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会員医師の約6割が医師不足・偏在を実感(会員医師アンケート調査報告)

CareNet.comでは、過日、会員医師の方々に「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマにアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので報告いたします。2019年2月20日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上でアンケートを実施、回答者総数は340名でした。結果概要医師不足・偏在を実感している会員医師は約6割Q1 今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字は実感できますか。(回答は1つ)1 実感できる2 実感できない「医師の都会志向」「医局人事」など複雑に絡み合う理由Q2で「実感できる」・「実感できない」の具体的理由についてお聞きしたところ、「実感できる」と回答した会員医師のコメントでは「医師の都会志向」、「へき地人口のさらなる減少」、「医局人事が厳しい」などのコメントがあった。また、「実感できない」と回答した会員医師のコメントでは、「医師の絶対数よりも偏在」、「厚生労働省の統計への信頼性」、「医師の頭数ではなく緊急対応の有無」などのコメントが寄せられた。Q2 「Q1」の回答の理由をお聞かせください。「1 実感できる」回答のコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●地域偏在の問題都市部への集中、へき地医療の衰退医師の将来設計が都会志向地方に医師が残らず、内科志望者も激減都会での勤務を希望する医師が多いという実感地方中核都市でさえ医師が不足している東京への一極集中が問題医師不足地域で勤務しているが、医師1人に対する負担は東京での勤務時とは比べものにならないくらい大変●診療科偏在の問題主要診療科のなり手が減ってきた外科、小児科、産婦人科では医師不足が進むと思う外科や産婦人科の医師がどんどん疲弊している新専門医制度により、さらに内科系が減る可能性近隣の産科が閉院している診療科によって忙しさが違いすぎる内科、とくに循環器、糖尿病内分泌、脳神経内科の医師が少ないように感じる当地域ではマイナー科も不足し、皮膚科受診をする際は予約が3日後になっている近隣の小児科開業医の高齢化が顕著休日、夜間の救急体制では、顕著に医師数が不足当直勤務後に引き続き勤務する先生方が多い都心部では、皮膚科や耳鼻科が非常に多い印象●医学教育、行政の問題医局人事が大変厳しい将来の見通しが立っていたのに、厚生労働省の対応が遅すぎる自分の医療圏では公的病院の医師がどんどん辞めていくどこの医療機関も医師確保に苦労している地域枠で入学した医師はまず不足地域で働くべき身近で医療崩壊が起こっている若い医師の派遣がない●医療そのものの問題医師の就業環境が劣悪すぎるしばらくは高齢者が増加するため、医師が必要になるのは明らか医師の絶対数がやはり不足「2 実感できない」回答のコメント偏在は実感できるが、医師の絶対数が不足しているとは思えない医療の現場で感じる実感と違うが、将来は不足すると思う医師の不足よりも、フリーアクセスや自己負担が少ないことによる過剰受診が問題表面上の数字よりも医師の雑用や勤務内容などの改善が先だと考える厚生労働省の統計はうのみにできない人口過疎地に医療だけ充実させても解決にはならない人口そのものも偏在があるのではないか医師不足県にいるが、実際周囲で医師が不足しているとの声は聞かれない産婦人科や小児科は頭数ではなく、当直や緊急対応ができるか否かが問題コンビニ出店並のクリニック密集地域に住んでいるので実感がない意外にも「内科」も医師不足Q3で「医師不足だと思う診療科」を尋ねたところ、多い順番で「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)の順だった。「内科」の回答が多かった点、ひと頃問題になった「麻酔科」を挙げる会員医師が少なかった点から現場のニーズが垣間見られた。Q3 現在、医師が不足していると思う診療科をお選びください。(回答はいくつでも)1 内科2 小児科3 皮膚科4 精神科5 外科6 整形外科7 産婦人科8 眼科9 耳鼻咽喉科10 泌尿器科11 脳神経外科12 放射線科13 麻酔科14 病理科15 救急科16 形成外科17 リハビリテーション科18 その他19 不足していると思う診療科はない画像を拡大する必ずしも医師数増加だけでない解決策もあるQ4で「医師不足・偏在」への解決策について尋ねたところ、多い順に「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)の順だった。医師への待遇改善と偏在をなくすことで解決できる内容が多くを占めた。また、「8 その他」へ寄せられた提言として、「医師免許の全国区と地域区の2本立て化」、「女性医師の待遇改善」、「患者数の多い診療科の報酬減」、「患者の受診への意識改革と啓発」などの声が寄せられた。Q4 医師不足や偏在の解決には何が必要だと思われますか。(回答はいくつでも)1 医学部の定員増員2 医師の就業の流動性3 専門医制度の改革4 病院・診療所・クリニックの適正配置5 患者の診療抑制の実施6 診療報酬で地域差を設ける7 外国人医師や医師以外の医療者の活用8 その他画像を拡大する「8 その他」で寄せられたコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●医師や専門医資格への提言地方に魅力ある教育病院を設置し、若手医師を勤務させる地方医師の専門医更新の免除医師国家試験の合格基準を2段階とし、上位は全国区免許、下位は医師不足県限定免許とする。診療実績で全国区免許へ格上げする女性医師の待遇を改善する医師不足が指摘されている診療科へ進む医師へのメリットを増やす勤務医の所得を増やす医学部の地域合格枠の拡大と地域義務年限の引き上げ医師のボランティア的な仕事に対しての十分な報酬適切な人材を医師にすること●医療制度や診療報酬への提言地域枠への補助金制度を直接医師に支払う急性期病院の内科・外科の診療報酬を上げる患者数が多い診療科の診療報酬を削減する開業医を減らす方策、たとえば勤務医の給与控除を増やす医局制度の復活と強制的な医師のローテーション応召義務の廃止都会の大学医学部の統廃合または自治医大化医師の強制配置●社会への提言医師法など時代に合わせたフレキシブルな改正患者の受診への意識改革と啓発アンケート概要内容「現在・将来の医師不足、偏在についてお聞かせください」実施日2019年2月20日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師340名アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。関連記事推計1万6,226人の内科医が2030年に不足16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

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強直性脊椎炎に新たな治療薬

 2019年1月30日、ノバルティスファーマ株式会社は、同社が製造販売(共同販売:マルホ株式会社)するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、昨年12月21日に指定難病である強直性脊椎炎への効能効果の追加承認を取得したことから都内でメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、強直性脊椎炎の概要のほか、患者を交えてパネルディスカッションが行われ、医療者、患者双方から診療の課題などが語られた。強直性脊椎炎の付着部炎症への治療に注目 はじめに「強直性脊椎炎(AS)の病態と新たな治療選択肢~IL-17阻害薬~」をテーマに亀田 秀人氏(東邦大学医学部 内科学講座 膠原病学分野 教授)を講師に迎え、ASの診療概要とセクキヌマブの効果について解説が行われた。 ASは、脊椎関節炎の中でも体軸関節の炎症が主体となる代表疾患であり、リウマチなどと比較しても、若年での発症が多いとされている。また、「本症はHLA-B24の白血球の型が関係していると推定され、この陽性者はわが国で3万人程度と推計されているが、本症の指定難病受給者証所持者は3千人程度にとどまっている。陽性者イコール発症するわけではないが、見過ごされている患者もいる」と亀田氏は指摘する。 診断では、1984年の改訂ニューヨーク基準が使用され、3つの臨床基準とX線検査基準とでASを確定診断する1)。日常診療では、炎症性背部痛とくに腰痛の兆候が重要所見であり、画像診断ではX線とMRIで行うが、MRIの方が仙腸骨の描出が優れていると診断でのポイントを語った。また、ASでは腱や靭帯の付着部の炎症が起こるとされ、痛みを伴い、患者のQOLを著しく低下させ、こうした痛みの管理も必要とされる。 ASの治療目標としては、根治療法が現在ない以上、疾患との共生にむけ、「病状のコントロール、構造破壊の予防、身体機能の正常化を通じて、健康に関連したQOLと社会参加を最大にする」ことが挙げられる。 治療では、薬物療法と運動・理学療法が主体となり、痛みにはNSAIDsが、体軸の炎症には生物学的製剤であるTNF阻害薬などが使用される。また、患者には、疾患への教育と運動の励行、そして、禁煙なども指導される。 とくに薬物療法では、付着部炎症への治療が注目され、IL-17Aが炎症反応に関与する免疫応答に関わることから抗IL-17A抗体製剤の開発が行われてきた。開発されたセクキヌマブは、当初、乾癬の適応から始まり、海外と国内で2つの第III相二重盲検比較試験(MEASURE1およびMEASURE2)が行われ、今回適応に強直性脊椎炎が追加された。 MEASURE1は、活動性AS患者を対象に有効性と安全性を評価する2年間の多施設共同、ランダム化、プラセボ対照、第III相臨床試験。主要評価項目は、ASAS20反応基準で20%以上の改善を達成した患者の割合を指標とし、16週時点のプラセボに対するセクキヌマブの優越性を評価(プラセボ群に割付けられた患者は、16週時点のASAS20反応率に基づき、非反応例は16週、反応例は24週目にセクキヌマブ75mgまたは150mg投与に再割付)。 その結果、16週の時点での ASAS20達成率は,セクキヌマブ皮下投与 150mg群、75mg群、プラセボ群でそれぞれ 61%、60%、29%であった(P<0.001)ほか、患者の約80%で、208週間の治療を通して投与開始時と比較し、脊椎にX線像上の骨所見の進行を示されないことが示唆された(modified Stoke Ankylosing Spondylitis Spinal Score[mSASSS]X線評価尺度を指標)。安全性は良好で、重篤な有害事象では心筋梗塞、胆石症、腹部リンパ節膨脹などが報告されたが、薬剤と関連する死亡例は報告されなかった。また、MEASURE2もASAS20反応基準で20%以上の改善率、安全性ともにほぼ同様の結果が得られ、薬剤に起因する死亡例はなかった。 以上から、亀田氏は「ASは早期診断が難しい脊椎関節炎であり、画像検査の適切な活用が重要となる」と語るとともに、ASの病態では付着部炎が中心的な役割を果たしていることを指摘し、「付着部炎を誘導するIL-17Aを阻害するセクキヌマブのような新しい生物学的製剤は治療への有用性が高い」と述べ、講演を終えた。強直性脊椎炎への関心が高まることを期待 続いて町 亞聖氏をファシリテーターに、強直性脊椎炎患者の銭谷 有基氏、多田 久里守氏(順天堂大学 膠原病・リウマチ内科学 准教授)の3人が登壇し、同社が2018年9月に行ったアンケート調査結果などを基にパネルディスカッションが行われた。 はじめにアンケート調査結果が多田氏から報告され、7割以上の患者が確定診断まで2ヵ所以上の複数医療機関を受診していること、誤診として「ヘルニア」「腰痛症」などが多いこと、半数以上の患者が医師に症状を伝えるうえで(症状が一定化しないため)言葉にするのが難しいと感じていること、また半数の患者がASと診断されてほっとしていることなどが報告された(回答者はASと診断された男女103例/インターネット調査)。 この内容を受けて多田氏は「X線に変化が出づらく診断がつかないのが問題で、腰の痛みが指標となる。特徴的な腰痛と眼病変、皮膚の痛みから本症を疑うことができるかがカギとなる。患者は、痛みの量化、場所、表現の難しさから発信が難しいと思われるので『痛み日記』などをつけることで医療者に身体の状態を理解してもらう工夫ができる」と診療でのポイントを述べた。 また、強直性脊椎炎患者である銭谷氏からは、患者の思いとして周囲の友人や関係者へ自分の痛みを理解してもらうのが難しかったことで、精神的につらい思いをしたこと、患者・患者家族がよく病気を理解することが大切であることなどが語られた。 最後に多田氏からは「ASの診断ができるように医療者への啓発が大事。セクキヌマブの登場で本症への関心が高くなればと思う。誤診や過重診断がないように、迷ったら専門医へ紹介していただきたい」とコメントし、銭谷氏は「痛みと付き合っていき、同じ患者のために何かできればと思う」と抱負を述べ、パネルディスカッションを終えた。■参考文献1)van der Linden S, et al. Arthritis Rheum .1984;27:361-368.

