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心不全ガイドラインを統合·改訂(前編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会から新たな心不全診療ガイドラインが公表された。本ガイドラインは、11学会(日本循環器学会、日本心不全学会、日本胸部外科学会、日本高血圧学会、日本心エコー図学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本超音波医学会、日本糖尿病学会、日本不整脈心電学会)、班員31名、協力員25名、外部評価員6名という巨大な組織により策定されたものである。 公表を受け、日本循環器学会学術集会(3月23~25日、大阪)では、ガイドライン作成班による報告セッションが組まれ、班長を務めた筒井裕之氏(九州大学)が説明した。講演内容を含め、本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。心不全の定義を明確化 まず、これまで不明確であった心不全の定義が明確化された。新しい定義は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」というものである。 加えて、非医療従事者向けの定義も書き込まれた。「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というものである。心不全という疾患は不可逆性に進行し、命に関わる状態である点が明記されている。進行過程を4つのステージに区分。ステージごとの治療最適化を目指す 心不全が進行性の疾患である点も強調され、発症前から治療抵抗性に至るまでの過程が「A」から「D」の4ステージに分けられた(A:器質的心疾患がなく危険因子のあるステージ、B:器質的心疾患があるステージ、C:心不全症候のある(既往も含む)心不全ステージ、D:治療抵抗性心不全ステージ)。2001年に、米国ガイドラインが導入した捉え方である(Yancy CW, et al. Circulation.2013;128:e240)。また、ステージごとに治療目標が設定された。これにより、ステージごとに適切な治療が提供されることが期待されている。心不全発症前から積極介入。「予防」に注力 前回ガイドラインとの最大の違いは、まだ心不全を発症していないステージ「A」と「B」が治療対象となっている点である。心疾患危険因子のみを有する「ステージA」では、それら危険因子の管理により、心不全発症のリスク因子である器質的心疾患発症の「予防」を図り、虚血性心疾患や左室肥大など器質的病変が生じている「ステージB」では、心不全発症の「予防」が推奨されている。 このように新ガイドラインは、心不全の「発症予防」にも力をいれている。「心不全予防」という章も、「心不全治療の基本方針」の前に新設された。その中には、高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動の項が設定され、心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が推奨クラスI、エビデンスレベルAとして推奨された理由が特筆されている。薬剤治療はEFの高低で3類型に分けて整理 心不全に対する治療の考え方も、大きく変わった。「ステージC」心不全例に対しては、左室収縮能(EF)に応じた治療の選択が推奨されるようになった。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40-50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」ごとに治療方針は異なる(なお心不全の「分類」の項では、この3類型に、HFrEFから治療によりEFが40%以上に回復した「HFpEF improved、HFrecEF」という類型を加えた4類型が示されている)。 もっともHFpEFとHFmrEFに関しては、現時点では予後改善の確たるエビデンスがない。そのため、HFpEFに対しては「心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療」が基本とされ、HFmrEFについては「この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する」と記載するに留まっている。「緩和ケア」を初めて明記·詳述 心不全発症例に対する「緩和ケア」の推奨も、今回改訂の大きな目玉である。この「緩和ケア」に関し筒井氏は、同日夕方に行われたガイドライン記者会見において、「心不全患者への緩和ケアは終末期医療に限定されない」点を強調した。緩和ケアは「ステージC」の段階から推奨されている。つまり、病状末期の「ステージD」に限定されていない。これは心不全の進展はさまざまな因子に影響を受けるため個人差が大きく、「終末期」がいつ訪れるか予知が困難なためである。この点は、経過の予想が比較的容易ながん治療と大きく異なる。そのため心不全では、発症直後から緩和ケアを行うべきだというのが、新ガイドラインの立場である。

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健康状態に関係なく余暇身体活動で死亡率低下~アジア50万人調査

 余暇身体活動(LTPA)と死亡リスクの関連を評価する研究は、ほとんど欧州系の健康人で実施されている。今回、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのYing Liu氏らが東アジアの健康人および慢性疾患患者のコホートで調査を実施し、アジアの中高齢者において、定期的なLTPAが健康状態にかかわらず死亡率低下と関連していることが示唆された。International journal of epidemiology誌オンライン版2018年2月27日号に掲載。 本研究では、アジアコホートコンソーシアムに含まれる9件の前向きコホートに参加した東アジアの46万7,729人でプール解析を行い、LTPAと全死因および原因別死亡率の関連を調べた。年齢、性別、教育、婚姻状況、喫煙状況の調整後、Cox比例ハザード回帰を用いてLTPAに関連するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間の13.6年に、6万5,858人の死亡が確認された。・LTPAが1時間/週未満の人と比較したところ、LTPA量と全死因および原因別死亡率との間に逆相関が認められた(傾向のp<0.001)。・逆相関は、心血管疾患による死亡、がん以外による死亡で強かった。・LTPAと全死因死亡率との逆相関については、重度でしばしば生命を脅かす疾患である、がん、脳卒中、冠動脈疾患の患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.81、95%CI:0.73~0.89)と、糖尿病や高血圧などのその他慢性疾患患者(低LTPAに対する高LTPAのHR:0.86、95%CI:0.80~0.93)で認められた。・性別、BMI、喫煙状況による明らかな修飾効果は確認されなかった。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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重度のストレスやうつ病からの復職に効果的なリハビリは

 うつ病やストレスに関連する精神疾患による世界的な負担は大きく、効果的なリハビリテーションが必要とされている。自然療法のリハビリテーションは、精神疾患患者の復職への手助けとなる可能性がある。スウェーデン農業科学大学のPatrik Grahn氏らは、長期的な重度のストレスやうつ病を有する患者群を対象に、自然療法のリハビリテーションプログラムの期間が、プログラム開始1年後のアウトカムに対し、どのような影響を及ぼすかについて調査した。International journal of environmental research and public health誌オンライン版2017年10月27日号の報告。 8、12、24週のリハビリテーションの結果を比較するため、プロスペクティブ準実験的研究を行った。参加者106例を対象に、特別に設計されたリハビリガーデンにおいて多様式なチームによるリハビリテーションを実施した。復職に関するデータは、介入前および開始1年後に収集した。また、自己評価による職業能力、個人管理、連帯感についてのデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・介入1年後にフルタイムまたはパートタイムの復職または職業訓練などに参加した患者は、68%であった。・リハビリテーション期間の長かった参加者では、職業能力に関してより良い結果が得られ、介入1年後のフルタイムまたはパートタイムの賃金労働をこなせる可能性が高かった。 著者らは「リハビリガーデンにおけるより長いリハビリテーション期間は、賃金労働へ復職する可能性を高める」としている。■関連記事職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか職業性ストレス対策、自身の気質認識がポイント:大阪市立大たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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低酸素血症のない脳卒中急性期患者に酸素投与は推奨できない(解説:内山真一郎氏)-754

 低酸素は、脳卒中発症後数日間にはよく起こるが、間欠的なことが多く、気づかれないこともある。酸素補給は低酸素や脳卒中症状悪化を予防しうるので、回復を改善する可能性がある。本研究は、通常の予防的な低用量の酸素補給が90日後の死亡と後遺症を減らすかどうか、またもしそうなら低酸素がもっとも多く起こり、酸素投与がリハビリテーションの邪魔をしない、夜間だけの酸素補給が持続的な補給よりいいのかを評価することを目的として行われた。 この単盲検の無作為化臨床試験には英国の136施設から、酸素療法の明らかな適応や禁忌のない、入院後24時間以内の8,003例の成人の急性脳卒中患者が登録された。患者は、72時間の持続的な酸素、3夜の夜間酸素、対照(臨床的に適応がある場合に限り酸素)のいずれかに1 vs.1 vs.1で無作為割り付けされた。酸素は、ベースラインの酸素飽和度が93%以下なら3L/min、94%以上あれば2L/minがnasal tubeから投与された。一次評価項目は、郵送の質問票による90日後の改変ランキン尺度スコアであった。 結果は、転帰良好の非補正オッズ比が、酸素 vs.対照で0.97(95%信頼区間:0.89~1.05、p値=0.47)、持続酸素 vs.夜間酸素で1.03(95%信頼区間:0.93~1.13、p値=0.61)であり、いずれも有意差がなかった。非低酸素の急性脳卒中患者では、低用量の酸素補給は3ヵ月後の死亡や後遺症を減らさなかったので推奨できないというのが結論である。

