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BMI高値は、NSCLCの免疫チェックポイント阻害薬治療の予後良好因子か/JAMA Oncol

 BMI高値は、悪性黒色腫における免疫チェックポイント阻害薬のサバイバルベネフィットの独立した関連因子であるが、進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるその関連は明らかではない。オーストラリア・フリンダース大学のGanessan Kichenadasse氏らは、NSCLCにおけるPD-L1阻害薬アテゾリズマブのアウトカムとBMIの関連を調べるため、4つの国際的多施設臨床研究から事後解析を行った。4つの試験は、単群の第II相試験(BIRCH試験、FIR試験)と、2群の無作為化臨床試験(POPLAR試験、OAK試験)で、データ分析期間は2019年2月28日~9月30日であった。BMIと全生存期間(OS)、 無増悪生存期間(PFS)および毒性との関係についてITT解析した。研究の詳細はJAMA Oncology誌オンライン版2019年12月26日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。・4試験の2,261例のうち2,110例が解析に適格とされた。・2,110例中アテゾリズマブ投与患者は1,436例、ドセタキセル投与患者は676例であった。・肥満(BMI 30以上)はアテゾリズマブ群のOSの改善と有意に関連していたが、ドセタキセル群では関連はみられなかった。・アテゾリズマブ群でのOSおよびPFSとBMIの関連はPD-L1高発現グループで最も強かった。・高PD-L1発現(TC50%以上またはIC10%以上)患者でのOSのハザード比(HR)は、肥満患者では0.36(95%CI:0.21~0.62)、過体重患者では0.69(0.48~0.98)であった。・高PD-L1発現(同上)患者でのPFSのHRは、肥満患者では0.68(0.49~0.94)、過体重患者では0.72(0.56~0.92)であった。 著者らは、「BMI高値は、NSCLCにおけるアテゾリズマブのサバイバル改善に独立して関連していると考えられ、ベースラインBMIは、今後の免疫チェックポイント阻害薬の研究における層別化因子として考慮されるべきだ」と述べている。

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術前化療で乳房温存療法が適応になる割合は(BrighTNess)/JAMA Surgery

 StageII~III乳がんでは乳房温存療法を可能にするべく術前化学療法が実施されることが多い。今回、米国・Brigham and Women's HospitalのMehra Golshan氏らは、BrighTNess試験の2次解析からトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において術前化学療法により53.2%が乳房温存療法の適応になったことを報告した。また、北米では乳房温存治療適応患者でも乳房温存率が低く、生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異のない患者での両側乳房切除率が高いことがわかった。JAMA Surgery誌オンライン版2020年1月8日号に掲載。 本研究は、多施設二重盲検無作為化第III相試験(BrighTNess)において事前に示されていた2次解析である。BrighTNess試験には、北米、欧州、アジアにおける15ヵ国145施設において、手術可能なStageII〜IIIのTN乳がんで術前化学療法開始前にgBRCA変異検査を受けた女性634例が登録された。登録患者をパクリタキセル+カルボプラチン+veliparib、パクリタキセル+カルボプラチン、パクリタキセル単独に無作為に割り付け、12週間投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミドを4サイクル投与した。乳房温存療法の適応については、術前化学療法の前後に外科医が臨床およびX線写真により評価した。データは2014年4月1日~2016年12月8日に収集し、2018年1月5日~2019年10月28日に2次解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・634例(年齢中央値:51歳、範囲:22〜78歳)のうち、604例で術前化学療法前後の評価が可能であった。・ベースラインで乳房温存療法が不適応と判断された141例のうち、75例(53.2%)が術前化学療法後に適応となった。・全体として、術前化学療法後、乳房温存療法の適応と判断された502例のうち、342例(68.1%)が実際に乳房温存療法を受けた。このうち、乳房温存療法が非適応から適応に変わった75例では42例(56.0%)が実際に温存治療を受けた。・欧州およびアジアの患者は、北米の患者より乳房温存療法実施率が高かった(オッズ比:2.66、95%CI:1.84~3.84)。・gBRCA変異陰性で乳房切除術を受けた患者の対側乳房予防切除実施率は、北米の患者が70.4%(81例中57例)と、欧州およびアジアの患者の20.0%(30例中6例)に比べて高かった(p<0.001)。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)レポート