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パーキンソン病〔PD:Parkinson's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は、運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムを呈し、緩徐に進行する神経変性疾患である。■ 疫学アルツハイマー病の次に頻度の高い神経変性疾患であり、平成26年に行われた厚生労働省の調査では、男性6万2千人、女性10万1千人の合計16万3千人と報告されている。65歳以上の患者数が13万8千人と全体の約85%を占め(有病率は1.5%以上)、加齢に伴い発症率が上昇する(ただし、若年性PDも存在しており、決して高齢者だけの疾患ではない)。症状は進行性で、歩行障害などの運動機能低下に伴い医療・介護を要し、社会的・経済的損失は著しい。超高齢社会から人生100年時代を迎えるにあたり、PD患者数は増え続けることが予想されており、本疾患の克服は一億総活躍社会を目指すわが国にとって喫緊の課題と言える。■ 病因これまでの研究により遺伝的因子と環境因子の関与、あるいはその相互作用で発症することが示唆されている。全体の約90%が孤発性であるが、10%程度に家族性PDを認める。1997年に初めてα-synucleinが家族性PDの原因遺伝子として同定され、その後当科から報告されたparkin、CHCHD2遺伝子を含め、これまでPARK23まで遺伝子座が、遺伝子については17原因遺伝子が同定されている。詳細はガイドラインなどを参照にしていただきたい。家族性PDの原因遺伝子が、同時に孤発性PDの感受性遺伝子となることが報告され、孤発性PDの発症に遺伝子が関与していることが明らかとなった。これら遺伝子の研究から、ミトコンドリア機能障害、神経炎症、タンパク分解障害、リソソーム障害、α-synucleinの沈着などがPDの発症に関与することがわかっている。環境因子では、性差、タバコ、カフェインの消費量などが重要な環境因子として検討されている。他にも農薬、職業、血清尿酸値、抗炎症薬の使用、頭部外傷の既往、運動など多くの因子がリスクとして報告されている。■ 病理PDの病理学的特徴は、中脳黒質の神経細胞脱落とレビー小体(Lewy body)の出現である。PDでは黒質緻密層のメラニン色素を持った黒質ドパミン神経細胞が脱落するため、肉眼でも黒質の黒い色調が失われる(図1-A、B)。レビー小体は、HE染色でエオジン好性に染まる封入体で、神経細胞内にみられる(図1-C、D)。レビー小体は脳幹の中脳黒質(ドパミン神経細胞)だけではなく、橋上部背側の青斑核(ノルアドレナリン神経細胞)、迷走神経背側運動核、脳幹に分布する縫線核(セロトニン神経細胞)、前脳基底部無名質にあるマイネルト基底核(コリン作動性神経)、大脳皮質だけではなく、嗅球、交感神経心臓枝の節後線維、消化管のアウエルバッハ神経叢、マイスナー神経叢にも認められる。脳幹の中脳黒質の障害はPDの運動障害を説明し、その他の脳幹の核、大脳皮質、嗅覚路、末梢の自律神経障害は非運動症状(うつ症状、不眠、認知症、嗅覚障害、起立性低血圧、便秘など)の責任病変である。PDのhallmarkであるレビー小体が全身の神経系から同定されることはPDが、多系統変性疾患でありかつ全身疾患であることを示しており、アルツハイマー病とはこの点で大きく異なる。家族性PDの原因遺伝子としてα-synuclein遺伝子(SNCA遺伝子)が同定された後に、レビー小体の主要構成成分が、α-synuclein蛋白であることがわかり、この遺伝子とその遺伝子産物がPDの病態に深く関わっていることが明らかとなった。図1 パーキンソン病における中脳黒質の神経脱落とレビー小体画像を拡大する■ 症状1)運動症状運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムは、左右差が認められることが多く、優位側は初期から進行期まで不変であることが多い。初期から仮面様顔貌、小字症、箸の使いづらさなどの巧緻運動障害、腕振りの減少、小声などを認める。進行すると、姿勢保持障害・加速歩行・後方突進・すくみ足(最初の一歩が出ない、歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなる)などを観察し、歩行時の易転倒性の原因となる。多くの症例で、進行期にはL-ドパの効果持続時間が短くなるウェアリングオフ現象を認める。そのためL-ドパを増量したり、頻回に内服する必要があるが、その一方でL-ドパ誘発性の不随意運動であるジスキネジア(体をくねらせるような動き。オフ時に認める振戦とは異なる)を認めるようになる。嚥下障害が進行すると、誤嚥性肺炎を来すことがある。2)非運動症状ほとんどの患者で非運動症状が認められ、前述の病理学的な神経変性、レビー小体の広がりが多彩な非運動症状の出現に関与している。非運動症状は、運動症状とは独立してQOLの低下を来す。非運動症状は、以下のように多彩であるが、睡眠障害、精神症状、自立神経症状、感覚障害の4つが柱となっている。(1)睡眠障害不眠、レム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorders:RBD)、日中過眠、突発性睡眠、下肢静止不能症候群(むずむず足症候群:restless legs syndrome)など(2)精神・認知・行動障害気分障害(うつ、不安、アパシー=無感情・意欲の低下、アンヘドニア=快感の消失・喜びが得られるような事柄への興味の喪失)、幻覚・妄想、認知機能障害、行動障害(衝動制御障害=病的賭博、性欲亢進、買い物依存、過食)など(3)自律神経症状消化管運動障害(便秘など)、排尿障害、起立性低血圧、発汗障害、性機能障害(勃起障害など)、流涎など(4)感覚障害嗅覚障害、痛み、視覚異常など(5)その他の非運動症状体重減少、疲労など嗅覚障害、RBD、便秘、気分障害は、PDの前駆症状(prodromal symptom)として重要な非運動症状であり、とくに嗅覚障害とRBDは後述するInternational Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)の診断基準にもsupportive criteria(支持的基準)として記載されている。■ 分類病期についてはHoehn-Yahrの重症度分類が用いられる(表1)。表1 Hoehn-Yahr分類画像を拡大する■ 予後現在、PDの平均寿命は、全体の平均とほとんど変わらないレベルまで良くなっている一方で、健康寿命については十分満足のいくものとは言い難い。転倒による骨折をしないことがPDの経過に重要であり、誤嚥性肺炎などの感染症は生命予後にとって重要である。2 診断■ 診断基準2015年MDSよりPDの新たな診断基準が提唱され、さらにわが国の『パーキンソン病診療ガイドライン2018』により和訳・抜粋されたものを示す。これによるとまずパーキンソニズムとして運動緩慢(無動)がみられることが必須であり、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つ以上がみられるものと定義された。姿勢保持障害は、診断基準からは削除された。パーキンソン病の診断基準(MDS)■臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在し、さらに、1)絶対的な除外基準に抵触しない。2)少なくとも2つの支持的基準に合致する。

