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医師主導で進むプレシジョン・メディシン―第15回 肺がん医療向上委員会

 4月13日(木)、都内で日本肺癌学会主催の第15回 肺がん医療向上委員会が開催され、「肺がん領域におけるプレシジョン・メディシン:その影響と将来」をテーマに後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)が講演を行った。自身が研究代表者を務める希少肺がん領域の遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」の取り組みを中心に、日本におけるプレシジョン・メディシン(精密医療)の進展と今後の展望について論じた。希少肺がんの治療薬開発を医師主導で 患者数の多いEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子に対しては分子標的薬の開発が進んでいるが、希少な遺伝子変化に対する製薬会社主導の積極的な治療薬開発、臨床試験の実施は難しい。しかし、非小細胞肺がんの1~2%で希少といわれる遺伝子変化であっても、年間約7万人が亡くなる肺がん患者数を考えれば決して小さな数字ではない、と後藤氏。 そこで2013年2月、全国の医療機関で対象患者を集めるための遺伝子スクリーニングを行い、医師主導の臨床試験を実施して治療薬開発を目指すプロジェクト「LC-SCRUM-Japan」が発足。非扁平上皮非小細胞がん患者を対象にスタートし、2015年には扁平上皮がん、小細胞がん患者にも対象が拡大され、2017年3月時点で4千例超の肺がん患者が登録されている。 2015年2月からは、消化器がん領域の遺伝子スクリーニングネットワーク「GI-SCRUM-Japan」と統合し、アカデミアと臨床現場、企業が一体となって進める大規模プロジェクト「SCRUM-Japan」として始動。全国約240の医療機関と製薬企業15社が参加している(2017年3月時点)。 これまでに実施された臨床試験によって、RET 融合遺伝子陽性肺がんに対するバンデタニブの有効性が確認され、現在適応拡大申請の準備が進んでいる。また、マルチプレックス遺伝子診断薬の臨床応用にも取り組んでおり、複数の遺伝子を一度に解析できる診断薬の承認申請に向けて準備中だ。地域差なく臨床試験にアクセス可能 後藤氏は、希少肺がん患者がこのネットワークを活用して病院・地域を超えて自分に合った臨床試験に参加するチャンスが生まれることが非常に重要、と話す。「LC-SCRUM-Japan」に全国の参加医療機関を通じて登録した患者は、まず検体(新鮮凍結組織+プレパラートあるいは胸水のどちらか)を提供する。提供された検体は検査会社で一元的に遺伝子解析され、結果が各医療機関に報告される。併せて、診断された遺伝子変化をターゲットとした企業治験を含む臨床試験の情報が提供されるという流れで、遺伝子検査費用は企業が負担するため、遺伝子検査費用について患者の自己負担は発生しない。日本ならではの「プレシジョン・メディシン」確立に向けて 2017年4月からは、「SCRUM-Japan」の第2期として2年計画のプロジェクトを開始。遺伝子解析結果と臨床データを紐づけた臨床ゲノムデータベースの構築や、血液を用いた解析が可能なマルチプレックス遺伝子診断薬の導入、肺がん免疫療法におけるバイオマーカー探索のための観察研究などに取り組む予定だという。 最後に後藤氏は、日本ならではの良質なサンプルに基づいた効率のよい遺伝子スクリーニング、臨床試験情報・患者情報の共有による試験登録や海外との統合解析等を引き続き推進しながら、より多くの患者に有効な治療薬を届けるための仕組みを構築し、世界に先駆けてプレシジョン・メディシンを確立していきたい、と結んだ。

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にきび治療のイソトレチノイン、うつ病リスクは?

 ざ瘡(にきび)のisotretinoin治療と、うつ病リスクの増加に関連はあるのか。これまで定量分析は行われていなかったが、台湾・台北医学大学のYu-Chen Huang氏らはシステマティックレビューとメタ解析を行い、両者に関連性はなく、むしろざ瘡の治療は抑うつを改善する可能性があることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年3月10日号掲載の報告。 研究グループは、isotretinoin治療を受けているざ瘡患者15例以上を対象にした対照試験または前向き非対照試験について、2016年9月30日までに公表された論文を検索し、うつ病の有病率ならびに抑うつスコアの変化を算出した。 主な結果は以下のとおり。・31試験がレビューに組み込まれた(無作為化試験はなし)。・対照試験では、isotretinoin治療群と他の治療群との間で、ベースラインからの抑うつスコアの変化に有意差はなかった(標準化平均差[SMD]:-0.334、95%信頼区間[CI]:-0.680~0.011)。・うつ病の有病率は、isotretinoin治療後に有意に低下した(相対リスク:0.588、95%CI:0.382~0.904)。・平均抑うつスコアは、ベースラインから有意に低下した(SMD:-0.335、95%CI:-0.498~-0.172)。・なお、試験間で大きなばらつきが観察された。

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2016年世界肺癌学会の動画レポートを公開:肺がん医療向上委員会

 特定非営利活動法人 日本肺癌学会「肺がん医療向上委員会」は、昨年(2016年)12月にオーストリアのウィーンで開催された第17回世界肺癌会議(WCLC/IASLC 2016)を取材し、全16本の動画レポートを制作し、公開した。 IASLC の「ペイシェント・アドボカシーアワード(Patient Advocacy Awards)」を受賞し、WCLC/IASLC 2016 に招待された「日本肺がん患者連絡会」代表の長谷川 一男氏の協力を得て、アドボカシーの視点から世界肺癌学会を取材し、最先端の学術的発表、世界各国のアドボカシー活動の現状などをまとめたもの。 第3世代TKI、免疫チェックポイント阻害薬、新ステージ分類など最新の発表の模様と、日本肺癌学会理事長の光冨徹哉氏の解説も収録されている。(ケアネット 細田 雅之)参考日本肺癌学会ニュースリリース(PDF)世界肺癌学会レポート:アドボカシーの視点から(動画サイト)

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これで良いのか?PD-L1測定

 非小細胞肺がん(NSCLC)において、PD-L1阻害薬のバイオマーカーPD-L1免疫組織化学染色(IHC)は薬剤ごとに固有のアッセイが対応しているが、どのアッセイで判定してもPD-L1染色の結果は同じなのか?PD-L1 アッセイを分析比較する産学協同のプロジェクト 承認済および臨床試験を含め、米国におけるPD-L1アッセイは、ニボルマブの28-8、ペムブロリズマブの22C3 、atezolizumabの SP142、durvalumabのSP263 という4種がある。Blueprint PD-L1 IHC Assay Comparisonプロジェクトは、この4種のPD-L1 のIHCアッセイを分析し、臨床的に比較し情報提供する初めての産学協同の試みである。4種のアッセイの染色陽性率と臨床診断性能を比較 合計39例のNSCLC腫瘍標本を、臨床試験と同様に上記4種のPD-L1 IHCアッセイで染色した。3名の専門家が、各々のアッセイの染色陽性強度を独立評価した。さらに各アッセイの固有カットオフを用いて患者を分類し、臨床的診断性能を比較した。各アッセイのカットオフ値は、28-8と22C3は腫瘍細胞1%(TC1%)、SP263は腫瘍細胞25%(TC25%)、SP142は腫瘍細胞1%そして/または免疫細胞1%(TC/IC 1%)であった。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1染色陽性腫瘍細胞の割合は、22C3、28-8、SP263では同等であったが、SP142はそれら3種よりも低かった。・4種のアッセイでの染色のばらつきは、免疫細胞のほう腫瘍細胞よりも高かった。 ・38例中19例(50.0%)はすべてのアッセイで共通してカットオフ値以上に、5例(13%)はすべてのアッセイで共通してカットオフ以下に分類された。 ・38例中14例(37%)は、アッセイによってカットオフ値以上か以下か異なる結果となった。・各アッセイのカットオフ値以上の割合は、28-8では60.5%、22C3では60.5%、SP263では52.6%、SP142では78.9%と、SP142で高かった。 この試験では、3つのアッセイについてPD-L1発現の分析性能は同等ではあるものの、アッセイとカットオフ値を替えることで、PD-L1ステータスの誤分類につながる可能性が示された。 異なる特異的なPD-L1カットオフを踏まえた上での代替染色アッセイの活用については、多くのデータが必要である、と筆者は述べている。

