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アピキサバンのVTE再発予防 効果と安全性に加え利便性に期待

 ブリストル・マイヤーズ株式会社とファイザー株式会社は2016年1月27日、プレスセミナー「静脈血栓塞栓症(VTE)治療の変遷と最新動向」を開催した。その中で、中村真潮氏(三重大学 客員教授、村瀬病院 副院長/肺塞栓・静脈血栓センター長)は下記のように述べた。 本邦における静脈血栓塞栓症(以下、VTE)は増加しており、今後もさらに増加すると予測される。しかしながら、VTEの認知度は欧米に比較して低い。さらに診断の難易度が高いこともあり、診断率も低い。 VTE治療の基本は薬物療法である。従来の標準療法は、迅速に効果を発揮する未分画へパリンを発症後から投与し、5日目からワルファリンを追加、その後ワルファリンの単独治療に移行する。しかし、薬物療法を行っても、VTEの再発は経時的に一定に起こる、とくに急性期の発現は顕著であり、それには急性期に投与する未分画ヘパリンのコントロールの難しさが一因となっている可能性もある。一方、ワルファリン抗血栓効果は高く、投与を中止するとVTEの発症率は上昇する。長期間継続したいが、その場合、出血合併症が問題となっている。とくにアジア人の脳出血の発生率は高い。そのため、投与期間は個々の患者状態で判断しているのが現状である。このように課題が残る中、導入がシンプルで、出血が少なく長期間使える薬剤の登場が望まれてきた。 近年、NOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)によるVTE2次予防のエビデンスが集積され、保険適応も追加されてきた。FXa阻害薬であるアピキサバン(商品名:エリキュース)も2015年12月、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制」の適応が追加承認された。 アピキサバンのVTEに対する効果と安全性は、海外第III相試験「AMPLIFY」で確認されている。AMPLIFYは急性症候性VTE患者を対象に、アピキサバン単独投与群と低分子ヘパリン/ワルファリン投与群を比較した試験である。主要有効性評価項目である、症候性VTE再発またはVTE関連死については、低分子ヘパリン/ワルファリン投与群に対して非劣性を示し(2.3%対2.7%、HR:0.84、95%CI:0.60~1.18)、主要安全性評価項目である大出血発現率については、優越性を示している(0.6%対1.8%、HR:0.31、95%CI:0.17~0.55)。また、本邦で行われたAMPLIFY-J試験においても、例数は少ないながらも、主要評価項目である大出血または臨床的に重篤な非大出血発現率は、未分画ヘパリン/ワルファリン投与群と比較して少ないという結果が出ている。 中村氏はまとめとして、アピキサバンはVTE治療において、標準療法と同等の効果を示し、出血に関する安全性を向上させた。また、内服のみで治療できることから、外来症例や軽症例についても介入しやすくなるであろう、と述べた。

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80歳以上の冠動脈疾患、侵襲的治療 vs.保存的治療/Lancet

 80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)または不安定狭心症の高齢患者に対して、侵襲的な治療は保存的治療よりも複合イベントを減少し、治療戦略の選択肢として優れることが、ノルウェー・オスロ大学のNicolai Tegn氏らが行った、非盲検無作為化試験の結果、明らかにされた。ただし戦略の有効性は、年齢の上昇(クレアチニンおよび効果修飾を補正後)とともに漸減する。出血性合併症については戦略間で差はなかったという。80歳以上のNSTEMIおよび不安定狭心症は入院要因として頻度が高いが、至適戦略に関する同集団対象の臨床試験は少なく、またガイドラインに則した治療が行われているかも不明であった。研究グループは、早期の侵襲的治療 vs.保存的治療を比較し、どちらの戦略がベネフィットをもたらすのかを調べた。Lancet誌オンライン版2016年1月12日号掲載の報告。心筋梗塞・緊急血行再建術の必要性・脳卒中・全死因死亡の複合アウトカムを評価 試験は、ノルウェー東南部の16病院に入院した患者457例を対象とし、侵襲的治療群(早期に冠動脈造影検査を行い即時にPCI、CABGを評価、および至適薬物療法について評価、229例、平均年齢84.7歳)または保存的治療群(至適薬物療法についてのみ評価、228例、84.9歳)に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、心筋梗塞・緊急血行再建術の必要性・脳卒中・全死因死亡の複合で、評価は2010年12月10日~14年11月18日に行われた。途中、侵襲的治療群5例、保存的治療群1例が試験中断となったが、解析はintention-to-treatにて行った。侵襲的治療群のハザード比0.53、出血性合併症は同程度 被験者を募集した2010年12月10日~14年2月21日のフォローアップ中(中央値1.53年)に、主要アウトカムは、侵襲的治療群93/229例(40.6%)、保存的治療群140/228例(61.4%)が報告された(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.69、p=0.0001)。 主要複合アウトカムを項目別にみると、発生に関するHRは心筋梗塞0.52(95%CI:0.35~0.76、p=0.0010)、緊急血行再建術の必要性0.19(0.07~0.52、p=0.0010)、脳卒中0.60(0.25~1.46、p=0.2650)、全死因死亡0.89(0.62~1.28、p=0.5340)であった。 出血に関して、侵襲的治療群で重大出血4例(1.7%)、軽度出血23例(10.0%)、保存的治療群でそれぞれ4例(1.8%)、16例(7.0%)が認められた。大半は消化管での発生であった。 結果の傾向は、性別、2型糖尿病、クレアチニン血中濃度(103μmol/L以上)、ワルファリン使用、90歳超で層別化した場合も変わらなかったが、クレアチニン値について交絡作用と90歳超での効果修飾がみられた。また多変量Cox分析で、クレアチニン値と年齢で調節した侵襲的治療戦略の効果を調べた結果、侵襲的治療戦略と年齢間には有意な相互作用があり(p=0.009)、侵襲的治療の有効性は年齢の上昇とともに減弱することが示された。

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Vol. 4 No. 2 アスピリンの評価とコントロバーシー(1) 循環器内科の立場から

