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異物の評価【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q22

異物の評価Q22症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのも気が引ける…。初期研修ぶりだけど、自分で縫ってみるか。非滅菌手袋もつけたし、指ブロックのうえ、創部を水道水でしっかり洗ったぞ。洗いながら異物がないことも確認したし、金属やガラス片くらいしかレントゲンで写らないから、これ以上の評価の方法はないよな?

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骨パジェット病〔Paget disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨パジェット病は、1877年、英国のSir James Pagetが変形性骨炎(osteitis deformans)として初めて詳細に報告した。限局した骨の局所で、異常に亢進した骨吸収と、それに続く過剰な骨形成が生じる結果、骨の微細構造の変化と疼痛を伴い、骨の肥大や弯曲などの変形が徐々に進行し、同時に罹患局所の骨強度が低下する疾患である。1ヵ所(単骨性)の骨が罹患する場合と複数ヵ所(多骨性)の場合がある。■ 疫学発症年齢は大半が40歳以降で、年齢とともに頻度が上昇する。発症頻度に明らかな人種差があり、欧米などは比較的頻度が高い(0.1~5%の有病率)が、アジアやアフリカ地域では、有病率がきわめて低い。わが国の有病率は100万人に2.8人ときわめて低い。わが国の患者の平均年齢は64.7歳で、90%以上が45歳以上であり、55歳以上では有病率が人口10万人あたり0.41人と上昇する。高齢者に多いこの年齢分布様式は欧米と大差がない。家族集積性に関しては日本では6.3%と、ほとんどの骨パジェット病の患者が散発性発症であり、欧米での15~40%程度と比較して少ない。また、多数の無症状例潜在の可能性がある。■ 病因骨パジェット病の病因は不明で、ウイルス説、遺伝子異常が考えられている。1970年代に、破骨細胞核内にウイルスのnucleocapsidに似た封入体が発見され、免疫組織学的にも麻疹、RS (respiratory syncytial)ウイルスの抗原物質が証明され、遅延性ウイルス感染説が考えられたが、明確な結論に至っていない。一方、破骨細胞の誘導や機能促進に関与するいくつかの遺伝子異常が、高齢者発症の通常型、早期発症家族性、またはミオパチーと認知症を伴う症候性の骨パジェット病患者に確認されている。好発罹患部位は体幹部と大腿骨であり、これらで75~80%を占める(骨盤30~75%、脊椎30~74%、頭蓋骨25~65%、大腿骨25~35%)。単骨性と多骨性について、わが国では、ほぼ同程度の頻度である。ほかに、脛骨、肋骨、鎖骨、踵骨、顎骨、手指、上腕骨、前腕骨など、いずれの部位も罹患骨となりうる。この分布は欧米と差はない。■ 症状1)無症状X線検査や血液検査で偶然発見される場合も多い。欧米では無症候性のものが多く、有症状の患者は、多い報告でも約30%程度だが、わが国の調査では75%が有症候性であった。2)疼痛最も多い症状は疼痛であり、罹患骨由来の軽度~中等度の持続的骨痛がみられ、夜間に増強する傾向がある。下肢骨では歩行で増強する傾向がみられる。疼痛部位は腰痛、股関節痛、殿部痛、膝関節痛の順に頻度が高い。3)変形疼痛の次に多い症状は、外観上の骨格変形であり、サイズの増大(例:頭)や弯曲変形(例:大腿骨、亀背)がみられ、頭蓋骨、顎骨、鎖骨など目立つ部位の腫脹、肥大や大腿骨の弯曲をみる。顎骨変形に伴い、噛み合わせ異常や開口障害といった歯科的障害を伴うこともある。4)関節障害・骨折・神経障害関節近傍の変形では、二次性の変形性関節症を生じる。長管骨罹患の場合、凸側ではfissure fractureと呼ばれる長軸に垂直な骨折線が全径に広がり、chalkを折ったような横骨折を起こすことがある。わが国の調査では、大腿骨罹患患者の約2割強に骨折が生じている。