度から高強度の身体活動(早歩きなど)を週に平均何日程度行っていますか」と「中強度から高強度の身体活動を平均何分間行っていますか」の2つの質問で構成されている。Carr氏は、「この2つの質問には、通常は30秒もあれば回答できるので、患者の診察の妨げになることはない。それにもかかわらず、患者の全体的な健康状態について多くの情報を得ることができる」と述べている。 Carr氏らはまず、EVSの有効なデータがそろった患者7,261人と、スクリーニングを受けていない患者3万3,445人の比較を行った。その結果、身体活動量のスクリーニングを受けた患者は、受けていない患者に比べて、肥満(15%対18%)、うつ病(17%対19%)、高血圧(22%対28%)、合併症のない糖尿病(5.9%対8.5%)、合併症を伴う糖尿病(4.4%対7.3%)、貧血(4.6%対6.1%)、甲状腺機能低下症(9.3%対10.0%)、うっ血性心不全(1.1%対1.9%)、および中等度の腎不全(1.8%対2.5%)の発症率が有意に低いことが明らかになった。 次に、身体活動量のスクリーニングを受けた7,261人の患者を身体活動量に基づき、十分な身体活動量(4,382人、60%)、不十分な身体活動量(2,607人、36%)、身体活動を全く行わない(272人、4%)の3群に分けて健康状態を比較した。その結果、十分な身体活動量の群は、不十分な身体活動量の群や身体活動を全く行わない群に比べて、肥満、うつ病、合併症のない/合併症を伴う高血圧・糖尿病、弁膜症、うっ血性心不全など、身体活動不足に関連する19種類の併存疾患のリスクが低いことが示された。 こうした結果に基づき研究グループは、医師に対し、患者に身体活動量について質問し、活動量を増やす必要がある患者には活動量を増やすように促すことを推奨している。Carr氏は、「現在の医療環境では、患者の身体活動量を増やすために医師が支援を行っても、それに対する報酬を得ることは難しい。身体活動量の不足を報告している患者に対しては、身体活動の処方や地域の健康専門家などの支援サービスと簡単につながるための選択肢が必要だ」と述べている。 Carr氏は、「この研究は、たとえ短時間であっても、患者と身体活動習慣について話すことの大切さを強調している」との見方を示す。なお、2024年12月に「Journal of Physical Activity and Health」に発表した関連研究でCarr氏らは、医師が患者への身体活動のカウンセリングを行った場合、保険会社が医師に95%近くの確率で払い戻しを行っていることを明らかにしている。同氏は、「われわれの研究結果は、推奨されている身体活動に関する請求コードを医療従事者が申請すると、高確率で払い戻しが行われていることを示唆している。この結果は、身体活動量の評価とカウンセリングサービスを提供する取り組みの推進を支持するものだ」と結論付けている。

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85歳以上の日本人、高血圧は死亡リスクに影響する?しない?

 日本人高齢者の大規模コホート研究において、高血圧は65~74歳および75~84歳では全死亡リスクおよび心血管系死亡リスクを上昇させたが、85歳以上では上昇させなかったことを岡山大学/就実大学の赤木 晋介氏らが報告した。Geriatrics Gerontology International誌オンライン版2024年12月12日号に掲載。 本コホート研究は、2006年4月~2008年3月にベーシックな健康診断を受診した岡山市の65歳以上の5万4,760人を登録した。参加者は血圧によりC1からC6までの6つのカテゴリーに分けた(C1:SBP<120、DBP<80、C2:120≦SBP<130、80≦DBP<85、C3:130≦SBP<140、85≦DBP<90、C4:140≦SBP<160、90≦DBP<100、C5:160≦SBP<180、100≦DBP<110、C6:180≦SBP、110≦DBP)。血圧と全死亡および心血管疾患死亡との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いて、C3を基準に各カテゴリーの全死亡のHRと95%信頼区間(CI)を計算した。心血管疾患死亡については、他の死亡を競合リスクと見なすFine and Grayモデルを使用し、部分分布HRと95%CIを推定した。さらに年齢層(65~74歳、75~84歳、85歳以上)ごとに解析した。 主な結果は以下のとおり。・全死亡の完全調整済みHRは、C5で1.11(95%CI:1.04~1.19)、C6で1.23(同:1.09~1.38)であった。・心血管死亡の完全調整済み部分分布HRは、C4で1.11(95%CI:1.01~1.21)、C5で1.19(同:1.05~1.34)、C6で1.36(同:1.09~1.70)であった。・年齢層別では、C4、C5、C6 の 全死亡の完全調整済みHRは、65~74 歳では1.14、1.26、1.75、75~84 歳では1.06、1.16、1.19、85 歳以上では 0.95、0.99、1.22であった。・高齢になるほど低血圧のリスクが増加し、C1のHRは85歳以上で1.28(95%CI:1.16~1.41)であった。

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心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。 心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。 セミナーでは、AFの病態やリスク、早期発見のための静岡市清水区でのAI診断の取り組みなどが解説された。AFの患者は100人に1人の時代 最初に「心房細動管理の最新トレンド」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野 教授)が、最近のガイドラインからみたAFの病態や治療、カテーテルアブレーションについて解説した。 AFは、高齢の男性に多く、その有病率は増え続けている。患者数は100万人と推定され、100人に1人がAFと考えられる。2018年からは法律に基づき、「国民の健康寿命の延伸等を図るため」に脳卒中とならび国を挙げて対策を要する疾患となっている。 そして、AFを発症すると脳梗塞発症リスクが5倍、心不全で5倍、認知症で2倍という報告もあり、健康寿命、生命予後に大きく影響する。 現在、わが国にはAFに関係するガイドラインが4つある。『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』(編集:日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン/後述の3ガイドラインも同様)では、病態生理として「肥満」「高血圧」「糖尿病」「睡眠呼吸障害」などが伝導障害となり、電気的リモデリングを促進させ、AFのトリガーになることが示されている。 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』では、4つの段階に分けてAFと生活習慣管理・包括管理を示している。第1段階では「急性期の管理」、第2段階では「増悪因子の管理」、第3段階では「脳梗塞の予防」、第4段階では「症状の改善」が記載されている。とくに第4段階の症状の改善について、リズムコントロール(洞調律維持)およびレートコントロール(適切な心拍数調節)が症状改善に行われるが、「動悸などの症状が強い」「AFの持続で心不全の発症・増悪が危惧される」「AF発症関連の併存疾患が比較的少ない」などの患者ではリズムコントロールが望ましいとガイドラインでは記されている。 次に症状の発見について触れ“Fukuoka Stroke Registry”から「急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者における、脳卒中発症前の心房細動の診断状況、抗凝固療法の実施状況」について、脳卒中発症前にAFの診断がなかった人が45.9%に上ることを紹介するとともに1)、AF患者において無症候性の割合について37.7%の報告もある2)と紹介し、AFの発見が難しいことを説明した。では、発見が難しいAFをどのように見つけるか? 日常生活で簡単にできる方法として身体診察の「検脈」の方法を紹介するとともに、『2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』に触れ、ガイドラインの中に記載されているAFのスクリーニングと治療に用いられる各デバイスの特徴について説明を行った。最近では、ウェアラブルの測定機器が進歩しているが、その精度はまだ未知数であり、エビデンスも確立されていないために長時間心電図モニターや携帯心電図などの心電図記録によるデバイスで診断することになっている。進歩するAFの治療 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』からAFの治療では、カテーテルアブレーションと抗凝固治療が行われる。 カテーテルアブレーションは、20221年のデータでわが国では約11万件施行されている。とくに心不全を合併したAFでは、カテーテルアブレーションは、全死亡・心不全入院を有意に減少させる報告があるので、予後を改善できる可能性が高い3)。 また、近年ではLVEF(左室駆出率)の低下した心不全(HFrEF)にも治療の適応が拡大されているほか、新しいカテーテル治療法として熱を伴わず特殊な電気ショックを利用して細胞のアポトーシスを誘導するパルスフィールドアブレーション(PFA)も登場し、安全に外科的治療が施行できるようになってきているという。 抗凝固療法に関しては、『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』で直接経口抗凝固薬(DOAC)4薬剤の用法・用量設定基準が明記され、すべてのDOACがCHADS2スコア1点以上で使用が推奨されている。また、腎機能障害、認知症、フレイルなどの高リスク高齢者についても積極的なDOACの使用を記していると説明し、レクチャーを終えた。AI診断で未診断のAFを発見 「『隠れ心房細動』を早期発見するための、AIとリモートテクノロジーを用いた取り組み-静岡市清水区における地域医療プロジェクトについて-」をテーマに笹野 哲郎氏(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)が、静岡市清水区で行われている心電図のAI診断とデバイスによるリモートモニタリングによるAFの早期発見の取り組みについて説明した。  静岡市清水地区の高齢化率は約32%とわが国の平均よりやや進んだ高齢化率を示し、すでにAFと診断された人が2,036人、隠れAFの人が2,000人とほぼ同数であることから、この地区が選定されたという。この取り組みでは、地元の市立清水病院と清水医師会が共同事業者となり現地で健診などを実施、連携する東京科学大学がデータのAI解析を行い、解析結果をフィードバックするものである。 同地区で行われているAFの早期発見メソッドとしては、「12誘導心電図のAI診断」、「デバイスによるリモートモニタリング」が行われている。AFは、肺静脈からのトリガー興奮の後、左心房内で異常興奮が持続することで起るが、発作時でなくとも心房リモデリングの評価はできるとして、AIの深層学習により発作性AFの推定をさせている。 そして、AIによるAF発見は実現可能な段階にあり、2022年1月から開始されたプロジェクトでは、2023年7月までに検診を受けた362例のうち11例(3.04%)に未診断のAFを発見したという。 また、デバイスによるリモートモニタリングについて、スマートウォチやスマートリングなどの精度は向上途上であり、やはり現在医療機器で使用されているモニタリング機器での検査が行われる。 今後、早期発見のために装着されるウェアラブル機器による生体モニタリングなどについては、利用者が中途で止めてしまわないようにモニタリングの重要性を教育すること、一切操作不要でモニタリングできるシステムの開発と導入が望まれると展望を語り、講演を終えた4)。