上妻 謙 氏帝京大学医学部内科学講座・循環器内科はじめに虚血性心疾患に対する治療は抗血小板療法の進歩とカテーテルインターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の普及によって低侵襲かつ高い成功率で治療が可能となった。抗血小板療法ではアスピリンを常に標準薬として投与し、そこに血小板表面のP2Y12受容体のADPによる凝集を抑制するチエノピリジンなどの薬剤を追加する抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)がステント血栓症予防とハイリスク患者の2次予防のために確立された治療となった。しかしDAPTによる出血合併症の増加が問題となり、近年P2Y12受容体拮抗薬に第3世代と呼ばれる新しい薬剤が登場して、より早期に有効性を発揮できるようになってきたことにより、アスピリンの役割、意義に見直しの気運がでてきた。アスピリンの抗血小板作用アスピリン(アセチルサリチル酸)は、何世紀にもわたって医学史上、代表的な薬物として使用されており、アテローム性血栓症の治療の主要な役割を担ってきた。アスピリンが合成できるようになって120年近くなるが、当初は消炎鎮痛薬として捉えられていた。抗血小板薬として認知されるようになったのは50年ほど前からで、日本で虚血性心疾患や脳梗塞予防に対する保険適応が認められたのは2000年と比較的最近のことである。アスピリンは、cyclooxygenase(COX)にあるsingle serine residue(Ser529)のアセチル化によって、アラキドン酸の代謝を阻害する。血小板が生きている間中、アスピリンはこのCOXを不可逆的に阻害する。また血小板の活性因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の産生が減少する結果、COXを阻害することができる。もともとアスピリンは、用量依存性でTXA2を減少させ、一度COXがアスピリンによってアセチル化された場合、巨核球によって新しい血小板が産生されるまで、TXA2は結合できない。COXは2つの異なるアイソフォームが存在し、COX-1は血小板、マクロファージ、そして血管内皮細胞に表れる構成型であり、もう一方のCOX-2は、炎症性刺激を求める誘導型である。アスピリンは、基本的には不可逆的なCOX-1阻害薬であり、高用量であればCOX-2阻害をすることができる。このため、アスピリンは大量投与すると抗血小板作用が減弱する可能性が知られており、アスピリンジレンマとも呼ばれ、1日100mgの投与で十分である。アスピリンの役割と問題点アスピリンは急性冠症候群をはじめとする虚血性心疾患の2次予防に対して、有効性が確立された薬物である。ISIS-2とRISC研究の両方の研究において、急性冠症候群発症後にアスピリン内服を継続していると、心筋梗塞の再発率を軽減させるという結果が示されている1, 2)。ISIS-2研究では、アスピリン160mg/日で内服治療を行う群と対照群とを無作為化して、5週間両群を比較検討したところ、血管イベントによる死亡率は減少したと報告された(9.4% vs. 11.8%; 95% CI 15-30; p<0.00001)。アスピリンの最大の問題点は出血合併症である。Antithrombotic Trialists' Collaborationは、アテローム性血栓症のハイリスク患者において、心筋梗塞、脳卒中、そして死亡を予防するための抗血小板療法を研究した、287の無作為化研究のメタ解析である3)。脳出血の合併は787人に起こり、そのうちの20%は致死的な出血であった。対照群と比較してアスピリンを内服していた患者は、脳出血発生のリスクが60%増加していたと報告している。このAntithrombotic Trialists' Collaboration研究において、重大な血管イベントを予防することに関して、アスピリンの1日内服用量、75~150、160~325、500~1,000mgの3群間にて、有意な差を示さなかった。アスピリンによる消化管出血および脳内出血発症のリスクを解析している、28の無作為化研究を用いたメタ解析では、対照群に割り振られた患者の消化管出血発生率は1.42%であったが、アスピリンを内服していた患者の消化管出血発生率は2.47%であることがわかった(OR 1.68; 95% CI 1.51-1.88)4)。また、心血管もしくは脳血管イベントの2次予防に対する6つの無作為化研究では、1日325mg以下のアスピリンを内服する患者は、対照群に比べると消化管出血の発症を2.5倍程度増加することが明らかにされた(95% CI 1.4-4.7; p= 0.001)5)。この解析は、アスピリンで治療を行った場合、67人の内1人の割合で死亡を防げた一方で、100人のうち1人の割合で非致死性の消化管出血が起こるということを示した。最近MAGIC試験の結果が発表され、日本人のデータとして低用量アスピリン内服中の患者の内視鏡所見で消化管障害を合併する頻度を明らかにしている6)。この報告では直径5mm以上の消化性潰瘍が6.5%に存在し、びらんは29.2%の頻度で存在した。もともとアスピリンをはじめとした非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)は上部消化管粘膜の障害を来す直接の作用があり、出血の元になる病変がアスピリンによって作られ、そこに他の抗血小板薬や抗凝固薬を併用することによって、臨床的に問題となる出血に発展するものと思われる。そして、消化管出血は心血管イベントの上昇につながることが示されている7)。そのため、海外のガイドラインでは低用量アスピリンに抗血小板薬や抗凝固薬を併用する時には、プロトンポンプ阻害薬を併用することを推奨するものが多い。DAPTにおけるアスピリンの役割現在、冠動脈ステント植え込み後の抗血小板療法として標準となっているのがアスピリンとチエノピリジン(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン)の2剤併用療法、すなわちDAPTである。日本ではほとんどのACSがPCIで治療されているため、ステント治療のDAPTと同義になっている傾向がある。もともとステント血栓症の予防のために始まったDAPTは、アスピリンにワルファリンを併用していたものを、ワルファリンからチクロピジンに変更したことで始まった。特にチクロピジンは作用が十分に発現するまで1週間程度かかり、チクロピジン単剤という発想はまったくなかった。クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジンはチエノピリジン系薬剤といわれ、血小板表面上にあるP2Y12受容体に結合し、ADPによる血小板凝集を抑制し、またcAMP濃度を上昇させることによる血小板凝集抑制作用をもち、強力な抗血小板作用を有する薬剤である。プラスグレルやチカグレロルのような新しい抗血小板薬の特徴は作用発現の早さと効果の個人差が少ないことである。今まではクロピドグレルの効果発現の早さに個人差があることから、効果発現の早いアスピリンの併用は、その早期作用不足の補完の意味があったが、新規抗血小板薬ではその必要がなくなってきている可能性がある。1. ステント血栓症予防のためのDAPT最近の大きな話題の1つが、「DAPTをいつまでつづけるか」というDAPT期間の問題である。ステント血栓症予防のためのDAPT投与期間に対する考えは、ステントの進歩に伴い大きく変わってきている。現在標準のDAPT期間は、ベアメタルステント(BMS)留置後は最低30日間、理想的には12か月間が推奨されており、薬剤溶出性ステント(DES)留置後は12か月となっている。BMSでは、臨床使用され始めた頃から30日以内の早期のステント血栓症が問題であった。これがDESに関しては、30日以降の遅発性ステント血栓症、さらに1年以降の超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis:VLST)がクローズアップされ、2006年BASKET late試験では、6か月以降の心筋梗塞と死亡のイベントはDESのほうがBMSよりも高いと発表され、大きな問題点として取りざたされるようになった。2006年秋のヨーロッパ心臓病学会(ESC)においてその話題は一気に盛り上がり、その後追試もなされ、第1世代のDESでは5年経過しても年間0.2~0.5%程度のVLST発生がレポートされており8, 9)、一時は世界中で使用を控える動きがみられるようになった。以上の背景から、DES植え込み後のDAPT期間は無期限に延長される傾向があった。しかし、その後上市され現在使用されているDESは第2世代と呼ばれ、VLSTの問題が大きく改善されている。DAPTに関する臨床試験が多数行われており、3か月や6か月へのDAPT期間短縮が試みられるようになった。これまでに出版された6つの論文では、いずれも延長されたDAPTにイベント抑制のメリットが認められず、出血が増加するという結果となっており、6か月以上のDAPTに関してはデメリットがメリットを上回るとされている10-13)。したがって、最近改訂された2014年のESCのガイドラインでも待機的PCIのDAPTはDESでも6か月までに短縮された12)。しかし、2014年11月に発表されたDAPT試験の結果は、これまでの結果を否定するものとなった。DAPT試験は、DES植え込み後12か月経過した症例をランダマイズし、DAPTを30か月まで継続する群とアスピリン単剤とする群とに分けて検討した、FDA主導の産官学共同の臨床試験である。その結果、DAPTの継続によってステント血栓症、心筋梗塞の発症率は有意に抑制されることが示された。しかし重篤な出血はDAPT継続で有意に多く、死亡率もDAPT継続で高い傾向が示された。特にステント血栓症が少ないといわれるeverolimus-eluting stentが半数近くを占めており、現代のDES植え込み患者の実態で行われた試験のため、DAPTの継続が一定の意味をもつことが初めて示されたといえる。残された疑問は、DAPT終了後に残す薬剤として選択されているのが常にアスピリンであり、それがP2Y12受容体拮抗薬であったらどうかということである。この点について検討する臨床試験がGlobal Leadersで、1か月のDAPT後にP2Y12受容体拮抗薬(チカグレロル)を単剤で残す治療法と、12か月DAPT後にアスピリン単剤を残す従来療法とを比較する無作為化試験で、出血合併症と関連しやすいにもかかわらず、作用がP2Y12受容体拮抗薬よりも弱いというアスピリンの問題点について、解決策を示してくれる可能性がある。2. 急性冠症候群等アテローム血栓症2次予防としての抗血小板療法ステント血栓症予防で始まったDAPTであるが、ステント使用にかかわらず、抗血小板薬の内服治療でACS患者の心血管イベント抑制が得られることが多くの臨床試験で示され、DAPTを12か月間行うことがACS治療の標準となっている14)。不安定プラークを発症の基盤とするアテローム血栓症は同一患者に複数存在することが多く、同時期に心血管イベントを起こすことも多い。そのアテローム血栓症が症候性のACSや脳卒中として発症することを予防するために、強力な抗血小板療法が行われる。