サイト内検索|page:2

検索結果 合計:245件 表示位置:21 - 40

21.

帯状疱疹後神経痛、crisugabalinが有効

 帯状疱疹後神経痛を有する成人患者へのcrisugabalin(HSK16149)40mg/日または80mg/日は、プラセボとの比較において忍容性は良好であり、疼痛の改善も示された。中国・南昌大学第一付属病院のDaying Zhang氏らが、crisugabalinの有効性と安全性を検討した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。同薬剤は中国で開発中の経口カルシウムチャネルα2δ-1リガンドである。中国では、帯状疱疹後神経痛の負担が大きいことから、既存のカルシウムチャネルリガンドよりも有効性が高く、神経毒性の少ない新薬が待望されているという。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年9月25日号掲載の報告。 本試験は2021年11月9日~2023年1月5日に、中国国内の3次医療センター48施設で2パートに分けて実施された。 パート1は、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験として実施され、2週間のスクリーニング期、1週間の導入期、12週間の二重盲検治療期で構成された。パート2は、14週間の非盲検下での延長試験であった。治験責任医師、データ分析者、治験担当医師および患者は、割り付けを盲検化された。 対象患者は、過去1週間のNRS(Numerical Rating Scale:0[痛みなし]~10[最大の痛み])に基づく平均疼痛スコア(average daily pain score)が4以上の帯状疱疹後神経痛を有する成人患者とした。なお、プレガバリン(300mg/日以上)またはガバペンチン(1,200mg/日以上)で疼痛コントロール不良の患者は除外された。 パート1では、対象患者をcrisugabalin 20mg 1日2回(40mg/日群)、同40mg 1日2回(80mg/日群)、プラセボ(プラセボ群)による治療を受ける群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、いずれも12週間投与した。パート2ではcrisugabalin 40mg 1日2回による治療を行ったが、治験責任医師の裁量により40~80mg/日の範囲で用量調整を可とした。 有効性の主要エンドポイントは、12週時点のNRSに基づく平均疼痛スコアのベースラインからの変化量であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は366例(年齢中央値63.0歳[四分位範囲:56.0~69.0]、男性193例[52.7%])であった(40mg/日群121例、80mg/日群121例、プラセボ群124例)。・12週時点のNRSに基づく平均疼痛スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値±標準偏差)は、プラセボ群が-1.1±0.2であったのに対し、40mg/日群が-2.2±0.2、80mg/日群が-2.6±0.2であった。・プラセボ群との群間差(最小二乗平均値)は、40mg/日群が-1.1(95%信頼区間:-1.6~-0.7、p<0.001)、80mg/日群が-1.5(-2.0~-1.0、p<0.001)であった。・安全性に関する新たな懸念は報告されなかった。

22.

第235回 第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず

第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず第III相試験の壁は高く、第II相試験結果から期待されたスタチンの多発性硬化症(MS)治療効果が認められませんでした1,2)。スタチンは脂質異常症を治療し、心血管や脳の虚血疾患を予防するのに広く使われています。それらの効果にはコレステロール低下に加えて、コレステロールとは独立した働きもどうやら寄与しているようです。免疫調節作用がその1つで、スタチンは炎症性細胞が血液脳関門(BBB)を通れるようにするタンパク質ICAMのリガンドであるLFA-1を阻害します。また、自己攻撃性T細胞が作るサイトカインを炎症促進から抗炎症のものに変えることも示されています。スタチンは細胞保護作用や脳血管の血行改善作用などもあり、MSの初期の炎症のみならず脳実質細胞や血管を障害するより進行した段階の患者にも有効と目されました。そのような期待を背景にして、スタチンの1つであるシンバスタチンの二次性進行型MS(secondary progressive MS)治療効果を調べた第II相MS-STAT試験は2008年に始まりました。試験には二次性進行型MS患者140例が参加し、半数(70例)ずつ高用量(80mg)のシンバスタチンかプラセボを投与する群に割り振られました。結果は遡ること10年前の2014年にLancet誌に掲載され、本サイトの同年の記事でも紹介されているとおり、脳萎縮を遅らせるシンバスタチンの有望な効果が認められました3)。また、体の不自由さの進行を抑制する効果も示唆されました。検査2つ(EDSSとMSIS-29)の2年時点での比較でシンバスタチン投与群がプラセボに有意に勝りました。ただし、別の身体機能検査MSFCはプラセボと有意差がつきませんでした。また、新規/拡大脳病変の発生率や再発率もプラセボと有意差がありませんでした。とにかく主な目的であった脳萎縮の抑制効果が認められたことを受け、著者のロンドン大学のJeremy Chataway氏らは第III相試験での検討が必要と結論しています。Chataway氏らが引き続き率いた第III相MS-STAT2試験は第II相試験結果のLancet誌掲載から4年後の2018年3月末に英国の患者団体MS Societyなどの協力の下で始まりました4)。その翌々月5月から2021年9月までの2年半弱に英国の31の病院から被験者が集められ、二次性進行型MS患者964例がシンバスタチンかプラセボ投与群に1対1の割合で割り振られました5)。主要アウトカムは第II相試験でも使われたEDSSに基づく身体障害の進行率でした。ベースラインのEDSSが6点未満だった患者はEDSSの1点以上の上昇、ベースラインのEDSSが6点以上だった患者はEDSSの0.5点以上の上昇が身体障害の進行と判定されました。その結果は上述したとおりで、シンバスタチンは二次性進行型MS患者の身体障害の悪化を遅らせることはできませんでした1)。残念な結果ではありますが、英国のMSコミュニティーが大規模で高品質の臨床試験を担えることをMS-STAT2試験は知らしめました。30年前は皆無だったMS治療は今や幸い増えているもののまだ不十分です。進行性MSに効きそうな薬一揃いを検討しているOctopus6)のような高品質の臨床試験に引き続き投資する、とMS Societyの臨床試験部門リーダーEmma Gray氏は言っています7)。参考1)Cholesterol drug found to be ineffective for treatment of multiple sclerosis / UCL 2)Simvastatin Fails to Reduce Disease Progression in Phase 3 MS-STAT2 Trial of Secondary Progressive Multiple Sclerosis / NeurologyLive3)Chataway J, et al. Lancet. 2014;383:2213-2221.4)Multiple Sclerosis-Simvastatin Trial 2(MS-STAT2)5)Evaluating the effectiveness of simvastatin in slowing the progression of disability in secondary progressive multiple sclerosis(MS-STAT2 trial):a multicentre, randomised, placebo-controlled, double-blind phase 3 clinical trial / ECTRIMS 2024 6)Octopus: Optimal Clinical Trials Platform for Multiple Sclerosis7)MS-STAT2 trial shows that simvastatin is not an effective treatment for secondary progressive MS / Multiple Sclerosis Society.

23.

