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AF合併PCI患者の2剤抗血栓療法、1ヵ月vs.12ヵ月(OPTIMA-AF試験)/Lancet

 心房細動を合併した主に慢性冠症候群を有する患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に2剤併用抗血栓療法を1ヵ月行い、その後に直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)単剤療法を行った群は、2剤併用抗血栓療法を12ヵ月行った群と比較し、12ヵ月時の死亡または血栓塞栓性イベントに関して非劣性であることが示され、大出血または臨床的に問題となる非大出血(CRNM)は有意に減少した。大阪大学の外海 洋平氏らOPTIMA-AF Investigatorsが、国内75施設で実施した無作為化非盲検実薬対照並行群間試験「OPTIMA-AF試験」の結果を報告した。心房細動患者におけるPCI後の2剤併用抗血栓療法の至適期間は、依然として不明であった。なお著者は、「1ヵ月併用群で全体として臨床的プロファイルが良好であることが示唆されたが、イベント発生率が予想より低かったため有効性に関する解釈には注意が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年7月15日掲載の報告。DOAC+P2Y12阻害薬併用1ヵ月後DOAC単剤vs.併用継続を比較 研究グループは、非弁膜症性心房細動を合併した、CHADS2スコアが1以上で、慢性冠症候群または不安定狭心症に対するPCIの適応があり、PCI施行後にDOACを用いた抗凝固治療継続が予定されている20歳以上の患者で、エベロリムス溶出ステント(XIENCE)留置に成功した適格患者を、1ヵ月併用群と12ヵ月併用群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 1ヵ月併用群では、DOAC+P2Y12阻害薬(クロピドグレル75mg/日またはプラスグレル3.75mg/日)を1ヵ月間併用投与した後、DOAC単剤療法に切り替えた。12ヵ月併用群では、同様の併用療法を12ヵ月間行った後、DOAC単剤療法に切り替えた。 有効性の主要評価項目は、12ヵ月時の全死因死亡または血栓塞栓性イベント(心筋梗塞、確定ステント血栓症、脳卒中または全身性塞栓症)の複合であった。安全性の主要評価項目は、12ヵ月時の国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血またはCRNMで、盲検下独立委員会の判定に基づいた。 本試験では、有効性主要評価項目に対する非劣性検定を行い(非劣性マージンは絶対群間差の両側95%信頼区間[CI]の上限が5%)、非劣性が示された場合は、安全性の主要評価項目の優越性を検定し、同優越性が示された場合は有効性評価項目の優越性の検定を行う固定順序法が採用された。12ヵ月時の死亡または血栓塞栓性イベントは5.4%vs.4.3%、出血イベントは4.5%vs.8.8% 2019年10月7日~2024年9月3日に、1,101例の適格性評価が行われ、このうち1,088例が無作為化され、試験薬を少なくとも1回投与され事前に規定された基準を満たした1,079例が解析対象集団となった(1ヵ月併用群542例、12ヵ月併用群537例)。 患者背景は、年齢中央値76歳(四分位範囲[IQR]:70~81)、女性225例(21%)、男性854例(79%)、CHADS2スコア中央値は2(IQR:2~3)で、追跡期間中央値は540日(IQR:517~559)であった。 1ヵ月併用群は有効性に関して非劣性基準を満たし、出血リスクに関する優越性も示されたが、有効性に関する優越性は認められなかった。 有効性の主要評価項目のイベントは、1ヵ月併用群で29例、12ヵ月併用群で23例に発生し(Kaplan-Meier推定値5.4%vs.4.3%)、絶対群間差は1.1%(95%CI:-1.5~3.6)、ハザード比(HR)は1.25(95%CI:0.73~2.17)であった。 安全性の主要評価項目の大出血またはCRNMは、1ヵ月併用群で24例、12ヵ月併用群で47例に発生し(Kaplan-Meier推定値4.5%vs.8.8%)、絶対群間差は-4.4%(95%CI:-7.3~-1.4)、HRは0.50(95%CI:0.30~0.81)であった(優越性のp=0.0041)。

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高齢者DLBCL診療における治療強度の考え方【高齢者がん治療 虎の巻】第11回

講師紹介<今回のPoint>高齢者DLBCLでは暦年齢のみで判断せず、G8などのスクリーニングと高齢者機能評価(GA)でfit/unfit/frailを評価し、治療強度を検討する。層別化に応じて、fitには治癒を目指す標準治療、unfitにはR-miniCHOPなどの減量レジメンを検討する。frailでは治療目標を再確認し、低強度治療または緩和的治療を含めて個別に判断する。Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの標準治療の一つであるが、80歳を超える患者では臨床試験のエビデンスが限られる。心機能、併存症、本人の希望を確認し、減量投与を含めて慎重に検討する。<症例>82歳、男性。2ヵ月前から頸部リンパ節腫大と食欲低下、体重減少を認め、近医から紹介された。頸部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)と診断され、免疫染色の結果、Non-GCB型(Hans分類)に分類された。PET-CTを撮影したところ、腹腔内リンパ節にも病変を認め、臨床病期はLugano分類でStage III、LDH高値、ECOG Performance Status(PS)1で、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)はhigh-intermediate riskだった。併存症は高血圧症、持続性心房細動、慢性心不全、2型糖尿病で、抗凝固薬、利尿薬、経口血糖降下薬を内服していた。退職後は自宅近くの畑仕事を日課としており、発症前のADLは自立、買い物や通院も自力で可能だった。最近は倦怠感のため畑に出る頻度が減っているが、身の回りのことは自立している。G8は11点、Charlson Comorbidity Index(CCI)は慢性心不全1点、糖尿病1点の計2点であった。本人は「また畑に出られるようになりたい。治る可能性があるなら、できる治療は受けたい」と話している。一方、家族は「年齢も心臓も心配なので、強い治療は避けたほうが良いのではないか」と不安を示している。高齢者DLBCLの治療方針悪性リンパ腫は高齢者に好発する代表的な造血器腫瘍であり、本邦では年間約3万6,000人が新たに診断され、その多くを70代から80代の患者が占めます1)。組織型としてはDLBCLが最も多く、高齢DLBCL患者を診療する機会は年々増加しています。DLBCLは高齢者であっても、薬物療法によって治癒が目指せる疾患ですが、若年者に比べて予後が不良であることが多く、その背景には生物学的要因や臨床的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)』には、高齢者DLBCLに対する標準治療として、80歳未満に対しては若年者と同様の治療法が、80歳以上の高齢者に対しては、用量あるいはコース数を減らしたR-CHOP療法が妥当な治療選択肢の一つであると記載されています2)。高齢者機能評価(GA)に基づく治療強度の決定高齢者DLBCLでは、暦年齢のみで治療強度を決定するのではなく、患者個々の予備能を評価したうえで治療方針を定めることが重要です。『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』でも、初発高齢者DLBCLの治療方針の判断にGAを行うことが弱く推奨されています3)。GAは、身体機能(ADL・IADL)、併存症、認知機能、栄養状態、社会的サポートなどを多面的に評価する手法であり、これにより患者をfit(標準治療に忍容性がある)、unfit(標準治療は困難だが減量治療は可能)、frail(緩和的対応が中心)に層別化します。簡便なスクリーニングには本症例でも用いられているG8などが、より包括的な評価には総合的なGAが活用されます。fitと判断される患者には、若年者と同様に治癒を目指した標準治療が推奨されます。一方、unfitやfrailと判断される患者では、毒性を軽減しつつ一定の有効性を確保する目的で減量レジメンが選択され、なかでもR-miniCHOP療法が代表的な選択肢です。Peyradeらによる第II相試験では、80歳以上のDLBCL患者に対し、標準量の約半量に減量したR-miniCHOP療法が、忍容性良好でありながら治癒も期待できることが示され、高齢者に対する標準的選択肢の一つとして位置付けられています4)。Pola-R-CHP療法という新たな選択肢近年、初発DLBCLに対する治療は大きく変化しました。第III相POLARIX試験では、R-CHOP療法のビンクリスチンを抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)に置き換えたPola-R-CHP療法が、従来のR-CHOP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、本邦でも初発DLBCLに対する標準治療の一つとして位置付けられるようになりました5)。サブグループ解析では、60歳以上の高齢者やIPI高リスク群、Non-GCB(ABC)型などでPola-R-CHP療法の相対的な有用性が示唆されています。本症例のような高齢・Non-GCB型のDLBCLは、Pola-R-CHP療法の効果が期待される集団と考えられます。ただし、POLARIX試験の対象は18〜80歳であり、80歳を超える高齢者は含まれていません。したがって、本症例のような80歳を超える患者にどこまで適応を広げてよいかは、現時点で明確なエビデンスがありません。近年は80歳以上を含む実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)が少しずつ報告されつつあり6)、ポラツズマブ ベドチンに併用するCHPを適切に減量することで、80歳以上でもPola-R-CHP療法を安全に実施しうる可能性が示されています。一方で、心機能低下例などアントラサイクリンの使用が難しい症例も少なくなく、適応は個々の予備能と併存症を踏まえて慎重に判断する必要があります。本症例への治療方針本症例を改めて整理すると、82歳と高齢であり、PS 1、ADLは自立していますが、G8 11点、CCI 2点で、機能的にはおおむねunfitに近い状態と評価できます。本人は治癒を目指した治療を希望していますが、持続性心房細動や慢性心不全といった心疾患を有し、ドキソルビシンによる心毒性のリスクには十分な注意が必要です。また、組織型はNon-GCB型であり、Pola-R-CHP療法の上乗せ効果が期待しやすい点は、治療選択の後押しとなります。以上を踏まえると、治療開始前に心エコーなどで心機能を評価し、ドキソルビシンの使用が許容される場合には、CHPを適切に減量したPola-R-CHP療法も選択肢となります。ただし、80歳を超える患者はPOLARIX試験の対象外であることから、現時点では実臨床データに基づく慎重な判断が必要です。もし心機能低下が明らかな場合には、ドキソルビシンを含まないレジメンも検討する必要があります。いずれの場合も、本人・家族の意向と予備能を共有しながら、治療強度を個別に最適化していく姿勢が重要です。G-POWER研究:日本の高齢DLBCLに合ったGAを目指して高齢DLBCLに対するGAの活用は国際的に進んでいますが、海外のデータをそのまま日本の実臨床に当てはめることには限界があります。生活環境、家族支援、医療アクセス、入院・外来治療の体制、介護保険を含む社会制度は国によって異なるためです。現在、国内において70歳以上の高齢DLBCL患者を対象に、GAの意義を明らかにする多施設前向き観察研究(G-POWER研究)が進められています7)。本研究では、G8、ADL、IADL、認知機能、うつ状態、併存症、Clinical Frailty Scaleなどを評価し、初回治療の内容、有害事象、治療完遂、予後との関連を検討します。日本の高齢DLBCL患者において、どのGA項目が治療選択や有害事象予測に本当に役立つのかを明らかにすることは、今後の実臨床に直結する課題です。GAを「評価して終わり」にせず、治療を支える具体的な介入につなげるためにも、本邦独自のエビデンス構築が期待されます。 1) がん情報サービス:全国がん登録 2) 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 2024年版. 金原出版. 2024. 3) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 南江堂. 2026. 4) Peyrade F, et al. Lancet Oncol. 2011;12:460-468. 5) Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363. 6) Yamada T, et al. Ann Hematol. 2025;104:5191-5200. 7) UMIN-CTR:臨床登録試験情報(G-POWER研究)