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ニボルマブ、再発・転移頭頸部がんに承認

 小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は2017年3月24日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」に対する国内製造承認事項一部変更の承認を得たと発表。 頭頸部がんの国内における年間患者数(甲状腺がんを除く)は2万4,000人と推定されている。再発または遠隔転移を有する頭頸部がんに対しては、プラチナ製剤による化学療法が第1選択として推奨されているものの、大多数の患者で局所に病勢進行が、50%以上の患者で3年以内の再発が認められている。プラチナ製剤投与後、早期に再発または遠隔転移が認められた患者に対しては、既存治療のなかで全生存期間(OS)の延長が検証されている薬剤はなく、新たな治療選択肢が期待されている。 日本人を含む再発または転移性頭頸部がん患者を対象とした国際共同試験(ONO-4538-11/CA209141)において、対照群のOSが5.06ヵ月であったのに対し、ニボルマブは7.49ヵ月(95%CI:5.49~9.10)であり、ニボルマブが有意にOSを延長した(HR:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.0101)。また、当試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一貫していた。(ケアネット 細田 雅之)参考小野薬品工業株式会社プレスリリースブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社ニュースリリースONO-4538-11/CA209141(CHECKMATE-141)試験(Clinical Trials.gov)

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日本人の扁平上皮NSCLCにおけるニボルマブの評価

 扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の2次治療におけるニボルマブ(商品名:オプジ-ボ)の有用性は、先行するCheckMate-017で示されている。本研究は、扁平上皮NSCLCの日本人患者におけるニボルマブの有効性および安全性を検討した、愛知県がんセンター中央病院 樋田 豊明氏らの研究。 この多施設第II相試験では、プラチナ含有化学療法後に進行した進行・再発扁平上皮がん患者に、ニボルマブ3mg/kgを、進行(PD)となるか忍容されない毒性が認められるまで、2週間ごとに投与した。主要評価項目は、独立放射線審査委員会(IRC)評価による全奏効率(ORR)、副次的評価項目は、試験実施施設評価によるORR、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間、初回奏効までの時間、最良総合効果(BOR)、および安全性である。この調査には、日本の17施設からの35例の患者が登録された。 主な結果は以下のとおり。・IRC評価のORRは25.7%(95%CI:14.2~42.1)であった。・試験実施施設評価のORRは20.0%(95%CI:10.0~35.9)、OSは16.3ヵ月(95%CI:12.4~25.4)、PFSは4.2ヵ月(95%CI:1.4~7.1)、初回奏効までの期間は2.7ヵ月(範囲:1.2~5.5)であった。 ・IRC評価のBORは、部分奏効(PR)25.7%、安定(SD)28.6%、進行(PD)45.7%であった。・治療関連有害事象は24例(68.6%)で報告され、大部分はステロイド療法またはニボルマブの中止を含む治療によって解決した。 ニボルマブはプラチナ含有化学療法後に増悪した進行・再発扁平上皮NSCLCの日本人患者において有効であり、十分な忍容性も示した。

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ペムブロリズマブ、進行性尿路上皮がんの2次治療でOS延長/NEJM

 進行性尿路上皮がんの2次治療において、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は化学療法に比べ全生存(OS)期間を延長し、治療関連有害事象も少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJoaquim Bellmunt氏らが実施したKEYNOTE-045試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年2月17日号に掲載された。本症の標準的1次治療はプラチナ製剤ベースの化学療法であるが、国際的に承認された標準的な2次治療はなく、2次治療のOS期間中央値は6~7ヵ月にすぎない。ペムブロリズマブはPD-1のヒト型モノクローナルIgG4κアイソタイプ抗体であり、第Ib相試験(KEYNOTE-012試験)および第II相試験(KEYNOTE-052試験)で本症への腫瘍縮小効果が確認されている。542例を対象とする国際的な無作為化試験 KEYNOTE-045試験は、進行性尿路上皮がんの2次治療におけるペムブロリズマブの有用性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験(Merck社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、腎盂・尿管・膀胱・尿道の尿路上皮がんと診断され、進行病変に対するプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の進行例、または筋層浸潤性局所病変に対する術前あるいは術後のプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の再発例で、全身状態(ECOG PS)が0~2の患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を投与する群または担当医の選択による化学療法(パクリタキセル、ドセタキセル、ビンフルニンのいずれか)を施行する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、全患者および腫瘍のPD-L1発現率(腫瘍に占める、PD-L1を発現している腫瘍細胞と腫瘍浸潤免疫細胞の割合)が10%以上の患者におけるOSおよび無増悪生存(PFS)の複合エンドポイントとした。 2014年11月5日~2015年11月13日に、29ヵ国120施設で患者登録が行われた。542例が登録され、ペムブロリズマブ群に270例、化学療法群には272例が割り付けられた。実際に治療を受けたのはそれぞれ266例、255例(パクリタキセル84例、ドセタキセル84例、ビンフルニン87例)だった。OS期間が約3ヵ月延長 ベースラインの年齢中央値は、ペムブロリズマブ群が67歳(範囲:29~88歳)、化学療法群は65歳(同:26~84歳)、男性がそれぞれ74.1%、74.3%を占めた。PD-L1発現率≧10%の患者の割合は、28.5%、33.8%だった。 全患者のOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が10.3ヵ月と、化学療法群の7.4ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.91、p=0.002)。また、PD-L1発現率≧10%の患者のOS期間中央値も、ペムブロリズマブ群が8.0ヵ月と、化学療法群の5.2ヵ月に比し有意に長かった(0.57、0.37~0.88、p=0.005)。 PFS期間中央値は、全患者(ペムブロリズマブ群:2.1ヵ月 vs.化学療法群:3.3ヵ月、HR:0.98、95%CI:0.81~1.19、p=0.42)およびPD-L1発現率≧10%の患者(0.89、0.61~1.28、p=0.24)とも、両群に差を認めなかった。 全患者の客観的奏効率はペムブロリズマブ群が有意に高く(21.1% vs.11.4%、p=0.001)、奏効までの期間中央値は両群とも2.1ヵ月であった。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群は4.3ヵ月だった。奏効期間が12ヵ月以上の患者の推定割合は、それぞれ68%、35%だった。PD-L1発現率≧10%の患者でも、ほぼ同様の結果であった。 治療関連有害事象の発現率は、全Grade(60.9% vs.90.2%)およびGrade 3~5(15.0% vs.49.4%)とも、ペムブロリズマブ群が少なく、治療関連の治療中止(5.6% vs.11.0%)も少なかった。治療関連死は、ペムブロリズマブ群が1例(肺臓炎)、化学療法群は4例(敗血症2例、敗血症性ショック1例、その他1例)に認められた。 ペムブロリズマブ群で頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象として、そう痒(19.5%)、疲労(13.9%)、悪心(10.9%)がみられたが、Grade 3~5の有害事象で発現率が5%を超えるものはなかった。2例以上に発現したGrade 3~5のとくに注目すべき有害事象は、肺臓炎(2.3%)、腸炎(1.1%)、腎炎(0.8%)であり、Grade 5は1例(肺臓炎)に認められた。 著者は、「ペムブロリズマブのベネフィットは、腫瘍および腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現にかかわらず認められた。バイオマーカーとしてのPD-L1の役割は、現在進行中のより早期の治療ラインの無作為化試験で明らかとなる可能性がある」としている。

