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やはりthe lower the betterだった(解説:興梠 貴英 氏)-659

 これまでコレステロール低下療法のエビデンスにおいて、スタチンが数の上で圧倒的に多かった。しかもezetimibeは試験デザイン上の問題から、なかなかthe lower the betterを示すことができなかった。そのため、PCSK9の機能喪失変異に伴う心血管リスク低減という疫学的な知見や、PCSK9阻害薬の第II相試験の予備的な結果で心血管リスクが低減することが示唆されたということはあったものの、PCSK9阻害薬による実際の介入で心血管系エビデンスを減らすのかについては、きちんと実施された臨床試験の結果を待たなくてはならなかった。 さて、本FOURIER試験では動脈硬化性心血管疾患を有しており、LDL-Cが70mg/dL以上ですでにスタチン治療を受けている2万7,564例の患者をエボロクマブ群、プラセボ群の2群にランダム割り付けして中央値2.2年間追跡した。患者背景で興味深いのは、8割以上が陳旧性心筋梗塞の患者であり、またそれにもかかわらず、喫煙者の割合が3割弱もいることである。つまり、心血管疾患の再発のリスクが高い集団であるが、結果は血清LDL-C濃度においてはエボロクマブ群でLDL-C 30mg/dL、プラセボ群で86mg/dLという差がつき、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント発生をエボロクマブ群で有意に低下させたというものであった(NNT=67例)。また、開発段階で可能性が示唆された認知機能への影響を含む副作用には、両群間で差が認められなかった(注射部位の副反応を除く)。 本試験の結果は、2年余りという比較的短い期間ではあるが、LDL-Cを30mg/dLまで低下させても安全上の問題がないこと、またその範囲でPCSK9阻害薬でLDL-Cを下げても、心血管系イベントについてthe lower the betterであることを示すものであった。本試験には日本人も参加していたので、今後サブ解析で日本人に関する結果が出てくることにも期待したい。

362.

エボロクマブ追加で心血管イベントリスクを有意に低減/NEJM

 前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)は、スタチン治療でLDLコレステロール(LDL-C)値のコントロールが不良なアテローム動脈硬化性心血管疾患患者のLDL-C値を30mg/dLまで低下させ、心血管イベントのリスクを有意に低減することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らが行ったFOURIER試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。本薬は単剤でLDL-C値を約60%低下させることが報告されているが、心血管イベントを予防するかは不明であった。2万7,564例を対象とするプラセボ対照無作為化試験 FOURIER試験は、エボロクマブのスタチンへの上乗せによる心血管イベントの予防の改善効果を検証する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Amgen社の助成による)。 対象は、年齢40~85歳、アテローム動脈硬化性心血管疾患でスタチンの投与を受けているが、LDL-C値が≧70mg/dLの患者であった。被験者は、エボロクマブ(患者の好みで、2週ごとに140mgまたは1ヵ月ごとに420mgから選択)またはプラセボを皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術の複合エンドポイントであった。主な副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。 2013年2月~2015年6月に、49ヵ国1,242施設で2万7,564例が登録され、エボロクマブ群に1万3,784例、プラセボ群には1万3,780例が割り付けられた。追跡期間中央値は2.2年だった。LDL-C値が59%低下、主要評価項目が15%改善 ベースラインの全体の平均年齢は63歳、女性が24.6%含まれた。心筋梗塞の既往が81.1%、非出血性脳卒中の既往が19.4%、症候性末梢動脈疾患が13.2%に認められた。スタチン治療は、ACC/AHAガイドラインのhigh-intensityが69.3%、moderate-intensityが30.4%に行われ、5.2%にはエゼチミブも投与されていた。 ベースラインのLDL-C値中央値は92mg/dL(IQR:80~109)であった。48週時に、エボロクマブ群のLDL-C値中央値は30mg/dL(IQR:19~46)に低下し、プラセボ群との絶対差は56mg/dL(95%信頼区間[CI]:55~57)であった。LDL-C値の減少率の最小二乗平均値は59%(95%CI:58~60、p<0.001)であり、エボロクマブ群が有意に良好であった。 主要評価項目の発生は、エボロクマブ群が9.8%(1,344例)と、プラセボ群の11.3%(1,563例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)。主な副次評価項目の発生も、エボロクマブ群が有意に良好だった(5.9%[816例] vs.7.4%[1,013例]、HR:0.80、95%CI:0.73~0.88、p<0.001)。 また、エボロクマブ群はプラセボ群に比し、心筋梗塞(3.4 vs.4.6%、HR:0.73、95%CI:0.65~0.82、p<0.001)、脳卒中(1.5 vs.1.9%、0.79、0.66~0.95、p=0.01)、冠動脈血行再建術(5.5 vs.7.0%、0.78、0.71~0.86、p<0.001)、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(1.7 vs.2.1%、0.77、0.65~0.92、p=0.003)を有意に改善した。一方、心血管死、全死因死亡、不安定狭心症による入院、心血管死/心不全の増悪による入院には差がなかった。 主要評価項目と主な副次評価項目に関するエボロクマブ群のベネフィットは、年齢、性、アテローム動脈硬化性血管疾患のタイプなどの主要なサブグループのほとんどに一貫して認められた。さらに、ベネフィットは、ベースラインのLDL-C値の最高四分位群(中央値:126mg/dL、IQR:116~143)から最低四分位群(74mg/dL、69~77)まで、一貫してみられた。 有害事象(77.4 vs.77.4%)、重篤な有害事象(24.8 vs.24.7%)、治験薬関連と考えられる有害事象の発現および治験レジメンの中止(1.6 vs.1.5%)は、両群に有意な差はなかった。また、筋関連イベント(5.0 vs.4.8%)、白内障(1.7 vs.1.8%)、新規糖尿病(8.1 vs.7.7%)、神経認知有害事象(1.6 vs.1.5%)にも、両群に差はなかったが、注射部位反応(2.1 vs.1.6%、p<0.001)はエボロクマブ群で有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、アテローム動脈硬化性心血管疾患患者は、LDL-C値を現在の目標値よりも、さらに下げることでベネフィットが得られることを示すもの」と指摘している。

363.

認知機能低下が懸念されるスタチン、運動併用が有効か

 スタチン使用と認知機能低下との関連が懸念されている。熊本大学循環器内科の研究グループでは、既に軽度の認知機能低下のある冠動脈疾患(CAD)患者におけるパイロット研究から、スタチンと定期的な運動の併用が認知機能障害の改善に役立つ可能性を報告した。Internal medicine誌オンライン版2017年3月17日号に掲載。 軽度の認知機能低下を伴うCAD患者43例を連続して登録し、スタチン治療と共に院内で週1回の有酸素運動を5ヵ月間実施した。血清脂質および運動能力を測定し、また、mini-mental state examination(MMSE)を用いて認知機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・軽度の認知機能低下を伴うCAD患者において、治療後、LDLコレステロール値が有意に減少し、最大運動能力(負荷)が有意に増加した。・スタチンと運動の併用療法により、コホート全体でMMSEスコア中央値(範囲)が24(22~25)から25(23~27)に有意に増加した(p<0.01)。・BMIの変化とMMSEスコアの変化との間に有意な負の相関がみられた。・治療後、BMIが減少した群ではMMSEスコアが有意に改善したが、BMIが増加した群では改善しなかった。・試験開始時にすでにスタチンを投与されていた患者は、スタチンを投与されていなかった患者よりも有意にMMSEスコアが改善した。・65歳以上・性別・糖尿病の有無で調整された多変量ロジスティック回帰分析において、 スタチンと運動の併用療法期間におけるBMI減少はMMSEスコア上昇と有意に相関していた(オッズ比:4.57、95%信頼区間:1.05~20.0、p<0.05)。

364.

