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ESMO2021レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介2021年のESMOは、9月16日から21日まで、フランスのパリで開催されましたが、いまだCovid-19感染が世界的に終息していない状況を反映し、完全バーチャルの形式でした。発表形式は、Presidential Symposium、Proffered Paper session、Mini Oral session、e-Posterとして発表され、泌尿器領域からも各セッションで注目演題が並びました。LBA5 mHSPCにおけるUp frontアビラテロン療法の第III相試験:PEACE-1試験A phase III trial with a 2x2 factorial design in men with de novo metastatic castration-sensitive prostate cancer: Overall survival with abiraterone acetate plus prednisone in PEACE-1. Fizazi K, et al. Presidential Symposium 2.PEACE-1試験は、フランスを中心として実施された国際共同第III相試験で、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)に対する初回治療として標準治療にアビラテロン(Abi)1,000mg+プレドニゾロン10mgを加えることと、局所放射線照射74Gy/37frを加えることの効果を検証する2×2のFactorial designで計画されました。2013年から2018年まで登録を行った試験であり、途中の2015年にUpfrontでのドセタキセル(DTX)のエビデンスが報告されるという大きなパラダイムシフトがありました。そのため試験デザインは、標準治療が2015年まではアンドロゲン除去療法(ADT)のみであったのに対し、2015年からはADT+DTX 75mg/m2×6回が追加できることに、変更されました。Abiを加えた群とAbiなしの群を比較したデータの報告は、6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)で無増悪生存期間(PFS)が報告されましたが、今回のESMOでは全生存期間(OS)の結果が初めて報告されました。標準治療がADT+DTXであった症例の患者背景は、各群バランスよく臓器転移が10%強、High burdenは60%強でした。PFSはすでに報告があったとおり、radiologic PFSは中央値4.5年と2.0年、ハザード比[HR]: 0.50、95%信頼区間[CI]: 0.40~0.62、p<0.0001であり、あらかじめ設定された両側α=0.001を下回り、有意にAbiの追加が優れていました。OSの解析には両側α=0.049が設定され、全体集団でのAbiあり群とAbiなし群の中央値は5.7年と4.7年、HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.030でした。また、標準治療がADT+DTXであった集団でのAbiあり群とAbiなし群の中央値は到達せずと4.4年、HR:0.75、95%CI:0.59~0.95、p=0.017であり、OSでも優越性が示されました。興味深いことに、サブグループ解析ではHigh volume症例においては、HR:0.72、95%CI:0.55~0.95、p=0.019と差が維持されるのに対し、Low volume症例においては、HR:0.83、95%CI:0.50~1.38、p=0.66と差がなくなる方向にシフトしていました。Low volumeではとくにイベント数が少ないため解釈には注意が必要ではありますが、少なくともHigh volumeでのADT+DTX+Abiは、既報の中で最も長いOS中央値を報告しており、もはやこれが標準治療ではないかと演者は締めくくりました。日本では、UpfrontでのDTXに関し本年8月に添付文書の改訂が行われ、ようやく保険上使用可能になりました。Abiを併用することが可能かどうかは未知数ですが、High volume症例へのUpfront療法の有用性は強く意識せざるを得ない結果だと思います。652O 筋層浸潤性膀胱がんに対する周術期化学療法dd-MVAC vs. GCの第III相試験:VESPER試験Dose-dense methotrexate, vinblastine, doxorubicin and cisplatin(dd-MVAC)or gemcitabine and cisplatin(GC)as perioperative chemotherapy for patients with muscle-invasive bladder cancer(MIBC): Results of the GETUG/AFU VESPER V05 phase III trial.Pfister C, et al. Proffered Paper session - Genitourinary tumours, non-prostate 1.dd-MVAC療法は、メトトレキサート30mg/m2 day1、ビンブラスチン3mg/m2 day2、ドキソルビシン30mg/m2 day2、シスプラチン70mg/m2 day2を2週間ごとに繰り返す、顆粒球コロニー形成刺激因子 (G-CSF)を用いたIntensiveなレジメンであり、転移性膀胱がんではGC療法と同等の効果が報告されています。GC療法は転移再発の膀胱がんにおいては4週サイクルで用いられますが、Intensiveなレジメンとしてゲムシタビン1,250mg/m2 day1、8、シスプラチン70mg/m2 day1を3週ごとに繰り返すレジメンも海外では用いられています(日本のゲムシタビンの保険承認用量は1,000mg/m2であることに注意)。周術期治療は、強度を上げることで生存の改善が望まれていますが、VESPER試験はそれに一定の答えを与えてくれる、重要なランダム化比較第III相試験です。2013年から2018年にかけてフランスの28施設で登録された試験であり、Primary endpointは3年PFSでした。術前治療の場合はT2以上N0M0、術後治療の場合はpT2以上かpN+でM0の症例を対象とし、dd-MVAC療法 6サイクルとGC療法4サイクルに1:1に割り付けました。GC群(N=245)とdd-MVAC群(N=248)の患者背景は、おおよそ同じではありましたが、術後化学療法ではN+がGC群に若干多く73%と60%でしたが、T3/4は27%と40%でありdd-MVAC群に多いようでした。また術前化学療法ではT2は95%と90%でGC群に若干多く、T4は1.8%と4.1%でdd-MVAC群に若干多いという偏りが見られました。有意差があったかどうかは言及がありませんでした。3年PFSは両群とも中央値に達さず、HR:0.77、95%CI:0.57~1.02、p=0.066でdd-MVAC群が上回るKaplan-Meier曲線でした。術前化学療法例に限ると、HR:0.70、95%CI:0.51~0.96、p=0.025と、dd-MVAC群の効果が際立つ結果でした。また今回の報告で初めてOSのデータが提示されました。全体集団ではOSのHRは0.74、95%CI:0.55~1.00、術前化学療法例ではHR:0.66、95%CI:0.47~0.92でdd-MVAC群が上回っていました。試験全体のPrimary endpointがPFSであることを鑑みると、Negativeな結果であり、周術期治療においてdd-MVAC療法のGC療法に対する優越性は示せなかったという結論になると思います。しかしながら、演者の論調もDiscussantの話しぶりも、術前化学療法にはdd-MVAC療法がより優れているのが明らかになったと解釈しており、論点はdd-MVAC療法を6サイクル行うか4サイクルで手術に行くか? という別の次元の問題がトピックになっていました。術前治療の効果を最大限高めることを目標にする場合は、明日からの診療はdd-MVAC療法となると思います。個人的な感想ですが、今回の報告からは安全性の情報は省かれていたことや、統計設定とその解釈についての情報はなかったことから、論文化を待って再度吟味したいと考えています。LBA29 転移性腎細胞がん1次治療のイピリムマブ+ニボルマブ療法の投与スケジュール変更の安全性と効果を検討するランダム化第II相試験:PRISM試験Nivolumab in combination with alternatively scheduled ipilimumab in first-line treatment of patients with advanced renal cell carcinoma: A randomized phase II trial (PRISM).Vasudev N, et al. Proffered Paper session - Genitourinary tumours, non-prostate 2.CheckMate-214試験において、転移性淡明腎細胞がんのIntermediate/Poorリスク例におけるイピリムマブ+ニボルマブ療法は、スニチニブ単剤と比較しOSの延長が報告され、現在標準的な治療となっています。イピリムマブとニボルマブの併用により、重篤な免疫関連有害事象は47%で発生し、22%は治療中止に至ると報告されています。PRISM試験は、英国で行われた多施設共同ランダム化第II相試験であり、イピリムマブ+ニボルマブの投与スケジュールを3週間ごとと3ヵ月ごとに1:2に割り付け比較しました。標準治療群(N=64)は、イピリムマブ1mg/kgとニボルマブ3mg/kgを3週ごとで4回投与後、ニボルマブ480mgを4週ごとで継続します。試験治療群(N=128)は、イピリムマブ1mg/kgとニボルマブ3mg/kgを3ヵ月ごとで4回投与、ニボルマブ240mgを最初の3ヵ月は2週ごと、次の3ヵ月以降は480mgを4週ごとで投与します。Primary endpointは、12ヵ月以内のGrade 3/4有害事象の比較であり、Secondary endpointはその他の有害事象、PFS、客観的奏効率(ORR)、OS、Quality of life;QOLでした。両群の患者背景は、バランスが取れており、追跡期間中央値は19.7ヵ月でした。Primary endpointのGrade 3/4の治療関連有害事象は、試験治療群で32.8%、試験治療群で53.1%、オッズ比0.43、90%CI:0.25~0.72、p=0.0075であり、試験治療群で安全性が上回っていました。とくに両群に違いが見られた有害事象は、関節痛(1.6% vs.7.8%)、大腸炎(3.9% vs.6.3%)、リパーゼ上昇(1.6% vs.9.4%)、下垂体機能低下症(0.8% vs.3.1%)であり、治療中止に至った症例はそれぞれ22.7%と39.1%でした。PFS中央値はmodified Intention to Treat;ITT(1回以上の治療を行った患者)では、試験治療群で10.8ヵ月、標準治療群で9.8ヵ月であり、Kaplan-Meyer曲線はほぼ重なっていました。Intermediate/Poorリスク群でのPFS曲線や、全体集団でのOS曲線も同様であり、2群の治療の効果は互角と読み取れました。本研究により、イピリムマブを3ヵ月ごとに投与するスケジュールは、効果を損なわず安全性が向上することが示されました。イピリムマブ+ニボルマブ療法の最適な治療のスケジュールはまだ探索の余地があることが示唆されます。654MO 集合管がんに対するカボザンチニブの第II相試験:BONSAI試験A phase II prospective trial of frontline cabozantinib in metastatic collecting ducts renal cell carcinoma: The BONSAI trial (Meeturo 2)Procopio G, et al. Mini Oral session - Genitourinary tumours, non-prostate.イタリアのがんセンターで行われた単施設の単群第II相試験で、標準治療のない転移性集合管がんに対する1次薬物療法として、カボザンチニブ60mg連日内服を実施しその効果と安全性を報告しました。統計設定はSimonの2ステージデザインで行われ、1stステージでは2/9例、2ndステージでは6/14例の奏効で有効性を判断することになっていました。2018年1月から2020年11月にかけて25例を登録し23例で治療が行われました。年齢中央値は66歳、19例が男性でした。追跡期間中央値8ヵ月時点において、奏効は8/23例で認められORR 35%、PFS中央値は6ヵ月でした。有害事象は全例でGrade 1/2の毒性が見られ、頻度の高いものは倦怠感43%、甲状腺機能低下症28%、口腔粘膜炎28%、食思不振26%、手足症候群13%などでした。DNAシークエンスを行った結果、奏効例には脱ユビキチン関連遺伝子、細胞間伝達関連遺伝子、TGF-βシグナル伝達関連遺伝子が認められていました。本研究の結果、集合管がんにおいてカボザンチニブは有効な治療選択肢であることが示されました。演者のProcopio氏はさらに、これら遺伝子プロファイルの結果、カボザンチニブのような血管新生阻害薬や、免疫チェックポイント阻害薬、あるいは化学療法が適しているのかを個別に治療選択する臨床試験(CICERONE試験)も始めていると報告しました。日本において腎細胞がんに対するカボザンチニブは、保険適用となっています。集合管がんの治療は、尿路上皮がんとして治療されたり腎細胞がんとして治療されたりしていますが、本研究の報告は治療選択の参考になるものと思われます。