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ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。 筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、1988~2012年に毎年健康診断を受けていて、ベースライン時にCVD既往のなかった40~79歳の日本人2,490人(平均年齢57.7±10.6歳、男性42.5%)。握力が年齢・性別の第1三分位群(握力が弱い方から3分の1)に該当し、かつ肥満(BMI25以上)に該当する場合を「ダイナペニック肥満」と定義すると、全体の5.4%がこれに該当した。 中央値24年(四分位範囲15~24)の追跡で482人にCVDイベント(脳卒中324件、冠動脈性心疾患〔CHD〕209件)が発生した。交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心電図異常など)を調整後に、握力の最高三分位群かつ普通体重(BMI18.5~24.9)の群(全体の23.9%)を基準として、ほかの群のCVDリスクを比較した。 その結果、ダイナペニック肥満群でのみ、CVD(ハザード比〔HR〕1.49〔95%信頼区間1.03~2.17〕)および脳卒中(HR1.65〔同1.06~2.57〕)の有意なリスク上昇が認められた。肥満でも握力低下のない群(第2~3三分位群)のCVDリスクは基準群と有意差がなく、また、やせ(BMI18.5未満)や普通体重の場合は握力にかかわらずCVDリスクに有意差がなかった。なお、CHDについてはダイナペニック肥満群のリスクも、基準群と有意差がなかった(HR1.19〔0.65~2.20〕)。 65歳未満/以上で層別化した解析では、65歳未満でダイナペニック肥満によるCVDリスクがより高いことが示された(HR1.66〔1.04~2.65〕)。一方、65歳以上では有意な関連を認めなかった(HR1.18〔0.61~2.27〕)。 続いて行った媒介分析からは、ダイナペニック肥満とCVDリスク上昇との関連の14.6%を炎症(高感度C反応性蛋白〔hs-CRP〕)、9.7%をインスリン抵抗性(HOMA-IR)で説明可能であり、特に65歳未満ではhs-CRPが13.8%、HOMA-IRが12.2%を説明していて、インスリン抵抗性の関与が強いことが示唆された。 著者らは、「握力とBMIで定義したダイナペニック肥満は、日本の地域住民におけるCVD発症のリスク因子であることが明らかになった。この関連性は、65歳未満でより顕著であり、炎症とインスリン抵抗性の上昇がこの関連性を部分的に媒介している」と総括。また、「われわれの研究結果は、CVD予防における中年期の筋力の低下抑止と、適切な体重管理の重要性を示唆するものと言える」と付け加えている。

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心房細動発症、尿酸上昇と体重増加が相互に作用~日本人での研究

 尿酸と肥満が関与する心房細動の新規発症機序から、心房細動発症に尿酸増加と体重増加が相互に作用している可能性がある。今回、京都府立医科大学の宗像 潤氏らが、「20歳以降に体重10kg以上増加」という体重変化の尺度を用いて調査したところ、ベースラインで尿酸値が正常範囲内であっても、その後の尿酸値の増加と体重増加が心房細動の新規発症に相互作用を及ぼすことがわかった。BMJ Open誌2024年11月27日号に掲載。 本研究は後ろ向きコホート研究で、2013年4月2日~2022年4月30日に毎年健康診断を受けた従業員コホートのうち、心房細動を発症していない30歳以上の日本人1,644人を後ろ向きに解析した。血清尿酸と体重の経時的変化が心房細動新規発症に及ぼす影響について、ランドマーク生存解析を用いて評価した。体重増加は標準化自記式質問票における「20歳以降に体重10kg以上増加」と定義し、心房細動は心電図で心房細動が認められた場合または問診で心房細動が認められた場合とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3.91年の間に69例が心房細動を新規発症した(発症割合:1.12/1,000人年)。・ベースラインの血清尿酸値は体重増加あり群で5.76(±1.37)mg/dL、体重増加なし群で4.87(±1.31)mg/dLであり、いずれも正常範囲内であった。・交互作用項を含む多変量ランドマーク生存分析では、心房細動の新規発症は、年齢、性別、ベースラインの収縮期血圧、ベースラインの尿酸値、尿酸値変化と体重増加の交互作用項と有意に関連していた。・体重増加と尿酸値変化との交互作用項によると、尿酸値1mg/dL増ごとのハザード比は、体重増加あり群で1.96(95%信頼区間[CI]:1.38〜2.77)、体重増加なし群で0.95(95%CI:0.61〜1.48)であった。

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COVID-19罹患で自己免疫・炎症性疾患の長期リスクが上昇

 COVID-19罹患は、さまざまな自己免疫疾患および自己炎症性疾患の長期リスクの上昇と関連していることが、韓国・延世大学校のYeon-Woo Heo氏らによる同国住民を対象とした後ろ向き研究において示された。これまでCOVID-19罹患と自己免疫疾患および自己炎症性疾患との関連を調べた研究はわずかで、これらのほとんどは観察期間が短いものであった。著者は「COVID-19罹患後のリスクを軽減するために、人口統計学的特性、重症度、ワクチン接種状況を考慮しながら、長期的なモニタリングと管理が重要であることが示された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Korea Disease Control and Prevention Agency-COVID-19-National Health Insurance Service(K-COV-N)コホートを対象に、COVID-19罹患後の長期における自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクを調べた。対象は、2020年10月8日~2022年12月31日にCOVID-19罹患が確認された住民(COVID-19罹患群)、2018年に一般健康診断を受けた住民(対照群)とした。 主要アウトカムは、COVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患の発症率とリスクとした。逆確率重み付け法を用いて、人口統計学的特性、一般的な健康データ、社会経済的状況、併存疾患などの共変量を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間180日超のCOVID-19罹患者314万5,388例、対照376万7,039例の計691万2,427例(男性53.6%、平均年齢53.39[SD 20.13]歳)が解析に含まれた。・COVID-19罹患群でリスクが高かった疾患(調整ハザード比、95%信頼区間)は以下のとおりであった。 円形脱毛症(1.11、1.07~1.15) 全頭脱毛症(1.24、1.09~1.42) 尋常性白斑(1.11、1.04~1.19) ベーチェット病(1.45、1.20~1.74) クローン病(1.35、1.14~1.60) 潰瘍性大腸炎(1.15、1.04~1.28) 関節リウマチ(1.09、1.06~1.12) 全身性エリテマトーデス(1.14、1.01~1.28) シェーグレン症候群(1.13、1.03~1.25) 強直性脊椎炎(1.11、1.02~1.20) 水疱性類天疱瘡(1.62、1.07~2.45)・人口統計学的特性(男性/女性、40歳未満/以上)別のサブグループ解析では、COVID-19罹患による自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクは、性別や年齢によって異なることが示された。・とくに、ICU入室を要する重症COVID-19罹患、デルタ株優勢期の感染、ワクチン未接種はCOVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクが高かった。

