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コロナ感染後の手術、間隔が長いほど術後の心血管疾患リスク減

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染から手術までの間隔が長くなるほど、術後の主要心血管イベント複合転帰のリスクが低くなることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJohn M. Bryant氏らが単一施設の後ろ向きコホート研究によって明らかにした。JAMA Netw Open誌2022年12月14日号掲載の報告。コロナ感染後、手術までの期間が長くなるほど複合転帰の発生率が低下これまで、複数の研究によってコロナ感染と手術後の死亡率増加の関連が報告されているが、コロナ感染から手術までの期間と死亡率の関連性についてはまだ不十分であった。そこで研究グループは、コロナ感染から手術までの期間が短いほど、術後の心血管イベントの発生率が上がると仮説を立て、手術後30日以内の心血管イベントリスクを評価することにした。 対象は、PCR検査によるコロナ感染歴があり、かつ2020年1月1日~2021年12月6日にヴァンダービルト大学医療センターで手術を行った3,997例(年齢中央値51.3歳、女性55.6%、白人74.8%)であった。主要エンドポイントは、手術後30日以内の深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管障害、心筋損傷、急性腎障害、または死亡の複合転帰であった。データ分析は2022年3月29日に実施された。 コロナ感染から手術までの期間と心血管イベント発生率の関連性について評価した主な結果は以下のとおり。・コロナ感染の診断から手術までの期間の中央値は98日(四分位範囲[IQR]:30~225日)で、3,997例中1,394名(34.9%)が7週以内に手術を受けていた。・手術の内訳は、消化器系25.1%、整形外科系14.3%、頸部・頸部10.4%、産婦人科系9.6%、腹部全般9.3%、循環器系5.8%、泌尿器科系5.8%などであった。・術後30日以内に485例(12.1%)で主要心血管イベントが確認された。急性腎障害は363例(9.1%)、心筋損傷は116例(2.9%)、深部静脈血栓症は61例(1.5%)、脳血管障害は29例(0.7%)、肺塞栓症は16例(0.4%)、死亡は79例(2.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、コロナ感染から手術までの期間が長くなるほど、主要心血管イベントの複合転帰の発生率は低くなった(10日あたり調整オッズ比[aOR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.98~1.00、p=0.006)。・高齢、男性、黒人/アフリカ系、全身状態不良、泌尿器科系手術、併存症を既往している患者などでは、主要心血管イベントの複合転帰の発生率が高かった。・新型コロナ感染症の症状の有無、ワクチン接種の有無にかかわらず、陽性診断から手術までの経過日数と複合転帰の発生率は同様の傾向を示した。 研究グループは、これらの結果から「コロナ感染の診断から手術までの間隔の延長が、術後の重大な心血管疾患イベントの低減と関連していた。コロナ感染歴のある患者の手術タイミングと転帰の議論に役立ててほしい」とまとめた。

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12月27日 国際疫病対策の日【今日は何の日?】

【12月27日 国際疫病対策の日】〔由来〕新型コロナウイルス感染の初確認から約1年となる2020年、疫病の大流行に対する備えの必要性を国際社会が認識し続ける狙いをこめて、国連総会の本会議で採択し、制定。関連コンテンツCOVID-19 関連情報まとめサル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】今、知っておきたいワクチンの話COVID-19罹患後症状のマネジメントの手引きの活用法【診療よろず相談TV】英語で「性交渉はありますか」は?【1分★医療英語】

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12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。 本研究では、2022年8月25日までに報告された、12~20歳のCOVID-19ワクチン関連心筋炎の臨床的特徴と早期転帰の観察研究および症例集積研究を、PubMedとEMBASEのデータベースより23件抽出し、ランダム効果モデルメタ解析を行った。抽出されたのは、前向きまたは後ろ向きコホート研究12件(米国、イスラエル、香港、韓国、デンマーク、欧州)、および症例集積研究11件(米国、ポーランド、イタリア、ドイツ、イラク)の計23件の研究で、COVID-19ワクチン接種後の心筋炎患者の合計は854例であった。被験者のベースラインは、平均年齢15.9歳(95%信頼区間[CI]:15.5~16.2)、SARS-CoV-2感染既往者3.8%(1.1~6.4)。心筋炎の既往や心筋症を含む心血管疾患を有する者はいなかった。 本系統レビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドライン、およびMOOSEガイドラインに従った。バイアスリスクについて、観察研究はAssessing Risk of Bias in Prevalence Studies、症例集積研究はJoanna Briggs Instituteチェックリスト、各研究の全体的品質はGRADEを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・接種したワクチンは、ファイザー製(BNT162b2)97.5%、モデルナ製(mRNA-1273)2.2%であった。・ワクチン接種後に心筋炎を発症した患者では、男性が90.3%(87.3~93.2)であった。・ワクチン接種後に心筋炎を発症した患者では、1回目接種後(20.7%、95%CI:58.2~90.5)よりも2回目接種後(74.4%、58.2~90.5)のほうが多く、心筋炎の発生率は、1回目接種後が100万人あたり0.6~10.0例、2回目接種後が100万人あたり12.7~118.7例であった。・ワクチン接種から心筋炎発症までの平均間隔のプールされた推定値は2.6日(95%CI:1.9~3.3)であった。・左室収縮障害(LVEF<55%)は患者の15.6%(95%CI:11.7~19.5)に認められたが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)を有する患者は1.3%(0~2.6)にすぎなかった。・心臓MRI検査(CMR)では、87.2%の患者にガドリニウム遅延造影(LGE)所見が認められた。・92.6%(95%CI:87.8~97.3)の患者が入院し、23.2%(11.7~34.7)の患者がICUに収容されたが、昇圧薬投与は1.3%(0~2.7)にとどまり、入院期間は2.8日(2.1~3.5)で、入院中の死亡や医療機器の支援を必要とした患者はいなかった。・最もよく見られた心筋炎の臨床的特徴は、胸痛83.7%(95%CI:72.7~94.6)、発熱44.5%(16.9~72.0)、頭痛33.3%(8.6~58.0)、呼吸困難/呼吸窮迫25.2%(17.2~33.1)だった。・心筋炎の治療に使用された薬剤は、NSAIDsが81.8%(95%CI:75.3~88.3)、グルココルチコイド13.8%(6.7~20.9)、免疫グロブリン静注12.0%(3.8~20.2)、コルヒチン7.3%(4.1~10.4)であった。 著者によると、SARS-CoV-2感染後の心筋炎発症リスクは、mRNAワクチン接種後の心筋炎発症リスクよりも有意に高いという。本結果は、複数の国や地域の多様な若年者の集団において、ワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であり、ワクチン接種による利益は潜在的リスクを上回ることを裏付けるとしている。

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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新型コロナは季節性インフルと同等となるか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月14日に開催された。その中で「新型コロナウイルス感染症の特徴と中・長期的リスクの考え方」が、押谷 仁氏(東北大学大学院微生物学講座 教授)らのグループより報告された。 本レポートは、「I.リスク評価の基本的考え方」「II. COVID-19 のリスク評価」「III.COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか」の3つに分かれて報告されている。 とくに「I.リスク評価の基本的考え方」では、「COVID-19のパンデミックは新型インフルエンザとはまったく異なる経過をたどり、病態にまだ不明な点も多く、死亡者の絶対数は季節性インフルエンザを大幅に超えているということもCOVID-19のリスクを評価する際には重要」と注意を喚起している。また、「III.COVID-19パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか」では、今後予測される状況として季節性インフルエンザと同じような特徴を持った感染症になるとしても相当の時間を要すると予想している。COVID-19と季節性インフルエンザとの比較は慎重に・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐっては季節性インフルエンザとの比較などの議論がなされているが、疫学・病態など多くの点でCOVID-19と季節性インフルエンザには大きな違いが存在しており、そのリスクをデータや最新の知見に基づいて評価することが必要である。・世界保健機関(WHO)はパンデミックインフルエンザの評価には、(1)伝播性、(2)疾患としての重症度、(3)医療や社会へのインパクトを評価するように求めている。国内ではCOVID-19と季節性インフルエンザの評価を致死率・重症化率でのみ比較されている場合が多いが、これは疾患としての重症度の一側面のみを評価するものであり、リスクの評価としては不十分である。・COVID-19の伝播性は当初より、季節性インフルエンザより高かったが、変異株の出現とともにさらに伝播性は増大してきており、伝播性の観点からはむしろ季節性インフルエンザとは大きく異なる感染症に変化してきている。COVID-19の伝播性が高いことに加え、ワクチンや自然感染で獲得した免疫も減弱することと、変異株は免疫逃避の程度も高いことから疫学的には季節性インフルエンザとは異なる特徴を持つ感染症になっている。・COVID-19の重症度は病原性が一定程度低いとされるオミクロン株が流行株の主体となり、さらに多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことにより、発生初期と比較して低下している。一方で、循環器系の合併症で死亡を含むインパクトが生じているとするデータが各国で得られてきている。国内でも2021年以降超過死亡が増加しており、循環器系の合併症を含めた超過死亡の要因を解明する必要がある。また、罹患後症状の問題もCOVID-19のリスクの評価の際には考慮すべきである。なお、COVID-19と季節性インフルエンザの致死率や重症化率を比較するさまざまなデータが示されているが、ほとんどの場合異なる方法で集められたものであり、直接比較することは困難であり、現在示されているデータの解釈には留意が必要である。・国内でも救急搬送困難事案の増加などCOVID-19による直接の医療負荷だけではなく、一般医療への負荷も生じている。同様のことは英国などでも報告されている。今後さらに流行規模が大きくなれば、罹患や罹患後症状による欠勤者が増え、社会機能維持に支障が生じるリスクも存在している。一方で、感染症法に基づく公衆衛生対応(行動制限)を継続することによる社会や経済に対するインパクトも発生している点には留意が必要である。

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第140回 厚労省の動画が3週間で656万回再生!いったい何が流れた?