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ESMO2021レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のESMOは、6月のASCO、8月のWCLCに続く9月開催ということもあり、肺がん領域では大きなインパクトのある発表はないと思われましたが、重要な試験のアップデート、EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の耐性後の治療開発、希少ドライバー変異に対する新薬や、がん免疫療法の第III相試験など、新たな知見の報告が多くありました。今回はその中から、とくに実臨床や近い将来に影響すると思われる演題について概括します。WJOG9717L試験EGFR遺伝子変異陽性、未治療進行再発、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを標準治療に、オシメルチニブ+ベバシズマブの優越性を評価した無作為化第II相試験である。活性型EGFR遺伝子変異タイプの割合や約2割の術後再発症例を含むなど、患者背景は同じ対象の過去の試験と同様であった。122例が登録され1:1に割り付けられた。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は主治医判定のPFS、全生存期間、奏効割合が設定されている。第1世代のEGFR-TKIであるエルロチニブにベバシズマブ(BEV)を併用することでPFS延長効果が第III相試験で示されており、オシメルチニブにBEVを併用することでPFSのさらなる延長効果に大きな期待が集まっていた試験である。BEV併用効果を示すことができなかった本試験の結果は、BEV併用群のPFS中央値22.1ヵ月、オシメルチニブ単剤群20.2ヵ月であった。生存曲線を見ると、治療開始早期から離れていたが24ヵ月あたりでほぼ重なってしまい、ハザード比0.862(95%信頼区間0.531~1.397)という結果だった。医師判定による結果も同様で、BEV併用群24.3ヵ月、オシメルチニブ単剤群17.1ヵ月であり、ハザード比0.801(95%信頼区間0.504~1.272)で差がなかった。サブ解析では、喫煙歴のある集団、del19の集団で併用群のPFSが良い傾向が認められた。奏効率は、BEV併用群82%、オシメルチニブ単剤群86%で同等であるが、Waterfall plotでは併用群は全例で縮小が認められた。しかし、血管新生阻害薬併用時に見られる腫瘍縮小の深さは見られなかった。有害事象で1つ興味深い結果があった。併用群でオシメルチニブに関連する肺臓炎発症頻度が少ないことである。オシメルチニブ単剤群18.3%、併用群3.3%であり、肺臓炎発症リスクを低減させる可能性が示唆される。この傾向は血管新生阻害薬併用の他試験でも見られている。本試験以外に、オシメルチニブにBEVを併用した試験は、T790M遺伝子変異陽性既治療症例を対象に実施された比較試験が2つあり(BOOSTER、WJOG8715L)、いずれも併用によるPFS延長効果を示すことができていない。血管新生阻害薬併用は単純ではなく、EGFR変異タイプ、胸水貯留や間質性肺炎の懸念など、使いどころを考える必要がある。DESTINY-Lung01試験HER2を標的としたADC(Antibody Drug Conjugate活性を:抗体薬物複合体)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の第II相試験である。本試験には、標的とするHER2の免疫染色による、HER2過剰発現、またはHER2遺伝子変異を対象とした2つのコホートがある。2020年のASCOでHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん42例の中間解析結果が発表されたが、今回は91例の結果が発表された。主要評価項目は独立評価による奏効割合である。観察期間中央値は13.1ヵ月、年齢中央値60歳、36.3%に脳転移を有し、変異部位はキナーゼドメインが93.4%であった。ほぼ全例が標準治療を受けた既治療例で、HER2-TKI既治療例も一部いた。解析時、15例(16.5%)が治療継続していた。CR 1.1%を含む、54.9%の奏効割合、病勢制御率は92.3%。HER2変異部位、蛋白発現や遺伝子増幅レベル、TKI既治療の有無に関係なく奏効していた。PFS中央値は8.2ヵ月、生存期間中央値は17.8ヵ月で、標準治療後の成績として有望な結果である。有害事象において特筆すべきは間質性肺疾患(ILD)である。24例(26.4%)に薬剤関連のILDが発現し、多く(75%)はGrade1/2であるが、死亡2例(2.2%)を認めた。細胞傷害性抗がん剤がリンカーで結合している薬剤のため、30%を超える消化器毒性と骨髄抑制の発現があり、50%を超える嘔気と倦怠感が最も多い減量理由であった。RET阻害薬が最近承認され、KRAS阻害薬は承認申請中であり、希少ドライバー変異に対する分子標的治療薬が臨床に届き始めた。HER2を標的にする阻害薬はなく、この試験結果から間違いなく期待される薬剤であるが、リスクベネフィットを考慮する必要がある。本研究は発表と同時にNEJM誌に掲載されている。ZENITH20試験(コホート4)HER2エクソン20挿入変異陽性、未治療の非小細胞肺がんを対象にした、経口の汎HERチロシンキナーゼ阻害薬poziotinibの第II相試験である。EGFRとHER2のエクソン20の挿入変異は、非小細胞肺がんにおいてそれぞれ約2~4%に認められ、変異全体の約10%を占めている。またエクソン20挿入変異は既存のTKIに対して耐性を示すことが知られている。HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対し有効な治療はない。本試験には7つのコホートがあり、主に既治療・未治療、EGFR・HER2のそれぞれに対する有効性を検討している。今回のコホートでは、最初の48例にpoziotinib 16mgを1日1回経口投与、以後登録される被験者には8mgが1日2回投与された。年齢中央値は60歳で肺がん試験では比較的若い。未治療48例中21例が奏効し、奏効率43.8%(95%信頼区間:29.5~58.8)であり、主要評価項目を達成した。PFS中央値は5.6ヵ月、そのうち26%の症例はPFSが12ヵ月を超えて持続していた。有害事象は、下痢(83%)、口内炎(81%)、皮疹(69%)、爪囲炎(46%)が認められ、投与中断割合88%、減量割合77%で治療中止割合は13%、と既存の第2世代EGFR-TKIと同程度であり、毒性がやや強いと思われる。治療薬がないドライバー変異に対する新規治療として有効性を示しているが、初回治療成績として臨床的に意義のある有効性とは言い難い。IMpower010試験完全切除された術後IBからIIIA期(UICC第7版)の非小細胞肺がんで、術後化学療法を最大で4サイクル受けた患者を対象に、アテゾリズマブを16サイクル投与する試験治療を経過観察と比較した第III相試験である。PD-L1(SP263)発現陽性54.6%、EGFRまたはALK遺伝子陽性例14.9%が含まれていた。無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした中間解析の結果がすでにASCO2021で発表されており、アテゾリズマブは経過観察に比べて、再発または死亡リスクを34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間0.50~0.88)。ASCO、WCLCでの発表に続く今回は、再発の詳細と再発後の治療についての発表で、少しずつ試験の全貌が明らかになってきている。再発率は、PD-L1 TC 1%以上でII~IIIA期の集団で、アテゾリズマブ群29.4%、経過観察群44.7%であった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団では33.3%と43.0%、ITT集団(IB~IIIA期)では30.8%と40.8%であった。再発形式は局所または遠隔のみ、その両方と中枢神経再発別で比較しているが、2群間で大きな差はない。再発形式は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期の集団で、局所領域のみの再発はアテゾリズマブ群47.9%、経過観察群41.2%、遠隔再発のみは38.4%と39.2%、局所と遠隔再発は12.3%と16.7%、中枢神経再発のみは11.0%と11.8%だった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団やITT集団でも、再発形式、その割合はほとんど一緒であり、2群間に大きな差はなかった。無作為化から再発までの期間は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期集団でアテゾリズマブ群のほうが経過観察群より長く、中央値がそれぞれ、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(0.7~42.3ヵ月)、経過観察群10.9ヵ月(1.3~37.3ヵ月)であった。また、同集団の再発形式別に見た再発までの期間は、いずれもアテゾリズマブ群のほうが長かった。しかし、無作為化されたII~IIIA期の集団やITT集団では、2群間の再発までの期間中央値は差が小さかった。再発後の治療においても外科治療、放射線治療、化学療法いずれも2群ともほとんど同じ割合であり、免疫療法を受けた割合は経過観察群(35.3%)で、アテゾリズマブ群(11.0%)より多かった。アテゾリズマブ群の再発に関しては経過観察群と比べて特徴のある因子はなく、局所から脳転移などの遠隔転移まで、満遍なく制御していることでDFS延長効果を示した結果であった。また、PD-L1発現50%以上の強発現集団では、DFSのハザード比は0.43と報告されている。現在、アテゾリズマブは術後化学療法に対して承認申請を行っている。本試験の観察期間中央値が32ヵ月であり、生存曲線もテイルプラトーが見られておらず、本当の意味での術後治療の有効性を見極めるためにはもうしばらく時間が要りそうである。IMpower010試験のデータは、Lancet誌に掲載されている。PACIFIC-R Real-World Study切除不能III期非小細胞肺がんを対象として、根治的同時化学放射線療法(CRT)後にデュルバルマブ維持療法を1年間投与する治療を、プラセボと比較して検証したPACIFIC試験のリアルワールドデータである。今年のASCO2021でデュルバルマブ投与による5年生存割合40%と長期生存改善効果が報告され、切除不能III期の予後を大きく改善しているが、試験データがこの1つしかない。良好な治療成績を示したPACIFIC試験だが、プラセボ群の治療成績も良い。そのため、試験に登録された対象全体が全身状態を含め条件の良い症例であると考えられ、患者背景もさまざまな実臨床で治験と同様の成績が証明できるのか疑問があった。この試験は、PACIFICレジメンの実臨床における有効性を後ろ向きに評価した観察研究である。11ヵ国、29施設から登録された1,399例が解析対象となった。患者背景は年齢中央値66歳、StageIIIA 43.2%、扁平上皮がん35.5%、CRT同時併用は76.6%、PD-L1≧1%は72.5%であった。放射線治療終了からデュルバルマブ投与までの期間中央値は56日、デュルバルマブ投与回数中央値22回、PFS中央値は21.7ヵ月で治験成績(16.9ヵ月)より良好であった。デュルバルマブ投与完遂率47.1%、有害事象による中止率16.7%、PDによる中止率26.9%も治験と同様であった。切除不能III期非小細胞肺がんに対するCRT後のデュルバルマブ維持療法の有用性は、リアルワールドでも裏付けられた結果といえる。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの併用、デュルバルマブ+tremelimumabの併用をそれぞれ評価した第III相試験である。主要評価項目である全生存期間の延長効果がデュルバルマブの上乗せによって示され、肺がん診療ガイドラインで推奨されている。最近、Lancet Oncology誌に掲載された2年フォローアップ解析の生存データの報告も新しい。今回の発表では、追跡期間中央値39.4ヵ月の3年生存割合のアップデート結果が示された。進展型小細胞肺がんで3年生存まで解析するのは珍しい。報告された生存に関する解析では、両群のハザード比が0.71、95%信頼区間0.60~0.86、3年生存割合が試験治療群17.6%、標準治療群5.8%という結果で、生存曲線の開きを維持しつつ、3年生存率の差が3倍になりテイルプラトーも見られた。小細胞肺がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の上乗せによる長期生存効果が確認できたが、非小細胞肺がんと違い、有望なバイオマーカーがなく、開発に期待したい。CheckMate-743試験切除不能進行、未治療悪性胸膜中皮腫の1次治療に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の試験治療を、標準化学療法であるペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと比較した第III相試験である。観察期間中央値29.7ヵ月で実施された事前指定の中間解析においてハザード比0.74(96.6%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0020)と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法による生存延長効果が示されているが、今回、観察期間中央値43.1ヵ月の3年長期生存結果と探索的バイオマーカーの解析結果が発表された。生存期間中央値は、ニボルマブとイピリムマブ併用群18.1ヵ月、標準治療群14.1ヵ月でハザード比0.73(95%信頼区間0.61~0.87)であった。3年生存割合は、23%と15%で、少しずつ年次生存率の差は小さくなっている。生存曲線はしっかり離れているがテイルプラトーは見え始めたような印象である。腫瘍組織のRNAシークエンスを用いてCD8A、STAT-1、LAG-3、PD-L1の4遺伝子の発現スコア、TMB、LIPI(Lung immune prognostic index、好中球/リンパ球比とLDHから算出される)と生存の関連が解析された。ニボルマブとイピリムマブ治療を受けた集団において、4遺伝子の発現スコアが高い集団で生存が良かった(21.8ヵ月vs.16.8ヵ月)。一方、化学療法群ではスコアによって生存に差がなかった。TMBやLIPIスコアに関係なく、ニボルマブとイピリムマブ群の生存が良い傾向が示された。WJOG9616L試験PD-1(L1)抗体が有効であった進行再発非小細胞肺がんに対して、ニボルマブ投与の有効性を検討した第II相試験である。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間などとなっている。標準治療を受けた既治療進行肺がんでは、前治療で奏効が得られた抗がん剤の再投与による治療は、比較的広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の再投与の有効性は、症例報告で散見されている程度である。対象は、CR、PRもしくは6ヵ月以上のSDの臨床的有効性が得られ、その後に増悪し、最終投与から60日以上経過している61症例で、59例で有効性が解析された。奏効割合は8.5%、無増悪生存期間中央値2.6ヵ月、全生存期間中央値は11.0ヵ月だった。診断時のPD-L1発現や前治療ICIの効果(41例がCRまたはPR)と有効性は関連性がなかった。ICI無効後のリチャレンジの有効性はない結果となったが、irAEなどで中止後の再投与とは違うと思われる。おわりに今回取り上げた演題以外にも知っていただきたい発表がたくさんありますが、臨床に反映できる内容が良いと考えて演題を選び概括させていただきました。まずはこのレポートが、多くの先生方に読んでいただき、今の臨床に役立つ内容になっていれば幸いです。

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ESMO2021レポート 消化器がん(上部下部消化管)

