サイト内検索|page:68

検索結果 合計:2206件 表示位置:1341 - 1360

1341.

AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。 海外では、国際血栓止血学会、米国血液学会などからTTSに関する診断や治療の手引きが公開されており、WHOからも暫定ガイドラインが発表された。海外と医療事情が異なるわが国には、これまで本疾患に対する診療の手引きは存在しなかったため、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は、COVID-19ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために2021年6月に「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月)を作成、公開した。まれだが発症すると致死的なTTS TTSの特徴は1)ワクチン接種後4~28日に発症する、2)血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3)血小板減少(中等度〜重度)、4)凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、5)抗血小板第4因子抗体(ELISA法)が陽性となる、が挙げられる。TTSの頻度は1万人~10万人に1人以下と極めて低いが、これまでに報告されたTTSの症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されているので、極めてまれな副反応であるが、臨床医はTTSによる血栓症を熟知しておく必要がある。目次はじめに1 TTSの診断と治療の手引きサマリー 1)診断から治療までのフローチャート 2)候補となる治療法2 TTSの概要 1)TTSとは 2)ワクチン接種後TTSの発症時期と血栓症の発症部位3 TTSとHITとの関連4 TTSの診断 1)TTSを疑う臨床所見  2)検査 3)診断手順 4)鑑別すべき疾患と見分けるポイント5 TTSの治療 1)免疫グロブリン静注療法 2)ヘパリン類 3)ヘパリン以外の抗凝固薬 4)ステロイド 5)抗血小板薬 6)血小板輸血 7)新鮮凍結血漿 8)血漿交換 9)慢性期の治療おわりに 付1)血栓症の診断 付2)脳静脈血栓症の治療 血栓溶解療法(局所および全身投与)/血栓回収療法/開頭減圧術/抗痙攣薬 付3)COVID-19ワクチンとは 文献 同手引きでは「おわりに」で「TTSは新しい概念の病態であり、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療の候補薬の保険収載、さらにはワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。今後、新たな知見が加わる度に、本手引きは改訂していく予定」と今後の方針を記している。

1342.

第64回 オリンピック入国者のコロナ“ザル検疫”、関係者が語る意外な事実と驚愕の見通し

東京オリンピックが今月末から開催される。続々と各国選手団や関係者が入国する中、6月19日、事前合宿のために来日したアフリカのウガンダ選手団9人のうち1人が成田空港検疫で新型コロナのPCR検査で陽性となったことはすでに報じられているとおりだ。該当の選手は検疫による隔離が行われたが、驚くべきことに残り8人はそのままバスで事前合宿地の大阪府泉佐野市に移動。その中からさらに1人の陽性が判明し、泉佐野市職員までもが濃厚接触者に認定されるに至った。ちなみに最初に空港検疫で陽性が判明した選手は、国の療養解除基準を満たしたことから、7月1日未明、泉佐野市の宿舎に到着したと発表されている。濃厚接触の疑いがある選手に移動を許してしまう「ザル検疫」にはかなり驚きだが、実は濃厚接触の判断は自治体(ウガンダ選手団の場合はホストタウンの泉佐野市)が行うとの方針に基づくもの。ただ、残りの選手の移動を許し、移動地で新たな陽性者が発生したことには批判が多く、今後は空港段階で濃厚接触者の特定を行う方針を検討しているという。やや口汚い言い方かもしれないが、この検討そのものが何とも間の抜けたレベルにしか思えない。もっとも空港検疫に限界があることも事実だ。たとえば今回のウガンダ選手団の場合、全員がアストラゼネカ社製ワクチンの2回接種を済ませ、出国96時間以内に2回のPCR検査を受けて陰性だったとの証明書を持参していたという。ここではまず科学的な限界がある。ワクチンで十分な抗体価を獲得できるのは接種完了から1~2週間後で、その効果も100%ではないこと。また、感染から4日後までは感染者の半数以上がPCR検査で偽陰性になってしまう。さらに空港検疫でスクリーニングに使われている抗原検査は、PCR検査と比べれば感度は落ちる。今回のケースはたまたま抗原検査で結果が出なかった選手に念押しのPCR検査を行った結果、陽性になったという結果論から言えば「不幸中の幸い」のようなケースだ。一方、実務上も限界がある。来日する外国人が提示するワクチンの接種証明書やPCR検査の陰性証明書に実施医療機関が記載されていても、空港検疫の窓口ではその医療機関が実在するのか否かを確認している余裕はない。それ以上にそれらの証明書の真贋を判断しきれないのが現実だ。約1ヵ月前、偶然にも検疫業務関係者と話す機会があった。その時この関係者が語っていたのは「陰性証明書を有していても入国時の抗原検査で陽性になるケースは一定程度あり、とくに航空機の場合、この陽性率は到着便の離陸国によって明らかに違う」ということだった。端的に言えば、法制度の運用が先進国ほど厳格ではない国からの到着便の搭乗客が提示する陰性証明書には、偽造が疑われるものが紛れ込んでいる可能性が高いということだ。しかし、この関係者が最も懸念していたことはほかにもあった。たとえば空港検疫で陽性が判明した入国者は、検疫所が用意した宿泊施設で経過観察が行われる。こうした宿泊施設は各入国ポイント近くに存在する。成田空港ならばその周辺すなわち千葉県内である。そしてこの経過観察中に重症化すれば千葉県内の新型コロナ病床に収容される。この現実が意味することは次のようなことだ。10万人程度が来日すると言われる今回のオリンピックでは、主な入国ポイントは成田空港、羽田空港になると思われるが、この水際で感染者を捕捉できたとしても、そこから発生する重症者は東京都、千葉県の新型コロナ病床に入院し、結果的に地域の病床ひっ迫に影響しかねないのである。そして場合によっては地域住民から発生するであろう新型コロナ重症者と病床を取り合ってしまうことさえ想定できるというのだ。ここでやや荒っぽい試算をしてみる。オリンピック関係の想定入国者は10万人と言われる。このうち1%から陽性者が見つかったとしよう。その数は1,000人。感染者のおおむね2割が重症化するのでその数は200人。そしてこちらのデータからは、新型コロナの重症者対応病床は千葉県が101床、東京都が1,207床となっている。2019年出入国管理統計によれば、同年に日本に入国した外国人は3,118万7,179人、うち成田空港からが897万8,773人、羽田空港からが 428万8,078人である。1年間に日本に入国する外国人は成田空港からが29%、羽田空港からが14%を占める。つまり前述の重症者試算にこの割合を加味すると、成田空港からのオリンピック関係入国者からは58人、羽田空港から28人の重症者が出ることになる。試算した成田空港での発生重症者が千葉県の新型コロナ重症者対応病床に入院することになれば、なんとその50%以上を占有することになる。東京都は幸い2%強で済む。ちなみに2019年出入国管理統計での成田空港、羽田空港の入国者がわりに少ないと思った人も多いだろう。これ以外で入国者が多いのは関西国際空港の837万8,039人で、割合にして27%。前述の試算と同様の計算を行えば、このルートで発生する重症者は54人。大阪府の重症者対応病床数は841床で、その7%弱に当たる。もっとも今回のオリンピックはあくまで開催地が東京であることを考えれば、過去の出入国管理統計データで示されるよりも成田空港、羽田空港からの関係者入国割合は多くなるはずだ。しかも、いま首都圏では東京都を中心に感染の再拡大傾向が見え始めている。6月30日時点の新規感染者の前週比は東京都が1.20倍、千葉県が1.09倍。そしてこの傾向が続けば東京オリンピックの開会式の頃に緊急事態宣言発出となる可能性がある。ここにオリンピック関連入国者から見つかる陽性者、そこから引き続く重症者が前述のように発生したらどうなるだろうか?何とも嫌な時期にオリンピックを開催するのだと、正直溜息しか出てこない今日この頃である。

1343.

