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カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。ランダム効果ネットワークメタ解析により相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。主要評価項目は、グルコン酸クロルヘキシジン製剤またはポビドンヨード製剤に関連するカテーテル関連血流感染発生率、カテーテル先端コロニー形成率、局所感染率とした。 主な結果は以下のとおり。・16件のRCT(7,803例、カテーテル1万1,985本)が選択基準を満たした。・アルコールベースの製剤は水溶液製剤より一貫して感染率が低く、またイソプロパノールがエタノールより優れていた。・アルコールベースのグルコン酸クロルヘキシジンは、アルコールベースのポビドンヨードより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.70、95%CI:0.45~1.08)、カテーテル先端コロニー形成率(RR:0.42、95%CI:0.37~0.48)、局所感染率(RR:0.40、95%CI:0.23~0.70)が低かった。・高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)は、低濃度グルコン酸クロルヘキシジンより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.31、95%CI:0.19~0.52)およびカテーテル先端コロニー形成率(RR:0.36、95%CI:0.30~0.42)が低かった。・局所的な有害事象はまれであり、アルコールベースの製剤でわずかに多く、グルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードで同程度であった。 著者らは、「これらの結果は、アルコールベースのポビドンヨードと水溶液製剤は、グルコン酸クロルヘキシジンまたはアルコールが使用できない状況に限定すべきであることを示唆する」とまとめている。

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うつ病予防に有効な魚の摂取量は?

 韓国・慶熙大学のEunje Kim氏らは、魚類摂取とうつ病および妊娠関連うつ病のリスクとの関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年12月18日号の報告。 2023年11月まで公表された論文をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。抽出された5,074件の論文のうち、35件の観察研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いて、効果推定値を相対リスク(RR)と対応する95%信頼区間(CI)として統合した。さらに、用量反応解析および層別サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・魚類摂取とうつ病リスクの間に有意な逆相関が認められた(RR:0.79、95%CI:0.73~0.86)。・妊娠関連うつ病についても同様の関連が認められた(RR:0.78、95%CI:0.69~0.89)。・層別解析では、魚類摂取量が68.4g/日以上の研究においてのみ、うつ病リスクが統計的に有意に低下することが示された(RR:0.75、95%CI:0.67~0.84)。・一方、魚類摂取量が少ない研究(68.4g/日未満)では有意な関連は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.69~1.01)。これは、閾値効果の可能性を示唆している。・さらに、用量反応解析では、魚類摂取量が15g/日増加するごとにうつ病リスクが6%低下することが示唆された。 著者らは「魚類摂取がうつ病予防のための調整可能な因子であること、そして68.4g/日以上を閾値とする可能性が示された。本結果は、食事ガイドラインや公衆衛生戦略への示唆となりうるであろう」としている。

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脂肪性肝疾患の診断基準、心代謝系・女性の飲酒量について決定/日本消化器病学会・日本肝臓学会

 日本消化器病学会と日本肝臓学会は、今年4月発刊予定の「MASLD診療ガイドライン」に先行し、国内で利用する脂肪性肝疾患(SLD)の診断基準を各会員に向けて公表した(2026年2月2日付)。 2023年9月、欧米3学会*が合同で、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へ、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと病名と分類法を変更。これを受け、両学会は2024年8月にNAFLD/NASHに代わる新たな分類法での日本語病名を公表していた。ただしこの時点では、心代謝系危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF)の基準と女性の飲酒量に関しては、わが国におけるメタボリック症候群ないしアルコール性肝障害の基準とは異なる部分があったため、CMRFの基準と女性の飲酒量に関する診断基準は明らかにされていなかった。*欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH) MASLDなどのSLDに関する診断基準は以下のとおり。<心代謝系基準(cardiometabolic risk criteria)>1.肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲>94cm(男)、>80cm(女)2.血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療3.血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服4.中性脂肪≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服5.HDL≦40mg/dL(男)、≦50mg/dL(女)or 脂質異常症治療薬内服<MetALDの飲酒量(エタノール換算)>男:30~60g/日(210~420g/週)女:20~50g/日(140~350g/週) なお、MASLD診療ガイドラインの改訂点は、2026年4月16~18日に福井県と石川県で開催される第112回日本消化器病学会総会のパネルディスカッション16「MASLD診療ガイドライン」で11の演題が用意され、ガイドライン改訂の経緯、治療フローチャートの概念・定義、診断などが具体的に紹介される予定だ。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q161

高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧Q161近年注目され始めており、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』でも取り上げられた高血圧の新しい表現型である起立性高血圧。その定義は?

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脳卒中管理で非専門医が押さえておきたい重要ポイントは?「脳卒中治療ガイドライン」改訂

 一次・二次予防でさまざまな診療科との連携が必要になる脳卒中。2025年8月には『脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]』が発刊され1)、本書より「改訂のポイント」が各章の冒頭に新設、前版からの改訂点やその経緯が把握しやすい仕様に変更された。近年の知見もタイムリーに反映し、140項目中52項目のエビデンスレベルが見直されている。そこで今回、非専門医が本書を手に取る際に理解しておきたい改訂点や取りこぼしてはいけない点を中心に、ガイドライン作成委員長の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)に話を聞いた。急性期は降圧せず、病期で異なる血圧管理 本書は7項目から章立てられ、14個のClinical Questionが掲載されている。このなかでも非専門医が目を通しておきたいのは、第I章「脳卒中一般」(p.2~56)である。 同章の脳卒中発症予防には、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった危険因子ごとのアプローチ方法が示され、とくに高血圧管理については、第I章の全身管理(2)血圧、脈、心電図モニター(p.31)に示されている。本書と同時期に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会編)では、全年齢で「原則的に収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする」と発表されており2)、亜急性期・慢性期の脳卒中の管理目標がこれに該当する。ただし、“超急性期や急性期では転帰不良が増加することから、急性脳梗塞では状況に応じた降圧治療が必要になり、原則的に降圧しない”や“脳出血では専門医への紹介前から降圧療法を考慮してもよい”と記され(高血圧治療・管理ガイドラインの第9章、p.109)、その根拠の詳細が本書の上述の項や脳出血の血圧管理(p.134)にて解説されている。 また、血圧管理における薬物療法については、2022年10月にLancet誌に報告された論文3)などを踏まえ、各個人が服用しやすい時間、アドヒアランス向上、副作用などを考慮した推奨となった。 一方で、超急性期では血栓溶解療法、機械的血栓回収療法のどちらを実施予定かで管理目標がやや異なり、今回の改訂では後者を行う場合の血圧の管理について新たな推奨文が追加、血栓回収時での過度な降圧回避を考慮した設定となった。この理由について黒田氏は「脳梗塞発症時脳血流が低下しているため、この状況で血栓を回収すると、健常状態よりも血流が多くなり、健常よりも回収時に血圧が大きく増加する。また、血栓回収終了後の厳格な降圧も予後不良に相関することが2つのRCTから示されている」と説明した。―――――――――――――――――――<I. 脳卒中一般 脳卒中急性期 2-1 全身管理(2)血圧、脈、心電図モニター>「機械的血栓回収療法を施行する場合、血栓回収前の降圧は必ずしも必要ないが、血栓回収後には収縮期血圧180mmHg以下に速やかな降圧を行うことは妥当である(推奨度B、エビデンスレベル中)。一方、血栓回収中および回収後には収縮期血圧140mmHg以下の過度な血圧低下は、避けるよう勧められる(推奨度E、エビデンスレベル中)」―――――――――――――――――――アルツハイマー病新薬の処方歴に注意! rt-PAの使用判断に注意 第II章「脳梗塞・TIA」では、機械的血栓回収療法が可能なタイミング、抗血小板薬シロスタゾールの脳領域での評価が反映されているが、診療科横断的な注意事項として、アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体治療薬の投与を受けている患者への脳梗塞超急性期治療についてはぜひ押さえておきたい。同氏は「静注血栓溶解(rt-PA)療法は、急性脳内出血を発症し、死亡例が報告されている。これを踏まえ、rt-PA検討時に慎重に適応を判断するためにMRI検査が必要とされ4)、また、アルツハイマー病の既往や治療歴を確認するためには問診が重要となる。さらに抗アミロイド抗体治療中の18ヵ月間は脳梗塞の発症にも注意してほしい」と強調した。 そして、睡眠中に脳梗塞を発症する発症時刻不明(Wake-up Stroke)患者の場合、これまでは正確な発症時刻がわからず、就寝時刻=最終健常時刻と判断されてきた。たとえば、22時に就寝、6時に起床して症状に気付いた患者では、脳梗塞の発症から8時間経過したと考えざるを得なかった。しかし近年では、頭部MRI画像検査で拡散強調画像(DWI)と水抑制画像(FLAIR)を撮影し、「FLAIR画像から明け方の発症も把握できるため、そのような症例にも血栓回収療法の実施が推奨されるようになった。さらに、重症度の高い患者(大脳半球の6~7割を占める大きな脳梗塞を起こした例)などでも、いくつかの条件を満たせば血栓回収療法により予後良好となるエビデンスが出てきている」と述べ、血栓回収療法の対象患者拡大について言及した。 脳梗塞再発予防については、慢性動脈閉塞症に基づく症状改善に使われていたシロスタゾールにおいて、ラクナ梗塞のような微小出血を有する患者への脳梗塞再発予防効果が示され、推奨文が一部改訂されている。―――――――――――――――――――<II. 脳梗塞・TIA 脳梗塞急性期 1-2 頸動脈的血行再建療法> 最終健常確認時刻から6時間を超えた内頚動脈または中大脳動脈M1部の急性閉塞による脳梗塞では、神経徴候と画像診断にもとづいて救済可能領域が十分にあると判断された患者に対して、最終健常確認時刻から24時間以内に機械的血栓回収療法を開始することが勧められる(推奨度A、エビデンスレベル高)<II. 脳梗塞・TIA 脳梗塞急性期 1-3 抗血小板療法>シロスタゾール200mg/日の単独投与や、低用量アスピリンとの2剤併用投与は、発症早期(48時間以内)の非心原性脳梗塞患者の治療法として考慮してもよい(推奨度C、エビデンスレベル中)―――――――――――――――――――専門医のなかで注目されているポイント、そして新たな脳卒中リハビリとは 第IV章のくも膜下出血の領域では、遅発性脳血管攣縮の予防・治療に関して変更点がある。まず、脳血管攣縮予防のための腰椎ドレナージは、近年のシステマティックレビュー結果を基に推奨度が上がった(推奨度B、エビデンスレベル中)。その一方で、治療ではエンドセリン受容体拮抗薬クラゾセンタンによる術後管理の普及に伴い、多量補液による肺水腫発症が広く認識されていること、triple H療法*によりうっ血性心不全や出血性合併症リスクが増加するといった報告を考慮して、「科学的根拠がないtriple H療法は行うべきではない」(推奨度E、エビデンスレベル低)としている。*循環血液量増加療法(Hypervolemia)、血液希釈療法(Hemodilution)、高血圧療法(Hypertension)の3つを組み合わせて脳血流を維持・改善する方法 このほかにも、リハビリテーション診療の領域では、上肢機能障害のリハビリ効果を高めるためにAI技術の導入が進んでおり、脳卒中後の機能回復にブレイン・マシン・インターフェイス(BCI)を応用した訓練の推奨度がCからBへ上がった。BCIとは、脳と機械を直接つなぎ、脳内情報を読み取ることで脳機能を補填・増進させる技術の総称で、「たとえば、手にロボットを装着した患者が“手を動かしたい”と考える。すると脳波の変化をAIが読み取り、ロボットが指を曲げたり伸ばしたりする」と解説。「片麻痺の患者は“手を動かしたい”というイメージができなくなっているため、それを思い出させるためのBCIの活用はリハビリ効果を高める」と推奨度が上がった理由を述べた。ガイドライン改訂の経緯 本書は6年に1回ごとに改訂、2年ごとに追補版が出版される。2019年からガイドライン作成委員長を務める同氏は本書改訂を振り返り、「これまで2021年、2023年とマイナーアップデートにも携わってきたが、新たな知見が報告されるたびに脳卒中の治療可否において実臨床とガイドラインで乖離が生じはじめ、先生方の誤解を招く可能性があった。また、これまでは追補には新たな知見だけを掲載していたが、矛盾点などが存在する項目はあわせて改訂することになり、今回は"改訂版”と表現を変えた」と説明した。 なお、日本脳ドック学会が脳卒中や認知症予防などに役立つ最新知見をまとめた『脳ドックのガイドライン2026』が2月26日に発刊されたので、あわせて一読されたい。