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自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日の「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。糖尿病の合併症の腎臓病では透析導入になりやすい 「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。 わが国の糖尿病と疑われる人の数は約2,000万人にのぼり、国民の5~6人に1人は糖尿病の危険があるとされる国民病となっている。 糖尿病は「インスリンの作用不足により起こる血糖値が高い状態が続く疾患」であり、診断では空腹時血糖値が126mg/dL以上、食後血糖値、ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上あれば糖尿病が強く疑われ、再度の検査で確定診断となる。また、健康診断などでよく話題になるHbA1cも6.5%以上は糖尿病が強く疑われる指標となる。 糖尿病にはI型、II型、妊娠、そのほか(薬剤性、肝臓疾患など)の4種類があり、その症状として「のどの渇き、水分の多飲」「日中・夜間の頻尿」「疲れやすい」「体重減少」などがある。そして、これらの症状は自覚症状に乏しく放置しがちであり、医療機関を受診しないことで合併症のリスクが高まる。 糖尿病合併症では、脳卒中、心筋梗塞、壊疽(神経障害)などの大血管障害と網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害がある。また、併存症として肺炎などの感染症、肝臓・膵臓などの悪性腫瘍、歯周病なども糖尿病患者では起こりやすく、重症化しやすい。 とくに糖尿病性腎症は、慢性腎臓病(CKD)の代表的な疾患であり、病期がかなり進行するまで自覚症状に乏しいために、診断がされたときには腎不全で透析導入になるケースが多い。実際、日本透析医学会の調査では、糖尿病性腎症は透析導入の約4割を占めていると報告されている。糖尿病合併症の抑制には血糖、血圧、脂質の厳格な管理が求められる 現在、日本糖尿病学会では、診療ガイドラインなどで糖尿病治療の目標として、「健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)の達成」を示している。糖尿病の根治が難しい以上、合併症を抑えることが重要となる。 糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法だが、これでも効果が不十分な場合に薬物療法が追加される。いずれも患者の自主的な取り組みなしには成功しない治療である。また、HbA1cを7%未満に抑えれば網膜症や腎症の悪化リスクを抑えことができるという研究報告1)のほか、血圧を130/80mmHg未満に抑えたり、LDLコレステロールを適切に管理したりすれば合併症のリスク低減が期待できるため、ガイドラインなどで推奨されている。そのほか、わが国のJ-DOIT3の研究結果から血糖、血圧、脂質の厳格な管理が糖尿病の合併症予防につながり、とくに脳血管合併症や腎症に効果があるとされている2)。 最後に坊内氏は、糖尿病やCKDの治療において大切なこととして、「医師やメディカルスタッフとのコミュニケーションが重要である。共同意思決定(SDM)として治療のゴールを決めるために、患者さんが価値観や好みをきちんと医師などに伝えることで、患者さん個々に合った治療法の提案をすることができる」と語り、講演を終えた。 この後開催された疾患啓発イベント「体験型ボードゲームで学ぶ糖尿病と合併症 ~腎臓の声に耳を傾けよう~ in 丸の内」のオープニングイベントでは、先の講演者の坊内氏が糖尿病の3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害を挙げたうえで、糖尿病性腎症はかなり進行するまで自覚症状に乏しいことに言及。「定期的な検査、とくに尿検査を行い、このイベントのタイトルにもなっている『腎臓の声』にしっかり耳を傾けよう」と呼びかけ、ゲストのガンバレルーヤの2人は「自覚症状が出にくいからときちんと病院に行って定期的に検査を受けることが大事なんですね」と早期発見の大切さに納得していた。また、会場では、特大サイズのボードゲームが人気で、多くの参加者が糖尿病とその合併症について学んでいた。

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酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。 本研究は、インターネット調査会社に登録している大阪府在住の一般モニターのうち20~64歳の日本人3,823人(男性1,907人、女性1,916人)を対象とし、2023年11月27~30日にインターネット調査を実施した。睡眠の満足度については、「満足」「少し不満」「かなり不満」「非常に不満またはまったく眠れなかった」のうち「満足」と回答した参加者を満足のいく睡眠をとっているとみなした。アジアンフラッシュについては、「飲酒し始めた年齢で、少量のアルコール摂取(ビールコップ1杯程度)ですぐに顔が赤くなりましたか?」という質問に「はい」と回答した参加者をアジアンフラッシュを経験していると分類した。飲酒したことのない参加者と過去に飲酒していた参加者を非飲酒者と定義した。 主な結果は以下のとおり。・アジアンフラッシュと睡眠満足度の間に有意な逆相関が認められた。潜在的交絡因子を補正した睡眠満足度のオッズ比(OR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.69~0.96)であった。・飲酒者と非飲酒者で基本的に同様の関連が認められた。補正後のORは、非飲酒者で0.81(95%CI:0.65~0.997)、飲酒者で0.80(同:0.61~1.05)であった。 著者らは、この結果が与える新たな臨床的意味合いとして「日常診療や毎年の健康診断に簡単に導入できる質問票が、睡眠不足の危険因子を特定するために役立つ可能性がある。また、飲酒しない人でもアジアンフラッシュは睡眠時間だけでなく睡眠満足度に関しても睡眠障害のリスクであることが明らかになった」としている。