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悪性黒色腫〔malignant melanoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義悪性黒色腫(メラノーマ:malignant melanoma)は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)ががん化して生じる悪性腫瘍である。表皮基底層部のメラノサイトが、がん化して皮膚に生じることが多いが、粘膜(口腔、鼻腔、肛門部など)や眼内(脈絡膜など)に生じることもある。■ 疫学人種によって発生頻度が大きく異なる。日本人では1~2/10万人年と見積もられている。白人では15~30/10万人年、黒人では0.5/10万人年程度の発生率である。■ 分類表皮に沿った悪性黒色腫細胞の組織学的増殖様式の特徴によって、以下の4型に分けるClark分類が用いられている(図1)1)。(1)表在拡大型: 白人の悪性黒色腫の70~80%を占める病型で、男性の背部や女性の下肢などに好発する(図1a)。日本人では全悪性黒色腫の20%程度を占め、近年増加している。(2)末端黒子型: 掌蹠や爪部を侵す病型であって(図1b)、日本人の悪性黒色腫の最多病型で50%程度を占める。(3)悪性黒子型: 高齢者の顔面に好発する病型で(図1c)、日本人、白人のいずれでも10%程度を占める。(4)結節型: 病変周囲に色素斑を伴わない病型で(図1d)、全身各所に生じうる。日本人の悪性黒色腫の15~20%を占める。なお最近、Bastianらによる新たな分類法が提案され、遺伝子変異を反映する分類として注目されている2)。■ 病因日光からの紫外線が主要発がん因子であり、表在拡大型は強い紫外線への間欠的曝露が、悪性黒子型は長年月にわたる慢性的な紫外線曝露が発生に関与するとされている。ただし、末端黒子型の発生には紫外線は関与せず、機械的刺激の関与が推定されている。■ 症状腫瘍細胞によるメラニン色素産生のために黒褐色調の病変としてみられることが多い1)。臨床的には濃淡不整な不規則形状の黒褐色斑として生じてくる。その後、一部に隆起性結節が生じ、さらに進行すれば潰瘍化を来す。■ 予後Tumor thickness(表皮顆粒層から最深部の悪性黒色腫細胞までの垂直距離をmm単位で表すもの)が最も重要な予後因子であり、T分類もこれによって規定される。AJCC(American Joint Committee on Cancer)の病期別の5年生存率は(同一病期でも亜病期によってかなり大きな差があるが)、病期Iが90%以上、病期IIが50~80%、病期IIIが25~60%程度、病期IVが10%程度である3)。後掲の表に各病期の概要を示した。なお、AJCCの予後予測ツールがネット上に公開されているので参考にされたい(http://www.melanomaprognosis.net/)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断悪性黒色腫の原発巣は、臨床的には大型で不整形状の黒褐色病変としてみられ、多くは色調に無秩序な濃淡差が認められる(図2a)。黒褐色調を呈する皮膚病変は悪性黒色腫以外にも多数存在するので、慎重に鑑別しなければならない1)。主要な鑑別診断と鑑別のポイントは、以下のとおりである。(1)色素細胞母斑: 径7mm程度までの小型の病変で、形状・色調に不規則、不整は目立たない(図2b)。ただし、先天性母斑は大きなことがある。(2)脂漏性角化症: 境界きわめて明瞭な隆起性結節としてみられ、表面が角化性で規則的な顆粒状凹凸を示すことが多い(図2c)。(3)基底細胞がん: 高齢者の頭頸部に好発し、青黒色調の局面、結節としてみられ、潰瘍化することも多い。周囲に色素斑を伴わないこと、病変表面が平滑で、透明感を呈することが特徴である(図2d)。■ ダーモスコピー診断近年、皮膚科診療に導入された診断法であり、乱反射を防止したうえで病変部に白色光を照射しながら10~20倍の拡大像を観察する。肉眼的に認識できないさまざまな所見を明瞭に観察することができ、とくに色素性皮膚病変の診断に有用である。その詳細は成書に譲るが4)、一点だけ日本人に多い掌蹠の悪性黒色腫の診断への有用性を記載する。掌蹠の悪性黒色腫は、ダーモスコピーにて早期段階から皮野(指紋)の隆起部(皮丘)に一致する色素沈着(parallel ridge pattern)を呈するのに対し、良性の母斑は皮野の溝(皮溝)に一致する色素沈着(parallel furrow pattern)を呈する(図3)。この所見の差異は両者の鑑別にきわめて有用であり、掌蹠の悪性黒色腫の早期検出と診断確定に役立つ4、5)。■ 病理組織診断臨床所見やダーモスコピー所見にて診断が確定できない場合は、生検して病理組織学的に診断を確定する。生検は可能ならば全摘生検が望ましい。生検することにより、もっとも重要な予後因子であるtumor thicknessを計測することもできる。悪性黒色腫は病理組織診断も難しいことが知られている。悪性黒色腫早期病変と良性のClark母斑の鑑別、結節型などの悪性黒色腫とSpitz母斑(良性の母斑の一種で、増殖するメラノサイトが顕著な核異型を示す)との鑑別がしばしば問題になる。疑わしい症例は、この方面のエキスパートにコンサルテーションすることが望ましい。■ 画像検査と病期の確定悪性黒色腫と診断されたら、AJCCの病期を決定する。原発巣のtumor thicknessを評価するとともに、理学的に所属リンパ節やその他の部位・臓器への転移がないかを検討する。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も施行する。PETも悪性黒色腫の転移の検出に、きわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AJCCの病期に対応して表のような治療を施行することが推奨されている。病期I、IIの段階ならば、原発巣の外科的切除を施行する。切除マージンはtumor thicknessによって規定されるが、早期病変は0.5~1cmのマージン、進行病変は2~3cmのマージンが推奨されている。症例によってはセンチネルリンパ節生検の実施を考慮する。病期IIIには原発巣の切除に加えて、所属リンパ節の郭清術を施行する。メラノーマは化学療法に抵抗性で、標準薬とされてきたダカルバジン(商品名:同)でも奏効率は15%程度に過ぎない。近年、分子標的薬が病期IVあるいは外科的根治術不能な病期IIICのメラノーマ患者に有効なことが明らかにされ、治療方針が激変した。病期IVにはMAPK経路の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が選択される6)。現在、わが国で保険適用となっているのは、MAPK阻害薬では変異BRAF阻害薬のベムラフェニブ(同:ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(同:タフィンラー)とMEK阻害薬のトラメチニブ(同:メキニスト)である。免疫チェックポイント阻害薬ではニボルマブ(抗PD-1抗体、同:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、同:キイトルーダ)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体、同:ヤーボイ)である。いずれの薬剤も特有の強い有害反応を有するので、施設内で治療チームを設けて対応することが望ましい。薬剤の選択順位は、確定的な推奨ではないが、増殖スピードの速いメラノーマにはまずベムラフェニブ単独またはベムラフェニブとトラメチニブの併用療法を考える。増殖スピードの遅いメラノーマには当初から抗PD-1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)あるいはイピリムマブを用いる。抗PD-1抗体はイピリムマブよりも奏効率、有害反応の点から臨床的意義が高い可能性がある。ただし、腫瘍細胞がPD-L1陰性の場合はイピリムマブを選択する。これらの治療に抵抗性となった高度進行例には、適切な緩和療法を施行する。4 今後の展望ニボルマブとイピリムマブの併用療法の治験が進んでいる。また、上記以外の分子標的薬も続々と開発され、わが国においても臨床治験が進められている。術後補助療法としてニボルマブとイピリムマブの有用性の比較やペムブロリズマブの有用性も治験が実施されている。5 主たる診療科皮膚科が主たる診療科であり、診断から治療まで一貫した対応ができる。病理組織診断には病理科が、切除後の外科的再建などには形成外科が対応することもある。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の使用にあたっては施設内に多職種診療チームを発足させることが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚悪性腫瘍学会が作成した日本皮膚科学会皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン(ほぼ同じものがMindsと日本がん治療学会のホームページにも掲載されている)(医療従事者向けのまとまった情報)米国NCCNの診療ガイドライン(リスト中“Melanoma”の項を参照)(医療従事者向けの英文のまとまった情報)国立がん研究センターがん情報サービス:「悪性黒色腫」患者用解説冊子(一般利用者向けのまとまった情報)1)斎田俊明ほか編. 1冊でわかる皮膚がん. 文光堂;2011.p.220-237.2)Curtin JA, et al. N Engl J Med. 2005;353:2135-2147.3)Balch CM, et al. J Clin Oncol. 2009;27:6199-6206.4)斎田俊明編. ダーモスコピーのすべて 皮膚科の新しい診断法.南江堂;2012.5)Saida T, et al. J Dermatol. 2011;38:25-34.6)宇原 久. 癌と化学療法. 2016;43:404-407.公開履歴初回2014年02月27日更新2017年02月21日