もうあと1週間足らずで2022年も終わりとなる。結局この1年もほぼ新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)で明けて暮れた1年だったと個人的には感じている。とはいえ昨年末以来、流行株が見かけ上、重症化率の低いオミクロン株の亜系統内で続いていることもあってか、ぱっと見の市中の様子はかなりコロナ禍以前に近づいていると感じている。敢えて「見かけ上」と記載したのは、ここ1ヵ月ほどでワクチン未接種の知人・友人が感染し、入院の上で酸素吸入にまで至った事例を複数知っているからである。その意味でワクチンの効果はある意味凄いものだと改めて感じている。そんな中、つい先日仕事が深夜0時を超える時間まで及んだ際、コンビニエンスストアに行くついでに、最寄り駅周辺を散策した。すると日中には見えなかったコロナ禍前後のわずかな変化が見えてきた。現在は飲食店への営業自粛要請もなくなったこともあって、午前0時を過ぎても営業している飲食店はあるが、その数は確実に減っている。少なくともコロナ禍以前、この周辺では0時過ぎまで営業していた飲食店は、私が知っている範囲でも10軒以上はあった。ところが先日確認した範囲では3軒のみ。ちょうど第7波から第8波の間に珍しく夜の早い時間に仕事のめどがつき、馴染みの飲食店に顔を出したが、その店も従来は午前1時までだった営業時間を午前0時までに短縮していた。従業員は「最近は皆さん来る時間も早いし、帰るのも早いですよ。客単価も以前の6割程度。もう遅くまで開けていてもコストばかりかかって」と、ぼやいていた。確かに私自身のことで言っても夜間の飲酒飲食は激減している。とくに今は大学受験生の娘を抱えていることもあり、今後2月末までは今まで以上に外出の飲食を控えることになるだろう。さて世の変化というところでやや驚いたものがある。それは半月ほど前から厚生労働省(以下、厚労省)が流し始めた屋外のマスク原則不要を告知するCMだ。ごくごく当たり前の内容ではあるが、わずか30秒の動画の構成はわかりやすく、失礼ながら厚労省が主導して製作したCMとしてはよくできている。同省のYouTubeチャンネルはさまざまな動画がアップされているが、再生回数が1,000回未満のものがほとんど。しかし、この動画だけは再生回数656万回と群を抜いている。ざっと同省配信動画の再生回数を眺め回してみたが、たぶん2022年に配信された動画の中では再生回数トップである。そもそも、このマスク問題はコロナ禍当初、かなり変動幅の大きいものだったと個人的には理解している。コロナ禍以前のマスクの位置付けとは、明らかに呼吸器感染症が疑われる症状を有する人が着用するもので、現在のようなユニバーサルマスクの考え方は標準的なものではなかったはずである。しかし、新型コロナの場合は症状発症前に二次感染を引き起こしていること、感染経路のほとんどが飛沫感染でマスクに一定の感染リスク低減効果があるなどのエビデンスが徐々に積み上げられたことで現在のような形になっている。かくいう私も2020年春くらいまではユニバーサルマスクには懐疑的だったが、今ではこの考えを改めている。もっとも考えを改めた後でも、明らかに感染リスクが低いであろう屋外(ただし、アーケード内や明らかな人混み、信号待ちで人が集合している場合などは除く)ではマスクを外していた。さてこのマスク問題、昨今のSNS上などでは新型コロナ関連の大きな話題の一つでもある。その中核は非医療従事者からの「いつまでこんなものを続けているのか」的な声が多くを占め、一見するとその声は日増しに大きくなっているようにも映る。ひょっとすると前述の厚労省のCMもそうした声を意識したものかもしれない。ちなみに私がこのCMに「驚いた」のは個人的な印象としての出来栄えの良さもあるが、厚労省が敢えてこれを出したということである。一般大衆に比べて無びゅう性を気にするお役所や専門家は、規制・推奨の強化は比較的得意だが、その逆は苦手である。それらを緩和した結果生じる問題に対して詰め腹を切らされかねないからだ。しかも、一般人とは概してこうしたお役所や専門家が発する言葉を自分に都合よく解釈しがちである。今年5月に前厚労相の後藤 茂之氏が閣議後の記者会見で「屋外でも身体的距離を置いた場合は、もともと『外してよい』との考えだったが、国民に十分に伝わっていなかった」と発言した直後、私は旧知の医師から愚痴をこぼされた。「定期受診の患者がいきなりノーマスクで来院して、マスクをしてくださいと話すと、『いや、厚生労働大臣がマスクは要らないって言ってたでしょ』と返される。それも特定の人に限ったことではなく、ポチポチと増えて一時的に対応に苦慮した」こうした事例を経験した医療従事者は少なからずいるのではないだろうか? ちなみに後藤氏は当時、これからは国民にこの点を丁寧に説明していきたいとの意向を示したが、そのような説明があった記憶は少なくとも私はない。腰が重いはずの厚労省が、この問題について前向きな対応を始めたことは一定の前進と言えるが、現状を鑑みる限り、一般国民の多くが期待するであろう日常生活でマスク着用が不要はまだ先のことだろう。そのためには新型コロナウイルスが一層弱毒化するか、有効性がより高く有効期間がより長いワクチンが開発・上市されることが必要だろうと考えられるからだ。むしろ私は次に来る「ポストコロナ時代」とは「メリハリのある感染対策ができる社会」と考えている。このマスク問題が代表例であり、感染リスクの高い局面では着用する、逆に感染リスクが低い局面では外しても良いという場面の切替である。これは昨今の教育現場で進む黙食の緩和も同様だろう。換気などの一定の感染対策をしたうえで黙食を緩和することが完全に誤りとは言えない(医療従事者を除けば、行動規制のない現在、夜間の飲酒飲食する大人は黙食とは無縁である以上、子どものみに規制的に対応する理由はある種薄弱である)。もっともこれも局面ごとの判断が必要である。具体的には小児での新型コロナワクチン接種完了者が4人に1人と留まる現状を考えれば、感染拡大期には黙食にする、感染拡大収束期には黙食を緩和するというメリハリである。その意味で、来る2023年はポストコロナ時代を念頭に社会全体がメリハリのついた感染対策を行える社会になって欲しいと切に願いながら、2022年最後の本連載を終えたいと思う。また、本連載は私への意見・要望窓口を設けていることもあり、読者の皆さんからは、本当にさまざまな角度からご意見を頂戴している。なるべくそれにお答えしようとは思っているものの、すべてのご意見を記事に反映できていないことについてはこの場を借りてお詫びしたい。それに懲りずこの1年間、私にお付き合いいただき誠にありがとうございました。来年も宜しくお願いいたします。

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コロナ重症化率と致死率、どの程度低下したのか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる。その判断には、病原性(重篤性)と感染力、それらによる国民への影響を考慮する必要があるが、病原性(重篤性)の参考となる重症化率と致死率について、12月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された。重症化率・致死率ともに昨年夏から大きく低下しており、病原性が低いとされるオミクロン株が流行株の主体となっていること、多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことが要因と考えられている。 今回報告された重症化率と致死率は、石川県、茨城県、広島県のデータから、2021年7~10月(デルタ株流行期)、2022年1~8月(オミクロン株流行期)に診断された新型コロナウイルス感染者のうち死亡/重症化した割合と死亡した割合を算出している。参考データとしての季節性インフルエンザの重症化率と致死率は、レセプト情報・特定健診等情報データベースにおいて2017年9月~2020年8月までに診断または抗インフル薬を処方された患者のうち、28日以内に死亡または重症化した割合と死亡した割合を算出したもの。重症化の定義やデータソース、集計方法などが異なるため、比較する際には留意が必要である。■重症化率(60歳未満、60・70代、80歳以上の順)2021年7~10月:0.56% 、3.88%、10.21% 2022年1~2月:0.03%、1.22%、5.04%2022年3~4月:0.03%、0.79%、3.50%2022年5~6月:0.01%、0.34%、1.66%2022年7~8月:0.01%、0.26%、1.86%<参考>季節性インフルエンザ:0.03%、0.37%、2.17%■致死率(60歳未満、60・70代、80歳以上の順)2021年7~10月:0.08%、1.34%、7.92%2022年1~2月:0.01%、0.70%、4.57%2022年3~4月:0.01%、0.43%、3.12%2022年5~6月:0.00%、0.14%、1.53%2022年7~8月:0.00%、0.18%、1.69%<参考>季節性インフルエンザ:0.01%、0.19%、1.73%注)新型コロナウイルス感染症の数字は、療養および入院期間が終了した際のステータス、または期間終了日から30日以上経過した時点でのステータスに基づいて算出しているため、とくに致死率については過少である可能性がある。

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第140回 次のパンデミックに備え感染症法等改正、そう言えば感染症の「司令塔機能」の議論はどうなった?