レポーター紹介2021年9月16日から21日にかけて、パリでESMOが開催された。「パリ」ということで楽しみにされていた先生も多かったのではないだろうか。私もその1人である。今回も新型コロナウイルスの影響で現地参加はかなわなかったが、感染は現地で比較的制御されているのかハイブリッドでの開催であり、欧米の先生の中にはリアルに参加されている方がいたのが大変うらやましく、印象的だった。今年のESMO、消化管がんの演題はpractice changingではないものの、来るべき治療の影が見え隠れする、玄人受けする(?)演題が多い印象であった。後述するように、とくに中国の躍進を感じさせる演題が多く、個人的には強い危機感を覚えている。食道がんいまや消化管がんにおける免疫チェックポイント阻害剤(ICI)のショーケースともいえるのが食道がん1st lineである。これまでに出そろったデータとして、ペムブロリズマブ+chemo(KEYNOTE-590試験)、ニボルマブ+chemo or イピリムマブ(CheckMate 648試験)、camrelizumab+apatinib(ESCORT-1st試験)がある。それにさらに加わったのが、中国発のICI、sintilimabとtoripalimabである。抗PD-1抗体sintilimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル or 5-FU)に対する上乗せを検証したORIENT-15試験では、食道扁平上皮がん(ESCC)のみの全体集団で、主要評価項目の全生存期間(OS)における有意な延長を示した(OS median:16.7 vs.12.5 months、HR:0.628、p<0.0001)。同じく抗PD-1抗体toripalimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル)に対する上乗せを検証したJUPITER-06試験では、ESCCのみの全体集団で主要評価項目のOS、無増悪生存期間(PFS)の両方において有意な延長を示した(OS median:17.0 vs.11.0 months、HR:0.58、p<0.00036、PFS median:5.7 vs.5.5 months、HR:0.58、p<0.0001)。胃がんCheckMate 649試験(CM 649)の成功によって、胃がん1st lineの標準治療がICI+chemotherapyとなったのは昨年のESMOであった。CM 649はそもそも3アーム試験であり、chemo±ニボルマブ(nivo)のほかにニボルマブ(1mg/kg q3w)+イピリムマブ(ipi)(3mg/kg q3w)というexperimental armがあったのだが、毒性の問題で登録中止となり主解析から外れていた。nivo+ipiにはさまざまなvariationがあるが、CM 649では高用量のipiが採用されている点は注意されたい。今回のESMOではnivo+ipiアームのデータが、chemo±nivoの長期フォローアップ、MSI解析に加えて公表された。結論から言えば、nivo+ipiはchemoに対して期待されたCPS≧5の集団において優越性を示すことはできなかった(OS:11.2 vs.11.6 months、HR:0.89、p=0.232)。MSI-Hは試験全体の3%であった。chemoとの比較において、chemo+nivoは高い有効性を示した(OS:38.7 vs.12.3 months、HR:0.38、ORR:55% vs.39%)。途中で中止となったアームなので比較はできないが、nivo+ipiはMSI-Hに対して、さらなる有効性を示唆した(OS:NR vs.10.0 months、HR:0.28、ORR:70% vs.57%)。MSI-Hに対しては5-FUがdetrimentalに作用する可能性が示唆されており、殺細胞性抗がん剤を含まないレジメンの有効性を示唆する結果であると考えている。現在、未治療のMSI-H胃がんに対するニボルマブ(240mg, fix dose, q2w)+low doseイピリムマブ(1mg/kg q6w)の有効性を探索する医師主導phase II試験(NO LIMIT, WJOG13320G/CA209-7W7)が進行中である(プロトコル論文:Kawakami H, et al. Cancers (Basel). 2021;13:805.)。nivo+ipiについてはもうひとつ、HER2陽性胃がん初回治療におけるニボルマブ+トラスツズマブにイピリムマブvs. FOLFOXの上乗せ効果を比較したランダム化phase II、INTEGA試験の結果も興味深かった。試験デザインは先進的である。つまりCM 649でnivo+ipiがchemoに対する優越性を証明でき、かつKEYNOTE-811においてchemo+トラスツズマブ+ペムブロリズマブの優越性が証明できれば、その次に浮かぶclinical questionがこのデザインだったからである。すでにHER2陰性胃がんに対して、nivo+ipiが化学療法を凌駕することがないことは、CM 649にて示されていたが、残念ながらこの試験結果もそれを追認するものであった。この結果から、HER2陽性胃がんに対する1st lineとしてのKEYNOTE-811の重要性が増した印象であり、生存データの結果公表が待たれる。HER2陽性胃がんといえば、本邦発のHER2 ADC、T-DXdの2次治療における欧米患者集団でのsingle arm phase II試験、DESTINY-Gastric02のデータが公表された。T-DXdは日本では3次治療以降の承認であるが、米国FDAにおいては2次治療ですでに承認となっている。主要評価項目を奏効率とし、トラスツズマブを含む1次治療に不応となったHER2陽性胃がん79例が登録された。有害事象は既報と変わりなかった。肝心の奏効率は38%と3次治療以降を対象としたDESTINY-Gastric01で認められた51%より低い数字であった(もちろん直接比較するものではないが)。Gastric-01と02の違いとして注意しなければならないのは、人種の違い以外(01は日本と韓国、2ヵ国の試験)に、02が2次治療すなわちトラスツズマブ不応直後の症例を対象としている、ということである。胃がんの治療開発の歴史においてトラスツズマブを含むanti-HER2 beyond PDは、これまで開発がことごとく失敗している。その原因の1つと考えられているのが、細胞表面上に発現しているHER2タンパクがトラスツズマブ治療中に欠失することにより不応となるという獲得耐性メカニズムである。複数の報告があるが、一例を挙げると、トラスツズマブbeyond PDの有効性を探索したT-ACT試験では2nd line前のHER2 statusが調べられた16症例のうち、実に11例(69%)でHER2陰性であった(Makiyama A, et al. J Clin Oncol. 2020;38:1919-1927.)。そうした背景からGastric-02試験においては、試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっている。こうしてみると、01試験の高い奏効率はどう説明できるのか、という疑問も生じる。現在、トラスツズマブ不応となったHER2陽性胃がんを対象としたphase III、DESTINY-Gastric04試験(weeklyパクリタキセル+ラムシルマブvs.T-DXd)が進行中である。この試験でも試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっており、今後注目の試験である。食道がんでもpositiveとなったsintilimabは、胃がん1次治療でもpositiveな結果であった(ORIENT-16試験)。CapeOxに対してsintilimabは、主要評価項目のOSにおいてCPS≧5(18.4 vs.12.9 months、HR:0.766、p=0,0023)および全患者集団(15.2 vs.12.3 months、HR:0.766、p=0.0090)において有意な延長を示した。中国の薬剤開発状況を「#MeToo」戦略といってばかにするのは簡単だが、昨年のESMOであればpresidential sessionに選出されたような開発を国内のみで短期間、しかも複数で成しえていること事態が驚異的である。ただ、これだけ同じような治療法が乱立した場合、どのような使い分けが中国国内で議論されるのかは知りたい気がする。しかし今回のESMOで一番衝撃を受けたのは、これからご紹介するClaudin(CLDN)18.2に対するCAR-Tである。CAR(Chimeric antigen receptor)-Tとは、患者さんのT cellに、がん細胞などの表面に発現する特定の抗原に対するキメラ受容体を人為的に発現させたものである。現在、CAR-T治療は本邦では白血病や悪性リンパ腫にのみ保険適用である一方、固形がんでの開発はまだまだ途上という印象である。CLDNは細胞間結合、とくにタイトジャンクションに関与するタンパク質で、少なくとも24種類のアイソフォームが知られている。CLDN18は、胃と肺で特異的に発現し、CLDN18.2は、タイトジャンクションが破壊された胃がん(低分化)での発現が高く、高度に選択的なマーカーと考えられている。すでにCLDN18.2を標的とする臨床開発は行われている。最も進んでいるのはCLDN18.2抗体zolbetuximabと化学療法を併用する治療戦略で、phase IIIが進行中である。そのCLDN18.2を標的とするCAR-Tの有効性と安全性に関するphase I試験の結果が報告された。対象はECOG PS-0,1、18~75歳のCLDN18.2発現陽性、既治療の胃がん症例であった。CLDN18.2陽性を背景に、42.9%がSignet ring cell carcinomaであった。前治療として抗PD-(L)1抗体が42.9%、Multi kinase inhibitorが35.7%で投与されていた。懸念された有害事象で治療中止となったものは1例のみで、忍容性が示される結果であった。有効性に関しては以下のとおりである。標的病変を有する36例中13例(48.6%)で奏効が認められた。病勢制御率は73%であった。また、少なくとも2ライン以上の治療を受けた症例(40%以上が抗PD-[L]1抗体既治療)でみると、奏効率は61.1%、病勢制御率は83.3%、median PFS 5.6ヵ月、median OS 9.5ヵ月というものであった。もちろんpreliminaryな結果ではあるが、この分野で中国の開発が一歩先に出ていることを示した重要なデータである。大腸がんMSS大腸がんに対しては、なかなか革新的な治療がなく、以前効果のあった薬を再利用するrechallengeの有効性が議論されるほど、「冬の時代」といえるのが大腸がんである。その理由としては、「大半を占めるMSSに対してICIが無効である」ことと「治療抵抗因子としてのRAS変異の存在(大腸がんの半数を占める)」が挙げられる。この大きな課題に対して、わずかずつではあるが光明が差してきていることを感じさせる結果が報告された。まずはICIについて注目した演題が2つ。1つはFOLFOXIRI+ベバシズマブ(Bmab)+アテゾリズマブ(atezo)の有効性を探索したランダム化phase II、AtezoTRIBE試験である。イタリアのGONO study groupらしく、1次治療としてFOLFOXIRI+Bmabがbackbone chemotherapyに選択された。主要評価項目をPFSとし、218例がatezo+chemo群vs.chemo群に2:1で割り付けされた。MSI-Hはそれぞれ6%、7%であった。結果として、atezo+chemo群が有意なPFSの延長を示した(mPFS:13.1 vs.11.5 months、HR:0.69、80%CI:0.56~0.85、p=0.0012)。一方で奏効率については59% vs.64%、R0 resection rateは26% vs.37%と有意差はないものの、atezo+chemo群で不良な傾向が認められた。この結果をどう捉えるか? 個人的には、この結果はby chanceの可能性が高く有効性については疑問符と考えている。この試験で気になっているのは、「客観性」が保たれていたのか、つまりblindが機能したのかということであり、それは主要評価項目PFSの確からしさに直結する。この試験にはopen labelなのかという記載がなく不明であるが、仮にblindされていたとしても経験のあるoncologistであれば、毒性からICIが投与されているかどうかは感覚的にわかる部分がある。その場合、PFSの評価が甘くなる可能性がある。つまりinvestigator PFSなのかcentral PFSなのかによって、ここが大きく揺らぐ可能性があるが、そこも明言されていない。一方、responseについては客観的な評価となるわけで、そこで優越性が示されていないことが上記の疑念をさらに増幅させる。さらなる情報の追加が求められる。もうひとつ、MSS、MGMT不活化切除不能大腸がんに対する、テモゾロミド(TMZ)、TMZ+LD-イピリムマブ+ニボルマブ併用療法の逐次治療の有効性を検討する(phase II)MAYA試験も注目した演題であるが、これも客観性に乏しいという問題があり、現時点での評価はやはり疑問符である。MSSに対するICIのチャレンジは道半ばという印象であった。一方、光明が見られたのはKRAS mutationに対してである。KRAS G12Cに対する開発が非小細胞肺がんに対するsotorasibを嚆矢に急激な発展を遂げているが、今回、既治療大腸がんKRAS G12Cを対象に、RAS G12C阻害剤adagrasib単剤もしくはセツキシマブ併用の有効性を探索したKRYSTAL-1試験の結果が報告された。個人的には、すでに基礎的に有効性が示されているセツキシマブ併用に注目していた。結果としては奏効率が単剤で22%、併用で43%と、別のRAS G12C阻害剤であるsotorasibでは見られなかった「手応え」を感じさせる結果であった。こうしたearly phaseでの良好な結果を見るとすぐに飛びつきたくなるが、Cobi Atezoの苦い経験からも、今回の結果はいずれもpreliminaryであり、まだ信じてはいけないな、と思っている(でも期待している)。したがって、1次治療不応となった症例を対象としたphase III試験KRYSTAL-10(adagrasib+セツキシマブvs.FOLFIRI/FOLFOX based)の結果を待ちたい。KRAS G12Cは大腸がんKRAS exon2変異の6~7%、つまり大腸がん全体の症例の2~3%という希少フラクションであり、その開発には少なからぬ困難が伴うが、少しずつではあるが着実に、この難しいパズルは解決に向かっていると信じている。最後に:ESMOの感想に代えて実は、筆者は6月に中国で行われた第11回CGOG(Chinese Gastrointestinal Oncology Group)総会に教育講演のinvited speakerとして参加した際に、このCLDN18.2に対するCAR-Tで実際に治療された症例報告を目にしていた。CAR-Tは血液悪性腫瘍では有効だが、消化器がんのような固形がんでの応用はまだまだ先と信じていた筆者にとって、すでに有効例が多数存在していることは衝撃的であった。さらに北京大学の若手医師たちが、この研究を通じてCAR-Tの治療経験をだいぶ積んでいる様子がディスカッションからうかがえ、言いようのない焦りを覚えた。こんな連中を相手にどんな教育講演をすればよいのか、頭が真っ白になった(会議のほとんどは中国語でやりとりされていて、急に英語で話を振られるので気が気でなかったというのもあるが)。さらに驚いたのは、「もうすでにphase Iを終えて、high impact journalへ投稿準備中である。そして新たにphase IIを計画中である」と北京大学の医師が語っていたことであった。CAR-Tは胃がんに対する新しい有望な治療の登場であり、喜ばしい報告であるのだが、正直筆者は強い危機感を覚えている。それはアジアにおける薬剤開発において、日本の優位性はもはや存在しないという事実を突き付けられたからにほかならない。胃がんに対するCAR-Tだけではない。CGOG総会で発表された基礎研究は非常にレベルが高いものが多かったが、アカデミアからだけでなく企業からのそうした発表も多く、産学連携が非常にうまく作用しているように思えた。CAR-Tはscienceであると同時にengineeringの側面が大きく、臨床のアイデアを形にするテクノロジーとの協調は必須である。この彼我の差は個々人の能力というより国を挙げての投資の結果の違いだと信じたいが、日本の基礎医学への冷淡な姿勢を見ていると、この状況はすぐには変わりそうになく暗澹たる気持ちになる。今後、薬剤開発においてこうした「格差」を感じる場面が増えてくるのではないかと思っている。個人的な話で恐縮だが、『三体』という中国発のSF小説を間もなく読了するところである(第三部は2021年5月に日本発売)。世界中で異例の大ヒットとなっている小説なのでご存じの方も多いと思うが、第一部、第二部でこの小説の世界観、想像力の大きさに圧倒され第三部を楽しみにしていた。そしてここまで読んで「中国はここまで来ているのか」と空恐ろしさを感じている。もちろん小説であり、そこに描かれているのは現実ではないが、それを感じさせる充実した内容であった。今年のESMOを見ていてふと思い出したのが、この小説『三体』であった。『三体』を読んで無意識に感じていた、まい進する中国に対する漠然とした「焦燥感」もしくは現状に対する「危機感」を、形にして突き付けられたような気がしたからかもしれない。最後に、この『三体』の単行本が中国で発売されたのが2008年1月であることを付記しておきたい。

