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日本人アルツハイマー病高齢者の手段的日常生活動作に対する影響

 鹿児島大学の田平 隆行氏らは、地域在住のアルツハイマー病(AD)高齢者における認知機能障害の重症度による手段的日常生活動作(IADL)の特徴を明らかにするため、生活行為工程分析表(PADA-D)を用いた検討を行った。IADLの工程を詳細に分析した結果、著者らは、地域在住のAD高齢者において重症度による影響の有無といった工程の特徴を明らかにできるとし、IADLのリハビリテーションやケアが在宅での生活を継続するうえで役立つ可能性を報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月15日号の報告。 日本の医療センターおよびケアセンター13施設より募集した地域在住のAD高齢者115例を対象に、横断的研究を実施した。認知機能障害の重症度はMMSEを用いて3群(軽度:20以上、中等度:20未満10以上、重度:10未満)に分類し、共変量で調整した後、IADLスコアとPADA-DのIADL 8項目について群間比較を行った。PADA-Dの各IADL項目に含まれる5つの実行可能なプロセスの割合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・IADLスコアは、交通手段の使用および金銭管理能力を除き、AD重症度と共に独立した低下が認められた。とくに買い物(F=25.58)、電話を使用する能力(F=16.75)、服薬の管理(F=13.1)において認められた。・PADA-Dの工程ごとの調査では、いくつかの工程は認知機能障害の重症度による影響を受ける場合、受けない場合があることが明らかとなった。・たとえば、調理において、献立は重症度の影響を受けるが(ES=0.29)、食材の準備は影響を受けなかった。

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ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!【知って得する!?医療略語】第16回

第16回 ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!ゴルフがきっかけで脳梗塞になるなんてことがあるのですか?そうなんです。水泳のクロールやテニス、カイロプラクティスなども若年性脳梗塞を引き起こすことがありますよ。いずれも椎骨動脈解離(VAD:vertebral artery dissection)が原因です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】VAD【日本語】椎骨動脈解離【英字】vertebral artery dissection【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・救急【関連】椎骨動脈解離性動脈瘤 VADA:vertebral artery dissecting aneurysm実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいの鑑別診断で見逃せない疾患の1つに椎骨動脈解離(VAD)があります。見逃すと脳幹梗塞や小脳梗塞、くも膜下出血に至ることもあります。そんなVADは、筆者の経験上、研修医の先生に質問しても、あまり認知されていない疾患ですが、救急外来でめまいの診療をしていると、VADは決して稀な疾患ではありません。しかし、VADという疾患の存在を知らなければ疑うこともできません。また、必ずしも一般的な頭部画像検査ではVADが診断出来るとは限らず、きちんと疑うことができなければ、それに応じたMRオーダーが出来ず、末梢性めまいと誤診してしまう可能性もあります。そこで、今回はVADについて、診断の観点からフォーカスしたいと思います。VADとはVADは脳動脈解離の1つです。脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈です。発症様式は、解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す場合と、椎骨動脈の解離部分が瘤状化し椎骨動脈瘤を発症(椎骨動脈解離性動脈瘤)、それが破裂する出血性のものがあります。初期症状は後頸部痛や肩こりで、多くは片側ですが、解離が脳底動脈に及び、脳底動脈の解離であれば頸部痛が両側性になる可能性も十分あります。また、筆者の経験上は頸部痛や肩こりの程度はさまざまで頭重感程度の方もいます。ただ、普段は肩こりや頸部痛が無い人が、めまいで来院し、普段は経験していない肩こりや頸部痛、頭重感を呈している際には、VADの可能性を十分に想定します。VADの主な原因VADの病因は、特発性から外傷性(交通事故・頸椎骨折等)、スポーツ、血管炎、マルファン症候群の結合組織病などさまざまですが、頸部の捻転を伴う動作が発症契機として指摘されています。とくに頸部を急に捻る動きや過伸展を伴うスポーツ、たとえばゴルフや水泳のクロールやサーフィン、テニスやカイロプラクティスなどで症例報告があります。2020年にはくしゃみ直後の発症も報告されています。これは筆者の推測ですが、頸椎の横突孔を通過する椎骨動脈は、頸部の過伸展や捻転動作により、横突孔周囲の骨と強く接触し、ずり応力により血管壁が損傷し解離を来しやすいのではないかと推測しています。頸動脈系よりもVADが圧倒的に多いのは、椎骨動脈の解剖的な構造に由来するのではないかと考えています。VAD診断にはMRのVRFAやBPASが役立つVADの画像診断の上で留意したいのは、虚血発症のVADが必ずしも脳梗塞まで至っていないことがある点です。このため、発症して間もないVADを頭部単純CTでは診断できないのはもちろんですが、頭部MRIでも拡散強調画像で急性期脳梗塞病変を指摘できないことがあります。これは梗塞まで至っていない虚血状態の病態があることによります。そこで頭頸部MRAも併用しますが、椎骨動脈は先天的な左右差も多く、MRAで椎骨動脈が狭窄や途絶しかけているように見えても、椎骨動脈の低形成という場合も少なくありません。このときに参考になるのが、BPAS(basi-parallel anatomical scanning)です。BPASはMRAの撮影法の1つです。MRAが血管内の血流信号(≒血管内腔)を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示します。BPASとMRAで示される血管径に明らかな乖離があるとすれば、椎骨動脈に解離腔の存在を疑う、あるいは解離部分の瘤状化を疑う手がかりとして有用です。ただし、BPASで有用な情報を得られない症例も存在し、近年は新たな撮像方法として、可変フリップ角 (VRFA:variable refocusing flip angle)を利用したVRFA-3D-TSE法も登場し、より診断精度の向上が期待されます。しかし、どれほど診断機器が発達しても、まずは疾患を疑わなければ始まりません。VADの診断には病歴聴取がとても重要だと思います。急性のめまいの患者さんの診療においては、症状出現前に頸部の過伸展や捻転イベントがなかったか詳しく問診します。また、これまで経験のない片側の肩こりや頸部痛の有無も確認します。ただし、VADの全例に誘因や頸部痛・後頭部痛があるとは限りませんのでその点は注意が必要です。ですが、少なくとも問診や症状からVADを否定できず、検査前確率が高いと考える場合は、放射線技師と相談し、MRI撮影の依頼時にBPASやVRFAを検討いただくことをお薦めします。最後に筆者がヒヤッとした症例をご報告します。その患者さんはバレリーナで、バレエ中に首を過度に反らしたときに突然のめまいが出現しました。初期対応した医師の診断は、アナムネとCTで異常がないことを理由に良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断したようでしたが、帰宅後も症状持続に改善がなく、患者さんは翌日の内科外来を受診しました。発症状況からVADを否定できないと判断し、BPASも含めた頭部MRを実施したところ、椎骨動脈解離が見つかり緊急入院しました。VADは、受診後にくも膜下出血を来し心機能停止で再搬送されたケースも報告されています。めまいを訴える患者を末梢性めまいと結論付ける前に、中枢性めまいの可能性を慎重に否定する必要があります。なお、近年は脳動脈解離として頸動脈解離とVADが一括りに語られる傾向があり、筆者は少々違和感を持っています。同じ脳動脈解離でも、VADと頸動脈系では臨床像が異なるのがその理由で、現場の実務ではそれぞれの臨床像を知っておく必要があると考えています。1)戌亥 章平ほか. 臨床神経. 2020;60:573-580.2)沖山 幸一ほか. 脳卒中の外科. 2014;42:196-202.3)徳元 一樹ほか. 臨床神経. 2014;54:151-157.4)寺崎 修司ほか. 脳卒中. 1996;18巻:70-73.

