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第59回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる? “家庭医構想”というパンドラの匣(後編)

家庭医、かかりつけ医の制度化の議論活発化こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。飲み屋がやっていないので、東京の夜は寂しいものです。先日、ある居酒屋(酒類を提供していないにもかかわらず営業中)に入って、「ホッピー、“外”だけ下さい」と頼んだところ、「アルコールが入っているので出せません」と言われました。アルコール?と思い調べたら、0.8%入っているようです。0.8%でどう酔っ払えるのかはわかりませんが、飲食店において1人や少人数の場合の酒類提供の禁止というのは、感染防止の観点からはほとんど意味がないと思うのですが、どうでしょう。さて、今回は、前回の続きで、家庭医・かかりつけ医の制度化を進めようという、いくつかの動きについて書いてみたいと思います。一つは、財務省の「かかりつけ医機能」の制度化の提案です。財務省主計局は4月15日、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において、医療や介護、年金など社会保障制度の改革についての考え方を示しました(参考:第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの)。この中で財務省は、診療所における「かかりつけ医機能」の制度化を提言。紹介状なしで大病院外来を受診した患者から定額負担を徴収する仕組みと共に推進し、外来医療の機能分化と連携につなげることを求めました。「『かかりつけ医』機能を法制上明確化せよ」と財務省大病院外来における受診時定額負担の義務化対象については、紹介外来を基本とする一般病床200床以上の病院に拡大する方針がすでに決まっており、2022年度診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)での議論で、詳細が固められる予定です。財務省はこの取り組みの一層の推進を促すとともに、「複数の慢性疾患を抱える患者が増加する超高齢化社会において、患者がその状態に合った医療を受けるためにも、有事を含め国民が必要な時に必要な医療にアクセスできるようにするためにも、緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の推進は不可欠である」と提言しました。そして、すでに日本医師会と四病院団体協議会において「かかりつけ医」の定義が明らかにされていることを踏まえ、「診療所における『かかりつけ医』機能を法制上明確化(制度化)するとともに、機能分化を進めるためのメリハリをつけた方策を推進すべきである」としています。とはいえ、日本医師会の「かかりつけ医」の定義については、以前に本連載(第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界を参照)でも書いたように、その概念は曖昧で確固たる資格ではありません。地域で診療する医師の一つの理想像に過ぎない今の「かかりつけ医」を、このコロナ禍を機にきちんと制度化しろ、と財務省は言っているわけです。経済財政諮問会議では民間議員が制度化に言及この提言の後、4月26日に開かれた内閣府の経済財政諮問会議でも「かかりつけ医の制度化」が俎上に上がりました。民間議員が「社会保障改革~新型感染症を踏まえた当面の重点課題」と題する資料を提出、新型コロナの緊急時対応では、「民間病院を含めて緊急時に必要な医療資源を動員できる制度的仕組みの構築」を求める一方、平時の構造改革として、診療報酬のインセンティブの強化等で医療機関の機能分化や統合を推進するほか、「かかりつけ医機能を制度化」し、コロナ対応やオンライン診療などを包括的に提供できる体制の整備を求めたのです。とくにかかりつけ医については、「感染症への対応、予防・健康づくり、オンライン診療、受診行動の適正化、介護施設との連携や在宅医療など地域の医療を多面的に支える役割を果たすべき」と、その具体的な機能も明示しました。「制度化」の議論と正対しない日本医師会こうした相次ぐ動きに対し、日本医師会は4月27日に「経済財政諮問会議等の議論について」という文書で、次のような見解を公表しています。かかりつけ医機能についてかかりつけ医が行う感染症への対応、予防・健康づくり、受診行動の適正化、高齢者への医療など、地域の医療を多面的に支える役割をしっかりと評価すべきです。フリーアクセスは国民皆保険を支える大きな柱であり、コロナ禍において、経済財政諮問会議や財政審が求めているように、かかりつけ医機能を制度化すれば、フリーアクセスを阻害し、以前後期高齢者医療制度導入のときに見られたように国民の理解を得られず、大混乱を招くおそれがあります。2008年に施行された後期高齢者医療制度における後期高齢者診療料は、慢性疾患を持つ複数の病気にかかっている高齢者の主治医を限定してフリーアクセスを奪いかねず、また、医学管理等、検査、画像診断、処置を包括して医療費抑制につながりかねないことなど、患者にとって必要な医療が制限されるとして批判を浴びました。(「日医君」だよりNo.588より)財務省や経済財政諮問会議の民間議員の提言、提案にまったく正対していないこの見解には正直驚きました。「かかりつけ医」が制度化されておらず、その存在の役割が曖昧なことには触れず、すでに機能しているものとして論を展開しているのは無理があります。また、フリーアクセスの阻害が「国民の理解を得られず、大混乱を招く」と主張しているのも説得力がありません。「コロナ禍における大混乱」の一因が、「フリーアクセス」がうまく機能せず、PCR検査、コロナ疑い患者の初期診療、回復患者への対応といった、本来診療所レベルでも対応すべきことができていなかったことにある、という認識が欠けています。また、ここで後期高齢者医療制度の議論の時のドタバタを持ち出すのも、不適当と言えるでしょう。この時の混乱と、高齢者を含む国民が医療機関にかかることができず、死亡するケースが続出している現状とは、混乱の度合いが比べものになりません。現場会員の「かかりつけ」の認識は単に受診頻度5月16日のNHKニュースは「定義あいまい“かかりつけ” ワクチン接種予約で困惑」というタイトルで、こんな話も伝えています。兵庫県内で、65歳以上の高齢者の新型コロナウイルスのワクチンの接種の予約受付が「かかりつけ」の医療機関で始まったが、「かかりつけ」の定義があいまいなため、医療機関に予約を受け付けてもらえないケースが出ている、というのです。ある高齢者が予約しようとしたところ、最後の受診日から一定期間経過していることなどで医療機関側が「かかりつけ」には当たらないと判断、予約を受け付けないケースがあったというのです。日本医師会・四病院団体協議会による「かかりつけ医」の定義は、「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」ですが、現場の診療所の認識は単純に受診の頻度や回数、最後に受診してからの期間だったのです。笑っちゃいますね。コロナ禍だからこそ「かかりつけ医」を見直せと日本総研さて、そんな中、シンクタンクである日本総合研究所(日本総研)もこれからの「かかりつけ医」の役割について斬新な提言をしています。日本総研は5月11日、Webシンポジウム「ポストコロナに望まれる日本のあるべき医療の姿~長期的な展開で、今後も医療制度を維持するために~」を開催、約2年間に渡って検討を重ねてきたという「持続可能で質の高い医療提供体制構築に関する提言」を発表しました。提言は、「新型コロナウイルス感染症による公衆衛生危機によって、わが国の医療提供体制はさらに多くの課題を突き付けられることになった。医療従事者の偏在や不足をはじめ、平常時・非常時それぞれにおける病床機能の不備、在宅での患者支援体制の未整備、ワクチン接種やデジタル化の遅れなど、それらをどのように進化させていくべきか、多くの国民が課題認識をかつてないほど深めている」と問題点を指摘した上で、「現在行われている医療制度改革は、医療提供者側を中心とした議論が行われており、医療の受け手である国民にも理解しやすい形で、医療のあるべき姿が議論されその実現に向けた対策が取られているとは言い難い」として、次の3つの提言をしました。提言1:コロナ禍だからこそ見直すべき「かかりつけ医」の役割提言2:デジタル化が可能にする質の高い医療の選択を加速化提言3:国民皆保険を将来世代に引き継ぐためにコロナ禍の今こそ考えるべき医療財政多職種連携で診るプライマリ・ケアチームを提言この中の、「提言1:コロナ禍だからこそ見直すべき『かかりつけ医』の役割」では、「国民の一生涯の健康を地域多職種連携で診るプライマリ・ケアチーム体制整備」が必要として、チームで「かかりつけ」の仕組みをつくれ、と主張しています。提言では、「臓器ごとの専門医だけでなく、全人的・包括的に複数科/疾病の患者も診られ、患者の地域や家族の状況も踏まえて診察できる医師(プライマリ・ケア医)が必要」としつつも、「そのために、国民一人ひとりが、自らが選んだ一生涯のかかりつけの多職種医療従事者チームに診てもらえる『国民の一生涯を見る日本版プライマリ・ケア』の仕組みを整備すべきである」としています。かかりつけ医だけでなく、看護師や薬剤師、OT・PT、介護福祉士、ケアマネジャーなど地域の多職種医療従事者チームでプライマリ・ケアを提供する、という視点は斬新です。医師に手に負えない(あるいは医師が怠ける)部分は、医師以外にタスクシフトをし、チームで「かかりつけ」として機能していけ、というわけです。国民の目線が日本医師会に向いている今こそ議論をコロナ禍での反省に立って出てきた「かかりつけ医」に対するさまざまな提言を、家庭構想を葬ったころと同じようなロジックで無視していいわけがありません。こうした提言や議論に正対せず、ひたすら「フリーアクセス」「自由開業」「出来高払い」という金科玉条を自分たちのためだけに唱え続けるとしたら、ここはもう、日本医師会を外して、「かかりつけ医」の議論を進めていく選択肢もあるでしょう。ただ、そんな勇気は、自民党にも厚労省にもおそらくないでしょうが…。しかし、この1年余り、コロナ禍での医療提供体制のお粗末ぶりを経験してきた国民の多くは、日本医師会やそのトップである中川 俊男会長の言動に大きな不信感を抱くに至っています。家庭医、かかりつけ医の制度化の議論は、国民の目線が日本医師会に向いているコロナ禍の中の今こそ進めるべきだし、進むと思いますが、皆さんどうでしょう。

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がん患者、新型コロナワクチン接種後の抗体価が低い/Ann Oncol