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HTLV-1関連脊髄症〔HAM:HTLV-1-associated myelopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)は、成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)の原因ウイルスであるヒトTリンパ球向性ウイルス1型(human T-lymphotropic virus type 1:HTLV-1)の感染者の一部に発症する、進行性の脊髄障害を特徴とする炎症性神経疾患である。有効な治療法に乏しく、きわめて深刻な難治性希少疾病であり、国の指定難病に認定されている。■ 疫学HTLV-1の感染者は全国で約100万人存在する。多くの感染者は生涯にわたり無症候で過ごすが(無症候性キャリア)、感染者の約5%は生命予後不良のATLを発症し、約0.3%はHAMを発症する。HAMの患者数は国内で約3,000人と推定されており、近年は関東などの大都市圏で患者数が増加している。発症は中年以降(40代)が多いが、10代など若年発症もあり、男女比は1:3と女性に多い。HTLV-1の感染経路は、母乳を介する母子感染と、輸血、臓器移植、性交渉による水平感染が知られているが、1986年より献血時の抗HTLV-1抗体のスクリーニングが開始され、以後、輸血後感染による発症はない。臓器移植で感染すると高率にHAMを発症する。■ 病因HAMは、HTLV-1感染T細胞が脊髄に遊走し、そこで感染T細胞に対して惹起された炎症が慢性持続的に脊髄を傷害し、脊髄麻痺を引き起こすと考えられており、近年、病態の詳細が徐々に明らかになっている。HAM患者では健常キャリアに比べ、末梢血液中のプロウイルス量、すなわちHTLV-1感染細胞数が優位に多く、また感染細胞に反応するHTLV-1特異的細胞傷害性T細胞や抗体の量も異常に増加しており、ウイルスに対する免疫応答が過剰に亢進している1)。さらに、脊髄病変局所で一部の炎症性サイトカインやケモカインの産生が非常に高まっており2)、とくにHAM患者髄液で高値を示すCXCL10というケモカインが脊髄炎症の慢性化に重要な役割を果たしており3)、脊髄炎症のバイオマーカーとしても注目されている。■ 症状臨床症状の中核は進行性の痙性対麻痺で、両下肢の痙性と筋力低下による歩行障害を示す。初期症状は、歩行の違和感、足のしびれ、つっぱり感、転びやすいなどであるが、多くは進行し、杖歩行、さらには車椅子が必要となり、重症例では下肢の完全麻痺や体幹の筋力低下により寝たきりになる場合もある。下半身の触覚や温痛覚の低下、しびれ、疼痛などの感覚障害は約6割に認められる4)。自律神経症状は高率にみられ、とくに排尿困難、頻尿、便秘などの膀胱直腸障害は病初期より出現し、初めに泌尿器科を受診するケースもある。また、起立性低血圧や下半身の発汗障害、インポテンツがしばしばみられる4)。神経学的診察では、両下肢の深部腱反射の亢進や、バビンスキー徴候などの病的反射がみられる4)。■ 分類HAMは病気の進行の程度により、大きく3つの病型に分類される(図)。1)急速進行例発症早期に歩行障害が進行し、発症から2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。納の運動障害重症度(表)のレベルが数ヵ月単位、時には数週間単位で悪化する。急速進行例では、髄液検査で細胞数や蛋白濃度が高いことが多く、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度もきわめて高い。とくに発症早期の急速進行例は予後不良例が多い。2)緩徐進行例症状が緩徐に進行する症例は、HAM患者の約7~8割を占める。一般的に納の運動障害重症度のレベルが1段階悪化するのに数年を要するので、臨床的に症状の進行具合を把握するのは容易ではなく、疾患活動性を評価するうえで髄液検査の有用性は高い。髄液検査では、細胞数は正常から軽度増加を示し、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度は中等度増加を示す。3)進行停滞例HAMは、発症後長期にわたり症状が進行しないケースや、ある程度の障害レベルに到達した後、症状がほとんど進行しないケースがある。このような症例では、髄液検査でも細胞数は正常範囲で、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度も低値~正常範囲である。■ 予後一般的にHAMの経過や予後は、病型により大きく異なる。全国HAM患者登録レジストリ(HAMねっと)による疫学的解析では、歩行障害の進行速度の中央値は、発症から片手杖歩行まで8年、両手杖歩行まで12.5年、歩行不能まで18年であり5)、HAM患者の約7~8割はこのような経過をたどる。また、発症後急速に進行し2年以内に片手杖歩行レベル以上に悪化する患者(急速進行例)は全体の約2割弱存在し、長期予後は明らかに悪い。一方、発症後20年以上経過しても、杖なしで歩行可能な症例もまれであるが存在する(進行停滞例)。また、HAMにはATLの合併例があり、生命予後に大きく影響する。6)2 診断 (検査・鑑別診断も含む)HAMの可能性が考えられる場合、まず血清中の抗HTLV-1抗体の有無についてスクリーニング検査(EIA法またはPA法)を行う。抗体が陽性の場合、必ず確認検査(ラインブロット法:LIA法)で確認し、感染を確定する。感染が確認されたら髄液検査を施行し、髄液の抗HTLV-1抗体が陽性、かつ他のミエロパチーを来す脊髄圧迫病変、脊髄腫瘍、多発性硬化症、視神経脊髄炎などを鑑別したうえで、HAMと確定診断する。髄液検査では細胞数増加(単核球優位)を約3割弱に認めるが、HAMの炎症を把握するには感度が低い。一方、髄液のネオプテリンやCXCL10は多くの患者で増加しており、脊髄炎症レベルおよび疾患活動性を把握するうえで感度が高く有益な検査である7)。血液検査では、HTLV-1プロウイルス量がキャリアに比して高値のことが多い。また、血清中の可溶性IL-2受容体濃度が高いことが多く、末梢レベルでの感染細胞の活性化や免疫応答の亢進を非特異的に反映している。また、白血球の血液像において異常リンパ球を認める場合があり、5%以上認める場合はATLの合併の可能性を考える。MRIでは、発症早期の急速進行性の症例にT2強調で髄内強信号が認められる場合があり、高い疾患活動性を示唆する。慢性期には胸髄の萎縮がしばしば認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)疾患活動性に即した治療HAMは、できるだけ発症早期に疾患活動性を判定し、疾患活動性に応じた治療内容を実施することが求められる。現在、HAMの治療はステロイドとインターフェロン(IFN)αが主に使用されているが、治療対象となる基準、投与量、投与期間などに関する指針を集約した「HAM診療ガイドライン2019」が参考となる(日本神経学会のサイトで入手できる)。(1)急速進行例(疾患活動性が高い)発症早期に歩行障害が進行し、2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。治療は、メチルプレドニゾロン・パルス療法後にプレドニゾロン内服維持療法が一般的である。とくに発症早期の急速進行例は治療のwindow of opportunityが存在すると考えられ、早期発見・早期治療が強く求められる。(2)緩徐進行例(疾患活動性が中等度)緩徐進行例に対しては、プレドニゾロン内服かIFNαが有効な場合がある。プレドニゾロン3~10mg/日の継続投与で効果を示すことが多いが、疾患活動性の個人差は幅広く、投与量は個別に慎重に判断する。治療前に髄液検査(ネオプテリンやCXCL10)でステロイド治療を検討すべき炎症の存在について確認し、有効性の評価についても髄液検査での把握が望まれる。ステロイドの長期内服に関しては、常に副作用を念頭に置き、症状や髄液所見を参考に、できるだけ減量を検討する。IFNαは、300万単位を28日間連日投与し、その後に週2回の間欠投与が行われるのが一般的である。(3)進行停滞例(疾患活動性が低い)発症後長期にわたり症状が進行しないケースでは、ステロイド治療やIFNα治療の適応に乏しい。リハビリを含めた対症療法が中心となる。2)対症療法いずれの症例においても、継続的なリハビリや排尿・排便障害、疼痛、痙性などへの対症療法はADL維持のために非常に重要であり、他科と連携しながらきめ細かな治療を行う。4 今後の展望HAMの治療は、その病態から(1)感染細胞の制御、(2)脊髄炎症の鎮静化、(3)傷害された脊髄の再生、それぞれに対する治療法開発が必要である。1)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)のランダム化比較試験を多施設共同で実施し、良好な結果が得られている。本試験により、HAMに対する保険承認申請がなされている。2)感染細胞や過剰な免疫応答を標的とした新薬開発HAMは、病因である感染細胞の根絶が根本的な治療となり得るがまだ実現していない。HAMにおいて、感染細胞は特徴的な変化を来しており、その特徴を標的とした治療薬の候補が複数存在する。また神経障害を標的とした治療薬の開発も重要である。治験が予定されている薬剤もあり、今後の結果が期待される。3)患者登録レジストリHAMは希少疾病であるため、患者の実態把握や治験などに必要な症例の確保が困難であり、それが病態解明や治療法開発が進展しない大きな要因になっている。患者会の協力を得て、2012年3月からHAM患者登録レジストリ(HAMねっと)を構築し、2022年2月時点で、約630名の患者が登録している。これにより、HAMの自然史や患者を取り巻く社会的・医療的環境が明らかになると同時に、治験患者のリクルートにも役立っている。また、髄液ネオプテリン、CXCL10、プロウイルス量定量の検査は保険未承認であるがHAMねっと登録医療機関で測定ができる。HAMねっとでは患者向けの情報発信も行っているため、未登録のHAM患者がいたら是非登録を勧めていただきたい。5 主たる診療科脳神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター HTLV-1関連脊髄症(HAM)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HAMねっと(HAM患者登録サイト)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HTLV-1情報サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に関する情報」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)JSPFAD HTLV-1感染者コホート共同研究班(医療従事者向けのまとまった情報)日本HTLV-1学会(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人「スマイルリボン」(患者とその家族および支援者の会)1)Jacobson S. J Infect Dis. 2002;186:S187-192.2)Umehara F, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 1994;53:72-77.3)Ando H, et al. Brain. 2013;136:2876-2887.4)Nakagawa M, et al. J Neurovirol. 1995;1:50-61.5)Coler-Reilly AL, et al. Orphanet J Rare Dis. 2016;11:69.6)Nagasaka M, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020;117:11685-11691.7)Sato T, et al. Front Microbiol. 2018;9:1651.8)Yamano Y, et al. PLoS One. 2009;4:e6517.9)Araya N, et al. J Clin Invest. 2014;124:3431-3442.公開履歴初回2017年10月24日更新2022年2月16日