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ECMO中の抗凝固療法、未分画/低分子ヘパリンでも出血低減/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)施行中の患者における抗凝固療法として、低用量のUFH(未分画ヘパリン)および治療用量のLMWH(低分子ヘパリン)は、重度出血・重度血栓塞栓性合併症・全死亡の複合エンドポイントに関して、標準用量のUFHに対し非劣性であることが認められた。オランダ・フローニンゲン大学医療センターのOlivier van Minnen氏らDutch ECLS Study Groupが、同国7施設の集中治療室(ICU)で実施した無作為化非盲検非劣性試験「RATE試験」の結果を報告した。ECMO中の血栓症リスク低減に対しては、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)をベースライン値の2.0~2.5倍に維持することを目標としたUFH静脈内投与が標準治療であるが、このアプローチは出血リスクを高める可能性が懸念されていた。著者は、「本結果は、抗凝固療法目標値を低く設定することで出血関連有害事象を低減できる可能性を示唆するものであり、ECMO中の抗凝固療法目標値の見直しを支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年7月7日号掲載の報告。低用量UFH、治療用量LMWHの標準用量UFHに対する非劣性を評価 研究グループは、治療チームにより可逆性があると判断された重度の呼吸不全または循環不全、あるいは移植の橋渡しとして開始された静脈-静脈(VV)または静脈-動脈(VA)-ECMOを受けている18歳以上の成人患者で、全量抗凝固療法の絶対的適応(例:機械弁僧帽弁など)がない患者を、標準用量UFH群(aPTTをベースラインの2.0~2.5倍として静脈内投与)、低用量UFH群(同1.5~2.0倍)、LMWH群(体重および腎機能に応じて調整した用量を1日2回皮下投与)のいずれかに、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。追跡調査担当の研究スタッフは、割り付けについて盲検化された。 主要アウトカムは、ECMO中の重度出血(Extracorporeal Life Support Organization[ELSO]レジストリの基準に基づく)、ECMO中の重度血栓塞栓性合併症、および6ヵ月時点の全死因死亡の複合であった。 解析は、6ヵ月後の追跡データがあり、意識回復後の事後同意が得られた無作為化されたすべての患者を対象として、ITTの原則に従って実施し、非劣性マージンは絶対リスク群間差の95%信頼区間(CI)の上限が7.5%ポイント未満とした。重度出血、重度血栓塞栓性合併症および全死亡の複合で、非劣性を検証 2020年10月22日~2024年9月12日に330例が標準用量UFH群、低用量UFH群、LMWH群に無作為に割り付けられた(各群110例)。このうち、6ヵ月時の主要解析の対象は、320例(男性225例[70%]、女性95例[30%]、年齢中央値56歳[四分位範囲:45~65]、白人255例[80%])であった。 主要アウトカムのイベント発生は、標準用量UFH群107例中87例(81%)に対して、低用量UFH群では108例中78例(72%)に認められ(絶対リスク群間差:-9.1%ポイント、95%CI:-20.3~2.1)、LMWH群では105例中79例(75%)に認められ(絶対リスク群間差:-6.1%ポイント、95%CI:-17.2~5.0)、いずれも非劣性基準を満たしていた。 重度出血は、標準用量UFH群70例(65%)に対して、低用量UFH群で63例(58%)、LMWH群で62例(59%)に認められ、重度血栓塞栓性合併症は、それぞれ12例(11%)、11例(10%)、9例(9%)に認められ、これらの差は統計学的に有意ではなかった。 6ヵ月時点の死亡は、標準用量UFH群で54例(50%)、低用量UFH群で45例(42%)、LMWH群で46例(44%)であった。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Left Atrial Appendage Closure or Anticoagulation for Atrial FibrillationDoshi SK, et al. N Engl J Med. 2026;394:2083-2094.<CHAMPION-AF試験>:心房細動患者で、左心耳閉鎖デバイスかDOACかの比較試験抗凝固療法適応の心房細動患者で、左心耳閉鎖術と直接経口抗凝固薬(DOAC)療法を比較したRCT試験の3年追跡結果です。左心耳閉鎖術は、心血管死・脳卒中・全身塞栓症の複合エンドポイントに対する有効性で非劣性を達成し、非手技関連出血を有意に減らしました。DOACを内服可能な患者に積極的に左心耳閉鎖術を行うべきか、という課題に応える画期的な研究といえます。ただし、3年間という追跡期間や熟練施設での成績であることを踏まえて解釈する必要があります。 Left Ventricular Unloading in Anterior ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Shock: The ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Door to Unload Randomized Controlled TrialKapur NK, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;88:76-90.<STEMI-DTU試験>:前壁STEMI患者にImpellaによる左室アンローディングと再灌流遅延を検証急性心筋梗塞(STEMI)治療では、“Time is muscle”という概念のもと、PCIによる再灌流までの時間短縮が最重要視されてきました。STEMI-DTU試験では、Impellaによる左室アンローディングを先行させ、あえて30分間PCIを遅らせるという戦略が検証されました。この新規治療戦略は、即時PCIの標準治療に対して梗塞サイズを縮小させることはなく、出血・血管合併症は増加しました。Randomized, Placebo-Controlled Trial of Chronic Total Occlusion Percutaneous Coronary Intervention in Stable Angina: The ORBITA-CTO TrialKhan S, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;88:4-18.<ORBITA-CTO試験>:CTO-PCIの症状改善効果をシャム手術対照で検証慢性完全閉塞(CTO)による安定狭心症患者を対象とした二重盲検シャム対照RCTです。CTOに対するPCIは、プラセボ効果や期待効果の影響を受けやすいという課題がありました。本試験では、PCI群とシャム手術(偽PCI群)を比較しています。PCI群で有意に改善効果は認めたものの、死亡や心筋梗塞など重篤イベントは差を認めず、効果は主に症状改善に限定されました。CTO-PCIの適応は、症状緩和のための戦略として考慮されるべきと解釈されます。Stem-Cell-Derived Biologic Ventricular Assist Tissue in Heart FailureZimmermann WH, et al. N Engl J Med. 2026;394:1991-2001.<BioVAT-HF試験>:iPS細胞由来“心筋パッチ”による再筋化治療の初期検証試験重症HFrEF患者(LVEF≦35%)に対しiPS細胞由来のシート状の心筋組織(BioVAT)を外科的に移植する第I/II相試験です。心筋壁厚増加、LVEF改善(約+4%)、QOL改善が観察されました。安全性はおおむね許容範囲で、再筋化による心機能改善の可能性が示されました。「心筋再生医療が実用化された」と結論付ける段階ではなく、「心筋再生医療が新たな段階に入った第一歩」と評価すべきです。Predictors of Long-Term Outcomes in Hypertrophic Cardiomyopathy: The NHLBI HCM RegistryHCMR Investigators. JAMA. 2026;335:1959-1969.<NHLBI HCM Registry>:多面的データ統合による肥大型心筋症の予後予測モデル検証研究 NHLBI HCM Registry(HCMR)は、2,700例の肥大型心筋症を前向き登録し平均約7年追跡し、臨床・遺伝子・バイオマーカー・心臓MRI(CMR)を統合して予後予測を検討している試験です。心臓MRI遅延造影とNT-proBNPが有用な予測因子でした。従来の突然死を中心としたモデルより予測精度が向上し、心不全や移植リスクも含めた包括的な有用性が示されました。

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英語でもある「血液をサラサラにする薬」の言い回し【患者と医療者で!使い分け★英単語】第67回

医学用語紹介:抗凝固薬 anticoagulantanticoagulantは「抗凝固薬」を意味する医学用語ですが、この医学用語を英語で伝えても患者さんには伝わりにくい場合がほとんどです。では、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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血栓回収療法成功後のtirofiban、機能的自立を改善/Lancet

 前方循環系の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を発症し血栓除去術(EVT)による再灌流が成功した患者において、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬であるtirofibanの投与は、プラセボと比較し機能的自立を改善し、症候性頭蓋内出血の発生割合に有意差はなかったことが示された。中国・Tongji Medical CollegeのHao Huang氏らATTRACTION Investigatorsが、同国82施設で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATTRACTION試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中でEVTにより再灌流に成功しても、必ずしも機能的自立が得られるわけではない。tirofibanは、静脈内血栓溶解療法後の急性虚血性脳卒中における補助的な抗血小板療法として検討されているが、EVT後の投与を支持する研究結果が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年6月24日号掲載の報告。EVTで再灌流に成功した虚血性脳卒中患者を対象、tirofiban群vs.プラセボ群 研究グループは、18歳以上、最終健常確認時から24時間以内で、前方循環系の大血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中を発症しEVTにより再灌流が成功した患者を、施設で層別化した固定ブロック法を用い、tirofiban群(5μg/kgを動脈内ボーラス投与後0.1μg/kg/分で持続静脈内投与を最長24時間継続)、またはプラセボ群(同様の用量および投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験薬投与終了後の抗血栓療法およびその他の脳卒中治療は、最新のガイドラインに従って行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア:0~2点)の患者割合で、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象集団とした。 安全性のアウトカムは、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血および画像診断による頭蓋内出血所見、ならびに90日全死亡率などで、試験治療を受け少なくとも1回の安全性評価が行われた患者を解析対象集団とした。90日時の機能的自立、tirofiban群49%vs.プラセボ群43% 2024年4月9日~2025年9月29日に、1,686例がスクリーニングを受け、このうち1,380例がtirofiban群(689例)またはプラセボ群(691例)に無作為に割り付けられた。 患者背景は、年齢中央値71歳(四分位範囲:62~77)、女性が591例(43%)、男性が789例(57%)、漢民族が1,367例(99%)であり、90日時の追跡不能例は認められなかった。 90日時の機能的自立は、tirofiban群で340/689例(49%)、プラセボ群で299/691例(43%)に認められた(絶対リスク群間差:6.1%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.8~11.3、p=0.023]、補正後リスク比:1.15[95%CI:1.03~1.27、p=0.0092])。 48時間以内の症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で12%(82/687例)、プラセボ群で9%(65/691例)、48時間以内のあらゆる頭蓋内出血はそれぞれ34%(235例)、32%(219例)に認められ、90日死亡率はそれぞれ18%(126例)、19%(131例)であり、いずれも両群間に差はなかった。