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尿路上皮がんにニボルマブ承認:FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年2月2日、プラチナベースの化学療法中および後、あるいは白金含有化学療法によるネオアジュバントまたはアジュバント療法12ヵ月以内に増悪した局所進行・転移性尿路上皮がん患者の治療に、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)を迅速承認した。 この承認は、上記の尿路上皮がん患者270例を対象にしたシングルアーム試験の結果に基づく。患者は、疾患進行が認められるか忍認できない毒性が認められるまで、2週間ごとにニボルマブ3mg/kgの投与を受けた。RECIST1.1評価基準を用いた独立した放射線学的レビュー委員会によって確認された客観的奏効率は、19.6%(270例中53例、95%CI:15.1~24.9)であった。 7例の患者がCRを示し、46例がPRを示した。カットオフ時の推定奏効期間中央値は10.3ヵ月であった。 多く見られた副作用(20%以上)は、疲労、筋骨格痛、悪心、および食欲低下であった。 ニボルマブに起因する肺炎や心血管障害で死亡した4例の患者を含め、14例の患者が疾患進行以外の原因で死亡した。副作用は患者の17%において用量の中断をもたらした。 FDAは、このニボルマブの申請にブレークスルーセラピー指定と優先審査資格を与え、目標日の約1ヵ月前に承認に至った。ニボルマブは昨年のatezolizumabに続き、尿路上皮がんにおいてFDAの承認を受けた2つ目の免疫チェックポイント阻害薬となった。米国食品医薬品局(FDA)Approved Drugs

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第36回

第36回:肺がん免疫チェックポイント阻害薬 最近のまとめキーワードatezolizumabペムブロリズマブニボルマブイピリムマブN Engl J MedASCO-GIReck M, et al. N Engl J Med. 2016; 375: 1823-1833.2017 GI Cancers Symposium:Nivolumab Demonstrated Efficacy and Improved Survival in Patients With Previously Treated Advanced Gastric Cancer

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ニボルマブ 標準治療不応の胃がんに良好な効果(ONO-4538-12 試験):ASCO-GI 2017

 小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社は2017年1月20日、標準治療が不応または不耐の切除不能な進行または再発胃がん患者を対象に実施したニボルマブ(商品名:オプジーボ)の無作為化二重盲検第III相臨床試験(ONO-4538-12試験)の結果が、2017 Gastrointestinal Cancer Symposium(ASCO-GI 2017)で発表されたことを明らかにした。 ONO-4538-12 試験は、日本、韓国、台湾において、標準治療が不応または不耐の切除不能な進行または再発胃がん(食道胃接合部がんを含む)患者を対象にONO-4538(ニボルマブ)の有効性および安全性について、プラセボ群を対照として実施された多施設共同第III相臨床試験である。主要評価項目は全生存期間(OS)。副次的評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性等が含まれた。本試験では、過去に2回以上の化学療法後に不応であり、ECOG PS 0~1で20歳以上の上記患者493例を3mg/kgのニボルマブ(n=330)とプラセボ(n=163)に2:1 の比率で無作為に割り付け、病勢進行、もしくは高度な有害事象などの発現が認められるまで2週間ごとに投与された。 本臨床試験の最終解析において、ニボルマブ群がプラセボ群に対して主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示した(HR:0.63、95%CI:0.50~0.78、p<0.0001)。最後に患者が無作為化されてから5.6ヵ月後のOS中央値はニボルマブ群で5.32ヵ月、プラセボ群で4.14ヵ月であった。12ヵ月全生存率は、ニボルマブ群で26.6%、プラセボ群で10.9%、6ヵ月全生存率は、ニボルマブ群で46.4%、プラセボ群で34.7%であった。副次的評価項目であるORRは、ニボルマブ群で11.2%(95%CI:7.7~15.6)、プラセボ群で 0%(95%CI:0.0~2.8)(p<0.0001)であった。PFS中央値は、ニボルマブ群で1.61ヵ月、プラセボ群で1.45ヵ月であった(HR:0.60、95%CI:0.49~0.75、p<0.0001)。Grade3 以上の薬剤関連有害事象(AE)は、ニボルマブ群の11.5%、プラセボ群の5.5%で発現した。薬剤関連AE(Gradeを問わず)による投与中止は、ニボルマブ群で2.7%、プラセボ群の2.5%であった。本臨床試験のデータは、米国サンフランシスコで開催された 2017 GastrointestinalCancer Symposium(ASCO-GI 2017)にて発表された。(ケアネット 細田 雅之)参考ブリストルマイヤーズスクイブ社・小野薬品工業:ニューススリリース(PDF)ASCO-GI 2017の発表ONO-4538-12試験(ClinicalTrials.gov)