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肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。英国の約29万件の手術のコホート研究 研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。 解析には、英国国家統計局の市民登録死亡データを含むイングランド国民保健サービス(NHS)の病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータが用いられた。 対象は、2009年4月1日~2017年3月31日の期間に、16歳以上の26万1,248例に施行された28万8,250件の肩関節鏡視下手術(肩峰下除圧術、腱板修復術、肩鎖関節切除術、肩関節安定化術、凍結肩関節授動術)であった。 主要アウトカムは、術後90日以内の入院治療を要する重篤な有害事象(死亡、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞、急性腎障害、脳卒中、尿路感染症)の割合とされた。深部感染症は腱板修復術で高い 全体の年齢中央値は55歳(IQR:46~64)で、手技別の年齢中央値は、肩関節安定化術の27歳(IQR:22~35)から腱板修復術の61歳(53~68)までの幅が認められた。47.8%が女性であった。試験期間を通じて、肩峰下除圧術の件数は減少したが、これを除く肩関節鏡視下手術の件数は増加していた。 肩関節鏡視下手術後90日以内の有害事象(再手術を含む)の発生率は、1.2%(95%信頼区間[CI]:1.2~1.3)と低く、81例に1例の割合であり、肩関節安定化術の0.6%(95%CI:0.5~0.8)から凍結肩関節授動術の1.7%(1.5~1.8)までの幅が認められた。年齢、併存症、性別で調整すると、手技の種類による影響はみられなくなった。 最も頻度の高い有害事象は肺炎(発生率:0.3%、95%CI:0.3~0.4)で、303例に1例の割合であった。一方、最もまれな有害事象は肺塞栓症(0.1%、0.1~0.1)で、1,428例に1例の割合だった。 1年以内に再手術を要した患者は3.8%(95%CI:3.8~3.9)と比較的高く、26例に1例の割合であり、肩関節安定化術の2.7%(95%CI:2.5~3.0)から凍結肩関節授動術の5.7%(5.4~6.1)までの幅がみられた。 深部感染症に対する追加手術は全体で0.1%(95%CI:0.1~0.1)と低く、1,111例に1例の割合であったが、腱板修復術に伴う深部感染症の発生率は0.2%(0.2~0.2)と高く、526例に1例の割合だった。 著者は、「膝関節鏡視下手術に比べて90日以内の肺炎の発生率が高かった理由は不明であり、今後、その原因の解明と予防法の確立が求められる。また、今後の研究では、腱板修復術に伴う感染症の増加に関連する因子の検討も行うべきであろう」としている。

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移植の予後に、筋肉の「質」が影響する可能性/京都大学

 造血器腫瘍治療で行われる同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)において、患者の筋肉の質及び量が移植後の予後に関係する可能性があるという。京都大学の濱田 涼太氏らによる本研究と結果はTransplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2022年6月19日号に掲載され、京都大学は7月12日にプレスリリースを発表した。 骨格筋量の減少は、移植後の生存に影響を及ぼすことが複数の研究グループから報告されているが、このような骨格筋量の減少はコンピュータ断層撮影(CT)などを用いて評価されるため、脂肪変性が進行した「質の悪い」骨格筋においては骨格筋量が過大評価されてしまい、正確な評価が出来ていない可能性があるという。 研究者らは、京都大学医学部附属病院で実施された同種造血幹細胞移植後の患者186例のデータを用いて、大腰筋の臍の高さの断面積と平均CT値から算出される大腰筋質量指数(PMI)とX線画像密度(RD)を用いて、それぞれ筋肉の量と質を判断した。 主な結果は以下のとおり。・17~68歳(中央値49)の成人患者186例を対象に 、同じ性・年齢群の中で最も低い四分位値(下位 25%)の患者を低 PMI 群と低 RD 群に割り付けた。46例(24.7%)が低PMI群に、49例(26.3%)が低RD群に割り付けられた。・初診からallo-HSCTまでの経過期間中央値は7ヵ月(範囲:2~46ヵ月)、95%の患者がECOG-PS(0-1)良好であった。・低RDは、移植後の非再発死亡率増加の有意な因子であった(調整後ハザード比[HR]:2.54、95%信頼区間[CI]:1.42~4.51、p

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ブタ心臓のヒトへの異種移植手術、初期の経過は良好/NEJM

 米国・メリーランド大学医療センターのBartley P. Griffith氏らの研究チームは、2022年1月7日、実験的なブタ心臓のヒトへの異種移植手術を世界で初めて行った。患者は、自発呼吸が可能になるなど良好な経過が確認されたが、約2ヵ月後の3月8日に死亡した。臓器不足の解消につながると期待された遺伝子編集ブタ心臓の移植の概要が、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号に短報として掲載された。ECMO導入重症心不全の57歳男性 患者は、慢性的な軽度の血小板減少症、高血圧症、非虚血性心筋症を有し、僧帽弁形成術の既往歴がある57歳の男性で、左室駆出率(LVEF)10%の重症心不全により入院となった。複数の強心薬の投与が行われたが、入院11日目には大動脈内バルーンポンプが留置され、23日目には末梢静脈-動脈体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された。 患者は、4つの心臓移植プログラムの審査を受けたが、いずれも許可されなかった。研究チームは、実験的な異種移植が、内科的治療や静脈-動脈ECMOの継続に劣る可能性はないと考え、米国食品医薬品局(FDA)に申請を行い、承認を得た。 今回、実施された異種移植の方法は、拒絶反応を起こさないよう10の遺伝子が編集されたブタドナー(Revivicor製)、免疫抑制薬であるヒト化抗CD40モノクローナル抗体KPL-404(Kiniksa Pharmaceuticals製)、XVIVO心臓灌流システム(XVIVO Perfusion製)を組み合わせた心臓保存療法である。移植後の初期経過:洞調律維持、拒絶反応なし 移植後、乏尿性急性腎不全が持続したため、腎代替療法が施行された。2日目には気管チューブが抜管され、胸部X線写真では肺野が明瞭に描出された。強心薬投与の必要はなく、移植後4日目にECMOから離脱した。 移植後6日目のSwan-Ganzカテーテル抜去前に、低用量ニカルジピンの投与下で、平均収縮期血圧は130~170mmHg、平均拡張期血圧は40~60mmHgで、肺動脈圧は収縮期32~46mmHg、拡張期18~25mmHgであり、中心静脈圧は6~13mmHgだった。心拍出量は5.0~6.0L/分で、体表面積当たりの1回拍出量は65~70mL/m2であった。また、異種移植心は70~90拍/分で洞調律を維持し、LVEFは55%以上を保持していた。 移植後12日目に腹膜炎が発症し、回復したものの非経口栄養に移行した。悪液質が悪化し、体重は入院時の85kgから術後の最低値で62kgまで減少した。 免疫抑制薬として、KPL-404のほかに、移植後1日目からミコフェノール酸モフェチルが投与されたが、顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)による治療で重度の好中球減少症が発現したため21日目に中止され、35日目からはタクロリムスの投与が開始された。 ドナー特異的抗体の値は、免疫抑制薬の導入後もベースラインを下回っており、移植後47日目まで低値で推移したが、43日目の免疫グロブリンの静脈内投与でIgG値が急激に上昇し、IgM値も上昇した。血清トロポニンI値は移植後に上昇したが、24日目にはベースラインの値に戻り、その後35日目に急激に上昇し始めた。 移植後34日目の心内膜心筋生検では、拒絶反応は認められなかった。患者は、心血管系のサポートなしにリハビリテーションが可能であり、異種移植心は拒絶反応を示すことなく正常に機能した。 移植後43日目に、傾眠が強くなり、気管挿管が行われた。予防対策を行っていたにもかかわらず、胸部X線と気管支鏡検査でウイルスまたは真菌感染を示唆する所見が得られた。また、微生物無細胞DNA(mcfDNA)検査では、ブタサイトメガロウイルス(pCMV)(suid herpesvirus 2とも呼ばれる)の顕著な増加が認められ、ウイルス感染の可能性が懸念された。ドナーの脾臓と患者の末梢血単核細胞(PBMC)を用いて定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)による検証を行ったところ、両方の検体ともpCMV陽性であり、ドナーがpCMVに潜伏感染していた可能性が示唆された。47日目には、気管抜管が行われ、患者は室内でのリハビリテーションを再開した。異種移植の失敗:検死所見は典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず 移植後48日目、患者は109日ぶりにベッドから解放された。しかし、49日目、軽度の腹部不快感と膨満感に伴い、血清乳酸値が8時間で4mg/dLから11.2mg/dLに上昇し、低血圧が発生したため気管挿管が行われた。肢端チアノーゼが発現し、移植後初めて心拍出量の低下が示唆された。 心エコー図検査でLVEFは65~70%を示したが、左室壁厚(1.7cm)と右室壁厚(1.4cm)の著明な増大、および左室内腔サイズ(3.2~3.5cm)の縮小が認められ、global longitudinal strainの値は劇的に低下(悪化)した。患者家族と相談し、49日目の夕方、静脈-動脈ECMOが再導入された。 移植後50日目の2回目の心内膜心筋生検では、抗体関連型拒絶反応や急性細胞性拒絶反応はみられなかったが、赤血球漏出および浮腫による局所毛細血管損傷が認められた。トロポニンI値は上昇していた。異種移植心由来無細胞DNA(xdcfDNA)値は、異種移植心特異的IgG値やIgM値と共にピークに達していたことが、後に判明した。抗体関連型拒絶反応の非典型的な発現を疑い、治療が開始された。 移植後56日目の3回目の心内膜心筋生検では、病理学的抗体関連型拒絶反応(国際心肺移植学会[ISHLT]のGrade1)が確認された。間質への赤血球漏出や浮腫は、前回の生検時に比べて少なかったが、心筋細胞の40%が壊死していた。 研究チームは、異種移植心に不可逆的な損傷が生じていると判断し、患者家族と相談して移植後60日目に生命維持装置を停止させた。検死では、心臓の重量が移植時の328gから600gに増加していた。心筋細胞や心臓内皮細胞などの所見は、典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず、このような損傷をもたらした病態生理学的なメカニズムの解明に向けた研究が進行中だという。 著者は、「異種移植心の機能不全に、患者の重度の体力減退と術後の複雑な経過が重なり、移植後60日目に、それ以上の高度な支持療法は行わないこととなった」と結んでいる。

