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9月20日 子供の成長啓発デー【今日は何の日?】

【9月20日 子供の成長啓発デー】〔由来〕内分泌疾患の患者や家族の支援団体で構成する国際組織“International Coalition of Organizations Supporting Endocrine Patients(ICOSEP)”が設立された日を記念し、2013(平成25)年に「子どもの成長啓発デー実行委員会」が制定。子どもの内分泌疾患に関する正しい知識の普及、内分泌疾患の早期発見・早期治療の促進、成長曲線の普及と利用促進を目的に啓発活動が行われている。関連コンテンツビタミンD依存症【希少疾病ライブラリ】週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】見分けづらい・見逃しやすい酵素欠損がもたらす疾患『ムコ多糖症』

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TAVI周術期の経口抗凝固薬、継続vs.中断/NEJM

 経口抗凝固療法の適応を有する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)施行患者において、周術期の経口抗凝固薬継続は中断と比較し、TAVI後30日以内の心血管死、全脳卒中、心筋梗塞、主要血管合併症または大出血の複合アウトカムに関する非劣性は認められなかった。オランダ・St. Antonius HospitalのDirk Jan van Ginkel氏らが、欧州22施設で実施された医師主導の無作為化非盲検非劣性試験「Periprocedural Continuation versus Interruption of Oral Anticoagulant Drugs during Transcatheter Aortic Valve Implantation trial:POPular PAUSE TAVI試験」の結果を報告した。TAVIを受ける患者の3分の1は、併存疾患のため経口抗凝固薬の適応がある。TAVI中の経口抗凝固薬中断は出血リスクを軽減する可能性がある一方で、継続は血栓塞栓性イベントのリスクを軽減する可能性があった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。約869例を無作為化、主要アウトカムは心血管死、全脳卒中、心筋梗塞等の複合 研究グループは、長期間経口抗凝固薬の投与を受けており大腿動脈または鎖骨下動脈アプローチによるTAVIを受ける予定の患者を、周術期に経口抗凝固薬を継続する群または中断する群に、施設および経口抗凝固薬の種類(ビタミンK拮抗薬、直接経口抗凝固薬)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。 中断群では、ダビガトラン投与中の腎不全合併患者を除き、直接経口抗凝固薬を投与中の患者はTAVIの48時間前、ダビガトラン投与中でeGFRが50~80mL/分/1.73m2の患者は72時間前、同30~50mL/分/1.73m2未満の患者は96時間前に中断した。ビタミンK拮抗薬投与中の患者では、acenocoumarolはTAVIの72時間前、phenprocoumonおよびワルファリンは120時間前に中断した。ヘパリンまたは低分子ヘパリンによるブリッジングは開始しなかった。TAVI後は、いずれも術者または担当医が安全と判断した時点で再開した。 継続群では、TAVI当日も含めて経口抗凝固薬を継続した。 主要アウトカムは、TAVI後30日以内の心血管死、全脳卒中、心筋梗塞、主要血管合併症、または大出血(VARC-3基準の2以上)の複合であった。主要解析は、無作為割り付けされた全患者のうち、TAVIが予定日の5日以上前にキャンセルされた患者を除いた修正ITT集団を対象とした。 2020年11月~2023年12月に計869例が無作為に割り付けられ(継続群435例、中断群434例)、858例が修正ITT集団となった(それぞれ431例、427例)。16.5% vs.14.8%、継続群の非劣性は示されず 主要アウトカムの複合イベントは、継続群で71例(16.5%)、中断群で63例(14.8%)に発生した。絶対群間差(リスク差)は1.7%ポイント(95%信頼区間[CI]:-3.1~6.6、非劣性のp=0.18)で、事前に設定した非劣性マージン(4.0%)を満たさなかった。 副次アウトカムである血栓塞栓性イベントは、継続群で38例(8.8%)、中断群で35例(8.2%)に発生した(群間リスク差:0.6%ポイント、95%CI:-3.1~4.4)。また、全出血は、それぞれ134例(31.1%)、91例(21.3%)に認められた(9.8%ポイント、3.9~15.6)。 なお、著者は、非盲検試験であること、神経学的検査や神経画像検査は行われなかったこと、血栓塞栓症と出血の2つのアウトカムではなく主要複合アウトカムとして非劣性の検出力が設定されたこと、ほぼ全例で大腿動脈アプローチが用いられたため本結果をTAVIの他の血管アクセスアプローチに一般化できないことなどを、研究の限界として挙げている。

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貧血改善も期待できる骨髄線維症薬「オムジャラ錠100mg/150mg/200mg」【最新!DI情報】第22回

貧血改善も期待できる骨髄線維症薬「オムジャラ錠100mg/150mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)/アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害薬「モメロチニブ塩酸塩水和物(商品名:オムジャラ錠100mg/150mg/200mg、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)」を紹介します。本剤は約10年ぶりの骨髄線維症の新薬であり、抗腫瘍効果だけでなく、貧血改善効果も示すことが期待されています。<効能・効果>骨髄線維症の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得し、同年8月15日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはモメロチニブとして200mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、感染症(2.3%)、骨髄抑制(血小板減少症[18.3%]、貧血[5.8%]、好中球減少症[4.7%]など)、肝機能障害(6.4%)、間質性肺疾患(頻度不明)があります。その他の副作用として、悪心(10%以上)、ビタミンB1欠乏、頭痛、浮動性めまい、錯感覚、末梢性ニューロパチー、回転性めまい、霧視、低血圧、潮紅、咳嗽、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、四肢痛、関節痛、疲労、無力症(いずれも1%以上~10%未満)、失神、血腫、発熱、挫傷(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、骨髄線維症にかかわるタンパク質(JAK)の働きを選択的に阻害することにより、脾臓の腫れ(脾腫)を縮小します。また、骨髄線維症に伴う貧血にかかわるタンパク質(ACVR1)の働きを選択的に阻害することにより、血液中の鉄分を増やして造血を促します。2.体の抵抗力が弱まり、感染症(発熱、寒気、体がだるいなど)にかかりやすくなることがあります。人ごみを避けるなど、感染症にかからないように気をつけてください。3.帯状疱疹が現れることがあります。初期症状が現れた場合は、ただちに医師に連絡してください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人は医師に相談してください。5.セント・ジョーンズ・ワートを含有する食品は、この薬の効果を下げる可能性があるので、控えてください。<ここがポイント!>骨髄線維症(MF)は、骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称であり、脾臓の腫れ、貧血および血小板減少症を含む血液細胞の産生異常、サイトカインの過剰産生による全身性炎症がみられる血液がんです。MFの罹患期間中に高度な貧血や血小板減少が生じると、輸血を含む追加の支持療法が必要となり、輸血依存の患者の予後は悪く、生存期間が短縮されることが示されています。モメロチニブは日本における約10年ぶりとなるMF治療の新薬です。ヤヌスキナーゼ(JAK)1およびJAK2阻害による腫瘍増殖抑制作用に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害による造血作用を有しています。既存薬であるルキソリチニブ(商品名:ジャカビ錠)では骨髄抑制による貧血が高頻度で認められますが、モメロチニブはACVR1阻害作用により、MF治療の重要な課題である貧血に対する効果も期待できます。JAK阻害薬による治療歴のないMF患者を対象とした国際共同第III相試験(SIMPLIFY-1試験)において、24週時の脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した患者の割合(SRR)は、モメロチニブ群で26.5%、ルキソリチニブ群で29.5%、非劣性の群間差は9%(95%信頼区間[CI]:2~16、p=0.014)であり、両側95%CIの下限が0を上回ったため、ルキソリチニブに対する非劣性を示しました。日本人集団では、24週時のSRRはモメロチニブ群で50.0%、ルキソリチニブ群で44.4%でした。一方、24週時の輸血非依存割合では、モメロチニブ群で66.5%、ルキソリチニブ群で49.3%、割合の群間差は18%(95%CI:9~26、p<0.001:名目上のp値)でした。