 がん治療を受けている固形腫瘍患者はCOVID-19ワクチン接種後の抗体価が低く、2回以降の接種が健常者以上に重要になる、という報告が相次いでいる。 Annals Oncology誌2021年4月28号オンライン版に「LETTER TO THE EDITOR」として掲載されたフランスの研究では、固形腫瘍患者194例と 健常者の対照群31例にファイザーの新型コロナワクチン「BNT162b2」 を接種。初回接種時、2回目接種時(3~4週後)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)に抗体値を測定し、陽性判定を行った。 主な結果は以下のとおり。・2021年1月18日~3月15日までに194例中122例(64.4%)が少なくとも2回の判定を受けた。年齢中央値は69.5歳(44~90歳)、男性64例(52.5%)、女性58例(47.5%)だった。・122例中105例(86.0%)は化学療法±分子標的薬療法を受けていた。・2回目接種時(3、4週後)は58例(47.5%、95%信頼区間:38.4~56.8)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は分析可能な40例(95.2%、83.8~99.4)が抗体陽性だった。・対照群は、2回目接種時(3、4週後)は13例(100.0%、75.3~100.0)、2回目接種後3~4週目(6~8週後)は24例(100.0%、85.7~99.4)が抗体陽性であり、固形腫瘍患者は健常者と比べ陽性率が有意に低かった。またいずれの時点でも抗体価中央値は固形腫瘍患者で有意に低かった。・化学療法を受けた患者は、受けていない患者や分子標的薬療法のみの患者と比べ、2回目接種時(3、4週後)に抗体陽性となった患者が少なかった(42.9%vs. 76.5%、p=0.016)。 研究者らは、がん患者は免疫不全状態であることが多く、ワクチン単回の接種では反応が弱い、または反応しない割合が高いことを考慮して、初回接種後少なくとも6~8週間は引き続き厳格な感染予防措置をとること、化学療法を受けている患者はとくに2回目接種のスケジュールを厳守すること、3回目以降の接種の有効性を検討する必要があることを示唆している。

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AZ社・モデルナ社の新型コロナワクチン、特例承認を取得

 アストラゼネカ社は5月21日、コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン「バキスゼブリア筋注」の製造販売について、日本国内における特例承認を取得したと発表した。SARS-CoV-2 ウイルスによる感染症の予防を適応とし、18 歳以上を対象とする。 英国・オックスフォード大学が主導する英国・ブラジル・南アフリカにおける第III相臨床試験の有効性および安全性に関する良好なデータと、国内第I/II相臨床試験結果を基に厚生労働省が同日、承認した。 PMDAは「バキスゼブリア筋注」について、成人には0.5mLを4~12週間の間隔をおいて2回筋肉内に接種することと定められており、最大の効果を得るためには8週以上の間隔をおいて接種することが望ましいと注意喚起している。この用法・用量は、臨床試験において良好な忍容性を示し、2回目接種後15日以降の症候性COVID-19を予防。COVID-19関連した重症例及び入院例も見られなかったという。 日本における同ワクチンはすでに生産を開始しており、数週間以内に出荷を開始する予定だ。 一方、米国・モデルナ社製のコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」についても、同日に特例承認された。2021年前半より日本国内においてモデルナ筋注5,000万回接種分を供給することを目的としたモデルナ社および厚労省との契約に基づき、武田薬品工業が申請していた。 同社は、日本において「モデルナ筋注」を28日間の間隔をあけて2回接種した際の、安全性および免疫原性の評価を行うプラセボ対照臨床第I/II相試験を実施。20歳以上の日本人成人200例を被験者として登録した。本試験の結果では、28日間隔で同ワクチン0.5mLを2回接種した被験者の100%において、2回目接種から28日後に結合抗体と中和抗体の上昇が確認された。重大な安全性の懸念は報告されず、忍容性はおおむね良好で、これまでに公表されたモデルナ社の臨床第III相COVE試験の免疫反応と同様の結果だった。 武田薬品工業では、国内における供給を速やかに開始する予定。 両ワクチンの概要および添付文書は、厚生労働省のホームページに掲載されている。

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第55回 モデルナ、AZの新型コロナワクチン承認、その位置付けは?

<先週の動き>1.モデルナ、AZの新型コロナワクチン承認、その位置付けは?2.コロナ重症患者の急増で麻酔薬プロポフォールが供給不安定に3.改正医療法の成立で、救急医の「勤務間インターバル」など義務化4.骨太の方針へ声明「すべての病院に適切な支援を」/日本病院団体協議会5.地域医療構想で病院再編の支援を強化、外来機能報告制度の創設1.モデルナ、AZの新型コロナワクチン承認、その位置付けは?厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を21日に開催し、モデルナ製とアストラゼネカ製の新型コロナワクチンについて、製造販売を承認した。接種対象範囲や公的接種とするかどうかなどを検討した結果、モデルナ製ワクチンは公的接種の対象とされる一方で、AZ製ワクチンは海外で接種後にわずかながら血栓症が発症する事例が報告されていることから、現時点では公的接種の対象外となった。今回、審査を簡略化する「特例承認制度」を活用して行われたが、国内治験のため製造承認が遅れ、アメリカに比べると3ヵ月ほど発売までの時間を要した。政府は国産ワクチンの研究開発を後押しする基金を創設し、開発能力の向上を目指すことを明らかにしている。(参考)厚労省 モデルナとアストラゼネカの新型コロナワクチンを特例承認 モデルナ製のみ公的接種の対象(ミクスonline)国産ワクチン開発へ、大学や製薬会社に資金…政府が基金創設の方針(読売新聞)第21回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料(厚労省)2.コロナ重症患者の急増で麻酔薬プロポフォールが供給不安定に人工呼吸器を必要とする新型コロナ重症患者の増加に伴い、手術患者の鎮静に用いる「プロポフォール」の需要が高まったため、国内の製薬メーカーは今月から出荷調整を行なっている。これに対して厚労省は、14日に事務連絡を発出し、プロポフォール製剤およびその代替薬について、「返品が生じないよう必要量に見合う量のみの購入」「臨床上問題なければ麻酔の維持においては揮発性吸入麻酔薬の使用を考慮」など適正使用を呼び掛けている。(参考)コロナ重症治療の麻酔薬がピンチ 患者急増の影響で (朝日新聞)資料 プロポフォール製剤が安定供給されるまでの対応について(周知依頼)(厚労省)3.改正医療法の成立で、救急医の「勤務間インターバル」など義務化21日に開催された参議院本会議で、医師の働き方改革案が盛り込まれた改正医療法が可決・成立した。これにより、救急医療などを担う医師に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」や、医師による面接指導による健康確保措置、医師労働時間短縮計画の作成が病院に義務づけられることになった。2024年4月から、医師の時間外労働の上限は原則「年960時間以内」となるが、3次救急医療機関、2次救急医療機関のうち年間救急車受入台数1,000台以上または年間の夜間・休日・時間外入院件数500件以上かつ、医療計画で5疾病5事業確保のために必要と位置付けられた医療機関や在宅医療においては、「年1,860時間」の範囲で規制される。なお、新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制がひっ迫したことも踏まえて、都道府県が策定する医療計画に、新たに感染症対策を追加し、5疾病6事業として改められる見込み。(参考)勤務医らの働き方改革推進 改正医療法 参院本会議で可決・成立(NHK)改正医療法が成立、医師の健康確保を義務化 病院再編支援なども(CBnewsマネジメント)資料 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等改正の趣旨の一部を改正する法律案の概要(厚労省)4.骨太の方針へ声明「すべての病院に適切な支援を」/日本病院団体協議会21日、財務省の財政制度等審議会は、社会保障費の伸びを2022年度から3年間、高齢化に伴う患者の分までに抑えるよう求める意見書(建議)を取りまとめており、さらに議論を経て7月に新たな骨太の方針としてまとめられる。中には、診療所の「かかりつけ医」機能の制度化、処方箋を繰り返し利用する「リフィル制度」の導入なども盛り込まれている。これに対し、国立大学附属病院長会議、独立行政法人 国立病院機構、全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、全日本病院協会など15団体から構成される「日本病院団体協議会」は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、過去の実績に基づく診療報酬の補填のみでは十分ではなく、すべての病院を支援する対策を求めた。(参考)新型コロナ支援は診療報酬概算払いに、財政審 社保費の伸び引き続き「高齢化分」に(CBnewsマネジメント)民間病院にもっと支援を…コロナ患者受け入れで収入減 減収補填など使途拡大訴え(東京新聞)資料 社会保障改革~新型感染症を踏まえた当面の重点課題~(経済財政諮問会議)資料 経済財政諮問会議等の議論にかかる声明(日本病院団体協議会)5.地域医療構想で病院再編の支援を強化、外来機能報告制度の創設21日に参議院本会議で可決・成立した改正医療法では、地方で進む人口減少や高齢化に備え、必要な病床の数や機能を見直す「地域医療構想」の実現を後押しするため、医療機関の取り組み支援を地域医療介護総合確保基金に位置付けて、国が全額負担する税制優遇措置などを講じることが明らかになった。また、外来医療の機能の明確化・連携を強化するために、一般病床や療養病床を有する医療機関に対し、医療資源を重点的に活用する外来などについて報告を求める「外来機能報告制度」の創設などを行うことになっている。(参考)病院再編の支援恒久化 改正案、国会成立へ(中日新聞)外来機能報告の義務化、遅くとも22年度初めから(CBnewsマネジメント)

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ワクチン接種後の手のしびれ、痛みをどう診るか(1)

