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8月に都内1万人超も、爆発的拡大への緊急声明/日医

 29日、国内の新型コロナ新規感染者数は初めて1万人を超え、病床逼迫が現実に発生しつつある。日本医師会は、これを踏まえ、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の各団体と共に、「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を取りまとめた。 東京都の新規陽性者数は、7月25日1,763人、26日1,429人、27日2,848人、28日3,177人、29日3,865人と、1週間比1.5以上で推移しており、厚労省アドバイザリーボードが28日に出した感染予測では、このまま1週間比1.4以上が続けば、8月中にも新規陽性者数は東京都だけで1万人を超えるとされている。 日本医師会は、緊急要請として、以下の3つを政府に示した。1. 首都圏をはじめ感染者が急増している地域に対し、早急に緊急事態宣言を発令すること。あわせて、緊急事態宣言の対象区域を全国とすることについても検討に入ること。2. 感染収束の目途がつくまで、徹底的かつ集中的にテレワークや直行直帰を推奨すること。3. 40歳から64歳までとリスクの高い疾患を有する方のワクチン接種を推進し、できるだけ早く完了させること。 また、医療提供体制確保の取り組みとして、(1)重症者、中等症患者の入院病床の確保、(2)軽症者への対応、(3)新型コロナウイルス感染症における有事の医療と、通常の診療の両立への支援策を示し、ワクチン接種の推進については、デルタ株の影響により、これまで考えられていた集団免疫の獲得は6~7割の接種では難しく、できる限り多くの方が確実に2回接種する必要があることを説明している。 声明文として「われわれは行政と連携して、通常医療への影響を食い止めます。そして、COVID-19がなければ防ぎえた死は、何としても回避する覚悟です。すでに多くの医療従事者は必死の思いでコロナに立ち向かい、心身ともに限界です。医療者はできうる責務はすべてまっとうします。そのためにも、政府に対して、今あらためて、感染拡大を食い止めることに、あらゆる手立てを尽くすことを要請します」と強い言葉が記されている。 なお、今回の声明取りまとめに当たっては、尾身 茂新型コロナウイルス感染症対策分科会長、脇田 隆字新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長と、多角的な視点から意見交換を行ったという。

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第68回 コロナ感染数の報道に「いたずらに不安を煽るな」発言した人へ、返したい一言

先週、たまたま日本を代表する「夜の街」である新宿・歌舞伎町に、まさに夜に繰り出す機会があった。このように書くと「けしからん!」と言われそうだが、別に飲食をするために行ったわけではない。この町で夜を中心に活動する医療従事者に私が関係する組織での講演を依頼するための挨拶に行ったのだ。挨拶は無事終了したが、私は目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。あちこちで居酒屋やいわゆる「接待を伴う飲食店」と非常に分かりにくい言い回しをされるキャバクラやホストクラブなどが盛大に営業をしていたのだ。実は別な用件で1月の緊急事態宣言中にも歌舞伎町を通り過ぎたことはあった。街中に客引きがいることを見れば、キャバクラやホストクラブの一部が営業しているのは確かだったが、居酒屋などの営業はかなり限定的。この時と比べれば、現在はほぼ通常営業といってもいいほどだ。そして東京都で7月28日の新型コロナウイルス感染症の感染者報告数が過去最高の3,000人超えの3,177人となった現状には溜息しか出てこない。ここでは何度も繰り返し言っているが、それでも敢えて言うと6月に新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に移行したことは、痛恨の政治判断ミスだったと改めて思う。中には「そのまま緊急事態宣言を続けていても、みな営業再開したのではないか?」との意見もあるかとは思うが、それでも一旦解除しながら再発出するよりは、状況ははるかにましだったのではないかと個人的には思っている。そんな最中、以下の報道で頭の中にクエスチョンマークがいくつも浮かんでしまった。東京都 福祉保健局長「いたずらに不安あおらないで」(NHK)まあ、端的に言えば、感染者は増加しているものの、高齢者のワクチン接種も進んで重症者はそれほど増加しておらず、過去の流行とは中身が違うということらしい。報道は数の多さに騒ぐなということだろう。この発言については、小池 百合子都知事もフォローアップしている。小池都知事、感染者最多に「数だけの問題ではない」(日本経済新聞)もちろん、ワクチン接種の進展のなか報告される感染者の中身が従来とは異なっていることは同意する。だが、報道に向けた「いたずらに不安を煽るな」というのは福祉保健局長自身のほかの発言と矛盾する。具体的には局長発言の「30代以下は重症化率が極めて低く、100人いたら、せいぜい十数人しか入院しない」という発言だ。それだけ入院者が発生してしまうならば十分すぎるほど問題である。7月28日の感染者報告数3,177人のうち20代は1,078人、 30代が680人。局長の発言に沿えば、この中から200人弱は入院することになる。もちろん若年者は入院後の回復も早いだろう。とはいえ、現在の東京都のコロナ対応病床は6,406床。今の感染状況が10日も続けば、30代以下だけで軽く1,000床以上の病床を占有することになる。そして中等症以上などで入院に至るのは別に30代以下だけではない。この状況は医療現場に十分負荷をかけていると思うのだが。従来から感染者数を報じることについては否定的な意見もあるのは承知している。しかし、現在進行形で何が起きているのかを最も端的に表し、一般市民も理解しやすいファクトなのは間違いなく感染者数であり、メディアにとってはこれを報じないという選択肢は存在しない。「初の3,000人台」という言葉で「うわ、怖い」と思う市民が出て、感染制御に必要な外出自粛に向かう人が増える可能性は十分にあるからだ。むしろ、これまでほぼ確実に感染者数の減少効果が認められたはずの「緊急事態宣言」が、経済を横目で眺めながら中途半端な強度でダラダラと行われ過ぎたために十分な効果を示さなくなった今、ワクチン接種以外に感染者減少効果が見込めそうなものは、現在進行形で感染者が急増しているという感染者数の報道である。その意味では東京都福祉保健局長の発言には「いたずらに事態を軽視しないで」と返したい。

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ファイザー社コロナワクチン、3回接種で「デルタ株」抗体が大幅増強/ファイザー

 米国・ファイザー社は、7月28日に発表した第2四半期決算報告会議で、同社の新型コロナワクチンについて、3回接種により、デルタ変異株に対する中和抗体価が大幅に増強されることを示した研究データを公表した。同社は、現在推奨されている2回接種後6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いと説明しており、8月中にも米食品医薬品局(FDA)に対し、追加接種の緊急使用許可の承認申請を行う方針だ。 ファイザー社が明らかにした研究データは、ごく少人数のコホート(18~55歳:11例、65~85歳:12例)ながら、3回目のブースター接種を受けることで、「デルタ株」への中和抗体価が2回接種と比べ、18~55歳では5倍以上、65~85歳では11倍以上に高まっていることを示した。同社では、2回接種から8ヵ月後には抗体レベルがピークアウトするため、2回目接種から6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いとの見立てだ。本研究では、2回目接種から6ヵ月以上経過した後、保護効果が減弱し始めているときに3回目を接種することで、中和抗体価を最大100倍にまで高める可能性が推定されるとしている。 デルタ株を巡っては、国民の大部分でワクチン接種が進んだ国々でも感染拡大が喫緊の課題になっている。米国では、今年5月にワクチン接種済みならばマスク不要としていたCDCの指針が、7月28日付で発表された改訂により、接種済みであっても屋内のマスク着用を求める内容に再び変更された。一方イスラエルでは、疾患や治療により免疫系が低下した人を対象に、すでに3回目のブースター接種を開始しており、高齢者への対象拡大も検討している。

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コロナワクチン接種後の中和抗体価、ウイルス株や年齢での違いは?/JAMA

 ファイザー製ワクチン(BNT162b2)を2回接種すると、有効率は約95%だと言われている。その一方で、患者の年齢が新型コロナウイルス感染症の発生率や重症度のリスクに寄与することも知られている。そこで、オレゴン健康科学大学のTimothy A Bates氏らはファイザー製ワクチン2回接種後のUSA-WA1/2020株とP.1系統の変異株(γ株、以下、P.1変異株)に対する年齢と中和抗体価の関係を調べた。その結果、USA-WA1/2020株に対するワクチン接種後の中和抗体価は年齢と負の相関が見られた。一方で、P.1変異株に対する中和抗体価はすべての年齢で減少したが、年齢による差は小さく、全体的にワクチンの有効性に寄与する要因として年齢を特定することができなかった。JAMA誌オンライン版2021年7月21日号リサーチレターでの報告。 研究者らは、2020年12月~2021年2月、オレゴンワクチン接種ガイドラインに従って実施されたワクチン接種の参加者を対象に調査を行った。参加者はファイザー製ワクチン1回目接種の時点で本研究に登録され、血清サンプルはワクチン1回目を受ける前と2回目を受けてから14日後に収集された。SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン特異的抗体レベルを酵素免疫測定法で測定し、中和抗体50%効果濃度(EC50、ウイルス中和アッセイで50%の感染を阻害する血清希釈)を計算した。新型コロナウイルスの50%中和力価は、USA-WA1/2020株とP.1変異株の生きた臨床分離株を使用した焦点還元中和試験(FRNT50、焦点減少中和検査で50%のウイルスを中和する血清希釈)で決定した。 主な結果は以下のとおり。・50例がこの研究に登録された(女性:27例[54%]、年齢の中央値[範囲]:50.5歳[21~82])。・すべての参加者において、ワクチン接種前のEC50は事前曝露がないことを示す定量限界未満だった。・ワクチン接種後のEC50は、年齢と有意な負の関連を示した(R2=0.19、p=0.002)。・USA-WA1/2020株に対しては、全参加者で中和抗体の強い活性が観察され、幾何平均抗体価(GMT:geometric mean antibody titer)は393(95%信頼区間[CI]:302~510)だった。一方、P.1変異株に対しての免疫応答は低く、GMTは91(95%CI:71~116)で、76.8%の減少を示した。・USA-WA1/2020株とP.1変異株の両方において、年齢はFRNT50と有意に負の相関があった(p<0.001およびp=0.001)。・USA-WA1/2020株の場合、年少参加者ら(20~29歳、n=8)のGMTは938(95%CI:608~1447)に対し、年長参加者ら(70~82歳、n=9)のGMTは138(95%CI:74~257)と85%の減少を示した(p<0.001)。・P.1変異株の場合、年少参加者らのGMTは165(95%CI:78~349)に対し、年長参加者らのGMTは66(95%CI:51~86)と60%の減少を示した(p=0.03)。 研究者らは「中和抗体価は感染からの保護と強く相関していると考えられる。ただし、今回の研究ではサンプル数が少ないこと、閾値がまだ正確に決定されないことを踏まえ、今後の研究では、ワクチン接種を受けた高齢者に見られる抗体レベルの低下が、同時に防御機能の低下につながるかどうかを具体的に取り上げる必要がある」としている。

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第68回 「骨太」で気になった2つのこと(前編) かかりつけ医制度化拒む日医は開業医の質に自信がない?