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筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。筋肉量は睡眠障害の自覚レベルと飲酒に有意に関連 本研究の対象は、2014年4月1日~2020年6月30日に東海大学医学部付属東京病院で抗加齢ドックを受診した成人男性160名のうち、睡眠時無呼吸症、脳血管障害、肝機能障害の治療中の5名を除いた155名。In-bodyによる筋肉量、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アディポネクチンを検査し、自記式質問票による睡眠時間(6時間未満/6時間以上)、睡眠障害の自覚レベル、喫煙習慣・飲酒習慣・運動習慣・朝食の有無、夕食開始時刻(18時以前/18~20時/20時以降)、入眠剤の服用の有無について、筋肉量との関係を相関分析および重回帰分析で検討した。さらに、60歳未満76名と60歳以上79名の2群に分け、各群において睡眠、朝食摂取、夕食時刻と筋肉量との関係を調べた。 筋肉量が睡眠などの生活習慣とどのように関連するのか調査し解析した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、入眠剤の服用、喫煙習慣を調整した場合、睡眠障害の自覚レベル(睡眠の満足感)、飲酒が筋肉量と有意に関連していた。・60歳未満では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また夕食開始時刻が遅いほど、筋肉量が有意に減少した。・60歳以上では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また朝食を毎日摂取していない場合に筋肉量が有意に減少した。 増田氏は、本研究の結果から良質な睡眠による筋肉疲労の回復を示唆する可能性、睡眠の満足感が睡眠リズムの障害を反映している可能性を考察している。睡眠リズムの障害があると成長ホルモンの分泌低下や、グリア細胞の機能低下があることが報告されているという。なお本研究の限界として、横断研究であり、対象者数が少なく、運動強度を設定していないことなどを挙げている。

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第114回 療養病床の終焉、実態に即した「慢性期重症治療病床」へ

「療養病床の終焉がすぐそこに近づいてきた」。日本慢性期医療協会(日慢協)の武久 洋三会長は、会長職としては最後の定例記者会見となる5月19日、刺激的な発言をした。「今では療養病床は、病床の実態が療養ではなく、慢性期重症治療病床となっている。もはやこのような病床は療養病床とは言えない」との見解を述べた。療養病床の入院患者は、決して療養が必要な患者ではなく、むしろICU(集中治療室)に近いような重度の高齢者がほとんどであるとの現状認識を示したうえで、病床の名前を実態に即した「慢性期重症治療病床」にただちに変更すべきであると提案した。重症高齢患者を短期間の治療で日常生活に戻す役割に療養病床の変遷を見ると、まず1983年に特例許可老人病棟が導入され、1992年に療養型病床群が創設された。2000年には療養病棟入院基本料が新設され、現在に至っている。以前は療養が必要な病床として、高齢の寝たきり患者の受け入れを主に担っていたが、2006年に医療区分が導入され、重症である医療区分2・3患者の割合は「療養病棟入院基本料1」(以下、療養1)で8割以上、「療養病棟入院基本料2」(以下、療養2)で5割以上が求められている。2010年には療養病棟入院基本料が再編され、20対1の療養1と、25対1の療養2という看護師配置基準が入った。2018年に、25対1をやめ、20対1に一本化することが決定。介護保険制度の施行などにより、療養病床の役割は「重度の高齢患者を受け入れ、短期間の治療で日常生活に戻す」ことになっている。実際、日慢協会員病院は、療養1で50%以上の患者を日常生活に戻している実績がある。療養病床の「療養」という言葉には「養生」のイメージが強いが、現状は「治療」の要素が強い。それにもかかわらず、療養病床と呼ばれていることに対して、武久会長は異を唱えたわけだ。「療養的な病床はもうやめなさいということ」2022年度診療報酬改定も、療養病床が「治療」の病床でない場合は評価しない方針を示している。療養病床である地域包括ケア病棟に対して、救急医療提供などを行わない場合は入院料を5%減算するなど、複数の減算規定が盛り込まれた。「5%減算されたら、病院によっては収支トントン状態が少々赤字に転じる可能性がある。10%減算されると、完全に赤字になる」と武久会長。療養病棟入院基本料の経過措置病棟は、今回の改定でそれまでの15~25%減算となった。武久会長は「要するに、もうやめなさいということだ」と述べた。武久会長が2008年に日本療養病床協会の会長に推挙された際の条件として、協会名を日本慢性期医療協会にすることをお願いして現在の協会名に改称された。そして14年が経過し、武久会長は「会の名称を変えたのは正しかった。療養病床という病床名を慢性期重症治療病床に変えるべきだ」と訴えた。目指すは地域の医療ニーズに応えられる多機能化そのうえで、「急性期医療だけでは日本の医療制度は完遂しない。そして全床療養病床だけの病院は消滅するだろう。地域の高齢の慢性期患者や要介護者の急変も治療できないような病院は、地域で必要とされなくなる」と指摘。「これからの会員病院は慢性期多機能病院として、地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟を配置し、2次救急指定を取って自宅・居住系施設などの入所者の急変時対応を行い、地域多機能病院として地域の信頼を得る努力をするべきだ」と提言した。病院は看取りの場ではない。病院は治療の場である。治る見込みがある患者を治療する場である。看取りは介護医療院などで慎重に行うべきだろう。武久会長の考えは、療養病床を持つ病院に対して、地域の医療ニーズに応じた多機能化を求めている。

