サイト内検索|page:26

検索結果 合計:984件 表示位置:501 - 520

501.

深部静脈血栓症、薬理機械的血栓溶解併用は有益か/NEJM

 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法に薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、薬理機械的血栓溶解療法)を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが、米国・セントルイス・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らによる無作為化試験の結果で示された。近位深部静脈血栓症を発症した患者は、抗凝固療法を行っても血栓後症候群を呈する頻度が高い。研究グループは、薬理機械的血栓溶解療法は血栓を速やかに除去し、血栓後症候群のリスクを低減すると仮定し検証試験を行った。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。抗凝固療法単独群と比較し、血栓後症候群の発生を評価 試験は、急性近位深部静脈血栓症の患者692例を対象とし、抗凝固療法単独(対照群)または抗凝固療法+薬理機械的血栓溶解療法(ステント併用ありまたはなしで、カテーテルまたはデバイスを介して遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータを送達し、血栓を吸引または破砕する)に無作為に割り付けて追跡した。 主要アウトカムは、フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生であった。血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは増大 主要アウトカムの発生について、両群間で有意差はなかった。発生率は、薬理機械的血栓溶解療法併用群47%、対照群48%であった(リスク比[RR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.11、p=0.56)。一方で、薬理機械的血栓溶解療法併用群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、RR:6.18[95%CI:0.78~49.2]、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、薬理機械的血栓溶解療法併用群18%に対し、対照群は24%であった(RR:0.73、95%CI:0.54~0.98、p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群より薬理機械的血栓溶解療法併用群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

502.

WATCHMAN留置後の血栓症の特徴を調査

 左心耳は非弁膜症性心房細動患者における血栓塞栓症の主要な発生源と考えられ、経皮的に左心耳を閉鎖することが、長期の抗凝固療法に代わる治療として使用される頻度が増えている。米国においては、WATCHMANが米国食品医薬局(FDA)が承認した唯一の左心耳閉鎖デバイスである。しかし一方で、WATCHMAN留置後、残存するデバイス周囲からの閉鎖漏れや予期できないデバイス関連血栓が懸念されている。Cedar-Sinai 医療センターのShunsuke Kubo氏、Saibal Kar氏ら研究グループは、心房細動患者におけるWATCHMANに関連した血栓形成の特徴や、その影響を調べた。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月号に掲載。心房細動患者119例が対象、デバイス関連血栓症の発生率は3.4% 本研究では、2006~14年に連続してWATCHMANの植込みを受けた心房細動患者119例を対象とした。植込み後の経食道エコー(TEE)は、45日後、6ヵ月後、12ヵ月後に実施された。TEEで同定されたデバイス関連血栓の発生率、特徴と臨床経過が評価された。フォローアップのTEEにより、デバイス上に形成された血栓が4例(3.4%)に同定された。血栓が見つかった患者はいずれも慢性心房細動を有しており、血栓のない患者における慢性心房細動の有病率(40%)よりも高かった。また、血栓を有する患者においては、留置されたデバイスのサイズが大きかった(29.3±3.8mm vs. 25.7±3.2mm)。血栓を有するすべての症例で、研究のプロトコールで求められる抗凝固もしくは抗血小板療法が中断されていた。ワルファリンおよびアスピリンによる治療再開後、全症例で血栓の完全な消失がTEEにより確認された。全症例において、ワルファリンは6ヵ月で中止されたが、血栓の再発は認められなかった。フォローアップ期間の平均は1,456±546日で、血栓を有する患者における死亡、脳梗塞、全身の血栓症は認められなかった。短期間のワルファリン療法がデバイス関連血栓症に有効 本研究では、心房細動の頻度、デバイスのサイズ、抗凝固・抗血小板療法が、WATCHMAN留置後に生じるデバイス関連血栓に関与しうることがわかった。また、短期間のワルファリン療法はデバイス関連血栓症に有効であることが示され、その後の再発も認められなかった。■参考Incidence, Characteristics, and Clinical Course of Device-Related Thrombus After Watchman Left Atrial Appendage Occlusion Device Implantation in Atrial Fibrillation Patients(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

503.

DOACエドキサバン、がんの血栓症で低分子ヘパリンに非劣性

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は2017年12月13日同社のニュースリリースで、抗凝固薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)による、がん合併静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象としたHokusai-VTE CANCER試験の結果において、エドキサバンが標準治療薬である低分子量ヘパリンのダルテパリン(国内未承認)に対して有効性および安全性に係わる主要評価項目において非劣性を達成したと発表。 本試験の結果は、米国ジョージア州アトランタで開催した第59回米国血液学会(ASH)年次総会のlate breaking sessionで発表されると共に、New England Journal of Medicineにオンライン掲載された。  Hokusai-VTE CANCER試験は、欧米を中心とする海外13ヵ国において、がんを合併したVTE患者1,050名を対象に、1日1回経口投与のエドキサバンまたは1日1回皮下注射のダルテパリンを12ヵ月間投与し、両剤の有効性(VTEの再発)および安全性(重大な出血)を比較したもの。  本試験の主要評価項目(VTEの再発および重大な出血の複合発現率)において、エドキサバン群は12.8%(522名中67名)、ダルテパリン群は13.5%(524名中71名)、リスク差(エドキサバン群の発現率-ダルテパリン群の発現率)は-0.7%となり、エドキサバンのダルテパリンに対する非劣性が検証された。リスク差(-0.7%)の内訳は、VTEの再発のリスク差は-3.4%、重大な出血のリスク差は2.9%であった。特に重篤度の高い重大な出血(重篤度カテゴリー3~4)の発現数はエドキサバン群で12名、ダルテパリン群で12名であった。 VTEは、がん患者において2番目に多い死亡原因となっている。現在、がんを合併したVTE患者の欧米における治療ガイドラインは、標準治療として低分子量ヘパリン(皮下注射)の6ヵ月以上の投与を推奨しているが、服薬アドヒアランス上の未充足ニーズがある。■関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

504.