PCI施行患者の冠動脈3枝すべてをイメージングで解析し、その後3年間フォローしたPROSPECT試験では、PCI施行病変以外の病変に伴う心血管イベントは、治療病変と同等の頻度で起こることが示されている15)。さらに、そのイベントを起こす病変はもともと有意な狭窄病変であったものと、狭窄が存在しなかったところから急速に進展して発症したものがほぼ同頻度であることも示されている。したがって、一度アテローム血栓症によるイベントを発症した患者は、プラークが安定化するまで2次予防を厳重に行わなければならないわけである。末梢動脈疾患など、多臓器に病変がおよぶpolyvascular diseaseはアテローム血栓症発症のハイリスクであることが示されており、こういったリスクの高い疾患では、心血管イベントによる死亡率が末梢動脈疾患の存在しない患者と比較して1.76倍、心筋梗塞発症率が2.08倍という報告もあり16)、2次予防のための抗血小板薬としてアスピリン単剤では効果不十分な可能性があることがメタ解析によって指摘されている17)。そして、アスピリンよりもチエノピリジン系を中心としたアスピリン以外の抗血小板薬のほうが心血管イベントの抑制に有効であるというメタ解析も公表されている18)。20年前の臨床試験ではあるが、アスピリンとクロピドグレルを比較する二重盲検無作為化比較試験であるCAPRIE試験のサブ解析でも、末梢動脈疾患で組み入れられた患者では、アスピリンに比べクロピドグレルは心筋梗塞発症率を37%低減させたと発表されている19)。したがって末梢動脈疾患やpolyvascular diseaseなどのハイリスク患者については、アスピリンよりP2Y12受容体拮抗薬などのより強力な抗血小板薬の投与が推奨されてきている。DAPTとアスピリン単剤のどちらがよいかについては、CHARISMA試験が公表されている。2次予防患者については心筋梗塞発症などのリスク低下が示されているが、重篤でない出血合併症の増加が指摘されている20)。ここでもアスピリンが本当に必要なのかという点については、すべてのガイドラインでアスピリン投与が標準となっており、当初からのアスピリンoffについては今まで検討されたことがない。おわりに今まで述べてきたように、ゴールデンスタンダードとして常に投与が基本とされてきたアスピリンの有効性、安全性についてのエビデンスレベルは、近年急速に低下してきており、効果が確実で早いP2Y12受容体拮抗薬の普及もあり、治療の当初からP2Y12受容体拮抗薬単剤投与という選択肢を考慮していく必要が出てきた。今後のエビデンスの集積が望まれるが、アスピリンは安価であり、費用対効果も検討していく必要がある。文献1)Randomised trial of intravenous streptokinase, oral aspirin, both, or neither among 17,187 cases of suspected acute myocardial infarction: ISIS-2. ISIS-2 (Second International Study of Infarct Survival)Collaborative Group. Lancet 1988; 2: 349-360.2)Risk of myocardial infarction and death during treatment with low dose aspirin and intravenous heparin in men with unstable coronary artery disease. The RISC Group. Lancet 1990; 336: 827-830.3)Antithrombotic Trialists' Collaboration. Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke in high risk patients. BMJ 2002; 324: 71-86.4)Derry S, Loke YK. Risk of gastrointestinal haemorrhage with long term use of aspirin: metaanalysis. BMJ 2000; 321: 1183-1187.5)Weisman SM, Graham DY. Evaluation of the benefits and risks of low-dose aspirin in the secondary prevention of cardiovascular and cerebrovascular events. Arch Intern Med 2002; 162: 2197-2202.6)Uemura N et al. Risk factor profiles, drug usage, and prevalence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: the results from the MAGIC study. J Gastroenterol 2014; 49: 814-824.7)Nikolsky E et al. Gastrointestinal bleeding in patients with acute coronary syndromes: incidence, predictors, and clinical implications: analysis from the ACUITY (Acute Catheterization and Urgent Intervention Triage Strategy) trial. J Am Coll Cardiol 2009; 54: 1293-1302.8)Daemen J et al. Early and late coronary stent thrombosis of sirolimus-eluting and paclitaxel-eluting stents in routine clinical practice: data from a large two-institutional cohort study. Lancet 2007; 369: 667-678.9)Kimura T et al. Very late stent thrombosis and late target lesion revascularization after sirolimus-eluting stent implantation: five-year outcome of the j-Cypher Registry. Circulation 2012; 125: 584-591.10)Valgimigli M et al. Short- versus long-term duration of dual-antiplatelet therapy after coronary stenting: a randomized multicenter trial. Circulation 2012; 125: 2015-2026.11)Park SJ et al. Duration of dual antiplatelet therapy after implantation of drug-eluting stents. N Engl J Med 2010; 362: 1374-1382.12)Windecker S et al. 2014 ESC/EACTS Guidelines on myocardial revascularization: The Task Force on Myocardial Revascularization of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS)Developed with the special contribution of the European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI). Eur Heart J 2014; 35: 2541-2619.13)Cassese S et al. Clinical impact of extended dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary interventions in the drug-eluting stent era: a meta-analysis of randomized trials. Eur Heart J 2012; 33: 3078-3087.14)Anderson JL et al. 2012 ACCF/AHA focused update incorporated into the ACCF/AHA 2007 guidelines for the management of patients with unstable angina/non-ST-elevation myocardial infarction: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2013; 127: e663-828.15)Stone GW et al. A prospective natural-history study of coronary atherosclerosis. N Engl J Med 2011; 364: 226-235.16)Diehm C et al. Mortality and vascular morbidity in older adults with asymptomatic versus symptomatic peripheral artery disease. Circulation 2009; 120: 2053-2061.17)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease: a meta-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.18)Wong PF et al. Antiplatelet agents for intermittent claudication. Cochrane Database Syst Rev 2011; CD001272.19)Cannon CP et al. Effectiveness of clopidogrel versus aspirin in preventing acute myocardial infarction in patients with symptomatic atherothrombosis (CAPRIE trial). Am J Cardiol 2002; 90: 760-762.20)Bhatt DL et al. Patients with prior myocardial infarction, stroke, or symptomatic peripheral arterial disease in the CHARISMA trial. J Am Coll Cardiol 2007; 49: 1982-1988.