令和の熱血指導【Dr. 中島の 新・徒然草】(547)

五百四十七の段 令和の熱血指導「暑さ寒さも彼岸まで」とは言うものの、相変わらず暑いですね。ようやく朝夕がマシになったという程度。昼は外に出る気になりません。さて、先日のこと。総合診療科ではローテートしてきた研修医に、自分の経験した症例の中から1例を選んで、スライドを使ったプレゼンテーションをしてもらうことになっています。私の卒後1年や2年の時に比べれば、皆さんはるかに上手な発表をしてくれますが、まだまだ改善の余地ありというのが現状。先日もある研修医が、上級医たちから熱血指導を受けてしまいました。この研修医、まずは5分ほどのプレゼンを何とか終えてホッと一息。その日はたまたま時間に余裕があったので、上級医たちもやる気満々でした。上級医A「じゃあ、最初からスライドを確認しよか」研修医「うっ」ということで一番最初に戻ります。中島「フォントがゴシック系なのは見やすくていいけど、たまに明朝体が混じっているな。統一したほうがいいと思うよ」研修医「確かにそうですね」上級医B「行間が詰まり過ぎで読みにくいから、1.2行とか1.3行とか、もう少しだけ空けようぜ」研修医「気を付けます」上級医C「句読点があったりなかったりするけど、全部、キチンと入れないとイカンぞ」研修医にしたら、内容よりスライドの体裁でいろいろ言われるのが驚きだったようです。終始「はい、すみません」か「わかりました。次から気を付けます」のみ。実際、それ以外の返答はあり得ないですね。ちょっとは中身にも触れておきましょう。中島「このスライドは上の3行で事実を並べて、最後の1行が先生の見解……というか、結論やな」研修医「そうです」中島「でも上の3行と下の結論は、あまり関係なさそうやぞ」研修医「えっ」中島「こういうのは数学の証明問題の解答のつもりで書いてくれ。だから『1、何々。2、何々。3、何々。よってカクカクシカジカ』とロジックがつながるようにすると、聴いているほうも気持ちがいいわけよ」研修医「確かにそのとおりですね」さらに指導は続きます。上級医A「Bab. reflexって何?」研修医「あの、Babinski reflexのつもりなんですけど」上級医A「先生が勝手に略語を作ったら、見ている人が混乱するだろう。できるだけスペルアウトしてくれ」病院によっては略語集というのがあって、使ってもいい略語を決めています。ウチの病院にもあり、作成には私も参加しました。実際、AVMとかCTのレベルなら略語のほうがいいですが、同じ略語でも複数の意味があったりすると厄介ですね。MSだとmitral stenosis(僧帽弁狭窄症)か、multiple sclerosis(多発性硬化症)かわからないし。MRだとmitral regurgitation(僧帽弁閉鎖不全症)ともとれるし、medical representative(医薬情報担当者)の意味でも使われます。上級医B「先生は検査結果の数値が基準値を超えている場合を赤字、基準値未満なら青字としているわけだな」研修医「そうです」上級医B「だったら数字の後ろに“H”とか“L”とか書くのは蛇足だろう。赤字だけにするか、黒字に“H”を付けるか、どちらかにしたほうがスッキリするぞ」研修医「そうですね」上級医C「それよりも検査結果が数値だけで、単位が付いていないのが淋しいなあ。mg/dLみたいな単位を加えようぜ。単位がなかったら“L”がリットルに見えるぞ」研修医「すみません」まだまだ指導は終わりません。中島「『一旦は○○と診断したのだが……』と文章の途中が「……」になって終わっているけど、何のことかな?」研修医「最初に考えていた診断が、後になってちょっとズレていたことに気付きまして」中島「じゃあ、そのとおりに書いたほうがいいと思うよ」上級医A「『したのだが……』って書いたら、そいつはポエムだ。先生は詩人だったのか?」研修医「すみません」ということで、この研修医は1時間近くも解放してもらえませんでした。昭和の時代と違って、上級医たちはできるだけ紳士的な言動を心掛けています。研修医もわれわれの熱意を感じ取ってくれたみたいで、ひたすら恐縮しながらメモを取っていました。ちょっと前日にでもスライドを見てくれと言われていたら、手直しできたのですけど。とはいえ、研修医にそんな余裕がないのは昭和も令和も同じですね。最後に1句スライドの 手直し足らぬ 彼岸かな

24.

わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」【最新!DI情報】第23回

わが国初のダニ媒介性脳炎予防ワクチン「タイコバック水性懸濁筋注」今回は、組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン(商品名:タイコバック水性懸濁筋注0.5mL/小児用水性懸濁筋注0.25mL、製造販売元:ファイザー)を紹介します。本剤はわが国初のダニ媒介性脳炎の予防ワクチンであり、致死的な経過および後遺症の予防が期待されています。<効能・効果>本剤は、ダニ媒介性脳炎の予防の適応で、2024年3月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>初回免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを3回、筋肉内に接種します。2回目接種は1回目接種の1~3ヵ月後、3回目接種は2回目接種の5~12ヵ月後に接種します。免疫の賦与を急ぐ場合には、2回目接種を1回目接種の2週間後に行うことができます。追加免疫の場合、16歳以上には1回0.5mL、1歳以上16歳未満には1回0.25mLを筋肉内に接種します。<安全性(0.5mL製剤の場合)>重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、脊髄炎、横断性脊髄炎、脳炎(いずれも頻度不明)があります。その他の頻度の高い副反応として、注射部位疼痛(35.0%)、下痢(10%以上)があります。10%未満の副反応には、注射部位出血、注射部位腫脹などの局所症状、上気道感染、浮動性・回転性めまい、悪心、嘔吐、腹痛、皮膚そう痒症、発疹などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ダニ媒介性脳炎を予防するためのワクチンです。2.ワクチン接種したすべての人で、ダニ媒介性脳炎ウイルスへの感染が完全に予防されるわけではありません。マダニに咬まれるリスクが高い環境下では、虫よけ剤の使用や皮膚の露出を少なくするなど、基本的な感染リスク低減対策をとってください。3.接種は、3回の接種を行う「初回免疫」と必要に応じて接種を行う「追加免疫」があります。初回免疫1回目の接種のみでは、発症の予防を期待することはできません。4.ショック、アナフィラキシーが現れることがあるので、医師の監視下で接種を行います。接種後、少なくとも15分間は座って安静にしてください。<ここがポイント!>ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis:TBE)は、TBEウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染・発症します。TBEは重度の急性臨床経過をたどり、日本に多い極東亜型ウイルスの感染では、7~14日の潜伏期間後に頭痛、発熱、悪心、嘔吐が現れ、進行すると精神錯乱や昏睡、痙攣などの脳炎症状が生じることがあります。致死率は20%以上で、生存者であっても30~40%に後遺症が残るとされています。TBEに対する抗ウイルス治療はなく、対症療法が中心となります。本剤はTBEを予防するためのワクチンで、TBEリスク地域でレクリエーションや農業・林業などの野外活動でマダニに咬まれるリスクがある人に接種が推奨されます。ただし、接種したすべての人で感染が予防されるわけではないので、マダニに咬まれるリスクが高い場合には、虫よけ剤の塗布や防護服の着用または皮膚露出を避けるなど、感染リスク低減のための基本的な対策が重要です。本剤は、TBEウイルスをSPF発育鶏卵から採取したニワトリ胚初代培養細胞で増殖させ、得られたウイルスをホルムアルデヒドで不活化した後、精製し、安定剤およびアジュバント(水酸化アルミニウム懸濁液)を加えたものです。TBEウイルスに感染歴のない日本人健康成人および健康小児を対象とした国内第III相試験(B9371039試験:初回免疫)において、本剤を3回接種した4週間後にTBEウイルス中和抗体陽性率は成人および小児とも90%以上に達しました。また、追加免疫における海外第IV相試験(223試験)や免疫持続性における海外第IV相試験(690701試験、691101[B9371010]試験)で本剤の有効性が確認されています。なお、ダニ媒介性脳炎ワクチンは、医療上の必要性が高いワクチンとして厚生労働省からの要請を受けて開発されました。

25.