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第34回

第34回:脳転移、せん妄…緩和ケアの話キーワード脳転移せん妄LancetJAMA Intern MedMulvenna P, et al. Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy (QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial. Lancet. 2016; 388: 2004-2014. Agar MR, et al. Efficacy of Oral Risperidone, Haloperidol, or Placebo for Symptoms of Delirium Among Patients in Palliative Care: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2016 Dec 5. [Epub ahead of print]

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サン・アントニオ2016 レポート-3

レポーター紹介オランダから乳房温存手術(BCS:breast conserving surgery)後の放射線治療(以下、RT)のタイミングがおよぼす10年生存率への影響に関する報告があった。グループ1:BCS→RT→+/-CT(2,759例)<42日、 42~55 日、 >55 日、グループ2:BCS→CT→RT(1,120例)<112日、 112~140日、 >140日、に分けて検討している。グループ1(-CT)では>55 日が<42日と比較して無病生存率、無遠隔再発率共に有意に良好であり、+CTでは>55 日と42~55 日が<42日と比較して無病生存率が有意に良好であった。グループ2では再発率は>140日で有意に高かった。しかし交絡因子(年齢、グレード、転移リンパ節個数、ホルモン受容体の状況、内分泌療法の使用、他院RT施設への紹介)で調整すると、グループ1(-CT)でのみ>55 日が<42日と比較して無遠隔再発率が良好であった。結論としてRTをBCSの後にすぐに行う必要はないと述べている。過去の報告では、BCSからRTまでの期間と生存率との関連についてはcontroversialであり、早い方が良いというものもあれば、むしろ遅らせた方が生存率は高いという報告もある。現状では期間にあまりこだわりすぎず、がんの性質や術後の状況に応じて柔軟に対応するのがよいだろう。きわめて増殖率の高い一部の乳がんではどの治療も遅らせないのが賢明であろうと考える。KAMILLA研究という、すでにHER2標的薬と化学療法をしっかり受けた患者に対するT-DM1の安全性と有効性をみる第III b相試験から、脳神経系(CNS)転移の有無でのT-DM1の安全性と有効性を確認し、またCNS転移への効果を評価した結果が報告されていた。安全性と有効性に関してはあまり参考にならないが、CNS転移への効果は大変興味のあるところである。測定可能なCNS転移を持つ患者26例のうち、CRが3例、PRが24例、6ヵ月以上のSDが27例であった(CBR43%)。またCNS病変において最大径が30%以上減少したのは54例(43%)であった( CNS以外がSDまたはPDであった症例も含む)。全身の転移状況にかかわらずCNS転移の減少が4割程度にみられるというのは非常に大きな効果である。しかし、CNS転移以外がPDでCNS転移がPRであった場合の治療方針が難しいところである。通常T-DM1とペルツズマブの併用による生存率向上効果は認められていないが、このような症例には試す価値があるかもしれない。乳がんの既往を持つ女性患者におけるサーベイランスとしてのマンモグラフィと乳房MRIの効果について評価した報告があったので紹介する。米国5地域の乳がんサーベイランスコンソーシアムレジストリーからのデータで、マンモグラフィのみ33,938件、乳房MRI 2,506件であった。データはプロペンシティスコアマッチングで調整されており、無作為化比較試験に近似させたものとなっている。欠損値は5件と非常に少ないうえに補正も行われている。第2がんのリスクが最も高い女性は含まれていないようである。マンモグラフィと乳房MRIとで乳がん発見率は変わらなかったが、MRI施行例では乳房生検率が有意に高かった。このことから乳がん術後の女性に乳房MRIをルーチンに行ってもよい効果は及ぼさないようである。このデータは非常に重要だと考えている。BRCA1/2遺伝子変異保有者には年1回の乳房MRIが推奨されているが、そのような乳がん発症の大きなリスクを持っていない方には、サーベイランスとしての乳房MRIは有用性が確認されないということである。遺伝子検査をしなくても乳房MRIを希望する方を時々みかけるが、やはりリスクに基づいてサーベイランス法を決定することが大切であり、重要な個別化医療の1つである。

