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統合失調症の陰性症状に対する運動療法の効果~メタ解析

 統合失調症患者の陰性症状に対するさまざまな運動療法(PE)の効果を評価するため、オランダ・フローニンゲン大学のJelle Sjoerd Vogel氏らは、メタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2019年3月14日号の報告。 本研究では、心身運動(mind-body exercise:MBE)、有酸素運動(aerobic exercise:AE)、レジスタンストレーニング(resistance training:RT)について検討を行った。2018年4月26日までの研究をCochrane Library、Medline、Embase、PsycINFOより検索を行った。陰性症状の評価のため、統合失調症患者におけるPE群と任意の対照群を比較したランダム化比較試験を含めた。本メタ解析は、PRISMAガイドラインに従って実施した。研究の方法論的な質の評価には、Cochrane Risk of Bias assessment toolを用いた。モデレーター分析、感度分析、メタ回帰分析を用いて、異質性の分析および研究の質への影響を調査した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された研究は、22件(1,249例)であった。・全体的な方法論的な質は低かった。・メタ解析(変量効果モデル)では、任意のPEは、任意の対照条件と比較し、中程度の有意な効果が認められた(Hedges’g:0.434、95%CI:0.196~0.671)。・任意の対照群と比較し、MBEでは中程度の有意な効果(Hedges’g:0.461)、AEではわずかに有意な効果(Hedges’g:0.341)が認められた。・RTの効果は、調査できなかった。・全体的に不均一性が高く(I2:76%)、モデレーター分析または感度分析では低減できなかった。 著者らは「PEは、統合失調症患者の陰性症状治療において有望な介入となりうることが示唆された。しかし、抽出された研究の質は低く、異質性が高かったため、明確に推奨することは困難であり、慎重な解釈が求められる」としている。

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セリンクロの登場がアルコール依存症治療を継続させるきっかけに

 2019年3月28日、大塚製薬株式会社は、同社の製造販売する飲酒量低減薬ナルメフェン(商品名:セリンクロ)が発売されたことを機し、都内でプレスセミナーを開催した。セミナーでは、アルコール依存症の現状と治療の最新情報が解説された。推定患者数107万のうち受診者はわずか5万人 セミナーでは、「アルコール依存症をとりまく現状と治療 新しい診断治療ガイドラインを踏まえて」をテーマに、樋口 進氏(久里浜医療センター 院長)が講師としてレクチャーを行った。 わが国の飲酒実態とアルコール依存症治療のギャップに触れ、飲酒量全体は横ばいまたは微減となっている中で、アルコール依存症患者は約107万人と推定されているが、実際に治療を受けている患者は、約5万人とかなりの未診療患者がいると指摘した。この治療ギャップを埋めるためにも「医療連携の促進・地域の取り組み・軽症例のプライマリケアでの受診・診療ガイドラインの作成」などの取り組みが必要と同氏は提起する。重症依存症になる前に アルコール依存症の治療目標は、「飲酒を完全に断ち続けることが、最も安全かつ安定的」とされているが、そもそも患者が医療機関を受診しなかったり、治療中断をするために難渋しているという。そうした状況を変える取り組みとして、同氏が所属する久里浜医療センターでは、アルコール依存症手前の患者を対象に「プレアルコホリック外来」が開設されている。同外来では、アルコールの有害使用者を対象に、1ヵ月に1回外来個人精神療法とミーティングを行うもので、まず6ヵ月の断酒に挑戦し、その後断酒または節酒をするか患者に決めてもらうという。また、2017年4月からは「減酒外来」も開設し、この外来には比較的社会機能が保たれている患者が、自分の意思で来院するという。受診理由の多くは男女ともに「ブラックアウト(一時的記憶喪失)」であり、「社会機能が保たれているうちに、介入・進行予防をすることが重要」と同氏は早期治療の必要性を強調する。治療継続に期待できるナルメフェン(商品名:セリンクロ) 軽症例からの早期介入に使える治療薬が、3月より発売されたナルメフェン(商品名:セリンクロ)である。ナルメフェンの効果、安全性について行われた国内第III相試験では、アルコール依存症患者(DSM-IV-TR)と診断された20歳以上の男女666例のうち、ナルメフェン10mg群(180例)、同20mg群(242例)、プラセボ群(244例)に分け、24週、プラセボ対照、無作為化、多施設共同二重盲検並行群間比較試験で行われた。主要評価項目は、12週目におけるHDD(多量飲酒日)数*のベースラインからの変化量である。その結果、ベースラインからの変化量はプラセボ群で-7.91日/月であったのに対し、ナルメフェン10mg群で-12.09日/月、ナルメフェン20mg群で-12.25日/月とナルメフェン群で有意な減少を示した。安全性については、有害事象として悪心、めまい、傾眠などが報告されたが、重篤なものはなかった。以上の結果を受け、「減酒のための治療薬の登場により、患者に治療継続をさせるきっかけができる」と同氏は期待をにじませる。*1日のアルコール消費量が男性60g、女性40gを超えた日の1ヵ月あたりの日数新ガイドラインの重点は「軽依存症患者」「非専門医」に重点 次に2018年に上梓された『新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン』について触れ、新ガイドラインでは「軽依存症」「有害な使用」に焦点をおいた内容であること、非専門医でも対応できる基準を示していることを説明した。また、アルコール依存症の治療目標に関する推奨事項は「断酒とその継続」としながらも、選択肢の1つとして飲酒量低減を目標にして、失敗時の断酒への切り替え、軽症依存症では飲酒低減も目標になりうるなど柔軟な目標設定をしていることを説明した。そのほか、断酒への薬物治療としては、第1選択薬はアカンプロサートが推奨され、断酒への動機付けなどの第2選択薬としてジスルフィラムやシアナミドが、飲酒量低減を目標にする場合はナルメフェンを考慮すると説明した。 最後に、国は施策として「アルコール健康障害対策基本法」を制定するとともに、依存症拠点機関事業も実施し、アルコール依存症の対策を行っていると説明。「今後、各地域で依存症対策事業も開始されるので、アルコール依存症を非専門の医師が診療する機会も増えると思う。今後関係する学会や研究会も開催されるので、こうした場で知見を吸収してもらいたい」と述べ、セミナーを終えた。

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特売卵のコレステロール量は?/日本動脈硬化学会

 卵1個のカロリーについては取り沙汰されることが多く、ご存じの方も多いだろう。先日、JAMAでも卵の摂取量と心血管疾患の発症や死亡率との相関を示す論文が発表され、話題を集めている。では、われわれが日頃食べている卵には、一体どのくらいのコレステロールが含まれるのだろうか? 2019年3月27日、日本動脈硬化学会が主催するプレスセミナーが開催され、「LDLコレステロールと動脈硬化」をテーマに上田 之彦氏(枚方公済病院診療部長、日本動脈硬化学会広報・啓発委員)が登壇した。卵のコレステロールについての論文に関する学会の見解とは? 卵をいくつ食べても良いとしていたこれまでの報告に、待ったをかける結果が報告された。上田氏によると、卵によるコレステロール摂取量・摂取頻度を研究した論文は豊富だが、その理由として「卵は患者へのコレステロール摂取の聞き取りに使いやすい」とし、「おおよそ、中くらいの卵1個には、200~250mgのコレステロールが含まれている」とコメントした。また、本セミナーに出席していた丸山 千寿子氏(日本女子大学家政学部食物学科教授)によると、「今回発表されたJAMAの論文*で記述されている卵は1個50gで、日本でいうSサイズ。しかし、流通量が多く、セール品として販売されているのは60gのLサイズ。卵のコレステロール摂取量に関する研究データでは、実際よりも過小評価されている可能性がある」とし、「患者には、食べている卵の数だけではなく、大きさの確認も必要かもしれない」と付け加えた。コレステロールの上限値がなくなった訳ではない 2015年2月、米国農務省(USDA)と保健福祉省は、『食事でのコレステロール摂取制限は必要ない』と発表。これは、アメリカ心臓病学会/アメリカ心臓協会(ACC/AHA)が、“コレステロール摂取量を減らして血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せない”として、「コレステロールの摂取制限を設けない」と見解を出したためだという。時を同じくして、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、健常者における食事中コレステロールからの摂取量と血中コレステロール値の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限値を設けなかった。「これらのことから、日本人はコレステロールをいくら摂取しても良いという錯覚に陥ってしまった」と、上田氏は当時の状況を振り返った。この混乱を受け、2015年5月1日、日本動脈硬化学会はコレステロール摂取量に関する声明を発表し、高LDLコレステロール血症患者に当てはまる訳ではないことを注意換気した。 来年は『食事摂取基準(2020年版)』の発表が予定されている。ここでも、“循環器疾患予防の観点から目標量(上限)を設けるのは難しい”とし、記載を避けている。しかし、脂質異常症を有する者やハイリスク者については、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」を参考に、コレステロールの摂取を200mg/日未満と記載される予定である。 最後に同氏は「動脈硬化症には、コレステロール摂取量もさることながら、喫煙が一番いけない。今後、禁煙についての話題を提供していく」と締めくくった。