レポーター紹介2019年12月10日~14日まで5日間にわたり、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)が開催された。乳がんだけを取り扱う世界最大の学会である。1977年より開催されており、90ヵ国を超える国々から研究者や医師、医療従事者が参加する。臨床試験のみならず、トランスレーショナルリサーチや基礎研究の演題も口演として聴講できるのが特徴である。ここ数年は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で大きな演題が発表されるようになった影響もあり、SABCSでは臨床試験についてはサブグループ解析や追跡調査の結果が取り上げられることが多かったが、2019年は今後の日常臨床に大きく影響を及ぼす演題が複数取り上げられた。とくにHER2陽性転移乳がんの演題は非常に重要なものが2題発表された。後に取り上げるDS-8201aの第II相試験の結果は、国内で開発された薬剤であるということもあり、ほぼ半数の演者が国内の研究者であった。すべての演題が興味深いものであったが、なかでも興味深かった6演題を紹介する。T-DM1既治療HER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01試験)trastuzumab deruxtecan(DS-8201a、T-DXd)は抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害薬であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。すでに第I相試験の結果は発表・論文化されており、高い有効性が示されていて、期待されている薬剤の1つである。本試験はT-DM1既治療のHER2陽性進行乳がんを対象として行われた単群第II相試験である。第I相試験ではDLTを認めなかったものの、毒性の懸念からPART 1では用量の再設定が行われ、5.4mg/kgが至適投与量とされた。主要評価項目は独立中央判定委員会によるRECIST v1.1を用いた奏効率、副次評価項目として病勢制御率や臨床的有用率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性などが置かれた。184例が5.4mg/kgで投与され、全員が女性であった。ホルモン受容体陽性が52.7%、HER2ステータスはIHC3+が83.7%、IHC2+または1+でISH陽性が16.3%であった。全例がトラスツズマブおよびT-DM1による治療歴を有した。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。奏効期間の中央値は14.8ヵ月であり、3次治療以降としては非常に長い奏効期間を有した。65.8%がペルツズマブによる治療歴を有し、ペルツズマブ治療歴のない症例でより奏効率が高い傾向を示した。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は16.4ヵ月、全生存期間(overall survival:OS)の中央値は未到達であった。有害事象(adverse event:AE)はGrade3以上の治療関連AEが57.1%(薬剤との因果関係ありが48.8%)、SAEが22.8%(同12.5%)、治療関連死は4.9%(同1.1%)であった。とくに注目されているAEである肺障害は全Gradeで13.6%と高頻度に発生していた。多くはGrade1または2であったが、2.2%がGrade5であり、やはり注意が必要なAEであるといえよう。総じて毒性が強く、とくに肺障害に注意が必要なものの、非常に高い奏効率と奏効期間を有する薬剤であるといえる。本試験の結果は同日New England Journal of Medicine(NEJM)誌オンライン版に掲載された。筆者は本薬剤の開発の初期段階から関わってきたが、実際に自分が使って感じている実感と本臨床試験の結果は合致している。米国食品医薬品局(FDA)は本試験の結果をもって、2019年12月20日にT-DXdを迅速承認した。国内でも2019年9月に承認申請がなされており、早期に承認されて日本の患者さんに本薬剤が早く届くことを期待している。HER2陽性乳がんにおけるカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibもしくはプラセボの上乗せ効果を比較する第III相試験(HER2CLIMB試験)tucatinibは経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)でHER2のキナーゼドメインを阻害する。ラパチニブはEGFRも阻害するが、tucatinibはHER2特異性が高い。本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびT-DM1による治療歴を有するHER2陽性転移乳がんを対象とした第III相試験でtucatinibまたはプラセボをカペシタビン+トラスツズマブ療法に併用した。ベースラインでの脳MRIが必須とされており、脳転移があっても治療後で落ち着いている、もしくは早急な局所治療を必要としない場合は登録可能とされた。2対1の割合で割り付けが行われ、tucatinib群に410例、プラセボ群に202例が登録された。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会によるPFSで、RECIST v1.1を用いて評価された。副次評価項目としてOS、脳転移のある症例のPFS、測定可能病変を有する症例でのORRとされた。脳転移症例は両群で50%弱の割合であった。主要評価項目評価対象症例におけるPFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.51、95%CI:0.42~0.71、p<0.00001)でありtucatinib群で有意に良好であった。全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.0048)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。脳転移症例におけるPFS中央値は7.6ヵ月vs.5.4ヵ月(ハザード比:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.00001)であり、脳転移症例においても同様の有効性を示した。奏効率は41% vs.23%でこちらもtucatinib群で有意に良好であり、すべての副次評価項目でtucatinib群が良好な結果であった。Grade3以上のAEはtucatinib群で55%に対しプラセボ群で49%であり、両群間で大きな差は認められなかった。頻度の高いAEは下痢、手足症候群、悪心、倦怠感、嘔吐などであり、HER2-TKIやカペシタビンでよくみられるAEが多かった。本試験の結果は同日NEJM誌オンライン版に掲載された。本試験はペルツズマブ、T-DM1既治療例を対象として行われた初めてのHER2-TKIの試験である。本試験ではPFSのみならずOSにおいても有意に良好であった。また、脳転移に特化したエンドポイントでも有効性を示しており、HER2陽性乳がんで多い脳転移症例に対しても期待される薬剤である。ただ、残念ながら日本からは本試験には参加していない。アロマターゼ阻害薬で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+内分泌療法vs.カペシタビンの第III相試験(PEARL試験)2019年のASCOで韓国のグループより閉経前ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHa vs.カペシタビンの第II相試験結果(KCSG-BR 15-10)が発表されたことは記憶に新しい。PEARL試験は閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんの2次治療としてホルモン療法+パルボシクリブをカペシタビンと比較した第III相試験である。ホルモン療法としてはエキセメスタンとフルベストラントが選択され、それぞれ別のコホートとして試験が行われた。コホート1(エキセメスタン)、コホート2(フルベストラント)でそれぞれ300例が1対1の割合でホルモン療法+パルボシクリブもしくはカペシタビンに割り付けられた。主要評価項目はコホート2におけるフルベストラント+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性(ESR1の変異の有無によらない)、およびESR1変異のない症例におけるホルモン療法(エキセメスタン/フルベストラント)+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性の2つであった。1つ目の主要評価項目であるフルベストラント+パルボシクリブの優越性については、PFS中央値が7.5ヵ月vs.10ヵ月(ハザード比:1.09、95%CI:0.83~1.44、p=0.537)であり、優越性は示されなかった。2つ目の主要評価項目であるESR1変異のない症例におけるホルモン療法+パルボシクリブの優越性についても、PFS中央値が8.0ヵ月vs.10.6ヵ月(ハザード比:1.08、95%CI:0.85~1.36、p=0.526)であり、優越性は示されなかった。KCSG-BR 15-10試験ではエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHaはカペシタビンに対して良好なPFSを示した。KCSG-BR 15-10試験は第II相試験であるため単純に比較することはできないが、本試験が閉経後かつアロマターゼ阻害薬で進行した症例を対象にしているのに対し、KCSG-BR 15-10試験ではTAMの治療歴がある症例しか含まれておらずホルモン感受性が異なっていると考えられること、1次治療と2次治療の違い、などが結果の違いの原因となっていると考察できる。転移乳がんに対するデュルバルマブvs.化学療法のランダム化第II相試験(SAFIR02-IMMUNO試験)デュルバルマブは免疫チェックポイント阻害薬の1つで、PD-L1を阻害する。局所進行肺がんの化学放射線治療後の維持療法として使用されている。抗PD-L1抗体ではアテゾリズマブがアルブミン結合パクリタキセルとの併用において、PD-L1発現のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としての有効性を示し標準治療となっている。本試験ではHER2陰性転移乳がんを対象として化学療法に対する維持療法としてのデュルバルマブの有効性を検討した第II相試験である。3コース目の化学療法前に腫瘍検体を採取し、その後CR/PR/SDを達成した症例が対象となった。腫瘍検体で標的分子が検出されている際には分子標的治療の臨床試験に参加し、検出されなかった症例が本試験の対象となった。主要評価項目はPFSであった。デュルバルマブ維持療法へスイッチする群と、治療を変更せずに化学療法を行う群に199例が2対1の割合で割り付けられた。PD-L1発現についてSP142抗体を用いて評価され、TNBCでは52.4%、ホルモン受容体陽性では14.9%が陽性であった。PFS中央値は2.7ヵ月vs.4.6ヵ月(ハザード比:1.40、95%CI:1.00~1.96、p=0.047)であり、化学療法群で良好な傾向であった。また、サブグループ解析ではホルモン受容体陽性で化学療法群が良好であった。OS期間においては21.7ヵ月vs.17.9ヵ月(ハザード比:0.84、95%CI:0.54~1.29、p=0.42)であり両群間に差を認めなかった。一方、サブグループ解析ではTNBCで21ヵ月 vs.14ヵ月、PD-L1陽性で26ヵ月vs.12ヵ月と、デュルバルマブで良好な傾向を認めた。乳がんに対しても活発に免疫チェックポイント阻害薬の開発が行われており、本試験もその1つである。All comerで行われた試験であったが、今後の開発はホルモン受容体ステータスやPD-L1の発現など、バイオマーカーでの絞り込みが必須と考えられる。また、ホルモン受容体陽性乳がんではこれまで免疫チェックポイント阻害薬の開発は成功しておらず、その生物学的背景の解明も重要である。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法に対するS-1の追加効果を検証した第III相試験(POTENT試験)2017年のSABCSで日本と韓国のグループから術前化学療法で残存腫瘍があった症例に対するカペシタビンの上乗せ効果が示され(CREATE-X試験)、日本の研究者にとって大きな自信につながったことは記憶に新しい。POTENT試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象として、低リスク症例を除いた症例群に対してS-1の上乗せ効果をみた第III相試験である。本試験ではStageIからIIIBを対象とし、リンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性かつ中間リスクもしくは高リスクの症例を対象とした。1,959例がホルモン療法+S-1群とホルモン療法単独群に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)とされた。5年IDFSにおいて、S-1群で86.9%に対し、ホルモン療法単独群では81.6%(ハザード比:0.63、95%CI:0.49~0.81、p<0.001)であり、S-1群で良好な結果であった。本試験は中間解析で有効性の閾値を超えたため、早期有効中止となっている。AEについては、S-1群で増加傾向にあり、Grade3以上のものとしては好中球減少(7.5%)や下痢(1.9%)に注意が必要であるが、総じてコントロールは可能と考えられた。本試験は先進医療Bとして行われており、今後は保険承認の手続きを目指していくと思われる。2017年にはCREATE-X試験、2018年にはAERAS試験、そして本試験と、ここのところSABCSでは毎年日本から口演が発表されている。日本の研究者として大変誇らしいとともに、少しでも日本からのエビデンス発信に貢献していきたい。APHINITY試験全生存期間の中間解析APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法におけるトラスツズマブ療法へのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験である。4,805例のHER2陽性乳がん患者が登録され、ペルツズマブ群(2,400例)とプラセボ群(2,405例)に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目はIDFSであり、OSは副次評価項目に含められた。4年IDFSは92.3% vs.90.6%(ハザード比:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.045)であり、絶対リスク減少は2%に満たないもののペルツズマブ群で良好であった。また、本試験は当初リンパ節転移のない症例も登録されていたが、イベントが少ないことから途中でプロトコールが改訂され、リンパ節転移陽性症例のみが適格となった。今回のOS期間の2回目の中間解析では、6年生存率は94.8% vs.93.9%(ハザード比:0.85、95%CI:0.67~1.07、p=1.07)であり、両群間に差を認めなかった。IDFSのフォローアップデータは、6年IDFSで90.6% vs.87.8%(ハザード比:0.76、95%CI:0.64~0.91)とペルツズマブ群で良好であったが、リンパ節転移の有無(すなわちベースラインリスクの違い)でサブグループ解析を行うと、リンパ節転移陽性では6年IDFSで87.9% vs.83.4%(ハザード比:0.72、95%CI:0.59~0.87)とペルツズマブの上乗せ効果を認めたのに対し、リンパ節転移陰性では95.0% vs.94.9%(ハザード比:1.02、95%CI:0.69~1.53)と上乗せ効果は認めなかった。ホルモン受容体ステータスによらずペルツズマブの上乗せ効果が認められた。トラスツズマブの登場によりHER2陽性乳がんの予後は劇的に改善しており、術後ペルツズマブの追加によりリンパ節転移陽性例に対してはIDFSの改善が期待される。ただし、中間解析時点ではOSの上乗せ効果は認めないため、最終解析の結果が待たれる。リンパ節転移陰性例に対しては原則として術後ペルツズマブの上乗せは不要であろう。

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進展型小細胞肺がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の成績(KEYNOTE-604)/Merck

 Merck社は、2020年1月6日、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の第III相KEYNOTE-604試験において、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。 同研究では、ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)併用は、化学療法単独(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)と比較して統計的に有意なPFSの改善がもたらした(HR:0.75、95%CI:0.61~0.91)。全生存(OS)についてはペムブロリズマブ併用患者で改善が認められたが、事前に指定された統計学的基準を満たさなかった(HR:0.80 、95%CI:0.64~0.98)。同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告されものと同様であった。試験結果は今後の医学会議で発表され、規制当局と議論するとしている。 KEYNOTE-604試験では、453例が登録され、ペムブロリズマブ+化学療法またはプラセボ+化学療法に無作為に割り付けられた。複合主要評価項目はOSとPFS、副次評価項目は、客観的奏効率、奏効期間、安全性と生活の質(QoL)など。

