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第6回 腎症でシスタチンCの検査が査定/心不全の各種検査での査定/リーバクト配合顆粒処方での査定/ミカルディス錠処方での査定【レセプト査定の回避術 】

事例21 腎症でシスタチンCの検査が査定糖尿病性腎症でシスタチンCの検査を請求した。●査定点シスタチンCの検査が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の血液化学検査に、「シスタチンCは、『1』の尿素窒素又は『1』のクレアチニンにより腎機能低下が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる」となっています。そのため確定病名で請求すると査定の対象となります。とくに確定病名にするかどうかの判断では、疑い病名から確定病名に変更する請求月の検査内容を確認してから変更するなどの注意が必要です。事例22 心不全の各種検査での査定心不全で同時に脳性Na利尿ペプチド(BNP)136点と脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)140点の検査を施行したため、点数の高い脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)で検査を請求した。●査定点脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の内分泌学的検査に「『16』の脳性Na利尿ペプチド(BNP)、『18』の脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)及び『43』の心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上を実施した場合は、各々の検査の実施日を「摘要」欄に記載する」となっています。レセプトの摘要欄に必要な「検査実施日」が記載されていなかっため、査定となりました。事例23 リーバクト配合顆粒処方での査定低アルブミン血症で紹介された患者にイソロイシン・ロイシン・バリン(商品名:リーバクト配合顆粒)3包30日分を処方した。●査定点リーバクト配合顆粒3包30日が査定された。解説を見る●解説リーバクト配合顆粒の添付文書「効能又は効果」に「食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善」となっています。そのため「低アルブミン血症」と「肝硬変」の病名が求められています。事例24 ミカルディス錠処方での査定高血圧症、肝障害でテルミサルタン(商品名:ミカルディス錠)20mg 3Tを処方した。●査定点ミカルディス錠20mg 1Tが査定された。解説を見る●解説添付文書の「用法・用量」に「通常、成人にはテルミサルタンとして40㎎を1日1回経口投与する。ただし、1日20㎎から投与を開始し漸次増量する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、1日最大投与量は80㎎までとする」となっています。「用法・用量に関連する使用上の注意」として「肝障害のある患者に投与する場合、最大投与量は1日1回40㎎とする」となっています。適宜増減に対する症状詳記がなかったことと、肝障害の病名があるため1日1回40㎎の上限として査定されました。

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スタチンに加え注射でLDL-Cをさらに下げると、心血管リスクが減少(解説:佐田政隆氏)-980

 約30年前にスタチンが発売されてから、数々のエビデンスが築かれてきた。2次予防はもちろん、ハイリスク症例の1次予防にも、有効性が示された。その後、スタチン間のhead to headの試験が組まれ、LDLコレステロールを大量のストロングスタチンで積極的に低下させる方が、より心血管イベント抑制効果が大きいことが示され、Lower is Better という概念が確立した。そして、LDLコレステロール値と心血管イベントがほぼ直線的に低下するグラフが作られ、その直線を外挿するとLDLコレステロールを20~30mg/dL程度まで低下させれば心血管イベントを0にすることができるのではないかと予想されていた。しかし、最大耐用量のストロングスタチンと小腸でのコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いても、LDLコレステロールはせいぜい50mg/dLまでしか下げられなかった。そして、至適薬物療法を施しても、冠動脈病変が進行していく症例が存在し、いわゆるスタチン投与後の残余リスクとして問題になっている。 そのような中、PCSK9というLDL受容体の分解を促進するタンパク質に対する中和抗体が発売された。抗PCSK9抗体は、肝臓でLDL受容体を増やして血中LDLコレステロールを著明に低下させる。本ODYSSEY OUTCOMES研究では、最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロールが70mg/dL以上の急性冠症候群の患者に、抗PCSK9抗体であるアリロクマブを投与して、40mg/dL程度まで低下させると、複合エンドポイント(冠動脈性心疾患死、非致死的心筋梗塞、致死的または非致死的虚血性脳卒中、入院を要する不安定狭心症)が2.8年のフォローアップ中15%有意に低下した。エボロクマブを用いたFOURIER試験でも同様の結果が昨年報告されている。 本試験をみると、最大耐用量のスタチンを投与してもイベントが生じる一部の急性冠症候群患者で、抗PCSK9抗体を用いてLDLコレステロールをさらに低下させると、心血管イベントを防げることが明らかになった。抗PCSK9抗体は、Lp(a)低下作用やHDLコレステロール上昇作用があり、LDLコレステロール低下以外の抗動脈硬化効果が期待される。一方、極端なLDLコレステロール低下療法の長期安全性もこれから確認していかなければならないであろう。 スタチンに加えて、抗PCSK9抗体を、どのような患者に、どのくらいの期間で用いたらよいのか、今後明らかにしていかないといけない点が多い。

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多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。CHXによる口腔洗浄、選択的中咽頭、消化管除菌を各1日4回実施 試験は2013年12月1日~2017年5月31日に、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌による血流感染が5%以上を占める、ヨーロッパ13ヵ所のICUで行われた。被験者は、人工呼吸器の24時間超の使用が予測された患者で、追跡調査は2017年9月20日まで行った。 標準ケアは、CHX2%による毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラムの実施で、ベースラインとして6~14ヵ月実施した。その後、クロルヘキシジン1~2%による口腔洗浄、選択的中咽頭除菌(コリスチン、トブラマイシン、ナイスタチン入り口腔ペースト:SOD)、選択的消化管除菌(同口腔ペーストの使用と同種抗菌薬による胃腸混濁液:SDD)をそれぞれ1日4回、6ヵ月ずつ、無作為順序で行った。 主要評価項目は、各介入期間におけるMDRGNBによるICU血流感染の発生率で、副次評価項目は28日死亡率だった。ICU血流感染の発生率、28日死亡リスクともに低下せず 被験者総数は8,665例で、年齢中央値は64.1歳、うち男性は64.2%だった。ベースライン群、CHX群、SOD群、SDD群の被験者数は、それぞれ2,251例、2,108例、2,224例、2,082例だった。 試験期間中のMDRGNBによるICU血流感染は全体で144例(154件)に発生し、発生率はベースライン群が2.1%、CHX群が1.8%、SOD群1.5%、SDD群が1.2%。 絶対リスク減少は、ベースライン群と比較して、CHX群が0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6~1.1)、SOD群0.6%(-0.2~1.4)、SDD群が0.8%(0.1~1.6)だった。対ベースラインの補正後ハザード(HR)は、それぞれCHX群1.13(95%CI:0.68~1.88)、SOD群0.89(0.55~1.45)、SDD群0.70(0.43~1.14)だった。 また、補正前28日死亡リスクは、ベースライン群が31.9%、CHX群32.9%、SOD群32.4%、SDD群34.1%。28日死亡に関する対ベースラインの補正後オッズ比は、CHX群1.07(95%CI:0.86~1.32)、SOD群1.05(0.85~1.29)、SDD群1.03(0.80~1.32)だった。

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第5回 再診料CT検査での査定/セルベックス処方での査定/カデュエット配合錠処方での査定/強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定【レセプト査定の回避術 】