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加齢性難聴予防に「聴こえ8030運動」を推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。聴こえが悪いと感じたら耳鼻科で聴力検査を 「加齢性難聴対策を介した共生社会の実現への取り組み」をテーマに和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授)が、現在の難聴対策の現状と問題点などについて講演を行った。 わが国は世界一の高齢化社会であり、加齢性難聴の放置は認知症の最大のリスクとなることが知られている1)。2024年の研究報告でも「難聴治療は老年期の認知症の予防に寄与する」という報告も出されている2)。こうした研究結果を踏まえ、日本医学会連合では2023年度よりさまざまな学会と連携し、難聴・聴覚補償機器に関する啓発活動を実施し、難聴への取り組みを行っている。 年代別の聴力レベルの変化について、高齢になればなるほど言葉の聞き取り力は有意に低下し、80代では半数が中等度の難聴となる3)。こうした加齢性難聴対策として「予防、受診、介入」を柱とした「聴こえ8030運動」が始められた。 難聴の原因には、加齢を筆頭に感染症、環境、薬剤など多彩な要因があり、最近では若年者の聴力は悪化傾向にあるという。こうした原因を啓発し、防止することが難聴予防につながると語る。また、わが国の耳鼻科への受診について、「聞こえに不自由を感じている人の受診率」が4割程度と先進国の中でもかなり低い割合であり、若年・中年期の難聴は健康診断などで発見されにくく、後期高齢者保健事業でも聴力検査が採り入れられていない課題があると指摘する。 おわりに和佐野氏は、「今後は適切な聴覚管理での早期介入のためにも、聞こえにくさを感じたら気軽に耳鼻科で聴力検査を受診できるよう、検査のハードルを下げる啓発活動を行っていきたい」と抱負を述べた。宮城県における加齢性難聴対策の取り組み 「言語聴覚士による加齢性難聴対策」をテーマに佐藤 剛史氏(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学/日本言語聴覚士協会)が、言語聴覚士(ST)の立場から高齢者や行政の支援者などへの難聴啓発事業について説明した。 佐藤氏の所属する東北大学と宮城県、仙台市では三者が連携し「高齢者の難聴および誤嚥性肺炎の理解と対応に関する普及啓発モデル事業」を行っている。 本事業は、高齢者の通いの場を中心とした啓発事業であること、行政・大学・地域が役割分担をして運営すること、啓発事業の対象は高齢者だけでなく地域の支援センターの福祉担当者や保健師、職員なども参加すること、自身の「聞こえ」状態が体感できる参加型講習であることを特徴としている。 市町村の職員など支援者向けの研修会は2022年から開催され、過去3回で248人が参加し、研修では耳の解剖や聴力の仕組みなどの講演会が行われている。また、高齢者向けの啓発活動では、加齢性難聴の病態と治療、体験プログラムが行われている。2022~23年の実施状況として、全41会場で合計1,395人が受講した。受講した高齢者へのアンケートでは、965人(平均年齢76歳)から回答を得た。対象者の聞こえの状態では、約7割弱の人が聞こえの不自由さを感じており、補聴器の装着は約2割に止まっていた。受講後に耳鼻科受診について聞いたところ約5割の受講者が「受診をしたい」と回答した。 佐藤氏は、今後の課題としては、「受診につながる長期のフォローアップや『通いの場』に参加できない人への啓発、『聞こえチェック方法』の検討などが必要であり、STの役割としては住民・行政などへの啓発活動や地域作り、高齢者への地域での難聴への支援、健診活動や補聴器装用の専門支援などが考えられる」と提言を行った。加齢性難聴への補聴器装用は認知症予防に寄与 「加齢性難聴と認知症」をテーマに下畑 享良氏(岐阜大学脳神経内科学 教授/日本神経学会 理事)が、難聴と認知症の関連について講演した。 わが国の認知症高齢者は2040年に約580万人(約15%)と推定されている。認知症では、アルツハイマー型認知症が1番多く、同症はアミロイドβが脳に沈着することで発症する。近年の研究では、この沈着に影響する因子に関し「高血圧」「喫煙」「睡眠」など多数の因子が関連していることが指摘されている。そして、先述の研究でも2)難聴が最大の修正可能因子であり、認知症の発症ないし遅延ができる可能性がある。 南デンマーク・57万例を対象とした約9年間の研究では、難聴があって補聴器をしていない人の認知症発症のハザード比は1.20であった一方で、補聴器を装用している人のハザード比は1.06だった結果から補聴器は認知症発症リスクを減少させる可能性があると指摘する4)。 アメリカからも同様の研究報告があり、認知症予防に難聴の人では、補聴器の装用が有効である可能性が示唆されることから、「認知症予防のために今後啓発していく必要がある」とその重要性を下畑氏は語った。加齢性難聴の社会的認知に「聴こえ8030運動」の取り組み 「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が取り組む『聴こえ8030運動』」をテーマに羽藤 直人氏(愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 理事)が「聴こえの8030運動」について説明した。 この運動は、80歳で30dB(聞こえの閾値)の聴力を保つ国民啓発運動であり、全年代に加齢性難聴の周知、聴力検査などの耳鼻科への受診啓発、補聴器装用率の向上を目指すものである。加齢性難聴者数は1,437万人と推定され、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当するとされている。その一方で耳鼻科受診率は低く、加齢性難聴が疾病であるという認識が不足しているとされる。また、先進国と比較して補聴器装用率もわが国は約1/3、人工内耳普及率も約1/2と低い数字に止まっている。 そこで、日本歯科医師会推進の「8020運動(80歳で20本以上の歯の維持を目標)」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命をサポートする目的で「聴こえ8030運動」を実施した経緯を説明した。運動の目標数字として、80歳で30dBの聞こえを維持している割合が現状30%から20年後には50%への伸長を謳っている。 加齢性難聴対策としては、「大音量で音楽などを聴かない」、「騒音の場所を避ける」、「騒音下の仕事では耳栓」、「静かな場所で耳を休ませる」などがあり、聞こえが悪くなったら補聴器の装用などが勧められる。 おわりに羽藤氏は、「こうした情報を手軽に入手できるように専用のウェブサイトを開設した。加齢性難聴という疾患の周知から聴力検査での耳鼻科受診、そして難聴カウンセリング、補聴器の適合診断を経て、適切な補聴器、人工内耳の普及へとつなげていくことで、認知症の抑制につなげていきたい」と展望を述べた。 講演後に「聴こえ8030運動が拓く加齢性難聴の未来」をテーマに、内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 特任教授)の進行で総合討論が行われた。総合討論では、残置聴力と補聴器の相性や聴こえ8030運動での医師以外の医療従事者の役割と連携、補聴器装用とSTの役割、非専門医への啓発、耳鼻科への診断はいつ行うかなどを話題に活発な議論が行われた。

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事例010 外来・在宅ベースアップ評価料(I)の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説初診の患者に対して「O100 外来・在宅ベースアップ評価料(I)」(以下「同評価料(I)」を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用されて査定になりました。「同評価料(I)1初診時」は、「主として医療に従事する職員の処遇改善を進める医療機関が、施設基準を満たしていると届出ている場合、初診を行った場合に算定ができる」と記載されています。健康診断後の精査にかかる初診であっても、初診を行った場合にあたると考えられるので算定は可能としていました。査定理由を調べるために、診療報酬点数表を読み返してみました。同評価料(I)1の留意事項(2)に、「A000初診料(中略)を算定した日に限り、1日につき1回算定できる」とあります。今回の事例は健診後の精査受診です。初診料の算定は認められません。初診料の算定が伴う同評価料(I)は算定できないことがわかります。「初診」と「初診料」の言葉の違いが明確に示された査定でした。同評価料(1)2再診時や、同評価料(1)3訪問診療時にも同様の留意事項が示されています。再診即時入院の場合は同評価料(1)2再診時が算定可能と通知が発出されています。同日に異なった診療科で関連の無い傷病を診察したときに認められる「A000 注5 2つ目初診料(複初)」の場合の通知はみつかりませんでした。これらの解釈を院内周知して査定対策としています。

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最近、疲れやすいんです…【漢方カンファレンス】第11回

最近、疲れやすいんです…以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代男性主訴易疲労感、腰痛既往気管支喘息病歴1年前から易疲労感を自覚するようになった。仕事はできているが、疲れがなかなか抜けず休日はゴロゴロしている。また腰痛が悪化したこともあり趣味のゴルフがしばらくできていない。これまで健康診断や人間ドックで異常を指摘されたことはない。妻に漢方治療を勧められて受診した。現症身長174cm、体重64kg(BMI 22kg/m2)。体温36.2℃、血圧120/56mmHg、脈拍56回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見に特記すべき異常はない。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後調子は変わらない。2ヵ月後なんとなく調子がよい。夜間尿の回数が減った。3ヵ月後久しぶりにゴルフができた。6ヵ月後腰痛が軽減している。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?最近、寒がりになりました。下肢が冷えます。下肢はどこが冷えますか?とくに膝から下が冷えます。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?入浴時間は長いです。冷房は好きです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?よくのどは渇きます。冷たい物をよく飲みます。1日およそ1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>食欲はありますか?胃は弱くないですか?食欲はあります。胃は丈夫です。倦怠感はありますか?昼食後に眠くなりませんか?横になりたいほどきついですか?朝は調子が悪いですか?疲れやすいですが、いつも横になりたいほどではありません。昼食後に眠くなることはありません。朝は比較的調子がよいです。尿は1日に何回出ますか?夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか?汗はよくかきますか?尿は1日7~8回で、夜間尿2~3回です。便秘・下痢はありません。汗はよくかきます。よく眠れますか?よく眠れますが、尿のために起きることが最近増えました。腰痛について教えてください。夜間安静時に痛みはありますか?入浴で温まると楽になりますか?動かすとベルトのあたりが痛みます。夜間に痛むことはありません。温まると痛みは軽減します。下肢はむくみますか?靴下の痕はつきませんか?はっきりむくむことはありませんが、夕方には靴下の痕がついています。ほかに気になるところはありませんか?最近、老眼が進んだ気がします。【診察】顔色は普通。脈診ではやや沈、強弱中間脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり、腹診では腹力は中等度、心窩部に抵抗あり。下腹部の腹力の低下あり。四肢末端に明らかな冷えはない。カンファレンス今回は50代前半男性の易疲労感、腰痛が主訴の症例ですね。寒がりになった、下肢、とくに膝下が冷える、入浴時間は長い、などから陰証が示唆されます。しかし触診では冷えを認めない、冷房が好き、横になりたいほどの倦怠感はないということからと強い冷えはないようです。そうだね。少なくとも少陰病でみられるような全身の冷え、倦怠感はないね。ただし、寒がりや下肢の冷えのほか、腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。入浴で痛みが軽減するかどうかも有用な情報になるのですね。少陰病ほど強い冷えはないとすると太陰病ですね。冷えの程度が軽いことから太陰病が考えやすいですね。虚実はどうでしょう?脈は強弱中間、腹力は中等度であることから虚実間と考えられます。そうですね。では漢方診療のポイント(3)の気血水の異常を考えましょう。疲れやすいというものの、食欲があって、昼食後の眠気はないということで気虚ということではなさそうです。朝調子が悪いという気欝の特徴もありません。血の異常(瘀血)では、舌暗赤色、舌下静脈の怒張でしょうか。倦怠感の漢方医学的鑑別が上手になりましたね。あとは、浮腫はないけれども下肢に靴下の痕がつくということを軽度の水毒(第9回「今回のポイント」の項参照)と考えてもよいでしょう。排尿異常も水毒とみなしますので、夜間頻尿も水毒と考えます。本症例では、易疲労感に加えて、瘀血や水毒の異常があるということですね。そのほかには、夜間頻尿、腰痛、老眼と現代医学的には複数の科に渡る症状が並んでいます。これらはすべて加齢に伴ってよく出現するものだと思うのですが…。漢方では加齢に伴って出現する症状をまとめて、加齢とともに腎の機能が衰えてくる「腎虚」(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)と考えて治療をするよ。そうすると本症例の夜間頻尿、下肢の冷え、腰痛、老眼などが一連の症状として考えることができますね。また、本症例の腹部の診察で、上腹部と比べて、下腹部の抵抗が弱いことを小腹不仁(しょうふくふじん)とよびます(写真)。これは腎虚を示唆する腹部の所見です。それでは本症例をまとめましょう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢(とくに膝下)が冷える、長湯できる、冷房が好き、冷水を好む、横になりたいほどの倦怠感はない脈:やや沈→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:強弱中間、腹力:中等度→虚実間(3)気血水の異常を考える疲れやすい→気虚?舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血下肢浮腫、夜間頻尿→水毒浮腫、夜間頻尿、腰痛、老眼→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む下肢の冷え、小腹不仁解答・解説【解答】以上から本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いて治療しました。【解説】腎虚に対する治療薬が八味地黄丸です。もとの古典を参考に八味丸という名前で丸剤として製造するメーカーもあります。主に下半身の症状が多く、冷えはとくに膝下が冷えることが特徴です。腰痛、下肢痛、下肢のしびれなどのほか、排尿異常(とくに夜間頻尿)、下肢浮腫などが代表的な症状で、視力障害、聴力障害、精力減退なども含まれます。もちろん加齢に伴う症状ですから内服によりすべての症状が改善するとはいえませんが、じっくりと内服することで症状が軽減していくことはよく経験します。構成生薬では、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があるとされ、そのほか利水作用のある沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める附子(ぶし)などが含まれます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで、幅広く適応になります。そのためひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)が加わったものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫が強い、しびれが強いなどの場合に用います。また、腎虚はあるものの冷えが目立たない症例では桂皮(けいひ)と附子を除いた六味丸(ろくみがん)という漢方薬もあります。八味地黄丸が適応となるのは、高齢者でも倦怠感や腰痛などのひどい症状があって困っている状態や施設で寝たきりの高齢者よりも、元気に外来通院してくる人というイメージです。また、内服して短期間に効果を実感できることは少なく、数ヵ月間じっくりと内服して、少しずつ症状が改善していくことが多いため、注意深く効果判定する必要があります。そのため効果判定として、夜間尿は回数として客観的に評価できるのでお勧めです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は、呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので、「腎は先天の気を主(つかさど)る」といわれ、漢方医学的な腎に宿ります。腎は成長、発育、生殖能などと関連し、腎の働きは年齢とともに弱くなります。腎の機能が衰えてくることを腎虚といい、加齢に伴って出現する排尿異常、下半身の冷えや痛み、聴力障害、視覚障害、精力減退などをまとめて腎虚による症状と考えることができます。