エボロクマブFOURIER試験、心血管アウトカム2年で有意に改善

 エボロクマブ(商品名:レパーサ)の心血管イベントの大規模研究であるFOURIER試験の結果が、米国心臓病学会(ACC.17)のLate Breaking Clinical Trialセッションで発表された。PCSK9阻害薬の追加による、主要心血管有害事象(MACE)の抑制を初めて示したこの結果は、同時にNew England Journal of Medicineにも掲載された。実臨床を反映し、高リスク患者を対象にした2万7千例の試験 FOURIERは、エボロクマブの効果と安全性を評価した無作為化プラセボ対照二重盲検第III相試験。対象は、アテローム性心血管病変を有し、LDL70mg/dL以上でスタチン治療を受けている患者2万7,564例。81.1%に心筋梗塞、19.4%に非出血性脳卒中、13.2%に症候性の末梢動脈病変の既往があり、69.3%は高強度のスタチン療法を受けているなど高リスク集団である。患者は無作為にエボロクマブ(140mg/2週間または420mg/月 )+最適スタチン群(1万3,784例)と、プラセボ+最適スタチン群(1万3,780例)の2群に無作為に割り付けられた。この研究はイベント・ドリブン型であり、主要副次的評価項目のイベント想定数1,630例を超えた時点で解析され、試験期間の中央値は2.2年である。評価委員会はTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)試験グループで、データは試験スポンサーとは独立して解析された。2.2年で20%のMACEリスク低減 LDL-C中央値は、エボロクマブ群でベースラインの92mg/dLから48週目に30mg/dLまで低下し、その効果は試験期間を通して持続した。この2.2年の試験期間において、主要複合評価項目である心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈再建術のイベント発生は、エボロクマブ群9.8%、プラセボ群11.3%と、エボロクマブで15%有意に減少した(HR:0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)。また、一般的なMACEの指標で、試験の主要副次的複合評価項目である、心臓血管死、心筋梗塞または脳卒中の発症は、エボロクマブ群5.9%、プラセボ群7.4%と、エボロクマブ群で20%有意に減少した(HR:0.80、95% CI:0.73~0.88、p<0.001)。単独の評価項目でも確認されたリスク抑制 イベント抑制は個別の評価項目でも確認され、心筋梗塞では27%(p<0.001)、脳卒中では21%(p=0.01)、冠動脈血行再建については22%(p<0.001)、エボロクマブ群で有意な相対リスク減少がみられた。また、日本人患者429例を含む、Asia/Pacificサブグループでもイベント抑制が確認されており、主要評価項目は27%、副次的評価項目は33%、エボロクマブ群で相対リスク減少がみられた。また、このリスク低下は時間と共に増加し、Amgen社の発表によれば、致命的・非致死的心筋梗塞または脳卒中の相対リスク減少は1年目の19%(p=0.003)から1年目以降は33%(p<0.00001)に増加していた。 試験を主導したTIMI試験グループのChairで論文筆頭著者のMarc S. Sabatine氏(ブリガム&ウィメンズ病院)は、ACCのインタビューで「この結果は、イベントリスクが高いアテローム性動脈硬化症患者にとっては非常に良いニュースであり、患者がLDL-Cを現在の目標値以上に低下させることで、より利益を得ることを強く示唆している」と述べている。(ケアネット 細田 雅之)参考ACC News StorySabatine MS, et al. N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]Amgen社(米国):ニュースリリースFOURIER試験(Clinical Trials.gov)

365.

スタチンはがん死亡リスクを下げるか~日本のコホート研究

 スタチンのがん発症やがん死亡に対する予防効果については結論が出ていない。今回、山梨大学の横道洋司氏らがバイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータから脂質異常症患者4万1,930例を調査したところ、スタチン単独療法が全死亡およびがん死亡に対して影響し、とくに大腸がんによる死亡に予防効果を示す可能性が示唆された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。 本研究では、2003~07年に66病院で登録された脂質異常症患者(40歳以上)を最大12年間観察し、死亡原因を調査した。投与薬剤による死亡率はカプランマイヤー推定法で比較した。全死亡率はスタチンおよび他の薬剤の投与の有無で比較し、がん全体と大腸がんのがん死亡率はスタチン投与の有無で比較した。 主な結果は以下のとおり。・登録された脂質異常症患者は4万1,930例、平均年齢が64~66歳、平均BMIは24~25であった。・スタチン単独療法の患者と生活習慣の改善のみの患者の生存曲線はほぼ同じであった。・有意ではないが、スタチン使用が大腸がん関連死亡を予防する可能性が示された。・陰イオン交換樹脂(レジン)単剤療法における死亡率が最も低かったが、本療法を受けた患者が軽症に偏っている可能性があるため、注意深く解釈する必要がある。

366.

冠動脈疾患患者における心房細動の危険因子は?

 一般集団における心房細動の危険因子は明らかだが、特定の疾患を持つ患者への影響は不明である。今回、札幌医科大学の村上 直人氏らが、冠動脈疾患(CAD)患者と非CAD患者における心房細動の危険因子を調べた結果、CADの有無により心房細動の主要な危険因子が異なることが示唆された。CAD患者では血清尿酸値高値、非CAD患者ではスタチン非使用で心房細動が発症しやすいことが示された。Open heart誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。 著者らは、BOREAS-CAGレジストリにおいて、2014年8月~2015年1月にCAD症状の評価のために冠動脈造影を実施した1,871例を連続して登録した。心臓弁膜症患者とPCI/心臓手術歴のある患者を除外した1,150例(非CAD群576例、CAD群574例)について、多変量ロジスティック回帰分析により心房細動の危険因子を同定した。また、2013年4月~2014年7月に札幌医科大学病院に入院したCAD患者361例のうち、BOREAS-CAGレジストリと同じ組み入れ基準と除外基準に合う166例のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・意外にも、CADが独立して「心房細動なし」に関連した。・CADの有無にかかわらず、脳性ナトリウム利尿ペプチドレベルが心房細動と強い関連を示した。・非CAD群では「スタチン非使用」が独立して心房細動に関連し、CAD群では「血清尿酸値高値」が心房細動の独立した説明変数となった。・札幌医科大学病院のCADコホートに登録された患者群(166例)で、心房細動と血清尿酸値との関連が確認された。

367.