改正感染症法案、岸田文雄首相の約束通り今国会で成立こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、友人の版画家、宇田川 新聞氏の個展「木版画パラダイス」を観に、池袋のB-galleryに行って来ました。「宇田川新聞」と言われても、ピンと来ないかもしれませんが、テレビ東京系で放映されている「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」1)で、赤色、緑色、黒色を使った特徴的なイラストを描いている(厳密には彫っている)版画家と言えばおわかりかと思います。芸能人の表情を絶妙にとらえたシンプルでほのぼのとした版画は、いつ見てもほっとします。彼女(女性です)との付き合いはもう25年近くになりますが、最近の売れっ子ぶりには頭が下がります。ただ、ギャラリーで「オリジナルの作品より、出川番組関連の版画の方が多いんじゃない?」と本音を言ったら、しょぼんとうなだれていました。芸術家は扱いが難しいです。あの独特の版画の実物を見たい方はぜひ覗いてみて下さい2)。さて、今回は先ごろ成立した感染症法改正と、検討が進められている(はずの)、「司令塔機能」について書いてみたいと思います。改正感染症法案は、参院選前の岸田 文雄首相の約束通り、今国会で成立しました。もう一つの“公約”とも言うべき、一元的に感染症対策を行う新しい「司令塔機能」については、その後、あまり報道もありません。一体どうなっているのでしょうか。地域医療支援病院や特定機能病院などと協定を結び医療の提供を義務付け新型コロナウイルス対応の教訓を活かし、今後の感染症のまん延(パンデミック)に備えるための改正感染症法などが11月2日、参院本会議で可決され、成立しました。都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになります。協定に沿った対応をしない医療機関には勧告や指示を行うほか、場合によっては承認の取り消しもあり得るとされています。施行(協定を締結する規定も)は来年、2023年4月1日付です。医療の提供が義務付けられるのは、自治体などが運営する「公立・公的医療機関」(約6,500施設)、400床以上で大学病院中心の「特定機能病院」(87施設)、200床以上で救急医療が可能な「地域医療支援病院」(685施設)です。また、都道府県は上記を含む全国すべての医療機関と、医療提供を事前に約束する協定を結べるようになります。都道府県は平時から計画をつくり、病床、発熱外来、人材派遣などの数値目標を盛り込み各医療機関への割り当てを決めます。医療機関は協議に応じる義務はありますが、実際に協定を結ぶかは任意です。付則には、新型コロナの感染症法上の位置付けについて速やかに検討するよう政府に求める文言も加わりました。これについては、法案成立直前の11月29日、加藤 勝信厚生労働大臣は会見で、新型コロナを感染症法の「2類相当」から「5類」に見直す検討を本格的に始める方針を示しています。なお、感染症法とあわせて医療法や予防接種法、新型インフルエンザ等対策特別措置法、検疫法なども一括で改正されています。特別措置法では、厚生労働大臣が協力を要請した時に限って、歯科医師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士にワクチン接種を認めました。検疫法では、水際対策により実効性をもたせるため、入国後の個人に自宅待機などを指示できるようにしたうえ、待機中の体調報告に応じない場合の罰則が設けられました。一般の民間病院や診療所については、協定締結は任意この3年間あまりの医療機関のドタバタぶり、個々の医療機関に対する国の権限のなさ(お願いしかできず命令できなかった)を考えると、地域医療支援病院や特定機能病院などへの病床確保や発熱外来といった医療提供の義務付けは、とても意味のあることで、特定機能病院などの承認を取り消す行政処分も含まれていることから、相当の強制力を持つことも確かです。ただ一方で、一般の民間病院や診療所については、都道府県との協議に応じなければならないものの、協定締結は任意のため、どの程度協力を得られるかは不透明です。今回のパンデミックでも、とくに民間病院や診療所の対応に批判が集まったことからも、協議から協力に至るプロセスをもう少し明確にしておく必要がありそうです。岸田首相がぶち上げたもう一つの大きな計画さて、今回の感染症法等の改正は、岸田首相が今年6月15日、通常国会の閉会を受けて行った記者会見で語った「新型コロナをはじめとする感染症に対する新対策」の中に盛り込まれていたことです。岸田首相はこの時、「昨年の総裁選で約束したとおり、国・地方が医療資源の確保等についてより強い権限を持てるよう法改正を行う。医療体制については、(2021年)11月の「全体像(次の感染拡大に向けた安心確保のための取り組みの全体像)」で導入した医療機関とあらかじめ協定を締結する仕組みなどについて、法的根拠を与えることでさらに強化する」と語っていました(「第114回 コロナ新対策決定、協定結んだ医療機関は患者受け入れ義務化、罰則規定も」参照)。当時は参議院選挙を睨んだパフォーマンスと見る向きもありましたが、岸田首相は感染症法改正については、約束を守ったと言えるかもしれません。岸田首相はこの時、もう一つの大きな計画をぶち上げています。それは、一元的に感染症対策を行う「内閣感染症危機管理庁」の新設と、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して「日本版CDC」をつくるというものです。そう言えば、この計画について、最近は話をあまり聞きません。「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し司令塔機能を強化岸田首相の6月15日の会見では、新型コロナウイルスを含む今後の感染症に対応する「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し、司令塔機能を強化することを表明していました。内閣感染症危機管理庁は、感染症の危機に備えて「首相のリーダーシップの下、一元的に感染症対策を行う」組織で、同庁の下で平時から感染症に備え、有事の際は物資調達などを担う関係省庁の職員を同庁の指揮下に置き、一元的な対策を行うとしました。トップには「感染症危機管理監(仮称)」が置かれる予定とのことでした。さらにこの時は、厚労省における平時からの感染症対応能力の強化も表明しています。その施策の目玉は、研究機関である国立感染症研究所と、高度な治療・研究の拠点である国立国際医療研究センターを統合、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした、いわゆる「日本版CDC」を厚労省の下に創設するというものでした。この2つの計画は6月17日、新型コロナウイルス感染症対策本部において正式決定しています。新型コロナウイルス感染症対策本部が公表した司令塔機能の具体的な姿その後、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策本部は9月2日、「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策」を公表し、その中で、司令塔機能の具体的な姿を提示しました。それによれば、司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」については、2023年度中の設置を目指すとして、以下の組織、業務等にするとしています3)。1)感染症対応に係る司令塔機能を担う組織として「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置し、感染症対応に係る総合調整を、平時・有事一貫して所掌する。総理・官房長官を直接助ける組織として内閣官房に設置し、長は官房副長官クラス、内閣官房副長官補を長の代行とし、厚生労働省の医務技監を次長相当とする等、必要な体制を整備する。2)統括庁は、平時から、感染症危機を想定した訓練、普及啓発、各府省庁等の準備状況のチェック等を行う。3)緊急事態発生時は初動対応を一元的に担う(内閣危機管理監と連携して対応)。4)特措法適用対象となる感染症事案発生時は、同法の権限に基づき、各府省庁等の対応を強力に統括する。各府省庁の幹部職員を庁と兼務させる等により、政府内の人材を最大限活用する。これら有事の際の招集職員はあらかじめリスト化し十分な体制を確保する。5)平時・有事を通じて厚生労働省の新組織(いわゆる日本版CDC)とは密接な連携を保ち、感染症対応において中核的役割を担う厚生労働省との一体的な対応を確保する。6)必要となる法律案を次期通常国会に提出し、2023年度中に設置することを目指す。――これらの案から見えてくるのは、今回のコロナ禍にあって、統率がとれなかった各省庁を強力にコントロールしたい、という内閣の強い意思です。とくに、厚生労働省(今回官邸の言うことを聞かなかった、対応がグダグダだったという批判もありました)とそこにつくる新組織(日本版CDC)をきちんと統括したい、という強い思いが伝わって来ます。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合した「日本版CDC」この「具体策」では、国立感染症研究所と、国立国際医療研究センターを統合して作る新組織、「日本版CDC」についても提示しています。それによれば、新組織については、1)厚生労働省における平時からの感染症対応能力を強化するため、健康局に「感染症対策部(仮称)」を設置し、内閣感染症危機管理統括庁(仮称)との連携の下、平時からの感染症危機への対応準備に係る企画立案や感染症法等に係る業務を行う。2)国立感染症研究所と国立研究開発法人国立国際医療研究センターを統合し感染症等に関する科学的知見の基盤・拠点国際保健医療協力の拠点、高度先進医療等の総合的な提供といった機能を有する新たな専門家組織を創設する。3)必要となる法律案を次期通常国会に提出し感染症対策部の設置及び厚生労働省の一部業務移管は2024年度の施行、新たな専門家組織の創設については2025年度以降の設置を目指す。――などとなっています。専門家組織をきっちりコントロールしたい厚労省内閣感染症危機管理統括庁と、厚生労働省、日本版CDCが整備されれば、機動的かつ科学的な対応が100%可能になるかのように書かれてある点が気になります。今回のパンデミックで機能してきた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のような、ある意味“第三者”の立場で検討・提言する組織についての記述は、日本版CDCの中に「新たな専門家組織を創設する」と書かれています。ただ、厚労省傘下にしっかり置いて、専門家組織をきっちりコントロールしようという意図が透けて見えます。また、専門家組織が感染症の専門家ばかりで、臨床や医学研究の分野に偏りそうな点も気がかりです。危機管理やIT、経済対策、メディア対策など、医学以外の分野の専門家もしっかりとメンバーに入れておくべきだと思いますがいかがでしょう。さらに、現在、国立感染症研究所は国立の機関、国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは国立研究開発法人と、組織形態が異なります。仮に、組織が圧倒的に大きい国立国際医療研究センターに国立感染症研究所が身を寄せる形で統合するとなれば、組織は国立研究開発法人ということになります。国からは一応は独立した組織になるとすれば、危機管理統括庁や厚生労働省がどういう形で影響力を及ぼすかも今後の大きな検討課題でしょう。現在のところ、厚労省が中心となって、これらの新組織の詳細を詰めているとのことです。内閣感染症危機管理統括庁は2023年度中の設置、日本版CDCは2025年以降の設置を目指すとされていますが、実際の稼働まで、まだまだひと悶着、ふた悶着ありそうです。参考1)出川哲朗の充電させてもらえませんか?/テレビ東京2)宇田川新聞個展《木版画パラダイス》(12/13(火)〜12/25(日)、池袋B-gallery、14:00〜18:00、月曜休廊)3)新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策/新型コロナウイルス感染症対策本部

