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セクキヌマブ、体軸性脊椎関節炎にFDA承認 /ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、同社が製造販売するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、X線基準を満たさない活動性の体軸性脊椎関節炎(以下「nr-axSpA」という)の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の効能追加承認を取得したと発表した。 体軸性脊椎関節炎(以下「axSpA」という)は、慢性炎症性背部痛を特徴とする慢性炎症性疾患。axSpAの疾患スペクトラムには、X線基準により仙腸関節の損傷が確認される強直性脊椎炎(以下「AS」という)と、X線基準により明らかな関節損傷が認められないnr-axSpAが含まれる。axSpAによる身体的な制限は、患者のADLやQOLに重大な影響を与える疾患である。安全に主要評価項目を達成し患者QOLなどを改善 セクキヌマブ(以下「本剤」という)の効能追加承認では、nr-axSpAの第III相臨床試験であるPREVENT試験の有効性および安全性に基づいて行われた。 PREVENT試験は、生物学的製剤による治療経験の無い患者もしくは以前にTNF-α阻害剤による治療で効果が不十分であったり、忍容性不良であった活動性nr-axSpAの成人患者555例が参加して行われた試験。 本剤群は、プラセボ群と比較し、生物学的製剤による治療経験の無い患者で52週目において国際脊椎関節炎評価学会が作成した指標(ASAS40)で評価したnr-axSpAの兆候と症状が統計的に有意な改善を示し主要評価項目を達成した。 本剤の導入投与有り、導入投与無しの両群において、nr-axSpA患者は、プラセボ群と比較して、強直性脊椎炎QOL(ASQoL)質問票において16週目で健康関連QOLの改善を示した(最小二乗平均変化:それぞれ16週目:-3.5および-3.6対-1.8)。 健康状態および生活の質を、Short Form Health Survey(SF−36)で評価した結果、16週目において本剤で治療された患者では、SF-36身体要素スコア(PCS)および精神要素スコア(MCS)において、ベースラインから改善を示した。 安全性では、PREVENT試験における本剤の安全性プロファイルは、以前の臨床試験と一致することが示され、新たな安全性シグナルは報告されなかった。セクキヌマブの概要 セクキヌマブは、初のヒト型生物学的製剤で、乾癬性関節炎、中等度から重度の尋常性乾癬、ASおよびnr-axSpAの炎症と発症に中心的役割をもつサイトカインであるインターロイキン17A(IL-17A)を直接阻害する。 セクキヌマブは上市以来、世界で34万人を超える患者が投与を受けており、日本では「尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、強直性脊椎炎」(いずれも既存治療で効果不十分の場合)の4つの疾患で適応を取得している。

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セルメチニブが希少疾病用医薬品に指定/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、セルメチニブ硫酸塩(以下「セルメチニブ」という)が希少遺伝性疾患の神経線維腫症1型(以下「NF1」という)の治療薬として、わが国で希少疾病用医薬品指定*を取得したと発表した。*希少疾病用医薬品指定とは、患者数が5万人未満で、アンメットメディカルニーズが高い疾病の治療を目的とした医薬品に対して行われている指定。通常の保険適用とは異なる。幼児期から始まり、平均余命も削る希少疾病 NF1は3,000~4,000人に1人が罹患する遺伝性疾患。NF1遺伝子の自発的あるいは遺伝的変異により発症し、皮膚あるいは皮下の柔らかい塊(皮膚の神経線維腫)、皮膚色素沈着(カフェ・オ・レ斑)、および患者の30~50%にみられる叢状神経線維腫(以下「PN」という)を含む多くの症状を伴う。これらのPNは、外見の変化、運動機能障害、疼痛、気道機能不全、視覚障害、腸や膀胱の機能不全および変形などの病的状態を引き起こす可能性がある。PNは幼児期に始まり、重症度は多岐にわたる。また、この疾患により、平均余命が8~15年短縮する可能性もある。がんの活性化を抑えるセルメチニブの特徴 治療薬として期待されるセルメチニブは、同社とMSDが共同開発、商業化を進めている薬剤で、2020年4月に「症候性かつ手術不能なPNを有する2歳以上のNF1小児患者に対する治療薬」として米国では承認されている。また、PNを有するNF1を適応症とする承認申請が欧州医薬品庁によって受理・審査中であり、その他の地域でも承認申請を検討している。なお本剤はわが国では現在未承認。 同薬剤は分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MEK1/2阻害剤)である。MEK1/2タンパクは、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路の上流調節因子で、MEKとERKはともに、RASによって調節されるRAF-MEK-ERK経路の重要な構成要素であり、さまざまな種類のがんで活性化されることが多い。単剤投与で66%の客観的奏効率 米国国立がん研究所の米国癌治療評価プログラムによるSPRINT試験(手術不能なPNを有するNF1小児患者を対象にセルメチニブ単剤療法を行い、客観的奏効率や患者報告アウトカムおよび機能転機への影響を評価するもの)の第I相および第II相のStratum1における客観的奏効率(ORR)は、セルメチニブ単剤を経口投与(1日2回)したPNを有するNF1の小児患者において66%(50例中33例、部分奏効を含む)を示した。ORRは、完全奏効または20%以上の腫瘍縮小を評価基準とする部分奏効が確認された患者数から算出している。 同社では、「NF1は、ほとんどの国でその治療選択肢は限られており、今回の指定は、NF1に対する初の治療薬を日本の小児患者に提供できる重要な一歩となる」と今後の発展に期待を寄せている。■関連記事コロナワクチン接種率の違いで死亡率に大きな差/JAMA

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多発性硬化症治療に新しい治療薬シポニモド登場/ノバルティスファーマ

多発性硬化症は進行すると歩行障害と認知機能障害を起こす 多発性硬化症(以下「MS」という)は、中枢神経(脳・脊髄・視神経)のミエリンが破壊され軸索がむき出しになる「脱髄」と呼ばれる病変が多発し、視力障害、運動障害、感覚障害、言語障害など多様な症状があらわれる疾患。わが国のMS患者は、約1万5千人と推定され、年々増加している。発症のピークは20歳代で、女性に多いのが特徴。発症後に再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(以下「RRMS」という)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行するSPMSに移行する。進行期に移行すると日常生活に影響をおよぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられ、主に歩行障害で車いす生活を余儀なくされる場合もある。また、認知機能障害が進み、社会生活に影響をもたらすこともある。多発性硬化症の進行を遅らせるシポニモド シポニモド(以下「本剤」という)は、S1P1およびS1P5受容体に選択的に結合するS1P受容体調整薬。シポニモドはS1P1受容体に作用することにより、リンパ球がリンパ節から移出することを防ぎ、その結果、それらのリンパ球が多発性硬化症患者の中枢神経系(以下「CNS」という)に移行することを防ぐことで本剤の抗炎症作用が発揮される。また、シポニモドはCNS内に移行し、CNS内の特定の細胞(オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト)上のS1P5受容体と結合することで、ミエリン再形成の促進作用と神経保護作用が非臨床試験で示唆されている。 国際共同第III相臨床試験(EXPAND試験)では、1,645例のSPMS患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施。主要評価項目は、Expanded Disability Status Scale(EDSS)に基づく3ヵ月持続する障害進行(3m-CDP)が認められるまでの期間で、プラセボ群と比較し、シポニモド群では3m-CDPの発現リスクが21.2%有意に減少し(p=0.0134)、シポニモドが患者の障害進行を遅らせる効果が示された。また、3m-CDPが認められた患者の割合は、プラセボ群が31.7%に対し、シポニモド群では26.3%だった。また、年間再発率の負の二項回帰モデルによる推定値は、シポニモド群において、プラセボ群と比較して年間再発率が55.5%低下した(p<0.0001)。安全性について、本試験での主な副作用は、頭痛5.3%、高血圧4.5%、徐脈4.5%などが報告された。メーゼント錠の概要一般名:シポニモド フマル酸商品名:「メーゼント錠0.25mg」「メーゼント錠2mg」効能・効果:二次性進行型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制用法・用量:通常、成人にはシポニモドとして1日0.25mgから開始し、2日目に0.25mg、3日目に0.5mg、4日目に0.75mg、5日目に1.25mg、6日目に2mgを1日1回朝に経口投与し、7日目以降は維持用量である2mgを1日1回経口投与するが、患者の状態 により適宜減量する。製造販売承認日:2020年6月29日 同社では、「MSの進行期への移行というアンメットニーズを医療現場から拾い上げ、日本で初めてとなるSPMSの適応取得に挑戦した。この承認を通じ『医薬の未来を描く』という弊社のミッションを少しでも果たせることを願う」と意欲をにじませている。なお、薬価、発売日などは未定。

