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1.

アスピリンがよい?それともクロピドグレル?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は1986年に循環器内科に入ったので、PCI後に5%の症例が血管解離などにより完全閉塞する時代、解離をステントで解決したが数週後に血栓閉塞する時代、薬剤溶出ステントにより1~2年後でも血栓性閉塞する時代を経験してきた。とくに、ステント開発後、ステント血栓症予防のためにワルファリン、抗血小板薬、線溶薬などを手当たり次第に試した時代を経験している。チクロピジンとアスピリンの併用により、ステント血栓症をほぼ克服できたインパクトは大きかった。チクロピジンの後継薬であるクロピドグレルは、急性冠症候群の1年以内の血栓イベントを低減した。アスピリンとクロピドグレルの併用療法は、PCI後の抗血小板療法の標準治療となった。 抗血小板併用療法により重篤な出血イベントリスクが増える。それでも1剤を減らして単剤にするのは難しい。単剤にした瞬間、血栓イベントが起これば自分の責任のように感じてしまう。やめる薬をアスピリンにするか、クロピドグレルにするかも難しい。クロピドグレルが特許期間内であれば、メーカーは必死でクロピドグレルを残す努力をしたと思う。資本主義の世の中なので、資金のあるほうが広報の力は圧倒的に強い。学術雑誌であってもfairな比較は期待できなかった。 クロピドグレルは特許切れしても広く使用され、真の意味で優れた薬剤であること(メーカーの広報がなくても医師が使用するとの意味)が示された。本研究ではPCI後標準期間の抗血小板併用療法施行後、アスピリンまたはクロピドグレルに割り振った。クロピドグレルの認可承認試験は、アスピリンとの比較における有効性・安全性を検証したCAPRIE試験であった。今回はPCI後、16ヵ月ほどDAPTが施行された後にランダム化した。冠動脈疾患の慢性期の単一抗血小板薬としてクロピドグレルによる死亡、心筋梗塞、脳梗塞がアスピリンよりも少ないことが示された。 筆者は特許中の薬剤を応援することがない。資本主義における、資本力による広報のトリックを完全に見破れる自信もない。しかし、特許切れして、なお有効性・安全性を示す薬は本物と思う。アスピリンは安価で優れた薬であった。筆者はアスピリンについて一冊の本を書いたほどである(後藤 信哉編. 臨床現場におけるアスピリン使用の実際. 南江堂;2006.)。しかし、クロピドグレルも数十年かけて優れた薬であることを示した。今度はクロピドグレルの本を書きたいほどである。

2.

TIA後の脳卒中リスクは長期間持続する(解説:内山真一郎氏)

 本研究は、38件の研究に登録された17万1,068例のTIAまたは軽症脳梗塞(大多数はTIA)のメタ解析である。脳卒中の再発リスクは最初の1年で5.9%、5年で12.5%、10年で19.8%であり、2年後からは毎年1.8%再発していた。われわれの行ったTIA registry.org研究でも、発症後2年後から5年後まで累積再発曲線は減衰することなく直線的に推移し、ブレーキがかかっていなかった(Amarenco P, et al. N Engl J Med. 2018;378:2182-2190.、本論文の引用文献14)。 このメタ解析やわれわれの研究結果は、現行のガイドラインによる長期の再発予防対策が不十分であることを示唆している。抗血栓療法のアドヒアランスを維持するとともに、脳卒中の危険因子の管理が十分であったかも見直す必要がある。さらに、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、心房細動のような伝統的危険因子以外の残余リスクがないかにも目を光らす必要がある(Uchiyama S, et al. Eur Stroke J. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print])。

3.

TIA/軽症脳卒中後の脳卒中リスク、10年後でも顕著に増大/JAMA

 一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中を発症した患者は、その後10年間で脳卒中リスクが徐々に高くなり、欧州に比べ北米やアジアでリスクが高く、非選択的患者集団と比較してTIA患者で低いことが、カナダ・カルガリー大学のFaizan Khan氏らWriting Committee for the PERSIST Collaboratorsが実施した「PERSIST共同研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月26日号で報告された。コホート研究のメタ解析 研究グループは、TIAまたは軽症脳卒中発症後10年の脳卒中発生率の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 医学関連データベースを用いて、2024年6月26日の時点で公表されている文献を検索した。TIAまたは軽症脳卒中を発症した患者を1年以上追跡し、この間の脳卒中リスクを報告した前向きまたは後ろ向きコホート研究を対象とした。 主要アウトカムは脳卒中の発症とした。累積発生率:1年5.9%、5年12.5%、10年19.8% 38件(欧州22件、日本を含むアジア7件、北米5件、オーストラリア1件、複数国3件)の研究に参加した17万1,068例(年齢中央値69歳[四分位範囲:65~71]、男性患者の割合中央値57%[52~60]、退院時に抗血栓薬を処方された患者の割合中央値95%[89~98])を解析の対象に含めた。38件のうち、17件がTIAまたは軽症脳卒中、20件がTIAのみ、1件が軽症脳卒中のみを対象とした研究であった。 TIAまたは軽症脳卒中後の100人年当たりの脳卒中発生率は、1年目の5.94件(95%信頼区間[CI]:5.18~6.76、38研究、I2=97%)から、2~5年目は年平均1.80件(1.58~2.04、25研究、90%)、6~10年目は年平均1.72件(1.31~2.18、12研究、84%)に減少した。 脳卒中のリスクは経時的に上昇し続け、累積発生率は1年以内が5.9%、5年以内が12.5%、10年以内は19.8%であった。長期的な脳卒中予防対策の改善が求められる 脳卒中発生率は、欧州と比較して北米(率比[RR]:1.43[95%CI:1.36~1.50])およびアジア(1.62[1.52~1.73])の研究で高く、2007年より前に参加者を募集した研究に比べ2007年以降に募集した研究で高かった(1.42[1.23~1.64])。 一方、非選択的患者集団と比較して、TIA患者(RR:0.68[95%CI:0.65~0.71])および初発のインデックスイベント(0.45[0.42~0.49])に焦点を当てた研究で、脳卒中発生率が低かった。 著者は、「多くの2次予防クリニックでは、最初の90日しか患者のモニタリングを行っておらず、長期的な予防ケアはプライマリケア医や内科医に移行していることが多いことを考慮すると、今回の結果は、最初の高リスク期以降における継続的な注意深いモニタリングとリスク低減戦略が重要であることを示している」「これらの知見は、この患者集団における長期的な脳卒中予防対策の改善の必要性を強調するものである」としている。

4.