これは、欧米の骨折率に比して著しく高い。また、変形に伴い、神経障害(例:頭蓋骨肥厚で脳神経圧迫、圧迫骨折で脊髄圧迫)がみられ、難聴、視力障害や脊柱管狭窄症などがみられることがある。5)循環器症状循環器症状は、病変骨の血流増加や動静脈シャントによる動悸、息切れ、全身倦怠感を来し、広範囲罹患例では高送血性心不全がみられる。■ 予後まれだが、罹患骨で骨肉腫や骨原発悪性線維性組織球腫など悪性腫瘍の発生がある。その頻度は欧米で0.1~5%、わが国の調査では1.8%である。したがって、経過中に罹患部位の疼痛増強を来した場合や血清学的な悪化を来した場合には、常に悪性腫瘍の可能性を考えておく必要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)基本的に単純X線像で診断可能な疾患である(図)。X線像は骨吸収と硬化像の混在、骨皮質の粗な肥厚が一般的であるが、初期病変の骨吸収の著明な亢進があり、まだ骨形成が生じていない時期には、長管骨ではV字状骨吸収(割れたガラス片先端のような骨透過像)と、頭蓋骨ではosteoporosis circumscripta (境界明瞭なパッチ状の吸収像)が特徴的である。その後、骨梁の粗造化と呼ばれる、大きく太い海綿骨の出現や皮質骨の肥厚、骨硬化像がみられ、骨吸収像の部位と混在して存在するようになり、骨の横径や前後径が増加し骨輪郭が拡大する。頭蓋骨では斑点状の骨硬化像と骨吸収像の混在がみられ、綿帽子状(cotton wool appearance)を呈する。これらの多くの変化の中で、診断上、役立つのは骨吸収像ではなく、旺盛な骨形成による骨幅の拡大という形態上の変化であり、特徴的な所見である。骨シンチグラフィーは、病変部に病勢を反映する強い集積像を示す。画像により鑑別すべき疾患は、前立腺がん、乳がんの骨転移や骨硬化をもたらす骨系統疾患である。生化学的には血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値とオステオカルシン上昇(骨新生)、尿中ヒドロキシプロリン(HP)値の上昇(骨吸収)が疾患の分布と活動性によりみられる(活動度は尿中HP値が血清ALP値より敏感)。また、骨形成指標の骨型ALP (BAP)と骨吸収マーカーの尿中N-telopeptide of human type collagen (NTX)、C-telopeptide of human type I collagen (CTX)、デオキシピリジノリン(DPD)値は高値を示す。病変が小さい場合は、ALP値が正常範囲のこともあり、わが国の調査で10.4%、欧米でも15%の患者がALP正常である。病理組織像では、多数の破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞の増生による骨形成が混在し、骨梁は層板が不規則になりcement lineを無秩序に形成し、モザイクパターンを示す。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は疼痛や、破骨細胞を標的とした薬物療法、変形に対する装具療法、変形や骨折に対する手術療法が考えられる。■ 薬物療法疼痛には消炎鎮痛薬を使用する。最初の病態は破骨細胞による骨吸収亢進であり、破骨細胞の機能を抑制する、カルシトニン、ビスホスホネートなどの薬剤があるが、カルシトニンを第1選択に使用することはない。ビスホスホネートは日本では第一世代のエチドロン酸ナトリウム(商品名:ダイドロネル)の使用が認められ、最初に広く用いた治療薬だが、現在、第1選択薬に使用することはない。欧米では第二、第三世代のビスホスホネート製剤を主に治療に使用している。わが国では2008年7月に、リセドロン酸ナトリウム(同:ベネットなど) 17.5mg/日の56日連続投与が認可され、ようやく骨パジェット病患者の十分な治療ができるようになったが、現在、保険適用されている第二世代以降のビスホスホネート製剤は、リセドロン酸ナトリウムのみであり、他のビスホスホネートは適用されていない。