ミロガバリン、ペマフィブラートなど4剤に「重大な副作用」追加/厚労省

 厚生労働省は8月27日、ミロガバリン、ペマフィブラートなどの添付文書について、「重大な副作用」の新設などに伴い、使用上の注意改訂指示を発出した。タリージェ「腎機能障害」、パルモディア「肝機能障害、黄疸」が重大な副作用に追加 神経障害性疼痛治療薬であるミロガバリンベシル酸塩(商品名:タリージェ、タリージェOD)の重大な副作用として、新たに「腎機能障害」が新設された。これは、MID-NET(R)を用いた腎機能検査値異常リスクに関する調査結果の概要1,2)、市販後の腎機能障害関連症例および同作用機序を有する薬剤の国内外の注意喚起状況を踏まえ、当該リスクがあると判断されたためである。◯腎機能障害関連症例*†の国内症例の集積状況【転帰死亡症例】 26例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例3例)【死亡3例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例)】 *:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例 †:以下の条件にて抽出した症例  ・MedDRA ver.27.0 SMQ「急性腎不全」(広域)またはSOC「腎および尿路障害」に該当する症例  ・本剤投与期間の記載がある症例  ・本剤投与開始後の血清クレアチニン値が男性1.07mg/dL、女性0.79mg/dL以上、GFR推定値/クレアチニンクリアランスが90mL/min/1.73m2未満、蛋白尿2+または尿蛋白/クレアチニン比>0.5(有害事象共通用語規準[CTCAE] ver.5.0のGrade1相当以上)に該当する症例 高脂血症治療薬のペマフィブラート(同:パルモディア、パルモディアXR)については、肝機能障害関連の症例を評価し、症例の因果関係評価および使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見を聴取。その結果、本剤と肝機能障害との因果関係が否定できない症例が集積し、当該症例に黄疸を認める症例が含まれていることから、使用上の注意を改訂し、「肝機能障害、黄疸」を追記することが適切と判断された。◯肝機能障害関連*†の国内症例の集積状況【転帰死亡症例】 25例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例9例。当該9例のうち3例は黄疸も認めた症例)【死亡0例】 *:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例 †:MedDRA ver.27.0 SMQ「薬剤に関連する肝障害-包括的検索(SMQ)」で抽出した症例のうち、CTCAE ver.5.0 Grade3以上に該当する症例を抽出 このほかに、パイナップル茎搾汁精製物(同:ネキソブリッド)には「適用部位出血」が、イオジキサノール(同:ビジパーク)には「急性汎発性発疹性膿疱症」が新たに重大な副作用として追加された。

26.

早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。 HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。 ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。 プレスセミナーでは、これら疾患と治療薬の概要が講演されたほか、ムコ多糖症や脊髄性筋萎縮症などを対象に衛生検査事業を同社が開始することが発表された。全世界で200例程度の患者・患児が存在 はじめに井原 健二氏(大分大学医学部医学科長 小児科学講座 教授)が、「HGPS/PDPL:病態・疫学・歴史と未来」をテーマに、主に疾患の概要について説明を行った。 ヒトは、小児期の発育(成長・発達・成熟)と成人期の老化(衰退・退行・退縮)の各要素により一生を終える。HGPS/PDPLなどの早老症は、老化の3要素が小児期から起こる疾患であり、発症年齢から先天性、乳児型、若年/成人型に分類される。 主な徴候としては、白髪・脱毛、難聴、白内障、強皮症様の皮膚症状、脂肪異栄養症、2型糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化および脳血管疾患などがある。また、100以上の症候群が報告され、乳児で発症すれば乳児早老症(コケイン症候群)、成人で発症すれば成人早老症(ウェルナー症候群)と発症年代の違いにより病名も変わってくる。 中でもHGPSは、出生児400万人に1人の発症とされ、患児は全世界に140例程度と推定されている。発症要因はLMNA遺伝子の病的変異が9割で、生後1年以内に発育不全、生後1~3年で特徴的な顔貌(下顎形成不全など)と早老徴候がみられ、平均余命は14.5歳。HGPSの老化には、Lamin A遺伝子の異常スプライシングによる翻訳時の欠失が知られ、異常ラミンが細胞核の物理的損傷や染色体クロマチン構造の異常を引き起こし、これらが病的変化の原因になることが判明している。また、核ラミナの変異が原因の遺伝性疾患であるラミノパチーはイコールで早老症ではなく、筋ジストロフィーや拡張型心筋症などもあり、これらの1つに早老症があるとされる。その代表疾患がHGPSであり、PDPLであるという。PDPL患者は、全世界で50例程度と推定され、生命予後は少し長く成人期まで生きることができる。 HGPSとPDPLの診断では、診察・問診後に遺伝子検査が必須となり、その結果遺伝子変異などの態様により分類される。 臨床症状としては、HGPSを例にとると「低身長(<3パーセンタイルなど)」、「不均衡な大頭などの顔の特徴」、「乳歯の萌出・脱落遅延などの歯科所見」、「さまざまな色素沈着などの皮膚所見」、「全禿頭や眉毛の喪失などの毛髪所見」、「末節の骨溶解などの骨格筋所見」、「細く甲高い声」などの症状がみられる。これらを大症状、小症状、遺伝学的検査の3つの組み合わせで確定または推定と診断される。医療者でも小児早老症の認知度は75%程度 HGPSとPDPLの疾患啓発については、「GeneReviews日本語版」や「プロジェリアハンドブック(日本語版)」などで医療者へ行っており、今後も医療者向けに2025年の診断基準の改訂情報や検査の高度化(血漿プロジェリン測定)を発信していくという。 また、啓発活動の一環として、「小児遺伝子疾患の診療経験・学習機会について」を医師51人に調査したアンケート結果を報告した。・「医学生時代に小児遺伝子疾患について学んだか」について聞いたところ、「はい」が53%、「いいえ/覚えていない」が47%だった。・「小児遺伝子疾患である早老症を知っているか」について聞いたところ、「はい」が75%、「いいえ」が25%だった。・「早老症のうちHGPS/PDPLなどの疾患群を知っているか」を聞いたところ、「はい」が27%、「いいえ」が73%だった。・「小児遺伝子疾患の診療で困ったこと」(複数回答)では、「治療に困った」が19人、「診断に困った」が18人と回答した医師が多かった。 まだ、医療者の中でも広く知られていないHGPSとPDPLの疾患啓発は、今後も続けられる。寿命の延伸に期待されるロナフェルニブ 「HGPSの治療の実際、および治療薬の登場により何が変わるのか?」をテーマに松尾 宗明氏(佐賀大学医学部小児科学 教授)が、HGPSの治療の概要やロナファルニブ登場の意義などを説明した。 はじめに自験例としてHGPSの患児について、生後3ヵ月で皮膚の硬化を主訴に診療を受けた症例を紹介した。その後、患児はHGPSが疑われ、生後5ヵ月でアメリカでの遺伝子検査により確定診断された。以降は、対症療法が行なわれ、10歳にときに無償提供プログラムでロナファルニブ単剤が投与され、現在も存命という。 ロナファルニブの作用機序は、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害することで死亡率を低下させ、生存期間を延長する。 臨床試験では、HGPSおよびPDPLを対象としたロナファルニブの観察コホート生存試験が行われ、ロナファルニブ投与被験者は未治療対照と比較して、平均生存期間が4.327年延長した(平均9.647年vs.5.320年、名目上のp<0.0001、層別log-rank検定)。また、死亡率はロナファルニブ投与群で38.7%(24/62例)、未治療対照群で59.7%(37/62例)で、ハザード比は0.28(95%信頼区間:0.154~0.521)だった。HGPSおよびPDPLでの死亡原因は、動脈硬化の進行が一番多く、治療薬の効果として血管の硬化を抑えている可能性が示唆された。 用法・用量は、通常、ロナファルニブとして開始用量115mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与し、4ヵ月後に維持用量150mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与する(なお、患者の状態に応じて適宜減量する)。 主な副作用では、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、とくに最初の4ヵ月に多いが、次第に慣れていくという。また、肝機能障害も初期に出現しやすく、QT延長もみられる場合もある。そのほか、潜在的なリスクとして、骨髄抑制、腎機能障害、眼障害、電解質異常も散見されるので注意しつつ処方する必要がある。 松尾氏はロナファルニブの登場により、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症抑制」、「患者QOLの向上」、「延命効果」、「国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供」などが変化すると期待をみせた。その一方で、「外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しいこと」、「心血管系に対する効果もまだ限定的であること」、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理」、「延命に伴う新たな問題(老化進行による予期せぬ合併症)」などが今後解決すべき課題と語り、講演を終えた。