「血痰は喀血」、繰り返す喀血は軽症でも精査を~喀血診療指針

 本邦初となる喀血診療に関する指針「喀血診療指針」が、2024年11月に日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」に全文掲載された。そこで、喀血ガイドライン作成ワーキンググループ座長の丹羽 崇氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 兼 喀血・肺循環・気管支鏡治療センター長)に、本指針の作成の背景やポイントなどを聞いた。喀血を体系的にまとめた指針は世界初 「喀血診療の現場では、長年にわたって公式な診療指針が存在せず、個々の医師が経験と知識を基に対応していたことに、大きなジレンマを感じていた」と丹羽氏は述べる。自身でカテーテル治療や内視鏡治療を行うなかで、より体系的な診療指針の必要性を実感していたところ、日本呼吸器内視鏡学会の大崎 能伸理事長(当時)より「ガイドラインを作ってみないか」と声をかけられたことから、喀血ガイドライン作成ワーキンググループが立ち上がり、作成が始まったとのことである。 「喀血という症候に焦点を当てて体系的にまとめているものは、本指針が世界で初めてである」と強調する。本指針は、日本IVR学会の協力のもとで作成されており、放射線科、呼吸器外科、呼吸器内科、救急集中治療の専門医が集まり、集学的に作成されたことから、非常に大作となっている。 なお「ガイドライン」ではなく「指針」となっている点について、「エビデンスが不足している領域が多く、Mindsのガイドライン作成方法に則った作成が困難であったことから、エキスパートオピニオンとして指針という形で作成した」と述べた。軽症喀血を「ティシューで処理可能」とするなど、わかりやすい表現に 本指針では、「血痰」や「小喀血」と表現されるものも「喀血」としている。これについては、「血痰」という表現は日本独自のものであり国際的には用いられていないこと、本指針を英文誌にも掲載して国際的なスタンダードを作成していきたい意向があることなどから、すべて「喀血」として統一したとのことである。 「本指針は専門医だけでなく、非専門医や看護師、救急相談センターの方々にも使っていただくことを想定して作成した」と丹羽氏は語る。そのため、喀血の重症度の表現を軽症喀血であれば「大さじ1杯」「ティシューで処理可能」など、わかりやすい表現としている。このような表現を用いることで「患者にわかりやすく説明可能となり、患者からの話を重症度に結びつけることができるほか、トリアージの場面などにも活用できるのではないか」と述べた。重症度の定義は以下のとおり。<重症喀血>200mL以上(コップ1杯)、または酸素飽和度90%以下<中等症喀血>15mL/日以上200mL/日未満、またはティシューで処理できない量<軽症喀血>15mL/日未満(大さじ1杯)、ティシューで処理可能 本指針では、重症度分類に入院適応と気管支動脈塞栓術(BAE)の適応をリンクさせていることも特徴である。中等症喀血であれば入院は相対適応、BAEも相対適応となっており、軽症喀血では入院については外来レベルとしているが、BAEは慎重適応とし、軽症喀血でもBAEを否定していない。肺非結核性抗酸菌症が増加 喀血というと、結核の印象を持たれる方もいるのではないだろうか。しかし、現在は肺非結核性抗酸菌症(NTM症)が増加している。喀血の原因疾患としては、肺NTM症、肺アスペルギルス症、気管支拡張症が多く、喫煙者にも多いという。本指針では、これらの疾患の概要や治療方法などと共に、喀血との関係についても記載しているため、ぜひ一読されたい。喀血患者は開業医のもとに眠っている 「喀血患者は開業医の先生方のところに多く眠っている」と丹羽氏は語る。「喀血をみたら、原因を精査していただきたい。胸部X線検査ではわからないような微細な変化で喀血を繰り返している人も多いため、喀血を繰り返す場合は、軽症であっても経過観察ではなく精査・加療の対象になると考えてほしい。軽症であってもQOLにも影響し、患者は外出が億劫になったり、お風呂に入るのを控えたりする場合もある」。 また、喀血が原因で抗血小板薬や抗凝固薬などの服用を中断しているケースも散見されるという。これについて「喀血が原因で本来必要な薬剤の服用をやめてしまわないように、BAEなども考慮してほしい。そのため、本指針では軽症喀血であってもBAEを適応なしとせず、慎重適応としている」と述べた。「開業医の先生方にこそ読んでいただきたい」 本指針は、日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」にフリーアクセスで全文掲載されているほか、2025年4月に書籍として発刊される予定である。書籍版には、重症度分類と治療方針に関する早見表も掲載予定とのことだ。丹羽氏は、本指針の活用法について「喀血患者は開業医の先生方のもとを訪れることが多いため、ぜひ、開業医の先生方にこそ読んでいただきたい。また、喀血患者の紹介を受ける呼吸器科の先生方にも読んでほしい。喀血の原因疾患についても詳しく記載しており、患者への説明にも役立てられると考えている。喀血治療にはカテーテル治療や内視鏡治療のオプションがあるといった気付きを得たり、手術適応の判断に活用したりするなど、本指針を1施設に1冊おいて喀血診療に役立てていただきたい」と話した。

5.

EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがOS改善(MARIPOSA)/ELCC2025

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体アミバンタマブと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ラゼルチニブの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている1)。また、世界肺がん学会(WCLC2024)で報告されたアップデート解析では、アミバンタマブ+ラゼルチニブが全生存期間(OS)を改善する傾向(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、名目上のp値=0.019)にあったことが示され、OSの最終解析結果の報告が待たれていた。欧州肺がん学会(ELCC2025)において、OSの最終解析結果が国立台湾大学のJames Chih-Hsin Yang氏により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブが有意にOSを改善したことが示された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[副次評価項目]奏効率(ORR)、頭蓋内PFS、症状進行までの期間(TTSP)など 今回はami+laz群とosi群の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・治療中止はami+laz群62%(260/421例)、osi群72%(310/428例)に認められ、病勢進行による治療中止はそれぞれ33%(140/421例)、55%(234/428例)であった。・OS最終解析(追跡期間中央値37.8ヵ月)時点におけるOS中央値はami+laz群が未到達、osi群が36.7ヵ月であり、ami+laz群が有意に改善した(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p<0.005)。3年OS率はそれぞれ60%、51%であり、42ヵ月OS率はそれぞれ56%、44%であった。・OSのサブグループ解析では、ほとんどのサブグループでami+laz群が優位であった。65歳以上の集団のみosi群が優位な傾向にあった(HR:1.11、95%CI:0.84~1.48)。・頭蓋内PFS中央値はami+laz群が25.4ヵ月、osi群が22.2ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.61~1.02、p=0.07)。3年頭蓋内PFS率はそれぞれ36%、18%であった。・頭蓋内ORRはami+laz群が78%、osi群が77%であり、頭蓋内奏効期間中央値はそれぞれ35.7ヵ月、29.6ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が43.6ヵ月、osi群が29.3ヵ月であり、ami+laz群が改善した(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)。・病勢進行後に2次治療を受けた患者の割合はami+laz群が74%、osi群が76%であり、2次治療の内訳は化学療法ベースの治療がそれぞれ56%、67%で、チロシンキナーゼ阻害薬ベースの治療がそれぞれ39%、28%であった。・割り付け治療継続期間中央値はami+laz群が27.0ヵ月、osi群が22.4ヵ月であった。・安全性プロファイルは主解析時と一貫しており、主解析時から5%以上増加した有害事象はなかった。有害事象の多くは治療開始から4ヵ月以内に発現した。・ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは5%であり、ami+laz群では40%に静脈血栓塞栓症が発現した(osi群は11%)。 なお、本試験の結果に基づき、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年3月27日に、アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法について「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を適応として、厚生労働省より承認を取得したことを発表している。

6.