前回、ワクチン接種後に生じる可能性のある末梢神経障害や、SIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration:ワクチン接種に関連する肩関節傷害)について解説しました。今回はワクチン接種後にこれらを疑う症例について、より実際に即したお話をしたいと思います。<今回のポイント>神経に穿刺した場合、“どこに注射したか”“何を注射したか”“損傷の形態”さらに“心因的な要素”などによって症状は異なる。神経を損傷したわけではなくても、注射の後に手の痺れを訴えることがある。末梢神経損傷やSIRVAについて、ワクチン接種に従事する医療者は知っておいたほうが良いのでしょうか?前回も述べたように、私たちが提案した安全なワクチンの筋注方法に従って注射する限り、末梢神経損傷やSIRVAは心配しなくても良いと考えています。とくに今回のような状況下では末梢神経損傷やSIRVAについては、せいぜい「そんな副反応もあるのだな」程度の知識で十分ではないでしょうか。それよりもワクチン接種会場では適切な問診の対応ができること、さらに厚生労働省が示すように、「アナフィラキシー」「血管迷走神経反射」といった副反応への対処のほうが大切でしょう。しかし、従来通り肩峰下三横指以内に筋肉注射する手技を選択するのであれば、少なくともSIRVAという疾患概念については知っておくべきではと思います。その部位に接種することによって障害が発生するリスクが指摘されているからです。針で神経を刺してしまうと、必ず麻痺が起こるのでしょうか?“どこに注射したか”“何を注入したか”“神経損傷の形態”さらに“心因的な要素”などによって症状は大きく異なると考えます。まず“どこに注射したか”ですが、たとえば、手関節の橈側での静脈穿刺は、橈骨神経浅枝損傷のリスクがあります1)(図1)。(図1)画像を拡大する2021年現在、判例等によると、手関節から12cm以内の前腕橈側での静脈穿刺は、橈骨神経浅枝の損傷に対して医療側の過失を問われる可能性が高い。実際にCRPS(複合性局所疼痛症候群)を発症し、病院側が敗訴した判例もあります2)。この部位での採血や静脈路確保による橈骨神経障害は、ほかの部位と比べると症状が強く発現しやすくトラブルに発展しやすいため、極力避けるべきだと個人的にも思います。ワクチン接種と関連した上腕の部位だと、腋窩神経は終末近くを分岐する運動神経で症状が出にくく、橈骨神経では手の一部を支配する感覚神経と運動神経双方の線維を含むことから症状が現れやすいと言えます。一方で、私たち整形外科医や麻酔科医は腕神経叢や坐骨神経に対して神経ブロックを行う際に末梢神経を針で刺し、局所麻酔薬を注入します。確かに神経に針を刺せば、部分的な軸索の損傷を生じる可能性があります。しかし、通常神経ブロックを行う部位への局所麻酔薬の注射では、永続的な神経障害の危険性はかなり低いと考えられています。もちろん注入する薬剤の種類や濃度によっては、注射部位によらず神経の障害を起こしうるでしょう。“何を注射したか”薬剤の種類によって神経毒性はまったく異なります。とくにワクチンは局所の炎症を引き起こすので、誤って末梢神経に注入するようなことは避けるべきでしょう(図2)。(図2)画像を拡大する末梢神経に対する局所の毒性は薬剤によって大きく異なる。「神経ブロックでよく穿刺しているから、ワクチン接種で穿刺しても大丈夫」とはならない。さらに知っておきたいのは、実際にはさまざまな“神経損傷の形態”があるということです。古典的なSeddon分類に従って考えても、一時的な圧迫による伝導障害、神経幹は断裂していないが軸索が損傷している状態、神経幹自体が断裂している状態など、神経損傷の程度や回復の見込みもさまざまです(図3)。(図3)画像を拡大するそれぞれの末梢神経は、図に示す神経線維の束である神経束がさらに束になったものである。実際には部分的な神経束の損傷など、さまざまな形態が存在する。ですから実際の患者さんが教科書に書いてあるような典型的な麻痺の症状を必ず呈するとは限りません。たとえば、単純に『肩が自動運動で挙上できるので、腋窩神経損傷は否定できます』などとは言えないわけです。末梢神経を傷つけた場合、ほとんど無症状の場合から、異常な感覚を訴える場合、あるいは筋力低下を明らかに示す場合など、さまざまな症状が生じ、整形外科医でも判断に迷うことはよくあります。注射後に手の痺れを訴える人もいるようですが、神経損傷あるいは気のせいでしょうか。神経損傷やSIRVAを生じる可能性は、全体的に見ると低いものです。SIRVAの場合、4月30日時点での厚生労働省の「医療機関からの副反応疑い報告について」3)を参照すると2件の副反応疑いとして報告(ワクチン接種関連肩損傷[ワクチン投与関連肩損傷])があります。もちろん何千万という単位で行われる集団ワクチン接種が今回日本で初めて筋肉注射という形で行われているので、確率の低い合併症であっても日本全体で見ると今後問題となるかもしれません。神経障害については、まだはっきりとした発生頻度は分かりません。上記の厚労省報告では、さまざまな症状の中で「感覚異常(感覚鈍麻)」と記載されているものは100例以上あるようです。しかし、ワクチン接種後に腕のしびれや肩の痛みなどの症状があっても、それをすぐに末梢神経損傷やSIRVAといった診断や被接種者への説明に結びつけるべきではないとも思います。 奈良県立医科大学附属病院では、これまで約4,000人の医療従事者に対して2回の新型コロナウイルスワクチン接種が研修医によって行われました。副反応のうち、肩や腕など接種部位に関連する症状について診察を必要とすると判断された被接種者については、私の外来を受診してもらっています。本病院ではわれわれが作成した筋肉注射手技マニュアルに従った接種方法を研修医に行ってもらいましたが、現在のところ末梢神経損傷やSIRVAを疑う被接種者はおりません。しかし、腕のしびれや痛みを訴えて受診された方は数名いました。実はインフルエンザワクチン接種や採血、あるいは研修医同士の採血の練習などにおいて、明らかな末梢神経の損傷を示す所見はないのに、「腕や手の痺れを訴える」というケースが毎年あり、珍しいものではありません。腕に注射をされた際、一時的に「なんとなく腕や手に軽い違和感」を自覚したものの、そのあとは「とくに何もしなくても元に戻った」と感じたことがある人は多いのではないでしょうか。このような一時的な痛みや痺れは、ほとんどの場合臨床上問題なく自然治癒するものなのですが、中には医療従事者の対応も含めた“心因的な要素”も重なり、CRPS(複合性局所疼痛症候群)を疑うような強い痛みに発展してしまう患者さんもいます。ただし、稀に本当の神経損傷がまぎれ込むこともあるので、慎重な診察が必要です。このあたりの問題については、次稿で解説します。1)渡邉 卓編. 日本臨床検査標準協議会. 標準採血法ガイドライン(GP4-A3). 2019.2)Medsafe.Net: No.400「点滴ルートの確保のために左腕に末梢静脈留置針の穿刺を受けた患者が複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症。看護師が、深く穿刺しないようにする注意義務を怠った結果、橈骨神経浅枝を損傷したと認定した高裁判決」3)厚生労働省:医療機関からの副反応疑い報告について(予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について [令和3年2月17日から令和3年4月25日報告分まで])

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ファイザー新型コロナワクチン、がん患者ではとくに2回接種を/Lancet Oncol

 がん患者に対する新型コロナワクチンBNT162b2(ファイザー)の安全性と免疫原性をがん患者における評価を目的とした前向き観察研究の結果が発表された。 対象は、2020年12月8日~2021年2月18日に、ロンドンの3つの病院でBNT162b2接種を受けたがん患者と健康成人(主に医療従事者)。複合主要評価項目は、がん患者におけるBNT162b2ワクチンの初回接種後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合、2回目(初回から21日後)接種後の同陽性例の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・期間中に151例のがん患者(固形がん95例、血液がん56例)と健康成人54例が対照群として登録された。・2回目の接種を受けたのは対照群16例、固形がん患者25例、血液がん6例であった。・SARS-CoV-2に曝露された17例を除外した、ワクチン初回接種21日後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群94%(34例中32例)、固形がん患者38%(56例中21例)、血液がん患者18%(44例中8例)であった。・2回目接種2週間後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群100%(12例中12例)、固形がん患者95%(19例中18例)、血液がん患者60%(5例中3例)であった。・BNT162b2ワクチンの忍容性は良好で、初回接種後毒性がなかったものはがん患者では54%、対照群では38%、2回目の接種後毒性がなかったものはがん患者では71%、対照群では31%であった。・毒性は初回接種後7日以内の注射部位の痛みがもっとも多く、がん患者では35%、対照群では48%に発現した。ワクチン関連の死亡は報告されていない。 健康成人例に比べ、がん患者では1回接種でのBNT162b2ワクチンの効果は低いことが示された。一方、固形がん患者においては、2回目ブースト接種から2週間以内に免疫原性が有意に増加した。筆者は、これらのデータは、がん患者におけるBNT162b2ワクチン2回目接種の優先を支持するものだとしている。

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TNF阻害薬治療中のIBD患者、新型コロナワクチン単回接種では抗体応答が不良