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モデルナ製COVID-19ワクチン、追加免疫の接種対象が12歳以上に拡大

 モデルナは2022年12月12日付のプレスリリースで、「スパイクバックス筋注」(1価:起源株)、「スパイクバックス筋注」(2価:起源株/オミクロン株BA.1)および「スパイクバックス筋注」(2価:起源株/オミクロン株BA.4/5)の追加免疫について、日本における添付文書を改訂し、接種対象年齢が12歳以上に拡大されたことを発表した。 これについてモデルナ・ジャパン代表取締役社長の鈴木 蘭美氏は「オミクロン株とその亜系統による感染が拡大する中、モデルナのCOVID-19ワクチンにより進学や受験といったイベントを控える方の多い12~17歳の年齢層をCOVID-19から守れることを嬉しく思います」と述べている。 なお、日本小児科学会(会長:岡 明氏[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表しており、COVID-19の重症化予防に寄与することが確認されたことを踏まえ、メリットがデメリットを大きく上回ると判断し、小児へのワクチン接種を推奨している。

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3~17歳へのコロナワクチン、オミクロン優勢期の効果は?/BMJ

 アルゼンチンで、3~17歳の小児・青少年に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(mRNA-1273[モデルナ製]、BNT162b2[ファイザー製]、BBIBP-CorV[Sinopharm製])2回接種の有効性について調べたところ、死亡に対する予防効果は、優勢となっている変異株の種類にかかわらず、小児・青少年ともに高値を維持していたことが明らかにされた。ワクチン接種後の短期間におけるSARS-CoV-2感染予防効果については、オミクロン変異株が優勢であった間は低かったこと、また時間の経過とともに同効果は急激に低下することも明らかにされた。アルゼンチン・保健省のJuan Manuel Castelli氏らが、約14万人のケースとそのマッチング対照を解析した、診断陰性例コントロール試験の結果で、BMJ誌2022年11月30日号で発表された。アルゼンチンで84万例超を対象に診断陰性例コントロール試験 研究グループは、アルゼンチンの国内サーベイランス・システムのデータベースと、ワクチンレジストリを基に、診断陰性例コントロール試験を行い、小児(3~11歳)・青少年(12~17歳)へのCOVID-19ワクチン2回接種の、SARS-CoV-2感染やCOVID-19関連死に対する有効性を推定し評価した。 対象は、2回のCOVID-19ワクチンのプライマリ接種対象者で、SARS-CoV-2感染歴がなく、2021年9月~2022年4月にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査または迅速抗原検査を受けた3~17歳、84万4,460例。マッチング対照の照合を行い、23万1,181例のケースのうち13万9,321例(60.3%)について解析を行った。 主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染とCOVID-19関連死だった。条件付きロジスティック回帰分析で、ワクチン2回接種者の非接種者に対するオッズ比(OR)を推算した。ワクチン有効率は、(1-OR)×100%で算出した。小児の対SARS-CoV-2感染有効率、デルタ株優勢期間は61%、オミクロン株では16% デルタ変異株優勢期間のSARS-CoV-2感染に対するCOVID-19ワクチン2回接種の有効率は、小児が61.2%(95%信頼区間[CI]:56.4~65.5)、青少年が66.8%(63.9~69.5)だった。オミクロン変異株優勢期間は、それぞれ15.9%(13.2~18.6)、26.0(23.2~28.8)だった。 ワクチン有効性は、接種後、日数経過とともに低下し、とくにオミクロン変異株優勢期間の低下は急激で、小児では、接種後15~30日で37.6%(95%CI:34.2~40.8)であったが、60日以降では2.0%(1.8~5.6)へと低下し、青少年ではそれぞれ55.8%(52.4~59.0)から12.4%(8.6~16.1%)への低下が認められた。 一方で、オミクロン変異株優勢期間の、SARS-CoV-2感染関連死に対するワクチン有効率は、小児が66.9%(95%CI:6.4~89.8)、青少年が97.6%(81.0~99.7)だった。

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自宅コロナ死、4割は同居家族あり/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月7日に開催された。その中で「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が報告された。 調査期間中776名の自宅で死亡した者の解析から、死亡者の79%が70代以上であり、基礎疾患がある者が69%、親族などと同居が42%いた。また、ワクチン接種歴も不明が34%で一番多いものの、「3回接種」も28%と多かった。 政府では、「Withコロナに向けた政策の考え方」に則り、今後必要な医療資機材の提供、国民への正確な知識の普及に努めるとしている。 以下に概要を示す。70代以上の高齢者で、基礎疾患がある人は死亡が多い【調査概要】期間: 2022年7月1日~8月31日地域:全国都道府県条件:新型コロナウイルス感染症患者(死後陽性確認者も含む)で自宅にて死亡した者を本年10月に都道府県を通じ、その年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査(ただし自宅療養中に症状が悪化し、医療機関に入院した後に死亡した事例は除く)。【結果概要】 合計776名(男性460名、女性316名)(死亡時の年齢構成) 80代以上が58%、70代以上が21%、60代以上が9%(基礎疾患の有無) 「あり」が69%、「なし」が19%、「不明」が12%(ワクチンの接種歴) 「不明」が34%、「3回」が28%、「未接種」が20%(単身・同居などの状況) 「不明」が48%、「同居」が42%、「単身」が10% その他の事項は次のとおり。・死亡直前の診断時の症状の程度について、軽症・無症状が41.4%、中等症が13.1%、重症が7.1%、不明または死亡後診断が38.4%・生前に陽性が判明した者は70.1%、死後に陽性が判明した者は29.9%・発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が50.6%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が31.2%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が17.9%、不明が0.3%・自宅療養の希望ありが22.8%、希望なしが10.3%、不明者および死後陽性が判明した者が66.9%発熱がなく、毎日訪問介護を受けていても死亡のケースも【具体的な死亡事例について】・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明したケース。・家族や親族などに自宅で倒れているところを発見されたケース。・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望したケース。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望したケース。・自宅療養中に急速に重症化して死亡したケース。・同居家族から感染し、自宅での死亡につながったケース。・コロナ以外の要因で死亡し、死後に陽性が判明したケース。・入院や宿泊療養、治療を希望しないケース。・浴槽で意識がなくなっているところを同居家族に発見されたケース。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡したケース。・主治医からの健康観察や訪問看護を受けていたものの、死亡したケース。・自宅訪問するも応答なく、警察に協力依頼を行ったケース。・症状があったが検査や受診を受けずに、死後に陽性が判明したケース。・家族は入院を希望していたが、自宅療養となり、死亡したケース。・発熱がなく、毎日訪問介護を受けていたが、死亡したケース。【自治体での取組事例】・体調の変化・悪化の早期把握のため、自宅療養開始時の説明、ホームページ、SMSなどで電話相談窓口への連絡を自宅療養者に対して周知。・療養者支援センターを開設。若年層にはSMSを利用して調査を実施し、保健所が電話で調査すべき対象者を重症化リスクが高い方に絞ることで連絡遅滞を防ぐ改善を行った。・陽性者からの要請があった場合、感染防護対策を行ったうえで、直ちに現場に向かう体制を施行。【今後の対応】 「Withコロナに向けた政策の考え方」の考え方に則り、入院治療が必要な患者への対応の強化、発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化、治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保などの対策を進めるとともに、国民への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなどに取り組んでいく。