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症候性リウマチ性心疾患でジゴキシンの追加は心不全の新規発症・悪化を減らす(解説:原田和昌氏)

 リウマチ性心疾患(RHD)は中低所得国の若年層における罹患および死亡の重要な原因であり、世界で4,000万人以上が罹患し、年120万件の心不全と約32万人の死亡を引き起こす。中低所得国で左室駆出率(EF)が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連する。RHD患者の心不全は主に僧帽弁狭窄症であり、心拍数の増加や心房細動の発症にて左心房圧と肺静脈圧が上昇し症状が悪化する。有症状患者のすべてが手術や介入治療の対象とはならず多くは薬物療法を受けているが、RHDの心不全に対する薬物療法は評価されていない。インドのKarthikeyan氏らは国内12施設で行われた二重盲検RCTであるDig-RHD試験にて、若年の症候性RHD患者で経口ジゴキシンは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを軽減することを示した。 心エコーでRHDと確定され、ジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録し、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。主要複合アウトカムは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化であった。平均年齢46歳、72%が女性、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類II~IV度、85%が中等度から重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均EFは58%、34%がジゴキシンの投与を受けており、約35%が経皮的僧帽弁形成術ないしは弁置換術を受けていた。 主要複合アウトカムはプラセボ群の35.5%に対し、ジゴキシン群は31.4%と有意に少なかった。心不全の新規発症・悪化はジゴキシン群で有意に低かった(HR:0.82)。中低所得国でみられるように、心不全の悪化のほとんどが入院を要せず、利尿薬の増量で治療された。全死因死亡に有意な差を認めなかった。心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(HR:0.82)。心不全関連死または心不全による入院の複合、心不全関連死、突然死に差はなかった。 β遮断薬、MRAを含む利尿薬、抗凝固薬などの治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシン追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムを低減した。これは心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた。すでにジゴキシンを服用していた患者や心房細動を有していた患者で、ジゴキシンの有益性が大きかった。ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現は少なかったが、患者が若く、併存疾患が少なく、腎機能が良好であったからかもしれない。中低所得国の若年層のRHDにおいて少量のジゴキシンは安価であることもあり、非常に有用かもしれない。 DIG試験でジゴキシンは心不全入院を減らす一方、全死亡を減らさなかった。これまでジゴキシンはカルシウム過負荷を来し、心拍数抑制はむしろ安静時に強いこともあり生命予後を改善しないと考えられてきた。しかし、最近JAMA誌に掲載された、「HFrEF/HFmrEF患者に関するジギタリス配糖体のメタ解析(DIG試験を含む)」では、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残る患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らしたという。年齢、基礎疾患、EF、基礎治療薬も異なる群ではあるが、(安価な)ジゴキシンを心不全悪化イベントを減らす補助薬として見直すべき時なのかもしれない。

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喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第309回

喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ喀血の原因といえば、結核、肺アスペルギルス症、肺がん、気管支拡張症あたりが定番です。呼吸器内科医なら、喀血と聞いた瞬間に頭の中で鑑別がズラッと並びます。ところが今回の異物論文は、その鑑別リストに絶対載っていない犯人を連れてきました。Abd Alkareem AA, et al. Nasopharyngeal hirudiniasis, a rare cause of masked hemoptysis in an older patient: A case report. J Int Med Res. 2026 Jun;54(6):3000605261453283.患者は、高血圧以外は元気な62歳の男性。タバコは吸いません。2週間前から血を吐くようになり、喉の違和感も続いていました。発熱も、嗄声も、息切れもなし。地元の病院では原因がわからず、専門医に紹介されてきました。高齢男性で2週間も喀血が続けば、たとえ非喫煙者でも、普通は肺がんや結核、心血管系の病気を疑って精査に入ります。実際この論文でも、最初はそうした方向で考えられていました。ところが、診察医が喉を覗いた瞬間、事態は一変します。え? 喉の奥で、何かが動いている。しかも、見えたと思ったらスッと引っ込む。落ち着け…、落ち着けオレ…! そう思ったに違いありません。鼻咽腔内視鏡を入れてみると、上咽頭の壁に、何かがくっついて、もぞもぞ動いていました。もう、嫌な予感しかしません。口蓋垂を持ち上げて視野を確保し、鉗子でそいつをつかんで引っ張り出す。エエイッ!なんと、出てきたのは、体長およそ3cmの、 生きたヒルでした。いやああああ!!! またこのタイプの論文かよおおお!!!!なぜ、ヒルで喀血したのでしょうか。実はヒルの唾液には、ヒルジンという強力な抗凝固物質と、局所麻酔成分が含まれています。だから噛みついても痛くないし、いったん吸血を始めると血が止まりにくくなります。つまり出血の正体はヒルがせっせと分泌していた天然の抗凝固薬だったわけです。実際、ヒルを取り除いた瞬間、出血はピタッと止まりました。患者さんにあらためて話を聞くと、3週間ほど前に、処理していない池の水を飲んでいたとのこと。水と一緒に幼いヒルを飲み込み、上咽頭に定着してしまったようです。2次感染予防に抗菌薬を1週間処方し、2週間後の再診でも再発はありませんでした。よかったよかった。

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がん関連VTEのDOACによる出血リスク、新たな予測モデルが有用か

 直接経口抗凝固薬(DOAC)治療を受けるがん関連静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象に開発された出血リスク予測モデル「ONCO-DOAC BLEEDスコア」は、既存の出血リスクスコアと比較して大出血リスクを良好に層別化できることが示された。本結果は京都府立医科大学循環器内科の長井 智之氏や中西 直彦氏ら(COMMAND VTE Registry-2)が報告し、JACC:CardioOncology誌2026年6月号に掲載された。  本研究グループは、国内31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究「COMMAND VTE Registry-2」のデータを使用。VTE診断時に活動性がんを有していた1,507例のうち、経口抗凝固療法未実施例、ワルファリン投与例、血栓溶解療法施行例を除外した1,166例を開発コホートとして作成、解析した。主要評価項目は、大出血(国際血栓止血学会[ISTH]基準)の発生とした。 多変量Cox比例ハザード解析より、大出血と独立して関連する予測因子(各1点)として、(1)大出血の既往、(2)慢性腎臓病(CKD)、(3)NSAIDsの使用、(4)遠隔転移のあるがん、(5)末期がん、(6)上部消化管がん、(7)膵臓がん、(8)子宮がんの8項目を特定し、「ONCO-DOAC BLEEDスコア」を構築。合計点に基づき、低リスク(0点)、中リスク(1点)、高リスク(2点以上)の3群に分類した。さらに、国内臨床試験のONCO DVT試験(601例)およびONCO PE試験(178例)の計779例を検証コホートとした。  主な結果は以下のとおり。・開発コホート(1,166例、追跡期間中央値163日)において127例(10.9%)が大出血を経験し、構築されたスコアの1年累積大出血発現率は低リスク群5.7%、中リスク群8.9%、高リスク群21.2%と、有意なリスク層別化が示された(p<0.001[Gray's test])。 ・開発コホートでのONCO-DOAC BLEEDスコアの識別能(C-index)は、Harrell's C-indexで0.68(95%信頼区間[CI]:0.62~0.73)、Uno's C-indexで0.67(95%CI:0.62~0.72)を示し、既存スコア(VTE-BLEED:0.55、RIETE:0.58、CAT-BLEED:0.58、Perform:0.54)と比較して有意に高い識別能を発揮した(p値はそれぞれ<0.001、0.004、0.002、<0.001)。 ・検証コホート(779例、うち53例が大出血を経験)においても、1年累積大出血発現率は低リスク群6.6%、中リスク群8.6%、高リスク群18.2%と段階的な上昇を示した(p=0.003[Gray's test])。 ・検証コホートにおける識別能はHarrell's C-indexで0.62(95%CI:0.54~0.70)、Uno's C-indexで0.63(95%CI:0.54~0.71)で、既存スコア(VTE-BLEED:0.60、RIETE:0.60、CAT-BLEED:0.55、Perform:0.53)と同等以上の予測能を維持し、キャリブレーションにより予測リスクと実際の観察イベント発生率との良好な一致が確認された。  研究者らは「ONCO-DOAC BLEEDスコアは、DOAC治療中のがん関連VTE患者での大出血リスク予測において、臨床的に意義のある層別化を可能にし、日常診療における個別化された治療意思決定をサポートしうる」とし、「本スコアを用いて高リスク患者を特定することは、より綿密な臨床フォローアップや併用薬(とくにNSAIDs)の見直し、病状モニタリングにつながり、安全な長期抗凝固療法の継続と最適ながん治療・VTE管理の両立に貢献することが期待される。ただし、本研究コホートは日本人のみで構成されているため、今後は欧米などほかの民族集団における外部検証を進める必要がある」と結論付けている。

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【GET!ザ・トレンド】脳血管内治療の新分野「脳血管内電極」の最前線