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B細胞NHLへのR-CHOP、4サイクルvs.6サイクル/Lancet

 60歳以下の低リスク中悪性度(アグレッシブ)B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療において、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone(R-CHOP)併用療法の4サイクル投与は6サイクル(標準治療)に対し、有効性が非劣性で、毒性作用は治療サイクルが少ない分、抑制されることが、ドイツ・ザールラント大学のViola Poeschel氏らGerman Lymphoma Allianceが行った「FLYER試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21/28日合併号に掲載された。国際予後指標(IPI)の年齢調整リスク因子がなく、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者では、6サイクルのR-CHOP様レジメンの予後はきわめて良好と報告されている。一方、多くの患者にとって、このレジメンに含まれる6サイクルの細胞傷害性薬剤の併用療法(CHOP様)は過剰治療となっている可能性があるという。5ヵ国が参加した非劣性試験 本研究は、5ヵ国(デンマーク、イスラエル、イタリア、ノルウェー、ドイツ)の138施設が参加した多施設共同非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2005年12月2日~2016年10月7日の期間に患者登録が行われた(Deutsche Krebshilfeの助成による)。 対象は、年齢18~60歳で、StageI/II、血清乳酸脱水素酵素(LDH)濃度が正常、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するB細胞非ホジキンリンパ腫患者であった。 被験者は、R-CHOP 4サイクルに加えリツキシマブを単独で2回投与する群(4サイクル群)、またはR-CHOPを6サイクル投与する群(6サイクル群)に無作為に割り付けられた。1サイクルは21日であった。リツキシマブの用量は375mg/m2(体表面積)とした。精巣リンパ腫を除き、放射線治療は計画されなかった。 主要評価項目は、3年時の無増悪生存(PFS)率とし、intention-to-treat集団で解析が行われた。非劣性マージンは-5.5%とした。安全性の評価は、1回以上の投与を受けた患者を対象とした。3年PFS率:96% vs.94%、完全寛解率:91% vs.92% 592例が登録され、588例(4サイクル群293例[年齢中央値 49歳、女性 40%]、6サイクル群295例[47歳、39%])がintention-to-treat解析の対象となった。B症状が4サイクル群で多かった(9% vs.3%)。588例中499例(85%)がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であった。 追跡期間中央値66ヵ月(IQR:42~100)の時点における3年PFS率は、4サイクル群が96%(95%信頼区間[CI]:94~99)、6サイクル群は94%(91~97)であった。群間差は3%で、95%CIの下限値は0%であり、非劣性マージン(-5.5%)よりも高く、4サイクル群の6サイクル群に対する非劣性が確認された。 治療終了時に、4サイクル群267例(91%)、6サイクル群271例(92%)が完全寛解を達成し、それぞれ8例(3%)および11例(4%)が部分寛解で、6サイクル群の1例(<1%)が不変であった。治療中の増悪は両群3例(1%)ずつで認められた。 3年無イベント生存率は、4サイクル群が89%、6サイクル群も89%であり、3年全生存率はそれぞれ99%および98%だった。 また、事後解析では、5年PFS率は4サイクル群94%、6サイクル群94%、5年無イベント生存率はそれぞれ87%および88%、5年全生存率は97%および98%であった。 全体で40例が増悪または再発した。治療終了時の完全寛解/不確定完全寛解例での再発は、4サイクル群が11例(4%)、6サイクル群は13例(5%)であり、部分寛解例の再発はそれぞれ2例(25%)および2例(18%)だった。完全寛解/不確定完全寛解の再発例24例のうち、4例(17%)は登録から1年以内に、8例(33%)は2年以内に再発した。 4サイクル群(293例)では血液学的有害事象が294件、非血液学的有害事象が1,036件発現したのに比べ、6サイクル群(295例)ではそれぞれ426件および1,280件であり、4サイクル群で少ない傾向が認められた。重篤な有害事象は、4サイクル群48例、6サイクル群45例にみられた。感染症は、それぞれ116例(Grade3/4は22例)および156例(同23例)で発現した。6サイクル群で治療関連死が2例認められた。 著者は、「R-CHOP療法は、有効性を損なわずに、化学療法の施行数を減らすことができる」としている。

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男性胚細胞腫瘍の心血管疾患リスクは?/JCO

 男性の胚細胞腫瘍は、まれだが20~30代に比較的多く発生するという特徴がある。その男性胚細胞腫瘍(精巣腫瘍)について、ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン(BEP)併用療法が、治療開始後1年未満の心血管疾患(CVD)リスクを顕著に増加させ、10年後にもわずかだがリスク増加と関連することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJakob Lauritsen氏らによる検討で明らかにされた。また、放射線療法が糖尿病のリスク増加と関連していることも示されたという。なお、経過観察の患者では、CVDリスクは正常集団と同程度であった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。 研究グループは、デンマークの精巣腫瘍データベースを用いて、腫瘍治療後のCVDリスクを分析した。臨床データを収集するとともに、患者1例につきデンマークの正常集団から生年月日をマッチさせたリスク集団サンプリング(risk-set sampling)で対照10例を抽出し、治療とアウトカムとの関連性を、がん治療を時変共変量(time-varying covariate)として組み込んだCoxモデルでアウトカムごとに分析した。 心血管リスク因子、CVDおよび関連する死亡は、デンマークのレジストリで特定した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、胚細胞腫瘍の男性患者5,185例、対照男性5万1,850例で、追跡期間中央値は15.8年であった。・BEP併用療法(1,819例)は、高血圧症と高コレステロール血症のリスク増加と関連していた。・BEP併用療法開始後1年未満のCVDのハザード比(HR)は、心筋梗塞が6.3(95%信頼区間[CI]:2.9~13.9)、脳血管障害が6.0(2.6~14.1)、静脈血栓塞栓症が24.7(14.0~43.6)であった。・BEP併用療法開始後1年以降は、CVDリスクは正常レベルに低下したが、10年後の時点でも心筋梗塞(HR:1.4、95%CI:1.0~2.0)および心血管死(1.6、1.0~2.5)のリスク増加が認められた。・放射線療法(780例)は、長期追跡で糖尿病のリスクを増加させた(HR:1.4、95%CI:1.0~2.0)が、ほかのリスクは増加しなかった。・経過観察の患者(3,332例)では、心血管リスク因子、CVDおよび心血管死のデータは正常集団と同程度であった。

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閉経後ルミナールB乳がんへの術前療法、ribociclib+レトロゾール併用が有望(CORALLEEN)/SABCS2019

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後乳がんに対する術前療法として、ribociclibとレトロゾールの併用投与が、術前化学療法と同様の効果を示す可能性があるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、スペインInstituto Valenciano de OncologiaのJoaquin Gavila氏より発表された。この結果はLancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号に同時掲載された。 本試験(CORELLEEN試験)は、2017年7月~2018年12月にスペイン国内(21施設)で実施された、オープンラベル無作為化比較の第II相試験である。・対象:Stage I~IIIAのHR+/HER2-ルミナールBタイプの閉経後乳がん患者(ルミナールBタイプは遺伝子発現プロファイル検査法PAM50で判定)・試験群:ribociclib+レトロゾール群(R群) 52例・対照群:ドキソルビシン+シクロホスファミド後にパクリタキセル逐次投与群(CT群) 54例・評価項目:[主要評価項目]手術時にPAM50によりROR(Risk Of Recurrence)-lowと判定される割合[副次評価項目]組織学奏効率(pCR)、残存腫瘍量(RCB)とPEPI(Preoperative Endocrine Prognostic Index)スコア、PAM50によるサブタイプ変化、奏効率、QOL、安全性、バイオマーカー検索など 両群共に6ヵ月の投薬期間後に手術を施行。ROR-Lowの判定は、リンパ節転移陰性(n0)の場合、RORスコア40以下、リンパ節転移1~3個(n1-3)の場合、15以下とした。同様にn0でRORスコアが41~60、n1~3で16~40をIntermediateとした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子検査の解析対象はR群49例、CT群51例であった。・手術時のROR-lowの割合は、R群46.9%(95%信頼区間[CI]:32.5~61.7)、CT群:46.1%(95%CI:32.9~61.5)であった。・RORスコアの中央値は、R群18、CT群25であった。中央判定によるKi67の中央値は、R群3、CT群10であった。・pCR率はR群0%(95%CI:0~7.2)、CT群5.8%(95%CI:1.4~16.6)、PEPIスコア0はR群22.4%(95%CI:11.7~36.6)、CT群17.3%(95%CI:8.6~31.4)であった。・手術時におけるサブタイプ変化は、R群の87.8%、CT群の82.7%がルミナールAとなっており、ルミナールBはR群で8.2%、CT群で15.4%であった。・ベースラインと薬剤投与15日目のRORの変化を見たところ、R群の1例以外はすべて減少しており、CT群に比べ大きなRORの低下がみられた。・Grade3以上の有害事象(AE)の発現率は、R群で56.9%、CT群で69.2%、重篤なAEはR群で3.9%、CT群で15.4%であった。また、AEによる投与中止はR群で15.7%、CT群で19.2%であった。Gavila氏はSABCSのプレスリリースで、「ハイリスクのルミナールB乳がん患者に対するribociclibとレトロゾールの併用による術前内分泌療法は有害事象も少なく、術前化学療法と同等の臨床的効果があり、今後は術前化学療法にとって代わる可能性がある」と述べている。