臓器移植患者、ワクチン3回接種で抗体価が大幅上昇/NEJM

 固形臓器移植を受けた患者は、新型コロナワクチンを2回接種しても免疫応答が弱いことが報告されている1,2)。そして、移植患者はワクチン2回接種後であっても感染後の重症化リスクが高いことが報告されている3)。これらを受け、フランス公衆衛生庁は、免疫抑制状態の患者に3回目の接種を行うことを推奨している4)。NEJM誌オンライン版2021年6月23日号「CORRESPONDENCE」では、3回接種した臓器移植患者の抗体価が報告された。 臓器移植を受けた101例が、mRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)を3回接種した(平均年齢±SD:58±2歳、男性69%)。移植臓器の内訳は、腎臓78例、肝臓12例、肺または心臓8例、膵臓3例だった。最初の2回の接種は1ヵ月間隔、3回目の接種は2回目から61±1日後に行われた。移植からワクチン接種開始までの期間は97±8ヵ月だった。免疫抑制は、糖質コルチコイド(87%)、カルシニューリン阻害薬(79%)、ミコフェノール酸(63%)、mTOR阻害薬(30%)、belatacept(12%)の使用によるものだった。 主な結果は以下のとおり。・抗SARS-CoV-2抗体血清有病率は、初回接種前0%(95%信頼区間[CI]:0~4、0/101)、2回目接種前4%(1~10、4/101)、3回目接種前40%(31~51、40/99)、3回目接種から4週間後68%(58~77、67/99)だった。・3回目接種前に血清陰性だった59例のうち26例(44%)が3回目接種から4週間後に陽性となった(平均信号対カットオフ比±SD:690±293)。・3回目接種前に血清陽性だった40例全員が4週間後にも血清陽性であり、抗体価は3回目接種前の36±12から、3回目接種1ヵ月後には2,676±350に上昇した(p<0.001)。 抗体反応を示さなかった患者は年齢が高く、免疫抑制度が高く、推定糸球体濾過量が低かった。3回接種後にCOVID-19を発症した例はなかった。また、3回目接種後に重篤な有害事象は報告されず、急性拒絶反応のエピソードも発生しなかった。 研究者らは、臓器移植患者にBNT162b2ワクチンの3回接種を行うことで、ワクチンの免疫原性が大幅に改善され、全例に発症が報告されなかった、とまとめている。

1344.

関節リウマチ診療ガイドライン改訂、新導入の治療アルゴリズムとは

 2014年に初版が発刊された関節リウマチ診療ガイドライン。その後、新たな生物学的製剤やJAK阻害薬などが発売され、治療方法も大きく変遷を遂げている。今回、6年ぶりに改訂された本ガイドライン(GL)のポイントや活用法について、編集を担った針谷 正祥氏(東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野)にインタビューした。日本独自の薬物治療、非薬物治療・外科的治療アルゴリズムを掲載 本GLは4つの章で構成されている。主軸となる第3章には治療方針と題し治療目標や治療アルゴリズム、55のクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨が掲載。第4章では高額医療費による長期治療を余儀なくされる疾患ならではの医療経済的な側面について触れられている。 関節リウマチ(RA)の薬物治療はこの20年で大きく様変わりし、80年代のピラミッド方式、90年代の逆ピラミッド方式を経て、本編にて新たな治療アルゴリズム「T2T(Treat to Target)の治療概念である“6ヵ月以内に治療目標にある『臨床的寛解もしくは低疾患活動性』が達成できない場合には、次のフェーズに進む”を原則にし、フェーズIからフェーズIIIまで順に治療を進める」が確立された。 薬物治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。<薬物治療アルゴリズム>(対象者:RAと診断された患者)◯フェーズI(CQ:1~4、26~28、34を参照)メトトレキサート(MTX)の使用を検討、年齢や合併症などを考慮し使用量を決定。MTXの使用が不可の場合はMTX以外の従来型抗リウマチ薬(csDMARD)を使用。また、MTX単剤で効果不十分の場合は他のcsDMARDを追加・併用を検討する。◯フェーズII(CQ:8~13、18、19、35を参照)フェーズIで治療目標非達成の場合。MTX併用・非併用いずれでの場合も生物学的製剤(bDMARD)またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の使用を検討する。ただし、長期安全性や医療経済の観点からbDMARDを優先する。また、MTX非併用の場合はbDMARD(非TNF阻害薬>TNF阻害薬)またはJAK阻害薬の単剤療法も考慮できる。◯フェーズIII(CQ:14を参照)フェーズIIでbDMARDまたはJAK阻害薬の使用で効果不十分だった場合、ほかのbDMARDまたはJAK阻害薬への変更を検討する。TNF阻害薬が効果不十分の場合は非TNF阻害薬への切り替えを優先するが、その他の薬剤については、変更薬のエビデンスが不足しているため、future questionとしている。 このほか、各フェーズにて治療目標達成、関節破壊進行抑制、身体機能維持が得られれば薬物の減量を考慮する仕組みになっている。過去にピラミッドの下部層だったNSAIDや副腎皮質ステロイド、そして新しい治療薬である抗RANKL抗体は補助的治療の位置付けになっているが、「このアルゴリズムは単にエビデンスだけではなく、リウマチ専門医の意見、患者代表の価値観・意向、医療経済面などを考慮して作成した推奨を基に出来上がったものである」と同氏は特徴を示した。新参者のJAK阻害薬、高齢者でとくに注意したいのは感染症 今回の改訂で治療のスタンダードとして新たに仲間入りしたJAK阻害薬。ただし、高齢者では一般的に有害事象の頻度が高いことも問題視されており、導入の際には個々の背景の考慮が必要である。同氏は、「RA患者の60%は65歳以上が占める。もはやこの疾患では高齢者がマジョリティ」と話し、「その上で注意すべきは、肝・腎機能の低下による薬物血中濃度の上昇だ。処方可能な5つのJAK阻害薬はそれぞれ肝代謝、腎排泄が異なるので、しっかり理解した上で処方しなければならない」と強調した。また、高齢者の場合は感染症リスクにも注意が必要で、なかでも帯状疱疹は頻度が高く、日本人RA患者の発症率は4~6倍とも報告されている。「JAK阻害薬へ切り替える際にはリコンビナントワクチンである帯状疱疹ワクチンの接種も同時に検討する必要がある。これ以外にも肺炎、尿路感染症、足裏の皮下膿瘍、蜂窩織炎などが報告されている」と具体的な感染症を列挙し、注意を促した。非薬物療法や外科的治療―患者は積極的?手術前後の休薬は? RAはQOLにも支障を与える疾患であることから、薬物治療だけで解決しない場合には外科的治療などの検討が必要になる。そこで、同氏らは“世界初”の試みとして、非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムも作成した。これについては「RAは治療の4本柱(薬物療法、手術療法、リハビリテーション、患者教育・ケア)を集学的に使うことが推奨されてきた。今もその状況は変わっていない」と述べた。 非薬物治療・外科的治療アルゴリズムの概略は以下のとおり。< 非薬物治療・外科的治療アルゴリズム>◯フェーズI慎重な身体機能評価(画像診断による関節破壊の評価など)を行ったうえで、包括的な保存的治療(装具療法、生活指導を含むリハビリテーション治療、短期的ステロイド関節内注射)を決定・実行する。◯フェーズII保存的治療を十分に行っても無効ないし不十分な場合に実施。とくに機能障害や変形が重度の場合、または薬物治療抵抗性の少数の関節炎が残存する場合は、関節機能再建手術(人工関節置換術、関節[温存]形成術、関節固定術など)を検討する。場合によっては手術不適応とし、可能な限りの保存的治療を検討。 患者の手術に対する意識については「罹病期間が短い患者さんのほうが手術をためらう傾向はあるが、患者同士の情報交換や『日本リウマチ友の会』などの患者コミュニティを活用して情報入手することで、われわれ医療者の意見にも納得されている。また、手術によって関節機能やQOLが改善するメリットを想像できるので、手術を躊躇する人は少ない」とも話した。 このほか、CQ37では「整形外科手術の周術期にMTXの休薬は必要か?」と記載があるが、他科の大手術に関する記述はない。これについては、「エビデンス不足により盛り込むことができなかった。個人的見解としては、大腸がんや肺がんなどの大手術の場合は1週間の休薬を行っている。一方、腹腔鏡のような侵襲が少ない手術では休薬しない場合もある。全身麻酔か否か、手術時間、合併症の有無などを踏まえ、ケース・バイ・ケースで対応してもらうのが望ましい」とコメントした。患者も手に取りやすいガイドライン 近年、ガイドラインは患者意見も取り入れた作成を求められるが、本GLは非常に患者に寄り添ったものになっている。たとえば、巻頭のクイックリファレンスには“患者さんとそのご家族の方も利用できます”と説明書きがあったり、第4章『多様な患者背景に対応するために』では、患者会が主導で行った患者アンケート調査結果(本診療ガイドライン作成のための患者の価値観の評価~患者アンケート調査~)が掲載されていたりする。患者アンケートの結果は医師による一方的な治療方針決定を食い止め、患者やその家族と医師が共に治療方針を決定していく上でも参考になるばかりか、患者会に参加できない全国の患者へのアドバイスとしての効力も大きいのではないだろうか。このようなガイドラインがこれからも増えることを願うばかりである。今後の課題、RA患者のコロナワクチン副反応データは? 最後に食事療法や医学的に問題になっているフレイル・サルコペニアの影響について、同氏は「RA患者には身体負荷や生命予後への影響を考慮し、肥満、骨粗鬆症、心血管疾患の3つの予防を掲げて日常生活指導を行っているが、この点に関する具体的な食事療法についてはデータが乏しい。また、フレイル・サルコペニアに関しては高齢RA患者の研究データが3年後に揃う予定なので、今後のガイドラインへ反映させたい」と次回へバトンをつないだ。 なお、日本リウマチ学会ではリウマチ患者に対する新型コロナワクチン接種の影響を調査しており、副反応で一般的に報告されている症状(発熱、全身倦怠感、局所反応[腫れ・痛み・痒み]など)に加えて、関節リウマチ症状の悪化有無などのデータを収集している。現段階で公表時期は未定だが、データ収集・解析が完了次第、速やかに公表される予定だ。