脳血管内治療の技術を応用して、脳活動を血管内から記録または刺激する「endovascular neural interface(血管内神経インターフェース)」の現状と臨床応用の可能性を整理した総説論文がJournal of NeuroInterventional Surgery(JNIS)に掲載された1)。本記事ではこの論文を紹介する。血管内神経インターフェースの概要と意義脳活動の記録には、従来から頭皮脳波が広く用いられている。頭皮脳波は安全で非侵襲的であり、日常診療でも実施しやすい。一方で、頭蓋骨や頭皮を介して信号を記録するため、信号は減弱し、空間分解能にも限界がある。特に、深部や脳溝内、限局した皮質領域に由来する活動は捉えにくい。これに対して、硬膜下電極や定位的頭蓋内脳波(SEEG)は、より高品質な信号を得ることができるが、開頭や穿頭、脳実質内への電極挿入を伴うため、出血や感染などの侵襲性が課題となる。脳血管内神経インターフェースは、この「低侵襲だが信号に限界がある頭皮脳波」と、「高品質だが侵襲的な頭蓋内電極」の中間に位置する新しいアプローチである。この技術の基本的な発想は、静脈洞や皮質静脈など、脳表に近接する血管内に電極を留置し、血管の内側から脳活動を記録する点にある。脳血管内治療で日常的に用いられているカテーテル操作を応用できるため、開頭を避けながら脳に近い位置から信号を取得できる可能性がある。とくに静脈系は、脳表に近い走行を取るうえ、比較的拍動の影響が少ないことから、電極留置の標的として有望である。ただし、血管内にデバイスを置く以上、血栓形成、血管閉塞、デバイス移動、血管解剖の個人差、抗血栓療法の必要性など、脳血管内治療に共通する管理上の課題を避けて通ることはできない。したがって、この分野では「信号が取れるか」だけでなく、「血管内デバイスとして安全に留置・管理できるか」が臨床応用の鍵となる。臨床応用のフロントランナー:StentrodeとEP-01現在、臨床応用に近い代表的なプラットフォームとして、StentrodeとEP-01が挙げられる。・Stentrode(本邦未承認品)Stentrodeは、Synchronが開発するステント状電極で、主に筋萎縮性側索硬化症の患者に対するbrain–computer interface(BCI)を目的とした慢性留置型デバイスである。上矢状静脈洞に留置し、運動野近傍から長期的に脳活動を記録する。初期のヒト臨床研究では、重度麻痺患者がBCIとしてのStentrodeを用いて、考えるだけでデジタル機器操作が可能となり、12ヵ月時点で重篤なデバイス関連有害事象、静脈閉塞、明らかなデバイス移動は報告されていない。一方で、慢性留置型であるため、抗血小板療法の期間、長期開存性、内皮化、リードやコネクタの耐久性、将来的な再治療や抜去の可否などが、今後の重要な検討課題である。・EP-01(本邦未承認品)EP-01は日本で開発された、難治性てんかんの術前評価を念頭に置いた一時留置型の脳血管内脳波デバイスである。両側内頸静脈からアプローチし、横静脈洞、海綿静脈洞、上矢状静脈洞など複数の静脈内に電極を配置できる点が特徴である。従来の頭皮脳波では検出できないてんかん性放電を、脳表に近い静脈内から検出できる可能性が前臨床・初期臨床研究で示されている。とくに、左右どちらの半球にてんかん焦点があるかを判断する「側方診断」への応用が期待されている。現在進行中のEPSILON IE試験では、従来の頭蓋内脳波との診断一致を主要評価項目として、難治性焦点てんかん患者における有効性と安全性を検証中である。デバイスの使用方法とチーム医療の必要性EP-01はStentrodeとは異なり、長期留置を目的とした完全植込み型ではなく、最大約2週間の一時留置と抜去を前提としている。そのため、既存のてんかんモニタリング環境に接続しやすい一方で、体外に出るリードの固定、感染予防、留置中の血栓リスク管理が重要となる。血管内デバイスでありながら、脳波モニタリング機器でもあるという二面性を持つため、脳血管内治療医、てんかん専門医、臨床神経生理・看護・検査部門を含めたチーム医療が不可欠である。今後の展望:既存技術を補完する新しい選択肢へ本論文の重要なメッセージは、血管内神経インターフェースが既存の頭皮脳波、硬膜下電極、SEEGを直ちに置き換える技術ではなく、症例に応じて補完的に用いられる可能性のある新しい選択肢だという点である。今後の臨床導入には、信号検出の実証だけでなく、診断や治療方針を実際に変える臨床的有用性、安全な手技の標準化、血管開存性の長期評価、デバイス不具合や感染への対応を明確にする必要がある。将来的には、てんかん診断、BCI、ニューロモデュレーション、さらには集中治療領域での脳モニタリングなどへ応用が広がる可能性があり、脳血管内治療と神経科学を結びつける新しいトランスレーショナル分野として注目される。 1) Hosoo H, et al. J NeuroIntervent Surg 2026;0:1-7

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DOACに併用するNSAIDs、出血リスクが低いのは?

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に関連する消化管出血について、関節リウマチや変形性関節症などでは、COX-2選択的NSAIDsを用いたほうがリスクが低いと報告されている。しかし、直接経口抗凝固薬(DOAC)による治療を受けている非弁膜症性心房細動(NVAF)など、出血リスクが高い集団におけるCOX-2選択的NSAIDsの有益性は明らかになっていない。そこで、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のFabian Maximilian Meinert氏らの研究グループは、NVAF患者におけるDOACとNSAIDsの併用について、NSAIDsをCOX-2選択性で分類し、出血リスクを比較した。その結果、COX-2選択的NSAIDsは消化管出血および非消化管出血リスク低下と関連していた。本研究結果は、JAMA Network Open誌2026年5月26日号に掲載された。 研究グループは、英国のClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumデータベースおよびカナダ・ケベック州の医療請求データを用いてコホート研究を実施した。対象は、2011~20年に、DOACとNSAIDsの併用を開始した成人NVAF患者とした。DOACはアピキサバン、ダビガトラン、エドキサバン、リバーロキサバンを対象とした。NSAIDsは、COX-2選択的NSAIDs(エトドラク、ジクロフェナク、セレコキシブ、メフェナム酸、メロキシカム、rofecoxib)※と非選択的NSAIDs(イブプロフェン、インドメタシン、オキサプロジン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど)に分類した。主要評価項目は消化管出血による入院、副次評価項目は非消化管出血による入院とした。傾向スコアに基づく逆確率重み付けを用いて、Cox比例ハザードモデルでデータベース別のハザード比(HR)を推定した後、ランダム効果モデルで統合した。※:本研究では既報の分類に従いCOX-2選択的NSAIDsとして扱われたが、ジクロフェナクやメフェナム酸、メロキシカムといったCOX-1阻害作用を一定程度有する薬剤も含まれた 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、DOACとNSAIDsの併用を開始したNVAF患者3万240例(英国のデータベース1万335例、カナダのデータベース1万9,905例)であり、3万7,833件の併用エピソードを対象とした。平均年齢は72.1歳、男性は56.7%であった。・英国では、COX-2選択的NSAIDsとしてジクロフェナクが最も多く使用され、非選択的NSAIDsではナプロキセンが最も多かった。カナダでは、COX-2選択的NSAIDsとしてセレコキシブが最も多く、非選択的NSAIDsではナプロキセンが最も多かった。・消化管出血の粗発生率(1,000人年当たり)は、英国ではCOX-2選択的NSAIDs群20.47、非選択的NSAIDs群34.77であった。カナダでは、それぞれ27.04、52.52であった。データを統合すると、COX-2選択的NSAIDsの併用は非選択的NSAIDsの併用と比較して、消化管出血リスク低下と関連していた(重み付けHR:0.63、95%信頼区間[CI]:0.46~0.87)。・非消化管出血の粗発生率(1,000人年あたり)は、英国ではCOX-2選択的NSAIDs群17.92、非選択的NSAIDs群34.82であった。カナダでは、それぞれ31.31、66.92であった。データを統合すると、COX-2選択的NSAIDsの併用は非選択的NSAIDsの併用と比較して、非消化管出血リスク低下と関連していた(重み付けHR:0.54、95%CI:0.40~0.74)。・サブグループ解析において、女性ではCOX-2選択的NSAIDs併用に伴う消化管出血リスク低下がより大きい可能性が示された。女性の重み付けHRは0.50(95%CI:0.31~0.80)、男性では0.85(95%CI:0.55~1.32)であった。

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抗凝固療法適応の心房細動患者、左心耳閉鎖術の非劣性を確認/NEJM

 抗凝固療法適応の心房細動患者において、Watchman Flx(米国・Boston Scientific製)デバイスを用いた左心耳閉鎖術は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)療法と比較し、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合エンドポイントに関して非劣性、かつ3年時の手技に関連しない出血に関して優越性が示された。米国・Cedars-Sinai Smidt Heart InstituteのShephal K. Doshi氏らCHAMPION-AF Investigatorsが、16ヵ国の141施設で実施中の無作為化試験「CHAMPION-AF試験」の、3年追跡解析結果を報告した。心房細動患者では、脳卒中予防のための経口抗凝固療法は出血リスクによって制限される。左心耳閉鎖術は、長期抗凝固療法が適さない患者で検討されるが、抗凝固療法適応患者における臨床的意義は確認されていなかった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。抗凝固療法適応の脳卒中リスクが高い心房細動患者を無作為化 研究グループは、抗凝固療法の適応となる脳卒中のリスクが高い心房細動患者(CHA2DS2-VAScスコアが男性は≧2、女性は≧3[スコア範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す])を、Watchman Flxデバイスを用いた左心耳閉鎖術群(デバイス群)またはNOAC群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 デバイス群では、無作為化14日以内にデバイスを留置し、その後3ヵ月間、NOAC+アスピリン併用療法、NOAC単剤療法、または抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)のいずれかを行った後、アスピリンまたはP2Y12阻害薬の単剤療法を推奨した。NOAC群のレジメンは、標準臨床ガイドラインに準拠した。 有効性の主要エンドポイントは、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合で、非劣性マージンを4.8%とした。安全性の主要エンドポイントは、3年時の手技に関連しない出血(ISTH基準の大出血または臨床的に重要な非大出血)とし、有意水準両側0.05で優越性を評価した。3年時の心血管死・脳卒中・全身性塞栓症の複合、デバイス群5.7%vs.NOAC群4.8% 計3,000例が無作為化された(デバイス群1,499例、NOAC群1,501例)。患者背景は、平均(±SD)年齢71.7±7.5歳、女性が31.9%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3であった。 3年時の有効性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で81例(Kaplan-Meier推定値5.7%)、NOAC群で65例(4.8%)に発生した。群間差は0.9%(95%信頼区間[CI]:-0.8~2.6)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを下回った(非劣性のp<0.001)。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で154例(Kaplan-Meier推定値10.9%)、NOAC群で260例(19.0%)に発生した。ハザード比は0.55(95%CI:0.45~0.67)で、優越性が示された(優越性のp<0.001)。 なお、著者らは、非劣性マージンを絶対値で設定したこと、使用した左心耳閉鎖デバイスは1種類のみであったこと、対象患者の大半はCHA2DS2-VAScスコアが4以下であったため最もリスクの高い患者には一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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脳梗塞治療と心筋梗塞治療の類似性と相違(解説:後藤信哉氏)