 新型コロナワクチンを巡っては、世界的に需要が高まり、限られた供給量をどう配分するかが各国における喫緊の課題になっており、単回接種の有効性についての研究も進んでいる。一方で、炎症性腸疾患(IBD)など全身免疫を抑制する治療を行っている患者では、免疫応答が十分に得られず、ワクチンの有効性が落ちるのではないかという懸念がある。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、インフリキシマブもしくはベドリズマブ治療中のIBD患者に対し、2種類の新型コロナワクチン(ファイザー製BNT162b2、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19)接種後の抗体価を比較。その結果、インフリキシマブ治療患者では、ベドリズマブと比べワクチン単回接種後の抗体価が有意に低かった。ただし、SARS-CoV-2感染後のワクチン接種、もしくは規定通り2回接種後は、ほとんどの患者でセロコンバージョンが認められた。著者らは、「インフリキシマブ治療患者においては、ワクチンの単回投与に対する抗体応答が悪く、SARS-CoV-2感染のリスクが高まる可能性があり、2回目接種の遅延は避けるべき」と述べている。Gut誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者(5歳以上、インフリキシマブまたはベドリズマブ治療を6週間以上実施、過去16週間に少なくとも1回の薬物治療を受けている)7,226例を連続して登録。インフリキシマブ治療中の865例とベドリズマブ治療中の428例を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1回目のワクチン接種後3~10週間で測定した抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体濃度は、ベドリズマブ治療群と比べ、インフリキシマブ治療群でBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれにおいても低かった。・ワクチンの種類に関係なく、ベドリズマブ単剤の治療患者におけるセロコンバージョン率が最も高く、インフリキシマブと免疫抑制剤を併用した患者において最も低いセロコンバージョン率が観察された。・SARS-CoV-2感染歴がある患者において、いずれかのワクチンの1回目接種前およびBNT162b2ワクチンの2回投与後でより高い抗体濃度およびセロコンバージョン率が認められた。・インフリキシマブ治療群においても、2回接種後の患者では抗体価の上昇が認められた。

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新型コロナワクチン戦略、65歳未満は1回目接種優先が有益/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、PfizerのBNT162b2およびModernaのmRNA-1273共に2回接種が標準となっているが、米国・メイヨー・クリニックのSantiago Romero-Brufau氏らは、エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションの結果、65歳未満の人々には1回目の接種を優先して行い2回目の接種を遅らせるワクチン接種戦略が、有益であることを明らかにした。同戦略で1日当たりのワクチン接種率が人口の0.1~0.3%で死亡率は最大20%低下し、1回接種のワクチン有効率が80%以上になる可能性があるという。BMJ誌2021年5月12日号掲載の報告。エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションを実施 研究グループは、米国の実際の人口統計および職業分布を代表する10万人をエージェント(模擬集団)とし、3種類の接触ネットワーク(仕事、家庭およびランダムな遭遇)を介したエージェントの相互作用による感染をモデル化した。標準的なスケジュールでワクチン接種を行った場合と、1回目の接種を優先し2回目の接種を遅らせる場合とで、1回目のワクチン接種後180日間におけるCOVID-19による累積死亡率、SARS-CoV-2累積感染率およびCOVID-19による累積入院率をシミュレーションにより比較した。 シミュレーションは10回繰り返し、平均として結果を示した。また、1回目のワクチンの有効率を接種後12日目で50%、60%、70%、80%、90%、1日当たりの接種率を人口の0.1%、0.3%、1%、ワクチンは無症候性感染ではなく症候性感染のみを予防すると仮定し、65歳以上のすべての人々がワクチン接種を終えた後に65歳未満の人には2回目の接種を遅らせるというワクチン接種戦略を採用することとして、感度分析を行った。2回目接種を遅らせ1回目接種を優先することで、全体の死亡率は最大2割低下 すべてのシミュレーションにおいて、標準接種vs.2回目遅延接種の10万人当たりの累積死亡率中央値は、1回目接種の有効性が90%の場合226 vs.179、同80%の場合233 vs.207、同70%の場合235 vs.236であった。 2回目遅延接種戦略は、ワクチンの有効率が80%以上、1日当たりのワクチン接種率が人口の0.3%以下の場合に最適となり、絶対累積死亡率が10万人当たり26~47減少することが示された。65歳未満の人々に対する2回目遅延接種戦略は、検討したすべてのワクチン接種率において一貫して良好な結果であった。

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モデルナ製ワクチンの副反応、ファイザー製との違いは?/JAMA

 モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273)が日本でも特例承認され、大規模接種会場を中心に接種が始まる。商品名はCOVID-19ワクチンモデルナ筋注。既存株に対するワクチン有効率は約94%*でファイザー社ワクチン(BNT162b2mRNA、有効率:95%)とほぼ同等だが、副反応疑い症状の発症率についてはどうだろうかー。 今回、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19レスポンスチームに所属するJohanna Chapin-Bardales氏らは、「BNT162b2mRNA」と「mRNA-1273」の接種者からの局所的・全身性の症状に関する報告の詳細を明らかにした。 その結果、両ワクチンともに接種部位の痛み、倦怠感、頭痛が多かった。また、いずれも副反応報告は2回目接種後のほうが多く、とくにmRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAと比べ、悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)、接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)を多く報告していた。JAMA誌2021年4月5日号オンライン版に掲載の報告。 この報告は、2020年12月14日~2021年2月28日の期間、v-safe**登録者が各ワクチン接種後0~7日目にv-safeへ自己申告した局所的および全身性の症状を収集したもの。2021年2月21日までに4,600万人以上が新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンを1回以上接種し、計364万3,918例がv-safeに登録されていた。登録者は1回目のワクチン接種後7日以内に1回以上の毎日の健康調査を完了し、そのうち192万872例は2回目のワクチン接種も受け、接種後7日以内に1回以上の健康調査を完了した。 主な結果は以下のとおり。・BNT162b2mRNAワクチンは1回目に165万9,724例、2回目に97万1,375例が接種し、mRNA-1273ワクチンは1回目に198万4,194例、2回目に94万9,497例が接種した。・v-safe登録者のほとんどは、ワクチン接種後0〜7日目に局所的な症状(接種1回目:70.0%、接種2回目:75.2%)または全身性の症状(同:50.0%、同:69.4%)を報告した。・両ワクチンの報告を合算した場合、1回目の接種後に最も報告されたのは、接種部位の疼痛(67.8%)、倦怠感(30.9%)、頭痛(25.9%)、および筋肉痛(19.4%)だった。・両ワクチンともに、2回目接種後に増えた報告は、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛だった。・mRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAワクチンと比較して、反応原性の割合が高いと報告され、2回目接種でその差は顕著に現れた[悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)]。・65歳以上の登録者は局所反応、全身性の反応いずれにおいてもあまり報告していなかった。・v-safe登録者による症状発現の報告割合は、ワクチン接種後1日目で最も高く、7日目までに著しく減少した。 研究者らは「いずれのワクチンにも局所反応および全身性の反応が予想され、大半は一過性のものだが、それらの経験が被接種者の認識に最も直接的な影響を与える可能性がある。そのため、臨床医はワクチン被接種者に具体的な副反応症状を伝えるとともに、副反応症状がとくに2回目接種当日~翌日に出現しやすいこと、また、症状は短期間で解消することを助言する必要がある」とも結論づけている。* 感染歴がない被験者では94.1%、感染歴を問わない被験者では93.6%1)** v-safeとは、 CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。患者説明用スライドはこちら『ファイザー社とモデルナ社のワクチン副反応比較』

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第58回 防衛省の逆ギレは誰のため?ワクチン接種センターの予約システム不備の件