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中皮腫の初回治療、ベバシズマブ上乗せでOS延長/Lancet

 悪性胸膜中皮腫の初回治療について、標準療法であるシスプラチン+ペメトレキセドの併用療法へのベバシズマブの上乗せは、全生存期間(OS)を有意に改善することが、フランス・カーン大学のGerard Zalcman氏らによる第III相の非盲検無作為化試験の結果、示された。毒性効果として循環器系の有害事象が増えるものの、著者は、「予想の範囲内のものであり、ベバシズマブの上乗せは適切な治療と見なすべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年12月21日号掲載の報告。標準初回治療への上乗せ効果を無作為化試験で検討 悪性胸膜中皮腫は進行が早く予後は不良で、職業性のアスベスト曝露との関連が知られている。初回治療は、シスプラチン+ペメトレキセドの併用療法とされているが、その適用はシスプラチン単独との比較でOS中央値12.1(ビタミンB12、B9服用群では13.3) vs.9.3ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値5.7 vs.3.9ヵ月のデータに基づく。また、進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の第II相の試験で示された結果は、OS中央値12.7ヵ月、PFS中央値6.5ヵ月であった。 こうした中、先行研究で、中皮腫細胞の病態生理において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆されたことから、研究グループは、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬が効果を示すのではないかと本検討を行った。 試験は、フランスの73病院から被験者を集めて行われた。18~75歳、切除不能の悪性胸膜中皮腫で化学療法未治療、全身状態はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアで0~2、重大な心血管疾患の併存はなく、CTで評価が可能な病変(胸水)または測定可能な病変(胸膜肥厚)が少なくともいずれか1つあり、余命は12週超の患者を対象とした。除外基準は、中枢神経系への転移あり、抗血小板薬(アスピリン325mg/日以上、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモール)を使用、ビタミンK拮抗薬を有効量使用、低分子量ヘパリンを有効量使用、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている、であった。 被験者を、ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)の静注投与(PCB)群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与する(PC)群に1対1の割合で無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで行った。なお、無作為化には最小化法を用い、患者を組織学的(上皮型 vs.肉腫型、または混在型)、全身状態(ECOGスコア0~1 vs.2)、試験病院、喫煙状態(非喫煙 vs.喫煙)で層別化した。 主要アウトカムはOS。intention-to-treat解析にて評価した。OSが有意に延長、18.8ヵ月 vs.16.1ヵ月 2008年2月13日~14年1月5日に、計448例の患者を無作為化した(PCB群223例[50%]、PC群225例[50%])。被験者は、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型81%、ECOGスコア0~1が97%、喫煙者57%などであった。 6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムのOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べてPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。 なお、PFSもPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象の報告は、全体ではPCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%] vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。

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慢性心房細動に対する抗凝固療法中に消化管出血を来したとき~抗凝固療法を再開する?それとも中止?~(解説:西垣 和彦 氏)-465

揺れ動く医師の心情 心房細動に起因する心原性脳血栓塞栓症は、いったん発症するとほかのアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞の予後とは比較にならないほど重症となり、20%が死亡、40%が要介護4度あるいは5度の寝たきりとなる悲惨な状態が待っている。これが、心原性脳血栓塞栓症を“ノック・アウト型脳梗塞”と評するゆえんである。したがって、心房細動に対する治療の最も重要なポイントは、心原性脳血栓塞栓症をいかに発症させないようにするかという予防的治療であり、その点において抗血栓療法の果たす役割は大きい。 しかし、抗血栓療法は、塞栓症予防のメリットと相反し、とくに脳出血や消化管出血などの重篤かつ致死的となりうる出血性副作用というデメリットを併せ持つ。出血性副作用をいったん経験すると、医師の抗血栓薬の処方動機は極端に抑制され、出血性副作用を来した当該患者さんのみならず、その他の心房細動患者に対しても抗血栓薬の処方が敬遠するという悪影響をもたらす。つまり、“医師も人の子”、その揺れ動く心情はよくわかる話である。 そこで本論文は、心房細動に対する抗血栓療法(経口抗凝固薬、抗血小板薬、そしてその併用)中に消化管出血を来した患者を対象として、抗血栓治療再開の影響を検討したものである。個々症例ごとに基礎疾患も状況も異なり、本来ならば“どんぶり勘定”で検討する問題ではないが、マスとしての有益性、合理性、経済性を追求する欧米ならではの医療理念から導かれたこの問題に対して“一定の結論”を知っておくことは悪くはない。ただし、本研究が、Boehringer-Ingelheimの研究費で支えられたものであることと、無作為化比較試験ではなくコホート研究であることは認識すべきである。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめてみよう。デンマーク全国コホート研究のデータベースを用い、抗血栓薬による治療を受けていたが消化管出血により入院し、その後退院した心房細動を有する患者4,602例を抽出したコホート研究で、集団はデンマークにおける一般診療等のデータが使用されており問題はない。比較リスクモデルの検討では、CHA2DS2-VAScスコアの因子と既往処方薬の使用による交絡を回避するため、フォローアップ開始を退院後90日時点からとし、調整されている。追跡期間中央値は2年であり比較的短く、また平均年齢は78.3±9.3歳と、わが国のレジストリ試験と比較すると8歳も高齢の患者を対象としている。ただし、平均のCHADS2スコアは2.1点であり、高齢以外の因子が少ない患者を対象としている研究であることがわかる。 消化管出血発症前に受けていた抗血栓療法は、経口抗凝固薬単独23.9%、抗血小板薬単独53.3%、経口抗凝固薬+抗血小板薬の併用19.4%、アスピリン+アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬の併用2.5%、その他3剤併用は0.9%であった。わが国のガイドラインでは、心房細動による心原性脳血栓塞栓症予防に対してアスピリンなどの抗血小板薬を用いることは無効であり推奨されていないが、現実的には依然アスピリンなどの抗血小板薬で“代用できる”と処方している医師や、冠動脈硬化性心疾患などの合併症のため余儀なく抗血小板薬を複数併用投与している症例があり、リアルワールドの併用時の有効性と安全性を評価・検討するのに役立つデータである。 コホート解析結果であるが、デンマークでも消化管出血になるとその後の抗血栓療法は3分の1程度の症例(27.1%)で中止されている。つまり、“デンマークの医師も人の子”、その揺れ動く心情は万国共通のものであるということである。では、今回の研究結果からいうと、はたしてその“親心的な”医師の心情が良い結果を生んだのであろうか? 結果は否である。 抗血栓薬非再開群との比較で、再開群はアスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用以外、経口抗凝固薬単独、抗血小板薬単独、そして経口抗凝固薬+抗血小板薬併用で有意に全死因死亡リスクの低下を認めた。また、血栓塞栓症リスクの低下も同様の結果であった。 一方、“両刃の剣”の安全性に関してはどうであったのか。結果は、抗血小板薬単独、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用、そしてアスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用では大出血リスクを上昇させなかったが、経口抗凝固薬単独ではかえってその危険性を有意に増す結果となった。しかし、懸案であった消化管出血の再発リスクに関しては、どの抗血栓薬でも非再開群と有意差はなく、消化管出血の再発リスクを上昇させるものではなかった。結論として 今回のこの論文を通じて、次の結論がみえてくる。1)有効性に関しては、アスピリン+ADP受容体拮抗薬の併用以外は総死亡と血栓塞栓症予防の有意な有効性が認められ、抗血栓薬を消化管出血後でも再開したほうが良い。2)一方で、安全性に関して、大出血がとくに経口抗凝固薬単独でそのリスクが上昇するので注意が必要である。3)消化管出血後の抗血栓薬再開においては、医師のその“親心的な”判断で抗血栓薬の投与を躊躇することは、患者に重大かつ不幸な結果をもたらすことが示唆される。 冒頭に述べたように、個々症例ごとに基礎疾患も状況も異なり、本来ならば“どんぶり勘定”で検討する問題ではなく、個々の症例ごとにその適応を十分に検討されるべきであり、軽々に結論を捻出するものでもないが、やはり消化管出血後でも一刻でも早く抗血栓薬を再開したほうが、死亡を先延ばしにできるようである。あらためて、心房細動に対する抗血栓療法の重要性と心房細動の真の重篤性を痛切に感じ、かつ自戒の念を喚起させた論文である。