 今の若い世代の循環器内科医にとって、心筋梗塞に対する再灌流療法は冠動脈インターベンションであろう。1986年から循環器内科医をしている筆者は、心筋梗塞治療に血栓溶解療法が主流になりそうな時代があったことを知っている。血栓溶解療法には内因系のプラスミノーゲンをプラスミンに転換することにより、線溶効果を狙う。ヒトの身体はバランスが取れているので、線溶を亢進させれば、体内の血栓性も亢進する。血栓溶解療法には血小板、凝固系を阻害する抗血栓療法の併用が必須である。われわれは1980~90年代に多数の抗凝固薬、抗血小板薬の併用を試してきた。 脳梗塞治療では血管インターベンションが血栓溶解療法を完全に置換してはいない。本研究でも血栓溶解療法施行時の併用療法が比較された。心筋梗塞後も、当初は抗血小板併用療法が試された。本研究でもチカグレロルを早期から開始する抗血小板併用療法にて予後が改善されたと報告されている。 チカグレロルの用量として循環器と同様90mg bidが選択されている。急性冠症候群では国際共同試験では90mg bidがクロピドグレルよりも有効とされた。しかし、日本などの東アジアではglobal試験の優越性を確認できなかった(Goto S, et al. Circulation Journal. 2015;79:2452-2460.)。本試験は中国にて施行されたがglobal doseが選択されたのは興味深い。 出血合併症から考えれば線溶療法より冠動脈インターベンションが優れていることが心筋梗塞では示されている。抗血小板薬併用療法も、出血合併症リスクが循環器では強調されている。現在、脳領域は1980~90年代の循環器内科を追いかけているようだが、脳梗塞治療も心筋梗塞治療同様カテーテルインターベンションの時代になるのか? いつまでも線溶療法の時代が持続するのか? 興味深く見守りたい。

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高齢者の前立腺がん疑い、本当にすぐに検査すべき?【高齢者がん治療 虎の巻】第9回

講師紹介<今回のPoint>高齢者のPSA高値では、前立腺がんの早期発見という利益だけでなく、前立腺生検の負担や過剰診断の不利益も考える必要がある。PSAが軽度〜中等度に上昇している場合には、PHIなどのバイオマーカーやMRIを活用することで、前立腺生検に進むべきかをより慎重に判断できる可能性がある。高齢者では、期待余命、フレイル、併存疾患、患者の価値観を踏まえたshared decision making(SDM)が重要である。<症例>78歳、男性。検診でPSA 6.9ng/mLを指摘され、クリニックを受診。一昨年に狭心症発作に対して冠動脈ステント留置術を受けており、糖尿病、高血圧の薬に加えて抗血小板薬を内服している。PSA高値について総合病院での精査を提案すると、「症状なんて何にもない。おしっこの悩みもないのに、精密検査は絶対に受けなければならないのか?」と話され、精査については躊躇される気持ちがあった。この患者に対して、すぐに侵襲的な検査である前立腺生検を勧めるべきでしょうか。それとも、患者と相談し、慎重に経過をみることを選択肢に持つべきでしょうか。“PSA高値=すぐ前立腺生検”でよいのか?PSA検査と、それに続く前立腺生検の目的は、前立腺がんを見つけて、必要な患者を根治に導くことです。しかし、高齢男性においては、「がんを見つけること」そのものが、必ずしも患者の利益につながるとは限りません。PSAスクリーニングの有効性を示した代表的な試験として、欧州で行われたERSPC trialがあります1)。この試験では、PSAスクリーニングにより前立腺がん死亡リスクが低下することが示されました。しかし、この16年間の追跡結果では、前立腺がん死を1人減らすためには570人にスクリーニングを行い、18人の前立腺がんを診断する必要があると報告されています。この数字を見ると、PSA検査には確かに意義がある一方で、多くの方が検査や精査の対象となることがわかります。とくに高齢者では、前立腺がんを見つける利益だけでなく、検査による負担や過剰診断の不利益もあわせて考える必要があります。さらに、PSA高値の患者に対して行われる前立腺生検は、決して無害な検査ではありません。血尿は4〜66%、直腸出血は1〜37%、発熱は0.6〜17%に認められると報告されています。多くは軽微ですが、膀胱洗浄を要する血尿は0.4%、処置を要する直腸出血は0.3%、敗血症は0.1〜3.1%とされており2)、まれながら重篤な合併症も起こり得ます。高齢者では、一度の感染や入院をきっかけにADLが低下することもあります。抗血小板薬や抗凝固薬を内服している患者では、出血リスクへの配慮も必要です。したがって、高齢者のPSA高値をみたときには、前立腺生検へ進む前に、その検査によって「本当に患者にとって利益が得られるものなのか」を一度立ち止まって考えることが大切です。高齢者では「見つけること」の不利益も考える前立腺がんには、生命予後にほとんど影響しない、いわゆる“おとなしいがん”が少なくありません。剖検研究では、ラテント前立腺がんの頻度は加齢とともに上昇し、80歳以上では約6割に認められると報告されています3)。高齢者に対するPSA検査や前立腺生検は、このような臨床的に問題とならないがんまで見つけてしまう可能性があります。ここで問題になるのが過剰診断です。過剰診断そのものは患者に症状を起こさないかもしれませんが、いったん「がん」と診断されると、不安や医療機関受診の負担、さらには将来的な過剰治療へつながることがあります。前立腺がん診療では、次回(前立腺がんに対する監視療法)で述べるように過剰治療への懸念もありますが、その前段階として「調べすぎ」「見つけすぎ」も高齢者では重要な課題です。もちろん、これは「高齢者には前立腺生検をすべきではない」という意味ではありません。臨床的に重要な生命予後に関わる前立腺がん(significant cancer)が疑われる患者では、適切な検査を進める必要があります。重要なのは、すべての前立腺がんを早期に見つけることではなく、転移性がんやsignificant cancerを見逃さず、一方で不必要な生検や過剰診断を減らすことです。PSAだけで判断せず、新規バイオマーカーとMRIも活用するこのような利益と不利益のバランスを考えるうえで、PSA値だけで判断するのではなく、PHI(Prostate Health Index)などの新規バイオマーカーやMRIを組み合わせて評価するという考え方もあります。とくにPSAが軽度〜中等度に上昇している高齢者では、すぐに前立腺生検へ進むのではなく、泌尿器科専門医のもとでリスクを段階的に評価し、前立腺生検が本当に必要かを患者と相談しながら判断することが重要です。PHIは、PSA高値患者における臨床的に意義のある前立腺がん、すなわちsignificant cancerのリスク評価に役立つ指標です4)。PHIが27未満の場合、91%が非がんまたはGleason score 6以下であったと報告されています5)。一方で、PHIが36以上ではGleason score 7以上のsignificant cancerのリスクが高まるとされています6)。これらの報告を踏まえると、PSAが軽度に上昇している高齢者、とくに複数の併存疾患を有しているケースでは、PHIが低い場合には慎重なPSAフォローを選択し、PHIが高い場合にはMRIなどの追加評価を検討するという段階的な考え方が成り立ちます。この段階的な評価において、MRIは前立腺生検へ進むべきかを判断するうえで重要な役割を担います。PI-RADSに基づくMRI評価は、significant cancerの検出を高める一方で、生命予後に大きく影響しにくい前立腺がんの過剰診断を減らすことにも役立ちます7)。PROMIS trialでは、significant cancerの検出において、mpMRIの感度は93%、特異度は41%、陰性的中率は89%と報告しています8)。また、MRIを先行することで約27%の患者が前立腺生検を回避でき、生命予後に大きく影響しにくい前立腺がんの診断を減らしながら、significant cancerの検出精度を高められる可能性が示されました。したがって、PSAが軽度〜中等度に上昇している高齢者では、「PSA高値だからすぐ生検」ではなく、PHIなどの新規バイオマーカーでリスクを見積もり、必要に応じてMRIを行い、その結果を踏まえて前立腺生検を検討するという段階的なアプローチも選択肢の1つとなり得ます。高齢者のPSA高値で考えるポイントさらに、高齢者のPSA高値を見たとき、最初に考えるべきことは「前立腺がんがあるか」だけではありません。期待余命はどのくらいかフレイルや認知機能低下はないか併存疾患や内服薬はどうか仮に前立腺がんが見つかった場合、生検やその後の治療に耐えられるか患者本人はどこまで検査や治療を望んでいるかこれらを踏まえたうえで、PHIやMRIを活用し、前立腺生検へ進むべきかを患者と相談しながら判断することが大切です。PSA値に応じて考える、高齢者への段階的アプローチ高齢者にPSA検査を行った後の対応としては、次のような段階的アプローチもあります。<PSA 4ng/mL未満の場合>日本泌尿器科学会の検診ガイドラインの考え方を参考に、PSA値に応じて1〜3年ごとの再検を検討します。ただし、再検を勧める際にも、その時点での期待余命やフレイルを再評価することが大切です。(図1)PSA<4ng/mLのフォローアップ戦略画像を拡大する<PSA 4〜10ng/mL、軽度PSA高値の場合>PHIでリスク層別化を行い、PHI高値であればMRIを検討します。MRIでPI-RADS3以上の病変があれば前立腺生検を考慮し、PI-RADS2以下で臨床的な疑いが低い場合にはPSAフォローを継続する、という流れも一つの選択肢になります。(図2)PSA 4〜10ng/mLに対するフォローアップ戦略画像を拡大する<PSA 10〜20ng/mL、中等度PSA高値の場合>MRIをより積極的に検討し、MRI所見やPSAの推移、患者の全身状態を踏まえて前立腺生検の要否を判断します。(図3)PSA10〜20ng/mLに対するフォローアップ戦略画像を拡大するもちろん、これらはあくまで一つの考え方であり、すべての患者に機械的に当てはめるものではありません。大切なのは、前立腺生検を避けること自体が目的なのではなく、本当に生検が必要な患者を見極めることです。終わりに高齢者の前立腺がん疑いでは、PSA高値をみたときにすぐ前立腺生検へ進むのではなく、期待余命、フレイル、併存疾患、患者の価値観を踏まえて、検査の利益と不利益を慎重に考える必要があります。PHIなどの新規バイオマーカーやMRIを活用し、significant cancerを見逃さず、不必要な前立腺生検や過剰診断を減らすことが重要です。高齢者のPSA高値では、患者と相談しながら、一人ひとりに合った検査戦略を考えることが大切です。 1) Hugosson J, et al. Eur Urol. 2019;76:43-51. 2) 日本泌尿器科学会編. 前立腺がん検診ガイドライン2018年版. 2018. p.111-116. 3) Bell KJL, et al. Int J Cancer. 2015;137:1749-1757. 4) Catalona WJ, et al. J Urol 2011;185:1650-1655. 5) Tosoian JJ, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2017;20:228-233. 6) White J, Shenoy BV, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2018;21:78-84. 7) 高橋 哲. 臨床泌尿器科. 2022;76:770-777. 8) Ahmed HU, et al. Lancet. 2017;389:815-822.