1345.

妊娠中のインフルワクチン接種と出生児の健康アウトカム/JAMA

 妊娠中の母親のインフルエンザワクチン接種は、生まれた子供の健康アウトカムに悪影響を及ぼすことはない。カナダ・ダルハウジー大学のAzar Mehrabadi氏らが、追跡期間平均3.6年間の後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種することで妊婦や新生児のインフルエンザ疾患を減らすことができるが、妊娠中のワクチン接種と小児期の有害な健康アウトカムとの関連については、報告が限られていた。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。最長5.5歳、平均3.6歳までの健康アウトカムと母親のワクチン接種との関連を解析 研究グループは、出生登録および出生登録とリンクしている健康管理データを用い、2010年10月1日~2014年3月31日の間にカナダのノバスコシア州で生まれたすべての出生児を対象に、母親の妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種、ならびに出生児の免疫関連疾患(喘息、感染症など)、非免疫関連疾患(腫瘍、感覚障害など)、および非特異的事象(緊急または入院医療の利用など)について、2016年3月31日まで追跡調査を行った(最短2年、最長5.5年、平均[±SD]3.6±1.1年)。 母親のワクチン接種の有無と出生児の健康アウトカムについて、母親の病歴およびその他の交絡因子を調整し、逆確率重み付け(IPTW)法を用いてハザード比(HR)と発生率比(IRR)、ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。喘息、感染症、腫瘍、感覚障害などいずれも有意な関連なし 解析対象の出生児は、2万8,255例(女児49%、妊娠37週以上の出生児92%)であった。このうち、1万227例(36.2%)が、季節性インフルエンザワクチンの接種を妊娠中に受けた母親から生まれた。 追跡期間平均3.6年間において、母親のインフルエンザワクチン接種は小児喘息、腫瘍および感覚障害と有意な関連はないことが認められた。母親の接種ありと接種なしにおける出生児1,000人年当たりの発生率は、小児喘息が3.0 vs.2.5(群間差:0.53[95%CI:-0.15~1.21]、補正後HR:1.22[95%CI:0.94~1.59])、腫瘍が0.32 vs.0.26(0.06[-0.16~0.28]、1.26[0.57~2.78])、感覚障害が0.80 vs.0.97(-0.17[-0.54~0.21]、0.82[0.49~1.37])であった。 また、母親のインフルエンザワクチン接種は、小児期早期の感染症(発生率184.6 vs.179.1、群間差:5.44[95%CI:0.01~10.9]、補正後IRR:1.07[95%CI:0.99~1.15])や、緊急または入院医療の利用(511.7 vs.477.8、33.9[24.9~42.9]、1.05[0.99~1.16])とも有意な関連は認められなかった。

1346.

新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。[症例1(76歳)]手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)症状:痛み、腫脹(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消[症例2(52歳)]手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)症状:痛み、発赤(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消[症例3(52歳)]手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)症状:痛み(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消[症例4(53歳)]手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)症状:痛み、炎症、血清腫(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

1347.

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

 新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。 対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。 本邦では、ワクチン接種は本人の希望によるとされている。重篤な合併症が元気な人に突然起こるという情報は医療関係者のみならず広く一般に広報されるのがよいと筆者は考える。確率は低いが致死的な合併症への対応、事前説明はきわめて難しい。

1348.

今、改めて見直したい院内の換気対策【コロナ時代の認知症診療】第4回

質問されることの多い、ワクチン2回完了後のマスク着用65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり進行しつつある。私の関与する患者さんとその家族でも2回目が終わったと安堵の報告をしてくださる人が増えてきた。政府の言う「この7月下旬には終了」の目標は実現しなくても、それにさほど遅れることなく終わりそうな気配になってきた。こうした過渡期にある現在、「2回のワクチン接種を済ませた患者さん、医療関係者は院内でマスクを外してもよいか?」という質問への回答が求められるようになってきた。すでにこの3月には、わが国の厚労省などが感染症対策においてよく参考にするとされる、米国疾病予防管理センター(CDC)による米国国民向けの文書が出されていた1)。堅実な臨床研究の結果2)に基づくものだそうだが、米国らしい大胆に割り切った内容であることに驚いた。ざっと次のような内容である。もしあなたが十分に予防接種されているのなら、パンデミック前の活動に戻れます。十分に予防接種されているのなら、行政等が定めた例外的な場所以外では、マスクをつけたり、フィジカルディスタンス(日本でいうソーシャルディスタンス)をとったりせずに従来の活動をしてもかまいません。けれども予防接種がまだなら、ワクチンを見つけなさい。さてここでいう「十分に予防接種されている」とは、ファイザー社やモデルナ社のような2回接種タイプのワクチンなら、2回目接種の2週間後である。またジョンソンアンドジョンソン社のような1回接種型のワクチンなら、接種の2週間後と上述のCDCのページでは解説されている。理論としてはこのとおりだと納得できる。実際、テレビのニュースなどを見ていると、米国ではマスクをしている人が少数派になってきている様子が見える。けれどもこの方針がこのまま日本で使えるか? となると、これは難しそうだ。実際、次のような反対の声もある。たとえワクチン接種されていてもまだ他人にウイルスを感染させる可能性がある。また抗体ができるには接種後、時間を要する。さらに免疫系が弱い人でもマスクによって防御効果が期待できる。加えて変異種に対してワクチンの有効性が低下する可能性がある、といった批判である3)。※なお、本稿執筆後の6月16日、新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」では、ワクチン接種後も国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、マスク着用を求めている。少なくとも自分のクリニックにおいてどうするかは、問題になる。今考えているのは、条件付きマスク解放である。当院のスタッフは、事務職員を含め全員がすでに2回の接種を終えている。患者さんで2回の接種を終えている人で、それを証明するものがあれば、診察時の限定的な場においては、患者さんも私たちもマスクをしないでよしとしようかと考えている。もっとも未接種の付き添いがいらっしゃる場合は別にする必要がある。忘れてはならない換気、基本を振り返る一方で忘れてはならないのが換気である。感染症対策では風の流れを作り出して、ウイルスを含む空気が効率よくこの場から外へ流れ出す工夫する工夫が求められる。対策の基本は、一定の方向に着実に風の流れを作ることだ。これを実現するにはいくつかの段階がある。仮に10坪(33平方メートル)以上の比較的広い区間を想定する。まずは、ここと思しき窓やドアを2ヵ所(たとえばAとB)開けてみて、風の方向を見る。この際に、私たちは写真に示すようなスズランテープを用いている。2ヵ所のテープが空中に漂う様子(写真)から、仮にAからBへと向かっているとわかれば、この流れを強化する仕掛けを作る。画像を拡大するその基本は換気扇と扇風機の併用である。そもそもサーキュレーターと扇風機は用途が異なる。サーキュレーターは、小さい羽根で直線的で強い風を出し、遠くまで風が届くように設計されているので、室内の空気を循環させられる。つまり部屋の中の空気をかき混ぜるだけではなく、部屋の空気と外の空気を入れ替えもできる。と言うのは、サーキュレーターは、後ろの空気を吸い込み、その空気を前へ放出するからだ。この場合、サーキュレーターを窓Aに置き、外気を室内に吸い込むように部屋の内側に向ける。一方で扇風機は本来、大きい羽根により広範囲に風を送り出せる。そこで扇風機は窓Bの位置に外に向けて置く。この併用により循環効率が上がる(図)4,5)。画像を拡大するなお狭い部屋(たとえば10平方メートル以下)で、入り口と1つの窓だけしかない環境もある。この場合、風が外から強く吹き込むときが問題になる。基本はサーキュレーターを窓の外に向けることだが、戸外へ送風できない場合には、外からの風を人のいない方向にどうやって流すかの工夫が求められる。終わりにご注意を1つ。部屋中の窓を皆開ければ換気効率が良くなると思われがちだが、それは違う。部屋の中に空気が渦巻いてしまう。参考文献・参考情報1)CDC 「When You've Been Fully Vaccinated | CDC2)Thompson MG,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Apr 2;70:495-500.3)Here’s Why Vaccinated People Still Need to Wear a Mask/NY times4)ダイキン工業株式会社「上手な換気の方法~住宅編~」5)厚生労働省「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