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脳卒中急性期にルーチンの酸素投与は有益か?/JAMA

 低酸素血症のない脳卒中(脳梗塞、脳内出血、一過性脳虚血発作)急性期の患者に対する低用量酸素の予防的投与は、3ヵ月後の死亡または障害を減少しないことが示された。英国・キール大学のChristine Roffe氏らによる、多施設共同無作為化単盲検臨床試験「SO2S試験」(The Stroke Oxygen Study)の結果で、「これらの患者では低用量酸素療法を支持しない結果が示された」と報告している。低酸素血症は、急性脳卒中発症後の最初の数日間に生じることが多く、しばしば間欠的であったり検出されないことがある。酸素投与は、低酸素症や二次的神経機能低下を予防することによって回復を促す可能性がある一方、有害事象が生じる可能性もあった。JAMA誌2017年9月26日号掲載の報告。約8千例で、持続的酸素投与、夜間酸素投与、必要時酸素投与の機能的転帰を比較 研究グループは、ルーチンの予防的低用量酸素投与が必要時の酸素投与より90日時点の死亡や障害を減らすのか、また、低酸素症の頻度が最も高くリハビリテーションへの影響が最も少ないと思われる夜間のみの酸素投与が、持続的酸素投与よりも有効かを評価する目的で、英国136施設において単盲検無作為化比較試験を行った。 対象は、入院後24時間以内で、酸素療法の明確な適応がないまたは禁忌ではない成人急性脳卒中患者8,003例。持続的酸素投与(72時間)群、夜間酸素投与(21時~7時、3日間)群および対照群(臨床的適応がある場合のみ酸素投与)に、1対1対1の割合で無作為に割り付け(それぞれ2,668例、2,667例、2,668例)、ベースラインの酸素飽和度が93%以下の場合は3L/分、94%以上の場合は2L/分で、経鼻チューブにより酸素投与を行った(登録開始日2008年4月24日、最終追跡調査日2015年1月27日)。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコア(mRS、0[症状なし]~6[死亡]、臨床的に意義のある最小変化量は1)とし、質問票を郵送して評価を実施した(被験者は非盲検、評価者は盲検)。mRSは、順序ロジスティック回帰分析を用いて、障害度が1レベル改善する共通オッズ比(OR)を算出し、ORが1より大きい場合は障害の改善を意味した。持続+夜間投与 vs.必要時投与、持続投与 vs.夜間投与、いずれも有意差なし 登録された8,003例の患者背景は男性4,398例(55%)、平均(±SD)年齢72(±13)歳、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア中央値5、ベースラインの平均酸素飽和度96.6%であった。 主要アウトカムについて回答が得られた患者は7,677例(96%)であった。未補正OR(順序ロジスティック回帰解析で算出)は、酸素投与群(持続投与群+夜間投与群) vs.対照群で0.97(95%信頼[CI]:0.89~1.05、p=0.47)、持続投与群 vs.夜間投与群は1.03(95%CI:0.93~1.13、p=0.61)であった。酸素療法が有益なサブグループも特定されなかった。 また、1件以上の重篤な有害事象が発現した被験者は、持続投与群348例(13.0%)、夜間投与群294例(11.0%)、対照群322例(12.1%)で、重大な有害性は認められなかった。 なお著者は、アドヒアランス不良の影響や、集中治療室を除き酸素投与の完全なアドヒアランスを得るのは難しいこと、主要アウトカムの評価が郵送の質問票によって実施されていることなどを研究の限界として挙げている。

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陰茎移植で自然な生理機能は回復するか/Lancet

 南アフリカ共和国の若い男性では、儀式として行われる包皮切除からの壊疽が、陰茎損失の主な原因になっているという。この文化的行為は社会に深く根ざしており、やめさせることは容易ではない。同国ステレンボッシュ大学のAndre van der Merwe氏らは、従来の遊離皮弁を用いた陰茎整形術は、社会経済的に課題がある集団には好ましくないが、陰茎を損失した若い男性の精神社会学的影響は甚大であり、同一臓器に置き換えることが最大の便益をもたらす可能性があるとして、同種陰茎移植を実施。24ヵ月間のフォローアップの結果を報告した。Lancet誌オンライン版2017年8月17日号掲載の報告。移植後24ヵ月追跡し、生活の質や勃起・排尿機能を評価 研究グループは、試行手技として初めに死体-死体の陰茎移植を行った。Human Research Ethics Committeeの承認を得た後、レシピエントを募り、陰茎断端長、移植に対する情動的な適合性など、身体的および精神的特性をスクリーニング。一方で、適切なドナー(36歳脳死男性)を獲得し、陰茎を採取した。 適切に選択したレシピエント(21歳男性)の陰茎断端を外科的に調整し、陰茎移植片を取り付けた。免疫抑制療法として、antithymyocyteグロブリン、メチルプレドニゾロン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、prednisoneを用いた。また、1週間後にタダラフィル5mgの1日1回服用を陰茎リハビリテーションとして開始し、3ヵ月間継続した。 評価データとして、移植前とフォローアップ中に、生活の質スコア(Short Form 36第2版[SF-36v2]質問票)を収集。また移植後24ヵ月時点の勃起機能(International Index for Erectile Function[IIEF]スコア)と尿流率を測定した。移植後1ヵ月で退院、その1週間後に満足な性交を行ったと報告 切除後移植片の温阻血時間は4分、冷阻血時間は16時間であった。手術は9時間を要した。手術8時間後に、動脈血栓により緊急処置を必要とした。また、術後6日の時点で、感染性血腫と近位皮膚壊死に対して外科的処置が行われた。 その後、レシピエントは1ヵ月後に退院。その1週間後に、性交を行い(反対のアドバイスにもかかわらず)満足感を得たとの第一報を寄せた。さらに術後3ヵ月からは定期的な性交を行っていることを報告した。 7ヵ月時点で急性腎障害を発症したが、タクロリムス14mgの1日2回投与を減らすことで回復した。 さらに術後8ヵ月時点で、Alternaria alternataによるフェオフィホ真菌症に罹患したが、抗真菌薬の塗布で治療した。 生活の質スコアは、術後大きく改善した。SF-36v2メンタルヘルススコアは、術前25から、移植後6ヵ月時点57、24ヵ月時点で46であった。また身体的ヘルススコアは、ベースライン時37から、移植後6ヵ月時点60、24ヵ月時点59であった。 24ヵ月時点の最大尿流率は標準値を(16.3mL/秒、排尿量109mL)、IIEFスコアも標準値(全体的満足度スコアは最大10のうち8)を示し、排尿機能、勃起機能ともに正常であった。 これらを踏まえて著者は、「陰茎移植は、移植後24ヵ月に重大な合併症を有することなく、レシピエントに自然な生理機能回復をもたらした」と結論している。

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第36回日本臨床運動療法学会学術集会 開催のご案内

 日本臨床運動療法学会(会長 木村 穣氏 関西医科大学 健康科学センター 教授)は、2017年9月2日(土)・3日(日)に、第36回の学術集会を大阪市にて開催する。テーマは「臨床医学と運動のさらなる融合」で、臨床における運動、スポーツ、身体活動に関する講演のほか、実技実習も予定されている。また、今回は学会初となる、参加者の不活動を予防する仕組みとして、セッションの合間に「レッツBSL(Break Sedentary Lifestyle)」と称したストレッチビデオの上映を行う。開催概要【開催日】2017年9月2日(土)・3日(日)【会場】メルパルク大阪(新大阪) 会場案内はこちら【主要プログラム】・会長講演  「臨床医学と運動のさらなる融合」  演者:木村 穣氏(関西医科大学 健康科学センター 教授)・特別講演  「エピジェネティクス入門 -その分子基盤から臨床応用まで-」  「ACSM EIM National Center 韓国および各国の現状と課題 The challenge of EIM Korea」・シンポジウム  「疾患別(乳がん、COPD、糖尿病、メタボなど)運動療法」  「運動指導士の臨床への架け橋をどう築くか」ほか・パネルディスカッション  「指定運動療法施設ガイドライン設立に向けての実態調査」(EIM Japan共同開催)  「糖尿病エネルギー必要量と身体活動」・教育講演  「運動療法の心理的恩恵-感情に注目した運動の効果-」  「サルコペニアと運動療法」ほか・実技実習  「CPX実習 & CPX症例検討会」  「木剣体操」ほか・ランチョンセミナー  「植え込みデバイス患者の包括的な心臓リハビリテーションを考える」  「CGM(持続血糖測定)の最新情報」※一般演題など詳細は、学会ホームページのプログラムをご覧ください。■参考第36回日本臨床運動療法学会学術集会ホームページフェイスブック