事例17 再診料CT検査での査定再診料で、他院の撮影したフィルムについて診断を行い、コンピュ-タ-断層診断料を請求した。●査定点コンピュ-タ-断層診断料が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」のコンピュ-タ-断層診断に、「当該保険医療機関以外の医療機関で撮影したフィルムについて診断を行った場合には、区分番号「A000」に掲げる初診料(注5のただし書に規定する2つ目の診療料に係る初診料を含む)を算定した日に限り、コンピュ-タ-断層診断料を算定できる」と記載されています。再診料での請求は認められていないのです。事例18 セルベックス処方での査定慢性胃炎の急性増悪でテプレノン(商品名:セルベックス)50mg 3カプセルを先月まで処方していたが、今月の請求から「急性増悪」を外して請求した。●査定点セルベックス50mg 3カプセルが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」として「急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期」と「胃潰瘍」が対象になっています。慢性胃炎から急性増悪期を外すと査定となります。このケ-スでは、「胃潰瘍」の病名に変更可能か検討することが必要です。事例19 カデュエット配合錠処方での査定他院から紹介され、狭心症でアムロジピン・アトルバスタチン配合剤(商品名:カデュエット配合錠)1番を処方した。●査定点カデュエット配合錠1番が査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「本剤(アムロジピン・アトルバスタチン配合剤)は、アムロジピンおよびアトルバスタチンによる治療が適切である以下の患者に使用する。高血圧症または狭心症と、高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症を併発している患者。なお、アムロジピンとアトルバスタチンの効能・効果は以下のとおりである」と示し、●アムロジピン・高血圧症・狭心症●アトルバスタチン・高コレステロ-ル血症・家族性高コレステロ-ル血症となっています。カデュエット配合錠を処方するときは、「高血圧症または狭心症」+「高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症」の病名が求められています。事例20 強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定C型肝炎でグリチルリチン・グリシン・システイン配合剤(商品名:強力ネオミノファ-ゲンシ-)20mL 3Aの請求をしていたが、今月から強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 5Aで請求した。●査定点強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 2Aが査定された。解説を見る●解説添付文書の「用法・用量」に「通常、成人には1日1回5~20mLを静脈内に注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。慢性肝疾患に対しては1日1回40~60mLを静脈内に注射または点滴静注する。年齢、症状により適宜増減する。なお、増量する場合は1日100mLを限度とする」となっています。このケ-スのように60mL以上で請求するには、増量した理由の「症状詳記」が求められます。

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添付文書改訂:タミフル/スタチンとフィブラート併用の原則禁忌解除/リンゼス錠【下平博士のDIノート】第13回

タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<Shimo's eyes>2007年に、オセルタミビルを服用した10代の患者が転落して死傷する事例が相次いで報告されたことから、緊急安全性情報の発出や添付文書の警告欄の新設によって、10代の未成年患者への使用は原則として差し控えられていました。しかし、2018年8月に、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知にて、オセルタミビル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明という調査結果が報告され、インフルエンザ罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず、異常行動が発現する可能性があることが明記されました。そして、オセルタミビルを含めたすべての抗インフルエンザウイルス薬について、異常行動に対する注意喚起の記載が統一されました。今年は経口抗インフルエンザ薬のラインアップに変化が生じており、2018年3月には新規作用機序であり、1回の経口投与で治療が可能なバロキサビル錠(商品名:ゾフルーザ)が発売され、同年9月には顆粒製剤が承認されています。同じく9月には、オセルタミビルの後発医薬品も発売されています。患者さんに合わせて処方薬が使い分けられるようになりますが、どのような薬剤が処方されていたとしても、異常行動の可能性があることを念頭に、小児・未成年者を1人にしないことや住居が高層階の場合は施錠を徹底することなどを指導しましょう。スタチン系とフィブラート系併用の原則禁忌が解除画像を拡大する<Shimo's eyes>2018年10月に、腎機能低下患者へのフィブラートとスタチンの併用が添付文書の原則禁忌から削除され、「重要な基本的注意」の項で、腎機能に関する検査値に異常が認められる場合、両剤は治療上やむを得ないと判断する場合のみ併用することという旨の注意喚起が追記されました。欧米では腎機能が低下している患者でもスタチンとフィブラートの併用が可能であること、わが国においても併用治療のニーズがあることなどから、日本動脈硬化学会より2018年4月に添付文書改訂の要望書が提出されていました。さらに、2019年4月に施行される予定の医療用医薬品の添付文書記載要領の改訂において、「原則禁忌」および「原則併用禁忌」が廃止されることを踏まえた対応と考えられます。なお、原則禁忌が解除されたとはいえ、腎機能が低下している患者では、スタチンとフィブラートの併用による横紋筋融解症のリスクについて、引き続き十分な注意を払う必要があるでしょう。リンゼス錠0.25mg画像を拡大する<使用上の注意>治療の基本である食事指導および生活指導を行ったうえで、症状の改善が得られない患者に対して本剤の適用を考慮します。重度の下痢が現れるおそれがあるので、症状の経過を十分に観察し、漫然と投与しないよう、定期的に本剤の投与継続の必要性を検討します。<用法・用量>通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与します。なお、症状により0.25mgに減量します。<Shimo's eyes>慢性便秘症は高齢者に多いため、超高齢社会となったわが国では、近年便秘治療薬の領域が活気を帯びています。従来、慢性便秘症の薬物治療には、酸化マグネシウムやセンノシドなどが主に使われてきましたが、近年新薬が相次いで発売されています。便秘は「本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、腸そのものの病変(腫瘍や炎症、狭窄など)によって起こる「器質性便秘」と、消化器官の機能低下によって起こる「機能性便秘」に分類されます。「慢性便秘症」は機能性便秘のうち、便秘の状態が日常的に続くものです。リナクロチドは、2017年3月に「便秘型過敏性腸症候群」の適応で発売されましたが、今回「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」が追加されました。同適応を有するものとしてすでに、ルビプロストンカプセル(商品名:アミティーザ)、エロビキシバット錠(同:グーフィス)が発売されており、さらに2018年9月にはマクロゴール含有製剤(同:モビコール)、ラクツロースゼリー(同:ラグノスNF)が承認されました。なお、食後投与の薬剤や食前投与の薬剤、服用時点の定めのない薬剤があるため、監査・服薬指導の際には注意が必要です。

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ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性が示唆された

 ベンゾジアゼピンの使用は、メンタルに関連する混乱や遅延を潜在的に引き起こす可能性がある。これらのよく知られているベンゾジアゼピンの副作用は、認知症と診断されるリスクの増加と関連しているといわれている。韓国・成均館大学校のKyung-Rock Park氏らは、ベンゾジアゼピンと認知症との関連について評価を行った。International Journal of Clinical Pharmacy誌オンライン版2018年10月26日号の報告。ベンゾジアゼピン使用が認知症リスク増加と関連しているかを調査 2002~13年の韓国医療データベースよりデータを抽出した。ベンゾジアゼピン使用が認知症リスク増加と関連しているかを調査するため、Sequence symmetry analysis(SSA)を行った。新規のベンゾジアゼピン使用者と新規に認知症と診断された患者(ICD-10:F00~03、G30、G318)を定義した。ベンゾジアゼピンは、作用時間に基づき長時間作用型と短時間作用型の2群に分類した。結果の非因果的解釈の可能性を除外するため、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬、スタチンの使用者を活性比較者とした。関連性を同定するため、時間傾向調整順序比(ASR)と95%信頼区間(CI)を用いた。主要アウトカム指標は、ASRとした。長時間作用型ベンゾジアゼピン使用者は認知症リスクが高い 主な結果は以下のとおり。・ベンゾジアゼピン使用者は、認知症との関連が認められた(ベンゾジアゼピン:4,212対、ASR:2.27、95%CI:2.11~2.44)。・長時間作用型ベンゾジアゼピン使用者(長時間作用型:3,972対、ASR:2.22、95%CI:2.06~2.39)は、短時間作用型ベンゾジアゼピン使用者(短時間作用型:5,213対、ASR:1.88、95%CI:1.77~2.00)よりも、ASRが高かった。・本SSAでは、期間と反応との関連は認められなかった。 著者らは「本研究において、ベンゾジアゼピンと認知症との関連が示唆された。さらに、長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤使用患者は、同薬剤の短時間作用型使用患者よりも、認知症リスクが高いと考えられる。この疫学的関連性の因果関係を明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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低用量メトトレキサートは冠動脈疾患例のMACEを抑制せず:CIRT/AHA