「骨太の方針」は国や財務省が考える医療リストラ策こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、ぼんやりとオリンピックの開会式を観ていたのですが、最終聖火ランナーの中に、何度か取材したことのある、多摩ファミリークリニック院長の大橋 博樹氏が「クルーズ船で対応にあたった」という紹介とともに突然登場したのには驚きました。それも、長嶋 茂雄氏、王 貞治氏、松井 秀喜氏から聖火を引き継ぐ形で。一緒に聖火をつないだのは、大規模クラスターが発生し、現場対応で大変な苦労をされた永寿総合病院の看護師の方とみられます。いわゆる“コロナ医療枠”というわけですが、どういう経緯でコロナに関わる数多くの医師の中から大橋氏(日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長でもあります)が選ばれたのか、今度取材する機会があったらうかがってみたいと思います。さて、今回は約1ヵ月前の6月18日に、政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(「骨太の方針2021」)について、気になったことを書きたいと思います。「骨太の方針」とは、政府としての経済・財政運営の基本的な方針や重要政策をまとめたものです。内閣府の重要政策に関する会議の一つである経済財政諮問会議(議長は首相、経済財政担当相、財務相、民間議員らで構成)において、通常年明けから主要テーマを決めて検討します。最終的に、例年6月に経済財政諮問会議で決定された後、政府の正式な決定として閣議決定されます。「骨太」と言われる所以は、2001年1月、省庁再編により内閣府に設置された経済財政諮問会議が開催され、当時の宮沢 喜一財務相が「骨太」と命名したため、と言われています。基本策、つまり「骨や軸」を諮問会議で決めた後、中身の具体策を財務省などで決めていく流れです。宮沢財務相は、「太くてしっかりした骨組み」という意味合いを込めて「骨太」と表現したようです。ではなぜ、毎年「骨太の方針」の内容が医療関係者を悩ませるのか。それは、国の予算の4割近くを社会保障費が占めているからです(2021年度予算案の国の一般会計歳出106.6兆円のうち社会保障費は35.8兆円[33.6% ])。社会保険料等も含めた社会保障給付費全体は2020年度で126.8兆円、うち医療費は40.6兆円で32%を占めています。つまり、医療関係者から見る「骨太の方針」とは、国や財務省が考える、医療リストラ策の方針そのものなのです。「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」をフィーチャー「骨太の方針2021」では、感染症拡大の緊急時の対応を、より強力な体制と司令塔の下で推進する考えが示されました。中でも医療提供体制については、感染症に対応するため、医療定休体制の「平時」と「緊急時」の体制を迅速・柔軟に行うべきとしています。注目されるのは、上記の具体的方策として「かかりつけ医」と「地域医療連携推進法人」がフィーチャーされた点です。かかりつけ医については、「第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革」の章で、「かかりつけ医機能の強化・普及等による医療機関の機能分化・連携の推進」と明記されました。これは、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会が今年4月、医療や介護、年金など社会保障制度の改革についての考え方を示した中で提言した、「かかりつけ医機能」の制度化を、やや表現をマイルドにしてもってきたものと言えます。この提言については以前の本連載でも紹介しました(第59回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる? “家庭医構想”というパンドラの匣)。4月の時点で財務省は、「かかりつけ医機能」の制度化について、紹介状なしで大病院外来を受診した患者から定額負担を徴収する仕組みと共に推進し、外来医療の機能分化と連携につなげることを求めていました。日医はかかりつけ医制度化に「反対」を再度表明「骨太」では「制度化」という言葉は使わず、「かかりつけ医機能の強化・普及等」になっています。とはいえ閣議決定された文書に明記されたのだから何らかのアクションあるはず、と思いますですが、なかなかそうは問屋が卸さないようです。日本医師会の中川 俊男会長は6月23日の定例記者会見で、「骨太の方針2021」に対する日医の見解を説明しています。その中で、「かかりつけ医機能の強化・普及」について、「かかりつけ医は患者が選ぶものであり、その際には、国民皆保険の柱であるフリーアクセスを担保する必要がある」と、定番の「フリーアクセス」を持ち出して制度化反対を表明しました。さらに、日医がこれまで「かかりつけ医機能研修制度」を創設し、地域住民から信頼される「かかりつけ医」の養成・普及に努めてきたことを説明し、その上で「今後は、医療費抑制のためにフリーアクセスを制限するような仕組みを制度化するのではなく、『骨太の方針』にも記載されているとおり、上手な医療のかかり方を啓発し、かかりつけ医を普及していくことが重要である」と話したとのことです。以前の回でも書いたように、相変わらずののらりくらり振りです。中川会長は、「俺たち医師側はちゃんとしている。患者側に上手な医療のかかり方を啓発しろ」と言っているわけですが、これでは議論放棄です。コロナワクチン接種を巡っては、「通ったことがある」とかかりつけ医の個別接種を希望した人が、受診回数や頻度が少ないので「あなたは、うちのかかりつけではない」と断られるケースが各地で頻発しました。これも「かかりつけ医」の定義が曖昧であることから起こっているのですが、そうした現場での混乱について中川氏は特段コメントしていません。中医協でも本格議論始まる「骨太の方針2021」を受ける形で、7月に入り中央社会保険医療協議会(中医協)でも、かかりつけ医の評価を2022年の診療報酬改定にどう反映させるかについての議論が始まっています。7月7日に開かれた総会では、診療・支払各側の委員が共にかかりつけ医推進の重要性を言及しています。もっとも、支払側の委員が「いわゆるゲートキーパー的な機能を患者は求めている。特定の領域に偏らず、幅広い疾患をまずは診療できるという医師と患者が1対1の関係でしっかりした関係を構築し、安心、安全で質の高い医療を提供できる場合に評価するような医療費の配分を次期改定でぜひ行っていくべき」と患者視点のかかりつけ医の必要性を述べたのに対し、診療側(日医常任理事)はかかりつけ医の制度化について「フリーアクセスということは担保されるべき。日本医師会としては明確に反対させていただく」と述べたとのことです。何度聞いても日医の言う「フリーアクセス」とは、患者のためのものではなく、質が悪い医師のところにも一定の患者が来るようにしておくための仕組みとしか思えないのですが、どうでしょう。なお、この場で支払側委員は「次期診療報酬改定において、かかりつけ医機能を評価する診療報酬項目の要件をゼロベースで見直し、再構築すべき」とも提案しています。医療の質を、会員全体で担保できないからでは?日医側の、かかりつけ医関係の診療報酬は上げて欲しいが、その診療報酬を得るための「かかりつけ医の制度化」は嫌だ…、というのは本当に虫のいい話です。なぜ、日医は制度化を嫌がるのでしょうか。それは、かかりつけ医(言い換えれば総合診療のプロ)としての医療の質を、会員全体で担保することができないからではないでしょうか。普通に考えれば、日医が自慢げに話す「かかりつけ医機能研修制度」を今回の制度化のベースにもってくればいい気がします。ただ、研修内容の中身や応用研修受講者延べ3万9,073名、修了者数6,009名(2020年3月現在)という規模では、報酬の恩恵を多くの会員が受けられず、診療報酬算定の要件として提案できそうにありません。「かかりつけ医の制度化で、医療の質の面には踏み込んで欲しくない。だって実力も自信もないから。でも報酬は上げてくれ」というのが彼らの本心なのかもしれません。ちなみに、冒頭で触れた大橋先生が所属する日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医の認定制度のカリキュラム内容は、当然ながら日医の研修制度よりも充実しています。患者の立場にたてば、かかりつけ医、家庭医を自称し報酬増も望むからには、これくらいの質の担保は欲しいところです。財務省は現時点ではやる気まんまんかかりつけ医については、医療法等改正で新たに始まる外来機能報告制度の中身を議論する「外来機能報告等に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織)でも議論される予定です。7月20日付のメディファクスには、医療・介護の予算を担当する財務省主計局の一松 旬主計官(厚生労働係第1担当)のインタビューの概要が掲載されています。同記事によれば、一松主計官は、2022年度診療報酬改定に向けて 「医療提供体制の改革なくして改定なし」の姿勢で臨む考えを示すとともに、かかりつけ医を普及・定着させるには、 要件を定めて認定することや、 患者による登録促進といった「制度化は必ず必要」と述べたとのことです。さらに、かかりつけ医の診療報酬上の評価は「包括払いがなじむ」とも語ったとのことです。患者が登録して包括払いとなると、財務省は以前の回でも紹介した英国のNHS(National Hearth Service)の家庭医制度に近い仕組みをイメージしているのかもしれません。仮にそうならば、日医の反対運動は相当なものになるでしょう。今秋から冬にかけ、かかりつけ医の制度化に向けての動きから、目が離せません。次回は、「骨太」の中でもう一つ気になった「地域医療連携推進法人」について考えてみたいと思います(この項続く)