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医師の飲酒状況、ALT30超は何割?年齢が上がるほど量も頻度も増える?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省は2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」1)を発表し、国民に向けて、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進している。こうした状況を踏まえ、日頃から患者さんへ適切な飲酒について指導を行うことも多い医師が、自身は飲酒とどのように向き合っているかについて、CareNet.com会員医師1,025人を対象に『医師の飲酒状況に関するアンケート』で聞いた。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。本ガイドラインの認知度や、自身の飲酒量や頻度、飲酒に関する医師ならではのエピソードが寄せられた。「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度 Q1では、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度について4段階で聞いた。全体では、認知度が高い順に「内容を詳細に知っている」が7%、「概要は知っている」が27%、「発表されたことは知っているが内容は知らない」が23%、「発表されたことを知らない」が43%であり、約60%が本ガイドラインについて認知していた。各年代別でもおおむね同様の傾向だった。診療科別でみると、認知度が高かったのは、外科、糖尿病・代謝・内分泌内科、消化器科、精神科、循環器内科/心臓血管外科、内科、腎臓内科の順だった。ALT値が30U/L超の医師は16% Q2では、医師自身の直近の健康診断で、肝機能を示すALT値について、基準値の30U/L以下か、30U/L超かを聞いた。日本肝臓学会の「奈良宣言」により、ALT値が30U/Lを超えていたら、かかりつけ医を受診する指標とされている2)。「ALT値30U/L超」は167人で、全体の16%を占めていた。年代別の結果として、30U/L超の人の割合が多い順に、50代で22%、60代以上で21%、40代で17%、30代で14%、20代で7%となり、年齢が上がるにつれて30U/L超の人の割合が多くなる傾向にあった。年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加 Q3では、1回の飲酒量について、単位数(1単位:純アルコール20g相当)を聞いた。お酒の1単位の目安は、ビール(5度)500mL、日本酒(15度)180mL、焼酎(25度)110mL、ウイスキー(43度)60mL、ワイン(14度)180mL、缶チューハイ(5度)500mL3)。 年代別では、「飲まない」と答えたのが、多い順に50代で32%、40代で30%、30代で26%、60代で22%、20代で15%だった。各年代で最も多く占めたのは、20代、30代、60代では「1単位未満」で、それぞれ36%、36%、32%であった。40代と50代では「1~2単位」が多くを占め、それぞれ32%と26%だった。 ALT値が30U/L超の人の場合では、「飲まない」と答えたのが、多い順に30代で33%、50代で23%、40代で22%、60代で9%、20代で0%だった。また、1回に「5単位以上」飲む人の割合は、30 U/L以下と30 U/L超を合わせた全体では5%だったが、30U/L超の人のみの場合では2倍以上の12%となり、顕著な差がみられた。30U/L超の人では、年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加する傾向がみられた。年齢が上がるにつれて、飲酒頻度が増加 Q4では、現在の飲酒頻度を7段階(毎日、週に5・6回、週に3・4回、週に1・2回、月に1~3回、年に数回、飲まない)で聞いた。全体で最も割合が多かったのは「飲まない」で22%であり、次いで「月に1~3回」で16%であった。ALT値が30U/L超の人の場合では、最も割合が多かったのは「週に3・4回」で19%、次いで「飲まない」と「毎日」が同率で16%だった。 全体の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「月に1~3回」で37%、次いで「週に1・2回」が20%、30代では「飲まない」が21%、「年に数回」が19%、40代では「飲まない」が25%、「週に5・6回」と「週に3・4回」が同率で15%、50代では「飲まない」が29%、「週に1・2回」が15%、60代以上では「毎日」が24%、「飲まない」が21%であった。とくに60代以上の頻度の高さが顕著だった。 ALT値30U/L超の人の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「週に1・2回」と「月に1~3回」で同率の36%、30代では「週に3・4回」と「飲まない」が同率の23%、40代では「週に3・4回」が25%、50代では「毎日」と「飲まない」が同率で23%、60代では「毎日」が28%、次いで「週に1・2回」が21%であった。20代と60代以上では「飲まなない」の割合の低さがみられ、30代と50代では「飲まない」が23%となり節制する人の割合が比較的多く、50代と60代以上で「毎日」の人の割合が20~30%となり、飲酒頻度が上がっている状況がみられた。 ALT値30U/L超の人においてQ3とQ4の結果を総合的にみると、20代は飲まない人の割合が低いものの、飲酒量と飲酒頻度は比較的高くない。また、30代は量と頻度を共に節制している人の割合が高い。60代以上と50代で、量と頻度が共に高い傾向がみられた。30~40代は飲酒の制限に積極的 Q5では、現状の飲酒を制限しようと思うかを聞いた。全体では、「制限したい」は21%に対し、「制限しない」は49%で2倍以上の差が付いた。ALT値30U/L超の人では、「制限したい」は28%に対し、「制限しない」は53%であった。ALT値30U/L超の人で「制限したい」が高かったのは、40代で42%、次いで20代で36%だった。また、30代はすでに飲酒していない人が37%で、年代別で最も多かった。 Q6では、Q5で「飲酒を制限したい」と答えた217人のうち、どのような方法で飲酒を制限するかを4つの選択肢から当てはまるものすべてを選んでもらった。人気が高い順に、「飲酒の量を減らす」が56%、「飲酒の頻度を減らす」が55%、「ノンアルコール飲料に代える」が36%、「低アルコール飲料に代える」が27%となり、量と頻度を減らすことを重視する人が多かった。自身が経験した飲酒のトラブルなど Q7では、自由回答として、飲酒に関するご意見や、自身が経験した飲酒のトラブルなどを聞いた。多くみられるトラブルとして、「記憶をなくした」が最多で15件寄せられ、「二日酔いで翌日に支障が出た」「屋外で寝た」「転倒してけがした」「嘔吐した」「暴れた」「救急搬送された」「アルコール依存症の治療をした」などが年齢にかかわらず複数みられた。自身の飲酒習慣について、「なかなかやめられない」「飲み過ぎてしまう」といった意見も複数あった。そのほか、医師ならではの飲酒に関するエピソードや社会的な側面からの意見も寄せられた。【医師ならではのエピソード】・研修医の時に指導医と潰れた(30代、その他)・医師でアルコール依存になる人が多いため、飲まなくなりました(30代、皮膚科)・アルコール依存症の患者さんをみているととても飲む気にはなれない(30代、麻酔科)・正月の救急外来は地獄(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・科の飲み会の際に病院で緊急事態が発生すると、下戸の人間がいると非常に重宝されます(40代、循環器内科)・飲酒をすると呼び出しに対応できない(60代、内科)・雨の中、帰宅途中、転倒し意識がなくなり、自分の病院に搬送され大騒ぎでした(60代、脳神経外科)・勤務医時代は飲まないと仲間が働いてくれなかったが、開業して、健康に悪いものはもちろんやめた(70代以上、内科)【社会的な側面や他人への影響】・喫煙があれだけ批判されるなら飲酒も同じぐらい批判されるべきと考える(20代、臨床研修医)・日本では以前は飲酒を強要されることがあったが、米国留学中は飲酒を強要されることはなく、とても快適な時間だった(40代、病理診断科)・日本人は酔っぱらうことが多く、見苦しいし、隙もできる。グローバルスタンダードではありえない(50代、泌尿器科)・テレビCMでアルコール飲料が放映されていることに違和感がある(60代、神経内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。医師の飲酒状況/医師1,000人アンケート