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低侵襲血腫除去は保存的治療を上回るか:ランダム化試験 "MISTIE III"

 現在、欧州脳卒中協会(ESO)ガイドラインは、非外傷性の頭蓋内出血に対するルーチンな外科的介入を推奨していない。支持するエビデンスが存在しないためだという。しかし2016年に報告されたMISTIE(Minimally Invasive Surgery Plus rt-PA for Intracerebral Hemorrhage Evacuation)II試験を含むランダム化試験のメタ解析からは、保存的治療を上回る機能自立度改善作用が示唆されている。そのような状況下、2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、頭蓋内出血例に対する、低侵襲手術を用いた血腫除去術と保存的療法の機能自立度改善作用を直接比較したランダム化試験“MISTIE III”が報告された。両治療間に改善作用の有意差は認めなかったが、血腫縮小に奏効した例では保存的治療に勝る改善作用が示唆される結果となった。7日のMain Eventセッションにて、Daniel F. Hanley氏(ジョンズ・ホプキンス大学、米国)とIssam A. Awad氏(シカゴ大学、米国)が報告した。 MISTIE III試験の対象は、発症後12~72時間で「修正Rankinスケール(mRS)≦1」、かつ「>30mLの血腫」を認めた頭蓋内出血499例である。アジアを含む全世界74施設で登録された。平均年齢は62歳、61%が男性だった。 これら499例は、「MISTIE治療」群(250例)と「標準治療」群(249例)にランダム化された。「MISTIE治療」群では、最低限の開頭下で、CTガイドにより経カテーテル的に血腫を除去し、その後、tPA洗浄を行った。血腫除去の目標は「≦15mL」である。 追跡はオープンラベルで行われたが、有用性評価者は治療群を盲検化されていた。1年間の死亡リスクはMISTIE治療群で有意に低い その結果、1次評価項目である「1年後mRS:0~3」の割合に、両群間で有意差は認められなかった。2次評価項目である「拡張グラスゴー転帰尺度」にも、有意差はなかった。ただし1年間の死亡リスクは、「MISTIE治療」群で有意に低くなっていた(ハザード比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.45~0.98)。 安全性については、「30日間死亡」「72時間以内症候性脳出血」「脳感染症」のいずれも、両群間に有意差はなかった。ただし、72時間以内の無症候性脳出血は、「MISTIE治療」群で有意に多かった(32% vs.8%、P<0.0001)。一方、全重篤有害事象の発現数は、「MISTIE治療」群で126であり、「標準治療」群の142に比べ有意(p=0.012)に低値となっていた。血腫除去良好群ではより良い成績を示す さて、本試験参加医師中、試験前にMISTIE治療を経験していたのは12%にすぎなかった。そのため、血腫除去の成績には相当のバラツキが生じ、目標である「血腫≦15mL」が達成できていたのは59%(146例)のみだった。 そこで血腫を「≦15mL」まで縮小できた例のみで比較してみたところ、「1年後mRS:0~3」の割合は「MISTIE治療」群で「標準治療」群に比べ10.5%、有意(p=0.03)に高値となっていた(オッズ比[OR]:2.02、95%CI:1.05~3.89)。 また、血腫除去率が70%以上になると「1年後mRS:0〜3」達成率が大幅に改善する傾向が認められたため、「MISTIE治療」群の「血腫除去率≧70%」例のみで検討すると、「1年後mRS:0~3」のORは2.05(95%CI:1.09~3.85)で、「標準治療」群に比べ有意に高くなっていた。 Hanley氏報告の主要結果は報告当日Lancet誌にオンライン公開され、Awad氏が担当した血腫除去成績と転帰の関係はNeurosurgery誌に掲載予定である。 本試験はNational Institute of Neurological Disorders and Stroke and Genentechから資金提供を受け行われた。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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第2世代ハイドロゲルコイルの実力は? プラチナコイルとの比較

 脳動脈瘤に対するハイドロゲルコイルを用いた血管内塞栓術は、プラチナコイルに比べ再開通率こそ低いものの (HELPS試験)、使い勝手は必ずしも良くなかったという。第2世代ハイドロゲルコイルは操作性が改善されているとされるが、再開通率は同じように良好だろうか―。2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、この点を検討すべく行われたランダム化試験 “HEAT”が報告された。その結果、第2世代ハイドロゲルコイルも再開通率はプラチナコイルより低く、有害事象には差がないことが明らかになった。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Bernard R. Bendok氏(メイヨー・クリニック、米国)が報告した。1次評価項目ではハイドロゲルコイル群が有意に低値 HEAT試験の対象は、径:3~14ミリメートルの動脈瘤を認めた18~75歳の600例である。Hunt and Hess分類のGrade IV以上の例は除外されている。 年齢中央値は57歳、約80%を女性が占めた。また約70%が非破裂瘤だった。 これら600例は、プラチナコイル群(303例)と第2世代のハイドロゲルコイル群(297例)にランダム化され、オープンラベルで追跡された。評価項目を画像所見から解析するのは、割り付け群を盲検化された研究者である。 その結果、1次評価項目である18~24ヵ月後の再開通率(Raymondスコア評価)は、プラチナコイル群の15.4%に対し、ハイドロゲルコイル群では4.4%で、有意に低値となった(p<0.001)。この傾向は、非破裂瘤、破裂瘤を問わず認められた。 Meyer’sスケールを用いて評価しても同様で、ハイドロゲルコイル群の再開通率は13%と、プラチナコイル群の27%よりも有意に低かった(p<0.001)。なお、再開通を「major」(Meyer’sスケール3以上)と「minor」(同1〜2)に分けて比較したところ、ハイドロゲルコイル群では「major」再開通が有意に減少しただけでなく(12.8% vs.20.7%、p=0.016)、「minor」再開通も有意に抑制されていた(1% vs.5%、p=0.004)。complete occlusion例の推移 興味深いのは、“complete occlusion”を認めた例の推移である。留置直後の割合は、プラチナコイル群が28%と、ハイドロゲルコイル群の18%に比べ有意に高値だったものの、留置12~24ヵ月後にはプラチナコイル群の51%を、ハイドロゲルコイル群が68%と上回っていた(p値不明)。 コイル・手技関連の有害事象に群間差はなく、死亡率もプラチナコイル群:3%、ハイドロゲルコイル群:2%で差はなかった。また修正Rankinスケールの分布も、両群で同様だった。QOLは両群とも有意に改善し、群間差は認められなかった。 本試験は、MicroVentionから資金提供を受けた米国・ノースウェスタン大学とメイヨー・クリニックにより、両施設の独立した指揮下で行われた。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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脳梗塞急性期:早期積極降圧による転帰改善は認められないが検討の余地あり ENCHANTED試験

 現在、米国脳卒中協会ガイドライン、日本高血圧学会ガイドラインはいずれも、tPA静注が考慮される脳梗塞例の急性期血圧が「185/110mmHg」を超える場合、「180/105mmHg未満」への降圧を推奨している。しかしこの推奨はランダム化試験に基づくものではなく、至適降圧目標値は明らかでない。2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、この点を検討するランダム化試験が報告された。収縮期血圧(SBP)降圧目標を「1時間以内に130~140mmHg」とする早期積極降圧と、ガイドライン推奨の「180mmHg未満」を比較したENCHANTED試験である。その結果、早期積極降圧による「90日後の機能的自立度有意改善」は認められなかった。ただし、本試験の結果をもって「早期積極降圧」の有用性が完全に否定されたわけではないようだ。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Craig Anderson氏(ニューサウスウェールズ大学、オーストラリア)とTom Robinson氏(レスター大学、英国)が報告した。早期積極降圧群とガイドライン順守降圧群を比較するも、想定した血圧差は得られず ENCHANTED試験の対象は、tPAの適応があり、脳梗塞発症から4.5時間未満で、SBP「150~185mmHg」だった2,196例である。74%がアジアからの登録だった(中国のみで65%)。平均年齢は67歳、NIHSS中央値はおよそ8。アテローム血栓性が45%弱、小血管病変が約30%を占めた。 これら2,196例は、「1時間以内にSBP:130〜140mmHgまで低下させ、72時間後まで維持」する「早期積極」降圧群(1,072例)と、ガイドラインに従い「SBP<180mmHg」へ低下する「ガイドライン順守」降圧群(1,108例)にランダム化され、オープンラベルで追跡された。 血圧は、ランダム化時に165mmHgだったSBPが、「早期積極」群で1時間後には146mmHgまでしか下がらなかったものの、24時間後に139mmHgまで低下した。一方「ガイドライン順守」群でも、1時間後には153mmHg、24時間後には144mmHgと、研究者が想定していた以上の降圧が認められた。ランダム化後24時間のSBP平均値は、「早期積極」群:144mmHg、「ガイドライン順守」群:150mmHg(p<0.0001)とその差は6mmHgしかなかった。1次評価項目では両群間に有意差を認めず その結果、1次評価項目である「90日後の修正ランキンスケール(mRS)」は、ITT解析、プロトコール順守解析のいずれにおいても、両群間に有意差を認めなかった。年齢、性別、人種、ランダム化時のSBP(166mmHgの上下)やNIHSS、脳梗塞病型などで分けたサブグループ解析でも、この結果は一貫していた。 ただし、頭蓋内出血のリスクは、「早期積極」群(14.8%)で「ガイドライン順守」群(18.7%)に比べ、有意に低くなっていた(オッズ比[OR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.60~0.94)。医師が「重篤な有害事象」と認識した頭蓋内出血も同様である(OR:0.59、95%CI:0.42~0.82)。なお、脳出血のORは0.79(95%CI:0.62~1.00)だった。 出血以外の有害事象は、群間に有意差を認めなかった。また、90日間死亡率は「早期積極」群:9%、「ガイドライン順守」群:8%だった。新たなランダム化試験を計画中 Robinson氏は、本試験の結果から、現行ガイドラインの大幅な変更を必要とするエビデンスは得られなかったと結論する一方、本試験の問題点として、1)両群の血圧差が小さかった、2)血管内治療の施行率が低かった、などを挙げ、至適降圧目標についてはさらなる検討が必要だと述べた。現在、大血管閉塞/血管内治療例のみを対象としたENCHANTED2試験を計画中だという。 本試験は、主としてオーストラリア政府機関と英国慈善団体から資金が提供され、そのほか、ブラジル政府機関、韓国政府機関、ならびにTakedaからも資金提供を受けた。 本研究は報告と同時に、Lancet誌にオンライン公開された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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脳卒中後の至適降圧目標は「130/80mmHg未満」か:日本発RESPECT試験・メタ解析