抗血栓治療でPPAPは成立するか?(解説:香坂俊氏)-777

 動脈系血栓予防(冠動脈疾患など)に最適とされている薬剤はアスピリンである。静脈系血栓予防(深部静脈血栓や心房細動など)には長らくワルファリンが用いられてきた。では、冠動脈疾患に心房細動が合併したりして、その2つを一度に行わなければならないときはどうするか? 数年前までは何も考えずこの2剤を併用してきた。2016年の流行語にPPAP(PEN-PINAPPLE-APPLE-PEN:ペンパイナッポーアッポーペン)というものがあったが、まさに・動脈系血栓予防にはASPIRIN・静脈系血栓予防にはWARFARIN・それをくっつけASPIRIN-WARFARIN-APPLE-PENといった塩梅である(苦しいですが、年の瀬なので許してください)。 しかし冠動脈疾患の治療にステントが使われるようになると、インターベンション治療(PCI)を行った患者にはアスピリンに2剤目の抗血小板薬(クロピドグレルやプラスグレル)をかぶせなければならなくなった。いわゆるDAPT(Dual AntiPlatelet Therapy:抗血小板2剤併用療法)である。すると、例えばステント治療を行った心房細動患者にはDAPTに加えさらにワルファリンを投与することになり「ちょっと多いかもな」ということになる。これが杞憂でないことはWOESTという医師主導の臨床試験で立証され、3剤で行くよりもアスピリンを抜いた2剤(クロピドグレル+ワルファリン)のほうが出血イベントが半分程度になることがわかった(DOI)。 その後、ワルファリンの代替薬としてNOAC(Non-Vitamin K Oral Anticoagulant:非ビタミンK経口抗凝固薬)が使われる時代になり、メーカーがこうした臨床試験に協力してくれるようになった。そうした流れの中で初代NOACであるダビガトランを用いて行われたのがRE-DUAL PCI試験である(これより前にリバーロキサバンでPIONNEER AF-PCI試験が行われており[DOI、さらにアピキサバンでもAUGUSTUS試験が現在行われている)。 結果の詳細は別記事(CareNet該当記事参照)に譲るが、・ダビガトラン 150mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ダビガトラン 110mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ワルファリン+DAPT(3剤併用) の3群で比較され、WOESTとほぼ同様の結果が得られている。 掲載誌のEditorialにはこれまでの3つの試験(WOEST、PIONNEER、RE-DUAL)のメタ解析が掲載されているが、出血イベントに関する安全性はもちろんのこと(OR:0.49、95%CI:0.34~0.72)、2剤のほうが虚血イベント抑制に関しても有利でありそうだ(OR:0.80、95%CI:0.58~1.09)という結果が示されている。これは、出血に伴い血栓傾向が強まることを考え合わせると(以下の3つのメカニズムによる)首肯できる結果である。(1)抗血小板薬や抗凝固薬の中止を余儀なくされる(2)出血そのものが炎症反応を惹起する(3)輸血や止血手技でも同様に炎症反応が惹起される 昨今、効果に差を見出すのではなく(Efficacy Trial)、安全性やQOLの確保に重点をおいた減算型の臨床試験が多く行われているが、RE-DUALもその好例といえる(3剤から2剤に引いても安全ですよということを明示)。今後おそらくこの領域では、安易な足し算の発想(PPAP式?)で3剤併用が行われることは【圧倒的】に少なくなることが予想される。

505.

出血こそが問題なのだ:減量のメリット(解説:後藤信哉氏)-775

 欧米では動脈硬化の初期症状として、冠動脈疾患が出現することが多い。アジア人では脳血管疾患が多いが、脳血管疾患は梗塞と出血の境界線が明確でないので抗血栓薬の開発は困難である。出血合併症の多い抗凝固薬が、血栓イベントの既往のない非弁膜症性心房細動に使用されているのは筆者には奇異であるが、ランダム化比較試験のエンドポイントとされた脳卒中と臨床家が恐れる心原性脳塞栓を混同させたマーケット戦略、巨大企業による徹底した情報管理の勝利であった。しかし、第III相試験にて示されたDOACによる年率3%の重篤な出血合併症は実臨床においても事実であろうから、特許切れまで企業が情報管理を継続できるか否かには疑問も残る。 一度、血栓性の心筋梗塞、脳梗塞を発症した症例の2次予防であれば、出血合併症の多いDOACにもチャンスはある。出血と梗塞の境界が微妙な脳梗塞を除いて、心筋梗塞後の症例に限局すれば、重篤な出血イベント年率0.2%、血栓イベント抑制効果25%のアスピリンの標準治療には多少抗血栓薬を追加する余地がある。心房細動例に使用する用量よりもはるかに少ない2.5mg×2/日のリバーロキサバンによる、重篤な出血の増加は年率1%であった。過去に血栓イベントの既往のない心房細動症例に使用されている、15(20)mg/日による3%に比較すればはるかに少ない。アスピリンにごく微量のリバーロキサバンを追加すれば、心房細動のときに用いるほどではないが重篤な出血が増加する。しかし、増加した出血と同じ程度の年間1%程度の血栓イベントの低下効果は期待できる。 抗Xa薬の臨床開発において、筆者は抗Xa薬には用量依存性の重篤な出血がないかもしれないと考えて各企業に協力した。第III相試験を主導している途中で、並行していた第II相試験が抗Xa薬でも用量依存性の出血を起こすことを示して、筆者の期待は急速に萎んだ。心房細動であろうと、心筋梗塞であろうと、1%の血栓イベントを予防するための用量では1%の重篤な出血合併症が、3%の血栓イベントを予防するためには3%の重篤な出血合併症が起こるDOACの価値を見いだすことは難しい。売れているから企業には危機感が少ないかもしれないが、将来に向けて出血しない薬効標的を探す努力が必要である。

506.