しかし、リセドロン酸ナトリウムに対して低反応性の症例に、他のビスホスホネートで奏効した報告や、抗RANKL抗体のデノスマブ(同:ランマーク)の方がビスホスホネートより優れている報告もあり、抗RANKL抗体ではないがRANKL-RANK経路を抑制するosteoprotegerin(OPG)のrecombinant体を若年性多骨性の骨パジェット病に投与した報告もある。■ 手術療法長管骨の骨折、二次性変形性関節症、脊柱管狭窄症などに手術を行うこともある。4 今後の展望骨パジェット病のほか、骨粗鬆症やがんの骨転移にも破骨細胞が関与している。これらの疾患では、破骨細胞の活動が亢進しており、それによって、それぞれの疾患がつくり上げられている。現在、破骨細胞の活動を抑制する薬剤には、ビスホスホネートと抗RANKL抗体であるデノスマブ(商品名:ランマーク※)、抗RANKL抗体ではないが、RANKL-RANK経路を抑制するosteoprotegerin(OPG)などがあり、これら薬剤の骨パジェット病に対する有効例の報告がある。今後、治療法の選択肢を増やす意味でも治験の実施、保険の適応などに期待したい。※ 骨パジェット病には未承認5 主たる診療科整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 骨パジェット病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)橋本淳ほか. Osteoporosis Japan. 2007;15:241-245.2)高田信二郎ほか. Osteoporosis Japan. 2007;15:246-249.3)Takata S, et al. J Bone Miner Metab. 2006;24: 359-367.4)平尾眞. CLINICAL CALCIUM. 2011;21:1231-1238.公開履歴初回2013年02月28日更新2019年11月12日

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ガラス片による切創の縫合後にX線写真をとらなかったことが医療過誤と認定されたケース

救急医療最終判決平成14年11月26日 札幌地方裁判所 判決概要割れたガラスで右手指の切創を受傷した男性。救急病院を受診して10数針の縫合処置を受けたのち、近医で縫合部位の抜糸が行われたが、受傷部位の疼痛や違和感を訴えなかったために、患部のX線撮影は施行されないまま治療は終了した。ところが、受傷から9年後にガラス片の残存が発覚し、別病院でガラス片の摘出手術が行われ、受傷後にX線撮影を行わなかったことをめぐって医事紛争へと発展した。詳細な経過経過平成3年2月15日午前4:30グラス(直径約7cm、高さ約8cmのクリスタル製)を右手に持ったまま床に転倒、右手に体重がかかってグラスが割れ、かなりの出血を来たしたため、右手にタオルを巻いて救急当番医を受診。担当医師は右第1指、第3指の切創に対し10数針の縫合処置を行ったが、明け方の受診でもあり、あえて患部のX線撮影は施行しなかった。2月16日受傷翌日に別病院を受診。右第1指、および第3指の縫合部位を消毒し、抗菌薬および伸縮包帯を処方した。右第2指については疼痛または違和感などの申告なし。ここでも患部のX線撮影は施行しなかった。2月22日右第3指の縫合部位の全抜糸、および第1指の縫合部位の半抜糸施行。2月25日右第1指の縫合部位の全抜糸施行、治療終了となった。 その後約9年間にわたって受傷部位に関連した症状なし。平成12年11月10日自動車を運転しようとハンドルを握った際に、右手の内側に何かが刺さったような感じを自覚。よくみると右第2指内側の付け根付近に堅いものがあり、そこに触れると鋭い痛みが走るようになる。11月13日別病院を受診し右手X線撮影の結果、右第2指にガラス片様のものがあることが発見された。12月4日右第2指ガラス片(幅約4mm、長さ約8mm)の摘出手術をうける。当事者の主張患者側(原告)の主張縫合処置を担当した救急病院の医師、およびその後創部の抜糸を担当した医師は、右手の切創が割れたガラスによるものであることを認識していたのであるから、右手にガラス片の残存がないかどうか確認するべき注意義務があった。