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「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会

 「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」および2011年発表の「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)において、心筋症診療ガイドライン作成の合同研究班班長を務めた北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学)が、その内容について講演した。 同氏は、心筋症診療ガイドラインの本改訂において重視した点として下記3つのポイントを挙げたうえで、心筋症全体の定義と分類、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)の診断・治療について、主な改訂点を解説した。1.これまでの心筋症の分類法を参考にしながら、わが国の診療実態に即した心筋症の新しい定義の作成2.HCMは、EBMの十分でない疾患であるため、ACCF/AHA、ESCのガイドラインを参考に、わが国より発信されたエビデンスを盛り込みながら、診療現場での実際の意思決定に有用であること3.DCMにおける病因解明の進歩を折り込み、本症が左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の代表的な疾患であることより、急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参照した最新の診療・治療方針を明示すること心筋症診療ガイドラインでは心筋症を4つの基本病態に整理 心筋症の分類としては、米国心臓協会(AHA)の病因による分類(2006年発表)、欧州心臓病学会(ESC)の形態による分類(2008年発表)が知られる。心筋症診療ガイドラインでは、従来通り形態や機能から心筋症を診断する。その際には、“常に病因としての遺伝性/非遺伝性を意識し、心アミロイドーシスやファブリー病など二次性心筋症を鑑別したうえで確定されるべきである”とされた。 原発性(特発性)心筋症としての病名を、肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性右室心筋症、拘束型心筋症の4つに分類している。さらに“これらの病型にOverlapがあることを明示した”ことも重要なポイントである。新ガイドラインでは肥大型心筋症は安静時に圧較差がなくても負荷をかけて心エコー推奨 肥大型心筋症については、近年の報告から「左室壁15mm(家族歴がある場合は13 mm)以上の心肥大」と診断上の定義を心筋症診療ガイドラインでは明記。そして閉塞性肥大型心筋症(HOCM)については、安静時に圧較差がある症例に加えて、負荷によって30mmHg以上の圧較差を認める場合もHOCMとして定義している。北岡氏は、「従来、HOCMは安静時の圧較差30mmHg以上と提唱されてきた。しかしこの10年ほどで、安静時には圧較差が認められなくても、負荷をかけると認められる症例が多く存在し、HCM全体の7割程度で、圧較差が病態と関係するということが分かってきた」とその背景を解説した。HCMと確定診断された患者では、バルサルバ手技などによる負荷を、心エコー検査中に行うことを推奨している。 そのほか新たな心筋症診療ガイドラインでは、MRIは形態学的評価だけでなく、二次性心筋症との鑑別あるいは予後予測において、最も推奨度の高いクラスIに変更された。心筋生検については、MRIの進歩などによりルーチンでの実施は不要と位置付けられている。「ただし、決して心筋生検の重要性が後退したということではなく、不明の場合の最終検査としては非常に重要」と同氏は補足。また、遺伝子診断についての推奨度が2012年版から大きく再整理・変更されていることも説明された。肥大型心筋症の突然死予防にガイドラインでICD植込み適応をフローチャート化 肥大型心筋症の薬物治療については、従来通りで新ガイドラインに大きな変更はない。突然死予防は、ICD植込み適応の考え方が再整理された。2012年度版から5つの主要リスク因子および修飾因子を一部変更。これまで重みづけされていなかった各主要リスク因子についてエビデンスを基に重みづけし、フローチャートの形でICD植込み適応の推奨度を示した。 そのほか、圧較差と不整脈に対する治療法は、近年の知見を盛り込んだ形に一部変更されている。不整脈については、心房細動患者に対する抗凝固療法にクラスIの推奨度とエビデンスレベルが記された。エビデンスの充実からワルファリン使用の推奨が明記され、DOACについても「有用性が期待される」という形で新たに記載された。抗がん剤によるリスクを整理、またクラスIの推奨となった遺伝子検査も(DCM) 新たな心筋症診療ガイドラインでは、DCMの定義に大きな変更はないが、近年左室機能障害を引き起こす重要な原因として指摘されている抗がん剤について、報告されている発症率とともに一覧化された表が初めて掲載された。 検査に関しては、HCM同様二次性心筋症との鑑別や予後予測においてもMRIによる評価に推奨度が記載された。「ただし、HCMほどデータが十分ではないという判断から、クラスIIaの推奨度となっている」と同氏は話した。心筋生検の位置づけはHCMと同様となっている。 DCMにおける遺伝子検査については、「40以上ある原因遺伝子の中で、特にタイチンとラミンについては検査に臨床的意義があると判断された」と述べ、タイチンにIIa、ラミンにIの推奨度が記載されている。MitraClipの COAPT試験の結果を反映 DCMの治療に関しては、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」に基づく内容となっている。加えて、その後の知見としてMitraClipの COAPT試験の結果も反映された。 また、ラミンA/C変異を有する患者は予後が悪いことが、日本人を対象とした試験でも報告されている。そのため、新たな心筋症診療ガイドラインでは“提言”の形で、ESCあるいはAHA/ACC/HRSガイドラインにおけるICD植込み適応(リスク因子と推奨度)を紹介している。

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ACC/AHAガイドライン、ESCガイドラインのエビデンスレベルは?/JAMA

 主要な心臓血管関連学会のガイドラインでは、複数の無作為化臨床試験(RCT)または単一の大規模RCTのエビデンスによって支持される推奨の割合はきわめて低く、このパターンは、2008~18年の改訂でも意義のある改善はなされていないことが、米国・デューク大学のAlexander C. Fanaroff氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2019年3月19日号に掲載された。臨床決定は、臨床転帰を評価した複数のRCTによるエビデンスに基づくのが理想だが、歴史的には、この種のエビデンスに完全に基づく臨床ガイドラインの推奨はほとんどないという。ACC/AHAガイドラインおよびESCガイドラインの現行と旧版を調査 研究グループは、現行の主要な心臓血管関連学会のガイドラインの推奨を支持するエビデンスのクラス(I~III)とレベル(LOE、A~C)について解析し、経時的なLOEの割合の変化を調査した。 学会のウェブサイトで同定された現行の米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)および欧州心臓病学会(ESC)の臨床ガイドライン(2008~18年)と、現行のガイドラインが参照した直近の旧版(1999~2014年)のガイドラインを調査の対象とした。 各ガイドラインについて、推奨の数とLOEの分布を検討した(LOE A:複数のRCTまたは単一の大規模RCTのデータによって支持されている、LOE B:観察研究または単一のRCTのデータで支持されている、LOE C:専門家の意見のみ)。主要評価項目は、LOE Aのエビデンスで支持されている推奨の割合とした。LOE A推奨の割合はACC/AHAガイドライン 8.5%、ESCガイドライン 14.2% 現行の26のACC/AHAガイドラインには、推奨が2,930件(1つのガイドライン当たりの中央値121件[四分位範囲:76~155])含まれた。そのうち、248件(8.5%)の推奨がLOE Aに分類され、1,465件(50.0%)がLOE B、1,217件(41.5%)はLOE Cであった。LOE A推奨の割合の中央値は7.9%(四分位範囲:0.9~15.2%)だった。 一方、現行の25のESCガイドラインには推奨が3,399件(1つのガイドライン当たりの中央値130件[四分位範囲:111~154])掲載されていた。484件(14.2%)の推奨がLOE Aに分類され、1,053件(31.0%)がLOE B、1,862件(54.8%)はLOE Cであった。 現行ガイドラインを旧版と比較すると、LOE Aの推奨の割合の中央値は、ACC/AHAガイドライン(現行9.0% vs.旧版11.7%)およびESCガイドライン(15.1% vs.17.6%)のいずれもが、増加していなかった。 下位専門分野別の解析では、LOE A推奨の割合は冠動脈疾患が最も高く、先天性心疾患/心臓弁膜症が最も低かった。また、先天性心疾患/心臓弁膜症を除き、LOE A推奨の割合は、ESCガイドラインがACC/AHAガイドラインよりも高かった。 著者は、「今回の結果は、過去10年にわたる臨床試験の簡略化と促進に向けた努力が、RCTによってより良く支持されたエビデンスに基づく推奨へと転換されていないことを示している」と指摘している。

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「がん患者におけるせん妄ガイドライン」が発刊!

