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<先週の動き>1.新型コロナ新変異株「KP.3」拡大で感染者数急増/政府2.新型コロナワクチン定期接種10月から開始、任意接種は1万5,000円/厚労省3.かかりつけ医制度の整備進む、2025年度から報告義務化/厚労省4.マイナ保険証推進のため医療DX推進体制整備加算の見直しが決定/中医協5.新興感染症対策強化へ、新たな行動計画と備蓄計画を発表/厚労省6.専門医機構の特別地域連携プログラム、要件緩和案に反発広がる/厚労省1.新型コロナ新変異株「KP.3」拡大で感染者数急増/政府林 芳正官房長官は7月19日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染者数が増加していることについて、「今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」と述べ、感染対策を徹底するよう呼び掛けた。厚生労働省によると、全国約5,000の定点医療機関から7月8~14日に報告された感染者数は5万5,072人で、1医療機関当たり11.18人と、前週比1.39倍に増加。感染者数は10週連続で増加し、とくに九州地方での増加が目立った。鹿児島県の定点医療機関の感染者数は31.75人、佐賀県は29.46人、宮崎県は29.34人と高い水準を記録。東京(7.56人)、愛知(15.62人)、大阪(9.65人)、福岡(14.92人)でも増加が確認され、全国45都府県で感染者数が増加していた。入院者数も増加傾向にあり、14日までの1週間で新規入院患者は3,081人、前週の2,357人から724人増加。集中治療室(ICU)に入院した患者数も113人と、前週から11人増加していた。専門家は、今回の感染拡大の背景には、新たな変異株「KP.3」の存在があると指摘する。東京大学の研究チームによると、KP.3はオミクロン株から派生した変異株で、感染力が強く、免疫を回避しやすい特徴があるという。とくに高齢者は重症化するリスクがあるため、十分な対策を講じる必要がある。感染症に詳しい東京医科大学の濱田 篤郎客員教授は、「今後、夏休みやお盆期間中に人の移動が増えることで、感染がさらに拡大する可能性がある」と警告。室内の換気や手洗い、マスクの着用など基本的な感染対策の徹底を呼び掛けている。また、高齢者は人混みを避け、感染が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診することが重要だとしている。参考1)新型コロナ流行、なぜ毎年夏に 「第11波」ピークは8月か(朝日新聞)2)新型コロナの感染者数増加 林官房長官が注意喚起(毎日新聞)3)コロナ「第11波」、夏の流行期前に変異株KP・3が主流 梅雨明けで影響か(産経新聞)2.新型コロナワクチン定期接種10月から開始、任意接種は1万5,000円/厚労省2024年7月18日に厚生労働省は、新型コロナウイルスと帯状疱疹のワクチンを定期接種化する方針を発表した。新型コロナワクチンの定期接種は10月1日から開始予定で、65歳以上の高齢者と60~64歳の重症化リスクが高い人を対象とする。帯状疱疹ワクチンについては、対象年齢を65歳とし、費用を公費で支援する定期接種とする案が示された。新型コロナワクチンの定期接種は、2023年度まで全額公費負担で無料接種が行われていたが、今秋からは季節性インフルエンザと同様に接種費用の一部自己負担が求められる。接種費用の自己負担額は自治体によって異なるが、最大で7,000円と設定される。国は接種1回当たり8,300円を各自治体に助成し、費用負担を軽減する。接種期間は、2024年10月1日~2025年3月31日までで、各自治体が設定する。対象外の人は「任意接種」となり、全額自己負担で費用は約1万5,000円程度となる見込み。また、帯状疱疹ワクチンの定期接種についても同日、厚労省の予防接種基本方針部会で議論が行われた。帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)と同じウイルスが引き起こし、加齢や疲労などによる免疫力の低下で発症する。日常生活に支障を来すほどの痛みが生じることがある。現在、国内で承認されている帯状疱疹ワクチンは、阪大微生物病研究会の生ワクチンと、英グラクソ・スミスクラインの不活化ワクチンの2種類である。部会では、65歳を対象とする定期接種化を検討し、帯状疱疹や合併症による重症化予防を目的とすることが提案された。厚労省は今後、専門家による会議での議論を経て正式に決定する予定。参考1)厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(厚労省)2)帯状疱疹ワクチン65歳に定期接種化、厚労省案 引き続き検討(CB news)3)新型コロナワクチン 高齢者など対象の定期接種 10月めど開始へ(NHK)4)新型コロナワクチンの定期接種、10月から開始…全額自己負担の任意接種費は1万5,000円程度(読売新聞)3.