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デュルバルマブの小細胞肺がん1次治療、3年の成績(CASPIAN)/ESMO2021

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療として、デュルバルマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン、EP)併用はEP単独と比較して、追跡期間中央値3年超の時点でも持続的な全生存期間(OS)の延長が示された。 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏が、「CASPIAN試験」の3年フォローアップの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。CASPIAN試験でデュルバルマブと化学療法併用が進展型小細胞肺がんのOS改善 CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブ±tremelimumab+EPとEP単独療法の安全性と有効性を比較した第III相の国際多施設共同無作為化非盲検無作為化試験。追跡期間中央値25.1ヵ月時点で、デュルバルマブ+EP併用群のEP単独群に対する有意なOS改善が示され(HR:0.73、p=0.0047)、2年フォローアップ時でも持続的な改善が確認されていた(HR:0.75、p=0.0032)。デュルバルマブ+tremelimumab+EP併用群は、数値上のOS改善は示されたが統計的な有意性の基準は達成しなかった。・対象:未治療進展型小細胞肺がん(WHO PS0/1、無症候性/治療安定性の脳転移許容、平均余命≧12週、RECIST v1.1測定可能病変)患者805例・試験群:デュルバルマブ(1,500mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群)3週ごと4サイクル、その後病勢進行(PD)までデュルバルマブ4週ごとデュルバルマブ(1,500mg)+tremelimumab(75mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)3週ごと4サイクル、その後PDまでデュルバルマブ4週ごと・対照群:EP単独、3週ごと最大6サイクル、その後オプションで予防的全脳照射・評価項目[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性、患者報告アウトカム(PRO) 進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブと化学療法併用とEP単独療法の安全性と有効性を比較したCASPIAN試験の主な結果は以下のとおり。・3年OSを評価したデータカットオフ時点(2021年3月21日、追跡期間中央値39.4ヵ月)で、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続していることが示された(HR:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.86、nominal p=0.0003)。・OS中央値は、D+EP群12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群10.5ヵ月(9.3~11.2)であり、36ヵ月時点で生存していた患者はそれぞれ17.6%、5.8%であった。・年齢、性別、PSなどのサブグループ解析では、D+EP群のすべての患者にベネフィットがあることが認められた。・D+T+EP群のOS中央値は10.4ヵ月(95%CI:9.5~12.0)であり、EP群に対する数値上のOS改善は持続していた(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97、nominal p=0.0200)。36ヵ月時点で生存していた患者は15.3%であった。・データカット時点でデュルバルマブ投与が継続されていたのは、D+EP群10.2%(投与回数中央値7.0)、D+T+EP群7.1%(6.0)であった。・重篤有害事象(あらゆる原因による)の発現率は、D+EP群32.5%、D+T+EP群47.4%、EP群36.5%であった。死亡に結びついた治療関連有害事象はそれぞれ、2.3%、4.5%、0.8%であった。 Paz-Ares氏は、「これまでに行われたES-SCLC患者を対象としたEP+抗PD(L)-1療法の第III相試験の中で、今回のOS解析の追跡期間中央値は3年超と最長であった。既報のとおり、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続しており、安全性プロファイルも忍容されるものであった。3年時点でEP群と比べてD+EP群の生存患者の割合は3倍超高く、多くの患者のEP治療が継続されており、ES-SCLCの1次治療の標準治療としてのD+EPの地位を、さらに確固とする結果であった」とまとめた。

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ペムブロリズマブとルテチウム177の併用は去勢抵抗性前立腺がん治療に有望(PRINCE)/ESMO2021

 ルテチウム177-PSMA-617(LuPSMA)とペムブロリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して良好な効果と安全性を示すことが、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのShahneen Sandhu氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 今回のPRINCE試験は第I相b試験であり、試験薬のLuPSMAは、すでに欧米で承認され、その放射線による殺細胞作用と免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が期待されていた。・対象:エンザルタミド、アビラテロン、アパルタミド、ドセタキセルの治療歴を有し、画像上PSMAの高発現が確認され、測定可能病変があるmCRPC・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと最大35サイクル(2年間)まで+LuPSMA 6週ごと最大6サイクル投与・評価項目[主要評価項目]PSA値を50%以上低下させる割合(P-RR)、安全性[副次評価項目]画像評価による無増悪生存期間(rPFS)、PSA上昇をイベントとした無増悪生存期間(P-PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数は37例、年齢中央値72歳、グリソンスコア8以上が62%、全例でエンザルタミドかアビラテロンの前治療があり、ドセタキセル治療歴ありも70%であった。・一般的な有害事象は、Grade1/2が、口腔乾燥76%、全身倦怠感43%、発疹25%など。血液毒性は血小板減少14%、貧血8%、好中球減少3%などであった。・Grade3の免疫関連有害事象として、大腸炎2例、膵炎、腎炎、糖尿病、筋無力症などがそれぞれ1例ずつ報告された。・追跡期間中央値38週時点のP-RRは73%であった。・治療開始から12週時点で、PSMAが発現なく血中循環腫瘍細胞(CTC)の検出がなかった症例は61%であった。・24週時点でのrPFS率は65%、P-PFS率は68%であった。 演者は最後に「ペムブロリズマブの生存に対する寄与を評価するためにはさらなる追跡期間が必要であり、腫瘍環境の精査にはバイオマーカーの評価も必要である」と結んだ。

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mCRC、テモゾロミド後のイピリムマブ+ニボルマブ、PFSを延長(MAYA)/ESMO2021

 MGMT(O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ)発現陰性およびMGMTプロモーター領域のメチル化が確認されたMGMTサイレンシング、かつマイクロサテライト安定性(MSS)の転移大腸がん(mCRC)に対し、テモゾロミドによる過剰変異を利用することで、低用量イピリムマブ+ニボルマブ併用療法の持続的な効果を誘導できることが、「MAYA試験」で示され、イタリア・IRCCS財団国立がん研究所のFillippo Pietrantonio氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 MAYA試験は、イタリアの12施設で実施された多施設共同非盲検第II相概念実証試験。標準治療(フッ化ピリミジン系薬剤、オキサリプラチン、イリノテカン、および抗EGFRモノクローナル抗体[RAS/BRAF野生型の場合])後に進行した、または標準治療の対象とならない18歳以上MGMTサイレンシングMSS mCRC患者を対象とした。・対象:18歳以上、標準治療後に進行、または標準治療の対象とならないMGMTサイレンシングMSS mCRC患者・試験群:テモゾロミド150mg/m2を1~5日目に4週ごと2サイクル投与後(第1治療期)、CTでCR、PRまたはSDが確認された患者に対して、テモゾロミドに加えてイピリムマブ(1mg/kg、8週ごと)およびニボルマブ(480mg、4週ごと)を併用投与(第2治療期)・評価項目:[主要評価項目]第2治療期を開始した患者における8ヵ月無増悪生存(PFS)率[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、有害事象(AE)、患者報告アウトカム 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2020年11月に、イタリアの12施設で703例がプレスクリーニングに同意し組織検体が解析された。204例が適格基準を満たし、135例が第1治療期を開始し、33例(24%)が第2治療期を開始した。・33例の患者背景は、年齢中央値58歳、男性52%、RAS変異型76%、RAS変異/BRAF野生型24%、前治療が3ライン以上48%、2ライン以上46%であった。また、原発巣が右側の患者が45%を占め、第1治療期を開始した135例の30%に比べて高値であった。・観察期間中央値16.0ヵ月(カットオフ日:2021年8月5日)において、PFS中央値は7.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.4)、33例中12例がPFS>8ヵ月を達成し、8ヵ月PFS率は36%であった。・OS中央値は18.4ヵ月(95%CI:14~NA)、ORRは42%(14/33例)であった。・全Gradeの主な化学療法関連AEは嘔吐(48%)、血小板減少症(36%)、貧血(24%)、主な免疫関連AEは甲状腺機能障害(27%)、そう痒症(24%)、発疹(18%)、大腸炎(12%)などであった。・Grade3/4の有害事象の発現頻度は低かった。 Pietrantonio氏は、「MGMTサイレンシングMSS mCRCに対し、テモゾロミドによるプライミング後の低用量イピリムマブ+ニボルマブ併用療法は、管理可能な安全性プロファイルと有望な臨床効果を示すことが認められた。この治療戦略の適格患者はmCRCの5%のみではあるものの、無作為化臨床試験で検討する価値がある」とまとめた。

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カボザンチニブとアテゾリズマブの併用は去勢抵抗性前立腺がんに有用な可能性(COMIC-021)/ESMO2021

 カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性の前立腺がん(mCRPC)に対して良好な抗腫瘍効果を示すことが、米国・The University of Utah Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 この試験はCOSMIC-021試験で、腎細胞がん、尿路上皮がん、肺がんなどを対象にした第I相b試験でる。今回はそのなかから、mCRPC(コホート6)の解析結果が報告された。・対象:エンザルタミドまたはアビラテロンの治療歴があり、測定可能病変を有するmCRPC 132例・試験群:カボザンチニブ40mg/日内服+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性[探索的評価項目]バイオマーカー検索、独立評価委員会(BIRC)評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数30例の目標で試験開始されたが、2回の登録数拡大により今回の解析時(データカットオフ2021年2月、観察期間中央値15.2ヵ月)では対象が132例となった。・登録症例の年齢中央値は70歳、グリソンスコア8以上が63%、ドセタキセル治療歴ありが25%、内臓転移ありが32%で、骨盤外リンパ節転移ありが60%であった。・主治医判定によるORRは23%(CR2%/PR21%)で、病勢制御率は84%、奏効期間中央値は6.9ヵ月であった。・内臓転移または骨盤外リンパ節転移あり(Vis/L)群101例のORRは、27%であった。これらの奏効率とPD-L1ステータスとの関連性は見い出されなかった。・BIRCによるPFS中央値は全症例で5.7ヵ月、Vis/LN群では6.8ヵ月であった。OS中央値は全症例Vis/LN群ともに18.4ヵ月であった・PSAが50%以上低下した症例割合は、全症例で23%、Vis/LN群では26%であった。・有害事象による用量減量は、カボザンチニブ、アテゾリズマブともに43%で、有害事象による投与中止はカボザンチニブ18%、アテゾリズマブ14%であった。・Grade3/4の主な有害事象は、高血圧、下痢、全身倦怠感が共に6.8%、肺塞栓が8.3%、膵炎6.1%、肝炎5.3%、腸炎3.0%、発疹3.0%などであり、高用量のステロイド剤投与が必要となった症例は17%であった。 mCRPCに対しては、今回のCOMIC-021と同レジメン(カボザンチニブとアテゾリズマブの併用)で、第III相試験CONTACT-02が進行中である。

288.