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サン・アントニオ2016 レポート-2

レポーター紹介DBCG 07-READは、6サイクルのDC(ドセタキセル+エンドキサン)と3サイクルのEC→3サイクルのDを比較する第III相試験である。アントラサイクリンはトポイソメラーゼⅡ阻害剤であるため、トポイソメラーゼⅡA(TOP2A)の変化により治療効果に差がある可能性がある。過去のDBCG89D試験(CMF vs CEF)の結果からTOP2A正常例ではアントラサイクリンの有益性がなかったことから、TOP2Aの遺伝子が正常である症例(TOP2A/Cen17 ratio 0.8~1.9)に絞って比較を行った。初回解析として5年の経過観察を行ったが、DFS、OS共にまったく差がなかった。各群約1,000例と大規模であり、生存曲線もほぼ完全に重なっていることから、さらに経過観察しても有意差は出ないであろう。有害事象の頻度も、末梢性浮腫、筋肉痛/関節痛、末梢神経障害などの割合は両群でまったく変わらないことから、TOP2A遺伝子が正常な症例ではアントラサイクリンのベネフィットはなく、DCのみで良いであろうということになる。さて、TOP2A遺伝子をアントラサイクリン使用の指標とすべきかどうかであるが、TOP2Aに関するメタアナリシスでは、TOP2A増幅/欠失例ではわずかにCMFよりアントラサイクリンでベネフィットがありそうではある(Di Leo A, et al. Lancet Oncol. 2011; 12: 1134-1142.)。別の報告では、CEP17重複またはTOP2A異常例でやはりCMFよりアントラサイクリンでベネフィットがあるとのことである(Bartlett JM, et al. J Clin Oncol. 2015; 33: 1680-1687.)。しかしその差はわずかであるようであり、また、ASCO2016レポートのABC試験のところでも述べたが、TC6サイクルが行われているものの、アントラサイクリンにしてもタキサンにしても4サイクルを超えて有効性を示している報告はないので、DCを行うとしても現時点では4サイクルで十分と考えられる。術前化学療法の効果を予測するためのバイオマーカーとしての腫瘍リンパ球浸潤(TILs)の意義について、ドイツの6つの術前化学療法試験(3,771名)のメタ分析が報告された。TILsは推奨に従って評価された(Salgado R, et al. Ann Oncol. 2014)。pCR率はトリプルネガティブ、HER2+、Lum/HER2-ともTILsが多いほど高かった。一方、無病再発はトリプルネガティブとHER2+で有意差があるものの、Lum/HER2-ではなかった。しかし、OSはトリプルネガティブとLum/HER2-で有意差があり、HER2+ではなかった。HER2+とTNBCでは高いTILsで予後良好の傾向があり、Lum/HER2-では内分泌療法抵抗性に関係している可能性が示唆されている。ただ、いずれにしても予後の差はわずかであり、TILsを指標に治療方針を決める段階にはなく、もっと多くの研究結果が統合されたり、単なるTILsの評価だけでなくさらなる指標が組み合わされたりすることで、初めて臨床的に有用なものとなるであろう。また、TILsの状況によってどの種類の化学療法(+分子標的薬)が効果をもたらすかということも合わせて考えていく必要があろう。Poster(およびPoster Discussion)より乳がん腋窩治療後の患側上肢からの点滴は、従来までは一般に禁忌とされてきたが、2014年のサン・アントニオ乳癌シンポジウムで大規模な前向き試験の結果が報告され、乳がん術後患側上肢からの静脈注射は浮腫の増加につながらないとの結果であった。この結果は論文化され(Ferguson CM, et al. J Clin Oncol, 2016;34:691-698.)、当院でも乳がん術後患側上肢に対するマネージメントを変更した。しかし、静脈注射とはいってもさまざまであり、血管刺激性がある薬剤には不安もあり、抗がん剤点滴に関して従来の考え方を守っていた。今回は抗がん剤静脈注射とリンパ浮腫の関連を前向きに検討したものが報告された。630名の乳がん術後患者に対してリンパ浮腫の発症率をみた。化学療法は術前(16%)または術後に受けていた。2年間のリンパ腫発生は全体として12.32%であり、末梢点滴群9.13%、中心静脈ポート群16.16%、 末梢点滴+中心静脈ポート群15.99%であった。多変量解析にてBMI≧30、リンパ節転移の個数のみがリンパ浮腫のリスク因子であり、点滴経路や化学療法のサイクル数、薬剤の種類(タキサン、非タキサン)は関連していなかった。これらのことから、患側上肢からの穿刺はリンパ浮腫のリスクを増加させないだろうと結論している。しかし、末梢点滴において患側からどれくらい穿刺されたのかが、方法にも結果にも記載されていないため、この結論を素直に受け取ることができない。論文化されるのを待ち、内容をよく吟味してから改めて検討したいところである。ここからOncotype DXの報告をいくつか紹介する。SEERレジストリを用いた研究である。n0またはn1でHR+、HER2-、Grade3の腫瘍を持つ患者の5年乳がん特異的生存率を評価することが目的である。9,201名の患者が対象となっており、n+でも50歳未満の方が20%以上含まれている。n+での化学療法施行の割合は低リスクで27%(腫瘍径≦2cm)、22%(>2cm)、中間リスクで56%(腫瘍径≦2cm)、63%(>2cm)、高リスクでは72%(腫瘍径≦2cm)、76%(>2cm)であった。低リスク(<18)と中間リスク(18~30)の生存率は、Grade3腫瘍でも、n0、n+に関わらず同程度にきわめて予後良好であった。しかしGrade3、高リスクでは、n+や腫瘍径によらず有意に予後不良であった。ここで学ぶべきことは、単に腫瘍のGradeが3、n+というだけでは、治療選択には不十分であり、やはりこのような多遺伝子アッセイを利用したほうが、予後と化学療法の選択をするのにより適しているということ、中間リスクはほぼ低リスクと同等であること、米国ですでに閉経の有無にかかわらずn+でもOncotype DXが用いられているということだろう。Oncotype DXをn+にも行ったこれまでの臨床試験が総括されていた(9,833名)。transATAC/SWOG S8814/ECOG E2197/NSABP P-28/PACS-01/SEER/WSG Plan Bの7試験を要約している。2014年までのエビデンスに基づくASCOガイドラインでは、n+においてこのようなエビデンスの多くを考慮に入れていないが、最近のNCCNガイドラインでは素早くn1~3に対してOncotype DXのオプションを取り入れている、という違いをサマリーで述べていた。しかし、NCCNガイドライン(Version 2. 2016)をみると変わっておらず、次期改訂で修正されるということだろうか。次は聖路加国際病院からの報告である。目的は低リスクのER陽性浸潤性乳がんを予測するための臨床病理学的因子を明らかにすることである。症例はすべてn0であり、99.1%がAllred7以上であった。多変量解析からはPRとKi67が重要な予測因子であり、PR強陽性(Allred7以上)、Ki67<24%であれば92.4%の確率で低リスクであった。このようなデータからいえることは、ER強陽性、PR強陽性、Ki67がおおむね20%以下であれば、低リスクであり、Oncotype DXによる検索はまず不要ということになる。このことは腫瘍径やnの状況にはよらないと思われる。ただし、Ki67の評価は診断医、染色条件、判定部位によってかなり変わってしまうこともあるので慎重に判断する必要はあろう。