エボロクマブ FOURIER試験のエンドポイント達成か

 アムジェン社(THOUSAND OAKS, カリフォルニア)は2017年2月2日、アテローム硬化性心血管疾患(ASCVD)に対するエボロクマブ(商品名:レパーサ)のイベントリスク抑制を評価するFOURIER(Further Cardiovascular OUtcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk)試験において、複合主要評価項目(心血管死、非致死心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症または冠動脈再建術の入院)および副次的評価項目(心血管死、非致死心筋梗塞または非致死的脳卒中)を達成し、新たな安全性の問題も認められなかった、と発表した。 また、FOURIER試験の被験者で行われた認知機能試験EBBINGHAUSにおいても、その主要評価項目を達成し、エボロクマブの認知機能への影響について、プラセボに対する非劣性を証明したことも明らかにした。 この2試験の結果は、2017年3月17日からワシントンD.C.で行われる第66回米国心臓病学会(ACC)学術集会で発表される(FOURIER試験は、3月17日のLate Breaking Clinical Trialセッション、EBBINGHAUS試験は、3月18日の Late Breaking Clinical Trialセッション)。 昨年(2016年)の米国心臓学会議(AHA)で発表されたGLAGOV試験では、最適なスタチン療法でLDLが適正値に保たれた患者における、エボロクマブのアテローム抑制効果を証明した。このFOURIER試験では、心筋梗塞に加え、虚血性脳卒中、症候性末梢動脈疾患といった、より重症な患者が含まれている。この実臨床に近い多様な対象に対してエボロクマブの心血管イベントリスク抑制を示した、同試験の詳細な発表が待たれる。 アムジェン社(米国)のニュースリリースはこちら

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アジア人で眼圧上昇と血糖降下薬の関連を示唆

 眼圧は全身薬物療法と関連しているのだろうか。シンガポール・国立眼科センターのHenrietta Ho氏らは、中国人、インド人およびマレー人を対象としたシンガポール眼疾患疫学研究の事後解析を行い、β遮断薬は眼圧低値と、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、スタチンおよびスルホニル尿素(SU)薬は眼圧高値と関連が示唆されることを明らかにした。これらの関連はそれほど強くはなかったが、血糖降下薬のみ1mmHg超の眼圧上昇と関連していたことから、著者は「緑内障眼の眼圧に対する全身薬物療法の作用はよく解明されていないが、重要である」と述べたうえで、「緑内障患者は、薬物の種類によって眼圧上昇または低下のリスクに曝されている可能性があり、眼圧コントロールに影響があるかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年1月12日号掲載の報告。 研究グループは、多民族的なアジア人集団で全身薬物療法と眼圧との関連を検討する目的で、シンガポール眼疾患疫学研究の事後解析を行った。 解析対象は、参加した中国人(募集期間2009年2月9日~2011年12月19日)、マレー人(同2004年8月16日~2006年7月10日)、およびインド人(同2007年5月21日~2009年12月29日)の計1万33例(回答率78.7%)のうち8,063例であった。年齢は平均57.0±9.6歳、女性50.9%、中国人2,680例(33.2%)、マレー人2,757例(34.2%)、インド人2,626例(32.6%)。緑内障、眼手術歴または外傷、および左右の眼圧の差が5mmHg以上の参加者は除外した。 眼圧は、ゴールドマン圧平眼圧計を用いて測定し、薬物療法および他の変数に関するデータはインタビュアーを介した質問票から得た。薬物療法と眼圧との関連について、線形回帰モデルを用い、2015年8月1日~10月31日に解析した。 主な結果は以下のとおり。・β遮断薬は、眼圧低下と関連していた(-0.45mmHg、95%信頼区間[CI]:-0.65~-0.25mmHg、p<0.001)。・眼圧上昇と関連していたのは、ACE阻害薬(+0.33mmHg、95%CI:0.08~0.57mmHg、p=0.008)、ARB(+0.40mmHg、95%CI:0.40~0.75mmHg、p=0.02)、スタチン(+0.21mmHg、95%CI:0.02~0.4mmHg、p=0.03)、SU薬(+0.34mmHg、95%CI:0.05~0.63mmHg、p=0.02)であった。・血糖降下薬のみ、他の研究で5年間に緑内障の発生リスクが14%高まる閾値とされる1mmHg超の眼圧上昇と関連していた。・眼圧に対する薬物種類間の相加的、相乗作用あるいは拮抗的な相互作用は確認されなかった。

369.

ベンゾジアゼピンと認知症リスク~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BZP)は、先進国のとくに高齢の患者に対し広く用いられている。しかし、BZPは記憶および認知機能に影響を及ぼし、認知症リスクを高める可能性があることが知られている。台湾・台北医学大学のMd Mohaimenul Islam氏らは、BZPと認知症リスクとの関連を評価した観察研究をレビューした。Neuroepidemiology誌オンライン版2016年12月24日号の報告。 認知症アウトカムに対するBZP使用リスクを評価するため、観察研究のシステマティックレビュー、メタ解析を行った。検討には、BZP使用患者と対照群における認知症アウトカムを比較したすべての対象観察研究を含んだ。ランダム効果モデルを用いて、プールされたORを算出した。システマティックレビューには10件(3,696例)が含まれ、そのうち8件はランダム効果メタ解析、感度分析に含めた。 主な結果は以下のとおり。・BZP使用患者における認知症オッズは、BZP未使用患者と比較し、78%高かった(OR:1.78、95%CI:1.33~2.38)。・サブグループ分析では、アジアの研究において高い相関が認められ(OR:2.40、95%CI:1.66~3.47)、北米(OR:1.49、95%CI:1.34~1.65)および欧州(OR:1.43、95%CI:1.16~1.75)の研究において中等度の相関が認められた。・糖尿病、高血圧、心疾患、スタチン系薬剤は、認知症リスク上昇と関連していたが、BMIは負の相関が認められた。・主要な分析および大部分の感度分析において、研究間に統計学的および臨床的に有意な異質性が認められた。 著者らは「本検討により、BZP使用と認知症リスクには有意な関連が示唆された。しかし、観察研究では、観察された疫学的関連性が因果関係であるのか、未測定の交絡因子の結果であるのかを明らかにすることができなかった。この関連を明らかにするためにも、より多くの研究が必要である」としている。関連医療ニュース 認知症予防にベンゾジアゼピン使用制限は必要か ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は 不適切なベンゾジアゼピン処方、どうやって検出する

370.