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第38回

第38回:高齢者にも週2時間半以上の運動を監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 健康のために、患者さんに運動の指導を行う場面は、プライマリケアにおいては少なくありません。「運動は『週末戦士』でもいいかもしれない」と示した論文1) も記憶に新しいところです。しかし、指導にあたっての具体的な方法がよくわからないという方も多いのではないでしょうか。 今回取り上げるarticleは、高齢者の運動処方についてです。運動処方の具体的方法を含めて非常に勉強になったため、ご紹介いたします。 以下、American Family Physician2017年4月1日号2) より定期的な運動は、健康的な加齢や慢性疾患のマネジメントに有益である。American College of Sports Medicine(ACSM)とU.S. Department of Health and Human Services(HHS)によって推奨される高齢者の運動の最小限の目標は、「週当たり、150分の中等度の強度の有酸素運動(早歩きなど)、または75分の強い強度の有酸素運動(ジョギング、ランニングなど)に加えて、2日以上の筋肉強化訓練」とされている。具体的な運動の処方の際には、運動の内容、頻度や強度、モチベーションを維持するための短期的・長期的な目標などが含まれる必要があり、個人の能力や好みに応じて個別に調整されるべきである。運動処方を行う前に、医師は身体活動によって得られるメリットを患者に教育し、身体機能や体力の改善、体重管理、慢性疾患管理の改善、転倒予防など、個人に応じた目標に対して動機付けをするべきである。患者が身体活動プログラムを開始する準備ができたら、医師は患者とともに達成可能な目標を設定すべきである(例:1日3マイル[約4.5km]走るよりも、週に50分に早歩きを増やすことを目指す、など)。医師は、実際に行うことができる活動から始めるよう患者に指示し、処方箋の内容と目標は、健康状態や機能的な能力に合わせて、個別に調整する必要がある。患者が身体活動プログラムを開始した後、医師は進行状況を定期的に(例えば、少なくとも年に1回)モニターし、励まし、患者が時間の不足や疲労などの障壁を乗り越えるのを助けるべきである。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Gary O’Donovan, et al. :Association of “Weekend Warrior” and Other Leisure Time Physical Activity Patterns With Risks for All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality. JAMA Intern Med. 2017;177(3):335-342 2) Pearl Guozhu Lee, et al. Am Fam Physician. 2017 Apr 1;95(7):425-432

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【JSMO2017見どころ】緩和・支持療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 このうち、「緩和・支持療法」については西森 久和氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 助教)が登壇した。以下、西森氏のコメントと注目演題を紹介する。【西森 久和氏コメント】 緩和・支持療法とは、がんに伴うさまざまな苦痛や症状、抗がん薬の副作用などを和らげるための治療である。がんを告知された患者さんは、がんに伴う痛みだけでなく、精神的にも不安やいらだちを感じ、社会的にも仕事を継続できなくなるなどの問題を抱えており、医療者は「苦痛」を全人的に捉えたうえで、サポートをしていく必要がある。がん対策基本法での緩和ケアの推進により、よりよい緩和医療が提供されるようになってきているが、いまだ不十分な点も多いのが現状といえる。本学会では、最新の緩和ケアに関するトピックスに加え、現状を直視したうえでよりよい方向性を見出すためのシンポジウムを数多く準備している。 医学の進歩により、さまざまな抗がん薬が開発され、それに伴う副作用も多様化している。一般的な抗がん薬による治療のイメージは、吐き気や嘔吐がつらい、脱毛など美容上の問題がある、などネガティブなものが多いかと思われるが、新しい制吐薬の開発など支持療法の分野も進歩しており、より効果的な抗がん薬をより安全に、やさしく患者さんに投与できる時代になってきている。本学会では支持療法に関しても、エビデンスに基づき患者さんの生活の質を保つことのできる情報を多く提供する予定である。 また、会期中神戸国際会議場では「患者・家族向けプログラム~いつでも、何処でも、最適のがん医療を受けるために~」が開催され、その模様がJunko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)でライブ中継される。各日午後には、両会場で相互交流を図る患者発のプログラムが予定されており、医療者にとっても「患者目線」を知ることができる機会となっている。 【注目演題】合同シンポジウム(日本緩和医療学会 / 日本臨床腫瘍学会)「緩和ケアに関わるガイドラインの変更と解説」日時:7月28日(金)10:20~12:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)セミプレナリーセッション「「予後2年」の望ましい伝え方:どのようながん患者がどのような台詞を好むか?」日時:7月29日(土)8:20~10:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)シンポジウム「症状スクリーニングと緩和治療―早期からの緩和ケアを目指して―」日時:7月27日(木)14:50~16:30 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―論拠に基づいた実践を目指して」日時:7月28日(金)8:20~10:20場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―人材を養成する体制から在り方を問う」日時:7月28日(金)10:20~12:20 場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「Whole Person Care 〜 Care for cancer patients 〜」日時:7月28日(金)17:00~18:30 場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)「チームで取り組む分子標的薬の副作用マネジメント 患者へベネフィットをもたらす支持療法」日時:7月29日(土)10:20~12:20 場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「外来がんリハビリテーション エビデンス&プラクティス」日時:7月29日(土)15:00~17:00場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)ワークショップ「緩和ケア病棟転院時の患者・家族の見捨てられ感について~安心して転院できますか」日時:7月27日(木)9:20~11:00 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「がん治療中の患者の decision making のサポート―がん治療する?しない?―」日時:7月27日(木)13:00~14:40 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)教育講演「がん患者とのコミュニケーション」日時:7月27日(木)14:00~14:30場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「緩和ケアにおける EBM」日時:7月29日(土)9:20~9:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん化学療法後のB型肝炎ウイルス再活性化のリスクとその対策」日時:7月29日(土)9:50~10:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん連携における在宅支持療法」日時:7月29日(土)10:20~10:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がんのリハビリテーション」日時:7月29日(土)10:50~11:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん患者の家族へのサポート」日時:7月29日(土)11:20~11:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科 特任教授)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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慢性腰痛に高周波熱凝固法は効果なし/JAMA

 椎間関節、仙腸関節、椎間板を源とする慢性腰痛患者を対象とした3つの無作為化臨床試験において、標準運動プログラムと高周波熱凝固法(RF)の併用では、標準運動プログラム単独と比較して、慢性腰痛の改善または臨床的に重要な改善のどちらも確認されなかった。オランダ・エラスムス大学医療センターのJohan N. S. Juch氏らによる無作為化試験「Mint」の結果で、著者は「椎間関節、仙腸関節、椎間板が源の慢性腰痛の治療にRFを用いることは支持されない」と結論している。RFは、慢性腰痛の一般的な治療として用いられているが、有効性に関する質の高いエビデンスは不足していた。JAMA誌オンライン版2017年7月4日号掲載の報告。疼痛源で分けて、有効性をRF+運動プログラム併用と運動プログラム単独で比較 Mint(Cost-Effectiveness of Minimal Interventional Procedures for Patients with Chronic Low Back Pain)試験は、脊柱関連の慢性腰痛患者に対する最小限の介入治療について評価することを旨とした研究で、3つの多施設共同実用的非盲検無作為化試験を、オランダの疼痛専門クリニック16施設で実施した。登録期間は2013年1月1日~2014年10月24日で、慢性腰痛を有し、診断的神経ブロックで椎間関節が陽性(椎間関節試験251例)、仙腸関節が陽性(仙腸関節試験228例)、または椎間関節・仙腸関節・椎間板のうち1つ以上が陽性(複合試験202例)であり、対症療法に反応がなかった患者を対象とした。 被験者を、標準運動プログラム+RF併用群(介入群)または標準運動プログラム単独群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。なお全例が標準運動プログラムを3ヵ月間受け、必要であれば精神的サポートを受けた。RFは通常1回であるが、本試験では最大3回施行した。 主要評価項目は、介入開始3ヵ月時点の疼痛強度(0~10の数値的評価尺度:0は痛みなし、10は考えられる中で最悪の痛み)で、事前に定義された臨床的に重要な差の最小値は2点以上とした。最終追跡調査は12ヵ月時点で実施され、2015年10月に終了した。統計解析は、intention-to-treat解析で行われた。RFの有効性は確認されず 計681例(平均年齢52.2歳、女性421例[61.8%]、ベースラインの平均疼痛強度7.1)が無作為化され、このうち3ヵ月後および12ヵ月後の追跡調査を完遂したのは、それぞれ599例(88%)、521例(77%)であった。 3ヵ月時点の介入群と対照群の疼痛強度の平均差は、椎間関節試験で-0.18(95%信頼区間[CI]:-0.76~0.40)、仙腸関節試験で-0.71(95%CI:-1.35~-0.06)、複合試験で-0.99(95%CI:-1.73~-0.25)であった。 なお著者は研究の限界として、異なるRFの手技が用いられたこと、非盲検試験であったこと、診断的神経ブロック閾値の問題、心理的問題のある患者を除外したこと、対照群の一部の患者は介入期間の3ヵ月が過ぎた後にRFを受けていたこと、仙腸関節試験は脱落が多かったこと、複合試験では介入群でRFを受けていない患者がおりデータ欠損も多かったこと、多重比較の調整を行わなかったことを挙げている。

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患者・家族とのトラブル、どう解決すべき!? 2017年“モンスターペイシェント”事情