 LDLコレステロール(LDL-C)を低下させることなくアテローム性動脈硬化性イベントを抑制したCANTOS試験は、心血管系(CV)イベント抑制における抗炎症療法の重要性を強く示唆した。メトトレキサート(MTX)も、機序は必ずしも明らかでないが抗炎症作用が知られている。また関節リウマチ例を対象とした観察研究や非ランダム化試験では、低用量MTXによるCVイベント抑制作用が報告されている。ではMTXも、アテローム性動脈硬化性イベントを減少させるだろうか? ランダム化試験"CIRT"の結果、その可能性は否定された。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、11月10日、CANTOS試験の報告者でもある米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul Ridker氏が報告した。対象は炎症亢進例に限定せず CIRT試験の対象は、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの標準的治療下にあった、安定冠動脈疾患4,786例である。平均年齢は66歳、20%弱が女性だった。61%が心筋梗塞既往例で、残りは糖尿病/メタボリックシンドローム合併多枝病変1次予防例である。CANTOS試験とは異なり、「高感度C反応性蛋白(hs-CRP)高値」は導入条件となっていない。 これら4,786例は全例が葉酸1mg/日を服用の上、低用量(15~20mg/週)MTX群(2,391例)とプラセボ群(2,395例)にランダム化され、二重盲検法で追跡された(早期中止)。MTXの用量は、臨床検査値と症状に基づいて、詳細なアルゴリズムに従い、必要があれば2ヵ月ごとに変更された。1次エンドポイントはプラセボと有意差なし、皮膚がんは有意増加 その結果、2.3年間(中央値)の追跡期間後、当初の1次エンドポイントであるMACE(心血管系[CV]死亡・心筋梗塞・脳卒中)のリスクは両群間に有意差を認めなかった(MTX群:3.46%/年、プラセボ群:3.43%/年、p=0.91)。盲検解除前に追加されたもう1つの1次エンドポイント「MACE・緊急血行再建が必要となる不安定狭心症」でも、同様だった(MTX群:4.13%/年、プラセボ群:4.31%/年、p=0.91)。 一方、肝機能異常、白血球減少症の発現はMTX群で有意に多く、基底細胞がん以外の皮膚がんが有意に増えていた(33例 vs.12例、p=0.0026)。炎症性サイトカインも減少せず Ridker氏が強調したのは、炎症性サイトカインの変化が、CANTOS試験と異なっていた点である。すなわち、インターロイキン-1β(IL-1β)抗体を用いたCANTOSではIL-1βはもとより、IL-6、hs-CRPも減少していたが、CIRTではいずれのマーカーの低下も認めなかった。このためCVイベント抑制には、IL-1βからCRP産生に至る経路の遮断が重要と考えられた。Ridker氏は、NLRP3インフラマソームやIL-6をターゲットにした治療による、CVイベント抑制の可能性を指摘した。 本試験は米国NHLBIからの資金提供を受けて行われた。また発表と同時に、NEJM誌にオンライン掲載された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「速報!AHA2018」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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スタチンにアリロクマブ追加で、ACS症例のイベント抑制/NEJM

 抗PCSK9モノクローナル抗体アリロクマブは、急性冠症候群(ACS)の既往歴を有し、高用量スタチン治療を行ってもアテローム生成性リポ蛋白の値が高い患者において、虚血性心血管イベントの再発リスクを有意に低減することが、米国・コロラド大学のGregory G. Schwartz氏らが行ったODYSSEY OUTCOMES試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年11月7日号に掲載された。ACS患者は、現行のエビデンスに基づく治療を行っても虚血性心血管イベントの再発リスクが高い。これまで、PCSK9抗体がACS発症後の心血管リスクを改善するかは不明とされていた。LDL-C 25~50mg/dLを目標とする用量調節戦略を検討 ODYSSEY OUTCOMESは、57ヵ国1,315施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験。2012年11月~2015年11月(中国のみ2016年5月~2017年2月)の期間に無作為割り付けが行われた(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢40歳以上、無作為割り付け前の1~12ヵ月の期間にACS(心筋梗塞または不安定狭心症)で入院し、LDLコレステロール値70mg/dL以上、non-HDLコレステロール値100mg/dL以上、アポリポ蛋白B値80mg/dL以上のいずれかを満たし、高用量スタチン(アトルバスタチン40~80mg、ロスバスタチン20~40mg)またはこれらのスタチンの最大耐用量の投与を受けている患者であった。 被験者は、アリロクマブ75mgまたはプラセボを2週ごとに皮下投与する群にランダムに割り付けられた。アリロクマブの用量は、LDLコレステロール値25~50mg/dLを目標に、盲検下で調節された。 主要エンドポイントは、冠動脈性心疾患死、非致死的心筋梗塞、致死的または非致死的虚血性脳卒中、入院を要する不安定狭心症の複合であった。ベネフィットはLDL-C値100mg/dL以上の患者でより顕著 1万8,924例が登録され、アリロクマブ群に9,462例(平均年齢:58.5±9.3歳、女性:25.3%)、プラセボ群にも9,462例(58.6±9.4歳、25.1%)が割り付けられた。全体のACS患者のうち、心筋梗塞が83.0%、不安定狭心症が16.8%であった。患者の92.1%がLDLコレステロール70mg/dL以上であり、non-HDLコレステロール100mg/dL以上のみを満たした患者は7.2%だった。フォローアップ期間中央値は2.8年。 ベースライン時の全体の平均LDLコレステロール値は92±31mg/dLであった。アリロクマブ群の平均LDLコレステロール値は、4ヵ月後には40mg/dLに低下し、12ヵ月後は48mg/dL、48ヵ月後は66mg/dLであった。これに対し、プラセボ群の平均LDLコレステロール値の推移は、それぞれ93、96、103mg/dLであった。 主要複合エンドポイントのイベント発生率は、アリロクマブ群が9.5%(903例)と、プラセボ群の11.1%(1,052例)に比べ有意に低く、推定4年発生率はそれぞれ12.5%および14.5%であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.78~0.93、p<0.001)。4年間に、主要エンドポイントのイベントを1件予防するのに要する治療必要数は49例だった。 主な副次エンドポイントのうち、冠動脈性心疾患イベント(冠動脈性心疾患死、非致死的心筋梗塞、入院を要する不安定狭心症、虚血による冠動脈血行再建術)(12.7 vs.14.3%、HR:0.88、p=0.001)、主要冠動脈性心疾患イベント(冠動脈性心疾患死、非致死的心筋梗塞)(8.4 vs.9.5%、0.88、p=0.006)、心血管イベント(冠動脈性心疾患死、非致死的心筋梗塞、入院を要する不安定狭心症、虚血による冠動脈血行再建術、非致死的虚血性脳卒中)(13.7 vs.15.6%、0.87、p<0.001)、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的虚血性脳卒中の複合(10.3 vs.11.9%、0.86、p<0.001)の発生率は、アリロクマブ群で有意に良好であった。 また、複合主要エンドポイントに関するアリロクマブの絶対ベネフィットは、ベースラインのLDLコレステロール値100mg/dL以上の患者が、100mg/dL未満の患者よりも大きかった(交互作用検定のp<0.001)。アリロクマブ群の3.5%(334例)、プラセボ群の4.1%(392例)が死亡した(HR:0.85、95%CI:0.73~0.98)。 有害事象および検査値異常の発生率は、アリロクマブ群で局所の注射部位反応(そう痒、発赤、腫脹)(3.8 vs.2.1%、p<0.001)が有意に高頻度であったが、これ以外は両群でほぼ同等であった。重篤な有害事象はアリロクマブ群が23.3%、プラセボ群は24.9%に認められた。 著者は、「盲検下の用量調節戦略が、安全性や有効性に影響を及ぼしたかは不明である」としている。

