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イスラム圏の健康状態、国家間格差の要因は?/Lancet

 乳幼児と妊産婦の健康改善を目標とした、ミレニアム開発目標(MDG)の項目4および5の推進は、世界的には大きな成果をもたらした。しかし、南アジア・中東・アフリカの多くのイスラム国家では、遅れをとっていることも明らかになっている。カナダ・トロント小児病院のNadia Akseer氏らは、イスラム国家間における、生殖や妊産婦・新生児・小児・青少年の健康状態および、その進展状況を評価する検討を行った。その結果、国家間の格差が認められ、そうした格差に関して、地域性や慣習の影響は認められなかったという。Lancet誌オンライン版2018年1月30日号掲載の報告。47のイスラム国家について調査 検討でとくに目的としたのは、イスラム国家における生殖や妊産婦・新生児・小児・青少年の健康状態および、それらの進展の現状と、開発が進んでいる先進イスラム国家における小児生存の決定因子を明らかにすることであった。そのために、イスラム国家と非イスラム国家の健康におけるアウトカムの差とキー決定因子を探るとともに、MDG4/5の達成程度(最良/不良/中程度)が異なるイスラム国家間の公的医療サービスのカバー率および決定因子を調べた。 具体的には、1990~2015年の複数の公表データ・レポジトリを基に、47のイスラム国家について調査した。そのうち26ヵ国が、Countdown to 2015 countriesと呼ばれるMDG4/5介入の最優先対象国(計75ヵ国)であった。これら26ヵ国について、非イスラムのCountdown国家48ヵ国と比較した。また、MDG4を達成するなど、小児生存率が大きく改善した、最も達成度が高かった8ヵ国の特徴も調べた。 青少年、妊産婦、5歳未満児、新生児の死亡率、死産率、死因別死亡、基本的な医療サービスのカバー率、決定因子の推算は、標準的手法を用いて行われた。 また、低所得および中所得のイスラム国家における、5歳未満児の死亡率と新生児の死亡率の決定因子について、階層的多変量解析も行った。貧しい国でも健康アウトカムの進展がみられる 1990~2015年の死亡率は、世界的には顕著な減少がみられたにもかかわらず、イスラム国家では全世界の推計値と比較して高く、Countdown国家間(イスラム国家と非イスラム国家)の比較においても高かった。基本的な公共医療サービスのカバー率も平均以下で、とくにリプロダクティブ・ヘルス、妊婦管理、出産・分娩、小児ワクチンの指標が低かった。 イスラム国家間において、死亡率および、生殖、妊産婦、新生児、小児、青少年に関する多数の健康アウトカム指標で、かなりのばらつきがあることが認められた。Countdown国家間の比較においては、構造的因子およびコンテキスト因子のうち、とくにガバナンス、コンフリクト、女性・少女のエンパワメント指標が、非イスラム国家と比較してイスラム国家では有意に不良であった。また、それらと小児・新生児の死亡率には、低所得および中所得のイスラム国家では強い関連性が認められた。 調整後の階層的モデルにおいて、その他の因子に関しても有意な関連性が認められている。イスラム国家における5歳未満児の死亡率は、難民の発生状況が高い国では上昇しているが(β=23.67、p=0.0116)、政情が安定しテロのない国(β=-0.99、p=0.0285)、政治力が強く政府が機能している国(β=-1.17、p<0.0001)、1人当たりの国民総所得が改善している国(β=-4.44、p<0.0001)、成人のリテラシーが高い国(β=-1.69、p<0.0001)、成人女性のリテラシーが高い国(β=-0.97、p<0.0001)、中等教育への進学者が男子よりも女子が多い国(β=-16.1、p<0.0001)においては低かった。 最良のパフォーマンスを示したイスラム国家は、アゼルバイジャン、バングラデシュ、エジプト、インドネシア、キルギス、モロッコ、ニジェール、セネガルで、パフォーマンスが中程度または不良のイスラム国家と比べて、家族計画介入や新生児あるいは小児のワクチン接種のカバー率が高く、またコンテキスト因子の大半で優れていた。 結果について著者は、「ニジェールやバングラデシュのように、貧困国でも進展がみられた」と指摘し、「今回の検討から得られたキー所見を政策やプログラムに適用し、統治者や政策立案者、開発パートナー、資金提供者、イスラム協力機構(Organization of the Islamic Cooperation)が優先的な割り当てを行うことで、2015年以降のイスラム国家の健康アウトカムのスケールアップおよび改善が可能になるだろう」とまとめている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第42回

第42回:水痘/帯状疱疹、50歳以上にワクチン接種勧めますか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 今回のテーマは水痘/帯状疱疹です。日本では2014(平成26)年10月から水痘ワクチンが定期接種化(生後12~36ヵ月)されています。先日も6歳の子が水痘で受診されましたが、接種していなくて未発症の姉は予防接種すべきか、担がん患者の祖母は接種したほうがよいか、非常に迷いました(50歳以上の接種で帯状疱疹を予防するエビデンスあり)。身近な問題ながら、わからないことが多いのが、水痘/帯状疱疹です。 以下、Am Fam Physician.11月15日号1)より帯状疱疹は、水痘ウイルスの再活性化(reactivation)で発症する。米国では年間100万人発症し、その人が生涯発症するリスクは30%程度とされている。家庭医の診療ベースでは、人口1,500人当たりで年間2~3例が発症し、体液性免疫が低下している人に関しては、そのリスクが20~100倍まで跳ね上がる。発疹の2~3日前に、全身倦怠感、頭痛、発熱、腹部の皮膚の違和感があるが、前駆症状だけで診断するのはかなり困難である。発疹は片側性に、1つのデルマトームに限局することが多く、水疱は7~10日で痂皮化する。72時間以内の抗ウイルス薬投与が勧められるが、新しい病変が発生する場合や、眼病変、神経症状が出る場合はその限りではない。アシクロビルにするか、バラシクロビル(商品名:バルトレックス)にするか迷うところである。アシクロビルは安価だが生体利用率が低く、投与回数も多い(3回と5回)。また、6ヵ月後の皮膚病変については差がないが、神経痛の改善はバラシクロビルのほうが早いと言われている2)。帯状疱疹後神経痛は5人に1人の割合で発症し、治療法はリドカイン、カプサイシン、ガバペンチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬がある。50歳以上の人に水痘ワクチンを接種することは、帯状疱疹の減少につながる可能性がある(ちなみに抗体価を測って接種の可否を決める必要はない。年齢要件があれば、既往や抗体価の有無に関わらず適応がある)。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2017;96:656-663. 2) Beutner KR, et al .Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1546-1553.

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魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減

 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。子供のころの痛みは記憶として大きくなる はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。小児の痛みをマネジメントする時代へ 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。痛みの軽減だけではない患児へのメリット 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。■参考佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

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乳児のインフル、妊産婦のワクチン接種で予防可能か

 生後6ヵ月までの乳児は重度のインフルエンザ合併症リスクが高いが、インフルエンザワクチンを接種するには早過ぎる。今回、日本の前向きコホート研究で、母親のインフルエンザワクチン接種により乳児のインフルエンザが減少することを、大阪市立大学の大藤 さとこ氏らが報告した。著者らは「今回の結果は、妊産婦が幼児を守るためにインフルエンザワクチン接種を受けるべきであることを示唆する」としている。The Journal of infectious diseases誌オンライン版2017年12月5日号に掲載。 本研究は、2013/14年のインフルエンザシーズンの前に研究参加病院で生まれた乳児3,441人における前向きコホート研究。募集時、母親に2013/14シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種状況についてアンケートした。2013/14シーズン終了後に追跡調査を行い、乳児のインフルエンザ診断と入院に関する情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・2013/14シーズン中、71人(2%)がインフルエンザと診断され、13人(0.4%)はインフルエンザで入院した。・母親のインフルエンザワクチン接種(とくに出生前)は、乳児のインフルエンザの減少効果を示した。・出生前ワクチン接種のワクチン有効性は61%(95%信頼区間:16~81%)、産後ワクチン接種のワクチン有効性は53%(同:-28~83%)であった。・母親のインフルエンザワクチン接種は乳児のインフルエンザ関連入院の減少とも関連していたが、インフルエンザのため入院した乳児数が少なかったため、ワクチンの有効性(73%)は統計的に有意ではなかった。

