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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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コロナ患者に接する医療者の感染予防効果、N95 vs.サージカルマスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に接する医療者のマスクの種類によるCOVID-19予防効果を調査したところ、サージカルマスクはN95マスクと比較して非劣性であったことが、カナダ・マックマスター大学のMark Loeb氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験の結果、明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。N95マスクとサージカルマスクのコロナ予防効果を国別に検証した N95マスクと比較して、サージカルマスクが新型コロナウイルス感染症に対して同様の感染予防効果があるかどうかは不明であった。そこで研究グループは、サージカルマスクはN95マスクに劣らないという仮説を立てて検証を行った。 試験はカナダ17施設、イスラエル2施設、パキスタン4施設、エジプト6施設の計29施設において、2020年5月4日~2022年3月29日に行われた。対象は、COVID-19疑いまたは確定の患者に日常的に医療を提供する1,009名の医療者で、業務中にサージカルマスクとN95マスクを着用する群にランダムに1:1に割り当て、10週間着用した。N95マスクのフィットテストに適合していない、COVID-19のハイリスク因子を有している、COVID-19の既往歴がある、流行株に対応しているワクチンを接種している医療者は除外された。主要評価項目は、RT-PCR検査によるCOVID-19確定であった。 N95マスクにサージカルマスクはコロナ予防効果で劣らないことを検証した主な結果は以下のとおり。・intention-to-treat解析の結果、新型コロナウイルス感染症を発症したのは、サージカルマスク群では10.46%(52/497例)、N95マスク群では9.27%(47/507例)であった(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:0.77~1.69)。・国別のサブグループ解析による新型コロナウイルス感染症の発症率は、下記のとおりであった。 -カナダ(計266例):サージカルマスク群6.11%、N95マスク群2.22%(HR:2.83、95%CI:0.75~10.72 -イスラエル(計34例):サージカルマスク群35.29%、N95マスク群23.53%(HR:1.54、95%CI:0.43~5.49) -パキスタン(計186例):サージカルマスク群3.26%、N95マスク群2.13%(HR:1.50、95%CI:0.25~8.98 -エジプト(計518例):サージカルマスク群13.62%、N95マスク群14.56%(HR:0.95、95%CI:0.60~1.50・マスク着用による不快感、皮膚刺激、頭痛を訴えたのは、サージカルマスク群で10.8%、N95マスク群で13.6%であった。

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第142回 これらのデータを並べて「コロナとインフルが同レベル」と言える?

「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症化率や死亡率は、インフルエンザと同等以下」最近、そんな言説をよく耳にする。まあ、一般人からの言説ならば、「またテキトーなことを言っている」で済むのだが、最近SNS上などを見ていると、そうした言説を発信する人の一部には医療従事者もそこそこ交じっている。彼らが根拠としているのが、昨年12月21日に開催された第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに厚生労働省が提出した資料や11月に財務省が公表した資料である。この件について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードはすでにインフルエンザと新型コロナの比較は困難との結論を出している。それはそうだろう。少なくとも両者の比較に使うにしてはデータの「野良」度合いが過ぎる。本サイトの読者に対しては釈迦に説法ではあるが、今回敢えてこの件について触れてみようと思う。まず、そもそも両資料に提示された重症化率、致死率を算定する分母が両者では違い過ぎると言わざるを得ない。インフルエンザの場合は、「NDB(National DateBase、レセプト情報・特定健診等情報データベース)における2017年9月から2020年8月までに診断または抗インフル薬を処方された患者のうち、28日以内に死亡または重症化(死亡)した割合」とある。ここで注意しなければならないのは、インフルエンザでは約3人に1人との報告がある無症候(不顕性)感染者はほぼ含まれていない可能性が高いことである。一方の新型コロナも無症候感染は存在する。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き」では20~40%と記載されている。どちらの無症候感染者がどの程度、感染者として拾い上げられているかのデータはもちろんない(というか、この点で信頼性の高いデータが存在し得るとは考えにくい)。ただ、コロナ禍前に一般市民のインフルエンザに対する警戒度が現在の新型コロナ並みに高かったと考える人は一般人でも稀だろう。これに対して現在の新型コロナは市中の検査所があふれ、ドラッグストアで抗原検査キットが容易に入手できる状況である。これらを念頭に論理的に考えるなら、新型コロナに関する感染者報告のほうが無症候感染者をより多く拾い上げているだろうと考えられる。つまりより厳格な調査をするならば、インフルエンザのほうが重症化率、致死率を算定する感染者の分母が拡大し、結果としてこれら重症化率、致死率はより小さな値になる可能性が濃厚である。一方、ワクチン接種をめぐる状況は次のようになる。インフルエンザの場合は、▽65歳以上▽60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される▽60~64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な場合、のいずれかに該当すれば予防接種法に基づく定期接種の対象となる。この定期接種対象者でのワクチン接種率は近年50%前後と報告されている。ちなみにワクチンの有効率に関しては、流行の程度や流行株とワクチン株のマッチングによってさまざまな報告があるが、重症化(入院)予防の有効率で見れば、ざっくりいうと50%強である。これに対して新型コロナワクチンは、予防接種法の臨時接種の特例として現在は生後6ヵ月以上が対象となっている。現時点での接種率は総人口あたりで基礎免疫の2回接種完了で80.4%、追加接種の3回接種完了で67.8%、オミクロン株対応2価ワクチンで37.5%である。現時点で2価ワクチンの有効性に関する報告は、まだ十分な数があるとは言えないが、国立感染症研究所の報告では、BA.4-5発症予防の有効率は69%である。このワクチンの有効率とそれが重症化率、致死率に及ぼす影響を考えると、謎解きはかなり複雑になる。季節性インフルエンザの場合、その名の通り主な流行は秋から初春にかけての半年間であり、おおむねこの期間中はワクチンの有効性は保持できると考えられている。これに対して新型コロナは流行が通年。ワクチンの効果はインフルエンザと同じように半年程度であり、前述の国立感染症研究所の研究結果(これとてまだプリミティブなものだが)を見てもわかる通り、接種回数と最終接種からの経過期間によって効果は異なる。重症化予防効果は時間を経ても比較的維持されていると言われてはいるものの、これまでのデータなどを見れば、やはり最終接種から時間が経過するとともに減衰しているのは事実である。このように「第〇波での重症化率、致死率」というデータには、未接種から4~5回接種まで、かつ最終接種日からの経過時間においてさまざまなバリエーションが混在しているため、とてもではないが今のオミクロン株の重症化率、致死率とシンプルに解釈することは無理がある。しかも、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究報告では、ワクチン未接種あるいは未感染者のオミクロン株による重症化・死亡リスクはデルタ株の0.72倍、武漢株の0.94倍との報告もある。この報告に依拠すれば現在のオミクロン株の重症化率自体が比較的高い日本のワクチン接種率でマスクされたものと考えねばならない。加えてこれら数字には、最近医療現場からとみに聞こえてくる新型コロナ経過観察期間終了後の高齢者での基礎疾患の急速な悪化による死亡、罹患後症状、オミクロン株BA.5の感染力の強さによる医療現場や高齢者施設でのクラスター頻発は一切考慮されていない。にもかかわらず、インフルエンザと新型コロナはもはや同レベルなどと一部の医療従事者が口にするのは、もはや妄言が過ぎるのではと思うのだが。