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心房細動患者における左心耳閉鎖術の効果は薬物治療と同等ではない(解説:高月誠司氏)

 CLOSURE-AF試験は、平均年齢77.9歳、CHA2DS2-VAScスコア5.2点で脳卒中および出血リスクが高い心房細動患者を対象に、左心耳閉鎖術(LAAC)と医師主導の最適内科治療(主にDOAC)を比較した多施設無作為化試験である。888例を対象とし、脳卒中、全身性塞栓症、大出血、心血管死または原因不明死の複合エンドポイントを主要評価項目とした。 追跡期間中央値3年で、主要イベント発生率はLAAC群16.8/100患者年、内科治療群13.3/100患者年であり、LAACは内科治療に対する非劣性を示さなかった。脳卒中発生率自体は両群でほぼ同等(2.6 vs.2.7/100患者年)であった一方、大出血の減少は認められず、周術期合併症や術後の二重抗血小板療法(DAPT)が利益を相殺した可能性が考えられた。また、高齢・高リスク患者では死亡が競合リスクとしてイベント評価に影響した可能性もあり、今後は手技安全性の向上や術後抗血栓療法の最適化が課題と考えられる。

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入院患者の静脈血栓塞栓症予防【医療訴訟の争点】第21回

症例入院患者については、原疾患や手術そのほかの治療との関係で、診療科を問わず、肺血栓塞栓症の発症リスクがあるため、予防についても意識を払った対応がされている。本稿では、精神科入院患者に対する身体拘束下における肺血栓塞栓症(PTE)の予防義務の有無が争われた大阪高裁令和7年3月26日判決を紹介する。<登場人物>患者(P3)精神疾患を有する入院患者(肥満[BMI≧30]に該当)原告患者の母(唯一の相続人)被告大学医学部附属病院(国立大学法人)事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)2月15日P3、精神症状の増悪により、被告病院に入院。入院後、精神科において薬物療法などが開始され、経過観察が行われた。2月中旬~5月下旬入院継続中、P3にはカタトニア様症状(強い緊張状態、反応低下など)が認められ、症状の増悪と改善を繰り返していた。向精神薬の投与が行われる一方、活動性の低下や脱水傾向などもみられていた。5月29日P3は精神症状の悪化により興奮・不穏状態が強まり、自傷他害のおそれがあると判断された。このため、保護室に隔離の上、四肢拘束を含む身体拘束が開始された。同日以降、看護師はバイタルサイン、呼吸状態、末梢循環(浮腫、皮膚色)、下肢の状態などの観察を、行動制限時フローシートなどに基づき継続的に実施した。もっとも、この時点で、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査といった客観的検査は実施されなかった。5月30日身体拘束の継続の要否についてカンファレンスが実施され、拘束継続の必要性が確認された。一方、拘束期間が長期化するかについては、この時点で明確な見通しは立っていなかった。5月31日午前P3は依然として拘束下にあり、自発的な運動は乏しい状態であった。医師は、血栓予防の観点から、同日午前11時頃、弾性ストッキングの装着を指示し、これが実施された。もっとも、体位変換の積極的実施、IPC(間欠的空気圧迫法)、抗凝固薬投与といったほかの予防措置は行われていなかった。また、同日午前までの時点においても、下肢の腫脹、発赤、疼痛など、深部静脈血栓症(DVT)を疑わせる症候は認められていなかった。午後2時頃看護師が訪室したところ、P3は反応が乏しく、呼吸・脈拍の異常が疑われる状態で発見された。午後2時20分頃スタットコールがなされ、医療スタッフが集結し、心肺蘇生措置(胸骨圧迫など)が開始された。なお、最初の異常指摘から蘇生開始までの時間は長くても約6分程度であったと認定されている。午後2時38分頃蘇生継続中の状態で院内搬送がなされたが、回復には至らなかった。同日P3死亡。 実際の裁判結果本件の第一審(神戸地裁)は、P3の死因を呼吸停止(呼吸不全)と認定し、呼吸管理義務違反を肯定して一部認容した。これに対し、被告病院が控訴し、原告も附帯控訴*を提起した。控訴審では、死因が急性肺血栓塞栓症(PTE)であるとの新たな主張がなされたほか、身体拘束後のVTE予防義務違反、検査義務違反などの主張も追加され、以下のような注意義務違反の有無が争われた。*控訴された側が、自身もより有利な内容へと一審判決を変更することを求めて控訴すること血液検査義務違反抗精神病薬の副作用防止義務違反呼吸管理義務違反救急対応義務違反PTE予防義務違反(控訴審で追加)VTE早期発見のための検査義務違反(控訴審で追加)控訴審(大阪高裁)は、P3の死因は急性PTEであると認定した上で、原告(患者家族)の主張する被告の注意義務違反をいずれも否定し、原告の請求を全面的に棄却した。控訴審で追加されたPTE予防義務違反とVTE早期発見のための検査義務違反を取り上げる。裁判所の判断1)P3の死因について詳細はこちら控訴審は、死因究明におけるAi(Autopsy imaging、死亡時画像診断)を用いた画像診断を行う第三者的医療機関として設立された一般財団法人Ai情報センターが作成したAi診断の報告書において、P3が心肺停止になってから1時間強後である5月31日午後3時35分頃に撮影された単純CT画像に、両側肺門部の肺動脈内に凝血塊を示唆する軽度高吸収が認められ、これらが肺動脈左右分岐部を横断するようにして連続していることから、P3の死因はPTEと考える旨の意見が述べられていることなどを踏まえ、P3の死因を「急性PTE」と認定した。2)PTE予防義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束開始後にVTEリスク評価を行い、体位変換、早期離床、弾性ストッキング、IPC、ヘパリンなどの予防策を講ずべき義務を主張した。しかし裁判所は、以下の点を指摘し、「控訴人病院スタッフである医師が、P3に対し、5月29日午後4時45分に体幹部及び両上肢を拘束したが、下肢拘束はせず、その時点ではVTEのリスクが高いとは判断せずに、積極的な運動(マッサージ、他動的な足関節運動など)、弾性ストッキング、IPC法または低用量未分割ヘパリンなどの予防法を取らず、それから48時間が経過する前である5月31日午前11時6分頃に、下肢を自発的に動かせないことから、DVTのリスクが高いと判断して弾性ストッキングの装着を指示したが、ほかの予防法を取らなかったことが、大学医学部の附属病院という控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできない」として、急性PTEの発症を回避するための予防策を取るべき注意義務違反があったとは認められないとした。5月29日以降、カタトニアにより下肢が不動化した状態にあったP3のDVTのリスクは客観的には相当に高かったといえ、P3が急性PTEにより死亡したのも、そのようなリスクが現実化したものと考えるのが自然であること日本血栓止血学会のガイドラインおよび研究班ガイドラインに挙げられたVTEの危険因子で、P3が該当するのは肥満だけであり、この場合の推奨予防法は「早期離床及び積極的な運動」であること72時間以上の身体拘束がVTEのリスクを高めるとの記載がある文献もあり、被告病院も含め、48時間以上の安静の必要をリスク評価の前提とする医療機関が多い中、P3につき5月29日の拘束開始時点やその翌日のカンファレンスにおいて、48時間以上の拘束が必要であると判断されていないこと平成29年当時、ほかの医療機関においても、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防あるいはIPC法を考慮することにはなっていなかったこと弾性ストッキング、IPC法及び薬物療法(低用量未分割ヘパリン)には、それぞれ副作用などのリスクがある上、弾性ストッキングやIPC法には、PTEの発症リスクが高いことが保険適用の条件となっていること被告病院では、P3の身体拘束後、生体モニターシステムを用いた測定をするとともに、行動制限時フローシートなどに従い、看護師が末梢循環状態や皮膚状態を継続的に観察しており、症候性DVTの臨床症状である浮腫や皮膚色の変化の有無なども確認されていたが、症候性DVTを疑わせる所見は認められていないこと3)VTE早期発見のための検査義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束時などにDダイマー測定や下肢エコーを行うべきと主張したが、裁判所は、以下の点を指摘し、「医師がP3に対し、身体拘束時から5月31日の弾性ストッキングの装着開始指示時点までの間において、Dダイマー検査などを実施しなかったことが、控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできず、控訴人病院スタッフに、被控訴人主張の注意義務違反があったとは認められない」とした。Dダイマー検査などの実施は、学会予防指針では“身体拘束の解除の際に、場合によりDダイマーなどのスクリーニングを行う”と記載するに止まること大病院では入院時や身体拘束時にDダイマーを測定するとなっているが、病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに被告病院における注意義務の内容となると解することはできないことVTEの予防法などを定めるに当たって、Dダイマー検査などについて記載していないか、IPC法を行う症例の場合やDVTの可能性が高い患者またはDVTの臨床症状が疑われる患者に限って実施するという医療機関もあることDダイマー検査については、血栓症の発症リスクの高い症例についてのみ手術前のスクリーニング検査の保険適用がなされ、DVTリスクが高くない限り、患者に対するスクリーニングとしてDダイマー検査などを行うことに否定的な見解もあること被告病院では、下肢の不動化が認められた後は、弾性ストッキングを装着して予防法を取っており、その装着時を含め、DVTを疑わせる所見が存したとは認められないこと注意ポイント解説本件は、控訴審で提出されたAi画像診断の報告書に基づきP3の死因がPTEと認定された上で、その予防義務違反の有無が争われ、本判決は、患者側の主張する予防義務違反をいずれも否定した。PTEは突発的に発症し、救命困難な場合も多いため、その予防を実施しているかが重要となる。本件当時のガイドラインやほかの医療機関での予防の実施状況を踏まえた判断をしているが、本判決でも「平成30年時点の報告を前提にすると、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防かIPC法を考慮することになっているが、平成29年5月当時、控訴人病院が、規模も異なるq1病院(注:他自治体が開設・運営する大規模な精神病院)の上記基準に従い、運用すべきであったとはいえない」としているように、ガイドラインの内容はアップデートされるものである。同様に、本判決が、被告病院では実施していない予防措置を実施している他院が存在していることについて「病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに控訴人における注意義務の内容となると解することはできない」としていることに表れているとおり、予防のために実施する対応内容については、医療機関の規模などによっても異なる。したがって、本判決と同様の対応をしていれば、予防措置が履行されているとして義務違反が否定されることになるとは限らない点に留意する必要がある。医療者の視点本件は、精神科における身体拘束中のPTE予防と検査のあり方が問われた事例です。裁判所は、当時のガイドラインや病院の規模を考慮し、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査、IPC法などの画一的な実施義務を否定しました。これは、予防策に伴う副作用リスクや患者ごとの状況を総合的に評価する、実際の臨床現場の感覚と合致しています。実臨床において、自傷他害の恐れがある興奮・不穏状態の患者の安全を確保するためには、身体拘束を実施せざるを得ない場面が多々あります。しかし、そのような患者に対して、PTE予防のための弾性ストッキングやIPC法を装着することは容易ではありません。不快感からさらなる不穏を招くリスクがあるためです。また、採血や長時間を要するエコー検査を安全に実施することも物理的に困難なケースが少なくありません。このようなジレンマの中で身を守るためには、入院時や拘束開始時にVTEのリスク評価をしっかり行うことが大事です。その上で、患者の状態に応じて早期離床や下肢の運動など、可能な予防策を選択してください。もし不穏などの理由で積極的な予防策や検査が困難な場合は、下肢の腫脹や色調変化などの継続的な観察を行い、その結果や「なぜ検査・処置ができないのか」という理由をカルテに詳細に記録しておくことを心がけると良いでしょう。Take home messagePTEは突発的に発症し、救命困難な場合があるため、裁判においては、然るべき予防措置を取っていたかが問題となる VTE予防はリスク評価に基づいて個別判断がなされるが、ガイドラインや同種医療機関での実施状況が、予防措置義務の履行がなされていたかの判断基準となるキーワード肺血栓塞栓症(PTE)/静脈血栓塞栓症(VTE)/身体拘束/予防義務/医療水準