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ペストに気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回は前回に引き続いてペストについてです。前回は、主にペストの歴史と疫学について学びました。現在、マダガスカルでアウトブレイク中ッ! とか言っていましたが、いつの間にかほぼ終息していますね。良かった良かった。しかし、またいつペストが流行するかわかりませんから、最低限の知識は持っておきましょう!ペストは「一類感染症」 疑ったら保健所に!はじめに重要な点ですが、ペストはわが国では「一類感染症」に指定されています。一類感染症と言えば、数年前に問題となったエボラ出血熱などと同じ括りになります。つまりッ! ペストが疑われた場合は、ただちに保健所に連絡して、特定感染症指定医療機関(全国に4施設)または第一種感染症指定医療機関(おおむね各都道府県に1施設)に転送し、隔離の上で診断・治療を行うことになります。自分の病院で診てはいけないのですッ!ところで漫画『リウーを待ちながら』(作・朱戸アオ/講談社)というペストを扱った作品をご覧になったことがありますでしょうか(本書でのCOIはありません)。これは日本のS県横走市という架空の自治体でアウトブレイクした多剤耐性(!)ペストと闘う話で、まぁ確かに面白いです。面白いんだけど…ペストだっつってんのに普通の総合病院で診療をしてるんですッ! 感染症法を完全無視ッ! 肺ペスト患者が普通に大部屋で入院ッ! 患者を隔離せんかい、隔離ッ! まあ飛沫感染ですから、厳密には個室隔離は不要だとは思いますが、一応法律上は隔離が必要です、はい。つーか、本来は、保健所に連絡して転院って流れになるんですが、そのまま自分の病院で診ちゃってるっていう…。良い子は絶対にマネすんなよっ! ていう内容です。ペストの感染経路のまとめさて、それはともかく前回ペストの感染経路について「腺ペストはノミに刺されることによって感染する」「腺ペストの患者の体液に曝露するとヒト-ヒト感染が成立する」「肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染する」とご紹介しました。我ながら、何がなんだかわかりませんので、もう少し詳しくペストの感染経路についてご紹介したいと思います。図1はペストの感染経路について超絶わかりやすく示したものです。ペスト菌は、流行地域において野生のげっ歯類とノミの間をサイクルしています。なお、野生のげっ歯類がペストに感染して死亡した場合、土壌にペスト菌がプールされることがあります。野生のげっ歯類(あるいはヒト)が、この土壌の粉塵を吸入することで感染することがあります。画像を拡大するヒトへの感染経路は、要約しますと、1)ペスト菌を持つ野生環境でノミに吸血される2)ペストに感染した野生環境でげっ歯類(またはその死体)と直接接触する3)屋内・人間社会に生息するペストに感染したげっ歯類(またはその死体)と直接接触する4)ペスト菌に汚染された土壌の粉塵を吸入する5)肺ペストの患者からの飛沫感染の5つがあります(厳密にはほかにも感染動物の食肉を生で食べる、とかもあります)。基本的には、このうち1)~3)では腺ペスト、4)と5)では肺ペストを発症します。ペストの主な症状腺ペストは、ペストの80~90%を占めるといわれており、通常は曝露してから1~7日の潜伏期間の後に高熱、頭痛、嘔吐、ノミに刺された部位の所属リンパ節の腫大と疼痛などの症状が出現します。肺ペストは、腺ペストに比べると潜伏期が短く、急激に進行する呼吸困難、血痰などの呼吸器症状が急激に進行します。ペスト全体に対する割合は、数%とされていますが、2017年のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペスト患者がより多くの割合で報告されています。いずれの病型も敗血症を起こし、全身に出血斑、壊死が出現することがあります。ペスト敗血症に至ると、治療を行わなければ数日~1週間程度で致死的になります。ペスト全体の10%程度が敗血症に至るとされています。図2は米疾病対策センター(CDC)の医師が撮影したペスト敗血症の臨床写真ですが、手指末端が壊死しています。これが「黒死病」と呼ばれた所以ですね。画像を拡大するペストの診断と治療ペストの診断ですが、ペストはペスト菌(Yersinia pestis)による細菌感染症ですので、ペスト菌を証明することで診断されます。血液、リンパ節、喀痰、病理組織などそれぞれの病態に応じた感染臓器の検体からの分離同定、蛍光抗体法での抗原検出、PCR法による遺伝子検出などによる病原体検出により確定診断となります。しかし! 何度も申しあげますが、ペストが疑われる場合は、保健所にただちに連絡すべしッ! ですので不用意に診断しちゃわないようにご注意ください。治療は抗菌薬が有効です。ストレプトマイシン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールといった「動物由来感染症によく使う系抗菌薬」で治療を行います。最後に予防ですが、残念ながらペストには有効なワクチンが現在ありません。ペスト発生国では、ネズミなどのげっ歯類、ノミ、ペストからの感染可能性のある患者や死体に接しないことが大切です(誰もそんなこと好き好んでしないと思いますが)。 また、入院患者対応としては、肺ペスト患者からは飛沫感染があるので、サージカルマスクの着用が有用です。ということで、2回にわたりペストについてお送りいたしました。次回こそは「バベシア症」についてご紹介したいと思います。1)Jonathan Cohen, et al. Infectious Diseases 4th Edition.Elsevier.2017.2)World Health Organaization. Plague: Fact sheet.