人工弁選択のLabyrinth(解説:今中 和人氏)-774

 人工弁選択は、要するに抗凝固合併症の可能性と劣化・再手術の可能性の選択である。古いテーマゆえ膨大な論文があるが、生体弁の改良をはじめ多くのconfounding factorで見解は一定せず、2014年にAHA/ACCが「大動脈弁置換(AVR)65歳、僧帽弁置換(MVR)70歳」とのガイドラインを発行した後も未決着の感が強い。本論文はカリフォルニア州の142施設が18年間に初回の単弁置換をした症例の追跡調査で、個々のデータは、とくに日本胸部外科学会の全国集計と比較すると興味深い。 たとえばこの期間にAVRは130%に増加、MVRは65%への減少だが、日本はAVRが450%と激増した一方、MVRは90%と微減に留まっている(ちなみに僧帽弁形成は370%に激増)。また、生体弁の比率は米国でもAVRで12%→52%、MVRで17%→54%と著増しているが、日本はもっと極端で、AVRは11%→81%、MVRで9%→57%と、日本人の残念な気質が端的に表れている(しかもすべて輸入品!)。というのも再AVRの30日死亡率は7.1%、再MVRは14.0%とかなり高い。日本の統計は、僧帽弁については交連切開の術後を大量に含むので参考にならないが、再AVRは30日死亡5.4%、在院死亡9.4%と、本論文と大差ない由々しき数字であり、再弁置換は極力避けたい事態だからである。「TAVRがあるさ」と楽観していてよいだろうか? 結果のほうは、50歳未満の生体弁MVRの30日死亡率が高かったこと以外は凡庸(若い人は機械弁、年配者は生体弁)なのだが、実にモヤモヤ感が残る。最も目立つのは年齢区分で、AVRは45~54歳と55~64歳の2群、MVRは40~49歳、50~69歳、70~79歳の3群で検討しているが、区分の食い違いに結局は根拠がなく、65歳以上のAVRの検討がない点も言及がない。COIは明示されていないが、これでは何らかの恣意を感じずにはおれない。 さらに、より本質的なのは、研究の限界ではあろうが、15年という経過観察期間である。観察期間の中央値は機械弁では8年前後だが、生体弁は実は4~5年で、15年時点のpatient at riskが4%未満の群もある。これを「ありがちなこと」と容認するとしても、グラフをよく見ると、10年過ぎあたりから多くの群で両者の生存曲線はじわっと乖離しはじめている。昨今の生体弁は、10年ほどはかなり成績が良いがそれ以降に不具合が増えるので、観察期間が延びれば大差がつく可能性が高い。ところが55~64歳の10年後は65~74歳、15年後でも70~79歳で、日本人だと男性の平均寿命にも満たないのに、この論文の結論だけをうのみにすると、高齢の再手術(TAVRを含む)患者が大量生産されかねない。当然、成績は上記よりさらに悪い。それでよいだろうか? ガイドラインにも言及したい。日本独自のRCTが乏しく、同じ参考文献に基づくせいで、日本のガイドラインは欧米のコピーに近い。しかし2015年の日本の平均寿命は83.7歳、米国79.3歳と5年近く、女性に限定すれば5年以上も日本のほうが長寿なのに、人工弁選択の推奨年齢が米国と同じでよいだろうか? エビデンスとは言えないが、寿命差を加味するよう付記すべきではないか?(さらには5年以上違う性差についても) 治療方針は最終的には患者さんの自己決定ではあるが、その自己決定はわれわれ医療者の説明に大幅に依存している。われわれは周到に学び、賢明に判断し、親身に助言する必要がある。

507.

ワルファリン使用者、がん罹患率が2割低い

 ノルウェーの50歳以上の大規模コホート研究において、ワルファリンを服用している人はがん罹患率が低いことが報告された。ワルファリンはがんモデルにおいて、AXL受容体チロシンキナーゼによる腫瘍形成を阻害し、抗凝固レベルに達しない用量で抗腫瘍免疫応答を増強するが、本研究で臨床でも抗がん作用を有する可能性が示唆された。著者のノルウェー・ベルゲン大学のGry S. Haaland氏らは「この結果は、抗凝固が必要な患者の薬剤選択に重要な意味を持つだろう」と述べている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月6日号に掲載。 この集団ベースのコホート研究は、ノルウェー全国レジストリとノルウェー処方データベース、ノルウェーがんレジストリを組み合わせて行われた。コホートは、2006年1月1日~2012年12月31日にノルウェーに居住していた、1924年1月1日~1954年12月31日に生まれたすべての人々(125万6,725人)から成る。このコホートをワルファリンの使用者と非使用者に分け、ワルファリン使用とがん罹患率の関連を検討した。また、心房細動または心房粗動に対してワルファリンを使用しているサブグループにおいても解析した。データは2004年1月1日~2012年12月31日に収集、2016年10月15日~2017年1月31日に解析した。ワルファリン使用は処方が6ヵ月以上、処方の開始からがんの診断までが2年以上の場合とした。主要アウトカムは、7年の観察期間(2006年1月1日~2012年12月31日)におけるすべてのがんの診断とした。 主な結果は以下のとおり。・125万6,725人のうち、男性が60万7,350人(48.3%)、女性が64万9,375人(51.7%)、がん患者が13万2,687人(10.6%)、ワルファリン使用者が9万2,942人(7.4%)、非使用者が116万3,783(92.6%)であった。・ワルファリン使用者は、平均年齢(SD)が70.2(8.2)歳で非使用者の63.9(8.6)歳より高く、また非使用者では女性が多い(61万3,803 [52.7%])のに比べて、使用者は男性が多かった(5万7,370人 [61.7%])。・ワルファリン使用者では非使用者と比較して、年齢・性別で調整された罹患率比(IRR)が、がん全体(0.84、95%CI:0.82~0.86)および頻度の高いがん種(肺がん:0.80[95%CI:0.75~0.86]、前立腺がん:0.69 [同:0.65~0.72]、乳がん:0.90 [同:0.82~1.00])で有意に低かった。結腸がんでは有意な効果は認められなかった(0.99、95%CI:0.93~1.06)。・心房細動または心房粗動患者のサブグループ解析では、がん全体(0.62、95%CI:0.59~0.65)および高頻度にみられるがん(肺がん:0.39 [95%CI:0.33~0.46、乳がん:0.72 [95%CI:0.59~0.87]、結腸がん:0.71 [95%CI:0.63~0.81]で、調整IRRが有意に低かった。