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治療抵抗性高血圧症の新たな治療法「腎デナベーション」、適正使用指針も公表

 治療抵抗性高血圧症の新たな治療法として、日本メドトロニックの「Symplicity Spyral腎デナベーションシステム」*1ならびに大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」*2が、2026年3月1日に保険適用を取得し、順次発売された。*1:2025年9月1日に製造販売承認を取得、2026年3月1日発売*2:2025年8月25日に製造販売承認を取得、2026年3月2日発売 いずれのシステムも対象患者は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症で、2025年8月に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』においても、腎デナベーションは治療抵抗性高血圧に対する補助療法として新たな治療選択肢となり得ることが明記されていた(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B、合意率:100%)。 本システムの発売に先駆け、2026年2月4日に日本循環器学会などがホームページにて『腎デナベーションシステムの適正使用指針』を公開しており、以下に本指針で示された適応、患者条件を抜粋して示す。―――――――――――――――――――1. 適応(承認適応) 本品は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症患者の追加的治療として血圧を低下させるために使用する。※治療抵抗性高血圧の定義は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに基づく2. 患者条件(以下の条件を全て満たす患者) 腎デナベーション治療は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに準じて、生活習慣の改善と降圧薬の服薬指導など適切な治療を受けているにもかかわらず、血圧コントロールが不良である高血圧症患者の血圧管理を目的としているものであり、適応は高血圧症患者の病態を高血圧腎デナベーション治療(HRT:Hypertension Renal denervation Treatment)チームが多職種連携して検討の上、決定する。 本治療に適正な患者選択を行うため、別紙1に示す腎デナベーション治療適正使用チェックリストを用いてスクリーニングを行うこと。(1)血圧コントロール不良を判定する前に確認すべき事項生活習慣修正状況、服薬アドヒアランス関連状況、降圧薬の適切な処方、正しい血圧測定と降圧目標の理解、二次性高血圧の除外(2)コントロール不良の血圧基準(選択基準) (i)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつABPMで24時間血圧が130/80mmHg以上、若しくは昼間血圧が135/85mmHg以上、又は夜間血圧が120/70mmHg以上 又は  (ii)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつ早朝若しくは就寝前家庭血圧が135/85mmHg以上、又は夜間家庭血圧が120/70mmHg以上 (3) 治療抵抗性高血圧(選択基準) 利尿薬を含む異なったクラスの3剤以上の降圧薬治療でコントロール不良の高血圧 ただし利尿薬以外の降圧薬は原則、最大忍容量を用いる。(4)腎デナベーションが不適格な患者(除外基準)・腎動脈瘤、腎動脈狭窄や治療に不適格な腎動脈の解剖学的構造を有する患者(造影CT評価を基本とする)・eGFR<40mL/min/1.73m2・添付文書の禁忌、禁止事項に該当する患者――――――――――――――――――― このほか、施設条件、施行医師条件などは適正使用指針を参照されたい。

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第284回 終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案