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開発中の遅発型ポンペ病治療薬の有効性/サノフィ

 サノフィ株式会社は、6月16日、酵素補充療法剤として現在開発中のavalglucosidase alfa(以下「本剤」という)が、遅発型ポンペ病の患者の臨床症状(呼吸障害と運動性の低下)に対し臨床上意義ある改善をもたらしたと報告した。世界には推定5万人の患者がいるポンペ病 ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グリコシダーゼ(GAA)の遺伝子欠損または活性低下が原因で生じる疾患。グリコーゲンが近位筋肉や横隔膜をはじめとする筋肉内に蓄積し、進行性の不可逆的な筋疾患が生じる。世界の患者数は約5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期にも発症する可能性がある。 本症は、遅発型と乳児型に分類され、遅発型では1歳以降から成人後期までのいずれかの時期に発症する。遅発型の特徴的な症状は、呼吸機能の低下と筋力低下で、多くの場合、運動機能の低下に至る。患者は、歩行が困難となり、車椅子での生活を余儀なくされることが多く、呼吸困難が現れ人工呼吸器が必要となることもあり、主な死因は呼吸不全となっている。乳児型は生後1年以内に発症し、骨格筋の筋力低下に加え、心機能障害がみられる。 COMET試験の概要 今回報告されたCOMET試験は、無作為化二重盲検第III相試験で、20ヵ国56施設において治療経験のない遅発型ポンペ病の小児患者または成人患者100例が対象。患者を無作為化し、本剤群またはアルグルコシダーゼアルファ(標準治療薬)群に割り付け、いずれの群とも49週間にわたり1回20mg/kgの点滴静脈内投与を隔週で受ける。49週間後、非盲検の継続投与を行い、標準治療群については本剤20mg/kgによる治療に切り替える。 主要評価項目は、呼吸筋機能の変化で、立位での予測値に対する比率をパーセントで表した努力性肺活量(%FVC)に基づき評価した。本剤群の患者は、アルファグリコシダーゼの標準治療群の患者に比べ、%FVCが2.4ポイント改善し(95%信頼区間[CI]:-0.13/4.99)、試験計画で規定した非劣性の基準を上回る呼吸機能の改善を示した(p=0.0074)。ただ、主要評価項目の優越性については、本剤群は統計学的に有意な優越性を示すには至らなかった(p=0.0626)ため、試験計画で定めた解析の実施順序に従い、副次評価項目に関する正式な統計学的検討は行わなかった。主な副次評価項目は、6分間歩行試験による運動性の評価、呼吸筋力、運動機能と生活の質(QOL)を評価など。 本剤の安全性プロファイルは標準治療薬と同様で、49週間の二重盲検試験の期間中、本剤群44例、標準治療群45例に有害事象が現れた。重度の有害事象は、本剤群6例、標準治療群7例。重篤な有害事象が現れた患者数は、本剤群(8例、うち1例は投与との因果関係が否定できない重篤な有害事象)の方が標準治療群(12例、うち3例は投与との因果関係が否定できない重篤な有害事象)より少数だった。標準治療群では、4例が有害事象のため投与中止に至り、1例は急性心筋梗塞(投与との因果関係なし)のため死亡した。本剤群での投与中止や死亡はなかった。avalglucosidase alfaの概要 ポンペ病の酵素補充療法の目標は、筋細胞の中にあるライソゾームに酵素を送り届け、欠損しているか機能低下がみられる酸性α-グルコシダーゼに代わって筋肉内のグリコーゲン蓄積を防ぐことにある。本剤は、筋肉内、とくに骨格筋の細胞に酵素を送り届ける機能を高めるよう設計されていて、標準治療で用いられるアルグルコシダーゼアルファに比べ、-マンノース-6-リン酸の含量を約15倍に高めた物質で、酵素の細胞内への取り込みを向上させ、標的組織において高いグリコーゲン除去効果を得る目的で開発された。ただ、この差の臨床的意義は、まだ確認されていない。 同社では、「今回の試験結果により、avalglucosidase alfaをポンペ病の新たな標準治療薬として確立させるという目標に向けた歩みがまた一歩進んだ」と期待をにじませている。 また、今回のデータに基づき、2020年下半期に世界各国で承認申請を行う予定であり、米国食品医薬品局(FDA)は、ポンペ病と確定診断された患者に対する治療薬候補として画期的新薬として、ファストトラック審査の対象に指定している。

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著者ら自身が不満なのではないのか?(解説:野間重孝氏)-1251

 患者アドヒアランスは単純に何かの実施率(この場合リハビリテーション実施率、服薬率)で評価できるものなのだろうか。まず少し理屈っぽくなってしまうが、コンプライアンス(compliance)とアドヒアランス(adherence)の違いを考えてみたいと思う。 コンプライアンスもアドヒアランスもいずれも規則や指示に従うことを意味するが、コンプライアンスが言われたことを守るという受け身の意味合いが強いのに対して、アドヒアランスは興味を持って積極的に参加しようという意味合いが強い言葉である。近年は医師・薬剤師に言われたことを守るだけでなく、患者自身が積極的に治療に参加することが重要視されるようになり、数年前までは服薬についていえば「服薬コンプライアンス」といわれていたものが、昨今は「服薬アドヒアランス」と呼ばれるように変わってきた。 この論文評をこのような議論から始めたことには理由がある。コンプライアンスという観点からは「患者は医療従事者に対して従順でなければならない」という患者像がつくられ、結果として服薬の場合でいえば「薬をきちんと飲まないのは患者が言うことを聞かないからだ」ということになり、すべて患者が悪いという認識になってしまう。しかし、実際には患者にも薬を飲めない、あるいは飲みたくないと思う種々の事情がある場合が多いのである。したがって患者の服薬指導に当たる場合、「患者が言うことを聞かない」という視点をまず外し、患者の持つさまざまな事情を共に考えるという姿勢が重要になってくる。服薬アドヒアランスの評価は単なる服用率だけではなく、1.服薬順守度: 薬を用法・用量どおりに正しく使用しているか? つまりコンプライアンスだがこれに加え、2.医療従事者との協働性: 医療従事者と自分の思い・目標を共有できているか?3.知識・情報に対する積極性: 自分の薬に対する必要な情報を探したり、利用したりしているか?4.服薬の納得度: 薬の必要性について納得しているか?などの項目の評価が必要である。とくに心筋梗塞後の薬剤投与についてはこれから先もほぼ生涯にわたって服薬を続ける必要があるため、患者の理解・納得度が非常に重要になってくる。 リハビリテーションについても少しかたちを変えながらもまったく同様のことがいえる。つまり、リハビリテーションの実施率は確かに大きな指標ではあるが、それだけでは足りず、上記のような多面的な考察が必要とされるのである。 この研究には2つの不満が持たれる。第1はまさに上記の議論である。単なるリハビリテーション実施率や服薬率だけでアドヒアランスを評価してよいのかという問題である。冊子を送付したり、様子伺いの電話をすることが、どれだけ患者に寄り添って考えることになるかには疑問が残るからである。しかし、正直こうした患者への寄り添いというのは、言うはやすくして実際には大変難しい問題であることは評者自身十分に理解しており、著者らを責める資格はないと自覚している。 第2点は単純に効果についての疑問である。著者らは約半数の患者が12ヵ月後にはリハビリテーションも服薬も中止してしまうという現実を踏まえてこの研究をスタートさせたとしているが、達成率はリハビリテーションの完全介入例で37%、服薬で36.8%となっている。この数字は決して満足できる数字とはいえないだろう。一方のオッズ比で有意差が出たといわれても何を意味するのか説得力に欠けるといわなくてはならないと思う。この介入に効果がなかったとはいえないが、不十分であるといわなければならないのではないだろうか。コンプライアンスを超えたアドヒアランスの向上を目指しているのだとすれば、なおさらだろう。 とはいうものの、現在自分たちが行おうとしている介入にどの程度の効果があるかを、机上の議論ではなくリアルワールドで検定してみようという姿勢は高く評価されてよいと思う。本論文は冊子送付や電話連絡といった介入を行ったところ、リハビリテーション実施率では改善がみられたが服薬率では差がみられなかったといった、単純な読まれ方をされてはならない性格の論文であるのだと思う。より患者に寄り添った医療を行うためにはどうするべきか、共に考えてみようという姿勢が問い直されているのである。ただおそらく今回の結果をみて、(一応有意差は出たので論文化はできたが)これでは不十分だなと一番強く感じているのは、ほかならぬ著者ら自身なのではないだろうか。