かかりつけ医制度の整備進む、2025年度から報告義務化/厚労省厚生労働省は、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を7月19日に開き、2025年4月に施行される新たな報告制度を巡る議論を大筋で取りまとめた。新しい報告制度によって、各都道府県が病院や診療所に対して、かかりつけ医の機能や診療できる疾患を毎年報告させる。報告された情報はウェブサイトで公開され、患者がかかりつけ医を選びやすくすることを目指す。この報告制度は、大学病院や歯科医療機関を除くすべての病院や診療所を対象とし、かかりつけ医の研修を修了した医師や総合診療専門医の有無も報告対象に含まれる。診療できる疾患は、患者にわかりやすいように高血圧や腰痛症、かぜ・感冒などの40疾患から選ぶ形となる。報告された情報は、厚労省の医療機関検索サイト「ナビイ」で公開される予定。地域の医療提供体制を把握し、足りない機能があれば対策を講じるよう各自治体に求める。初回の報告は2026年初めごろを見込んでおり、制度開始に向けてルールの改正やガイドライン作成が進められる。また、この報告制度では、病院や診療所は「日常的な診療」(1号機能)と「時間外診療」(2号機能)の2段階で報告する。1号機能は17の診療領域ごとに一時診療に対応できるかどうかを報告し、かかりつけ医機能に関する研修修了者や総合診療医の有無も報告する。2号機能には時間外診療や在宅医療、介護サービスとの連携が含まれる。時間外診療の体制については、在宅当番医制や休日夜間急患センターへの参加状況などを報告する。かかりつけ医機能の報告制度は、5年後を目途に報告内容の見直しが検討される。初回の報告時には「高血圧」「脳梗塞」「乳房の疾患」などの40疾患についての報告を求めるが、施行から5年後に改めて検討する予定である。また、かかりつけ医機能に関する研修の要件を設定し、それに該当する研修を示す予定。今回の制度導入により、患者が適切なかかりつけ医を選びやすくなると同時に、医療提供体制の強化が期待されることで、地域医療の質の向上が期待される。参考1)第8回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会(厚労省)2)「かかりつけ医機能報告」枠組み固まる 一次診療への対応は「17領域ごと」に(CB news)3)かかりつけ医、選びやすく 来年度、診療疾患をウェブ掲載(日経新聞)4.マイナ保険証推進のため医療DX推進体制整備加算の見直しが決定/中医協7月17日に厚生労働省は、中央社会保険医療協議会を開催し、2024年度の診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」の見直しを決定した。見直しでは、マイナカードの利用率の実績に応じて、医療DX推進体制整備加算を3区分に再編することが含まれている。具体的には、医科における加算1が現在の8点から11点に引き上げられる。医療情報取得加算についても変更があり、患者がマイナ保険証を利用するかどうかで区分されていた初診時と再診時の点数が、12月以降はそれぞれ1点に一本化されることが決定した。医療DX推進体制整備加算の医科における点数は、10月以降、加算1が11点、加算2が10点に引き上げられるのと同時に、マイナポータルの医療情報に基づき患者からの健康管理の相談に応じることが新たに求められる。加算3は現在の8点を維持し、相談対応の基準は設定されない。マイナ保険証の利用率は、原則として適用3ヵ月前のレセプト件数ベースでの実績を使い、10月から2025年1月までは2ヵ月前のオンライン資格確認件数ベースでの利用率の使用も認められる。具体的な基準値は、10~12月には加算1が15%、加算2が10%、加算3が5%となり、2025年1~3月にはそれぞれ30%、20%、10%に引き上げられる予定。2025年4月以降の基準は年末をめどに検討される予定となっている。医療情報取得加算については、医科の初診時と再診時の点数が12月以降に1点に一本化される。これは、現行の保険証が12月に廃止され、マイナ保険証に一本化されることに対応するための措置。厚労省は、この改定を8月中に告示する予定。一方、厚労省は、低迷するマイナ保険証の利用を推進するため、医療従事者のマイナ保険証に関する疑問を解消するためのセミナーを7月19日にYouTubeでライブ配信した。セミナー資料は下記のリンクを参照されたい。厚労省は、医療DX推進体制整備加算の見直しにより、マイナ保険証の利用率向上を図り、医療現場でのデジタルトランスフォーメーションを推進する考え。2025年度以降も、電子処方箋の普及のため、さらなる引き上げが検討される予定。