非弁膜症性心房細動に対するDOAC3剤、1日の服薬回数は治療効果に影響せず?

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に対する第Xa因子(FXa)阻害薬の治療効果において、3剤間で安全性プロファイルが異なる可能性が示唆されており、まだ不明点は多い。そこで諏訪 道博氏(北摂総合病院循環器内科臨床検査科 部長)らがリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(同:エリキュース)、エドキサバン(同:リクシアナ)の3剤の有効性と安全性を評価する目的で、薬物血漿濃度(plasma concentration:PC)と凝固活性をモニタリングして相関関係を調査した。その結果、1日1回投与のリバーロキサバンやエドキサバンの薬物PCはピークとトラフ間で大きく変動したが、凝固活性マーカーのフィブリンモノマー複合体(FMC)は、1日2回投与のアピキサバンと同様に、ピーク/トラフ間で日内変動することなく正常範囲内に維持された。本研究では3剤の時間経過での薬物PCのピークの変動も調査したが、リバーロキサバンについては経時的に蓄積する傾向がみられた。Pharmaceuticals誌2024年10月25日号掲載の報告。 この結果より研究者らは「用法が1日1回と1日2回では、ピークの血中濃度は異なる傾向にあるが、凝固能を示すFMCはピークとトラフのいずれにおいても抑制された。血栓症の既往があり二次予防目的で本剤を使用する場合、2回投与のほうがトラフは維持されるため血栓症が発生しにくいと考えられているが、DOACに関して言えば、変わらないと判断できる」としている。なお、用量の違い(標準用量と低用量)では差異は見られなかった。 本研究は多施設共同観察研究で、NVAFで直接経口抗凝固薬(DOAC[リバーロキサバン:72例、アピキサバン:71例、エドキサバン:125例])を服用している外来患者268例を対象に、薬物PCと凝固活性マーカー(フィブリノーゲン[FIB]とFMC)のピーク(服薬3時間後[服薬開始後1ヵ月後:peak 1、3~4ヵ月後:peak 2、6~12ヵ月後:peak 3の3回測定])とトラフ(服薬直前[1ヵ月後、3~4ヵ月後の2回測定])をモニタリングした。投与量は各薬剤の用量調整基準に基づいて調整された。主要評価項目は投薬開始から12ヵ月までの出血および血栓症の発生とDOACの血中濃度、副次評価項目は投薬開始から12ヵ月までの凝固活性マーカーの測定値であった。 主な結果は以下のとおり。・本研究(摂津DOAC Registry)では、出血イベントが発生した8例(リバーロキサバン3例、アピキサバン2例、エドキサバン3例)のうち、2例(リバーロキサバンとエドキサバン各1例)では薬物PCのピークは出血イベント予測のカットオフ値を下回り、出血が薬剤由来ではない可能性が示唆された。・薬物PCはピークからトラフまで大きく変動したが、凝固活性を反映するFMC値は、薬物PCの変動に関係なく正常範囲(<6.1μg/mL)内に留まっていた。・各薬剤の抗凝固作用は薬物PC、投与量、投与回数に関係なく、1日中持続することが示された。・さらに薬物PCのピークの経時的変化において、peak1~3における薬物PC上昇患者数を評価したところ、リバーロキサバン(50.9%)、アピキサバン(37.5%)、エドキサバン(31.7%)と差異が見られ、時間経過での薬物PC上昇率はエドキサバンで低かった。・経時的に薬物PCの上昇がみられた患者のうち、peak3で薬物PCがわれわれの先の試験において設定された出血予知のカットオフ値を超えた患者数は、リバーロキサバン(44.8%)、アピキサバン(22.2%)、エドキサバン(12.5%)とエドキサバンで最も低頻度で、リバーロキサバンはエドキサバンより蓄積傾向が高く、出血事象発現の可能性が高率であると予想された。 なお、本研究内容の一部は2025年3月28日~30日に横浜で開催される第89回日本循環器学会学術集会でも発表が予定されている。

7.

NVAFによる脳卒中リスクを低減、Amulet左心耳閉鎖システム発売/アボット

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に行われる経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)に有効なデバイス「Amulet(アミュレット)左心耳閉鎖システム」が2025年3月11日にアボットジャパンより発売された。 本システムは独自の2層構造によって、さまざまな形状・サイズの左心耳に対応できる特徴を持っていることから、既存製品では閉塞が困難とされていた左心耳に対しても、閉塞術を行うことが可能となる。また、左心耳の入口部を密閉することで術後のリークを防ぐことも可能となる。 既存デバイス(WATCHMAN)を対象とした海外のAmulet IDE試験結果によると、有意に高い左心耳閉鎖率が示され1)、術後3年時の抗凝固薬中止率も96.2%と有意に高い傾向が示された2)。 なお、日本循環器学会は2024年10月17日に「Amulet左心耳閉鎖システム使用指針」を公開しており、使用する際の概要や患者除外基準、心腔内エコー(ICE)を使用したAmulet左心耳閉鎖システムの使用に関してなどが記載されている。

8.

抗凝固薬―長期投与は減量でよい?(解説:後藤信哉氏)

 深部静脈血栓症の症例への予防的抗凝固薬の投与期間は確定されていない。さじ加減を重視する日本の臨床家として「長期投与するなら減量で!」と考える医師は多いと思う。一般に血栓症の再発リスクは時間とともに低減するから、減量して長期投与することは正しそうに思う。 それでもランダム化比較試験にて自分の直感を検証したいと考える欧米人が、本研究を施行した。欧米のDOACはアピキサバンとリバーロキサバンが標準なのでアピキサバン (2.5mg twice daily) と リバーロキサバン(10mg once daily)を比較した。静脈血栓症の発症から1~2年経過すれば血栓イベントリスクは十分に低下している。減量しても静脈血栓症の再発リスクは増えなかった(ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:0.67~2.60)。重篤な出血リスクは減少した(HR:0.61、95%CI:0.48~0.79)。仮説検証試験として結論が出たわけではないが、医師の直感的判断を支持する試験結果であった。

9.

第254回 肥満症治療薬の販売が絶好調!おかげで販売元は豊満に?