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フレイルの健診に有用なテキスト公開/国立長寿医療研究センター

 2020年6月、健康長寿教室テキスト第2版が国立長寿医療研究センターの老年学・社会科学研究センターのホームページ上に公開された。これは同施設のフレイル予防医学研究室(室長:佐竹 昭介氏)が手がけたもので、2014年に初版が発刊、6年ぶりの改訂となる。 健康長寿教室テキストは介護予防に役立てるためのパンフレットで、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)に関する基本的概念に加え、実践編として「お口の体操」「運動」「フレイルや低栄養を予防するための食事の工夫やレシピ」などが掲載されている。このほかにも、最新の話題として、新型コロナなどによる外出制限時の対策にも応用できる内容が紹介されている。なお、健康長寿教室テキストは無料でダウンロードして使えるため、後期高齢者健康診査(いわゆるフレイルの健診)、スタッフ研修、敬老会の資料としても有用である。 健康長寿教室テキストの改訂にあたり荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター理事長)は、「当センターのみならず、国内外で明らかになった成果を取り入れ、お口の健康に関する内容を充実するとともに、よりわかりやすく健康的な食事のレシピや最新版の運動プログラムを含めた内容に一新した。高齢者では多くの病気を合併することが多いが、病気の適切な診断と治療を行うことはもとより、加齢とともに心身が衰えてくる『フレイル』の予防を行うことで、真の健康寿命の延伸をめざした全人的医療を行っている。病気の治療はどの医療機関でもできるが、本テキストに載っているようなフレイル予防を実践しているところはまだまだ少ないのが現状」とし、また、「新型コロナウイルス感染症の影響で外出を控えるようになり、地域での活動も制限され、『生活不活発』による身体機能の低下も懸念されている。本テキストをさまざまな現場で活用することにより、フレイルにならずにいつまでも元気で長生きしていただけることを祈念している」と述べている。<健康長寿教室テキスト目次>◆知識向上編第1章 健康寿命とフレイル第2章 フレイルに関連する状態◆実践編第3章 フレイルを予防するお口のお手入れ第4章 フレイルを予防する栄養第5章 フレイルを予防する運動第6章 フレイルを予防する生活第7章 老いと上手に付き合うために

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心臓リハビリ、冊子&電話フォローで完了率増/BMJ

 心筋梗塞発症後、2次予防のための心臓リハビリテーション実施と薬物療法について、患者に対してその重要性を示し実施と服薬を促す冊子の郵送と電話によるフォローアップを行うことで、心臓リハビリテーションの実施率は有意に増加したことが示された。一方で、服薬のアドヒアランスは増加しなかった。カナダ・Women's College HospitalのNoah M. Ivers氏らが2,632例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は、「介入を強化することで服薬アドヒアランスが改善されるのかを調べること、また心臓リハビリテーションの実施と服薬アドヒアランスとの関連を調べることが必要である」と述べている。BMJ誌2020年6月10日号掲載の報告。MI歴のある患者に、冊子を定期的に郵送し電話でフォローアップ 研究グループは2015年9月~2016年5月にかけて、カナダ・オンタリオ州9ヵ所の心臓治療センターを通じて、アウトカム評価を盲検化した無作為化比較試験を行い、心筋梗塞を発症した2,632例を対象に、2次予防治療のアドヒアランスを改善する介入とその効果を検証した。 被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、(1)従来の治療(通常ケア群876例)、(2)心筋梗塞歴のある患者やその家族と一緒に作成した、心筋梗塞後のリハビリテーションや長期の服薬アドヒアランスを促す冊子の5回にわたる郵送(冊子のみ介入群878例)、(3)同冊子の郵送と、郵送後の電話によるフォローアップ(完全介入群878例)をそれぞれ実施した。電話によるフォローアップでは、最初に自動応答システムで治療を順守していない患者を特定し、訓練を受けた医療者が必要に応じてフォローアップを行った。介入は、調整は中央で行ったが、配信は各病院から行われた。 主要アウトカムは2つで、心臓リハビリテーションの完了と、服薬のアドヒアランス。アドヒアランスは、2次予防のための4種の推奨薬(スタチン系薬、抗血小板薬、β遮断薬、アンジオテンシン系阻害薬)の服用状況について、0~4段階(0:過去7日間で服用しなかった推奨薬なし[0種]~4:同服用しなかった推奨薬はすべて[4種])で測定・評価した。データは12ヵ月時点で、盲検化された評価者によって、患者の自己申告および医療管理データベースから集められた。リハビリテーション完了率、完全介入群37%に対し通常ケア群27% 被験者2,632例の平均年齢は66歳、男性は71%であった。 回答を得られた被験者における心臓リハビリテーションの完了率は、通常ケア群27%(643例中174例)、冊子のみ介入群32%(628例中200例)に対し、完全介入群は37%(531例中196例)だった(補正後オッズ比[OR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.18~2.03)。 一方で、服薬アドヒアランスは、通常ケア群、冊子のみ介入群、完全介入群でいずれも有意差はなかった。1年後の服薬アドヒアランスが0、1、2、3、4種の割合はそれぞれ、通常ケア群が12.2%、8.4%、13.1%、30.3%、36.1%、冊子のみ介入群は12.5%、6.8%、13.6%、30.2%、36.8%、完全介入群は11.7%、6.0%、14.4%、32.9%、35.0%で、冊子のみ介入群vs.通常ケア群のORは0.98(95%CI:0.81~1.19)、完全介入群vs.通常ケア群のORは0.99(0.82~1.20)だった。

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COVID-19、ヒドロキシクロロキンの使用は支持されない/BMJ

 ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療薬として期待され世界的に注目されていたが、リアルワールドで収集した観察データを用いた臨床研究の結果、酸素投与を要するCOVID-19肺炎入院患者へのヒドロキシクロロキン使用は、支持されないことを、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のMatthieu Mahevas氏らが報告した。COVID-19による呼吸不全や死亡を予防する治療が緊急に必要とされる中、ヒドロキシクロロキンは、in vitroでCOVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果が報告され、小規模な臨床試験でも有効性が示唆されていた。BMJ誌2020年5月14日号掲載の報告。フランスの4施設におけるCOVID-19肺炎入院患者におけるヒドロキシクロロキンの有効性を後ろ向きに解析 研究グループは、2020年3月12日~31日の期間に、フランスの3次医療施設4施設に入院したCOVID-19肺炎患者全例について電子カルテをスクリーニングし、18~80歳で酸素投与を必要とするが集中治療室(ICU)への入室は必要としないSARS-CoV-2感染が確認された肺炎患者を適格症例として、入院48時間以内にヒドロキシクロロキン600mg/日の投与を開始した患者(治療群)と、ヒドロキシクロロキンを投与せず標準治療を行った患者(対照群)に分け比較した。 主要評価項目は21日時点でのICU入室を伴わない生存率、副次評価項目は全生存期間、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴わない生存率、酸素投与からの離脱、自宅退院またはリハビリテーション施設への転院である(すべて21日時点)。解析は、逆確率重み付け法により交絡因子を調整した。ヒドロキシクロロキン治療群と対照群とで生存率に有意差なし 主要解析の対象集団は全体で181例、治療群が84例、対照群が89例であり、入院後48時間以降にヒドロキシクロロキンの投与を開始した8例も追加された。 主要評価項目である21日時のICU入室を伴わない生存率は、治療群76%、対照群75%であった(加重ハザード比[HR]:0.9、95%信頼区間[CI]:0.4~2.1)。また、21日時点の全生存率は治療群89%、対照群91%(加重HR:1.2、95%CI:0.4~3.3)、ARDSを伴わない生存率はそれぞれ69%、74%(加重HR:1.3、95%CI:0.7~2.6)、酸素投与から離脱した患者の割合は82%、76%(加重リスク比:1.1、95%CI:0.9~1.3)であった。 治療群の8例(10%)に、治療の中止を要する心電図異常が認められた。

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脊髄性筋萎縮症治療に新しい治療薬登場/ノバルティス ファーマ

 5月13日、中央社会保険医療協議会は、オンラインで総会を開催し、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療用製品としてノバルティス ファーマ株式会社が3月19日に製造販売承認取得したオナセムノゲン アベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ点滴静注)の薬価につき1億6,707万7,222円とすることを了承した。薬価収載は5月20日に行われ、同日に発売された。 ゾルゲンスマは、SMAの根本原因である遺伝子の機能欠損を補う遺伝子補充療法で、1回の点滴静注で治療が完了する。SMAの概要とゾルゲンスマの特性 対象疾患となるSMAとは、脊髄前角細胞の変性・消失によって進行性に筋力低下と筋萎縮を呈する下位運動ニューロン病。常染色体劣性遺伝性の希少疾病であり、発症年齢と最高到達運動機能によってI~IV型の4タイプに分類される。とくにI型(乳児型)SMAは、重症かつ高頻度にみられ、0~6ヵ月で発症し、患児の90%以上が20ヵ月前に死亡または人工呼吸器による永続的な呼吸管理が必要な状態となる。そのほかII、IIIまたはIV型においても、病状の進行により歩行機能の喪失および筋力低下により、社会生活が困難となり、QOLを著しく低下させる。 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は、平成30年度末、全国で858人(うち0~9歳は30人)と報告され、本症は遺伝性疾患による乳幼児の主な死亡原因となっている。 ゾルゲンスマは、SMAの原因遺伝子であるヒト運動神経細胞生存(Survival Motor Neuron: SMN)タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ、野生型のアデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を利用した遺伝子治療用ベクター製品。静脈内に投与され、SMAの根本原因であるSMN1遺伝子の機能欠損を補い、運動ニューロンでSMNタンパク質を発現させ、運動ニューロンの変性・消失を防ぎ、神経および筋肉の機能を高め、筋萎縮を防ぐことで、SMA患者の生命予後および運動機能を改善することが期待されている。また、導入したSMN遺伝子は患者のゲノムDNAに組み込まれることなく、細胞の核内にエピソームとして留まり、運動ニューロンのような非分裂細胞に長期間安定して存在するように設計されている。ゾルゲンスマの概要一般名:オナセムノゲン アベパルボベク製品名:ゾルゲンスマ点滴静注効能・効果:脊髄性筋萎縮症(臨床所見は発現していないが、遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予測されるものも含む)ただし、抗AAV9抗体が陰性の患者に限る。用法・用量:通常、体重2.6kg以上の患者(2歳未満)には、1.1×1014ベクターゲノム(vg)/kgを60分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと。薬価:1億6,707万7,222円承認取得日:2020年3月19日薬価収載日:2020年5月20日発売日:2020年5月20日主な患者数:年間の投与対象患者数は15~20人程度

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COPD患者の退院後呼吸リハ、早期開始で死亡リスク減/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院したメディケア受給者では、退院後3ヵ月以内の呼吸リハビリテーションの開始により、1年後の死亡リスクが低減することが、米国・マサチューセッツ大学のPeter K. Lindenauer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月12日号に掲載された。COPD増悪後の呼吸リハビリテーション(運動訓練、自己管理教育)が生存率を改善することはメタ解析で示唆されているが、この解析に含まれた試験は患者数が少なく、異質性が高いという。米国の現行ガイドラインでは、COPD患者に、退院後は呼吸リハビリテーションに参加するよう推奨している。90日以内と以降の開始を比較する開始コホート研究 本研究は、2014年に米国の4,446の急性期病院にCOPDで入院した出来高払い方式メディケア受給者の保険請求データを、後ろ向きに解析した開始コホート研究(inception cohort study)(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。最終フォローアップ日は2015年12月31日だった。 呼吸リハビリテーションを、初回退院後90日以内に開始した患者と、90日以降(91~365日)に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった患者を比較した。また、傾向スコアでマッチさせた患者の比較も行った。 主要アウトカムは、1年後の全死因死亡とした。探索的解析として、呼吸リハビリテーションの開始時期と死亡率との関連、および終了した呼吸リハビリテーションの回数と死亡率との関連の評価を行った。1年死亡率:7.3% vs.19.6% 4,446病院に入院したCOPD患者19万7,376例(平均年齢76.9歳、女性11万5,690例[58.6%])が解析の対象となった。このうち、2,721例(1.5%)が退院後90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、3,161例(1.6%)は91~365日に開始した。 退院から1年以内に3万8,302例(19.4%)が死亡した。このうち、7.3%が90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、19.6%は90日以降に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった。90日以内開始群は、90日以内非開始群に比べ、1年死亡リスクが有意に低かった(1年死亡率:7.3% vs.19.6%、絶対群間リスク差[ARD]:-6.7%、95%信頼区間[CI]:-7.9~-5.6、ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.57~0.69、p<0.001)。 90日生存例(1年死亡率:90日以内開始群6.2% vs.90日以内非開始群13.4%、ARD:-5.8%、95%CI:-6.9~-4.6、オッズ比[OR]:0.54、0.46~0.63)に限定した解析でも、生存に関して同様の効果が認められた。 また、在宅酸素療法の使用例(ARD:-5.7%、95%CI:-7.4~-3.5、OR:0.60、0.49~0.75、p<0.001)と非使用例(-6.8%、-8.0~-5.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)、併存疾患の負担が軽度(-7.6%、-8.6~-6.2、0.27、0.19~0.39、p<0.001)、中等度(-5.0%、-6.7~-2.8、0.57、0.43~0.75、p<0.001)、重度(-3.8%、-6.7~-0.5、0.76、0.59~0.97、p=0.03)の患者のいずれにおいても、90日以内開始群で死亡リスクが低かった。 傾向スコアでマッチさせた患者(両群2,710例ずつ)でも、90日以内開始群で死亡リスクが低かった(7.3% vs.14.1%、ARD:-6.8%、95%CI:-8.4~-5.2、HR:0.50、95%CI:0.42~0.59、p<0.001)。 呼吸リハビリテーションの開始時期別の比較では、90日以内非開始群に比べ、退院後30日以内に開始した患者(ARD:-4.6%、95%CI:-5.9~-3.2、HR:0.74、95%CI:0.67~0.82、p<0.001)、31~60日に開始した患者(-10.6%、-12.4~-8.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)および61~90日に開始した患者(-11.1%、-13.2~-8.4、0.40、0.30~0.54、p<0.001)のいずれも死亡リスクが低かった。 退院から90日までに受けた呼吸リハビリテーションの回数の中央値は9回(IQR:4~14)であった。回数が3回(1週間の推奨回数)増えるごとに、死亡リスクが有意に低下した(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)。 著者は、「これらの知見は、COPDで入院後の呼吸リハビリテーションに関する現行ガイドラインの推奨を支持するものだが、交絡が残存する可能性があり、さらなる検討を要する」としている。