“モンスターペイシェント”という言葉が使われるようになって久しいですが、診療で対応した患者やその家族とのトラブルや事件は後を絶ちません。「モンスター化させないことが大切」とは言うものの、実際皆さんどのように対応していますか? 医師1,000人から聞いたその実態と、対応策とは…。結果概要2人に1人以上が暴言や暴力、“通常の域を超え、診察に著しい影響を及ぼすレベル”の要求やクレーム経験あり全体では55.1%の医師が「経験がある」と回答した。2013年にケアネットが行った同調査では67.1%であったのと比較してやや減少したものの、依然として2人に1人以上が何らかの経験があることがわかった。経験の頻度は、1年に1度以下が最も多かったが、「月に1度」以上の人があわせて11.5%にのぼり、わずかではあるが「週に2~3度以上」(1.3%)と答えた人も。暴言、ネットへの誹謗中傷の書き込み、なかには立件レベルの事案も内容としては、「スタッフの対応が気に食わないなどのクレーム」が最も多く(47.2%)、「自分を優先した診療ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く」(33.4%)、「治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張」(30.3%)、「不要な投薬・過剰な投薬を要求」(23.6%)などが続いた。とくに悪質なケースとしては、「『訴える』『殺す』『暴力団関係者を連れてくる』『マスコミに流す』などと脅迫」(18.3%)や、「自身やスタッフに暴力を振るう」(15.1%)などがあり、「看護師の首を跡が残るくらい絞めた」「病室で拳銃を発砲」といったエピソードも寄せられた。3割超で対応マニュアル・ガイドライン整備。現場では警察OBが活躍、悪質なケースでは110番通報も患者やその家族とトラブルになった場合の最終的な対応として、およそ3人に1人が「以後の診察を拒否した」と回答。以下、「他の医師と担当を交代」(18.7%)「転院させた」(17.8%)などが続いた。一方、「とくに対応はしなかった」人は33.4%にのぼり、全選択肢の中で最も多い回答だった。「なるべく話を妨げずに聞き、嵐が去るのを待つ」など、ひたすら傾聴するというコメントも少なくなかったが、「カルテに詳細を記録する」「ICレコーダーは必須」などの証拠保全策、「すぐに対応部署に介入してもらう」「警察への通報を躊躇してはいけない」などの回避策も挙がった。また、「警察OBを雇用している」との回答は14.0%で、対応を一任できる安心感があるとのコメントが多かった。このほか、ネットの掲示板への誹謗中傷の書き込みや、患者のストーカー化など、精神的負担を強いられるエピソードも複数見られた。設問詳細診療で関わった患者・家族とのトラブルが発端となった事件が後を絶ちません。医療現場では今、何が起こっているのでしょうか。そこで、患者・家族からの暴言や暴力、通常の域を超えた要求やクレームにまつわる経験や対応について、皆さんが日常診療の中で遭遇した実例や対応策を、ぜひお聞かせください。Q1.患者・家族から暴言・暴力、その他“通常の域を超えている、診察に著しく影響を及ぼすレベル”の行動や要求、クレームを受けたことがありますかあるないQ2.(Q1で「ある」と回答した方のみ)その頻度について最も近いものをお答え下さい週に2~3度以上週に1度半月に1度月に1度2~3ヵ月に1度半年に1度1年に1度それ以下Q3.(Q1で「ある」と回答した方のみ)その内容について当てはまるものをすべてお答え下さい(複数回答可)自分を優先した診察ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く「空いている」などの理由で、時間外・夜間診療を繰り返す診察を受けずに投薬のみ要求不要な投薬・過剰な投薬を要求治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張検査・診察・食事・内服等を拒否入院を強要退院を拒否治療費・入院費を払わない「スタッフの対応が気に食わない」などのクレーム事実と異なることを吹聴(SNSへの書き込みなども含む)土下座など度を越した謝罪を要求「訴える」「殺す」「暴力団関係者を連れてくる」「マスコミに流す」などと脅迫自身やスタッフに暴力を振るうQ4.(Q1で「ある」と回答した方のみ)上記の患者・家族への対応で、ご経験があるものをお答え下さい(複数回答可)他の医師と担当を交代転院させた以後の診察を拒否弁護士・司法書士等に相談警察に相談警察に通報、出動を要請した患者の対応に参って体調を崩した退職したとくに対応はしなかったQ5.院内で設けられている対応策について当てはまるものをお答え下さい(複数回答可)対応マニュアルやガイドラインがある対策システムがある防犯・対策セミナーや訓練を実施している院内で事例を共有している対応担当者を決めている担当部署を設置している警察OBを雇用している弁護士・司法書士に相談する体制をとっている「警察官立寄所」のステッカー・看板等を掲示しているICレコーダー・カメラ等を設置しているとくに対応策をとっていないQ6.コメントをお願いします(具体的なエピソードや解決方法、対策ノウハウ、院内体制など何でも結構です)コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)エピソード夫が暴力団関係者であると脅され、患者に有利になるよう診断書を書くことを強要された(50代、整形外科)。ほか、診断書の内容についてのクレーム・過度の要求2件。入院中に無断外出しアルコールを飲んだうえ、暴言をはかれた。スタッフの協力によって解決したが、そのために使った時間と体力、精神力は大きなものだった(30代、神経内科)。ほか、無断外出によるトラブル2件。酔っ払い相手で困った経験がある。殴られ、刑事事件とした(40代、消化器内科)。ほか、直接暴力を受けたというコメント2件。救急外来での対応に不満を持ち、いったん帰宅して包丁を持って来院した患者がおり、以来救急外来に監視カメラが設置された(50代、麻酔科)。ほか、救急・夜間診療でのトラブル5件。ミュンヒハウゼン症候群の患者への対応に苦慮。精神神経科医や臨床心理士のサポートが不足している病院が少なくないように感じる(50代、内科)。ほか、精神疾患や認知症患者への対応についてのコメント7件。生活保護受給者が、売買目的で不必要な薬を大量に要求してくることが毎日のようにある(50代、泌尿器科)。ほか、生活保護受給者に関するトラブル4件。治療が家族の見立て通りに進まないことへの苦言から、威嚇行為に発展したことがある(30代、膠原病・リウマチ科)。ほか、家族への対応でのトラブル7件。患者にストーカー状態でつきまとわれ、病棟まで追いかけてこられた(30代、皮膚科)。ほか、ストーカーまがいのトラブル1件。ネット上の口コミで辛辣な書き込みをされて困っている(50代、内科)。ほか、ネット上での誹謗中傷1件。対策<複数での対応>問題がありそうな患者に対応するときは医師以外に看護師、事務スタッフを横に置き、必ずメモを取り、カルテにも記載する(60代、産婦人科)。基本的には別のスタッフが対応したり、複数で対応することで鎮静化することが多い(50代、循環器内科)。ほか、複数での対応が有効というコメント46件。<情報共有・専任部署の設置>上位の責任者を決めておくことは必須(50代、神経内科)。ほか、上司・院長などへの報告システムが重要とのコメント12件。日ごろから問題に発展しそうな事例についての情報共有と対策検討が不可欠(40代、精神科)。ほか、情報共有が重要というコメント34件。専任の医療安全部看護師が対応する(40代、内科)。ほか、クレーム対応部署等専任者・部署の設置39件。医療安全カンファレンスを定期的に開催している(20代、臨床研修医)。ほか、研修会等の開催5件。院内放送で、職員が集まるシステムになっている(50代、糖尿病・代謝・内分泌内科)、ほか、院内放送の活用5件。<接遇・態度>理不尽な要求は対応できないとはっきり伝え、以後は警察等を通すように言う(50代、内科)。ほか、毅然とした態度が重要というコメント23件。できるだけ入院や手術治療前に対応する(40代、消化器外科)。ほか、早め早めの対応が重要というコメント7件。患者が興奮している時は、なるべく刺激するようなことを言わない(60代、リハビリテーション科)、なるべく話しを妨げずに聞いて落ち着くのを待つ(50代、皮膚科)。ほか、まずは傾聴・丁寧な姿勢で臨むというコメント30件。<記録・録音>目の前でICレコーダーで記録を取っていることを見せている(40代、腎臓内科)。ほか、ICレコーダーが有効とのコメント3件。言葉を選んで話し、カルテに詳細に記録を残す。カルテ開示を念頭に置き、冷静に記載する(50代、皮膚科)。ほか、カルテへの詳細記録が有効とのコメント6件。<マニュアル・ガイドライン>マニュアルを各部署に配布し、理不尽な要求には応じないよう徹底している(50代、消化器内科)。ほか、マニュアルについてのコメント21件。<弁護士・警察・警備会社>トラブルが起こりそうな場合は、弁護士に連絡する体制をとっている(40代、消化器内科)。ほか、弁護士への相談体制が重要とのコメント5件。病院が警察OBと契約し、暴力事例への不安が軽減された(50代、循環器内科)。ほか、警察OBの雇用・常駐が有効とのコメント15件。違法な行為があればすぐに通報する(40代、小児科)。ほか、躊躇せず、すばやい通報が重要とのコメント6件。警備会社の自動通報システムが有効(60代、精神科)。ほか、民間警備会社の活用4件。