 「せん妄」と聞くと、術後せん妄や高齢者をイメージすることが多いのではないだろうか。しかし、がん自体やその治療の副作用に伴う痛みや不安・不眠を取り除くために使用するオピオイド、ならびに精神安定薬の使用も、せん妄の大きな要因の一つになっているという。このような現状を踏まえ、2019年2月27日、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会が協力し、「がん患者におけるせん妄ガイドライン」を発刊した。がん患者を念頭においたせん妄ガイドラインはあまり多くない せん妄は、患者だけでなく、介護をする家族や医療者にも大きな影響をもたらすため、超高齢社会を迎えた日本では、せん妄の予防・対策が重要になると予想される。「がん患者におけるせん妄ガイドライン」は、がん患者のせん妄に関する先行知見や実証的なエビデンスが、臨床に即した形でまとめられている。序文では、明智 龍男氏(日本サイコオンコロジー学会代表理事)や田村 和夫氏(日本がんサポーティブケア学会理事長)が、「せん妄に関してはたくさんの指針やガイドラインがあります。一方、がんという疾患の軌跡の特殊性も念頭においたガイドラインはあまり多くありません」など、発刊の経緯を記している。医療者の疑問に答えるせん妄ガイドライン 「がん患者におけるせん妄ガイドライン」では、がん患者におけるせん妄の基礎知識を総論とし、全4章から成る。評価方法や薬物療法・非薬物療法などに関する9つの臨床疑問を設けて、現場に即した指針が提示されている。 I章は、ガイドラインの目的や使用上の注意、エビデンスレベルと推奨の強さについて。II章は、総論と表し、がん患者におけるせん妄の頻度やその特徴、原因、治療方法が記載されている。臨床での疑問に触れているIII章では、「がん患者のせん妄には、どのような原因(身体的原因・薬剤原因)があるか?」、「せん妄を有するがん患者に対して、せん妄症状の軽減を目的としてベンゾジアゼピン系薬を単独で投与することは推奨されるか?」、「せん妄を有するオピオイド投与中のがん患者に対して、せん妄症状の軽減を目的としてオピオイドを変更すること(スイッチング)は推奨されるか?」などに対して解説がされている。第IV章には、資料として概要やシステマティックレビュー、今後の検討課題、患者・家族へのせん妄説明パンフレットなどが盛り込まれている。

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うつ、不安、睡眠の質に対する「お笑い介入」~メタ解析

 うつ病や不安症状の治療に対し、ネガティブな感情を減少させるための介入が求められており、お笑いやユーモアを用いた介入(お笑い介入)は、安全かつ便利で、患者と医療従事者との関係を良好に保つことが期待される介入方法である。成人のうつ病、不安および睡眠の質に対するお笑い介入の効果を定量化するため、中国・吉林大学のJinping Zhao氏らが検討を行った。Journal of Advanced Nursing誌オンライン版2019年3月18日号の報告。 ランダム化比較試験のメタ解析を実施し、2018年12月までの研究を各種データベース(PubMed、Embase、PsycINFO、Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Chinese National Knowledge Infrastructure、Weipu、Wanfang Data)より検索した。Cochrane Collaborationガイドラインに従って、メタ解析レビューを実施した。研究の選択、データ抽出、バイアスリスク(Cochrane Collaborationバイアスリスク評価ツール)の評価は、独立した2人のレビューアにより実施した。 主な結果は以下のとおり。・10研究より、814例が抽出された。・メタ解析では、お笑い介入が成人のうつ病、不安を有意に減少させ、睡眠の質を改善することが示唆された。・サブグループ解析では、長期的なお笑い介入は、うつ病患者により多くのベネフィットをもたらすことが示唆された。 著者らは「お笑い介入は、成人のうつ病や不安を軽減し、睡眠の質の改善に有効であることが明らかとなった。今後は、質の高いフォローアップ評価を行うために、さらなる研究が求められる」としている。■関連記事「笑い」でうつ病診断が可能にこれからのうつ病治療、どんな介入を行うべきかうつ病や不安症状に対する食事療法~メタ解析

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院外心停止後蘇生のNSTEMIに、即時冠動脈造影は有効か/NEJM

 院外心停止後に蘇生に成功した非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者では、即時的に冠動脈造影を行い、必要に応じて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行するアプローチは、神経学的回復後に遅延的にこれを施行する戦略と比較して、90日生存率の改善は得られないことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのJorrit S. Lemkes氏らが実施したCOACT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月18日号に掲載された。院外心停止の主な原因は虚血性心疾患であり、現行の欧米のガイドラインでは、蘇生後のST上昇型心筋梗塞(STEMI)へは即時的な冠動脈造影とPCIが推奨されている。一方、蘇生後のNSTEMIへの即時的な施行に関しては、無作為化試験のデータはなく、観察研究では相反する結果の報告があるという。NSTEMIへの即時的施行を評価するオランダの無作為化試験 本研究は、オランダの19施設が参加した非盲検無作為化試験であり、2015年1月~2018年7月に患者登録が行われた(オランダ心臓研究所などの助成による)。 院外心停止から蘇生し、心電図検査でST上昇がみられない患者552例のうち、後に同意を撤回した患者を除く538例(平均年齢65.3±12.6、男性79.0%)を対象とした。 これらの患者を、即時的に冠動脈造影を行う群(273例)または神経学的回復後に行う遅延的冠動脈造影群(265例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも、必要に応じてPCIが施行された。 主要エンドポイントは90日生存率とした。副次エンドポイントは、脳機能が良好または軽度~中等度障害の状態での90日生存率、心筋傷害、カテコールアミン投与期間、ショックのマーカー、心室頻拍の再発、人工呼吸器の使用期間、大出血、急性腎障害、腎代替療法の必要性、目標体温の到達時間、集中治療室(ICU)退室時の神経学的状態などであった。90日生存率:64.5% vs.67.2%、目標体温到達時間が長い 冠動脈造影の施行率は、即時的冠動脈造影群が97.1%、遅延的冠動脈造影群は64.9%であった。心停止から冠動脈造影施行までの時間中央値は、それぞれ2.3時間、121.9時間、無作為割り付けから冠動脈造影までの時間中央値は、0.8時間、119.9時間だった。 急性血栓性閉塞が即時群3.4%、遅延群7.6%にみられた。PCIはそれぞれ33.0%、24.2%で、CABGが6.2%、8.7%で行われ、薬物療法または保存的治療は61.5%、67.5%で実施された。 90日時の生存率は、即時群が64.5%(176/273例)、遅延群は67.2%(178/265例)と、両群に有意な差を認めなかった(オッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.62~1.27、p=0.51)。 副次エンドポイントのうち、目標体温到達時間中央値が、即時群5.4時間と、遅延群の4.7時間に比べ有意に長かった(幾何平均値の比:1.19、95%CI:1.04~1.36)。他の副次エンドポイントには、両群に有意な差はなかった。 著者は、「心停止後に蘇生したNSTEMIで、冠動脈造影の即時的施行により生存ベネフィットが得られたとする以前の観察研究は、選択バイアスが影響した可能性がある」と指摘している。 また、これらの結果の理由として、(1)PCIは、急性血栓性閉塞を有する冠動脈疾患患者で転帰の改善と関連し、安定冠動脈疾患ではこのような効果はないが、本試験では急性血栓性冠動脈閉塞は5%のみで、ほとんどが安定冠動脈疾患であった、(2)神経学的損傷による死亡が多く、心臓が原因の死亡の3倍以上であった、(3)目標体温到達までに長い時間を要したことが、即時的冠動脈造影の潜在的なベネフィットを弱めた可能性があるなどの点を挙げている。