転移のあるホルモン感受性前立腺がん対するエンザルタミド+ADT療法はOSを改善(ARCHES)/ESMO2021

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対するエンザルタミドとアンドロゲン遮断療法(ADT)の併用は、ADT単独療法より全生存期間(OS)を延長することが示された。 これは国際共同の大規模臨床試験であるARCHES試験の結果で、米国・Duke Cancer Institute CenterのAndrew J. Armstrong氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。同試験は日本も参加した二重盲検無作為化比較第III試験。・対象:画像上で確認されたmHSPC 1,150例(3ヵ月以内のADTの先行と6ヵ月以内のドセタキセルの先行投与は許容)・試験群:エンザルタミド+ADT群 574例(Enza群)・対照群:プラセボ+ADT群 576例(Pla群)・評価項目[主要評価項目] 中央判定による画像評価を用いた無増悪生存期間(rPFS)[副次評価項目] OS、PSA増悪期間、次治療移行までの期間、奏効率、安全性など 主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)はEnza群の有意な延長が、2018年に報告された(ハザード比[HR]0.39(95%信頼区間[CI] 0.30~0.50)、P<0.001)。それ以降、試験の盲検化が解かれ、Pla群へのエンザルタミドのクロスオーバー投与が認められた。今回はOSの最終解析報告である。 主な結果は以下のとおり・登録症例の年齢中央値は70歳、ドセタキセル治療歴有りが18%、診断時のグリソンスコア8以上が65~67%を占めた。・Pla群576例中、180例がエンザルタミド+ADTのクロスオーバー投与(Cross群)を受けた。・観察期間中央値44.6ヵ月時点でのOS中央値は両群ともに未到達であったが、OSのHRは0.66(95%CI:0.53~0.81)、p<0.0001とEnza群で有意に良好であった。・2年時OS率はEnza群が86%、Pla群が82%、3年時OS率はEnza群が78%、Pla群が69%、4年時OS率はEnza群が71%、Pla群が57%と、4年時点で14%の差があった。・治療期間中央値はEnza群で40.2ヵ月、Pla群で13.8ヵ月であり、Cross群では23.9ヵ月であった。・後治療が施行されたのは、Enza群131例Pla群221例であり、後治療施行までの期間中央値は、Enza群は未到達、Pla群は40.5ヵ月でHR0.38(95%CI:0.31~0.48)であった。・後治療の主な薬剤は、Enza群ではドセタキセル48例とアビラテロン26例、Pla群ではドセタキセル71例とエンザルタミド61例であった。・安全性における新たな徴候は見られなかった。両群ともに治療関連死はなかったが、治療中止はEnza群で13.8%、Pla群で5.6%あった。グレード3/4の主な有害事象は、高血圧でEnza群が5.1%Pla群が2.3%、骨折はEnza群で3.5%Pla群で1.6%であった。

289.

非小細胞肺がん2次治療に現れた新規作用薬plinabulin(DUBLIN-3)/ESMO2021

 プラチナベース化学療法で進行した2〜3次治療の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるplinabulinとドセタキセルの併用の有用性を評価した国際無作為化第III相試験DUBLIN-3の初回解析が欧州臨床腫瘍学会(ESMO COngress2021)で発表された。その結果、plinabulinとドセタキセルは当該対象患者に対する有効性と良好な安全性を示した。 EGFR変異のないNSCLC、1次治療のスタンダードがPD-(L)1阻害薬となった現在、2次治療の主体はドセタキセルベースの化学療法である。しかし、ドセタキセルの効果は限定的であり、好中球減少の懸念も拭えず、2次治療にはアンメットニーズがある。 plinabulinはファースト・イン・クラスの免疫調整微小管結合薬(Selective Immunomoduliting Mictorotubule Binding agent, SINMBA)である。同剤は、微小管のチューブリンβサブユニットを結合し、樹状細胞を成熟化させ、T細胞の増殖を促進して免疫腫瘍反応の適正化する。・対象:1〜2ラインのプラチナ化学療法で進行したNSCLC(EGFR野生型、免疫チェックポイント阻害薬の前治療は許容)・試験薬群:plinabulin(30mg/m2 Day1)+ドセタキセル(70mg/m2 Day1、8)(PD群 278例)・対照薬群:ドセタキセル(70mg/m2 Day1、8)(D群 281例)・評価項目[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、第1サイクル8日目のGrade4の好中球減少、24および36ヵ月OS率、奏効期間(DoR)、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、PD群10.5ヵ月に対し、D群9.4ヵ月で、主要評価項目を達成した(HR:0.82、95%CI:0.67〜0.99、p=0.0399)。24ヵ月OS率は22.13%対12.51%であった。・PFS中央値は、PD群6.0に対し、D群4.4ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.63〜0.93)。・ORRは、PD群12.23%に対し、D群では6.76%であった(p=0.0275)。・第1サイクル8日目のGrade4の好中球減少はPD群で5.26%に対し、D群では27.8%と、PD群で有意に少なかった(p<0.0001)。・PD群の有害事象発現率は全Gradeで56.9%、Grade3/4では27.4%であった。 発表者は、plinabulinとドセタキセルの併用は、NSCLC2/3次治療において、良好な効果と安全性を示すとともに、plinabulinの骨髄保護作用がGrade4の好中球現象を減少させた、と述べている。 plinabulinとドセタキセルの併用は、NSCLC2/3次治療としての可能性を示唆したと言えるだろう。

290.

カルボプラチン+パクリタキセルの術前療法がTN乳がんの予後を改善(BrighTNess)/ESMO2021

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル療法が、長期予後追跡の結果、無イベント生存期間(EFS)を改善することが示唆された。これは大規模臨床試験のBrighTNess試験の結果であり、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。 本試験は、国際共同の第III相比較試験であり、すでに主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については2018年に報告済みである。今回は長期予後のEFSと全生存期間(OS)に関する報告。・対象:gBRCAの判定結果を有するStage2/3のTNBC症例(634例)・試験群:(1)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparib(PARP阻害薬)の併用(CPV群)(2)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparibのプラセボ(CP群)・対照群:パクリタキセル+カルボプラチンのプラセボ+veliparibのプラセボ(P群)カルボプラチンはAUC 6mg/mL/分を3週ごとに、パクリタキセルは80mg/m2を1週ごとに投与し、共に16週間以内に投与完了。併用するveliparibは50mg/日(内服)。この3群の投与後はすべての群で、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)を4サイクル追加投与し、その2~8週間後に手術を施行。・評価項目[主要評価項目]pCR率[副次評価項目]EFSとOS、安全性(2次発がんの検討含む) 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は約50歳、gBRCA変異ありは約15%、N0症例は約58%であった。・観察期間中央値4.5年時点で、3群ともに50%EFS期間に到達しておらず、CPV群のP群に対するEFSハザード比(HR)は0.63(95%信頼区間[CI]:0.43~0.92)、p=0.02であった。CP群のHRは0.57(95%CI:0.36~0.91)、p=0.02であった。CPV群とCP群間ではHRは1.12(95%CI:0.72~1.72)、p=0.62であった。・pCRが得られた症例のEFSは、gBRCA変異状況に関係なく、pCRが得られなかった患者に比べて良好であった。HRは0.26(95%CI:0.18~0.38)、p<0.0001であった。・OSに関しては、死亡はCPV群が38/316例で12%、CP群16/160例の10%、P群では22/158例で14%であった。CPV群のP群に対するHRは0.82(95%CI:0.48~1.38)、p=0.45で、CP群はHR 0.63(95%CI:0.33~1.21)、p=0.17、CPV群とCP群間ではHR 1.25(95%CI:0.70~2.24)、p=0.46であった。・骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を含む2次発がんの発生頻度は3群間で大きな差はなかった(0~4%)。 演者は、「TNBCの術前療法としてのveliparibの追加は有用ではなかったが、従来のパクリタキセル+AC療法にカルボプラチンを追加する意義は大きかった。さらにこれはgBRCAステータスには無関係であった」と締めくくった。

291.

トラスツズマブ デルクステカン、HER2変異NSCLCに有望(DESTINY-Lung01)/ESMO2021

 HER2抗体複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)による、既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する第II相試験DESTINY-Lung01の初回解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表され、有効な成績が示された。 NSCLCにおけるHER2遺伝子変異は約3%と多くはない。標的治療薬は承認されておらず、検査は行われない。治療には化学療法が使われるが、効果は限定的である。 そのようななか、第II相DESTINY-Lung01試験の中間解析で良好な成績を示したことから、T-DXdに新たな選択肢としての期待がかかる。 DESTINY-Lung01試験は多施設国際2コホート研究。・対象:転移を有する標準療法不応のHER2発現またはHER2変異陽性の非扁平上皮NSCLC・コホート1:HER2過剰発現患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)・コホート1a:HER2過剰発現患者 T-DXd 5.4mg/kg 3週間ごと(n=41)・コホート2:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=42)・コホート2拡張:HER2遺伝子変異陽性患者 T-DXd 6.4mg/kg 3週間ごと(n=49)・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による全奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・HER2変異NSCLCは91例登録され、T-DXdの投与を受けた。・データカットオフ時(2021年5月3日)の追跡期間中央値は13.1ヵ月であった。・無症候性中枢神経系(CNS)転移は36.3%に認められた。・98.9%が全身治療を受けており、前治療数の中央値は2であった。・前治療の内訳はプラチナベース化学療法94.5%、PD-(L)1阻害薬65.9%、プラチナベース化学療法+PD-(L)1阻害薬62.6%、ドセタキセル19.8%、HER2-TKI14.3%であった。・ICR評価のconfirmed ORRは54.9%、DCRは92.3%であった(CR1例、PR49例、SD34例)。・サブグループのORRは、脳転移の有無、HER2変異サブタイプを問わず、良好であった。・DoR中央値は9.3ヵ月、PFD中央値は8.2ヵ月、OS中央値は17.8ヵ月であった。・治療関連有害事象(TEAE)は96.7%で発現した。・薬物関連間質性肺疾患(ILD)は24例24.1%で発現した。そのうち、75%はGrade1および2であった。 T-DXdは、既治療のHER2変異陽性NSCLC患者に良好かつ持続的な有効性を示した。安全性プロファイルも以前の研究と一致しており、間質性肺疾患についても管理可能なものであった。 この研究は、T-DXdがこれらの集団に対する、新たな標準治療としての可能性をを支持するものだ、と発表者は締めくくった。 この結果はNEJM誌に同時公開された。

292.

TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ上乗せ、CPS≧10でOS改善(KEYNOTE-355)/ESMO2021

 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験におけるOSの最終解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・プラセボ群:プラセボ+化学療法 281例・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2021年6月15日。観察期間中央値はペムブロリズマブ群が44.0ヵ月、プラセボ群が44.4ヵ月だった。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値が53歳、CPS≧1が約75%、CPS≧10が約38%だった。試験で投与されたのはタキサンが約45%、ゲムシタビン/カルボプラチンが約55%。de novo転移が約30%、無再発期間<12ヵ月が約20%だった。・CPS≧10の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群23.0ヵ月 vs.プラセボ群16.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95、p=0.0093)と有意な改善がみられた。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群58.3% vs.プラセボ群44.7%、24ヵ月時点で48.2% vs.34.0%だった。・CPS≧10の患者におけるOSのサブグループ解析では、化学療法の種類や治療歴などによらずペムブロリズマブ群におけるベネフィットがみられたが、無再発期間<12ヵ月の患者ではみられなかった。ただし、サンプルサイズが小さいことには留意が必要となる。・CPS≧1の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.6ヵ月 vs.プラセボ群16.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.72~1.04、p=0.0563)と事前に設定された有意性水準(p<0.0172)を満たさなかった。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群48.4% vs.プラセボ群41.4%、24ヵ月時点で37.7% vs.29.5%だった。・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.2ヵ月 vs.プラセボ群15.5ヵ月(HR:0.89、95%CI:0.76~1.05)。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群47.8% vs.プラセボ群41.8%、24ヵ月時点で35.5% vs.30.4%だった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群68.1%(死亡2例) vs.プラセボ群66.9%(死亡例なし)で報告された。・Grade3以上の免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ群5.3% vs.プラセボ群0.0%で報告された。死亡例は報告されていない。多く報告されたのは甲状腺機能低下症・亢進症だった。

293.