1349.

第66回 ModernaやPfizerのCOVID-19ワクチン説明書に心筋炎/心膜炎の警告をFDAが追加

米国疾病予防管理センター(CDC)会議での検討結果を受け、心筋炎や心膜炎(心臓を包む組織の炎症)がどうやら生じやすくなるとの警告(Warning)をModernaとPfizerの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチンそれぞれの説明書(Fact Sheet)1,2)に米国FDAが追加しました3)。心筋炎や心膜炎はそれらワクチンの2回目の接種後にとくに生じやすいらしく、ほとんどの場合接種から数日以内に発症するようです。CDC検討会議の資料4)によるとmRNAワクチン2回目接種者100万人当たり約13人(12.6人)の割合で心筋炎/心膜炎が発生しています。接種を受ける人やその保護者向けの説明書(Fact Sheets for Recipients and Caregiver)も変更され、胸痛、息切れ、心臓の動悸(心拍の亢進、動揺、高ぶり)が接種後に生じたらすぐに診てもらう必要があるとの指示が付け加えられています。心筋炎や心膜炎の症状はほとんどの場合短期で解消するようですが、長期の転帰はまだ不明です。FDAとCDCは報告を検討し、より多くの情報を集め、数ヵ月の長期転帰を追跡する予定です。心筋炎や心膜炎がワクチンの説明書の警告に加えられたとはいえ、米国のワクチン接種支持に変わりはありません。ワクチン後の心筋炎や心膜炎は非常に稀であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で生じることのほうがずっと多いことが知られています。それに、COVID-19の心臓への害は重症化する恐れがあります。米国保健行政代表や家庭・小児科・産婦人科・心臓・内科・看護・公衆衛生・地域医療・感染症の専門家たちは恩恵が害を遥かに上回るワクチンを許容可能な12歳以上の誰もが接種することを強く望んでいます5,6)。また、COVID-19ワクチンに伴う心筋炎様病態で入院した19~39歳の患者7例をCirculation誌に最近報告した著者らも接種の価値は害を引き続きだいぶ上回ると結論しています7)。それらのうち6例はModernaかPfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種後、1例はJohnson & Johnson社のアデノウイルス仕様のCOVID-19ワクチン接種後のものでした。今月初めにPediatrics誌に報告された別の7例8)と同様に経過は概ね良好であり、治療にはβ遮断薬や抗炎症薬などが使われ、全員が症状解消の上で入院から2~4日以内に退院できました7,9)。参考1)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 2)EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE MODERNA COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) 3)Coronavirus (COVID-19) Update: June 25, 2021 / FDA4)Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) June 23, 2021 / CDC5)Statement Following CDC ACIP Meeting from Nation’s Leading Doctors, Nurses and Public Health Leaders on Benefits of Vaccination / AAP 6)Health officials, AAP urge COVID-19 vaccination despite rare myocarditis cases / AAP7)Rosner CM, et al. Circulation. 2021 Jun 16. [Epub ahead of print] 8)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.9)Symptoms resolved in 7 patients with myocarditis-like illness after COVID-19 vaccination.AMERICAN HEART ASSOCIATION / EurekAlert

1350.

妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。■日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」対象:全般要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報■日本小児科学会「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」対象:子供(12歳以上)要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。■日本産科婦人科学会「―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて―」対象:妊婦要旨:妊娠初期を含めワクチンは妊婦・胎児双方を守る。希望する妊婦はワクチンを接種できる。持病のある妊婦はとくに接種を検討すべきである。■日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNA ワクチン)Q & A」対象:女性全般要旨:ワクチン接種で不妊になったり、流産したりといった情報に科学的根拠は全くない。生理中や経口避妊薬服用中でもワクチン接種に対する問題はない(7/26情報追加)。■日本血液学会「新型コロナウィルス感染症蔓延下における血液疾患診療について」対象:血液疾患患者要旨:基本的にワクチン接種は推奨されるものの、治療の状況に応じてワクチン接種の効果が減じる可能性があるため、主治医と適切なタイミングを相談する。■日本神経学会「COVID-19 ワクチンに関する日本神経学会の見解」対象:神経疾患患者要旨:現時点では神経疾患(脳卒中、認知症、神経難病)を対象としたエビデンスはないが、海外のデータから副反応は一過性のものに限られ、アナフィラキシー以外には重篤な健康被害はみられていないことから、リスクは小さいものと考えられる。■日本骨髄腫学会「骨髄腫患者に対する新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について」対象:骨髄腫患者要旨:骨髄腫患者は重篤化と死亡のリスクが高いと推測され、ワクチン接種による罹患率と重篤化防止が期待できるが、接種タイミングは患者ごとの免疫不全状態をみながらの判断となる。■日本リウマチ学会「COVID-19ワクチンについて」対象:リウマチ性疾患患者要旨:ステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種したほうがよい。通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはない。■日本麻酔科学会「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について(5月18日修正版)」対象:手術予定患者要旨:待機手術もワクチン接種後すぐに行うことができるが、数日間(最大1週間)空けることで、術後の発熱などの症状が副反応か手術によるものかが区別できる。■日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療について Q&A-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-」対象:がん患者要旨:がん患者における重症化の可能性を考慮すると、ワクチン接種はベネフィットがリスクを上回ると思われ、接種が推奨される。

1351.