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β遮断薬長期投与、肝硬変の代償不全を予防/Lancet

 代償性肝硬変および臨床的に重要な門脈圧亢進症(CSPH)の患者では、β遮断薬の長期投与により代償不全(腹水、胃腸出血、脳症)のない生存が改善されることが、スペイン・バルセロナ自治大学のCandid Villanueva氏らが実施したPREDESCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年3月22日号に掲載された。肝硬変における臨床的な代償不全は予後不良とされる。CSPHは、肝静脈圧較差(HVPG)≧10mmHgで定義され、代償不全の最も強力な予測因子だという。代償不全/死亡をプラセボと比較 本研究は、β遮断薬によるHVPG低下が、CSPHを伴う代償性肝硬変における代償不全や死亡のリスクを低減するかを検証する研究者主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験である(Spanish Ministries of Health and Economyの助成による)。 高リスクの静脈瘤のない代償性肝硬変およびCSPHで、HVPG≧10mmHgの患者(年齢18~80歳)を登録し、プロプラノロール静脈内投与によるHVPGの急性反応を評価した。レスポンダー(HVPGがベースラインから>10%低下)は、プロプラノロール(40~160mg、1日2回)またはプラセボを投与する群に、非レスポンダーはカルベジロール(≦25mg/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、肝硬変の代償不全(腹水、門脈圧亢進症関連の胃腸出血、顕性肝性脳症の発現と定義)または死亡とした。代償性肝硬変では、代償不全が発症する前の死亡は、ほとんどが肝臓とは関連がないため、肝臓非関連死を競合イベントとしたintention-to-treat解析が行われた。主要エンドポイント:16% vs.27%、腹水の発生低下が主要因 2010年1月~2013年7月の期間に、スペインの8施設で201例が登録され、β遮断薬群に100例(平均年齢60歳、男性59%、プロプラノロール67例、カルベジロール33例)、プラセボ群には101例(59歳、63%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は37ヵ月だった。 主要エンドポイントの発生率は、β遮断薬群が16%(16/100例)と、プラセボ群の27%(27/101例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.26~0.97、p=0.041)。 この両群の差は、β遮断薬群で腹水の発生が少なかったためであり(9% vs.20%、0.42、0.19~0.92、p=0.0297)、胃腸出血(4% vs.3%、1.52、0.34~6.82、p=0.61)および顕性肝性脳症(4% vs.5%、0.92、0.40~2.21、p=0.98)には差はみられなかった。 全体の有害事象の発生は、両群でほぼ同等であった(β遮断薬群84% vs.プラセボ群87%)。治療に関連する可能性があると判定された有害事象は、それぞれ39%、30%、その可能性が高いと判定された有害事象は16%、15%であった。6例に重度の有害事象が認められ、β遮断薬群が4例、プラセボ群は2例だった。 著者は、「この非選択的β遮断薬の新たな適応は、患者転帰の改善や医療費の抑制に多大な効果をもたらし、今後、臨床ガイドラインに影響を及ぼす可能性がある」としている。

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タファミジス、ATTR-心アミロイドーシスに適応追加/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2019年3月26日、タファミジス(商品名:ビンダケル)に関して、新たな適応症として「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 ATTR-心アミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)という4量体のタンパク質が加齢(野生型)や遺伝変異(変異型)により単量体に解離して変性が起こることによりアミロイド線維が形成され、全身の組織内へ沈着することが原因で障害が生じる疾患。心アミロイドーシスは、そのアミロイド線維が心筋に沈着することで、難治性の不整脈や心不全等により最終的に死に至る可能性のある進行性の疾患である。 タファミジスメグルミンは、ATTR-心アミロイドーシスの患者を対象としたATTR-ACT試験において、死因を問わない死亡および心血管事象に関連する入院の減少に対する有効性を示した。これらの臨床試験結果に基づき、2018年11月にATTR-心アミロイドーシスの適応症に対する一部変更承認申請を行い、この度承認を取得した。なお、同剤は「トランスサイレチン型心アミロイドーシス」の効能・効果に対して、2018年3月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されていた。なお、日本循環器学会では、心アミロイドーシスに関するガイドラインの策定を開始するとともに、ATTR-心アミロイドーシス症例に対してビンダケルが適性に投与されるため、厚生労働省が定める患者要件に加え、施設要件、医師要件を定め、これらのすべての要件が満たされることをビンダケル投与導入の条件とするステートメントを発表した。■参考トランスサイレチン型心アミロイドーシス症例に対するビンダケル適性投与のための施設要件、医師要件に関するステートメント(日本循環器学会)

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こんなにある子供の便秘サイン

 2018年3月18日、EAファーマ株式会社は、「大人が知らない『子供の慢性便秘症』の実態と世界標準へと歩み出した最新治療~便秘難民ゼロを目指して~」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、子供が抱える「言うに言えない便秘の悩み」に大人がどう気付き、診療へ導くのか解説された。子供の5人に1人は便秘 セミナーでは、十河 剛氏(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)を講師に迎え、小児の便秘症について詳しくレクチャーを行った。 はじめに横浜市鶴見区で行われた調査報告を紹介。 3~8歳の子供3,595人に食事と排便に関するアンケート調査を行ったところ、718人(約20%)に慢性便秘症(ROMEIII診断基準による)がみられたという(全国平均では約15%)。とくに便秘の子供では、「便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往」「痛みを伴う便通の既往」「少なくとも週1回の便失禁」が散見されると報告した1)。 子供の便秘に関しては保護者の関心も高い一方で、しつけや教育の問題とされたり、周囲に相談できる人がいなかったり、かかりつけの医師に相談しても対症的な治療だけだったりと不安を訴える。また、子供たちは、友達から「臭い」と言われたり、恥ずかしくて言えなかったりと自尊心が傷つき行き場のない子供を診療で救う必要性があると同氏は問題を指摘する。気付きたい「便秘症」の症状 「便秘」について、その定義、診療はどのようにされるべきか。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」(2014年)によれば、「便秘とは、便が滞った、または便がでにくい状態」と定義され、とくに小児では、排便時に肛門が痛く泣いたり、いきんでも排便ができない状態がみられる。ただ注意すべきは、「便秘」の認識は、個々人で異なるため排便の回数などで判断せず、同時に家族の状況も確認した方がよいと語る。 そして、便秘の症状として「腹痛、裂肛、直腸脱、便失禁、肛門周囲の付着便や皮膚びらん、嘔吐・嘔気、胃食道逆流・げっぷ・口臭、集中力低下、夜尿・遺尿」があり、いかに医療者が気付き、診療介入できるかが重要だと指摘する。 具体的に10歳・女児の症例を紹介。この症例では、「口臭、げっぷ、嘔吐、排便時間30分超」の症状がみられ、他科診療の折に同氏の診療科を受診、便秘症の診療にいたったという。X線検査では、直腸に便塞栓が観察され、大腸に大量の便が貯留していた。慢性便秘症と胃食道逆流症の診断後、プロトンポンプ阻害薬とポリエチレングリコール(PEG)製剤で治療を開始。19日後には、排便時間が10分以内になり、当初の症状も消失したという。 小児の便秘症を疑うポイントとして、前記便秘症状の中でも触れているが、溜まった便で膀胱が圧迫されることによる夜尿やおもらしが多く、便塞栓のために液便による便漏れやこれらに伴う肛門部のびらんなどがみられ、診断の手助けになると語った。小児にも適用できるようになったPEG製剤 小児が便秘症を発症しやすい時期として、「食事の移行期(離乳食から普通食など)」「トイレットトレーニング」「通学の開始」の3期があり、排便への恐れが子供にできないように、環境を整えることも重要と指摘する。 また、便秘症の「便塞栓」について詳説し、本症を疑うポイントとして、「少量の硬い便」「肛門周囲や下着への便の付着」「便がでにくいのに下痢便」「1週間近く排便がない」などが見られたら治療介入し、便秘症の悪循環を断ち切る必要があると強調する。 便秘症治療の三大原則としては、「便塞栓があればその除去の後で、薬剤、食事、生活習慣改善などの治療を行う」「外したフタ(便塞栓)は外したままにする」「便を我慢せず出しきる習慣を身に付ける」ことを説明。とくに排便習慣については、直腸の排便へのセンサーを正常化させることが大事で、また、排便の姿勢についても、自然に排便できるように洋式便座では踏み台などの設置も効果的という。 そして、これら治療を補助するために治療薬があり、「浣腸だけでなく新しい経口治療薬も小児には適用できるようになった」と説明する。現在、わが国では、乳児・幼児に対してラクツロース、酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、グリセリン、ビサコジルなどの刺激性下剤が便秘に多用されている。また、2018年11月からようやくわが国でもPEG製剤(商品名:モビコール)が、2歳以上の小児に使用できるようになったこともあり、便秘薬の選択肢は増えつつあるという(参考までに、海外では便塞栓除去に浣腸だけでなく経口治療薬も選択肢に入っており、イギリスではPEG製剤が第一選択薬となっている2))。 臨床上、成人の便秘症は治療に難渋することがあるが、子供の便秘症では薬剤療法が奏功することもあり、早く介入することが重要と語る。治療の目標は、便秘ではない状態の維持であり、そのためには3~4年近く必要という。 最後に同氏は、子供のトイレ指導のコツについて、「25%できたら褒める」「小さいことから少しずつ」「できた行動に着目する」「具体的な指示をする」「一度に一つだけ指示をする」などを挙げ、「便秘難民がゼロ」になることを期待すると講演を締めた。■参考EAファーマ株式会社 イーベンnavi