アテゾリズマブの術後補助療法の有効性は症例タイプによって変わるか(IMpower010)/WCLC2021

 IMpower010試験で示された、アテゾリズマブによるStage II~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法の有効性が、大きな反響を呼んでいる。このアテゾリズマブの術後補助療法の成績は症例タイプによって違いはあるのか、探索的研究が世界肺癌学会(WCLC2021)で発表された。ゾリズマブの術後補助療法を追加した試験群、ほとんどの症例タイプでDFSを改善 その結果、ほとんどの症例タイプにおいて、アテゾリズマブの術後補助療法の追加により、無病生存期間(DFS)が改善した。・対象:Stage IB~IIIAで術後化学療法(プラチナ+ペメトレキセド/ドセタキセル/ゲムシタビン/ビノレルビン)を21日ごと最大4回サイクル受けた完全切除NSCLC患者(ECOG PS 0~1)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日 3週ごと16サイクル(Atezo群)・対照群:ベストサポーティブケア(BSC群)・評価項目[主要評価項目]治験責任医評価のDFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]Stage II~IIIAのPD-L1(TC)≧1%のDFS、Stage II~IIIA全患者の DFS、ITT集団(Stage IB-IIIA)のDFS、ITT集団のOS(階層的に検証)、安全性 アテゾリズマブの術後補助療法の成績は症例タイプによって違いがあるのか研究した主な結果は以下のとおり。[Stage II~IIIA PD-L1≧1%]・臨床病期別のDFSのハザード比(HR)は、Stage IIAで0.73、Stage IIBで0.77、IIIAでは0.62であった。・リンパ節病変別のDFS HRはN0 で0.86、N+では0.62であった。・手術タイプ別のDFS HRは肺葉切除で0.63、肺全摘で0.83、2肺葉切除では0.78であった。・化学療法レジメン別のDFS HRは、シスプラチン+ドセタキセルで0.60、シスプラチン+ビノレルビンで1.14、シスプラチン+ペメトレキセドでは0.66であった。[Stage II~IIIA すべての無作為化患者]・臨床病期別のDFS HRは、Stage IIAで0.68、Stage IIBで0.88、IIIAでは0.81であった。・リンパ節病変別のDFS HRはN0 で0.88、N+では0.76であった。・手術タイプ別のDFS HRは肺葉切除で0.77、肺全摘で0.91、2肺葉切除では1.02であった。・化学療法レジメン別のDFS HRは、シスプラチン+ドセタキセルで0.72、シスプラチン+ビノレルビンで0.94、シスプラチン+ペメトレキセドでは0.84あった。 Stage I~IIIAのPD-L1≧1%および全集団において、ほとんどの症例タイプ(臨床病期、リンパ節浸潤の有無、手術タイプ、化学療法レジメン)で、アテゾリズマブ群がDFSの改善傾向を示していた。

294.

小細胞肺がんに対するlurbinectedin+ドセタキセルの2次治療、主要評価項目は達成できず(ATLANTIS)/WCLC2021

 lurbinectedinは小細胞肺がん(SCLC)において、3.2mg/m2用量の単剤で、米国で承認されている。 in vitroでは、lurbinectedinとドセタキセルの併用による相乗効果が確認されている。この結果を基に、第I相用量拡大試験が行われ、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル40mg/m2とトポテカンまたはCAV(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン)の併用が有望な効果を示した1)。 WCLC2021では、小細胞肺がんに対する、lurbinectedin 2mg/m2とドセタキセル(またはCAV)の併用を評価する第III相試験ATLANTISの結果が発表された。 併用群は対照群に匹敵する有効性を示したが、主要評価項目は達成できなかった。・対象:2次治療のSCLC・試験群:lurbinectedin 2mg/m2 +ドセタキセル40mg/m2 3週ごと・対照群:トポテカン1.5mg/m2day1~5 3週ごとまたはCAV 3週ごと・評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はlurbinectedin併用群8.6ヵ月に対し、トポテカン(またはCAV)群は7.6ヵ月であった(HR:0.967、p=0.7032 )。・独立評価委員会評価のPFS中央値は4.4ヵ月対4.0ヵ月であった(HR:0.831、p=0.0437)。・12ヵ月PFS率は10.8%対4.4%であった(p=0.0129)。・全Gradeの有害事象(AE)発現率はlurbinectedin併用群88.4%に対し、トポテカン(またはCAV)群は92.0%であった。・Grade3以上のAEは47.2%対75.4%と、lurbinectedin群ではGrade1~2が多かった。・lurbinectedin併用群で多くみられた有害事象は貧血14.5%、好中球減少37.0%、血小板減少13.1%であった。 lurbinectedinとドセタキセルの併用は主要評価項目は未達であったが、対照群に匹敵する有効性を示した。安瀬寧については、対照群よりも良好な結果を示した。

295.

デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法が、NSCLC1次治療の生存を改善(POSEIDON)/WCLC2021

 Stage IVの非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用、および、同併用への抗CTLA-4抗体tremelimumabの上乗せの評価結果が世界肺癌学会(WCLC2021)で発表された。 試験は無作為オープンラベル国際第III相POSEIDON試験である。その結果、デュルバルマブ、tremelimumabと化学療法の併用が、統計学的に有意に生存を延長したことが示された。・対象:未治療のStage IV NSCLC・試験群: -デュルバルマブ+化学療法*→デュルバルマブ+化学療法(+ペメトレキセド**)(Durv+CT群) -デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(+ペメトレキセド)(Durv+T+CT群)・対照群:化学療法(CT群)・評価項目[主要評価項目]Durv+CT群における盲検下独立評価委員会(BICR)判定の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]Durv+T+CT群におけるBICR判定のPFS、Durv+T+CT群のOS、高TMB(20mut/MB以上)症例のOS*化学療法:ゲムシタビン+シスプラチン(扁平上皮)、ペメトレキセド+カルボプラチン(非扁平上皮)、nab-パクリタキセル(扁平上皮/非扁平上皮)**初回治療でペメトレキセドを用いた症例のみに適用 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,013例は、Durv+CT群、Durv+T+CT群、CT群に、1:1:1で無作為に割り付られた。・各群で患者の偏りはなかった。[Durv+CT群]・PFS中央値は、Durv+CT群5.5ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+CT群で有意に改善した(HR:0.74、95%CI:0.62~0.89、p=0.00093)。・OS中央値は、Durv+CT群13.3ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+CT群の有意な改善は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.07581)。・全奏効率(ORR)は、Durv+CT群41.5 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.26)。[Durv+T+CT群]・PFS中央値は、Durv+T+CT群6.2 ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.72 、95%CI:0.60~0.86 、p=0.00031)。・OS中央値は、Durv+T+CT群14.0ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.00304)。・ORRは、Durv+T+CT群38.8 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.00)。[安全性]・いずれの群においても、新たな安全性シグナルは認められなかった。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は、Durv+CT群96.1%、Durv+T+CT群97.3%、CT群は96.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、54.8、53.3、51.7%である。・全Gradeの免疫関連AE(imAE)発現率は、Durv+CT群19.2%、Durv+T+CT群33.6%、CT群は5.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、6.9、10.0、1.5%である。 Durv+CT群においては、PFSは有意に改善したものの、OSは有な改善には至らなかった。一方、Durv+T+CT群においは、PFS、OSともにCT群から有意に改善した。また、どちらの併用群もimAE以外のAE発現率はCT群と同程度であった。 筆者は、化学療法へのデュルバルマブとtremelimumabの併用は、Stage IV NSCLCの1次治療における、新たな選択肢となる可能性がある、と述べている。

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第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望

“末期”となり抗体カクテルも効かなかった菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。菅 義偉首相が昨年の安倍 晋三前首相に続き、またまた投げ出し退陣をすることになりました。コロナ対策も総じて後手後手でしたが、自身の政権延命策も後手後手の印象で、最後は自分で自分を“詰んで”しまいました。新聞やテレビは、退陣に追い込まれるに至ったいくつかの潮目について解説していましたが、個人的にはコロナ対策で8月2日に政府が打ち出した「新型コロナウイルスの感染者は重症患者を除き自宅療養を基本」とした方針が大きかったと思っています(「第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性」参照)。この方針は「棄民政策」とまで批判され、その後変更を余儀なくされましたが、「国民の安全、安心」と言いながら、コロナ患者の現状をまったく見ていなかったことが、この一件で明らかになりました。前回に書いた抗体カクテル療法は、発症早期の投与が求められる治療法ですが、“末期”だった自身の政権に効く“特効薬”はもはやなかったようです。今週はコロナを離れ、がん治療の現場を騒がせている抗がん剤のニュースを取り上げます。膵がん患者にとっては死活問題大鵬薬品工業のがん治療薬「アブラキサン点滴静注用100mg」(パクリタキセル アルブミン懸濁型)の供給が2021年10月以降、停滞することが明らかになり、がん治療の現場やがんの患者会では大騒ぎとなっています。この問題、夏の初めころから腫瘍内科医の間では話題となっていたようですが、表沙汰にはなっていませんでした。8月18日、大鵬薬品は「アブラキサン点滴静注用100mg供給に関するお詫び」と題した文書を医療機関向けに出し、「10月以降安定供給に一時的な支障を来す」と公表しました。2日後の8月20日には、全国のがん患者会でつくる「全国がん患者団体連合会」が厚生労働省や大鵬薬品などに対し「出庫調整並びに供給停止に関する要望書」を提出したことで、一般メディアも知るところとなりました。この要望書では、アブラキサンは膵がん、乳がん、胃がん、肺がんの治療のために重要であり、特に膵がんの治療には不可欠で、死活問題になりかねない状況だとして、供給停止に至った理由や対応策、今後の見通しなどについて速やかに情報公開を行うこと、医療機関での在庫を把握して、特に必要とする患者に対して適切に配分されるようにすることなどを求めました。アブラキサンについては、乳がん、胃がん、肺がん(非小細胞肺がん)に関してはパクリタキセルで代用できますが、膵がんでは代用品がありません。国内では年間4万人が使用しており、全アブラキサンの約65%が膵がんに使用されているとのことです。アリゾナ州フェニックスの工場の不具合なぜアブラキサンが供給停止になるのか…。はじめにこのニュースを聞いたときにはコロナの影響かとも思ったのですが、どうもそうではないようです。専門誌の報道やすい臓がんの患者会サイト(PanCAN)などによれば、大鵬薬品の海外生産拠点である米国のAbraxis BioScience社(米Bristol-Myers Squibb社の子会社)のアブラキサンの製造工場(アリゾナ州フェニックス)で製造上での不具合が見つかり、生産が中断したことから海外の供給先の1つである日本への供給が停止した、とのことです。なお、北米(米国、カナダ)とヨーロッパ(英国など)ではアブラキサンの供給停止は起こっておらず、日本への供給ストップは海外供給を担当しているアリゾナ工場の不具合が原因とのことです。日本以外ではオーストラリアでも供給停止となっています。大鵬薬品は供給停止の理由について「米国のメーカーから『製造工程に関する定期的な検証にて再評価が必要となる旨の連絡』があった」と説明していますが、詳しい内容は明らかにしていません。がん関連の6学会が合同声明、胃がん、乳がん、肺がん患者には切り替えを勧めるアブラキサン供給停止問題を受け、がん関連の6学会(日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本膵臓学会、日本胃癌学会、日本乳癌学会、日本肺癌学会)は8月26日、医療関係者に対して合同声明を出しました。現在の状況が続くとアブラキサンの国内の在庫が10月中旬でなくなることが予想され、現時点では供給の目処が立っていないことから、声明では以下の3点を医療関係者に求めました。1.現在アブラキサンによる治療を継続中の患者さんについては、アブラキサンによる治療に効果があり継続中の患者さんを最優先してください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替えるなど代替治療を積極的にご検討ください。2.新規に治療を開始する患者さんについては、代替治療への切り替えが困難な膵がん患者さんやアルコール不耐(パクリタキセルへの代替困難)の患者さんの治療を優先ください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替える(肺癌、胃癌)か、他の治療法に切り替える(乳癌)など代替治療を積極的にご検討ください。3.アブラキサンはもとより、パクリタキセルなどの代替薬の必要以上の購入はお控えください。膵臓学会は他製造工場の製品の緊急承認求める9月1日には、膵がん治療の専門医の集まりである日本膵臓学会が、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対してアブラキサンの供給一時停止という事態の打開を訴える要望書を提出しました。要望書では、「アブラキサンはゲムシタビンとの併用で進行膵がんの1次化学療法薬として延命効果が証明され、最も多く用いられている極めて重要な薬剤です。アブラキサンは膵がんにおいて代替薬が無く、供給に支障を来した状況では進行膵がん患者の生命予後に直結する極めて重大な事態となります」と供給停止の深刻さを指摘、その上で、次の2点を要望しました。1.アブラキサン製造所に関する一部変更の緊急承認(今回問題が生じている日本向けアブラキサン製造所以外で製造されたアブラキサンの緊急承認)。2.アブラキサンの海外ジェネリック製品の緊急承認Abraxis BioScience社のアブラキサンの製造拠点は米国イリノイ州メルローズ・パークとアリゾナ州フェニックスの2ヵ所にあります。日本向け製品はフェニックスで製造されており、こちらだけが製造が止まっています。そこでメルローズ・パークで製造されたものを緊急承認してもらうとともに、欧州で流通しているジェネリックも使えるようにしてくれ、という要望です。なお、全国がん患者団体連合会も同様の要望を準備しているとのことです。ファイザーのパクリタキセルも出荷調整へ今回の事態の影響はアブラキサンだけではなく、パクリタキセルにも及んでいます。パクリタキセルを供給するファイザーは8月26日、医療関係者向けに「パクリタキセル点滴静注液の出荷調整のご案内」を出しました。それによると、ファイザーはパクリタキセルを「他社同種同効薬の出荷調整の影響から平常時を大幅に超える需要が想定されるため、既存のお得意様への供給を継続すべく関係卸様への出荷調整を実施」し、「しばらくの間は新規ご採用を辞退する」としています。大鵬薬品お詫び2報でも原因わからず当の大鵬薬品ですが、9月2日にお詫びの第2報を出しました。しかし、ここでも「当該製造拠点にて原因調査およびこれまでに製造した製品への影響度評価を進めております」と、原因は説明されていません。そして、「現在弊社が保有している在庫から鑑み、本製品のメーカー在庫消尽は10 月中旬頃となる可能性が出てまいりました」として、「出庫調整の後、在庫がなくなり次第、供給を一時停止」としています。供給の再開時期については、「グローバル在庫を調整の上、日本市場向け製品の輸入を現在交渉しているところ」とのことです。医薬品供給体制の脆弱さが浮き彫りにそれにしても、米国の1工場の不具合で、がん患者が窮地に追い込まれるとは、日本の医薬品供給体制の脆弱さが改めて浮き彫りになった格好です。日本国内で使用されている薬剤のうち、がん治療に用いられる分子標的治療薬や抗体医薬はその多くが海外から輸入されています。しかも今回のように、1ヵ所の製造所に依存しているケースもあります。アブラキサンについては、フェニックスの工場が停止した場合の対応策についてまったく考えていなかった大鵬薬品の責任は重いと言えるでしょう。他製造工場でつくられたアブラキサンやヨーロッパで流通しているジェネリックの確保が果たして可能なのか、そしてPMDAは緊急承認するのか、今後の展開が気になります。医薬品供給を巡っては、ジェネリックの自主回収(「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び「ゾロ」と呼ばれる日」参照)が問題になったばかりですが、海外の製造工場に依存するがん治療薬などについても、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しておくなど、製薬会社にはしっかりとしたリスクマネジメントを期待したいところです。