海外企業の多くは12月末が決算である。このため5月以降に佳境を迎える日本と違い、すでに主要企業の決算はほぼ出そろっている。医療に関係する企業で言うならば、やはり一番大きいのが製薬業界である。2023年実績で世界ランキング20位までの製薬企業のうち、日本企業ゆえにまだ決算が発表されていない武田薬品、大塚ホールディングスと非上場のためまだ発表されていない独・ベーリンガー・インゲルハイム以外の17社はすでに決算を発表済みだ。これら各社の決算結果では当然、各社の主要製品の売上高も公表されている。この各社発表の医療用医薬品の売上高をランキング化すると、改めて近年の傾向が見えてくる。そのトップ10を見ていきたい。なお、売上高はドル換算だが、各薬剤を円換算に表示すると、やや読みづらいと思うので、100億ドル=約1兆5,000億円を軸に各読者が概算で捉えていただければと思う。売上高トップ5、2024年で変わったことまず、2024年の売上高トップの医薬品は抗PD-1モノクローナル抗体のペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の294億8,200万ドルである。近年、免疫チェックポイント阻害薬ががん治療の主流を占める中で、2023年からこの薬が世界売上高トップにつけている。第2位が抗凝固薬のアピキサバン(同:エリキュース)の206億9,900万ドル(併売するブリストル・マイヤーズスクイブとファイザーの合算)。以下順に第3位がGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの注射薬(同:オゼンピック)の176億4,200万ドル、第4位が抗IL-4/13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ(同:デュピクセント)の139億4,700万ドル、第5位が抗HIV薬のビクテグラビルナトリウム・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩の配合剤(同:ビクタルビ)の134億2,300万ドル。このトップ5は2023年とほぼ順位は同じなのだが1点だけ異なる点がある。2023年は第3位に抗TNFαモノクローナル抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)がランクインしていた。同薬は免疫疾患に広く使われ、ペムブロリズマブが同年にトップになるまで、医療用医薬品売上高の王座だった。で、2024年にはどうなったのかというと、売上高89億9,300万ドルでトップ10圏外の第11位までランクダウンした。それもこれも2023年に特許が失効し、バイオ医薬品版ジェネリックのバイオシミラーが登場し始めたからである。ちなみに特許失効前の2022年の売上高は212億3,700万ドル。実に過去2年間で57.7%の減収である。製薬業界ではこの特許失効時期を境に該当製品の売上が急減することを「パテントクリフ」、日本語で直訳すると「特許の崖」と評するが、まさにその状況である。もっともこれでもアダリムマブはまだましなほうである。というのも、低分子の経口薬ならば、特許失効後半年程度で売上高の6割がジェネリック医薬品に置き換わるからである。ご存じのように低分子の経口薬と違い、培養が必要なバイオ医薬品では完全に同一条件で製造ができないため、バイオシミラーは先発のバイオ医薬品の同一成分ではなく同等・同質の成分。この結果、経口薬のジェネリック医薬品に比較的寛容な欧米の医師でも処方には慎重になりがちだ。6~10位にもある変化がさて第6位以降はどうだろう。第6位が抗IL-23p19モノクローナル抗体のリサンキズマブ(同:スキリージ)の117億1,800万ドル、第7位が抗CD38モノクローナル抗体のダラツムマブ(同:ダラザレックス)の116億7,000万ドル、第8位が持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(同:マンジャロ)の115億4,000万ドル、第9位が抗IL-12/23p40モノクローナル抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)の103億6,100万ドル、第10位が抗PD-1モノクローナル抗体のニボルマブ(同:オプジーボ)の93億400万ドル(ブリストル・マイヤーズスクイブ分のみの売上高)だった。第6~10位を2023年と比べると、トップ5と同じくある医薬品がトップ10外にランクダウンしている。それは一般人にとってはもはや喉元過ぎた熱さと言えるかもしれない、ファイザーの新型コロナウイルス感染症ワクチンのコミナティである。2023年には112億2,000万ドルの売上高だったが、2024年は53億5,300万ドルで52.3%の減収となった。もっとも新型コロナに限らず、感染症ワクチンはある種季節もの的な側面はあるため、取り立てて驚くような話でもない。一方、アダリムマブとコミナティのランクダウンに代わって2024年に新たにトップ10入りしたのが第6位のリサンキズマブと第8位のチルゼパチドである。前者はアダリムマブの製造販売元のアッヴィが戦略上、アダリムマブの後継品の1つに位置付けている医薬品である。現状、両薬で共通する適応症は乾癬と炎症性腸疾患だが、今後、新規患者では企業側自体がリサンキズマブに注力する可能性が高いため、アダリムマブの後退に代わって、より伸長していく可能性が高いだろう。そして第8位のチルゼパチドは前年比2.24倍という驚異的な売上伸長で初めてトップ10入りした。もともとは2型糖尿病治療薬として発売(同:マンジャロ)され、2025年4月11日に肥満症治療薬(同:ゼップバウンド)として発売が決定している。ちなみに第3位のセマグルチドも商品名としてのオゼンピックは2型糖尿病が適応だが、同一成分で肥満症を適応とするウゴービがある。ただ、以前の本連載でも触れたが、オゼンピック、マンジャロとも純粋に2型糖尿病治療薬として使われているとは言い難く、実際にはいわゆるダイエット目的の自由診療で相当程度使われ、今回の両製品の公式売上高もその分が相当含まれていると思われる。そして公式の肥満症治療薬としての2024年の製品売上高は、ウゴービが85億3,300万ドル、ゼップバウンドが49億2,600万ドルだった。それぞれ2023年比で1.86倍、24.6倍も売上高が伸長している。この調子だとウゴービ、ゼップバウンドともに2025年もかなりの売上伸長となりそうだ。ウゴービの場合は今回の集計では第12位で、2025年売上高はトップ10にGLP-1受容体作動薬関連が4製品もランクインする事態が現実味を帯びている。もちろんこれが適応症に沿って医学的に正しく使われているのならば何も問題はないが、そうではないことを否定できる人は誰もいないはずだ。もはや世界的に“なんだかなあ?”と言いたくなるような状況なのである。

10.

ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。 しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。 ランダム化比較試験としては事前に設定した有効性、安全性エンドポイントに対する仮説検証が目標となるが、臨床家は結果に基づいて実臨床における治療選択を考える。「頭蓋内出血の既往のある心房細動」でもDOACで虚血性脳卒中リスクを低減できるが、頭蓋内出血リスクは増える。未来に虚血性脳卒中リスクの高い個別症例を選別してDOACをのませる、などの個別最適化医療への方向転換が必要である。

11.