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学校健診の留意点「検診項目追加は事前に打ち合わせを」/日医

 日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、9月25日の定例記者会見で、文部科学大臣へ「学校保健の更なる充実のための提言と要望」を提出し、文部科学省と日本医師会の共同で「学校健康診断実施上の留意点」を作成したことを報告した。文部科学大臣への提言・要望 「学校保健の更なる充実のための提言と要望」では、将来を担う子供たちの健康を増進する学校保健の重要性を踏まえ、下記の3点について検討を要望した。1.学校健康診断のあり方に関する検討-現在実施されている健診項目は社会的状況に見合ったものとなっているか2.健康教育の推進-学習指導要領と解説の整理、管理職を含む関係教員の研修機会の充実、学校医などの外部講師の活用に係る予算の確保3.教師の働き方改革推進と教育の質向上-学校現場の教職員の処遇や定数の大幅な改善、教員養成系大学の教職員や国・地方自治体において教育行政に携わる公務員など教育に関わる人員の抜本的拡充、必要なインフラ整備 文部科学大臣からは、「学校健康診断については、時代に合わせた見直しは必要。関係省庁と連携しながら対応していくとともに、実施する側の負担軽減も図っていく必要がある」と言及があったという。学校健康診断の留意点 2024年6月に小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが大きく報道された。学校と学校医との間で共通理解が十分ではなく、学校から児童・生徒および保護者への事前の説明が不足していたことなどから、児童・生徒のプライバシーや心情への配慮が欠けていた状況を踏まえ、日本医師会と文部科学省の共同で「学校健康診断実施上の留意点」のリーフレットを作成した。 リーフレットでは、学校健康診断の目的や役割、留意すべき事項を改めて示すとともに、学校医に対して下記5点の徹底を求めている。1. 学校健康診断を行うに当たっては、その意義・目的を理解するとともに、学校の意向を十分考慮したものとすること2. 診察方法や児童・生徒などのプライバシー・心情への配慮について事前に学校と確認すること3. かかりつけ医の診療と学校医の健康診断の違いを理解すること(学校健康診断では、学校医は普段診ていない子供を学校の中でスクリーニングする)4. 法令に定めのない検査の項目を追加する場合には、その実施の目的、検査方法などについて事前に学校と十分打合せを行うこと5. 健康診断結果に基づき学校が行う事後措置について医療面から指導すること 渡辺氏は「リーフレットによって、2025年度の学校健康診断の実施に向けて学校医と学校の共通理解が深まり、より円滑に健康診断が行われることを強く期待する。リーフレット配布をきっかけに出てくる学校健康診断に対するさまざまな意見を関係者で共有し、児童・生徒の健康のために学校検診をより良いものとしたい」とまとめた。

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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第205回 ポストコロナ時代、地域医療の存続に向けた病院の新たなアプローチとは?

毎週月曜日に先週にあった行政や学会、地域の医療に関する動きを伝える「まとめる月曜日」。今回は特別編として「すこし未来の地域医療の姿」について井上 雅博氏にご寄稿いただきました。新型コロナが医療・介護にもたらした影響とは今春、6年に1度のタイミングで医療報酬、介護報酬、障害福祉サービスの報酬が同時に改定されました。今回の改定では、医療と介護の連携の必要性を強く求めると同時に、マイナンバーカードの普及により医療情報の利活用を促進し、高血圧、脂質異常症、糖尿病を中心に診療を行っていた医療機関では「療養計画書」の作成などの対応に追われました。改定後、全国の病院関係者からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大時に救急患者の受け入れや転院、退院支援で苦労したのが、第11波の現在では、患者不足で病床が埋まらず、病床稼働率の低下が囁かれるようになったという声が聞かれます。もちろん、COVID-19のワクチン接種による軽症化や治療薬の開発による早期治療開始による早期退院が可能となったことが大きいとは思います。しかし、それ以外の原因として、感染拡大によって定期的な健康診断やがん検診によって発見された手術適応患者の紹介の減少が目立っていることが挙げられます。さらに、後期高齢者の場合、入院しても手術適応とならない方が増えている可能性があります。私が以前勤務していた広島県福山市の脳神経センター大田記念病院では、最新の統計によれば中央値では過去5年間大きな変動はないものの、高齢者層の増加(とくに90歳以上)が報告されています。じわじわと来る診療報酬改定の影響現在、病院が直面している経営課題は、昨年秋以降、コロナ対策の医療機関への病床確保基金などの制度が廃止され、以前の診療報酬体制に戻ったにも関わらず、患者の受診行動が変化してしまい、COVID-19拡大が落ち着いても元通りにならなかったという点です。このため、病床稼働率低下に加え、今春の改定で厳しくなった重症度、医療・看護必要度の対応で、10月からの病床再編や加算の対応に頭を悩ませている病院が多いと思います。さらに、原油高やエネルギー価格高騰に加え、デフレからインフレへの転換による経営環境の変化、人件費の増加といった影響も大きく、経営環境が激変しています。診療報酬改定では医療・介護職員の処遇改善のために賃上げの財源としてベースアップ評価料の算定が可能になりましたが、目新しい加算項目は少なく、サイバーセキュリティの強化など追加支出が求められているため、医療機関にとっては厳しい状況です。また、医療機関で問題となっているのは人手不足です。介護系サービス事業者は、高齢者の増加に備え設備投資を行い、施設を増やしてきましたが、現場に投入する医療・介護人材が必要となるため、医療機関よりも賃上げを先行して実施しており、同じ職種でも介護サービス事業者の賃金が高い状態になっています。さらに都市部では、コロナ禍にサービスを縮小していたホテル、飲食業などのサービス業界での人材不足が深刻化し、異業種との人材獲得競争も厳しくなっています。医療機関に求められる新たな「医療の形」病床稼働率の低下という現状を乗り切るための唯一の解決方法は、患者のニーズに応えることです。しかし、急性期の医療機関は専門医が多く、スペシャリストとして専門診療は得意である一方、後期高齢者のように2つ以上の慢性疾患が併存し、診療の中心となる疾患の設定が難しい「Multimorbidity(多疾患併存)」の場合、診療科ごとに縦割り構造のため、患者をチームで診ていると言いながら、病院内で診療科間の連携が取れていない、かかりつけ医や介護サービス事業者との連携協力が不十分なため、退院後にも内服薬の治療中断や退院前の指導不足による病状の悪化など、同じ患者が何回も入退院を繰り返す例が少なくありません。今後は、高度な急性期の医療機関は変わる必要がありそうです。とくに、在宅医やかかりつけ医との退院前のカンファレンスの開催や紹介状の内容の充実、情報共有の進化が必要ですが、多忙な急性期病院の医師がこれらを行うのは難しいと感じています。現状の解決手段としては、医師事務補助作業者の活用による書類作成の充実、退院サマリーや紹介状の作成業務のクオリティの向上が考えられます。また、今後は電子カルテにAIを導入し、カルテ内容の要約自動化を進めることや連携医療機関とカルテの開示を進めることが求められます。さらに、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟のある医療機関から退院する場合に、退院後のケアを担当する医療、福祉職へのわかりやすい指導(たとえば体重が〇kg以上増えたら早期に専門医に受診、食事や体重が減ったらインスリンは〇単位減量など)が求められると考えます。政府が模索する「新たな地域医療構想」の時代へ厚生労働省は、社会保障制度改革国民会議報告書に基づき、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて、地域医療構想を策定するよう各都道府県に働きかけてきました。厚労省は地域医療構想を「中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするもの」と定義しています。現状、2025年を目指していた「地域医療構想」はほぼ完成形に近付いているように思います。高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床区分は、各医療機関の立ち位置を明確にし、担うべき役割と連携協力機関をはっきりさせることで、独立した医療機関が有機的に医療・介護連携を行い、全国の2次医療圏内で完結できるよう基盤整備を進めてきました。厚労省は、今後の日本が迎える「高齢者が増えない中、むしろ労働人口が減少していく」2040年を見据え、今年3月から「新たな地域医療構想等に関する検討会」を立ち上げました。地域によっては高齢化の進行によって外来患者のピークを過ぎた2次医療圏も増えています。これは国際医療福祉大学の高橋 泰教授らが作成した2次医療圏データベースシステムからも明らかになっています。これまで、医師や看護師といった人材リソースを増やすことで充実させてきた医療のあり方が変わる中、その地域でいかに残っていくのかを考える必要があります。そのために、最近読んでいる本を紹介します。今後の病院、クリニック運営を考える際の一助になりましたら幸いです。『病院が地域をデザインする』発行日2024年6月14日発行クロスメディア・パブリッシング発売インプレス定価1,738円(1,580円+税10%)https://book.cm-marketing.jp/books/9784295409861/著者紹介梶原 崇弘氏(医学博士/医療法人弘仁会 理事長/医療法人弘仁会 板倉病院 院長/日本大学医学部消化器外科 臨床准教授/日本在宅療養支援病院連絡協議会 副会長)千葉県の船橋市にある民間病院である板倉病院(一般病床 91床)の取り組みとして、救急医療、予防医療、在宅医療の提供、施設や在宅との連携を通して「地域包括ケア」の展開や患者に求められる医療機関の在り方など先進的な取り組みが、とても参考になります。ぜひ一度、手に取ってみられることをお勧めします。参考1)新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)社会保障制度改革国民会議報告書(同)3)外来医療計画関連資料(同)4)診療報酬改定2024 「トリプル改定」を6つのポイントでわかりやすく解説!(Edenred)5)2次医療圏データベースシステム(Wellness)5)医療の価格どう変化? 生活習慣病、医師と患者の「計画」で改善促す(朝日新聞)