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主食・主菜・副菜をとる頻度と栄養素摂取量の関係

 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる頻度が、さまざまな栄養素の習慣的な摂取量とどのように関係するかを詳細に調べる研究が行われた。その結果、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は栄養素摂取量の適切さと関連し、その頻度が低いほど、たんぱく質やビタミンなど、いくつかの栄養素の摂取量が低いこと、習慣的な摂取状況が不足の可能性の高い栄養素の数が多いことが示された。神戸学院大学栄養学部の鳴海愛子氏らによる研究であり、「Nutrients」に5月26日掲載された。 食事バランスを考える料理区分として、「主食」はごはん・パン・麺など、「主菜」は魚・肉・卵・大豆・大豆製品を主材料とする料理、「副菜」は野菜・いも・海藻・きのこを主材料とする料理とされる。健康日本21(第三次)では、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合」を増やすことが目標とされている。一方、これらと習慣的な栄養素摂取状況の適切度との関連はこれまで検討されてこなかった。加えて、食事習慣は他の生活習慣とも関連し、例えば、定期的に運動している人ほど食事の質は高い。食事の内容や頻度と栄養素摂取量との関係は、生活習慣を含め他の要因の影響も考慮に入れて検討する必要がある。 著者らは今回、無作為に抽出した30~69歳の日本人を対象とする横断研究を行い、調査票を用いて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度や、直近1カ月間の食事内容などを調査し、栄養素摂取量を算出した。解析に必要なデータの得られた対象者は331人(平均年齢48.8±10.2歳、男性62.8%)だった。 対象者のうち、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日が「ほぼ毎日」だった人は132人(39.9%)、「週に4~5日」は65人(19.6%)「週に2~3日」は74人(22.4%)、「週に1回以下」は60人(18.1%)だった。「ほぼ毎日」の人は、女性、既婚者の割合が高く、年齢も高かった。一方、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は、BMI、教育歴、世帯年収、喫煙の有無、1日の歩行時間、睡眠時間、飲酒頻度とは関連していなかった。 たんぱく質の摂取量の不足の確率が50%以上である人の割合を比較したところ、「ほぼ毎日」の人では31.8%、「週に4~5日」は33.8%、「週に2~3日」は47.3%、「週に1回以下」は56.7%であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど摂取量が不足の可能性が高い者が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。この傾向は、ビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンCについても同様に認められた。また、摂取量が不足の確率50%以上である栄養素の数(平均値)が、「ほぼ毎日」の人では2.0、「週に4~5日」は2.1、「週に2~3日」は2.7、「週に1回以下」は3.1であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど習慣的な摂取状況が不足の可能性が高い栄養素の数が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。一方、頻度にかかわらず、食物繊維の摂取量が生活習慣病予防のための摂取量の下限値未満である人(全体で86.1%)と食塩の摂取量が過剰の人(同98.5%)の割合は高かった。 今回の研究結果について著者らは、「高齢者の低栄養の予防や、若い女性のやせに対する介入など、栄養不足を予防するための介入に役立つ可能性がある」と述べている。また、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が低い人ほど海藻、魚介類、卵の摂取量が少なかったことや、頻度にかかわらず食物繊維や塩分の摂取量が適正でない人が多かったことを挙げ、適切な食材選択などについて、さらなる研究が必要だとしている。

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心筋梗塞既往の糖尿病患者へのキレーション療法、有効性は?/JAMA

 50歳以上の心筋梗塞既往の糖尿病患者において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレーション療法はプラセボと比較し、血中鉛濃度が有意に低下したが、心血管イベントは減少しなかった。米国・マウントサイナイ医療センターのGervasio A. Lamas氏らが、米国とカナダの88施設で実施した「Trial to Assess Chelation Therapy 2:TACT2試験」の結果を報告した。2013年には、心筋梗塞既往患者1,708例を対象とした「TACT試験」で、EDTAキレーション療法により心血管イベントが18%有意に減少したことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年8月14日号掲載の報告。主要エンドポイントは全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合 研究グループは、登録の少なくとも6週間前に心筋梗塞の既往がある50歳以上の糖尿病患者を、2×2要因デザイン法を用いて、EDTAキレーション療法群とプラセボ点滴静注群(いずれも週1回3時間の点滴静注を計40回)、または高用量マルチビタミン・ミネラル経口投与群とプラセボ経口投与群(1日2回60ヵ月間経口投与)に無作為に割り付けた。本論文ではキレーション療法群とプラセボ点滴静注群の比較について報告されている。 EDTAキレーション溶液は、推定クレアチニンクリアランスに基づきEDTA-二ナトリウム最大3g、ならびにアスコルビン酸、塩化マグネシウム、プロカイン塩酸塩、未分画ヘパリン、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、パントテン酸、チアミン、ピリドキシンおよび注射用水で構成された。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合であった。 2016年10月27日~2021年12月31日に、1,000例がキレーション療法群(499例)またはプラセボ群(501例)に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年6月30日であった。追跡期間4年の主要エンドポイント発生、キレーション療法群35.6% vs.プラセボ群35.7% 解析対象は、少なくとも1回試験薬の投与を受けた959例(キレーション療法群483例、プラセボ群476例)で、年齢中央値67歳(四分位範囲:60~72)、女性27%、白人78%、黒人10%、ヒスパニック20%であった。 追跡期間中央値48ヵ月において、主要エンドポイントはキレーション療法群で172例(35.6%)、プラセボ群で170例(35.7%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.76~1.16、p=0.53)。Kaplan-Meier法による主要エンドポイントの推定5年累積発生率は、キレーション療法群45.8%(95%CI:39.9~51.5)、プラセボ群46.5%(39.7~53.0)であった。 主要エンドポイントの各イベントの発生率も治療群間で差はなかった。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のイベントはキレーション療法群で89例(18.4%)、プラセボ群で94例(19.7%)に認められた(補正後HR:0.89、95%CI:0.66~1.19)。全死因死亡は、キレーション療法群で84例(17.4%)、プラセボ群で84例(17.6%)であった(0.96、0.71~1.30)。 血中鉛濃度中央値は、キレーション療法群ではベースラインの9.0μg/Lから、40回が終了した時点で3.5μg/Lに低下し(p<0.001)、プラセボ群ではそれぞれ9.3μg/L、8.7μg/Lであった。 重篤な有害事象は、キレーション療法群で81例(16.8%)、プラセボ群で79例(16.6%)にみられた。