高齢者に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)のワクチン優先接種が本格化している。1日100万回接種で7月末までに高齢者への接種を完了させると菅 義偉首相が宣言したこともあり、防衛省が運営する大規模接種センターも東京、大阪に設置されることになった。ところが、その大規模接種センターの予約システムが穴だらけということが朝日新聞出版の雑誌「AERA」のwebニュースサイト「AERA.dot」で報じられ、その取材手法を巡って岸 信夫防衛大臣と報じたメディア側とのつばぜり合いがまた報じられるという泥仕合になっている。同じような検証は毎日新聞、日経XTECHも報じている。まず、予約システムでは、ホームページにアクセスした後、対象の高齢者に送付されている接種券に記載の市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)、接種希望者の生年月日を入力後、接種希望日時を選ぶ画面で空きがある日時を予約する。報道によると、この市町村コード、接種券番号、生年月日を架空の数字を入力しても予約が成立するという。この問題が報じられると岸大臣はTwitter上で次のようにつぶやいた。「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」さてこの件、医療従事者の方々の中では「メディアはけしからん!」という声も少なくないと聞く。私の見解を言うと、ポジショントークと言われてしまいかねないが、ほぼ問題ないと思っている。もし私自身が同じような情報を得たら同じように入力して検証し、その通りならば報道したと思う。AERA.dotの記事を読めば分かるが、今回の記事の発端は防衛省関係者からの内部告発、つまり内部で今回の問題に懸念を持った人がいたということだ。私も報道の世界に27年いて思うことだが、内部告発が行われる場合、大概は内部での意見具申が無視される、あるいは告発者がしがらみなどで意見具申がしにくい立場にあるなどの事情からやむにやまれず外部を頼ってくる場合がほとんどである。「そもそも内部告発者が愉快犯や怨恨で情報提供している可能性もあるだろう」と言う指摘もある。その可能性は常にある。ただ、さすがにわれわれも馬鹿ではない。例え短時間であっても情報提供者のバックグラウンドは可能な限りチェックする。さらに怨恨のケースは提供してくる情報につじつまが合わないことも多く、裏取りの過程でもおのずとその辺の状況は明らかになる。また、多少怨恨が背後にあったとしても、提供された情報で明らかになった問題点が多くの人に不利益をもたらす可能性が高いならば、それは慎重に裏取りをしたうえで報じることになる。さて話を今回の一件に戻そう。まず架空の予約を入れたことは問題なのか? 少なくともほかの手段で事実検証が代替できなければ、この手法は選択肢の1つである。ただ、それを実行するか否かのカギを握るのは、予約キャンセルの可否である。キャンセルが可能であるならば、システムや現場に与える負荷はほぼ無視できるので、入力による検証作業が岸大臣の言うところの「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」には当たらないと考える。また、この件で「わざわざ予約をしてなくとも、防衛省やシステム開発会社に情報提供者の言うことの真偽を問い合わせすれば代替できるではないか」という意見もあるかもしれない。この意見は一見すると論理的に聞こえるものの、実は物事の本質を見失う可能性がある。そもそも内部にシステムの脆弱性を認識した人がいながら、このシステムがリリースされてしまう組織体制が本質的に問題なのである。その組織に対してこちらが検証結果も持たずに取材をかければ相手側は不適切な隠ぺいに走る恐れがある。ちなみに、この報道について防衛省に抗議された朝日新聞出版の見解が公開されている。これを読むと、検証の上で防衛省に見解を問い合わせたものの回答はなかった旨が記載されている。防衛省はこの段階で事実を公表し、システムを一時停止するなどの措置が取れたはずである。経験上、こうした反応の場合は決定的な証拠を提示しない限り、隠ぺいが行われる可能性がある。にもかかわらず上述の岸大臣のツイートである。このツイートは直訳すれば、「お前らは気にくわない」の逆ギレに過ぎない。ちなみにこのシステムの穴に関して岸大臣はこのようなツイートもしている。「本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました」さてこれは個人情報に関してはそうかもしれない。しかし、6桁の市町村コードすら適当な数字の入力でよかったことの言い訳としては苦しい。そして事の真相についてはこんな記事も出ている。結局のところ非常に大雑把で掛け声だけの「1日100万回接種」の無理がたたったということである。そして今回の報道、まさに大規模接種のスタート前で本当に良かったと思う。一部にはワクチン接種前の関係者の努力に水を差したという指摘もあるが、もしこれが本格的にスタートしてから実際に悪意を持った入力が大量に行われていたらどうなるのか? そちらのほうが想像するだけでぞっとする。幸いにして大規模接種会場で使うモデルナのワクチンは、ファイザーのコミナティと違って解凍から有効期間が30日あるので、ニセの予約を大量に入れられても大量廃棄に至る可能性は低いだろう。しかし、虚偽予約があれば現場のマンパワーはかなり疲弊する。いずれにせよ今回は不幸中の幸いだったというべきだ。それでも中には防衛省とのやり取りも含め全部修正が済んでから報道すればという御仁もいるかもしれない。しかし、それは「万引きした人はモノを基に戻すか、お金を払えば無罪」という論理と同じだ。さて、そうはいってもちょっとだけAERA.dotには物申したいところがある。上述の記事を読めばわかるが、この記事ではこの穴だらけのシステムの運営会社の経営顧問が菅首相の盟友で、自民党の小泉 純一郎政権時の特命大臣を務めた竹中 平蔵氏であることに言及している。まあ、私もメディアの側にいるのでこの手の補足情報の記述に理解を示さないわけではないが、なくても良い情報かとも思う。この辺で「色」がついて、逆に変に嫌味っぽく受け取られかねないのだ。まあ、もっとも今回の報道で指摘されたことは事実無根のことではないことや、岸大臣があくまで権力者という前提に立てば大臣のツイートのほうがはるかに大人げない。そしてそのツイートをわざわざ引用して次のようにツイートしたのが、岸大臣の実兄・安倍 晋三元首相である。「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」日本歴代最長政権を司った元首相のツイートとしてはかなり粗雑で品性に欠けると私には映ってしまうのだが。まあ、遡って考えればご両人のツイートも、安倍元首相の政治姿勢に厳しい目を向け続けた、朝日新聞、毎日新聞への恨み節がにじんで見えるといううがった見方も成り立つかもしれない。もちろんこうした見方はある種、私個人のバイアスともいえる。ただ、同時にこの一件に関して「メディアはけしからん」と思った方は、実はメディアの好き嫌いというバイアスが混入している可能性はある。というのも両社ともメディアとしては一般人から好き嫌いが分かれやすいからである。もちろんそのスタンスは自由だが、この件で「メディアはけしからん」と公言するならば、「朝日、毎日はけしからん」のバイアスが混じってないか否かはご自身で検証してみる必要はあるだろう。

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ファイザー製ワクチン、感染報告率の低下は接種後何日から?/感染研

 ファイザー製の新型コロナワクチンBNT162b2は、国内では2021年2月14日に薬事承認され、2月17日から医療従事者を対象とした先行接種が開始となった。国立感染症研究所は、先のワクチンの臨床的効果を迅速に評価するため、既存のサーベイランスデータを用いた仮想コホートを構成し、1回目接種後のCOVID-19報告率の変化を検討した(追跡期間は2021年4月30日まで)。その結果、報告率は1回目接種日から12日前後を境に低下する傾向がみられ、接種後0~13日の報告率と比較すると、14~20日で0.42倍、21~27日で0.39倍、28日以降で0.14倍であった。イスラエルで行われた先行研究では、1回目接種後から2回目接種までの期間のCOVID-19報告の抑制効果(VE)は46~60%と報告されており、本結果はそれと同等である可能性があるという。 本研究では、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)のデータを用いて分析を行った。V-SYSのワクチン接種実績記録からワクチン被接種者の仮想コホートを構成し、HER-SYSのワクチン接種歴が記録されたCOVID-19患者のデータを、1回目のワクチン接種日と都道府県に基づいて突合した。 解析対象は、医療従事者への先行接種が開始された2021年2月17日から高齢者への接種開始前の4月11日までの期間に、新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者とした。主要評価項目は、報告されたCOVID-19症例の診断日で、副次評価項目は報告時有症状例の診断日と報告時無症状例の診断日。 主な結果は以下の通り。・観察期間中、医療従事者110万1,698人に対し1回目の新型コロナワクチン接種が実施され、このうち4月30日時点で2回目の接種終了者は104万2,998人(94.7%)だった。・4月30日までにHER-SYSに登録され、少なくとも1回のワクチン接種歴が記録されているCOVID-19症例は282例だった。・発症日がワクチン接種前だった1例を除く281例中、ワクチン接種後28日以内に診断された症例は256例(91.1%)だった。症例は、女性および20~40歳代が約7割を占めていた。・2回目の接種後に診断された症例は全体の16.7%で、このうち報告時無症状例が占める割合は40.7%、1回目接種後に診断された症例に占める報告時無症状例の割合(20.0%)より高い傾向にあった。・COVID-19報告率は、接種後0~13日が1.26/10万人日、14~20日が0.53/10万人日、21~27日が0.49 /10万人日、28日以降が0.18/10万人日だった。・接種後0~13日の報告率と比較した報告率比は、14~20日が0.42倍(95%CI:0.30~0.59)、21~27日が0.39倍(95%CI:0.27~0.56)、28日以降が0.14倍(95%CI:0.09~0.21)だった。報告時有症状例に比べ、報告時無症状例の報告率は全期間において低かった。

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Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。南アフリカでHIV陽性/陰性の6,324例を対象にNVX-CoV2373ワクチンを評価 研究グループは、18~84歳のHIV陰性成人、および18~64歳の医学的に安定しているHIV陽性者を、NVX-CoV2373ワクチン(組み換えスパイクタンパク質5μg+Matrix-M1アジュバント50μg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ2回接種した。接種するスタッフのみ割り付けを知っており、他の研究スタッフおよび参加者は盲検化されていた。 主要評価項目は、安全性、ならびにベースラインSARS-CoV-2血清陰性者における2回目接種後7日以上経過時点の検査で確認された症候性COVID-19発症に関する有効性とした。 6,324例がスクリーニングを受け、このうち4,387例が少なくとも1回の接種を受けた(ワクチン群2,199例、プラセボ群2,188例)。平均年齢は32.0歳で、65歳以上の高齢者は4.2%、男性が57%であった。また、抗スパイクIgG抗体の評価により、ベースラインで30.2%がSARS-CoV-2血清陽性であった。ワクチンの有効率は全体で約50%、HIV陰性者で60% 2回の接種を受けベースラインで血清陰性であった有効性解析対象集団(per-protocol集団)は2,684例(HIV陰性94%、HIV陽性6%)で、ワクチン群1,357例中15例、プラセボ群1,327例中29例において軽症~中等症のCOVID-19が発症した。 全体でのワクチン有効率は49.4%(95%信頼区間[CI]:6.1~72.8)、HIV陰性者におけるワクチン有効率は60.1%(95%CI:19.9~80.1)であった。 COVID-19を発症した44例のうち全ゲノムシークエンス解析が可能であった41例において、38例(92.7%)でB.1.351変異が確認された。B.1.351に対するワクチンの有効性(事後解析)は、HIV陰性者(ワクチン群11例、プラセボ群22例)において51.0%(95%CI:-0.6~76.2)であった。 初期の局所/全身の反応原性イベントは、ワクチン群で高頻度であったが、重篤な有害事象は両群においてまれであった。

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YouTube中毒を克服する【Dr. 中島の 新・徒然草】(375)