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mRNA-4157/V940・ペムブロリズマブ併用で悪性黒色腫患者に対する主要評価項目達成/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)は2022年12月13日付のプレスリリースで、完全切除後の再発リスクが高いStageIII/IVの悪性黒色腫患者において、研究中の個別化mRNAがんワクチンであるmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を併用した場合、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクが統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示したと発表した。mRNA-4157/V940とペムブロリズマブ併用で再発/死亡リスクが44%減少 mRNA-4157/V940は、患者のがんの遺伝子変異に基づいて設計された、最大34の腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)をコードするmRNAベースの個別化がんワクチンである。 無作為化非盲検第IIIb相試験であるKEYNOTE-942試験において、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157を合計9回投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目は無再発生存期間(RFS)で、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間と安全性である。 mRNA-4157/V940を評価する試験対象者の主な選択基準は以下のとおり。 ・リンパ節に転移し、再発のリスクが高い切除可能な皮膚悪性黒色腫患者 ・ペムブロリズマブの初回投与前13週間以内に完全切除された患者 ・試験登録時(手術後)に無病であり、局所再発または遠隔転移がなく、脳転移の臨床的証拠がない患者 ・シークエンスに適したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)の腫瘍サンプルを提出できる患者 ・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status 0または1 ・スクリーニング時に臓器および骨髄機能が正常な患者 主要評価項目であるRFSについて、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブを併用したアジュバント治療では、ペムブロリズマブ単独と比較して再発または死亡のリスクが44%減少し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.31~1.08、片側検定のp=0.0266)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療関連の重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では14.4%、ペムブロリズマブ単独群では10.0%で発生した。 ModernaとMerckは、規制当局と結果について協議し、2023年に悪性黒色腫を対象とする第III相試験を開始し、他の腫瘍タイプにも拡大する予定であるとした。また、両社は、2022年10月に、MerckがmRNA-4157/V940を共同で開発し商品化するオプションを行使したことを発表した。

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開発中の経口レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビルに非劣性/NEJM

 重症化リスクの高い軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、VV116(重水素化レムデシビル臭化水素酸塩)の経口投与は、経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル+リトナビル(商品名:パキロビッドパック)と比較して、持続的な臨床的回復までの期間に関して非劣性であり、安全性は良好であることが、中国・Shanghai Institute of VirologyのZhujun Cao氏らが実施した第III相無作為化観察者盲検比較試験の結果、報告された。VV116は、レムデシビルの経口抗ウイルス薬の1つとして中国で開発が進められている。これまで小規模試験で、陽性確定後5日以内の投与は通常ケアと比較してウイルス排出期間が短縮したことが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年12月28日号掲載の報告。VV116の有効性、持続的な臨床的回復までの期間を検証 研究グループは、SARS-CoV-2のB.1.1.529(オミクロン)変異株流行期の2022年4月4日~5月2日に、重症化リスクの高い軽症~中等症の症状を有するCOVID-19成人患者を、VV116群またはニルマトレルビル+リトナビル群に無作為に割り付け、それぞれ5日間経口投与した。 主要エンドポイントは、無作為化から持続的な臨床的回復までの期間(観察期間28日目まで)とし、持続的な臨床的回復とは、COVID-19に関連する全症状が2日間連続して軽減(11項目の症状のスコア[各項目のスコア範囲は0~3でスコアが高いほど重症であることを示す]の合計スコア[11項目の合計スコアの範囲は0~33]が0または1)、と定義した。また、非劣性マージンは、ハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)の下限を0.8とした(HRが>1の場合、VV116のほうがニルマトレルビル+リトナビルより持続的な臨床的回復までの期間が短いことを示す)。持続的な臨床的回復までの期間、VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日 計822例が無作為化され、771例がVV116(384例)またはニルマトレルビル+リトナビル(387例)の投与を受けた。患者背景は、年齢中央値が53歳、女性が50.2%で、ほとんど(92.1%)が軽症COVID-19であり、ワクチン接種済み(ブースター接種含む)が4分の3を占めていた。主な重症化リスクは、60歳以上(37.7%)、高血圧を含む心血管疾患(35.1%)、肥満(BMI≧25)(32.9%)、喫煙(12.5%)、および糖尿病(10.1%)などであった。 主要解析(データカットオフ日:2022年5月13日)で、持続的な臨床的回復までの期間に関して、ニルマトレルビル+リトナビルに対するVV116の非劣性が検証された(HR:1.17、95%CI:1.01~1.35)。最終解析(データカットオフ日:2022年8月18日)においても同様の結果が得られた(中央値:VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日、HR:1.17、95%CI:1.02~1.36)。 最終解析において、持続的な症状消失までの期間(11項目のCOVID-19関連症状の各スコアが2日連続で0)、および無作為化からSARS-CoV-2検査が初めて陰性になるまでの期間は、両群間で差は認められなかった。28日までに死亡または重症COVID-19に進行した患者は、両群とも報告されなかった。 有害事象の発現率は、VV116群67.4%、ニルマトレルビル+リトナビル群77.3%であり、VV116群が低値であった。Grade3または4の有害事象の発現率も同様であった(2.6% vs.5.7%)。 なお、著者は、二重盲検試験ではなかったこと、オミクロン変異株亜種に感染した中国人が組み込まれていたこと、連続2日間の症状消失後に症状が再燃する可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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オミクロン株XBB.1の細胞侵入効率と免疫回避能

 2022年1月、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB系統がインドで初めて検出され、アジアと欧州で増加している。XBB系統は主に5つの亜系統(XBB.1~5)が派生し、ほとんどがXBB.1である。ドイツ・German Primate CenterのPrerna Arora氏らは、XBB.1系統の宿主細胞への侵入と抗体による中和を回避する能力を初めて評価した。その結果、ワクチンを4回接種した人や3回接種後にBA.5に感染した人においてもXBB.1の中和回避能が非常に高いことがわかった。また、この高い中和回避能は、細胞侵入効率の若干の低下と引き換えにもたらされた可能性が示唆された。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月5日号に掲載。 著者らはまず、XBB.1の宿主細胞への侵入効率を祖先株のB.1、現在優勢なBA.5と比較した。BA.5の侵入効率はB.1と比べ、Vero細胞(アフリカミドリザル腎細胞)では2.2倍、293T細胞(ヒト腎細胞)で5.3倍高かったが、Calu-3細胞(ヒト肺細胞)では1.9倍低かった。XBB.1の侵入効率は、すべての細胞株でBA.5と比べて1.7~3.9倍低下し、Calu-3細胞ではB.1と比べて3.4倍低下した。一方、293T細胞およびVero細胞ではXBB.1はB.1と同様だった。 次に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防や治療に臨床使用されている(使用中止となったものも含む)もしくは開発中のモノクローナル抗体(14種類)およびモノクローナル抗体カクテル(4種類)について、XBB.1に対する中和能力を調べた。調査したすべてのモノクローナル抗体およびモノクローナル抗体カクテルがB.1を効果的に中和したが、XBB.1についてはソトロビマブとS2H97が中和できたものの、その中和能力はB.1に対する中和能力と比べて10分の1以下だった。 最後に、ワクチン接種またはワクチン接種+感染によって誘導された抗体のXBB.1の中和能力を評価した。ワクチン3回接種者の血清の中和能力は、B.1、BA.5に対しては高かったが、XBB.1にはほとんどなかった。また、ワクチン3回接種後BA.5流行中に感染した人の血清の中和能力は、B.1には高く、BA.5には中程度、XBB.1には低かった。ワクチン3回接種後に1価ワクチン(B.1)または2価ワクチン(B.1とBA.5)のいずれかを接種した人の血清においても同様だった。 これらの結果から、著者らは「ほとんどの抗体がXBB.1を中和しないことからCOVID-19治療には新たな抗体が必要であり、XBB系統の発生率が高い地域では他の治療法を検討すべき」としている。