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新型インフルエンザ対策の最前線

 2017年11月5日、厚生労働省は都内において、「新型インフルエンザ対策に関する研修」を開催した。当日は、新型インフルエンザの疫学、治療ガイドライン、感染対策、行政の動向について4名の演者による講演が行われた。急がれるH7N9ワクチン はじめに「鳥インフルエンザの疫学について」をテーマに小田切 孝人氏(国立感染研インフルエンザウイルス研究センター WHOインフルエンザ協力センター センター長)が、鳥インフルエンザの動向、最新の知見を解説した。 インフルエンザAタイプは人獣共通感染症であり、野生のツルやカモなどの水禽類が宿主となっている。このタイプは、ヒト、トリ、ブタ間でも感染し、現在トリではH5N1、H5N6、H7N9、H9N2が、ブタではH1N2v、H3N2vがヒトに感染することがわかっている。とくに患者数が多かったH5N1は、その数が減少する傾向にあるものの、高病原性ゆえに致命率は53%と高いという。 問題は、突然変異によるパンデミックポテンシャルをウイルスが持っていることであり、トリがこうしたウイルスを獲得していないかどうか、常に監視する必要があると警告する。 ワクチンについては、世界保健機関(WHO)がインフルエンザウイルスのリスト化とワクチン株の保存を行い、日本、米国、英国の施設で新型インフルエンザワクチン製造株を作製・提供を実施しており、中国でも開発中であるという。 その中国では、2013年より鳥インフルエンザ H7N9が流行。2017年8月31日時点で、1,531例の感染例(うち死亡604例)と高い致命率(39.5%)が報告された。また、旅行など人の移動が感染拡大を助長したこと、高齢者の感染例が多いことも報告された(H5N1は青年に多かった)。 H7N9は、飛沫感染する例も動物実験で報告され、ワクチンの開発が急がれているが、予防接種の免疫獲得が低いことや免疫細胞に認識されないなどの問題があり、現在も研究が続けられている。 最後に、日本で中国のようなアウトブレイクが起きるかどうかについて、「わが国の検疫対応をみると発生しないだろう」と現状からの予測を語り、レクチャーを終えた。新型インフルエンザには抗ウイルス薬の使用をためらわない 次に川名 明彦氏(防衛医科大学校 感染症・呼吸器内科 教授)が、「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン改訂の方向性について」をテーマに解説を行った。 2014年3月に現在の治療ガイドラインが発行され、現在は改訂(第2版)の最終段階であり、12月中には最新のガイドラインが発行されるとの見通しを述べた。 ガイドラインで示される治療の範囲は、入院診療の治療がメインとなり、とくに意識障害、肺炎の有無別による治療にページが割かれるという。また、予想される新型インフルエンザの臨床像は、過去のインフルエンザの事例、鳥インフルエンザの重症例、季節性インフルエンザの重症例などから検討され、インフルエンザ肺炎の中でも原発性、混合性、二次性の大きく3つに分けた治療が記されるという。 現在、日本で使用できる抗ウイルス薬には、オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(同:リレンザ)、ラニナミビル(同:イナビル)、ペラミビル(同:ラピアクタ)の4種がある。治療では、米国疾病管理予防センター(CDC)の原則に沿い、早期投与が勧められているほか、入院患者、2歳以下の小児、65歳以上の高齢者、循環器や代謝異常などの既往症、免疫抑制状態、妊婦(出産後2週間以内も含む)、病的肥満(BMI 40以上)、長期療養施設に入所など、ハイリスク患者には可能な限り早期に投与するとしている。 症状が、軽症、中等症、肺炎合併がない場合の新型インフルエンザの治療では、季節性インフルエンザと同じ治療としつつ、肺炎を合併した場合は、できるだけ早く抗ウイルス薬の投与を示している。とくに重症例ではペラミビルの選択、増量や投与期間の延長、ファビピラビル(同:アビガン)との併用も考慮するとしている(ただしファビピラビルは妊婦または妊娠している可能性のある婦人へは投与しない)。 新型インフルエンザ肺炎への細菌感染の合併例については、頻度の高いものとして肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などのウイルス細菌混合性肺炎と、緑膿菌、アシネトバクターなどの二次性細菌性肺炎を挙げ、入院を要する症例ではただちに抗菌薬療法を開始する。そして抗菌薬の選択はガイドラインを参考に行い、病原体確定後に、より適切な抗菌薬へde-escalationすることとしている。その他の薬物療法として副腎皮質ステロイド薬は、ウイルス性肺炎では喘息合併に限り重症化を抑制するほか、細菌性肺炎では敗血症性ショック時の相対的副腎不全に低容量で有効とされている。また、マクロライド系薬は、細菌性肺炎の重症化例で予後を改善するとの報告がある。 肺炎時の呼吸管理では、人工呼吸を躊躇しないで使用するほか、悪化または改善がみられない場合は、特殊な人工呼吸法(ECMO)の導入やより専門的な施設への転送をするとしている。 インフルエンザ肺炎の重症度評価では、PSI、A-DROP、CURB-65などの市中肺炎の重症度評価法よりも、重症度が過小評価されることに注意が必要と指摘する。 最後に、川名氏は「“新型インフルエンザ”の病態は未知であるが、病原性の高いインフルエンザの出現を想定し、準備する必要がある。ガイドラインも、出現時にはウイルスの特徴に応じてただちに再検討する必要がある」とまとめ、レクチャーを終えた。感染対策は手指衛生と予防接種が大事 次に加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室 医長)が、「感染対策について」をテーマに解説を行った。 インフルエンザの院内感染の特性は、新型も季節性も、新生児、骨髄移植患者、長期療養型病棟で致死率の高い流行を起こすことがあり、医療従事者においては患者からの感染と患者の感染源になるという2つのリスクがあると説明する。そして、新型インフルエンザ流行時には、感染被害の軽減と封じ込めの同時進行が必要であり、過去の拡大例を検証すると、医療従事者から患者への飛沫感染対策は重要であるという。 そして、医療機関における具体的な感染対策としては、「感染源対策」「患者・職員の健康管理」「感染経路の遮断」の3つが必要とされ、CDCの推奨でも予防接種、患者との接触を減らす、標準予防策の順守、飛沫予防策の順守、訪問者の制限なども掲げられ、実践されることが期待される。 とくに飛沫感染対策・咳エチケットとして、医療機関の入口での注意の掲示、1m以上の距離を隔てた待合用の座席、待合室の手近な場所への手指衛生設備の設置などが必要となる。同様に、医療スタッフへの指導では、個人防護具(手袋、ガウン、シールド付きサージカルマスクなど)の装着・脱着の研修は有効であるという。 最後に加藤氏は「院内感染対策では、手指衛生と(患者、医療従事者の)予防接種の2つが有効とされている。新型インフルエンザの対策も、季節性インフルエンザの延長にあると考え、流行に備えてもらいたい」と語り、解説を終えた。新型インフルエンザではWeb情報も活用を! 最後に、厚生労働省の海老名 英治氏(健康局結核感染症課 新型インフルエンザ対策推進室 室長)が「行政動向について」をテーマに、新型インフルエンザ対策の法令、ワクチンの備えに関して説明を行った。 新型インフルエンザへの対策は、水際での侵入阻止と早期封じ込めによる感染拡大の抑制と流行規模の平坦化、それと同時にワクチンの開発、生産、接種によって流行のピークを下げること、医療への負荷を減らすことであるという。 2012年5月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が公布され(施行は2013年6月)、流行時の各種対策の法的根拠が明確化された。具体的には、体制整備として国・地方公共団体の行動計画や訓練、国民への啓発のほか、流行発生時の対策本部の設置、特定接種の指定などが決められ、「新型インフルエンザ等緊急事態」発生の際の措置では、外出自粛要請、興行場等の制限などの要請・指示、住民への予防接種の実施、医療提供体制の確保、緊急物資の運送の要請・指示などの規定が挙げられる。 また、国のインフルエンザ対策として、時間軸で海外発生期、国内発生早期、国内感染期、小康期の4つに区切り、各段階で(1)実施体制、(2)サーベイランス・情報収集、(3)情報提供・共有が行われると説明を行った。 現行の被害想定はいずれも最大数で、罹患者を人口の25%、医療機関受診者を約2,500万人、入院者を約200万人、死亡者を約64万人、欠勤者を従業員の約40%とし、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は人口の45%を目標としている(2017年7月時点の有識者会議で、全人口の25%が罹患するとして再検討されている)。また、「これら抗ウイルス薬の備蓄方針、季節性インフルエンザとの同時流行時の規模や重症患者への倍量・倍期間治療、予防投与についても、省内の厚生科学審議会で継続的に審議されている」と説明する。 最後に海老名氏は、「審議会などの新しい情報も厚生労働省のウェブサイトなどを通じて日々発信しているので、新型インフルエンザの対策ではこれらも参考に準備をしていただきたい」と述べ、説明を終えた。■参考厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)内閣官房 新型インフルエンザ等対策厚生労働省 セミナー当日の配布資料

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腸チフスにおける蛋白結合型ワクチンの有効性-細菌摂取による感染モデルでの検討(解説:板倉泰朋氏)-761

 腸チフスは南アジアやサハラ以南アフリカなど、上下水道の設備が不十分な途上国を中心に流行を認めている疾患である。世界では小児を中心に年間2,000万人以上が罹患し、死亡者は20万人に及んでいる。日本においてここ数年は年間40~60例ほどの届け出がなされ、輸入例が多くを占めている。 現在、米国などで承認されている腸チフスワクチンとしては、経口弱毒生ワクチンであるTy21aとVi抗原に対する莢膜多糖体ワクチンの2つがある。ただし、いずれのワクチンも疾患感受性の高い2歳未満の小児への利用ができないことが問題だった。その理由は、生ワクチンはカプセル状で5歳未満の小児は内服が難しいためであり、莢膜多糖体ワクチンは2歳以下の小児での免疫原性が十分でなく、推奨できないためである。 2歳未満の小児への免疫原性を高めた蛋白結合型ワクチンとして、2001年にVi-rEPA(Vi-recombinant Pseudomonas aeruginosa exotoxin)の報告がなされ、2~5歳の小児に89%の有効性を示した。その後、蛋白結合型ワクチンの大規模試験がWHOの承認を得るべく計画されたものの、報告がない状況であった。 本研究は、英国在住の健常成人において、腸チフスに対する蛋白結合型ワクチンの安全性と有効性を調査した第IIb相のランダム化比較試験である。T細胞依存性の蛋白結合型ワクチン(Vi-tetanus toxoid:Vi-TT)群、莢膜多糖体ワクチン(Vi-polysaccharide:Vi-PS)群、コントロール群の3群に分け、ワクチン接種後、腸チフス菌の経口摂取を行い、ワクチンの予防効果を発症群と非発症群で比較した。 結果として、腸チフスの発症を菌血症または12時間以上の遷延する発熱と定義した場合、コントロール群での発症率は77%であった。Vi-TT群、Vi-PS群の発症率はともに35%であり、効果はVi-TT群54.6%(95%CI:26.8~71.8)、Vi-PS群52.0%(95%CI:23.2~70.0)とほぼ同等であった。SeroconversionはVi-TT群で100%、Vi-PS群で88.6%であり、抗体価もVi-TT群で高く、臨床的にもVi-TT群でより軽症となる傾向がみられた。重大な有害事象とワクチン接種との関連はなく、Vi-TTは今までのワクチンと同程度で安全に使用できると考えられた。 薬剤耐性への取り組みは世界的な課題となっているが、市販で抗菌薬を入手できる国々での過剰使用が、耐性菌発生の重要な要因となっている。実際、腸チフスでも、フルオロキノロン系抗菌薬への耐性が進んでいる。ワクチンによる予防で抗菌薬使用量を削減することは、薬剤耐性への取り組みの一環としても期待が大きい。 国内では、腸チフスワクチンの接種は流行地への渡航に際し推奨されているが、認可されたワクチン製剤はないため、輸入ワクチンを用いている。国内での使用機会は限られているが、世界的な普及に伴い流行地での罹患率の減少、ひいては薬剤耐性菌減少につながる。回りまわってその恩恵は国境を越えて全世界で享受されるだろう。さらなる蛋白結合型ワクチンに関する大規模試験での報告と今後の実地での利用拡大に期待したい。■参考「IASR(病原微生物検出情報)」 国立感染症研究所ホームページ