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人工膝関節全置換術後の入院リハビリは必要か/JAMA

 人工膝関節全置換術(TKA)後に入院リハビリテーションを行っても、最初から在宅プログラムを開始した場合に比べ、26週後のモビリティは改善しないことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMark A Buhagiar氏らが実施したHIHO試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月14日号に掲載された。入院プログラムなどの形式化されたリハビリテーションプログラムは、TKAを受けた患者の至適な回復法と見なされることが多いが、外来や自宅でのプログラムとの比較は行われていないという。観察群を含む無作為化試験でモビリティを評価 HIHO試験は、TKAを受けた患者を対象に、10日間の入院リハビリテーションを行った後、監視型在宅ベースプログラムを開始するアプローチが、監視型在宅ベースプログラム単独と比較して、モビリティ、身体機能、QOLを改善するかを検証する非無作為化観察群を含む無作為化臨床試験である(HCF Research Foundationなどの助成による)。 2012年7月~2015年12月に、オーストラリア、シドニー市の2つの大規模な関節形成術専門施設でTKAを受けた骨関節炎患者165例が無作為割り付けの対象となり、入院+在宅群に81例、在宅単独群には84例が割り付けられた。観察群(自分の意思で監視型在宅ベースプログラムを選択した患者)には87例が含まれた。 主要評価項目は、術後26週時の6分間歩行試験に基づくモビリティとした。副次評価項目には、患者報告による疼痛、身体機能の尺度である膝関節疾患患者評価尺度(Oxford Knee Score:OKS、0~48点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:5点)、QOLの評価尺度であるEQ-5Dの視覚アナログスケール(EQ-5D VAS、0~100点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:23点)などが含まれた。6分間歩行試験:402.7 vs.403.7 vs.389.0m 無作為割り付けされた患者165例(ITT集団)のベースラインの平均年齢は66.9(SD 8.4)歳、女性が68%を占めた。平均BMIは34.7(SD 7)であった。主要評価項目のデータが得られたのは、入院+在宅群が79例(98%)、在宅単独群は80例(95%)だった。 26週時の6分間歩行試験は、入院+在宅群が402.7m、在宅単独群は403.7mであり、有意な差は認めなかった(平均差:-1.01、95%信頼区間[CI]:-25.56~23.55)。 26週時のOKSは、入院+在宅群が36.9点、在宅単独群は34.8点(平均差:2.06、95%CI:-0.59~4.71)、EQ-5D VASはそれぞれ78.8点、80.2点(平均差:-1.41、95%CI:-6.42~3.60)であり、いずれも有意な差はなかった。他の副次評価項目も、両群で同等だった。 また、観察群の6分間歩行距離は389.0mであり、在宅単独群との間に有意な差はなかった(平均差:-17.00、95%CI:-41.27~7.28)。副次評価項目も同様の結果であった。 合併症のデータにも、入院+在宅群と在宅単独群に差はなく、無作為割り付け患者で最も頻度の高い有害事象は麻酔下の処置を要する関節のこわばり(stiffness)であった(入院+在宅群:4.9%、在宅単独群:3.6%)。 事後解析では、患者評価による満足度が入院+在宅群で有意に高かった(p=0.004)が、職場復帰までの期間に有意な差はなかった(入院+在宅群:7.57週、在宅単独群:7.80週、平均差:-0.23、95%CI:-3.76~3.30)。 著者は、「優越性を示す知見が得られなかったため、費用対効果の解析は行わなかったが、最近のエビデンスでは、TKA後に入院リハビリテーションを行うと費用対効果は低下することが示唆されている」としている。

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VR(仮想現実)はパーキンソン病のリハビリに有効か【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第87回

VR(仮想現実)はパーキンソン病のリハビリに有効か 足成より使用 バーチャルリアリティ(VR)システムPlayStation VRが登場し、ハマっている医師も多いかもしれません。バイオハザード7が発売されたので、私もぜひとも欲しいところですが、子供が家にいるので、お父さんはなかなかゲームなんてできません。さて、医療にVRを利用しようという試みは、すでに複数の研究グループによって検証されていますが、とくに脳卒中や神経疾患のリハビリテーションの分野で盛んです。 Dockx K, et al.Virtual reality for rehabilitation in Parkinson's disease.Cochrane Database Syst Rev. 2016;12:CD010760.昨年末にコクランからパーキンソン病のリハビリテーションにVRが応用できるかどうかを検討したシステマティックレビューが発表されました。VRが歩行や平衡に有意な影響を与えるかどうかを調べたものです。そのほか、運動機能、ADL、QOL、認知機能など複数の項目を調べました。とはいっても、PlayStation VRのようなタイプのVRとは限りません。論文で「virtual reality」と記載されたランダム化比較試験すべてを対象にしています。8研究・263例のパーキンソン病の症例が対象となりました。いずれもサンプルサイズは小さい研究で、エビデンスの質も低いと言わざるを得ないものばかりでした。VRは主に理学療法と比較され、歩幅・重複歩長(step and stride length)に関して中等度の改善をもたらしました(標準化平均差[SMD]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.30~1.08[3試験106例])。また、歩行(gait)については理学療法と同様の効果をもたらしました(SMD:0.20、95%CI:-0.14~0.55[4試験129例])。平衡(SMD:0.34、95%CI:-0.04~0.71[5試験155例])、QOL(平均差:3.73単位、95%CI:-2.16~9.61[4試験106例])についても、VRは理学療法と同等の効果でした。VRを利用したことによる有害事象は報告されませんでした。エビデンスの質は低いものの、歩幅・重複歩長の改善が見込める可能性を残してはいます。ただ現時点で、通常の理学療法ではなくVRを用いなければならないほどの説得力はなさそうです。インデックスページへ戻る

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東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】