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糖類控えめの食生活は生物学的年齢の若さと関連

 添加糖類の摂取は老化を早める可能性があると、新たな研究が警告している。この研究では、食生活が健康的でも、添加糖類の摂取が1g増加するごとに生物学的年齢が上昇する可能性がある一方で、ビタミンやミネラル、抗酸化物質、抗炎症作用のある栄養素が豊富な食事は、生物学的年齢の若さと関連することが示されたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学・行動科学分野教授のElissa Epel氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月29日掲載された。 この研究では、National Heart, Lung, and Blood Institute Growth and Health Study (NGHS)への参加女性342人(黒人と白人がそれぞれ171人、平均年齢39.2歳)を対象に、食事パターンとエピジェネティック年齢(細胞や組織、臓器などの生物学的年齢)との関連が検討された。NGHSは研究開始時に9〜10歳だった白人または黒人の女児を登録して1987〜1999年にかけて心代謝の健康とその関連因子を調査した研究で、2015〜2019年に追跡調査が行われていた。 Epel氏らは、対象者の食事摂取記録から栄養と食品の平均摂取量を計算し、全体的な食事の質を評価した。この評価には、既存の代替地中海食(Alternate Mediterranean Diet;aMED)スコア、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index;AHEI)とともに、研究グループが考案したエピジェネティック栄養指数(ENI)が用いられた。さらに、3日間の食事摂取記録から添加糖類の平均摂取量を、唾液のDNAメチル化プロファイルから第二世代のエピジェネティック時計の指標とされるGrimAge2を算出した。 対象者は、1日平均61.5gの添加糖類を摂取していたが、範囲は2.7gから316.5gと個人差が大きかった。解析の結果、aMEDスコア、AHEI、ENIが高いほどGrimAge2が低くなり、特にaMEDスコアとGrimAge2の関連は強いことが明らかになった。地中海食は、一般的に新鮮な野菜と果物、ナッツ類、豆類、全粒穀物、主な脂肪源としてのオリーブオイルを重点的に摂取する一方で、魚介類、赤肉、加工食品、砂糖を多く使った菓子の摂取を制限する。一方、添加糖類の摂取量が増えるほどGrimAge2も高くなり、添加糖類の摂取量が1g増加するごとにGrimAge2は0.02増加する可能性が示唆された。 Epel氏は、「食事因子の中でも添加糖類を大量に摂取すると代謝の健康が損なわれ、疾患の早期発症につながることが明らかにされている。今回の研究により、添加糖類と疾患発症との関連の背景にはエピジェネティック年齢の加速が関係していることが示された。過剰な添加糖類の摂取は、健康的な長寿を妨げる多くの要因の一つである可能性がある」と話している。 論文の上席著者である、米カリフォルニア大学バークレー校食品・栄養・集団健康学教授のBarbara Laraia氏は、「エピジェネティックな変化は可逆的であるように見えることを考えると、長期にわたって継続的に添加糖類を1日10g控えることは、エピジェネティック時計を2.4カ月戻すことに近いのかもしれない」と言う。同氏はさらに、「重要な栄養素を多く含み、添加糖類の少ない食品に焦点を置く食事法は、長生きを目指して体に良い食生活を心がけようとする人の意欲を高める新たな方法になる可能性がある」と付け加えている。 一方、論文の筆頭著者であるUCSF、Osher Center for Integrative HealthのDorothy Chiu氏は、「われわれが調査した食事内容は、疾病予防と健康増進のための既存の推奨内容と一致しており、特に、抗酸化作用と抗炎症作用のある栄養素の効力が強調されている。ライフスタイル医学の立場から言えば、これらの勧告に従うことで、暦年齢に比べて生物学的年齢が若くなる可能性があるということは、心強いことだ」と述べている。

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ビタミンDが2型糖尿病患者の心不全リスクを抑制

 2型糖尿病患者における血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)と心不全リスクとの関連性を調査した結果、血清25(OH)D値が高いほど心不全リスクが低くなるという関連があり、メンデルランダム化(MR)解析では潜在的な因果関係が示唆されたことを、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのXue Chen氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年7月23日号掲載の報告。 2型糖尿病患者は心不全の発症リスクが高く、またビタミンDの不足/欠乏を呈しやすいことが報告されているが、2型糖尿病患者における25(OH)Dと心不全リスクとの関連性に関するエビデンスはほとんどない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者における血清25(OH)Dと心不全リスクとの関連性を前向きに評価し、さらに潜在的な因果関係を検討するためにMR解析を実施した。 観察研究は、英国バイオバンクに登録された40~72歳の2型糖尿病患者1万5,226例を対象に実施された。心不全の発症は電子健康記録で確認した。Cox比例ハザードモデルを用いて、2型糖尿病患者の血清25(OH)D値と心不全リスクの関連性についてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。MR解析は、血縁関係のない2型糖尿病患者1万1,260例を対象に実施された。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の血清25(OH)Dの平均値は43.4(SD 20.4)nmol/Lであった。・追跡期間中央値11.3年において、836件の心不全イベントが発生した。・血清25(OH)D値が高いほど心不全リスクが低くなるという非線形の相関関係があり、リスクの減少は50nmol/L付近で横ばいになる傾向があった。・25(OH)D値が25nmol/L未満の群と比較すると、50.0~74.9nmol/L群の多変量調整HRは0.67(95%CI:0.54~0.83)、75nmol/L以上群の多変量調整HRは0.71(95%CI:0.52~0.98)であった。・MR解析では、遺伝的に予測される25(OH)D値が7%増加するごとに、2型糖尿病患者の心不全リスクが36%低下することが示された(HR:0.64[95%CI:0.41~0.99])。 これらの結果より、研究グループは「これらの所見は、2型糖尿病患者の心不全予防において、適切なビタミンD状態の維持が重要な役割を果たすことを示している」とまとめた。

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大豆食品は子どもの知能を高める

 大豆食品由来のイソフラボンの摂取量が多い学齢期(7〜13歳)の子どもは、摂取量の少ない子どもよりも注意力と思考能力の高いことが、新たな研究で明らかになった。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のAjla Bristina氏らによるこの研究結果は、米国栄養学会(ASN)年次総会(NUTRITION 2024、6月29日〜7月2日、米シカゴ)で発表された。 大豆や大豆食品にはイソフラボンが豊富に含まれている。イソフラボンは、成人を対象にした研究では記憶力を向上させることが示されているが、子どもを対象にイソフラボンのベネフィットを検討した研究はあまり実施されていない。また、Bristina氏によると、子どもが日常的に大豆食品を摂取する習慣は米国にはあまりないという。 Bristina氏らは今回、7〜13歳の子ども128人を対象にした研究のデータを用いて、大豆イソフラボンの潜在的なベネフィットについて調べた。対象者の主要栄養素、微量栄養素、ビタミン類、イソフラボンなどの1日当たりの平均摂取量は、7日間にわたる食事摂取内容の記録を用いて算出された。また、学年で調整した筆記試験により対象者の全般的な知能を評価したほか、フランカー課題と呼ばれる課題をこなす間の脳波(EEG)検査により情報処理速度と注意力を測定した。 その結果、対象者の大豆食品からのイソフラボン摂取量は平均1.33mgと相対的に低いものの、その中で、摂取量の多かった子どもは少なかった子どもよりも、注意力に関する課題を行っている間の反応速度と情報処理速度が速いことが明らかになった。一方、イソフラボンの摂取と全般的な知能との間に有意な関連は認められなかった。 Bristina氏は、「われわれの研究は、大豆食品に含まれるイソフラボンが小児期の認知能力にとって重要であることを証明するものだ」と述べている。 Bristina氏は、「今回のような相関研究は第一歩に過ぎない。大豆食品の摂取が子どもの認知能力に及ぼす影響や、反応時間を早めるために必要なイソフラボンの正確な摂取量を明らかにするためには、介入的アプローチが必要だろう」と述べている。そのために研究グループは、大豆食品が思考能力、性ホルモン、代謝の健康、腸の健康に及ぼす影響を調べる臨床試験を開始したところだという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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産後うつ病リスクとビタミンDとの関連

 妊婦、産後女性、非産後女性、男性の抑うつ症状発現に対するビタミンDの影響を評価するため、米国・南イリノイ大学のVictoria Rose Barri Benters Hollinshead氏らは、血清ビタミンD濃度と抑うつ症状との関連を調査した。Nutrients誌2024年6月14日号の報告。 研究対象集団は、2007〜18年のNHANES公開データより抽出された20〜44歳の妊婦、産後女性、非産後女性(非妊婦/産後の女性)、男性。抑うつ症状、血清ビタミンD濃度、栄養摂取量、人工統計学的データなどの主観的な聴取データおよび客観的な臨床検査データを用いた。主成分分析を用いて2つの食事パターンを作成し、各サブグループのうつ病アウトカムを予測するため、ベイジアン多項モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンDの対数傾斜パラメータの推定値は、すべてのコホートにおいてネガティブであり、ビタミンDが増加すると、うつ病割合の減少、非うつ病割合の増加が認められた。・妊婦コホートにおいて、ビタミンDの傾斜は最も急激であり、次いで産後女性、非産後女性、男性の順であった。・妊娠中および産後女性では、ビタミンD濃度が高いと、非産後女性および男性と比較し、うつ病リスクの減少に大きな影響が認められた。・産後女性において授乳中の女性は、授乳していない女性と比較し、ビタミンD濃度の高さとうつ病リスク減少により大きな影響が認められた。