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苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

今回のキーワード世間(主流秩序)集団主義不安(セロトニン不足)受け身(ドパミン不足)「グレートジャーニー促進説」「均一民族促進説」私刑発信者情報開示請求どう日本的なバッシングはユニークなの?進化心理学的に考えると、バッシングには普遍性があることが分かりました。ところが、世界的に見て、日本人によるバッシングは、実はかなりユニークです。そのユニークな点を3つあげてみましょう。キーワードは、「世間」です。(1)内向きである1つ目は、内向きであることです。日本のバッシングのターゲットのほとんどは、国内です。逆に、海外には目が向いていないです。これは、日本のウチ・ソトの文化によるものです。ウチとは、世間(主流秩序)の範囲「内」であるということです。逆に、海外であるソトは、世間(主流秩序)が通用しない別の世界であるととらえられます。この心理は、ソトに対して、良く言えば寛容ですが、悪く言えば無関心です。一方、とくに欧米のバッシングは、ターゲットが国内外を問わず、政治家、王族、ハリウッドのセレブであることが多いです。(2)情緒的である2つ目は、情緒的であることです。日本のバッシングの内容の多くは、犯罪や不倫などの分かりやすい悪に偏っています。逆に、労働、育児、介護、年金、貿易、原発などのまさに実生活にかかわることについては、善悪が分かりにくいため、あまり目が向いていないです。また、バッシングするかどうかは、同じ犯罪や不倫であっても、ターゲットやその時の世間の雰囲気によって極端に変わり、とても流されやすいです。これは、日本の和の文化によるものです。和とは、世間(主流秩序)を乱さないことです。よって、多数派という「安全な場所」から、少数派はバッシングされやすいです。逆に、多数派には逆らわないため、政権の不正へのバッシングは広がりにくいと言えます。一方、とくに欧米のバッシングの内容は、政治経済をはじめとして実生活にかかわることすべてです。また、ターゲットがどれだけズルしたか、自分たちはどれだけ損したかなど、お金についての内容が多く、現実的です。なお、不倫については、社会ではなく個人の問題であるため、そもそもバッシングのターゲットにはならないです。(3)陰湿である3つ目は、陰湿であることです。日本のバッシングのゴールは、「ご迷惑をおかけしました」「お騒がせしました」という世間への謝罪と「もう調子に乗りません」「大人しくします」という反省です。そこに至るまで、または至ったとしても、徹底的に追い詰めて、容赦がないです。親兄弟や職場にも謝罪を求めます。逆に、損害賠償など、合理的な解決を求めることについては、あまり目が向いていないです。これは、日本の疑似家族の文化によるものです。疑似家族とは、価値観が同じであることを前提に、親や兄弟、職場、さらには世間とのつながりを重んじることです。よって、本人だけでなく家族や会社が、世間様(主流秩序)に許しを乞うのは当然という発想になります。これは、バッシングの目的化に至りやすい思考回路でもあります。一方、とくに欧米のバッシングは、価値観が違うことが前提であるため、謝罪や反省ではなく、解決することが一番のゴールであり、とてもドライです。たとえば、違法ドラッグについては、謝罪や反省の是非ではなく、薬物依存症のリハビリテーションをしているかどうかが注目されます。親兄弟は、成人すれば赤の他人であるため、本人のために謝罪をすることはありません。むしろ、大変な思いをしていると周りから同情を寄せられることがあります。また、会社は、個人との単なる労働契約をしている関係にすぎないため、謝罪会見をすることはまずありえないです。なぜ日本的なバッシングはユニークなの?日本人的なバッシングのユニークな点は、ウチ・ソトの文化によって内向きである、和の文化によって情緒的である、疑似家族の文化によって陰湿であることが分かりました。これらは、欧米の個人主義とは対照的な日本独特の集団主義の文化です。それでは、なぜ日本人によるバッシングは、文化的にユニークなのでしょうか? ここから、その原因を、2つの脳内物質の国際比較を通して、脳科学的に解き明かしてみましょう。(1)不安を感じやすい―セロトニン不足1つ目は、日本人は不安を感じやすいことです。これは、先ほどにも触れた「安心ホルモン」であるセロトニンの不足との関係が指摘されています。セロトニンは、脳内でその「リサイクルポンプ」(セロトニントランスポーター)が働くことによって、常に使い回されています。「最後通牒ゲーム」を用いた研究によると、自分が損をしてでも公平性(正義)を重んじる人は、セロトニントランスポーターの密度が低い(働きが悪い)、つまりセロトニン不足であることが分かっています。この密度が低い遺伝子タイプ(SSタイプ)を持つ人の割合の国際比較において、日本人は世界で最も多いことが分かっています。つまり、日本人は不安を感じやすいからこそ、ソト(海外)へのバッシングなんて怖くてできず、内向きなのでしょう。その一方、ウチ(国内)では多数派に流されやすく、情緒的なのでしょう。また、同じ価値観を押し付けて、陰湿なのでしょう。こうして、バッシングによってとりあえず世間が乱れないようにして安心を得ようとするのです。(2)受け身になりやすい―ドパミン不足2つ目は、日本人は受け身になりやすいことです。これは、先ほどにも触れた「快感物質」であるドパミンの不足との関係が指摘されています。ドパミンは、脳内で分解酵素(カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ)が働くことによって、溶かされてなくなります。「同調圧力実験」を用いた研究によると、意思決定が楽しいと感じにくい人(受け身になりやすい人)は、ドパミン分解酵素の活性が高い(溶かす働きが良い)、つまりドパミン不足であることが分かっています。この活性が高い遺伝子タイプを持つ人の割合の国際比較において、日本人は世界でトップレベルであることが分かっています。つまり、受け身になりやすいからこそ、文化の違うソト(海外)まで積極的に目を向けられず、内向きなのでしょう。善悪を自分で考えようとせず、情緒的なのでしょう。解決への働きかけをしようとせず、陰湿なのでしょう。そして、バッシングによって、安易な快感を得ようとするのです。次のページへ >>

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第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?【今さら聞けない心リハ】