今回のキーワード発達心理学アイデンティティ親密性ミラクル・クエスチョンタイムマシン・クエスチョンリソーススケーリングみなさんは、「あの時ああだったら」「もっとこうしてれば」と思うことはありますか? このように「~たら」「~れば」と後悔することはよくありますよね。これが、「タラレバ」です。ただこの「タラレバ」は否定的な意味合いだけでしょうか? このプラス面はないでしょうか?それが、ブリーフセラピーです。今回は、ブリーフセラピーをテーマに、ドラマ「東京タラレバ娘」を取り上げます。主人公の倫子は30歳の売れない脚本家。高校時代からの親友でネイリストの香と居酒屋の看板娘の小雪といっしょに、 まめに女子会を開き、「~したら」「~すれば」と好き勝手に言い合いながら酒を飲むのが一番の楽しみです。3人とも長らく彼氏がいない中、今年こそはと奮起して、それぞれの幸せを手に入れようとするラブコメディーです。彼女たちは、恋愛に行き詰まっています。その原因を、発達心理学のライフステージをキーワードにして、解き明かします。そして、その解決策を、ブリーフセラピーに当てはめて探っていきましょう。倫子たちのライフステージは?倫子は脚本家として独立し、香はネイリストとして開業し、小雪は居酒屋の跡取りとして、3人ともそれぞれの自分の道を決めて、突き進んでいます。そんな3人は、小雪の居酒屋で「今日も朝まで女子会だー」「8年前の告白を受けてたら」「早坂さん(倫子の同僚)と付き合ってれば」と毎回騒いでいます。ある時、隣の席にたまたま座っていた常連の金髪男のKEYに「そうやって一生、女同士でタラレバつまみに酒飲んでろよ」と言われ、3人ともショックを受けてしまいます。その後、倫子は、一時期うまく行かず、脚本家の道をあきらめようとするシーン。たまたま倫子が携わった町おこしの短編ドラマの脚本で、町の良さを届けたいという町の人たちの熱心な思いに刺激を受け、「この町が私を見つけてくれた」「私はここにいる」「ここに来れば自分らしさが見えてくる」というセリフを役者に言わせます。倫子自身が自分らしさを再確認します。3人とも「自分とはどういう人か?」「自分が生きていくために何をするのか?」という自分らしさがはっきり分かっています。これは、発達心理学では、アイデンティティ(自己同一性)がすでに確立されていると言えます。また、3人は、このアイデンティティの維持のために頻繁に集まって、それぞれの仕事の愚痴や恋愛話で毎回盛り上がります。同性同年代の仲間(ギャング集団)の関係が10年以上続いています。ここで、人生をいくつかの段階に分けてみましょう。これをライフステージ(発達段階)と言います(グラフ1)。それぞれのステージにはそれぞれの発達課題があります。倫子たちは、立派に思春期の発達課題であるアイデンティティの確立をクリアしています。問題なのは、次の成人早期のライフステージの発達課題の前で足踏みをしていることです。つまり、倫子たちは30歳にもなっても、心は思春期のままだということです。それをKEYに言い当てられてしまったのでした。それでは、次のライフステージの発達課題とは何でしょうか?倫子たちの次の発達課題は?倫子がバーテンダーの奥田と交際するエピソード。奥田は、イケメンで高身長の上に人柄もよく相手としては申し分ないです。にもかかわらず、倫子は、だんだん疲れてきて、「やっぱ独りの方が楽」「自分のことだけ考えてたらいいじゃん」と香と小雪に打ち明けます。なぜなのでしょうか?ドラマでは、「独りに慣れすぎ(ていたから)」と香に突っ込まれています。もっと正確に言えば、倫子は、異性との心理的距離の縮め方が分からなくなっていたのです。そして、孤独を選ぼうとしています。これは、成人早期のライフステージに上がれない場合の状態です(グラフ1)。そうなると、さらにその先のライフステージに上がるのがますます難しくなっていきます。ここで分かることは、倫子の次の発達課題は、お互いの価値観(アイデンティティ)を尊重し合って、パートナーとの一体感を抱くこと、つまり親密さです。これは、「いい男と結婚して幸せになる」という倫子の本来の目的に当てはまります。ところが、倫子は、焦るあまりに、幸せになるという中身よりも、結婚するという形を優先させてしまっています。その心理によって、「嫌われたくない」という思いから、相手にどう見られるかということばかりに目が行き、受け身になり、緊張や不安ばかり募らせています。逆に、相手をどう見るか、どうして行きたいかという働きかけによる楽しさや心地良さがありません。親密さを実感していれば、自分がどう見られるかを気にすることが減り、むしろその方が楽になるということに倫子は気付いていません。一方、奥田も課題があります。奥田の好みのマニアックな映画を倫子が楽しんでいないことを奥田は察していません。倫子を脚本家に導いたアメリカのドラマ「セックスアンドザシティ」を「登場人物が恋愛しか考えてない話って、テーマが見えない」と否定します。そして、「倫子さんもこの(自分の好きなフランス映画の女優)髪型にしたらどう?」「絶対に似合うよ。この髪型にしてくれたらうれしいんだけどなあ」と言います。たまりかねた倫子から「もし私が映画好きじゃなくても、付き合おうって言ってくれてました?」と聞かれて、奥田は「もし嫌いでも、いっしょに見ているうちにきっと好きになってくれると思うから」と言い切ります。表面的には穏やかですが、実は一方的で、相手を自分好みの女性にしようとしている点で独りよがりです。奥田は、自分のアイデンティティへのこだわりが強すぎて、倫子のアイデンティティを受け入れようとはしていません。また、セカンド女になっている香や不倫女になっている小雪は、「違う人間同士、そのままでうまくいくわけじゃないんだから、寄せて行かないと」と倫子に説きます。彼女たちなりの親密さがうかがえますが、自分が相手にとって一番ではなく、フェアな関係ではない点で、その親密さには危うさがあります。実際に、香の彼氏の涼は、「(本命の)彼女も好きだけど、香も好き」と無邪気に言い、わがままです。小雪の不倫相手の丸井は、産後クライシスの妻との関係について「気が重いことばっかりでさ」「こうやって小雪さんと話したり、おいしいもの食べてる時の方がずっと楽しくてよっぽど幸せを感じちゃう」と小雪に漏らしています。彼は、困難を前にして親密さをいっしょに守るべき妻から小雪に一時的に逃げ込んで、甘えているだけです。さらに、倫子の同僚のADのマミにも課題があります。マミはもともと独特で奇抜なファッションセンスがあります。これがマミのアイデンティティです。ところが、付き合う男性の好みに合わせて、ファッションもヘアスタイルもあっさり変えています。一見いじらしいですが、よくよく考えると、相手のアイデンティティを優先させ、自分がありません。自分を押し殺しています。だからこそ、マミの交際は毎回ふわふわとして長続きしないのです。親密さを育むには、倫子のように我慢ばかりするのでもなく、奥田のように一方的になるのでもなく、香や小雪のようにアンフェアになるのでもなく、涼のようにわがままになるのでもなく、丸井のように単に甘えるのでもなく、麻美のように言いなりになるのでもないということです。婚活とは、単に理想の相手を見つけることだと思われがちです。しかし、実際はそれだけではなく、お互いがお互いの理想となれるように、この親密さを育むメンタリティも必要であるということです。倫子たちはどうすれば良いの?それでは、倫子たちはどうすれば良いのでしょうか?その答えを、倫子たちの女子会トークから探り、ブリーフセラピーという心理療法の手法に当てはめてみましょう。ブリーフセラピーとは、できるだけブリーフに(短い時間で)、困りごとを解決するセラピーです。セラピーがブリーフであることで、効率・効果やインパクトなどの満足度に重きを置くのが特徴です。これは、心療内科や精神科だけでなく、禁煙外来やリハビリテーションなどの他の科にも、そして、学校教育、新人研修、育児などにも、幅広く使うことができます。ここから、大きく3つのステップに分けて、考えてみましょう。(1)タラレバ話1つ目のステップは、タラレバ話をすることです。これは、すでに倫子たちが日々やっていることですが、注意点があります。それは、ネガティブな過去ではなく、ポジティブな未来に限ることです。そうすれば、タラレバ話は、後悔ではなく、現実的な野望としてプラスに働きます。そして、うまく行っている自分をイメージアップさせることです。そのための具体的なやり方が3つあります。a. 奇跡の自分を描く倫子たちが「今まで通り仕事がんばって、女磨きも抜かりなくしてたら、もっといい男現れるよ」「今よりダイエットしてきれいになったら」「もっともっといい男が現れる」などとも話しているシーンが参考になります。1つ目は、うまく行かない自分ではなく、うまく行く自分、そしてあえて奇跡の自分を具体的に思い描くことです。これは、ブリーフセラピーのミラクル・クエスチョンに当てはまります。例えば、「もしも今晩、眠っている間に奇跡が起きたら。その奇跡とは、いい男ともう付き合っていること。そしたら、明日の朝に目覚めてから、まずどんな違いに気付く?」「どんな1日になる?」などのようにです。すると、倫子はこう考えるでしょう。「朝、目が覚めると、もう起きてる彼氏が微笑んでる」「鏡に映る自分は生き生きしている」「朝ご飯をおいしくいっしょに食べる」「休日に公園に遊びにいってはしゃいでいる」「いっしょに好きなお笑い番組を見る」などなどわくわくすることばかりです。このように、想像をすることは、それ自体で、その気を高めています。これは、想像力とやる気に関係する脳内の物質(ドパミン)が活性化するからです。受け身ではなく、自分から何かしようとする積極的な心のあり方を引き出します。それが次の行動のエネルギーになっていきます。b. うまく行っている未来の自分を見る奥田と別れた倫子は「10年後の私の声が聞こえる気がする」「彼を追いかけて、あの手をつかんで。じゃないと、10年後も独りで寂しくて後悔することになるって」と言います。香から「(奥田さんは傷つけたけど)他は誰にも迷惑をかけてないんだからさ」と言われて、倫子は「迷惑かけてるかも。未来の私に」「ごめ~ん!未来の私!」と叫び、沈んでいきます。これは、うまく行っていない未来の自分を想像していますので、避けた方が良いです。2つ目は、うまく行っていない未来ではなく、うまく行っている未来の自分を具体的に見ることです。これは、ミラクル・クエスチョンの変法であるタイムマシン・クエスチョンに当てはまります。ミラクル・クエスチョンとの違いは、いつの未来かという時間の設定ができる点です。3か月後でも良いですし、10年後でも良いです。例えば、「もしもタイムマシンに乗って、2020年(3年後)の東京オリンピックの時の自分を見に行ったら。自分はどんな夫と子どもと過ごしている?」などのにようにです。すると、倫子はこう考えるでしょう。「朝、目が覚めた自分の隣りには夫と子どもがまだ眠っている」「作った朝ご飯をおいしく食べてくれる」「午前中に脚本の仕事がはかどる」「午後に自分の子どもと香と小雪と彼女たちの子どもたちといっしょにオリンピックの観戦をして盛り上がる」などなどわくわくすることばかりです。このように、うまく行かないことに目を向けて、負のスパイラルに陥るのなら、徹底的にうまく行くことに目を向けることで、その気を高めることができます。c. うまく行っている未来の自分と話す早坂さん(倫子の同僚)に未練を残す倫子は「もしタイムマシンがあったら」「あの日に戻って22歳の私に伝えたい」と言います。そして、想像上の22歳の自分に向かって「私は8年後の未来から来たあなた・・・このバカタレ小娘が!」と自分をぶん殴るシーンがあります。倫子は、過去の自分と話をしています。3つ目は、うまく行かなかった過去の自分ではなく、うまく行っている未来の自分と話をすることです。これは、タイムマシン・クエスチョンとマインドフルネス(認知行動療法)の併用に当てはまります。例えば、「2020年の倫子さん、どうしたらあなたのようになれる?」と尋ねることです。すると、今度は2020年の倫子になりきって、「2017年の倫子よ、まずは・・・」と前向きな話が膨らんでいくでしょう。このように、自分自身から距離を置いて、自分をポジティブに見つめ直すことができます。これは、ちょうどドラマでたびたび登場する倫子の幻覚のタラとレバとの会話にも似ています。タラとレバは、「おまえは大馬鹿者だ」「いい加減に目を覚ませ!」などと毎回ののしり、倫子を追い込んでいますが、彼らはもう1人(2人?)の倫子の心の叫びと言っても良いでしょう。このように、誰かからの説教などで言われたことではなく、自分で思い付いたことは、受け入れやすく、その気を高めることができます。これは、スポーツ選手のいわゆる「イメージ・トレーニング」に通じるものがあります。(2)フォロー倫子たちは「大丈夫だよ」と慰め合います。そして、お互いの良いところを励まし合っています。幻覚のタラから「仕事がうまく行けば恋愛もうまく行くタラ」と言われて、倫子は元気を取り戻しています。2つ目のステップは、フォローすることです。ここでの注意点は、付き合う相手の悪さや自分の弱みではなく、自分の強みや周りで使えるものです。そうすれば、フォロー話は、男の悪口や傷のなめ合いではなく、自分の持っている武器の再確認というプラスに働きます。これは、ブリーフセラピーのリソースに当てはまります。例えば、「自分の知識、経験、能力、好み、キャラで生かせることは?」「自分の売りは?」「周りで利用できることは?」「今までにうまくいったやり方は?」などと整理することです。(3)とりあえず行動倫子たちは、お互いに「とりあえず、どうしたら良い?」と尋ね合うシーンがたびたびあります。3つ目のステップは、とりあえず行動をすることです。ここで注意点は、「何となく」「できるだけ」「いつか」のような抽象的で大きく無期限の行動ではなく、「これを」「これだけ」「この日までに」のような具体的で小さく期限付きの行動を積み重ねることです。そうすれば、とりあえず話は、現実逃避ではなく、戦略としてプラスに働きます。これは、ブリーフセラピーのスケーリングに当てはまります。これを、3つの要素の例をそれぞれあげて、説明しましょう。a. 具体的に例えば、倫子は奥田と結ばれるために、とりあえず「嫌われない」ようにしました。これは「~しない」という心理の罠です。これで受け身になってしまい、けっきょく我慢の限界が来てしまいました。そうではなくて、「嫌われない」という抽象的な行動の代わりに、具体的に何をするかです。例えば、それはいっしょに楽しめる映画を探すことです。b. 小さく例えば、倫子たちは、結婚相手をいきなり求めています。かなりハードルが高いです。そうではなくて、最終的に結婚相手を見つけるために、越えられそうな小さなハードルをまず設定することです。例えば、それは、友人の紹介で異性と知り合いになることです。その後に、その人と合コンをしたり、さらにその人から別の異性を紹介してもらい、男友達を増やすことです。c. 期限付き例えば、倫子たちは「3年後の東京オリンピックまでに結婚して子どもがほしい」と言っています。これは年単位の話です。そうではなくて、年単位の目標のために、週単位の期限でできる行動を設定することです。例えば、結婚相談所に入会して、1週間に最低1人とデートすることです。表1 倫子たちの女子会トークに当てはまるブリーフセラピー「女子」か「女性」か?小雪の居酒屋の常連客たちが倫子たちを見て、「女子ってのはいくつくらいまでのことを言うんだろね?」「さあなあ、学生さんぐらいまでじゃねえのか」と話しています。倫子たちは、まさに次のライフステージの発達課題である親密さを育むために、タラレバ話で野望を持ち、フォローし合って武器を探し、とりあえず行動を積み重ねて戦略を立てることで、積極的に恋愛の場数を踏んでいます。そうすることで、彼女たちは自分の夢だけ見る「女子」ではなく、周りの現実も見る「女性」であると自覚できるのではないでしょうか? そして、その時、「女子」であるか「女性」であるかは、年齢でも周りの評価でもなく、自分自身のメンタリティによるものであることに気付くのではないでしょうか?1)東村アキコ:東京タラレバ娘1巻~7巻、講談社、2011-20162)鈴木忠ほか:生涯発達心理学、有斐閣アルマ、20163)森俊夫、黒澤幸子:解決志向ブリーフセラピー、ほんの森出版、2002