三百七十五の段 YouTube中毒を克服する5月半ばにして梅雨入りしてしまいました。雨さえ降っていなければ涼しく過ごしやすい天気です。降ったら降ったで人流が減り、コロナ対策になりますね。大阪のコロナ新規感染者数も、ついにピークアウトした感があります。7日間平均の最大は4月20日の1,150人でしたが、5月18日には641人にまで減りました。緊急事態宣言下とはいえ人も車も多く、いつもの風景にしか見えません。しかし、数字が改善しているので緊急事態宣言にも効果があったと思われます。今回の宣言に効果のあった理由は何でしょうか?人々を3つのグループに分けると考えやすいと思います。第1のグループは緊急事態宣言の有無にかかわらず、常に自粛している人たち。医療従事者なんかは大部分がこのグループですね。コロナの恐ろしさを目の当たりにしつつ、自宅と職場の往復で毎日が過ぎていきます。第2のグループは緊急事態宣言によって行動の変わる人。多くの一般の方がこのグループではないでしょうか。そして第3のグループは緊急事態宣言を無視して濃厚接触を繰り返している人。酒を飲んで大騒ぎしたり、カラオケしたり。この人たちの行動は目立ちますが、数としては少ないのだと思います。で、コロナを抑え込むためには、大多数を占める第2グループの行動が鍵になります。つまり、緊急事態宣言があれば自粛するが、なければ自粛しない人たち。この人たちが常時慎重な行動をすれば、徐々にコロナの新規感染者数が減るはずです。そうすれば都道府県がわざわざ飲食業に自粛要請する必要もありません。皆が1人で行って、1人で静かに食べる。単にそれだけのことです。アルコールを飲みたければ家で飲む。何も難しいことはありません。そうやって時間稼ぎをしている間にワクチンが行き渡れば、自然にコロナは収束するはず。簡単なことだと思うのですが……。ところでタイトルにした YouTube の話。何回も述べていますが、私は2015年の春から自宅にテレビがありません。なので、リオ五輪も平昌五輪も知らない間に終わってしまいました。平昌なんか、いまだにヒラマサと呼びそうになります。ピョンチャンですよね、確か。テレビがなければ時間が沢山できるはずでした。ところがそこに現れたのが YouTube。好きなチャンネルをいつでも何度でも見ることができます。中毒性が高く、考えようによってはテレビより危険。休みの日なんか、気がつけば動物ビデオをずっと見てしまいます。ハイエナとライオンの戦いとか、チーターの子育てとか。一体、人生の何の役に立つのか?自分で自分にツッコミを入れずにはおれません。こりゃ駄目だ!というわけで YouTube を長時間見ない方策を考えました。まずは YouTube の危険性を認識する次に YouTube に代わるものを探すそして心穏やかな毎日を過ごすこれらの中で一番大切なのは YouTube の代替物を探すことですね。今、試しているのはキンドル(電子出版)の英語小説。決して難しい小説を読むわけではありません。700語以内とか1,000語以内とか、限られた語彙で書かれた平易な英語小説です。色々なシリーズがありますが、私は Oxford Bookworms Library を読み始めました。易しいほうから、Starter、Stage 1……と続いて、Stage 6 まで全部で7段階。まずは Stage 2 の "Dead Man's Island" を読んでみました。英検では準2級~2級相当とされています。小さな島に住む大金持ちの男性の話ですが、これがなかなか面白い。辞書をひくことなく最後まで読めました。難しい単語を使わずにここまで表現できるのか、と感心させられます。次に Stage 3 の "Skyjack!"搭乗していた飛行機が過激派に乗っ取られる話です。英検では2級相当ですが、これも辞書要らず。2~3語ほど「ん?」と思った単語はありますが、文脈から容易に意味を推測できました。ストーリーも手に汗を握るものでお勧めです。そして Stage 4(英検2級~準1級相当)の "The Thirty-Nine Steps"国家間の戦争を仕掛けようと暗躍する人たちの話です。まだ途中ですが、辞書を使ったのは1回か2回、読むのに苦労はありません。Bookworms のシリーズは、イギリスを中心にヨーロッパを舞台とした小説が多いようです。登場人物が容赦なく殺されてしまうのがイギリスらしさかも。さて、英語小説を読むことのいいところは、罪悪感のなさです。知らないうちに何時間も経っていたとしても、何ら恥じることはありません。むしろ、「英語の小説に夢中になる俺、スゲエ!」と思ってしまうくらいです。また、寝るときにスマホで読もうとすると3分以内に眠りにつけます。これ以上の睡眠薬は、この世に存在しないでしょう。というわけで英語小説を使って YouTube 中毒からの脱出を図っております。なんか読書に夢中だった子供時代を思い出してしまいました。もし YouTube に毒されている読者がおられましたら、是非やってみてください。最後に1句ユーチューブ はまるな危険 距離を置け

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第58回 世界との比較で見えてきた日本のコロナ対策の課題と対応

新型コロナウイルス感染症を巡っては、検査やワクチン接種が遅々として進まず、治療においても病床数が不足している日本。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が4月24日、「これまでのコロナ対策を問う」と題した講演会において問題点の指摘と提言を行った。以下、講演の概要を紹介する。季節性の“風邪コロナ”の動向にも注視を緊急事態宣言後の新規感染者数の増加に対し、「リバウンド」という言い方がされるが、世界で感染者数が増加しているということは、日本固有以外の理由がある。それは変異株の拡大と季節性の変動の影響だ。前者については改めて説明の必要はないが、後者については新型コロナ流行を予測する上で重要だ。コロナは元々、風邪のウイルスで、新型コロナが流行する以前から4種のウイルスが世界で流行を繰り返してきた。このような“風邪コロナ”は夏と冬の年2回流行することから、新型コロナも夏に流行する可能性がある。しかし日本の場合、現在の状況では今夏はおろか、今冬であっても国民の大半がワクチン接種を完遂するのは無理だろう。G7の中では、英国と米国において感染者数が激減している。英国については、昨夏の日本の第2波までは、感染者数の急増により「世界の負け組」と呼ばれたが、年末年始頃から減少に転じた。また、米国は死亡者数の急増から第2次世界大戦末の様相とまで言われた。両国はなぜ感染者数の減少に成功したのか、そしてその他の欧州諸国がなぜうまくいっていないのかを分析すべきだ。ワクチン接種数5割超で集団免疫を獲得日本に関しては、やり方次第で緊急事態宣言は必要なかったと考える。各国の人口10万人当たりのワクチン接種率(4月13日現在、1回目接種)のデータによると、英米両国の接種率は約6割。対する日本は1.3%。英米の感染者数の減少傾向を見ると、集団免疫を獲得していることがうかがえる。このことが示すのは、接種率が5割を超えれば感染者数を抑えられるということだ。ただし、速やかな接種でなければいけない。ちなみに、接種率1位はチリで約65%。しかし、同国の感染者数は急増した。ワクチンの主な購入先は中国のメーカーだ。中国製は不活化ワクチンで、有効性は5〜7割。これに対し、米国のファイザー製やモデルナ製はmRNAワクチンで、有効性は約9割だ。後者は世界初のワクチンで、接種後何が起きるかわからないからと、当初は中国製ワクチンが求められていたが、チリの状況が明らかになってから潮目が変わった。菅 義偉首相が4月、5,000万回分のワクチンの追加供給をファイザーと合意した頃、中国は1億回分を輸入した。習 近平・国家主席は自国のワクチンを危ないと思ったのか。一方、ファイザー製は短期的な有効性や安全性が明らかになりつつある。「特例承認」制度を早期に生かせなかった日本日本の接種率が低い理由に、接種開始の遅れがある。主要先進国では昨年12月に始まったが、日本は今年2月からだ。田村 憲久・厚生労働大臣は、安全性チェックのため治験が必要だと言ったが、ファイザー製ワクチンの治験にヨーロッパで参加した国はドイツのみで、多くが自国での治験にこだわらなかった。形だけのブリッジ試験を実行した日本とは危機意識が違うと言えよう。日本は緊急事態と言っても平時の対応だ。医薬品医療機器等法に基づく特例承認という制度があって、治験せずとも承認できるのに、政治判断をしなかった。問題を指摘された菅首相の答弁は、「法改正が必要」との苦しい説明だった。ワクチンを確保したら、あとは打つだけ。欧米では医学生や看護学生、軍人でも接種できる。日本も規制を緩和して打ち手を増やさなければいけない。日本は経済的に大きなダメージを受けている。2020年のGDPは、前年比で-5.1ポイント、アジア圏域では中ぐらいだが、東アジアの中では最下位だ。一方、ヨーロッパで感染対策を緩めたスウェーデンでは、ロックダウン措置をしなかった結果、死亡者数が増えた。2020年のGDPは前年比‐4.2ポイント。高齢者層の経済活動自粛などが要因として考えられる。国際標準とは真逆の日本の対応策日本のコロナ施策における最大の問題点は、PCR検査を抑制したことだ。G20における10万人当たりのPCR検査数(2020年12月9日前後の数字)を見ると、トップは米国で約6万5,000件。翻って、日本は14位で5,000件以下だ。世界のコロナ対策が大きく動いたのは、昨年8月。リードした米国では、新学期が始まるタイミングだった。学校では対面でないと教育効率が下がったり、教員の雇用に影響したりする。週2回の検査により陽性者が早期に発見できるという研究結果を根拠に、実行することにした。日本も東京五輪・パラリンピックの選手や関係者は週2回検査(その後、毎日に変更)するというが、子ども達に週2回検査しようとはしない。ダブルスタンダードになっている。OECD加盟国と中国の10万人当たりのCOVID-19関係論文数(2020年12月28日現在)を見ると、トップはスイスで、日本は34位。「イソジンでうがいをすれば感染を防げる」「PCR検査を増やせば医療が崩壊する」「マスク会食をしましょう」などという言説が行政トップから発せられるのが日本なのだ。実際は逆で、検査をして陰性の人はマスクを外して外食しましょう、これが国際標準であるということは明白だ。大学病院での受け入れ増に必要な感染症改正欧米と比べて患者数が少ない日本で医療が逼迫するのは、コロナ感染者の受け入れ病床数が少ないからだが、とくに問題なのは、大学病院が少数の感染者しか受け入れられない点だ。それはコロナが感染症法に規定されている法定感染症で、受け入れ病院として大学病院は認定されていないからだ。言うまでもなく、コロナは「総力戦」。科学的かつ合理的でなければならない。