 脳卒中後の血圧管理は、PROGRESS研究後付解析から「低いほど再発リスクが減る」との報告がある一方、PRoFESS試験の後付解析は「Jカーブ」の存在を指摘しており、至適降圧目標は明らかでない。 この点を解明すべく欧州では中国と共同でESH-CHL-SHOT試験が行われているが、それに先駆け、2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)のLate Breaking Clinical Trialsセッション(7日)において、わが国で行われたRESPECT試験が、北川 一夫氏(東京女子医科大学・教授)によって報告された。 登録症例数が当初計画を大幅に下回ったため、「通常」降圧に比べ、「積極」降圧による有意な脳卒中再発抑制は認められなかったものの、すでに報告されている類似試験とのメタ解析では、「積極」降圧の有用性が示された。通常降圧群と積極降圧群の脳卒中再発率の比較 RESPECT試験の対象は、脳卒中発症後30日~3年が経過し、血圧が「130~180/80~110mmHg」だった1,280例である。降圧薬服用の有無は問わない。当初は5,000例を登録予定だった(中間解析後、2,000例に変更)。 平均年齢は67歳、登録時の血圧平均値は145/84mmHgだった。初発脳卒中の病型は、脳梗塞が85%、脳出血が15%である。スタチン服用率は約35%のみだったが、抗血小板薬は約7割が服用していた。 これら1,280例は「140/90mmHg未満」を降圧目標とする「通常」降圧群(630例)と、「120/80mmHg未満」とする「積極」降圧群(633例)にランダム化され、非盲検下で平均3.9年間追跡された(心筋梗塞既往例、慢性腎臓病例、糖尿病例は「通常」群でも降圧目標は130/80mmHg未満)。 ランダム化1年後までに血圧は、通常群:132.0/77.5mmHg、積極群:123.7/72.8mmHgへ低下した。メタ解析では積極降圧で脳卒中再発率の低下が示される その結果、1次評価項目である「脳卒中再発」は、通常群の2.26%/年に対し、積極群では1.65%/年と低値になったが、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.49~1.11)。ただし脳出血のみで比較すると、通常群(0.46%/年)に比べ、積極群(0.04%/年)でリスクは有意に低下していた(HR:0.09、95%CI:0.01~0.70)。 重篤な有害事象は、両群間に有意差を認めたものはなかった。 この結果を踏まえ北川氏は、すでに公表されている、脳卒中発症後の通常降圧と積極降圧を比較した3つのランダム化試験(SPS3、PAST-BP、PODCAST)とRESPECTを併せてメタ解析した(4,895例中636例で再発)。すると積極降圧群における、脳卒中再発リスクの有意な低下が認められた(HR:0.78、95%CI:0.64~0.96)。 RESPECT以外の上記3試験では積極降圧群のSBP目標値が「125~130mmHg未満」だったため、エビデンスは脳卒中後の降圧目標として「130/80mmHg未満」を支持していると北川氏は結論した。 本試験の資金は「自己調達」と報告されている(UMIN000002851)。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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無症候性の頸動脈高度狭窄例に対するCASで、CEAと転帰の差を認めず:CREST/ACTⅠメタ解析

 米国では、頸動脈インターベンションの最大の適応は無症候性の高度狭窄だという。しかし、米国脳卒中学会など関連14学会による2011年版ガイドラインでは、外科高リスク例を除き、無症候性頸動脈高度狭窄例に対しては、頸動脈ステント留置術(CAS)よりも頸動脈内膜剥離術(CEA)が推奨されている。 しかし同ガイドライン策定後、CREST試験とACTI試験という2つの大規模ランダム化試験において、末梢塞栓保護下CASは、死亡・脳卒中・心筋梗塞抑制に関し、CEAに対する非劣性が示された。 2019年2月6~8日に、米国・ハワイにて開催された国際脳卒中会議(ISC)では、これら2試験の個別患者データをメタ解析した結果が報告され、CAS施行後の転帰はさまざまな評価項目においてCEAと有意差がないと確認された。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Jon Matsumura氏(ウィスコンシン大学、米国)が報告した。評価項目を事前設定のうえ、個別患者データを用いてメタ解析 本メタ解析は両試験の研究者が合意のもと、あらかじめ評価項目を定めたうえで(後述)、個々の患者データを用いて行われた。ACTⅠ試験では80歳以上が除外されていたため、CREST試験参加2,502例中試験開始時に80歳未満だった1,091例と、ACTⅠ試験に参加した1,453例が、今回のメタ解析の対象となった。 試験開始時における、CAS群(1,637例)とCEA群(907例)の患者背景は、CAS群で喫煙者が有意に多い(25.6% vs.21.8%、p=0.033)以外、有意差はなかった。平均年齢は68歳で、65歳以上が約70%を占めている。1次評価項目でCASとCEAに有意差は認められず これらをメタ解析した結果、本解析の1次評価項目とされた「周術期の死亡・脳卒中・心筋梗塞、ランダム化後4年間の同側性脳卒中」(CREST試験と同様)の発生率は、CAS群:5.3%、CEA群:5.1%となり、有意差を認めなかった(p=0.91)。ただしその内訳は、脳卒中(CAS群:2.7% vs.CEA群:1.5%)と死亡(同、0.1% vs.0.2%)、4年間同側性脳卒中(同、2.3% vs.2.2%)には群間差を認めなかったものの(いずれもNS)、心筋梗塞に限ればCAS群が0.6%と、CEA群の1.7%に比べ有意に低値となっていた(p=0.01)。 次に、2次評価項目とされたランダム化後4年間の「脳卒中非発生生存率」だが、同様に、CAS群:93.2%、CEA群:95.1%で有意差はなかった(p=0.10)。「全生存率」で比較しても同様だった(CAS群:91% vs.CEA群:90.2%、p=0.923)。 本メタ解析は、デバイス製造・販売会社からのサポートは受けていない。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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ISC 2019 速報

ISC(国際脳卒中学会議)が、米国・ハワイにて2月6~8日に開催されました。Late-Breakingの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ISC 2019注目演題一覧※(掲載予定)の演題は変更となる場合がございます。2月6日発表演題Dual Antiplatelet Therapy Using Cilostazol for Secondary Stroke Prevention in High-risk Patients: The Cilostazol Stroke Prevention Study for Antiplatelet Combination (CSPS.com)高リスク患者における二次性脳卒中予防のためのDAPT:抗血小板薬併用療法のシロスタゾールによる脳卒中予防試験(CSPS.com)について2月7日発表演題Treatment of Carotid Stenosis in Asymptomatic, Non-Octogenarian, Standard Risk Patients with Stenting versus Endarterectomy: A Pooled Analysis of the CREST and ACT I Trials無症候性の標準リスク患者の頸動脈狭窄症治療における治療ステント留置術と動脈内膜摘出術の比較:CRESTおよびACT I試験の統合解析A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control in Patients with a History of Stroke: The Recurrent Stroke Prevention Clinical Outcome (RESPECT) Study脳卒中歴のある患者における集中的血圧コントロールと標準的血圧コントロールの無作為化試験:再発性脳卒中予防臨床転帰(RESPECT)研究Main Results of the Enhanced Control of Hypertension and Thrombolysis Stroke Study (enchanted) of the Early Intensive Blood Pressure Control After thrombolysis急性期脳梗塞例に対する、SBP「<130-140mmHg」と「<180mmHg」による、90日後の「死亡・要介助」への影響を比較するRCTThe New Generation Hydrogel Endovascular Aneurysm Treatment Trial (HEAT): Final Results新世代ハイドロゲル血管内動脈瘤治療試験(HEAT):最終結果MISTIE III Surgical Results: Efficiency of Hemorrhage Removal Determines mRSMISTIE III手術成績:非外傷性頭蓋内出血に対する、低侵襲手術がmRSに与えた影響J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とはJ-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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アスピリンまたはクロピドグレルへのシロスタゾール併用、日本人脳梗塞の出血リスクを増やさず再発抑制:CSPS.com試験