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妊婦への新型コロナワクチン、有効性と安全性/JAMA

 妊婦において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ワクチン非接種と比較してSARS-CoV-2感染リスクを有意に低下させることが確認された。イスラエル・テルアビブ大学のInbal Goldshtein氏らが、妊婦を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊婦におけるBNT162b2ワクチンの有効性と安全性については、第III相試験において妊婦が除外されたためデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2021年7月12日号掲載の報告。ワクチン接種妊婦vs.非接種妊婦、各7,530例でSARS-CoV-2感染を比較 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesのデータベースを用い、2020年12月19日~2021年2月28日に、妊娠中に1回目のBNT162b2 mRNAワクチン接種を受けた妊婦を特定し、2021年4月11日まで追跡した。また、ワクチン接種妊婦と年齢、妊娠週数、居住地域、民族、経産歴、インフルエンザ予防接種状況などについて1対1の割合でマッチングさせたワクチン非接種妊婦を対照群とした。 主要評価項目は、初回ワクチン接種後28日以降におけるPCR検査で確定したSARS-CoV-2感染であった。 解析対象はワクチン接種群7,530例、対照群7,530例で、妊娠第2期が46%、妊娠第3期が33%、年齢中央値は31.1歳(SD 4.9)であった。初回ワクチン接種後28日以降のSARS-CoV-2感染が約80%低下 主要評価項目の追跡期間中央値は37日(四分位範囲:21~54、範囲:0~70)であった。ワクチン接種群で追跡期間が21日以上の妊婦は、ほとんどが追跡期間終了までに2回目の接種を受けていた。 追跡期間終了時までのSARS-CoV-2感染者は、合計でワクチン接種群118例、対照群202例であった。感染者で症状を有していたのは、ワクチン接種群で105例中88例(83.8%)、対照群で179例中149例(83.2%)であった(p≧0.99)。 初回ワクチン接種後28~70日にSARS-CoV-2感染が確認されたのは、ワクチン接種群10例、対照群46例であった。感染のハザードはそれぞれ0.33%および1.64%、絶対群間差は1.31%(95%信頼区間[CI]:0.89~1.74)であり、ワクチン接種群は対照群と比較して統計学的に有意にハザード比が低下した(補正後ハザード比:0.22、95%CI:0.11~0.43)。 ワクチン接種群におけるワクチン関連有害事象は68例報告され、重篤な副反応はなかった。68例中3例は、ワクチン接種の直近にSARS-CoV-2に感染しており、症状はワクチンではなく感染に起因する可能性が示唆された。主な症状は、頭痛(10例、0.1%)、全身の脱力感(8例、0.1%)、非特異的な疼痛(6例、<0.1%)、胃痛(5例、<0.1%)であった。

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コロナワクチンで注目される解熱鎮痛薬への2つの懸念【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第72回

新型コロナウイルスワクチンの接種が若年層へ拡大する中、副反応に対する不安をよく耳にします。接種後に発熱や痛みが生じやすいというのはよく報告されていますが、それ以外にも根拠が不明な眉唾物の副反応情報が拡散していて、接種を躊躇する方もいらっしゃいます。逆に、接種後の発熱や痛みが少なかった高齢者の方が、「私には効いているのか?」と不安になって薬局に尋ねてくることもあったと聞きます。回答に困る質問は多々あると思いますが、厚生労働省が3月末に開設した「新型コロナワクチンQ&A特設サイト」では随時新たな情報が更新されているため、そのような際に参考になります。このサイトのQ&Aでは、ワクチン接種後の発熱や接種部位の痛みは高齢者では少し発症頻度が低いものの、しっかりと有効性が確認できている旨が掲載されています。先述の高齢者の方にはこの回答をお伝えしたいですね。また、副反応への対処法の1つとして、「市販の解熱鎮痛薬で対応することも考えられる」とし、「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただける」といったように、成分名も記載した回答を掲載しています。さて、このワクチン接種後の発熱や痛みの対応について、2つの懸念が生じています。1つ目は、このような情報を見て、「ワクチン接種には解熱鎮痛薬の準備が必要!」と解釈された可能性があることです。薬局では一時的にOTC薬の解熱鎮痛薬が品薄になり、解熱鎮痛薬を配布した接種会場もあったと聞きます。OTC薬を1箱購入して家族で使いまわすこともあると思いますが、アレルギー歴のある方や病気治療中の方の服用に薬剤師は関わることができているでしょうか。そして、緊急時といえども、医薬品の販売および譲渡のルールに変更はありませんので、医薬品の販売に当たっては医薬品販売業の許可が必要で、原則として無償での譲渡はできません。患者さんのことを思ってのことでしょうが、医薬品の提供については通常時と変わらないことに注意が必要です。2つ目としては、副反応の症状が出る前に解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服している人がいることです。これについては現在のところ推奨されていません。予防的な服用を希望する患者さんには、解熱鎮痛薬の副作用の説明をするとともに、Q&Aを参考に「副反応の大部分は接種後数日以内に回復することがわかっている」と過度に心配する必要はないことを説明して安心してもらいましょう。このサイトを見ると、その回答自体はやわらかい言葉で書いてあるのですが、その根拠としてワクチンの審査報告書が閲覧できたり、CDC(米国疾病予防管理センター)の論文へのリンクが貼り付けてあったりと、一般の方向けとしてはかなり専門的な内容だなぁと思います。ぜひ一度ざっと見て、一般の方がどのような疑問を持つ可能性があるのか予習してみてはいかがでしょうか。

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第70回 Pfizerワクチン2回目接種後に自然免疫が大幅増強

インドで見つかって世界で広まるデルタ変異株にもPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2が有効なことが先週21日にNEJM誌に掲載された英国Public Health Englandの試験で示されました1)。その効果を得るには決まりの2回接種が必要であり、デルタ変異株感染の発症の予防効果はBNT162b2接種1回では僅か36%ほどでした。2回接種の予防効果は大幅に上昇して88%となりました。一方、イスラエル保健省の先週木曜日の発表によると、デルタ変異株が広まる同国でのBNT162b2のここ最近1ヵ月程のCOVID-19発症予防効果は心配なことに約41%(40.5%)に低下しています2)。ただし、被験者数が少なくて対象期間も短いためかなり不確実な推定であり、今後更なる慎重な解析が必要です3)。仮に感染予防効果が落ちているとしても重症化は防げており、COVID-19入院の88%と重度COVID-19の91%を予防しました。BNT162b2はデルタ変異株感染による重症化を予防する効果も恐らく高く、先月発表された英国Public Health Englandの報告によるとデルタ変異株COVID-19入院の96%を防いでいます4)。BNT162b2は中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株を起源とするにも関わらず少なくとも変異株感染重症化を確かに防ぎ、2回接種すると効果が跳ね上がるのはなぜなのか? 抗体やT細胞などの標的特異的な免疫反応のみならず感染源に素早く手当たり次第より広く攻撃を仕掛ける自然免疫を引き出す力がその鍵を握るのかもしれません。SARS-CoV-2への免疫の研究やニュースといえば主に抗体で、T細胞がたまに扱われるぐらいです。スタンフォード大学の免疫学者Bali Pulendran氏のチームはそういう免疫のパーツではなくそれらを含む免疫系全体に目を向け、BNT162b2が接種された56人の血液検体を調べてみました。その結果、抗体やT細胞の反応が他の研究と同様に認められたことに加え、強力な抗ウイルス防御を担うにもかかわらずワクチン開発で見過ごされがちな効果・自然免疫の増強が判明しました5)。自然免疫の大幅な増強は2回目の接種後のことであり、インターフェロン応答遺伝子(ISG)を発現する単球様の骨髄細胞の一群・C8細胞が1回目接種1日後には血液細胞の僅か0.01%ほどだったのが2回目接種1日後には100倍多い1%ほどに増えていました。2回目接種1日後の血中インターフェロンγ(IFN-γ)濃度は高く、C8細胞の出現と関連しており、C8細胞の誘導にはIFN-γが主たる役割を担っているようです。SARS-CoV-2のみならず他のウイルスの防御にも働きうるC8細胞は新型コロナウイルス感染自体ではどうやら生じないようです5,6)。C8細胞を引き出すためにも1回のBNT162b2接種で十分とは思わず、他の多くの試験でも支持されている通り2回目も接種すべきでしょう7)。ModernaのワクチンもBNT162b2と同様にmRNAを中身とします。Modernaのワクチンも恐らくはBNT162b2と同様の反応を引き出すと想定されますが定かではありません。実際のところどうかを調べるべくPulendran氏はそれらワクチン2つの比較研究を始めています7)。参考1)Lopez Bernal J,et al.N Engl J Med. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print] 2)Concentrated data on individuals who have been vaccinated with two vaccine (HE) doses before 31.1.2021 and follow up until 10.7.2021 / gov.il 3)Israeli Data Suggests Possible Waning in Effectiveness of Pfizer Vaccine / New York Times4)Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant / PHE5)Arunachalam PS, et al.. Nature . 2021 Jul 12. [Epub ahead of print]6)Study shows why second dose of COVID-19 vaccine shouldn't be skipped / Eurekalert.7)How the Second mRNA Vaccine Bolsters Immunity / TheScientist

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第64回 米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC

<先週の動き>1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省1.米国の平均寿命1.5年短縮、第二次世界大戦以来/CDC米国疾病予防管理センター(CDC)は、2020年のアメリカ人の平均寿命が77.3歳と、2019年から2020年にかけて1.5歳短くなったことを公表した。最大の要因は、新型コロナウイルスによる死者数の増加である。平均寿命が短縮したのは、第二次世界大戦中の1943年(2.9歳短縮)以来のこと。これまで延長していた平均寿命は、20年近くも後退した。また、今回の平均寿命短縮を人種別で見ると、ヒスパニック系は81.8歳から78.8歳と-3.0歳、黒人は74.7歳から71.8歳と-2.9歳でそれぞれ短くなった一方、白人は78.8歳から77.6歳と1.2歳の短縮に留まり、人種差が再び広がる傾向が見られた。(参考)新型コロナの影響で米国の平均寿命が1.5歳短く 第2次大戦以来の落ち込み(東京新聞)米CDC “平均寿命1歳半短く 新型コロナによる死者増が主要因”(NHK)Provisional Life Expectancy Estimates for 2020(CDC)2.診療所へのワクチン接種加算、8月以降も継続政府は、7月末までに新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、これまで診療所に支援してきた特例加算を継続することとした。8月以降も、週100回以上の接種を4週間以上行う診療所には1回につき2,000円、週150回以上の場合は3,000円を上乗せして補助する。11月までに、希望者全員にワクチン接種の完了を目指す。(参考)ワクチン接種 診療所への費用上乗せ支援策 来月以降も継続へ(NHK)3.総接種回数7,000万回突破、高齢者の8割超が1回目接種済み政府は、7月19日時点で、国内の新型コロナウイルスワクチンの総接種回数が7,000万回を超えたと公表した。1回の接種を受けた人の割合は総人口の33.5%となり、65歳以上の高齢者では81.7%、2回目まで完了した高齢者は57.9%となった。なお、7月23日時点で、2回目の接種率は総人口の19.6%であり、欧米と比べた遅れがまだ挽回できていない。また、都道府県別の接種率を見ると、上位は25%を超える中、下位には千葉県17.4%、埼玉県16.7%、東京都16.6%、栃木県16.4%、沖縄県14.5%など、感染拡大が続いている大都市圏が並び、さらなる接種の推進が求められる。(参考)新型コロナワクチンについて(内閣府)ワクチン接種1回目終了 高齢者全体の8割超(NHK)国内ワクチン接種、7000万回超す 7月19日公表分までで(日経新聞)4.モデルナと来年の追加供給を契約、ワクチン不足への対応急ぐ厚労省は20日、新型コロナウイルスワクチンについて、2022年の初頭から5,000万回分の追加供給を受けることをモデルナと正式契約したことを明らかにした。また、菅 義偉首相は23日に、来日しているファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と会談し、10月以降に予定していたワクチン供給の前倒しを要請した。さらに、米・ノババックスとも、来年前半から1億5,000万回分のワクチン供給について協議を進めている。政府は、ワクチン供給不足による接種計画の遅れに対する国民の声に対して、早期のワクチン接種完了を急ぐ。(参考)米モデルナとワクチンの追加契約 22年以降の5000万回分(毎日新聞)ワクチン供給、前倒し要請 首相、ファイザーCEOと会談(日経新聞)5.海外渡航に必要なワクチンパスポート受付、26日から開始政府は、海外へ渡航する人が新型コロナウイルスワクチンの接種済みを証明する「ワクチンパスポート(予防接種証明書)」の申請受け付けを、26日から各市町村で開始することを明らかにした。イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5ヵ国に入国する際に利用可能となる。なお、発行に当たっては、海外渡航にワクチンパスポートが必要な場合に限って申請が認められ、国内での使用は想定していない。(参考)ワクチン接種証明書 発行手続 第1回自治体向け説明会(内閣官房副長官補室)同 第2回自治体向け説明会(同)「ワクチンパスポート」26日から受け付け開始 「経済活動再開の第一歩」「差別につながる」と賛否渦巻く(J-CAST)「ワクチンパスポート」発行テスト 26日から申請受け付け(NHK)6.5年以内に供給不足の後発品企業、新規薬価収載見送りへ/厚労省厚労省は、後発医薬品の出荷調整や回収による欠品発生を防止する目的で、薬価収載日から5年経過していない後発品で供給不足を起こした企業が新たな薬価基準収載希望書を提出する際には、「安定供給義務が守れない品目があった場合には以後2回分の収載を見送る」との念書を提出するよう求めた。今回の通知は8月16日までに製造販売承認を受け、20日までに薬価収載希望書の受け付けが済んだ医薬品が対象となる。今年12月収載予定からの運用となる見込み。これにより、医療機関や調剤薬局が直面している欠品による調達困難の改善や後発品への不安を取り除くのが狙い。(参考)欠品で1年間の収載見送り~後発品に対する規制強化【厚生労働省】(薬読)