27.

日本のプライマリケアにおける不眠症の治療戦略の実態

 オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬などの新規睡眠薬の導入後、プライマリケア医による不眠症治療実態は、明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、日本のプライマリケア診療における不眠症の治療戦略を調査するため、Webベースのアンケート調査を実施した。BMC Primary Care誌2024年6月18日号の報告。 対象は、プライマリケア医117人。不眠症の各マネジメントオプションの精通度を2段階(精通していない:0、精通している:1)で評価し、不眠症のマネジメント法を9段階リッカート尺度(処方/実施したことがない:1、頻繁に処方/実施している:9)を用いて調査した。マネジメントオプションに精通していないと回答した医師は、処方/実施したことがないとみなした。 主な結果は以下のとおり。・薬物療法に関しては、ほとんどのプライマリケア医が、新規睡眠薬に精通していると回答した。・最も多く使用されていた睡眠薬はスボレキサントであり、次いでレンボレキサント、ラメルテオンであった。・これら新規睡眠薬の9段階リッカート尺度は、入眠障害に対し平均4.8〜5.4ポイント、中途覚醒に対し平均4.0〜4.7ポイントであった。・対照的に、多くのベンゾジアゼピン系睡眠薬は2ポイント未満であり、使用されることは少なかった。・心理療法に関しては、認知行動療法(CBT-I)に精通しているプライマリケア医は、約40%であり、9段階リッカート尺度は平均1.5〜1.6ポイントと、ほとんど行われていなかった。・CBT-Iと比較し、多くの医師はリラクゼーション、睡眠制限法、刺激制御法などに精通していると回答した。このようなプライマリケア医はCBT-Iをやや頻繁に実施し(48〜74%)、スコアは2.6〜3.4ポイントであった。 著者らは、「日本のプライマリケア医は、不眠症に対してCBT-Iをほとんど行っておらず、薬物療法に関しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬ではなく新規睡眠薬を使用する傾向にあった。日本のプライマリケア医による不眠症に対するCBT-Iの利用促進には、教育、簡易またはデジタルCBT-Iの導入、CBT-I専門医との連携構築などが求められる」としている。

28.

日本における入院患者のせん妄に対する新規睡眠導入薬の予防効果〜レトロスペクティブコホート研究

 新規睡眠導入薬であるラメルテオン、スボレキサント、レンボレキサントなどは、せん妄の高リスク患者の予防に有用であることが示唆されている。しかし、入院患者において、すべての新規睡眠導入薬のせん妄予防効果を同時に評価した研究は、これまでなかった。久留米大学の逸見 竜次氏らは、精神疾患以外で一般内科および外科に入院し、不眠症のリエゾン介入を受けた患者を対象に、睡眠導入薬の使用とせん妄予防との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月3日号の報告。 精神疾患以外で一般内科および外科に入院し、不眠症の相談・リエゾンのために精神科医のコンサルトを受けた患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。せん妄の診断は、精神科専門医がDSM-Vを用いて行った。せん妄発症と関連する因子として、睡眠導入薬の種類、年齢、性別、せん妄リスク因子を診療記録よりレトロスペクティブに調査した。せん妄発症のリスク因子は、多変量ロジスティック回帰分析による調整オッズ比(aOR)として算出した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者710例のうち、257例(36.2%)がせん妄を発症した。・スボレキサント(aOR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.40〜0.94、p=0.02)、レンボレキサント(aOR:0.23、95%CI:0.14〜0.39、p<0.0001)の使用は、せん妄発症リスクを有意に低下させた。・ベンゾジアゼピン(aOR:1.90、95%CI:1.15〜3.13、p=0.01)の使用は、せん妄リスクを有意に増加させた。・ラメルテオン(aOR:1.30、95%CI:0.84〜2.01、p=0.24)およびZ薬(aOR:1.27、95%CI:0.81〜1.98、p=0.30)は、せん妄リスクとの有意な関連が認められなかった。 著者らは、「さまざまな疾患により入院している患者のせん妄予防に対し、スボレキサントとレンボレキサントの使用が有用である可能性が示唆された」としている。

29.