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サン・アントニオ2016 レポート-1

レポーター紹介はじめに2016年SABCSは12月6日~10日まで5日間開催された。今年から会場が新しくなり、非常に快適であった。しかし、外は風も強くとても寒い日が続いた。メイン会場は従来と雰囲気は変わらないが、柱やスクリーンが障壁となって、座席によりスライドの見えにくいところが多かったのが難点である。来年より改善して欲しいところである。今回私たちの臨床をすぐに変えるようなものはほとんどなかった。しかし、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)をはじめとするがん免疫、ERやHER2も含めた体細胞変異、BRCA1/2以外の胚細胞変異、多遺伝子アッセイ、リキッドバイオプシー(循環癌細胞、セルフリーDNA)、マイクロRNA(miRNA)、がん幹細胞、腫瘍の不均一性といった話題は引き続き多くみられた。また、臨床試験デザインの演題も多く採用されていたように思う。まずはOral sessionから紹介する。NSABP B-42は閉経後乳がんにおいて、アロマターゼ阻害剤(AIs)を5年服用後(タモキシフェン3年以下服用も含む)に、さらにレトロゾールを5年延長した場合の効果をみる試験である。現在までにタモキシフェン5年服用後にレトロゾールを5年延長するMA.17試験でその有効性が示されている。MA.17R試験では、レトロゾール5年にさらにレトロゾール5年を追加したが、遠隔再発抑制効果はほとんどみられなかった。しかし、それ以前にタモキシフェンを5年使用していた患者も多く含まれているため、私たちが知りたい条件とは異なっていた。B-42試験では3,964例が2群に割り付けられた。約40%の患者が治療を完遂できず、そのうち治療拒否または中止は14%、有害事象によるものは10%であった。主要評価項目である無病生存期間は、7年でレトロゾール群84.7%、プラセボ群81.3%と有意差が認められた(p=0.048、 HR=0.85:0.73~0.99)。さらに遠隔再発もそれぞれ3.9%、5.8%で有意差を認めた(p=0.03、HR=0.72:0.53~0.97)。しかし全生存期間には差を認めなかった(92.3% vs.91.8%)。すなわち、アロマターゼ阻害剤5年にさらにレトロゾール5年を延長することによる利益は全体としてはわずかである。スライドでは示されなかったが、予後不良(リンパ節転移陽性など)群などでは効果が大きくなると思われる。そのため、TAM→TAM、TAM→AIs、AIs→AIs共に、より予後不良と考えられる患者には使うメリットがあろうと考えられ、個々の患者の状況により対策を立てるのが賢明である。DATA研究は2~3年のタモキシフェンの後に3年または6年のアナストロゾールを服用した際の効果を比較する第III相試験である。3年無病生存率は79.4% vs.83.1%で有意差はみられなかったが(p=0.07、HR=0.79:0.620~1.02)、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、pN+、化学療法施行例に限ると75.9% vs.86.0%で有意差が認められた(p=0.01、HR=0.58:0.39~0.89)。なお、全生存率にはまったく差は認められていない。まだ観察期間も短く、何ら結論は出せないが、他の延長試験と合わせて考えると、やはり再発リスクが高いグループでアロマターゼ阻害剤の延長を考慮したほうが良さそうである。BRCA1/2乳がんにおける体細胞遺伝子の変化について、メモリアル・スローンケタリングがんセンターから報告があった。BRCA1/2乳がんは先天的に一方のアレルのBRCA1/2遺伝子が変異により機能喪失しており、2ヒットとしてもう一方のアレルも何らかの理由で機能喪失すると乳がんに進展していく。BRCA1では29例中28例で両アレルが失活していたが、1例では失活しておらず散発性の乳がん発症と考えられた。両アレルの失活に伴い、その他の遺伝子変異がTP53-76%(ER陰性-95%、ER陽性-25%)、NF1-10%、PTEN-10%、RB1-7%に認められた。BRCA2では10例中全例でLOHが認められた。BRCA1/2胚細胞変異保有者における散発性乳がんの割合とBRCA1/2遺伝子変異に伴う他の体細胞遺伝子変異は、私も兼ねてより知りたかったことの1つだったのでここに紹介した次第である。すなわち、BRCA1/2遺伝子変異保有者ではその大半が遺伝性乳がんとして発症し、散発性乳がんはごくわずかであるということである。当然のことながら散発性乳がんは遺伝の有無にかかわらず発症する訳であるが、遺伝を持っている方は散発性乳がん発症に加え、より大きな遺伝性乳がん発症のリスクを持っていると考えられ、やはり個別化医療としての選択的なサーベイランスを行うことが大切であろう。化学療法に伴う脱毛を予防するための頭皮冷却に関する無作為化比較試験SCALPの結果が報告された。本研究はPaxmanの頭皮冷却装置が用いられているが、これは国内でもすでに薬事承認されている。182例の患者が無作為化割り付け(冷却群119例、非冷却群63例)され、1レジメンでの効果が検討された。その結果、非冷却群での脱毛は100%であったのに対し、冷却群では脱毛を50.5%予防できていた。薬剤別での予防率はタキサンで65.1%であったが、アントラサイクリンではわずか21.9%であった。冷却により強い不快感を訴えた方はわずかであった。比較的良好な結果を示しているといえるが、本報告の問題点として、薬剤の詳細(種類や投与量)がわからないこと、最も多く使われているアントラサイクリン+タキサンレジメンでの脱毛の割合が不明であることが挙げられる。また、パクリタキセルの毎週投与では頭皮冷却の回数が非常に増えてしまうことが懸念される。実地臨床では、時間が長くなり化学療法室を1例で長く占拠してしまうこと、化学療法室のスペース不足、誰に行うのか、といった問題があるのが現実であり、データ不足と相まって普及にはまだ困難を伴いそうである。アロマターゼ阻害剤関連の筋骨格系症状(AIMSS)に対するデュロキセチンの効果をみる無作為化比較試験の結果が報告された(SWOG S1202))。慢性疼痛の治療薬としてFDAで認可されているセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(SNRI)の1つであるデュロキセチンの効果をみたものである。299例の患者をデュロキセチンとプラセボを12週間内服する群にそれぞれ割り付け、QOL評価を行った。その結果、関節痛や関節のこわばりはデュロキセチン内服群で有意に改善傾向がみられ、QOLも有意に向上していた。しかしながら、その差はわずかにみえる。デュロキセチン群の方で明らかに有害事象が多いこと、プラセボ群でもそれなりの効果と有害事象が出ていることから、直ちにデュロキセチンを使うというよりは1つの提案をしてみたい。まずは何らかの副作用の少ない薬剤(たとえば漢方薬、ビタミンD3など)を使って効果を確認し、改善が不十分であればデュロキセチンに変えてみるなどすると、有害事象を最小限にしながら治療効果を上げることができるのではないか。

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新たな時代を迎えた「がん免疫療法

 「免疫チェックポイント阻害薬」の登場以降、がん治療における免疫療法には大きな関心が集まっている。 長年、がん免疫療法分野の研究に携わってきた慶應義塾大学医学部 先端医療科学研究所 教授の河上 裕氏は、医療課題から複合免疫療法まで免疫療法を取り巻く概況について講演した。 当月開催のプレスセミナー「免疫チェックポイント阻害薬の基礎と今後の展望」(主催:アストラゼネカ株式会社 2016年12月13日都内開催)より内容を抜粋して紹介する。求められる、使い方の工夫 免疫チェックポイント阻害薬(以下、免疫CP阻害薬)の登場以降、「がん免疫療法」には注目が集まっている。 ヒトの体には免疫機構が備わっているが、遺伝子異常を持つがん細胞には免疫防御をくぐり抜ける「がん免疫逃避機構」がある。この抗腫瘍免疫にブレーキをかける経路が、免疫チェックポイントと呼ばれるCTLA4経路や PD-1/PD-L1経路である。そして、このブレーキを解除するのが、免疫CP阻害薬である。 治療奏効率の高さで注目を集める免疫CP阻害薬だが、医療経済的課題から議論は続いている。河上氏は「使い方の工夫が必要」と述べる。使用時期、使用症例の選択は? 使い方で問題となるのが「使用時期」だ。河上氏は、「悪性黒色腫や肺がんは未治療例への奏効率が高く、最初に使うことで治療成績が上がる可能性がある」という。しかし、無駄な治療は前述の医療経済的課題につながる。 そこで「使用症例」の選択が重要となる。臨床で唯一使用されているバイオマーカーは「PD-L1」のみだが、今後臨床応用が期待されているバイオマーカーには以下がある。・CD8+T細胞の腫瘍湿潤度・DNA突然変異数、DNA修復関連遺伝子の不良(MMR、POLE、BRCA1/2など)・腫瘍組織の遺伝子発現解析(IFN signature,CTL signature)・治療後のTCRレパートリー解析 これらマーカーのさらなる開発、精度向上が期待されている。 このほか、効きが悪いがん種も明らかになりつつある。「膵がん」「大腸がん」「多発性骨髄腫」「前立腺がん」などは効きが悪い可能性が高い。そこで「効きが悪い症例をどこまで効く状態に変えられるか?」というアプローチにも注目が集まっている。それが「複合免疫療法」である。複合免疫療法で、効きが悪い症例を効く状態に 現在、「複合免疫療法」を検討した臨床試験は複数進行中だ。同じ免疫制御系の組み合わせとして注目されるのが、「抗PD-1 抗体+抗CTLA4抗体」の併用。2剤の併用は単剤治療に比べ奏効率を増加させたと報告されており、補完的作用が期待される。 そのほか、化学療法剤や分子標的治療薬と免疫CP阻害薬とを組み合わせた複合免疫療法の検討も進行中だ。抗腫瘍免疫ネットワークを総合的に制御する「複合免疫療法」の開発に期待がかかる。新しい時代を迎えたがん免疫療法 がん免疫療法はすでに標準がん治療の仲間入りをした。今後、新技術の開発によりがん免疫病態の解明も進むだろう。しかし、米国で1,000以上の臨床試験が進行している一方、日本での臨床試験実施数はまだまだ不足している。 河上氏は「今後は日本でも産学官連携がいっそう重要となる。日本で実施する臨床試験により、免疫病態の解析が進むことを期待したい。」と述べ、講演を締めくくった。