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卵の摂取量増加で、心血管疾患発症や死亡が増加?/JAMA

 米国成人において、食事性コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患(CVD)発症および全死因死亡リスクの上昇と有意に関連していることが確認された。米国・ノースウェスタン大学のVictor W. Zhong氏らが、Lifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを用いた解析結果を報告した。コレステロールは、ヒトの食事における一般的な栄養素で、卵は食事性コレステロールの重要な源であるが、食事性コレステロール/卵の摂取量がCVDおよび死亡と関連しているかどうかについては、なお議論が続いている。著者は今回の結果について、「食事ガイドラインの作成・改訂の際に考慮されるべきである」とまとめている。JAMA誌2019年3月19日号掲載の報告。食事性コレステロール/卵の摂取量とCVD発症/死亡リスクの関連を評価 研究グループは、1985年3月25日~2016年8月31日の期間に収集された、米国の6つの前向きコホート研究における参加者個々のデータを統合した。自己報告の食事摂取に関するデータは、標準的プロトコルを用いて調整し、食事性コレステロール(mg/日)または卵の摂取量(個/日)を算出した。 主要評価項目は、人口統計学的、社会経済的および行動的要因を調整した、CVD発症(致死的/非致死的冠動脈心疾患・脳卒中・心不全・他のCVD死亡の複合)と全死因死亡に関する全追跡調査期間にわたるハザード比(HR)および絶対リスク差(ARD)で、コホートで層別化した原因別ハザードモデルおよび標準比例ハザードモデルを用いて解析した。卵の摂取量が半分増加した場合でも有意な関連 本解析には合計2万9,615例が組み込まれ、平均[±SD]年齢はベースライン時51.6±13.5歳、1万3,299例(44.9%)が男性で、9,204例(31.1%)が黒人であった。 追跡期間中央値17.5年(四分位範囲:13.0~21.7、最大31.1)において、CVDイベント発症が5,400例、全死因死亡が6,132例認められた。 1日当たりの食事性コレステロール摂取量が300mg増加した場合、CVD発症(補正後HR:1.17[95%信頼区間[CI]:1.09~1.26]、補正後ARD:3.24%[95%CI:1.39~5.08])および全死因死亡(補正後HR:1.18[95%CI:1.10~1.26]、補正後ARD:4.43%[95%CI:2.51~6.36])のリスク上昇と有意な関連が認められた。 1日当たりの卵の摂取量が半分(2分の1個、卵1個を3~4回/週または3~4個/週)増加した場合でも、同様に有意な関連が認められた(CVD発症の補正後HR:1.06[95%CI:1.03~1.10]、補正後ARD:1.11%[95%CI:0.32~1.89]、全死因死亡の補正後HR:1.08[95%CI:1.04~1.11]、補正後ARD:1.93%[95%CI:1.10~2.76])。ただし、食事性コレステロール摂取量を補正後は、卵の摂取量とCVD発症(補正後HR:0.99[95%CI:0.93~1.05]、補正後ARD:-0.47%[95%CI:-1.83~0.88])および全死因死亡(補正後HR:1.03[95%CI:0.97~1.09]、補正後ARD:0.71%[95%CI:-0.85~2.28])との間に、有意な関連は確認されなかった。 著者は研究の限界として、食事摂取に関するデータが自己報告であること、全コホートが異なる食事評価法を使用していたこと、観察研究のため因果関係については立証できないことなどを挙げている。

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第19回 スタチンに片頭痛の予防効果はあるか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 スタチン系薬はコレステロールを降下させるための薬であることは言うまでもありませんが、片頭痛の予防にも有効なのではないかという説があります。脂質異常症も片頭痛も有病率が高いため、意図して、もしくは意図せずコレステロール値の高い片頭痛患者さんにスタチンが処方されていることもあるのではないかと思います。慢性頭痛の診療ガイドライン2013には、片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある場合は片頭痛の予防療法を検討するという記載があり、第1選択薬としてバルプロ酸やトピラマートなどの抗てんかん薬、プロプラノロールやメトプロロールなどのβ遮断薬、アミトリプチリンなどの抗うつ薬が推奨されています(保険適用外含む)。予防療法の効果判定には少なくとも2ヵ月を要し、有害事象がなければ3〜6ヵ月継続し、コントロールが良好になれば薬を漸減・中止するというのがガイドラインの推奨です。私が調査した限りにおいては、現時点で日米英のガイドラインにスタチンについて特段の言及はありません。実際のところ、スタチンは片頭痛に有用なのでしょうか? 片頭痛が月6回以上生じる女性を対象に、プロプラノロール60mg群またはシンバスタチン20mg群に割り付け、比較したオープンラベルの試験では、いずれの群においても有効性が示されています。プラセボ効果が寄与した可能性も考慮しなければなりませんが、50%の頭痛発作減少のアウトカムを達成したのはプロプラノロール群で88%、シンバスタチン群で83%といずれも高率でした1)。またアトルバスタチンとプロプラノロールのランダム化比較試験でも、反復性片頭痛の予防効果は同等でした2)。二重盲検ランダム化比較試験もありますので紹介します。月に4日以上、反復性片頭痛がある成人患者57例をシンバスタチン20mg1日2回+ビタミンD3(コレカルシフェロール)1000IU群(実薬群)またはプラセボ群に割り付け、24週間フォローアップした研究です3)。なお、ビタミンDが併用されているのは、血漿中ビタミンD濃度が高いほうが、重度頭痛または片頭痛発作の発生が少ないという報告があるためです4)。この試験では、プライマリアウトカムとして、1ヵ月間に片頭痛を認めた日数のベースラインからの変化を観察しています。実薬群では、服用12週時点では8例(25%)で50%の頭痛発作減少のアウトカムが達成され、24週時点では9例(29%)で同様の結果が得られています。対して、プラセボ群ではそれぞれ1名(3%)のみでした。なお、以前から用いている片頭痛予防薬の使用は制限しておらず、有意差はなかったものの実薬群で予防薬の使用が多い傾向にあるので解釈に注意が必要です。また、24週以降は検討外であることから、長期的効果については判断できません。当初予定したサンプルサイズを下回る症例数で試験されていますが、実際の試験どおり介入群28例、プラセボ群29例の事後分析で85%の検出力(α=5%)ですので、症例数が増えればより確かなことが言えそうです。スタチンの抗酸化作用や抗炎症作用が片頭痛に影響かスタチンで頭痛が改善しうる理由の仮説として、スタチンのプレイオトロピック効果が挙げられています。スタチンには本来の脂質低下作用とは別に、抗酸化作用、血管内皮機能改善、血小板凝集抑制、血管の緊張や炎症の抑制など多面的な作用があるのではないかと考えられており、それがなんらかの形で片頭痛発作の減少に寄与したのかもしれないというものです。私が調査した限りにおいては、スタチンの種類によって効果が異なるのか、十分な根拠は見つけることができませんでした。いずれにしても、ビタミンD欠乏症だと片頭痛頻度が多いという説もありますから5)、まず十分な血清ビタミンD濃度が確保されているか確認することも大切です。あくまでもスタチンは片頭痛への効果を期待して処方されるものではありませんが、片頭痛の頻度に影響があるかもしれないということを知っていると、服薬指導で役に立つかもしれません。1)Medeiros FL, et al. Headache. 2007;47:855-856.2)Marfil-Rivera A, et al. Neurology. 2016;86:P2.2163)Buettner C, et al. Ann Neurol. 2015;78:970-981.4)Buettner C, et al. Cephalalgia. 2015;35:757-766.5)Song TJ, et al. J Clin Neurol. 2018;14:366-373.