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第223回 院内処方は例外?腑に落ちない「医薬品の自己負担の新たな仕組み」

酷暑が続く最中だが、秋に向けてさまざまな動きがスタートしている。医療界では10月から、患者の希望に基づくジェネリック(GE)医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の処方は選定療養となり、新たに自己負担が生じることになる。すでに厚生労働省は特設ページまで用意している。国民に新たな負担を強いるわけだから、この対応自体は一定の評価はできると個人的に考えている。さてこのページを見ていて、ちょっと気になったことがあった。それは「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」という事務連絡通知だ。余計なことを言えば、「その1」があるならば、「その2」はいつ出るのだろうとも考えているが…。私がこの通知の中で気になったのが以下の疑義解釈である。【院内処方その他の処方について】問7 院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。(答)患者が後発医薬品を選択することが出来ないため、従来通りの保険給付として差し支えない。なお、後発医薬品の使用促進は重要であり、外来後発医薬品使用体制加算等を設けているところ、後発医薬品も院内処方できるようにすることが望ましい。「は?」という感想しかない。念のために言っておくと、私は原則的に医薬分業を推進すべきだと思いつつ、過渡的に院内処方はありだと思っている。しかしだ、さすがにこれはないだろうと思ってしまった。まず、国が医薬分業推進とジェネリック品(私の表記はこれで統一、以下GE品)の使用促進を謳っている中で、院内処方にこだわるならば、せめてGE品も院内在庫として有するのが筋というもの。こういうと、「GE品は先発品とは医薬品添加剤などが異なるから実質的に異なるもの」という主張が出てくる。医薬品添加剤などが異なるは、その通りである。しかしながら、GE品は長期収載品との同等性試験のデータを提出して承認されるものである。実は私は会社員として専門紙記者をやっていた頃、この生物学的同等性試験(以下、同等性試験)を受けようとしたことがある。やや余談になるが、その時の話をまず記述したいと思う。同等性試験に参加したワケ当時の私は、所属していた媒体でインフォームド・コンセント(IC)に関する連載を担当しており、臨床試験でのICの実態を体験したいと考えていた。私の友人にはGE品の同等性試験を経験した人がおり、そこから試験申し込みの情報は得ていた。とはいえ、会社員の身で事実上の潜入取材となるため、直属の上司は編集局長の許可がいると言い出し、最終判断は局長一任となり却下された。だが、その直後、直属の上司が社内異動となり、社内の他媒体の編集長が私の媒体の兼任となった。私はこの間隙を縫って、兼任編集長に次ぐ、記者でもある主任に再度掛け合った。主任は私の申し出に腕組みして考えた後、「友人に迷惑かけんなよ。それと試験手前で離脱できるならしろ。その条件で認める。後は俺が責任を取る」と言ってくれた。私は友人から教えられた電話番号に連絡し、事前の採血や健康診断を受け、さらに臨床試験のICも受けた。率直に言って、この時受けたICは、臨床試験に際して求められる項目がかなり抜け落ちたものだった。結局、私は試験開始前に離脱を表明し、最終的にその状況を記事にしたのだった。記事が出た当初、社内で問題になることはなかったが(そもそも局長が社内媒体すべてには目を通していなかった)、しばらくして大問題となった。社内の広告営業部門の幹部が飛んできて「えらいことをしてくれた」と言うのだ。曰く、私と同期入社である営業担当社員が半年ほど、臨床試験受託会社の業界団体加盟社すべてから営業訪問を拒否されているとのこと。長らくその理由も明らかにされなかったが、この同期社員が「なぜ会ってもいただけないんですか?」とある会社に食い下がったところ、私の記事のコピーを差し出されたという。私が離脱した同等性試験を受託していたのは、この業界団体の加盟社だった。結局、同期の営業社員は年間で営業成績が数百万円の落ち込みとなってしまった。彼には直接詫びたが、彼は「まあ、うちら専門紙がやるかという問題はあるけど、(記事は)必要だったと思うよ」と精一杯の“やせ我慢”(と私は思っている)で応えてくれた。私が属していた会社は、いわゆる業界紙という区分にもなる専門紙だったが、私以外にもこうした誤報ではないが、読者でもあり広告出稿者の癇に障る記事を書いて、一時出稿停止になることは珍しくなかった。ちなみに私の退職時の送別会に出席した前述の営業部門幹部から、私の記事が原因で飛んだ7年間の広告料概算総額を聞かされた時は正直血の気が引いたものである。同等性試験の参加者は過酷さて同等性試験に話を戻そう。私は事前に友人が受けた同等性試験の様子は聞いていたが、それはある意味壮絶なものだった。友人の証言に基づくと、彼が受けた同等性試験では最初の6時間は1時間おき、その後は丸2日間にわたって3時間おきに採血が行われたという。これは服用薬の血中濃度測定のためだ。この頻回な採血により、後半になると採血用の注射針を刺した直後に失神する被験者もいたという。いずれにせよ、そうした犠牲を払って行われた同等性試験の結果が正しいという前提に立てば、「GE品は先発品と異なる」との主張はあまり適当ではないと思われる。確かに昨今のGE企業の相次ぐ不祥事もあるが、それでGE品を丸々否定するのはやや度が過ぎていると感じる。そのような中で、今回示された疑義解釈に沿えば、院内処方の医療機関でGE品を在庫していないというだけで選定療養の対象外とするのは、さすがに国の方針としてやや甘過ぎないだろうか? そしてこの解釈を利用すれば、院内処方を行う医療機関と医学的な必要性もなく長期収載品の処方を望む患者が手を組めば、事実上不正な処方も行えることにほかならない。院内処方はたかだか20%なのだから固いこと言うなとの意見もあるかもしれない。しかし、そもそもこの解釈そのものが今回の制度改正の主旨であるGE品の使用促進に伴う国の薬剤費負担を軽減することにすら反する。現行の制度や世の中を取り巻く環境を考えるならば、院内処方をする医療機関はそれ相当の矜持を有するべきであり、国もそれ相応の対応を取るべきである。しかし、この解釈に対しては、少なくとも私は場当たりな印象しかない。最後に申し添えておくと、ときどき保険薬局の薬剤師からは「院内処方をしている医療機関から時に在庫確保が困難だからとかの理由で処方箋が出されることがある」との話はよく耳にする。現在の医薬品供給不足で、在庫確保の困難さは薬局も同じこと。大きなお世話と言われようが、そこは互いに思いやりが必要ではと思ってしまう。