再発高リスクのVTE患者、DOACは減量可能か?/Lancet

 再発リスクが高く長期の抗凝固療法が必要な静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与は全量投与に対して、非劣性基準を満たさなかった。しかしながら両投与群ともVTEの再発率は低く、減量投与群のほうが臨床的に重要な出血が大幅に減少し、減量投与は治療選択肢として支持可能なことが示されたという。フランス・Centre Hospitalier Universitaire BrestのFrancis Couturaud氏らRENOVE Investigatorsが、多施設共同無作為化非盲検エンドポイント盲検化非劣性試験「RENOVE試験」の結果を報告した。再発リスクが高くDOACの長期投与が適応のVTE患者において、その最適な投与量は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、抗凝固薬の減量投与をすべきではないサブグループを特定する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌2025年3月1日号掲載の報告。減量投与群vs.全量投与群、症候性VTEの再発を評価 RENOVE試験は、フランスの47病院で行われた。急性症候性VTE(肺塞栓症または近位深部静脈血栓症)を呈し、長期の抗凝固薬療法が適応で連続6~24ヵ月の抗凝固薬全量投与を受けた18歳以上の外来患者を適格とした。適格患者は、初発の特発性VTE、再発VTE、持続性リスク因子の存在、その他の再発リスクが高いと考えられる臨床的状態のいずれかに分類された。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いた中央無作為化法により、減量投与群(アピキサバン2.5mgを1日2回またはリバーロキサバン10mgを1日1回)または全量投与群(アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回)に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。コンピュータ乱数生成ジェネレーターを用いたシーケンス生成法でブロックサイズの差異のバランスを取り、無作為化では試験施設、DOACの種類、抗血小板薬による層別化を行った。試験担当医師および被験者は治療割り付けを盲検化されなかった。VTEの再発、臨床的に重要な出血、全死因死亡は治療割り付けを盲検化された独立委員会によって判定された。 主要アウトカムは、治療期間中に判定された症候性VTEの再発(致死的または非致死的な肺塞栓症もしくは孤立性の近位深部静脈血栓症などを含む)であった(非劣性マージンは、ハザード比[HR]の95%信頼区間[CI]の上限が1.7、検出力90%に設定)。重要な副次アウトカムは、治療期間中に判定された重大な出血(国際血栓止血学会[ISTH]の基準に従い定義)または臨床的に重要な非重大出血、および治療期間中に判定されたVTEの再発、重大な出血または臨床的に重要な非重大出血の複合とした。主要アウトカムと最初の2つの副次アウトカムは、階層的に評価した。VTEの5年累積発生率は減量投与群2.2%、全量投与群1.8%で非劣性は認められず 2017年11月2日~2022年7月6日に2,768例が登録され、減量投与群(1,383例)または全量投与群(1,385例)に無作為化された。970例(35.0%)が女性、1,797例(65.0%)が男性で、1例(<0.1%)は性別が報告されていなかった。追跡期間中央値は37.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.0~48.3)。 症候性VTEの再発は、減量投与群で19/1,383例(5年累積発生率2.2%[95%CI:1.1~3.3])、全量投与群で15/1,385例(1.8%[0.8~2.7])に報告された(補正後HR:1.32[95%CI:0.67~2.60]、絶対群間差:0.40%[95%CI:-1.05~1.85]、非劣性のp=0.23)。 重大または臨床的に重要な出血は、減量投与群で96/1,383例(5年累積発生率9.9%[95%CI:7.7~12.1])、全量投与群で154/1,385例(15.2%[12.8~17.6])に報告された(補正後HR:0.61[95%CI:0.48~0.79])。 有害事象の発現は、減量投与群で1,136/1,383例(82.1%)、全量投与群で1,150/1,385例(83.0%)に報告された。Grade3~5の重篤な有害事象の発現はそれぞれ374/1,383例(27.0%)、420/1,385例(30.3%)であった。試験期間中の死亡はそれぞれ35/1,383例(5年累積死亡率4.3%[95%CI:2.6~6.0])、54/1,385例(6.1%[4.3~8.0])であった。

12.

脳出血既往AFに対する脳梗塞予防、DOACは有用か?/Lancet

 直接経口抗凝固薬(DOAC)は、心房細動を伴う脳内出血生存者の虚血性脳卒中予防に有効ではあるが、その有益性の一部は脳内出血再発の大幅なリスク増加により相殺されることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRoland Veltkamp氏らPRESTIGE-AF Consortiumが、欧州6ヵ国75施設で実施された第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「PRESTIGE-AF試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「これら脆弱な患者集団における脳卒中予防を最適化するには、さらなるエビデンスと無作為化データのメタ解析が必要である。特定の患者に対しては、より安全な薬物療法または機械的代替療法の評価も求められる」と述べている。DOACは、心房細動患者において血栓塞栓症の発症頻度を低下させるが、脳内出血生存者に対するベネフィットとリスクは不明であった。Lancet誌オンライン版2025年2月26日号掲載の報告。脳内出血発症後14日~1年のAF患者をDOAC群と抗凝固薬非投与群に無作為化 研究グループは、脳内出血発症後14日~12ヵ月(当初は6ヵ月)以内で、心房細動を有し、抗凝固療法の適応があり、修正Rankinスケール(mRS)スコアが4以下の18歳以上の患者を、脳内出血の部位と性別によって層別化し、DOAC群または抗凝固薬非投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 血管奇形または外傷に起因する脳内出血、左心耳閉鎖デバイスによる治療予定または既治療患者などは除外した。 DOAC群では、各地の試験担当医師の判断によりアピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバーロキサバンが投与された。抗凝固薬非投与群では、試験担当医師の判断で抗血小板薬(例:アスピリン100mg 1日1回)を投与または非投与した。 主要エンドポイントは2つで、初回虚血性脳卒中と脳内出血の初回再発とし、ITT集団で優越性と非劣性に関する階層的検定を実施した。脳内出血に関する非劣性マージンは、ハザード比(HR)の90%信頼区間上限が1.735未満とした。安全性についても、ITT集団を対象に解析した。DOAC群で虚血性脳卒中リスクは減少、脳内出血再発リスクは増大 2019年5月31日~2023年11月30日に319例が登録され、DOAC群(158例)および抗凝固薬非投与群(161例)に無作為に割り付けられた。患者背景は、年齢中央値が79歳(四分位範囲[IQR]:73~83)で、女性113例(35%)、男性206例(65%)であった。 追跡期間中央値1.4年(IQR:0.7~2.3)において、初回虚血性脳卒中の発症頻度は、DOAC群が抗凝固薬非投与群より低かった(HR:0.05、95%CI:0.01~0.36、log-rank検定p<0.0001)。すべての虚血性脳卒中イベントの発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群で0.83(95%CI:0.14~2.57)に対し、抗凝固薬非投与群では8.60(5.43~12.80)であった。 脳内出血の初回再発については、DOAC群は事前に規定された非劣性マージン(<1.735)を満たさなかった(HR:10.89、90%CI:1.95~60.72、p=0.96)。すべての脳内出血の発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群5.00(95%CI:2.68~8.39)に対し、抗凝固薬非投与群は0.82(95%CI:0.14~2.53)であった。 重篤な有害事象は、DOAC群で158例中70例(44%)、抗凝固薬非投与群で161例中89例(55%)に発現した。DOAC群では16例(10%)、抗凝固薬非投与群では21例(13%)が死亡した。

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出血リスクを比較、NOACs vs.アスピリン~9試験のメタ解析

 新規経口抗凝固薬(NOAC)とアスピリンは広く用いられているが、出血リスクの比較に関するデータは限られている。そこで、カナダ・マクマスター大学のMichael Ke Wang氏らの研究グループは、NOACとアスピリンを比較した無作為化比較試験(RCT)について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、出血リスクを評価した。その結果、アピキサバンとダビガトランはアスピリンと比較して出血リスクを上昇させなかったが、リバーロキサバンは上昇させる可能性が示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年2月11日号に掲載された。 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govより、2024年6月までに登録された研究のうち、NOACとアスピリンを比較したRCTを検索した。その結果、9つのRCTが抽出された。これらの研究のメタ解析を行い、大出血、頭蓋内出血のリスクを比較した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された9つのRCTの内訳は、アピキサバンとアスピリンの比較が5試験、ダビガトランとアスピリンの比較が2試験、リバーロキサバンとアスピリンの比較が2試験であった。・対象患者は2万6,224例で、平均年齢は67歳、男性は58%、平均追跡期間は20ヵ月であった。・アスピリンの用量は、8つのRCTで81~100mg/日であった(アピキサバンとアスピリンを比較した1つのRCTで81~324mg/日)。・大出血、頭蓋内出血について、いずれのNOACもアスピリンと比べて有意なリスク上昇はみられなかったが、リバーロキサバンではリスクが高い傾向にあった。各NOACのアスピリンに対するリスク差および95%信頼区間は以下のとおり。【大出血】 アピキサバン:0.0%ポイント、-1.3~2.6 ダビガトラン:0.5%ポイント、-2.1~19.6 リバーロキサバン:0.9%ポイント、-0.1~3.7【頭蓋内出血】 アピキサバン:-0.2%ポイント、-0.6~1.4 ダビガトラン:0.0%ポイント、-1.1~24.5 リバーロキサバン:0.3%ポイント、-0.1~79.7 本研究結果について著者らは、信頼区間の幅が広いという限界が存在することを指摘しつつ「今回のシステマティックレビューおよびメタ解析では、アピキサバンとダビガトランは大出血の発現率がアスピリンと同程度であったが、リバーロキサバンはアスピリンより高い傾向にあった」と結論を述べている。