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正しいがんの原因への認識、ワクチン拒否・代替医療・陰謀論支持者で低調/BMJ

 がんの原因に対する認識傾向について、スペイン・Catalan Institute of OncologyのSonia Paytubi氏らが、約1,500人を対象に行ったオンライン横断調査の結果、ほぼ半数が「何もかもががんの原因になるように思える」と感じていることが明らかになった。著者は、「大量の情報が、事実に基づく原因と根拠のない原因を見分けることを困難にしていることが浮き彫りになった」と述べている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン拒否者、代替医療や陰謀論を支持する人々では、それぞれの対照群と比べ、根拠のないがんの原因を支持する傾向が高く、事実に基づくがんの原因を支持する傾向は低かった。著者は、「これらの結果は、誤ったデジタル情報と誤った健康認識が関連していることを示すものであり、予防可能ながん率を示している可能性もある」と述べている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「DON’T BELIEVE THE HYPE(誇大宣伝を信じるな)」掲載の報告。ネット上フォーラムやがん予防ウェブサイトからデータ収集 研究グループは、インターネット上のフォーラム「ForoCoches」(スペイン語)、「Reddit」(英語)、「4Chan」(英語)、「HispaChan」(スペイン語)、およびがん予防に関するスペイン語ウェブサイト(mejorsincancer.org)から、2022年1~3月にかけてデータを収集し、ワクチン懐疑論や陰謀論への公言とがん予防に対する態度について、横断研究を行った。 Cancer Awareness Measure(CAM)とCancer Awareness Measure Mythical Causes Scale(CAM-MYCS)を用いて、がんに対する考え(cancer beliefs)を評価した。事実に基づくがんの原因に関する認識度、CAMスコア中央値63.6% 回答者1,494人のうち、COVID-19ワクチン非接種者は209人、従来医療よりも代替医療を好む人は112人、天動説またはレプティリアン(ヒト型爬虫類の異星人)陰謀説の信者は62人だった。 事実に基づくがんの原因に関する認識度は、根拠のない原因への認識度より高かった(CAMスコア中央値:63.6% vs.41.7%)。最も支持されていた根拠のないがんの原因は、食品添加物や人工甘味料の摂取、ストレス、遺伝子組み替え食品の摂取だった。 ワクチン非接種者、代替医療支持者、陰謀論支持者の3群の、事実に基づくがんの原因の特定率中央値は54.5%だった。一方、3群の対照群では63.6%だった(それぞれ、p=0.13、p=0.04、p=0.003)。根拠のないがんの原因の特定率中央値は、ワクチン非接種者群が25.0%、代替医療支持者群が16.7%、陰謀論支持者群が16.7%だったのに対し、各対照群は中央値41.7%と高率だった(いずれも、補正後p<0.001)。 「何もかもががんの原因になるように思える」に同意した人の割合は、全体では673人(45.0%)だった。同割合は、ワクチン非接種者群は44.0%、陰謀論支持者群は41.9%、代替医療支持者群は35.7%で、各対照群(45.2%、45.7%、45.8%)と有意差はなかった。

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モルヌピラビル、ワクチン接種済み患者の入院・死亡への効果は?/Lancet

 SARS-CoV-2の経口抗ウイルス薬モルヌピラビルは、地域で暮らす高リスクのワクチン接種済み成人集団における、COVID-19関連の入院または死亡の発生を減少しなかった。英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らが、約2万6,000例を対象とした非盲検プラットフォームアダプティブ無作為化対照試験「PANORAMIC試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月22日号掲載の報告。28日以内の原因を問わない入院または死亡を比較 PANORAMIC試験は2021年12月8日~2022年4月27日に、50歳以上、または18歳以上で関連併存疾患のある体調不良で在宅療養5日以内のCOVID-19確定患者を適格対象として行われた。被験者を無作為に2群に分け、一方にはモルヌピラビル(800mg、1日2回、5日間)+通常ケアを、もう一方の群には通常ケアのみを行った。 無作為化はウェブベースシステムを用いて行い、年齢(50歳超、50歳未満)と、SARS-CoV-2ワクチン接種の有無による層別化も行った。 COVID-19アウトカムは、無作為化後28日間、患者自身が記録したオンライン日誌で追跡された。主要アウトカムは、無作為化から28日以内の原因を問わない入院または死亡。解析は、無作為化を受けた適格全被験者を包含したベイズモデルを用いて行われた。入院・死亡率はモルヌピラビル投与群、通常ケアのみ群ともに1% 2万6,411例が無作為化を受けた(モルヌピラビル+通常ケア群1万2,821例、通常ケアのみ群1万2,962例、その他の治療628例)。主要解析には、モルヌピラビル+通常ケア群1万2,529例、通常ケアのみ群1万2,525例が包含された。 被験者の平均年齢は56.6歳(SD 12.6)、SARS-CoV-2ワクチンの3回以上接種者は94%(2万5,708例中2万4,290例)だった。 入院または死亡が記録されたのは、モルヌピラビル+通常ケア群105例(1%)、通常ケアのみ群98例(1%)だった(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%ベイズ信用区間[CrI]:0.81~1.41、優越性の確率:0.33)。サブグループ間で治療相互作用のエビデンスはみられなかった。 重篤な有害事象は、モルヌピラビル+通常ケア群で50例(0.4%)、通常ケアのみ群で45例(0.3%)が記録されたが、モルヌピラビルに関連すると判定された有害事象はなかった。