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無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。接種完了を、2回目接種後7日超と定義 研究グループは、2020年12月20日~2021年2月25日に、テルアビブの3次医療センターに勤務する医療従事者について行われた鼻咽頭スワブによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果から、症候性および無症候性SARS-CoV-2感染者に関するデータを集めて分析した。ロジスティック回帰法にて、ワクチン接種完了群と非接種群の感染を、発生率比(IRR)を求めて比較した。被験者の居住地やPCR検査回数によって補正を行った。 ワクチン接種歴は、職場の健康データベースから入手し、接種完了は2回目接種後7日超が経過していることと定義した。 主要アウトカムは、ワクチン接種完了群vs.非接種群の症候性および無症候性SARS-CoV-2に関する補正後IRRであった。副次評価項目は、ワクチン1回接種群(1回目接種後7~28日)に関するIRR、ワクチン接種完了21日超群に関するIRRなどだった。無症候性SARS-CoV-2、ワクチン接種完了群で86%減 被験者の医療従事者は6,710例で、平均年齢は44.3(SD 12.5)歳、女性は4,465例(66.5%)だった。追跡期間の中央値は63日で、BNT162b2ワクチンの1回以上接種者は5,953例(88.7%)、2回接種者は5,517例(82.2%)、非接種者は757例(11.3%)だった。ワクチン接種者はより高年齢(平均年齢:接種者44.8歳、非接種者40.7歳)で、男性の割合が高かった(それぞれ、31.4%、17.7%)。 症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群8例、非接種群38例で発生した。感染の発生率はそれぞれ、4.7件/10万人日、149.8件/10万人日で、補正後IRRは0.03(95%信頼区間[CI]:0.01~0.06)だった。また、無症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群19例、非接種群17例で、それぞれ発生率は11.3件/10万人日、67.0件/10万人日、補正後IRRは0.14(95%CI:0.07~0.31)だった。 傾向スコア感度分析を行っても、結果に質的変化はなかった。

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ワクチン接種にまつわるさまざまな疑問【コロナ時代の認知症診療】第3回

副作用と副反応、改めて知るそのちがい医療関係者として私は4月の中旬に、2回目のコロナワクチン予防接種を終えた。注射の痛みはこれまでの注射経験の中で最も痛くないものであった。けれども2回とも翌日、注射の刺入点付近を中心に腫れぼったさを自覚した。また2回目は発熱こそなかったものの、翌日はけだるさが続き頭の回転も冴えなかった。「若い人なら3分の2の人に37.5度以上の発熱があるが、高齢になるほどさほどでもない」と言われる典型例だったのだろう。ところでこのような症状は普通なら副作用と言われるはずなのに、どうしてワクチン接種では副反応と呼ばれるのかを注射の後で知った。ワクチンによる健康被害の多くは、免疫反応そのものによって起きるから、こう呼ばれるのだそうだ。インフルワクチンも未経験の高齢者が意外に多い世界の先進国におけるワクチン接種率が日本はとても低いという声がある。一般国民はもとより5月1日時点の新聞記事によると医療関係者における2回目の接種終了率はまだ2割ほどに過ぎないとの報告もある。こうした中で、私の外来でも接種に関する質問がかなり出てきた。ポイントは、まず接種せねばならないものかという質問。次にどんな人はやってはいけないかという質問である。さらにイギリス型など新型コロナウイルスの変異株にもこのワクチンは効くのかという質問もある。とくに最初の問いは多いので、「インフルエンザ予防注射は打っていますか?」と尋ねると、したことはないと答える人が結構多い。そこで高齢者におけるインフルエンザ予防接種の摂取率を調べてみた。その結果、4~7割とする厚労省による報告1)を知り、その少なさに驚いた。ワクチンによる「集団免疫」への希望の声がある。もちろん多くの人は自分がかかりたくないから接種するのである。一方で人口の3分の2が免疫を獲得すれば、パンデミックを食い止め地域社会や国全体を守れるという「集団免疫」の考えがある。その信憑性を疑う声もあるが、これを実現するにはインフルエンザの予防接種でいうところの、これまでの最高くらいの接種率が必要である。けれどもこれは容易ではないだろう。私の知る範囲では、恐らく接種しないだろうと思われる人が少なくない。科学的判断というよりもむしろ本人の信念による気がする。次に接種の絶対禁忌は、各医師会がガイドラインを市民向けに示している:(1)1回目の新型コロナワクチン接種でアナフィラキシーなど重度のアレルギー反応がでた方(2)本ワクチンの成分であるポリエチレングリコール(PEG)にアレルギーのある方である。なおよくありそうな、接種当日37.5℃以上の発熱がある方については、「今は接種できないが、タイミングをずらせば接種可能」とされている。投げかけられるさまざまな疑問にどう答える?次に変異株に対する効果も含めてどれくらい有効だろうか? まず「そもそも変異とは何か?」。これは今の時代、いまさら聞けない質問かもしれない。「ウイルスの遺伝子コピーの写し間違えで、元とは違ったタンパク質からなる生物ができること」と答えても難しいだろう。そこでウイルスのもとになる遺伝子における「伝達ゲーム」のようなものだと言っている。つまりどんどん間違いが広がっていって最初の話とは全く別の話が出来上がるようなものという説明である。さてどこまで効くかだが、これまでの生ワクチンなどと違って、今度のRNAワクチンには、効果が期待されるようだ。インフルエンザのように毎年変異し、全く生物学的に異なるものであれば確かに効果は期待しにくいだろう。そうではなくコロナの場合、新型コロナウイルスの中での変異なので、期待できるのではないかと考えられている。筆者自身は変異株が今では大多数のイギリスにおける疫学的結果が最も大切かと思う。ヨーロッパでワクチン接種率が最も高いイギリスでは、4月30日の段階で、1度でもワクチンを接種した人の割合は約50%だ。1日あたりの感染者は、1月には約6万8,000人だったものが、3ヵ月後には2,000人程度まで急激に減少した2)。まさに集団免疫による効果が出つつあるのだろう。なお、予防接種の持続効果については、少なくとも半年間はあると言われる。つまり半年間くらいは、抗体が血液中に存在するとされるが、それ以上にもつか否かについてまだエビデンスはないようだ。このような多くの質問が臨床の場ではしばしば投げかけられる。筆者自身はNew England Journal of MedicineのFrequently Asked Questionsにあるコロナワクチンに関する特集3)が信頼できると感じている。参考文献・参考情報1)厚生労働省「2020/21シーズンのインフルエンザワクチンの供給について」2)ワクチン接種50%のイギリス 感染が激減3)NEJM — Covid-19 Vaccine Frequently Asked Questions (FAQ)

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第58回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる?“家庭医構想”というパンドラの匣(前編)