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新たな慢性血栓症、VITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症の特徴/NEJM

 ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症(またはワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症、VITT)は、血小板第4因子(PF4)を標的とする抗体と関連し、ヘパリン非依存性であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンまたはアデノウイルス感染によって誘発される急性の血栓症を特徴とする。オーストラリア・Flinders UniversityのJing Jing Wang氏らの研究チームは、VITT様抗体と関連する慢性的な血栓形成促進性の病態を呈する患者5例(新規症例4例、インデックス症例1例)について解析し、新たな疾患概念として「VITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症(VITT-like monoclonal gammopathy of thrombotic significance:VITT-like MGTS)」を提唱するとともに、本症の治療では抗凝固療法だけでなく他の治療戦略が必要であることを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年2月12日号に短報として掲載された。本研究は、カナダ保健研究機構(CIHR)などの助成を受けた。従来のVITTとは異なる病態の血栓症の病因か 対象となった5例すべてが慢性の抗凝固療法不応性血栓症を呈し、間欠性の血小板減少症を伴っていた。これらの患者はM蛋白の濃度が低く(中央値0.14g/dL)、各患者でM蛋白がVITT様抗体であることが確認された。 また、PF4上の抗体のクローン型プロファイルと結合エピトープは、ワクチン接種やウイルス感染後に発症する急性疾患で観察されるものとは異なっており、これは別個の免疫病因を反映した特徴であった。さらに、VITT様抗体は、一般的なヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の抗体とは異なり、ヘパリン非依存性に血小板を活性化することが示された。 VITT様MGTSという新たな疾患概念は、このような従来のVITTとは異なる病態を示す慢性的な抗PF4抗体による血栓症の病因として、ほとんどの抗PF4障害、および明確な原因のない異常や再発性の血栓症を説明可能であることが示唆された。抗PF4抗体、M蛋白が新たな治療標的となる可能性 新規の4例の中には、VITT様の特性を有する血小板活性化抗PF4抗体が検出されたため、MGTSを疑い、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブによる治療を行ったところ、血栓症が抑制された症例を認めた。 また、従来の抗凝固療法を含むさまざまな治療を行っても、血栓症と血小板減少症が再発したため、MGTSを疑ってボルテゾミブ+シクロホスファミド+ダラツムマブ療法を施行したところ、血小板数が正常化し、M蛋白および抗PF4抗体が検出されなくなり、血栓症が改善した症例もみられた。 著者は、「慢性血栓症患者の診断に抗PF4抗体およびM蛋白の検査を追加することで、VITT様MGTSの早期発見が可能になると考えられる」「既存のVITT治療に加え、経静脈的免疫グロブリン療法(IVIG)やイブルチニブ、ボルテゾミブ+ダラツムマブなどを適用することで、より効果的な治療戦略を構築できるだろう」「これらの知見は、他の自己免疫性血小板減少症や血栓症における新たな治療標的としての抗PF4抗体およびM蛋白の役割を研究する基盤となる」としている。

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妊娠糖尿病とメトホルミン―「非劣性試験で有意差なし」の解釈は難しい(解説:住谷哲氏)

 妊娠糖尿病患者が食事療法のみで血糖管理が困難になれば、インスリンを投与するのがゴールドスタンダードである。わが国では妊娠糖尿病に対するメトホルミン投与は禁忌であるが、米国での妊娠糖尿病患者の69%はメトホルミンまたはグリブリド(グリベンクラミドと同じ)が投与され1)、英国では薬物療法が必要となった妊娠糖尿病患者の59%にメトホルミンが投与されているとのデータがある2)。さらに英国のNICEガイドラインではメトホルミンが妊娠糖尿病に対する第一選択薬に推奨されている3)。 妊娠糖尿病に対するメトホルミンの有効性を検討した試験にMiG試験がある4)。同試験の主要評価項目は新生児複合アウトカムであり、メトホルミン群は必要であればインスリンが追加投与されている。Discussionに“a methodologic limitation”として記載されているが、試験デザインはインスリンのメトホルミンに対する優越性を検証する優越性試験であった。しかし、事後解析として実施された非劣性デザインを用いた解析において、メトホルミンのインスリンに対する非劣性が証明された。ちなみに同論文の付属論説では明確にnon-inferiority trialとしている。 本試験はMiG試験とは異なり、メトホルミン投与で血糖が管理できなかった際にインスリンではなくグリブリドを投与する群と、最初からインスリンを投与する群との比較である。また主要評価項目は、LGA(large for gestational age)の発生率である。さらに試験デザインはインスリン群に対するメトホルミン群の非劣性を検証する非劣性試験である。結果は絶対リスク差4.0%(95%信頼区間[CI]:-1.7~9.8、p=0.09)であり、95%CIの上限が設定した非劣性マージンの8%を超えており、結論は「非劣性が証明されなかった」となった。 「非劣性が証明されなかった」試験の正しい解釈は、有効性に関して介入群は対照群と比較して「優越 superior」でも「同等 equivalent」でも「劣性 inferior」でもなく、統計学的に「判定不能」である。つまり本試験の結果からは、群間差について統計学的には何も言えないことになる。 近年、非劣性試験は多用される傾向にある。糖尿病領域でもほとんどのCVOTは非劣性試験であり、循環器領域でのワルファリンに対するDOACの有用性を検討した試験も同様である5)。冒頭に述べたように、妊娠糖尿病患者にメトホルミンの使用ができないわが国ではリスクとベネフィットを天秤に掛ける必要はないが、メトホルミンへの追加薬剤としてはインスリンが無難だろう。

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心房細動、abelacimab月1回投与で出血イベント改善/NEJM