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高齢者施設での新型コロナ被害を最小限にするために/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月28日に開催された。その中で「高齢者・障がい者施設における被害を最小限にするために」が、舘田 一博氏(東邦大学医学部教授)らのグループより発表された。 このレポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると死亡などのリスクの高い、高齢者・障害者を念頭に大人数が集まるケア施設内などでのクラスター感染を防ぐための対応や具体的な取り組み法として、健康チェック、ワクチン、早期診断と対応、早期治療、予防投与が可能な薬剤、リスク時の対応、保健所や医療機関との連携などが示されている。医療機関外での感染者対応が課題 はじめに「第8波のリスクと高齢者・障がい者施設を守ることの重要性」と題し、これまでわが国では、高齢者・障害者施設において多数のクラスターを経験、多くの命が失われたこと、現在は第8波の入り口であり、年末年始の諸行事により急激な感染者数の増加が生じるリスクが高まることを指摘する。そして、死亡者数が1日270人(2022年12月15日時点)と増加中であり、その多くが高齢者や基礎疾患を有する人で、とくに集団感染が生じやすい高齢者・障害者施設、慢性期医療機関がリスクの中心であり、その被害をいかに減らすかが重要となる。また、今冬はインフルエンザとの同時流行が懸念され、こうした施設内においても、COVID-19とインフルエンザが同時期に流行し両方の感染者が増大したことを想定した備えが必要になると注意を喚起しているほか、ワクチンなどの普及により軽症例や無症候例もあり、すべてが医療機関への入院ではなく感染者の状態に応じて施設内対応が求められる事例が増加しており、感染者や濃厚接触者への感染対策や治療を施設などでも行っていくことが求められるようになっている。高齢者や障害者の命を守ることができる施設対策へ 高齢者・障害者施設で求められる第8波対策は以下の通り。1)健康チェック入所者・職員の毎日の健康チェックが重要。発熱・咳・咽頭痛(違和感)・全身倦怠感などがみられた場合には感染の可能性を考えて迅速に対応。都道府県が実施している職員対象のPCR検査や抗原定性検査キットによる定期的検査を積極的に活用し、感染の早期発見に努めること。2)ワクチン接種オミクロン対応2価ワクチンが利用でき、それ以外の新型コロナワクチンの最終接種から3ヵ月を経過した時点からは次のワクチン接種が受けられる。施設利用者に対しては集団的接種などによる接種機会の確保を図るとともに、職員にも早めの接種を推奨する。また、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能。3)早期診断・早期対応「風邪かな?」と思ったら、コロナやインフルエンザの可能性を考えて検査を実施することが必要。典型例を除き(インフルエンザ流行時の急激な発熱・筋肉痛など)、臨床症状だけで両者を鑑別することは困難。現在では、コロナだけでなく、インフルエンザも同時に診断できる簡易抗原検査キットが利用可能なので、施設ごとに協力医療機関などと連携の上で、検査キットを備えておくことが勧められる。4)コロナと診断された場合の早期治療これまでにコロナに対する治療薬として抗ウイルス経口薬(3種類)と注射薬(1種類)、中和抗体薬(3種類)に加えて、免疫抑制剤(3種類)が承認されている。高齢者や重症化リスクのある人には早期の治療開始が重要。しかし、高齢者・障害者施設においては、医師が常駐していないこともあり、施設特性や得られる医療支援に応じて、無理のない範囲で使用可能な治療薬の検討を行い、感染発生を想定した準備を行うことも重要。5)予防投与が可能な薬剤施設内で感染者が発生し、クラスターのリスクが高まっている場合、あるいは免疫抑制状態が強く重症化リスクが高い入所者において、曝露後に使用できる薬剤としてカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)が承認されている。オミクロン株の流行の中で中和活性の低下が報告されているが、中和活性に加えて感染細胞を排除する作用(エフェクター機能)があることも報告されており、他の薬剤が使用できない場合の投与が承認されている。施設内でのクラスター発生時、感染者周囲の曝露者に対して予防投与を早期に行うことにより発症および重症化を抑制できる可能性がある。施設の特性や得られる医療支援を考慮し、無理のない範囲で、予防投与の進め方に関して担当医師と相談しておくことも重要。6)クラスターのリスクが高まっている場面での感染対策の実際施設内で感染者が発生した場合に、施設内で隔離および治療を行わなければいけない場合も増加している。これまでの経験をもとに感染対策を実施し、他の入所者に感染を広げない対策が必要になる。施設内では人材・感染対策資材も限られており、ゼロリスクを求める対策は困難だが、施設で実施することが可能なリスクを減らす対策を組み合わせて対応することが必要になる。〔高齢者・障害者施設におけるエアロゾル感染対策の考え方〕(1)屋内における密集を避ける(2)換気扇を常時稼働させる(3)人数が増えたら窓を開ける(4)扇風機を外に向かって回す(5)パーティションは必要時に設置する(6)空気清浄機を活用する7)保健所・医療機関との連携の重要性クラスターの発生前から保健所や医療機関との連携が取れるように、日常から備えておくことが重要。とくに医師が常駐していない施設では、感染疑いの入所者・職員が出た場合の検査や治療の実施に関して事前に保健所や医療機関と相談をしておく必要がある。感染者が明らかとなった場合には、保健所・医療機関に速やかに連絡し、必要な治療を開始することが重症化抑制、クラスター対策として効果的。第8波を前に保健所・連携医療機関と対応の実際に関してお互いに確認しておくことをお勧めする。〔高齢者・障害者施設における感染対策のポイント〕・最終ワクチン接種後、3ヵ月を経過したら次の接種が可能(コロナとインフルエンザワクチンの同時接種も可能)・早期発見「かぜ」かな?と思ったら検査を実施(適宜、コロナ・インフルエンザ同時抗原検査を利用)・リスクを減らす対策を可能な限り組み合わせて対応・人との接触時(近距離・直接)はマスク着用と効果的な換気が基本(吸引などの場合はN95マスクを使用)・医療機関・保健所との連携の確認(早めの診断と治療、感染の拡大予防が可能になるよう前もって相談)

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第141回 神対応の大規模接種会場!モデルナBA.4-5対応ワクチン求め行ってきた