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MI後標準治療下でのhsCRP高値例、IL-1β抗体で心不全入院減少の可能性:CANTOS探索的解析/AHA

 慢性心不全例における、炎症性サイトカインの増加を報告する研究は少なくない。しかし、心不全例に対する抗炎症療法の有用性を検討したランダム化試験“ATTACH”と“RENEWAL”は、いずれも有用性を示せずに終わった。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らが、心筋梗塞(MI)後、非心不全例を含む高hsCRP例への抗炎症療法の心不全入院作用を検討すべく、ランダム化試験“CANTOS”の探索的解析(事前設定解析)を行った。その結果 、インターロイキン(IL)-1β抗体による用量依存性の心不全入院減少の可能性が示唆された。11月11日、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会のRapid Fireセッションにおいて報告された。MI後標準治療下でhsCRP高値例が対象 CANTOS試験の対象となったのは、MI後、スタチンを含む積極的2次予防療法にもかかわらず、hsCRPが「≧2mg/L」だった1万61例である。平均年齢は61歳、約8割がレニン・アンジオテンシン系抑制薬を服用しており、およそ2割はすでに慢性心不全と診断されていた。 これら1万61例は、IL-1β抗体であるカナキヌマブ(50mg、150mg、300mg皮下注/3ヵ月)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で追跡された。hsCRP著明低下例では心不全入院リスク有意低下 3.7年間(中央値)の追跡期間中、385例(3.8%)が心不全で入院した。うち、約60%は試験開始時に心不全を認めた例だった。 プラセボ群と比較したカナキヌマブ群の「心不全入院」ハザード比[HR]は、50mgで1.04(95%信頼区間[CI]:0.79~1.36)、150mg群で0.86(95%CI:0.65~1.13)、300mgで0.76(95%CI:0.57~1.01)となり、有意な用量依存性の減少傾向を認めた(傾向のp=0.025)。「心不全死・心不全入院」で比較しても、同様の用量依存性が認められた(傾向のp=0.042)。 さらにカナキヌマブ群を全用量併合すると、「到達hsCRP<2mg/L」例では、プラセボに比べ心不全入院リスクの有意な低下が観察された(HR:0.80、95%CI:0.70~0.91)。「hsCRP50%以上低下」例でも同様だった(HR:0.86、95%CI:0.77~0.97)。 本試験はNovartisの資金提供を受けて行われた。また発表と同時に、Circulation誌オンライン版で公開された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「速報!AHA2018」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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TG低下療法によるCVイベント抑制作用が示される:REDUCE-IT/AHA

 スタチン服用下でトリグリセライド(TG)高値を呈する例への介入は、今日に至るまで、明確な心血管系(CV)イベント抑制作用を示せていない。そのような状況を一変させうるランダム化試験がREDUCE-IT試験である。その結果が、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の11月10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションで報告された。精製イコサペンタエン酸エチル(EPA-E)を用いた服用で、プラセボに比べ、CVイベントリスクは、相対的に25%の有意減少を認めた。スタチン服用下で高TGを呈するCV高リスク例が対象 REDUCE-IT試験の対象は、スタチン服用下でTG「150~499mg/dL」の、1)CV疾患既往例(2次予防:5,785例)、2)CVリスクを有する糖尿病例(高リスク1次予防:2,394例)である。LDLコレステロール(LDL-C)「≦40mg/dL」と「>100mg/dL」例、魚類に対する過敏症例などは除外されている。 平均年齢は64歳、30%弱が女性だった。試験開始時のTG値の平均は216mg/dL、全体の60%が「TG≧200mg/dL」だった。 これら8,179例はEPA-E群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で4.9年間(中央値)追跡された。EPA-EでTGは低下、HDL-Cは増加せず まず脂質代謝の変化を見ると、試験開始1年後、EPA-E群のTG値は175mg/dLへ有意に低下し(p<0.001)、プラセボ群では逆に221mg/dLへ上昇していた(p<0.001)。またHDLコレステロール(HDL-C)は、EPA-E群で39mg/dLへの有意低下と、プラセボ群における42mg/dLへの有意上昇を認めた(いずれもp<0.001)。CVイベント4.9年間NNTは21例 その結果、プライマリーエンドポイントである「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠血行再建術・不安定狭心症」の発生率は、EPA-E群で17.2%、プラセボ群で22.0%となり、EPA-E群における有意なリスク低下が認められた(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.68~0.83)。21例でプラセボをEPA-Eに切り替えれば、4.9年間(中央値)に1例でプライマリーエンドポイントを回避できる計算になる。 EPA-E群におけるプライマリーエンドポイント抑制作用は、「2次予防と1次予防」や治療前TG値「200mg/dLの上下」「150mg/dLの上下」、「糖尿病合併の有無」など、さまざまなサブグループで検討しても一貫していた。 有害事象は、EPA-E群で「末梢浮腫」が有意に多く(6.5% vs.5.0%、p=0.002)、同様に「便秘」(5.4% vs.3.6%、p<0.001)、「心房細動」(5.3% vs.3.9%、p=0.003)の発現も、EPA-E群で有意に多かった。一方、「下痢」(9.0% vs.11.1%、p=0.002)と「貧血」(4.7% vs.5.8%、p=0.03)の発現は、EPA-E群で有意に少なかった。 その結果、試験薬服用中止に至った有害事象発現率は、EPA-E群(7.9%)とプラセボ群(8.2%)の間に有意差を認めなかった(p=0.60)。重篤な出血も、EPA-E群2.7%、プラセボ群2.1%で、有意差はなかった(p=0.06)。 本試験はAmarin Pharmaの資金提供を受けて実施された。また発表と同時に、NEJM誌オンライン版で公開された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「速報!AHA2018」ページはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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CV高リスク・高LDL-C血症の日本人高齢者に対するLDL-C低下療法の有用性は?:EWTOPIA/AHA