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脳卒中後の慢性期失語、集中的言語療法が有効/Lancet

 70歳以下の脳卒中患者の慢性期失語症の治療において、3週間の集中的言語療法は、言語コミュニケーション能力を改善することが、ドイツ・ミュンスター大学のCaterina Breitenstein氏らが行ったFCET2EC試験で示された。失語症の治療ガイドラインでは、脳卒中発症後6ヵ月以降も症状が持続する場合は集中的言語療法が推奨されているが、治療効果を検証した無作為化対照比較試験は少ないという。Lancet誌オンライン版2017年2月27日号掲載の報告。従来の言語療法と比較する無作為化試験 FCET2EC試験は、年齢18~70歳、虚血性または出血性脳卒中の発症後6ヵ月以上持続する慢性期失語症(アーヘン失語症検査[AAT]で判定)がみられる患者を対象に、集中的言語療法の日常的な言語コミュニケーション能力の改善効果を評価する多施設共同無作為化対照比較試験(ドイツ連邦教育研究省などの助成による)。 被験者は、通常治療下に、3週間以上の集中的言語療法(≧10時間/週)を行う群(介入群)または同様の治療を3週間遅れて開始する群(対照群)に無作為に割り付けられた。言語療法は、研究グループが作成したマニュアルに従って、専門のセラピストが個別の患者およびグループで行った。対照群は、待機中の3週間、従来の言語療法を受けた。 主要評価項目は、日常的な言語コミュニケーション能力(Amsterdam-Nijmegen Everyday Language Test[ANELT]A-scaleで判定)のベースラインから治療終了時までの変化とした。解析には、1日以上の治療を受けた全患者が含まれた。 2012年4月1日~2014年5月31日に、ドイツの19の入院/外来リハビリテーション施設で156例が登録され、両群に78例ずつが割り付けられた。言語能力、患者知覚QOLも改善 ベースラインの平均年齢は、介入群が53.5(SD 9.0)歳、対照群は52.9(SD 10.2)歳、女性がそれぞれ59%、69%を占めた。脳卒中の重症度(修正Rankinスケール[mRS])は、両群とも2(2~3)、脳卒中発症後の経過期間中央値は介入群が43.0ヵ月(IQR:16.0~68.3)、対照群は27.0ヵ月(13.0~48.8)であり、虚血性脳卒中がそれぞれ58%、72%だった。 言語療法は、全体で3~10週間行われ(期間中央値:介入群4.8週[IQR:3.0~5.6]、対照群4.0週[3.0~5.0])、このうち3週間の集中的言語療法は22.5~49.0時間実施された(期間中央値:介入群31.0時間[30.0~34.5]、対照群32.0時間[30.0~34.6])。対照群は、待機中の3週間、従来の言語療法を0~22.5時間受けた。それぞれ92%、94%の患者が、6ヵ月時に言語療法を継続していた(1.0時間[IQR:0.6~1.7]/週)。 言語コミュニケーション能力は、介入群ではベースラインに比べ3週間の集中的言語療法により有意に改善した(ANELT Aスコアの平均差:2.61[SD 4.94]点、95%信頼区間[CI]:1.49~3.72、p<0.0001)のに対し、対照群(従来言語療法期間)では3週後に有意な効果はみられず(-0.03[SD 4.04]点、-0.94~0.88、p=0.95)、両群間に有意な差が認められた(p=0.0004、効果量[Cohen’s d]:0.58)。また、対照群も、3週間の集中的言語療法後に、介入群と同様の言語コミュニケーション能力の改善効果が得られた。 全体で、ベースラインから3週間の集中的言語療法終了時までにANELT Aスコアが3点以上改善した患者は44%(69/156例)であり、同様の期間に3点以上低下(増悪)した患者は10%(16/156例)だけだった。 また、3週間の集中的言語療法により、言語能力(Sprachsystematisches APhasieScreening[SAPS]:音韻、語彙、統語法、言語理解、言語産出)の総合スコア(p<0.0001、Cohen’s d:0.73)および患者知覚QOL(Stroke and Aphasia Quality of Life Scale-39[SAQOL-39]:身体機能、コミュニケーション、心理社会、活力)の総合スコア(p=0.0365、Cohen’s d:0.27)が有意に改善された。 有害事象は、集中治療中の介入群が6%(5例:風邪1例、消化管または心臓の症状3例、治療開始前の脳卒中の再発1例)、待機中および集中治療中の対照群は3%(2例:自動車事故1例、風邪1例)に認められ、割り付け前に脳卒中の再発が1例にみられたが、いずれも試験への参加とは関連がなかった。 著者は、「有益な治療効果を得るための最小限の治療強度を調査し、反復介入期間以降も治療効果が持続するかを検証するために、さらなる研究を要する」としている。

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高齢者のロービジョンケアへのリハビリ併用効果

 視覚機能が低下したロービジョン(LV)高齢者を対象に、基本的なデバイス使用のLVケア介入と、そこにリハビリテーションを併用する介入(LVR)の有用性を、無作為化臨床試験で比較検討した結果が報告された。結果は、LVRの有効性が顕著だったのは最良矯正遠見視力(BCDVA)が20/63~20/200の患者においてのみであることが示されたという。米国・エドワード退役軍人病院のJoan A. Stelmack氏らが明らかにしたもので、著者は、「多くを占める視覚障害が軽度のLV患者は、基礎的なLVケアで十分のようだ」とまとめている。JAMA Ophthalmologyオンライン版2016年12月15日号掲載の報告。 研究グループは2010年9月27日~2014年7月31日に、黄斑疾患を有しBCDVAが20/50~20/200の退役軍人323例(男性97.2%、平均[±標準偏差]80±10.5歳)を対象に無作為化臨床試験を行った。偏心視および環境改良についての指導や自宅での実践を含めたリハビリテーションとともにLVデバイスを使用するLVR群と、リハビリテーションなしでLVデバイスを用いた介入を行う基礎的LV群に被験者を無作為化し、介入前後に評価者盲検にて電話によるアンケート調査を行った。 評価項目は、退役軍人ロービジョン視覚機能調査票(VA LV VFQ-48)の回答から推定した視覚機能(総合および4つの機能ドメイン)の4ヵ月後におけるベースラインからの変化量、ならびにMNREADを用いた最大読書速度、臨界文字サイズ、読書能力に関する介入終了時におけるベースラインからの変化であった。視覚機能はロジット(対数オッズ)を算出し評価した(0.14ロジットの変化は、視力の1列の変化に相当する)。 主な結果は以下のとおり。・基礎的LVは、視覚機能の改善に有効であることが示された。・基礎的LVとの比較で、LVRの有意な機能改善は、移動を除く各機能ドメインで示された。両群差は、読字能力0.34ロジット(95%信頼区間[CI]:0.0005~0.69、p=0.05)、視覚情報処理0.27ロジット(0.01~0.53、p=0.04)、視覚運動能力0.37ロジット(0.08~0.66、p=0.01)、総合0.27ロジット(0.06~0.49、p=0.01)であった。・また、LVRは、読書能力(群間差:-0.11 logMAR、95%CI:-0.15~-0.07、p<0.001)、最大読書速度(平均増加21.0字/分、95%CI:6.4~35.5、p=0.005)を有意に改善することが認められたが、臨界文字サイズについての改善はみられなかった。・層別解析において、BCDVAが20/63~20/200の患者は、LVR群のほうがLV群と比較して、読字能力、視覚運動能力および総合の視覚機能の改善が大きかった(それぞれ群間差は、0.56ロジット、0.40ロジット、0.34ロジット)。しかし、BCDVAが20/50~20/63の患者は、LVR群とLV群で有意な差はなかった。

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