2日連続の社説で“大胆”な提言を行った日経新聞こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週の個人的なビッグニュースは大谷 翔平投手の13号ホームラン、ではなく、MLBのタンパベイ・レイズをクビになった筒香 嘉智選手を、ロサンゼルス・ドジャースが5月15日(現地時間)に獲得したことです(同じくロサンゼルス・エンジェルスをクビになったアルバート・プホルズ選手も獲得)。レイズは5月11日、筒香選手がメジャー出場の前提となるロースター40人枠から外し、戦力外としていました。2年契約最終年の今季は26試合出場し、打率.167、0本塁打、5打点と打撃が振るわなかったことが原因とされています。最近はほぼ代打要員で、ベンチの隅っこにおとなしく座っている姿が印象に残っています。米紙などは「(レイズが筒香と契約したのは)前例のないほどの大失敗」「今後、日本の球団に所属する日本人野手のポスティング移籍に悪影響を及ぼす」と酷評。日本のネット上でも、「投手の球速がパ・リーグより遅いセ・リーグにいて、かつ狭い横浜球場でしかホームランを量産できなかった筒香が活躍できるわけがなかった」などと、厳しい意見が飛んでいました。3Aで鍛え直すか、日本に戻って来るか、その動向が注目されていましたが、なんとドジャースがトレードで獲得するとは…。故障者が復帰するまでのつなぎとの話もありますが、他球団でクビになった2選手を、昨年世界一のドジャースがどう使っていくのか注目されます。さて、北海道、岡山、広島の3道県にも、16日から今月31日までの期間、緊急事態宣言が発出されました。「まん延防止等重点措置」については群馬、石川、熊本の3県が追加されました。北海道、岡山、広島については、政府の諮問案になかったものを、専門家でつくる分科会でより強い措置が必要だという意見が相次ぎ変更された、とのことです。ワクチン接種も各地でドタバタが続き、医療提供体制の逼迫も深刻さを増しています。今回は、少し古い話になりますが、そんな日本の医療提供体制に対し、5月の連休中、社説を2日も連続して使って“大胆”な提言を行った日本経済新聞の報道と、その中で取り上げられた「家庭医」について書いてみたいと思います。「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限せよ」日本経済新聞は、5月4日、5日と連続で、「医療提供体制を問い直す」という社説を掲載しました。通常、社説は1日2テーマないし1テーマで、連続して同じテーマが掲載されることはありません。ゴールデンウィークで話題がなかったという事情もあるとは思いますが、極めて異例なことです。同紙は5月1日、2日の朝刊でも、「コロナ医療の病巣 機能不全の実相」という連載記事を掲載、コロナを診療拒否する医療機関の現状や、非常時における民間病院の「経営の自由」の問題点を指摘しています。社説はその総まとめ、という位置づけのように感じました。社説の内容は、ある筋の人が読めば相当カチンと来るだろう“刺激的”なものでした。5月4日の社説「医療体制を問い直す(上) 非常時の病床確保に強力な措置を」では、「新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療提供体制のもろさを浮き彫りにした」として、「今後の人口減少社会で医療の質を維持するためにも、日本の医療体制に早急にメスを入れる必要がある」と提言、「小規模に分散した医療資源でコロナ病床を増やすには、医療機関の役割分担を徹底するしかない」と、日経がこれまで主張してきた論を改めて強く主張しています。その上で、大規模病院、中規模以下病院、療養型病院や高齢者施設の役割を明示、「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべき」として、経営を医療機関の自由に任せている現状は「非常事態に対応できない致命的な欠陥」と断じています。「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ続く5月5日の社説「医療体制を問い直す(下) 初期診療をこなす家庭医を増やせ」では、その矛先は診療所の開業医(つまり日本医師会)にも向けられました。「世界に冠たる」と言われて来た国民皆保険が「幻想にすぎなかった現実をあぶり出したのがコロナ禍である」、「人口あたりの病床数は格段に多いにもかかわらず、治療体制のゆき詰まりが露見した」と厳しく批判。その上で、「医療の主役である患者第一を貫きつつ、効果が高くコストが低い医療体制に向けた再構築のカギを握るのは、欧州などで一般化している家庭医制度の普及である」と主張、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」制度が大病院志向を生む要因にもなっているとして、「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ、と論じています。さらに「患者はGPと呼ばれる資格を持つ家庭医に登録し、病院ではなく登録GPにかかるのを基本とする」 という英国のNHS(National Hearth Service)の家庭医制度を紹介。「日本は一般に、開業医に比べ勤務医の労働環境が過酷」として、「働き方改革を推し進めるためにも大学医学部は家庭医養成を急いでほしい」としています。日本医師会ではタブーだった「家庭医」私自身は日経のこの社説、全体として正論だと思いました。実際、コロナ対応に積極的でない民間病院の存在や、コロナ診療における診療開業医の存在感のなさは、これまで医療提供体制に疎かった一般の人ですら認識、批判するまでになっています。それにしても、「医療機関の経営の自由制限」「フリーアクセスの問題点指摘」「家庭医制度の普及」と、日本医師会がカチン(一昔前なら激怒)と来そうなキーワードをわざわざ用いて、日本の医療提供体制に大胆に“物申し”た姿勢はあっぱれと言えるでしょう。私がとくに驚いたのは「家庭医」という言葉を使っていたことです。「家庭医」は、日本医師会にとって40年近くもタブーとされてきた言葉です。総合医、総合診療医、あるいはかかりつけ医という差し障りのない言葉ではなく、「家庭医」という言葉を敢えて使っていたとしたら、それは相当挑戦的、かつ挑発的なことです。患者登録制と人頭払いを嫌った日本医師会「家庭医」は、日本医師会の中では使ってはいけないタブーの言葉となった原因は、今から36年も前に繰り広げられた「家庭医論争」にあります。1985年から87年にかけて、地域の診療所開業医の新しい機能・役割として家庭医の制度化が議論され、「家庭医論争」が巻き起こりました。厚生省(当時)は「家庭医懇談会小委員会」を設け、地域における家庭医の必要性、家庭医療学確立の重要性などが議論されました。しかし、日本医師会は「家庭医の制度化は開業医療に対する国家統制だ」という論陣を張り猛反対、最終的に制度化は見送られ、家庭医構想そのものも葬り去られました。この時も、NHSの家庭医(GP)制度が一つのモデルとして紹介されました。しかし、GPは患者登録制で報酬体系も人頭払い主体であったため、「フリーアクセス」「自由開業」「出来高払い」を金科玉条のごとく堅持することで存在意義を保ってきた日本医師会の逆鱗に触れたわけです。以降、「家庭医」という言葉を、日本医師会の幹部が建設的な意味合いで使うことはなくなりました。2018年から新しい専門医制度において総合診療専門医が位置づけられましたが、その議論の過程でも「家庭医」という言葉はほとんど使われていません。「出席した人は全取っ替えしないとダメです」と長嶋氏が、しかし、新型コロナ感染症の感染拡大によって、「フリーアクセス」や「自由開業」、そして日経新聞の言う「自由な経営」が、非常時における効率的な医療提供体制の構築に大きな足かせになっていることが明白になってきました。さらに、日本医師会が推し進めてきた「かかりつけ医」(第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界を参照)も、このコロナ禍でたいした機能を発揮していないことは誰の眼にも明らかです。病院の機能再編に加え、「家庭医」や「かかりつけ医」の再定義や制度化は、正真正銘待ったなしの状況になってきたと言えるでしょう。そんな中、ここに来て、家庭医、かかりつけ医の制度化を改めて進めようという動きが出てきました。財政制度等審議会・財政制度分科会や経済財政諮問会議などでの提言・議論がそれです。折しも、政治資金パーティ出席で日本医師会の中川 俊男会長は国民の信頼を大きく損ない、「出席した人は全取っ替えしないとダメです。今後この人の言うことを聞きますか?」(5月16日に放映されたフジテレビ系の情報番組「ワイドナショー」でのタレントの長嶋 一茂氏の発言)という声すら出ています。パーティがあった翌日(4月21日)、中川氏は日本医師会の定例記者会見で「3度目の緊急事態宣言は不可避の状況」との見解を示し、早急に厳しい制限を伴った緊急事態宣言の発令を政府に要望していました。医療体制逼迫を訴えるのとは裏腹に、自分だけ政治家パーティに出席(つまり医師会の利益のための活動を最優先)していたという事実は、日本医師会にとって(自分たちが考える以上の)相当大きなダメージとなるでしょう。ひょっとしたら、封印されていた“家庭医構想”というパンドラの匣(日本医師会にとっての)が再び開くことになるかもしれません(この項続く)。

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

 筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。 本論文ではデンマークとノルウェーにてChAdOx1-Sワクチン接種を受けた28万1,264例を対象とした。北欧諸国は医療データベースの確立された国である。2021年2月9日~3月11日に接種を受けた18~65歳の症例の動脈・静脈血栓イベントの発現率を、デンマークの2016~18年、ノルウェーの2018~19年のワクチン接種を受けていない18~65歳と比較した。ワクチン接種後28日以内のイベントに着目した。心筋梗塞などの動脈血栓イベントについてはChAdOx1-S接種後でも増加を認めなかった。静脈血栓イベントはコントロールの人口10万人当たり30人に比較して、ChAdOx1-S接種後は59人と多かった。標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)であった。ワクチン接種の全体に比較すれば静脈血栓イベントを発症した絶対数は多くはない。しかし、18~65歳の健常人では少数の副作用でも許せないというヒトもいるだろう。新型コロナウイルス感染の血栓症の特徴を示しているのか、一般にはほとんど発症しない脳静脈洞血栓が7例に発症している。 本研究では血栓イベントのみでなく凝固異常、出血イベントにも注目している。血小板減少が起こる症例は17例とコントロールの6人よりも多い。原因が解明されない場合が多い。気道出血もワクチン後は35例、コントロールは16例とワクチン後に多かった。新型コロナウイルス感染による血栓形成、凝固異常の原因には不明の部分がある。本研究はChAdOx1-Sワクチン接種後、静脈血栓、脳静脈洞血栓が少数ながら北欧の2つの国の歴史的対照群よりは多いことを示唆した。ワクチン接種により地域の感染拡大速度低減、医療崩壊リスクを低減できると期待できる。圧倒的少数例ではあるが、静脈血栓、静脈洞血栓などが増えることを示唆した本論文を読んで、各国の規制当局、個人はどう考えるだろうか? 個人にとっての正解は常に不明である。科学は客観的数値を与えてくれるが、常に限界が伴う。結果を公表し、公表された結果からみんなが考え、今の時点での最適解を個人なり、国なりに考えざるを得ない。 読者の皆さん、この結果を読んで自分はChAdOx1-Sを受けたいと思うかどうか? 自分が厚生労働省の専門官として政府として、このワクチンを日本国にて承認して使用するかどうか? 自分がワクチンを選択できる自治体の長であったら、自らの自治体にて本ワクチンを接種するか否か? 各々どのような論理にて周囲を説得するか? この機会に自分なりの考えをまとめてみるとよい。

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東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。スポーツドクターの資格有無を問わず、8割超が「応募しない」と回答 本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。 本ボランティアの活動期間は3日間程度でも可能、1回当たりの活動時間は約9時間(休憩含む)であるが、応募希望について、Q2で『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、日本スポーツ協会公認のスポーツドクターを対象に医師200人程度をボランティアとして募集していますが、応募を考えていますか?』と質問したところ、スポーツドクターの資格有無を問わず、全回答者の86%(215人)が「応募しない」と回答。主な理由を以下に抜粋した。 「現在の社会情勢を考慮していないと考える(30代、200床以上)」 「明らかにコロナ対応を意味しているのに、スポーツドクター募集に違和感。開催の是非で未だに揉めている大会に参加したくない(40代、100~199床)」 「ワクチン接種の医師が足りないと言っていながら、医師募集とは矛盾している気がする(50代、200床以上)」 「付け焼き刃的。非現実的(60代、100~199床)」 また、今回のように専門職をボランティア募集しておきながら大会組織委員には日当が出ることに疑問を感じている医師も一定数いた。 このほか、スポーツドクターの資格を持ち、実際に応募したという医師からも、今回のオリンピック開催については、「コロナにリソースを傾けるべき時に、逆のことをしていると思う(30代、200床以上)」などの否定的な声もみられた。一番の不安要素は「自身の出勤制限」だが、日当があれば参加する? Q3『もしボランティアに参加した場合、心配な点はありますか?』では、「自身の出勤制限」「施設内の医師不足」「給与/売上」の順で回答が多かった。また、Q4『Q2で「応募しない」と回答した方に伺います。どのような条件なら応募しますか?』では、多数が「日当があれば」と回答、多くが「10万円以上」を希望していた。国内のスポーツドクター数は約6,400名 日本スポーツ協会の定めるスポーツドクターの受講条件は、「受講開始年度の4月1日時点で日本国の医師免許取得後4年を経過(受講開始年度の4年前の4月1日以前に取得)し、当協会または当協会加盟(準加盟)団体から推薦され、当協会が認めた者」で、現在のスポーツドクター登録数は6,420名(令和2年10月1日現在)である。登録者の専門診療科は整形外科をはじめ、救急科、リハビリテーション科、形成外科、リウマチ科などで、今回応募した約390名はこの登録者の6.1%にあたる。また、スポーツ医に該当する資格はこのほかにも、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定の健康スポーツ医などがある。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『東京五輪の医師ボランティア募集、どう考える?』

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