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地域一般住民におけるフレイルな高齢者に対する多因子介入が運動機能障害を予防する(解説:石川讓治氏)

 日本老年医学会から提唱されたステートメントでは、Frailtyとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念であるとされている。わが国においてはフレイルと表現され、要介護状態や寝たきりになる前段階であるだけでなく、健康な状態に戻る可逆性を含んだ状態であると考えられている。フレイルの原因は多面的であり、運動、栄養改善、社会的なサポート、患者教育、ポリファーマシー対策といった多因子介入が必要であるとされているが、加齢という最大のフレイルのリスク要因が進行性であるため、フレイルの要介護状態への進行の抑制は困難を要する場合も多い。 SPRINTT projectは、欧州の11ヵ国16地域における1,519人の一般住民(70歳以上)を対象として、SPPBスコア3~9点、四肢骨格筋量低下、400m歩行機能などから身体的フレイルやサルコペニアと見なされた759人に対して、多因子介入(中等度の身体活動をセンターにおいて1週間に2回および家庭において週に4回、身体活動量の測定、栄養に関するカウンセリング)を行った群とコントロール群(1ヵ月に1回の健康的な老化に関する教育)を比較した。1次評価項目は運動機能低下(400mを15分未満で歩行困難)、副次評価項目は運動機能低下持続(400m歩行機能、身体機能、筋力、四肢骨格筋量の24~36ヵ月後の変化)であった。1次評価項目はSPPBスコア3~7の対象者において評価され、追跡期間中に身体機能低下は多因子介入群で46.8%、コントロール群で52.7%に発症し、多因子介入によって22%(p=0.005)の有意なリスク低下が認められた。運動機能低下持続は多因子介入群で21.0%、コントロール群で25.0%に認められ、多因子介入によって21%のリスク低下が認められる傾向があった(p=0.06)。 本研究の結果は、フレイルやサルコペニアを有する地域一般住民に対する多因子介入の有用性を示したものであり、地方自治体などが行っている“通いの場”、“集いの場”などでの運動教室や栄養教室をサポートするエビデンスになると思われる。またデイサービスなどの老人福祉施設においても、本研究の介入方法は参考になると思われる。比較的健康であると思われた地域一般住民のデータにおいても、約3年の間に対象者の約半数が運動機能低下を来しており、心不全(7.2%)、がん(13.4%)、糖尿病(22.4)など併存疾患の多いことが驚きであった。現在、病院に通院中で何らかの疾患を要するフレイル患者の場合、6ヵ月以上の慢性期リハビリ介入は、医療保険診療では困難な場合が多い。そのため、病院通院中の患者でありながら、フレイルに対する多因子介入は老人保健施設にお願いせざるを得ない状況がある。病院でフレイル患者を診療する医師としては、医療機関においても慢性期リハビリが継続できるような医療保険システムの構築を願っている。 本研究において、運動機能低下の発症がコックスハザードモデルで評価されているが、登録時はフレイルで、運動機能低下の発症後に、多因子介入で健常に戻った場合でも、運動機能低下発症ありと評価されていることに多少の違和感がある。フレイルは可逆性のある状態であるにもかかわらず、解析上はあたかもエンドポイントであるかのように評価されている。定義上、フレイルは可逆性で、要介護状態は非可逆の要素が多いとされているが、日常臨床では可逆性と非可逆の境界を見極めるのは困難な場合が多い。身体機能低下は悪化と改善を繰り返しながら、徐々に要介護状態へ進行していく。本研究の運動機能低下は、400m歩行が15分以内に困難な状態として定義されているが、これをもって運動機能低下(不可逆なポイント)と定義していいのかどうかも疑問が残った。日常臨床上における要介護状態は、介護保険制度の要介護度を用いて判断される場合が多いが、基本的ADLの低下をもって判断され、本研究の運動機能低下の判定基準とは異なることに注意が必要である。

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虚弱高齢者への運動+栄養介入、運動障害の発生を約2割減/BMJ

 身体的フレイルおよびサルコペニアが認められるShort Physical Performance Battery(SPPB)スコアが3~9の70歳以上に対し、中等度身体的アクティビティ指導(対面週2回、家庭で週4回以下)と個別栄養カウンセリングを実施することで、運動障害の発生が減少したことが示された。イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのRoberto Bernabei氏らが、技術的サポートと栄養カウンセリングによる身体活動ベースの多面的介入が、身体的フレイルとサルコペニアが認められる高齢者の運動障害を予防するかを確認するため検討した無作為化試験「SPRINTT project」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「身体的フレイルとサルコペニアは、虚弱高齢者の可動性を維持するターゲットになりうることが示された」とまとめている。BMJ誌2022年5月11日号掲載の報告。SPPBスコア3~9、400m自力歩行可能な70歳以上を対象に試験 研究グループは2016年1月~2019年10月31日に、欧州11ヵ国、16ヵ所の医療機関を通じて、身体的フレイルとサルコペニアを有し、SPPBスコアが3~9、除脂肪体重が低く、400mの自力歩行が可能で、地域に居住する70歳以上の男女1,519例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方(介入群)には中等度身体アクティビティを試験センターで週2回、家庭で週4回まで実施。身体アクティビティは、アクチメトリ(活動量)データを用いて個別に調節した。また、個別に栄養カウンセリングも行った。もう一方(対照群)には、月1回、健康的なエイジングに関する教育を行った。介入と追跡は最長36ヵ月にわたった。 主要アウトカムは運動障害で、15分未満での400m自力歩行不可で定義された。事前に規定した副次アウトカムは、運動障害の持続(400m自力歩行が2回連続で不可)、ベースラインから24ヵ月および36ヵ月時点の身体機能・筋力・除脂肪体重の変化などだった。 主要比較は、ベースラインSPPBスコアが3~7の1,205例を対象に行い、SPPBスコアが8/9の被験者314例については探索的目的で別に解析を行った。運動障害発生率は介入群46.8%、対照群52.7%でハザード比0.78 被験者1,519例(うち女性1,088例)の平均年齢は78.9歳(SD 5.8)、平均追跡期間は26.4ヵ月(9.5)だった。 SPPBスコア3~7の被験者における運動障害の発生は、介入群283/605例(46.8%)、対照群316/600例(52.7%)だった(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.67~0.92、p=0.005)。運動障害の持続が認められたのは、介入群127/605例(21.0%)、対照群150/600例(25.0%)だった(HR:0.79、95%CI:0.62~1.01、p=0.06)。 24ヵ月時点および36ヵ月時点でのSPPBスコアの群間差も、それぞれ0.8ポイント(95%CI:0.5~1.1、p<0.001)、1.0ポイント(0.5~1.6、p<0.001)といずれも介入群を支持する結果が示された。 24ヵ月時点の握力低下は、介入群の女性で対照群よりも有意に小さいことが示された(0.9kg、95%CI:0.1~1.6、p=0.028)。 除脂肪体重の減少は、24ヵ月時点で介入群が対照群よりも0.24kg少なく(95%CI:0.10~0.39、p<0.001)、36ヵ月時点では0.49kg少なかった(0.26~0.73、p<0.001)。 重篤な有害事象は、介入群237/605例(39.2%)、対照群216/600例(36.0%)報告された(リスク比:1.09、95%CI:0.94~1.26)。 なお、SPPBスコア8/9の被験者では、運動障害の発生は介入群46/155例(29.7%)、対照群38/159例(23.9%)だった(HR:1.25、95%CI:0.79~1.95、p=0.34)。