509.

卵円孔開存を閉じるまでの長い道のり(解説:香坂俊氏)-762

筆者が研修を行っていた時分(10年以上前)は、まさに心エコーで「卵円孔開存(PFO)を見つけよう!」という機運が盛り上がっていたところで、下図のように細かい空気泡を静脈に打ち込んでは、右房から左房に漏れないかどうか目を凝らして見ていた(細かい空気泡はよく超音波を反射するので、静脈系の血液が流れている様子がエコーでよく見えるようになる)。こうしたとき、時に患者さんに息こらえや咳をしてもらったりすると(胸腔内圧を上げる)、たまに空気泡がパラパラと左房側に漏れていき、「結構な患者さんで卵円孔は開存しているのだなぁ」と感銘を受けたことを覚えている。実際に統計をとってみると、実に4人に1人くらいで卵円孔は開存しているとされている。そして、これが開いているだけならまだよいのだが、たまに静脈側で発生した血栓等を通してしまい(通常は肺に行くはずが左心系に迷い込む)、脳梗塞を起こしたりするのが長らく問題だと考えられてきた。下図のように実際に血栓(赤色部)が開存した卵円孔に挟まっていたというような症例報告も多数なされている。その後、とくに若年者の脳梗塞の50%以上にPFOが併存しているとする報告がなされ、とくに若年者でPFOを打倒しようという機運が盛り上がった。その黎明期には、PFO患者にアスピリンやワルファリンを使ってもまったく脳梗塞の予防にもつながらず、カテーテルでPFOを閉じるデバイス(両端に傘がついたようなデバイス)が導入された後も、いまひとつその成績はぱっとしなかった(CLOSURE I、PC Trial、RESPECT)。しかしその後もデバイスの開発が進められ、適切なプロフィールの患者を選択するための方策が練られた。今回NEJMに掲載されたのは、そうした流れの中で行われた試験である(CLOSE、RESPECT extended、REDUCEの3試験の結果が同時掲載)。この3つの試験ではカテーテルによるPFO閉鎖による脳梗塞予防効果が見事に証明された。最も大きなポイントとしては、きちんと18歳から60歳という若年者を対象としたということのほかに、右左シャントの「大きさ」を規定したことではなかったか。これまでは少しでも空気泡が左房側に漏れればそれで「PFOだ!」としてきたが、今回はたとえばCLOSE試験では、右房が空気泡で満たされてから3心拍以内に30以上の空気泡が左房に認められた場合のみ閉鎖の適応としている。そのことを反映してか、これまでの試験よりも試験全体の脳梗塞の発症率が高くなっている(コントロール群で5%前後)。注意すべき点としては術後に肺塞栓(RESPECT extended)や心房細動(REDUCE)の頻度が若干増えるところだろうか? ただ、トータルで考えると今回の脳梗塞の「劇的」ともいえる予防効果(35~50%のイベント抑制効果)の前では閉鎖することのベネフィットのほうがほとんどのケースで高くなるものと考えられる。今後コストの問題等も合わせて検討されなくてはならないが、今回ようやく適切なPFO閉鎖というところに道筋がつけられたといえるのではないか?

511.

ワルファリンの可能性(解説:後藤信哉氏)-756

 日本は、非弁膜症性心房細動などにいわゆるNOACsが多く使用されている国である。しかし、世界の抗凝固薬の標準治療は安価なワルファリンである。日本では2mg/日で開始すれば多くの場合、INR 2以下くらいにコントロールできる。 30年ワルファリンを使用している筆者には経験がないが、2mg/日でも過剰でINRが延長してしまう症例がいるらしい。まれに2mg/日ではINRが延長せず、漸増させて10mg/日程度が必要な症例は経験する。圧倒的多数の症例は2mg/日で問題なく、一部に過剰、過小の症例がいる原因にワルファリンの代謝が寄与するとされる。血漿蛋白に結合していないワルファリンが肝臓で活性型に転換する。その酵素はチトクロームP450のCYP2C9とされる。ビタミンK還元酵素複合体にも遺伝子型に応じた酵素活性の差異がある。 この2種の酵素の遺伝子型を事前に知っていれば、ワルファリンの初期投与量、維持量を個人ごとに予測できる、との仮説が過去に臨床的に検証された。2本のNEJM誌の論文の結果は相互に矛盾していた。 今回JAMA誌に発表された論文では対象を膝または腰の置換術にして症例を均質化した。その結果、予想どおり、遺伝子型を考慮に入れたワルファリン治療において重篤な出血が少なく、INR 4以上の過剰投与も避けられた。 疾病一般の予後が改善して、時代は「平均的症例の標準治療」、「One dose fit all」を目指すEBMの時代から、個別症例の最適治療を目指す「Precision Medicine」に転換しようとしている。主作用と副作用イベント発症率相関性のあるバイオマーカーとしてのPT-INRがあるワルファリンは、個別最適化に向いた薬剤である。抗凝固効果のポテンシャルは選択的抗トロンビン薬、抗Xa薬よりも大きく、薬剤の価格は安い。丁寧に使用すれば安全性も高い。安い薬を日本人医師の職人魂にて個別最適化して使用すれば、有効、安全、安価な医療を実現できる。 日本の圧倒的多数は2mg/日にて大きな問題はないと考えるが、遺伝子型により特殊な少数例を弁別できるので日本での応用性もあると考える。