気候変動は脳の疾患の悪化と関連

 気候変動は、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、てんかん、多発性硬化症などの脳の疾患を悪化させる可能性のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)クイーンスクエア神経学研究所教授のSanjay Sisodiya氏らによる研究で明らかになった。研究グループは、「気候変動は、さまざまな神経疾患にかなりの影響を与える可能性が高い」と危惧を示している。この研究の詳細は、「The Lancet Neurology」6月号に掲載された。 この研究では、1968年から2023年の間に発表された332件の研究データを分析し、気候変動が、2016年の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study 2016)で検討された、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、髄膜炎、てんかん、多発性硬化症などの19種類の神経疾患、および不安や抑うつ、統合失調症などの精神疾患に与える影響を検討した。 その結果、気候がいくつかの脳の疾患に影響を与えることに対しては明確なエビデンスがあり、特に脳卒中と神経系の感染症に対する影響は大きいことが示された。また、気候変動の中でも、極端な気温(高い場合も低い場合も)と気温の日内変動の大きさは脳の疾患に影響を及ぼし、特に、それらが季節的に異常な場合には影響が大きくなることも判明した。Sisodiya氏は、「夜の気温はとりわけ重要と考えられる。夜間を通して高い気温は睡眠を妨げ、睡眠の質の低さは多くの脳の疾患を悪化させることが知られているからだ」と話す。 実際に、本研究では、高温の日や熱波が発生しているときには、脳卒中による入院や身体障害の発生、死亡数が増加することが示された。一方、認知症の人は、認知機能障害が妨げとなって環境の変化に合わせた行動を取るのが難しいため、極端な気温のときや洪水や山火事のような自然災害が発生したときに悪影響を受けやすい傾向が認められた。研究グループは、「認知症の人はリスクに対する意識が低下しているため、暑いときに助けを求める能力や、水分の摂取量を増やし、衣類を調節するなどして危害を軽減させる能力が低下している」と説明している。さらに、多くの精神疾患で、高温、気温の日内変動、極端に高い気温と低い気温は、精神疾患の発症、入院、死亡リスクと関連していることも示された。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「悪天候に起因する出来事が深刻さを増し、地球の気温が上昇するにつれて、過去の研究では脳の疾患に影響を与えるほど深刻ではないと考えられた環境要因が悪化し、人々はその悪化した要因にさらされている」と指摘する。その上で、気候変動の現在の状態だけでなく、将来の状態も考慮した最新の研究を行うことの重要性を強調している。 Sisodiya氏は、「この研究は気候条件が悪化していく中で実施されたが、有用な情報を個人や組織に提供し続けるためには、敏捷かつ動的であり続ける必要がある」と話す。同氏はまた、「将来の気候シナリオが脳の疾患へ及ぼす影響を見積もる研究はほとんどないことが、将来の計画を立てることを難しくしている」と述べている。

30.

ガイドラインで推奨される睡眠薬、日本の臨床で有用なのは?

 不眠症のガイドラインでは、いくつかの睡眠薬が推奨されているが、臨床現場において最も有用な睡眠薬は明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法の失敗リスクが低い薬剤、単剤療法後の中止率の高い薬剤を特定するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2024年4月1日号の報告。 2005年4月~2021年3月の日本医療データセンターレセプトデータベースのデータを用いて、レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。対象患者は、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬(スボレキサント、ラメルテオン、エスゾピクロン、ゾルピデム、トリアゾラム)による単剤療法を行った成人患者。データ分析は、2022年12月24日~2023年9月26日に実施した。主要アウトカムは、単剤療法の失敗とし、ガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を開始してから6ヵ月以内に睡眠薬の変更または追加を行った場合と定義した。副次的アウトカムは、単剤療法の中止とし、単剤療法が失敗しなかった後、6ヵ月以内に2ヵ月連続で睡眠薬を処方しなかった場合と定義した。単剤療法の失敗および中止は、それぞれCox比例ハザードモデル、ロジスティック回帰モデルを用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を行なった患者23万9,568例(年齢中央値:45歳、四分位範囲:34~55歳、女性の割合:50.2%)が本研究に含まれた。・6ヵ月間のフォローアップ期間中に単剤療法を失敗した患者は、2万4,778例(10.3%)であった。・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(調整ハザード比[aHR ]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.17~1.30、p<0.001)は単剤療法の失敗例が多く、ゾルピデム(aHR:0.84、95%CI:0.81~0.87、p<0.001)、トリアゾラム(aHR:0.82、95%CI:0.78~0.87、p<0.001)は失敗例が少なかった。スボレキサントとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。・単剤療法が失敗しなかった後、睡眠薬を中止した患者の割合は、84.6%であった。・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(調整オッズ比[aOR ]:1.31、95%CI:1.24~1.40、p<0.001)、スボレキサント(aOR:1.20、95%CI:1.15~1.26、p<0.001)は中止例が多かった。ゾルピデムまたはトリアゾラムとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。 著者らは、「本コホート研究では、制御されていない交絡因子があるため、これらの結果に基づきガイドライン推奨の睡眠薬の薬理学的特性に関する結論を導き出すことはできない」とし、「慢性不眠症と急性不眠症の診断、不眠症および精神症状の重症度、睡眠薬処方に対する医師の態度など、交絡因子を検討したさらなる研究が求められる」としている。

31.

日本人不眠症患者におけるレンボレキサント切り替えの有効性と安全性

 慢性不眠症患者は、従来の治療法では必ずしも満足のいく有効性および安全性を得られているとはいえない。したがって、代替治療法への切り替えを考慮する必要があるものの、これらの有効性を評価したプロスペクティブ研究は不十分である。久留米大学の小曽根 基裕氏らは、慢性不眠症患者に対するレンボレキサントへの切り替えにより患者の満足度が向上するかを評価した。Advances in Therapy誌2024年4月号の報告。 対象は、現在の治療に満足していない日本人慢性不眠症患者90例。4つのコホート研究から、プロスペクティブ非ランダム化オープンラベル介入的多施設共同研究を実施した。コホート研究には、非ベンゾジアゼピン系鎮痛催眠薬(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)単剤療法、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)単剤療法、スボレキサントとベンゾジアゼピン受容体作動薬の併用療法、スボレキサントとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)からレンボレキサントへの切り替えの4つを含めた。主要エンドポイントは、2週間(漸増期終了)時点でのレンボレキサント切り替え成功率とした。切り替え成功の定義は、漸増期にレンボレキサントを服薬し、その後の維持期(2~14週目)においてレンボレキサントの継続使用意向を示した患者の割合とした。患者の満足度と安全性(治療中に発現した有害事象[TEAE]の発生率)の評価は、14週目(漸増期および維持期終了時)に実施した。 主な結果は以下のとおり。・2週間のレンボレキサント切り替えに成功した患者の割合は、95.6%(95%信頼区間:89.0~98.8%)であった。・レンボレキサントの継続に成功した患者の割合は、漸増期(2週目)97.8%、維持期(14週目)で82.2%であった。・全体的なTEAEの発生率は47.8%であり、重篤なTEAEは認められなかった。・Patient Global Impression-Insomnia versionの3つの尺度による患者の満足度評価では、すべてのコホートにおいて、肯定的な反応を示す患者が否定的な反応よりも多かった。・維持期では、レンボレキサントに切り替え後、2週目、6週目、14週目において不眠重症度指数の改善が認められた。 著者らは「現在の治療に満足していない不眠症患者に対するレンボレキサント切り替えは、有効な選択肢となる可能性が示唆された」としている。

32.