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第26回 アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーか否かを迅速に判断!2)アドレナリンの投与は適切に!アナフィラキシーに関しては以前(第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?)も取り上げましたが、大切なことですので、今一度整理しておきましょう。今回の症例は、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーとして報告された事例*からです。この経過をみて突っ込みどころ、ありますよね?!*第53回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会令和2年度第13回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会【症例】30歳女性。ワクチン接種後待機中、呼吸困難を自覚。咳嗽が徐々に増悪し、体中の掻痒感を自覚した。接種5分後、SpO2が85~88%まで低下。酸素負荷、その後ネオフィリン注125mg、リンデロン注2mg点滴を開始。接種後20分緊急入院。眼瞼浮腫、喘鳴、SpO2100%(酸素4L)、血圧収縮期150mmHg程度、脈拍70~80/分、体幹に丘疹。接種55分後、アドレナリン0.3mL皮下注。その後、喘鳴は徐々に改善。接種4時間後酸素負荷終了。翌日午前中に一般病棟に転出。午後になり呼吸困難を自覚、サルブタモール吸入も効果なし。喘鳴は徐々に増強。その後も、リンデロン1.0mg投与効果なし、SpO2は98~100%、心拍70~80/分であった。オキシマスク2L投与併用。意識障害はなかったが、発語は困難であった。数時間後にリンデロン3mgを投与したところ、徐々に呼吸状態は改善。その後会話が可能な程度にまで回復した。翌朝、意識清明、会話可能、喘鳴なし、SpO2低下なし、リンデロン投与を継続し、経過観察したところ再燃なし、数日後自宅退院とした。はじめにアナフィラキシーは、どんな薬剤でも起こりえるものであり、初期対応が不適切であると致死的となるため、早期に認識し、適切な介入を行うことが極めて大切です。救急外来で診療をしているとしばしば出会います。また、院内でも抗菌薬や造影剤投与後にアナフィラキシーは一定数発生するため、研修医含め誰もが初期対応を理解しておく必要があります。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種も全国で進んでおり、勤務先の病院やクリニック、大規模接種センターなどでアナフィラキシーに対して不安がある医療者の方も多いと思います。今回はアナフィラキシーの初期対応をシンプルにまとめましたので整理してみてください。アナフィラキシーを疑うサインとはアナフィラキシーか否かを判断できるでしょうか。そんなの簡単だろうと思われるかもしれませんが、意外と迷うことがあるのではないでしょうか。薬剤投与後に皮疹と喘鳴、血圧低下を認めれば誰もが気付くかもしれませんが、皮疹を認め喉の違和感や嘔気を認めるもののバイタルサインは安定している、皮疹は認めないが投与後に明らかにバイタルサインが変化しているなど、実際の現場では悩むのが現状であると思います。アナフィラキシーの診断基準は表の通りですが、抗菌薬や造影剤、さらにワクチン接種後の場合には、「アレルゲンと思われる物質に曝露後」に該当するため、皮膚や呼吸、循環、消化器症状のうち2つを認める場合にはアナフィラキシーとして動き出す必要があります。「血圧が保たれているからアドレナリンまでは…」「SpO2が保たれているからアドレナリンはやりすぎ…」ではないのです。皮膚症状もきちんと体幹部や四肢を直視しなければ見落とすこともあるため、薬剤使用後に呼吸・循環・消化器症状を認める場合、さらには頭痛や胸痛、痙攣などを認めた場合には必ず確認しましょう。表 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する(Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.より引用)ワクチン接種後のアナフィラキシーは、普段通りの全身症状で打つことに問題がない方が打っているわけですから、より判断がしやすいはずです。抗菌薬や造影剤の場合には、細菌感染や急性腹症など、全身状態が良好とはいえない状況で使用しますが、ワクチンは違いますよね。筋注後に何らかの症状を認めた場合にはアナフィラキシーを念頭にチェックすればいいわけですから、それほど判断は難しくありません。痛みや不安に伴う反射性失神によるもろもろの症状のこともありますが、皮疹や喘鳴は通常認めませんし、安静臥位の状態で様子をみれば時間経過とともによくなる点から大抵は判断が可能です。ここで重要な点は、「迷ったらアナフィラキシーとして対応する」ということです。アナフィラキシーは1分1秒を争い、対応の遅れが病状の悪化に直結します。アナフィラキシー? と思ったらアナフィラキシーと判断したらやるべきことはシンプルです。患者を臥位にしてバイタルサインの確認、そしてアドレナリンの投与です。アナフィラキシーと判断したらアドレナリンは必須なわけですが、投与量や投与方法を間違えてしまっては十分な効果が得られません。正確に覚えているでしょうか?アドレナリンは[1]大腿外側に、[2]0.3~0.5mg、[3]筋注です。肩ではありません、1mgではありません、そして皮下注ではありません。OKですね? アドレナリンの投与量に関しては、成人では0.5mgを推奨しているものもありますが、エピペンは0.3mgですから、その場にエピペンしかなければ0.3mgでOKです。何が言いたいか、「とにかく早期にアナフィラキシーを認識し、早期にアドレナリンを適切に投与する」、これが大事なのです。救急医学会が公開した、アナフィラキシー対応・簡易チャート(図)を見ながらアプローチをきっちり頭に入れておいて下さい。アナフィラキシー対応・簡易チャート画像を拡大する間違い探しさぁそれでは今回の症例をもう1度みてみましょう。この患者は基礎疾患に喘息などがあり、現場での対応が難しかったことが予想されますが、ちょっと突っ込みどころがあります。まず、ワクチン接種後、掻痒感に加え呼吸困難、SpO2も低下しています。この時点でアナフィラキシー症状の所見ですから、なる早でアドレナリンを投与する準備を進めなければなりません。よくアナフィラキシーに対して抗ヒスタミン薬やステロイドを投与しているのをみかけますが、これらの薬剤は使用を急ぐ必要は一切ありません。そして、アドレナリンは皮下注ではありません、筋注です! 重症喘息の際のアドレナリン投与は、なぜか皮下注も選択肢となっていますが筋注でよいでしょう。本症例では特にアナフィラキシーが考えられるため0.3~0.5mg筋注です。位置は大腿外側ですよ!さいごにアナフィラキシーはどこでも起こりえます。アナフィラキシーショックや死亡症例の多くは、アドレナリンの投与の遅れが大きく影響しています。迅速に判断し、適切なマネジメントができるように、今一度整理しておきましょう。1)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.2)救急医学会. ワクチン接種会場におけるアナフィラキシー対応簡易チャート

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新型コロナ外来患者へのbamlanivimab+etesevimab、第III相試験結果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクが高い外来患者において、bamlanivimab+etesevimab併用療法はプラセボと比較して、COVID-19関連入院および全死因死亡の発生率を低下し、SARS-CoV-2ウイルス量の減少を促進することが示された。米国・ハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院のMichael Dougan氏らが、同併用療法の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「BLAZE-1試験」の結果を報告した。基礎疾患を有するCOVID-19患者は重症化リスクが高い。ワクチン由来では時間をかけて免疫がつくのに対し、中和モノクローナル抗体は即時に受動免疫をもたらし、疾患の進行や合併症を抑制できる可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2021年7月14日号掲載の報告。軽症~中等症外来患者、bamlanivimab 2,800mg+etesevimab 2,800mgをプラセボと比較 研究グループは、12歳以上で重症化リスクが高い軽症~中等症のCOVID-19外来患者を、SARS-CoV-2陽性判明後3日以内に中和モノクローナル抗体bamlanivimab(2,800mg)とetesevimab(2,800mg)の併用療法群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回静脈内投与した。 主要評価項目は、29日目までのCOVID-19に関連した入院または全死因死亡であった。29日目までのCOVID-19関連入院および全死亡は併用療法群で有意に減少 計1,035例が無作為化を受けた(併用療法群518例、プラセボ群517例)。患者の平均(±SD)年齢は53.8±16.8歳で、52.0%が女性であった。 29日目までのCOVID-19関連入院または全死因死亡は、併用療法群で11例(2.1%)、プラセボ群で36例(7.0%)に認められ、絶対リスク差は-4.8%(95%信頼区間[CI]:-7.4~-2.3、相対リスク差:70%、p<0.001)であった。 併用療法群では死亡例の報告がなく、プラセボ群のみ10例が報告され、そのうち9例は治験責任医師によりCOVID-19関連死と判定された。 7日目におけるSARS-CoV-2ウイルス量(log)のベースラインからの減少は、併用療法群がプラセボ群より大きかった(ベースラインからの変化量のプラセボ群との差:-1.20、95%CI:-1.46~-0.94、p<0.001)。