<先週の動き> 1.終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案 2.全国がん登録に「死亡場所」追加、研究活用促進へ/規制改革推進会議 3.小児科・産科、総合診療の人材不足鮮明 医師確保計画の改定で/厚労省 4.美容医療の診療録記載を省令で明確化へ、監督強化でパブコメ開始/厚労省 5.出生数70.6万人で過去最少更新、推計より17年早い少子化/厚労省 6.人口減少で経営悪化の病院再編、市立病院が閉院へ/室蘭市 1.終末期医療における延命治療終了、4学会が合同ガイドライン改訂案救急・集中治療領域における生命維持治療の終了・差し控えを巡り、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会の4学会は、合同ガイドライン改訂案を公表した。2014年策定の指針から約11年ぶりの改訂となる。改訂案では「終末期」をあえて定義せず、人工呼吸器などの生命維持治療を開始しない、または終了する際の判断手順を具体化した点が特徴となっている。患者本人の価値観や意思を中心に、家族および医療チームが協議して方針を決定する「共同意思決定」を原則とした。また、1度治療を開始すると中止できないという臨床現場の萎縮を防ぐため、期限を区切って治療効果を評価する「タイム・リミテッド・トライアル」の考え方を明記。治療を差し控え、または終了した場合の緩和ケアについても、苦痛緩和の具体的手順や家族支援の在り方を詳細に示した。これまで、法的責任への懸念や指針のあいまいさから、患者が望まない治療が継続される事例も少なくなかった。今回の改訂案は、現場での判断を支える実践的指針として、患者の尊厳を尊重した医療の実現につながることが期待される。3月27日までパブリックコメントを実施している。 参考 1) 終末期医療の指針、救急など4学会改訂案 意思決定やケアの手順示す(朝日新聞) 2) 延命治療終了の手順具体化 学会指針案、11年ぶり改定(共同通信) 3) 延命治療終了の手順明記 4学会が指針案、患者の意思尊重 医療者・家族の協議求める(日経新聞) 4) 「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」パブリックコメント募集のお知らせ(日本救急医学会) 2.全国がん登録に「死亡場所」追加、研究活用促進へ/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は2月26日、規制改革に関する中間答申を公表し、「全国がん登録情報および院内がん登録情報の利活用拡大」を最重要項目に位置付けた。がん登録に含まれる死亡日や死因情報は、遺族の個人情報に該当する可能性から、現行制度では第三者提供が厳しく制限されている。その一方で、多施設共同研究などでは生存確認や死亡情報の活用ニーズが高く、「研究に使えない」との指摘が相次いでいた。中間答申では、死亡日を5日単位でグループ化するなど、個人特定リスクを抑えた加工を施したうえでの第三者提供を検討すると明記。死因についても、がん死亡では部位が判別可能な情報、非がん死ではICD中間分類レベルの提供を可能とする方向性が示された。2026年の制度実施を目指す。これにあわせて、全国がん登録の届け出項目拡充も進められる。厚生労働省は、2027年診断症例から「死亡場所」を登録項目に追加する方針を了承。終末期医療や在宅看取りの実態把握に資する狙いだ。さらに、2028年以降はUICCのTNM分類(腫瘍径、リンパ節転移、遠隔転移)の追加も予定されている。また、院内がん登録とNDB(レセプト・特定健診情報)など公的データベースの連結解析を可能とし、本人同意を不要とする第三者提供の対象に院内がん登録を含める方針も示された。AYA世代や希少がんでは、国際標準分類に基づく情報提供を拡充する。その一方で、議論が続く自治体がん検診の「医師1人+AI読影」解禁は、今回の中間答申には盛り込まれなかった。政府は、今夏に規制改革実施計画を策定し、がん研究基盤の強化を急ぐとしている。 参考 1) がん登録情報の利活用、死亡日など提供方法を検討 中間答申 規制改革推進会議(CB news) 2) がん登録に「死亡場所」も 27年症例から項目追加 厚労省(同) 3) 規制改革推進に関する中間答申(規制改革推進会議) 3.小児科・産科、総合診療の人材不足鮮明 医師確保計画の改定で/厚労省厚生労働省は、2月25日に開かれた「第13回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、都道府県を対象に実施したアンケート結果を公表し、医師確保が特に必要な診療科として「小児科」を挙げた自治体が最多の41都道府県に上ったと明らかにした。次いで産科・産婦人科が40、総合診療科が34となり、生命予後に直結しやすく、24時間対応や当直負担の重い診療科で人材不足が深刻である実態が改めて浮き彫りとなった。特定診療科の医師確保に向けた支援策は44都道府県で実施しており、主な手法は(1)診療科を特定した地域枠の設定、(2)人件費や医師派遣費など医療機関への財政支援、(3)大学への寄附講座設置などであった。その一方で、都道府県が養成過程での対策を進めるために国に求める支援としては、財政支援の拡充、制度に関する情報提供や協議の場の設置、臨床研修・専門研修での採用上限設定など制度的関与の強化が多く挙げられた。この検討会において、第8次医師確保計画(後期、2027年度~)に反映する「医師養成過程の取組に係る議論の整理(案)」を大筋で了承した。整理案では、地域枠は原則として恒久定員内で設置する方針を明確化し、医師少数県や離島・豪雪地帯など、やむを得ない事情がある場合に限って臨時定員の活用を例外的に認めるとした。また、医学部段階だけでなく、臨床研修・専門研修を通じた偏在是正を重視し、若手医師の流出入や研修修了後の定着状況、地域枠医師の義務年限終了後の勤務実態を継続的に把握・検証することを都道府県に求めた。大学医学部・大学病院に対しては、地域医療を担う診療科への誘導や研修プログラムの魅力向上など、教育機能と地域医療政策の一体的運用がより強く求められることになる。 参考 1) 医師確保が特に必要な診療科、最多は「小児科」 厚労省の都道府県調査で(CB news) 2) 地域枠は原則「恒久定員内」に設置へ 医師多数県以外も 厚労省検討会が整理案(同) 3) 特に医師確保が必要な診療科として、41都道府県が「小児科」と回答(日経メディカル) 4) 医師確保計画策定ガイドラインの見直しに向けた医師養成過程の取組に係る議論の整理案(厚労省) 4.美容医療の診療録記載を省令で明確化へ、監督強化でパブコメ開始/厚労省厚生労働省は、美容医療を巡る健康被害や不適切な勧誘の増加を受け、医師の診療録の記載ルールを見直す省令改正案を公表し、パブリックコメントを実施している。意見募集は3月17日まで。改正案では、美容医療を提供する場合の診療録の記載事項に「患者の主訴」「患者が希望する治療内容」が含まれることを明確化し、保健所などの立入検査・指導で診療実態を確認できるようにする。これまでは医師法違反などが疑われる事案でも、診療録の記載自体が不十分で根拠が追えず、指導の実効性が上がらないケースがあったためであり、厚労省は監督強化の一環として2026年4月の施行を予定している。今回の医師法施行規則の改正は、美容医療の消費者相談の件数増加を受け、2024年に厚労省は「美容医療の適切な実施に関する検討会」での議論をもとに、同年11月の取りまとめで「診療録記載の徹底」を安全確保の柱に位置付けた経緯がある。わが国の美容医療はSNS拡散とコロナ禍の「特需」を追い風に急拡大し、推計では2024年に市場規模は6,310億円に達している。クリニック数は、2020年の1,404施設から2023年に2,016施設へと増加し、施術件数も2017年約160万件から2024年約306万件に伸長、自由診療の高収益性を背景に研修後すぐ美容医療に進む「直美」医師も2012年の16人から2022年には198人と急増している。その一方で、経験不足や合併症対応の脆弱さを不安視する声があり、国民生活センターへの相談件数も2022年度3,798件から2024年度1万736件へと急増している。自由診療は保険診療と異なり、診療内容について保険審査の枠外で、価格設定や運営の自由度が高い。クリニックによっては、カウンセラーにノルマを課して高額な施術へ誘導するほか、術後の合併症の対応能力不足、未承認の薬剤や医療機器を使用した施術での重篤な被害の発生も繰り返されている。SNSでは「痛みゼロ」「必ず小顔」など断定的表現や根拠不明の肩書が拡散しやすく、広告規制が届きにくい「グレーゾーン」も課題となっている。厚労省では、患者の「主訴」「希望する治療」の記録を明確化して、診療の妥当性や説明・同意の検証、トラブル時の事後検証を可能にし、行政指導につなげたい考え。2025年12月には美容医療機関に安全管理措置や相談先などの報告を年1回程度求める制度整備も進んでおり、今回の省令改正と併せ、統一的な指針整備、若手教育・倫理、広告監視の実効性をどう高めるかが焦点となる。厚労省は、パブリックコメントで記載項目の具体性や運用負担、立入検査での活用方法などへの意見を求めており、4月以降は現場での真摯な対応が求められる。 参考 1) 医師法施行規則及び歯科医師法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について(政府) 2) 美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書(厚労省) 3) 美容医療、診療録の記載事項に「患者の主訴」「希望する治療内容」も 省令改正へ(CB news) 4) 美への欲望につけこみ高額な課金、死亡事故も…専門医は「過剰営業」を懸念(日経メディカル) 5) 「成功してるじゃん」美容医療で“しこり”も医師が失敗認めず…被害者が施術費用の返還など求めクリニックを提訴(弁護士JPニュース) 5.出生数70.6万人で過去最少更新、推計より17年早い少子化/厚労省厚生労働省が公表した人口動態統計速報(外国人を含む)によると、2025年の出生数は70万5,809人で、1899年の統計開始以降で過去最少を更新し、10年連続減少した。前年差は1万5,179人減(2.1%減)で、2022~24年の約5%減に比べ減少幅は縮小した。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計(中位推計)では出生数が70万人台となるのは2042年と見込まれており、想定よりも約17年早いペースで少子化が進んでいる。死亡数は160万5,654人で0.8%減と5年ぶりに減少へ転じたが、出生数との差である自然減は89万9,845人と過去最大に拡大した。団塊の世代が全員75歳以上となる中、人口減の加速が改めて示された。婚姻数は50万5,656組で1.1%増、2年連続の増加。ただしコロナ禍前(2019年の59万組台)には戻っていない。離婚は18万2,969組で3.7%減だった。地域別では45道府県で出生数が減少する一方、東京都は8万8,518人(1.3%増)と速報値で9年ぶりに増加し、石川県も6,515人(128人増)と増加に転じた。全国出生数の約3割を首都圏1都3県が占め、地域差も鮮明となった。東京都は、現金給付や保育料無償化の拡大、無痛分娩助成など子育て支援を進めており、周辺自治体から転居希望の増加を指摘する声もある。上野 賢一郎厚生労働大臣は、若年層の所得向上や共働き・共育て支援を進める考えを示し、「婚姻増は良い傾向」と述べている。もっとも、出生数の下振れが続けば、年金・医療・介護の前提となる人口見通しが揺らぎ、給付と負担の再設計を迫る可能性がある。なお日本人のみの出生数・合計特殊出生率は6月公表予定で、出生数は60万人台となる見通しが示されている。政府は2030年までが少子化反転の「ラストチャンス」として、こども未来戦略を推進し、財源として公的医療保険に上乗せする支援金制度を段階的に運用する方針も示している。 参考 1) 人口動態統計速報(厚労省) 2) 2025年の出生数70万人、10年連続で最少更新…東京・石川が増加に(読売新聞) 3) 出生数過去最少の70万人 推計より17年早い少子化 25年速報値(毎日新聞) 4) 2025年の出生数70.5万人 少子化は推計より17年早く、人口減も進行(日経新聞) 5) 2025年、出生数は70万5,809人で10年連続減少、死亡数が160万5,654人で、自然増減は「マイナス89万9,845人」-厚労省(Gem Med) 6.人口減少で経営悪化の病院再編、市立病院が閉院へ/室蘭市北海道室蘭市は、経営悪化が続く市立室蘭総合病院について2027年度をめどに閉院し、高度急性期・急性期機能を製鉄記念室蘭病院へ統合する方針を正式に決定した。市内3病院(市立室蘭総合病院、製鉄記念室蘭病院、日鋼記念病院)の再編を巡り、地域医療連携再編等推進協議会が最終合意に達した。背景には、室蘭市および西胆振地域で進む人口減少と急性期医療需要の縮小がある。3病院が同様の急性期機能を維持し続ければ、病床過剰や症例分散により医療の質低下や医師確保難を招き、病院経営の持続性が失われるとの判断が示された。市立病院は1872年開設、517床・22診療科を有し、約720人が勤務する基幹病院だが、2024年度末で約85億円の負債を抱え、市の一般会計からの多額の繰り出しが市の財政を圧迫していた。再編後、東室蘭地域では製鉄記念室蘭病院が2次医療圏の救命救急・高度急性期拠点を担い、蘭西地域では日鋼記念病院を中心に急性期から回復期、在宅医療までを支える体制とする。道内初の結核患者収容モデル病室の稼働など、政策医療の集約も進める。その一方で、500人超の市立病院職員は公務員の身分を失うため、再就職支援が課題となる。北海道知事の鈴木 直道氏は、患者の受け皿確保や職員雇用について市と連携し、丁寧に対応する考えを示している。今回の閉院は、人口減少地域における公立病院再編の先行事例として、全国の地域医療に大きな影響を与える可能性がある。 参考 1) 室蘭市地域医療連携・再編等推進について(室蘭市) 2) 市立室蘭総合病院、27年度めどに閉院へ 製鉄記念室蘭病院へ機能統合 3病院再編で合意(CB news) 3) 市立室蘭総合病院を閉院へ 北海道室蘭市、70億円超の財政支出も(朝日新聞) 4) 150年の歴史がある市立病院が閉院へ…新年度に23億円支出方針の室蘭市の財政は「危機的水準」(読売新聞)