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ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。 APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表(症例追跡期間中央値45.4ヵ月時点)では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。とくに、リンパ節転移陽性群ではHR 0.77(95%CI:0.62~0.96、p=0.019)と、またホルモン受容体陽性群でもHR 0.76(95%CI:0.56~1.04、p=0.085)と、HP群が良い傾向を示していた。・対象:HER2陽性乳がん患者4,805例 (リンパ節転移状況、ホルモン受容体状況は問わず)・試験群:ペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(HP群)2,400例・対照群:プラセボ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(H群)2,405例・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間(OS)、無再発期間、安全性、健康関連QOLなど標準化学療法は、78%がアントラサイクリンを含むレジメン、そのほかはドセタキセル+カルボプラチンなど。ペルツズマブとトラスツズマブの投与期間は1年間。 主な結果は以下のとおり。・2019年6月のデータカットオフ(追跡期間中央値:74.1ヵ月)時のデータで、2回目のOS解析が実施された。・6年OS率はHP群94.8%、H群93.9%で、OSのHRが0.85(95%CI:0.67~1.07、p=0.170)と両群間に統計学的な有意差はなかった(今回のOS解析での統計学的有意差の閾値はp=0.0012)。・6年iDFS率はHP群90.6%、H群87.8%で、iDFSのHRが0.76(95%CI:0.64~0.91)と、前回の解析よりHP群の効果が明確になっていた。とくに、遠隔再発率はHP群5.9%対H群7.7%、局所再発率はHP群1.2%対H群2.0%と、HP群で良好であった。・リンパ節転移の有無、ホルモン受容体の有無別のiDFSのHRは、2017年時の発表と同様、リンパ節転移陽性群では0.72(95%CI:0.59~0.87)、またホルモン受容体陽性群では0.73(95%CI:0.59~0.92)、さらにホルモン受容体陰性群でも0.83(95%CI:0.63~1.10)と、引き続きHP群が良好であった。しかし、リンパ節転移陰性群では1.02(95%CI:0.69~1.53)で、6年iDFS率もHP群95.0%対H群94.9%と差がなかった。・心機能イベントについては、HP群で0.8%、H群で0.3%と安全性に大きな問題はなかった。 SABCS2019のプレスリリースでPiccart氏は、「今回の解析により、HER2陽性乳がん患者の術後療法におけるトラスツズマブ+化学療法へのペルツズマブの追加は、さらに堅固なエビデンスとなった」と述べている。

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デュルバルマブの進展型小細胞肺がん、FDAの優先審査指定に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2019年11月29日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が治療歴のない進展型小細胞肺がん(SCLC)患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に対する優先審査指定を受けたことを発表。 このsBLAは、The Lancet誌に掲載された第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づいて行われた。CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。同試験では、デュルバルマブと化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)の併用と化学療法単独、および、デュルバルマブ、トレメリムマブ、化学療法の併用と化学療法単独を比較したもの。全生存期間(OS)を主要評価項目とし、米国、欧州、南米、アジア、中東の 23カ国200以上の施設で実施されている。 同試験において、化学療法単独群のOS中央値は10.3ヵ月であったのに対し、デュルバルマブと化学療法併用群はOS中央値13.0ヵ月を示し、統計学的に有意で臨床的に意義のあるOSの延長を示した(ハザード比:0.73)。治療開始後18ヵ月時点で生存している患者の割合は、デュルバルマブ・化学療法併用群では33.9%、化学療法単独群では24.7%と推計され、併用療法によるOS延長のベネフィットが示された。 デュルバルマブの小細胞肺がん治療薬としての適応は本邦では未承認である。

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ddTC療法、上皮性卵巣がんの1次治療でPFS改善せず/Lancet

 上皮性卵巣がん患者の1次治療において、毎週(weekly)投与を行うdose-dense化学療法は施行可能であるが、標準的な3週ごと(3-weekly)の化学療法に比べ無増悪生存(PFS)期間を改善しないことが、英国・マンチェスター大学のAndrew R. Clamp氏らが行った「ICON8試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月7日号に掲載された。上皮性卵巣がんの標準的1次治療は、従来、カルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)の3週ごとの投与とされる。一方、日本のJGOG3016試験(Katsumata N, et al. Lancet 2009;374:1331-1338.、Katsumata N, et al. Lancet Oncol. 2013;14:1020-1026.)では、dose-dense weekly PTX+3-weekly CBDCAにより、PFSと全生存(OS)がいずれも有意に改善したと報告されている。2つのweeklyレジメンと標準治療を比較する無作為化試験 本研究は、6ヵ国(英国、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、韓国、アイルランド)の117施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2011年6月6日~2014年11月28日の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、組織学的に上皮性卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がんが確認され、国際産婦人科連合(FIGO)の1988年分類でStageIC~IV、全身状態(PS)が米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)基準の0~2の新規診断患者であった。 被験者は、1群(CBDCA[AUC5または6]+PTX[175mg/m2]を3週ごとに投与する群[3-weeklyレジメン]、対照群)、2群(CBDCA[AUC5または6]を3週ごと+PTX[80mg/m2]を毎週投与する群[weekly PTXレジメン])、3群(CBDCA[AUC2]+PTX[80mg/m2]を毎週投与する群[weekly CBDCA+PTXレジメン])のいずれかに、無作為に割り付けられた。これら3週を1サイクルとする治療が、6サイクル行われた。 手術は次の2つの方法で行われた。(1)割り付け前に即時的な初回腫瘍減量手術(IPS)として施行し、術後に6サイクルの化学療法を行う方法、(2)術前化学療法を3サイクル行った後、計画された遅延的な初回腫瘍減量術(DPS)として施行し、術後にさらに3サイクルの化学療法を行う方法。 主要アウトカムは、PFSとOSの2つとし、intention-to-treat解析が行われた。ddTC療法は3-weeklyレジメンに比べPFS期間中央値を改善しなかった 1,566例が登録され、1(対照)群に522例、2群に523例、3群には521例が割り付けられ、それぞれ72%(365例)、60%(305例)、63%(322例)がプロトコールで定められた6サイクルの治療を完遂した。PTXの用量強度は、weeklyレジメンで高かった(総投与量中央値:1群1,010mg/m2、2群1,233mg/m2、3群1,274mg/m2)。 全体の年齢中央値は62歳(IQR:54~68)で、1,444例(93%)がECOG PS 0~1、1,073例(69%)が高Grade漿液性腺がん、1,119例(72%)がStageIIIC以上であった。また、746例(48%)がIPS、779例(50%)がDPSを受けた。 2017年2月20日の時点(追跡期間中央値36.8ヵ月)で、1,018例が病勢進行または死亡した(1群337例、2群338例、3群343例)。2つのweeklyレジメンは標準的な3-weeklyレジメンに比べ、いずれもPFS期間中央値を改善しなかった。境界内平均生存時間(restricted mean survival time:RMST)は、1群24.4ヵ月(97.5%信頼区間[CI]:23.0~26.0)、2群24.9ヵ月(24.0~25.9)、3群25.3ヵ月(23.9~26.9)であり、PFS期間中央値は同17.7ヵ月(IQR:10.6~未到達)、20.8ヵ月(11.9~59.0)、21.0ヵ月(12.0~54.0)であった(log-rank検定:2群vs.1群のp=0.35、3群vs.1群のp=0.51)。2年OS率は、1群が80%、2群が82%、3群は78%だった。 事前に計画されたサブグループ解析では、IPSコホートのRMSTは1群が32.6ヵ月、2群が33.0ヵ月、3群は33.3ヵ月、DPSコホートではそれぞれ18.6ヵ月、19.1ヵ月、19.6ヵ月であり、手術アプローチとweekly dose-dense治療に交互作用は認められなかった。 Grade3/4の毒性作用は、weeklyレジメンで頻度が高い傾向がみられた(1群42%、2群62%、3群53%)。発熱性好中球減少(4%、6%、3%)およびGrade2以上の感覚性ニューロパチー(27%、24%、22%)の頻度は3群でほぼ同等であった。Grade3以上の貧血は、2群(13%)が1群(5%)に比べ高頻度であった(p<0.0001)。 著者は、「本研究は日本のJGOG3016試験から着想を得たが、欧州人を中心とする集団ではweekly dose-dense PTXの生存利益は再現されなかった」としている。

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治療抵抗性となった転移性去勢抵抗性前立腺がんへの次なる治療は?(解説:宮嶋哲氏)-1155