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尿検体の迅速検査【とことん極める!腎盂腎炎】第5回

尿検査でどこまで迫れる?【後編】Teaching point(1)尿定性検査の白血球陽性反応の細菌尿に対する感度は70〜80%程度であり、白血球反応陰性で尿路感染症を除外しない(2)硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない(もしくは時間がかかる)微生物による尿路感染症もあり、亜硝酸塩陰性で尿路感染症を除外しない(3)尿pH>8の際にはウレアーゼ産生菌の関与を考える《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。前回、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について紹介した。今回は引き続き、迅速に細菌尿を検知するための検査として有用な尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などの詳細を述べる。1.白血球エステラーゼ(試験紙白血球反応)尿定性検査での白血球の検出は、好中球に存在するエステラーゼが特異基質(3-N-トルエンスルホニル-L-アラニロキシ-インドール)を分解し、生じたインドキシルがMMB(2-メトキシ-4-Nホルモリノ-ベンゼンジアゾニウム塩)とジアゾカップリング反応し、紫色を呈することを利用している。そのため顆粒球しか検出できず、リンパ球には反応しない。多少崩壊した好中球や腟分泌物で偽陽性となりうる。糖>3g/dL、タンパク>500mg/dL、高比重、酸性化物質の混入(ケトン尿)などで偽陰性となる1)。尿試験紙を保存している容器の蓋が開いた状態で2週間以上放置すると試薬が変色し、約半数で亜硝酸は偽陽性となる2)のため注意が必要である。日本で市販されている白血球反応は、(±):10〜25個/μL、(1+):25〜75個/μL、(2+):75〜250個/μL、(3+):500個/μLに相当する(尿沈渣鏡検での陽性と判定するWBC≧5/HPFは20個/μL相当)。2.亜硝酸塩尿定性検査の亜硝酸塩は、細菌の存在を間接的に評価する方法である。細菌が硝酸塩を還元し、亜硝酸塩とすることを利用して検出している。細菌の細胞質内に亜硝酸をつくる硝酸還元酵素もあるが、主にNap(periplasmic dissimilatory nitrate reductase)と呼ばれる酵素を有する細菌がperiplasmic space(細胞膜と細胞外膜の間)に亜硝酸塩を作った場合に検出できると考えられている3)。食品などから摂取した硝酸塩が尿中に存在すること、前述のような菌種が膀胱内に存在すること、尿路への貯留時間が4時間以上あることが必要である4)。腸内細菌目細菌やStaphylococcus属は硝酸塩を亜硝酸塩に還元でき、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)も還元できるが還元するのに時間がかかり、レンサ球菌や腸球菌は還元できない5)。硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない微生物、pH<6.0、ウロビロノーゲン陽性、ビタミンC(アスコルビン酸)が存在する場合に偽陰性となる1)。血清ビリルビン値が高いときは、機序不明だが偽陽性が報告されている6)。3.尿pH意外に思われるかもしれないが、実は尿路感染症の診断において、尿定性検査での尿pHも有用である。尿pH<4.5もしくは>8.0の場合は生理的範囲では説明できない。尿路感染症の場合に酸性尿となることもあるが、臨床的意義が高いのはアルカリ尿のほうである。尿pH>8であれば、ウレアーゼ産生菌の関与を考える。細菌のもつウレアーゼが尿素を加水分解し、アンモニアが生成され尿pHが上昇する(図)7)。画像を拡大する代表的菌種はProteus mirabilis、Klebsiella pneumoniae、Morganella morganiiなど8)である。また、Corynebacterium属もウレアーゼを産生する。Escherichia coliはウレアーゼを産生することはなく、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Enterococcus属も産生率は低い。尿路感染症での尿pHと培養結果を検討した研究では、pHが高いほどProteus mirabilisの頻度が高かったという報告もあり、実臨床でも起因菌の推定に有用である9)。また、尿pHが高いことは、リン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイトとも呼ばれる)ができやすいことにも関連する10)。グラム染色や尿沈渣でこれらを確認することで間接的に尿pHを予測することもできる。閉塞性尿路感染症+意識障害ではウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症を鑑別する必要がある。4. 迅速検査の組み合わせから尿路感染症を診断するここまで各種検査の詳細について述べてきたが、いずれも単独で尿路感染症を診断できるものではない。しかしながら各種検査を正確に解釈し、組み合わせることで診断に迫ることができる。各種検査とその組み合わせによる診断特性についてまとめると表1~311-16)となる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する白血球反応は膿尿検出の感度・特異度は比較的高いが、陽性であれば尿路感染症であるというわけではなく、また白血球反応が陰性で尿路感染症状がある患者では、尿沈渣や尿培養を検討する必要がある。亜硝酸塩は感度が低く、陰性でも尿路感染症を否定できないが、陽性なら尿路感染症を強く疑う根拠とはなる。逆に白血球エステラーゼと亜硝酸塩がともに陰性であれば尿路感染症の可能性を下げる。尿沈渣は簡便性に劣るが信頼性が高く、白血球数や細菌数によって尿路感染症の可能性を段階的に評価できる。尿グラム染色は迅速に施行することができ、得られる情報量も多く、診断特性が高い検査の1つである。とくに尿沈渣の検査を夜間・休日に施行できない施設では大きな武器となる。おわりに逆説的ではあるが、あくまで検査所見のみをもって尿路感染症を診断することができないことは繰り返し述べておく。検査を適切に解釈し、病歴・身体診察と組み合わせることでより正確な診断に迫れることは忘れないでほしい。本項が検査の解釈の一助となれば幸いである。《今回の症例の診断》昨日より頻尿を認めており、左CVA叩打痛も陽性であった。尿グラム染色ではレンサ状のグラム陽性球菌を認めた。尿定性での白血球反応陽性の感度が70%程度であること、腸球菌やレンサ球菌では亜硝酸塩は陰性になることを鑑みて、臨床所見とあわせて腎盂腎炎の疑いで入院加療とした。翌日、尿培養からB群溶連菌を認め、これに伴う腎盂腎炎と診断した。1)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.2)Gallagher EJ et al. Am J Emerg Med. 1990;8:121-123.3)Morozkina EV, Zvyagilskaya RA. Biochemistry. 2007;72:1151-1160.4)Wilson ML, Gaido L. Clin Infect Dis. 2004;38:1150-1158.5)Sleigh JD. Br Med J. 1965;1:765-767.6)Watts S, et al. Am J Emerg Med. 2007;25:10-14.7)Burne RA, Chen YY. Microbes Infect. 2000;2:533-542.8)新井 豊ほか. 泌尿器科紀要 1989;35:277-281.9)Lai HC, et al. J Microbiol Immunol Infect. 2021;54:290-298.10)Daudon M, Frochot V. Clin Chem Lab Med. 2015;53:s1479-1487.11)Ramakrishnan K, Scheid DC. Am Fam Physician. 2005;71:933-942.12)Zaman Z, et al. J Clin Pathol. 1998;51:471-472.13)Williams GJ, et al. Lancet Infect Dis. 2010;10:240-250.14)Whiting P, et al. BMC Pediatr. 2005;5:4.15)Meister L, et al. Acad Emerg Med. 2013;20:631-645.16)Ducharme J, et al. CJEM. 2007;9:87-92.

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マルチビタミンに寿命延長効果はある?