 虚血性脳血管障害に対する長期の抗血小板薬2剤併用は、脳卒中を抑制せず大出血リスクを増やすとされている。これは大規模試験MATCH、CHARISMAサブスタディ、SPS3で得られた知見に基づく。 しかし、これらのランダム化試験で検討されたのは、いずれもアスピリンとクロピドグレルの併用だった。ではCSPS 2試験においてアスピリンよりも出血リスクが有意に低かった、シロスタゾールを用いた併用ではどうだろう――。この問いに答えるべく、わが国で行われたのが、ランダム化非盲検試験CSPS.comである。その結果、アスピリン、クロピドグレル単剤に比べ、それらへのシロスタゾール併用は、重篤な出血リスクを増やすことなく、脳梗塞を有意に抑制することが明らかになった。2019年2月6~8日に、米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)初日のOpening Main Eventにおいて、豊田 一則氏(国立循環器病研究センター病院・副院長)が報告した。アスピリンまたはクロピドグレル単剤服用の脳梗塞再発高リスク例が対象 CSPS.com試験の対象は、非心原性脳梗塞発症から8~180日以内で、アスピリンまたはクロピドグレル単剤を服用していた、脳梗塞再発高リスク例である。「再発高リスク」は、「頭蓋内主幹動脈、あるいは頭蓋外動脈に50%以上の狭窄」または「2つ以上の虚血性イベント危険因子」を有する場合とされた。なお、心不全や狭心症、血小板減少症を認める例などは除外されている。 これらは、アスピリン単剤(81または100mg/日)あるいはクロピドグレル単剤(50または75mg/日)を服用する単剤群と、それらにシロスタゾールを加えた併用群にランダム化され、盲検化されず追跡された。当初は4,000例を登録する予定だったが、アスピリンまたはクロピドグレルへのシロスタゾール併用群の有用性が明らかになったため早期中止となり、「単剤」群:947例と「併用」群:932例の比較となった。 平均年齢は70歳。全例日本人で、女性が約30%を占めた。高血圧合併例が85%近くを占めたが、血圧は「135mmHg強/80mmHg弱」にコントロールされていた。また、5%強に虚血性心疾患の既往を認め、30%弱が喫煙者だった。 再発高リスクの内訳は、頭蓋内主幹動脈狭窄が30%弱、頭蓋外動脈狭窄が15%弱となっていた。シロスタゾール併用群では脳梗塞再発率が有意に低下 19ヵ月(中央値)の追跡期間中、1次評価項目である「脳梗塞再発率」は、アスピリンまたはクロピドグレルへのシロスタゾール併用群で2.2%/年であり、単剤群の4.5%/年よりも有意に低値となった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.31~0.76、ITT解析)。脳梗塞に、症状が24時間継続しなかった一過性脳虚血発作(TIA)を加えても同様で、併用群におけるHRは0.50の有意な低値だった(95%CI:0.33~0.76)。 一方、「脳出血の発生率」は併用群で0.4%、単剤群は0.5%で、リスクに有意差はなかった(HR:0.77、95%CI:0.24~2.42)。 また解析した16のサブグループのいずれにおいても、アスピリンまたはクロピドグレルへのシロスタゾール併用に伴う「脳梗塞再発減少」は一貫していた。 一方、安全性評価項目の1つであるGUSTO基準の「重大・生命を脅かす出血発生率」は、併用群が0.6%/年、単剤群で0.9%/年となり、有意差は認められなかった(HR:0.66、95%CI:0.27~1.60)。頭蓋内出血も同様で、有意差はなかった(併用群:0.6%/年vs.単剤群:0.9%/年、HR:0.66、95%CI:0.27~1.60)。  「有害事象発現率」は、アスピリンまたはクロピドグレルへのシロスタゾール併用群で有意に高かった(27.4% vs.23.1%、p=0.038)。とくに心臓関係の有害事象で、増加が著明だった(8.4% vs.1.8%。p<0.001)。 一方「重篤な有害事象」に限れば、発現率は併用群のほうが低かった(9.3% vs.15.0%、p<0.001)。大きな差を認めたのは、神経系(4.7% vs.8.3%、p=0.002)と消化器系0.2% vs.1.2%、p=0.022)である。 なお併用群ではおよそ5分の1が、試験開始半年以内に試験薬服用を中止していた。主な理由は頭痛と頻脈だった。 本試験は、循環器病研究振興財団と大塚製薬株式会社の資金提供を受けて行われた。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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頭蓋結合双生児の分離成功は早期着手がカギ/NEJM

 頭蓋結合双生児は、まれな先天異常であり、上矢状静脈洞を共有する完全癒合の双生児は合併症や死亡の割合が高いとされる。米国・ペンシルベニア大学のGregory G. Heuer氏らは、集学的チームにより、生後10ヵ月の完全癒合頭蓋結合双生児(女児)の外科的分離に成功した。詳細な症例報告が、NEJM誌2019年1月24日号に短報として掲載された。分離手術では、3次元プリンターを用いたコンピュータ支援によるデザインとモデリング、特別仕様のデバイス、術中ナビゲーション技術が使用された。これらの技術は、早期の分離を可能にし、若い脳の再生能を生かすことにつながったという。妊娠11週時に診断、脳実質の癒合はないが、上矢状静脈洞を共有 症例は、妊娠11週時に超音波画像所見で頭蓋癒合と診断された。胎児のMRIでは、頭蓋冠の部分的な癒合がみられたが、脳実質の癒合は認めなかった。神経外科医、形成外科医、麻酔科医、神経放射線科医、専門看護師から成る集学的チームが組織された。 出生後(妊娠30週4日)、頭蓋骨上前部の癒合が確認され、脳実質に癒合はないもののinterdigitationが認められた。血管は、双生児の間で上矢状静脈洞水平部が共有され、静脈血が交換されていた。Stone and Goodrich systemに基づき、癒合はtotal angular fusionと判定された。 コンピュータ支援によるデザインおよびモデリングにより、3次元プリントモデルが生成された。この際、共有されている硬膜静脈洞の解剖学的構造にとくに注意が払われた。 癒合した頭蓋骨を分離するために、頭蓋骨切除術とともに骨延長術(distraction osteogenesis)が行われた。分離された頭蓋骨を、徐々に延長するための外付けのデバイスを新たに作製し、生後3ヵ月時に双方の頭部に装着した(1日2.1mmずつ、3週間かけて延長)。延長の後、外付けの圧迫デバイスを用いて、軟部組織の減量が行われた。これにより、共有領域の外周が40cmから28cmに短縮した。生後7ヵ月時には、最終的な分離と頭皮の縫合に向けて、皮膚被覆を増大させるために、癒合部の頭皮と前額部に皮下組織の拡張器が装着され、分離手術までの3ヵ月間留置された。今後、頭蓋骨欠損へのインプラント移植を予定 最終的な分離手術は、生後10ヵ月時に、2段階で行われた。各段階とも、正中矢状面で分離が行われた。術中に遭遇する可能性のある危険な静脈構造のマップを得るために、コンピュータ支援のナビゲーションを使用した。 初回の頭部半球の分離は、合併症もなく、出血は最小限で4時間以内に終了した。対側半球の分離は、共有された上矢状静脈洞があるため手技が複雑で、終了まで約11時間を要した。術後の脳腫脹が検出できるように、いくつかの領域に同種皮膚組織片を移植した。 術後、2人は集中治療室に移され、てんかん治療や創傷の修復術を受けた。状態が安定した時点で、最初の誕生日後まもなく、外来リハビリテーションを受けるために退院した。1人は分離手術後4ヵ月、もう1人は約5ヵ月での退院であった。 分離手術後9ヵ月(生後19ヵ月)の3次元再構成CTでは、双方に頭蓋骨欠損がみられ、脳軟化症の所見が認められた。水頭症や頭蓋内圧の上昇はみられなかった。2人は、4~5歳時に、頭蓋骨欠損を再建する人工頭蓋骨インプラントの移植を受けるために、3次元モデリングの画像検査が行われる予定である。 分離手術後11ヵ月(生後21ヵ月)の時点で、1人は体重が30パーセンタイル、身長は14パーセンタイルに達し、もう1人はそれぞれ55パーセンタイル、14パーセンタイルであった。 著者は、「今回のアプローチは、これまでの頭蓋結合双生児分離手術の死亡率を低下させるために、双生児が若年のうちに早期に行うことを意図した」とし、「この症例に用いた技術や戦略は、リスクのバランス調整に有用であり、早期の分離手術を成功に導いた」と考察している。

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RDday事務局手記~RDD2019にかける思い~

Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日、以下RDD)は、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者さんの生活の質(QOL)の向上を目指して、スウェーデンで2008年から始まった活動で、毎年2月末日に開催されています。2018年までに延べ100ヵ国にて開催され、希少疾患領域における世界最大の社会啓発イベントに成長しました。日本では2010年以降毎年開催されており、前回のRDD2018は過去最大の国内39ヵ所で実施されました。公認開催主催者は地域難病連や患者会にとどまらず、支援者組織や社会福祉関連組織、大学や病院、リハビリテーションセンターといったさまざまな当該領域関連組織が担っています。全国各地のRDDが最終的には同じゴールを目指し、社会に向けた発信を続けることこそ大きな意味があると考えています。10度目の日本開催となるRDD2019は、これからも共に歩む、という気持ちを込めて「きょうも、あしたも、そのさきも」をテーマとしました。2019年2月を中心に開催される全国の公認開催情報はRDD JAPANウェブサイトに掲載されています。RDD JAPAN:https://rddjapan.info/2019/