運転パフォーマンスに対する睡眠薬の残存効果の影響~ネットワークメタ解析

 睡眠薬には残存効果があり、運転中の安全性に悪影響を及ぼす可能性がある。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、不眠症患者における睡眠薬の残存効果と運転パフォーマンスへの影響を明らかにするためネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2024年4月号の報告。 2023年5月28日までに公表された、不眠症患者と健康対照者を比較した睡眠薬使用および運転に関するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、EMBASE、TRID、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、Web Of Scienceより検索した。エンドポイントとして、車両の横位置の標準偏差(SDLP)、朝の最初の運転時における障害率を考慮した。バイアスリスクおよび不均一性(グローバル/ローカル)を測定し、エビデンスの信頼性を評価するためCINeMAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・特定された4,805件のうち、クロスオーバーRCTをシステマティックレビューに含め、22件をネットワークメタ解析に組み入れた(健康対照者のみに焦点を当てた)。・単回投与では、ほとんどの薬剤は運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同様であり、SDLPについてはゾピクロンを上回っていた。・対照的に、ラメルテオン8mg、daridorexant 100mg、就寝時のゾルピデム10mg、深夜のゾルピデム10mgおよび20mg、ミルタザピン15~30mg、トリアゾラム0.5mgは、プラセボよりも有意にパフォーマンスが悪かった。・レンボレキサント2.5~5mg、スボレキサント15~20mg、深夜のゾルピデム3.5mgは、ゾピクロンよりも機能障害が少なかった。・フルラゼパムを除き、反復投与(最大フォローアップ期間:10日間)により、残存効果は少なくなっていた。・異質性および不均一性は、ほとんど認められなかった。・エビデンスの信頼性は、「低」または「非常に低」であった。・感度分析により、主要分析の結果が確認された。 著者らは「FDAが承認したほとんどの睡眠薬は、承認用量において運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同程度であり、ゾピクロンを上回っていた。15日以内の反復投与が残存効果を減少させる点については、さらなる研究が求められる」としている。

33.

再発性多発性硬化症、抗CD40L抗体frexalimabが有望/NEJM

 再発性多発性硬化症患者において、抗CD40Lヒト化モノクローナル抗体のfrexalimabはプラセボと比較し、12週時におけるT1強調MRIでの新規ガドリニウム(Gd)増強病変数を減少させたことが示された。フランス・リール大学のPatrick Vermersch氏らが、10ヵ国38施設で実施した第II相臨床試験の結果を報告した。CD40-CD40L共刺激経路は、適応免疫応答と自然免疫応答を制御し多発性硬化症の病態に関与する。frexalimabは第2世代の抗CD40Lモノクローナル抗体で、抗原提示細胞表面に発現しているCD40へのCD40Lの結合を阻害することによりCD40-CD40Lシグナル伝達経路を阻害し、T細胞を介した免疫応答を抑制する。著者は、「多発性硬化症患者におけるfrexalimabの長期的な有効性と安全性を明らかにするため、より大規模で長期間の試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。frexalimab 1,200mg静脈内投与と300mg皮下投与を、プラセボと比較 研究グループは再発性多発性硬化症患者を、frexalimab 1,200mgを4週間隔で静脈内投与する群(負荷用量1,800mg)、frexalimab 300mgを2週間隔で皮下投与する群(負荷用量600mg)、またはそれぞれのプラセボを投与する群に4対4対1対1で割り付け、二重盲検下で12週間投与した。投与経路は盲検化されなかった。12週後、全例が非盲検下でfrexalimabを投与した(プラセボ群の患者はそれぞれ対応するfrexalimabに切り替えた)。 主要エンドポイントは、8週時と比較した12週時におけるT1強調MRIでの新規Gd増強病変数。副次エンドポイントは、8週時と比較した12週時における新規または拡大したT2強調病変数、12週時のGd増強病変総数、および安全性であった。8週時と比較した12週時の新規Gd増強病変数はfrexalimab群で減少 2021年6月7日~2022年9月21日の間に、166例がスクリーニングを受け、129例が無作為に割り付けられ、うち125例(97%)が12週間の二重盲検期間を終了した。患者背景は、平均年齢36.6歳、66%が女性、30%がベースラインでGd増強病変を有していた。 12週時における新規Gd増強病変数の補正後平均値は、プラセボ群1.4(95%信頼区間[CI]:0.6~3.0)に対し、frexalimab 1,200mg静脈内投与群0.2(95%CI:0.1~0.4)、frexalimab 300mg皮下投与群0.3(95%CI:0.1~0.6)であり、プラセボ群に対する率比は1,200mg静脈内投与群0.11(95%CI:0.03~0.38)、300mg皮下投与群0.21(95%CI:0.08~0.56)であった。副次エンドポイントの結果は、主要エンドポイントの結果とおおむね同じであった。 12週間の二重盲検期間における有害事象の発現率は、frexalimab 1,200mg静脈内投与群29%(15/52例)、frexalimab 300mg皮下投与群45%(23/51例)、プラセボ群31%(8/26例)で、最も多くみられた有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は新型コロナウイルス感染症および頭痛であった。

34.

古代人のDNAから多発性硬化症の起源が明らかに

 英ケンブリッジ大学およびコペンハーゲン大学(デンマーク)教授のEske Willerslev氏を中心とする国際的な研究グループが、アジアと西ヨーロッパで見つかった中石器時代から青銅器時代までの古代人の遺物のDNA解析により、世界で最大規模の古代人の遺伝子バンクを構築。これを用いて、時代の流れの中で人々の移動とともに遺伝子の変異や疾患などがどのように伝播したのかを明らかにした。この研究結果は、1月10日付の「Nature」に4本の論文として掲載された。 このうち、ケンブリッジ大学動物学分野のWilliam Barrie氏が筆頭著者を務めた1本の論文では、中枢神経系の自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の有病率が、世界的に見て北欧で高い理由の説明となる結果が得られた。 Barrie氏らは、古代人の歯や骨のサンプルを用いたDNAデータと既存の古代人のゲノムデータを組み合わせて作成された、1,600人以上の古代人のDNAプロファイルに中世以降(11〜18世紀)のデンマーク人86人のゲノム解析データを加え、「白人の英国人」を自称する約41万人のUKバイオバンク参加者のDNAデータと比較し、現代人の遺伝子における古代人の遺伝子の影響を調べた。 その結果、MSの発症リスクに関わる遺伝子変異は、約5,000年前に東方からポントスステップ(現在のウクライナ、ロシア南西部、カザフスタン西部の一部にまたがる地域)に移住してきたヤムナ族と呼ばれる牧畜民とともにヨーロッパにもたらされたことが明らかになった。牛や羊などを家畜化していたヤムナ族は、動物を介した感染症罹患の脅威に常にさらされていた。このことを踏まえてWillerslev氏は、「ヤムナ族がヨーロッパに移住した後もMSのリスク遺伝子を受け継いでいたことは、これらの遺伝子が、たとえMSリスクの上昇をもたらすとしても、感染症から身を守る上で有利だったからに違いない」と話す。 Willerslev氏は、「このMSに関する発見は、遠い過去を見る以上のものをもたらす。この知見は、MSの原因に関するわれわれの見方を変え、治療法にも影響を与えるものだ」と強調する。一方、Barrie氏は、「これらの結果はわれわれを驚かせた。MSや他の自己免疫疾患の進化についてのわれわれの理解を大きく飛躍させる結果だ。われわれの祖先のライフスタイルが現代の疾患リスクに及ぼす影響を明らかにすることで、現代人がいかに古代人の免疫システムの影響を受けているかが明確になる」と話している。 4本の研究で明らかにされたそのほかの主な結果は以下の通り。 身長:北欧の人は南欧の人より背の高い傾向があるが、その違いの背景にもヤムナ族の遺伝子が関係している可能性がある。 他の疾患のリスク:南欧の人は古代の農耕民族のDNAを色濃く受け継いでおり、双極性障害のリスクが高い傾向がある一方で、東欧の人が古代人から継承した遺伝子はアルツハイマー病や2型糖尿病の発症リスクを高める可能性がある。 乳糖に対する耐性:初期の人類は、離乳後に牛乳を消化する(牛乳に含まれている乳糖を分解する)ことができなかった。成人での乳糖に対する耐性は、約6,000年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 野菜の摂取:菜食のみで生活する能力と耐性は、おそらく約5,900年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 1本の論文の筆頭著者であるコペンハーゲン大学グローブ研究所のEvan Irving-Pease氏はニュースリリースの中で、「過去1万年にわたるユーラシア大陸の人々のライフスタイルが、現代人の身体的特徴や多くの疾患リスクに関わる遺伝的遺産をもたらしたことは驚くべきことだ」と述べている。■原著論文Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:301-311.Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:329-337.Irving-Pease EK, et al. Nature. 2024;625:312-320.Barrie W, et al. Nature. 2024;625:321-328.