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高齢乳がん診療の課題とGA活用【高齢者がん治療 虎の巻】第7回

講師紹介<今回のPoint>乳がんは比較的若年者の多いがん種であるが、高齢者の罹患が増えている。高齢乳がん患者の治療方針決定に当たっては、年齢のみで評価せず、身体・認知機能や社会的背景を含めた高齢者機能評価(GA)に基づいて治療方針を決定する。GAに基づくレジメン選択や用量調整は有害事象を減らし、Fit(適格)な高齢者には標準治療を積極的に適用する。乳がんの発症年齢も欧米化近年、乳がんの治療開発は速度を増しており、毎年新たな標準治療が導入されています。転移乳がんを対象とした臨床試験でも、生存期間が延長を示すものが少なくない。日本の乳がん患者は40代後半と60代後半に2つの罹患ピークがありますが、発症年齢は欧米化しており高齢乳がん患者は増加しています。高齢者には臓器機能低下、複数の併存症、認知機能低下、社会的支援の不足など、年齢特有の生物学的・生理学的・社会的変化が重なり合い、すべての患者への標準治療の適用や、適切な毒性管理が難しい状況にあります。また臨床試験への高齢者の参加が少なく、治療選択の根拠となるデータが不足しています。これらの課題に対し、近年注目されているのが高齢者機能評価(geriatric assessment:GA)です。GAは患者の身体機能、認知機能、栄養状態、心理状態、社会的支援、併存症などを多面的に評価し、治療選択や用量調節の指針とするものです。欧米のガイドラインや本邦の乳がん診療ガイドラインでも、GAを用いて高齢患者の予後やレジリエンスを評価し、それらを元に患者の価値観や治療目標を共有し、治療計画を立てることが推奨されています。そのためには、高齢患者全例に簡易ツール「G8」でスクリーニングを行い、14点以下となった患者には詳細なGAを実施します。また、薬物療法の有害事象予測としてはCARGスコアやCRASHスコアなどのリスク指標を用います。これらの指標に基づき、若年患者と同じ標準治療を導入するか、用量を減量して導入するか、あるいはがん薬物療法は行わずに症状緩和を行うかといった判断が可能となります。国内外での乳がん患者に対するGA実施結果当院では、試験的に2024年10月から入退院支援センターで面談を受けた65歳以上の全がん患者(すなわち入院患者)にG8を施行しています。その結果、高齢がん患者の中でも身体機能や生活状況は大きく異なり、単純な年齢区分だけでは適切な治療方針を決められないことが確認されました。たとえば、G8評価で良好なスコアを示した75歳の転移乳がん患者であっても、若年者と同様にCDK4/6阻害薬併用内分泌療法を実施し、十分な効果と有害事象の管理が得られました。一方、G8で脆弱と判定された患者では、化学療法の開始前に栄養・運動介入や社会支援の導入を行うことで、有害事象の発生を抑えながら治療を完遂することができました。海外の臨床研究でも、GAに基づく介入が化学療法関連毒性を有意に減らし、治療完遂率やQOLを改善することが示されています。GAを活用しない場合はどうでしょう。一見元気そうな高齢患者の問題が見落とされ、後々になって治療強度が保てなかったり、重篤な副作用につながったりします。一方、高齢患者を年齢のみで判断して標準治療を避けると、治療機会を失い生存期間が短縮する可能性があります。逆にPS良好だからといって高用量の化学療法を選択すると、隠れた認知機能障害や栄養不良により重大な毒性が生じることがありますし、根拠を欠いたまま減量や中止を行えば、治療効果が十分に得られず患者のQOL低下を招くことになります。こうした過剰治療と過少治療のリスクを避けるためにも、GAを実施して患者の全体像を把握し、主観によらない評価で治療を調整することが不可欠です。がん治療対象のfit/unfit、老年医学と異なる観点で意識を高齢者がん診療の実践において、私が医師の皆さまに伝えたいことは、「年齢を唯一の基準とせず、患者個々の機能と価値観を尊重した治療を提供する」ことです。fitな高齢者(fit[適格]とvulnerable[プレフレイル])には若年者と同じ標準治療を行い、unfitな患者(frail)には早期から多職種チームによる栄養・リハビリ・薬学的支援を導入しながら適切な減量や支持療法を組み合わせるべきです。また、患者と家族の希望や生活目標を共有する共有意思決定(shared decision making:SDM)を実践し、治療の利点と不利益をわかりやすく説明することが重要です。がん治療の進歩により寿命が延びる一方、高齢者の多様性も増しています。令和のがん治療を実践する医師には老年腫瘍学の知識とコミュニケーションスキルを磨き、チーム医療の一員として高齢者のがん治療を支える姿勢が求められています。乳がんの試験から見えた、治療強度とIADLの意外な関係私が研究事務局を担ったJCOG1607試験(高齢者HER2陽性転移乳がんに対するペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル[HPD]療法vs. T-DM1)は、毒性の強い標準治療HPD療法に対する毒性の低い治療T-DM1の非劣性を示すことを目的として実施した。その際、HPD療法は毒性が強いために高齢者では治療強度が保てずに、結果として予後が悪化するのではないかと考えた。しかしながらT-DM1の非劣性は示されず、更には探索的なサブグループ解析でG8や手段的日常生活動作(IADL)が”低い”ほうがHPD療法のメリットが大きかった(SABCS2023、ASCO2024)。この結果は逆説的であるが、“疾患によって”全身状態が悪化している患者には、しっかりと有効性が高い治療を行うことが結果的に全身状態の改善につながるということを示しているのかもしれない。1)Culakova E, et al. J Clin Oncol. 2023;41:835-846.2)Biganzoli L, et al. Lancet Oncol. 2021;22:e327-e340.3)Morita M, et al. Breast Cancer. 2022;29:498-506.4)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology - Older Adult Oncology Version 1.2026.5)高齢者がん診療ガイドライン作成委員会編. 高齢者がん診療ガイドライン 2022年 修正・増補版. 2025.6)JCOG Breast Cancer Study Group:JCOG1607

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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現在の認知症診断、その費用対効果は?

 アルツハイマー病および認知症は、世界において臨床的および経済的に大きな負担となっている。早期診断や介入は、疾患の進行を遅らせる可能性がある。現在の診断ガイドラインでは、臨床評価と併せて画像診断およびバイオマーカー分析を検討することが推奨されている。しかし、医療資源は限られているため、資源配分の指針として診断技術の費用対効果を検証する必要がある。カナダ・Western UniversityのMunira Kashem氏らは、アルツハイマー病または認知症の診断および/または進行フォローアップのための神経画像診断、バイオマーカー、その他の診断、スクリーニング戦略に関する経済評価研究をシステマティックにレビューした。Alzheimer's Research & Therapy誌2026年1月23日号の報告。 国、言語、出版期間を問わずMedline、Embase、PsycINFO、CINAHL、EconLitより網羅的に検索し、関連研究を抽出した。研究の質の評価には、医療経済基準に関するコンセンサス拡張版(Consensus on Health Economic Criteria-Extended:CHEC-Extended)チェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・6,804件中21件の研究が適格基準を満たした。・これらの研究には、PET、SPECT、CT、MRIなどの神経画像技術(10件)、脳脊髄液および血液バイオマーカー(7件)、スクリーニングプログラム、機械学習に基づくモデル、多職種連携ケアアプローチなどの代替診断戦略(4件)の評価が含まれた。・画像技術を評価した研究のうち、6件は、費用対効果が高いとは認めなかった。・対照的に、脳脊髄液および血液バイオマーカーの研究では、これらの技術は費用対効果が高いと結論付けられたが、結果には多少のばらつきが認められた。・方法論的質スコアは、15〜95%の範囲であり、低品質から高品質の研究が混在していることが示された。・研究デザインと報告されたアウトカムの異質性のため、直接比較はできなかった。 著者らは「多くの研究は高品質であったが、研究目的、デザイン、アウトカムの異質性により、エビデンスの統合が制限された。今後の研究では、方法論の一貫性、透明性のある費用報告、新たな治療枠組みの統合を確保し、アルツハイマー病診断における経済的エビデンスの政策的妥当性および信頼性を向上させる必要がある」と結論付けている。