ところが各医師は切創部位のX線撮影を行わなかったため、9年間もガラス片が発見されずに放置され、多大な精神的苦痛を受けた。病院側(被告)の主張右第2指のガラス片は、本件負傷の際に刺さって皮下に入り込んだものではなく、その後の機会に刺さって入り込んだものである。右第2指にガラス片があったとしても、診察当時その存在を疑わせるような事情はなかったため、X線撮影をする注意義務はない。ちなみに、異物の存在を疑わせるような事情がない場合にX線撮影をすることは、国民健康保険連合会における診療報酬の査定において過剰診療と指摘されるものでる。裁判所の判断本件は異物であるガラス片の存在を疑わせるような事情があったと認定できるので、「異物の存在を疑わせるような事情がない場合のX線撮影は国民健康保険連合会から過剰診療と指摘される」という、病院側の主張は採用できない。縫合部位の消毒・抜糸を担当した医師としては、受傷直後に縫合処置を行った前医を信頼し、かつ患者の負担を避けるため改めてそのX線写真撮影をしなくてもよいという考え方もあるが、前医においてX線撮影をしていなければ、ガラス片を確認するためにX線撮影をする注意義務があった。本件では担当した医師がいずれも、受傷部位のX線撮影を行うという注意義務を果たさなかったために、9年間にわたって体内にガラス片が残存するという事態となったので、精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべきである。原告側合計281万円の請求に対し、合計44万円の判決考察明け方5:00頃の救急外来に、割れたコップのガラスで右手を切った患者が来院したので、10数針の縫合処置を行なったというケースです。当然のことながら、十分な消毒、局所麻酔ののち、縫合する部位にガラス片が残っていないかどうかを肉眼で確認したうえで、創痕が残らないように丁寧に縫合したと思われます。そして、午前5:00頃の時間外診察ということもあり、あえて(緊急で)患部のX線撮影をすることはないと判断し、もし経過中に疼痛や違和感があれば、その時点で対応するという方針であったと考えられます。ところが、患者は自らの都合で、縫合処置を行った病院ではなく別病院に通院を開始し、とくに疼痛を申告することもなく、抜糸が行われて治療終了となりました。このような状況で、たった1回だけの診察・縫合処置を行った初診時の医師に対し、「手の外傷でX線撮影を行わないのは医療過誤である」とするのは、少々行き過ぎのような判決に思えてなりません。前医から治療を引き継いで抜糸を担当した医師にしても、合計3回の通院治療は縫合した部分の経過観察が主たる目的であり、受傷部位の疼痛や感覚障害などの申告がない限り、あらためてX線撮影を指示することはないというのが、現場の医師の認識ではないでしょうか。確かに、米国手の外科学会編の「手の診察マニュアル」のような医学書レベルでは、「手の切創の診察をする場合には、正面・側面・斜位のX線写真を必ずとっておく。ガラス片は、X線に写り、みつかることがある。しかし、木片やプラスチックや、時にはガラスも写らないことがあるので注意を要する」という記載があります。しかし実際の臨床現場では、とくに痛みや違和感の申告がなければ、あえてX線写真までは撮影しないこともあるのではないでしょうか。もしフロントガラスが割れるような交通事故であれば、鉛入りのガラスがX線写真にも写るので、X線写真を撮ってみようか、という判断にもつながると思います。ところが上記医学書にも「時にはガラスも写らないことがあるので注意を要する」という記載があるように、X線撮影によってすべてのガラス片が確認できるわけではありません。結局のところ、医療現場にたずさわる医師と、医学書などの書証からしか医療の世界を垣間見ることのできない法律家との間に、埋めることのできない認識の相違があるため、このような判決に至ったと考えられます。そして、今後同じような医事紛争に巻き込まれないためには、やはり医学書通りに「手の切創の診察をする場合には、正面・側面・斜位のX線写真を必ずとっておく」という姿勢で臨まざるを得ないように思います。救急医療

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