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足関節骨折のギプス固定、3週間に短縮可/BMJ

 安定型足関節外果単独骨折(Weber分類タイプB)の治療において、ギプスまたは装具による3週間固定の有効性は、従来の6週間ギプス固定と比較して非劣性であることが認められ、最適固定期間は6週から3週へ安全に短縮できる可能性が示唆された。フィンランド・オウル大学病院のTero Kortekangas氏らが、多施設共同無作為化非劣性臨床試験の結果を報告した。安定型Weber分類タイプB腓骨骨折は、最も多い足関節骨折で、膝下に6週間ギプスをすることで非観血的に治療することができる。この治療戦略の臨床アウトカムは一般的に良好であることが示されているが、長期にわたるギプス固定は有害事象のリスク増加と関連しており、ギプス固定の至適期間に関する質の高いエビデンスは不足していた。BMJ誌2019年1月23日号掲載の報告。約250例で6週間ギプス固定とギプスまたは装具による3週間固定を比較 研究グループは、2012年12月22日~2015年6月6日の期間で、フィンランドの主要外傷センター2施設において、静止X線写真により足関節外果(腓骨)単独骨折(Weber分類タイプB)を認めた16歳以上の患者247例を登録。患者を6週間ギプスで固定する(6週ギプス)群84例、3週間ギプスで固定する(3週ギプス)群83例、または3週間装具で固定する(3週装具)群80例に1対1対1の割合で無作為に割り付け、52週間追跡した(追跡調査最終日2016年6月6日)。 主要評価項目は、52週時のOlerud-Molander Ankle Score(OMAS:0~100点、スコアが高いほど転帰良好で症状が少ないことを示す)で、非劣性マージンは-8.8点と定義した。副次評価項目は、足関節機能、疼痛、QOL、足関節の動き、X線写真で、6週、12週、52週時に評価した。ギプスまたは装具を用いた3週間固定、6週間ギプス固定に対して非劣性 無作為化された247例中、212例(86%)が試験を完遂した。52週時のOMAS(平均±SD)は、6週ギプス群87.6±18.3点、3週ギプス群91.7±12.9点、3週装具群89.8±18.4点であり、52週時の群間差は、3週ギプス群vs.6週ギプス群で3.6点(95%信頼区間[CI]:-1.9~9.1、p=0.20)、3週装具群vs.6週ギプス群1.7点(95%CI:-4.0~7.3、p=0.56)であった。いずれの比較においても、95%CIの下限値は事前に定義した非劣性マージン-8.8点を上回り、非劣性が認められた。 群間で統計的有意差が確認されたのは副次評価項目のみで、有害事象については6週ギプス群と比較し両3週固定群で足関節底屈および深部静脈血栓症の発症がわずかに改善した。

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アキレス腱断裂、手術・非手術とも再断裂リスクは低い/BMJ

 アキレス腱断裂の手術療法は、非手術療法に比べ、再断裂のリスクが有意に低いもののその差は小さく(リスク差:1.6%)、他の合併症のリスクが高い(リスク差:3.3%)ことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのYassine Ochen氏らの検討で示された。アキレス腱断裂は遭遇する頻度が高く、最近の研究では発生率の増加が報告されている。観察研究を含まない無作為化対照比較試験のみのメタ解析では、手術療法は非手術療法に比べ、再断裂リスクが有意に低い(リスク差:5~7%)が、他の合併症のリスクは16~21%高いとされる。BMJ誌2019年1月7日号(クリスマス特集号)掲載の報告。観察研究を加えたメタ解析 研究グループは、アキレス腱断裂の手術療法と非手術療法における再断裂、合併症、機能的アウトカムを比較する目的で、文献を系統的レビューし、メタ解析を行った(研究助成は受けていない)。 手術療法には低侵襲修復術、観血的修復術が、非手術療法にはキャスト固定、機能装具が含まれた。アキレス腱断裂以外の合併症は、創感染、腓腹神経損傷、深部静脈血栓症、肺塞栓症などであった。 医学関連データベース(2018年4月25日現在)を用いて、アキレス腱断裂の手術療法と非手術療法を比較した無作為化対照比較試験および観察研究を選出した。データの抽出は、4人のレビュアーが2人1組で、所定のデータ抽出ファイルを用いて別個に行った。アウトカムは変量効果モデルを用いて統合し、リスク差、リスク比、平均差と、その95%信頼区間(CI)を算出した。再断裂率:全体重負荷では手術が良好、加速的リハビリでは差なし 29件の研究に参加した1万5,862例が解析に含まれた。無作為化対照比較試験が10件(944例[6%])、観察研究が19件(1万4,918[94%])で、手術療法が9,375例、非手術療法は6,487例であった。全体の加重平均年齢は41歳(範囲:17~86)、男性が74%で、フォローアップ期間の範囲は10~95ヵ月だった。 再断裂率(29件[100%]で検討)は、手術群が2.3%と、非手術群の3.9%に比べ有意に低かった(リスク差:1.6%、リスク比:0.43、95%CI:0.31~0.60、p<0.001、I2=22%)。 合併症の発生率(26件[90%]で検討)は、手術群は4.9%であり、非手術群の1.6%に比し有意に高かった(リスク差:3.3%、リスク比:2.76、95%CI:1.84~4.13、p<0.001、I2=45%)。合併症発生率の差の主な原因は、手術群で創傷/皮膚感染症の発生率が2.8%と高いことであった(非手術群は0.02%)。非手術群で最も頻度の高い合併症は深部静脈血栓症(1.2%)だった(手術群は1.0%)。 スポーツ復帰までの平均期間(4件[14%]で検討)にはばらつきがみられ、手術群で6~9ヵ月、非手術群では6~8ヵ月の幅があり、メタ解析におけるデータの統合はできなかった。また、仕事復帰までの期間(9件[31%]で検討、そのうち6件は情報が不十分のため3件のデータを統合)にも、両群間に差を認めなかった。 全体重負荷による再断裂率は、早期(4週以内、9件[31%]で検討、リスク比:0.49、95%CI:0.26~0.93、p=0.03、I2=9%)および後期(5週以降、15件[52%]で検討、0.33、0.21~0.50、p<0.001、I2=0%)のいずれもが、手術群で有意に良好であった。 早期可動域訓練による加速的リハビリテーション時の再断裂率(6件[21%]で検討)は、手術群と非手術群に差を認めなかった(リスク比:0.60、95%CI:0.26~1.37、p=0.23、I2=0%)。 統合効果推定値に関して、無作為化対照比較試験と観察研究の間に差はみられなかった。 著者は、「アキレス腱断裂の管理の最終的な決定は、個々の患者に特異的な因子および共同意思決定(shared decision making)に基づいて行う必要がある」と指摘し、「本レビューは、手術療法後の客観的アウトカムの評価のメタ解析では、質の高い観察研究を加えることの潜在的な便益を強調するものである」としている。

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第21回 在宅医療の本質を3つのキーワードで理解しよう【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は地域包括ケアシリーズの第2弾として、在宅医療の本質を考えるための3つのキーワードであるリハ、ICF(国際生活機能分類)、CGA(高齢者総合機能評価)についてお話しします。リハを単なる身体機能訓練だと思っていませんか?リハビリテーションの本来の意味は「その人らしい人生を再構築すること」。それを実現するためにチームで患者さんの生活状況、症状を正しく評価することが大切です。

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【GET!ザ・トレンド】脳神経細胞再生を現実にする(5)