スタチンが静脈血栓塞栓症を予防~メタ解析

 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺塞栓症)に対するスタチンの予防効果が示唆されているが、明確なエビデンスはない。英国ブリストル大学のSetor K Kunutsor氏らは観察コホート研究と無作為化比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を行ったところ、静脈血栓塞栓症の1次予防にスタチンが有益であることが示唆された。また、スタチンによって効果に差があることも示された。Lancet Haematology誌オンライン版2017年1月12日号に掲載。 スタチンと静脈血栓塞栓症との関連を報告した研究について、MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryのデータベース、2016年7月18日までに出版された研究の参考文献のマニュアル検索、研究者との電子メールのやりとりから特定した。スタチン使用と成人の静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症との関連を調べた観察コホート研究、スタチン治療の効果をプラセボ投与や無治療と比較し、静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症の転帰に関するデータを収集している介入試験を特定した。なお、スタチンの効果を他のスタチンや脂質低下薬と比較した試験は除外した。ランダム効果モデルを用いて試験特異的な相対リスク(RR)を統合し、研究レベルによってグループ分けした。 主な結果は以下のとおり。・13のコホート研究(314万8,259例)、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した23のRCT(11万8,464例)の36試験を適格とした。・観察研究において、スタチン使用群を不使用群と比較した場合の静脈血栓塞栓症の統合RRは0.75(95%CI:0.65~0.87、p<0.0001)で、この関連性は研究レベルによってグループ分けされた場合でも同様であった。・RCTにおいて、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した場合の静脈血栓塞栓症のRRは0.85(95%CI:0.73~0.99、p=0.038)であった。・サブグループ解析では、ロスバスタチンが他のスタチンと比べ静脈血栓塞栓症リスクが最も低く(RR:0.57、95%CI:0.42~0.75、p=0.015)、スタチンの効果がスタチンによって有意に異なることが示された。・肺塞栓症へのスタチンの効果についてはエビデンスが得られなかった。・深部静脈血栓症のエンドポイントのリスクは、スタチン使用が不使用に比べて有意に低下した(RR:0.77、95%CI:0.69~0.86、p<0.0001)。

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降圧や脂質低下治療の無作為化試験での効果、その後どうなる?

 降圧治療および脂質低下治療において、治療中止後も長期的ベネフィットが持続することが示唆されている。今回、シドニー大学の平川 洋一郎氏らが大規模無作為化試験の系統的レビューを行ったところ、全死亡率および心血管系死亡率における降圧および脂質低下によるベネフィットは、試験後も持続しているものの減衰が認められ、治療を継続することの重要性が示された。Journal of hypertension誌オンライン版2017年1月5日号に掲載。 著者らは、降圧治療または脂質低下治療の大規模無作為化比較試験で、終了後に1年以上フォローアップされた試験を、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを系統的に検索した。降圧治療では13試験(48,892例)、脂質降下治療では10試験(71,370例)を同定した。試験およびフォローアップ期間の平均は、それぞれ約4年と6年であった。 主な結果は以下のとおり。・血圧および脂質の値は、試験後の期間にすぐに同じになる傾向があった。・試験期間中は、降圧による全死亡率への有意なベネフィットがあり(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.81~0.89)、フォローアップ期間中も減衰はしたが有意なベネフィットがあった(0.91、0.87~0.94) 。・同様に、スタチンによる脂質低下は、試験期間中に全死亡率リスクを減少させ(0.88、0.81~0.95)、この効果はフォローアップ期間中も持続した(0.92、0.87~0.97)。・心血管系死亡率についても同様の結果が認められた。・降圧治療試験での全死亡率の累積した低下をみると、フォローアップ期間が5年未満の試験と比べて5年以上の試験で有意に低く、脂質低下試験でも同様の傾向が認められた。

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PCSK9阻害薬とスタチン、効果も影響もほぼ同じ/NEJM

 PCSK9遺伝子多様体と、スタチンが標的とするHMGCR遺伝子多様体は、LDLコレステロール単位当たりの低下につき、心血管イベントリスクにはほぼ同様の低減効果を及ぼすことが、また糖尿病リスクには非常に類似した増大効果を及ぼすことが明らかにされた。また両遺伝子多様体の影響は、独立的かつ相加的であることも示された。米国・ウェイン州立大学のBrian A. Ference氏らによる遺伝子多様体スコア研究の結果で、NEJM誌2016年11月30日号で発表された。PCSK9の薬理学的阻害は、臨床試験で心血管疾患治療について評価がされている。しかし、スタチンと同様に、PCSK9阻害によるLDLコレステロール低下の心血管イベントおよび糖尿病のリスクへの影響は明らかにされていなかった。PCSK9多様体またはHMGCR多様体により低下したLDL-C値の影響を比較 研究グループは、PCSK9およびHMGCRをコードする遺伝子多様体から構成された遺伝子スコアを操作変数として用いて、14試験の被験者11万2,772例(加重年齢中央値59.9歳、心血管イベント1万4,120例、糖尿病例1万635例を含む)を無作為にPCSK9多様体スコア群とHMGCR多様体スコア群に分類した。また、LDLコレステロール値を低下するアレル数によって、被験者を分類(スコア中央値でabove群とbelow群に二分)した。 PCSK9多様体またはHMGCR多様体によって低下したLDLコレステロール値の、心血管イベントリスクおよび糖尿病リスクへの影響について比較した。心血管イベントには同様の保護効果、糖尿病リスクは同様に増大 PCSK9多様体とHMGCR多様体は、心血管イベントリスクについてほぼ同様の保護効果が認められた。PCSK9多様体によるLDLコレステロール値10mg/dL(0.26mmol/L)低下ごとの心血管イベントに関するオッズ比は0.81(95%信頼区間[CI]:0.74~0.89)で、HMGCR多様体による場合は0.81(同:0.72~0.90)であった。 また両遺伝子多様体は、糖尿病リスクについても非常に類似した影響が認められた。LDLコレステロール値10mg/dL低下ごとの糖尿病に関するオッズ比は、PCSK9多様体の場合は1.11(95%CI:1.04~1.19)、HMGCR多様体は1.13(同:1.06~1.20)であった。 糖尿病リスクの増大は、PCSK9多様体スコア群とHMGCR多様体スコア群いずれにおいても、ベースラインで空腹時血糖異常値を有した被験者に限ってみられた。同リスク増大は、心血管イベントへの保護作用に比べて小さかった。 PCSK9多様体とHMGCR多様体両者が存在する場合は、心血管イベントと糖尿病の両者のリスクについて、相加的な影響があることも確認された。

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LDL-C低下によるプラークの退縮はどこまで可能か?(解説:平山 篤志 氏)-624

 今回の米国心臓病学会のLate Braking Clinical Trialの目玉の1つである、GLAGOV試験の結果が発表された。 試験のデザインは、冠動脈疾患患者にスタチンが投与されていてLDL-C値が80mg/dLを超える患者を対象に、スタチン治療のみを継続する群(プラセボ群)と、スタチン治療に抗PCSK9抗体であるエボロクマブを追加投与する群(エボロクマブ群)で、LDL-C値の低下の違いにより血管内超音波で測定したプラーク体積(percent atheroma volume)の変化の差を検討するものであった。 LDL-C値は、プラセボ群で平均93.0mg/dL(ベースラインからの変化率は3.9%)、エボロクマブ群で平均36.6mg/dL(ベースラインからの変化率-59.8%)と有意な低下効果を認めた。1次エンドポイントであるプラーク量の変化率は、プラセボ群で0.05%、エボロクマブ群で-0.95%と両群間に有意な差を認めた(p<0.001)。 LDL-コレステロールによる低下で、プラークの退縮が認められるのは期待された結果であるが、その程度が0.95%で、期待されていたほどの退縮が認められなかったのは、少し残念な結果であった。というのも、スタチンを用いたこのグループのこれまでの試験から、おそらく2%以上の退縮が期待されたていたからである。退縮効果が少なかった理由として、かつての試験の時代より強力なスタチン治療がすでになされている患者が多いという背景の違いがあるかもしれない。ただ、プラークの退縮がこれまでの大規模臨床試験の結果を反映していたことを考えると、エボロクマブにはおそらくイベント低下効果はあるだろうが、大きな効果ではないかもしれないとの危惧を感じさせた。ただ、ベースラインのLDL-C値が70mg/dL未満の患者群で-1.97%のプラーク低下を認めたことは、ある意味では治療されていてもハイリスクの人たちに著明な効果があるのではという期待を抱かせる結果でもあった。 これらの患者群で、なぜ高度な退縮が認められたのか? 結果の解釈にはさらなる解析が必要だが、今後発表される大規模臨床試験がこの結果を反映したものになるのかを待ちたい。