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第67回 例外だらけのコロナ治療、薬剤費高騰と用法煩雑さの解消はいずこへ?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている陰で、治療薬開発もゆっくりではあるが進展しつつある。中外製薬が新型コロナの治療薬として6月29日に厚生労働省に製造販売承認申請を行ったカシリビマブとイムデビマブの抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)が7月19日に特例承認された。この抗体は米国のリジェネロン・ファーマシューティカルズ社が創製したものを提携でスイス・ロシュ社が獲得、ロシュ社のグループ会社である中外製薬が日本国内での開発ライセンスを取得していた。両抗体は競合することなくウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位に結合することで、新型コロナウイルスに対する中和活性を発揮する薬剤。日本での申請時には、昨年11月に米国食品医薬品局(FDA)で入院を要しない軽度から中等度の一部のハイリスク新型コロナ患者に対する緊急使用許可の取得時にも根拠になった、海外第III相試験『REGN-COV 2067』と国内第I相試験の結果が提出されている。「REGN-COV 2067」は入院には至っていないものの、肥満や50歳以上および高血圧を含む心血管疾患を有するなど、少なくとも1つの重症リスク因子を有している新型コロナ患者4,567例を対象に行われた。これまで明らかになっている結果によると、主要評価項目である「入院または死亡のリスク」は、プラセボ群と比較して1,200mg静脈内投与群で70%(p=0.0024)、2,400mg静脈内投与群で71%(p=0.0001)、有意に低下させた。また、症状持続期間の中央値は両静脈内投与群とも10日で、プラセボ群の14日から有意な短縮を認めた。安全性について、重篤な有害事象発現率は1,200mg静脈内投与群で1.1%、2,400mg静脈内投与群で1.3%、プラセボ群で4.0%。投与日から169日目までに入手可能な全患者データを用いた安全性評価の結果では、新たな安全性の懸念は示されなかったと発表されている。今回の承認により日本国内で新型コロナを適応とする治療薬は、抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブに次ぐ4種類目となった。従来の3種類はすべて既存薬の適応拡大という苦肉のドラッグ・リポジショニングの結果として生み出されたものであったため、今回の薬剤は「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える。「統計学的に有意に死亡リスクを低下させる」とのエビデンスが示されたのはデキサメタゾンについで2種類目であり、これまでに行われた臨床試験の結果からは、なんと家族内感染での発症予防効果も認められている。発症予防効果は米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と共同で実施した第III相試験『REGN-COV 2069』で明らかにされた。本試験は4日以内に新型コロナ陽性と判定された人と同居し、新型コロナウイルスに対する抗体が体内に存在しない、あるいは新型コロナの症状がない1,505例が対象。プラセボと1,200mg単回皮下注射で有効性を比較したところ、主要評価項目である「29日目までに症候性感染が生じた人の割合」は、プラセボ群に比べ、皮下注射群で81%減少したことが分かった。また、皮下注射群で発症した人の症状消失期間は平均1週間以内だったのに対し、プラセボ群の3週間と大幅な期間短縮が認められている。死亡率低下効果に予防効果もあり、なおかつ限定的とはいえ軽度や中等度の患者にも使用できるというのは、やや手垢のついた言い方だが「鬼に金棒」だ。もっとも冷静に考えると、そう単純に喜んでばかりもいられない気がしている。まず、そもそも今回の抗体カクテル療法も含め、新型コロナを適応として承認された治療薬は、いずれも従来の感染症関連治療薬とは毛並みが異なり、現実の運用では非専門医が気軽に処方できるようなものではない。今後承認が期待される薬剤も含めてざっと眺めると、もはや従来の感染症の薬物治療からかけ離れたものになりつつある。もちろん現行では非専門医がこうした薬剤を新型コロナ患者に処方する機会はほとんどないが、専門医でも慣れない薬剤であるため、それ相応に臨床現場で苦労をすることが予想される。その意味では治療選択肢の増加にもかかわらず、新型コロナの治療自体は言い方が雑かもしれないが、徐々にややこしいものになりつつある。一方、隠れた問題は治療費の高騰である。現在、新型コロナは指定感染症であるため、医療費はすべて公費負担である。そうした中でデキサメタゾンを除けば、薬剤費は極めて高額だ。レムデシビルは患者1人当たり約25万円、バリシチニブも用法・用量に従って現行の薬価から計算すると最大薬剤費は患者1人当たり約7万3,900円。今回の抗体カクテル療法は薬価未収載で契約に基づき国が全量を買い取り、その金額は現時点で非開示だが、抗体医薬品である以上、安く済むわけはない。しかも、これ以前の3種類がいずれも中等度以上であることと比べれば、対象患者は大幅に増加する。本来、疾患の治療は難治例の場合を除き、疾患の解明が進むほど、選択肢が増えて簡便さが増し、時間経過に伴う技術革新などで薬剤費や治療関連費は低下することが多い。ところが新型コロナでは世界的パンデミックの収束が優先されているため、今のところ治療が複雑化し、価格も高騰するというまったく逆を進んでいる。そうした現状を踏まえると、やはりワクチン接種のほうがコストパフォーマンスに優れているということになる。こうした時計の針がどこで逆に向くようになるのか? 個人的にはその点を注目している。

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ワクチンで不妊、流産」に科学的根拠なし、婦人科系3学会が一般向けQ&A

 7月19日、婦人科系三学会(日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会)は合同で「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A」と題した資料を公開した。 3学会はこれまでも妊産婦や妊娠を希望する女性に対して、新型コロナワクチン接種にあたっての不安を解消するための声明を発表してきた1)2)。しかし、SNS上では「ワクチンを打つと不妊になる」「ワクチンによって月経不順になる」といったエビデンスを欠いた情報が現在も多く流布されており、そうした情報に触れることで不安を持ち、ワクチン接種を見合わせる女性が存在する。ワクチン忌避者の割合は若年女性が年配の男性の3倍程度多い、という調査結果も出ており3)、若年者、とくに女性を対象とした正しいワクチン接種の情報提供が急務となっている。 今回の資料はこれまでの学会声明等を基に、多くの女性が持つ不安や疑問に答えるQ&A形式を採用、一般向けにわかりやすい用語を使い、医療者が印刷してそのまま患者に渡せる資料形式でつくられた。 計15問のQAの一部は以下のとおり。Q1)ワクチンで不妊になることはありますか?これから妊娠を考えているのですが、mRNA ワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?A1)新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)で不妊になるという科学的な根拠は全くありません。Q2)妊娠中の女性は mRNA ワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?流産することはありますか?A2)妊娠中の女性でも mRNA ワクチンを接種して大丈夫です。すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対するワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに流産などの何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A/日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会

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世界の小児期ワクチン接種率、直近10年は頭打ち/Lancet

 1980~2019年の世界の小児期ワクチン接種率の動向を分析した結果、2010年以降は頭打ち、もしくは後退の情勢が明らかになったという。米国・ワシントン大学のStephen S. Lim氏ら、世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD])2020共同研究グループが、世界や地域、各国における小児期予防接種実施率についてシステマティックに分析し報告した。Lancet誌オンライン版2021年7月15日号掲載の報告。204の国と地域の11ルーチン小児期予防接種実施率を推定 研究グループは、1980~2019年の国、コホート、実施年、ワクチンの種類、ワクチン投与量の別に、5万5,326のルーチン小児期予防接種の実施データを集めて解析した。時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、同期間の204の国と地域における、実施場所・年別の11ルーチン小児期予防接種の実施率を推算した。国が報告したデータは、在庫切れや供給停止の報告に基づき補正を行った。 世界・地域別のワクチン接種率や、DTP三種混合ワクチン未接種の“ゼロ接種児”の数の傾向、世界ワクチン接種行動計画(GVAP)の目標値への進捗、ワクチン接種率と社会人口学的発展との関連性について、それぞれ分析を行った。GVAP目標値達成は11ヵ国にとどまる 2019年までに、世界のDTPワクチンの3回目接種率は81.6%(95%不確実性区間[UI]:80.4~82.7)と、1980年の推定接種率39.9%(37.5~42.1)に比べ約2倍に増加した。同様に、麻疹ワクチン含有ワクチンの初回接種率も、1980年の38.5%(35.4~41.3)から2019年の83.6%(82.3~84.8)へと倍増した。 ポリオワクチン3回目接種率も、1980年の42.6%(95%UI:41.4~44.1)から2019年の79.8%(78.4~81.1)へと増加した。さらに、より新しい種類のワクチン接種率も、2000年から2019年にかけて急増が認められた。 “ゼロ接種児”の数は、1980年の5,680万児(95%UI:5,260万~6,090万)から2019年の1,450万児(1,340万~1,590万)へと、75%近く減少した。 一方で、直近10年の世界のワクチン接種率は頭打ちとなっており、94の国と地域ではDTPワクチン3回目接種率が2010年以降減少した。 GVAPの目標値である全評価済みワクチン接種率90%以上を達成していたのは、2019年時点で11の国と地域のみだった。 著者は、「今回の調査結果は、ルーチンの予防接種戦略とプログラムによるアプローチを再検討し、公平で十分なサービスを受けられていない人々にサービスを提供することの重要性を明らかにするものである」と分析し、GVAPと予防接種アジェンダ2030(Immunization Agenda 2030)が進行中であることを踏まえて「今後2030年に向けて、すべての子供がワクチンの恩恵を受けられるよう、ワクチンデータとモニタリングシステムを強化することが極めて重要だ」と述べている。

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第67回 コロナパンデミックの懸念はらむ東京五輪、尾身会長の懸念