「わずかn=61で有意差が出るとは。信じられなかった」。JCHO東京新宿メディカルセンター 脳神経外科 主任部長 今井 英明氏のこの一言でインタビューは始まった。慢性期の外傷性脳損傷(TBI)患者に対する第II相STEMTRA試験で、骨髄由来の間葉系幹細胞から作成した再生細胞薬であるSB623が、運動機能改善に有意な改善を示した。この試験結果がどのようなことを意味するのか、試験開始時からこの治験に関わる今井氏に聞いた。頭部外傷後遺症の問題解決は世の中の要請わが国の慢性期TBIの状況、問題点はどのようなものでしょうか。わが国の頭部外傷受傷者は年間4万人、その3割は退院時に重度障害を後遺していると推測されます。片麻痺、高次脳機能障害、重症の場合は寝たきりとなりますが、慢性期の治療薬はなく、リハビリによる運動機能改善しか手段がありません。とはいえ、わが国では、リハビリテーションをいつまでも受けられるわけではなく、施設や自宅で無治療のまま過ごしている患者さんも少なくないと考えられます。この治験の開始がマスコミで取り上げられた途端に、脳梗塞などの後遺症で苦しむ全国の患者さんからの問い合わせが引きも切らなくなりました。後遺症に苦しむ患者さんがどれだけ多く、これは世の中の要請であると実感しました。この厳しい状況の試験でポジティブな結果が出たのは脅威STEMTRA試験の概要は?STEMTRA試験は、慢性のTBI患者に対するSB623細胞の効果と安全性を評価するため日米で行われた第II相試験です。世界27施設、そのうち日本では5施設で実施され、最終的には世界で61例が登録されました。試験は二重盲検で、定位脳手術でSB623を投与する実薬群に加え、対照群として偽手術群を設定しているエビデンスレベルの高い試験です。わが国では、当時私が在籍していた東京大学において1例目の手術を実施しました。この試験のプロトコールは非常に厳密です。また、盲検性の維持も非常に厳密で、手術に関わる治療者(脳外科医)と評価者は別人です。つまり、患者だけでなく評価者も割り付けを知らず、評価にバイアスがかからない状況なのです。この試験の結果には、どのような意義があるのでしょうか。この試験では、適格基準の範囲内であるものの、傷害部位や重症度なども多様であり、薬の投与部位も治験担当医の裁量に任されている多様性のある集団です。均一なかつ多数の対象でやっても結果が出ない試験が多い中、このようなばらつきの大きい集団で、かつn数の少ない試験で統計学的に有意な結果はまず出ないだろうと、当初は主張していました。しかし、ご存じのとおり、試験結果は有意にポジティブでした。わずか61のn数で、しかもヘテロな集団で有意差が出たのは、驚くべきことです。この厳しい状況を凌駕するほどのパワーが出たということで、夢のようなことが起きたと考えています。STEMTRA試験の概要運動機能障害を伴う慢性期の外傷性脳損傷患者に対するSB623細胞の効果を評価する日米第II相プラセボ対照二重盲検比較試験。対象:受傷後1年以上経過した運動障害を有する外傷性脳損傷患者。GOS-E(The Extended Glasgow Outcome Scale[拡張グラスゴー転帰尺度])3~6(中等度~重度障害)など。試験薬:SB623(それぞれ、2.5×106、5.0×106、10.0×106)を定位脳手術で投与対照:偽手術主要有効性評価項目:Fugl-Meyer Motor Scale4群(偽手術群、SB623 2.5×106群、SB623 5.0×106群、SB623 10.0×106群)に1:1:1:1で無作為割り付け。投与部位と刺入経路は治験担当医の裁量で、運動神経経路の損傷部位に最も近い投与部位を選択。主要有効性評価項目結果:24週時点のFugl-Meyer Motor Scaleのベースラインからの改善量は、SB623投与群の8.7点、コントロール群2.4点で、SB623群で統計学的有意に改善。SB623治療群ではFugl-Meyer Motor Scaleが8.7点改善していますが、どの程度のものなのでしょうか。ワンランク改善するという感覚です。たとえば、車いすでの生活がギリギリできる患者さんが、なんとか杖で歩行可能になる。ドラマのような劇的な変化とは言えませんが、自然経過の中では改善は望めない患者さんに対しての結果であり、患者さんにとっては非常に大きな改善だと言えます。どのようなメカニズムでこの改善効果が表れるのでしょうか。運動機能障害があるということは、運動野の細胞体から伸びる軸索の束、錐体路などと言いますが、そこが傷害されていることです。傷害があった軸索を目標にSB623細胞を移植するのですが、切断された軸索がつながるとは考えられません。あくまで推測ですが、非臨床試験の結果などから考えると、移植細胞が新たな構造を作るのではなく、この細胞から栄養因子(サイトカイン)が分泌され、傷ついた細胞を修復し機能を改善することで、電気信号が正確に筋肉に伝達されるようになった可能性があります。患者さんが「希望を持って生きる」が現実にSTEMTRA試験の結果から、TBIに対する細胞治療は実現に近づいたといえますか。SB623は他家移植細胞なので、ストックして必要時にいつでも使えます。他家移植で問題となる免疫応答もほとんどなく、免疫抑制剤を使用する必要がありません。また、安全性も高く、細胞による副作用も認められていません。今回、バイアスがかからない状況での試験でポジティブな結果が出たという事実は誰も否定できないことだと思います。今後、条件付承認を経て、その後リアルワールドで評価される日も遠くはないでしょう。夢のようなことが現実に迫っていると思います。慢性期TBIをはじめ、脳神経分野の細胞治療には、どのような可能性があるでしょうか。慢性期TBIに関しては、今後の解析から、SB623に対して、効果のある人、効果のある投与部位などが明らかになってくると思います。今回は運動機能の改善を評価していますが、それと連動して、知的機能も上がっていくことが考えられ、高次脳機能障害への発展も十分ありえると思います。また、TBIだけでなく、脳梗塞、脳出血への応用も可能だと思います。大脳白質の軸索障害という病態と考えると、これらの疾患の病態生理に違いはありません。今回のSTEMTRA試験の対象は外傷性ですが、外傷による軸索切断よりむしろ、外傷による血腫で圧迫された虚血傷害の患者さんがほとんどでした。今回の治験で、患者さんが“希望を持って生きる”ということが最も重要だということを勉強させていただきました。今回のこの厳密な第II相試験でのポジティブな結果は、現在の医学では現状維持が精一杯という患者さんにとって、明らかに福音となるのでしょう。“希望を持って生きる”ということが、現実味を帯びてきたと言えます。

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第5回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院消化器化学療法外科、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プランは、2019年1月13日(日)に、第5回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同院が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の5回目となる。今回は『がん治療とQOL(生活の質)』をテーマに、がん治療中のQOLの維持に積極的に取り組む意味や、QOLの維持に役立つ情報を広く知ってもらうための内容となっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2019年1月13日(日)《ブース展示》12:00~17:00《セミナー》13:00~16:40【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】がん治療とQOL(生活の質)【予定内容】《セミナー》13:00~16:40 鈴木章夫記念講堂 司会:石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター/緩和ケア科)13:05~13:25 講演1 知ってますか? がん治療とQOLの関係 石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:25~13:55 講演2 がん患者さんのための栄養・食事の工夫 有本 正子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)13:55~14:25 講演3  摂食嚥下(食べる・飲み込む機能)の大切さ 中川 量晴氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院 摂食嚥下リハビリテーション外来)14:25~14:55 講演4 「がんのリハビリテーション」ってどんなもの? 何のため? 酒井 朋子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 リハビリテーション部)14:55~15:15 休憩15:15~15:35 医科歯科大のがん治療 update(1) 「遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)外来」がスタートしました 大島 乃里子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 周産・女性診療科)15:35~15:55 医科歯科大のがん治療 update(2) もっと知ってほしい!「緩和ケア病棟」のこと 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター/緩和ケア科)15:55~16:35 パネルディスカッション がん治療とQOL 座長:植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)16:35~16:40 閉会挨拶 川﨑 つま子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長)《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■「がんのリハビリテーション」ってどんなもの? (東京医科歯科大学医学部附属病院 リハビリテーション部)■「がんゲノム医療」ってなに? (東京医科歯科大学医学部附属病院 がんゲノム診療科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■術後の補正下着・パッドのご紹介 (株式会社ワコール リマンマ)■抗がん剤治療の味方「CVポート」ってどんなもの? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■リレー・フォー・ライフ・ジャパン(RFLJ)のご紹介 (RFLJ御茶ノ水実行委員会)■その情報、図書館で調べられます (東京都立中央図書館/東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■看護師よろずミニ相談 (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【協力】認定NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/東京都/文京区第5回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら

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サルコペニア嚥下障害は誤嚥性肺炎などの入院が引き金に

 元気だったはずの高齢者が、入院後に低栄養で寝たきりになるのはなぜか。2018年11月10、11日の2日間、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、若林 秀隆氏(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)が「栄養の視点からみたサルコペニアの摂食嚥下障害対策」について講演した。誤嚥性肺炎で救急搬送されサルコペニアの嚥下障害になる “嚥下障害があり、食べられないから低栄養になる”という流れはごく普通である。若林氏は、「低栄養があると嚥下障害を来すことがあり、これはリハビリテーションだけでは改善することができない。つまり、栄養改善が要」と、本来とは逆ともとれる低栄養のメカニズムについて解説した。 若林氏によると、一見、元気な老人でも実はサルコペニアを発症している可能性があるという。たとえば、喉のフレイル(嚥下障害ではないが正常より衰えている状態)が原因となり、誤嚥性肺炎を発症。その後、救急搬送され寝たきりや嚥下障害になる場合がある。この原因について同氏は、「急性期病院で誤嚥性肺炎を発症すると“根拠のない安静”や“禁食”がオーダされやすい」と、嚥下、腸管や心臓機能などの適切な評価がなされていない点を指摘。さらに、「病院内での不適切な安静臥床と栄養管理や肺炎の急性炎症による筋肉の分解でサルコペニアを生じる結果、これまで外出や食事が可能であった方でも寝たきりや嚥下障害となる」と、入院後の管理体制を問題視した。サルコペニアによる嚥下障害の定義とは 同氏らを含む4学会(日本サルコペニア・フレイル学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会)は、サルコペニアによる嚥下障害を立証し、メカニズム、診断、治療、今後の展望に関する統一的見解を提言するために、ポジションペーパーを作成している1)。 この合同学会において、サルコペニアによる嚥下障害を以下のように定義している。1)全身の筋肉と嚥下関連筋の両者にサルコペニアを認める2)脳卒中など明らかな摂食嚥下障害の原因疾患が存在し、その疾患による摂食嚥下障害と考えられる場合は除外する3)神経筋疾患による筋肉量減少や筋力低下、そして摂食嚥下障害はサルコペニアの摂食嚥下障害には含めない ポジションペーパーに採用された研究の一部には、今年発表された基礎研究も含まれる。これによると、誤嚥性肺炎では舌や横隔膜で筋分解が亢進し、筋萎縮が生じることが示された2)。これについて同氏は、「人間でも同様のメカニズムにおいて呼吸筋、全身の骨格筋、嚥下筋の筋萎縮が引き起こされ、最終的に寝たきりに至るのでは」と、研究結果を踏まえた人体への影響を説明。さらに、同氏が行った嚥下関連筋のレジスタンストレーニングに関するRCT3)を示し、摂食嚥下障害の原因がサルコペニアの場合、栄養改善を行いながらレジスタンストレーニングを行うと改善しやすい傾向であることを解説した。急性期病院患者のサルコペニア嚥下障害の有病割合は32% 急性期病院の実態として、嚥下リハ患者のサルコペニア有病割合は49%を占め、患者の2人に1人がサルコペニアであることが判明している4)。さらに、患者全体ではサルコペニア嚥下障害の有病割合は32%と、3人に1人はサルコペニアの嚥下障害を有し、急性期病院で起こりがちな、“とりあえず安静”、“とりあえず禁食”、“とりあえず水電解質輸液のみ”によって引き起こされている。これを『医原性サルコペニア』と呼び、同氏は「サルコペニアによる嚥下障害の患者は、他の嚥下障害よりも予後が悪いため予防が重要」と予防の大切さを訴えた5)。サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防・治療へ攻めの栄養管理 今後の展望として、サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防、治療への介入研究、管理栄養士の積極的な介入を必要が必要であると述べ、それに有用な“攻めの栄養管理“を以下のように提唱した。・(痩せている)実体重の場合:エネルギー必要量=エネルギー消費量±蓄積量(200~750kcal/day)・理想体重の場合:35kcal/kg/day 最後に同氏は、「サルコペニアは地域での予防、軽微な状態で発見し介入することが重要」と述べ、リハ栄養診断やゴール設定など、リハ栄養における5つのステップ5)の活用を求めた。■参考1)Fujishima I, et al. Sarcopenia and dysphagia: Position paper by four professional organizations. Geriatr Gerontol Int, in press2)Komatsu R, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2018;9:643-653.3)Wakabayashi H, et al. Nutrition. 2018;48:111-116.4)Wakabayashi H, et al. J Nutr Health Aging. 2018 Oct 16.5) Nagano A, et al. Rehabilitation nutrition for iatrogenic sarcopenia and sarcopenic dysphagia. J Nutr Health Aging, in press■関連記事初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備を「食べる」ことは高齢者には大問題

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医師が選んだ"2018年の漢字"TOP5! 【CareNet.com会員アンケート結果発表】

毎年恒例、12月の発表に向けて日本漢字能力検定協会が募集している「今年の漢字」。CareNet.comでは、一足早く会員の先生方に今年の漢字を選んでいただきました。「今年1年の世相を漢字1文字で表すとしたら、何を思い浮かべますか?」という質問に対し、ダントツで選ばれたのは、自然災害を連想させる「災」でした。それでは、「2018年の漢字」トップ5を発表します。発表にあたって、今年はケアネットの新入社員が筆を執りました。書を持つ5人も新入社員です。1位災第1位は群を抜いて多かった「災」2018年は、豪雪に始まり、各地での地震、西日本豪雨、酷暑、台風被害など、さまざまな自然災害が記憶に残る1年でした。なかには、被災した方からのコメントもあり、これを機に、医療現場や家庭での対応策を見直すべきなのかもしれません。 「災」を選んだ理由(コメント抜粋)今年は、地震、台風、土砂崩れなど自然災害が多かった。(60代 内科医/兵庫県)西日本豪雨災害にショックを受けたのと、他にも日本各地で地震、台風など多くの災害があった年だと思うから。(50代 内科医/広島県)今年1年、西日本豪雨、北海道地震、台風など自然災害続きで多くの方が被害に遭われた。そのことを忘れたくはないので。(50代 血液内科/福岡県)まさか自分も被災者になるとは思わなかった。(40代 内科/広島県)2位変昨年初登場し、今年は第2位にランクアップ。年号が変わることを筆頭にした国内の変化、トランプ大統領の動向など世界の変化、そして異常気象やプライベートの環境変化など、さまざまな「変」に対するコメントが寄せられました。平成が終わり、次の年号は何に決まるのでしょうか。 「変」を選んだ理由(コメント抜粋)いろいろと変化が大きかった。世界も安定しておらず、紛争、米国のトランプ大統領など、変化が大きかった。(60代 内科/新潟県)豪雪、猛暑などの気候等も含め「今までの常識だけでは対応できない」ことによく遭遇したという意味で。自身が臨機応変に対応できればという願いも込めて選びました。(50代 内科/福井県)初の米朝首脳会談、築地市場移転、平成最後の年など、変化する世の中であったから。(40代 消化器内科/福岡県)3位嘘第3位は4年ぶりに再登場の「嘘」。政治、マスコミ、教育、メーカーにおける虚偽に関するコメントが多く寄せられました。とくに、東京医大の入試減点問題は印象に残る先生も多かったのではないでしょうか。 「嘘」を選んだ理由(コメント抜粋)政治家の虚偽発言や、フェイクニュースの話題が多かった。(60代 神経内科/東京都)入試不正が印象に残ったから。(30代 精神科/福島県)日本をはじめ各国の指導者が平気で嘘をつき過ぎる。官僚や一流企業・大学も改竄、隠蔽、不正のオンパレード。(50代 皮膚科/東京都)4位乱第4位の「乱」は4年連続のランクイン。国内だけでなく、世界情勢も含めて「乱れている」「混乱している」という印象が強いようです。なかには、渋谷でのハロウィン騒ぎを連想させるコメントもありました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)今の世の中あらゆるものが乱れている。(60代 外科/大分県)天災や不祥事などいろいろな騒動が目に付いたから。(30代 循環器内科/福岡県)天候、気象、災害、犯罪、秩序、政治などすべての分野で常識から外れた、乱れた出来事が多過ぎたから。(50代 総合診療科/青森県)5位暑第5位は、初登場の「暑」。7月半ばから8月にかけては気温40度超えの観測地点数が過去最多となり、各地で熱中症患者が多発しました。東京オリンピックに向けた暑さ対策も検討されており、納得のランクインです。 「暑」を選んだ理由(コメント抜粋)今年の夏が非常に暑かったから。(50代 泌尿器科/岐阜県)とにかく猛暑だった。(60代 リハビリテーション科/熊本県)猛暑で大変だった。(40代 小児科/静岡県)アンケート概要アンケート名 :『2018年を総まとめ!今年の漢字と印象に残ったニュースをお聞かせください』実施日    :2018年11月8日~15日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :526件

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統合失調症に関する10年間の調査~実臨床のためのレビューとレコメンド

 フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のF. Schurhoff氏らは、統合失調症専門家のための学術研究センター(FondaMental Academic Center of Expertise for Schizophrenia:FACE-SZ)グループによる最初の10年間のコホート研究について報告を行った。L'Encephale誌オンライン版2018年10月13日号の報告。 FACE-SZでは、700以上のコミュニティで安定している患者を募集し、現在まで評価を行っている。対象者は、平均年齢32歳、男性の割合75%、平均罹病期間11年、平均発症年齢21歳、統合失調症の平均未治療期間1.5年、喫煙者55%であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、一般集団と比較し2倍であり、正しい評価や治療が行われていなかった。・ベンゾジアゼピン使用患者および慢性低悪性度末梢炎症患者において、認知機能低下が認められた。・うつ病の合併は、対象患者の約20%で認められた。・うつ病は、QOL低下や統合失調症の喫煙者におけるニコチン依存症の増加と関連が認められた。・うつ病および陰性症状の改善は、統合失調症患者のQOL改善のための最も効果的な治療戦略であると考えられる。・大麻使用患者および発症年齢が19歳未満の患者では、統合失調症の未治療期間が長くなる傾向が認められた。・治療開始後、主観的にネガティブの印象を報告した患者では、錐体外路症状や体重増加などの客観的な副作用とは無関係に、治療に対するアドヒアランスが低下した。・アカシジアは、統合失調症の18%で認められ、これは抗精神病薬の多剤併用と関連が認められた。 結果を踏まえ、臨床ケアを行う際の、著者らのレコメンドは以下のとおりである。・統合失調症の早期診断は、青年および大麻使用者でとくに強化すべきである。・すべての患者において、治療開始時および安定後に総合的な神経心理学的評価を行わなければならない。・代謝パラメータや生活習慣(食生活や身体活動)の改善を強化すべきである。・ベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬の多剤併用については、ベネフィット/リスク比を定期的に再評価し、できるだけ早い段階で是正すべきである。・うつ病の改善は、統合失調症のQOLを大幅に改善する可能性があるため、うつ病の診断、治療を行うべきである。・認知リハビリテーション療法や抗炎症戦略は、より治療戦略に組み込むべきである。■関連記事統合失調症患者の死亡率に関する30年間のフォローアップ調査初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬治療中止に関する20年間のフォローアップ研究統合失調症患者の強制入院と再入院リスクとの関連~7年間のレトロスペクティブコホート研究

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