無事2023年に入ったが、世はいまだ新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第8波の真っ最中である。そうした中で一つの重要な対策であるオミクロン株対応ワクチンの国内接種率は1月4日現在、35.8%。65歳以上の高齢者に限定すると60.2%。全人口で見ると、やや心もとない接種率に見えなくもない。もっとも接種対象者のうち第7波、第8波で感染した人たちが接種保留状態にあることを考えると、まずまずの数字なのではないかと個人的には考えている。そのような中で年の瀬の12月27日、私はようやく新型コロナ・オミクロン株対応ワクチンによる4回目接種を完了した。「ワクチンマニア」を自認する人間としては遅過ぎるとのご批判も受けそうだが、その理由は何よりもオミクロン株BA.4-5対応のモデルナ製ワクチンの承認を待ったためである。従来の研究からファイザー製ワクチン接種者より、モデルナ製ワクチン接種者のほうが抗体価は高めであるとの研究報告は多いからだ。年明けから受験を控える子供を持つ親にとっては、こうしたちょっとした差も気になってしまうのだ。ご存じのようにモデルナ製のBA.4-5対応ワクチンは、ファイザー製から約1ヵ月遅れて承認され、現場での流通は11月下旬から始まった。それ以降、私はいつ自分の居住区で使用されるかと逐次情報をチェックしていたが、12月中旬になってからもその兆しは皆無だった。各方面に問い合わせると、どうやら東京都に関しては、当面、モデルナ製BA.4-5対応ワクチンは、ほぼ都の大規模接種会場での使用一択と判明した。ならば大規模接種会場ですぐに受ければ良いと思われそうだが、自分の場合、接種した場所で、保有する世界保健機関(WHO)版と米国疾患予防管理センター(CDC)版のイエローカード(国際予防接種証明書)への記録記載もお願いしたいため、個別医療機関での接種のほうが何かと都合が良い。しかし、当面居住区の個別医療機関に回ってこないとなると、もはや大規模接種会場で接種するしかなかった。しかし、問題は大規模接種会場で“イエローカード記入”という手間を取ってもらえるか否かである。やむなく12月の第4週に東京都庁に電話し、イエローカードへの記載を行ってもらえるかを問い合わせた。最初に対応してくれた福祉保健局感染症対策部防疫・情報管理課の担当者からは「イエローカード? はあ、そういうのがあるんですね」と言われ、大規模接種会場担当者に電話を回された。こちらでもほぼ同様の反応だったが、希望する接種会場に問い合わせて折り返しするとのこと。最終的に会場から記入対応可能との回答をいただいた。大規模接種会場の担当者からは「イエローカードへの記入要望があることをあらかじめ会場側に伝えたいので、予約が完了したら予約日時と予約番号を教えて欲しい」と言われた。そこで、接種予約を入れてその日時を担当者に再度電話。また、同時接種可能なインフルエンザワクチンも打ちたかったので、同じ日に馴染みのK先生のところでの接種を予約した。当日の午前11時、都内のK先生のクリニックでインフルエンザワクチンの接種を完了。同時に新型コロナのスパイクタンパク抗体検査用の採血もしてもらった。そこから新宿に移動。昼食を終えてから都庁近くのカフェで仕事をして午後3時の接種時間を待つ。接種予定時間10分前に都庁に行き、1F受付で接種予約確認後、検温。接種の予診票には、接種予約をしたワクチンの種類が大書されたカードが張り付けられた。アナログとはいえ、ワクチン選択ミスを防ぐ手段としてはそこそこ以上に有効だろう。会場となる北展望室接種センターがある45階へエレベーターで昇った。ちなみに会場は撮影禁止である。エレベーターを降りると、目の前の空間はファイザー(BA.1、BA.4-5)、モデルナ(BA.1、BA.4-5)、ノババックスと接種ワクチンの種類ごとにラインがパーテーションポールで仕切られていた。迷わずモデルナのラインに入り、それに従って進むと、そのまま予診室BOXへ案内された。一通り予診票を確認した予診担当医師から「体調が悪いとかはありませんか?」と尋ねられたので、「とくにありません」と答えると、そのまま医師の背後を通過して予診室入口と反対側に通り抜けするよう指示され、その先にある接種室BOXへ。今度は、接種担当医師による再度の予診票確認後、「どちらの腕にします?」と聞かれたので、インフルエンザワクチンを打ったのと反対側の左腕への接種を依頼した。指示通り手をだらんとぶら下げて、「チクッとしますね」と言われるやいなや「はい、終了です」。今までで一番短時間だった気がする。医師にアレルギー体質なのでアナフィラキシーチェックは30分でお願いしたいと伝えたところ、予診票をじっと見つめて「じゃあ、ここ修正してもらえます」と指で示された。ああ、確かに「アレルギーなし」に丸をしていた。実はここで気付いたのだが、これまでの個別医療機関での接種時はアレルギーの有無で無に印をつけていた。何となく文面が直接的な薬物や食物へのアレルギーを尋ねているようにしか読めなかったからだが、こういう場合、気になるところは念のため書いておくべきだったと反省。ということで修正した。私が修正を提出すると、接種担当医師が予診BOXのほうに予診票を持って行き、予診担当医師と二言三言。こうやってきちんと細かに情報共有や確認を行うのだと、改めて感服した。接種BOXを出て、順路に沿って進むと、パイプ椅子が並ぶアナフィラキシーチェック待機場へと到着する。その中でやはりパーテーションポールで区切られた30分待機者用区画に案内された。職員の指示で「こちらの席にどうぞ」と言われて座るも西日がきつい。職員もそれに気づいて、椅子を動かし、「こちらでどうでしょう?」と日陰に誘導してくれた。着席直後、看護師から「ちょっとでも具合が悪いと思ったら遠慮なく仰ってください」と伝えられる。愛知県愛西市の接種会場での死亡事例もあって、この辺は厳格化したのかもしれないが、行き届いた対応である。とりあえずスマホで仕事の資料をチェックしていると、あっという間に30分が経過。職員の誘導に従って最終コーナーの接種済み証交付窓口に。ここで例のイエローカードの記入を申し出る。WHO版、米・CDC版の2種類のイエローカードを提出したのだが、どうやらロット番号シールが1枚で済むと思っていたらしく、職員があたふたし始めた。もともと一覧性に優れている米・CDC版を使い始めたのだが、反米国家に行く頻度が多く、イエローカード内の「U.S」が時に厄介なことになりかねないので2種類を運用している。職員2人で「うん、こっち(WHO)は見たことがあるけど、こっち(CDC)は初めて見た。どこの?」とゴニョゴニョ。私が「それは米・CDC版です」と伝えると、「ほー」と言いながら2人とも穴が開くかと思うほど凝視している。記入を待っている間、出口に山積みされた『免疫』のキャッチフレーズが付いたドリンクを勧められる。接種者は1人1本いただけるらしい。まあ、本音で言うと「免疫」を名乗る商品は胡散臭いとしか思わないが、さすがに害はないだろうと思い、ありがたく1本いただき、粗野な私はその場で一気飲みする。最終的に2枚のカードにロット番号シールが貼られ、無事終了。ついにCDC版イエローカードは3枚目となった。今回、初めて経験した大規模接種会場だが、驚くほどシステマティックかつ行き届いた運営がなされていた。これも約2年に及ぶワクチン接種事業の賜物なのだろう。さて、この翌日にはK医師のところで受けた新型コロナのスパイクタンパク抗体の検査(試薬はロシュ・ダイアグノスティックス)結果が届いた。3回目接種から10カ月を経過した時点の私の抗体価は4,521 U/mL。以前、2回目接種から4ヵ月後に測定した際にK医師から「僕の10倍はある」と言われた時と、数値はほぼ同じ。3回目接種から10ヵ月も経っているのにもかかわらずだ。思うに1~2回目はファイザーで、3回目をモデルナという抗体価が上がりやすい交差接種にして、その直後に抗体価が爆上がりしたのだろうか。ちなみに同時に新型コロナウイルスへの感染履歴がわかるヌクレオカプシド(N)タンパク質抗体の検査も行っており、その結果ではここ最近、無症候も含む感染歴はないことも判明し、ややほっとした。が、それもつかの間。その後、やや怒涛とも思える事態に遭遇することになるが、それは機会があれば次回以降で。また、本年も宜しくお願い致します。

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早くも選考の時期!1年半後のフェローシッププログラムに応募【臨床留学通信 from NY】第42回

第42回:早くも選考の時期!1年半後のフェローシッププログラムに応募さて、3年間の循環器フェローシッププログラムも、この12月でようやく折り返し地点に来ました。次の所属先を決めるにはまだかなり早い気もしますが、1年半後の循環器カテーテル治療フェロー(Interventional Cardiology Fellowship)の選考があったことを報告します。通常はERAS(electronic residency application system)というウェブサイトを通じて応募し、プログラム側が均一化されたフォーマットをもとに応募者を選定し、面接に呼び、最終的にマッチングシステムのNRMP(national ranking matching program)を通して作成されたランキングを基にマッチングするという仕組みになっています。その点は、日本の研修病院選びと大差はないでしょう。通常だと、7月のプログラム開始に合わせて、フェローの場合は、前年の7月に申請が始まり、11月まで面接があり12月にマッチングの発表が行われます。レジデントの場合は、9月より申請が始まり、プログラム開始の5ヵ月前の3月に結果が出るため、ビザ申請などを含めるとあまり余裕がない日程になっています。しかしながら、循環器カテーテル治療フェローの選考はERASを経由して候補者が申請し、プログラム側がそれを審査するところまでは同じなのですが、申請開始時期が前々年の12月からと非常に早く、さらに不公平なことに現時点ではマッチングシステムを採用していません。プログラム側が選定した候補者と面接をした後に随時オファーを送り、候補者側は48時間以内にそれを受けるか判断しなければいけないという仕組みになっています。たとえば、より良い病院の面接を控えている状況で、少しランクの落ちる病院からのオファーが来た時に、候補者側が大変悩ましい選択を強いられるような仕組みです。あまり魅力的でないオファーを蹴って、ランクの高い病院に勝負をかけてもいいのですが、逆にオファーを蹴ったことで、よりランクの落ちる病院になる可能性もあります。はたまた、循環器のサブスペシャリティの中でInterventional Cardiologyは最も競争が激しいため、アンマッチになることもありえます。この仕組みはプログラム側が有利だと言えます。また、ある程度上位のプログラムは内部生で固まってしまうため、外部から有名な病院のプログラムには入りにくくなっています。このような不公平さへの批判から、この仕組みはわれわれの学年までで終了し、1学年下からはNRMPを通じたマッチングシステムに変わります。病院がNRMPのシステムを採用すると、マッチング外からの採用は禁止されるため、さらに多くの病院が参加することとなります。さて、システムの逆境の中ではありましたが、私はなんとか2024年7月から、ハーバード・メディカルスクール マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School)のカテーテルフェローのポジションを獲得できました。そのプロセスについて、次回お伝えしたいと思います。Column先日、JAMA Pediatricsにコロナワクチンと若年者の心筋炎に関する論文を掲載したので、ここに報告させていただきます。筆頭著者は大学テニス部の時のダブルスパートナーで、まさに二人三脚で挑んだ2本目のダブルス論文です。また、共同筆頭著者の先生は臨床留学を目指しているとのことで、今後もアカデミックに頑張ってほしいと思います。Yasuhara, J, Masuda K, Kuno T, et al. Myopericarditis After COVID-19 mRNA Vaccination Among Adolescents and Young Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2022 Dec 5. [Epub ahead of print]