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オミクロン株のlong COVIDリスク、デルタ株より低い

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株は以前に流行したデルタ株と比較して急性期の症状が軽症であることが報告されているが、コロナ罹患後の後遺症、いわゆるlong COVIDのリスクも低いことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のKarin Magnusson氏らの調査で示された。本研究の結果はNature Communications誌2022年11月30日号で報告された。 研究者らは、ノルウェーにおける18~70歳の全国民を対象に、医療データベースを使った前向きコホート研究を行った。オミクロンとデルタ株の流行が最も重複した期間(2020年12月8日~2021年12月31日)を対象に、オミクロン株の感染者の罹患後症状を、デルタ株感染者・非感染者と比較した。さらに、検査陽性後14~126日までの追跡期間を、急性期(14~29日)、亜急性期(30~89日)、慢性期(90日以上)に分け、罹患後症状の有病率の推定値も示した。 主な結果は以下のとおり。・全国民369万6,005人のうち、17万3,317人が期間中に1回以上のPCR検査を受け、うち5万7,727人が陽性と判定された。うち2万3,767人がデルタ株の感染者(デルタ群)、1万3,365人がオミクロン株の感染者(オミクロン群)だった。オミクロン群は、デルタ群に比べ、若年で高学歴、合併症が少なく、ワクチン接種の頻度も高い傾向があった。・オミクロン群およびデルタ群の両方で、PCR検査の陰性者と比較して、罹患後症状のリスクが20~30%増加し、息切れの発症リスクが30~80%増加した・全期間(14〜126日)における具体的な訴えを直接比較したところ、オミクロン群とデルタ群の差は認められなかったが、オミクロン群はデルタ群に比べ、検査後90日以上経過した時点でいずれかの症状を持つリスクが低く(1万人あたり43人[95%CI:14〜72]減)、筋骨格系の痛みのリスクも低かった(1万人あたり23人[95%CI:2〜43]減)。・ワクチン接種者(14~210日前に1、2、3回接種)では、オミクロン群(9,368人)はデルタ群(1万4,160人)と比較して90日以上の罹患後症状有病率が1万人あたり36人(95%CI:1~70)減ることが示された。

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第127回 新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会

<先週の動き>1.新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会2.75歳以上の医療保険料、年間5,300円の負担増へ/厚労省3.がん患者数、コロナ前の水準に、進行がん患者増を懸念/国立がん研究センター4.医療機関にセキュリティ対策研修用ポータルサイト開設/厚労省5.かかりつけ医機能について、年内に結論へ/全世代型社会保障構築会議6.改正精神保健福祉法と改正難病法が成立/参院1.新型コロナウイルスの2類見直しについて討議開始/感染症対策分科会政府は新型コロナウイルス感染症対策分科会を12月9日に開き、今年の年末年始の感染対策について考えをまとめ、公表した。この中で、オミクロン株対応ワクチンの早期接種を求めるとともに、医療逼迫防止のために、重症化リスクが低い人については咽頭痛や発熱などの自覚症状が出た場合は、自宅での抗原定性検査キットを使うことも検討を求めた。また、定期的に換気することも求めた。さらに、新型コロナの2類感染症の見直しについても、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への引き下げについても議論されたが、致死率などがインフルエンザに近づいているという意見もある一方で、死亡数が多いといった意見も出され、最新のデータに基づいた評価をもとに、改めて議論することとなった。(参考)年末年始の感染対策についての考え方(新型コロナウイルス感染症対策分科会)新型コロナの感染症法上の扱い 改めて議論へ 政府分科会(NHK)ワクチン年内接種呼び掛け コロナ分科会 年末年始の医療逼迫回避(時事通信)2.75歳以上の医療保険料、年間5,300円の負担増へ/厚労省厚生労働省は12月9日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、年末までに医療保険の見直し案による試算を公表した。これによると、出産育児一時金を47万円に増額した場合、75歳以上が加入している後期高齢者医療制度の保険料が年間5,300円増加する見込みとなっている。政府は、出産一時金については50万円に引き上げる方針のため、健康保険料はこの試算より増額が見込まれている。なお、実際に保険料が増えるのは、75歳以上のうち年金収入が153万円以上の所得がある人で、全体の約4割に止まるとみられる。高齢者医療をすべての世代で公平に支え合う仕組みのため、政府はさらに改革を進めていく方針。(参考)第160回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)24年度医療保険料 75歳以上、年5300円増 政府試算(毎日新聞)後期高齢者の年間保険料 2年後 約5400円の負担増 厚労省が試算(NHK)75歳以上、平均年5300円負担増 医療保険見直し案、厚労省が試算公表(朝日新聞)3.がん患者数、コロナ前の水準に、進行がん患者増を懸念/国立がん研究センター国立がん研究センターは12月9日に、2021年1月1日から12月31日の1年間にがんと診断または治療された患者の院内がん登録データをまとめ、速報値として報告書としてウェブサイトで公表した。院内がん登録データの提出があった拠点病院453施設と小児拠点6施設のうち、過去4年間にわたってデータ提出のあった計455施設を対象にデータをまとめたところ、2021年の院内がん登録数は、2018年と2019年の2ヵ年平均登録数と比較して101.1%とほぼ同程度であることが明らかとなり、新型コロナウイルスの影響で減った2020年と比べると2021年は感染拡大前の水準であったことがわかった。一方、2021年の登録症例は、2018年と2019年の平均登録数と比較したところ、多くのがん種で早期がんでの登録の割合が減少しており、今後も継続的に分析を行う必要があるとしている。(参考)院内がん登録2021年全国集計速報値 公表 2021年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況(国立がん研究センター)国立がん研究センター「がん情報サービス がん統計」報告書ページ(同)国がん 21年院内がん登録全国集計結果を公表 コロナ禍で減少の新規患者数が同程度に(ミクスオンライン)昨年がん診断・治療、コロナ前並みの81万件…想定より少なく「進行がんで見つかる恐れ」(読売新聞)4.医療機関にセキュリティ対策研修用ポータルサイト開設/厚労省厚生労働省は、医療機関へのランサムウェアによるサイバー攻撃が増加しているのを受け、12月8日に、医療機関向けに「医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト」を開設した。医療機関の経営者に対して最近のサイバー攻撃事例を紹介するほか、システム管理者に向けてはインシデント対応やシステム設定などを伝える。また、一般の医療従事者には情報セキュリティの基本や注意点などを説明する。さらにトラブル発生時の相談・初動対応依頼窓口も設置されている。(参考)医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト(厚労省)医療機関向けサイバーセキュリティ対策研修を開始します(同)医療機関にセキュリティ知識を ソフトウェア協会が講習事業スタート(ITmedia)医療機関にサイバー研修 厚生労働省がポータルサイト(日経新聞)5.かかりつけ医機能について、年内に結論へ/全世代型社会保障構築会議政府は、12月7日に全世代型社会保障構築会議を開催し、報告書の取りまとめに向け、論点整理を巡って議論を行った。当日、論点となったのは医療・介護制度改革のほか、誰もが安心して希望通りに働くことができる社会保障制度の構築、子育て支援。医療・介護保険制度の改革では、今後の高齢者人口のさらなる増加を見据え、「かかりつけ医機能」制度の整備は不可欠とし、具体的なかかりつけ医の機能として「日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うこと」とし、「休日・夜間の対応、他の医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携」も必要ではないかとされた。今後は、年内に議論をまとめ、来年の通常国会での関連法改正を目指す方向とみられる。(参考)全世代型社会保障の構築に向けた各分野における改革の方向性(全世代型社会保障構築会議)「かかりつけ医機能」年内結論 全世代型会議「足元の課題」(CB news)かかりつけ医機能の方向性決定は年内か 政府の全世代型社会保障構築会議が報告書の素案を提示(日経ヘルスケア)6.改正精神保健福祉法と改正難病法が成立/参院12月10日、会期末の参院本会議で精神保健福祉法、難病法の改正案も含めた「障害者総合支援法等改正案」が成立した。難病法の改正案には、これまで難病の申請を行った日からされていた医療費助成を「重症と診断された日」にさかのぼって受けられることにするほか、障害福祉サービス利用時に使える「登録者証」の発行が盛り込まれた。このほか、難病患者や小児慢性特定疾病患者らのデータベースの整備により、製薬企業が難病患者のデータベースのデータを利活用できるようにして、新薬の開発を促進することを目指す。また、精神科病院の管理者に対し、病院の職員への研修や患者の相談体制の整備など、患者虐待防止策義務付けた改正精神保健福祉法も同日成立した。(参考)障害者総合支援法等改正案の概要(厚労省)「改正難病法」成立 患者からは一日も早く治療薬開発求める声(NHK)精神科病院の患者虐待防止策義務づけ 改正精神保健福祉法成立(同)1人暮らし促進 障害者支援、改正法成立(毎日新聞)

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黄色ブ菌、大腸菌などの感染症関連死は依然多い/Lancet