512.

One dose fit all!の限界(解説:後藤信哉氏)-757

 いわゆるNOACs、DOACsの臨床開発に当たって、選択的抗トロンビン薬では有効性、安全性は薬剤の用量依存性と予測していた。開発試験の結果が出るまで、Xa阻害薬では出血合併症には用量依存性が少ないとの期待があった。急性冠症候群を対象とした第II相試験の結果を見て、抗Xa薬でも用量依存性に重篤な出血合併症が増加することを知って失望した。 それでも抗Xa薬は競争相手のワルファリンの自由度を縛ることによって、見かけ上安全な薬剤として開発、上梓された。論理の緻密な英語では「PT-INR 2~3を標的としたワルファリン治療より安全」と必ず述べるが、あいまいな日本語では「ワルファリン治療より安全」との誤解も広まった。目の前の自分の患者の予後を最重視する臨床医にはメーカー、メーカーの教育を受けた医師の「ワルファリン治療より安全」が、現場では「?」であることをすぐに実感する。 本論文は台湾の医療データベースの解析である。重篤な出血合併症の発症率は1%程度で第III相試験より著しく少ない。報告されていない出血もあると想定されるが、実臨床では添付文書に規定された用量よりも少量を使用していることが、出血イベントの実態が少ない原因と想定される。 「One dose fit all」と喧伝されたNOACsであるが、アミオダロン、フルコナゾールなどの併用性では出血合併症が多い。いわゆるNOACs、DOACsであっても薬剤との相互作用は重篤な出血イベントを倍増させるほどのインパクトがある。ワルファリンと異なり、個別最適化のためのバイオマーカーはない。INRの延長に相当する黄色信号なしに、いきなり出血の赤信号となるNOACs、DOACsを、実態を知りながら服用したいと思うヒトはきわめて少ないと私は思うが、いかがだろうか?

513.

卵円孔開存は問題か?(解説:後藤信哉氏)-753

 胎児循環では心房中隔の一部としての卵円孔は開存している。出生とともに閉じるのが一般的である。剖検例を詳細に検討すると、20%程度の症例には機能的卵円孔開存を認めるとの報告もある。経食道心エコーでは心房の血流の詳細な検討が可能である。バブルを用いたコントラスト法により機能的卵円孔開存の診断精度も向上した。原因不明の脳梗塞の一部は、静脈血栓が開存した卵円孔を介して左房・左室と移動した血栓が原因と考えられた。とくに、出産時、潜水時などに比較的若いヒトに起こる脳塞栓には卵円孔開存を原因とするものが多いと想定された。 卵円孔が開存しても心負荷は増えない。将来の心不全を防ぐために卵円孔を閉鎖する必要はない。自分の患者が心房中隔欠損症の高齢出産のときには緊張する。1次予防は難しいとはわかっていても、入院時にできた静脈血栓が、腹圧増加時に欠損した心房中隔を介して重篤な脳卒中になるのが心配だからだ。卵円孔開存でも腹圧亢進時などには右・左シャントが起こりうる。1次予防は無理としても、卵円孔開存が明らかで、右・左シャントを介した脳梗塞を発症した後でも、われわれは診療に当たる必要がある。過去に抗血小板薬、抗凝固薬などの有効性が検証されたが明確な結論は得られなかった。卵円孔開存はまれではないが、原因不明の脳卒中を合併するリスクは少ないので、再発予防であってもランダム化比較試験を計画することは困難であった。今回はこの困難な領域において、複数のランダム化比較試験の結果が報告された。 Masらのフランスのグループは抗凝固療法よりも、抗血小板療法よりも、経カテーテル的卵円孔閉鎖と抗血小板薬の併用の予防効果が高いとした(Mas JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1011-1021.)。しかし、経カテーテル的卵円孔閉鎖時の合併症を考えると今後の標準治療に転換するほどのインパクトはない。難しいランダム化比較試験を完遂した努力は賞賛したい。Sondergaardらも同様のランダム化比較試験を行い、同様の結果をNEJM誌に発表した(Sondergaard L, et al. N Engl J Med. 2017;377:1033-1042.)。Saverらの結果も同様であった(Saver JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1022-1032.)。単独の試験の結果と比較して、複数の試験が同時に発表されれば、結果の信頼性は高い。しかし、SaverらはSt. Jude Medical社、SondergaardらはW.L. Gore & Associates社の助成研究である。自社のデバイスをうまく使える技術のある施設を選定したバイアスは否定できない。Masらの公的グラントによる研究も同様の成果を示しているので、技術の上手な術者であれば2次予防にはデバイスを考えてもよいのかもしれない。

514.