 米国では、成人の3人に1人が疾患予防を目的にマルチビタミンを摂取している。しかし、約40万人の成人を20年以上にわたって追跡調査した研究で、マルチビタミンの摂取が長生きに役立つというエビデンスは得られなかったことが報告された。米国立がん研究所(NCI)がん疫学・遺伝学部門のErikka Loftfield氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月26日掲載された。 毎日のマルチビタミンの摂取がもたらす有益性と有害性については明確になっていない。マルチビタミンの摂取と死亡との関連についての過去の研究では一貫した結果が得られていない上に、追跡期間も短かった。 Loftfield氏らは今回、長期にわたる毎日のマルチビタミンの摂取とあらゆる原因による死亡との関連を明らかにするために、米国の異なる地域で実施された3件の大規模前向きコホート研究のデータを分析した。これら3件の研究では、総計39万124人(年齢中央値61.5歳、男性55.4%)の調査参加者が、ベースライン時(1993〜2000年)と追跡調査時(1998〜2004年)にマルチビタミンの摂取についての調査を受け、さらにその後も追跡調査を受けていた(最長27年)。調査参加者は全てがんや慢性疾患の既往のない、健康な人だった。 研究期間中に16万4,762人が死亡していた。このうち、4万9,836人の死因はがん、3万5,060人の死因は心血管疾患であった。人種/民族、学歴、食事の質などで調整して解析した結果、マルチビタミンの毎日の摂取は追跡期間中の全死亡リスクの低下とは関連しておらず、逆に4%増加することが明らかになった(ハザード比1.04)。心疾患、がん、脳血管疾患による死亡リスクについてもハザード比は1.0に近かった。 こうした結果を受けてLoftfield氏らは、「主要な慢性疾患の既往歴がない健康な人において、マルチビタミンを毎日摂取することで寿命が延びることを裏付けるエビデンスは見つからなかった」と結論付けている。 研究グループは、「この研究で得られた新たな知見は、心血管疾患、がん、または死亡のリスク低減にマルチビタミン摂取は有益でないことを報告したいくつかの先行研究に続くものだ」と述べている。健康専門家から成る影響力のある独立した委員会である米国予防医療専門委員会(USPSTF)も2020年に、マルチビタミンが心臓病やがんを予防できるかどうかを判断するにはエビデンスが「不十分」であるとの見解を示している。 米国でのマルチビタミンの摂取は、1999年から2011年にかけて6%減少しているが、それでも「成人の3人に1人近くが、マルチビタミンを最近摂取したことを報告しており、依然として人気があることに変わりはない」と研究グループは述べている。 今回の研究では、マルチビタミンの全死亡リスクに対する効果は確認されなかったが、研究グループは、「マルチビタミンの日常的な摂取が、加齢に関連する他の健康上の転帰に関わっている可能性を排除することはできない」と強調している。

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抗肥満薬使用時に推奨される食事療法

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を中心とする抗肥満薬を使用する際の栄養上の推奨事項をまとめた論文が、「Obesity」に6月10日掲載された。米イーライリリー社のLisa Neff氏らの研究の結果であり、同氏は「本報告は、抗肥満薬による治療を行う臨床医に対して、最適な栄養と介入効果を患者にもたらすための知識とツールを提供することを目指した」と語っている。なお、イーライリリー社は米国において、GLP-1RAであるチルゼパチドを抗肥満薬「zepbound」として販売しており、国内でも承認申請中。 近年、体重が15%以上も減ることもあるGLP-1RAが肥満治療に用いられるようになり、さらに新たな作用機序による抗肥満薬の開発も進められている。これらの薬剤により食事摂取量が減少すると、栄養バランスが崩れて微量栄養素が不足するなどのリスクも生じる。現状において、抗肥満薬治療を受けている患者の最適な食事スタイルに関するエビデンスは少ない。しかし、減量・代謝改善手術後の患者や超低カロリー食による減量中の患者の食事療法に関しては、一定のエビデンスが蓄積されてきている。Neff氏らは、文献検索によりそれらの報告をレビューすることで、抗肥満薬使用中の食事療法に関する推奨事項を総括した。 主な推奨事項は以下のとおり。・エネルギー量:個別に設定する必要があるが、通常は女性1,200~1,500kcal/日、男性1,500~1,800kcal/日。・タンパク質:通常は体重1kg当たり1.5g以下だが、1日に60~75g以上は確保するために、人によっては1.5g/kgを超える量が必要なこともある。推奨される食品は、豆類、魚介類、赤肉、鶏肉、低脂肪乳製品、卵など。・炭水化物:総摂取エネルギー量の45~65%で、添加糖は10%未満とする。全粒穀物、果物、野菜、乳製品などが推奨される。・脂質:総摂取エネルギー量の20~35%で、飽和脂肪酸は10%未満とする。ナッツ、種子、アボカド、植物油、脂肪分の多い魚などが推奨される。抗肥満薬使用に伴う消化器症状を来しやすくなることがあるため、揚げ物や高脂肪食品を避ける。・食物繊維:女性は21~25g/日、男性は30~38g/日。果物、野菜、全粒穀物などが推奨される。食事のみではこの推奨量を満たすことができない場合は、サプリメントの利用を検討。・水分:2~3L/日を摂取。水、低カロリー飲料、低脂肪乳製品などが推奨され、カフェイン入り飲料は控えるか摂取しない。 このほかに、微量栄養素の不足が生じないように、マルチビタミンやカルシウム、ビタミンDなどのサプリメントを適宜摂取することを推奨している。また臨床医に対する推奨として、抗肥満薬使用中の患者では栄養状態のモニタリングの必要があると記している。 本研究には関与していない米エモリー大学のJessica Alvarez氏は、「減量効果のみに焦点を当てた肥満治療は不完全だ。本論文は、抗肥満薬による治療に際して徹底した栄養評価を行う必要性を述べた重要なガイドと言える。抗肥満薬の使用中には、適切な栄養を確保して栄養失調を避け、筋肉量の減少を防ぐため、何をどれだけ食べるべきかといった詳細な患者指導が求められる」と語っている。

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CKD-MBD治療の新たな方向性が議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)が改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後の改訂のポイントに関して解説した。保存期CKD-MBDにおけるプラクティスポイントとは 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。血清カルシウム、リンの管理目標値の上限は、より厳格な管理へ 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。患者の背景に応じたリン低下薬の選択を 前回のガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。透析患者における骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDの管理目標値とは 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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第196回 6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省