第60回 ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省

<先週の動き>1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み3.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省1.ワクチン接種ミス139件で重大報告70件、再発防止策は?/厚労省厚生労働省は、22日に事務連絡「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その2)」を発出し、新型コロナワクチンの接種開始から6月16日までに報告された「接種間違い」は139件(10万回当たり0.596件)であり、そのうち健康被害につながる恐れのある「重大な間違い」は70件(同0.300件)だったことを公表した。なお、現時点で健康被害は確認されていない。最も多かったミスは、「接種間隔の間違い」が31件、次いで注射器の再使用など「血液感染を起こしうる間違い」が23件、「不必要な接種(生理食塩水のみ)」と「接種量の間違い」がそれぞれ13件。厚労省が掲げる対策として、「リキャップを行わない」「接種後は速やかに使用後の注射器を確実に廃棄する」「一連の作業を中断させない」など、再発防止の徹底を呼び掛けた。厚労省は、全国の自治体に対し、ワクチンの接種ミスがあった場合、速やかに報告するよう求めている。(参考)ワクチン接種ミス139件 厚労省、再発防止を呼びかけ(朝日新聞)ワクチン接種ミス「139件」、厚労省が集計…最多は「接種間隔の間違い」(読売新聞)ワクチン接種ミス 139件確認 使用済み注射器使用など 厚労省(NHK)2.大学病院の経営状況、過去最大1兆円以上の落ち込み全国医学部長病院長会議が23日に発表した大学病院の経営状況調査の結果によると、2020年度は、新型コロナウイルス感染症患者の対応により、対前年度比4%減の1,204億円強の医業赤字となり、医業利益率はマイナス8.3%と前年度に比べて3.93ポイント悪化したことが明らかになった。また、手術件数も前年と比較して累計約13万件減少となっている。今年の3月以降、改善しつつある指標もあるが、前年度の反動と考えられ、依然として厳しい経営環境にあり、同会議は一層の財政支援を強く要望している。(参考)2020年度に大学病院経営は1204億円強の医業赤字、3月に外来指標が改善するが「前年の反動」である点に留意―医学部長病院長会議(GemMed)新型コロナウイルス感染症に関する大学病院の経営状況調査(3月度)全国医学部長病院長会議 プレスリリース20213.若年層への違法薬物対策で、大麻の使用も罰則化へ/厚労省厚労省は、21日に「大麻等の薬物対策のあり方検討会とりまとめ~今後の大麻等の薬物対策のあり方に関する基本的な方向について~」を公表した。世界と比較し、日本の違法薬物使用の生涯経験率は著しく低い水準に留まっている一方で、2020年には大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加し過去最高を更新、30歳未満の検挙者も7年連続で増加するなど、若年層での大麻乱用が拡大している状況だ。使用に対する罰則が規定されていないことが、「大麻を使用してもよい」というメッセージと受け止められかねないため、ほかの薬物と同様、大麻の使用に対しても罰則を科すことが必要という意見が多かった。今後、法制化について国会で審議される見込み。(参考)大麻使用罪に賛成多数 厚労省検討会が報告書(福祉新聞)「大麻等の薬物対策のあり方検討会」とりまとめを公表します(厚労省)資料 「大麻等の薬物対策のあり方検討会」について(同)4.10月の本格稼働に間に合う?マイナンバーカード保険証の準備状況25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、健康保険証の代わりにマイナンバーカードが使える医療機関や薬局の数が、6月21日時点で732施設と明らかになった。今年3月から本格稼働する予定が、保険団体側のミスなどにより10月に延期になっている。受付に必要なカードリーダーの補助金には、全国の医療機関、薬局合計約13万施設(57%)が申し込みを行っているが、マイナンバーカードの健康保険証利用登録状況は、20日時点で440.3万件(10.4%)と、まだ本格的な稼働まで時間がかかりそうだ。(参考)オンライン資格確認等システムについて(厚労省)マイナ保険証732施設どまり、10月運用へ準備急ぐ(日経新聞)オンライン資格確認、試行運用に732施設参加 21日時点、来週には800施設超(CBnewsマネジメント)5.日本全国の医療機関や専門医の検索サイトを新設/厚労省24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚労省は全医療機関の治療内容や専門医の有無などを全国横断的に検索できる「医療情報サイト」を新設することを明らかにした。これまで、各都道府県が医療機関等に対して、患者が医療機関等の選択をするために必要な情報(医療機能情報)の報告を義務付け、自治体ごとに運用していたが、都道府県をまたいで検索・比較ができないなどの課題があった。新システムは外国語対応のほか、医療機関の業務負担軽減のために、手術などの実施件数はNDBオープンデータを利用して事前入力を行う方針であり、運用開始は2024年度を目指す。(参考)医療機能情報提供制度に関する全国統一的な検索サイトの構築に向けた進捗状況について(厚労省)「治療どこで」全国18万病院を一括検索、厚労省が情報サイト新設へ(読売新聞)6.「即日インプラント」「全身脱毛し放題」もNG、規制強化へ/厚労省厚労省は、24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で、ウェブサイト広告で規制している美容医療関係の事例について、具体的な解説を公表した。「即日インプラント治療1日で終了」「医療脱毛満足度99%」「全身脱毛3年し放題」などの表示、ビフォーアフター写真は虚偽や誇大広告とされ規制される。医療機関やウェブサイト制作事業者、地方自治体などに対し、医療に関する広告規制の理解を深めるのが目的とされる。なお、虚偽広告は自治体が中止命令や是正命令に従わなかった場合、6ヵ月以下の懲役か30万円以下の罰金となる。(参考)第17回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 資料(厚労省)医療広告禁止などの事例解説書を公開へ 厚労省(CBnewsマネジメント)「脱毛3年し放題」は誇大 ネット広告、厚労省が解説書(朝日新聞)

1352.

コロナワクチン後に心筋炎、CDCが接種との関連性を指摘

 米国疾病予防管理センター(CDC)は6月23日、新型コロナワクチンを接種した若年層において、心筋炎などの副反応と見られる症状が、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に1,000件以上報告されていることを明らかにした。CDCは接種と関連している可能性を指摘し、さらなる調査を進めるとしている。ただ、これまでに投与されたワクチン総量と比しても発症はまれであり、COVID-19のリスクおよび関連合併症を考慮した上で、ワクチン接種を引き続き推奨する方針だ。 米国では、現在12歳以上がコロナワクチンの接種対象となっていて、これまでに1億7,700万人以上が少なくとも1回目の接種を受けている状況。着実に接種人口が増える中、今年4月以降、ファイザー社やモデルナ社が開発したmRNAワクチン接種後に起きた心筋炎および心膜炎の症例が、VAERSに1,226例報告されたという(6月11日時点)。 CDCによると、症例が確認されたのは主に16歳以上の男性青年および若年成人で、2回目接種後で多く、おおむね接種後、数日以内だったという。CDCが323例について経過を調べたところ、309例が入院したものの295例がすでに退院、218例(79%)が症状から回復している。 CDCは、「ワクチン接種がCOVID-19から自身および家族を守るのに役立つ最良の方法」とし、12歳以上のすべての人にCOVID-19ワクチン接種を引き続き推奨する方針を明らかにした。日本国内での報告例は11例 一方、日本国内における症例報告はどのような状況なのだろうか。厚生労働省によると、副反応疑い報告制度において、ファイザー社のワクチン接種後の心筋炎関連事象(心筋炎・心膜炎)として、6月13日までに、医療機関から12件(11例)*の報告があったという。年齢群別では、40歳未満8件(7例)*、40歳~65歳未満2件、65歳以上2件となっている。モデルナ社のワクチンでは現在までに同症例の報告はない。*40歳未満の男性1例は、心筋炎・心膜炎の両者の記載があるため、1例分を2件として計上。

1353.