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「消化性潰瘍診療ガイドライン」改訂、ポストピロリ時代に対応/日本消化器病学会

 2026年4月、「消化性潰瘍診療ガイドライン」が改訂された。2021年から5年ぶりの改訂で、第4版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、「日常臨床の現場に残された消化性潰瘍の解決すべき課題 ポストピロリ時代におけるガイドラインの改訂」と題したパネルディスカッションが行われ、各セクションを担当したガイドライン作成委員会委員から、改訂のポイントが紹介された。 冒頭では、ガイドライン作成委員会委員長を務めた鎌田 智有氏(川崎医科大学)が基調講演を行った。ガイドライン改訂総論/鎌田 智有氏(川崎医科大学) 今回のガイドラインの改訂の骨子は、以下となっている。1)近年H.pylori感染率の低下や除菌治療のさらなる普及を背景に、H.pylori関連の消化性潰瘍の頻度は減少傾向にある。一方で、薬物性潰瘍や非H.pylori、非NSAIDs潰瘍、特発性潰瘍が増加傾向にある。こうした現状に即したガイドラインにした。2)ボノプラザン(P-CAB)が上市されて10年が過ぎ、さまざまなデータが蓄積してきた。再度P-CABを含めたシステマティックレビューを行い、予防を含めたこの薬剤の位置付けを広く検証した。 対象疾患は胃と十二指腸にできる潰瘍であり、成人18歳以上に対する診療を基礎とした。GRADEシステムに準拠し、エビデンスの確実性(A〜D)と推奨強度(強い推奨/弱い推奨)を明確に提示した。Clinical Question(CQ)25項目に加え、Background Question(BQ)51項目、Future Research Question(FRQ)7項目を設定し、現時点のエビデンスと今後の課題を整理した。専門医のみならず非専門医、看護師、保健師など多職種の方、学生教育、市民の方などにもわかりやすいステートメントを書くように心掛けたので、ぜひご一読いただきたい。H.pylori除菌治療/伊藤 公訓氏(広島大学)CQ3-1 プロトンポンプ阻害薬に比してボノプラザンで除菌率は向上するか?(二次除菌を含む)・一次除菌治療時にはボノプラザンを使用することを推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:A)・二次除菌治療時にはアモキシシリン-メトロニダゾール療法に併用する酸分泌抑制薬はプロトンポンプ阻害薬、ボノプラザンのいずれかを提案する。(推奨の強さ:弱[強い推奨合意率66.7%、弱い推奨合意率33.3%]、エビデンスレベル:B) 除菌治療パートの大きな改訂点としては、一次除菌におけるP-CABの推奨がある。メタアナリシスにより、PPIに比して除菌率が有意に高いことが示されており、副作用発現率に有意差は認められなかった。一方、二次除菌ではPPIとP-CABの有効性に有意差はなく、いずれの使用も許容される「提案」としている。CQ3-2  一次除菌前にはクラリスロマイシン耐性の有無を検査すべきか?・一次除菌前には可能ならクラリスロマイシン感受性検査を行い、最も高い除菌率が期待される除菌レジメンを選択することを推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:A) 本改訂で最も重要な変更点の1つが、感受性検査によるクラリスロマイシン耐性確認と、その結果を考慮した個別化除菌の推奨である。H.pylori除菌治療不成功の最大の原因はクラリスロマイシン耐性であり、日本における耐性率は35.5%に上る。根拠としたメタアナリシスでは個別化治療のほうが除菌率が高く、これは臨床の経験からも妥当な結果と考えられるだろう。感受性の場合はP-CAB+アモキシシリン+クラリスロマイシン、耐性の場合はPPI/P-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾールの3剤併用療法が推奨となる。 一方で、日本ヘリコバクター学会が会員医師を対象に行ったアンケート調査では、「除菌治療前に感受性試験を行っている」と回答した医師は15%に過ぎなかった。検査には手間と費用がかかり、全例に実施するのは困難であることは想定できる。さらに、感受性試験は保険適用とされているにもかかわらず、社会保険診療報酬支払基金から査定される場合があり、その点も実施が躊躇される要因となっていた。しかし、今年2月に厚労省から「ピロリ菌の感受性検査によるクラリスロマイシン耐性の存在が明らかで」ある場合には、一次除菌としてP-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾールの使用を認めるとの通達が出ており、保険診療による感受性検査の妥当性が裏付けられたという点は強調したい。検査ができなかった場合のレジメンについてもCQに記載した。FRQ3-3 泥沼除菌とは何ですか?泥沼除菌の際に気をつけることはありますか?・泥沼除菌とは、除菌治療が成功しているにもかかわらず、尿素呼気試験で偽陽性となり不必要な除菌治療を追加する医療行為を指す。自己免疫性胃炎症例で見られることが多く、注意が必要である。 除菌後の尿素呼気試験偽陽性により、不必要な除菌治療が繰り返される「泥沼除菌」について新たにFRQとして提示した。背景として自己免疫性胃炎の関与が指摘されており、診断精度の向上が求められる。 薬物性潰瘍の治療と予防/千葉 俊美氏(岩手医科大学) 薬物性潰瘍の章は、1)NSAIDs潰瘍、2)選択的NSAIDs(COX-2選択的阻害薬)潰瘍、3)低用量アスピリン(LDA)潰瘍、4)抗凝固薬などその他の薬物潰瘍、5)PPI/P-CAB有害事象の5つの項目を設け、20のBQ、9つのCQ、1つのFRQを設定した。全体としてP-CABのエビデンスが蓄積したため、各項目で推奨に入れている。BQ5-12 非ステロイド性抗炎症薬誘発性潰瘍の治療はどのように行うか?・非ステロイド性抗炎症薬は中止し、抗潰瘍薬を投与する。・非ステロイド性抗炎症薬中止が不可能な場合、第一選択薬としてボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬を投与する。 NSAIDs継続下でのPPIとP-CABの潰瘍治癒効果の比較についてメタアナリシスの結果、潰瘍治癒効果においてP-CABのPPI(ランソプラゾール)に対する非劣性が示されたため、第1選択薬はP-CABまたはPPIとした。CQ5-2 潰瘍既往歴、出血性潰瘍既往歴がある患者が非ステロイド性抗炎症薬を服用する場合、再発予防はどうするか?・(潰瘍既往歴ありの予防)ボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬の投与を推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:B)・(出血性潰瘍既往歴ありの予防)COX-2選択的阻害薬にボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬の併用を提案する。(推奨の強さ:弱[強い推奨合意率33.3%、弱い推奨合意率66.7%]、エビデンスレベル:B) NSAIDs誘発性潰瘍において、潰瘍既往歴を有する患者は再発リスクが高く、予防的介入が必要である。PPIの潰瘍再発予防効果については、複数のRCTおよびメタアナリシスにより、プラセボと比較して有意に再発率を低下させることが示されている。また、P-CABはPPIと比較して強力な酸分泌抑制作用を有しており、NSAIDs潰瘍の再発予防においてPPIに対する非劣性が示されている。したがって、P-CABもPPIと同様に再発予防薬として使用可能と判断された。 これらのBQ・CQでP-CABの推奨を明確にしたほか、CQ5-5、5-6では低用量アスピリン服用者における予防として潰瘍既往歴なしの場合はPPI、既往歴ありの場合はP-CABまたはPPIを第一選択とした。 さらに、FRQ5-1では「プロトンポンプ阻害薬/ボノプラザンの長期投与により胃腫瘍などの粘膜病変は生じるか?」という項目を設定した。この分野におけるエビデンスは観察研究が大半であり、まだ確定した推奨はできないため、「さまざまな胃粘膜病変が生じる可能性があることから、長期投与は慎重に行うべきである」としている。臨床医に関心の高い設問であり、新たな試験を経て、次の改訂ではCQへの格上げを期待したい。その他のポイント このほか、「非H.pylori・非NSAIDs潰瘍」「球後部十二指腸潰瘍出血」「NHPH(Non-Helicobacter pylori Helicobacters)」などについて解説が行われた。総括/丹羽 康正氏・愛知県がんセンター総長 従来の消化性潰瘍はH.pylori/NSAIDsが主因だったが、現在ではH.pylori感染率低下、高齢化、抗血栓薬使用の増加などを背景に特発性の潰瘍が増加し、感染症モデルから多因子疾患モデルへと移行しつつある。本ガイドラインはその流れを汲むものであり、今後は「除菌療法の最適化」「薬物性潰瘍の予防戦略」「出血/穿孔などの合併症管理」「非H.pylori潰瘍の体系化」といった点が求められる。

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中リスクの急性肺血栓塞栓症に対する超音波補助カテーテル血栓溶解療法が有効で重篤な出血合併症を増加させなかった(HI-PEITHO試験)(解説:佐田政隆氏)