 CARD trialは、ドセタキセルやアンドロゲン経路標的薬の治療歴を有するmCRPC患者を対象に、カバジタキセル(129例)またはアンドロゲン経路標的薬(アビラテロンまたはエンザルタミド、126例)を割り付けたランダム化比較試験である。1次評価項目である画像診断に基づくPFS(腫瘍の増大、骨病変の進行、がん死)に関しては、カバジタキセル群8.0ヵ月、アンドロゲン経路標的薬群3.7ヵ月であった(HR:0.54、p<0.001)。OSではカバジタキセル群13.6ヵ月、アンドロゲン経路標的薬群11.0ヵ月であった(HR:0.64、p=0.008)。2次評価項目であるOS、PFS、PSA response、腫瘍の反応などにおいてもカバジタキセル優位の傾向を示していた。なお、Grade3以上の有害事象は両群で同等であった。 転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対してはドセタキセルかアンドロゲン経路標的薬が選択されるが、この両者間に交差耐性の可能性が示唆されていることから、次の治療薬の選択は悩ましい。CARD trialのアンドロゲン経路標的薬群の患者背景で有転移症例と高リスクがんの割合が若干高いのが気になるところだが、ドセタキセルかアンドロゲン経路標的薬の治療歴がある場合の次なる候補としてカバジタキセルの優位性が示されたことは重要である。ただし、今後PSMA-PET等のnext generation imaging modalityの導入に伴い転移巣への積極的なmetastasis-directed therapyが適用されていくことから、mCRPCの治療法も薬物療法のみならず、腫瘍量によって層別化されていくことが予想される。

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FDA、非扁平上皮NSCLCの初期治療にアテゾリズマブ+化学療法を承認/Roche

 Roche社は、2019年12月4日、米国食品医薬品局(FDA)が、EGFRまたはALK遺伝子異常を伴わない非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の初期治療に対して、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用を承認したことを発表した。 今回の承認は、化学療法未治療のIV期非扁平上皮NSCLC患者を対象に、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)単独を比較した第III相IMpower130試験の結果に基づいている。IMpower130試験において、アテゾリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して有意に全生存期間(OS)を延長することが示された(OS中央値:18.6対13.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.64~0.99、p=0.0384)。また、無増悪生存(PFS)のリスクも化学療法単独と比較して有意に低減した(PFS中央値:7.2対6.5ヵ月、HR:0.75、95%CI:0.63~0.91、p=0.0024)。 アテゾリズマブと化学療法の併用の安全性は、個々の薬剤の既知の安全性プロファイルと一致しており、併用による新しい安全性シグナルは確認されなかった。Grade3/4の治療関連有害事象は、化学療法単独群では60.3%、アテゾリズマブ・化学療法併用群では73.2%で報告された。

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間質性肺炎合併NSCLCに対するカルボプラチン+nabパクリタキセルの成績

 間質性肺疾患(ILD)を合併する非小細胞肺がん(NSCLC)の予後は不良であり、また、肺がん治療によりILD悪化のリスクが高まる。とくに、化学療法を受けた患者の5~20%でILDが増悪するとされる。静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏らは、間質性肺炎を合併したNSCLC患者に対するカルボプラチン+nabパクリタキセルの効果と安全性を評価する多施設第II相試験を実施、その結果が発表された。Cancer Science誌オンライン版2019年10月13日号掲載の報告。カルボプラチン+nabパクリタキセルで間質性肺炎の無増悪の割合95.7%・対象:軽度~中等度のILDを合併した進行NSCLC患者・介入:カルボプラチン(AUC6 day1)+nabパクリタキセル(100mg/m2 day1、8、15)3週ごと4サイクル(最大6サイクル)・評価項目:[主要評価項目]プロトコール治療28日後のILD無増悪の割合[副次評価項目]奏効率(RR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、ILD増悪の割合、毒性 間質性肺炎を合併したNSCLC患者に対するカルボプラチン+nabパクリタキセルの効果と安全性を評価した主な結果は以下のとおり。・間質性肺炎を合併したNSCLC患者94例が登録され、92例がプロトコール治療を受けた。・間質性肺炎を合併したNSCLC患者の年齢中央値は70歳、非扁平上皮がんが58%を占めた。・カルボプラチン+nabパクリタキセルのプロトコール治療28日後の間質性肺炎の無増悪の割合は95.7%(92例中88例)であった。・RRは51%(95%信頼区間:40~62)であった。・PFS中央値は6.2ヵ月、OS中央値は15.4ヵ月であった。・頻度の高いGrade3/4の有害事象は好中球減少75%、白血球減少53%、血小板減少20%で、治療関連死は2例であった。

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小細胞肺がん、PARP阻害薬veliparibの追加でPFS改善/JCO

 小細胞肺がん(SCLC)に対して、化学療法へのPARP阻害薬veliparib追加の有効性が確認された。veliparibは、非臨床試験で標準化学療法の効果を増強することが示されており、米国・エモリー大学のTaofeek K. Owonikoko氏らは、未治療の進展型SCLC(ES-SCLC)患者を対象に第II相無作為化臨床試験を行った。その結果、シスプラチン+エトポシド(CE)へのveliparib追加併用療法により、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長したことが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌2019年1月20日号掲載の報告。 研究グループは、未治療ES-SCLC患者をveliparib(CE+V)群(1~7日目に100mgを1日2回経口投与)またはプラセボ(CE+P)群に、性別および血清乳酸脱水素酵素(LDH)値で層別化して無作為に割り付け、いずれもCE療法4サイクルと併用投与した。 主要評価項目はPFS。全体の片側(0.10値)log-rank検定を用い、試験の検出力は88%で、PFSのハザード比(HR)37.5%減少と設定した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしプロトコールの治療を受けた患者は、計128例であった。・患者背景は、年齢中央値66歳、52%が男性、ECOG PSは0が29%、1が71%であった。・PFS中央値は、CE+V群6.1ヵ月、CE+P群5.5ヵ月であり、CE+V群が優れていた(層別化前HR:0.75[片側p=0.06]、層別化後HR:0.63[片側p=0.01])。・全生存(OS)期間中央値は、CE+V群10.3ヵ月、CE+P群8.9ヵ月であった(層別化後HR:0.83、80%信頼区間[CI]:0.64~1.07、片側p=0.17)。・全奏効率(ORR)は、CE+V群71.9%、CE+P群65.6%であった(両側p=0.57)。・層別解析の結果、LDH高値の男性患者ではCE+V群でPFSの有意な延長(PFSのHR:0.34、80%CI:0.22~0.51)が認められたが、他の患者集団では治療群間で有意差はなかった(PFSのHR:0.81、80%CI:0.60~1.09)。・Grade3以上の血液学的毒性の発現頻度はCE+V群がCE+P群よりも高かった(CD4リンパ球減少症:8% vs.0%[p=0.06]、好中球減少症:49% vs.32%[p=0.08])。

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HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本癌治療学会

 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。 主な結果は以下のとおり。・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