第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?今回のポイント新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、全国の病院では外来の心リハを休止せざるを得ない状況となっている心リハは運動療法だけではなく疾患管理プログラムとしての役割を担っているため、外来の心リハ休止により心疾患の再発悪化の増加が懸念される外来の心リハ休止の悪影響を最小限に抑えるためには、どのような対応が求められるか、外来再開時には何に注意すべきか現在、新型コロナウイルス感染拡大は全世界に及んでおり、その収束の見通しは立っていません。日本では都市部を中心として感染者が急増しており、政府は4月7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出しました。4月17日には全国都道府県に緊急事態宣言の対象が拡大。それとともに、これまでの宣言の対象であった7都府県に京都を含む6つの道府県を加えた13都道府県については、とくに重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていくべき「特定警戒都道府県」と位置付けられました。筆者の勤務する京都大学医学部附属病院(京大病院)でも、新型コロナウイルス感染症対策として外来の心リハを4月9日より中止しています。心リハは心筋梗塞や心不全などの心疾患患者にとってとても大切な治療であることをこれまでの連載で語ってきました。今回は、『緊急事態とは言っても、心疾患患者にとって重要な心リハを中止しても大丈夫?』という疑問を持つ読者の皆様とともに、国内外の心リハの状況と対策について考えてみたいと思います。心リハ学会の指針は?4月20日に日本心臓リハビリテーション学会より、“COVID19 に対する心臓リハビリテーション指針”が公開されました。要点は以下の3つです。1)入院中の心リハは自粛せず、適切に導入・継続する2)外来の心リハは中止し、自宅での在宅リハを推奨する3)運動処方目的の心肺運動負荷試験(CPX)は実施しない補足事項として、入院患者に心リハを行う場合も、手指消毒・マスク装着・密集を避ける(患者間は2mの距離を設ける)などの感染対策を徹底する、感染患者の新規発生がみられない地域では外来の心リハ実施も許容される、と書かれています。ただし、こちらの指針が作成されたのは緊急事態宣言の対象が全国に拡大されるより前の4月13日のことであり、現時点では全国の施設での外来心リハ実施は中止することが妥当と考えられます。ヨーロッパ・アメリカでは?世界保健機構(WHO)の発表によると、4月22日時点の新型コロナウイルスの感染者数は日本では1万1,118例です。一方、ヨーロッパでは118万7,184例、アメリカでは89万3,119例と桁違いに多く、まさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにあることがわかります。心リハの先進国でもあるヨーロッパ・アメリカですが、COVID-19パンデミックで心リハはどうなっているのでしょうか。ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の推奨ヨーロッパ心臓病学会(ESC)は4月8日に‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’を公開しています。ここでは、COVID-19パンデミックにより各国での心リハの実施に障害が生じていることを述べたうえで、以下、10の推奨が示されています。1)COVID-19パンデミックの状況を定期的に確認する2)COVID-19患者を扱える準備をする3)COVID-19パンデミックが心疾患患者に与える結果について系統的に検討する4)現状で提供できる最大限の心リハを実施する5)患者の要望に対して個別の病状に配慮したうえで応じられるよう準備する6)なんらかの症状がでた際には、必要な医療を後回しにせず適切な支援を受けられるように患者に指導する7)偽情報に惑わされない8)包括的心リハのすべての要素を含む電話での遠隔リハ(telerehabilitation programmes:テレリハプログラム)を実施する9)医療および地域連携による患者の心理サポートを行う10)施設における心リハ再開の準備をする施設の状況によっては、通常通りの心リハ運営が難しくなっている場合もあります。COVID-19患者対応でスタッフが配置転換となり、心リハを完全に閉じている施設もあります。ESCは施設の状況に応じた推奨を示しています。心リハを閉じている施設に対しては、残っているスタッフまたは配置転換となったスタッフ間で連携し、COVID-19が心疾患に与える影響についての情報共有や遠隔リハの開始について検討することが推奨されています。心リハの運営ができている施設には、入院患者と回復期の外来患者は、手指消毒・マスク装着・密集を避けるなどの感染対策を実施したうえで行うこと、ただし回復期または維持期の外来患者については可能であれば対面ではなく、電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ(患者評価と指導)を行うことが推奨されています。米国のほうはCOVID-19パンデミック下の心リハについてESCほどまとまったものはありませんが、AACVPR(American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation)が3月13日に公表した‘AACVPR Statement on COVID-19’には、各施設の方針に従って心リハを実施すること、外来の心リハが実施できない患者には有効な在宅運動指導を検討することが書かれています。米国ではCOVID-19パンデミック以前の昨年7月に“在宅心リハについてのステートメント”が公表されています。テレリハ、具体的にどうする?では、テレリハ、“電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ”は、どのように実践すればいいでしょうか。言うは易し、行うは難し、ですね。患者さんに心リハスタッフが電話して、『運動しましょうね』と言えばそれだけでいいのでしょうか。心疾患患者さんには、運動をするにあたってメディカルチェックが必要です。テレリハであっても、そのプロセスは省けません。さらに、テレリハを行うにあたって、スタッフ間での対応も統一する必要があります。電話での患者情報聴取は何を聞けばよいか、もし患者が症状の悪化を訴えたら、どの程度で受診を促すべきなのか…。当院では、複数のメディカルスタッフが心リハに携わっています。そこで今回、心リハのメディカルスタッフで協働して「テレリハプログラム」を作成し、4月9日より運用を開始しました。(表)京大病院で活用している、テレリハ問診チェックリストPDFで拡大するこれはESCの‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’の公開を知る前に作成したものでしたが、ESCの推奨8)の“包括的心リハの全ての要素を含む電話でのテレリハプログラム(telerehabilitation programmes)”にほぼ相当する内容になっているようです。心リハを専門にする医療者の考えることは、日本もヨーロッパも同じようなレベルにあるということでしょうか。運動の内容についても、具体的な指導が必要です。「一人で運動してください」と言われても、どうしたらいいのか、患者の立場だったら困りますよね。単に歩けばそれでいいのでしょうか。外出を控えることが一人一人の国民に求められている現状で、どこを歩けばいいのか、街中に住んでいる患者さんには難しい問題です。具体的な運動内容を患者さんに提供するために、当科のホームページに当院の心リハで実施している体操プログラムを公開しました。外来の心リハ患者さんでインターネットアクセスが可能な方には活用していただくようお伝えしています。COVID-19パンデミックは心リハイノベーションをもたらすか?緊急事態宣言により、さまざまな企業・病院で、テレワークなどの新しい働き方が整備されました。大学での会議や授業もWebが導入されるなど、教育にも新しい仕組みが導入されています。これまで、1~2時間の会議のために京都から東京まで出張することが多かった私も、往復の交通に要する時間や費用など、無駄を省けたことにはメリットを感じています。通常の外来でも電話診療が本格的に始まりました。遠方から検査がない日に薬の処方目的に来院されていた患者さんにとっては、かなりメリットが大きいようです。心リハでも、今回を機に遠隔リハ体制が整えば、外来の心リハの一部はテレリハに移行できる可能性があります。しかし、現在のテレリハは医療者の無償奉仕に依存しており、テレリハの普及には診療報酬制度の見直しなども必要そうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>今回はDr.小笹とともに当科で活躍する、鷲田 幸一氏(京大病院 慢性心不全看護認定看護師)のこぼれ話を紹介します。「テレリハを開始して」私が実際に患者さんにお電話をして感じたのは、「多くの患者さん・ご家族は先の見えない現状に不安を抱いていること」、また外出自粛などにより、身体活動度が減少するだけでなく「social distance(社会的距離)を超えて、social isolation(社会的孤立)に陥っていること」でした。これらは、とくに独居の高齢者には大きな問題のように思います。ESCの推奨9)にあるように、心理面での支援も医療者として非常に重要だと感じています。疾患管理をするための形式的な問診だけではなく、患者さん・ご家族を気遣いながらコミュニケーションを取り、不安を増大させることなく日常の生活(食事・睡眠)を続けているかを確認する。そして、その中で、疾患管理としてのモニタリングや、適切な食事・活動についてのアドバイスを行う必要があるのだと思っています。今後、多くの病院で同様の取り組みが拡がり、自宅で孤立している患者さんの疾患・生活・心理面で支援拡大を願います。