DOAC、静脈血栓塞栓症でワルファリンと同等の安全性/BMJ

 静脈血栓塞栓症を呈した患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与は、ワルファリン投与に比べ、治療開始90日以内の大出血リスクや全死因死亡リスクを増大しないことが示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、6万人弱を対象に行った大規模コホート試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月17日号で発表した。これまでに、無作為化試験でDOACのワルファリンに対する非劣性は示されていたものの、臨床試験の被験者は高度に選択的であるため、実際の臨床現場におけるルーチン投与の状況を反映したものなのか疑問の余地があった。90日以内の大量出血、総死亡リスクを比較 研究グループは、2009年1月1日~2016年3月31日にかけて、カナダと米国の6州のヘルスケアデータを用いて傾向スコアでマッチングした、住民ベースの後ろ向きコホート試験を行った。試験対象期間中に静脈血栓塞栓症の新規診断を受け、診断後30日以内にDOACまたはワルファリンの処方を受けた5万9,525例のデータを分析し、DOACの安全性についてワルファリンと比較検討した。 アウトカムは、大出血による入院または救急部門受診と、治療開始後90日以内の全死因死亡率などだった。傾向スコアマッチング法と共用異質性モデルにより、DOACとワルファリンの補正後ハザード比を推定した。CKDの有無、年齢、性別で分けても安全性は同等 5万9,525例について、追跡期間平均値85.2日の間に、1,967例(3.3%)が大出血を呈し、死亡は1,029例(1.7%)だった。 大出血リスクは、DOAC服用群とワルファリン服用群で同程度だった(プールハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.82~1.03)。また、死亡リスクも、両群間の差は認められなかった(同:0.99、0.84~1.16)。 なお、試験を実施した医療施設間に不均一性はなく、示された結果について、患者の慢性腎臓病(CKD)の有無、年齢、性別などによる違いは認められなかった。

515.

NOAC併用で大出血リスクが増大する薬/JAMA

 非弁膜症性心房細動で非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)を服用する患者において、アミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトインの併用は、NOAC単独と比較して、大出血リスクの増大と関連する。台湾・桃園長庚紀念医院のShang-Hung Chang氏らが、台湾の全民健康保険データベースを用いて非弁膜症性心房細動患者計9万1,330例について後ろ向きに分析した結果を報告した。NOACは、代謝経路を共有する薬物と併用して処方される頻度が高く、大出血リスクを高める可能性がある。今回の結果を踏まえて著者は、「NOACを処方する臨床医は、他剤との併用によるリスクの可能性を考慮しなければならない」とまとめている。JAMA誌2017年10月3日号掲載の報告。台湾の非弁膜症性心房細動患者9万1,330例について分析 研究グループは、台湾の全民健康保険データベースを用いて、2012年1月1日~2016年12月31日(最終フォローアップ)の間に、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンのNOAC処方を1種以上受けた非弁膜症性心房細動患者9万1,330例を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。被験者は、NOAC単独または併用(アトルバスタチン、ジゴキシン、ベラパミル、ジルチアゼム、アミオダロン、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、posaconazole、シクロスポリン、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン、dronedarone、リファンピシン、フェニトイン)投与を受けていた。 主要アウトカムは大出血で、頭蓋内出血、消化管、泌尿器またはその他部位での出血と診断を受けて入院または緊急部門を受診した症例と定義した。 NOAC単独または他剤併用のperson-quarter(暦年の各四半期における各被験者の曝露時間)における大出血の補正後発生率の差を、Poisson回帰分析を用いた推算で評価。また、傾向スコアを用いて治療重み付けの逆数を算出し評価した。アミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトイン併用で有意に増大 対象の9万1,330例は、平均年齢74.7歳(SD 10.8)、男性55.8%、NOACの処方内訳は、ダビガトラン4万5,347例、リバーロキサバン5万4,006例、アピキサバン1万2,886例であった。 大出血を呈したのは、NOAC処方44万7,037 person-quarterにつき4,770件であった。全person-quarterにおいて、最も併用が多かったのはアトルバスタチン(27.6%)で、ジルチアゼム(22.7%)、ジゴキシン(22.5%)、アミオダロン(21.1%)と続いた。 NOACとアミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトインとの併用は、NOAC単独と比較し、大出血の補正後発生率比(1,000人年当たり)が有意に増大した。NOAC単独38.09 vs.アミオダロン併用52.04(差:13.94[99%信頼区間[CI]:9.76~18.13])、NOAC単独102.77 vs.フルコナゾール併用241.92(138.46[80.96~195.97])、NOAC単独65.66 vs.リファンピシン併用103.14(36.90[1.59~72.22])、NOAC単独56.07 vs.フェニトイン併用108.52(52.31[32.18~72.44])であった(すべての比較のp<0.01)。 大出血の補正後発生率比は、NOAC単独と比較して、アトルバスタチン(差:-14.38[99%CI:-17.76~-10.99])、ジゴキシン(-4.46[-8.45~-0.47])、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン(-39.78[-50.59~-28.97])の併用群では有意に低下した。 ベラパミル、ジルチアゼム、シクロスポリン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、posaconazole、dronedaroneの併用群では有意な差は認められなかった。

516.