 脳卒中リスクが中~高の心房細動患者の抗凝固療法において、リバーロキサバンと比較してabelacimab(不活性型の第XI因子に結合してその活性化を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体)の月1回投与は、遊離型第XI因子濃度を著明に低下させ、出血イベントを大幅に少なくすることが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristian T. Ruff氏らAZALEA-TIMI 71 Investigatorsが実施した「AZALEA-TIMI 71試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月22日号で報告された。7ヵ国の無作為化実薬対照比較第IIb相試験 AZALEA-TIMI 71試験は、心房細動患者の抗凝固療法におけるabelacimabの安全性と忍容性の評価を目的とする無作為化実薬対照比較第IIb相試験であり、2021年3~12月に7ヵ国の95施設で患者を登録した(Anthos Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢55歳以上、心房細動または心房粗動の既往歴があり、抗凝固療法が計画され、CHA2DS2-VAScスコアが4点以上、またはCHA2DS2-VAScスコアが3点以上で抗血小板薬の併用が計画されているか推定クレアチニンクリアランスが50mL/分以下の患者を対象とした。 これらの患者を、盲検下にabelacimab 150mgまたは90mgを月1回皮下投与する群、または非盲検下にリバーロキサバン20mgを1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、大出血または臨床的に重要な非大出血とした。出血イベントが予想以上に減少、試験は早期中止に 1,287例(年齢中央値74歳、女性44%)を登録し、abelacimab 150mg群に430例、同90mg群に427例、リバーロキサバン群に430例を割り付けた。CHA2DS2-VAScスコア中央値は5点で、ベースラインで患者の92%が60日以上の抗凝固薬の投与を受けており、66%が直接経口抗凝固薬(DOAC)であった。 abelacimabの月1回の皮下投与により、遊離型第XI因子の値はベースラインと比較して持続的に低下し、3ヵ月後の遊離型第XI因子の減少の中央値は、150mg群で99%(四分位範囲:98~99)、90mg群で97%(51~99)であった。 abelacimabによる出血イベントの減少が予想を超えていたため、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき試験は早期中止となった。 大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率は、abelacimab 150mg群が3.22件/100人年、同90mg群が2.64件/100人年であったのに比べ、リバーロキサバン群は8.38件/100人年と高い値を示した。リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のハザード比(HR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.24~0.60、p<0.001)、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHRは0.31(0.19~0.51、p<0.001)であった。有害事象の頻度は同程度 副次エンドポイントである大出血(リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のHR:0.33[95%CI:0.16~0.66]、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHR:0.26[0.12~0.57])および大出血、臨床的に重要な非大出血、小出血の複合(0.68[0.51~0.91]、0.46[0.33~0.64])についても、リバーロキサバン群に比べ2つのabelacimab群で良好であった。また、大出血のうち消化管大出血(0.11[0.03~0.48]、0.11[0.03~0.49])はabelacimab群で顕著に少なかったが、頭蓋内大出血やその他の大出血にはこのような差はなかった。 全有害事象、重篤な有害事象、試験薬の投与中止に至った有害事象の発現率は、3群で同程度であった。abelacimab群における注射部位反応は、150mg群で2.8%、90mg群で1.6%に認めた。抗薬物抗体を発現した患者はいなかった。 著者は、「本試験は症例数が少ないため、abelacimabの臨床的有効性を評価することはできず、より大規模な試験が必要である。現在、利用可能な抗凝固療法を使用できない高リスク心房細動患者を対象に、脳梗塞および全身性塞栓症の予防におけるabelacimabの有効性をプラセボと比較する第III相試験(LILAC-TIMI 76試験)が進行中である」としている。

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とくに注意すべき血液検査のパニック値とは?死亡事例の分析と提言~医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、血液検査パニック値が関与していた死亡事例の分析を実施し、事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第20号)を公表した(2024年12月)1)。パニック値とは「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」とされ、緊急異常値や緊急報告検査値などとも呼ばれる。今回、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた12事例が分析対象とされ、分析を基に5つの提言が示された。 今回の提言では、医療事故調査・支援センターに届けられた医療事故報告(2015年10月~2023年8月)のうち院内調査結果報告書2,432件の中から、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた17例を抽出。パニック値は検査項目や閾値が医療機関により異なるため、今回の分析では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)で示された“パニック値の例”(今回の提言書では資料1として掲載、32の検査項目のパニック値の例が示されている)に該当した9例と、医療機関内で設定されていたパニック値に該当していた事例3例の計12例を対象としている。その他の5例は化学療法前の検査値に関連した2例と、パニック値の項目として取り扱うか議論があるD-dimerに関連する3例で、今回の分析では参考事例とされている。 12例中、カリウム(K)がパニック値として検出された事例は5例あり、4例で致死的な不整脈の出現を認めた。また、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がパニック値であった事例は2例あり、脳出血に至っていた。 5つの提言は以下の通り。提言1(パニック値の項目と閾値の設定):医療機関は、診療状況に応じてパニック値の項目(グルコース[Glu]、K、ヘモグロビン[Hb]、血小板[Plt]、PT-INRなど)と閾値を検討し、設定する。※今回の提言書では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)からパニック値の例を示しており、上記とくに優先して設定することが望ましいとした5項目については、以下の数値が例示されている。Glu:低値50mg/dL、高値350mg/dL(外来)・500mg/dL(入院)K:低値1.5mmol/L、高値7.0mmol/LHb:低値5g/dL、高値20g/dLPlt:低値3万/μL、高値100万/μLINR:高値2.0(ワルファリン治療時は4.0)提言2(パニック値の報告):パニック値は、臨床検査技師から検査をオーダーした医師へ直接報告することを原則とする。また、臨床検査部門は報告漏れを防ぐため報告したことの履歴を残す。提言3(パニック値への対応):パニック値を報告された医師は、速やかにパニック値への対応を行い、記録する。また、医師がパニック値へ対応したことを組織として確認する方策を検討することが望まれる。提言4(パニック値の表示):パニック値の見落としを防ぐため、臨床検査情報システム・電子カルテ・検査結果報告書において、一目で「パニック値」であることがわかる表示を検討する。提言5(パニック値に関する院内の体制整備):パニック値に関する院内の運用を検討する担当者や担当部署の役割を明確にし、定期的に運用ルールを評価する体制を整備する。さらに、決定した運用ルールを院内で周知する。 提言書では、各事例の概要やパニック値検出時の対応フローのほか、D-dimerをパニック値項目として扱う際の課題などについてもまとめられている。

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心房細動患者、脳卒中予防のために有益な意思決定支援とは?/BMJ