 高齢の高コレステロール血症例を対象としたコレステロール低下療法のランダム化試験としては、“PROSPER”がよく知られている(Shepherd J, et al. Lancet. 2002;360:1623-1630.)。しかし同試験には多くの心血管系(CV)2次予防例が含まれており、さらに「82歳」という年齢上限も設けられていた。 そこで、わが国の高LDLコレステロール(LDL-C)血症を呈するCV1次予防高齢者を対象に、LDL-C低下療法の有用性が検討された。ランダム化試験“EWTOPIA75”である。その結果、エゼチミブを用いたLDL-C低下療法で、食事指導のみの対照群に比べ、「脳・心イベント」リスクは相対的に34%有意に低下した。米国・シカゴにて開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の11月10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、大内 尉義氏(虎の門病院 院長)が報告した。わが国のCV高リスク「LDL-C≧140mg/dL」高齢者を、「食事指導」と「食事指導+エゼチミブ」にランダム化 EWTOPIA75試験の対象は、75歳以上、冠動脈疾患の既往はないもののCVリスク因子は有し、スタチンを含む脂質低下薬非服用下で「LDL-C≧140mg/dL」だった3,796例である。 平均年齢は81歳、女性が74%を占めた。LDL-C平均値は約160mg/dL。90%近くが高血圧、約25%が糖尿病を合併し、15%強がメタボリックシンドロームを呈していた。 これら3,796例は食事指導のみを行う「対照」群(1,898例)と、食事指導に加えエゼチミブ10mg/日を服用する「エゼチミブ」群(1,898例)にランダム化され、イベント判定者にのみ割付群が遮蔽されるPROBE法で追跡された。また原則として、エゼチミブ以外の脂質低下薬は使用しないこととされた。「脳・心イベント」が相対的に34%の有意減少 5年間の観察期間終了時、LDL-C値は、エゼチミブ群で120.1mg/L、対照群でも131.4mgまで低下した。 その結果、1次評価項目である「心臓突然死・心筋梗塞・冠血行再建術、脳卒中」のハザード比(HR)は、エゼチミブ群で0.66(95%信頼区間[CI]:0.50~0.86)と、有意に低値となった。 両群のカプランマイヤー曲線は、試験開始後1年を待たず乖離を始め、5年間の追跡期間中、差はわずかながら広がり続けた。有意減少は「心イベント」、脳血管障害と総死亡には有意差認めず 2次評価項目を見ると、エゼチミブ群で有意にリスクが減少していたのは、「心臓突然死・心筋梗塞・冠血行再建術」から成る「心イベント」である(HR:0.60、95%CI:0.37~0.98)。脳血管障害(HR:0.78、95%CI:0.55~1.11)と総死亡(HR:1.09、95%CI:0.89~1.34)のリスクに、両群間で有意差はなかった。なお、本試験はPROBE法であり、盲検化はされていない。 また、これらのイベント中、最も発生率が高かったのは「総死亡」で約15%、次いで「脳血管障害」の約5%、「心イベント」の発生率はおよそ2~3%だった。 指定討論者として登壇したJennifer Robinson氏(米国・アイオワ大学)は、本試験における「LDL-C低下幅に対するイベント減少率」が、これまでのLDL-C低下ランダム化試験に比べ著明に高いと指摘していた。 本研究は、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターから資金提供を受け行われた。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「速報!AHA2018」ページはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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CV高リスク2型DMへのSGLT2iのCV死・MI・脳卒中はプラセボに非劣性:DECLARE-TIMI58/AHA

 先ごろ改訂された米国糖尿病学会・欧州糖尿病学会ガイドラインにおいてSGLT2阻害薬は、心血管系(CV)疾患既往を有する2型糖尿病(DM)例への第1選択薬の1つとされている。これはEMPA-REG OUTCOME、CANVAS programという2つのランダム化試験に基づく推奨だが、今回、新たなエビデンスが加わった。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて発表された、DECLARE-TIMI 58試験である。SGLT2阻害薬は、CV高リスク2型DM例のCVイベント抑制に関しプラセボに非劣性であり(優越性は認めず)、CV死亡・心不全(HF)入院は有意に抑制した。Stephen D. Wiviott氏(Brigham and Women’s Hospital、米国)が報告した。3分の2近くが1次予防例 DECLARE-TIMI 58試験の対象は、1)虚血性血管疾患を有する(6,974例)、または2)複数のCVリスク因子を有する(1万186例)2型DM例である。クレアチニン・クリアランス「60mL/分/1.73m2未満」例は除外されている。本試験における1次予防例の割合(59%)は、CANVAS Program(34%)に比べ、かなり高い。 平均年齢は64歳、DM罹患期間中央値は11年、平均BMIは32kg/m2だった。併用薬は、82%がメトホルミン、43%がSU剤を服用し、41%でインスリンが用いられていた。CVイベント抑制薬は、レニン・アンジオテンシン系抑制薬が81%、スタチン/エゼチミブが75%、抗血小板薬も61%、β遮断薬が53%で用いられていた。 これら1万7,160例は、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン群(8,582例)とプラセボ群(8,578例)にランダム化され、二重盲検法で4.2年間(中央値)追跡された。MACE抑制はプラセボに非劣性が示された その結果、CV安全性1次評価項目であるMACE(CV死亡・心筋梗塞[MI]・脳梗塞)の発生率は、SGLT2阻害薬群:8.8%、プラセボ群:9.4%(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.84~1.03)となり、SGLT2阻害薬による抑制作用は、プラセボに非劣性だった(p<0.001)。このように、プラセボに比べMACEの有意減少は認められなかったものの、もう1つのCV有効性1次評価項目である「CV死亡・心不全入院」*リスクは、SGLT2阻害薬群で有意に減少していた(HR:0.83、95%CI:0.73~0.95)。*試験開始後、MACEリスク中間解析前に追加 有害事象は、服用中止を必要とするものがSGLT2阻害薬群で有意に多かった(8.1% vs.6.9%、p=0.01)。なおメタ解析でリスク増加が懸念されていた膀胱がんは(Ptaszynska A, et al. Diabetes Ther. 2015;6:357-75.)、プラセボ群のほうが発症率は有意に高かった(0.5% vs.0.3%、p=0.02)。CANVAS programとの併合解析で、1次予防例におけるMACE有意抑制は示されず SGLT2阻害薬による2型DMのCVイベント抑制作用を検討した大規模ランダム化試験は、このDECLARE-TIMI 58で3報目となる。そこでWiviott氏らは、既報のEMPA-REG OUTCOME、CANVAS programと合わせたメタ解析により、SGLT2阻害薬のMACE抑制作用を検討した。 その結果、CV疾患既往例では、SGLT2阻害薬によりMACEのHRは0.86(95%CI:0.80~0.93)と有意に低下していたものの、リスク因子のみの1次予防例(1万3,672例)では、SGLT2阻害薬によるリスク低下は認められなかった(HR:1.00、95%CI:0.87~1.16)。なお、CV疾患既往の有無による交互作用のp値は「0.05」である。一方、CV死亡・HF入院のHRは、CV疾患既往例で0.76(95%CI:0.69~0.84)、リスク因子のみ例で0.84(95%CI:0.69~1.01)だった(交互作用p値:0.41)。 本試験はAstraZenecaの資金提供を受け行われた(当初はBristol-Myers Squibbも資金提供)。また学会発表と同時にNEJM誌にオンライン掲載された。「速報!AHA2018」ページはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

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古くて新しい残余リスクとしてのLP(a)(解説:平山篤志氏)-937

 これまでリポ蛋白(a)(LP(a))については、動脈硬化疾患と関連するということが知られていて、独立した冠危険因子とされていた、しかし、測定される対象が限られていることと、多くの試験が少数例であったこと、またLP(a)を低下させる薬剤がなかったこともあって、LDL-コレステロール(LDL-C)の陰に隠れた存在であった。 本研究ではこれまで行われたプラセボ対照のスタチン試験においてLP(a)を複数回測定している対象で、心血管イベントとの関連が検討された。LP(a)は遺伝的に決定されているため環境因子に左右されないとされていたように、スタチンの投与でLDL-Cは39%低下したが、LP(a)は変化しなかった。プラセボ群でLP(a)の上昇とともにイベントの上昇が直線的に認められた。これはスタチン治療群でも同様で、さらにプラセボ群より強い関連が認められた。 これらのことから、LP(a)を治療のターゲットとした臨床試験の必要性が述べられている。これまで、HDL-Cの高値が心血管イベントの低下と関連することからHDL-Cを上昇させる薬剤の試験が行われたが、いずれも失敗に終わっている。観察研究で独立因子とされたものでも原因であることを示すには、LP(a)を低下させてイベントが低下することを示さねばならない。ただ、欧州動脈硬化学会でFOURIERのサブ解析が発表され、LP(a)を低下させる効果のあるEvolocmabで、LP(a)値の高値群での効果が顕著にみられたことから考えると、LP(a)が治療のターゲットであることは間違いないであろう。スタチンでLDL-Cを低下させてもLP(a)高値の残余リスクを有する新たな治療の展開が期待される。