血尿よ、お前もか!-抗血栓薬は慎重に(解説:桑島巖氏)-748

 最近、循環器領域の疾患では、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)や抗血小板薬を処方する傾向が顕著になっている。確かに脳卒中や心筋梗塞予防効果はあることはあるが、そのウラ側にある有害事象のことも考えてほしいというのが本研究のメッセージである。抗血栓薬処方の爆発的な増加には企業の激しい宣伝合戦も影響しているかもしれないが、ここで一歩立ち止まって考える必要がありそうだ。言うまでもないことではあるが、抗血栓薬は血栓を予防して梗塞性イベントを防ぐ一方で、大出血という重大な有害事象を発生することも、あらためて認識する必要がある。 すでに、JAMA誌(Gaist D, et al. JAMA. 2017;317:836-846.)では、抗血栓薬で明らかに硬膜下血腫リスクが増大しているというデータを示しているが、今回の本論文は血尿である。 カナダ・オンタリオ州における66歳以上の一般住民の追跡調査であるが、抗凝固薬や抗血小板薬などの抗血栓薬服用者の肉眼的血尿発現率は、123.95イベント/1,000人年であり、これは非服用者の80.17人年に比べて1.44倍高かったという。この調査での血尿は、入院と救急外来受診者に限定され、一般診療での血尿は含まれておらず、一般臨床での血尿を含めるとさらに多くなると思われる。 本研究はあくまでも一般住民での追跡調査成績であり、いくつかのlimitationはあるとしても、抗血栓薬の安易な処方傾向に一石を投じる報告である。 抗血栓薬服用者では、泌尿器科処置に伴う合併症や、入院、救急外来受診率などの頻度も、非服用者に比していずれも有意に高かった。これらは医療行為による医師の負担を増大させ、医療経済の点から言ってもマイナスの要因であろう。 抗血栓薬処方の裏では、消化管出血、血尿、硬膜下血腫などの副作用で、消化器科医師、泌尿器科医師、脳外科医師がその後始末に四苦八苦している事情も知っておくべきである。 近年では、脳卒中の急性期治療の進歩により、脳卒中死は著しく減少したが、消化管出血、硬膜下血腫などは死亡に直結する有害事象であることは、あらためて認識する必要がある。とくにDOACは効果のマーカーがないだけに、高齢者では慎重な処方が必要である。

517.

リバーロキサバンの安定型冠動脈疾患に対する効果(解説:高月誠司氏)-745

 本研究は、抗Xa薬リバーロキサバンの冠動脈疾患患者に対する心血管イベントの2次予防効果を検証した二重盲検試験である。2万7,395例の安定した冠動脈疾患患者を対象とし、リバーロキサバン2.5mg 1日2回+アスピリン100mgの併用群、リバーロキサバン5mg 1日2回単剤群、アスピリン100mg単剤群の3群に無作為割り付けした。主要評価項目は心血管死、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントで、平均23ヵ月の追跡期間である。 結果、主要評価項目の発生は、リバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群よりも少なかった(4.1% vs.5.4%、ハザード比0.76、p<0.001)。しかし、大出血の頻度はリバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群より多かった(3.1% vs.1.9%、ハザード比1.70、p<0.001)。ただし、脳出血や致死的な出血の頻度は変わらなかった。リバーロキサバン単剤群とアスピリン単剤群との比較では、主要評価項目は変わらなかったが、大出血はリバーロキサバン単剤群で多かったという。試験は主要評価項目において、リバーロキサバン・アスピリン併用群が一貫して優位であり、早期中止された。 抗Xa薬、抗トロンビン薬といった新規経口抗凝固薬は心房細動や深部静脈血栓症に対する抗凝固療法薬として広く使用されているが、冠動脈疾患に対する効果も検証されている。アピキサバンのAPPRAISE-2、リバーロキサバンのATLAS ACS-TIMI 51や最近報告されたダビガトランのRE-DUAL PCIなどの報告があり、後2者では肯定的な結果が得られている。本研究の特徴は安定した冠動脈疾患が対象で、心房細動の有無を問わないという点で、リバーロキサバン・アスピリン併用群のアスピリン群に対する有用性が明らかとなった。冠動脈疾患に対しても、抗Xa薬は有用と考えていいだろう。ただし、リバーロキサバン単剤群は5mg 1日2回、併用群のリバーロキサバンは2.5mg 1日2回という用法・用量で、これらはいずれも心房細動に対するそれとは異なる。 心房細動に対する用法・用量は、欧米では20mg 1日1回(減量時15mg 1日1回)、本邦では15mg 1日1回(減量時10mg 1日1回)であり、本研究では低用量を分服している。それでも、本研究のリバーロキサバン単剤群はアスピリン群よりも大出血の頻度が高かった。本研究はリバーロキサバン・アスピリン併用群でアスピリン群よりも、心血管死、脳卒中、心筋梗塞の頻度が少なかったが、サブグループ解析の結果では、その優位性は75歳以上の患者、体重60kg以下の患者では認めなかった。ワルファリンとは異なり、用量調節不要というのが新規経口抗凝固薬の利点であるが、用法・用量の設定が大事だということがわかる。 欧米人と日本人を比較すると、平均で約20kgの体重差がある。少なくとも本研究で用いられた用量は本邦で用いることはできないだろうし、本邦における検討が必要であろう。また、本研究では主要エンドポイントに致命的な出血や有症状の主要臓器の出血を加えたネットクリニカルベネフィットも併用群で頻度が少なかったと報告している。通常ネットクリニカルベネフィットの算出には症状によって重み付けし、たとえば脳出血は1.5倍や2倍として計算することがあるが、本研究では単純に頻度が比べられている。高齢者、低体重など出血が危惧される患者で本当にベネフィットがあるかどうか検証が必要である。

518.