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ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

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ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。 同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない切除不能な局所再発または転移を有する進行トリプルネガティブ乳がんの患者を対象として、ペムブロリズマブと3種の化学療法のうち1種との併用療法をプラセボと3種の化学療法のうち1種との併用療法と比較する2つのパートからなる、第III相無作為化プラセボ対照試験。主要評価項目はPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)の患者およびすべての被験者(ITT集団)におけるPFSおよびOSであった。このほかの評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、患者報告アウトカム(PRO)および安全性。 KEYNOTE-355試験のパート2では、被験者847例を2:1の割合でペムブロリズマブ(200mgを3週間毎)と化学療法(ナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)との併用療法、またはプラセボとナブパクリタキセルパクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンとの併用療法のいずれかに無作為に割り付けた。各群に登録された被験者のうち、CPS≧1のPD-L1陽性患者は約75%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中425例、プラセボ+化学療法群281例中211例)であり、CPS≧10のPD-L1陽性患者は約38%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中220例、プラセボ+化学療法群281例中103例)であった。

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子宮内膜がんに対するペムブロリズマブ+レンバチニブをFDAが承認/メルク・エーザイ

 メルクとエーザイは、2021年7月22日、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Highを有さない進行子宮内膜がんに対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブの併用療法の適応について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。 今回の承認は、第III相臨床試験 (KEYNOTE-775 試験/309 試験)の結果に基づいたもの。同試験において、対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して、同併用療法は全生存期間(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p=0.0001)、無増悪生存期間(HR:0.60、95%CI:0.50-0.72、p<0.0001)共に有意に延長した。さらに奏効率は30%で、対照群の15%に比べ有意な改善を示した。 根治的治療に不適応な進行性子宮内膜がんの5年生存率は17%と低い。なかでも、全身化学療法後に増悪した患者の治療選択肢は限られているが、今回の承認で、生存期間を延長する新たな治療選択肢が加わった。

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ASCO2021 レポート 消化器がん(肝胆膵がん)