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エボロクマブ、アテローム体積率を減少/JAMA

 スタチン服用のアテローム性動脈硬化症の患者に対する、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)の投与は、LDL-C値を低下し、アテローム体積率を減少することが示された。プラーク退縮が認められた患者の割合も、エボロクマブ投与群で高率だった。オーストラリア・アデレード大学のStephen J. Nicholls氏らが行った、多施設共同のプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験「GLAGOV」の結果で、JAMA誌2016年11月15日号で発表した。スタチン服用患者におけるPCSK9阻害薬のLDL-C値の低減効果は知られていたが、冠動脈アテローム性硬化症に対する効果は不明だった。 世界197ヵ所で968例を対象に試験 研究グループは2013年5月3日~2015年1月12日にかけて、北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、南アフリカの197ヵ所の医療機関を通じて、スタチン服用中の冠動脈アテローム性硬化症の患者968例を対象に試験を行った。被験者を無作為に同数2群に分け、スタチンに追加して一方にはエボロクマブ(420mg/月、皮下注射)を、もう一方の群にはプラセボを、76週間にわたり投与した。 有効性に関する主要評価項目は、ベースラインから78週までのアテローム体積率(PAV)の変化で、血管内超音波検査(IVUS)により測定した。副次評価項目は、標準化総アテローム体積(TAV)の変化と、プラーク退縮が認められた患者の割合だった。アテローム体積率、エボロクマブ群で0.95%減少 被験者の平均年齢は59.8歳、女性被験者の割合は27.8%、平均LDL-C値は92.5mg/dLだった。被験者のうち、フォローアップで画像による評価が可能だったのは846例だった。 結果、エボロクマブ群の時間荷重平均LDL-C値は、36.6mg/dLで、プラセボ群の93.0mg/dLに比べ有意に低かった(群間差:-56.5mg/dL、95%信頼区間[CI]:-59.7~-53.4、p<0.001)。  またPAVも、プラセボ群では0.05%増大したのに対し、エボロクマブ群では0.95%減少した(群間差:-1.0%、95%CI:-1.8~-0.64、p<0.001)。 副次評価項目の標準化TAVについても、プラセボ群0.9mm3減少に対し、エボロクマブ群では5.8mm3減少が認められた(群間差:-4.9mm3、95%CI:-7.3~-2.5、p<0.001)。プラーク退縮が認められた患者の割合もエボロクマブ群は高率で、PAVで見た場合には、プラセボ群47.3%に対しエボロクマブ群64.3%(p<0.001)、TAVではそれぞれ48.9%と61.5%(p<0.001)だった。

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エボロクマブのプラーク退縮、AHAで発表:アムジェン

 アムジェン社は2016年11月15日、冠動脈疾患(CAD)患者に対して最適用量のスタチン療法にエボロクマブ(商品名:レパーサ)を上乗せした結果、統計学的に有意なアテローム性動脈硬化の退縮が確認されたことを発表した。この第III相プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(GLAGOV試験)の結果は、2016年米国心臓学会議(AHA)学術集会での発表と同時に、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌にも掲載された。 GLAGOV試験では、サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤エボロクマブの、最適用量のスタチン療法を受けている患者に対する冠動脈のアテローム性プラーク進展への影響をベースラインおよび78週目の血管内超音波(IVUS)測定により検証した。 この試験は主要評価項目を達成し、エボロクマブの治療が、動脈血管内に占めるプラークの割合であるアテローム体積率(PAV:Percent Atheroma Volume)をベースライン時から統計学的に有意に減少することを明らかにした。 最適用量スタチン+エボロクマブ(エボロクマブ群)ではPAVがベースラインに対し0.95%の減少が認められたが、最適用量スタチン+プラセボ群では0.05%の増加が認められた(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.78)。投与群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。さらに、エボロクマブ群ではプラセボ(プラセボ群)と比較し、より多くの患者でPAVの退縮が認められた(エボロクマブ群:64.3%、プラセボ群:47.3%、p<0.0001)。 プラーク量測定のもう1つの基準である標準化した総アテローム体積(TAV:Total Atheroma Volume)の減少ついては、エボロクマブ群で平均5.8mm3、プラセボ群では0.9mm3で(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.45)、2群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。 ベースラインでは、いずれの群でも患者の平均LDL-C値は92.5mg/dLであり、両群で98%の患者が高用量から中用量のスタチン療法を受けていた。78週間の治療期間中、エボロクマブ群のLDL-C値の時間加重平均は36.6mg/dLで、プラセボ群の93.0mg/dLと比較し59.8%の低下が認められた。78週目において、エボロクマブ群の平均LDL-C値は29mg/dLで、プラセボ群が90mg/dLを示したのに対し、ベースラインから68.0%低下を認めた。  この試験では、安全性に関する新たな所見は認められなかった。治療中の有害事象の発現率は両群で同等であった(エボロクマブ群:67.9%、プラセボ群:79.8%)。本試験で検討された臨床的に重要な有害事象は筋肉痛(エボロクマブ群:7.0%、プラセボ群:5.8%)、新たに診断された糖尿病(エボロクマブ群:3.6%、プラセボ群:3.7%)、神経認知機能関連の事象(エボロクマブ群:1.4%、プラセボ群:1.2%)、注射部位反応(エボロクマブ群:0.4%、プラセボ群:0.0%)であった。 GLAGOV試験では結合抗体はほとんど認められず(エボロクマブ群:0.2%[1例])、中和抗体は検出されなかった。 また、心血管イベントへの影響を評価する目的では設計されていないものの、明確に主要心血管イベントと判定された事象の発現率はエボロクマブ群で12.2%、プラセボ群で15.3%であった。判定された事象の多くは、冠動脈血行再生術(エボロクマブ群:10.3%、プラセボ群:13.6%)、心筋梗塞(エボロクマブ群:2.1%、プラセボ群:2.9%)、その他の判定された心血管イベントの発現率はいずれの治療群でも0.8%以下であった。GLAGOV試験について GLAGOV(GLobal Assessment of Plaque ReGression with a PCSK9 AntibOdy as Measured by IntraVascular Ultrasound)試験は、臨床的に冠動脈造影が必要とされている最適用量のスタチン治療中の患者968例を対象に、冠動脈疾患における動脈硬化(プラーク)に対するエボロクマブの効果を評価するため設計された。患者は、最低4週間継続して定用量のスタチン療法を受けており、LDL-C80mg/dL以上か、60~80mg/dL の場合は、1件の重要な心血管リスク要因(冠動脈以外のアテローム性血管疾患、直前2年間における心筋梗塞または不安定狭心症による入院、もしくは2型糖尿病と定義)または3件の軽微な心血管リスク要因(現在喫煙している者、高血圧、HDLコレステロール低値、若年性冠動脈疾患の家族歴、2mg/dL以上の高感度C反応性タンパク質、50歳以上の男性、55歳以上の女性)があることが要件であった。被験者は、エボロクマブ420mg月1回またはプラセボに1:1で割り付けられた。最適用量のスタチン療法の定義は、20mg/日以上相当のアトルバスタチンを投与し、ガイドラインに沿ってLDL-Cを低下させられる投与用量とした。主要評価項目は、IVUS測定による、プラセボと比較した78週目におけるPAVのベースラインからの変化率。副次的評価項目は、PAVの減少(ベースラインからのすべての減少)、78週目におけるTAVのベースラインからの変化、およびTAVの減少(ベースラインからのすべての減少)であった。(ケアネット 細田 雅之)原著論文はこちらNicholls SJ, et al.JAMA. 2016 Nov 15. [Epub ahead of print]参考アムジェン社(米国):ニュースリリースGLAGOV試験(ClinicalTrials.gov)