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メタボリックシンドロームとうつ病〜日本リアルワールドデータ横断的研究

 メタボリックシンドローム(MetS)とうつ病は、どちらも優先度の高い健康問題であり、とくに労働年齢層において問題となる。これまで、MetSとうつ病との関連についての研究は、数多く行われているが、そのすべてが一貫しているわけではない。帝京大学の杉本 九実氏らは、広範なリアルワールドデータを分析することにより、MetSとうつ病の関連性を判断するため、本研究を実施した。Environmental Health and Preventive Medicine誌2024年号の報告。 東京都を除くすべての都道府県の地方自治体職員の2019年度の保険請求および健康診断のデータを用いた。うつ病診断および抗うつ薬の処方月数に応じて、参加者を次の4群に分類した。確実にうつ病ではない(CN群)、うつ病でない可能性が高い(PN群)、うつ病の可能性あり(PD群)、うつ病である(CD群)。MetSおよびその構成要素である内臓肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病と各うつ病カテゴリとの関連性を分析するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加対象者は13万59例(CN群:85.2%、PN群:6.9%、PD群:3.9%、CD群:4.1%)。・男性の場合、CN群を基準としたMetSの調整オッズ比(aOR)は、PN群0.94(95%信頼区間[CI]:0.86〜1.02)、PD群1.31(1.19〜1.43)、CD群1.63(1.50〜1.76)であった。・女性のaORは、PN群1.10(95%CI:0.91〜1.32)、PD群1.54(1.24〜1.91)、CD群2.24(1.81〜2.78)であった。・MetSの構成要素のうち内臓肥満、脂質異常症、糖尿病は、うつ病カテゴリと有意な関連が認められた。 著者らは「これまでの報告と同様に、MetSとうつ病との有意な関連が認められた。本調査結果は、MetSとうつ病の関連性についての確固たるエビデンスを提供するとともに、リアルワールドデータ分析が、具体的なエビデンスの提供に有用である可能性を示唆している」としている。

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学校健康診断に関する報道についての見解/日医

 2024年6月に群馬県みなかみ町の小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが明らかになり、学校健康診断に関する報道が過熱している。そこで、日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、6月19日の定例記者会見で、日本医師会としての学校健康診断に関する見解を明らかにした。 まず、渡辺氏は、「学校健康診断のマニュアルである『児童生徒等の健康診断マニュアル』には、健康診断時に注意すべき疾病および異常として思春期早発症への言及がある。当該医師は小児内分泌の専門医であり、医学的に診察を行ったことの妥当性はある」としつつ、「一般的な学校健康診断では、児童・生徒全例に第2次性徴の診察を実施することは想定されていないことから、事前に保護者に説明する必要があった。学校設置者・学校・学校医の連携や共通認識が必要だったのではないか」と述べた。 学校健康診断の目的は、学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて疾病をスクリーニングし、健康状態を把握することであり、通常の診療とは状況も場所も異なる。そのため、「懸念される疾病などをその場で確認しなければならないという気持ちがあったとしても、子供のプライバシーにしっかりと配慮しながら学校検診を行わなければならないとあらかじめ理解する必要があった」と指摘するとともに、「法令に定める項目以外の検診項目を実施する場合やプライバシーや心情に関わるような場合では、事前に学校を介して保護者に説明し、同意を得る必要がある」と強調した。 最後に、「5月に発刊した『学校医のすすめ そうだったのか学校医』の活用を含め、学校医業務で配慮すべき内容を理解してもらえる仕組みが必要。文部科学省とも協議してできるだけ早く対応を進める」と述べ、児童・生徒、保護者が安心して学校健康診断を受けることができるよう、関係者と連携して取り組むことを明らかにした。

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臨床留学通信、ニューヨーク最終章【臨床留学通信 from NY】第61回

第61回:臨床留学通信、ニューヨーク最終章ニューヨークからボストンのハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)に移るに当たって、書類処理に追われています。まず、アメリカの病院で働く際には、健康診断がかなりきっちりしています。過去のワクチンの証明書やMMRなどの抗体価、日本人だとツベルクリン反応が陽性になってしまうので、クォンティフェロンの採血結果(3ヵ月以内)の提出などです。日本で働いてると、友達に採血オーダーしてもらってちょっとした合間に採血して、ということは簡単ですが、こちらだとそうはいきません。自身のプライマリケアにMyChartと呼ばれるウェブサイトから、その都度ラインのように担当医に連絡してオーダーしてもらい、通ってるプライマリケアまで行って採血をする形で、結構不便です。多くの場合、かかりつけの病院と自身の勤務先の病院は離れているため、勤務先の病院で採血、というわけにはいかないのです。今回、ニューヨーク州からマサチューセッツ州へ州が変わることもあり、州用のライセンス取得のために申請が必要で、過去のUSMLEの合格証明を、発行機関にお金を払って送ってもらったりします。新しい病院で働く場合多くはHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)と呼ばれる、病院で働く際の医者の守秘義務等を履行するために、オンラインコースを延々と受けなければいけません。そのほかに、もし銃撃事件に巻き込まれたら、といった恐ろしいシミュレーションを想定したオンラインコースもあります。隠れることもできず、退路を断たれたらどうする?という質問に対して、“Fight”という選択肢をどうしても選ぶことはできませんでしたが、どうやらそれが正解のようです…。ACLS/BLSも必要で、コースを受けなければいけませんが、病院側が用意してくれたコースがあるのでお金は掛かりません。引っ越しもなかなか大変で、不動産会社を経由して、古くて狭い2LDKが現在とほぼ同等の1ヵ月2800ドル、光熱費込みで約3,000ドル(45万円)です。引っ越し料金は、引っ越し業者に頼むと1,800ドル(27万円)も掛かります。米国では小学校の格差が激しく、学区の良い地域に住むと、どうしても古くて狭くても家賃が高くなってしまうのです。現在のニューヨーク郊外も、今度のボストン郊外も、そこだけはなんとか守るようにしています。なお、皇后雅子さまが住まわれたBelmontと呼ばれる地域の近くで、この地域の公立の高校からハーバード大学に入ることも多いようです。なお、6月下旬に引っ越すのですが、家賃を6月1日から払わないとなかなか良い物件は借りられないと不動産会社に言われたこともあり、6月はほぼ2倍の家賃を払うことになってしまいます。また夏休みに日本に一時帰国するのですが、ボストンから東京への直航便は、ニューヨークより便が少ないせいか高額で、エコノミークラスでも往復で3,200ドル(48万円)もして、なんじゃこりゃと言いたいところです。フェローの給料ではなかなか厳しいものです。そんなこんなで日々追われていますが、ニューヨークのNプログラム※の会合でBBQなどがあり、最後のニューヨークステイを楽しみたいと思います。アイコンの自由の女神のあるリバティ島には大学生の時に行きましたが、この6年間は行かずじまいになりそうです。7月以降は、施設を変わると最初はどうしても大変だったりしますが、comfort zoneに甘んじることなく、いろいろな施設の違いを感じ、世界最高峰の病院の1つと呼ばれるMGHを楽しんでいきたいと思います。※Nプログラムは、東京海上日動火災保険株式会社が実施する、米国の教育病院における臨床医学レジデンシー・プログラムに日系の若手医師を派遣するプログラム。

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