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リファンピシン耐性結核に短期レジメンが有望/NEJM

 リファンピシン耐性結核の治療において、高用量モキシフロキサシンを含む9~11ヵ月の短期レジメンは、2011年のWHOガイドラインに準拠した長期レジメン(20ヵ月)に対し、有効性が非劣性で安全性はほぼ同等であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAndrew J. Nunn氏らが実施したSTREAM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月13日号に掲載された。バングラデシュのコホート研究では、多剤耐性結核患者において、2011年のWHOの推奨治療よりも治療期間が短いレジメンを用いた既存薬の投与により、有望な治癒率が得られたと報告されている。アフリカとアジア4ヵ国の非劣性試験 本研究は、多剤耐性結核の治療における、バングラデシュ研究と類似の短期レジメンの、2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメンに対する非劣性を検証する無作為化第III相試験である(米国国際開発庁[USAID]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、フルオロキノロン系およびアミノグリコシド系抗菌薬に感受性で、リファンピシン耐性の肺結核患者であった。被験者は、高用量モキシフロキサシンを含む短期レジメン(9~11ヵ月)または2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメン(20ヵ月)を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは132週時の「良好な状態」とした。その定義は、132週時の培養および試験期間中の培養でMycobacterium tuberculosisが陰性で、不良なアウトカム(割り付けレジメンに含まれない2剤以上による治療の開始、許容期間を超える治療の延長、死亡、直近の2つの検体のうち1つで培養陽性、76週以降の受診がない)を認めないこととした。群間差の95%信頼区間(CI)上限値が10%以下の場合に、非劣性と判定した。 2012年7月~2015年6月の期間に、424例(エチオピア:126例、モンゴル:33例、南アフリカ共和国:165例、ベトナム:100例)が割り付けの対象となり、383例(短期レジメン群:253例、長期レジメン群:130例)が修正intention-to-treat(mITT)解析に含まれた。mITT集団の主要アウトカム:78.8% vs.79.8% ベースライン時に全体の32.6%でHIV感染が、77.2%でcavitationが認められた。治療期間中央値は、短期レジメン群が40.1週(5パーセンタイル値37.0、95パーセンタイル値46.3)、長期レジメン群は82.7週(72.1、102.3)だった。 mITT解析による主要アウトカムは、短期レジメン群が78.8%(193例)、長期レジメン群は79.8%(99例)に認められ、HIV感染で補正した群間差は1.0(95%CI:-7.5~9.5)であり、非劣性が示された(非劣性:p=0.02)。また、per-protocol集団(321例)においても、短期レジメン群の長期レジメン群に対する非劣性が確認された(補正群間差:-0.7%、95%CI:-10.5~9.1、非劣性:p=0.02)。 Grade3~5の有害事象は、短期レジメン群が48.2%、長期レジメン群は45.4%に、重篤な有害事象は、それぞれ32.3%、37.6%にみられた。8.5%、6.4%が死亡した。 短期レジメン群で、QT間隔または補正QT間隔(Fridericia法で補正)の500msecまでの延長が多く認められたため(11.0% vs.6.4%、p=0.14)、厳重なモニタリングとともに、一部の患者では投薬の調整が行われた。フルオロキノロン系またはアミノグリコシド系抗菌薬への獲得耐性が、短期レジメン群の3.3%(8例)、長期レジメン群の2.3%(3例)にみられた(p=0.62)。 著者は、「今回の結果は有望だが、多剤耐性結核の治療では、薬剤感受性結核と同等の有効性と安全性をもたらす短期の簡便なレジメンを見つけ出すことが、依然として重要である」としている。

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日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

 2019年3月22日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の報告書とりまとめを了承した。昨年4月より策定検討会にて議論が重ねられた今回の食事摂取基準は、2020年~2024年までの使用が予定されている。策定検討会の構成員には、日本糖尿病学会の理事を務める宇都宮 一典氏や日本腎臓学会理事長の柏原 直樹氏らが含まれている。日本人の食事摂取基準(2020年版)の主な改定ポイントは? 日本人の食事摂取基準(2020年版)の改定では、2015年版をベースとしつつ、『社会生活を営むために必要な機能の維持および向上』を策定方針とし、これまでの生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の重症化予防に加え、高齢者の低栄養・フレイル防止を視野に入れて検討がなされた。主な改定点として、・高齢者を65~74歳、75歳以上の2つに区分・生活習慣病における発症予防の観点からナトリウムの目標量引き下げ・重症化予防を目的としてナトリウム量やコレステロール量を新たに記載・フレイル予防の観点から高齢者のタンパク質の目標量を見直しなどが挙げられる。日本人の食事摂取基準(2020年版)、まずは総論を読むべし 報告書やガイドラインなどを活用する際には、まず、総論にしっかり目を通してから、各論や数値を理解することが求められる。しかし、メディアなどは総論を理解しないまま数値のみを抜粋して取り上げ、問題となることがしばしばあるという。これに対し、策定検討会のメンバーらは「各分野のポイントが総論だけに記載されていると、それが読まれずに数値のみが独り歩きし、歪んだ情報が流布されるのではないか」と懸念。これを受け、日本人の食事摂取基準(2020年版)の総論には、“同じ指標であっても、栄養素の間でその設定方法および活用方法が異なる場合があるので注意を要する”と記載し、総論以外にも各項目の目標量などがどのように概算されたのかがわかるように『各論』を設ける。メンバーらは「各指標の定義や注意点はすべて総論で述べられているため、これらを熟知したうえで各論を理解し、活用することが重要である」と、活用方法を強調した。 以下に日本人の食事摂取基準(2020年版)の各論で取り上げられる具体的な内容を抜粋する。タンパク質:高齢者におけるフレイルの発症予防を目的とした量を算定することは難しいため、少なくとも推奨量以上とし、高齢者については摂取実態とタンパク質の栄養素としての重要性を鑑みて、ほかの年齢区分よりも引き上げた。また、耐容上限量は、最も関連が深いと考えられる腎機能への影響を考慮すべきではあるが、基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないことから、設定しなかった。脂質:コレステロールは、体内でも合成される。そのために目標量を設定することは難しいが、脂質異常症および循環器疾患予防の観点から過剰摂取とならないように算定が必要である。一方、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。炭水化物:炭水化物の目標量は、炭水化物(とくに糖質)がエネルギー源として重要な役割を担っていることから、アルコールを含む合計量として、タンパク質および脂質の残余として目標量(範囲)を設定した。ただし、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に留意が必要である。脂溶性ビタミン:ビタミンDは、多くの日本人で欠乏または不足している可能性があるが、摂取量の日間変動が非常に大きく、摂取量の約8割が魚介類に由来し、日照でも産生されるという点で、必要量を算出するのが難しい。このため、ビタミンDの必要量として、アメリカ・カナダの食事摂取基準で示されている推奨量から日照による産生量を差し引いた上で、摂取実態を踏まえた目安量を設定した。ビタミンDは日照により産生されるため、フレイル予防を図る者を含めて全年齢区分を通じて可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には高齢化問題が深刻さを増す 日本では、2020年の栄養サミット(東京)開催を皮切りに、第22回国際栄養学会議(東京)や第8回アジア栄養士会議(横浜)などの国際的な栄養学会の開催が控えている。また、日本人の食事摂取基準(2020年版)改定の後には団塊世代が75歳以上になるなど、高齢化問題が深刻さを増していく。 このような背景を踏まえながら1年間にも及ぶ検討を振り返り、佐々木 敏氏(ワーキンググループ長、東京大学大学院医学系研究科教授)は、「理解なくして活用なし。つまり、どう活用するかではなく、どう理解するかのための普及教育が大事。食事摂取基準ばかりがほかの食事のガイドラインよりエビデンスレベルが上がると、使いづらくなるのではないか。そうならないためにも、ほかのレベルを上げて食事摂取基準との繋がり・連携を強化するのが次のステージ」とコメントした。また、摂取基準の利用拡大を求めた意見もみられ、「もっと疾患を広げるべき。次回の改定では、心不全やCOPDも栄養が大事な要素なので入れていったほうがいい。今回の改定では悪性腫瘍が入っていないが、がんとともに長生きする時代なので、実際の現場に合わせると病気を抱えている方を栄養の面でサポートすることも重要(名古屋大学大学院医学系研究科教授 葛谷 雅文氏)」、「保健指導の対象となる高血糖の方と糖尿病患者の食事療法のギャップが、少し埋まるのではと期待している。若年女性のやせ、骨粗鬆症も栄養が非常に影響する疾患なので、次の版では目を向けていけるといい(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授 勝川 史憲氏)」、など、期待や2025年以降の改定に対して思いを寄せた。座長の伊藤 貞嘉氏(東北大学大学院医学系研究科教授)は、「構成員のアクティブな発言によって良い会・良いものができた」と、安堵の表情を浮かべた。 なお、厚労省による報告書(案)については3月末、パブリックコメントは2019年度早期に公表を予定している。