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急性期統合失調症に対する認知リハビリテーションの可能性

 多くの研究において、統合失調症患者に対する認知リハビリテーションが有用なアウトカムを示しているが、日常的および社会的機能に対する認知リハビリテーションの有効性は、よくわかっていない。また、認知リハビリテーションの内容や方法に関する検討は不可欠ではあるが、実施するタイミングも重要であると考えられる。東邦大学の根本 隆洋氏らは、急性期統合失調症患者に対する認知リハビリテーションの実現可能性および受容性について調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2020年3月26日号の報告。 入院病棟へ急性期入院した患者を15ヵ月間連続でエントリーし、入院後14日以内に8週間の認知リハビリテーションプログラムに参加できるかどうかを評価した。患者の状態や負担を考慮し、ワークブック形式の認知リハビリテーションプログラムを行った。 主な結果は以下のとおり。・エントリー期間中に新規入院した83例のうち、49例(59.0%)の患者が対象となった。・そのうち、22例(44.9%)が認知リハビリテーションプログラムへの参加に同意し、プログラムを開始した。・プログラムを完了した16例に対し、2回目の評価を行った。・実際に研究プログラムを完了した患者の割合は、適格患者の32.7%(49例中16例)であった。・参加者は、プログラムに対し、非常に満足していた。 著者らは「急性期統合失調症患者に対する認知機能改善の実現可能性および受容性を示す有望な結果が得られた。初回エピソード統合失調症患者に対する認知リハビリテーションの提供は、より良い機能アウトカムにつながることが期待できる」としている。

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主要な学術集会の開催予定

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、今春開催の多くの学術集会が延期または開催方式の変更を余儀なくされている。COVID-19終息の道筋が見えない状況の中、夏以降に開催が予定されている学術集会も軌道修正が余儀なくされ、会合方式の変更からWEB開催に移行した学術集会もある。CareNet.com編集部では、主要な臨床系医療学会の学術集会をピックアップ。現在の各学術集会の開催概要をまとめた。今後、参加予定の学会などがあれば参考にしてもらいたい(内容は7月3日現在)。主要な学術集会の開催予定第117回 日本内科学会会期 8月7日(金)~9日(日)会場 東京国際フォーラム ホールA第60回 日本呼吸器学会学術講演会会期 9月20日(日)~22日(火)会場 神戸コンベンションセンター第84回 日本循環器学会学術集会会期 7月27日(月)~8月2日(日)(オンライン開催)第50回 日本心臓血管外科学会学術総会会期 8月17日(月)~19日(水)(オンライン開催)第106回 日本消化器病学会総会会期 8月11日(火)~13日(木)(オンライン開催)第63回 日本腎臓学会学術総会会期 8月19日(水)~21日(金)会場 パシフィコ横浜アネックスホール・ノースおよびオンライン開催の併用第63回 日本糖尿病学会年次学術集会会期 10月5日(月)~16日(金)(オンライン開催)第54回 糖尿病学の進歩会期 9月2日(水)~3日(木)(オンライン開催)第93回 日本内分泌学会学術総会会期 7月20日(月)~8月31日(月)(オンライン開催)第82回 日本血液学会学術集会会期 10月9日(金)~11日(日)(オンライン開催)第42回 日本血栓止血学会学術総会会期 6月18日(木)~20日(土)(オンライン開催)第94回 日本感染症学会学術講演会会期 8月19日(水)~21日(金)会場 グランドニッコー東京(台場)ほかオンライン開催と併用第18回 日本臨床腫瘍学会学術集会会期 2021年2月18日(木)~20日(土)会場 国立京都国際会館ほか※2020年は開催予定なし第58回 日本癌治療学会学術集会会期 10月22日(木)~24日(土)会場 国立京都国際会館・グランドプリンスホテル京都第69回 日本アレルギー学会学術大会会期 9月17日(木)~20日(日)会場 国立京都国際会館第64回 日本リウマチ学会総会・学術集会会期 8月17日(月)~9月15日(火)(オンライン開催)第61回 日本神経学会学術大会会期 8月31日(月)~9月2日(水)岡山コンベンションセンターほかオンライン開催と併用第116回 日本精神神経学会学術総会会期 9月28日(月)~30日(水)会場 仙台国際センターほかオンライン開催と併用第25回 日本心療内科学会総会・学術大会2020年は開催せず、2021年に下記にて開催会期 2021年10月23日(土)・10月24日(日)会場 東北大学大学院医学系研究科星陵オーディトリウム緩和・支持・心のケア合同学術大会2020会期 8月9日(日)・10日(月)(WEB開催のみ)日本脳神経外科学会 第79回学術総会会期会場開催 10月15日(木)~17日(土)Web開催 10月15日(木)~11月末予定会場 岡山コンベンションセンターほかとオンライン開催の併用第120回 日本外科学会定期学術集会会期 8月13日(木)~15日(土)(オンライン開催)第28回 日本乳癌学会学術総会会期 10月13日(火)~15日(木)会場 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)第93回 日本整形外科学会学術総会会期 6月11日(木)~8月31日(月)(オンライン開催)第108回 日本泌尿器科学会総会会期 12月22日(火)~25日(金)会場 神戸ポートピアホテルほか第123回 日本小児科学会学術集会会期 8月21日(金)~23日(日)会場 神戸コンベンションセンターほかオンライン開催と併用第121回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会会期 10月6日(火)・7日(水)会場 岡山コンベンションセンターほか第67回 日本麻酔科学会年次学術集会会期 7月1日(水)~8月末日(WEB開催、詳細は検討中)第48回 日本救急医学会総会・学術集会会期 11月18日(水)~20日(金)会場 長良川国際会議場ほか第57回 日本リハビリテーション医学会学術集会会期 8月19日(水)~22日(土)会場 国立京都国際会館第11回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会会期 7月23日(木・祝)〜 8月31日(月)オンデマンド配信 7月23日(木・祝)〜8月31日(月)ライブ配信 8月29日(土)・30日(日)第20回 日本抗加齢医学会総会会期 9月25日(金)〜9月27日(日)会場 浜松町コンベンションホールおよびオンライン開催

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自転車通勤は負傷リスクを上げるか?/BMJ

 自転車通勤は、公共交通機関や自動車による通勤と比較して、がんの診断や心血管イベント、死亡が少ない一方で、負傷で入院するリスクが高く、とくに輸送関連事故による負傷リスクが高いことが、英国・グラスゴー大学のClaire Welsh氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。英国では、自転車通勤は傷病への罹患や死亡のリスクが低いとされてきた。また、国民の自転車通勤への理解の主な障壁は、主観的および客観的な交通の危険性だが、これまでに得られた自転車と負傷に関するエビデンスの質は高くないという。通勤手段別の負傷リスクを評価する前向きコホート研究 研究グループは、自転車通勤と負傷のリスクの関連を評価する目的で、地域住民ベースの前向きコホート研究を行った(Chest, Heart, and Stroke Association Scotlandの助成による)。 解析には、UK Biobankのデータが用いられた。対象は、英国の22の地域から登録された通勤者23万390人(平均年齢52.4歳、女性52.1%)。典型的な一日で、往復の通勤に利用する輸送方式別に比較した。 徒歩、自転車、徒歩を含む混合型(非活動型+徒歩)、自転車を含む混合型(自転車+他の輸送方式)の通勤と、非活動型(自動車/エンジン駆動の乗り物、公共交通機関)の通勤とを比較した。 主要アウトカムは、初回の負傷による入院とした。自転車移動距離が長いと、負傷リスクも高い 5,704人(2.5%)が、自転車が主な通勤の輸送方式と答えた。非活動型通勤者(17万8,976人[77.5%])と比較して、自転車通勤者は年齢がわずかに若く、BMIが低く、白人男性が多く、現喫煙者や心血管疾患、糖尿病、がん、長期の疾患の病歴を持つ者が少なかった。 フォローアップ期間中央値は8.9年(IQR:8.2~9.5)で、この間に全体で1万241人(4.4%)が負傷による入院または負傷で死亡(29人)した。負傷の内訳は、自転車通勤が397人(7.0%)、非活動型通勤は7,698人(4.3%)だった。負傷の発生率は、自転車通勤が1,000人年当たり8.06件と、非活動型通勤の1,000人年当たり4.96件に比べて高く(p<0.001)、自転車を含む混合型通勤(6.99件/1,000人年)でも高い傾向がみられた。 社会人口統計学や健康、生活様式に関連する主要な交絡因子を補正すると、自転車通勤は非活動型通勤に比べ、負傷のリスクが高かった(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.30~1.61)。自転車を含む通勤でも、同様の傾向が認められた(1.39、1.29~1.50)。徒歩は、負傷のリスク上昇とは関連がなかった。 自転車通勤と自転車を含む通勤では、通勤中の自転車での移動距離が長いほど、負傷のリスクが高くなったが、非活動型通勤では、通勤距離は負傷のリスクとは関連しなかった。また、自転車通勤は、外的要因が輸送関連事故の場合は、負傷者数が非活動型通勤の約3.4倍多く(発生率比:3.42、95%CI:3.00~3.90、p<0.001)、自転車を含む通勤でも約2.6倍だった(2.62、2.37~2.91、p<0.001)。 自転車通勤と自転車を含む通勤は、自転車以外での通勤に比べ、心血管疾患(HR:0.79、95%CI:0.69~0.90)、がんの新規診断(0.89、0.84~0.94)、全死因死亡(0.88、0.78~1.00)のリスクが低かった。また、10年間に1,000人が自転車または自転車を含む通勤に変更した場合、負傷による新規入院は26件(1週間以内の入院23件、1週間以上の入院3件)増加するのに対し、がんの新規診断は15件減少し、心血管イベントは4件、死亡は3件減少すると推定された。 著者は、「これらの自転車通勤のリスクは、活動的な通勤による健康上の有益性との関連において考察すべきであり、英国における自転車のより安全な基盤設備の必要性を強調するものである」と指摘している。