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英語で「食上げ」は?【1分★医療英語】第29回

第29回 英語で「食上げ」は?Mr. Smith is tolerating well with clear liquid diet.(スミスさんは水分を問題なく飲めているようです)Great. Let’s advance his diet from clear to full liquid diet.(いいですね。水分からペースト食に食上げしましょう)《例文1》Please advance diet as tolerated.(問題ない範囲で食上げしてください)《例文2》Let’s hold off on advancing his diet until we get the barium swallow results.(バリウム造影検査の結果が返ってくるまで、食上げはやめておきましょう)《解説》「食上げ」は、病院の中ではよく用いるものの、英会話スクールなどではなかなか出合うことのない表現だと思います。「食上げを行う」は“advance diet”と言いますので、丸ごと覚えてしまいましょう。また、流動食は“liquid diet”、軟菜食は“soft diet”、常食は“regular diet”と言います。“clear liquid”と“full liquid”の違いは、前者が水やスープ、後者がペースト食のようなものです。米国の病院では、三分粥、五分粥、全粥のような段階的に水分が減るお粥はありませんので、これに対応する英語はありません。ただし、普通のお粥は出す病院もあり、これは“congee”と呼ばれます。日本語の「漢字」に発音が近いので、渡米して間もないころ、「漢字?」と思わず聞き返してしまったことがありました。ちなみに「漢字」の英単語は“chinese character”です。また、“advance diet”という表現と一緒に“as tolerated”という表現もよく用います。「耐えられる範囲で」という意味で、食上げだけでなく、安静度やリハビリテーションのオーダーの際にも用いられる表現ですので、併せて覚えておくとよいでしょう。講師紹介

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事例050 骨粗鬆症治療のイベニティ皮下注で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説骨粗鬆症の患者にロモソズマブ(商品名:イベニティ皮下注)(以下「同注射薬」)を2筒皮下注射したところ、皮下注射の手技料がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。レセプトには注射部位の記入を求められていません。また、初回の投与であるため、通知にある再投与開始時の理由をコメント記載する場合には該当しませんでした。査定理由を調べるために、カルテを確認しました。前月に同注射薬投与の是非を判定するための検査が行われていました。皮下注射は部位を変えて2ヵ所に注入したことも記載されていました。不備はありません。再度、増減点票を確かめると、他にも同注射薬に皮下注射手技料に査定があることに気付きました。調べてみると同注射薬を投与している患者すべてにおいて、皮下注射手技料が1回に査定となっていました。同注射薬の添付文書をみると、「1回当たり210mgを皮下注射する」とあります。同注射薬1筒105mgを2本使用することになります。総量の指定があるために、「皮下注射手技料は1回しか認めない」と審査基準が変更されたようです。医師と会計担当者には、皮下注射手技は1回のみの算定となったことを伝え、レセプトチェックシステムの改修を行い査定対策としました。

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修復不能な腱板断裂、肩峰下バルーンスペーサーは無効/Lancet

 修復不能な肩腱板断裂に対し、関節鏡視下デブリドマンと比較しInSpaceバルーン(米国Stryker製)の有効性は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のAndrew Metcalfe氏らが英国の24施設で実施したアダプティブ群逐次デザインの無作為化二重盲検比較試験「START:REACTS試験」の結果、示された。InSpaceデバイスは、2010年にCEマークを取得し、2021年7月に米国食品医薬品局(FDA)で承認されるまで、米国以外では約2万9,000件の手術で用いられていた。しかし、InSpaceデバイスの有効性については、初期の小規模なケースシリーズで有望な結果が報告されていたものの、いくつかの研究では好ましくない結果や炎症・疼痛がみられる症例について報告され、無作為化試験のデータが必要とされていた。著者は今回の結果を受けて、「われわれは修復不能な腱板断裂の治療としてInSpaceバルーンを推奨しない」と結論づけている。Lancet誌オンライン版2022年4月21日号掲載の報告。12ヵ月後の肩スコアをデブリドマンのみとInSpaceバルーン留置併用で比較 研究グループは、保存療法の効果がなく手術の適応となる症状を有する修復不能な腱板断裂の成人患者を、上腕二頭筋腱切除を伴う肩峰下腔の関節鏡視下デブリドマンのみ(デブリドマン単独群)、またはInSpaceバルーン留置を併用したデブリドマン(デバイス群)の2群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、術中、肩の断裂と周辺構造の評価後に適格性を決定し(医師が腱板断裂を修復できると判断した場合は試験から除外)、断裂サイズを測定した後、中央ウェブシステムにアクセスすることで実施された。 患者および評価者は割り付けに関して盲検化された。盲検化は、両群とも手術の切開部を同じとし、手術記録の盲検性を保持し、治療群にかかわらず一貫したリハビリテーションプログラムを提供することで達成された。 主要評価項目は、12ヵ月時の肩スコア(Oxford Shoulder Score[OSS]、範囲:0~48[48が最良])である。 なお、本試験は2回の中間解析が計画されていたが、最初の中間解析で事前に規定された無益性の基準を満たしたため、2020年7月30日に募集と無作為化が中止された。デブリドマンのみがInSpaceバルーン留置併用より有効 2018年6月1日~2020年7月30日の期間に、385例の適格性が評価され、適格と判断され試験参加に同意を得られた患者のうち117例が治療群に割り付けられた(デブリドマン単独群61例、デバイス群56例)。43%が女性、57%が男性であり、患者背景は両群で類似していた。 12ヵ月時の主要評価項目のデータは117例中114例(97%)から得られた。 12ヵ月時の平均(±SD)OSSは、デブリドマン単独群(59例)が34.3±11.1、デバイス群(55例)が30.3±10.9であった。適応的デザインで補正した平均群間差は、-4.2(95%信頼区間[CI]:-8.2~-0.26、p=0.037)であり、デブリドマン単独群が優れていた。 有害事象に関しては、両群間で差はなかった。

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コロナ罹患後症状マネジメント第1版発表、暫定版を改訂/厚労省

 厚生労働省は、2021年12月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を改訂、新たに「新型コロナウイルス感染症(COVID19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」を4月28日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 今回の改訂では、神経症状と精神症状はそれぞれ別の章とし、皮膚症状の章を新設したほか、各章が共有の小項目の見出しとなった。また、内容としてかかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医・拠点病院の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、神経、精神、痛み、皮膚ごと、また、小児への対応、さまざまな症状に対するリハビリテーション)について記載を行った。 なお、本別冊(第1版)は、2022年4月現在の情報を基に作成しており、今後の知見に応じて、内容に修正が必要となる場合がある。厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得る必要があるとしている。■目次と主な改訂点1)罹患後症状・代表的な罹患後症状の図を追加・今後の課題の内容を大きく改訂2)罹患後症状を訴える患者へのアプローチ・CDCの見解などを追加3)呼吸器症状へのアプローチ※以下の各診療領域のアプローチでは共通項目として「1.はじめに」、「2.科学的知見」、「3.症状へのアプローチ」、「4.フォローアップすべき所見・症状」、「5.プライマリケアのおけるマネジメント」、「6.専門医・拠点病院への紹介の目安・タイミング」、「7.専門医・拠点病院でのマネジメント」に内容が整理され、表記されている。4)循環器症状へのアプローチ5)嗅覚・味覚症状へのアプローチ6)神経症状へのアプローチ・COVID-19罹患後に遷延する症状の表を追加・診療フローチャートの図を追加・難治性症例の追加7)精神症状へのアプローチ8)“痛み”へのアプローチ・SARS-CoV-2感染による疼痛発症機序と考えられるメカニズムを追加・筋痛、関節痛などの症状の変化の図を追加9)皮膚症状へのアプローチ(新設)・診療のフローチャートを掲載・COVID-19関連皮膚症状の臨床的特徴、病理組織学的所見、全身症状の重症度、治療法の選択についてのまとめ一覧を掲載10)小児へのアプローチ・診療のフローチャートを追加11)罹患後症状に対するリハビリテーション・診療のフローチャートを追加12)罹患後症状と産業医学的アプローチ・具体的な事例4つを追加