第63回 尾身会長の専門家のプライド滲む具体的な指摘vs.模範解答も無視の菅政権

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき4月25日から東京都に出されていた緊急事態宣言が今週月曜日から約2ヵ月ぶりに解除され、「まん延防止等重点措置(まん防)」へと移行した。東京都で焦点となっていた飲食店の営業形態については、措置区域内(檜原村、奥多摩町を除く)で5~20時までの時間短縮営業を要請し、酒類の提供は来店者が同一グループで2人以内、最大滞在時間90分を条件に19時まで認めることになった。実効性はもちろん、なんとも分かりにくい。医療の世界で言うところの、なるべく取ってほしくない高点数の診療報酬の算定に当たって、あれこれと条件を付けるのと似ていなくもない。緊急事態宣言最終日の6月20日の日曜日。東京は午前中には雨がぱらつき、昼以降は曇り空、その割に気温は高いという何ともはっきりしない天気。仕事の合間(私は年中ほぼ無休、というか無窮とも言えるかもしれない)に昼食を取りに出かけた最寄り駅の繁華街周辺は、長らく休業が続いていた飲食店のシャッターが開けられ、店内では翌日以降の開店準備のためか、清掃をしている様子があちこちで見受けられた。久しぶりに活気があったことは私自身もやや嬉しくもあったが、同時に素直に喜びきれない複雑な思いも抱えていた。というのも6月12日に約1ヵ月ぶりに感染者報告数が前週同一曜日を上回り、6月17日からも同様の現象が3日間続いていたからだ。20日も夕方の時点でやはり前週日曜日よりも感染者報告数が上回ったことが明らかになった。そして、まん防移行後、本稿執筆時点までひたすら前週同一曜日を上回る現象が続きっぱなしだ。潜伏期間を考慮すれば、やはりヒトの我慢の限界は1ヵ月程度なのかもしれない。宣言開始直前の本連載での言葉を用いれば、私たちは赤点だったことになる。だが、今回それ以上に赤点だったと思える存在は政治である。そもそも4月25日から3回目となる緊急事態宣言を東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県を対象に発出した際の期限は5月11日。潜伏期間などを考えれば、5月11日というのは宣言の効果が見え始めるか否かの段階に過ぎず、端から宣言解除は期待できない期限だった。それでも政治がこの期限を設定したのは、3回目の緊急事態宣言に伴う国民の宣言疲れへの配慮や経済を必要以上に横目で眺めた結果だったのだろうと推測できる。そして1回目の宣言延長時、実は政治には赤点回避の模範解答が示されていた。緊急事態宣言の対象地域に4都府県に加え、愛知県、福岡県を追加し、期限も5月31日まで延長することを決定した5月7日の首相官邸での記者会見でのことだ。会見冒頭の質問で東京新聞の記者から宣言解除の基準を問われた際に菅 義偉首相は「基本的対処方針、ここにも書かれていますように、ステージ4、ここを脱却することが目安となりますが、具体的には専門家や自治体の意見も聴きながら総合的に判断していきたい、このように考えております」と、いつものようにややボヤっとした基準を示したのに対し、もはや同席が慣例となった新型インフルエンザ等対策閣僚会議新型インフルエンザ等対策有識者会議会長兼新型コロナウイルス感染症対策分科会長の尾身 茂氏はかなり具体的な形での指摘を行っている。以下に引用したい。「ステージ3に入って、しかもステージ2のほうに安定的な下降傾向が認められるということが非常に重要。それからもう一つは、感染者の数も重要ですけれども、解除に当たっては医療状況のひっ迫というものが改善されているということが重要だと思います。それから、今回は明らかに変異株の影響というのが前回に比べて極めて重要な要素になっていますので、今回は、いずれ解除するときには、今まで以上に慎重にやる必要があると思います。それから最後の点、申し上げたいことは、これは多くの専門家はなるべく下げたいという、なるべく数が少ないほうが良いということでいろいろな数が出ていますけれども、そうなることが理想ですが、必ずしもかなり下がるというところまでいかない可能性も、これはある。その場合は、いわゆる下げ止まりという状況があります。これがあり得る。そのときに、下げ止まったからすぐに解除するということをすると必ずリバウンドが来ますので、ここは何週間ということはなかなか難しいですけれども、必要な対策を続けながら、普通、われわれ感染症の専門家の常識を考えると、下げ止まっても、大まかな目安ですけれども、2~3週間はぐっと我慢するということが次の大きなリバウンドになるまでの時間稼ぎをできるということで、そういうことが必要だと思います。」私はスポーツジムのトレッドミルを走りながら、目の前のディスプレイであの会見をリアルタイムで聞いていたのだが、上記の中でも太字にした部分について「かなり踏み込んだ」と個人的には感じていた。私の勝手な推測だが、尾身氏のこの発言には2回目の緊急事態宣言の苦渋の解除が頭にあったのだろうと思っている。改めて記すと、2回目の緊急事態宣言は1月8日から東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に発出され、1月14日には栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県へと対象地域が拡大。最終的に首都圏の1都3県では3月21日まで宣言が維持された。この時の東京都では3月10日前後を境に前週同一曜日の感染者報告を上回り、200~300人台で感染者報告は下げ止まった。宣言期間が約2ヵ月半におよんだうえでの下げ止まりで、打つ手なしのやや投げやりな解除にも映った。実際、諮問委員会では反対意見を言った専門家は一人もいなかったこと、それに驚いたことを尾身氏自身が明らかにしている。「宣言解除、専門家の反対はゼロ 尾身会長も驚いた議論」(朝日新聞)こう書くと、「そういう尾身氏自身が反対しなかったのでは?」と野暮な突っ込みをする人が出てくるだろうが、あくまで専門家は助言・提言を行う立場であることを考えれば、おのずとできることに限界はある。ただ、その後まもなくリバウンドが起こり、現実に3回目の宣言発出になったからこそ、前述の会見での発言につながったのだろうと思う。専門家としての後悔も感じていたのではないかと思えるし、それ以上に政治の側に公の場で「くぎを刺す」意味もあったのだろう。だからこそ私はこの尾身氏の示した基準通りに政府側が動くか否かだけを注視していた。すでに答えは明らかで、模範解答は破り捨てられた。しかも、今回の東京都では、2回目の宣言解除直前よりやや多い300~400人台の感染者報告数で「まん防」に移行した。前回と違って一気に解除ではなく「まん防」に移行しているのだからましだと思えるかもしれないが、町の様子を見ていると多くの人は「移行」というよりは「解除」と捉えているのではないだろうか。現在、ようやく目標の1日100万回に達したワクチン接種。これを促進して力技で第5波への突入を阻止できるかは微妙だ。だが、もし第5波となってしまえば、今回はさすがに今まで以上に政府・政治家の責任は大きいと言わざるを得ない。と、そう思ったのだが、この政治は言ってしまえばわれわれの総意の結果、産み出されているものである。そうなるとやっぱり自分たちの赤点ぶりも相当のものと反省しなければならないとも思うのである。

1355.

コロナワクチンで注目される有害事象、ワクチンなしでの発生率は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン関連の、とくに注目される15種の有害事象(AESI)のバックグラウンド発生率を8ヵ国のデータベースを基に調べたところ、年齢や性別によりばらつきがあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らによる検討で明らかにされた。データベース間でも差が認められたという。ワクチン有害事象のバックグラウンド率は、ワクチン接種者の間で観察された割合のベースラインコンパレータとして機能することで、ワクチンの安全性を監視するうえで歴史的に重要な役割を果たしているが、研究結果を踏まえて著者は、「バックグラウンド率をサーベイランス目的で用いる場合は、同一のデータベースを使い比較する必要性が示唆された。事前に年齢や性別による差を考慮し、階層化や標準化が必要だ」と述べている。BMJ誌2021年6月14日号掲載の報告。脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓症など15のAESI発生率を解析 研究グループは、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、スペイン、英国、米国の8ヵ国の電子健康記録と医療費支払いデータを基に、COVID-19ワクチン関連の15のAESIに関するバックグラウンド発生率を定量化した。事前に規定した15のAESIは、非出血性・出血性脳卒中、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アナフィラキシー、ベル麻痺、心筋炎/心膜炎、ナルコレプシー、虫垂炎、免疫性血小板減少症、播種性血管内凝固症候群、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎だった。 AESI発生率は、年齢、性別、データベースにより層別化。発生率はランダム効果メタ解析を用いて別のデータベースとプール化し、国際医学団体協議会(Council for International Organizations of Medical Sciences:CIOMS)による頻度カテゴリーに従って分類した。データベースや年齢、性別によりAESI発生率に差 13のデータベースを基に、1億2,666万1,070人について2017年1月1日~2019年12月31日の間に365日以上の観察を行った(観察日は各年の1月1日)。 AESIバックグラウンド発生率は、データベースにより大きなばらつきがあった。たとえば、深部静脈血栓症の65~74歳女性の発生率は、英国CPRD GOLDデータベースでは387件(95%信頼区間[CI]:370~404)/10万人年だったが、米国IBM MarketScan Multi-State Medicaidデータでは1,443件(1,416~1,470)/10万人年だった。 AESI発生率は、年齢上昇に伴い増加するものもあった。具体的には、米国Optum電子健康記録データでは、男性の心筋梗塞発生率は、18~34歳では28件(95%CI:27~29)/10万人年だったが、85歳超では1,400件(1,374~1,427)/10万人年だった。 一方で、若年層に多くみられるAESIもあった。同健康記録データでは、男性のアナフィラキシー発生率は、6~17歳では78件(95%CI:75~80)/10万人年だったが、85歳超では8件(6~10)/10万人年だった。 メタ解析によるAESI発生率の推定値は、年齢および性別で分類された。

1356.