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オミクロン株の新系統に対するワクチンの有効性/東京大学・国立国際医療研究センター

 第8波の主体となっている新型コロナウイルス・オミクロン株。現在では、欧米諸国でBA.5系統から派生したBQ.1.1系統が、インドやシンガポールなどのアジア諸国ではBA.2系統から派生したXBB系統の感染例が急激に増加している。これら現在流行中の系統に対する新型コロナワクチンの有効性は、どの程度あるのだろうか。 東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡 義裕氏らの研究グループは国立国際医療研究センターと共同で、オミクロン株BQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン(パンデミック初期株をもとに作られたワクチン)の有効性を検証するため、患者から分離したBQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン被接種者血漿*の中和活性を調べた。その結果、BQ.1.1系統とXBB系統に対する中和活性は、従来株、BA.2系統、あるいはBA.5系統に対する活性よりも顕著に低かったことが判明した。Lancet Infectious Diseases誌2023年1月号に公表された。*3回目接種から半年経過または、4回目接種から1~2ヵ月経過したもの。ワクチン4回接種でも中和活性は低い 本研究の目的として、2022年12月現在、わが国を含む多くの国々では、BA.5系統に属する株が主流となっている。しかし、米国をはじめとする欧米諸国では、BA.5系統から派生したBQ.1.1系統が主流となりつつあり、インドやシンガポールなどのアジア諸国では、BA.2系統から派生したXBB系統の感染例が急激に増加している。さらには、BQ.1.1系統とXBB系統が、国内を含む多くの国々で検出されている。こうした環境下で、国民のおよそ65%あるいは40%がmRNAワクチンの3回目あるいは4回目接種を終えているなか、現在流行中の系統に対するワクチンの有効性に関する情報が求められている。そのため、河岡氏らの研究グループは、オミクロン株BQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン(パンデミック初期株をもとに作られたワクチン)の有効性を検証するため、患者から分離したBQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン被接種者血漿の中和活性を調べた。 mRNAワクチン被接種者から採取された血漿のBQ.1.1株とXBB株に対する感染阻害効果(中和活性)を調べた結果、mRNAワクチン3回目の被接種者の血漿(3回目接種から半年経過したもの)または4回目の被接種者血漿(4回目接種から1~2ヵ月経過したもの)の、BQ.1.1系統とXBB系統に対する中和活性は、いずれも、従来株、BA.2系統、あるいはBA.5系統に対する活性より著しく低く、多くの検体で中和活性が検出限界以下だった。 続いてmRNAワクチンを3回目接種後にBA.2系統に感染した患者(BA.2系統ブレークスルー感染者)の血漿を用いて、BQ.1.1株とXBB株に対する中和活性を調べたところ、これらの血漿のBQ.1.1系統とXBB系統に対する中和活性は、従来株、BA.2系統、あるいはBA.5系統に対する活性よりも顕著に低いことがわかった。一方で、ほとんどの血漿は低いながらも中和活性を有していることが判明した。 同グループは、本研究を通して得られた成果は、「医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株各系統のリスク評価など、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定・実施する上で、重要な情報となる」と期待を寄せている。

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「新型コロナ感染症対策の情報提供サイト」開設/モデルナ

 モデルナは2022年12月22日、一人ひとりにあった感染予防対策や最新情報の提供を目指した、新型コロナウイルス感染症情報サイト『コロナ対策ステーション』(以下、当サイト)を開設した。当サイトは4つのメニューから構成されており、各コンテンツを通して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する正しい知識を得られる場となることが期待される。『コロナ対策ステーション』について SARS-CoV-2感染によるCOVID-19は、日本の公衆衛生にとっていまだ脅威であり、今後さらなる感染再拡大も懸念されている。当サイトは、「一人ひとりの年齢やこれまでのワクチン接種状況などに応じて、感染対策情報の提供と新型コロナウイルス感染症に関する疑問を解決する」というコンセプトのもと、「あなたのための新型コロナウイルス対策(FAQ)」「知っておきたいコロナ対策(動画5本掲載)」「コロナウイルス流行株インフォ」「ワクチン接種会場を調べる」の4つのメニューで構成され、「一人ひとりにあった感染予防対策や最新情報」を提供している。 当サイトのナビゲーターを務めるのは俳優の椎名 桔平氏である。椎名氏は、一般生活者の代表としてサイト内の随所に登場する。また、矢野 晴美氏(国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 副センター長/感染症学教授)が監修する「知っておきたいコロナ対策」では、新型コロナウイルス対策やワクチンについて、矢野氏による丁寧な解説を動画で視聴することができる。 当サイトの開設について、モデルナ・ジャパン代表取締役社長の鈴木 蘭美氏は、「新型コロナウイルスは、日本の公衆衛生にとって引き続き脅威となっております。モデルナはワクチン提供にとどまらず、当サイトを通してCOVID-19に関する正しい情報を提供することで、皆さんのお役に立てることを願っています」と述べている。【コロナ対策ステーションのコンテンツ内容】・あなたのための新型コロナウイルス対策(FAQ) 年齢、性別、ワクチン接種回数、家庭内の小さな子どもの有無、健康状態を選択すると、その条件にあった内容の情報が抽出され閲覧できる。・知っておきたいコロナ対策(動画5本掲載、1本当たり4~5分) 矢野氏監修のコンテンツ。椎名氏が聞き手として5本の動画内に登場し、COVID-19対策の各テーマについて矢野氏による解説を聞く内容となっている。1. 接種対象者案内「接種対象者はどんな人?」2. 追加接種の意義「追加接種は必要?」3. コロナワクチンの種類「新型コロナウイルスのワクチンにはどんな種類があるの?」4. 変異株とは「ウイルスの変異って何?」5. 副反応対策「追加接種の副反応、大丈夫?対策は?」・コロナウイルス流行株インフォ国立感染症研究所の変異株情報をわかりやすく解説している。・ワクチン接種会場を調べる厚生労働省のコロナワクチンナビ「接種会場を探す」へリンクし全国の接種会場を調べることができる。

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コロナ死亡例、脳を含む広範囲に長期ウイルスが存在/Nature