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高齢者のSU薬とワルファリンの併用、低血糖リスク増大/BMJ

 高齢者のワルファリンとスルホニル尿素薬(SU薬)の同時服用は、SU薬単独服用時に比べ、低血糖による病院救急部門受診・入院リスクを約1.2倍に増大することが、また、転倒リスクも約1.5倍に増大することが明らかにされた。米国・南カリフォルニア大学のJohn A. Romley氏らが、65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者の保険請求データを基に後ろ向きコホート試験を行った結果、示されたという。著者は、「結果は、これら薬物間の重大な相互作用の可能性を示唆するものだ」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月7日号掲載の報告。2006~11年の保険請求データを基に併用群 vs.SU薬単独群を分析 研究グループは、メディケア出来高払いプラン加入者の20%に相当する保険請求データを基に、SU薬(glipizideまたはグリメピリド)服用高齢者において、ワルファリンの併用が、低血糖などによる病院救急部門受診または入院リスク増大と関連するのかを調べた。被験者は、2006~11年にSU薬を処方されていた46万5,918例。そのうちワルファリンを処方されていたのは、7万1,895例(15.4%)だった。 主要評価項目は、ワルファリンとSU薬を同時処方されていた四半期(併用群)と、SU薬のみ処方されていた四半期(単独群)とで比較した、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生率だった。多変量ロジスティック回帰法にて各被験者特性を補正し分析した。併用群で低血糖1.22倍、転倒1.47倍、精神状態関連1.22倍 結果、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生は、併用群1,903件/393万8,939人・四半期、単独群は294件/41万6,479人・四半期で、併用群が有意に高率だった(補正後オッズ比[OR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.05~1.42)。 その中でも同時服用による低血糖発症リスクは、ワルファリンを初めて服用する人や、65~74歳の人で高かった。 また、ワルファリンとSU薬の同時服用時は、転倒(補正後OR:1.47、95%CI:1.41~1.54)や変性意識状態・精神状態関連(同:1.22、1.16~1.29)の病院救急部門受診や入院リスクについても、SU薬単独服用時に比べて有意に高率だった。なお、結果について著者は、ワルファリン使用と重症低血糖の関連については交絡因子の存在が否定できないこと、また今回の所見をもって高齢者全般について言えるものではないとしている。

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冠動脈インターベンション時の血栓性の人工コントロールは可能か?(解説:後藤 信哉 氏)-460

 トロンビン、Xaなどの凝固因子の機能を薬剤により阻害すると、重篤な出血イベントが増え、血栓イベントは減少する。血液凝固第VIII因子、第IX因子の欠損は、重篤な出血イベントを起こす血友病ではあるが、血友病の血栓イベントは少ないと想定される。止血、血栓形成に必須の役割を演じる血液凝固因子を、血栓イベントリスクの高い短時間のみ阻害し、血栓イベントリスクの低下に合わせて凝固因子を正常化する調節ができれば、出血イベントリスクの増加を伴わない抗血栓療法が可能となると期待された。 本研究では、血液凝固第IX因子の機能を阻害して人工的に血友病をつくるpegnivacoginが使用された。本研究は、血液凝固第IX因子阻害薬使用時のアナフィラキシーの増加により早期に中止された。それでも、3,000例以上の症例がランダム化され、血液凝固第IX因子阻害群では108/1,616例(7%)、欧米にて承認された選択的なトロンビン阻害薬bivalirudin群では103/1,616例(6%)に心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントが発現した。本研究のアイデアは、人工的に血友病をつくり出してでも血栓イベント予防を目指す凄まじいコンセプトであった。血液凝固第IX因子阻害効果を、人工的に中和できる薬剤を同時に使用するとはいっても、生体の複雑性には未知の部分が多い。本研究は、チャレンジングなコンセプトであったが、比較的単純な血液凝固系であっても人工的な制御は難しいことを示したともいえる。 現時点の医療の科学は、帰納的なエビデンスベースドメディシンである。構成論的予測は不可能ではないが、未知の部分が多すぎる。エビデンスベースドメディシンの世界を脱却して、構成論的、予測的、個別特異的な医療の世界をつくるのが21世紀の医学、生物学のチャレンジである。

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抗Xaの囮療法の評価をどうする?(解説:後藤 信哉 氏)-459

 血液凝固検査は、細胞の存在しない液相で施行される。しかし、生体内の血液凝固反応は活性化細胞膜上、白血球上などのリン脂質膜上にて主に起こる。ワルファリンは、血液凝固因子第II、VII、IX、X因子と生体膜のphosphatidylserineの結合を阻害する効果を有した。ワルファリン服用下では、液相での血液凝固検査における凝固系の機能異常以上に、生体内における細胞膜を介した凝固系も効率的に予防した。いわゆる新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬は、凝固因子のトロンビン産生、フィブリン産生の酵素作用を可逆的に阻害する。ワルファリンとは作用メカニズムが異なるので、中和作用も異なる。抗トロンビン薬ダビガトランは、液相、細胞膜上の両者にてフィブリノーゲンからフィブリンを産生するトロンビンの作用を阻害している。トロンビンに結合するダビガトランを単純に失活させれば、中和薬としての効果を期待できた。 抗Xa薬も、液相ではXaの酵素活性部位から抗Xa薬を除いて失活させることを目標とすればよい。その方法は、ダビガトランの中和薬と同様でよい。しかし、トロンビンを産生するプロトロンビナーゼ複合体を形成するXaが、液相のXaと同じ動態をとるか否かは未知である。Xaに類似した構造を持ちつつ、Xaとして酵素作用がなく、かつ活性化血小板膜に集積できないXaデコイ(囮)が中和薬として開発された。液相のXa活性を指標とすれば、Xaデコイ(囮)により抗Xa薬の薬効は中和できることが本論文にて示された。 しかし、血小板細胞上などでのプロトロンビナーゼ活性阻害を中和したか否かは明確ではない。本研究は出血、血栓リスクの高い症例に対する研究ではなく、健常人を対象とした研究である。本研究の結論は、液相中の抗Xa活性を中和したことのみを支持すると考えるべきである。 抗血栓薬を中和すると、逆に血栓リスクが増すと想定される。実際、トロンビン産生のマーカーであるF1+2、線溶の指標であるD-dimerは中和薬投与後に上昇している。本研究は、バイオマーカーの計測を精緻に行った研究である。抗Xa薬に対する「Decoy(囮)」療法は科学的には新規のチャレンジである。臨床的インパクトの有無の評価は、今後の課題である。