<先週の動き>1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2024年度の診療報酬改定が6月1日より適用される。高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療において「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(I)」「生活習慣病管理料(II)」への移行が行われる。この改定は、質の高い疾病管理を進めることを目的とし、具体的には患者と医療者が共通の理解を持ち、療養計画書を作成して共有することが求められる。新たに導入される「生活習慣病管理料(II)」は333点となり、従来の「特定疾患療養管理料」225点より高く設定されている反面、算定回数が月2回から1回に減少する。また、「外来管理加算」や「処方箋料」が併算定できなくなり、全体の診療報酬は減少することになる。都内の開業医によれば、1日50人の患者のうち6割が特定疾患療養管理料を算定していた場合、年間で約115万円の減収が予測されている。改定のもう1つの大きな変更点は、療養計画書の作成と患者の同意・署名の取得が必須となる点で、これにより医師やスタッフの業務負担が増加する。療養計画書には、患者と相談した達成目標や行動目標、食事や運動の指導内容、血液検査の結果などが記載され、これを患者に説明し、同意を得て署名をもらう必要がある。一方、改定により「生活習慣病管理料(I)」も引き続き存在し、点数が引き上げられた。脂質異常症は610点、高血圧症は660点、糖尿病は760点となり、一定条件下で療養計画書の交付義務が免除される場合がある。また、生活習慣病管理料(II)の算定には多職種連携が推奨され、管理栄養士などの専門職との協力が求められる。外来栄養食事指導が必要な場合は、他の医療機関と連携し、指導記録を共有する体制を整備することが重要となる。厚生労働省は、生活習慣病管理料の導入により計画的な治療管理を促進し、疾病管理を求めている。その一方で、医療機関側には新たな文章作成など負担が増大するため、業務改善が必要となる。参考1)診療報酬の改定で開業医が年間115万円の減収? 生活習慣病の治療、6月から何が変わるのか(東京新聞)2)生活習慣病管理料(II)を新設し、2区分に(CB news)3)糖尿病・高血圧症等治療は特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料I・IIへシフト、計画的治療管理を(Gem Med)4)生活習慣病管理料への移行、当院の「療養計画書」の作成法(日経メディカル)2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁5月31日にデジタル庁は、2025年春をめどにiPhoneにマイナンバーカードの機能を搭載する計画を発表した。岸田 文雄首相と米アップル社のティム・クックCEOとの会談で、この計画が確認された。これにより、iPhoneを使って行政手続きや本人確認ができるようになる。すでにAndroid端末向けには2023年5月からスマホ用電子証明書の運用が開始されており、iPhoneへの対応が焦点となっていた。アップル社は、デジタル庁と協力してiPhoneのウォレット機能にマイナカードを追加する準備を進めており、物理的なカードがなくても、スマホだけで身分証明書として使用できるようになる。これによりコンビニエンスストアでの公的証明書の発行や、病院での本人確認などが可能となる。アップルウォレットの身分証明書機能が米国以外で展開されるのはわが国が初めてとなる。一方で、政府はマイナカード機能のスマホ搭載を進めるために法改正を行い、今回の法改正でマイナカードの全機能がスマホに搭載されることが可能となり、銀行口座や証券口座の開設がスマホだけで完結できるようになるほか、コンビニエンスストアなどでの年齢確認にも使用可能となる。さらに、マイナ保険証も2025年春以降にスマホで使用できるようになる見通し(なお現行の保険証は2024年12月に廃止され、マイナカードに1本化される)。しかし、マイナンバー制度には、個人情報の管理やセキュリティの面で課題が残っているため、政府は、デジタル庁が主体となり、個人情報の正確性を確保するための支援を行うことを新たに規定する。また、医療機関でのマイナ保険証の利用率が低いため、普及促進のための取り組みが必要とされている。iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載は、デジタル社会への移行を大きく進める重要な1歩となると予想され、今後も利用者が安心して使える環境を政府が整えることが求められる。参考1)マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について(デジタル庁)2)iPhoneにマイナカードの機能搭載へ 来春を予定 デジタル庁(CB news)3)iPhoneにマイナ機能 かざして身分証明、病院などで アップル、来夏までに(日経新聞)3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は、規制改革推進に向けた答申をまとめ、5月31日に岸田 文雄首相に提出した。主な内容として、医療機関が「総合診療科」を標榜できるように広告規制の見直しを厚生労働省に求め、2025年までに結論を出す方針。これは、患者がプライマリケアにアクセスしやすくするための措置となる。現在の医療法の広告規制では、内科、外科、精神科など特定の診療科名しか単独で広告できないが、総合診療科はこの中に含まれていない。高齢化に伴い、複数の疾患を抱える高齢者が増える中、総合診療を提供する医療機関の認知度向上が求められ、これに対応するため規広告規制の見直しを求めたもの。また、在宅医療における薬物治療を円滑に提供するため、厚労省には、訪問看護ステーションにストックできる薬の種類を拡大することが検討されている。このほか、オンライン診療で精神療法が初診から利用できることにつき2025年までに結論を出し、診療報酬の見直しを行う方針。これは、オンライン診療の利用拡大を通じて、地域差を解消し、患者の利便性を高めることを目的としている。もう1つの重要な施策として、薬剤師が不在の店舗でもオンラインで市販薬を販売できるようにする規制改革が進められている。とくに、過疎地や深夜・早朝に薬剤師が常駐しない店舗に、遠隔で管理することで市販薬の販売を可能にする方針。これにより、薬剤師の人手不足を解消し、地域住民の利便性を向上させることを目指している。今回の答申を受け、政府は新たな規制改革実施計画を取りまとめ、近く閣議決定する予定。これにより、医療分野でのデジタル技術の活用などが具体的に進められることになる。参考1)規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~(規制改革推進会議)2)「総合診療科」の標榜容認検討へ、25年結論 規制改革推進の答申(CB news)3)人手不足、デジタルで解消 遠隔で薬販売/AIで要介護認定 規制改革会議が最終答申(日経新聞)4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴兵庫県尼崎市の眼科医院がグーグルマップの口コミ欄に一方的に悪評を投稿されたとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。5月31日に山中 耕一裁判官は、投稿者の大阪府豊能町の女性に対し、200万円の賠償と投稿の削除を命じた。訴えによると、眼科医院は3年前に「レーシック手術を受けたが左目だけで、右目はレンズを入れられた」や「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」といった内容の書き込みを受けた。医院の院長は、これらの内容に身に覚えがないとして、グーグルに情報開示を求めて投稿者を特定し、今年1月に女性を訴えた。山中裁判官は「書き込みは、眼科の医師が患者から承諾を得ずに勝手な医療行為をするという印象を与え、医院の社会的評価を低下させた」と述べ、投稿が名誉毀損にあたると判断した。眼科医院の代理人弁護士である壇 俊光氏は、「投稿者の特定には3年かかり、ネット社会における不当な投稿への対応の遅れを感じている。迅速な削除を求める司法判断が必要だ」と述べる。この判決により、インターネット上での名誉毀損行為に対する法的対応の重要性が再確認された。参考1)グーグルマップの口コミ欄で一方的に眼科医院の悪評、投稿者に200万円の賠償命じる判決(読売新聞)2)「クチコミ」投稿者に賠償命令 眼科医院長“評判落とされた”(NHK)5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行美容や健康への関心の高まりを背景に、公的な医療保険が適用されない自由診療を提供するクリニックが急増している。しかし、自由診療クリニックの増加に伴い、健康トラブルも多発しており、健康被害や契約上の問題が顕在化している。とくに、美容医療分野では、脱毛や薄毛治療、医療ダイエットなどの自由診療が行われ、患者は全額自己負担で利用している。NHKの報道によれば、都市部を中心に「一般社団法人」として設立された美容クリニックが急増し、その多くが自由診療を提供している。一般社団法人は、医師でなくても設立可能であり、登記のみで開業できるため、異業種からの参入が容易なために医師の「名義貸し」が横行、実際には医療行為に関与しない医師が管理者として名前を貸しているケースが多数報告されている。国民生活センターによると、美容医療に関するトラブルの相談件数は、2023年度に5,833件と、この5年間で約3倍に増加している。とくに健康被害の相談は839件に上り、過去5年間で約1.7倍に増加している。たとえば、高濃度のビタミン点滴によるアナフィラキシーショックなど、深刻な健康被害も報告されている。一般社団法人によるクリニックの運営に関しては、監督官庁がなく、医療法人のような規制も適用されないため、管理が不十分とされる。渋谷区保健所の熊澤 雄一郎生活衛生課長は、「一般社団法人のクリニックも医療法人と同様に業務内容の報告体制を整備する必要がある」と指摘する。厚生労働省は、専門家による検討会を立ち上げ、自由診療における美容医療の適切なあり方や対策を協議し、行政が事業内容を定期的にチェックできる制度について検討する予定。適切な監視体制の構築が急務となる。参考1)追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層(NHK)2)一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師「名義貸し」証言も(同)3)美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ(同)6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省5月30日に厚生労働省は、医療機関ごとの出産費用やサービス内容を比較できるウェブサイト「出産なび」を開設した。このサイトは、全国の病院や助産所など約2,000の出産施設を対象に、妊婦やその家族が適切な施設を選択できるよう情報を提供する。「出産なび」では、各施設の出産費用や分娩実績、サービス内容を一覧で確認でき、たとえば、無痛分娩の対応有無や24時間対応の可否、立ち会い出産の可否などが細かく紹介されている。施設の種類や希望するサービスにチェックを入れて検索すると、条件に合致する施設が一覧表示され、地図上で施設の位置を確認することもできる。出産費用の内訳も明示されており、基本的な分娩費用や個室の追加料金などがわかるようになっている。これにより、妊婦や家族が費用面での予測を立てやすくなり、出産に伴う経済的な負担を見通しやすくなる。「出産なび」の開設は、少子化対策の一環として、出産費用の透明化を図り、不透明な値上げを防ぐことを目的としている。また、正常分娩への保険適用に向けた議論の材料としても活用される予定。現在、正常分娩は保険適用外であり、費用は全額自己負担となっているが、2026年度をめどに保険適用を検討している。厚労省では、今後も「出産なび」の情報を定期的に更新し、利用者が最新の情報にアクセスできるよう努める。また、出産費用の保険適用についても議論を進め、妊婦や家族の負担軽減を図っていく方針。参考1)「出産なび」へようこそ(厚労省)2)お産の費用見える化サイト「出産なび」開設 全国の約2千施設が対象 厚労省(CB news)3)医療機関ごとの出産費用を検索「出産なび」開設…無痛分娩の対応有無や24時間対応可も紹介(読売新聞)4)出産費用丸わかり、厚労省が施設検索サイト「出産なび」(日経新聞)

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日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスク~JPHC研究