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リポ蛋白(a)値とCVDリスクの関連/Lancet

 スタチンによる治療を受けた患者の個々のデータを用いたメタ解析の結果、ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)高値は、独立して心血管疾患(CVD)リスクとほぼ線形相関を示すことが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学のPeter Willeit氏らが報告した。リポ蛋白(a)値の上昇は、一般集団を対象とした研究においてCVDの遺伝的リスク因子であることが示されているが、CVD患者またはスタチン治療中の患者における心血管イベントリスクへの寄与度は不明であった。著者は、「リポ蛋白(a)値低下仮説を検証するCVDアウトカム研究を実施する理論的根拠が得られた」とまとめている。Lancet誌2018年10月4日号掲載の報告。約2万9,000例でリポ蛋白(a)値と心血管イベントの関連を検証 研究グループは、スタチン治療中またはCVD既往歴を有する患者のリポ蛋白(a)値と心血管イベントリスクの関連性を検証する目的で、スタチンに関する無作為化プラセボ対照比較試験7件(AFCAPS、CARDS、4D、JUPITER、LIPID、MIRACL、4S)から個々の患者のデータを得て統合し、心血管イベント(致死的/非致死的冠動脈疾患、脳卒中、血行再建術)のハザード比(HR)を評価した。HRは、あらかじめ定義されたリポ蛋白(a)群(15~<30mg/dL、30~<50mg/dL、≧50mg/dL vs.

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心血管病の証拠のない2型糖尿病患者への予防的ω-3多価不飽和脂肪酸の投与効果は期待はずれか(ω-3PUFA効果は夢か幻か?)(解説:島田俊夫氏)-926

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心血管病に良い影響を与えるということが巷でささやかれており、サプリメントも広く普及している。PUFAにまつわる話はグリーランドのイヌイット(エスキモー)に心血管病が少ないことに着目した研究に端を発している1)。この研究以降、精力的に研究が行われてきたが、PUFAサプリメントの投与と心血管病の予防・治療への有効性は、いまだ確立されていない。とくに1次予防に関しては、悲観的な結果が優勢であるがわが国の大規模研究JELIS2)は、高コレステロール血症に対してスタチン投与中の集団を無作為にEPA(1,880mg/day)、プラセボに割り付けることにより、主冠動脈イベント発症率は19%有意に低下した。2次予防サブ解析では累積冠動脈イベントが23%低下した。脳卒中に関しては1次予防効果は認めず、2次予防効果において20%の抑制効果が認められた。しかし、この研究がprobe法を用いた研究であったことが信憑性に疑念を抱かせる結果となっている。 NEJM誌オンライン版の2018年8月26日号に掲載された英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らの論文は、PUFAの予防投与における有用性に疑問を投じる貴重な報告と考え、私見を述べる。研究の概略 観察研究では、ω-3PUFAの摂取増加は心血管病リスク低下に関係している。 ところがこれらの所見は、ランダム化試験においていまだ是認されていない。ω-3PUFAサプリメントが糖尿病患者の心血管リスクに便益をもたらすか、いまだ解決されていない。 明らかな動脈硬化性疾患の証拠を持たない糖尿病患者1万5,480例を、ω-3PUFA1gカプセル服用群(PUFA群)、オリーブオイル服用群(プラセボ群)のいずれかの群に無作為に割り付けを行った。1次アウトカムは、初回の重篤な血管イベントとした(つまり、確定した脳内出血を除いた非致死的心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作または血管死)。 7.4年のフォローアップ期間中(アドヒアランス:76%)、重篤な血管イベントが脂肪酸群で689例(8.9%)、プラセボ群で712例(9.2%)に発生した(率比:0.97、95%CI:0.87~1.08、p=0.55)。重篤な血管イベントあるいは血管再建複合アウトカムは、それぞれ882例(11.4%)、887例(11.5%)に起こった(率比:1.00、95%CI:0.91~1.09)。全死因死亡は脂肪酸群で752例(9.7%)、プラセボ群で788例(10.2%)に起こった(率比:0.95、95%CI:0.86~1.05)。非致死的重篤有害イベント率に関しては有意差を認めなかった。筆者コメント 結論として、心血管病の証拠のない糖尿病患者は、ω-3PUFAサプリメント群、プラセボ群に無作為に割り付けられた2群間比較で、重篤な心血管イベントリスクに有意差を認めなかった。本論文のメッセージは、心血管病予防にこれまで期待の大きかったPUFAサプリメントの1次予防への投与が無作為に割り付けられた糖尿病患者で、かつ明らかな心血管疾患の証拠のない患者の2群間(ω-3PUFAサプリメント群とプラセボ群)比較で有意差を認めなかった事実から、PUFAの予防投与は思いの外、糖尿病患者の心血管病予防への期待を裏切る結果となった。高コレステロール血症治療中の患者を対象とした研究、2型糖尿病治療群を対象とした本研究での結果の乖離が、単なる対象疾患の差にもとづくものか慎重な判断が必要である。1次予防に関する研究は追跡期間、人口構成らが大いに結果に影響し、至適追跡期間が不適切であれば検出力不足のために陰性になる恐れもあり、本研究の平均追跡期間7.4年が1次予防効果を評価するに十分であったか多少の疑問が残る。これまでの多くのエビデンスを考えると多価不飽和脂肪酸サプリメントへの過大な期待に対する警鐘と理解するのが、現段階では妥当な解釈かと考えている。効果を否定するのは早計と考える。

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高齢者でもスタチンは投与すべきなのか?(解説:平山篤志氏)-923

 今後多くの先進国は、高齢化社会を迎える。とくにわが国は高齢化率が著しく、諸外国に先駆けて数多くの未知なる諸問題に対処してゆかねばならない。その1つにEvidence Based Medicineがある。医学の世界では、EBMに基づいてガイドラインが作成され、治療に対応している。EBMとして最もエビデンスレベルが高いとされるのは、Randomized Control Trial(RCT)で得られた結果である。だが、多くの場合RCTでは高齢者が除外されているか、また含まれていても数が少ないため十分なEBMを得ることができていない。RCTでは少数であっても実臨床では数多い高齢者についての情報を得るために、近年はReal World Evidenceということが注目されるようになり、電子カルテベースのデータや保険会社のデータ、あるいはレジストリー研究からの結果が出されるようになっている。 本論文もその1つで、スペインの電子カルテからのデータを基に、75歳以上の高齢者でコレステロール低下目的にスタチンを投与することの有用性が検討された。電子カルテのレコードから75歳以上で初めてスタチンを投与された患者と、さまざまな背景因子を合わせた患者(プロペンシティーマッチした)を比較したものである。結果は興味深く、75歳以上ではスタチンの投与は心血管イベント低下効果がないとするものである。ただ、糖尿病患者では有用性があることも示されたが、この効果も85歳以上では効果が消失するようである。ガイドラインでは1次予防としてもスタチンの投与の有用性は広く示されているため、75歳以下だけでなく、高齢者でも有用なのではと推測されていたが、本論文では安易なスタチンの投与はすべきでないとしている。結論を出すには2022年ごろに発表される高齢者を対象としたRCTの結果(STAREE試験)を待たなければならないが、本論文の結果は安易にガイドラインを高齢者に適応すべきではないという示唆でもある。 ただ、(1)これまでスタチンを投与してきた患者を75歳で中止すべきなのか? (2)75歳以上の高齢者では各個人間での相違(合併症、虚弱度、食事など)を考慮すべきではないか? (3)スペインと他の地域での高齢者は同じなのか? など、年齢だけでは規定できない多くの要素があり、Real World Evidenceだからといって、普遍化はできない。高齢者では、RCTやReal World Evidenceにも多くのバイアスがあるので、これまでのEBMに基づいた治療ではなく、一人ひとりの背景因子をしっかり把握して個人に合ったエビデンスの適応を考慮しなければならないであろう。