 2019年の世界の感染症関連死は推定1,370万人で、うち黄色ブドウ球菌、大腸菌など33の細菌属・種が原因の死亡は770万人だった。また、同細菌による年齢標準化死亡率はサハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高かった。米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら、薬剤耐性の世界疾病負担(Global Burden of Antimicrobial Resistance)に関する研究グループ「GBD 2019 Antimicrobial Resistance Collaborators」が解析結果を報告した。先行研究により、薬剤耐性感染症と敗血症関連の死亡数が推定され、感染症が依然として世界の主要な死因を占めることが明らかになっている。公衆衛生上の最大の脅威を特定するためには、一般的な細菌(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)の世界的負荷を理解することが求められている中、本検討は、33の細菌属・種による11の重大感染症と関連する死亡について世界的な推算値を求めた初となる研究で、Lancet誌オンライン版2022年11月18日号で発表された。204の国と地域の33の細菌属・種による死亡数を推定 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019のメソッドと、薬剤耐性の世界疾病負担2019で記述されている特定条件を満たした部分集合データを用いて、2019年に発生した33の細菌属・種による11の感染症に関連する死亡数を推算した。本検討には、1万1,361調査地域年にわたる3億4,300万人の記録と分離株が包含された。 各病原体に関連した死亡数を3段階モデル(感染による死亡、感染症に起因する死亡のうち特定の感染症による死亡割合、感染症に起因する死亡のうち特定の病原体による死亡割合)を用いて推定した。推定値は、2019年における204の国と地域、全年齢、男女について算出。標準的なGBDメソッドに従って、対象の各数量の事後分布から1,000の2.5パーセンタイルと97.5パーセンタイルを抽出し、33の細菌属・種に関連する死亡と感染の最終推定値について95%不確実性区間(UI)を算出した。33細菌属・種の関連死、世界全死亡の約14% 2019年の感染症関連死は推定1,370万人(95%UI:1,090万~1,710万)で、そのうち33の細菌属・種(抗菌薬への耐性あり/なしの両者を含む)による11の感染症関連死は、770万人(570万~1,020万)だった。 2019年の33細菌属・種の関連死は、世界全死亡の13.6%(95%UI:10.2~18.1)を占め、敗血症関連の全死亡の56.2%(52.1~60.1)を占めると推定された。なかでも黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎球菌、肺炎桿菌、緑膿菌の5種の病原菌が、調査対象とした細菌による死因の54.9%(52.9~56.9)を占めた。 死因となった感染症や病原菌は、地域や年齢により異なった。また、調査対象細菌による年齢標準化死亡率は、サハラ以南アフリカのスーパーリージョンで最も高く230人/10万人(95%UI:185~285)だった一方、高所得のスーパーリージョンで最も低く52.2人/10万人(37.4~71.5)だった。 黄色ブドウ球菌は、135ヵ国において細菌による死亡の最大の原因で、また、世界的にみて15歳超で最も多く死亡と関連していた。5歳未満の小児では、肺炎球菌が細菌による死亡の最大の原因だった。 2019年に、600万人以上が3種の細菌感染症で死亡しており、200万人超が死亡した感染症は下気道感染症(400万人)と血流感染症(291万人)の2種で、100万人超の死亡は腹膜・腹腔内感染症(128万人)によるものだった。 著者は、「今回調査した33細菌属・種は、世界的な健康ロスの実質的な原因であるが、感染症や地域によって分布にかなりのばらつきがあった。GBDレベル3の根本的な死因と比較すると、これら細菌関連死は2019年の世界で2番目に多い死因に分類される」と述べ、国際保健コミュニティで緊急に介入を優先すべき事項とみなすべきで、対応戦略として、感染予防、抗菌薬の最適使用、微生物学的分析能力の改善、ワクチン開発・改良、利用可能なワクチンのより広範な使用などを提言している。

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医師が選ぶ「2022年の漢字」TOP5を発表!【CareNet.com会員アンケート】

12月12日は漢字の日。毎年この日に、京都の清水寺で発表される「今年の漢字」(主催:日本漢字能力検定協会)。本家より一足先に、CareNet.com医師会員1,029名に選んでいただいた「2022年の漢字」TOP5を発表します。1年を振り返ってみて、皆さんはどの漢字をイメージしましたか?第1位「戦」第1位には、104票の圧倒的な得票数で「戦」が選ばれました。2022年2月24日にロシアがウクライナへ軍事侵攻し、全世界が戦争の終結を願っているものの、冬を迎えた今も戦禍は続いています。長引くコロナとの戦いに加え、戦争による影響もあり、世界経済も不安定になった1年でした。「戦」を選んだ理由(コメント抜粋)ウクライナの戦争が長引いて庶民は物価高騰との戦いであるから。(50代 眼科/島根)ロシアによるウクライナ侵攻が最大のニュースだった。(40代 循環器内科/東京)ウクライナのように、突如侵略戦争の犠牲になる可能性について考えた。(30代 精神科/埼玉)ウクライナ侵略に正当性はない。(50代 小児科/神奈川)ウクライナにおける惨状を目の当たりにして。(50代 その他/群馬)ワンオペ育児に奔走、コロナと戦い世界的に戦争もあったから。(20代 麻酔科/北海道)第2位「乱」第2位には、「乱」がランクイン。過去にも何度か登場していて昨年は5位でしたが、混乱の世の中は変わらず、再浮上する結果となりました。第1位と同様に、ウクライナでの戦争や、オミクロン株に悩まされたコロナ禍、国内外の経済の混乱などが理由に挙げられました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)円安に拍車がかかったり、ミサイルが幾度も飛んできたり、乱れに乱れた1年だったと思うから。(40代 循環器内科/青森)相変わらず社会全体が混乱のさなかにあると感じました。(40代 外科/岡山)ウクライナに対するプーチンの乱暴。(50代 形成外科/北海道)戦争、コロナ、資源高、円安など混乱が続いているから。(40代 精神科/広島)ロシアによるウクライナ侵攻、為替の乱高下などが印象に残っているため。(20代 臨床研修医/香川)コロナ禍やウクライナ情勢、経済的な混乱を目の当たりしたから。(40代 腎臓内科/福岡)■第3位「安」第3位は「安」。全35票のうち27票で理由に挙げられたのが「円安」。一時は32年前の水準と並ぶ1ドル150円台を記録しました。また、7月の参院選で起きた安倍元総理の銃撃事件を挙げた方も見られ、複合的な理由から「安」が上位に入る結果となりました。 「安」を選んだ理由(コメント抜粋)数十年ぶりの円安ドル高、物価上昇など印象に残ったため。(50代 泌尿器科/鹿児島)安倍元総理の事件のインパクトの大きさと安全安心な世界になってほしい気持ちを込めて。(20代 内科/東京)円安が進んでいよいよ日本の国家としての危機が強まったから。(30代 内科/東京)安倍元首相の銃撃事件、急激な円安、安全保障問題など関連することが多いと感じた。(30代 内科/福岡)第4位「禍」昨年はトップだった「禍」ですが、ここにきて第4位に転落。コロナ禍は依然として続いていますが、今年は治療薬や2価ワクチンの登場などもあり、対抗する手段が増えたことで、収束の兆しが見えてきました。 「禍」を選んだ理由(コメント抜粋)医療逼迫にて行政にも振り回される1年となった。(50代 救急科/愛知)コロナが終わらない。(50代 内科/兵庫)コロナ禍は未だ終息せず、ウクライナの戦禍もあったから。(40代 麻酔科/愛知)第5位「耐」第5位は「耐」。オミクロン株の流行の波が何度もやってきた2022年、医療者には引き続き忍耐が強いられました。全国旅行支援のキャンペーンも開始されるなど、日本も解禁ムードに向かっています。来年こそは、これまで我慢していたことをできる日常が戻ってくるといいですね。 「耐」を選んだ理由(コメント抜粋)月並みだけど、コロナ禍で外出(旅行、飲み会など)を我慢してきた。忍耐のみ。(70代以上 膠原病・リウマチ科/神奈川)まだ旅行や宿泊へ行けずに耐えているから。全面解除になったら、ぜひ政府に医療者限定特別旅行期間をもうけてもらわないと、割に合わない。(50代 精神科/石川)値上げや円安で我慢が強いられる年だから。(40代 眼科/大阪)アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日~10日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,029件

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女性のサル痘感染、性自認や性行為で臨床症状が異なる/Lancet