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鋭い論文解説が勢ぞろい!【CLEAR!ジャーナル四天王 2015年トップ30発表】

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。コメント総数は約450本(2015年11月時点)。今年掲載された150本以上のコメントの中から、アクセス数の多かった解説記事のトップ30を発表します。1位高齢者では、NOACよりもワルファリンが適していることを証明した貴重なデータ(解説:桑島 巖氏)(2015/5/20)2位LancetとNEJM、同じデータで割れる解釈; Door-to-Balloon はどこへ向かうか?(解説:香坂 俊氏)(2015/1/9)3位FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅氏)(2015/3/20)4位降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巖氏)(2015/4/3)5位MRIが役に立たないという論文が出てしまいましたが…(解説:岡村 毅氏)(2015/7/22)6位DAPT試験を再考、より長期間(30ヵ月)のDAPTは必要か?(解説:中川 義久氏)(2015/1/8)7位やはり優れたワルファリン!(解説:後藤 信哉氏)(2015/8/19)8位ヘパリンブリッジに意味はあるのか?(解説:後藤 信哉氏)(2015/7/8)9位市中肺炎患者に対するステロイド投与は症状が安定するまでの期間を短くすることができるか?(解説:小金丸 博氏)(2015/2/18)10位CKD合併糖尿病患者では降圧治療は生命予後を改善しない?(解説:浦 信行氏)(2015/6/9)11位ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉氏)(2015/4/6)12位SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖氏)(2015/11/13)13位なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巖氏)(2015/7/14)14位COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊氏)(2015/3/27)15位SORT OUT VI試験:薬剤溶出性ステント留置は成熟した標準治療となった!(解説:平山 篤志氏)(2015/2/10)16位心血管リスクと関係があるのはHDL-C濃度ではなくその引き抜き能(解説:興梠 貴英氏)(2015/1/21)17位SPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行氏)(2015/11/18)18位鼻腔から集中治療を行える時代へ:ハイフロー鼻腔酸素療法(解説:倉原 優氏)(2015/6/3)19位働き過ぎは、脳卒中のリスク!(解説:桑島 巖氏)(2015/8/31)20位CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博氏)(2015/10/30)21位IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志氏)(2015/6/22)22位なぜ心房細動ばかりが特別扱い?(解説:後藤 信哉氏)(2015/10/5)23位LDL-コレステロール低下で心血管イベントをどこまで減少させられるか?(解説:平山 篤志氏)(2015/4/21)24位EMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人氏)(2015/10/1)25位DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人氏)(2015/4/14)26位食後血糖の上昇が低い低glycemic index(GI)の代謝指標への影響(解説:吉岡 成人氏)(2015/1/6)27位抗うつ薬、どれを使う? 選択によって転帰は変わる?(解説:岡村 毅氏)(2015/3/3)28位治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章氏)(2015/2/20)29位デブと呼んでごめんね! DEB改めDCB、君は立派だ(解説:中川 義久氏)(2015/9/30)30位問診と自己申告で全死亡が予測できる?(解説:桑島 巖氏)(2015/7/6)今回ご紹介しました「CLEAR!ジャーナル四天王」とは他にも、人気のランキングはこちらをどうぞ

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2015年、人気を集めた記事・スライド・動画は?【2015年コンテンツ閲覧ランキング TOP30】

2015年も、日常診療に役立つ情報を、記事やスライド、動画などで多数お届けしてまいりました。その中でもアクセスの高かった人気コンテンツは、何だったのでしょうか?トップ30をご紹介いたします。1位わかる統計教室第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション1 生存率を算出する方法2位特集:アナフィラキシー 症例クイズ(1)3回目のセフェム系抗菌薬静注後に熱感を訴えた糖尿病の女性3位特集:誰もが知っておきたいアナフィラキシー(3)知っておくべき初期治療4位1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより~第16回 犬猫咬傷~傷は縫っていいの? 抗菌薬は必要なの?5位特集:誰もが知っておきたいアナフィラキシー(1)誘因と増悪因子を整理6位CLEAR!ジャーナル四天王高齢者では、NOACよりもワルファリンが適していることを証明した貴重なデータ(解説:桑島 巖 氏)7位Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャーQ9.急性腎盂腎炎の標準的治療期間、10~14日の根拠を教えてください。8位特集:誰もが知っておきたいアナフィラキシー(2)診断のカギ9位Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャーQ1.急性上気道炎での抗菌薬投与は本当に不要なのでしょうか?10位Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャーQ20.尿路感染症にアンピシリン・スルバクタム、正しいですか?11位臨床に役立つ法的ケーススタディ【ケース1】「入院拒否後、自宅で死亡。家族対応はどうすべき?」(後編)12位わかる統計教室第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション2 よくあるオッズ比の間違った解釈13位わかる統計教室第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション2 カプランマイヤー法で累積生存率を計算してみる14位わかる統計教室第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション3 オッズ比の使い道15位特集:誰もが知っておきたいアナフィラキシー(4)再発予防と対応16位特集:アナフィラキシー 症例クイズ(2)海外出張中に救急搬送されたアレルギー体質の35歳・男性の例17位わかる統計教室第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション1 分割表とリスク比18位Dr.倉原の“おどろき”医学論文第45回 急性心筋梗塞に匹敵するほど血清トロポニンが上昇するスポーツ19位Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャーQ7.抗菌薬を投与する際、内服・点滴のどちらにするか悩むことがたびたびあります。20位診療よろず相談TV シーズンII第10回「脂質異常症」(回答者:寺本内科歯科クリニック / 帝京大学臨床研究センター長 寺本 民生氏)Q3.LDL、下げ過ぎによるリスクは?21位特集:成人市中肺炎 症例クイズ(2)「何にでも効く薬」は本当に「何にでも効く」のか?22位CLEAR!ジャーナル四天王LancetとNEJM、同じデータで割れる解釈; Door-to-Balloon はどこへ向かうか?(解説:香坂 俊 氏)23位Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャーQ5.インフルエンザ感染で、WBCやCRPはどのように変化するか?24位斬らレセプト ―査定されるレセプトはこれ!事例61 「初診料 休日加算」の査定25位Cardiologistへの道@Stanford第6回 会員からのリクエスト「米国医師の給与について」26位アリスミアのツボQ22. 発作性心房細動はやがてどうなるの?27位わかる統計教室第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション4 カプランマイヤー法の生存曲線を比較する28位スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草五十五の段 責任とってねテレビ局29位Dr.小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~テレビなど健康番組を見る患者さんへの説明用資料30位患者向けスライド期外収縮の患者さんへの説明