 非弁膜症性心房細動を有する成人患者において、患者用意思決定支援(PDA)のみ、診療時意思決定支援(EDA)のみ、または両者の実施といった意思決定支援を受けた患者は、それらを受けなかった通常ケアの患者と比較し、意思決定の葛藤が少なくその共有が良好で、より多くの知識を得ていたことが示された。なお、PDAのみであった場合は、意思決定の葛藤に及ぼす影響については統計学的に有意ではなかった。米国・ユタ大学のElissa M. Ozanne氏らが、同国の6つの大学医療センターで実施したクラスター無作為化臨床試験の結果を報告した。心房細動患者のための共有意思決定(SDM)ツールや意思決定支援の手法がいくつか開発されているが、実際の共有意思決定支援の改善に関する、PDAとEDAの効果の違いを比較したデータはなかった。結果を踏まえて著者は、「来院前または外来診療時の意思決定支援を単独または組み合わせて実施することは、通常ケアと比較して有益であることが実証された」とまとめている。BMJ誌2025年1月9日号掲載の報告。患者および医師をそれぞれ意思決定支援実施群、非実施の通常ケア群に無作為化 研究グループは、18歳以上で非弁膜症性心房細動と診断され、血栓塞栓性イベントのリスク因子を1つ以上有し(CHA2DS2-VAScスコア:男性1以上、女性2以上)、抗凝固療法の適応と判断され、脳卒中予防戦略について話し合うための臨床予約が予定されている患者を、PDA実施群または非実施(通常ケア)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。臨床医もEDA実施群と非実施(通常ケア)群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、OPTION12尺度で測定したSDMの質(スコア範囲:0~100、高スコアほど意思決定が共有されていることを示す)、心房細動とその管理に関する知識(7項目からなるtrue/false回答形式の調査、スコアは正答率)、意思決定の葛藤(Decisional Conflict Scale[DCS]、16項目からなる5段階のリッカート尺度の合計を0~100のスコアに変換、低スコアほど患者の意思決定の葛藤レベルが低い)の3つであった。PDAとEDAの併用、およびEDA単独が有用 2020年12月14日~2023年7月3日に1,214例の患者が登録され、適格基準などを満たした1,117例が解析対象となった。臨床医は107例登録され、51例がEDA群、56例が通常ケア群に割り付けられた。したがって患者は、通常ケア群306例、PDA+EDA併用群263例、PDA単独群285例、EDA単独群263例であった。 通常ケア群と比較し、PDA+EDA併用群で、SDMの質が改善し(補正後平均群間差:12.1、95%信頼区間[CI]:8.0~16.2、p<0.001)、患者の知識が向上し(オッズ比:1.68、95%CI:1.35~2.09、p<0.001)、患者の意思決定の葛藤が減少した(補正後平均群間差:-6.3、95%CI:-9.6~-3.1、p<0.001)。 また、EDA単独群でも3つの主要アウトカムすべてにおいて、通常ケア群と比較し有意な改善が認められ、PDA単独群ではSDMの質および知識について通常ケア群と比較し有意な改善が認められた。 その他の評価項目である脳卒中予防のための治療選択や参加者の満足度については、重要な差は観察されなかった。また、診察時間の長さも各群間で、統計学的な有意差は認められなかった。

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身近な血圧計から心房細動の早期発見に寄与する新システム発表/オムロン

 オムロンヘルスケアは、血圧測定時に同時に得られるバイタルデータを解析することで「脈の乱れ」を検知するシステムの完成に合わせ、プレスセミナーを開催した。 セミナーでは、心房細動(AF)におけるバイタルデータの重要性や開発された血圧測定でAFのリスクを検出する次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”の説明が行われた。大きな循環器、脳血管障害の予防に日常生活でみつけたいAF 「脳・心血管イベントの抑制における心房細動管理の重要性」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野 教授)がAFの発症リスクと家庭におけるバイタルデータ計測の重要性について、説明を行った。 2017(平成29)年の人口動態統計によれば死因の第1位は「悪性新生物」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」となっている。循環器系疾患で全体の約1/4を占め、医療費と介護費では1番費用がかかり全体の約1/5を占め、介護が必要となる原因でも約1/5を循環器系疾患が占めている。 AFは加齢とともに増加する最も頻度が高い不整脈であり、患者の健康寿命や生命予後に大きく影響する。そのためAFに伴う心原性脳梗塞、心不全、認知症の予防が健康寿命延伸の鍵となる。 わが国のAFの有病率は、年齢に比例し、男性ほど多く、80代では男性の約4.5%で、女性の約2%でAFという研究報告もあり1)、有病率は年々増加している。とくに問題となるのは、脳卒中の前症状でAFが診断されないケースであり、“Fukuoka Stroke Registry”によれば、脳卒中の発症前にAFの診断なしが45.9%だったという報告もある2)。 そのため、早期にAFを発見することが、その後の大きな循環器、脳血管障害の予防に寄与するが、発見のアプローチとしてはさまざまなものがある。日常、簡単にできるものでは、自分で脈をチェックする「検脈」のほか、血圧計、ウェアラブルデバイスがあり、AFスクリーニング能は高くないが簡単にできる。また、家庭では携帯型心電計、24時間ホルター心電計などAFの可能性を検出できるデバイスもあり、これらの機器を駆使して早期に発見されることが期待される。 AFのリスクファクターでは、年齢、糖尿病、喫煙のほかに高血圧も指摘されている。とくに高血圧患者では非高血圧患者と比べて、未治療のAFが約3倍検出されたことが報告されており、早期発見の重要なターゲットといわれている3)。 次にAFの治療の最新動向について触れ、『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』(日本循環器学会/日本不整脈心臓学)から内容を引用しつつ、説明を行った。 同ガイドラインでは、リズムコントロールの有効性を高めるために生活習慣(肥満、喫煙、アルコール多飲など)の改善、併存疾患(高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など)の治療も重要と示すとともに、早期発見のAF患者ではリズムコントロール療法を考慮することが記載されている。 また、わが国では年間10万例を超えるカテーテルアブレーションの治療が行われており、その適応も拡大されるとともに、従来の焼灼ではなく高周波の電気で患部に作用するパルスフィールドアブレーションも使用できるなど治療機器の進化の一端も説明した。そのほか、抗凝固療法について、すべての直接経口抗凝固薬(DOAC)がCHAD2スコア1点以上で推奨されていること、高リスク高齢者では、腎機能障害や認知症などがあっても積極的にDOACを使用するべきと述べ、レクチャーを終えた。高血圧患者の圧脈波をAIが解析し、AFを発見 血圧を測るだけでAFの早期発見をサポートする「次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”とは」をテーマに、同社の技術開発統轄部の濱口 剛宏氏がシステムの説明を行った。 同社は累計3.5億台の血圧計を製造・販売しており、高血圧患者が、毎日の血圧測定で意識せず、AFを早期にみつける「新しい機会」の創出を模索していた。そして、今回開発された“Intellisense AFib”は、心臓が拍動するときに生じる動脈内の圧力変化である圧脈波のデータを取得することで、これをAIが解析し、AFの検出を可能にするという。 Intellisense AFibは、同社が蓄積してきた50年に及ぶ膨大な圧脈波のデータと最新のAIによるアルゴリズム、そして、心電図・脈波解析の専門チームの融合により、高精度なAF検出アルゴリズムを実現したものである。このシステムは2024年8月から中国をはじめ、欧州で発売を開始し、25年に米国で発売を、本年度中にはわが国でも薬事取得を目指すという。 同社では「Intellisense AFibが搭載された血圧計が普及し、1人でも多くの高血圧のAF患者の早期発見を実現したい」と今後に期待を寄せている。

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1月20日 血栓予防の日【今日は何の日?】

【1月20日 血栓予防の日】〔由来〕「大寒」に前後する、この時季は血栓ができやすいという背景と「20」を「ツマル」と語呂合わせして日本ナットウキナーゼ協会が制定。「ナットウキナーゼ」が血栓を溶解し、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果があることを啓発している。関連コンテンツ抗凝固薬を飲むにあたって【患者説明用スライド】心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancetコーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

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