東京オリンピック・パラリンピックの開幕を前に、来日した選手や大会関係者の間で新型コロナウイルス陽性者や濃厚接触者が出ていることが連日ニュースとなっている。選手らが外部との接触を断つ「バブル方式」の破綻や、大会の感染対策をまとめた「プレーブック(規則集)」の形骸化を指摘する声が上がっている。国内の感染者数は右肩上がりに増え、東京都のモニタリング会議では、1週間平均の新規感染者数は五輪閉幕(8月8日)後の8月11日には、約2,400人に達すると試算。また、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身 茂会長は「今の状況でやるのは、普通はない」と発言する事態に。コロナ第5波の到来だけでなく、「トーキョー・パンデミック」の懸念もはらみながら、五輪は明日7月23日に開幕する。重症者が増加すればたちまち医療崩壊も現実となりかねず、もはや「安心安全の五輪」とは言い難いが、今からでもできることは少しでも実行したいものだ。国内においては、自粛疲れと緊急事態宣言慣れによる緩みが感染を拡大。五輪に関しては「バブルの穴」が指摘される。具体的には、▽空港における五輪関係者と一般客の導線の乱れなど水際対策の破綻 ▽選手村(東京・晴海)の滞在者(選手・スタッフ)に新型コロナ陽性者が判明 ▽行動制限が守られていない―などだ。プレーブックの徹底はもちろん必要だ。今回は選手が感染した国が発表したが、疑心暗鬼を招かないようにどの国で何人の感染が発生したのかなど、選手村の正確な状況を日々公表することも必要だろう。日医と都医師会が共同で要望書を提出日本の医療界は五輪に向けてどのような対応をしているのか。日本医師会(日医)は7月12日、五輪会場のある北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県の9都道県医師会を中心に「東京オリンピック・パラリンピックに関する都道府県医師会連絡協議会」をオンラインで開催。この中で、バブル方式がうまく機能するのかといった懸念や、全国のホストタウンにおいて新型コロナ感染症の拡大を心配する声が挙がった。こうした声を受け、日医と東京都医師会は7月19日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の橋本 聖子会長に、以下の内容を記した要望を提出した。要望は、▽午後9時以降の競技開催に伴い夜間の人流が増加しないよう、国民に外出自粛の徹底を求めていく ▽選手団などの入国に際して水際対策の万全を期すよう、課題点の改善とルールの再徹底に取り組む ▽大会関係者、マスコミ等の競技会場への来場をできるだけ減員する ▽各国が任命するCLO(コロナ対策責任者)に関する情報を取りまとめ、ホストタウンや競技開催地域の関係各所に事前に共有する―といった内容だ。また日医は、大規模クラスターやテロ、自然災害が発生した場合に備え、9都道県や周辺地域の医師会と情報共有するため、SNSを活用したシステムを休日・夜間問わず運用するという。尾身分科会長は「最大の医療逼迫招く可能性」を指摘4連休、夏休み、五輪、お盆が重なる中、新型コロナの新規感染者数が現状のペースで増え続けるとどうなるのか。分科会の尾身会長は7月20日、民放のニュース番組で「今までの中で最も厳しい時期。医療の逼迫がまた起きてくる可能性が極めて高い」と指摘。ワクチン接種率の高い欧米でも感染者が増えている状況を踏まえ、「したたかなウイルスなので、ワクチン接種率が6〜7割でも完全に防げるわけではない」と述べる一方、緊急事態宣言が解除される8月22日前後に、人々の行動緩和の目安を示したいとした。このような日本の状況を海外メディアはどう見ているのか。日本が緊急事態宣言下にあること、ワクチン接種率が先進国の中でも低いことを“2つの困難”と捉えているようで、米ワシントン・ポストは「世界の人々の興味は、もはや競技ではなく、コロナの感染状況を確認することが焦点になるだろう」とシニカルに報じ、「今回の東京大会の本当のスターはコロナウイルスになるかもしれない」と結んでいる。海外から皮肉や冗談交じりに“対岸の火事”を眺めるのは勝手だが、自国で起こっているわれわれはそうはいかない。コロナウイルスをスターにするわけにはいかないのだ。

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モデルナ製ワクチン後の急性期副反応に備えた、予診票の確認ポイント/自衛隊中央病院

 自衛隊東京大規模接種センターにおける「COVID-19 ワクチンモデルナ筋注」接種者約20万人のデータについて、急性期副反応の詳細を速報としてまとめたデータを自衛隊中央病院がホームページ上で公開した。本解析では急性期副反応を「同センター内で接種後経過観察中(最大30分間)に、何らかの身体的異常を自覚し、同センター内救護所を受診したもの」と定義し、得られた経験・知見を可能な限り医療従事者と共有することで、今後のCOVID-19ワクチン接種の対応向上に資することが目的としている。<解析の対象と方法>・2021年5月24日~6月15日に行われたワクチン接種者20万8,154人を対象(すべて1回目接種)。・ワクチン接種者の基礎的臨床情報は、厚生労働省より配布される「新型コロナワクチン予診票」を用いて収集・解析。・急性期副反応発症者については全件調査を行い、非発症者についてはランダムサンプリングによる調査を行った。非発症者の母集団平均値の95%信頼区間の許容誤差が2%以下になるよう、サンプルサイズを設定した(n=3,000)。・急性期副反応に関する詳細は、同センター救護所で使用した医療記録を用いて収集・解析を行った。アナフィラキシーの診断は、ブライトン分類に基づき2名の医師(内科医および救急医)により判定した。 主な結果は以下のとおり。・急性期副反応は、合計395件(0.19%)確認された。センター内における急性期副反応発生者のうち、合計20件(0.01%)が他医療機関へ救急搬送された。ブライトン分類を用いてアナフィラキシーと診断されたのは0件であった。・急性期副反応発症者の平均年齢は70才、非発症者数の平均年齢は69才で、両群において年齢分布に統計学的有意差は認めなかった(p=0.867)。・発症者の72.9%が女性であり、非発症者(44.6%)と比較し有意に高値であった(オッズ比[OR]:3.3、95%信頼区間[CI]:2.7~4.2、p<0.001)。・甲状腺疾患(OR:2.8、95%CI:1.6~5.0、p<0.001)、喘息(OR:3.6、95%CI:2.2~5.7、p<0.001)、悪性腫瘍(OR:1.9、95%CI:1.1~3.3、p=0.02)、食物または薬剤に対するアレルギーの既往(OR:7.9、95%CI:6.1~10.2、p<0.001)、過去ワクチン接種時の副反応の既往(OR:2.0、95%CI:1.4~2.9、p=0.001)がある接種者については、急性期副反応の発症リスクが高い傾向にあった。一方、抗凝固薬/抗血小板薬の使用中の接種者は、発症リスクが低い傾向にあった(OR: 0.4、95%CI:0.3~0.8、p=0.003)。・急性期副反応として観察された最も多い症状は、めまい・ふらつき(98 件、24.8%)であり、続いて動悸(71 件、18.0%)であった。発赤・紅斑・蕁麻疹等などの皮膚症状は 58 件(14.7%)に認めた。呼吸困難感を訴えたものは 17 件(4.3%)であった。ブライトン分類を用いてアナフィラキシーと診断されたのは、0 件であった。・発症者395件中、バイタルサインが観察された発症者は203件。バイタルサイン異常として最も高率に観察されたのは、接種後の高血圧で、収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上を伴う高血圧は、34件(16.7%)に認めた。低血圧は4件(2.0%)に認め、いずれもアナフィラキシーの基準は満たさず、発症エピソードや徐脈の合併から迷走神経反射と診断された。・救急搬送が実施された20件の急性期副反応の症状としては、6件(30.0%)に頻呼吸を認め、5件に持続する高血圧(収縮期血圧>180mmHgまたは拡張期血圧>110mmHg)を認めた。いずれもアナフィラキシーの基準は満たさなかった。 本解析の結果から、急性期副反応を予測するための予診票確認時におけるポイントは、性別(女性)、基礎疾患の有無(甲状腺疾患、喘息、悪性腫瘍)、食物または薬剤に対するアレルギーの既往、過去ワクチン接種時に体調不良を起こした既往と考えられる。また、急性期副反応発生者の16.7%に高血圧を認めた点について、迷走神経反射による低血圧よりも高率に認められていると指摘。mRNAワクチン接種後経過観察中に二次性高血圧が発生するとの報告1)があることに触れ、とくに高齢者では心血管病の既往がある場合も少なくないため、ワクチン接種に伴うアナフィラキシーや迷走神経反射における低血圧のみならず、接種後高血圧に関しても、十分な注意と対策が必要としている。 本報告における全接種者の平均年齢が69歳と比較的高齢であることに留意を求め、今後若年者についても解析を続けていく予定とされている。また同報告では、遅発性皮膚副反応についても、自験例について提示している。

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コロナウイルスのデマを斬る!マスク怖い、サングラス怖い、シッポ大好き!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第38回

第38回 コロナウイルスのデマを斬る!マスク怖い、サングラス怖い、シッポ大好き!新型コロナウイルス感染症をめぐる混乱は続いています。ワクチン接種はスピード感をもって進捗していますが、さまざまなデマが流布しているようです。具体的なものを挙げてみます。「ワクチン接種された実験用のネズミが2年ですべて死んだ」そもそもネズミの寿命が2年程度です。デマというよりも当然の真実で、不安をあおるためだけの流言です。災害や疫病の発生時にはデマや流言が流布しやすいといわれています。その背景が、不安です。人は情報不足あるいは情報が不確かな状況で不安を感じるのです。欧米人と日本人では不安を感じるメカニズムも異なるようです。日本人は目を隠している人に不安を感じ、欧米人は口元を隠している人に不安を感じます。つまり、日本人は「サングラスしてる人怖い」となり、欧米人は「マスクしてる人怖い」となります。欧米の映画やアニメのヒーローは、目元を隠して口元は隠さないのが普通です。バットマン&ロビンが代表です。ヒーローは口元を隠さない、口元を隠すのはだいたい悪いやつ、だからマスクをしたくない。これが、新型コロナウイルス感染症が流行してもマスクをしたくない欧米人の深層心理なのでしょう。一方で、日本では忍者装束のように鼻と口を隠して目は剥き出しが多いようです。コロナの流行がなくともマスクをしている人を街でよく見かけたのが日本です。日本の少女漫画のキャラクターは目が極端に大きいです。アメリカのアニメキャラは口が大きいです。相手の感情を目で読み取る日本人と、口元で読み取る欧米人といえます。メールなどに用いる絵文字にも、その違いは表れています。日本の顔文字の代表は、(^_^) です。目で笑っています。欧米の顔文字の代表のスマイリーフェースは、:-)です。これは英語の書籍の背文字のように横向きに表記されていますが、口で笑っています。そもそもマスクという言葉を考えてみれば、「mask」には「仮面」「覆面」のほかに「ごまかし」「見せかけ」「隠す」などの意味があります。飛沫感染を防ぐための衛生管理の道具がマスクではなく、「正体を隠す」という意味がマスクなのです。ここに欧米人のマスクへの不安感の本質があるのではないでしょうか。目で感情を表す日本人、口で感情を表す欧米人、これを超える素晴らしい感情表現法をもつのが猫です。猫はシッポで感情を表現します。猫がシッポをピンと立てるのは、嬉しい時や甘えたい時です。基本的に機嫌がいい時で、ウキウキしている証拠です。シッポがピンと立っている状況は、子猫時代に母猫にお尻をキレイになめてもらっていた名残です。母猫や心を許した人だけへの表現です。思い切り可愛がりましょう。シッポの毛を逆立てて膨らませているのは、相手を威嚇している時です。自宅に知らない人が突然現れた時や、不意打ちで怖い思いをした時には、うずくまってシッポを足の間にしまって体を小さくします。攻撃しないでと訴えているのです。シッポをパタパタと左右に大きく振っている時は、ご機嫌が斜めの時です。放置しておきましょう。猫を呼んだ時に、シッポの先だけ、ちょこっと振られることがあります。これは、猫が「めんどくさい」と感じている時です。飼い主の声は聞こえているけど、面倒な気持ちの時に行うしぐさです。自分は猫と会話できることを自認しています。鳴き声に加えて、このようなシッポの動きから猫の感情を読み取ります。私ほどの上級者になれば、シッポだけでなく、猫の耳の傾き具合や、ひげ袋の膨らみ具合、目の見開き方、ヒゲの向きなどの情報を網羅的に収集し解析します。エッヘン!コロナウイルスへのデマを排除し不安を払拭しようという文章が、猫自慢になってしまいました。それにしても自分にシッポがないのが残念です。シッポくれ!