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事例049 骨粗鬆症治療のプラリア皮下注で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説骨粗鬆症の患者に行ったデノスマブ(商品名:プラリア皮下注)60mg(以下「同注射」)が、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。1筒当たりの薬価が高額のためにカルテを確認しました。カルテの前回受診日には、「次回来院予定は、6ヵ月後」と患者に説明したことが記載されていました。今回は、そろそろ6ヵ月となるからと来院された模様です。医師は、「実際には5ヵ月と少しの来院であるが、おおむね6ヵ月となるために注射は可能」と判断して実施されていました。レセプトには、前回と今回の注射施行日が記載されています。その他のコメントは記載がありませんでした。同注射の添付文書には、「骨粗鬆症の患者には60mg1筒を6ヵ月に1回、皮下注射する」と記載されています。審査支払機関では期間制限のある投与に対しては厳密に審査がなされます。このような事例では、計算時やレセプト点検時における対応ができません。大きな金額の査定につながることになります。査定対策として医師には、投与期間に期限のある薬剤に対しては患者に再度の来院を依頼していただき、医学的にやむを得ず期限を外れて必要と判断された場合には、カルテとレセプトにその旨を記載していただくことをお願いしました。

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COVID-19患者のリハビリテーション治療とその効果/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院し、体力が落ちた中で患者のリハビリテーションはいつから開始するべきか、またその効果はどうなのだろう。 日本リハビリテーション医学会(理事長:久保 俊一)では、理事長声明を公開し、「新型コロナウイルス感染症の入院患者さんは狭い病室内への隔離によって運動量や活動量が低下しやすいために、隔離期間中であっても、発症早期から機能維持を目標とした適切なリハビリテーション治療を可能な限り実施していただきますよう、各医療機関での積極的な取り組みをお願いいたします。また、新型コロナウイルス感染症から回復した患者さんを受け入れる後方支援医療機関あるいは介護施設等でのリハビリテーション医療の継続とリハビリテーションマネジメントの実施を決して疎かにされませんようにお願いいたします」と早期からのリハビリテーション導入を推奨している。 また、4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「COVID-19感染患者に対するリハビリテーション治療」が報告されている。 この報告は、田島 文博氏(日本リハビリテーション医学会副理事長/和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 教授)が自施設の取り組みも含め発表したものである。新型コロナウイルス感染症患者、リハビリで運動機能維持 COVID-19感染症患者に対するリハビリテーション医療の必要性として、2020年4月に全米保健機構(PAHO)が「COVID-19感染症患者には感染予防を徹底した上で、積極的なリハビリテーション治療が必要である。患者の活動性を低下させず、治療効果を最大限に引き出し、病床の有効利用と社会的資源の活用に繋がる」と提唱したこと、同年5月に日本リハビリテーション医学会の理事長声明で「急性期の集中治療室(ICU)での肺炎患者から回復期の身体・精神機能低下に対するリハビリテーション治療までリハビリテーション医療は不可欠」と提言のあったことを示した。また、2022年2月に、日本リハビリテーション医学会は「感染対策指針(COVID-19含む)」を発表し、さらなる安全なリハビリテーション治療の導入を勧めたほか、上述の理事長声明が4月に出されたことを示した。新型コロナウイルス感染症入院早期からのリハビリで転帰も良好 田島氏の所属する和歌山県立医科大学では、ICUで人工呼吸器にて治療している重症患者に対してもリハビリテーション治療を行っている。重要なことは、「身体を起こすこと」と「運動すること」だという。これは軽症・中等症患者でも同じで、分院では屋外での訓練を含め、運動療法を主体としたリハビリテーション治療も実施している。また、高齢者でもリハビリテーション治療を行えば、隔離期間が終わると同時に退院できると報告している。 中等症・軽症コロナ病棟のリハビリテーション治療実績について、同大学リハビリテーション科では、すべての患者をリハビリテーション科医師が診察し、必要と判断した場合にリハビリテーション治療を処方している。コロナ患者には、感染対策の教育を十分に行った療法士を担当とし、同科医師の指示に基づく、可及的長時間高負荷の運動療法中心を実施している。 実際、オミクロン株流行期におけるリハビリテーション診療に現状について、70歳以上の高齢者では94人が入院し、そのうちの88人(93.6%)にリハビリテーション治療が実施された。88人の転帰では、死亡者はなく、自宅・施設退院は79人(89.8%)、転院は9人(10.2%)だった。なお、院内感染はなかった。新型コロナウイルス感染症患者にリハビリ医療を導入する取り組み 田島氏は新型コロナウイルス感染症患者へのリハビリテーション医療導入のメッセージとして次の3項目を掲げている。1)コロナ医療においても、急性期からリハビリテーション医療を理解した医師が診察し、感染対策を指導された療法士がリハビリテーション治療を行えば、運動機能の低下は防げること。2)コロナ患者に対するリハビリテーション治療では急性期からの座位・立位訓練と運動療法が必須であること。3)コロナ医療において、リハビリテーション治療対応が困難な場合、可及的速やかにリハビリテーション治療可能な医療機関などに転院させること。

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ストレートネック発生の原因は日常の姿勢から/アイスタット