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相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】第10回

相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」今回は、「ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物カプセル(商品名:ネイリンカプセル100mg)」を紹介します。本剤は、薬物相互作用が少なく、休薬期間や服用時点の制限もないため、高齢者に多い爪白癬の新たな治療選択肢となることが期待できます。<効能・効果>皮膚糸状菌(トリコフィトン属)による爪白癬の適応で、2018年1月19日に承認され、2018年7月27日より販売されています。本剤は、トリアゾール系抗真菌薬であるラブコナゾールの水溶性および生物学的利用率を高めたプロドラッグであり、経口投与後速やかに活性本体であるラブコナゾールに変換され、真菌の発育に必要なエルゴステロールの生合成を阻害して抗真菌作用を示します。<用法・用量>通常、成人には、1日1回1カプセルを12週間経口投与します。なお、本剤はすでに変色した爪所見を回復させるものではないので、投与終了後も爪の伸長期間を考慮した経過観察が必要です。<副作用>国内第III相臨床試験において、101例中副作用が24例(23.8%)に認められました。主な副作用は、γ-GTP増加16例(15.8%)、ALT(GPT)増加9例(8.9%)、AST(GOT)増加8例(7.9%)、腹部不快感4例(4.0%)、血中Al-P増加2例(2.0%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、飲み続けることで爪白癬の原因となる真菌を殺菌する働きがあります。2.すでに変形・変色してしまった爪を回復させる薬ではありません。服薬終了後も健康な爪に生え変わるまで継続的な観察(約9ヵ月間)が必要です。3.自己判断で中止すると、再発・悪化につながります。医師の指示があるまではしっかり続けてください。4.爪が肥厚、変形している場合は、必要に応じてやすりや爪切りなどで爪のお手入れをしてください。5.爪白癬はご家族などに感染することがあります。患部はお風呂に入った後よく乾かし、清潔に保ってください。6.この薬を服用している間および使用を中止してから少なくとも3ヵ月間は必ず避妊をしてください。<Shimo's eyes>本剤は、経口爪白癬治療薬として約20年ぶりに承認された新薬で、適応は爪白癬のみとなっています。爪(NAIL)に薬物が入る(IN)ことからNAILIN(ネイリン)と命名されました。爪白癬治療薬として、経口薬ではテルビナフィン(先発品名:ラミシール)およびイトラコナゾール(同:イトリゾール)が発売されています。1997年に発売されたテルビナフィンは、肝機能障害や血球減少といった重篤な副作用が報告されているため定期的な採血が必要であり、また服用期間が約6ヵ月と長いことが課題でした。そのため、現在では主に1999年に発売されたイトラコナゾールのパルス療法(1週間投与して3週間休薬を1サイクルとして、3サイクル繰り返す)が行われています。しかし、イトラコナゾールは強力なCYP3A4とP糖蛋白の阻害作用を有するため、併用禁忌・併用注意薬が多くあり、高齢者や合併症のある患者さんでは使用しづらいこともあります。そのような中、爪外用液として2014年にエフィナコナゾール爪外用液10%(商品名:クレナフィン)、2016年にルリコナゾール爪外用液5%(同:ルコナック)が発売されました。しかし、爪外用液は、肝障害などの副作用や他剤との薬物相互作用が少ないというメリットがあるものの、爪が生え変わるまでの期間(1年程度)塗布し続ける必要があり、経口薬に比べて有効性が低い傾向があります。このように、これまでの爪白癬治療では、有効性や安全性、治療の利便性に課題があり、服薬アドヒアランスを良好に保つことが課題でした。本剤は、CYP3A阻害作用が比較的弱いため、シンバスタチンやミダゾラム、ワルファリンとは併用注意ですが、併用禁忌の薬はありません。また、1日1回12週間の連日服薬で、食事の影響がないため患者さんのライフスタイルに合わせて服用することができ、服薬アドヒアランスが良好に維持されることが期待されます。とくに要介護患者さんに対する爪外用液の使用で負担が大きかった介護者にとっては、負担が大きく軽減されるかもしれません。なお、国内臨床試験において、肝機能に関する重篤な有害事象は認められていませんが、海外で承認されている国および地域はありません※ので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。※2018年8月現在

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スタチン不耐に関する診療指針2018」で治療中断を食い止める

 スタチンは心筋梗塞をはじめ、動脈硬化によって生ずる心血管イベントを予防するためには必要不可欠であると、日本人を含むさまざまなデータにおいて報告がある。しかし、その服用継続が困難な「不耐」については日本人のデータが確立していないどころか、適切なLDLコレステロール低下療法が実践されているのかさえ不明瞭である。2018年9月26日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナー「スタチン不耐について」が開催され、梶波 康二氏(金沢医科大学循環器内科学主任教授/スタチン不耐ワーキンググループ委員長)が登壇し、スタチン不耐に関する診療指針2018作成の経緯について語った。スタチン不耐に該当する患者は意外にも多い スタチンの服用中断は決して稀なことではないという。スタチン服用継続困難な状態(服用に伴う有害事象、検査値異常、ほかの継続服用を妨げる事象や懸念)のことをスタチン不耐と呼び、この患者が占める割合はスタチンの服用が必要な患者の10%1)に及ぶ。また不耐には、部分不耐(ある種のスタチンのある投与量で)と完全不耐(すべてのスタチンのあらゆる投与量で)が知られている。 前述のとおり、スタチンがまったく飲めないのではなく、なんらかの理由によって飲めない患者も含まれるため、同氏は「薬が服用できない原因をしっかり確認し、それを克服することがスタチンを有効に使用するうえで重要な課題である」と問題提起した。スタチン中断に対するさまざまな問題点が指針作成へ発展 スタチン服用による有害事象は多岐に渡るが、なかでもエビデンスより明らかな筋関連障害と肝酵素の上昇に焦点が当てられメカニズムの解明が進められている。欧州ではスタチン関連筋障害の管理指針2)が発表されているが、欧州と日本では認可されている投与量が異なるため、同氏は、「日本人にこれを直接当てはめるのは注意が必要」と指摘。また、「スタチン関連筋障害には遺伝子多型の影響があるが、欧州で報告された遺伝素因は日本人における筋障害に対し影響は小さかった。日本人の中でどういう人がスタチンと相性が悪いのかを、日本人で検証することが必要である」と示唆し、「このような日本人における有害事象のデータを明らかにするために、日本肝臓学会、日本神経学会、日本薬物動態学会の協力を得て、診療指針を作成する運びとなった。スタチン継続困難な患者と共に考える道筋を学会としてアプローチしていく」とコメントした。Nocebo効果が筋関連障害の患者を増やしている スタチンの筋関連障害では、Nocebo効果が認められた論文3)が報告されており、プラセボを服用した時だけに筋症状が出た患者が、参加者の30%にも及んでいる。患者が筋関連障害を訴えた場合は、プラセボ効果とは逆のNocebo効果があることを考慮し、同氏は、「患者にもその旨を伝え、診察時は患者と共に対応を協議することが重要」と、患者の訴えを鵜呑みにした際のリスクについて語った。スタチン不耐克服のためにワーキンググループが取り組む課題と対策 不足している日本人のデータを取り揃えるため、ワーキンググループはPMDAに申請を行い、情報収集ならびに分析を開始している。これを踏まえ、同氏は「日本人のスタチン服用にまつわる有害事象の詳細な解析の第一歩を踏み出している。われわれが作成する“スタチン投与時の有害事象に対するフローチャート”を共有し、どのような患者にどういうことが起きているのかを登録する仕組みを確立したい。そして、日本人のスタチン継続困難な理由は何かについて、科学的な分析をさらに発展させたい」と述べ、「10%は不耐な患者が存在すると推測される。そのような患者にどうアプローチをしていくのかを主治医に依存するのではなく、指針作成を通して共通の方向性を設定し、問題解決の方策を見いだしていくことが、日本人の心血管予防をさらに充実させる診療につながる」とまとめた。■参考1)Nagar SP, et al.Circ J.2018;82:1008-1016.2)Stroes ES, et al.Eur Heart J.2015;36:1012-1022.3)Nissen SE, et al.JAMA.2016;315:1580-1590.■関連記事スタチン不耐容患者へのエボロクマブ vs.エゼチミブ/JAMA