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米国「食事ガイドライン」改訂――初の超加工食品制限に評価も、専門家から批判も相次ぐ

 米国の「食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans:DGA)」は、学校給食などをはじめとした国民の栄養摂取の指針となるもので、米国農務省(USDA)と米国保健福祉省(HHS)が5年ごとに改訂している。2026年1月7日に最新版(2025~2030年版)が発表され、大きな内容変更が話題となっている。 改訂版の中心となるメッセージは、「Eat real food(本物の食物を食べよう)」で、全体を通じて「ホールフード」(加工されていない/加工が最小限の食品、全粒粉穀物など)の摂取が推奨されている。従来のDGAは、基本的に塩分や糖分といった1日の栄養目標値の範囲内であれば、あらゆる食品の選択肢が許容されるものとしてきたが、この方針を大きく転換した。主な改訂点は以下のとおり。1)超加工食品・精製炭水化物・添加糖類:初の制限推奨避けるべき、あるいは制限すべき食品として、「高度に加工された食品(highly processed foods)」(化学添加物が添加された肉などで、一般に「超加工食品」と呼ばれるもの)や精製炭水化物(クッキー、白パン、シリアルなど)が明記された。添加糖類の制限も強化され、出生~4歳は「添加糖類を避ける」、5~10歳は「一切推奨しない」という内容が盛り込まれた。2)脂質:飽和脂肪10%上限は維持飽和脂肪は総エネルギーの10%を超えないという推奨は前版から継承された一方で、「healthy fats(健康的な油脂)」として、オリーブ油に加えてバターや牛脂も選択肢として例示された。3)乳製品:小児で「全乳」を明確に推奨小児の1歳以降では「whole milk(全脂肪乳)」がエネルギーや脳発達に重要と明記。これに基づいて「学校給食を低脂肪・無脂肪乳から全脂肪乳を戻す運動(Whole Milk for Healthy Kids Act)」の関連法が提出されている。4)タンパク質の増強食事におけるタンパク質の摂取量を、従来の推奨である体重1kg当たり0.8g/日から1.2~1.6g/日に引き上げた。 一方、本ガイドラインが発表されると、医療や栄養の専門家から批判の声が上がった。  JAMA誌はオンライン版2026年1月14日号の「Perspective1)」でガイドラインの概要を紹介、ホールフード推奨や超加工食品の制限に対しては一定の評価をしつつ、突然の方針転換を「科学ではなく政治によるもので一貫性がない」とし、タンパク質の増加推奨もエビデンスに基づいておらず特定の業界を利するものだとし、実際の学校給食などの変革プロセスも不確実である点などを批判している。 Lancet誌はオンライン版2026年2月16日号の「Correspondence2)」「Comment3)」で、DGAが従来の栄養学の蓄積やエビデンスの扱いから外れており、「政策(予算・制度)と推奨内容の組み合わせが、結果的に健康を悪化させかねない」と警鐘を鳴らしている。 米国心臓病学会(ACC)も2026年1月27日付で解説記事4)を発表し、タンパク質の摂取量の推奨が大きく上がったが、これは独立組織である「食事ガイドライン諮問委員会(DGAC)」が事前にまとめた報告に含まれていないなど、エビデンスとの不一致や策定プロセスの不透明性に対する疑問を表明している。 CareNet.comのコラム「NYから木曜日」でこれまでの多くの米国の医療・健康問題を取り上げてきた米国・マウントサイナイ医科大学 老年医学科の山田 悠史氏に今回のガイドラインの問題点について聞いた。「正しさ」と「問題」が混在するゆえの「タチの悪さ」 ――今回の改訂ガイドラインの主な推奨事項として、以下が挙げられます。・「リアルフード」の重視(自然食品を推奨し、超加工食品を徹底的に排除する)・タンパク質の増量(体重1kg当たり1.2~1.6g/日という、従来の推奨量を上回る目標値を設定)・脂肪の質の再定義(全脂肪乳製品を推奨、調理油としてオリーブオイルに加え、バターや牛脂の使用を肯定)・添加糖と添加物の排除(1食当たりの添加糖を10g以下に制限。着色料、保存料、人工甘味料などの化学添加物を避けるよう警告) 確かに、「超加工食品の過剰摂取是正」や「添加糖の削減」という点では公衆衛生的にも正しい方向を向いています。しかし、脂質に関するアドバイスでは矛盾があったり、過剰なタンパク質推奨がされていたりするなど、科学と政治の混同といった問題がみられます。 この正しさと問題の「混在」が一般の人が見抜くのを難しくしていて、「タチが悪い」と思います。 たとえば、脂質に関するアドバイスの矛盾として、ガイドラインは「飽和脂肪酸の摂取は総カロリーの10%未満に抑えるべき」と従来の基準を踏襲する一方で、「バターや牛脂」を調理油の選択肢として推奨し 、「全脂肪乳製品」を推奨しています。 バターや牛脂は飽和脂肪酸の主要な供給源であり、これらを積極的に推奨しながら「10%未満」という目標を達成することは、一般消費者にとって極めて困難です。多くの質の高いシステマティックレビューは、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸(植物油など)に置き換えることで心血管疾患リスクが低減することを示唆していますが、ガイドラインでは植物性種子油への言及を避け、動物性脂肪を肯定するバイアスがかかっています。これは現在の栄養疫学のコンセンサスとは異なり、国内産業支援の色が見え隠れします。 タンパク質に関しては、一般成人に対して「体重1kg当たり1.2~1.6g」の摂取を推奨しています。参考までに現在の米国の推奨量は0.8g/kgです。確かに、1.2~1.6g/kgという数値は、アスリートや高齢者のサルコペニア予防には有益であるエビデンスが存在しますが、一般人口全体に対する一律の推奨としては多過ぎる可能性があります。 とくに慢性腎臓病の未診断者も多い状況下で、高タンパク食を無差別に推奨することは一定数の人をリスクにさらすことになる可能性があります。また、この目標を達成するために赤肉摂取が増加した場合、大腸がんや心血管疾患のリスクとの関連も考慮すべきでしょう。「人々の健康と地球の健康」を両立させるアプローチとも逆行しています。赤肉や全脂肪乳製品の推奨は、温室効果ガス排出量の観点から環境負荷が高く、現代の栄養ガイドラインが考慮すべきグローバルな課題を無視しています。 通常、米国の食事指針は、外部の委員会による数年にわたるシステマティックレビューを経て策定されますが、本ガイドラインは「トランプ政権のリーダーシップの下、常識を取り戻す」 と明記されており、政治的意図が前面に出ています。エビデンス以上に「国内農業支援」を進めたい狙いが透けて見えるガイドラインです。――

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コルヒチン中毒の報告受け、添文の警告や副作用など改訂/厚労省

 コルヒチン(商品名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)の添付文書への警告や重大な副作用の新設、用法及び用量などの改訂について、2026年2月24日、厚生労働省より改訂指示が発出された。 主な改訂内容として、用法及び用量に関連する注意の項では、「痛風発作の緩解への使用において、1日量1.5mgを超える高用量の投与は臨床上やむを得ない場合を除き避けること。1回量、1日量及び投与期間は国内の最新のガイドラインを参考にすること」「痛風発作の予防又は家族性地中海熱への使用において、承認された用量を超えて投与しないこと」の追記がなされた。 これまでの添付文書では、「1日量は1.8mgまでの投与にとどめることが望ましい」とされていたが、これまでに医薬品と事象との因果関係が否定できない死亡例が8例報告されており、それらの複数の症例において「1日量1.8mg超の投与」または「低用量投与であるが重度腎機能障害患者」であったことが確認されていた。 警告、副作用などの改訂は以下のとおり。―――<警告>(新設)本剤の1日量1.5mgを超える高用量を投与した患者及び重度腎機能障害患者において、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等)を発現し、死亡に至った症例が報告されている。1日量1.5mgを超える高用量の投与、又は重度腎機能障害患者への投与は、臨床上やむを得ない場合を除き避けること。また、悪心・嘔吐、腹部痛、下痢、咽頭部・胃・皮膚の灼熱感、血尿、乏尿、筋脱力等の中毒症状があらわれた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者に指導すること。<用法及び用量に関連する注意>(一部抜粋)[効能共通]投与量の増加に伴い、下痢等の胃腸障害の発現が増加するため、以下の点に留意すること。1日量1.5mgを超える高用量投与により、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等)を発現し、死亡に至った症例が報告されている。・痛風発作の緩解への使用において、1日量1.5mgを超える高用量の投与は臨床上やむを得ない場合を除き避けること。1回量、1日量及び投与期間は国内の最新のガイドラインを参考にすること。 ・痛風発作の予防又は家族性地中海熱への使用において、承認された用量を超えて投与しないこと。<重要な基本的注意>(新設)高用量を投与した患者及び腎機能障害患者において、重篤な中毒症状を発現する可能性があるので、悪心・嘔吐、腹部痛、下痢、咽頭部・胃・皮膚の灼熱感、血尿、乏尿、筋脱力等の症状があらわれた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者に指導すること。<腎機能障害患者>(新設)9.2.1に述べた併用薬を服用していない重度腎機能障害患者*臨床上やむを得ない場合を除き投与は避けること。投与する場合には、ごく少量から開始し、必要最小限の投与期間に留めるなど注意すること。重度腎機能障害患者において、重篤な中毒症状を発現し、死亡に至った症例が報告されている。*肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤又はP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の腎機能障害患者<重大な副作用>(新設)コルヒチンによる中毒症状承認された用法及び用量の範囲内であっても高用量を投与した患者及び腎機能障害患者等において、本剤の血中濃度が上昇し、重篤な中毒症状を発現する可能性がある。胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害等の中毒症状が認められた場合には、本剤の投与を中止し適切な処置を行うこと。 処置:脱水に対する補液、電解質補正、血球減少、感染症、凝固異常に対する対症療法、血圧、呼吸管理を行う。なお、本剤は強制利尿や血液透析では除去されない。――― なお、コルヒチンの高用量投与については、2月6日に高田製薬が適正使用のお願いを公表し、1日量として1.8mgを超えないよう注意を呼びかけていた。