レポーター紹介今年のASCOもCOVID-19の影響でVirtual meetingとなり、2年連続Web開催となった。2021年6月4日から始まったが、いつものようなワクワク感がない。今年は、肝胆膵領域でそこまで面白い演題がなかったこともあるのだが、海外の先生と接する機会もなく質問もできないので、演題を生で聞かなきゃという気持ちに焦りもなく、あとでon demandで見ようという感じになる。また、ASCO期間中に集中して行われていたmeetingも数少なくなり、ASCOが終わって1ヵ月たってもだらだらと行われている感じである。そして、気が付いたらESMO-GI(WCGC)まで終わっているという状況であり、ASCOだという華やかさがなく、寂しさを感じた。やはり顔を見ながら、お互いの意見を突き付けてdiscussionする機会が欲しい。いろんな先生と交流の機会があることで、やる気も高まってくるものである。しかも、昨年、ASCO memberは参加費が不要だったので、今年も不要になることを信じて事前登録もしていなかったため、ASCO当日、慌てて全額を支払い、Virtual meetingに参加することとなった。当日参加は1,395ドルもかかり、非常に痛い出費である。「くっそー、COVIDの野郎め」と八つ当たりしながら、ChicagoでDeep-Dish Pizzaを食べている自分をイメージして、いつものDomino’s Pizzaを食べつつ、今年のASCOを振り返りたいと思う。肝臓がんさて、本題です。まずは肝臓がんから解説します。今年の肝胆膵領域はあまり面白い演題がなかったなというのが本音である。肝細胞がん領域では、Oral presentationに2演題が選ばれていたが、Poster discussionでは1演題も採択されていなかった。また、今年発表されるであろうと期待されていたデュルバルマブ+tremelimumabの第III相試験(HIMALAYA)やペムブロリズマブ+レンバチニブの第III相試験(LEAP-002)、tislelizumabの第III相試験(RATIONALE-301)などの大規模試験の結果を期待していたのだが、報告されなかった。そして、今年も中国からFOLFOX肝動注化学療法の第III相試験が2演題であり、中国1国のみでいくつもの第III相試験を発表しており、どんなに肝細胞がんの患者さんがいるのだろうかと感じずにはいられなかった。進行肝細胞がんに対するオキサリプラチン+フルオロウラシル併用肝動注療法とソラフェニブ療法の比較:ランダム化第III相試験(The FOHAIC-1 study)著者:Ning Lyu, et al.、Oral presentation本試験は、肝内腫瘍量が多い進行肝細胞がん症例に対する1次薬物療法として、FOLFOX肝動注療法の有効性を、ソラフェニブをコントロールとして検証するランダム化第III相試験(FOHAIC-1試験)である。主な適格基準はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)Stage BまたはC、Child-Pugh分類A~B7、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)-Performance Status(PS)0~2などで、肝動注群とソラフェニブ群に1:1で割り付けられた。FOLFOX肝動注療法は、オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン(LV)200mg/m2、5-フルオロウラシル(5-FU)400mg/m2および5-FU 2,400mg/m2 46時間持続投与を3週間ごとに行い、ソラフェニブ群はソラフェニブ1回400mgを1日2回内服した。ソラフェニブ群の全生存期間(OS)の中央値を8.0ヵ月、肝動注群を14ヵ月、検出力90%、両側α=0.05として、36ヵ月間の登録期間、最大60ヵ月の追跡期間として、247例の登録が必要となり、260例の登録を目標症例数として設定された。登録患者は肝動注群(130例)とソラフェニブ群(132例)に割り付けられた。患者背景は両群において有意な差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目であるOSは、ソラフェニブ群と比べて肝動注群で有意に良好であった。薬物療法によるダウンステージングは、肝動注群で16例(12.3%)、ソラフェニブ群で1例(0.8%)に認めた。また、腫瘍の肝占拠割合が50%以上または門脈本幹に腫瘍栓を有する高リスク群のOSも肝動注群で有意に良好であった。RECISTv1.1による客観的奏効割合(ORR)は肝動注群で有意に良好だった(p<0.001)。薬剤に関連したGrade3以上の有害事象はむしろソラフェニブ群で有意に多く、主な有害事象は、肝動注群のオキサリプラチン投与に伴う腹痛(40.6%)であったが、投与による有害事象で肝動注療法を中止した患者はいなかった。画像を拡大するこのように、肝内病変が進行した肝細胞がん患者を対象として、FOLFOX肝動注療法はソラフェニブと比較した第III相試験において、有意に良好なOSとORRが示された。かなり予後の厳しい肝腫瘍量が50%以上の症例や門脈本幹に腫瘍栓を有する症例でも有効であり、ダウンステージできた症例、局所療法にコンバージョンできた症例も高率に認められ、有害事象も低頻度であり、今後が期待される結果であった。しかし、本試験は中国単施設の結果で、B型肝炎の患者が90%前後を占める対象で行われた試験であり、解釈には注意が必要であることや、現在の標準治療であるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法と比較してどうなのかなど疑問点も残っており、この試験の結果に基づきFOLFOX肝動注療法が標準治療と位置付けられるまでには至っていない。術前補助療法としてのFOLFOX肝動注療法は、ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者の予後を改善させた:多施設共同ランダム化第III相試験の中間解析著者:Li S, et al.、Oral presentationミラノ基準外のBCLC Stage A/Bの切除可能肝細胞がんに対して、術前補助療法FOLFOX肝動注療法を行った患者と肝動注療法は行わずに切除した患者の有効性と安全性を、多施設共同ランダム化第III相試験にて検討した。ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者に対して、術前補助療法としてFOLFOX肝動注療法を施行した群と、術前補助療法を行わずに直接手術を行う群に1:1でランダムに割り付けられた。術前肝動注群は2サイクルのFOLFOX肝動注療法を施行し、忍容性があれば抗腫瘍効果を確認し、完全奏効/部分奏効が得られていれば切除、安定であれば追加の2サイクルの肝動注療法を行い、増悪の場合には次治療へ移行した。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無再発生存期間(RFS)と安全性とした。切除可能肝細胞がん患者208例が登録され、術前化療群99例、切除先行群100例が解析対象となった。患者背景において、両群間に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。術前化療群では、ORR 63.6%、病勢制御割合(DCR)96.0%で、88例(88.9%)で肝切除が施行された。術前化療群は、脈管浸潤の割合が11.4%であり、切除先行群(39.0%)と比べて低値であった。OSとPFSは術前化療群で有意に良好であったが、RFSは両群間に有意差はなかった。FOLFOX肝動注療法群の有害事象は、Grade1を59.6%、Grade2を26.3%に認めたが、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。なお、OSとPFSのサブグループ解析では、50歳以下の若い患者や腫瘍が単発である患者、AFPが400ng/mL以上と高い患者、HBV-DNAが低い患者においてより良好な結果が示された。画像を拡大する著者らは、FOLFOXによる肝動注療法は、肝細胞がんに対して効果的で安全であること、ミラノ基準外の切除可能BCLC A/Bの肝細胞がん患者に対して生存期間の延長効果が見込まれることを結論付けた。本試験の結果、肝細胞がんの術前補助療法として、FOLFOX肝動注療法の有用性が示された。この演題のDiscussantは、39%の症例が多発例であり、通常、切除しないような症例が多数含まれていることや中国の5施設の結果であり、B型肝炎の患者が中心である点については注意して解釈すべきであり、日常診療に取り入れる前に世界規模または欧米での検証が必要であろうとコメントしていた。このように、中国からFOLFOX肝動注療法に関連する2演題が発表された。ともに、中国1ヵ国での第III相試験であり、全世界で受け入れられるには、さらなる試験が必要である。しかし、これだけの試験を中国だけで、症例集積できることが驚きである。しかも、この試験のほかにも、昨年、sintilimab+ベバシズマブ-バイオシミラーの第III相試験(ORIENT-32)、donafenibの第III相試験、apatinibの第III相試験など、進行がんでも中国1ヵ国で行った試験の結果が報告されており、計り知れないほど患者さんがいて、臨床試験に参加してくれる環境ができていることを考慮すると、今後の肝細胞がんの薬物療法の開発において、中国の存在が重要になってくることが改めて予想された。また、この数年、アジアを中心に肝細胞がんに対する肝動注療法の有用性を示唆する結果が報告されてきており、肝細胞がんの薬物療法において、肝動注療法が再度、見直される日が来る可能性も十分にあることが示された。余談であるが、Q&Aセッションで、抗がん剤の投与方法についてDiscussionがあった。通常、米国では肝動注を行う場合に抗がん剤が100mL程度注入できるポンプを皮下に埋め込んで投与を行うことが多い(ポンプは結構な大きさで、皮下に埋められる米国人患者もすごいのではあるが…)。中国ではポンプの合併症はどうかという質問があり、演者らはポンプを使用していないことを説明し、腫瘍の多いところにカテーテルを挿入して投与しているとのことであった。柔軟に対応が可能で、より効率よく抗がん剤が投与できることを解説していたが、では、カテーテルを留置せず、どうやって2日間のFOLFOXを投与しているのか、私には謎であった。質問できる知り合いの先生が中国にはいなかったため答えはわからないのであるが、おそらく3週に1回、血管造影を行い、カテーテルを挿入した後は2日間、動かずに安静にして投与しているのかなと勝手に想像しているところである。胆道がん胆道がんでは、ナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(LV)と5-FU/LVを比較したランダム化第II相試験がOral presentationで1演題、取り上げられていた。非常に期待できる2次治療のレジメンが報告されたが、遺伝子異常に基づく分子標的治療薬の開発に移行していた胆道がんが、また細胞障害性抗がん剤の開発に戻るのかなと、少し不安も隠せなかった。ゲムシタビン+シスプラチン併用療法後の転移性胆道がん患者に対するリポソーム型イリノテカンとフルオロウラシル、ロイコボリンの併用療法:多施設ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)著者:Yoo C, et al.、Oral presentation切除不能・転移性胆道がんに対してゲムシタビン+シスプラチン療法(GC)後に進行した症例の2次治療の標準治療は確立していない。ABC-06試験によって、2次治療としてFOLFOX療法を行うことで、積極的な症状コントロールのみを行った患者と比べて、OSが延長したことが示されたが、まだその治療成績は十分とは言い難い。ゲムシタビン耐性の膵がんに対するナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-FU/ロイコボリン(LV)療法は、NAPOLI-1試験の結果、プラセボと比較してPFSとOSの延長が示された。胆道がんでも本レジメンによる治療が有効である可能性がある。1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者を対象として、2次治療としてNal-IRI+5-FU/LVと5FU/LVを比較した多施設共同非盲検ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)が行われた。対象は、1次治療でGC療法を行って病勢の進行が確認された胆道がん患者174例であった。患者は、Nal-IRI(70mg/m2、90分)+5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群と、5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群に、1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目は盲検下の独立中央判定委員会によるPFSとして、副次評価項目は担当医師によるPFS、OS、ORR、安全性などであった。症例数設定は、Nal-IRI+5-FU/LV群のPFS中央値を3.3ヵ月、5-FU/LV群の中央値を2ヵ月、検出力80%、両側α=5%、ハザード比0.6で有意差が検出できるように設定し、総数174例が必要と判断された。患者背景において、両群に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目である独立中央判定委員会によるPFSはNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。副次評価項目である担当医師によるPFSやOSもNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。独立中央判定委員会によるORRは両群で有意差を認めなかったが、担当医師判定では統計学的な有意差を認めた。安全性について、好中球減少症と疲労は、5-FU/LV群と比較してNal-IRI+5-FU/LV群に多く認められたが、膵がんに対して行われたNAPOLI-1試験の結果と同様の結果であった。画像を拡大するNal-IRI+5FU/LV療法は、1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者に対してPFS、OS、ORRを有意に改善させた。Nal-IRI+5-FU/LV療法の有害事象は十分に管理可能で、膵がんに対するNAPOLI-1試験で示された安全性と同様の結果であった。今回の検討は韓国のみで行われた臨床試験であり、全世界に一般化できる結果ではないが、この試験の統計学的事項は十分な検出力があり、PFSやORRも中央判定で行われており、抗腫瘍効果も十分に評価できる。この試験の結果から、Nal-IRI+5-FU/LV療法はGC療法で増悪した進行胆道がん患者に対する標準治療の1つとして考慮されるべきであると著者らは結論していた。確かに、本試験の結果はNal-IRI+5-FU/LV療法は、GC療法の2次治療としてABC-06試験で優越性が示されたFOLFOXレジメンよりも良好なPFS、OS、ORRが示されており、かなり期待できるレジメンである。また、ランダム化第II相試験ではあるが、第III相試験と遜色のない試験デザインで行われている。演者であるYoo先生は知り合いなので、直接、試験デザインについて聞いてみたところ、症例数設定は第III相試験としても十分であるが、主要評価項目としてPFSを選択したので、第IIb相試験としたとコメントがあった。なるほど、第IIb相試験というあまり聞き慣れない相にしているのはそういうことであったか、と。そして、Yoo先生は、第III相試験と宣言して行えばよかったなと後悔されていた。しかし、仮に本試験が第III相試験であったとしても、韓国1ヵ国の試験であり、アジアの結果を米国のFDAや欧州のEMEAが受け入れるかどうかは微妙である。また、本試験でOSでも有意差があるといっても、PFSが主要評価項目であるランダム化第II相試験であり、OSを主解析として行った試験ではないため、この試験結果をもって標準治療とするには時期尚早と考える。今後、Nal-IRI+5-FU/LVとFOLFOXのどちらが良いのかを明らかにする検討も必要であり、IDH1変異に対するIDH阻害剤、FGFR変異に対するFGFR阻害剤など、actionableな遺伝子変異を有する患者において、どちらを先行して治療すべきかなども明らかにする必要があると思われる。膵がん膵がんでは、Oral presentationに1演題も取り上げられていなかったが、Poster discussionでは6演題、取り上げられていた。膵がんにおいては薬物療法も停滞期で、なかなか次の良い薬剤が登場してこない状況である。今回のASCO2021で何らかの目を見張る結果が報告されることを期待したが、まだ突破口が見えていない現状であった。その中でも、やはり日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)からの発表などいくつか知っておいてほしい結果があるので、取り上げて解説する。局所進行膵がんに対するmodified FOLFIRINOXとゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の無作為化比較第II相試験(JCOG1407)著者:Ozaka M, et al.、Poster discussionFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GEM+nab-PTX療法)は、それぞれProdige4-ACCORD11試験およびMPACT試験においてゲムシタビン単剤と比較して優越性を示したレジメンである。どちらも遠隔転移膵がんのみを対象とした試験であり、局所進行膵がんに対する評価はこれまで十分に行われていない。今回、局所進行膵がん患者を対象として、FOLFIRINOX療法の5-FUの静注とイリノテカンの投与量を150mg/m2に減量し、有害事象を軽減させたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とGEM+nab-PTX療法の有効性と安全性を検討し、より有望な治療法を選択することを目的としてランダム化第II相試験(JCOG1407)が行われた。本試験の対象は、全身化学療法歴のない局所進行膵がん患者であり、mFOLFIRINOX療法群とGEM+nab-PTX療法群に1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目はOS(1年生存割合)、副次的評価項目はPFS、無遠隔転移生存期間、ORR、CA19-9奏効割合、有害事象発生割合などであった。症例数設定は、2つの試験治療群のうち、1年生存割合が良好な群を53%、不良な群を63%と仮定し、良好な試験治療を正しく選択できる確率が85%以上となるように算出した。また、2つの試験治療群のうち、良好な群の期待1年生存割合を70%と仮定し、閾値1年生存割合を53%、片側有意水準α=5%、検出力80%とし、必要症例数は120例と算出された。mFOLFIRINOX療法群に62例、GEM+nab-PTX療法群に64例で、計126例が登録された。患者背景では、両群に大きな偏りは見られなかった。JCOG1407試験の結果を表に示す。1年生存割合はGEM+nab-PTX療法群で良好だったが、2年生存割合はmFOLFIRINOX療法群で良好であり、ハザード比は1.162(95%CI:0.737~1.831)であった。PFSと無遠隔転移生存期間は有意差を認めなかったが、mFOLFIRINOX療法群で良好な傾向であった。ORRは有意差を認めなかったが、GEM+nab-PTX療法群で良好であった。CA19-9奏効割合はGEM+nab-PTX療法群で有意に良好であった。有害事象において、Grade3~4の好中球減少/白血球減少はGEM+nab-PTX療法群で高率、全Gradeの悪心/嘔吐や下痢はmFOLFIRINOX療法群で高率に認められたが、治療関連死は見られなかった。画像を拡大する本試験は、局所進行膵がんに対する2つのレジメンを比較した最初のランダム化試験であった。GEM+nab-PTX療法群の1年生存割合はmFOLFIRINOX療法群より良好であったが、mFOLFIRINOX療法群は2年生存割合が高く、その他の項目では良かったり悪かったりとなっており、どちらが良好とは言い難い結果であった。局所進行膵がんに対しては、『膵癌診療ガイドライン2019年版』でも転移性膵がんのエビデンスに基づき、mFOLFIRINOXとGem+nab-PTXが提案されているが、しっかりしたランダム化比較試験は行われていない。今回はJCOG肝胆膵グループで行われたmFOLFIRINOXとGem+nab-PTXを比較するランダム化第II相試験の結果は、主要評価項目である1年生存割合では、Gem+nab-PTXが良好であったが、全体の生存曲線や2年生存割合ではmFOLFIRINOXが優勢であった。下痢、悪心、嘔吐などの消化器毒性はmFOLFIRINOX群で高頻度に認められたが、骨髄抑制や神経障害はGem+nab-PTX群で高頻度に認められており、優劣はつけ難い結果であった。今後、長期間の追跡調査を行い、どちらを選択すべきかを明らかにしていくことが必要である。NRG1融合遺伝子陽性の膵がんや他の固形がんに対するzenocutuzumabの有効性と安全性著者:Schram AM, et al.、Oral presentation膵がんに対するNRG1融合遺伝子に対するzenocutuzumabのpreliminaryな結果が報告されていた。zenocutuzumab(MCLA-128)はADCC活性を持つHER2、HER3を阻害する二重特異性抗体で、HER3にNRG1 fusionのEGF-likeドメインの結合を阻害することで、HER2/HER3の二量体形成を阻害し、下流のPI3K/AKT/mTORシグナルによる腫瘍増殖を阻害する抗体製剤である。NRG1融合遺伝子を有する患者に有効性が期待され、開発が進んでいる。膵がんパートに登録された12例のうち5例(42%)に奏効が得られており、11例中11例全例でCA19-9の50%以上の低下が認められ、7例(64%)においては正常値まで低下したことが報告された。有害事象はGrade1~2であり、重篤な消化器や皮膚、心毒性は認めなかったことが報告され、期待されている薬剤である。膵がんにおけるNRG1融合遺伝子の頻度は1%未満といわれており、非常にまれではあるが、60歳以下の若年者やKRAS wildの患者に多く認められることを手掛かりとして、聖マリアンナ医大と国立がん研究センター東病院を中心に、NRG1のスクリーニングが行われている。術前化学放射線療法が膵がん患者の生存期間を改善させる:多施設共同第III相試験(PREOPANC)の長期治療成績著者:Van Eijck C, et al.、Poster discussion切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対して、ゲムシタビンによる術前化学放射線療法は、切除先行と比べて、R0切除割合や無病生存期間を改善させた。生存期間においては良好な傾向は示されていたが、有意な差を認めていなかった。今回、この試験を長期フォローアップすることで、生存期間への効果が検討された。結果を表に示す。R0切除割合やN0切除割合、Intention to treatによるOS、切除できた患者のOS、補助療法を受けた患者のOSにおいて、化学放射線療法群で有意に良好な結果が示された。切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対する術前治療の有効性が示されたことにより、日本ではすでに術前治療が標準治療であるが、海外でも術前治療へよりシフトすることが推測された。画像を拡大するまとめ今年のASCO2021では、肝細胞がんでは初回薬物療法として肝動注化学療法、胆道がんでは2次治療としてNal-IRI+5-FU/LV、膵がんでは局所進行膵がんの1次治療としてmFOLFIRINOX/Gem+nab-PTX、切除可能/切除可能境界膵がんに対する術前化学放射線療法など、少し昔の時代に戻ったかのように、主要演題には細胞障害性抗がん剤による治療が席巻していた。しかし、肝胆膵がんでは分子標的治療や免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療開発が進んでおり、今後、新たなエビデンスはこれらの治療から生まれてくると思われる。今年のASCOでは世の中を大きく変えるような結果は出てこなかったが、世界的にも注目される重要な学会であり、Web開催であろうと、みんなが参加する学会である。ぜひ来年は、COVID-19が落ち着いて、現地でみんなと一緒にFace to Faceで談笑しながら、肝胆膵のOncologyについて語り合いたいものである。1)Ning Lyu, Ming Zhao. Hepatic arterial infusion chemotherapy of oxaliplatin plus fluorouracil versus sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma: A biomolecular exploratory, randomized, phase 3 trial (The FOHAIC-1 study). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4007)2)Shaohua Li, Chong Zhong, Qiang Li, et al. Neoadjuvant transarterial infusion chemotherapy with FOLFOX could improve outcomes of resectable BCLC stage A/B hepatocellular carcinoma patients beyond Milan criteria: An interim analysis of a multi-center, phase 3, randomized, controlled clinical trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4008)3)Changhoon Yoo, Kyu-Pyo Kim, Ilhwan Kim, et al. Liposomal irinotecan (nal-IRI) in combination with fluorouracil (5-FU) and leucovorin (LV) for patients with metastatic biliary tract cancer (BTC) after progression on gemcitabine plus cisplatin (GemCis): Multicenter comparative randomized phase 2b study (NIFTY). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4006)4)Masato Ozaka, Makoto Ueno, Hiroshi Ishii, et al. Randomized phase II study of modified FOLFIRINOX versus gemcitabine plus nab-paclitaxel combination therapy for locally advanced pancreatic cancer (JCOG1407). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4017)5)Alison M. Schram, Eileen Mary O'Reilly, Grainne M. O'Kane, et al. Efficacy and safety of zenocutuzumab in advanced pancreas cancer and other solid tumors harboring NRG1 fusions. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 3003)6)Casper H.J. Van Eijck, Eva Versteijne, Mustafa Suker, et al. Preoperative chemoradiotherapy to improve overall survival in pancreatic cancer: Long-term results of the multicenter randomized phase III PREOPANC trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4016)

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