第59回 コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省

<先週の動き>1.コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省2.ワクチン予診で、初・再診療、外来診療料の算定不可/厚労省3.職域接種診療所、管理者は常勤医でなくとも開設可/厚労省4.次の感染拡大に向け、都道府県の新たな病床確保計画を公表/厚労省5.9月からレセプト審査でAI稼働、ローカルルール廃止へ/支払基金6.こども庁創設、オンライン診療の恒久化を明記/骨太の方針1.コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省厚生労働省は、特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」で、新たな質問「Q.ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか」を更新した。回答の下に「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただけます」と記載され、参考資料としてCDCのページが示されている。巷では、「ワクチン後の解熱鎮痛にNSAIDsは使えない」などと誤った認識が広まっている可能性があり、アセトアミノフェン単剤の市販薬が売り切れるなどの影響が出ているため、これを機に正確な情報発信に努めたい。(参考)ワクチン接種後に発熱や頭痛が…市販薬は飲んでいいの?<新型コロナ>(東京新聞)【新型コロナウイルス感染症】気になるワクチン接種後の発熱 解熱鎮痛剤の使用について(感染症・予防接種ナビ)ワクチン接種後に発熱…どうする? アセトアミノフェンが人気 市販薬“正しい使い方”〈宮城〉(仙台放送)2.ワクチン予診で、初・再診療、外来診療料の算定不可/厚労省新型コロナワクチン接種の予約に当たり、予診を事前に行ったとして診療報酬を請求する事例があったため、厚労省は17日に、「注射をする前の予診実施に対して初診料、再診料、外来診療料などの診療報酬を算定することは不可」とする通知を発出した。なお、接種後の救急対応を行ったなど、処置や検査、投薬などに対応する項目について、それぞれ算定要件を満たした場合には、その分の診療報酬を算定できる。(参考)ワクチン接種、病院で代金請求に疑問の声「無料のはず」でも再診料請求のなぜ?(京都新聞)コロナワクチン接種のための「予診」、初診料や再診料・外来診療料の算定は「不可」―厚労省(GemMed)3.職域接種診療所、管理者は常勤医でなくとも開設可/厚労省厚労省は、職場でのワクチン接種を推進するため、医療法上の臨時的な取り扱いをまとめ、14日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの迅速な接種のための体制確保に係る医療法上の臨時的な取扱いについて(その4)」を発出した。職域単位でのワクチン実施に当たっては、都道府県知事が、適正かつ安全なワクチン接種に係る医療を提供するための医療法に規定される義務を果たすことが可能か確認した上で、「職域接種診療所」の開設を許可する。また、管理者は必ずしも常勤医でなくても可能となっている。さらに厚労省は、来年2月までの特例措置として、接種会場での看護師不足に対して、看護師の人材派遣を解禁している。5月14日時点で、全国の自治体から5,095人の看護師を確保しており、ワクチン接種加速のためにさまざまな規制緩和がなされる。(参考)「職域でのコロナワクチン接種」促進に向け、診療所開設・変更など届け出を臨時特例的に柔軟化―厚労省(GemMed)特例解禁の看護師派遣、151自治体で計5095人確保(読売新聞)4.次の感染拡大に向け、都道府県の新たな病床確保計画を公表/厚労省17日、厚労省は、各都道府県が次の新型コロナウイルス感染拡大に備えて作成した「病床・宿泊療養施設確保計画」を発表した。今年1月第3波の患者数の2倍を上回る想定で、これまでより約4,800床多い3万5,000床を確保。また、看護師不足にも対応するために、広域派遣が可能な看護師73人を確保した。(参考)13.6万人の療養者想定 全国の病床確保計画―厚労省集計(時事ドットコム)コロナ病床、全国で4800積み上げ3万5千床を確保(朝日新聞)「第3波の2倍」想定 都道府県の新たな病床確保計画公表 厚労省(NHK)5.9月からレセプト審査でAI稼働、ローカルルール廃止へ/支払基金社会保険診療報酬支払基金による改革の一環で、今年9月審査分より、AI(人工知能)を用いた新しい審査システムが導入される。これにより、8割程度をAI、2割程度を人による審査に振り分け、2年以内にレセプト全体の9割程度をコンピューターチェックで完結することを目指す。また、9月の新システム稼働までに、支払基金の各支部にある独自のチェックルール(ローカルルール)が、原則すべて集約または廃止される。都道府県間における審査結果の不合理な差異の解消や、審査業務の効率化・高度化の推進を進める。(参考)支払基金、人による審査8割減目指し今年9月審査分からレセプト審査にAI導入(ワタキューメディカルニュース)資料 社会保険診療報酬支払基金の審査事務 集約化に向けた取組と今後の課題6.こども庁創設、オンライン診療の恒久化を明記/骨太の方針菅内閣は、18日に開催された臨時閣議において、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」を閣議決定した。感染症の克服と経済の好循環を目指し、希望する高齢者へのワクチン接種を今年7月末に完了し、希望する全対象者への接種を本年10~11月にかけて終えることを目指す。効果的な治療法、国産治療薬の研究開発・実用化の支援および国産ワクチンの研究開発体制・生産体制の強化を行い、感染症有事に備える取り組みとして、より実効性のある対策を講じることができるよう、法的な整備を行う。また、少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現のためにこども庁の創設や、行政手続のオンライン化によりデジタルガバメントの推進を図ること、さらにオンライン診療を幅広く活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医によるものと限定しつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で、具体案を検討することが打ち出されている。(参考)骨太方針、成長戦略、規制改革実施計画を閣議決定 ワクチン接種「10~11月完了」(NHK)「経済財政運営と改革の基本方針2021」(内閣府)

1357.

AZ製ワクチン、毛細血管漏出症候群を副反応に追加/欧州医薬品庁

 欧州医薬品庁(EMA)の安全委員会・ファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)はアストラゼネカ製のCOVID-19ワクチン「Vaxzevria:開発名ChAdOx1 nCoV-19(AZ製ワクチン)」に関するレビューをサイト上で発表し、過去に毛細血管漏出症候群を発症した人はAZ製ワクチンを接種すべきではない、と結論付けた。 毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)は、毛細血管から液体が漏出し、手足のむくみ、低血圧、アルブミン血中濃度の低下などが生じ、全身の浮腫や腎不全などの症状を引き起こす希少疾患。 PRACは、AZ製ワクチンを接種した毛細血管漏出症候群の6例について詳細な検討を行った。症例の大半が女性で、ワクチン接種後4日以内に発生した。対象者のうち3例は毛細血管漏出症候群の既往歴があり、うち1例はその後死亡した。2021年5月27日時点で、AZ製ワクチンはEU/EEAおよび英国において7,800万回以上接種されている。 PRACは、毛細血管漏出症候群の兆候や症状、および過去に同症候群と診断されたことのある人の再発リスクに対する認識を高めるために、医療従事者とコミュニケーションをとることを検討しており、あわせて毛細血管漏出症候群をワクチンの新たな副反応として製品情報に追加し、このリスクについて医療従事者や患者の認識を高めるための警告を加えるべき、と結論付けている。

1358.