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テゼペルマブ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加/AZ

 アストラゼネカは2026年2月19日、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)について「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療で効果不十分な18歳以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「WAYPOINT試験」の結果に基づくものである。WAYPOINT試験では、共主要評価項目の鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)が、いずれも有意に改善したことが報告されている。なお、NPSは投与4週時、NCSは投与2週時から改善が認められ、投与52週時まで改善が維持された。 電子化された添付文書の「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4. 効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)5. 効能又は効果に関連する注意〈気管支喘息〉5.1 最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。5.2 本剤は既に起きている気管支喘息の発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉5.3 本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。6. 用法及び用量〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉通常、成人にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。7. 用法及び用量に関連する注意〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から24週までには得られる。24週までに治療反応が得られない場合は、漫然と投与を続けないよう注意すること。8. 重要な基本的注意〈効能共通〉8.1 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。8.2 本剤の投与によって合併する他のアレルギー疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー疾患に対する適切な治療を怠った場合、症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれもある。本剤の投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー疾患を担当する医師と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理のもとで慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。〈気管支喘息〉8.4 本剤の投与開始後に喘息症状がコントロール不良であったり、悪化した場合には、医師の診療を受けるように患者に指導すること。

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リツキサン、自己免疫性溶血性貧血の適応追加/全薬工業・中外

 全薬工業および中外製薬は、共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体のリツキサン点滴静注100mg/同500mg(一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え))について、2026年2月19日、「自己免疫性溶血性貧血」の適応追加の承認を取得したことを発表した。 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対する適応追加は、日本血液学会および日本小児血液・がん学会より開発要望が提出され、2025年7月4日の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、同年7月31日の薬事審議会医薬品第一部会で公知申請を行って差し支えないと正式に決定された。これを受け、全薬工業が同年8月29日に公知申請を行い、今回の承認取得に至った。なお、第一部会で決定された7月31日付けで薬事承認を待たずに保険適用となっている。 AIHAは、自己抗体が体温(37℃)近くで反応する温式AIHAと、体温以下の低温条件で反応する冷式AIHA(寒冷凝集素症および発作性寒冷ヘモグロビン尿症)に大別される。温式AIHAでは約80%で副腎皮質ステロイド薬で改善がみられるが、再発が多く、長期投与が必要であり、再発・難治例では脾臓摘出術が行われている。また、寒冷凝集素症では保温が最も基本的な治療法だが、貧血症状、輸血依存、末梢循環障害などの重篤な症状を伴う場合もある。これらの患者に対する治療選択肢の1つとして、国内外の診療ガイドラインではリツキシマブによる治療が推奨されている。 リツキシマブは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を免疫系を用いて攻撃し細胞を傷害する。AIHAでの自己反応性B細胞の活性化や自己抗体の出現に至る病因は十分に解明されていないが、温式AIHAおよび冷式AIHAのいずれも自己抗体の出現が共通して認められることから、リツキシマブによるB細胞除去を介した治療効果が期待されるという。

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第283回 2026年度診療報酬改定に思う「ストラクチャー評価からプロセス・アウトカム評価へ」-医療AIが前提となる時代

「人を増やせば稼げる医療」の終焉2月13日に2026年度の診療報酬改定が、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で厚生労働大臣に答申がなされました。今回の改定は、わが国の医療提供体制における評価軸を根本から転換するものになると思われます。これまでの診療報酬は、看護配置や人員基準といった「構造(ストラクチャー)」、あるいは処置や実施内容に基づく「プロセス」を中心に設計されてきました。しかし、今回の改定では、「どのような医療を提供して、どのような成果(アウトカム)を出したのか」が明確に問われる内容になりました。急性期病院では、人件費比率がすでに50~60%に達し、賃上げや物価高の影響も重なって「人を増やすことで収益を確保するモデル」は限界に来ているといえます。中医協でも、生産年齢人口の急減を背景に、厳格な人員配置基準そのものが医療現場の持続性を損なっているとの認識が共有されており、限られた人材で成果を出す医療への転換が求められています。そのため設けられたAI導入による看護師の配置の基準緩和や新たな看護・多職種協働加算の取得が対策の肝となります。医療におけるアウトカムとは、退院時ADLの維持・改善、在宅復帰率、重症度評価、再入院率、紹介・逆紹介の質など、医療の「成果」です。これらを従来と同様に現場のマンパワーだけで対応しようとすれば、業務負荷の増大と疲弊は避けられないため、医療AIの導入が不可欠となってきます。医療AIは「省力化ツール」ではなく「思考支援基盤」医療現場で最も時間を消費しているのは診療・看護行為ではなく、おそらく「カルテ記録」や「報告」だと思われます。2026年の改定では、生成AIや音声入力を活用することで、医師事務作業補助者を1.3人換算できる方針が示されました。国が公式にAIによる省人化を評価対象とした点は大きな転換点です。しかし、医療AIの本質的な価値は、単なる時間短縮ではありません。診察や看護、リハビリテーションで得られた患者情報を抽出・構造化し、整理された形で診療録やサマリのドラフトを作成できるようになります。医師や看護師などのスタッフはそれらを確認・修正するだけでよくなり、残業の原因となっていた入力作業から解放されることになり、結果として記録業務が「思考を妨げる作業」から「思考を整理するプロセス」へと変わり得ることになります。病床マネジメントは経験則からデータへ今回の改定で病院経営上の最大の論点は、急性期病床の再編です。重症度・医療看護必要度の評価は厳格化され、救急車の受け入れ実績や手術件数など、より「急性期らしさ」が強く求められるようになっています。医療現場でAIを用いることで、在院日数の予測、転棟タイミングの提示、在宅復帰困難患者の早期抽出などが可能となり、従来は「空床を埋めるために調整」していたベッドコントロール会議が、「患者を最適なタイミングで最適な場に送るための戦略会議」へと変化することが予想されます。さらにAIが示す退院予測を基に、多職種カンファレンスで患者のゴールをシェアし、役割を分担することで、主治医単独型からチーム医療への移行も現実味を帯びてきます。記録業務をAIに委ね、現場を守る看護配置においても、AIのほか見守りセンサーなどの活用で要件の緩和が示されています。重要なのは、バイタル転記や必要度判定などの定型的な記録業務をAIに任せることです。これにより看護スタッフは、PCの前で記録業務に専念する必要がなくなり、ベッドサイドで看護業務に多くの時間を割けるようになります。労働人口が減少する中、医療・看護人材確保が今後ますます困難となる時代、医療・看護現場でのAI活用は単なるIT投資ではなく、現場スタッフの負担を減らし、バーンアウト(燃え尽き)を防ぐ「人材戦略」ともいえるのではないでしょうか。なぜ医師・看護師主導でなければ失敗するのか医療AIの導入でIT部門や事務部門任せにすると、現場で使われない仕組みになりやすいと思います。患者フローや医療の価値を理解しているのは、医師や看護師など医療スタッフであり、何が「アウトカムとして意味を持つか」を定義できるのも、現場スタッフの視点や意見です。これまで現場のスタッフが残業時間で行っていた診療録の作成、退院サマリなどの文書作成、委員会資料作成など、AIの適用範囲を医師や看護スタッフが導入について主導することで、「頑張っているのにあまり評価されない病院」から、「構造的に評価される病院」へと転換が可能になります。医療AIのリスク、無料版AIの安易な利用には注意が必要個人情報保護の観点から、一般商用の無料AIの安易な利用は極めてリスクが高いので注意が必要です。厚生労働省からはわが国の医療機関が遵守すべきルールとして「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が出されており、最新版(第6.0版)では、クラウドサービス(SaaS/PaaS/IaaS)の利用について厳格な規定があります。このガイドラインでは、データ保存先の所在地と法制度の把握が求められています。多くの無料AIはこれを満たさず、医療機関での利用には適しません。このため、医療機関はサービス提供者と、安全管理措置や責任範囲を明確にした契約を締結する必要があります。無料AIの場合、個別の契約ができず、運営側に免責事項が多い「利用規約」のみで運用されるため、ガイドライン違反となります。さらに無料版のAIツールの多くは、入力されたデータを「AIの性能向上(学習)」に2次利用することをデフォルトで設定しています。学習データへの利用リスク(オプトアウトの欠如)が存在しており、患者の病歴や氏名などの情報がいったんAIの学習データに取り込まれると、第三者が特定のプロンプトを入力した際に、その情報が回答の一部として出力されてしまうリスクがあります。これは意図しない「情報の拡散」であり、重大な情報漏洩事案となります。さらに患者の病歴は「要配慮個人情報」に該当し、より厳格な取り扱いが求められます。個人情報保護法では、本人の同意なしに個人データを第三者に提供することを禁じています。国外のAIサービスにデータを入力することは、国外の第三者への提供とみなされる可能性があり、厳格な法的要件(適切な体制の確認など)をクリアする必要があります。そして、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は、正当な理由なく業務上知り得た他人の秘密を漏らしてはならない守秘義務(刑法および各職能法)があり、国外の制御不能なクラウドサービスに患者情報を送信する行為は、セキュリティが担保されていない以上、守秘義務違反を問われる可能性が極めて高いため、医療機関では、ガイドラインに準拠した契約型AIを用い、学習機能の制御や入力ルールを明確にした運用が不可欠と考えます。結びに-2026年は「最初の一手」を打つ年2026年度の診療報酬改定は、病院業界にとっては黒船にあたるAIを組み込んだ医療提供体制を構築できた病院により成果報酬をもたらす改定ともいえます。診察や検査は医療スタッフが行い、判断をAIが支援する一種の有能な秘書となるでしょう。このシステムをなるべくスムーズに導入して現場スタッフの業務軽減に役立てるかどうかが、病院の将来を左右すると予想されます。医療AIは魔法の杖ではありません。しかし、2040年を見据え、人手不足にいつも悩まされている医療現場のスタッフが、専門性に誇りを持って働き続けるための「最初の一手」となります。 参考 1) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 2) 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(厚生労働省)