 果物や野菜には、ビタミンC、α-カロテン、β-カロテンなどの抗酸化ビタミンが豊富に含まれている。果物や野菜の摂取が認知症リスクに及ぼす影響を評価したプロスペクティブ観察研究はほとんどなく、結果には一貫性が認められていない。筑波大学の岸田 里恵氏らは、日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスクとの関連を調査した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年4月8日号の報告。 2000~03年(ベースライン時)に50~79歳の4万2,643例を対象としたJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)においてフォローアップ調査を実施した。食事による果物および野菜の摂取量、関連する抗酸化ビタミン(α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC)の摂取量は、食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて収集した。認知障害の診断は、2006~16年の介護保険制度における認知症に係る日常生活障害の状況に基づいて行った。認知障害に関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、潜在的な交絡因子で調整した後、エリア層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。摂取量の最低四分位と比較した最高四分位の多変量HRを算出した。 主な結果は以下のとおり。・4,990例で認知障害が認められた。・男女ともに、果物および野菜の総摂取症と認知症リスクとの間に逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.87(95%CI:0.76~0.99)、p-trend=0.05 【女性】多変量HR:0.85(95%CI:0.76~0.94)、p-trend=0.006・抗酸化ビタミンの中でビタミンCの摂取量は、男女ともに、認知症リスクとの逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.71(95%CI:0.61~0.84)、p-trend<0.001 【女性】多変量HR:0.76(95%CI:0.67~0.86)、p-trend<0.001 著者らは、「果物や野菜、ビタミンCの食事による摂取は、男女ともに認知障害のリスク低減につながる可能性が示唆された」としている。

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妊娠中のナッツ摂取が子どもの「仲間関係の問題」を予防?

 約1,200組の母子を対象としたコホート研究の結果から、妊娠中にナッツを摂取すると、生まれた子どもの「仲間関係の問題」を予防できる可能性が示唆された。これは愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らによる研究結果であり、「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に3月7日掲載された。 著者らの研究グループはこれまでに、妊娠中のさまざまな栄養素の摂取が、生まれた子どもの感情・行動の問題と関連することを報告している。食品に着目すると、栄養密度が高いことで知られるナッツは、不飽和脂肪酸、タンパク質、食物繊維、ビタミンやミネラルといった栄養素を豊富に含んでいる。そこで今回の研究では、妊娠中のナッツの摂取と5歳児の行動的問題との関連を調べた。 研究対象は「九州・沖縄母子保健研究」の参加者で、2007年4月~2008年3月に妊娠し(年齢中央値32.0歳)、生まれた子どもが5歳の時の追跡調査に参加した母子1,199組。妊婦の栄養データは、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて入手した。子どもの行動的問題は、5歳時の調査で、母親に「子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire;SDQ)」に回答してもらい、評価した。 その結果、1,199人の子ども(生後59~71カ月)のうち、SDQの下位尺度である「情緒の問題」は12.9%、「行為の問題」は19.4%、「多動の問題」は13.1%、「仲間関係の問題」は8.6%、「向社会的な行動の低さ」は29.2%に認められた。また、ナッツを摂取していた妊婦は618人、摂取量の中央値は0.8g/日(四分位範囲0.4~1.3g/日)であり、ナッツの種類としてはピーナッツの割合が36.2%、他のナッツが27.3%、ピーナッツと他のナッツの両方が36.4%だった。 次に、対象者の背景の差(妊娠年齢、妊娠週数、居住地、子どもの数、両親の教育歴、世帯収入、妊娠中の食事内容・抑うつ症状・飲酒量・喫煙、子どもの出生体重・性別、生後1年間の受動喫煙、母乳摂取期間)を調整し、妊娠中のナッツの摂取と子どもの行動的問題の関連を解析した。その結果、妊娠中のナッツの摂取は子どもの「仲間関係の問題」のリスク低下と有意に関連していることが明らかとなった(ナッツ非摂取と比較したオッズ比0.64、95%信頼区間0.42~0.97)。 この「仲間関係の問題」は、SDQのアンケート項目「一人でいるのが好きで、一人で遊ぶことが多い」「いじめの対象にされたりからかわれたりする」「他の子どもたちより、大人といる方がうまくいくようだ」など、5つの項目から評価されたもの。一方で、子どもの行動的問題のうち「情緒の問題」「行為の問題」「多動の問題」「向社会的な行動の低さ」に関しては、妊娠中のナッツ摂取との有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「妊娠中の母親のナッツ摂取は、子どもの5歳時点における仲間関係の問題のリスク低下と関連している可能性がある」と結論付けている。また、この予防的関連の背景にあるメカニズムについては、さらなる研究が必要としている。

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カルシウムとビタミンDの摂取は閉経後女性の全死亡リスクに影響せず

 慢性疾患の予防効果を目的にカルシウムとビタミンDを摂取している更年期の女性をがっかりさせる研究結果が報告された。閉経後女性の慢性疾患の予防戦略に焦点を当てた「女性の健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)」のデータを事後解析した結果、カルシウムとビタミンDの摂取により、閉経後女性のがんによる死亡リスクは7%低下するものの、心血管疾患による死亡リスクは6%上昇するため、全死亡に対する正味の効果はないことが明らかになった。米アリゾナ大学健康推進科学分野教授のCynthia Thomson氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に3月12日に掲載された。 骨の健康を守るために、長年にわたってカルシウムとビタミンDを摂取している閉経後女性は少なくない。しかし、致死的な心疾患やがんなどの慢性疾患に対するこれらの栄養素の予防効果については明確になっていない。 1991年に米国立衛生研究所(NIH)により開始されたWHIは、数十年にわたって閉経後女性の健康を追跡してきた大規模研究で、数万人の女性が登録されている。今回の研究テーマである、閉経後女性でのカルシウムとビタミンDの摂取効果については、2006年に初めて、7年間の追跡データの解析結果が報告されていた。研究グループによると、その結果は「ほとんど効果なし」というものだった。 今回の研究では、長期追跡データを解析することでこの結果に変化が認められるのかどうかが調査された。対象は、3万6,283人の閉経後女性で、乳がんや大腸がんの既往がある者は含まれていなかった。女性は、1日1,000mgの炭酸カルシウム(カルシウム含有量としては400mg)と400IUのビタミンD3を摂取する群(CaD群)とプラセボを摂取する群(プラセボ群)に1対1の割合でランダムに割り付けられていた。 その結果、累積追跡期間中央値22.3年の経過後にCaD群で1,817人、プラセボ群で1,943人ががんにより死亡しており、前者では後者に比べてがんによる死亡リスクが7%低下することが示された(ハザード比0.93、95%信頼区間0.87〜0.99)。一方、心血管疾患による死亡については、CaD群では7,834人、プラセボ群では7,748人が確認されており、前者では後者に比べて死亡リスクが6%高いことが示された(同1.06、1.01〜1.12)。それゆえ、死亡リスクという点でカルシウムとビタミンD摂取の有益性は確認されなかった。 Thomson氏は、「カルシウムサプリメントの摂取が冠動脈の石灰化を促し、心血管疾患による死亡リスクを増加させる可能性は考えられる」との見方を示している。 研究グループはこの研究の結論として、「閉経後女性を20年以上追跡した調査の解析結果に基づくと、カルシウムとビタミンDの摂取は、がんによる死亡リスクを低減する一方で心血管疾患による死亡リスクを増大させ、結果的に全死亡リスクには影響を及ぼさないことが明らかになった」と述べている。