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抗ジカウイルスDNAワクチン、ヒトで免疫応答/NEJM

 開発中の抗ジカウイルスDNAワクチン(GLS-5700)の、ヒト接種の安全性と免疫原性を検討した第I相非盲検臨床試験の速報結果が、NEJM誌オンライン版2017年10月4日号で発表された。米国・ペンシルベニア大学のPablo Tebas氏らが、米国とカナダの3施設で健康なボランティア成人40例(年齢中央値38歳)を集めて1mgまたは2mg接種について検討した結果、全例で安全に免疫応答を誘発したことを報告した。ジカウイルス(ZIKV)感染症に対する承認ワクチンは、現状ではない。今回の結果を受けて著者は、「さらなる試験を行い、ワクチンの有効性と長期的安全性を評価する必要がある」とまとめている。接種&エレクトロポレーションで免疫原性を高める 試験は2016年8~9月に、ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)、QPS-Miami Research Associates(マイアミ)、ラヴァル大学(ケベック)で、健康なボランティアを集め、デング熱検査が陰性であった40例を登録して行った。 GLS-5700は、ZIKVのpremembrane and envelopeタンパク質をコードする合成DNAワクチンで、皮下注後に接種部位でエレクトロポレーション(ワクチンに封入されたDNAシーケンスを、パルス電界を利用して細胞に導入する方法)を行い、免疫原性を高める。 今回の第I相試験では、被験者を2群に分けて(各群20例)、GLS-5700を1mgまたは2mg皮下注投与し安全性と有効性を調べた。接種とエレクトロポレーションは、ベースライン、4週後、12週後に行った。3回投与の安全性と有効性を確認 被験者の年齢中央値は38歳(四分位範囲:30~54歳)、60%が女性で、人種は78%が白人、22%が黒人であった。また、被験者をヒスパニック系か否かで分類した場合、ヒスパニック系は30%であった。 14週の中間解析の時点(ワクチン3回接種後を含む)で、重篤な副反応の報告はなかった。ワクチン接種部位反応(注射部位の痛み、発赤、腫脹、かゆみなど)は、被験者の約50%で報告された。 ワクチン3回接種後、ELISA法にて、全被験者で結合抗体が検出された。幾何平均抗体価(GMT)は、1mg投与群1,642、2mg投与群2,871であった。中和抗体は、Vero細胞培養アッセイにて、62%で発現が認められた。神経細胞培養アッセイでは、70%の血清サンプルで、ZIKV感染を90%阻止したことが認められ、95%のサンプルでは50%の感染阻止が認められた。 IFNARノックアウトマウス(インターフェロンαおよびβ受容体をコードする遺伝子欠損モデル)を用いたワクチン接種後の評価では、致死量のZIKV-PR209株のチャレンジ試験において、103/112例(92%)で感染阻止が認められた。ベースライン接種後にチャレンジ試験を受けたマウスでは生存例はみられず、生存は中和抗体価と無関係であった。

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流行性耳下腺炎アウトブレイク時のMMRワクチン追加接種の有効性(解説:小金丸博氏)-744

 流行性耳下腺炎(ムンプス)は、ワクチンで予防可能なウイルス疾患である。米国では麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン(MMRワクチン)の2回接種がワクチンプログラムに組み込まれており、ムンプス症例は2005年までに99%減少したが、近年も数千人規模のアウトブレイク事例が報告されている。ムンプスのアウトブレイクは、90%以上がきちんとワクチンの2回接種を済ましている大学生の間でも、たびたび報告されている。アウトブレイクを制御するための手段の1つにMMRワクチン3回目の追加接種が挙げられるが、この方法の有効性は明確になっていなかった。 本研究は、2015年アイオワ大学で発生したムンプスのアウトブレイク時にMMRワクチンの追加接種を呼びかけ、その有効性を検討した観察研究である。アウトブレイクは、98.1%の学生がMMRワクチンを2回以上接種していた集団で発生した。ムンプスの発生率は、3回目の追加接種を受けた群が、2回接種済みだが追加接種を受けなかった群と比べて、有意に低かった(1,000人当たり6.7例 vs.14.5例、p<0.001)。3回目のワクチンを追加接種することで、2回接種のみの群と比べて、接種後28日の時点で78.1%ムンプスのリスクが低下した。また、ワクチン2回接種群と未接種群を比較すると、2回目のワクチン接種から時間が経過しているほど、ワクチンの有効性が低下していることが示された。 本研究では、ムンプスのアウトブレイク時にMMRワクチン3回目の追加接種を行うことで、発生リスクを低下させうることが示された。とくに2回目のワクチン接種から13年以上経過している学生ではムンプスの発生リスクが高くなっており、アウトブレイク時に追加接種を検討する価値は高いと思われる。小児期に接種したワクチンの効果が減衰することがアウトブレイクの拡大に関与すると考えられるため、今後は10代前半で追加接種を行うようなプログラムが検討されるかもしれない。 ムンプスワクチンに関する日本の現状は、世界とはまったく異なる。世界ではMMRワクチンの2回接種が標準となっているが、日本においてはまだ任意接種であり、定期の予防接種の対象にもなっていない。当然、本論文で議論されている内容をそのまま日本に当てはめることはできない。日本の子供たちに世界標準のワクチンを公費で接種できる日が早く訪れることを強く望む。

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腸チフス予防、ワクチンは有効か/Lancet

 Vi-破傷風トキソイド結合型(Vi-TT)ワクチン接種は、18~60歳の腸チフスの疾病負荷を軽減し健康格差を減らす可能性が示された。英国・オックスフォード大学のCelina Jin氏らが、健康なボランティア成人を対象に行った初となるヒト対象の第IIb相単一施設無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月28日号で発表した。世界の貧困地域では毎年、チフス菌亜型(S Typhi)に約2,000万人が感染し、20万人が死亡している。莢膜Vi多糖体蛋白結合型ワクチン(Vi結合型ワクチン)は免疫原性があり乳児期から使用できるが、接種普及のための主要ワクチン候補とするには有効性に関するデータが乏しく、そのギャップを埋めるため、研究グループは、S Typhiの感染確立モデルを使ってVi-TTワクチンの有効性を評価した。ワクチン接種1ヵ月後にチフス菌を経口投与 研究グループは2015年8月18日~2016年11月4日の間に、腸チフスのワクチン接種歴および感染症歴なし、または腸チフス流行地域の長期滞在歴がない18~60歳の健康なボランティアを集めて、試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、Vi-TTワクチン、Vi多糖体蛋白結合型(Vi-PS)ワクチン、髄膜炎ワクチン(対照群)をそれぞれ単回投与した。被験者と試験担当医は接種割り付けについてマスキングされたが、ワクチン接種を担当した看護師は認識していた。 被験者は、ワクチン接種の約1ヵ月後にチフス菌の経口投与(チャレンジ試験)を受け、その後2週間にわたり毎日血液検査を受け、腸チフス感染症罹患(38℃以上、12時間以上の持続的発熱またはチフス菌血症)の診断を受けた。 主要エンドポイントは、腸チフス感染症者の割合(罹患率)であった。腸チフス罹患率、対照群77%、Vi-TT群とVi-PS群は35% 被験者は112例(Vi-TT群41例、Vi-PS群37例、対照群34例)で、そのうち、チャレンジ試験を完了した103例を対象に分析を行った。 腸チフス感染基準を満たし罹患したと診断された割合は、対照群77%(24/31例)だったのに対し、Vi-TT群(13/37例)、Vi-PS群(13/35例)はいずれも35%で、ワクチン有効率は、Vi-TT群54.6%(95%信頼区間:26.8~71.8)とVi-PS群52.0%(同:23.2~70.0)だった。 セロコンバージョンは、Vi-TT群が100%、Vi-PS群が88.6%で達成が認められ、ワクチン投与後1ヵ月の幾何平均抗体価はVi-TT群で有意に高率だった。 試験期間中、重篤な有害事象が4件(Vi-TT群1件、Vi-PS群3件)報告されたが、いずれもワクチンとの関連は認められなかった。