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LDL-C低下に関与する遺伝子変異は2型糖尿病のリスク増加と関連(解説:小川 大輔 氏)-606

 脂質異常症の治療としてスタチン薬が動脈硬化性疾患の予防のために用いられることが多いが、これまでにスタチン薬の使用は体重増加や2型糖尿病の新規発症と関連することが報告されている1)。一方、LDLコレステロールトランスポーターNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)の阻害薬であるエゼチミブの糖代謝に対する影響については不明である。今回、LDLコレステロールの低下に関与するNPC1L1遺伝子の変異と2型糖尿病の発症リスク増加との関連が報告された。 この研究は、1991年から2016年にかけて欧州および米国で実施された3つの遺伝子関連研究からデータを収集し、2型糖尿病患者5万775例とその対照群27万269例、冠動脈疾患患者6万801例とその対照群12万3,504例が組み込まれた。そして、LDLコレステロール低下に関連する遺伝子変異と2型糖尿病、冠動脈疾患との関連をメタ解析で検討が行われた。 その結果、NPC1L1遺伝子変異は2型糖尿病と正の相関を示し、冠動脈疾患とは逆相関を示した(LDLコレステロール 1mmol/L[38.7mg/dL]低下当たりのオッズ比はそれぞれ2.42[p<0.001]、0.61[p=0.008])。 また、NPC1L1以外のLDLコレステロール低下と関連するHMGCR、PCSK9、ABCG5/G8、LDLR近傍の対立遺伝子と2型糖尿病や冠動脈疾患についても検討が行われたが、HMGCRおよびPCSK9遺伝子変異は2型糖尿病と正の相関を示した(LDLコレステロール 1mmol/L[38.7mg/dL]低下当たりのオッズ比はそれぞれ1.39[p=0.003])、1.19[p=0.03])。 NPC1L1遺伝子の変異を有する症例は、心血管疾患のリスクが低いことが知られていたが2)、これまで糖尿病の発症リスクとの関連については報告がなかった。今回の研究で初めて、NPC1L1遺伝子変異が2型糖尿病のリスク増加と関連していることが明らかとなった。さらに、LDLコレステロールの低下に関与するHMGCR、PCSK9の遺伝子変異よりもオッズ比が高いことも示された。 エゼチミブは脂質異常症の治療薬として実臨床で使われており、スタチン薬とエゼチミブの併用療法は糖尿病を合併した脂質異常症の心血管イベントを抑制することが報告されている3)。 糖尿病のない脂質異常症の症例に投与してどの程度2型糖尿病の発症が増加するのか、また、すでに糖尿病のある脂質異常症の症例にエゼチミブを投与して血糖コントロールに悪影響を及ぼすかどうかについてはまだ明らかにされておらず、今後の研究が待たれる。