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ニボルマブ、小細胞肺がんに単独およびイピリムマブ併用で有望な効果:CheckMate-032

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は12月7日、治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象に、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)単剤療法およびニボルマブとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を評価した第I/II相非盲検 CheckMate-032試験におけるコホートの最新結果を発表した。 追加の追跡調査において、確定奏効率(主要評価項目)は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群で25%(95%CI:15~37)、ニボルマブ単剤群で11%(95%CI:6~19)であった。奏効は、プラチナ製剤感受性および治療歴にかかわらず認められた。併用群では、患者3例が完全奏効を達成した。推定2年生存率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群で30%、ニボルマブ単剤群では17%であった。この解析において、新たな安全性シグナルは認められなかった。Grade3/4の治療に関連する投与中止率は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群で10%、ニボルマブ単剤群で4%であった。これらの結果は、ウィーンで開催された第17回世界肺癌学会議で発表された。  CheckMate-032試験は、進行期または転移性固形がんを対象に、ニボルマブ単剤療法またはニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性と有効性を異なる用量および投与スケジュールで評価した進行中の第I/II相非盲検臨床試験。本試験では、PD-L1発現および非発現患者の両方を組み入れた。主要評価項目は、RECIST 1.1基準に基づく治験担当医師の判定による確定奏効率(ORR)。副次的評価項目は、安全性、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)および奏効期間(DOR)であった。 CheckMate-032試験の小細胞肺がん(SCLC)コホートには、プラチナ製剤による化学療法の1次治療を含め、1種類以上の治療歴を有する進行性の患者217例が組み入れられた。この解析において、患者はニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに、またはニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを3週間ごとに4サイクル静脈内投与され、その後ニボルマブ3mg/kgが2週間ごとに投与された。すべての患者は、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで投与を継続した。ニボルマブ・イピリムマブ併用群では中央値21ヵ月、ニボルマブ単剤群で15.7ヵ月追跡調査された。ベースライン時に患者の73%がPD-L1 発現について評価可能であり、そのうち17%において、PD-L1発現レベルが1%以上であった。生存率および奏効率に関して報告されたデータに加え、ニボルマブ・イピリムマブ併用群21例、 ニボルマブ単剤群11例において、確定部分奏効で有効性が認められた。確定された病勢安定は、両群で同様であった(併用療法群25例、単剤療法群24例)。DORの中央値は、併用療法群で11.7ヵ月(95%信頼区間:4.0、NR)、単剤療法群では未達であった。併用療法群と単剤療法群では、それぞれ33%(15 例中5例)と27%(11例中3例)で、投与開始から18 ヵ月以上奏効が継続していた。 単剤療法群および併用療法群において、患者の10%以上で報告されたGrade3/4 の治療関連有害事象(AE)は、それぞれ疲労(1% vs.0%)、そう痒症(0% vs.2%)、下痢 (0% vs.5%)、悪心(0% vs.2%)、発疹(0% vs.5%)、甲状腺機能低下症(0% vs.2%)、斑状丘疹状皮疹(0% vs.3%)およびリパーゼ上昇(0% vs.8%)であった。Grade3/4の治療関連AEによる投与中止は、ニボルマブ単剤療法群の4%、併用療法群の10%で発生した。治療関連の新たな死亡は認められなかった。ブリストル・マイヤーズ(米国)プレスリリースはこちら

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抗PD-L1抗体atezolizumab、非小細胞肺がんのOSを延長/Lancet

 扁平上皮・非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体atezolizumabは、PD-L1蛋白質の発現状況にかかわらず、ドセタキセルに比べ全生存期間を有意に延長することが示された。安全性プロファイルも良好だった。ドイツLungenfachklinik Immenhausen病院のAchim Rittmeyer氏らが行った、第III相国際多施設共同無作為化非盲検試験「OAK」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年12月12日号で発表した。OAKは、PD-L1をターゲットとした治療の初となる第III相無作為化試験だという。プラチナ製剤ベース化学療法実施後のStageIIIB・IVのNSCLCを対象に試験  研究グループは2014年3月11日~2015年4月29日にかけて、31ヵ国、194の大学または地域のがん治療センターを通じ、扁平上皮・非扁平上皮NSCLCの18歳以上の患者で、固形がんの治療効果判定のためのガイドラインにより測定可能で、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)による全身状態の評価尺度が0~1の1,225例を対象に試験を行った。被験者は、プラチナ製剤ベースの化学療法を1~2回受けており、StageIIIBまたはIVのNSCLCだった。自己免疫性疾患やドセタキセル、CD137作動薬、抗CTLA4、PD-L1・PD-1パスウェイを標的とした治療をすでに受けていた人については、被験者から除外した。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、atezolizumab 1,200mgまたはドセタキセル75mg/m2を3週ごとに静脈投与した。 主要評価項目は2つで、intent-to-treat解析による全生存期間と、PD-L1発現で分類したサブグループ(TC1/2/3またはIC1/2/3)の全生存期間だった。主要有効性解析は、1,225例中、最初の850例(atezolizumab群、ドセタキセル群ともに425例)を対象に行った。生存期間中央値、atezolizumab群で約4ヵ月延長 その結果、ITTおよびサブグループによる解析ともに、全生存期間(OS)はatezolizumab群でドセタキセル群に比べ有意に延長した。ITT解析では、atezolizumab群のOS中央値は13.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.8~15.7)に対し、ドセタキセル群は9.6ヵ月(8.6~11.2)だった(ハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.62~0.87、p=0.0003)。 PD-L1発現が1%以上の腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に認められたサブグループ(TC1/2/3またはIC1/2/3)でもOS中央値は、atezolizumab群(241例)15.7ヵ月(95%CI:12.6~18.0)、ドセタキセル群(222例)10.3ヵ月(8.8~12.0)と有意差が認められた(HR:0.74、95%CI:0.58~0.93、p=0.0102)。また、PD-L1発現が1%未満のサブグループ(TC0またはIC0)でも、OS中央値はそれぞれ12.6ヵ月、8.9ヵ月と、atezolizumab群で有意に延長した(HR:0.75、95%CI:0.59~0.96)。 生存期間の延長効果については、扁平上皮または非扁平上皮のNSCLCで同等だった。 なお、Grade3または4の治療に関連した有害事象の発生率は、ドセタキセル群43%に対してatezolizumab群は15%と少なかった。

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