 2022年5月~11月に、世界で7万8,000人以上のヒトサル痘ウイルス感染が報告されたが、主に男性と性行為を持つ男性で発生している。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJohn P. Thornhill氏らは、今回、15ヵ国のシスジェンダーおよびトランスジェンダー女性と、出生時に女性性を割り当てられたノンバイナリーにおけるサル痘感染の疫学的および臨床的な特性を記述し、リスク因子の特定と理解の向上を目的とする症例集積研究を行った。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月17日号に掲載された。136人のデータを解析、性行為による感染が多い 本研究では、サル痘ウイルス感染の診断件数が多い地域の研究者と連絡を取り、サル痘ウイルス感染が確定された女性およびノンバイナリーのデータを提供するよう依頼した。 参加施設は、匿名化された構造的症例報告スプレッドシートに感染した女性およびノンバイナリーの関心変数のデータを記述したほか、可能性のある曝露、人口統計学的因子、職業、早期の症状、HIVの感染状況、併存する性感染症などを中心に、疑われる感染経路についても尋ねられた。 2022年5月11日~10月4日までに15ヵ国(欧州、北米・南米、アフリカ、イスラエル)でサル痘ウイルスに感染した136人のデータが寄せられた。トランス女性が62人(46%)、シス女性が69人(51%)、ノンバイナリーが5人(4%)であった。ノンバイナリーは数が少ないため、シス女性と合わせて解析が行われた(シス女性/ノンバイナリー74人)。全体の年齢中央値は34歳(四分位範囲[IQR]:28~40、範囲:19~84)だった。 136人中121人(89%)が、男性との性行為を報告した。37人(27%)はHIV感染者で、トランス女性(62人中31人[50%])がシス女性/ノンバイナリー(74人中6人[8%])よりも高率であった。 性行為による感染が疑われたのは、トランス女性が55人(89%、残りは感染経路不明)、シス女性/ノンバイナリーは45人(61%)であった。性行為以外の感染経路は、シス女性/ノンバイナリーでのみ報告され、性行為以外の密接な接触が7人(9%)、家庭が7人(9%)、職場(医療従事者)が4人(5%)だった。診断前誤診が23%、肛門性器の小水疱膿疱性発疹が多い サル痘ウイルス感染の診断の前の誤診が136例中31人(23%)で認められ、トランス女性(62人中6人[10%])よりも、シス女性/ノンバイナリー(74人中25人[34%])で高率であった。 データが得られた集団における症状は、発疹が134人中124人(93%)に認められ、121人中105人(87%)は小水疱膿疱性と記述されていた。また、少なくとも1つの肛門性器病変が129人中95人(74%)にみられた。 病変数中央値は10個(IQR:5~24、範囲:1~200)であった。粘膜病変(膣、肛門、中咽頭、眼球)は119人中65人(55%)で発現した。膣および肛門の性行為は、これらの部位での病変の発生と関連していた。 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で検査した14の膣スワブ検体のすべてで、サル痘ウイルスDNAが検出された。 17人(13%)が入院した。入院理由は、病変部の細菌性重複感染が2人、肛門直腸の重度疼痛の管理が3人、嚥下痛が3人などであった。33人(24%)がテコビリマット(tecovirimat)による治療を受け、6人(4%)は曝露後にワクチン接種を受けた。死亡の報告はなかった。 著者は、「女性における診断の遅れや誤診を避けるために、特別な注意を払う必要がある」と指摘し、「トランス女性およびシス女性/ノンバイナリーでは、病変部位は性行為の種類とほぼ一致していた。臨床医は、性自認や性行為によって臨床症状が異なることに留意する必要がある」としている。

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ソトロビマブ、高リスクCOVID-19で優れた重症化予防効果/BMJ

 オミクロンBA.1およびBA.2変異株が優勢な時期のイングランドでは、重症化のリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の日常診療において、中和モノクローナル抗体ソトロビマブは抗ウイルス薬モルヌピラビルと比較して、28日以内の重症化の予防効果が優れ、60日の時点でも結果はほぼ同様であったことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBang Zheng氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月16日号で報告された。イングランドのEHRデータを用いたコホート研究 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19による重症転帰のリスクが高い患者において、重症化の予防効果をソトロビマブとモルヌピラビルで比較する目的でコホート研究を行った(UK Research and Innovation[UKRI]などの助成を受けた)。 本研究は、OpenSAFELY-TPPプラットフォーム(国民保健サービス[NHS]の電子健康記録[EHR]の解析のための、安全で透明性の高いオープンソースのソフトウエアプラットフォーム)を用いた実臨床コホート研究であり、イングランドの総合診療(GP)施設に登録している2,400万人から、患者レベルのEHRデータが取得された。 2021年12月16日以降に、ソトロビマブまたはモルヌピラビルによる治療を受けた、COVID-19による重症化リスクが高い成人COVID-19患者が対象となった。主要アウトカムは、治療開始から28日以内のCOVID-19による入院およびCOVID-19による死亡であった。さまざまな解析法で、矛盾のないほぼ同様の結果 2021年12月16日~2022年2月10日の期間に、3,331例がソトロビマブ、2,689例がモルヌピラビルによる治療を受けた。全体(6,020例)の平均年齢は52.3(SD 16.0)歳、58.8%が女性、88.7%が白人で、87.6%はCOVID-19ワクチンを3回以上接種していた。 治療開始から28日以内に、87例(1.4%)がSARS-CoV-2感染により入院または死亡した(ソトロビマブ群32例、モルヌピラビル群55例)。 居住地域で層別化したCox比例ハザードモデルでは、人口統計学的因子、高リスクコホート分類、ワクチン接種状況、暦年、BMI、その他の併存疾患で補正すると、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群に比べ、COVID-19による入院または死亡のリスクが大幅に低かった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.33~0.88、p=0.01)。 傾向スコアで重み付けしたCoxモデル(HR:0.50、95%CI:0.31~0.81、p=0.005)および完全ワクチン接種者に限定した解析(HR:0.53、95%CI:0.31~0.90、p=0.02)でも、これと矛盾のない結果が得られた。また、他の因子の有無による層別解析でも、実質的な効果の修正は検出されなかった(交互作用検定のp値はすべて>0.10)。さらに、この結果は、イングランドでオミクロンBA.2が優勢だった2022年2月16日~5月1日の期間に治療を受けた患者の探索的解析でもほぼ同様であった。 治療開始から60日以内(95例[1.58%]がCOVID-19で入院または死亡、ソトロビマブ群34例、モルヌピラビル群61例)の層別Cox回帰分析でも、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群よりもCOVID-19による入院・死亡の予防効果が優れた(4つのモデルのHRの範囲は0.46~0.51、すべてp<0.05)。 著者は、「これらの結果は、入院を要さないCOVID-19患者の治療において、モルヌピラビルよりもソトロビマブを優先する現行ガイドラインを支持するものである」としている。

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第137回 新型コロナ「5類」引き下げ、今やる3つのデメリット

「またこの議論が出てきたか」と感じている。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の『感染症法上の5類扱い問題』である。加藤 勝信厚生労働大臣は11月30日、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに対して、感染症法上の分類の見直し検討を念頭に現在のウイルスの病原性・感染性などに関するリスク評価を示すよう求めたという。釈迦に説法になってしまうが、改めて新型コロナの感染症法上の分類について触れておくと、現在は「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、外出自粛要請や入院勧告が可能で、医療費が全額公費負担なため、法的には感染症法上の2類とほぼ同等となっている。また、これとは別に新型コロナワクチンに関しては予防接種法の臨時接種扱いで、現時点でのワクチン接種は全額公費負担だ。もっとも陽性者報告などは簡略化されたことや、軽症の陽性者が大半を占めるようになり、自主的な自宅隔離や増加した発熱外来での対応止まりも増えたことなども相まって、現状は限りなく5類に近い扱いとも言える。さて個人的にはこの件についてどんな見解かと言うと、「見直し議論は大いにやって良いと思うが、実際の分類変更は多角的かつ慎重に検討すべき」という立場だ。なぜこのように敢えて言及するかと言えば、最近の新型コロナ5類化議論は世論や一部の政治家の主張に押され気味なことに加え、現在の岸田 文雄政権の支持率がかなり低くなっているため、ポピュリズムとも言える安易な判断をしかねない懸念があるからだ。この議論で最も慎重に検討すべきなのは今後の変異株登場の恐れと現在の重症化率についてである。2020年初以来、丸3年のコロナ禍の中で新型コロナでは武漢株→アルファ株→デルタ株→オミクロン株と流行株が入れ替わった。現在のオミクロン株の流行はほぼ丸1年が経過し、国内では最長流行期間を維持している変異株であるのは確かだ。もっともこの間もオミクロン株内の亜系統で流行株が入れ替わっている。これほど流行株が不安定な中で、単純にオミクロン株の特性を基準に法的位置づけを考えるべきかは検討の余地がある。そもそも今回の新型コロナでは、ウイルスの生存原理としての「感染力が強くなれば、重症化率は低下するだろう」というロジックが、武漢株からデルタ株変遷時には“幻想”にすぎなかったことが明らかになった。今の時点でオミクロン株感染者の重症化率が低下しているからと言って、今後もこの状況が続くと考えるのはやや拙速の感がある。感染力の強さゆえに新規感染者が増加し、その過程で強毒の変異株が出現する可能性も十分に考慮に入れなければならない。また、そもそもこの議論では、5類化を支持する一般人を中心に「感染者の数で考えるべきではなく、重症化率で考えるべき」との主張が多い。この手の主張をする人たちの中での最近の流行りは、財務省が各種データからまとめた各感染拡大期の重症化率データの引用である。確かにこのデータを見れば、第6波以降の重症化率や致死率は大幅に低下し、第7波では季節性インフルエンザと同等以下になっているように見える。しかし、この数字は極めて数多くの交絡因子を含んでいる。そもそも第5波と第6波以降での最大の違いはワクチン接種の有無である。第5波時もすでにワクチン接種は進行していたが、重症化率が最も深刻だったと言われる2021年8月は月末時点で全国民の1回目接種率がようやく50%超という状況に留まっていた。現在のオミクロン株の重症化率は2回目までが80%超、3回目までが70%弱の接種率を達成している中でのもの。真の重症化率はワクチン効果でマスクされている可能性がある。5類化議論、もっと言えば季節性インフルエンザとの比較をするならば、ワクチン接種回数や最終接種完了からの経過時間などの層別解析でワクチン接種状況に応じたデータを基に検討しなければ判断を誤る可能性もある。同時に財務省とりまとめの重症化率を基に5類化議論をするならば、それより一足先に始まった新型コロナワクチン接種の無償化終了の是非議論との兼ね合いをどうするかも欠かせない。少なくとも高齢者や基礎疾患保有者では、いまだ油断のならない感染症であることは明白である。5類化するならば、こうした人に対して季節性インフルエンザワクチンのような公費接種(費用の一部に公費負担がある場合)を提供するか否かは明確にしなければならない。というか、それなくして5類化はあまりにも暴論と言える。また一方で、5類化を主張する一般人の多くは、判で押したように「5類にすればどこの医療機関でも診てもらえるようになり、医療逼迫は防げる」というフレーズを口にする。しかし、これは“幻想”に過ぎない。すでに全国で新型コロナ対応を行う発熱外来を有する医療機関は4万軒超に達しているが、これだけ感染力の強い新型コロナでは、院内の導線確保がままならないなどの理由でどうあがいても対応できない医療機関はある。結局、5類化したところで今より発熱外来の対応施設が激増するとはとても考えにくい。そんな中、全国でどのような診療体制を構築するかという議論を棚上げにはできない。同時に整備しなければならないのが、この感染症の特徴ともいえる後遺症対応である。現在はごく一部の後遺症外来対応の医療機関を崖っぷちに立たせたかのような診療体制が続いている。地域ごとの後遺症診療体制の確立は急務だ。さらに検討しなければならないのが治療費の公費負担の在り方である。現在の新型コロナ治療薬は新規の抗体医薬や抗ウイルス薬など製薬企業にとって高額な開発費を要するものばかりで、すべての治療薬が5類という“ありふれた”感染症にしては高薬価である。そのアンバランスさはまるで田んぼのあぜ道をポルシェが疾走するかのごとき状況である。すでに薬価収載されたものでも、自己負担となれば患者は万単位の支払いを迫られることになり、「だったら要らない」という患者も出現するだろう。これら多くの変数を考慮した議論が必要で、およそ1~2ヵ月で結論を出せるものだとは思えない。というか、そもそも感染症法上の1~5類という硬直化した分類の枠内で考えるのもなかなか困難と言ってもいいかもしれない。にもかかわらず、政治の側から5類化議論が比較的安易に飛び出しているように私の目には映る。しかも、日本版CDC創設を根回しなしに突然進めた岸田政権である。正直、この先の行方は気が抜けないと個人的には思っている。