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ESMO2019レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する術前化学療法の意義―PRODIGY試験とRESOLVE試験切除可能な進行胃がんに対する治療は本邦では、S-1、CapeOx、SOX、S-1+ドセタキセル(DS)による術後補助化学療法が標準的治療の位置付けである。欧州では、FLOT4試験の結果、術前術後に3剤併用療法を行うことが標準となった。今回、アジアから2つの術前治療に関する第III相試験が発表された。PRODIGY試験は、韓国で実施されたcT2-3N+M0またはcT4NanyM0に対する術前DOS療法+手術+術後S-1療法(以下、CSC群)の、手術+術後S-1療法(以下、SC群)に対する優越性を検証する第III相無作為化比較試験である。計530例が登録され、最終的な解析対象(FAS)は484例であった。年齢中央値は両群とも58歳、食道胃接合部原発が5%程度含まれていた。CSC群におけるGrade3以上の治療関連有害事象として、好中球減少12.6%、発熱性好中球減少9.2%、下痢5.0%を認め、術前治療中の治療関連死は0.8%であった。手術におけるR0切除割合は、CSC群(238例)96.4% vs.SC群(246例)85.8%(p<0.0001)であった。CSC群では病理学的完全奏効(CR)が10.4%(p<0.0001)で認められた。主要評価項目の3年無増悪生存期間(PFS)は、CSC群66.3% vs.SC群60.2%(HR:0.70、95%CI: 0.52~0.95、p=0.0230)であった。ITT解析でもHR:0.69、6ヵ月のランドマーク解析でもHR:0.71と一貫した結果であった。RESOLVE試験は、中国で行われたcT4a/N+M0またはcT4bNanyM0に対する、術後XELOX、術後SOX、術前SOX+手術+術後SOXの3群比較試験である。計1,094例が登録され、年齢中央値は59~60歳、食道胃接合部原発が35~38%含まれていた。術後化学療法実施割合は、各群66~70%であった。3年無病生存(DFS)は、術後XELOX群と比較して、術前術後SOX群で優越性が示され(54.78% vs.62.02%、HR:0.79、95%CI:0.62~0.99、p=0.045)、術後SOX群の非劣性が示された(54.78% vs.60.29%、HR:0.85、95%CI:0.67~1.07、Non-Inferiority margin:1.33)。以上、中国および韓国から2つの第III相試験が報告され、術前化学療法の優越性が検証された。試験の質も大きな問題はないと考えられ、本邦の実地臨床にも外挿できる可能性が高いと考えられる。ただ、中国の試験はcT4と局所進行症例の中でもより進行した集団が対象であること、韓国の試験は優越性を示すも、PFS曲線はほぼR0切除率の差がPFSの差につながっていることが示唆されることを考慮すれば、すべての切除可能胃がんで術前化学療法が必要とは言い切れないだろう。ただ、発表からは術前化学療法の有害事象も許容範囲内で、術後合併症の発生割合も同程度であったことから、大きなデメリットが感じられない。本邦では、JCOG1509試験、JCOG1704試験の2つの胃がんにおける術前化学療法を検討する前向き試験が実施中である。前者はcT3-4N+M0(肉眼型大型3型および4型を除く)を対象に術前S-1+オキサリプラチン(OX)療法の優越性を無治療群と比較する第III相試験、後者はBulky Nがあるものを対象にしたDOS療法を評価する第II相試験である。これらの試験の結果を待つか、中国・韓国のエビデンスを外挿するか、もう少し国内での議論が必要かもしれない。BRAF V600E変異型大腸がんに対する新規分子標的治療―BEACON試験切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんは、大腸がんの約5%に認められ、きわめて予後不良である。大腸がん治療ガイドラインでは、1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法が推奨レジメンの1つとなっているが、2次治療以降には有効な治療が乏しいのが現状である。BRAF変異陽性メラノーマや非小細胞肺がんではBRAF阻害薬+MEK阻害薬の有効性が示されており、同様の治療戦略が大腸がんでも期待されていた。BEACON試験は、BRAF V600E変異を有する切除不能・進行再発大腸がんにおいて、1次治療もしくは2次治療後に腫瘍進行を認めた患者を対象とした無作為化第III相試験である。対象患者665例は、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブの3剤併用療法群、エンコラフェニブ+Cmabの2剤併用療法群、FOLFIRI+Cmab療法またはIRI+Cmab療法のコントロール群の3群に、1:1:1で無作為に割り付けられた。OS期間中央値は、3剤併用療法群vs.コントロール群で9.0ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で8.4ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0003)、最初の331例のORRは3剤併用療法群vs.コントロール群で26% vs.2%(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で20% vs.2%(p<0.0001)であり、主要評価項目を達成した。相対用量強度(RDI)は3剤併用療法群では、エンコラフェニブ 91%、ビニメチニブ 87%、Cmab 91%、2剤併用療法群では、エンコラフェニブ 98%、Cmab 93%、コントロール群では74~85%であった。Grade3以上の有害事象割合は、3剤併用療法群58%、2剤併用療法群50%、コントロール群61%であり、3剤併用療法群で下痢10%、貧血11%が高く、全Gradeの有害事象において2剤併用療法群で筋肉痛(13%)、関節痛(19%)、頭痛(19%)などの頻度がやや高かった。QOLに関してはQLQ-C30、FACT-Cにおいては差を認めなかった。以上から、3剤併用療法群において良好な有効性を認め、高いRDIを維持しながらも、管理可能な有害事象のプロファイルとQOLの維持を認めた。以上から、今後切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんにおいて、本併用療法は2次治療以降の標準治療として臨床導入されることが期待される。3剤併用療法で有効性がやや高く、有害事象も2剤併用療法とプロファイルが異なるだけでQOLに差がないことからまずは3剤併用でトライしてみることが勧められる。Grade3以上の消化器毒性は3剤併用療法で高いことから、その場合には2剤併用療法もオプションとなりえるだろう。今後メラノーマ同様に1次治療や補助療法での有効性にも期待したいところである。現状、臨床現場でも困っている患者さんのために、早急な薬事承認に期待したいが、まだ1年程度先になるだろう。それまでは、拡大治験の実施や患者申出制度の利用に活路を見いだしたいところである。ハイリスクStageII結腸がんに対する補助療法―ACHIEVE-2試験リンパ節転移のないStageII結腸がんでは、臨床病理学的な再発ハイリスク因子を持つ場合にのみ術後補助化学療法が推奨され、レジメンはCAPOX/FOLFOX療法やフルオロピリミジン単独療法が6ヵ月間行われる。StageIIIにおいて、IDEA collaborationの結果から、CAPOX/FOLFOX療法の3ヵ月投与が治療選択肢として確立されたことからハイリスクStageII結腸がんでも同様の検討が行われた。2019年ASCOでIDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)の統合解析が発表され、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は非劣性が証明されず、negative studyであった。しかし、CAPOX群では3ヵ月と6ヵ月で大きな差を認めず、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合でも、CAPOXなら3ヵ月への短縮が可能と結論付けていた。今回のESMOでは、本邦での試験であるACHIEVE-2試験の結果が発表された。514例が登録され、ハイリスク因子はT4 36%、低分化腺がん10~13%、郭清リンパ節転移個数不十分13%、腸閉塞発症19~20%、脈管侵襲陽性87~88%であった。観察期間中央値約36ヵ月の時点で、3年DFSは3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群87.9%であった(HR:1.12、95%CI:0.80~1.57)。レジメン別解析では、FOLFOX群(n=82)3ヵ月群88.6% vs.6ヵ月群85.7%、CAPOX群(n=432)3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群88.4%であった。サブグループ解析では、T4群では3ヵ月群76.2% vs.6ヵ月群79.7%(HR:1.28、95%CI:0.84~1.95)であった。本試験結果の解釈は非常に悩ましい。もともとIDEA collaborationは、統合解析が主体となっていることから、個々の試験の解釈をするときは、統合解析の結果と合わせて評価することが必要である。3年DFSで大きな差はないが、HRが1.12と少し1を超えている点は気になるところである。とくに、T4集団での解析では少数例の検討とはいえ、HR:1.28と1を大きく超えている。全体の3年DFSがlow risk StageIIIよりも悪いことも鑑みると、T4集団ではCAPOX 6ヵ月を選択することが妥当という印象を持った。スペシャルセッションの最後には、登壇者からStageII CCの補助療法のアルゴリズムが提案されたが、私自身はあまり納得のいくものではなかった。国内でのコンセンサス形成には少し時間がかかると思われた。まとめ今回のESMOでも、多くの新しいエビデンスに巡り合うことができた。胃がん、大腸がんでは肺がんなどに比べ新薬の登場が遅れており、その間に周術期治療の開発がトピックスとなっている印象を受けた。日本人の発表やディスカッサント登壇も多く、世界と一緒に新しい治療方針を議論している実感が得られた。腫瘍医としての矜持を持ち、目の前の患者さんにこの新しいエビデンスをどう適用させるかが肝要である。その過程で、また新たなクリニカルクエスチョンが生じ、それに答えるべく臨床試験に取り組む…この繰り返しの結果が今日までのがん治療の進歩であり、令和の時代にも継続していかねばならないだろう。

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局所進行胃がんに対するDOSによる術前化学療法の追加効果(PRODIGY)/ESMO2019

 局所進行胃がんに対する術後S-1治療への術前ドセタキセル+オキサリプラチン+S-1(DOS)の追加効果を検討したPRODIGY試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告された。韓国・蔚山大学校のYoon-Koo Kang氏による発表。DOSの術前化学療法追加で腫瘍のStage減少ならびにPFSの延長がみられた アジアにおいて、胃切除リンパ節郭清(D2)とそれに続く術後化学療法は、切除可能進行胃がんに対する標準治療となっている。PRODIGY試験は、標準治療へのDOSの術前化学療法追加による効果を検証した第III相試験である。・対象:新規に局所進行胃がんまたは食道胃接合部がんと診断された韓国人患者530例(cTNM分類でcT2/N+、cT3-4/N+、cT4/N-、PS:0~1)・試験群(CSC群):術前DOS+術後S-1(266例)・対照群(SC群):術後S-1(264例)・評価項目: [主要評価項目]3年無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]R0切除率、術後Stage、全生存期間(OS)、安全性 切除可能進行胃がん標準治療へのDOS追加による効果を検証した主な結果は以下のとおり。・計484例(最大の解析集団[FAS])が登録され、CSC群に238例、SC群に246例が割り付けられた。・37.4ヵ月の追跡期間(中央値)のうち、FASにおける3年PFSの割合はCSC群66.3%、SC群60.2%(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.52~0.95、p=0.023)であった。・CSC群において、R0切除率の有意な増加がみられた(CSC群:96.4%、SC群:85.8%、p<0.0001)。・CSC群におけるGrade3以上の主な副作用は、好中球減少症(12.6%)、発熱性好中球減少症(9.2%)、下痢(5.0%)であった。また、治療に関連した死亡が1例みられた。・術後S-1に術前DOSを追加することで、腫瘍のStage減少ならびにPFSの延長がみられた。