 急性肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の死亡率は、診断されず未治療の場合は約30%と高いが、適切な治療を実施すれば2~8%まで低下することが知られている。致死的PTE患者の75%は発症から1時間以内に、残りの25%は発症48時間以内に死亡するとされており、遅れることなくPTEを診断して適切な治療を施すことがきわめて重要である。 心停止やショックといった高リスク例では、早急に機械的補助循環を導入し、抗凝固療法に加えて再灌流療法(血栓溶解療法、外科的血栓摘除術、カテーテル治療)の実施を検討することが国内外で推奨されている。 一方、中リスクのPTE患者に対する血栓溶解療法の有効性は確立していなかった。2014年に発表になったPEITHO試験では、血行動態が安定している中リスクのPTE患者約1,000例に対し、抗凝固療法(ヘパリン)に加えて血栓溶解薬としてのtPAを全身投与する治療が、抗凝固療法単独よりも死亡・血行動態悪化の発生率を低下させたものの、重大な出血リスクを高めた(Meyer G, et al. N Engl J Med. 2014;370:1402-1411.)。 日本循環器学会と日本肺高血圧・肺循環学会による2025年改訂版「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」においては、重症度別に急性PTEに対する治療戦略をフローチャートで提示している。中リスクのうち、右心機能障害と心臓バイオマーカーの上昇のいずれも認める場合、抗凝固療法を開始するとともに慎重なモニタリングを行い、血行動態が悪化した場合には再灌流療法の実施を考慮することが推奨されている。 Boston Scientific社が開発したEKOSシステムでは、高周波・低出力の超音波エネルギーカテーテルを用いることで、血栓溶解薬の投与量、投与期間を減じても従来と同等の血栓溶解効果が期待できることが示され、欧米では販売されている。本HI-PEITHO試験は市販後非盲検無作為化試験である。中リスクの急性PTEに対するEKOSシステムを使用した血栓溶解と抗凝固の併用療法は、抗凝固療法のみと比較して、7日以内のPTE関連死、症候性のPTE再発、心肺機能の代償不全/虚脱の複合イベントの発生率を低下させたが、重篤な出血リスクは増加させなかった。 今まで、PTEに対するカテーテルを用いた血栓溶解療法については十分なエビデンスは示されておらず、わが国では、海外で使用されているカテーテルが承認されていない。そのため、もっぱらガイディングカテーテルを用いた用手的吸引術が用いられてきており、関連学会から未承認の血栓吸引あるいは血栓除去カテーテルについて早期承認申請が行われている。抗凝固療法としてDOACが主流となった現在、日本でもPTEに対する血栓除去カテーテル治療が本研究のようなRCTの結果に基づき承認されていき、患者の予後改善につながることを期待したい。

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静脈インターベンションの世界からの新しいエビデンスの登場―詰まった静脈もやはり広げればよいのか?(解説:山下侑吾氏)

 循環器医や放射線科医を中心とするインターベンション医は、これまで「動脈」を対象とした血管内治療の世界を大きく切り開いてきた。長年にわたる貢献により同領域は高度に発展し、現在では一定の成熟を得た領域となったともいえる。一方で、同じ血管である「静脈」を対象とした血管内治療は、未知な部分も多く、今後の発展が望まれる領域といえる。近年、静脈領域としては、肺塞栓症や深部静脈血栓症に対するさまざまな血栓吸引デバイスが世界中で普及しつつあり、これまで同領域では、ほとんど皆無であったランダム化比較介入試験も報告され、信頼性の高いエビデンスが現在進行形で蓄積しつつある。C-TRACT試験は、このような静脈インターベンションの世界での新しい歴史を切り開く重要なエビデンスと考えられる。筆者自身も、循環器内科のインターベンション医として、普段から冠動脈・末梢動脈・肺動脈などの全身の動脈の血管内治療に携わっているが、時として静脈の血管内治療が必要となることがある。しかしながら、カテーテル室の現場ではその適応や介入方法を含めて悩むことも多く、本試験の結果は、心より待ち望んでいたエビデンスであった。 深部静脈血栓症は、慢性期の後遺症として血栓後症候群(post-thrombotic syndrome:PTS)を呈することがある。大半は、軽度の浮腫や疼痛の残存といった軽症例と考えられるが、時として強い症状を呈することがあり、患者のQOLを著しく下げる可能性もある。これまでの治療法としては圧迫療法などの保存的治療であったが、高度の狭窄および閉塞した静脈がある場合には、当該血管を物理的に再疎通させる治療が有用と考えられ、そのコンセプトは「open vein hypothesis」という形で広く知られている。しかしながら、この意義を、大規模なランダム化比較介入試験で直接的に検証されたことはなかった。C-TRACT試験は、これまで主として保存的治療で対応されていたPTSに対して、病態の根幹である静脈閉塞に直接介入するという「open vein hypothesis」の妥当性を検証した意義深い試験といえる。多くの専門家がおそらく有用であろうと思いつつも意外に立証されていなかった治療介入は、心血管領域ではよくあるが、本試験は静脈インターベンションの世界でのそのような疑問に真正面から取り組んだものともいえる。 本試験の結果自体は、ステントによる血管内治療が、保存的治療と比較してPTS症状やQOLの改善に有用であることが示されたpositiveなものであった。医学的な価値として「open vein hypothesis」を臨床的に支持する結果を、大規模なランダム化比較介入試験にて初めて示した点が挙げられる。一方で、血管内治療は6ヵ月時点での重症度の評価スコアであるVenous Clinical Severity Score(VCSS)を有意に低下させたが、その低減は約2点と比較的控えめであった。この結果は、統計学的には有意であるが、臨床的なインパクトとしては限定的と解釈する余地もある。しかしながら、本病態のQOL指標であるVEINES-QOLおよび包括的健康指標であるSF-36においては、いずれも臨床的に意味のある改善幅であり、患者の日常生活機能や主観的健康状態に対する影響は十分な恩恵があることが示された。すなわち、本治療の本質的価値は単なるスコアの改善ではなく、患者が実際に感じる生活の質の向上にあると考えるべきであろう。この視点は、今後のPTS治療戦略を考えるうえできわめて重要である。 本試験を日常臨床に応用する際にはいくつかの注意点もある。本試験の対象患者は、腸骨静脈に閉塞もしくは高度狭窄を有する中等度から重度のPTS患者に限定されており、比較的選択された集団である。このため、軽症例や腸骨静脈に相応の病変を伴わない症例に対して本結果を一般化することは適切ではない。また、本試験は経験豊富な施設において実施されており、手技の再現性や外的妥当性についても慎重な評価が求められる。また、安全性の観点では、血管内治療群において出血イベントの増加が有意に認められた点は無視できない。多くは非大出血であったものの、抗血栓療法の強化に伴うと予想される出血リスクの増大は、臨床的に無視できないトレードオフである。この点は、適応判断の際には十分に考慮されるべきであり、すべての静脈をもれなくopenさせることが適切であるかは慎重であるべきである。 上記の注意点を有するものの、本試験はPTS患者への静脈インターベンションが有用であることを高いエビデンスとして示し、新しい歴史を切り開く価値あるものと考えられる。まったくの奇遇であるが、筆者自身が本稿を執筆している当日に、下大静脈の完全閉塞により高度の下肢浮腫に大変困っている患者に大静脈ステントを留置する静脈インターベンションを実施した。治療介入直後より下肢静脈圧の著明な改善とともに下肢浮腫の改善も認め、患者はQOLの改善に対して大変なご利益を感じられた。適切な症例への適切な静脈インターベンションによる介入は、患者QOLの視点より重要であることを改めて実感した。本試験は、筆者のそのような主観的な感覚を、ランダム化比較介入試験という客観的な形で示してくれたこの上ない朗報である。今後は、さらなる長期的な予後の検証や最適な抗血栓療法の確立、さらには実臨床でのさまざまな患者への適応を通して、本治療の真の臨床的価値がより明確になることが期待される。

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虚血性脳卒中の2次予防、asundexian追加が有効性示す/NEJM

 非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)発症後72時間以内の患者において、血液凝固第XI因子(FXI)阻害薬asundexianの1日1回50mg経口投与は、抗血小板療法との併用下でプラセボと比較し大出血のリスクを増加させることなく、虚血性脳卒中および主要心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、カナダ・McMaster UniversityのMukul Sharma氏らOCEANIC-STROKE Investigatorsが実施した「OCEANIC-STROKE試験」で示された。NEJM誌2026年4月16日号掲載の報告。37ヵ国702施設で第III相試験を実施 OCEANIC-STROKE試験は、日本を含む37ヵ国702施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベント主導型第III相試験で、対象は非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスクTIA発症後72時間以内の2剤併用または単剤による抗血小板療法が予定されている18歳以上の患者であった。 虚血性脳卒中はNIHSSスコア(範囲0~42:高スコアほど重症)が15以下、高リスクTIAはABCD2スコア(範囲0~7:高スコアほど高リスク)が6または7と定義された。また、すべての患者は、急性非ラクナ梗塞の画像所見、冠動脈疾患・末梢血管疾患または50%以上の頸動脈狭窄の既往歴、脳血管アテローム性動脈硬化の画像所見のいずれか1つ以上を満たしていることとし、心房細動の既往歴または抗凝固療法の適応となる病態を有する患者などは除外した。 研究グループは、適格患者をasundexian(1日1回50mg経口投与、経管投与も可)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、予定されていた抗血小板療法に加えて投与した。 有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中発症、副次アウトカムはすべての脳卒中(虚血性または出血性)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合、全死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合など、安全性の主要アウトカムは国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血であった。虚血性脳卒中およびすべての脳卒中が26%有意に減少、大出血は増加せず 2023年1月~2025年2月に1万2,578例がスクリーニングを受け、1万2,327例が無作為化された(asundexian群6,162例、プラセボ群6,165例)。 無作為化後の追跡期間中央値567日(四分位範囲:377~729)において、虚血性脳卒中はasundexian群で384例(6.2%)、プラセボ群で518例(8.4%)に発生した(原因別ハザード比[csHR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)。 asundexian群およびプラセボ群で、すべての脳卒中はそれぞれ404例(6.6%)、545例(8.8%)(csHR:0.74、95%CI:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは568例(9.2%)、685例(11.1%)(0.83、0.74~0.92、p<0.001)、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは649例(10.5%)、757例(12.3%)(0.85、0.77~0.95、p=0.003)に発生した。 大出血は、asundexian群で1.9%(117/6,124例)、プラセボ群で1.7%(107/6,130例)に認められた(csHR:1.10、95%CI:0.85~1.44、層別log-rank検定のp=0.46)。有害事象の発現割合はasundexian群69.3%、プラセボ群70.1%であり、重篤な有害事象の発現割合はそれぞれ19.2%および19.5%であった。

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