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進行性核上性麻痺〔PSP:progressive supranuclear palsy〕

1 疾患概要■ 概念・定義進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)は、中年期以降に発症し、核上性の垂直性眼球運動障害や偽性球麻痺、構音障害、筋強剛、易転倒性を呈し、パーキンソン病などとの鑑別診断を要する緩徐進行性の神経変性疾患である。1964年に掲載1)された3名の提唱者の名前を取りSteel-Richardson-Olszewski症候群とも呼ばれる。病理学的には、異常リン酸化タウが蓄積したtufted astrocytesが特異的な所見である。■ 疫学わが国での有病率は、人口10万対10~20人とされている2)。■ 病因病因はいまだ不明であるが、病理学的には黒質や淡蒼球、視床下核、中脳被蓋、橋などに程度の強い神経細胞脱落や、これらの脳幹、基底核のほか、大脳皮質にも神経原線維変化を認め、タウ蛋白の異常沈着や遺伝子異常が指摘され、タウオパチーの1つと考えられている。神経生化学的にはドパミン、アセチルコリン、ガンマアミノ酪酸(GABA)、ノルアドリンなどの複数の神経伝達物質の異常を認めている。多くが孤発例である。■ 症状臨床症状としては、易転倒性が特徴的であり、通常は発症1年以内の初期から認められる。病名の由来である垂直方向の眼球運動障害は、とくに下方視の障害が特徴的であるが、病初期には目立たないことや羞明や複視と訴えることもあり、発症3年以内程度で出現するとされている。核上性の麻痺のため、随意的な注視が障害される一方で、頭位変換眼球反射は保たれている。四肢よりも頸部や体幹に強い傾向の筋強剛を示し、進行すると頸部が後屈して頸部後屈性ジストニアを呈する。偽性球麻痺による構音障害や嚥下障害を中期以降に認める。失見当識や記銘力障害よりは、思考の緩慢化、情動や性格の変化などの前頭葉性の認知障害を呈する3)。■ 分類典型例であるRichardson症候群の他に多様な臨床像があり、以下に示す非典型例として分類されている。1)Richardson症候群(RS):易転倒性や垂直性核上性注視麻痺を呈し、最も頻度の高い病型である。2)PSP-Parkinsonism(PSP-P):パーキンソン病と似て左右差や振戦を認める一方で、初期には眼球運動障害がはっきりせず、パーキンソン病ほどではないがレボドパ治療が有効性を示し、RSより生存期間が長い。3)PSP-pure akinesia with gait freezing(PSP-PAGF):わが国から報告された「純粋無動症(pure akinesia)」にあてはまり、無動やすくみ足などを呈し、RSより罹病期間は長い。4)PSP-corticobasal syndrome(PSP-CBS):失行や皮質性感覚障害、他人の手徴候などの大脳皮質症状と明瞭な左右差のあるパーキンソニズムといった大脳皮質基底核変性症に類似した症状を呈する。5)PSP-progressive non-fluent aphasia(PSP-PNFA):失構音を中心とした非流暢性失語を示す。6)PSP with cerebellar ataxia(PSP-C):わが国から提唱された非典型例で、病初期に小脳失調や構語障害を呈する。■ 予後分類された臨床像による差や個人差が大きい。平均して発症2~3年後より介助歩行や車椅子移動、4~5年で臥床状態となり、平均罹病期間は5~9年という報告が多い。肺炎などの感染症が予後に影響することが指摘されている4)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)指定難病としての本疾患の診断基準は、40歳以降で発症することが多く、また、緩徐進行性であることと、主要症候として、(1)垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる)、(2)発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ、(3)無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ、の3項目の中から2項目以上があること、および以下の5項目の除外項目、すなわち、(1)レボドパが著効(パーキンソン病の除外)、(2)初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)、(3)顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)、(4)肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)、(5)脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患、を満たすこととされている4)。2017年には、Movement Disorder Societyから、多様な臨床像に対応した新たな臨床診断基準が提唱されている5)。頭部MR冠状断で中脳や橋被蓋部の萎縮や、矢状断で上部中脳が萎縮することによる「ハチドリの嘴様」に見える(humming bird sign)画像所見は、本疾患に特徴的とされ、鑑別診断の際に有用である。MIBG心筋シンチでは、心臓縦隔の取り込み比(H/M比)が低下するパーキンソン病やレビー小体型認知症と異なり、本疾患では原則としては低下せず、正常対照と差がない。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在までのところ、根本的な治療法や症状進行を遅延させる予防法は確立されていない。初期には抗パーキンソン病薬が有効性を示すこともある。三環系抗うつ薬、抗コリン薬、コリン作動薬などの有効性を指摘する報告もあるが、効果が短期間であったり副作用を生じるなど経験の範囲を出ない。より早期からのリハビリテーションによるADLに対する有用性が示唆されている。残存機能の維持や拡大にむけた理学療法、作業療法、言語・摂食嚥下訓練などが行われている。4 今後の展望タウ蛋白をターゲットとした免疫療法などが試みられてきたが、有効性の認められた薬剤は現在ない。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 進行性核上性麻痺(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班(研究代表者:中島健二)(サイト内では「PSP進行性核上性麻痺 診断とケアマニュアル」、「進行性核上性麻痺の臨床診断基準(日本語版)」、「進行性核上性麻痺評価尺度(日本語版)」などの閲覧ができる医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PSPのぞみの会(患者とその家族および支援者の会)1)Steele JC, et al. Arch Neurol. 1964;10:333-359.2)Takigawa H, et al. Brain Behav. 2016;6:e00557.3)中島健二,古和久典. 日本医師会雑誌. 2019;148(特別号(1)):S85-S86.4)難病情報センター(ホームページ). 進行性核上性麻痺. https://www.nanbyou.or.jp/entry/4115.(2020年2月閲覧).5)Hoglinger GU, et al. Mov Disord. 2017;32:853-864.公開履歴初回2020年03月16日

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Dr.飯島の在宅整形

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