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米国で経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが非推奨へ変更された理由(解説:小金丸博氏)-739

 米国では2003年より、経鼻タイプの弱毒生インフルエンザワクチンが導入された。経鼻弱毒生ワクチンは一般的な不活化ワクチンと比べて予防効果が高いとされ、とくに小児領域で高い評価を受けてきた。日本でも2016年に承認申請が出され、国内での流通開始が待ち望まれていたワクチンだったが、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は一転「2016-17年シーズンの弱毒生インフルエンザワクチンの接種を推奨しない」と勧告した。本論文を読むことで、経鼻弱毒生ワクチンが非推奨へ変わった理由を知ることができる。 本研究は、米国における2015-16年シーズンのインフルエンザワクチンの有効性をtest-negative designを用いて評価した症例対照研究である。急性呼吸器疾患で受診した生後6ヵ月以上の患者を対象とし、鼻咽頭スワブ検体のRT-PCR陽性をもって確定診断とした。その結果、あらゆるインフルエンザ疾患に対するインフルエンザワクチンの効果は48%(95%信頼区間:41~55、p<0.001)だった。2~17歳の小児における効果をワクチンのタイプ別にみてみると、不活化ワクチンの効果は60%だったが、弱毒生ワクチンは5%と効果を確認できなかった。とくに、インフルエンザA(H1N1)pdm09に対して弱毒生ワクチンは予防効果を示さなかった。 本試験で用いられたtest-negative designは、診断陰性例を対照(コントロール)としてワクチン効果を判定する方法である。毎年、各国から報告されるインフルエンザワクチンの効果判定の多くはtest-negative designを用いて行われており、世界的には広く浸透している手法である。 2013-14年シーズンから弱毒生インフルエンザワクチンの効果が落ちていることが報告されはじめた。その傾向が2014-15年シーズン、2015-16年シーズンと続き、米国では経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが推奨から外れることにつながった。日本での導入にも少なからず影響が出ると思われる。これらのシーズンでは不活化ワクチンは有効性を示しており、ワクチン株と流行株が不一致だったわけではない。弱毒生ワクチンの効果が低くなってしまった理由として、ワクチン株の耐熱性やワクチンに含まれるウイルス間の干渉などが指摘されているが、明確な理由は判明しておらず、今後の原因究明を期待したい。

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流行性耳下腺炎のMMRワクチン接種 3回 vs.2回/NEJM

 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)について、米国疾病予防管理センター(CDC)のCristina V. Cardemil氏らが大学生を対象とした検討で、3回接種者では2回接種者よりも流行性耳下腺炎のリスクが低下したことを明らかにした。米国では、小児期にMMRワクチンの2回接種がプログラムされている。しかし、大学生での流行性耳下腺炎のアウトブレイクがたびたび報告されており、2015年夏~秋にはアイオワ大学で集団発生が起きた。本報告は、そのアウトブレイクの後半に保健当局者がMMRワクチン接種キャンペーンを呼びかけ、3回目の接種に応じた学生の有効性を2回目の接種時期からの年数で補正を行い検討した結果で、2回目の接種時期が、今回のアウトブレイクよりも13年以上前であった学生は、流行性耳下腺炎のリスクが高かったことも明らかにした。これまで、MMRワクチンの3回投与が流行性耳下腺炎のアウトブレイクを制御するかについては明らかになっていなかった。NEJM誌2017年9月7日号掲載の報告。2回目接種からの年数で補正後、接種回数別にワクチンの有効性を評価 アイオワ大学では2015~16年の1学年の間に、学生2万496例のうち259例が流行性耳下腺炎と診断された。研究グループはFisher正確確率検定を用いて、MMRワクチンの接種状況と2回目接種からの年数に基づく未補正発生率を比較した。多変量時間依存性Cox回帰モデルを用いて、2回目の接種からの年数で補正後、接種回数別(3回 vs.2回、2回 vs.未接種)にワクチンの有効性を評価した。3回接種群で発生率が有意に低下 アウトブレイク前にMMRワクチン接種を2回以上受けていた学生は、98.1%であった。アウトブレイク中に3回目の接種を受けたのは4,783例であった。 発生率は、3回接種を受けた学生(1,000人当たり6.7例)が2回接種の学生(同14.5例)よりも有意に低かった(p<0.001)。また、2回目接種を、アウトブレイク前2年以内に受けていた学生と比べて、13~15年前に受けていた学生では、流行性耳下腺炎のリスクは9.1倍高かった。16~24年前に受けていた学生では14.3倍高かった。 3回目のワクチン接種後28日時点で、流行性耳下腺炎のリスクは2回接種の学生よりも78.1%低下していた(補正後ハザード比:0.22、95%信頼区間:0.12~0.39)。 2回接種 vs.未接種の比較検討において、2回目の接種から今回のアウトブレイクまでの年月が経っているほど、ワクチンの有効性が低下していることが示された。 著者は、「結果は、MMRワクチンの3回接種キャンペーンが流行性耳下腺炎アウトブレイクの制御を改善したことを、また、免疫の減衰がアウトブレイクの拡大に寄与したと思われることを示すものであった」とまとめている。

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ワクチンの安全性をどう伝えるか

 2017年8月23日、国立国際医療研究センターの国際感染症センター予防接種支援センターと、国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センターは、国立国際医療研究センター病院内で「予防接種とコミュニケーション~メディアや専門家が伝えていること、いないこと~」をテーマに、講演とパネルディスカッションを開催した。ワクチンの正しい知識の底上げが大事 はじめに医療者の立場から氏家 無限氏(同センター予防接種支援センター)が、「定期の予防接種における一時中止・積極的勧奨の差し控え」と題して、講演を行った。 わが国では、国民の健康保持と予防接種被害の救済の目的のもと制定されている予防接種法に基づき、小児、成人への予防接種が行われている。また、万が一、健康被害が起こっても副反応報告制度とともに、予防接種健康被害救済制度などにより、被接種者の保護がなされている。 実際、1975年のDPT(三種混合)ワクチン、2000年のポリオワクチン(Lot.39)の一時中止、2005年の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨差し控えを例に挙げ、いずれもその後に、安全性の確認されたワクチンなどが上市されても、社会的な影響は大きく長く続き、ワクチン未接種者を生む結果となったと問題を提起した。 そして今、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが同じような状態になっていると指摘する。2013年の積極的勧奨差し控え以降(公費助成は継続)、それまで実施対象者の75.3%が接種していたワクチン実施率も、2014年には0.7%にまで落ち込んだという。 同ワクチンは、現在も厚生労働省の審議会で安全性の審議がされているが、「デメリットが強調されやすいワクチンの特性を理解したうえで、医療従事者やメディアが中心となって、全体の関心、知識、理解の底上げを行っていくことが重要であろう」と述べ、レクチャーを終えた。若者の健康を守ることは次代への投資 同じく医療者の立場から北村 邦夫氏(一般社団法人 日本家族計画協会 理事長)が、「女性の健康」と題して、レクチャーを行った。 最初に『世界人口白書(2003年)』からの引用として「思春期の若者の健康と権利への投資は次世代に大きな利益をもたらす」と若年者への健康配慮の重要性を説いた。具体的には10代での避妊や性感染症の検査・治療、とくにコストについて触れ、クリニックの利用などほぼ公費で無料である欧米各国と比べ、わが国には補助制度がなく、著しく遅れている現状を紹介。デリケートな内容だけに、親や社会が触れることに積極的ではないと指摘する。 また、HPVワクチンについて言及し、わが国では1年間に約1万人の女性に子宮頸がんが発症し、1年間に約3,000人の女性が本症で死亡し、20~30代女性で罹患率・死亡率ともに増加している中で、ワクチン非接種の女性が出産年齢を迎えている。早急にワクチンの有効性をエビデンス1-4)を基に説明し、ワクチン接種の必要性と重要性を啓発する必要があると提案する。「諸外国より遅れているワクチンギャプを一刻も早く解消することが若者を救う近道」と述べ、レクチャーを終えた。●参考文献1)Ozawa N, et al. Tohoku J Exp Med. 2016;240:147-151.2)Tanaka H, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2017 Jul 14. [Epub ahead of print]3)Matsumoto K, et al. Int J Cancer. 2017;141:1704-1706.4)World Health Organaization. Weekly epidemiological record. 2017;92:393-404.メディアは科学的根拠に基づいた報道で世論形成を 続いて報道の立場から岩永 直子氏(BuzzFeeD JAPAN)が、「子宮頸がんワクチンの報道について」をテーマに、現在の報道の在り方と今後の方向性についてレクチャーを行った。 HPVワクチンは、2013年6月の「積極勧奨の中止」以降、医療者の間でも接種に消極的な医師が増え、事実上、わが国では接種がストップしてしまった。 これについてメディアは、接種が再開されないことに疑問を呈しながらも、副反応やネガティブな情報の両論併記をすることで、一般の受け手の不安を増大させたと、同氏は指摘する。また、ワクチンの専門家が、接種中止の弊害を発信しても、それが一般の受け手に届いていないという現実もあるという。今、世界中でHPVワクチンの科学的知見が蓄積されている。これらの客観的な価値判断をメディアは行い、伝える必要性があると指摘する。 具体的には、「行政、医学界、メディアが科学的な根拠を捻じ曲げた判断をせずに、最新の科学的根拠を、この三者が連携して絶えず発信することで、世論形成をするべきではないか」と提案し、レクチャーを終えた。求められる情報の受け手に配慮した情報発信 続いて、堀 成美氏(国際感染症センター 感染症対策専門職)が、情報を受ける側の立場から、メディアへの要望などを述べた。 HPVワクチンの報道では、メディアが不安をあおるようなものが多数見られた。その情報を得て、受け手が不安になりWebなどで検索することで、さらに不安を増大させる現象があったと指摘する。問題は、メディアが「続報」をきちんと伝えないことであり、一度流れた情報が修正されないまま、今日まで来ているという。また、医学系学会などの情報発信も一般の受け手を意識した発信を行っているかどうか(たとえば専門用語で難しい、読みやすさなど工夫がないなど)、受け入れ易い情報発信をしているかどうか検討する必要があると語った。各国各様のワクチン啓発事情 後半では、ブータン、マレーシア、オーストラリア、スコットランド(イギリス)、デンマーク、アイルランドからのパネリストも交え「報道、専門家は何を伝え、伝えていないか~海外のHPVワクチン事情を例に~」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。 ブータン、マレーシア、オーストラリア、スコットランドでは、HPVワクチンの学校接種が行われ、印刷物、ラジオ、テレビなどを使用し、予防接種推奨のメッセージを発信し続けている。その成果もあり、ワクチンに否定的なメディアもあまり見られないという。 一方、デンマークでは、2015年に放映された副反応を取り上げたテレビ番組などにより、日本と同様の問題に直面している。また、アイルランドでも、副反応の刺激的な取り上げ方がメディアで行われたものの、厚生大臣が先頭に立ち、政府がエビデンスに基づいた情報を発信、ワクチン接種推奨の啓発活動を行っていると紹介した。 このほか、今後の情報発信ツールとして「FacebookなどのSNS」を通じて、「短いメッセージでさまざまなワクチンの有効性を発信する」、「同じ内容を繰り返し動画配信する」などさまざまな事例や建設的な提案がなされディスカッションを終えた。■参考厚生労働省 予防接種情報