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認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。 これまで、二重盲検無作為化2×2要因試験「COSMOS試験※」のサブスタディでは、電話やインターネットを用いた認知機能に関する評価において、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群よりも良好な結果であったことが報告されている。しかし、対面式の詳細な神経心理学的評価は行われていなかった。そこで研究グループは、神経心理学的評価を対面で行って認知機能の変化に対するマルチビタミンの影響を検証するとともに、COSMOS試験のサブスタディのメタ解析も実施した。※COSMOS試験:60歳以上の米国成人2万1,442例を対象として、マルチビタミンおよび/またはカカオ抽出物の連日摂取によって心血管疾患およびがん発症リスクが軽減するかどうかを調査した大規模試験。無作為化は2015年6月~2018年3月に行われ、2020年12月31日まで追跡された。 COSMOS-Clinicの解析対象は、60歳以上で、ベースラインおよび2年後に対面で神経心理学的評価(45分間)を受けた573例であった。主要アウトカムは11つのテストの平均標準化スコアによる全体的な認知機能で、副次アウトカムはエピソード記憶、実行機能/注意力であった。メタ解析には、3つのCOSMOS試験のサブスタディ(COSMOS-Clinic[573例、2年間、対面]、COSMOS-Mind[2,158例、3年間、電話]、COSMOS-Web[2,472例、3年間、インターネット])を用いた(重複する参加者を含めずに実施)。 主な結果は以下のとおり。COSMOS-Clinic試験・参加者はマルチビタミン群272例(平均年齢69.3歳、男性51.1%)、カカオ抽出物群301例(69.8歳、50.5%)に無作為に割り付けられた。両群ともに2年後でも90%超がアドヒアランス良好であった。・エピソード記憶については、マルチビタミン群の平均標準化スコア(高いほど良好)はベースライン時0.01、2年後0.36、カカオ抽出物群はそれぞれ-0.01、0.23、平均差は0.12[95%信頼区間[CI]:0.002~0.23])であり、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して統計的に有意な改善が認められた。・全体的な認知機能(平均差:0.06[95%CI:-0.003~0.13])および実行機能/注意力(0.04[-0.04~0.11])は、有意差はなかったもののマルチビタミン群で良好な傾向を示した。サブスタディのメタ解析・全体的な認知機能は、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して、統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.07[95%CI:0.03~0.11]、p=0.0009)。・エピソード記憶でも、マルチビタミン群では統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.06[95%CI:0.03~0.10]、p=0.0007)。・マルチビタミン群の全体的な認知機能に対する効果は、2歳離れたカカオ抽出物群と同程度であり、マルチビタミン群の認知機能の老化を2年遅らせたことに相当する。

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活性型ビタミンD3がサルコペニアを予防/産業医大

 前糖尿病と糖尿病はサルコペニアの独立した危険因子であることが報告されている1)。今回、前糖尿病患者への活性型ビタミンD3投与がサルコペニアを予防するかどうか調べた結果、筋力を増加させることでサルコペニアの発症を抑制し、転倒のリスクを低減させる可能性があることが、産業医科大学病院の河原 哲也氏らによって明らかにされた。Lancet Healthy Longevity誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。 これまでの観察研究では、血清25-ヒドロキシビタミンD値とサルコペニア発症率との間に逆相関があることが報告されている2)。しかし、ビタミンDによる治療がサルコペニアを予防するかどうかは不明である。そこで研究グループは、活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールによる治療が前糖尿病患者のサルコペニアの発症を抑制するかどうかを評価するため、「Diabetes Prevention with active Vitamin D study(DPVD試験)※」の付随研究を実施した。※DPVD試験:前糖尿病の成人における2型糖尿病の1次予防として、活性型ビタミンD治療の効果を調査した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験。国内32施設で実施された。 対象は、耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値140~199mg/dL、かつHbA1c<6.5%)を有し、サルコペニアではない30歳以上の男女1,094例であった。エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、ITT集団における3年間のサルコペニア発症率で、その定義は握力が弱い(男性28kg未満、女性18kg未満)、骨格筋指数が低い(生体電気インピーダンス分析で男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)こととした。副次評価項目は、3年間の転倒の発生率、握力と体組成の変化であった。 主な結果は以下のとおり。・解析にはエルデカルシトール群548例、プラセボ群546例が組み込まれた。平均年齢60.8歳、女性44.2%、平均BMI値24.5、2型糖尿病の家族歴があったのは59.5%であった。・約3年間の追跡期間中にサルコペニアを発症したのは、エルデカルシトール群4.6%、プラセボ群8.8%であり、エルデカルシトールによる治療は有意なサルコペニア予防効果を示した(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.83、p=0.0065)。・転倒の発生は、エルデカルシトール群24.6%、プラセボ群32.8%で有意差が認められた(HR:0.78、95%CI:0.62~0.97、p=0.0283)。・BMIと腹囲径の変化は両群で有意差は認められなかったものの、エルデカルシトール群ではプラセボ群よりも脂肪量指数が有意に減少し(-0.15% vs.0.31%、p=0.028)、骨格筋指数が有意に増加し(0.45% vs.-1.72%、p<0.0001)、握力も増加した(1.85% vs.0.45%、p=0.0003)。・有害事象の発生率は両群間で有意差は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールの治療によって、骨格筋量および筋力を増加させることにより、前糖尿病患者のサルコペニアの発症を予防し、転倒のリスクを大幅に減少させる可能性を見出した。今後はサルコペニアや前糖尿病の有無にかかわらず高齢者を対象とした臨床試験を実施する予定である」とまとめた。

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ナイアシンの取り過ぎは心臓に悪影響

 ナイアシンは必須ビタミンB群の一つだが、取り過ぎは心臓に良くないようだ。何百万人もの米国人が口にする多くの食品に含まれるナイアシンの過剰摂取が炎症を引き起こし、血管にダメージを与える可能性のあることが、米クリーブランド・クリニック、ラーナー研究所の心血管・代謝科学主任研究員であるStanley Hazen氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Nature Medicine」2月19日号に掲載された。 Hazen氏は、「ナイアシンの過剰摂取により心血管疾患の発症リスクが高まる可能性が示された以上、平均的な人はナイアシンのサプリメントの摂取を控えるべきだ」とNBCニュースに対して語った。 米メイヨークリニックによれば、ナイアシンの推奨摂取量は男性で1日16mg、妊娠していない女性では1日14mgである。米国では、穀物やシリアルにナイアシンが強化され始めた1940年代以来、その摂取量が増加している。Hazen氏によると、食品にナイアシンを強化する動きは、ナイアシンが不足するとペラグラと呼ばれる致命的な疾患を引き起こす可能性があることを示唆した研究を受けて助長されたと説明する。皮肉なことに、ナイアシンのサプリメントは、かつてはコレステロール値を改善するために医師によって処方されていた。 本研究には関与していない、米ヴァンダービルト大学医療センター循環器内科のAmanda Doran氏は、ナイアシンが心血管疾患リスクを高める可能性があることを知って驚いたと話す。同氏はNBCニュースに対し、「ナイアシンに炎症促進作用があると予想していた人はいないのではないかと思う」と語り、「この研究結果は、臨床データ、遺伝子データ、マウス実験を組み合わせて多角的に検討して導き出されたものであり、説得力がある」と述べている。 Hazen氏らはまず、心血管疾患の評価のために心臓病センターを訪れた患者1,162人(女性422人)の空腹時血漿のメタボロミクス解析を行った。その結果、ナイアシンの代謝産物である2PY(N1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド)と4PY(N1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド)の血中濃度が主要心血管イベント(MACE)の発生と関連していることが明らかになった。この結果は、米国人2,331人とヨーロッパ人832人から成る2つの検証コホートでも確認された。また、遺伝子変異体rs10496731は2PYおよび4PYレベルと有意に関連しており、さらに、この変異と血漿中の血管細胞接着分子(VCAM-1)である可溶性VCAM-1(sVCAM-1)レベルが関連することも示された。 マウスを用いた実験からは、生理学的レベルの4PYの投与によりVCAM-1の発現が促進されるとともに、血管内皮における白血球の付着が増加し、炎症が亢進していることが示唆された。このような変化は、2PYの投与では確認されなかった。 米マウントサイナイ・ヘルスシステム代謝・脂質部門でディレクターを務めるRobert Rosenson氏は、この結果は「魅力的」で「重要だ」とし、「食品業界がパンのような製品にナイアシンを大量に添加するのをやめることを期待している。これは、体に良いとされるものの取り過ぎが、かえって悪影響を及ぼすことの一例だ」とNBCニュースに語った。 Rosenson氏は、「この結果は、ナイアシンの食事からの摂取推奨量にも影響を与える可能性がある」との見方を示す。一方、前述のDoran氏は、「この結果は、血管の炎症を抑える新たな方法の開発につながる可能性もある」との見方を示し、「大きな可能性を秘めた、ワクワクするような結果だ」と話している。

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