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心房細動の抗血栓療法時の消化管出血後、再開による死亡リスクは?/BMJ

 心房細動患者の消化管出血後の抗血栓療法再開による全死因死亡などのリスクについて調べた結果、再開しなかった患者群との比較で、再開レジメン別にみると経口抗凝固薬単独再開群の全死因死亡および血栓塞栓症のアウトカムが良好であったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLaila Staerk氏らによるコホート試験の結果、明らかにされた。消化管出血は、経口抗凝固療法を受ける心房細動患者の出血部位として最も多いが、同出血後に抗血栓療法を再開するのか見合わせるのかに関してはデータが不足していた。BMJ誌オンライン版2015年11月16日号掲載の報告。全死因死亡、血栓塞栓症、重大出血、消化管出血再発リスクを検討 検討は、デンマークコホート(1996~2012年)の抗血栓療法を受ける心房細動患者で、入院中に消化管出血を呈しその後退院した全患者を対象に行われた。試験集団には4,602例(平均年齢78歳、女性45%)が組み込まれた。これら患者が消化管出血発症前に受けていた抗血栓療法の内訳は、経口抗凝固薬単独23.9%、抗血小板薬単独53.3%、経口抗凝固薬+抗血小板薬の併用19.4%、アスピリン+アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬の併用2.5%、その他3剤併用0.9%であった。 同集団について、時間依存的Cox比例ハザードモデルや比較リスクモデル[抗血栓療法の非再開群 vs.再開群(単独または併用療法)]を用いて、全死因死亡、血栓塞栓症、重大出血、消化管出血再発の各アウトカム発生リスクを調べた。なお、比較リスクモデルの検討では既往処方薬の使用による交絡を回避するため、フォローアップ開始を退院後90日時点からとした。非再開群との比較では経口抗凝固薬単独群のアウトカムが良好 試験集団全体における消化管出血後2年時点の各アウトカムの累積発生率は、全死因死亡が39.9%(95%信頼区間[CI]:38.4~41.3%、1,745例)、血栓塞栓症12.0%(同:11.0~13.0%、526例)、重大出血17.7%(同:16.5~18.8%、788例)、消化管出血再発12.1%(同:11.1~13.1%、546例)であった。全死因死亡、重大出血、消化管出血再発は、集団への包含1ヵ月以内に顕著な増大がみられた一方、血栓塞栓症の発生は、2年の間、一定して増大していた。 比較リスクモデルの検討には3,409例が組み込まれた。このうち抗血栓療法を再開しなかった患者は27.1%(924例)であった。また再開群のレジメン内訳は、経口抗凝固薬単独21%(725例)、抗血小板薬単独38.5%(1,314例)、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用11.3%(384例)、アスピリン+ADP受容体拮抗薬併用1.5%(51例)であった。 非再開群との比較で、全死因死亡リスクの低下が認められた再開レジメンは、経口抗凝固薬単独(ハザード比[HR]:0.39、95%CI:0.34~0.46)、抗血小板薬単独(同:0.76、0.68~0.86)、そして経口抗凝固薬+抗血小板薬併用(同:0.41、0.32~0.52)であった。 また、血栓塞栓症リスクの低下が認められたのは、経口抗凝固薬単独(同:0.41、0.31~0.54)、抗血小板薬単独(同:0.76、0.61~0.95)、経口抗凝固薬+抗血小板薬併用(同:0.54、0.36~0.82)であった。 一方で、単独療法において経口抗凝固薬単独のみが、重大出血リスクの増大と関連していた(同:1.37、1.06~1.77)。 消化管出血再発リスクについては、レジメン間で有意差はみられなかった。

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2015年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?【医療ニュース 年間ランキングTOP30】

2015年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心が高かった論文は何だったのでしょう?アクセス数順にトップ30を発表します!1位本当だった!? 血液型による性格の違い(2015/6/2)2位脳梗塞の発症しやすい曜日(2015/4/3)3位心房細動へのジゴキシン、死亡増大/Lancet(2015/3/30)4位緑茶で死亡リスクが減る疾患(2015/4/30)5位学会発表後になぜ論文化しない?(2015/3/3)6位食道がんリスクが高い職業(2015/2/4)7位「朝食多め・夕食軽く」が糖尿病患者に有益(2015/3/4)8位アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし(2015/10/28)9位片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関(2015/10/13)10位パートナーがうつ病だと伝染するのか(2015/5/14)11位コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究(2015/5/11)12位長時間労働は多量飲酒につながる/BMJ(2015/1/26)13位急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能か?/JAMA(2015/6/30)14位2型糖尿病と関連するがんは?/BMJ(2015/1/23)15位脳梗塞と脳出血の発症しやすい季節(2015/10/19)16位胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?(2015/7/16)17位ジゴキシンは本当に死亡を増大するのか/BMJ(2015/9/14)18位甘くみていませんか、RSウイルス感染症(2015/10/9)19位認知症、早期介入は予後改善につながるか(2015/2/6)20位肺炎球菌ワクチン 接種間隔はどのくらい?(2015/4/22)21位新規経口抗凝固薬の眼内出血リスク、従来薬との比較(2015/8/12)22位5歳までのピーナッツ摂取でアレルギー回避?/NEJM(2015/3/9)23位軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標(2015/1/7)24位若白髪のリスク因子(2015/1/19)25位社会生活の「生きにくさ」につながる大人のADHD(2015/9/16)26位内科診療「身体診察」の重要性を再認識(2015/6/5)27位性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大(2015/8/20)28位心不全患者へのASV陽圧換気療法は死亡を増大/NEJM(2015/9/18)29位低GI食、インスリン感受性や収縮期血圧を改善せず/JAMA(2015/1/5)30位唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ(2015/8/17)

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第Xa因子阻害薬の中和薬、抗凝固活性の抑制効果を確認/NEJM