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日本脳炎に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回は日本脳炎の続きのお話をしたいと思います。前回、日本国内での日本脳炎症例は戦後年間5,000例超を数えていましたが、現在では年間10例未満ほどまで減少しているというお話をしました。もはや「制圧寸前」と言っても過言ではないッ!では、日本脳炎ウイルスは、日本国内から消えようとしているというのかッ!? 実はそうではありません…日本脳炎ウイルスは今もわれわれの周りに存在しているのですッ!日本脳炎患者の発症傾向は「西高東低」画像を拡大する図は、国立感染症研究所が行ったブタさんの日本脳炎ウイルス抗体を地域ごとに調べたものです。なぜブタの抗体を調べるのかといいますと、1つは前回お話したとおり、ブタが日本脳炎ウイルスのリザーバーだからです。そしてもう1つは、ブタさんは必ず1年以内に出荷されてしまうからですッ!(泣) つまり、その地域のブタの抗体陽性率は、リアルタイムにその地域における日本脳炎ウイルスの流行状況を反映していると言えるのですッ! そういう点を踏まえて図をもう一度見てみましょう。2015年9月時点で、北海道から東北地方にかけては抗体陽性率が0%になっています。これらの地域では日本脳炎ウイルスは、蔓延しているとは言えないでしょう。福島県あたりから抗体陽性率<50%の地域が出てきます。そして、関東から西日本にかけては、抗体陽性率が高い地域が多くなってきます。九州・四国では抗体陽性率が80%以上の地域も珍しくありません。実際にこのブタさんの抗体陽性率と一致して、ヒトでの感染例も西高東低の傾向にあります。昨年も長崎県対馬市で4例の日本脳炎症が報告されています。というわけで、ヒトへの日本脳炎の感染者数は減ってはいますが、日本脳炎ウイルス自体は、日本国内でまだまだ蔓延している状況がおわかりいただけましたでしょうか。急がれる「より早期のワクチン接種」では、なぜここまでヒトでの感染者数が減ったのかといいますと、やはり日本脳炎ワクチンの接種率向上によるものが大きいと考えられています。ワクチン、素晴らしいッ! 定期接種、最高ッ! それでは現在の日本脳炎ワクチンの定期接種スケジュールが最高のものなのかというと…異議ありッ! というのが私の意見です。2015年に千葉県で生後11ヵ月児の日本脳炎感染例が報告されました。生後11ヵ月児が日本脳炎に…ここに現在の日本脳炎ワクチンの定期接種スケジュールの落とし穴があるのです!現在の日本脳炎ワクチンの定期接種スケジュールは、次の表のとおりです。画像を拡大する上のように、3〜4歳から接種を開始することになっているのです。だから0歳児には罹患するリスクがあるというわけです。ほかにも過去10年くらいでは、熊本県で2006年に3歳児、高知県で2009年に1歳児、沖縄県で2011年に1歳児が日本脳炎に罹患したと報告されています。3歳になるまでにも日本脳炎に罹患することがあるのに、なぜ3歳から接種開始なのか…それは誰にもわからないのですッ!!(泣) 先日、ワクチンの専門家にこの話を伺ったところ、とくに3歳からである必然性はないとのことでした。実は定期接種1期として接種可能な時期は生後6~90ヵ月となっており、生後6ヵ月以上であればいつでも接種可能なのです。実際に、千葉県などでは日本脳炎ワクチンの定期接種スケジュールを前倒しにして、生後6ヵ月から接種を開始している都道府県もあります(素晴らしいッ!泣)。最近、日本小児科学会も日本脳炎患者が発生した地域やブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6ヵ月からの日本脳炎ワクチンの接種を推奨しています。この動きが広がると良いなあと思っております。アジアからアフリカに渡った日本脳炎さて、最後に今年の日本脳炎のトピックをご紹介いたします。日本脳炎といえば前回お話したとおり、アジアで流行している感染症なのですが、なんと最近アフリカでも日本脳炎の症例が報告されました1)。アフリカで日本脳炎って…すごい世の中になったものです。昨年、アンゴラで黄熱がアウトブレイクしたことは本連載「黄熱に気を付けろッ その1」でもご紹介したとおりですが、そのときの黄熱の症例の中に日本脳炎との共感染の事例があったという報告が先日“The New England Journal of Medicine”に掲載されました。前回のその1でもお話したとおり、人は最終宿主ですから、人がアジアからアフリカまでウイルスを運んだわけではないでしょう。そうすると蚊か鳥かブタかということになりますが、蚊はそんなに距離を移動できませんし、ブタは紅の豚以外は飛べませんし、だとすると渡り鳥が運んだのでしょうか…非常に興味深い事例であります。これからはアフリカ帰国後の脳炎患者では、日本脳炎を鑑別に挙げる必要が…あるのでしょうかねえ…。さて、次回は日本でも罹患するかもしれない感染症「バベシア症」についてご紹介したいと思いますッ!1)Simon-Loriere E, et al. N Engl J Med. 2017;376:1483-1485.