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コロナワクチン追加接種後も重篤なCOVID-19となる患者の特徴(解説:寺田教彦氏)

 2022年11月末、新型コロナウイルス患者は増加傾向となり、「第8波」への対応が問題となっている。「第1波や第2波」の頃と比較すると、新型コロナワクチンの普及や、重症化リスクの高いCOVID-19患者への抗ウイルス薬処方が可能になるなど治療の選択肢が増えており、これらの適切な活用が求められている。 本論文の執筆者であるUtkarsh Agrawal氏は、過去に新型コロナワクチン初回接種完了後も重症化する患者(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)についてスコットランドで検討しており、高齢(80歳以上)、5つ以上の併存疾患、過去4週間以内の入院歴、新型コロナウイルスに接触するリスクの高い職業、行動(10回以上の検査歴)、介護施設入居者、社会的弱者、男性、前喫煙者でリスクが高いことを報告していた(Agrawal U, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:1439-1449.)。 当時と今回の論文で異なる点は、流行株がアルファ株からオミクロン株に変化した点と、新型コロナワクチンの接種回数が以前の研究では2回接種者を対象としていたが、本研究ではワクチン2回接種後に追加接種をした患者を対象としている点である。 「第8波」を迎える本邦の環境としても、流行株はオミクロン株と考えられ、ワクチンの接種も3回目以降の追加接種済みの患者が増えていることから、この論文を参考にしやすい状況と考えられる。 本論文の概要は「ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は?/Lancet」にまとめられており、ブースター接種後も高リスク患者の特徴は、高齢者(aRR:3.60[95%信頼区間[CI]:3.45~3.75])、5つ以上の併存疾患(aRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、免疫抑制状態(aRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(aRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])等である。※aRR:人口統計学的、臨床的因子と重症COVID-19との関連についてワクチン接種後の時間で調整した率比 本研究の結果を参考にできる臨床場面の1つは、執筆者の指摘どおり、抗コロナ薬の処方の判断がある。以前オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化予防に関する報告がされていた(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田 教彦 氏)-1570)。本研究で特定された、ブースター接種後もCOVID-19重症化リスクの高い患者層に対して、ニルマトレルビル等の抗ウイルス薬の処方をすることでCOVID-19重症化リスクが低下するか否かのエビデンスは今後の報告を待つ必要はあるが、現時点でのエビデンスとしては、これらの患者に対して抗ウイルス薬の処方を検討することは妥当だろう。 また、筆者は、重症化リスクの高い人々には、2回目接種以降のブースター接種を優先的に行うことも提案している。新型コロナウイルスワクチンのブースター接種により重症化率等の低下は認められており、本邦においてもブースター接種が未実施の場合は適切なタイミングでの接種が望ましいだろう。 ただし、ワクチンのブースター接種の実施に関しては、メリット(感染予防効果、重症化予防効果、集団免疫効果など)とデメリット(費用、副反応など)は継続して考えていく必要がある。本論文のように、新型コロナウイルスワクチン接種後もCOVID-19が重症化するリスクの高い患者層を特定するとともに、健康成人や重症化リスクの高い患者層それぞれに対して、ワクチンを追加接種する適切なタイミングを考察するための研究も望まれる。

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4回目接種後、医療者での抗体価推移と有効性の持続期間/NEJM

 4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価は2・3回目接種後と比較して違いはあるのか。そしてコロナワクチンによって上がった抗体価はどのくらいの期間、持続するのか。イスラエル・Sheba Medical CenterのMichal Canetti氏らは、同国の医療従事者における4回目接種後6ヵ月間の液性免疫応答とワクチン有効性を評価。2回目および3回目接種後と比較した。NEJM誌オンライン版2022年11月9日号のCORRESPONDENCEに掲載の報告より。コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を2回目および3回目と比較 SARS-CoV-2検査および血清学的フォローアップ検査によって感染歴がないことが確認され、4ヵ月以上前に3回目接種を受けていたコロナワクチン4回目接種者が対象。4回目接種後の液性免疫応答(IgGおよび中和抗体の測定によって評価)を、2回目および3回目の投与後と比較した。 コロナワクチンの有効性は、以下の期間(4回目の接種後7~35日、36~102日、または103~181日)ごとに4回目接種を受けた参加者の感染率を、3回接種者の感染率と比較することによって評価された。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、および職業により調整し、経時的な感染率の違いを説明するための時間スケールとして暦時間が使用された。死亡や追跡不可となった参加者はいなかった。 コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を調べた主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2感染歴のない参加者のうち、6,113人(年齢中央値48[37~59]歳)が液性免疫応答の分析に含まれ、1万1,176人(年齢中央値49[36~65]歳)がコロナワクチン有効性の分析に含まれた。・抗体反応はコロナワクチン接種後約4週間でピークに達し、13週間までに4回目接種前に見られたレベルまで低下し、その後安定していた。・コロナワクチン4回目接種後6ヵ月の追跡期間を通じて、週ごとに調整されたIgGおよび中和抗体レベルは、3回目接種後と同等であり、2回目接種後に観察されたレベルと比較すると著しく高かった。・コロナワクチン3回接種者と比較して、4回接種者ではSARS-CoV-2感染に対する保護効果が強化された。全体のワクチン有効性は41%(95%信頼区間[CI]:35~47)だった。・ワクチンの有効性は接種後の時間とともに低下し、接種後最初の5週間では52%(95%CI:45~58)だったのに対し、15~26週間では-2%(95%CI:-27~17)に低下した。 著者らは今回の結果について、「コロナワクチン3回目接種が2回目接種と比較して、免疫応答の改善と持続をもたらしたのに比較すると4回目接種の追加の免疫学的利点ははるかに小さく、ワクチン接種後13週までに完全に弱まった。この結果は、4回目接種を受けた患者のコロナワクチン有効性の低下と相関しており、接種後15~26週においては3回目接種後と比較した実質的な追加効果は見られなかった」とした。そのうえで、「これらの結果は、インフルエンザワクチンと同様に、4回目の接種および将来の追加接種を、流行の波に合わせて、または季節的に利用できるように賢明なタイミングで行う必要があることを示唆している」とまとめている。

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