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ナトリウムとカリウムの適切な1日摂取量は/BMJ

 世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。今回、カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE試験)では、これら2つの目標を同時に満たす者はきわめてまれで、死亡/心血管イベントのリスクが最も低いのは、ナトリウム摂取量が3~5g/日でカリウム高摂取量(≧2.1g/日)の集団であることが明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年3月13日号に掲載された。ナトリウムについては相反する知見が報告されているが、多くでは摂取量と死亡にJ字型の関連が示されている。これに対し、カリウムは一般に摂取量が増えるに従って死亡が直線的に低下することが報告されている。一方、ナトリウム/カリウム比と臨床アウトカムとの関連を示唆する観察研究の報告もある。18ヵ国、10万人の早朝空腹時尿から摂取量を推算 研究グループは、ナトリウムとカリウムの摂取量の代替測定値として尿中排泄量を測定し、心血管イベントおよび死亡との関連を、現在のWHO推奨1日摂取量との比較において検討する目的で、国際的な前向きコホート研究を実施した(欧州研究会議[ERC]の助成による)。 18の高/中/低所得国の都市部および農村部の住民10万3,570例(35~70歳)から、早朝空腹時尿を採取した。主要アウトカムは、摂取量の代替測定値としてのナトリウムとカリウムの推定24時間尿中排泄量と、全死因死亡および主要な心血管イベント(心血管死、脳卒中、心筋梗塞、心不全)との関連とした。解析には、多変量Cox回帰を用いた。 ナトリウム排泄量を低(<3g/日)、中(3~5g/日)、高(>5g/日)の3つに、カリウム排泄量は中央値2.1g/日を基準に高(≧2.1g/日)と低(<2.1g/日)の2つに分け、これらを組み合わせた6つのカテゴリーについて解析を行った。WHO推奨の同時達成は0.002%、ナトリウムはJ字型の関連 参加者の41.8%が中国からで、ナトリウムとカリウムの尿中排泄量の平均推定値は、それぞれ4.93g/日、2.12g/日であった。フォローアップ期間中央値8.2年の時点で、7,884例(6.1%)が死亡または心血管イベントを経験した。 尿中ナトリウム排泄量の増加はカリウム排泄量増加と正の相関を示した(補正前、r=0.34)。また、ナトリウムの超低排泄量(<2g/日)とカリウムの高排泄量(>3.5g/日)を同時に満たした参加者は、0.002%ときわめて少なかった。 ナトリウム排泄量が高値および低値の双方の集団で、死亡/重大な心血管イベントのリスクが高く、J字型の関連を示した。カリウム排泄量と死亡/重大な心血管イベントには反比例の関連が認められた。 6つのカテゴリーのうち、ナトリウム中排泄量(3~5g/日)/カリウム高排泄量(≧2.1g/日)の群(全コホートに占める割合:21.9%)が、死亡/心血管イベントのリスクが最も低く、イベント発生率は6.4%であった。 これを参照群として比較すると、死亡/心血管イベントのリスクが最も高かったのは、低ナトリウム/低カリウムの群(イベント発生率:9.4%、ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.11~1.37、全コホートに占める割合:7.4%)であり、次いで高ナトリウム/低カリウムの群(8.8%、1.21、1.11~1.32、13.8%)、低ナトリウム/高カリウム群(6.8%、1.19、1.02~1.38、3.3%)、高ナトリウム/高カリウム群(7.5%、1.10、1.02~1.18、29.6%)の順であった。また、中ナトリウム/低カリウム群は、参照群に比べリスクが高かった(7.8%、1.10、1.01~1.19、24.0%)。 カリウム排泄量が増加するに従って、ナトリウム高排泄量との関連で増加した心血管リスクが減衰し、ナトリウム高排泄量と心血管リスクとの関連はカリウム低排泄量の集団で最も顕著だった。 著者は、「本研究の知見は、WHOの推奨の実行可能性に疑問を呈するものである。ナトリウム摂取と死亡/心血管イベントのJ字型の関連は、現行のWHOの低ナトリウム食(<2.0g/日)の推奨を支持せず、ナトリウム/カリウム比の使用には同意しないものである」としている。

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6年ぶりの改訂!『頭部外傷治療・管理のガイドライン(第4版)』発表

 3月8日、第42回日本脳神経外傷学会において、6年ぶりの改訂となる『頭部外傷治療・管理のガイドライン(第4版)』(委員長:冨永 悌二氏[東北大学病院副病院長]、委員57名)の概要が、刈部 博氏(仙台市立病院脳神経外科部長)から発表された。なお、本ガイドラインの出版は、本年秋を予定している。頭部外傷診療現場の変化にガイドラインが対応 現在、頭部外傷の診療現場は、初期診療~後療法~社会復帰支援といった一連の診療が求められるとともに、初期診療に救急医や研修医が占める割合が増加するなど大きな変化が起こっている。この状況に対応するため、新たな『頭部外傷治療・管理のガイドライン』では、画像診断、凝固障害、多発外傷、高次脳機能障害および早期リハビリテーションの項目を充実することに力が注がれた。ガイドラインの対象が広がり、タイトルも「頭部外傷」に変更 以前に比べ、頭部外傷患者として、高齢者軽症例や抗血栓薬使用例が増加していることも大きな変化である。それを受け、新たな『頭部外傷治療・管理のガイドライン』では、対象患者が広がった。具体的には、従来は「成人頭部外傷の中等症・重症」であったが、新ガイドラインではさらに「軽症・中等症からの重症化例」が追加された。 また、対象患者の広がりに合わせてガイドラインのタイトルも従来の「重症頭部外傷」から「頭部外傷」に変更された。新ガイドラインは新たに「頭部外傷における凝固障害」の項目が追加 新たな『頭部外傷治療・管理のガイドライン』は、項目が大きく増え、全12項目、補追4項目から成る。前回に比べ「小児頭部外傷」「高齢者頭部外傷」「スポーツ頭部外傷」「外傷に伴う高次脳機能障害」「外傷に伴う低髄液圧症候群」の項目が充実し、新たに「頭部外傷における凝固障害」「早期リハビリテーション」「外傷急性期の精神障害」「多発外傷」の項目が作られた。 また、推奨グレード、エビデンスレベル、600超の引用文献が明記された点も大きな変更点である。

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スタチン長期投与患者でbempedoic acidが有益/NEJM