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米、インフルエンザ弱毒生ワクチン非推奨の理由/NEJM

 2016-17年の米国インフルエンザシーズンでは、予防接種に弱毒生インフルエンザワクチンを使用しないよう米国予防接種諮問委員会(ACIP)が中間勧告を出したが、そこに至る経緯を報告したGroup Health Research Institute(現カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所)のMichael L. Jackson氏らによる論文が、NEJM誌2017年8月10日号で発表された。これは、Jackson氏らInfluenza Vaccine Effectiveness Network(Flu VE Network)が、2013-14年流行期に、4価弱毒化ワクチンが小児におけるA(H1N1)pdm09ウイルスに対して効果不十分であったと明らかにしたことに端を発する。2015-16年のワクチン効果をタイプ別に推定 Flu VE Networkは、インフルエンザワクチンの有効性と予防接種により回避できるインフルエンザ症例数を推定・提供する組織。その2013-14年の報告所見に基づき、2015-16年の弱毒化ワクチンで使用するA(H1N1)pdm09株は変更された。この変更の効果に関する評価も含めて、Flu VE Networkは2015-16年シーズンにおけるインフルエンザワクチンの効果を推定した。 評価は、ミシガン、ペンシルベニア、テキサス、ワシントン、ウィスコンシンの各州にある外来診療所において、急性呼吸器疾患で受診した生後6ヵ月以上の患者を登録して行われた。test-negativeデザイン法を用いて、ワクチン効果を「(1-OR)×100」で推定した。ORは、ワクチン接種者と非接種者を比較したインフルエンザウイルス検査陽性者のオッズ比である。また、不活化ワクチン、弱毒生ワクチンそれぞれの効果についても推定した。ウイルス株を変更したにもかかわらず弱毒生ワクチン接種群の効果不十分を確認 2015年11月2日~2016年4月15日に、適格患者6,879例が登録された。このうちインフルエンザウイルス陽性と判定されたのは1,309例(19%)で、大半のウイルスがA(H1N1)pdm09(11%)とB型(7%)であった。 全体で、あらゆるインフルエンザ疾患に対するインフルエンザワクチンの効果は、48%(95%信頼区間[CI]:41~55、p<0.001)であった。年齢群別にみると26%(50~64歳群)から59%(9~17歳)にわたっていたが、すべての年齢群で有意な効果が認められた(p≦0.04)。 しかし、ワクチンのタイプ別でみると、有意な効果は不活化ワクチン接種群では認められたが(p<0.001)、弱毒生ワクチン接種群ではみられなかった(p=0.86)。 2~17歳の小児群において、不活化ワクチンの効果は60%であったが(95%CI:47~70、p<0.001)、弱毒生ワクチンの効果は確認できなかった(効果:5%、95%CI:-47~39、p=0.80)。また、小児群におけるA(H1N1)pdm09に対するワクチン効果は、不活化ワクチン接種群では63%(95%CI:45~75、p<0.001)であったが、弱毒生ワクチン接種群では-19%(95%CI:-113~33、p=0.55)であった。 このように2015-16年のインフルエンザ疾患のリスクは、インフルエンザワクチンによって軽減されたが、不活化ワクチンに大きな効果が認められた年に、小児において弱毒生ワクチンは効果不十分であることが見いだされた。2016-17年の弱毒生ワクチンに用いられたA(H1N1)pdm09株は2015-16年と同様であったため、ACIPは2016-17年シーズンに弱毒生ワクチンを使用しないよう勧告を発表したのである。

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遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-712

 インフルエンザの流行の抑制を期待されているワクチンの1つが、遺伝子組み換えワクチンである。遺伝子組み換え法は、ベクターを用いてウイルスの遺伝子を特殊な細胞に挿入し、ウイルスの抗原性に関わる蛋白を細胞に作らせ精製する方法である。この方法では、卵の蛋白成分、ホルムアルデヒド、抗菌薬、防腐剤を含まないワクチンを製造することができる。また、鶏卵培養法では6ヵ月間かかる製造期間が、6~8週間に短縮できることが大きな利点となる。 本研究は、2014~15シーズンに行われた、遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)と鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)の有効性を比較した第III-IV相のランダム化二重盲検実薬対照試験である。50歳以上の成人を対象とし、急性疾患に罹患している患者や免疫抑制治療中の患者は除外された。その結果、per-protocol解析を行えた8,604例において、RT-PCRで確定診断されたインフルエンザ発症率は、RIV4接種群が2.2%、IIV4接種群が3.2%であり、インフルエンザ様疾患が確認された割合はRIV4接種群がIIV4接種群より30%低かった(95%信頼区間:10~47、p=0.006)。修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析でも同様の結果であった。 本研究は、遺伝子組み換えワクチンと既存のインフルエンザワクチンである鶏卵培養不活化ワクチンを、head-to-headで臨床効果を比較したものである。鶏卵培養で製造されるワクチンでは、製造過程でインフルエンザの抗原性に関わるヘマグルチニン(HI)をコードする遺伝子の変異が生じることでワクチンの有効性が低下する可能性が指摘されており、遺伝子組み換えワクチンの有効性が勝る一因になっていると推察される。 本研究の対象は50歳以上の成人であり、75歳以上の割合は12%程度であった。インフルエンザワクチンの恩恵を受けやすい高齢者、小児、妊婦、免疫不全者などに対する遺伝子組み換えワクチンの有効性や安全性については本試験では評価できない。 研究が実施された2014~15シーズンは、インフルエンザA/H3N2の流行株とワクチン株の不一致がみられたシーズンであった。このようなシーズンでより有効性を示したことは評価できるが、流行株とワクチン株が一致した場合でも本試験と同様の結果が得られるのかはわからない。B型インフルエンザに対しては有効性に差がなかったという結果も興味深い。遺伝子組み換えワクチンは利点の多いワクチンでもあるため、安全性の評価も含めて、今後さらなる研究が待たれる。

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狂犬病mRNAワクチンfirst-in-human試験/Lancet

 狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードするmRNAワクチン(CV7201)を、初めてヒトに投与し安全性と免疫原性を評価したproof-of-concept試験の結果が、ドイツ・ミュンヘン大学医療センターのMartin Alberer氏らによって報告された。CV7201は、良好な忍容性プロファイルを示し概して安全であったが、無針注射装置を用いて投与された場合にのみ、WHOが推奨するレベルの中和抗体を誘導できることが認められ、通常の注射器による投与では免疫原性は示されなかった。前臨床試験では、通常の注射器でも高い免疫原性を発揮することが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2017年7月25日号掲載の報告。針付き注射器 vs.無針注射装置、皮内 vs.筋肉内投与を検証 本試験は、2013年10月21日~2016年1月11日にドイツ・ミュンヘンの単施設で行われた。狂犬病ワクチン接種歴がない健常成人ボランティア(18~40歳の男女)が順番に登録され、針付き注射器または無針注射装置3種類のうちの1つを用い、皮内または筋肉内に、CV7201を3回(長期スケジュール[0、28、56日]、または短期スケジュール[0、7、28日])投与した。また、一部の参加者が拡大コホートに組み込まれ、接種3回目の1年後に追加投与が行われた。 主要評価項目は安全性と忍容性、副次評価項目は、WHOが規定した予防抗体価0.5 IU/mLと同等以上の狂犬病ウイルス中和力価を誘導するCV7201の最低投与量などであった。針付き注射器を用いた場合の有効性は確認できず 被験者101例が登録され、針付き注射器(皮内投与18例、筋肉内投与24例)または無針注射装置(皮内投与46例、筋肉内投与13例)を用い、CV7201(80~640μg)を各人3回、計306回接種した。 接種7日後に、注射部位反応が皮内投与64例中60例(94%)および筋肉内投与37例中36例(97%)に、またGrade3の全身性有害事象がそれぞれ64例中50例(78%)および37例中29例(78%)に認められた。640μg筋肉内投与群で、接種7日後にCV7201との関連が疑われる予期しない重大な有害事象が1例発生したが、後遺症なく回復した。 無針注射装置群は、あらゆる投与経路と投与量においてウイルス中和抗体価0.5 IU/mL以上を誘導した(皮内投与[80μgまたは160μg]で45例中32例[71%]、筋肉内投与[200μgまたは400μg]で13例中6例[46%])。 また、1年後に追加接種を行った拡大コホートでは、無針注射装置による皮内投与(80μg)の14例中8例(57%)が中和抗体価0.5 IU/mL以上を達成した。一方、針付き注射器群で検出可能な免疫反応を示したのは1例(320μg皮内投与)のみで、有効性は認められなかった。 本試験は、長期的安全性と免疫原性の追跡調査が継続されている。