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第67回 針刺し事故頻発中!コロナワクチン接種進む中、肝炎、HIVの感染リスクにも重々注意を

一度使った注射器を別の人に再度使用こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京都の新型コロナ感染者の増加が止まらない中、とうとう今週末、オリンピックが開催されます。そこで先週の日曜(7月18日)は選手村がどんな状況か視察するため、ではなく豊洲にあるライブ会場で開かれた、福岡市博多区出身のバンド、NUMBER GIRLのライブを観るために、東京・湾岸エリアの選手村近くまで出かけました(そもそも選手村は交通規制で近づけませんでした)。NUMBER GIRLは、8月に茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で開催予定だった「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」にも出演予定でした。しかし、茨城県医師会の要請で同イベントは中止が決定、NUMBER GIRLのファンのみならず多くの夏フェスファンを失望させました。この夏、NUMBER GIRLをライブで聴くことができるのは、今回の豊洲PITの単独と、「FUJI ROCK FESTIVAL’21」、山中湖のフェスだけという状況です。猛暑の中、選手村と海を挟んではす向いにある豊洲PITで1年半ぶりに観客を入れて敢行されたNUMBER GIRLのライブ。椅子に座って静かに“鑑賞”という、およそロックのライブとは思えないものでしたが、久しぶりの爆音が身体に沁み渡り満足の1日でした。終演後、勝鬨橋を歩いて渡り地下鉄の駅まで歩いたのですが、営業中の居酒屋の中にオリンピック関係者と思しき外国人2人(大胆にも同じユニフォームを着てました)が日本人に混じって飲んでいるのが見えました。“バブル方式”と言ってはいますが、彼らがもし選手だとしたら、選手村のバブルは針で穴を開けたかのように、既に弾けてしまっているのかもしれません。さて、今週はコロナワクチンの接種が各地で進む中、頻発している「針刺し事故」について書いてみたいと思います。7月13日のNHKニュースによれば、群馬県沼田市は、12日の新型コロナウイルスワクチン接種において、一度使った注射器(注射針とシリンジ)を別の人に再度使用した可能性があることを明らかにした、とのことです。ディスポなのに“2度刺し”の余地はどこに?最初、このニュースを聞いて疑問に思いました。私自身も先日1回目の接種を終えたのですが、注射針・シリンジはディスポーザブルなので接種後すぐに廃棄されていました。沼田市の事故において、“2度刺し”の余地がどこにあったのか、わからなかったのです。同ニュースによれば、一度使った注射器を別の人に使用したのは12日午後6時から市の保健福祉センターで行ったワクチンの集団接種においてのこと。ここでは108人が2度目の接種を受けましたが、終了後に注射器が1人分余り、使用済みで廃棄した注射器を確認したところ107本しかなかったということです。市によれば、この日は歯科医師が接種を担当しており、一度打った注射器を廃棄せず空の状態で再度使ってしまった可能性が高いということでした。同ニュースでは、「接種を受けた人に確認を進めていて現時点で、健康面の被害は報告されていない」「誤って使用済みの空の注射器を打たれた人は抗体ができていないことが想定されるため、1週間後をめどに全員に抗体検査を行って特定したいとしている」と報道していますが、そんなことより、2度刺しが起きた原因や、針刺し事故では肝炎やHIVに感染するリスクがあることも、きちんと伝えるべきではないかと感じました。使用注射器と未使用注射器を同じ机の同じ形状のトレーにいったいどういう経緯でこんな“古典的”な医療事故が起こったのでしょうか?ひょっとしたら他でも起きているのではないかと考え、ネットで検索してみると、あるわあるわ…。ワクチン接種に絡む事故が頻発していました。6月11日には、宮崎市で市内の高齢者施設において医療機関が実施した新型コロナワクチン接種において、医師が誤って使用済み注射器の針を施設従事者の60代女性に刺す事故が起こっています。この事故については、宮崎市のホームページに事故の概要が報告されています。それによれば、事故発生の原因は、「医師が受傷者の直前に使用した注射器と未使用の注射器を、同じ机の同じ形状のトレーに置いたため、誤って使用済みの注射器を使用して受傷者に刺した」とのことです。この他、同様の事故は、岡山県浅口市、滋賀県湖南市、奈良県五條市、埼玉県上里町などでも発生しています。いずれも現段階で受傷者に健康被害は起きていないようです。医療廃棄物での事故も多発中接種後、医療廃棄物になってからの事故も頻発しています。6月1日、北九州市は新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で、誤った方法で廃棄された注射針がゴミ回収業者の女性の足に刺さる事故があった、と発表しました。注射針は使用済みとみられ、女性は血液検査を受け、血液感染する可能性がある感染症のワクチン(おそらくB型肝炎ワクチン)を接種したそうです。西日本新聞の報道によれば、本来は専用ボックスに捨てなければならない注射針をガウンなどの医療用廃棄物の袋に捨てた上、それを一般廃棄物用の場所に誤って置いていたとのことです。また、6月7日、石川県小松市の新型コロナワクチンの集団接種会場では使用済みの注射針が会場の準備などを行うスタッフに刺さる事故が発生しています。石川テレビの報道によると、集団接種終了後、スタッフが接種の片づけを行っていたところ、ゴミ袋に入っていた注射針が相次いで2人に刺さった、とのことです。接種ブースには使用済みの注射針を捨てる医療廃棄物用のゴミ箱とガーゼの包装紙など一般ゴミを捨てるゴミ袋が置かれていましたが、今回の事故は誤って通常のゴミを集める袋に注射針が捨てられたことが原因とみられています。予防接種のフローに慣れていなかったことも一因か2度刺し事故や、廃棄物になってからの事故は、医療現場から遠ざかっていた医療スタッフや、注射針による医療事故の怖さを知らない事務方スタッフのケアレスミスで起こっているようです。中でも医療廃棄物の処理の杜撰さは、ワクチン接種を専門業者に丸投げ(その業者もまた関連業者に再丸投げのケースも)したことで、事故防止策が疎かになっていることも一因と言えるでしょう。2度差し事故については、いくつかの報道を見ると、宮崎市のケースのように、一度刺した注射針とシリンジを、未使用の注射が置いてあるトレーに戻したり、同じ形のトレーに置いたりしたため、未使用か使用済みかわからなくなってしまうことで起こっています。岡山県浅口市の個別接種で起きた事故でも、通常はトレーに注射器を1本ずつ置いて管理するところを、なぜか2本(未使用と使用済み)置いてあり、直前の接種で使った注射器を使用してしまったようです。集団予防接種に慣れている医療スタッフではまず考えられないミスだと言えるでしょう。沼田市のケースでは打ち手が歯科医だったようですが、2度刺しは予防接種のフローやリスク管理に慣れていないスタッフで起こりやすいのかもしれません。打ち手が自分に刺してしまう事故の可能性もここまで見てきたのは、新聞やテレビで報道された事故ばかりですが、おそらくこれらは氷山の一角で、針刺し事故はもっと頻繁に起こっているのではないでしょうか。なにせ、1日150万回近くの接種が行われているのですから。今のところ、致命的な劇症肝炎が発生していないだけでも幸いと言えます。ところで、こうした事故の中で、うやむやにされがちなのは、医療スタッフ自身がワクチン接種後の注射針を、自分の腕や腿などに誤って刺してしまう事故です。ミスしたことがバレるとカッコ悪いので、その事実を黙っている人も、ひょっとしたらいるかもしれません。医療者であればご存知でしょうが、針刺し事故後はすぐに打った相手の感染症情報(HBs抗原、HBs抗体、HCV 抗体、HIV 抗体)を調べることと、自分自身の血液検査が必要です。場合によっては、乾燥抗HBsヒト免疫グロブリン投与(HBIG)とB型肝炎ワクチンの接種や、抗HIV薬服用も考えなければなりません。針刺し事故の思い出…「SASU-ME」にも気を付けて実は私自身も針刺し事故に遭遇したことがあります。今から15年ほど前、ある病気で診療所を受診し血液検査を受けることになりました。院長が採血をしたのですが、採血後の注射を持った右手がぶれて、あろうことか院長自身の左手を刺してしまったのです。院長は一瞬焦った表情をしたものの、「大丈夫、大丈夫。萬田さん、肝炎のキャリアじゃないですよね?」と言って、その時の診療は終わりました。私自身は「大丈夫って。まあ私は大丈夫だけど」と思い帰宅したのですが、すぐに診療所から電話がかかってきて、その日のうちに再度受診することになりました。診療所では肝炎やHIVの検査の同意を取られ、再び採血、検査される羽目となりました。その後、院長には何の健康被害も起きませんでしたが、日常診療の中でのちょっとした気の緩みやミスで針刺し事故は起こるんだ、と実感したことを覚えています。これまでの報告1)からHIV汚染血液による針刺し事故の感染率は0.3%、粘膜の曝露による感染率は0.09%とのことです。また、C型肝炎ウイルスは約2%、HBe抗体陽性ウイルスは約10%、HBe抗原陽性ウイルスは約40%とされています。HBe抗原陽性ウイルスの場合の感染率の高さが際立っており、劇症肝炎を発症する危険性もあります。そう言えば、NUMBER GIRLには「SASU-YOU」という名曲があります。医療スタッフの多くはB型肝炎ワクチンを接種済だとは思いますが、ワクチン接種に関わる方は、肝炎、HIVの感染リスクも念頭に、「SASU-“YOU”」に加え、「SASU-“ME”」にも気を付けていただきたいと思います。参考1)針刺し事故後の対応について/国立病院機構 名古屋医療センター