 スマートフォンの普及は、私たちの生活に利便性をもたらした一方で、若年からの老眼やドライアイなど眼への悪影響、ストレートネック(スマホ首)の発生などを起こしている。一般的にこれらの影響、とくにストレートネックなどの発生割合はどの程度だろうか。ストレートネックを知らない人は約7割 株式会社アイスタットは、4月6日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の300人が対象。■調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年4月6日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~59歳/全国の有職者)を対象■アンケートの概要・ストレートネックを知らない人の割合は約7割近く。意外に浸透はしていない。・ストレートネックと思う人の割合は約4割、「20・30代」で多い。・ストレートネックで「ある人」と「そうでない人」の生活習慣の違い第1位は「猫背になりながらのデスクワーク」・猫背や反り腰の人ほど、ストレートネックになりやすい。・「身体が硬い」と「ストレートネック」の関連性はあるといえない。・「視力が落ちた、見えづらい」と「ストレートネック」の関連性はあるといえる。・日頃、悩んでいる症状で肩こり、首こりがある人ほど、ストレートネックである。ストレートネックの原因は日頃の生活習慣 質問1で「ストレートネックを知っているか」(単一回答)を聞いたところ、「初めて聞いた、知らない」が37.3%、「知っている」が33.0%、「聞いたことがあるが、内容まで知らない」が29.7%で多かった。大きくストレートネックの認知の有無別に分類すると「知っている」が33%、「知らない」が67%で、約7割近くの人が認知していなかった。性差では、「知っている」の回答について、女性(43.0%)の方が男性(28.0%)に比べてストレートネックの認知度が高く、女性の方が健康に強い関心をもつ傾向が表れた。 質問2で「ストレートネックの症状があると思うか」(単一回答)を聞いたところ、「あまりそう思わない」が34.3%、「全くそう思わない」が30.3%、「ややそう思う」が21.7%と多かった。年代別では、ストレートネックと思う人は「20・30代」に最も多く、すでに医療機関で「スマホ首」と診断された人も4.7%いた。 質問3で「日頃の生活習慣で、あてはまるものについて」(複数回答)を聞いたところ、「長時間のスマホやパソコン操作」が58.3%、「猫背になりながらのデスクワーク」が37.3%、「うつむいた姿勢での読書」が14.3%と多かった。一方で、「どれにもあてはまらない」が22.0%と回答数も多く、日常生活で必ずしも前傾姿勢をしている人が多いわけでもないことがわかった。また、ストレートネックの有無別では、アンケートで聞いたすべての生活習慣であてはまると回答した人は「ストレートネックである」の人ほど多かったことから、生活習慣がストレートネックの原因の一つとなっていることがうかがえた。 質問4で「自分は猫背あるいは反り腰だと思うか」(単一回答)を聞いたところ、「どちらかといえばそう思う」が34.7%、「どちらかといえばそう思わない」が24.0%、「非常にそう思う」が22.3%と多かった。大きくわけると「そう思う」が57%、「そう思わない」が43%と、前傾姿勢を意識していた回答者が多かった。また、ストレートネック有無別にみると「猫背あるいは反り腰」を回答した人は「ストレートネックである」が78.3%、「そうでない」が45.4%で、「ストレートネックである」と回答した人の方が多かった。ストレートネックの原因、運動の有無と日常生活での姿勢が関係 質問5で「身体が硬い方(柔軟性がない方)だと思うか」(単一回答)を聞いたところ「非常にそう思う」と「どちらかといえばそう思う」が同数で34.7%、「どちらかといえばそう思わない」が17.7%と多かった。また、ストレートネック有無別にみると「身体が硬い」を回答した人は「ストレートネックである」が74.5%、「そうでない」が66.5%で、「ストレートネックである」と回答した人の方が多かった。  質問6で「最近、視力が落ちた、もしくは見えづらいと思うか」(単一回答)を聞いたところ「どちらかといえばそう思う」が38.3%、「非常にそう思う」が31.7%、「どちらかといえばそう思わない」が17.7%と多かった。また、ストレートネックの有無別にみると「見えづらい」と回答した人は「ストレートネックである」が79.2%、「そうでない」が64.9%で、「ストレートネックである」と回答した人の方が多かった。 質問7で「最近、選択肢の症状で悩んでいることはあるか」(複数回答)を聞いたところ、「肩こり」が42.7%、「首こり」が33.3%、「視力低下・疲れ目・ドライアイ」が29.7%の順で多かった。また、ストレートネックの有無別では、アンケートで聞いたすべての症状で、あてはまると回答した人は「ストレートネックである」の人ほど多かった。とくに、ストレートネックで「ある人」と「そうでない人」の主な違いは何かを調べたところ、両方の差分より、第1位は「肩こり」が33.2ポイント、第2位は「首こり」が28.7ポイント、第3位は「めまい・ふらつき・吐き気」が18.9ポイントで、肩こり、首こりの症状があると回答している人ほど、ストレートネックである傾向がみられた。 質問8で「日頃、行っていることはあるか」(複数回答)を聞いたところ、「ストレッチをする」が38.7%、「姿勢を正しくする」が22.7%、「あお向けで寝る」が14.7%の順で多かった一方で、「(選択肢の)どれにもあてはまらない」と回答した人も39.0%いた。また、ストレートネックで「ある人」と「そうでない人」の主な違いは何かを調べたところ、両者の差分より、第1位は「ストレッチをする」が17.5ポイント、第2位が「スマホの使用時に姿勢を注意する」の14.6ポイント、第3位が「姿勢を正しくする」の11.6ポイントだった。運動の有無、日常生活での姿勢がストレートネックの原因に大きく関係している可能性がうかがえた。

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末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

 間欠性跛行を呈する末梢動脈疾患(PAD)成人患者において、在宅での歩行運動行動変容介入は通常ケアと比較し、3ヵ月時点での歩行距離を改善することが示された。英国・ロンドン大学のLindsay M. Bearne氏らが、多施設共同無作為化評価者盲検比較試験「Motivating Structured Walking Activity in People With Intermittent Claudication trial:MOSAIC試験」の結果を報告した。PAD患者に対し在宅での歩行運動介入が推奨されているが、その有効性に関するエビデンスはさまざまであった。JAMA誌2022年4月12日号掲載の報告。PAD患者190例、理学療法士による歩行運動行動変容介入の有効性を通常ケアと比較 研究グループは、2018年1月~2020年3月の期間に英国の病院6施設において、50歳以上の間欠性跛行を呈するPAD患者190例を、動機付けアプローチを用いるよう訓練を受けた理学療法士による歩行運動行動変容介入を受ける群(介入群)または通常ケア群に、1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間追跡した(最終追跡調査日は2020年9月8日)。評価者および統計解析者は、解析完了まで盲検化した。 主要評価項目は、3ヵ月後の6分間歩行距離(6MWT)(臨床的に意義のある最小変化量:8~20m)、副次評価項目は8項目で、そのうち3項目はWalking Estimated Limitation Calculated by History(WELCH)質問票(範囲:0[最も良好]~100)、簡易版疾患認識尺度(Brief Illness Perceptions Questionnaire:BIPQ)(範囲:0~80[80は疾患に対して否定的認識])、計画的行動理論(Theory of Planned Behavior)質問票(範囲:3~21[21が最高の態度、主観的規範、行動統制感、意図])であり、これらの尺度については臨床的に意義のある最小変化量は定義されなかった。3ヵ月後の6分間歩行距離、介入群で有意に改善 無作為化された190例(平均年齢 68歳、女性30%、白人79%、ベースラインの平均6MWT 361.0m)のうち、148例(78%)が3ヵ月間の追跡調査を完遂し、6MWTは介入群ではベースライン352.9mから3ヵ月後380.6mに増加したが、通常ケア群では369.8mから372.1 mへの変化にとどまった(変化量の補正後平均群間差:16.7m、95%信頼区間[CI]:4.2~29.2、p=0.009)。 副次評価項目8項目中、5項目は統計学的有意差が認められなかった。WELCHスコアの変化はベースライン→6ヵ月後で、介入群18.0→27.8、通常ケア群20.7→20.7(変化量の補正後平均群間差:7.4、95%CI:2.5~12.3、p=0.003)、BIPQスコアの変化は同様に介入群45.7→38.9、通常ケア群44.0→45.8(-6.6、-9.9~-3.4、p<0.001)、TPB質問票の構成項目である「態度」のスコアの変化は介入群14.7→15.4、通常ケア群14.6→13.9(1.4、0.3~2.5、p=0.02)であった。 重篤な有害事象は、介入群で13例、通常ケア群で3例報告されたが、すべて試験との関連性はない、または可能性は低いと判断された。

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医療マンガ大賞2021「たった一時間されど一時間」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)

医療マンガ大賞2021「たった一時間されど一時間」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)ケアネット部門受賞者・ささき かずよ(ぴよ)氏からのコメント治療の限界を感じたとき、家族に何をしてあげられるか。これは、闘病中の家族が向き合う切実な気持ちです。原作ではそんなご家族を支える支援者の心も感じたので、両方が伝わるように心がけて描きました。実際、命の瀬戸際で自宅へ帰ることは大変です。ご本人の意思確認が難しいこともあります。しかし、最期を自宅で迎えることは、ご本人の気持ちはもとより、見送るご家族を支えることにもつながるのではないでしょうか。正解の形はない中、そんな気持ちを少しでも伝えられたなら幸いです。この場をいただきありがとうございます。原作者様、ケアネット様、お読みいただいた皆様に感謝いたします。看護師/NHA認定トレーナーが看護・介護にNHAをお届けします!