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(厚労省)2)徹底解決!マイナ保険証への医療現場の疑問 解消セミナー(同)3)医療DX推進体制加算1は11点、10月以降 加算3は8点、中医協が即日答申(CB news)4)マイナ保険証、来年度以降の基準は年末めどに 医療DX推進体制加算 中医協で検討・設定(CB news)5.新興感染症対策強化へ、新たな行動計画と備蓄計画を発表/厚労省7月17日に厚生労働省は、厚生科学審議会感染症部会を開催し、新型インフルエンザ等対策政府行動計画に基づく新ガイドライン案を示した。このガイドラインでは、緊急時に備えて医療用マスク3億1,200万枚を国と都道府県で備蓄することを盛り込んでいる。ガイドライン案には、高機能なN95マスク2,420万枚や非滅菌手袋12億2,200万枚の備蓄など、物資確保の項目が新たに追加された。都道府県は、初動1ヵ月分の物資を備蓄し、国は2ヵ月目以降の供給が回復するまでの分を備蓄する。また、事実誤認の指摘など国民への情報発信の強化も求められている。2024年度からの新しい医療計画(第8次医療計画)では、「新興感染症対策」が追加され、各都道府県で感染患者受け入れ病床や発熱患者対応外来医療機関の確保が進展している。6月1日時点で病床確保は目標の81.8%、発熱外来は54.0%の達成率となっている。とくに流行初期に確保すべき病床の進捗率は109.5%、初期に対応すべき発熱外来は124.1%と目標を上回る進展をみせている。新医療計画では、新興感染症の流行初期や蔓延時に備えて、都道府県と医療機関が「医療措置協定」を締結することが義務付けられている。現在、各都道府県で協議が進行中であり、9月末までに協定の締結完了を目指している。協定締結が進む一方で、病床数や発熱外来の整備が依然として必要とされている。部会では、病床の確保だけでなく医療従事者の確保も課題として挙げられた。出席した委員からは、「病床数は多いが医療従事者が不足することで運用が難しい」との指摘があり、医療現場の状況の把握も検討が求められた。また、初動期には各都道府県が相談センターを整備し、受診調整を実施することが提案された。厚労省は同日、新型インフルエンザ等対策ガイドラインの案も示し、感染症発生前の「準備期」から発生後の「初動期」、「対応期」ごとに対応策を整理し、感染者の受け入れや流行段階に応じた対応を求めている。政府は、今後もガイドラインの内容を議論し、夏ごろに取りまとめを目指す予定。参考1)新型インフルエンザ等対策政府行動計画 ガイドライン案 概要(厚労省)2)第87回厚生科学審議会感染症部会(同)3)新興感染症対策、各都道府県の「感染患者受け入れ病床」「発熱患者に対応する外来医療機関」確保が着実に進展-社保審・医療部会(Gem Med)4)感染症のまん延防止策、ガイドライン案を公表 リスク評価に基づき、機動的に実施 厚労省(CB news)5)感染症有事の対応、「病床確保」だけでは不十分 厚科審でガイドライン案めぐり議論(同)6.専門医機構の特別地域連携プログラム、要件緩和案に反発広がる/厚労省日本専門医機構は、7月19日に開催された厚生労働省の医道審議会の医師専門研修部会で、医師少数区域の施設で1年以上の研修を設ける「特別地域連携プログラム」の要件緩和案を示した。この案では、新たに医師を1年以上派遣する研修施設を連携先に加えることを提案。しかし、「ミニ一極集中」を招く恐れがあるとして反対意見が相次いだ。特別地域連携プログラムは、医師が不足している都道府県の医師少数区域の施設などを連携先とし、1年以上の研修を行うもの。しかし、研修施設としての要件を満たす施設が少ないことから、連携枠を設けるのが困難だという指摘が複数の学会から出ていた。そのため、同機構は2025年度に向けて、医師多数区域であっても、医師少数区域の医療機関に新たに医師を派遣する研修施設であれば、連携先に加えることを提案した。しかし、立谷 秀清委員(全国市長会相馬市長)は「ミニ一極集中を助長する」と反対を表明。2024年度のプログラムで採用された専攻医42人の連携先のうち、約4割が茨城県、約3割が埼玉県と、東京に近い地域に偏っていることが問題視され、他の委員からも反対意見が多く出された。花角 英世委員(全国知事会新潟県知事)は、要件緩和を行うにしても「シーリングの効果が十分に発揮されていない東北や東海、甲信越地域の医師少数区域に医師が派遣されるような制限を設けるべき」と主張し、医師の偏在解消に効果が期待できる制度設計を求めた。参考1)令和6年度第1回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省)2)特別地域連携プログラム、「要件緩和」に反対相次ぐ 25年度シーリング案 専門医機構(CB news)