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先端巨大症〔acromegaly〕

1 疾患概要■ 概念・定義手足の末端や顔貌の変化など特有な容姿から名付けられた疾患名であるが、成長ホルモン(GH)の過剰分泌により生じる。骨端線閉鎖以前では巨人症(gigantism)を、骨端線閉鎖以降では骨の末端の肥大を示す先端巨大症(acromegaly)を呈する。また、GH過剰状態が長期に持続すると、QOLは低下し、心・脳血管障害、悪性腫瘍、呼吸器疾患などを合併し、生命予後は不良となる。■ 疫学欧米の最近の報告によると、発生頻度(罹患率)は、年間3.5~6.5人/100万人、有病率は125~137人と報告されている。わが国の報告では、片上氏らの宮崎県での調査の結果、罹患率は5.3人/100万人、有病率85人と報告されている。本症に性差はみられず、40~60歳を好発年齢とし各年齢層に広く分布している。■ 病因先端巨大症の99%以上は、下垂体のGH産生腫瘍が原因であるが、ごくまれに気管支や膵、十二指腸などに発生する内分泌腫瘍から、異所性にGH放出ホルモンが過剰に産生される異所性GHRH産生腫瘍や、膵臓がんや悪性リンパ腫での異所性GH産生などが原因となる先端巨大症の報告例がある。■ 病態生理GH産生腫瘍もほかの下垂体腫瘍同様、モノクローナルな腫瘍で、体細胞レベルでの突然変異(somatic mutation)が腫瘍化の原因と考えられてきた。約半数の症例ではGHRH受容体と共役しているGタンパク質のαsubunitであるGsαの活性化変異(gsp変異)が認められる。その結果アデニル酸シクラーゼの活性化が持続し、細胞内のcAMPの増加が維持され、細胞増殖が促進する。一方、家族性にGH産生腺腫を合併する疾患にCarney complex、家族性GH腺腫(isolated familial somatotropinoma:IFS)、多発性内分泌腺腫症(MEN1および4)があるが、弧発性GH腺腫でもこれらの遺伝性疾患の原因遺伝子が検討されたが、不活化を伴う体細胞変異は認められていない。■ 臨床症状症状はGH過剰分泌に基づく症候が主体で、時に下垂体腫瘍が大きな場合には下垂体機能低下、視機能障害、頭痛など占拠性症候が同時に認められる。GHの過剰分泌により、肝臓でインスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor 1: IGF-1)が過剰に産生され、これらGH、IGF-1の過剰分泌が長期に続くと、骨、軟部組織、内臓の肥大や変形が生じる。臨床症状としては顔貌の変化、手足の肥大はほぼ全例で認められ、耐糖能の低下、巨大舌、発汗過多も70%以上でみられる。また、先端巨大症では約25%(自験例で13%)の症例でプロラクチン(PRL)の同時産生を認めるため、月経異常(無月経、乳汁漏出)が主訴となることがある(図1、図2、表)。画像を拡大するA:先端巨大症の主な症状B:先端巨大症男性例の顔貌。骨の変形に伴う眉弓部・頬骨部の隆起、下顎の突出がみられ、鼻、口唇の肥大も認める特徴的な先端巨大症顔貌C:左は手指の腫大、皮膚の肥厚、多毛など典型的な先端巨大症の手(右は成人男性健常者)画像を拡大する画像を拡大する1)顔貌の変化眉弓部や頬骨部の隆起、下顎の突出、咬合不全、歯間の開大などが認められ、軟骨、軟部組織、皮膚も影響され、鼻、口唇も肥大し、いわゆる先端巨大症様顔貌を呈する(図1B)。2)骨、関節、結合組織手足の骨は伸び、手足の末端は肥大し、指は厚ぼったく太く丸みをおび、時に手指で小さな物をつまみ上げることが困難となる(図1C)。多角的にはX線検査における手指末節骨先端の花キャベツ様変化また結合組織も肥大によるheel pad(踵骨と足底の間の軟部組織)の肥厚が認められる。時に骨、結合組織の肥厚に伴い、手根管症候群や座骨神経痛、股関節、顎関節、膝関節の変形に伴う痛みも認められる。体型も椎骨の肥大変形により、胸部は後彎、腰部は前彎という独特な体型を呈する。これら骨に生じた変形は通常進行性で不可逆的である。3)皮膚肥厚し、色素沈着や発汗過多により、手掌、足底は常にべたつき、しばしば異臭を伴う。4)臓器肥大肝臓、腎臓、甲状腺などが肥大する。舌の肥大は巨大舌と呼ばれ、声帯の肥大などとともに特徴的な低い声となる(deepening of the voice)。5)循環器高率に高血圧を合併する。これは進行する動脈硬化と細胞外液量の増加が関与すると考えられている。心肥大も多く、最終的には拡張性の心不全を生じ、生命予後を左右する大きな一因となっている。6)呼吸器胸郭、肺の弾性が低下し、換気低下が進行すると慢性気管支炎、肺気腫など器質性変化が生じ、時に呼吸不全となる。また、近年本症は閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の一因としても注目されている。7)代謝GHのインスリン拮抗作用が原因で耐糖能の低下、糖尿病が高頻度にみられる。8)占拠性症候下垂体腫瘍の70%以上は、腫瘍径1cm以上のmacroadenomaであるが、視野異常など視機能低下を合併する頻度はそれほど多くはない(自験例で5%)。同様に腫瘍の圧迫による続発性下垂体機能低下症もまれである。■ 予後放置した場合の生命予後は、一般人口と比較すると不良で、標準化死亡率は1.72倍高いと報告される一方、治療によりGH、IGF-1値が正常化すると、その後の生命予後は一般人と変わらなくなると報告されている。また、合併する高血圧、糖尿病、心疾患などの合併症のコントロールも生命予後の改善に寄与する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床所見とGH、IGF-1基礎値診断の基本はまず臨床的所見から先端巨大症を疑うことが重要である。しかし、通常患者が直接専門医を受診することは少なく、早期発見のためにも、合併疾患の治療科である整形外科、呼吸器科、一般内科医などへの本疾患の啓発が重要である。近年、新聞・雑誌や下垂体患者会などからの啓発活動の結果、患者自らがこの疾患を疑い、専門機関を受診するケースも増加している。本疾患が疑われる患者では、まずGH、IGF-1値を含めた下垂体ホルモン基礎値を測定し、GH過剰分泌の有無、他のホルモンの過剰あるいは低下の有無を検討する。重要なことは、GH基礎値は変動が大きく、単回の血中GH基礎値のみでのGH過剰状態の判定は不可能で、同時に必ずGHの総分泌量を反映するIGF-1値を測定することが重要である。臨床所見を認め、IGF-1値が年齢、性別の基準値より明らかに高値を示す場合には、通常先端巨大症と考えてよい(図2)。■ 経口ブドウ糖負荷試験など先端巨大症患者では、GHの抑制がないか、逆説的な増加を示し、0.4ng/mL未満には抑制されない。感度の高い検査で、本疾患が疑われる場合には必須の検査である。この検査は、先端巨大症の診断のみならず耐糖能の評価、治療後の耐糖能低下改善の予測などにも重要な検査である。以上で診断が確実となれば、他の前葉ホルモンの機能評価を兼ねたTRH、CRH、GnRH 3者負荷試験、薬物の効果を予測するドパミン作動薬(ブロモクリプチン)やオクトレオチド負荷試験を施行する。■ 画像検査次に重要なことは腫瘍の状況の把握で、このためには下垂体の精検MRIが最も重要である。通常1cm以下の微小腺腫が2~3割程度を占める。また、下垂体腫瘍が認められない場合には、異所性GHRH産生腫瘍なども考慮する必要がある(図2)。■ その他の検査合併症の評価のため、心機能、呼吸機能、動脈硬化の程度の評価、大腸がんの有無の評価なども重要な検査である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)先端巨大症を呈する下垂体腫瘍の治療の目的は、過剰に産生されているGHの早期の正常化と、腫瘍が大きく圧迫症候を伴っているときには、それらの改善にある。本疾患の治療の原則は、外科的切除が第1選択であるが、手術不能例や患者の同意が得られない特殊な場合、手術で治癒が不可能と考えられる一部の症例、外科的治療でも治癒が得られない場合には薬物療法、放射線療法などの補助療法を追加する。同時に合併症のコントロールも予後の改善からも重要である。先端巨大症の治療の流れを示すフローチャートを図3に示した。画像を拡大する■ 手術療法手術は通常経鼻的アプローチで行われ、これを「経蝶形骨洞手術」と呼び、手術用顕微鏡や内視鏡下に施行されるが、大きな腫瘍や浸潤性腫瘍では、患者の全身状態の改善による周術期のリスクの減少と腫瘍の縮小を目的として、術前短期(1~3回程度)のオクトレオチドLAR(商品名: サンドスタチンLAR)、ランレオチド(同:ソマチュリン)を使用する場合がある。現在のところ下垂体外科を専門とする施設での治癒率は、60~70%と報告されている(図4)。手術での治療成績不良な因子としては、腫瘍の大きさ、海綿静脈洞浸潤の有無などが挙げられる。画像を拡大する■ 薬物療法腫瘍からのGH分泌を抑制し、抗腫瘍効果のあるドパミン作動薬(ブロモクリプチン[商品名: パーロデル]やカベルゴリン[同:カバサール])、ソマトスタチンアナログ製剤が主に使用されている。それでも効果が不十分な場合には、GHの作用をブロックするペグビソマント(同:ソマバート)が使用される。ただし、ソマトスタチンアナログ製剤やペグビソマントは、有効率は高いものの、きわめて高価であること、ペグビソマントは毎日自己注射が必要なこと、カベルゴリンは保険適用ではないことが欠点である。また、これらの薬剤の効果をより高めるために、多剤薬物療法(combined therapy)も適時試みられている。■ 放射線照射海綿静脈洞内など外科切除困難な部位に腫瘍が残存し、薬物効果が不十分な場合などが適応となる。現在ではγナイフやサイバーナイフなどの定位放射線療法が主体で、従来の放射線療法に比較し、いずれも短時間でより選択的な照射が腫瘍へ可能であり、かつ治療効果発現までの時間も短く(通常1~2年)、正常下垂体、神経組織への障害も少ない。■ フォローアップ通常治療後、治癒基準を満たす症例が再発を呈することはきわめてまれであるが、半年~1年に1度GH、IGF-1検査のフォローが必要である。また、術前の症状の有無により、適時に大腸内視鏡、心エコーなどの定期的フォローも必要となるし、薬物療法施行例では、それぞれの副作用のチェック、さらに放射線療法が行われた症例ではGH、IGF-1はもちろん、下垂体機能低下症の長期にわたるフォローも重要となる。4 今後の展望本疾患の早期発見、早期治療のためには、関連診療科医師へのさらなる啓発活動が重要である。薬物治療法については、オクトレオチドLAR、ランレオチドなどの標準的なソマトスタチンアナログ製剤と比較して、より優れたGHおよびIGF-1の治療目標値への達成が期待されるSOM230(一般名: パシレオチド)が、2016年末にわが国で発売される予定である。また、ソマトスタチンアナログ製剤は、現在1ヵ月に1度の割合で病院での注射が必要となるが、アドヒアランスのより高い経口薬(oral octreotide)がすでに開発されており、近い将来広く臨床応用されることが期待される。5 主たる診療科下垂体疾患・腫瘍を取り扱う内分泌内科、脳神経外科、小児科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 先端巨大症、下垂体性巨人症(下垂体性成長ホルモン分泌亢進症)平成27年施行の指定難病。先端巨大症は、下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(告示番号77)に分類されている。本サイトは「厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究 先端巨大症および下垂体性巨人症の診断と治療の手引き」にリンクされている。アクロメガリー広報センター(ノバルティスファーマ株式会社)先端巨大症ねっと(帝人ファーマ株式会社)いずれも製薬メーカーが運営するサイトであるが、患者向け、医療者向けの両サイトがあり、先端巨大症についての知識や治療法がわかりやすく解説されている。患者会情報下垂体患者の会(下垂会)2005年に下垂体疾患の患者有志が集まり、自分達の病気の難病指定を目標に結成され、現在全国規模で医療講演会や患者会を定期的に開催・活動している。1)Katznelson L, et al. J Clin Endocrinol Metab.2014;99:3933-3951.2)特集 先端巨大症の診療最前線. ホルモンと臨床.2009.3)平田結喜緒 編. 下垂体疾患診療マニュアル 改訂第2版.診断と治療社;2016.4)千原和夫 監修. 改訂版 Acromegaly Handbook.メディカルレビュー社;2013.公開履歴初回2016年10月18日