35.

第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

36.

不眠症の診断治療に関する最新情報~欧州不眠症ガイドライン2023

 2017年以降の不眠症分野の進歩に伴い、欧州不眠症ガイドラインの更新が必要となった。ドイツ・フライブルク大学のDieter Riemann氏らは、改訂されたガイドラインのポイントについて、最新情報を報告した。Journal of Sleep Research誌2023年12月号の報告。 主なポイントは以下のとおり。・不眠症とその併存疾患の診断手順に関する推奨事項は、臨床面接(睡眠状態、病歴)、睡眠アンケートおよび睡眠日誌(身体検査、必要に応じ追加検査)【推奨度A】。・アクチグラフ検査は、不眠症の日常的な評価には推奨されないが【推奨度C】、鑑別診断には役立つ可能性がある【推奨度A】。・睡眠ポリグラフ検査は、他の睡眠障害(周期性四肢運動障害、睡眠関連呼吸障害など)が疑われる場合、治療抵抗性不眠症【推奨度A】およびその他の適応【推奨度B】を評価するために使用する必要がある。・不眠症に対する認知行動療法は、年齢を問わず成人(併存疾患を有する患者も含む)の慢性不眠症の第1選択治療として、対面またはデジタルにて実施されることが推奨される【推奨度A】。・不眠症に対する認知行動療法で十分な効果が得られない場合、薬理学的介入を検討する【推奨度A】。・不眠症の短期(4週間以内)治療には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬【推奨度A】、ベンゾジアゼピン受容体作動薬【推奨度A】、daridorexant【推奨度A】、低用量の鎮静性抗うつ薬【推奨度B】が使用可能である。利点と欠点を考慮して、場合により、これら薬剤による長期治療を行うこともある【推奨度B】。・いくつかのケースでは、オレキシン受容体拮抗薬を3ヵ月以上使用することができる【推奨度A】。・徐放性メラトニン製剤は、55歳以上の患者に対し最大3ヵ月間使用可能である【推奨度B】。・抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、即放性メラトニン製剤、ラメルテオン、フィトセラピーは、不眠症治療に推奨されない【推奨度A】。・光線療法や運動介入は、不眠症に対する認知行動療法の補助療法として役立つ可能性がある【推奨度B】。

37.

術後せん妄予防に対するスボレキサント+ラメルテオンの有効性

 スボレキサントとラメルテオンは、術後せん妄の予防に有用であると報告されている。これまでの研究では、せん妄誘発リスクと関連するベンゾジアゼピン系睡眠薬との比較が報告されているが、睡眠薬未使用患者との比較は、これまで報告されていなかった。静岡がんセンターの池内 晶哉氏らは、がん患者において、術前にスボレキサントとラメルテオンの併用投与を行った場合と睡眠薬未使用の場合を比較し、術後せん妄の発生率を評価した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2023年12月1日号の報告。 対象は、2017年4月~2020年6月に静岡がんセンターの肝胆膵外科で手術を受けたがん患者110例。手術の7日前からスボレキサントとラメルテオンの併用を行った患者50例、スボレキサント、ラメルテオンを含む睡眠薬未使用患者60例を分析した。術後7日間、レトロスペクティブに観察し、術後せん妄の累積発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・術後7日間における術後せん妄の累積発生率は、スボレキサントとラメルテオン併用患者で7例(14.0%)、睡眠薬未使用患者で22例(36.7%)であり、両群間で有意な差が認められた(オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.11~0.73、p=0.009)。 結果を踏まえ、著者らは「がん患者に対する術前のスボレキサントとラメルテオンの予防的併用投与は、術後せん妄の発生率を低下させるために、有効であることを示唆している」としている。

38.

動物病院での猫の不安を軽減する薬を米FDAが承認

 猫を飼っている人なら、猫を獣医師のもとへ連れていくことが猫と飼い主の双方にとっていかにストレスとなるかを経験的によく知っているだろう。米食品医薬品局(FDA)は11月17日、このような猫の不安を軽減する新薬を承認したことを発表した。FDAは、Bonqatと呼ばれるこの抗不安薬は、「移動中や動物病院での診察時に猫が感じる不安や恐怖を和らげるように設計されている」とニュースリリースで説明している。 Bonqatは、過活動状態にある神経を鎮める薬物であるプレガバリンを含む、初のFDA承認薬だ。FDAの説明によると、同薬は、猫を連れて移動するか、または動物病院で診察を受ける1時間半ほど前に経口投与すればよい。投与は2日間連続で可能である。 米VCA動物病院の情報によると、猫の中には、行き先を問わず、移動中に重度の不安を感じたり、ひどい乗り物酔いを起こす個体がいる。そのような猫には、ニャーニャーと鳴く、唇を鳴らす、よだれを垂らすといったものから、ストレスによる乗り物酔いで排尿や排便を起こすものまで、さまざまな症状が現れる。 Bonqatは、この薬を製造するフィンランドのOrion社が実施した実地調査の結果に基づき承認された。試験では、動物病院を受診した際に恐怖や不安を感じたことのある猫の飼い主に、5〜10日の間に2回に分けて猫を診察のために動物病院に連れてくるよう依頼した。初回は、治療前に試験に登録するためのスクリーニング訪問とし、2回目の訪問時には、訪問に先立ち、Bonqatまたはプラセボが猫に投与された。移動中の猫の不安や恐怖は飼い主が、身体診察中の猫の不安や恐怖は獣医師が評価した。 その結果、Bonqatを投与された猫(108匹)の半数強は移動中と動物病院受診中の両方で良好、または優れた反応を示したのに対して、プラセボを投与されたネコ(101匹)では、その割合が約3分の1にとどまったことが明らかになった。さらに、2回の診察の間に恐怖と不安のレベルに改善が認められたのは、Bonqatを投与された猫では77%(83匹)であったのに対し、プラセボを投与された猫では46%(46匹)にとどまっていた。Bonqatの投与により生じた副作用は、軽度の鎮静、運動失調、嗜眠などであった。 FDAは、Bonqatは、人が誤用する可能性があるため、資格を有する獣医師の処方を通じてのみ入手可能と述べている。また、製品を安全に使用するためには、正確な投与量や適切な投与方法などに関する医師の専門知識と監視が必要だとしている。FDAはまた、猫の飼い主に対しても、「薬剤が人の皮膚や目、その他の粘膜に触れないように気を付けるなど、薬の取り扱いに注意する必要がある」と注意喚起している。

39.