「COVID-19ワクチンに関する提言」、変異株や安全性の最新情報追加/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田一博氏[東邦大学医学部教授])は、6月16日に「COVID-19ワクチンに関する提言」(第3版)を同学会のホームぺージで発表、公開した。 第1版は2020年12月28日に、第2版は2021年2月26日に発表・公開され、ワクチンの有効性、安全性、国内での接種の状況、接種での注意点などが提言されていた。今回は、第2版以降の新しい知見に加え、新しく承認されたワクチンの効果、安全性について加筆された。 主に加筆・修正された箇所は下記の通り。【ワクチンの有効性について】・ファイザーのコミナティ筋注について、わが国の報告では、初回接種後57.1%(60/105)、2回接種後99.0%(104/105)の抗体陽転率がみられる。・モデルナのCOVID-19ワクチンモデルナ筋注について、2回接種後の中和抗体価(55歳未満でそれぞれ184と1,733、55歳以上で160と1,827)は、海外で行われた臨床試験とほぼ同等。また、抗体陽転率は100%であり、高い免疫原性が示されている。・アストラゼネカのバキスゼブリア筋注について、いずれの年齢層でも中和抗体価が初回接種後より2回目接種後で上昇。・ファイザーとモデルナのワクチンの実社会での有効性は、米国CDCの報告から2回接種14日以後で発症者が90%減少、65歳以上のCOVID-19による入院率が94%減少、医療従事者の発症率が2回接種7日以後で94%減少。・ファイザーのワクチンでは、イスラエルで接種群と対照群それぞれ59万人を対象とした大規模な比較研究が行われ、接種群では2回接種7日以後の発症が94%、入院率が87%、重症化率が92%減少した。また、1回接種後14~20日の期間でも、発症54%、入院率74%、重症化率62%の有効率。【変異株とワクチンの効果】・ファイザーやモデルナのワクチンで誘導される抗体による中和活性には若干の減少がみられるが、ワクチンの有効性に大きな影響はない。アストラゼネカのワクチンで誘導される抗体の中和活性は約9分の1に低下するが、実際の発症予防効果は従来株での81.5%に対して、B.1.1.7でも70.4%の有効率。また、インド型変異株(B.1.617、δ)などの3つの亜型のうちB.1.617.1とB.1.617.3には免疫回避をもたらすE484Q変異がみられ、ワクチン効果が低下することが懸念され、B.1.617.1では、ファイザーとモデルナのワクチンで誘導される抗体の中和活性が、いずれも7分の1に低下していることが報告されている。【ワクチンの安全性】・海外の臨床試験における有害事象では、アストラゼネカのワクチンで血栓塞栓イベントがまれながら発生したことから、再評価が行われた上で接種が進んでおり、ファイザーのワクチンでは、12~15歳における安全性が海外の臨床試験で評価され、副反応の種類・頻度は16~25歳と比較してほぼ同等であり、重篤な健康被害はみられなかった。・わが国での臨床試験における有害事象について、ファイザーのワクチンでは、医療従事者1万9千人を対象に先行接種者健康調査が行われたが、初回接種後の発熱(37.5℃以上)が3.3%と国内臨床試験に比べて低かった以外はほぼ同等の副反応の頻度だった。発熱は接種翌日(2日目)に多く、接種3日目にはほとんど消失。モデルナのワクチンでは、海外の臨床試験やファイザーのワクチンの国内臨床試験の結果と大きな違いはなかったが、2回目の発熱が40.1%と高い頻度(これは口腔内体温で測定している影響も考慮)。なお、モデルナのワクチンでは、接種1週間以後に遅発性の局所反応(疼痛、腫脹、紅斑など)が海外で報告され、国内臨床試験でも5.3%(8/150)にみられ、すべて初回接種後8~22日に発現し、持続期間は2~15日だった。・mRNAワクチン接種後の心筋炎について、ファイザーのワクチン接種後に心筋炎症例が報告され、年齢は14~56歳の範囲で、10代から20代の男性に多く、接種後1日から数日後に胸痛や胸部違和感などの症状で発症し、心電図異常やトロポニンの上昇が確認されている。軽症例がほとんどで、2回目の接種後に多く見られている。わが国では5月30日現在で8人のファイザーのワクチン接種後の心筋炎が報告されているが、6月9日時点においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められず、引き続き国内外の情報を収集しつつ接種を継続。・アストラゼネカのウイルスベクターワクチン接種後の血栓塞栓イベントについて、ワクチン接種後4~28日に発症、脳静脈血栓症や内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる血栓症、中等度~重度の血小板減少、凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、抗血小板第4因子抗体の陽性などが特徴。発症機序は不明だがアデノウイルスが血小板に結合して活性化することが報告されている。【国内での接種の方向性】・12~15歳へのmRNAワクチンの接種について、わが国でも6月1日から予防接種法の臨時接種として接種が認められたが、有効性とリスクの観点から接種する場合、個人への丁寧な説明が困難な集団接種ではなく、医療機関における個別接種が望ましい。・COVID-19罹患者への接種では、すでに罹患した人にファイザーやモデルナのmRNAワクチンを1回接種した場合、抗スパイクタンパク質抗体価が未罹患者より10~100倍程度上昇するという報告があり、罹患者への接種でさらに強い免疫が得られると考えられる。厚生労働省のQ&Aでは、「感染した方もワクチンを接種することができ、現時点では通常通り2回接種できる」とあり、回復後の適当な時期に接種することが奨められる。ワクチン接種後の感染対策も重要 最後に提言では、「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではない。接種しても一部の人は発症する。発症しなくても感染し、無症状病原体保有者として人に広げる可能性も一部にはある。また、ワクチンの効果がどのくらい続くかも不明。COVID-19の蔓延状況が改善するまでは、マスク、手洗いなどの基本的な感染対策は維持しなければならない」と注意を喚起するとともに、「最終的に接種するかどうかは個人の判断にゆだねられるべきであり、周囲から接種を強制されることがあってはならない。また、健康上の理由で接種できない人や個人としての信条で接種を受けない人が、そのことによって何らかの差別を受けることがないよう配慮が必要」とラベリングなどへの注意も示している。

1359.

ワクチン予診票、17ヵ国語対応版を公開/厚労省

 厚生労働省サイトでは、各国語に対応した新型コロナワクチン接種に使う「予診票」「ワクチン種類別の説明書」「接種に関するお知らせ」が公開されている。 対応言語は英語、中国語(簡体字・繁体字)、フランス語、アラビア語など計17ヵ国語。「予診票」はかかりつけ医の項目が削除された最新版に対応しており、ファイザー製とモデルナ製それぞれに対応した「説明書」は対象年齢や接種のスケジュール、接種が受けられないケースといった基本事項が説明されている。「接種のお知らせ」は接種当日の服装や持ちものについての説明が記載されている。 医療従事者、高齢者以外にもワクチン接種が進み、今後は在日外国人等への接種も本格化することが見込まれる中、自治体や大規模接種センターでの用途が想定される。なお、各国語版での予診票では接種費用の請求はできず、日本語版の予診票に転記して請求することが必要となる。

1360.

男性の精子数、mRNAワクチン接種で減少なし/JAMA

 COVID-19感染後に男性の生殖機能に障害が生じるという複数の報告※1※2があるが、mRNAワクチン接種後に精子の状態を調べた研究では、精子濃度が高まり、精液量と精子運動性も高まったことが確認されたという。JAMA誌オンライン版2021年6月17日号Research Letterの報告。 米マイアミ大学で行われたこの単施設の前向き研究では、18~50歳までの健康な男性をボランティアとして募集。参加者は不妊症の基礎疾患がないことが確認され、COVID-19有症状者と90日以内の検査結果陽性者は除外された。参加者は2~7日間の禁欲後、1回目のワクチン接種前と2回目のワクチン接種から約70日後に精液サンプルを提出した。 主な結果は以下のとおり。・2020年12月17日~2021年1月12日に45例が登録した(年齢中央値:28歳[IQR:25~31])。2回目接種後サンプルは中央値75(IQR:70~86)日目に提出され、試験は2021年4月24日に終了した。・サンプル接種前の禁欲期間は、ベースライン時は中央値2.8(IQR:2~3)日、フォローアップ時は中央値3(IQR:3~4)日だった。・45例中、21例(46.7%)がBNT162b2(ファイザー製)を接種し、24例(53.3%)がmRNA-1273(モデルナ製)を接種した。・ベースライン時の精子濃度は2,600万/mL(IQR:1,950~3,400)、総運動精子数(TMSC)は3,600万(IQR:1,800~5,100)だった。2回目接種後、精子濃度中央値は3,000万/mL(IQR:2,150~4,050、p=0.02)、TMSC中央値は4,400万(IQR:2,700~9,800、p=0.001)と有意に上昇し、精液量と精子の運動性も有意に増加した。・ワクチン接種前には45例中8例が乏精子症だった(濃度中央値:850万/mL[IQR:510~1,200])が、8例中7例は追跡調査で正常精子域まで精子濃度が増加した(中央値:2,200万/mL[IQR:1,700~2,550])。・ワクチン接種後に無精子症になった例はなかった。 研究者らは、mRNAワクチンが精子のパラメータに影響を与える可能性は低く、数値の増加は通常の個人差の範囲内であり、2回目のサンプル採取までの禁欲期間が長くなったことが要因の一つとして考えられる、としている。

検索結果 合計:2206件 表示位置:1341 - 1360