259.

スタチンによる高齢者のCVイベント1次予防 DM vs.非DM/BMJ

 スタチンは、非2型糖尿病の75歳以上の高齢者の1次予防では、アテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡を抑制しないのに対し、2型糖尿病の75~84歳の高齢者の1次予防では、これらの発生を有意に低減することが、スペイン・ジローナ大学のRafel Ramos氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年9月5日号に掲載された。スタチンは、75歳以上の高齢者の2次予防において、心血管イベントや心血管死の抑制効果が確立されており、最近の数十年で高齢者への処方が増加しているが、とくに85歳以上の高齢者の1次予防における有効性のエビデンスは不十分だという。スタチンの効果について年齢との関連を糖尿病の有無別に後ろ向きに評価 研究グループは、高齢者および超高齢者の1次予防におけるスタチン治療の、アテローム動脈硬化性心血管疾患および死亡の抑制効果を、糖尿病の有無別に評価する後ろ向きコホート研究を行った(スペイン科学イノベーション省の助成による)。 データの収集には、600万例以上(カタルーニャ地方の80%、スペイン全体の10%に相当)の、匿名化された長期的な患者記録の臨床データベース(Spanish Information System for the Development of Research in Primary Care[SIDIAP])を用いた。 対象は、臨床的にアテローム動脈硬化性心血管疾患が確認されていない75歳以上の高齢者であり、2型糖尿病の有無およびスタチンの非使用/新規使用で層別化した。 傾向スコアで補正したCox比例ハザード回帰モデルを用いて、スタチン使用の有無別にアテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡のハザード比(HR)を算出した。また、2型糖尿病の有無別に、薄板回帰スプライン(thin plate regression splines)を用いた連続的尺度で、年齢別(75~84歳、85歳以上)のスタチンの効果を解析した。スタチンは2型糖尿病の75~84歳で死亡リスク16%低減、90代では効果消失 2006年7月~2007年12月の期間に組み入れ基準を満たした4万6,864例(75~84歳:3万8,557例、85歳以上:8,307例)が登録され、このうち7,502例(16.0%)がスタチン治療を開始していた(75~84歳:6,558例、85歳以上:944例)。7,880例(16.8%)が2型糖尿病(75~84歳:6,641例、85歳以上:1,239例)であった。ベースラインの全体の平均年齢は77歳、女性が63%だった。 非糖尿病群では、75~84歳のスタチン使用者におけるアテローム動脈硬化性心血管疾患のHRは0.94(95%信頼区間[CI]:0.86~1.04)、全死因死亡のHRは0.98(0.91~1.05)であり、いずれも有意な関連は認めなかった。また、85歳以上のスタチン使用者のHRは、アテローム動脈硬化性心血管疾患が0.93(0.82~1.06)、全死因死亡は0.97(0.90~1.05)と、いずれも有意な関連はみられなかった。 これに対し、糖尿病群では、75~84歳のスタチン使用者におけるアテローム動脈硬化性心血管疾患のHRは0.76(95%CI:0.65~0.89)、全死因死亡のHRは0.84(0.75~0.94)と、いずれも有意な関連が認められた。また、85歳以上のスタチン使用者のHRは、それぞれ0.82(0.53~1.26)、1.05(0.86~1.28)であり、有意な差はなかった。 同様に、スプラインを用いた連続的尺度における年齢別のスタチンの効果の解析では、非糖尿病群の75歳以上の高齢者では、アテローム動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡に対するスタチンの有益な作用は認めなかった。 このように、スタチンは、糖尿病群では動脈硬化性心血管疾患および全死因死亡に対し保護的な作用を示したが、この効果は85歳以上では実質的に低下し、90代では消失した。 著者は、「これらの結果は、高齢者および超高齢者へのスタチンの広範な使用を支持しないが、75~84歳の2型糖尿病患者へのスタチン治療を支持するもの」としている。

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発症時年齢は1型糖尿病患者の心血管疾患リスクに関連する(解説:住谷哲氏)-917

 1型糖尿病患者の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが2型糖尿病と同様に増加することは、本論文の著者らによってスウェーデンの1型糖尿病レジストリを用いて詳細に検討されて報告された1)。今回、著者らは1型糖尿病の発症時年齢とASCVDとの関連を同じレジストリを用いて解析した。その結果、発症時の年齢は糖尿病罹病期間を調整した後も、ASCVDリスクと有意に関連することが明らかにされた。 1型糖尿病の主病態はインスリン分泌不全であり、インスリン抵抗性の寄与は2型糖尿病とは異なりほとんどない。したがって1型糖尿病患者では、高血糖そのものによりASCVDのリスクが増大していると考えられる。本論文では、とくに急性心筋梗塞のリスクが1型糖尿病患者において約30倍に増加しているのが注目される。これは2型糖尿病患者における厳格な血糖管理の影響を検討したメタ分析において、非致死性心筋梗塞が強化治療により有意に減少したことと一致しており、冠動脈疾患の発症には高血糖が強く関連することを示唆している2)。一方、脳卒中の増加は約6倍であり、加齢の影響を差し引いて考えることが当然必要であるが、同じASCVDである冠動脈疾患と脳卒中に対する高血糖の影響は大きく異なっていることが示唆される。 若年1型糖尿病患者のASCVDの発症を主要評価項目として、スタチンおよびRAS系阻害薬の有効性を検討したランダム化比較試験は存在しない。ASCVDの代用エンドポイントである内頚動脈内膜中膜複合体厚を副次評価項目として、若年1型糖尿病患者に対するACE阻害薬およびスタチンの効果を検討したランダム化比較試験としてAdDIT(Adolescent Type 1 Diabetes Cardio-Renal Intervention Trial)が昨年報告されたが3)、両薬剤ともにプラセボ群と差はなかった。しかしASCVDの発症メカニズムは1型糖尿病と2型糖尿病とに共通すると考えられることから、2型糖尿病治療における包括的心血管リスク管理のストラテジーはそのまま1型糖尿病にも適用できると思われる。1型糖尿病患者の治療は2型糖尿病患者以上に血糖管理にのみ注目してしまうことが多い。とくに若年発症の1型糖尿病患者の治療の際にはASCVDの抑制に留意した治療を心掛けることが必要である。

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