回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・入院時に向精神薬が処方されていた患者は55例(62.5%)であり、処方薬は2種類(中央値)であった。・退院時に向精神薬が処方されていた患者は41例、処方薬は1種類(中央値)へと有意な減少が認められた(p<0.05)。・入院時と比較した退院時の向精神薬処方量は、レンボレキサントは有意に高かったものの、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、スボレキサント、ラメルテオン、バルプロ酸ナトリウムの処方は有意に低下した(p<0.05)。 著者らは、「この研究では患者数が限られており、患者の特性の違いによる選択バイアスが否定できないため、さらなる検討が必要である」としている。

40.

十人十色の症状・経過を示す多発性硬化症、改訂GLで疾患修飾薬の使い方を示す/バイオジェン

 多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の診療環境は、近年大きく変化している。「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」の公開後、MSにおいては国際的な診断基準が改訂され(McDonald 2017診断基準)、フマル酸ジメチル(商品名:テクフィデラ)、シポニモド(同:メーゼント)、オファツムマブ(同:ケシンプタ)が発売された。それを受けて約6年ぶりの改訂となる「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」が2023年9月に発刊された。 そこで、バイオジェンは2023年10月26日に「ガイドライン改訂からみるこれからの多発性硬化症診療」と題し、メディアセミナーを実施した。ガイドライン作成委員会の委員長を務める新野 正明氏(北海道医療センター臨床研究部 部長)が、MS患者が抱える悩みを含めたMS診療の現状と課題、ガイドライン改訂のポイントについて解説した。多様な症状・経過を示し、人生に大きく影響する MSは20~30代での発症が多く、仕事や結婚、出産など人生に大きな影響を及ぼす。同じ症状を呈するMS患者は2人としていないと言われるほど多様な症状を示し、その中には、ウートフ現象(温浴効果)、易疲労感、記憶力や集中力、判断力の低下などの見た目にはわからない症状もある。そのような背景から、MS患者は「学業や仕事に影響しないのだろうか?」「何に気を付ければ良いのだろうか?」「結婚・出産・子育てに影響しないのだろうか?」「いつまで薬を続ければ良いのだろうか?」「まわりにはなかなか理解してもらえない」といった悩みを抱えていると新野氏は指摘した。 このように多様な症状・経過を示し、患者の悩みの多いMSの診療課題として、新野氏は以下を挙げた。1)患者数が少なく、脳神経内科医でも経験することがそれほど多くない。そのため、専門とする医療機関が少なく、都市部に限られることが多い。2)長期にわたる診療・観察が必要であるが、担当医が異動により毎年交替することがあり、そのたびに方針が変更になることがある。3)2000年以降、疾患修飾薬(DMD)が8種類発売されたが、どのような使い分けが良いのか示されていない。4)どのような点に注意してフォローアップすれば良いか、情報が十分に共有されていない。DMDについてアルゴリズムを作成、使用方法を示す これらの課題に対応すべく、ガイドラインが改訂された。今回のガイドラインは3つの章からなり、中核箇所はMindsに準拠して作成された。第1章では、MSの診断では他の疾患との鑑別が重要となることから、NMOSDやMOG抗体関連疾患(MOGAD)などとの鑑別の手助けになるように、中枢神経系炎症性脱髄疾患診断のアルゴリズムが作成された。また、第1章の後半には各治療薬の概説や使用方法が具体的に掲載されたほか、診療において重要な「医療経済学的側面及び社会資源の活用」の項が追加された。 第2章では、MSやNMOSDを専門とする医師でも対応が分かれると考えられる重要臨床課題が5つ選定され、CQとして取り上げられた(MS:3つ、NMOSD:1つ、MOGAD:1つ)。今回設定されたMSに関するCQは以下のとおり。詳細はガイドラインを参照されたい。CQ1:再発寛解型MS(RRMS)の診断早期にナタリズマブないしオファツムマブで治療を開始するのは推奨されるか?(p114)CQ2:高齢MS患者において、DMDを中止することは推奨されるか?(p116)CQ3:二次性進行型MS(SPMS)患者に、オファツムマブとシポニモドのいずれが推奨されるか?(p118) 第3章では、診療上重要であり、エキスパートの間では一定のコンセンサスが得られると考えられる事項などがQ&Aとして取り上げられている。また、第2章と第3章の内容からRRMSの治療アルゴリズムも作成された。具体的には、「再発頻度・MRI活動性・EDSSが高くない、脳萎縮が強くない場合」には、アボネックス、ベタフェロン、コパキソン、フマル酸ジメチルのいずれかで治療を開始し、治療効果が不十分である場合は、ナタリズマブ、オファツムマブへの切り替えを速やかに検討することが記載されている。一方、「再発頻度やMRI活動性が高い、さらにはEDSSが高い、脳萎縮が強い場合」には、ナタリズマブ、オファツムマブによる治療開始を検討し、「再発頻度・MRI活動性・EDSSが高くない、脳萎縮が強くない場合」でも患者の意向等によってはナタリズマブやオファツムマブから開始することも検討することが記載されている。DMDの切り替え、効果不十分の判断は? それでは、DMDの切り替えの判断はどうすべきであろうか。これについても「Q2-6-1:どのような場合に、DMDの切り替えを検討すべきか?」という問いが設定されている。回答の内容としては「DMDの治療効果が不十分な場合や副作用により治療を継続できない場合、治療継続による副作用が懸念される場合には、切り替えを検討する」ことが記載され、治療効果不十分の判定については「DMDを開始した後も再発や障害度の進行が認められる場合や、MRIで新規病変や拡大病変が認められる場合」に治療効果不十分と判定することが記載されたと新野氏は解説した。 MRIの撮像頻度や障害度の進行の評価方法について、新野氏に質問したところ、「MRIについては、未治療の場合やDMD開始の判断をする場合には半年に1回、進行性多巣性白質脳症のリスクがある場合は3~4ヵ月に1回、安定している患者では1年に1回など、患者の状態によって判断する。身体障害については、EDSSの評価を年に1回程度もしくは再発時に実施するほか、歩行が重要な指標になるため、Timed 25-Foot Walk(25フィート歩行に要する時間)の評価、同じ距離を歩くのにかかる時間が延びていないか質問することも有用である。また、認知機能も非常に重要であるため、情報処理能力などを年に1回は評価する必要がある」との回答が得られた。 講演の最後に、新野氏は「患者さんはさまざまな悩みを抱えているため、医療者側の考えやエビデンスを押し付けるのではなく、患者さんの希望も聞きながら患者さんと一緒に治療方針を考えていく必要がある」とまとめた。

検索結果 合計:245件 表示位置:21 - 40