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家庭血圧測定を指示通りに実施する患者は少ない

 高血圧の治療は継続的なモニタリングに基づいており、医師は、患者が自宅で定期的に測定した血圧値を基に治療方針を調整する。しかし、遠隔高血圧管理プログラムに参加した高血圧患者の約3分の2が、血圧計が無料で提供され、教育と個別支援が行われても、自宅で指示通りに血圧を測定しなかったことが、新たな研究で明らかになった。米マス・ジェネラル・ブリガム心血管研究所のOzan Unlu氏らによるこの研究結果は、「JAMA Cardiology」に1月21日掲載された。Unlu氏は、「現行のガイドラインでは、正確な測定値を得るために、頻回かつ厳密なタイミングでの血圧測定を求めているが、日常生活の中でそれを実現するのは困難な場合が多い」とニュースリリースで述べている。 研究グループによると、家庭血圧測定(HBPM)は診察室での測定よりも正確であることが多いという。このため、米国心臓協会(AHA)は現在、高血圧患者に対し、医師の診察前に、1分間隔で2回の測定を1日2回、最大7日間行い、その平均値を算出することを推奨している。論文の上席著者である米マス・ジェネラル・ブリガムの内分泌科医であるNaomi Fisher氏は、「診察室での単回の血圧測定は誤解を招く可能性がある。診察時のストレスや不安、直前の身体活動によって、血圧が一時的に高くなることがある。自宅で数日間にわたり1日複数回測定することで、患者の真の血圧をより正確に把握でき、治療をより適切に調整できる」と述べている。 今回の研究では、遠隔高血圧管理プログラムに参加した高血圧患者3,390人(年齢中央値61歳、女性57.8%)を対象に、患者のHBPMの実施状況を評価した。患者には、自動血圧計、HBPMの教育、ナビゲーターによる電話・メッセージでの個別支援が無料で提供された。参加者には、朝と夜の服薬前にそれぞれ2回ずつ血圧測定を行い、これを週6日以上継続することが求められた。これにより、測定回数は1週間当たり計24〜28回となる。測定値は自動的に医療スタッフへ送信された。 その結果、HBPMを指示通りに24〜28回実施したのは全体の34.8%(1,181人)に過ぎず、32.7%(1,107人)は1回も測定せず、14.3%(484人)は1〜11回の実施、18.2%(618人)は12〜23回の実施にとどまることが明らかになった。 研究グループは、「これらの結果は、糖尿病患者における持続血糖モニターのように、さらに簡便な血圧測定手段が必要であることを示している」と述べ、患者が毎週測定を忘れずに行う負担を減らすため、受動的に血圧を測定できるウェアラブルデバイスが有用である可能性があるとの見方を示している。Unlu氏は、「本研究で見られたギャップは、患者に日常生活の調整を強いることなく信頼性の高い血圧データを取得できる、負担の少ない技術の必要性を浮き彫りにしている」と述べている。

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初めて治療ゴールを示した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン

 骨粗鬆症は、社会的認知も上がり、高齢者の診療では考慮しなければならない疾患となった。日本骨粗鬆症学会と日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団の3団体は2025年8月に『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2025年版』(編集:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会)を10年ぶりに刊行した。 今回の改訂では「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」の作成方法を採用して作成され、新たにClinical Question(CQ)を設定してシステマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文が作成された。治療薬では新しい治療薬が追加されたほか、「治療アルゴリズム(初期治療選択)」が盛り込まれた。 本稿では、本ガイドラインの作成委員である萩野 浩氏(独立行政法人 労働者健康安全機構 山陰労災病院 院長)に改訂のポイントや骨粗鬆症予防の意義、今後の展望について聞いた。骨粗鬆症診療を充実させるリエゾンサービス——今回のガイドライン改訂でとくに読んでもらいたい点について 大きく3点ある。 1つ目は、新たにゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブの治療薬が加わったことである。また、従来の薬剤の評価も新しくなったので、確認してもらいたい。 2つ目は、骨折のリスクについてである。骨折の既往やその既往の部位や回数、骨折からの期間でリスクが異なる。このリスクをどのように評価するかが加わり、骨折のリスクに応じて薬剤を選択することが示された。とくに「骨折リスクが高い患者には、骨形成促進薬を最初に投与する」という項目が新しく追加された。 3つ目は、「治療のゴールが設定された点」である。骨粗鬆症の治療において、薬物療法をどの程度まで継続するのか、治療薬を変更するのか、そして、休薬するのかが新たに記載された。——骨粗鬆症の予防について 骨粗鬆症の最終像としては大腿骨骨折や椎体骨折が起こり、寝たきりとなり生命予後に影響するリスクとなる。そのために、予防としては骨粗鬆症そのものを予防するとともに、骨粗鬆症の患者に骨折が起こることを予防すること、起きてしまった骨折箇所などが再度骨折することを予防する3つの予防が必要となる。 骨粗鬆症は、自覚症状や病状が少ない「沈黙の疾患」と呼ばれていて、「骨粗鬆症の検診」をきちんと実施しようということがガイドラインに記載されている。検診については、「健康日本21」の中で骨粗鬆症の検診率を15%(現在5%前後)まで引き上げようと目標が掲げられている。今後、そのためにガイドやマニュアルを整備し、検診を充実させて、早期発見・早期治療介入をしようという動きがある。 もう1つ今回のガイドラインでは、主な診療科である整形外科医へのつなぎとして骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)も明記された。これは骨粗鬆症に起因する骨折の治療と予防を含めて、看護師や理学療法士が骨粗鬆症の患者と医師の仲立ちをして、骨密度の検査や薬物療法を医師に依頼するサービスであり、より多くの医療者の目で骨粗鬆症の患者の診療を充実させようという狙いがある。1年に1回投与の新治療薬も登場——追加された新しい治療薬について 今回の改訂では「ゾレドロン酸」「アバロパラチド」「ロモソズマブ」の3つの治療薬が追加された。 ゾレドロン酸は点滴製剤で、1年に1回投与の骨吸収を抑える骨吸収抑制薬であり、経口での服用に問題のある患者やアドヒアランスに問題がある患者などにメリットとなる。 また、今回のガイドラインでは、「骨折リスクが非常に高い患者には、まず治療薬として骨形成促進薬を処方する」ということが明記され、新しい治療薬のアバロパラチドとロモソズマブは、この骨形成促進薬となる。この使い分けについては、まだ明確なコンセンサスがないので、今後臨床研究を積み上げていくこととなる。 そのほか既存薬のテリパラチドも「骨折リスクが非常に高い患者に使用すること」が示されている。その理由の1つとして何も治療していない患者のほうが、骨形成促進薬の治療効果が非常に高いというエビデンスがあり、国内外の専門家のコンセンサスも得られている。——次回のガイドラインへの課題や今後の展望について 今回のガイドライン改訂は2015年版のガイドラインから10年を要した。その理由としては、Minds診療ガイドラインに準拠した作成に変更したために、論文などの評価や解析に時間を要したからである。次回の改訂ではもう少し早くできるようにしたいが、新しい骨粗鬆症治療薬の発売などの予定がないので作成時期は今後検討されることになる。 また、今回のガイドラインは上梓してから、治療のゴール設定や治療薬の選択の目安などの記載が医師・医療者から評価された一方で、治療薬の選択が「推奨する」や「提案する」になり、少しわかりにくいという声もあった。 そのほか、米国骨代謝学会と米国骨粗鬆症財団が2024年に発表した「初期治療の治療アルゴリズム」が盛り込まれたが、「治療の目安ができた」という評価がある一方で、わが国の保険適用と異なる点もあるので、この点は気を付ける必要がある。主な改訂点と目次【今回の主な改訂点】・新たにCQを設定、システマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文を作成・新しい骨粗鬆症治療薬として、ゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブを追加・「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023」「癌治療関連骨減少症(CTIBL)診療マニュアル」を反映【目次】 第1章 骨粗鬆症の定義・疫学および成因 第2章 骨粗鬆症の診断とリスク評価 第3章 骨粗鬆症の予防 第4章 骨粗鬆症の管理および治療の基本方針 第5章 骨粗鬆症の薬物治療 第6章 続発性骨粗鬆症 第7章 骨粗鬆症管理の向上に向けた取組みとリエゾンサービス    資料/付表/QOL評価質問表/索引