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者の体内には、呼吸器をはじめ非呼吸器、脳に至るまで広く長期に渡ってSARS-CoV-2が存在していることが、新たな研究で判明した。米国国立衛生研究所(NIH)のSydney R. Stein氏らによる本研究結果は、Nature誌オンライン版2022年12月14日号に掲載された。 COVID-19は、重症の感染時に多臓器不全を引き起こすことが知られており、一部の患者には罹患後症状と呼ばれる症状が長く続く。しかし、呼吸器以外の感染負荷やウイルスが消失するまでの時間、とくに脳においては十分に解明されていない。 研究者らは、COVID-19の感染後に死亡した44例の患者の完全剖検を行い、うち11例の患者の中枢神経系を広範囲に採取し、感染から症状発現後7ヵ月以上までの、脳を含む人体全体のSARS-CoV-2の分布、複製、細胞型特異性のマッピングと定量分析を行った。組織および症例間のSARS-CoV-2 RNAレベルを定量的、統計的に比較するために、呼吸器系および非呼吸器系組織の観点から結果を分析した。 死亡時の病日により剖検例を早期(14日以内:n=17)、中期(15~30日:n=13)、後期(31日以上:n=14)に分類し、後期の症例においてSARS-CoV-2 RNAが存在する場合を持続と定義した。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月26日~2021年3月2日に44例の剖検を行った。検体はすべてCOVID-19に感染して死亡したワクチン未接種者のものだった。女性が30%、年齢中央値は62.5歳(四分位範囲[IQR]:47.3~71.0)、61.4%が3つ以上の併存疾患を有していた。PCR陽性は42例で死前、2例で死後に確認された。11例で脳のサンプリングが行われた。・発症から最終的な入院、その後の死亡までの中央値はそれぞれ6日(IQR:3~10)、18.5日(IQR:11.25~37.5)であった。死亡から剖検までの中央値は22.2時間(IQR:18.2~33.9)であった。・SARS-CoV-2 RNAは84の異なる解剖学的部位と体液で検出され、早期~後期のいずれも非呼吸器組織と比較して呼吸器組織で有意(p<0.0001)に高い値が検出された。 ・脳のサンプリングを受けた全症例において、中枢神経系組織からSARS-CoV-2 RNAが検出された(10/11例、検出不能を除く)。ここには、230日目の死亡例を含んだ後期症例のすべてが含まれ(5/6例、検出不能を除く)、脳におけるウイルスの持続性が確認された。高いウイルス負荷にもかかわらず、脳における病理組織学的変化はほとんど認められなかった。・SARS-CoV-2 RNAの持続性は、血漿では検出されなかったものの、すべての後期症例で複数の組織にわたって確認された。 研究者らは以下のように結果の要点をまとめている。・SARS-CoV-2は、重症のCOVID-19で死亡した患者を中心に体内に広く分布しており、感染初期には脳を含む複数の呼吸器・非呼吸器組織でウイルス複製が存在することが明らかになった。・SARS-CoV-2 RNAが全身に広く分布しているにもかかわらず、気道以外では炎症や直接的なウイルスの細胞病理はほとんど観察されなかった。・SARS-CoV-2は、一部の患者では感染初期に播種し、非呼吸器組織よりも呼吸器組織で有意に高いウイルス量を示した。他の研究により、心臓、リンパ節、小腸および副腎内のSARS-CoV-2 RNAの存在が報告されており、SARS-CoV-2がこれらの組織や脳を含む他の多くの組織に感染し複製する能力があることを決定的に証明するものである。・SARS-CoV-2 RNAが残存する場所としては呼吸器が最も一般的であったが、後期症例の50%以上は、心筋、頭頸部および胸部のリンパ節、坐骨神経、眼組織、そして硬膜を除く中枢神経系組織のすべての採取部位にもRNAが残存していた。注目すべきは、早期症例では呼吸器系組織と非呼吸器系組織でSARS-CoV-2 RNA量が100倍以上高かったにもかかわらず、後期症例ではこの差が非常に小さくなっていることである。非呼吸器組織におけるウイルス排除の効率悪化は、SARS-CoV-2によるウイルス性mRNAの細胞検出を変化させる能力、インターフェロンシグナルの妨害、ウイルスの抗原提示の妨害における組織特異的な差異に関係していると思われる。SARS-CoV-2が免疫を回避するメカニズムを理解することは、ウイルス排除を促進する将来の治療アプローチの指針に不可欠である。 さらに、本研究の限界として、対象が重度のCOVID-19で死亡した既往症を持つ中高年のワクチン未接種者であること、実施時期から現在および将来の変異株に一般化できない可能性があること、研究デザインが臨床所見をウイルスの持続性に帰するためのものではないことを挙げている。

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生後6ヵ月以上へのBA.4/5対応ワクチン承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は12月8日、モデルナおよびファイザーのオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、緊急使用許可(EUA)を修正し、生後6ヵ月以上の小児への使用を追加したことを発表した。 今回のEUA修正により、モデルナのBA.4/5対応2価ワクチン(mRNA-1273.222)は、生後6ヵ月~5歳の小児に対して、1価ワクチンの初回シリーズ(2回)を接種して2ヵ月後に、追加免疫として1回(10μg)の接種を行うことができる。 本ワクチンの承認は、同社の試験用2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)の成人における追加接種に関する臨床試験から評価した免疫反応データに基づいている。また、17ヵ月~5歳で、1価ワクチンの初回シリーズ完了から6ヵ月以降に追加接種を行った56例と、18~25歳で、1価ワクチンの初回シリーズを受けた約300例を比較した試験では、ほぼ同程度の免疫反応が認められた。 安全性データは、同社の2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)追加接種を評価した臨床試験、1価ワクチンの初回シリーズと追加接種を評価した臨床試験、および両ワクチンの市販後の安全性データに依拠している。1価のモデルナワクチン初回シリーズ接種から6ヵ月以降に1価ワクチンの追加接種を受けた生後6ヵ月~5歳の145例の臨床試験では、最も多く報告された副反応は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、注射した腕や大腿部のリンパ節の腫脹/圧痛、発熱などであった。そのほかに報告された副反応は、生後17~36ヵ月では、神経過敏/泣く、眠気、食欲不振、生後37ヵ月~5歳では、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒、悪心/嘔吐などであった。 一方、ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児に対して、1価ワクチンの初回シリーズ(3回)をまだ開始していない、あるいは初回シリーズの3回目をまだ受けていない場合に限り、1価ワクチンを2回接種後、初回シリーズの3回目として3μg接種することができる。なお、1価ワクチンの初回シリーズを3回完了した生後6ヵ月~4歳の小児は、現時点ではBA.4/5対応2価ワクチンの接種対象とはならない。 また、今回のEUA修正に伴い、ファイザーの1価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児における、初回シリーズの3回目接種としての使用が認められなくなった。同社の1価ワクチンは、生後6ヵ月~4歳の小児における初回シリーズ(3回)の最初の2回分、5歳以上の初回シリーズとして2回分、および免疫不全のある5歳以上の初回シリーズとして3回分の投与は引き続き認められている。 本ワクチンの承認は、同社の生後6ヵ月~4歳、および16歳以上の1価ワクチンによる初回シリーズ、また、55歳以上の1価ワクチン初回シリーズと1回目の追加接種、2価ワクチン(起源株およびBA.1対応)の2回目の追加接種の有効性および安全性に関するこれまでの分析に基づいている。 なお、これらの小児に対する2価ワクチン接種の根拠となるデータは、追って1月に発表される予定。