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第69回 COVID-19ワクチンの確かな情報源は医療従事者/神経精神症状を呈するCOVID-19入院小児

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種するかどうかを決めるのに最も頼れる情報源は医療従事者であることが世界12ヵ国の4万人超の試験で示されました。また、英国からの報告によると神経精神症状を呈するCOVID-19入院小児の割合は大人に比べて高いようです。COVID-19ワクチン接種の意思決定の柱は医療従事者アジア、アフリカ、南アメリカの低~中所得10ヵ国(LMIC)、中所得国の中で上位のロシア、高所得国の米国の4万人超を調べたところ、LMICの人の8割(80.3%)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを希望しており、ロシアや米国をだいぶ上回りました1-3)。ロシアでのCOVID-19ワクチン接種希望者はとくに低く僅か約30%、米国は約65%でした。自分の身を守ることがCOVID-19ワクチン接種を望む第一の理由となっており、接種を求めるLMICの人の91%の接種志望動機となっていました。一方、副作用の心配がCOVID-19ワクチンを望まない主な理由であり、接種を希望しないLMICの人の41%の非希望理由となっていました。COVID-19ワクチンを接種するかどうかの判断で最も頼りにされていたのは医療従事者からの情報であり、ワクチン忌避が解消するように社会や行動を変える取り組みに各地の医療従事者が携わることはとくに有効なようです。医療従事者に寄せられる信頼はCOVID-19やCOVID-19ワクチンに関する誤情報の排除にも役立つに違いありません。米国はCOVID-19に関する誤情報の増加を警戒しており、フェイスブック(Facebook)のようなソーシャルメディアがCOVID-19ワクチンの誤った情報の掲載を許していることは米国のバイデン大統領に言わせれば殺戮行為です。ワクチンの間違った情報とFacebookなどのソーシャルメディアに対する見解を記者が先週金曜日に官邸(ホワイトハウス)で尋ねたところ「いまや感染流行はワクチン非接種の人に限られ、ソーシャルメディアは人殺し(killing people)をしている」と大統領は答えました4)。ワクチン接種判断で最も信頼されている医師からの説明はワクチンの誤情報を誤情報と知ってもらうことにも大いに貢献するでしょう。神経精神症状を呈するCOVID-19入院小児の割合は成人に比べて高いらしい神経や精神の症状を呈するCOVID-19入院小児の割合は成人に比べてどうやら高いようです。COVID-19で入院した英国イングランドの小児1,334人の3.8%(51人)が神経や精神の症状を呈して入院しており、成人のCOVID-19入院患者のその割合0.9%を4倍ほど上回りました5)。神経精神症状を呈して入院した英国のCOVID-19小児のうち入院時に呼吸器症状を呈していたのは52人中僅か12人(23%)のみであり、初期症状は多くの場合解消していました。52人のうち8人(15%)はそもそもCOVID-19感染症状がなく、PCR検査して初めて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が発覚しました。この結果によると急な神経性症状を呈した小児はみなSARS-CoV-2検査をする必要があるようです。神経精神症状を呈して入院したCOVID-19小児のおよそ3人に2人(65%)は無事回復しましたが、3人に1人(33%)は退院時に体の不自由さを呈していました。死亡したのは1人(2%)のみでした。多くは込み入った治療を受けており、しばしば免疫系の制御を目当てとしたそれらの治療の長期経過への影響を今後の試験で調べる必要があります6)。神経症状はCOVID-19入院後の合併症として生じることも知られており、19歳以上のCOVID-19入院成人7万人超を調べた試験ではおよそ20人に1人(4.3%)が神経合併症(髄膜炎、脳炎、てんかん、脳卒中)を入院中に発現しています7)。参考1)Study finds vaccine hesitancy lower in poorer countries / Eurekalert2)Understanding COVID-19 vaccine hesitancy / Nature Medicine3)Solis Arce JS,et al.. Nat Med. 2021 Jul 16. [Epub ahead of print] 4)Biden says Facebook, others 'killing people' by carrying COVID misinformation / Reuters5)Ray STJ, et al. Lancet Child Adolesc Health. 2021 Jul 14:S2352-4642,00193-0.6)New UK study reveals extent of brain complications in children hospitalized with COVID-19 / Eurekalert7)Drake TM, et al.Lancet. 2021 Jul 17. [Epub ahead of print]

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第63回 コロナ感染拡大、補助金で公立病院は黒字化

<先週の動き>1.コロナ感染拡大、補助金で公立病院は黒字化2.75歳以上の医療費増大、後期高齢者の健康保険財政が悪化へ3.再診なしでも使える繰り返し処方箋も検討課題に4.過労死認定、「過労死ライン」を超えずとも認定可能に5.医療法改正で、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技師の業務拡大へ6.トランプ元大統領も受けた抗体カクテル療法、日本でも承認へ1.コロナ感染拡大、補助金で公立病院は黒字化7月15日に全国自治体病院協議会が開催した定例記者会見で、2020年度の自治体病院の決算において6割の病院が黒字となったことが明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大により外来患者の延べ数は9.2%減、入院患者は同9.6%減、平均病床利用率は6.9%減(いずれも前年比)であったが、政府からの新型コロナ関連の補助金、計約3,027億円によって経営状態が大幅に改善した。(参考)自治体病院6割黒字の見込み コロナ対応の政府補助金で(朝日新聞)コロナ感染症の重点医療機関、支援金加味した2020年度の経常収支は104.5%の黒字に―全自病・小熊会長(Gem Med)2.75歳以上の医療費増大、後期高齢者の健康保険財政が悪化へ厚生労働省は7月16日に、令和元年度の後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況を発表した。これによれば、支出が16兆1,969億円と前年度比3.8%(5,954億円)増加となり、会社員らの現役世代からの支援金6兆5,220億円により黒字となっているが、75歳以上の人口の増加に伴って支援金の増加も加速しており、2023年度より75歳以上人口が増えるため、現役世代の負担感はさらに強くなると考えられる。政府は一定の所得がある後期高齢者については22年度後半から医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるように法改正を行なったが、今後もさらに検討が必要とみられる。(参考)令和元年度後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況について後期高齢者医療への支援金が最大 現役の拠出、19年度2300億円増 75歳以上増加で負担重く(日本経済新聞)3.再診なしでも使える繰り返し処方箋も検討課題に厚生労働省は、7月14日に開催された中医協の総会において、再診なしで繰り返し使える処方箋(リフィル処方箋)について、議論に着手することを明らかにした。リフィル処方箋は、今年の6月18日に内閣府で閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)において、「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」との目的で、導入が検討されていた。調剤薬局には、ポリファーマシー対策や重複投薬の防止とともに患者情報の交換を通して医療機関との連携強化が期待されているが、診療側は慎重姿勢であり、今後の議論に注目が集まる。(参考)中央社会保険医療協議会 総会 調剤(その1)再診なく繰り返し使える処方箋 厚労省が検討開始(日本経済新聞)中医協総会 2022年度調剤報酬改定へキックオフ 支払側・幸野委員「薬局機能に応じた報酬体系に」(ミクスOnline)4.過労死認定、「過労死ライン」を超えずとも認定可能に7月16日、厚生労働省は「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において、昨年からで検討を重ねてきた「業務による過重負荷を原因とする脳血管疾患及び虚血性心疾患」について、2001 年に定められた認定基準の改定を公表した。この20年間に働き方の多様化や職場環境の変化が生じており、残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間に達していなくても、これに近い時間外労働が認められ、加えて労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できると明示することとし、労災として認定することになった。この報告書を基に今年8月末から新たな基準の運用が始まる見通しだ。(参考)「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書労災認定柔軟に 脳・心臓疾患 厚労省(時事通信)「過労死ライン」こだわらず 厚労省、労災認定を柔軟に(日本経済新聞)5.医療法改正で、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技師の業務拡大へ今年5月28日に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(改正医療法)により、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法が改正された。今年の10月1日から、医師の働き方改革を進めるため、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士へのタスクシフト/シェアを推進する。医師の負担を軽減しつつ、医療関係職種がより専門性を活かせるよう、各職種の業務範囲の拡大等を行うことが目的だ。具体的には、診療放射線技師では、RI検査のために静脈路を確保し、RI検査医薬品を投与する行為、さらに投与終了後に抜針及び止血する行為、臨床検査技師では医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査を行う行為、臨床工学技士には手術室等で生命維持管理装置や輸液ポンプ・シリンジポンプに接続するために静脈路を確保し、それらに接続する行為や投与終了後に抜針などの業務が該当し、現場で行う前に、各団体により研修が実施される。(参考)良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(第78回社会保障審議会医療部会)臨床検査技師等に関する法律施行令の一部を改正する政令等の公布について(PDF)臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修2021年医療法等改正のチェックポイント-医師の働き方、タスクシフト/シェアの推進、外来医療の機能の明確化・連携など-(医療総研)6.トランプ元大統領も受けた抗体カクテル療法、日本でも承認へ日本国内で、新型コロナワクチンに新しい治療法が承認されそうだ。米国リジェネロン社とスイス・ロシュ社が共同開発した2種類の医薬品を組み合わせた「抗体カクテル療法」は去年、当時の大統領のドナルド・トランプ氏が受けたことで話題となり、厚生労働省は、7月19日に薬食審医薬品第二部会を開催し、特別承認について審議する。この抗体カクテル療法は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の2種類のウイルス中和抗体の「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を含む「ロナプリーブ点滴静注」であり、国内では中外製薬が独占契約に基づいて国内第I相の治験を実施した。米国国内においては緊急使用許可が出て臨床使用されている。これまで国内の新型コロナ治療薬としては「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3製品が承認されているが、いずれも中等症・重症の患者を対象としており、軽症・中等症向けの治療薬としては初となる見込み。(参考)「抗体カクテル療法」19日に承認可否を審議 厚労省(産経新聞)軽・中等症では初の新型コロナ治療薬 来週にも特例承認へ(毎日新聞)薬食審 中外製薬の新型コロナへの抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット」7月19日に審議(ミクスOnline)

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