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WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019 レポート

レポーター紹介世界肺がん学会WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月7~10日の期間に行われた。今年は9月末に欧州臨床腫瘍学会が同じスペインのバルセロナで行われることもあり、例年のWCLCと比べるとトピックスが少ない印象ではあったが、公式発表では100ヵ国以上から7,000例以上がWCLCに参加し、多くの演題(2,853演題)が報告された。学会初日の印象では参加人数が例年よりも少なそうで寂しい印象を受けたが、Presidential Symposiumの発表時には、会場はほぼ満席であり活気に満ちたものであった。このレポートでは、私的に選んだ今学会でのトピックスをいくつか紹介する。外科手術のトピックVIOLET試験の効果と安全性に関する探索的検討clinical stage cT1~3、N0~1、M0の肺がん、もしくは肺がんが強く疑われる患者を対象に、開胸手術とVATSを比較する第III相試験における早期の効果と安全性の結果が報告された。入院中の死亡率は、VATS群で1.4%(VATS治療から開胸手術の移行率5.7%)であった。また、完全切除率については、VATS群で98.8%、開胸切除で97.4%であり、有意差を認めなかった(p=0.839)。術後の疼痛についてmedian(visual analogue)pain scoreで評価が行われており、術後1日では術後疼痛についてmedian scoreに差を認めなかったが、術後2日では術後疼痛の強さがVATS群で有意に改善され、入院期間についてもVATS群が4日、開胸手術群が5日と有意に短くなる(p=0.008)ことが報告された。また、入院中の術後合併症がVATS群で32.8%、開胸手術群で44.3%と有意に低下する(p=0.008)という結果であった。今回の報告では、VATSと開胸手術において、侵襲の少ないVATSが開胸手術と比較しても根治率が変わらないことが報告され、合併症や入院期間、術後疼痛が良好であることが報告され、日常臨床で広く浸透しているVATSが短期的な指標では有用であることが検証された試験である。今後の長期予後データなどの報告が待たれる。(Lim E, et al. PL 02-06)分子標的療法におけるトピックスLIBRETTO-001 study進行非小細胞肺がんのRET-fusion遺伝子変異に対する分子標的療法で、保険償還承認が得られた治療はまだ存在しない。LIBRETTO-001試験で使用されたLOXO-292はRETを選択的に強く阻害する分子標的薬であり、脳への移行性も高く、RET-fusion遺伝子変異に対する治療薬として期待されている。今学会ではLIBRETTO-001試験における、LOXO-292療法の効果と安全性についての第I/II相試験の結果が報告された。253例のRET-fusion陽性の非小細胞肺がんの患者が参加し、うちprimary analysis set (PAS) に139例が登録された。105例が初回にプラチナ製剤併用化学療法を受け、58例がPD-1/PD-L1阻害薬療法を受けていた。奏効率(ORR)は68%(95%CI:58~76%、n=71/105)であり、RET fusionのパートナーにかかわらず治療効果を認めた。また治療奏効期間は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0ヵ月)であり、脳転移のある患者における脳転移のORRは91%(n=10/11:2 confirmed CRs、8 confirmed PRs)であった。さらに未治療のRET-fusion陽性の患者ではORR85%(95%CI:69~95%、n=29/34)であった。毒性(AEs)は、ほとんどがGrade1/2と軽微であり、頻度では口腔内乾燥、下痢、高血圧、AST/ALTの上昇が多かった。今回のLOXO-292のデータは非常に良好であり、RET-fusion陽性肺がんの標準療法になりうると考えられ早期での臨床導入が期待される。(Drilon A, et al. PL 02-08)免疫チェックポイント阻害薬のトピックスCASPIAN study進展型小細胞肺がんに対し、初回治療でのプラチナ(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド(EP)療法の標準療法と、デュルバルマブもしくはデュルバルマブ+tremelimumabの上乗せ治療を比較するオープンラベル下での第III相試験である。この試験はプレスリリースにおいて、デュルバルマブ上乗せ群が標準療法群に対してOSを有意に改善したと発表しており、今学会の最注目演題であった。今学会ではCASPIAN試験における、標準療法群とデュルバルマブ併用療法群の結果が報告された。PS 0~1の未治療進展型小細胞肺がんの患者を対象に、デュルバルマブ1,500mg+EP療法を3週ごと、デュルバルマブ1,500mg+tremelimumab 75mg+EP療法を3週ごと、もしくはEP療法を3週ごと4コースの治療を行った。免疫療法群では、4コース終了後のデュルバルマブ維持療法が認められており、EP療法では6コースまで投与をすることが認められていた。また、主治医判断での予防的全能照射(prophylactic cranial irradiation [PCI])も認められていた。EP+デュルバルマブ療法群に268例、EP療法群に269例が割り付けられ、56.8%の患者が6コースのEP療法を受けていた。全生存期間においてEP+デュルバルマブ群がEP療法群と比較して、HR0.73、95%CIは0.591~0.909、p=0.0047と生存期間を有意に延長し、生存期間中央値(mOS)はEP+デュルバルマブ療法群で13ヵ月、EP療法群で10.3ヵ月であった。また18ヵ月の時点で、EP+デュルバルマブ療法群では33.9%の患者が生存しており、EP療法群では24.7%の患者が生存していた。無増悪生存期間(PFS)や奏効率(ORR)においてもEP+デュルバルマブ療法群がEP療法群よりも優れた結果であった。EP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でそれぞれ、mPFSが5.1ヵ月と5.4ヵ月、PFSはHR0.78、95%CIは0.645~0.936、12ヵ月PFS rateが17.5%と4.7%、ORR(RECIST v1.1:unconfirmed)が79.5%と70.3%(odds ratio:1.64、95%CI:1.106~2.443)であった。毒性(AEs)ではEP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でGrade3/4 AEsが61.5%と62.4%、AEsによる治療中断率は各9.4%と差を認めなかった。この試験では、先行するIMpower133試験(カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの上乗せの有効性が証明された)と同様にPD-L1阻害薬の標準療法への上乗せが証明された。この試験では、EP+デュルバルマブ+tremelimumab療法群の結果、すなわちPD-L1阻害薬+CTLA-4阻害薬の標準療法への上乗せ効果は公表されておらず、いまだ不明のままである。(Luis Paz-Ares, et al. PL 02-11)CheckMate 817試験(Cohort A1)PS 2や肝障害やHIV感染症を持つPS 0~1(all other special population:AOSP)のIV期非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ(PD-1阻害薬)+イピリムマブ(CTLA-4阻害薬)併用療法の効果と安全性を確認する第IIIb/IV相試験の結果が報告された。この試験での治療方法はニボルマブ240mg(2週ごと)、イピリムマブ1mg/kg(6週ごと)の固定容量での治療である。この試験ではPS 2の患者139例とAOSPの患者59例が試験に登録された。安全性についてはPS 2の患者でも、AOSPの患者でも、通常のPS 0~1の患者と比較して、治療関連有害事象や治療関連有害事象による治療中断、治療関連死に差がないことが示された。奏効率は、PS 2で20%、AOSPで37%であり、PS 0~1で35%であったが、PFSはPS 2やAOSPの患者で、PS 0~1の患者より有意に短かった。免疫チェックポイント阻害薬の併用において、PS不良の患者でも安全性はPS良好な患者と同様であり、初回治療の選択肢となりうることが示されたと考えてよいだろう。(Valette CA, et al. OA 04-02)その他の免疫チェックポイント阻害薬のトピック今回の学会では、以前に発表された第III相試験の長期予後データについていくつかの報告があった。PD-L1 50%陽性、EGFRやALK変異陰性の患者で行われた第III相試験であるKEYNOTE-024試験の3年目解析データが報告された。生存期間中央値(mOS)はペムブロリズマブ群26.3ヵ月(18.3~40.4)、殺細胞性抗がん剤治療群14.2ヵ月(9.8~18.3)で、OSはHR0.65、95%CIは0.50~0.86、p=0.001であり、長期間の観察期間でも有意にOSを延長していることが報告された。また、この発表では抗がん剤治療群からのペムブロリズマブのクロスオーバーしたペムブロリズマブの治療成績が報告されており、奏効率(ORR)は20.7%であり、治療奏効期間の中央値は20.9ヵ月と報告された。(Reck M, et al. OA 14-01)また、扁平上皮がんに対するプラチナ+タキサン療法へのアテゾリズマブの上乗せを検討しているIMpower131試験の最終解析結果も報告された。この試験は、ASCO2018においてOSの有意な延長が示されておらず、PD-L1 1~49%群でのOSがプラチナ製剤併用療法群と比較してクロスすることが報告されていた。今回の最終解析において、カルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ群とカルボプラチン+nabパクリタキセル群の生存期間中央値(mOS)は14.2ヵ月vs.13.5ヵ月で、OSはHR0.88、95%CIは0.73~1.05、p=0.158で、OSの延長効果は示されなかった。ただし、PD-L1TPS 50%以上の高発現群においては、mOSは23.4ヵ月vs.10.2ヵ月、OSはHR0.48、95%CIが0.29~0.81とサブグループ解析ではあるが有意に延長していることが報告された。同じ扁平上皮がんを対象としたプラチナ+タキサン療法へのペムブロリズマブの上乗せを検討したKEYNOTE-407試験では、ペムブロリズマブの上乗せの生存延長効果が示されているだけに、PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬で扁平上皮がんに効果に違いが出るのか興味深いところではある。(Cappuzzo F, et al. OA 14-02)小細胞肺がんのトピックスSensitive Relapse小細胞肺がんを対象にカルボプラチン+エトポシドとトポテカンを比較した第III相試験トポテカンはヨーロッパでは小細胞肺がんの2次療法で承認されている数少ない抗がん剤であり、ヨーロッパだけでなく本邦含めグローバルで標準療法として広く用いられている。この試験では、初回治療から90日以上たってから再燃してきた小細胞肺がんをsensitive relapse小細胞肺がんとして定義しており、この対象を満たし初回治療でプラチナ+エトポシド療法が施行されている患者に対して、カルボプラチン+エトポシドとトポテカンの比較試験が行われた。この試験での意義は初回治療のre-challengeと標準療法であるトポテカンのどちらが良いかを比較している点で、今までのクリニカル・クエスチョンを確認する試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、中央値がre-challenge群で4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.5)、トポテカン群で2.7ヵ月(95%CI:2.3~3.2)、PFSがHR0.6、95%CIは0.4~0.8、p<0.002であり、re-challenge群が有意にPFSを延長していた。またre-challenge群とトポテカン群の比較において、他の主な評価項目では、奏効率が49% vs.25%(p<0.002)とre-challenge群で有意に奏効率が高かったが、全生存期間ではmOSが7.5ヵ月(95%CI:5.4~8.7)vs.7.4ヵ月(95%CI:6.0~9.3)であり、両群で有意な差を認めなかった。毒性では、トポテカン群はGrade3/4の好中球減少が35.8% vs.19.7%(p<0.001)と有意に高かったが、発熱性好中球減少症が13.6% vs.6.2% (p=0.19)で両群に有意な差を認めず、その他の毒性も両群で差を認めなかった。この試験の結果からは、日常臨床で行われることが多いsensitive relapse小細胞肺がんにおけるre-challenge療法を、標準療法の一つとして考えてもよいのかもしれない。(Monnet I, et al. OA 15-02)