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患者に伝えたいアナフィラキシー症状

患者さん、その症状はアナフィラキシー ですよ!アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性アレルギー症状が引き起こされ、生命に危険を与え得る過敏反応」のこと。以下のような症状を伴います。□紅潮□そう痒感□蕁麻疹□立毛□結膜の充血□流涙□口腔内腫脹□気道狭窄感□息切れ□嗄声(声がれ)□激しい咳・喘鳴□鼻閉・鼻汁・くしゃみ□腹痛□下痢□血圧低下□拍動性頭痛□浮動性めまい□嘔気・嘔吐□意識障害 □動悸・頻脈□嚥下障害◆こんな場合も要注意!• 蕁麻疹が出なくても、急に息切れや腹痛、血圧低下が起こればアナフィラキシーと診断されます。• 薬剤や食べ物で起こりますが、約半数の患者さんでは原因が特定できないことも。• 薬物投与などの数時間後に症状が起こる場合もあるので、治療によっては院内でしばらく待機する必要があります。出典:日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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コロナ感染後の手術、間隔が長いほど術後の心血管疾患リスク減

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染から手術までの間隔が長くなるほど、術後の主要心血管イベント複合転帰のリスクが低くなることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJohn M. Bryant氏らが単一施設の後ろ向きコホート研究によって明らかにした。JAMA Netw Open誌2022年12月14日号掲載の報告。コロナ感染後、手術までの期間が長くなるほど複合転帰の発生率が低下これまで、複数の研究によってコロナ感染と手術後の死亡率増加の関連が報告されているが、コロナ感染から手術までの期間と死亡率の関連性についてはまだ不十分であった。そこで研究グループは、コロナ感染から手術までの期間が短いほど、術後の心血管イベントの発生率が上がると仮説を立て、手術後30日以内の心血管イベントリスクを評価することにした。 対象は、PCR検査によるコロナ感染歴があり、かつ2020年1月1日~2021年12月6日にヴァンダービルト大学医療センターで手術を行った3,997例(年齢中央値51.3歳、女性55.6%、白人74.8%)であった。主要エンドポイントは、手術後30日以内の深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管障害、心筋損傷、急性腎障害、または死亡の複合転帰であった。データ分析は2022年3月29日に実施された。 コロナ感染から手術までの期間と心血管イベント発生率の関連性について評価した主な結果は以下のとおり。・コロナ感染の診断から手術までの期間の中央値は98日(四分位範囲[IQR]:30~225日)で、3,997例中1,394名(34.9%)が7週以内に手術を受けていた。・手術の内訳は、消化器系25.1%、整形外科系14.3%、頸部・頸部10.4%、産婦人科系9.6%、腹部全般9.3%、循環器系5.8%、泌尿器科系5.8%などであった。・術後30日以内に485例(12.1%)で主要心血管イベントが確認された。急性腎障害は363例(9.1%)、心筋損傷は116例(2.9%)、深部静脈血栓症は61例(1.5%)、脳血管障害は29例(0.7%)、肺塞栓症は16例(0.4%)、死亡は79例(2.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、コロナ感染から手術までの期間が長くなるほど、主要心血管イベントの複合転帰の発生率は低くなった(10日あたり調整オッズ比[aOR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.98~1.00、p=0.006)。・高齢、男性、黒人/アフリカ系、全身状態不良、泌尿器科系手術、併存症を既往している患者などでは、主要心血管イベントの複合転帰の発生率が高かった。・新型コロナ感染症の症状の有無、ワクチン接種の有無にかかわらず、陽性診断から手術までの経過日数と複合転帰の発生率は同様の傾向を示した。 研究グループは、これらの結果から「コロナ感染の診断から手術までの間隔の延長が、術後の重大な心血管疾患イベントの低減と関連していた。コロナ感染歴のある患者の手術タイミングと転帰の議論に役立ててほしい」とまとめた。

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12月27日 国際疫病対策の日【今日は何の日?】

【12月27日 国際疫病対策の日】〔由来〕新型コロナウイルス感染の初確認から約1年となる2020年、疫病の大流行に対する備えの必要性を国際社会が認識し続ける狙いをこめて、国連総会の本会議で採択し、制定。関連コンテンツCOVID-19 関連情報まとめサル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】今、知っておきたいワクチンの話COVID-19罹患後症状のマネジメントの手引きの活用法【診療よろず相談TV】英語で「性交渉はありますか」は?【1分★医療英語】

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12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。 本研究では、2022年8月25日までに報告された、12~20歳のCOVID-19ワクチン関連心筋炎の臨床的特徴と早期転帰の観察研究および症例集積研究を、PubMedとEMBASEのデータベースより23件抽出し、ランダム効果モデルメタ解析を行った。抽出されたのは、前向きまたは後ろ向きコホート研究12件(米国、イスラエル、香港、韓国、デンマーク、欧州)、および症例集積研究11件(米国、ポーランド、イタリア、ドイツ、イラク)の計23件の研究で、COVID-19ワクチン接種後の心筋炎患者の合計は854例であった。被験者のベースラインは、平均年齢15.9歳(95%信頼区間[CI]:15.5~16.2)、SARS-CoV-2感染既往者3.8%(1.1~6.4)。心筋炎の既往や心筋症を含む心血管疾患を有する者はいなかった。 本系統レビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドライン、およびMOOSEガイドラインに従った。バイアスリスクについて、観察研究はAssessing Risk of Bias in Prevalence Studies、症例集積研究はJoanna Briggs Instituteチェックリスト、各研究の全体的品質はGRADEを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・接種したワクチンは、ファイザー製(BNT162b2)97.5%、モデルナ製(mRNA-1273)2.2%であった。・ワクチン接種後に心筋炎を発症した患者では、男性が90.3%(87.3~93.2)であった。・ワクチン接種後に心筋炎を発症した患者では、1回目接種後(20.7%、95%CI:58.2~90.5)よりも2回目接種後(74.4%、58.2~90.5)のほうが多く、心筋炎の発生率は、1回目接種後が100万人あたり0.6~10.0例、2回目接種後が100万人あたり12.7~118.7例であった。・ワクチン接種から心筋炎発症までの平均間隔のプールされた推定値は2.6日(95%CI:1.9~3.3)であった。・左室収縮障害(LVEF<55%)は患者の15.6%(95%CI:11.7~19.5)に認められたが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)を有する患者は1.3%(0~2.6)にすぎなかった。・心臓MRI検査(CMR)では、87.2%の患者にガドリニウム遅延造影(LGE)所見が認められた。・92.6%(95%CI:87.8~97.3)の患者が入院し、23.2%(11.7~34.7)の患者がICUに収容されたが、昇圧薬投与は1.3%(0~2.7)にとどまり、入院期間は2.8日(2.1~3.5)で、入院中の死亡や医療機器の支援を必要とした患者はいなかった。・最もよく見られた心筋炎の臨床的特徴は、胸痛83.7%(95%CI:72.7~94.6)、発熱44.5%(16.9~72.0)、頭痛33.3%(8.6~58.0)、呼吸困難/呼吸窮迫25.2%(17.2~33.1)だった。・心筋炎の治療に使用された薬剤は、NSAIDsが81.8%(95%CI:75.3~88.3)、グルココルチコイド13.8%(6.7~20.9)、免疫グロブリン静注12.0%(3.8~20.2)、コルヒチン7.3%(4.1~10.4)であった。 著者によると、SARS-CoV-2感染後の心筋炎発症リスクは、mRNAワクチン接種後の心筋炎発症リスクよりも有意に高いという。本結果は、複数の国や地域の多様な若年者の集団において、ワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であり、ワクチン接種による利益は潜在的リスクを上回ることを裏付けるとしている。

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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