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LDL-C低下に関与する遺伝子変異、糖尿病リスクと関連/JAMA

 NPC1L1など低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の低下に関与する遺伝子変異が、2型糖尿病のリスク増加と関連していることが確認された。英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らが、脂質低下薬の標的分子であるNPC1L1などの遺伝子変異と、2型糖尿病や冠動脈疾患との関連性を評価するメタ解析を行い報告した。著者は、「所見は、LDL-C低下療法による有害な影響の可能性について洞察を促すものである」と結論している。エゼチミブおよびスタチンの標的分子であるNPC1L1やHMGCR近傍の対立遺伝子はLDL-C低下と関連しており、これら脂質低下薬の有効性の検討で代理指標として用いられている。一方で、臨床試験においてスタチン治療による糖尿病新規発症の頻度増加が示されており、HMGCR近傍の対立遺伝子は2型糖尿病のリスク増加とも関連していることが知られていた。しかし、NPC1L1近傍の対立遺伝子と2型糖尿病との関連は不明であった。JAMA誌2016年10月4日号掲載の報告。LDL-C低下に関与する5つの遺伝子変異についてメタ解析で検討 研究グループは、1991~2016年に欧州および米国で実施された3つの遺伝子関連研究、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC-InterAct試験)、UK Biobank試験、DIAbetes Genetics Replication And Meta-analysis(DIAGRAM)からデータを収集し、LDL-C低下に関連する遺伝子変異と、2型糖尿病および冠動脈疾患との関連をメタ解析で調査した。解析には、2型糖尿病患者5万775例とその対照群27万269例、冠動脈疾患患者6万801例とその対照群12万3,504例が組み込まれた。 主要評価項目は、LDL-C低下と関連するNPC1L1、HMGCR、PCSK9、ABCG5/G8、LDLR近傍の対立遺伝子による2型糖尿病および冠動脈疾患に関するオッズ比(OR)であった。NPC1L1遺伝子変異は2型糖尿病と関連あり LDL-C低下に関連するNPC1L1遺伝子変異は、冠動脈疾患と逆相関を示した(遺伝子学的に予測されるLDL-C 1-mmol/L[38.7mg/dL]低下当たりのOR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.88、p=0.008)。一方、2型糖尿病とは正の相関を示した(同OR:2.42、1.70~3.43、p<0.001)。 全体として、LDL-C低下に関連する遺伝子変異は、冠動脈疾患リスクについては、いずれも同程度の減少がみられた(遺伝的関連の異質性I2=0%、p=0.93)。しかしながら、2型糖尿病との関連はばらつきがみられ(I2=77.2%、p=0.002)、LDL-C低下の代謝リスクに関連する特異的な対立遺伝子の存在が示唆された。 PCSK9遺伝子変異の場合、2型糖尿病に関する同ORは1.19であった(95%CI:1.02~1.38、p=0.03)。

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LDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制はスタチンだけではない!(解説:平山 篤志 氏)-600

 動脈硬化の原因として、LDL-コレステロールの関与は実験的、疫学的にも20世紀初頭から明らかにされ、コレステロール低下によるイベント抑制試験も行われてきた。しかし、1994年に4S試験で全死亡をはじめとした心血管死、心筋梗塞の発症の抑制が示されたことを契機として、数多くのスタチンによる大規模臨床試験が発表されるようになった。 スタチンの時代の到来を予見して、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsが4S以降あらかじめ発表されたプロトコルを基に前向きに登録した試験を集め解析をするようになった。2005年には、スタチンによるLDL-コレステロール低下の程度がイベント抑制と直線関係にあることが示され、コレステロール低下療法の意義が示された。 ところが、2010年のメタ解析で、より強力なスタチンの使用によりイベントが低下すること、さらにはその効果が治療前のLCL-コレステロール値にかかわらないことが示された。 その結果を受け、2013年にAHA/ACCガイドラインでは、LDL-コレステロールの目標値が設定されず、強力なスタチンの使用を推奨する“Fire and Forget”の考えが記載された。しかし、2015年にIMPROVE-ITが発表され、非スタチン製剤のエゼチミブのLDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制効果が示された。さらに、LDL-コレステロール受容体の分解を促進するPCSK9を阻害する薬剤での前向き観察研究によるイベント低下効果も示され、非スタチン製剤によるデータも蓄積されつつある。そこで、本論文ではこれまでの非スタチンによる薬物、非薬物療法を合わせた8つの試験とスタチンによる臨床試験さらにPCSK9阻害薬による心血管イベント効果抑制を加えたメタ解析を行い、LDL-コレステロール低下と心血管イベント抑制効果に直線関係が認められることを示した。 “The Lower, The Better”が示されたことになり、スタチンでなくともLDL-コレステロール低下療法によりイベント低下を証明する論文ではある。ただ、あくまでもPCSK9阻害薬の効果は観察研究であり、今後発表されるRCTの結果を待って判断されるべきである。

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