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局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシンC+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによる化学放射線療法(CRT)は切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。・対象:切除不能Stage IIIA/B NSCLC(70歳未満、PS 0~1)・対照群[A群]シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)+TRT(60Gy)→シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)・試験群[B群]イリノテカン+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→カルボプラチン+イリノテカン(3週ごと2サイクル)[C群]パクリタキセル+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→パクリタキセル+カルボプラチン(3週ごと2サイクル)。・評価項目:5年および10年の全生存(OS)率、晩期毒性(CRT開始後90日以降に発生) 主な結果は以下のとおり。・2001年9月~2005年9月に440例が登録され、A群(n=146)、B群(n=147)、C群(n=147)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は140ヵ月であった。・OSはA群20.5ヵ月に対しB群19.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.82~1.51)、C群22.0ヵ月(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30)であった。・5年OS率はA群20.8%、B群16.0%、C群18.3%、10年OS率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。・5年無増悪生存(PFS)率はA群10.2%、B群10.8%、C群12.3%、10年PFS率はそれぞれ8.5%、5.9%、11.1%であった。・Grade3/4の晩期毒性はA群3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、B群で3.4%(肺のみ)、C群4.1%(肺のみ)、Grade5は、C群で0.7%(肺のみ)であった。 C群のカルボプラチン+パクリタキセルは、A群と同程度の効果と毒性プロファイルを有していることが示された。10年OS率15%、PFS率11%という結果から、免疫療法を含めた新たな治療戦略が必要だとしている。 発表者の善家義貴氏との1問1答はこちら。この試験を行った背景について教えてください。 Stage IIIのCRTは従来5年生存をcureの指標としていましたが、がん患者さんの生存が延長した現在、cureは10年生存でみるべきだといえます。しかし、CRTを10年間観察した大規模研究はありませんでした。そこで、今回初めて、CRTが10年という長期のcureを実現しているのかを追跡評価しました。この結果をどう評価されますか。 今までCRT後の生存率は5年で20%と言われていましたが、その後はどのようになるのか明らかになっていませんでした。今回の試験で、10年で15%というデータが出たことは重要だと思います。 また現在、実臨床で使われているCRTの化学療法は、ほとんどがC群のカルボプラチン+パクリタキセルだと思います。当試験の結果からも、このレジメンが効果、安全性ともにスタンダードであると言えると思います。この試験で苦労されたことは? 10年間、患者さんの生存調査をすることは大変な作業でした。しかし、この難しい作業を研究者の先生方は快く協力していただけました。その背景には、この研究の結果をぜひ知りたいという強い興味が、肺がん診療医にあったのではないかと思います。 CRTはcureを目指す治療です。10年生存15%は満足な数字だとは言えません。今後は免疫療法などで、どこまで引き上げられるかが課題です。

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BRAF V600E変異大腸がんに対するビニメチニブ、エンコラフェニブ、セツキシマブの3剤併用(BEACON CRC)/ESMO2019

 スペイン・Vall d’Hebron 大学病院のJosep Tabernero氏は、転移のあるBRAF V600E変異大腸がんに対する、BRAF阻害薬エンコラフェニブ、MEK阻害薬ビニメチニブ、抗EGFR抗体セツキシマブの3剤併用療法を検証した無作為化非盲検の第Ⅲ相試験BEACON CRCの結果を発表。この3剤併用療法あるいはエンコラフェニブとセツキシマブの併用療法は、従来のFOLFIRI療法あるいはイリノテカンにセツキシマブを加えた治療法に比べ、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善すると報告した。 BRAF V600E変異型は転移を有する大腸がんの10~15%に認められ、予後不良因子とされている。ただ、こうした症例ではBRAFのみを阻害しても効果は限定的で、逆にEGFRに急なフィードバックがかかり、MAPKシグナル伝達経路を活性化し、がん細胞増殖が促進されるとされている。BRAF阻害薬のエンコラフェニブ、MEK阻害薬のビニメチニブは共にMAPKシグナル伝達経路での酵素を阻害する薬剤である。・対象:1次治療あるいは2次治療後に進行したPS 0~1のBRAF V600E変異型を有し、BRAF阻害薬、MEK阻害薬、EGFR阻害薬のいずれの治療も受けたことがない転移を有する大腸がん患者665例・試験群1(3剤療法):エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ(224例)・試験群2(2剤療法):エンコラフェニブ+セツキシマブ(220例)・対照群:FOLFIRI療法+セツキシマブまたはイリノテカン+セツキシマブ(221例)・評価項目:[主要評価項目]3剤療法vs.対照群でのOS、盲検化中央判定でのORR[副次評価項目]2剤療法vs.対照群、3剤療法vs. 2剤療法でのOS、無増悪生存期間(PFS)、ORR、安全性 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は3剤療法群が9.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.0~11.4)、対照群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.6)であった(ハザード比[HR]:0.52、95%CI:0.39~0.70、両側検定p<0.0001)。・2剤療法のOS中央値は8.4ヵ月(95%CI:7.5~11.0)であった(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79、両側検定p=0.0003)。・PFS中央値は3剤療法群が4.3ヵ月(95%CI:4.1~5.2)、対照群が1.5ヵ月(95% CI:1.5~1.7)であった(HR:0.38、95%CI:0.29~0.49、両側検定p<0.0001)。・2剤療法群のPFS中央値は4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.4)であった(HR:0.40、95%CI:0.31~0.52、両側検定p<0.0001)。・無作為化割り付けが最初に行われた331例でのORRは3剤療法群が26%、2剤療法が20%、対照群が2%(対照群との比較で3剤療法、2剤療法は共にp<0.0001)であった。・全有害事象(AE)発現率は3剤療法群が98%、2剤療法が98%、対照群が97%、Grade3以上のAE発現率はそれぞれ58%、50%、61%であった。・Grade3以上の主なAEは3剤療法群が下痢、腹痛、ヘモグロビン値上昇、2剤療法が腸閉塞、疲労感、ヘモグロビン値上昇、対照群が下痢、腹痛、無力症であった。・QLQ-c30によるQOL評価では3剤療法と2剤療法はほぼ同等だった。 この結果についてTabernero氏は3剤療法は2剤療法を超える臨床的に妥当なアドバンテージを得られる可能性が示唆され、有害事象も管理可能であると指摘。「既治療のBRAF V600E変異型の転移を有する大腸がんに対する新たな標準治療になりえる」と述べた。

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