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カムラティ・エンゲルマン病〔CED:Camurati-Engelmann Disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義カムラティ・エンゲルマン病は、進行性骨幹異形成症(progressive diaphyseal dysplasia)とも記載される常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる骨系統疾患である。本症は、1920年Cockayneによって初めて記載され、1922年Camuratiにより遺伝性であることが示唆された。1929年Engelmannにより、筋力低下と著明な骨幹異形成症を示す一例が報告され、本症の名前の由来となっている。現在では、過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、四肢痛を特徴とする疾患としてカムラティ・エンゲルマン病(Camurati-Engelmann病:CED)の表記が広く用いられている。現在までに150例を超える症例報告がある。家系内解析では、表現型に大きな幅があることが知られている。■ 疫学筆者らが、2014年に行ったアンケート調査(国内医療機関[計2,531施設]に送付し、1,470施設から回答を得ることができた)では、16症例が報告された。このうち、13症例が新規だと考えられた。アンケートから推定された新規患者は30症例程度であり、既知の患者と合わせて60名程度のCED患者がいると考えられる。このアンケートでの患者の定義は、発症年齢は大半が幼児期であるが、その症状は幼児期と青年成人期で異なり、幼児期は、筋力低下、易疲労性を主徴とし、青年成人期は、骨幹の疼痛、めまい、難聴を主徴とするものを対象にし、2診断の項目で示すX線画像所見もしくは検査所見を持つものとしている。■ 病因筆者らは、このCEDの3世代にわたる大家系(21名)を見出し、その臨床表現型についての検討を行った。罹患者、非罹患者をX線学的に同定し、家系内連鎖解析を行った。これにより、疾患遺伝子が19番染色体長腕に位置するTGFB1遺伝子であることを突き止めた。しかしながら、この遺伝子にみられる変化は、TGFB1の構造遺伝子部分ではなく、関連蛋白(Latency associated protein:LAP)に存在する。当初の解析では、LAPドメインを不安定化する変異がTGFB1の遊離を促進することで成熟型TGFB1を増加させるものであると考えられていた。その後のシグナルペプチドでの変異やヒンジ以外の部分の変異での解析から、必ずしも成熟型TGFB1の増加必須なのではなく、情報伝達系として亢進する変異であれば、カムラティ・エンゲルマン病の表現型をとることが明らかになっている。■ 症状3主徴は、四肢の骨痛、筋力低下、易疲労感である。これらの3主徴の出現時期には、年齢依存性があることに注意が必要である。1)幼児期この時期の症状は、筋肉痛、筋力低下、歩行異常であり、骨痛を訴えることは少ない。2)思春期思春期前後から、運動後の骨痛や骨の自発痛が始まる。痛みの出現部位は、病変部である長幹骨の骨幹であることが多い。3主徴が整うのは思春期以後であることが多い。3主徴が整うころの体型としては、手足が長く筋肉の付きの悪い痩せ型であることが多く「マルファン様」と記載されることが多い。性別を問わず、思春期が遅れることも比較的よくみられる症状である。妊孕性に異常はみられない。3)成人期成人期以後は、上記の症状に加えて、頭蓋底の骨肥厚、骨硬化による症状が加わっていく。これには、神経孔の狭窄による神経麻痺などがあり、骨肥厚、骨硬化の進行により生じると考えられている。同様の病態生理から顔面神経マヒ、頭痛、うっ血乳頭、めまい、耳鳴、感音性難聴などの症状が生じうる。理由は不明であるが、女性患者の場合、妊娠によって四肢の疼痛が劇的に改善することが知られている。■ 予後妊孕性に問題はなく、生命予後が悪いという報告もない。しかしながら、頑固な耳鳴や日常生活に支障を来すほどの骨の自発痛は、患者を不安に陥れ精神的な不安定さを生じ、予期しない不幸な転帰をむかえることがあるので精神状態のフォローが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)疾患の診断には、上記の症状に加えて、X線画像所見が依然として最も価値があると考えられる。2014年の全国調査では、頭蓋骨側面、四肢長管骨X線画像所見もしくは骨シンチグラム画像所見で診断基準を設定して集計した。1)X線画像所見長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性の骨硬化像(*X線画像所見における頭蓋底の骨硬化像の有無は問わない)2)検査所見骨シンチグラムでの長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性とりこみ3)判定上記2項目のうち1項目を満たすもの図1 典型例頭蓋底の硬化像、頭蓋骨のびまん性の肥厚、長幹骨骨幹を中心とした硬化像。画像を拡大する図2 軽症例頭蓋底の硬化性変化はほとんどみられない。右尺骨近位部大腿骨遠位部の骨硬化、下腿の骨変化。画像を拡大する図3 典型例での99mTc-HMDP骨シンチグラフィー頭蓋底と長幹骨骨幹に左右対称的な取り込みを認める。画像を拡大する図1に典型例、図2に軽症例、図3には骨シンチグラフィーの所見を示す。X線画像所見では、軽症例で内骨膜中心の膜性骨化を示し、骨全体の変形は少ない。重症になるにつれ頭蓋底の骨硬化が進行し、外骨膜性の骨化が加わり骨の変形を来すのが観察できる。古典的には、赤沈の亢進、ALPの上昇の記載があるが、鑑別に用いることが可能なほどの診断的な意味はないと思われる。筆者らが経験した大家系においても、ALP、骨ALP、オステオカルシン、尿中デオキシピリジノリンなど汎用性の高い骨関連マーカーは、病気の存在、病勢と一致しない。また、この疾患の原因遺伝子であるTGFB1の血中濃度も病勢を反映するものではない。現在では、保険診療外ではあるがTGFB1遺伝子解析が可能となっており、機能亢進型の変異を検出することができれば診断を確定できるものと考えられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在までの報告からは、ステロイドの有効性を指摘するものが多い。プレドニンとして平均0.6mg/kg/日から開始し漸減する方法が一般的である。筆者らは、初期の投与期間を限定して、低容量で長期間服用する方法をとっている。しかしながら、投与方法については、一定の見解が得られていない。疼痛に対する効果はみられるものの、一過性であり周期的に繰り返し投与が必要である。最近、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のステロイド治療で使用されるDeflazacortでの治療経験が報告されるようになっており、経過が注目される1999年ビスフォスファネート製剤の有効性が報告されたが、筆者らの症例では効果はなく、2005年には第1世代、第2世代ビスフォスファネート製剤の否定的な追試が発表された。最近、第3世代のビスフォスファネートであるゾレドロンでの治療経験の報告がみられるようになっており経過を注視する必要がある。また、原因遺伝子がTGFB1の機能亢進にあることから、マルファン症候群と同じくロサルタンの応用が報告されるようになった。低血圧を惹起しない小児領域での実用的な量は、0.6~1.4mg/kg/日とされている。これまでの報告では、病態が完成していない思春期前の小児での成績がよく、成人後では改善が認められないとするものが多い。4 今後の展望現在、本疾患は、小児慢性特定疾病ではあるものの、指定難病には指定されていない。また、治療については、新規開発薬剤の適応拡大などが必要である。そのためにも難病政策として小児慢性特定疾病指定と指定難病指定の一元化が望まれるところである。5 主たる診療科整形外科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター カムラティ・エンゲルマン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2022年4月12日

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年代別身体活動の目安【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q10

年代別身体活動の目安Q10高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では高血圧予防としての運動習慣について、「健康づくりのための身体活動基準2013」の推奨内容が明記された。18~64歳、65歳以上それぞれにおける、推奨される運動強度と時間は?

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