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HIV-1感染症、ARTからドラビリン+islatravir切り替えによる有効性・安全性を確認/Lancet

 HIV-1感染症治療においてドラビリン/islatravir配合錠は、有効かつ良好な忍容性を示す、初となる非インテグラーゼ阻害薬(INSTI)ベースの2剤併用療法として有望であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らによる第III相無作為化実薬対照非盲検非劣性試験で示された。すべての国際ガイドラインでは、INSTIを含むレジメンが第1選択薬として推奨されているが、INSTI耐性の出現を示すWHOのデータが示されたことから懸念が生じている。ドラビリン/islatravir配合錠は、2つの強力な抗ウイルス薬からなる開発中の1日1回投与の配合錠で、相補的な作用機序および耐性プロファイルを有する。著者は、「広範なINSTI耐性の出現に対する懸念が高まる中、抗レトロウイルス療法(ART)の変更を必要とするHIV-1感染者にとって、この1日1回の配合錠は有望な選択肢となりうるだろう」と述べている。Lancet誌2026年2月7日号掲載の報告。ドラビリン/islatravir固定用量配合錠への切り替え、有効性と安全性を評価 研究グループは、成人HIV-1感染者において錠剤経口ARTの切り替え薬として、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)の固定用量配合錠の有効性と安全性を評価した。 試験は、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、コロンビア、日本、南アフリカ共和国、スイス、英国、米国)53ヵ所の研究・地域・病院ベースのクリニックで行われた。対象は、18歳以上の成人で、2剤または3剤の経口ARTレジメンを3ヵ月以上受けており、ウイルス量がHIV-1 RNA 50コピー/mL未満、治療失敗歴なし、ドラビリンに対する既知の耐性なし、活動性B型慢性肝炎でないこととした。 被験者をコンピュータ生成無作為化スケジュール法(ブロックサイズは3)で、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)配合錠を1日1回投与する群またはベースラインARTを継続する群に2対1の割合で無作為に割り付け、48週間投与した。無作為化では、ベースラインレジメンの中心となる抗レトロウイルス薬のクラス(INSTI、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬)によって層別化した。 主要エンドポイント(治療を受けたすべての被験者で評価)は、48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合であった。非劣性は、治療群間差の多重性補正後95%信頼区間(CI)の上限が4%未満の場合と定義した。安全性の解析は、無作為化され試験薬を少なくとも1回服用した被験者を対象に行われた。48週時のウイルス量50コピー/mL以上の患者割合で非劣性 2023年2月20日~10月24日に、614例が適格性についてスクリーニングされ、553例がドラビリン/islatravir群(368例)またはベースラインART群(185例)に無作為化された。551例が割り付け治療を少なくとも1回服用した(ドラビリン/islatravir群366例、ベースラインART群185例)。 551例のうち、出生時男性332例(60%)、出生時女性219例(40%)で、年齢中央値51歳(四分位範囲:41~59)、250例(45%)が自己申告に基づく黒人またはアフリカ系米国人などだった(アジア人は両群ともに5%)。 48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合は、ドラビリン/islatravir群1.4%(5/366例)、ベースラインART群4.9%(9/185例)で、ドラビリン/islatravir群の非劣性が示された(群間差:-3.6%、多重性補正後95%CI:-7.8~-0.8)。 治療関連有害事象は、ドラビリン/islatravir群(44/366例[12.0%])がベースラインART群(9/185例[4.9%])よりも多く観察された(群間差:7.2、95%CI:2.2~11.6)。両群(ドラビリン/islatravir群vs.ベースラインART群)の発現率は、あらゆる有害事象(79.5%[291/366例]vs.83.8%[155/185例]、群間差:-4.3[95%CI:-10.7~2.8])、重篤な有害事象(6.3%[23/366例]vs.4.9%[9/185例]、1.4[-3.2~5.2])、有害事象による試験中止(0.5%[2/366例]vs.2.2%[4/185例]、-1.6[-4.9~0.2])で同等であった。 死亡が1例報告されたが(ベースラインART群)、治療とは無関係と見なされた。プロトコールで規定されたCD4陽性細胞数または総リンパ球数の減少により治療を中止した被験者はいなかった。 著者は、「安全性および有効性の知見は、長期作用型の可能性のある薬剤としてのislatravirの開発を進めることを支持するものである」とまとめている。

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高齢者の減薬、EHRによる医師への通知が有効/JAMA

 高齢者に対する「潜在的に不適切な薬剤」、とくにベンゾジアゼピン系薬剤や抗コリン薬の処方は、転倒や入院のリスクを約30%増加させることが知られている。臨床ガイドラインは、これらの薬剤の使用制限を推奨しているが、多忙な診療現場における時間の制約や、患者の希望、現状維持バイアスなどが障壁となり、減薬(deprescribing)による処方の適正化は容易ではないという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学のJulie C. Lauffenburger氏らは「NUDGE-EHR-2試験」において、行動科学の知見に基づく電子健康記録(EHR)への介入ツール(ナッジ[nudge]と呼ばれる医師への通知システム)が、高齢患者における不適切な処方の削減にきわめて有効であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月29日号で報告された。201人のプライマリケア医(PCP)が参加した3群無作為化優越性試験 NUDGE-EHR-2試験は、米国ボストン市のマサチューセッツ総合病院で実施した実践的な3群並行無作為化優越性試験(米国国立老化研究所[NIA]の助成を受けた)。201人のプライマリケア医(PCP)を、2022年11月、3つの群にクラスター無作為化した。 対象は、無作為化されたPCPの患者で、年齢65歳以上、2022年11月10日~2024年3月15日にPCPを受診し、過去180日間に1種類以上のベンゾジアゼピン系薬剤または非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬、あるいは2種類以上の抗コリン薬の処方を受けた患者であった。 PCPは、介入を受けず通常ケアを行う群または次の2つのEHR介入を受ける群に割り付けられた。(1)事前コミットメント介入群:初回診察時にEHRメッセージを受信し、患者と投薬のリスクや減薬(薬剤の漸減・中止)について話し合いを開始するよう要請された。2回目およびそれ以降の診察時には、患者に不適切な可能性のある薬剤の減薬を促すよう要請するEHRメッセージをリマインダーとして受信した。(2)ブースター介入群:初回診察時にEHRメッセージを受信し、患者に減薬を促すよう要請された。PCPは、4週間後にリマインダーを送信するよう設定することができ、これを設定したPCPは受信箱でリマインダーを受け取った。 主要アウトカムは、初回診察時から追跡期間終了時までに行われた1種類以上の減薬とした。減薬は、EHRデータを用いて患者レベルで評価した医師の主導による薬剤の中止または漸減と定義した。減薬率の改善、事前コミットメント介入群40%、ブースター介入群26% 1,146例(平均年齢73.6[SD 6.4]歳、女性799例[69.7%]、平均追跡期間289.9[SD 141.0]日)が解析に含まれた。PCPは平均5.7(SD 4.7)例の患者を診察した。平均受診回数は、事前コミットメント介入群が2.6(SD 2.2)回、ブースター介入群が2.3(SD 1.6)回、通常ケア群が2.2(SD 1.6)回だった。 373例(32.5%)で、少なくとも1種類の薬剤の減薬が達成された。内訳は、事前コミットメント介入群が145例(36.8%)、ブースター介入群が122例(34.3%)、通常ケア群が106例(26.8%)であった。 通常ケア群と比較して、減薬の割合は事前コミットメント介入群で40%高く(相対リスク[RR]:1.40、95%信頼区間[CI]:1.14~1.73、絶対群間差:10.4%)、ブースター介入群で26%高かった(RR:1.26、95%CI:1.01~1.57、絶対群間差:6.5%)。 有害事象報告システムを通じた重篤な有害事象の報告はなかった。手動によるEHRレビューに基づく死亡の報告は、事前コミットメント介入群で1.4%、ブースター介入群で3.9%、通常ケア群で1.8%であった。累積投与量が減少しなかった原因は 主要アウトカムの結果とは異なり、通常ケアと比較して2つの介入法は、ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬、強力な抗コリン作用を有する薬剤の、処方された累積投与量を有意に減少させなかった。 この原因として、著者は、症例数がもっと多ければ差を検出できた可能性とともに、一部の医師が、介入の通知を受けて、ベンゾジアゼピン系薬剤および非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬を、抗コリン薬に代替した可能性があること、1つの薬剤クラスの使用を減らす一方で別の薬剤クラスを増やした可能性があると指摘している。

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