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多くのがん種で開発中、ペムブロリズマブの最新トピックス

 2017年7月4日、MSD株式会社はメディアラウンドテーブルを開催し、同社グローバル研究開発本部オンコロジーサイエンスユニット統括部長の嶋本 隆司氏が、ASCO2017の発表データを中心にキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の最新トピックスを解説するとともに、併用療法を含めた今後の開発戦略について語った。 本邦において、ペムブロリズマブは2016年に「根治切除不能な悪性黒色腫」および「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する適応を取得。2015年に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」に対して「先駆け審査指定品目」の指定を受けているほか、現在は「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」および「局所進行性または転移性の尿路上皮がん(優先審査対象)」が承認申請中、13がん種以上で後期臨床開発プログラムが進んでいる。米国でNSCLCは適応拡大、尿路上皮がんとMSI-H/dMMR固形がんで承認取得 ASCO2017では、ペムブロリズマブについて16のがん種に対する50以上のデータが発表された。肺がん領域は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2016)の続報が中心となった。初回治療でEGFRまたはALK変異がなく、かつPD-L1発現不問の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、化学療法との併用を評価したKEYNOTE-021試験(コホートG)では、統計学的な有意差は得られなかったものの、長期フォローアップで全生存期間(OS)の延長傾向が示された。米国ではすでにPD-L1発現を問わず、化学療法との併用でNSCLCの1次治療に適応が拡大され、現在、日本も参加して第III相試験(KEYNOTE-189試験)を実施中という。 米国で2017年5月に相次いで承認された、尿路上皮がん(1次治療、2次治療)、高度マイクロサテライト不安定(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損(dMMR)を示す進行固形がんに対する試験結果も発表された。がん種によらない、バイオマーカーに対する初の薬剤承認として注目されたMSI-H/dMMR固形がん患者に対する単剤療法を評価した試験としては、1レジメン以上の治療歴のある大腸がん以外の進行固形がん患者対象のKEYNOTE-158試験、2レジメン以上の治療歴のある進行大腸がん患者対象のKEYNOTE-164試験の結果が発表され、それぞれ全奏効率(ORR)が38%(29/77例)、28%(17/61例)、病勢コントロール率が58%(45/77例)、51%(31/61例)という結果が得られている。進行胃がん、トリプルネガティブ乳がんでも有望な結果 2ライン以上の治療歴のある進行胃がん患者(259例)を対象に単剤療法を評価したKEYNOTE-059試験(コホート1)では、42.4%の患者で何らかの腫瘍縮小効果がみられ、ORRは11.6%であった。この結果を基に、米国では優先審査の対象に指定され承認審査が進んでいる。嶋本氏は「ORRだけをみると目を見張るような結果ではないが、治療の選択肢がすでに非常に限られた対象であること、多くの患者で腫瘍縮小効果がみられたことが評価され、優先審査につながったと考えている」と話した。 また、トリプルネガティブ乳がん患者を対象に、術前化学療法との併用を評価したKEYNOTE-173試験では、病理学的完全奏効率(pCR)がコホートA(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+ドキソルビシン/シクロホスファミド[AC])で50~60%、コホートB(ペムブロリズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン→ペムブロリズマブ+AC)で80%という結果が得られた。「従来の術前化学療法のpCRは20~30%であることから、ペムブロリズマブの乳がんに対する効果を示す有望な予備データといえる」と嶋本氏。同じく術前化学療法との併用を評価したI-SPY2試験では、トリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ群(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→AC)の推定pCRがコントロール群(パクリタキセル→AC)の3倍となるという結果が得られている。この結果を受け、現在、日本も参加して第III相試験が進行中という。IDO阻害薬との併用、単剤よりも高い奏効率 IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)阻害薬epacadostatとの併用を評価したECHO-202試験の結果も発表されている。本試験は複数のがん種に対して行われているが、そのうちNSCLC、転移性または再発性の扁平上皮頭頸部がん(SCCHN)、進行性尿路上皮膀胱がん(UC)、進行性腎細胞がん(RCC)の結果が紹介された。NSCLCでORRが35%(14/40例)、SCCHNで34%(13/38例)、UCで35%(14/40例)、RCCで33%(10/30例)と、いずれもペムブロリズマブ単剤よりも高い奏効率が得られている。日本人を含む第III相試験が進行中または準備を進めている段階で、早期の承認取得を目指すという。安全性については、本試験の安全性解析対象集団である進行がん患者294例を対象としたプール解析の結果、Grade 3以上の有害事象は患者の18%に認められ、最も高頻度のものはリパーゼ上昇(無症候性)4%、次いで発疹3%であった。この結果について嶋本氏は、「単剤と比較して大きく毒性が増すものではないとみられる」と話した。 IDO阻害薬のほか、化学療法や分子標的治療薬、新規ワクチンなどとの併用療法について、現在300以上の臨床試験が進行中だという。嶋本氏は、「がん種ごと、さらには肺がんのように多様性のあるがん種では患者背景ごとにアプローチしていくことも視野に入れて、ペムブロリズマブを核に、それぞれ適切な併用薬を検証していく」と結んだ。■関連記事ペムブロリズマブ、尿路上皮がんの優先審査対象に指定:MSDNSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017尿路上皮がんにペムブロリズマブを承認:FDAペムブロリズマブ、臓器横断的ながんの適応取得:FDA進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017早期乳がんにおける免疫療法の役割の可能性

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インフルエンザワクチン、遺伝子組換え vs.不活化/NEJM

 従来の不活化インフルエンザワクチンと比べて、遺伝子組み換えインフルエンザワクチンが優れた防御能を示したことが、米国・Protein Sciences社のLisa M. Dunkle氏らが行った第III-IV相の多施設共同無作為化二重盲検試験の結果、報告された。検討されたのは遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)で、試験は2014~15年のインフルエンザシーズンに、50歳以上の成人を対象に実施された。標準用量の鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)接種群よりも、確認されたインフルエンザ様疾患の確率が30%低かったという。なお、同時期のインフルエンザはA/H3N2型が主流で、ワクチン株の抗原性との不一致により多くの認可ワクチンについて効果の低下がみられたシーズンであった。NEJM誌2017年6月22日号掲載の報告。50歳以上の成人9,003例を対象に無作為化試験 試験は2014年10月22日~12月22日に、50歳以上の成人9,003例を登録して行われた。被験者を、RIV4(遺伝子組み換え赤血球凝集素[HA]量45μg/株、蛋白量180μg/接種)またはIIV4(同15μg、60μg)を接種する群に無作為に割り付け、ワクチン接種後14日以降に、発症がRT-PCR法で確認されたインフルエンザ様疾患(事前にプロトコルで規定されたあらゆるインフルエンザ株によるもの)に対する相対的なワクチンの有効性を比較した。被験者にインフルエンザ様疾患の症状がみられた場合、鼻咽頭スワブで検体を採取し、RT-PCRと培養検査でインフルエンザ感染の確定診断を行った。 主要エンドポイントは、ワクチン接種後14日~インフルエンザシーズン終了(2015年5月22日)に、RT-PCRで確認・プロトコルに規定されていたインフルエンザ様疾患とした。遺伝子組み換えのほうが、確認されたインフルエンザ様疾患の確率が30%低い 9,003例のうち8,855例(98.4%)が試験ワクチンの接種を受け、有効性に関する追跡を受けた(修正intention-to-treat集団)。ワクチン接種後のデータを得られて安全性解析に包含されたのは8,672例(96.8%)。RIV4群とIIV4群のベースラインの特性は両群で類似しており、平均年齢は両群とも63歳、男性の比率はそれぞれ41.5%、41.6%であった。 鼻咽頭スワブで検体を採取したのは、RIV4群809/4,328例(18.7%)、IIV4群822/4,344例(18.9%)。検出されたインフルエンザ株は234/1,631検体(14.3%)で、A/H3N2型が最も多く181例、B型が47例、A亜型不明が6例であった。 per-protocol解析の追跡を完了した8,604例(95.6%、修正per-protocol集団)において、RT-PCRで確認されたインフルエンザ発病率は、RIV4群2.2%(96/4,303例)、IIV4群3.2%(138/4,301例)であり、インフルエンザ様疾患が確認された確率は、RIV4群がIIV4群よりも30%低かった(95%信頼区間[CI]:10~47、p=0.006)。 修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析では、RIV4群の発病率2.2%(96/4,427例)およびIIV4群の発病率3.1%(138/4,428例)は、相対的なワクチンの有効性が基本的に同一の30%(95%CI:10~47)であることが示された。なお、RIV4のIIV4に対する非劣性に関する主要解析、および事前規定の探索的優越性の基準は満たされたことが確認されている。 RT-PCRで確認されたインフルエンザ様疾患の累積発生率は、インフルエンザシーズン中、RIV4がIIV4よりも有意に効果があることを示した(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.53~0.90、p=0.006)。各インフルエンザ株についての相対的なワクチンの有効性に関する事後解析では、RIV4はA型に対しては36%(95%CI:14~53)の有効性を示したが、B型に対しては他のワクチンと有効性に違いがなかった。 安全性プロファイルについては、両ワクチンともに類似していた。

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