 TPクエン酸リアーゼ阻害薬bempedoic acid(ベンペド酸)の安全性/有効性を評価した、52週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「CLEAR Harmony試験」の結果が、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K. Ray氏らにより発表された。最大耐用量のスタチンへのベンペド酸の追加により、プラセボと比較して有害事象の発現が増加することなく、LDLコレステロール値が有意に低下したという。これまで短期試験では、ベンペド酸によりLDLコレステロール値が低下することが示唆されていたが、ガイドラインで推奨されるスタチン療法を長期にわたって受けている高コレステロール血症患者への、ベンペド酸投与の安全性と有効性に関するデータは限られていた。NEJM誌2019年3月14日号掲載の報告。スタチン療法中の患者にベンペド酸を追加、長期安全性/有効性を評価 CLEAR Harmony試験は、2016年1月18日~2018年2月21日に、5ヵ国114施設において実施された。 対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症、あるいはその両方を有する患者で、最大耐用量のスタチン療法±脂質低下療法を受けているがLDLコレステロール値が70mg/dL以上の患者を適格とし、ベンペド酸群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最大耐用量スタチン療法は、患者が継続できた最大強度のスタチンレジメンとし、担当医が判定した。 主要評価項目は安全性とし、主要副次評価項目(主要有効性評価項目)は、52週間試験における12週時のLDLコレステロール値の変化率とした。安全性の解析には記述統計を用い、有効性は共分散分析(ANCOVA)を用いて解析した。ベンペド酸の上乗せは有効で、安全性プロファイルも良好 2,230例が登録され、そのうち1,488例がベンペド酸群、742例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。ベースラインの平均(±SD)LDLコレステロール値は、103.2±29.4mg/dLであった。 介入期間中における有害事象発現率は、ベンペド酸群78.5%(1,167/1,487例)プラセボ群78.7%(584/742例)、重篤な有害事象発現率はそれぞれ14.5%、14.0%で、いずれも両群で大きな差はなかった。しかし、投与中止に至った有害事象の発現率は、ベンペド酸群がプラセボ群よりも高く(10.9% vs.7.1%)、痛風の発現率もベンペド酸群が高値であった(1.2% vs.0.3%)。 12週時点で、ベンペド酸群は、平均LDLコレステロール値が19.2mg/dL低下し、ベースラインからの変化率は-16.5%であった。プラセボ群のベースラインからの変化率との差は-18.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-20.0~-16.1)で、有意差が認められた(p<0.001)。安全性および有効性のアウトカムは、併用していたスタチン療法の強度にかかわらず一貫していた。

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高感度心筋トロポニンI、真の99パーセンタイル値は?/BMJ

 大学病院で血液検査を実施した入院および外来の全連続症例2万例において、20例に1例は、高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)値が、推奨基準値上限(ULN)を超えていたという。英国・サウサンプトン大学病院 NHS Foundation TrustのMark Mariathas氏らが、hs-cTnIの99パーセンタイル値を明らかにすることを目的とした前向き観察コホート研究の結果を報告した。現行ガイドラインでは、急性心筋梗塞の診断/除外診断にトロポニン測定を推奨しているが、年齢、性別、腎機能等のさまざまな臨床要因がトロポニン値に影響を与えている。病院の全患者集団におけるトロポニン値の真の分布についてはほとんど知られていなかった。結果を受けて著者は、「急性心筋梗塞の診断における推奨ULN値の適用に当たっては、とくに心筋梗塞の臨床症状がない場合、誤診を避けるためhs-cTnIを注意深く解釈する必要がある、ということが浮き彫りなった」とまとめている。BMJ誌2019年3月13日号掲載の報告。入院/外来患者2万例でhs-cTnI濃度の99パーセンタイル値を解析 研究グループは、2017年6月~8月の間に、サウサンプトン大学病院 NHS Foundation Trustにおいて、臨床所見に対する医学的判断のために血液検査を実施したすべての入院/外来連続症例2万例を対象に、hs-cTnIを測定し評価を行った。 主要評価項目は、全患者におけるhs-cTnIの分布、とくに99パーセンタイル値とし、上級医(supervising doctor)の指示で実施されたhs-cTnI測定は解析から除外した。99パーセンタイル値は約300ng/L、20例中1例は推奨上限値超え 全2万例におけるhs-cTnIの99パーセンタイル値は296ng/Lであった。ULNとして現在臨床的に使用している製造業者の推奨値は40ng/Lで、全患者の20例に1例は40ng/L以上であった。 急性心筋梗塞と診断された患者122例と、医学的判断のためにhs-cTnI測定が指示された患者1,707例を除外した、残りの患者1万8,171例における99パーセンタイル値は189ng/Lであった。 また、99パーセンタイル値は、入院患者4,759例で563ng/L、外来患者9,280例で65ng/L、救急部門の3,706例で215ng/Lであり、225例(6.07%)が推奨ULN値を超えていた。集中治療室の123例中48例(39.02%)、および内科の全入院患者のうち67例(14.16%)のhs-cTnI濃度が、推奨ULN値よりも高値であった。

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展望とトピックス-第83回日本循環器学会学術集会

 第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)が2019年3月29~31日の3日間、横浜市にて開催される(会長:東京大学大学院医学系研究科循環器内科 小室 一成氏)。今年のテーマは、「循環器病学Renaissance-未来医療への処方箋-」。循環器に関わるさまざまな問題解決のための戦略と、これからの方向性を示すことを目的としている。海外応募含む2,194題が採択、JCSによる新しい取り組みとは? 世界の死亡率1位は、“がん”ではない-心筋梗塞なのである。現在、日本における主要死因別死亡数の1位はがんであるが、高齢化に伴い後期高齢者の循環器疾患による死亡者数は増え続け、がんを凌ぐ勢いである。そのような状況を踏まえ、2018年末には「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、今後、わが国の循環器診療・研究は大きく変わっていくことが予想される。 現在、日本循環器学会は「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」「脳卒中・循環器病対策基本法」「国際化」の3つの事業を軸に学会開催や専門医の育成などを行っているが、学会の国際化、2020年のAPSC(アジア太平洋心臓病学会)、2021年のWCC(世界心臓病学会)との合同開催を見越して、海外から座長や演者の誘致、性別、国籍などを問わない学会への参加などのダイバーシティ推進にも力を注いでいる。 そうした中、今回の取り組みとして、アジアの参加者も国の代表者として競うことができる「ドクターJCSアジアチャンピオンシップ」、ポスター発表の中から優秀な演題が採択される「ベストポスターセッション」、アプリのツイート機能を用いて演者への意見や質問を受け付けるなど、多彩な企画が盛り込まれている。JCSお薦めのセッション3選◆ガイドライン 2018年に改訂されたガイドラインは計7種。1)急性冠症候群ガイドライン、2)慢性冠動脈疾患診療ガイドライン、3)冠動脈血行再建ガイドライン、4)心筋症診療ガイドライン、5)不整脈非薬物治療ガイドライン、6)心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン、7)先天性並びに小児期心疾患ガイドラインの改訂におけるポイント解説が各セッションで行われる。また、ガイドラインの利用方法が学べる、「症例から学ぶガイドラインセミナー」も開催される予定だ。◆不整脈 突然死の原因とされる先天性QT延長症候群やブルガタ症候群は特定の遺伝子変異が原因とされる遺伝性不整脈の1つである。これらに関する遺伝子検査による予後予測、そのメリットについて報告が予定されている。◆心不全 『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です』-2017年10月に一般にも発信しやすい定義が公開。高齢化が進む日本では、終末期心不全における地域を巻き込んだ緩和ケア対策が必要となることから、2021年より『心不全療養指導士』の認定制度がスタートする。対象職種は看護師、保健師、薬剤師など。これを踏まえ、「チームで取り組む循環器症状の緩和ケア」と題し、日本緩和医療学会とのジョイントシンポジウムが開催される。また、2017年10月に発足した日本腫瘍循環器学会が取り組む化学療法関連心機能障害などについて、「Onco-Cardiologyの最前線」にて発表が予定されている。 新たな取り組みが盛り込まれた今大会の会長を務める小室氏は、「循環器疾患は、ほかの疾患に比べて患者会が少ない。学会が主導となって患者との距離を縮め、要望などを聞きながら密接な関係を築いていきたい」と、これまでの学会の伝統を継承しつつも新しい世界を創造していくことに意気込んだ。■参考日本循環器学会:第83回日本循環器学会学術集会■関連記事心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

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