 第Xa因子阻害薬の抗凝固作用に対する中和薬として開発が進められているandexanet alfaについて、カナダ・マックマスター大学のDeborah M. Siegal氏らによる健常高齢者ボランティアを対象に行った臨床試験の結果が報告された。アピキサバン、リバーロキサバンのいずれの抗凝固薬に対しても数分以内で中和作用を示し、臨床的毒性作用は認められなかったという。第Xa因子阻害薬治療では出血の合併症が伴うことから、中和薬の開発が期待されている。NEJM誌オンライン版2015年11月11日号掲載の報告。アピキサバン、リバーロキサバンに対する中和作用を評価 試験は、50~75歳の健常高齢者ボランティアに、アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回投与して行われた。2段階の無作為化プラセボ対照試験にて、andexanetのボーラス投与またはボーラス投与+2時間静注を評価した。 主要アウトカムは、平均%でみた抗第Xa因子活性の変化とし、抗凝固薬ごとに抑制効果を評価した。 2014年3月~15年5月に、計101例の被験者(アピキサバン試験48例、リバーロキサバン試験53例)がandexanet投与を、44例(アピキサバン試験17例、リバーロキサバン試験27例)がプラセボ投与を受けるよう無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は57.9歳、女性が39%であった。抗凝固活性、ボーラス投与でアピキサバンは94%、リバーロキサバンは92%抑制 結果、抗第Xa因子活性は、andexanetボーラス投与群においてプラセボ投与群と比べて、急速(2~5分以内)に抑制された。 アピキサバン試験のボーラス投与群(24例)の抑制効果は94%に対し、プラセボ投与群(9例)は21%であった(p<0.001)。また、非結合アピキサバンの血中濃度は9.3ng/mLと有意に抑制され(プラセボ群1.9ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の100%で2~5分以内に完全に回復した(プラセボ群11%、p<0.001)。 リバーロキサバン試験では、ボーラス投与群(27例)の抑制効果は92%、プラセボ投与群(14例)は18%であった(p<0.001)。また非結合リバーロキサバン血中濃度は23.4ng/mLに有意に抑制され(プラセボ群4.2ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の96%で完全に回復した(プラセボ群7%、p<0.001)。 同様の効果は、andexanetのボーラス投与+2時間静注の検討においても維持されていた。 サブグループにおいて、Dダイマー値、プロトロンビンフラグメント1、2の一過性の上昇がみられたが、24~72時間で回復した。なお、有害事象や血栓性イベントの報告はなかった。

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新規抗血栓システムREG1、開発中止に/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時の新規抗血栓システムとして開発中のREG1は、重篤なアレルギー反応と関連することが明らかとなり、試験が早期に中止となったことが報告された。米国・クリーブランドクリニック研究センターのA Michael Lincof氏らがbivalirudinに対する優越性を検討していた。なお、試験の早期中止により統計的検出力に限りがあるものの、REG1がbivalirudinと比較して虚血性イベントや出血を抑制するとのエビデンスは示されなかったという。Lancet誌オンライン版2015年11月4日号掲載の報告。北米とヨーロッパの225病院でbivalirudinに対する優越性を検討 REG1は、第IXa凝固因子阻害薬pegnivacoginと中和薬anivamersenを組み合わせた新規開発中の抗血栓システム。研究グループは、bivalirudinと比較して同システムは、PCI施行時は第IXa因子をほぼ完全に阻害し、その後anivamersenの局所中和作用によって、出血を増大することなく、虚血性イベントを抑制すると仮定し検討を行った。 北米とヨーロッパの225病院で、多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験にて、REG1のbivalirudinに対する優越性を検討した。試験は、PCI施行患者1万3,200例をREG1群[PCI後にpegnivacoginを1mg/kgボーラス投与し(>99%第IXa因子を抑制)、anivamersenで80%中和]またはbivalirudin群に、無作為に割り付けて評価するよう計画された。なお、48時間以内のST上昇型心筋梗塞患者は除外された。 主要有効性エンドポイントは、無作為化後3日時点までの全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、予定外の標的病変血行再建の複合。主要安全性エンドポイントは、重大出血であった。重篤アレルギー反応が報告され早期に中止 試験は3,232例が登録後、重篤アレルギー反応が報告され早期に中止された。同時点で、1,616例がREG1群に、1,616例がbivalirudin群に割り付けられており、それぞれ、1,605例、1,601例が治療を受けていた。 重篤アレルギー反応は、REG1群で10/1,605例(1%)、bivalirudin群で1/1,601例(1%未満)で報告された。 複合主要エンドポイントの発生は、REG1群108/1,616例(7%)、bivalirudin群は103/1,616例(6%)が報告され、両群間で差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.80~1.39、p=0.72)。 重大出血の発生も同程度の発生で、REG1群7/1,605例(1%未満)、bivalirudin群2/1,601例(1%未満)であった(OR:3.49、95%CI:0.73~16.82、p=0.10)。ただし、重大・小出血の発生はREG1群の有意な増大がみられた(104例[6%] vs.65例[4%]、OR:1.64、95%CI:1.19~2.25、p=0.002)。

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英国プライマリケアでの処方の安全性、施設間で差/BMJ

 英国一般診療所の代表サンプル526施設を対象に処方の安全性について調べた結果、患者の約5%に不適切処方がみられ、また約12%でモニタリングの記録が欠如していることが、英国・マンチェスター大学のS Jill Stocks氏らによる断面調査の結果、明らかになった。不適切処方のリスクは、高齢者、多剤反復処方されている患者で高く、著者は、「プライマリケアにおいて、とくに高齢者と多剤反復投与患者について処方のリスクがあり適切性について考慮すべきであることが浮かび上がった」と述べている。英国では、プライマリケア向けに処方安全指標(prescribing safety indicator)が開発されているが、これまで試験セットでの検討にとどまり、大規模なプライマリケアデータベースでの評価は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年11月3日号掲載の報告。英国一般診療所526施設のデータを分析 研究グループは、英国一般診療所における複数タイプの潜在的有害処方の有病率を調べ、また診療所間にばらつきがあるかどうかについて調べた。2013年4月1日時点でClinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録された526施設において、診断と処方の組み合わせで特定した潜在的処方リスクやモニタリングエラーの可能性がある全成人患者を包含した。 主要アウトカムは、抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs、β遮断薬、glitazone(チアゾリジン系糖尿病薬:TZD)、メトホルミン、ジゴキシン、抗精神病薬、経口避妊薬(CHC)、エストロゲンの潜在的に有害な処方率。また、ACE阻害薬およびループ利尿薬、アミオダロン、メトトレキサート、リチウム、ワルファリンの反復処方患者の、血液検査モニタリングの頻度が推奨値よりも低いこととした。不適切処方、モニタリング欠如は指標によりばらつき、診療所間のばらつきも高い 全体で94万9,552例のうち4万9,927例(5.26%、95%信頼区間[CI]:5.21~5.30%)の患者が、少なくとも1つの処方安全指標に抵触した。また、18万2,721例のうち2万1,501例(11.8%、11.6~11.9%)が、少なくとも1つのモニタリング指標に抵触した。 同処方率は、潜在的処方リスクタイプの違いでばらつきがみられ、ほぼゼロ(静脈または動脈血栓症歴ありでCHC処方:0.28%、心不全歴ありでTZD処方:0.37%)のものから、10.21%(消化器系潰瘍または消化管出血歴ありで消化管保護薬処方なし、アスピリンやクロピドグレル処方あり)にわたっていた。 不十分なモニタリングは、10.4%(75歳以上、ACE阻害薬やループ利尿薬処方、尿素および電解質モニタリングなし)から41.9%(アミオダロン反復処方、甲状腺機能検査なし)にわたっていた。 また、高齢者、多剤反復処方患者で、処方安全指標の抵触リスクが有意に高かった一方、若年で反復処方が少ない患者で、モニタリング指標の抵触リスクが有意に高かった。 さらに、いくつかの指標について診療所間での高いばらつきもみられた。 なお研究グループは、処方安全性指標について、「患者への有害リスクを増大する回避すべき処方パターンを明らかにするもので、臨床的に正当なものだが例外も常に存在するものである」と述べている。さらに、検討結果について「いくつかの診療について、CPRDで捕捉できていない情報がある可能性もあった(ワルファリンを投与されている患者のINRなど)」と補足している。

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