高齢者、抗血栓薬で血尿リスク増大/JAMA

 高齢者の抗血栓薬服用では、血尿関連合併症による泌尿器科処置のリスクが約1.4倍に、入院や救急外来受診のリスクは2倍以上に増大することが示された。なかでも、抗凝固薬と抗血小板薬併用での血尿関連合併症リスクは、約10倍に上るという。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのChristopher J.D. Wallis氏らによる、同国オンタリオ州の高齢者250万例超を対象に行った住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果で、JAMA誌2017年10月3日号で発表された。抗血栓薬は、最も頻度が高い処方薬の1つである。カナダ・オンタリオ州の66歳以上が対象の後ろ向きコホート試験 研究グループは2002~14年にかけて、カナダ・オンタリオ州居住の66歳以上を対象にコホート試験を行い、抗血栓薬服用者の血尿関連合併症の発生について検証した。 血尿関連合併症の発生は、救急外来受診、入院、または肉眼的血尿の検査・管理を目的とした泌尿器科処置の施行と定義した。血尿関連泌尿器科処置リスクは1.4倍、入院リスクは2.0倍に 被検者251万8,064例のうち、抗血栓薬の処方を1回以上受けたのは80万8,897例(平均年齢72.1歳、女性53%)だった。 中央値7.3年の追跡期間中、血尿関連合併症発生率は、抗血栓薬非服用者80.17件/1,000人年に対し、同服用者は123.95件/1,000人年だった(両群差:43.8、95%信頼区間[CI]:43.0~44.6、p<0.001、発生率比[IRR]:1.44、95%信頼区間[CI]:1.42~1.46)。 それぞれの血尿関連合併症の発生率についてみると、血尿関連の泌尿器科処置は、服用者105.78件/1,000人年 vs.非服用者80.17件/1,000人年(両群差:33.5、95%CI:32.8~34.3、p<0.001)で、IRRは1.37(95%CI:1.36~1.39)だった。入院は、11.12 vs.5.42回/1,000人年(両群差:5.7、95%CI:5.5~5.9、p<0.001)でIRRは2.03(95%CI:2.00~2.06)、救急外来受診は7.05 vs.2.51回/1,000人年(両群差:4.5、95%CI:4.3~4.7、p<0.001)でIRRは2.80(95%CI:2.74~2.86)だった。 抗血栓薬非服用者との比較で、抗凝固薬・抗血小板薬の併用服用者は、血尿関連合併症のIRRが10.48(95%CI:8.16~13.45)で、抗凝固薬のみ服用者は1.55(同:1.52~1.59)、抗血小板薬のみ服用者は1.31(同:1.29~1.33)だった。 また、抗血栓薬服用者は非服用者と比べて6ヵ月以内に膀胱がんと診断される可能性が高かった(0.70% vs.0.38%、オッズ比:1.85、95%CI:1.79~1.92)。

520.

高齢者の術後ワルファリン導入、遺伝子型ガイド下は有益か/JAMA

 待機的大腿骨頸部・膝関節形成術を受ける高齢者の周術期ワルファリン療法について、遺伝子型ガイド下投与は臨床的ガイド下投与と比べて、複合リスク(大出血、INR 4以上、静脈血栓塞栓症、死亡)の発生を減少させたことが示された。米国・ワシントン大学のBrian F. Gage氏らによる無作為化試験の結果で、著者は「さらなる試験で、ワルファリンの個別化投与の費用対効果について確認する必要がある」とまとめている。高齢患者へのワルファリン使用は、他の薬物よりも、薬物関連の緊急部門受診で頻度が高い。遺伝子型ガイド下のワルファリン投与が、そうした有害事象を回避可能なのかは明らかになっていなかった。JAMA誌2017年9月26日号掲載の報告。遺伝子型ガイド下 vs.臨床的ガイド下の無作為化試験で有害事象発生を評価 研究グループは、遺伝子型ガイド下投与がワルファリン導入の安全性を改善するかを調べる、Genetic Informatics Trial of Warfarin to Prevent Deep Vein Thrombosis(GIFT試験)を米国の医療施設6ヵ所で行った。対象者は、待機的大腿骨・膝関節形成術を受けワルファリン投与を開始する65歳以上の患者。被験者の遺伝子多型(VKORC1-1639G>A、CYP2C9*2、CYP2C9*3、CYP4F2 V433M)を調べ、2×2要因配置法にて、1~11日目のワルファリン投与(目標INRは1.8または2.5)を遺伝子型ガイド下で行う群、または臨床的ガイド下で行う群に無作為に割り付けた。被験者と試験担当医は、ワルファリンの推奨用量は認識していたが、試験の割り付けと遺伝子型については盲検化された。 主要エンドポイントは、大出血、INR 4以上、静脈血栓塞栓症、死亡の複合。被験者は関節形成術から約1ヵ月後に、下肢部のduplex超音波検査を受けた。 試験登録は2011年4月に始まり、被験者は90日間のフォローアップを受けた。最終フォローアップは2016年10月であった。主要複合エンドポイント発生の絶対差3.9%、相対比率は0.73 1,650例(平均年齢は72.1歳[SD 5.4]、女性63.6%、白人91.0%)が無作為化を受け、831例が遺伝子型ガイド下群に、819例が臨床的ガイド下群に割り付けられた。ワルファリン投与を少なくとも1回受けて試験を完了したのは、1,597例(96.8%)であった(遺伝子型ガイド下群808例、臨床的ガイド下群789例)。 1つ以上のエンドポイント発生が認められたのは、遺伝子型ガイド下群87例(10.8%)に対し、臨床的ガイド下群は116例(14.7%)であった(絶対差:3.9%[95%信頼区間[CI]:0.7~7.2]、p=0.02/相対比率[RR]:0.73[95%CI:0.56~0.95])。 各エンドポイントの発生は、大出血が遺伝子型ガイド下群2例 vs.臨床的ガイド下群8例(RR:0.24、95%CI:0.05~1.15)、INR 4以上は56例 vs.77例(RR:0.71、95%CI:0.51~0.99)、静脈血栓塞栓症は33例 vs.38例(RR:0.85、95%CI:0.54~1.34)、死亡は報告がなかった。

検索結果 合計:984件 表示位置:501 - 520